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特表2024-528128単離された多糖化合物とその使用及び製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】単離された多糖化合物とその使用及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08B 37/00 20060101AFI20240719BHJP
   A61K 31/716 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 17/16 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 8/97 20170101ALI20240719BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
C08B37/00 P
A61K31/716
A61P17/02
A61P17/16
A61K8/97
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505551
(86)(22)【出願日】2022-07-27
(85)【翻訳文提出日】2024-03-26
(86)【国際出願番号】 AU2022050788
(87)【国際公開番号】W WO2023004456
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】17/390,809
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524038956
【氏名又は名称】ティッシュ リペア リミティッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】シャララ, アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】ショー, マーク ディーコン
【テーマコード(参考)】
4C083
4C086
4C090
【Fターム(参考)】
4C083AD211
4C083CC02
4C083EE12
4C083EE13
4C083FF01
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA20
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA63
4C086NA14
4C086ZA89
4C090AA04
4C090AA09
4C090BA36
4C090BB33
4C090BB35
4C090BB38
4C090BB52
4C090BC17
4C090CA04
4C090CA11
4C090CA34
4C090DA23
4C090DA26
(57)【要約】
本明細書では、単離された生物学的多糖化合物について説明する。生物学的多糖化合物は、単離されていることと、65~95重量%の1:3結合グルコピラノシル残基及び5~25重量%の1:6結合グルコピラノシル残基を含むグリコシル結合と;純度85~100%のβ-グルカンと;0.5~2.2MDaの分子量と;ヒトバイオアッセイにおけるネガティブコントロールのTNF-αサイトカイン応答よりも少なくとも1.5倍大きい、ヒトバイオアッセイにおけるTNF-αサイトカイン応答とを有することと、水溶液には本質的に不溶性であることによって特徴付けられ得る。少なくとも一実施形態では、単離された生物学的多糖類を含むビヒクルを創傷又は火傷などの皮膚部位への局所的な適用によって皮膚を治療する方法が記載される。製造方法も記載される。
【選択図】図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
65~95重量%の1:3結合グルコピラノシル残基及び5~25重量%の1:6結合グルコピラノシル残基を含むグリコシル結合と;
純度85~100%のβ-グルカンと;
0.5~2.2MDaの分子量と;
ヒトバイオアッセイにおけるネガティブコントロールのTNF-αサイトカイン応答よりも少なくとも1.5倍大きい、ヒトバイオアッセイにおけるTNF-αサイトカイン応答と
を含み、
水溶液に本質的に不溶性である、
単離された生物学的多糖化合物。
【請求項2】
単離された生物学的多糖化合物が、サッカロミセス・セレビシエ種の酵母細胞に由来する、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
単離された生物学的多糖化合物が、以下の、
1:4結合グルコピラノシル残基;
3:4結合グルコピラノシル残基;
2:3結合グルコピラノシル残基;
3:6結合グルコピラノシル残基;
2:6及び4:6結合グルコピラノシル残基;
3:4:6結合グルコピラノシル残基;及び/又は
末端結合グルコピラノシル残基
の1つ又は複数から選択される追加の側鎖を含む化合物によってさらに特徴付けられる、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
単離された生物学的多糖化合物が、
1:4結合グルコピラノシル残基2~6%;
3:4結合グルコピラノシル残基0.01~0.5%;
2:3結合グルコピラノシル残基0.5~4%;
3:6結合グルコピラノシル残基3~10%;
2:6及び4:6結合グルコピラノシル残基0.2~1%;
3:4:6結合グルコピラノシル残基0.01~0.5%;及び
末端結合グルコピラノシル残基2~8%
を含む追加の側鎖を含む化合物によってさらに特徴付けられる、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の単離された生物学的多糖化合物の治療有効量を含むビヒクルの創傷部位への局所的な適用により、皮膚の治療を必要とする患者の皮膚を治療する方法。
【請求項6】
ビヒクルがゲル組成物である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ゲルが水性ゲルであり、単離された生物学的多糖が微粒子の形態であり、ゲル中に懸濁されている、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ビヒクルが、0.05~1.5重量%の単離された生物学的多糖化合物を含む、請求項5から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ビヒクルが慢性創傷に局所的に適用される、請求項5から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
慢性創傷が潰瘍である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
潰瘍が静脈性脚潰瘍である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
ビヒクルが皮膚の美容処置として局所的に使用される、請求項5から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ビヒクルが、治癒した皮膚弾性症及びしわを改善するために使用される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ビヒクルが、フラクション化後の皮膚の治療及び/又は完全アブレーション可能な皮膚のリサーフェイシングに使用される、請求項5から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ビヒクルが、肌質へのメリットを促進するために補助的な処置後に局所的に適用されるゲルとして使用される、請求項5から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1から5のいずれか一項に記載の単離された生物学的多糖化合物の製造方法であって、
酵母細胞を選択することと;
前記細胞を溶解し、細胞壁の断片を収集することと;
細胞壁の断片を加熱して酸性化し、マンナンとキチンを除去することと;
溶媒を用いて相分離を行って、タンパク質、グリコーゲン及び脂質とともにさらなるマンナンとさらなるキチンを除去することと;
沸騰及び乾燥により、溶媒と他の非多糖化合物を分離することと;
溶解した後、酸性化する前に、少なくとも1回の水ですすぐ工程を実施することと
を含む方法。
【請求項17】
前記酸性化することの後、前記相分離の前に、少なくとも1回水ですすぐことをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
酸性化することの後、前記相分離の前に、pHを変更し、アルコール洗浄する、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
pHを4.0に下げて前記アルコールを洗浄し、次にpH9.0に上げて前記アルコールを洗浄し、次にpH7.0に調整して前記アルコールを洗浄する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
溶媒と他の非多糖化合物を沸騰及び乾燥により分離した後、最終生成物を再び乾燥させる前に、少なくとも1回のさらなる一連の溶媒すすぎ、アルコールすすぎ、及び任意選択的に、さらなる水すすぎを通じてさらに精製することを含む、請求項16から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
使用されるアルコールが1つ又は複数の低級アルコールから選択される、請求項18から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
使用されるアルコールが、メタノール、エタノール、プロパノール、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項18から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
溶解することが、アルカリ処理若しくは熱処理、又は両方の処理を介して起こる、請求項16から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
使用される溶媒が、有機溶媒及び非極性溶媒であり、1.0超の比重を有する、請求項16から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
溶媒が、メチルクロロホルム、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラクロロエタン、四塩化炭素、酢酸エチル、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項16から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記溶媒による相分離が、室温及び中性pHで完了する、請求項16から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
溶媒と前記他の非多糖化合物の沸騰及び乾燥による分離後、生成された乾燥多糖は、最終生成物を再び乾燥させる前に、少なくとも1回のさらなる一連の溶媒すすぎ、アルコールすすぎ、及び任意選択的に、少なくとも1回のさらなる一連の水すすぎを通じてさらに精製される、請求項16から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
少なくとも1回のさらなる一連の前記溶媒すすぎ及び前記アルコールすすぎが、メチルクロロホルム、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラクロロエタン、四塩化炭素、酢酸エチル及びそれらの組み合わせから選択される溶媒、並びに、メタノール、エタノール、プロパノール及びそれらの組み合わせから選択されるアルコールを使用して行われる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
少なくとも1回のさらなる一連の前記水すすぎが、50℃超の温度の水を使用して完了される、請求項27又は28に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2021年7月30日にWIPO DASコード8235で出願された米国実用特許出願第17/390,809号のPCT特許出願であり、その明細書は参照により本明細書で援用される。
【0002】
技術分野
本明細書には、単離された生物学的多糖化合物、その使用方法及び製造方法が記載されている。より詳細には、多糖類は、生物学的に誘導された多糖類の高純度形態であり得、使用方法は、局所皮膚治療に関連し得る。本製造方法は、予期せぬ臨床的に有効な多糖化合物を提供すると思われる従来の方法に、追加の製造工程を含む。
【背景技術】
【0003】
背景技術
多糖化合物及び関連する態様が本明細書に記載される。説明を簡単にするために、本明細書に記載の多糖類は酵母に由来するため、以下では、生物学的多糖類、生物学的由来多糖類、グルカン、又はβ-グルカンと同義で呼ぶことができる。
【0004】
酵母由来の生物学的に由来する多糖類は、グリコシル結合で構成される既知の化合物である。他の用途の中でも、特に創傷修復を促進するためのそれらの使用が知られている。非セルロース系β-グルカンは、強力な免疫活性化因子として認識されている。β-グルカンは一般に安全で、術後の感染率を軽減することが知られている。
【0005】
既存の技術では、組織修復、スキンケア、及びその他の用途に関する知見の中で、そのような製品中の重要な化合物の1つが酵母細胞膜製品であることが記載されている。本技術は、皮膚疾患の治療のための酵母細胞製品の使用;酵母からβ-グルカンを製造するプロセス;酵母由来の皮膚細胞生成物の処理;酵母由来の微粒子β-グルカンを局所的に適用された皮膚を活性化すること;火傷の局所治療用のゲル又はクリームとしての穀物由来のβ-グルカン;凍結乾燥を使用した小粒子グルカンの調製;酵素を使用してβ-グルカンを抽出するプロセス;レーザー又はケミカルピーリング治療後の皮膚を治療するために担体中にカルボキシメチルβ-グルカンを使用すること;レーザー又はケミカルピーリング治療後の皮膚を治療するための微粒子β-グルカンの局所的適用;わずか1~3個の結合と1~6個の側鎖を有する精製酵母抽出物のβ-グルカンの効果;及びサッカロミセス・セレビシエ由来のゲルグルカン製品を説明する。
【0006】
β-グルカンの構造とその効果プロファイルの間の複雑な関係の理解には欠陥があり、さらに臨床解釈へのアプローチの不均一性、及びこれらの薬剤の抽出と精製へのアプローチの多様性も存在する。これらの欠陥は、二重盲検ランダム化プラセボコントロール治験において規制当局によって設定された臨床的に受け入れられたエンドポイントの達成に実際に成功を示した分子の探索を妨げている。
【0007】
現在まで、β-グルカンは創傷治癒における適応症としての薬学的又は生物学的承認を得ることができていない。創傷治癒に使用する分子に関する先行技術があるにもかかわらず、β-グルカンを含む製剤は、規制で義務付けられた臨床エンドポイント周辺の静脈性下腿潰瘍又はその他の慢性創傷を対象とした二重盲検プラセボコントロールヒト治験で臨床効果が証明されていいない。
【0008】
発明者らの経験によれば、従来技術は、どのような分子の特徴付けが臨床有効性の証拠を生み出すのかを解決又は記載していない。例えば、本技術は、グルカンの分岐構造はどうあるべきか;分子量はどれくらいであるべきか;理想的な純度と測定された免疫反応はどのようなものであるべきかなどが、最終製品の一貫性と、創傷治癒のエンドポイントにおける実際に実証された臨床効果を組み合わせた両方の規制当局の承認を達成するために説明されていない。
【0009】
グルカンの分野には膨大な量の先行技術があるにもかかわらず、臨床試験で米国食品医薬品局(FDA)の有効な評価項目を満たすグルカンは、これまでに承認されていない。しかし、有効かつ効果的な皮膚治療の必要性は依然として存在しており、効果的な新しい治療法には大きな価値がある。過去30年間、静脈性下腿潰瘍を治療するという治療効果を謳う薬剤は、この適応症には満たされていない大規模なニーズが示されているにもかかわらず、承認されていないことに注意されたい。
【0010】
詳細には、本発明者らは、従来技術が以下について記載していないことを確認した。
-静脈性下肢潰瘍及び慢性創傷の治療において規制当局によって設定された絶対的基準の創傷治癒エンドポイントに対する臨床効果を証明するβ-グルカン化合物の正確な特徴付けと説明;
-不溶性酵母(サッカロマイセス・セレヴィシエ)由来のβ-グルカンのUS6,242,594に記載されているものを超える追加の処理;
-US6,242,594に記載されているものよりも高純度のβ-グルカン化合物;
-微粒子β-グルカン;
-美容皮膚疾患及び慢性創傷の治療における予期せぬ実証された臨床効果;
-弾性線維症及びしわによって測定される肌の質を改善するための、局所的に適用された微粒子状の生物学的多糖化合物の使用。
-レーザーアブレーティブレーザー手術後の皮膚の質の利点を加速する臨床証拠を提供するための生物学的多糖化合物を使用;
-静脈潰瘍の治癒を開始し、さらに促進するための生物学的多糖化合物の使用;
-ヒト二重盲検ランダム化プラセボコントロール試験において、創傷治癒における証明された臨床効果;
-ヒト二重盲検ランダム化プラセボコントロール試験における弾性線維症及びしわの臨床段階的改善によって測定された、加速された肌質における証明された臨床効果;
-該技術はまた、不溶性の生物学的多糖化合物や不溶性のβ-グルカンそのものから遠ざかることにもつながる。実際、当技術では、不溶性物質は炎症性が高く、過剰な炎症反応が害を及ぼし、実際に治癒結果を悪化させるため、局所的な創傷/皮膚環境には使用すべきではないことが示されている;
-予期せぬポジティブな効果を生み出す、創傷治癒のための従来技術の化合物を上回る非常に高い免疫応答の証拠;
-静脈性下腿潰瘍の適応症において肯定的な第IIB相データを達成し、FDA及びその他の規制当局が治療の標識を付与するために許容するエンドポイントの化粧品を達成した生物学的多糖化合物。
【0011】
生物学的多糖化合物、その使用方法及び製造方法のさらなる態様及び利点は、単なる例として与えられる以下の説明から明らかになるであろう。
【発明の概要】
【0012】
本明細書に記載されるのは、高純度の形態の、単離された不溶性の生物学的に誘導された多糖化合物である。この化合物の使用方法が記載されており、特に局所皮膚治療において、この化合物の有効性が予想よりも高いレベルであることを示している。予想外に有効な多糖化合物を提供すると思われる従来の方法に対する代替/追加の製造工程を示す製造方法も記載される。
【0013】
第1の態様では、以下の1つ又は複数を含む単離された生物学的多糖化合物が提供される。
65~95重量%の1:3結合グルコピラノシル残基及び5~25重量%の1:6結合グルコピラノシル残基を含むグルコシド結合と;
純度85~100%のβ-グルカンと;
0.5~2.2MDaの分子量と;
ヒトバイオアッセイにおけるネガティブコントロールのTNF-αサイトカイン応答よりも少なくとも1.5倍大きい、ヒトバイオアッセイにおけるTNF-αサイトカイン応答と
を含み、
水溶液には本質的に不溶性である。
【0014】
第2の態様では、ビヒクルを創傷部位への局所的な適用により、それを必要とする患者の皮膚を治療する方法が提供され、ビヒクルは、実質的に本明細書に記載される単離された生物学的多糖化合物の治療有効量を含む。
【0015】
第3の態様では、医薬の製造において、それを必要とする患者の皮膚の局所的治療のための、実質的に本明細書に記載されるような単離された生物学的多糖化合物の使用が提供される。
【0016】
第4の態様では、
酵母細胞を選択する工程と;
細胞を溶解し、細胞壁の断片を収集する工程と;
細胞壁断片を加熱して酸性化し、マンナンとキチンを除去する工程と;
溶媒を用いて相分離を行って、タンパク質、グリコーゲン及び脂質とともに追加のマンナンと追加のキチンを除去する工程と;
沸騰及び乾燥により、溶媒と他の非多糖化合物を分離する工程と;
溶解後、酸性化する前に、少なくとも1回の水でのすすぎ工程を実施する工程と
を含む、実質的に上記のような単離された生物学的多糖化合物を製造する方法が提供される。
【0017】
上記単離された生物学的多糖化合物、使用方法及び製造方法は、多くの利点を備えており、1つは、この化合物が有害な炎症作用を及ぼすことなく、局所治療に予期せぬ最適な免疫原性応答を提供することである。
【0018】
生物学的多糖化合物、使用方法及びその製造方法のさらなる態様は、添付の図面を参照して、単なる例として与えられる以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1A】1H NMRグラフと分子を概略的に示し、記載の生物学的多糖類は、(1->3)(1->6)-βグルカンの一般構造を有するβ-グルカンベースの多糖類である。簡単にするために、主要な残基には「BC」、「Br」、及び「SC」と標識されている。BCは主鎖残基を表し、Brは分岐残基を表し、SCは側鎖残基を表す。
図1B】1H NMRグラフと分子を概略的に示し、記載の生物学的多糖類は、(1->3)(1->6)-βグルカンの一般構造を有するβ-グルカンベースの多糖類である。簡単にするために、主要な残基には「BC」、「Br」、及び「SC」と標識されている。BCは主鎖残基を表し、Brは分岐残基を表し、SCは側鎖残基を表す。
図2】本発明の化合物の微粒子形態の安全性と有効性を確立するためのオーストラリアの第I相試験の結果を示す。6人の患者を対象としたオープン非コントロール試験が実施された。標準的な創傷治療が失敗した患者に対して、ビヒクル中の本発明の化合物を4週間にわたって2~3日ごとに局所適用した。試験品の使用に関連して、重大な不耐性や毒性は観察又は報告されなかった。6人の患者全員で治癒反応が観察され、56日間の測定で創傷表面積が26%~82%の範囲で減少した。
図3】第2相I/II調査の結果を示しており、標準的な創傷管理療法に抵抗性となったCDVI潰瘍患者18名を対象とした単一施設無作為化二重盲検ビヒクルコントロール試験で本発明の化合物の有効性を決定するために実施された。本発明の化合物を、より低い分子量範囲及びより低い割合の(1:6)-β-グルカン側枝を有する別の形態のグルカン(Glucodine(商標))及びビヒクル(コントロール)と比較した。有効性は、創傷の表面積を測定する面積測定によって評価された。4週間にわたる平均改善率は、ビヒクルグループで4.4%、本発明の化合物グループで36.7%、Glucodine(商標)グループで17.3%であった。結果は、本発明の化合物が創傷治癒を促進するためのより有効な活性剤を含んでいることを示した。
図4】第3相試験の第IIA相調査の結果を示しており、当時の最終的な規制第III相研究の基礎となる適切な製剤を特定することを目的として実施された。これは第2相、二重盲検、無作為化、溶媒コントロール試験であり、患者は無作為化に基づいて、コンピュータ生成の割り当てシーケンスを使用して3つの治療グループのいずれかに割り当てられた。慢性静脈潰瘍を患う58人の患者が2つの施設で募集され、高用量活性物質(1.0%本発明化合物ゲル)又は低用量活性物質(0.1%本発明化合物ゲル)、又はゲルベース単独(ビヒクルコントロール)のいずれかにランダムに割り当てられた。この調査は、下肢の慢性静脈不全潰瘍患者における本発明の化合物の有効性及び安全性の統計的評価を提供することを目的とした。第II相調査のデータは、本発明の化合物が創傷治癒速度を促進し、プラセボ治療した潰瘍と比較して統計的に有意な改善率で治療した潰瘍が治癒したことを示した。本発明の化合物は、プラセボの10%に対して、55%~59%の平均創傷面積減少を実証した。
図5】本発明化合物を含むゲルの使用による、フラクショナル化美容レーザー処置であるコントロール熱傷後の26人の患者を対象とした第IIA相治験の結果を示す。この研究では、創傷治癒時間が平均30%改善されたことが示された。創傷が完全に閉鎖するまでの時間に関する有効性の結果は、本発明の化合物グループをプラセボグループ(GLYC-101 0.1%及びGLYC-101 1.0%と標識)と比較した場合により速かった(それぞれ、p=0.0062及び0.0331)。
図6-8】本発明の化合物を使用して完了した第IIA相オーストラリア治験において静脈潰瘍創傷の創傷サイズが縮小した患者の非典型的な例の写真を示す。
図9】米国を拠点とする82人の患者を対象とした第IIB相治験における本発明の化合物のビヒクルグループと活性グループ間の完全閉鎖の生の発生率と、既存製品Apiligraf(商標)の第III相データ及びその第III相結果との生の発生率の差を示す。Apiligraf(商標)(www.apiligraf.comを参照)はおそらく静脈性下腿潰瘍(VLU)閉鎖の絶対的基準であり、申請ごとに約1200米ドルが払い戻され、Apiligraf(商標)を使用したVLUの通常の治療では、3~15回の適用が必要な場合がある。本発明の化合物は、Apiligraf(登録商標)の完全閉鎖発生率17%と比較して、完全閉鎖発生率の調整後21%の差を達成した。ITTグループとPPグループの意味のある差異が記録される。治験設計(盲検化を含む)の包含基準と除外基準の違いを考慮すると、結果は厳密に比較できるものではないが、本発明の化合物が絶対的基準製品と同等又は優れた有効性を示す強力な信号を提供する。
図10】静脈性下肢潰瘍における患者82人の第IIB相治験から得られたODDS RATIO(「OR」)出力を示す。これは、プラセボよりもアクティブなグループに対して100%の治癒を達成したORを示している。出力は、治癒に影響を与えることが知られている共変量を調整したロジスティック回帰からのものである。ORの解釈、例として、ORが1.4の場合、TR987グループの治癒の確率は、プラセボグループの治癒の確率より1.4倍高くなる。1を超える値は治療に有利であり、1未満の値はプラセボに有利である。すべてのグループのオッズ比は臨床的に意味のあるもの(2.0以上)であり、すべてが本発明の化合物を支持しており、完全治癒を達成するオッズがプラセボに対して実薬グループの2倍であることを示唆している。
図11】第IIA相治験と第IIB相治験を完了した患者の平均創傷面積減少の比較を示す。このデータは、本発明の化合物が、2つの独立した第II相治験における創傷面積の減少によって測定されるように、一貫した有効性を生み出すことを実証している。
図12】静脈性下腿潰瘍治療における本発明の化合物の有効性とApiligraf(商標)との関係を示す。これは、完全閉鎖とプラセボの発生率の違いを示している。この図において、本発明の化合物はTR-987と標識されている。この図は、実薬とプラセボの間で完全閉鎖を達成した患者の割合の違いを示している。本発明の化合物は、完全閉鎖の発生率の調整後の差が21%であるのに対し、Apiligraf(商標)の完全閉鎖の調整後の発生率は17%であり、議論の余地のある絶対的基準製品に対する本発明の化合物の優れた差異を示している。
図13】ヒト胎盤由来でヒト組織治癒製品として承認されている製品であるEpifix(商標)と比較した、創傷面積減少の指標を用いた本発明の化合物の有効性の比較を示す(https://mimedx.com/epifix/を参照)。)。
図14】本発明の化合物を使用して完了した第IIB相82患者治験における静脈潰瘍創傷の患者の創傷サイズ縮小の典型的な例の写真を示す。
図15】本発明の化合物を使用して完了した第IIB相82患者治験における静脈潰瘍創傷の患者の創傷サイズ縮小の典型的な例の写真を示す。
図16】本発明の化合物を使用して完了した第IIB相82患者治験における静脈潰瘍創傷の患者の創傷サイズ縮小の典型的な例の写真を示す。
図17】本発明の化合物を、低侵襲美容処置(胸部のCOフラクション化レーザー処置)後に投与される患者の非典型的な例、及び第IIB相レーザーアブレーション試験n=40で見出された皮膚の質の結果の改善の非典型的な例を示す。第IIB相治験で本発明の化合物を使用した患者は、ゲルビヒクルでの本発明の化合物の使用から28日目に、プラセボゲル+標準治療と比較して、弾性線維症及びしわによって測定される皮膚の質の促進の発生率が2倍近くになった(p<0.04)、n=40)。
図18】本発明の化合物グループ及びビヒクルグループのそれぞれにおいて、ベースラインと28日目の間のしわスコアの≧1ポイントの改善を達成した患者の割合を示す(フィッツパトリック・ゴールドマン分類)。回答者の85%が、プラセボグループ(回答者の50%のみが1以上のしわスコアを達成した)と比較して、本発明の化合物グループに関して1以上のしわスコアを達成した。カイ二乗法又はフィッシャー正確値を使用した場合、70%の分散P<0.04。
図19】本発明の化合物グループ及びビヒクルグループのそれぞれにおいて、ベースラインと28日目の間の弾性線維症スコアの≧3ポイントの改善を達成した患者の割合を示す(フィッツパトリック・ゴールドマン分類)。未調整の比率に対するカイ二乗検定を使用して、p値として表される有意性を決定した。28日目の時点で、有効グループでは回答者の75%が弾性線維症の改善スコア3以上を達成したが、プラセボグループでは回答者のわずか35%であった(114%分散P<0.011)。
図20】本発明者らが創傷治癒に最も関連するβ-グルカンの特許公報であると考えたWoulgan(商標)と呼ばれるさらなる技術製品に対する本発明化合物の有効性を示す。Woulgan(商標)は、ヒト採取マクロファージ細胞からのTNFα応答を測定するアッセイで測定したところ、コントロールと比較して8.9倍の免疫応答を生成した。コントロール的に、本発明の化合物は、同じビヒクルコントロールと比較して、本発明の化合物(TR-987と標識)について25.4倍の応答をアッセイした。これは、本発明の化合物がWoulgan(商標)ゲルよりも約3倍強力であり、従来の化合物よりも有効性が非常に高いことを意味する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
上で述べたように、本明細書に記載されるのは、高純度の形態で、単離された生物学的に誘導された多糖化合物である。この化合物の使用方法が記載されており、特に局所皮膚治療におけるこの化合物の予期せぬ有効性が示されている。予想外に有効な多糖化合物を提供すると思われる従来の方法に対する代替/追加の製造工程を示す製造方法も記載される。
【0021】
この明細書の目的のために、「約(about)」又は「およそ(appoximately)」という用語とその文法的バリエーションは、基準量、レベル、程度、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、又は長さに対して、30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1%だけ変化する数量、レベル、程度、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量又は長さを意味する。
【0022】
「実質的に(substantially)」という用語又はその文法的変形は、少なくとも約50%、例えば75%、85%、95%又は98%を指す。
【0023】
「含む(comprise)」という用語及びその文法的変形は、つまり、直接参照する列挙された構成要素だけでなく、他の非特定の構成要素又は要素も含むことを意味すると解釈される包括的な意味を有するものとする。
【0024】
本明細書で使用される「多糖化合物(polysaccharide compound)」という用語及びその文法的変形は、グリコシル結合を含む酵母由来の化合物を包含する。「多糖化合物(polysaccharide compound)」という用語は、今後、「生物学的多糖類(biological polysaccharides)」、「生物学的に由来する多糖類(biologically derived polysaccharides)」、「グルカン(glucans)」又は「β-グルカン(β-glucans)」という用語と同じ意味で使用される場合がある。特に指定がない限り、1つの用語への言及は他の用語の使用を制限するものとみなされるべきではない。
【0025】
β-グルカンという用語又はその文法的変形という用語が本明細書で使用される。これは、β-D-グルカンを包含するか、又はβ-D-グルカンである。
【0026】
単離された生物学的多糖化合物
第1の態様では、以下の1つ又は複数を含む単離された生物学的多糖化合物が提供される。
65~95重量%の1:3結合グルコピラノシル残基及び5~25重量%の1:6結合グルコピラノシル残基を含むグルコシド結合と;
純度85~100%のβ-グルカンと;
0.5~2.2MDaの分子量と;
ヒトバイオアッセイにおけるネガティブコントロールのTNF-αサイトカイン応答よりも少なくとも1.5倍大きい、ヒトバイオアッセイにおけるTNF-αサイトカイン応答と
を含み、
水溶液には本質的に不溶性である。
【0027】
単離
本明細書の文脈において、単離されたという用語は、細胞又は細胞壁などの天然状態から精製された形態に単離された生物学的多糖化合物を指す。正確な単離方法は異なる場合があるが、タンパク質や脂質などの不純物を洗浄及び除去するための様々な工程が含まれ得る。
【0028】
単離された生物学的多糖化合物は、実質的に無傷であり得る。つまり、単離プロセスにより、化合物内の化学結合の切断が最小限に抑えられるか回避され、生物学的多糖化合物の複雑さとサイズがそのまま維持される。この場合の複雑さは、生物学的糖化合物の分岐側鎖1:3~1:6の比率に特に関係している可能性がある。
【0029】
生物学的多糖化合物
上で述べたように、単離された生物学的多糖化合物が本明細書に記載される。
【0030】
少なくとも一実施形態では、記載されている生物学的多糖化合物は酵母に由来する。生物学的多糖化合物は、酵母細胞に由来し得る。酵母細胞は、サッカロマイセス・セレヴィシエ種に由来し得る。
【0031】
生物学的多糖化合物はグルカン化合物であり得る。生物学的多糖化合物は、β-グルカン化合物であり得る。
【0032】
不溶性
生物学的多糖化合物は水溶液に不溶性である。
【0033】
溶解度は、所定の温度及び圧力で所定の溶媒に完全に溶解し得る物質の最大濃度として定義できる。物質の溶解度は様々な方法で説明できる。USP/NFは、概して、特定の温度で1グラムの薬物を溶解するのに必要な溶媒の体積で溶解度を表す。この尺度を使用すると、記載されている生物学的多糖化合物は実質的に不溶性又は不溶性であり、溶質1部に必要な溶媒の部数は10,000部を超える。
【0034】
以下にさらに説明する製造方法から理解できるように、本明細書に記載される生物学的多糖化合物は、単離された形態に到達するまで、製造中に多くの水性洗浄工程に供される可能性がある。可溶性化合物又は残留物は製造中に不溶性の完成化合物から除去される。
【0035】
生物学的多糖化合物
生物学的多糖化合物は、特定のグリコシル化合物によって特徴付けられ得る。グリコシル鎖は、ヒトに炎症反応を引き起こす生物学的多糖化合物の一部であり得る。記載されている単離された生物学的多糖化合物が、多数のグリコシル側鎖を有する可能性があり、これらはグリコシル鎖内に露出した抗原性領域を含むことが、本発明者らによって理解される。
【0036】
上述の生物学的多糖化合物は、かなりの量の1:6結合グルコピラノシル残基を有するという点で独特である。技術β-グルカン化合物は、多くの場合、この側鎖(及び他の側鎖が除去されて)があり、非常に高い割合の1:3側鎖が残る。本発明者らは、1:6側鎖(及び分岐状対非分岐状の他の側鎖)を維持することが、所望の有効性を達成するために非常に重要である可能性があることを発見した。
【0037】
さらに、本発明者らは、開いた傷に置かれたときに感染や望ましくない影響を引き起こす可能性のある成分が酵母細胞内に残すことなく、生物学的多糖化合物が有効性を達成するために最適なレベルの免疫応答をもたらすことを発見した。
【0038】
側鎖分析
少なくとも1つの実施形態において、記載される生物学的多糖化合物は、記載される1:3及び1:6側鎖のみを含む。
【0039】
少なくとも1つの実施形態では、記載された1:3及び1:6側鎖に加えて、さらなる側鎖が存在してもよい。追加の側鎖が存在する場合、次の側鎖タイプの少なくとも1つを含み得る。
1:4結合グルコピラノシル残基;
3:4結合グルコピラノシル残基;
2:3結合グルコピラノシル残基;
3:6結合グルコピラノシル残基;
2:6及び4:6結合グルコピラノシル残基;
3:4:6結合グルコピラノシル残基;
末端結合グルコピラノシル残基。
【0040】
これらの追加の側鎖の量は可変であり得る。少なくとも1つの実施形態では、それらは、以下のおおよその濃度(重量%)で(全て又はいくつか又は一つ)存在し得る:
1:4結合グルコピラノシル残基2~6%;
3:4結合グルコピラノシル残基0.01~0.5%;
2:3結合グルコピラノシル残基0.5~4%;
3:6結合グルコピラノシル残基3~10%;
2:6及び4:6結合グルコピラノシル残基0.2~1%;
3:4:6結合グルコピラノシル残基0.01~0.5%;
末端結合グルコピラノシル残基2~8%。
【0041】
少なくとも1つの実施形態において、生物学的多糖化合物は、およそ(重量%)のグリコシル化合物分析を有することによって特徴付けられ得る:
1:3結合グルコピラノシル残基67.7%
1:6結合グルコピラノシル残基12.7%
1:4結合グルコピラノシル残基4.4%
3:4結合グルコピラノシル残基0.3%
2:3結合グルコピラノシル残基2%;
3:6結合グルコピラノシル残基6.3%;
2:6及び4:6結合グルコピラノシル残基0.6%;
3:4:6結合グルコピラノシル残基0.2%;
末端結合グルコピラノシル残基5.8%。
【0042】
理論にとらわれずに、本発明者らは、生物学的多糖化合物で観察される強力な免疫原性応答を達成するには、特に1:6側鎖(及びおそらくは注目される他の側鎖)の存在が重要である可能性があると想定しているが、これは、β-グルカン化合物などの既存の生物学的多糖化合物に関して当該技術分野で注目されているように観察される、潜在的に阻害されていない炎症カスケードではない。
【0043】
純度
上記の生物学的多糖化合物は、高純度又は超高純度であることを特徴とすることができる。この文脈における純度は、例えば、タンパク質、酵素、脂質、β-グルカン由来の核物質、さらに抽出プロセスからのすべての残留物などの細胞構成要素の除去を指す。
【0044】
上で述べたように、純度は、85~100%(重量)のβ-グルカンであってもよい。純度は、90~100%、又は95~100%のβ-グルカンであってもよい。
【0045】
純度は、タンパク質又は脂質の不純物含有量の観点から測定することもできる。
【0046】
少なくとも1つの実施形態において、生物学的多糖化合物は、3、又は2、又は1、又は1、又は0.5重量%以下のタンパク質含量を有することによって特徴付けられ得る。少なくとも1つの実施形態では、生物学的多糖化合物中の残留タンパク質含量は0.3%未満であってよい。残留タンパク質含有量は、アミノ酸分析によって測定できる。
【0047】
さらに、生物学的多糖化合物は、3、又は2、又は1又は0.5重量%以下の脂質含有量を有することによって特徴付けられ得る。少なくとも1つの実施形態では、生物学的多糖化合物中の残留資質含量は0.3%未満であってよい。残留脂質含有量は、重量抽出によって測定できる。
【0048】
少なくとも1つの実施形態では、生物学的多糖化合物は、その抽出に利用される溶媒又は化学物質からの残留物が実質的に存在しないことを特徴とすることができる。
【0049】
記載されている純度は、投与量と結果の一貫性を可能にするため、当技術分野に比べて大きな利点となる可能性があり、他の化合物の純度や存在の変化に伴う副作用や効能の変動を回避できる可能性がある。生物学的多糖化合物、特にβ-グルカン化合物は、自然の状態で天然に生成される化合物である。高純度の単離は、特に本明細書に記載されるような不溶性の生物学的多糖化合物について、当技術分野で指摘されている有効性のばらつき、混乱を招く結果及び起こり得る副作用又は炎症カスケードを伴う技術上の問題を克服する。
【0050】
さらに、治療効果を主張して規制当局の承認を得るには、生物学的多糖化合物の以前の抽出によって悩まされていた最終化合物の高度な変動を克服する必要がある。つまり、先行技術では、一貫したレベルの有効性を主張できる生物学的多糖化合物の一貫性と、CMCパッケージの承認を達成できる薬剤のような特性を達成する、規制当局による医薬品の承認の重要な要素を形成する確実性がない。
【0051】
分子量
上で述べたように、生物学的多糖化合物は、分子量が0.5~2.2MDaの大きな化合物である可能性がある。少なくとも1つの実施形態では、分子量は、0.5~2.2、又は0.6~2.2、又は0.7~2.2、又は0.8~2.2、又は0.9~2.2、又は1.0~2.2、又は1.1~2.2又は1.2~2.2、又は1.3~2.2、又は1.4~2.2、又は1.5~2.2MDaであってよい。この分子量は、分布又は平均分子量として測定できる。
【0052】
分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定することができる。
【0053】
バイオアッセイ
言及されるバイオアッセイは、生物学的多糖化合物によって引き起こされる炎症反応の尺度であり、ヒト採取マクロファージ細胞に対する化合物のTNF-α応答を試験するバイオアッセイを使用して測定される。使用されている生物学的多糖化合物は、暴走する炎症カスケードを引き起こさないように見えるが、炎症と治癒を開始させるようである。当技術分野では、不溶性の生物学的多糖が、本発明者らが上記の化合物について観察したものとは異なる重篤な炎症反応を引き起こす例が示されている。
【0054】
無菌性
少なくとも1つの実施形態において、生物学的多糖化合物は、非常に低い生物負荷を有することによってさらに特徴付けられ得る。少なくとも1つの実施形態において、化合物は無菌であってもよい。本明細書の文脈において、「非常に低い生物負荷(very low bio-burden)」又は「無菌性(sterility)」という用語は、微生物数が10cfu/g未満であり、さらに病原体が存在しないことを指す。
【0055】
少なくとも1つの実施形態において、記載される化合物は、USP51(抗菌有効性)及びUSP61(微生物限界)基準を満たす。少なくとも1つの実施形態において、記載される生物学的多糖化合物は、USP71(無菌性)基準を満たすことができる。
【0056】
USP基準は、無菌性を測定するために規制当局によって施行される基準である。USP71試験を完了する1つの方法は、培地が、USP71無菌試験に記載されている6つの微生物の増殖をサポートできることを確認するために、成長促進試験を実行し、他の品質パラメーターを評価することである。次に、密閉膜濾過法又は直接接種法のいずれかを使用して培地に接種し、次いで、試験容器は適切な温度で少なくとも14日間培養され、微生物の増殖が測定される。試料がUSP71に準拠するには、潜伏期間の終わりには成長の証拠があってはならず、医薬品には、試験条件下で検査されたサンプル中に汚染微生物が見つからないことを示す「無菌」結果が与えられる。
【0057】
これをさらに例示するために、記載される生物学的多糖化合物は、以下の無菌基準を有することによってさらに特徴付けられ得る:

【0058】
微粒子
生物学的多糖化合物は、微粒子の形態であってもよい。粒径は40μm未満であってもよい。これは、マルバーン粒度試験法を使用して測定されるものであってもよい。
【0059】
単離された生物学的多糖化合物を微粒子として提示することは、表面積を増加させ、生物学的多糖化合物の抗原領域(主に1-3及び1-6グリコシル側鎖)をより多く露出させるのに有用である可能性がある。
【0060】
外観
単離された生物学的多糖化合物は、白色からわずかにオフホワイトの色であってもよく、純粋な形態では粉末であってもよい。
【0061】
残留溶媒
β-グルカン化合物/生物学的多糖化合物を単離する技術的方法は、水、クロロホルム、エタノールなどを含むがこれらに限定されない、様々な溶媒/試薬に依存し得る。
【0062】
発明者の経験では、本明細書に記載の単離された生物学的多糖化合物では残留溶媒は事実上検出できない。
【0063】
安定性
生体多糖化合物は安定性が高い。本発明者が完了した試験では、単離された生物学的多糖化合物は、周囲温度での保存後、少なくとも1、又は2、又は3、又は4、又は5年間は貯蔵安定性である。生物学的多糖化合物は熱にも安定しているようである。発明者らを代表して完了した一治験では、熱重量分析が完了し、安定性を考えると非常に高い温度である220℃で処理した後でも、化合物が安定なままであることが実証された。
【0064】
これは、単離された生物学的多糖化合物の高純度及び高無菌性の結果である可能性があり、したがって、これらの化合物が長期間保存しても分解がほとんど見られない理由であると考えられる。
【0065】
治療方法
第2の態様では、ビヒクルを創傷部位への局所的な適用により、それを必要とする患者の皮膚を治療する方法が提供され、ビヒクルは、実質的に本明細書に記載される単離された生物学的多糖化合物の治療有効量を含む。
【0066】
特定の方法のさらなる例については、以下でさらに説明する。
【0067】
使用
第3の態様では、医薬の製造において、それを必要とする患者の皮膚の局所的治療のための、実質的に本明細書に記載されるような単離された生物学的多糖化合物の使用が提供される。
【0068】
特定の使用のさらなる例については、以下でさらに説明する。
【0069】
有効性
本発明者らは、記載された生物学的多糖化合物が、創傷治癒に利用できる最適な免疫原性分子である可能性があることを発見した。
【0070】
2020年に完了した最近の2つの第IIB相二重盲検ランダム化臨床治験から実証された有効性の概要を以下に記載し、実施例及び図でさらに説明する。
【0071】
慢性創傷
82人の患者を対象とした無作為化二重盲検無作為化プラセボコントロール第IIB相治験では、生物学的多糖化合物は、以下を含むビヒクルゲルと比較して有効性の強力なシグナルを示した。
・プロトコルごとのグループにおける完全閉鎖の発生率におけるプラセボとの調整後の差は27%(p=0.1)。
・ITTグループにおける完全閉鎖の発生率とプラセボの調整後の差異は22%(p=0.12)。
完全閉鎖の発生率における10%の差は、当該技術分野において臨床的に意味があると考えられることに留意されたい。
【0072】
美容処置
40人の患者を対象とした第IIB相二重盲検プラセボコントロール治験では、分別レーザー処置後の皮膚の質と治癒を測定し、記載された生物学的多糖化合物の有効性を評価した。生物学的多糖化合物は次のことを実証した。
・プラセボグループと比較して、しわが70%改善(P<0.04)。
・弾性線維症の114%の改善(P<0.13)、28日で弾性線維症の改善は2倍になる。
【0073】
免疫刺激作用のメカニズムは、様々な適応症に合わせて変更できるため、複数の適用が可能になる。
【0074】
同定された単離された生物学的多糖化合物は、生物学的脅威(例えば酵母菌感染症)を模倣することによって自然真皮免疫系を刺激、これにより、マクロファージのNF-κB経路の活性化を介して免疫系が反応するということが発明者の理解である。
【0075】
マクロファージは創傷治癒反応を調節及び制御する。記載された生物学的多糖化合物は、創傷治癒反応の自然なカスケードを誘発及び加速する単純な抗原反応機構を刺激するが、抑制されない炎症反応は引き起こさない。その結果、新しい組織の再生と創傷閉鎖において予想外に高い効果が得られたようである。
【0076】
単離された生物学的多糖化合物は、病原微生物に対して防御するために人類の進化の過程で発達した免疫細胞上のパターン認識受容体を活性化すると考えられる。
【0077】
生物学的多糖化合物の抗原性領域、例えば、酵母グルカンは、知覚された脅威に対するおとりとして体のマクロファージによって認識される可能性があり、脅威と戦うことを目的とした創傷マクロファージ及びシグナル伝達経路上のトール様受容体(TLR)2及びデクチン-1膜受容体の刺激を引き起こす。しかしながら、おとりは認識されているような損傷を引き起こさないが、結果として生じるマクロファージの活性化が、様々な有益な方法で創傷治癒を刺激すると考えられる。
【0078】
本方法は、創傷マクロファージ活性を刺激し、その結果、食作用の増加、創傷治癒サイトカインの分泌の増加、及び血管新生及び創傷修復の刺激をもたらすものであると発明者らは理解している。
【0079】
発明者の経験では、本方法/使用には、副作用は観察されず、懸念される炎症も測定されず、不溶性の生物学的多糖化合物について当該技術分野が示唆するものとは全く反対である。
【0080】
ビヒクル
一実施形態では、ビヒクルは、単離された生物学的多糖化合物を含むゲル組成物であり得る。ビヒクルは高粘度のゲルであってもよい。例えば、ゲルの粘度は3000cpsを超え得る。ゲルには、パラフィンや従来の化学防腐剤などの化学防腐剤が含まれていない場合がある。これは、開いた傷への干渉や悪影響を避けるために望ましい場合がある。ゲルは水性ゲルであってもよい。生物学的多糖化合物は、微粒子の形態であってもよい。上述したように、生物学的多糖化合物は不溶性であるため、生物学的多糖化合物は微粒子懸濁液としてゲル中に懸濁され得る。
【0081】
ビヒクルはまた、他の薬学的及び生理学的に許容される形態をとることもできる。ビヒクルは一般に水性であってよい。ビヒクルは、局所的に適用されるまで、生物学的多糖化合物を微粒子懸濁液又は粒子として基材上に懸濁又は保持するように作用し得る。代替ビヒクルの例としては、クリーム、軟膏、包帯、創傷や火傷を治療するための装置などの皮膚の治療に使用される医療装置などが挙げられる。
【0082】
生物学的多糖化合物の濃度/用量
少なくとも一実施形態では、ビヒクルは、0.05、又は0.06、又は0.07、又は0.08、又は0.09、又は0.1、又は0.2、又は0.3、又は0.4、又は0.5、又は0.6、又は0.7、又は0.8、又は0.9、又は1.0、又は1.1、又は1.2、又は1.3、又は1.4、又は1.5重量%の単離された生物学的多糖化合物を含み得る。少なくとも1つの実施形態において、ビヒクルは、0.05~1.5重量%又は0.1~1.0重量%の単離された生物学的多糖化合物を含む。
【0083】
ビヒクルは、創傷部位に毎日又は毎日2回局所的に適用することができる。ビヒクルは複数日又は数週間適用してよい。投与計画は、ビヒクル中の化合物の濃度、行われる治療、他の要因の中でも特に患者が示す反応の関数であり得る。発明者らの経験では、治療計画は、5~14日間、1日1~2回の適用となる傾向があり、又、慢性的な傷の治療の場合、12~20週間の治療期間で週に1、2、又は3回である。この期間は変動する可能性がある。
【0084】
ビヒクルは、患者が自宅で自分の皮膚部位に適用することができる。
【0085】
化合物を含むビヒクルは、1~5mm厚の層として部位に適用され得る。時間が経つと、層が皮膚に吸収され得る。
【0086】
慢性創傷の治療
本方法/使用は、慢性創傷を治療するために使用することができる。慢性創傷は潰瘍であり得る。潰瘍は静脈性脚潰瘍であり得る。発明者の経験によれば、生物学的多糖化合物は、プラセボと比較して、静脈性下肢潰瘍の治療において予期せぬ相乗効果をもたらした。
【0087】
少なくとも一実施形態では、本発明者らは、記載された生物学的多糖化合物が、患者67人を対象とした第IIB相二重盲検ランダム化プラセボコントロール治験において静脈性下肢潰瘍の治療に使用された場合、潰瘍サイズが2~12cmの慢性静脈性脚潰瘍について、ビヒクルゲルと比較して完全な創傷閉鎖の発生率に約27%の差があることを発見した。このレベルの有効性は、おそらく現在承認されている競合製品よりも優れているであろう。
【0088】
本著者らはまた、慢性静脈性脚潰瘍における創傷面積の減少率が、上記の生物学的多糖化合物による91%とプラセボによる46.6%の2倍であることも発見した。これらの発見は、以下の実施例でさらに説明される。
【0089】
美容処置
本方法/使用は、美容皮膚治療であってもよい。少なくとも一実施形態では、美容皮膚治療の有効性は、美容皮膚の質の観点から、詳細には皮膚の弾性線維症及びしわによって測定される場合がある。発明者らの経験によれば、記載された生物学的多糖化合物は、美容皮膚治療において予想外の相乗効果をもたらした。
【0090】
少なくとも一実施形態では、第IIB相の42人の患者を対象とした二重盲検プラセボコントロール治験において、胸部のCOフラクション化レーザー処置であるコントロール熱傷処置後のゲルの使用について説明され、記載された生物学的多糖化合物は、レーザーアブレーション後の皮膚の質の改善のほぼ2倍、弾性線維症75%対プラセボ35%(p<0.01)、しわの割合85%対プラセボ50%(p<0.04)をもたらした。
【0091】
さらなる効果又は関連する効果
上述の生物学的多糖化合物は、以下の1つ又は複数を含むさらなる組織修復及び治癒効果を有し得る。
皮膚の治癒と肌の質の最適化;
美容処置後の皮膚のしわを軽減すること;
治癒中に皮膚の弾性線維症を増加させること;
フラクション後の、完全にアブレーション可能なリサーフェイシング後の皮膚の治療(紫外線による光損傷、口唇炎、色素沈着、及び最適以下の皮膚の質感の外観を改善するための既知の治療オプション);
肌質への効果を促進するために、補助的な術後局所てきに適用されるゲル。
【0092】
生物学的多糖化合物は、上記のようなゲル形態にあるとき、以下の治療/処置のうちの1つ又は複数の後の治癒を含む、あらゆる創傷治癒を伴うあらゆる美容処置に応用できる。
切開;
穿刺;
アブレーション;
重度のケミカルピーリング;
皮膚移植;
侵襲的で軽いレーザー処置。
【0093】
生物学的多糖化合物を含むゲルの適用は、皮膚の質の向上と治癒効果をもたらす美容処置の臨床効果を高める可能性がある。これは、記載されている生物学的多糖化合物が、根底にある美容処置によって生じた傷に反応して、レーザー処置、ケミカルピーリング、切開、又はその他の形式のアブレーションであっても、組織再生とコラーゲン生成のための身体自身のプロセスを刺激するためであると考えられている。
【0094】
生物学的多糖化合物の製造方法
第4の態様では、
酵母細胞を選択する工程と;
細胞を溶解し、細胞壁の断片を収集する工程と;
細胞壁断片を加熱して酸性化し、マンナンとキチンを除去する工程と;
溶媒を用いて相分離を行って、タンパク質、グリコーゲン及び脂質とともに追加のマンナンと追加のキチンを除去する工程と;
沸騰及び乾燥により、溶媒と他の非多糖化合物を分離する工程と;
溶解後、酸性化する前に、少なくとも1回の水でのすすぎ工程を実施する工程と
を含む、実質的に上記のような単離された生物学的多糖化合物を製造する方法が提供される。
【0095】
溶解
少なくとも1つの実施形態では、溶解は、アルカリ処理若しくは熱処理、あるいは両方の処理によって起こり得る。溶解は一般的な技術であるが、圧力変動、音波破壊、ホモジナイザー、酵素、洗剤などの他の方法も使用できる。
【0096】
水すすぎ
本方法は、前記酸性化の後、且つ前記相分離の前に、少なくとも1回の水ですすぐことをさらに含んでもよい。追加の水でのすすぎにより追加の精製が完了すると考えられるが、その方法は多糖類のグリコシル分岐状構造を保持した穏やかな方法で行われ、より過酷で多糖類の構造の変化を引き起こす可能性のある技術的な方法とは異なる。
【0097】
pH変化
水ですすぐことに加えて、酸性化の後、前記相分離の前に、収集された混合物は、pH変更やアルコール洗浄に供されてもよい。少なくとも1つの実施形態では、pHを4.0に下げて前記アルコールを洗浄し、次にpH9.0に上げて前記アルコールを洗浄し、次にpH7.0に調整して前記アルコールを洗浄することができる。相分離後にアルコールと水のすすぎも行わってもよい。使用されるアルコールは、1つ又は複数の低級アルコールから選択され得る。アルコールの例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、及びそれらの組み合わせが挙げられます。
【0098】
溶媒
上記で使用される溶媒は有機溶媒であってもよい。使用される溶媒は、非極性溶媒であってもよい。溶媒の比重は1.0以上のものを使用することができる。使用できる可能性のある溶媒の例には、次の1つ以上が含まれる。メチルクロロホルム、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラクロロエタン、四塩化炭素、酢酸エチル、及びそれらの組み合わせ。この溶媒抽出の工程は室温で完了できる。この種の溶媒を使用すると、混合物から脂質が除去され、したがって生物学的多糖化合物の精製に役立つ可能性があることが理解される。
【0099】
前記溶媒を用いた相分離は、室温及び中性pHで完了することができる。発明者の経験に基づくと、特別な条件は必要ない。
【0100】
沸騰及び乾燥
少なくとも一実施形態では、本方法はさらに、溶媒と他の非多糖化合物を沸騰及び乾燥によって分離した後、最終生成物を再び乾燥させる前に、少なくとも1回のさらなる一連の溶媒すすぎ、アルコールすすぎ、そして任意選択的な、さらなる水すすぎを通じてさらに精製することを含むことができる。これらの追加の工程で使用される溶媒は、相分離で使用される上記のものと同じであってもよい。これらの追加の工程で使用されるアルコールは、アルコール洗浄用と同様に上記のものと同じでよい。この追加の工程での水すすぎは、熱水(>50°C)を使用して行うことができる。記載された乾燥は、一段階で行うこともできるし、複数の乾燥技術、例えば噴霧乾燥、オーブン乾燥、凍結乾燥、真空乾燥などを使用して複数の段階を経て行うこともできる。
【0101】
上記の方法は、US6,242,594に記載されているプロセスなどの最も近い技術とは全く異なることを理解されたい。US6,242,594では、記載されたプロセスは4段階プロセスであり、上述の方法は、様々な洗浄及び溶媒段階、そして追加の精製及び乾燥段階を広範に含む多数の追加段階を必要とする。
【0102】
パイロット規模又は商業規模での多糖類の生産に関しては、大量の塩の結晶の蓄積を止めるために、発明者らは追加の水ですすぐ工程を追加した。これらの水すすぎの工程には、非多糖類物質を除去し、プロセスの初期段階で精製を行うという追加の利点があり得る。水ですすぐプロセスは、分岐状分子と非分岐分子を分離し、最終的な単離生成物中に1-3:1-6化合物の分岐をより高い割合で収集するためにも重要であり得る。
【0103】
異なる構造
上述のように、記載された方法は、従来技術に記載されたものとは根本的に異なる構造(及び効能)を有する化合物を生成する。例えば、本明細書に記載の方法により、以下を有する単離された生物学的多糖化合物が得られる。
・US6,242,594に記載されているように、従来技術よりも実質的に高い分子量(0.7m~2.2mダルトンのオーダーに対し、60k~250kダルトン(平均140kダルトン)の分子量)。
・より大きな割合の分岐した1~6個の側鎖からなる、より大きくて複雑な分子。
・US6,242,594は、96%~97%の1-3鎖を含み、3~4%の1-6鎖を有する化合物を製造することを教示している。本方法から単離され、本明細書に記載される化合物は、非分岐の1~3及び1~6側鎖と比較して、はるかに高い割合の分岐状1~3及び1~6結合を有する。
・本明細書に記載の方法によって生成される単離化合物は、タンパク質又は脂質が2%未満の超純粋な多糖を生成し、これは一般に、US6,242,594を含む当該技術分野で記載されているものよりもはるかに高い。
・最終形態の化合物中に無関係な細胞物質が存在するとしても最小限である、非常に低い生物負荷の化合物。単離された化合物の用途の1つが開放創傷に使用される可能性があることを考えると、これは非常に重要であり得る。
【0104】
上述の単離された生物学的多糖化合物、使用及び製造方法は、上で実証されたように、多くの利点を含み得る。いくつかの利点の例としては、次の1つ以上が挙げられる。
・有害な炎症作用を及ぼすことなく、最適なレベルの免疫応答を備えた創傷治癒のために設計された最適な免疫原性化合物を提供する。
・臨床的に検証された慢性創傷の治癒改善(ゴールドスタンダード療法よりも優れた二重盲検ランダム化プラセボコントロール治験。
・標準的なレーザー治療二重盲検プラセボコントロールヒト試験後、肌の質がほぼ2倍改善。
・本製造方法は、バッチ間で測定可能な一貫した有効性レベルをもたらす、適切に特徴付けられた分子を生成する能力により、既存の製造上の課題を解決すると思われる。
・処置後のかゆみや圧迫感の軽減の徴候。
【0105】
上述の実施形態は、本出願の明細書において個別に又は集合的に参照又は示される部分、要素、及び特徴、並びに任意の2つ以上の前記部分、要素、又は特徴の任意又はすべての組み合わせから構成されると広義に言うこともできる。
【0106】
さらに、実施形態が関連する技術分野において既知の等価物を有する特定の整数が本明細書で言及される場合、そのような既知の等価物は、あたかも個別に記載されているかのように本明細書に組み込まれるものとみなされる。
【0107】
作業例
次に、上記多糖化合物、それらの使用方法及び製造方法について、具体例を挙げて説明する。
【0108】
実施例1
以下の表1は、上記の単離された生物学的多糖化合物の完全な特徴を示している。
【0109】
【0110】
実施例2
この例では、グリコシル結合分析の方法及び結果は、本明細書に記載の単離された生物学的多糖化合物の特徴付けを支援するために使用されることが記載されている。
【0111】
方法
グリコシル結合分析では、まず試料(1.2mg)を400μLのDMSOに溶解した。次に、試料は完全メチル化、解重合、還元、そしてアセチル化された。そして得られた、部分的にメチル化された酢酸アルジトール(PMAA)は、Heissらの(2009)Carbohydr.Res.344:915によって記載されているように、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)によって分析された。
【0112】
完全メチル化は、水酸化ナトリウム400μL(15分)及びヨウ化メチル100μL(45分)の2回の処理によって実行された。2mLの水を加えて反応を停止させ、過剰のヨウ化メチルを窒素流により除去した。ジクロロメタンで抽出し、水洗(3回)し、溶媒を除去した後、完全メチル化物質を2M TFAを使用して加水分解し(400μL、密閉チューブ中121℃で2時間)、NaBD4で還元し、無水酢酸/TFA(250μL+230μL、15分、50℃)を使用してアセチル化した。得られたPMAAは、5975C MSD(質量選択検出器、電子衝突イオン化モード)に接続されたAgilent 7890A GCで分析された。分離は30m Supelco SP-2331結合相溶融シリカキャピラリカラムで実行された。
【0113】
結果
結合解析結果から、グルコースの最も豊富なグリコシド結合は3結合グルコピラノシル残基であり、6結合グルコピラノシル残基よりも大きかった。6-Glcと3,6-Glcの比は約2対1であり、平均側鎖長が3Glc残基であることを示唆しており、3-Glcと3,6-Glcの比は約11対1であり、平均して骨格Glc残基の10番目ごとに側鎖があることを示唆している。以下の表2は、特定された結合とその相対的な存在量を示している。
【0114】
【0115】
実施例3
この実施例では、本明細書に記載の単離された生物学的多糖化合物の特徴付けを支援するために使用されるNMR研究の方法及び結果が記載されている。
【0116】
1H NMR試料は、本発明の化合物の試料をD6MSO及びD-TFAに溶解することによって調製した。試料は400MHz NMR装置を使用して試験された。試験結果を以下の表3及び図1Aに示す。主鎖及び側鎖のアノマーH1及びH6プロトンシグナルが同定された。1-3-Glc主鎖と1-6-Glc分岐の比率は、NMRデータに基づいて計算された。平均して、側鎖の長さは約4Glc残基であった。1-3-Glcと1-6-Glcの比は約10対1であり、側鎖が平均して10番目ごとの骨格Glc残基に結合していることを示唆している。
【0117】
以下の表3は、NMRの概要出力を示している。
【0118】
【0119】
次いで、分子は、図1Bに示されるように概略的に表され、ここで、本発明の生物学的多糖は、3-及び3,6-結合グルコース残基単位からなるβ-グルカンベースの糖である。図1Bは、(1->3)(1->6)-β-グルカンの一般的な構造を示している。簡単にするために、主要な残基には「BC」、「Br」、及び「SC」と標識されている。BCは主鎖残基を表し、Brは分岐残基を表し、SCは側鎖残基を表す。
【0120】
実施例4
この例では、出願人がこれまでに完了した臨床試験の概要が提供される。
【0121】
200人を超える患者が本発明の化合物を用いた第I相、第IIA相及び第IIB相臨床試験にわたって研究されており、そのほとんど(150人を超える被験者)は二重盲検、無作為化、プラセボコントロール研究で行われた。患者の大部分は米国に滞在しており、残りはオーストラリアで行われた研究である。
【0122】
近年、申請者は慢性創傷の治療と美容皮膚科の2つの適応症にわたる第IIB相臨床治験プログラムを完了した。
【0123】
無作為化、二重盲検、プラセボコントロールの第IIB相慢性創傷治験は、FDA承認のプロトコルに基づいて2020年に完了し、その結果、ゴールドスタンダード療法より優れているとは言わないまでも同等の薬効が示された。
【0124】
胸部のCO分別レーザー照射後の美容皮膚科に関する第IIB相ランダム化二重盲検プラセボコントロール治験では、施術後28日目にプラセボジェルの2倍近い肌質の改善が示された。
【0125】
すべての第II相治験は、選択及び/又は割り当ての偏りを軽減するために偶然の要素を使用して治療グループ又はコントロールグループに割り当てられたFDA承認のプロトコルを使用してランダム化治験対象者を採用して実施された。
【0126】
二重盲検法:参加者も投与者も、自分たちがプラセボを投与されているのか試験治療が投与されているのかを知らない。
【0127】
コントロールされたプラセボ:コントロールグループには、試験中の治療法のベンチマークを再度行うために、実際の効果がないように特別に設計された効果のない「プラセボ」治療を受けた。
【0128】
以下の表4は、これまでの臨床検証の概要を示している。
【0129】
【0130】
実施例5
上記の単離された生物学的多糖化合物の安全性と有効性を確立するために、オーストラリアで第I相試験が実施された。6人の患者を対象としたオープン非コントロール試験が実施された。本発明の化合物は、標準的な創傷治療が失敗した患者に対して、4週間にわたって2~3日ごとに局所的に適用された。
【0131】
面積測定による創傷面積の減少の分析及び決定は、治療開始後56日目に評価され、治療前の創傷面積と比較された。さらに、安全性と毒性の分析も行われた。
【0132】
試験品の使用に関連して、重大な不耐性や毒性は観察又は報告されなかった。6人の患者全員で治癒反応が観察され、56日間の測定で創傷表面積が26%~82%の範囲で減少した。
【0133】
図2に示すように、治療1日目と比較して56日目に、創傷表面積における創傷サイズの平均56%の減少が観察された。
【0134】
要約すると、この第I相研究は、慢性栄養性潰瘍内の治癒を刺激する本発明の化合物の能力を確認した。
【0135】
実施例6
この例では、第I/II相治験について説明する。
【0136】
第2の第I/II相試験は、標準的な創傷管理療法に抵抗性になったCDVI潰瘍患者18人を対象とした単一施設無作為化二重盲検ビヒクルコントロール試験で研究された本発明の化合物の有効性を決定するために実施された。本発明の化合物を、より低い分子量範囲及びより低い割合の(1-6)-β-グルカン側枝を有する別の形態のグルカン(Glucodine(商標))及びビヒクル(コントロール)と比較した。
【0137】
2種類のグルカン材料(本発明及びGlucodine(商標))をクリームベース(0.1%w/w;パラベン保存)中に懸濁した。
【0138】
患者は、グループあたり6人の患者として、3つの治療グループ(2つの活性グループと1つのビヒクルコントロールグループ)にランダムに割り当てられた。
【0139】
治療は週3回、4週間であった。
【0140】
活性試験品又はビヒクルコントロールのいずれかの使用に関連して、不耐性又は毒性は観察又は報告されなかった。
【0141】
有効性は、創傷の表面積を測定する面積測定によって評価された。主な有効性パラメーターは、ベースライン(訪問1)から試験終了(訪問6)までの潰瘍表面積の改善でした。4週間にわたる平均改善率は、ビヒクルグループで4.4%、本発明の化合物グループで36.7%、Glucodine(商標)グループで17.3%であった。8週間にわたる治癒の程度は、以下の表5及び図3に示されているとおりである(本発明の化合物は、図3では「グルコプライム」と標識されていることに留意されたい)。
【0142】
【0143】
結果は、本発明の化合物が創傷治癒剤として著しく有効であることを示した。
【0144】
実施例7
この実施例では、慢性創傷、この場合は静脈性潰瘍を治療するための本発明の化合物の使用についての相2A治験が記載されている。
【0145】
処方の変更は、マクロファージに対して阻害作用を及ぼす可能性のあるパラベン(第2回臨床研究で使用)などの防腐剤を避けるという戦略的決定によって推進された。最初の臨床研究で使用されたメタノール防腐剤に戻ることが決定された。その後、配合研究が行われ、様々な程度の防腐剤で保存されたゲルベースを使用することが決定された。
【0146】
0.1%及び1.0%の活性物質を含む製剤を試験した。
【0147】
これは、コンピュータで生成された割り当て順序を使用して、ランダム化ベースで患者を3つの治療グループの1つに割り当てた、第2相の二重盲検無作為化ビヒクルコントロール研究であった。慢性静脈潰瘍を患う58人(男性36人、女性22人)の患者が2つの施設で募集され、高用量活性物質(1.0%本発明化合物ゲル)又は低用量活性物質(0.1%本発明化合物ゲル)、又はゲルベース単独(ビヒクルコントロール)のいずれかにランダムに割り当てられた。患者の年齢は34歳と93歳の間の範囲であり、3つの治療グループ間で人口統計学的特徴は同等であった。この治療は、標準的な創傷ケア管理時に、週に3回、12週間、創傷表面全体にわたって約3mmの深さまで適用された。この調査は、下肢の慢性静脈不全潰瘍患者における本発明の化合物の有効性及び安全性の統計的評価を提供することを目的とした。
【0148】
研究の一環として、潰瘍を洗浄し、創面切除し、試験製品を適用し、週に3回、最長12週間傷を圧迫包帯で覆った。傷の縁を毎週追跡し、治癒速度と治癒の程度の両方を測定した。
【0149】
どちらの活性グループでも試験中に薬物関連の毒性は発生しなかった。
【0150】
第II相研究のデータは、本発明の化合物が傷の治癒速度を促進することを示し、本発明の化合物で治療した潰瘍は、プラセボで治療した潰瘍と比較して統計的に有意な改善率で治癒した。この研究で得られた創傷閉鎖率は、以下の表6の通りであった。
【0151】
【0152】
潰瘍の表面積の減少によって測定した、12週間にわたる全体の平均治癒レベルは、以下の表7の通りであった。
【0153】
【0154】
潰瘍領域のベースラインからの変化率中央値も図4に示し、ここで、「高(1.0%)」は高用量試料を指し、「低(0.1%)」は低用量試料を指す。
【0155】
これらの結果は、潰瘍のサイズに大きな差異があったにもかかわらず観察され、患者が無作為化されたにもかかわらず、2つの本発明の化合物治療グループはプラセボグループよりも実質的に大きな平均潰瘍サイズを有していた。
【0156】
実施例8
第IIA相治験の完全な結果をまとめたものを以下の表8に示す。
【0157】
表8-第2A相のオーストラリアの慢性静脈潰瘍治験の結果
【0158】
上記の結果に示されているように、本発明の化合物は創傷の治癒速度を促進した。本発明の化合物を用いると、治療された潰瘍は、プラセボで治療された潰瘍と比較して、有意に速い速度(1日あたりmm)で治癒した。12週間にわたる全体の平均治癒レベルは、10%(プラセボ)、59%(低用量の本発明の化合物)、及び55%(高用量の本発明の化合物)であった。
【0159】
実施例9
この例では、第IIA相熱傷試験について説明する。米国の研究は、下まぶたの二酸化炭素レーザー皮膚リサーフェシング(LSR)を受けている患者におけるプラセボとの比較した、局所的に適用された0.1%及び1.0%の発明化合物(ビヒクルはゲル)の安全性と有効性を調査する二重盲検、無作為化、プラセボコントロール第2相研究として完了した。
【0160】
設計と評価項目:この研究では、プラセボ(ゲルベース)と比較して、美容目的(しわの軽減)のためにCOLSRを受けている26人の被験者の下まぶたの皮膚の創傷治癒の促進において、2つの濃度の発明化合物ゲル(0.1%濃度のGLYC-101及び1.0%濃度のGLYC-101と呼ばれる)の安全性と有効性を評価した。創傷表面全体が厚さ約0.5mm(1mmを超えない)の試験品(プラセボ又はGLYC-101のいずれか)の層で覆われるように、研究化合物を各下まぶたの切除皮膚領域に局所的に適用した。試験物質を毎日(前回の適用から約24時間後)合計5日間適用した。全体として、プラセボと比較した場合、本発明の化合物(GLYC-101 1.0%又はGLYC-101 0.1%)による治療は安全であり、良好な耐容性を示した。
【0161】
結果:この治験薬は、しわ除去を目的とした下眼瞼領域の術後COLSRアブレーションに関連する安全性事象の発生率を増加させたり既存の安全性問題を悪化させたりすることはなく、また、安全性事象の数を減少させたり重症度を軽減したりすることもないようであった。
【0162】
主要評価項目(完全な創傷閉鎖までの時間)に関する各GLYC-101(本発明の化合物は現在TR-987と名付けられている)グループとプラセボの比較は、すべての治療組み合わせからの完全な被験者データセットを考慮した場合、肯定的な結果を示した。図5は、創傷閉鎖までの第2相治験のレーザーデータ時間を示している。創傷治癒時間において平均30%の改善が見られた。より詳細には、本発明の化合物(GLYC-101 0.1%及びGLYC-101 1.0%)グループをプラセボグループと比較した場合、創傷が完全に閉鎖するまでの時間の有効性結果はより迅速であった(それぞれ、p=0.0062及び0.0331)。これらの結果は、本発明の化合物の有効性を実証している。
【0163】
実施例10
この例では、図6図7、及び図8を参照して、第IIA相治験の結果を示す。
【0164】
詳細には、図6図7及び図8には、本発明の化合物を使用して完了した試験における静脈潰瘍創傷の創傷サイズ縮小の非典型的な例が示されている。完全者コホートの58人の患者全体で、本発明の化合物を投与された患者については、12週間にわたって統計的に有意な45%の減少が証明された(p<0.008)。
【0165】
本発明の化合物による治療を受けている患者の例は、オーストラリアの静脈潰瘍試験に基づいて示されている。画像に示されているように、潰瘍形成は時間の経過とともに大幅に減少し、示されている3つの例では、8~12週間以内に治癒又はほぼ完全な治癒が起こる。
【0166】
実施例11
この例では、第IIb相治験で得られた創傷閉鎖所見を示す試験について説明する。
【0167】
慢性静脈潰瘍の治療において本発明の化合物とプラセボゲルを評価する二重盲検プラセボコントロール無作為化第IIB相臨床試験第IIB相研究が完了した。
【0168】
全体として、82人の被験者が無作為に治療を受け(本発明の化合物42人、プラセボ38人)、潰瘍領域のベースライン後の評価を少なくとも1回受けた(ITT集団)。プロトコルごとの母集団はスポンサーによって定義された。PP母集団は、早期に離脱した場合、重大なプロトコルからの逸脱、又は連続感染があった場合の対象を除外した。
【0169】
治験の主な基準は次を含む。
・第IIB相静脈性下腿潰瘍試験。
・裁判は野心的かつ強力なものであった。
・二重盲検プラセボコントロール。
・有効なINDに基づいてFDAがプロトコルを承認。
・発明の化合物+標準治療で治療されたVLUは、圧迫包帯対プラセボゲル及び同じ標準治療である。
・プラセボゲルは、あらゆる点でアクティブアームから偽装可能な本物のビヒクルコントロールであった。
・米国の10拠点とオーストラリアの3拠点で採用。
・治療期間は12週間。
・2~20cmの潰瘍を治療し、2~12cmの潰瘍を検査するプロトコールバリエーション。
・治りの悪い潰瘍のみが試験に含まれるようにするために、30%を超える減少を示した治癒の速い患者は無作為化から除外されるように、導入期間が包含基準の一部となった。
・潰瘍に年齢制限はない。登録された一部の潰瘍は、無作為化の約300週間前でも持続していた。
【0170】
分析の結果、治癒までの時間という主な目標にはグループ間で差が見られなかったものの、100%治癒した創傷の割合という重要な副次的な目標は有効性の強力なシグナルを示したことが示された。100%の閉鎖を達成した創傷の割合は、治癒に対するFDAの絶対的基準の評価項目とみなされる。
【0171】
要約すると、有効成分とプラセボの間の創傷閉鎖と創傷面積縮小の発生率に関する重要な初期分析により、治験では以下のことが判明した。
・2~12cm潰瘍のITTグループ(n=67)では、完全閉鎖の発生率に調整後20.6%の差(p=0.12)。
・プロトコルごとのグループ(n-69)の2~12cmの潰瘍では、完全閉鎖の発生率に27%の差(p=0.1)。
・慢性静脈性下腿潰瘍(VLU)における創傷面積減少率が2倍。プロトコルごとのグループ(p=0.035)22~12cm潰瘍に関して、本発明化合物91%対プラセボ46.6%。
【0172】
創傷面積の縮小に関する追加の目的でも、強い効果のシグナルが示され、プラセボと比較して全体的な痛みの軽減(これは統計的に有意でした)は、さらに強い効果のシグナルを示した。
【0173】
図9は、本発明の化合物についてのビヒクル基と活性基との間の完全閉鎖の生の発生率とApiligraf(商標)第III相ラベルからの第III相データとの差異を示す。Apiligraf(商標)は、おそらくVLU閉鎖の絶対的基準であり、申請ごとに約$1200が払い戻され、VLUの通常の治療には3~15回の適用が必要な場合がある。
【0174】
第IIB相治験からのプロトコールグループごとの本発明の化合物は、治験を完了し、12週間にわたって薬剤の全用量を投与された患者である(本発明者らは、このグループが薬剤の有効性の正確な尺度であると考えている)。
【0175】
ITTグループには、12週間の完全な治療を受けなかったすべての早期中止を含む、無作為化されたすべての患者が含まれる。
【0176】
臨床的に意味のある差は、一般に絶対閉鎖の+10%の差であると考えられる。
【0177】
図9に示すように、本発明の化合物は、Apiligraf(商標)の完全閉鎖発生率17%と比較して、完全閉鎖発生率の調整後20.6%の差を達成する。ITTグループとPPグループの意味のある差異が記録される。
【0178】
調整されたデータは、グループ間の治癒に影響を与えることが知られている因子(例えば、ベースライン、潰瘍サイズなど)を制御するロジスティック回帰(本発明の化合物)及びコックス回帰(Apiligraf(商標))に基づいている。
【0179】
治験設計(盲検化を含む)の包含基準及び除外基準の違いを考慮すると、結果は厳密には比較できないが、本発明の化合物について同等又は優れた有効性のシグナルを提供する。
【0180】
図10は、プラセボに対する実薬グループの100%治癒達成の記録されたロジスティック回帰オッズ比(「OR」)を示す。出力は、治癒に影響を与えることが知られている共変量を調整したロジスティック回帰からのものである。ORの解釈、例として、ORが1.4の場合、発明化合鬱グループの治癒の確率は、プラセボグループの治癒の確率より1.4倍高くなる。1を超える値は治療に有利であり、1未満の値はプラセボに有利である。
【0181】
記録されたORはすべて治療を支持する2超であり、実薬グループでの治癒の確率がプラセボグループでの完全治癒に達する確率の2倍を超えることを示唆している。
図10は、プロトコル2~20cm及び2~12cmで特定された両方のサイズグループの完全治癒について、表示されたITT及びPPグループのそれぞれのORを示している。信頼区間の上限と下限も表示される。
【0182】
すべてのグループのオッズ比は臨床的に有意であり、すべてのグループが治療に有利であるため、(第III相治験で)「n」が増加するにつれて、提示された信頼区間が狭くなり、統計的有意性が達成されると仮説が立てられている。結果は、患者がビヒクル又はプラセボグループよりも本発明の化合物グループで100%の閉鎖を達成する可能性が2倍超より高いことを示している。
【0183】
実施例12
この例では、第IIA相及び第IIB相治験における平均創傷面積の減少について、図11を参照して説明する。このデータは、本発明の化合物が、2つの独立した第II相治験における創傷面積の減少によって測定されるように、一貫した有効性を生み出すことを実証している。
【0184】
創傷面積の平均縮小は、治癒に関する有効性を測定するための第II相治験の許容可能な評価項目とFDAによってみなされている。これは治癒の前兆又はシグナルと考えられているため、FDAによって有効な第II相評価項目としてのみ認められている。有効な第III相の標識としては受け入れられていない。第IIB相治験からのプロトコールグループごとの本発明の化合物の結果は、試験を完了し全薬剤投与を受けた患者、及び治験を完了した患者である第IIA相治験の完了者コホートの結果を示す。
【0185】
図13は、Epifix(商標)と比較した創傷面積の減少の測定基準を使用した本発明の有効性の比較を示す。
【0186】
使用されたEpifix(商標)データは、二重盲検ではない、つまり医師が盲検でなかった、公表されたスポンサー資金提供治験(FDAを介さない)からのものであった。Epifix(商標)は、ヒト組織製品として承認され、妥当な商品化を達成したApiligraf(商標)に類似した生物学的パッチである。Epifix(商標)は申請ごとに$1000超が払い戻されるが、閉鎖するには複数の申請が必要である。Epifix(商標)の詳細については、https://mimedx.com/epifix/で説明されている。
【0187】
図13に示すように、本発明の化合物は、プラセボ(TR-987と標識)91%対プラセボ47%という2倍近い平均創傷面積減少の差を達成し、Epifix(商標)との絶対差は44%(p=0.035)であり、これは、本発明の化合物とプラセボとの間で25%の絶対差を達成する(p<0.02)。
【0188】
実施例13
この実施例では、本発明の化合物を、静脈性下腿潰瘍治療(VLU)に関して技術製品Apiligraf(商標)(www.apiligraf.comを参照)と比較した。図12は、本発明の化合物についてのビヒクル基と活性基との間の完全閉鎖の生の発生率とApiligraf(商標)第III相ラベルからの第III相データとの差異を示す。Apiligraf(商標)はおそらくVLU閉鎖の絶対的基準であり、1件の申請につき約US$1200が払い戻され、3~15件の申請が必要になる場合がある。
【0189】
第IIB相治験からのプロトコールグループごとの本発明の化合物は、治験を完了し、12週間にわたって薬剤の全用量を投与された患者である(このグループが化合物の有効性の正確な尺度である)。
【0190】
ITTグループには、すべての離脱を含む、無作為化されたすべての患者が含まれる。
【0191】
臨床的に意味のある差異は、一般に、100%創傷閉鎖における+10%の差異であると考えられる。
【0192】
本発明の化合物は、完全閉鎖の発生率においてプラセボに対して調整後21%の差を達成したが、Apiligraf(商標)の完全閉鎖の調整後発生率はプラセボに対して17%であり、ITTグループとPPグループの両方において、おそらく絶対的基準製品に対して本発明の化合物との優れた差異を示している。
【0193】
本発明の化合物(TR-987と称する)試験についての21%調整差は、TR-987とその試験で使用されたプラセボとの間で観察された完全治癒の絶対差である。
【0194】
調整されたデータは、グループ間の治癒に影響を与えることが知られている因子(例えばベースラインの潰瘍サイズ)を制御するロジスティック回帰(本発明の化合物)及びコックス回帰(Apiligraf(商標))に基づいている。
【0195】
試験設計(盲検化を含む)の包含基準及び除外基準の違いを考慮すると、結果は厳密には比較できないが、本発明の化合物について同等の有効性を示す強力なシグナルを提供する。
【0196】
実施例14
この実施例では、本発明の化合物と従来製品のEpifix(商標)とを比較する試験が示されており、創傷面積の縮小を比較している。本発明の化合物(標識化TR-987)とEpifix(商標)との創傷面積減少率を図13に示す。
【0197】
平均創傷面積縮小は、第II相治験についてのみ、第III相治験や重要な治験ではなく有効性を測定する目的でのみ、FDAによって許容可能な評価項目とみなされている。
【0198】
本発明の化合物は、治験を完了し、薬剤の全用量を投与された患者である第IIB相治験からのプロトコールグループごとに存在する(このグループは、薬剤の有効性の正確な尺度である)。
【0199】
Epifix(商標)データは、スポンサーの資金提供を受けた臨床試験(FDAを介さない)であり、二重盲検ではない、つまり、医師による新たな有効成分と治療法の比較である。
【0200】
本発明の化合物は、プラセボ91%対47%の2倍に近い平均創傷面積縮小の差を達成し、絶対差44%(p=0.035)対、絶対差25%(p<0.02)を達成するEpifix(商標)と比較する。
【0201】
本発明の化合物による創傷面積の減少は、初期の第IIA相治験データ55%対25%を反映している(p<0.01)。
【0202】
Epifix(商標)は、ヒト組織製品として承認され、大幅な市場浸透を達成したApiligraf(商標)に類似した生物学的パッチである。Epifix(商標)は申請ごとにc+$1000が払い戻されるが、閉鎖するには複数の申請が必要である。
【0203】
試験デザイン、包含基準及び除外基準、患者及び医師の盲検化のレベルの違いを考慮すると、結果は厳密には比較できないが、本発明の化合物について同等の有効性を示す強力なシグナルを提供する。
【0204】
実施例15
この実施例では、第IIB相静脈性脚潰瘍治験n=67(2~12cm)において本発明の化合物で治癒したVLU創傷の典型的な例を示すために、第IIB相治験の結果を図14及び図15を参照して説明する。
【0205】
図14及び図15は、ランダム化時の潰瘍サイズが7.53cmであった場合、12週間で治癒したことを示す試験の別の例を示している。オーストラリア、メルボルンのThe Heidelberg Repatriation Hospitalで発表。潰瘍は登録前に4年以上開放していた。TR-987による10週間の治療で潰瘍は閉鎖。
【0206】
実施例16
本発明の化合物は、28日で皮膚の質の改善及び美容処置の臨床効果をほぼ2倍にする有用な処置後の局所ゲルであることが出願人によって確認された。
【0207】
図17は、低侵襲美容処置(胸部のCOフラクションレーザー処置)後に本発明の化合物を投与された患者の非典型的な例、及び第IIB相レーザーアブレーション試験n=42で見出された非典型的な皮膚質改善結果を示す。左側の画像は、胸部フラクション後のレーザー処置を示している。右側の画像は、処置後28日目、及び本発明の化合物を使用して処置された皮膚の毎日の処置後の同じ胸部を示す。
【0208】
第IIB相試験で本発明の化合物を使用した患者は、ゲル対プラセボゲル+標準治療(p<0.04、n=40)の使用から、28日目に弾性線維症及びしわによって測定される皮膚質の加速の発生率が2倍近くになった。
【0209】
アブレーションフラクショナル化レーザーは、紫外線による光損傷、皮膚のしわ(瘢痕)、瘢痕の外観を改善するために近年ますます利用されている。術後のスキンケアは、治療後の最適な創傷治癒を促進するために非常に重要であるが、現在、絶対的基準の術後薬剤はない。
【0210】
第IIB相治験における本発明の化合物の所見は、本発明の化合物が追加のコラーゲン産生と線維化を生成し、しわや小じわを加速したペースで埋めることを実証した。
【0211】
第IIB相治験を完了(COフラクショナルレーザー後)
上記で使用された臨床試験方法論(n=40)は、胸部全体にフラクション化COレーザー処置によって作成された標準化された熱傷を模倣するものであった。二重盲検/プラセボコントロール臨床研究は第三者によって実施された。
【0212】
しわ
図18は、ベースラインと28日目の間でしわスコアの1ポイント以上の改善を達成した、本発明の化合物及びビヒクルグループのそれぞれにおける患者の割合を詳述する(Fitzpatrick-Goldman Classification)。未調整の比率に対するカイ二乗検定を使用して、p値として表される有意性を決定した。
【0213】
応答者の85%が、プラセボグループと比較して、本発明の化合物グループで1以上のしわスコア(33%改善)を達成した(応答者の50%のみが1以上のしわスコアを達成した)。
【0214】
カイ二乗法又はフィッシャー正確値を使用した70%分散P<0.04。
【0215】
弾性線維症
28日目の時点で、有効グループでは回答者の75%が弾性線維症の改善スコア3以上(33%改善)を達成したが、プラセボグループでは回答者のわずか35%であった(114%分散P<0.011)。
【0216】
図19は、ベースラインと28日目の間で弾性線維症スコアの3ポイント以上の改善を達成した、本発明の化合物及びビヒクルグループのそれぞれにおける患者の割合を詳述する(Fitzpatrick-Goldman Classification)。未調整の比率に対するカイ二乗検定を使用して、p値として表される有意性を決定した。
【0217】
実施例17
この例では、本発明化合物の有効性は、Woulgan(商標)として販売され、創傷治癒に最も関連するβ-グルカン特許公報であると発明者らにより考えられたUS9,956,245B2として公開されたさらなる技術製品に対して試験される。
【0218】
図20に示すように、ヒト採取マクロファージ細胞からのTNFα応答を測定するアッセイにより測定したところ、Woulgan(商標)はコントロールと比較して8.9倍の免疫応答を生じた。これは免疫反応又は刺激の尺度である。コントロール的に、本発明の化合物で標識化TR-987は、同じビヒクルコントロールに対して本発明の化合物について25.4倍の応答をアッセイした。これは、本発明の化合物がWoulgan(商標)ゲルよりも約3倍強力であり、従来の化合物よりも有効性が非常に高いことを意味する。Woulgan(商標)の濃度は2%であり、本発明の化合物の濃度は(0.1%)であったことに留意されたい。本発明の化合物は、Woulgan(商標)ゲルの1/20の濃度で存在していたが、3倍の免疫応答を生成し、これは、免疫応答の生成において60倍強力な分子であることを意味する。
【0219】
多糖化合物の態様、その使用方法及び製造方法は、例としてのみ説明されており、本明細書の特許請求の範囲から逸脱することなく変更及び追加を行うことができることを理解されたい。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
【国際調査報告】