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特表2024-528138高周波アブレーション用の電気外科コンソール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】高周波アブレーション用の電気外科コンソール
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/12 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
A61B18/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505621
(86)(22)【出願日】2022-07-28
(85)【翻訳文提出日】2024-03-27
(86)【国際出願番号】 US2022038635
(87)【国際公開番号】W WO2023009697
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】63/227,387
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506410062
【氏名又は名称】ストライカー・コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(72)【発明者】
【氏名】スプリンクル,トーマス,ボーエン
(72)【発明者】
【氏名】キッドマン,ボー,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ハインズ,ダグラス,ポール
(72)【発明者】
【氏名】ラッチフォード,ブレーク,ウイリアム
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK03
4C160KK04
4C160KK24
4C160KK26
(57)【要約】
高周波アブレーション用の電気外科システム。電気外科コンソールは、初期組織インピーダンス値に基づいてインピーダンス閾値を求めるように構成されているプロセッサを備える。インピーダンス閾値は、経過時間に基づく特性に基づいて変動しうる。温度設定点は、組織インピーダンス値が閾値を超えるインピーダンスイベントの発生に基づいて低減される。低減される温度設定点は一定でありうる。コントローラは、組織温度を温度設定点(複数の場合もある)に向かって駆動するようにRFエネルギーの送達を制御するように構成されている。温度設定点は、インピーダンスイベントがランプ期間中に発生した場合には低減せずに、アラートを表示することができる。副インピーダンス閾値を利用することができ、アブレーション処置の後半においてより低速のランプ期間を提供することができる。電気外科システムを用いるアブレーション処置を行う方法も開示される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気エネルギーを組織に送達する電極と、熱電対とを備える電気外科器具を用いたアブレーション処置中に前記組織をアブレーションするための電気外科コンソールであって、
前記電気外科器具に結合されるように構成されているコンソールであって、該コンソールに結合された前記電気外科器具と通信するように構成されるコントローラを備えている、コンソールと、
前記コントローラと通信するように構成されるプロセッサと
を備え、
前記プロセッサは、
前記熱電対が検知した組織温度と、前記組織がアブレーションされる温度設定点とに基づいて、前記電極から送達される前記電気エネルギーを制御することを前記コントローラに行わせることと、
初期組織インピーダンス値を求めることと、
前記初期組織インピーダンス値に基づいてインピーダンス閾値を求めることであって、前記インピーダンス閾値は、前記アブレーション処置の経過時間に基づく特性に基づいて変動することと、
前記電気外科器具による前記電気エネルギーの送達中の後続の組織インピーダンス値を求めることと、
前記後続の組織インピーダンス値を前記インピーダンス閾値と比較することによって、インピーダンスイベントの発生を判断することと、
前記インピーダンスイベントの発生に基づいて前記温度設定点を低減することと
を行うようにさらに構成されている、電気外科コンソール。
【請求項2】
前記初期組織インピーダンス値は、前記電極に関連する電気パラメータ、及び前記組織温度のうちの少なくとも一方に基づく、請求項1に記載の電気外科コンソール。
【請求項3】
前記インピーダンス閾値は、線形であるインピーダンス閾値曲線を規定し、前記経過時間に基づく特性の値がより高くなるにつれて、前記インピーダンス閾値がより大きくなる、請求項1に記載の電気外科コンソール。
【請求項4】
前記インピーダンス閾値曲線は、前記初期組織インピーダンス値及び最終インピーダンス閾値に基づく傾きを有し、前記傾きは、異なる初期閾値を有する別のインピーダンス閾値曲線とは異なる、請求項3に記載の電気外科コンソール。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記組織が閾値温度を超える総処置時間の百分率を求めることによって、前記経過時間に基づく特性を求めるようにさらに構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の電気外科コンソール。
【請求項6】
前記閾値温度は、温度設定点、又は前記温度設定点に基づく別の温度である、請求項5に記載の電気外科コンソール。
【請求項7】
前記アブレーション処置は、前記組織がアブレーションされる温度設定点と、前記組織温度が前記温度設定点に向かって上昇するランプ期間とを含み、前記プロセッサは、前記インピーダンスイベントの発生が前記ランプ期間中であるか又は前記ランプ期間後であるかを判定し、前記インピーダンスイベントの発生が前記ランプ期間中である場合には前記温度設定点を維持するように構成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の電気外科コンソール。
【請求項8】
前記プロセッサは、前記インピーダンスイベントの発生が前記ランプ期間後である場合には前記温度設定点を低減するようにさらに構成されている、請求項7に記載の電気外科コンソール。
【請求項9】
前記プロセッサは、前記インピーダンスイベントの発生及び追加のインピーダンスイベントの後続の発生に伴って、前記温度設定点を一定温度オフセットだけ低減するようにさらに構成されている、請求項8に記載の電気外科コンソール。
【請求項10】
前記一定温度オフセットは、3℃~7℃の範囲内である、請求項9に記載の電気外科コンソール。
【請求項11】
前記プロセッサと通信するディスプレイをさらに備え、前記プロセッサは、前記インピーダンスイベントの発生が前記ランプ期間中である場合にアラートを提供するように前記ディスプレイに命令するようにさらに構成されている、請求項7~11のいずれか一項に記載の電気外科コンソール。
【請求項12】
前記プロセッサは、前記ランプ期間後の前記インピーダンスイベントの発生に基づいて前記電気エネルギーの送達を中断し、一定期間の後に前記電気エネルギーの送達を再開するように前記コントローラに命令するようにさらに構成されている、請求項7~11のいずれか一項に記載の電気外科コンソール。
【請求項13】
前記プロセッサは、前記再開時に、前記組織温度を前記低減された温度設定点に再ランプ制御する電力を伴う前記電気エネルギーを送達するように前記コントローラに命令するようにさらに構成されている、請求項12に記載の電気外科コンソール。
【請求項14】
前記再ランプ制御は、前記アブレーション処置の後の点においてより長い、請求項13に記載の電気外科コンソール。
【請求項15】
前記プロセッサは、前記経過時間に基づく特性のそれぞれについて、前記インピーダンス閾値よりもより大きい副インピーダンス閾値を求めるようにさらに構成され、前記プロセッサは、前記後続の組織インピーダンス値が前記副インピーダンス閾値を超えたことに基づいて、前記電気エネルギーの送達を中断するように前記コントローラに命令するようにさらに構成されている、請求項1~11のいずれか一項に記載の電気外科コンソール。
【請求項16】
電気エネルギーを組織に送達する電極と、熱電対とを備える電気外科器具を用いたアブレーション処置用の電気外科コンソールであって、前記アブレーション処置は、前記組織がアブレーションされる温度設定点と、組織温度が前記温度設定点に向かって上昇するランプ期間とを含み、
前記電気外科コンソールは、
前記電気外科器具に結合されるように構成されるコンソールであって、該コンソールに結合された前記電気外科器具と通信するように構成されているコントローラを備えるコンソールと、
前記コントローラと通信するように構成されるプロセッサと
を備え、
前記プロセッサは、
インピーダンス閾値を求めることと、
前記電気外科器具による前記電気エネルギーの送達中の組織インピーダンス値を求めることと、
前記組織インピーダンス値を前記インピーダンス閾値と比較することによってインピーダンスイベントの発生を判断することと、
前記インピーダンスイベントの発生が前記ランプ期間中であるか又は前記ランプ期間後であるかを判定することと、
前記インピーダンスイベントの発生が前記ランプ期間中である場合には前記温度設定点を維持することと
を行うようにさらに構成されている、電気外科コンソール。
【請求項17】
前記プロセッサは、前記インピーダンスイベントの発生が前記ランプ期間後である場合には前記温度設定点を低減するようにさらに構成されている、請求項16に記載の電気外科コンソール。
【請求項18】
前記プロセッサは、前記インピーダンスイベントの発生及び追加のインピーダンスイベントの後続の発生に伴って、前記温度設定点を一定温度オフセットだけ低減するようにさらに構成されている、請求項17に記載の電気外科コンソール。
【請求項19】
前記一定温度オフセットは、3℃~7℃の範囲内である、請求項16~18のいずれか一項に記載の電気外科コンソール。
【請求項20】
前記プロセッサは、
前記熱電対から組織温度値を受信することと、
前記組織温度値を、前記温度設定点、又は前記温度設定点に基づく温度閾値と比較することによって、前記インピーダンスイベントの発生が前記ランプ期間中であるか又は前記ランプ期間後であるかを判定することと
を行うようにさらに構成されている、請求項16~19のいずれか一項に記載の電気外科コンソール。
【請求項21】
前記コントローラは、前記インピーダンスイベントの発生に基づいて前記電気外科器具からの前記電気エネルギーの送達を制御するようにさらに構成されている、請求項16~20のいずれか一項に記載の電気外科コンソール。
【請求項22】
前記プロセッサと通信するディスプレイをさらに備え、前記プロセッサは、前記インピーダンスイベントの発生が前記ランプ期間中である場合にアラートを提供することを前記ディスプレイに命令するようにさらに構成されている、請求項16~21のいずれか一項に記載の電気外科コンソール。
【請求項23】
前記プロセッサは、前記ランプ期間後の前記インピーダンスイベントの発生に基づいて前記電気エネルギーの送達を中断することと、一定期間の後に前記電気エネルギーの送達を再開することを前記コントローラに命令するようにさらに構成されている、請求項16~22のいずれか一項に記載の電気外科コンソール。
【請求項24】
前記プロセッサは、前記再開時に、前記組織温度を前記温度設定点に再ランプ制御する電力を伴う前記電気エネルギーを送達することを前記コントローラに命令するようにさらに構成されている、請求項23に記載の電気外科コンソール。
【請求項25】
前記再ランプ制御は、前記アブレーション処置の後の点においてより長い、請求項24に記載の電気外科コンソール。
【請求項26】
電気エネルギーを組織に送達する電極と、熱電対とを備える電気外科器具を用いたアブレーション処置用の電気外科コンソールであって、前記アブレーション処置は、前記組織がアブレーションされる温度設定点と、組織温度が前記温度設定点に向かって上昇するランプ期間とを含み、
前記電気外科コンソールは、
前記電気外科器具に結合されるように構成されるコンソールと、
前記コンソールに結合された前記電気外科器具と動作可能に通信するように構成されるプロセッサと
を備え、
前記プロセッサは、
前記電気外科器具による前記電気エネルギーの送達中の組織インピーダンス値を求めることと、
前記組織インピーダンス値をインピーダンス閾値と比較することによってインピーダンスイベントの発生を判断することと、
前記インピーダンスイベントの発生及び前記インピーダンスイベントの後続の発生後に、前記温度設定点を一定温度オフセットだけ低減することと
を行うようにさらに構成されている、電気外科コンソール。
【請求項27】
前記プロセッサは、
前記インピーダンスイベントの発生が前記ランプ期間中であるか又は前記ランプ期間後であるかを判定することと、
前記インピーダンスイベントの発生が前記ランプ期間後である場合には前記温度設定点を低減することと
を行うようにさらに構成されている、請求項26に記載の電気外科コンソール。
【請求項28】
前記一定温度オフセットは、3℃~7℃の範囲内である、請求項26又は27に記載の電気外科コンソール。
【請求項29】
前記一定温度オフセットは、5℃である、請求項28に記載の電気外科コンソール。
【請求項30】
前記コンソールは、前記プロセッサと通信するとともに、前記コンソールに結合された前記電気外科器具と通信するように構成されるコントローラを備え、前記コントローラは、前記インピーダンスイベントの発生に基づいて前記電気外科器具からの前記電気エネルギーの送達を制御するように構成されている、請求項26~29のいずれか一項に記載の電気外科コンソール。
【請求項31】
前記プロセッサは、前記組織に送達される前記電気エネルギーを低減又は中断するように前記コントローラに命令するようにさらに構成されている、請求項30に記載の電気外科コンソール。
【請求項32】
前記プロセッサは、再開時に、前記組織温度を前記低減された温度設定点に再ランプ制御する電力を伴う前記電気エネルギーを送達することを前記コントローラに命令するようにさらに構成されている、請求項31に記載の電気外科コンソール。
【請求項33】
前記再ランプ制御は、前記アブレーション処置の後の点においてより長い、請求項32に記載の電気外科コンソール。
【請求項34】
前記低減された温度設定点は、前記インピーダンスイベントの後続の発生がない状況で、前記アブレーション処置の残り時間の間、不変となるように構成されている、請求項26~33のいずれか一項に記載の電気外科コンソール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[優先権の主張]
本出願は、2021年7月30日に出願された米国仮特許出願第63/227,387号の優先権及び利益を主張するものであり、その全体が引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【背景技術】
【0002】
高周波(RF:radiofrequency)エネルギーは、一般に、疼痛又は病理を治療するために病組織をアブレーションする(ablate:除去する)ために利用される。組織は、他の解剖学的構造の中でも、感覚神経、骨内神経、又は骨内腫瘍とすることができる。従来、電極が電気外科コンソールに結合され、RFエネルギーは、電極-組織(electrode-tissue)界面(interface:インタフェース)にわたって電極から組織に伝導され、治療箇所に傷(lesion)をもたらす。骨内腫瘍の場合、RFエネルギーは、腫瘍の細胞を破壊するために組織を少なくとも90℃(194°F)に加熱することが多い。
【0003】
組織は、組織インピーダンス(tissue impedance)、すなわち、RFエネルギーの伝導に対する自然抵抗性(natural resistance)を有する。組織が脱水(dehydrated)又は炭化(charred)すると、組織インピーダンスは急速に上昇しうることが観測されている。換言すれば、炭化は、組織の電気及び熱伝導を不必要に変化させるおそれがある。そのため、組織インピーダンスの上昇を検出することで、治療箇所に送達されるRFエネルギーの有効性が損なわれていることを知らせることができる。したがって、組織インピーダンスの上昇を防止する又は適切に考慮することが、関心領域及び開発領域である。
【0004】
治療箇所への生理食塩水等の流体の注入により、電極と組織の界面での伝導を改善すること及び組織温度を低下させることによって、炭化を制限することができることが示されている。また、既知の解決策は、組織インピーダンスが所定の閾値を超えて上昇すると、RFエネルギーの送達が中断されるインピーダンス制御式システムを含むものであった。RFエネルギーが突然中断すると、外科処置(surgical procedure)に支障をきたす。さらに、炭化の影響は部分的にしか可逆でないため、多くの場合、組織を以前の温度設定点に戻す作業により、組織インピーダンスに更なるスパイクが繰り返し生じる可能性がある。その後、アブレーション処置(ablation procedure)中に大きな支障及びダウンタイムが起こる悪循環(fraught cycle)が続くことがあり、所望の傷の達成が実現不能になるおそれがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、上述の欠点を克服する電気外科システム、電気外科コンソール、及びコンピュータ実施方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
電気外科システム(electrosurgical system)は、電気外科器具(複数の場合もある)(electrosurgical instrument(s))と、任意選択的に、ケーブルアクセサリ(cable accessory)及び/又は接地パッド(ground pad)(つまり、ケーブルアクセサリ又は接地パッドあるいはそれらの両方)とを備える。ケーブルアクセサリは、電気外科コンソール(electrosurgical console)に取外し可能に結合されるように構成され、電気外科器具は、電気外科コンソール及び/又はケーブルアクセサリ(つまり、電気外科コンソール又はケーブルアクセサリあるいはそれらの両方)に取外し可能に結合されるように構成される。注入モジュールは、流体を、電気外科器具を通して導くように電気外科器具とともに動作可能とすることができる。熱電対が電気外科器具の遠位端部の近くに配置され、電極(複数の場合もある)の近くの組織の温度測定値を提供するように構成される。注入モジュールは、流体の流れを選択的に開始及び停止するように作動するように構成される注入クランプを備える。電気外科コンソールは、制御された高周波(radiofrequency)の電気エネルギーを生成し、電気外科器具及び組織を通してエネルギーを通過させ、これにより、組織の細胞を破壊するのに十分な温度に組織を加熱する。電気外科コンソールは、ユーザが、他のアクションの中でも、動作パラメータを選択することと、電気外科コンソール上のソフトウェアによって提供される異なる動作モードを通してナビゲートすることとを可能にするグラフィカルユーザインタフェース(GUI)を表示するように構成されるディスプレイを備える。
【0007】
電気外科コンソールは、コントローラと、1つ以上のプロセッサと、メモリとを備える。コンピュータ実行可能命令又はコードを、メモリ、例えば、メモリのデータベース内に記憶することができる。命令は、プロセッサがアクセス可能であり、電気外科コンソールの様々な機能を実施するためにプロセッサによって実行可能である。電気外科器具は、電気外科コンソールに取外し可能に結合され、電気外科器具をコントローラと通信状態にするように構成される。GUIへの入力に基づいて、コントローラは、電気外科器具に供給されるRFエネルギーを制御する。コントローラは、さらに、組織温度等の1つ以上の治療パラメータを受信又は処理するように構成される。別の治療パラメータとして、組織インピーダンスが挙げられ、組織インピーダンスは、測定電気パラメータ、例えば、電極と組織の界面を越えて電極を通る供給電圧及び復帰電圧に基づいて、プロセッサによって求めることができる。プロセッサは、初期組織インピーダンス値を求めるように構成することができる。初期組織インピーダンス値は、電極と組織の界面を越えて電極を通る初期供給電圧及び復帰電圧に基づくことができる。
【0008】
プロセッサは、初期組織インピーダンス値に基づいてインピーダンス閾値を求めるように構成することができる。インピーダンス閾値は、アブレーション処置の経過時間に基づく特性に基づいて変動する。経過時間に基づく特性は、RFエネルギーの送達を始めてからの経過時間、又はアブレーション処置の別の開始若しくは設定時間からの経過時間とすることができる。設定時間は、例えば、熱電対によって測定される組織温度が、温度設定点の近く又は温度設定点になったら、選択されるか又は予め規定されたものとすることができる。経過時間は、連続的なものとすることもできるし、RFエネルギーが送達されていない期間中は一時停止するものとすることもできる。経過時間に基づく特性は、総アブレーション時間(total ablation time)の百分率とすることができる。総アブレーション時間は、ユーザによってGUIに入力することもできるし、プロセッサによって求めることもできる。総アブレーション時間の百分率は、総アブレーション時間に対する経過時間の比率とすることができる。経過時間に基づく特性は、閾値温度を超える病変の百分率とすることができる。閾値温度は、温度設定点、温度設定点の百分率(パーセンテージ)、又はアブレーション処置の任意の数の要因に基づく別の求められた温度とすることができる。プロセッサは、総アブレーション時間に対する閾値温度を超える病変の経過時間の比率として百分率を求めるように構成することができる。プロセッサは、さらに、最終閾値インピーダンス値を求めるように構成される。最終閾値インピーダンス値は、例えば、RFエネルギーが終わりを迎えたアブレーション処置の終了時の、最後の経過時間に基づく特性のインピーダンス閾値とすることができる。これは、病変の100パーセントが温度閾値を超えたことに対応しうる。
【0009】
インピーダンス閾値は、関数から、例えば、式に従って求めることができる。インピーダンス閾値は、インピーダンス閾値曲線を定義することができる。インピーダンス閾値曲線は、線形又は非線形とすることができ、初期インピーダンス値と最終インピーダンス値との間に延びうる。インピーダンス閾値曲線は、正の傾きを有することができ、経過時間に基づく特性の値が高くなるほど、閾値は大きくなる。初期組織インピーダンス値の値がより高くなるほど、インピーダンス閾値曲線のうちのそれぞれ1つの傾きは減少しうる。インピーダンス閾値曲線は、異なる傾きを有することができ、インピーダンス閾値曲線のオフセットは、経過時間に基づく特性の値がより高いところよりも、経過時間に基づく特性の値がより低いところでより大きくなる。インピーダンス閾値のうちの後続の1つは、インピーダンスイベントの発生に基づくことができ、インピーダンス閾値は、予め規定された関数又は曲線から逸脱することができる。インピーダンス閾値は、アブレーション処置のそれぞれの時間に予め規定されたものとすることができる。
【0010】
コントローラは、熱電対の温度測定値と、組織がアブレーションされる温度設定点とに基づいて、電極から送達されるRFエネルギーを制御するように構成される。プロセッサは、インピーダンスイベントの発生に基づいて温度設定点を低減するように構成される。電気外科コンソールは、組織温度を温度設定点に向かわせるインピーダンスに基づく制御を利用する。温度設定点は、予め規定されたもの、求められたもの、又はユーザに選択されたものとすることができる。予め規定された温度設定点は、例えば、アブレーションされる病変のタイプに基づくことができる。求められる温度設定点は、例えば、病変のタイプ、総アブレーション時間、組織インピーダンス、又は別の治療パラメータに基づくことができる。プロセッサは、温度設定点を求めるように構成することができる。ユーザが選択する温度設定点は、ユーザによってGUIに入力することができる。
【0011】
RFエネルギーは、電極から送達され、組織温度をほぼ温度設定点に、又は厳密に温度設定点に向かわせる。RFエネルギーの送達中、プロセッサは、電気外科器具によるRFエネルギーの送達中の後続の組織インピーダンス値を求めるように構成される。プロセッサは、後続の組織インピーダンス値をインピーダンス閾値と比較する。求められた組織インピーダンス値が、アブレーション処置の所与の経過時間に基づく特性においてインピーダンス閾値を超えない場合、プロセッサは、インピーダンスイベントが発生していないと判定する。インピーダンスイベントが発生したとプロセッサが判定した場合には、温度設定点は低減される。上記のアクションは、アブレーション処置全体を通して連続的に及びリアルタイムに行うことができる。温度設定点の低減は、恒久的なものとすることができる。換言すれば、温度設定点は、アブレーション処置の残り時間にわたって増大されることはない。
【0012】
温度設定点の低減は、温度オフセット(temperature offset)とすることができる。温度オフセットは、固定(fixed)、すなわち一定、又は可変とすることができる。一定温度オフセットは、インピーダンスイベントの各発生に伴って温度設定点を低減させる値とすることができる。温度オフセットは、一定又は可変とすることができ、及び/又は予め規定されたものとする、求められたもの、又はユーザに選択されたもの、並びにそれらの組合せとすることができる。プロセッサは、初期組織インピーダンス、初期温度設定点、インピーダンスイベント間の経過時間、病変のタイプ、又は他の任意の治療パラメータに基づいて温度オフセットを求めるように構成することができる。求められた温度オフセットは、一定とすることもできるし、インピーダンスイベントの各発生の後に反復的に求めることもできる。ユーザに選択された温度オフセットは、ユーザによってGUIに入力することができる。
【0013】
アブレーション処置は、組織温度が温度設定点に向かって上昇するランプ(ramp)期間を含む。電気外科コンソールにより、温度設定点が低減する事例を、ランプ期間後に発生するインピーダンスイベントに制限される。プロセッサは、インピーダンスイベントがランプ期間中であるか又はランプ期間後であるかを判定するように構成される。プロセッサは、組織温度を、温度設定点、又は温度設定点に基づく別の温度と比較することができる。温度は、経過時間に基づく特性に関する閾値温度とすることができる。閾値温度は、温度設定点の百分率とすることができる。プロセッサは、インピーダンスイベントの発生がランプ期間中である場合には温度設定点を維持するように構成される。プロセッサは、さらに、インピーダンスイベントの発生がランプ期間後である場合には温度設定点を低減するように構成される。インピーダンスイベントの発生がランプ期間中である場合、プロセッサは、さらに、アラートを提供するようにディスプレイに命令するように構成される。ディスプレイは、他の治療パラメータの中でも、総アブレーション時間、動作モード、アブレーション処置の温度対時間のグラフ表現、電気外科コンソールに結合される電気外科器具の標示を表示することもできる。
【0014】
プロセッサは、インピーダンス閾値と併せて利用される副インピーダンス(secondary impedance)閾値を生成することができる。副インピーダンス閾値は、全ての経過時間に基づく特性について主インピーダンス(primary impedance)閾値よりも大きいものとすることができる。副インピーダンス閾値は、温度設定点の低減が組織インピーダンスの継続的な上昇を阻止するのに不十分である場合に利用することができる。副インピーダンス閾値は、主インピーダンス閾値と同じ又は異なる傾きを有することができる。組織インピーダンスが副インピーダンス閾値のインピーダンス閾値を超える場合には、プロセッサは、電気外科器具へのRFエネルギーの送達を中断するようにコントローラに命令することができる。RFエネルギーの送達の一時停止により、注入モジュールからの流体が、組織の炭化等の影響を部分的に逆転させる時間が提供される。予め規定された又は求められた期間の後、コントローラは、電気外科器具へのRFエネルギーの送達を再開するように構成されている。
【0015】
プロセッサは、インピーダンスイベントの発生に続くランプ期間の持続時間を増大するように構成されている。インピーダンスイベントに応答したRFエネルギーの送達の一時的な中断に続いて、組織温度を温度設定点に向かって駆動する速度が減少する。ランプ期間が低速であるほど、アブレーション体積がより均一になるため、アブレーション処置の後の点(later point)における再開に続いて組織をより低速で加熱することができる。なお、ここで、「及び/又は」は、その句によってつながれる二以上の要素の一要素、それらの任意の組み合わせ、あるいはそれらの総体をカバーする意味で使われる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】電気外科コンソールと、ケーブルアクセサリと、電気外科器具と、電気外科器具のうちの1つに結合される注入モジュールと、接地パッドアセンブリとを備える電気外科システムの斜視図である。
図2】組織が所定の温度閾値を超える処置時間の百分率に応じてインピーダンス値が上昇しているインピーダンス閾値軌道のグラフ表現である。
図3】複数の例示的なインピーダンス閾値曲線が示される、温度閾値を超える病変のパーセントに応じたインピーダンスのグラフ表現である。
図4】エネルギーの経過時間(分単位)に応じた組織温度(℃)のグラフ表現である。温度設定点の減少の事例は、インピーダンスイベントの発生に関連する。
図5】アブレーション処置の動作パラメータを示す電気外科コンソールのディスプレイの図である。
図6】アブレーション処置のランプ期間中にインピーダンスイベントが発生したことに応答してアラートが示されたディスプレイの別の図である。
図7】エネルギーの経過時間(分単位)に応じた組織温度(℃)のグラフ表現である。ランプ期間の持続時間は、アブレーション処置の後の点において上昇するものとして示される。
図8】エネルギー送達の経過時間(分単位)に応じた組織温度(℃)のグラフ表現である。最適未満の配置(suboptimal arrangement)により、インピーダンスイベントの発生の後に温度設定点を減少させず、経時的な組織の炭化により、組織は温度設定点の近くに戻ることが阻止される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1及び図2を参照すると、電気外科システム10は、電気外科コンソール12と、電気外科器具(複数の場合もある)16、17と、任意選択的に、ケーブルアクセサリ(cable accessory)14及び/又は接地パッド18とを備える。ケーブルアクセサリ14は、電気外科コンソール12に取外し可能に結合されるように構成され、電気外科器具16、17は、電気外科コンソール12及び/又はケーブルアクセサリ14に取外し可能に結合されるように構成されている。電気外科器具17の1つの実施態様は、電気外科コンソール12に取外し可能に結合可能な接地パッド18とともに電極22が動作可能であるモノポーラ電極とすることができる。電気外科器具16の別の実施態様は、近位電極22及び遠位電極23が、アブレーションされる組織を通る電流の経路を提供する、バイポーラ電極、例えば、自己接地式バイポーラ電極(self-grounding bipolar electrode)である。例えば、椎体を通る両椎弓根(bipedicular)手法において、2つ以上のバイポーラ電極を同時に使用することができる。注入モジュール20は、近位電極22及び遠位電極23の近くに排出される流体を、電気外科器具16を通して導くように電気外科器具16とともに動作可能とすることができる。熱電対24が電気外科器具16、17の遠位端部の近くに配置され、電極(複数の場合もある)22、23の近くの組織の温度測定値を提供するように構成されている。電気外科器具16及び注入モジュール20の1つの好適な実施態様は、2020年11月5日に公開された同一出願人の国際公開第2020/198150号に開示されており、その開示内容全体は、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。注入モジュール20は、流体の流れを選択的に開始及び停止するように作動するように構成される注入クランプ26を備える。
【0018】
電気外科システム10は、高周波(RF)アブレーション(radiofrequency (RF) ablation)によって、組織を治療するように構成されている。電気外科コンソール12は、制御された高周波の電気エネルギーを生成し、電気外科器具16、17及び組織を通してエネルギーを通過させ、これにより、組織の細胞を破壊するのに十分な温度に組織を加熱する。アブレーションは、2018年11月1日に公開された同一出願人の国際公開第2018/200254号に詳述されている、モノポーラ構成、並列バイポーラ構成、又は自己接地式バイポーラ構成によって実施することができる。その開示内容全体は、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。或る特定の実施態様において、電気外科システム10は、疼痛管理(pain management)のために神経をアブレーションするために利用される。他の実施態様において、電気外科システム10は、病変、特に骨内腫瘍をアブレーションするために利用される。特定の関心がある一例示的な処置は、椎体内の腫瘍のアブレーションである。導入器アセンブリが、一方又は両方の椎弓根を通して配備され、椎体内へのアクセスを容易にし、電気外科コンソール12は、温度制御されたRFエネルギーを腫瘍内に印加する。腫瘍内で関連する又は腫瘍を囲む神経もアブレーションして、疼痛の緩和をもたらすことができる。本開示の電気外科システム10を利用することで、長骨、頭蓋骨、下顎骨、回腸等の骨内腫瘍を治療することができることを理解されたい。
【0019】
電気外科コンソール12は、図1に示すように、ユーザが、他のアクションの中でも、動作パラメータを選択することと、電気外科コンソール12上のソフトウェアによって提供される異なる動作モードを通してナビゲートすることとを可能にするグラフィカルユーザインタフェース(GUI)32を表示するように構成されるディスプレイ30を備える。ディスプレイ30は、1つの例において、タッチスクリーンであり、タッチスクリーン上で容量式に検知されうる接触箇所を使用して、ディスプレイ30上に表示されるデジタル表示の選択を可能にする。代替的に、ディスプレイ30は、別個のタッチスクリーンデバイスとペアリングすることもできるし、マウス及び/又はキーボード等(つまり、マウス又はキーボード等あるいはそれらの全て)、電気外科コンソール12に接続される周辺入力デバイスによって制御することもできる。
【0020】
図2を参照すると、電気外科コンソール12は、コントローラ34と、1つ以上のプロセッサ36と、メモリ38とを備える。コンピュータ実行可能命令40又はコードを、メモリ38、例えば、メモリ38のデータベース42内に記憶することができる。命令40は、プロセッサ36がアクセス可能であり、電気外科コンソール12の様々な機能を実施するためにプロセッサ36によって実行可能である。例えば、命令40は、ディスプレイ30上にGUI32を実施するように構成されている。命令40の実行によって実施される他の機能は後述される。プロセッサ(複数の場合もある)36及びメモリ38は、任意の好適な構成を有することができ、本明細書に記載の機能の実施を可能にする任意の好適なタイプのものとすることができる。さらに、慣習に倣って、本開示は、プロセッサ36が命令40を実行し、コントローラ34が電気外科コンソール12からの出力又は電気外科コンソール12のアクションを制御する、例えば、電気外科器具16、17に供給されるRFエネルギーを制御することを記載している。コントローラ34はプロセッサ36によって実施することもできるし、プロセッサ36とは別個のデバイスとすることもできることを理解されたい。プロセッサ36は、コントローラ34と通信し、又は、コントローラ34及びプロセッサ36が別個のデバイス上に収容される場合、コントローラ34と有線若しくは無線通信状態になるように構成されている。本明細書に記載の機能のいずれも、コントローラ34、プロセッサ(複数の場合もある)36、又はその組合せによって実施することができる。
【0021】
電気外科器具16、17は、電気外科コンソール12に取外し可能に結合され、電気外科器具16、17をコントローラ34と通信状態にするように構成されている。GUI32への入力に基づいて、コントローラ34は、電気外科器具16、17に供給されるRFエネルギーを制御する。コントローラ34は、さらに、組織の温度等の1つ以上の治療パラメータを受信又は処理するように構成されている。特に、コントローラ34は、電気外科器具16、17の熱電対24と通信し、治療部位の組織温度を示す信号を受信するように構成されている。別の治療パラメータとして、組織インピーダンスが挙げられ、組織インピーダンスは、測定電気パラメータ、例えば、電極-組織界面にわたって電極22、23を通る供給電圧及び復帰電圧に基づいて、プロセッサ36によって求めることができる。組織温度は、インピーダンス値を求めるために使用することもできる。
【0022】
病変のアブレーション中は組織インピーダンスが変化し、より高い組織インピーダンス値が、アブレーション処置の後により許容可能であることが知られている。換言すれば、組織の電気及び熱伝導の減少は、病変が既に長期にわたって加熱された後では重要度が下がっていく一方、処置の早期にそのような減少があると、処置の有効性を損ねるおそれがある。次に図3を参照すると、プロセッサ36は、初期組織インピーダンス値44を求めるように構成することができる。初期組織インピーダンス値44は、電極-組織界面にわたって電極22、23を通る初期供給電圧及び復帰電圧に基づくことができる。したがって、電気外科器具16、17は、電極22、23を病変の近く、又は病変に、又は病変内において標的部位に配備することができ、電流の経路が、初期供給電圧及び復帰電圧を得るように生じる。1つの実施態様において、これは、アブレーションを始める入力がGUI32に提供されると、自動的に行うことができる。換言すれば、初期組織インピーダンス値44は、RFエネルギーの送達とリアルタイムに求めることができる。代替的に、電気外科器具16、17が標的部位に配備された後であってアブレーションを始める前に、ユーザは、組織インピーダンスを得るモードをGUI32上で選択することができ、その後、治療に至らない又はアブレーションに至らない大きさ(subtherapeutic or sub-ablative magnitude)の電流の経路が、初期供給電圧及び復帰電圧を得るように生じ、そこから初期組織インピーダンス値44が求められる。
【0023】
プロセッサ36は、初期組織インピーダンス値44に基づいてインピーダンス閾値48を求めるように構成することができる。インピーダンス閾値48は、より高い組織インピーダンス値が、アブレーション処置の後により許容可能であることを反映して、アブレーション処置の経過時間に基づく特性に基づいて変動することができる。最も広範な意味において、経過時間に基づく特性は、RFエネルギーの送達を始めてからの経過時間、又はアブレーション処置の別の開始若しくは設定時間からの経過時間とすることができる。設定時間は、例えば、熱電対24によって測定される組織温度が、記載される温度設定点の近く又は温度設定点になったら、選択されるか又は予め規定されたものとすることができる。経過時間は、連続的なものとすることもできるし、RFエネルギーが送達されていない期間中は一時停止するものとすることもできる。別の実施態様において、経過時間に基づく特性は、総アブレーション時間の百分率とすることができる。総アブレーション時間は、ユーザによってGUI32に入力することもできるし、プロセッサ36によって求めることもできる。例えば、アブレーションされる病変のサイズ及び温度設定点に基づいて、プロセッサ36は、総アブレーション時間を求めるように構成されている。総アブレーション時間の百分率は、前述したように、総アブレーション時間に対する経過時間の比率とすることができる。更に別の実施態様において、経過時間に基づく特性は、図3に示すように、閾値温度を超える病変の百分率とすることができる。閾値温度は、温度設定点、温度設定点の百分率、又はアブレーション処置の任意の数の要因に基づく別の求められた温度とすることができる。病変の組織温度は、熱電対24によって検知され、プロセッサ36に送信される。プロセッサ36は、前述したように、総アブレーション時間に対する閾値温度を超える病変の経過時間の比率として百分率を求めるように構成することができる。そのような実施態様において、温度が温度閾値を超えたままである場合には、RFエネルギーが一時停止されているにもかかわらず、百分率は上昇しうる。実験により、インピーダンス閾値の基礎として閾値温度を超える病変の百分率を使用することで、組織インピーダンスの上昇及び/又は一過性スパイク(つまり、上昇又は一過性スパイクあるいはそれらの両方)を考慮しながら、所望のアブレーションプロファイルがより有効に提供されることが示されている。
【0024】
或る特定の実施態様において、インピーダンス閾値48は、インピーダンス閾値曲線46を定義することができる。インピーダンス閾値48は、関数、例えば、次式に従って求めることができる。
(t)=Z+(Z-Z)*t
ここで、Z(t)は、処置中の所与の時間におけるインピーダンス閾値48であり、Zは、初期インピーダンス値44であり、Zは、最大インピーダンス閾値であり、tは、経過時間に基づく特性、例えば、総処置時間の百分率である。ノイズマージンを更に考慮することができる。最大インピーダンス閾値及びノイズマージンは、一定又は可変の値とすることができる。総処置時間は、処置の前に可変的に求めることもできるし、メモリ38に記憶された予め規定されたデフォルト値に基づいて求めることもできる。予め規定されたデフォルト値は、電気外科器具16、17のプローブのサイズに基づくことができる。
【0025】
プロセッサ36は、さらに、最終閾値インピーダンス値50を求めるように構成されている。最終閾値インピーダンス値50は、例えば、RFエネルギーが終わりを迎えたアブレーション処置の終了時に、最後の経過時間に基づく特性のインピーダンス閾値48とすることができる。これは、上記式の経過時間に基づく特性が1に等しいこと、及び/又は病変の100パーセントが温度閾値を超えたこと(つまり、1に等しいこと、又は病変の100パーセントが温度閾値を超えたこと、あるいはそれらの両方)に対応しうる。最終インピーダンス閾値50は、初期組織インピーダンス値44に基づくことができ、上記式に従って求めることができる。代替的な実施態様において、メモリ38は、複数のインピーダンス閾値曲線を記憶することができ、プロセッサ36は、メモリ38に記憶されたインピーダンス閾値曲線46のうちの1つを選択することによってインピーダンス閾値曲線を求めるように構成されている。1つの例として、初期組織インピーダンス値44を、インピーダンス閾値曲線46のそれぞれの初期組織インピーダンス値と比較し、初期組織インピーダンス値44が最も近いインピーダンス閾値曲線46を選択することが挙げられる。加えて又は代替的に、インピーダンス閾値48のうちの後続の1つは、インピーダンスイベントの発生及び/又は特性(つまり、発生又は特性あるいはそれらの両方)に基づくことができ、インピーダンス閾値は、リアルタイムで求めることができ、予め規定された関数から逸脱することができる。1つの例として、インピーダンス閾値48のうちの後続の1つは、組織インピーダンス値44がインピーダンス閾値48を超える大きさに基づいてより高いか又はより低いことが挙げられる。
【0026】
図3は、例示のために、いくつかの例示的なインピーダンス閾値曲線46を示している。インピーダンス閾値曲線46は、線形とすることができ、初期組織インピーダンス値44と最終インピーダンス閾値50との間に延びうる。インピーダンス閾値曲線46は、正の傾きを有することができ、経過時間に基づく特性の値がより高くなるほど、閾値はより大きくなる。さらに、初期組織インピーダンス値44の値がより高くなるほど、インピーダンス閾値曲線46のそれぞれ1つの傾きは減少しうる。例えば、図3に示すように、インピーダンス閾値曲線46は、異なる傾きを有し、インピーダンス閾値曲線46のオフセットは、経過時間に基づく特性の値がより高いところよりも、経過時間に基づく特性の値がより低いところでより大きくなる。より具体的には、初期組織インピーダンス値44は、互いに100オームだけオフセットされるものとして示される一方、最終閾値インピーダンス値50は、互いに50オームだけオフセットされるものとして示される。とりわけ、双曲線形状及び対数形状を有することによる非線形のもの、及び段階的なもの等、インピーダンス閾値曲線46の他の特性が想定される。
【0027】
さらに図4を参照すると、プロセッサ36は、熱電対24の温度測定値と、組織がアブレーションされる温度設定点とに基づいて、電極22、23から送達されるRFエネルギーを制御するように構成されている。さらに、記載するように、プロセッサ36は、インピーダンスイベントの発生、すなわち、組織インピーダンスがインピーダンス閾値48を超えるときに基づいて温度設定点を低減するように構成されている。インピーダンスに基づく制御が利用され、組織温度を温度設定点に向かわせる本開示の電気外科コンソール12は、インピーダンスの制御不能なスパイクが繰り返し生じるリスクが低下し、有利には、RFエネルギーの送達を改善する。対照的に、インピーダンスがインピーダンス軌道に向かわされる既知のシステムにより、温度制御が最適未満になるおそれがある。同様に、図8は、組織温度が温度設定点に向かわされる最適未満の配置を反映したものであるが、インピーダンスイベントに続く温度設定点の低減なしでは、インピーダンスイベントが繰り返され、電極と組織の界面が劣化し、送達可能なRFエネルギーがアブレーションには不十分になる。本開示の電気外科コンソール12は、そのような欠点を克服する。
【0028】
温度設定点は、予め規定されたもの、求められたもの、又はユーザに選択されたものとすることができる。予め規定された温度設定点は、例えば、アブレーションされる病変のタイプに基づくことができる。骨内腫瘍は、90℃~100℃の範囲内、より詳細には、94℃~96℃の範囲内の温度設定点、又は病変の組織の細胞を破壊するように指示される別の温度でアブレーションすることができる。求められた温度設定点は、例えば、病変のタイプ、総アブレーション時間、組織インピーダンス、又は別の治療パラメータに基づくことができる。プロセッサ36は、温度設定点を求めるように構成することができる。ユーザに選択された温度設定点は、ユーザによってGUI32に入力することができる。図5は、ディスプレイ30上に95℃として表示される温度設定点52を示している。
【0029】
RFエネルギーは、電極22、23から送達され、組織温度54をほぼ温度設定点52に又は厳密に温度設定点52に向かって駆動する、すなわち、向かわせる。図5は、ディスプレイ30上に94℃として表示される組織温度54を示している。RFエネルギーの送達中、プロセッサ36は、電気外科器具16、17によるRFエネルギーの送達中の後続の組織インピーダンス値を求めるように構成されている。プロセッサ36は、後続の組織インピーダンス値をインピーダンス閾値48と比較する。求められた組織インピーダンス値が、アブレーション処置の所与の経過時間に基づく特性においてインピーダンス閾値48を超えない場合には、プロセッサ36は、インピーダンスイベントが発生していないと判定する。一例として、図3を参照して、初期組織インピーダンス値44が150オームであるインピーダンス閾値曲線46を使用して、また、経過時間に基づく特性が60%である場合、56に示される第1の組織インピーダンス値は、ほぼ625オームであるインピーダンス閾値48よりもより小さい。プロセッサ36は、アクションを行わなくてよく、コントローラ34は、RFエネルギーを電極22、23に送達し続け、組織温度54を温度設定点52に向かって駆動する。経過時間に基づく特性が75%である場合、58に示される第2の組織インピーダンス値は、ほぼ750オームであるインピーダンス閾値48よりもより大きい。プロセッサ36は、インピーダンスイベントの発生を判断し、温度設定点52を低減する。上記のアクションは、アブレーション処置全体を通して連続的に及びリアルタイムに行うことができる。
【0030】
温度設定点52の低減は、恒久的なものとすることができる。換言すれば、温度設定点52は、アブレーション処置の残り時間にわたって上昇されない。インピーダンスイベントが発生する根本の原因、例えば、組織の炭化、又は電極22、23と組織との間の最適未満の接触は残存するおそれがあり、前述したように、温度設定点52を初期温度設定点に戻す作業により、インピーダンスイベントが更に発生するおそれがある。より具体的には、図8は、第1のインピーダンスイベントIを示しており、その後、最適未満の配置は、組織温度を初期温度設定点に駆動しようとする。これは、場合によっては、組織温度の一時的な降下に続く組織の炭化が部分的に可逆であること、又は電極と組織との間の接触を改善することにより、最初は実現可能でありうる。しかし、病変及び/又は電極と組織の界面(つまり、病変又は電極と組織の界面あるいはそれらの両方)の特性は、初期温度設定点を保持することが不可能となり得て、その後、第2のインピーダンスイベントIが発生する。最適未満の配置は、再び、組織温度を初期温度設定点に駆動しようとする。電極と組織の界面の劣化が不可逆的であることにより、第3のインピーダンスイベント、第4のインピーダンスイベント、及び後続のインピーダンスイベント(I、I、...I)は、より低くなる組織温度で発生する。換言すれば、初期温度設定点が達成不能であるだけでなく、組織温度がより穏やかでもインピーダンスイベントがもたらされる。結果として、インピーダンスイベントなしでRFエネルギーを送達しうる組織温度は、アブレーションには不十分であり、これにより、アブレーション処置が事実上失敗となる。
【0031】
次に図4を参照すると、本開示の実施態様が示されており、ここでは、温度設定点52は、インピーダンスイベントの発生(複数の場合もある)に応答して低減される。RFエネルギーの送達が始まると、組織温度は、初期又は第1の温度設定点Tにランプ制御される。本例において、組織温度は、第1の温度設定点を達成し、数分後、第1のインピーダンスイベントIが発生する。プロセッサ36は、第1の温度設定点Tを第2の温度設定点Tに低減し、コントローラ34は、組織温度を第2の温度設定点Tに駆動するようにRFエネルギーを制御する。これにより、病変及び/又は電極と組織の界面は、好ましくはインピーダンスイベントがもう一度発生することなく、第2の温度設定点に関連するRFエネルギーのレベルに適応する可能性がより高くなりうる。例示のために、図4は、第2のインピーダンスイベントI及び第3のインピーダンスイベントIの発生を示している。第2のインピーダンスイベントIの発生に基づいて、プロセッサ36は、第2の温度設定点Tを第3の温度設定点Tに低減し、コントローラ34は、組織温度を第3の温度設定点Tに駆動するようにRFエネルギーを制御する。同様に、第3のインピーダンスイベントIの発生に基づいて、プロセッサ36は、第3の温度設定点Tを第4の温度設定点Tに低減し、コントローラ34は、組織温度を第4の温度設定点Tに駆動するようにRFエネルギーを制御する。アブレーション処置の残り時間は、病変が第4の温度設定点Tでアブレーションされる状態で進行する。インピーダンスイベントが繰り返し発生することにより、組織温度がほぼ40℃に減衰する図8の最適未満の実施態様とは対照的に、図8の本開示の実施態様は、病変をアブレーションするために十分な温度である80℃での実行を保持する。換言すれば、この手法は、より低速ではあるが、RFエネルギーの出力及びアブレーションゾーンの拡張を継続し、意図したような細胞破壊をもたらすと知られている設定点温度でアブレーション処置を進行するための自信をユーザに提供する。
【0032】
温度設定点52の低減は、温度オフセットである。温度オフセットは、一定又は可変とすることができる。一定温度オフセットは、インピーダンスイベントの各発生に伴って温度設定点を低減させる値とすることができる。一定温度オフセットは、3℃~7℃の範囲内、より詳細にはほぼ5℃とすることができる。実験により、3℃~7℃の範囲は、インピーダンスイベントが後続して発生する可能性を大幅に低減することが示されている。図4の例示的な実施態様において、一定温度オフセットは5℃であり、初期かつ第1の温度設定点は95℃であり、第2の温度設定点は90℃であり、第3の温度設定点は85℃であり、第4の温度設定点は80℃であり、以下同様である。さらに、温度オフセットは、一定又は変動式とすることができ、及び/又は予め規定されたもの、求められたもの、又はユーザに選択されたもの、並びにそれらの組合せとすることができることが想定される。例えば、プロセッサ36は、初期組織インピーダンス、初期温度設定点、インピーダンスイベント間の経過時間、病変のタイプ、又は他の任意の治療パラメータに基づいて温度オフセットを求めるように構成することができる。求められた温度オフセットは、一定とすることもできるし、インピーダンスイベントの各発生の後に反復的に求めることもできる。換言すれば、第1の温度オフセットは3℃とすることができるが、そのすぐ後に、例えば所定の又は求められる経過時間内に後続のインピーダンスイベントが続く場合、第2の温度オフセットは5℃、7℃、又はそれ以上とすることができる。代替的に、ユーザに選択された温度オフセットは、ユーザによってGUI32に入力することができる。例えば、ユーザに選択された温度オフセットは、15℃と選択することができ、実験により、試験中のインピーダンス上昇が非常に少ないことを実証しているため、第2の温度設定点は80℃となる。
【0033】
図4を継続して参照すると、アブレーション処置は、組織温度が温度設定点52に向かって上昇するランプ期間60を含む。人体の公称温度が37℃として、ランプ期間60は、例えば、95℃である温度設定点52を達成する前の、アブレーション処置の最初の1分、2分、3分、4分又はそれ以上とすることができる。組織温度が40℃、50℃、及び60℃等しかないランプ期間60中、インピーダンスイベントの発生は、組織の電気伝導及び熱伝導の減少(例えば、炭化)に起因したものではあり得ない。むしろ、インピーダンスイベントは、電極22、23と電極-組織界面の病変との間の最適未満の接触に起因したものでありうる。したがって、ランプ期間60中に温度設定点を低減することは、組織が初期温度設定点を達成するレベルのRFエネルギーに適応する可能性が高いままであるため、望ましくないおそれがある。換言すれば、ランプ期間60中に温度設定点を低減するのは早計であるおそれがある。
【0034】
本開示の電気外科コンソール12により、有利には、温度設定点が低減する事例を、インピーダンスイベントの発生がランプ期間60の後になる発生に制限される。より詳細には、プロセッサ36は、インピーダンスイベントがランプ期間60中であるか又はランプ期間60中の後半(後い時点)であるかを判定するように構成されている。そのために、プロセッサ36は、組織温度を、温度設定点52、又は温度設定点に基づく別の温度と比較することができる。温度は、前述したように、経過時間に基づく特性に関する閾値温度とすることができる。或る特定の実施態様において、閾値温度は、温度設定点の百分率とすることができる。例えば、組織温度が温度設定点52の85%、90%、又は95%に達していない場合には、プロセッサ36は、アブレーション処置がランプ期間60にあると判定する。逆に、組織温度が閾値温度又は温度設定点52に達した場合、プロセッサ36は、アブレーション処置がもはやランプ期間60にないと判定する。
【0035】
プロセッサ36は、インピーダンスイベントの発生がランプ期間60中である場合には温度設定点52を維持するように構成されている。図4を継続して参照すると、ランプ期間60中のランプインピーダンスイベントの発生が62に示されている。ランプインピーダンスイベント62について、プロセッサ36は、温度設定点52を初期又は第1の温度設定点Tとして維持する。プロセッサ36は、さらに、インピーダンスイベントの発生がランプ期間60中の後半(後い時点)である場合には温度設定点52を低減するように構成されている。そのような事例の一例は、図4に示し、前述したように、第1のインピーダンスイベントIと、第1の温度設定点Tから第2の温度設定点Tに低減することとである。
【0036】
述べたように、ランプ期間60中のインピーダンスイベントは、電極22、23と電極と組織の界面の病変との間の最適未満の接触に起因したものでありうる。本開示の電気外科システム10は、近位電極22及び遠位電極23の近くに排出される流体を、電気外科器具16を通して導く注入モジュール20を備える。排出される流体は、電極と組織の界面でのRFエネルギーの伝導性を改善し、これにより、電極22、23と病変との間の最適未満の接触が制限される。したがって、ランプ期間60中のインピーダンスイベントの発生は、流体の流れを許可するようにユーザが注入モジュール20を起動させないこと又は注入クランプ26を作動させないことに起因したものでありうる。したがって、インピーダンスイベントの発生がランプ期間60中である場合には、プロセッサ36は、さらに、アラート64を提供するようにディスプレイ30に命令するように構成されている。1つの例示的なアラート64が、図6においてポップアップ通知として示されている。追加の視覚的アラートも、聴覚的アラート及び触覚アラートも想定される。例えば、図6は、さらに、組織インピーダンス58をディスプレイ30上で視覚的に強調して示し、組織インピーダンス58が、アブレーション処置の所与の経過時間に基づく特性61についてインピーダンス閾値を超えることを示している。ディスプレイ30は、他の治療パラメータの中でも、総アブレーション時間66、動作モード68、アブレーション処置の温度対時間のグラフ表現70、電気外科コンソール12に結合される電気外科器具16、17の示度72を表示することもできる。さらに、2つ以上の電気外科器具16、17が電気外科コンソール12とともに同時に動作可能とすることができ、ディスプレイ30は、電気外科コンソール12に結合される電気外科器具16、17(図1を参照)のそれぞれを示すフィールド74、76を含むことができることが想定される。GUI32上のフィールド74、76の選択により、ユーザは、電気外科器具16、17のそれぞれの動作パラメータ間を切り替えることが可能になりうる。
【0037】
或る特定の実施態様において、プロセッサ36は、主インピーダンス閾値と以降で称されるインピーダンス閾値48と併せて利用される副インピーダンス閾値(識別せず)を生成することができる。副インピーダンス閾値は、全ての経過時間に基づく特性について主インピーダンス閾値よりもより大きいものとすることができる。副インピーダンス閾値は、温度設定点52の低減が組織インピーダンスの継続的な上昇を阻止するのに不十分である場合に利用することができる。換言すれば、副インピーダンス閾値は、バックアップフェイルセーフ(backup failsafe)とみなすことができる。副インピーダンス閾値は、主インピーダンス閾値曲線と同じ又は異なる傾きを有する曲線等の関数とすることができる。異なる傾きを有する1つの例において、副インピーダンス閾値曲線は、許容可能な組織インピーダンスの不変の最大値における水平線である。組織インピーダンスが副インピーダンス閾値のインピーダンス閾値を超える場合には、プロセッサ36は、電気外科器具16、17へのRFエネルギーの送達を中断するようにコントローラ34に命令することができる。RFエネルギーの送達の一時停止により、注入モジュールからの流体が、組織の炭化等の影響を部分的に逆転させる時間が提供される。予め規定された又は求められた期間の後、コントローラ34は、電気外科器具16、17へのRFエネルギーの送達を再開するように構成されている。
【0038】
次に図7を参照すると、命令40がプロセッサ36によって実行され、インピーダンスイベントの発生に続くランプ期間の持続時間を増大させる別の実施態様が示されている。より詳細には、インピーダンスイベントに応答したRFエネルギーの送達の一時的な中断に続いて、組織温度を温度設定点に向かって駆動させる速度が減少する。換言すれば、ランプ期間が低速であるほど、アブレーション体積がより均一になる(すなわち、炭化が少なくなる)ため、アブレーション処置中の後の方の時点(later point)における再開に続いて組織がより低速で加熱される。したがって、処置のより早期においては、より高速のランプ期間を利用することができ、炭化がアブレーション処置中に次第により大きな問題になる場合には、利用することができるランプの激しさがより減少しうる。
【0039】
図7は、組織温度が初期又は第1の温度設定点Tにランプ制御されることを示し、ここで、初期ランプ期間60を前述したように定義する。第1のインピーダンスイベントIに応答して、プロセッサ36は、第1の温度設定点Tを第2の温度設定点Tに低減する。コントローラ34は、図7の温度-時間曲線の傾きを有する第2のランプ期間Rにおいて、組織温度を第2の温度設定点Tに向かって駆動するように構成される電力レベルのRFエネルギーの送達を再開する。第2のインピーダンスイベントIが発生し、プロセッサ36は、第1の温度設定点Tを第2の温度設定点Tに低減する。コントローラ34は、第3のランプ期間Rにおいて、組織温度を第3の温度設定点Tに向かって駆動するように構成される別の電力レベルのRFエネルギーの送達を再開する。第3のランプ期間Rは、第2のランプ期間Rよりも持続時間がより大きいため、第2のランプ期間Rの傾きは、第3のランプ期間Rの傾きよりもより小さい。RFエネルギーを追加で送達した後、第3のインピーダンスイベントIが発生し、プロセッサ36は、第2の温度設定点Tを第3の温度設定点Tに低減する。コントローラ34は、第4のランプ期間Rにおいて、組織温度を第4の温度設定点Tに向かって駆動するように構成される更に別の電力レベルのRFエネルギーの送達を再開する。第4のランプ期間Rは、第3のランプ期間Rよりも持続時間がより大きいため、第3のランプ期間Rの傾きは、第4のランプ期間Rの傾きよりもより小さい。アブレーション処置の残り時間は、病変が第4の温度設定点Tでアブレーションされる状態で進行する。
【0040】
上記の開示は、網羅的であること、又は本発明を任意の特定の形態に限定することを意図するものではない。使用された用語は、限定ではなく、説明の言葉の性質であることが意図される。上記の教示に照らして多くの変更及び変形が可能であり、本発明は、詳細に記載された以外の方法で実施することができる。インピーダンス及び温度以外の治療パラメータを上述の技法とともに利用することができることを理解されたい。さらに、治療パラメータを記載の技法とは異なる方法で制御又は定義することができることが想定される。さらに、本開示の対象は、高周波エネルギー以外のマイクロ波エネルギー又は電気エネルギーとともに使用することができることを理解されたい。
【0041】
以下の条項を参照して、本開示の電気外科システム10を用いる電気外科処置を行う例示的な方法を記載する。
【0042】
条項(clause)1-電気外科器具を用いるアブレーション処置中に組織をアブレーションする電気外科コンソールを動作させる方法であって、熱電対の温度測定値と、組織がアブレーションされる温度設定点とに基づいて、電極から送達される電気エネルギーを制御することと、初期組織インピーダンス値を求めることと、初期組織インピーダンス値に基づいてインピーダンス閾値を求めることであって、インピーダンス閾値は、アブレーション処置の経過時間に基づく特性に基づいて変動することと、電気外科器具による電気エネルギーの送達中の後続の組織インピーダンス値を求めることと、後続の組織インピーダンス値を閾値と比較することによって、インピーダンスイベントの発生を判断することと、インピーダンスイベントの発生に基づいて温度設定点を低減することとを含む方法。
【0043】
条項2-さらに、組織が閾値温度を超える総処置時間の百分率を求めることによって、経過時間に基づく特性を求めることを含む、条項1に記載の方法。
【0044】
条項3-アブレーション処置は、組織がアブレーションされる温度設定点と、組織温度が温度設定点に向かって上昇するランプ期間とを含み、方法は、インピーダンスイベントの発生がランプ期間中であるか又はランプ期間後であるかを判定することと、インピーダンスイベントの発生がランプ期間中である場合には温度設定点を維持することとをさらに含む、条項1又は2に記載の方法。
【0045】
条項4-インピーダンスイベントの発生がランプ期間後である場合には温度設定点を低減することをさらに含む、条項3に記載の方法。
【0046】
条項5-インピーダンスイベントの発生及び追加のインピーダンスイベントの後続の発生に伴って、温度設定点を一定温度オフセットだけ低減することをさらに含む、条項4に記載の方法。
【0047】
条項6-インピーダンスイベントの発生がランプ期間中である場合にアラートを表示することをさらに含む、条項3~5のいずれか1つに記載の方法。
【0048】
条項7-ランプ期間後のインピーダンスイベントの発生に基づいて電気エネルギーの送達を中断することと、一定期間の後に電気エネルギーの送達を再開することとをさらに含む、条項3~5のいずれか1つに記載の方法。
【0049】
条項8-再開時に、組織温度を低減された温度設定点に再ランプ制御する電力を伴う電気エネルギーを送達することをさらに含み、任意選択的に、再ランプ制御は、アブレーション処置の後の点においてより長い、条項7に記載の方法。
【0050】
条項9-副インピーダンス閾値を求めることと、後続の組織インピーダンス値が副インピーダンス閾値を超えたことに基づいて、電気エネルギーの送達を中断することとをさらに含む、条項1~8のいずれか1つに記載の方法。
【0051】
条項10-電気外科器具を用いるアブレーション処置中に組織をアブレーションする電気外科コンソールを動作させる方法であって、アブレーション処置は、組織がアブレーションされる温度設定点と、組織温度が温度設定点に向かって上昇するランプ期間とを含み、方法は、インピーダンス閾値を求めることと、電気外科器具による電気エネルギーの送達中の組織インピーダンス値を求めることと、組織インピーダンス値をインピーダンス閾値と比較することによってインピーダンスイベントの発生を判断することと、インピーダンスイベントの発生がランプ期間中であるか又はランプ期間後であるかを判定することと、インピーダンスイベントの発生がランプ期間中である場合には温度設定点を維持することとを含む方法。
【0052】
条項11-インピーダンスイベントの発生がランプ期間後である場合には温度設定点を低減することをさらに含む、条項10に記載の方法。
【0053】
条項12-インピーダンスイベントの発生及び追加のインピーダンスイベントの後続の発生に伴って、温度設定点を一定温度オフセットだけ低減することをさらに含む、条項11に記載の方法。
【0054】
条項13-組織温度値を受信することと、組織温度値を、温度設定点、又は温度設定点に基づく温度閾値と比較することによって、インピーダンスイベントの発生がランプ期間中であるか又はランプ期間後であるかを判定することとをさらに含む、条項9~12のいずれか1つに記載の方法。
【0055】
条項14-インピーダンスイベントの発生に基づいて電気外科器具からの電気エネルギーの送達を制御することをさらに含む、条項9~13のいずれか1つに記載の方法。
【0056】
条項15-インピーダンスイベントの発生がランプ期間中である場合にアラートを表示することをさらに含む、条項9~14のいずれか1つに記載の方法。
【0057】
条項16-ランプ期間後のインピーダンスイベントの発生に基づいて電気エネルギーの送達を中断することと、一定期間の後に電気エネルギーの送達を再開することとをさらに含む、条項9~15のいずれか1つに記載の方法。
【0058】
条項17-さらに、再開時に、組織温度を低減された温度設定点に再ランプ制御する電力を伴う電気エネルギーを送達し、任意選択的に、再ランプ制御は、アブレーション処置の後の点においてより長い、条項16に記載の方法。
【0059】
条項18-電気外科器具を用いるアブレーション処置中に組織をアブレーションする電気外科コンソールを動作させる方法であって、アブレーション処置は、組織がアブレーションされる温度設定点と、組織温度が温度設定点に向かって上昇するランプ期間とを含み、方法は、電気外科器具による電気エネルギーの送達中の組織インピーダンス値を求めることと、組織インピーダンス値をインピーダンス閾値と比較することによってインピーダンスイベントの発生を判断することと、インピーダンスイベントの発生及びインピーダンスイベントの後続の発生後に、温度設定点を一定温度オフセットだけ低減することとを含む方法。
【0060】
条項19-インピーダンスイベントの発生がランプ期間中であるか又はランプ期間後であるかを判定することと、インピーダンスイベントの発生がランプ期間後である場合には温度設定点を低減することとをさらに含む、条項18に記載の方法。
【0061】
条項20-組織に送達される電気エネルギーを中断することと、任意選択的に、再開時に、組織温度を低減された温度設定点に再ランプ制御する電力を伴う電気エネルギーを送達することとをさらに含み、再ランプ制御は、アブレーション処置の後の点においてより長い、条項19に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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【国際調査報告】