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特表2024-528139改良された発現ベクターおよびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】改良された発現ベクターおよびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20240719BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20240719BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240719BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20240719BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240719BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240719BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20240719BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20240719BHJP
【FI】
C12N5/10
C12P21/08
C07K16/46
C07K16/00
C12N15/63 Z
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N15/11 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506140
(86)(22)【出願日】2022-07-29
(85)【翻訳文提出日】2024-02-29
(86)【国際出願番号】 IB2022057073
(87)【国際公開番号】W WO2023012627
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】63/228,315
(32)【優先日】2021-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】593141953
【氏名又は名称】ファイザー・インク
(74)【代理人】
【識別番号】100133927
【弁理士】
【氏名又は名称】四本 能尚
(74)【代理人】
【識別番号】100174447
【弁理士】
【氏名又は名称】龍田 美幸
(74)【代理人】
【識別番号】100185960
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 理愛
(72)【発明者】
【氏名】カルパニー ルワンマリ バンダラ
(72)【発明者】
【氏名】キャサリン メアリー ビール
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ジョセフ スカルチェッリ
(72)【発明者】
【氏名】リン ザング
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065CA25
4B065CA44
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
改良された抗体産生のためのベクターおよび核酸構築物が提供される。また、ベクターおよび構築物を作製および使用する方法も提供される。
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
宿主細胞染色体に組み込まれた第1の外因性核酸構築物および宿主細胞染色体に組み込まれた第2の外因性核酸構築物を含む哺乳動物宿主細胞であって、第1の外因性核酸構築物が、抗体軽鎖をコードする第1の遺伝子および抗体軽鎖をコードする第2の遺伝子を5’から3’の順序で含み、かつ、第2の外因性核酸構築物が、抗体重鎖または抗体重鎖融合タンパク質をコードする第1の遺伝子および抗体重鎖をコードする第2の遺伝子を5’から3’の順序で含む、哺乳動物宿主細胞。
【請求項2】
宿主細胞染色体に組み込まれた第1の外因性核酸構築物および宿主細胞染色体に組み込まれた第2の外因性核酸構築物を含む哺乳動物宿主細胞であって、
第1の外因性核酸構築物が、以下のエレメント:a)第1の組換え配列、b)抗体軽鎖をコードする第1の遺伝子、c)抗体軽鎖をコードする第2の遺伝子、d)第2の組換え配列を5’から3’の順序で含み、かつ、
第2の外因性核酸構築物が、以下のエレメント:a)第1の組換え配列、b)抗体重鎖または抗体重鎖融合タンパク質をコードする第1の遺伝子、c)抗体重鎖をコードする第2の遺伝子、d)第2の組換え配列を5’から3’の順序で含む、
哺乳動物宿主細胞。
【請求項3】
第2の外因性核酸構築物の第1の遺伝子が抗体重鎖をコードする、請求項1から2のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項4】
第2の外因性核酸構築物の第1の遺伝子が抗体重鎖融合タンパク質をコードする、請求項1から2のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項5】
第1の外因性核酸構築物の第1の組換え配列が、少なくとも1つのヌクレオチド分、第1の外因性核酸構築物の第2の組換え配列と異なるヌクレオチド配列を有する、請求項2から4のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項6】
第1の外因性核酸構築物の第1の組換え配列および第2の外因性核酸構築物の第1の組換え配列が、同一のリコンビナーゼ酵素によって認識される、請求項5に記載の宿主細胞。
【請求項7】
第1の外因性核酸構築物の第1の組換え配列、第1の外因性核酸構築物の第2の組換え配列、第2の外因性核酸構築物の第1の組換え配列、および第2の外因性核酸構築物の第2の組換え配列が、同一のリコンビナーゼ酵素によって認識される、請求項5に記載の宿主細胞。
【請求項8】
第1の外因性核酸構築物の第1の組換え配列が、第2の外因性核酸構築物の第1の組換え配列と同一のヌクレオチド配列を有する、請求項2から7のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項9】
第1の外因性核酸構築物の第1の組換え配列が、少なくとも1つのヌクレオチド分、第2の外因性核酸構築物の第1の組換え配列と異なるヌクレオチド配列を有する、請求項2から7のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項10】
第1の外因性核酸構築物の第1の組換え配列、第1の外因性核酸構築物の第2の組換え配列、第2の外因性核酸構築物の第1の組換え配列、および第2の外因性核酸構築物の第2の組換え配列がそれぞれ、少なくとも1つのヌクレオチド分、互いに異なる、請求項2から7のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項11】
第1の組換え配列が、チロシン部位特異的リコンビナーゼまたはセリン部位特異的リコンビナーゼによって認識される、請求項2から10のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項12】
チロシン部位特異的リコンビナーゼが、CreリコンビナーゼまたはFlpリコンビナーゼである、請求項11に記載の宿主細胞。
【請求項13】
セリン部位特異的リコンビナーゼがBxb1リコンビナーゼである、請求項11に記載の宿主細胞。
【請求項14】
細胞が、マウス細胞、ラット細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、またはヒト細胞である、請求項1から13のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項15】
核酸構築物の一方または両方が、抗体軽鎖、抗体重鎖、および抗体重鎖融合タンパク質をコードするそれぞれの遺伝子の各々の上流にプロモーターを、下流にポリ(A)配列をさらに含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項16】
抗体または抗体融合タンパク質を産生するための方法であって、
(a)請求項1から15のいずれか一項に記載の哺乳動物宿主細胞を提供するステップ、
(b)抗体または抗体融合タンパク質を発現させるために十分な条件下で宿主細胞を培養するステップ
を含む、方法。
【請求項17】
発現した抗体または抗体融合タンパク質を回収するステップをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
請求項1から15のいずれか一項に記載の宿主細胞によってまたは請求項16から17のいずれか一項に記載の方法に従って調製された、抗体または抗体融合タンパク質。
【請求項19】
第1の発現ベクターおよび第2の発現ベクターを含む組成物であって、第1の発現ベクターが、抗体軽鎖をコードする第1の遺伝子および抗体軽鎖をコードする第2の遺伝子を5’から3’の順序で含み、かつ、第2の発現ベクターが、抗体重鎖または抗体重鎖融合タンパク質をコードする第1の遺伝子および抗体重鎖をコードする第2の遺伝子を5’から3’の順序で含む、組成物。
【請求項20】
第1の発現ベクターおよび第2の発現ベクターを含む組成物であって、
第1の発現ベクターが、以下のエレメント:a)第1の組換え配列、b)抗体軽鎖をコードする第1の遺伝子、c)抗体軽鎖をコードする第2の遺伝子、d)第2の組換え配列を5’から3’の順序で含み、かつ、
第2の発現ベクターが、以下のエレメント:a)第1の組換え配列、b)抗体重鎖または抗体重鎖融合タンパク質をコードする第1の遺伝子、c)抗体重鎖をコードする第2の遺伝子、d)第2の組換え配列を5’から3’の順序で含む、
組成物。
【請求項21】
第2の発現ベクターの第1の遺伝子が抗体重鎖をコードする、請求項19から20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
第2の発現ベクターの第1の遺伝子が抗体重鎖融合タンパク質をコードする、請求項19から20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
第1の発現ベクターの第1の組換え配列が、少なくとも1つのヌクレオチド分、第1の発現ベクターの第2の組換え配列と異なるヌクレオチド配列を有する、請求項20から22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
第1の発現ベクターの第1の組換え配列および第2の発現ベクターの第1の組換え配列が、同一のリコンビナーゼ酵素によって認識される、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
第1の発現ベクターの第1の組換え配列、第1の発現ベクターの第2の組換え配列、第2の発現ベクターの第1の組換え配列、および第2の発現ベクターの第2の組換え配列が、同一のリコンビナーゼ酵素によって認識される、請求項23に記載の組成物。
【請求項26】
第1の発現ベクターの第1の組換え配列が、第2の発現ベクターの第1の組換え配列と同一のヌクレオチド配列を有する、請求項20から25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
第1の発現ベクターの第1の組換え配列が、少なくとも1つのヌクレオチド分、第2の発現ベクターの第1の組換え配列と異なるヌクレオチド配列を有する、請求項20から25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
第1の発現ベクターの第1の組換え配列、第1の発現ベクターの第2の組換え配列、第2の発現ベクターの第1の組換え配列、および第2の発現ベクターの第2の組換え配列がそれぞれ、少なくとも1つのヌクレオチド分、互いに異なる、請求項20から25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
第1の組換え配列が、チロシン部位特異的リコンビナーゼまたはセリン部位特異的リコンビナーゼによって認識される、請求項20から28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
チロシン部位特異的リコンビナーゼが、CreリコンビナーゼまたはFlpリコンビナーゼである、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
セリン部位特異的リコンビナーゼがBxb1リコンビナーゼである、請求項29に記載の組成物。
【請求項32】
発現ベクターの一方または両方が、抗体軽鎖、抗体重鎖、および抗体重鎖融合タンパク質をコードするそれぞれの遺伝子の各々の上流にプロモーターを、下流にポリ(A)配列をさらに含む、請求項19から31のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、改良されたタンパク質発現ベクター、当該ベクターを含有する細胞、ならびに関連する組成物および方法が提供される。発現ベクターは、宿主細胞における抗体などのタンパク質の発現に使用され得る。
【背景技術】
【0002】
組換え抗体および関連分子(例えば、抗体融合タンパク質)は、複数の使用、例えば医学的治療および診断にとって重要である。組換え抗体の産生のための効果的な方法は存在しているが、組換え抗体の産生は依然として複雑で費用のかかるプロセスである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、組換え抗体の産生の際に生じる組換え抗体の量および/または質を改善する組成物および方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、改良されたタンパク質発現ベクター、当該ベクターを含有する細胞、ならびに関連する組成物および方法に関する。発現ベクターは、宿主細胞における抗体などのタンパク質の発現に使用され得る。
【0005】
一部の実施形態では、宿主細胞染色体に組み込まれた第1の外因性核酸構築物および宿主細胞染色体に組み込まれた第2の外因性核酸構築物を含む哺乳動物宿主細胞であって、第1の外因性核酸構築物が、抗体軽鎖をコードする第1の遺伝子および抗体軽鎖をコードする第2の遺伝子を5’から3’の順序で含み、かつ、第2の外因性核酸構築物が、抗体重鎖または抗体重鎖融合タンパク質をコードする第1の遺伝子および抗体重鎖をコードする第2の遺伝子を5’から3’の順序で含む、哺乳動物宿主細胞が本明細書で提供される。
【0006】
一部の実施形態では、宿主細胞染色体に組み込まれた第1の外因性核酸構築物および宿主細胞染色体に組み込まれた第2の外因性核酸構築物を含む哺乳動物宿主細胞であって、第1の外因性核酸構築物が、以下のエレメント:a)第1の組換え配列、b)抗体軽鎖をコードする第1の遺伝子、c)抗体軽鎖をコードする第2の遺伝子、d)第2の組換え配列を5’から3’の順序で含み、かつ、第2の外因性核酸構築物が、以下のエレメント:a)第1の組換え配列、b)抗体重鎖または抗体重鎖融合タンパク質をコードする第1の遺伝子、c)抗体重鎖をコードする第2の遺伝子、d)第2の組換え配列を5’から3’の順序で含む、哺乳動物宿主細胞が本明細書で提供される。
【0007】
本明細書で提供される宿主細胞において、一部の実施形態では、第2の外因性核酸構築物の第1の遺伝子は、抗体重鎖をコードする。一部の実施形態では、第2の外因性核酸構築物の第1の遺伝子は、抗体重鎖融合タンパク質をコードする。一部の実施形態では、第1の外因性核酸構築物の第1の組換え配列は、少なくとも1つのヌクレオチド分、第1の外因性核酸構築物の第2の組換え配列と異なるヌクレオチド配列を有する。一部の実施形態では、第1の外因性核酸構築物の第1の組換え配列および第2の外因性核酸構築物の第1の組換え配列は、同一のリコンビナーゼ酵素によって認識される。一部の実施形態では、第1の外因性核酸構築物の第1の組換え配列、第1の外因性核酸構築物の第2の組換え配列、第2の外因性核酸構築物の第1の組換え配列、および第2の外因性核酸構築物の第2の組換え配列は、同一のリコンビナーゼ酵素によって認識される。
【0008】
本明細書で提供される宿主細胞において、一部の実施形態では、第1の外因性核酸構築物の第1の組換え配列は、第2の外因性核酸構築物の第1の組換え配列と同一のヌクレオチド配列を有する。一部の実施形態では、第1の外因性核酸構築物の第1の組換え配列は、少なくとも1つのヌクレオチド分、第2の外因性核酸構築物の第1の組換え配列と異なるヌクレオチド配列を有する。一部の実施形態では、第1の外因性核酸構築物の第1の組換え配列、第1の外因性核酸構築物の第2の組換え配列、第2の外因性核酸構築物の第1の組換え配列、および第2の外因性核酸構築物の第2の組換え配列はそれぞれ、少なくとも1つのヌクレオチド分、互いに異なる。
【0009】
本明細書で提供される宿主細胞において、一部の実施形態では、第1の組換え配列は、チロシン部位特異的リコンビナーゼまたはセリン部位特異的リコンビナーゼによって認識される。チロシン部位特異的リコンビナーゼは、CreリコンビナーゼまたはFlpリコンビナーゼであってもよい。セリン部位特異的リコンビナーゼは、Bxb1リコンビナーゼであってもよい。
【0010】
一部の実施形態では、本明細書で提供される宿主は、マウス細胞、ラット細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、またはヒト細胞である。
【0011】
本明細書で提供される宿主細胞において、一部の実施形態では、核酸構築物の一方または両方は、抗体軽鎖、抗体重鎖、および抗体重鎖融合タンパク質をコードするそれぞれの遺伝子の各々の上流にプロモーターを、下流にポリ(A)配列をさらに含む。
【0012】
一部の実施形態では、抗体または抗体融合タンパク質を産生するための方法であって、(a)本明細書で提供される哺乳動物宿主細胞を提供するステップ、および(b)抗体または抗体融合タンパク質を発現させるために十分な条件下で宿主細胞を培養するステップを含む、方法が本明細書で提供される。本方法は、発現した抗体または抗体融合タンパク質を回収するステップをさらに含んでいてもよい。
【0013】
一部の実施形態では、本明細書で提供される宿主細胞によってまたは本明細書で提供される方法に従って調製された抗体または抗体融合タンパク質が本明細書で提供される。
【0014】
一部の実施形態では、第1の発現ベクターおよび第2の発現ベクターを含む組成物であって、第1の発現ベクターが、抗体軽鎖をコードする第1の遺伝子および抗体軽鎖をコードする第2の遺伝子を5’から3’の順序で含み、かつ、第2の発現ベクターが、抗体重鎖または抗体重鎖融合タンパク質をコードする第1の遺伝子および抗体重鎖をコードする第2の遺伝子を5’から3’の順序で含む、組成物が本明細書で提供される。
【0015】
一部の実施形態では、第1の発現ベクターおよび第2の発現ベクターを含む組成物であって、第1の発現ベクターが、以下のエレメント:a)第1の組換え配列、b)抗体軽鎖をコードする第1の遺伝子、c)抗体軽鎖をコードする第2の遺伝子、d)第2の組換え配列を5’から3’の順序で含み、かつ、第2の発現ベクターが、以下のエレメント:a)第1の組換え配列、b)抗体重鎖または抗体重鎖融合タンパク質をコードする第1の遺伝子、c)抗体重鎖をコードする第2の遺伝子、d)第2の組換え配列を5’から3’の順序で含む、組成物が本明細書で提供される。
【0016】
本明細書で提供される組成物において、一部の実施形態では、第2の発現ベクターの第1の遺伝子は、抗体重鎖をコードする。一部の実施形態では、第2の発現ベクターの第1の遺伝子は、抗体重鎖融合タンパク質をコードする。一部の実施形態では、第1の発現ベクターの第1の組換え配列は、少なくとも1つのヌクレオチド分、第1の発現ベクターの第2の組換え配列と異なるヌクレオチド配列を有する。一部の実施形態では、第1の発現ベクターの第1の組換え配列および第2の発現ベクターの第1の組換え配列は、同一のリコンビナーゼ酵素によって認識される。一部の実施形態では、第1の発現ベクターの第1の組換え配列、第1の発現ベクターの第2の組換え配列、第2の発現ベクターの第1の組換え配列、および第2の発現ベクターの第2の組換え配列は、同一のリコンビナーゼ酵素によって認識される。
【0017】
本明細書で提供される組成物において、一部の実施形態では、第1の発現ベクターの第1の組換え配列は、第2の発現ベクターの第1の組換え配列と同一のヌクレオチド配列を有する。一部の実施形態では、第1の発現ベクターの第1の組換え配列は、少なくとも1つのヌクレオチド分、第2の発現ベクターの第1の組換え配列と異なるヌクレオチド配列を有する。一部の実施形態では、第1の発現ベクターの第1の組換え配列、第1の発現ベクターの第2の組換え配列、第2の発現ベクターの第1の組換え配列、および第2の発現ベクターの第2の組換え配列はそれぞれ、少なくとも1つのヌクレオチド分、互いに異なる。
【0018】
本明細書で提供される組成物において、一部の実施形態では、第1の組換え配列は、チロシン部位特異的リコンビナーゼまたはセリン部位特異的リコンビナーゼによって認識される。チロシン部位特異的リコンビナーゼは、CreリコンビナーゼまたはFlpリコンビナーゼであってもよい。セリン部位特異的リコンビナーゼは、Bxb1リコンビナーゼであってもよい。
【0019】
本明細書で提供される組成物において、一部の実施形態では、発現ベクターの一方または両方は、抗体軽鎖、抗体重鎖、および抗体重鎖融合タンパク質をコードするそれぞれの遺伝子の各々の上流にプロモーターを、下流にポリ(A)配列をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】HCまたはLCのトランスジェニックORF(長方形)を示す略図であり、ORFの5’末端の付近にあるヌクレオチド多型(NP)位置(長方形における縦の線)、および各特異的NPを検出するために使用された対応するプライマー/プローブセット(長方形の上の黒い線)を示している。全プライマープローブセット(長方形の上の破線)は、ORFの3’末端の付近に位置しており、総転写産物レベルを測定するために使用される。
図2】6つの異なるベクター構造(C1~C6)についての、各ランディングパッドに組み込まれたベクタートポロジーを示す略図である。軽鎖(LC)および重鎖(HC)のヌクレオチド多型(NP)が、NP1~NP4で標識されている。各NPは、全ての構造で、ベクターおよびランディングパッドにおける各位置が不変のままである。LCおよびHCのORFおよび選択マーカー(「セレクト1」-ブラストサイジン耐性遺伝子、または「セレクト2」-グルタミンシンテターゼ遺伝子)が、ベクターの組換え配列(「Rec」)の間に含まれており、宿主ゲノムへの適正な組み込みを可能にしている。
図3A図2で概説されている6つの構造についての、各ベクターにおける各mAb遺伝子(ヌクレオチド多型(NP)によって同定される)のcDNAレベルを測定する転写産物発現の結果をまとめた棒グラフであり、具体的には、構造C1:図3A、構造C2:図3B、構造C3:図3C、構造C4:図3D、構造C5:図3E、構造C6:図3Fである。図3A~3Fの各々で、バーは、左から右に向かって、ランディングパッドAの位置1(塗りつぶしのバー)、ランディングパッドAの位置2(右肩上がりのストライプのバー)、ランディングパッドBの位置1(チェック柄のバー)、ランディングパッドBの位置2(左肩上がりのストライプのバー)の順で、遺伝子の発現データを含有している。結果は、全てのトランスフェクション条件での、2つまたは3つの複製プールの各々から得られた3回のddPCR反応の平均を表している。
図3B図2で概説されている6つの構造についての、各ベクターにおける各mAb遺伝子(ヌクレオチド多型(NP)によって同定される)のcDNAレベルを測定する転写産物発現の結果をまとめた棒グラフであり、具体的には、構造C1:図3A、構造C2:図3B、構造C3:図3C、構造C4:図3D、構造C5:図3E、構造C6:図3Fである。図3A~3Fの各々で、バーは、左から右に向かって、ランディングパッドAの位置1(塗りつぶしのバー)、ランディングパッドAの位置2(右肩上がりのストライプのバー)、ランディングパッドBの位置1(チェック柄のバー)、ランディングパッドBの位置2(左肩上がりのストライプのバー)の順で、遺伝子の発現データを示している。結果は、全てのトランスフェクション条件での、2つまたは3つの複製プールの各々から得られた3回のddPCR反応の平均を表している。
図3C図2で概説されている6つの構造についての、各ベクターにおける各mAb遺伝子(ヌクレオチド多型(NP)によって同定される)のcDNAレベルを測定する転写産物発現の結果をまとめた棒グラフであり、具体的には、構造C1:図3A、構造C2:図3B、構造C3:図3C、構造C4:図3D、構造C5:図3E、構造C6:図3Fである。図3A~3Fの各々で、バーは、左から右に向かって、ランディングパッドAの位置1(塗りつぶしのバー)、ランディングパッドAの位置2(右肩上がりのストライプのバー)、ランディングパッドBの位置1(チェック柄のバー)、ランディングパッドBの位置2(左肩上がりのストライプのバー)の順で、遺伝子の発現データを示している。結果は、全てのトランスフェクション条件での、2つまたは3つの複製プールの各々から得られた3回のddPCR反応の平均を表している。
図3D図2で概説されている6つの構造についての、各ベクターにおける各mAb遺伝子(ヌクレオチド多型(NP)によって同定される)のcDNAレベルを測定する転写産物発現の結果をまとめた棒グラフであり、具体的には、構造C1:図3A、構造C2:図3B、構造C3:図3C、構造C4:図3D、構造C5:図3E、構造C6:図3Fである。図3A~3Fの各々で、バーは、左から右に向かって、ランディングパッドAの位置1(塗りつぶしのバー)、ランディングパッドAの位置2(右肩上がりのストライプのバー)、ランディングパッドBの位置1(チェック柄のバー)、ランディングパッドBの位置2(左肩上がりのストライプのバー)の順で、遺伝子の発現データを示している。結果は、全てのトランスフェクション条件での、2つまたは3つの複製プールの各々から得られた3回のddPCR反応の平均を表している。
図3E図2で概説されている6つの構造についての、各ベクターにおける各mAb遺伝子(ヌクレオチド多型(NP)によって同定される)のcDNAレベルを測定する転写産物発現の結果をまとめた棒グラフであり、具体的には、構造C1:図3A、構造C2:図3B、構造C3:図3C、構造C4:図3D、構造C5:図3E、構造C6:図3Fである。図3A~3Fの各々で、バーは、左から右に向かって、ランディングパッドAの位置1(塗りつぶしのバー)、ランディングパッドAの位置2(右肩上がりのストライプのバー)、ランディングパッドBの位置1(チェック柄のバー)、ランディングパッドBの位置2(左肩上がりのストライプのバー)の順で、遺伝子の発現データを示している。結果は、全てのトランスフェクション条件での、2つまたは3つの複製プールの各々から得られた3回のddPCR反応の平均を表している。
図3F図2で概説されている6つの構造についての、各ベクターにおける各mAb遺伝子(ヌクレオチド多型(NP)によって同定される)のcDNAレベルを測定する転写産物発現の結果をまとめた棒グラフであり、具体的には、構造C1:図3A、構造C2:図3B、構造C3:図3C、構造C4:図3D、構造C5:図3E、構造C6:図3Fである。図3A~3Fの各々で、バーは、左から右に向かって、ランディングパッドAの位置1(塗りつぶしのバー)、ランディングパッドAの位置2(右肩上がりのストライプのバー)、ランディングパッドBの位置1(チェック柄のバー)、ランディングパッドBの位置2(左肩上がりのストライプのバー)の順で、遺伝子の発現データを示している。結果は、全てのトランスフェクション条件での、2つまたは3つの複製プールの各々から得られた3回のddPCR反応の平均を表している。
図4A】表3の数値一覧によって予測される、図2で示されているベクター構造C6(LH LH)およびベクター構造C2(LL HH)の両方での、各構造の理論的な(予測される)転写産物レベルと比較した、ハウスキーピング遺伝子GAPDHに対する6つの異なるモノクローナル抗体(mAb1~mAb6)の比率として定量された、重鎖および軽鎖のcDNA転写産物を示す棒グラフである。図4Aでは、各mAbで、具体的なバーは、C6構造における正規化された総重鎖(HC)転写産物(左肩上がりのスラッシュ柄)、C2構造における正規化された総HC転写産物(塗りつぶし)、C6構造における正規化された総軽鎖(LC)転写産物(無地)、およびC2構造における正規化された総LC転写産物(平行線柄)を示している。
図4B】5つの異なる抗体(mAb4の力価データは入手できなかった)の12日間の流加から得られた、mg/L単位で表されている、C6ベクター構造(無地)またはC2ベクター構造(塗りつぶし)のいずれかにおける各mAbの抗体力価の結果を示している。
図5A】ベクター構造C1およびC2での、mAb融合タンパク質の予測された転写産物レベルと観察された転写産物レベルとを示す棒グラフである(これらの構造の詳細については、表4を参照されたい)。左から右に向かって、3本のバーからなる各群は、i)構造C1の予測値、ii)構造C1の観察値、iii)構造C2の予測値、iv)構造C2の観察値についてである。3本のバーからなる各セットでは、具体的なバーは、左から右に向かって、正規化された総重鎖(HC)転写産物(塗りつぶし)、正規化された総重鎖融合タンパク質(HC-F)転写産物(左肩上がりのスラッシュ柄)、および正規化された総軽鎖(LC)転写産物(無地)を示している。
図5B】ベクター構造C1およびC2の各々での、mAb融合タンパク質の12日間の流加から得られた、mg/L単位で表されている抗体力価の結果を示す棒グラフである。
図5C】還元SDS-PAGEのデンシトメトリー分析によって決定された、C1およびC2ベクター構造の各々での、mAb融合タンパク質の各々の個々のポリペプチド鎖のパーセントを示す棒グラフである。左から右に向かって、3本のバーからなる各群は、i)構造C1、ii)構造C2についてである。3本のバーからなる各セットについて、具体的なバーは、左から右に向かって、重鎖(HC)のパーセント(塗りつぶし)、重鎖融合タンパク質(HC-F)のパーセント(左肩上がりのスラッシュ柄)、および軽鎖(LC)のパーセント(無地)を示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
改良されたタンパク質発現ベクター、ベクターを含有する細胞、ならびに関連する組成物および方法が本明細書で開示される。
【0022】
本明細書で提供されている開示は、タンパク質発現ベクター内の抗体コード遺伝子のある特定の構造が、遺伝子の転写の改善、ならびに抗体産物の収量の改善および質の改善の一方または両方をもたらすという発見に関する。
【0023】
一般的技術
本発明の実施は、特記しない限り、当業者の技術範囲内の、分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学および免疫学の従来技術を使用する。かかる技術は、文献、例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版(Sambrookら、1989)Cold Spring Harbor Press;Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait編、1984);Methods in Molecular Biology、Humana Press;Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis編、1998)Academic Press;Animal Cell Culture(R.I.Freshney編、1987);Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.MatherおよびP.E.Roberts、1998)Plenum Press;Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle、J.B.GriffithsおよびD.G.Newell編、1993~1998)J.Wiley and Sons;Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.);Handbook of Experimental Immunology(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell編);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.MillerおよびM.P.Calos編、1987);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubelら編、1987);PCR:The Polymerase Chain Reaction、(Mullisら編、1994);Current Protocols in Immunology(J.E.Coliganら編、1991);Short Protocols in Molecular Biology(Wiley and Sons、1999);Immunobiology(C.A.JanewayおよびP.Travers、1997);Antibodies(P.Finch、1997);Antibodies:a practical approach (D.Catty.編、IRL Press、1988~1989);Monoclonal antibodies:a practical approach(P.ShepherdおよびC.Dean編、Oxford University Press、2000);Using antibodies:a laboratory manual(E.HarlowおよびD.Lane(Cold Spring Harbor Laboratory Press、1999);The Antibodies(M.ZanettiおよびJ.D.Capra編、Harwood Academic Publishers、1995)中で、ならびに該当する場合には、上記参考文献の後続の版および対応するウェブサイト中で、十分に説明されている。
【0024】
定義
特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語、表記、および他の科学用語または専門用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解される意味を有するものである。一部の場合では、一般に理解されている意味を有する用語は、明確にするためおよび/またはすぐに参照できるようにするために本明細書において定義されており、本明細書にかかる定義を含めることは、当該技術において一般に理解されているものと大きく異なることを表すと必ずしも解釈されない。
【0025】
以下の用語は、特記しない限り、以下の意味を有すると理解される。
【0026】
「抗体」は、免疫グロブリン分子の可変領域中に位置する少なくとも1つの抗原認識部位を介して、標的、例えば、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなどへの特異的結合が可能な免疫グロブリン分子である。本明細書で使用する場合、この用語は、インタクトなポリクローナルまたはモノクローナル抗体だけでなく、特記しない限り、特異的結合についてインタクトな抗体と競合するその任意の抗原結合部分、抗原結合部分を含む融合タンパク質、および抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の任意の他の改変された構成もまた包含する。抗原結合部分には、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)、Fd、Fv、ドメイン抗体(dAb、例えば、サメおよびラクダ科抗体)、相補性決定領域(CDR)を含む断片、単鎖可変断片抗体(scFv)、マキシボディ(maxibody)、ミニボディ(minibody)、イントラボディ(intrabody)、ダイアボディ(diabody)、トリアボディ(triabody)、テトラボディ(tetrabody)、v-NARおよびbis-scFv、ならびにそのポリペプチドに特異的抗原結合を付与するのに十分な免疫グロブリンの少なくとも一部分を含むポリペプチドが含まれる。抗体には、任意のクラス、例えば、IgG、IgAまたはIgM(またはそのサブクラス)の抗体、および任意の特定のクラスである必要がない抗体が含まれる。その重鎖の定常領域の抗体アミノ酸配列に依存して、免疫グロブリンは、異なるクラスに割当てることができる。5つの主要なクラスの免疫グロブリン:IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMが存在し、これらのうちいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG、IgG、IgG、IgG、IgAおよびIgAへとさらに分割され得る。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常領域は、それぞれ、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマおよびミューと呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および三次元構成は、周知である。
【0027】
用語「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、任意の長さのアミノ酸の鎖を指すために、本明細書で相互交換可能に使用される。この鎖は、直鎖でも分岐鎖でもよく、改変されたアミノ酸を含み得、および/または非アミノ酸によって中断され得る。これらの用語は、天然にまたは介入によって改変されたアミノ酸鎖、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または任意の他の操作もしくは改変、例えば、標識化構成成分とのコンジュゲーションもまた包含する。例えば、アミノ酸の1つまたは複数のアナログ(例えば、非天然のアミノ酸などを含む)ならびに当該分野で公知の他の改変を含むポリペプチドもまた、この定義内に含まれる。ポリペプチドは、単一の鎖として、または会合した鎖として存在し得ることが理解される。
【0028】
当該分野で公知のように、「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、本明細書で相互交換可能に使用される場合、任意の長さおよびコンフォメーション(例えば、直鎖または環状)のヌクレオチドの鎖を指し、DNAおよびRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、改変されたヌクレオチドもしくは塩基、および/またはそれらのアナログ、あるいはDNAまたはRNAポリメラーゼによって鎖中に取り込まれ得る任意の基質であり得る。ポリヌクレオチドは、改変されたヌクレオチド、例えば、メチル化されたヌクレオチドおよびそれらのアナログを含み得る。存在する場合、ヌクレオチド構造に対する改変は、鎖のアセンブリの前または後に付与され得る。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド構成成分によって中断され得る。ポリヌクレオチドは、例えば、標識化構成成分とのコンジュゲーションによって、重合後にさらに改変され得る。他の型の改変には、例えば、「キャップ」、アナログによる、1つまたは複数の天然に存在するヌクレオチドの置換、ヌクレオチド間改変、例えば、非荷電連結(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホアミデート(phosphoamidate)、カルバメートなど)および荷電連結(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)によるものなど、ペンダント部分、例えば、タンパク質(例えば、ヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ポリ-L-リジンなど)などを含むもの、インターカレーター(例えば、アクリジン、ソラレンなど)によるもの、キレーター(例えば、金属、放射性金属、ホウ素、酸化金属(oxidative metal)など)を含むもの、アルキル化薬を含むもの、改変された連結によるもの(例えば、アルファアノマー核酸など)、ならびに未改変の形態のポリヌクレオチドが含まれる。さらに、糖中に通常存在するヒドロキシル基のいずれかは、例えば、ホスホネート基、ホスフェート基によって置き換えられ得、標準的な保護基によって保護され得、もしくはさらなるヌクレオチドへのさらなる連結を準備するために活性化され得、または固体支持体にコンジュゲートされ得る。5’および3’末端のOHは、リン酸化され得、または1~20炭素原子のアミンもしくは有機キャップ基部分で置換され得る。他のヒドロキシルもまた、標準的な保護基へと誘導体化され得る。ポリヌクレオチドは、例えば、2’-O-メチル-、2’-O-アリル、2’-フルオロ-または2’-アジド-リボース、炭素環式糖アナログ、アルファ-またはベータ-アノマー糖、エピマー糖、例えば、アラビノース、キシロースまたはリキソース、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環式アナログおよび無塩基ヌクレオシド(abasic nucleoside)アナログ、例えば、メチルリボシドを含む、当該分野で一般に公知の類似の形態のリボースまたはデオキシリボース糖もまた含み得る。1つまたは複数のホスホジエステル連結は、代替的連結基によって置き換えられ得る。これらの代替的連結基には、ホスフェートが、P(O)S(「チオエート」)、P(S)S(「ジチオエート」)、(O)NR(「アミデート(amidate)」)、P(O)R、P(O)OR’、COまたはCH(「ホルムアセタール(formacetal)」)によって置き換えられた実施形態が含まれるがこれらに限定されず、式中、各RまたはR’は独立して、H、またはエーテル(-O-)連結、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニルもしくはアラルジル(araldyl)を含んでいてもよい置換もしくは未置換のアルキル(1~20C)である。ポリヌクレオチド中の全ての連結が同一である必要はない。前述の説明は、RNAおよびDNAを含む、本明細書で言及される全てのポリヌクレオチドに当てはまる。
【0029】
本明細書で使用する場合、「組換え」核酸は、天然に存在しないおよび/または合成により製造されたポリヌクレオチド配列を含む核酸分子を指す。例えば、「組換え」核酸は、ベクター配列にカップリングされたタンパク質コード遺伝子を含み得る。タンパク質コード遺伝子の配列は、天然に存在してもよいが、この遺伝子は、ベクター配列と組み合わせては天然に存在しない。言い換えると、「組換え」核酸分子は、分子の一部として、天然に存在する核酸配列を含み得るが、その配列は、(核酸分子配列の全体が天然に存在しないように)別の配列にカップリングされる、および/またはこの分子は、合成により製造される。「組換え」ポリペプチドは、組換え核酸から産生されたポリペプチドを指す。
【0030】
本明細書で使用する場合、「外因性」核酸は、その導入の前にはその宿主細胞中に存在しなかった、宿主細胞中に(例えば、従来の遺伝子操作法によって、好ましくは、形質転換、エレクトロポレーション、リポフェクションまたはトランスフェクションによって)導入されるまたは導入された組換え核酸分子を指す。一部の状況では、外因性核酸は、宿主細胞中で天然に存在しないヌクレオチド配列を含む。かかる配列は「トランスジェニック」とも呼ばれる。一部の状況では、外因性核酸は、細胞にとって内因性である配列と同じヌクレオチド配列を含み得る(すなわち、外因性核酸分子は、宿主細胞にとって内因性である遺伝子のヌクレオチド配列を含み得、その結果、宿主細胞中への外因性核酸分子の導入は、宿主細胞中への遺伝子のさらなるコピーを導入する)。「外因性核酸」は、外因性核酸分子またはそのヌクレオチド配列を指す。
【0031】
本明細書で使用する場合、「目的のヌクレオチド配列」は、宿主細胞中に導入したいまたはベクター中に存在している任意のヌクレオチド配列を指す。目的のヌクレオチド配列は、外因性核酸中に存在し得る。最も一般的には、目的のヌクレオチド配列は、目的のポリペプチドをコードする、または目的のRNA分子の生成のための鋳型である、DNA配列である。しかし、あるいは、目的のヌクレオチド配列は、例えば、調節性もしくは構造的機能を提供する配列(例えば、プロモーターまたはエンハンサー配列)、またはクローニング目的のための制限酵素配列など、異なる目的を果たす配列(例えば、目的のヌクレオチド配列は、マルチクローニング部位であり得る)であり得る。目的のヌクレオチド配列は、任意のヌクレオチド長のものであり得る。目的のヌクレオチド配列は、DNA配列またはRNA配列であり得る。一部の実施形態では、目的のヌクレオチド配列は、宿主細胞中に内因性に存在しない配列である。一部の実施形態では、目的のヌクレオチド配列は、宿主細胞中に内因性に別々に存在する(すなわち、この配列はまた、宿主細胞中に導入された目的のヌクレオチド配列を含む組換え核酸構築物とは別に、宿主細胞中に存在する)。かかる実施形態では、目的のヌクレオチド配列は、例えば、対応する内因性ヌクレオチド配列の比較的低い発現が存在する場合、および細胞におけるヌクレオチド配列の増加した発現を有することが望ましい場合、宿主細胞中に導入され得る。
【0032】
本発明の態様または実施形態が、マーカッシュ群または選択肢の他のグループ分けの観点から記載される場合、本発明は、全体として列挙された群全体だけでなく、その群の各メンバーを個々に、および主群の全ての可能な下位群、群メンバーのうち1つまたは複数が存在しない主群もまた包含する。本発明は、特許請求された発明中の任意の群メンバーのうち1つまたは複数の明示的な排除も想定する。
【0033】
本明細書および特許請求の範囲を通じて、単語「含む(comprise)」または変化形、例えば、「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」は、述べられた整数または整数の群を含むが、任意の他の整数または整数の群を排除しないことを意味すると理解される。文脈が他を要求しない限り、単数形の用語は複数を含むものとし、複数形の用語は単数を含むものとする。用語「例えば(e.g.)」または「例えば(for example)」の後に記載される任意の例は、網羅的または限定的ではないことを意味する。用語「または」は、複数の選択肢のリストに関して使用される場合(例えば、「A、BまたはC」)、文脈が明らかに他を示さない限り、それらの選択肢のうち任意の1つまたは複数を含むと解釈するものとする。実施形態が「含む」という言葉を用いて本明細書に記載される場合には、「~からなる」および/または「~から本質的になる」の用語で記載される他の点では類似の実施形態もまた提供されることが理解される。
【0034】
例示的な方法および材料が本明細書に記載されるが、本明細書に記載される方法および材料と類似または等価な方法および材料もまた、本発明の実施または試験において使用され得る。材料、方法および実施例は、例示に過ぎず、限定を意図しない。
【0035】
抗体コード遺伝子を含有するベクター
一態様では、抗体ポリペプチドをコードする遺伝子を含有するベクターが本明細書で提供される。抗体ポリペプチドをコードする遺伝子はまた、本明細書では「抗体コード遺伝子」とも呼ばれる。
【0036】
本明細書で使用する場合、「抗体ポリペプチド」は、抗体軽鎖、抗体重鎖、抗体軽鎖融合タンパク質、および抗体重鎖融合タンパク質を指す。「抗体重鎖」および「抗体軽鎖」という用語は、当該分野における標準的な意味を有し、例えば、本明細書の他の箇所で記載されている様々な抗体重鎖および軽鎖(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4 mAbの重鎖および軽鎖)を含む。「抗体重鎖」および「抗体軽鎖」という用語には、標準的な完全長抗体重鎖および軽鎖の両方、ならびにそれぞれの可変領域(VLまたはVH)を含有するこれらの誘導体が含まれる。「抗体重鎖融合タンパク質」という用語は、1つまたは複数のさらなるタンパク質またはペプチドに共有結合している抗体重鎖を含有するポリペプチドを指す。例えば、「抗体重鎖融合タンパク質」は、サイトカインに共有結合している抗体重鎖であり得る。結合は、直接的なもの、またはペプチドリンカー(例えば、グリシン-セリンリンカー)を介するものであり得る。抗体重鎖融合タンパク質において、抗体重鎖は、重鎖のN末端もしくはC末端(または両位置)で、さらなるタンパク質に連結していてよい。「抗体軽鎖融合タンパク質」という用語は、抗体軽鎖であることを除いて、「抗体重鎖融合タンパク質」について直前で記載したものと同一の意味を有する。本明細書で使用する場合、「抗体融合タンパク質」は、1つまたは複数のさらなるタンパク質またはポリペプチドに共有結合している(例えば、抗体の重鎖または軽鎖を介して)、本明細書で提供される抗体を指す。したがって、抗体融合タンパク質は、抗体融合タンパク質のポリペプチドの1つとして少なくとも1つの抗体重鎖融合タンパク質または1つの抗体軽鎖融合タンパク質を含有する。最も一般的には、抗体融合タンパク質は、2つの抗体軽鎖、1つの抗体重鎖、および1つの抗体重鎖融合タンパク質を含有する分子であり、そのため、さらなるタンパク質が抗体の重鎖の一方に連結される。
【0037】
本明細書で使用する場合、「ベクター」は、目的の1つまたは複数の遺伝子または配列(例えば、抗体コード遺伝子)を宿主細胞に送達し得、好ましくは宿主細胞において発現させ得る、構築物を意味する。ベクターの例としては、プラスミドベクターおよびウイルスベクターが含まれるが、これらに限定されず、ネイキッド核酸が含まれ得るか、または送達を促進する材料(例えば、カチオン性の縮合剤、リポソームなど)と結び付いた核酸が含まれ得る。ベクターとしては、DNAまたはRNAが含まれ得る。「発現ベクター」は、本明細書で使用する場合、少なくとも1つのポリペプチドコード遺伝子、遺伝子の転写または翻訳に関連する少なくとも1つの調節エレメント(例えば、プロモーター配列、ポリ(A)配列)を含むベクターを指す。典型的には、本明細書で使用されるベクターは、2つ以上の抗体コード遺伝子、ならびに1つまたは複数の調節エレメントおよび/または選択マーカーを含有する。例えば、本明細書で使用するベクターは、全ての目的のために本明細書で参照によって組み込まれるInniss,M,ら、Biotechnology and Bioengineering、114(8):1837~1846、2017年3月14日において記載されている構造を有し得る。ベクター成分には、例えば、シグナル配列、複製起点、1つまたは複数のマーカー遺伝子、適切な転写制御エレメント(プロモーター、エンハンサー、およびターミネーターなど)のうちの1つまたは複数が含まれ得る。発現(すなわち翻訳)のために、1つまたは複数の翻訳制御エレメント、例えばリボソーム結合部位、翻訳開始部位、および停止コドンも含まれ得る。ベクターは、「核酸構築物」を含有し得る。
【0038】
本明細書で提供される「核酸構築物」は、本明細書で記載されるポリヌクレオチドまたは核酸のタイプである。「核酸構築物」は、本明細書で記載されるポリヌクレオチドまたは核酸の特徴のいずれかを有し得る。典型的には、本明細書で提供される「核酸構築物」は、ポリヌクレオチドを構成するヌクレオチドの鎖の中に2つ以上の機能的単位を含有する。ヌクレオチド配列内の機能的単位は、特定の機能を有するあらゆるタイプの個別のヌクレオチド配列、例えば、目的のヌクレオチド配列、ポリペプチドをコードする遺伝子、調節配列、または組換え配列であり得る。ベクターの文脈では、「核酸構築物」は、より大きなベクター配列内の「発現カセット」(本明細書では単純に「カセット」とも呼ばれる)の特徴を有し得る。例えば、核酸構築物は、抗体コード遺伝子および関連する調節エレメントを含み得る。具体的には、核酸構築物は、例えば、少なくともi)プロモーター配列、ii)抗体コード遺伝子、およびiii)3’非翻訳領域を含み得る。一部の実施形態では、核酸構築物は、リコンビナーゼ媒介カセット交換(RMCE)において使用される「カセット」の特徴を有し得る(例えば、全ての目的のために本明細書で参照によって組み込まれる、Inniss,M,ら、Biotechnology and Bioengineering、114(8):1837~1846、2017年3月14日;Zhang Lら、Biotechnol Prog 31(6):1645~1656、2015;Turan,Sら、Gene、515(1):1~27、2013;Crawford,Yら、Biotechnol Prog、29(5):1307~1315、2013;Kawabe Yら、Cytotechnology、64(3):267~279、2012、ならびに、Kim MSおよびGyun ML、J Microbiol Biotechnol 18(7):1342~1351、2008を参照されたい)。例えば、「核酸構築物」は、全ての目的のために本明細書で参照によって組み込まれるInniss,M,ら、Biotechnology and Bioengineering、114(8):1837~1846、2017年3月14日において記載されているベクター成分の1つまたは複数の特徴を有し得る。例えば、Innissの第1838頁、右欄に示されているように、「RMCE mAb標的ベクター」は、以下のエレメントを順に含有する(FRT F5 Bxb1 attB部位とBxb1 mut attB FRT wt部位との間に):a)選択マーカー(ブラストサイジン遺伝子)、b)SV40ポリA配列、c)ヒトCMV(hCMV)プロモーター、d)抗体コード遺伝子(軽鎖)、e)SV40ポリA配列、f)hCMVプロモーター、g)抗体コード遺伝子(重鎖)、h)SV40ポリA配列。したがって、本明細書で使用する場合、「核酸構築物」は、例えば、これらのエレメントの一部または全てを含有し得る。
【0039】
例示的なプロモーターとしては、SV40初期プロモーターおよびヒトCMVプロモーターが含まれる。
【0040】
例示的な選択マーカーとしては、ブラストサイジン、ピューロマイシン、またはジェネティシン(G418)に対する抗生物質耐性遺伝子が含まれる。
【0041】
典型的には、本明細書で提供されるベクターまたは核酸構築物は、少なくとも2つの抗体コード遺伝子を含有する。2つの抗体コード遺伝子は、同一のまたは異なる遺伝子であり得る。例えば、一部の実施形態では、ベクターまたは核酸構築物は、同一の抗体軽鎖遺伝子の2つのコピーを含有し得る。あるいは、一部の実施形態では、ベクターまたは核酸構築物は、抗体軽鎖遺伝子の1つのコピーおよび抗体重鎖遺伝子の1つのコピー、または第1の抗体の抗体軽鎖遺伝子の1つのコピーおよび第2の抗体の抗体軽鎖遺伝子の1つのコピーを含有し得る。第1の抗体遺伝子および第2の抗体遺伝子を含有するベクターにおいて、上流の(すなわち、5’から3’の方向で最初に転写される)位置は本明細書では「第1の位置」と呼ばれ、下流の位置は本明細書では「第2の位置」と呼ばれる。
【0042】
本明細書で提供される一部の実施形態では、少なくとも2つのベクターが使用される。両ベクターとも、同一の宿主細胞に導入される。したがって、2つのベクターを含有する、関連する組成物、方法、および宿主細胞も本明細書で提供される。
【0043】
本明細書で提供される実施形態において少なくとも2つのベクターが使用される場合、少なくとも2つのベクターは、少なくとも2つの異なる構造を有し得る。例えば、2つの構造を有する一実施形態では、「第1のベクター」構造および「第2のベクター」構造が存在する。少なくとも1つのエレメントまたはエレメントの位置が第1のベクターと第2のベクターとの間で異なっていれば、第1のベクターは、第2のベクターと異なる構造を有していると考えられる。本明細書で使用する場合、異なる構造を有する第1のベクターおよび第2のベクターは、「第1のベクター」および「第2のベクター」と呼ばれ得る。
【0044】
第1のベクターおよび第2のベクターを伴う、本明細書で提供される実施形態において、一部の態様では、第1のベクターは、抗体軽鎖をコードする第1の遺伝子および抗体軽鎖をコードする第2の遺伝子を含有し、第2のベクターは、抗体重鎖をコードする第1の遺伝子および抗体重鎖をコードする第2の遺伝子を含有する。一部の実施形態では、抗体軽鎖をコードする第1の遺伝子および抗体軽鎖をコードする第2の遺伝子は、同一の抗体軽鎖(例えば、同一の遺伝子の2つのコピー)をコードする。一部の他の実施形態では、抗体軽鎖をコードする第1の遺伝子および抗体軽鎖をコードする第2の遺伝子は、異なる抗体軽鎖(例えば、2つの異なる抗体軽鎖遺伝子の各々の1つのコピー)をコードする。一部の実施形態では、抗体重鎖をコードする第1の遺伝子および抗体重鎖をコードする第2の遺伝子は、同一の抗体重鎖(例えば、同一の遺伝子の2つのコピー)をコードする。一部の他の実施形態では、抗体重鎖をコードする第1の遺伝子および抗体重鎖をコードする第2の遺伝子は、異なる抗体重鎖(例えば、2つの異なる抗体重鎖遺伝子の各々の1つのコピー)をコードする。
【0045】
一実施例では、標準的なIgG単一特異的抗体の発現では、抗体軽鎖をコードする第1の遺伝子および抗体軽鎖をコードする第2の遺伝子が同一の抗体軽鎖をコードし、抗体重鎖をコードする第1の遺伝子および抗体重鎖をコードする第2の遺伝子が同一の抗体重鎖をコードする実施形態を使用することが望ましい場合がある。この実施形態は、標準的なIgG単一特異的抗体がi)抗体軽鎖およびii)抗体重鎖という2つの異なるポリペプチドタイプのみを含有しているため、有用である。したがって、標準的なIgG発現では、第1のベクター内の第1および第2の位置の両方に、同一の抗体軽鎖をコードする同一の遺伝子を含有すること、ならびに第2のベクター内の第1および第2の位置の両方に、同一の抗体重鎖をコードする同一の遺伝子を含有することが可能である。
【0046】
二重特異的IgG抗体を発現させるための別の実施例では、抗体軽鎖をコードする第1の遺伝子および抗体軽鎖をコードする第2の遺伝子が異なる抗体軽鎖をコードし、抗体重鎖をコードする第1の遺伝子および抗体重鎖をコードする第2の遺伝子が異なる抗体重鎖をコードする実施形態を使用することが望ましい場合がある。この実施形態は、典型的な二重特異的IgG抗体がi)第1の抗原結合部分のための抗体軽鎖、ii)第1の抗原結合部分のための抗体重鎖、iii)第2の抗原結合部分のための抗体軽鎖、およびiv)第2の抗原結合部分のための抗体重鎖という4つの異なるポリペプチドタイプを含有するため、有用である。したがって、二重特異的IgGの発現では、第1の抗体軽鎖をコードする遺伝子を含有する第1のベクター内の第1の位置、第2の抗体軽鎖をコードする遺伝子を含有する第1のベクター内の第2の位置、第1の抗体重鎖をコードする遺伝子を含有する第2のベクター内の第1の位置、および第2の抗体重鎖をコードする遺伝子を含有する第2のベクター内の第2の位置を有することが望ましい場合がある。
【0047】
他の関連する実施形態もまた、本明細書で提供される。例えば、一部の実施形態では、第1のベクターおよび第2のベクターは、例えば、共通の軽鎖を有する二重特異的抗体の発現のための、本明細書で提供される実施形態と共に使用され得る(例えば、2021年6月24日に公開されたWO2021/124073を参照されたい)。共通の軽鎖を有する二重特異的抗体は、2つの異なる重鎖を含有し得る。この状況では、場合により、第1のベクター内の第1および第2の位置は、同一の抗体軽鎖をコードする同一の遺伝子を含有し、第2のベクター内の第1の位置は、第1の抗体重鎖をコードする遺伝子を含有し、第2のベクター内の第2の位置は、第2の抗体重鎖をコードする遺伝子を含有する。
【0048】
第1のベクターおよび第2のベクターを伴う、本明細書で提供される実施形態において、一部の他の態様では、第1のベクターは、抗体軽鎖をコードする第1の遺伝子および抗体軽鎖をコードする第2の遺伝子を含有し、第2のベクターは、抗体重鎖融合タンパク質をコードする第1の遺伝子および抗体重鎖をコードする第2の遺伝子を含有する。一部の実施形態では、抗体軽鎖をコードする第1の遺伝子および抗体軽鎖をコードする第2の遺伝子は、同一の抗体軽鎖(例えば、同一の遺伝子の2つのコピー)をコードする。一部の他の実施形態では、抗体軽鎖をコードする第1の遺伝子および抗体軽鎖をコードする第2の遺伝子は、異なる抗体軽鎖(例えば、2つの異なる抗体軽鎖遺伝子の各々の1つのコピー)をコードする。
【0049】
第1のベクターにおいて、同一の抗体軽鎖の2つのコピーを有するか、2つの異なる抗体軽鎖の各々の1つのコピーを有するかの選択は、製造される抗体分子の具体的なタイプに応じる。例えば、抗体重鎖を介して別のタンパク質に共有結合している標準的な単一特異的IgG mAbを伴う抗体融合タンパク質では、分子は、典型的には、i)抗体軽鎖、ii)抗体重鎖、およびiii)抗体重鎖融合タンパク質という3つの個別のポリペプチドタイプを含有する。この抗体融合タンパク質分子では、抗体重鎖および抗体重鎖融合タンパク質の各々の1つの鎖、ならびに抗体軽鎖の2つのコピーが存在する。この分子には1つのタイプの抗体軽鎖しか存在しないため、同一の抗体軽鎖遺伝子の2つのコピーが第1のベクターに提供される。別の実施例では、抗体重鎖を介して別のタンパク質に共有結合している二重特異的IgG mAbを伴う抗体融合タンパク質では、分子は、典型的には、i)第1の抗原結合部分のための抗体軽鎖、ii)第1の抗原結合部分のための抗体重鎖、iii)第2の抗原結合部分のための抗体軽鎖、およびiv)抗体重鎖部分が第2の抗原結合部分のためのものである抗体重鎖融合タンパク質という4つの個別のポリペプチドタイプを含有する。この抗体融合タンパク質分子では、抗体重鎖および抗体重鎖融合タンパク質の各々の1つのコピー、ならびに抗体軽鎖の各々の1つのコピーが存在する。この分子には2つのタイプの抗体軽鎖が存在するため、2つの異なる抗体軽鎖遺伝子が第1のベクターに提供される。
【0050】
2つの異なる抗体重鎖、または1つの抗体重鎖および1つの抗体重鎖融合タンパク質を伴う、本明細書で提供される実施形態では、場合により、重鎖は、重鎖の定常領域に、2つの異なる重鎖の間でのヘテロ二量体の形成を促進するための1つまたは複数のアミノ酸修飾を有していてもよい。このような修飾は、当該分野において公知であり、当該修飾としては、例えば、帯電に基づく静電気的なアミノ酸修飾、および立体に基づく「ノブイントゥーホール」アミノ酸修飾が含まれる。
【0051】
一部の実施形態では、本明細書で提供される核酸構築物は、構築物の一方または両方の末端に組換え配列が隣接している。「組換え配列」または「組換え部位」は、リコンビナーゼと共に、標的化された組換えに必要であり、当該組換えを可能にし、このような組換えの位置を規定する、一続きのヌクレオチドである。本明細書で使用する場合、「組換え配列」は、典型的には、宿主細胞中に導入される外因性核酸構築物上の組換え配列を指すために使用され、「組換え部位」は、典型的には、宿主細胞染色体中の対応する組換え配列を指すために使用される。組換え部位は、宿主細胞ゲノムにとって非ネイティブであり得る(例えば、組換え標的部位は、ランディングパッド配列の一部として、宿主細胞染色体中に導入され得る)。
【0052】
一部の実施形態では、核酸構築物の一部または全てが、宿主細胞染色体中の対応する部位中に組み込まれ得るように、1つまたは複数の組換え配列が、本明細書で提供される核酸構築物中に含まれ得る。
【0053】
チロシンリコンビナーゼベースの系およびセチンリコンビナーゼベースの系の両方を含む、任意の適切な組換え部位、標的配列およびリコンビナーゼの組合せが、本明細書で提供される組成物および方法と共に使用され得る。本明細書で提供される核酸構築物および宿主細胞共に使用され得るリコンビナーゼ(およびそれらの対応する組換え配列)には、例えば、Cre、Dre、Flp、KD、B2、B3、λ、HK022、HP1、γδ、ParA、Tn3、Gin、Bxb1、φC31、φBT1およびR4が含まれる。部位特異的リコンビナーゼは、例えば、TuranおよびBode、The FASEB Journal、25(12):4088~107(2011);Nernら、PNAS、108(34):14198~203(2011);ならびにXuら、BMC Biotechnology、13(87)(2013)中に記載されている。
【0054】
上記のように、一部の実施形態では、本明細書で提供される核酸構築物は、RMCEで使用される「カセット」であり得るか、または当該カセットの特徴を有し得る。これらの実施形態では、核酸構築物は、構築物の一方または両方の末端に組換え配列が隣接している。核酸構築物に両末端で組換え配列が隣接している実施形態において、一部の実施形態では、いずれかの末端にある組換え配列は同一の配列を有する。他の実施形態では、いずれかの末端にある組換え配列は異なる配列を有する。宿主細胞内におけるランディングパッドへの核酸構築物/カセットの方向性のある挿入を可能にするために、核酸構築物のいずれかの末端で異なる組換え配列を提供することが望ましい場合がある(以下でさらに論じる)。例えば、様々な異なる組換え配列は互いに直交性であり(すなわち、これら配列は相互に組み合わされない)、宿主細胞におけるランディングパッドに方向性のある挿入をされ得る核酸構築物を調製するために使用され得る。例えば、Bxb1野生型およびBxb1-GA突然変異体の配列は直交性であり(Jusiak,B,ら、AC Synth.Biol.、2019、8(1)、第16~24頁)、Bxb1リコンビナーゼを介する方向性のある挿入のために、核酸構築物のいずれかの末端で使用され得る。別の実施例では、野生型FRTおよびFRT F5突然変異体の配列が、Flpリコンビナーゼを介する方向性のある挿入のために、核酸構築物のいずれかの末端で使用され得る。
【0055】
一部の実施形態では、本明細書で提供される第1のベクターは、5’末端で第1の組換え配列が隣接しており、3’末端で第2の組換え配列が隣接している、第1の核酸構築物を含有しており、かつ、本明細書で提供される第2のベクターは、5’末端で第1の組換え配列が隣接しており、3’末端で第2の組換え配列が隣接している、第2の核酸構築物を含有している。第1のベクターの第1の組換え配列は、第1のベクターの第2の組換え配列と異なるヌクレオチド配列を有していてよい。第1のベクターの第1の組換え配列は、第1のベクターの第2の組換え配列と同一のヌクレオチド配列を有していてよい。第2のベクターの第1の組換え配列は、第2のベクターの第2の組換え配列と異なるヌクレオチド配列を有していてよい。第2のベクターの第1の組換え配列は、第2のベクターの第2の組換え配列と同一のヌクレオチド配列を有していてよい。場合により、i)第1のベクターの第1の組換え配列、ii)第1のベクターの第2の組換え配列、iii)第2のベクターの第1の組換え配列、およびiv)第2のベクターの第2の組換え配列の各々は、異なるヌクレオチド配列を有する。
【0056】
一部の実施形態では、核酸構築物内の抗体コード遺伝子は、核酸構築物内の1つまたは複数の調節性の遺伝子制御エレメントに連結していてよい。ある特定の実施形態では、遺伝子制御エレメントは、目的のヌクレオチド配列の構成的発現を指示する。ある特定の実施形態では、目的のヌクレオチド配列の誘導性発現を提供する遺伝子制御エレメントが使用され得る。誘導性遺伝子制御エレメント(例えば、誘導性プロモーター)の使用は、例えば、遺伝子によってコードされるポリペプチドの産生のモジュレーションを可能にする。真核生物細胞における使用のための潜在的に有用な誘導性遺伝子制御エレメントの非限定的な例には、ホルモン調節型エレメント(例えば、Mader,S.およびWhite,J.H.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5603~5607、1993を参照されたい)、合成リガンド調節型エレメント(例えば、Spencer,D.M.ら、Science 262:1019~1024、1993を参照されたい)および電離放射線調節型エレメント(例えば、Manome,Y.ら、Biochemistry 32:10607~10613、1993;Datta,R.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10149~10153、1992を参照されたい)が含まれる。当該分野で公知のさらなる細胞特異的または他の調節系は、本明細書で提供される方法および組成物に従って使用され得る。
【0057】
本明細書で提供されるポリヌクレオチドは、一本鎖(コードまたはアンチセンス)または二本鎖であり得、DNA(ゲノム、cDNAまたは合成)またはRNA分子であり得る。さらなるコードまたは非コード配列は、本発明のポリヌクレオチド内に存在してもよいが存在する必要はなく、ポリヌクレオチドは、他の分子および/または支持体材料に連結されていてもよいが、連結されている必要はない。本明細書で提供される任意の核酸構築物またはベクター配列に対して相補的なポリヌクレオチドもまた、本発明によって包含される。遺伝子コードの縮重の結果として、本明細書で提供されるポリペプチドをコードする複数のヌクレオチド配列が存在し得ることが、当業者によって理解される。
【0058】
本明細書で提供されるポリヌクレオチドは、化学的合成、組換え法またはPCRを使用して取得され得る。化学的ポリヌクレオチド合成の方法は、当該分野で周知であり、本明細書で詳細に記載する必要はない。当業者は、所望のDNA配列を産生するために、本明細書で提供される配列および市販のDNA合成機を使用できる。
【0059】
組換え法を使用してポリヌクレオチドを調製するために、本明細書でさらに議論されるように、所望の配列を含むポリヌクレオチドは、適切なベクター中に挿入され得、ベクターは次に、複製および増幅に適切な宿主細胞中に導入され得る。ポリヌクレオチドは、当該分野で公知の任意の手段によって、宿主細胞中に挿入され得る。細胞は、直接的取込み、エンドサイトーシス、トランスフェクション、F-接合またはエレクトロポレーションによって外因性ポリヌクレオチドを導入することによって形質転換される。いったん導入されると、外因性ポリヌクレオチドは、非組み込みベクター(例えば、プラスミド)として細胞内で維持され得、または宿主細胞ゲノム中に組み込まれ得る。そうして増幅されたポリヌクレオチドは、当該分野で周知の方法によって、宿主細胞から単離され得る。例えば、Sambrookら、1989を参照されたい。
【0060】
あるいは、PCRは、DNA配列の複製を可能にする。PCR技術は、当該分野で周知であり、米国特許第4,683,195号、同第4,800,159号、同第4,754,065号および同第4,683,202号、ならびにPCR:The Polymerase Chain Reaction、Mullisら編、Birkauswer Press、Boston、1994中に記載されている。
【0061】
RNAは、単離されたDNAを適切なベクター中で使用し、それを適切な宿主細胞中に挿入することによって取得され得る。細胞が複製し、DNAがRNAに転写されると、このRNAは、次いで、例えば、Sambrookら、1989、上記に示されるような、当業者に周知の方法を使用して単離され得る。
【0062】
適切なクローニングベクターは、標準的な技術に従って構築され得、または当該分野で入手可能な多数のクローニングベクターから選択され得る。選択されるクローニングベクターは、使用が意図される宿主細胞に従って変動し得るが、有用なクローニングベクターは一般に、自己複製する能力を有し、特定の制限エンドヌクレアーゼに対する単一の標的を有し得、および/またはベクターを含むクローンを選択する際に使用され得るマーカーの遺伝子を有し得る。適切な例には、プラスミドおよび細菌ウイルス、例えば、限定なしに、pUC18、pUC19、Bluescript(例えば、pBS SK+)およびその誘導体、mp18、mp19、pBR322、pMB9、ColE1、pCR1、RP4、ファージDNA、ならびにシャトルベクター、例えば、pSA3およびpAT28が含まれる。これらおよび多くの他のクローニングベクターは、BioRad、StrategeneおよびInvitrogenなどの供給業者から入手可能である。
【0063】
宿主細胞
本明細書で使用する場合、用語「宿主細胞」は、本明細書で提供される組換え核酸を有する、またはかかる核酸のレシピエントであり得る、細胞または細胞培養物を指す。宿主細胞には、単一の宿主細胞の子孫が含まれる。
【0064】
一部の実施形態では、宿主細胞は、そのゲノム中(例えば、染色体中)の位置に安定に組み込まれた組換え核酸を有し得る。一部の実施形態では、宿主細胞中の組換え核酸は、宿主細胞のゲノム中に安定に組み込まれない-例えば、組換え核酸は、宿主細胞中でプラスミド中に存在し得る。
【0065】
本開示の文脈では、「細胞」は、好ましくは哺乳動物細胞である。哺乳動物細胞は、例えば、イヌ細胞(例えば、Madin-Darbyイヌ腎臓上皮(MDCK)細胞)、霊長類細胞、ヒト細胞(例えば、ヒト胎児由来腎臓(HEK)細胞)、マウス細胞またはハムスター細胞であり得る。一部の実施形態では、ハムスター細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。任意選択により、CHO細胞は、CHOK1、CHOK1 SV細胞(Porter,AJら、Biotechnol Prog.26(2010)、1455~1464)、または別のCHO細胞株であり得る。一部の実施形態では、哺乳動物細胞は、BALB/cマウス骨髄腫細胞、ヒト網膜芽細胞(PER.C6)、サル腎臓細胞、ヒト胎児由来腎臓細胞(293)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、マウスセルトリ細胞、アフリカミドリザル腎臓細胞(CERO-76)、HeLa細胞、バッファローラット肝臓細胞、ヒト肺細胞、ヒト肝臓細胞、マウス乳癌細胞、TRI細胞、MRC 5細胞、FS4細胞またはヒト肝細胞癌細胞(例えば、Hep G2)である。一部の実施形態では、細胞は、非哺乳動物細胞(例えば、昆虫細胞または酵母細胞)である。
【0066】
細胞中へのポリヌクレオチドの導入
本明細書で提供されるポリヌクレオチド(例えば、核酸構築物、ベクターなど)は、例えば、エレクトロポレーション、塩化カルシウム、塩化ルビジウム、リン酸カルシウム、DEAE-デキストランまたは他の物質を使用するトランスフェクション、微粒子銃、リポフェクション、および感染(例えば、ベクターが、ワクシニアウイルスなどの感染性因子である場合)を含むいくつかの適切な手段のいずれかによって、宿主細胞中に導入され得る。宿主細胞中へのポリヌクレオチドの導入のための方法の選択は、宿主細胞の特色に依存する場合が多い。
【0067】
哺乳動物宿主細胞中に、目的のタンパク質の発現を達成するのに十分な核酸を導入するのに適切な方法は、当該分野で公知である。例えば、その各々が本明細書で参照によって組み込まれる、Gethingら、Nature、293:620~625、1981;Manteiら、Nature、281:40~46、1979;Levinsonら EP 117,060;およびEP 117,058を参照されたい。哺乳動物細胞について、哺乳動物細胞中に遺伝材料を導入する一般的な方法には、Grahamおよびvan der Erb(Virology、52:456~457、1978)のリン酸カルシウム沈殿方法またはlipofectamine(商標)(Gibco BRL)Method of Hawley-Nelson(Focus 15:73、1993)が含まれる。哺乳動物細胞宿主系の形質転換の一般的態様は、1983年8月16日に発行した米国特許第4,399,216号においてAxelによって記載されている。哺乳動物細胞中に遺伝材料を導入するための種々の技術については、Keownら、Methods in Enzymology、1989、Keownら、Methods in Enzymology、185:527~537、1990およびMansourら、Nature、336:348~352、1988を参照されたい。核酸を導入するのに適切なさらなる方法には、例えば、BioRad(商標)によるGenePulser XCell(商標)エレクトロポレーターまたはThermoFisherによるNeon Electroporationを使用して採用されるエレクトロポレーションが含まれる。哺乳動物細胞におけるタンパク質の発現に適切なベクターの比限定的な代表例には、以下のものが含まれ、その各々の全体は、本明細書で参照によって組み込まれる:pCDNA1;pCD、Okayamaら、Mol.Cell Biol.5:1136~1142、1985を参照;pMClneo Poly-A、Thomasら、Cell 51:503~512、1987を参照;バキュロウイルスベクター、例えば、pAC 373またはpAC 610;CDM8、Seed,B.Nature 329:840、1987を参照;およびpMT2PC、Kaufmanら、EMBO J.6:187~195、1987を参照。
【0068】
所望のポリヌクレオチドの送達および所望の細胞における発現のためのウイルスベースのベクターは、当該分野で周知である。例示的なウイルスベースのビヒクルには、組換えレトロウイルス(例えば、PCT出願公開番号WO90/07936、WO94/03622、WO93/25698、WO93/25234、WO93/11230、WO93/10218、WO91/02805、米国特許第5,219,740号および同第4,777,127号、英国特許第2,200,651号、および欧州特許第0345242号を参照されたい)、アルファウイルスベースのベクター(例えば、シンドビスウイルスベクター、セムリキ森林ウイルス(ATCC VR-67、ATCC VR-1247)、ロスリバーウイルス(ATCC VR-373、ATCC VR-1246)およびベネズエラウマ脳炎ウイルス(ATCC VR-923、ATCC VR-1250、ATCC VR 1249、ATCC VR-532))、ならびにアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター(例えば、PCT出願公開番号WO94/12649、WO93/03769、WO93/19191、WO94/28938、WO95/11984およびWO95/00655を参照されたい)が含まれるがこれらに限定されない。Curiel、Hum.Gene Ther.、1992、3:147に記載されるような、死滅アデノウイルスに連結されたDNAの投与もまた使用され得る。
【0069】
死滅アデノウイルス単独に連結されたまたは連結されていないポリカチオン性縮合DNA(例えば、Curiel、Hum.Gene Ther.、1992、3:147を参照されたい)、リガンド連結したDNA(例えば、Wu,J. Biol.Chem.、1989、264:16985を参照されたい)、真核生物細胞送達ビヒクル細胞(例えば、米国特許第5,814,482号、PCT出願公開番号WO95/07994、WO96/17072、WO95/30763、およびWO97/42338を参照されたい)および核荷電中和(nucleic charge neutralization)または細胞膜との融合が含まれるがこれらに限定されない、非ウイルス性の送達ビヒクルおよび方法もまた使用され得る。
【0070】
ネイキッドDNAもまた使用され得る。例示的なネイキッドDNA導入法は、PCT出願公開番号WO90/11092および米国特許第5,580,859号に記載されている。遺伝子送達ビヒクルとして作用し得るリポソームは、米国特許第5,422,120号、PCT出願公開番号WO95/13796、WO94/23697、WO91/14445、およびEP 0524968に記載されている。さらなるアプローチは、Philip、Mol.Cell Biol.、1994、14:2411およびWoffendin、Proc.Natl.Acad.Sci.、1994、91:1581に記載されている。ネイキッドDNAは、DNAおよびリン酸カルシウムを含む沈殿物を形成することによって、細胞中に導入され得る。あるいは、ネイキッドDNAは、DNAおよびDEAE-デキストランの混合物を形成し、この混合物を細胞と共にインキュベートすること、または細胞およびDNAを適切な緩衝液中で一緒にインキュベートし、(例えば、エレクトロポレーションによって)細胞を高電圧電気パルスに供することによっても、細胞中に導入され得る。ネイキッドDNAは、例えば、マイクロインジェクションによって、細胞中に直接注入することもできる。あるいは、ネイキッドDNAは、細胞表面受容体に対するリガンドにカップリングされたポリリジンなどのカチオンにDNAを複合体化させることによって、細胞中に導入することもできる(例えば、その各々の全体が本明細書で参照によって組み込まれる、Wu,G.およびWu,C.H. J.Biol.Chem.263:14621、1988;Wilsonら J.Biol.Chem.267:963~967、1992;ならびに米国特許第5,166,320号を参照されたい)。受容体へのDNA-リガンド複合体の結合は、受容体媒介性のエンドサイトーシスによるDNAの取込みを促進する。
【0071】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供されるポリヌクレオチドは、宿主細胞中に安定に導入される。ある特定の実施形態では、本明細書で提供されるポリヌクレオチドは、宿主細胞中に一過的に導入される。
【0072】
宿主細胞染色体中への核酸の組み込み
ポリヌクレオチドが宿主細胞中に安定に導入される本明細書で提供される実施形態(例えば、ポリヌクレオチドが宿主細胞染色体中に組み込まれる状況)では、ポリヌクレオチドは、宿主細胞の染色体中にランダムに組み込まれ得、またはポリヌクレオチドは、宿主細胞の染色体中の特定の位置において組み込まれ得る。これらのアプローチは、本明細書で、それぞれ、「ランダム組み込み」または「部位特異的組み込み(「SSI」)」と呼ばれ得る。
【0073】
ランダム組み込みについて、典型的には、組換え核酸構築物が各々、少なくとも1つの目的のヌクレオチド配列、および少なくとも1つの選択マーカー(例えば、抗生物質耐性をコードする遺伝子)を含む、1つまたは複数の組換え核酸構築物が調製される。
【0074】
抗体コード遺伝子の1つまたは複数を含有するポリヌクレオチドを調製した後、ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入することができる。ポリヌクレオチドが組み込まれた宿主細胞が、例えば、構築物中の抗生物質耐性遺伝子がそれに対して耐性を付与する抗生物質に対する耐性によって、選択され得る。一般に、目的の遺伝子を含むポリヌクレオチドが細胞集団中に導入され、細胞が、関連する選択マーカーシステム(例えば抗生物質耐性)を介して選択された後に、1つまたは複数の抗体コード遺伝子を含むポリヌクレオチドの異なる数のコピーを含む、ならびに細胞の染色体中にポリヌクレオチドの異なる位置の組み込みを含む、細胞の不均一な集団(本明細書で細胞の「プール」とも呼ばれる)が存在し得る。任意選択により、この細胞プール由来の個々の細胞は、選別および単離され得、異なる細胞の個々の均一な細胞株集団が樹立され得る(本明細書で細胞株「クローン」とも呼ばれる)。あるいは、一部の実施形態では、本明細書で提供される第1および第2の核酸構築物を含有する細胞の異種プールが維持され得る。いずれかの型の上記細胞集団(例えば、均一または不均一な集団)が、本明細書に記載される種々の方法(例えば、タンパク質産生)のために使用され得る。
【0075】
一部の実施形態では、ランダム組み込みのための核酸構築物は、直鎖ポリヌクレオチドであり得る。一部の実施形態では、直鎖構造は、(例えば、PCRまたは化学的ポリヌクレオチド合成による)直鎖分子の合成によって生成され得る。一部の実施形態では、直鎖構造は、直鎖核酸分子を生成するための(例えば、制限酵素による)環状ベクターの切断によって生成され得る。
【0076】
一部の実施形態では、細胞の染色体中に組み込まれた本明細書で提供される1つまたは複数の核酸構築物を含む宿主細胞が、本明細書で提供される。例えば、一部の実施形態では、細胞の染色体に組み込まれた本明細書で提供される第1の組換え核酸構築物および第2の組換え核酸構築物を含む宿主細胞が本明細書で提供される。
【0077】
部位特異的組み込みについて、一部の実施形態では、1つまたは複数の規定された染色体遺伝子座において1つまたは複数の「ランディングパッド」を含む宿主細胞が使用される。ランディングパッドは、染色体中に安定に組み込まれている、1つまたは複数の組換え部位を含む外因性ヌクレオチド配列を含む。ランディングパッド中の組換え部位に対応する1つまたは複数の組換え配列を含む外因性核酸構築物が宿主細胞中に導入される場合、外因性核酸構築物中の発現カセットは、(例えば、リコンビナーゼ媒介カセット交換(RMCE)を介して)ランディングパッド配列中に組み込まれ得るまたはランディングパッド配列を置き換え得る。一部の実施形態では、全ての目的のために本明細書で参照によって組み込まれるZhang L,ら(Biotechnol Prog.2015、31:1645~1656)または国際公開第WO2013/190032において例えば記載されているSSI系を、本明細書で提供される実施形態と共に使用してもよい。
【0078】
一部の実施形態では、本明細書で提供される組成物および方法と共に使用するための宿主細胞は、少なくとも2つの個別のランディングパッドを含有する。場合により、本明細書で提供される第1のベクターまたは第1の核酸構築物は、細胞における第1のランディングパッド内の組換え部位に対応する組換え配列を含有し得、かつ、本明細書で提供される第2のベクターまたは第2の核酸構築物は、第2のランディングパッド内の組換え部位に対応する組換え配列を含有し得る。一部の実施形態では、CHO細胞内の複数のランディングパッド部位を、2020年1月2日に公開されたUS2020/0002727において記載されているように使用することができる。一部の実施形態では、ランディングパッドは、2013年12月27日に公開されたWO2013/190032において記載されているようにCHO Fer1L4遺伝子内に位置していてもよい。一部の実施形態では、ランディングパッドは、2020年1月2日に公開されたUS2020/0002727において記載されているようにNL1遺伝子座に位置していてもよい。
【0079】
一部の実施形態では、宿主細胞株中のランディングパッドは、宿主細胞のゲノム中の「ホットスポット」に位置し得る。本明細書で使用する場合、用語「ホットスポット」は、その部位において組み込まれた遺伝子(単数または複数)の安定な高い発現を提供する、宿主細胞のゲノム中の部位を意味する。
【0080】
SSIのためのランディングパッドを含む細胞は、本明細書で「SSI宿主細胞」とも呼ばれ得る。本明細書で使用する場合、「SSI宿主細胞」は、少なくとも1つの組換え部位(例えば、ランディングパッド)を含む外因性ヌクレオチド配列を含む宿主細胞を指す。宿主細胞中の組換え部位は、宿主細胞のゲノム中への外因性ヌクレオチド配列の部位特異的組み込みを可能にし、したがって、宿主細胞のゲノム中の所望の場所における所望のヌクレオチド配列の所定の局在化され指示された組み込みを可能にする。したがって、一部の実施形態では、部位特異的組み込み宿主細胞は、宿主細胞の染色体中への本明細書に記載される組換え核酸構築物(またはその中の発現カセット)の標的化された組み込みが可能である。一部の実施形態では、部位特異的組み込み宿主細胞は、組換え媒介カセット交換(RMCE)による発現カセットの標的化された組み込みが可能である。
【0081】
上記のような、宿主細胞ゲノム中への外因性核酸構築物の組換えが関与する本明細書で提供される組成物および方法について、リコンビナーゼもまた宿主細胞中に存在し、または宿主細胞中に導入される。外因性核酸構築物を導入することが関与する本明細書で提供される方法は、宿主細胞中に、リコンビナーゼをコードする遺伝子を導入することを含み得る。
【0082】
一部の実施形態では、細胞の染色体中の特定の位置中に組み込まれた外因性組換え核酸構築物を含む宿主細胞が、本明細書で提供される。核酸構築物は、本明細書で提供される核酸構築物の特性のいずれかを有し得る。
【0083】
組換え抗体
別の態様では、本明細書で提供される組成物および方法を介して産生される組換え抗体(本明細書では「組換えタンパク質」および「組換えポリペプチド」とも呼ばれる)が本明細書で提供される。例えば、本明細書で提供される組換え核酸構築物の一成分である抗体コード遺伝子によってコードされる抗体が本明細書で提供される。
【0084】
宿主細胞において発現可能な任意の抗体は、本発明の教示に従って産生され得、本発明の方法に従って、または本発明の細胞によって産生され得る。
【0085】
発現された抗体の単離
一般に、本発明に従って発現された抗体を単離および/または精製することが、典型的には望ましい。ある特定の実施形態では、発現された抗体は、培地中に分泌され、したがって、細胞および他の固形物は、例えば、精製プロセス中の第1のステップとして、遠心分離または濾過などによって除去され得る。あるいは、発現された抗体は、細胞中に残存し得、または宿主細胞の表面に結合され得る。かかる状況では、培地は除去され得、タンパク質を発現する宿主細胞は、精製プロセス中の第1のステップとして溶解される。哺乳動物宿主細胞の溶解は、ガラスビーズによる物理的破壊および高pH条件への曝露を含む、当業者に周知の任意の数の手段によって達成され得る。
【0086】
発現された抗体は、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、アフィニティ、サイズ排除およびヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー)、ゲル濾過、遠心分離もしくは示差的溶解度、エタノール沈殿が含まれるがこれらに限定されない標準的な方法によって、および/またはタンパク質の精製のための任意の他の利用可能な技術によって、単離および精製され得る(例えば、その各々が本明細書で参照によって組み込まれる、Scopes、Protein Purification Principles and Practice 第2版、Springer-Verlag、New York、1987;Higgins,S.J.およびHames,B.D.(編)、Protein Expression:A Practical Approach、Oxford Univ Press、1999;ならびにDeutscher,M.P.、Simon,M.I.、Abelson,J.N.(編)、Guide to Protein Purification:Methods in Enzymology(Methods in Enzymology Series、182巻)、Academic Press、1997を参照されたい)。特に免疫親和性クロマトグラフィーについて、タンパク質は、そのタンパク質に対して惹起され静置支持体に固定された抗体を含むアフィニティカラムにそのタンパク質を結合させることによって単離され得る。あるいは、親和性タグ、例えば、インフルエンザコート配列、ポリヒスチジンまたはグルタチオン-S-トランスフェラーゼが、適切なアフィニティカラムを通過させることによる容易な精製を可能にするために、標準的な組換え技術によってタンパク質に結合され得る。プロテアーゼ阻害剤、例えば、フッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)、ロイペプチン、ペプスタチンまたはアプロチニンが、精製プロセスの間のタンパク質の分解を低減または排除するために、任意のまたは全ての段階で添加され得る。プロテアーゼ阻害剤は、発現された抗体を単離および精製するために細胞が溶解される必要がある場合、特に有利である。
【0087】
細胞培養および細胞培養培地
用語「培地(medium)」、「培地(media)」などは、本明細書で使用する場合、成長中の哺乳動物細胞に栄養分を与える構成成分または栄養素を含む溶液を指す。典型的には、栄養素には、最低限の成長および/または生存のために細胞が必要とする、必須および非必須アミノ酸、ビタミン、エネルギー源、脂質ならびに微量元素が含まれる。かかる溶液は、ホルモンおよび/もしくは他の増殖因子、特定のイオン(例えば、ナトリウム、塩化物、カルシウム、マグネシウムおよびリン酸)、緩衝液、ビタミン、ヌクレオシドもしくはヌクレオチド、微量元素(非常に低い最終濃度で通常存在する無機化合物)、高い最終濃度で存在する無機化合物、アミノ酸、脂質ならびに/またはグルコースもしくは他のエネルギー源が含まれるがこれらに限定されない、最小速度を上回って成長および/または生存を増強するさらなる栄養素または補足的構成成分もまた含み得る。一部の実施形態では、培地は、有利には、細胞の生存および増殖にとって最適なpHおよび塩濃度になるように製剤化される。一部の実施形態では、培地は、細胞培養の開始後に添加される供給培地である。
【0088】
広範な種々の哺乳動物成長培地が、本発明に従って使用され得る。一部の実施形態では、細胞は、種々の化学的に規定された培地のうち1つにおいて成長され得、この培地の構成成分は、公知であり、管理されている。一部の実施形態では、細胞は、培地の構成成分が必ずしも全て公知ではないかおよび/または管理されていない複合的な培地中で成長させることもできる。
【0089】
哺乳動物細胞培養のための化学的に規定された成長培地は、過去数十年間にわたって幅広く開発され、公開されている。規定された培地の全ての構成成分は、十分に特徴付けられており、したがって、規定された培地は、血清または加水分解産物などの複雑な添加物を含まない。初期の培地製剤は、タンパク質産生についてほとんどまたは全く気にせずに、細胞の成長および生存度の維持を可能にするために開発されたものである。より最近では、培地製剤は、高度に生産的な組換えタンパク質産生細胞培養物を支持するという明確な目的をもって開発されている。かかる培地は、本発明の方法における使用に好ましい。かかる培地は、一般に、高密度での細胞の成長および/または維持を支持するために、高い量の栄養素、特にアミノ酸を含む。必要に応じて、これらの培地は、本発明の方法における使用のために、当業者によって改変され得る。例えば、当業者は、本明細書で開示される方法における基本培地または供給培地としての使用のために、これらの培地中のフェニルアラニン、チロシン、トリプトファンおよび/またはメチオニンの量を減少させ得る。
【0090】
一部の実施形態では、本明細書で提供される方法および組成物には、細胞培養物および細胞培養培地が関与する。用語「培養物」および「細胞培養物」は、本明細書で使用する場合、細胞集団の生存および/または成長に適切な条件下で培地中にある細胞集団を指す。当業者に明らかなように、一部の実施形態では、これらの用語は、本明細書で使用する場合、細胞集団および集団がその中に存在する培地を含む組合せを指す。一部の実施形態では、細胞培養物の細胞は、哺乳動物細胞を含む。一部の実施形態では、細胞培養物は、懸濁物中の細胞を含む。一部の実施形態では、細胞培養物は、基材上で成長した細胞を含む。
【0091】
一部の実施形態では、本明細書で提供される組換え核酸構築物を含有する、本明細書で提供される宿主細胞を、本明細書で提供される第1の核酸構築物および第2の核酸構築物によってコードされる抗体を産生するために使用してもよい。同様に、本明細書で提供されるように、本明細書で提供される方法および組成物は、本明細書で提供される第1の核酸構築物および第2の核酸構築物を含有する宿主細胞を得るために使用され得、このような核酸構築物によってコードされるポリペプチドが産生および精製され得る。加えて、このような宿主細胞が生成および培養され得る。
【0092】
本発明は、所望のプロセス(例えば、本明細書で提供される方法に従う組換え核酸構築物の導入、および組換えタンパク質(例えば、抗体)の産生)に適した任意の細胞培養法と共に使用され得る。非限定的な例として、細胞は、バッチまたは流加培養で成長され得、この場合、培養は、組換えタンパク質(例えば、抗体)の十分な発現後に終結され、その後、発現されたタンパク質(例えば、抗体)が収集される。あるいは、別の非限定的な例として、細胞は、バッチ再供給(batch-refeed)で成長され得、この場合、培養は終結されず、新たな栄養素および他の構成成分が、培養物に周期的または継続的に添加され、その間、発現された組換えタンパク質(例えば、抗体)は、周期的または継続的に収集される。他の適切な方法(例えば、スピンチューブ)培養)が、当該分野で公知であり、本発明を実施するために使用され得る。
【0093】
一部の実施形態では、凍結乾燥製剤または水溶液の形態の、本明細書で提供される方法に従って宿主細胞から産生された抗体、および1種または複数の薬学的に許容できる担体、賦形剤または安定剤を含む組成物が、本明細書で提供される(Remington:The Science and practice of Pharmacy 第20版、2000、Lippincott Williams and Wilkins、K.E.Hoover編)。許容できる担体、賦形剤または安定剤は、その投薬量および濃度においてレシピエントにとって非毒性であり、緩衝液、例えば、リン酸、クエン酸および他の有機酸;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルアルコールもしくはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチルパラベンもしくはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチンもしくは免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンもしくはリジン;グルコース、マンノースもしくはデキストランを含む、単糖、二糖および他の炭水化物;キレート剤、例えば、EDTA;糖、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロースもしくはソルビトール;塩形成性対イオン、例えば、ナトリウム;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);ならびに/または非イオン性界面活性剤、例えば、TWEEN(商標)、PLURONICS(商標)もしくはポリエチレングリコール(PEG)を含み得る。
【0094】
方法
一部の態様では、本明細書で提供される宿主細胞を選択する方法、本明細書で提供される宿主細胞を調製する方法、および本明細書で提供される組換え抗体を産生するための方法が、本明細書で提供される。
【0095】
一部の実施形態では、本明細書で記載される核酸構築物またはこのような核酸構築物を含有するベクターは、組換え核酸の調製のための当該分野において公知の標準的な技術によって調製され得る。
【0096】
本明細書で提供される核酸構築物を含有する宿主細胞は、本明細書の他の箇所で記載されているように、当該分野において公知の方法で関連する核酸構築物を宿主細胞に導入することによって調製され得る。
【0097】
一部の実施形態では、抗体を産生するための方法が本明細書で提供される。このような方法に従って、本明細書で提供される細胞(本明細書で提供される方法に従って選択されたまたは本明細書で提供される方法に従って調製された細胞を含む)は、例えば、宿主細胞における、第1の核酸構築物および第2の核酸構築物によってコードされる抗体または抗体融合タンパク質の発現に使用され得る。
【0098】
当業者は、正確な精製技術が、精製される抗体の特徴、タンパク質が発現される細胞の特徴、および/または細胞が成長した培地の組成に依存して変動することを理解する。
【0099】
米国仮特許出願第63/228,315号(2021年8月2日出願)の内容は、全ての目的のために本明細書で参照によって組み込まれる。
【0100】
以下の実施例は、例示目的のためにのみ提供され、本発明の範囲を限定することは決して意図しない。実際、本明細書に示され記載されるものに加えた、本発明の種々の改変は、上述の説明から当業者に明らかとなり、添付の特許請求の範囲の範囲内に入る。
【実施例
【0101】
(実施例1)
デュアルランディングパッドCHO細胞系での、ベクター内のmAbコード遺伝子の順序および位置の影響の評価
目的:
この実施例では、デュアルランディングパッドCHO細胞系における、転写およびmAb力価に対する、発現ベクター内での抗体重鎖および軽鎖をコードする遺伝子の位置の影響を評価した。
【0102】
材料および方法:
順序および位置の影響を評価するためのmAb遺伝子の修飾
mAb遺伝子の転写に対する、発現ベクター内の抗体重鎖遺伝子および軽鎖遺伝子の位置の順序および位置の影響を評価するために、モノクローナル抗体(「mAb1」)の重鎖および軽鎖のオープンリーディングフレームに、それぞれの配列の5’末端の付近の1つのアルギニンに対するサイレント突然変異を導入した。これらの突然変異、すなわちヌクレオチド多型(NP)を、各発現ベクター位置から生じる転写産物のレベルを追跡するためのバイオマーカーとして使用した。NPとして使用でき、CHOゲノムにおいてほぼ等しい頻度で出現する、6つの異なるコドンが存在していたため、アルギニンを選択した。4つの異なる発現ベクター位置を評価するために、各重鎖遺伝子(HC)および軽鎖遺伝子(LC)について4つの異なるNPを導入した。異なるNPを以下の表1に示す。
【0103】
【表1】
【0104】
ロックド核酸技術を利用するプローブでのddPCRを使用して、重鎖および軽鎖の総転写産物レベルに対するヌクレオチド多型を定量し、これは、分子の3’末端の付近の個別のプライマー/プローブセットによって測定された(図1)。重鎖遺伝子、軽鎖遺伝子、および他の遺伝子(例えばGAPDH)はまた、本明細書では「オープンリーディングフレーム」(ORF)とも呼ばれる。
【0105】
発現ベクター
2つの異なる発現ベクターを、デュアルランディングパッド宿主細胞系と共に使用するために設計し、ここで、各ベクターは、宿主細胞内の2つの独立したランディングパッド(「ランディングパッドA」および「ランディングパッドB」)の一方に標的化されており、リコンビナーゼ介在性の挿入を介して宿主細胞染色体に組み込まれる。ランディングパッドおよびベクターは、全ての目的のために本明細書で参照によって組み込まれるInniss,M,ら、Biotechnology and Bioengineering、114(8):1837~1846、2017年3月14日において記載されているものと類似の構造を有している。各ランディングパッドの占有を確実にするために、一方の発現ベクターはブラストサイジン耐性を付与し[ブラストサイジン耐性遺伝子、Kimura Mら、Biochim Biophys Acta 1219(3):653~659、1994を参照されたい]、他方は、他の理由でグルタミンシンテターゼがノックアウトされている宿主におけるグルタミン合成を可能にする(グルタミンシンテターゼ遺伝子、Matasci,Mら、Drug Discovery Today Technol.5、e37~42、2008を参照されたい)。各発現ベクターは、オープンリーディングフレームの挿入のための2つの多重クローニング部位を有する。各オープンリーディングフレームは、挿入部位の3’側にhCMVプロモーターおよびSV40ポリA尾部が隣接している。これらのベクターは、全部で少なくとも4つの導入遺伝子が宿主細胞ゲノムに挿入されることを可能にし(ベクター当たり2つの導入遺伝子)、その各々には同一の調節配列が隣接している。
【0106】
発現ベクターを、重鎖および軽鎖の様々な位置および順序を評価するために生成した。図2に示す構造を有する、発現ベクター構造の6つの異なる組合せを準備した(図2の略図は、プロモーターおよびポリA尾部などの、ベクター内の全ての特徴を含んでいない)。図2における異なるベクター内の抗体遺伝子の構造を、表2にまとめる。
【0107】
【表2】
【0108】
発現ベクターを、Q5(登録商標)Hot Start High-Fidelity 2X Master Mix(New England BioLabs)を使用するPCRで目的の遺伝子を増幅することによって構築した。増幅の際、オリゴタグを、NEBuilder(登録商標)HiFi DNA Assembly Master Mix(New England BioLabs)を使用して、制限消化された発現ベクターの所望の位置の目的の標的遺伝子に付加した。ヌクレオチド多型を、オーバーラップ伸長増幅を介するサイレント突然変異を組み込むためのオリゴを使用して、オープンリーディングフレームの5’末端に導入した。
【0109】
宿主細胞
宿主細胞は、転写活性が高いことが示されているゲノムの区域に2つの独立したランディングパッド(「ランディングパッドA」および「ランディングパッドB」)を有するように遺伝子操作された、自社のPfizer宿主CHO細胞系(CHOK1誘導体)であった。
【0110】
トランスフェクションおよび通常の細胞培養
Neonエレクトロポレーター(Invitrogen)を使用して約1E7個の細胞を10ugのベクターと組み合わせることによって(各発現ベクター:リコンビナーゼをコードするベクターの比が3:1)、各発現ベクター構造について3重のトランスフェクションを行った。細胞を、CD-CHO培地(Gibco)+8mMのグルタミンを含有するT-75フラスコに2日間回収した。CD-CHO培地+5ug/mlのブラストサイジン中に細胞を再懸濁することによって、選択を行った。回収の際、細胞を125mLの振とうフラスコにスケールアップし、3日間/4日間のスケジュールでCD-CHO培地中で2~3回継代し、次いで、さらなる継代および試料の採取のために、適当な自社の培地に移した。
【0111】
試料の調製
細胞を、ゲノムDNAおよび全RNAの調製のために、3日目の継代培養物から採取した。ゲノム試料を、DNeasy Blood & Tissueキット(Qiagen)を使用して準備し、ナノドロップを使用して定量した。1ugの全ゲノムDNAを、MseI制限酵素(New England BioLabs)を使用して、断片ゲノムDNAに消化した。RNA試料を、RNeasyミニキット(Qiagen)を使用して調製し、ナノドロップを使用して定量した。2ugの全RNAを、SuperScript(商標)III First-Strand Synthesis System(ThermoFisher)を使用してcDNAに変換した。
【0112】
ヌクレオチド多型の定量
ゲノム鋳型およびcDNA鋳型を、QX200(商標)Droplet Digital(商標)PCRシステム(ddPCR)(Bio-Rad)を使用して定量した。PrimeTime LNA qPCRプローブ(Integrated DNA Technologies)を使用して各ヌクレオチド多型(NP)を定量し、PrimeTime qPCRプローブ(Integrated DNA Technologies)を使用して、全重鎖、全軽鎖および、GAPDHハウスキーピング遺伝子を検出した。PCRを、標準的な条件を使用して3重で行った。ゲノムDNAを、全重鎖および軽鎖に対する各NPの比率として測定した。cDNAを、GAPDHハウスキーピング(内因性CHO)遺伝子に対する全重鎖または軽鎖の比率として測定し、次いで、全重鎖または軽鎖に対するNPの比率に基づく各々の個々のNPのデシマルパーセンテージをかけた。
【0113】
流加培養
プールを、ambr(登録商標)15機器を使用して、12日間の流加培養プロセスにかけた。各プールを、自社の産生培地および供給培地を使用して、2本の容器に約1.5e6個細胞/mLの流量で播種した。プールを、Pfizerのプラットフォーム流加プロセスを使用して、ambr(登録商標)機器で評価した(Lieske,Pら、Biotechnology J、第15巻(4)、1900306、2020年4月を参照されたい)。さらに、細胞懸濁液を回収して、7日目、10日目、および12日目にHPLCを使用して力価の評価を行った。多重特異的発現プールでは各容器を回収し、選択されたプールでは、ランの終了時に、馴化培地を産物品質分析にかけた。
【0114】
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)
およそ50mgの各タンパク質試料を、30℃で維持したYMC-Pack Diol-200サイズ排除カラム(300×8mm、Watersカタログ番号DL20S053008WT)に注入した。高分子量種(HMMS)、モノマー、およびLMMSを、20mMのリン酸ナトリウムおよび400mMの塩化ナトリウムを含有するpH7.2の移動相を用いるイソクラティック溶出を使用して分離した。
【0115】
キャピラリーゲル電気泳動(cGE)
およそ5mgの各タンパク質試料を、還元(DTT)および非還元(ヨードアセトアミド)条件下で、70℃で10分間インキュベートし、Chen,Xら、Electrophoresis、第29巻(24)4993~5002、2008年7月に従って、HT Protein Expressチップを使用して分析した。
【0116】
結果:
ddPCRアッセイの精度を評価するために、ゲノムDNAを、構造C2およびC3の細胞プールから採取した。8つのNP(4つの重鎖NPおよび4つの軽鎖NP)の全てが、これら2つのプールセットで存在している。各プールは2つの重鎖遺伝子および2つの軽鎖遺伝子を有しているため、各NPは、各プール内の各遺伝子に対して、全シグナルの50%を占めると予想される(例えば、C2プールでは、NP1はLC遺伝子シグナルの50%を占めると予想され、NP2はLC遺伝子シグナルの50%を占めると予想された)。各NPは、予想した通り、各プール内の各遺伝子に対して、全シグナルのおよそ50%を占めることが分かり、ddPCRアッセイの精度が確認された。
【0117】
次に、各構造での各発現ベクター位置の転写産物レベルを評価するために、RNAを細胞から回収し、cDNAに変換した。NP、全重鎖または軽鎖、およびGAPDHハウスキーピング遺伝子レベルを、各試料について測定した。全重鎖または軽鎖をGAPDHに対して正規化し、次いで、全重鎖または軽鎖に対するNPの比率に基づく各NPのデシマルパーセンテージをかけた。図3A図3Fは、試験した全ての構造の各発現ベクター位置から得られた転写産物レベルを示している。トランスフェクション構造1(C1)は、全ての発現ベクター位置で軽鎖が占有しており、全ての発現ベクター位置にわたって相対的強度を評価するために同一のGOIを使用する直接的な比較が可能となっている。軽鎖をあまり伴わない重鎖の発現は細胞毒性を生じさせ得るため、重鎖の代わりに軽鎖をこの評価に使用した。各ランディングパッド内の各発現ベクターの第1の位置が第2の位置よりも強力であることが観察された。ランディングパッドAに占有する発現ベクターの第1の位置がランディングパッドBに占有する発現ベクターの第1の位置よりも強力であることも分かった。これらの結果は、転写産物レベルの差が発現ベクター内の導入遺伝子の位置および各ランディングパッド間での転写の差に基づいて生じることを示している。
【0118】
条件C2およびC3は、ランディングパッドBまたはランディングパッドAのいずれかにそれぞれ重鎖を導入している。C1と比較して、全ての発現ベクター位置で、産生された重鎖転写産物は軽鎖転写産物よりも少ない。結果はまた、両ランディングパッドで第1の位置の重鎖転写産物が第2の位置の重鎖転写産物よりも多く産生されることも示しており、このことは、C1から得られた軽鎖の結果と一致している。さらに、C2およびC3の軽鎖転写産物レベルは、C1の軽鎖転写産物レベルと同等であり、このことは、ランディングパッドが互いに独立しており、その結果、一方のランディングパッドにおける遺伝子インサートの占有の変化が他方のランディングパッドに影響しないことを示唆している。これらの結果は、重鎖および軽鎖の転写に差があること、ならびに、重鎖の転写の結果生じる転写産物レベルが軽鎖と比較して低いことを示している。しかし、各ランディングパッドで第1の位置が第2の位置よりも多くの転写産物を生じさせるという発見は、軽鎖および重鎖の両方で維持されている。
【0119】
トランスフェクションC4およびC5は、各ランディングパッドでの、軽鎖の後ろに重鎖がある場合、および重鎖の後ろに軽鎖がある場合の、発現ベクターの位置の影響の効果を評価している。両イテレーションにおいて、結果は、各ランディングパッドで、重鎖が位置1に占有している場合であっても、位置1からの転写産物レベルが位置2と比較して多いことを示している。C4およびC5とC1とで、第2の位置の軽鎖レベルを比較すると、第1の位置に重鎖が占有している場合、軽鎖の場合と比較して、観察される軽鎖転写産物が少ない。逆に、C4およびC5とC2およびC3とで、第2の位置の重鎖レベルを比較すると、第1の位置に軽鎖が占有している場合、重鎖の場合よりもより多くの重鎖が観察される。これらの結果は、第2の位置の転写産物レベルが発現ベクターの第1の位置の占有に依存していることを強力に示唆している。しかし、全ての条件で第1の位置の重鎖および軽鎖を比較すると、重鎖および軽鎖の転写産物レベルは、第2の位置の占有に関係なく一定のままである。これらの結果は、第1の位置の転写産物レベルが第2の位置の占有に依存していないことを示唆している。
【0120】
構造C6は、このCHO発現系でこれまでに利用されたベクター構造である(上記のInnissを参照されたい)。構造C6から得られた結果は、各ランディングパッドが重鎖転写産物よりもかなり多くの軽鎖転写産物を生じさせることを示している。C6の結果は、発現生産量が、重鎖転写産物レベルを増大させることおよび軽鎖転写産物に対する重鎖転写産物の比率を増大させることによって改良され得ることを示唆した。
【0121】
図3A図3Fのデータを使用して、標準的なmAbの各ランディングパッド内の全ての考えられる発現ベクター構造の推定される転写産物レベルを予測するための数値一覧(表3)を得た。この一覧は、各々の個々のランディングパッドの各発現ベクター構造で見られた平均転写産物レベルを考慮して作成された。表3では、平均転写産物レベルを、ハウスキーピング遺伝子GAPDHに対する比率(例えば、ある位置における「4.4」という値は、GAPDHの転写産物レベルに対する、その位置にある導入遺伝子の転写産物レベルの相対的比率を示す)、ならびに、全ての考えられる占有の組合せでの、各ランディングパッドにおける第1および第2の発現ベクター位置での軽鎖(L)および/または重鎖(H)の相対的パーセンテージ(L/L構造では、ランディングパッドAにおける第1のL鎖に対する;太字の値を参照されたい)として定量した。
【0122】
【表3】
【0123】
表3の情報を使用して、C2で概略されるベクター構造[ランディングパッドAのベクターが位置1に軽鎖を、位置2に軽鎖を有し(「LL」)、また、ランディングパッドBのベクターが位置1に重鎖を、位置2に重鎖を有する(「HH」)ため、本明細書では「LL HH」とも呼ばれる]がベクター構造C6(本明細書では、C2で説明したものと同一の理論的根拠に基づいて「LH LH」と呼ばれる)と比較して優れた転写産物プロファイルを有し、したがって生産性を向上させることが予測された。これは以下のように計算した。LL HH(C2)構造では、総軽鎖値は6.4[4.4(第1の位置)+2.0(第2の位置)という加算によって計算された]であり、総重鎖値は2.2[1.7(第1の位置)+0.5(第2の位置)という加算によって計算された]である。したがって、C2(LL HH)構造での、細胞における重鎖転写産物に対する軽鎖転写産物の比率は、2.2に対して6.4、すなわち1重鎖当たり約2.9の軽鎖である。C6(LH LH)構造では、総軽鎖値は7.6[4.3(第1の位置、ランディングパッドA)+3.3(第1の位置、ランディングパッドB)という加算によって計算された]であり、総重鎖値は1.5[0.7(第2の位置、ランディングパッドA)+0.8(第2の位置、ランディングパッドB)という加算によって計算された]である。したがって、LH LH構造での、細胞における重鎖転写産物に対する軽鎖転写産物の比率は、1.5に対して7.6、すなわち1重鎖当たり約5.1の軽鎖である。総合すると、この情報は、LL HH(C2)構造を有する細胞(1に対して約2.9)では、LH LH(C6)構造を有する細胞(1に対して約5.1)よりも、重鎖転写産物に対する軽鎖転写産物が少ないことを示した。
【0124】
構造C2とC6とを複数の抗体の発現について試験するために、両発現ベクター構造を6つの異なるmAb(mAb1~mAb6)について作製した。各ベクターをCHO宿主細胞系にトランスフェクトして、3つの個別のプールを作製し、その後、選択および回収を行った。回収した細胞を振とうフラスコ内で継代し、試料を採取して、転写産物の分析を行った。図4Aは、6つのmAb全ての観察された転写産物レベルと比較した、表3の数値一覧によって予測された各ベクター構造での重鎖および軽鎖の転写産物レベルを示す。予測した通り、重鎖転写産物レベルは、6つのmAb全てで、LL HH(C2)ベクター構造で、LH LH(C6)構造と比較して有意に増大した。軽鎖レベルは6つのmAbのうちの4つで低下したが、全てが統計的に有意であったわけではない。しかし、全てのケースにおいて、軽鎖に対する重鎖の比率は増大し、転写産物プロファイルの全体的な改善は、12日間の流加培養の後のC2(LL HH)プールのmAbの産生量をC6(LH LH)プールと比較して増大させた(図4B)。各ベクター構造の6つのmAb全てでの転写産物プロファイルの持続的なパターン、および産生量の一貫した向上は、この研究からの学習が標準的なmAbに普遍的に適用され得、事前の合理的な発現ベクターの設計を可能にすることを示唆している。
【0125】
(実施例2)
デュアルランディングパッドCHO細胞系での、ベクター内のmAb融合タンパク質コード遺伝子の順序および位置の影響の評価
目的:
この実施例では、デュアルランディングパッドCHO細胞系における、転写および力価に対する、発現ベクター内でのmAb融合タンパク質(抗体重鎖、抗体軽鎖、および抗体重鎖サイトカイン融合体)のポリペプチドをコードする3つの異なる遺伝子の位置の影響を評価した。
【0126】
材料および方法:
別段の記載がない限り、材料および方法は、使用した、mAb融合タンパク質のポリペプチドをコードする遺伝子を除いて(実施例1の標準的なmAb重鎖および軽鎖遺伝子の代わりに)、実施例1で記載した通りに使用した。
【0127】
mAb融合タンパク質は、3つの異なるポリペプチド種:i)抗体重鎖(HC)、ii)抗体軽鎖(LC)、およびiii)抗体重鎖サイトカイン融合体(HC-F)(重鎖のC末端に共有結合しているサイトカイン)を有している。mAb融合タンパク質におけるこれらのポリペプチド種の比率は、1重鎖:1重鎖サイトカイン融合体:2軽鎖(1HC:1HC-F:2LC)である。mAb融合タンパク質はまた、mAbの重鎖のうちの1つのN末端にサイトカインが共有結合している、標準的なmAbとしても記載される。
【0128】
表4に示すように、2つの異なる発現ベクター構造を評価のために選択した。
【0129】
【表4】
【0130】
構造C1は、1重鎖(HC):1重鎖サイトカイン融合体(HC-F):2軽鎖(LC)という所望の比率に近い転写産物レベルとなるように、表3の情報に基づいて設計した。構造C2は、表3の情報に基づいて設計したが、大きな重鎖サイトカイン融合ポリペプチドの翻訳および/または安定性の比率が標準的な重鎖ポリペプチドと比較して潜在的に異なることも考慮し、したがって、HCと比較した、HC-Fの翻訳および/または安定性の予想される低減を補うために、HC転写産物よりも多くのHC-F転写産物を生成することを目的とした。
【0131】
結果:
各ベクター構造の予測されたおよび観察された転写産物レベルを図5Aに示す。図5Aに示されるように、構造1(C1)および構造2(C2)の両方で、全ての遺伝子の観察された転写産物レベルは、それぞれの構造における遺伝子の予測された転写産物レベルとほとんど適合していた。具体的には、ベクター構造C1は、転写産物の予測された1HC:1HC-F:2LCという比率に非常に近かったが、構造C2は、予測された、HCと比較して多くのHCF転写産物を示している。
【0132】
細胞から得られる抗体力価もまた評価した。12日間の流加の後に良好な産生量が両構造で見られ、構造C1はC2よりも高い生産量を示した(それぞれ、約5500mg/L対約3800mg/L)(図5B)。
【0133】
還元SDS-PAGE分析のデンシトメトリーを介して測定されたポリペプチドレベルは、構造C1ではHC-Fに対して過剰なHCを、構造C2ではほぼ等しいレベルのHCおよびHC-Fを示し(図5C)、このことは、より大きなHC-Fポリペプチドで翻訳率/安定性が低減していることを示唆している。次に、産物品質分析を、分析用サイズクロマトグラフィー(「SEC」)およびキャピラリーゲル電気泳動(「cGE」)を介して、C1およびC2産物で行った。結果を表5に示す。
【0134】
【表5】
【0135】
図5Aおよび表5のデータは、構造C1は標的化された1HC:1HC-F:2LC比に最も近い転写産物比率を有していたが(図5A)、HC-Fポリペプチドの翻訳率および/または安定性の低減が余剰のHCポリペプチドを生じさせ、これがおそらく、C1産物における低分子量種(「LMMS」)のパーセンテージの増大をもたらした(表5)ことを示した。逆に、構造C2から生じた産物は優れた品質プロファイルを示し(表5)、これは、例えば、C1と比較した、C2における、はるかに高い目的のタンパク質(POI)の%(POIはmAb融合タンパク質である)およびインタクトタンパク質の%、ならびにはるかに低いLMMS%によって証明され、このことは、C2産物のほとんどがインタクトなmAb融合タンパク質であるが、C1の産物のほぼ半分がLMMSであることを示している。C2構造からの産物の優れた品質プロファイルは、同様のレベルのHCおよびHC-Fポリペプチドの存在に起因する可能性が高い(図5C)。
【0136】
全体として、この実施例のデータは、デュアル発現ベクターに基づくタンパク質発現系の一部としてのmAb融合タンパク質の産生にとっての、C2ベクター構造(LC-LC/HC-F-HC)の利益を示している。
【0137】
開示された教示は、種々の適用、方法、キットおよび組成物に関して記載されてきたが、種々の変化および改変が、本明細書の教示および以下の特許請求された本発明から逸脱することなしになされ得ることが理解される。上述の実施例は、開示された教示をよりよく説明するために提供されるのであって、本明細書に提示された教示の範囲を限定する意図はない。本明細書の教示は、これらの例示的な実施形態に関連して記載されてきたが、当業者は、これらの例示的な実施形態の多数のバリエーションおよび改変が、過度の実験なしに可能であることを容易に理解する。全てのかかるバリエーションおよび改変は、本明細書の教示の範囲内である。
【0138】
特許、特許出願、論文、教科書などを含む、本明細書で引用された全ての参考文献、およびそれらの中で引用された参考文献は、まだ引用されていない範囲まで、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。定義された用語、用語の用法、記載された技術などが含まれるがこれらに限定されない、組み込まれた文献および同様の資料のうち1つまたは複数が、本出願とは異なる場合または本出願と矛盾する場合には、本出願が支配する。
【0139】
先の記載および実施例は、本発明のある特定の具体的な実施形態を詳述し、本発明者らによって検討される最良の態様を記載している。しかし、先の記載が本明細書においていかに詳述されていても、本発明は多くの手段で実施され得、本発明は添付の特許請求の範囲およびあらゆるそれらの同等物に従って解釈されるべきであることが理解されよう。
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図4
図5-1】
図5-2】
【国際調査報告】