(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】触媒コーティング膜(CCM)を製造するための触媒インクの調製
(51)【国際特許分類】
H01M 4/88 20060101AFI20240719BHJP
H01M 4/92 20060101ALI20240719BHJP
H01M 4/90 20060101ALI20240719BHJP
H01M 4/96 20060101ALI20240719BHJP
H01M 4/86 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
H01M4/88 K
H01M4/92
H01M4/90 M
H01M4/96 B
H01M4/86 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506152
(86)(22)【出願日】2022-08-02
(85)【翻訳文提出日】2024-02-28
(86)【国際出願番号】 SG2022050555
(87)【国際公開番号】W WO2023014300
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】10202108416X
(32)【優先日】2021-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510338259
【氏名又は名称】テマセク ポリテクニック
【氏名又は名称原語表記】TEMASEK POLYTECHNIC
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】チュン,メイ リン
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ミン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,レイ
(72)【発明者】
【氏名】チュア,チェン ラム,ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】リュウ,リジュン
【テーマコード(参考)】
5H018
【Fターム(参考)】
5H018AA06
5H018BB00
5H018BB08
5H018BB11
5H018BB12
5H018EE03
5H018EE05
5H018EE10
5H018EE18
5H018HH00
5H018HH03
5H018HH05
5H018HH10
(57)【要約】
本発明は、触媒インク配合物の調製のためのプロセスに関し、前記プロセスは下記ステップを含む:(i)ボールミリングに供せられた、触媒、イオノマーおよび水を含む混合物を提供するステップ;ならびに、(ii)混合物を超音波処理ステップに約1分~約1時間の期間の間、供するステップ。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒インク配合物の調製のためのプロセスであって、
(i)ボールミリングに供せられた、触媒、イオノマーおよび水を含む混合物を提供するステップ;ならびに
(ii)前記混合物を超音波処理ステップに約1分~約1時間の期間の間、供するステップ
を含む、プロセス。
【請求項2】
ボールミリングに供せられた、触媒、イオノマーおよび水を含む、前記混合物は、下記のステップにより得られる、請求項1に記載のプロセス:
(a)触媒、イオノマーおよび水を含む混合物を提供するステップ;
(b)前記混合物をボールミリングステップに約1~約20分の期間の間、供するステップ;ならびに
(c)前記粉砕された混合物を濾過するステップ。
【請求項3】
ステップ(ii)前に、ステップ(c)からの前記濾過した混合物はC
1-4アルコールおよびそれらの混合物からなる群より選択される有機希釈剤で希釈され、
任意で、前記有機希釈剤は、プロパン-1-オールおよびプロパン-2-オールからなる群より選択され、
任意で、有機希釈剤対触媒の重量比は約3:1~約10:1である、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
ステップ(i)における前記混合物は、有機溶媒をさらに含み、
任意で、前記有機溶媒はアルコールを含み、
より任意で、前記有機溶媒は、エタノール、プロパン-1-オールおよびプロパン-2-オールからなる群より選択される1つ以上を含む、前記請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
触媒、イオノマーおよび水を含む前記有混合物は約1:3~約1:15のX:Y比を有し、
Xは、触媒(全ての固体担体を含む)、およびイオノマーの総質量であり;ならびに
Yは、水ならびに、存在すれば、有機希釈剤および/または有機溶媒の総質量であり、
任意で、前記X:Y比は約1:5~約1:10である、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
触媒、イオノマーおよび水を含む前記混合物は3~30wt%、任意で5~20wt%の固形分を有する、請求項2に記載の、または請求項2に従属する請求項3~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記触媒は、白金、ルテニウム、オスミウム、白金-ルテニウム合金、白金-オスミウム合金、白金-パラジウム合金、白金-M合金およびそれらの組み合わせからなる群より選択され、Mは、Ga、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sn、Mo、W、Rhおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される遷移金属であり、
任意で、前記触媒は、白金、白金-ルテニウム合金、白金-オスミウム合金、白金-パラジウム合金、白金-M合金およびそれらの組み合わせからなる群より選択され、Mは、Ga、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sn、Mo、W、Rhおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される遷移金属であり、
より任意で、前記触媒は白金である、前記請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記触媒は固体担体上で提供され、
任意で、前記固体担体は炭素担体である、前記請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記イオノマーはペルフルオロポリマーを含み、
任意で、前記イオノマーはスルホン化テトラフルオロエチレンに基づくフルオロポリマー-コポリマーを含む、前記請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
ステップ(i)における前記混合物中の触媒(全ての固体担体を含む)対イオノマーの重量比は約1:1~約5:1、任意で約1.5:1~約4:1である、前記請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
ステップ(i)における前記混合物中の触媒(全ての固体担体を含む)対水の重量比は約1:2~約1:5、任意で約1:2~約1:3である、前記請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記ボールミリングステップはジルコニアボールを使用して実施され、
任意で、前記ジルコニアボールは約2~約8mm、例えば約5mmの平均直径を有する、請求項2、または請求項2に従属する請求項3~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記ボールミリングステップは遊星ボールミルを使用して実施される、請求項2、または請求項2に従属する請求項3~12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記ボールミリングステップは、約100rpm~約500rpm、
任意で約200rpm~約400rpm、
より任意で約250rpm~約350rpm
の回転速度で実施される、請求項2、または請求項2に従属する請求項3~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記ボールミリングステップは、約3~約15分の期間の間、
任意で約4~約10分の期間の間、実施される、前記請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記濾過ステップは、約20~約100ミクロンの細孔サイズ、
任意で約30~約45ミクロンの細孔サイズ
を有するフィルタを使用して実施される、請求項2、または請求項2に従属する請求項3~15のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
前記超音波処理ステップは、約10分~約40分、
任意で約15分~約30分
の期間の間実施される、前記請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項18】
前記超音波処理ステップは、約20kHz~約30kHzの周波数で実施される、前記請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項19】
下記ステップをさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載のプロセス:
(iii)前記触媒インク配合物を膜上に噴霧コーティングするステップ。
【請求項20】
下記ステップをさらに含む、請求項19に記載のプロセス:
(iv)前記触媒コーティング膜を燃料電池に組み込むステップ。
【請求項21】
下記ステップを含む、触媒コーティング膜を形成するプロセス:
(A)ボールミリング、続いて超音波処理に供せられた、触媒、イオノマーおよび水を含む触媒インク配合物を提供するステップ;ならびに
(B)前記触媒インク配合物を膜上に噴霧コーティングするステップ。
【請求項22】
前記触媒インク配合物は請求項1~18のいずれか一項に記載の方法により調製される、請求項21に記載のプロセス。
【請求項23】
下記ステップをさらに含む、請求項21または22に記載のプロセス:
(C)前記触媒コーティング膜を燃料電池に組み込むステップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒コーティング膜において有用な触媒インク配合物の調製のためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
触媒コーティング膜(CCM)は燃料電池における重要なスタック構成要素である。CCMは燃料の電気エネルギーへの電気化学的変換を促進する。CCMは典型的には、電極の各々(すなわち、アノードおよびカソード)と電気接触するプロトン交換膜を含む。CCMは典型的には貴金属触媒を利用し、反応物の電極への拡散を可能にする。
【0003】
CCMは典型的には貴金属触媒のために非常に高価であり、そのため、燃料電池商業化と関連する重要課題は高いコストである。
【0004】
CCMの調製のための2つの主な商業的プロセスが存在する。
(a)電極触媒層を、可撓性基材を介して膜表面に転写する。
(b)直接噴霧堆積、この場合、触媒層が膜表面上で直接噴霧される。
【0005】
電極触媒層を、可撓性基材を介して膜表面に転写することは複数のステップを含む。US20110217621A1号は、触媒コーティング膜を、電極触媒層が可撓性基材を介して膜表面に転写されるロール・ツー・ロール製造方法を介して形成するためのプロセスを記載する。しかしながら、これには、多くの複雑なステップおよび電極触媒を基材上に最初にコーティングし、その後、それを膜に転写する退屈なプロセスが含まれ、高いコストにつながる。米国特許第.5,234,777号は、デカールプロセスにより触媒層を直接、プロトン伝導膜上で形成するための方法に関し、これにより、触媒層組成物が、支持体上にコーティングされ、次いで、剥がされ、薄い触媒フィルムが得られる。触媒フィルムはプロトン交換膜の表面上に押圧され、完全な触媒層が形成される。しかしながら、デカール転写法を使用する不利点としては、触媒粒子の不十分な分散およびこのホットプレスプロセス中の触媒劣化が挙げられる。亀裂などの欠陥は、転写および剥離ステップ中に起こる可能性があり、膜上への転写中の触媒損失につながる(すなわち、全ての触媒が、膜に転写されるとは限らない)。
【0006】
直接噴霧堆積プロセスは、触媒層を直接、膜表面上にコーティングすることにより関連するステップを簡略化した。US特許出願第20080206616A1号およびUS6,221,523B1号は、直接噴霧堆積プロセスを採用し、この場合、触媒層は直接、膜に適用される。そのプロセスは、複数の積層触媒層が、交互の噴霧および蒸発ステップにより、直接、膜上に形成されることを要求した。複数の層は異なる平均粒子サイズを有する触媒粒子を含む、複数のインクから形成される。このプロセスの不都合な点は、複数のインクを必要とすることであり、触媒の高い廃棄、ならびに噴霧プロセス中の凝集およびノズル閉塞という結果になる。アプローチはまた時間がかかり、というのも、多くの異なる噴霧ステップが必要とされるからであり、異なるインクは触媒層間の欠陥または他の構造的な問題という結果になり得る。
【0007】
よって、噴霧堆積プロセスによって膜に容易に適用することができ、これにより、高い廃棄なしにCCMが形成される、触媒インク配合物を調製するための効率的なプロセスが必要とされる。
【発明の概要】
【0008】
発明者らは驚いたことに、先行技術と関連する問題は、本明細書で記載されるプロセスにより克服されることを見出した。特に、発明のプロセスにより、均質触媒インク配合物の調製が可能になり、これは、噴霧コーティングにより膜に直接適用することができ、CCM上に均質触媒コーティングが形成される。本発明により生成されたインクはまた、噴霧コーティング中のノズル閉塞の可能性を低減させる。
【0009】
よって、発明は、下記を提供する。
【0010】
1.触媒インク配合物の調製のためのプロセスであって、前記プロセスは下記ステップを含む、プロセス:
(i)ボールミリングに供せられた、触媒、イオノマーおよび水を含む混合物を提供するステップ;ならびに
(ii)混合物を超音波処理ステップに約1分~約1時間の期間の間、供するステップ。
【0011】
2.項1によるプロセスであって、ボールミリングに供せられた、触媒、イオノマーおよび水を含む混合物は、下記のステップにより得られる、プロセス:
(a)触媒、イオノマーおよび水を含む混合物を提供するステップ;
(b)混合物をボールミリングステップに約1~約20分の期間の間、供するステップ;ならびに
(c)粉砕された混合物を濾過するステップ。
【0012】
3.項2によるプロセスであって、ステップ(ii)前に、ステップ(c)からの濾過した混合物は、C1-4アルコールおよびそれらの混合物からなる群より選択される有機希釈剤で希釈され、
任意で、有機希釈剤は、プロパン-1-オールおよびプロパン-2-オールからなる群より選択され、
任意で、有機希釈剤対触媒の重量比は約3:1~約10:1である、プロセス。
【0013】
4.前記項のいずれか一つによるプロセスであって、ステップ(i)における混合物は、有機溶媒をさらに含み、
任意で、有機溶媒はアルコールを含み、
より任意で、有機溶媒は、エタノール、プロパン-1-オールおよびプロパン-2-オールからなる群より選択される1つ以上を含む、プロセス。
【0014】
5.項4によるプロセスであって、触媒、イオノマーおよび水を含む混合物は約1:3~約1:15のX:Y比を有し、
Xは、触媒(全ての固体担体を含む)、およびイオノマーの総質量であり;ならびに
Yは、水ならびに、存在すれば、有機希釈剤および/または有機溶媒の総質量であり、
任意で、X:Y比は約1:5~約1:10である、プロセス。
【0015】
6.項2による、または、項2に従属する項3~5のいずれか一つによるプロセスであって、触媒、イオノマーおよび水を含む混合物は3~30wt%、任意で5~20wt%の固形分を有する、プロセス。
【0016】
7.前記項のいずれか一つによるプロセスであって、触媒は、白金、ルテニウム、オスミウム、白金-ルテニウム合金、白金-オスミウム合金、白金-パラジウム合金、白金-M合金およびそれらの組み合わせからなる群より選択され、Mは、Ga、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sn、Mo、W、Rhおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される遷移金属であり、
任意で、触媒は、白金、白金-ルテニウム合金、白金-オスミウム合金、白金-パラジウム合金、白金-M合金およびそれらの組み合わせからなる群より選択され、Mは、Ga、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sn、Mo、W、Rhおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される遷移金属であり、
より任意で、触媒は白金である、プロセス。
【0017】
8.前記項のいずれか一つによるプロセスであって、触媒は固体担体上で提供され、
任意で、固体担体は炭素担体である、プロセス。
【0018】
9.前記項のいずれか一つによるプロセスであって、イオノマーはペルフルオロポリマーを含み、
任意で、イオノマーはスルホン化テトラフルオロエチレンに基づくフルオロポリマー-コポリマーを含む、プロセス。
【0019】
10.前記項のいずれか一つによるプロセスであって、ステップ(i)における混合物中の触媒(全ての固体担体を含む)対イオノマーの重量比は約1:1~約5:1、任意で約1.5:1~約4:1である、プロセス。
【0020】
11.前記項のいずれか一つによるプロセスであって、ステップ(i)における混合物中の触媒(全ての固体担体を含む)対水の重量比は約1:2~約1:5、任意で約1:2~約1:3である、プロセス。
【0021】
12.項2または項2に従属する項3~11のいずれか一つによるプロセスであって、ボールミリングステップはジルコニアボールを使用して実施され、
任意で、ジルコニアボールは約2~約8mm、例えば約5mmの平均直径を有する、プロセス。
【0022】
13.項2または項2に従属する項3~12のいずれか一つによるプロセスであって、ボールミリングステップは遊星ボールミルを使用して実施される、プロセス。
【0023】
14.項2または項2に従属する項3~13のいずれか一つによるプロセスであって、ボールミリングステップは約100rpm~約500rpm、
任意で約200rpm~約400rpm、
より任意で約250rpm~約350rpm
の回転速度で実施される、プロセス。
【0024】
15.前記項のいずれか一つによるプロセスであって、ボールミリングステップは約3~約15分の期間の間、
任意で約4~約10分の期間の間、実施される、プロセス。
【0025】
16.項2または項2に従属する項3~15のいずれか一つによるプロセスであって、濾過ステップは、約20~約100ミクロンの細孔サイズ、
任意で約30~約45ミクロンの細孔サイズ
を有するフィルタを使用して実施される、プロセス。
【0026】
17.前記項のいずれか一つによるプロセスであって、超音波処理ステップは約10分~約40分、
任意で約15分~約30分の期間の間、実施されるプロセス。
【0027】
18.前記項のいずれか一つによるプロセスであって、超音波処理ステップは約20kHz~約30kHzの周波数で実施される、プロセス。
【0028】
19.前記項のいずれか一つによるプロセスであって、下記ステップをさらに含む、
プロセス:
(iii)触媒インク配合物を膜上に噴霧コーティングするステップ。
【0029】
20.項19によるプロセスであって、下記ステップをさらに含む、プロセス:
(iv)触媒コーティング膜を燃料電池に組み込むステップ。
【0030】
21.触媒コーティング膜を形成するプロセスであって、下記ステップを含むプロセス:
(A)ボールミリング、続いて超音波処理に供せられた、触媒、イオノマーおよび水を含む触媒インク配合物を提供するステップ;ならびに
(B)触媒インク配合物を膜上に噴霧コーティングするステップ。
【0031】
22.項21によるプロセスであって、触媒インク配合物は項1~18のいずれか一つによる方法により調製される、プロセス。
【0032】
23.項21または22によるプロセスであって、下記ステップをさらに含む、プロセス:
(C)触媒コーティング膜を燃料電池に組み込むステップ。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明により調製した触媒インク、および従来の方法により調製したものを使用して調製した燃料電池の電力および電圧を対比させる図である。
【
図2】触媒インク配合物の稠度に関するボールミリングステップの長さの効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
触媒インク配合物は典型的には、イオノマー(プロトン伝導ポリマー)、触媒、および1つ以上の溶媒を含む。
【0035】
好適なイオノマーの例としては、ペルフルオロポリマー、例えば、スルホン化ペルフルオロポリマー、例えばスルホン化テトラフルオロエチレンに基づくフルオロポリマー-コポリマーが挙げられる。
【0036】
好適な触媒の例としては、白金、ルテニウム、オスミウム、白金-ルテニウム合金、白金-オスミウム合金、白金-パラジウム合金、白金-M合金およびそれらの組み合わせが挙げられ、Mは、Ga、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sn、Mo、W、Rhおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される遷移金属である。
【0037】
触媒インク配合物において有用な好適な溶媒の例としては、水、有機溶媒およびそれらの混合物が挙げられる。好適な有機溶媒は水と混和することができ、例えば、有機溶媒はアルコール、例えば、C1-4アルコールまたはそれらの混合物であってもよい。触媒インク配合物において使用することができる特定的な有機溶媒の例としては、エタノール、プロパン-1-オールおよびプロパン-2-オールが挙げられる。
【0038】
触媒インク配合物は典型的には、上記成分を一緒に混合し、処理ステップを実施して配合物を均質化することにより調製されるが、発明者らは驚いたことに、ステップの特定の順序を制御することにより、都合よく高い均質性を有する改善された配合物が、得られ得ることを見出した。
【0039】
よって、発明者らは、改善された触媒インク配合物が、下記一般的方法により得られ得ることを見出した。
1.制御された粘度/固体:液体成分の比を有する、イオノマー、触媒、および溶媒(例えば、水および/または有機溶媒)を含む混合物を調製すること
2.混合物を短いボールミリングステップに供すること
3.混合物を濾過し、それを有機希釈剤で希釈すること
4.希釈した混合物を超音波処理すること
5.超音波処理した混合物を噴霧コーティングすること。
【0040】
特に、発明者らは驚いたことに、希釈および超音波処理前にボールミリングを使用すると、優れた均質性を有する触媒インク配合物が得られ、および、噴霧コーティング後に優れた触媒コーティング膜が得られることを見出した。そのような触媒コーティング膜を組み込んだ燃料電池は、実施例で示されるように、改善された性能を有する。これらの利益は、ボールミリングおよび超音波処理がこの正確な順序で使用されないと、または、混合物が超音波処理前に有機希釈剤で希釈されないと得られない。
【0041】
混合物が超音波処理前に希釈されないと、そうすると、噴霧コーティングのために使用される配合物は、粘性すぎて、効率的な噴霧コーティングができない。混合物が超音波処理後のみ、かつ、噴霧コーティング前に希釈されると、そうすると、それは、要求される均質性を有さないであろう。しかしながら、より希釈された混合物がステップ1および2のために使用された場合、そうすると、ボールミリングにより固体成分の有効な分散が得られない。というのも、ボールミリングは、少量の液体を有する高粘性混合物にとって最も有効となるからである。
【0042】
そのため、以上で設定されるステップの特定の順序により、より有利な方法および触媒インク配合物が得られると考えられ、より容易な噴霧コーティングが可能になり、より効率的なプロセスを用いて触媒コーティング膜を生成させ、触媒損失を低減させることができる。
【0043】
以上によれば、発明は、触媒インク配合物の調製のためのプロセスを提供し、前記プロセスは下記ステップを含む:
(i)ボールミリングに供せられた、触媒、イオノマーおよび水を含む混合物を提供するステップ;ならびに
(ii)混合物を超音波処理ステップに約1分~約1時間の期間の間、供するステップ。
【0044】
本明細書で示される「含む」という単語は言及された特徴を必要とするが、他の特徴の存在を制限しないものと解釈することができる。あるいは、「含む」という単語はまた、列挙された構成要素/特徴のみが存在することが意図される状況に関連し得る(例えば、含む」という単語は、「から構成される」または「から本質的に構成される」という句にとって代わられる可能性がある)。より広い、または、より狭い解釈の両方が、本発明の全ての態様および実施形態に適用できることが明確に企図される。言い換えれば、「含む」という単語およびその同義語は、「から構成される」という句または「から本質的に構成される」という句またはそれらの同義語によりとって代わられる可能性があり、逆の場合も同じである。
【0045】
「から本質的に構成される」という句およびその仮名(pseudonym)は、微量の不純物が存在する可能性がある材料を示すと、本明細書では解釈することができる。例えば、材料は90%以上純粋、例えば、95%超純粋、例えば、97%超純粋、例えば、99%超純粋、例えば、99.9%超純粋、例えば、99.99%超純粋、例えば、99.999%超純粋、例えば、100%純粋であってもよい。
【0046】
本明細書では、単数形「1つの(a、an)」および「その(the)」は、文脈で明確に別記されない限り、複数の指示対象を含む。よって、例えば、「1つの組成物」への言及は2つ以上のそのような組成物の混合物を含み、「1つの酸素担体」への言及は2つ以上のそのような酸素担体の混合物を含み、「その触媒」への言及は2つ以上のそのような触媒の混合物を含む、など。
【0047】
IUPACゴールドブックで規定されるように、触媒は反応における全体の標準Gibbsエネルギー変化を改変せずに、反応速度を増加させる種である。「触媒」という用語が本明細書で使用される場合、それは燃料電池により使用される燃料のプロトンおよび電子を含む成分(それらは燃料電池により使用され、電流が生成される)への分解を触媒することができる触媒を示す。
【0048】
本明細書で言及され得る発明のいくつかの実施形態では、触媒は、白金、ルテニウム、オスミウム、白金-ルテニウム合金、白金-オスミウム合金、白金-パラジウム合金、白金-M合金およびそれらの組み合わせからなる群より選択される1つ以上を含んでもよく、Mは、Ga、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sn、Mo、W、Rhおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される遷移金属である。
【0049】
本明細書で言及され得る発明のいくつかの実施形態では、触媒は、白金、白金-ルテニウム合金、白金-オスミウム合金、白金-パラジウム合金、白金-M合金およびそれらの組み合わせからなる群より選択される1つ以上を含んでもよく、Mは、Ga、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sn、Mo、W、Rhおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される遷移金属である。
【0050】
本明細書で言及され得る発明のいくつかの実施形態では、触媒は、白金を含み得る。
【0051】
本明細書で言及され得る発明のいくつかの実施形態では、触媒は固体担体上で提供され得る。これは、固体担体が高い表面積を有する場合に特に有利となり得る。本明細書で言及され得る好適な固体担体の一例は炭素である。
【0052】
本明細書では、「イオノマー」という用語は、巨大分子からなるポリマーを示し、その中で、構成単位の一部はイオン基またはイオン化可能基、または両方を有する。誤解を避けるために、「イオノマー」という用語は本明細書では、ポリマーを示し、イオノマーが市販配合物の一部として提供され得る溶媒を含まない。
【0053】
本明細書で言及され得る発明のいくつかの実施形態では、イオノマーはペルフルオロポリマーを含み得る。本明細書で言及され得る発明のいくつかの実施形態では、イオノマーはスルホン化ペルフルオロポリマー、例えばスルホン化テトラフルオロエチレンに基づくフルオロポリマー-コポリマーを含み得る。
【0054】
発明のステップ(i)における混合物は水を含む。本明細書で言及され得る発明のいくつかの実施形態では、水は脱イオン水、例えば、25℃で18MΩ・cmを超える抵抗率を有する脱イオン水であってもよい。
【0055】
本明細書で言及され得る発明のいくつかの実施形態では、ボールミリングに供せられた、触媒、イオノマーおよび水を含む混合物は、下記ステップにより得られ得る:
(a)触媒、イオノマーおよび水を含む混合物を提供するステップ;
(b)混合物をボールミリングステップに約1~約20分の期間の間、供するステップ;ならびに
(c)粉砕された混合物を濾過するステップ。
【0056】
短いボールミリング時間(1~20分)の使用により、触媒インクの生産時間が低減し、よって、商業的にコストが低減する。加えて、従来のボールミリングプロセス(1~24時間)の使用では、しばしば、触媒インク配合物中の材料の分解および分離という結果になる。そのため、より短いボールミリング時間の使用は、実施例で示されるように、非常に有利となる。
【0057】
本明細書で言及され得る発明のいくつかの実施形態では、ステップ(ii)前に、ステップ(c)からの濾過した混合物は、有機希釈剤、例えば、C1-4アルコール(例えばプロパン-1-オールまたはプロパン-2-オール)で希釈され得る。有機希釈剤(例えばC1-4アルコール)対触媒の重量比は、約3:1~約10:1であってもよい。理論に縛られないが、この重量比により、有効な噴霧コーティングを可能にする粘度が得られ得ると考えられる。
【0058】
本明細書で言及され得る発明のいくつかの実施形態では、ステップ(i)における混合物は、有機溶媒をさらに含み得る。これはイオノマーの溶解度を改善するのに望ましい可能性がある。有機溶媒は水と混和することができ、アルコール(例えばC1-4アルコール)を含み得る。このために好適な有機溶媒の具体例としては、エタノール、プロパン-1-オールおよびプロパン-2-オールからなる群より選択される1つ以上の有機溶媒が挙げられる。
【0059】
本明細書で言及され得る発明のいくつかの実施形態では、触媒、イオノマーおよび水を含む混合物は、約1:3~約1:15のX:Y比を有してもよく、
Xは、触媒(全ての固体担体を含む)、およびイオノマーの総質量であり;ならびに
Yは、水ならびに、存在すれば、有機希釈剤および/または有機溶媒の総質量である。
【0060】
本明細書で言及され得る発明のいくつかの実施形態では、X:Y比は、約1:5~約1:10であってもよい。
【0061】
理論に縛られないが、これらの比により、有効なボールミリングに適切な粘度を有する混合物が得られると考えられる。これにより確実に、大きな凝集体が分解され、イオノマーが触媒上で均一に分配される。
【0062】
そのため、本明細書で言及され得る発明のいくつかの実施形態では、触媒、イオノマーおよび水を含む混合物は3~30wt%、例えば5~20wt%の固形分を有し得る。これらの重量パーセント範囲は、ボールミリングに適切な粘度となると考えられる。誤解を避けるために、「固体」という用語は本明細書でこの状況では、溶質として存在する材料を、そのような材料がそうでなければ、標準温度および圧力下、固体状態で存在したとしても、含まない。言い換えれば、イオノマーが溶液中に溶解して混合物中に存在する場合、それはこのパラメータの目的のために「固体」と考えられない。
【0063】
本明細書で言及され得る発明のいくつかの実施形態では、ステップ(i)における混合物中の触媒(全ての固体担体を含む)対イオノマーの重量比は、約1:1~約5:1、例えば約1.5:1~約4:1であってもよい。
【0064】
本明細書で言及され得る発明のいくつかの実施形態では、ステップ(i)における混合物中の触媒(全ての固体担体を含む)対水の重量比は、約1:2~約1:5、例えば、約1:2~約1:3であってもよい。
【0065】
本明細書で言及され得る発明のいくつかの実施形態では、ボールミリングステップは、任意の適切な装置、例えば遊星ボールミルを使用して実施され得る。
【0066】
本明細書で言及され得る発明のいくつかの実施形態では、ボールミリングステップは、約100rpm~約500rpm、例えば、約200rpm~約400rpm、例えば約250rpm~約350rpmの回転速度で実施され得る。
【0067】
本明細書で言及され得る発明のいくつかの実施形態では、ボールミリングステップは、約3~約15分の期間、例えば、約4~約10分の期間の間実施され得る。
【0068】
本明細書で言及され得る発明のいくつかの実施形態では、ボールミリングステップは、ジルコニアボールおよび/またはジルコニアすり鉢を使用して実施され得る。ボールミリングステップにおいて使用されるボールは任意の適切な直径を有し得る。本明細書で言及され得る発明のいくつかの実施形態では、ボールミリングボール(例えばジルコニアボール)は約2~約8mm、例えば約5mmの平均直径を有し得る。
【0069】
本明細書で言及され得る発明のいくつかの実施形態では、濾過ステップは、約20~約100ミクロンの細孔サイズ、例えば、約30~約45ミクロンの細孔サイズを有するフィルタを使用して実施され得る。発明において使用され得るフィルタの具体例は400メッシュフィルタである。
【0070】
本明細書で言及され得る発明のいくつかの実施形態では、超音波処理ステップは、約10分~約40分、例えば、約15分~約30分の期間の間実施され得る。
【0071】
本明細書で言及され得る発明のいくつかの実施形態では、超音波処理ステップは、約20kHz~約30kHz、例えば約25kHzの周波数で実施され得る。
【0072】
本明細書で記載されるように、触媒インク配合物は、触媒コーティング膜を形成するために使用され得る。よって、発明は、下記ステップをさらに含む、本明細書で記載されるプロセスを提供する:
(iii)触媒インク配合物を膜上に噴霧コーティングするステップ。
【0073】
噴霧コーティングステップは、膜のそれぞれの側に複数のコートを噴霧することを含み得る。コートの数は必要とされる触媒の充填[これは、カソード側(例えば0.4mg/cm2)およびアノード側(例えば0.1mg/cm2)では異なる]に基づいて計算することができる。噴霧プロセスは、噴霧コーティング前後での重量差に基づく理論計算に基づいて、所望の触媒充填達成後に中止することができる。
【0074】
例として、所望の充填が0.2mg/cm2であり、20×20cm膜上での3mLインクの単一噴霧サイクルが0.1mg/cm2触媒充填を達成する場合、そうすると、1つの追加の噴霧サイクルが実施されるであろう。
【0075】
触媒コーティング膜は燃料電池において有用となり得る。よって、発明はまた、下記ステップをさらに含むプロセスを提供する:
(iv)触媒コーティング膜を燃料電池に組み込むステップ。
【0076】
同様に、発明はまた、下記ステップを含む、触媒コーティング膜を形成するプロセスを提供する:
(A)ボールミリング、続いて超音波処理に供せられた、触媒、イオノマーおよび水を含む触媒インク配合物を提供するステップ;ならびに
(B)触媒インク配合物を膜上に噴霧コーティングするステップ。
【0077】
このプロセスにおいて使用される触媒インク配合物は本明細書で規定される方法により調製され得る。
【0078】
プロセスは、下記ステップをさらに含み得る:
(C)触媒コーティング膜を燃料電池に組み込むステップ。
【0079】
発明を下記実施例により説明する。実施例は、限定的なものとして解釈されるべきではない。
【0080】
実施例
一般的調製法1
1.6.25gの触媒粉末を秤量して、15gの脱イオン水中に分散させ、250mlジルコニアすり鉢内に入れてもよい。
2.5mmジルコニアボールおよび50gのNafion溶液(5重量%)をジルコニアすり鉢中に添加してもよい。すり鉢は気密シーリングカバーで被覆してもよい。
3.ボールミリングは遊星ボールミルPM100により、室温で、300rpmの回転速度で5分間実施してもよい(10分の総時間、1分間隔を含む)。
4.ボールミリングプロセスが完了した後、インク混合物を、400-メッシュフィルタに通して濾過してもよい。
5.30gのイソプロパノールを濾過したインク混合物に添加してもよい。
6.濾過したインク混合物を超音波処理器(25kHz)に、室温で15分間入れてもよく、所望の粘度を有する均質触媒インクが生成される。
7.得られたインク混合物を超音波シリンジホルダーに移し、少なくとも1/2時間プライミングして、噴霧コーティング前に、触媒パワー粒子の懸濁および均質性を維持してもよい。
【0081】
噴霧コーティングは、当技術分野で知られている標準方法を使用して実施され得る。例えば、噴霧コーティングステップは膜のそれぞれの側に、Sono-tek XYZモーション超音波コーティングシステム(モデル:ExactaCoat)を使用して、複数のコートを噴霧することを含んでもよい。コートの数は必要とされる触媒の充填[これはカソード側(例えば0.4mg/cm2)およびアノード側(例えば0.1mg/cm2)では異なる]に基づいて計算することができる。噴霧プロセスは、噴霧コーティング前後での重量差に基づく理論計算に基づいて、所望の触媒充填達成後に中止することができる。例として、所望の充填が0.2mg/cm2であり、20×20cm膜上での3mLインクの単一噴霧サイクルが0.1mg/cm2触媒充填を達成する場合、そうすると、1つの追加の噴霧サイクルが実施されるであろう。
【0082】
実施例1:非加湿システムのためのインク配合物
この実施例は、非加湿システム(オープンカソード)において有用なCCMの製造のためのインク配合物を記載する。そのような配合物はより高いパーセンテージのイオノマーを含み得る。
【0083】
(触媒粉末と比べて)40%の所望のイオノマー重量パーセンテージに基づき、インク混合物を、一般的調製法1に従うことにより、6.25gの触媒粉末(Tanaka TEC10V40E、40wt%Pt/C)、4.17gのNafion樹脂(79.61g Chemours D520、5重量%Nafion)および15gの脱イオン水を使用して調製した。ボールミリングを10分間300rpmで実施した。インク混合物を、400メッシュフィルタに通して濾過し、その後、30gのイソプロパノールを濾過したインク混合物に添加した。超音波処理を、室温で15分間、Elma多周波数超音波ユニット(モデル:TI-H-10)を25kHzで使用して実施した。
【0084】
インクにおける触媒(C)/イオノマー(I)重量比は1.5:1(すなわち6.25:4.17)であった。
【0085】
インクを膜基材上に、噴霧コーティングにより、Sono-tek XYZモーション超音波コーティングシステム(モデル:ExactaCoat)を使用して適用した。
【0086】
実施例2:加湿システムのためのインク配合物
この実施例は、加湿システム(クローズドカソード)において有用なCCMの製造のためのインク配合物を記載する。そのような配合物はより低いパーセンテージのイオノマーを含み得る。
【0087】
(触媒粉末と比べて)20%の所望のイオノマー重量パーセンテージに基づき、インク混合物を一般的調製法1に従うことにより、6.25gの触媒粉末(Tanaka TEC10V40E、40wt%Pt/C)、1.56gのNafion樹脂(29.64g Chemours D520、5重量%Nafion)および15g脱イオン水を使用して調製した。ボールミリングを10分間300rpmで実施した。インク混合物を、400メッシュフィルタに通して濾過し、その後、30gのイソプロパノールを濾過したインク混合物に添加した。超音波処理を、室温で15分間、Elma多周波数超音波ユニット(モデル:TI-H-10)を使用して25kHzで実施した。
【0088】
インクにおける触媒(C)/イオノマー(I)重量比は4:1(すなわち6.25:1.56)であった。
【0089】
インクを膜基材上に、噴霧コーティングにより、Sono-tek XYZモーション超音波コーティングシステム(モデル:ExactaCoat)を使用して適用した。
【0090】
発明は、噴霧コーティングにおいて直接、使用することができる均質触媒配合物を生成することにより、先行技術と関連する問題の多くを解決する。特に、発明は、噴霧コーティング中の触媒の凝集およびノズル閉塞の問題を克服する。
【0091】
実施例3:プロセスステップ順序の比較
2つのインク配合物を、1つの配合物では、一般的調製法1のステップ5のイソプロパノールを代わりに初期段階で添加し、その後にボールミリングしたことを除き、実施例1の方法により調製した。これにより、より希薄な4成分混合物がボールミリングステップ中に得られた(触媒、イオノマー溶液、イソプロパノールおよび水)。この方法により調製したインク配合物は、「4成分」インク配合物と呼ばれる。
【0092】
他の配合物を実施例1に従い調製し、これは、その後、「3成分」インク配合物と呼ばれる。
【0093】
2つの触媒インク配合物(「3成分」および「4成分」)をどちらも、以下に記載されるように燃料電池に組み込んだ。
【0094】
燃料電池を下記の通りに調製した。触媒インク配合物を膜基材上に、超音波コーティングシステム(ExactaCoat)により噴霧し、両方の配合物について8cm2の有効面積で同様の触媒充填を達成した。膜/電極接合体をアノード-膜-カソードサンドイッチから作製し、5-セルスタックを組立て、PEMFCテストを、社内燃料電池テストシステムを介して実施した。空冷式オープンカソードPEMFCスタックは、直列の5つのセルから構成され、8cm2の活性面積を有する。カソード流れ場のオープン構造を使用して、周囲空気を燃料電池に供給しながら、熱および水をもまた除去した。
【0095】
【表1】
分極曲線を、配合物の各々をコーティングしたCCMを使用して製造した5-セルスタックについて作成した(
図1)。
・イソプロパノールをステップ1で含有させた「4成分」インク配合物を使用して製造した5-セルスタックは性能の減少を有した。これは、ボールミリングに供された混合物が希薄すぎて、完全な均質化が得られなかったためと考えられる。
・対照的に、「3成分」インク配合物(すなわち、実施例1に従い調製された)を使用して製造した5-セルスタックは優れた性能を有した。
【0096】
実施例4:ボールミリング時間の比較
5時間の従来のボールミリング時間は触媒インク混合物の温度の増加を引き起こし、高せん断プロセス中でのイオノマーの熱分解および脱重合につながる。
図2(左)に示されるように、これにより、混合物の分離という結果となった。
【0097】
対照的に、10分のより短いボールミリング時間(1分間隔を有する)は混合物を有利な温度範囲内で維持し、一方、粒子サイズの要求される低減および、炭素およびPtナノ粒子上でのイオノマーの均一な分配をも提供した。このより短いボールミリング時間では、
図2(右)に示されるように高い均質配合物が得られた。
【国際調査報告】