(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】タンパク質合成および分泌のための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20240719BHJP
C12N 15/53 20060101ALI20240719BHJP
C12N 15/55 20060101ALI20240719BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240719BHJP
C12P 21/00 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
C12N15/12
C12N15/53 ZNA
C12N15/55
C12N1/19
C12P21/00 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506169
(86)(22)【出願日】2022-07-29
(85)【翻訳文提出日】2024-04-01
(86)【国際出願番号】 IB2022057092
(87)【国際公開番号】W WO2023007468
(87)【国際公開日】2023-02-02
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524040270
【氏名又は名称】ヘライナ,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100122644
【氏名又は名称】寺地 拓己
(72)【発明者】
【氏名】ボテロ・ベサダ-ロンバナ,パメラ
(72)【発明者】
【氏名】カッツ,ローラ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064CA06
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA10
4B065AA72X
4B065AA90Y
(57)【要約】
ある側面において、合成分泌シグナルペプチドが本明細書において開示される。また、ある場合にはタンパク質コード配列に作動可能に連結された、そのようなシグナルペプチドをコードする核酸分子、ならびにそのような核酸分子を含む細胞も開示される。ポリペプチドに連結された本開示のシグナルペプチドを細胞において発現させることを含む、ポリペプチドを分泌するための方法がさらに開示される。特定の側面は、そのような方法によって産生されるタンパク質(例えばヒト乳タンパク質)、ならびにそのようなタンパク質を含む組成物を含む。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SEQ ID NO:1, 2、3または4に対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むポリペプチドをコードする単離された核酸。
【請求項2】
請求項1に記載の単離された核酸であって、配列がSEQ ID NO:1, 2、3、または4を含む単離された核酸。
【請求項3】
請求項1または2に記載の単離された核酸であって、該ポリペプチドがさらに哺乳動物タンパク質の配列を含む単離された核酸。
【請求項4】
請求項3に記載の単離された核酸であって、該哺乳動物タンパク質がヒト乳タンパク質である単離された核酸。
【請求項5】
請求項4に記載の単離された核酸であって、該ヒト乳タンパク質が、分泌型IgA(sIgA)、キサンチンデヒドロゲナーゼ、ラクトフェリン、ラクトペルオキシダーゼ、ブチロフィリン、ラクトアドヘリン、アディポネクチン、β-カゼイン、κ-カゼイン、レプチン、リゾチームまたはα-ラクトアルブミンである単離された核酸。
【請求項6】
請求項5に記載の単離された核酸であって、該ヒト乳タンパク質がヒトラクトフェリンである単離された核酸。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の単離された核酸であって、該配列が、SEQ ID NO:1に対して少なくとも90%の配列同一性を有する単離された核酸。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載の単離された核酸であって、該配列がSEQ ID NO:1を含む単離された核酸。
【請求項9】
請求項8に記載の単離された核酸であって、該単離された核酸がSEQ ID NO:41に対して少なくとも80%の同一性を有する核酸配列を含む単離された核酸。
【請求項10】
請求9に記載の単離された核酸であって、該核酸配列がSEQ ID NO:41を含む単離された核酸。
【請求項11】
請求項8に記載の単離された核酸であって、該ポリペプチドがSEQ ID NO:5を含む単離された核酸。
【請求項12】
請求項11に記載の単離された核酸であって、該単離された核酸がSEQ ID NO:46に対して少なくとも80%の同一性を有する核酸配列を含む単離された核酸。
【請求項13】
請求項12に記載の単離された核酸であって、該核酸配列がSEQ ID NO:46を含む単離された核酸。
【請求項14】
請求項1~6のいずれかに記載の単離された核酸であって、該配列がSEQ ID NO:2に対して少なくとも90%の配列同一性を有する単離された核酸。
【請求項15】
請求項1~6のいずれか一項に記載の単離された核酸であって、該配列がSEQ ID NO:2を含む単離された核酸。
【請求項16】
請求項15に記載の単離された核酸であって、該単離された核酸がSEQ ID NO:42に対して少なくとも80%の同一性を有する核酸配列を含む単離された核酸。
【請求項17】
請求項16に記載の単離された核酸であって、該核酸配列がSEQ ID NO:42を含む単離された核酸。
【請求項18】
請求項15に記載の単離された核酸であって、該ポリペプチドがSEQ ID NO:6を含む単離された核酸。
【請求項19】
請求項18に記載の単離された核酸であって、該単離された核酸がSEQ ID NO:47に対して少なくとも80%の同一性を有する核酸配列を含む単離された核酸。
【請求項20】
請求項19に記載の単離された核酸であって、該核酸配列がSEQ ID NO:47を含む単離された核酸。
【請求項21】
請求項1~6のいずれかに記載の単離された核酸であって、該配列が、SEQ ID NO:3に対して少なくとも90%の配列同一性を有する単離された核酸。
【請求項22】
請求項1~6のいずれか一項に記載の単離された核酸であって、該配列がSEQ ID NO:3を含む単離された核酸。
【請求項23】
請求項22に記載の単離された核酸であって、該単離された核酸がSEQ ID NO:43に対して少なくとも80%の同一性を有する核酸配列を含む単離された核酸。
【請求項24】
請求項23に記載の単離された核酸であって、該核酸配列がSEQ ID NO:43を含む単離された核酸。
【請求項25】
請求項22に記載の単離された核酸であって、該ポリペプチドがSEQ ID NO:7を含む単離された核酸。
【請求項26】
請求項25に記載の単離された核酸であって、該単離された核酸がSEQ ID NO:48に対して少なくとも80%の同一性を有する核酸配列を含む単離された核酸。
【請求項27】
請求項26に記載の単離された核酸であって、該核酸配列がSEQ ID NO:48を含む単離された核酸。
【請求項28】
請求項1~6のいずれかに記載の単離された核酸であって、該配列が、SEQ ID NO:4に対して少なくとも90%の配列同一性を有する単離された核酸。
【請求項29】
請求項1~6のいずれか一項に記載の単離された核酸であって、該配列がSEQ ID NO:4を含む単離された核酸。
【請求項30】
請求項29に記載の単離された核酸であって、該単離された核酸がSEQ ID NO:44に対して少なくとも80%の同一性を有する核酸配列を含む単離された核酸。
【請求項31】
請求項30に記載の単離された核酸であって、該核酸配列がSEQ ID NO:44を含む単離された核酸。
【請求項32】
請求項32に記載の単離された核酸であって、該ポリペプチドがSEQ ID NO:8を含む単離された核酸。
【請求項33】
請求項32に記載の単離された核酸であって、該単離された核酸がSEQ ID NO:49に対して少なくとも80%の同一性を有する核酸配列を含む単離された核酸。
【請求項34】
請求項33に記載の単離された核酸であって、該核酸配列がSEQ ID NO:49を含む単離された核酸。
【請求項35】
請求項1~34のいずれかに記載の核酸を含むベクター。
【請求項36】
請求項1~34のいずれかに記載の核酸または請求項35に記載のベクターを含む、操作された真核細胞。
【請求項37】
請求項36に記載の操作された真核細胞であって、該細胞が真菌細胞である操作された真核細胞。
【請求項38】
請求項37に記載の操作された真核細胞であって、該真菌細胞が、アルクスラ属、アスペルギルス属、オーランチオキトリウム属、カンジダ属、バッカクキン属、クリプトコッカス属、クスダマカビ属、ゲオトリクム属、ハンゼヌラ属、クルイウェロマイセス属、コダマエア属、コマガタエラ属、レウコスポリジエラ属、リポミセス属、モルティエラ属、オガタエア属、ピキア属、プロトテカ属、リゾープス属、ロドスポリジウム属、ロドトルラ属、サッカロマイセス属、シゾサッカロマイセス属、シロキクラゲ属、トリコスポロン属、ウィッカーハモマイセス属またはヤロウイア属の細胞である操作された真核細胞。
【請求項39】
請求項38に記載の操作された真核細胞であって、該細胞が酵母細胞である操作された真核細胞。
【請求項40】
請求項39に記載の操作された真核細胞であって、該酵母細胞がコマガタエラ属の細胞である操作された真核細胞。
【請求項41】
請求項40に記載の操作された真核細胞であって、該酵母細胞がコマガタエラ・パフィ、コマガタエラ・パストリスまたはコマガタエラ・シュードパストリス細胞である操作された真核細胞。
【請求項42】
請求項36~41のいずれか一項に記載の操作された真核細胞であって、該核酸が該細胞のゲノム中に組み込まれる操作された真核細胞。
【請求項43】
請求項36~41のいずれか一項に記載の操作された真核細胞であって、該核酸が該細胞のゲノム中に組み込まれない、操作された真核細胞。
【請求項44】
分泌タンパク質を産生するための方法であって、該方法が、細胞からポリペプチドを分泌するのに十分な条件下で請求項36~43のいずれか一項に記載の細胞を増殖させることを含む方法。
【請求項45】
請求項44に記載の方法であって、分泌タンパク質を収集することをさらに含む方法。
【請求項46】
請求項44または45に記載の方法であって、該分泌タンパク質がヒト乳タンパク質である方法。
【請求項47】
請求項46に記載の方法であって、該ヒト乳タンパク質が、分泌型IgA(sIgA)、キサンチンデヒドロゲナーゼ、ラクトフェリン、ラクトペルオキシダーゼ、ブチロフィリン、ラクトアドヘリン、アディポネクチン、β-カゼイン、κ-カゼイン、レプチン、リゾチーム、またはα-ラクトアルブミンである方法。
【請求項48】
請求項44~47のいずれか一項に記載の方法であって、該ヒト乳タンパク質が、1以上のヒト様N-グリカンを含む方法。
【請求項49】
請求項44~48のいずれか一項に記載の方法であって、さらに該ヒト乳タンパク質および乳児用調製粉乳の1以上の構成要素を含む混合物を生成することを含む方法。
【請求項50】
SEQ ID NO:1, 2、3または4に対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むポリペプチドをコードする核酸を含む、操作された酵母細胞。
【請求項51】
請求項50に記載の操作された酵母細胞であって、該配列がSEQ ID NO:1、2、3または4を含む操作された酵母細胞。
【請求項52】
請求項51に記載の操作された酵母細胞であって、該配列がSEQ ID NO:3を含む操作された酵母細胞。
【請求項53】
請求項50~52のいずれか一項に記載の操作された酵母細胞であって、該ポリペプチドが哺乳動物タンパク質の配列をさらに含む操作された酵母細胞。
【請求項54】
請求項53に記載の操作された酵母細胞であって、該哺乳動物タンパク質がヒト乳タンパク質である操作された酵母細胞。
【請求項55】
請求項54に記載の操作された酵母細胞であって、該ヒト乳タンパク質が、分泌型IgA(sIgA)、キサンチンデヒドロゲナーゼ、ラクトフェリン、ラクトペルオキシダーゼ、ブチロフィリン、ラクトアドヘリン、アディポネクチン、β-カゼイン、κ-カゼイン、レプチン、リゾチームまたはα-ラクトアルブミンである操作された酵母細胞。
【請求項56】
請求項55に記載の操作された酵母細胞であって、該ヒト乳タンパク質がヒトラクトフェリンである操作された酵母細胞。
【請求項57】
操作された酵母細胞であって、以下:
(a)以下を含むポリペプチドをコードする第1の核酸:
(i)SEQ ID NO:1、2、3または4に対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列および
(ii)ヒト乳タンパク質の配列;ならびに
(b)α-1,2-マンノシダーゼ(Man-I)タンパク質をコードする第2の核酸
を含み、該細胞が機能性OCH1タンパク質を発現しない操作された酵母細胞。
【請求項58】
請求項57に記載の操作された酵母細胞であって、該(i)の配列がSEQ ID NO:1、2、3または4を含む操作された酵母細胞。
【請求項59】
請求項57または58に記載の操作された酵母細胞であって、該ヒト乳タンパク質が、分泌型IgA(sIgA)、キサンチンデヒドロゲナーゼ、ラクトフェリン、ラクトペルオキシダーゼ、ブチロフィリン、ラクトアドヘリン、アディポネクチン、β-カゼイン、κ-カゼイン、レプチン、リゾチーム、またはα-ラクトアルブミンである操作された酵母細胞。
【請求項60】
請求項57に記載の操作された酵母細胞であって、該ヒト乳タンパク質がヒトラクトフェリンである操作された酵母細胞。
【請求項61】
請求項57に記載の操作された酵母細胞であって、該ヒト乳タンパク質がヒトα-ラクトアルブミンである操作された酵母細胞。
【請求項62】
請求項57~61のいずれか一項に記載の操作された酵母細胞であって、該Man-Iタンパク質がHDEL C末端タグに融合されている操作された酵母細胞。
【請求項63】
請求項57~62のいずれか一項に記載の操作された酵母細胞であって、さらに以下:
(a)N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼI(GnT-I)タンパク質;
(b)α-1,3/6-マンノシダーゼ(Man-II)タンパク質;
(c)β-1,2-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnT-II)タンパク質;および
(d)β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ(GalT)タンパク質;
の1以上をコードする第3の核酸をさらに含む操作された酵母細胞。
【請求項64】
ヒト様N結合型グリコシル化を有するヒト糖タンパク質を含む乳児用調製粉乳。
【請求項65】
請求項64に記載の乳児用調製粉乳であって、該ヒト糖タンパク質がヒト乳タンパク質である乳児用調製粉乳。
【請求項66】
請求項65に記載の乳児用調製粉乳であって、該ヒト乳タンパク質が、分泌型IgA(sIgA)、キサンチンデヒドロゲナーゼ、ラクトフェリン、ラクトペルオキシダーゼ、ブチロフィリン、ラクトアドヘリン、アディポネクチン、β-カゼイン、κ-カゼイン、レプチン、リゾチーム、またはα-ラクトアルブミンである乳児用調製粉乳。
【請求項67】
請求項66に記載の乳児用調製粉乳であって、該ヒト乳タンパク質がヒトラクトフェリンである乳児用調製粉乳。
【請求項68】
請求項64~67のいずれか1項に記載の乳児用調製粉乳であって、該ラクトフェリンが、ヒト母乳中に天然に存在するあらゆるヒトラクトフェリンのグリカンパターンとは異なるグリカンパターンを有する乳児用調製粉乳。
【請求項69】
請求項64~68のいずれか一項に記載の乳児用調製粉乳であって、該ヒト糖タンパク質が、請求項44~49のいずれか一項に記載の方法によって産生される乳児用調製粉乳。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
[0001] 本出願は、2021年7月30日に出願された米国仮出願第63/227,820号および2021年10月21日に出願された米国仮出願第63/273,858号に対する優先権およびその利益を主張し、それらは参照によりそのまま本明細書に援用される。
【0002】
配列リスト
[0002] 本出願は、XML形式で提出された配列リストを含有し、それは、参照によりそのまま本明細書に援用される。2022年7月76日に作成された前記XMLコピーは、HELA_P0005WO_Sequence_Listing.xmlと命名され、サイズは61,471バイトである。
【背景技術】
【0003】
I.技術分野
[0003] 本発明の側面は、少なくとも微生物学、遺伝学およびバイオテクノロジーの分野に関する。
【0004】
II.背景
[0004] 酵母は、その急速な増殖、高い細胞密度に達するその能力、定義された最小培地上で増殖するその能力、高いタンパク質収率を達成する、および真核生物の翻訳後修飾を実施するその能力のために、組換えタンパク質の生産に関する望ましい宿主である。タンパク質生産に関する最も適切な酵母は、ゲノム情報およびゲノム操作のための分子ツールが広く利用可能であるため、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)(コマガタエラ・パストリス(Komagataella pastoris)、コマガタエラ・パフィ(Komagataella phaffii))である。これらは、FDA基準に基づくGRAS成分の生産のためのピキア・パストリスの使用を可能にしてきた。
【0005】
[0005] 多様なバイオテクノロジー的適用に関して、回収を容易にするため、増殖培地に分泌されるタンパク質を生産することがしばしば好まれる。ピキア・パストリスは、内因性タンパク質の低レベル分泌を維持しながら、活性な組換えタンパク質を分泌することができる。
【0006】
[0006] 真核生物では、分泌されるタンパク質はまず移行により細胞質から小胞体(ER)内腔に標的化される。ER中への移行は、翻訳後(すなわち、一度ポリペプチド鎖が合成された後)または翻訳と同時に(すなわち、mRNAがそのアミノ酸配列に翻訳される間に)のどちらかで行われ得る。翻訳後の移行は、細胞質中でポリペプチド鎖を緩いコンフォメーションに維持するシャペロンならびに分子ラチェットとして作用するER常在シャペロンKar2の作用を必要とする。その結果、このプロセスは、部分的に折りたたまれたドメインおよび/または細胞質での凝集によって妨げられ得る。従って、バイオテクノロジー的適用に関して、翻訳と同時の移行を促進することが望ましい。一度ERに入ると、タンパク質はグリコシル化され、それらのジスルフィド結合が異性化され、それらはそれらの未変性の状態に折り畳まれる。うまく折り畳まれたタンパク質は、次いでゴルジ複合体に移行し、そこでさらにグリコシル化が行われた後、分泌顆粒中に充填され、それは細胞膜に融合し、タンパク質を細胞外環境に放出する。
【0007】
[0007] 分泌経路へのタンパク質の標的化は、分泌ペプチドによって媒介される。ピキア・パストリスで最も広く使用されているのは、出芽酵母の接合因子アルファのリーダーペプチドである。それは、2つの異なる領域から構成されている:ii)翻訳後転移を促進し、ER侵入時に切断される最初の19アミノ酸のプレ領域、ii)ERからゴルジ体への輸出シグナルとして機能する70アミノ酸のプロセグメント、それは、ゴルジ装置中で二塩基性アミノ酸切断部位KRで切断される。
【0008】
[0008] タンパク質のより高い細胞外生産につながる合成分泌シグナルペプチドに関する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0009】
[0009] 本開示の側面は、例えばヒト乳タンパク質のような哺乳動物タンパク質を含むタンパク質の細胞外産生の向上において有効な新規分泌シグナルペプチドを提供することによって、特定の必要性に対処する。本開示の特定の側面は、少なくとも部分的に1)i)ER内腔のオリゴ糖転移酵素複合体のアルファサブユニット(Ost1)またはii)GPIアンカータンパク質Pst1のどちらかからのP.パストリスの分泌前ペプチドの2)i)出芽酵母接合因子またはii)P.パストリス Epx1のプロ領域のどちらかのプロ領域とのインフレーム融合から生成されるシグナルペプチドの開発に基づく。従って、ある場合にはヒト乳タンパク質のような組換えタンパク質に連結されたそのような分泌シグナルペプチドをコードする単離された核酸ならびにそのような核酸を含む細胞ならびにそのような細胞から組換えタンパク質を産生および回収するための方法が、本明細書において記載される。
【0010】
[0010] 本明細書において、ある態様において、SEQ ID NO:1、2、3または4に対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むポリペプチドをコードする単離された核酸が、記載される。ある態様において、配列は、SEQ ID NO:1、2、3または4を含む。ある態様において、ポリペプチドは、さらに哺乳動物タンパク質の配列を含む。ある態様において、哺乳動物タンパク質は、ヒト乳タンパク質である。ある態様において、ヒト乳タンパク質は、分泌性IgA(sIgA)、キサンチンデヒドロゲナーゼ、ラクトフェリン、ラクトペルオキシダーゼ、ブチロフィリン、ラクトアドヘリン、アディポネクチン、β-カゼイン、κ-カゼイン、レプチン、リゾチームまたはα-ラクトアルブミンである。ある態様において、ヒト乳タンパク質は、ヒトラクトフェリンである。
【0011】
[0011] ある態様において、配列は、SEQ ID NO:1に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有する。ある態様において、配列は、SEQ ID NO:1を含む。ある態様において、単離された核酸は、SEQ ID NO:41に対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有する核酸配列を含む。ある態様において、核酸配列は、SEQ ID NO:41を含む。ある態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:5を含む。ある態様において、単離された核酸は、SEQ ID NO:46に対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有する核酸配列を含む。ある態様において、核酸配列は、SEQ ID NO:46を含む。
【0012】
[0012] ある態様において、配列は、SEQ ID NO:2に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有する。ある態様において、配列は、SEQ ID NO:2を含む。ある態様において、単離された核酸は、SEQ ID NO:42に対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有する核酸配列を含む。ある態様において、核酸配列は、SEQ ID NO:42を含む。ある態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:6を含む。ある態様において、単離された核酸は、SEQ ID NO:47に対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有する核酸配列を含む。ある態様において、核酸配列は、SEQ ID NO:47を含む。
【0013】
[0013] ある態様において、配列は、SEQ ID NO:3に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有する。ある態様において、配列は、SEQ ID NO:3を含む。ある態様において、単離された核酸は、SEQ ID NO:43に対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有する核酸配列を含む。ある態様において、核酸配列は、SEQ ID NO:43を含む。ある態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:7を含む。ある態様において、単離された核酸は、SEQ ID NO:48に対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有する核酸配列を含む。ある態様において、核酸配列は、SEQ ID NO:48を含む。
【0014】
[0014] ある態様において、配列は、SEQ ID NO:4に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有する。ある態様において、配列は、SEQ ID NO:4を含む。ある態様において、単離された核酸は、SEQ ID NO:44に対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有する核酸配列を含む。ある態様において、核酸配列は、SEQ ID NO:44を含む。ある態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:8を含む。ある態様において、単離された核酸は、SEQ ID NO:49に対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有する核酸配列を含む。ある態様において、核酸配列は、SEQ ID NO:49を含む。
【0015】
[0015] また、ある態様において、本明細書において開示される核酸(例えば、単離された核酸またはその配列もしくは部分)を含むベクターも、本明細書において開示される。
【0016】
[0016] ある側面において、本明細書で開示される核酸を含む設計された真核細胞が、さらに開示される。ある態様において、細胞は、真菌細胞である。ある態様において、真菌細胞は、アルクスラ属(Arxula)、アスペルギルス属(Aspegillus)、オーランチオキトリウム属(Aurantiochytrium)、カンジダ属(Candida)、バッカクキン属(Claviceps)、クリプトコッカス属(Cryptococcus)、クスダマカビ属(Cunninghamella)、ゲオトリクム属(Geotrichum)、ハンゼヌラ属(Hansenula)、クルイウェロマイセス属(Kluyveromyces)、コダマエア属(Kodamaea)、コマガタエラ属、レウコスポリジエラ属(Leucosporidiella)、リポミセス属(Lipomyces)、モルティエラ属(Mortierella)、オガタエア属(Ogataea)、ピキア属、プロトテカ属(Prototheca)、リゾープス属(Rhizopus)、ロドスポリジウム属(Rhodosporidium)、ロドトルラ属(Rhodotorula)、サッカロマイセス属(Saccharomyces)、シゾサッカロマイセス属(Schizosaccharomyces)、シロキクラゲ属(Tremella)、トリコスポロン属(Trichosporon)、ウィッカーハモマイセス属(Wickerhamomyces)またはヤロウイア属(Yarrowia)の細胞である。ある態様において、細胞は酵母細胞である。いくつかの実施形態において、酵母細胞はコマガタエラ属の細胞である。ある態様において、酵母細胞は、コマガタエラ・パフィ、コマガタエラ・パストリスまたはコマガタエラ・シュードパストリス(Komagataella pseudopastoris)細胞である。ある側面において、核酸は、細胞のゲノム中に組み込まれる。ある側面において、核酸は、細胞のゲノム中に組み込まれない。
【0017】
[0017] また、ある側面において、分泌タンパク質を産生するための方法が開示され、その方法は、本開示の設計された真核細胞を細胞からポリペプチドを分泌するのに十分な条件下で増殖させることを含む。ある態様において、方法は、さらに分泌タンパク質を回収することを含む。ある側面において、分泌タンパク質はヒト乳タンパク質である。ある態様において、ヒト乳タンパク質は、分泌性IgA(sIgA)、キサンチンデヒドロゲナーゼ、ラクトフェリン、ラクトペルオキシダーゼ、ブチロフィリン、ラクトアドヘリン、アディポネクチン、β-カゼイン、κ-カゼイン、レプチン、リゾチーム、またはα-ラクトアルブミンである。ある態様において、ヒト乳タンパク質は、ヒトラクトフェリンである。ある態様において、ヒト乳タンパク質は、1以上のヒト様N-グリカンを含む。ある態様において、方法は、さらにヒト乳タンパク質および乳児用調製粉乳の1以上の構成要素を含む混合物を生成することを含む。
【0018】
[0018] さらに、ある側面において、SEQ ID NO:1、2、3または4に対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むポリペプチドをコードする核酸を含む、操作された酵母細胞が、本明細書において開示される。ある態様において、配列は、SEQ ID NO:1、2、3または4を含む。ある態様において、配列は、SEQ ID NO:1を含む。ある態様において、配列は、SEQ ID NO:2を含む。ある態様において、配列は、SEQ ID NO:3を含む。ある態様において、配列は、SEQ ID NO:4を含む。ある態様において、ポリペプチドは、さらに哺乳動物タンパク質の配列を含む。ある態様において、哺乳動物タンパク質は、ヒト乳タンパク質である。ある態様において、ヒト乳タンパク質は、分泌性IgA(sIgA)、キサンチンデヒドロゲナーゼ、ラクトフェリン、ラクトペルオキシダーゼ、ブチロフィリン、ラクトアドヘリン、アディポネクチン、β-カゼイン、κ-カゼイン、レプチン、リゾチーム、またはα-ラクトアルブミンである。ある態様において、ヒト乳タンパク質は、ヒトラクトフェリンである。
【0019】
[0019] ある側面において、以下を含む設計された酵母細胞が、本明細書において記載され:(a)(i)SEQ ID NO:1、2、3または4に対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列、およびii)ヒト乳タンパク質の配列を含むポリペプチドをコードする第1の核酸;ならびに(b)アルファ-1,2-マンノシダーゼ(Man-I)タンパク質をコードする第2の核酸、ここで、細胞は、機能性OCH1タンパク質を発現しない。ある側面において、(i)の配列は、SEQ ID NO:1、2、3または4を含む。ある態様において、ヒト乳タンパク質は、分泌性IgA(sIgA)、キサンチンデヒドロゲナーゼ、ラクトフェリン、ラクトペルオキシダーゼ、ブチロフィリン、ラクトアドヘリン、アディポネクチン、β-カゼイン、κ-カゼイン、レプチン、リゾチーム、またはα-ラクトアルブミンである。ある態様において、ヒト乳タンパク質は、ヒトラクトフェリンである。ある態様において、ヒト乳タンパク質は、ヒトα-ラクトアルブミンである。ある態様において、Man-Iタンパク質は、HDEL C末端タグに融合される。ある態様において、細胞は、さらに(a)N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼI(GnT-I)タンパク質;(b)α-1,3/6-マンノシダーゼ(Man-II)タンパク質;(c)β-1,2-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnT-II)タンパク質;および(d)β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ(GalT)タンパク質の1つ以上をコードする第3の核酸を含む。ある態様において、酵母細胞は、コマガタエラ属の細胞である。ある態様において、酵母細胞は、コマガタエラ・パフィ、コマガタエラ・パストリスまたはコマガタエラ・シュードパストリス細胞である。ある側面において、核酸は、細胞のゲノム中に組み込まれる。ある側面において、核酸は、細胞のゲノム中に組み込まれない。
【0020】
[0020] 本明細書中で議論されるあらゆる態様は、開示される態様のあらゆる方法または組成物に関して実施され得、逆もまた同様であることが企図される。さらに、本明細書に開示される態様の組成物は、それらの態様の方法を達成するために使用されることができる。
【0021】
[0021] 本明細書において開示される本態様の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な記載から明らかになるであろう。しかし、本明細書に開示される態様の精神および範囲内での様々な変更および修正はこの詳細な記載から当業者に明らかになると考えられるため、詳細な記載および特定の実施例は、特定の態様を示すものであるが、例示のためにのみ与えられていることは、理解されるべきである。
【0022】
[0022] 以下の図面は、本明細書の一部を形成し、本開示の特定の側面をさらに実証するために含まれている。これは、本明細書に提示される特定の態様の詳細な記載と組み合わせて、これらの図面の1つ以上を参照することにより、よりよく理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】[0023]
図1は、上清のウェスタンブロットの画像である。レーン1は、タンパク質標準、Genscript、M00624(ThermoFisher Scientific、米国マサチューセッツ州ウォルサム)をロードしたものである。レーン2は、ヒト乳由来ラクトフェリン、Sigma Aldrich,SRP6519(Sigma Aldrich,米国ミズーリ州セントルイス)をロードされている。レーン3は、対照(出芽酵母プレ-プロ-MFα)を装填されている。レーン4は、陰性対照(形質転換していない酵母細胞の上清)を装填されている。レーン5~6は、SP2-ラクトフェリン形質転換酵母細胞からの上清を装填されている。レーン7~8は、SP3-ラクトフェリン形質転換酵母細胞からの上清を装填されている。レーン9~10は、SP1-ラクトフェリン形質転換酵母細胞を装填されている。
【0024】
【
図2】[0024]
図2は、タンパク質発現レベルを示す棒グラフである。細胞外タンパク質の定量化はELISAにより実施された。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[0025] 新規合成分泌シグナルペプチドの生成が、本明細書において記載される。また、そのようなシグナルペプチドを含む1つ以上の外因性タンパク質(例えば、ヒト乳タンパク質)を発現するように設計された細胞(例えば、酵母細胞などの真菌細胞)も開示される。本明細書に開示されるように、P.パストリスOst1またはPst1由来の“プレ領域”配列および出芽酵母接合因子αまたはP.パストリスEpx1由来の“プロ領域”配列のインフレーム融合は、以前に使用されていたシグナルペプチドと比較して、細胞外タンパク質産生の増加を促進し得る。開示されるシグナルペプチドは、例えばSEQ ID NO:1、2、3または4を含むペプチド、ならびにSEQ ID NO:1、2、3または4に対して1、2、3、4または5個のアミノ酸置換(またはより多く)を含むペプチドを含む。本明細書に記載されるように、これらのハイブリッドシグナルペプチドの哺乳動物タンパク質(例えばラクトフェリンまたはα-ラクトアルブミンのようなヒト乳タンパク質)のN末端へのインフレーム融合は、非常に効率的なタンパク質分泌を促進する。
【0026】
I.定義
[0026] “生物学的に活性な部分”という用語は、完全長のアミノ酸配列より少ないが、完全長配列の少なくとも1つの活性を示すアミノ酸配列を指す。例えば、酵素の生物学的に活性な部分は、酵素の触媒活性を有する酵素の1つ以上のドメインを指し得る(すなわち触媒ドメインであり得る)。ある側面において、酵素の生物学的に活性な部分は、酵素の触媒ドメインを含む酵素の部分である。タンパク質の生物学的に活性な部分は、タンパク質のアミノ酸配列と十分に同一であるか、またはそれに由来するアミノ酸配列を含むペプチドまたはポリペプチドであって、完全長のタンパク質よりも少ないアミノ酸を含み、タンパク質の少なくとも1つの活性(例えば、酵素活性、機能活性等)を示すペプチドまたはポリペプチドを含む。
【0027】
[0027] “外因性”という用語は、細胞に導入される、または細胞に導入されたあらゆるものを指す。“外因性核酸”は、細胞膜を通して細胞内に入るか、または入った核酸である。“外因性核酸配列”は、外因性核酸の核酸配列である。外因性核酸は、細胞の天然ゲノムに存在するヌクレオチド配列、および/または細胞のゲノムに以前は存在しなかったヌクレオチド配列を含有することができる。外因性核酸は、外因性遺伝子を含む。“外因性遺伝子”は、(例えば形質転換/トランスフェクションによって)細胞に導入されたRNAおよび/またはタンパク質の発現をコードする核酸であり、“トランスジーン”とも呼ばれる。外因性核酸を含む細胞は、組換え細胞と呼ばれる可能性があり、その中に追加の外因性遺伝子(単数または複数)が導入されることができる。外因性遺伝子は、形質転換される細胞に対して同じまたは異なる種に由来することができる。従って、外因性遺伝子は、その遺伝子の内在性コピーに対して、細胞のゲノムの異なる位置を占めるか、異なる制御下にある天然遺伝子を含むことができる。外因性遺伝子は、細胞内に1より多くのコピー数で存在することができる。外因性遺伝子は、ゲノム(核、ミトコンドリア、またはプラスチド)中への挿入として、またはエピソーム分子として細胞中で維持され得る。
【0028】
[0028] “作動可能な連結”(または“作動可能に連結されている”)は、2つの核酸配列、例えば制御配列(典型的にはプロモーター)および連結された配列(典型的にはタンパク質をコードする配列、コード配列とも呼ばれる)の間の機能的連結を指す。プロモーターは、それが遺伝子の転写を媒介できる場合、遺伝子と作動可能に連結されている。
【0029】
[0029] “天然の”という用語は、形質転換事象前の細胞または親細胞の組成を指す。“天然遺伝子”(“内在性遺伝子”とも呼ばれる)は、形質転換事象により細胞中に導入されていないタンパク質をコードするヌクレオチド配列を指す。“天然タンパク質”(“内在性タンパク質”とも呼ばれる)は、天然遺伝子によりコードされるアミノ酸配列を指す。
【0030】
[0030] “組換え体”は、外因性核酸の導入または天然核酸の変更により改変された細胞、核酸、タンパク質、またはベクターを指す。結果として得られた細胞、核酸、タンパク質、またはベクターは、組換え体とみなされ、これらの後代、子孫、重複または複製も組換え体とみなされる。従って、例えば、組換え細胞は、細胞の天然(非組換え)形態内に見出されない遺伝子を発現したり、または天然遺伝子を非組換え細胞によって発現されるそれらの同じ遺伝子とは異なって発現したりすることができる。組換え細胞は、限定されるものではないが、遺伝子産物をコードする組換え核酸、または突然変異、ノックアウト、アンチセンス、干渉RNA(RNAi)、もしくはdsRNAのような、細胞中の活性遺伝子産物のレベルを低減する抑制エレメントをコードする組換え核酸を含むことができる。“組換え核酸”は、一般に例えばポリメラーゼ、リガーゼ、エキソヌクレアーゼ、エンドヌクレアーゼを用いて核酸を操作することにより、元々インビトロで形成された核酸に由来するものであり、そうでなければ天然には通常存在しない形態のものである。一度組換え核酸が作製され、宿主細胞または生物に導入されると、それは、宿主細胞のインビボ細胞機構を用いて複製され得る;しかし、そのような核酸は、一度組換え的に産生されると、その後細胞内で複製されるものの、本開示の目的上、なお組換え体とみなされる。加えて、組換え核酸は、内因性ヌクレオチド配列および外因性ヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列を指し;従って、外因性プロモーターとの組換えを受けた内因性遺伝子は、組換え核酸である。“組換えタンパク質”は、組換え技法を用いて、すなわち組換え核酸の発現によって作られたタンパク質である。
【0031】
[0031] “形質転換”は、宿主生物または宿主生物のゲノム中への核酸の移入を指す。形質転換された核酸断片を含有する宿主生物(およびそれらの後代)は、“組換え”、“トランスジェニック”または“形質転換”生物と呼ばれる。従って、本開示の単離されたポリヌクレオチドは、宿主細胞中への導入および宿主細胞中での複製が可能な組換えコンストラクト、典型的にはDNAコンストラクトに組み込まれることができる。そのようなコンストラクトは、複製系および所定の宿主細胞においてポリペプチドコード配列の転写および翻訳が可能である配列を含むベクターであり得る。典型的には、発現ベクターは、例えば5’および3’調節配列の転写制御下にある1つ以上のクローニングされた遺伝子および選択可能なマーカーを含む。そのようなベクターは、プロモーター制御領域(例えば、誘導性または構成的、環境的または発生的に制御される、または部位特異的発現を制御する制御領域)、転写開始出発部位、リボソーム結合部位、転写終結部位および/またはポリアデニル化シグナルも含有し得る。あるいは、細胞は、プロモーターのような単一の遺伝的要素で形質転換されることができ、それは、相同組換えなどによって宿主生物のゲノム中に組み込まれる際に結果として遺伝的に安定な遺伝をもたらし得る。
【0032】
[0032] “形質転換細胞”という用語は、形質転換を受けた細胞を指す。従って、形質転換細胞は、親のゲノムおよび継承可能な遺伝子改変を含む。態様は、そのような形質転換細胞の後代および子孫を含む。
【0033】
[0033] 用語“ベクター”は、それによって生物、細胞、または細胞構成要素の間で核酸を増殖および/または転移させることができる手段を指す。ベクターは、プラスミド、直鎖DNA断片、ウイルス、バクテリオファージ、プロウイルス、ファージミド、トランスポゾンおよび人工染色体等を含み、それは、自律的に複製することができるかどうか、または宿主細胞の染色体に統合することができるかどうかは問わない。
【0034】
[0034] “個体”、“対象”および“患者”は、互換的に使用され、ヒト又は非ヒトを指すことができる。
【0035】
[0035] 本出願全体を通して、用語“約”は、値が測定または定量化法に固有の誤差の変動を含むことを示すために使用される。
【0036】
[0036] 用語“含むこと”と合わせて使用される際、語“a”または“an”の使用は、“1”を意味し得るが、“1以上”、“少なくとも1”および“1または1より多く”の意味とも一致する。
【0037】
[0037] 句“および/または”は、“および”または“または”を意味する。A、Bおよび/またはCを図説することは、以下を含む:Aのみ、Bのみ、Cのみ、AおよびBの組み合わせ、AおよびCの組み合わせ、BおよびCの組み合わせ、またはA、BおよびCの組み合わせ。換言すると、“および/または”は包括的として作用する。
【0038】
[0038] 語“含むこと(comprising)”(および含むことのあらゆる形態、例えば“含む(comprise)”および含む“comprises”)、“有すること”(および有することのあらゆる形態、例えば有する“have”および有する“has”)、“含むこと(including)”(および含むことのあらゆる形態、例えば“含む(includes)”および含む“include”)または“含有すること”(および含有することのあらゆる形態、例えば“含有する(contains)”および含有する“contain”)は、包括的またはオープンエンドであり、追加の、列挙されない要素または方法工程を除外しない。
【0039】
[0039] 組成物およびそれらの使用のための方法は、本明細書全体を通して開示される成分または工程のいずれかを“含む”、“から本質的になる”または“からなる”ことができる。開示された成分または工程のいずれか“から本質的になる”組成物および方法は、特許請求された態様の基本的かつ新規な特徴に重大な影響を与えない明記された材料または工程に特許請求の範囲を限定する。
【0040】
II.タンパク質および核酸
[0040] 本明細書で用いられる際、“タンパク質”または“ポリペプチド”は、少なくとも5個のアミノ酸残基を含む分子を指す。本明細書で使用される場合、用語“野生型”は、生物において天然に存在する分子の内因性バージョンを指す。ある態様において、タンパク質またはポリペプチドの野生型バージョンが採用されるが、本開示の多くの態様において、改変されたタンパク質またはポリペプチドが採用される。上記の用語は、互換的に使用され得る。“改変タンパク質”または“改変ポリペプチド”または“バリアント”は、その化学構造、特にそのアミノ酸配列が野生型タンパク質またはポリペプチドに対して変更されているタンパク質またはポリペプチドを指す。ある態様において、改変された/バリアントタンパク質またはポリペプチドは、少なくとも1つの改変された活性または機能を有する(タンパク質またはポリペプチドは複数の活性または機能を有し得ることを認識する)。改変された/バリアントタンパク質またはポリペプチドは、1つの活性または機能に関して変更されてもなお他の点では野生型の活性または機能を保持することができることが、特に企図される。
【0041】
[0041] 本明細書においてタンパク質が特に言及される場合、それは、一般に天然(野生型)または組換え(改変)タンパク質または場合によりあらゆるシグナル配列が除去されたタンパク質に対する言及である。タンパク質は、それが天然である生物から直接単離されることができ、組換えDNA/外因性発現法によって産生されることができ、または固相ペプチド合成(SPPS)もしくは他のインビトロ法によって産生されることができる。特定の態様において、ポリペプチドをコードする核酸配列を組み込んだ単離された核酸セグメントおよび組換えベクターが存在する。用語“組換え体”は、ポリペプチドまたは特定のポリペプチドの名称と合わせて使用されることができ、これは一般に、インビトロで操作された核酸分子から産生されたポリペプチドまたはそのような分子の複製産物であるものを指す。
【0042】
[0042] 特定の態様において、タンパク質またはポリペプチド(野生型または改変型)のサイズは、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、525、550、575、600、625、650、675、700、725、750、775、800、825、850、875、900、925、950、975、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1750、2000、2250、2500アミノ酸残基以上、およびそこから誘導可能なあらゆる範囲、または本明細書中に記載もしくは参照される対応するアミノ配列の派生物を含み得るが、それらに限定されない。ポリペプチドは、切り詰めにより変異させられ、それらをそれらの対応する野生型形態よりも短くされることができ、また、それらは、特定の機能(例えば、標的化または局在化のため、免疫原性の増強のため、精製の目的のため等)を有する異種タンパク質またはポリペプチド配列を融合またはコンジュゲーションすることにより変更され得る。本明細書で使用される場合、用語“ドメイン”は、タンパク質またはポリペプチドのあらゆる別個の機能的または構造的単位を指し、一般に、当業者に認識可能な構造または機能を有するアミノ酸の配列を指す。
【0043】
[0043] 用語“ポリヌクレオチド”は、組換え体であるか、または全ゲノム核酸から単離されたかのどちらかである核酸分子を指す。用語“ポリヌクレオチド”に含まれるのは、オリゴヌクレオチド(長さ100残基以下の核酸)、例えばプラスミド、コスミド、ファージ、ウイルス等を含む組換えベクターである。ポリヌクレオチドは、特定の側面において、それらの天然に存在する遺伝子またはタンパク質をコードする配列から実質的に離れて単離された調節配列を含む。ポリヌクレオチドは、一本鎖(コードまたはアンチセンス)または二本鎖であることができ、RNA、DNA(ゲノム、cDNAまたは合成)、それらのアナログ、またはそれらの組み合わせであることができる。追加のコード配列または非コード配列がポリヌクレオチド内に存在することができるが、存在する必要はない。
【0044】
[0044] この点において、用語“遺伝子”、“ポリヌクレオチド”または“核酸”は、タンパク質、ポリペプチドまたはペプチド(適切な転写、翻訳後修飾または局在化に必要とされるあらゆる配列を含む)をコードする核酸を指すために使用される。当業者には理解されるであろうように、この用語は、ゲノム配列、発現カセット、cDNA配列ならびにタンパク質、ポリペプチド、ドメイン、ペプチド、融合タンパク質および変異体を発現する、または発現するように適合され得るより小さな操作された核酸セグメントを包含する。ポリペプチドの全部または一部をコードする核酸は、そのようなポリペプチドの全部または一部をコードする連続した核酸配列を含有し得る。また、特定のポリペプチドは、わずかに異なる核酸配列を有するバリエーションを含有する核酸によってコードされ得るが、それでもなお同じまたは実質的に類似のタンパク質をコードすることが企図される。
【0045】
[0045] 特定の態様において、本明細書において開示される配列と実質的な同一性を有するポリヌクレオチドバリアント;本明細書において記載される方法(例えば、標準的なパラメーターを使用するBLAST分析)を使用して、本明細書において提供されるポリヌクレオチド配列と比較して、その間の全ての値および範囲を含めて少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%以上の配列同一性を含むものが存在する。特定の側面において、単離されたポリヌクレオチドは、配列の全長にわたって、本明細書で記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、ある場合には95%以上の同一性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;または前記の単離されたポリヌクレオチドに相補的なヌクレオチド配列を含むであろう。
【0046】
[0046] 核酸セグメントは、コード配列自体の長さに関係なく、他の核酸配列、例えばプロモーター、ポリアデニル化シグナル、追加の制限酵素部位、複数のクローニング部位、他のコードセグメント等と組み合わせられることができ、従ってそれらの全体的な長さはかなり変動することができる。核酸は、あらゆる長さであることができる。それらは、例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、75、100、125、175、200、250、300、350、400、450、500、750、1000、1500、3000、5000またはより長いヌクレオチド長であることができ、かつ/または1つ以上の追加の配列、例えば調節配列を含み得、かつ/またはより大きな核酸、例えば、ベクターの一部であり得る。従って、ほとんどあらゆる長さの核酸フラグメントが採用され得、好ましくは、全長は、意図される組換え核酸プロトコルにおける調製および使用の容易さによって制限されることが企図される。ある場合には、核酸配列は、例えばポリペプチドの精製、輸送、分泌、翻訳後修飾を可能にするため、または標的化もしくは有効性のような療法上の利益のために、追加の異種コード配列を有するポリペプチド配列をコードし得る。上記で論じたように、タグまたは他の異種ポリペプチドを改変ポリペプチド-コード配列に付加することができ、ここで“異種”は、改変ポリペプチドと同じではないポリペプチドを指す。
【0047】
[0047] 本開示のポリペプチド、タンパク質またはそのようなポリペプチドもしくはタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49もしくは50(またはその中のあらゆる誘導可能な範囲)もしくはより多くのバリアントアミノ酸もしくは核酸置換を含むことができ、または少なくとも、もしくは最大でSEQ ID NO:1~49の3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、300、400、500、550、1000以上の連続するアミノ酸または核酸、またはその中で誘導可能なあらゆる範囲と少なくとも60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%(またはその中のあらゆる誘導可能な範囲)類似した、同一である、または相同性であることができる。
【0048】
[0048] ある態様において、タンパク質またはポリペプチドは、SEQ ID NO:1~14または34~40のアミノ酸1~2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、296、297、298、299、300、301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、311、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、322、323、324、325、326、327、328、329、330、331、332、333、334、335、336、337、338、339、340、341、342、343、344、345、346、347、348、349、350、351、352、353、354、355、356、357、358、359、360、361、362、363、364、365、366、367、368、369、370、371、372、373、374、375、376、377、378、379、380、381、382、383、384、385、386、387、388、389、390、391、392、393、394、395、396、397、398、399、400、401、402、403、404、405、406、407、408、409、410、411、412、413、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428、429、430、431、432、433、434、435、436、437、438、439、440、441、442、443、444、445、446、447、448、449、450、451、452、453、454、455、456、457、458、459、460、461、462、463、464、465、466、467、468、469、470、471、472、473、474、475、476、477、478、479、480、481、482、483、484、485、486、487、488、489、490、491、492、493、494、495、496、497、498、499、500、501、502、503、504、505、506、507、508、509、510、511、512、513、514、515、516、517、518、519、520、521、522、523、524、525、526、527、528、529、530、531、532、533、534、535、536、537、538、539、540、541、542、543、544、545、546、547、548、549、550、551、552、553、554、555、556、557、558、559、560、561、562、563、564、565、566、567、568、569、570、571、572、573、574、575、576、577、578、579、580、581、582、583、584、585、586、587、588、589、590、591、592、593、594、595、596、597、598、599、600、601、602、603、604、605、606、607、608、609、610、611、612、613、614、615、616、617、618、619、620、621、622、623、624、625、626、627、628、629、630、631、632、633、634、635、636、637、638、639、640、641、642、643、644、645、646、647、648、649、650、651、652、653、654、655、656、657、658、659、660、661、662、663、664、665、666、667、668、669、670、671、672、673、674、675、676、677、678、679、680、681、682、683、684、685、686、687、688、689、690、691、692、693、694、695、696、697、698、699または700(またはその中の誘導可能なあらゆる範囲)を含むことができる。
【0049】
[0049] ある態様において、タンパク質、ポリペプチドまたは核酸は、SEQ ID NO:1~49の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、296、297、298、299、300、301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、311、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、322、323、324、325、326、327、328、329、330、331、332、333、334、335、336、337、338、339、340、341、342、343、344、345、346、347、348、349、350、351、352、353、354、355、356、357、358、359、360、361、362、363、364、365、366、367、368、369、370、371、372、373、374、375、376、377、378、379、380、381、382、383、384、385、386、387、388、389、390、391、392、393、394、395、396、397、398、399、400、401、402、403、404、405、406、407、408、409、410、411、412、413、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428、429、430、431、432、433、434、435、436、437、438、439、440、441、442、443、444、445、446、447、448、449、450、451、452、453、454、455、456、457、458、459、460、461、462、463、464、465、466、467、468、469、470、471、472、473、474、475、476、477、478、479、480、481、482、483、484、485、486、487、488、489、490、491、492、493、494、495、496、497、498、499、500、501、502、503、504、505、506、507、508、509、510、511、512、513、514、515、516、517、518、519、520、521、522、523、524、525、526、527、528、529、530、531、532、533、534、535、536、537、538、539、540、541、542、543、544、545、546、547、548、549、550、551、552、553、554、555、556、557、558、559、560、561、562、563、564、565、566、567、568、569、570、571、572、573、574、575、576、577、578、579、580、581、582、583、584、585、586、587、588、589、590、591、592、593、594、595、596、597、598、599、600、601、602、603、604、605、606、607、608、609、610、611、612、613、614、615、616、617、618、619、620、621、622、623、624、625、626、627、628、629、630、631、632、633、634、635、636、637、638、639、640、641、642、643、644、645、646、647、648、649、650、651、652、653、654、655、656、657、658、659、660、661、662、663、664、665、666、667、668、669、670、671、672、673、674、675、676、677、678、679、680、681、682、683、684、685、686、687、688、689、690、691、692、693、694、695、696、697、698、699または700個(またはその中の誘導可能なあらゆる範囲)の連続するアミノ酸を含み得る。
【0050】
[0050] ある態様において、ポリペプチド、タンパク質または核酸は、少なくとも、最大で、または正確に、SEQ ID NO:1~49の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、296、297、298、299、300、301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、311、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、322、323、324、325、326、327、328、329、330、331、332、333、334、335、336、337、338、339、340、341、342、343、344、345、346、347、348、349、350、351、352、353、354、355、356、357、358、359、360、361、362、363、364、365、366、367、368、369、370、371、372、373、374、375、376、377、378、379、380、381、382、383、384、385、386、387、388、389、390、391、392、393、394、395、396、397、398、399、400、401、402、403、404、405、406、407、408、409、410、411、412、413、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428、429、430、431、432、433、434、435、436、437、438、439、440、441、442、443、444、445、446、447、448、449、450、451、452、453、454、455、456、457、458、459、460、461、462、463、464、465、466、467、468、469、470、471、472、473、474、475、476、477、478、479、480、481、482、483、484、485、486、487、488、489、490、491、492、493、494、495、496、497、498、499、500、501、502、503、504、505、506、507、508、509、510、511、512、513、514、515、516、517、518、519、520、521、522、523、524、525、526、527、528、529、530、531、532、533、534、535、536、537、538、539、540、541、542、543、544、545、546、547、548、549、550、551、552、553、554、555、556、557、558、559、560、561、562、563、564、565、566、567、568、569、570、571、572、573、574、575、576、577、578、579、580、581、582、583、584、585、586、587、588、589、590、591、592、593、594、595、596、597、598、599、600、601、602、603、604、605、606、607、608、609、610、611、612、613、614、615、616、617、618、619、620、621、622、623、624、625、626、627、628、629、630、631、632、633、634、635、636、637、638、639、640、641、642、643、644、645、646、647、648、649、650、651、652、653、654、655、656、657、658、659、660、661、662、663、664、665、666、667、668、669、670、671、672、673、674、675、676、677、678、679、680、681、682、683、684、685、686、687、688、689、690、691、692、693、694、695、696、697、698、699または700個(またはその中の誘導可能なあらゆる範囲)の連続するアミノ酸を含み、それは、SEQ ID NO:1~49の1つと少なくとも、最大で、または正確に60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%(またはその中の誘導可能なあらゆる範囲)類似しているか、同一であるか、または相同性である。
【0051】
[0051] ある側面において、SEQ ID NO:1~49のいずれかの位置1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、296、297、298、299、300、301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、311、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、322、323、324、325、326、327、328、329、330、331、332、333、334、335、336、337、338、339、340、341、342、343、344、345、346、347、348、349、350、351、352、353、354、355、356、357、358、359、360、361、362、363、364、365、366、367、368、369、370、371、372、373、374、375、376、377、378、379、380、381、382、383、384、385、386、387、388、389、390、391、392、393、394、395、396、397、398、399、400、401、402、403、404、405、406、407、408、409、410、411、412、413、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428、429、430、431、432、433、434、435、436、437、438、439、440、441、442、443、444、445、446、447、448、449、450、451、452、453、454、455、456、457、458、459、460、461、462、463、464、465、466、467、468、469、470、471、472、473、474、475、476、477、478、479、480、481、482、483、484、485、486、487、488、489、490、491、492、493、494、495、496、497、498、499、500、501、502、503、504、505、506、507、508、509、510、511、512、513、514、515、516、517、518、519、520、521、522、523、524、525、526、527、528、529、530、531、532、533、534、535、536、537、538、539、540、541、542、543、544、545、546、547、548、549、550、551、552、553、554、555、556、557、558、559、560、561、562、563、564、565、566、567、568、569、570、571、572、573、574、575、576、577、578、579、580、581、582、583、584、585、586、587、588、589、590、591、592、593、594、595、596、597、598、599、600、601、602、603、604、605、606、607、608、609、610、611、612、613、614、615、616、617、618、619、620、621、622、623、624、625、626、627、628、629、630、631、632、633、634、635、636、637、638、639、640、641、642、643、644、645、646、647、648、649、650、651、652、653、654、655、656、657、658、659、660、661、662、663、664、665、666、667、668、669、670、671、672、673、674、675、676、677、678、679、680、681、682、683、684、685、686、687、688、689、690、691、692、693、694、695、696、697、698、699または700において開始し、少なくとも、最大で、または正確に、SEQ ID NO:1~49のいずれかの2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、296、297、298、299、300、301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、311、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、322、323、324、325、326、327、328、329、330、331、332、333、334、335、336、337、338、339、340、341、342、343、344、345、346、347、348、349、350、351、352、353、354、355、356、357、358、359、360、361、362、363、364、365、366、367、368、369、370、371、372、373、374、375、376、377、378、379、380、381、382、383、384、385、386、387、388、389、390、391、392、393、394、395、396、397、398、399、400、401、402、403、404、405、406、407、408、409、410、411、412、413、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428、429、430、431、432、433、434、435、436、437、438、439、440、441、442、443、444、445、446、447、448、449、450、451、452、453、454、455、456、457、458、459、460、461、462、463、464、465、466、467、468、469、470、471、472、473、474、475、476、477、478、479、480、481、482、483、484、485、486、487、488、489、490、491、492、493、494、495、496、497、498、499、500、501、502、503、504、505、506、507、508、509、510、511、512、513、514、515、516、517、518、519、520、521、522、523、524、525、526、527、528、529、530、531、532、533、534、535、536、537、538、539、540、541、542、543、544、545、546、547、548、549、550、551、552、553、554、555、556、557、558、559、560、561、562、563、564、565、566、567、568、569、570、571、572、573、574、575、576、577、578、579、580、581、582、583、584、585、586、587、588、589、590、591、592、593、594、595、596、597、598、599、600、601、602、603、604、605、606、607、608、609、610、611、612、613、614、
615、616、617、618、619、620、621、622、623、624、625、626、627、628、629、630、631、632、633、634、635、636、637、638、639、640、641、642、643、644、645、646、647、648、649、650、651、652、653、654、655、656、657、658、659、660、661、662、663、664、665、666、667、668、669、670、671、672、673、674、675、676、677、678、679、680、681、682、683、684、685、686、687、688、689、690、691、692、693、694、695、696、697、698、699または700個(またはその中の誘導可能なあらゆる範囲)の連続したアミノ酸またはヌクレオチドを含む核酸分子またはポリペプチドが存在する。
【0052】
[0052] 様々な遺伝子に関するヌクレオチドならびにタンパク質、ポリペプチドおよびペプチド配列は、以前に開示されており、認められたコンピューター化されたデータベースにおいて見出され得る。2つの一般的に用いられるデータベースは、国立バイオテクノロジー情報センターのGenbankおよびGenPeptデータベース(ワールドワイドウェブ上のncbi.nlm.nih.gov/)ならびにUniversal Protein Resource(UniProt;ワールドワイドウェブ上のuniprot.org)である。これらの遺伝子に関するコード領域は、本明細書で開示される技法を用いて、または当業者に既知であろうように増幅および/または発現され得る。
【0053】
[0053] 本開示の組成物において、1mlあたり約0.001mg~約10mgの総ポリペプチド、ペプチド、および/またはタンパク質が存在することが企図される。組成物中のタンパク質の濃度は、約(少なくとも約または最大で約)0.001、0.010、0.050、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0mg/ml以上(またはそこから誘導可能なあらゆる範囲)であることができる。
【0054】
[0054] 触媒活性を有するタンパク質(例えば酵素)の場合、そのようなタンパク質は、酵素分類(EC)命名法を用いて記載され得る。様々な酵素のEC分類が以前に開示されており、認められたデータベース、例えばENZYMEデータベース(Bairoch A. The ENZYME database in 2000. Nucleic Acids Res. 2000 Jan 1;28(1):304-5. doi: 10.1093/nar/28.1.304; 参照により本明細書にそのまま援用される。)において見付けられることができる。
【0055】
A.シグナルペプチド
[0055] 本開示の側面は、合成シグナルペプチドならびにそのようなシグナルペプチドをコードするポリヌクレオチドおよび核酸に向けられている。また、そのようなシグナルペプチドを含む細胞ならびにタンパク質(例えば、ヒト乳タンパク質のような哺乳動物タンパク質)の生産および分泌において細胞を使用する方法も開示される。本明細書中で使用される場合、“シグナルペプチド”(または“シグナルペプチド配列”)は、新たに合成されたポリペプチドのN末端に存在する場合、細胞の細胞膜(例えば、形質膜、小胞体膜等)を横切って、またはその中にポリペプチドを方向付けることができるあらゆるペプチドを記載する。ある側面において、本開示のシグナルペプチドは、ポリペプチドを細胞の分泌経路およびその後のポリペプチドの分泌に方向付けることができる(本明細書において“分泌シグナルペプチド”として記載される)。
【0056】
[0056] 本明細書に記載されるように、本開示の側面は、以下を含む合成シグナルペプチドに関する:
(a)以下からのプレ領域配列:
(i)P.パストリスOst1;または
(ii)P.パストリスPst1;および
(b)以下からのプロ領域配列
(i)出芽酵母接合因子α(MFα);または
(ii)P.パストリスEpx1。
【0057】
[0057] 本開示の特定のシグナルペプチドを以下の表1に記載する。
【0058】
【0059】
【表1-2】
[0058] ある側面において、本開示のシグナルペプチドを含むポリペプチドが開示される。そのようなポリペプチドをコードする核酸も開示される。さらに、本開示のシグナルペプチドを含むポリペプチドを発現する細胞も開示される。
【0060】
[0059] ある側面において、本開示のポリペプチドは、SEQ ID NO:1を含む。ある態様において、本開示のポリペプチドは、SEQ ID NO:1に対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有する配列を含む。ある側面において、本開示のポリペプチドは、SEQ ID NO:1に対して1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換(またはより多く)を有する配列を含む。
【0061】
[0060] ある側面において、本開示のポリペプチドは、SEQ ID NO:2を含む。ある態様において、本開示のポリペプチドは、SEQ ID NO:2に対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有する配列を含む。ある側面において、本開示のポリペプチドは、SEQ ID NO:2に対して1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換(またはより多く)を有する配列を含む。
【0062】
[0061] ある側面において、本開示のポリペプチドは、SEQ ID NO:3を含む。ある態様において、本開示のポリペプチドは、SEQ ID NO:3に対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有する配列を含む。ある側面において、本開示のポリペプチドは、SEQ ID NO:3に対して1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換(またはより多く)を有する配列を含む。
【0063】
[0062] ある側面において、本開示のポリペプチドは、SEQ ID NO:4を含む。ある態様において、本開示のポリペプチドは、SEQ ID NO:4に対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有する配列を含む。ある側面において、本開示のポリペプチドは、SEQ ID NO:4に対して1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換(またはより多く)を有する配列を含む。
【0064】
[0063] 本明細書で開示されるシグナルペプチドのいずれか1つ以上は、特定の態様から除外され得る。
【0065】
B.分泌タンパク質
[0064] 本開示の側面は、分泌タンパク質(“分泌されるタンパク質”とも呼ばれる)、ならびに分泌タンパク質を含む組成物、分泌タンパク質を発現する方法およびそれらの使用方法を含む。本明細書で使用される場合、“分泌タンパク質”は、細胞外に分泌されるあらゆるタンパク質を記載する。特定の場合において、本開示の分泌タンパク質は、例えば初乳、乳、涙、精液、膣液、唾液または他の分泌物のようなヒト分泌物中に存在するタンパク質である。ある側面において、本開示の分泌タンパク質は、ヒト乳タンパク質である。ある側面において、本開示の分泌タンパク質は、ヒト乳タンパク質ではない。
【0066】
1.ヒト乳タンパク質
本開示の側面は、ヒト乳タンパク質ならびにヒト乳タンパク質を含む組成物(例えば、乳児用調製粉乳組成物)、ヒト乳タンパク質を生産する方法、およびそれらの使用方法を含む。ある側面において、本開示のシグナルペプチドに連結されたヒト乳タンパク質(例えば、SEQ ID NO:1、2、3または4を含む)を発現する細胞が、開示される。本明細書中で使用される場合、“ヒト乳タンパク質”は、ヒト母乳中に存在するあらゆるタンパク質を記載する。ヒト乳タンパク質は、ヒト母乳由来の(例えば、ヒト母乳から単離された)タンパク質、ならびにヒト母乳中に存在するタンパク質のアミノ酸配列を有する他の手段(例えば、組換え発現、化学合成等)によって産生されるあらゆるタンパク質を含む。種々のヒト乳タンパク質が、当該分野で認識されており、本明細書で企図される。本明細書において企図されるヒト乳タンパク質は、分泌性IgA(sIgA)、ヒト血清アルブミン、キサンチンデヒドロゲナーゼ、ラクトフェリン、ラクトペルオキシダーゼ、ブチロフィリン、ラクトアドヘリン、アディポネクチン、β-カゼイン、κ-カゼイン、レプチン、リゾチーム、およびα-ラクトアルブミンを含むが、それらに限定されない。ある態様において、本開示のヒト乳タンパク質は、ヒト乳清タンパク質である。ある態様において、本開示のヒト乳タンパク質は、組換えヒト乳タンパク質(例えば、酵母細胞のような非哺乳動物細胞によって産生される)である。
【0067】
[0066] 本開示の特定の側面は、“ヒト様”グリカンを有するヒト乳タンパク質に向けられている。ヒト様グリカン(“ヒト様グリカン構造”ともいう)は、ヒト糖タンパク質に存在する構造を有するグリカンを記載する。そのようなグリカンは、例えばハイブリッド型Nグリカン、複合型Nグリカン、2-アンテナ型、3-アンテナ型および4-アンテナ型Nグリカン、ならびにシアル酸、ガラクトース、N-アセチルガラクトサミンまたはフコースを含むグリカンを含む。ヒト様グリカンは、Man3GlcNAc2コア構造を有するものを含む。従って、本開示のヒト乳タンパク質は、1以上のヒト様グリカン、例えばハイブリッド型Nグリカン、複合型Nグリカン、2-アンテナ型Nグリカン、3-アンテナ型Nグリカン、4-アンテナ型Nグリカン、およびそれらの組み合わせを有するものを含む。
【0068】
[0067] 従って、ある態様において、1以上のヒト様グリカンを含む組換えヒト乳タンパク質(例えば、組換えヒトラクトフェリン)が開示される。そのような組換えタンパク質は、例えば本明細書の他の箇所に記載される設計された細胞を含む、設計された哺乳動物、真菌、酵母、細菌、または他の細胞によって産生される組み換えタンパク質を含む。特定の側面において、そのような組換えタンパク質は、対応する天然のヒト乳タンパク質のグリカンパターンとは異なるグリカンパターンを有する。例えば、ある態様において、1以上のヒト様グリカンを含む組換えヒトラクトフェリンが開示され、ここで、そのラクトフェリンは、あらゆる天然存在ヒトラクトフェリン(例えば、ヒト母乳中のヒトラクトフェリン)のグリカンパターンとは異なるグリカンパターンを有する。
【0069】
a.ラクトフェリン
[0068] 本開示の側面は、ラクトフェリンならびに乳児用調製粉乳組成物を含むラクトフェリンを含む組成物に向けられている。ある側面において、本開示のシグナルペプチド(例えばSEQ ID NO:1、2、3または4を含む)に連結されたヒトラクトフェリンを発現する細胞が、開示される。ラクトフェリン(“ラクトトランスフェリン”とも呼ばれる)は、母乳などの外分泌液中に見出される乳清タンパク質であり、LTF遺伝子によってコードされる。理論に束縛されることを望むものではないが、ラクトフェリンは抗微生物および抗炎症特性を有すると理解されている。本開示の特定の側面は、そのイソ型を含むヒトラクトフェリン(UniProtKB/Swiss-Prot受入番号P02788)に向けられている。シグナルペプチドを含むヒトラクトフェリンの全配列は、SEQ ID NO:34として提供される。シグナルペプチドの切断後の成熟ヒトラクトフェリンの配列は、SEQ ID NO:9として提供される。
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【表2-11】
[0069] ある側面において、本開示のヒトラクトフェリンは、組換えヒトラクトフェリン(rhLactoferrin)である。ある側面において、本開示の組換えヒトラクトフェリンは、哺乳動物、真菌、酵母、細菌または他の細胞から得られる。ある側面において、本開示の組換えヒトラクトフェリンは、哺乳動物細胞から得られない。特定の側面において、本開示の組換えヒトラクトフェリンは、真菌細胞から得られる。真菌細胞は、例えば、アルクスラ属、アスペルギルス属、オーランチオキトリウム属、カンジダ属、バッカクキン属、クリプトコッカス属、クスダマカビ属、ゲオトリクム属、ハンゼヌラ属、クルイウェロマイセス属、コダマエア属、コマガタエラ属、レウコスポリジエラ属、リポミセス属、モルティエラ属、オガタエア属、ピキア属、プロトテカ属、リゾープス属、ロドスポリジウム属、ロドトルラ属、サッカロマイセス属、シゾサッカロマイセス属、シロキクラゲ属、トリコスポロン属、ウィッカーハモマイセス属またはヤロウイア属の細胞であり得る。ある側面において、真菌細胞は、酵母細胞である。ある側面において、酵母細胞は、コマガタエラ属の細胞(コマガタエラ・パフィ、コマガタエラ・パストリス、コマガタエラ・シュードパストリス)である。組換えタンパク質産生に適した追加の細胞は、当該技術分野で認識されており、本明細書で企図される。ある側面において、本開示の組換えヒトラクトフェリンは、細菌細胞から得られる。他の側面において、本開示のヒトラクトフェリンは、天然源から単離される。
【0081】
[0070] 本開示の特定の側面は、少なくとも1つのハイブリッド型または複合型N-グリカンを有するヒトラクトフェリンに向けられている。ある側面において、ヒトラクトフェリンは、シアル酸、ガラクトース、N-アセチルガラクトサミン、またはフコースの1つ以上を含むグリカンを含む。ある側面において、ヒトラクトフェリンは、2-アンテナ型、3-アンテナ型または4-アンテナ型N-グリカンを含む。本明細書で開示されるように、1以上のハイブリッド型、複合型、2-アンテナ型、3-アンテナ型または4-アンテナ型Nグリカンを有するヒトラクトフェリンは、例えば乳児用調製粉乳または他の栄養組成物もしくはサプリメントにおいて有用であり得る。
【0082】
b.アルファ-ラクトアルブミン(α-ラクトアルブミン)
[0071] 本開示の側面は、アルファ-ラクトアルブミンならびに乳児用調製粉乳組成物を含むアルファ-ラクトアルブミンを含む組成物に向けられている。ある側面において、本開示のシグナルペプチド(例えば、SEQ ID NO:1、2、3または4を含む)に連結されたヒトアルファ-ラクトアルブミンを発現する細胞が、開示される。アルファ-ラクトアルブミン(“α-ラクトアルブミン”とも呼ばれる)は、母乳中に見出される乳清タンパク質であり、LALBA遺伝子によってコードされる。本開示の特定の側面は、そのイソ型を含むヒトα-ラクトアルブミン(UniProtKB/Swiss-Prot受入番号P00709)に向けられている。シグナルペプチドを含むヒトα-ラクトアルブミンの全配列は、SEQ ID NO:36として提供される。シグナルペプチドの切断後の成熟ヒトα-ラクトアルブミンの配列は、SEQ ID NO:35として提供される。
【0083】
【表3】
[0072] ある側面において、本開示のヒトα-ラクトアルブミンは、組換えヒトα-ラクトアルブミンである。ある側面において、本開示の組換えヒトα-ラクトアルブミンは、哺乳動物、真菌、酵母、細菌、または他の細胞から得られる。ある側面において、本開示の組換えヒトα-ラクトアルブミンは、哺乳動物細胞から得られない。特定の側面において、本開示の組換えヒトα-ラクトアルブミンは、酵母細胞から得られる。酵母細胞は、例えば、アルクスラ属、アスペルギルス属、オーランチオキトリウム属、カンジダ属、バッカクキン属、クリプトコッカス属、クスダマカビ属、ゲオトリクム属、ハンゼヌラ属、クルイウェロマイセス属、コダマエア属、コマガタエラ属、レウコスポリジエラ属、リポミセス属、モルティエラ属、オガタエア属、ピキア属、プロトテカ属、リゾープス属、ロドスポリジウム属、ロドトルラ属、サッカロマイセス属、シゾサッカロマイセス属、シロキクラゲ属、トリコスポロン属、ウィッカーハモマイセス属またはヤロウイア属の細胞であることができる。ある側面において、酵母細胞は、コマガタエラ属の細胞(例えばコマガタエラ・パフィ、コマガタエラ・パストリス、コマガタエラ・シュードパストリス)である。組換えタンパク質生産に適した追加の酵母細胞は、当該技術分野で認識されており、本明細書で企図される。ある側面において、本開示の組換えヒトα-ラクトアルブミンは、細菌細胞から得られる。他の側面において、本開示のヒトα-ラクトアルブミンは、天然源から単離される。
【0084】
[0073] 本開示の特定の側面は、少なくとも1つのハイブリッド型または複合型N-グリカンを有するヒトα-ラクトアルブミンに向けられている。ある側面において、ヒトα-ラクトアルブミンは、シアル酸、ガラクトース、N-アセチルガラクトサミンまたはフコースの1以上を含むグリカンを含む。ある側面において、ヒトラクトフェリンは、2-アンテナ型、3-アンテナ型または4-アンテナ型Nグリカンを含む。本明細書で開示されるように、1以上のハイブリッド型、複合型、2-アンテナ型、3-アンテナ型または4-アンテナ型N-グリカンを有するヒトα-ラクトアルブミンは、例えば乳児用調製粉乳または他の栄養組成物もしくはサプリメントにおいて有用であり得る。
【0085】
c.追加のヒト乳タンパク質
[0074] 本開示の組成物(例えば乳児用調製粉乳組成物)および方法において企図される追加のヒト乳タンパク質は、分泌性IgA(sIgA)、ヒト血清アルブミン、キサンチンデヒドロゲナーゼ、ラクトペルオキシダーゼ、ブチロフィリン、ラクトアドヘリン、アディポネクチン、β-カゼイン、κ-カゼイン、レプチン、オステオポンチン、胆汁酸塩刺激リパーゼ(BSSL)およびリゾチームを含むが、それらに限定されない。これらのヒト乳タンパク質のいずれか1つ以上が、本開示の組成物(例えば、乳児用調製粉乳)に含まれ得る。これらのヒト乳タンパク質のいずれか1つ以上は、特定の態様において除外され得る。
【0086】
C.N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ
[0075] 本開示の側面は、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼタンパク質に関する。本明細書で使用される場合、“N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼタンパク質”は、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ活性を有するあらゆるポリペプチドを記載する。N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼは、特定の糖ヌクレオチド供与体から2つの可能なアノマー結合(αまたはβのいずれか)のうちの1つで成長するグリカン鎖中の単糖の特定のヒドロキシル位への単糖の転移を触媒する酵素を記載する。
【0087】
[0076] N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼタンパク質は、あらゆる適切な生物由来のN-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼタンパク質であることができる。ある側面において、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼタンパク質は、真核生物のN-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼタンパク質である。ある側面において、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼタンパク質は、哺乳動物N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼタンパク質である。
【0088】
1.N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼI
[0077] ある態様において、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼタンパク質は、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIタンパク質(EC 2.4.1.101)である。この酵素クラスの系統名は、アルファ-1,3-マンノシル-糖タンパク質ベータ-1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼである。他の名称は、以下を含む:GnT-I、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼI、およびウリジンジホスホアセチルグルコサミン-アルファ-1,3-マンノシル糖タンパク質ベータ-1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ。特定の態様において、本開示のN-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIタンパク質は、ホモサピエンスGnT-Iであるが、あらゆる真核生物由来のN-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIタンパク質が、本開示の方法および組成物の一部として使用され得る。
【0089】
2.β-1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ
[0078] ある態様において、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼタンパク質は、β-1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼタンパク質(EC 2.4.1.143)である。この酵素クラスの系統名は、アルファ-1,6-マンノシル-糖タンパク質2-ベータ-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼである。他の名称は、以下を含む:GnT-II、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼII、およびウリジンジホスホアセチルグルコサミン-アルファ-1,6-マンノシル糖タンパク質ベータ-1-2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ。特定の態様において、本開示のβ-1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼタンパク質は、ラッツス・ノルベギクス(Rattus norvegicus)GnT-IIであるが、あらゆる真核生物由来のβ-1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼタンパク質が、本開示の方法および組成物の一部として使用され得る。
【0090】
D.アルファ-1,3/6-マンノシダーゼ(α-1,3/6-マンノシダーゼ)
[0079] 本開示の側面は、α-1,3/6-マンノシダーゼタンパク質(EC 3.2.114)に関する。本明細書中で使用される場合、“α-1,3/6-マンノシダーゼタンパク質”(または“アルファ-1,3/6-マンノシダーゼタンパク質”)は、α-1,3/6-マンノシダーゼ活性を有するあらゆるポリペプチドを記載する。α-1,3/6-マンノシダーゼは、N-グリカンからの2つのマンノシル残基の除去を触媒する酵素を記載する。この酵素クラスの系統名は、マンノシルオリゴ糖1,3-1,6-アルファ-マンノシダーゼである。他の名称は以下を含む:Man-IIおよびマンノシダーゼII。α-1,3/6-マンノシダーゼタンパク質は、あらゆる適切な生物由来であり得る。ある態様において、α-1,3/6-マンノシダーゼタンパク質は、真核生物のα-1,3/6-マンノシダーゼタンパク質である。特定の態様において、α-1,3/6-マンノシダーゼタンパク質は、ショウジョウバエMan-IIであるが、あらゆる真核生物由来のα-1,3/6-マンノシダーゼタンパク質が、本開示の方法および組成物の一部として使用され得る。
【0091】
E.アルファ-1,2-マンノシダーゼ(α-1,2-マンノシダーゼ)
[0080] 本開示の側面は、α-1,2-マンノシダーゼタンパク質(EC 3.2.1.130)に関する。本明細書で使用される場合、“α-1,2-マンノシダーゼタンパク質”(または“アルファ-1,2-マンノシダーゼタンパク質”)は、α-1,2-マンノシダーゼ活性を有するあらゆるポリペプチドを記載する。この酵素クラスの系統名は、糖タンパク質エンド-アルファ-1,2-マンノシダーゼである。他の名称は以下を含む:エンド-アルファ-D-マンノシダーゼおよびMan-I。ある態様において、α-1,2-マンノシダーゼタンパク質は、真菌Man-Iである。特定の態様において、Man-Iは、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)Man-Iである。
【0092】
F.ベータ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ(β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ)
[0081] 本開示の側面は、β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼタンパク質(EC 2.4.1.38)に関する。本明細書で使用される場合、“β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼタンパク質”(または“ベータ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼタンパク質”)は、β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ活性を有するあらゆるポリペプチドを記載する。この酵素クラスの系統名は、ベータ-N-アセチルグルコサミニルグリコペプチドベータ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼである。他の名称は以下を含む:糖タンパク質4-ベータ-ガラクトシルトランスフェラーゼ、UDP-ガラクトース-糖タンパク質ガラクトシルトランスフェラーゼおよびGalT。ある態様において、β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼタンパク質は、哺乳動物GalTである。特定の態様において、GalTは、ホモサピエンスGalTである。
【0093】
G.グリコシル化タンパク質
本開示の側面は、ヒト細胞によって産生される糖タンパク質のものと類似のグリコシル化のパターンを有するグリコシル化タンパク質(“糖タンパク質”ともいう)を産生するための方法および組成物に向けられている。ある態様において、本開示の糖タンパク質はN-結合型糖タンパク質である。N-結合型糖タンパク質は、タンパク質中のアスパラギン残基のアミド窒素に結合したN-アセチルグルコサミン残基を含有する。糖タンパク質上に見られる主な糖は、グルコース、ガラクトース、マンノース、フコース、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)およびシアル酸、例えばN-アセチルノイラミン酸(NANA)である。糖基のプロセシングは、ERの内腔で翻訳と同時に行われ、N-結合型糖タンパク質に関してはゴルジ装置で継続する。
【0094】
H.タンパク質の標的化
[0083] 本開示の特定の側面は、核酸分子から1以上のタンパク質を発現する細胞を含み、ここで、そのタンパク質は、所望の細胞内位置(例えば、ゴルジ装置のようなオルガネラ)に標的化される。ある場合には、タンパク質は、タンパク質の一部分(例えば、酵素の触媒ドメイン)および細胞標的化シグナルペプチド、例えば通常はタンパク質の一部分にライゲーションされていないか、またはタンパク質の一部分と会合していない異種シグナルペプチド(例えばSEQ ID NO:1、2、3または4を含むシグナルペプチド)を含む融合タンパク質を形成することによって細胞内位置に標的化される。融合タンパク質は、細胞標的化シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチドが、タンパク質(例えば酵素)またはその触媒的に活性なフラグメントをコードする核酸フラグメントに同じ翻訳リーディングフレーム(“インフレーム”)においてライゲーションされることによってコードされ得る。
【0095】
[0084] 融合コンストラクトまたはタンパク質の標的化シグナルペプチド構成要素は、ERまたはゴルジの膜結合タンパク質、回収シグナル、II型膜タンパク質、I型膜タンパク質、膜スパニングヌクレオチド糖トランスポーター、マンノシダーゼ、シアリルトランスフェラーゼ、グルコシダーゼ、マンノシルトランスフェラーゼおよびホスホマンノシルトランスフェラーゼに由来し得る。ある側面において、標的化シグナルペプチドは、ゴルジ装置局在化タグである。ゴルジ装置局在化タグの例は、出芽酵母Kre2p、出芽酵母Mnn2p、出芽酵母Mnn9、コマガタエラ・パフィBmt2、コマガタエラ・パフィBmt3またはコマガタエラ・パフィKtr2由来の膜貫通ドメインを含むが、それらに限定されない。
【0096】
III.配列
[0085] 本明細書で企図されるポリペプチドおよび核酸配列の特定の例を以下の表4に示す。
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
【表4-8】
IV.遺伝子工学
[0086] 本開示に従う微生物(例えば真菌細胞、酵母細胞)を形質転換するためのベクターは、本明細書の開示を考慮して、当業者に周知の既知の技法により調製され得る。ベクターは、典型的には1つ以上の遺伝子を含有し、ここで、各遺伝子は、所望の産物(遺伝子産物)の発現に関してコードし、そして遺伝子発現を調節するかまたは遺伝子産物を組換え細胞中の特定の位置に標的化する1つ以上の制御配列に作動可能に連結されている。
【0105】
[0087] 例えば融合タンパク質をコードする核酸配列、野生型または変異型タンパク質をコードする核酸配列を含む外因性核酸配列は、多くの異なる宿主細胞に導入され得る。遺伝子における遺伝子変異を促進するように構成された核酸配列もまた、本明細書においてさらに記載されるように、種々の宿主細胞中に導入され得る。適切な宿主細胞は、真菌ファミリー内で広く見出され得る微生物宿主である。適切な宿主株の例は、真菌または酵母種、例えばアルクスラ属、アスペルギルス属、オーランチオキトリウム属、カンジダ属、バッカクキン属、クリプトコッカス属、クスダマカビ属、ハンゼヌラ属、クルイウェロマイセス属、コマガタエラ属、レウコスポリジエラ属、リポミセス属、モルティエラ属、オガタエア属、ピキア属、プロトテカ属、リゾープス属、ロドスポリジウム属、ロドトルラ属、サッカロマイセス属、シゾサッカロマイセス属、シロキクラゲ属、トリコスポロン属およびヤロウイア属を含むが、それらに限定されない。ある態様において、本開示の宿主細胞は、コマガタエラ属の細胞である。ある態様において、本開示の宿主細胞は、コマガタエラ・パフィである。ある態様において、本開示の宿主細胞は、コマガタエラ・パストリスである。本開示の宿主細胞は、コマガタエラ・シュードパストリスである。
【0106】
[0088] 微生物発現系および発現ベクターは、当業者に周知である。あらゆるそのような発現ベクターが、インスタント遺伝子および核酸配列を生物に導入するために使用され得る。核酸配列は、形質転換技法により適切な微生物中に導入され得る。例えば、核酸配列を適当なプラスミドにクローニングし、得られたプラスミドで親細胞を形質転換することができる。プラスミドは、それが所望の核酸配列を微生物の子孫に遺伝可能にする限り、特に限定されない。
【0107】
[0089] 適切な宿主細胞の形質転換に有用なベクターまたはカセットは、当技術分野で認められている。典型的には、ベクターまたはカセットは、遺伝子、プロモーターを含む関連遺伝子の転写および翻訳を指示する配列、選択可能なマーカーならびに自律複製または染色体統合を可能にする配列を含有する。適切なベクターは、プロモーターおよび他の転写開始制御を有する遺伝子の5’領域ならびに転写終結を制御するDNA断片の3’領域を含む。
【0108】
[0090] プロモーター、cDNAおよび3’UTRならびにベクターの他の要素は、天然の源から単離された断片を用いたクローニング技法によって生成されることができる(Green & Sambrook, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, (第4版, 2012);米国特許第4,683,202号;参照により援用される)。あるいは、要素は、既知の方法を用いて合成的に生成されることができる(Gene 164:49-53 (1995))。
【0109】
A.ベクターおよびベクターの構成要素
[0091] 本開示に従う微生物(例えば酵母細胞)を形質転換するためのベクターは、本明細書の開示を考慮して、当業者に周知の既知の技法により調製され得る。ベクターは、典型的には、1つ以上の遺伝子を含有し、ここで、各遺伝子は、所望の産物(遺伝子産物)の発現をコードし、そして遺伝子発現を調節するかまたは遺伝子産物を組換え細胞中の特定の位置に標的化する1つ以上の制御配列(例えばプロモーター配列、シグナルペプチド配列)に作動可能に連結されている。
【0110】
1.制御配列
[0092] 制御配列は、コード配列の発現を調節するか、または遺伝子産物を細胞内または細胞外の特定の場所に方向付ける核酸配列である。発現を調節する制御配列は、例えばコード配列の転写を制御するプロモーターおよびコード配列の転写を終結させるターミネーターを含む。別の制御配列は、ポリアデニル化シグナルをコードするコード配列の末端に位置する3’非翻訳配列である。遺伝子産物を特定の場所に方向付ける制御配列は、シグナルペプチドをコードするものを含み、それは、それらが結合しているタンパク質を細胞内外の特定の場所に方向付ける。
【0111】
[0093] このように、微生物における遺伝子の発現のためのベクター設計の例は、酵母で活性なプロモーターと作動可能に連結した所望の遺伝子産物(例えば選択可能マーカー、酵素、融合タンパク質等)に関するコード配列を含有する。あるいは、ベクターが対象のコード配列と作動可能に連結したプロモーターを含有しない場合、コード配列は、それがベクター統合の時点で内因性プロモーターと作動可能に連結するように細胞中に形質転換され得る。本明細書において企図されるプロモーターの例は、AOX1、GAP、TEF1、TPI1、DAS1、DAS2、CAT1およびFMDプロモーターを含むが、それらに限定されない。
【0112】
[0094] 遺伝子を発現するために使用されるプロモーターは、その遺伝子に天然に連結されたプロモーターまたは異なるプロモーターであり得る。
【0113】
[0095] プロモーターは一般的に、構成的または誘導性と特性付けられる。構成的プロモーターは、一般的に活性であるか、または常に(または細胞のライフサイクルの特定の時期に)同じレベルで発現を駆動するように機能する。誘導性プロモーターは逆に、活性であるか(または不活性化されるか)、または刺激に応答してのみ著しく上方制御または下方制御される。両タイプのプロモーターは、開示された方法に適用される。有用な誘導性プロモーターは、外因的に提供される小分子、温度(熱または寒冷)、培養培地中の窒素不足のような刺激に応答して作動可能に連結された遺伝子の転写を媒介するものを含む。適切なプロモーターは、本質的に不活性な遺伝子の転写を活性化するか、または低レベルで転写される作動可能に連結された遺伝子の転写を上方制御することができる。
【0114】
[0096] 終結領域制御配列の挿入は任意である。終結領域は、転写開始領域(プロモーター)にネイティブであることができ、対象のDNA配列にネイティブであることができ、または別の供給源から入手可能であることができる(例えばChen & Orozco, Nucleic Acids Research 16:8411 (1988)参照)。
【0115】
[0097] ある場合には、プロモーターの全ヌクレオチド配列は転写を駆動するのに必要ではなく、プロモーターの全ヌクレオチド配列よりも短い配列が作動可能に連結された遺伝子の転写を駆動し得る。プロモーターの最小部分は、コアプロモーターと呼ばれ、転写開始部位、RNAポリメラーゼの結合部位および転写因子の結合部位を含む。
【0116】
[0098] プロモーターは、プロモーターおよび標的を核酸分子、例えばベクター中に導入することにより、標的に連結され得る。ベクターは、細胞中に導入され、それによってプロモーターおよび標的を発現する。一態様において、プロモーターは、例えば相同組換えを介して細胞のDNA中にプロモーターを導入し、それによってプロモーターを細胞のゲノム中に組み込むことによって、標的に連結される。
【0117】
B.遺伝子およびコドン最適化
[0099] 典型的には、遺伝子は、プロモーター、コード配列および終結制御配列を含む。組換えDNA技術によって組み立てられた場合、遺伝子は発現カセットと呼ばれることができ、組換え遺伝子を宿主細胞に導入するために使用されるベクターに挿入するのに便利であるように、制限部位で挟まれていることができる。発現カセットは、相同組換えによるゲノム中への発現カセットの安定な組み込みを容易にするために、ゲノムまたは他の核酸標的からのDNA配列によって挟まれていることができる。あるいは、ベクターおよびその発現カセットは、統合されないまま(例えばエピソーム)であることができ、その場合、ベクターは典型的には、ベクターDNAの複製を提供することができる複製起点を含む。
【0118】
[100] ベクター上に存在する一般的な遺伝子はタンパク質をコードする遺伝子であり、その発現は、タンパク質を含有する組換え細胞を、タンパク質を発現しない細胞から分化させることを可能にする。そのような遺伝子およびその対応する遺伝子産物は、選択可能マーカーまたは選択マーカーと呼ばれる。多種多様な選択可能マーカーのいずれも、開示された態様においてカバーされる生物を形質転換するために有用な導入遺伝子コンストラクトにおいて利用されることができる。
【0119】
[101] 組換えタンパク質の最適な発現のために、形質転換されるべき宿主細胞によって最適に使用されるコドンを有するmRNAを産生するコード配列を利用することが有益であり得る。従って、導入遺伝子の適切な発現は、導入遺伝子のコドン使用が導入遺伝子が発現されている生物の特異的コドンバイアスと一致することを必要とし得る。この効果の基礎となる正確な機序は多くあるが、利用可能なアミノアシル化tRNAプールと、細胞内で合成されるタンパク質との適切なバランスが、この必要性が満たされた時のトランスジェニックメッセンジャーRNA(mRNA)のより効率的な翻訳と相まっていることを含む。導入遺伝子におけるコドン使用が最適化されていない場合、利用可能なtRNAプールは、トランスジェニックmRNAの効率的な翻訳を可能にするのに十分でなく、結果として、リボソーム停止および終結、ならびにトランスジェニックmRNAの不安定性の可能性をもたらし得る。
【0120】
[102] 本開示のコード配列は、1つ以上の稀なコドンを、宿主細胞においてより頻繁に見出される1つ以上のコドンと置き換えることによって、特定の宿主細胞に関してコドン最適化されることができる。宿主細胞中の稀なコドンは、宿主細胞中のコード配列の5%未満、10%未満または20%未満に見出されるコドンを記載する。稀なコドンは、当業者に既知の方法を用いて同定されることができる。
【0121】
[103] 本開示の側面は、タンパク質をコードする遺伝子を含む核酸配列を用いた微生物の形質転換を含む。遺伝子は、細胞に天然であることも、異なる種に由来することもできる。遺伝子は、異なる種であるが微生物における最適な発現のために改変された(例えばコドン最適化された)ものに由来し得る。特定の態様において、遺伝子は、形質転換細胞の後代に遺伝可能である。ある態様において、遺伝子は、それがプラスミド上に存在するため、遺伝可能である。特定の態様において、遺伝子は、それが形質転換細胞のゲノム中に組み込まれるため、遺伝可能である。
【0122】
[104] 本開示のさらなる側面は、微生物の遺伝子において突然変異を生成するように構成された核酸配列を用いた微生物の形質転換を含み得る。例えば、本開示の側面は、遺伝子(例えばOCH1遺伝子)の上流および下流の配列を含む核酸配列を用いた微生物の形質転換を含み得、それによって、相同組換えを介した遺伝子の発現の低減または欠失を促進する。微生物の遺伝子において突然変異(欠失またはノックアウト突然変異、ならびに遺伝子の発現を低減する突然変異を含む)を生成するための様々な方法が、当技術分野で認識されており、本明細書で想定される。遺伝子の欠失またはノックアウト変異を有する微生物は、タンパク質の機能性コピーを生成しない。例えば、本開示の組換え酵母細胞は、組換え酵母細胞が内因性の機能性OCH1タンパク質を発現しないように、内因性OCH1遺伝子の欠失を含むことができる。遺伝子またはタンパク質の低減した発現を有する微生物は、タンパク質の機能性コピーを産生するが、同じ種の野生型(すなわち、非組換えまたは非遺伝子改変)微生物と比較して低減した量においてである。タンパク質の発現を低減するための方法は、当技術分野において認識されており、例えば、内因性プロモーターの置換および/または1つ以上の調節エレメントの改変を含む。
【0123】
C.形質転換
[0105] 細胞は、例えば、遺伝子銃、エレクトロポレーション、ガラスビーズ形質転換、および炭化ケイ素ウィスカー形質転換を含むあらゆる適切な技法によって形質転換されることができる。微生物中に導入遺伝子を導入するためのあらゆる便利な技法が、本明細書で開示される態様において採用されることができる。
【0124】
[106] 微生物の形質転換のためのベクターは、当業者に周知の既知の技法によって調製されることができる。一態様において、微生物における遺伝子の発現のための例示的なベクター設計は、微生物において活性なプロモーターと作動可能に連結した酵素をコードする遺伝子を含有する。あるいは、ベクターが対象の遺伝子と作動可能に連結したプロモーターを含有しない場合、遺伝子は、それがベクター組み込みの時点で天然のプロモーターに作動可能に連結されるように、細胞に形質転換され得る。ベクターはまた、タンパク質をコードする第2の遺伝子を含有することもできる。場合により、一方または両方の遺伝子(単数または複数)の後に、ポリアデニル化シグナルを含有する3’非翻訳配列が続く。2つの遺伝子をコードする発現カセットは、ベクター中で、または別々のベクター上で物理的に連結され得る。微生物の同時形質転換も使用されることができ、ここで、別個のベクター分子が同時に使用されて細胞を形質転換する(Protist 155:381-93 (2004))。形質転換細胞は、耐性カセットを欠く細胞が増殖しないであろう条件下で、抗生物質または他の選択可能マーカーの存在下で増殖する能力に基づいて、場合により選択されることができる。
【0125】
D.遺伝子操作された細胞
[107] 本開示の側面は、遺伝子操作された細胞(“操作された細胞”または“組換え細胞”とも呼ばれる)ならびにそのような細胞を作製および使用するための方法を含む。ある態様において、1以上の外因性核酸配列を含む組換え細胞が、開示される。1以上の外因性核酸配列を宿主細胞に導入することを含む、そのような組換え細胞を生成するための方法も、開示される。そのような組換え細胞から1以上の産物(例えば、哺乳動物タンパク質)を収集するための方法であって、細胞を培養し、産物を収集することを含む方法が、さらに記載される。
【0126】
[108] ある態様において、組換え細胞は、原核細胞、例えば細菌細胞である。ある態様において、組換え細胞は、真核細胞、例えば哺乳動物細胞、酵母細胞、糸状菌細胞、原生生物細胞、藻類細胞、鳥類細胞、植物細胞、または昆虫細胞である。ある態様において、細胞は、酵母細胞である。当業者は、多くの形態の糸状菌が酵母様増殖をもたらし、本明細書における酵母の定義はそのような細胞を包含することを認識するであろう。本開示の組換え細胞は、藻類、細菌、カビ、真菌、植物および酵母からなる群から選択され得る。ある態様において、本開示の組換え細胞は、細菌細胞(例えば、大腸菌)、真菌細胞、または酵母細胞である。
【0127】
[109] ある態様において、本開示の組換え細胞は、組換え真菌細胞である。組換え真菌細胞は、当技術分野で認識されているあらゆる適切な真菌細胞であり得る。ある側面において、真菌細胞は、アルクスラ属、アスペルギルス属、オーランチオキトリウム属、カンジダ属、バッカクキン属、クリプトコッカス属、クスダマカビ属、ゲオトリクム属、ハンゼヌラ属、クルイウェロマイセス属、コダマエア属、コマガタエラ属、レウコスポリジエラ属、リポミセス属、モルティエラ属、オガタエア属、ピキア属、プロトテカ属、リゾープス属、ロドスポリジウム属、ロドトルラ属、サッカロマイセス属、シゾサッカロマイセス属、シロキクラゲ属、トリコスポロン属、ウィッカーハモマイセス属またはヤロウイア属の細胞である。ある態様において、真菌細胞は、アルクスラ・アデニボランス(Arxula adeninivorans)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus orzyae)、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)、オーランチオキトリウム・リマシヌム(Aurantiochytrium limacinum)、カンジダ・ユティリス(Candida utilis)、バッカクキン(Claviceps purpurea)、クリプトコッカス・アルビダス(Cryptococcus albidus)、クリプトコッカス・クルバタス(Cryptococcus curvatus)、クリプトコッカス・ラミレズゴメジアヌス(Cryptococcus ramirezgomezianus)、クリプトコッカス・テレウス(Cryptococcus terreus)、クリプトコッカス・ウィリンゲ(Cryptococcus wieringae)、カニングハメラ・エキヌラータ(Cunninghamella echinulata)、カニングハメラ・ジャポニカ(Cunninghamella japonica)、ゲオトリカム・ファーメンタンス(Geotrichum fermentans)、ハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、クルイウェロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、コマガタエラ・パフィ、コマガタエラ・パストリス、コマガタエラ・シュードパストリス、クルイベロマイセス・マルシアナス(Kluyveromyces marxianus)、コダマエア・オウメリ(Kodamaea ohmeri)、レウコスポリディエラ・クレアチニボラ(Leucosporidiella creatinivora)、リポマイセス・リポファー(Lipomyces lipofer)、リポマイセス・スターキー(Lipomyces starkeyi)、リポマイセス・テトラスポルス(Lipomyces tetrasporus)、モルティエレラ・イサベリナ(Mortierella isabellina)、モルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)、オガタエア・ポリモルファ(Ogataea polymorpha)、ピキア・シフェーリ(Pichia ciferrii)、ピキア・グイリエルモンディ(Pichia guilliermondii)、ピキア・パストリス、ピキア・スティピティス(Pichia stipites)、プロトテカ・ゾプフィ(Prototheca zopfii)、リゾプス・アルヒズス(Rhizopus arrhizus)、ロードスポリジウム・バブジェバエ(Rhodosporidium babjevae)、ロードスポリジウム・トルロイデス(Rhodosporidium toruloides)、ロードスポリジウム・パルジゲナム(Rhodosporidium paludigenum)、ロドトルラ・グルティニス(Rhodotorula glutinis)、ロドトルラ・ムシラギノサ(Rhodotorula mucilaginosa)、出芽酵母、分裂酵母、トレメラ・エンシェパラ(Tremella enchepala)、トリコスポロン・クタネウム(Trichosporon cutaneum)、トリコスポロン・ファーメンタンス(Trichosporon fermentans)、ウィッカーハモマイセス・シフェリイ(Wickerhamomyces ciferrii)またはヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)である。
【0128】
[110] ある側面において、真菌細胞は、酵母細胞である。ある態様において、酵母細胞は、コマガタエラ属の細胞である。ある態様において、酵母細胞は、クルイウェロマイセス・パフィ、コマガタエラ・パストリスまたはコマガタエラ・シュードパストリスである。特定の態様において、酵母細胞は、クルイウェロマイセス・パフィである。
【0129】
[111] ある態様において、本開示の操作された細胞は、ヒト様N-グリカンを含むN-グリカンの生成を向上させるための1つ以上の改変を含む酵母細胞である。そのような細胞および改変の例は、例えば参照によりそのまま本明細書に援用される米国特許第9,617,550号に記載されている。
【0130】
E.遺伝子編集システム
[112] 本開示の特定の態様は、細胞の集団中の遺伝子におけるノックアウトまたは他の突然変異を生成するための遺伝子編集技法の使用に向けられている。遺伝子編集のための様々な方法およびシステムが当技術分野で既知であり、例えばジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)ベースの遺伝子編集、転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)ベースの遺伝子編集、およびCRISPR/Casベースの遺伝子編集を含む。遺伝子編集のための様々な方法およびシステムが当技術分野で認識されており、本明細書で企図される。ある態様において、本開示の方法は、CRISPR/Casベースの遺伝子編集を含み、それはCRISPRシステムの構成要素、例えばガイドRNA(gRNA)およびCasヌクレアーゼの使用を含む。ある態様において、本開示の方法は、CRISPR/Casベースの遺伝子編集を含まない(例えばZFNベース、TALENベース、またはあらゆる他の遺伝子編集方法もしくはシステムを含む)。
【0131】
[113] 一般に、“CRISPRシステム”は、Cas遺伝子をコードする配列を含む、CRISPR関連(“Cas”)遺伝子の発現に関与する、またはその活性を方向付ける転写産物および他の要素、tracr(トランス活性化CRISPR)配列(例えば、tracrRNAまたは活性な部分的tracrRNA)、tracr-mate配列(“直接反復”およびtracrRNAでプロセシングされた内因性CRISPR系の文脈における部分的直接反復を包含する)、ガイド配列(内因性CRISPR系の文脈における“スペーサー”とも呼ばれる)、ならびに/またはCRISPR遺伝子座由来の他の配列および転写産物を集合的に指す。
【0132】
[114] CRISPR/CasヌクレアーゼまたはCRISPR/Casヌクレアーゼ系は、DNAに配列特異的に結合する非コードRNA分子(ガイド)RNA、およびヌクレアーゼ機能性(例えば、2つのヌクレアーゼドメイン)を有するCasタンパク質(例えば、Cas9)を含むことができる。CRISPR系の1つ以上の要素は、I型、II型、またはIII型CRISPR系に由来し得、例えば、化膿連鎖球菌のような内因性CRISPR系を含む特定の生物に由来し得る。
【0133】
[115] ある側面において、CasヌクレアーゼおよびgRNA(標的配列に特異的なcrRNAおよび固定されたtracrRNAの融合体を含む)が細胞に導入される。CasヌクレアーゼおよびgRNAは、Casヌクレアーゼおよび/またはgRNAをコードする1つ以上の核酸(例えば、ベクター)の導入を介して間接的に細胞に導入されることができる。CasヌクレアーゼおよびgRNAは、Casヌクレアーゼタンパク質およびgRNA分子の導入によって直接細胞中に導入されることができる。一般に、gRNAの5’末端の標的部位は、相補的塩基対形成を用いて、Casヌクレアーゼを標的部位、例えば、遺伝子に標的化する。標的部位は、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列、例えば、典型的にはNGGまたはNAGのそのすぐ5’の位置に基づいて選択され得る。この点において、gRNAは、ガイドRNAの最初の20、19、18、17、16、15、14、14、12、11、または10ヌクレオチドを標的DNA配列に対応するように改変することによって、所望の配列に標的化され得る。一般に、CRISPR系は、標的配列の部位でのCRISPR複合体の形成を促進する要素により特性付けられる。典型的には、“標的配列”は一般に、ガイド配列がそれに対して相補性を有するように設計される配列を指し、ここで、標的配列およびガイド配列の間のハイブリダイゼーションがCRISPR複合体の形成を促進する。完全な相補性は必ずしも必要ではないが、ただし、ハイブリダイゼーションを引き起こし、CRISPR複合体の形成を促進するのに十分な相補性が存在することを条件とする。
【0134】
[116] CRISPR系は、標的部位で二本鎖切断(DSB)を誘導することができ、その後、本明細書で論じられるように破壊を誘導することができる。他の態様において、“ニッカーゼ”とみなされるCas9バリアントを用いて、標的部位で一本鎖にニックを入れる。対になったニッカーゼは、例えば、ニックの導入時に同時に5’オーバーハングが導入されるように、それぞれ異なるgRNA標的化配列の対によって方向付けられる特異性を向上させるために使用されることができる。他の態様において、触媒的に不活性なCas9は、遺伝子発現に影響を及ぼすために、転写抑制因子または活性化因子のような異種エフェクタードメインに融合される。
【0135】
[117] 標的配列は、DNAまたはRNAポリヌクレオチドのようなあらゆるポリヌクレオチドを含み得る。標的配列は、細胞のオルガネラ内のように、細胞の核または細胞質に位置し得る。一般に、標的配列を含む標的遺伝子座中への組換えのために使用され得る配列または鋳型は、“編集鋳型”または“編集ポリヌクレオチド”または“編集配列”と呼ばれる。ある側面において、外因性鋳型ポリヌクレオチドは、編集鋳型と称され得る。ある側面において、組換えは、相同組換えである。
【0136】
[118] 典型的には、内因性CRISPR系の文脈において、CRISPR複合体(標的配列にハイブリダイズされ、1つ以上のCasタンパク質と複合体化されたガイド配列を含む)の形成は、結果として標的配列中またはその近傍(例えば、標的配列から1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、50、またはより多くの塩基対内)の一方または両方の鎖の切断をもたらす。野生型tracr配列の全部または一部(例えば、野生型tracr配列の約20、26、32、45、48、54、63、67、85、またはより多くのヌクレオチド)を含むか、またはそれらからなり得るtracr配列はまた、例えばtracr配列の少なくとも一部に沿った、ガイド配列に作動可能に連結されたtracrメイト配列の全部または一部へのハイブリダイゼーションにより、CRISPR複合体の一部を形成し得る。tracr配列は、最適に整列された場合、tracrメイト配列の長さに沿って少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%の配列相補性のように、ハイブリダイズし、CRISPR複合体の形成に参加するのに十分なtracrメイト配列に対する相補性を有する。
【0137】
[119] CRISPR系の1つ以上の要素の発現を駆動する1つ以上のベクターは、CRISPR系の要素の発現が1つ以上の標的部位でCRISPR複合体の形成を方向付けるように、細胞中に導入されることができる。構成要素はまた、タンパク質および/またはRNAとして細胞に送達され得る。例えば、Cas酵素、tracr-mate配列に連結されたガイド配列、およびtracr配列はそれぞれ、別々のベクター上の別々の調節エレメントに作動可能に連結され得る。あるいは、同じまたは異なる調節エレメントから発現されるエレメントの2つ以上を、単一のベクター中で組み合わせることができ、1つ以上の追加のベクターは第1のベクターに含まれないCRISPR系のあらゆる構成要素を提供する。ベクターは、制限エンドヌクレアーゼ認識配列(“クローニング部位”とも呼ばれる)のような1つ以上の挿入部位を含み得る。ある態様において、1以上の挿入部位は、1以上のベクターの1以上の配列要素の上流および/または下流に位置する。複数の異なるガイド配列が使用される場合、単一の発現コンストラクトが、CRISPR活性を細胞内の複数の異なる対応する標的配列に標的化するために使用され得る。
【0138】
[120] ベクターは、Casタンパク質(“Casヌクレアーゼ”とも呼ばれる)をコードする酵素コード配列に作動可能に連結された調節エレメントを含み得る。Casタンパク質の非限定的な例は、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9(Csn1およびCsx12としても知られている)、Cas10、Cas12a(Cpf1)、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csfl、Csf2、Csf3、Csf4、それらのホモログ、またはそれらの改変バージョンを含む。これらの酵素は既知であり;例えば、化膿連鎖球菌Cas9タンパク質のアミノ酸配列は、受入番号Q99ZW2の下でSwissProtデータベース中に見出すことができる。
【0139】
[121] CasヌクレアーゼはCas9(例えば、化膿連鎖球菌または肺炎連鎖球菌(S.pneumonia)由来)であり得る。CasヌクレアーゼはCas12aであり得る。Casヌクレアーゼは、標的配列内および/または標的配列の相補配列内のような標的配列の位置で、一方または両方の鎖の切断を指示することができる。ベクターは、対応する野生型酵素に関して変異しているCasヌクレアーゼをコードすることができ、その結果、変異したCasヌクレアーゼは、標的配列を含有する標的ポリヌクレオチドの一方または両方の鎖を切断する能力を欠く。ある態様において、Cas9ニッカーゼはガイド配列(単数または複数)、例えば、DNA標的のそれぞれセンス鎖およびアンチセンス鎖を標的とする2つのガイド配列と組み合わせて使用され得る。この組み合わせは、両方の鎖がニックされ、NHEJまたはHDRを誘導するために使用されることを可能にする。
【0140】
[122] ある態様において、CRISPR酵素をコードする酵素コード配列が特定の細胞、例えば酵母細胞における発現のためにコドン最適化される。
【0141】
[123] 一般に、ガイド配列は、標的配列とハイブリダイズし、CRISPR複合体の標的配列への配列特異的結合を方向付けるために標的ポリヌクレオチド配列との十分な相補性を有するあらゆるポリヌクレオチド配列である。ある態様において、ガイド配列およびその対応する標的配列の間の相補性の程度は、適切なアラインメントアルゴリズムを使用して最適にアラインメントされる場合、50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%、97.5%、99%、またはそれ以上であるか、より大きい。
【0142】
[124] 最適なアラインメントは、配列をアラインメントするためのあらゆる適切なアルゴリズムを使用して決定されることができ、その非限定的な例は、Smith-Watermanアルゴリズム、Needleman-Wunschアルゴリズム、Burrows-Wheeler Transformに基づくアルゴリズム(例えばBurrows Wheeler Aligner)、Clustal W、Clustal X、BLAST、Novoalign(Novocraft Technologies, ELAND(Illumina,カリフォルニア州サンディエゴ)、SOAP(soap.genomics.org.cnで入手可能)、およびMaq(maq.sourceforge.netで入手可能)を含む。
【0143】
[125] Casヌクレアーゼは、1つ以上の異種タンパク質ドメインを含む融合タンパク質の一部であることができる。Casヌクレアーゼ融合タンパク質は、あらゆる追加のタンパク質配列および場合によりあらゆる2つのドメイン間のリンカー配列を含み得る。Casヌクレアーゼに融合され得るタンパク質ドメインの例は、限定ではなく、エピトープタグ、レポーター遺伝子配列および以下の活性:メチラーゼ活性、デメチラーゼ活性、転写活性化活性、転写抑制活性、転写放出因子活性、ヒストン修飾活性、RNA切断活性および核酸結合活性の1つ以上を有するタンパク質ドメインである。エピトープタグの非限定的な例は、ヒスチジン(His)タグ、V5タグ、FLAGタグ、インフルエンザ血球凝集素(HA)タグ、Mycタグ、VSV-Gタグおよびチオレドキシン(Trx)タグを含む。レポーター遺伝子の例は、グルタチオン-5トランスフェラーゼ(GST)、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ベータガラクトシダーゼ、ベータ-グルクロニダーゼ、ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、HcRed、DsRed、シアン蛍光タンパク質(CFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)および青色蛍光タンパク質(BFP)を含む自己蛍光タンパク質を含むが、それらに限定されない。Casヌクレアーゼは、DNA分子に結合するか、またはマルトース結合タンパク質(MBP)、Sタグ、Lex A DNA結合ドメイン(DBD)融合物、GAL4A DNA結合ドメイン融合物、および単純ヘルペスウイルス(HSV)BP16タンパク質融合物を含むがそれらに限定されない他の細胞分子に結合するタンパク質またはタンパク質の断片をコードする遺伝子配列に融合され得る。Casヌクレアーゼを含む融合タンパク質の一部を形成し得るさらなるドメインは、参照により本明細書に援用される米国特許第20110059502号に記載されている。
【実施例】
【0144】
[126] 以下の実施例は、本明細書で開示される特定の態様を実証するために含まれる。以下の実施例で開示される技法は開示される態様の実施において十分に機能することが本発明者によって発見された技法を表し、従って、その実施のための特定のモードを構成すると考えられることができることが、当業者によって理解されるべきである。しかし、当業者は、本開示を考慮して、本明細書で開示される態様の精神および範囲から逸脱することなく、開示された特定の態様において多くの変更が行われることができ、それでもなお同様のまたは類似の結果を得ることができることを理解すべきである。
【0145】
実施例1-新規シグナルペプチドは、細胞外タンパク質レベルを増加させる
[127] 細胞外タンパク質レベルに対する新規シグナルペプチドの作用を決定するために、SEQ ID NO:1(“SP1”)、SEQ ID NO:2(“SP2”)およびSEQ ID NO:4(“SP4”)をコードするDNAを、目的のタンパク質(POI)をコードするDNA、すなわち、ピキア・パストリスコドン最適化ヒトラクトフェリンの5’末端にインフレームでクローニングし、出芽酵母からのプレ-プロ-MFαの置換をもたらした。これは、酵母において最も広く使用されているシグナルペプチドであり、対照として役立つ。得られた配列および対照の単一コピーを、二重交差を介してAOX1遺伝子座に組み込んだ。各形質転換プレートの複数のコロニーを、96-ディープウェルプレート中で培養した。
【0146】
[128] 目的のタンパク質の存在を確立するために、ウェスタンブロットを上清で行った。
図1に示すように、ヒトラクトフェリンの単一コピーが組み込まれ、出芽酵母からの広く使用されているプレプロMFαによって分泌が駆動される場合、タンパク質は上清中に検出されない。逆に、分泌がSEQ ID NO:1(“SP1”)、SEQ ID NO:2(“SP2”)、およびSEQ ID NO:3(“SP3”)によって駆動される場合、細胞外タンパク質が検出される。
【0147】
[129] 分泌の向上の大きさを評価する目的で、ELISAにより細胞外タンパク質の定量化を実施した。
図2に見られるように、新規の操作された信号は、それぞれSEQ ID NO:1(“SP1”)、SEQ ID NO:2(“SP2”)、およびSEQ ID NO:3(“SP3”)に関して、対照(プレプロMFα)に対して2.38倍、2.41倍、および2.20倍、細胞外タンパク質レベルを増強した。
【0148】
[130] 材料および方法
[131] ベクターおよび株の構築。オリゴヌクレオチドおよびgBlockは、Integrated DNA Technologies(米国カリフォルニア州サンディエゴ)から注文され、表5に記載されている。NEBuilder(登録商標)HiFi DNA Assembly Master Mix、OneTaq(登録商標)Quickload(登録商標)DNAポリメラーゼ、および大腸菌DH5α細胞はNew England Biolabsからのものであった。全てのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅配列を、Genewizでの配列決定により確認した。
【0149】
【表5】
[132] 組み込みのための線状dsDNAの形質転換は、Madden, Tolstorukov, & Cregg (2014) Fungi, Volume 1, Fungal Biologyにより記載された方法を用いて実施された。総酵母ゲノムDNA抽出は、InvitrogenからのキットEasy DNAを用いて実施された((ThermoFisher, Applied Biosystems(商標), PrepSEQ(商標) 1-2-3 Nucleic Acid Extraction Kit, Catalog number: 4452222))。結果として得られたプラスミドを表6に要約する。
【0150】
【表6】
[133] ピキア・パストリス内在性タンパク質Ost1およびPst1由来のリーダーペプチド配列を、生物学的配列分析センター(CBS)から公的に入手可能なSignalP-5.0バイオインフォマティクスソフトウェアを用いて決定した。Epx1のプロ領域は、Heiss et al. (2015) Microbiology, 161(7)によって記載された。
【0151】
[134] 出芽酵母由来の接合因子アルファのプレプロリーダーペプチドとインフレーム融合したその天然の分泌ペプチドを欠くヒトラクトフェリンをコードする遺伝子を含有するプラスミドP1をGenscriptにより合成した。ヒトラクトフェリン遺伝子は、ピキア・パストリスにおける発現のためにコドン最適化された。
【0152】
[135] シグナル配列SP1(SEQ ID NO:1)を含有するプラスミドP2を作製するために、プライマーPMR1(SEQ ID NO:16)およびPMR2(SEQ ID NO:17)を使用して、鋳型としてgBLOCK1を使用してOst1リーダー配列を増幅した。ヒトラクトフェリン、酵母HIS4栄養要求性マーカーならびに大腸菌抗生物質耐性および複製起点を含有する骨格を、プライマーPMR3(SEQ ID NO:18)およびPMR4(SEQ ID NO:19)を使用するP1プラスミドのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって得た。得られた2つの断片を、NEBuilder(登録商標)HiFi DNA Assembly Master Mixを製造業者の指示に従って用いて組み立てた。
【0153】
[136] シグナル配列SP2(SEQ ID NO:2)を含有するプラスミドP3を生成するために、プライマーPMR5(SEQ ID NO:20)およびPMR6(SEQ ID NO:21)を増幅のために用いて、鋳型としてgBLOCK1(SEQ ID NO:15)を使用した。ヒトラクトフェリン、酵母HIS4栄養要求性マーカー、ならびに大腸菌抗生物質耐性および複製起点を含有する骨格を、プライマーPMR7(SEQ ID NO:22)およびPMR8(SEQ ID NO:23)を用いたP1プラスミドのPCRによって得た。得られた2つの断片を、NEBuilder(登録商標)HiFi DNA Assembly Master Mix製造業者の指示に従ってを用いて組み立てた。
【0154】
[137] シグナル配列SP3(SEQ ID NO:3)を含有するプラスミドP4を生成するために、プライマーPMR9(SEQ ID NO:24)およびPMR10(SEQ ID NO:25)を、鋳型としてgBLOCK1を使用する増幅のために使用した。ヒトラクトフェリン、酵母HIS4栄養要求性マーカー、ならびに大腸菌抗生物質耐性および複製起点を含有する骨格を、プライマーPMR11(SEQ ID NO:26)およびPMR12(SEQ ID NO:27)を用いたP1プラスミドのPCRによって得た。得られた2つの断片を、NEBuilder(登録商標)HiFi DNA Assembly Master Mixを製造業者の指示に従って用いて組み立てた。
【0155】
[138] シグナル配列SP4(SEQ ID NO:4)を含有するプラスミドP5を生成するために、プライマーPMR13(SEQ ID NO:28)およびPMR14(SEQ ID NO:29)を、鋳型としてgBLOCK1(SEQ ID NO:15)を用いる増幅に使用した。ヒトラクトフェリン、酵母HIS4栄養要求性マーカー、ならびに大腸菌抗生物質耐性および複製起点を含有する骨格を、プライマーPMR15(SEQ ID NO:30)およびPMR16(SEQ ID NO:31)を用いたP1プラスミドのPCRによって得た。結果として得られた2つの断片を、NEBuilder(登録商標)HiFi DNA Assembly Master Mixを製造業者の指示に従って用いて組み立てた。
【0156】
[139] アセンブリ混合物を、製造業者によって指示されるように大腸菌DH5α細胞に形質転換し、100μg/mLのアンピシリンを含有するLuria Broth(LB)寒天プレートに播いた。陽性クローンをコロニーポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって選択し、100μg/mLのアンピシリンを補充した5mLの液体Luria Broth培地に一夜接種した。大腸菌細胞からのプラスミドを、GeneJETプラスミドミニプレップキット(ThermoFisher(登録商標)、カタログ番号K502)を用いて単離した。適切な組み立ては、サンガーDNA配列決定により確認された。
【0157】
[00140] プライマーPMR17(SEQ ID NO:32)およびPMR18(SEQ ID NO:33)ならびに鋳型としてプラスミドP1、P2、P3、P4またはP5を使用して、Q5高忠実度DNAポリメラーゼを使用して酵母への組み込みのための線状dsDNA断片を得た。エレクトロコンピテントなピキア・パストリス細胞を、Madden, Tolstorukov, & Cregg (2014) Fungi, Volume 1, Fungal Biologyにより記載されたように形質転換した。細胞を、MDプレート(1.34%酵母窒素ベース、4×10-5%ビオチン、2%ブドウ糖、20%寒天)上に広げ、それは、his4+細胞の選択を可能にし、30oCで72時間インキュベートした。次いで、個々の酵母コロニー(~10~20個)をMDプレートにおいて再画線し、30oCで24時間増殖させる。P1で形質転換された細胞を、対象のタンパク質(POI)の分泌におけるSP1(SEQ ID NO:1)、SP2(SEQ ID NO:2)、SP3(SEQ ID NO:3)およびSP4(SEQ ID NO:5)のより高い効率を評価するための対照として使用した。
【0158】
[141] 再画線プレートからの個々のコロニーを、600μlの2% YPD(2%デキストロース、2%ペプトン、1%酵母抽出物)を使用して、96ディープウェルプレートに接種する。細胞を1,000rpmおよび30oCで48時間増殖させた。50マイクロリットルの得られた細胞懸濁液を、0.5% casアミノ酸を補充した550μlのBMG(100mMリン酸カリウム緩衝液(pH=6.0)、1.34%酵母窒素ベース、4×10-5%ビオチン、1%グリセロール)に移し、1,000rpmおよび30oCで48時間インキュベートした。次いで、細胞を4,500×gで5分間遠心分離することによってペレット化し、1,000rpmおよび20oCで72時間の誘導のために1% BMM(100mMリン酸カリウム緩衝液(pH=6.0)、1.34%酵母窒素ベース、4×10-5%ビオチン、1%メタノール)に再懸濁した。次いで、細胞外培地に分泌されたタンパク質を、SDS-PAGE、ELISAおよびウェスタンブロットによって分析した。
【0159】
[142] 本明細書に開示され、特許請求される方法の全ては、本開示を考慮して、過度の実験なしで、行われ、実行され得る。本明細書に開示される組成物および方法は特定の態様に関して記載されてきたが、開示される態様の概念、精神および範囲から逸脱することなく、本明細書で記載される方法に、および工程において、または方法の工程の順序において、バリエーションが適用され得ることが、当業者には明らかであろう。より具体的には、化学的にも生理学的にも関連する特定の薬剤で本明細書に記載される薬剤を代用し、同じまたは類似の結果が達成され得ることが理解されるであろう。当業者に明らかな全てのそのような類似の代用物および改変は、添付の特許請求の範囲によって定義されるように、本明細書で開示される態様の精神、範囲および概念内にあると見なされる。
【0160】
参考文献
以下の参考文献は、それらが例示的な手順上または本明細書で記載したものを補足するその他の詳細を提供する程度まで、参照により明確に本明細書に援用される。
【0161】
【化1】
米国特許第4,977,137号(Nicols et al.)
米国特許第5,571,691号(Conneely et al.)
米国特許第7,335,512号(Callewaert et al.)
米国特許第7,344,867号(Connolly)
米国特許第7,749,960号(Vidal et al.)
米国特許第7,524,815号(Vidal et al.)
米国特許第7,914,822号(Medo)
米国特許第8,440,456号(Callewaert et al.)
米国特許第8,871,445号(Cong et al.)
米国特許第8,802,650号(Buck et al.)
米国特許第8,821,878号(Medo et al.)
米国特許第8,927,027号(Fournell et al.)
米国特許第7,449,308号(Gerngross et al.)
米国特許出願公開第2012/0142580号(Nutten et al.)
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-06-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1, 2、3または4に対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むポリペプチドをコードする単離された核酸。
【請求項2】
請求項1に記載の単離された核酸であって、配列が配列番号1, 2、3、または4を含む単離された核酸。
【請求項3】
請求項1または2に記載の単離された核酸であって、ポリペプチドがさらに哺乳動物タンパク質の配列を含む単離された核酸。
【請求項4】
請求項3に記載の単離された核酸であって、哺乳動物タンパク質がヒト乳タンパク質である単離された核酸。
【請求項5】
請求項4に記載の単離された核酸であって、ヒト乳タンパク質が、分泌型IgA(sIgA)、キサンチンデヒドロゲナーゼ、ラクトフェリン、ラクトペルオキシダーゼ、ブチロフィリン、ラクトアドヘリン、アディポネクチン、β-カゼイン、κ-カゼイン、レプチン、リゾチームまたはα-ラクトアルブミンであり、またはヒト乳タンパク質がヒトラクトフェリンである単離された核酸。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の単離された核酸であって、該配列が配列番号3を含む単離された核酸。
【請求項7】
請求項6に記載の単離された核酸であって、該単離された核酸が配列番号41、42、43または44に対して少なくとも80%の同一性を有する核酸配列を含む単離された核酸。
【請求項8】
請求項7に記載の単離された核酸であって、該核酸配列が配列番号:41、42、43または44を含む単離された核酸。
【請求項9】
請求項6に記載の単離された核酸であって、該ポリペプチドが配列番号5、6、7または8を含む単離された核酸。
【請求項10】
請求項11に記載の単離された核酸であって、該単離された核酸が配列番号46、47、48または49に対して少なくとも80%の同一性を有する核酸配列を含む単離された核酸。
【請求項11】
請求項10に記載の単離された核酸であって、該核酸配列が配列番号46、47、48または49を含む単離された核酸。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載の核酸を含むベクター。
【請求項13】
請求項1~11のいずれかに記載の核酸または請求項12に記載のベクターを含む、操作されたピキア・パストリス細胞。
【請求項14】
分泌タンパク質を産生するための方法であって、細胞からポリペプチドを分泌するのに十分な条件下で請求項13に記載のピキア・パストリス細胞を増殖させることを含み、分泌タンパク質を収集すること含んでいてもよい、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、分泌タンパク質がヒト乳タンパク質であり、該ヒト乳タンパク質が、分泌型IgA(sIgA)、キサンチンデヒドロゲナーゼ、ラクトフェリン、ラクトペルオキシダーゼ、ブチロフィリン、ラクトアドヘリン、アディポネクチン、β-カゼイン、κ-カゼイン、レプチン、リゾチーム、またはα-ラクトアルブミンであってもよい、方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、ヒト乳タンパク質が、1以上のヒト様N-グリカンを含む方法。
【請求項17】
請求項14~16に記載の方法であって、さらにヒト乳タンパク質および乳児用調製粉乳の1以上の構成要素を含む混合物を生成することを含む方法。
【請求項18】
核酸が哺乳動物ポリペプチドをコードする、請求項13に記載の操作されたピキア・パストリス細胞。
【請求項19】
配列が配列番号1、2、3または4を含む、または配列が配列番号3である、請求項13に記載の操作されたピキア・パストリス細胞。
【請求項20】
ポリペプチドが哺乳動物タンパク質であり、該哺乳動物タンパク質がヒト乳タンパク質であってもよい、請求項18に記載の操作されたピキア・パストリス細胞。
【請求項21】
ヒト乳タンパク質が、分泌型IgA(sIgA)、キサンチンデヒドロゲナーゼ、ラクトフェリン、ラクトペルオキシダーゼ、ブチロフィリン、ラクトアドヘリン、アディポネクチン、β-カゼイン、κ-カゼイン、レプチン、リゾチーム、またはα-ラクトアルブミンである、請求項20に記載の操作されたピキア・パストリス細胞。
【請求項22】
ピキア・パストリス、コマガタエラ・パストリス、またはコマガタエラ・パフィである、請求項13および18~21のいずれか1項に記載の操作されたピキア・パストリス細胞。
【請求項23】
ピキア・パストリスが、ピキア・パストリス、コマガタエラ・パストリス、またはコマガタエラ・パフィである、請求項14~17のいずれか1項に記載の操作されたピキア・パストリス細胞。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0160
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0160】
本明細書は以下の発明の開示を包含する:
[項目1]SEQ ID NO:1, 2、3または4に対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むポリペプチドをコードする単離された核酸。
[項目2]項目1に記載の単離された核酸であって、配列がSEQ ID NO:1, 2、3、または4を含む単離された核酸。
[項目3]項目1または2に記載の単離された核酸であって、該ポリペプチドがさらに哺乳動物タンパク質の配列を含む単離された核酸。
[項目4]項目3に記載の単離された核酸であって、該哺乳動物タンパク質がヒト乳タンパク質である単離された核酸。
[項目5]項目4に記載の単離された核酸であって、該ヒト乳タンパク質が、分泌型IgA(sIgA)、キサンチンデヒドロゲナーゼ、ラクトフェリン、ラクトペルオキシダーゼ、ブチロフィリン、ラクトアドヘリン、アディポネクチン、β-カゼイン、κ-カゼイン、レプチン、リゾチームまたはα-ラクトアルブミンである単離された核酸。
[項目6]項目5に記載の単離された核酸であって、該ヒト乳タンパク質がヒトラクトフェリンである単離された核酸。
[項目7]項目1~6のいずれかに記載の単離された核酸であって、該配列が、SEQ ID NO:1に対して少なくとも90%の配列同一性を有する単離された核酸。
[項目8]項目1~6のいずれか一項に記載の単離された核酸であって、該配列がSEQ ID NO:1を含む単離された核酸。
[項目9]項目8に記載の単離された核酸であって、該単離された核酸がSEQ ID NO:41に対して少なくとも80%の同一性を有する核酸配列を含む単離された核酸。
[項目10]項目9に記載の単離された核酸であって、該核酸配列がSEQ ID NO:41を含む単離された核酸。
[項目11]項目8に記載の単離された核酸であって、該ポリペプチドがSEQ ID NO:5を含む単離された核酸。
[項目12]項目11に記載の単離された核酸であって、該単離された核酸がSEQ ID NO:46に対して少なくとも80%の同一性を有する核酸配列を含む単離された核酸。
[項目13]項目12に記載の単離された核酸であって、該核酸配列がSEQ ID NO:46を含む単離された核酸。
[項目14]項目1~6のいずれかに記載の単離された核酸であって、該配列がSEQ ID NO:2に対して少なくとも90%の配列同一性を有する単離された核酸。
[項目15]項目1~6のいずれか一項に記載の単離された核酸であって、該配列がSEQ ID NO:2を含む単離された核酸。
[項目16]項目15に記載の単離された核酸であって、該単離された核酸がSEQ ID NO:42に対して少なくとも80%の同一性を有する核酸配列を含む単離された核酸。
[項目17]項目16に記載の単離された核酸であって、該核酸配列がSEQ ID NO:42を含む単離された核酸。
[項目18]項目15に記載の単離された核酸であって、該ポリペプチドがSEQ ID NO:6を含む単離された核酸。
[項目19]項目18に記載の単離された核酸であって、該単離された核酸がSEQ ID NO:47に対して少なくとも80%の同一性を有する核酸配列を含む単離された核酸。
[項目20]項目19に記載の単離された核酸であって、該核酸配列がSEQ ID NO:47を含む単離された核酸。
[項目21]項目1~6のいずれかに記載の単離された核酸であって、該配列が、SEQ ID NO:3に対して少なくとも90%の配列同一性を有する単離された核酸。
[項目22]項目1~6のいずれか一項に記載の単離された核酸であって、該配列がSEQ ID NO:3を含む単離された核酸。
[項目23]項目22に記載の単離された核酸であって、該単離された核酸がSEQ ID NO:43に対して少なくとも80%の同一性を有する核酸配列を含む単離された核酸。
[項目24]項目23に記載の単離された核酸であって、該核酸配列がSEQ ID NO:43を含む単離された核酸。
[項目25]項目22に記載の単離された核酸であって、該ポリペプチドがSEQ ID NO:7を含む単離された核酸。
[項目26]項目25に記載の単離された核酸であって、該単離された核酸がSEQ ID NO:48に対して少なくとも80%の同一性を有する核酸配列を含む単離された核酸。
[項目27]項目26に記載の単離された核酸であって、該核酸配列がSEQ ID NO:48を含む単離された核酸。
[項目28]項目1~6のいずれかに記載の単離された核酸であって、該配列が、SEQ ID NO:4に対して少なくとも90%の配列同一性を有する単離された核酸。
[項目29]項目1~6のいずれか一項に記載の単離された核酸であって、該配列がSEQ ID NO:4を含む単離された核酸。
[項目30]項目29に記載の単離された核酸であって、該単離された核酸がSEQ ID NO:44に対して少なくとも80%の同一性を有する核酸配列を含む単離された核酸。
[項目31]項目30に記載の単離された核酸であって、該核酸配列がSEQ ID NO:44を含む単離された核酸。
[項目32]項目32に記載の単離された核酸であって、該ポリペプチドがSEQ ID NO:8を含む単離された核酸。
[項目33]項目32に記載の単離された核酸であって、該単離された核酸がSEQ ID NO:49に対して少なくとも80%の同一性を有する核酸配列を含む単離された核酸。
[項目34]項目33に記載の単離された核酸であって、該核酸配列がSEQ ID NO:49を含む単離された核酸。
[項目35]項目1~34のいずれかに記載の核酸を含むベクター。
[項目36]項目1~34のいずれかに記載の核酸または項目35に記載のベクターを含む、操作された真核細胞。
[項目37]項目36に記載の操作された真核細胞であって、該細胞が真菌細胞である操作された真核細胞。
[項目38]項目37に記載の操作された真核細胞であって、該真菌細胞が、アルクスラ属、アスペルギルス属、オーランチオキトリウム属、カンジダ属、バッカクキン属、クリプトコッカス属、クスダマカビ属、ゲオトリクム属、ハンゼヌラ属、クルイウェロマイセス属、コダマエア属、コマガタエラ属、レウコスポリジエラ属、リポミセス属、モルティエラ属、オガタエア属、ピキア属、プロトテカ属、リゾープス属、ロドスポリジウム属、ロドトルラ属、サッカロマイセス属、シゾサッカロマイセス属、シロキクラゲ属、トリコスポロン属、ウィッカーハモマイセス属またはヤロウイア属の細胞である操作された真核細胞。
[項目39]項目38に記載の操作された真核細胞であって、該細胞が酵母細胞である操作された真核細胞。
[項目40]項目39に記載の操作された真核細胞であって、該酵母細胞がコマガタエラ属の細胞である操作された真核細胞。
[項目41]項目40に記載の操作された真核細胞であって、該酵母細胞がコマガタエラ・パフィ、コマガタエラ・パストリスまたはコマガタエラ・シュードパストリス細胞である操作された真核細胞。
[項目42]項目36~41のいずれか一項に記載の操作された真核細胞であって、該核酸が該細胞のゲノム中に組み込まれる操作された真核細胞。
[項目43]項目36~41のいずれか一項に記載の操作された真核細胞であって、該核酸が該細胞のゲノム中に組み込まれない、操作された真核細胞。
[項目44]分泌タンパク質を産生するための方法であって、該方法が、細胞からポリペプチドを分泌するのに十分な条件下で項目36~43のいずれか一項に記載の細胞を増殖させることを含む方法。
[項目45]項目44に記載の方法であって、分泌タンパク質を収集することをさらに含む方法。
[項目46]項目44または45に記載の方法であって、該分泌タンパク質がヒト乳タンパク質である方法。
[項目47]項目46に記載の方法であって、該ヒト乳タンパク質が、分泌型IgA(sIgA)、キサンチンデヒドロゲナーゼ、ラクトフェリン、ラクトペルオキシダーゼ、ブチロフィリン、ラクトアドヘリン、アディポネクチン、β-カゼイン、κ-カゼイン、レプチン、リゾチーム、またはα-ラクトアルブミンである方法。
[項目48]項目44~47のいずれか一項に記載の方法であって、該ヒト乳タンパク質が、1以上のヒト様N-グリカンを含む方法。
[項目49]項目44~48のいずれか一項に記載の方法であって、さらに該ヒト乳タンパク質および乳児用調製粉乳の1以上の構成要素を含む混合物を生成することを含む方法。
[項目50]SEQ ID NO:1, 2、3または4に対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むポリペプチドをコードする核酸を含む、操作された酵母細胞。
[項目51]項目50に記載の操作された酵母細胞であって、該配列がSEQ ID NO:1、2、3または4を含む操作された酵母細胞。
[項目52]項目51に記載の操作された酵母細胞であって、該配列がSEQ ID NO:3を含む操作された酵母細胞。
[項目53]項目50~52のいずれか一項に記載の操作された酵母細胞であって、該ポリペプチドが哺乳動物タンパク質の配列をさらに含む操作された酵母細胞。
[項目54]項目53に記載の操作された酵母細胞であって、該哺乳動物タンパク質がヒト乳タンパク質である操作された酵母細胞。
[項目55]項目54に記載の操作された酵母細胞であって、該ヒト乳タンパク質が、分泌型IgA(sIgA)、キサンチンデヒドロゲナーゼ、ラクトフェリン、ラクトペルオキシダーゼ、ブチロフィリン、ラクトアドヘリン、アディポネクチン、β-カゼイン、κ-カゼイン、レプチン、リゾチームまたはα-ラクトアルブミンである操作された酵母細胞。
[項目56]項目55に記載の操作された酵母細胞であって、該ヒト乳タンパク質がヒトラクトフェリンである操作された酵母細胞。
[項目57]操作された酵母細胞であって、以下:
(a)以下を含むポリペプチドをコードする第1の核酸:
(i)SEQ ID NO:1、2、3または4に対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列および
(ii)ヒト乳タンパク質の配列;ならびに
(b)α-1,2-マンノシダーゼ(Man-I)タンパク質をコードする第2の核酸を含み、該細胞が機能性OCH1タンパク質を発現しない操作された酵母細胞。
[項目58]項目57に記載の操作された酵母細胞であって、該(i)の配列がSEQ ID NO:1、2、3または4を含む操作された酵母細胞。
[項目59]項目57または58に記載の操作された酵母細胞であって、該ヒト乳タンパク質が、分泌型IgA(sIgA)、キサンチンデヒドロゲナーゼ、ラクトフェリン、ラクトペルオキシダーゼ、ブチロフィリン、ラクトアドヘリン、アディポネクチン、β-カゼイン、κ-カゼイン、レプチン、リゾチーム、またはα-ラクトアルブミンである操作された酵母細胞。
[項目60]項目57に記載の操作された酵母細胞であって、該ヒト乳タンパク質がヒトラクトフェリンである操作された酵母細胞。
[項目61]項目57に記載の操作された酵母細胞であって、該ヒト乳タンパク質がヒトα-ラクトアルブミンである操作された酵母細胞。
[項目62]項目57~61のいずれか一項に記載の操作された酵母細胞であって、該Man-Iタンパク質がHDEL C末端タグに融合されている操作された酵母細胞。
[項目63]項目57~62のいずれか一項に記載の操作された酵母細胞であって、さらに以下:
(a)N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼI(GnT-I)タンパク質;
(b)α-1,3/6-マンノシダーゼ(Man-II)タンパク質;
(c)β-1,2-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnT-II)タンパク質;および
(d)β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ(GalT)タンパク質;
の1以上をコードする第3の核酸をさらに含む操作された酵母細胞。
[項目64]ヒト様N結合型グリコシル化を有するヒト糖タンパク質を含む乳児用調製粉乳。
[項目65]項目64に記載の乳児用調製粉乳であって、該ヒト糖タンパク質がヒト乳タンパク質である乳児用調製粉乳。
[項目66]項目65に記載の乳児用調製粉乳であって、該ヒト乳タンパク質が、分泌型IgA(
sIgA)、キサンチンデヒドロゲナーゼ、ラクトフェリン、ラクトペルオキシダーゼ、
ブチロフィリン、ラクトアドヘリン、アディポネクチン、β-カゼイン、κ-カゼイン、レプチン、リゾチーム、またはα-ラクトアルブミンである乳児用調製粉乳。
[項目67]項目66に記載の乳児用調製粉乳であって、該ヒト乳タンパク質がヒトラクトフェリンである乳児用調製粉乳。
[項目68]項目64~67のいずれか1項に記載の乳児用調製粉乳であって、該ラクトフェリンが、ヒト母乳中に天然に存在するあらゆるヒトラクトフェリンのグリカンパターンとは異なるグリカンパターンを有する乳児用調製粉乳。
[項目69]項目64~68のいずれか一項に記載の乳児用調製粉乳であって、該ヒト糖タンパク質が、項目44~49のいずれか一項に記載の方法によって産生される乳児用調製粉乳。
参考文献
以下の参考文献は、それらが例示的な手順上または本明細書で記載したものを補足するその他の詳細を提供する程度まで、参照により明確に本明細書に援用される。
【国際調査報告】