(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】負極板及びその製造方法、二次電池、電池モジュール、電池パックと電力消費装置
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20240719BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240719BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20240719BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20240719BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20240719BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20240719BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240719BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/62 Z
H01M4/587
H01M4/48
H01M4/139
H01M10/0566
H01M10/052
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506255
(86)(22)【出願日】2022-06-27
(85)【翻訳文提出日】2024-01-31
(86)【国際出願番号】 CN2022101515
(87)【国際公開番号】W WO2024000102
(87)【国際公開日】2024-01-04
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】宋 佩▲東▼
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲シュアン▼
(72)【発明者】
【氏名】▲孫▼ 信
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ 李力
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ ▲興▼布
(72)【発明者】
【氏名】云 ▲亮▼
(72)【発明者】
【氏名】董 苗苗
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ02
5H029AJ03
5H029AJ05
5H029AJ12
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM05
5H029AM07
5H029BJ02
5H029BJ06
5H029BJ12
5H029BJ14
5H029CJ08
5H029CJ22
5H029DJ08
5H029DJ14
5H029DJ16
5H029EJ01
5H029EJ05
5H029EJ07
5H029EJ08
5H029HJ01
5H029HJ04
5H029HJ19
5H050AA02
5H050AA07
5H050AA08
5H050AA15
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050DA03
5H050DA09
5H050EA05
5H050EA11
5H050EA12
5H050EA14
5H050EA15
5H050FA02
5H050FA05
5H050FA15
5H050FA17
5H050FA18
5H050GA10
5H050GA22
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA19
(57)【要約】
本出願は、二次電池用負極板及びその製造方法、ならびに該負極板を含む二次電池、電池モジュール、電池パックと電力消費装置を提供する。本出願の複合リチウム金属負極板は、集電体と、集電体の少なくとも一つの表面上に塗布された活物質層とを含み、前記活物質層は、活物質と、コアシェル構造を有するリチウム親和性材料とを含み、前記リチウム親和性材料のコアは、リチウム親和性物質を含有し、シェルは、炭素材料である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体と、集電体の少なくとも一つの表面上に塗布された活物質層とを含む複合リチウム金属負極板であって、
前記活物質層は、
活物質と、
コアシェル構造を有するリチウム親和性材料とを含み、
前記リチウム親和性材料のコアは、リチウム親和性物質を含有し、シェルは、炭素材料である、ことを特徴とする複合リチウム金属負極板。
【請求項2】
前記リチウム親和性材料の活物質層における質量百分率は、0.1%~5%であり、任意選択的に0.3%~3%である、ことを特徴とする請求項1に記載の負極板。
【請求項3】
前記リチウム親和性物質は、Si、Ni、Ga、Sn、In、Ge、Ti、Mo、Pt、Al、Mg、Zn、Ag、Au、Co、Feなどの金属単体のうちの一つ又は複数であり、及び/又は、上記金属元素を含む酸化物、硫化物、フッ化物、窒化物、塩化物、炭化物のうちの一つ又は複数である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の負極板。
【請求項4】
前記リチウム親和性材料の炭素材料シェルは、10~70nmの厚さを有する、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の負極板。
【請求項5】
前記リチウム親和性材料の炭素材料シェルの内部にキャビティを有する、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の負極板。
【請求項6】
前記リチウム親和性材料のキャビティ内にリチウム金属がさらに含有される、ことを特徴とする請求項5に記載の負極板。
【請求項7】
前記活物質は、炭素系材料、シリコーン系材料、金属酸化物のうちの一つ又は複数から選択される、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の負極板。
【請求項8】
前記炭素系材料は、天然黒鉛、人造黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ、ハードカーボン、ソフトカーボンのうちの一つ又は複数であり、及び/又は
前記シリコーン系材料は、シリコーン炭素、酸化ケイ素のうちの一つ又は二つであり、及び/又は
前記金属酸化物は、酸化鉄、酸化スズのうちの一つ又は複数である、ことを特徴とする請求項7に記載の負極板。
【請求項9】
前記活物質層の外側に、前記リチウム親和性材料を含有しない第2の活物質層をさらに有する、ことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の負極板。
【請求項10】
集電体と活物質層とを含む複合リチウム金属負極板であって、
前記集電体と前記活物質層との間に位置するリチウム親和性材料層をさらに含み、
前記リチウム親和性材料層は、コアシェル構造を有するリチウム親和性材料を含み、
前記シリコーンリチウム親和性材料のコアは、リチウム親和性物質を含有し、シェルは、炭素材料である、ことを特徴とする複合リチウム金属負極板。
【請求項11】
前記リチウム親和性材料層と前記活物質層との厚さ比は、0.1/100~6/100であり、任意選択的に0.3/100~5/100である、ことを特徴とする請求項10に記載の負極板。
【請求項12】
前記リチウム親和性物質は、Si、Ni、Ga、Sn、In、Ge、Ti、Mo、Pt、Al、Mg、Zn、Ag、Au、Co、Feなどの金属単体のうちの一つ又は複数であり、及び/又は、上記金属元素を含む酸化物、硫化物、フッ化物、窒化物、塩化物、炭化物のうちの一つ又は複数である、ことを特徴とする請求項10又は11に記載の負極板。
【請求項13】
前記リチウム親和性材料の炭素材料シェルは、10~70nmの厚さを有する、ことを特徴とする請求項10~12のいずれか一項に記載の負極板。
【請求項14】
前記リチウム親和性材料の炭素材料シェルの内部にキャビティを有する、ことを特徴とする請求項10~13のいずれか一項に記載の負極板。
【請求項15】
前記リチウム親和性材料のキャビティ内にリチウム金属がさらに含有される、ことを特徴とする請求項14に記載の負極板。
【請求項16】
請求項1~9のいずれか一項に記載の負極板の製造方法であって、
活物質と、リチウム親和性材料とを、所定の比率で分散媒体において混合して、スラリーAに調製するステップS1-1と、
ステップS1-1で得られた前記スラリーAを集電体の少なくとも一つの表面上に塗覆するステップS1-2とを含む、ことを特徴とする負極板の製造方法。
【請求項17】
活物質を分散媒体に分散させて、スラリーBに調製するステップS1-3と、
ステップS1-3で得られた前記スラリーBを、前記ステップS1-2で得られた負極板上に塗覆するステップS1-4とをさらに含む、ことを特徴とする請求項16に記載の負極板の製造方法。
【請求項18】
リチウム親和性材料を分散媒体に分散させて、スラリーCに調製するステップS2-1と、
活物質を分散媒体に分散させて、スラリーDを調製するステップS2-2と、
ステップS2-1で得られた前記スラリーCを集電体の少なくとも一つの表面上に塗覆して、リチウム親和性材料コーティングを形成するステップS2-3と、
ステップS2-2で得られた前記スラリーDを、ステップS2-3で得られたリチウム親和性材料コーティングの表面上に塗覆するステップS2-4とを含む、ことを特徴とする請求項10~15のいずれか一項に記載の負極板の製造方法。
【請求項19】
請求項1~15のいずれか一項に記載の負極板、及び正極板、電解液とセパレータを含む、二次電池。
【請求項20】
負極のリチウム吸蔵容量をNとし、正極のリチウム放出容量をPとすると、
負正極板のリチウム容量の比N/P<1であり、任意選択的に0.3≦N/P≦0.9である、ことを特徴とする請求項19に記載の二次電池。
【請求項21】
請求項19又は20に記載の二次電池を含む、ことを特徴とする電池モジュール。
【請求項22】
請求項21に記載の電池モジュールを含む、ことを特徴とする電池パック。
【請求項23】
請求項19又は20に記載の二次電池、請求項21に記載の電池モジュール、請求項22に記載の電池パックから選択される少なくとも一つを含む、ことを特徴とする電力消費装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、二次電池の技術分野に関し、特に二次電池用複合リチウム金属負極板、該負極板の製造方法、及び該負極板を含む二次電池、電池モジュール、電池パックと電力消費装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン電池の応用範囲がますます広くなるにつれて、リチウムイオン電池は、水力、火力、風力と太陽光発電所などのエネルギー貯蔵電源システム、及び電動工具、電動自転車、電動バイク、電気自動車、軍事装備、航空宇宙などの数多くの分野に広く応用されている。リチウムイオン電池が飛躍的な発展を遂げたため、そのエネルギー密度、サイクル性能と安全性能などに対する要求も高くなってきている。
【0003】
従来技術では、リチウムイオン二次電池の負極板の活物質として、黒鉛が一般的に用いられている。しかしながら、従来技術によるリチウムイオン二次電池の充電中において、リチウムイオンが還元される時に極板上に堆積するため、リチウムデンドライトが形成される(
図1に示す)。リチウムデンドライトの成長により電池が膨張し、電池サイクル中の電極と電解液界面の不安定を引き起こし、電解液浸潤不良になるとともに、生成した固体電解質界面(SEI)膜を破壊し、電池の耐用年数が短くなる。リチウムデンドライトがセパレータを突き破ってリチウムイオン電池内部のショートを起こし、電池の熱暴走を起こして燃焼や爆発を引き起こす危険性もある。
【0004】
そのため、電極の構造を改良し、リチウムイオンの堆積を制御し、リチウムデンドライトの成長を抑制することにより、リチウムイオン電池の耐用年数と安全性能を向上させる負極板を開発する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術に存在する問題に鑑みて、本出願の目的は、複合リチウム金属負極板を提供することであり、それは、該負極板を使用するリチウムイオン電池の耐用年数と安全性能を向上させると同時に、電池のレート性能を確保し、電池の容量減衰を低減させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を実現するために、第1の態様によれば、本出願は、集電体と、集電体の少なくとも一つの表面上に塗布された活物質層とを含む複合リチウム金属負極板を提供し、
活物質層は、
活物質と、
コアシェル構造を有するリチウム親和性材料とを含み、
リチウム親和性材料のコアは、リチウム親和性物質を含有し、シェルは、炭素材料であることを特徴とする。
【0007】
これにより、負極板の表面にコアシェル構造を有するリチウム親和性材料を増加することによって、リチウムの核生成障壁を低下させ、リチウム金属が炭素シェル内部のリチウム親和性物質上に堆積するように配向誘導することができる。リチウム堆積の位置(炭素シェル内部)を制御しリチウム堆積の空間を制限することによって、リチウムデンドライトの成長を大幅に抑制し、リチウム金属のサイクル中の膨張を低減させる。電池の安全性とサイクル性能を改善すると同時に極めて高いエネルギー密度を達成する。
【0008】
任意の実施形態では、リチウム親和性材料の活物質層における質量百分率は、0.1%~5%であり、任意選択的に0.3%~3%である。
【0009】
これにより、リチウム親和性物質の活物質層における比率を制御することによって、負極板のエネルギー密度が低下しないことを確保するとともに、リチウム堆積を誘導し制御するために十分なリチウム親和性物質があることを確保することができる。
【0010】
任意の実施形態では、リチウム親和性物質は、Si、Ni、Ga、Sn、In、Ge、Ti、Mo、Pt、Al、Mg、Zn、Ag、Au、Co、Feなどの金属単体のうちの一つ又は複数であり、及び/又は、上記金属元素を含む酸化物、硫化物、フッ化物、窒化物、塩化物、炭化物のうちの一つ又は複数である。
【0011】
これにより、リチウム親和性物質として高いリチウム親和性を有する金属及び/又はその酸化物、硫化物、フッ化物、窒化物、塩化物、炭化物を選択することによって、リチウムイオンがその表面上に堆積するように効果的に誘導し、リチウムイオンが負極表面の任意の位置でリチウムデンドライトを形成することを回避することができ、それによってリチウムデンドライトがセパレータを突き破って局所的な短絡を起こして電池の安全性能の低下を引き起こすことを回避する。
【0012】
任意の実施形態では、リチウム親和性材料の炭素材料シェルは、10~70nmの厚さを有する。
【0013】
炭素材料シェルの厚さが薄すぎると、炭素材料の冷間加圧中に、炭素シェルは、破砕しやすくなり、厚さが厚すぎると、リチウムイオンの炭素材料シェル内外での拡散に影響を与え、シェル本体内のリチウム親和性物質は、リチウム親和性の作用を発揮しにくくなる。
【0014】
任意の実施形態では、リチウム親和性材料の炭素材料シェルの内部にキャビティを有する。
【0015】
これにより、炭素シェル材料内部のキャビティをリチウム堆積空間への制限に用いることによって、リチウムデンドライトの負極表面での無秩序な成長を回避すると同時に、サイクル中のリチウム金属による膨張問題を軽減する。
【0016】
任意の実施形態では、リチウム親和性材料のキャビティ内にリチウム金属がさらに含有される。
【0017】
これにより、キャビティ付きリチウム親和性材料内のリチウム親和性物質の誘導及び領域制限作用によって、リチウムイオンは、充放電中に還元反応が起こって、リチウム親和性材料のキャビティ内部に析出して堆積する。
【0018】
任意の実施形態では、活物質は、炭素系材料、シリコーン系材料、金属酸化物のうちの一つ又は複数から選択される。
【0019】
これにより、負極板の活物質として以上に記載の物質を選択することによって、負極板の良好なリチウムイオンの吸蔵放出性能と高い理論容量を確保すると同時に、電極界面上に安定した固体電解質界面膜(SEI膜)を形成し、負極板の安定性を向上させる。
【0020】
任意の実施形態では、炭素系材料は、天然黒鉛、人造黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ、ハードカーボン、ソフトカーボンのうちの一つ又は複数であり、及び/又は
シリコーン系材料は、シリコーン炭素、酸化ケイ素のうちの一つ又は二つであり、及び/又は
金属酸化物は、酸化鉄、酸化スズのうちの一つ又は複数である。
【0021】
これにより、負極活物質の活物質として以上に記載の物質を選択することによって、負極板の性能が要求を満たすことを確保することができる。
【0022】
任意の実施形態では、活物質層の外に、リチウム親和性材料を含有しない第2の活物質層をさらに有する。
【0023】
これにより、活物質層の外側に、リチウム親和性材料を含有しない第2の活物質層を添加することによって、リチウム金属の集電体に近い方向への堆積に有利であり、極板表面のリチウムデンドライトを減少させる。
【0024】
第2の態様によれば、本出願は、集電体と活物質層とを含む複合リチウム金属負極板を提供し、
集電体と活物質層との間に位置するリチウム親和性材料層をさらに含み、
リチウム親和性材料層は、コアシェル構造を有するリチウム親和性材料を含み、
リチウム親和性材料のコアは、リチウム親和性物質を含有し、シェルは、炭素材料である、ことを特徴とする。
【0025】
これにより、集電体と活物質層との間に、コアシェル構造を有するリチウム親和性材料を増加することによって、リチウムの核生成障壁を低下させ、リチウム金属が炭素シェル内部のリチウム親和性物質上に堆積するように配向誘導することができ、堆積して得られたリチウム金属は、集電体により近くなる。リチウム堆積の位置(炭素シェル内部)を制御しリチウム堆積の空間を制限することによって、リチウムデンドライトの成長を大幅に抑制し、リチウム金属のサイクル中の膨張を低減させる。電池の安全性とサイクル性能を改善すると同時に極めて高いエネルギー密度を達成する。
【0026】
任意の実施形態では、リチウム親和性材料層と活物質層との厚さ比は、0.1/100~6/100であり、好ましくは0.3/100~5/100である。
【0027】
これにより、リチウム親和性材料層と活物質層との厚さの比率を制御することによって、負極板のエネルギー密度が低下しないことを確保するとともに、リチウム堆積を誘導し制御するために十分なリチウム親和性物質があることを確保することができる。
【0028】
任意の実施形態では、リチウム親和性物質は、Si、Ni、Ga、Sn、In、Ge、Ti、Mo、Pt、Al、Mg、Zn、Ag、Au、Co、Feなどの金属単体のうちの一つ又は複数であり、及び/又は、上記金属元素を含む酸化物、硫化物、フッ化物、窒化物、塩化物、炭化物のうちの一つ又は複数である。
【0029】
これにより、リチウム親和性物質として高いリチウム親和性を有する金属及び/又はその酸化物、硫化物、フッ化物、窒化物、塩化物、炭化物を選択することによって、リチウムイオンがその表面上に堆積するように効果的に誘導し、リチウムイオンが負極表面の任意の位置でリチウムデンドライトを形成することを回避することができ、それによってリチウムデンドライトがセパレータを突き破って局所的な短絡を起こして電池の安全性能の低下を引き起こすことを回避する。
【0030】
任意の実施形態では、リチウム親和性材料の炭素材料シェルは、10~70nmの厚さを有する。
【0031】
炭素材料シェルの厚さが薄すぎると、炭素材料の冷間加圧中に、炭素シェルは、破砕しやすくなり、厚さが厚すぎると、リチウムイオンの炭素材料シェル内外での拡散に影響を与え、シェル本体内のリチウム親和性物質は、リチウム親和性の作用を発揮しにくくなる。任意の実施形態では、リチウム親和性材料の炭素材料シェルの内部にキャビティを有する。
【0032】
これにより、炭素シェル材料内部のキャビティをリチウム堆積空間への制限に用いることによって、リチウムデンドライトの負極表面での無秩序な成長を回避すると同時に、サイクル中のリチウム金属による膨張問題を軽減する。
【0033】
任意の実施形態では、リチウム親和性材料のキャビティ内にリチウム金属がさらに含有される。
【0034】
これにより、キャビティ付きリチウム親和性材料内のリチウム親和性物質の誘導及び領域制限作用によって、リチウムイオンは、充放電中に還元反応が起こって、リチウム親和性材料のキャビティ内部に析出して堆積する。
【0035】
第3の態様によれば、本出願は、複合リチウム金属負極板の製造方法を提供し、この方法は、
活物質と、リチウム親和性材料とを、所定の比率で分散媒体において混合して、スラリーAに調製するステップS1-1と、
ステップS1-1で得られたスラリーAを集電体の少なくとも一つの表面上に塗覆するステップS1-2とを含む。
【0036】
これにより、以上に記載の製造方法によって、以上に記載の、より高いエネルギー密度と、より高いサイクル使用安全性を有する負極板を得ることができる。
【0037】
いくつかの実施形態では、
活物質を分散媒体に分散させて、スラリーBに調製するステップS1-3と、
ステップS1-3で得られたスラリーBを、ステップS1-2で得られた負極板上に塗覆するステップS1-4とをさらに含む。
【0038】
これにより、以上に記載の製造方法によって得られた負極板は、リチウム金属が集電体に近い方向へ堆積しやすく、極板表面のリチウムデンドライトを減少させる。
【0039】
第4の態様によれば、本出願は、複合リチウム金属負極板の製造方法を提供し、この方法は、
リチウム親和性材料を分散媒体に分散させて、スラリーCに調製するステップS2-1と、
活物質を分散媒体に分散させて、スラリーDを調製するステップS2-2と、
ステップS2-1で得られたスラリーCを集電体の少なくとも一つの表面上に塗覆して、リチウム親和性材料コーティングを形成するステップS2-3と、
ステップS2-2で得られたスラリーDを、ステップS2-3で得られたリチウム親和性材料コーティングの表面上に塗覆するステップS2-4とを含む。
【0040】
これにより、以上に記載の製造方法によって得られた負極板は、より高いエネルギー密度、より高い安全性とサイクル性能を有する。
【0041】
第5の態様によれば、本出願は、二次電池を提供し、この二次電池は、
本出願の第1の態様又は第2の態様の複合リチウム金属負極板、又は本出願の第3の態様又は第4の態様の製造方法で製造された複合リチウム金属負極板、及び正極板、電解液とセパレータを含む。
【0042】
以上に記載のように、本出願の二次電池は、耐用年数と安全性能が向上すると同時に、質量エネルギー密度が十分に確保されている。
【0043】
任意の実施形態では、負極のリチウム吸蔵容量をNとし、正極のリチウム放出容量をPとすると、負正極板のリチウム容量の比N/P<1であり、任意選択的に0.3≦N/P≦0.9である。これにより、二次電池の質量エネルギー密度をさらに向上させることに有利である。
【0044】
第6の態様によれば、本出願は、本出願の第5の態様の二次電池を含む電池モジュールを提供する。
【0045】
第7の態様によれば、本出願は、本出願の第6の態様の電池モジュールを含む電池パックを提供する。
【0046】
第8の態様によれば、本出願は、本出願の第5の態様の二次電池、本出願の第6の態様の電池モジュール、又は本出願の第7の態様の電池パックを含む電力消費装置を提供する。
【0047】
本出願の負極板では、内部にリチウム親和性物質を有するコアシェル状のリチウム親和性材料を負極板上に添加することによって、リチウムの核生成障壁を効果的に低下させ、リチウム金属がシェル構造の内部のリチウム親和性物質上に堆積するように配向誘導することができ、それによってリチウムイオン電池の耐用年数と安全性能を向上させると同時に、電池の質量エネルギー密度を十分に確保する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】従来技術の一実施形態による、集電体の一つの表面上に活物質層を有する負極板の例示的な概略図である。
【
図2】本出願の一実施形態による、集電体の一つの表面上に活物質層を有する負極板の例示的な概略図である。
【
図3】本出願の一実施形態による、集電体の一つの表面上に活物質層と第2の活物質層を有する負極板の例示的な概略図である。
【
図4】本出願の一実施形態による、集電体の一つの表面上に活物質層とリチウム親和性材料層を有する負極板の例示的な概略図である。
【
図5】本出願の一実施形態によるリチウム親和性材料の構造概略図である。
【
図6】本出願の一実施形態による二次電池の概略図である。
【
図7】
図6に示す本出願の一実施形態による二次電池の分解図である。
【
図8】本出願の一実施形態による電池モジュールの概略図である。
【
図9】本出願の一実施形態による電池パックの概略図である。
【
図10】
図9に示す本出願の一実施形態による電池パックの分解図である。
【
図11】本出願の一実施形態の二次電池が電源として用いられる電力消費装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、図面を適当に参照しながら、本出願の二次電池用負極板及びその製造方法、二次電池、電池モジュール、電池パックと電力消費装置を具体的に開示した実施形態を詳細に説明する。しかし、必要のない詳細な説明を省略する場合がある。例えば、周知の事項に対する詳細な説明、実際に同じである構造に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に長くなることを回避し、当業者に容易に理解させるためである。なお、図面及び以下の説明は、当業者に本出願を十分に理解させるために提供するものであり、特許請求の範囲に記載されたテーマを限定するものではない。
【0050】
本出願に開示された「範囲」は、下限と上限の形式で限定され、与えられた範囲は、一つの下限と一つの上限を選定することで限定されるものであり、選定された下限と上限は、特定の範囲の境界を限定した。このように限定される範囲は、端値を含むか又は含まないものであってもよく、且つ任意の組み合わせが可能であり、即ち任意の下限は、任意の上限と組み合わせて、一つの範囲を形成することができる。例えば、特定のパラメータに対して60-120と80-110の範囲がリストアップされている場合、60-110と80-120の範囲も想定できると理解される。なお、最小範囲値として1と2がリストアップされており、最大範囲値として3、4及び5がリストアップされている場合、1-3、1-4、1-5、2-3、2-4と2-5という範囲がすべて想定できる。本出願では、特に断りのない限り、「a~b」という数値範囲は、a~bの任意の実数の組み合わせの短縮表現を表し、ここで、aとbはいずれも実数である。例えば、数値範囲「0~5」は、本明細書で「0~5」の間のすべての実数がリストアップされていることを意味し、「0~5」は、これらの数値の組み合わせの短縮表現だけである。また、あるパラメータが≧2の整数であると表現すると、このパラメータが例えば整数2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12などであることを開示していることに相当する。
特に説明しない場合、本出願のすべての実施形態及び選択的な実施形態は、互いに組み合わせて新たな技術案を形成することができる。
【0051】
特に説明しない場合、本出願のすべての技術的特徴及び選択的な技術的特徴は、互いに組み合わせて新たな技術案を形成することができる。
【0052】
特に説明しない場合、本出願のすべてのステップは、順番に行われてもよく、ランダムに行われてもよく、好ましくは、順番に行われる。例えば、前記方法がステップ(a)と(b)とを含むことは、前記方法が、順番に行われるステップ(a)と(b)とを含んでもよく、順番に行われるステップ(b)と(a)とを含んでもよいことを表す。例えば、以上で言及した前記方法がステップ(c)をさらに含んでもよいことは、ステップ(c)が任意の順序で前記方法に追加されてもよいことを表し、例えば前記方法は、ステップ(a)、(b)及び(c)を含んでもよく、ステップ(a)、(c)及び(b)を含んでもよく、ステップ(c)、(a)及び(b)などを含んでもよい。
【0053】
特に説明しない場合、本出願で言及した「含む」と「包含」は、開放型を表し、閉鎖型であってもよい。例えば、前記「含む」と「包含」は、リストアップされていない他の成分をさらに含み又は包含してもよく、リストアップされている成分のみを含み又は包含してもよいことを表してもよい。
【0054】
特に説明しない場合、本出願では、用語である「又は」は、包括的である。例を挙げると、「A又はB」というフレーズは、「A、B、又はAとBとの両方」を表す。より具体的には、Aが真であり(又は存在し)且つBが偽である(又は存在しない)条件と、Aが偽である(又は存在しない)が、Bが真である(又は存在する)条件と、AとBがいずれも真である(又は存在する)条件とのいずれも「A又はB」を満たしている。
【0055】
従来技術におけるリチウムイオン電池の充放電過程は、リチウムイオンの正負極板上での酸化還元反応であり、その本質は、リチウムイオンの正負極板上での吸蔵と放出の過程である。そのため、負極に対して、適切な対リチウム電位を備え、酸化還元中に構造変化しにくく、リチウムイオンの吸蔵と放出中に、負極活物質の体積変化が小さく、構造が安定して、良好なサイクル性能を有し、高い容量を有することで、電池に高いエネルギー密度を備えさせることが要求されている。しかし、リチウムイオンが負極の表面において不可逆的に堆積して、リチウムデンドライトを形成するため、有効なリチウムイオンの含有量を低下させ、電池の初回クーロン効率を低下させると同時に、リチウムデンドライトは、セパレータを突き破りやすく、それによって短絡を起こして、電池使用の安全性を低下させる。
【0056】
そのため、負極板の充放電中の構造安定性を確保すると同時に、電池のレート性能を確保し、電池容量の減衰を低減させることができる新たな負極板の構造が強く要望されている。
【0057】
本出願の一実施形態では、本出願は、集電体と、集電体の少なくとも一つの表面上に塗布された活物質層とを含む複合リチウム金属負極板を提供し、該活物質層は、
活物質と、
コアシェル構造を有するリチウム親和性材料とを含み、
リチウム親和性材料のコアは、リチウム親和性物質を含有し、シェルは、炭素材料である。
【0058】
メカニズムがよく分かってないが、本出願者は、多くの実験を重ねてから以下のことを見出した。
図2に示すように、本出願は、活物質層(61)にリチウム親和性材料(63)を設置することで、リチウムの核生成障壁を低下させ、チウム金属が炭素シェル(64)内部のリチウム親和性物質(65)上に堆積するように配向誘導することができ、堆積して得られたリチウム金属は、集電体により近くなる。リチウム堆積の位置(炭素シェル内部)を制御しリチウム堆積の空間を制限することによって、リチウムデンドライトの成長を大幅に抑制し、リチウム金属のサイクル中の膨張を低減させる(
図5に示す)。それによって電池の安全性とサイクル性能を改善すると同時に極めて高いエネルギー密度を達成する。そのため、活物質層(61)にリチウム親和性材料(63)を設置することで、負極板表面での不規則なリチウムデンドライトの生成を減少させることができる。そして、リチウム親和性材料(63)の存在により、リチウムが負極板上においてリチウム金属の形式で均一に分散して堆積するように誘導し、それによって負極板のエネルギー密度を向上させ、局所のリチウム金属の濃度が高すぎて不可逆的な堆積を引き起こすことを回避し、電池のサイクル性能と耐用年数を向上させ、サイクルによる比容量の減衰を低減させ、電池に非常に優れた耐過充電、過放電特性を備えさせることができる。また、リチウムデンドライトの減少により、セパレータへ危害を軽減し、電極の短絡を回避し、それによって電池の安全性能を向上させる。
【0059】
活物質層は、活物質、リチウム親和性材料、導電剤、接着剤と任意選択的な増粘剤を含んでもよい。本出願では、リチウム親和性材料におけるリチウム親和性物質は、以上に記載の、リチウムの核生成障壁を低下させ、リチウムの堆積を配向誘導する作用を果たすことができるものであればよく、リチウム親和性物質の種類に対して、具体的に制限しない。任意選択的に、リチウム親和性物質は、リチウム親和性金属の単体、酸化物、硫化物などの様々な形態であってもよい。導電剤、接着剤と任意選択的な増粘剤の種類に対して具体的に制限せず、当業者は、実際の需要に応じて選択することができる。活物質層における活物質、リチウム親和性材料、導電剤、接着剤と任意選択的な増粘剤の含有量に対して具体的に制限せず、当業者は、実際の需要に応じて選択することができる。
【0060】
いくつかの実施形態では、リチウム親和性材料の活物質層における質量百分率は、0.1%~5%であり、好ましくは0.3%~3%である。すでに知られているように、リチウム親和性材料におけるリチウム親和性物質の主な作用は、リチウムがその表面に堆積するように誘導することであり、リチウム親和性材料の含有量が低すぎると、十分なリチウム堆積サイトを形成することができず、大量のリチウムが依然として活物質の表面に堆積してリチウムデンドライトを形成し、リチウム親和性材料の含有量が高すぎると、リチウムイオンがリチウム親和性物質と反応しやすく、放出しにくくなり、リチウムイオンの損失をもたらし、電池のエネルギー密度が低下する。そのため、リチウム親和性材料の活物質層における比率を制御することによって、負極板のエネルギー密度が低下しないことを確保するとともに、リチウム堆積を誘導し制御するために十分なリチウム親和性物質があることを確保することができる。
【0061】
いくつかの実施形態では、リチウム親和性物質は、Si、Ni、Ga、Sn、In、Ge、Ti、Mo、Pt、Al、Mg、Zn、Ag、Au、Co、Feなどの金属単体のうちの一つ又は複数であり、及び/又は、上記金属元素を含む酸化物、硫化物、フッ化物、窒化物、塩化物、炭化物のうちの一つ又は複数である。ここで、リチウム親和性という特性は、後述のリチウム親和性テスト方法において規定されるリチウム親和性を指す。
【0062】
リチウム親和性を有する金属単体及び/又はその酸化物、硫化物、フッ化物、窒化物、塩化物、炭化物は、リチウムイオンがその表面上に堆積するように効果的に誘導し、リチウムイオンが負極表面の任意の位置でリチウムデンドライトを形成することを回避することができ、それによってリチウムデンドライトがセパレータを突き破って局所的な短絡を起こして電池の安全性能の低下を引き起こすことを回避する。
【0063】
いくつかの実施形態では、リチウム親和性材料の炭素材料シェルは、10~70nmの厚さを有する。このような厚さを有することによって、イオン輸送効率を配慮すると同時に、理想的で適切な強度を有し、炭素シェル内で生成した金属粒子が炭素シェルの外側に漏れることを防止することができる。炭素材料のシェル層が薄すぎると、炭素シェルの安定性が低く、極板生産及び電極使用中に構造の崩壊が発生しやすく、又は堆積したリチウムが炭素シェルを引き裂き/突き破ることで、リチウムのシェル層構造内での配向堆積を破壊する。炭素シェルが厚すぎると、イオンの輸送経路が長くなり、イオンの輸送効率が低下し、電池のレート性能が顕著に低下する。
【0064】
いくつかの実施形態では、リチウム親和性材料の炭素材料シェルの内部にキャビティを有する。シェル層構造は、リチウム堆積のために一定の空間を取り囲み、キャビティの形成により、リチウム堆積のためによい成長空間を提供すると同時に、リチウム金属の成長に対する定領域制限作用を果たすことができ、リチウムデンドライトの負極表面での無秩序な成長を回避すると同時に、サイクル中のリチウム金属による膨張問題を軽減し、リチウムイオン電池の使用安全性を向上させる。
【0065】
いくつかの実施形態では、リチウム親和性材料のキャビティ内にリチウム金属がさらに含有される。該リチウム金属は、電解液と接触する時にリチウムイオンのリチウム親和性物質表面での堆積に由来するものであってもよい。リチウム親和性材料のキャビティ内にリチウム金属が存在するか否かにかかわらず、リチウム親和性物質の誘導及びキャビティの領域制限作用は、影響を受けない。一般的には、シェル層構造内のリチウム親和性物質の誘導により、電解液中のリチウムイオンは、リチウム金属の形式で堆積し、リチウム金属とリチウムイオンとの間に動的変換の平衡反応が存在する。さらに活物質の比容量が、十分なリチウムイオンの吸蔵と放出を収容するには不十分であるため、キャビティ内には、一定量の金属状態のリチウムが常に存在し得る。すでに知られているように、リチウム金属の理論グラム容量は、極めて高く、金属リチウムの存在によりリチウムイオン電池のエネルギー密度を顕著に向上させる。
【0066】
充電中に、活物質の収容量を超えるリチウムイオンは、リチウム金属の形式でリチウム親和性材料のキャビティ内部に析出して堆積し、放電中に、この析出リチウム金属によって変換されたリチウムイオンは、活物質に収容されるリチウムイオンよりも先に電解液に戻る。
【0067】
いくつかの実施形態では、活物質は、炭素系材料、シリコーン系材料、金属酸化物のうちの一つ又は複数から選択される。すでに知られているように、これらの材料は、いずれも一般的な負極板材料であり、対リチウム電位が適切で、構造安定性が高く、リチウムイオン吸蔵と放出のサイクル中に変形しにくく、エネルギー密度が高く、表面に安定したSEI膜が形成されやすいなどの様々な優位性を有するため、一般的に負極の活物質として選択される。負極の活物質として以上に記載の材料を選択することによって、形成される負極及び該当する二次電池に複合リチウム金属負極構造をより容易に形成し、且つ負極板の安定性がより高いことを確保することができる。
【0068】
いくつかの実施形態では、炭素系材料は、天然黒鉛、人造黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ、ハードカーボン、ソフトカーボンのうちの一つ又は複数であり、及び/又は
シリコーン系材料は、シリコーン炭素、酸化ケイ素のうちの一つ又は二つであり、及び/又は
金属酸化物は、酸化鉄、酸化スズのうちの一つ又は複数である。
【0069】
これにより、負極活物質の活物質として以上に記載の物質を選択することによって、負極板の性能が要求を満たすことを確保することができる。
【0070】
いくつかの実施形態では、活物質層の外に、リチウム親和性材料を含有しない第2の活物質層(「単一活物質層」と呼ばれることもある)をさらに有する。リチウムが集電体により近い箇所に堆積するようにガイドし、活物質層表面の任意の位置で堆積する可能性を低下させるために、リチウム親和性材料を含有する活物質層を、集電体の方向により近い位置に設置することで、リチウムの配向堆積をガイドし、リチウム堆積の無秩序さを軽減することができる。
【0071】
第2の態様によれば、本出願は、集電体と活物質層とを含む複合リチウム金属負極板を提供し、
集電体と活物質層との間に位置するリチウム親和性材料層をさらに含み、
リチウム親和性材料層は、コアシェル構造を有するリチウム親和性材料を含み、
リチウム親和性材料のコアは、リチウム親和性物質を含有し、シェルは、炭素材料である、ことを特徴とする。
【0072】
これにより、集電体と活物質層との間に、コアシェル構造を有するリチウム親和性材料を増加することによって、リチウムの核生成障壁を低下させ、リチウム金属が炭素シェル内部のリチウム親和性物質上に堆積するように配向誘導することができ、堆積して得られたリチウム金属は、集電体により近くなる。リチウム堆積の位置(炭素シェル内部)を制御しリチウム堆積の空間を制限することによって、リチウムデンドライトの成長を大幅に抑制し、リチウム金属のサイクル中の膨張を低減させる。電池の安全性とサイクル性能を改善すると同時に極めて高いエネルギー密度を達成する。
【0073】
活物質層は、一般的な活物質、導電剤、接着剤と任意選択的な増粘剤を含んでもよい。一般的な活物質は、リチウム親和性材料を含有しない市販の製品である。導電剤、接着剤と任意選択的な増粘剤の種類に対して具体的に制限せず、当業者は、実際の需要に応じて選択することができる。活物質層における活物質、導電剤、接着剤と任意選択的な増粘剤の含有量に対して具体的に制限せず、当業者は、実際の需要に応じて選択することができる。任意選択的に、活物質層の総重量に対して、活物質の量は、93.0~98.0重量%であってもよく、導電剤の量は、0.3~4.0重量%であってもよく、接着剤の量は、0.3~2.0重量%であってもよく、任意選択的な増粘剤の量は、0.1~1.0重量%であってもよい。
【0074】
いくつかの実施形態では、リチウム親和性材料層と活物質層との厚さ比は、0.1/100~6/100であり、好ましくは0.3/100~5/100である。リチウム親和性材料層と活物質層が異なる物質である場合、リチウム親和性材料層と活物質層との厚さの比率を制御することによって、集電体表面におけるリチウム親和性材料と活物質との量の比率を制御することができ、負極板のエネルギー密度が低下しないことを確保するとともに、リチウム堆積を誘導し制御するために十分なリチウム親和性物質があることを確保することができる。
【0075】
いくつかの実施形態では、リチウム親和性物質は、Si、Ni、Ga、Sn、In、Ge、Ti、Mo、Pt、Al、Mg、Zn、Ag、Au、Co、Feなどの金属単体のうちの一つ又は複数であり、及び/又は、上記金属元素を含む酸化物、硫化物、フッ化物、窒化物、塩化物、炭化物のうちの一つ又は複数である。
【0076】
これにより、リチウム親和性物質として高いリチウム親和性を有する金属及び/又はその酸化物、硫化物、フッ化物、窒化物、塩化物、炭化物を選択することによって、リチウムイオンがその表面上に堆積するように効果的に誘導し、リチウムイオンが負極表面の任意の位置でリチウムデンドライトを形成することを回避することができ、それによってリチウムデンドライトがセパレータを突き破って局所的な短絡を起こして電池の安全性能の低下を引き起こすことを回避する。
【0077】
いくつかの実施形態では、リチウム親和性材料の炭素材料シェルは、10~70nmの厚さを有する。このような厚さを有することによって、イオン輸送効率を配慮すると同時に、理想的で適切な強度を有し、炭素シェル内で生成した金属粒子が炭素シェルの外側に漏れることを防止することができる。リチウム親和性材料のシェル層が薄すぎると、炭素シェルの安定性が低く、極板生産及び電極使用中に構造の崩壊が発生しやすく、又は堆積したリチウムが炭素シェルを引き裂き/突き破ることで、リチウムのシェル層構造内での配向堆積を破壊する。そして炭素シェル構造が破壊される時、炭素シェル内部に堆積した金属が出されるようになり、リチウム金属の配向堆積を誘導できないリスクが存在する。炭素シェルが厚すぎると、イオンの輸送経路が長くなり、イオンの輸送効率が低下し、電池のレート性能が顕著に低下する。
【0078】
いくつかの実施形態では、リチウム親和性材料の炭素材料シェルの内部にキャビティを有する。以上に記載のように、シェル層構造は、リチウム堆積のために一定の空間を取り囲み、キャビティの形成により、リチウム堆積のためによい成長空間を提供すると同時に、リチウム金属の成長に対する定領域制限作用を果たすことができ、リチウムデンドライトの負極表面での無秩序な成長を回避すると同時に、サイクル中のリチウム金属による膨張問題を軽減し、リチウムイオン電池の使用安全性を向上させる。
【0079】
いくつかの実施形態では、リチウム親和性材料のキャビティ内にリチウム金属がさらに含有される。該リチウム金属は、電解液と接触する時にリチウムイオンのリチウム親和性物質表面での堆積に由来するものであってもよい。リチウム親和性材料のキャビティ内にリチウム金属が存在するか否かにかかわらず、リチウム親和性物質の誘導及びキャビティの領域制限作用は、影響を受けない。一般的には、シェル層構造内のリチウム親和性物質の誘導により、電解液中のリチウムイオンは、リチウム金属の形式で堆積し、リチウム金属とリチウムイオンとの間に動的変換の平衡反応が存在する。さらに活物質の比容量が、十分なリチウムイオンの吸蔵と放出を収容するには不十分であるため、キャビティ内には、一定量の金属状態のリチウムが常に存在し得る。すでに知られているように、リチウム金属の理論グラム容量は、極めて高く、金属リチウムの存在によりリチウムイオン電池のエネルギー密度を顕著に向上させる。
【0080】
充電中に、活物質の収容量を超えるリチウムイオンは、リチウム金属の形式でリチウム親和性材料のキャビティ内部に析出して堆積し、放電中に、この析出リチウム金属によって変換されたリチウムイオンは、活物質に収容されるリチウムイオンよりも先に電解液に戻る。
【0081】
本出願は、複合リチウム金属負極板の製造方法をさらに提供し、この方法は、
活物質と、リチウム親和性材料とを、所定の比率で分散媒体において混合して、スラリーAに調製するステップS1-1と、
ステップS1-1で得られたスラリーAを集電体の少なくとも一つの表面上に塗覆するステップS1-2とを含む。
【0082】
これにより、以上に記載の製造方法によって、以上に記載の、より高いエネルギー密度と、より高いサイクル使用安全性を有する負極板を得ることができる。
【0083】
いくつかの実施形態では、
活物質を分散媒体に分散させて、スラリーBに調製するステップS1-3と、
ステップS1-3で得られたスラリーBを、ステップS1-2で得られた負極板上に塗覆するステップS1-4とをさらに含む。
【0084】
これにより、以上に記載の製造方法によって得られた負極板は、リチウム金属が集電体に近い方向へ堆積しやすく、極板表面のリチウムデンドライトを減少させる。
【0085】
第4の態様によれば、本出願は、複合リチウム金属負極板の製造方法を提供し、この方法は、
リチウム親和性材料を分散媒体に分散させて、スラリーCに調製するステップS2-1と、
活物質を分散媒体に分散させて、スラリーDを調製するステップS2-2と、
ステップS2-1で得られたスラリーCを集電体の少なくとも一つの表面上に塗覆して、リチウム親和性材料コーティングを形成するステップS2-3と、
ステップS2-2で得られたスラリーDを、ステップS2-3で得られたリチウム親和性材料コーティングの表面上に塗覆するステップS2-4とを含む。
【0086】
これにより、以上に記載の製造方法によって得られた負極板は、より高いエネルギー密度、より高い安全性とサイクル性能を有する。
【0087】
本出願は、二次電池をさらに提供し、この二次電池は、以上に記載の本出願の負極板を含み、正極板、電解液とセパレータをさらに含む。
【0088】
本出願の二次電池では、負極のリチウム吸蔵容量をNとし、正極のリチウム放出容量をPとすると、負正極板のリチウム容量の比N/P<1であり、好ましくは0.3≦N/P≦0.9である。
【0089】
これにより、活物質の容量の比をN/P<1に制御することによって、単位重量の負極板に収容可能なリチウムの含有量を効果的に増加させることができ、電池全体のエネルギー密度の向上に有利である。電池全体のエネルギー密度をより高く向上させるという観点から、好ましくは、N/P≦0.9である。デンドライトの生成、リチウムイオンの損失をよりよく防止するという観点から、好ましくは、0.3≦N/Pである。
【0090】
ここでいう「負極のリチウム吸蔵容量」とは、電池が満充電になった時に負極活物質に理論的に吸蔵できるリチウムイオンの量であり、負極活物質の表面に析出したリチウム金属、及びリチウム親和性物質により誘導されてリチウム金属の形態としてリチウム親和性材料内部に析出したリチウムを含まない。「正極のリチウム放出容量」とは、電池が満充電になった時に正極から理論的に放出できるリチウムの量である。「負極のリチウム吸蔵容量」と「正極のリチウム放出容量」は、使用する正極活物質及び負極活物質の量から算出することができる。
【0091】
負正極板のリチウム容量の比N/Pが1である時、正極活物質から放出されたすべてのリチウムは、理論的にすべて負極活物質に吸蔵することができる。しかし実際には、一部のリチウムが活物質の表面に析出するため、従来技術において、負極活物質の容量をより多く利用するように、N/Pは、一般的には1よりも大きい。
【0092】
本発明は、リチウムが金属の形式でリチウム親和性材料内部に堆積するように誘導することによって、N/Pの値にかかわらず、デンドライトの析出を良好に回避することができる。しかし本発明の効果は、N/P<1の時、特に顕著である。
【0093】
また説明すべきこととして、N/P<1であっても、金属リチウムが負極活物質の表面に析出することもできる。しかしながら、リチウム親和性材料内のキャビティが満たされるまで、析出した金属リチウムは、主にリチウム親和性材料内部に存在する。N/P>1であっても、金属リチウムがリチウム親和性材料に析出することもでき、すべて負極活物質に吸蔵されるというわけではない。
【0094】
本出願は、以上に記載の本出願の二次電池を含む電池モジュールをさらに提供する。
【0095】
本出願は、以上に記載の本出願の電池モジュールを含む電池パックをさらに提供する。
【0096】
本出願は、以上に記載の本出願の二次電池、以上に記載の本出願の電池モジュール、又は以上に記載の本出願の電池パックを含む電力消費装置をさらに提供する。
【0097】
本出願の負極板では、内部にリチウム親和性物質を有するコアシェル状のリチウム親和性材料を負極板上に添加することによって、リチウムの核生成障壁を効果的に低下させ、リチウム金属がシェル構造の内部のリチウム親和性物質上に堆積するように配向誘導することができ、それによってリチウムイオン電池の耐用年数と安全性能を向上させると同時に、電池の質量エネルギー密度を十分に確保する。
【0098】
炭素シェル構造としてのリチウム親和性材料の合成方法については、特に限定されることがなく、リチウム親和性物質外に炭素源を被覆してから、アーク放電法、水熱法、化学気相堆積、高温熱分解などの一般的な方法によって炭素源を炭化することが挙げられる。
【0099】
上記炭素源として、例えばグルコース、黄色デキストリンなどの、水に可溶な炭素源を使用してもよい。
【0100】
好ましくは、炭素源とリチウム親和性物質を用いて、界面活性剤(例えば、ドデシルスルホン酸ナトリウム)の作用下でワンステップ水熱法によってリチウム親和性材料を合成する。この時、界面活性剤の量を調節することによって、リチウム親和性材料のサイズをコントロールすることができる。又は、直接に金属有機骨格化合物(MOF)を炭化してもよい。
【0101】
上記炭化反応は、160℃~180℃で1~3時間加熱することによって行われてもよい。
【0102】
MOFは、酸素、窒素などを含有する多座有機配位子と遷移金属イオンとが自己集合して形成される配位ポリマーである。多孔質で、比表面積が大きいなどの特性を有する。本発明に使用されるMOFについては、特に限定されることがなく、溶媒法、液相拡散法、ゾル-ゲル法、撹拌合成法、固相合成法、マイクロ波、超音波、イオン熱などの方法によって合成されるMOFが挙げられる。
【0103】
多座有機配位子としては、多座有機配位子として用いる一般的な物質を利用してもよく、炭化可能であれば、特に制限はない。例えば、ポリオール、ポリ酸、ポリアミン、及びその混合物を使用してもよい。
【0104】
遷移金属イオンとしては、本発明の効果が損なわれない限り、制限なく使用することができ、リチウム親和性物質を含有する。
【0105】
有機高分子により形成される炭素シェルは、製造が簡単で、コストが低いという特徴を有し、電池の低コスト化に有利である。MOFにより形成される炭素シェルは、リチウムイオン透過性が高く、機械的強度が高いという特徴を有し、電池の充放電速度を向上させ、リチウム親和性材料の炭素シェルの構造を保持することに有利であるとともに、遷移金属を均一に含有するため、リチウムの堆積を均一に誘導することに有利である。
【0106】
以下では、図面を適当に参照しながら、本出願の二次電池、電池モジュール、電池パックと電力消費装置を説明する。
【0107】
本出願の一実施形態では、二次電池を提供する。
【0108】
一般的には、二次電池は、正極板と、負極板と、電解質と、セパレータとを含む。電池の充放電中において、活性イオンは、正極板と負極板との間で往復して吸蔵し放出する。電解質は、正極板と負極板との間でイオンを伝導する作用を果たす。セパレータは、正極板と負極板との間に設置され、主に正負極の短絡を防止する作用を果たすとともに、イオンを通過させることができる。
【0109】
[正極板]
正極板は、正極集電体と、正極集電体の少なくとも一つの表面に設置される正極活物質層とを含んでもよい。例として、正極集電体は、それ自体の厚さ方向において対向する二つの表面を有し、正極活物質層は、正極集電体の対向する二つの表面のいずれか一方又は両方上に設置される。
【0110】
上記正極集電体は、金属箔シート又は複合集電体を採用してもよい。例えば、金属箔シートとして、アルミニウム箔を採用してもよい。複合集電体は、高分子材料基材と、高分子材料基材の少なくとも一つの表面上に形成された金属層とを含んでもよい。複合集電体は、金属材料(アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金など)を高分子材料基材(例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)など)上に形成することによって形成されてもよい。
【0111】
正極活物質層は、正極活物質を含む。正極活物質は、コバルト酸リチウム、ニッケルマンガンコバルト酸リチウム、ニッケルマンガンアルミン酸リチウム、リン酸鉄リチウム、リン酸バナジウムリチウム、リン酸コバルトリチウム、リン酸マンガンリチウム、ケイ酸鉄リチウム、ケイ酸バナジウムリチウム、ケイ酸コバルトリチウム、ケイ酸マンガンリチウム、スピネル型マンガン酸リチウム、スピネル型ニッケルマンガン酸リチウム、チタン酸リチウムなどを含むが、それらに限らない。正極活物質は、これらのうちの一つ又は複数を使用してもよい。
【0112】
正極活物質層は、任意選択的に接着剤をさらに含む。接着剤の種類に対して具体的に制限せず、当業者は、実際の需要に応じて選択することができる。例として、接着剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-プロピレン三元共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン三元共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体及びフッ素含有アクリレート樹脂のうちの一つ又は複数を含んでもよい。
【0113】
正極活物質層は、任意選択的に導電剤をさらに含む。導電剤の種類に対して具体的に制限せず、当業者は、実際の需要に応じて選択することができる。例として、正極活物質層に用いる導電剤は、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの一つ又は複数から選択されてもよい。
【0114】
正極板の製造は、本分野の既知の方法に基づいて行ってもよい。例として、正極活物質と、導電剤と、接着剤とを溶媒(例えば、N-メチルピロリドン(NMP))中に分散させて、均一な正極スラリーを形成し、正極スラリーを正極集電体上に塗覆し、乾燥、冷間加圧などの工程を経て、正極板が得られる。
【0115】
[負極板]
本出願の二次電池における負極板は、以上に記載の二次電池用負極板を使用し、それは、集電体と、集電体の少なくとも一つの表面上に設置された、リチウム親和性材料を含有するコーティングとを含み、それは、様々な構造配置の形態を有する。例えば、リチウム親和性物質を含有するリチウム親和性材料と負極活物質とを十分に混合してから集電体の少なくとも一つの表面上に設置して、単層の活物質層を形成し、又は、リチウム親和性物質を含有するリチウム親和性材料と負極活物質とを十分に混合してから集電体の少なくとも一つの表面上に設置して1層目の活物質層を形成し、リチウム親和性物質を含有しない活物質を1層目の活物質層の表面上に設置して、二層の活物質層を形成し、又は、リチウム親和性物質のみを含有するリチウム親和性材料を集電体の少なくとも一つの表面上に設置してリチウム親和性物質層を形成し、リチウム親和性物質を含有しない活物質をリチウム親和性物質層の表面上に設置する。
【0116】
集電体の一つの表面上に、リチウム親和性物質を含有する活物質層が形成される場合に、負極板の集電体と活物質層は、
図2、
図3、又は
図4に例示的に示す構造を有してもよい。集電体の二つの表面上に、いずれも活物質層が形成される場合に、負極板の二つの活物質層は、対称的な構造を有してもよい。
【0117】
負極集電体は、金属箔シート又は複合集電体を採用してもよい。例えば、金属箔シートとして、銅箔を採用してもよい。複合集電体は、高分子材料基材と、高分子材料基材の少なくとも一つの表面上に形成された金属層とを含んでもよい。複合集電体は、金属材料(銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金など)を高分子材料基材(例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)など)上に形成することによって形成されてもよい。
【0118】
負極活物質は、本分野における公知の電池用の負極活物質を採用してもよい。例として、負極活物質は、人造黒鉛、天然黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボンなどの炭素系材料、シリコーン系材料、スズ系材料及びチタン酸リチウムなどの材料のうちの少なくとも一つを含んでもよい。前記シリコーン系材料は、シリコーン単体、シリコーン酸化物、シリコーン炭素複合体、シリコーン窒素複合体及びシリコーン合金のうちの少なくとも一つから選択されてもよい。前記スズ系材料は、スズ単体、スズ酸化物及びスズ合金のうちの少なくとも一つから選択されてもよい。しかし、本出願は、これらの材料に限らず、さらに電池の負極活物質として使用可能な他の従来の材料を使用してもよい。これらの負極活物質は、単独で一つのみを使用してもよく、二つ以上を組み合わせて使用してもよい。
【0119】
負極活物質層におけるリチウム親和性材料層と活物質層(リチウム親和性材料を含有するか又は含有しない)は、いずれも接着剤、導電剤と任意選択的な増粘剤などの他の助剤を含んでもよい。
【0120】
活物質層とリチウム親和性材料層にそれぞれ使用される導電剤は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよく、当業者は、需要に応じて選択することができる。例として、導電剤は、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの一つ又は複数から選択されてもよい。
【0121】
活物質層とリチウム親和性材料層にそれぞれ使用される接着剤は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよく、当業者は、需要に応じて選択することができる。例として、接着剤は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸ナトリウム(PAAS)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸ナトリウム(SA)、ポリメタクリル酸(PMAA)及びカルボキシメチルキトサン(CMCS)のうちの一つ又は複数から選択されてもよい。
【0122】
活物質層とリチウム親和性材料層にそれぞれ使用される他の助剤は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよく、当業者は、需要に応じて選択することができる。例として、助剤は、任意選択的に増粘剤、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)などを含む。
【0123】
本出願の製造方法によって、リチウム親和性物質を含有するリチウム親和性材料と負極活物質とを十分に混合してから集電体の少なくとも一つの表面上に設置することで、リチウム親和性材料と活物質を含む単層の活物質層を得てもよく、リチウム親和性物質を含有するリチウム親和性材料と負極活物質とを十分に混合してから集電体の少なくとも一つの表面上に設置して1層目の活物質層を形成し、リチウム親和性材料を含有しない活物質を1層目の活物質層の表面上に設置して第2の活物質層を形成することで、複合コーティング構造を得てもよく、リチウム親和性物質のみを含有するリチウム親和性材料を集電体の少なくとも一つの表面上に設置してリチウム親和性材料層を形成し、リチウム親和性物質を含有しない活物質をリチウム親和性材料層の表面上に設置して、同様にリチウム親和性材料層と活物質層を含む複合コーティング構造を得てもよい。
【0124】
例として、上記活物質、リチウム親和性材料、導電剤、接着剤と任意選択的な他の助剤を溶媒(例えば脱イオン水)中に分散させて、均一なスラリーを形成し、一般的な塗覆プロセスによって該スラリーを負極集電体の少なくとも一つの表面上に塗覆してから乾燥させて、第1の活物質層を得てもよい。任意選択的に、活物質、導電剤、接着剤と任意選択的な他の助剤を溶媒(例えば脱イオン水)中に分散させて、均一なスラリーを形成し、一般的な塗覆プロセスによって該スラリーを第1の活物質層の表面上に塗覆してから乾燥させて、第2の活物質層を得る。続いて、冷間加圧の条件下で、得られた、集電体と、リチウム親和性材料と、活物質とを含む複合コーティング構造に対して冷間加圧を行って、負極板を得る。
【0125】
[電解質]
電解質は、正極板と負極板との間でイオンを伝導する作用を果たす。本出願は、電解質の種類を具体的に制限せず、需要に応じて選択することができる。例えば、電解質は、液体、ゲル状又は全固体であってもよい。
【0126】
いくつかの実施形態では、上記電解質は、電解液を採用する。電解液は、電解質塩と、溶媒とを含む。
【0127】
例として、電解質塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF6)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiTFS)、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiDFOB)、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiBOB)、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO2F2)、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム(LiDFOP)及びテトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウム(LiTFOP)のうちの一つ又は複数から選択されてもよい。
【0128】
例として、溶媒は、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、ブチレンカーボネート(BC)、ギ酸メチル(MF)、酢酸メチル(MA)、酢酸エチル(EA)、酢酸プロピル(PA)、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル(EP)、プロピオン酸プロピル(PP)、酪酸メチル(MB)、酪酸エチル(EB)、1,4-ブチロラクトン(GBL)、スルホラン(SF)、ジメチルスルホン(MSM)及びエチルメチルスルホン(EMS)とジエチルスルホン(ESE)のうちの一つ又は複数から選択されてもよい。
【0129】
いくつかの実施形態では、電解質には、任意選択的に添加剤がさらに含まれる。例えば、電解質には、負極膜形成添加剤と、正極膜形成添加剤と、電池の過充電性能を改善する添加剤と、電池の高温性能を改善する添加剤と、電池の低温性能を改善する添加剤などが含まれてもよい。
【0130】
[セパレータ]
セパレータは、正極板と負極板とを隔離し、電池内部での短絡を防止すると同時に、活性イオンがセパレータを貫通して正負極の間で移動できるようにする。本出願の二次電池では、セパレータの種類に対して特に制限せず、良好な化学的安定性と機械的安定性を有する任意公知の多孔質構造のセパレータを選択してもよい。
【0131】
いくつかの実施形態では、セパレータの材質は、ガラス繊維フィルム、不織布フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリビニリデンフルオライドフィルム、及びそのうちの一つ又は二つ以上を含む多層複合フィルムのうちの一つ又は複数から選択されてもよい。セパレータは、単層セパレータであってもよく、多層複合セパレータであってもよく、特に制限はない。セパレータが多層複合セパレータである場合、各層の材料は、同じであってもよく、異なってもよく、特に制限はない。
【0132】
いくつかの実施形態では、正極板、負極板とセパレータは、捲回プロセス又は積層プロセスによって電極アセンブリを製造してもよい。
【0133】
いくつかの実施形態では、二次電池は、外装体を含んでもよい。該外装体は、以上に記載の電極アセンブリ及び電解液をパッケージングするために用いられてもよい。
【0134】
いくつかの実施形態では、二次電池の外装体は、硬質ケース、例えば硬質プラスチックケース、アルミニウムケース、鋼製ケースなどであってもよい。二次電池の外装体は、パウチ、例えば袋状パウチであってもよい。パウチの材質は、プラスチックであってもよく、プラスチックとして、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)及びポリブチレンサクシネート(PBS)などが挙げられる。
【0135】
本出願は、二次電池の形状に対して特に限定せず、それは、円筒型、四角形又は他の任意の形状であってもよい。例えば、
図6は、一例としての四角形構造の二次電池5である。
【0136】
いくつかの実施形態では、
図7を参照すると、外装体は、ケース51とトップカバーアセンブリ53とを含んでもよい。ここで、ケース51は、底板と、底板上に接続された側板とを含んでもよく、底板と側板とで取り囲んで収容キャビティを形成する。ケース51は、収容キャビティに連通する開口を有し、トップカバーアセンブリ53は、開口をカバーして設けられることによって収容キャビティを閉鎖することができる。正極板と負極板とセパレータは、捲回プロセス又は積層プロセスによって電極アセンブリ52を形成することができる。電極アセンブリ52は、収容キャビティ内にパッケージングされる。電解液は、電極アセンブリ52に浸潤する。二次電池5に含まれる電極アセンブリ52の数は、一つ又は複数であってもよく、当業者は、実際の具体的な需要に応じて選択することができる。
【0137】
いくつかの実施形態では、二次電池は、電池モジュールに組み立てられてもよく、電池モジュールに含まれる二次電池の数は、一つ又は複数であってもよく、具体的な数は、当業者が電池モジュールの応用と容量に基づいて選択することができる。
【0138】
図8は、一例としての電池モジュール4である。電池モジュール4において、複数の二次電池5は、電池モジュール4の長手方向に沿って順に並べて設置されてもよい。無論、任意の他の方式に従って配置されてもよい。さらに、該複数の二次電池5を締め具で固定してもよい。
【0139】
任意選択的に、電池モジュール4は、収容空間を有するハウジングをさらに含んでもよく、複数の二次電池5は、該収容空間に収容される。
【0140】
いくつかの実施形態では、上記電池モジュールは、さらに電池パックに組み立てられてもよく、電池パックに含まれる電池モジュールの数は、当業者が電池パックの応用と容量に基づいて選択することができる。
【0141】
図9と
図10は、一例としての電池パック1である。電池パック1には、電池ボックスと、電池ボックスに設置された複数の電池モジュール4とが含まれてもよい。電池ボックスは、上部筐体2と下部筐体3とを含み、上部筐体2は、下部筐体3をカバーして設けられて、電池モジュール4を収容するための密閉空間を形成することができる。複数の電池モジュール4は、任意の方式に従って電池ボックスの中に配置されてもよい。
【0142】
また、本出願は、電力消費装置をさらに提供し、該装置は、本出願による二次電池、電池モジュール、又は電池パックを含む。二次電池、電池モジュール又は電池パックは、電力消費装置の電源として使用されてもよく、電力消費装置のエネルギー貯蔵ユニットとして使用されてもよい。電力消費装置は、移動体機器(例えば携帯電話、ノートパソコンなど)、電動車両(例えば純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクータ、電動ゴルフカート、電動トラックなど)、電気列車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システムなどを含んでもよいが、それらに限らない。
【0143】
電力消費装置として、その使用上の需要に応じて二次電池、電池モジュール又は電池パックを選択することができる。
【0144】
図11は、一例としての電力消費装置である。該電力消費装置は、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車などである。該電力消費装置の、二次電池の高パワーと高エネルギー密度に対する需要を満たすために、電池パック又は電池モジュールを採用することができる。
【0145】
別の例としての電力消費装置は、携帯電話、タブレットコンピュータ、ノートパソコンなどであってもよい。該電力消費装置は、一般的には軽量化が求められており、二次電池を電源として採用することができる。
【0146】
実施例
以下では、本出願の実施例を説明する。以下に記述されている実施例は、例示的なもので、本出願を解釈するためのものにすぎず、本出願に対する制限と理解されるべきではない。実施例において具体的な技術又は条件が明記されていない場合、当技術分野の文献に記述されている技術若しくは条件、又は製品取扱説明書に従って行う。使用する試薬又は計器について、製造メーカーが明記されていないものは、いずれも市販で購入できる一般的な製品である。
【0147】
リチウム親和性材料の製造
グルコースとドデシルスルホン酸ナトリウムを含有する水溶液に各実施例で使用したリチウム親和性物質又はその塩を添加し、分散液を十分に均質化した後に、ワンステップ水熱法によって完全な炭素シェルを有するリチウム親和性材料を合成した。この時、グルコースの量を調整することによってリチウム親和性材料の炭素シェルが必要な厚さに達するようにし、ドデシルスルホン酸ナトリウムの量を調整することによってリチウム親和性材料の炭素シェルが必要なサイズに達するようにした。
【0148】
また、グルコースとドデシルスルホン酸ナトリウムを含有する水溶液のみに対して、ワンステップ水熱法によって、比較例におけるリチウム親和性物質を含有しない炭素シェル材料を合成した。
【0149】
負極板の製造
1.混合活物質層単層を含む負極板の製造
活物質とリチウム親和性材料との合計量、導電剤であるカーボンブラック、接着剤であるスチレンブタジエンゴム(SBR)、増粘剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)が97.2:0.3:1.25:1.25の質量比で、脱イオン水に加えて十分に撹拌し、0.5~6h混合撹拌し、均一に混合して負極コーティングを形成するためのスラリー(固形分含有量10%)に調製し、一般的なプロセスによって、上記スラリーを集電体の銅箔上に均一に塗布し、そして100℃の温度で乾燥させることで、集電体上において厚さが80μmの混合活物質層を形成した。
【0150】
2.単一活物質層と混合活物質層との複合層を含む負極板の製造
活物質とリチウム親和性材料との合計量、導電剤であるカーボンブラック、接着剤であるスチレンブタジエンゴム(SBR)、増粘剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)が97.2:0.3:1.25:1.25の質量比で、脱イオン水に加えて十分に撹拌し、0.5~6h混合撹拌し、均一に混合して負極コーティングを形成するためのスラリー(固形分含有量50%)に調製し、一般的なプロセスによって、上記スラリーを集電体の銅箔上に均一に塗布し、そして100℃の温度で乾燥させることで、集電体上において厚さが80μmの混合活物質層を形成した。
【0151】
続いて、活物質と、導電剤であるカーボンブラックと、接着剤であるスチレンブタジエンゴム(SBR)と、増粘剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)とを、96.7:0.8:1.25:1.25の質量比で、脱イオン水に加えて十分に撹拌し、0.5~6h混合撹拌し、均一に混合して負極コーティングを形成するためのスラリー(固形分含有量50%)に調製し、一般的なプロセスによって、上記スラリーを上記形成された混合活物質層の表面上に均一に塗布し、そして100℃の温度で乾燥させることで、集電体上において、厚さが40μmの単一活物質層と、厚さが40μmの混合活物質層とを有する複合コーティングを形成した。
【0152】
3.単一活物質層と単一リチウム親和性材料層との複合層を含む負極板の製造
リチウム親和性材料と、接着剤であるスチレンブタジエンゴム(SBR)と、増粘剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)と、リチウム親和性材料とを、1:0.5:0.5の質量比で、脱イオン水に加えて十分に撹拌し、0.5~6h混合撹拌し、均一に混合して負極コーティングを形成するためのスラリー(固形分含有量10%)に調製し、一般的なプロセスによって、上記スラリーを集電体の銅箔上に均一に塗布し、そして100℃の温度で乾燥させることで、集電体上において厚さが0.3μmの単一リチウム親和性材料層を形成した。
【0153】
続いて、活物質と、導電剤であるカーボンブラックと、接着剤であるスチレンブタジエンゴム(SBR)と、増粘剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)とを、96.7:0.8:1.25:1.25の質量比で、脱イオン水に加えて十分に撹拌し、0.5~6h混合撹拌し、均一に混合して負極コーティングを形成するためのスラリー(固形分含有量50%)に調製し、一般的なプロセスによって、上記スラリーを上記形成された単一リチウム親和性材料層の表面上に均一に塗布し、そして100℃の温度で乾燥させることで、集電体上において、厚さが0.5μmの単一リチウム親和性材料層と、厚さが80μmの単一活物質層とを有する複合コーティングを形成した。
【0154】
上記形成された、集電体上に活物質とリチウム親和性材料のコーティングが塗布された極板を冷間加圧してから、スリット加工して、負極板を得た。
【0155】
電池の製造
本出願の実施例において、セルの製造は、以下の方法を採用した。
【0156】
(1)正極板の製造
正極活物質であるLiNi0.8Co0.1Mn0.1O2(NCM811)と、導電剤であるカーボンブラックと、接着剤であるポリビニリデンフルオライド(PVDF)とを、97:1:2の質量比で混合して、溶媒N-メチルピロリドン(NMP)に加え、そして十分に撹拌し、0.5~6h混合撹拌し、均一に混合して正極スラリー(固形分含有量65%)に調製し、一般的なプロセスによって、正極スラリーを0.2~200mg/mm2の塗覆量で集電体のアルミニウム箔上に均一に塗布し、そして100~130℃の温度で乾燥させ、冷間加圧してからスリット加工して、正極板を得た。
【0157】
(2)電解液の製造
アルゴン雰囲気のグローブボックス(H2O<0.1ppm、O2<0.1ppm)において、有機溶媒のエチレンカーボネート(EC)/エチルメチルカーボネート(EMC)/ジエチルカーボネート(DEC)を1:1:1の体積比で均一に混合し、12.5%のLiPF6リチウム塩を加えて有機溶媒中(モル濃度1mol/L)に溶解させ、均一に撹拌して、リチウムイオン電池用の電解液を得た。
【0158】
(3)電池の製造
以上のステップで得られた正極板と、セパレータとしてのポリエチレン膜と、負極板とを、以上の順で積層し、負極板上の活物質層がセパレータに対向するようにした。そして捲回してベアセルが得られ、ベアセル上にタブを溶接し、ベアセルをアルミニウムケースに装入し、組み立てられたセルを100℃でベーキングして水分を除去し、そして電解液を注入して、帯電していない電池が得られ、帯電していない電池を順に静置し、熱間冷間加圧し、化成し、整形し、容量テストしてから、リチウムイオン電池を得た。
【0159】
電池を製造する時、負極板における負極活物質の量と、正極板における正極活物質の量とを適切に調整することによって、電池における負正極板のリチウム容量の比を調整した。
【0160】
性能テスト
(1)負正極板のリチウム容量の比の計算方法
使用した正極活物質と負極活物質の量によって、負極のリチウム吸蔵容量(N)と正極のリチウム放出容量(P)をそれぞれ算出し、NをPで除して、対応する電池の負正極板のリチウム容量の比N/Pを算出した。ここで、
N=負極充電グラム容量×負極面密度×負極活物質比率
P=正極充電グラム容量×正極面密度×正極活物質比率
(2)リチウム親和性材料の炭素シェルの厚さテスト方法
水熱合成方法を利用して試料を作製した。試料を表面切削して研磨した後に、電子顕微鏡を利用して試料を観察し、視野における炭素シェルに対して、その厚さを測定し、炭素シェル毎に5箇所を測り、計30個の炭素シェルをテストし、その平均値を炭素シェルの厚さとした。
【0161】
(3)サイクル容量維持率のテスト方法
45℃で、電池を1/3Cで4.25Vまで定電流充電し、さらに4.25Vの定電圧で電流が0.05Cになるまで充電し、5min放置し、さらに1/3Cで2.8Vまで放電し、得られた容量を初期容量C0と記録し、そして、電池を上記と同じ条件下でサイクルし、n回目のサイクル後の電池の放電容量Cnを記録し、毎回サイクル後の電池のサイクル容量維持率Pnを
以下の式に基づいて算出し、
Pn=(Cn/C0)×100%
Pnが80%未満まで低下した時のnをサイクル寿命とした。
【0162】
(4)材料のリチウム親和性のテスト方法
三電極の電気化学電池を構築することによって材料のリチウム親和性をテストした。テストすべき材料を作動電極とし、Li0.5FePO4を参照電極とし、リチウム金属を対電極とした。極めて小さい電流密度(例えば10 μA/cm2)で作動電極上に金属リチウムを堆積させ、作動電極のLi金属(Li/Li+)に対する電圧を縦座標とし、容量を横座標とした。
【0163】
容量が向上する時、電圧は、一旦低下した後、横ばいで推移するようになり、この過程において、曲線に変曲点がないか、又は変曲点に対応する電圧の絶対値が≦0.03Vの場合、テストすべき材料は、リチウム親和性を有する。変曲点があり、且つ変曲点に対応する電圧の絶対値が>0.03Vの場合、材料は、リチウム親和性を有しない。
【0164】
実施例1
リチウム親和性物質としてAgを選び取り、以上に記載のリチウム親和性材料の製造方法を使用してAg@Cリチウム親和性材料を得て、ここで炭素シェルの厚さは、35nmであり、活物質として市販の人造黒鉛を使用し、ここで負正極板のリチウム容量の比は、0.5であり、活物質層に占めるリチウム親和性材料の質量比は、0.5%である。以上に記載の混合活物質層単層を含む負極板の製造方法に基づいて、集電体の二つの表面上に混合活物質層単層を含むコーティング構造を形成した。100℃で乾燥させ、冷間加圧してからスリット加工して、実施例1の負極板を得た。
【0165】
以上に記載の方法によって、実施例1の負極板を使用してリチウムイオン電池を製造した。以上に記載のテスト方法によって、実施例1で製造されたリチウムイオン電池のエネルギー密度及びサイクル寿命を測定した結果は、表1に示されている。
【0166】
実施例2~10と比較例1~4
リチウム親和性物質、リチウム親和性材料のシェル層厚さ、活物質層に占めるリチウム親和性物質の質量比、活物質、及び負正極板のリチウム容量の比などの変数を、表1に示すように変更した。それ以外は、実施例1と同様に操作して、実施例2~10と比較例1~4の二次電池を作製した。得られた二次電池の電池エネルギー密度及びサイクル寿命の結果も、表1に示されている。比較例1と2には、リチウム親和性材料が添加されていない。比較例3には、リチウム親和性物質を含有しない炭素シェル材料のみが添加されている。比較例4では、リチウム親和性材料に取って代わって、従来技術における、Agを二酸化ケイ素に固定化して得られた粒子を使用した。
【0167】
【0168】
表1の結果から分かるように、本発明の電池では、リチウム親和性材料を使用することによって、高エネルギー密度を取得すると同時に十分なサイクル寿命を取得することができる。説明すべきこととして、比較例1と4のエネルギー密度は低い。比較例2と3は、エネルギー密度が高くなったが、リチウムの沈殿を誘導できないため、多くのデンドライトが生成してサイクル寿命が低くなった。
【0169】
実施例11~21
負極活物質として人造黒鉛を使用し、リチウム親和性材料として内部にキャビティを有するAg@Cを使用し、リチウム親和性材料の炭素シェル厚さ、活物質層に占めるリチウム親和性材料の質量比、及び負正極板のリチウム容量の比N/Pなどの変数を、表2に示すように変更した。それ以外は、実施例1と同様に操作して、実施例11~21の二次電池を作製した。得られた二次電池の電池エネルギー密度及びサイクル寿命の結果も、表2に示されている。
【0170】
【0171】
表2の結果から分かるように、容量の比N/Pが小さいほど、電池のエネルギー密度が高くなり、容量の比が大きいほど、サイクル寿命がよくなる。負極板に本発明のリチウム親和性材料を添加して製造されたリチウムイオン電池は、良好なエネルギー密度とサイクル寿命を示している。
【0172】
実施例22
リチウム親和性物質としてAgを選び取り、以上に記載のリチウム親和性材料の製造方法を使用してAg@Cリチウム親和性材料を得て、ここで炭素シェルの厚さは、35nmであり、活物質として市販の人造黒鉛を使用し、ここで負正極板のリチウム容量の比は、0.5であり、混合活物質層において、活物質層に占めるリチウム親和性材料の質量比は、0.5%である。以上に記載の単一活物質層と混合活物質層との複合層を含む負極板の製造方法に基づいて、集電体の二つの表面上に、厚さが40μmの混合活物質層と厚さが40μmの単一活物質層との複合層コーティング構造を形成した。100℃で乾燥させ、冷間加圧してからスリット加工して、実施例22の負極板を得た。
【0173】
以上に記載の方法によって、実施例22の負極板を使用してリチウムイオン電池を製造した。以上に記載のテスト方法によって、実施例22で製造されたリチウムイオン電池のエネルギー密度及びサイクル寿命を測定した結果、エネルギー密度が365Wh/kg、サイクル寿命が420回のリチウムイオン電池が得られた。
【0174】
実施例23
リチウム親和性材料としてAg@Cを使用し、ここで炭素シェルの厚さは、35nmであり、活物質として市販の人造黒鉛を使用した。以上に記載の単一活物質層と単一リチウム親和性材料層との複合層を含む負極板の製造方法に基づいて、集電体の二つの表面上に、厚さが0.5μmの単一リチウム親和性材料層と厚さが80μmの単一活物質層との複合層コーティング構造を形成した。100℃で乾燥させ、冷間加圧してからスリット加工して、実施例23の負極板を得た。
【0175】
以上に記載の方法によって、実施例23の負極板を使用してリチウムイオン電池を製造した。以上に記載のテスト方法によって、実施例23で製造されたリチウムイオン電池のエネルギー密度及びサイクル寿命を測定した結果、エネルギー密度が370Wh/kg、サイクル寿命が680回のリチウムイオン電池が得られた。
【0176】
実施例24~28
内層の単一リチウム親和性材料層の厚さと、外層の単一活物質層の厚さとを、表3に示すように変更し、それ以外は、実施例23と同様に操作して、実施例24~28の二次電池を作製した。
【0177】
得られた二次電池の電池エネルギー密度及びサイクル寿命の結果も、表3に示されている。
【0178】
【0179】
表3の結果から分かるように、活物質のみを含有する層と集電体との間にリチウム親和性材料層を設置した負極板を使用することによって、リチウムイオン電池のエネルギー密度とサイクル寿命を顕著に向上させることができる。
【0180】
説明すべきこととして、本出願は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態は、例示であり、本出願の技術案の範囲内に技術的思想と実質的に同じ構成を有し、同じ作用効果を奏する実施形態は、いずれも本出願の技術範囲内に含まれる。なお、本出願の趣旨から逸脱しない範囲内で、実施形態に対して当業者が想到できる様々な変形を加え、実施形態における一部の構成要素を組み合わせて構築された他の形態も、本出願の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0181】
1電池パック、2上部筐体、3下部筐体、4電池モジュール、5二次電池、51ケース、52電極アセンブリ、53トップカバーアセンブリ、6負極板、60集電体、61活物質層、62リチウム親和性材料層、63リチウム親和性材料、64炭素シェル、65リチウム親和性物質、66第2の活物質層、67リチウム金属堆積、68キャビティ
【手続補正書】
【提出日】2024-01-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体と、集電体の少なくとも一つの表面上に塗布された活物質層とを含む複合リチウム金属負極板であって、
前記活物質層は、
活物質と、
コアシェル構造を有するリチウム親和性材料とを含み、
前記リチウム親和性材料のコアは、リチウム親和性物質を含有し、シェルは、炭素材料である、ことを特徴とする複合リチウム金属負極板。
【請求項2】
前記リチウム親和性材料の活物質層における質量百分率は、0.1%~5%であり、任意選択的に0.3%~3%である、ことを特徴とする請求項1に記載の負極板。
【請求項3】
前記リチウム親和性物質は、Si、Ni、Ga、Sn、In、Ge、Ti、Mo、Pt、Al、Mg、Zn、Ag、Au、Co、Feなどの金属単体のうちの一つ又は複数であり、及び/又は、上記金属元素を含む酸化物、硫化物、フッ化物、窒化物、塩化物、炭化物のうちの一つ又は複数である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の負極板。
【請求項4】
前記リチウム親和性材料の炭素材料シェルは、10~70nmの厚さを有する、ことを特徴とする請求項1
又は2に記載の負極板。
【請求項5】
前記リチウム親和性材料の炭素材料シェルの内部にキャビティを有する、ことを特徴とする請求項1
又は2に記載の負極板。
【請求項6】
前記リチウム親和性材料のキャビティ内にリチウム金属がさらに含有される、ことを特徴とする請求項5に記載の負極板。
【請求項7】
前記活物質は、炭素系材料、シリコーン系材料、金属酸化物のうちの一つ又は複数から選択される、ことを特徴とする請求項1
又は2に記載の負極板。
【請求項8】
前記炭素系材料は、天然黒鉛、人造黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ、ハードカーボン、ソフトカーボンのうちの一つ又は複数であり、及び/又は
前記シリコーン系材料は、シリコーン炭素、酸化ケイ素のうちの一つ又は二つであり、及び/又は
前記金属酸化物は、酸化鉄、酸化スズのうちの一つ又は複数である、ことを特徴とする請求項7に記載の負極板。
【請求項9】
前記活物質層の外側に、前記リチウム親和性材料を含有しない第2の活物質層をさらに有する、ことを特徴とする請求項1
又は2に記載の負極板。
【請求項10】
集電体と活物質層とを含む複合リチウム金属負極板であって、
前記集電体と前記活物質層との間に位置するリチウム親和性材料層をさらに含み、
前記リチウム親和性材料層は、コアシェル構造を有するリチウム親和性材料を含み、
前記シリコーンリチウム親和性材料のコアは、リチウム親和性物質を含有し、シェルは、炭素材料である、ことを特徴とする複合リチウム金属負極板。
【請求項11】
前記リチウム親和性材料層と前記活物質層との厚さ比は、0.1/100~6/100であり、任意選択的に0.3/100~5/100である、ことを特徴とする請求項10に記載の負極板。
【請求項12】
前記リチウム親和性物質は、Si、Ni、Ga、Sn、In、Ge、Ti、Mo、Pt、Al、Mg、Zn、Ag、Au、Co、Feなどの金属単体のうちの一つ又は複数であり、及び/又は、上記金属元素を含む酸化物、硫化物、フッ化物、窒化物、塩化物、炭化物のうちの一つ又は複数である、ことを特徴とする請求項10又は11に記載の負極板。
【請求項13】
前記リチウム親和性材料の炭素材料シェルは、10~70nmの厚さを有する、ことを特徴とする請求項10
又は11に記載の負極板。
【請求項14】
前記リチウム親和性材料の炭素材料シェルの内部にキャビティを有する、ことを特徴とする請求項10
又は11に記載の負極板。
【請求項15】
前記リチウム親和性材料のキャビティ内にリチウム金属がさらに含有される、ことを特徴とする請求項14に記載の負極板。
【請求項16】
請求項1
又は2に記載の負極板の製造方法であって、
活物質と、リチウム親和性材料とを、所定の比率で分散媒体において混合して、スラリーAに調製するステップS1-1と、
ステップS1-1で得られた前記スラリーAを集電体の少なくとも一つの表面上に塗覆するステップS1-2とを含む、ことを特徴とする負極板の製造方法。
【請求項17】
活物質を分散媒体に分散させて、スラリーBに調製するステップS1-3と、
ステップS1-3で得られた前記スラリーBを、前記ステップS1-2で得られた負極板上に塗覆するステップS1-4とをさらに含む、ことを特徴とする請求項16に記載の負極板の製造方法。
【請求項18】
リチウム親和性材料を分散媒体に分散させて、スラリーCに調製するステップS2-1と、
活物質を分散媒体に分散させて、スラリーDを調製するステップS2-2と、
ステップS2-1で得られた前記スラリーCを集電体の少なくとも一つの表面上に塗覆して、リチウム親和性材料コーティングを形成するステップS2-3と、
ステップS2-2で得られた前記スラリーDを、ステップS2-3で得られたリチウム親和性材料コーティングの表面上に塗覆するステップS2-4とを含む、ことを特徴とする請求項10
又は11に記載の負極板の製造方法。
【請求項19】
請求項1に記載の負極板、及び正極板、電解液とセパレータを含む、二次電池。
【請求項20】
負極のリチウム吸蔵容量をNとし、正極のリチウム放出容量をPとすると、
負正極板のリチウム容量の比N/P<1であり、任意選択的に0.3≦N/P≦0.9である、ことを特徴とする請求項19に記載の二次電池。
【請求項21】
請求項1
9に記載の二次電池を含む、ことを特徴とする電池モジュール。
【請求項22】
請求項21に記載の電池モジュールを含む、ことを特徴とする電池パック。
【請求項23】
請求項1
9に記載の二次電池、請求項21に記載の電池モジュール、請求項22に記載の電池パックから選択される少なくとも一つを含む、ことを特徴とする電力消費装置。
【国際調査報告】