(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】血管内循環支持システム用の駆動ユニット
(51)【国際特許分類】
A61M 60/427 20210101AFI20240719BHJP
A61M 60/17 20210101ALI20240719BHJP
A61M 60/295 20210101ALI20240719BHJP
A61M 60/569 20210101ALI20240719BHJP
A61M 60/841 20210101ALI20240719BHJP
【FI】
A61M60/427
A61M60/17
A61M60/295
A61M60/569
A61M60/841
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506463
(86)(22)【出願日】2022-08-01
(85)【翻訳文提出日】2024-03-01
(86)【国際出願番号】 US2022039057
(87)【国際公開番号】W WO2023014659
(87)【国際公開日】2023-02-09
(32)【優先日】2021-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516064091
【氏名又は名称】ニューパルスシーブイ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】アイヴァース ダグラス エドワード
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA04
4C077DD09
4C077EE05
(57)【要約】
血管内循環支持システム用の駆動ユニットは、モーター、ボールナット、ボールねじ、およびベローズを含んでいてもよい。モーターはローターおよびステーターを含んでいてもよい。ボールナットはローターに固着されていてもよい。ベローズは、第一端部、第二端部、およびそれらの間に位置するベローズキャビティを有していてもよい。第一端部は固定されたポジションにあってもよく、第二端部は、ベローズキャビティによって支えられる凹部を有する動的フランジによって規定されてもよい。そして、動的フランジの凹部はモーターの少なくとも一部分を支えてもよい。第二端部はまた、ボールねじを受けてもよい。ローターの回転は、ボールナット内のボールねじの直線運動を引き起こしてベローズを動作させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローターとステーターとを含むモーター;
該ローターに固着された、ボールねじを運ぶボールナット;ならびに
第一端部、第二端部、および該第一端部と該第二端部との間に位置するベローズキャビティを有するベローズであって、
該第一端部が、固定されかつ空圧出力を有するものとして規定され、
該第二端部が、該ボールねじを受けるように構成された動的フランジによって規定され、該動的フランジが、該ベローズキャビティに向かって方向付けされた凹部を有しており、該凹部が、該モーターの少なくとも一部分を該ベローズキャビティ内に受けて入れ子状にしている、ベローズ
を含む、血管内循環支持システム内の伸展可能部材を制御するための駆動ユニットであって
該ボールナットが、該ローターの回転を該ボールナット内の該ボールねじの直線運動に変換してベローズを動作させ、それにより空気を動かして空圧出力に出入りさせる
駆動ユニット。
【請求項2】
モーターがモーターハウジングをさらに含み;かつ
ステーターが該モーターハウジングに固定されている
請求項1記載の駆動ユニット。
【請求項3】
ボールねじが螺旋状軌道を含み、
ローターの回転に起因して、複数のボールがそうした回転をボールナット内の該ボールねじの直線運動に移すように、ボールナットが、該螺旋状軌道内で進む複数のボールを含む、
請求項1記載の駆動ユニット。
【請求項4】
動的フランジがボールねじに固定されている、請求項1記載の駆動ユニット。
【請求項5】
内面を有する外側ケースをさらに含み、
該外側ケースの内面に固定された静的フランジによって第一端部が規定され、
該静的フランジが該第一端部をシールし、
動的フランジが第二端部をシールし、かつ
該静的フランジがベローズアウトレットを含む
請求項4記載の駆動ユニット。
【請求項6】
凹部の形状が円柱形である、請求項1記載の駆動ユニット。
【請求項7】
ローターの角位置、スピード、および方向のうち1つまたは複数を決定するように構成され、かつ
該決定されたローターの角位置、スピード、および方向のうち1つまたは複数に基づき、1つまたは複数のポジションフィードバック信号を生成するように構成された
エンコーダーディスクおよびエンコーダーセンサー
をさらに含む、請求項1記載の駆動ユニット。
【請求項8】
少なくとも前記1つまたは複数のポジションフィードバック信号に基づいてモーターを制御するように構成されたプロセッサーをさらに含む、請求項7記載の駆動ユニット。
【請求項9】
プロセッサーが、治療を受けている患者の1つまたは複数のEKG信号、および該患者の動脈内の圧力に関連した1つまたは複数の圧力信号に基づいて、モーターを制御するようにさらに構成されている、請求項8記載の駆動ユニット。
【請求項10】
治療を受けている患者の1つまたは複数のEKG信号に基づいてモーターを制御するように構成されたプロセッサーをさらに含む、請求項1記載の駆動ユニット。
【請求項11】
内側レースおよび外側レースを有する少なくとも1つのラジアル軸受をさらに含み、
該少なくとも1つのラジアル軸受の該外側レースが、モーターハウジングに固着され、
該少なくともラジアル軸受の該内側レースが、ローター・ボールナットアセンブリに固定されている、
請求項2記載の駆動ユニット。
【請求項12】
ボールねじが中空である、請求項1記載の駆動ユニット。
【請求項13】
ベローズが外径を有し、
治療を受けている患者の1つまたは複数のEKG信号において検出されたQRS群内のR波を受けてから約100ms以内に駆動ユニットが膨張可能部材を50%脱膨張できるように、該ベローズの該外径が選択される、
請求項10記載の駆動ユニット。
【請求項14】
ベローズの外径が、約111mm~125mmの範囲内である、請求項1記載の駆動ユニット。
【請求項15】
ベローズ行程距離が、該ベローズの選択された外径に基づく、請求項1記載の駆動ユニット。
【請求項16】
ベローズ行程距離が、約8mm~11.5mmの範囲内である、請求項1記載の駆動ユニット。
【請求項17】
ベローズの外径の長さが、ベローズ行程距離の約10倍の長さである、請求項1記載の駆動ユニット。
【請求項18】
モーターのインピーダンスが、駆動ユニットにかかる空圧負荷のインピーダンスと同じかまたは実質的に同じになるように、螺旋状軌道のピッチが選択される、請求項3記載の駆動ユニット。
【請求項19】
モーターのインピーダンスが、駆動ユニットにかかる空圧負荷のインピーダンスと同じかまたは実質的に同じになるように、ベローズの直径が選択される、請求項1記載の駆動ユニット。
【請求項20】
螺旋状軌道のピッチが、約3.5mm~5.5mmの範囲内である、請求項16記載の駆動ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は心不全を処置するためのシステム、デバイス、および方法に関し、特に血管内循環支持システム用の駆動ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
背景
心不全の有病率は世界的に高まっており、医療提供者にとって高額な負担となっている。医療の進歩にもかかわらず、心不全患者の予後は依然として良好でなく、進行期の心不全を有する患者においては特にそうである。このことには、そうした患者に対する治療選択肢が限られることも一因となっている。血管内循環支持システムを使用したカウンターパルセーションは心不全に対する1つの処置選択肢である。そうしたシステムは、カテーテルと呼ばれる細く可撓性のチューブを、カテーテル先端に取り付けられた長く細いバルーンとともに含んでいてもよい。バルーンは患者の大動脈内にポジショニングされる。カテーテルの他端は、心拍中の適切な時点でバルーンを膨張および脱膨張させるための機構を伴う、コンピューターコンソールまたは「駆動ユニット」に取り付けられてもよい。バルーンの作動はバルーンポンプ(すなわち大動脈内バルーンポンプ(IABP))として作用する。駆動ユニットは、心臓が弛緩した時に、末端臓器、および心臓を灌流するための冠動脈に向かって血液を押すために、バルーンを膨張させてもよい。そして左心室が収縮する前に、駆動ユニットはバルーンを脱膨張させてもよく、それは、心臓がそれに対抗してポンプ送りしなければならない圧力を低減させる。このことは、心臓がより少ないエネルギーを使用してより多くの血液を体内にポンプ送りすることを可能にする。駆動ユニットは、心拍と同期して引き続きバルーンを膨張および脱膨張させてもよい。
【0003】
従来の駆動ユニットはバルーンを膨張および脱膨張させるためにヘリウムを利用する場合がある。しかし、ヘリウムの使用に関連して、技術的コスト、患者の使用性および可搬性の問題、ならびに安全上のリスクが存在する。例えば、駆動ユニットは、ヘリウムを含有する貯蔵タンクを含有し(またはこれに接続され)なければならない。結果として、従来の駆動ユニットは、可搬性であるには大きく重すぎる。ヘリウムを使用する典型的な駆動ユニットは50~100lbsの重量があり、病院内での使用に限られる。さらに、バルーンがリークまたは破裂した場合には、ヘリウムは血液中に速やかには吸収されず、血栓形成および脳卒中の著明なリスクを患者にもたらす。
【0004】
さらに、患者の心拍との同期が良好でないバルーンの膨張および脱膨張は、甚だしく有害になるか、少なくとも治療的に非生産的になる可能性がある。例えば、バルーン膨張が早いことは、左心室の後負荷(すなわち、大動脈を開いて血液体積を全身循環内に押し出すために心臓が克服しなければならない抵抗の量)の増大をもたらす可能性がある。バルーンの膨張が早すぎると、左心室はまだ収縮の過程中で、開いた大動脈弁を通って血液を駆出しようとしている可能性がある。ゆえに、左心室は全身の血管抵抗に対してのみならず、心臓からの血流の妨げとなる、大動脈内で膨張したバルーンによる追加的な抵抗に対しても働くことになる可能性がある。そしてまた、一部の血液が大動脈を通って左心室内に押し戻される可能性もあり、それは心室容積を増大させてその壁により大きなストレスをかける。バルーン膨張が遅いことは、拡張期血圧増高の低減をもたらす可能性がある。治療的に有効であるために、駆動ユニットは大動脈弁が閉じた直後にバルーンを膨張させる可能性がある。膨張が大動脈弁閉鎖のずっと後に生じると、バルーンは心拡張期中に血液を身体および心臓に押し出すための充分な時間がなく、それは治療有効性を低減させる。バルーン脱膨張が早いことは、心室の作業負荷および心筋の酸素需要を効果的に低減させない。バルーンの脱膨張が早すぎる場合、大動脈圧は平衡化するための時間を有する可能性があり、心臓近くの拡張期血圧は非補助時のレベルまで戻る可能性があり、そして、左心室の等容収縮持続時間、または心臓がそれに対抗して駆出しなければならない後負荷の、低減が生じない可能性がある。バルーン脱膨張が早いことの結果として、心筋酸素需要を低減できない可能性がある。バルーン脱膨張が早いことは、拡張期血圧増高の恩恵をいくらか提供する可能性があるとはいえ、大動脈弁を開くうえで左心室が補助されない可能性があるので、後負荷の低減が少なくなる。バルーン脱膨張が遅いと、左心室が再び収縮する準備ができるまでに大動脈の拡張終期圧が低減するのに充分な時間がないので、後負荷を増大させる可能性がある。
【0005】
駆動ユニットは、患者の心電図(ECGまたはEKG)のリアルタイム感知および解析に少なくとも部分的に基づいて、バルーンを正しい時間に膨張および脱膨張させてもよい。しかし、信号を完璧に感知して駆動ユニットに送達したとしても、駆動ユニットの機械的な非効率性がバルーンの実際の膨張・脱膨張サイクルにいくらかの遅延を引き起こす可能性がある。この遅延は、いくつかの心血管コンディションについて、IABPを使用したカウンターパルセーションの治療的適用を妨げる可能性がある。心房細動などの不整脈は、心臓上部の2つの部屋が無秩序な電気信号を受けた時に生じる、不規則でしばしば速い心拍数のゆえに、そうした遅延に特に敏感である。例えば、a-fibまたは他の不整脈がある患者において、膨張したバルーンが妨げとならないようにするには、QRS群内のR波を受けてから約100ミリ秒以内にバルーンが少なくとも50%脱膨張されるべきである。ゆえに、不整脈、不規則心拍、またはa-fibを患う患者のために安全かつ有効な治療法を提供できるのに充分に高速な、血管内循環支持システム(例えばIABPを含むシステム)用の駆動ユニットに対するニーズが存在する。高価で、大きく、重く、したがってほとんど可搬性がないヘリウムタンクを必要としない駆動ユニットに対しても、別のニーズが存在する。ヘリウムを使用してバルーンを膨張させることがもたらすリスクを回避または軽減するために、ヘリウム以外の流体を使用する駆動ユニットに対しても、同様にニーズが存在する。そして、従来の駆動ユニットと比較して重量およびサイズが低減された、可搬性が向上した駆動ユニットに対しても、ニーズが存在する。
【発明の概要】
【0006】
【図面の簡単な説明】
【0007】
本技術の多くの局面は、以下の図面を参照することによってよりよく理解されうる。図面内の構成要素は必ずしも縮尺が一律でなく、むしろ、本開示の原理を明瞭に図示することに重点が置かれている。
【0008】
【
図1】患者の脈管構造内に植え込まれた血管内循環支持システムの一例を図示する。
【
図2A】血管内循環支持システム用の駆動ユニットの例示的な第一の態様の上面透視外観図を図示する。
【
図2F】
図2Aおよび2Dの断面A-Aに沿った、
図2Aの駆動ユニットの一部分の分解図を図示する。
【
図3A】血管内循環支持システムの駆動ユニットの例示的な第二の態様の上面外観透視図を図示する。
【
図4】
図2Aおよび3Aの駆動ユニットに適用可能な、ある一定の制御コンポーネントのブロック図を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
詳細な説明
本技術のいくつかの態様の具体的詳細を、図面を参照しながら以下に説明する。本発明の態様の多くは、血液を体内にめぐらせることを助けるカウンターパルセーションを提供するために大動脈内にIABP/バルーンをポジショニングする、血管内循環支持システム/血管内心室補助デバイス(「iVAD」)の使用に関して、以下に説明されるが、本明細書に説明されるものに加えて、他の用途および他の態様も本技術の範囲内である。例えば、本技術の他のいくつかの態様が、本明細書に説明するものとは異なる構成、コンポーネント、または手技を有してもよく、そして本明細書に示す諸態様の特徴が互いに組み合わせられてもよい。したがって当業者には、追加的要素を伴う他の態様を本技術が有しうること、または、描写および後述する特徴のうちいくつかを伴わない他の態様を本技術が有しうることが、理解されるであろう。
【0010】
以下に提示する説明において用いられる術語は、本技術のある一定の具体的態様の詳細な説明との関連において用いられていても、その最も広い妥当な様式で解釈されることが意図されている。ある一定の用語が以下において強調される可能性もある。しかし、制限された様式で解釈されることが意図された術語は、この詳細な説明のセクションにおいて、明白かつ具体的にそのように定義される。加えて、本技術は、実施例の範囲内に入るが図面に関して詳しく説明されない他の態様も含みうる。
【0011】
本明細書全体を通して、「1つの態様(one embodiment)」または「1つの態様(an embodiment)」への参照は、その態様に関して説明される特定の特徴、構造、または特質が、本技術の少なくとも1つの態様に含まれることを意味する。ゆえに、本明細書全体を通したさまざまな箇所における、「1つの態様において(in one embodiment)」または「1つの態様において(in an embodiment)」という句の出現は、必ずしも同じ態様を参照するわけではない。さらに、特定の特徴または特質が、1つまたは複数の態様において任意の好適な様式で組み合わせられてもよい。
【0012】
心不全と循環支持システム
心不全は、身体の要求を満たす血流を心臓が維持できないときに生じる。これは、心臓が、収縮中に充分にポンプ送りできないか、または弛緩中に充分に充満できない場合に生じる。心不全は、広く見られ、費用がかかり、かつ死に至る可能性があるコンディションである。例えば、心不全は現在、米国において約650万人の患者がおり、2030年までに46%増加すると予想されている。心不全のステージ/重症度はニューヨーク心臓協会(NYHA)のクラスを使用して定義することができ、NYHA Class Iは疾患初期を、NYHA Class IVは疾患後期を表す。心不全に対する現在の処置選択肢は心不全のステージによって異なり、それには、他の選択肢の中でもとりわけ、薬物療法、心臓再同期療法(CRT)、長期の機械的循環支持(例えば左心室補助デバイスまたは「LVAD」)、および心臓移植が含まれる。薬物療法およびCRTは、比較的初期の症例(例えばNYHA Class IIまたはNYHA Class III初期の心不全がある患者)に使用されるのが典型的である。しかし、これらの治療法は心不全の進行を遅らせるにすぎないのが典型的であり、それは、当初は薬物療法またはCRTに反応した患者であっても、疾患の進行をきたして、より高度な治療的介入が必要となることが典型的であることを意味する。
【0013】
心不全患者の予後は依然として良好でない:1年死亡率は、NYHA Class IIIの患者では約15.0%であり、NYHA Class 4の患者では約28.0%である。これは少なくとも部分的には、NYHA Class III後期/NYHA Class IV初期の心不全患者にとって利用可能な処置選択肢の数が限られていることに起因する。例えば、心臓移植はNYHA Class IV後期の患者において長期生存の最良の機会を提供するが、この選択肢はドナー臓器の不足による限界がある(例えば米国では約年間2000件、カナダでは年間200件、日本では年間100件未満である)。したがって、NYHA Class IIIおよびClass IVの多くの患者は、他の処置に頼らなくてはならない。例えば、一部の患者は、心臓移植までの橋渡しとして、または独立した治療法として、LVAD療法を受ける。しかしLVAD療法には、その広範な使用を限定するいくつかの固有の欠点がある。現在のLVAD療法は、高額であり(例えば$100,000超)、典型的に植込みのための大きな外科手技(典型的に胸骨切開または開胸)を要し、典型的に植込み手技中に心肺バイパスの使用を要し、そして典型的に血液製剤(例えば約11.6単位の血液製剤)を要する。より低侵襲の手段を通して(例えば経皮的に)植込みされるLVAD療法は、短期の循環支持にのみ使用される。さらに、LVADを受ける患者の術後ケアは難しくかつ費用がかかる可能性があり、そして、デバイスの電源の遮断または喪失が数分間より長くなってはならないので、患者の不安が大きい可能性もある。LVAD療法はまた、デバイスの故障、血栓症、血栓塞栓症、脳卒中、感染、および出血など、いくつかの重篤な有害事象とも関連性がある。少なくともこれらの理由のため、LVAD療法は、選択肢が限られる末期心不全(例えばNYHA Class IV後期)の患者のために取っておかれるのが典型的である。このことにより、CRTを行うには進行しすぎているがLVAD療法/心臓移植を正当化するほど重度には至っていない心不全患者(例えばNYHA Class III後期/NYHA Class IV初期の患者)のかなりの割合が、有効な処置選択肢がない状態に置かれている。現在、Class III後期/Class IV初期の心不全患者が米国に約160万人、欧州に約390万人おり、処置選択肢が限られる大きな患者集団となっている。
【0014】
心不全に対する別の処置選択肢として、大動脈内バルーンポンプ(IABP)を使用したカウンターパルセーション療法がある。カウンターパルセーション療法は、患者の大動脈内にポジショニングしたバルーンを大動脈弁閉鎖(重複切痕)の直後に急速に膨張させ、そして収縮開始の直前にバルーンを急速に脱膨張させることによって実現される。バルーンの急速な膨張は拡張期大動脈圧を25~70%増大させて、末端臓器および冠動脈の灌流量を増やす。バルーンの急速な脱膨張は自己心室の駆出圧を低減させて、後負荷および左心室の外部仕事を低減させる。
【0015】
IABPの使用はLVADの植込みおよび使用よりはるかにシンプルであり、かつ関連する有害事象がより少ないので、カウンターパルセーション療法は魅力的な治療選択肢である。例えば、医師は、心臓に直接カニューレ挿入することなくIABPを植込みできる。しかし、低侵襲手技を通じて植込みされる従来のカウンターパルセーションシステムは短期間しか使用できない。これはいくつかの理由による。例えば、動脈アクセス(例えば大腿動脈)、IABPの耐久性、および生体適合性の問題が、IABPの使用を約14日未満の短期間に限定する可能性がある。より長期間のIABP支持(>14日間)は、血管合併症、感染、および出血の頻度増大につながる可能性がある。さらに、現在の形態において、大腿動脈から下行大動脈内まで逆行的に進められるカテーテルマウント式のIABPでは、患者が治療期間にわたって仰臥位を保つ必要がある。したがって、患者を歩行可能にすること、または退院させることができない。これらの制限のため、IABPは心不全に対する長期治療法としての使用が妨げられており、代わりに、移植待機患者または冠動脈バイパス手術を受ける患者など、短期間の設定において用いられている。
【0016】
本譲受人/出願人(NuPulseCV, Inc.)は、上述した従来のシステムと比較して、より長期的な支持を心不全患者に提供するように設計された、さまざまなカウンターパルセーション支持システムを開発してきた。そのような向上したカウンターパルセーション支持システムは、2009年10月22日に提出された米国特許第7,892,162号「ARTERIAL INTERFACE」、2010年10月22日に提出された米国特許第8,066,628号「INTRA-AORTIC BALLOON PUMP AND DRIVER」、2017年8月24日に提出された米国特許出願第15/685,553号「BLOOD PUMP ASSEMBLY AND METHOD OF USE THEREOF」、および2020年5月17日に提出された米国特許出願第16/876,110号「INTRAVASCULARLY DELIVERED BLOOD PUMPS AND ASSOCIATED DEVICES, SYSTEMS, AND METHODS」に説明されており、以上の各々の開示内容全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0017】
組み入れられる開示物に説明されているIABPは、少なくともある一定の状況においては低侵襲の経皮的手技を使用して植込みできるコンポーネントによる、心不全患者のための長期的または慢性的なカウンターパルセーション療法を提供する。例えば、本IABPは、胸部に入ることなく最小の侵襲で植込みでき、かつ、心肺バイパスまたは血液製剤投与を概ね必要としない。
【0018】
そして本技術は、より詳しく後述するように、バルーンの膨張および脱膨張と患者のEKGとのミスマッチを引き起こす可能性がある機械的な非効率性を、心房細動などの不整脈の症例においても最小化しながら、患者の脈管構造内に植え込まれたバルーンまたは伸展可能部材(例えば上述の組み入れられる開示物に説明されているIABP)の内部体積内に流体(気体または液体、例えば空気)を導くことができる、駆動ユニットを提供する。
【0019】
慢性血管内循環支持システムの選択的態様
図1に、本技術の選択的態様に基づいて構成された、循環支持および/または血管内心室補助システム100を図示する。システム100は、心不全患者の大動脈内に植込み可能な伸展可能部材110を含んでいてもよい。伸展可能部材110はIABPまたはバルーンとも呼ばれうる。システム100は、第一空気式駆動ライン120(「内部駆動ライン」ともいう)、動脈インターフェースデバイスまたはストッパー130、第二空気式駆動ライン140、皮膚インターフェースデバイス190、駆動ユニット150、およびセンサー160をさらに含んでいてもよい。システム100は、植込みされた時に、心不全患者にカウンターパルセーション療法を提供してもよい。
【0020】
伸展可能部材110は、気体または液体を充填されたことに応答してサイズおよび/または形状を変えることができる、バルーンまたは他の要素であってもよい。例えばいくつかの態様において、伸展可能部材110は、生体適合性かつ血栓非形成性のエラストマー材料(例えばBiospan(登録商標)-S)で組成されたバルーンである。伸展可能部材110はまた、他の好適な材料で作られてもよい。伸展可能部材110は、少なくとも、概ね脱膨張した第一状態と概ね膨張した第二状態との間で、移行可能である。伸展可能部材110は、第一(例えば脱膨張)状態にある時の第一体積、および、第二(例えば膨張)状態にある時の、第一体積より大きい第二体積を有する。
【0021】
したがって、伸展可能部材110は、第一状態と第二状態との間を繰り返し移行することによってカウンターパルセーション療法を提供できる。伸展可能部材110を第一状態と第二状態との間で移行させるために、より詳しく後述するように、駆動ユニット150が、第一空気式駆動ライン120および第二空気式駆動ライン140を介して伸展可能部材110の内部体積内に流体(気体または液体、例えば空気)を導いてもよい。伸展可能部材110はまた、腎動脈など、大動脈から分枝している動脈を伸展可能部材110がブロックすることを低減および/または防止するように、サイズ決定および/または形状決定されてもよい。いくつかの態様において、伸展可能部材110はまた、参照により本明細書に組み入れられる開示物に説明されているものと概ね同様の、ある一定の特徴も有していてもよい。いくつかの態様において、伸展可能部材110は、バルーンとは別の、またはこれに加えて、伸展可能なエンドエフェクターを含む。
【0022】
駆動ユニット150から延在する外部空気式駆動ライン172を形成するために集束する、第一空気式駆動ライン120および第二空気式駆動ライン140を介して、駆動ユニット150は、伸展可能部材110に出入りする気体流を生成してもよい。例えば、駆動ユニット150は、第一空気式駆動ライン120および第二空気式駆動ライン140を介して伸展可能部材110に入るよう気体を加速し、それによって伸展可能部材110を膨張させるために、陽圧を生成してもよい。駆動ユニット150はまた、第一空気式駆動ライン120および第二空気式駆動ライン140を介して伸展可能部材110から気体を引き抜き、それによって伸展可能部材110を脱膨張させるために、陰圧を誘発してもよい。駆動ユニット150は、伸展可能部材110に出入りする気体流を、ベローズ(
図1には描写せず)を通じて誘発してもよい。いくつかの態様において、駆動ユニット150は、伸展可能部材110を過膨張させることを回避するために、伸展可能部材110内に押し込まれる空気の体積を制御してもよい。例えば、空気流を生成するためにベローズを利用する1つの態様において、ベローズによって生成される空気流の体積(例えばベローズの体積)が伸展可能部材110の内部体積に対応してもよい。当業者は、相対圧力における変化のゆえに、ベローズの体積がバルーンの内部体積と同一でない可能性があることを認識するであろう。いくつかの態様において、駆動ユニット150は、駆動ユニット150を囲んでいる環境からの環境空気(例えば「室内空気」)を使用して、システム100の作動を駆動する。環境空気の使用は、気体または流体の内部供給(例えばヘリウムタンク)に頼る駆動ユニットと比較して、駆動ユニット150のサイズ、重量、および/または費用を低減させると予期される。例えばいくつかの態様において、駆動ユニット150は約3kgまたはそれ未満の重量であってもよい。そしてまた、バルーンがリークまたは破裂した場合に、空気はヘリウムと比較して血液中により吸収されやすく、血栓形成および脳卒中のリスクがより低い。駆動ラインは、システム100が稼働状態で使用されていない時に、皮膚インターフェースデバイス190の近くで接続解除されてもよい。
【0023】
システム100は、心機能および血流の慢性的支持を可能にしながら、なお一方で患者が歩行可能のままであることを可能にする可能性がある。典型的な心室補助デバイスは、駆動ライン用の大腿アクセス、および/または、大型で静置式の外部制御ユニットへの接続を必要とし、したがって治療の期間中、患者を仰臥位で病床に留めることになる。対照的に、システム100は、患者が比較的妨げられず動き回ることを可能にする。さらに、システム100によって提供される治療レベルは、患者のニーズにマッチするように調整可能である。例えば、提供される支持を変動させるために、伸展可能部材110によって提供される体積置換および支持の比(例えば1:1、1:2、1:3の支持)を、各患者について調整できる。当業者には、支持の比が、心拍とバルーン膨張との比を示すことが認識されるであろう。例えば、1:1の支持比は、毎回の心拍について対応するバルーン膨張があることを示し、1:2の支持比は各膨張前に2回の心拍があることを示し、1:3の支持比は各膨張前に3回の心拍があることを示す。駆動ユニット150は、ユーザーが体積置換または支持比を制御できるユーザーインターフェース(描写せず)を有していてもよい。代替的に、駆動ユニット150は他の外部入力を介して(例えば、駆動ユニット150と電気的に連絡している、対応するタブレットまたは他のデバイスを用いて)制御されてもよい。(例えば、内部ベローズ機構の望ましい行程を、全行程のパーセントとして変化させることによって)体積置換を経時的に徐々に低減させると、制御された心臓負荷がもたらされる可能性があり、それは、一部の場合において心臓の回復に有益である可能性がある。さらに、従来の循環支持システムと異なり、システム100は、例えば支持なしで心臓の需要を扱う患者の能力をシステム100の除去前に評価するなどのために、または別の好適な理由のために、オフにすることができる。例えばいくつかの態様において、伸展可能部材110は、比較的長時間にわたって(例えば1日のうち23時間にわたって)脱膨張条件で大動脈内に留まるように設計される。このことは従来のデバイスと対照的である。従来のデバイスは、非稼働状態にあった時に形成された塞栓が再稼働によって一気に押し流される可能性があるので、約15分間を超えてオフにされたならば除去しなければならないことが多い。
【0024】
駆動ユニット
本開示は、駆動ユニット150の少なくとも2つの態様を企図している。第一の態様は
図2A~2Fに描写されており、符番200によって駆動ユニットを参照する。第二の態様は
図3A~3Eに描写されており、符番300によって駆動ユニットを参照する。
【0025】
図2Aは駆動ユニット200の第一の態様を描写している。駆動ユニット200は、さまざまなポート204を有する外側ケース202を含んでいてもよい。ポート204は、数ある中で特に、表示読出し、電源ボタン、換気、および他のシステムコンポーネント(例えば空気式駆動ライン172)への接続性のために使用されてもよい。
【0026】
図2B~2Dを参照すると、駆動ユニット200は、締結具206を使用して固着された上部アクセスプレート208を有する外側ケース202を含んでいてもよい。
図2E~2Fを参照すると、駆動ユニット200は、ベローズ220およびモーター222(例えば、ブラシレスDCモーターなどの電気モーター)を含んでいてもよい。
図2Eにおけるベローズ220の左側の空間は、モーター222を制御するために使用される電気コンポーネント(図示せず)によって、少なくとも部分的に占められてもよい。そうしたコンポーネントは、1つまたは複数のコンピュータープロセッサーと、コンピュータープロセッサーによって実行できるコンピュータープロセッサー可読の命令を含有しているメモリとを含んでいてもよい。同じ空間が、(例えば、ベローズ出力/空圧出力223を適切なポート204に連結するための)バリューマニホールド(value manifold)などの機械コンポーネントによって、少なくとも部分的に占められてもよい。
【0027】
ベローズ220は、モーター222が異なる方向に回転することに応答して、
図2Eに描写されたB-B軸に沿って伸展および収縮できる、軸方向伸展ベローズであってもよい。
図2Eおよび2Fに描写する態様において、ベローズ220は、伸展可能部材110(
図1)が脱膨張されるように伸展する。ベローズ220がモーター222によって圧迫されると、伸展可能部材110(
図1)が膨張される。ベローズ220は、ベローズ220内の体積がベローズの長さに応じて変動するように、その長さに沿って一定した断面幾何学形状を有してもよい。
【0028】
モーター222はローター222aおよびステーター222bを含んでいてもよい。ローター222aは回転直動転換器に接合されていてもよい。例えばローター222aは、動的フランジ228に固着されたボールねじ226を運ぶボールナット224に接合されていてもよい。ベローズ220は、ボールねじ226より近位の第一のベローズ端部にて動的フランジ228によってシールされてもよく、そしてボールねじ226より遠位の第二のベローズ端部にて静的フランジ229(
図3E)によってシールされてもよい。ベローズアウトレット233(
図3E)は、ベローズ220の動きに応答して、外部駆動ライン172内の流体が伸展可能部材110に連絡することを可能にしてもよい。
【0029】
いくつかの態様において、ベローズアウトレット233は静的フランジ229内に形成されてもよい。ボールナット224と組み合わせられたボールねじ226が、摩擦をほとんど伴わずにモーター222の回転運動を直線運動に変換する機械的な回転直動転換器を形成してもよい。静置式のステーター222b内におけるローター222aによるボールナット224の回転が、ボールねじ226を軸B-Bに沿って直線的に動かしてもよく、そしてそれに付随してベローズ220の直線運動を引き起こしてもよい。
【0030】
ボールねじ226は、ボールナット224のボール(描写せず)用の螺旋状軌道226aを提供するためにねじ切りされていてもよく、そして精密なねじとして作用してもよい。いくつかの寸法がボールねじ226および軌道226aを規定する可能性がある。例えば、ボールねじ226は、螺旋状軌道226aの溝間の距離の尺度となるピッチを含んでいてもよい。
【0031】
ローター222aおよびボールナット224のアセンブリは、ラジアル軸受232を介してモーター222のハウジング230にマウントされてもよい。ラジアル軸受232の内側レースはローター222aおよびボールナット224のアセンブリに固着されてもよく、一方で、ラジアル軸受232の外側レースおよびステーター222bはモーターハウジング230に固着されてもよい。モーター222の動作はローター222aおよびボールナット224の回転運動を引き起こしてもよく、それは、ボールナット224のボール(描写せず)をボールねじ226の螺旋状軌道226a内で進ませ、ローター222aの回転運動を軸B-B(
図2E)に沿ったボールねじ226の直線運動に変換してもよい。ボールねじ226の運動は動的フランジ228を介してベローズ220に移され、それはベローズ220を伸展または収縮させて、ベローズアウトレット233(
図2E)を介して伸展可能部材110と流体接続された外部駆動ライン172内に、それぞれ負または正の流体フローを作り出す。いくつかの態様において、ボールねじ226は、(
図2Fに描写されるように)ねじ切りされたインターフェースを介して動的フランジ228に固定的に嵌合されてもよい。いくつかの態様において、動的フランジ228およびボールねじ228は1つの連続ピースである。ボールねじ226が動的フランジ228に固定的に嵌合されている時、またはボールねじ226および動的フランジ228が1つの連続ピースである時は、ボールねじ228がその動きを直接的かつ効率的にベローズに移す可能性がある(例えば、静的フランジ229から遠ざかるようにボールねじ226が引き戻されると、それが動的フランジ228を引っ張ってベローズ220を伸展させる可能性がある)。
【0032】
図2E~Fおよび
図4を参照すると、駆動ユニット200は、プロセッサー402、メモリ404、および駆動ユニット402を含んでいてもよい。プロセッサー402は、データもしくは情報を処理できる、1つまたは複数の、専用もしくは非専用のマイクロプロセッサー、マイクロコントローラー、シーケンサー、マイクロシーケンサー、デジタル信号プロセッサー、処理エンジン、ハードウェアアクセレレーター、特定用途向け集積回路(ASIC)、状態機械、プログラム可能論理列、任意の集積回路、ディスクリート回路など、または任意の好適なその組み合わせを含んでいてもよい。メモリ404は、システムメモリ、フレームバッファーメモリ、フラッシュメモリ、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読出し専用メモリ(ROM)、レジスター、およびラッチのうち1つもしくは複数などを行える、任意の好適な不揮発性メモリデバイス、チップ、または保存デバイスを含んでいてもよい。プロセッサー402は、(例えばメモリ404内に保存された)実行可能な命令を実行できる。プロセッサー402は、モーター222を、そしてその延長としてベローズ220を、制御するように構成されてもよい。
【0033】
例えば、エンコーダーディスク234およびエンコーダーセンサー236が、ローターの角位置、スピード、および/または方向を決定してもよく、そしてそうした情報をポジションフィードバック信号としてプロセッサー402および/またはメモリ404に提供してもよい。他の態様において、ボールねじ226またはベローズ220のポジションを決定するため、そしてそうしたポジションフィードバック信号を提供するために、直線ポジションセンサー(描写せず)が使用されてもよい。プロセッサー402および/またはメモリ404はまた、駆動ユニットUI 406から制御情報を受けてもよく、駆動ユニットUI 406に表示情報(例えば状態情報)を提供してもよい。関連して、プロセッサー402および/またはメモリ404は、皮膚インターフェースデバイス190および1つまたは複数のセンサー160(
図1)からのEKG信号、(例えばタブレットまたは他の計算デバイス(描写せず)からの)1つまたは複数の外部制御信号、ならびに1つまたは複数のセンサー信号も同様に受けてもよい。例えば、プロセッサー402および/またはメモリ404は、治療(例えばカウンターパルセーション療法)を受けている患者の動脈(例えば
図1に描写されるように下行大動脈)内に配された時にバルーン110の近傍に位置する圧力センサー(描写せず)によって観察される、圧力信号を受けてもよい。1つまたは複数の圧力信号は、そうした動脈内でバルーン110にかけられる圧力の、および/またはそうした動脈内の圧力の、指標であってもよい。
【0034】
プロセッサー402は、ポジションフィードバック信号、駆動ユニットUI 406の制御信号、EKG信号、外部制御信号、およびモーター222を制御するためのセンサー信号のうち、1つまたは複数を使用してもよい。例えば、(例えばカウンターパルセーションを遂行するために)バルーン110の膨張および/または脱膨張の適切なタイミングを確実にするために、EKG信号が使用されてもよい。そして、前述したように、体積置換および/または支持比を変えるために、駆動ユニットUI 406の制御信号および外部制御信号が使用されてもよい。
【0035】
他の態様において、ベローズ220を圧迫および伸展するために、リニアブラシレスDCモーター、ソレノイド、および/または圧電アクチュエーターが用いられてもよい。
【0036】
心不全患者においてカウンターパルセーション療法を提供するため、環境空気を使用して膨張可能部材110を効果的に膨張および脱膨張させるために駆動ユニット200が使用されてもよい。下表に記す、以下のコンポーネント値は、そうした目的にとって効率的かつ/または経済的である可能性がある。数値の2つの列は、駆動ユニット200と、膨張可能部材110としての約20~60ccのバルーンとを使用するカウンターパルセーションに好適な寸法を表す。
【0037】
上述のように構成された駆動ユニット200は、カウンターパルセーションに概ね有効ではあるが、ローター222aの回転慣性を克服するだけでもかなりの量の電力を使用する。そして、不整脈、不規則心拍、a-fibのある患者を処置するのに「充分速い」わけではない可能性もある。駆動ユニットの効率を向上させるためにボールねじのピッチが選択または調整されてもよい。具体的には、ボールねじのピッチを調整すると(かつ/またはベローズ220の直径を調整すると)、モーター222のインピーダンスと、駆動ユニット200にかかる空圧負荷(例えば、バルーン110、第一空気式駆動ライン120、第二空気式駆動ライン140、および外部駆動ライン172の集合的な空圧負荷)のインピーダンスとを、より良好にマッチできる可能性がある。そのような効率の向上は、駆動モーター222に用いられる任意の電池の寿命を向上させる可能性がある。
【0038】
図3Aを参照すると、駆動ユニットの第二の態様300もまた、さまざまなポート304を有する外側ケース302を含んでいてもよい。ポート304は、数ある中で特に、表示読出し、電源ボタン、換気、および他のシステムコンポーネント(例えば空気式駆動ライン172)への接続性のために使用されてもよい。
【0039】
図3B~3Dを参照すると、外側ケース302は、それにしっかりと固定された端部アクセスプレート308を含んでいてもよい。
図3Eを参照すると、駆動ユニット300は、ベローズ320およびモーター322(例えば、ブラシレスDCモーターなどの電気モーター)を含んでいてもよい。ベローズ320は、モーター322が異なる方向に回転することに応答して、
図3Eに描写されたD-D軸に沿って伸展および収縮できる、軸方向伸展ベローズであってもよい。
図3Eに描写されるように、ベローズ320は動的フランジ328を含んでいてもよい。モーター322の少なくとも一部分がベローズキャビティ320a内で入れ子状にされるように、動的フランジ328は、モーター322の少なくとも一部分を受けまたは格納するようにサイズ決定および形状決定されてもよい。例えば、凹部328aの方向はベローズキャビティ320に向かっていてもよく、そして、外部駆動ライン172内に有効な空気流を提供するのに充分なストローク長さを維持しながら、モーター322の少なくとも一部分をベローズキャビティ321a内に受けまたは格納して、入れ子状にするのに好適な、三次元形状(例えば円柱形)を取ってもよい。凹部328aは、外側ケース302のサイズおよび重量の低減を可能にしてもよく、それは(例えば外側ケース202のサイズと比較して)システムの可動性を向上させる。
図3Eに描写した態様において、ベローズ320は、伸展可能部材110(
図1)が脱膨張されるように伸展されまたは圧迫されていない状態で描写されている。
【0040】
モーター322はローター322aおよびステーター322bを含む。第一の態様200と同様に、ローター322aは、例えば、ねじ切りされたインターフェースを介して動的フランジ328に固着されたボールねじ326を運ぶボールナット324など、回転直動転換器と接合するように形状決定されてもよい。他の態様において、ローター323aとボールナット324とが単一ピースとして形成されてもよい。いくつかの態様において、ボールねじ326は重量を低減させるために中空である。ローター323aおよびボールナット324のアセンブリは、ラジアル軸受330を介してモーターのハウジング332にマウントされてもよい。ラジアル軸受330の内側レースはローター323aおよびボールナット324のアセンブリに固着されてもよく、一方で、ラジアル軸受330の外側レースおよびステーター323bはモーターハウジング332に固着されてもよい。第一の態様と同様に、モーター322の動作はローター323aおよびボールナット324の回転運動を引き起こしてもよく、それは、軸D-Dに沿ったボールねじ326の直線運動に移ってもよい。ボールねじ326の運動は動的フランジ328を介してベローズ320に移されてもよく、それはベローズ320を伸展または収縮させて、静的フランジ329に関連したベローズ出力/空圧出力333を介して伸展可能部材110と流体接続された外部駆動ライン172内に、それぞれ負または正の流体フローを作り出す。他の態様において、ベローズ320を圧迫および伸展するために、リニアブラシレスDCモーター、ソレノイド、および/または圧電アクチュエーターが用いられてもよい。
【0041】
ローター322aおよびボールナット324がステーター322b内で軸D-Dの周りをスピンしている間に、ボールねじ328がその動きを直接的かつ効率的にベローズ320に移すことを可能にするために、ボールねじ326が動的フランジ328に嵌合されていてもよい(または2つのコンポーネントが1つの連続ピースであってもよい)。ローター322aの回転が、ボールナット324のボールをボールねじ226の螺旋状軌道226a内で運び、それゆえに軸D-Dに沿ったボールねじ226の運動を引き起こしてもよい。
【0042】
図2E~Fおよび
図4を参照すると、エンコーダーディスク334およびエンコーダーセンサー336が、ローターの角位置、スピード、および/または方向を決定してもよく、そして電気フィードバック信号(描写せず)を介してそうした情報をプロセッサーに提供してもよい。他の態様において、ボールねじ326またはベローズ320のポジションを決定するため、そしてその情報をそうしたプロセッサーに提供するために、直線ポジションセンサー(描写せず)が使用されてもよい。そうしたプロセッサーはまた、皮膚インターフェースデバイス190および1つまたは複数のセンサー160(
図1)からのEKG信号、(例えば、モーター322とベローズ220の行程とを制御するように構成されたタブレット(描写せず)、ケース302(描写せず)に機能的に連結されたユーザーインターフェース、などからの)好適な外部制御信号、ならびに他のセンサー(例えば、下行大動脈内の圧力を感知できる圧力センサー(描写せず))も受けてもよい。
【0043】
不整脈、不規則心拍、またはa-fibがある患者を含む、心不全患者において、カウンターパルセーション療法を提供するため、環境空気を使用して膨張可能部材110を効果的に膨張および脱膨張させるために駆動ユニット300が使用されてもよい。以下の範囲のコンポーネント値は、駆動ユニット300と、膨張可能部材110としての約20~60ccのバルーンとを使用するカウンターパルセーションについて、効率的かつ/または経済的である可能性がある。
【0044】
図3Eおよび
図4を参照すると、駆動ユニット300は、プロセッサー402、メモリ404、および駆動ユニット402を含んでいてもよい。エンコーダーディスク334およびエンコーダーセンサー336が、ローターの角位置、スピード、および/または方向を決定してもよく、そしてそうした情報をポジションフィードバック信号としてプロセッサー402および/またはメモリ404に提供してもよい。他の態様において、ボールねじ326またはベローズ320のポジションを決定するため、そしてそうしたポジションフィードバック信号を提供するために、直線ポジションセンサー(描写せず)が使用されてもよい。プロセッサー402および/またはメモリ404はまた、駆動ユニットUI 406から制御情報を受けてもよく、駆動ユニットUI 406に表示情報(例えば状態情報)を提供してもよい。関連して、プロセッサー402および/またはメモリ404は、皮膚インターフェースデバイス190および1つまたは複数のセンサー160(
図1)からのEKG信号、(例えばタブレットまたは他の計算デバイス(描写せず)からの)1つまたは複数の外部制御信号、ならびに1つまたは複数のセンサー信号も同様に受けてもよい。例えば、プロセッサー402および/またはメモリ404は、治療(例えばカウンターパルセーション療法)を受けている患者の動脈(例えば
図1に描写されるように下行大動脈)内に配された時にバルーン110の近傍に位置する圧力センサー(描写せず)によって観察される、圧力信号を受けてもよい。1つまたは複数の圧力信号は、そうした動脈内でバルーン110にかけられる圧力の、および/またはそうした動脈内の圧力の、指標であってもよい。
【0045】
プロセッサー402は、ポジションフィードバック信号、駆動ユニットUI 406の制御信号、EKG信号、外部制御信号、およびモーターを制御するためのセンサー信号のうち、1つまたは複数を使用してもよい。例えば、(例えばカウンターパルセーションを遂行するために)バルーン110の膨張および/または脱膨張の適切なタイミングを確実にするために、EKG信号が使用されてもよい。そして、前述したように、体積置換および/または支持比を変えるために、駆動ユニットUI 406の制御信号および外部制御信号が使用されてもよい。
【0046】
対応するベローズ220、320がフル伸展ポジションからフル収縮ポジションまでの直線運動を受けた時、またはその逆である時に、駆動ユニット200および駆動ユニット300が同量の空気を動かすように(すなわち、同じサイズのバルーンを脱膨張または膨張させるように)構成されていると仮定すると、駆動ユニット300は駆動ユニット200に対していくつかの利点を有する可能性がある。例えば、駆動ユニット300は、駆動ユニット200より小さく軽くなる(すなわち、より小さい体積のエンクロージャーを有する)ように構成でき、それは、駆動ユニット150を運ばなければならない人が移動できる能力/より歩行的な行動に関わる能力に対して、かなりの影響を有する可能性がある。特に、ベローズ320は、駆動ユニット220より小さいベローズ行程距離(および、より短いボールねじ)を有することができる。駆動ユニット300におけるベローズ直径を、駆動ユニット200におけるベローズ直径に対して増大させることによって、(1)駆動ユニットにかかる空圧負荷(例えば、バルーン110、第一空気式駆動ライン120、第二空気式駆動ライン140、および外部駆動ライン172の集合的な空圧負荷)のインピーダンスが、より良好にモーター(すなわち、駆動ユニットの機械的サブシステム)のインピーダンスにマッチされ、かつ、(2)膨張および脱膨張に必要な電力消費が低減され、それによって駆動ユニット300の効率が駆動ユニット200と比較して増大する。
【0047】
そうした構成において、駆動ユニット300の、直線運動の軸(すなわち軸D-D)に沿った全体的な寸法は、駆動ユニット200の、直線運動の軸(すなわち軸B-B)に沿った全体的な寸法より小さくなる可能性がある。駆動ユニット200の最長の寸法はその直線運動の軸(すなわち軸B-B)に沿っている可能性があるが、駆動ユニット300の最長の寸法はその直線運動の軸に直交する(すなわち軸D-Dに直交する)可能性がある。このことは、外側ケース202および302の両方が、立方形(または実質的に立方形の形状)であり、かつ、静的フランジ229、329のフェースが外側ケース202、302のフェースに平行であるように構成されている場合に、特に当てはまる可能性がある。
図3Eに描写されているように、駆動ユニット300の最長の寸法は、ベローズ320の直径に平行な軸に対応してもよい。
【0048】
さらに、駆動ユニット300の設計は、不規則心拍がある患者(例えば、心房細動つまり「a-fib」がある患者)を処置できるよう、対応するバルーンまたは膨張可能部材110をQRS群内のR波の約100ms以内に50%脱膨張させるのに充分な速さで作動するように構成されてもよい。上述したように、a-fibは、心臓上部の2つの部屋が無秩序な電気信号を受けた時に生じる、不規則かつ/または速い心拍数である。結果として、伸展可能部材110を有効に膨張および脱膨張させるための予測が難しい、速く不規則な心臓リズムが生じる。a-fib患者を効果的に処置するには、伸展可能部材110がR波の約100ms以内に少なくとも50%脱膨張されるべきである。迅速な脱膨張がないと、伸展可能部材110が大動脈内で血流を妨げて心臓の作業負荷を増大させる可能性がある。QRS群内のR波を心室収縮の指標として使用するには、EKG信号を処理してR波を探し当てる必要があり、それは、用いられるアルゴリズムにもよるが、従来のアルゴリズムおよびプロセッサーを使用して約20~50msを費やす可能性がある。駆動ユニット300におけるボールねじのピッチを3.5~5.5mmに設定し、外径125~111mm、有効ベローズ行程距離8.0~11.5mmのベローズ320を使用することによって、駆動ユニット300は、不規則心拍およびa-fibがある患者を効果的に処置できる可能性がある。
【0049】
さらに、駆動ユニット300は、電力消費という点において駆動ユニット200よりはるかに効率的になる可能性があり、それによって、電池が同じであると仮定すると、モーター222に電力供給する電池(描写せず)と比較して、モーター322に電力供給する電池(描写せず)の電池寿命を長くできる。特に、ローター322aの回転慣性を克服するために駆動ユニット300において利用される電力量と比較して、モーター222は、駆動ユニット200におけるローター222aの回転慣性を克服するために、不釣り合いな電力量を非効率的に使用する可能性がある。駆動ユニット300はこの利点を次のことによって実現する:(a)モーター322のインピーダンスが、駆動ユニット300にかかる空圧負荷のインピーダンスと同じかまたは実質的に同じになる(すなわち、マッチするかまたは実質的にマッチする)ように、駆動ユニット300におけるボールねじのピッチを設定すること;および/または(b)ベローズ行程が低減された設計を可能にする(そして、モーター322のインピーダンスを駆動ユニット300の空圧負荷にマッチさせるかまたは実質的にマッチさせることをさらに助ける可能性がある)、拡大されたベローズ320を使用すること。
【0050】
駆動ユニット200および駆動ユニット300について上記に提供した表は例示的なものにすぎない。異なるコンポーネント値を伴う駆動ユニットも本開示の範囲内であるものとして企図されている。
【0051】
結論
以上に詳しく述べた本技術の諸態様の説明は、網羅的であること、または以上に開示したとおりの形態に本技術を限定することを意図していない。本技術の具体的態様および実施例を例証の目的で以上に説明したが、当業者に認識されるであろうように、本技術の範囲内においてさまざまな等価の改変が可能である。本明細書に説明するさまざまな態様はまた、組み合わせられてさらなる態様を提供してもよい。
【0052】
文脈が別段のことを明白に求めるのでない限り、本明細書の説明および実施例全体を通して、「含む(comprise)」および「含む(comprising)」などの語は、排他的または網羅的な意味ではなく、包含的な意味、すなわち「~を含むが、それに限定されるわけではない(including, but not limited to)」という意味に解釈されるべきである。本明細書において用いる「接続される(connected)」、「連結される(coupled)」、またはその異形は、2つまたはそれ以上の要素間の、直接的または間接的のいずれかの、任意の接続または連結を意味する;要素間の連結または接続は、物理的、論理的、またはそれらの組み合わせであってもよい。加えて、「本明細書において(herein)」、「上述の(above)」、「後述の(below)」、および同様の趣旨の語は、本出願において用いられる時、本出願の全体を指すのであり、本出願の特定の部分を指すのではない。文脈が許す場合、上述の詳細な説明における単数形または複数形を用いた語は、それぞれ、その複数形または単数形もまた含む可能性がある。本明細書において用いる、「Aおよび(ならびに)/もしくは(または)B(A and/or B)」などにおける「および(ならびに)/もしくは(または)(and/or)」という句は、Aのみ、Bのみ、および、AとBとの組み合わせを指す。具体的態様が例証の目的で本明細書に説明されていること、しかし本技術から逸脱することなくさまざまな改変が行われうることもまた、認識されるであろう。さらに、本技術のいくつかの態様に関連する利点が、それら態様の文脈において説明されているが、他の態様もまたそうした利点を呈する可能性があり、そして、本技術の範囲内に入るために必ずしもすべての態様がそうした利点を呈する必要はない。したがって、本開示および関連技術は、本明細書に明示的に描写または説明されない他の態様も包含しうる。
【国際調査報告】