(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】エネルギー貯蔵装置及び熱伝達流体を加熱する方法
(51)【国際特許分類】
F28D 20/00 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
F28D20/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506470
(86)(22)【出願日】2022-08-04
(85)【翻訳文提出日】2024-03-07
(86)【国際出願番号】 EP2022071888
(87)【国際公開番号】W WO2023012250
(87)【国際公開日】2023-02-09
(32)【優先日】2021-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390023685
【氏名又は名称】シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【氏名又は名称】新井 規之
(72)【発明者】
【氏名】クルジャー,アルフレッド・アーノルド
(72)【発明者】
【氏名】ベルビスト,ギー・ロード・マグダ・マリア
(57)【要約】
本発明は、粉末床(110)と、少なくとも2つの電極(301、302、303)と、少なくとも1つの熱伝達管(200)と、を備える熱エネルギー貯蔵装置(100)を提供する。粉末床(110)は、500~50,000Ωmの範囲の電気抵抗率を有する。少なくとも2つの電極(301、302、303)は、粉末床(110)中に埋め込まれ、電極(301、302、303)の間に電圧を供給することによって粉末床(110)を加熱するように配置されている。少なくとも1つの熱伝達管(200)は、熱伝達流体を収容するように配置され、熱エネルギー消費体(30)に接続可能な入口(210)及び出口(220)を有する。熱伝達管(200)及び粉末床(110)は、電気絶縁材料を介して熱的に結合している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱エネルギー貯蔵装置であって、
-500Ωm~50,000Ωmの範囲の電気抵抗率を有する粉末床と、
-少なくとも2つの電極であって、前記粉末床中に埋め込まれ、前記少なくとも2つの電極の間に電流を提供することによって前記粉末床を加熱するように配置された、少なくとも2つの電極と、
-熱伝達流体を収容するように配置された少なくとも1つの熱伝達管であって、熱エネルギー消費体に接続可能な入口及び出口を有する、少なくとも1つの熱伝達管と、を備え、前記熱伝達管及び前記粉末床が、電気絶縁材料を介して熱的に結合している、熱エネルギー貯蔵装置。
【請求項2】
前記粉末床が、半導体材料を含む、請求項1に記載の熱エネルギー貯蔵装置。
【請求項3】
前記半導体材料が、ドープされていないか、又は窒素、リン、ベリリウム、ホウ素、アルミニウム、又はガリウムでドープされた炭化ケイ素マトリックスを含む、請求項2に記載の熱エネルギー貯蔵装置。
【請求項4】
前記電極が、前記粉末床と直接接触している、請求項1又は2に記載の熱エネルギー貯蔵装置。
【請求項5】
前記電極が、グラファイト又は焼結炭化ケイ素を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱エネルギー貯蔵装置。
【請求項6】
前記電気絶縁材料が、炭化ケイ素、砂、石英、又は鉄鉱石などのバルク材料の電気絶縁層であり、前記熱伝達管が、前記バルク材料中に埋め込まれている、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱エネルギー貯蔵装置。
【請求項7】
複数の熱的に結合したモジュールを備え、各モジュールが、
-前記粉末床及び前記少なくとも2つの電極を含む発熱層と、
-前記熱伝達管及び前記電気絶縁材料を含む放熱層と、を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の熱エネルギー貯蔵装置。
【請求項8】
前記粉末床に熱的に結合し、少なくとも前記粉末床によって前記熱伝達管から分離された、緩衝層を更に備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の熱エネルギー貯蔵装置。
【請求項9】
前記緩衝層が、相変化材料を含む、請求項8に記載の熱エネルギー貯蔵装置。
【請求項10】
複数の熱的に結合したモジュールを備え、各モジュールが、
-前記粉末床及び前記少なくとも2つの電極を含む第1の発熱層と、
-前記熱伝達管及び前記電気絶縁材料を含む放熱層と、
-前記粉末床及び前記少なくとも2つの電極を含む第2の発熱層と、
-前記緩衝層と、を含む、請求項8又は9に記載の熱エネルギー貯蔵装置。
【請求項11】
少なくとも前記粉末床、前記熱伝達管、及び前記電気絶縁材料を支持する断熱下部層を更に備える、請求項1~10のいずれか一項に記載の熱エネルギー貯蔵装置。
【請求項12】
前記断熱下部層中に埋め込まれた冷却管を更に備え、前記冷却管が、前記熱伝達管に接続可能である、請求項11に記載の熱エネルギー貯蔵装置。
【請求項13】
前記少なくとも2つの電極が、電圧が1,000ボルトを超える高電圧供給源に直接接続されている、請求項1~12のいずれか一項に記載の熱エネルギー貯蔵装置。
【請求項14】
熱伝達流体を加熱する方法であって、
-粉末床、少なくとも2つの電極、電気絶縁材料を介して前記粉末床に熱的に結合した少なくとも1つの熱伝達管を備える、請求項1~13のいずれか一項に記載の熱エネルギー貯蔵装置を提供すること、
-前記少なくとも2つの電極間に電流を通し、それによって前記粉末床中で熱を発生させ、前記電気絶縁材料を加熱すること、
-前記少なくとも1つの熱伝達管に前記熱伝達流体を通過させ、それによって前記電気絶縁材料からの熱で前記熱伝達流体を加熱すること、を含む、方法。
【請求項15】
前記電流が、経時的に変動する、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱エネルギー貯蔵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ここ数十年、環境への配慮及び人工CO2低減への要望が、風力及び太陽光発電などの再生可能な供給源から電気を発生させるための技術の開発を刺激してきた。このような再生可能なエネルギー供給源の使用に関連する1つの問題は、その断続的、かつ時に予測不可能な利用可能性である。風速は1日を通して変動し、より長い期間にわたって非常に低い場合がある。太陽電池パネルに対する太陽の位置は、高度に予測可能であり得るが、局所的な天候変動は、捕捉され、かつ電気に変換される太陽エネルギーの量に大きな変動を引き起こす。
【0003】
エネルギー生産だけでなく、エネルギー需要も経時的に変動する。エネルギー生産及びエネルギー需要の変動性は一致しないので、豊富に利用可能である場合にエネルギーを貯蔵し、必要な場合に消費体が貯蔵されたエネルギーを取り出すことを可能にするための技術的解決策が必要とされる。電気を発生させるための再生可能エネルギー供給源の使用が増加するにつれて、多種多様な新規エネルギー貯蔵解決策が現在開発されている。異なる解決策が、異なる使用シナリオのために必要とされる。利用可能なエネルギーを後で使用するためにどのように一時的に貯蔵するかを決定する場合、貯蔵容量、空間的制約、携帯性、コスト、充電速度、耐久性、及び多くの他の関連する要因が考慮される。
【0004】
大規模な産業用途では、熱エネルギー貯蔵は、経時的なエネルギー需要のバランスをとるために使用され得る。熱エネルギー貯蔵では、利用可能な電気エネルギーの余剰が存在する場合、一部の媒体が電気的に加熱される。需要が供給を超える場合、貯蔵された熱は、蒸気を発生させるために使用され得、蒸気は、それ自体電源として使用され得るか、又は蒸気タービン発電機を使用して電気に変換され得る。熱エネルギーを貯蔵するために使用される材料は、好ましくは安価でかつ安全である。最も安価でかつ最も一般的に使用される選択肢のうちの1つは、水タンクであるが、溶融塩、砂、又は金属などの材料は、より高い温度に加熱され得、したがって、より高い貯蔵容量又はより高いレベルの有用なエネルギーを提供する。
【0005】
多くの現在利用可能な熱エネルギー貯蔵システムの共通の欠点は、例えば、風力タービン又は太陽電池パネルによって生産された電気エネルギーを、貯蔵媒体に貯蔵される熱エネルギーに変換するために、何らかの形態のシステムが必要とされることである。例えば、国際特許出願第2020/254001(A1)号は、熱貯蔵媒体を加熱するための電気加熱装置の使用について記載している。貯蔵媒体は、10-4Ωm~1Ωmの低い電気抵抗率を有する導電性媒体である。一実施形態によれば、電気加熱装置は、電気エネルギーを熱の形態で貯蔵するために誘導コイルを使用する。別の実施形態では、電気加熱装置は、接触電極を使用して、材料内に電流を発生させ、それによって熱エネルギー貯蔵媒体を加熱する。接触電極との直接接触によって熱貯蔵媒体を加熱する場合であっても、国際特許出願第2020/254001(A1)号の加熱装置は、再生可能エネルギー供給源からの電気によって供給される配電網の高電圧を、低い電気抵抗率を有する導電性媒体を加熱するために使用され得るはるかに低い電圧に最初に変換するために、依然として大型かつ高価な変圧器を必要とする。
【0006】
本発明の目的は、既知の熱エネルギー貯蔵システムの不利益の少なくとも一部を克服することである。
【発明の概要】
【0007】
本発明の一態様によれば、熱エネルギー貯蔵装置であって、
-500Ωm~50,000Ωmの範囲の電気抵抗率を有する粉末床と、
-少なくとも2つの電極であって、粉末床中に埋め込まれ、少なくとも2つの電極の間に電流を提供することによって粉末床を加熱するように配置された、少なくとも2つの電極と、
-熱伝達流体を収容するように配置された少なくとも1つの熱伝達管であって、熱エネルギー消費体に接続可能な入口及び出口を有する、少なくとも1つの熱伝達管と、を備え、熱伝達管及び粉末床が、電気絶縁材料を介して熱的に結合している、熱エネルギー貯蔵装置が提供される。
【0008】
本発明の別の態様によれば、熱伝達流体を加熱する方法であって、
-少なくとも粉末床と、少なくとも2つの電極と、電気絶縁材料と、電気絶縁材料を介して粉末床に熱的に結合した少なくとも1つの熱伝達管と、を備える、上記の熱エネルギー貯蔵装置を提供することと、
-少なくとも2つの電極間に電流を通し、それによって粉末床中で熱を発生させ、それによって当該電気絶縁材料を加熱することと、
-少なくとも1つの熱伝達管に熱伝達流体を通過させ、それによって電気絶縁材料からの熱で熱伝達流体を加熱することと、を含む、方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】風力発電基地、太陽光発電基地、及び熱エネルギー貯蔵装置を示す概略図である。
【
図2】
図1の熱エネルギー貯蔵装置の実施形態の斜視図を示す概略図である。
【
図3】
図2の熱エネルギー貯蔵装置で使用するための熱伝達管の一例を示す概略図である。
【
図4】追加された断熱材を有する
図2の熱エネルギー貯蔵装置を示す概略図である。
【
図5】
図1の熱エネルギー貯蔵装置の異なる実施形態の斜視図を示す概略図である。
【
図6】更に追加された断熱材を有する
図5の熱エネルギー貯蔵装置を示す概略図である。
【
図7】
図1の熱エネルギー貯蔵装置の代替の実施形態の斜視図を示す概略図である。
【
図8】外部断熱層が除去された
図7の熱エネルギー貯蔵装置の一部の拡大図を示す概略図である。
【0010】
これらの図面は、限定としてではなく、単に例として、本教示による1つ以上の実現形態を示す。図面では、同様の参照番号は、同一又は類似の要素を指す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
粉末床と、少なくとも2つの電極と、少なくとも1つの熱伝達管と、を備える熱エネルギー貯蔵装置が本明細書に記載される。粉末床は、500Ωm~50,000Ωmの範囲の電気抵抗率を有する。少なくとも2つの電極は、粉末床中に埋め込まれ、電極間に電流を供給することによって粉末床を加熱するように配置されている。少なくとも1つの熱伝達管は、熱伝達流体を収容するように配置され、熱エネルギー消費体に接続可能な入口及び出口を有する。熱伝達管及び粉末床は、電気絶縁材料を介して熱的に結合している。
【0012】
粉末床の電気抵抗率は、電気エネルギー供給源の高電圧を、電極間の導電性媒体を加熱するために使用され得るはるかに低い電圧に最初に変換するための任意の変圧器の使用を必要とせずに、熱エネルギー貯蔵装置が電気エネルギー供給源に直接接続され得るように有利に選択され得る。電気エネルギー供給源へのこのような直接接続は、粉末床がエネルギー変換及びエネルギー貯蔵の機能を同時に果たすことを可能にする。これは、有意なコスト低減をもたらすだけでなく、局所ピーク温度に対するより良好な制御ももたらし、それによって、システムの耐久性及び寿命を増加させる。
【0013】
電極の加熱電力は、粉末床の抵抗及び電流の二乗に比例する。オームの法則によれば、これは、電圧の二乗を電気抵抗で除したものに比例するものとしても表され得る。粉末床によって提供される電気抵抗は、粉末床材料の抵抗率及び電極間隔に比例する。500Ωm~50,000Ωmの範囲の上述の好ましい抵抗率で、例えば50cm~200cmの実用的な電極間隔を使用して、好適な加熱電力を達成し得、粉末床を好適な温度に加熱し得る。
【0014】
好ましくは、半導体粒子が粉末床に使用される。粉末形態の半導体材料の使用は、加熱プロセス中の電極及び粉末床の自由な熱膨張を可能にする。電極が冷却中に収縮する場合、粉末床は、それ自体の重量の影響下で自己回復し得る。したがって、電極と半導体材料との間の良好な接触が、多くの繰り返されるエネルギー貯蔵及び放出サイクルに対して保証される。
【0015】
本発明の例示的な実施形態では、粉末床の半導体材料は、炭化ケイ素マトリックスを含む。炭化ケイ素マトリックスは、ドープされていなくてもドープされていてもよい。好ましくは、炭化ケイ素マトリックスは、窒素、リン、ベリリウム、ホウ素、アルミニウム、若しくはガリウム、又はこれらの組み合わせでドープされ得る。炭化ケイ素粒子を使用する利点は、それが容易に入手可能なバルク材料であり、焼結のような任意の後処理工程を必要とせずに粉末形態で使用され得ることである。ドープされた炭化ケイ素は、例えば、約1,000Ωmの非常に好適な電気抵抗率を有し得る。粉末床の抵抗率は、使用される粒子の材料だけでなく、例えば、粒子径、粒子形状、及び粒子間間隔にも依存することに留意されたい。
【0016】
好ましくは、電極は、効率的かつ効果的な熱伝達を確実にするために粉末床と直接接触している。
【0017】
例示的な実施形態では、電極は、良好な伝導性及び長寿命を提供するグラファイト又は焼結炭化ケイ素を含む。
【0018】
電気絶縁材料の電気抵抗率は、粉末床の電気抵抗率よりも高い。好ましい実施形態では、電気絶縁材料は、バルク材料の電気絶縁層である。好適なバルク材料としては、炭化ケイ素(好ましくはドープされていない)、砂、石英、及び鉄鉱石の選択されたグレードが挙げられる。熱伝達管は、バルク材料中に埋め込まれ得る。容易に入手可能であり、かつ比較的安価であることに加えて、このようなバルク材料は、絶縁材料が熱伝達管との直接接触を失うことなく、熱伝達管がその温度が変化した場合に自由に膨張及び収縮することを可能にするという利点をもたらす。それとともに、電気絶縁層と熱伝達管との間の効率的かつ効果的な熱伝達が、繰り返しの長期使用のために保証される。粒子状バルク材料の使用が好ましいが、代替の固体材料、場合によっては多孔質材料が代替物として使用され得る。例えば、コンクリートは、コスト、電気絶縁性、及び熱伝導性の点で好適な材料であり得る。
【0019】
例示的な実施形態では、熱エネルギー貯蔵装置は、複数の熱的に結合したモジュールを備え、各モジュールは、
-粉末床及び少なくとも2つの電極を含む発熱層と、
-熱伝達管及び電気絶縁材料を含む放熱層と、を含む。
【0020】
上に記載された例示的な熱エネルギー貯蔵装置のいくつかは、粉末床に熱的に結合し、少なくとも粉末床によって熱伝達管から分離された緩衝材を更に備え得る。このような緩衝材は、熱エネルギー貯蔵装置の総貯蔵容量を更に増加させ得、発熱粉末床の最大温度を制御するのに役立ち得る。緩衝材は、顕熱の形態で、又は潜熱の形態で、又は両方の組み合わせでエネルギーを貯蔵する材料を含み得る。
【0021】
例えば、熱エネルギー貯蔵装置は、複数の熱的に結合したモジュールを備え得、各モジュールは、
-粉末床及び少なくとも2つの電極を含む第1の発熱層と、
-熱伝達管及び電気絶縁材料を含む放熱層と、
-粉末床及び少なくとも2つの電極を含む第2の発熱層と、
-緩衝層と、を含む。
【0022】
各々1つの発熱層のみを有する熱的に結合したモジュールなどの他の配置も予見される。
【0023】
好ましい熱エネルギー貯蔵装置は、少なくとも粉末床と、熱伝達管と、電気絶縁材料と、を支持する断熱下部層を更に備え得る。下部断熱層は、熱エネルギー貯蔵装置が置かれる土壌への熱の損失を防止するのに役立つ。同様に、熱エネルギー貯蔵装置の上部の空気への熱の損失を防止するために、上部断熱層が追加され得る。熱エネルギー貯蔵装置の1つ以上の側面に、追加の断熱材が提供され得る。全ての断熱層は、任意の好適な断熱材料から作製され得る。好ましくは、ミネラルウール、安価なバルク材料、例えば、既に上で考察されたバルク材料のうちの1つが使用される。可能な材料としては、ミネラルウール、セラミック発泡体、真空パネル、又は砂、石英、軽石、又は火山灰などの顆粒状断熱材料の床が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
好ましい実施形態では、上部及び/又は下部断熱層は、断熱下部層中に埋め込まれた冷却管を更に含み得る。冷却管は、水などの冷却流体で満たされ得、そうでなければ熱エネルギー貯蔵装置の下の土壌を暖めていたであろう熱の一部を吸収する。冷却管は、冷たい冷却流体の連続供給を提供するためのポンプに接続され得る。冷却管は、熱伝達流体を予熱するために使用され得るように、熱伝達管の入口に更に接続され得る。
【0025】
本明細書で上に記載された熱エネルギー貯蔵装置は、少なくとも2つの電極間に電流を通し、それによって粉末床中で熱を発生させ、それによって当該電気絶縁材料を加熱することと、少なくとも1つの熱伝達管に熱伝達流体を通過させ、それによって電気絶縁材料からの熱で熱伝達流体を加熱することと、を含む、熱伝達流体を加熱する方法において使用され得る。電流は、電流が太陽光及び/又は風力電源などの再生可能な供給源に由来する場合によくあるように、経時的に変動し得る。電気絶縁材料及び任意選択的な緩衝層は、装置から抽出される熱を補充するために電力が利用可能でないか、又は不十分である場合、電流の遮断中に特定の時間量の間、熱伝達流体を加熱し続ける熱緩衝材として作用する。
【0026】
図1は、風力発電基地10、太陽光発電基地20、及び熱エネルギー貯蔵装置100を概略的に示す。熱エネルギー貯蔵装置100の1つ以上の詳細な例は、以下でより詳細に記載される。好適な量の風が存在する場合、風力発電基地10内の風力タービン11の回転ロータブレードは、電気を生産する発電機を駆動する。同様に、日中、風力発電基地20内の太陽電池パネル21は、太陽50からの光を吸収し、また電気を発生させる。風力発電基地10及び太陽光発電基地20は、いずれも熱エネルギー貯蔵装置100に電気的に接続されている。熱エネルギー貯蔵装置100の目的は、貯蔵媒体を加熱することによって、風力発電基地10及び太陽光発電基地20によって発生した電気エネルギーを貯蔵することである。貯蔵されたエネルギーは、必要に応じて熱伝達流体を加熱することによって放出される。加熱された熱伝達流体、典型的には蒸気の形態の水は、次いで、1つ以上のパイプ35を通して、ここでは工場30によって象徴的に表される熱エネルギー消費体に導かれ得る。消費体は、例えば、蒸気を工業プロセス又は代替的に蒸気凝縮器に供給する前に、いくつかの工業プロセスにおいて蒸気を直接使用して、又は蒸気タービン発電機を使用して、最初に蒸気を電力に変換し得る。熱伝達流体(少なくともその一部)の戻り流れは、熱エネルギー貯蔵装置100から熱を更に抽出するために熱エネルギー貯蔵装置100に循環して戻り得る。
【0027】
図2は、熱エネルギー貯蔵装置100の実施形態の斜視図を示す。熱エネルギー貯蔵装置100は、異なる機能、材料、及び他の特徴を有する一連の交互層110、120、130から作製される。層は、垂直に延在し得るか、かつ/又は列を形成し得る。異なる層において使用され得る材料及び特徴のうちのいくつかをより詳細に記載する前に、最初に、エネルギーを貯蔵及び放出するために熱貯蔵装置がどのように使用され得るかの簡単な説明を提供する。
【0028】
電極層110を通過する電流は、熱エネルギーに変換され、この層110内の材料を、例えば、800℃を超え得る温度まで温める。隣接する放熱層120において、管構造200が設けられ、それを通して熱伝達液体、例えば、水が導かれて、貯蔵されたエネルギーの一部を受容し得、例えば、蒸気の形態の加熱された流体になり得る。単一の電極層110と単一の放熱層120との組み合わせは、作動熱エネルギー装置100を得るのに十分であるが、複数のこのような層を交互パターンで提供することによって、より大きい貯蔵容量、並びに局所ピーク温度及びエネルギー貯蔵及び放出プロセスに対する改善された制御が得られる。熱エネルギー貯蔵装置100の総貯蔵容量を更に増加させ、最大温度及び放出デューティ変動を制御するために、任意選択的な緩衝層130が追加され得る。
【0029】
この実施形態では、電極層110は、500~50,000Ωmの範囲の電気抵抗率を粉末床に提供する半導体材料の粉末床を含む。少なくとも2つの電極が、粉末床中に埋め込まれ、少なくとも2つの電極の間に電圧を提供することによって粉末床を加熱するように配置されている。半導体材料は、例えば、所望の電気抵抗率を得るために、好適な量の窒素、リン、ベリリウム、ホウ素、アルミニウム、又はガリウムで任意選択的にドープされた炭化ケイ素(SiC)を含み得る。ドープされた炭化ケイ素は、熱エネルギー貯蔵装置100の電極層110において使用するための優れた電気的及び熱的特性(伝導性及び貯蔵容量に関して)を有する。このようなドープされた炭化ケイ素は、例えば、中間送電網供給電圧で使用するために、約1,000Ωmの電気抵抗率を有し得る。炭化ケイ素のバルク生産における不純物のために、ドープされていない炭化ケイ素も粉末床の主成分として使用するのに好適であり得る。50,000Ωmまでの抵抗率を有するドープされていない炭化ケイ素は、例えば、高い送電網供給電圧とともに使用され得る。
【0030】
粉末床の抵抗率は、使用される粉末床粒子の材料だけでなく、例えば、粒子径、粒子形状、及び粒子間間隔にも依存する。粉末床の電気抵抗率は、好ましくは、電気エネルギー供給源の高電圧を、電極間の導電性媒体を加熱するために使用され得るはるかに低い電圧に最初に変換するための任意の変圧器の使用を必要とせずに、熱エネルギー貯蔵装置100が風力発電基地10又は太陽光発電基地20などの電気エネルギー供給源に直接接続され得るような方法で選択される。電気エネルギー供給源へのこのような直接接続は、選択された半導体材料がエネルギー変換及びエネルギー貯蔵の機能を同時に果たすことを可能にする。このことは、有意なコスト低減をもたらす。
【0031】
炭化ケイ素を使用する更なる利点は、それが容易に入手可能なバルク材料であり、焼結のような任意の後処理工程を必要とせずに粉末形態で使用され得ることである。粉末形態の半導体材料の使用はまた、加熱プロセス中の電極の自由な熱膨張も可能にする。電極が冷却中に収縮する場合、粉末床は、それ自体の重量の影響下で自己回復し得る。したがって、電極と半導体材料との間の良好な接触が、多くの繰り返されるエネルギー貯蔵及び放出サイクルに対して保証される。高温への長時間の暴露に起因する炭化ケイ素の電気的特性の経時的な劣化は、発熱層におけるピーク温度を制御することによって、例えば、ピーク温度を約800℃に限定することによって、最小限に抑えられ得る。粉末床材料の劣化を限定する他の方法としては、粒子径の選択及び保護パージガス(例えば、窒素、アルゴン、又は二酸化炭素)の周期的注入が挙げられる。
【0032】
電極301、302、303の材料の好ましい選択は、グラファイト又は焼結炭化ケイ素である。グラファイト電極及び焼結炭化ケイ素電極の両方は、良好な導電性及び長寿命を有する。上で考察されたように、電極301、302、303は、高電圧電源に直接接続され得る。このような高電圧電源の電圧は、1kV(1,000ボルト)、5kV、又は10kVを超え得る。例えば、風力発電基地10及び/又は太陽光発電基地20は、三相交流を用いて33kVの電圧を供給し得る。この例では、相互接続された第1の電極301の第1のラインは、第1の相に接続され得、相互接続された第2の電極302の第2のラインは、第2の相に接続され得、相互接続された第3の電極303の第3のラインは、第3の相に接続され得る。このパターンは、相互接続された電極の第4、第5、第6、及び後続のラインに対して繰り返され得る。他の実施形態では、より低い又はより高い電圧(例えば、6kV、11kV、22kV、66kV)、2相交流、又は更に直流が印加され得る。
【0033】
電極301、302、303に電圧を印加することによって、電流が半導体材料を通って、直接接続されていない2つの隣接する電極間を流れる。半導体材料の電気抵抗率に起因して、電極層110は、そのオーム抵抗の結果として暖まる。最も高い加熱(したがって、場合によっては800℃超までの温度)は、電極301、302、303の付近で生じると予期される。半導体材料の導電特性及び熱伝導特性及び熱貯蔵容量は、電極層110を通して発生された熱の更なる分布を決定する。
【0034】
放熱層120は、電極層110に隣接して提供され、電極層110と直接接触するか、又は電極層110及び放熱層120とは異なる材料を含み得る中間緩衝層と接触する。この放熱層に使用される材料の熱伝導特性及び熱貯蔵特性は、電極層110で発生した熱が、熱伝達管200に効果的に伝達されるようなものである。放熱層120の1つの機能は、受容可能な熱供給変動を消費体に提供するために、再生可能エネルギー供給源の日毎又は時間毎の間欠性を減衰させることである。熱エネルギー貯蔵装置100が機能するためには、熱伝達管200が放熱層120との間で効率的に熱交換し得るように、熱伝達管200が放熱層120と密接に接触していることが重要である。熱伝達管200が、温度変化の影響下で収縮及び膨張する材料から作製されている場合、放熱層120に使用される材料は、これらの変化に対応し得ることが好ましい。したがって、電極層110に関しては、粉末などの緩い粒子からなるバルク材料の使用が好ましい。
【0035】
放熱層120に使用され得る好適な材料としては、(非伝導性)炭化ケイ素、砂、石英、又は鉄鉱石などのバルク材料が挙げられる。熱伝達管200が金属などの導電性材料から作製される場合、放熱層120に使用される材料は、例えば、熱伝達管200を電気的に絶縁するため、及び望ましくない電流が熱伝達管を通って流れるのを回避するために、導電性でないことが好ましい。あるいは、放熱層120は、電極層110に使用されるのと同じ半導体材料、又は別の導電性若しくは半導電性材料を含み得る。その場合、絶縁層を熱伝達管200に応用して、それを流れる望ましくない電流を回避し得る。しかしながら、このような電気絶縁層は、熱エネルギー貯蔵装置100と管200を流れる熱伝達流体との間の熱交換を著しく妨げないことが重要である。他の実施形態では、電極層110と放熱層120との間に電気絶縁層が提供され得、それによって、放熱層120に導電性材料を使用する機会が生じる。
【0036】
任意選択的に、熱エネルギー貯蔵装置100の総貯蔵容量を更に増加させ、最高温度を制御するために、追加の緩衝層130が提供される。この目的のために、材料は、例えば、コスト、熱伝導、及び熱貯蔵容量に基づいて選択される。この緩衝層に使用するのに好適な材料としては、バルク材料、例えば、(非伝導性)炭化ケイ素、砂、石英、鉄鉱石、又は潜熱を、場合によっては顕熱と組み合わせて貯蔵することが可能である材料、例えば、混和性ギャップ合金(miscibility gap alloy、MGA)、天日塩又は低融点金属が挙げられる、これらは、非溶融多孔質又はバルク固体と混合されると考えられる。緩衝層130は、
図2と同様に、2つの電極層110間に挟まれ得るが、隣接する電極層110のうちの1つ又は2つを省くか、又はより多くの電気絶縁層を追加する代替的な配置も可能である。
【0037】
全ての層は、所望の特性の劣化、又は層内及び/若しくは電極301、302、303、若しくは熱伝達管200の周囲の水分蓄積を防止するために、例えば、窒素、アルゴン、又は二酸化炭素を使用して、周期的又は連続的にパージされ得る。
【0038】
図3は、
図2の熱エネルギー貯蔵装置で使用するための熱伝達管200の一例を示す。熱伝達管200は、相互接続部分240によって互いに接続されている複数の実質的に平行な直線部分230を含む。相互接続部分240は、例えば、湾曲していてもよく、フランジ付きであってもよく、又は交差継手として実行されてもよい。使用中、例えば、水(W)は、入口210で熱伝達管200に入り、熱交換層130(
図1参照)から熱を奪いながら管200を流下し、最後に出口220で蒸気(S)として管200から出る。水の使用が好ましいが、代替の熱伝達流体が使用され得る。ポンプ(図示せず)が、水を入口210内に圧送するために提供され得る。出口220を出た後、典型的には約350℃の温度の蒸気は、1つ以上の消費体に導かれ得る。消費体は、例えば、いくつかの工業プロセスにおいて蒸気を直接使用して、又は蒸気タービン発電機を使用して、最初に蒸気を電力に変換し得る。任意選択的に、熱伝達管200及び消費体は、閉回路を形成し、使用済み蒸気は、凝縮されて水になり、熱伝達管200の入口210にポンプで戻される。
【0039】
2つ以上の熱伝達管200を有する熱エネルギー貯蔵装置100では、各入口210は、熱伝達流体のそれ自体の供給源に接続され得、熱伝達流体は、全ての入口210において類似の温度を有し得る。あるいは、2つ以上の熱伝達管200は、第1の熱伝達管200の出口220が第2の熱伝達管200の入口210に接続され、熱伝達流体が2つ以上の熱伝達管を通過してから、熱熱貯蔵装置100を出て、消費体に送られるように、相互接続され得る。
【0040】
熱伝達管200は、ステンレス鋼などの金属から作製され得る。熱伝達管200に使用される材料の重要な特性は、外側の放熱層120と内側の熱伝達流体との間の効率的な熱交換を可能にすることである。熱伝達管200と放熱層120との間の永続的な接触は、管に対して自由に膨張又は収縮する顆粒状材料を使用することによって促進され得る。既に上で説明したように、管材料が導電性である場合、熱伝達管200を電極301、302、303から絶縁するために何らかの形態の電気絶縁が提供されることが重要である。加えて、熱伝達管のアース及びボンディングが提供され得る。
【0041】
好ましくは、熱伝達管200の相互接続部分240のうちの1つ以上は、直線部分230から容易に取り外され得、直線部分210に再び取り付けられ得る。
図2の実施形態と同様に、相互接続部分240が、熱エネルギー貯蔵装置100の本体から突出している場合、相互接続部分240を取り外すことによって、熱伝達管200の水平に置かれた直線部分230への保守及び点検アクセスが可能になる。
【0042】
図4は、追加された断熱材を有する
図2の熱エネルギー貯蔵装置100を示す。下部断熱層410は、熱エネルギー貯蔵装置100が置かれる土壌への熱の損失を防止するのに役立つ。下部断熱層410は、任意の好適な断熱材料から作製され得る。好ましくは、良好な断熱特性及び耐荷重特性を有する安価なバルク材料が使用される。可能な材料としては、砂、石英、軽石、又は火山灰が挙げられるが、これらに限定されない。下部断熱層410は、水などの冷却流体で満たされ得、そうでなければ熱エネルギー貯蔵装置100の下の土壌を暖めていたであろう熱の一部を吸収する、冷却管412を含み得る。冷却管412は、熱伝達管200と類似の材料から作製され得る。好ましくは、冷却管412は、冷たい冷却流体の連続供給を提供するためのポンプに接続される。冷却管412は、熱伝達流体を予熱するために使用され得るように、熱伝達管200の入口210に接続され得る。
【0043】
直接の環境への過剰な熱損失を防止するために、熱エネルギー貯蔵装置100の上部に類似の上部断熱層420が提供され得る。上部断熱層420は、下部断熱層410と同じ又は類似の材料を含み得る。
【0044】
図5は、熱エネルギー貯蔵装置100の異なる実施形態の斜視図を示す。
図4に示される熱エネルギー貯蔵装置100との主な相違は、緩衝層130を備えず、電極層110と放熱層120とが交互に繰り返されたパターンを備えることである。
【0045】
図6は、更に追加された断熱材を有する
図5の熱エネルギー貯蔵装置100を示す。断熱スリーブ500は、熱エネルギー貯蔵装置100の全ての側壁に応用される。多くの容易に入手可能な断熱材料が、この断熱スリーブ500に使用され得る。単なる例として、パーライトは、高温に対するその適合性のために使用され得る。このような断熱スリーブ500を追加する可能性は、
図5の実施形態に限定されず、
図2及び
図4の実施形態などの他の実施形態においても有益であり得る。熱エネルギー貯蔵装置100の側面は、バルク材料の自然な安息角に従って垂直壁を有し得るか、壁がない可能性がある。
【0046】
図7は、熱エネルギー貯蔵装置100の代替の実施形態の斜視図を示す。
図8は、外部断熱層410、420、430が除去された
図7の熱エネルギー貯蔵装置100の一部の拡大図を示す。この実施形態の多くの特徴は、
図2~
図6を参照して上に記載された実施形態における対応する特徴と類似しており、同じ機能を実行する。したがって、このような対応する特徴には同じ参照番号が使用される。
【0047】
図8で明確に観察され得るように、先に記載された実施形態との1つの重要な相違は、異なる層110、120、130、140が、実質的に水平な向きを有することである。このような層状構成の使用は、性能及び/又は構築の容易さの理由から有利であり得るが、本発明は、このような構成に限定されないことに留意されたい。また、層が使用される場合、それらの配向は、図面に示される実質的に垂直又は水平の向きと異なり得る。同様に、層は、様々な厚さ及び異なる形状を有し得る。例えば、異なる層が同心リングとして提供される円筒状熱エネルギー貯蔵装置が提供され得る。
【0048】
図7及び
図8の実施形態では、第1、第2、及び第3の電極、301、302、303は、2つの実質的に水平な電気絶縁層140の間に挟まれている実質的に水平な電極層110内で平行に位置合わせされ、例えば、上で記載された電気絶縁バルク材料のうちの1つで充填されている。これらの電気絶縁層140の重要な機能は、後続の緩衝層130及び放熱層120に導電性材料を使用可能にすることである。緩衝層130及び/又は放熱層120は、同じ材料又は異なる材料から作製され得る。
図2~
図6に記載された実施形態における対応する層120、130についての上記の全ての材料は、この実施形態でも使用され得る。
【0049】
熱エネルギー貯蔵装置の設置面積を低減させるためには、1立方メートル当たりの熱流束が大きいことが望ましい。典型的な非限定的な例では、発熱電極層110における日中と夜間との間の最大温度変動は、約100℃(例えば、700℃と800℃との間の循環)である。放熱層120の主な機能は、消費体へのデューティ出力の昼夜変動を減衰させることである。これは、発熱電極層110における温度スイングを低減することによって達成され得る。
【0050】
この出力デューティスイングを更に低減させるために、又は日中と夜間との間の発熱電極層110における最大温度変動を、例えば400℃まで更に増加させるために、層120、130の一方又は両方が、潜熱の形態でエネルギーを貯蔵し得る相変化材料を含み得る。層の組成が、例えば加熱サイクル中に溶融し、より少ない再生可能エネルギーが生産され、層が冷却される場合に固化することによって、その一部が相を変化させるようなものである場合、より一定の温度緩衝が得られる。これは、消費体の需要が低い期間中に蒸気管の過熱を防止するのに役立つ。
【0051】
相変化材料を使用する場合、それが溶融状態にある場合、層120内で静止したままであることが重要である。これは、例えば、低融点顆粒を非溶融バルク材料(すなわち、熱エネルギー貯蔵装置100の通常の使用中に溶融を回避するのに十分高い溶融温度を有するバルク材料)と混合することによって達成され得る。可能な組み合わせは、マグネシウム(650℃で相変化)と鉄(1538℃で相変化)、若しくは亜鉛(420℃で相変化)とグラファイト(3600℃で相変化)のいずれかの50%-50%混合物、又はアルミニウムマグネシウム共晶と、砂、炭化ケイ素、鉄鉱石、若しくはグラファイトの純粋物若しくは混合物である。非溶融構成要素による完全な封入が達成される場合、又は非溶融粒子が溶融可能材料の溶融及び凝固段階を通して互いに耐荷重接触状態を維持し、低融点相が全ての側面で不透過性層によって取り囲まれている場合、他の層への漏出が防止される。金属を含む相変化材料は、導電性であるが、電気絶縁層140が、電極層110と蒸気管200との間の電気絶縁のために提供される。
【0052】
当業者は、本発明の詳細な記載が、特徴及び手段の特定の組み合わせを各々有する1つ以上の実施形態を参照して示されているが、それらの特徴及び手段の多くが、他の実施形態又は組み合わせにおいて独立して等しく又は同様に応用され得ることを容易に理解するであろう。更に、当業者は、本発明及びその教示が、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、多くの様々な方法で実行され得ることを理解するであろう。
【国際調査報告】