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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】医療器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/29 20060101AFI20240719BHJP
   A61B 17/128 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
A61B17/29
A61B17/128
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506529
(86)(22)【出願日】2022-07-26
(85)【翻訳文提出日】2024-03-29
(86)【国際出願番号】 EP2022070889
(87)【国際公開番号】W WO2023011976
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】102021208392.7
(32)【優先日】2021-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502154016
【氏名又は名称】アエスキュラップ アーゲー
【住所又は居所原語表記】Am Aesculap-Platz, 78532 Tuttlingen Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤナ シューレ
(72)【発明者】
【氏名】ジアン ゾーイング タン
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ロスワイラー
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160GG24
4C160NN15
(57)【要約】
1. 医療器具
2.1
このタイプの医療器具、特に医療用クリップを適用するための医療器具は、固定ハンドル部と、操作されていない静止位置と操作された機能位置との間で固定ハンドル部に対して手動で可動な可動ハンドル部と、係止装置とを備えるハンドル装置と、近位端が係止装置によってハンドル装置に解除可能に係止される細長いシャフトと、シャフトの遠位端に配置され、可動ハンドル部の操作によって開位置と閉位置との間で可動である器具ジョーと、シャフト内で軸方向に可動に案内され、力および運動伝達のために、近位側で可動ハンドル部に協動的に接続され、遠位側で器具ジョーに協動的に接続されている細長いプッシュプル要素と、を有することが知られている。
2.2
本発明によれば、係止装置は、係止を解除するために手動で解除位置へ可動な操作要素と、可動ハンドル部に協動的に接続されるブロック要素であって、可動ハンドル部が機能位置にある場合に、ブロック要素が形状嵌合的に操作要素の移動を阻止するブロック位置へ動かされ、可動ハンドル部が静止位置にある場合に、操作要素の移動が可能である可能位置へ動かされるブロック要素と、を有する。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に医療用クリップを適用するための医療器具(1)であって、
固定ハンドル部(6)と、操作されていない静止位置と操作された機能位置との間で前記固定ハンドル部(6)に対して手で動かすことが可能な可動ハンドル部(7)と、係止装置(8)と、を備えるハンドル装置(2)と、
前記係止装置(8)によって、近位端(9)が前記ハンドル装置(2)に解除可能に係止される細長いシャフト(3)と、
前記シャフト(3)の遠位端(10)に配置され、前記可動ハンドル部(7)の動作によって開位置と閉位置との間で可動である器具ジョー(4)と、
前記シャフト(3)内で軸方向に可動に案内され、力および運動伝達のために、近位側で前記可動ハンドル部(7)に協動的に接続され、遠位側で前記器具ジョー(4)に協動的に接続されている細長いプッシュプル要素(5)と、を有し、
前記係止装置(8)が、
前記係止を解除するために、手で解除位置へ動かすことができる操作要素(13)と、
前記可動ハンドル部(7)に協動的に接続されるブロック要素(14)であって、
前記可動ハンドル部(7)が前記機能位置にあるときに、前記ブロック要素(14)が形状嵌合的に前記操作要素(13)の移動を阻止するブロック位置へ動かされ、
前記可動ハンドル部(7)が前記静止位置にあるときに、前記操作要素(13)の移動が可能である可能位置へ動かされるブロック要素(14)と、
を有することを特徴とする、医療器具(1)。
【請求項2】
前記解除位置にある前記操作要素(13)は、前記ブロック位置への前記ブロック要素(14)の前記移動および/または前記機能位置への前記可動ハンドル部(7)の前記移動を阻止することを特徴とする、
請求項1に記載の医療器具(1)。
【請求項3】
前記ブロック要素(14)は、
前記ハンドル装置(2)に配置された第1のばね要素(31)によって、前記ブロック位置の前記方向にばね荷重が付勢され、
前記シャフト(3)の前記係止状態において、前記シャフト(3)に配置された第2のばね要素(32)によって、前記可能位置の前記方向にばね荷重が付勢され、
前記第2のばね要素(32)は、前記第1のばね要素(31)よりも大きな付勢を生じさせることを特徴とする、
請求項1または2に記載の医療器具(1)。
【請求項4】
前記操作要素(13)が、前記プッシュプル要素(5)の前記半径方向(R)に可動であり、
前記ブロック要素(14)が、前記プッシュプル要素(15)の前記軸方向(A)に可動であることを特徴とする、
先行する請求項の1つに記載の医療器具(1)。
【請求項5】
前記操作要素(13)が、前記解除位置へ押し込み可能な押しボタン(15)であり、
前記ブロック要素(14)が、前記ブロック位置において前記押しボタン(15)の下に少なくとも部分的に滑り込む、直線的に可動なスライド(17)であることを特徴とする、
先行する請求項の1つに記載の医療器具(1)。
【請求項6】
前記可動ハンドル部(7)が、回動ピン(19)を中心として回動可能に前記固定ハンドル部(6)に取り付けられており、
前記ブロック要素(14)が、前記回動ピン(19)と平行に配向され、前記可動ハンドル部(7)の前記端面に設けられた駆動溝(21)と相互作用する駆動ピン(20)を有することを特徴とする、
先行する請求項の1つに記載の医療器具(1)。
【請求項7】
前記可動ハンドル部(7)が、前記ブロック要素(14)を介して、力を伝達するようにおよび運動を伝達するように前記プッシュプル要素(5)の近位端(11)に作用することを特徴とする、
先行する請求項の1つに記載の医療器具(1)。
【請求項8】
前記ブロック要素(14)が、遠位側に配置された支持部(22)を有し、
前記プッシュプル要素(5)の前記近位端(11)が、前記軸方向(A)で前記支持部(22)に支持される、および/または、前記半径方向(R)で形状嵌合的に受容されることを特徴とする、
請求項7に記載の医療器具(1)。
【請求項9】
前記係止装置(8)が、前記軸方向(A)で前記シャフト(3)のノッチ(36)と形状嵌合的に係合し、前記操作要素(13)によって前記ノッチ(36)との係合を解除可能なばね式ラッチ(35)を有することを特徴とする、
先行する請求項の1つに記載の医療器具(1)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療器具、特に医療用クリップを適用するための医療器具であって、固定ハンドル部と、操作されていない静止位置と操作された機能位置との間で固定ハンドル部に対して手で動かすことが可能な可動ハンドル部と、係止装置とを有するハンドル装置と、係止装置によって近位端がハンドル装置に解除可能に係止される細長いシャフトと、シャフトの遠位端に配置され、可動ハンドル部の動作によって開位置と閉位置との間で可動である器具ジョーと、シャフト内で軸方向に可動に案内され、力および動きの伝達のために、近位側で可動ハンドル部に動作可能に接続され、遠位側で器具ジョーに動作可能に接続されている細長いプッシュプル要素と、を有する医療器具に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の医療器具は、EP 0 688 187 B1から知られており、内視鏡的介入で使用される医療用鉗子の形態で提供されている。この公知の鉗子は、固定ハンドル部と可動ハンドル部を有するハンドピースを有する。さらに、この医療用鉗子は、ハンドピースに解除可能に係止される外管の形態をした細長いシャフトを有する。外管内を軸方向に可動に案内されるプルロッドは、その一端が外管の遠位側に取り付けられた鉗子ジョーに動作可能に接続されており、その他端が可動ハンドル部に動作可能に接続されている。外管は、鉗子ジョーおよびプルロッドとともに、ハンドピースから取り外すことができる。これは、特に洗浄と滅菌の目的のためである。
【0003】
本発明の目的は、患者の安全性を向上させる前述のタイプの医療器具を提供することである。
【0004】
この目的は、係止装置が、係止を解除するために手動で解除位置へ動かすことが可能な操作要素と、可動ハンドル部に動作可能に接続されるブロック要素であって、可動ハンドル部が機能位置にあるときに、ブロック要素が操作要素の可動性を形状嵌合的に妨害するブロック位置へ動かされ、可動ハンドル部が静止位置にあるときに、操作要素の可動性が有効となる可能位置へ動かされるブロック要素と、を有することで達成される。本発明による解決策により、医療器具が係止解除されるべきではないときに、係止が誤って解除されてしまうことを防止できる。本発明は、特に器具が操作状態にあるとき、すなわち可動ハンドル部が機能位置にあるときに係止が解除されてしまうと、患者に不利な影響を及ぼす可能性があるという知見に基づくものである。本発明による解決策により、操作機能位置では係止の解除が防止される。このように、器具の使用における不利な影響が回避される。よって、最終的には患者の安全性の向上につながる。可動ハンドル部は、固定ハンドル部に対して静止位置と機能位置との間で回動可能であることが好ましい。あるいは又は加えて、可動ハンドル部は、固定ハンドル部に対して直線的に可動であってもよい。係止装置は固定ハンドル部に一体化されていることが好ましい。係止装置は、シャフトを、ひいてはプッシュプル要素や器具ジョーなどのシャフトに接続されているさらなる部品を、ハンドル装置に解除可能に係止するよう機能する。シャフトは、形状嵌合および/または力嵌合によってハンドル装置に解除可能に接続され、係止装置は、この接続の解除を阻止する、および/またはそれ自体がこの接続を形成することが好ましい。シャフトとハンドル装置との間の前述の接続は、例えば、ねじ込み式接続、差込み式接続、ラッチ式接続、及び/又はクランプ式接続として設計されてよい。シャフトは、好ましくは、その近位端と遠位端との間で直線状に延びている。シャフトは、その少なくとも一部が管状および/または中空円筒であることが好ましい。シャフトは、1つの部品で構成されていてもよいし、複数の部品で構成されていてもよい。開位置では、器具ジョーは開いている。閉位置では、器具ジョーは閉じている。器具ジョーは、2つのジョー部によって形成されており、これらのジョー部は、互いに対して可動であり、閉位置では互いに向かって動かされており、開位置では互いから離反していることが好ましい。器具ジョーは、プッシュプル要素を介して間接的に可動ハンドル部に動作可能に接続されている。可動ハンドル部の機能位置で可動ハンドル部を動かすことにより、器具ジョーが開かれるかまたは閉じられてよいが、後者が好ましい。可動ハンドル部を動かすと、プッシュプル要素は器具ジョーに対してプル動作および/またはプッシュ動作を行ってよいが、後者が好ましい。プル動作の場合、プッシュプル要素はプル要素として機能する。プッシュ動作の場合、プッシュプル要素はプッシュ要素および/または押しつけ要素として機能する。プッシュプル要素は、その近位端と遠位端との間において、好ましくは、直線状および/またはシャフトと同軸である。プッシュプル要素は、シャフト内で、半径方向に形状嵌合的に案内され、軸方向にスライド移動するように案内されることが好ましい。可動ハンドル部が操作されると、ブロック要素がブロック位置へ動く。ブロック要素の可能位置とブロック位置との間の移動は、回転および/または並進によって行われてよい。操作要素の解除位置への移動は、回転および/または並進によって行われてよい。ブロック位置において、ブロック要素は、好ましくは直接的におよび/または形状嵌合的に、操作要素の解除位置への移動を阻止する。本医療器具は、好ましくは、腹腔鏡手術に使用するために提供される。医療器具は、例えば、好ましくは、医療用の鉗子、クランプ、鋏等の形態をしている。従って、器具ジョーは、例えば、鉗子のジョー、クランプのジョー、または鋏のジョーである。
【0005】
本発明の一実施形態では、解除位置にある操作要素は、ブロック要素のブロック位置への移動および/または可動ハンドル部の機能位置への移動を阻止する。これにより、可動ハンドル部が、操作されるべきでないときに操作されてしまうことが防止される。本発明のこの実施形態は、操作要素が解除位置にあるとき、すなわちシャフトの係止が解除されているときに可動ハンドル部が操作されてしまうと、患者に不利な影響を及ぼす可能性があるという知見に基づくものである。本発明のこの実施形態では、係止が解除されている間は可動ハンドル部の動きが禁止される。このようにして、医療器具の使用における更なる不利な影響が回避される。これにより、操作要素がその解除位置でブロックされてしまうことも防止される。これは最終的に、患者の安全性をさらに向上させることにつながる。ブロック要素および/または可動ハンドル部の移動の阻止は、好ましくは、操作要素によって形状嵌合的におよび/または直接的に行われる。
【0006】
本発明のさらなる実施形態において、ブロック要素は、ハンドル装置に配置された第1のばね要素によってブロック位置の方向にばね荷重が付勢され、シャフトが係止された状態では、シャフトに配置された第2のばね要素によって可能位置の方向にばね荷重が付勢され、第2のばね要素は第1のばね要素よりも大きな付勢を生じさせる。この特に好ましい本発明の実施形態は、さらなる利点をもたらす。さらなる説明のために、医療器具の第1の構成と第2の構成とを区別する。第1の構成では、シャフトが、したがってプッシュプル要素および器具ジョーも、ハンドル装置に取り付けられている、すなわちハンドル装置に接続されている、および/またはハンドル装置に係止されている。第2の構成では、シャフトが、したがってプッシュプル要素および器具ジョーも、ハンドル装置から分離されている、すなわち第1の構成における前述の接続および/または係止が解除されている。第1の構成は組立状態とも称される。第2の構成は分解状態とも称される。組立状態では、第1のばね要素と第2のばね要素の両方がブロック要素に作用する。第1のばね要素と第2のばね要素は反対方向に作用し、第2のばね要素は第1のばね要素よりも強い。したがって、大きい方の付勢によって、組立状態では、ブロック要素はばね付勢によって可能位置へ動かされている。これは、可動ハンドル部が、静止位置にあり且つブロック要素に付加的に作用していない場合である。分解状態では、第2のばね要素はシャフトと一緒に、ハンドル装置から分離されているので、ブロック要素は可能位置へ向けて付勢されていない。このように、ブロック要素は、第1のばね要素の作用下ではブロック位置へ動かされている。ブロック要素が可動ハンドル部と作動的に接続されていることにより、可動ハンドル部は、好ましくは、同時に機能位置へ動かされる。その結果、分解状態では、操作要素は常にブロックされる。これにより、シャフトが取り外されている間に操作要素を動かすことができないということが保証される。この実施形態は、シャフトが取り外されている間に操作要素が望まず動いてしまう、および/または、誤って動いてしまうと、不利な影響があるという知見に基づいている。これらの不利な影響は、本発明のこの実施形態によって排除される。このように、患者の安全性がさらに向上する。第1のばね要素はハンドル装置に組み込まれていることが好ましい。第2のばね要素はシャフトに配置されている。一実施形態では、第1のばね要素および/または第2のばね要素は、ブロック要素に直接作用する。さらなる実施形態では、第1のばね要素および/または第2のばね要素は、ブロック要素に間接的に作用する。例えば、第1のばね要素は、可動ハンドル部を介して間接的にブロック要素に作用してよい。第2のばね要素は、例えば、プッシュプル要素を介して間接的にブロック要素に作用してよい。
【0007】
本発明のさらなる実施形態では、操作要素はプッシュプル要素の半径方向に可動であり、ブロック要素はプッシュプル要素の軸方向に可動である。これには特に設計上の利点がある。一方、ブロック要素のブロック機能は、設計上とても簡単に実現することができる。例えば、ブロック要素は、操作要素の半径方向移動を阻止するために、操作要素の下で、操作要素の上で、または操作要素に対して押圧されてよい。このようにして得られるブロックは、特に堅牢である。ブロック要素および/または可動ハンドル部の移動が操作要素によってもされる場合、操作要素は、プッシュプル要素の軸方向移動において、プッシュプル要素の前方または後方に動かされてよい。これは半径方向外側または内側であり得る。
【0008】
本発明のさらなる実施形態において、操作要素は、解除位置へと押し込み可能な押しボタンであり、ブロック要素は、直線的に可動なスライドであり、ブロック位置では、少なくとも部分的に押しボタンの下に押し込まれている。本発明のこの実施形態は、設計上、特に実施が容易である。同時に、操作要素の移動を特に強固に阻止することができる。解除位置において、押しボタンは、スライドの前方で少なくとも部分的に押し込まれている。これにより、スライドの移動、ひいてはスライドと協動するように接続された可動ハンドル部の移動を簡単かつ強固に阻止することができる。押しボタンは、第3のばね要素とも称されるさらなるばね要素によって、解除位置への移動とは反対にばね荷重が付勢されてよいことが好ましい。一実施形態では、押しボタンはプッシュプル要素の半径方向に可動である。さらなる実施形態では、押しボタンはプッシュプル要素の軸方向に可動である。同じことが、スライドの動きにも準用される。押しボタンおよび/またはスライドは、固定ハンドル部に可動に取り付けられていることが好ましい。
【0009】
本発明のさらなる実施形態では、可動ハンドル部は、回動ピンを中心に回動可能に固定ハンドル部に取り付けられており、ブロック要素は、回動ピンと平行に配向され、可動ハンドル部の端面に設けられた駆動溝と相互作用する駆動ピンを有する。このように、設計上特にシンプルであり、また特に頑丈でもある動作接続が可動ハンドル部とブロック要素との間に形成される。この動作接続は、可動ハンドル部とブロック要素との間で力と動きを伝達する役割を果たす。回動ピンおよび/または駆動ピンは、対応する構造部品の形態で空間的かつ物理的に存在してもよいし、または幾何学的な意味での軸であってもよい。駆動ピンは、プッシュプル要素の軸方向で、形状嵌合的に駆動溝と係合する、及び/又は可動ハンドル部の回動ピンに関して形状嵌合的に係合することが好ましい。駆動ピンは、その周方向に摺動可能に駆動溝に受容されることが好ましい。
【0010】
本発明のさらなる実施形態では、可動ハンドル部は、ブロック要素を介して、力および動きを伝達するようにプッシュプル要素の近位端に作用する。従って、本発明のこの実施形態では、ブロック要素は、特に有利な複数の機能を有する。一方では、ブロック要素は、前述のように操作要素の移動を阻止するよう機能する。他方では、ブロック要素は、可動ハンドル部とプッシュプル要素との間の機械的伝達要素としても機能する。これにより、設計をさらに簡素化することができる。可動ハンドル部は、ブロック要素によってのみプッシュプル要素に協動的に接続されていることが好ましい。
【0011】
本発明のさらなる実施形態において、ブロック要素は、遠位側に配置された支持部を有し、支持部において、プッシュプル要素の近位端が軸方向で支持される、および/または半径方向で形状嵌合的に受容される。軸方向での支持によって、力と動きがプッシュプル要素へ有利に伝達される。半径方向での形状嵌合によって、プッシュプル要素がより良く案内される。支持部は、例えば凹部または突起の形態をした形状嵌合プロファイルを有しており、このプロファイルは、プッシュプル要素の近位端と解除可能に軸方向に一緒に差し込まれ、半径方向の形状嵌合を形成することが好ましい。
【0012】
本発明のさらなる実施形態では、係止装置は、ばね荷重が付勢されたラッチを有しており、このラッチは、シャフトの切欠きと軸方向で形状嵌合的に係合し、操作要素によって切欠きとの係合を解除することができる。本発明のこの実施形態では、係止は解除可能なラッチ-切欠き接続として実現される。ラッチは、操作要素に動作可能に接続されている。一実施形態では、ラッチは、操作要素とは別体であり、力および動きを伝達するために操作要素に接続される構造部として具現化される。別の実施形態では、ラッチは、操作要素の一部であり、操作要素と一体化されている。切欠きは、シャフトの近位端に設けられている。切欠きは、好ましくは、シャフトの周方向に延びる窪みとして、例えば環状溝として設計されている。操作要素の解除位置では、ラッチは切欠きと係合していない。それ以外では、ラッチは切欠きと係合している。ラッチの係合動作および/または係合解除動作は、好ましくは、シャフトおよび/またはプッシュプル要素の半径方向で行われる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明のさらなる利点および特徴は、特許請求の範囲および図面に示される本発明の好ましい例示的実施形態の以下の説明から明らかになるであろう。
図1】ハンドル装置と、ハンドル装置に着脱可能に取り付けられたシャフトと、シャフトの遠位側に取り付けられた器具ジョーとを有する本発明による医療器具の一実施形態の概略側面図を示す。
図2】器具ジョーの範囲におけるシャフトの詳細を示す概略部分側面図であり、個々のコンポーネントおよび/または部分は省略されている。
図3】ハンドル装置の範囲における図1の医療器具の概略部分縦断面図を示す。
図4図1から図3の医療器具のハンドル装置の縦断面斜視図である。
図5】ハンドル装置に関するブロック要素の概略斜視図である。
図6】ハンドル装置の範囲における医療器具の部分概略縦断面図であり、ハンドル装置の可動ハンドル部が操作されていない静止位置(図6)および操作された機能位置(図7)にある。
図7】ハンドル装置の範囲における医療器具の部分概略縦断面図であり、ハンドル装置の可動ハンドル部が操作されていない静止位置(図6)および操作された機能位置(図7)にある。
図8】ハンドル装置へのシャフトの組み付け/ハンドル装置からのシャフトの分離を説明するために、図6および図7に対応する図で、異なる構成の医療器具を示す。
図9】ハンドル装置へのシャフトの組み付け/ハンドル装置からのシャフトの分離を説明するために、図6および図7に対応する図で、異なる構成の医療器具を示す。
図10】ハンドル装置へのシャフトの組み付け/ハンドル装置からのシャフトの分離を説明するために、図6および図7に対応する図で、異なる構成の医療器具を示す。
【0014】
図1によると、腹腔鏡手術に使用される医療器具が提供されている。本例では、医療器具は医療用鉗子1の形態をしている。医療用鉗子1は、医療用クリップを適用するために使用されるので、医療用クリップアプリケータとも称される。
【0015】
医療用鉗子1は、ハンドル装置2と、細長いシャフト3と、鉗子ジョー4の形態をした器具ジョーと、プッシュプル要素5とを有する。
【0016】
ハンドル装置2は、固定ハンドル部6と、可動ハンドル部7と、係止装置8とを有する。可動ハンドル部7は、操作されていない静止位置(図1図3および図6を参照)と操作された機能位置(図7を参照)との間で、固定ハンドル部6に対して手動で動かされることが可能である。
【0017】
シャフト3は、近位端9と遠位端10との間で延びている。図1に示される構成では、医療用鉗子1は使用される準備が整った組立状態にある。この組立状態では、シャフト3は、鉗子ジョー4およびプッシュプル要素5と共に、ハンドル装置2に取り付けられている。シャフト3の近位端9は、さらに詳細に後述されるように、係止装置8によってハンドル装置2に解除可能に係止される。医療用鉗子1は、ハンドル装置2が医療用鉗子1の残りのコンポーネントから分離された分解状態へ移行可能である。この目的ために、前述の係止は、より詳細に後述されるように、解除可能となっている。
【0018】
鉗子ジョー4は、可動ハンドル部7の作動によって、閉位置(図1)と開位置(図2)との間で動くことができる。したがって、鉗子ジョー4と可動ハンドル部7は、力および動きの伝達のために、互いに協動的に接続されている。
【0019】
前述の協動接続は、プッシュプル要素5によって確立される。プッシュプル要素5は、近位端11(図3)と遠位端12(図2)との間で延びている。近位端11は、可動ハンドル部7に協動的に接続されている。遠位端12は、鉗子ジョー4に協動的に接続されている。プッシュプル要素5は、シャフト3内を軸方向に移動可能に案内される。図示の実施形態では、シャフト3とプッシュプル要素5は、互いに同軸に配向されている。
【0020】
係止を解除するために、係止装置8は操作要素13を有する。操作要素13は、操作されていない静止位置(特に図1図3図4)と操作された解除位置(図面には詳細に示されていない)との間で手動で動かされることが可能である。操作要素13が静止位置にあるときは、係止が有効である。操作要素13が解除位置にあるときは、係止が解除されているか、あるいはキャンセルされている。係止が解除されると、分解のために、ハンドル装置2とシャフト3を互いから分離することができる。
【0021】
医療用鉗子1が係止解除されるべきではないときに係止が解除されてしまうのを避けるために、係止装置8はブロック要素14(図3参照)を有する。ブロック要素14は、可動ハンドル部7に協動的に接続されている。換言すれば、ブロック要素14は、可動ハンドル部7の動きに応じて動くことが可能である、および/またはその逆である。可動ハンドル部7が静止位置にあるとき、ブロック要素14は可能位置をとる(図3および図6参照)。可動ハンドル部7が機能位置にあるとき、ブロック要素14はブロック位置をとる(図7)。ブロック位置において、ブロック要素14は、操作要素13の解除位置への移動を形状嵌合的に阻止する。可能位置において、ブロック要素14は操作要素の移動に影響を及ぼさず、操作要素は移動可能である。これにより、医療用鉗子1が操作されている状態で係止が解除されてしまう事態が防止される。
【0022】
医療用鉗子1のさらなる構造的および機能的特徴について、以下により詳細に説明する。以下に説明する特徴は、有利なものとみなされる。しかしながら、本発明の観点から、以下に説明する特徴は必須ではない。
【0023】
図示の実施形態では、操作要素13はプッシュプル要素5の半径方向Rに動くことができる。ブロック要素14はプッシュプル要素5の軸方向Aに動くことができる。図示の実施形態ではシャフト3とプッシュプル要素5が互いに同軸に配向されているので、シャフト3の半径方向Rおよび軸方向Aと言うこともできる。不図示の実施形態では、操作要素の動きとブロック要素の動きは異なっていてもよい。例えば、ブロック要素が半径方向に動くことができ、操作要素が軸方向に動くことができてもよい。
【0024】
操作要素13は、操作されていない静止位置では半径方向外側に動かされており、操作された解除位置では半径方向内側に動かされている。ブロック要素14は、可能位置では軸方向後方(近位側)へ動かされており、ブロック位置では軸方向前方(遠位側)へ動かれされている。対照的に、不図示の実施形態では、解除位置は、半径方向外側へ変位した操作要素の位置である。これに応じて、ブロック位置は、近位側へ変位したブロック要素の位置であってよい。
【0025】
図示の実施形態では、ブロック位置にあるブロック要素14は、少なくとも部分的に操作要素13の下に滑り込んでいるので、操作要素13を半径方向R内側に向かって動かすことができない(図7)。従って、操作要素13の形状嵌合ブロックは半径方向Rに作用する。
【0026】
本例では、操作要素13は、解除位置に向かって半径方向に押し込み可能な押しボタン15である。押しボタン15は、ハンドル装置2の上面に設けられている。押しボタン15は、ハンドル装置2の受容凹部16に受容されている。押しボタン15は、半径方向Rに動くことができ、それに垂直に、受容凹部16内で形状嵌合的に案内される。
【0027】
図示の実施形態では、ブロック要素14は直線的に可動なスライド17である。スライド17は、この目的のためにハンドル装置2に設けられたさらなる受容凹部18に受容されている。
【0028】
本例では、操作要素13とブロック部14の両方が、固定ハンドル部6に可動に取り付けられている。
【0029】
可動ハンドル部7とブロック要素14との間の協動接続は、原則として、様々な方法で具体化されてよい。図示の実施形態では、可動ハンドル部7は、回動ピン19を中心として回動可能に固定ハンドル部6に取り付けられており、ブロック要素14は、回動ピン19と平行に配向され、可動ハンドル部7の端面に設けられた駆動溝21と相互作用する駆動ピン20を有する。機能位置では、可動ハンドル部7は回動ピン19を中心に回動して固定ハンドル部6に近づくように動かされている。可能位置では、可動ハンドル部7は、回動ピン19を中心として固定ハンドル部6から遠ざかるように動かされている。回動ピン19は、軸方向Aおよび半径方向Rに直交するように配向されている。言い換えれば、回動ピン19は、ハンドル装置2および/またはシャフト3の横軸(詳細には図示せず)に平行に配向されている。同じことが、回動ピン19に平行に配向されているブロック要素14の駆動ピン20に関しても言える。駆動溝21と駆動ピン20は、駆動ピン20の周方向の摺動運動で相互作用する。ブロック要素14は、軸方向Aに摺動可能であり、半径方向Rでさらなる受容凹部18内に形状嵌合的に保持される。このように、ハンドル部7が機能位置の方向へ回動することによって、ブロック要素14が遠位方向へ直線的に動かされる。
【0030】
図示の実施形態では、可動ハンドル部7は、力および動きの伝達のために、ブロック要素14のみによってプッシュプル要素5に協動的に接続されている。従って、図示の実施形態におけるブロック要素14は、特に有利な複数の機能を有する。一方では、ブロック要素14は、既に説明したように、操作要素13をブロックするように機能する。他方では、ブロック要素14は、可動ハンドル部7の操作動作および/または操作力をプッシュプル要素5へ、ひいては鉗子ジョー4へ伝達するための機械的伝達要素としても機能する。
【0031】
プッシュプル要素5との協動接続のために、ブロック要素14は遠位側に配置された支持部22を有する(図5)。プッシュプル要素5の近位端11は、軸方向Aで支持部22に支持される。本例では、近位端11はさらに、半径方向Rで支持部22に形状嵌合的に受容される。この目的のために、支持部22は、ブロック要素14の遠位端面から近位方向に延びる凹部23を有する。近位端11は、近位方向で凹部23内へ着脱可能に差し込まれる。
【0032】
本実施形態のブロック要素14のさらなる特徴が図5に示されている。本例のブロック要素14は、遠位側の支持部22と近位端面(詳細には図示せず)との間を軸方向Aに沿って延びる円筒状の本体24を有する。本体24は、上面と下面との間を半径方向Rに連続して延びる切欠き25を有する。駆動溝21が設けられている可動ハンドル部7の上端面は、半径方向Rで切欠き25と係合し、横方向で本体24の互いに対向する側壁26の間に配置される。操作要素13を形状嵌合ブロックするために、ブロック要素14はブロック部27を有する。ブロック部27は、形状嵌合部とも称される。ブロック部27は、本体24から遠位方向に突出している。本例では、ブロック部27は、遠位方向に突出するブロックフィンガー28である。ブロック位置において、ブロック部27は操作要素13の下側から係合し、操作要素13の解除位置への移動を阻止する。駆動ピン20は、本体24および/または切欠き25を突き抜けて横方向に延びる。
【0033】
図示の実施形態では、ブロック要素14は、プラスチック材料から一部品として製造されている。あるいは、ブロック要素は、金属から製造されてもよい、および/または、複数の部品として製造されてもよい。
【0034】
例えば、図3および図4から、操作要素13が半径方向内側へ変位された解除位置にあるとき、ブロック要素14の移動が阻止される、したがって可動ハンドル部7の移動も阻止されることが分かる。これは、ブロック要素14が遠位方向へ移動できないように、解除位置(詳細には図示せず)では操作要素13が半径方向内側へ変位されているからである。解除位置では、操作要素13の外周30が、ブロック要素14、より正確にはブロック部27の端面29のための停止部として機能する。従って、操作要素13も、特に有利な複数の機能を有する。一方では、操作要素13は、係止を解除するために係止装置8を作動するように機能する。他方では、操作要素13は、ブロック要素14の移動、したがって可動ハンドル部7の移動も形状嵌合的に阻止するための(さらなる)ブロック要素としても機能する。これにより、操作要素13が操作されているとき、すなわち係止が解除されているときには、可動ハンドル部7を動かすことができない。
【0035】
図示の実施形態では、ブロック要素14は、ハンドル装置2に配置された第1のばね要素31によってブロック位置の方向へばね荷重が付勢されている。この付勢に起因して、医療用鉗子1が解体された分解状態(図8参照)では、ブロック要素14が常にブロック位置へ変位されている。ブロック要素14との協動接続が存在することによって、可動ハンドル部7は、第1のばね要素31によって間接的にばね荷重が付勢されている。この付勢は、機能位置の方向に作用する。したがって、分解状態では、可動ハンドル部7は常に機能位置へ変位されている(図8参照)。第1のばね要素31は、ブロック要素14に対して軸方向Aに作用する。第1のばね要素31は、近位方向で固定ハンドル部6に支持されており、遠位方向でブロック要素14の近位端面(詳細には図示せず)に支持されている。図示の実施形態では、第1のばね要素31は圧縮ばねである。ばね要素31は螺旋ばねとして設計されている。
【0036】
完全を期すために、ブロック要素14および可動ハンドル部7への付勢は、図4の図面では実施されていないことに留意されたい。換言すれば、当該図面の可動ハンドル部7は、第1のばね要素31の付勢に抗して静止位置で固定されている。同じことがブロック要素14にも準用される。
【0037】
第1のばね要素31による前述の付勢によって、分解状態では、操作要素13の解除位置への変位が防止される。これにより、以下でさらに詳細に説明されるように、ハンドル装置2へのシャフト3の正しい組み付けがサポートされる。
【0038】
シャフト3とハンドル装置2が互いに接続されているとき、すなわち医療用鉗子1が組立状態にあるとき(図1図3図6、および図7)には、第1のばね要素31に加えて、第2のばね要素32もブロック要素14に作用する。第2のばね要素32(図2)は、ブロック要素14に対して可能位置の方向へばね荷重の付勢を生じさせる。ここで、第2のばね要素32は、第1のばね要素31よりも強い、すなわち、第1のばね要素31よりも大きな付勢を生じさせる。換言すれば、ブロック要素14は、主に可能位置の方向へ付勢されている。このように、組立状態におけるブロック要素14は、可動ハンドル部7が操作されていない場合は、常に可能位置へ変位されている。ブロック要素14との協動接続に起因して、可動ハンドル部7は、第2のばね要素32によって間接的にばね荷重が付勢されている。この付勢は、静止位置の方向に作用する。第1のばね要素31によっても付勢されているにもかかわらず、このようになる。
【0039】
第2のばね要素32はシャフト3に配置されている。従って、第2のばね要素32は、シャフト3がハンドル装置2に取り付けられているときにのみ、ブロック要素14に作用する。
【0040】
図示の実施形態では、第2のばね要素32は、プッシュプル要素5のための復元ばねとしても機能する。第2のばね要素32は、プッシュプル要素5を介して間接的にブロック要素14に作用する。第2のばね要素32はシャフト3の遠位端10に配置されている。第2のばね要素32は、軸方向Aでプッシュプル要素5に作用する、したがってブロック要素14にも作用する。第2のばね要素32は、近位方向でプッシュプル要素の遠位端12に支持されている。この支持は、直接的であってもよいし、間接的であってもよい。第2のばね要素32は、遠位方向で鉗子ジョー4に関連する構造部(詳細には図示せず)に支持されている。鉗子ジョー4の設計詳細は、第2のばね要素32の機能に関しては重要ではないので、これに関するさらなる説明は省略する。本例では、第2のばね要素32は圧縮ばねである。第2のばね要素32は螺旋ばねとして設計されている。
【0041】
図2にさらに示されるように、図示の実施形態の鉗子ジョー4は、第1のジョー部33と第2のジョー部34で形成されている。開位置(図2)では、第1のジョー部33と第2のジョー部34は互いから遠ざかるように動かされており、閉位置(図1)では、2つのジョー部33、34は互いに近づくように動かされている。
【0042】
鉗子ジョー4は、プッシュプル要素の作用下で、当業者に周知の方法で開閉される。本例では、プッシュプル要素5の遠位方向移動によって、鉗子ジョー4が閉じられる。プッシュプル要素の近位方向移動によって、鉗子ジョー4が開かれる。これに関するさらなる説明は、本発明に関しては必要ない。
【0043】
シャフト3をハンドル装置2に係止するために、図示の実施形態の係止装置8は、ばね式ラッチ35を有する。ラッチ35との相互作用のために、シャフト3はその近位端9にノッチ36を有する。組立状態でかつ操作要素13が操作されていない静止位置にあるときには、ラッチ35は、軸方向Aでノッチ36に形状嵌合的に係合する。操作要素13を操作することによって、ラッチ35が半径方向Rでノッチ36と係合解除される。本例では、ラッチ35は、ばねによって半径方向R内側に向かって付勢されている。この目的のために、第3のばね要素37が存在する。第3のばね要素37は、ラッチ35を介して間接的に操作要素13に作用する。操作要素13は、第3のばね要素37によって、解除位置への移動とは反対方向に付勢されている。
【0044】
図示の実施形態では、ノッチ36はシャフト3の周方向に延びる環状溝39である。環状溝39はシャフト3の近位端11に形成されている。さらに、ラッチ35は、プッシュプル要素5が通る貫通孔38を有する。
【0045】
前述の係止、より正確には、ラッチ35とノッチ36との間のラッチ-ノッチ接続によって、ハンドル装置3からシャフト3が望まず脱離してしまうことが防止され、その逆もまた同様である。シャフト3との接続のために、本例のハンドル装置2は、遠位側に配置された外側コーン40を有しており、外側コーン40は、受容孔41を有する。ハンドル装置2との接続のために、シャフト3は内側コーン42を有する。組立状態において、外側コーン40と内側コーン42は、軸方向で着脱可能に互いに対して差し込まれている。こうして形成される差し込み接続は、係止装置8によって解除可能に係止される。
【0046】
図示の実施形態では、シャフト3は、複数の部品から構成されており、シャフトチューブ43と、シャフト取付部44と、シャフト延在部45とを有する(図3)。シャフトチューブ43、シャフト取付部44およびシャフト延在部45は、当業者に公知の方法で互いに連結される。本例では、内側コーン42はシャフト取付部44に形成されている。ノッチ36はシャフト延在部45に形成されている。組立状態において、シャフト延在部45は、受容孔41に挿入されて、貫通孔38を貫通している。シャフト3のこの設計は一例として示されているものであり、本発明の観点からは必須ではないことが理解されよう。実際、シャフトが一部品で設計されることも原理的には可能である。
【0047】
医療用鉗子1の機能について、図6から図10を参照して以下に詳細に説明する。特に、ブロック要素14の機能と、ブロック要素14と医療用鉗子1の他のコンポーネントとの相互作用について説明する。まず、組立状態について説明する(図6および図7)。その後、組立/分解について説明する(図8、9、10)。
【0048】
図6は、組立状態であり、非操作構成とも称される第1の構成の医療用鉗子1を示している。第1の構成では、可動ハンドル部7は静止位置にある。第2のばね要素32は、プッシュプル要素5を介して、ブロック要素14に対して近位方向に作用している。第1のばね要素31は、ブロック要素14に対して遠位方向に作用している。第2のばね要素32のばね力は第1のばね要素31のばね力よりも大きいので、ばね荷重の付勢は主に近位方向に作用している。したがって、ブロック要素14は可能位置へ変位/付勢されている。可動ハンドル部7は、静止位置へ変位/付勢されている。係止は有効である。ここで、ラッチ35は、第3のばね要素37によってノッチ36内に配置されている。第3のばね要素37は、間接的に、すなわちラッチ35を介して、解除位置への移動とは反対方向に操作要素13を付勢している。
【0049】
第1の構成から、操作要素13を解除位置へ移動させることができる。これにより、ラッチ35は、半径方向R外側へと動かされ、ノッチ36から抜け出る。こうして、係止が解除される。その後、シャフト3を、遠位方向にハンドル装置2から引き離すことができる。このようにして、医療用鉗子1は、分解される、および/または分解状態へ移行する(図8)。
【0050】
分解状態(図8)は、第3の構成とも称される。この第3の構成では、第1のばね要素31が、ブロック要素14をブロック位置へ変位させている。それに応じて、可動ハンドル部7が機能位置へと動かされている。操作要素13の移動は、ブロック要素14によって形状嵌合的に阻止されている。
【0051】
第3の構成(図8)から、シャフトをハンドル装置2に再び取り付けることができる。このような取付けは、図9図10に示されている。シャフト3を取り付けるために、シャフト3の近位端9が軸方向でハンドル装置2に差し込まれる。このようにして、外側コーン40と内側コーン42との間の上述の差込み接続が生じる。
【0052】
図9は、第3の構成からシャフト3とハンドル装置2が部分的に差し込まれた第4の構成を示している。この第4の構成では、シャフト延在部45は、プッシュプル要素5と共に、近位方向で受容孔41に差し込まれている。ラッチ35とノッチ36との間のラッチ-ノッチ接続はまだ確立されていない。従って、(部分的な)差し込み接続はまだ係止されていない。プッシュプル要素5の近位端11は、すでに支持部22に受容されている。
【0053】
図10は、シャフト3とハンドル装置2がさらに差し込まれた第5の構成を示している。ここで、シャフト3は、プッシュプル要素5と共に、ハンドル装置2に対して近位方向にさらに動かされている。このように、ブロック要素14は、プッシュプル要素5の近位端11の作用下で、近位方向へ、すなわち可能位置の方向へと押圧されている。それに応じて、可動ハンドル部7は、既にその静止位置の方向へ部分的に動かされている。操作要素13は、相変わらず、ブロック要素14によって形状嵌合的に阻止されている。ラッチ35は、まだノッチ36内に配置されていない。
【0054】
シャフト3とハンドル装置2をさらに差し込むことにより、第5の構成から第1の構成(図6)、すなわち組立状態となる。
【0055】
組立状態および/または第1の構成において、鉗子ジョー4を開くおよび/または閉じるために、医療用鉗子1が操作されてよい(図7、第2の構成)。本例では、可動ハンドル部7を静止位置から機能位置へ動かすことにより、鉗子ジョー4が閉じられる。可動ハンドル部7を固定ハンドル部6に向かって引くと、可動ハンドル部7が回動ピン19を中心として反時計回りに動く。つまり、駆動溝21と駆動ピン20との相互作用によって、ブロック要素14が同時に遠位方向へ動くということである。このように、一方では、解除位置の方向への操作要素13の移動が形状嵌合的に阻止される。他方では、ブロック要素14がプッシュプル要素5を遠位方向へ押圧する。このようにして、プッシュプル要素5は、シャフト3およびシャフト3の遠位側に取り付けられた鉗子ジョー4に対して軸方向に動かされる。遠位端12が、力および動きを伝達するように鉗子ジョー4に作用し、その結果、鉗子ジョー4が閉じる。プッシュプル要素5は、第2のばね要素32のばね力に抗して遠位方向へ軸方向移動する。可動ハンドル部7の操作が止まると、第2のばね要素32は、プッシュプル要素5を近位方向へ復帰するよう動かし、鉗子ジョー4が開き、ブロック要素14が可能位置へ動き、可動ハンドル部7が静止位置へ動く。そして、再び第1の構成となる。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2024-05-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に医療用クリップを適用するための医療器具(1)であって、
固定ハンドル部(6)と、操作されていない静止位置と操作された機能位置との間で前記固定ハンドル部(6)に対して手で動かすことが可能な可動ハンドル部(7)と、係止装置(8)と、を備えるハンドル装置(2)と、
前記係止装置(8)によって、近位端(9)が前記ハンドル装置(2)に解除可能に係止される細長いシャフト(3)と、
前記シャフト(3)の遠位端(10)に配置され、前記可動ハンドル部(7)の動作によって開位置と閉位置との間で可動である器具ジョー(4)と、
前記シャフト(3)内で軸方向に可動に案内され、力および運動伝達のために、近位側で前記可動ハンドル部(7)に協動的に接続され、遠位側で前記器具ジョー(4)に協動的に接続されている細長いプッシュプル要素(5)と、を有し、
前記係止装置(8)が、
前記係止を解除するために、手で解除位置へ動かすことができる操作要素(13)と、
前記可動ハンドル部(7)に協動的に接続されるブロック要素(14)であって、
前記可動ハンドル部(7)が前記機能位置にあるときに、前記ブロック要素(14)が形状嵌合的に前記操作要素(13)の移動を阻止するブロック位置へ動かされ、
前記可動ハンドル部(7)が前記静止位置にあるときに、前記操作要素(13)の移動が可能である可能位置へ動かされるブロック要素(14)と、
を有することを特徴とする、医療器具(1)。
【請求項2】
前記解除位置にある前記操作要素(13)は、前記ブロック位置への前記ブロック要素(14)の前記移動および/または前記機能位置への前記可動ハンドル部(7)の前記移動を阻止することを特徴とする、
請求項1に記載の医療器具(1)。
【請求項3】
前記ブロック要素(14)は、
前記ハンドル装置(2)に配置された第1のばね要素(31)によって、前記ブロック位置の前記方向にばね荷重が付勢され、
前記シャフト(3)の前記係止状態において、前記シャフト(3)に配置された第2のばね要素(32)によって、前記可能位置の前記方向にばね荷重が付勢され、
前記第2のばね要素(32)は、前記第1のばね要素(31)よりも大きな付勢を生じさせることを特徴とする、
請求項1または2に記載の医療器具(1)。
【請求項4】
前記操作要素(13)が、前記プッシュプル要素(5)の前記半径方向(R)に可動であり、
前記ブロック要素(14)が、前記プッシュプル要素(15)の前記軸方向(A)に可動であることを特徴とする、
項1に記載の医療器具(1)。
【請求項5】
前記操作要素(13)が、前記解除位置へ押し込み可能な押しボタン(15)であり、
前記ブロック要素(14)が、前記ブロック位置において前記押しボタン(15)の下に少なくとも部分的に滑り込む、直線的に可動なスライド(17)であることを特徴とする、
項4に記載の医療器具(1)。
【請求項6】
前記可動ハンドル部(7)が、回動ピン(19)を中心として回動可能に前記固定ハンドル部(6)に取り付けられており、
前記ブロック要素(14)が、前記回動ピン(19)と平行に配向され、前記可動ハンドル部(7)の前記端面に設けられた駆動溝(21)と相互作用する駆動ピン(20)を有することを特徴とする、
項1に記載の医療器具(1)。
【請求項7】
前記可動ハンドル部(7)が、前記ブロック要素(14)を介して、力を伝達するようにおよび運動を伝達するように前記プッシュプル要素(5)の近位端(11)に作用することを特徴とする、
項1に記載の医療器具(1)。
【請求項8】
前記ブロック要素(14)が、遠位側に配置された支持部(22)を有し、
前記プッシュプル要素(5)の前記近位端(11)が、前記軸方向(A)で前記支持部(22)に支持される、および/または、前記半径方向(R)で形状嵌合的に受容されることを特徴とする、
請求項7に記載の医療器具(1)。
【請求項9】
前記係止装置(8)が、前記軸方向(A)で前記シャフト(3)のノッチ(36)と形状嵌合的に係合し、前記操作要素(13)によって前記ノッチ(36)との係合を解除可能なばね式ラッチ(35)を有することを特徴とする、
項1に記載の医療器具(1)。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0055
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0055】
組立状態および/または第1の構成において、鉗子ジョー4を開くおよび/または閉じるために、医療用鉗子1が操作されてよい(図7、第2の構成)。本例では、可動ハンドル部7を静止位置から機能位置へ動かすことにより、鉗子ジョー4が閉じられる。可動ハンドル部7を固定ハンドル部6に向かって引くと、可動ハンドル部7が回動ピン19を中心として反時計回りに動く。つまり、駆動溝21と駆動ピン20との相互作用によって、ブロック要素14が同時に遠位方向へ動くということである。このように、一方では、解除位置の方向への操作要素13の移動が形状嵌合的に阻止される。他方では、ブロック要素14がプッシュプル要素5を遠位方向へ押圧する。このようにして、プッシュプル要素5は、シャフト3およびシャフト3の遠位側に取り付けられた鉗子ジョー4に対して軸方向に動かされる。遠位端12が、力および動きを伝達するように鉗子ジョー4に作用し、その結果、鉗子ジョー4が閉じる。プッシュプル要素5は、第2のばね要素32のばね力に抗して遠位方向へ軸方向移動する。可動ハンドル部7の操作が止まると、第2のばね要素32は、プッシュプル要素5を近位方向へ復帰するよう動かし、鉗子ジョー4が開き、ブロック要素14が可能位置へ動き、可動ハンドル部7が静止位置へ動く。そして、再び第1の構成となる。
下記する項目は、出願当初の特許請求の範囲に記載されていた項目である。
(項目1)
特に医療用クリップを適用するための医療器具(1)であって、
固定ハンドル部(6)と、操作されていない静止位置と操作された機能位置との間で前記固定ハンドル部(6)に対して手で動かすことが可能な可動ハンドル部(7)と、係止装置(8)と、を備えるハンドル装置(2)と、
前記係止装置(8)によって、近位端(9)が前記ハンドル装置(2)に解除可能に係止される細長いシャフト(3)と、
前記シャフト(3)の遠位端(10)に配置され、前記可動ハンドル部(7)の動作によって開位置と閉位置との間で可動である器具ジョー(4)と、
前記シャフト(3)内で軸方向に可動に案内され、力および運動伝達のために、近位側で前記可動ハンドル部(7)に協動的に接続され、遠位側で前記器具ジョー(4)に協動的に接続されている細長いプッシュプル要素(5)と、を有し、
前記係止装置(8)が、
前記係止を解除するために、手で解除位置へ動かすことができる操作要素(13)と、
前記可動ハンドル部(7)に協動的に接続されるブロック要素(14)であって、
前記可動ハンドル部(7)が前記機能位置にあるときに、前記ブロック要素(14)が形状嵌合的に前記操作要素(13)の移動を阻止するブロック位置へ動かされ、
前記可動ハンドル部(7)が前記静止位置にあるときに、前記操作要素(13)の移動が可能である可能位置へ動かされるブロック要素(14)と、
を有することを特徴とする、医療器具(1)。
(項目2)
前記解除位置にある前記操作要素(13)は、前記ブロック位置への前記ブロック要素(14)の前記移動および/または前記機能位置への前記可動ハンドル部(7)の前記移動を阻止することを特徴とする、
項目1に記載の医療器具(1)。
(項目3)
前記ブロック要素(14)は、
前記ハンドル装置(2)に配置された第1のばね要素(31)によって、前記ブロック位置の前記方向にばね荷重が付勢され、
前記シャフト(3)の前記係止状態において、前記シャフト(3)に配置された第2のばね要素(32)によって、前記可能位置の前記方向にばね荷重が付勢され、
前記第2のばね要素(32)は、前記第1のばね要素(31)よりも大きな付勢を生じさせることを特徴とする、
項目1または2に記載の医療器具(1)。
(項目4)
前記操作要素(13)が、前記プッシュプル要素(5)の前記半径方向(R)に可動であり、
前記ブロック要素(14)が、前記プッシュプル要素(15)の前記軸方向(A)に可動であることを特徴とする、
先行する項目の1つに記載の医療器具(1)。
(項目5)
前記操作要素(13)が、前記解除位置へ押し込み可能な押しボタン(15)であり、
前記ブロック要素(14)が、前記ブロック位置において前記押しボタン(15)の下に少なくとも部分的に滑り込む、直線的に可動なスライド(17)であることを特徴とする、
先行する項目の1つに記載の医療器具(1)。
(項目6)
前記可動ハンドル部(7)が、回動ピン(19)を中心として回動可能に前記固定ハンドル部(6)に取り付けられており、
前記ブロック要素(14)が、前記回動ピン(19)と平行に配向され、前記可動ハンドル部(7)の前記端面に設けられた駆動溝(21)と相互作用する駆動ピン(20)を有することを特徴とする、
先行する項目の1つに記載の医療器具(1)。
(項目7)
前記可動ハンドル部(7)が、前記ブロック要素(14)を介して、力を伝達するようにおよび運動を伝達するように前記プッシュプル要素(5)の近位端(11)に作用することを特徴とする、
先行する項目の1つに記載の医療器具(1)。
(項目8)
前記ブロック要素(14)が、遠位側に配置された支持部(22)を有し、
前記プッシュプル要素(5)の前記近位端(11)が、前記軸方向(A)で前記支持部(22)に支持される、および/または、前記半径方向(R)で形状嵌合的に受容されることを特徴とする、
項目7に記載の医療器具(1)。
(項目9)
前記係止装置(8)が、前記軸方向(A)で前記シャフト(3)のノッチ(36)と形状嵌合的に係合し、前記操作要素(13)によって前記ノッチ(36)との係合を解除可能なばね式ラッチ(35)を有することを特徴とする、
先行する項目の1つに記載の医療器具(1)。
【国際調査報告】