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特表2024-528179ポリエステルコポリマーの製造の方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】ポリエステルコポリマーの製造の方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/12 20060101AFI20240719BHJP
   C08G 64/20 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
C08G63/12
C08G64/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506534
(86)(22)【出願日】2022-08-01
(85)【翻訳文提出日】2024-04-01
(86)【国際出願番号】 EP2022071586
(87)【国際公開番号】W WO2023012122
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】21189200.5
(32)【優先日】2021-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517213429
【氏名又は名称】アバンティウム・ナレッジ・センター・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ビン・ワン
(72)【発明者】
【氏名】ゲラルドゥス・ヨハンネス・マリア・グルテル
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト-ヤン・ファン・ピュッテン
【テーマコード(参考)】
4J029
【Fターム(参考)】
4J029AA03
4J029AB04
4J029AC02
4J029AD01
4J029AD07
4J029AE01
4J029BA02
4J029BA03
4J029BA04
4J029BA05
4J029BA10
4J029BD07A
4J029BF08
4J029BF09
4J029BF30
4J029CA04
4J029CB05A
4J029CB06A
4J029CF19
4J029FA01
4J029HA01
4J029HA02
4J029HB01
4J029HB02
4J029JB131
4J029JE162
4J029JF371
4J029KD02
4J029KD07
4J029KE05
4J029KE13
(57)【要約】
ポリエステル(i)を、1種又は複数種のジオール(ii)及び1種又は複数種のジカルボン酸又はその任意のエステル(iii)と同時に反応させることを含む、ポリエステルコポリマーAの製造のための重合方法であって、ポリエステル(i)が、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンフラノエート、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンフラノエートとの混合物、又はポリエチレンテレフタレート-co-フラノエートであり;ポリエステル(i)がポリエチレンテレフタレートである場合、テレフタル酸又はそのエステルは、ジカルボン酸又はそのエステル(iii)として加えられず;1種又は複数種のジオール(ii)が、C3~C18脂肪族ジオールから選択される一級ジオールから選択され;成分(i)及び(ii)が、ポリエステルコポリマーA中のジオール由来モノマー単位の総量に基づいたパーセンテージで、少なくとも40モル%の、出発ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンフラノエート又はポリエチレンテレフタレート-co-フラノエートから誘導されたエチレングリコール、及び、少なくとも5モル%、好ましくは10モル%以上の、前記一級ジオールから誘導されたモノマーを含む、ポリエステルコポリマーAを製造するのに充分な量で使用され;方法が、ポリエステル(i)、1種又は複数種の一級ジオール(ii)及び1種又は複数種のジカルボン酸又はその任意のエステル(iii)を加熱して、融液を形成する工程であって、ポリエステル(i)から誘導されたモノマー単位、1種又は複数種の一級ジオール(ii)から誘導されたモノマー単位、及び1種又は複数種のジカルボン酸又はその任意のエステル(iii)から誘導されたモノマー単位を含み、かつ、PMMA標準を基準物質とするゲル浸透クロマトグラフィーにより測定して16500ダルトン以上の数平均分子量を有するポリエステルAを生成させる工程を含む、ポリエステルコポリマーAの製造のための重合方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル(i)を、1種又は複数種のジオール(ii)及び1種又は複数種のジカルボン酸又はその任意のエステル(iii)と同時に反応させる工程を含む、ポリエステルコポリマーAの製造のための重合方法であって、
前記ポリエステル(i)が、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンフラノエート、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンフラノエートとの混合物、又はポリエチレンテレフタレート-co-フラノエートであり;
前記ポリエステル(i)がポリエチレンテレフタレートである場合、テレフタル酸又はそのエステルは、ジカルボン酸又はそのエステル(iii)として加えられず;
前記1種又は複数種のジオール(ii)が、C3~C18脂肪族ジオールから選択される一級ジオールから選択され;
成分(i)及び(ii)が、ポリエステルコポリマーA中のジオール由来モノマー単位の総量に基づいたパーセンテージで、少なくとも40モル%の、出発ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンフラノエート又はポリエチレンテレフタレート-co-フラノエートから誘導されたエチレングリコール、及び、少なくとも5モル%、好ましくは10モル%以上の、前記一級ジオールから誘導されたモノマーを含む、ポリエステルコポリマーAを製造するのに充分な量で使用され;
前記方法が、前記ポリエステル(i)、前記1種又は複数種の一級ジオール(ii)及び前記1種又は複数種のジカルボン酸又はその任意のエステル(iii)を加熱して、融液を形成する工程であって; 前記ポリエステル(i)から誘導されたモノマー単位、前記1種又は複数種の一級ジオール(ii)から誘導されたモノマー単位、及び前記1種又は複数種のジカルボン酸又はその任意のエステル(iii)から誘導されたモノマー単位を含み、かつ、
PMMA標準を基準物質とするゲル浸透クロマトグラフィーにより測定して16500ダルトン以上の数平均分子量を有する、ポリエステルAを生成させる工程を含む、ポリエステルコポリマーAの製造のための重合方法。
【請求項2】
前記ポリエステル(i)が、ポリエチレンフラノエート又はポリエチレンテレフタレート-co-フラノエートである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1種又は複数種の一級ジオール(ii)が、好ましくはヒドロキシル基が少なくとも非隣接炭素原子に結合している、直鎖、環式又は分岐鎖の飽和C3~C12脂肪族ジオール化合物から選択され、好ましくは、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、及びポリオール、特にC6ポリオールのアセタール、並びに特に2,3:4,5-ジ-O-メチレン-ガラクチトール、2,4:3,5-ジ-O-メチレン-D-マンニトール、2,4:3,5-ジ-O-メチレン-D-グルシトール、2,3:4,5-ジ-O-イソプロピリデン-ガラクチトール、2,4:3,5-ジ-O-イソプロピリデン-D-マンニトール及び2,4:3,5-ジ-O-イソプロピリデン-D-グルシトールから選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記1種又は複数種のジカルボン酸又はその任意のエステル(iii)が、フランジカルボン酸、イソフタル酸、直鎖、環式又は分岐鎖であり得て好ましくは飽和であり得るC2~C18脂肪族ジカルボン酸並びに/又はそれらのモノエステル及び/若しくはジエステルの1種又は複数種から選択され、ポリエステル(i)がポリエチレンフラノエートである場合、前記ジカルボン酸又はその任意のエステル(iii)はテレフタル酸並びに/又はそのモノエステル及び/若しくはジエステルでもあり得る、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
一級ジオール(ii)とジカルボン酸(iii)との組合せが、シクロヘキサンジメタノールとコハク酸との組合せ;及び、フランジカルボン酸又はコハク酸と、1,4-ブタンジオール又は1,6-ヘキサンジオールとの組合せから選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記1種又は複数種の一級ジオール(ii)及び前記1種又は複数種のジカルボン酸又はその任意のエステル(iii)は、前記方法において、ジオールの総和とジカルボン酸又はその任意のエステルの総和とのモル比が1.5:1.0から1.0:1.0で使用される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリエステル(i)、前記1種又は複数種の一級ジオール(ii)及び前記1種又は複数種のジカルボン酸又はその任意のエステル(iii)に加えて、ヒドロキシ基が唯一の反応性官能基である一価アルコールも、前記他の反応物(i)、(ii)及び(iii)の総重量に対して10~100重量%で加えられ、前記一価アルコールが、175℃以上の沸点及び12.0以下7.0以上の酸解離定数(pKa)を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
(a)反応容器内で、前記ポリエステル(i)、前記1種又は複数種の一級ジオール(ii)及び前記1種又は複数種のジカルボン酸又はその任意のエステル(iii)を、特定の温度にて特定の期間、透明な融液が形成するまで加熱する工程;
(b)縮合生成物を1から5barの圧力で除去しながら、エステル化/エステル交換反応を継続する工程;
(c)特定の期間継続して撹拌しながら、工程(b)の前記容器内の圧力を、20mbarより低く、好ましくは10mbarより低く、より好ましくは5mbarより低く、特に1mbarより低い真空に減少させる工程;並びに
任意に、工程(c)の間、温度を10から50℃増加させる工程
を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の方法から得ることができるポリエステルコポリマーA、特に、
ジカルボン酸由来モノマー単位及びジオール由来モノマー単位を1:1の比で含み、
PMMA標準を基準物質とするゲル浸透クロマトグラフィーにより測定して16500ダルトン以上の数平均分子量を有し、
5%以下の結晶性を有するか又は結晶性を有し、
(a)前記ポリエステルコポリマー内のジオール由来モノマー単位の総量に基づいて、10モル%以上から60モル%以下の範囲の1種又は複数種の一級ジオールモノマー単位;
(b)前記ポリエステルコポリマー内のジオール由来モノマー単位の総量に基づいて、40モル%以上から90モル%の以下の範囲のエチレングリコールから誘導されたモノマー単位;
(c)任意に、前記ポリエステルコポリマー内のジオール由来モノマー単位の総量に基づいて、最高で5モル%までのジエチレングリコールから誘導されたモノマー単位;
及び(d1)か(d2)のいずれか:
(d1)前記ポリエステルコポリマー内のジカルボン酸由来モノマー単位の総量に基づいて、40モル%以上から90モル%のテレフタル酸から誘導されたモノマー単位と、前記ジカルボン酸由来モノマー単位の残余のモル%のフランジカルボン酸から誘導されたモノマー単位;又は
(d2)前記ポリエステルコポリマー内のジカルボン酸由来モノマー単位の総量に基づいて、40モル%以上から90モル%のフランジカルボン酸から誘導されたモノマー単位と、前記ジカルボン酸由来モノマー単位の残余のモル%のテレフタル酸から誘導されたモノマー単位;並びに
(e)任意に、前記ポリエステルコポリマー内のジカルボン酸由来モノマー単位の総量に基づいて、最高で5モル%までのイソフタル酸から誘導されたモノマー単位;及び
(f)任意に、前記ポリエステルコポリマー内のジオール由来モノマー単位の総量に基づいて、0モル%以上から20モル%以下の、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、2,3:4,5-ジ-O-メチレン-ガラクチトール又は2,4:3,5-ジ-O-メチレン-D-マンニトールから誘導されたモノマー単位
を含有する、
ポリエステルコポリマーから選択される、ポリエステルコポリマーA。
【請求項10】
請求項9に記載のポリエステルコポリマーA、並びに1種若しくは複数種の添加剤及び/又は1種若しくは複数種の追加の他の(コ)ポリマーを含む、組成物。
【請求項11】
請求項10に記載のポリエステルコポリマーA、又は請求項9に記載のポリエステルコポリマーA並びに1種若しくは複数種の添加剤及び/若しくは追加のポリマーを含む組成物、を含む、物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステルを1種又は複数種のジオール及び1種又は複数種のジカルボン酸又はそのエステルと反応させることを含む、ポリエステルコポリマーの製造のための重合方法、前記方法により得ることができる新規ポリエステルコポリマー、前記新規ポリエステルコポリマーを含む組成物並びに前記新規ポリエステルコポリマーを含む物品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート(PET)は重要なポリマー材料であり、現在、「ビッグ5」プラスチックのうち2番目に量が多く、世界的な年間生産量は約8000万トンである[www.textileworld.com/textile-world/features/2019/07/challenges-facing-recycled-polyester/]。最も一般的なPET用途は、繊維(織物;5600万トン/年)、並びにボトル(2000万トン/年)等の単回使用包装、エンジニアリングプラスチック及びフィルムである。PET産業の急速な発展は、世界的に、PET廃棄物の増加をもたらした。特に海洋における多くの汚染がPET廃棄物により起こされている。その結果、化石原料の消費を減少させるだけでなく、環境に良い影響を有する、廃棄PET製品のリサイクル及びリユースの必要がある。リサイクル可能な再生可能産業の創造は、ポリエステル材料の持続可能な開発にとって非常に重要である。しかし、純度の要件のため、現在、全PETの約3%(1年あたり200万トン)のみがクローズドループのメカニカルリサイクルをされて、ボトル用のrPET(リサイクルされたPET)が製造されている。残りの7800万トンのPET廃棄物は埋め立てられ、オープンループリサイクルされ(ダウンサイクルされる-例えば、ボトルから繊維に)、エネルギー回収の面で最良の状態で焼却されるか、又は自然に還る。これは、1年あたり少なくとも800万トンの混合プラスチック廃棄物であると推定される(World Economic Forum, Ellen MacArthur Foundation and McKinsey & Company, The New Plastics Economy - Rethinking the future of plastics [2016, http: //www.ellenmacarthurfoundation.org/publications])。
【0003】
特に、例えばより良好な生分解性を有する、魅力的なより高価値のPETの誘導体を製造する目的で、PET廃棄材料を新たな経済的に興味深い方法に使用して、そのようにしてPET材料を「アップサイクルする」ことが依然として必要である。廃棄プラスチックを新たなプラスチックの製造のための好ましい資源として効果的に使用することにより、直線的なプラスチック使用からプラスチックの真の循環型使用(circular use)への2050年までの移行のために求められている加速に多大な寄与をすることができる。
【0004】
残念なことに、メカニカルリサイクリングプロセスのコストのために、リサイクルされたPET(又はrPET)は、いわゆる「バージン」(すなわち新たに製造された)PETよりも高価である。オランダのCure社[https://curetechnology.com/]及びIoniqa社[https://ioniqa.com/]等、PETがオリゴマー又はそのモノマーに解重合されて、「洗浄」が可能となり、またクローズドループリサイクリングをもたらす数種のケミカルリサイクリング技術が現在開発されている。しかし、生じたケミカルリサイクルされたrPETは、それでも、バージンの石油由来PETより高価である。更に、例えば、Carbios社、GR3N社、Loop Industries社及びResinate Materials Group社等の企業による、種々の他の新たなPETリサイクリングの取り組みがあるが、それらは、リサイクリングプロセスを改善し、リサイクリングコストを低下させることを目標とするのみである。
【0005】
PETのケミカルリサイクリングには更なる研究が必要である。PETのようなポリエステルは、エステル結合が(水により、元の酸及びアルコールに)加水分解され得て、又は(典型的にはアルコールにより、元の酸とアルコールとのエステルに)エステル交換され得て、又は他のモノマーによりエステル交換され得て、コポリエステルを生み出し得るので、ケミカルリサイクリング/アップサイクリング手法において独自の位置づけをされている。ケミカルリサイクリング手法の利点は、廃棄PET中に既に存在するエステル結合が使用され、そのためそれらの製造に投資されたエネルギー(高温及び低圧が、水及びメタノール等の縮合生成物を除去するために、且つ過剰なジオールを除去するために必要とされるような)が保存されることである。
【0006】
PETの再使用は、材料が、好ましくは持続可能性がより高い追加のモノマー単位の導入により品質改良される場合、特に興味深い。追加のモノマー単位を有する興味深いクラスのPETコポリマーはPEXTコポリマーであり、Xは環式又は二環式(二級)ジオールから誘導されたモノマーである。そのようなコポリマーは、前記ジオールにより導入された、より高い剛性及び/又はより良好な生分解性のような改善された性質を有する。例えば、CHDM(シクロヘキサンジメタノール)又はTMCD(テトラメチルシクロブタンジオール)は、そのようなコポリマーに使用されるスペシャリティジオールである。更に、イソソルビドを含有するポリエチレンテレフタレート(PEIT)ポリマーは、イソソルビドが再生可能な源から製造されるため望ましい。PEITコポリマーは広範囲なガラス転移温度(80℃から180℃まで等)を示すことが知られており、したがって、多くの用途での使用に好適である(例えば、Polymer Engineering and Science, March 2009, 49(3):544-553を参照されたい)。
【0007】
最近、CN112608454は、リサイクルされたPETプラスチックを使用することにより、非結晶性コポリエステルPETGを調製する方法を報告した。PETGは、PETの分子構造中への結晶性を効果的に制御するモノマーフラグメント(Gとする)を導入することにより製造される非晶質コポリエステル材料である。CN112608454開示中のモノマーフラグメントGは、いわゆる「変性」グリコールcis 1,4-シクロヘキサンジメタノール、trans 1,4-シクロヘキサン-ジメタノール、及びネオペンチルグリコール(の混合物)から誘導される。CN112608454の方法は、原出発材料としての廃棄PET及びエチレングリコールを、テレフタル酸、又はテレフタレート、又はテレフタル酸とテレフタレートの混合物と、いわゆる「変性」グリコール、触媒及び安定剤と共に、任意に追加の二酸及び「他の」グリコールの存在下で同時にスラリー化することで始まり、それに続いて高温での分解/エステル化反応があり、真空重合で終了して、低分子量エステルが生じる。
【0008】
別の開示において、KR20150053502Aは、PETのケミカルリサイクリング、及びその後の不飽和ポリエチレンテレフタレート由来樹脂への転化を記載している。KR20150053502Aの方法は、PETオリゴマーを、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール(DEG)及びプロピレングリコール(PG)から選択されるグリコールによる解糖に付すこと、それに続いて、未反応のグリコール含量を、第1の反応工程で製造された反応物の13C NMR分析により分析することにより、実際の反応に加えるべきグリコールの量を計算すること;次いで、計算された含量に基づいて、第1の反応工程で製造された反応物に、エチレングリコール及びプロピレングリコールから選択される少なくとも1種、並びに不飽和酸、マレイン酸及びフタル酸を加えることを含む。更なる反応工程において、不飽和ポリエステル樹脂が合成される。
【0009】
従来技術において、逐次重合技法は既にPETコポリマーの製造に使用されてきたものの、その方法で直面するいくつかの課題により、新たな合成戦略の開発が必要になったことは注目に値する。更に、特定の使用及び/又は用途に適合され得る性質を有する新たなコポリマーが必要とされている。
【0010】
好ましくは持続可能なモノマーが(廃棄)PETに導入されて、PETと比較してより良好な機械的性質、熱的性質、バリア性及び耐アルカリ性などの改善された性質を有する新たなコポリエステルが製造される、ケミカルPETリサイクリング/アップサイクリング(upcyling)方法を提供することが好都合である。ポリエステルPET自体は生分解性ではない。そのため、高価値の生分解性(且つ好ましくは海洋分解性)ポリエステルコポリマーを製造できることは更に進歩であり、それに関して市場において莫大な関心がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】CN112608454
【特許文献2】KR20150053502A
【特許文献3】US2011282020A1のセクション[0026]から[0029]
【特許文献4】WO2013/062408A1の5ページ
【特許文献5】WO2010/010282A1
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】www.textileworld.com/textile-world/features/2019/07/challenges-facing-recycled-polyester/
【非特許文献2】World Economic Forum, Ellen MacArthur Foundation and McKinsey & Company, The New Plastics Economy - Rethinking the future of plastics [2016, http: // www.ellenmacarthurfoundation.org/publications]
【非特許文献3】Polymer Engineering and Science, March 2009, 49(3):544-553
【非特許文献4】AFNOR NF T 51-800
【非特許文献5】EN 13432
【非特許文献6】ISO 18606
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
したがって、本発明は、ポリエステル(i)を、1種又は複数種のジオール(ii)及び1種又は複数種のジカルボン酸又はその任意のエステル(iii)と同時に反応させることを含む、ポリエステルコポリマーAの製造のための重合方法であって、ポリエステル(i)が、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンフラノエート(PEF)、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンフラノエートの混合物、又はポリエチレンテレフタレート-co-フラノエート(PETF)(好ましくはポリエチレンフラノエート又はポリエチレンテレフタレート-co-フラノエート)であり;ポリエステル(i)がポリエチレンテレフタレートである場合、テレフタル酸又はそのエステルは、ジカルボン酸又はそのエステル(iii)として加えられず;1種又は複数種のジオール(ii)が、C3~C18脂肪族ジオールから選択される一級ジオールから選択され;成分(i)及び(ii)が、ポリエステルコポリマーA中のジオール由来モノマー単位の総量に基づいたパーセンテージで、少なくとも40モル%の、出発ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンフラノエート又はポリエチレンテレフタレート-co-フラノエートから誘導されたエチレングリコール、及び、少なくとも5モル%、好ましくは10モル%以上の、前記一級ジオールから誘導されたモノマーを含む、ポリエステルコポリマーAを製造するのに充分な量で使用され;方法が、ポリエステル(i)、1種又は複数種の一級ジオール(ii)及び1種又は複数種のジカルボン酸又はその任意のエステル(iii)を加熱して、融液を形成する工程であって、ポリエステル(i)から誘導されたモノマー単位、1種又は複数種の一級ジオール(ii)から誘導されたモノマー単位、及び1種又は複数種のジカルボン酸又はその任意のエステル(iii)から誘導されたモノマー単位を含み、PMMA標準を基準物質とするゲル浸透クロマトグラフィーにより測定して16500ダルトン以上の数平均分子量を有するポリエステルAを生成させる工程を含む、ポリエステルコポリマーAの製造のための重合方法を提供する。
【0014】
当技術分野に公知である数種のPETリサイクリング/分解方法とは対照的に、現在の方法において、エチレングリコールは、PETポリマー鎖の(最初の)分解に加えられない。驚くべきことに、PET、PEF、PETとPEFの混合物、又はPETF、1種又は複数種の一級ジオール(ii)及び1種又は複数種のジカルボン酸又はその任意のエステル(iii)をいわゆる「ワンポット」反応(バッチか連続的のいずれか)で共に反応させる場合、同時の解重合/エステル交換が起こり、前記ジオールから、及び前記ジカルボン酸又はそのエステルから誘導されたかなりの量のモノマー単位を含むポリエステルコポリマーが生じることが見出された。好都合なことに、本発明の方法によると、ジカルボン酸(1対1のジオール対ジカルボン酸の比に合致することが要される)は反応の開始から既に存在し、効率よい、協調した「ワンインオール(one-in-all)」方法を可能にする。従来技術に公知である多段階重合は、ポリエステルコポリマーの形成を制御するために必要ではない。
【0015】
従来技術の方法に優る更なる利点として、本発明の方法は、ポリエステル最終生成物の高い数平均分子量を得る一方で、再生可能な材料から誘導されたモノマー単位を含む、PET由来ポリエステルコポリマーの調製を可能にする。
【0016】
本開示の方法によると、方法において追加の二酸を更に組み合わせることにより、調節可能な性質を有する多種多様なポリエステルコポリマーが製造され得る。注目すべきことに、本発明の方法は、広範囲の既存コポリマー及び新規コポリマーの両方の製造に好適である。その結果、一実施形態において、本発明は新規ポリエステルコポリマーを提供する。好都合なことに、本発明の方法を使用することにより、100%持続可能で、柔軟で強く、潜在的に生分解性である、包装及び/又は繊維等の用途のためのコポリエステルを製造することが可能である。
【0017】
更に、本発明は、前記新規ポリエステルコポリマーAのいずれか1種、並びに更に1種若しくは複数種の添加剤及び/又は1種若しくは複数種の追加のポリマーを含む、組成物を提供する。
【0018】
更に、本発明は、本発明によるポリエステルコポリマーA、又は前記ポリエステルコポリマーA並びに1種若しくは複数種の添加剤及び/若しくは追加のポリマーを含む組成物、を含む、物品を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、ポリエステルコポリマーの製造のための重合方法に関する。本明細書での「ポリエステル」は、その主鎖中のエステル官能基により連結された複数のモノマー単位を含むポリマーと理解される。エステル官能基は、ヒドロキシル基(-OH)をカルボキシル/カルボン酸基(-C(=O)OH)と反応させることにより形成され得る。典型的には、ポリエステルは、1種又は複数種の二官能性カルボン酸と1種又は複数種の二官能性ヒドロキシル化合物との反応により形成される合成ポリマーである。本明細書でのポリエステルコポリマーは、3種以上のモノマー単位が同じポリマー主鎖中で結合されたポリエステルであると理解される。
【0020】
「モノマー単位」は、モノマーの重合後に得られ得る、ポリエステルコポリマーに含まれる単位であると本明細書で理解され、すなわち、「モノマー単位」は単一のモノマー又はモノマー化合物によりポリマーの構造に与えられた構成単位であり、本明細書では最小のジオール又は二酸繰り返し単位である。「モノマー」又は「モノマー化合物」は、重合すべき出発化合物として使用される最小のジオール又は二酸化合物であると本明細書で理解される。
【0021】
本発明による重合方法は、ポリエステル(i)、1種又は複数種の一級ジオール(ii)及び1種又は複数種のジカルボン酸又はその任意のエステル(iii)の混合物を加熱して融液を形成することを含むが、それは、材料の溶融混合、すなわち、全ての材料を反応混合物内で、それらが全て透明な液体として溶融状態になるまで加熱することを意味する。任意に、金属含有触媒が反応混合物に加えられる。試薬(i)、(ii)及び(iii)の溶融混合は、典型的には、200℃以上、より好ましくは230℃以上から、300℃以下、より好ましくは275℃以下、及びより一層好ましくは250℃以下の範囲の温度で実施される。溶融混合は、例えば、バッチ式に反応器内で実施できる。溶融混合の前には、試薬が反応器に導入される導入段階があり得て、溶融混合の後にはエステル化/エステル交換段階があり、それに続いて16500ダルトン超の望まれる分子量Mnが得られるまで重縮合段階があり、更に、ポリエステルコポリマーが反応器から回収される回収段階が続き得る。本開示の溶融重合方法は、連続的方法でも実施され得る。
【0022】
特許請求されている方法において、エチレングリコールはジオール(ii)として加えられない。そのため、製造されたポリエステルコポリマーA中の全てのエチレングリコール由来モノマー単位は、エチレングリコール由来モノマー単位を既に含む出発ポリエステル(i)から誘導される。
【0023】
本発明の方法において、1種又は複数種の一級ジオール(ii)は、C3~C18脂肪族ジオールから、特に、好ましくはヒドロキシル基が少なくとも非隣接炭素原子に結合している、直鎖、環式又は分岐鎖の飽和C3~C12脂肪族ジオール化合物から選択され、好ましくは、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、及びポリオール、特にC6ポリオールのアセタール、特に2,3:4,5-ジ-O-メチレン-ガラクチトール、2,4:3,5-ジ-O-メチレン-D-マンニトール、2,4:3,5-ジ-O-メチレン-D-グルシトール(グルシトール=ソルビトール)、2,3:4,5-ジ-O-イソプロピリデン-ガラクチトール、2,4:3,5-ジ-O-イソプロピリデン-D-マンニトール及び2,4:3,5-ジ-O-イソプロピリデン-D-グルシトールから選択される。方法において、一級ジオールの混合物も使用され得る。特に好ましい一級ジオールはシクロヘキサンジメタノールである。
【0024】
本発明の方法によると、簡便には、製造されたポリエステルコポリマーの、Tg、バリア性、機械的性質、生分解性及び他の性質などの特定の性質は、方法の間の1種又は複数種の一級ジオール(ii)の種類及び量の選択を調整することによっても、1種又は複数種のジカルボン酸又はその任意のエステル(iii)の種類及び量の選択を調整することによっても望まれる値/レベルに目標化できる。本開示の方法によると、商業的に興味深い数平均分子量を有するポリエステルコポリマーが、商業的に好都合な反応時間内に得られ得る。
【0025】
上記の通り、(iii)1種又は複数種のジカルボン酸又はその任意のエステルの種類及び量も、製造されたポリエステルコポリマーAの性質に対する調整効果を有する。特に、1種又は複数種のジカルボン酸又はその任意のエステル(iii)は、フランジカルボン酸(FDCA)、イソフタル酸、直鎖、環式若しくは分岐鎖であり得て好ましくは飽和であり得るC2~C18(好ましくはC2~C12)脂肪族ジカルボン酸並びに/又はそれらのモノエステル及び/若しくはジエステルの1種又は複数種から選択され、ポリエステル(i)はポリエチレンフラノエートである場合、ジカルボン酸又はその任意のエステル(iii)は、テレフタル酸並びに/又はそのモノエステル及び/若しくはジエステルであり得る。柔軟性のあるコポリマーを目標にするには、好ましくは、シュウ酸、マロン酸、ブタン二酸(コハク酸)、ペンタン二酸(グルタル酸)、ヘキサン二酸(アジピン酸)、ヘプタン二酸、オクタン二酸(スベリン酸)、ノナン二酸、デカン二酸、ウンデカン二酸及びドデカン二酸等の直鎖C2~C12脂肪族ジカルボン酸、並びに/又はそれらのモノエステル及び/若しくはジエステル、例えばそのようなC2~C12脂肪族ジカルボン酸のジアルキルエステル等が選択され、ここで、アルキル基は、1から6の範囲の炭素原子を含む。また、FDCA及び/又はイソフタル酸もその目的に使用できる。シュウ酸、コハク酸及びアジピン酸、FDCA及び/又はそのエステル誘導体が好ましい。
【0026】
本発明の方法において、一級ジオール(ii)とジカルボン酸(iii)の好ましい組合せは、シクロヘキサンジメタノールとコハク酸との組合せ;及びフランジカルボン酸又はコハク酸とと、1,4-ブタンジオール又は1,6-ヘキサンジオールとの組合せである。
【0027】
本発明の方法の特に好ましい実施形態において、1種又は複数種の一級ジオール(ii)及び1種又は複数種のジカルボン酸又はその任意のエステル(iii)は、ジオールの総和とジカルボン酸又はその任意のエステルの総和とのモル比が1.5:1.0から1.0:1.0で方法に使用される。
【0028】
好ましくは、本方法に使用されるジオール及び/又は二酸は、再生可能な源、例えば、持続可能なバイオマス材料から得られ且つ/又は誘導される。バイオマス材料とは、石油、天然ガス又は石炭から得られ且つ/又は誘導される組成物に対して、生物学的源から得られ且つ/又は誘導される組成物と本明細書で理解される。バイオマス材料は、例えば、デンプン等の多糖、又はセルロース及び/若しくはリグノセルロース系材料であり得る。持続可能とは、環境が枯渇されず、永久に損なわれもしないように材料が収集され且つ/又は得られることであると本明細書で理解される。持続可能なバイオマス材料は、例えば、森林廃棄物、農業廃棄物、紙屑及び/又は製糖残渣から調達され得る。
【0029】
本発明の方法の好ましい実施形態において、ポリエステル(i)はポリエチレンテレフタレート(PET)である。これは、ポリエステルが、基本的にPETであり、任意にごくわずかの他の化合物を含むことを意味する。方法において出発材料として使用されるポリエステル(i)は、特にポリエステルの一貫した高い質を有する、前記ポリエステル(i)を含む材料の形態で提供され得る。材料は、好都合にはリサイクルされた材料である。好ましくは、PETを含む材料は、大部分リサイクルされたPET、特にPETスクラップである。誤解を避けるために、非リサイクルされたPET(すなわちバージンPET)もリサイクルされたPETの代わりに使用され得る。
【0030】
本発明の別の好ましい実施形態において、ポリエステル(i)は、ポリエチレンテレフタレートの代わりに、ポリエチレンフラノエート(PEF)又はポリエチレンテレフタレート-co-フラノエート(PETF)である。ポリエステルがPEFである場合、これは、ポリエステルが、基本的にPEFであり、任意にごくわずかの他の化合物を含むことを意味する。PEFは、エチレングリコールと2,5-フランジカルボン酸でできた芳香族ポリエステルであり、PETの化学的類似体である。PEFは完全に生物原料の材料であり得て、より良好なカーボンフットプリントの他に、PETと比較して優れたバリア性、機械的性質及び熱的性質を与える。PEFは、アルコール飲料、フルーツジュース、牛乳、ソフトドリンク、フレッシュティー又は水の包装産業における等広範囲の用途のための理想的な材料である。PETと同様に、PEFは、「バージン」及び「リサイクルされた」材料の形態で利用可能であり得る。PEFが豊富に利用可能である場合、好ましくは、ポリエステル(i)は、廃棄PEF、特にPEFスクラップを大部分に含む材料であり得る。好ましくは、本明細書で使用されるポリエステルコポリマーPETFは、テレフタレートモノマーとフラノエートモノマーとの比(T:F)が1を超え、好ましくはT:Fが2を超え、より好ましくはT:Fが5を超える。
【0031】
一般的に、出発PET又はPEFのMnは少なくとも10000ダルトンである。
【0032】
上記の通り、本発明の方法において、ポリエステル(i)がPEFとPETとの混合物を含むことも可能である。そのような場合、少なくとも95重量%のPETと多くとも5重量%のPEFの組合せ、又は少なくとも95重量%のPEFと多くとも5重量%のPETの組合せが好ましい。
【0033】
本発明の更なる実施形態において、また方法においても、ポリエステル(i)、1種又は複数種の一級ジオール(ii)及び1種又は複数種のジカルボン酸又はその任意のエステル(iii)に加えて、ヒドロキシ基が唯一の官能基である一価アルコールが、他の反応物(i)、(ii)及び(iii)の総重量に対して10~100重量%で加えられ得て、ここで、一価アルコールは、175℃以上の沸点及び12.0以下7.0以上の酸解離定数(pKa)を有する。特に、一価アルコールは、フェノール、p-アルキルフェノール、p-アルコキシフェノール、グアイアコール等の任意に置換されたフェノールである。一価アルコールの添加は、反応が開始する前に、例えば、好ましくは最初にPET及び/又はPEFをアルコールと混合することによりなされ得るが、それは、必要があればいつでも、反応の間のより遅い段階でも、反応の開始時と反応の間の両方でも加えられ得る。一価アルコールは、反応混合物中で反応性の希釈剤として作用し得て、それは、望ましいとも、特定の状況下で必要であるとも考えられ得る。例えば、一価アルコールを現在特許請求される方法に使用する場合、及びモノマーの混合物のみから開始する当技術分野に公知である多段階重合技法と比べる場合、重合の間に失われるジオールモノマーが少なくなり得て、生じたポリエステルコポリマーに組み込まれるジオールモノマーが多くなり得る。
【0034】
製造されたポリエステルコポリマー中の異なるモノマー単位のそれぞれの量は、プロトン核磁気共鳴(1H NMR)により決定できる。当業者であれば、ポリエステルコポリマー中の異なるモノマー単位のそれぞれの量を決定するための分析の条件を容易に見出す。
【0035】
本発明の方法に従って製造されたポリエステルコポリマーAはランダムコポリマーであり得るか、又はよりブロック的な微細構造を有し得る。(新規)コポリマーAが、モノマーからのみではなく、出発材料としてのPET及び/又はPEFからも製造されているため、コポリマーAは、例えば、共有結合により連結された2つ以上のホモポリマーサブユニットを含み得る。
【0036】
ポリエステルコポリマーAの数平均分子量(Mn)は様々になり得て、例えば、加えられたモノマーの種類及び量、触媒、反応時間並びに反応温度及び圧力に依存し得る。
【0037】
本発明によるポリエステルコポリマーAは、好ましくは、16500グラム/モル以上、より好ましくは20000グラム/モル以上、多くとも200000グラム/モルまでの数平均分子量を有する。
【0038】
重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、計算のためにポリ(メチルメタクリレート)標準を基準物質として使用し、ヘキサフルオロ-2-プロパノールを溶離液として使用して、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により35℃で決定できる。本明細書での全分子量は、実施例の分析方法の項に記載の通り決定される。
【0039】
好適には、本発明によるポリエステルコポリマーAは、1.6以上から2.6以下の範囲の多分散指数(すなわち、重量平均分子量(Mw)の数平均分子量(Mn)に対する比、すなわちMw/Mn)を有し得る。
【0040】
ポリエステルコポリマーAのガラス転移温度は、従来の方法により、特に加熱速度10℃/分で、窒素雰囲気中で示差走査熱量測定(DSC)を使用することにより測定できる。本明細書での全ガラス転移温度は、実施例の分析方法の項に記載の通り決定される。
【0041】
生分解性は、現在広く研究されている、プラスチックの重要で興味深い性質であり、新たなポリマーを提供することにより本発明が改善しようとしている性質でもある。生分解性プラスチックは、生体、通常微生物の作用により、水、二酸化炭素、及びバイオマスに分解され得るプラスチックである。生分解性プラスチックは、通常、包装、食器類、カトラリー、及び食品サービス容器等の使い捨ての品物に使用される。しかし、「生分解性」と表示されるが、マイクロプラスチックのようなより小さいかけらに、又は生分解性ではないより小さい単位に分解するだけであるプラスチックの品物は従来のプラスチックに優る改善物ではない。注目すべきことに、用語「生分解性」に伴う問題は、それが「システム特性(system property)」であることである。すなわち、特定のプラスチックの品物が生分解するかどうかは、化学組成及び物理的外観(形状、厚さ、表面積等)等のその品物の固有の性質だけでなく、それが最後を迎える環境中の条件にも依存する。特定の生態系中でプラスチックが生分解する速度は、温度、湿度、UV光、及び特定の微生物の存在を含む広範囲の環境的条件に依存する。
【0042】
家庭で堆肥化可能な(home compostable)プラスチックは、(簡単に言うと)土壌中で、12か月で、周囲温度でセルロース(木)と同じ速度又はより速く、微生物によりCO2、水及びバイオマスに(好気性条件で)分解するポリマー(例えば、PHA)である。本明細書の執筆の時点で、家庭での堆肥化可能性の欧州規格はなく、フランス規格AFNOR NF T 51-800が家庭での堆肥化可能性要件のために考慮されるべきである。
【0043】
工業的に堆肥化可能な(industrial compostable)プラスチックは、(簡単に言うと)土壌中で、6か月で、50℃より高温で、微生物によりCO2、水及びバイオマスに(好気性条件で)分解するポリマー(例えば、PLA)である。EN 13432又は同等な規格(例えば、ISO 18606)が工業的な堆肥化可能性要件のために考慮されるべきである。
【0044】
(家庭又は工業的な堆肥化可能性に従って)生分解性ではないが、自然の中で従来のポリマーより(はるかに)速く分解するプラスチックもあることが留意されるべきである。例えば、PEFは数年以内で分解する一方で、PETは数世紀後に分解する。PEFは生分解性プラスチックではないが、それでも、数年以内のその分解により、環境に漏れ出た後のこれらのプラスチックの際限のない蓄積が回避される。
【0045】
本発明の方法を実施する好適で好都合な手法は、以下の工程:(a)反応容器内で、ポリエステル(i)、1種又は複数種の一級ジオール(ii)及び1種又は複数種のジカルボン酸又はその任意のエステル(iii)を、特定の温度に、透明な融液(液体)が形成するまで特定の期間加熱する工程;(b)(水、アルコールのような)縮合生成物を1から5barの圧力で除去しながら、エステル化/エステル交換反応を(撹拌しながら)継続する工程;(c)特定の期間継続して撹拌しながら、工程(b)の容器内の圧力を、20mbarより低く、好ましくは10mbarより低く、より好ましくは5mbarより低く、特に1mbarより低い真空に減少させる工程(重縮合);並びに任意に工程(c)の間に、温度を10から50℃更に増加させて、反応器からの残存する縮合生成物の除去を促進する工程を含む。
【0046】
本発明による方法は、バッチ式、半バッチ式又は連続式で実施できる。エステル化/エステル交換段階及び重縮合段階は、簡便には、1つの同じ反応器内で実施され得るが、2つの別な反応器内でも実施され得て、例えばエステル化/エステル交換段階が第1のエステル化/エステル交換反応器内で実施され、重縮合段階が第2の重縮合反応器内で実施される。
【0047】
任意の導入段階において、モノマーは、反応器に、同時に、例えばフィード混合物の形態で、又は別個にして導入され得る。モノマーは溶融相で反応器に導入され得るか、又は、それは反応器への導入後に溶融及び混合され得る。
【0048】
あらゆるエステル化/エステル交換段階は、好ましくは、0.5時間以上、より好ましくは1.0時間以上から、6.0時間以下、より好ましくは4.0時間以下の範囲の反応時間で実施される。エステル化/エステル交換段階の間、温度は、段階的又は徐々に増加され得る。
【0049】
あらゆる重縮合段階は、好ましくは、0.5時間以上、より好ましくは1.0時間以上から、8.0時間以下、より好ましくは6.0時間以下の範囲の反応時間で実施される。重縮合段階の間、温度は、段階的又は徐々に増加され得る。
【0050】
重縮合段階は、好適には、エステル交換段階が実施される温度以上の温度で実施され得る。エステル交換段階は、例えば、200℃以上、より好ましくは210℃以上、より一層好ましくは230℃以上から、250℃以下の範囲の温度で実施され得る。重縮合段階は、好適には、エステル交換段階の後であり得て、重縮合段階は、例えば、250℃以上、より好ましくは265℃以上から300℃以下、より好ましくは285℃以下、最も好ましくは275℃以下の範囲での温度で実施され得る。
【0051】
重縮合段階の後には、ポリエステルコポリマーAが反応器から回収される回収段階があり得る。ポリエステルは、例えば、反応器から、溶融ポリマーの糸の形態でそれを引き出すことにより回収できる。この糸は、従来の造粒技法を使用して顆粒に変換できる。
【0052】
エステル化/エステル交換段階は、好適には不活性ガス雰囲気下で、好適には周囲圧力又はわずかにそれを超える、例えば、5バールまでの圧力で実施される。重縮合段階は、好適には、減圧下で実施される。好ましくは、重縮合段階は、0.01mbar(1パスカルに相当する)以上、より好ましくは0.1mbar(10パスカルに相当する)以上から、10.0mbar(1.0キロパスカルに相当する)以下、より好ましくは5.0mbar(500パスカルに相当する)以下の範囲の圧力で実施され得る。
【0053】
本発明による方法は、安定剤等の1種又は複数種の添加剤、例えば光安定剤、UV安定化剤及び熱安定剤、流動化剤、難燃剤及び帯電防止剤の存在下で実施され得る。リン酸は、PETに適用される安定剤の一例である。添加剤は、方法の開始時に、又は重合反応の間若しくは後に加えられ得る。他の添加剤としては、一次及び/又は二次酸化防止剤がある。一次酸化防止剤は、例えば、化合物Hostanox(登録商標)O 3、Hostanox(登録商標)O 10、Hostanox(登録商標)O 16、Ultranox(登録商標)210、Ultranox(登録商標)276、Dovernox(登録商標)10、Dovernox(登録商標)76、Dovernox(登録商標)3114、Irganox(登録商標)1010又はIrganox(登録商標)1076等の立体障害のあるフェノールであり得る。二次酸化防止剤は、例えば、Ultranox(登録商標)626、Doverphos(登録商標)S-9228又はSandostab(登録商標)P-EPQ等の三価リン含有化合物であり得る。
【0054】
本発明による方法は、好適には、金属含有触媒の存在下で実施される。そのような金属含有触媒は、例えば、スズ(Sn)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ゲルマニウム(Ge)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、ハフニウム(Hf)、マグネシウム(Mg)、セリウム(Ce)、亜鉛(Zn)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、ナトリウム(Na)、鉛(Pb)、カリウム(K)、アルミニウム(Al)、及び/又はリチウム(Li)の誘導体を含み得る。好適な金属含有触媒の例としては、酢酸塩等の、Li、Ca、Mg、Mn、Zn、Pb、Sb、Sn、Ge、及びTiの塩並びにグリコールアダクト及びTiアルコキシドを含むオキシドがある。そのような化合物の例は、例えば、US2011282020A1の段落[0026]から[0029]及びWO2013/062408A1の5ページに与えられるものであり得る。好ましくは、金属含有触媒はスズ含有触媒、例えばスズ(IV)又はスズ(II)含有触媒である。より好ましくは、金属含有触媒は、アルキルスズ(IV)塩及び/又はアルキルスズ(II)塩である。例としては、アルキルスズ(IV)塩、アルキルスズ(II)塩、ジアルキルスズ(IV)塩、ジアルキルスズ(II)塩、トリアルキルスズ(IV)塩、トリアルキルスズ(II)塩又はこれらの1種若しくは複数種の混合物がある。これらのスズ(IV)及び/又はスズ(II)触媒は、代替又は追加の金属含有触媒と共に使用され得る。使用され得る代替又は追加の金属含有触媒の例としては、チタン(IV)アルコキシド又はチタン(IV)キレート、ジルコニウム(IV)キレート、又はジルコニウム(IV)塩(例えば、アルコキシド);ハフニウム(IV)キレート又はハフニウム(IV)塩(例えば、アルコキシド);イットリウム(III)アルコキシド又はイットリウム(III)キレート;ランタン(III)アルコキシド又はランタンキレート;スカンジウム(III)アルコキシド又はキレート;セリウム(III)アルコキシド又はセリウムキレートの1種又は複数種がある。例示的な好ましい金属含有触媒は、n-ブチルスズヒドロキシドオキシドである。
【0055】
本発明による方法は、任意に、上述の回収段階(すなわち、ポリエステルコポリマーが反応器から回収される)の後に、固体状態での重合の段階を更に含み得る。すなわち、上述の通り回収されたポリエステルコポリマーは、固体状態で更に重合されて、それにより鎖長を増加させ得る。固体状態のそのような重合は、固体重合(SSP)とも称される。そのような固体重合により、好都合には、ポリエステルコポリマーの数平均分子量を更に増加させることができる。該当する場合、SSPは、更に好都合には、射出ブロー成形又は押出しの前に、ポリエステルコポリマーの機械的性質及びレオロジー的性質を増大させることができる。固体重合方法は、好ましくは、ポリエステルコポリマーを、例えば真空又は不活性ガスによるパージにより、酸素及び水が基本的に又は完全にない状態で加熱することを含む。
【0056】
好都合には、したがって、本発明による方法は、
- 上述のモノマーが融液中で重合されて、ポリエステルコポリマー融液生成物が製造される、溶融重合;
- ポリエステルコポリマー融液生成物がペレットに変換される任意のペレット化、及び真空下又は不活性ガスパージによる、任意のペレットの乾燥;
- ポリエステルコポリマー融液生成物のTgより高く、ポリエステルコポリマー融液生成物の溶融温度より低い温度での、任意にペレットの形態のポリエステルコポリマー融液生成物の、任意の固体重合
を含む。
【0057】
一般的に、固体重合は、好適には、150℃以上から220℃以下の範囲の温度で実施され得る。固体重合は、好適には、不活性ガス(例えば、窒素又はアルゴン等)の流れによりパージしながら周囲圧力(すなわち、0.1メガパスカルに相当する1.0bar雰囲気)で実施され得るか、又は真空で、例えば100ミリバール(0.01メガパスカルに相当する)以下の圧力で実施され得る。固体重合は、好適には、120時間までの期間、より好適には2時間以上から60時間以下の範囲の期間実施され得る。固体重合の継続期間は、ポリエステルコポリマーの望まれる最終数平均分子量に達するように調整され得る。
【0058】
本発明は、本発明による方法により得ることができる又は特に本発明による方法により得られるポリエステルコポリマーを更に提供する。前記一級ジオール(特にジエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール及び/又は1,6-ヘキサンジオール)から誘導されるモノマー単位を10~60モル%(総ジオールに基づいて)含むポリエステルコポリマー;特に、シクロヘキサンジメタノール(CHDM)とコハク酸(SA)の組合せ、並びにフランジカルボン酸(FDCA)、アジピン酸(AD)又はコハク酸と組み合わせたジエチレングリコール(DEG)、1,4-ブタンジオール(BDO)、1,5-ペンタンジオール(PDO)又は1,6-ヘキサンジオール(HDO)の組合せを含むポリエステルコポリマーが特に好ましい。そのようなポリエステルコポリマーは、特に興味深い生分解性を有する。
【0059】
本発明による新規ポリエステルコポリマーAの非限定的な例としては(ここで、モル%は、それぞれ、総ジオール、二酸に基づいている):
- PEDTA及びPEDFA(すなわち、PET又はPEFから、それぞれ、10~60モル%のDEG及び10~60モル%のADと共に調製されたポリエステルコポリマー);
- PECTS、PEBTF(又はPEPTF又はPEHTF)、PEBTS(又はPEPTS又はPEHTS)(すなわち、それぞれ、PET+10~60モル%のCHDM又はBDO(又はPDO又はHDO)、プラスそれぞれ10~60モル%のSA又はFDCAから調製されたポリエステルコポリマー);
- PECFS、PEBFS(又はPEPFS又はPEHFS)、PEBF(又はPEPF又はPEHF)(すなわち、それぞれ、PEF+10~60モル%のCHDM又はBDO(又はPDO又はHDO)、プラスそれぞれ10~60モル%のSA又はFDCAから調製されたポリエステルコポリマー);
- 具体的には、PETから、それぞれ5モル%超の量のCHDM又はBDO(又はPDO又はHDO)及びそれぞれ同じ5モル%超の量のSA又はFDCAと共に調製されたPECTS、PEBTF(又はPEPTF又はPEHTF)又はPEBTS(又はPEPTS又はPEHTS)ポリエステルコポリマー;及び、PEFから、それぞれ5モル%超の量のCHDM又はBDO(又はPDO又はHDO)及びそれぞれ同じ5モル%超の量のSA又はFDCAと共に調製されたPECFS、PEBFS(又はPEPFS又はPEHFS)又はPEBF(又はPEPF又はPEHF)ポリエステルコポリマー;
- PECFS50(すなわち、PEFから、50モル%のCHDM及びSAと共に調製されたポリエステルコポリマー)と同じである、PECTS50(すなわち、PETから、50モル%のCHDM及びSAと共に調製されたポリエステルコポリマー)
がある。
【0060】
本発明の好ましい実施形態は、本発明による方法により得ることができる又は本発明による方法により得られるポリエステルコポリマーA、特に、ジカルボン酸由来モノマー単位及びジオール由来モノマー単位を1:1の比で含み、PMMA標準を基準物質とするゲル浸透クロマトグラフィーにより測定して16500ダルトン以上の数平均分子量を有し、低い(5%以下の結晶性)結晶性を有するか又は結晶性を有さないポリエステルコポリマーであって、
(a)ポリエステルコポリマー内のジオール由来モノマー単位の総量に基づいて、10モル%以上から60モル%以下の範囲の1種又は複数種の一級ジオールモノマー単位(特にCHDM由来単位);
(b)ポリエステルコポリマー内のジオール由来モノマー単位の総量に基づいて、40モル%以上から90モル%の以下の範囲のエチレングリコールから誘導されたモノマー単位;
(c)任意に、ポリエステルコポリマー内のジオール由来モノマー単位の総量に基づいて、最高で5モル%までのジエチレングリコールから誘導されたモノマー単位;
及び(d1)か(d2)のいずれか:
(d1)ポリエステルコポリマー内のジカルボン酸由来モノマー単位の総量に基づいて、40モル%以上から90モル%のテレフタル酸から誘導されたモノマー単位と、ジカルボン酸由来モノマー単位の残余のモル%のフランジカルボン酸から誘導されたモノマー単位;又は
(d2)ポリエステルコポリマー内のジカルボン酸由来モノマー単位の総量に基づいて、40モル%以上から90モル%のフランジカルボン酸から誘導されたモノマー単位と、ジカルボン酸由来モノマー単位の残り余のモル%のテレフタル酸から誘導されたモノマー単位;並びに
(e)任意に、ポリエステルコポリマー内のジカルボン酸由来モノマー単位の総量に基づいて、最高で5モル%までのイソフタル酸から誘導されたモノマー単位;及び
(f)任意に、ポリエステルコポリマー内のジオール由来モノマー単位の総量に基づいて、0モル%以上から20モル%以下の、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、2,3:4,5-ジ-O-メチレン-ガラクチトール又は2,4:3,5-ジ-O-メチレン-D-マンニトールから誘導されたモノマー単位
を含有するポリエステルコポリマーから選択されるポリエステルコポリマーAである。
【0061】
本発明の方法により得ることができるポリエステルコポリマーAは、好適には、添加剤及び/又は他の(コ)ポリマーと組み合わされ得て、したがって、本発明は、前記ポリエステルコポリマー並びに更に1種若しくは複数種の添加剤及び/又は1種若しくは複数種の追加の他の(コ)ポリマーを含む組成物を更に提供する。
【0062】
そのような組成物は、例えば、添加剤として核化剤を含み得る。これらの核化剤は、本質的に有機でも無機でもあり得る。核化剤の例は、タルク、ケイ酸カルシウム、安息香酸ナトリウム、チタン酸カルシウム、窒化ホウ素、亜鉛塩、ポルフィリン、クロリン及びフロリンである。
【0063】
本発明による組成物は、添加剤として、有機又は無機性のナノメートル(すなわち、ナノメートルサイズの粒子を有する)又は非ナノメートルの、官能化又は非官能化充填剤又は繊維も含み得る。それらは、シリカ、ゼオライト、ガラス繊維又はビーズ、粘土、マイカ、チタン酸塩、ケイ酸塩、グラファイト、炭酸カルシウム、カーボンナノチューブ、木繊維、炭素繊維、ポリマー繊維、タンパク質、セルロース繊維、リグノセルロース繊維及び非構造破壊(nondestructured)粒状デンプンである。これらの充填剤又は繊維は、硬さ、剛性又は水若しくは気体への透過性を改善することを可能にできる。組成物は、組成物の総重量に対して、0.1%から75重量%、例えば0.5%から50重量%の充填剤及び/又は繊維を含み得る。組成物は、コンポジットタイプでもあり得て、すなわち、多量のこれらの充填剤及び/又は繊維を含み得る。
【0064】
組成物は、添加剤として、乳白剤、染料及び顔料も含み得る。それらは、酢酸コバルト並びに以下の化合物:名称Solvent Red 195でも知られるアゾ官能基を有する化合物であるHS-325 Sandoplast(登録商標)Red BB、アントラキノンであるHS-510 Sandoplast(登録商標)Blue 2B、Polysynthren(登録商標)Blue R及びClariant(登録商標)RSB Violetから選択できる。
【0065】
組成物は、添加剤として、加工装置中の圧力を減少させるための処理助剤も含み得る。モールド又はカレンダー装置のローラー等、ポリエステルを付形するための装置への密着性を減少させることが可能である離型剤も使用できる。これらの作用剤は、脂肪酸エステル及びアミド、金属塩、石鹸、パラフィン又は炭化水素蝋から選択できる。これらの作用剤の具体例は、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアラミド、エルカミド、ベヘンアミド、蜜蝋又はカンデリラ蝋である。
【0066】
組成物は、本明細書で上述された通り、安定剤等の他の添加剤も含み得る。
【0067】
更に、組成物は、本発明による1種又は複数種のポリエステルコポリマー以外の1種又は複数種の追加のポリマーを含み得る。そのような追加のポリマーは、好適には、ポリアミド、ポリスチレン、スチレンコポリマー、スチレン/アクリロニトリルコポリマー、スチレン/アクリロニトリル/ブタジエンコポリマー、ポリメチルメタクリレート、アクリルコポリマー、ポリ(エーテル/イミド)、ポリ(2,6-ジメチルフェニレンオキシド)等のポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリ(エステル/カーボネート)、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリスルホンエーテル、ポリエーテルケトン及びこれらのポリマーのブレンドからなる群から選択できる。組成物は、追加のポリマーとして、ポリマーの衝撃特性を改善することを可能にするポリマー、特にエチレン若しくはプロピレンの官能化ポリマー及びコポリマー等の官能性ポリオレフィン、コア/シェルコポリマー又はブロックコポリマーも含み得る。本発明による組成物は、追加のポリマーとして、デンプン、セルロース、キトサン、アルギネート、グルテン等のタンパク質、ピープロテイン、カゼイン、コラーゲン、ゼラチン又はリグニン等の天然由来のポリマーも含み得るが、これらの天然由来ポリマーは、物理的又は化学的に修飾されることが可能なことも不可能なこともある。デンプンは、構造破壊又は可塑化された形態で使用できる。後者の場合、可塑剤は、水又はポリオール、特にグリセロール、ポリグリセロール、イソソルビド、ソルビタン、ソルビトール、マンニトール又は尿素でもあり得る。組成物を調製するために、文書WO2010/010282A1に記載されている方法が特に使用され得る。
【0068】
これらの組成物は、好適には、熱可塑性プラスチックの転化のための従来の方法により製造できる。これらの従来の方法は、少なくとも1段階のポリマーの溶融又は軟化されたブレンディング及び1段階の組成物の回収を含み得る。そのようなブレンディングは、例えば、インターナルブレード(internal blade)若しくはローターミキサー、エクスターナルミキサー、又は一軸若しくは同方向回転若しくは異方向回転二軸押出機内で実施できる。しかし、このブレンディングを、押出により、特に同方向回転押出機を使用することにより実施することが好ましい。組成物の構成要素のブレンディングは、好適には、220から300℃の範囲の温度で、好ましくは不活性雰囲気下で実施できる。押出機の場合、組成物の種々の構成要素は、好適には、押出機に沿って配置された導入ホッパーを使用して導入できる。
【0069】
本発明は、本発明によるポリエステルコポリマーA、又は本発明によるポリエステルコポリマーA並びに1種若しくは複数種の添加剤及び/若しくは追加のポリマーを含む組成物を含む、物品にも関する。
【0070】
ポリエステルコポリマーAは、簡便には、フィルム、繊維、射出成形された部品、及び例えば容器等の包装材料等の物品の製造に使用できる。ポリエステルコポリマーAの使用は、そのようなフィルム、繊維、射出成形された部品又は包装材料が耐熱性であるか又は耐冷性であることが必要な場合に、特に好都合である。物品は、例えば織物工業で使用するための繊維であり得る。これらの繊維は、布を形成するために織られても、不織でもよい。上記の通り、物品は、フィルム又はシートであり得る。これらのフィルム又はシートは、カレンダー仕上げ、キャストフィルム押出又はフィルムブロー押出技法により製造できる。これらのフィルムは、ラベル又は絶縁体の製造に使用できる。この物品は、ポリエステルコポリマー又はポリエステルコポリマー並びに1種若しくは複数種の添加剤及び/若しくは追加のポリマーを含む組成物から、従来の転化技法を使用して製造できる。物品は、気体、液体、及び/又は固体を輸送するための容器でもあり得る。該当する容器は、哺乳瓶、フラスコ、ボトル、例えば発泡性又は非炭酸水ボトル、ジュースボトル、ソーダボトル、カーボイ、アルコール飲料ボトル、薬品ボトル又は化粧品用ボトル、皿、又は蓋であり得る。これらの容器はどのような大きさでもよい。ポリエステルコポリマーAは、例えば低温貯蔵及びディープフリーザー用途に特に好適であり得る。
【0071】
物品は、例えば、好適には、押出ブロー成形、熱成形又は射出ブロー成形により製造され得る。
【0072】
したがって、本発明は、簡便には、物品を製造する方法であって、本発明による1種又は複数種のポリエステルコポリマーAの使用を含み、好ましくは以下の工程:1)本発明による方法に従って得ることができるポリエステルコポリマーAを用意する工程;2)前記ポリエステルコポリマー、並びに任意に1種若しくは複数種の添加剤及び/又は1種若しくは複数種の追加のポリマーを溶融して、それによりポリマー融液を製造する工程;並びに3)ポリマー融液を、押出ブロー成形、熱成形及び/又は射出ブロー成形して物品にする工程を含む方法も提供する。
【0073】
物品は、溶融状態であるポリエステルの層の、金属上又は固体状態の接着剤組成物上の有機ポリマーに基づく層への塗布の段階を含む方法によっても製造できる。この段階は、加圧、オーバーモールド成形(overmoulding)、ラミネーション、押出ラミネーション、コーティング又は押出コーティングにより実施できる。
【0074】
以下の非限定的な実施例により本発明を更に説明する。
【実施例
【0075】
略語のリスト
AD=アジピン酸
BDO=1,4-ブタンジオール
DEG=ジエチレングリコール
DSC=示差走査熱量測定
FDCA=2,5-フランジカルボン酸
GPC=ゲル浸透クロマトグラフィー
HFIP=ヘキサフルオロ-2-プロパノール
MEG=(モノ)エチレングリコール
Mn=数平均分子量
Mw=重量平均分子量
PDI=多分散指数
PDO=1,3-プロパンジオール
PEF=ポリエチレンフラン-2,5-ジカルボキシレート
PEDFA=ポリ(エチレン-ジエチレン)フラノエートアジペート
PEDTA=ポリ(エチレン-ジエチレン)テレフタレートアジペートPET=ポリエチレンテレフタレート
PMMA=ポリ(メチルメタクリレート)
SA=コハク酸
TCE=1,1,2,2-テトラクロロエタン
TCE-d2=1,2-ジデューテロ-1,1,2,2-テトラクロロエタン
Tg=ガラス転移温度
【0076】
分析方法:
以下の実施例において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定した。GPC測定は35℃で実施した。計算のために、PMMA標準を基準物質として使用した。溶離液として、HFIPを1mL/分で使用した。GPC測定は、これらの条件下で、2つのPFG 7マイクロメートル(μm)Linear M(300×7.5mm)カラムを備えたAgilent HPLCシステムを有するHitachi Chromaster 5450で実施した。分子量の計算は、Astra 6ソフトウェアにより実施した。
【0077】
以下の実施例のポリエステルポリマー及びコポリマーのガラス転移温度は、加熱速度10℃/分で、窒素雰囲気中で示差走査熱量測定(DSC)を使用して決定した。第2の加熱サイクルにおいて、ガラス転移、(Tg)を記録した。
【0078】
以下の実施例のポリエステルポリマー及びコポリマー中のモノマー単位の含量は、プロトン核磁気共鳴(1H NMR)により決定した。ジオール及び二酸モノマー単位の含量は、重水素ジクロロメタン(deutero-dichromethane)を溶媒として、及びジクロロメタンを基準として使用して決定した。
【0079】
(実施例1 PETからのPEDTAの調製)
13.8mgのブチルスズヒドロキシドオキシド(0.07mmol)、6.00gのDEG(56.54mmol)、7.50gのAD(51.32mmol)及び19.51gのPET(市販のRAMA PET N180、101.54mmol)を、メカニカルスターラー、窒素ガス入口、縮合生成物を回収する受け器に接続した蒸留ヘッドを備えた100mLガラス反応器に量り入れた。ガラス反応器を油浴により加熱した。
1)反応器内容物を、窒素が流れる雰囲気(30mL/分)中で加熱し、油温度が240℃に達したらすぐに、撹拌を30rpmで開始した。15分後、温度を245℃に増加させた;撹拌を100rpmに増加させながら、15分間維持した;その後に、温度を255℃に増加させ、20分間維持し、次いで撹拌を150rpmに増加させた。温度及び撹拌速度を約200分維持したが、その間に反応器内容物が溶融し、透明な液体に変わった。
2)温度を255℃に増加させ、撹拌を100rpmで約60分間継続した。
3)200mbarの減圧で出発した後で、15分以内に、圧力を少なくとも2段階で1mbar未満に減少させ、同時に、温度を260~265℃に増加させた。この段階での反応時間はポリマー粘度に依存した。約120分後、トルクは30rpmで25Ncmに達し、次いで、周囲圧力に達するまで窒素ガスを導入し、撹拌を停止し、その後にPEDTAポリマーを反応器から取り出して分析できた。分析結果:DSCに基づいてTg=9.7℃;プロトンNMRは、総ジオールに基づいて38.6mol%DEG;総二酸に基づいて31.9mol%アジピン酸を示した。
【0080】
結果をTable 1(表1)にまとめる。
【0081】
【表1】
【0082】
(実施例2 PEFからのPEDFAの調製)
実施例1を、出発ポリエステルとしてPETの代わりにPEFにより繰り返した。反応条件は全て同じであった。
【0083】
結果をTable 2(表2)にまとめる。
【0084】
【表2】
【国際調査報告】