(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】発泡性耐火コーティング用の改良された樹脂系
(51)【国際特許分類】
C09K 21/14 20060101AFI20240719BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20240719BHJP
C08F 265/06 20060101ALI20240719BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20240719BHJP
C09D 4/02 20060101ALI20240719BHJP
C09D 133/00 20060101ALI20240719BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20240719BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20240719BHJP
【FI】
C09K21/14
C08F2/44 C
C08F265/06
C09D201/00
C09D4/02
C09D133/00
C09D7/63
C09D7/61
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506559
(86)(22)【出願日】2022-06-27
(85)【翻訳文提出日】2024-02-01
(86)【国際出願番号】 EP2022067499
(87)【国際公開番号】W WO2023011799
(87)【国際公開日】2023-02-09
(32)【優先日】2021-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319013746
【氏名又は名称】レーム・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Roehm GmbH
【住所又は居所原語表記】Deutsche-Telekom-Allee 9, 64295 Darmstadt, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ブルーノ ケラー
【テーマコード(参考)】
4H028
4J011
4J026
4J038
【Fターム(参考)】
4H028AA02
4H028AA07
4H028AA08
4H028AA24
4H028AA42
4H028AA44
4H028BA04
4J011PA69
4J011PC02
4J011PC08
4J011PC13
4J026AA43
4J026AA45
4J026AC09
4J026AC15
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4J026BA25
4J026BA27
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4J026DA12
4J026DA13
4J026DB06
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4J026DB13
4J026DB24
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4J026DB30
4J026DB32
4J026DB34
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4J026GA08
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4J038GA01
4J038HA216
4J038JB16
4J038JB36
4J038KA08
4J038KA11
4J038MA13
4J038PB05
4J038PC06
4J038PC08
(57)【要約】
本発明は、イントメッセントコーティング用の新規の反応性樹脂系および該樹脂系の製造方法に関する。イントメッセントコーティングは、特に、建築構造における鋼製桁のような金属部材の防火に用いられる。ここで、火災発生時に前述のコーティングの反応性発泡を生じさせることで、熱伝導率の低い耐火断熱層が金属桁上に形成され、これに伴って生じる断熱性により、前述の部材の熱誘起性の早期破壊が抑制される。ここで、本発明は、特に、第1のモノマー分を最大95重量%の度合いまで重合させ、次いで第2のモノマー混合物で希釈する新規の方法によって製造されるメタクリレート系樹脂系に関する。この場合に形成される組成物のポリマー成分のガラス転移温度は、先行技術と比較して特に低い。さらに、樹脂系に組み込まれた有機酸は、フィラー系との驚くべき相乗効果を奏する。このようにして製造された樹脂系は、その小孔および閉気孔性のフォーム構造により、温度誘起性の発泡において特に効率的であることが判明した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イントメッセントコーティング用の反応性樹脂の製造方法において、少なくとも1種の酸官能性モノマーを含む第1のモノマー混合物を、70重量%~95重量%の重合度まで重合させ、その後、前記重合を終了し、その際に形成されたポリマーは、Foxの式にしたがって算出される23℃未満のガラス転移温度を有し、前記重合の終了後、70重量%~95重量%のポリマーを含む混合物を、前記第1のモノマー混合物とは異なる第2のモノマー混合物で希釈することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記第1のモノマー混合物は、少なくとも90重量%がアクリレートおよび/またはメタクリレートからなり、前記第1のモノマー混合物中の前記酸官能性モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸および/または2-カルボキシエチルアクリレート、好ましくはメタクリル酸および/または2-カルボキシエチルアクリレートである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記形成されたポリマーは、前記酸官能性モノマーの繰返し単位を、前記形成されたポリマーの総重量に対して1重量%~10重量%、好ましくは2.5重量%~5重量%含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記第2のモノマー混合物は、前記第2のモノマー混合物の総重量に対して50重量%~90重量%のMMAを含む、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記第1のモノマー混合物は、前記酸官能性モノマーと、MMA、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレートおよび/またはスチレンから選択されるさらなるモノマーとからなる、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記形成されたポリマーは、10000~200000g/molの重量平均分子量M
wを有し、かつ-20℃~20℃、好ましくは-10℃~15℃のガラス転移温度を有する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記重合を、バッチ式で非連続的に、または連結流管を有する連続的に運転される撹拌槽で連続的に実施し、ここで、前記反応を、温度の低下、阻害剤の添加および/または開始剤の消費によって終える、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記重合の終了時の重合度は、85重量%~95重量%である、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記第2のモノマー混合物は、それぞれ前記第2のモノマー混合物の総重量に対して、少なくとも90重量%のアクリレートおよび/またはメタクリレート、好ましくはMMA、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレートおよび/またはエチルヘキシル(メタ)アクリレート、5重量%までの酸官能性モノマー、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸および/または2-カルボキシエチルアクリレートならびに任意にスチレンを含む、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記第2のモノマー混合物を、完全に重合したときにFoxの式によるガラス転移温度が50℃~120℃、好ましくは60℃~90℃であるポリマーとなるように選択する、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
2成分系イントメッセントコーティング用の配合物であって、前記配合物が、前記2成分系の混合後に、それぞれ前記2成分系の総重量に対して、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法により製造可能な反応性樹脂20重量%~40重量%、発泡剤35重量%~60重量%、過酸化物および/またはアゾ開始剤0.1重量%~2.5重量%、任意に促進剤2重量%まで、任意に添加剤4.9重量%~15重量%、ならびにフィラー5重量%~30重量%を含むことを特徴とする、2成分系イントメッセントコーティング用の配合物。
【請求項12】
2成分系イントメッセントコーティング用の配合物であって、前記配合物が、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法により製造可能な反応性樹脂の前記2成分系の混合後に、ポリホスフェート対メラミンの発泡剤比=1:1~3:1を有することを特徴とする、2成分系イントメッセントコーティング用の配合物。
【請求項13】
前記配合物は、さらに顔料を含む、請求項11記載の配合物。
【請求項14】
金属表面のイントメッセントコーティング方法において、請求項11または12記載の配合物を製造し、1~20分以内に前記金属表面に施与し、そこで-5℃~30℃の温度で60分以内に硬化させることを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イントメッセントコーティング用の新規の反応性樹脂系および該樹脂系の製造方法に関する。イントメッセントコーティングは、特に、建築構造における鋼製桁のような金属部材の防火に用いられる。ここで、火災発生時に前述のコーティングの反応性発泡を生じさせることで、熱伝導率の低い耐火断熱層が金属桁上に形成され、これに伴って生じる断熱性により、前述の部材の熱誘起性の早期破壊が抑制される。
【0002】
ここで、本発明は、特に、第1のモノマー混合物を最大95重量%の度合いまで重合させ、次いで第2のモノマー混合物で希釈する新規の方法によって製造されるメタクリレート系樹脂系に関する。この場合に形成される組成物のポリマー成分のガラス転移温度は、先行技術と比較して特に低い。さらに、樹脂系に組み込まれた有機酸は、フィラー系との驚くべき相乗効果を奏する。このようにして製造された樹脂系は、その小孔および閉気孔性のフォーム構造により、温度誘起性の発泡において特に効率的であることが判明した。
【0003】
先行技術
第一世代のイントメッセントコーティング系は、アクリレート、メタクリレートおよび/またはビニルモノマー系の高分子量の熱可塑性樹脂をベースとしており、適切な金属表面に施与するために多量の溶媒分または水分を必要とし、それに応じて乾燥時間も長くなる。
【0004】
このようなイントメッセントコーティングは、建設段階にて現場で施与するのが通例である。しかし、建設現場に搬入する前に現場外で施与するのが、管理された条件下で行えるため好ましい。しかし、乾燥に時間がかかる場合には、特に完全を期すためにコーティングを異なる面から連続して行う必要があるため、処理時間が非効率的になる。
【0005】
中国特許出願公開第112029367号明細書には、例えば、水中にコアシェル型粒子を含有するエマルションの形態のイントメッセント系が記載されている。コアシェル型粒子のコアは架橋されている。
【0006】
中国特許出願公開第111995919号明細書には、カナダ国特許出願公開第3028431号明細書と同様に、極薄のイントメッセントコーティングとしてのアクリルポリマーのエマルションが開示されている。アクリルポリマーはコアシェル型粒子の形態で存在し、コアは架橋されている。
【0007】
特開2003-171579号公報は、未重合(メタ)アクリルモノマー混合物と(メタ)アクリルポリマーとの混合物に関する。この混合物は、イントメッセントコーティングとして使用することができる。所定の重合度での重合終了は開示されていない。
【0008】
独国特許出願公開第19630063号明細書は、鉄道車両用内装部品に関する。イントメッセントコーティングは開示されていない。
【0009】
エポキシ系イントメッセントコーティングは、有利にはオフショア産業で使用されている。該コーティングは、耐老化性に優れ、乾燥時間が比較的短いという特徴がある。ポリウレタン系も集中的に研究されてきた。ポリウレタン系も同様に、乾燥時間が比較的短く、耐水性に優れているという特徴がある。しかし、鋼材へのコーティングの密着性が低いため、火災試験の結果は満足のいくものではなかった。その詳細は、Development of alternative technologies for off-site applied intumescent, Longdon, P.J., European Commission, [Report] EUR (2005), EUR 21216, 1-141に記載されている。
【0010】
イントメッセントコーティングのもう1つの世代は、(メタ)アクリレート反応性樹脂をベースとしている。この樹脂の施与には、溶媒を必要とせず、施与後の樹脂の硬化が上述の系に比べて比較的迅速であるという大きな利点がある。これにより、処理がより迅速となるだけでなく、特に、施与されたコーティング中の残留揮発性成分の含有量も少なくなる。このようなイントメッセントコーティング系は、欧州特許第1636318号明細書で初めて開示された。
【0011】
その後、(メタ)アクリレートをベースとする系のさらなる改良が、例えば欧州特許第2171004号明細書に記載された。これは、金属密着性を向上させるために酸基の割合が特に高いという特徴を有する。欧州特許第2171005号明細書には、このような系の発展形態が開示されている。これは特に、スペーサー基を有する二酸または共重合可能な酸の共重合を特徴とする。これにより、さらに金属密着性を向上させることができる。
【0012】
しかし、これらの系にはいずれもさらなる改良の余地がある。例えば、配合に関する自由度が非常に制約されている。また、比較的厚い層しか施与できない。これらの欠点から複合的に、例えば、必要時や火災時のフォーム高さを最小限にしか設定できないことにもなる。
【0013】
さらに、樹脂の製造方法が比較的複雑であることも欠点となる。先行技術に記載されている、通常であれば非常に有利なすべての(メタ)アクリレート系に共通しているのは、この場合には、樹脂に含まれる固体熱可塑性ポリマーをまず別個に製造し、次にモノマー成分に溶解させ、添加剤で予備成形した後、最終的に2成分系として施与する直前に最終配合することである。このプロセスシーケンスは比較的複雑であり、簡略化に大きな関心が寄せられている。
【0014】
国際公開第2021/180488号には、シロップ法でのイントメッセントコーティング用メタクリレート系反応性樹脂の製造について初めて記述されている。ここでは、モノマー混合物を70%の重合度まで重合させ、次いで重合を終了する。ここで、この組成物は、懸濁ポリマーまたは粒状物をモノマー混合物に溶解して得られる既知の反応性樹脂と本質的に類似している。相違点は、特にポリマー鎖の種類によって生じる。
【0015】
課題
したがって、本発明の課題は、(メタ)アクリレート系イントメッセントコーティングを製造するための著しく簡略化された方法を提供することであった。
【0016】
特に、先行技術に記載されている(メタ)アクリレート系イントメッセントコーティングの製造方法と比較して、少なくとも1つの単離ステップまたは配合ステップを省くことができる簡略化された製造方法が必要とされていた。
【0017】
さらに、非常に良好な金属密着性および容易な加工性に加えてさらに、添加剤の付与およびその後の発泡制御の調整に関して、特にその後のフォーム高さおよびフォーム品質の事前設定、例えば特に高い閉気孔フォームの割合に関してより高い自由度を可能にする、2成分系イントメッセントコーティング用の新規の配合物を提供することが課題であった。
【0018】
明示的に言及されていないさらなる課題は、以下で、発明の詳細な説明または実施例から、および本発明の全体的な文脈から明らかとなり得る。
【0019】
解決手段
これらの課題は、イントメッセントコーティング用の反応性樹脂の新規の製造方法を提供することによって解決される。本方法では、まず、少なくとも1種の酸官能性モノマーを含む第1のモノマー混合物を、70重量%~95重量%の重合度まで重合させる。その後、所望の重合度に達したら、重合を終了する。その際に形成されたポリマーは、本発明によれば、Foxの式にしたがって算出される23℃未満のガラス転移温度を有し、この温度は、先行技術における対応する樹脂について報告されているものより明らかに低い。さらに、本発明による方法は、重合の終了後、70重量%~95重量%のポリマーを含む混合物を、第1のモノマー混合物とは異なる第2のモノマー混合物で希釈することを特徴とする。
【0020】
先行技術に記載されている発泡性耐火コーティングは、特に多成分系からなり、これは、モノマーに溶解した熱可塑性ポリマーから基本配合されている。一方で、本発明は、液状ポリマー、すなわち、23℃未満の室温にて未溶解状態で液状であるようなガラス転移温度を有するポリマーも同様に使用に適していることを示している。さらに、特に2-カルボキシエチルアクリレートのような重合された酸成分は、基材への密着性の向上の役割を果たし、特にアクリル酸またはメタクリル酸のような付加的に配合された酸成分は、耐火塗料としての最終的な使用において驚くべきフォーム高さの制御の役割を果たす。
【0021】
Foxの式は、均一な(すなわち、統計的に分布した繰返し単位を有する)コポリマーのガラス転移温度を算出するための、非常に単純でありながら現実に近い結果が得られる方法であり、(メタ)アクリレートコポリマー(任意にスチレンとのコポリマー)に特に有用であることが証明されている。ここで、(メタ)アクリレートという表記には、コ-アクリレート、コ-メタクリレート、およびアクリレートとメタクリレートとを含むコポリマーが包含される。ここで、2種のモノマーの場合、Foxの式は以下のとおりであるが、これを、同様に多数の異なるコモノマーに拡張することも可能である:
Tg=Tg1(x1)+Tg2(x2)…+Tgy(xy)
ここで、
Tg:理論的に求められたコポリマーのガラス転移温度
Tgy:モノマーyのホモポリマーのガラス転移温度
xy:モノマー混合物中またはポリマーにおける繰返し単位中のモノマーyの重量割合。
【0022】
本発明によれば、すべてのガラス転移温度のデータは、フリーラジカルにより、これに慣用の40℃~120℃の重合温度で製造されたポリマーに関するものである。はるかにより低い温度で、例えばアニオン重合によって、またはGTPによって立体選択的に製造されたエキゾチックポリマーは、本発明には関与しない。このようなポリマーの場合、立体規則性が大きく異なるため、Foxの式を選択された形態で用いることはできない。ラジカル重合によって製造されたホモポリマーのガラス転移温度は、文献から知られている。
【0023】
本発明の範囲において、モノマー混合物とは、通例、溶媒を含まないモノマー混合物を意味すると理解される。特に、本発明の趣意におけるモノマー混合物は、水を含まない。したがって、モノマー混合物は、好ましくはモノマーからなる混合物である。これらの説明および好ましい形態は、第1のモノマー混合物および第2のモノマー混合物の双方にそれぞれ独立して当てはまる。
【0024】
第1のモノマー混合物は、好ましくは、第1のモノマー混合物の総重量に対して少なくとも90重量%がアクリレートおよび/またはメタクリレートからなる。ここで、同様に好ましくは、第1のモノマー混合物中の酸官能性モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸および/または2-カルボキシエチルアクリレート、好ましくはメタクリル酸および/または2-カルボキシエチルアクリレートである。さらに、第1のモノマー混合物は、好ましくは、酸官能性モノマーの他に、さらなるモノマーとして、メチル(メタ)アクリレート(MMA)、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレートおよび/またはスチレンを含む。第1のモノマー混合物は、特に好ましくは、第1のモノマー混合物の総重量に対して少なくとも95重量%が、非常に特に好ましくは専ら、ここで言及されるモノマーからなる。
【0025】
ここで、モノマー混合物は、非常に特に好ましくは、20重量%~45重量%、特に好ましくは25重量%~40重量%のメタクリレート、例えば特にエチルヘキシルメタクリレートを含む。好ましくは、酸官能性モノマーは、モノマー混合物中で、それぞれ第1のモノマー混合物の総重量に対して10重量%まで使用される。
【0026】
本発明の一実施形態では、第1のモノマー混合物は、スチレンを含まない。したがって、第1のモノマー混合物は、好ましくはスチレンを含まない。
【0027】
アクリレートおよび/またはメタクリレートとしての第1のモノマー混合物が架橋剤を含まないことがさらに好ましい。特に好ましくは、第1のモノマー混合物は架橋剤を含まない。
【0028】
「架橋剤」とは、本発明の範囲において、本発明による重合、特にラジカル重合において重合し得る官能基を2つ以上含むモノマーを意味すると理解される。
【0029】
重合終了時の重合度は、好ましくは85重量%~95重量%である。特に好ましくは、本発明により第1のモノマー混合物から形成されたポリマーは、酸官能性モノマーの繰返し単位を、形成されたポリマーの総重量に対して1重量%~10重量%、好ましくは2.5重量%~5重量%含む。さらに好ましくは、形成されたポリマーは、10000~200000g/mol、好ましくは20000~150000g/mol、特に好ましくは30000~100000g/molの重量平均分子量Mwを有し、かつ-20℃~20℃、好ましくは-5℃~15℃のガラス転移温度を有する。
【0030】
ここで、これらのガラス転移温度のデータも、Foxの式によって予め設定された値に関するものである。最終的に実際に得られるガラス転移温度は、重合後、例えばDSC(示差走査熱量測定、例えばISO 11357-1、特に-2に準拠)によって決定することができる。上記のモノマーを使用する場合、この方法で決定された値は、通常はFoxの式によって予め設定された値と最小限の差しかない。これら以外のモノマーの場合、ごくまれに鎖中の繰返し単位がブロック状に分布していることがある。ここで、非常に稀なケースでは、ブロック形成が顕著になり、ポリマーが2つ以上のガラス転移温度を持つことがある。本発明による、このような非常に稀で好ましくない場合には、もはやFoxの式によりガラス転移温度を算出するのではなく、上記で定義した規格ISO 11357-2に準拠して最も顕著なガラス転移温度を決定することが重要である。
【0031】
ここで、重量平均分子量は、溶離液としてTHFを用い、少なくとも2つの適切なカラムを用いたPMMA標準物質に対するGPCによって決定される。
【0032】
驚くべきことに、本発明による方法で形成されたポリマーが、周囲の室温未満のガラス転移温度を有する場合、すなわち、単離された状態であっても室温で液体である場合に、特に有利であることが判明した。
【0033】
重合は特に、バッチ式で非連続的に実施することも、連結流管を有する連続的に運転される撹拌槽で連続的に実施することもできる。ここで、反応の終了は、原則的に運転様式にかかわらず、しかし運転様式にそれぞれ適合させて、温度の低下、阻害剤の添加および/または単に開始剤の消費によって終えることができる。
【0034】
好ましくは、第2のモノマー混合物は、第2のモノマー混合物の総重量に対して50重量%~90重量%、特に好ましくは75重量%~85重量%のメチル(メタ)アクリレート(MMA)を含む。さらに好ましくは、第2のモノマー混合物は、それぞれ第2のモノマー混合物の総重量に対して、少なくとも90重量%がアクリレートおよび/またはメタクリレートならびに任意にスチレンから、好ましくはMMA、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレートおよび/またはエチルヘキシル(メタ)アクリレートからなり、5重量%までが酸官能性モノマー、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸および/または2-カルボキシエチルアクリレートならびに任意に最大で5重量%がスチレンからなる。
【0035】
本発明の代替的な好ましい一実施形態では、第2のモノマー混合物は、それぞれ第2のモノマー混合物の総重量に対して55重量%~80重量%、特に好ましくは60重量%~75重量%のメタクリレートを含み、ここで、メチル(メタ)アクリレートおよびn-ブチル(メタ)アクリレートは、例えば、約80重量%:20重量%~50重量%:50重量%の比で使用される。
【0036】
一実施形態では、第2のモノマー混合物は、第2のモノマー混合物の総重量に対して0.5重量%~2重量%の範囲の酸官能性モノマーを含む。
【0037】
「酸官能性モノマー」とは、本発明の範囲において、ちょうど1種の酸官能性モノマーだけでなく、2種以上の酸官能性モノマーの混合物をも意味すると理解される。
【0038】
さらに好ましくは、第2のモノマー混合物は、スチレンを含まない。したがって、第2のモノマー混合物は、好ましくはスチレンを含まない。特に好ましくは、反応性樹脂は、スチレンを含まない。
【0039】
第2のモノマー混合物が架橋剤を含まないことがさらに好ましい。特に好ましくは、反応性樹脂は、架橋剤を含まない。「架橋剤」という用語については、先に記載した説明および好ましい形態が当てはまる。
【0040】
特に好ましくは、第2のモノマー混合物は、完全に重合したときにFoxの式によるガラス転移温度が50℃~120℃、好ましくは60℃~90℃であるポリマーとなるように選択される。ここで、第2のモノマー混合物の主にこれらのモノマーから形成される完成したイントメッセントコーティング中のポリマーは、ほとんどの場合、Foxの式によって算出される第2のモノマー混合物の理論的ガラス転移温度から逸脱するはずであることを明確にすべきである。なぜならば、この第2の重合は、第2のモノマー混合物と、反応性樹脂の総重量に対して30重量%までの、第2のモノマー混合物とは異なる残りの第1のモノマー混合物との混合物に基づいて硬化時に起こるためである。
【0041】
本発明による方法に加えて、2成分系イントメッセントコーティング用の新規の配合物も本発明の主題である。本配合物は特に、2成分系の混合後の時点で、該配合物が、本発明による方法によって製造された反応性樹脂20重量%~40重量%、発泡剤35重量%~60重量%、過酸化物および/またはアゾ開始剤0.1重量%~2.5重量%、好ましくは過酸化物のみ、例えば過酸化ベンゾイル、任意に促進剤2重量%まで、任意に添加剤4.9重量%~15重量%、ならびにフィラー5重量%~30重量%を含むことを特徴とする。任意に、配合物は、それぞれ2成分系の総重量に対して追加の顔料を含むことができる。
【0042】
添加剤は特に、湿潤剤、皮膜形成剤、脱気試薬および/または分散剤であってよい。任意に使用される促進剤は、通常は第二級アミンである。
【0043】
フィラーは、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、石英または他の、特に熱的に安定した無機化合物である。火災時のコーティングの無秩序な追加発泡を避けるために、熱分解を起こし得る炭酸塩のような無機フィラーを、比較的わずかな程度でのみ使用することができる。特に好ましいフィラーは、二酸化チタンである。
【0044】
発泡剤については、様々な選択肢が存在する。特に好ましい一代替形態では、190℃~300℃でリン酸に転化されるポリホスフェートを使用することができる。配合物はさらにペンタエリスリトールを含み、このペンタエリスリトールは、その後リン酸の存在下で300℃を超えると、水および二酸化炭素の脱離下にカーボンフォームを形成する。ここで、水および二酸化炭素が発泡剤として作用する。ここで、本代替形態のさらなる利点は、ポリホスフェートおよびリン酸の双方が追加の難燃剤として作用することである。
【0045】
第2の代替形態では、発泡剤の基材としてメラミンが使用され、このメラミンは350℃を超えるとアンモニア、窒素および二酸化炭素に分解され、ここで、これら3つすべてが発泡剤として作用する。
【0046】
第3の特に好ましい変形例として、これら2つの選択肢を組み合わせることにより、難燃作用以外のさらなる利点を追加的に実現することが可能になる。このようにして、発泡の程度をより細かく調整することが可能になる。さらに、発泡は徐々に行われ、これによりさらに、フォーム安定性に関する利点が生じる。
【0047】
本発明による反応性樹脂と並行して、驚くべきことにポリホスフェートおよびメラミンが3:1~1:1、例えば2:1の比で混合されると、特に小孔および閉気孔性のフォームが得られる。
【0048】
開始剤は、通常は1種以上の過酸化物および/またはアゾ開始剤、好ましくは過酸化物からなる。開始剤を、促進剤、通常は1種以上の第三級アミン、特に芳香族第三級アミンと一緒に開始剤系として使用することができる。このような開始剤の特に適した例は、過酸化ジベンゾイルであり、これを、例えば信頼性が高く予備配合されたペーストとして使用することもでき、その際、このペーストの助剤、例えばパラフィンは、配合物中で適切な濃度であれば妨害とならない。
【0049】
促進剤の例は、特にN,N-ジアルキル-p-トルイジン、例えばN,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)-p-トルイジンまたはN,N-ジメチル-p-トルイジンまたはN,N-ジメチルアニリンである。
【0050】
実際のコーティング組成物の配合は、次のように行うことができる:反応性樹脂に、発泡剤、添加剤、任意のフィラーおよびさらなる任意フィラーが配合される。次に、この中間配合物が、例えば大きさが等しい2つのフラクションに分割される。次いで、これらのフラクションの一方が促進剤とさらに混合される。よって、これらの2つのフラクションは、長期間にわたって貯蔵安定性である。
【0051】
次いで、実際の施与の前に、促進剤を含まないフラクションは、開始剤または開始剤混合物と混合される。長期間の貯蔵または輸送の後に、例えばフィラーが沈殿している可能性があるため、まず双方のフラクションをもう一度撹拌する必要があり得る。開始剤が撹拌またはそれとは異なり混合された後、次いで、2成分系の2つのフラクション同士が混合される。その際、反応性樹脂のモノマー成分の重合が開始され、これがいわゆるポットライフの開始であり、このポットライフ内に基材への施与、すなわち例えば鋼製桁への施与が行われなければならない。最新の施与装置では、2成分系の2つのフラクションの混合を、圧力により誘発される噴霧の直前に施与ノズルの混合チャンバで行うこともできる。
【0052】
ポットライフは、開始剤および促進剤の種類および濃度と、モノマー混合物と、外部影響因子、例えば周囲温度との組み合わせに由来する。これらの要因は、当業者であれば容易に見積もり、調整することができる。数分ないし数時間のポットライフで作業するのが通常であり、20時間を超えることもある。
【0053】
さらに、金属表面のイントメッセントコーティング方法も本発明の主題である。本方法では、上記の2成分系イントメッセントコーティング用配合物を製造し、1~20分以内に金属表面に施与し、そこで-5℃~30℃、好ましくは0℃~30℃の温度で60分以内に硬化させる。ここで、未発泡コーティングの好ましい層厚は、1~20mm、特に好ましくは1.5~7.5mmである。ここで、これは、コーティングが、火災時に好ましくは層厚1mmあたり5~100mm、好ましくは層厚1mmあたり15~50mmの特定の層厚のフォームを生じるように配合される。
【0054】
実施例
実施例1
モノマー供給工程:
MMA23重量%、エチルヘキシルメタクリレート33重量%、n-ブチルメタクリレート36重量%およびβ-CEA(2-カルボキシエチルアクリレート)8重量%からなるポリマー成分の第1のモノマー混合物を、目標分子量を約60,000g/molとして、室温で、チオグリコール酸2-エチルヘキシルエステル1重量%およびジ-(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネートまたは2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)0.6重量%と混合する。第1のモノマー混合物の25%の割合を、撹拌しながらプレバッチとして74℃に加熱し、加熱を止め、86℃で、第1のモノマー混合物の75%の割合を連続的に添加することにより、約90℃~149℃で自己発熱的に重合させる。約30~60分の計量供給時間後、プロセスは完了する。約45分の後反応時間の後、メチルメタクリレート79重量%、エチルヘキシルアクリレート20重量%およびメタクリル酸1重量%からなる第2のモノマー混合物を、ポリマー割合30重量%およびモノマー混合物70重量%の比で混合することによってバッチを希釈し、30℃まで冷却し、15ppm(15mg/kg)の2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(Topanol O)で安定化させ、次いでワックス1.2重量%(滴点約60℃)およびN,N-ビス-(2-ヒドロキシプロピル)-p-トルイジン1.9重量%を配合する。
【0055】
粘度を、流下時間30秒間にわたってDINカップ4によって決定し、これは20℃で30~150mPa・sに相当する。目標のポリマー含有量は、約30~35%である。形成されたポリマーは、約-5℃のガラス転移温度を有し、架橋されていない。
【0056】
実施例2
開始剤供給工程
MMA23重量%、エチルヘキシルメタクリレート33重量%、n-ブチルメタクリレート36重量%およびβ-CEA(2-カルボキシエチルアクリレート)8重量%からなるポリマー成分の第1のモノマー混合物を、室温で、チオグリコール酸2-エチルヘキシルエステル約2重量%と混合する。第1のモノマー混合物を、撹拌しながら74℃に加熱し、加熱を止め、86℃で、目標分子量を約60,000g/molとして、ジ-(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネートまたは2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)0.6重量%をn-ブチルアセテート中の10重量%溶液として連続的に添加することにより、約90℃~120℃で自己発熱的に重合させる。約60~120分の計量供給時間後、プロセスは完了する。約45分の後反応時間の後、メチルメタクリレート79重量%、エチルヘキシルアクリレート20重量%およびメタクリル酸1重量%からなる第2のモノマー混合物を、ポリマー割合30重量%およびモノマー混合物70重量%の比で混合することによってバッチを希釈し、30℃まで冷却し、15ppm(15mg/kg)の2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(Topanol O)で安定化させ、次いでワックス1.2重量%(滴点約60℃)およびN,N-ビス-(2-ヒドロキシプロピル)-p-トルイジン1.9重量%を配合する。
【0057】
粘度を、流下時間30秒間にわたってDINカップ4によって決定し、これは20℃で30~150mPa・sに相当する。目標のポリマー含有量は、約30~35%である。形成されたポリマーは、約-5℃のガラス転移温度を有し、架橋されていない。
【0058】
比較例1:
DEGALAN(登録商標)1710およびDEGALAN(登録商標)1720を等量で混合する。
【0059】
樹脂系の硬化:
樹脂混合物に対して2重量%の過酸化ベンゾイル。
【0060】
比較例1:
ポットライフ:18分
Tmax:34分後に85℃、目標:15~40分後に70℃~130℃
ガラス転移温度:64℃。
【0061】
実施例1:
ポットライフ:18分
Tmax:42分後に90℃、目標:15~40分後に70℃~130℃
ガラス転移温度:約-5℃および約74℃。
【0062】
ここで、低い方のガラス転移温度は、第1のモノマー混合物の部分的な重合によるポリマーに関するものであり、高い方のガラス転移温度は、コーティングの最終硬化時に形成されたポリマーに関するものである。
【0063】
耐火コーティングの配合
使用例:
実施例1および比較例1による反応性樹脂33.8重量%に、それぞれ、リン酸アンモニウム30.0重量%、ペンタエリスリトール9.2重量%、メラミン15.0重量%、二酸化チタン10.0重量%、ならびにカオリンおよび湿潤剤各1重量%を予備配合する。その後、これらの配合物をそれぞれ大きさの等しい2つのフラクションに分け、その際、一方のフラクションには、配合物全体に対して0.5重量%の過酸化ベンゾイルを加える。その後、これら2つのフラクションを混ぜ合わせ、少量の一部を取り出す。量の多い方の部分を、層厚2000μmでの鋼板のコーティングに使用し、量の少ない方の試料を、ポットライフおよび混合後の最高温度の測定に使用する。
【0064】
発泡実験
High Therm VMK 39マッフル炉での試験
開始樹脂フィラー系を、脱脂した厚さ0.8mmの鋼板に3000μmのブレードで施与する。24時間硬化させた後、低温にマッフル炉に入れ、所望の温度に加熱する。この温度に達した後、この温度を1時間保持し、次いで放冷する。
【0065】
【0066】
実施例1および実施例2の結果は、より高い比フォーム高さを示し、これにより、より優れた防火効果を発揮することができる。
【国際調査報告】