(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】クジノシドA化合物の結晶、その薬物組成物および応用
(51)【国際特許分類】
C07H 15/24 20060101AFI20240719BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20240719BHJP
A61P 11/08 20060101ALI20240719BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240719BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240719BHJP
A61K 36/185 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
C07H15/24 CSP
A61K31/7048
A61P11/08
A61P11/00
A61P29/00
A61K36/185
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506629
(86)(22)【出願日】2022-08-03
(85)【翻訳文提出日】2024-02-14
(86)【国際出願番号】 CN2022109901
(87)【国際公開番号】W WO2023011512
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】202110891737.7
(32)【優先日】2021-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516294609
【氏名又は名称】上海凱屹医薬科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI KE PHARMACEUTICAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】408G Main Building, No.63 Runan Blvd, Huangpu District, Shanghai, China
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬 明
【テーマコード(参考)】
4C057
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4C057AA06
4C057BB04
4C057DD01
4C057JJ55
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086EA10
4C086EA11
4C086GA15
4C086GA17
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA13
4C086MA55
4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZA61
4C086ZB11
4C088AB12
4C088AC05
4C088BA08
4C088BA13
4C088BA32
4C088CA14
4C088NA14
4C088ZA59
4C088ZA61
4C088ZB11
(57)【要約】
本発明はクジノシドA化合物の結晶、その薬物組成物および応用を提供し、前記結晶は、結晶A、B、C、D、E、G、J、KおよびLを含み、各結晶の粉末X線回折(XRPD)図のピークは明細書記載の通りである。本発明の結晶、特に結晶A、CおよびJは、適切な条件下安定に存在できる。本発明の結晶は、肺疾患を治療する薬物組成物の調製に用いられる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記結晶A、C、J、B、D、E、G、KおよびLから選ばれるクジノシドA化合物の結晶であって、以下の特徴を有する、クジノシドA化合物の結晶。
前記結晶Aの粉末X線回折(XRPD)図において、下記2θにピークが存在する:6.7°±0.2°、7.3°±0.2°、7.9°±0.2°、10.5°±0.2°、10.9°±0.2°、14.1°±0.2°;
前記結晶Cの粉末X線回折(XRPD)図において、下記2θにピークが存在する:7.8°±0.2°、12.7°±0.2°、14.4°±0.2°、14.9°±0.2°、16.3°±0.2°、18.6°±0.2°、25.1°±0.2°;
前記結晶Jの粉末X線回折(XRPD)図において、下記2θにピークが存在する:7.7°±0.2°、9.3°±0.2°、12.1°±0.2°、14.1°±0.2°、15.1°±0.2°、16.6°±0.2°;
前記結晶Bの粉末X線回折(XRPD)図において、下記2θにピークが存在する:7.4°±0.2°、7.9°±0.2°、11.8°±0.2°、12.5°±0.2°、14.3°±0.2°、15.4°±0.2°;
前記結晶Dの粉末X線回折(XRPD)図において、下記2θにピークが存在する:6.2°±0.2°、9.9°±0.2°、12.4°±0.2°;
前記結晶Eの粉末X線回折(XRPD)図において、下記2θにピークが存在する:5.6°±0.2°、11.1°±0.2°、14.4°±0.2°;
前記結晶Gの粉末X線回折(XRPD)図において、下記2θにピークが存在する:5.7°±0.2°、7.8°±0.2°、9.2°±0.2°、9.9°±0.2°、17.5°±0.2°、19.8°±0.2°、20.0°±0.2°、28.5°±0.2°、37.8°±0.2°;
前記結晶Kの粉末X線回折(XRPD)図において、下記2θにピークが存在する:7.6°±0.2°、11.1°±0.2°、12.1°±0.2°、14.3°±0.2°;
前記結晶Lの粉末X線回折(XRPD)図において、下記2θにピークが存在する:9.5°±0.2°、12.3°±0.2°、13.6°±0.2°、14.5°±0.2°、15.4°±0.2°、16.2°±0.2°。
【請求項2】
前記結晶Aの粉末X線回折(XRPD)図において、下記2θにさらにピークが存在する:3.6°±0.2°、12.8°±0.2°、13.2°±0.2°、13.6°±0.2°、15.2°±0.2°、16.1°±0.2°、18.3°±0.2°、24.1°±0.2°;
前記結晶Bの粉末X線回折(XRPD)図において、下記2θにさらにピークが存在する:4.8°±0.2°、8.1°±0.2°、14.6°±0.2°;
前記結晶Cの粉末X線回折(XRPD)図において、下記2θにさらにピークが存在する:3.9°±0.2°、8.3°±0.2°、13.2°±0.2°、19.5°±0.2°、20.3°±0.2°;
前記結晶Dの粉末X線回折(XRPD)図において、下記2θにさらにピークが存在する:4.5°±0.2°、7.2°±0.2°、12.9°±0.2°、19.0°±0.2°;
前記結晶Eの粉末X線回折(XRPD)図において、下記2θにさらにピークが存在する:4.5°±0.2°、7.7°±0.2°、13.6°±0.2°、18.1°±0.2°、19.8°±0.2°、20.8°±0.2°、28.0°±0.2°;
前記結晶Gの粉末X線回折(XRPD)図において、下記2θにさらにピークが存在する:3.4°±0.2°、7.3°±0.2°、12.0°±0.2°、14.4°±0.2°、17.0°±0.2°、18.8°±0.2°、22.5°±0.2°、25.5°±0.2°、25.7°±0.2°、26.1°±0.2°;
前記結晶Jの粉末X線回折(XRPD)図において、下記2θにさらにピークが存在する:3.5°±0.2°、4.7°±0.2°、12.7°±0.2°、13.7°±0.2°、15.5°±0.2°、16.2°±0.2°、18.1°±0.2°;
前記結晶Kの粉末X線回折(XRPD)図において、下記2θにさらにピークが存在する:4.5°±0.2°、4.9°±0.2°、5.5°±0.2°、8.2°±0.2°、13.5°±0.2°、18.7°±0.2°;
前記結晶Lの粉末X線回折(XRPD)図において、下記2θにさらにピークが存在する:3.7±0.2°、7.9°±0.2°、16.9°±0.2°、17.3°±0.2°、18.8°±0.2°、20.4°±0.2°;
ことを特徴とする請求項1に記載の結晶。
【請求項3】
前記結晶Aの粉末X線回折(XRPD)図において、表1に示される2θにピークが存在する;
前記結晶Bの粉末X線回折(XRPD)図において、表14に示される2θにピークが存在する;
前記結晶Cの粉末X線回折(XRPD)図において、表2に示される2θにピークが存在する;
前記結晶Dの粉末X線回折(XRPD)図において、表15に示される2θにピークが存在する;
前記結晶Eの粉末X線回折(XRPD)図において、表16に示される2θにピークが存在する;
前記結晶Gの粉末X線回折(XRPD)図において、表17に示される2θにピークが存在する;
前記結晶Jの粉末X線回折(XRPD)図において、表3に示される2θにピークが存在する;
前記結晶Kの粉末X線回折(XRPD)図において、表20に示される2θにピークが存在する;
前記結晶Lの粉末X線回折(XRPD)図において、表21に示される2θにピークが存在する;
ことを特徴とする請求項1または2に記載の結晶。
【請求項4】
前記結晶Aは、以下のいずれか一つまたは複数の特徴を有する、請求項1に記載の結晶。
(1)基本的に
図1aに示される粉末X線回折(XRPD)図を有する;
(2)基本的に
図1bに示される示差走査熱量(DSC)解析図を有する;
(3)基本的に
図1cに示される熱重量分析(TGA)図を有する;および
(4)基本的に
図1dに示される動的水分吸着(DVS)図を有する。
【請求項5】
前記結晶Cは、以下のいずれか一つまたは複数の特徴を有する、請求項1に記載の結晶。
(1)基本的に
図2aに示される粉末X線回折(XRPD)図を有する;
(2)基本的に
図2bに示される示差走査熱量(DSC)解析図を有する;
(3)基本的に
図2cに示される熱重量分析(TGA)図を有する;および
(4)基本的に
図2dに示される動的水分吸着(DVS)図を有する。
【請求項6】
前記結晶Jは、以下のいずれか一つまたは複数の特徴を有する、請求項1に記載の結晶。
(1)基本的に
図3aに示される粉末X線回折(XRPD)図を有する;
(2)基本的に
図3bに示される示差走査熱量(DSC)解析図を有する;
(3)基本的に
図3cに示される熱重量分析(TGA)図を有する;および
(4)基本的に
図3dに示される動的水分吸着(DVS)図を有する。
【請求項7】
クジノシドA化合物結晶Aの作製方法であって、以下の内容を含む:
苦丁茶を浸透抽出、濃縮した後に、抽出物エキスを得る;エキスを希釈して遠心分離し、粗製品を得る;粗製品を高圧クロマトグラフィーで精製した後に、脱色、再結晶、凍結乾燥をし、最後は粉砕し、結晶Aを得る;または
下記三方法のいずれか一つで前記結晶Aを作製する:
方法一:アルコール系溶媒でアモルファスクジノシドAを溶解し、クジノシドAの溶解液を得て、当該溶解液を、白色沈殿が析出し、かつ蒸発液収集容器の入口に液滴がほとんど生じなくなる濃縮終点までに濃縮し、濃縮液を得る;当該濃縮液を凍結乾燥し、結晶Aを得る;
方法二:アルコール系溶媒でアモルファスクジノシドAを溶解し、クジノシドAの溶解液を得て、当該溶解液に対し超音波処理し、その後ろ過し、ろ液を減圧濃縮した後に乾燥固体の結晶Aを得る;
方法三:アルコール系溶媒でアモルファスクジノシドAを溶解し、クジノシドAの溶解液を得て、室温下で当該溶解液を自然揮発させ、乾燥固体の結晶Aを得る。
【請求項8】
苦丁茶粉末とアルコールとの質量比が1:2.5-1:1.5になるように、純エタノールまたは50-90%(v/v)のエタノール水溶液で浸透抽出する;抽出物エキスは、順次に、水および無水エタノールで希釈し、遠心分離し、粗製品を得、ただし、水の用量は苦丁茶粉末質量の0.5-1倍とし、無水エタノールの用量は苦丁茶粉末質量の0.3-0.8倍とする;エタノールまたはその水溶液で60-90℃で当該粗製品を溶解し、その後それを10℃以下の条件下に置き、再結晶をする;約0℃で得られた結晶を凍結乾燥し、その後室温まで上げて乾燥し、最後は32℃以上の温度下でさらに乾燥し、結晶Aを得、ただし、凍結乾燥の時間は1-3時間とし、室温乾燥の時間は3-5時間とし、32℃以上の乾燥時間は5-8時間とすることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記方法一および方法二では、エタノール水溶液でアモルファスクジノシドAを溶解する;前記方法三では、メタノールでアモルファスクジノシドAを溶解する;前記方法一では、クジノシドAの溶解液を得た後に、先にろ過して透明溶液を得て、さらに当該透明溶液を濃縮し、ただし、濃縮は50-60℃の水浴中で行い、回転速度は30-80rpmとし、真空度は0.08MPa以上とすることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
以下の方法四~方法六のいずれか一つで結晶Cを作製する:
方法四:溶媒で結晶Aを溶解し、混濁液を得る;室温下で3-5日撹拌し、遠心分離する;得られる固体を25-30℃の条件下で一晩真空乾燥し、結晶Cを得る;
方法五:酢酸エチルで結晶Aを溶解し、混濁液を得る;室温下で2-4日撹拌し、遠心分離する;得られる固体を25-30℃の条件下で一晩真空乾燥し、結晶Cを得る;
方法六:150-200℃で結晶Aを3-10分間加熱し、結晶Cを得る;
以下の方法七~方法十のいずれか一つで結晶Jを作製する:
方法七:酢酸エチル飽和水溶液で結晶Aを溶解し、混濁液を得る;室温下で3-5日撹拌し、遠心分離する;得られる固体を25-30℃の条件下で一晩真空乾燥し、結晶Jを得る;
方法八:水で結晶Aを溶解し、混濁液を得る;室温下で2-4日撹拌し、遠心分離する;得られる固体を25-30℃の条件下で一晩真空乾燥し、結晶Jを得る;
方法九:アルコール系溶媒でアモルファスクジノシドAを溶解する;水を入れ、室温下で一晩撹拌した後に、遠心分離し、その後得られる固体を25-30℃の条件下で一晩真空乾燥し、結晶Jを得る;
方法十:アルコール系溶媒および水でアモルファスクジノシドAを溶解した後に、0-10℃で一晩撹拌した後に、遠心分離し、その後得られる固体を25-30℃の条件下で一晩真空乾燥し、結晶Jを得る;
ことを特徴とするクジノシドA化合物の結晶CまたはJの作製方法。
【請求項11】
前記方法四では、アセトニトリルとジイソプロピルエーテルとの体積比は1:1~1:5である;結晶Aと溶媒との質量体積比(グラム:ミリリトル)は1:20~1:50である;
前記方法五では、結晶Aと酢酸エチルとの質量体積比(グラム:ミリリトル)は1:10~1:30である;
前記方法六では、170±5℃の温度下で結晶Aを加熱し、3-7分間保温する;
前記方法七では、結晶Aと酢酸エチル飽和水溶液との質量体積比(グラム:ミリリトル)は1:20~1:50である;
前記方法八では、結晶Aと水との質量体積比(グラム:ミリリトル)は1:10~1:30である;
前記方法九では、アルコール系溶媒は無水アルコール系溶媒であり、クジノシドAとアルコール系溶媒との質量体積比(グラム:ミリリトル)は1:30~1:100であり、入れられる水の量はアルコール系溶媒の体積の1-10倍である;
前記方法十では、前記アルコール系溶媒は好ましく無水アルコール系溶媒であり、アルコール系溶媒と水との体積比は1:1~1:5であり、クジノシドAとアルコール系溶媒との質量体積比(グラム:ミリリトル)は1:10~1:50である;
ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
気管拡張用、抗炎用、または肺疾患治療用薬物の調製における請求項1-6に記載のいずれか一つのクジノシドA化合物の結晶または請求項7-11に記載のいずれか一つの方法で調製される生成物の応用。
好ましくは、前記肺疾患は慢性閉塞性肺疾病または喘息である;
好ましくは、前記結晶は結晶A、CまたはJまたはそれらの任意的な混合物である;
好ましくは、前記薬物は吸入製剤である;好ましくは、前記吸入製剤は粉末エアゾール吸入剤、ガス吸入剤、噴霧吸入剤、混濁吸入剤または溶液吸入剤である。
【請求項13】
有効治療量の請求項1-6に記載のいずれか一つのクジノシドA化合物の結晶または請求項7-11に記載のいずれか一つの方法で調製される生成物、および薬学において許容される担体を含むことを特徴とする肺疾患を治療する薬物組成物。
好ましくは、前記結晶は結晶A、CまたはJまたはそれらの任意的な混合物であり、前記生成物は結晶A、CまたはJまたはそれらの任意的な混合物を含有する;
好ましくは、前記薬物組成物は吸入製剤である;好ましくは、前記吸入製剤は粉末エアゾール吸入剤、ガス吸入剤、噴霧吸入剤、混濁吸入剤または溶液吸入剤である。
【請求項14】
需要のある患者に有効量の請求項1-6に記載のいずれか一つのクジノシドA化合物の結晶または請求項7-11に記載のいずれか一つの方法で調整される生成物、または前記結晶または生成物を含有する薬物組成物を投与することを含むことを特徴とする気管拡張、抗炎または肺疾患を治療する方法;好ましくは、前記結晶は結晶A、CまたはJまたはそれらの任意的な混合物であり、前記生成物は結晶A、CまたはJまたはそれらの任意的な混合物を含有する。
【請求項15】
前記肺疾患は、慢性閉塞性肺疾病または喘息であることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学・医薬、結晶作製技術分野に属し、具体的にはクジノシドA化合物の結晶、その薬物組成物および応用に関する。
【背景技術】
【0002】
苦丁茶冬青は、モチノキ科モチノキ属の植物である苦丁茶冬青の若葉または葉であり、中国の南部および西南地域における伝統的な薬用植物として、長い歴史にわたり広く運用され、熱と解毒を取り除き、殺菌して炎症を取り除き、腸胃を蕩滌し強くにし、咳を止め痰を取り除き、唾液を分泌し喉をうるおし、眠気を覚し脳を活性化させ、目を明らかにし智慧を益する、などの効果があり、頭痛、歯痛、赤目、熱に関する病気と煩渇および痢疾等の症状の治療には相応しい;また、血管を生き生きさせ、血中脂質を調整する効果があり、高血圧および高血中脂質等の病気の治療に相応しい。さらに、気管支平滑筋を拡張する効果があるため、各気道肺疾患(例えばCOPDおよび喘息)の治療にも相応しい。
【0003】
苦丁茶冬青から、上述の効果を有する複数のクジノシド系化合物(例えばクジノシドA)を抽出分離することができ、これは多くの文献によって報道され、例えば、トゥ・ペンフェイなどによる(「苦丁茶冬青の化学成分およびその血中脂質減少効果に関する研究」、中国化学会第二十五回年会、2006年)がある。クジノシドAは、3β-[(3-O-β-D-グルコピラノシル-2-O-α-L-ラムノピラノシル-α-L-アラビノピラノシル)オキシ]-12β,19,20-トリヒドロキシウルサ-13(18)-エン-28-酸28,20-ラクトンであり、その構造は式(I)に示される:
【化1】
【0004】
薬用化合物の結晶が違うと、その物理、化学性質が違い、また溶解度および安定性も違うため、体内での分解および吸収が違い、臨床での効果が違ってくる。そのため、薬用化合物を開発するとき、異なる結晶を全面、システム的に選び、体内での効果を探索することは、最適な結晶を選び出すのに重要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】トゥ・ペンフェイ、中国化学会第二十五回年会、2006年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明では、複数の溶媒系で、複数の結晶方法による選択することで、クジノシドAの11種類の結晶が得られ、それぞれ結晶A、B、C、D、E、G、I1、I2、J、KおよびLとする。ただし、結晶I1および結晶I2は弱結晶態(または低結晶態とも言う)であり、安定に存在することができない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのため、本発明では、クジノシドAの結晶A、B、C、D、E、G、J、KおよびLが提供される。本発明はまた、任意的な比例で、二種以上の任意的な前記結晶からなる混合物を含む。本発明の結晶は、適切な条件下で安定に存在し、特に結晶A、CおよびJは、常温条件下で乾燥粉末の形式で安定に存在する。そのため、好ましい実施形態では、本発明はクジノシドAの結晶A、CおよびJおよびそれらの任意的な混合物を提供する。
【0008】
具体的には、本発明はクジノシドA化合物の結晶Aを提供し、前記結晶Aの粉末X線回折(XRPD)図において、下記2θにピークが存在する:6.7°±0.2°、7.3°±0.2°、7.9°±0.2°、10.5°±0.2°、10.9°±0.2°、14.1°±0.2°。
【0009】
好ましい実施例では、前記結晶Aの粉末X線回折(XRPD)図において、下記2θにさらにピークが存在する:3.6°±0.2°、12.8°±0.2°、13.2°±0.2°、13.6°±0.2°、15.2°±0.2°、16.1°±0.2°、18.3°±0.2°、24.1°±0.2°。
【0010】
好ましい実施例では、前記結晶Aは基本的に
図1aに示されるような粉末X線回折(XRPD)図を有する。
【0011】
好ましい実施例では、前記結晶Aの粉末X線回折(XRPD)図において、表1に示される2θにピークが存在する;
【表1】
【0012】
好ましい実施例では、前記結晶Aは基本的に
図1bに示されるような示差走査熱量(DSC)解析図を有する。
【0013】
好ましい実施例では、前記結晶Aは基本的に
図1cに示されるような熱重量分析(TGA)図を有する。
【0014】
好ましい実施例では、前記結晶Aは基本的に
図1dに示されるような動的水分吸着(DVS)図を有する。
【0015】
本発明に提供されるクジノシドA化合物の結晶Cの粉末X線回折(XRPD)図において、下記2θにピークが存在する:7.8°±0.2°、12.7°±0.2°、14.4°±0.2°、14.9°±0.2°、16.3°±0.2°、18.6°±0.2°、25.1°±0.2°。
【0016】
好ましい実施例では、前記結晶Cの粉末X線回折(XRPD)図において、下記2θにさらにピークが存在する:3.9°±0.2°、8.3°±0.2°、13.2°±0.2°、19.5°±0.2°、20.3°±0.2°。
【0017】
好ましい実施例では、前記結晶Cは基本的に
図2aに示されるような粉末X線回折(XRPD)図を有する。
【0018】
好ましい実施例では、前記結晶Cの粉末X線回折(XRPD)図において、表2に示される2θにピークが存在する;
【表2】
【0019】
好ましい実施例では、前記結晶Cは基本的に
図2bに示されるような示差走査熱量(DSC)解析図を有する。
【0020】
好ましい実施例では、前記結晶Cは基本的に
図2cに示されるような熱重量分析(TGA)図を有する。
【0021】
好ましい実施例では、前記結晶Cは基本的に
図2dに示されるような動的水分吸着(DVS)図を有する。
【0022】
本発明に提供されるクジノシドA化合物の結晶Jの粉末X線回折(XRPD)図において、下記2θにピークが存在する:7.7°±0.2°、9.3°±0.2°、12.1°±0.2°、14.1°±0.2°、15.1°±0.2°、16.6°±0.2°。
【0023】
好ましい実施例では、前記結晶Jの粉末X線回折(XRPD)図において、下記2θにさらにピークが存在する:3.5°±0.2°、4.7°±0.2°、12.7°±0.2°、13.7°±0.2°、15.5°±0.2°、16.2°±0.2°、18.1°±0.2°。
【0024】
好ましい実施例では、前記結晶Jは基本的に
図3aに示されるような粉末X線回折(XRPD)図を有する。
【0025】
好ましい実施例では、前記結晶Jの粉末X線回折(XRPD)図において、表3に示される2θにピークが存在する;
【表3】
【0026】
好ましい実施例では、前記結晶Jは基本的に
図3bに示されるような示差走査熱量(DSC)解析図を有する。
【0027】
好ましい実施例では、前記結晶Jは基本的に
図3cに示されるような熱重量分析(TGA)図を有する。
【0028】
好ましい実施例では、前記結晶Jは基本的に
図3dに示されるような動的水分吸着(DVS)図を有する。
【0029】
本発明に提供されるクジノシドAの結晶Bの粉末X線回折(XRPD)図において、下記2θにピークが存在する:7.4°±0.2°、7.9°±0.2°、11.8°±0.2°、12.5°±0.2°、14.3°±0.2°、15.4°±0.2°。
【0030】
好ましい実施例では、前記結晶Bの粉末X線回折(XRPD)図において、下記2θにさらにピークが存在する:4.8°±0.2°、8.1°±0.2°、14.6°±0.2°。
【0031】
好ましい実施形態では、前記結晶Bの粉末X線回折(XRPD)図において、表14に示される2θにピークが存在する。
【0032】
本発明に提供されるクジノシドAの結晶Dの粉末X線回折(XRPD)図において、下記2θにピークが存在する:6.2°±0.2°、9.9°±0.2°、12.4°±0.2°。
【0033】
好ましい実施例では、前記結晶Dの粉末X線回折(XRPD)図において、下記2θにさらにピークが存在する:4.5°±0.2°、7.2°±0.2°、12.9°±0.2°、19.0°±0.2°。
【0034】
好ましい実施形態では、前記結晶Dの粉末X線回折(XRPD)図において、表15に示される2θにピークが存在する。
【0035】
本発明に提供されるクジノシドAの結晶Eの粉末X線回折(XRPD)図において、下記2θにピークが存在する:5.6°±0.2°、11.1°±0.2°、14.4°±0.2°。
【0036】
好ましい実施例では、前記結晶Eの粉末X線回折(XRPD)図において、下記2θにさらにピークが存在する:4.5°±0.2°、7.7°±0.2°、13.6°±0.2°、18.1°±0.2°、19.8°±0.2°、20.8°±0.2°、28.0°±0.2°。
【0037】
好ましい実施形態では、前記結晶Eの粉末X線回折(XRPD)図において、表16に示される2θにピークが存在する。
【0038】
本発明に提供されるクジノシドAの結晶Gの粉末X線回折(XRPD)図において、下記2θにピークが存在する:5.7°±0.2°、7.8°±0.2°、9.2°±0.2°、9.9°±0.2°、17.5°±0.2°、19.8°±0.2°、20.0°±0.2°、28.5°±0.2°、37.8°±0.2°。
【0039】
好ましい実施例では、前記結晶Gの粉末X線回折(XRPD)図において、下記2θにさらにピークが存在する:3.4°±0.2°、7.3°±0.2°、12.0°±0.2°、14.4°±0.2°、17.0°±0.2°、18.8°±0.2°、22.5°±0.2°、25.5°±0.2°、25.7°±0.2°、26.1°±0.2°。
【0040】
好ましい実施形態では、前記結晶Gの粉末X線回折(XRPD)図において、表17に示される2θにピークが存在する。
【0041】
本発明に提供されるクジノシドAの結晶Kの粉末X線回折(XRPD)図において、下記2θにピークが存在する:7.6°±0.2°、11.1°±0.2°、12.1°±0.2°、14.3°±0.2°。
【0042】
好ましい実施例では、前記結晶Kの粉末X線回折(XRPD)図において、下記2θにさらにピークが存在する:4.5°±0.2°、4.9°±0.2°、5.5°±0.2°、8.2°±0.2°、13.5°±0.2°、18.7°±0.2°。
【0043】
好ましい実施形態では、前記結晶Kの粉末X線回折(XRPD)図において、表20に示される2θにピークが存在する。
【0044】
本発明に提供されるクジノシドAの結晶Lの粉末X線回折(XRPD)図において、下記2θにピークが存在する:9.5°±0.2°、12.3°±0.2°、13.6°±0.2°、14.5°±0.2°、15.4°±0.2°、16.2°±0.2°。
【0045】
好ましい実施例では、前記結晶Lの粉末X線回折(XRPD)図において、下記2θにさらにピークが存在する:3.7°±0.2°、7.9°±0.2°、16.9°±0.2°、17.3°±0.2°、18.8°±0.2°、20.4°±0.2°。
【0046】
好ましい実施形態では、前記結晶Lの粉末X線回折(XRPD)図において、表21に示される2θにピークが存在する。
【0047】
本発明はまた、クジノシドA化合物の結晶A、C、Jの作製方法を提供する。
【0048】
一好適な実施例では、クジノシドAの結晶Aは、苦丁茶粉末を浸漬抽出・精製した後に、特定な溶媒中で結晶させることで得られる。
【0049】
好ましくは、前記結晶Aの作製方法は以下の通りである:苦丁茶粉末を浸透抽出、濃縮した後に、抽出物エキスを得る;エキスを希釈して遠心分離し、粗製品を得る;粗製品を二回にわたり高圧クロマトグラフィーで精製した後に、活性炭で脱色し、再結晶、凍結乾燥をする;最後は粉砕し、クジノシドA結晶(つまり結晶A)を得る。
【0050】
好ましい実施形態では、アルコール系溶媒(例えばエタノール)で浸透抽出を行う。例えば純エタノールまたは50-90%(v/v)のエタノール水溶液で浸透抽出を行う。通常、苦丁茶粉末とアルコールとの質量比は1:2.5-1:1.5である。抽出物エキスを、順次に、水および無水エタノールで希釈し、遠心分離することで、粗製品を得る。水の用量は苦丁茶粉末質量の0.5-1倍であってもよく、無水エタノールの用量は苦丁茶粉末質量の0.3-0.8倍であってもよい。
【0051】
好ましくは、アルコールで当該粗製品を溶解し、その後それを10℃以下の条件下に置き、再結晶を行う。アルコールはエタノールまたはその水溶液であってもよく、例えば20-50%(v/v)のエタノール溶液である。溶解は高い温度、例えば60-90℃下で行う。得られる結晶を凍結乾燥(例えば約0℃で凍結乾燥)してもよく、その後、室温(例えば約20-28℃)まで上げて乾燥し、最後は32℃以上の温度下で乾燥し、結晶Aを得ることができる。通常、凍結乾燥の時間は1-3時間でもよく、室温乾燥の時間は約3-5時間でもよく、32℃以上での乾燥時間は5-8時間でもよい。
【0052】
もう一つ好適な実施例では、クジノシドAの結晶Aは、アモルファスクジノシドAを特定な溶媒中で結晶させることで得られる。
【0053】
好ましくは、前記結晶Aの作製方法は、以下三つのいずれか一つでもよい:
【0054】
方法一:アルコール系溶媒でアモルファスクジノシドAを溶解し、クジノシドAの溶解液を得て、当該溶解液を、白色沈殿が析出し、かつ蒸発液収集容器の入口に液滴がほとんど生じなくなる濃縮終点までに濃縮し、濃縮液を得る;当該濃縮液を凍結乾燥し、結晶Aを得る;
【0055】
方法二:アルコール系溶媒でアモルファスクジノシドAを溶解し、クジノシドAの溶解液を得て、当該溶解液に対し超音波処理し、その後ろ過し、ろ液を減圧濃縮した後に乾燥固体の結晶Aを得る;
【0056】
方法三:アルコール系溶媒でアモルファスクジノシドAを溶解し、クジノシドAの溶解液を得て、室温下で当該溶解液を自然揮発させ、乾燥固体の結晶Aを得る。
好ましくは、前記アルコール系溶媒はメタノールまたはエタノールである。好ましくは、方法一および方法二ではエタノール、例えばエタノール水溶液(例えば70%のエタノール溶液)でアモルファスクジノシドAを溶解する。好ましくは、方法三では、メタノールでアモルファスクジノシドAを溶解する。アルコール系溶媒の用量は特に制限がなく、当該アモルファスクジノシドAを十分溶解できればいい。
好ましくは、方法一では、クジノシドAの溶解液を得た後に、先にろ過して透明溶液を得て、さらに当該透明溶液を濃縮する。ろ過穴<5マイクロメートルのフィルムでろ過してもよい。エバポレーターで当該溶解液またはその透明溶液を濃縮してもいい。濃縮は50-60℃の水浴中で行ってもよく、回転速度は30-80rpmにしてもよく、真空度は0.08MPa以上にしてもいい。
【0057】
一好適な実施例では、クジノシドAの結晶Cは、結晶Aを特定な溶媒中で再結晶させることで得られる。
好ましくは、前記結晶Cの作製方法は、以下三つのいずれか一つでもよい:
【0058】
方法四:溶媒(例えばアセトニトリルおよびジイソプロピルエーテル)で結晶Aを溶解し、混濁液を得る;室温下で3-5日撹拌し、遠心分離する;得られる固体を25-30℃の条件下で一晩真空乾燥し、結晶Cを得る;
【0059】
方法五:酢酸エチルで結晶Aを溶解し、混濁液を得る;室温下で2-4日撹拌し、遠心分離する;得られる固体を25-30℃の条件下で一晩真空乾燥し、結晶Cを得る;
【0060】
方法六:150-200℃で結晶Aを3-10分間加熱し、結晶Cを得る。
好ましくは、前記方法四では、アセトニトリルとジイソプロピルエーテルとの体積比は1:1~1:5である。好ましくは、結晶Aと溶媒との質量体積比(グラム:ミリリトル)は1:20~1:50である。
好ましくは、前記方法五では、結晶Aと酢酸エチルとの質量体積比(グラム:ミリリトル)は1:10~1:30である。
好ましくは、前記方法六では、170±5℃の温度下で結晶Aを加熱し、3-7分間保温する。
一好適な実施例では、クジノシドAの結晶Jは、結晶Aを特定な溶媒中で再結晶させることで得られる。
好ましくは、前記結晶Jの作製方法は、以下二つのいずれか一つでもよい:
【0061】
方法七:酢酸エチル飽和水溶液で結晶Aを溶解し、混濁液を得る;室温下で3-5日撹拌し、遠心分離する;得られる固体を25-30℃の条件下で一晩真空乾燥し、結晶Jを得る;
【0062】
方法八:水で結晶Aを溶解し、混濁液を得る;室温下で2-4日撹拌し、遠心分離する;得られる固体を25-30℃の条件下で一晩真空乾燥し、結晶Jを得る。
好ましくは、前記方法七では、結晶Aと酢酸エチル飽和水溶液との質量体積比(グラム:ミリリトル)は1:20~1:50である。
好ましくは、前記方法八では、結晶Aと水との質量体積比(グラム:ミリリトル)は1:10~1:30である。
もう一つ好適な実施例では、クジノシドAの結晶Jは、アモルファスクジノシドAを特定な溶媒中で結晶させることで得られる。
好ましくは、前記結晶Jの作製方法は、以下二つのいずれか一つでもよい:
【0063】
方法九:アルコール系溶媒でアモルファスクジノシドAを溶解する;水を入れ、室温下で一晩撹拌した後に、遠心分離し、その後得られる固体を25-30℃の条件下で一晩真空乾燥し、結晶Jを得る;
【0064】
方法十:アルコール系溶媒および水でアモルファスクジノシドAを溶解した後に、0-10℃で一晩撹拌した後に、遠心分離し、その後得られる固体を25-30℃の条件下で一晩真空乾燥し、結晶Jを得る。
好ましくは、前記方法九では、アルコール系溶媒は無水アルコール系溶媒、例えば無水エタノールである。クジノシドAとアルコール系溶媒との質量体積比(グラム:ミリリトル)は1:30~1:100である。入れられる水の量は、アルコール系溶媒体積の1-10倍であってもよい。通常、水を入れた後に、白色固体が析出し、その場合では室温下で一晩撹拌する。
好ましくは、前記方法十では、前記アルコール系溶媒は好ましくに無水アルコール系溶媒、例えば無水エタノールである。アルコール系溶媒と水との体積比は1:1~1:5であってもよい。クジノシドAとアルコール系溶媒との質量体積比(グラム:ミリリトル)は1:10~1:50である。アルコール系溶媒、水およびクジノシドAを混合した後に、例えば60-80℃の水浴中でクジノシドAが完全に溶解するまで加熱してもよい。通常、約4℃で一晩撹拌する。
【0065】
一部の実施形態では、結晶Bは結晶Aから作製される。具体的には、結晶Aを110-130℃まで上げ、3-10分間保温し、結晶Bを得ることができる。
【0066】
一部の実施形態では、アルコール系溶媒(例えばイソプロピルアルコール)およびクジノシドAを混合し、例えば55℃以上の水浴中で完全に溶解させた後に、ゆっくり固体を析出させ、室温まで徐冷し、3-6日撹拌し、遠心分離することで、結晶Dを得ることができる。アルコール系溶媒とクジノシドAとの質量体積比(mg:mL)は4-8:1であってもよい。
【0067】
一部の実施形態では、クジノシドA、アルコール系溶媒および水を混合し、60℃以上の温度かで溶解した後に、室温まで徐冷し、静置し、固体を析出させることで、結晶Eを得ることができる。アルコール系溶媒は、例えば無水エタノールであってもいい。アルコール系溶媒および水の用量は特に制限がなく、クジノシドAを溶解できればよい。
【0068】
一部の実施形態では、クジノシドAおよび有機溶媒(例えばテトラヒドロフラン)および水を混合し、完全に溶解させた後に、室温下で溶媒を揮発させることで、結晶Gを得ることができる。有機溶媒および水の用量は特に制限がなく、クジノシドAを溶解できればよい。もちろん、溶媒の用量が多すぎると、揮発時間が影響され、作製時間が長くなる。具体的な用量は、当業者が実際の生産状況で確定できる。
【0069】
一部の実施形態では、無水エタノールでクジノシドAを溶解した後に、25-30℃下で減圧濃縮・乾燥することで、結晶Kを得ることができる。
【0070】
一部の実施形態では、結晶Jを110℃以上に上げ、3-10分間保温することで、結晶Lを得ることができる。
【0071】
本発明は、クジノシドA化合物の各結晶が肺疾患治療薬物の作製における応用を提供する。
【0072】
一好ましい実施例では、前記肺疾患は慢性閉塞性肺疾病または喘息である。
【0073】
一実施形態では、前記クジノシドA化合物の各結晶は、気管(支)を拡張させることで治療の目的を果たす;もう一つ実施形態では、前記クジノシドA化合物の各結晶は、抗炎によって治療の目的を果たす。
【0074】
本発明はまた、肺疾患を治療する薬物組成物を提供し、前記薬物組成物は、クジノシドA化合物の結晶A、B、C、D、E、G、J、KおよびLの一つまたは複数の混合物、及び薬学において許容される担体を含む。好ましくは、前記薬物組成物は、クジノシドAの結晶A、CおよびJのいずれか一つまたは複数を含有する。好ましくは、前記薬物組成物では、前記クジノシドA化合物は結晶状態に保てる。
【0075】
一好適な実施例では、前記クジノシドA化合物の結晶は結晶A、結晶Cまたは結晶Jである。
【0076】
一好適な実施例では、前記薬物組成物の剤形は吸入製剤である。
【0077】
一好ましい実施例では、前記吸入製剤は粉末エアゾール吸入剤、ガス吸入剤、噴霧吸入剤、混濁吸入剤または溶液吸入剤である。
【0078】
用語「薬学において許容される担体」は、本発明の薬物組成物におけるクジノシドA化合物(結晶)と適合し、つまりそれと混合する上で、通常では薬物組成物による肺疾患(例えば喘息や慢性閉塞性肺疾病)の治療効果を大幅に低減しないものを指す。
【0079】
一好適な実施例では、前記薬学において許容される担体は、潤滑剤、流動化剤、噴射剤、助溶媒、共溶媒、希釈剤、安定剤および静菌剤の一つまたは複数を含む。
【0080】
一好ましい実施例では、前記薬学上の担体は乳糖である。
【0081】
もう一つ好ましい実施例では、前記薬学上の担体はポリエチレングリコール200、エタノールおよび1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R134a)である。
【0082】
一部の実施形態では、本発明は気管(支)を拡張させる方法を提供する。当該方法は、需要のある気管(支)拡張対象に有効量の本文によるいずれかの実施形態に記載のクジノシドA化合物の結晶、または本文によるいずれかの実施形態に記載の方法で作製される生成物、または前記結晶または生成物を含有する薬物組成物を与えることを含む。一実施形態では、本発明は抗炎方法を提供する。当該方法は、需要のある抗炎対象(特に気管、気管支および/または肺部に炎症がある対象)に有効量の本文によるいずれかの実施形態に記載のクジノシドA化合物の結晶、または本文によるいずれかの実施形態に記載の方法で作製される生成物、または前記結晶または生成物を含有する薬物組成物を与えることを含む。一実施形態では、本発明は肺疾患治療方法を提供する。当該方法は、需要のある対象に有効量の本文によるいずれかの実施形態に記載のクジノシドA化合物の結晶、または本文によるいずれかの実施形態に記載の方法で作製される生成物、または前記結晶または生成物を含有する薬物組成物を与えることを含む。好ましくは、これらの方法では、前記結晶は結晶A、CまたはJまたはその任意的な混合物であり、前記生成物は結晶A、CまたはJまたはその任意的な混合物を含有する。好ましくは、これらの方法では、前記対象は肺疾患対象、より好ましくは慢性閉塞性肺疾病または喘息の患者である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【
図1a】
図1aはクジノシドAの結晶Aの粉末X線回折(XRPD)図であり、横軸は2θ値(度)であり、縦軸は強度(カウント)である。
【
図1b】
図1bはクジノシドAの結晶Aの示差走査熱量(DSC)解析図であり、横軸は温度(℃)であり、縦軸は熱流束(ワット/グラム)である。
【
図1c】
図1cはクジノシドAの結晶Aの熱重量分析(TGA)図であり、横軸は温度(℃)であり、縦軸は重量(%)である。
【
図1d】
図1dはクジノシドAの結晶Aの動的水分吸着(DVS)図であり、横軸は相対湿度(%)であり、縦軸は重量(%)である。
【
図2a】
図2aはクジノシドAの結晶Cの粉末X線回折(XRPD)図であり、横軸は2θ値(度)であり、縦軸は強度(カウント)である。
【
図2b】
図2bはクジノシドAの結晶Cの示差走査熱量(DSC)解析図であり、横軸は温度(℃)であり、縦軸は熱流束(ワット/グラム)である。
【
図2c】
図2cはクジノシドAの結晶Cの熱重量分析(TGA)図であり、横軸は温度(℃)であり、縦軸は重量(%)である。
【
図2d】
図2dはクジノシドAの結晶Cの動的水分吸着(DVS)図であり、横軸は相対湿度(%)であり、縦軸は重量(%)である。
【
図3a】
図3aはクジノシドAの結晶Jの粉末X線回折(XRPD)図であり、横軸は2θ値(度)であり、縦軸は強度(カウント)である。
【
図3b】
図3bはクジノシドAの結晶Jの示差走査熱量(DSC)解析図であり、横軸は温度(℃)であり、縦軸は熱流束(ワット/グラム)である。
【
図3c】
図3cはクジノシドAの結晶Jの熱重量分析(TGA)図であり、横軸は温度(℃)であり、縦軸は重量(%)である。
【
図3d】
図3dはクジノシドAの結晶Jの動的水分吸着(DVS)図であり、横軸は相対湿度(%)であり、縦軸は重量(%)である。
【
図4a】
図4aは長期試験および加速試験条件下でのクジノシドAの結晶Jの粉末X線回折(XRPD)図であり、横軸は2θ値(度)であり、縦軸は強度(カウント)である。
【
図4b】
図4bは長期試験および加速試験条件下でのクジノシドAの結晶Jの熱重量分析(TGA)図であり、横軸は温度(℃)であり、縦軸は重量(%)である。
【
図5a】
図5aは結晶Aおよび結晶Jの競争開始の際での混合サンプルおよび単一結晶の粉末X線回折(XRPD)図である。横軸は2θ値(度)であり、縦軸は強度(カウント)である。
【
図5b】
図5bは結晶Aおよび結晶Jが3日間競争した後の粉末X線回折(XRPD)図である。横軸は2θ値(度)であり、縦軸は強度(カウント)である。
【発明を実施するための形態】
【0084】
以下の説明では、本発明の様々な実施形態を完全に理解するための詳細が記載される。しかしながら、当業者は、本発明がこれらの詳細がなくても実施できることを理解するべきである。いくつかの実施形態に対する以下の説明は、本開示が特許請求される主題の例とみなされるべきであることを理解してなされるものであり、添付の特許請求の範囲を示される特定の実施形態に限定する意図はない。本開示の全ての見出しは、便宜のためにのみ提供されており、いかなる形でも特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。見出しの下に示される実施形態は、他の見出しの下に示される実施形態と組み合わせることができる。
【0085】
明細書および特許請求の範囲全体を通じて、文脈上別段の要求がない限り、「含む」という語およびその変形は、オープンで包括的な意味、つまり「含むがそれに限定されない」と解釈されるべきであり、「含む」やその変形には、「主に…からなる」と「…からなる」が含まれる。
【0086】
本明細書における「一実施形態」または「実施形態」では、当該実施形態において記載される特定の特徴、構造または特性は、本発明の少なくとも一実施形態に含まれる。そのため、本明細書全体に現れる「一実施形態において」または「ある実施形態において」という語句は、必ずしも同じ実施形態を指すわけではない。さらに、特定の特徴、構造または特性は、1つまたは複数の実施形態において適切な方法で組み合わせることができる。
【0087】
本文では、「薬学において許容される担体」には、FDAまたはNMPAまたはその他の関連機関によってヒトまたは家畜への使用が許容されると承認されている任意の助剤、担体、賦形剤、流動化剤、甘味料、希釈剤、防腐剤、染料/着色剤、風味増強剤、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁剤、安定剤、等張剤、溶媒または乳化剤を含むが、それに限定されない。
【0088】
本文では、「薬物組成物」は、本発明の化合物と、生物学的に活性な化合物を哺乳動物(ヒトなど)に送達するための当技術分野で一般に認められている媒体を含む製剤である。この媒体は、このための全ての薬学において許容される賦形剤を含む。
【0089】
本文では、「有効量」または「治療有効量」とは、本発明の化合物の量であり、需要のある患者に投与する場合、化合物が有用な病状、障害または疾患の治療を果たすことができる。このような量は、研究者または臨床医が求める組織系または患者の生物学的または医学的反応を引き出すのに十分である。治療有効量を構成する本発明の化合物の量は、以下の要因に応じて変化する:化合物およびその生物学的活性、投与に使用される組成物、投与時間、投与経路、化合物の排泄速度、治療継続期間、治療しようとする病状または障害の種類および重症度、本発明の化合物と組み合わせてまたは併用して使用される薬剤、ならびに患者の年齢、体重、一般的な健康、性別、食事。このような治療有効量は、当業者であれば、自身の知識、従来技術、および本開示に基づいて決定することができる。
【0090】
他に説明がない限り、本明細書の「治療」という用語は、その用語が適用される障害もしくは病状、またはそのような障害もしくは病状の1つ以上の症状を逆転させる、軽減する、進行を阻害する、または予防することを意味する。「予防」とは、疾患または病状の臨床症状の発現を阻止する疾患または病状のあらゆる治療を意味する。
【0091】
本文では、「対象」または「患者」とは、治療、観察または実験の対象となったことがある、または対象となる哺乳動物(ヒトを含む)などの動物を指す。本明細書に記載の方法は、ヒトの治療および/または獣医学へ応用できる。一部の実施形態では、対象は哺乳動物(または患者)である。一部の実施形態では、対象(または患者)は、ヒト、家畜(例えばイヌおよびネコ)、農場動物(例えばウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギおよびブタ)および/または実験動物(例えばマウス、ラット、ハムスター、モルモット、ブタ、ウサギ、イヌおよびサル)である。一部の実施形態では、対象(または患者)はヒトである。「需要のあるヒト(または患者)」とは、特定の治療、例えば、本明細書に記載の本明細書に開示される化合物による治療から恩恵を受ける疾患または症状を患っている可能性がある、または患っていると疑われるヒトを指す。
【0092】
本文における値またはパラメータの「約」への言及は、その値またはパラメータ自体を対象とする実施形態を含む(および説明する)。例えば、「約X」という説明には、「X」に関する説明が含まれる。さらに、単数形「一」および「当該」には、文脈上明らかに別段の指示がない限り、複数の指示対象が含まれる。そのため、例えば、「当該化合物」への言及には、様々なそのような化合物が含まれ、「当該測定」への言及には、当業者に公知の1つ以上の測定およびその等価物への言及が含まれる。
【0093】
本文では、「薬学において許容される」または「生理学において許容される」とは、獣医学またはヒトの医薬応用に適した薬物組成物の調製に有用な化合物、塩、組成物、剤形および他の物質を指す。
【0094】
本文では、「単位剤形」は、対象(例えば、ヒト対象および他の哺乳類)に対する単位用量として適した物理的に別個の単位であり、各単位は、必要な治療活性物質を適切な医薬賦形剤とともに生成するように計算された所定の量を含有する。
【0095】
本文では、例えば、XRPD図、DSCサーモグラム、DVS図、またはTGA図に言及する場合、「基本的に…に示されるように」という用語は、必ずしも正確に本明細書に記載されるものではないが、当業者が考慮した場合、実験誤差または偏差の範囲内にあるグラフ、サーモグラムまたは図を含むことを意味する。
【0096】
一部の実施形態では、化合物の特定の結晶形に関して、「基本的に純」または「基本的に含まない」という用語は、その結晶形を含む組成物が20重量%未満、15重量%未満、10重量%未満、5重量%未満、または1重量%未満の他の結晶形および/または不純物を含む他の物質を含有することを意味する。一部の実施形態では、「基本的に純」または「基本的に含まない」とは、他の結晶形および/または不純物を含む他の物質を含まない物質を指す。例えば、不純物には、化学反応による副生成物または残留試薬、汚染物質、分解生成物、他の結晶形、水、および溶媒が含まれる場合がある。
【0097】
本文では、結晶の特徴的な粉末X線回折ピーク位置について、角度位置(2θ)の許容誤差を±0.2°とする。この誤差は、2つの粉末X線回折図を比較するときに用いられる。ある図の特定の回折ピークが、測定されたピーク位置から±0.2°の特定の角度位置範囲(2θ)として割り当てられ、別の図の回折ピークが、測定されたピーク位置から±0.2°の別の角度位置範囲として割り当てられ、しかもこれらのピーク範囲が重なる場合、この2つのピークは同じ角度位置(2θ)を持つと見なされる。例えば、図の回折ピークが5.20°にあると測定された場合、比較の目的で、許容誤差によりそのピークに5.00°-5.40°の範囲を割り当てることができる。比較の目的で、別の回折図の対照ピークが5.35°にあると測定された場合、許容誤差により、そのピークには5.15°-5.55°の範囲が割り当てられる。2つのピーク位置範囲には重複があるため、比較される2つのピークは同じ角度位置(2θ)を持つと見なされる。一部の実施形態では、角度位置(2θ)の許容誤差は±0.1°とする。
【0098】
本文では、「超音波」または「超音波処理」は、溶液中の物質を完全に混合または完全に溶解するために使用される。超音波処理のプロセスパラメータは、異なる処理対象に応じて変化し、実際の使用条件に従って当業者が設定することができる。例えば、超音波治療出力は60ワット-2000ワット、周波数は20キロヘルツ~80キロヘルツ、時間は5分間-150分間に設定することができる。
【0099】
本発明は、複数の機械分析方法で、作製されるクジノシドAの結晶A、C、Jを同定(例えば粉末X線回折解析)するとともに、それらの性質を研究(例えば示差走査熱量解析、熱重量分析および動的水分吸着解析)する。
【0100】
粉末X線回折(XRPD)は、結晶構造解析によく使われ、その回折強度は結晶単位中の原子の元素や数、およびその配列で決定される。結晶の粉末X線回折測定方法は当業者にとって既知であり、本発明は粉末X線回折機でクジノシドAの結晶A、C、Jに対し測定を行い、具体的な測量条件は表4に示される(特別な説明がない限り、そしてサンプルは測定まで研磨されない):
【表4】
【0101】
測定した結果、結晶A、C、Jは、粉末X線回折図において、特定のピークを有する;具体的には、結晶A、C、Jに関しては、表1、2、3に示される2θにそれぞれピークが存在する。
【0102】
示差走査熱量解析(DSC)は重要な熱解析方法であり、サンプルの吸熱または放熱速度(単位:ミリジュール/秒)を縦軸とし、温度または時間を横軸とし、例えば結晶速度、溶融温度、物質の相転移温度等の複数の熱力学および動力学パラメータの測定に用いられる。結晶の示差走査熱量解析法は当業者にとって既知であり、本発明は示差走査熱量解析機でクジノシドAの結晶A、C、Jに対し測定を行い、具体的な測量条件は表5に示される。
【表5】
【0103】
発明者は、上述の方法で、主にクジノシドAの結晶A、C、Jの脱溶媒ピークおよび融点などのパラメータを測定した。
結晶Aの示差走査熱量解析の結果は
図1bに示される:その脱溶媒ピークの温度範囲は約30℃~120℃であり、その融点は約205℃である。
結晶Cの示差走査熱量解析の結果は
図2bに示される:その脱溶媒ピークの温度範囲は約20℃~60℃であり、その融点は約310℃である。
結晶Jの示差走査熱量解析の結果は
図3bに示される:その脱溶媒ピークの温度範囲は約20℃~120℃であり、その融点は約309℃である。
【0104】
熱重量分析(TGA)は熱重分析ともいい、プログラム制御された温度下で、測定しようとするサンプルの質量と温度または時間の変化との関係を測定する熱分析方法を指し、サンプルの熱安定性および考えられる中間生成物成分などの品質に関する情報を研究するために用いられる。包括的な熱分析を実行するために、他の熱分析手法と組み合わせて用いられることがある。結晶の熱重量分析法は当業者にとって既知であり、本発明は熱重量分析機でクジノシドAの結晶A、C、Jに対し測定を行い、具体的な測量条件は表6に示される。
【表6】
【0105】
結晶Aの熱重量分析の結果は
図1cに示される:その80℃前の重量減少は約6.8%であり、かつその分解温度は約318℃である。
結晶Cの熱重量分析の結果は
図2cに示される:その70℃前の重量減少は約1.2%であり、かつその分解温度は約315℃である。
結晶Jの熱重量分析の結果は
図3cに示される:その120℃前の重量減少は約5.8%であり、かつその分解温度は約324℃である。
【0106】
動的水分吸着(DVS)法は、サンプルの水分吸着性を解析し、水分吸着等温線を記録する検出法であり、化合物の水分吸着能力を確認することでその安定性を判断する。結晶の動的水分吸着解析法は当業者にとって既知であり、本発明は動的水分吸着機でクジノシドAの結晶A、C、Jに対し水分吸着解析を行い、具体的な測量条件は表7に示される。
【表7】
【0107】
結晶Aの熱重量分析の結果は
図1dに示される:相対湿度が0%~80%であると、その重量変化は約12%であるため、結晶Aは吸湿性がある。
結晶Cの熱重量分析の結果は
図2dに示される:相対湿度が0%~80%であると、その重量変化は約1.8%であるため、結晶Cは吸湿性がややある。
結晶Jの熱重量分析の結果は
図3dに示される:相対湿度が0%~80%であると、その重量変化は約4.7%であるため、結晶Jは吸湿性がある。
【0108】
本発明で言及された上記の特徴、または実施例で言及された特徴は、任意に組み合わせることができる。本願明細書に開示されているすべての特徴は、任意の構成形態と組み合わせて使用することができ、明細書に開示されている各特徴は、同等、類似、または同様の目的を提供できる任意の代替特徴に置き換えることができる。従って、特に明記されていない限り、開示されている特徴は、同等または類似の特徴の一般的な例に過ぎない。
【0109】
特に定義がない限り、本文で使用されているすべての専門用語及び科学用語は、当業者によく知られている用語と同じ意味を有する。さらに、記載された内容と類似または同等のすべての方法および材料を、本発明の方法に適用することができる。本文における好ましい実施形態と材料は、説明のためだけに使用される。
【0110】
本明細書では、特に説明がない限り、前記数値または数値範囲は、前置詞「約」の存在有無にかかわらず、当業者に理解される当該数値または数値範囲に均等な範囲を含み、例えば当該数値または端点値±10%の範囲、もしくは±5%、±3%、±2%、±1%または±0.5%の範囲であってもいい。
【0111】
以下、実施例に基づき、本発明のより詳細な説明を行う。しかし、これらの実施例は説明のために挙げられ、本発明の範囲を限定するものではないのは、理解されるべきである。
【実施例1】
【0112】
実施例1:クジノシドA結晶Aの作製およびその粉末X線回折測定
【0113】
クジノシドA結晶Aの作製の具体的な手順は以下の通りである:
20kg苦丁茶粉末を34.4kgの80%エタノール溶液で浸透抽出し、濃縮した後の抽出物エキスに水を入れて、17kgの最終エキスを得た;10.2kg無水エタノールで希釈して遠心分離し、粗製品を得た。
粗製品を順次に30μmフィラーのクロマトグラフィーおよび10μmフィラーのクロマトグラフィーを通過させ、計二回の高圧クロマトグラフィーで精製した後に、さらに活性炭で脱色し、クジノシドA粗製粉末を得た;後に、35%エタノールで80℃水浴の条件下でクジノシドA粗製粉末を溶解し、それを6℃水浴の条件下に置き、結晶を析出させた;結晶を0℃で二時間凍結乾燥し、その後25℃に上げて4時間乾燥し、最後は35℃で6時間乾燥した;最後は、粉砕して、約170gのクジノシドA結晶(つまり結晶A)を得た。
上述のように作製された結晶AでX線回折測定を行った。使用された機械やそのパラメータは表4に示される。得られたデータは表1に示され、表1に示される2θにピークが存在する。
【実施例2】
【0114】
実施例2:クジノシドA結晶Cの作製およびその粉末X線回折測定
【0115】
クジノシドA結晶Cの作製の具体的な手順は以下の通りである:
a. 実施例1に示される作製方法で、まず結晶Aを作製した;
b. 100mgの結晶Aに1mLアセトニトリルおよび2mLジイソプロピルエーテルを入れて混濁液を得て、室温の条件下で4日間撹拌し、その後遠心分離した。沈殿物を30℃で一晩真空乾燥して、結晶Cを得た。
クジノシドA結晶Cで粉末X線回折測定を行った。使用された機械やそのパラメータは表4に示される。得られたデータは表2に示され、表2に示される2θにピークが存在する。
【実施例3】
【0116】
実施例3:クジノシドA結晶Jの作製およびその粉末X線回折測定
クジノシドA結晶Jの作製の具体的な手順は以下の通りである:
a. 実施例1に示される作製方法で、まず結晶Aを作製した;
b. 100mgの結晶Aに3mL酢酸エチル飽和水溶液を入れて混濁液を得て、室温の条件下で4日間撹拌し、遠心分離し、30℃で一晩真空乾燥して、結晶Jを得た。
クジノシドA結晶Jで粉末X線回折測定を行った。使用された機械やそのパラメータは表4に示される。得られたデータは表3に示され、表3に示される2θにピークが存在する。
【実施例4】
【0117】
実施例4:クジノシドA結晶Aの安定性試験
【0118】
実施例1で作製された結晶Aで、表8に示される条件で安定性試験を行った。このうち、結晶Aは低ホウケイ酸ガラスバイアルに入れ、医薬品複合袋(つまりアルミ箔袋とシリカゲル乾燥剤の小袋)で包み、真空引きした後、密封して保管した。
【表8】
【0119】
高速液体クロマトグラフィーで結晶Aにおける性状、水分、クジノシドA含有量および関連物質に対し測定し、機械はDAD(またはPDA)検出器を備えた超高速液体クロマトグラフであり、パラメータは以下のとおりである:
カラム: Agilent C18(2.1*100 mm、1.8-Micron);
移動相A:アセトニトリル;
移動相B:超純水;
検出波長:225nm;
流量:0.6mL/min;
注入量:5μl;
カラム温度:38℃;
作動時間:28分間;
定組成溶出:移動相A:移動相B=26:74(V/V);
希釈液:ニトリル:水=30:70(V/V);
ブランク溶液:希釈液。
【0120】
一、クジノシドA含有量の具体的な測定手順は以下の通りである:
不純物A原液の準備:不純物A(つまりクジノシドB)約10mgを精密に量り、100mLメスフラスコに置き、希釈液で溶解し、適量に希釈し、よく混ぜ、1mLごとに約100μg不純物Aを含む溶液を作製し、不純物A原液とする。
不純物D原液の準備:不純物A原液の作製手順と同じように、不純物Aを不純物D(つまりクジノシドC)に置き換え、1mLごとに約100μg不純物Dを含む溶液を作製する。
不純物F原液の準備:不純物A原液の作製手順と同じように、不純物Aを不純物F(つまりクジノシドD)に置き換え、1mLごとに約100μg不純物Fを含む溶液を作製する。
分離度溶液の準備:クジノシドA約50mgを精密に量り、100mLメスフラスコに置き、希釈液で溶解し、適量に希釈し、よく混ぜる;その後、当該溶液1mLおよび不純物A、D、F原液それぞれ0.6mLを10mLメスフラスコに精密に量り、希釈液で適量に希釈し、よく混ぜ、1mLごとに約クジノシドA50μg、不純物A6μg、不純物D6μg、不純物F6μgを含む溶液を作製し、分離度溶液とする。
標準溶液1の準備:クジノシドA標準物を約50mgを精密に量り、100mLメスフラスコに置き、希釈液で溶解し、適量に希釈し、よく混ぜる;1mLを10mLメスフラスコに精密に量り、希釈液で適量に希釈し、よく混ぜ、1mLごとにKA約50μgを含む溶液を作製し、標準溶液1とする。
標準溶液2の準備:標準溶液1の作製手順と同じように、標準溶液2を作製する。
測定対象溶液の準備:約50mgのサンプルを精密に量り、100mLメスフラスコに置き、希釈液で溶解し、適量に希釈し、よく混ぜる;1mL溶液を10mLメスフラスコに精密に量り、希釈液で適量に希釈し、よく混ぜて得る(測定対象溶液の濃度は50μg/mL)(同じように二つ作製する)。
UPLC解析を実行する前に、すべてのサンプル溶液を0.22μmPTFEニードルフィルターで濾過する必要がある。
注入手順:クロマトグラフィーの条件に応じて、ブランク溶液、分離度溶液、標準溶液1、標準溶液2、測定対象溶液、標準溶液1をそれぞれ注入し、クロマトグラフィーの全プロセスを記録する。
結果の計算:標準溶液1で外部標準法によりクジノシドAの含有量を算出する。
【0121】
二、関連物質含有量の具体的な測定手順は以下の通りである:
まず、上述のクジノシドA含有量の測定法に従い、不純物A、D、F原液、標準溶液1、標準溶液2を作製する。次に、以下の溶液を作製する。
分離度溶液:クジノシドA60mgを精密に量り、100mLメスフラスコに置き、不純物A、不純物Dおよび不純物F原液各0.9mLをそれぞれ入れ、希釈液で適量に希釈し、よく混ぜて得る(クジノシドA、不純物A、不純物Dおよび不純物Fの濃度はそれぞれ600、0.9、0.9および0.9μg/mLである)。
感度溶液:1mL標準溶液1を100mLメスフラスコに精密に量り、希釈液で適量に希釈し、よく混ぜる;3mL溶液を100mLメスフラスコに精密に量り、希釈液で適量に希釈し、よく混ぜ、1mLごとにKAを約0.15μg含む溶液を調製し、感度溶液(0.025%不純物限界溶液に相当)とする。
測定サンプル溶液:クジノシドA60mgを精密に量り、100mLメスフラスコに置き、希釈液で溶解し、適量に希釈し、よく混ぜて得る。同じように二つサンプルを作製し、TS1およびTS2とする。
対照溶液:測定サンプル溶液1mLを100mLメスフラスコに精密に量り、希釈液で適量に希釈する。1mL溶液を10mLメスフラスコに精密に量り、希釈液で適量に希釈する。同じように二つサンプルを作製し、TSR1およびTSR2とする。
UPLC解析を実行する前に、すべてのサンプル溶液を0.22μmPTFEニードルフィルターで濾過する必要がある。
注入手順:クロマトグラフィーの条件に応じて、ブランク溶液、分離度溶液、感度溶液、標準溶液1、標準溶液2、測定対象溶液、対照溶液、標準溶液1をそれぞれ注入し、クロマトグラフィーの全プロセスを記録する。
結果の計算:補正係数を用いた自己対照法により、測定サンプル溶液中の各物質の含有量を算出する。そのうち、不純物A(つまりクジノシドB)、不純物D(つまりクジノシドC)、不純物F(つまりクジノシドD)の補正係数はそれぞれ1.13、0.80、0.82である。
【0122】
上記の方法によって得られた結晶Aの安定性データは表9、10および11に示される。
【表9】
【表10】
【表11】
【0123】
表9-11に示される結果からわかるように、実施例1で作製される結晶Aは、いずれかの試験条件下でも、規定の標準を満たすため、良好な安定性を有することが証明される。
【実施例5】
【0124】
実施例5:クジノシドAの結晶A、C、Jの吸湿性試験
【0125】
実施例1-3で作製された結晶A、C、Jを各約10mg取り、動的水分吸着機(DVS)でそれぞれの吸湿性を測定(試験条件:温度は25℃で、相対湿度は0%~80%とする)し、以下の表12に示される標準で各結晶の吸湿性特徴を判断した。この吸湿性試験の手順および判断標準は《中華人民共和国薬典2020年版(四部)》通則9103―薬物吸湿性試験指導原則に参照する。
【表12】
【0126】
本試験では、結晶A、C、Jの動的水分吸着(DVS)図はそれぞれ
図1d、2d、3dに示される。そして、その吸湿性の結果は表13に示される。
【表13】
【0127】
表13からわかるように、結晶A、C、Jの吸湿性は:A>J>C。2020年版の吸湿性標準によると、結晶Cはやや吸湿性がある;結晶AおよびJは吸湿性がある。結晶Cは吸湿性に関して明らかに有利である。
【実施例6】
【0128】
実施例6:クジノシドAの結晶Jの安定性実験
【0129】
25mg結晶Jを取り、シャーレに平らに広げ、長期条件(温度:25℃±2℃;相対湿度:65%±10%)および加速条件(温度:40℃±2℃;相対湿度:75%±10%)下で、覆わずに暗所に10日間放置し、粉末X線回折測定および熱重量分析を行った。粉末X線回折機およびそのパラメータは表4に示される;熱重量分析器およびそのパラメータは表6に示される。測定結果は
図4に示される。
【0130】
図4aからわかるように、長期試験および加速試験の条件下では、結晶Jの粉末X線回折図におけるピークはいずれも変わっていないため、結晶が変わっていないのが証明される;
図4bからわかるように、長期試験および加速試験の条件下では、結晶Jの重量減少は変わっていない。つまり、結晶Jの安定性が良好である。
【実施例7】
【0131】
実施例7:クジノシドAの結晶Aおよび結晶Jの競争実験
【0132】
まず、初期混合サンプルを作製する:同じ量のクジノシドAの結晶A、結晶Jサンプルを取り、よく混ぜ、サンプリングしてXRPDを行った。用いられる機械やそのパラメータは表4に示され、
図5aに示される比較図が得られた。
サンプルに水を加えて混濁液を形成し、室温下で撹拌し、3日間後に、遠心分離し、サンプリングしてXRPDを行った(ウェットサンプル);30℃で真空乾燥した後に、XRPDを行った(ドライサンプル)。用いられる機械やそのパラメータは表4に示され、測定結果は
図5bに示される。
図5bからわかるように、ドライサンプルであっても、ウェットサンプルであっても、測定により、得られる水和物はいずれも結晶Jである。つまり、一定の条件下で、結晶Aは結晶Jに変わりやすい。
【実施例8】
【0133】
実施例8:クジノシドAの他の新型結晶の作製およびその粉末X線回折測定
【0134】
1. 結晶Bの作製およびその粉末X線回折測定
【0135】
クジノシドA結晶Bの作製方法:実施例1に示される作製方法でまず結晶Aを作製した。適量の結晶Aサンプルを取り、加熱で120℃まで上げ、5分間保温して、結晶Bを得た。
【0136】
上述のように作製された結晶BでX線回折測定を行った。使用された機械やそのパラメータは表4に示され、得られるデータは表14に示される。
【表14】
【0137】
結晶Bは、上記の表14に記載の2θにピークが存在する。そして、結晶Bは高温条件でしか安定に存在できない。
【0138】
2. 結晶Dの作製およびその粉末X線回折測定
【0139】
約100mgアモルファスクジノシドAを取り、15mLイソプロピルアルコールを入れ、超音波をかけ、60℃の水浴中で完全に溶解するまで撹拌し、その後固体がゆっくり析出し、室温まで徐冷し、4日間撹拌し、遠心分離し、結晶Dを得た。
【0140】
上述のように作製された結晶DでX線回折測定を行い、使用された機械やそのパラメータは表4に示され、得られたデータは表15に示される。
【表15】
【0141】
結晶Dは、上記の表15に記載の2θにピークが存在する。そして、結晶Dは潤った状態のウェットサンプルでしか安定に存在できない。
【0142】
3. 結晶Eの作製およびその粉末X線回折測定
【0143】
クジノシドA結晶Eの作製方法:約30mgアモルファスクジノシドAを取り、0.8mLエタノールおよび0.2mL水を入れ、70℃の水浴中で完全に溶解するまで加熱し、室温まで徐冷し、一晩放置した後に、固体を析出させ、結晶Eを得た。
【0144】
上述のように作製された結晶EでX線回折測定を行い、使用された機械やそのパラメータは表4に示され、得られたデータは表16に示される。
【表16】
【0145】
結晶Eは、上記の表16に記載の2θにピークが存在する。そして、結晶Eは潤った状態のウェットサンプルでしか安定に存在できない。
【0146】
4. 結晶Gの作製およびその粉末X線回折測定
【0147】
クジノシドA結晶Gの作製方法:約100mgアモルファスクジノシドAを取り、3mLテトラヒドロフランおよび1.2mL水を入れ、完全に溶解するまで超音波をかけ、室温で覆わずに放置し、揮発させ、結晶Gを得た。
【0148】
上述のように作製された結晶GでX線回折測定を行い、使用された機械やそのパラメータは表4に示され、得られたデータは表17に示される。
【表17】
【0149】
結晶Gは、上記の表17に記載の2θにピークが存在する。そして、結晶Gは潤った状態のウェットサンプルでしか安定に存在できない。
【0150】
5. 結晶I1の作製およびその粉末X線回折測定
【0151】
クジノシドA結晶I1の作製方法:約30mgアモルファスクジノシドAを取り、1mLトリフルオロエタノールを入れ、完全に溶解するまで超音波をかけ、室温で覆わずに放置し、揮発させ、結晶I1を得た。
【0152】
上述のように作製された結晶I
1でX線回折測定を行い、使用された機械やそのパラメータは表4に示され、得られたデータは表18に示される。
【表18】
【0153】
結晶I1は、上記の表18に記載の2θにピークが存在する。
【0154】
6. 結晶I2の作製およびその粉末X線回折測定
【0155】
クジノシドA結晶I2の作製方法:約100mgアモルファスクジノシドAを取り、3mLトリフルオロエタノールを入れ、完全に溶解するまで超音波をかけ、ろ過、室温で覆わずに放置し、乾燥まで揮発させ、結晶I2を得た。
【0156】
上述のように作製された結晶I
2でX線回折測定を行い、使用された機械やそのパラメータは表4に示され、得られたデータは表19に示される。
【表19】
【0157】
結晶I2は、上記の表19に記載の2θにピークが存在する。
【0158】
7. 結晶Kの作製およびその粉末X線回折測定
【0159】
クジノシドA結晶Kの作製方法:約100mgアモルファスクジノシドAを取り、15mLエタノールを入れ、完全に溶解するまで超音波をかけ、ろ過、28℃下で減圧濃縮して乾燥し、結晶Kを得た。
【0160】
上述のように作製された結晶KでX線回折測定を行い、使用された機械やそのパラメータは表4に示され、得られたデータは表20に示される。
【表20】
【0161】
結晶Kは、上記の表20に記載の2θにピークが存在する。
【0162】
8. 結晶Lの作製およびその粉末X線回折測定
【0163】
クジノシドA結晶Lの作製方法:実施例3に示される作製方法でまず結晶Jを作製した;適量の結晶Jを取り、加熱で120℃まで上げ、5分間保温して、結晶Lを得た。
【0164】
上述のように作製された結晶LでX線回折測定を行い、使用された機械やそのパラメータは表4に示され、得られたデータは表21に示される。
【表21】
【0165】
結晶Lは、上記の表21に記載の2θにピークが存在する。そして、結晶Lは高温条件でしか安定に存在できない。
【実施例9】
【0166】
実施例9:クジノシドAの生物学的な活性
【0167】
1. クジノシドAによる気管支平滑筋の拡張効果
【0168】
まず、異なる濃度のクジノシドA溶液を調製した:実施例1で得られたクジノシドA結晶A0.3253gを量り、1mLジメチルスルホキシド(DMSO)を加えて溶解し、クジノシドA結晶A原液を調製し、その後、DMSOで1μM、3.2μM、10μM、32μMクジノシドA結晶A溶液にそれぞれ希釈した。
そして、気管支輪を作製した:6週齢のC57BL/6Jマウスを頸椎脱臼により殺し、左右の気管支を除去し、実体顕微鏡下で気管支を解剖して左右の気管支を取得し、それらを長さ約2mmの気管支輪に切断した。
さらに、気管支輪の張力のバランスをとた:気管支輪を二つの金属ワイヤーで固定し、5mLの平衡食塩水(Kreb溶液)を入れた37℃の水槽に吊るし、5%二酸化炭素および95%酸素からなる混合ガスを連続注入した;次に、張力トランスデューサーを使用して気管支輪の張力のバランスをとり、60mM塩化カリウムを使用して事前刺激してからバランスを再調整した。
最後に、気道張力測定と投与を行った:機械を校正し、検出システムをゼロ調整した;マウスの張力が安定したときに、張力値Aを記録した;最終濃度を10μMにするように、5μL、10mMメラニン凝集ホルモンを5mLKreb溶液に添加して、気管支輪の収縮張力が最高ピークに達したとき、5μL異なる濃度(1μM、3.2μM、10μM、32μM)のクジノシドA結晶A溶液を添加し、表22に示すように、気管支張力の変化を記録し、気道張力緩和のパーセンテージを計算した。このうち、クジノシドA溶液を添加する時点の1分間前の張力の平均値をBとし、クジノシドA添加した20分間後の張力の平均値をCとし、気道張力緩和のパーセンテージ=(B―C)/(B―A)。
【0169】
【0170】
上記の表22から、クジノシドAの濃度が1μMである条件下では、それは気管支平滑筋に対して緩和効果を有さない;しかし、クジノシドAの濃度が3.2μM、10μM、32μMである条件下では、気管支平滑筋に対して緩和効果がある程度あり、KA濃度が高いほど、気管支平滑筋に対して緩和効果が強くなることが分かる。
【0171】
2. クジノシドAの抗炎効果
【0172】
まず、異なる濃度のクジノシドA溶液を準備した。具体的な手順は以下のとおりである。
【0173】
(1)15mg/mLのクジノシドA結晶A原液の調製:実施例1で得られたクジノシドA結晶A0.50990gを量り、33.993mLのプロピレングリコールを加え、超音波で溶解して約40mL、15mg/mLのクジノシドA結晶A原液を得て、暗所、室温で保存した;
(2)1.5mg/mLクジノシドA溶液の調製:15mg/mLクジノシドA結晶A原液2mLを量り、18mL 25%プロピレングリコールを加えて希釈し、20mL 1.5mg/mLクジノシドA溶液を得て、すぐに使う。
(3)0.3mg/mLクジノシドA溶液の調製:1.5mg/mLクジノシドA溶液4mLを量り、16mL 32.5%プロピレングリコールを加えて希釈し、20mL 0.3mg/mLクジノシドA溶液を得て、すぐに使う。
(4)0.06mg/mLクジノシドA溶液の調製:0.3mg/mLクジノシドA作業溶液3mLを量り、12mL 32.5%プロピレングリコールを加えて希釈し、15mL 0.3mg/mLクジノシドA溶液を得て、すぐに使う。
【0174】
次に、明らかな肺炎症を伴う喘息マウスモデルを構築した:Balb/cマウスに、初日に6mg/mL鶏卵アルブミン100μLと4mg水酸化アルミニウムを腹腔内注射し、8日目には3.6mg/mL鶏卵アルブミン100μLと4mg水酸化アルミニウムを注射し、15日目には1mg/mL鶏卵アルブミン100μLと4mg水酸化アルミニウムを注射し、20-23日目に毎日30分間かけて6mL 2%鶏卵アルブミンで刺激をかけ、明らかな肺炎症を伴う喘息マウスモデルを構築した。このうち、マウスのブランク対照群では、鶏卵アルブミンの代わりに100μLPBSを使用した。
【0175】
最後に噴霧治療を行った。24日目から異なる濃度(0.06mg/mL、0.3mg/mL、1.5mg/mL)のクジノシドA溶液を1日2回、1回30分間で合計12mL投与し、噴霧治療を行い、噴霧治療の1時間後に6mL 2%鶏卵アルブミンを使用して30分間刺激をかけ、そのように15日間投与・刺激した;最後の投与・刺激の24時間後、つまり39日目にサンプルを取って、サンプルを取る前に、2回で各回30分間、合計12mLのクジノシドA溶液を、対応する噴霧治療濃度でクジノシドA溶液を投与することで治療し、上記は、異なる用量のクジノシドA治療の実験群スキームである。陰性対照群のマウスでは、クジノシドAを30%プロピレングリコールに置き換え、噴霧投与を行った。
【0176】
フローサイトメトリーを使用して、マウス肺胞洗浄液サンプル中の白血球における好酸球(EO)の割合を検出した。このうち、ブランク群には15匹のマウス、陰性対照群には12匹のマウス、そして高濃度、中濃度、低濃度のクジノシドA実験群にはそれぞれ18匹、13匹、14匹のマウスがいた。結果を以下の表23に示される。
【0177】
【0178】
表23の結果から、ブランク対照群と比較して、陰性対照群における好酸球の割合が明らかに増加し、肺炎症の喘息マウスモデルが成功に構築されたことが分かる;陰性対照群と比較して、様々な用量のクジノシドA投与群における好酸球の割合が減少し、クジノシドAが一定の抗炎効果を有することが示された。
【0179】
本発明は、具体的な例が説明されたが、当業者にとって、本発明の主旨および範囲から離脱しないまま、本発明に対し様々な変化、修正を行うことが可能であるのは、明らかである。そのため、請求の範囲は、これらの本発明範囲内の変化、修正を全て含む。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記結晶A、C、J、B、D、E、G、KおよびLから選ばれるクジノシドA化合物の結晶であって、以下の特徴を有する、クジノシドA化合物の結晶。
前記結晶Aの粉末X線回折(XRPD)図において、下記2θにピークが存在する:6.7°±0.2°、7.3°±0.2°、7.9°±0.2°、10.5°±0.2°、10.9°±0.2°、14.1°±0.2°;
前記結晶Cの粉末X線回折(XRPD)図において、下記2θにピークが存在する:7.8°±0.2°、12.7°±0.2°、14.4°±0.2°、14.9°±0.2°、16.3°±0.2°、18.6°±0.2°、25.1°±0.2°;
前記結晶Jの粉末X線回折(XRPD)図において、下記2θにピークが存在する:7.7°±0.2°、9.3°±0.2°、12.1°±0.2°、14.1°±0.2°、15.1°±0.2°、16.6°±0.2°;
前記結晶Bの粉末X線回折(XRPD)図において、下記2θにピークが存在する:7.4°±0.2°、7.9°±0.2°、11.8°±0.2°、12.5°±0.2°、14.3°±0.2°、15.4°±0.2°;
前記結晶Dの粉末X線回折(XRPD)図において、下記2θにピークが存在する:6.2°±0.2°、9.9°±0.2°、12.4°±0.2°;
前記結晶Eの粉末X線回折(XRPD)図において、下記2θにピークが存在する:5.6°±0.2°、11.1°±0.2°、14.4°±0.2°;
前記結晶Gの粉末X線回折(XRPD)図において、下記2θにピークが存在する:5.7°±0.2°、7.8°±0.2°、9.2°±0.2°、9.9°±0.2°、17.5°±0.2°、19.8°±0.2°、20.0°±0.2°、28.5°±0.2°、37.8°±0.2°;
前記結晶Kの粉末X線回折(XRPD)図において、下記2θにピークが存在する:7.6°±0.2°、11.1°±0.2°、12.1°±0.2°、14.3°±0.2°;
前記結晶Lの粉末X線回折(XRPD)図において、下記2θにピークが存在する:9.5°±0.2°、12.3°±0.2°、13.6°±0.2°、14.5°±0.2°、15.4°±0.2°、16.2°±0.2°。
【請求項2】
前記結晶Aの粉末X線回折(XRPD)図において、下記2θにさらにピークが存在する:3.6°±0.2°、12.8°±0.2°、13.2°±0.2°、13.6°±0.2°、15.2°±0.2°、16.1°±0.2°、18.3°±0.2°、24.1°±0.2°;
前記結晶Bの粉末X線回折(XRPD)図において、下記2θにさらにピークが存在する:4.8°±0.2°、8.1°±0.2°、14.6°±0.2°;
前記結晶Cの粉末X線回折(XRPD)図において、下記2θにさらにピークが存在する:3.9°±0.2°、8.3°±0.2°、13.2°±0.2°、19.5°±0.2°、20.3°±0.2°;
前記結晶Dの粉末X線回折(XRPD)図において、下記2θにさらにピークが存在する:4.5°±0.2°、7.2°±0.2°、12.9°±0.2°、19.0°±0.2°;
前記結晶Eの粉末X線回折(XRPD)図において、下記2θにさらにピークが存在する:4.5°±0.2°、7.7°±0.2°、13.6°±0.2°、18.1°±0.2°、19.8°±0.2°、20.8°±0.2°、28.0°±0.2°;
前記結晶Gの粉末X線回折(XRPD)図において、下記2θにさらにピークが存在する:3.4°±0.2°、7.3°±0.2°、12.0°±0.2°、14.4°±0.2°、17.0°±0.2°、18.8°±0.2°、22.5°±0.2°、25.5°±0.2°、25.7°±0.2°、26.1°±0.2°;
前記結晶Jの粉末X線回折(XRPD)図において、下記2θにさらにピークが存在する:3.5°±0.2°、4.7°±0.2°、12.7°±0.2°、13.7°±0.2°、15.5°±0.2°、16.2°±0.2°、18.1°±0.2°;
前記結晶Kの粉末X線回折(XRPD)図において、下記2θにさらにピークが存在する:4.5°±0.2°、4.9°±0.2°、5.5°±0.2°、8.2°±0.2°、13.5°±0.2°、18.7°±0.2°;
前記結晶Lの粉末X線回折(XRPD)図において、下記2θにさらにピークが存在する:3.7±0.2°、7.9°±0.2°、16.9°±0.2°、17.3°±0.2°、18.8°±0.2°、20.4°±0.2°;
ことを特徴とする請求項1に記載の結晶。
【請求項3】
前記結晶Aの粉末X線回折(XRPD)図において、表1に示される2θにピークが存在する;
前記結晶Bの粉末X線回折(XRPD)図において、表14に示される2θにピークが存在する;
前記結晶Cの粉末X線回折(XRPD)図において、表2に示される2θにピークが存在する;
前記結晶Dの粉末X線回折(XRPD)図において、表15に示される2θにピークが存在する;
前記結晶Eの粉末X線回折(XRPD)図において、表16に示される2θにピークが存在する;
前記結晶Gの粉末X線回折(XRPD)図において、表17に示される2θにピークが存在する;
前記結晶Jの粉末X線回折(XRPD)図において、表3に示される2θにピークが存在する;
前記結晶Kの粉末X線回折(XRPD)図において、表20に示される2θにピークが存在する;
前記結晶Lの粉末X線回折(XRPD)図において、表21に示される2θにピークが存在する;
ことを特徴とする請求項
1に記載の結晶。
【請求項4】
前記結晶Aは、以下のいずれか一つまたは複数の特徴を有する、請求項1に記載の結晶。
(1)基本的に
図1aに示される粉末X線回折(XRPD)図を有する;
(2)基本的に
図1bに示される示差走査熱量(DSC)解析図を有する;
(3)基本的に
図1cに示される熱重量分析(TGA)図を有する;および
(4)基本的に
図1dに示される動的水分吸着(DVS)図を有する。
【請求項5】
前記結晶Cは、以下のいずれか一つまたは複数の特徴を有する、請求項1に記載の結晶。
(1)基本的に
図2aに示される粉末X線回折(XRPD)図を有する;
(2)基本的に
図2bに示される示差走査熱量(DSC)解析図を有する;
(3)基本的に
図2cに示される熱重量分析(TGA)図を有する;および
(4)基本的に
図2dに示される動的水分吸着(DVS)図を有する。
【請求項6】
前記結晶Jは、以下のいずれか一つまたは複数の特徴を有する、請求項1に記載の結晶。
(1)基本的に
図3aに示される粉末X線回折(XRPD)図を有する;
(2)基本的に
図3bに示される示差走査熱量(DSC)解析図を有する;
(3)基本的に
図3cに示される熱重量分析(TGA)図を有する;および
(4)基本的に
図3dに示される動的水分吸着(DVS)図を有する。
【請求項7】
クジノシドA化合物結晶Aの作製方法であって、以下の内容を含む:
苦丁茶を浸透抽出、濃縮した後に、抽出物エキスを得る;エキスを希釈して遠心分離し、粗製品を得る;粗製品を高圧クロマトグラフィーで精製した後に、脱色、再結晶、凍結乾燥をし、最後は粉砕し、結晶Aを得る;または
下記三方法のいずれか一つで前記結晶Aを作製する:
方法一:アルコール系溶媒でアモルファスクジノシドAを溶解し、クジノシドAの溶解液を得て、当該溶解液を、白色沈殿が析出し、かつ蒸発液収集容器の入口に液滴がほとんど生じなくなる濃縮終点までに濃縮し、濃縮液を得る;当該濃縮液を凍結乾燥し、結晶Aを得る;
方法二:アルコール系溶媒でアモルファスクジノシドAを溶解し、クジノシドAの溶解液を得て、当該溶解液に対し超音波処理し、その後ろ過し、ろ液を減圧濃縮した後に乾燥固体の結晶Aを得る;
方法三:アルコール系溶媒でアモルファスクジノシドAを溶解し、クジノシドAの溶解液を得て、室温下で当該溶解液を自然揮発させ、乾燥固体の結晶Aを得る。
【請求項8】
苦丁茶粉末とアルコールとの質量比が1:2.5-1:1.5になるように、純エタノールまたは50-90%(v/v)のエタノール水溶液で浸透抽出する;抽出物エキスは、順次に、水および無水エタノールで希釈し、遠心分離し、粗製品を得、ただし、水の用量は苦丁茶粉末質量の0.5-1倍とし、無水エタノールの用量は苦丁茶粉末質量の0.3-0.8倍とする;エタノールまたはその水溶液で60-90℃で当該粗製品を溶解し、その後それを10℃以下の条件下に置き、再結晶をする;約0℃で得られた結晶を凍結乾燥し、その後室温まで上げて乾燥し、最後は32℃以上の温度下でさらに乾燥し、結晶Aを得、ただし、凍結乾燥の時間は1-3時間とし、室温乾燥の時間は3-5時間とし、32℃以上の乾燥時間は5-8時間とすることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記方法一および方法二では、エタノール水溶液でアモルファスクジノシドAを溶解する;前記方法三では、メタノールでアモルファスクジノシドAを溶解する;前記方法一では、クジノシドAの溶解液を得た後に、先にろ過して透明溶液を得て、さらに当該透明溶液を濃縮し、ただし、濃縮は50-60℃の水浴中で行い、回転速度は30-80rpmとし、真空度は0.08MPa以上とすることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
以下の方法四~方法六のいずれか一つで結晶Cを作製する:
方法四:溶媒で結晶Aを溶解し、混濁液を得る;室温下で3-5日撹拌し、遠心分離する;得られる固体を25-30℃の条件下で一晩真空乾燥し、結晶Cを得る;
方法五:酢酸エチルで結晶Aを溶解し、混濁液を得る;室温下で2-4日撹拌し、遠心分離する;得られる固体を25-30℃の条件下で一晩真空乾燥し、結晶Cを得る;
方法六:150-200℃で結晶Aを3-10分間加熱し、結晶Cを得る;
以下の方法七~方法十のいずれか一つで結晶Jを作製する:
方法七:酢酸エチル飽和水溶液で結晶Aを溶解し、混濁液を得る;室温下で3-5日撹拌し、遠心分離する;得られる固体を25-30℃の条件下で一晩真空乾燥し、結晶Jを得る;
方法八:水で結晶Aを溶解し、混濁液を得る;室温下で2-4日撹拌し、遠心分離する;得られる固体を25-30℃の条件下で一晩真空乾燥し、結晶Jを得る;
方法九:アルコール系溶媒でアモルファスクジノシドAを溶解する;水を入れ、室温下で一晩撹拌した後に、遠心分離し、その後得られる固体を25-30℃の条件下で一晩真空乾燥し、結晶Jを得る;
方法十:アルコール系溶媒および水でアモルファスクジノシドAを溶解した後に、0-10℃で一晩撹拌した後に、遠心分離し、その後得られる固体を25-30℃の条件下で一晩真空乾燥し、結晶Jを得る;
ことを特徴とするクジノシドA化合物の結晶CまたはJの作製方法。
【請求項11】
前記方法四では、アセトニトリルとジイソプロピルエーテルとの体積比は1:1~1:5である;結晶Aと溶媒との質量体積比(グラム:ミリリトル)は1:20~1:50である;
前記方法五では、結晶Aと酢酸エチルとの質量体積比(グラム:ミリリトル)は1:10~1:30である;
前記方法六では、170±5℃の温度下で結晶Aを加熱し、3-7分間保温する;
前記方法七では、結晶Aと酢酸エチル飽和水溶液との質量体積比(グラム:ミリリトル)は1:20~1:50である;
前記方法八では、結晶Aと水との質量体積比(グラム:ミリリトル)は1:10~1:30である;
前記方法九では、アルコール系溶媒は無水アルコール系溶媒であり、クジノシドAとアルコール系溶媒との質量体積比(グラム:ミリリトル)は1:30~1:100であり、入れられる水の量はアルコール系溶媒の体積の1-10倍である;
前記方法十では、前記アルコール系溶媒は好ましく無水アルコール系溶媒であり、アルコール系溶媒と水との体積比は1:1~1:5であり、クジノシドAとアルコール系溶媒との質量体積比(グラム:ミリリトル)は1:10~1:50である;
ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
気管拡張用、抗炎用、または肺疾患治療用薬物の調製における請求項1-6に記載のいずれか一つのクジノシドA化合物の結晶または請求項7-11に記載のいずれか一つの方法で調製される生成物の応用。
好ましくは、前記肺疾患は慢性閉塞性肺疾病または喘息である;
好ましくは、前記結晶は結晶A、CまたはJまたはそれらの任意的な混合物である;
好ましくは、前記薬物は吸入製剤である;好ましくは、前記吸入製剤は粉末エアゾール吸入剤、ガス吸入剤、噴霧吸入剤、混濁吸入剤または溶液吸入剤である。
【請求項13】
有効治療量の請求項1-6に記載のいずれか一つのクジノシドA化合物の結晶または請求項7-11に記載のいずれか一つの方法で調製される生成物、および薬学において許容される担体を含むことを特徴とする肺疾患を治療する薬物組成物。
好ましくは、前記結晶は結晶A、CまたはJまたはそれらの任意的な混合物であり、前記生成物は結晶A、CまたはJまたはそれらの任意的な混合物を含有する;
好ましくは、前記薬物組成物は吸入製剤である;好ましくは、前記吸入製剤は粉末エアゾール吸入剤、ガス吸入剤、噴霧吸入剤、混濁吸入剤または溶液吸入剤である。
【国際調査報告】