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特表2024-528203可撓性ポリプロピレン変性絶縁材料、その調製方法、およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】可撓性ポリプロピレン変性絶縁材料、その調製方法、およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C08F 255/02 20060101AFI20240719BHJP
   C08L 51/06 20060101ALI20240719BHJP
   C08L 23/12 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
C08F255/02
C08L51/06
C08L23/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506637
(86)(22)【出願日】2022-08-03
(85)【翻訳文提出日】2024-04-01
(86)【国際出願番号】 CN2022109917
(87)【国際公開番号】W WO2023011515
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】202110892173.9
(32)【優先日】2021-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202110893165.6
(32)【優先日】2021-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202210876405.6
(32)【優先日】2022-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】510016575
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司北京化工研究院
【氏名又は名称原語表記】BEIJING RESEARCH INSTITUTE OF CHEMICAL INDUSTRY,CHINA PETROLEUM & CHEMICAL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】NO.14,BEISANHUAN EAST ROAD,CHAOYANG DISTRICT,BEIJING 100013,CHINA
(71)【出願人】
【識別番号】506259634
【氏名又は名称】清華大学
【氏名又は名称原語表記】TSINGHUA UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】Qinghuayuan,Haidian District,Beijing 100084,China
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】邵清
(72)【発明者】
【氏名】何金良
(72)【発明者】
【氏名】袁浩
(72)【発明者】
【氏名】李▲チ▼
(72)【発明者】
【氏名】張雅茹
(72)【発明者】
【氏名】胡軍
(72)【発明者】
【氏名】王銘▲ティ▼
(72)【発明者】
【氏名】黄上師
(72)【発明者】
【氏名】李娟
(72)【発明者】
【氏名】胡世▲シュン▼
(72)【発明者】
【氏名】張▲チ▼
(72)【発明者】
【氏名】高達利
(72)【発明者】
【氏名】施紅偉
【テーマコード(参考)】
4J002
4J026
【Fターム(参考)】
4J002BB12X
4J002BB14X
4J002BN03W
4J002BN03X
4J002BN04W
4J002BN04X
4J002BN05W
4J002BN05X
4J002GQ01
4J026AA13
4J026AC01
4J026BA04
4J026BA05
4J026BA06
4J026BA16
4J026BA20
4J026BA25
4J026BA27
4J026BA29
4J026BA30
4J026BA31
4J026BA35
4J026BA40
4J026BA43
4J026BB01
4J026BB03
4J026DB03
4J026DB05
4J026DB08
4J026DB12
4J026DB13
4J026DB23
4J026DB25
4J026DB27
4J026DB32
4J026DB40
4J026FA08
4J026GA01
4J026GA02
4J026GA08
(57)【要約】
可撓性ポリプロピレン変性絶縁材料、その調製方法および使用に関し、特にケーブル絶縁材料の分野に属する。可撓性ポリプロピレン変性絶縁材料は、プロピレン系連続相と、該プロピレン系連続相中に分散したゴム相および不飽和結合含有重合性モノマー由来のグラフト相とを含む。可撓性ポリプロピレン変性絶縁材料の総重量に基づいて、可撓性ポリプロピレン変性絶縁材料において、キシレン可溶分の含有量が、10重量%~55重量%であり、好ましくは15重量%~45重量%であり、より好ましくは18重量%~40重量%であり、さらに好ましくは20重量%~40重量%であり、可撓性ポリプロピレン変性絶縁材料において、不飽和結合含有重合性モノマー由来の、グラフト状態の構造単位の含有量は、0.3重量%~6重量%、好ましくは0.7重量%~5重量%である。可撓性ポリプロピレン変性絶縁材料の曲げ弾性率は、200MPa~1000MPaであり、好ましくは200MPa~950MPaであり、より好ましくは200MPa~700MPaであり、さらに好ましくは250MPa~600MPaである。好ましくは、キシレン不溶解物中の、可撓性ポリプロピレン変性絶縁材料中の不飽和結合含有重合性モノマー由来の構造単位の、可撓性ポリプロピレン変性絶縁材料中の不飽和結合含有重合性モノマー由来の構造単位に対する質量比が0.1を超え、好ましくは0.3~0.9である。本発明の可撓性ポリプロピレン変性絶縁材料は、より高い使用温度において機械的特性および電気的特性の両方に優れ、高温かつ高作動電界強度の使用条件に適している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン系連続相と、該プロピレン系連続相中に分散したゴム相および不飽和結合含有重合性モノマー由来のグラフト相とを含む変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料であって、
前記変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料の総重量に基づいて、前記変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料において、キシレン可溶分の含有量は、10重量%~55重量%であり、好ましくは15重量%~45重量%であり、より好ましくは18重量%~40重量%であり、さらにより好ましくは20重量%~40重量%であり、
前記変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料において、前記不飽和結合含有重合性モノマー由来のグラフト状態の構造単位の含有量は、0.3重量%~6重量%であり、好ましくは0.7重量%~5重量%であり、
前記変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料の曲げ弾性率は、200MPa~1000MPaであり、好ましくは200MPa~950MPaであり、より好ましくは200MPa~700MPaであり、さらにより好ましくは250MPa~600MPaであり、
好ましくは、キシレン不溶分中の前記不飽和結合含有重合性モノマー由来の構造単位の質量の、前記変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料中の前記不飽和結合含有重合性モノマー由来の構造単位の質量に対する比は、0.1を超え、好ましくは0.3~0.9である、変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料。
【請求項2】
前記不飽和結合含有重合性モノマーはアルケニル基含有官能性モノマーであり、前記変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料において、前記アルケニル基含有官能性モノマー由来の、グラフト状態の構造単位の含有量は、0.4重量%~6重量%であり、好ましくは1重量%~5重量%であり、
前記グラフト相のD50は、300nm未満であり、好ましくは10nm~250nmであり、より好ましくは50nm~200nmである、請求項1に記載の変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料。
【請求項3】
前記不飽和結合含有重合性モノマーは無水物モノマーおよびアルケニル基含有官能性モノマーであり、
前記変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料において、前記無水物モノマーおよび前記アルケニル基含有官能性モノマー由来のグラフト状態の構造単位の含有量は、0.3重量%~5重量%であり、好ましくは0.7重量%~3重量%であり、前記無水物モノマー由来のグラフト状態の構造単位の含有量は、0.05重量%~2重量%であり、好ましくは0.2重量%~0.5重量%であり、
前記グラフト相のD50は、170nm未満であり、好ましくは10nm~150nmであり、より好ましくは55nm~110nmである、請求項1に記載の変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料。
【請求項4】
前記変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料は、
230℃、2.16kg荷重下でのメルトフローレートが0.5g/10分~15g/10分であり、好ましくは0.6g/10分~10g/10分であり、さらに好ましくは0.8g/10分~6g/10分であり、
破断伸び率が≧200%であり、より好ましくは≧300%であり、
引張強度が5MPaを超え、好ましくは10MPa~25MPaであることのうちの少なくとも1つの特性を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料。
【請求項5】
前記変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料は、
前記変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料の最高使用温度が90℃以上であり、好ましくは100℃~160℃であり、より好ましくは、110℃~140℃であり、
前記変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料の110℃における破壊電界強度Eが285kV/mm以上であり、好ましくは290kV/mm~800kV/mmであり、より好ましくは300kV/mm~750kV/mmであり、
前記変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料の110℃、40kV/mm電界強度での直流体積抵抗率ρvgが≧1.0×1013Ω・mであり、好ましくは1.5×1013Ω・m~1.0×1020Ω・mであり、
前記変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料の110℃、50Hzでの誘電率が2.0を超え、より好ましくは2.1~2.5であることのうちの少なくとも1つの特性を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料。
【請求項6】
前記無水物モノマーは、少なくとも1つのオレフィン不飽和を有する無水物から選ばれてもよく、好ましくは、前記無水物モノマーは、無水マレイン酸および/または無水イタコン酸から選ばれ、より好ましくは、前記無水物モノマーは無水マレイン酸である、請求項3に記載の変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料。
【請求項7】
前記アルケニル基含有官能性モノマーは、式1で表される構造を有するモノマーの少なくとも1つから選ばれ、
【化1】

式1中、R、R、Rは、それぞれ独立して、H、置換または非置換のアルキルから選ばれ、Rは、置換または非置換のアルキル、置換または非置換のアルコキシ、置換または非置換のアリール、置換または非置換のエステル基、置換または非置換のカルボキシル、置換または非置換のシクロアルキルまたはヘテロシクリル、シアノ、置換または非置換のシリルから選ばれる、請求項2または3に記載の変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料。
【請求項8】
、R、Rは、それぞれ独立して、H、置換または非置換のC-Cアルキルから選ばれ、好ましくはR、R、Rは、それぞれ独立して、H、置換または非置換のC-Cアルキルから選ばれ、
は、置換または非置換のC-C20アルキル、置換または非置換のC-C20アルコキシ、置換または非置換のC-C20アリール、置換または非置換のC-C20エステル基、置換または非置換のC-C20カルボキシル、置換または非置換のC-C20シクロアルキルまたはヘテロシクリル、シアノ、置換または非置換のC-C20シリルから選ばれ、
置換基はハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、C-C12アルキル、C-Cシクロアルキル、C-C12アルコキシ、C-C12アシルオキシであり、
好ましくは、Rは、置換または非置換のC-C12アルキル、置換または非置換のC-C18アルコキシ、置換または非置換のC-C12アリール、置換または非置換のC-C12エステル基、置換または非置換のC-C12カルボキシル、置換または非置換のC-C12シクロアルキルまたはヘテロシクリル、シアノから選ばれ、置換基はハロゲン、C-Cアルキル、C-Cシクロアルキルであり、
より好ましくは、Rは、置換または非置換のC-Cアルキル、置換または非置換のC-C12アルコキシ、置換または非置換のC-Cアリール、置換または非置換のC-Cエステル基、置換または非置換のC-Cカルボキシル、置換または非置換のC-Cシクロアルキルまたはヘテロシクリル、シアノから選ばれる、請求項7に記載の変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料。
【請求項9】
、R、Rは、それぞれ独立して、H、置換または非置換のC-Cアルキルから選ばれ、
は、式2で表される基、式3で表される基、式4で表される基、式5で表される基、式6で表される基、式6で表される基と式7で表される基との組み合わせ、複素環基から選ばれ、
【化2】

式2中、R-Rは、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、リン酸基、スルホン酸基、置換または非置換のC-C12アルキル、置換または非置換のC-C12シクロアルキル、置換または非置換のC-C12アルコキシ、置換または非置換のC-C12エステル基、置換または非置換のC-C12アミノから選ばれ、置換基は、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、リン酸基、スルホン酸基、C-C12アルキル、C-C12シクロアルキル、C-C12アルコキシ、C-C12エステル基、C-C12アミノから選ばれ、
好ましくは、R-Rは、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、置換または非置換のC-Cアルキル、置換または非置換のC-Cアルコキシから選ばれ、
【化3】

式3中、R-R10は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、リン酸基、スルホン酸基、置換または非置換のC-C12アルキル、置換または非置換のC-C12シクロアルキル、置換または非置換のC-C12アルコキシ、置換または非置換のC-C12エステル基、置換または非置換のC-C12アミノから選ばれ、置換基は、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、リン酸基、スルホン酸基、C-C12アルキル、C-C12シクロアルキル、C-C12アルコキシ、C-C12エステル基、C-C12アミノから選ばれ、
好ましくは、R-R10は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、置換または非置換のC-Cアルキル、置換または非置換のC-Cアルコキシから選ばれ、置換基はハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、C-Cアルキル、C-Cアルコキシから選ばれ、
【化4】

式4中、R’-R10’は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、リン酸基、スルホン酸基、置換または非置換のC-C12アルキル、置換または非置換のC-C12シクロアルキル、置換または非置換のC-C12アルコキシ、置換または非置換のC-C12エステル基、置換または非置換のC-C12アミノから選ばれ、置換基はハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、リン酸基、スルホン酸基、C-C12アルキル、C-C12シクロアルキル、C-C12アルコキシ、C-C12エステル基、C-C12アミノから選ばれ、
好ましくは、R’-R10’は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、置換または非置換のC-Cアルキル、置換または非置換のC-Cアルコキシから選ばれ、置換基はハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、C-Cアルキル、C-Cアルコキシから選ばれ、
【化5】

式5中、R’、R’’、R’’’は、それぞれ独立して、置換または非置換のC-C12直鎖アルキル、置換または非置換のC-C12分岐アルキル、置換または非置換のC-C12アルコキシ、置換または非置換のC-C12アシルオキシから選ばれ、
好ましくは、Rは、C-Cアルケニルであり、好ましくは一価不飽和アルケニルであり、R、R、Rは、それぞれ独立して、置換または非置換のC-C直鎖アルキル、置換または非置換のC-C分岐アルキル、置換または非置換のC-Cアルコキシ、置換または非置換のC-Cアシルオキシから選ばれ、
【化6】

【化7】

式6中、Rは、置換または非置換の以下の基:C-C20直鎖アルキル、C-C20分岐アルキル、C-C12シクロアルキル、C-C12エポキシアルキル、C-C12エポキシアルキルアルキルから選ばれ、置換基はハロゲン、アミノおよびヒドロキシの少なくとも1つから選ばれ、
前記複素環基は、イミダゾール、ピラゾリル、カルバゾリル、ピロリジノニル、ピリジル、ピペリジニル、カプロラクタニル、ピラジニル、チアゾリル、プリニル、モルホリニル、オキサゾリニルから選ばれる、請求項8に記載の変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料。
【請求項10】
前記アルケニル基含有官能性モノマーは芳香族オレフィン系モノマーであり、前記芳香族オレフィン系モノマーは、スチレン、α-メチルスチレン、1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン、単置換または多置換のスチレン、単置換または多置換のα-メチルスチレン、単置換または多置換の1-ビニルナフタレン、および、単置換または多置換の2-ビニルナフタレンの少なくとも1つから選ばれ、置換基は、好ましくは、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、リン酸基、スルホン酸基、C-C直鎖アルキル、C-Cの分岐アルキルもしくはシクロアルキル、C-C直鎖アルコキシ、C-Cの分岐アルコキシもしくは環状アルコキシ、C-C直鎖エステル基、C-Cの分岐エステル基もしくは環状エステル基、C-C直鎖アミン基およびC-Cの分岐アミン基もしくは環状アミン基の少なくとも1つから選ばれ、好ましくは、前記芳香族オレフィン系モノマーは、スチレン、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレンおよび4-メチルスチレンの少なくとも1つから選ばれ、および/または、
前記アルケニル基含有官能性モノマーはアルケニル基含有シランモノマーであり、前記アルケニル基含有シランモノマーは、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリ-tert-ブトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、エチルビニルジエトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、アリルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、アリルトリ-tert-ブトキシシラン、アリルトリアセトキシシラン、メチルアリルジメトキシシランおよびエチルアリルジエトキシシランの少なくとも1つから選ばれ、および/または、
前記アルケニル基含有官能性モノマーは、アクリレートモノマーおよび任意のアクリルモノマーであり、好ましくは、前記アクリレートモノマーは、メチル(メチル)アクリレート、sec-ブチル(メチル)アクリレート、エチル(メチル)アクリレート、n-ブチル(メチル)アクリレート、イソブチル(メチル)アクリレート、tert-ブチル(メチル)アクリレート、イソオクチル(メチル)アクリレート、ドデシル(メチル)アクリレート、コシニン(メチル)アクリレート、オクタデシル(メチル)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メチル)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メチル)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メチル)アクリレートおよびグリシジル(メチル)アクリレートの少なくとも1つから選ばれ、好ましくは、前記アクリルモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸および2-エチルアクリル酸の少なくとも1つから選ばれ、好ましくは、アクリレートモノマー由来の構造単位と、アクリルモノマー由来の構造単位とのモル比は、1:0~2であり、好ましくは1:0.125~1である、請求項9に記載の変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料。
【請求項11】
前記アルケニル基含有重合性モノマーは、酢酸ビニル、スチレン、α-メチルスチレン、(メタ)アクリレート、ビニルアルキルエーテル、ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾールおよびアクリロニトリルの少なくとも1つから選ばれ、前記(メタ)アクリレートは、好ましくは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、およびグリシジル(メタ)アクリレートの少なくとも1つから選ばれ、好ましくは、前記アルケニル基含有重合性モノマーは酢酸ビニル、スチレン、α-メチルスチレンから選ばれ、より好ましくは、前記アルケニル基含有重合性モノマーはスチレンである、請求項10に記載の変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料。
【請求項12】
前記変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料は、変性ポリプロピレン(A)および低弾性率ポリプロピレン(B)を含み、前記変性ポリプロピレン(A)は、第1の不飽和結合含有重合性モノマーでグラフト変性されたポリプロピレンであり、前記低弾性率ポリプロピレン(B)は、未変性低弾性率ポリプロピレン、および/または、第2の不飽和結合含有重合性モノマーでグラフト変性された低弾性率ポリプロピレンであり、
好ましくは、前記第1の不飽和結合含有重合性モノマーおよび前記第2の不飽和結合含有重合性モノマーは、それぞれ独立して、アルケニル基含有官能性モノマーおよび任意の無水物モノマーであり、
好ましくは、前記変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料の総重量に基づいて、前記変性ポリプロピレン(A)の含有量は20重量%~80重量%であり、好ましくは30重量%~70重量%であり、より好ましくは、35重量%~65重量%であり、前記低弾性率ポリプロピレン(B)の含有量は20重量%~80重量%であり、好ましくは30重量%~70重量%であり、より好ましくは、35重量%~65重量%である、請求項1~11のいずれか1項に記載の変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料。
【請求項13】
前記変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料は、前記変性ポリプロピレン(A)と、前記低弾性率ポリプロピレン(B)とをブレンドすることによって調製される、請求項12に記載の変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料。
【請求項14】
前記変性ポリプロピレン(A)は、単独重合ポリプロピレンまたは共重合ポリプロピレン由来の構造単位と、不飽和結合含有重合性モノマー由来の構造単位とを含み、前記変性ポリプロピレン(A)の重量に基づいて、前記変性ポリプロピレン(A)において、前記不飽和結合含有重合性モノマー由来の、グラフト状態の構造単位の含有量は、0.1重量%~20重量%であり、好ましくは1重量%~15重量%である、請求項13に記載の変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料。
【請求項15】
前記単独重合ポリプロピレンまたは共重合ポリプロピレンは、
コモノマーの含有量が0モル%~15モル%であり、好ましくは0モル%~12モル%であり、より好ましくは0モル%~8モル%であり、キシレン可溶分の含有量が15重量%未満であり、好ましくは0.5重量%~8重量%であり、230℃、2.16kg荷重下でのメルトフローレートが1g/10分~10g/10分であり、好ましくは2g/10分~5g/10分であり、融点Tmが110℃~180℃であり、さらに好ましくは120℃~170℃であり、重量平均分子量が20×10g/モル~50×10g/モルであり、曲げ弾性率が500MPa~2000MPaであり、好ましくは600MPa~1700MPaであり、破断伸び率が200%以上であり、好ましくは300%以上であり、引張強度が5MPaを超え、好ましくは10MPa~40MPaであることのうちの少なくとも1つの特性を有する、請求項14に記載の変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料。
【請求項16】
前記共重合ポリプロピレンのコモノマーは、エチレンおよびC-Cα-オレフィンの少なくとも1つから選ばれ、好ましくは、前記共重合ポリプロピレンのコモノマーは、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテンおよび1-オクテンの少なくとも1つから選ばれ、より好ましくは、前記共重合ポリプロピレンのコモノマーは、エチレンおよび/または1-ブテンであり、モノマーの総モル量に基づいて、コモノマーの含有量が0.1モル%~15モル%であり、好ましくは0.1モル%~12モル%であり、より好ましくは、0.1モル%~8モル%である、請求項14に記載の変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料。
【請求項17】
前記低弾性率ポリプロピレンは、プロピレンと、エチレンまたはより高級のα-オレフィンとのコポリマーであり、好ましくはエチレン-プロピレンコポリマーであり、曲げ弾性率が300MPa未満であり、
好ましくは、前記プロピレンと、エチレンまたはより高級のα-オレフィンとのコポリマーは、プロピレンホモポリマーおよび/またはプロピレンランダムコポリマーマトリックス成分(1)と、その中に分散した別のプロピレンコポリマーである成分(2)とを含み、
より好ましくは、前記低弾性率ポリプロピレンは海島構造または共連続構造であり、
さらに好ましくは、前記低弾性率ポリプロピレンは、反応器内でその場で調製された、請求項12に記載の変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料。
【請求項18】
前記低弾性率ポリプロピレンは、
コモノマーの含有量が8重量%~25重量%であり、好ましくは10重量%~22重量%であり、キシレン可溶分の含有量が18重量%~75重量%であり、好ましくは30重量%~70重量%であり、より好ましくは、30重量%~67重量%であり、230℃、2.16kg荷重下でのメルトフローレートが0.1g/10分~15g/10分であり、好ましくは0.2g/10分~7g/10分であり、融点Tmが120℃~165℃であり、さらに好ましくは125℃~150℃であり、曲げ弾性率が10MPa~300MPaであり、好ましくは15MPa~250MPaであり、前記キシレン可溶分中のコモノマーの含有量が10重量%~50重量%であり、好ましくは20重量%~35重量%であり、前記キシレン可溶分の前記低弾性率ポリプロピレンに対する固有粘度比が0.5~3であり、好ましくは0.8~1.3であり、重量平均分子量が25×10g/モル~70×10g/モルであることのうちの少なくとも1つの特性を有する、請求項17に記載の変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料。
【請求項19】
前記低弾性率ポリプロピレン(B)の重量に基づいて、前記低弾性率ポリプロピレン(B)中のグラフト状態の構造単位の含有量は、0重量%~5重量%であり、好ましくは0.2重量%~2.5重量%である、請求項12に記載の変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料。
【請求項20】
変性ポリプロピレン(A)と低弾性率ポリプロピレン(B)とをブレンドして変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料を調製する工程を含み、
前記変性ポリプロピレン(A)は、第1の不飽和結合含有重合性モノマーでグラフト変性されたポリプロピレンであり、前記低弾性率ポリプロピレン(B)は、未変性低弾性率ポリプロピレン、および/または、第2の不飽和結合含有重合性モノマーでグラフト変性された低弾性率ポリプロピレンであり、
好ましくは、前記第1の不飽和結合含有重合性モノマーおよび前記第2の不飽和結合含有重合性モノマーは、それぞれ独立して、アルケニル基含有官能性モノマーおよび任意の無水物モノマーであり、
好ましくは、変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料の総重量に基づいて、前記変性ポリプロピレン(A)の含有量は20重量%~80重量%であり、好ましくは30重量%~70重量%であり、より好ましくは35重量%~65重量%であり、前記低弾性率ポリプロピレン(B)の含有量は20重量%~80重量%であり、好ましくは30重量%~70重量%であり、より好ましくは、35重量%~65重量%である、請求項1~19のいずれか1項に記載の変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料を調製するための方法。
【請求項21】
不活性ガスの存在下で、単独重合ポリプロピレンまたは共重合ポリプロピレンと第1の不飽和結合含有重合性モノマーとを含む反応混合物Aをグラフト化反応させ、変性ポリプロピレンを得、
任意に、不活性ガスの存在下で、低弾性率ポリプロピレンと第2の不飽和結合含有重合性モノマーとを含む反応混合物Bをグラフト化反応させ、変性低弾性率ポリプロピレンを得る工程S1、および、
前記変性ポリプロピレンと、未変性低弾性率ポリプロピレンおよび/または変性低弾性率ポリプロピレンと、任意の添加剤とを混合し、押出造粒して変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料を得る工程S2を含み、
好ましくは、前記第1の不飽和結合含有重合性モノマーおよび前記第2の不飽和結合含有重合性モノマーは、それぞれ独立して、アルケニル基含有官能性モノマーおよび任意の無水物モノマーである、請求項20に記載の調製方法。
【請求項22】
前記反応混合物Aおよび前記反応混合物Bは、それぞれ独立して、フリーラジカル開始剤を含み、前記フリーラジカル開始剤が過酸化物系フリーラジカル開始剤および/またはアゾ系ラジカル開始剤から選ばれ、前記過酸化物系フリーラジカル開始剤は、好ましくは過酸化ジベンゾイル、過酸化ジクミル、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、過酸化ラウロイル、過酸化ドデシル、tert-ブチルペルオキシ安息香酸、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、tert-ブチルペルオキシ(2-エチルヘキサノエート)およびジシクロヘキシルペルオキシジカーボネートの少なくとも1つから選ばれ、前記アゾ系ラジカル開始剤は、好ましくはアゾビスイソブチロニトリルおよび/またはアゾビスイソヘプトニトリルである、請求項21に記載の調製方法。
【請求項23】
ラジカル開始剤の質量の、不飽和結合含有重合性モノマーの総質量に対する比が0.01~10:100であり、好ましくは0.5~6:100である、請求項22に記載の調製方法。
【請求項24】
前記第1の不飽和結合含有重合性モノマーの前記単独重合ポリプロピレンまたは共重合ポリプロピレンに対する質量比が0.5~35:100であり、好ましくは2~30:100であり、より好ましくは、2.5~25:100であり、
前記第2の不飽和結合含有重合性モノマーの前記低弾性率ポリプロピレンに対する質量比が0.1~20:100であり、好ましくは0.2~15:100であり、より好ましくは、0.5~10:100であり、
前記不飽和結合含有重合性モノマーがアルケニル基含有官能性モノマーおよび無水物モノマーを含む場合、アルケニル基含有官能性モノマーの、無水物モノマーに対する質量比が0.5~10:1であり得、好ましくは2~8:1であり得る、請求項21に記載の調製方法。
【請求項25】
グラフト化反応は、温度が30℃~130℃であり、好ましくは60℃~120℃であり、時間が0.5時間~10時間であり、より好ましくは1時間~6時間である、請求項21に記載の調製方法。
【請求項26】
前記反応混合物Aおよび前記反応混合物Bは、それぞれ独立して、分散剤、界面活性剤および有機溶媒の少なくとも1つをさらに含み、前記分散剤の質量含有率が、前記単独重合ポリプロピレンまたは共重合ポリプロピレン/低弾性率ポリプロピレンの質量の50%~300%であり、前記界面活性剤の質量含有率が、前記単独重合ポリプロピレンまたは共重合ポリプロピレン/低弾性率ポリプロピレンの質量の1%~30%であり、前記有機溶媒の質量含有率が、前記単独重合ポリプロピレンまたは共重合ポリプロピレン/低弾性率ポリプロピレンの質量の1%~35%である、請求項21に記載の調製方法。
【請求項27】
a.単独重合ポリプロピレンまたは共重合ポリプロピレンを密閉反応器に入れ、その後、不活性ガス置換を行う工程、
b.フリーラジカル開始剤および第1の不飽和結合含有重合性モノマーを密閉反応器に添加し、撹拌しながら混合する工程、
c.任意に界面活性剤を添加し、任意に反応系を膨潤させる工程、
d.任意に分散剤を添加し、反応系をグラフト化反応温度まで加熱してグラフト化反応を行う工程、
e.反応終了後、任意にろ過し、乾燥して変性ポリプロピレンを得る工程、
f.前記変性ポリプロピレンと、グラフト化されていないおよび/またはグラフト化された低弾性率ポリプロピレンと、任意の助剤とを混合し、溶融、押出し、造粒して、変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料を得る工程を含む調製方法であって、
前記グラフト化された低弾性率ポリプロピレンの調製方法は、
i.低弾性率ポリプロピレンを密閉反応器に入れ、その後、不活性ガス置換を行う工程、
ii.フリーラジカル開始剤および第2の不飽和結合含有重合性モノマーを密閉反応器に添加し、撹拌しながら混合する工程、
iii.任意に界面活性剤を添加し、任意に反応系を膨潤させる工程、
iv.任意に分散剤を添加し、反応系をグラフト化反応温度まで加熱してグラフト化反応を行う工程、
v.反応終了後、任意にろ過し、乾燥して変性低弾性率リプロピレンを得る工程を含む、請求項26に記載の調製方法。
【請求項28】
a.単独重合ポリプロピレンまたは共重合ポリプロピレンを密閉反応器に入れ、その後、不活性ガス置換を行う工程、
b.有機溶媒とフリーラジカル開始剤を混合し、その混合物を密閉反応器に加える工程、
c.前記有機溶媒を除去する工程、
d.第1の不飽和結合含有重合性モノマーを添加し、任意に界面活性剤を添加し、任意に反応系を膨潤させる工程、
e.任意に分散剤を添加し、反応系をグラフト化反応温度まで加熱してグラフト化反応を行う工程、
f.反応終了後、任意にろ過し、乾燥して変性ポリプロピレンを得る工程、
g.変性ポリプロピレンと、グラフト化されていないおよび/またはグラフト化された低弾性率ポリプロピレンと、任意の助剤とを割合で秤量し、混合、溶融、押出し、造粒して、変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料を得る工程を含む調製方法であって、
前記グラフト化された低弾性率ポリプロピレンの調製方法は、
i.低弾性率ポリプロピレンを密閉反応器に入れ、その後、不活性ガス置換を行う工程i、
ii.有機溶媒とフリーラジカル開始剤を混合し、その混合物を密閉反応器に添加する工程、
iii.前記有機溶媒を除去する工程、
iv.第2の不飽和結合含有重合性モノマーを添加し、任意に界面活性剤を添加し、任意に反応系を膨潤させる工程、
v.任意に分散剤を添加し、反応系をグラフト化反応温度まで加熱してグラフト化反応を行う工程、
vi.反応終了後、任意にろ過し、乾燥して変性低弾性率リプロピレンを得る工程を含む、請求項26に記載の調製方法。
【請求項29】
好ましくはケーブル分野における使用である、請求項1~19のいずれか1項に記載の変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、絶縁材料、特にケーブル絶縁材料の分野に属し、特に、変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料、変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料の調製方法、および変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料の使用に関する。
【0002】
〔背景技術〕
ポリプロピレン系材料は、自然に高い使用温度および高い破壊電界強度という利点を有し、空間電荷抑制特性と再利用可能特性とを備え、従来のケーブル絶縁材料である架橋ポリエチレンの最適な代替材料である。しかし、絶縁材料として、ポリプロピレンは脆く靭性が不十分であるため、ケーブルの構造およびレイアウトの要件を満たすことができない。ポリプロピレンにポリオレフィンエラストマーをブレンドすること、またはゴム相に低弾性率のエチレンプロピレンコポリマーを組み込むことが、現在の主な強靭化手段の1つである(例えば、EP893802A1、EP893801A1、KR1020180093807A、KR1020120095309Aなどを参照のこと)。しかし、これらの方法は、材料の絶縁特性、特に高温での絶縁特性の低下を必然的にもたらす。ケーブルの高温および高電界強度の使用条件に対応するために、添加剤、ナノドーピング、またはグラフト変性等によって、材料の絶縁特性を向上させる必要がある。
【0003】
グラフト変性とは、ポリプロピレンの分子鎖上に特殊な官能基を導入し、分子軌道を変化させ、電荷トラップを導入することで、材料の絶縁特性を向上させることである。ナノ粒子ドーピング変性と比較して、当該方法はプロセスが簡単であり、ナノ粒子の凝集によってもたらされる不安定な性能という問題を解決し、非常に高い応用可能性を有する。
【0004】
CN105949394Aは、無水マレイン酸グラフトポリプロピレン材料およびその調製方法を開示しており、この材料は、グラフト化後の空間電荷蓄積が明らかに減少している。しかし、この発明で採用された溶融グラフト化法は材料の分子量を著しく低下させ得、その結果、材料の機械的特性がケーブル絶縁材料の実際の需要を満たすことができなくなる。
【0005】
US20140363671A1は、絶縁材料としてエポキシ基含有グラフトポリプロピレンを用いたケーブルを開示しているが、この発明は調製方法のみを開示しており、材料のグラフト化率等の構造パラメータ、そしてまた材料の絶縁特性は開示していない。
【0006】
CN111354507Aは、無水マレイン酸グラフトポリプロピレンをケーブル絶縁層中の水樹抑制剤として使用することに言及しているが、グラフトポリプロピレンの調製およびグラフト化率は詳細に限定されておらず、材料の絶縁特性も開示されていない。
【0007】
〔発明の内容〕
本発明は、従来技術の上記欠点を克服し、より高い使用温度において機械的特性および電気的特性の両方に優れることができ、高温かつ高作動電界強度の使用条件に適している、変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料を提供することを目的とする。
【0008】
本発明の第1の態様は、プロピレン系連続相と、該プロピレン系連続相中に分散したゴム相および不飽和結合含有重合性モノマー由来のグラフト相とを含む変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料であって、前記変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料の総重量に基づいて、前記変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料において、キシレン可溶分の含有量は、10重量%~55重量%であり、好ましくは15重量%~45重量%であり、より好ましくは18重量%~40重量%であり、さらにより好ましくは20重量%~40重量%であり、
前記変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料において、前記不飽和結合含有重合性モノマー由来のグラフト状態の構造単位の含有量は、0.3重量%~6重量%であり、好ましくは0.7重量%~5重量%であり、前記変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料の曲げ弾性率は、200MPa~1000MPaであり、好ましくは200MPa~950MPaであり、より好ましくは200MPa~700MPaであり、さらにより好ましくは250MPa~600MPaであり、好ましくは、キシレン不溶分中の前記不飽和結合含有重合性モノマー由来の構造単位の質量の、前記変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料中の前記不飽和結合含有重合性モノマー由来の構造単位の質量に対する比は、0.1を超え、好ましくは0.3~0.9である、変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料を提供することである。
【0009】
本発明の第2の態様は、変性ポリプロピレン(A)と低弾性率ポリプロピレン(B)とをブレンドして変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料を調製する工程を含み、前記変性ポリプロピレン(A)は、第1の不飽和結合含有重合性モノマーでグラフト変性されたポリプロピレンであり、前記低弾性率ポリプロピレン(B)は、未変性低弾性率ポリプロピレン、および/または、第2の不飽和結合含有重合性モノマーでグラフト変性された低弾性率ポリプロピレンであり、好ましくは、前記第1の不飽和結合含有重合性モノマーおよび前記第2の不飽和結合含有重合性モノマーは、それぞれ独立して、アルケニル基含有官能性モノマーおよび任意の無水物モノマーである、上記変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料を調製するための方法を提供する。
【0010】
本発明の第3の態様は、上記の変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料の使用を提供する。
【0011】
本発明の変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料は、より高い使用温度において機械的特性および電気的特性の両方に優れることができ、高温かつ高作動電界強度の使用条件に適している。ケトル中でアロイ化することによって得られるポリプロピレン材料と比較して、低弾性率ポリプロピレンと機械的にブレンドされたポリプロピレン材料は、より多様性を有し構造について柔軟に調整できる生成物を結果として生じ、より良い性能を得ることができる。ナノドーピング技術と比較して、分散によって導入されたアルケニル基含有官能性モノマーでグラフト変性されたポリマーは、複合材料中に均一に分散したナノ分散相、すなわち有機ナノ粒子を形成することができ、結果として無機ナノ粒子が添加および分散しにくい等の問題が解決される。さらに、本発明のグラフト変性されたポリプロピレン材料は、低分子添加剤を添加した材料と比較して、低分子の移動によってもたらされる性能低下を回避し、したがってより良い安定性を有する。
【0012】
本発明のさらなる特徴および利点は、以下の具体的な実施形態の詳細な説明に記載される。
【0013】
〔図面の簡単な説明〕
本発明の例示的な実施形態は、図を参照することによってより詳細に説明される。
【0014】
図1図1は、実施例1Aの生成物の原子間力顕微鏡写真であり、丸で示した部分のうち、明るい白色部分がスチレングラフト相であり、黒色部分がゴム相であり、その他の部分が連続相である。
【0015】
図2図2は、実施例1Aの生成物のミクロ構造の10000倍電子顕微鏡写真であり、球状分散相はスチレングラフト相である。
【0016】
図3図3は、実施例3Aの生成物のミクロ構造の10000倍電子顕微鏡写真である。
【0017】
図4図4は、実施例4Aの生成物のミクロ構造の10000倍電子顕微鏡写真である。
【0018】
図5図5は、実施例5Aの生成物のミクロ構造の10000倍電子顕微鏡写真である。
【0019】
図6図6は、比較例3の生成物のミクロ構造の10000倍電子顕微鏡写真である。
【0020】
図7図7は、エッチングした後の比較例3の生成物のミクロ構造の10000倍電子顕微鏡写真であり、黒い部分がゴム相である。
【0021】
図8図8は、比較例4Aの生成物のミクロ構造の10000倍電子顕微鏡写真である。
【0022】
図9図9は、比較例5Aの生成物のミクロ構造の10000倍電子顕微鏡写真である。
【0023】
図10図10は、実施例1Bの生成物の原子間力顕微鏡写真であり、丸で示した部分のうち、明るい白色部分がスチレン-無水マレイン酸グラフト相であり、黒色部分がゴム相であり、その他の部分が連続相である。
【0024】
図11図11は、実施例1Bの生成物のミクロ構造の20000倍電子顕微鏡写真であり、球状分散相はスチレン-無水マレイン酸グラフト相である。
【0025】
図12図12は、実施例2Bの生成物のミクロ構造の20000倍電子顕微鏡写真である。
【0026】
図13図13は、実施例3Bの生成物のミクロ構造の20000倍電子顕微鏡写真である。
【0027】
図14図14は、比較例4Bの生成物のミクロ構造の20000倍電子顕微鏡写真である。
【0028】
図15図15は、比較例5Bの生成物のミクロ構造の20000倍電子顕微鏡写真である。
【0029】
〔発明の詳細な説明〕
以下、本発明の特定の実施形態について詳細に説明する。本明細書で説明する具体的な実施形態は、本発明を例示し説明するためのものであって、本発明を限定するためのものではないことを理解されたい。
【0030】
本発明は、プロピレン系連続相と、該プロピレン系連続相中に分散したゴム相および不飽和結合含有重合性モノマー由来のグラフト相とを含む変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料であって、前記変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料の総重量に基づいて、前記変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料において、キシレン可溶分の含有量は、10重量%~55重量%であり、好ましくは15重量%~45重量%であり、より好ましくは18重量%~40重量%であり、さらにより好ましくは20重量%~40重量%であり、前記変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料において、前記不飽和結合含有重合性モノマー由来のグラフト状態の構造単位の含有量は、0.3重量%~6重量%であり、好ましくは0.7重量%~5重量%であり、より好ましくは0.4重量%~4.5重量%であり、前記変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料の曲げ弾性率は、200MPa~1000MPaであり、好ましくは200MPa~950MPaであり、より好ましくは200MPa~900MPaであり、さらに好ましくは200MPa~800MPaであり、さらにより好ましくは200MPa~700MPaであり、さらにより好ましくは250MPa~600MPaであり、好ましくは、キシレン不溶分中の前記不飽和結合含有重合性モノマー由来の構造単位の質量の、前記変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料中の前記不飽和結合含有重合性モノマー由来の構造単位の質量に対する比は、0.1を超え、好ましくは0.3~0.9である、変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料を提供する。
【0031】
前記不飽和結合含有重合性モノマーはアルケニル基含有官能性モノマーであり、前記変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料において、前記アルケニル基含有官能性モノマー由来の、グラフト状態の構造単位の含有量は、0.4重量%~6重量%であり、好ましくは1重量%~5重量%であり、前記グラフト相のD50は、300nm未満であり、好ましくは10nm~250nmであり、より好ましくは50nm~200nmである。
【0032】
別の実施形態において、前記不飽和結合含有重合性モノマーは無水物モノマーおよびアルケニル基含有官能性モノマーであり、前記変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料において、前記無水物モノマーおよび前記アルケニル基含有官能性モノマー由来のグラフト状態の構造単位の含有量は、0.3重量%~5重量%であり、好ましくは0.7重量%~3重量%であり、前記無水物モノマー由来のグラフト状態の構造単位の含有量は、0.05重量%~2重量%であり、好ましくは0.2重量%~0.5重量%であり、前記グラフト相のD50は、170nm未満であり、好ましくは10nm~150nmであり、より好ましくは55nm~110nmである。
【0033】
本発明において、変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料は分離相構造を有する。ここで、「連続相」の意味は当業者に周知であり、マトリックス部分を指し、「ゴム相」は軟質キシレン可溶性部分を指し、「グラフト相」は不飽和結合含有重合性モノマー由来の構造単位から形成されている。ここで、不飽和結合含有重合性モノマー由来の構造単位は、その全部であってもよく、または主にグラフト化された単独重合ポリプロピレンもしくは共重合ポリプロピレン由来であってもよく、あるいは、その一部がグラフト化された低弾性率ポリプロピレン由来であってもよい。したがって、不飽和結合含有重合性モノマー由来の「グラフト状態」の構造単位とは、ポリプロピレンおよび任意の低弾性率ポリプロピレンと共有結合(グラフト)を形成する不飽和結合含有重合性モノマー由来の構造単位を指す。多相構造は原子間力顕微鏡によって観察することができ、原子間力顕微鏡によって観察される黒色部分がゴム相であり、明るい白色部分がグラフト相であり、その他の部分が連続相である。グラフト相は電子顕微鏡によって直接観察することもできる(電子顕微鏡画像中の分散相)。
【0034】
前記変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料は、230℃、2.16kg荷重下でのメルトフローレートが0.5g/10分~15g/10分であり、好ましくは0.6g/10分~10g/10分であり、さらに好ましくは0.8g/10分~6g/10分であり、破断伸び率が≧200%であり、より好ましくは≧300%であり、引張強度が5MPaを超え、好ましくは10MPa~25MPaであることのうちの少なくとも1つの特性を有する。
【0035】
一実施形態において、前記不飽和結合含有重合性モノマーがアルケニル基含有官能性モノマーである場合、前記変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料は、230℃、2.16kg荷重下でのメルトフローレートが0.5g/10分~15g/10分であり、好ましくは0.6g/10分~10g/10分であり、さらに好ましくは0.8g/10分~6g/10分であり、破断伸び率が≧200%であり、より好ましくは≧300%であり、引張強度が5MPaを超え、好ましくは10MPa~25MPaであることのうちの少なくとも1つの特性を有する。
【0036】
別の実施形態において、前記不飽和結合含有重合性モノマーが無水物モノマーおよびアルケニル基含有官能性モノマーである場合、前記変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料は、230℃、2.16kg荷重下でのメルトフローレートが0.5g/10分~15g/10分であり、好ましくは1g/10分~10g/10分であり、さらに好ましくは1.2g/10分~6g/10分であり、破断伸び率が≧200%であり、より好ましくは≧300%であり、引張強度が5MPaを超え、好ましくは10MPa~25MPaであることのうちの少なくとも1つの特性を有する。
【0037】
本発明によれば、好ましくは、前記変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料は、前記変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料の最高使用温度が90℃以上であり、好ましくは100℃~160℃であり、より好ましくは110℃~140℃であり、前記変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料の110℃における破壊電界強度Egが285kV/mm以上であり、好ましくは290kV/mm~800kV/mmであり、より好ましくは300kV/mm~750kV/mmであり、前記変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料の110℃、40kV/mm電界強度での直流体積抵抗率ρvgが≧1.0×1013Ω・mであり、好ましくは1.5×1013Ω・m~1.0×1020Ω・mであり、前記変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料の110℃、50Hzでの誘電率が2.0を超え、より好ましくは2.1~2.5であることのうちの少なくとも1つの特性を有する。
【0038】
一実施形態において、前記不飽和結合含有重合性モノマーがアルケニル基含有官能性モノマーである場合、前記変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料は、前記変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料の最高使用温度が90℃以上であり、好ましくは100℃~160℃であり、より好ましくは110℃~140℃であり、前記変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料の110℃における破壊電界強度Egが290kV/mm以上であり、好ましくは300kV/mm~800kV/mmであり、より好ましくは310kV/mm~750kV/mmであり、例えば、320kV/mm、330kV/mm、340kV/mm、350kV/mm、400kV/mm、450kV/mm、500kV/mm、550kV/mm、600kV/mm、650kV/mm、700kV/mmであり、前記変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料の110℃、40kV/mm電界強度での直流体積抵抗率ρvgが≧1.0×1013Ω・mであり、好ましくは1.5×1013Ω・m~1.0×1020Ω・mであり、前記変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料の110℃、50Hzでの誘電率が2.0を超え、より好ましくは2.1~2.5であることのうちの少なくとも1つの特性を有する。
【0039】
別の実施形態において、前記不飽和結合含有重合性モノマーが無水物モノマーおよびアルケニル基含有官能性モノマーである場合、前記変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料は、前記変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料の最高使用温度が90℃以上であり、好ましくは100℃~160℃であり、より好ましくは110℃~140℃であり、前記変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料の110℃における破壊電界強度Egが285kV/mm以上であり、好ましくは290kV/mm~800kV/mmであり、より好ましくは310kV/mm~750kV/mmであり、例えば、320kV/mm、330kV/mm、340kV/mm、350kV/mm、400kV/mm、450kV/mm、500kV/m、550kV/mm、600kV/mm、650kV/mm、700kV/mmであり、前記変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料の110℃、40kV/mm電界強度での直流体積抵抗率ρvgが≧2.0×1013Ω・mであり、好ましくは4.0×1013Ω・m~1.0×1020Ω・mであり、前記変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料の110℃、50Hzでの誘電率が2.0を超え、より好ましくは2.1~2.5であることのうちの少なくとも1つの特性を有する。
【0040】
最高使用温度は、当該技術分野において周知のように、通常、材料が長期間安定して使用できる使用温度として定義される。本発明の材料は110℃の試験で上記優れた絶縁特性が得られ、本発明の材料が少なくとも110℃の最高使用温度を有することを証明することができる。
【0041】
アルケニル基含有官能性モノマーによるポリプロピレンのグラフト変性は、原料が単純であり、材料の破壊強度を大幅に向上させることができる。これに加えて、共重合のために無水物モノマーを添加することで、より少ない総モノマー添加量でより顕著な抵抗率向上効果を達成することができる。さらに、無水物モノマーを用いるグラフト化は、絶縁材料の水樹抑制性を効果的に向上させることもできる。
【0042】
本発明によれば、前記無水物モノマーは、少なくとも1つのアルケニル基を有する無水物から選ばれてもよく、好ましくは、前記無水物モノマーは、無水マレイン酸および/または無水イタコン酸から選ばれ、より好ましくは、前記無水物モノマーは無水マレイン酸である。
【0043】
本発明のアルケニル基含有官能性モノマー中のアルケニル基は、ポリプロピレン/低弾性率ポリプロピレンとのグラフト重合に使用されるため、反応可能なアルケニル基を有するアルケニル基含有官能性モノマーであれば、本発明での使用に適している。
【0044】
具体的には、前記アルケニル基含有官能性モノマーは、式1で表される構造を有するモノマーの少なくとも1つから選ばれ、
【0045】
【化1】
【0046】
式1中、R、R、Rは、それぞれ独立して、H、置換または非置換のアルキルから選ばれ;Rは、置換または非置換のアルキル、置換または非置換のアルコキシ、置換または非置換のアリール、置換または非置換のエステル基、置換または非置換のカルボキシル、置換または非置換のシクロアルキルまたはヘテロシクリル、シアノ、置換または非置換のシリルから選ばれる。
【0047】
本発明の好ましい実施形態によれば、R、R、Rは、それぞれ独立して、H、置換または非置換のC-Cアルキルから選ばれ;Rは、置換または非置換のC-C20アルキル、置換または非置換のC-C20アルコキシ、置換または非置換のC-C20アリール、置換または非置換のC-C20エステル基、置換または非置換のC-C20カルボキシル、置換または非置換のC-C20シクロアルキルまたはヘテロシクリル、シアノ、置換または非置換のC-C20シリルから選ばれ;置換基はハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、C-C12アルキル、C-Cシクロアルキル、C-C12アルコキシ、C-C12アシルオキシである。
【0048】
本発明のより好ましい実施形態によれば、R、R、Rは、それぞれ独立して、H、置換または非置換のC-Cアルキルから選ばれ、Rは、式2で表される基、式3で表される基、式4で表される基、式5で表される基、式6で表される基、式6で表される基と式7で表される基との組み合わせ、複素環基から選ばれ、
【0049】
【化2】
【0050】
式2中、R-Rは、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、リン酸基、スルホン酸基、置換または非置換のC-C12アルキル、置換または非置換のC-C12シクロアルキル、置換または非置換のC-C12アルコキシ、置換または非置換のC-C12エステル基、置換または非置換のC-C12アミノから選ばれ、置換基は、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、リン酸基、スルホン酸基、C-C12アルキル、C-C12シクロアルキル、C-C12アルコキシ、C-C12エステル基、C-C12アミノから選ばれ、好ましくは、R-Rは、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、置換または非置換のC-Cアルキル、置換または非置換のC-Cアルコキシから選ばれ、
【0051】
【化3】
【0052】
式3中、R-R10は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、リン酸基、スルホン酸基、置換または非置換のC-C12アルキル、置換または非置換のC-C12シクロアルキル、置換または非置換のC-C12アルコキシ、置換または非置換のC-C12エステル基、置換または非置換のC-C12アミノから選ばれ、置換基は、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、リン酸基、スルホン酸基、C-C12アルキル、C-C12シクロアルキル、C-C12アルコキシ、C-C12エステル基、C-C12アミノから選ばれ、好ましくは、R-R10は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、置換または非置換のC-Cアルキル、置換または非置換のC-Cアルコキシから選ばれ、置換基はハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、C-Cアルキル、C-Cアルコキシから選ばれ、
【0053】
【化4】
【0054】
式4中、R’-R10’は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、リン酸基、スルホン酸基、置換または非置換のC-C12アルキル、置換または非置換のC-C12シクロアルキル、置換または非置換のC-C12アルコキシ、置換または非置換のC-C12エステル基、置換または非置換のC-C12アミノから選ばれ、置換基はハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、リン酸基、スルホン酸基、C-C12アルキル、C-C12シクロアルキル、C-C12アルコキシ、C-C12エステル基、C-C12アミノから選ばれ、好ましくは、R’-R10’は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、置換または非置換のC-Cアルキル、置換または非置換のC-Cアルコキシから選ばれ、置換基はハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、C-Cアルキル、C-Cアルコキシから選ばれ、
【0055】
【化5】
【0056】
式5中、R’、R’’、R’’’は、それぞれ独立して、置換または非置換のC-C12直鎖アルキル、置換または非置換のC-C12分岐アルキル、置換または非置換のC-C12アルコキシ、置換または非置換のC-C12アシルオキシから選ばれ、
好ましくは、Rは、C-Cアルケニルであり、好ましくは一価不飽和アルケニルであり、R、R、Rは、それぞれ独立して、置換または非置換のC-C直鎖アルキル、置換または非置換のC-C分岐アルキル、置換または非置換のC-Cアルコキシ、置換または非置換のC-Cアシルオキシから選ばれ、
【0057】
【化6】
【0058】
【化7】
【0059】
式6中、Rは、置換または非置換の以下の基:C-C20直鎖アルキル、C-C20分岐アルキル、C-C12シクロアルキル、C-C12エポキシアルキル、C-C12エポキシアルキルアルキルから選ばれ、置換基はハロゲン、アミノおよびヒドロキシの少なくとも1つから選ばれ、前記複素環基は、イミダゾール、ピラゾリル、カルバゾリル、ピロリジノニル、ピリジル、ピペリジニル、カプロラクタニル、ピラジニル、チアゾリル、プリニル、モルホリニル、オキサゾリニルから選ばれる。
【0060】
一実施形態において、不飽和結合含有重合性モノマーがアルケニル基含有官能性モノマーである場合、好ましくは、Rは、式2で表される基、式3で表される基、式4で表される基、式5で表される基、式6で表される基、式6で表される基と式7で表される基との組み合わせ、複素環基から選ばれる。
【0061】
別の実施形態において、不飽和結合含有重合性モノマーが無水物モノマーおよびアルケニル基含有官能性モノマーである場合、好ましくは、Rは、式2で表される基、式3で表される基、式4で表される基、式6で表される基、式6で表される基と式7で表される基との組み合わせ、複素環基から選ばれる。
【0062】
本発明の具体的な実施形態によれば、前記アルケニル基含有官能性モノマーは芳香族オレフィン系モノマーであり、前記芳香族オレフィン系モノマーは、スチレン、α-メチルスチレン、1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン、単置換または多置換のスチレン、単置換または多置換のα-メチルスチレン、単置換または多置換の1-ビニルナフタレン、および、単置換または多置換の2-ビニルナフタレンの少なくとも1つから選ばれ、置換基は、好ましくは、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、リン酸基、スルホン酸基、C-C直鎖アルキル、C-Cの分岐アルキルもしくはシクロアルキル、C-C直鎖アルコキシ、C-Cの分岐アルコキシもしくは環状アルコキシ、C-C直鎖エステル基、C-Cの分岐エステル基もしくは環状エステル基、C-C直鎖アミン基およびC-Cの分岐アミン基もしくは環状アミン基の少なくとも1つから選ばれ、好ましくは、前記芳香族オレフィン系モノマーは、スチレン、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレンおよび4-メチルスチレンの少なくとも1つから選ばれる。
【0063】
本発明の具体的な実施形態によれば、前記アルケニル基含有官能性モノマーはアルケニル基含有シランモノマーであり、前記アルケニル基含有シランモノマーは、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリ-tert-ブトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、エチルビニルジエトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、アリルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、アリルトリ-tert-ブトキシシラン、アリルトリアセトキシシラン、メチルアリルジメトキシシランおよびエチルアリルジエトキシシランの少なくとも1つから選ばれる。
【0064】
本発明の具体的な実施形態によれば、前記アルケニル基含有官能性モノマーは、アクリレートモノマーおよび任意のアクリルモノマーであり、好ましくは、前記アクリレートモノマーは、メチル(メチル)アクリレート、sec-ブチル(メチル)アクリレート、エチル(メチル)アクリレート、n-ブチル(メチル)アクリレート、イソブチル(メチル)アクリレート、tert-ブチル(メチル)アクリレート、イソオクチル(メチル)アクリレート、ドデシル(メチル)アクリレート、コシニン(メチル)アクリレート、オクタデシル(メチル)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メチル)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メチル)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メチル)アクリレートおよびグリシジル(メチル)アクリレートの少なくとも1つから選ばれ、好ましくは、前記アクリルモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸および2-エチルアクリル酸の少なくとも1つから選ばれる。
【0065】
本発明において、C-C12エポキシアルキルアルキルとは、3個~12個の炭素原子を有するエポキシアルキル置換アルキル、例えばオキシラニルメチルを指す。
【0066】
本発明において、アクリルモノマー由来の構造単位は存在しなくてもよく、または、アクリレートモノマー由来の構造単位とともに存在してもよく、好ましくは、アクリルモノマー由来の構造単位に対する、アクリレートモノマー由来の構造単位のモル比は、1:0~2であり、好ましくは1:0.125~1である。
【0067】
本発明の具体的な実施形態によれば、アルケニル基含有官能性モノマーは、アルケニル基含有複素環式モノマーである。本発明のアルケニル基含有複素環式モノマーは、ラジカル重合ができる任意のアルケニル基含有複素環式化合物であってもよく、アルケニル基含有イミダゾール、アルケニル基含有ピラゾール、アルケニル基含有カルバゾール、アルケニル基含有ピロリドン、アルケニル基含有ピリジンまたはピリジニウム、アルケニル基含有ピペリジン、アルケニル基含有カプロラクタム、アルケニル基含有ピラジン、アルケニル基含有チアゾール、アルケニル基含有プリン、アルケニル基含有モルホリンおよびアルケニル基含有オキサゾリンから選ばれる少なくとも1つであってもよく、好ましくは、アルケニル基含有複素環式モノマーはモノアルケニル基含有複素環式モノマーである。
【0068】
具体的には、アルケニル基含有複素環式モノマーは、1-ビニルイミダゾール、2-メチル-1-ビニルイミダゾール、N-アリルイミダゾール、1-ビニルピラゾール、3-メチル-1-ビニルピラゾール、ビニルカルバゾール、N-ビニルピロリドン、2-ビニルピリジン、3-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、2-メチル-5-ビニルピリジン、ビニルピリジンN-オキシド、ビニルピリジニウム、ビニルピペリジン、N-ビニルカプロラクタム、2-ビニルピラジン、N-ビニルピペラジン、4-メチル-5-ビニルチアゾール、N-ビニルプリン、ビニルモルホリン、およびビニルオキサゾリンの少なくとも1つから選ばれる。
【0069】
さらに、前記アルケニル基含有重合性モノマーは、酢酸ビニル、スチレン、α-メチルスチレン、(メタ)アクリレート、ビニルアルキルエーテル、ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾールおよびアクリロニトリルの少なくとも1つから選ばれ、前記(メタ)アクリレートは、好ましくは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、およびグリシジル(メタ)アクリレートの少なくとも1つから選ばれ、好ましくは、前記アルケニル基含有重合性モノマーは酢酸ビニル、スチレン、α-メチルスチレンから選ばれ、より好ましくは、前記アルケニル基含有重合性モノマーはスチレンである。
【0070】
本発明によれば、好ましくは、前記変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料は、変性ポリプロピレン(A)および低弾性率ポリプロピレン(B)を含み、前記変性ポリプロピレン(A)は、第1の不飽和結合含有重合性モノマーでグラフト変性されたポリプロピレンであり、前記低弾性率ポリプロピレン(B)は、未変性低弾性率ポリプロピレン、および/または、第2の不飽和結合含有重合性モノマーでグラフト変性された低弾性率ポリプロピレンであり、
好ましくは、前記第1の不飽和結合含有重合性モノマーおよび前記第2の不飽和結合含有重合性モノマーは、それぞれ独立して、アルケニル基含有官能性モノマーおよび任意の無水物モノマーであり、
好ましくは、前記変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料の総重量に基づいて、前記変性ポリプロピレン(A)の含有量は、20重量%~80重量%であり、好ましくは30重量%~70重量%であり、より好ましくは35重量%~65重量%であり、前記低弾性率ポリプロピレン(B)の含有量は20重量%~80重量%であり、好ましくは30重量%~70重量%であり、より好ましくは35重量%~65重量%である。
【0071】
一実施形態では、変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料は、アルケニル基含有官能性モノマーでグラフト変性されたポリプロピレン(A)と、未変性低弾性率ポリプロピレンおよび/またはアルケニル基含有官能性モノマーでグラフト変性された低弾性率ポリプロピレン(B)とを含む。
【0072】
別の実施形態において、変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料は、変性ポリプロピレン(A)と、低弾性率ポリプロピレン(B)とを含み、変性ポリプロピレン(A)は、アルケニル基含有官能性モノマーでグラフト変性され、かつ、任意に無水物モノマーでグラフト変性されたポリプロピレンであり、低弾性率ポリプロピレン(B)は、未変性低弾性率ポリプロピレン、および/または、アルケニル基含有官能性モノマーでグラフト変性され、かつ、任意に無水物モノマーでグラフト変性された低弾性率ポリプロピレンである。すなわち、変性ポリプロピレン(A)は、アルケニル基含有官能性モノマーでグラフト変性されたポリプロピレンであってもよく、または、アルケニル基含有官能性モノマーおよび無水物モノマーを含む二重モノマーでグラフト変性されたポリプロピレンであってもよく、低弾性率ポリプロピレン(B)は、未変性低弾性率ポリプロピレンであってもよく、または、アルケニル基含有官能性モノマーでグラフト変性された低弾性率ポリプロピレンであってもよく、アルケニル基含有官能性モノマーおよび無水物モノマーを含む二重モノマーでグラフト変性された低弾性率ポリプロピレンであってもよく、または、これらの混合物であってもよい。変性ポリプロピレン(A)が、アルケニル基含有官能性モノマーでグラフト変性されたポリプロピレンである場合、低弾性率ポリプロピレン(B)は、アルケニル基含有官能性モノマーおよび無水物モノマーを含む二重モノマーでグラフト変性された低弾性率ポリプロピレンでなければならない。変性ポリプロピレン(A)が、アルケニル基含有官能性モノマーおよび無水物モノマーを含む二重モノマーでグラフト変性されたポリプロピレンである場合、低弾性率ポリプロピレン(B)は、未変性低弾性率ポリプロピレン、アルケニル基含有官能性モノマーでグラフト変性された低弾性率ポリプロピレン、またはアルケニル基含有官能性モノマーおよび無水物モノマーを含む二重モノマーでグラフト変性された低弾性率ポリプロピレンであってもよい。本発明では、上記変性可撓性ポリプロピレン系絶縁材料の総グラフト量を満たす限り、各々の原料のグラフト成分含有量は特別な条件を有さない。
【0073】
本発明の変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料の三相構造において、グラフト変性されたポリプロピレン(A)は少なくともプロピレン系連続相とグラフト相とを提供し、低弾性率ポリプロピレン(B)はプロピレン系連続相およびゴム相、ならびに任意にグラフト相を提供する。
【0074】
本発明によれば、前記変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料は、前記変性ポリプロピレン(A)と、前記低弾性率ポリプロピレン(B)とをブレンドすることによって調製されてもよい。
【0075】
本発明において、前記変性ポリプロピレン(A)は、単独重合ポリプロピレンまたは共重合ポリプロピレン由来の構造単位と、不飽和結合含有重合性モノマー由来の構造単位とを含み、前記変性ポリプロピレン(A)の重量に基づいて、前記変性ポリプロピレン(A)において、前記不飽和結合含有重合性モノマー由来の、グラフト状態の構造単位の含有量は、0.1重量%~20重量%であり、好ましくは1重量%~15重量%である。
【0076】
一実施形態において、前記変性ポリプロピレン(A)は、単独重合ポリプロピレンまたは共重合ポリプロピレン由来の構造単位と、アルケニル基含有官能性モノマー由来の構造単位とを含み;前記変性ポリプロピレン(A)の重量に基づいて、前記変性ポリプロピレン(A)において、前記アルケニル基含有官能性モノマー由来の、グラフト状態の構造単位の含有量は、0.5重量%~20重量%であり、好ましくは1重量%~15重量%である。
【0077】
別の実施形態において、前記変性ポリプロピレン(A)は、単独重合ポリプロピレンまたは共重合ポリプロピレン由来の構造単位と、アルケニル基含有官能性モノマー由来の構造単位と、任意に無水物モノマー由来の構造単位とを含み;前記変性ポリプロピレン(A)の重量に基づいて、前記変性ポリプロピレン(A)中のグラフト状態の構造単位の含有量は、0.1重量%~10重量%であり、好ましくは1重量%~5重量%である。
【0078】
用語「構造単位」とは、変性ポリプロピレン(A)の一部であることを意味し、その形態は特に限定されない。具体的には、用語「単独重合ポリプロピレンまたは共重合ポリプロピレン由来の構造単位」とは、単独重合ポリプロピレンまたは共重合ポリプロピレンから形成される生成物を指し、「基」の形態のものだけでなく、「ポリマー」の形態のものも含む。用語「不飽和結合含有重合性モノマー由来の構造単位」とは、不飽和結合含有重合性モノマーから形成される生成物を指し、「基」の形態のものだけでなく、「モノマー」の形態のもの、ならびに「ポリマー」の形態のものも含む。用語「アルケニル基含有官能性モノマー由来の構造単位」とは、アルケニル基含有官能性モノマーから形成される生成物を指し、「基」の形態のものだけでなく、「モノマー」の形態のもの、ならびに「ポリマー」の形態のものも含む。用語「(マレイン酸)無水物モノマー由来の構造単位」とは、(マレイン酸)無水物モノマーから形成される生成物を指し、「基」の形態のものだけでなく、「モノマー」の形態のもの、ならびに「ポリマー」の形態のものも含む。前記「構造単位」は、繰り返し単位または非繰り返し独立単位であってもよい。
【0079】
本発明において、ポリプロピレンコポリマーの用語「コモノマー」は当業者に周知であり、プロピレンと共重合したモノマーを意味する。
【0080】
本発明の好ましい実施態様によれば、前記単独重合ポリプロピレンまたは共重合ポリプロピレンは、コモノマーの含有量が0モル%~15モル%であり、好ましくは0モル%~12モル%であり、より好ましくは0モル%~8モル%であり、230℃、2.16kg荷重下でのメルトフローレートが1g/10分~10g/10分であり、好ましくは2g/10分~5g/10分であり、融点Tmが110℃~180℃であり、さらに好ましくは120℃~170℃であり、重量平均分子量が20×10g/モル~50×10g/モルであり、曲げ弾性率が500MPa~2000MPaであり、好ましくは600MPa~1700MPaであり、破断伸び率が200%以上であり、好ましくは300%以上であり、引張強度が5MPaを超え、好ましくは10MPa~40MPaであり、キシレン可溶分の含有量が15重量%未満であり、好ましくは0.5重量%~8重量%である。
【0081】
本発明の好ましい実施形態によれば、共重合ポリプロピレンのコモノマーは、プロピレン以外のC-Cα-オレフィン(本明細書では、エチレンをα-オレフィンとみなす)の少なくとも1つから選ばれ、前記共重合ポリプロピレンのコモノマーは、エチレンおよびC-Cα-オレフィンの少なくとも1つから選ばれ、好ましくは、前記共重合ポリプロピレンのコモノマーは、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテンおよび1-オクテンの少なくとも1つから選ばれ、より好ましくは、前記共重合ポリプロピレンのコモノマーは、エチレンおよび/または1-ブテンであり、モノマーの総モル量に基づいて、コモノマーの含有量が0.1モル%~15モル%であり、好ましくは0.1モル%~12モル%であり、より好ましくは、0.1モル%~8モル%である。本発明の共重合ポリプロピレンは、好ましくは多孔質粒子状または粉末状の樹脂である。
【0082】
本発明の単独重合ポリプロピレンまたは共重合ポリプロピレンは、任意の本発明に適した市販のポリプロピレン粉末であってもよく、中国特許CN102453180B、CN101490096B、CN102816269B、CN102816270Bなどに記載の重合プロセスによって製造されてもよい。
【0083】
本発明による用語「低弾性率ポリプロピレン」は当業者に周知であり、好ましくは、プロピレンとエチレンとのコポリマーまたは高級α-オレフィン(好ましくはC-Cα-オレフィン)であり、好ましくは曲げ弾性率が300MPa未満のエチレン-プロピレンコポリマーである。具体的には、プロピレンとエチレンとのコポリマーまたは高級α-オレフィンは、マトリックス相としてのプロピレンホモポリマーおよび/またはプロピレンランダムコポリマーマトリックス成分(1)と、その中に分散した分散相としての別のプロピレンコポリマー成分(2)とを含む。該プロピレンコポリマー成分(2)は1つ以上のエチレンまたは高級α-オレフィン(好ましくはC-Cα-オレフィン)コモノマーを含む。プロピレンランダムコポリマー中、コモノマーはプロピレンポリマーの主鎖中にランダムに分布している。好ましくは、低弾性率ポリプロピレンのホモポリマーまたはコポリマーマトリックス(1)中に分散したプロピレンコポリマー(2)は、実質的に非晶質である。用語「実質的に非晶質」とは、本明細書において、プロピレンコポリマー(2)がホモポリマーまたはコポリマーマトリックス(1)よりも低い結晶化度を有することを意味する。
【0084】
低弾性率ポリプロピレンは、海島構造または双連続構造であってもよい。好ましくは、本発明の低弾性率ポリプロピレンは、既存のプロセスに従って反応器内でその場(in situ)で調製されたヘテロ相溶性プロピレンコポリマーである。
【0085】
本発明によれば、好ましくは、前記低弾性率ポリプロピレンは、コモノマーの含有量が8重量%~25重量%であり、好ましくは10重量%~22重量%であり、キシレン可溶分の含有量が18重量%~75重量%であり、好ましくは30重量%~70重量%であり、より好ましくは、30重量%~67重量%であり、230℃、2.16kg荷重下でのメルトフローレートが0.1g/10分~15g/10分であり、好ましくは0.2g/10分~7g/10分であり、融点Tmが120℃~165℃であり、さらに好ましくは125℃~150℃であり、曲げ弾性率が10MPa~300MPaであり、好ましくは15MPa~250MPaであり、前記キシレン可溶分中のコモノマーの含有量が10重量%~50重量%であり、好ましくは20重量%~35重量%であり、前記キシレン可溶分の前記低弾性率ポリプロピレンに対する固有粘度比が0.5~3であり、好ましくは0.8~1.3であり、重量平均分子量が25×10g/モル~70×10g/モルであることのうちの少なくとも1つの特性を有する。
【0086】
本発明に記載の低弾性率ポリプロピレンは、本発明に適した市販のポリプロピレン粉末およびペレットを含むが、これらに限定されるものではなく、中国特許CN1069908C、CN1049932C、CN1108315C、CN1117610C、CN1132865C、CN102020733Bなどに記載の重合プロセスによって製造することもできる。一般的な重合プロセスは、Basell社のSpheripolプロセス、三井石油化学社のHypolプロセス、Borealis社のBorstar PPプロセス、DOW chemical社のUnipolプロセス、INEOS社(元BP-Amoco社)のInnovene気相プロセス等を含む。
【0087】
本発明において、グラフト化が明示されていない場合、用語「低弾性率ポリプロピレン」は、通常、グラフト化されていない(すなわち、未変性)低弾性率ポリプロピレンを指す。
【0088】
本発明によれば、前記低弾性率ポリプロピレン(B)の重量に基づいて、前記低弾性率ポリプロピレン(B)中のグラフト状態の構造単位の含有量は、0重量%~5重量%であり、好ましくは0.2重量%~2.5重量%である
一実施形態において、前記低弾性率ポリプロピレン(B)が、アルケニル基含有官能性モノマーでグラフト変性された低弾性率ポリプロピレンである場合、前記アルケニル基含有官能性モノマーでグラフト変性された前記低弾性率ポリプロピレンの重量に基づいて、前記アルケニル基含有官能性モノマーに由来し、かつ、前記アルケニル基含有官能性モノマーでグラフト変性された低弾性率ポリプロピレン中のグラフト状態の構造単位の含有量は、0.1重量%~5重量%であり、好ましくは0.2重量%~2.5重量%である。
【0089】
別の実施形態において、前記低弾性率ポリプロピレン(B)が、アルケニル基含有官能性モノマーおよび無水物モノマーでグラフト変性された低弾性率ポリプロピレンである場合、前記アルケニル基含有官能性モノマーおよび前記無水物モノマーでグラフト変性された前記低弾性率ポリプロピレンの重量に基づいて、前記アルケニル基含有官能性モノマーおよび前記無水物モノマーでグラフト変性された前記低弾性率ポリプロピレン中のグラフト状態の構造単位の含有量は、0.1重量%~5重量%であり、好ましくは0.5重量%~2.5重量%である。
【0090】
本発明はまた、変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料を調製するための方法を提供し、この方法は、変性ポリプロピレン(A)と低弾性率ポリプロピレン(B)とをブレンドして変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料を調製する工程を含み、前記変性ポリプロピレン(A)は、第1の不飽和結合含有重合性モノマーでグラフト変性されたポリプロピレンであり、前記低弾性率ポリプロピレン(B)は、未変性低弾性率ポリプロピレン、および/または、第2の不飽和結合含有重合性モノマーでグラフト変性された低弾性率ポリプロピレンである。
【0091】
好ましくは、前記第1の不飽和結合含有重合性モノマーおよび前記第2の不飽和結合含有重合性モノマーは、それぞれ独立して、アルケニル基含有官能性モノマーおよび任意の無水物モノマーである。
【0092】
好ましくは、変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料の総重量に基づいて、前記変性ポリプロピレン(A)の含有量は20重量%~80重量%であり、好ましくは30重量%~70重量%であり、より好ましくは35重量%~65重量%であり、前記低弾性率ポリプロピレン(B)の含有量は20重量%~80重量%であり、好ましくは30重量%~70重量%であり、より好ましくは35重量%~65重量%である。
【0093】
本発明の好ましい実施形態によれば、該調製方法は、
不活性ガスの存在下で、単独重合ポリプロピレンまたは共重合ポリプロピレンと第1の不飽和結合含有重合性モノマーとを含む反応混合物Aをグラフト化反応させ、変性ポリプロピレンを得、
任意に、不活性ガスの存在下で、低弾性率ポリプロピレンと第2の不飽和結合含有重合性モノマーとを含む反応混合物Bをグラフト化反応させ、変性低弾性率ポリプロピレンを得る工程S1、および、
前記変性ポリプロピレンと、未変性低弾性率ポリプロピレンおよび/または変性低弾性率ポリプロピレンと、任意の添加剤とを混合し、押出造粒して変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料を得る工程S2を含む。
【0094】
好ましくは、前記第1の不飽和結合含有重合性モノマーおよび前記第2の不飽和結合含有重合性モノマーは、それぞれ独立して、アルケニル基含有官能性モノマーおよび任意の無水物モノマーである。前記グラフトモノマーは、目標とするグラフト生成物に応じて決定される。
【0095】
好ましくは、グラフト化部位はフリーラジカル開始剤によって開始され、グラフト化反応はさらに進行する。この場合、反応混合物Aおよび反応混合物Bは、それぞれ独立してフリーラジカル開始剤も含む。
【0096】
本明細書において、前記過酸化物系ラジカル開始剤は、好ましくは過酸化ジベンゾイル、過酸化ジクミル、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、過酸化ラウロイル、過酸化ドデシル、tert-ブチルペルオキシ安息香酸、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、tert-ブチルペルオキシ(2-エチルヘキサノエート)およびジシクロヘキシルペルオキシジカーボネートの少なくとも1つから選ばれ、前記アゾ系ラジカル開始剤は、好ましくはアゾビスイソブチロニトリルおよび/またはアゾビスイソヘプトニトリルである。
【0097】
より好ましくは、グラフト化部位は過酸化物系フリーラジカル開始剤によって開始され、グラフト化反応はさらに進行する。
【0098】
さらに、本発明のグラフト化反応は、CN106543369A、CN104499281A、CN102108112A、CN109251270A、CN1884326AおよびCN101492517Bに記載の方法に従って実施することもできる。
【0099】
本発明のグラフト化反応における各成分の使用量は、上記生成物特性を満たすことを前提として、特に限定されない。具体的には、ラジカル開始剤の質量の、不飽和結合含有重合性モノマーの総質量に対する比が0.01~10:100であり、好ましくは0.5~6:100である。前記第1の不飽和結合含有重合性モノマーの前記単独重合ポリプロピレンまたは共重合ポリプロピレンに対する質量比が0.5~35:100であり、好ましくは2~30:100であり、より好ましくは2.5~25:100である。前記第2の不飽和結合含有重合性モノマーの前記低弾性率ポリプロピレンに対する質量比が0.1~20:100であり、好ましくは0.2~15:100であり、より好ましくは0.5~10:100である。
【0100】
一実施形態において、前記第1の不飽和結合含有重合性モノマーおよび前記第2の不飽和結合含有重合性モノマーの両方がアルケニル基含有官能性モノマーである場合、前記ラジカル開始剤の前記アルケニル基含有官能性モノマーに対する質量比が0.01~10:100であり、好ましくは0.5~5:100である。前記アルケニル基含有官能性モノマーの、前記単独重合ポリプロピレンまたは共重合ポリプロピレンに対する質量比が0.5~35:100であり、好ましくは2~30:100であり、さらに好ましくは5~25:100であり、前記アルケニル基含有官能性モノマーの、前記低弾性率ポリプロピレンに対する質量比が0.1~20:100であり、好ましくは0.2~10:100であり、より好ましくは0.5~5:100である。
【0101】
別の実施形態において、前記第1の不飽和結合含有重合性モノマーおよび/または前記第2の不飽和結合含有重合性モノマーが、アルケニル基含有官能性モノマーおよび無水物モノマーを含む場合、前記反応系中の前記不飽和結合含有重合性モノマーの総質量に対する前記ラジカル開始剤の質量比が0.1~10:100であってもよく、好ましくは0.5~6:100であってもよい。前記第1の不飽和結合含有重合性モノマーの総質量の、前記単独重合ポリプロピレンまたは共重合ポリプロピレンに対する質量比が0.5~35:100であってもよく、好ましくは2~30:100であってもよく、より好ましくは2.5~20:100であってもよく、前記第2の不飽和結合含有重合性モノマーの総質量の、前記低弾性率ポリプロピレンに対する質量比が0.5~15:100であってもよく、好ましくは2~10:100であってもよく、前記不飽和結合含有重合性モノマーがアルケニル基含有官能性モノマーおよび無水物モノマーを含む場合、前記アルケニル基含有官能性モノマーの、前記無水物モノマーに対する質量比が0.5~10:1であり得、好ましくは2~8:1であり得る。
【0102】
また、本発明は、グラフト化反応の技術的な条件については特に制限されないが、好ましくは、グラフト化反応は固相グラフト化反応である。具体的には、グラフト化反応は温度が30℃~130℃であり、好ましくは60℃~120℃であり、時間が0.5時間~10時間であり、好ましくは1時間~6時間である。
【0103】
本発明において、用語「反応混合物」は、グラフト化反応系に添加される全ての材料を含み、材料は一度に添加されてもよく、反応の異なる段階で添加されてもよい。
【0104】
本発明の反応混合物Aおよび反応混合物Bは、それぞれ独立して、分散剤を含んでもよく、分散剤は、好ましくは水または塩化ナトリウムの水溶液である。分散剤の質量含有量が、好ましくはポリプロピレンの質量の50%~300%である。
【0105】
本発明の反応混合物Aおよび反応混合物Bは、それぞれ独立して、界面活性剤をさらに含んでもよく、ここで、界面活性剤は、ポリオレフィンに対して膨潤効果を有する有機溶媒であり、好ましくは、ポリプロピレンに対して膨潤効果を有する以下の有機溶媒:エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒およびアルカン系溶媒のうちの少なくとも1つであり、より好ましくは、以下の有機溶媒:クロロベンゼン、ポリ塩化ベンゼン、C以上のアルカンもしくはシクロアルカン、ベンゼン、C-Cアルキル置換ベンゼン、C-C脂肪エーテル、C-C脂肪ケトン、およびデカリンのうちの少なくとも1つであり、さらに好ましくは、以下の有機溶媒:ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、アセトン、ヘキサン、シクロヘキサン、デカリン、ヘプタンのうちの少なくとも1つである。界面活性剤の質量含有量が、ポリプロピレンの質量の、好ましくは1%~30%であり、より好ましくは10%~25%である。
【0106】
本発明の反応混合物Aおよび反応混合物Bは、それぞれ独立して、固体ラジカル開始剤を溶解するための溶媒として有機溶媒をさらに含んでもよく、有機溶媒は、好ましくは、C-Cアルコール類、C-Cエーテル類およびC-Cケトン類の少なくとも1つを含み、より好ましくは、C-Cアルコール類、C-Cエーテル類およびC-Cケトン類の少なくとも1つを含み、最も好ましくは、エタノール、ジエチルエーテルおよびアセトンのうちの少なくとも1つである。有機溶媒の質量含有量が、好ましくはポリプロピレンの質量の1%~35%である。
【0107】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記調製方法は、
a.単独重合ポリプロピレンまたは共重合ポリプロピレンを密閉反応器に入れ、その後、不活性ガス置換を行う工程、
b.フリーラジカル開始剤および第1の不飽和結合含有重合性モノマーを密閉反応器に添加し、撹拌しながら混合する工程、
c.任意に界面活性剤を添加し、任意に反応系を膨潤させる工程、
d.任意に分散剤を添加し、反応系をグラフト化反応温度まで加熱してグラフト化反応を行う工程、
e.反応終了後、任意にろ過し(水相分散剤を使用する場合)、乾燥して変性ポリプロピレンを得る工程、
f.前記変性ポリプロピレンと、グラフト化されていないおよび/またはグラフト化された低弾性率ポリプロピレンと、任意の助剤とを混合し、溶融、押出し、造粒して、変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料を得る工程を含む調製方法であって、
前記グラフト化された低弾性率ポリプロピレンの調製方法は、
i.低弾性率ポリプロピレンを密閉反応器に入れ、その後、不活性ガス置換を行う工程、
ii.フリーラジカル開始剤および第2の不飽和結合含有重合性モノマーを密閉反応器に添加し、撹拌しながら混合する工程、
iii.任意に界面活性剤を添加し、任意に反応系を膨潤させる工程、
iv.任意に分散剤を添加し、反応系をグラフト化反応温度まで加熱してグラフト化反応を行う工程、
v.反応終了後、任意にろ過し(水相分散剤を使用する場合)、乾燥して変性低弾性率リプロピレンを得る工程を含む。
【0108】
具体的には、調製方法は、
a.単独重合ポリプロピレンまたは共重合ポリプロピレンを密閉反応器に入れ、その後、不活性ガス置換を行う工程、
b.フリーラジカル開始剤および第1の不飽和結合含有重合性モノマーを密閉反応器に添加し、撹拌しながら混合する工程、
c.0部~30部の界面活性剤を添加し、任意に反応系を20℃~60℃で0時間~24時間膨潤させる工程、
d.0部~300部の分散剤を添加し、系を30℃~130℃のグラフト重合温度まで加熱して、0.5時間~10時間反応を行う工程、
e.反応終了後、任意にろ過し(水相分散剤を使用する場合)、乾燥して変性ポリプロピレンを得る工程、
f.変性ポリプロピレンと、グラフト化されていないおよび/またはグラフト化された低弾性率ポリプロピレンと、任意の助剤とを割合で秤量し、二軸押出機を用いて、融点180℃~230℃、スクリュー回転数30rpm~600rpmで混合および造粒し、変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料を得る工程を含む調製方法であって、
前記グラフト化された低弾性率ポリプロピレンの調製方法は、
i.低弾性率ポリプロピレンを密閉反応器に入れ、その後、不活性ガス置換を行う工程、
ii.フリーラジカル開始剤および第2の不飽和結合含有重合性モノマーを密閉反応器に添加し、撹拌しながら混合する工程、
iii.0部~30部の界面活性剤を添加し、任意に反応系を20℃~60℃で0時間~24時間膨潤させる工程、
iv.0部~300部の分散剤を添加し、系を30℃~130℃のグラフト重合温度まで加熱して、0.5時間~10時間反応を行う工程、
v.反応終了後、任意にろ過し(水相分散剤を使用する場合)、乾燥して変性低弾性率ポリプロピレンを得る工程を含む。
【0109】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、前記調製方法は、
a.単独重合ポリプロピレンまたは共重合ポリプロピレンを密閉反応器に入れ、その後、不活性ガス置換を行う工程、
b.有機溶媒とフリーラジカル開始剤を混合し、その混合物を密閉反応器に加える工程、
c.前記有機溶媒を除去する工程、
d.第1の不飽和結合含有重合性モノマーを添加し、任意に界面活性剤を添加し、任意に反応系を膨潤させる工程、
e.任意に分散剤を添加し、反応系をグラフト化反応温度まで加熱してグラフト化反応を行う工程、
f.反応終了後、任意にろ過し(水相分散剤を使用する場合)、乾燥して変性ポリプロピレンを得る工程、
g.変性ポリプロピレンと、グラフト化されていないおよび/またはグラフト化された低弾性率ポリプロピレンと、任意の助剤とを割合で秤量し、混合、溶融、押出し、造粒して、変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料を得る工程を含む調製方法であって、
前記グラフト化された低弾性率ポリプロピレンの調製方法は、
i.低弾性率ポリプロピレンを密閉反応器に入れ、その後、不活性ガス置換を行う工程i、
ii.有機溶媒とフリーラジカル開始剤を混合し、その混合物を密閉反応器に添加する工程、
iii.前記有機溶媒を除去する工程、
iv.第2の不飽和結合含有重合性モノマーを添加し、任意に界面活性剤を添加し、任意に反応系を膨潤させる工程、
v.任意に分散剤を添加し、反応系をグラフト化反応温度まで加熱してグラフト化反応を行う工程、
vi.反応終了後、任意にろ過し(水相分散剤を使用する場合)、乾燥して変性低弾性率リプロピレンを得る工程を含む。
【0110】
具体的には、調製方法は、
a.単独重合ポリプロピレンまたは共重合ポリプロピレンを密閉反応器に入れ、その後、不活性ガス置換を行う工程、
b.有機溶媒とフリーラジカル開始剤とを混合し、その混合物を密閉反応器に加える工程、
c.有機溶媒を除去する工程、
d.第1の不飽和結合含有重合性モノマーを添加し、0部~30部の界面活性剤を添加し、任意に反応系を20℃~60℃で0時間~24時間膨潤させる工程、
e.0部~300部の分散剤を添加し、系を30℃~130℃のグラフト重合温度まで加熱し、0.5時間~10時間反応を行う工程、
f.反応終了後、任意にろ過し(水相分散剤を使用する場合)、乾燥して変性ポリプロピレンを得る工程、
g.変性ポリプロピレンと、グラフト化されていないおよび/またはグラフト化された低弾性率ポリプロピレンと、任意の助剤とを割合で秤量し、二軸押出機を用いて、融点180℃~230℃、スクリュー回転数30rpm~600rpmで混合および造粒し、変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料を得る工程を含む調製方法であって、
前記グラフト化された低弾性率ポリプロピレンの調製方法は、
i.低弾性率ポリプロピレンを密閉反応器に入れ、その後、不活性ガス置換を行う工程、
ii.有機溶媒とフリーラジカル開始剤とを混合し、その混合物を密閉反応器に添加する工程、
iii.有機溶媒を除去する工程、
iv.第2の不飽和結合含有重合性モノマーを添加し、界面活性剤を、好ましくは0部~30部添加し、任意に反応系を膨潤させ、好ましくは20℃~60℃で0時間~24時間反応させる工程、
v.任意に分散剤を、好ましくは0部~300部添加し、系をグラフト重合温度、好ましくは30℃~130℃まで加熱し、好ましくは0.5時間~10時間反応を行う工程、
vi.反応終了後、任意にろ過し(水相分散剤を使用する場合)、乾燥して変性低弾性率ポリプロピレンを得る工程を含む。
【0111】
本発明の方法によれば、反応終了後に揮発性成分が系中に存在する場合、本発明の方法は、好ましくは脱揮の工程を含み、この脱揮は、グラフト化反応終了時に真空抽出または脱揮剤の使用を含む任意の従来の方法によって実施することができる。適切な脱揮剤は不活性ガスを含むが、これらに限定されない。
【0112】
上述したように、本発明における用語「変性ポリプロピレン」または「変性低弾性率ポリプロピレン」は、ポリプロピレン/低弾性率ポリプロピレンと不飽和結合含有重合性モノマーとのグラフト化反応により直接得られる生成物(粗生成物)だけでなく、生成物をさらに精製することによって得られるグラフト変性されたポリプロピレン純生成物も含む。したがって、本発明の調製方法は、任意に、粗生成物を精製する工程を含む。精製は、抽出のような、当技術分野で慣用されている種々の方法によって実施することができる。
【0113】
本発明では、グラフト化反応のグラフト化効率は特に限定されないが、一段階のグラフト化反応により、所望の物性を有する不飽和結合含有重合性モノマーでグラフト変性されたポリプロピレン材料を得るためには、グラフト化効率が高い方がより有利である。従って、グラフト化反応のグラフト化効率は、好ましくは20%~100%、より好ましくは25%~80%に制御される。用語「グラフト化効率」は、当業者に周知であり、グラフトされた不飽和結合含有重合性モノマーの量/反応に供される不飽和結合含有重合性モノマーの総量を指す。
【0114】
本発明の不活性ガスは、当該分野で一般的に使用される様々な不活性ガスであってもよく、窒素、アルゴンを含むがこれらに限定されない。
【0115】
本発明の方法において、グラフト変性されたポリプロピレンと、低弾性率ポリプロピレンおよび任意に添加剤とを混合する方法は、機械的混合、好ましくは二軸機械でのブレンドであってもよい。添加剤は、例えば、酸化防止剤、安定剤、加工助剤から選ばれる1つ以上である。使用される添加剤の種類および量は、慣習的であり、当業者に周知である。
【0116】
本発明の上記変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料は、例えば、絶縁材料としてケーブルの分野に適用することができる。
【0117】
以下の実施例を参照して本発明をさらに説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0118】
試験方法
1.ポリプロピレン中のコモノマー含有量の測定
コモノマー含有量は、Perkinelmer社のSpectrum Two型定量的フーリエ変換赤外(FTIR)分光法によって測定した。測定されたコモノマー含有量の相関は、定量的核磁気共鳴(NMR)分光法によって校正された。定量的13C-NMR分光法から得られた結果の校正法は、当該技術分野における従来の方法に従って実施した。
【0119】
2.キシレン可溶分(XS)の含有量の測定
試験は、GB/T24282-2009に規定された方法に従って行われた。
【0120】
3.低弾性率ポリプロピレンにおけるキシレン可溶分中のコモノマー含有量(XSC2)、および、キシレン可溶分の低弾性率ポリプロピレンに対する固有粘度比の測定
Polymer Char社のCRYST-EX装置を用い、以下の手順で行った。トリクロロベンゼン溶媒を用いて、150℃まで加熱して溶解し、90分間保温し、サンプリング試験を行い、その後、35℃まで冷却し、70分間保温し、サンプリング試験を行った。
【0121】
4.ポリプロピレンの重量平均分子量(M)の測定
試料を1,2,4-トリクロロベンゼンに1.0mg/mlの濃度で溶解し、Polymer Char社製のPL-GPC 220型ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて高温GPCにより測定した。試験温度は150℃、溶液流量は1.0ml/分であった。ポリスチレンの分子量を内部基準として検量線をプロットし、流出時間に応じて試料の分子量および分子量分布を算出した。
【0122】
5.メルトフローレートMFRの測定
試験は、GB/T3682-2018に規定された方法に従い、CEAST社の7026型メルトインデックス装置を用い、230℃で2.16kgの荷重をかけて行った。
【0123】
6.融点Tmの測定
材料の溶融および結晶化の過程は、米国TA社のDSC25型示差走査熱量計で分析した。具体的には、窒素保護下、試料5~10mgを20℃~200℃の3段階式昇温降温測定法で測定し、材料の溶融および結晶化の過程を熱流量の変化に反映させ、第2の加熱過程で融点Tmを求めた。
【0124】
7.グラフト効率GE、パラメータM1、M2の測定
グラフト生成物または粉砕した複合材料粒子2~4gをソックスレー抽出器に入れ、有機溶媒(芳香族オレフィン系モノマー、アクリレート系モノマーおよび無水物の場合は、酢酸エチルを使用し、シラン系モノマーの場合は、アセトンを使用する)で24時間抽出し、未反応モノマーおよびホモポリマーを除去し、純粋なグラフト生成物を得て、これを乾燥、秤量し、パラメータMn、M1、M2およびグラフト効率GEを計算した。
【0125】
(1)不飽和結合含有重合性モノマーがアルケニル基含有官能性モノマーである
パラメータMn(n=AまたはB)は、成分Aまたは成分B中の、アルケニル基含有重合性モノマーに由来しグラフト化状態にある構造単位の含有量を表し、パラメータM1は、複合材料中の、アルケニル基含有重合性モノマーに由来しグラフト化状態にある構造単位の含有量を表し、MおよびMから算出される。本発明におけるM1およびMnの計算式は以下の通りである。
【0126】
【数1】
【0127】
【数2】
【0128】
【数3】
【0129】
上記式中、wはPPマトリックスの質量を示し、wは抽出前のグラフト生成物の質量を示し、wは抽出後のグラフト生成物の質量を示し、wは添加したアルケニル基含有官能性モノマーの質量を示し、mは複合材料中の成分Aの質量を示し、mは複合材料中の成分Bの質量を示し、m生成物は複合材料の質量を示す。
【0130】
(2)不飽和結合含有重合性モノマーが、無水物モノマーおよびアルケニル基含有重合性モノマーである
パラメータMn(n=AまたはB)は、成分Aまたは成分B中の、無水物モノマーおよびアルケニル基含有重合性モノマーに由来しグラフト化状態にある構造単位の含有量を表し、パラメータM1は、複合材料中の、無水物モノマーおよびアルケニル基含有重合性モノマーに由来しグラフト化状態にある構造単位の含有量を表し、MおよびMから算出される。パラメータM2は、複合材料中の無水物モノマーに由来しグラフト化状態にある構造単位の含有量を表す。本発明におけるM1、M2、Mnの計算式は以下の通りである。
【0131】
【数4】
【0132】
【数5】
【0133】
【数6】
【0134】
【数7】
【0135】
上記式中、wはPPマトリックスの質量を表し、wは抽出前のグラフト生成物の質量を表し、wは抽出後のグラフト生成物の質量を表し、wは添加したグラフトモノマーの総質量を表し、wは抽出後の複合材料の質量を表す。mは複合材料中の成分Aの質量を示し、mは複合材料中の成分Bの質量を示し、m生成物は複合材料の質量を示し、%GMAHは無水マレイン酸の質量含有率を示す。複合材料中の無水マレイン酸の質量含有率%GMAHは、参考文献(張広平、らせん状リボン型反応器におけるポリプロピレンへの無水マレイン酸の固相グラフト、中国プラスチック、2002年2月第16巻第2期、69-71)に記載された方法に従って測定および算出した。
【0136】
8.直流体積抵抗率の測定
試料は、加硫プレスを用いて210℃で100±10μmの試料シートにホットプレスした後、オーブンに入れ、80℃で6時間短絡処理を行い、試料シートの表面と内部とに残留する妨害電荷を除去した。試験前に試料シートをアルコールで拭き取り、表面の不純物を除去した。試料シートの試験はGB/T1410-2006の方法に従って実施した。試料シートの試験面には金属溶射処理を施した。直径1cmの上部電極と直径4cmの下部電極とを使用した。出力電圧は10kV、サンプリング時間は600秒、サンプリングステップは15kV/mmであった。各試料は3点で測定し、平均値を取った。
【0137】
9.破壊電界強度の測定
試料は、加硫プレスを用いて210℃で100±10μmの試料シートにホットプレスした後、オーブンに入れ、80℃で6時間短絡処理を行い、試料シートの表面と内部に残留する妨害電荷を除去した。試験前に試料シートをアルコールで拭き取り、表面の不純物を除去した。試料シートの試験はGB/T1408-2006の方法に従って実施した。電圧上昇速度は1kV/sで、各試料について20点で破壊電界強度を測定した。次に、2パラメータワイブル(Weibull)分布を用いて実験データを処理し、特徴的な破壊電界強度を求めた。
【0138】
10.引張強さの測定
試料は200~220℃で試料バーに射出され、射出速度は55mm/s、射出金型内での試料の冷却時間は10秒、試料は150mm×10mm×4mmのダンベル状の試料バーに引き伸ばされた。射出後、試料バーを24時間置いておく必要があった。その後、GB/T1040.2-2006の方法に従って試験を行った。試料の引張速度は50mm/分とした。
【0139】
11.曲げ弾性率の測定
試験される試料は200-220℃で試料バーに射出され、射出速度は55mm/s、射出金型内での試料の冷却時間は10秒、試料は80mm×10mm×4mmの長方形の試料バーに曲げられた。試験はGB/T9341-2008の方法に従って実施した。
【0140】
12.破断伸び率の測定
試験はGB/T1040-2006の方法に従って実施した。試料の準備と試験条件は、引張強さの測定と同じである。
【0141】
13.誘電率の測定
試験はGB/T1409-2006の方法に従って行われた。
【0142】
14.ゴム相の特性
二軸押出造粒中に、長さ5~10cmの複合材料試料バーを1~2本採取した。液体窒素に15分間浸した後、脆性破壊を行った。試料バーの破断面を室温で24時間キシレンに浸した後、超音波を加えて浄水に15分間浸し、最後にアルコールで洗浄し、空気中で乾燥させた。試料の破断面を金属溶射処理した後、熱電界放出型走査電子顕微鏡(米国FEI社製 NanoSEM 450)で観察した。
【0143】
15.グラフト相の特性とD50の算出
複合材料試料バーを液体窒素に15分間浸した後、脆性破壊を行った。破断面に金属溶射処理を施した後、熱電界放出型走査電子顕微鏡(米国FEI社製 NanoSEM 450)で観察し、ミクロモルフォロジー画像を得た。分析ソフトウェアを用いて、各試料について200個の分散相を採取し、直径を測定し、データ処理ソフトウェアを用いてD50を算出した。D50はメジアン粒子径、すなわち試料の累積粒子径分布率が50%に達したときの粒子径を表す。
【0144】
16.三相構造の特性評価
複合材料試料バーは液体窒素中で-50℃に冷却され、スライスされた。ドイツBruker社のDimension型高速走査型原子間力顕微鏡で複合材料のミクロモルフォロジー画像を得た。
【0145】
17.キシレン不溶分および変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料中のグラフト単位の含有率Kの測定
試料を適量取り、正確に秤量し、質量をmとし、キシレン不溶分(IXS)およびキシレン可溶物(XS)は、中国国家標準GB/T24282-2009「プラスチック-ポリプロピレン中のキシレン可溶分含有量の測定」に従い、分離、乾燥、秤量し、それぞれの質量をmixs、mxsとした。
【0146】
文献(王正煕、孫道桐、曹立群、「ポリマー定量的赤外分光分析における標準添加法の応用(J)」『プラスチック工業』1989,(6):41-43)の方法を参照して、赤外線スペクトルで、キシレン不溶分および変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料中のグラフト単位の質量濃度を算出した。参照試料はグラフトモノマーのポリマーを選ぶべきであり、グラフトモノマーの参照試料の一部とその赤外特性ピークを以下に例示する。
【0147】
【表1】
【0148】
グラフトモノマーが無水マレイン酸を含む場合、文献(張広平、らせん状リボン型反応器におけるポリプロピレンへの無水マレイン酸の固相グラフト、中国プラスチック、2002年2月第16巻第2期、69-71)に記載された方法に従って、キシレン不溶分および変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料中の無水マレイン酸の濃度を測定および算出した。
【0149】
赤外分光法によって測定および算出されたキシレン不溶分および変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料中のグラフト単位の濃度は、それぞれcixs(1,2,3……)およびcp(1,2,3……)(1、2、3は異なる種類のグラフト単位を示す)で表され、キシレン不溶分中のグラフト単位の変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料中のグラフト単位に対する質量比Kの計算式は以下の通りである。
【0150】
【数8】
【0151】
実施例
実施例で使用した原料およびその物理的性質を以下の表A、表Bおよび表Cに示す。
【0152】
【表2】
【0153】
【表3】
【0154】
【表4】
【0155】
実施例1A
40メッシュ未満の微粉をふるい分けにより除去したPP1粉末原料2.0kgを秤量し、機械的撹拌機を備えた10Lの反応釜に加え、反応系を密閉し、窒素置換により酸素を除去した。tert-ブチルパーオキシ(2-エチルヘキサノエート)4.83gとスチレン322gとを加え、反応混合物を30分間撹拌混合した後、分散剤である水2kgを加え、50℃で2時間膨潤させ、反応系を90℃に加熱し、4時間反応させた。反応終了後、反応生成物を冷却し、濾過して分散剤である水を除去し、70℃で10時間真空乾燥し、ポリプロピレン-g-スチレン粉末、M=7.2%を得た。
【0156】
ポリプロピレン-g-スチレン粉末とb-PP1とを36:64の質量比になるように1.2kg秤量し、3000ppmの酸化防止剤1010/168(質量比1:1)を添加し、得られた混合物を高速撹拌機に入れて均質化した。二軸押出機を用いて、区分温度190-200-210-220-220-220-220-220-210-200℃、スクリュー回転数400rpmで造粒を行い、複合材料C1Aを得た。得られた生成物について各種性能パラメータを試験し、その結果を表1に示す。
【0157】
図1は、実施例1Aの材料生成物の原子間力顕微鏡写真(弾性率像)であり、明るい白色の領域はスチレングラフト相、黒色の領域はゴム相、その他の領域は連続相を表す。
【0158】
図2は、実施例1Aの材料生成物のミクロ構造を10000倍の電子顕微鏡下で示す写真であり、球状分散相はスチレングラフト相である。スチレングラフト相の粒径は小さく、形態は規則的であることがわかる。
【0159】
実施例2A
40メッシュ未満の微粉をふるい分けにより除去したPP2粉末原料2.0kgを秤量し、機械的撹拌機を備えた10Lの反応釜に加え、反応系を密閉し、窒素置換により酸素を除去した。過酸化ジベンゾイル2.4gとスチレン240gを加え、反応混合物を30分間撹拌混合した後、40℃で2時間膨潤させ、100℃に加熱し、3時間反応させた。反応終了後、反応生成物を冷却し、70℃で10時間真空乾燥し、ポリプロピレン-g-スチレン粉末、M=7.0%を得た。
【0160】
ポリプロピレン-g-スチレン粉末とb-PP1とを60:40の質量比になるように1.2kg秤量し、3000ppmの酸化防止剤1035を添加し、得られた混合物を高速撹拌機に入れて均質化した。二軸押出機を用いて、区分温度190-200-210-220-220-220-220-220-210-200℃、スクリュー回転数450rpmで造粒を行い、複合材料C2Aを得た。得られた生成物について各種性能パラメータを試験し、その結果を表1に示す。
【0161】
実施例3A
40メッシュ未満の微粉をふるい分けにより除去したPP2粉末原料2.0kgを秤量し、機械的撹拌機を備えた10Lの反応釜に加え、反応系を密閉し、窒素置換により酸素を除去した。過酸化ジベンゾイル2.2gとメチルメタクリレート100gとを加え、反応混合物を20分間撹拌混合し、95℃に加熱し、5時間反応させた。反応終了後、反応生成物を冷却し、70℃で10時間真空乾燥し、ポリプロピレン-g-メチルメタクリレート粉末、M=2.5%を得た。
【0162】
ポリプロピレン-g-メチルメタクリレート粉末とb-PP2とを60:40の質量比になるように1.2kg秤量し、3000ppmの酸化防止剤1035を添加し、得られた混合物を高速撹拌機に入れて均質化した。二軸押出機を用いて、区分温度200-210-220-230-230-230-230-220-220-210℃、スクリュー回転数350rpmで造粒を行い、複合材料C3Aを得た。得られた生成物について各種性能パラメータを試験し、その結果を表1に示す。
【0163】
図3は、実施例3Aの材料生成物のミクロ構造を10000倍の電子顕微鏡下で示す写真であり、球状分散相はメチルメタクリレートグラフト相である。メチルメタクリレートグラフト相の粒径は小さく、形態は規則的であることがわかる。
【0164】
実施例4A
40メッシュ未満の微粉をふるい分けにより除去したPP1粉末原料2.0kgを秤量し、機械的撹拌機を備えていた10Lの反応釜に加え、反応系を密閉し、窒素置換により酸素を除去した。過酸化ジベンゾイル3.4gとスチレン226gとを加え、反応混合物を30分間撹拌混合した後、分散剤である脱イオン水2Lを加え、反応系を90℃に加熱し、6時間反応させた。反応終了後、反応生成物を冷却し、70℃で10時間真空乾燥し、ポリプロピレン-g-スチレン粉末1、M=6.2%を得た。
【0165】
b-PP1粉末2.0kgを秤量し、機械的撹拌機を備えていた10Lの反応釜に加え、反応系を密閉し、窒素置換により酸素を除去した。過酸化ジベンゾイル0.28gとスチレン28.0gを加え、反応混合物を20分間撹拌混合し、分散剤である脱イオン水2Lを加え、反応系を90℃に加熱し、5時間反応させた。反応終了後、反応生成物を冷却し、70℃で10時間真空乾燥し、ポリプロピレン-g-スチレン粉末2、M=0.8%を得た
ポリプロピレン-g-スチレン粉末1とポリプロピレン-g-スチレン粉末2とを36:64の質量比になるように1.2kg秤量し、3000ppmの酸化防止剤1010/168(質量比1:1)を添加し、得られた混合物を高速撹拌機に入れて均質化した。二軸押出機を用いて、区分温度190-200-210-220-220-220-220-220-210-200℃、スクリュー回転数400rpmで造粒を行い、複合材料C4Aを得た。得られた生成物について各種性能パラメータを試験し、その結果を表1に示す。
【0166】
図4は、実施例4Aの材料生成物のミクロ構造を10000倍の電子顕微鏡下で示す写真であり、球状分散相はスチレングラフト相である。スチレングラフト相の粒径は小さく、形態は規則的であることがわかる。
【0167】
実施例5A
40メッシュ未満の微粉をふるい分けにより除去したPP3粉末原料2.0kgを秤量し、機械的撹拌機を備えた10Lの反応釜に加え、反応系を密閉し、窒素置換により酸素を除去した。過酸化ラウロイル7.5g、ビニルトリエトキシシラン150g、キシレン100mlを均一に混合し、反応釜に加え、反応混合物を20分間撹拌混合し、105℃に加熱し、4時間反応させた。反応終了後、反応生成物を冷却し、70℃で10時間真空乾燥し、ポリプロピレン-g-ビニルトリエトキシシラン粉末、M=1.8%を得た。
【0168】
ポリプロピレン-g-ビニルトリエトキシシラン粉末とb-PP3とを40:60の質量比になるように1.2kg秤量し、2000ppmの酸化防止剤1024を添加し、得られた混合物を高速撹拌機に入れて均質化した。二軸押出機を用いて、区分温度200-210-220-230-230-230-230-220-220-210℃、スクリュー回転数400rpmで造粒を行い、複合材料C5Aを得た。得られた生成物について各種性能パラメータを試験し、その結果を表1に示す。
【0169】
図5は実施例5Aの材料生成物のミクロ構造を10000倍の電子顕微鏡下で示す写真であり、球状分散相はビニルトリエトキシシラングラフト相である。ビニルトリエトキシシラングラフト相の粒径は小さく、形態は規則的であることがわかる。
【0170】
実施例6A
40メッシュ未満の微粉をふるい分けにより除去したPP1粉末原料2.0kgを秤量し、機械的撹拌機を備えた10Lの反応釜に加え、反応系を密閉し、窒素置換により酸素を除去した。tert-ブチルパーオキシ(2-エチルヘキサノエート)4.83gとスチレン322gを加え、撹拌せず、分散剤である水2kgを加え、膨潤させず、反応系を90℃に加熱し、4時間反応させた。反応終了後、反応生成物を冷却し、濾過して分散剤である水を除去し、70℃で10時間真空乾燥し、ポリプロピレン-g-スチレン粉末、M=3.4%を得た。
【0171】
ポリプロピレン-g-スチレン粉末とb-PP1とを36:64の質量比になるように1.2kg秤量し、3000ppmの酸化防止剤1010/168(質量比1:1)を添加し、得られた混合物を高速撹拌機に入れて均質化した。二軸押出機を用いて、区分温度190-200-210-220-220-220-220-220-210-200℃、スクリュー回転数400rpmで造粒を行い、複合材料C6Aを得た。得られた生成物について各種性能パラメータを試験し、その結果を表1に示す。
【0172】
実施例7A
40メッシュ未満の微粉をふるい分けにより除去したPP1粉末原料2.0kgを秤量し、機械的撹拌機を備えていた10Lの反応釜に加え、反応系を密閉し、窒素置換により酸素を除去した。過酸化ジベンゾイル0.9gとスチレン30gとを加え、反応混合物を30分間撹拌混合した後、分散剤である脱イオン水2Lを加え、反応系を90℃に加熱し、6時間反応させた。反応終了後、反応生成物を冷却し、70℃で10時間真空乾燥し、ポリプロピレン-g-スチレン粉末1、M=0.6%を得た。
【0173】
b-PP1粉末2.0kgを秤量し、機械的撹拌機を備えた10Lの反応釜に加え、反応系を密閉し、窒素置換により酸素を除去した。過酸化ジベンゾイル3.5gとスチレン141gとを加え、反応混合物を20分間撹拌混合し、分散剤である脱イオン水2Lを加え、反応系を90℃に加熱し、5時間反応させた。反応終了後、反応生成物を冷却し、70℃で10時間真空乾燥し、ポリプロピレン-g-スチレン粉末2、M=4.1%を得た。
【0174】
ポリプロピレン-g-スチレン粉末1とポリプロピレン-g-スチレン粉末2とを36:64の質量比になるように1.2g秤量し、3000ppmの酸化防止剤1010/168(質量比1:1)を添加し、得られた混合物を高速撹拌機に入れて均質化した。二軸押出機を用いて、区分温度190-200-210-220-220-220-220-220-210-200℃、スクリュー回転数400rpmで造粒を行い、複合材料C7Aを得た。得られた生成物について各種性能パラメータを試験し、その結果を表1に示す。
【0175】
実施例8A
40メッシュ未満の微粉をふるい分けにより除去したPP2粉末原料2.0kgを秤量し、機械的撹拌機を備えていた10Lの反応釜に加え、反応系を密閉し、窒素置換により酸素を除去した。過酸化ジベンゾイル3.1gとスチレン174gとを加え、反応混合物を30分間撹拌混合した後、脱イオン水2Lを加え、40℃で2時間膨潤させ、反応系を90℃に加熱し、6時間反応させた。反応終了後、反応生成物を冷却し、70℃で10時間真空乾燥し、ポリプロピレン-g-スチレン粉末、M=3.6%を得た。
【0176】
ポリプロピレン-g-スチレン粉末とb-PP1とを50:50の質量比になるように1.2g秤量し、3000ppmの酸化防止剤1035を添加し、得られた混合物を高速撹拌機に入れて均質化した。二軸押出機を用いて、区分温度190-200-210-220-220-220-220-220-210-200℃、スクリュー回転数450rpmで造粒を行い、複合材料C8Aを得た。得られた生成物について各種性能パラメータを試験し、その結果を表1に示す。
【0177】
比較例1A
40メッシュ未満の微粉をふるい分けにより除去したPP1粉末原料2.0kgを秤量し、機械的撹拌機を備えていた10Lの反応釜に加え、反応系を密閉し、窒素置換により酸素を除去した。過酸化ジベンゾイル2gとスチレン100gとを加え、反応混合物を60分間撹拌混合した後、40℃で4時間膨潤させ、反応系を95℃に加熱し、4時間反応させた。反応終了後、窒素ガスでバージして冷却し、ポリプロピレン-g-スチレン粉末を得た。
【0178】
ポリプロピレン-g-スチレン粉末1.2kgを秤量し、3000ppmの酸化防止剤1010/168(質量比1:1)を添加し、得られた混合物を高速撹拌機に入れて均質化した。二軸押出機を用いて、区分温度190-200-210-220-220-220-220-220-210-200℃、スクリュー回転数400rpmで造粒を行い、生成物D1Aを得た。得られた生成物について各種性能パラメータを試験し、その結果を表1に示す。
【0179】
比較例2
コモノマーエチレン含有量が20.2モル%、キシレン可溶分含有量が44.2重量%、重量平均分子量が35.3×10g/モル、230℃、2.16kg荷重下でのMFRが1.55g/10分、融点が143.6℃であることを特徴とするポリプロピレン粉末を選択した。上記ポリプロピレン粉末1.2kgを秤量し、3000ppmの酸化防止剤1010/168(質量比1:1)を添加し、得られた混合物を高速撹拌機に入れて均質化した。二軸押出機を用いて、区分温度190-200-210-220-220-220-220-220-210-200℃、スクリュー回転数400rpmで造粒を行い、生成物D2を得た。得られた生成物について各種性能パラメータを試験し、その結果を表1に示す。
【0180】
比較例3
PP2粉末とb-PP1とを50:50の質量比になるように1.2kg秤量し、3000ppmの酸化防止剤1035を添加し、得られた混合物を高速撹拌機に入れて均質化した。二軸押出機を用いて、区分温度190-200-210-220-220-220-220-220-210-200℃、スクリュー回転数450rpmで造粒を行い、複合材料D3を得た。得られた生成物について各種性能パラメータを試験し、その結果を表1に示す。
【0181】
図6は、比較例3の生成物のミクロ構造を10000倍の電子顕微鏡下で示す写真である。図7は、比較例3の生成物のエッチング後のミクロ構造を10000倍の電子顕微鏡下で示す写真であり、黒い部分がゴム相である。図6および図7から、グラフト化されていない生成物はゴム相を含むが、グラフト相を含まないことがわかる。グラフト化後の本発明の生成物は、ゴム相とグラフト相の両方を含む三相構造である。
【0182】
比較例4A
40メッシュ未満の微粉をふるい分けにより除去したPP2粉末原料2.0kgを秤量し、機械的撹拌機を備えていた10Lの反応釜に加え、反応系を密閉し、窒素置換により酸素を除去した。過酸化ジベンゾイル10gとスチレン566.7gとを加え、反応混合物を30分間撹拌混合した後、脱イオン水2Lを加え、40℃で2時間膨潤させ、反応系を90℃に加熱し、6時間反応させた。反応終了後、反応生成物を冷却し、70℃で10時間真空乾燥し、ポリプロピレン-g-スチレン粉末、M=12.7%を得た。
【0183】
ポリプロピレン-g-スチレン粉末とb-PP1とを50:50の質量比になるように1.2kg秤量し、3000ppmの酸化防止剤1035を添加し、得られた混合物を高速撹拌機に入れて均質化した。二軸押出機を用いて、区分温度190-200-210-220-220-220-220-220-210-200℃、スクリュー回転数450rpmで造粒を行い、複合材料D4Aを得た。得られた生成物について各種性能パラメータを試験し、その結果を表1に示す。
【0184】
図8は、比較例4Aの生成物のミクロ構造を10000倍の電子顕微鏡下で示す写真である。
【0185】
比較例5A
PP1と、b-PP1と、ポリスチレンGPPS-123とを、31:64:5の質量比になるように1.2kg秤量し、3000ppmの酸化防止剤1010/168(質量比1:1)を添加し、得られた混合物を高速撹拌機に入れて均質化した。二軸押出機を用いて、区分温度190-200-210-220-220-220-220-220-210-200℃、スクリュー回転数400rpmで造粒を行い、複合材料D5Aを得た。得られた生成物について各種性能パラメータを試験し、その結果を表1に示す。
【0186】
図9は、比較例5Aの生成物のミクロ構造を10000倍の電子顕微鏡下で示す写真である。相溶性が悪いため、分散相のサイズは均一ではなく、明らかに大きなサイズの分散相が存在する。
【0187】
【表5】
【0188】
実施例1Aと比較例1Aのデータを比較すると、ベース粉末としてホモPPを使用した場合、曲げ弾性率が高すぎ、機械的特性に劣るポリプロピレン-g-スチレン材料生成物が得られ、絶縁材料の加工および使用要件を満たすことができないことがわかる。
【0189】
実施例1Aと比較例2のデータを比較すると、本発明で得られた生成物の機械的特性は、釜で直接アロイ化して調製したポリプロピレンの機械的特性に劣ることはなく、電気的特性がより優れていることがわかる。
【0190】
実施例8Aと比較例3のデータとの比較からわかるように、グラフト相を含まない材料と比較して、変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料の機械的特性はほぼ同じであり、破壊電界強度および直流体積抵抗率はともに改善されており、本発明の変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料が良好な電気的特性を有する。
【0191】
実施例8Aと比較例4Aのデータを比較すると、グラフト量が限定範囲を超えると、グラフト相のD50が大きくなりすぎて、変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料の破壊電界強度と体積抵抗率が低下し、材料の電気特性に影響を与えるだけでなく、変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料の曲げ弾性率が大きくなり、実用上の使用要件を満たすことができないことがわかる。
【0192】
実施例1Aと比較例5Aのデータを比較すると、アルケニル基含有官能性モノマーのポリマーを配合する場合、アルケニル基含有官能性モノマーの分散相のサイズが大きくなりすぎるため、材料の破壊電界強度と体積抵抗率が大きく低下し、材料の電気特性に大きな影響を与えることがわかる。
【0193】
実施例1Aおよび実施例6A、7Aのデータを比較すると、反応混合物を予備接触させ、または、異なるポリプロピレン成分中のグラフト単位の含有量を調整することにより、不溶分中のグラフト単位の割合を増加させることが可能であり、その結果、より良好な電気的特性が得られることがわかる。
【0194】
結論として、表1のデータからわかるように、本発明で得られた変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料は、優れた電気絶縁性を有するだけでなく、良好な機械的特性および加工性を有する。
【0195】
さらに、誘電率のデータから、本発明の材料が絶縁に必要な条件を満たしていることがわかる。
【0196】
実施例1B
40メッシュ未満の微粉をふるい分けにより除去したPP1粉末原料2.0kgを秤量し、機械的撹拌機を備えていた10Lの反応釜に加え、反応系を密閉し、窒素置換により酸素を除去した。Tert-ブチルパーオキシ(2-エチルヘキサノエート)3.95gと無水マレイン酸30gとスチレン120gとの混合物を加え、30分間撹拌混合した後、分散剤である水2kgを加え、50℃で2時間膨潤させ、反応系を90℃に加熱し、4時間反応させた。反応終了後、反応生成物を冷却し、濾過して分散剤である水を除去し、70℃で10時間真空乾燥し、ポリプロピレン-g-スチレン/無水マレイン酸粉末、M=4.9%を得た。
【0197】
ポリプロピレン-g-スチレン/無水マレイン酸粉末とb-PP1とを36:64の質量比になるように1.2kg秤量し、3000ppmの酸化防止剤1010/168(質量比1:1)を添加し、得られた混合物を高速撹拌機に入れて均質化した。二軸押出機を用いて、区分温度190-200-210-220-220-220-220-220-210-200℃、スクリュー回転数400rpmで造粒を行い、複合材料C1Bを得た。得られた生成物について各種性能パラメータを試験し、その結果を表1に示す。
【0198】
図10は、実施例1Bの材料生成物の原子間力顕微鏡写真(対数弾性率モード)であり、白い領域はスチレン/無水マレイン酸グラフト相、黒い領域はゴム相、その他の領域は連続相を表す。
【0199】
図11は、実施例1Bの材料生成物のミクロ構造を20000倍の電子顕微鏡下で示す写真であり、球状分散相はスチレン/無水マレイン酸グラフト相である。スチレン/無水マレイン酸グラフト相の粒径は小さく、形態は規則的であることがわかる。
【0200】
実施例2B
40メッシュ未満の微粉をふるい分けにより除去したPP2粉末原料2.0kgを秤量し、機械的撹拌機を備えた10Lの反応釜に加え、反応系を密閉し、窒素置換により酸素を除去した。過酸化ジベンゾイル1.5gと無水マレイン酸13gとスチレン39gとの混合物を加え、30分間撹拌混合した後、40℃で2時間膨潤させ、反応系を100℃に加熱し、3時間反応させた。反応終了後、反応生成物を冷却し、70℃で10時間真空乾燥し、ポリプロピレン-g-スチレン/無水マレイン酸粉末、M=1.4%を得た。
【0201】
ポリプロピレン-g-スチレン/無水マレイン酸粉末とb-PP2とを、60:40の質量比になるように1.2kg秤量し、3000ppmの酸化防止剤1035を添加し、得られた混合物を高速撹拌機に入れて均質化した。二軸押出機を用いて、区分温度190-200-210-220-220-220-220-220-210-200℃、スクリュー回転数450rpmで造粒を行い、複合材料C2Bを得た。得られた生成物について各種性能パラメータを試験し、その結果を表2に示す。図12は、実施例2Bの材料生成物のミクロ構造を20000倍の電子顕微鏡下で示す写真であり、球状分散相はスチレン/無水マレイン酸グラフト相である。スチレン/無水マレイン酸グラフト相の粒径は小さく、形態は規則的であることがわかる。
【0202】
実施例3B
40メッシュ未満の微粉をふるい分けにより除去したPP1粉末原料2.0kgを秤量し、機械的撹拌機を備えていた10Lの反応釜に加え、反応系を密閉し、窒素置換により酸素を除去した。Tert-ブチルパーオキシ(2-エチルヘキサノエート)3.95gと無水マレイン酸30gとスチレン120gとの混合物を加え、30分間撹拌混合した後、分散剤である水2kgを加え、50℃で2時間膨潤させ、反応系を90℃に加熱し、4時間反応させた。反応終了後、反応生成物を冷却し、濾過して分散剤である水を除去し、70℃で10時間真空乾燥し、ポリプロピレン-g-スチレン/無水マレイン酸粉末、M=4.9%を得た。
【0203】
b-PP1粉末2.0kgを秤量し、機械的撹拌機を備えていた10Lの反応釜に加え、反応系を密閉し、窒素置換により酸素を除去した。過酸化ジベンゾイル0.28gとスチレン64.0gとの混合物を加え、20分間撹拌混合した後、分散剤である脱イオン水2Lを加え、反応系を90℃に加熱し、5時間反応させた。反応終了後、反応生成物を冷却し、70℃で10時間真空乾燥し、ポリプロピレン-g-スチレン粉末、M=1.1%を得た。
【0204】
ポリプロピレン-g-スチレン/無水マレイン酸粉末とポリプロピレン-g-スチレン粉末とを、38:62の質量比になるように1.2kg秤量し、3000ppmの酸化防止剤1010/168(質量比1:1)を添加し、得られた混合物を高速撹拌機に入れて均質化した。二軸押出機を用いて、区分温度190-200-210-220-220-220-220-220-210-200℃、スクリュー回転数400rpmで造粒を行い、複合材料C3Bを得た。得られた生成物について各種性能パラメータの試験を行い、その結果を表2に示す。
【0205】
図13は、実施例3Bの材料生成物のミクロ構造を20000倍の電子顕微鏡下で示す写真であり、球状分散相はスチレン/無水マレイン酸グラフト相である。スチレン/無水マレイン酸グラフト相の粒径は小さく、形態は規則的であることがわかる。
【0206】
実施例4B
40メッシュ未満の微粉をふるい分けにより除去したPP3粉末原料2.0kgを秤量し、機械的撹拌機を備えた10Lの反応釜に加え、反応系を密閉し、窒素置換により酸素を除去した。過酸化ラウロイル3.5gと無水マレイン酸30gとα-メチルスチレン32gとの混合物を30分間撹拌混合した後、分散剤である脱イオン水2Lを加え、反応系を90℃に加熱し、6時間反応させた。反応終了後、反応生成物を冷却し、70℃で10時間真空乾燥し、ポリプロピレン-g-α-メチルスチレン/無水マレイン酸粉末、M=0.9%を得た。
【0207】
ポリプロピレン-g-α-メチルスチレン/無水マレイン酸粉末とb-PP3とを、41:59の質量比になるように1.2kg秤量し、2000ppmの酸化防止剤1024を添加し、得られた混合物を高速撹拌機に入れて均質化した。二軸押出機を用いて、区分温度200-210-220-230-230-230-230-220-220-210℃、スクリュー回転数400rpmで造粒を行い、複合材料C4Bを得た。得られた生成物について各種性能パラメータ試験を行い、その結果を表2に示す。
【0208】
実施例5B
40メッシュ未満の微粉をふるい分けにより除去したPP1粉末原料2.0kgを秤量し、機械的撹拌機を備えていた10Lの反応釜に加え、反応系を密閉し、窒素置換により酸素を除去した。過酸化ジベンゾイル1.8gとメチルメタクリレート120.5gとの混合物を加え、30分間撹拌混合した後、分散剤である脱イオン水2Lを加え、反応系を90℃に加熱し、2.5時間反応させた。反応終了後、反応生成物を冷却し、70℃で10時間真空乾燥し、ポリプロピレン-g-メチルメタクリレート粉末、M=4.6%を得た。
【0209】
b-PP1粉末2.0kgを秤量し、機械的撹拌機を備えた10Lの反応釜に加え、反応系を密閉し、窒素置換により酸素を除去した。過酸化ジベンゾイル0.29gと無水マレイン酸14.3gとスチレン85.7gとの混合物を加え、20分間撹拌混合した後、反応系を90℃に加熱し、5時間反応させた。反応終了後、反応生成物を冷却し、70℃で10時間真空乾燥し、ポリプロピレン-g-スチレン/無水マレイン酸粉末、M=2.6%を得た。
【0210】
ポリプロピレン-g-メチルメタクリレート粉末とポリプロピレン-g-スチレン/無水マレイン酸粉末とを、38:62の質量比になるように1.2kg秤量し、3000ppmの酸化防止剤1010/168(質量比1:1)を添加し、得られた混合物を高速撹拌機に入れて均質化した。二軸押出機を用いて、区分温度190-200-210-220-220-220-220-220-210-200℃、スクリュー回転数400rpmで造粒を行い、複合材料C5Bを得た。得られた生成物について各種性能試験を行い、その結果を表2に示す。
【0211】
実施例6B
40メッシュ未満の微粉をふるい分けにより除去したPP2粉末原料2.0kgを秤量し、機械的撹拌機を備えた10Lの反応釜に加え、反応系を密閉し、窒素置換により酸素を除去した。過酸化ジベンゾイル1.5gと無水マレイン酸13gとスチレン39gとの混合物を加え、30分間撹拌混合した後、40℃で2時間膨潤させ、反応系を100℃に加熱し、3時間反応させた。反応終了後、反応生成物を冷却し、70℃で10時間真空乾燥し、ポリプロピレン-g-スチレン/無水マレイン酸粉末、M=1.4%を得た。
【0212】
b-PP2粉末を2.0kg秤量し、機械的撹拌機を備えた10Lの反応釜に加え、反応系を密閉し、窒素置換により酸素を除去した。過酸化ジベンゾイル0.6gと無水マレイン酸8.4gとスチレン31.5gとの混合物を加え、20分間撹拌混合した後、分散剤である脱イオン水2Lを加え、反応系を90℃に加熱し、5時間反応させた。反応終了後、反応生成物を冷却し、70℃で10時間真空乾燥し、ポリプロピレン-g-スチレン/無水マレイン酸粉末2、M=1.3%を得た。
【0213】
ポリプロピレン-g-スチレン/無水マレイン酸粉末1とポリプロピレン-g-スチレン/無水マレイン酸粉末2とを60:40の質量比になるように1.2kg秤量し、3000ppmの酸化防止剤1035を添加し、得られた混合物を高速撹拌機に入れて均質化した。二軸押出機を用いて、区分温度190-200-210-220-220-220-220-220-210-200℃、スクリュー回転数450rpmで造粒を行い、複合材料C6Bを得た。得られた生成物について各種性能パラメータ試験を行い、その結果を表2に示す。
【0214】
実施例7B
40メッシュ未満の微粉をふるい分けにより除去したPP2粉末原料2.0kgを秤量し、機械的撹拌機を備えた10Lの反応釜に加え、反応系を密閉し、窒素置換により酸素を除去した。過酸化ジベンゾイル1.7g、無水マレイン酸17gおよびスチレン68gの混合物を加え、30分間撹拌混合した後、脱イオン水2Lを加え、40℃で2時間膨潤させ、反応系を90℃に加熱し、6時間反応させた。反応終了後、反応生成物を冷却し、70℃で10時間真空乾燥し、ポリプロピレン-g-スチレン/無水マレイン酸粉末、M=2.2%を得た。
【0215】
ポリプロピレン-g-スチレン/無水マレイン酸粉末とb-PP1とを50:50の質量比になるように1.2kg秤量し、3000ppmの酸化防止剤1035を添加し、得られた混合物を高速撹拌機に入れて均質化した。二軸押出機を用いて、区分温度190-200-210-220-220-220-220-220-210-200℃、スクリュー回転数450rpmで造粒を行い、複合材料C7Bを得た。得られた生成物について各種性能パラメータ試験を行い、その結果を表2に示す。
【0216】
比較例1B
40メッシュ未満の微粉をふるい分けにより除去したPP1粉末原料2.0kgを秤量し、機械的撹拌機を備えた10Lの反応釜に加え、反応系を密閉し、窒素置換により酸素を除去した。過酸化ジベンゾイル1g、無水マレイン酸10gおよびスチレン40gの混合物を加え、30分間撹拌混合した後、40℃で4時間膨潤させ、反応系を95℃に加熱し、4時間反応させた。反応終了後、窒素ガスパージで冷却し、ポリプロピレン-g-スチレン/無水マレイン酸粉末を得た。
【0217】
ポリプロピレン-g-スチレン/無水マレイン酸粉末1.2kgを秤量し、3000ppmの酸化防止剤1010/168(質量比1:1)を添加し、得られた混合物を高速撹拌機に入れて均質化した。二軸押出機を用いて、区分温度190-200-210-220-220-220-220-220-210-200℃、スクリュー回転数400rpmで造粒を行い、生成物D1Bを得た。得られた生成物について各種性能パラメータ試験を行い、その結果を表2に示す。
【0218】
比較例4B
40メッシュ未満の微粉をふるい分けにより除去したPP2粉末原料2.0kgを秤量し、機械的撹拌機を備えた10Lの反応釜に加え、反応系を密閉し、窒素置換により酸素を除去した。過酸化ジベンゾイル10g、無水マレイン酸100gおよびスチレン400gの混合物を加え、30分間撹拌混合した後、脱イオン水2Lを加え、40℃で2時間膨潤させ、反応系を90℃に加熱し、6時間反応させた。反応終了後、反応生成物を冷却し、70℃で10時間真空乾燥し、ポリプロピレン-g-スチレン/無水マレイン酸粉末、M=13.4%を得た。
【0219】
ポリプロピレン-g-スチレン/無水マレイン酸粉末とb-PP1とを50:50の質量比になるように1.2kg秤量し、3000ppmの酸化防止剤1035を添加し、得られた混合物を高速撹拌機に入れて均質化した。二軸押出機を用いて、区分温度190-200-210-220-220-220-220-220-210-200℃、スクリュー回転数450rpmで造粒を行い、複合材料D4Bを得た。得られた生成物について各種性能パラメータを試験し、その結果を表2に示す。図14は、比較例4Bの生成物のミクロ構造を20000倍の電子顕微鏡下で示す写真である。
【0220】
比較例5B
PP1と、b-PP1と、スチレン/無水マレイン酸ポリマーとを31:64:5の質量比になるように1.2kg秤量し、3000ppmの酸化防止剤1010/168(質量比1:1)を添加し、得られた混合物を高速撹拌機に入れて均質化した。二軸押出機を用いて、区分温度190-200-210-220-220-220-220-220-210-200℃、スクリュー回転数400rpmで造粒を行い、複合材料D5Bを得た。得られた生成物について各種性能パラメータ試験を行い、その結果を表2に示す。
【0221】
図15は、比較例5Bの生成物のミクロ構造を20000倍の電子顕微鏡下で示す写真である。相溶性が悪いため、分散相のサイズは均一ではなく、明らかに大きなサイズの分散相が存在する。
【0222】
【表6】
【0223】
実施例1Bと比較例1Bのデータを比較すると、ベース粉末としてホモPPを使用した場合、曲げ弾性率が高すぎ、機械的特性に劣るポリプロピレン-g-スチレン/無水マレイン酸材料生成物が得られ、絶縁材料の加工および使用要件を満たすことができないことがわかる。
【0224】
実施例1Bと比較例2のデータを比較すると、本発明で得られた生成物の機械的特性は、釜で直接アロイ化して調製したポリプロピレンの機械的特性に劣ることはなく、電気的特性がより優れていることがわかる。
【0225】
実施例7Bと比較例3のデータとの比較からわかるように、グラフト相を含まない材料と比較して、変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料の機械的特性はほぼ同じであり、破壊電界強度および直流体積抵抗率はともに改善されており、本発明の変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料が良好な電気的特性を有する。
【0226】
実施例7Bと比較例4Bのデータを比較すると、グラフトモノマーの添加量が多すぎる(M1値が高すぎる)と、グラフト相のD50が大きすぎるため、変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料の破壊電界強度が大きく低下し、実用的な使用要件を満たすことができないことがわかる。
【0227】
実施例1Bと比較例5Bのデータを比較すると、無水物/アルケニル基含有官能性モノマーのコポリマーを配合する場合、分散相のサイズが大きくなりすぎて分散が不均一になり、材料の破壊電界強度と体積抵抗率が大きく低下し、材料の電気特性に大きな影響を与えることがわかる。
【0228】
結論として、表2のデータからわかるように、本発明で得られた変性可撓性ポリプロピレン絶縁材料は、優れた電気絶縁特性を有するだけでなく、良好な機械的特性も有する。
【0229】
さらに、誘電率のデータから、本発明の材料が絶縁に必要な条件を満たしていることがわかる。
【0230】
以上、本発明の実施例について説明したが、上記の説明は例示的なものであり、網羅的なものではなく、本発明は実施例に限定されるものではない。実施例の範囲および精神から逸脱しないかぎり、当業者には多くの修正および変更が明らかである。
【0231】
本明細書に開示される範囲の端点および任意の値は正確な範囲または値に限定されず、これらの範囲または値に近い値を含むと理解されるべきである。数値範囲については、各範囲の端点値を互いに、各範囲の端点値と個別の点値とを、または、個別の点値を互いに組み合わせて、1つまたは複数の新しい数値範囲を得ることができ、これらの新しい数値範囲は本明細書に具体的に開示されていると解釈されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0232】
本発明の例示的な実施形態は、図を参照することによってより詳細に説明する。
図1図1は、実施例1Aの生成物の原子間力顕微鏡写真であり、丸で示した部分のうち、明るい白色部分がスチレングラフト相であり、黒色部分がゴム相であり、その他の部分が連続相である。
図2図2は、実施例1Aの生成物のミクロ構造の10000倍電子顕微鏡写真であり、球状分散相はスチレングラフト相である。
図3図3は、実施例3Aの生成物のミクロ構造の10000倍電子顕微鏡写真である。
図4図4は、実施例4Aの生成物のミクロ構造の10000倍電子顕微鏡写真である。
図5図5は、実施例5Aの生成物のミクロ構造の10000倍電子顕微鏡写真である。
図6図6は、比較例3の生成物のミクロ構造の10000倍電子顕微鏡写真である。
図7図7は、エッチングした後の比較例3の生成物のミクロ構造の10000倍電子顕微鏡写真であり、黒い部分がゴム相である。
図8図8は、比較例4Aの生成物のミクロ構造の10000倍電子顕微鏡写真である。
図9図9は、比較例5Aの生成物のミクロ構造の10000倍電子顕微鏡写真である。
図10図10は、実施例1Bの生成物の原子間力顕微鏡写真であり、丸で示した部分のうち、明るい白色部分がスチレン-無水マレイン酸グラフト相であり、黒色部分がゴム相であり、その他の部分が連続相である。
図11図11は、実施例1Bの生成物のミクロ構造の20000倍電子顕微鏡写真であり、球状分散相はスチレン-無水マレイン酸グラフト相である。
図12図12は、実施例2Bの生成物のミクロ構造の20000倍電子顕微鏡写真である。
図13図13は、実施例3Bの生成物のミクロ構造の20000倍電子顕微鏡写真である。
図14図14は、比較例4Bの生成物のミクロ構造の20000倍電子顕微鏡写真である。
図15図15は、比較例5Bの生成物のミクロ構造の20000倍電子顕微鏡写真である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【国際調査報告】