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特表2024-528206アレーンの触媒的グリコシル化プロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】アレーンの触媒的グリコシル化プロセス
(51)【国際特許分類】
   C07H 17/02 20060101AFI20240719BHJP
   C07C 41/30 20060101ALI20240719BHJP
   C07C 43/23 20060101ALI20240719BHJP
   B01J 31/02 20060101ALI20240719BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240719BHJP
【FI】
C07H17/02
C07C41/30
C07C43/23 D
B01J31/02 103Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506643
(86)(22)【出願日】2022-07-26
(85)【翻訳文提出日】2024-03-28
(86)【国際出願番号】 EP2022070996
(87)【国際公開番号】W WO2023011994
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】21189383.9
(32)【優先日】2021-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591091515
【氏名又は名称】シュトゥディエンゲゼルシャフト・コーレ・ゲマインニュッツィゲ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【住所又は居所原語表記】Kaiser-Wilhelm-Platz 1, D-45470 Muelheim an der Ruhr, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】リスト・ベンヤミン
(72)【発明者】
【氏名】オプラドーアス・カルラ
(72)【発明者】
【氏名】ミチュケ・ベンヤミン
(72)【発明者】
【氏名】オークランド・マイルズ
【テーマコード(参考)】
4C057
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4C057AA18
4C057AA19
4C057BB02
4C057DD01
4C057KK01
4G169AA02
4G169BA21B
4G169BD01B
4G169BD02B
4G169BD04B
4G169BD05B
4G169BD08B
4G169BD15B
4H006AA02
4H006AC22
4H006BA67
4H039CA41
4H039CA42
4H039CA60
4H039CD10
(57)【要約】
本発明は、特に抗ウイルスプロドラッグであるレムデシビルのヌクレオシドアナログGS-441524の迅速な合成を可能にする、アレーンの触媒的グリコシル化プロセスに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単糖を、ルイス酸触媒の存在下、単糖に1つ以上のシリル基を導入するためのシリル化剤と、それぞれ任意に1つ以上の置換基を有するアレーンまたはヘテロアレーンから選択される芳香族炭化水素とを反応させ、次いで1つ以上のシリル基を除去してヌクレオシドアナログを得る、アレーンのグリコシル化のための方法。
【請求項2】
単糖がテトロース、ペントース、ヘキソースおよびそれらの任意のデオキシ型、好ましくはリボースまたはデオキシリボースから選択される、請求項1に記載のアレーンのグリコシル化のための方法。
【請求項3】
シリル化剤がトリ-(C~C-アルキル)-置換シリル化合物、好ましくは(N,O-ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミドである、請求項1または2に記載のアレーンのグリコシル化のための方法。
【請求項4】
芳香族炭化水素が、1~4個の芳香族環またはヘテロ芳香族環を有するアレーンまたはヘテロアレーンから選択され、各々が任意に1個以上のヘテロ置換基で置換されている、請求項1、2または3に記載のアレーンのグリコシル化のための方法。
【請求項5】
単糖がリボースであり、ヘテロアレーンがピロロ[2,1-f][1,2,4]トリアジン-4-アミンである、請求項1に記載の方法に従って得られたグリコシル化アレーンをさらに反応させるための方法であって、
a)ヌクレオシドアナログを保護剤で処理し、リボース部分の水酸基を保護するステップ;
b)得られた保護されたヌクレオシドアナログを触媒の存在下において酸化剤で処理して、アノマー炭素原子上に水酸基を導入するステップ;
c)アノマー炭素原子上に水酸基を有する得られた反応生成物をシアノ化剤で処理して、アノマー炭素原子上の水酸基を置換するステップ;および
d)得られたシアノ化反応生成物を脱保護剤で処理し、リボース部分の水酸基から保護基を除去するステップ
を含む前記方法。
【請求項6】
保護剤が、アルキルハライド、アルキルカルボン酸無水物、アリールカルボン酸無水物、アルキルカルボン酸塩化物、アリールカルボン酸塩化物、シリルハライド、ビス(シリル)アセトアミド、シリルトリフルオロメタンスルホネート、アセトン、アルキルクロロメチルエーテル、2-(シリル)エトキシクロロメチルエーテル、好ましくは無水酢酸または無水安息香酸から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
酸化剤が、触媒Mn(TPP)Cl((5,10,15,20-テトラフェニル-21H,23H-ポルフィンマンガン(III)クロライド)の存在下でのヨードシルベンゼンである、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
シアノ化剤が、シリルシアニド、アルカリ金属シアニド、好ましくはトリメチルシリルシアニド(TMSCN)から選択される、請求項5、6または7に記載の方法。
【請求項9】
脱保護剤が、好ましくは脂肪族アルコール中における、アルカリアルコラートまたはアルカリカーボネートである、請求項5、6、7または8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、他のものの中において、特に抗ウイルスプロドラッグであるレムデシビルのヌクレオシドアナログの迅速な合成を可能にする、アレーンの触媒的グリコシル化プロセスに関する。このヌクレオシドアナログ抗ウイルス薬はギリアド・サイエンシズ社(Gilead Sciences)によって開発され、GS-441524と命名された。これは抗ウイルスプロドラッグであるレムデシビルの血漿中主要代謝物で、ヒト患者における半減期は約24時間である。
【背景技術】
【0002】
2020年初頭以来、特に、この病気の蔓延を阻止する信頼性の高いワクチンを開発し、人体への影響と戦うための薬剤を再利用することによって、科学者はSARS-CoV-2と闘うための効果的な解決策を見出すことに努めてきた。抗ウイルスプロドラッグであるレムデシビルは、依然として感染初期に最も広く使用されている治療薬である。しかし、現在の合成経路は、保護基、空気感受性試薬、および低温条件の使用に依存している。
【0003】
社会は、SARS-CoV-2の影響を抑制する上で、応用科学と基礎科学が顕著な効果を上げていることを目の当たりにしてきた。この大流行には、低分子治療薬、ワクチン接種、生物医学機器(バイオメディカルデバイス)など、製薬部門が特に力を入れて取り組んできた。パンデミックはまた、迅速かつ的を絞った対応を可能にするため、既存の医薬品を再利用しようとする世界的な努力の原動力ともなった。レムデシビル(ベクリュリー)は、もともとエボラウイルスと闘うために臨床試験で評価された抗ウイルスプロドラッグであり、COVID-19に対してはやや複雑な結果を示したものの、感染初期には現在でも最も広く使用されている治療薬である。
【0004】
その結果、抗ウイルスヌクレオシドを調製するための改良されたプロセスが必要とされている。
【0005】
CHEMICAL REVIEWS,VOL.117,pages1687-1764,2017に、ルイス酸触媒の存在下、水酸基を保護することなく、アレーン化合物を単糖で直接C-グリコシル化する単一の例が開示されている。当該開示からそれ以上の詳細は得られない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】CHEMICAL REVIEWS,VOL.117,pages1687-1764,2017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明者らは、保護されていない単糖へのアレーンおよび(ヘテロ)アレーンの直接的な付加(反応)の開発に着目した。ここで本発明者らは、シリリウム触媒を用いた、完全に立体選択的なC-C結合形成法を見出し、この方法により、開環したポリオールが得られ、このポリオールは選択的に環化されて、速度論的なα-フラノースまたは熱力学的に有利なβ-アノマーのいずれかを提供することができる。この方法は、その後のMn触媒によるC-H酸化およびデオキシシアノ化の後、レムデシビル前駆体GS-441524の合成を促進する。
【0008】
第一の態様において、本発明は、単糖を、ルイス酸触媒の存在下、単糖に1つ以上のシリル基を導入するためのシリル化剤と、アレーンまたはヘテロアレーンから選択され、各々が任意選択で1つ以上の置換基を有する芳香族炭化水素と反応させ、続いて1つ以上のシリル基を除去してヌクレオシド類似体を得る、アレーンのグリコシル化のための方法に関する。
【0009】
本発明の方法において、単糖は好ましくはテトロース、ペントース、ヘキソースおよびそれらの任意のデオキシ型から選択され、単糖はより好ましくはリボースまたはデオキシリボースから選択される。
【0010】
本発明の方法において、シリル化剤は、ヒドロシラン、アリルシラン、メタリルシラン、アリールシラン、トリフルオロメチルシラン、ベンジルシラン、ジシラザン、シリルハライド、シリルシアニド、シリルアジド、シリルホスファイト、シリルケテンアセタール、ビス(シリル)アセトアミドから選択されることができ、特にトリ-(C~C-アルキル)-置換シリル化合物、好ましくはビス(シリル)アセトアミド、より好ましくは(N,O-ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミドであり、好ましくはトリ-(C~C-アルキル)-置換シリル基をヘミアセタール形態で単糖の各水酸基に転移させるために使用される。すなわち、フラノースまたはピラノースの形態である。本発明の方法においては、BSTFA(N,O-ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド)が好ましいシリル化剤であり、反応物の溶媒としても機能する。
【0011】
反応条件はそれほど重要ではないが、反応温度と反応圧力は反応相手に合わせて調節できる。反応物のための溶媒が使用されることができ、ペンタン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、1,4-ジオキサン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、アセトニトリルなどの非極性から極性の非プロトン性有機溶媒から選択することができる。好ましくは、反応は常温から50℃~70℃のやや高めの温度まで、かつ大気圧下でワンポット反応として行われる。
【0012】
ルイス酸触媒は特に限定されず、三フッ化ホウ素エーテレート(エーテル酸)、カルシウム(II)ビス(トリフルオロメタンスルホンイミド)、塩化アルミニウム、塩化鉄(III)、塩化スズ(IV)、トリフルオロメタンスルホン酸インジウム(III)、トリフルオロメタンスルホン酸ビスマス(III)、トリフルオロメタンスルホン酸希土類金属、二塩化ジルコノセン、テトラフルオロホウ酸トリチリウム、シリルトリフルオロメタンスルホネート、シリルパークロレート(過塩素酸シリル)、シリルビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、シリルジスルホンイミド(DSI)、シリルビナフチル-アリル-テトラスルホン(BALT)、シリルイミドジホスホリミデート(IDPis)、N,N’-ビス(トリフルオロメタンスルホニル)ホスホルアミジミデート(PADI)から選択されることができる。本発明の方法においては、TMSOTf(トリメチルシリル)トリフルオロメタンスルホネートが好ましいルイス酸である。
【0013】
芳香族炭化水素は、1個~4個の芳香環を含み、各環が任意に1個以上のヘテロ置換基で置換されているアレーン、または1個~4個の環を含み、1個から4個のヘテロ原子を含み、各環が任意に1個以上のヘテロ置換基で置換されているヘテロアレーンから選択することができ、さらに以下に定義される。好ましいアレーン類または好ましいヘテロアレーン類は、それぞれ、アニソール、アニリン、ピロール、フラン、チオフェン、オキサゾール、チアゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、イミダゾール、トリアゾール、オキサジアゾール、テトラゾール、ピラゾール、アゼピン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、オキサジン、チアジン、トリアジンであり、各々は任意に1つ以上のヘテロ置換基で置換されている。
【0014】
第二の態様において、反応性薬剤GS-441524を提供するために、単糖がリボースであり、ヘテロアレーンがピロロ[2,1-f][1,2,4]トリアジン-4-アミンであるヌクレオシドアナログであって、本発明の方法に従って得ることができるヌクレオシドアナログを、水酸基の保護剤でさらに処理することができる。得られた保護されたヌクレオシドアナログを酸化剤で処理してアノマー炭素原子上に水酸基(ヒドロキシル基)を導入し、アノマー炭素原子上に水酸基を有する得られた反応生成物をシアネート化剤で処理してアノマー炭素原子上の水酸基をニトリル基で置換し、この反応生成物を最後に脱保護剤で処理してリボース部分上の水酸基から保護基を除去する。
【0015】
リボース部分の水酸基の保護剤は、アルキルハライド、アルキルカルボン酸無水物、アリールカルボン酸無水物、アルキルカルボン酸クロライド、アリールカルボン酸クロライド、シリルハライド、ビス(シリル)アセトアミド、シリルトリフルオロメタンスルホネート、アセトン、アルキルクロロメチルエーテル、2-(シリル)エトキシクロロメチルエーテルから選択され、好ましくは無水酢酸または無水安息香酸である。
【0016】
水酸基を保護した後、保護されたヌクレオシドアナログを、リボヌクレオシドのアノマー炭素原子に水酸基を導入するために、非極性非プロトン性有機溶媒中、酸化剤で処理する。好ましくは、酸化剤は、触媒としてMn(TPP)Cl((5,10,15,20-テトラフェニル-21H,23H-ポルフィンマンガン(III)クロライド)の存在下、ヨードシルベンゼンである。
【0017】
次の反応ステップにおいては、得られた反応生成物としての酸化リボヌクレオシドを、触媒としての強酸、例えば、ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミドの存在下、非極性非プロトン性有機溶媒中で、シリルシアニド、アルカリ金属シアノ化物、好ましくはトリメチルシリルシアニド(TMSCN)から選択されるシアネート化剤で処理し、それによって、α:βジアステレオマーの混合物が得られる、ここで、α-ジアステレオマー(2R,3R,4R,5R)-2-(4-アセトアミドピロロ[2,1-f][1,2,4]トリアジン-7-イル)-5-(アセトキシメチル)-2-シアノテトラヒドロフラン-3,4-ジイルジアセテートが主要生成物として得られる。好ましくは、反応は0℃までの温度および大気圧下で行われる。
【0018】
次の反応ステップにおいては、α:βジアステレオマーの混合物を、アルカリ金属アルコール酸塩、アルカリ金属炭酸塩、好ましくはメタノール酸ナトリウムから選択される塩基で、好ましくは脂肪族アルコール中、例えば、メタノール、エタノールまたはiso-プロパノール中で処理し、酢酸保護基を除去することにより、単一のα-ジアステレオマー(2R,3R,4S,5R)-2-(4-アミノピロロ[2,1-f][1,2,4]トリアジン-7-イル)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ-フラン-2-カルボニトリルが得られる。
【0019】
本発明の文脈においては、特許請求の範囲および明細書で使用される要素およびグループを定義するために、以下の定義が使用される。
【0020】
定義
本明細書に記載される化合物は、1つ以上の不斉中心を含むことができ、従って、種々の異性体の形態、例えば、エナンチオマーおよび/またはジアステレオマーで存在し得る。例えば、本明細書に記載の化合物は、個々のエナンチオマー、ジアステレオマーまたは幾何異性体の形態であり得るか、またはラセミ混合物および1つ以上の立体異性体が濃縮された混合物を含む立体異性体の混合物の形態であり得る。異性体は、キラル高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)およびキラル塩の形成および結晶化を含む、当業者に公知の方法によって混合物から単離することができる;または好ましい異性体は、不斉合成によって調製することができる。例えば、Jacques et al., Enantiomers, Racemates and Resolutions (Wiley Interscience, New York, 1981); Wilen et al., Tetrahedron 33:2725 (1977); Eliel, Stereochemistry of Carbon Compounds (McGraw-Hill, NY, 1962); and Wilen, Tables of Resolving Agents and Optical Resolutions p. 268 (E.L. Eliel, Ed., Univ. of Notre Dame Press, Notre Dame, IN 1972)を参照のこと。本発明は、さらに、実質的に他の異性体を含まない個々の異性体として、および代替的に、種々の異性体の混合物として、本明細書に記載される化合物を包含する。
【0021】
値の範囲が記載されている場合、その範囲内の各値および小範囲を包含することを意図している。例えば、「C1-6」は、C、C、C、C、C、C、C1-6、C1-5、C1-4、C1-3、C1-2、C2-6、C2-5、C2-4、C2-3、C3-6、C3-5、C3-4、C4-6、C4-5、C5-6
【0022】
「脂肪族」という用語は、飽和および不飽和の両方の、直鎖(すなわち、非分枝)、分枝、非環式、環式、または多環式脂肪族炭化水素を含み、これらは任意に1つ以上の官能基で置換されている。当業者には理解されるように、「脂肪族」は、本明細書において、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、およびシクロアルキニル部分を含むことが意図されるが、これらに限定されない。従って、用語「アルキル」は、直鎖、分岐および非環式アルキル基を含む。類似の定義が、「アルケニル」、「アルキニル」などの他の一般用語にも適用される。さらに、「アルキル」、「アルケニル」、「アルキニル」などの用語は、置換基および非置換基の両方を包含する。特定の実施形態において、「低級アルキル」は、1~6個の炭素原子を有するアルキル基(非環式、置換、非置換、分枝または非分枝)を示すために使用される。
【0023】
本明細書で使用される場合、「アルキル」は、1~20個の炭素原子を有する直鎖状、環状または分枝状の飽和炭化水素基のラジカルを指す(「C1-20アルキル」)。いくつかの実施形態において、アルキル基は、1~10個の炭素原子を有する(「C1-10アルキル」)。いくつかの実施形態において、アルキル基は、1~9個の炭素原子を有する(「C1-9アルキル」)。いくつかの実施形態において、アルキル基は、1~8個の炭素原子を有する(「C1-8アルキル」)。いくつかの実施形態において、アルキル基は、1~7個の炭素原子を有する(「C1-7アルキル」)。いくつかの実施形態において、アルキル基は、1~6個の炭素原子を有する(「C1-6アルキル」)。いくつかの実施形態において、アルキル基は、1~5個の炭素原子を有する(「C1-5アルキル」)。いくつかの実施形態において、アルキル基は、1~4個の炭素原子を有する(「C1-4アルキル」)。いくつかの実施形態において、アルキル基は、1~3個の炭素原子を有する(「C1-3アルキル」)。いくつかの実施形態において、アルキル基は、1~2個の炭素原子を有する(「C1-2アルキル」)。いくつかの実施形態において、アルキル基は、1個の炭素原子を有する(「Cアルキル」)。いくつかの実施形態において、アルキル基は、2~6個の炭素原子を有する(「C2-6アルキル」)。C1-6アルキル基の例としては、メチル(C)、エチル(C)、n-プロピル(C)、イソプロピル(C)、n-ブチル(C)、tert-ブチル(C)、sec-ブチル(C)、iso-ブチル(C)、n-ペンチル(C)、3-ペンタニル(C)、アミル(C)、ネオペンチル(C)、3-メチル-2-ブタニル(C)、3級アミル(C)、およびn-ヘキシル(C)である。アルキル基のその他の例としては、n-ヘプチル(C)、n-オクチル(C)などが挙げられる。特に断らない限り、アルキル基の各例は、独立して、非置換(「非置換アルキル」)または1つ以上の置換基で置換(「置換アルキル」)されている。特定の実施形態において、アルキル基は、非置換C1-10アルキル(例えば、-CH)である。特定の実施形態において、アルキル基は、置換C1-10アルキルである。
【0024】
「芳香族炭化水素またはアレーンまたはアリール」は、6~14個の環炭素原子および芳香族環系に提供されるゼロヘテロ原子を有する、単環式または多環式(例えば、二環式または三環式)4n+2芳香族環系(例えば、環状配列で共有される6個、10個または14個のπ電子を有する)のラジカルを指す(「C6-14アリール」)。いくつかの実施形態において、アリール基は、6個の環炭素原子を有する(「Cアリール」;例えば、フェニル)。いくつかの実施形態において、アリール基は、10個の環炭素原子(「C10アリール」;例えば、1-ナフチルおよび2-ナフチルなどのナフチル)を有する。いくつかの実施形態において、アリール基は、14個の環炭素原子を有する(「C14アリール」;例えば、アントラシル)。「アリール」はまた、上記で定義されるアリール環が、ラジカルまたは付着点がアリール環上にある1つ以上のカルボシクリル基またはヘテロシクリル基と縮合した環系を含み、そのような場合、炭素原子の数は、アリール環系中の炭素原子の数を引き続き示す。特に規定しない限り、アリール基の各例は、独立して、任意選択的に置換されている、すなわち、1つ以上の置換基で置換されていない(「非置換のアリール」)か、または置換されている(「置換されたアリール」)。特定の実施形態において、アリール基は、非置換のC6-14アリールである。特定の実施形態において、アリール基は、置換C6-14アリールである。
【0025】
「アラルキル」は、アルキルとアリールのサブセットであり、任意に置換されたアリール基で置換された任意に置換されたアルキル基を指す。特定の実施形態において、アラルキルは、任意選択で置換されたベンジルである。特定の実施形態において、アラルキルは、ベンジルである。特定の実施形態において、アラルキルは、任意選択で置換されたフェネチルである。特定の実施形態において、アラルキルはフェネチルである。
【0026】
「ヘテロ芳香族炭化水素またはヘテロアレーンまたはヘテロアリール」とは、環炭素原子および芳香族環系に設けられた1~4個の環ヘテロ原子を有する5~18員単環式または二環式4n+2芳香族環系(例えば、環状配列で共有される6個または10個のπ電子を有する)のラジカルを指し、各ヘテロ原子は独立して窒素、酸素および硫黄から選択される(「5~18員ヘテロアリール」)。1つ以上の窒素原子を含むヘテロアリール基では、原子価が許す限り、結合点は炭素原子または窒素原子であり得る。ヘテロアリール二環式環系は、一方または両方の環に1つ以上のヘテロ原子を含むことができる。「ヘテロアリール」には、上記で定義したヘテロアリール環が、結合点がヘテロアリール環上にある1つ以上のカルボシクリル基またはヘテロシクリル基と縮合した環系が含まれ、そのような場合、環員の数は、ヘテロアリール環系における環員の数を示し続ける。「ヘテロアリール」には、上記で定義したヘテロアリール環が1つ以上のアリール基と縮合した環系も含まれ、その場合、結合点はアリール環上またはヘテロアリール環上のいずれかであり、そのような場合、環員数は縮合した(アリール/ヘテロアリール)環系における環員数を示す。一方の環がヘテロ原子を含まない二環式ヘテロアリール基(例えば、インドリル、キノリニル、カルバゾリルなど)では、結合点はいずれかの環、すなわち、ヘテロ原子を有する環(例えば、2-インドリル)またはヘテロ原子を含まない環(例えば、5-インドリル)のいずれかにあることができる。
【0027】
いくつかの実施形態において、ヘテロアリール基は、芳香族環系に提供される環炭素原子および1~4個の環ヘテロ原子を有する5~10員芳香族環系であり、各ヘテロ原子は、窒素、酸素、および硫黄から独立して選択される(「5~10員ヘテロアリール」)。いくつかの実施形態において、ヘテロアリール基は、芳香族環系に提供される環炭素原子および1~4個の環ヘテロ原子を有する5~8員芳香族環系であり、各ヘテロ原子は、窒素、酸素、および硫黄から独立して選択される(「5~8員ヘテロアリール」)。いくつかの実施形態において、ヘテロアリール基は、芳香族環系に提供される環炭素原子および1~4個の環ヘテロ原子を有する5~6員芳香族環系であり、各ヘテロ原子は、窒素、酸素、および硫黄から独立して選択される(「5~6員ヘテロアリール」)。いくつかの実施形態において、5~6員ヘテロアリールは、窒素、酸素、および硫黄から選択される1~3個の環ヘテロ原子を有する。いくつかの実施形態において、5~6員ヘテロアリールは、窒素、酸素、および硫黄から選択される1~2個の環ヘテロ原子を有する。いくつかの実施形態において、5~6員ヘテロアリールは、窒素、酸素、および硫黄から選択される1個の環ヘテロ原子を有する。別段の規定がない限り、ヘテロアリール基の各例は、独立して、任意選択的に置換され、すなわち、1つ以上の置換基で置換されていない(「非置換のヘテロアリール」)か、または置換されている(「置換ヘテロアリール」)。特定の実施形態において、ヘテロアリール基は、非置換の5~14員ヘテロアリールである。特定の実施形態において、ヘテロアリール基は、置換5~14員ヘテロアリールである。
【0028】
1個のヘテロ原子を含有する例示的な5員ヘテロアリール基としては、これらに限定されないが、ピロリル、フラニルおよびチオフェニルが挙げられる。2個のヘテロ原子を含む例示的な5員ヘテロアリール基としては、これらに限定されないが、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、およびイソチアゾリルが挙げられる。3個のヘテロ原子を含む例示的な5員ヘテロアリール基としては、これらに限定されないが、トリアゾリル、オキサジアゾリル、およびチアジアゾリルが挙げられる。4個のヘテロ原子を含む例示的な5員ヘテロアリール基としては、特に限定されないが、テトラゾリルが挙げられる。1個のヘテロ原子を含む例示的な6員ヘテロアリール基としては、特に限定されないが、ピリジニルが挙げられる。2個のヘテロ原子を含む例示的な6員ヘテロアリール基としては、これらに限定されないが、ピリダジニル、ピリミジニルおよびピラジニルが挙げられる。ヘテロ原子を3個または4個含む例示的な6員ヘテロアリール基としては、特に限定されないが、それぞれ、トリアジニルおよびテトラジニルが挙げられる。1個のヘテロ原子を含む例示的な7員ヘテロアリール基としては、これらに限定されないが、アゼピニル、オキセピニルおよびチエピニルが挙げられる。例示的な5,6-二環式ヘテロアリール基としては、これらに限定されないが、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチオフェニル、イソベンゾチオフェニル、ベンゾフラニル、ベンゾイソフラニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンズチアゾリル、ベンズイソチアゾリル、ベンズチアジアゾリル、インドリジニル、およびプリニルが挙げられる。例示的な6,6-二環式ヘテロアリール基としては、これらに限定されないが、ナフチリジニル、プテリジニル、キノリニル、イソキノリニル、シノリニル、キノキサリニル、フタラジニル、およびキナゾリニルが挙げられる。
【0029】
「ヘテロアラルキル」は、アルキルとヘテロアリールのサブセットであり、任意に置換されたヘテロアリール基で置換された任意に置換されたアルキル基を指す。
【0030】
本明細書に記載される原子、部分、または基は、特に明示的に規定されない限り、原子価が許す限り、非置換であっても置換されていてもよい。「任意に置換された」という用語は、置換または非置換を意味する。
【0031】
アルキル基、アリール基およびヘテロアリール基は、任意選択で置換される(例えば、「置換」または「非置換」アルキル基、「置換」または「非置換」アリール基、または「置換」または「非置換」ヘテロアリール基)。一般に、用語「置換された」は、用語「任意に」が先行するか否かにかかわらず、基(例えば、炭素原子または窒素原子)上に存在する少なくとも1つの水素が、許容される置換基、例えば、置換時に安定な化合物、例えば、転位、環化、脱離、または他の反応によるような変換を自発的に受けない化合物を生じる置換基で置換されることを意味する。特に断らない限り、「置換された」基は、その基の1つ以上の置換可能な位置に置換基を有し、任意の与えられた構造中の1つ以上の位置が置換されている場合、置換基は、各位置で同じであるか、または異なるかのいずれかである。本発明の目的のために、窒素のようなヘテロ原子は、水素置換基および/またはヘテロ原子の原子価を満足し、安定な部分の形成をもたらす、本明細書に記載されるような任意の適切な置換基を有してもよい。特定の実施形態において、置換基は炭素原子置換基である。特定の実施形態において、置換基は、窒素原子置換基である。特定の実施形態において、置換基は、酸素原子置換基である。特定の実施形態において、置換基は、硫黄原子置換基である。
【0032】
例示的な置換基としては、これらに限定されないが、ハロゲン、-CN、-NO、-N、-SOH、-SOH、-OH、-OR、-ON(R)、-N(R)、-N(R)X +-、-SH、-SR、-SSR、-C(=O)R、-COH、-CHO、-C(OR)、-COR、-OC(=O)R、-OCOR,-C(=O)N(R),-OC(=O)N(R),-NRC(=O)R,-NRCOR,-NRC(=O)N(R),-C(=NR)R,-C(=NR)OR,-OC(=NR)R,-OC(=NR)OR,-C(=NR)N(R),-OC(=NR)N(R),-NRC(=NR)N(R),-C(=O)NRSOR,-NRSOR,-SON(R),-SOR、SOOR、-OSOR、-S(=O)R、-OS(=O)R、-Si(R)、-OSi(R)-C(=S)N(R)、-C(=O)SR、-C(=S)SR、-SC(=S)SR、-SC(=O)SR、-OC(=O)SR、-SC(=O)OR、-SC(=O)R、C1-10アルキル、C1-10ハロアルキル、C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、C3-10カルボシクリル、3~14員ヘテロシクリル、C6-14アリール、および5~14員ヘテロアリールであり、ここで、各アルキル、アルケニル、アルキニル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、アリール、およびヘテロアリールは、独立して、0、1、2、3、4、または5個のR基で置換されており;または、炭素原子上の2個のジェミナル水素が、基=O、=S、=NN(R)、=NNRC(=O)R、=NNRC(=O)OR、=NNRS(=O)R、=NR、または=NORで置換されており;
ここで、Rの各々の例は、独立して、C1-10アルキル、C1-10ハロアルキル、C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、C3-10カルボシクリル、3~14員ヘテロシクリル、C6-14アリール、および5~14員ヘテロアリールから選択されるか、または2個のR基が結合して3~14員ヘテロシクリルもしくは5~14員ヘテロアリール環を形成する、ここで、各アルキル、アルケニル、アルキニル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、アリールおよびヘテロアリールは、ハロゲン、-OH、-OR、-CN、-NO-NR2,2から選択される1つまたは複数の置換基を有していてもよく、ここで、Rは水素またはCアルキルである。
【0033】
「ハロ」または「ハロゲン」は、フッ素(フルオロ、-F)、塩素(クロロ、-Cl)、臭素(ブロモ、-Br)、またはヨウ素(ヨード、-I)を示す。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図と例
本発明は、添付の図および実施例によってさらに説明される。図において、以下を示す。
図1.A.ヌクレオシドベースの抗ウイルス剤の例。B.レムデシビルの合成に向けた確立されたシークエンス。C.ここでの設計:遊離D-リボースのアリール化。
図2.A.一過性シリル化(transient silylation)によるD-リボースのジアステレオ選択的(立体選択的)官能基化。B.C-C結合形成に関する機構的な考察。C.他の(ヘテロ)アレーンを用いた他の糖の例。
図3.環化温度の変化によるα-およびβ-C-グリコシル化ヌクレオシドの選択的合成。
図4.ペルアセチル化リボヌクレオシドのベンジリックC-H酸化とジアステレオ選択的デオキシシアノ化α-6。
【0035】
図1に示されるように、レムデシビルのようなヌクレオチドアナログは一般に、RNA抗ウイルス特性で著名な化合物のクラスである(図1A)。単糖誘導体の普遍的な存在に加えて、それらの合成は、保護されていない糖の官能基化に固有の選択性の問題のために、依然として多段階シークエンスと保護基の使用に依存している。
【0036】
レムデシビルの場合、ギリアド社の工業的ルートは、ペルベンジル化D-リボノラクトン(図1B)-これは、D-リボースから4つのステップを経て得られるが-、いくつかのステップでは高感度な試薬と極低温条件を必要とする。このような必要性から、複素環アレーンを構築するための新しいアプローチや、モノリン酸様側鎖を導入するための有機触媒的不斉ホスホルアミドの改良が着想された。しかし、核となるヌクレオシドそのものの構築を効率化に対する取り組みは、いまだ達成されていない。ヌクレオシドの直接的な組み立てに関する最近の進歩は、アノマー位でのC-ヘテロ原子結合の形成に焦点が当てられているが、C-C切断の例は少ない。
【0037】
本発明者らは、シリリウム触媒を用いたD-リボースのアリール化を鍵となるステップとする、レムデシビルの新規かつ大幅な簡便化経路の開発を目的とした(図1C)。本発明者らは、(ヘテロ)アレーンの保護されていない糖への位置選択的かつ立体選択的な付加反応を報告し、これによりワンポットでヌクレオシド中間体が得られることを明らかにした。α-またはβ-アノマーの分岐形成は、それぞれ速度論的制御、または熱力学的に駆動されるエピマー化によって達成される。最後に、この新しい方法は、選択的Mn触媒によるベンジリックC-H酸化とジアステレオ選択的デオキシシアノ化により、レムデシビル前駆体GS-441524の簡便な合成を可能にした。
【0038】
図2に示すように、本発明者らのアプローチは、ヘテロ環の本来の求核性を利用するものであり、予備官能基化や空気に敏感な有機金属試薬の調製を必要としない。さらに本発明者らは、すべてのプロトン性官能基のその場での(in situ)保護と選択的なアノマー活性化という2つの主目的を同時に達成するために、ルイス酸触媒による糖質の一過性シリル化を利用した(図2A)。本発明者らは、D-リボースが25℃で触媒的TMSOTfによって速やかに活性化され、無垢のケイ素源N,O-ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド(BSTFA)のプロトデシリル化によって再生されることを見出した。主要なC-C結合の形成は、50℃のニート(neat)条件下で起こり、定量的な収率で1-TMSという単一の直鎖異性体のみが得られる。しかし、この動的混合物は、変換中にジアステレオ選択的に単一の生成物に収束する。その後、粗反応混合物をTBAFで脱シリル化すると、直鎖状アナログ1がワンポットで得られ(86%)、シリコン使用の痕跡がなくなる。予備的な試みの結果、この方法は代替糖や(ヘテロ)アレーン類の官能基化にも有効であることが明らかになった(図2C);ここでは、本発明者らは、さらに3つの例を示しているが、我々の研究室では、より包括的な研究が現在進行中である。D-キシロースとの反応でも、生成物2は単一のジアステレオ異性体として得られるが、収率はわずかに低い(53%)。さらに、インドール誘導体を添加すると、25℃でポリオール3が収率よく得られる(69%)。最後に、1,3,5-トリメトキシベンゼンも同様に、71%の収率で化合物4への誘導体化を可能にする。
【0039】
ルイス酸触媒による炭水化物誘導体への求核付加反応は、一般に、アノマー置換基の活性化に由来するオキソカルベニウム中間体を経由して進行すると考えられている。しかし、この仮定は、単一の直鎖状生成物の形成に照らして、ここでは疑問視されている。その代わりに、本発明者らは、複素環と反応して開環に先立って、TMSOTfが糖の環内の酸素原子に配位してから、というメカニズムを提案している(図2B)。徹底的なNMR分析により、25℃で糖がシリル化され、異性体の量が減少したことが確認された(サポート情報、図S10-23参照)。本発明者らは、TMSで保護されたリボピラノースと-フラノースを実際に観察することができた(それぞれ77%と21%)。両中間体には、β-アノマーのみが存在し、立体的な理由から、アノマー基は近傍のシロキシ基に対してトランス配向している(DFT計算については、サポート情報、図S46を参照)。その結果、S2型機構を介した連続的な求核置換により、生成物は単一のジアステレオ異性体に収束した。50℃での速度論的解析から、アレーンの消費は生成物の生成を反映し、ピラノース異性体はフラノースよりも速く反応することが明らかになった。二重付加の痕跡も検出された。
【0040】
図3に示すように、本発明者らは、反応混合物をフッ素処理ではなく酸処理にかけると、対応するC-リボフラノシル化生成物が得られることを見出した(図3)。酸処理を25℃で行うと、収率よく、高いジアステレオ選択性(71%,α/β=90:10)で、α-生成物5の形成が達成される。対照的に、50℃での酸処理は、熱力学的に有利なβ-ヌクレオシド5に直接つながる(48%、α/β=14:86)。α-からβ-へのエピマー化(エピメリゼーション)は、単離された生成物α-5を50℃でジオキサン中の塩酸に再溶解した後、HNMRでモニターすることができた(サポート情報、図S27参照)。
【0041】
図4に示すように、抗ウイルス薬GS-441524の合成には、ニトリル部分の酸化的導入が必要であった。そこで本発明者らは、最初にC-H酸化を行い、立体障害性ヘミアセタール7(図4)を得て、これをジアステレオ変換的にデオキシシアノ化してGS-441524を得ることを想定した。
【0042】
さまざまなアプローチを検討した結果、Mn触媒を用いたベンジリックC-H酸化反応により、所望の反応性が得られた。注目すべきは、α-アノマー5の排他的な反応性が観察されたことである。これは、DFTで最適化された基底状態構造に従って、β-水素原子がMn-ポルフィリン錯体に対してより高いアクセス性を示すためであると考えられる(サポート情報、図S31参照)。反応時間の短縮と酸化剤の部分的添加は、化学選択性を決定する重要な要因であり、リボノラクトンへの断片的過酸化が最も顕著な副反応である。ペルアセチル化α-リボヌクレオシド6から出発し、D-リボースからカラムクロマトグラフィーを介した1回の精製において収率60%で15mmolスケールで合成された酸化生成物7は、27%の総収率(57%brsm)で異性体の不要な混合物として得られた(CDCl中での平衡分布:46:54ケトン/ヘミアセタール,α:β=63:37)。
【0043】
ベンジルで保護されたヘミアセタールのデオキシシアノ化に関する以前の報告は、本経路の最終ステップに大きな示唆を与えた。しかし、隣接するアセトキシ基のために、中間体7は反応性が有意に低かった。その結果、本発明者らは、TfOH/TMSOTfの元の混合物を、さらに強力なブレンステッド酸HNTfに置き換えて、TMSCNで処理し、その場で活性ルイス酸TMS-NTf。生成した。さらに、TMSCNの当量を減らすと、生成物のさらなる反応が防止され(サポート情報,TableS3参照)、-40℃で一晩反応させると、収率84%、良好なジアステレオ選択性でペルアセチル化シアノ化生成物が得られた(α:β=87:13)。注目すべきことに、GS-441524は、その後のメタノリシスにおいて、ヘミアセタール7から収率81%、68%で単一の立体異性体として析出した。
【実施例
【0044】
実験パート
1.1保護されていない糖のアリール化
保護されていない糖のアリール化の一般的手順
(1S,2S,3R,4R)-1-(4-アミノピロロ[2,1-f][1,2,4]トリアジン-7-イル)ペンタン-1,2,3,4,5-ペンタオール、1
【化1】
TMSOTf(トリメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート、9μL、11.1mg、50.0μmol、0.25当量)を、BSTFA中(N、O-ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド、0.53mL、516mg、2.0mmol、10当量)のD-(-)-リボース(30.1mg、0.2mmol、1.0当量)およびピロロ[2、1-f][1、2、4]トリアジン-4-アミン(40.3mg、0.3mmol、1.5当量)の撹拌懸濁液に室温でゆっくりと加えた。混合物をこの温度で5分間撹拌し、その時点で溶液は均一になり、その後50℃に加熱した。24時間後、薄層クロマトグラフィー(TLC)分析は、リボース出発物質の完全な消費を示し、その時点で反応を室温まで冷却し、次いで0℃まで冷却した。次に、TBAF(テトラブチルアンモニウムフルオリド、2.2mL、THF中1M、2.2mmol、11当量)の溶液をゆっくりと加え、溶液をこの温度で2時間撹拌した後、真空中で濃縮した。粗生成物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(EtOAc→EtOAc中10%MeOH)で精製し、1(48.7mg、0.17mmol、86%)を白色固体として得た。
HRMS(ESI)は、C1117[M+H]に対し285.119345と計算され、観察285.119410であった。
【0045】
保護されていない糖のアリール化のための追加の基質
(1S,2S,3S,4R)-1-(4-アミノピロロ[2,1-f][1,2,4]トリアジン-7-イル)ペンタン-1,2,3,4,5-ペンタオール、2
【化2】
TMSOTf(9μL、11mg、50μmol、0.25当量)を、BSTFA(0.53mL、516mg、2.0mmol、10当量)中のD-(-)-キシロース(45.0mg、0.3mmol、1.5当量)およびピロロ[2、1-f][1、2、4]トリアジン-4-アミン(26.8mg、0.2mmol、1.0当量)の撹拌懸濁液に室温でゆっくりと加えた。混合物をこの温度で5分間撹拌した後、50℃に加熱した。4日後、薄層クロマトグラフィー(TLC)分析は、アレーン出発物質の完全な消費を示し、この時点で反応を室温まで冷却し、次いで0℃まで冷却した。次に、TBAF(2.2mL、THF中1M、2.2mmol、11当量)の溶液をゆっくりと加え、溶液をこの温度で2時間撹拌した後、真空中で濃縮した。粗生成物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(EtOAc→EtOAc中10%MeOH)で精製し、2(30.1mg、0.1mmol、53%)をオフホワイトの固体として得た。
HRMS(ESI)はC1117[M+H]に対し285.119345と計算され、観察285.119100であった。
【0046】
(1S,2S,3R,4R)-1-(5-ブロモ-1-メチル-1H-インドール-3-イル)ペンタン-1,2,3,4,5-ペンタオール、3
【化3】
BSTFA(0.53mL、516mg、2.0mmol、10当量)中のD-(-)-リボース(45.1mg、0.3mmol、1.5当量)の撹拌懸濁液に、TMSOTf(9μL、11mg、50μmol、0.25当量)を室温でゆっくりと加えた。混合物をこの温度で5分間撹拌し、その後、溶液が均一になったので、5-ブロモ-1-メチル-1H-インドール(42.2mg、0.2mmol、1.0当量)を1回で加えた。反応混合物を室温で撹拌した。48時間後、薄層クロマトグラフィー(TLC)分析はインドール出発物質の完全な消費を示し、その時点で反応物を室温まで冷却し、次いで0℃まで冷却した。次に、TBAF(2.2mL、THF中1M、2.2mmol、11当量)の溶液をゆっくりと加え、溶液をこの温度で2時間撹拌した後、真空中で濃縮した。粗生成物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(CHCl→10%MeOH、CHCl中;注:クロマトグラフィー前に、シリカをCHCl中の5%EtN溶液で前処理する必要がある)で精製し、3(49.8mg、0.1mmol、69%)を白色固体として得た。
HRMS(ESI)はC1418NOBrNa[M+Na]に対し382.026068と計算され、観察382.026000であった。
【0047】
(1S,2S,3R,4R)-1-(2,4,6-トリメトキシフェニル)ペンタン-1,2,3,4,5-ペンタオール,4
【化4】
BSTFA(1.06mL、1.03g、4.0mmol、20当量)中のD-(-)-リボース(44.9mg、0.3mmol、1.5当量)の撹拌懸濁液に、TMSOTf(9μL、11mg、50μmol、0.25当量)を室温でゆっくりと加えた。混合物をこの温度で5分間撹拌し、その後、溶液が均一になったので、1、3、5-トリメトキシベンゼン(33.7mg、0.2mmol、1.0当量)を1回で加えた。反応混合物を50℃に加熱した。48時間後、薄層クロマトグラフィー(TLC)分析は、アレーン出発物質の完全な消費を示し、その時点で反応を室温まで冷却し、次いで0℃まで冷却した。次に、TBAF(4.4mL、THF中1M、4.4mmol、22当量)の溶液をゆっくりと加え、溶液をこの温度で2時間撹拌した後、真空中で濃縮した。粗生成物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(EtOAc→EtOAc中10%MeOH;注:シリカはクロマトグラフィー前にEtOAc中5%EtN溶液で前処理する必要がある)で精製し、4(45.1mg、0.1mmol、71%)を白色固体として得た。
HRMS(ESI)C1422Na[M+Na]に対し341.120689と計算され、観察341.120290であった。
【0048】
異なる環化条件による生成物の結果の相違
【化5】
【0049】
(2R,3R,4S,5R)-2-(4-アミノピロロ[2,1-f][1,2,4]トリアジン-7-イル)-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ-フラン-3,4-ジオール、α-5)
【化6】
TMSOTf(90μL、111mg、0.5mmol、0.25当量)を、D-(-)-リボース(302mg、2.0mmol、1.0当量)およびピロロ[2、1-f][1、2、4]トリアジン-4-アミン(326mg、2.4mmol、1.2当量)のBSTFA(5.0mL、4.87g、18.9mmol、10当量)中の攪拌懸濁液に室温でゆっくりと加えた。混合物をこの温度で5分間撹拌し、その時点で溶液は均一になり、その後50℃に加熱した。48時間後、薄層クロマトグラフィー(TLC)分析は、リボース出発物質の完全な消費を示し、その時点で反応を室温まで冷却し、次いで0℃まで冷却した。その後、HCl(20mL、1、4-ジオキサン中4M、80mmol、40当量)の溶液をゆっくりと加え、懸濁液をこの温度で10分間激しく撹拌した後、室温に温めた。24時間後、混合物をEtO(30mL)で希釈し、ガラスフリット上で濾過し、固体をEtOで洗浄した後、真空下で乾燥した。次に、粗混合物をMeOH(20mL)に溶解し、NaHCO(11g)を加えた。混合物を30分間撹拌した後、ろ過し、MeOHで洗浄し、真空中で濃縮した。粗生成物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(EtOAc→EtOAc中10%MeOH)で精製し、α-5(377mg、α/β=9:1、1.4mmol、71%)をオフホワイトの固体として得た。
HRMS(ESI)はC1115[M+H]に対し267.108780と計算され、観察267.108860であった。
【0050】
(2S,3R,4S,5R)-2-(4-アミノピロロ[2,1-f][1,2,4]トリアジン-7-イル)-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-3,4-ジオール、β-5)
【化7】
TMSOTf(45μL、55.2mg、0.25mmol、0.25当量)を、D-(-)-リボース(150mg、1.0mmol、1.0当量)およびピロロ[2、1-f][1、2、4]トリアジン-4-アミン(202mg、1.5mmol、1.5当量)のBSTFA(2.6mL、2.53g、9.84mmol、10当量)中の攪拌懸濁液を室温でゆっくりと加えた。混合物をこの温度で5分間撹拌し、その時点で溶液は均一になり、その後50℃に加熱した。48時間後、薄層クロマトグラフィー(TLC)分析は、リボース出発物質の完全な消費を示し、この時点で反応を室温まで冷却し、次いで0℃まで冷却した。その後、HCl(10mL、1、4-ジオキサン中4M、40mmol、40当量)の溶液をゆっくりと加え、懸濁液をこの温度で10分間激しく撹拌した後、50℃に温めた。48時間後、混合物を室温まで冷却し、EtO(30mL)で希釈し、ガラスフリット上で濾過し、固体をEtOで洗浄した後、真空下で乾燥した。次に、粗混合物をMeOH(10mL)に溶解し、NaHCO(5.5g)を加えた。混合物を30分間撹拌した後、ろ過し、MeOHで洗浄し、真空中で濃縮した。粗生成物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(EtOAc→EtOAc中10%MeOH)で精製し、β-5(127.5mg、α/β=1:6、0.48mmol、48%)をオフホワイトの固体として得た。
HRMS(ESI)はC1113[M-H]に対し265.094230と計算され、観察265.094460であった。
【0051】
リボヌクレオシドの過アセチル化
(2R,3S,4R,5R)-2-(4-アセトアミドピロロ[2,1-f][1,2,4]トリアジン-7-イル)-5-(アセトキシメチル)-テトラヒドロフラン-3,4-ジイルジアセテート、α-6
【化8】
ヌクレオシドα-5(133mg,0.5mmol,1.0当量)およびDMAP(6.1mg,50μmol、0.1当量)をトリエチルアミン(0.7mL、508mg、5.0mmol、10当量)に0℃で懸濁した。次いで、無水酢酸(0.21mL、227mg、2.2mmol、4.4当量)を滴下添加し、反応物を室温まで温め、16時間撹拌した。混合物をEtOAcおよびHOで希釈し、有機層を水(2回)で洗浄し、NaSO上で乾燥し、真空中で濃縮した。粗生成物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(1:1CHCl/EtOAc)で精製し、α-6(187mg、α/β=10:1、0.4mmol、86%)をオフホワイトの固体として得た。
HRMS(ESI)C1922Na[M+Na]に対し457.132984と計算され、観察457.133320であった。
【0052】
(2S,3S,4R,5R)-2-(4-アセトアミドピロロ[2,1-f][1,2,4]トリアジン-7-イル)-5-(アセトキシメチル)-テトラヒドロフラン-3,4-ジイルジアセテート、β-6
【化9】
ヌクレオシドβ-5(52.6mg、0.2mmol、1.0当量)およびDMAP(2.4mg、20μmol、0.1当量)をトリエチルアミン(275μL、200mg、2.0mmol、10当量)に0℃で懸濁した。次いで、無水酢酸(82μL、89mg、0.9mmol、4.4当量)を滴下添加し、反応物を室温まで温め、12時間撹拌した。混合物をEtOAcおよびHOで希釈し、有機層を水(2回)で洗浄し、NaSO上で乾燥し、真空中で濃縮した。粗生成物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(1:1CHCl/EtOAc)で精製し、β-6(85.8mg、α/β=1:7、0.1mmol、38%)をオフホワイトの固体として得た。
HRMS(ESI)C1922[M]に対し434.14376と計算され、観察434.14360であった。
【0053】
大規模/テレスコープ工程
【化10】
【0054】
15mmolスケールでのアリール化/環化/アセチル化のシーケンス
TMSOTf(0.68mL、835mg、3.75mmol、0.25当量)を、D-(-)-リボース(2.25g、15.0mmol、1.0当量)およびピロロ[2、1-f][1、2、4]トリアジン-4-アミン(2.41g、18.0mmol、1.2当量)のBSTFA(40mL、38.6g、150mmol、10当量)中の攪拌懸濁液に室温でゆっくりと加えた。混合物をこの温度で5分間撹拌し、その時点で溶液は均一になり、その後50℃に加熱した。60時間後、薄層クロマトグラフィー(TLC)分析は、リボース出発物質の完全な消費を示し、その時点で反応を室温まで冷却し、次いで0℃まで冷却した。その後、HCl(150mL、1、4-ジオキサン中4M、600mmol、40当量)の溶液をゆっくりと加え、懸濁液をこの温度で10分間激しく撹拌した後、室温に温めた。24時間後、混合物をガラスフリット上で濾過し、固体をEtOで洗浄した後、真空下で乾燥させた。固体およびDMAP(183mg、1.5mmol、0.1当量)をトリエチルアミン(22mL、16.0g、158mmol、10当量)に0℃で懸濁した。その後、無水酢酸(6.4mL、6.91g、67.7mmol、4.5当量)を滴下し、反応物を室温まで温め、16時間撹拌した。TLC分析の結果、反応はまだ完全ではなかったので、混合物をもう一度0℃に冷却し、さらに無水酢酸(1.4mL、1.51g、14.8mmol、1.0当量)を加えた。室温で6時間撹拌した後、混合物をEtOAcおよびHOで希釈し、有機層を水(2回)で洗浄し、NaSO上で乾燥し、真空中で濃縮した。粗生成物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(4:3→1:1CHCl/EtOAc)で精製し、6(3.91g、α/β=9:1、9.0mmol、60%)をオフホワイトの固体として得た。
【0055】
Mn(TPP)触媒によるリボヌクレオシドの酸化の一般的手順
(3R,4R,5R)-2-(4-アセトアミドピロロ[2,1-f][1,2,4]トリアジン-7-イル)-5-(アセトキシメチル)-2-ヒドロキシテトラヒドロフラン-3,4-ジイルジアセテート、7
【化11】
室温で火炎乾燥したシュレンクフラスコに、Mn(TPP)Cl(4mol%)およびアセチル化リボヌクレオシドα-6(1.0当量)を、新鮮に脱気したベンゼン(0.05mol/L)に溶解した。ヨードシルベンゼン(合計2.3等量、バッチ当たり0.29等量)を8時間(1時間間隔)にわたって部分的に添加し、完全に添加した後、反応混合物をさらに2時間撹拌した。固体を綿毛上の濾過により除去し、溶媒を減圧下で除去し、粗生成物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(1:1→0:1CHCl/EtOAc)により精製して、7を異性体の混合物として得た(CDClにおける異性体分布、オープン(open):α:β=46:34:20、収率23~32%、回収した出発物質に基づく収率50~68%)。
【0056】
【化12】
HRMS(ESI)はC1921[M-H]に対し449.131405と計算され、観察449.131880であった。
m.p.(融点)=60-63℃
HNMR(600MHz,CDCl)δ8.28(s,1H,NH),8.15(s,1H,C12H),7.08(d,J=4.8Hz,1H,CH),6.93(d,J=4.7Hz,1H,CH),5.72(d,J=6.9Hz,1H,CH),5.37(dd,J=6.9,3.8Hz,1H,CH),4.56(q,J=3.7Hz,1H,CH),4.44(dd,J=12.0,3.5Hz,1H,CH),4.27(dd,J=12.0,4.7Hz,1H,C6’H),2.53(s,3H,CH14 ),2.14(s,3H,CH18 ),2.07(s,3H,CH17 ),2.06(s,3H,CH20 ).
13CNMR(151MHz,CDCl)δ170.8(C19),170.7(C13),170.5(C17),169.7(C15),151.3(C11),146.2(C12H),129.3(C),116.5(C10),112.1(CH),104.5(CH),100.5(C),80.4(CH),73.0(CH),70.7(CH),63.7(CH ),26.0(CH14 ),21.0(CH20 ),20.9(CH18 ),20.7(CH16 ).
【0057】
【化13】
HNMR(600MHz,CDCl)δ8.28(s,1H,NH),8.14(s,1H,C12H),7.10(d,J=4.7Hz,1H,CH),6.97(d,J=4.7Hz,1H,CH),5.69(d,J=4.5Hz,1H,CH),5.63(dd,J=7.7,4.5Hz,1H,CH),4.53-4.47(m,2H,CH,CH),4.27-4.21(m,1H,C6’H),2.53(s,3H,CH14 ),2.10(s,3H,CH20 ),2.03(s,3H,CH15 ),1.76(s,3H,CH16 ).
13CNMR(151MHz,CDCl)δ171.0(C19),170.7(C13),170.1(C17),169.3(C15),151.2(C11),146.2(C12H),128.3(C),116.0(C10),113.5(CH),104.6(CH),103.6(C),78.8(CH),75.9(CH),72.3(CH),65.1(CH ),26.0(CH14 ),21.0(CH20 ),20.7(CH18 ),20.5(CH16 ).
【0058】
【化14】
HNMR(600MHz,CDCl)δ8.45(s,1H,NH),8.35(s,1H,C12H),7.69(d,J=5.0Hz,1H,CH),7.13(d,J=5.0Hz,1H,CH),6.39(d,J=3.3Hz,1H,CH),5.46(dd,J=7.8,3.3Hz,1H,CH),4.31(bt,J=7.0Hz,1H,CH),4.19(dd,J=11.8,2.8Hz,1H,CH),4.10(dd,J=11.8,6.2Hz,1H,C6’H),2.57(s,3H,CH14 ),2.21(s,3H,CH16 ),2.03(s,3H,CH18 ),2.00(s,3H,CH20 ).
13CNMR(151MHz,CDCl)δ183.0(C),171.3(C19),171.0(C13),170.4(C15),170.1(C17),151.7(C11),147.7(C12H),128.4(C),119.7(C10),119.6(CH),105.4(CH),76.6(CH),72.0(CH),68.5(CH),65.5(CH ),26.1(CH14 ),21.0(CH18 ),20.9(CH20 ),20.8(CH16 ).
【0059】
酸化リボヌクレオシドのシアノ化手順
【化15】
火炎乾燥したシュレンクフラスコ中、-78℃のAr下で、ヘミアセタール7(45.0mg、0.10mmol、1.0当量)をHNTf(0.4mL、ジクロロメタン中の0.88mol/L溶液、0.35mmol、3.5当量.、最終反応濃度0.25mol/L)と40分間反応させた。その後、TMSCN(37.5μL、29.8mg、0.30mmol、3.0当量)を加え、反応混合物を-40°Cまで温めた後、20時間撹拌した。反応はトリエチルアミン(55.8μL、40.5mg、0.40mmol、4.0当量)の添加により終了し、室温まで加温し、さらに冷却トラップを使用して高真空下で揮発性物質を除去した(アリコートの分析から、α:β=87:13のジアステレオマー混合物が検出された)。粗反応混合物を1.0mLトリエチルアミンで処理し、シリガゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィー(1:1CHCl/EtOAc)で直接精製し、S4をオフホワイト固体として得た(38.5mg、α:β=89:11、84%)。
【0060】
(2R,3R,4R,5R)-2-(4-アセトアミドピロロ[2,1-f][1,2,4]トリアジン-7-イル)-5-(アセトキシメチル)-2-シアノテトラヒドロフラン-3,4-ジイルジアセテート、α-S4
【化16】
HRMS(ESI)はC2020[M-H]に対し458.131738と計算され、観察458.131900であった。
【0061】
シアノ化リボヌクレオシドの脱保護の手順
【化17】
文献公知の手順に従って、(O.-M.Soueidan、B.J.Trayner、T.N.Grant、J.R.Henderson、F.Wuest、F.G.West、C.I.Cheeseman、OrgBiomolChem2015、13、6511-6521.)を室温で化合物S4(54.0mg、0.12mmol、1.0当量、α:β=88:12)をメタノール(2.4mL、0.05mol/L)中でNaOMe(8.0μL、7.6mg、メタノール中25質量%、0.3当量)と反応させた。1時間後、白色固体の沈殿が観察されたので、溶媒をデカントした。沈殿物をメタノールおよびヘキサン1.0mLで処理し、液をデカントし、固体を高真空下で乾燥させ、GS-441524を単一立体異性体として得た(27.6mg、81%、α-S4に基づき92%)。
【0062】
(2R,3R,4S,5R)-2-(4-アミノピロロ[2,1-f][1,2,4]トリアジン-7-イル)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ-フラン-2-カルボニトリル、GS-441524
【化18】
分析データは文献に準ずる(T.Cihlar,S.Bavarietal.,Nature2016,531,381-385)。
HRMS(ESI)はC1214[M+H]に対し292.104028と計算され、観察292.103860であった。
【0063】
上記のように、本発明者らは遊離D-リボースから出発する、より実用的で効率的なレムデシビルの合成法を設計・開発した。そのルートは、保護基や活性化基をあらかじめ導入することなく、炭水化物に(ヘテロ)アレーンを新規かつ完全に立体選択的に求核付加させることを特徴としている。この方法は、C-C結合を形成する前に、TMSで保護されたβ-リボピラノースと-フラノースに対して収束的なシリル化を行い、シリル触媒反応によってジアステレオ選択的に直鎖状生成物を提供する。C-ヌクレオシドのアノマー構造は、酸を介した環化反応中の熱力学的制御によってシンプルに調整される。ベンジリックC-H酸化に続くデオキシシアノ化は、GS-441524の化学合成を、D-リボースと人工ヌクレオベースからの精製を必要とするわずか3工程に効率化する。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】