IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ハルトメタル−ウェルクゾーグファブリック ポール ホーン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

<>
  • 特表-切削インサート及び機械加工用工具 図1
  • 特表-切削インサート及び機械加工用工具 図2
  • 特表-切削インサート及び機械加工用工具 図3
  • 特表-切削インサート及び機械加工用工具 図4
  • 特表-切削インサート及び機械加工用工具 図5
  • 特表-切削インサート及び機械加工用工具 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】切削インサート及び機械加工用工具
(51)【国際特許分類】
   B23D 77/00 20060101AFI20240719BHJP
   B23B 51/06 20060101ALI20240719BHJP
   B23C 5/28 20060101ALI20240719BHJP
   B23B 27/10 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
B23D77/00
B23B51/06 C
B23C5/28
B23B27/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506730
(86)(22)【出願日】2022-07-26
(85)【翻訳文提出日】2024-02-08
(86)【国際出願番号】 EP2022070951
(87)【国際公開番号】W WO2023011987
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】102021120357.0
(32)【優先日】2021-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503128054
【氏名又は名称】ハルトメタル-ウェルクゾーグファブリック ポール ホーン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルイク, マティアス
【テーマコード(参考)】
3C037
3C046
3C050
【Fターム(参考)】
3C037BB06
3C037DD07
3C046BB07
3C050EA00
3C050EB01
3C050EB09
(57)【要約】
本発明は、ワークピースを加工するための工具(100)用の切削インサート(10)に関する。切削インサート(10)は、貫通孔として構成される少なくとも1つの冷却剤チャネル(34)を備えるクランプ部(12)を備える。さらに、切削インサート(10)は、切削ヘッド(14)を備え、該切削ヘッドは主たる切削縁(26)と、主たる切削縁(26)に隣接するすくい面(30)と、すくい面(30)から突出するか、またはすくい面に導入され、主たる切削縁(26)で機械加工されるチップを破壊するように構成されたチップ破断幾何学的形状部(32)とを備える。更に、切削インサート(10)は、クランプ部(12)を切削ヘッド(14)に接続すると共にクランプ部(12)よりも小さい直径を有する片持ちレバーアーム(16)を備える。チップ破断幾何学的形状部(32)とを備える切削ヘッド(14)の一部分は、切削インサート(10)の長手方向軸(38)に沿った前面側から平面視で見たときに、冷却剤チャネル(34)を少なくとも部分的に覆う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークピースを機械加工するための工具(100)用の切削インサート(10)であって、
貫通孔として構成された少なくとも1つの冷却剤チャネル(34)を備えるクランプ部(12)と、
主たる切削縁(26)と、該主たる切削縁(26)に隣接するすくい面(30)と、すくい面(30)から突出するか、またはすくい面(30)に導入され、主たる切削縁(26)で機械加工されたチップを破断するように構成されたチップ破断幾何学的形状部(32)とを備える少なくとも1つの切削部材(24)を有する切削ヘッド(14)と、
前記クランプ部(12)を切削ヘッド(14)に接続し、クランプ部(12)より小さい直径を有する片持ちレバーアーム(16)とを備え、
チップ破断幾何学的形状部(32)を備える切削ヘッド(14)の一部は、切削インサート(10)の長手方向軸(38)に沿った前側からの平面視にて、冷却剤チャネル(34)を少なくとも部分的に覆うことを特徴とする、切削インサート(10)。
【請求項2】
切削インサート(10)は、クランプ部(12)と、切削ヘッド(14)と、片持ちレバーアーム(16)とが互いに一体的に接続されるように、一体に構成される、請求項1に記載の切削インサート(10)。
【請求項3】
片持ちレバーアーム(16)は、切削インサート(10)の長手方向軸(38)に沿った前面側からの平面視において、冷却剤チャネル(34)を覆わない、請求項1又は2に記載の切削インサート。
【請求項4】
前記チップ破断幾何学的形状部(32)は、前記主たる切削縁(26)から離間し、前記すくい面(30)の第1の部分は、前記チップ破断幾何学的形状部(32)と前記主たる切削縁(26)との間で前記主たる切削縁(26)に沿って延在する、請求項1乃至3の何れかに記載の切削インサート。
【請求項5】
前記切削部材(24)は、さらに前記主たる切削縁(26)に対して横方向に配向される補助切削縁(28)を含み、前記すくい面(30)の第2の部分は、前記チップ破断幾何学的形状部(32)と前記補助切削縁(28)との間で前記補助切削縁(28)に沿って延在する、請求項4に記載の切削インサート。
【請求項6】
主たる切削縁(26)及び/又は補助切削縁(28)は、直線状である、請求項5に記載の切削インサート。
【請求項7】
片持ちレバーアーム(16)は、切削インサート(10)の長手方向軸(38)に実質的に沿って延び、切削部材(24)は、長手方向軸(38)に対して横方向に突出し、切削ヘッド(14)から横方向に突出している、請求項1乃至6の何れかに記載の切削インサート。
【請求項8】
前記冷却剤チャネル(34)は、切削インサート(10)の長手方向軸(38)と平行に配向される、請求項1乃至7の何れかに記載の切削インサート。
【請求項9】
前記チップ破断幾何学的形状部は、前記すくい面(30)から突出する隆起形状(32)として構成される、請求項1乃至8の何れかに記載の切削インサート。
【請求項10】
前記チップ破断幾何学的形状部(32)を備える切削ヘッド(14)の一部を、切削インサート(10)の長手方向軸(38)に沿った前側から平面視すると、冷却剤チャネル(34)の断面の少なくとも10%を覆う、請求項1乃至9の何れかに記載の切削インサート。
【請求項11】
前記チップ破断幾何学的形状部(32)を備える切削ヘッド(14)の一部を、切削インサート(10)の長手方向軸(38)に沿った前側からの平面図で見たとき、冷却剤チャネル(34)の断面の少なくとも10%を覆うが、最大で断面の最大80%を覆う、請求項1乃至9の何れかに記載の切削インサート。
【請求項12】
冷却剤チャネル(34)の中心軸(40)が、チップ破断幾何学的形状部(32)の表面部分(42)と平行に配向されるか、またはこの表面部分(42)と平面内に位置する、請求項1乃至11の何れかに記載の切削インサート。
【請求項13】
前記冷却剤チャネル(34)の断面は非円形である、請求項1乃至12の何れかに記載の切削インサート。
【請求項14】
前記切削ヘッド(14)から離れる方向に向かう第1の端部における前記冷却剤チャネル(34)の断面は、前記切削ヘッド(14)に向かう前記冷却剤チャネル(34)の第2の端部における前記冷却剤チャネル(34)の断面よりも大きい、請求項1乃至13の何れかに記載の切削インサート。
【請求項15】
ワークピースを加工するための工具(100)であって、請求項1乃至14の何れかに記載の切削インサート(10)と、該切削インサート(10)を保持する切削インサートホルダ(18)とを備える、工具(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークピースを機械加工する工具用の切削インサートに関する。本発明はさらに、このような切削インサートを備えた工具に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に係る工具は、例えばリーマ工具であってもよい。しかしながら、本発明は、このようなリーマ工具に限定されるものではない。また、本発明に係る切削インサートが挿入される本発明に係る工具は、異なる種類の切削工具、例えば、バイト、穿孔工具、フライス工具などであってもよい。本発明に係る工具は、例えば、CNC処理センタなどの工作機械で使用されることが好ましい。
【0003】
本発明に係る工具は、切削インサートに加えて、切削インサートを保持するための切削インサートホルダを有する。好ましくは、切削インサートは、摩耗の場合に取り替えることができるように、切削インサートホルダ内に取り外し可能に固定される。
【0004】
このような工具の主要な目的は、加工中に不要に長いチップを避けるために、最良のチップ破断を生成することである。良好なチップ破断特性は、工具に使用される切削インサートの耐用年数を長くするだけでなく、加工されたワークピースの表面性状にもプラスの効果をもたらす。
【0005】
耐用年数を長くし、加工の信頼性を向上させるためには、加工場所に十分な冷却剤/潤滑油(以下、「冷却剤」と略す)を供給する必要がある。従って、冷却剤チャネルは、しばしば工具及び/又は切削インサートに一体化される。これらは、最も負荷の高い工具の領域が、使用中にいつでも十分な量の冷却剤の供給を受けることを確実にすることを意図している。
【0006】
一体化された冷却剤チャネルを有する機械加工用工具の例は、次の文書で開示される。ドイツ特許公開公報10 2007 023 167号,ドイツ特許公開公報10 2010 002 669号,ドイツ特許公開公報10 2010 021 520号,ドイツ特許公開公報10 2010 051 377号,ドイツ実用新案公開公報2004 008 566号,ヨーロッパ特許2 146 816号,ヨーロッパ特許2 148 757号,ヨーロッパ特許2 550 126号。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、チップ破断特性及び冷却剤供給が更に改善される機械加工用の工具用の切削インサート及びそのような工具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、この目的は、以下を備えた切削インサートを含むことによって達成される。
貫通孔として構成された少なくとも1つの冷却剤チャネルを備えるクランプ部と、
主たる切削縁と、主たる切削縁に隣接するすくい面と、すくい面から突出するか、またはすくい面に導入され、主たる切削縁で機械加工されたチップを破断するように構成されたチップ破断幾何学的形状部とを備える少なくとも1つの切削部材を有する切削ヘッドと、
クランプ部を切削ヘッドに接続し、クランプ部より小さい直径を有する片持ちレバーアームとを備え、
チップ破断幾何学的形状部を備える切削ヘッドの一部は、切削インサートの長手方向軸に沿った前側からの平面視にて、冷却剤チャネルを少なくとも部分的に覆う。
【0009】
少なくとも1つの切削部材上に設けられたチップ破断幾何学的形状部の結果として、本発明に係る切削インサートのチップ破断特性が大幅に改善される。さらに、チップ破断幾何学的形状部が配置された切削ヘッドの一部で、冷却剤チャネルを幾何学的に被覆することにより、最適な冷却剤供給が保証される。
従来技術の切削インサートでよくあることとは対照的に、これにより、切削インサートのチップ破断特性にとって決定的な位置に冷却剤が確実に到達する。これは、冷却剤チャネルから排出される冷却剤の大部分が、結果的にチップ破断幾何学的形状部に直接衝突し、他の場合によくあるように、切削インサートの切削部材の向こう側や横方向に噴射されないからである。
【0010】
前述した、冷却剤チャネルがチップ破断幾何学的形状部で幾何学的に覆われている場合、前面からの平面図で現れるように、冷却剤チャネルから排出される冷却剤のジェットが切削ヘッドの一部と衝突し、それにより切削ヘッドによって部分的に方向転換されることが認められる。しかしながら、冷却剤ジェットがブレードに亘って完全に自由に(すなわち、方向転換されずに)噴霧する切削インサート及び切削工具と比較して、これはチップ形成特性を著しく改善することが分かっている。いずれにしても、本発明による切削インサートの構成の結果、チップ破断の改善およびより高いレベルの加工信頼性が達成され得る。
【0011】
したがって、上記の目的は完全に解決される。
【0012】
好ましくは、切削インサートは、一体的な方法、すなわち、1つのピースで構成され、クランプ部、切削ヘッド及び片持ちレバーアームが、互いに一体的に連結されるように構成される。
【0013】
これにより、切削インサートの機械的安定性が高まり、これは切削インサートのサイズが比較的小さくなると特に有利である。
【0014】
別の改良例によれば、片持ちレバーアームが、切削インサートの長手方向軸に沿った前側からの平面視において、冷却剤チャネルを覆わないようにすることが好ましい。
【0015】
これは、冷却剤チャネルから排出された冷却剤ジェットがクランプ部から排出され、片持ちレバーアームと衝突することなく、または、片持ちレバーアームによって方向転換されることなく、切削ヘッドに束縛を受けずに到達するという利点がある。従って、冷却剤ジェットは、切削ヘッド上に配置されたチップ破断幾何学的形状部に対する衝突位置までその運動エネルギーの大部分を保持する。
【0016】
別の改良例によると、チップ破断幾何学的形状部が主たる切削縁から離間して配置され、すくい面の第1の部分がチップ破断幾何学的形状部と主たる切削縁との間にて、主たる切削縁に沿って延在することが提供される。
【0017】
これにより、正の切削角を達成することができ、それによってチップ破断特性をさらに改善することができる。これは、一般的に非常に薄いチップが発生するリーマ工具または他の切削工具で特に有利である。このような薄いチップは、本発明のチップ破断幾何学的形状部と相まって上述の正の切削角がなければ、十分に信頼できる方法で破断されないであろう。これは、切削部材の表面の引っかき傷、その結果、すくい面の引っかき傷につながり、それによって、最終的には摩耗が増加し、切削インサートの耐用年数が短くなる。
【0018】
別の改良例によれば、切削部材は、主たる切削縁に対して横方向に配向される補助切削縁をさらに含み、すくい面の第2の部分は、チップ破断幾何学的形状部と補助切削縁との間にて、補助切削縁に沿って延在する。
【0019】
「横方向」という用語は、この例では、0度に等しくない角度における2つの切れ端の方向を表す。2つの切削縁(主たる切削縁及び補助切削縁)は、互いに対して鋭角または直角で配向されることが望ましい。しかし、原理的には互いに鈍角で配向されることも可能である。
【0020】
以前に述べた改良例のチップ破断幾何学的形状部は、主たる切削縁の方向及び補助切削縁の方向の両方において、すくい面によって完全に囲まれており、これは前述した利点(正の切削角、チップ切断の改善、結果として耐用年数の延長)に繋がる。
【0021】
好ましくは、主たる切削縁と補助切削縁の両方が、夫々の場合において、直線状に構成される(曲線ではない)。
【0022】
別の改良例によれば、片持ちレバーアームが、切削インサートの長手方向軸に実質的に沿って延び、切削部材が、切削ヘッドから横方向に突出するように延びることが提供される。
【0023】
好ましくは、片持ちレバーアームの直径またはその横方向の範囲(切削インサートの長手方向軸に対して横方向の範囲)は、切削ヘッド及びクランプ部の対応する直径または対応する横方向の範囲よりも細くなるように構成される。
【0024】
もう1つの改良例によれば、冷却剤チャネルは、切削インサートの長手方向軸に平行に向けられる。
【0025】
クランプ部に配置された冷却剤チャネルから排出される冷却剤ジェットは、結果的に、片持ちレバーアームに沿って平行に延び、チップ破断幾何学的形状部の領域において切削インサートの長手方向軸と平行に、切削部材にぶつかる。
【0026】
このような冷却剤ジェットと切削インサートの個々の構成要素との相対的な向きにより、クランプ部は、その外側に、切削インサートの長手方向軸と平行な向きの少なくとも1つのクランプ面を有することがさらに好ましい。
【0027】
もう1つの改良例によれば、チップ破断幾何学的形状部は、すくい面から突出する隆起した幾何学的形状部であることが望ましい。
【0028】
この例では、チップ破断幾何学的形状部は、すくい面から上向きに突出する。これにより、チップ破断特性はさらに改善される。
【0029】
別の改良例によれば、切削ヘッドを構成する部分は、切削インサートの長手方向軸に沿った前面から平面図で見ると、切削チャネルの断面の少なくとも10%を覆うことが好ましい。
【0030】
既に述べたように、この覆いにより、少なくとも1つの切削部材、特にその中に配置されたチップ破断幾何学的形状部及びすくい面が、最適な方法で冷却剤/潤滑剤を供給することが可能になる。
【0031】
切削インサートの長手方向軸に沿って前面から見たときに、チップ破断幾何学的形状部を含む切削ヘッドの部分が、冷却剤チャネルの断面の少なくとも10%を覆うが、最大で冷却剤チャネルの断面の80%を覆うことがさらに好ましい。
【0032】
仮に切削ヘッドが冷却剤チャネルの断面の80%以上を覆うと、既に冷却剤の大部分が他の場所にて切削ヘッドと事前に衝突しているので、少なくとも1つの切削部材の適切な冷却及び潤滑が確保されなくなる。
【0033】
もう1つの改良例において、冷却剤チャネルの中心軸が、チップ破断幾何学的形状部の表面部分に平行に配向されるか、またはこの表面部分と平面に位置することが提供される。
【0034】
この結果、冷却剤ジェットは、平行または接線方向に上述のチップ破断幾何学的形状部の表面部分にぶつかる。これは、少なくとも1つの切削部材の最適な冷却及び潤滑につながる。また、チップの除去も、冷却剤ジェットのこの種の配向によって改善される。
【0035】
もう1つの改良例によると、冷却剤チャネルの断面は非円形である。もちろん、冷却液チャネルの断面が丸く(円形に)なるように構成してもよい。
【0036】
非円形の構成の結果、例えば、冷却剤チャネルの断面が楕円又は卵形の構成の結果として、冷却剤ジェットは、少なくとも1つの切削部材に対してさらに良い方向に向けることができる。
【0037】
もう1つの改良例によれば、冷却剤チャネルの切削ヘッドから離れる方向に向かう第1の端部における冷却剤チャネルの断面は、冷却剤チャネルの切削ヘッドに向かう第2の端部の断面よりも大きい。なお、本実施形態によれば、冷却剤チャネルは、例えば、円錐形のテーパ状に構成することができる。あるいは、冷却剤チャネルは、その内部において、異なる直径の部分を有する凹んだ穴の形をしていてもよい。
【0038】
その第1の端部から第2の端部までの冷却剤チャネルの直径の減少は、ある種のノズル効果をもたらし、これにより、冷却剤チャネルの排出速度を増加させることができる。これは、チップ除去の改善に関して再び有利である。
【0039】
もちろん、上述した、且つ以下に説明する特徴は、各場合に記載された組み合わせの中だけでなく、本発明の範囲から逸脱することなく、他の組み合わせにおいても、または単独で使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
本発明の例示的な実施形態は、図面に示されている。
図1】本発明に係る切削インサートの例示的な実施形態の斜視図である。
図2】本発明による工具の例示的な実施形態の側面図を示し、本発明による切削インサート及び切削インサートホルダは、概略的に且つ断面で図示されている。
図3図1の本発明による切削インサートの切削ヘッドの部分的な図である。
図4図3に示す切削ヘッドの切削部材の詳細図である。
図5図1に示す切削インサートの前面からの平面図を示す。
図6図5の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1及び図3乃至図6は、本発明に係る切削インサートの例示的な実施形態を様々な図面で示している。切削インサートはその全体を符号10で指定される。図2は、本発明に係る工具の例示的な実施形態を示し、切削インサートと関連する切削インサートホルダとを備える、。工具はその全体を符号100で指定される。
【0042】
図1に示されている切削インサート10は、リーマ工具用の切削インサートである。切削インサート10は、クランプ部12と、切削ヘッド14と、片持ちレバーアーム16とを有する。切削インサート10は、一体型に構成されている。したがって、切削インサート10は1つの部品であり、クランプ部12、切削ヘッド14及び片持ちレバーアーム16は、一体的な方法で互いに接続される。切削インサート10は、硬質金属から完全に製造されることが望ましい。
【0043】
クランプ部12は、切削インサート10を切削インサートホルダ18にクランプする役割を果たす(図2参照)。本例に示す実施形態では、クランプ部は、円柱状に構成されている。したがって、切削インサートホルダ18に設けられた切削インサート受入れ部材20も、円筒状の断面を有する。しかしながら、クランプ部12及び切削インサート受入れ部材20は、任意の他の断面形状(例えば、長方形、正方形、長円形又は複雑な形状)を有することができることは自明である。
【0044】
切削インサートホルダ18内に設けられた切削インサート受入れ部材20は、切削インサート10が前側から導入可能なポット状の受入れ部材の形であることが好ましい。切削インサート10を切削インサート受入れ部材20に固定するために、ねじ又はその他の固定手段を設けてもよい。組立状態では、切削インサート10のクランプ部12は、その周りに沿って当接し、且つ、その端部後側22が、切削インサート受入れ部材20内の対応する相手側の当接面に当接するのが好ましい。また、完全な当接の代わりに、クランプ部12の周縁に対して部分的な当接を設けることもできる。
【0045】
切削インサートホルダ18は、図2に概略的に示されている。切削インサートホルダ18は、従来の工具ホルダであってもよい。同様に、切削インサートホルダ18は、切削インサート10が用いられる工作機械の一部であってもよい。例えば、後者の場合、切削インサートホルダ18は、工作機械に直接一体化されたクランプチャックである。
【0046】
切削ヘッド14は、この例示的な実施形態では、切削ヘッド14から横方向に突出した5つの切削部材24を有している。これらの切削部材24はそれぞれ、主たる切削縁26と、主たる切削縁26に隣接し、かつ主たる切削縁26に対して横方向に延在する補助切削縁28とを有する(図3図4参照)。主たる切削縁26および補助切削縁28は、この例で示される例示的な実施形態では、直線状の切削縁の形態である。主たる切削縁26及び補助切削縁28は、クランプ面30によって内方に隣接しており、このクランプ面は、特に図4にて詳細に見ることができる。
【0047】
チップ破断幾何学的形状部32は、実際には、チップ案内ステップとも呼ばれることが多く、これはすくい面30上に配置される。
【0048】
チップ破断幾何学的形状部32は、主たる切削縁26で機械加工されるチップ(図示せず)を切るように構成される。これは、実質的にはチップを変形させることによって行われる。主たる切削縁26で機械加工されるチップは、チップ破断幾何学的形状部32によって方向を変えられ、それによってさらに強力に湾曲され、それによって強制的に破断される。
【0049】
チップ破断幾何学的形状部32は、この例で示される実施形態では、すくい面30から上方に突出する、上向きの幾何学的形状部である。しかし、原則的には、チップ破断幾何学的形状部を、すくい面30に導入される凹み構造として構成することも可能である。
【0050】
切削ヘッド14は、切削インサート10の用途及び構成に応じて、5つ以上又は5つ以下のこれら切削部材24を備えることもできる。例えば、本発明に係る切削インサート10の切削ヘッド14は、1つの切削部材24のみを構成してもよい。これは、主に、本発明に係る切削インサート10を回転工具に用いた場合に当てはまる。もちろん、回転工具の切削インサートとして用いた場合の切削ヘッド14は、本例に示す実施形態のそれとは非常に異なった形である。
【0051】
クランプ部12には、切削部材24の数に応じて、切削ヘッド14に冷却剤を供給する役割を果たす5つの冷却剤チャネル34が、本実施例では配置されている。これらの冷却剤チャネル34から、1つの冷却剤ジェットが各場合に排出され、各場合に、切削部材24のうちの1つに対して向けられる。これらの冷却剤ジェットは、好ましくは、片持ちレバーアーム16によって分流されたり方向変更されたりすることなく、自由な噴流として切削ヘッド14に当たる。したがって、クランプ部12を切削ヘッド14に接続する片持ちレバーアーム16は、クランプ部12及び切削ヘッド14よりも小さい直径を有することが好ましい。片持ちレバーアーム16は、実質的に切削インサート10の長手方向軸38に沿って延在する。
【0052】
個々の冷却剤チャネル34への冷却剤供給は、切削インサートホルダ18を介して実行される。このために、例えば、切削インサート10に設けられた全ての冷却剤チャネル34に共に供給する冷却剤チャネル36が切削インサートホルダ18に設けられている。しかし、あるいは、切削インサート10に設けられた冷却剤チャネル34に個別に供給する複数の冷却剤チャネル36を切削インサートホルダ18に設けてもよい。この点において、単一の切削部材24のみを備えた切削ヘッドの構成の場合には、好ましくはクランプ部12の内側に1つだけの冷却剤チャネルが設けられることにも留意されたい。
【0053】
各冷却剤チャネル34は、切削インサート10の長手方向軸38と平行に延びるのが好ましい。冷却剤チャネル34の各々は、クランプ部12を貫通する貫通孔の形状をしている。夫々の貫通孔は、円周上で完全に閉鎖される輪郭を有する。したがって、冷却剤チャネル34は、それぞれの場合、円周上で閉じられ、切削インサート10のクランプ部12から横方向に冷却剤が排出されないようにする。
【0054】
切削部材24に対する冷却剤チャネル34の配置は、以下により詳細に記載される。これは、冷却剤チャネル34または切削部材24の例を使用して実行される。
【0055】
冷却剤チャネル34は、図5及び図6に示すように切削インサートの前面からの平面図において、冷却剤チャネル34に関連する切削部材24によって少なくとも部分的に隠蔽されるように配置される。冷却剤チャネル34は、この場合、特に、チップ破断幾何学的形状部32が配置された切削部材24の部分によって隠蔽される。好ましくは、切削インサート10の長手方向軸38に沿った前面からの平面図として見たときに、チップ破断幾何学的形状部32を含む切削部材24の一部は、冷却剤チャネル34の断面の少なくとも10%を覆うが、冷却剤チャネル34の断面の最大で80%を覆う。それにより、機械加工操作において使用される切削ヘッド14の構成要素の最適な冷却及び潤滑が保証される。
【0056】
切削部材24及びその上に配置されるチップ破断幾何学的形状部32は、好ましくは、冷却剤チャネル34に対して外側に向けて半径方向にオフセットされるように配置される。冷却剤チャネル34の中心軸40がチップ破断幾何学的形状部の表面部分42と平行に配向されることが特に好ましい。また、チップ破断幾何学的形状部32の上側に配置された上述の表面部分42は、冷却剤チャネル34の中心軸40と同一平面上に配置されてもよい。
【0057】
上述の冷却剤チャネル34の被覆の結果として、冷却剤チャネル34から排出される冷却剤ジェットの一部は、切削ヘッド14の後側にぶつかるが、それにもかかわらず、切削ヘッド14に対する冷却剤チャネル34のこのような配置は、最適な冷却及び潤滑を確保し、また、最適なチップ除去を確保することがわかっている。なぜなら、冷却剤は、切削ヘッド14またはその切削部材24の周りを最適な方法で流れることができるからである。
【0058】
切削インサート10の他の様々な最適化が可能である。冷却剤チャネル34は、必ずしも円形の断面を備えて構成される必要はない。例えば、冷却剤ジェットをできるだけ「平坦」な方法で構成するために、卵形または楕円形の断面も考えられる。冷却剤チャネル34の断面を、切削ヘッド14から離れる方向に向かう第1の端部から、切削ヘッド14に向かう第2の端部に向かってテーパ付けられるように設けてもよい。これにより、冷却剤チャネル34内で冷却剤が加速されるタイプのノズル効果が達成される。あるいは、冷却剤チャネル34は、その内側が凹んだり、段付けされて、例えば、第1の端部に隣接する第1の部分がより大きな直径を有し、第2の端部に隣接する第2の部分がより小さな直径を有してもよい。様々な他の適応な、特に切削ヘッド14の形状については、既に述べたように、切削インサート10の用途に応じて可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2024-02-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークピースを機械加工するための工具(100)用の切削インサート(10)であって、
貫通孔として構成された少なくとも1つの冷却剤チャネル(34)を備えるクランプ部(12)と、
主たる切削縁(26)と、該主たる切削縁(26)に隣接するすくい面(30)と、すくい面(30)から突出するか、またはすくい面(30)に導入され、主たる切削縁(26)で機械加工されたチップを破断するように構成されたチップ破断幾何学的形状部(32)とを備える少なくとも1つの切削部材(24)を有する切削ヘッド(14)と、
切削インサート(10)の長手方向軸(38)に沿って延び、前記クランプ部(12)を切削ヘッド(14)に接続し、クランプ部(12)より小さい直径を有する片持ちレバーアーム(16)とを備え、
切削インサート(10)は、クランプ部(12)と、切削ヘッド(14)と、片持ちレバーアーム(16)とが互いに一体的に接続されるように、一体に構成され
チップ破断幾何学的形状部(32)を備える切削ヘッド(14)の一部は、切削インサート(10)の長手方向軸(38)に沿って見て、冷却剤チャネル(34)の断面の少なくとも10%を覆うが、最大で断面の最大80%を覆うことを特徴とする、切削インサート(10)。
【請求項2】
片持ちレバーアーム(16)は、切削インサート(10)の長手方向軸(38)に沿った前面側からの平面視において、冷却剤チャネル(34)を覆わない、請求項に記載の切削インサート。
【請求項3】
前記チップ破断幾何学的形状部(32)は、前記主たる切削縁(26)から離間し、前記すくい面(30)の第1の部分は、前記チップ破断幾何学的形状部(32)と前記主たる切削縁(26)との間で前記主たる切削縁(26)に沿って延在する、請求項に記載の切削インサート。
【請求項4】
前記切削部材(24)は、さらに前記主たる切削縁(26)に対して横方向に配向される補助切削縁(28)を含み、前記すくい面(30)の第2の部分は、前記チップ破断幾何学的形状部(32)と前記補助切削縁(28)との間で前記補助切削縁(28)に沿って延在する、請求項に記載の切削インサート。
【請求項5】
主たる切削縁(26)及び/又は補助切削縁(28)は、直線状である、請求項に記載の切削インサート。
【請求項6】
片持ちレバーアーム(16)は、切削インサート(10)の長手方向軸(38)に沿って延び、切削部材(24)は、長手方向軸(38)に対して横方向に突出し、切削ヘッド(14)から横方向に突出している、請求項に記載の切削インサート。
【請求項7】
前記冷却剤チャネル(34)は、切削インサート(10)の長手方向軸(38)と平行に配向される、請求項に記載の切削インサート。
【請求項8】
前記チップ破断幾何学的形状部は、前記すくい面(30)から突出する隆起形状(32)として構成される、請求項に記載の切削インサート。
【請求項9】
冷却剤チャネル(34)の中心軸(40)が、チップ破断幾何学的形状部(32)の表面部分(42)と平行に配向されるか、またはこの表面部分(42)と平面内に位置する、請求項に記載の切削インサート。
【請求項10】
前記冷却剤チャネル(34)の断面は非円形である、請求項に記載の切削インサート。
【請求項11】
前記切削ヘッド(14)から離れる方向に向かう第1の端部における前記冷却剤チャネル(34)の断面は、前記切削ヘッド(14)に向かう前記冷却剤チャネル(34)の第2の端部における前記冷却剤チャネル(34)の断面よりも大きい、請求項に記載の切削インサート。
【請求項12】
ワークピースを加工するための工具(100)であって、請求項1乃至11の何れかに記載の切削インサート(10)と、該切削インサート(10)を保持する切削インサートホルダ(18)とを備える、工具(100)。
【国際調査報告】