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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】獣医学的ウイルス性疾患の治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7072 20060101AFI20240719BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
A61K31/7072
A61P31/16
A61P31/12
A61K48/00
A61P31/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506795
(86)(22)【出願日】2022-08-05
(85)【翻訳文提出日】2024-03-29
(86)【国際出願番号】 EP2022072074
(87)【国際公開番号】W WO2023012329
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】21190172.3
(32)【優先日】2021-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】22185716.2
(32)【優先日】2022-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510000976
【氏名又は名称】インターベット インターナショナル ベー. フェー.
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100216839
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 敏幸
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】マレー,エドワード
(72)【発明者】
【氏名】ワラス,ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】ウルリッヒ,ヨアヒム
(72)【発明者】
【氏名】ナガラジ,バサヴァ・ハンガラプラ
(72)【発明者】
【氏名】ホイスマン,ウィレム
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084MA52
4C084MA63
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZB211
4C084ZB212
4C084ZB331
4C084ZB332
4C084ZC611
4C084ZC612
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA17
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA63
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZB33
4C086ZC61
(57)【要約】
動物におけるウイルス性疾患を予防または治療する方法であって、抗ウイルスヌクレオシドβ-D-N(4)-ヒドロキシシチジン(NHC)またはそのプロドラッグもしくは塩および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を動物に投与することを含み、ウイルス性疾患が、ブタ生殖呼吸器症候群(PRRS)、ウシ呼吸器疾患(BRD)、ウマインフルエンザ、イヌジステンパー、イヌ呼吸器疾患、ネコ感染性腹膜炎、ネコウイルス性鼻気管炎またはネコ免疫不全である、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物におけるウイルス性疾患を予防または治療する方法であって、抗ウイルスヌクレオシドβ-D-N(4)-ヒドロキシシチジンまたはそのプロドラッグもしくは塩および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を動物に投与することを含み、
そしてここで、前記ウイルス性疾患が、ブタインフルエンザウイルス、ブタロタウイルス、ネコ感染性腹膜炎ウイルス(FIPV)またはネコカリシウイルスによって引き起こされる、方法。
【請求項2】
前記投与が、経口、局所、または注射経路、好ましくは経口によるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記動物がブタであり、前記疾患がブタインフルエンザウイルスまたはブタロタウイルスによって引き起こされる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記動物がネコであり、前記疾患がネコ感染性腹膜炎ウイルスまたはネコカリシウイルスによって引き起こされる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記医薬組成物が、単回投与または複数回投与される複数回投与で投与される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
動物におけるウイルス性疾患を予防または治療する方法であって、β-D-N(4)-ヒドロキシシチジンまたはそのプロドラッグもしくは塩および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を前記動物に投与することを含み、
そしてここで、前記ウイルス性疾患が前記動物におけるSARS-CoV-2感染症に起因し、前記動物がブタ、ウシ、ウマ、イヌ、またはネコである、方法。
【請求項7】
動物におけるウイルス性疾患の予防または治療に使用するための、抗ウイルスヌクレオシドβ-D-N(4)-ヒドロキシシチジンまたはそのプロドラッグもしくは塩および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物であって、
ここで、前記動物がブタまたはネコであり、前記動物が、ブタインフルエンザウイルス、ブタロタウイルス、ウイルスネコ感染性腹膜炎ウイルスまたはネコカリシウイルスによって引き起こされるウイルス性疾患に罹患しているかまたはかかりやすい、医薬組成物。
【請求項8】
動物において抗ウイルス応答を誘導するための、抗ウイルスヌクレオシドβ-D-N(4)-ヒドロキシシチジンまたはそのプロドラッグもしくは塩および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物であって、
ここで、前記動物がブタまたはネコであり、前記動物がウイルス性疾患に罹患しているかまたはかかりやすく、前記ウイルス性疾患が、ブタインフルエンザウイルス、ブタロタウイルス、ネコ感染性腹膜炎ウイルスまたはネコカリシウイルスによって引き起こされる、医薬組成物。
【請求項9】
前記抗ウイルス応答が、前記動物におけるウイルスの量が実質的に同じままである、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記抗ウイルス応答が、前記動物におけるウイルスの量が減少することである、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記抗ウイルス応答が、前記動物におけるウイルスの量が実質的に排除されることである、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項12】
ウイルス感染症を治療する方法であって、抗ウイルスヌクレオシドβ-D-N(4)-ヒドロキシシチジンまたはそのプロドラッグもしくは塩および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を動物に投与することを含み、
ここで、前記ウイルス感染が、ブタロタウイルス、ブタインフルエンザウイルス、ネコ感染性腹膜炎ウイルス(FIPV)またはネコカリシウイルスからなる群から選択される、方法。
【請求項13】
抗ウイルス性予防を提供する方法であって、抗ウイルス性ヌクレオシドβ-D-N(4)-ヒドロキシシチジンまたはそのプロドラッグもしくは塩および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を動物に投与することを含み、
ここで、前記ウイルス感染が、ブタロタウイルス、ブタインフルエンザウイルス、ネコ感染性腹膜炎ウイルス(FIPV)またはネコカリシウイルスからなる群から選択される、方法。
【請求項14】
動物におけるウイルス性疾患を予防または治療する方法であって、抗ウイルスヌクレオシドβ-D-N(4)-ヒドロキシシチジンまたはそのプロドラッグもしくは塩および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を前記動物に投与することを含み、
そしてここで、前記ウイルス性疾患がコロナウイルスによって引き起こされる、方法。
【請求項15】
前記動物がネコまたはブタである、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物におけるウイルス感染症およびウイルス疾患の治療または予防に使用するための抗ウイルスヌクレオシド化合物および医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
獣医学で使用するための抗ウイルス薬の開発は、選択性が高く副作用が少ない特定のウイルス標的を同定する必要性によって制約されてきた。その結果、獣医学的使用のための抗ウイルス薬はほとんど開発されていない。Dal Pozzo&Thiry,Rev.sci.tech.Off.int.Epiz.,2014,33(3),791-801参照。
【0003】
ブタ繁殖呼吸障害症候群(PRRS)は、2つの重複する臨床症状、繁殖動物における生殖機能障害または機能不全、および任意の年齢のブタにおける呼吸器疾患を特徴とするウイルス性疾患である。PRRSは、米国の豚生産に影響を及ぼす最も経済的に重要な疾患である。PRRSに対する具体的な治療はない。広域抗生物質は、二次感染症の制御に有用であり得る。抗炎症性製品(例えば、アスピリン)は、一般に、急性疾患中に投与される。他の有用な技術には、子豚の早期離乳および単離、様々なPRRSワクチン接種プロトコル、定期的な血清学的モニタリング、試験(ELISA、PCRおよびIFA)、ならびに感染率が10%未満でバイオセキュリティが改善した群における持続性担体の除去が含まれる。(2021年4月22日にアクセスしたSwine Manual,Iowa State University,College of Veterinary Medicine,Swine Manual,https://vetmed.iastate.edu/vdpam/FSVD/swine/index-diseases/porcine-reproductive参照)。
【0004】
「輸送熱」としても知られているウシ呼吸器疾患(BRD)は、北米の肉牛産業に影響を及ぼす最も一般的で費用のかかる疾患である。最も広い意味で、BRDは、上気道または下気道の任意の疾患を指す。ウシのBRDは、一般に、最近離乳したか、または最近肥育舎に到着した子ウシに肺炎を引き起こす肺の感染症に関連する(これがしばしば輸送熱と呼ばれる理由である)。BRDまたは輸送熱は、肥育場への到着の最初の週以内に最も流行するが、給餌期間の後半に発生する可能性があり、牧草地の子牛にも見られる。疾患を引き起こすのに必要な感染因子または病原体は、ウイルス、細菌および寄生虫として広く分類することができる。BRDを引き起こすことが知られているウイルスは、ウシヘルペスウイルス(IBR);ウシパラインフルエンザウイルス(PI-3);ウシ呼吸器合胞体ウイルス(BRSV);ウシウイルス性下痢ウイルス(BVD)およびウシコロナウイルス(BCV)である。(2019年10月2日改定、2021年4月22日アクセスした「Bovine Respiratory Disease」Beef Catle Research Council,http://www.beefresearch.ca/research-topic.cfm/bovine-respiratory-disease-38参照)。米国特許出願公開第2017/0260147号は、ウシコロナウイルスに対する活性を示すグアニジン誘導体化合物を開示している(実施例43および44参照)。β-D-N(4)-ヒドロキシシチジン(NHC)は、細胞変性ウシウイルス性下痢ウイルス(BVDV)RNAの産生を用量依存的様式で5.4μMの90%有効濃度(EC90)で阻害し、この観察はウイルス収量アッセイ(EC90=2μM)によって確認された(Stuyverら、ANTIMICROBIAL AGENTS AND CHEMOTHERAPY,Vol.47,No.1,Jan.2003,p.244-254参照)。
【0005】
ウマインフルエンザは、ほぼ世界的な分布を有するウマの一般的な、高度に伝染性の呼吸器疾患である。ウマにおけるEIV感染症の最も一般的な臨床徴候は、発熱、嗜眠、食欲不振、鼻汁および乾性咳である。死亡率は、一般に、EIV発生中は低い。死亡は、既存の健康状態が悪い仔馬またはウマ科の動物の間で最も一般的である。EIV感染症のリスクはウマ科の動物に限定されない;イヌ、ネコおよびヒトもかかりやすい。この疾患は、ワクチン接種がウイルス排出を防止しないため、ワクチン接種によって制御することが困難であることが分かっている。(Sackら EID Journal,Vol.25(6)June2019参照)。
【0006】
イヌジステンパーは、パラミクソウイルスによって引き起こされる感染性の高いウイルス性疾患である。これは世界中のイヌに見られるが、フェレット、ラクーン、スカンク、グレーフォックス、および他の多くの動物にも影響を及ぼす可能性がある。イヌジステンパーは、胃腸、呼吸器、皮膚、免疫および中枢神経系に影響を及ぼす。イヌジステンパーに対する治療法はない。ワクチン接種は、成犬および子犬の犬ジステンパーを予防するために推奨される。(2021年2月10日に改定、2021年4月23日にアクセスしたA.Flowers「Canine Distemper」,https://pets.webmd.com/dogs/canine-distemper#1参照)。
【0007】
イヌ感染性呼吸器疾患複合体(CIRDC)は、いくつかの異なる細菌性病原体およびウイルス性病原体によって引き起こされ得る疾患の症候群を指す。歴史的に、CIRDCに関連する最も一般的な病原体は、イヌパラインフルエンザウイルス(CPIV)、イヌアデノウイルス2型(CAV-2)、および気管支敗血症菌であった。イヌヘルペスウイルス-1(CHV-1)およびイヌインフルエンザウイルス(CIV)を含む新規病原体の発生が報告されている。CIRDCの徴候を有するイヌの治療は、典型的には支持療法を含む。ワクチンは、多くの一般的なCIRDC病原体に利用可能であり、曝露のリスクがあるイヌに推奨されている。しかしながら、利用可能なワクチンは殺菌免疫を伝えず、ウイルス性CIRDC病原体に利用可能な特定の治療法はない。(K.Reagan&J.Sykes,Vet Clin Small Anim.50(2020)405-418参照)。
【0008】
ネコ感染性腹膜炎(FIP)は、野生および家畜のネコに影響を及ぼすネココロナウイルスによって引き起こされるウイルス性疾患である。ネココロナウイルスは非常に一般的であり、通常、軽度の下痢を除いて重大な問題を引き起こさない。しかし、ネココロナウイルスがコロナウイルスの特定の株に変化すると、FIPが発生し得る。感染したネコの約10%では、ウイルスが増殖して変異し、ネコ感染性腹膜炎ウイルス(FIPV)として知られる感染症が生じ、ネコの身体全体に広がる。それは、腹部、腎臓、または脳の周囲の組織において極端な炎症反応を引き起こす可能性がある。FIPは伝染性ではないと考えられているが、非常に深刻な疾患である。ネコがFIPを得ると、進行性であり、ほぼ常に致命的である。FIPは、長い間、治療不可能な疾患と考えられてきた。最近まで、FIPの治療を助けるために抗ウイルス薬が導入されることはなかった。これらの薬物はまだ食品医薬品局(FDA)によって承認されておらず、それらの長期有効性は依然として不明である。FIPワクチンは入手可能であるが、有効であることは証明されておらず、米国ネコ医師ネコワクチン学会懇談会によって推奨されていない。(2021年2月12日に改定、2021年4月23日にアクセスしたhttps://pets.webmd.com/cats/cat-fip-feline-infectious-peritonitis#1参照)。ヌクレオシド類似体GS-441524は、組織培養および実験的ネコ感染症研究においてネコ感染性腹膜炎(FIP)ウイルスを強力に阻害することが見出されている。(Murphyら,Veterinary Microbiology219(2018)226-233参照)。
【0009】
ネコウイルス鼻気管炎(FVR)は、ネコヘルペスウイルス1(FeHV-1)によって引き起こされるネコの一般的な世界的な呼吸器疾患である。この疾患は、二次性細菌性肺炎またはネコカリシウイルスとの同時感染にネコを罹りやすくする肺防御機構の障害を引き起こす。ウイルスはまた、神経節に潜伏したままであり得る。FVRから回復したネコの大部分はキャリアになり、自発的にまたはストレス後にFeHV-1を排出する。かかりやすい動物、特に母体免疫の低い子猫は、病気のネコまたは担体ネコにさらされた後に感染する。鼻、結膜、咽頭、および程度は低いが気管上皮におけるFeHV-1の複製は、細胞の変性および剥離を引き起こす。(Alfonso Lopez,Shannon A.Martinson,Pathologic Basis of Veterinary Disease,Elsevier Inc.Sixth Edition,James F.Zachary,Editor,Chapter9,pp471-560,2017参照)。
【0010】
国際公開第2012/152317号は、ネコウイルス疾患の治療におけるプリンおよびピリミジンの誘導体の使用を開示している。ネコ免疫不全ウイルス(FIV)およびネコ白血病(FeLV)感染症は、8%超がFIVに感染し、14%がFeLVに感染したイエネコ(Felis cat us)で一般的である(国際公開第2012/152317号の表1を参照)。2002年から2017年まで、FIVワクチン接種が米国およびカナダで利用可能であった。しかし、このワクチンは、限定的な保護を提供し、ワクチン部位肉腫のリスクを高め、FIV抗体試験で偽陽性をもたらしたため、それ以来中止されている(2019年6月21日公開、2020年7月9日更新、2021年4月22日アクセスされたhttps://www.petmd.com/cat/care/what-fiv-and-why-fiv-vaccine-no-longer-availableのN.Stilwellによる「What is FIV and Why is the FIV Vaccine No Longer Available」参照)。
【0011】
米国特許出願公開第2015/0018427号は、ヒトまたは動物におけるパルボウイルス感染症の治療または予防のためのアマンタジンファミリーの化合物の使用を実証している。
【0012】
β-D-N(4)-ヒドロキシシチジン(NHC、1-((2R,3R,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル)-4-(ヒドロキシアミノ)ピリミジン-2(1H)-オン)は、抗ペスチウイルス活性および抗ヘパシウイルス活性を有することが分かった。Antimicrob Agents Chemother,2003,47(1):244-54.β-D-N(4)-ヒドロキシシチジン
【化1】
【0013】
誘導体およびその製造方法は、PCT国際特許出願公開番号WO2016/106050号として公開されたPCT国際特許出願第PCT/US2015/066144号、および米国特許出願公開番号US2019/0022116号として公開された米国特許出願第15/537,087号、および米国特許出願公開番号US2021-0060050A1号として公開された米国特許出願第16/921,359号に示されている。NHCは互変異性化することが知られており、(Z)-1-((2R,3R,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル)-4-(ヒドロキシイミノ)-3,4-ジヒドロピリミジン-2(1H)-オンとしても知られている。
【化2】
【0014】
国際公開第2016/106050号は、N4-ヒドロキシシチジン誘導体、組成物、ならびにウイルス感染症の治療および予防におけるそれらの使用を開示している。
【0015】
国際公開第2019/113462号は、Eastern、Western、およびVenezuelan Equine Encephalitis(それぞれEEE、WEEおよびVEE)、チクングニア熱(CHIK)、エボラ、インフルエンザ、RSV、およびジカウイルス感染症などのウイルス感染症の治療または予防に使用するための特定のN4-ヒドロキシシチジン誘導体および医薬組成物を提案している。
【0016】
β-D-N(4)-ヒドロキシシチジン(NHC)およびその誘導体を調製するための方法は、PCT国際特許出願公開番号WO2019/173602号として公開されたPCT国際特許出願番号PCT/US2019/021168号、および米国特許出願公開番号US2020-0276219A1号として公開された米国特許出願第16/755,779号に開示されている。
【0017】
動物におけるブタ繁殖呼吸障害症候群(PRRS)、ウシ呼吸器疾患(BRD)、ウマインフルエンザ、イヌジステンパー、イヌ呼吸器疾患、ネコ感染性腹膜炎、ネコウイルス鼻気管炎またはネコ免疫不全を治療または予防するために利用可能な抗ウイルス療法は限られているか、または存在しない。家畜生産者およびペットの所有者の間で、そのような治療が必要とされている。引用された参考文献のいずれも、これらの疾患の治療または予防におけるN4-ヒドロキシシチジンまたはそのプロドラッグもしくは塩の使用を開示していない。
【0018】
アデノシンヌクレオシド類似体GS-441524は、臨床的に診断された神経性ネコ感染性腹膜炎(Dickinson ら,J Vet Intern Med.2020 Jul;34(4):1587-1593.doi:10.1111/jvim.15780.Epub 2020 5月22日、PMID:32441826参照)を有するネコの抗ウイルス治療として使用されている。
【0019】
天然に存在するネコ感染性腹膜炎を有するネコの治療のためのヌクレオシド類似体GS-441524の有効性および安全性を調査した。(Pedersenら、J Feline Med Surg.2019 Apr.;21(4):271-281.doi:10.1177/1098612X19825701.Epub2019 Feb 13.PMID:30755068;PMCID:PMC6435921参照。
【0020】
ヌクレオシド類似体GS-441524は、組織培養および実験的ネコ感染症研究においてネコ感染性腹膜炎(FIP)ウイルスを強力に阻害することが見出されている。Murphyら、Vet Microbiol.2018;Jun;219:226-233.doi:10.1016/j.vetmic.2018.04.026.Epub2018 Apr22.PMID:29778200;PMCID:PMC7117434参照。
【0021】
GS-441524を含有する経口多成分薬物によるネコ感染性腹膜炎を有するネコの治療が実証されている。Krentz D、Zenger K、Alberer M、Felten S、Bergmann M、Dorsch R、Matiasek K、Kolberg L、Hofmann-Lehmann R、Meli ML、Spiri AM、Horak J、Weber S、Holicki CM、Groschup MH、Zablotski Y、Lescrinier E、Koletzko B、von Both U、Hartmann K.Curing Cats with Feline Infectious Peritonitis with Oral Multi-Component Drug Containing GS-441524.Viruses.2021年11月5日;13(11):2228.doi:10.3390/v13112228.PMID:34835034;PMCID:PMC8621566。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】米国特許出願公開第2017/0260147号
【特許文献2】国際公開第2012/152317号
【特許文献3】米国特許出願公開第2015/0018427号
【特許文献4】PCT国際特許出願公開番号WO2016/106050号
【特許文献5】米国特許出願公開番号US2019/0022116号
【特許文献6】米国特許出願公開番号US2021-0060050A1号
【特許文献7】国際公開第2016/106050号
【特許文献8】国際公開第2019/113462号
【特許文献9】PCT国際特許出願公開番号WO2019/173602号
【特許文献10】米国特許出願公開番号US2020-0276219A1号
【非特許文献】
【0023】
【非特許文献1】Dal Pozzo&Thiry,Rev.sci.tech.Off.int.Epiz.,2014,33(3),791-801
【非特許文献2】Swine Manual,Iowa State University,College of Veterinary Medicine,Swine Manual,https://vetmed.iastate.edu/vdpam/FSVD/swine/index-diseases/porcine-reproductive
【非特許文献3】「Bovine Respiratory Disease」Beef Catle Research Council,http://www.beefresearch.ca/research-topic.cfm/bovine-respiratory-disease-38
【非特許文献4】Stuyverら、ANTIMICROBIAL AGENTS AND CHEMOTHERAPY,Vol.47,No.1,Jan.2003,p.244-254
【非特許文献5】Sackら EID Journal,Vol.25(6)June2019
【非特許文献6】A.Flowers「Canine Distemper」,https://pets.webmd.com/dogs/canine-distemper#1
【非特許文献7】K.Reagan&J.Sykes,Vet Clin Small Anim.50(2020)405-418
【非特許文献8】https://pets.webmd.com/cats/cat-fip-feline-infectious-peritonitis#1
【非特許文献9】Murphyら,Veterinary Microbiology219(2018)226-233
【非特許文献10】Alfonso Lopez,Shannon A.Martinson,Pathologic Basis of Veterinary Disease,Elsevier Inc.Sixth Edition,James F.Zachary,Editor,Chapter9,pp471-560,2017
【非特許文献11】https://www.petmd.com/cat/care/what-fiv-and-why-fiv-vaccine-no-longer-availableのN.Stilwellによる「What is FIV and Why is the FIV Vaccine No Longer Available」
【非特許文献12】Antimicrob Agents Chemother,2003,47(1):244-54
【非特許文献13】Dickinsonら,J Vet Intern Med.2020 Jul;34(4):1587-1593.doi:10.1111/jvim.15780.Epub 2020 5月22日、PMID:32441826
【非特許文献14】Pedersenら、J Feline Med Surg.2019 Apr.;21(4):271-281.doi:10.1177/1098612X19825701.Epub2019 Feb 13.PMID:30755068;PMCID:PMC6435921
【非特許文献15】Murphyら、Vet Microbiol.2018;Jun;219:226-233.doi:10.1016/j.vetmic.2018.04.026.Epub2018 Apr22.PMID:29778200;PMCID:PMC7117434
【非特許文献16】Krentz D、Zenger K、Alberer M、Felten S、Bergmann M、Dorsch R、Matiasek K、Kolberg L、Hofmann-Lehmann R、Meli ML、Spiri AM、Horak J、Weber S、Holicki CM、Groschup MH、Zablotski Y、Lescrinier E、Koletzko B、von Both U、Hartmann K.Curing Cats with Feline Infectious Peritonitis with Oral Multi-Component Drug Containing GS-441524.Viruses.2021年11月5日;13(11):2228.doi:10.3390/v13112228.PMID:34835034;PMCID:PMC8621566
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
動物におけるウイルス性疾患を予防または治療する方法であって、抗ウイルスヌクレオシドβ-D-N(4)-ヒドロキシシチジン(NHC)またはそのプロドラッグもしくは塩および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を動物に投与することを含み、ここで、ウイルス性疾患が、ブタ生殖呼吸器症候群(PRRS)、ウシ呼吸器疾患(BRD)、ウマインフルエンザ、イヌジステンパー、イヌ呼吸器疾患、ネコ感染性腹膜炎、ネコウイルス性鼻気管炎またはネコ免疫不全である、方法。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】FIPV感染ネコ腎臓細胞に対するNHCの抗ウイルス用量応答曲線である。NHCは、用量依存的にウイルス誘導性細胞変性効果(CPE)に対して保護的である。
図2】ネコカリシウイルスに対するNHC活性を示す。
図3A】ブタロタウイルス株G5P7およびG9P7に対するNHCの抗ウイルス活性を示す。
図3B】ブタロタウイルス株G5P7およびG9P7に対するNHCの抗ウイルス活性を示す。
図4A】ブタインフルエンザAウイルスH3N2およびH1N1pdmに対するNHCの抗ウイルス活性を示す。
図4B】ブタインフルエンザAウイルスH3N2およびH1N1pdmに対するNHCの抗ウイルス活性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
動物におけるウイルス感染症は、動物の健康産業に大きな経済的影響を与える。これらの感染症は、伝統的に、ワクチン接種、試験および処分によって管理および予防が成功している。現在、動物におけるウイルス感染症は、抗ウイルス性小分子薬物によって標的化されていない。
【0027】
動物の健康における抗ウイルス薬の使用にはいくつかの課題がある。動物におけるウイルス感染症の治療または予防は、費用対効果が高い。これは、家畜動物(例えば、ウシ、ブタ、家禽および水産養殖)において特に当てはまる。多くの管轄区域では、感染動物の処分は、いくつかのウイルス性疾患(例えば、口蹄疫)の法的要件である。利便性は、動物健康抗ウイルス薬の別の課題である。例えば、多くの種では、ワンショット用量が前提条件であり得る。さらに、抗ウイルス薬による治療は、動物に対するワクチン接種戦略を妨げてはならない。食用動物の場合、抗ウイルス薬は、食用組織中の最小残留レベル(MRL)を確立するために投与できなければならない。最後に、抗ウイルス薬は、標的動物に対して清浄な毒性プロファイルを有し、薬物を投与するヒトに対して安全でなければならない。
【0028】
さらに別の課題は、必要とされる有効性レベルである。抗ウイルス薬はウイルス排除または治癒が可能でなければならないか?ウイルス負荷を単純に維持する必要があるか、またはウイルス性疾患を治療または予防するためにウイルス負荷を減少させる必要があるか?ある動物から別の動物への疾患の伝染を防ぐために、ウイルス排出を低減または排除すべきか?
【0029】
合成ヌクレオシド誘導体N4-ヒドロキシシチジンならびにそのプロドラッグおよび塩は、ウイルスRNA複製中に複製エラーを導入することによってそれらの抗ウイルス作用を発揮すると考えられている。上記のように、SARS、MERSおよびSARS-CoV-2を含むコロナウイルスに対する活性も実証されている。推定される作用機序(MOA)は、複製エラー率がウイルス集団を維持するために許容されるエラー閾値よりも大きい「エラーカタストロフィ」によるものである。
【0030】
合成ヌクレオシド誘導体N4-ヒドロキシシチジンならびにプロドラッグおよびその塩は、ウイルス性疾患を引き起こすウイルス感染症を治療または予防するのに有効な抗ウイルス薬であり、ウイルス性疾患は、ブタ生殖器呼吸器症候群(PRRS)、ウシ呼吸器疾患(BRD)、ウマインフルエンザ、イヌジステンパー、イヌ呼吸器疾患、ネコ感染性腹膜炎、ネコウイルス性鼻気管炎、またはネコ免疫不全であると考えられる。
【0031】
合成ヌクレオシド誘導体N4-ヒドロキシシチジンならびにプロドラッグおよびそれらの塩は、ウイルス性疾患を引き起こすウイルス感染症を治療または予防するのに有効な抗ウイルス薬であり、ウイルス性疾患は、ブタ繁殖呼吸障害症候群(PRRS)、ウシ呼吸器疾患(BRD)、イヌジステンパー、イヌ呼吸器疾患、ネコ感染性腹膜炎、ネコウイルス鼻気管炎またはネコ免疫不全であることも考えられる。
【0032】
さらに、合成ヌクレオシド誘導体N4-ヒドロキシシチジンならびにそのプロドラッグおよび塩は、動物におけるウイルス感染症のウイルス負荷を安定化または減少させるのに有効な抗ウイルス薬であり、ウイルス感染症は、ブタ繁殖呼吸障害症候群ウイルス(PRRS-1/PRRS-2)、ウシ白血病ウイルス(BLV)、ウシコロナウイルス(BCV)、ウシ呼吸器合胞体ウイルス(BRSV)、ウシロタウイルス、ウシパラインフルエンザウイルス3、ウシウイルス性下痢ウイルス(BVDV)、ウマインフルエンザウイルス、イヌジステンパーウイルス、イヌインフルエンザウイルス(CIV)、コロナウイルス科(FIPV)、ネコカリシウイルス、またはネコ免疫不全ウイルス(FIV)に由来すると考えられる。
【0033】
本明細書に記載の方法または使用はまた、上記の動物健康抗ウイルス療法の課題の1つまたは複数に対処する。具体的には、動物に投与した場合の合成ヌクレオシド誘導体N4-ヒドロキシシチジンならびにそのプロドラッグおよび塩は、動物におけるウイルス負荷を維持または低減し、動物からのウイルス排出を低減または排除する。
【0034】
これにより、ウイルスの拡散が抑制され、未治療の接触動物への伝染が阻止される。
【0035】
定義
特定の技術用語および科学用語を以下に具体的に定義する。本明細書の他の箇所で具体的に定義されない限り、本明細書で使用される他のすべての技術用語および科学用語は、本開示が関連する当業者によって一般的に理解される意味を有する。
【0036】
添付の特許請求の範囲を含めて本明細書で使用される場合、「a」、「an」、および「the」などの単語の単数形は、文脈が明らかにそうでないことを指示しない限り、それらの対応する複数の言及を含む。
【0037】
化合物の「投与」および/または「投与する」という用語は、本明細書に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、および前述の組成物を対象に提供することを含むと理解されるべきである。
【0038】
本明細書で使用される場合、「少なくとも1つの」の事項または「1つ以上の」の事項という用語はそれぞれ、リストから選択された単一の事項、ならびにリストから選択された2つ以上の事項の混合を含む。
【0039】
「薬学的に許容される担体」という用語は、治療薬の送達のための製剤での使用に適した任意の不活性物質を指す。担体は、付着防止剤、結合剤、コーティング、崩壊剤、充填剤または希釈剤、滑沢剤、保存剤(抗酸化剤、抗菌剤、抗真菌剤など)、甘味料、吸収遅延剤、湿潤剤、乳化剤、緩衝剤などであり得る。適切な薬学的に許容される担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、デキストロース、植物油(オリーブ油など)、生理食塩水、緩衝液、緩衝生理食塩水、および等張剤、例えば糖、ポリアルコール、ソルビトール、および塩化ナトリウムが挙げられる。
【0040】
動物は、ウシ(例えば、雌牛)、ブタ(例えば、豚)、羊科の動物(例えば、ヒツジ)、カプラ(例えば、ヤギ)、馬科の動物(例えば、ウマ)、イヌ科の動物(例えば、飼育犬)、猫科の動物(例えば、飼いネコ)、ウサギ科の動物(ウサギ)、齧歯動物(例えば、ラットまたはマウス)、Procyon lotor(例えば、アライグマ)からなる群から選択される1つ以上であり得る。
【0041】
本明細書で使用される場合、「治療」および「治療すること」という用語は、本明細書に記載の疾患または障害の進行の減速、中断、停止、制御、または終了があり得るすべてのプロセスを指す。これらの用語は、必ずしもすべての疾患または障害症状の完全な排除を示すものではない。
【0042】
本明細書で使用される場合、「予防(prophylaxis)」および「抗ウイルス予防(antiviral prophylaxis)」という用語は、疾患を予防することを意図したすべてのプロセスを指す。予防は、ウイルス感染症への曝露前またはウイルス感染症への潜在的曝露後に起こり得る。
【0043】
本方法で使用される治療剤および組成物は、任意の適切な経腸投与経路または非経口投与経路を介して投与することができる。「経腸経路」投与という用語は、消化管の任意の部分を介した投与を指す。経腸経路の例としては、経口、粘膜、口腔および直腸経路、または胃内経路が挙げられる。「非経口経路」の投与は、経腸経路以外の投与経路を指す。
【0044】
投与は、経口、局所、または注射経路によるものであり得る。
【0045】
薬剤の投与に関して本明細書で使用される「同時投与(simultaneous administration)」という用語は、個々の薬剤が同時に対象内に存在するような薬剤の投与を指す。(同じまたは代替の経路を介した)薬剤の同時投与(concomitant administration)に加えて、同時投与は、異なる時間での(同じまたは代替の経路を介した)薬剤の投与を含み得る。
【0046】
本明細書および特許請求の範囲を通して使用される「から本質的になる(consists essentially of)」および「から本質的になる(consist essentially of)」または「から本質的になる(consisting essentially of)」などの変形は、指定された投与計画、方法、または組成物の基本的または新規な特性を実質的に変化させない、任意の列挙された要素または要素群の包含、および列挙された要素と同様または異なる性質の他の要素の任意の包含を示す。
【0047】
実施形態が「含む(comprising)」という文言で本明細書に記載されている場合は常に、「からなる(consisting of)」および/または「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語で記載されている他の類似の実施形態も提供されることが理解される。
【0048】
そうではないと明示的に述べられていない限り、本明細書に引用されるすべての範囲は包括的であり、すなわち、範囲は、範囲の上限および下限の値、ならびにその間のすべての値を含む。すべての範囲はまた、含まれるすべての部分範囲を含むことが意図されているが、必ずしも明示的に記載されているわけではない。一例として、本明細書に記載の温度範囲、パーセンテージ、等価物の範囲などは、範囲の上限および下限、ならびにそれらの間の連続体における任意の値を含む。
【0049】
本明細書で提供される数値、および「約」という用語の使用は、±1%、±2%、±3%、±4%、±5%、および±10%の変動ならびにそれらの数値等価物を含み得る。
【0050】
数値的に定義されたパラメータ(例えば、抗ウイルスヌクレオシドの用量、または本明細書に記載の併用療法による治療時間の長さ)を修正するために使用される場合の「約」とは、パラメータが、そのパラメータについて記載された数値を10%ほど下回って、または上回って変化し得ることを意味し、適切な場合、記載されたパラメータは、最も近い整数に四捨五入されてもよい。例えば、約5mg/kgの用量は、4.5mg/kg~5.5mg/kgの間で変動し得る。さらに、本明細書で使用される「または」という用語は、適切な場合には組み合わせることができる代替物を示す。すなわち、「または」という用語は、それぞれ別々に列挙された選択肢およびそれらの組み合わせを含む。
【0051】
本明細書で使用される場合、「抗ウイルスヌクレオシド」は、抗ウイルス活性を示す任意のヌクレオシド化合物を意味する。
【0052】
本明細書で使用されるウイルス負荷は、生物、典型的には血流中のウイルスの量の測定値を意味し、通常はウイルス粒子/ミリリットルで表される。
【0053】
ウイルス排出とは、宿主細胞感染中の成功した生殖後のウイルス子孫の排除および放出を指す。
【0054】
滅菌免疫は、免疫系が、ウイルスを含む病原体が動物内で複製するのを止めることができることを意味する。
【0055】
本明細書で使用されるプロドラッグは、体内で代謝されて薬物を生成することができる生物学的に不活性な化合物を意味する。本発明のプロドラッグは、処方者に適した任意の形態を有することができ、例えば、エステル、より具体的にはアルキルエステルは、非限定的な一般的なプロドラッグ形態である。抗ウイルスヌクレオシドNHCのプロドラッグの例は、N-ヒドロキシシチジン5’-(2-メチルプロパノエート)(化合物A):
【化3】
および{(2R,3S,4R,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-[4-(ヒドロキシイミノ)-2-オキソ-3,4-ジヒドロピリミジン-1(2H)-yl]オキソラン-2-イル}メチル2-メチルプロパノアート):
【化4】
としても知られているウリジン4-オキシム5’-(2-メチルプロパノエート)(化合物B)が挙げられる。
【0056】

本発明の化合物は、薬学的に許容される塩の形態で使用することができる。当業者は、本発明の化合物が塩を形成し得る例を認識するであろう。そのような化合物の例は、可能な塩を参照して本明細書に記載されている。そのような参照は、例示のみのためのものである。
【0057】
薬学的に許容され得る塩を、患者を治療するための化合物と共に使用することができる。しかしながら、非薬学的塩は、中間化合物の調製に有用であり得る。
【0058】
「薬学的に許容される塩」という用語は、親化合物と同様の有効性を有し、生物学的にまたは他の点で望ましくない(例えば、そのレシピエントにとって毒性でも他の点でも有害でもない)ものではない塩(双性イオンなどの内部塩を含む)を指す。したがって、本発明の一実施形態は、化合物の薬学的に許容される塩の使用を提供する。本明細書で使用される「塩」という用語は、無機および/または有機酸で形成される酸性塩、ならびに無機および/または有機塩基で形成される塩基性塩のいずれかを示す。本発明の化合物の塩は、当業者に公知の方法によって、例えば、本発明の化合物を、塩が沈殿する媒体中または水性媒体中などの媒体中で当量などの量の酸または塩基と反応させ、続いて凍結乾燥することによって形成され得る。
【0059】
塩基性医薬化合物からの医薬的に有用な塩の形成に一般に適していると考えられる酸は、例えば、P.Stahlら,Camille G.(eds.),Handbook of Pharmaceutical Salts.Properties,Selection and Use.(2002)Zurich:Wiley-VCH;S.Bergeら,Journal of Pharmaceutical Sciences(1977)66(1)1-19;P.Gould,International J.of Pharmaceutics(1986)33 201-217;Anderson et al,The Practice of Medicinal Chemistry(1996),Academic Press,New York;およびThe Orange Book(Food&Drug Administration,Washington,D.C.on their website)よって論じられている。これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0060】
本開示は、本明細書で定義されるウイルス性疾患を治療する方法であって、抗ウイルスヌクレオシドNHCまたはプロドラッグもしくはその塩を含む治療を、それを必要とする動物に投与することを含む方法に関する。本開示は、ウイルス性疾患を治療する方法であって、抗ウイルスヌクレオシドNHCまたはプロドラッグもしくはその塩を含む治療を、それを必要とする対象に投与することを含む方法に関する。ここで、ウイルス性疾患が、ブタ生殖器呼吸器症候群(PRRS)、ウシ呼吸器疾患(BRD)、ウマインフルエンザ、イヌジステンパー、イヌ呼吸器疾患、ネコ感染性腹膜炎、ネコウイルス鼻気管炎またはネコ免疫不全からなる群から選択される。
【0061】
新生仔ブタ(piglets)における下痢発生の主要な原因因子としてのブタロタウイルスB。ロタウイルス(RV)は、若齢動物における急性ウイルス性胃腸炎の主な原因であると考えられている。Miyabeら,Scientifc Reports,(2020)10:22002,https://doi.org/10.1038/s41598-020-78797-y。
【0062】
ブタ(Porcine)またはブタ(swine)インフルエンザは、ブタ(pigs)においてインフルエンザの発生を定期的に引き起こすA型インフルエンザウイルスによって引き起こされるブタの呼吸器疾患である。近年、米国の豚に流行している主要な豚インフルエンザウイルスは、豚トリプルリアソータント(tr)H1N1インフルエンザウイルス、trH3N2ウイルスおよびtrH1N2ウイルスである。Centers for Disease Control and Prevention,National Center for Immunization and Respiratory Diseases(NCIRD)https://www.cdc.gov/flu/swineflu/keyfacts_pigs.htm(最終確認ページ:2014年8月19日)。
【0063】
そのようなウイルス性疾患の治療は、治療された動物における臨床徴候の減少および重篤な疾患の徴候を示す動物における死亡率の減少をもたらす。別の実施形態では、治療は臨床症状からの回復を促進する。
【0064】
本開示は、抗ウイルス性予防を提供する方法であって、抗ウイルス性ヌクレオシドNHCまたはプロドラッグもしくはその塩を含む組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む方法に関する。ここで、ウイルス性疾患が、ブタ生殖器呼吸器症候群(PRRS)、ウシ呼吸器疾患(BRD)、ウマインフルエンザ、イヌジステンパー、イヌ呼吸器疾患、ネコ感染性腹膜炎、ネコウイルス鼻気管炎またはネコ免疫不全からなる群から選択される。抗ウイルス予防法は、抗ウイルスヌクレオシドNHCまたはプロドラッグもしくはその塩がウイルス複製のピークであるがウイルス排出の開始前に投与される場合に特に有用である。
【0065】
さらに、本開示は、ウイルス感染症を治療する方法であって、抗ウイルスヌクレオシドNHCまたはプロドラッグもしくはその塩を含む治療を、それを必要とする対象に投与することを含む方法に関する。ウイルス感染症が、ブタ繁殖呼吸障害症候群ウイルス(PRRS-1/PRRS-2)、ウシ白血病ウイルス(BLV)、ウシコロナウイルス(BCV)、ウシ呼吸器合胞体ウイルス(BRSV)、ウシロタウイルス、ウシパラインフルエンザウイルス3、ウシウイルス性下痢ウイルス(BVDV)、ウマインフルエンザウイルス、イヌジステンパーウイルス、イヌインフルエンザウイルス(CIV)、コロナウイルス科(FIPV)、ネコカリシウイルス、またはネコ免疫不全ウイルス(FIV)からなる群から選択される。
【0066】
さらに、本開示は、抗ウイルス性予防を提供する方法であって、抗ウイルス性ヌクレオシドNHCまたはプロドラッグもしくはその塩を含む組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む方法に関する。ここで、ウイルス感染症が、ブタ繁殖呼吸障害症候群ウイルス(PRRS-1/PRRS-2)、ウシ白血病ウイルス(BLV)、ウシコロナウイルス(BCV)、ウシ呼吸器合胞体ウイルス(BRSV)、ウシロタウイルス、ウシパラインフルエンザウイルス3、ウシウイルス性下痢ウイルス(BVDV)、ウマインフルエンザウイルス、イヌジステンパーウイルス、イヌインフルエンザウイルス(CIV)、コロナウイルス科(FIPV)、ネコカリシウイルス、またはネコ免疫不全ウイルス(FIV)からなる群から選択される。
【0067】
治療および予防として提供される製品は、組成物中に抗ウイルスヌクレオシドNHCまたはプロドラッグもしくはその塩を含む組成物を含み得る。治療はまた、1つまたはそれを超えるさらなる治療剤を含み得る。1つ以上のさらなる活性剤は、抗ウイルスヌクレオシドと共に投与されてもよく(同時投与)、または異なる投薬形態で抗ウイルスヌクレオシドとは別に投与されてもよい。すなわち、さらなる活性剤は、抗ウイルスヌクレオシドと共に単一の投薬形態で投与されてもよく、またはさらなる活性剤は、抗ウイルスヌクレオシドを含有する投薬形態とは別個の投薬形態で投与されてもよい。本明細書に開示される治療は、限定されないが、特定の疾患または状態(例えば、ウイルス感染症)の予防、治療、制御、改善、またはリスクの低減に使用される抗ウイルス剤を含む1つまたは複数の他の活性剤と組み合わせて使用され得る。一実施形態では、本明細書に開示される抗ウイルスヌクレオシドNHCまたはプロドラッグもしくはその塩は、本明細書に開示される抗ウイルスヌクレオシドNHCまたはプロドラッグもしくはその塩が有用である特定の疾患または状態の予防、治療、制御改善、またはリスクの低減に使用するための1つ以上の他の抗ウイルス剤と組み合わせられる。そのような他の活性剤は、本開示の化合物と同時または逐次的に、経路によって、そのために一般的に使用される量で投与され得る。本明細書に開示される治療が1つ以上の他の活性剤と同時に使用される場合、抗ウイルスヌクレオシドは、1つ以上の他の活性剤と同時に、または1つ以上の他の活性剤の前もしくは後に投与され得る。抗ウイルスヌクレオシドは、別々に、同じもしくは異なる投与経路によって、または他の薬剤と同じ医薬組成物中で一緒に投与することができる。
【0068】
抗ウイルスヌクレオシドNHCまたはプロドラッグもしくはその塩の投与量は様々であり得、各薬剤の治療有効用量に依存する。一般に、それぞれの治療有効用量が使用される。少なくとも1つの抗ウイルスヌクレオシドおよび他の活性剤を含む組み合わせは、一般に、治療有効用量の各活性剤を含む。そのような組み合わせでは、本明細書に開示される抗ウイルス性ヌクレオシドおよび他の活性剤は、別々にまたは組み合わせて投与され得る。さらに、1つの要素の投与は、他の薬剤の投与前、投与と同時、または投与後であってもよい。一実施形態では、本開示は、治療における同時、別個または逐次使用のための組み合わせ調製物として、抗ウイルスヌクレオシドおよび少なくとも1つの他の活性剤を提供する。一実施形態では、治療はウイルス性疾患の治療であり、ウイルス性疾患は、ブタ生殖器呼吸器症候群(PRRS)、ウシ呼吸器疾患(BRD)、ウマインフルエンザ、イヌジステンパー、イヌ呼吸器疾患、ネコ感染性腹膜炎、ネコウイルス鼻気管炎またはネコ免疫不全からなる群から選択される。一実施形態では、治療は、ウイルス感染症への曝露前または曝露後のいずれかの、潜在的な感染症などの抗ウイルス予防であり、ウイルス感染症は、ブタ生殖呼吸器症候群(PRRS)、ウシ呼吸器疾患(BRD)、ウマインフルエンザ、イヌジステンパー、イヌ呼吸器疾患、ネコ感染性腹膜炎、ネコウイルス性鼻気管炎またはネコ免疫不全からなる群から選択される。別の実施形態では、治療はウイルス性疾患の治療であり、ウイルスは、ブタ繁殖呼吸障害症候群ウイルス(PRRS-1/PRRS-2)、ウシ白血病ウイルス(BLV)、ウシコロナウイルス(BCV)、ウシ呼吸器合胞体ウイルス(BRSV)、ウシロタウイルス、ウシパラインフルエンザウイルス3、ウシウイルス性下痢ウイルス(BVDV)、ウマインフルエンザウイルス、イヌジステンパーウイルス、イヌインフルエンザウイルス(CIV)、コロナウイルス科(FIPV)、ネコカリシウイルス、またはネコ免疫不全ウイルス(FIV)からなる群から選択される。
【0069】
さらなる活性剤は、抗ウイルス化合物、抗原、アジュバント、抗癌剤、CTLA-4アゴニスト、LAG-3アゴニスト、PD-1経路アンタゴニスト、脂質、リポソーム、ペプチド、細胞毒性薬、化学療法剤、免疫調節細胞株、チェックポイント阻害剤、血管内皮増殖因子(VEGF)受容体阻害剤、トポイソメラーゼII阻害剤、平滑化阻害剤、アルキル化剤、抗生物質、代謝拮抗物質、レチノイド、ステロイド、および限定されないが、抗ウイルスワクチンを含む免疫調節剤からなる群から選択される1つ以上の薬剤であり得る。上記のさらなる活性剤および以下に列挙されるものの説明は、重複していてもよいことが理解されよう。治療の組み合わせは最適化の対象であることも理解され、抗ウイルスヌクレオシドおよび1つ以上のさらなる活性剤の使用に対する最良の組み合わせは、個々の動物の必要性に基づいて決定されることが理解される。
【0070】
本明細書に開示される治療と組み合わせて使用され得るワクチン療法には、不活化ワクチン、生弱毒化ワクチン、組換えワクチン、複製欠損ウイルスベクターワクチン、mRNAベースのワクチン、DNAワクチン、ナノ粒子ワクチン、非複製ウイルスベクター、自己複製RNAワクチン、自己増幅RNAワクチン、タンパク質サブユニットワクチン、Ii-KeyペプチドCOVID-19ワクチン、gp96ベースのワクチン、鼻腔内ワクチン、およびmRNA脂質ナノ粒子(mRNA10 LNP)ワクチンが含まれるが、これらに限定されない。
【0071】
本開示はさらに、ウイルス性疾患を治療する方法であって、抗ウイルスヌクレオシドNHCまたはプロドラッグもしくはその塩を含む治療を、それを必要とする対象に投与することを含む方法に関する。ここで、抗ウイルスヌクレオシドは、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間または10日間など、1~10日間1日1回投与される。特定の実施形態では、抗ウイルスヌクレオシドNHCまたはプロドラッグもしくはその塩は、3日間、4日間、または5日間などの3~5日間1日1回投与される。
【0072】
本開示はさらに、ウイルス性疾患を治療する方法であって、抗ウイルスヌクレオシドNHCまたはプロドラッグもしくはその塩を含む治療を、それを必要とする対象に投与することを含む方法に関する。抗ウイルスヌクレオシドは、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間または10日間など、1~10日間1日2回投与される。特定の実施形態では、抗ウイルスヌクレオシドは、3日間、4日間または5日間など、3~5日間1日2回投与される。
【0073】
本明細書に開示される治療方法の実施形態では、抗ウイルスヌクレオシドNHCまたはプロドラッグまたはその塩は、約100mg~約1400mg、約200mg~約1200mg、約300mg~約1000mg、または約400mg~約800mgなど、約50mg~約1600mgの量の単回用量として1日1回投与される。そのような実施形態の態様では、抗ウイルスヌクレオシドNHCまたはプロドラッグもしくはその塩は、約50mg、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約1000mg、約1200mg、約1400mg、または約1600mgの量の単回用量として1日1回投与される。そのような実施形態の態様では、抗ウイルスヌクレオシドNHCまたはプロドラッグもしくはその塩は、約200mgの量の単回用量として1日1回投与される。そのような実施形態の態様では、抗ウイルスヌクレオシドは、約300mgの量の単回用量として1日1回投与される。そのような実施形態の態様では、抗ウイルスヌクレオシドは、約400mgの量の単回用量として1日1回投与される。そのような実施形態の態様では、抗ウイルスヌクレオシドは、約500mgの量の単回用量として1日1回投与される。そのような実施形態の態様では、抗ウイルスヌクレオシドは、約600mgの量の単回用量として1日1回投与される。そのような実施形態の態様では、抗ウイルスヌクレオシドは、約700mgの量の単回用量として1日1回投与される。そのような実施形態の態様では、抗ウイルスヌクレオシドNHCまたはプロドラッグもしくはその塩は、約800mgの量の単回用量として1日1回投与される。
【0074】
本明細書に開示される治療方法の実施形態では、抗ウイルスヌクレオシドNHCまたはプロドラッグまたはその塩は、約100mg~約1400mg、約200mg~約1200mg、約300mg~約1000mg、または約400mg~約800mgなど、約50mg~約1600mgの量の個々の用量として1日2回投与される。そのような実施形態の態様では、抗ウイルスヌクレオシドNHCまたはプロドラッグもしくはその塩は、約50mg、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約1000mg、約1200mg、約1400mg、または約1600mgの量の個々の用量として、1日2回投与される。そのような実施形態の態様では、抗ウイルスヌクレオシドNHCまたはプロドラッグもしくはその塩は、約200mgの量の個々の用量として1日2回投与される。そのような実施形態の態様では、抗ウイルスヌクレオシドNHCまたはプロドラッグもしくはその塩は、約300mgの量の個々の用量として1日2回投与される。そのような実施形態の態様では、抗ウイルスヌクレオシドNHCまたはプロドラッグもしくはその塩は、約400mgの量の個々の用量として1日2回投与される。そのような実施形態の態様では、抗ウイルスヌクレオシドは、約500mgの量の単回用量として1日2回投与される。そのような実施形態の態様では、抗ウイルスヌクレオシドNHCまたはプロドラッグもしくはその塩は、約600mgの量の個々の用量として1日2回投与される。そのような実施形態の態様では、抗ウイルスヌクレオシドは、約700mgの量の単回用量として1日2回投与される。そのような実施形態の態様では、抗ウイルスヌクレオシドNHCまたはプロドラッグもしくはその塩は、約800mgの量の個々の用量として1日2回投与される。
【0075】
本明細書に開示される治療方法の実施形態では、抗ウイルスヌクレオシドNHCまたはプロドラッグまたはその塩は、約1mg/kg動物体重~約500mg/kg動物体重、または約10mg/kg動物体重~約100mg/kg動物体重、または約1mg/kg動物体重~約10mg/kg動物体重、または約10mg/kg動物体重~約50mg/kg動物体重、または約20mg/kg動物体重~約40mg/kg動物体重、または約50mg/kg動物体重~約100mg/kg動物体重、または約100mg/kg動物体重~約500mg/kg動物体重の量の用量で投与される。
【0076】
本開示はさらに、抗ウイルス予防を提供する方法であって、抗ウイルス性ヌクレオシドNHCまたはプロドラッグもしくはその塩を含む治療を、それを必要とする対象に投与することを含む方法に関する。ここで、抗ウイルスヌクレオシドは、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、15日間、16日間、17日間、18日間、19日間、20日間、21日間、22日間、23日間、24日間、25日間、26日間、27日間、28日間、29日間、30日間、31日間、32日間、33日間、34日間、35日間、36日間、37日間、38日間、39日間、40日間、41日間または42日間など、1~42日間1日1回投与される。特定の実施形態では、抗ウイルスヌクレオシドNHCまたはプロドラッグもしくはその塩は、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、15日間、16日間、17日間、18日間、19日間、20日間、または21日間など、1~21日間1日1回投与される。特定の実施形態では、抗ウイルスヌクレオシドNHCまたはプロドラッグもしくはその塩は、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、または14日間など、3~14日間1日1回投与される。
【0077】
本開示はさらに、抗ウイルス予防を提供する方法であって、抗ウイルス性ヌクレオシドNHCまたはプロドラッグもしくはその塩を含む治療を、それを必要とする対象に投与することを含む方法に関する。ここで、抗ウイルスヌクレオシドは、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、15日間、16日間、17日間、18日間、19日間、20日間、21日間、22日間、23日間、24日間、25日間、26日間、27日間、28日間、29日間、30日間、31日間、32日間、33日間、34日間、35日間、36日間、37日間、38日間、39日間、40日間、41日間または42日間など、1~42日間1日2回投与される。特定の実施形態では、抗ウイルスヌクレオシドNHCまたはプロドラッグもしくはその塩は、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、15日間、16日間、17日間、18日間、19日間、20日間、または21日間など、1~21日間1日2回投与される。特定の実施形態では、抗ウイルスヌクレオシドNHCまたはプロドラッグもしくはその塩は、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、または14日間など、3~14日間1日2回投与される。
【0078】
一実施形態では、抗ウイルスヌクレオシドNHCまたはプロドラッグもしくはその塩は経口投与される。一実施形態では、抗ウイルスヌクレオシドNHCまたはプロドラッグもしくはその塩は、経口ピルまたは錠剤の形態で投与される。一実施形態では、抗ウイルスヌクレオシドNHCまたはプロドラッグもしくはその塩は、液体の形態で投与される。一実施形態では、抗ウイルスヌクレオシドNHCまたはプロドラッグもしくはその塩は、動物の飼料中に投与される。一実施形態では、抗ウイルスヌクレオシドNHCまたはプロドラッグもしくはその塩は、動物の飲料水中に投与される。一実施形態では、抗ウイルスヌクレオシドNHCまたはプロドラッグもしくはその塩は局所投与される。一実施形態では、抗ウイルスヌクレオシドNHCまたはプロドラッグもしくはその塩は、口腔組織に投与される。一実施形態では、抗ウイルスヌクレオシドNHCまたはプロドラッグもしくはその塩は、鼻腔スプレーの形態で投与される。一実施形態では、抗ウイルスヌクレオシドNHCまたはプロドラッグもしくはその塩は、注射によって投与される。一実施形態では、抗ウイルスヌクレオシドNHCまたはプロドラッグもしくはその塩は、インプラントの形態で投与される。一実施形態では、抗ウイルスヌクレオシドNHCまたはプロドラッグもしくはその塩は、動物の眼に投与される。一実施形態では、抗ウイルスヌクレオシドNHCまたはプロドラッグもしくはその塩は、動物の耳に投与される。
【0079】
一実施形態では、抗ウイルスヌクレオシドNHCまたはプロドラッグもしくはその塩は、一部の感染動物および一部の非感染動物を含む動物の群または集合のすべての動物に投与される。一実施形態では、抗ウイルスヌクレオシドNHCまたはプロドラッグもしくはその塩は、ウイルスに曝露されたかまたは潜在的に曝露されたが、ウイルス性疾患の症状はまだ発症していない動物に投与される。
【0080】
本発明の一実施形態は、動物におけるウイルス性疾患を予防または治療する方法であって、抗ウイルスヌクレオシドβ-D-N(4)-ヒドロキシシチジンまたはそのプロドラッグもしくは塩および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を動物に投与することを含み、ウイルス性疾患が、ブタ生殖呼吸器症候群(PRRS)、ウシ呼吸器疾患(BRD)、ウマインフルエンザ、イヌジステンパー、イヌ呼吸器疾患、ネコ感染性腹膜炎、ネコウイルス性鼻気管炎またはネコ免疫不全である方法である。
【0081】
別の実施形態では、投与は、経口、局所、または注射によるものである。
【0082】
別の実施形態では、動物はブタであり、疾患はブタ繁殖呼吸障害症候群(PRRS)である。別の実施形態では、動物はウシ科動物であり、疾患はウシ呼吸器疾患(BRD)である。別の実施形態では、動物はウマであり、疾患はウマインフルエンザである。別の実施形態では、動物はイヌであり、疾患はイヌジステンパーまたはイヌ呼吸器疾患である。別の実施形態では、動物はネコであり、疾患はネコ感染性腹膜炎、ネコウイルス鼻気管炎またはネコ免疫不全症である。
【0083】
別の実施形態では、医薬組成物は、単回用量で、または複数回投与される複数回用量で投与される。
【0084】
代替実施形態は、動物におけるウイルス性疾患を予防または治療する方法であって、β-D-N(4)-ヒドロキシシチジンまたはそのプロドラッグもしくは塩および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を動物に投与することを含み、ウイルス性疾患が動物におけるSARS-CoV-2感染症に起因し、動物がブタ、ウシ、ウマ、イヌまたはネコである方法である。
【0085】
別の実施形態では、動物への医薬組成物の投与は、動物のワクチン接種戦略を妨害しない。
【0086】
代替的な実施形態は、抗ウイルスヌクレオシドβ-D-N(4)-ヒドロキシシチジンまたはそのプロドラッグもしくは塩および動物において抗ウイルス応答を誘導するための薬学的に許容される担体を含む医薬組成物であって、動物が、ブタ、ウシ、ウマ、イヌまたはネコであり、動物がウイルス性疾患に罹患しているかまたはウイルス性疾患にかかりやすく、ウイルス性疾患が、ブタ繁殖呼吸障害症候群(PRRS)、ウシ呼吸器疾患(BRD)、ウマインフルエンザ、イヌジステンパー、イヌ呼吸器疾患、ネコ感染性腹膜炎、ネコウイルス性鼻気管炎またはネコ免疫不全症である、医薬組成物である。
【0087】
別の実施形態では、動物はブタであり、疾患はブタ繁殖呼吸障害症候群(PRRS)である。別の実施形態では、動物はウシ科動物であり、疾患はウシ呼吸器疾患(BRD)である。別の実施形態では、動物はウマであり、疾患はウマインフルエンザである。別の実施形態では、動物はイヌであり、疾患はイヌジステンパーまたはイヌ呼吸器疾患である。別の実施形態では、動物はネコであり、疾患はネコ感染性腹膜炎、ネコウイルス鼻気管炎またはネコ免疫不全症である。
【0088】
別の実施形態では、抗ウイルス応答は、動物中のウイルスの量が実質的に同じままであることである。
【0089】
別の実施形態では、抗ウイルス応答は、動物のウイルス負荷が減少することである。
【0090】
別の実施形態では、抗ウイルス応答は、動物のウイルス負荷が実質的に排除されることである。
【0091】
別の実施形態では、投与は経口である。
【0092】
別の実施形態では、経口投与は、錠剤または液体の形態である。
【0093】
別の実施形態では、経口投与は動物の飲料水中で行われる。
【0094】
別の実施形態では、経口投与は動物の飼料中で行われる。
【0095】
別の実施形態では、投与は局所的である。
【0096】
別の実施形態では、投与は注射によるものである。
【0097】
代替の実施形態は、ウイルス感染症を治療する方法であり、抗ウイルスヌクレオシドβ-D-N(4)-ヒドロキシシチジンまたはそのプロドラッグもしくは塩および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を動物に投与することを含む。ここで、ウイルス感染が、ブタ繁殖呼吸障害症候群ウイルス(PRRS-1/PRRS-2)、ウシ白血病ウイルス(BLV)、ウシコロナウイルス(BCV)、ウシ呼吸器合胞体ウイルス(BRSV)、ウシロタウイルス、ウシパラインフルエンザウイルス3、ウシウイルス性下痢ウイルス(BVDV)、ウマインフルエンザウイルス、イヌジステンパーウイルス、イヌインフルエンザウイルス(CIV)、コロナウイルス科(FIPV)、ネコカリシウイルス、またはネコ免疫不全ウイルス(FIV)からなる群から選択される。
【0098】
代替の実施形態は、ウイルス感染症を治療する方法であり、抗ウイルスヌクレオシドβ-D-N(4)-ヒドロキシシチジンまたはそのプロドラッグもしくは塩および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を動物に投与することを含む。ここで、ウイルス感染症は、ブタ繁殖呼吸障害症候群ウイルス(PRRS-1/PRRS-2)、ウシ白血病ウイルス(BLV)、ウシコロナウイルス(BCV)、ウシ呼吸器合胞体ウイルス(BRSV)、ウシロタウイルス、ウシパラインフルエンザウイルス3、ウシウイルス性下痢ウイルス(BVDV)、ウシインフルエンザウイルス、イヌジステンパーウイルス、コロナウイルス科(FIPV)、ネコカリシウイルス、またはネコ免疫不全ウイルス(FIV)からなる群から選択される。
【0099】
別の実施形態では、ウイルス感染症は、ブタ繁殖呼吸障害症候群ウイルス(PRRS-1/PRRS-2)である。別の実施形態では、ウイルス感染症は、ウシ白血病ウイルス(BLV)である。別の実施形態では、ウイルス感染症はウシコロナウイルス(BCV)である。別の実施形態では、ウイルス感染症は、ウシ呼吸器合胞体ウイルス(BRSV)である。別の実施形態では、ウイルス感染症は、ウシロタウイルスである。別の実施形態では、ウイルス感染症はウシパラインフルエンザウイルス3である。別の実施形態では、ウイルス感染症は、ウシウイルス性下痢ウイルス(BVDV)である。別の実施形態では、ウイルス感染症は、ウマインフルエンザウイルスである。別の実施形態では、ウイルス感染症はイヌジステンパーウイルスである。別の実施形態では、ウイルス感染症は、イヌインフルエンザウイルス(CIV)である。別の実施形態では、ウイルス感染症は、コロナウイルス科(FIPV)である。別の実施形態では、ウイルス感染症はネコカリシウイルスである。別の実施形態では、ウイルス感染症はネコ免疫不全ウイルス(FIV)である。
【0100】
代替の実施形態は、抗ウイルス予防を提供する方法であり、抗ウイルスヌクレオシドβ-D-N(4)-ヒドロキシシチジンまたはそのプロドラッグもしくは塩および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を動物に投与することを含む。ここで、ウイルス感染症が、ブタ繁殖呼吸障害症候群ウイルス(PRRS-1/PRRS-2)、ウシ白血病ウイルス(BLV)、ウシコロナウイルス(BCV)、ウシ呼吸器合胞体ウイルス(BRSV)、ウシロタウイルス、ウシパラインフルエンザウイルス3、ウシウイルス性下痢ウイルス(BVDV)、ウマインフルエンザウイルス、イヌジステンパーウイルス、イヌインフルエンザウイルス(CIV)、コロナウイルス科(FIPV)、ネコカリシウイルス、またはネコ免疫不全ウイルス(FIV)からなる群から選択される。
【0101】
別の実施形態は、抗ウイルス予防を提供する方法であって、抗ウイルス性ヌクレオシドβ-D-N(4)-ヒドロキシシチジンまたはそのプロドラッグもしくは塩および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を動物に投与することを含む方法である。ここで、ウイルス感染症は、呼吸器系または上気道を介して伝播される。別の実施形態では、ウイルス感染症は、空気を介して伝播される感染症である。さらに別の実施形態では、ウイルス性疾患は消化管を介して伝達される。
【0102】
別の実施形態では、ウイルス感染症は、ブタ繁殖呼吸障害症候群ウイルス(PRRS-1/PRRS-2)である。別の実施形態では、ウイルス感染症は、ウシ白血病ウイルス(BLV)である。別の実施形態では、ウイルス感染症はウシコロナウイルス(BCV)である。別の実施形態では、ウイルス感染症は、ウシ呼吸器合胞体ウイルス(BRSV)である。別の実施形態では、ウイルス感染症は、ウシロタウイルスである。別の実施形態では、ウイルス感染症はウシパラインフルエンザウイルス3である。別の実施形態では、ウイルス感染症は、ウシウイルス性下痢ウイルス(BVDV)である。別の実施形態では、ウイルス感染症は、ウマインフルエンザウイルスである。別の実施形態では、ウイルス感染症はイヌジステンパーウイルスである。別の実施形態では、ウイルス感染症は、イヌインフルエンザウイルス(CIV)である。別の実施形態では、ウイルス感染症は、コロナウイルス科(FIPV)である。別の実施形態では、ウイルス感染症はネコカリシウイルスである。別の実施形態では、ウイルス感染症はネコ免疫不全ウイルス(FIV)である。
【0103】
本発明の実施形態は、動物におけるウイルス性疾患を予防または治療する方法であって、抗ウイルスヌクレオシドβ-D-N(4)-ヒドロキシシチジンまたはそのプロドラッグもしくは塩および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を動物に投与することを含み、ウイルス性疾患が動物におけるRNAウイルス感染症に起因する方法である。
【0104】
別の実施形態では、動物は、ブタ、ウシ、ウマ、イヌまたはネコである。
【0105】
別の実施形態では、動物はブタであり、疾患はブタ繁殖呼吸障害症候群(PRRS)である。
【0106】
別の実施形態では、動物はウシ科動物であり、疾患はウシ呼吸器疾患(BRD)である。
【0107】
別の実施形態では、動物はウマであり、疾患はウマインフルエンザである。
【0108】
別の実施形態では、動物はイヌであり、疾患はイヌジステンパーまたはイヌ呼吸器疾患である。
【0109】
別の実施形態では、動物はネコであり、疾患はネコ感染性腹膜炎、ネコウイルス鼻気管炎またはネコ免疫不全症である。
【0110】
別の実施形態では、RNAウイルスは一本鎖RNA(ssRNA)ウイルスである。
【0111】
別の実施形態では、RNAウイルスは二本鎖RNA(dsRNA)ウイルスである。
【0112】
別の実施形態では、RNAウイルスはプラス鎖RNAウイルスである。
【0113】
別の実施形態では、プラス鎖RNAウイルスは、アルテリウイルス科、アストロウイルス科、カリシウイルス科、コロナウイルス科、フラビウイルス科、ヘペウイルス科、ノダウイルス科、ピコルナウイルス科、トロウイルス科またはトガウイルス科である。
【0114】
別の実施形態では、RNAウイルスは、マイナス鎖RNAウイルスである。
【0115】
別の実施形態では、RNAウイルスは、アンビセンスRNAウイルスである。
【0116】
別の実施形態では、マイナス鎖RNAウイルスは、アレナウイルス科、ボルナウイルス科、ブニウイルス科、フィロウイルス科、ナイマウイルス科、オルトミクソウイルス科、パラミクソウイルス科、ニューモウイルス科、またはラブドウイルス科である。
【0117】
本発明の一実施形態は、動物におけるウイルス性疾患を予防または治療する方法であって、抗ウイルスヌクレオシドβ-D-N(4)-ヒドロキシシチジンまたはそのプロドラッグもしくは塩および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を動物に投与することを含み、ウイルス性疾患が、ブタインフルエンザウイルス、ブタロタウイルス、ネコ感染性腹膜炎ウイルス(FIPV)またはネコカリシウイルスによって引き起こされる、方法。
【0118】
別の実施形態では、投与は、経口、局所または注射経路、好ましくは経口によるものである。
【0119】
好ましい実施形態では、動物はブタであり、疾患はブタインフルエンザウイルスまたはブタロタウイルスによって引き起こされる。
【0120】
好ましい実施形態では、動物はブタであり、疾患はブタインフルエンザウイルスによって引き起こされる。
【0121】
好ましい実施形態では、動物はブタであり、疾患はブタロタウイルスによって引き起こされる。
【0122】
好ましい実施形態では、動物はネコであり、疾患はネコ感染性腹膜炎ウイルスまたはネコカリシウイルスによって引き起こされる。
【0123】
好ましい実施形態では、動物はネコであり、疾患はネコ感染性腹膜炎ウイルスによって引き起こされる。
【0124】
好ましい実施形態では、動物はネコであり、疾患はネコカリシウイルスによって引き起こされる。
【0125】
別の実施形態では、医薬組成物は、単回用量で、または複数回投与される複数回用量で投与される。
【0126】
本発明の別の実施形態は、動物におけるウイルス性疾患を予防または治療する方法であって、β-D-N(4)-ヒドロキシシチジンまたはそのプロドラッグもしくは塩および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を動物に投与することを含み、ウイルス性疾患が動物におけるSARS-CoV-2感染症に起因し、動物がブタ、ウシ、ウマ、イヌまたはネコである方法である。
【0127】
本発明の別の実施形態は、動物におけるウイルス性疾患の予防または治療に使用するための、抗ウイルスヌクレオシドβ-D-N(4)-ヒドロキシシチジンまたはそのプロドラッグもしくは塩および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物であって、動物がブタまたはネコであり、動物が、ブタインフルエンザウイルス、ブタロタウイルス、ウイルスネコ感染性腹膜炎ウイルス、またはネコカリシウイルスによって引き起こされるウイルス性疾患に罹患しているか、またはウイルス性疾患にかかりやすい医薬組成物である。
【0128】
本発明の別の実施形態は、動物において抗ウイルス応答を誘導するための、抗ウイルスヌクレオシドβ-D-N(4)-ヒドロキシシチジンまたはそのプロドラッグもしくは塩および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物であって、動物がブタまたはネコであり、動物がウイルス性疾患に罹患しているか、またはウイルス性疾患にかかりやすく、ウイルス性疾患が、ブタインフルエンザウイルス、ブタロタウイルス、ネコ感染性腹膜炎ウイルスまたはネコカリシウイルスによって引き起こされる、医薬組成物である。
【0129】
別の実施形態では、抗ウイルス応答は、動物中のウイルスの量が実質的に同じままであることである。
【0130】
別の実施形態では、抗ウイルス応答は、動物におけるウイルスの量が減少することである。
【0131】
別の実施形態では、抗ウイルス応答は、動物におけるウイルス量が実質的に排除されることである。
【0132】
本発明の別の実施形態は、ウイルス感染症を治療する方法であって、抗ウイルスヌクレオシドβ-D-N(4)-ヒドロキシシチジンまたはそのプロドラッグもしくは塩および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を動物に投与することを含む方法である。ここで、ウイルス感染症が、ブタロタウイルス、ブタインフルエンザウイルス、ネコ感染性腹膜炎ウイルス(FIPV)またはネコカリシウイルスからなる群から選択される。
【0133】
本発明の別の実施形態は、抗ウイルス性予防を提供する方法であって、抗ウイルス性ヌクレオシドβ-D-N(4)-ヒドロキシシチジンまたはそのプロドラッグもしくは塩および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を動物に投与することを含む方法である。ここで、ウイルス感染が、ブタロタウイルス、ブタインフルエンザウイルス、ネコ感染性腹膜炎ウイルス(FIPV)またはネコカリシウイルスからなる群から選択される。
【0134】
本発明の別の実施形態は、動物におけるウイルス性疾患を予防または治療する方法であって、抗ウイルスヌクレオシドβ-D-N(4)-ヒドロキシシチジンまたはそのプロドラッグもしくは塩および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を動物に投与することを含み、ウイルス性疾患がコロナウイルスによって引き起こされる方法である。
【0135】
別の実施形態では、動物はネコ(Feline)またはブタ(Porcine)である。
【0136】
ブタ(Porcine)とは、ブタ(pig)またはブタ(swine)と関係があることを意味する。
【0137】
ネコ(Feline)とは、ネコ(cat)またはネコ科の他のメンバーと関係があることを意味する。
【0138】
本開示のさらなる実施形態は、上記の医薬組成物、組み合わせ、使用および方法を含み、そのような組み合わせが実施形態の説明と一致する限り、各実施形態を1つまたは複数の他の実施形態と組み合わせることができることを理解されたい。上記で提供された実施形態は、実施形態の組み合わせから生じるような実施形態を含めて、すべての実施形態を含むとさらに理解されたい。
【0139】
[実施例]
[実施例1]
クランデル-リーズネコ腎臓(CrFK)細胞におけるネコ感染性腹膜炎ウイルス(FIPV)のCPE抗ウイルスアッセイ
クランデル-リーズネコ腎臓(CRFK、ATCC CCL-94)細胞を、2%FBS、GlutaMax、D-グルコース、ピルビン酸Na、非必須アミノ酸およびペンシリン/ストレプトマイシンを含有するDMEM培地で培養した。トリプシン処理によるウイルス感染について細胞を回収した。50mlのCRFK細胞(1.5×10細胞/ml)をネコ感染性腹膜炎(FIPV)株79-1146に感染させた。感染の条件を、感染の4日後のCPEアッセイウィンドウについて最適化した。FIPV感染CRFK細胞を、最終濃度10μMから0.000508μMまで連続1/3希釈でNHC化合物と混合した。その後、各希釈物を96ウェルプレート(Costar3903または3904)に100μl/ウェルで反復してプレーティングした。細胞を、加湿インキュベーター中、37°C、5%COで96時間インキュベートした。細胞変性効果(CPE)を、Tecan Infinite M1000 PROプレートリーダーにおいてCellTiterGlo Luminescent Cell Viability Assay(Promega)を製造者のプロトコルに従って使用して決定した。FIVP複製を50%減少させるNHCの有効濃度(EC50)を、GraphPad Prism8を使用して4パラメータ非線形回帰モデルにおいて計算した。
【0140】
この試験の結果は、CRFK細胞においてFIPウイルスを効果的に阻害するNHCの濃度を示す。以下の図1および表1を参照されたい。
【表1】
【0141】
MK-0608は、インビトロでのHCV複製の強力かつ経口的に生物学的に利用可能な阻害剤である(Carrollら,ANTIMICROBIAL AGENTS AND CHEMOTHERAPY,Mar.2009,p.926-934)。
【0142】
GC-376は、様々な形態の後天性ネコ感染性腹膜炎を治療することが知られている3C様プロテアーゼ阻害剤である(Pedersenら J.of Feline Med Surg.2018 Apr;20(4):378-392)。
【0143】
レムデシビルは、アデノシン三リン酸(ATP)類似体のプロドラッグであり、様々なRNAウイルスに対して潜在的な抗ウイルス活性を有する。https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Remdesivirから2021年7月21日から検索されたAPA National Center for Biotechnology Information(2021).PubChem Compound Summary for CID121304016,Remdesivir.Retrieved。
【0144】
NHCはβ-D-N(4)-ヒドロキシシチジンであり、上に記載されている。
【0145】
[実施例2]
ネコカリシウイルス(FCV)に対するNHCのCrFK細胞ベースの抗ウイルス活性
5%FCSおよび0.15%NaHCOを2×10細胞/mlの密度で補充した100μl/ウェルのM6B8培地中の96ウェルプレート(Greinerカタログ番号655090)で増殖させたクランデル-リーズネコ腎臓(CrFK)細胞の単層を、ネコカリシウイルス(FCV)野生株255に感染多重度0.01および0.001で感染させた。NHCを1/3連続希釈で感染細胞に添加して、10μM~0.000508μMの試験濃度範囲を得て、培養物を37°Cおよび5%COで最大48時間インキュベートした。ウイルス複製の程度を、CellTiterGlo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assay(Promegaカタログ番号G7571)を使用して、室温に30分間平衡化した培養プレートに試薬1:1(v/v)を添加することによって、FCV誘導性細胞変性効果(CPE)の程度を決定することによって評価した。プレートを室温で10分間インキュベートし、続いてBiotek Cytation5で発光を読み取った。FCV複製を50%減少させたNHCの有効濃度(EC50)を、GraphPad Prism8を使用して4パラメータ非線形回帰モデルにおいて計算した。ネコカリシウイルスに対するNHCのED50は3.8μMである(図2)。
【0146】
[実施例3]
β-D-N(4)-ヒドロキシシチジン(NHC)の抗ブタロタウイルス活性
ブタロタウイルスに対するNHCの抗ロタウイルス活性を、細胞培養に基づくアッセイで試験した。MA-104(アカゲザル腎臓組織)細胞を培養し、標準的な手順に従って回収した。収集したMA-104細胞懸濁液を、96ウェルプレート(Greiner CELLSTAR(登録商標)ブラック、Sigma-Aldrich(登録商標)M0562)に、5%FBSを含む200μl/ウェルのM6B8培地中に3×10細胞/mLの密度で播種した。4日間の培養後、単層を洗浄し、血清型G5P7(ATCC、VR-892)またはG9P7株(MAH Worthington、米国)の100μl/ウェルの3630TCID50/mLブタロタウイルスA株を添加することによって、細胞をロタウイルスAに感染させた。感染の1時間後、NHCを1/3連続希釈で添加して、270μM~123nMの試験濃度範囲を得て、細胞を37°C、5%CO下で3日間培養した。NHCによるロタウイルスA株の複製阻害を、マウス抗ロタウイルスA株特異的モノクローナル抗体(Ingenasa、#1JF10)を使用して定量し、その後、免疫蛍光アッセイにおいてFITC蛍光色素共役ヤギ抗マウス抗体(Nordic)およびDAPI(Sigma Aldrich)核染色を使用して定量した。Cytation5細胞イメージングマルチモードリーダーおよびGen5ソフトウェアバージョン3.10(Agilent BioTek)を使用して、485nm励起および528nm発光での相対蛍光単位(RFU)として免疫蛍光の程度を定量した。ロタウイルス複製を50%減少させるNHCの阻害濃度(IC50)を、GraphPad Prism8を使用した4パラメータ非線形回帰モデルによって計算した。結果は、NHCがブタロタウイルス株G5P7およびG9P7の複製を阻害することができることを実証している。ブタロタウイルスの複製が半減するNHCの有効濃度(EC50)は、G5P7株について2.6μMであり(図3a)、G9P7株については1.9μMである(図3b)。
【0147】
[実施例4]
β-D-N(4)-ヒドロキシシチジン(NHC)の抗ブタインフルエンザウイルスA活性
ブタインフルエンザウイルスに対するNHCの抗ウイルス活性を細胞培養に基づくアッセイで試験した。MDCK(Madin-Darbyイヌ腎臓)細胞懸濁液を、6×10細胞/mLの密度で、5%FBSを含む200μl/ウェルDMEM培地中の96ウェルプレート(Greiner CELLSTAR(登録商標)ブラック、Sigma-Aldrich(登録商標)M0562)に播種した。培養3日後、単層を洗浄し、100μl/ウェルの5000TCID50/mLの株A/ブタ/MN/A01483170/2014(H1N1pdm)または2500TCID50/mLの株A/ブタ/ベルギー/113/2013(H3N2)を添加し、ブタインフルエンザウイルス(SIV)を感染させた。感染の1時間後、NHCを1/3連続希釈で添加して、270μM~123nMの試験濃度範囲を得て、細胞を37°C、5%CO下で1日間培養した。NHCによるSIV株の複製阻害を、マウス抗SIVウイルス特異的モノクローナル抗体(MSD AH、#HB-65)、引き続いてAlexa Fluor488蛍光色素共役ヤギ抗マウス抗体(Invitrogen)およびDAPI(Sigma Aldrich)核染色を用いて免疫蛍光アッセイで定量した。Cytation5細胞イメージングマルチモードリーダーおよびGen5ソフトウェアバージョン3.10(Agilent BioTek)を使用して、488nm励起および525nm発光での相対蛍光単位(RFU)として免疫蛍光の程度を画像化しおよび定量した。SIV複製を50%減少させるNHCの有効濃度(EC50)を、GraphPad Prism8を使用して4パラメータ非線形回帰モデルにおいて計算した。ブタインフルエンザウイルスの複製が半減するNHCの有効濃度(EC50)は、H3N2株については1.3μMであり(図4a)、H1N1pdm株については5.2μMである(図4b)。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
【国際調査報告】