(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】核酸医薬の徐放性能の強化方法
(51)【国際特許分類】
A61K 47/54 20170101AFI20240719BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240719BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20240719BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20240719BHJP
A61K 31/711 20060101ALI20240719BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240719BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240719BHJP
C12N 15/10 20060101ALN20240719BHJP
【FI】
A61K47/54
A61K31/7088
A61K31/713
A61K31/7105
A61K31/711
A61K48/00
A61P43/00 105
C12N15/10 Z ZNA
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506876
(86)(22)【出願日】2022-07-29
(85)【翻訳文提出日】2024-03-29
(86)【国際出願番号】 CN2022109084
(87)【国際公開番号】W WO2023011360
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】202110883137.6
(32)【優先日】2021-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524045286
【氏名又は名称】エルエヌシーティーエーシー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LNCTAC CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201732
【氏名又は名称】松縄 正登
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【氏名又は名称】伊佐治 創
(74)【代理人】
【識別番号】100227019
【氏名又は名称】安 修央
(72)【発明者】
【氏名】宋 旭
(72)【発明者】
【氏名】▲趙▼ 永云
(72)【発明者】
【氏名】袁 ▲徳▼雨
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ ▲暁▼霞
(72)【発明者】
【氏名】▲曾▼ 秒
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA94
4C076CC41
4C076EE30
4C076EE59
4C076FF31
4C084AA13
4C084NA12
4C084ZB21
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA12
4C086ZB21
(57)【要約】
本発明は、核酸医薬の徐放性能の強化方法に関する。本発明の方法は、核酸医薬の5’末端および/または3’末端、および/または核酸医薬の内部に特定の配列のDNAまたはRNAを付加する工程を含む。核酸医薬の徐放性能の強化は、核酸医薬のin vivoでの徐放時間を遅らせ、核酸医薬のin vivoでの作用時間を増加させることを指す。前記特定の配列のDNAまたはRNAはグアニン四重鎖であり、前記グアニン四重鎖の構造はGx1Ny1Gx2Ny2Gx3Ny3Gx4を含有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸医薬の5’末端および/または3’末端、および/または核酸医薬の内部に特定の配列のDNAまたはRNAを付加する工程を含み、
核酸医薬の徐放性能の強化は核酸医薬の徐放時間を
in vivoで2日より長く延長し核酸医薬の作用時間を
in vivoで2日より長く増加させることを意味し、
前記核酸医薬の徐放時間を
in vivoで2~20日に延長し前記核酸医薬の作用時間を
in vivoで2~20日に増加させることが好ましい核酸医薬の徐放性能の強化方法。
【請求項2】
前記核酸医薬は無修飾核酸医薬または化学修飾核酸医薬であってもよい請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記核酸医薬の配列の長さは8nt以上であり、好ましくは8~5000ntであり、より好ましくは8~2000ntであり、最も好ましくは8~1000ntである請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記核酸医薬は一本鎖DNA医薬、二本鎖DNA医薬、一本鎖RNA医薬、二本鎖RNA医薬、または核酸類縁体であり、
好ましくは前記核酸医薬はRNA核酸アプタマー、mRNA,ncRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチドASO、DNA核酸アプタマー、またはその他のDNA医薬であり、
前記ncRNAはmiRNA、siRNA、shRNA、saRNA、sgRNA、piRNA、lncRNA、circRNA、またはその他の調節性RNAである請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記特定の配列のDNAまたはRNAは連続G塩基が間隔を空けて現れているDNAまたはRNAであり、前記連続G塩基は2~10のグアニンの繰り返し塩基であり、前記連続G塩基の間隔の数は4~16であり、間隔を空けて現れている各連続G塩基におけるG塩基の繰り返しの数は同じであっても異なっていても良く、
好ましくは前記特定の配列のDNAまたはRNAはさらに、Gを含むまたはGを含まない1~6の任意の塩基の配列である、間隔を空けて現れているスペーサー配列を含有し、前記スペーサー配列の間隔の数は3~15であり、間隔を空けて現れている各スペーサー配列は同じであっても異なっていてもよい請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記特定の配列のDNAまたはRNAはグアニン四重鎖であり、
前記グアニン四重鎖の配合はGx
1Ny
1Gx
2Ny
2Gx
3Ny
3Gx
4を含み、
Gはグアニンを表し、
x1~x4はそれぞれ独立して2~10から選択された整数、好ましくは3~5から選択された整数、最も好ましくは3であり、
Nはそれぞれ独立して任意の塩基(A,C、T、U)、好ましくはTまたはUを表し、
y1~y3はそれぞれ独立して1~10から選択された整数、好ましくは1~6から選択された整数、より好ましくは1~3から選択された整数であり、
好ましくは前記グアニン四重鎖は、
、または
である請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記特定の配列のDNAまたはRNAは無修飾または化学修飾配列であり、好ましくは前記化学修飾の配列は、
であり、
*はホスホロチオエート結合を表し、MOEはリボースの2’位におけるヒドロキシル基(-OH)がメトキシエチルと置換されていることを表す請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記特定の配列のDNAまたはRNAと核酸医薬との関係が、
特定の配列のDNAがDNA医薬を徐放するか、特定の配列のDNAがRNA医薬を徐放するか、特定の配列のRNAがDNA医薬を徐放するか、または特定の配列のRNAがRNA医薬を徐放することであり、
好ましくは前記特定の配列のDNAがDNA医薬と結合してその徐放性能を強化するか、または前記特定の配列のRNAがRNA医薬と結合してその徐放性能を強化することである請求項5に記載の方法。
【請求項9】
強化された徐放性能は核酸医薬の徐放時間を
in vivoで2日より長く延長し核酸医薬の作用時間を
in vivoで2日より長く増加させることを意味し、核酸医薬の徐放時間を
in vivoで2~20日に延長し核酸医薬の作用時間を
in vivoで2~20日に増加させることが好ましい、徐放性能が強化された核酸医薬の調製におけるグアニン四重鎖の使用。
【請求項10】
グアニン四重鎖の配合はGx
1Ny
1Gx
2Ny
2Gx
3Ny
3Gx
4を含み、
Gはグアニンを表し、
x1~x4はそれぞれ独立して2~10から選択された整数、好ましくは3~5から選択された整数、最も好ましくは3であり、
Nはそれぞれ独立して任意の塩基(A,C、T、U)、好ましくはTまたはUを表し、
y1~y3はそれぞれ独立して1~10から選択された整数、好ましくは1~6から選択された整数、より好ましくは1~3から選択された整数であり、
好ましくは前記グアニン四重鎖は、
、または
である請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記グアニン四重鎖におけるヌクレオチドは化学修飾されており、
好ましくは前記化学修飾グアニン四重鎖は、
であり、
*はホスホロチオエート結合を表し、MOEはリボースの2’位におけるヒドロキシル基(-OH)がメトキシエチルと置換されていることを表す請求項10に記載の使用。
【請求項12】
PCSK0をノックダウンしLDLを抑制する、グアニン四重鎖含有の核酸医薬であって、
前記核酸医薬は両末端に一つ以上のグアニン四重鎖が修飾されたASOであり、
(1) 前記グアニン四重鎖はGx
1Ny
1Gx
2Ny
2Gx
3Ny
3Gx
4を含む配合の核酸フラグメントであり、
Gはグアニンを表し、
x1~x4はそれぞれ独立して2~10から選択された整数、好ましくは3~5から選択された整数、最も好ましくは3であり、
Nはそれぞれ独立して任意の塩基(A,C、T、U)、好ましくはTまたはUを表し、
y1~y3はそれぞれ独立して1~10から選択された整数、好ましくは1~6から選択された整数、より好ましくは1~3から選択された整数であり、
好ましくは前記グアニン四重鎖は、
、または
であり、
さらに前記グアニン四重鎖のヌクレオチドは化学修飾されていても良く、
好ましくは前記化学修飾されたグアニン四重鎖は、
であり、
*はホスホロチオエート結合を表し、MOEはリボースの2’位におけるヒドロキシル基(-OH)がメトキシエチルと置換されていることを表し、
(2)前記ASOは以下の配列、
のいずれか一つであるグアニン四重鎖含有の核酸医薬。
【請求項13】
前記核酸医薬が以下の配列、
のいずれか一つか、これらの任意の組み合わせの核酸である請求項12に記載の核酸医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は中国特許庁に2021年8月2日に出願された中国特許出願公開第202110883137.6号明細書を基礎とする優先権を主張するものであり、その開示の全てをここに取り込む。
【0002】
本発明は生物医学およびバイオテクノロジーの分野に関し、さらに具体的には核酸医薬の徐放性能の強化方法に関する。
【背景技術】
【0003】
徐放剤は、投与後の薬を長時間継続的に放出させ、長期効果を発揮させることができる製剤である。半減期が短い薬または頻繁に投与が必要な薬に対してこのような製剤を用いることで、投与回数を減少させ、薬の血中濃度の変動を抑えて血中濃度を安定化させ、薬の毒性作用と副作用の低減に寄与し、総投与量を減らして最小の投与量で最大の効果を発揮させることが可能である。さらに、刺激を抑え、治療効果を長時間持続させることができ、安全であるという利点もある。そのため、病院では徐放剤への関心が益々高まっている。
【0004】
核酸医薬の徐放を実現する方法として現在報告されているものは、主に核酸徐放アジュバントを用いる方法と核酸医薬をポリマーナノ粒子として調製する方法である。核酸徐放アジュバントはPoly I:Cの徐放アジュバント、またホワイトオイル、ステアリン酸アルミニウム、スパン80等を用いて調製した徐放アジュバントを含む。ポリマーナノ粒子は、核酸を用いてキトサンおよびPLA-PEGから形成したナノ粒子等を含む。しかし、これらの調製方法は複雑であり現時点で広く使われていない。
【0005】
グアニン四重鎖は、反復した連続のグアニン(G)に富むDNAまたはRNAを折り重ね形成された高次構造である。G-カルテットは四重鎖の構造単位である。四つのグアニン塩基はフーグスティーン型水素結合によって連結し平面のリング構造を成すことができる。複数のG―カルテットがπ-πスタッキングによって重層しグアニン四重鎖を形成する。グアニン四重鎖は安定した二次構造を持つオリゴヌクレオチドの一種である。
【0006】
現時点で、グアニン四重鎖や類似の構造が核酸の徐放性能を強化させる役割を担うといった報告はない。
【0007】
前述に基づき本発明を提案する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明によって解決する技術課題は、核酸医薬の生物中における徐放性能を強化できる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の技術課題を解決するため、本発明は以下の技術的解決策を採用する。
【0010】
核酸医薬の5’末端および/または3’末端、および/または前記核酸医薬の内部に特定の配列のDNAまたはRNAを付加する工程を含む核酸医薬の徐放性能の強化方法。
【0011】
ここで核酸医薬の徐放性能の強化とは、核酸医薬の徐放時間をin vivoで2日より長く延長し、核酸医薬の作用時間をin vivoで2日より長く増加させることを意味する。核酸医薬の徐放時間をin vivoで2~20日に延長することが好ましく、核酸医薬の作用時間をin vivoで2~20日に増加することが好ましい。
【0012】
前記核酸医薬は無修飾核酸医薬または化学修飾核酸医薬であってもよい。
【0013】
さらに、前記核酸医薬の配列の長さは、8nt以上、好ましくは8~5000nt、より好ましくは8~2000nt、最も好ましくは8~1000ntである。
【0014】
さらに、前記核酸医薬は一本鎖DNA医薬、二本鎖DNA医薬、一本鎖RNA医薬、二本鎖RNA医薬、または核酸類縁体である。
【0015】
さらに、前記核酸医薬は、RNA核酸アプタマー、mRNA,ncRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、DNA核酸アプタマー、またはその他のDNA医薬である。
【0016】
さらに、前記ncRNAはmiRNA、siRNA、shRNA、saRNA、sgRNA、piRNA、lncRNA、circRNA等の調節性RNAである。
【0017】
前記特定の配列のDNAまたはRNAは、連続G塩基が間隔を空けて現れているDNAまたはRNAである。前記連続G塩基は2~10Gの繰り返し塩基である。前記連続G塩基の間隔の数は4~16であり、間隔を空けて現れている連続G塩基それぞれにおいて、G塩基の繰り返しの数は同じであるか異なる。
【0018】
好ましくは、前記特定の配列のDNAまたはRNAはさらに、Gを含むまたはGを含まない1~6の任意の塩基の配列である、間隔を空けて現れているスペーサー配列を含有する。前記スペーサー配列の間隔の数は3~15であり、間隔を空けて現れている各スペーサー配列は同じであるか異なる。
【0019】
より好ましくは、前記特定の配列のDNAまたはRNAはグアニン四重鎖である。
【0020】
グアニン四重鎖の配合はGx1Ny1Gx2Ny2Gx3Ny3Gx4を含む。
【0021】
Gはグアニンを表す。
【0022】
x1~x4はそれぞれ独立して2~10から選択された整数、好ましくは3~5から選択された整数、最も好ましくは3である。
【0023】
Nはそれぞれ独立して任意の塩基(A、C、T、U)、好ましくはTまたはUを表す。
【0024】
y1~y3はそれぞれ独立して1~10、好ましくは1~6、より好ましくは1~3から選択された整数である。
【0025】
【0026】
本発明のさらなる改良として、前記特定の配列のDNAまたはRNAは、いかなる修飾もされていない配列または化学修飾された配列である。前記化学修飾はMOE修飾および硫黄修飾であることが好ましく、3’末端または5’末端の塩基における修飾であることが好ましい。より好ましくは、前記化学修飾配列は、
【0027】
ここで、*はホスホロチオエート結合を表し、MOEはリボースの2’位におけるヒドロキシル基(-OH)がメトキシエチルと置換されていることを表す。
【0028】
特定の配列のDNAまたはRNAと核酸医薬の関係において、
特定の配列のDNAがDNA医薬を徐放してもよく、特定の配列のDNAがRNA医薬を徐放してもよく、特定の配列のRNAがDNA医薬を徐放してもよく、特定の配列のRNAがRNA医薬を徐放してもよい。
【0029】
前記特定の配列のDNAはDNA医薬して徐放性能を強化することが好ましく、また前記特定の配列のRNAはRNA医薬と結合して徐放性能を強化することが好ましい。
【0030】
さらに本発明は、徐放性能が強化された核酸医薬の調製におけるグアニン四重鎖の使用に関する。
【0031】
ここで徐放性能の強化とは、核酸医薬の徐放時間をin vivoで2日より長く延長し、核酸医薬の作用時間をin vivoで2日より長く増加させることを意味する。核酸医薬の徐放時間をin vivoで2~20日に延長することが好ましく、核酸医薬の作用時間をin vivoで2~20日に増加させることが好ましい。
【0032】
前記グアニン四重鎖の配合はGx1Ny1Gx2Ny2Gx3Ny3Gx4を含む。
【0033】
Gはグアニンを表す。
【0034】
x1~x4はそれぞれ独立して2~10から選択された整数、好ましくは3~5から選択された整数、最も好ましくは3である。
【0035】
Nはそれぞれ独立して任意の塩基(A、C、T、U)、好ましくはTまたはUを表す。
【0036】
y1~y3はそれぞれ独立して1~10、好ましくは1~6、より好ましくは1~3から選択された整数である。
【0037】
【0038】
さらに本発明は、PCSK9をノックダウンさせ低密度リポタンパク質(LDL)を抑制する、グアニン四重鎖を含有する核酸医薬に関する。前記核酸医薬は両末端が一つ以上のグアニン四重鎖で修飾されたオリゴヌクレオチド(ASO)である。
【0039】
(1)前記グアニン四重鎖は、Gx1Ny1Gx2Ny2Gx3Ny3Gx4を含む配合の核酸フラグメントである。
【0040】
Gはグアニンを表す。
【0041】
x1~x4はそれぞれ独立して2~10から選択された整数、好ましくは3~5から選択された整数、最も好ましくは3である。
【0042】
Nはそれぞれ独立して任意の塩基(A、C、T、U)、好ましくはTまたはUを表す。
【0043】
y1~y3はそれぞれ独立して1~10、好ましくは1~6、より好ましくは1~3から選択された整数である。
【0044】
【0045】
さらに、前記グアニン四重鎖のヌクレオチドは化学修飾されていてもよい。好ましくは、化学修飾されたグアニン四重鎖は、
【0046】
*はホスホロチオエート結合を表し、MOEはリボースの2’位におけるヒドロキシル基(-OH)がメトキシエチルと置換されていることを表す。
【0047】
【0048】
好ましくは、前記核酸医薬は以下の任意の配列または以下を任意に組み合わせた配列の核酸である。
【発明の効果】
【0049】
前述の技術的解決策により、本発明は少なくとも以下の利点を持つ。
【0050】
(1)発明者は特定の配列のDNAまたはRNAにより生体における核酸医薬の徐放性能を強化できることを発見した。また、発明者は本発明の方法により、異なる配列および長さの一本鎖DNA、二本鎖DNA、一本鎖RNA、および二本鎖RNAの動物における徐放性能を強化できることを実験的に証明した。本発明の方法により、異なる構造の核酸医薬の動物における徐放性能を強化し、さらに核酸医薬の応用を促進できることを証明した。
【0051】
(2)本発明の方法を用いて、5000nt以下の長さの核酸医薬の徐放および長期改善を行うことができ、徐放効果を著しく改善できる。すなわち、核酸医薬の徐放時間をin vivoで約2~20日に延長し、核酸医薬の作用時間をin vivoで約2~20日に増加させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0052】
[用語の説明]
【0053】
「核酸」、「核酸分子」、および/または「核酸医薬」
【0054】
本明細書においてこれらの用語は同じ意味で使われ、任意のDNA、RNA、またはDNA/RNAキメラを指す。これらはオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドでもよい。これらは無修飾または修飾RNAまたはDNAでもよい。これらの用語は一本鎖および二本鎖DNA、一本鎖および二本鎖領域を混合したDNA,一本鎖および二本鎖RNA,一本鎖および二本鎖領域を混合したRNA、および一本鎖または二本鎖の、または一本鎖および二本鎖領域を混合したDNAおよびRNAを含有するハイブリッド分子を含むが、これらに限定されない。ヌクレオチドはアデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、シトシン(C)、およびウラシル(U)を含む。
【0055】
本発明における「核酸」、「核酸分子」、および/または「核酸医薬」の用語は、遺伝子ノックダウン、遺伝子ノックアウト、遺伝子活性化、遺伝子修飾、遺伝子編集、遺伝子調節、タンパク質発現、タンパク質調節、または生体検知等、様々な用途に用いられ、核酸医薬としても用いられる。
【0056】
「核酸修飾」、「化学修飾」、および/または「化学修飾核酸」
【0057】
本明細書においてこれらの用語は同じ意味で使われ、以下の記載のいずれか一つまたは組み合わせを指す。
【0058】
(1)核酸構造の修飾
【0059】
いくつかの実施形態において、本発明の核酸(例えば、DNAを標的とするRNA)は一つ以上の修飾(例えば、塩基修飾、骨格修飾等)を含有し、これにより新しいまたは強化された特性(例えば、強化された安定性)を持つ核酸となる。当該技術において公知の通り、ヌクレオシドは塩基と糖の化合物である。ヌクレオシドの塩基部分は通常ヘテロ環塩基である。このようなヘテロ環塩基に最も多い二種類はプリンとピリミジンである。ヌクレオチドはヌクレオシドと、ヌクレオシドの糖部分と共有結合したリン酸基とを含む。ペントフラノースを含むこのようなヌクレオシドにおいて、糖の2’、3’、または5’のヒドロキシル部分にリン酸基が結合していてもよい。核酸の形成過程において、リン酸基は隣り合うヌクレオシドと共有結合し直鎖状の重合性化合物を形成する。反対に、直鎖状の高分子化合物のそれぞれの末端がさらに結合して環状化合物を形成してもよい。一般的には直鎖化合物が適している。さらに、直鎖化合物は内部ヌクレオチド塩基相補性を有していてもよく、そうすることによって、このように折り重なり全体または一部が二本鎖である化合物を生成してもよい。核酸内におけるリン酸基は、核酸を形成するヌクレオシド間バックボーンと呼ばれることが多い。RNAおよびDNAの通常結合またはバックボーンは3’と5’のホスホジエステル結合である。
【0060】
(2)修飾バックボーンおよび修飾ヌクレオシド間結合
【0061】
好適な修飾核酸は例えば、修飾バックボーンまたは人工のヌクレオシド間結合を有する核酸である。核酸(修飾バックボーンを有する核酸)としては、バックボーンにリン原子を保持する核酸、およびバックボーンにリン原子を有していない核酸を含む。
【0062】
リン原子含有の好適な修飾核酸は、例えば、ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、3’アルキレンホスフェートを含むメチルおよびその他のアルキルホスフェート、5’アルキレンホスフェート、キラルホスフェート、ホスホネート、3’アミノホスホロアミダートおよびアミノアルキルホスホロアミダートを含むホスホロアミダート、ジアミノホスフェート、チオノホスホロアミダート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、通常の3’-5’結合を有するセレノホスフェートおよびボロホスフェート、2’-5’結合したこれらの類縁体、および反転した極性を有する核酸であり、一つ以上のヌクレオチド間結合は3’と3’、5’と5’、または2’と2’の結合である。反転した極性を有する核酸は、ヌクレオチド間結合に3’と3’の単結合を含有する。すなわち、塩基を有さない(核酸塩基が失われた、またはヒドロキシル基と置換された)単反転ヌクレオシドの残留物であってもよい。様々な塩(カリウム塩やナトリウム塩等)、混合塩、および遊離酸構造も含まれる。
【0063】
いくつかの実施形態において、本発明の核酸は一つ以上のホスホロチオエート結合および/またはリン原子ヌクレオシド間結合を含有し、これらの結合は具体的にはCH2-NH-O-CH2-、-CH2-N(CH3)-O-CH2-(メチレン(メチルイミノ)またはMMIバックボーンとして知られる)、-CH2-O-N(CH3)-CH2-、-CH2-N(CH3)-N(CH3)-CH2-、または-O-N(CH3)-CH2-CH2-(天然のホスホジエステルヌクレオシド間結合は-O-P(=O)(OH)-O-CH2-として表される)でもよい。
【0064】
その他のバックボーン修飾としては、例えば、モルフォリノバックボーン構造を有する核酸を含む。例えば、いくつかの実施形態において、本発明の核酸は、リボース環の代わりに六員のモルフォリン環を含む。いくつかの実施形態において、ホスホジエステル結合の代わりにジアミノホスフェートまたはその他のホ非ホスホジエステルヌクレオシド間結合が含まれている。
【0065】
リン原子を含有しない好適な修飾ポリヌクレオチドバックボーンは、短鎖アルキルまたはシクロアルキルのヌクレオシド間結合、混合ヘテロ原子とアルキルまたはシクロアルキルとのヌクレオシド間結合、または一つ以上の短鎖ヘテロ原子またはヘテロ環式のヌクレオシド間結合によって形成されたバックボーンを有する。これらのバックボーンとしては、モルフォリノ結合(一部がヌクレオシドの糖部分から成る)を有するバックボーン、シロキサンバックボーン、スルフィドおよびスルホキシドおよびスルホンバックボーン、ホルムアセチルおよびチオホルムアセチルバックボーン、メチレンホルムアセチルおよびチオホルムアセチルバックボーン、リボアセチルバックボーン、アルキレン含有バックボーン、スルファメートバックボーン、メチレンイミノおよびメチレンヒドラジノバックボーン、スルフォネートおよびスルホンアミドバックボーン、アミドバックボーン、および混合のN、O、S、およびCH2の構成要素を有するその他のバックボーンを含む。
【0066】
その他のバックボーン修飾としては、2’ヒドロキシルが糖環の4’の炭素原子と結合し、2’-C,4’-C-オキシメチレン結合を形成することで二環性糖部分を成すロック核酸(LNA)を含む。鎖はメチレン(-CH2-)(2’の酸素原子と4’の炭素原子を架橋する基)でもよく、nは1または2である(Singh et al., Chem.Commun.,1998,4,455-456)。LNAおよびLNA類縁体は相補的なDNAおよびRNAによって高い二本鎖の熱安定性(Tm=+3℃~+10℃)、3’-核酸エキソ分解に対する安定性と優れた可溶性を発揮する。
【0067】
LNAのアデニン、シトシン、グアニン、5-メチル-シトシン、チミン、およびウラシルモノマーの合成および調製、またこれらのオリゴマー化および核酸の認識性については、先行技術(Koshkin et al., Tetrahedron,1998,54,3607-3630)に記載されている。
【0068】
(3)修飾糖部分
【0069】
本発明の核酸はさらに一つ以上の置換された糖部分を含んでいてもよい。好適なポリヌクレオチドは、OH、F、O-またはS-またはN-アルキル、O-またはS-またはN-アルケニル、O-またはS-またはN-アルキニル、またはO-アルキル-O-アルキルから選択された糖置換基を含み、前記アルキル、アルケニル、およびアルキニルは置換されたまたは置換されていない炭素数1~10のアルキルまたは炭素数2~10アルケニルおよびアルキニルでもよい。特に好適な糖置換基としては、O((CH2)nO)mCH3、O(CH2)nOCH3、O(CH2)nNH2、O(CH2)nCH3、O(CH2)nONH2、およびO(CH2)nON((CH2)nCH3)2を含み、nおよびmは1から約10である。その他の好適なポリヌクレオチドは、炭素数1~10の低級アルキル、置換された低級アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキルアリール、アラルキル、O-アルキルアリール、またはO-アラルキル、SH、SCH3、OCN、Cl、Br、CN、CF3、OCF3、SOCH3、SO2CH3、ONO2、NO2、N3、NH2、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキアリール、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換されたシリル、RNA切断基、レポーター基、インターカレーター、核酸の薬物動態特性を高める基または核酸の薬力学的特性を高める基、および同様の特性を持つその他の基から選択された糖置換基を含む。好適な修飾は、2’-メトキシエトキシ(2’-O-CH2CH2OCH3、2’-O-(2-メトキシエチル)、2’-MOEとしても知られる)(Martin et al., Helv. Chim. Acta,1995,78,486-504)、すなわちアルコキシーアルコキシ基を含む。その他の好適な修飾は、以下の実施例で記載する2’-DMAOEとしても知られる2’-ジメチルアミノオキシエトキシ、すなわちO(CH2)2ON(CH3)2基、および2’-ジメチルアミノエトキシエトキシ(当該技術において2’-O-ジメチルーアミノーエトキシルーエチルまたは2’-DMAEOEとして知られる)、すなわち2’-O-CH2-O-CH2-N(CH3)2を含む。
【0070】
その他の好適な糖置換基としては、メトキシル(-O-CH3)、アミノプロピルオキシル(-OCH2CH2CH2NH2)、アリル(-CH2-CH=CH2)、-O-アリル(-O-CH2-CH=CH2)、およびフッ素(F)を含む。2’糖置換基はアラビノース(上部の)位置またはリボース(下部の)位置でもよい。好適な2’-アラビノース修飾は2’-Fである。同様の修飾はオリゴマー化合物上のその他の位置でなされていてもよく、具体的には2’-5’結合核酸における3’末端のヌクレオシドまたは糖の3’位および5’末端のヌクレオチドの5’位である。さらにオリゴマー化合物はペントフラノースの代わりにシクロブチル部分等の糖の模倣体を有していてもよい。
【0071】
(4)塩基修飾および置換
【0072】
本発明の核酸はさらに核酸塩基(当該技術において単に「塩基」とも呼ぶ)の修飾または置換を含む。ここで用いる「無修飾」または「天然」核酸塩基は、プリン塩基であるアデニン(A)およびグアニン(G)、およびピリミジン塩基であるチミン(T)、シトシン(C)、およびウラシル(U)を含む。修飾核酸塩基は、5-メチルシトシン(5-me-C)、5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2ーアミノアデニン、6-メチルおよびアデニンとグアニンのその他のアルキル誘導体、2-プロピルおよびアデニンとグアニンのその他のアルキル誘導体、2-チオウラシル、2-チオチミンおよび2-チオシトシン、5-ハロウラシルおよびシトシン、5-プロピニル(-C=C-CH3)ウラシルおよびシトシンおよびピリミジン塩基のその他のアルキル誘導体、6-アゾウラシルおよびシトシンおよびチミン、5-ウラシル(シュードウラシル)、4-チオウラシル、8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシルおよびその他の8―置換アデニンおよびグアニン、5-ハロ(特に5-ブロモ)、5-トリフルオロメチルおよびその他の5-置換ウラシルおよびシトシン、7-メチルグアニンおよび7-メチルアデニン、2-F-アデニン、2-アミノーアデニン、8-アザグアニンおよび8-アザアデニン、7-デアザグアニンおよび7-デアザアデニン、および3-デアザグアニンおよび3-デアザアデニン等の、その他の合成のまたは天然の核酸塩基を含む。その他の修飾核酸塩基としては、フェノキサジンシチジン(1H-ピリミド(5,4-b)(1,4)ベンゾキサジン-2(3H)-オン)およびフェノチアジンシチジン(1H-ピリミド(5,4-b)(1,4)ベンゾチアジン-2(3H)-オン)等の三環系ピリミジン、置換されたフェナジンシチジン(例えば、9-(2-アミノエトキシ)-H-ピリミド(5,4-(b)(1,4)ベンゾキサジン-2(3H)-オン)、カルバゾールシチジン(2H-ピリミド(4,5-b)インドール-2-オン)、ピリドインドールシチジン(H-ピリド(3’,2’:4,5)ピロロ(2,3-d)ピリミジン-2-オン)等のG-クリップを含む。
【0073】
ヘテロ環式塩基部分としてはさらに、プリン塩基またはピリミジン塩基が7-デアザアデニン、7-デアザグアニン、2-アミノピリジン、および2-ピリドン等の他のヘテロ環と置き換えられたヘテロ環式塩基部分を含んでもよい。その他の核酸塩基としては、The Concise Encyclopedia of Polymer Science and Engineering, pp.858-859, Kroschwitz, J. L, ed. John Wiley & Sons, 1990に開示されている核酸塩基、Angewandte Chemie, International edition,30,613,1991に開示されている核酸塩基、Sanghvi,Y.S, Chapter 15, Antisense Research and Applications,289-302, Crooke, S. T. and Lebleu, B., Ed., CRC Press,1993に開示されている核酸塩基を含む。これらの核酸塩基の中には、オリゴマー化合物の結合親和性を高めるのに有効なものもある。これらの核酸塩基は、2-アミノプロピルアデニン、5-プロピニルウラシル、および5-プロピニルシトシンを含む5-置換ピリミジン、6-アザピリミジンおよびN-2、N-6、およびO-6置換プリンを含む。例えば、5―メチルシトシン置換は、核酸の二重鎖安定性を0.6℃~1.2℃高め(Sanghvi et al., Eds., Antisense Research and Applications, CRC Press, Boca Raton, 1993,276-278)、好適な塩基置換であり、特に2’-Oメトキシエチル糖修飾と組み合わせるとさらに好適であることが示されている。
【0074】
(5)コンジュゲート修飾
【0075】
その他の本発明の核酸の修飾としては、ポリヌクレオチドに対する核酸の活性、細胞分布、または細胞吸収を強化する一つ以上の部分またはコンジュゲートとの化学結合を伴う修飾でもよい。これらの部分またはコンジュゲートは、第一級ヒドロキシル基または第二級ヒドロキシル基等の官能基を共有結合させるコンジュゲート基を含んでいてもよい。コンジュゲート基は、インターカレーター、リポーター分子、ポリアミン類、ポリアミド類、ポリエチレングリコール類、ポリエーテル類、オリゴマー類の薬力学的特性を高める基、およびオリゴマー類の薬物動態特性を高める基を含むがこれらに限定されない。好適なコンジュゲート基としては、コレステロール、脂質、リン脂質、ビオチン、フェナジン、葉酸、フェナンスリジン、アントラキノン、アクリジン、フルオレセイン、ローダミン、クマリン、および色素を含むがこれらに限定されない。薬力学的特性を高める基としては、吸収の促進、耐劣化性の強化、および/または標的核酸との配列特異的なハイブリダイゼーションの促進のための基を含む。薬物動態特性を高める基は、本発明の核酸の吸収、分布、代謝、または排泄を促進する基を含む。コンジュゲート部分としては、以下の脂質部分を含むが、これらに限定されない。
【0076】
コレステロール部分(Letsinger et al., Proc. Natl. Acid. Sci. USA,1989,86,6553-6556)、コール酸(Manoharan et al., Bioorg. Med. Chem. Let., 1994,4,1053-1060)、チオエーテル、例えばベリル-S-トリチルチオール(Manoharan et al., Ann. N.Y. Acad. Sci., 1992,660,306-309; Manoharan et al., Bioorg. Med. Chem. Let.,1993,3,2765-2770)、チオコレステロール(Oberhauser et al., Nucl. Acids Res., 1992,20,533-538)、脂肪鎖族、例えばドデカンジオールまたはウンデシルの残留物(Saison-Behmoaras et al., EMBO J,1991, 10:1111-1118; Kabanov et al., FEBS Lett., 1990,259:327-330; Svinarchuk et al., Biochimie,1993,75,49-54)、リン脂質、例えばジ-ヘキサデチル-rac-グリセロールまたはトリエチル-アンモニウム1,2-ジ-O-ヘキサデチル―rac-グリセロ-3-ホスホネート(Manoharan et al., Tetrahedron Lett.,1995,36,3651-3654; Shea et al., Nucl. Acids Res.,1990,18,3777-3783)、ポリアミンまたはポリエチレングリコール鎖(Manoharan et al., Nucleosides & Nucleotides,1995,14,969-973)、またはアダマンタン酢酸(Manoharan et al., Tetrahedron Lett.,1995,36,3651-3654)、パルミチル部分(Mishra et al., Biochim. Biophys. Acta,1995,1264,229-237)、またはオクタデシルアミンまたはヘキシルアミノ-カルボニルオキシコレステロール部分(Crooke et al., J. Pharmacol. Exp. Ther.,1996,277,923-937)等。
【0077】
「グアニン四重鎖」
【0078】
グアニン四重鎖は、反復した連続のグアニン(G)に富むDNAまたはRNAを折り重ねて形成した高次構造である。G-カルテットは四重鎖の構造単位である。四つのグアニン塩基はフーグスティーン型水素結合によって連結し平面のリング構造を成すことができる。複数のG―カルテットがπ-πスタッキングによって重層しグアニン四重鎖を形成する。グアニン四重鎖は安定した二次構造を持つ核酸の一種である(Zahler, A.M., Williamson, J.R., Cech, T.R. & Prescott. D.M. Suppression of Telomerase by G-quarter DMA Structures. Nature 350,718-720(1991)参照、またこれを本明細書の一部として全ての目的のために援用する)。グアニン四重鎖は、カルテットの各ペアの間の中央部位にカチオン、特カリウムが存在することで、さらに安定化する。グアニン四重鎖はDNA、RNA、LNA、およびPNAにより形成されていてもよく、分子内、二分子型、または四分子型グアニン四重鎖でもよい。グアニン四重鎖の構造は、カルテットまたはカルテットの一部を形成するストランドの配向によってパラレル型またはアンチパラレル型と呼ぶことができる(例えば、Parkinson G N, Lee M P H, Neidle S, Crystal structure of parallel quadruplexes from human telomeric DNA. Nature 417(6891):876-880(2002)、Wang Y, Patel D J, Solution structure of the human telomeric repeat d[AG3(T2AG3)3] G-tetraplex. Structure 1(4): 263-282(1993)、およびDai J. Carver M., Yang D,. Polymorphism of human telonieric quadruples structures. Biochimie.90(8):1172-1183 (2008)参照、またこれらを本明細書の一部として全ての目的のために援用する)。
【0079】
いくつかの実施形態において、本発明のグアニン四重鎖の配合を持つ核酸は、Gx1Ny1Gx2Ny2Gx3Ny3Gx4を含み、Gはグアニンを表し、x1~x4はそれぞれ独立して2~10から選択された整数、好ましくは3~5から選択された整数、最も好ましくは3である。Nはそれぞれ独立して任意の塩基(A、C、T、U)、好ましくはTまたはUを表す。
【0080】
y1~y3はそれぞれ独立して1~10、好ましくは1~6、より好ましくは1~3から選択された整数である。
【0081】
いくつかの実施形態において、本発明のグアニン四重鎖は分子内、二分子型、または四分子型グアニン四重鎖でもよい。いくつかの実施形態において、本発明のグアニン四重鎖は、カリウムやナトリウムイオン等の一価カチオン類等のカチオン類、およびマグネシウム、カルシウム、亜鉛、銅イオン等の二価カチオン類等のカチオン類を含んでいてもよい。
【0082】
「コンジュゲート」、「付加」、および「連結」
【0083】
本発明において、「コンジュゲート」、「付加」、および「連結」の用語は同じ意味で使われ、全て特定のフラグメントを化学結合によって連結または挿入することを指す。
【0084】
「薬学的に許容可能な担体」
【0085】
上記には、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張化剤、吸収抑制剤等の、投薬と適合する任意のまたは全ての溶媒が含まれている。このような担体や試薬の使用は当該技術において周知である。本明細書において提案される物質と不適合でない限り、任意の担体または試薬を構成物に使用するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【
図1】
図1は本発明の方法により強化したアプタマーの動物における徐放の評価結果である。
【
図2】
図2は本発明の方法により強化したアプタマーのマウスの臓器における徐放の評価結果である。
【
図3】
図3は本発明の方法により強化した二本鎖DNA(dsDNA)の動物における徐放の評価結果である。
【
図4】
図4は本発明の方法により強化した一本鎖RNA(ssRNA)の動物における徐放の評価結果である。
【
図5】
図5は本発明の方法により強化した二本鎖RNA(dsRNA)の動物における徐放の評価結果である。
【
図6】
図6は本発明の方法により強化したアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)の動物における徐放の評価結果である。
【
図7】
図7は核酸の徐放性能の強化における異なるグアニン四重鎖の、動物における評価結果である。
【
図8】
図8は核酸の徐放性能の強化におけるG1に基づいて修飾された配列の、動物における評価結果である。
【
図9】
図9は5’末端および/または3’末端のG1および内部と外部に含有されたG1の徐放効果の評価結果(
図9のA)、また異なる種類の核酸における異なる種類のG1の徐放効果の評価結果(
図9のB)である(動物の
in vivo結果)
【
図10】
図10は本発明の方法を用いて徐放したPCSK9を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドの、長時間のPCSK9ノックダウン(
図10のA)およびLDLの抑制(
図10のB)における性能の、動物における評価結果である。
【
図11】
図11はG1―アプタマー2(抗FGL-1アプタマー)の抗腫瘍効果が無修飾アプタマー2の抗腫瘍効果より優れていたことを示している。
【
図12】
図12はG1-dsDNA2(GFPのdsDNA2)を注射した動物における蛍光タンパク質のmRNA含有率はコントロール群と比較して著しく高かったことを示している。
【
図13】
図13はG1-mRNA1(マーカー遺伝子mRNAとしてのホタルルシフェラーゼ)を注射した動物において蛍光保持時間が48時間にまで到達したことを示している。
【
図14】
図14はG1-ncRNA1(ncRNA1としてのBGLT3)を注射した後の動物においてHGB1の制御時間が著しく増加したことを示している。
【実施例】
【0087】
特に断らない限り、以下実施例で用いた素材は全て市販のものであり、実験に用いた様々な特定の実験手法は当該技術における従来の実験方法であるか、または製造元が提案する手順や条件に従って行われており、必要に応じて当業者によって常習的に決定してもよい。
【0088】
[実施例1]
本発明の方法によって強化したアプタマーの動物における徐放の評価結果
【0089】
本発明の方法によって強化したアプタマーの動物における徐放性能を評価するために、本発明の方法によって強化した核酸アプタマーをCy5.5で標識した。CD35配列の両末端にそれぞれG1配列を付加し、Cy5.5を用いて(Cy5.5-G1-CD35)を形成した。
【0090】
まず、特定の無修飾DNA(G1)の、アプタマーの徐放を強化する性能を検証した。Cy5.5-G1-CD35を注射前に生理食塩水で希釈した。マウスを計量し、2mg/kgの投与量で腹部脱毛したマウスに注射した。以下の方法でマウスに皮下注射を行った。マウスを掴み固定し、後肢の間の皮膚をアルコール綿球で拭き、体重に応じた量の薬剤を注射器で抽出し、針を上向きにしてそっと皮膚に刺し、皮膚に沿って1~2cmほど針を皮下に刺し入れゆっくりと注射を行う。皮下注射の成功後、マウスの皮膚の注射部位が膨れ、針が刺し入れた方向とは逆方向に滑らかに引き出され注射が完了となる。注射後0日目、1日目、3日目、5日目、10日目、20日目にそれぞれin vivo撮像を行い、皮下注射後のCy5.5-G1-CD35の分布を観察した。
【0091】
図1の結果に示す通り、本発明の方法を採用したCy5.5標識Cy5.5-G1-CD35の注射後20日目にはまだ蛍光を検出できた。また、20日目に検出した前記蛍光は、本発明の強化方法を採用していないCy5.5標識Cy5.5-Rs1(RS1配列においては、G1配列の代わりにG1配列と同じ長さの無作為の配列をCD35の両末端に付加しコントロールとした)において24時間後に検知した蛍光より強かった。
【0092】
その後、マウスを解剖し、臓器における蛍光強度を検知した。
図2の結果に示す通り、Cy5.5-G1-CD35を注射したマウスの肝臓には蛍光を検知できたが、コントロールのマウスには蛍光を検知できなかった。つまり、本発明の方法により強化したアプタマーは動物における優れた徐放性能を有していた。
【0093】
さらに、特定の化学修飾DNA(G1M)によって強化したアプタマーの動物における徐放性能を検証した。同じ注射方法を用いて、本発明の徐放化の方法を採用した徐放性Cy5.5標識Cy5.5-*G1-CD35を注射したところ、20日目においてまだ蛍光を検出できた。加えて、20日目に検知した前記蛍光は、本発明の強化方法を採用していないCy5.5標識Cy5.5-Rs1において24時間後に検知した蛍光より強かった。つまり、アプタマーの動物における徐放性能は、特定の化学修飾DNAを用いても強化できることが示された。
【0094】
【0095】
[実施例2]
本発明の方法によって強化した二本鎖DNA(dsDNA)の動物における徐放の評価結果
【0096】
本発明の方法によって強化したdsDNAの動物における徐放性能を評価するために、本発明の方法によって強化したdsDNAをCy5.5で標識した。CD35配列の両末端それぞれにG1配列を付加し、Cy5.5を用いてCy5.5-G1-dsDNA1を形成した。
【0097】
Cy5.5-G1-dsDNA1を注射前に生理食塩水で希釈した。マウスを計量し、2mg/kgの投与量で腹部脱毛したマウスに注射した。以下の方法でマウスに皮下注射を行った。マウスを掴み固定し、後肢の間の皮膚をアルコール綿球で拭き、体重に応じた量の薬剤を注射器で抽出し、針を上向きにしてそっと皮膚に刺し、皮膚に沿って1~2cmほど針を皮下に刺し入れゆっくりと注射を行う。皮下注射の成功後、マウスの皮膚の注射部位が膨れ、針が刺し入れた方向とは逆方向に滑らかに引き出され注射が完了となる。注射後の異なる時点でin vivo撮像を行い、皮下注射後のCy5.5-G1-dsDNA1の分布を観察した。
【0098】
図3の結果に示す通り、徐放化のための本発明の方法を採用したCy5.5標識Cy5.5-G1-dsDNA1の注射後2日目にはまだ明らかな蛍光を検出できた一方で、本発明の方法を採用していないCy5.5標識Cy5.5-Rs1のケースでは蛍光をほとんど検出できなかった。つまり、本発明の方法によって強化したdsDNAは動物における優れた徐放性能をまだ有していた。
【0099】
【0100】
[実施例3]
本発明の方法によって強化したssRNAの動物における徐放の評価結果
【0101】
本発明の方法によって強化したssRNAの動物における徐放性能を評価するために、本発明の方法によって強化したssRNAをCy5.5で標識した。CD35配列の両末端それぞれにG1R配列を付加し、Cy5.5を用いてCy5.5-G1-ssRNA1を形成した。
【0102】
Cy5.5-G1R-ssRNA1を注射前に生理食塩水で希釈した。マウスを計量し、2mg/kgの投与量で腹部脱毛したマウスに注射した。以下の方法でマウスに皮下注射を行った。マウスを掴み固定し、後肢の間の皮膚をアルコール綿球で拭き、体重に応じた量の薬剤を注射器で抽出し、針を上向きにしてそっと皮膚に刺し、皮膚に沿って1~2cmほど針を皮下に刺し入れゆっくりと注射を行う。皮下注射の成功後、マウスの皮膚の注射部位が膨れ、針が刺し入れた方向とは逆方向に滑らかに引き出され注射が完了となる。注射後の異なる時点でin vivo撮像を行い、皮下注射後のマウスにおけるCy5.5-G1R-ssRNA1の分布および劣化を観察した。
【0103】
図4の結果に示す通り、本発明の徐放化の方法を採用したCy5.5標識Cy5.5-G1R-ssRNA1の注射後2日目にはまだ明らかな蛍光が検出できた一方で、徐放化されていないCy5.5標識Cy5.5-Rs3のケースにおいては蛍光をほとんど検出できなかった。つまり、本発明の方法によって強化したssRNAは動物における優れた徐放性能をまだ有していた。
【0104】
【0105】
[実施例4]
本発明の方法によって強化したdsRNAの動物における徐放の評価結果
【0106】
本発明の方法によって強化したdsRNAの動物における徐放性能を評価するために、本発明の方法によって強化したdsRNAをCy5.5で標識した。CD35配列の両末端それぞれにG1R配列を付加し、Cy5.5を用いてCy5.5-G1R-dsRNA1を形成した。
【0107】
Cy5.5-G1R-dsRNA1を注射前に生理食塩水で希釈した。マウスを計量し、2mg/kgの投与量で腹部脱毛したマウスに注射した。以下の方法でマウスに皮下注射を行った。マウスを掴み固定し、後肢の間の皮膚をアルコール綿球で拭き、体重に応じた量の薬剤を注射器で抽出し、針を上向きにしてそっと皮膚に刺し、皮膚に沿って1~2cmほど針を皮下に刺し入れゆっくりと注射を行う。皮下注射の成功後、マウスの皮膚の注射部位が膨れ、針が刺し入れた方向とは逆方向に滑らかに引き出され注射が完了となる。注射後の異なる時点でin vivo撮像を行い、皮下注射後のCy5.5-G1R-dsRNA1の分布を観察した。
【0108】
図5に示す通り、本発明の方法を採用したCy5.5標識Cy5.5-G1R-dsRNA1の注射後2日目にはまだ明らかな蛍光を検出できた一方で、本発明の方法を採用していないCy5.5標識Cy5.5-Rs4のケースではほとんど蛍光を検出できなかった。つまり、本発明の方法によって強化したdsRNAは動物における優れた徐放性能をまだ有していた。
【0109】
[実施例5]
本発明の方法によって強化したアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)の動物における徐放の評価結果
【0110】
本発明の方法によって強化したASOの動物における徐放性能を評価するために、本発明の方法によって強化したASOをCy5.5で標識した。CD35配列の両末端それぞれにG1配列を付加し、Cy5.5を用いてCy5.5-G1-ASO1を形成した。
【0111】
Cy5.5-G1-ASO1を注射前に生理食塩水で希釈した。マウスを計量し、2mg/kgの投与量で腹部脱毛したマウスに注射した。以下の方法でマウスに皮下注射を行った。マウスを掴み固定し、後肢の間の皮膚をアルコール綿球で拭き、体重に応じた量の薬剤を注射器で抽出し、針を上向きにしてそっと皮膚に刺し、皮膚に沿って1~2cmほど針を皮下に刺し入れゆっくりと注射を行う。皮下注射の成功後、マウスの皮膚の注射部位が膨れ、針が刺し入れた方向とは逆方向に滑らかに引き出され注射が完了となる。注射後の異なる時点でin vivo撮像を行い、皮下注射後のCy5.5-G1-ASO1の分布を観察した。
【0112】
図6の結果に示す通り、本発明の方法を採用したCy5.5標識Cy5.5-G1-ASO1の注射後20日後にまだ蛍光を検出できた。20日目に検出した前記蛍光は、本発明の強化方法を採用していないCy5.5標識Cy5.5-Rs5において24時間後に検出した蛍光より強かった。つまり、本発明の方法によって強化したASOは動物における優れた徐放性能をまだ有していた。
【0113】
【0114】
[実施例6]
動物における核酸の徐放性能の強化における、異なるグアニン四重鎖の評価結果
【0115】
7つの異なるグアニン四重鎖配列を選択し、それぞれ核酸S1の両末端に付加した。いかなる配列も付加されていない核酸S1をコントロールとして用いた。Cy5.5を用いて標識を行い、前述の配列をそれぞれ動物に注射して蛍光を検出した。
【0116】
図7のG5とG11の結果に示す通り、異なるグアニン四重鎖は全て核酸の徐放性能を有していた。使用したグアニン四重鎖における連続するGの数は2~4であり、任意の塩基の数は1~6であり、連続Gの繰り返しの数は4~16であり、中間における任意の塩基の繰り返しの数は3~15であった。
【0117】
【0118】
[実施例7]
動物における核酸の徐放性能の強化における、G1に基づいて修飾した配列の評価結果
【0119】
G1配列を選択し異なる方法で修飾した。修飾した配列をそれぞれ核酸S1の両末端に付加した。いかなる配列も修飾していない核酸S1をコントロールとして用いた。Cy5.5を用いて標識を行い、核酸における修飾配列の徐放性能を評価し、前述の配列をそれぞれ動物に注射し蛍光を検出した。
【0120】
図8のG1~18、G1~22、およびG1~23の結果に示す通り、異なる修飾は全て核酸に対する徐放性能を有していた。なお、使用した特定の配列における連続するGの数は2~10であり、任意の塩基の数は1~5であり,連続Gの繰り返しの数は4~8であり、中間における任意の塩基の繰り返しの数は3~7であった。
【0121】
G1に基づいて修飾した配列の配列情報は以下の通りである。
【0122】
[実施例8]
動物における核酸の徐放性能の強化における、5’末端および/または3’末端のG1、および内部に含有されたG1の評価結果
【0123】
5’末端および/または3’末端のG1の、動物において核酸を徐放する性能を評価するため、G1を選択し異なる長さの核酸(S1,S2,およびS3)の5’末端、3’末端、および両末端に付加した。なお、S1は21nt、S2は8nt、S3は13ntであった。Cy5.5を用いて標識を行い、前述の核酸をそれぞれ動物に注射して蛍光を検出した。
【0124】
図9のAの結果に示す通り、5’末端(Cy5.5-5’)のみ、3’末端(CY5.5-3’)のみ、および両末端(CY5.5-5’+3’)G1に付加した際にG1は核酸に対する徐放性能を有していた。
【0125】
さらに、核酸配列内に付加されたG1の徐放性能を評価した。2つの異なる配列G1-InおよびG1-Dを設計した。G1-InはG1配列が核酸配列の内部に一度だけ現れている配列であり、G1-DはG1配列が標的配列の両末端に付加され核酸配列の内部に位置している配列である。Cy5.5を用いて標識を行い、前述の配列を動物に注射して蛍光を検出した。
図9のAに示す通り、核酸配列の内部にあるG1は明白な徐放性能をまだ有していた。
【0126】
上記における配列情報は以下の通りである。
下線部の配列がG1であった。
【0127】
[実施例9]
本発明の方法によって構成されたキメラの動物における徐放性能の評価
【0128】
動物において核酸を徐放するキメラの性能を評価するために、2種類の核酸を選択した。Sr(RNA)の徐放化のためにはG1を選択し、S1(DNA)の徐放化のためにはG1R(RNA)を選択した。無作為な配列Rs1をコントロールとして用いた。Cy5.5を用いて標識を行い、前述の核酸をそれぞれ動物に注射して蛍光を検出した。
図9のBの結果に示す通り、異なる種類(DNA/RNA)のG1が異なる種類(DNA/RNA)の核酸に対する徐放性能を有し、必ずしも一致している必要はなかった。
【0129】
【0130】
[実施例10]
動物における長時間のPCSK9ノックダウンおよびLDLの抑制における、本発明の方法を用いて徐放したPCSK9を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドの性能の評価結果
【0131】
本発明の方法によって強化したアンチセンスオリゴヌクレオチドの動物における効果を評価するために、本発明はPCSK9を標的とするASO配列を設計し、本発明の方法を用いて前記ASO配列の徐放性能を強化した。徐放化処理を施していないASOをネガティブコントロールとして用いて、2つの異なる方法による動物におけるPCSK9ノックダウンの長期効果を比較した。
【0132】
本実験に必要な“ssDNA”を注射前に生理食塩水で希釈した。マウスを計量し、ASO(0.8μmol/kg)、LT-001(3.2μmol/kg)、およびLT-001(0.8μmol/kg)の3つのグループに分けた。空の2ml針管および4.5番の針を用いて注射を行った。希釈したssDNA生理食塩水を注射した。注射後、最初の3日間は毎日、また5日目と30日目に尾を切って血液サンプルを採取した。
【0133】
マウスの血漿におけるPCSK9およびLDL(低密度リポタンパク質)の含有率をELISAによって検出した。動物における長時間のPCSK9ノックダウンに対する、本発明の方法を用いて徐放したPCSK9を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドの効果を調べた。
図10のAおよびBの結果に示す通り、LT-001を注射したマウスのPCSK9およびLDLの値は、徐放化処理を施していないASOを注射したマウスと比べて著しく低く、30日目にもまだ効果を発揮していた。つまり、本発明の方法によってPCSK9を標的とするアンチセンスヌクレオチドの動物における徐放性能が強化され、長時間PCSK9をノックダウンできLDLの含有率を抑制できた。
【0134】
【0135】
さらに、PCSK9 mRNAに応じて16種類の特定のASOを設計し、ASOの両末端にG1を付加した(G1/PCSK9-ASO)。G1/PCSK9-ASOを肝細胞癌細胞HCC97H内にリポフェクタミン2000のリポソームによって20pmolの投与量で導入した。導入後48時間後に細胞を回収し、細胞の全RNAをTRIzol試薬によって抽出し、PCSK9 mRNAのノックダウン効果をRT-qPCRによって検出した。結果によると、16種類のG1/PCSK9-ASOによってPCSK9 mRNAを効果的にノックダウンすることができた(
図10のC)。
【0136】
【0137】
[実施例11]
動物における長期的なタンパク質阻害に対する、本発明の方法を用いて徐放したアプタマーの効果の評価結果
【0138】
長期的なタンパク質活性の阻害に対する、核酸アプタマーの徐放方法の性能を評価するため、タンパク質の阻害活性試験に選択したアプタマーをマウスに注射し、タンパク質活性を評価した。コントロール(アプタマー2)と比較し、アプタマーの両末端にG1を付加したG1―アプタマー2を注射した動物におけるタンパク質活性は、アプタマー2を注射した場合より著しく低かった。つまり、この方法によってアプタマーの徐放性能が強化され、タンパク質活性が長期的に阻害された。
【0139】
片方の末端にG1を付加したFGL-1のアプタマー(G1アプタマー2)、およびそのコントロール(アプタマー2)をスクリーニングした。
【0140】
腫瘍細胞を注入してから6日経過後、マウスの腫瘍体積はおよそ100mm3であった。この時点で、各グループ6体となるようマウスを無作為に2つのグループに分けた。マウスを計量し、15mg/kgの投与量でG1アプタマー2およびアプタマー2をそれぞれ注射した。ブランク(NC)として生理食塩水を注射した。
【0141】
マウスの腫瘍サイズと体重を2または3日おきに観察した。マウスの腫瘍の長径(L)と短径(S)を電子ノギスによって測定し、3つの測定値の平均値を各測定において記録し、マウスの腫瘍体積をV=L×S2/2の式で計算した。
【0142】
図11の結果に示す通り、G1-アプタマー2を注射した動物の抗腫瘍効果はアプタマー2を注射した動物と比べて優れていた。つまり、この方法によって核酸アプタマーの徐放性能が強化され、タンパク質の活性が長時間阻害された。
【0143】
【0144】
[実施例12]
動物における長時間のRNA転写において、本発明の方法によるDNAの徐放の性能の評価結果
【0145】
dsDNAの徐放性能を強化する本発明の方法の性能を評価するために、蛍光タンパク質のDNAを選択し転写能の検証を行った。選択したDNAをマウスに注射し、蛍光タンパク質のmRNA発現を定量PCRによって分析した。コントロール(dsDNA2)と比較し、dsDNAの両末端にG1を付加したG1-dsDNA2を注射した動物における蛍光タンパク質のmRNA含有率は、dsDNA1を注射した動物よりも著しく高かった。つまり、この方法によってdsDNAの徐放性能が強化され、dsDNAが長時間転写された。
【0146】
GFPを持つdsDNA2を選択し、転写能の検証を行った。dsDNA2配列の両末端にG1を付加し(G1-dsDNA2)、蛍光タンパク質のmRNA発現を定量PCRによって分析した。
【0147】
dsDNA2およびG1-dsDNA2を注射前に生理食塩水で希釈した。マウスを計量し、4mg/kgの投与量で皮下注射を行った。注射後24、48、72、96時間後に血漿サンプルを採取し、蛍光の定量を検出した。ブランク(NC)としては生理食塩水を注射した。
【0148】
図12の結果に示す通り、G1-dsDNA2を注射した動物における蛍光タンパク質のmRNA含有率は、dsDNA2を注射した動物よりも著しく高かった。つまり、この方法によってdsDNAの徐放性能が強化され、dsDNAが長時間転写された。
【0149】
上記における配列情報は以下の通りであった(下線部がG1配列)
dsDNA2(配列番号77):
G1-dsDNA2(配列番号78):
【0150】
[実施例13]
動物における長時間のタンパク質翻訳における、本発明の方法によるDNAの徐放の性能の評価結果
【0151】
RNAの徐放性能を強化する本発明の方法の性能を評価するために、蛍光タンパク質のRNAを選択し徐放性能の検証を行った。in vitroで転写されたRNAをマウスに注射し、蛍光タンパク質の蛍光強度を測定した。コントロール(mRNA1)と比較し、RNAの両末端にG1を付加したG1-mRNA1を注射した動物のEGFP蛍光保持時間は、mRNA1を注射した動物より長かった。つまり、この方法によって、mRNAの徐放性能が強化され、RNAが長時間転写された。
【0152】
マーカー遺伝子(mRNA1)としてホタルルシフェラーゼを選択し、mRNAの徐放性能の検証を行った。mRNA1の両末端にG1Rを付加してG1-mRNA1を形成し、ホタルルシフェラーゼを持つプラスミドをポジティブコントロール(PC)として用いた。
【0153】
in vitroで転写されたmRNA(またはプラスミド)を無菌のDPBSで希釈した後、ヌードマウスを計量し、5mg/kgの投与量で皮下注射を行った。皮下注射成功後、マウスの皮膚が膨んだ。注射後の異なる時点における
in vivo撮像観察の前に、D-ルシフェリン基質(PerkinElme社製造、製品番号:770504)を150mg/kgの投与量で尾静脈に注射した。5分後、マウスにガス麻酔(イソフルラン3%)をかけ、小動物用
in vivo撮像システムIVISに入れ撮像を行った。基質注射後20分で撮像が完了し、
図13の結果に示す通り、G1-mRNA1を注射した動物の蛍光保持時間は48時間にまで達していた。つまり、この方法によってmRNAの徐放性能が強化され、タンパク質が長時間翻訳された。
【0154】
上記における配列情報は以下の通りである。
mRNA1(配列番号79):
G1-mRNA1(配列番号80):
【0155】
[実施例14]
動物におけるncRNAの長期効果を実現するための、本発明の方法によるncRNA徐放の性能の評価結果
【0156】
ncRNAの徐放性能を強化する本発明の方法の性能を評価するために、徐放性能試験にncRNA(標的を調節する機能を持つ)を選択しマウスに注射した。コントロール(ncRNA1)と比較し、ncRNAの両末端にG1を付加したG1-ncRNA1を注射した動物においては、ncRNA1を注射した動物よりも著しく長い時間標的を制御していた。つまり、この方法によってncRNAの徐放性能が強化され、ncRNAの効果時間が延長された。
【0157】
BGLT3(ncRNA1)を選択し徐放性能の検証を行った。BGL3がその上流遺伝子HBG1(Ivaldi MS.etc. Blood.)の発現を積極的に制御したことが指摘されている。ncRNA1の両末端にG1を付加しG1-ncRNA1を形成した。定量PCRによってHGB1発現の分析を行った。
【0158】
ncRNAを注射前に生理食塩水で希釈した。生後2週間のBAKB/cマウスを計量し、4mg/kgの投与量で皮下注射を行った。ブランク(NC)として生理食塩水を注射した。注射後4、6、8時間後にそれぞれ肝臓のRNAを抽出した。定量PCRによってHGB1発現を検出した。
【0159】
図14の結果に示す通り、G1-ncRNA1を注射した動物は、ncRNA1を注射した動物より著しく長い時間HGB1を制御していた。つまり、この方法によってncRNAの徐放性能が強化され、ncRNAの効果時間が延長された。
【0160】
上記における配列情報は以下の通りである。
ncRNA1(配列番号81):
G1-ncRNA1(配列番号82):
【0161】
最後に、前述の実施形態は当業者にとって本発明の本質の理解を容易にするためのものであり、本発明の保護範囲を制限するものではない。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-03-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸医薬の5’末端および/または3’末端、および/または核酸医薬の内部に特定の配列のDNAまたはRNAを付加する工程を含み、
特定の配列の前記DNAまたはRNAは、
(1)間隔の数が4~16であり、各フラグメントにおいてG塩基の数が同じである、間隔を空けて現れている連続G塩基フラグメントと、
(2)Gを含まない1~6の任意の塩基の配列であり、前記連続G塩基フラグメントの間に位置し、間隔の数が3~15である、間隔を空けて現れているスペーサーフラグメントと、
(3)前記配列の5’末端および3’末端に付加されたG塩基フラグメントとを含み、
核酸医薬の徐放性能の強化は核酸医薬の徐放時間をin vivoで2日より長く延長し核酸医薬の作用時間をin vivoで2日より長く増加させることを意味する核酸医薬の徐放性能の強化方法。
【請求項2】
核酸医薬の徐放時間をin vivoで2~20日に延長し核酸医薬の作用時間をin vivoで2~20日に増加させる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記核酸医薬は無修飾核酸医薬または化学修飾核酸医薬でもよい請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記核酸医薬の配列の長さは8nt以上である請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記核酸医薬の配列の長さは8~5000ntである請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記核酸医薬は一本鎖DNA医薬、二本鎖DNA医薬、一本鎖RNA医薬、二本鎖RNA医薬、または核酸類縁体である請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記核酸医薬はRNA核酸アプタマー、mRNA,ncRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチドASO、DNA核酸アプタマー、またはその他のDNA医薬であり、
前記ncRNAはmiRNA、siRNA、shRNA、saRNA、sgRNA、piRNA、lncRNA、circRNA、またはその他の調節性RNAである請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記特定の配列のDNAまたはRNAは、
G1:GGGTTGGGTTTGGGTTGGGまたは化学修飾G1、または
G1R:GGGUUGGGUUUGGGUUGGGまたは化学修飾G2である請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記化学修飾G1の配列は、
であり、
*
はホスホロチオエート結合を表し、MOEはリボースの2’位におけるヒドロキシル基(-OH)がメトキシエチルと置換されていることを表す請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記特定の配列のDNAまたはRNAと核酸医薬との関係は、
特定の配列のDNAがDNA医薬を徐放するか、特定の配列のDNAがRNA医薬を徐放するか、特定の配列のRNAがDNA医薬を徐放するか、または特定の配列のRNAがRNA医薬を徐放することである請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記核酸医薬はASOである請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ASOは以下の配列、
PCSK9-ASO-1:AGCCACGTGGGCAGCAGCCTGTGA
PCSK9-ASO-2:TTCCACGTGGGCAGCAGCCTGTTT
PCSK9-ASO-3:CGTAGACACCCTCACCCCCA
PCSK9-ASO-4:TTTAGACACCCTCACCCCTT
PCSK9-ASO-5:TTTAGACACCCTCACCCCCAATT
PCSK9-ASO-6:CGTAGACACCCTCACCCCCAAAA
PCSK9-ASO-7:TTCATCCCGGCCGCTGACCTT
PCSK9-ASO-8:TTTCCCCAAAGTCCCCTT
PCSK9-ASO-9:TTCCACGTGGGCAGCAGCCTGTT
PCSK9-ASO-10:TTGCCACGTGGGCAGCAGCCTGTT
PCSK9-ASO-11:TTTCAGGGAACCAGGCTT
PCSK9-ASO-12:TTTCCTCAGGGAACCATT
PCSK9-ASO-13:TTGCTCCGGCAGCAGATTT
PCSK9-ASO-14:TTGGGATGCTCTGGGCTT
PCSK9-ASO-15:TTGCCTGTCTGTGGAATT
PCSK9-ASO-16:TTCTGGTCCTCAGGGAACCAGGCCTT.
のいずれか一つである請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記5’末端に前記特定の配列のDNAまたはRNAが付加された前記核酸医薬は以下の配列、
(1)G1/PCSK9-ASO-1:
GGGTTGGGTTTGGGTTGGGAGCCACGTGGGCAGCAGCCTGTGAGGGTTGGGTTTGGGTTGGG
(2)G1/PCSK9-ASO-2:
GGGTTGGGTTTGGGTTGGGTTCCACGTGGGCAGCAGCCTGTTTGGGTTGGGTTTGGGTTGGG
(3)G1/PCSK9-ASO-3:
GGGTTGGGTTTGGGTTGGGCGTAGACACCCTCACCCCCAGGGTTGGGTTTGGGTTGGG
(4)G1/PCSK9-ASO-4:
GGGTTGGGTTTGGGTTGGGTTTAGACACCCTCACCCCTTGGGTTGGGTTTGGGTTGGG
(5)G1/PCSK9-ASO-5:
GGGTTGGGTTTGGGTTGGGTTTAGACACCCTCACCCCCAATTGGGTTGGGTTTGGGTTGGG
(6)G1/PCSK9-ASO-6:
GGGTTGGGTTTGGGTTGGGCGTAGACACCCTCACCCCCAAAAGGGTTGGGTTTGGGTTGGG
(7)G1/PCSK9-ASO-7:
GGGTTGGGTTTGGGTTGGGTTCATCCCGGCCGCTGACCTTGGGTTGGGTTTGGGTTGGG
(8)G1/PCSK9-ASO-8:
GGGTTGGGTTTGGGTTGGGTTTCCCCAAAGTCCCCTTGGGTTGGGTTTGGGTTGGG
(9)G1/PCSK9-ASO-9:
GGGTTGGGTTTGGGTTGGGTTCCACGTGGGCAGCAGCCTGTTGGGTTGGGTTTGGGTTGGG
(10)G1/PCSK9-ASO-10:
GGGTTGGGTTTGGGTTGGGTTGCCACGTGGGCAGCAGCCTGTTGGGTTGGGTTTGGGTTGGG
(11)G1/PCSK9-ASO-11:
GGGTTGGGTTTGGGTTGGGTTTCAGGGAACCAGGCTTGGGTTGGGTTTGGGTTGGG
(12)G1/PCSK9-ASO-12:
GGGTTGGGTTTGGGTTGGGTTTCCTCAGGGAACCATTGGGTTGGGTTTGGGTTGGG
(13)G1/PCSK9-ASO-13:
GGGTTGGGTTTGGGTTGGGTTGCTCCGGCAGCAGATTTGGGTTGGGTTTGGGTTGGG
(14)G1/PCSK9-ASO-14:
GGGTTGGGTTTGGGTTGGGTTGGGATGCTCTGGGCTTGGGTTGGGTTTGGGTTGGG
(15)G1/PCSK9-ASO-15:
GGGTTGGGTTTGGGTTGGGTTGCCTGTCTGTGGAATTGGGTTGGGTTTGGGTTGGG
(16)G1/PCSK9-ASO-16:
GGGTTGGGTTTGGGTTGGGTTCTGGTCCTCAGGGAACCAGGCCTTGGGTTGGGTTTGGGTTGGGのいずれかである請求項1に記載の方法。
【請求項14】
核酸医薬の5’末端および/または3’末端、および/または核酸医薬の内部に特定の配列のDNAまたはRNAを付加する工程を含み、
特定の配列の前記DNAまたはRNAは、
(1)間隔の数が4であり、各フラグメントにおけるG塩基の数が2~6である、間隔を空けて現れている連続のG塩基フラグメントと、
(2)Gを含まない1~3の任意の塩基の配列であり、前記連続G塩基フラグメントの間に位置し、間隔の数が3である、間隔を空けて現れているスペーサーフラグメントと、
(3)前記配列の5’末端および3’末端に付加されたG塩基フラグメントとを含み、
核酸医薬の徐放性能の強化は核酸医薬の徐放時間をin vivoで2日より長く延長し核酸医薬の作用時間をin vivoで2日より長く増加させることを意味する核酸医薬の徐放性能の強化方法。
【国際調査報告】