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特表2024-528255病原体含有試料中の分析物の検出方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】病原体含有試料中の分析物の検出方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6813 20180101AFI20240719BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
C12Q1/6813 Z ZNA
C12N15/09 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506893
(86)(22)【出願日】2022-08-04
(85)【翻訳文提出日】2024-03-18
(86)【国際出願番号】 EP2022071935
(87)【国際公開番号】W WO2023012272
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】63/230,247
(32)【優先日】2021-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521552268
【氏名又は名称】リゾルブ バイオサイエンシズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】コーフハージ,クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ライネケ,フランク
(72)【発明者】
【氏名】ゲイペル,アンドレアス
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QQ79
4B063QR32
4B063QR48
4B063QR55
4B063QS33
4B063QS34
4B063QX02
(57)【要約】
本開示は、分析物の連続シグナルコード化により、並行して試料中の異なる前記分析物を検出するための新規多重化法およびキットに関する。特に、本開示は、分析の前にDNAまたはRNA調製ステップなしに、in situ空間トランスクリプトミクス(例えば、分子地図作成)のための病原体の不活化をもたらす方法に関する。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)病原体または試料からのRNAおよび/またはDNAの単離のない試料内の病原体の不活化;
ii)空間トランスクリプトミクスにより分析物を検出すること、
を含む病原体含有試料中の分析物を検出するための方法。
【請求項2】
前記病原体含有試料は、固体、流体試料、塗抹標本および病原性物質を含む表面からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記病原体含有試料は、好ましくは生体組織を含む、更に好ましくは生体細胞および/または病原体含有細胞の抽出物および/または一部を含む、生体試料である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記病原体含有試料は、真核生物、古細菌、原核生物、および/またはウィルスを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記病原体含有試料は、生物、環境試料、生物からの排泄物、または表面由来である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記病原体含有試料は、病原体を含むホルマリン固定された、パラフィン包埋された組織を含むおよび/または前記病原体含有試料は、凍結されるまたはアルコールで安定化される、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記病原体含有試料中の病原体は、真核生物病原体、古細菌病原体、原核生物病原体、ウィルスおよびウイロイドからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記病原体は、物理的、化学的、生化学的および/または生物学的処理により不活化される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記病原体は、物理的不活化処理により不活化される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記物理的不活化処理は、温度変化、電磁波および可視光ならびにUVのような不可視光を含む光の照射、またはこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記物理的不活化処理は、30℃、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃、90℃、100℃または110℃より高い温度による温度処理である、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記物理的不活化処理は、X線、放射能、UV光、青色光、赤色光および/または赤外光、またはこれらの組み合わせによる処理である、請求項9または10に記載の方法。
【請求項13】
前記病原体は、化学的不活化処理により不活化される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記化学的不活化処理は、pH変化、塩処理、極性のまたは非極性の溶媒の少量による処理、酸化性または還元性試薬による処理、病原体への共有結合または非共有結合を行う試薬による処理および病原体の少なくとも部分を切断する分解性試薬による処理、またはこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記化学的不活化処理は、βメルカプトエタノール、ジチオトレイトール(DTT)、ジチオエリトリット、ホウ化水素ナトリウム(NaBH)、水素化リチウムアルミニウム(LiAlH)、H、オゾン、過マンガン酸カリウムのような過酸化物、tert-ブチルヒドロペルオキシド、過ホウ酸ナトリウムおよび/または次亜塩素酸塩のような有機物過酸化物、またはこれらの組み合わせのようなレドックス反応性薬剤による処理である、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記化学的不活化処理は、アルデヒド、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドおよび/またはBoinsche Solutionによる処理である、請求項13~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記化学的不活化処理は、メタノール、エタノール、プロパノールおよび/またはイソプロパノールのようなアルコールによる処理である、請求項13~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記化学的不活化処理は、SDS、トリトンおよび/またはNPのような界面活性剤による処理である、請求項13~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記病原体は、生化学的不活化処理により不活化される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記生化学的不活化処理は、酵素および/または生体分子による処理である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記病原体は、生物学的不活化処理により不活化される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記空間トランスクリプトミクスを検出することは、前記分析物の連続的なシグナルコード化により病原体含有試料中の異なる分析物を検出するための多重化法を含み、病原体または試料からのRNAおよび/またはDNAの単離のない試料内の病原体の不活化、および、
(A)少なくとも20個の異なる分析物のコード化のために分析物特異的プローブの少なくとも20個の(20)異なるセットと試料を接触させることであって、分析物特異的プローブの各セットは異なる分析物と相互作用し、分析物が核酸であるならば分析物特異的プローブの各セットは、同じ分析物の異なる下部構造と特異的に相互作用する少なくとも5個の(5)分析物特異的プローブを含み、各分析物特異的プローブは、
(aa)コード化される異なる分析物の1種と特異的に相互作用する結合エレメント(S)、および
(bb)コード化される分析物に対しユニークなヌクレオチド配列(ユニークな識別子配列)を含む識別子エレメント(T)、
を含み、分析物特異的プローブの特定のセットの分析物特異的プローブは、識別子エレメント(T)のヌクレオチド配列中の分析物特異的プローブの別のセットの分析物特異的プローブとは異なり、
分析物特異的プローブの各セット中の分析物特異的プローブは、同じ分析物に結合しかつ分析物にユニークな識別子エレメント(T)の同じヌクレオチド配列を含む、接触させること;および
(B)分析物当りデコーディングオリゴヌクレオチドの少なくとも1セットと試料を接触させることであって、個別の分析物のためのデコーディングオリゴヌクレオチドの各セット中の各デコーディングオリゴヌクレオチドは、
(aa)対応する分析物特異的プローブセットの識別子エレメント(T)のユニークな識別子配列の少なくとも一部分に実質的に相補的なヌクレオチド配列を含む識別子コネクターエレメント(t)、および
(bb)シグナルオリゴヌクレオチドの特異的ハイブリダイゼーションを可能にするヌクレオチド配列を含む翻訳エレメント(c);
を含み、個別の分析物のための記デコーディングオリゴヌクレオチドセットは、第1のコネクターエレメント(t)中の異なる分析物のための別のデコーディングオリゴヌクレオチドセットとは異なる、接触させること;および
(C)シグナルオリゴヌクレオチドの少なくとも1セットと試料を接触させることであって、各シグナルオリゴヌクレオチドは:
(aa)デコーディングオリゴヌクレオチドに含まれる翻訳エレメント(c)のヌクレオチド配列の少なくとも一部分に実質的に相補的なヌクレオチド配列を含む翻訳コネクターエレメント(C)、および
(bb)シグナルエレメント、
を含む、接触させること;
(D)シグナルエレメントに起因するシグナルを検出すること;
(E)試料からデコーディングオリゴヌクレオチドおよびシグナルオリゴヌクレオチドを選択的に除去すること、それによりコード化される分析物への分析物特異的プローブの特異的結合を実質的に維持すること;
(F)分析物毎に符号語を含むコード化スキームを生成するためにステップB)~E)を含む少なくとも3回のさらなるサイクルを実施することであって、特に最後のサイクルが、ステップ(D)で停止し得る、、実施すること
を含む、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
全てのステップは、自動化され、特にステップB)~F)は、特にロボットシステム用いることにより、自動化される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
全てのステップは、流体系で実施される、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
各分析物は、特異的な符号語と関連付けられ、前記符号語は、多数の位置を含み、かつ各位置は、複数の符号語を有する複数の識別可能なコード化スキームをもたらす1つのサイクルに対応する、請求項22~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記コード化スキームは、予め決められかつコード化される分析物に割り付けられる、請求項22~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
実施されたサイクルにおいて個別の分析物について得られる前記符号語は、検出されたシグナルおよび追加で検出シグナルなしに対応する少なくとも1つのエレメントを含む、請求項22~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
シグナルは、少なくとも1つのサイクル内で少なくとも1種の分析物について検出されない、請求項22~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
少なくとも1種の個別の分析物について符号語の位置は、ゼロ(0)である、請求項22~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
符号語ゼロ(0)は、個別の分析物に対する対応する分析物特異的プローブの識別子エレメント(T)のユニークな識別子配列の少なくとも一部分に実質的に相補的なヌクレオチド配列を含む識別子コネクターエレメント(t)を有するデコーディングオリゴヌクレオチドを用いることなく生成される、請求項22~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
少なくとも1種の個別の分析物について符号語の位置がこのサイクルにおいてゼロ(0)であるならば個別の分析物について対応する分析物特異的プローブの識別子エレメント(T)のユニークな識別子配列の少なくとも一部分に実質的に相補的なヌクレオチド配列を含む識別子コネクターエレメント(t)を有する対応するデコーディングオリゴヌクレオチドは、使用されない、請求項22~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記試料は、シグナルオリゴヌクレオチドの少なくとも2つの異なるセットと接触され、各セット中のシグナルオリゴヌクレオチドは、異なるシグナルエレメントを含みおよび異なるコネクターエレメント(C)を含む、請求項22~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記試料は、分析物毎にデコーディングオリゴヌクレオチドの少なくとも2つの異なるセットと接触され、
これらの異なるセットに含まれるデコーディングオリゴヌクレオチドは、対応する分析物特異的プローブセットの識別子エレメント(T)のユニークな識別子配列の少なくとも一部分に実質的に相補的なヌクレオチド配列を含む同じ識別子コネクターエレメント(t)を含み、および
分析物毎に異なるセットのデコーディングオリゴヌクレオチドは、シグナルオリゴヌクレオチドの特異的ハイブリダイゼーションを可能にするヌクレオチド配列を含む翻訳エレメント(c)において異なる、
請求項22~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記試料は、分析物毎にデコーディングオリゴヌクレオチドの少なくとも2つの異なるセットと接触され、
これらの異なるセットに含まれるデコーディングオリゴヌクレオチドは、対応する分析物特異的プローブセットの識別子エレメント(T)のユニークな識別子配列の少なくとも一部分に実質的に相補的なヌクレオチド配列を含む同じ識別子コネクターエレメント(t)を含み、および
分析物毎に異なるセットのデコーディングオリゴヌクレオチドは、シグナルオリゴヌクレオチドの特異的ハイブリダイゼーションを可能にするヌクレオチド配列を含む翻訳エレメント(c)において異なり;
分析物毎にデコーディングオリゴヌクレオチドの1セットのみが、サイクル毎に使用され、および/またはデコーディングオリゴヌクレオチドの異なるセットは、同じサイクルでシグナルオリゴヌクレオチドの対応するセットと組み合わせて異なるサイクルで使用される、
請求項22~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
異なる翻訳エレメント(c)を含む分析物毎のデコーディングオリゴヌクレオチドの異なるセットの数は、異なるコネクターエレメント(C)を含むシグナルオリゴヌクレオチドの異なるセットの数に対応する、請求項22~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
異なる分析物に対するデコーディングオリゴヌクレオチドの全てのセットは、同じタイプの翻訳エレメント(c)を含む、請求項22~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記試料は、分析物特異的プローブの特定の識別子エレメント(T)への結合のために非シグナルデコーディングオリゴヌクレオチドの少なくとも1セットと接触され、同じ非シグナルデコーディングオリゴヌクレオチドセット中のデコーディングオリゴヌクレオチドは、同じ異なる識別子エレメント(T)と相互作用し、

各非シグナルデコーディングオリゴヌクレオチドは、ユニークな識別子配列の少なくとも一部分に実質的に相補的なヌクレオチド配列を含む識別子コネクターエレメント(t)を含み、かつシグナルオリゴヌクレオチドの特異的ハイブリダイゼーションを可能にするヌクレオチド配列を含む翻訳エレメント(c)を含まない、
請求項22~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記試料は、少なくとも2つの異なる識別子エレメント(T)への結合のために非シグナルデコーディングオリゴヌクレオチドの少なくとも2つの異なるセットと接触され、非シグナルデコーディングオリゴヌクレオチドの各セットは、異なる識別子エレメント(T)と相互作用し、
各非シグナルデコーディングオリゴヌクレオチドは、ユニークな識別子配列の少なくとも一部分に実質的に相補的なヌクレオチド配列を含む識別子コネクターエレメント(t)を含み、かつシグナルオリゴヌクレオチドの特異的ハイブリダイゼーションを可能にするヌクレオチド配列を含む翻訳エレメント(c)を含まない、
請求項22~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
非シグナルデコーディングオリゴヌクレオチドの異なるセットは、非シグナルデコーディングオリゴヌクレオチドの異なるセットの事前混合物中に含まれ得るまたは別々に存在し得る、請求項22~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記試料は、非シグナルオリゴヌクレオチドのセットと接触され、各非シグナルオリゴヌクレオチドは:
(aa)翻訳エレメント(c)のヌクレオチド配列の少なくとも一部分に実質的に相補的なヌクレオチド配列を含む翻訳コネクターエレメント(C)、および
(bb)消光剤(Q)、シグナルエレメントおよび消光剤(Q)
を含む、またはシグナルエレメントを含まない、
請求項22~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記試料は、
非シグナルオリゴヌクレオチドの少なくとも2セットと接触され、各非シグナルオリゴヌクレオチドは:
(aa)翻訳エレメント(c)のヌクレオチド配列の少なくとも一部分に実質的に相補的なヌクレオチド配列を含む翻訳コネクターエレメント(C)、および
(bb)消光剤(Q)、シグナルエレメントおよび消光剤(Q)
を含む、またはシグナルエレメントを含まない、
請求項22~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
非シグナルデコーディングオリゴヌクレオチドの異なるセットは、非シグナルデコーディングオリゴヌクレオチドの異なるセットの事前混合物中に含まれ得るまたは別々に存在し得る、請求項22~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
デコーディングオリゴヌクレオチドの特定のセット中のデコーディングオリゴヌクレオチドは、特定の分析物にユニークな同一の識別子エレメント(T)と相互作用する、請求項22~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
デコーディングオリゴヌクレオチドの異なるセットは、異なるデコーディングオリゴヌクレオチドセットの事前混合物中に含まれ得るまたは別々に存在し得る、請求項22~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
分析物特異的プローブの異なるセットは、分析物特異的プローブの異なるセットの事前混合物中に含まれ得るまたは別々に存在し得る、請求項22~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
シグナルオリゴヌクレオチドの異なるセットは、シグナルオリゴヌクレオチドの異なるセットの事前混合物中に含まれ得るまたは別々に存在し得る、請求項22~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記試料は、生体試料であり、好ましくは生体組織を含み、更に好ましくは生体細胞および/または細胞の抽出物および/または一部を含む、請求項22~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記細胞は、原核細胞または真核細胞、特に哺乳類細胞、特にヒト細胞である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記生体組織、生体細胞、細胞の抽出物および/または一部は、固定される、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記分析物は、細胞含有試料などの、透過処理された試料中で固定される、請求項22~49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記結合エレメント(S)は、コード化される分析物への特異的結合、好ましくはコード化される分析物への特異的ハイブリダイゼーションを可能にするヌクレオチド配列を含む核酸を含む、請求項22~56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
ステップA)の後でかつステップB)の前に非結合分析物特異的プローブは、特に洗浄により、除去される、請求項22~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
ステップB)の後でかつステップC)の前に非結合デコーディングオリゴヌクレオチドは、特に洗浄により、除去される、請求項22~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
ステップC)の後でかつステップD)の前に非結合シグナルオリゴヌクレオチドは、特に洗浄により、除去される、請求項22~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記分析物特異的プローブは、試料とインキュベートされ、それによりコード化される分析物への分析物特異的プローブの特異的結合を可能にする、請求項22~54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
前記デコーディングオリゴヌクレオチドは、試料とインキュベートされ、それによりそれぞれの分析物特異的プローブの識別子エレメント(T)へのデコーディングオリゴヌクレオチドの特異的ハイブリダイゼーションを可能にする、請求項22~55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記シグナルオリゴヌクレオチドは、試料とインキュベートされ、それによりそれぞれのデコーディングオリゴヌクレオチドの翻訳エレメント(T)へのシグナルオリゴヌクレオチドの特異的ハイブリダイゼーションを可能にする、請求項22~56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
前記コード化される分析物は、核酸、好ましくはDNAまたはRNA、特にmRNAである、請求項22~57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
前記コード化される分析物は、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質である、請求項22~58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
前記結合エレメント(S)は、コード化される分析物への特異的結合を可能にするアミノ酸配列を含む、請求項22~59のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
前記結合エレメント(S)は、抗体、抗体フラグメント、アンチカリンタンパク質、受容体リガンド、酵素基質、レクチン、サイトカイン、リンホカイン、インターロイキン、血管新生または病原性因子、アレルゲン、ペプチド性アレルゲン、組換えアレルゲン、アレルゲン-イディオタイプ抗体、自己免疫誘発構造、組織拒絶誘導構造、免疫グロブリン定常領域およびこれらの組み合わせからなる群より選択される親和性物質由来の親和性部分または全体として親和性物質である部分を含み得る、請求項22~60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
前記結合エレメント(S)は、Fab、scFv;単一ドメイン、またはこれらのフラグメント、ビスscFv、Fab2、Fab3、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディおよびtandabからなる群より選択される抗体または抗体フラグメントである、請求項22~61のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
前記シグナルエレメントに起因するシグナル、従って特にデコーディングオリゴヌクレオチドへのシグナルオリゴヌクレオチドの結合、対応する検体プローブとの相互作用、それぞれの分析物への結合は、
(f)試料の少なくとも一部を画像化すること;および/または
(g)光学画像化技術を使用すること;および/または
(h)蛍光画像化技術を使用すること;および/または
(i)多色蛍光画像化技術;および/または
(j)超解像度蛍光画像化技術、
により決定される、請求項22~62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
前記デコーディングオリゴヌクレオチドの少なくとも1つのセット中のデコーディングオリゴヌクレオチドは、マルチデコーダーであり、
(aa)対応する分析物特異的プローブセットの識別子エレメント(T)のユニークな識別子配列の少なくとも一部分に実質的に相補的なヌクレオチド配列を含む識別子コネクターエレメント(t)、および
(bb)少なくとも2つの翻訳エレメント(c)であって、異なるシグナルオリゴヌクレオチドの特異的ハイブリダイゼーションを可能にする異なるヌクレオチド配列を含む、翻訳エレメント
を含む、請求項22~63のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
前記異なるシグナルオリゴヌクレオチドは、異なるシグナルエレメントを含みおよび異なるコネクターエレメント(C)を含む、請求項64に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示分野
本明細書で提供される技術は、病原体含有試料中の分析物を検出するための、特に多重空間トランスクリプトミクス法、並びに疾患の診断のためのインビトロ法により病原体不活化試料中の分析物を検出することによる、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特異的な分子の、細胞のおよび病原体の標的(ウィルス、細菌、または他の病原体など)を検出するための方法は、医学および獣医学診断、環境試験、および工業的品質管理のための基本的なツールである。臨床医学において特定の標的を検出するための方法の例は、売薬迅速妊娠試験、特定の抗体に対する感染病原体の耐性を測定するための微生物培養試験、および血液試料中の癌マーカーのための自動化試験を含む。食品中の病原体混入物の検出、薬物発見のための候補化合物の高スループットスクリーニング、および医薬品中の有効成分の定量化は、特定の標的の存在を測定するための方法に依存する工業生産用途の実例である。特定の標的の試験を必要とする環境用途は、給水汚染、風媒性生物脅威病原体、および家庭真菌汚染を含む。
【0003】
例えば、SARS-CoV-2により引き起こされたCOVID-19パンデミックは、感染症を検出し、株の進化を追跡し、および疾患経過のバイオマーカーを特定する臨床的ニーズを浮き彫りにする。遺伝子発現の分析は、病原体検出に使われるより高い安全性レベルの実験室に一緒に設置してはいけない測定装置に依存する。従って、より高い安全性レベルでのこれらの試料の分析は、測定装置が同じ実験室に配置される場合、可能ではない。代替法は、目的の生体分子を抽出し、次に、これを、分析がより高い安全性レベルの実験室の外で実施できるように、安全性レベルを下げることである。通常、バイオセーフティ試料の空間トランスクリプトミクス分析は、RNAまたはDNAが単離された後で実施される。これは、Visium技術(10xゲノミクス)またはGeoMxシステム(ナノストリング;https://www.nature.com/articles/s41467-021-21361-7)を用いるシナリオに典型的である。
【0004】
生物学的および非生物学的試料中の小量の分析物の分析および検出は、臨床的および分析的な環境での日常業務となった。多数の分析方法が、この目的のために確立されてきた。それらのいくつかは、特定の第1の分析物に対し特定の読み取り可能なコードを割り付け、それは特定の第2の分析物に割り付けられるコードとは異なる、コード化技術を使用する。
【0005】
この分野での先行技術の1つは、試料中のmRNA分子を検出するために実質的に開発された、いわゆる「一分子蛍光in situハイブリダイゼーション」(smFISH)である。Lubeck et al.(2014),Single-cell in situ RNA profiling by sequential hybridization,Nat.Methods 11(4),p.360-361では、目的のmRNAは、特異的直接標識プローブセットにより検出される。1ラウンドのハイブリダイゼーションおよび検出の後で、mRNA特異的プローブのセットが、mRNAから溶出され、他の(または同じ)蛍光標識を有する同じプローブセットが、次のハイブリダイゼーションおよび画像化のラウンドで用いられて、いくつかのラウンドにわたり遺伝子特異的カラーコードスキームを生成する。この技術は、転写物当りいくつかの異なるタグ付きプローブセットを必要とし、かつ毎回の検出ラウンド後にこれらのプローブセットを変性させる必要がある。
【0006】
この技術のさらなる展開は、直接標識されるプローブセットを使用しない。その代わりに、プローブセットのオリゴヌクレオチドが、ハイブリダイゼーション連鎖反応(HCR)の開始剤として機能する核酸配列を提供し、これは、シグナル増幅を可能にする技術である;Shah et al.(2016),In situ transcription profiling of single cells reveals spatial organization of cells in the mouse hippocampus,Neuron 92(2),p.342-357を参照されたい。
【0007】
「多重化されたエラーに強い蛍光in situハイブリダイゼーション」(merFISH)と呼ばれる別の技術が、Chen et al.(2015),RNA imaging.Spatially resolved,highly multiplexed RNA profiling in single cells,Science 348(6233):aaa6090により報告されている。そこでは、目的のmRNAが、後に続く蛍光標識オリゴヌクレオチドの特異的ハイブリダイゼーションのための追加の配列エレメントを提供する特異的プローブセットにより検出される。各プローブセットは、合計16種の配列エレメントのうちの4種の異なる配列エレメントを提供する。目的のmRNAへの特異的なプローブセットのハイブリダイゼーション後に、いわゆる読み出しハイブリダイゼーションが、行われる。各読み出しハイブリダイゼーションでは、配列エレメントの1つに相補的な16個の蛍光標識オリゴヌクレオチドのうちの1個が、ハイブリダイズされる。全ての読み出しオリゴヌクレオチドは、同じ蛍光色を使用する。画像化後に、蛍光シグナルは、光照射により破壊され、次のラウンドの読み出しハイブリダイゼーションが、変性ステップなしに起こる。その結果、バイナリーコードが、各mRNA種について生成される。16ラウンドで4つのシグナルのユニークなシグナルサインが、特異的プローブセットの目的のmRNAへの結合のための1回のみのハイブリダイゼーションラウンドを用いて生成され、単一蛍光色により標識された読み出しオリゴヌクレオチドの16ラウンドのハイブリダイゼーションがそれに続く。
【0008】
この技術のさらなる展開は、2つの異なる蛍光色を用い、読み出しオリゴヌクレオチドと蛍光標識の間のジスルフィド切断によりシグナルを除去し、さらに代替ハイブリダイゼーション緩衝液を用いることによりスループットを改善する;Moffitt et al.(2016),High-throughput single-cell gene-expression profiling with multiplexed error-robust fluorescence in situ hybridization,Proc.Natl.Acad.Sci.U S A.113(39),p.11046-11051を参照されたい。
【0009】
「intron seqFISH」と呼ばれる技術が、Shah et al.(2018),Dynamics and spatial genomics of the nascent transcriptome by intron seqFISH,Cell 117(2),p.363-376で報告されている。そこでは、目的のmRNAは、後に続く蛍光標識オリゴヌクレオチドの特異的ハイブリダイゼーションのための追加の配列エレメントを提供する特異的プローブセットにより検出される。各プローブセットは、カラーコーディングラウンド当り12種の可能な配列エレメント(使用される12種の「疑似色」を表す)のうちの1つを提供する。各カラーコーディングラウンドは、4回の連続ハイブリダイゼーションからなる。これらの連続ハイブリダイゼーションのそれぞれでは、それぞれ異なるフルオロフォアで標識された3個の読み出しプローブが、mRNA特異的プローブセットの対応するエレメントにハイブリダイズされる。画像化後に、読み出しプローブは、55%のフォルムアミド緩衝液により取り除かれ、次のハイブリダイゼーションが続く。それぞれ4回の連続ハイブリダイゼーションを含む、5回のカラーコード化ラウンド後に、カラーコードは完結する。
【0010】
欧州特許第EP0611828号は、分析物に特異的に結合するプローブにシグナル生成エレメントを動員するための架橋エレメントの使用を開示する。更に具体的な記載は、架橋核酸分子を動員する特異的プローブによる核酸の検出を記述する。この架橋核酸は最終的に、シグナル生成核酸を動員する。この特許文献はまた、分岐DNAのようなシグナル増幅のためのシグナル生成エレメントのための2つ以上の結合部位を有する架橋エレメントの使用も記載する。
【0011】
Player et al.(2001),Single-copy gene detection using branched DNA(bDNA)in situ hybridization,J.Histochem.Cytochem.49(5),p.603-611は、目的の核酸が追加の配列エレメントを提供する特異的プローブセットにより検出される方法を記載する。第2ステップでは、前置増幅器(preamplifier)オリゴヌクレオチドは、この配列エレメントにハイブリダイズされる。この前置増幅器オリゴヌクレオチドは、その後のステップでハイブリダイズされる増幅器オリゴヌクレオチドのための複数の結合部位を含む。これらの増幅器オリゴヌクレオチドは、標識オリゴヌクレオチドのための複数の配列エレメントを提供する。このように、シグナルの増幅をもたらす分岐オリゴヌクレオチドツリーが構築される。
【0012】
RNAscopeと呼ばれるこの方法のさらなる進展は、Wang et al.(2012),RNAscope:a novel in situ RNA analysis platform for formalin-fixed,paraffin-embedded tissues,J.Mol.Diagn.14(1),p.22-29により報告されており、それは、別のデザインのmRNA特異的プローブを使用する。ここで、2種のmRNA特異的オリゴヌクレオチドは、前置増幅器オリゴヌクレオチドを動員できる配列を提供するために、極めて接近してハイブリダイズしなければならない。このように、この方法の特異性は、擬陽性シグナルの数を減らすことにより増大される。
【0013】
Choi et al.(2010),Programmable in situ amplification for multiplexed imaging of mRNA expression,Nat.Biotechnol.28(11),p.1208-1212は、「HCR-ハイブリダイゼーション連鎖反応」として知られる方法を開示する。目的のmRNAは、追加の配列エレメントを提供する特異的プローブセットにより検出される。追加の配列エレメントは、ハイブリダイゼーション連鎖反応を開始するためのイニシエーター配列である。基本的に、ハイブリダイゼーション連鎖反応は、第1のヘアピンがイニシエーター配列により開放された後で高分子へと自己集合する、準安定性のオリゴヌクレオチドヘアピンに基づく。
【0014】
この技術のさらなる展開は、RNAscope技術と同様に、HCRのためのイニシエーター配列を形成するために極めて接近してハイブリダイズしなければならない、いわゆる、スプリットイニシエータープローブを用い、これは、擬陽性シグナルの数を減らす;Choi et al.(2018),Third-generation in situ hybridization chain reaction:multiplexed,quantitative,sensitive,versatile,robust.Development 145(12)を参照されたい。
【0015】
Mateo et al.(2019),Visualizing DNA folding and RNA in embryos at single-cell resolution,Nature Vol,568,p.49ff.は、「クロマチン構造の光再構成(ORCA)」と呼ばれる方法を開示する。この方法は、染色体株を可視化することを目的とする。
【0016】
欧州特許第EP2992115B1号は、連続的単一分子ハイブリダイゼーションの方法を記載し、連続バーコード化により細胞、組織、臓器または生物中の核酸を検出するおよび/または定量化するための技術を提供する。
【0017】
この背景に対し、先行技術の方法の欠点が低減され、またはさらに回避され得る手段により病原体含有試料中の分析物を検出するための方法を提供することが、本開示の根底にある目的である。
【発明の概要】
【0018】
本開示は、分析物の連続的なシグナルコード化により、並行して試料中の異なる上記分析物を検出するための新規多重化法およびキットに関する。特に、本開示は、分析の前にDNAまたはRNA調製のステップなしに、in situ空間トランスクリプトミクス(例えば、分子地図作成)のための病原体の不活化をもたらす方法に関する。1つの重要な利点は、分析がBSL3またはBSL4実験室の外で実施できることである。
本開示の有利な実施形態は、病原体含有試料中の分析物を検出するための方法が、下記のステップを含むことである:
1)リスクレベル>2を有する病原体を含む試料を採取するステップ、
2)病原体または試料からRNAまたはDNAを単離することなしに、試料内の病原体を不活化するステップ、
3)空間*オミクス解析を実施するステップ。
【0019】
第1の態様では、本開示の実施形態は特に、下記を含む病原体含有試料中の分析物を検出するための方法に関する:
i)病原体または試料からのRNAおよび/またはDNAの単離のない、試料内の病原体の不活化;
ii)空間トランスクリプトミクスによる分析物の検出。
【0020】
特に、空間トランスクリプトミクス検出法は、分析物の連続的なシグナルコード化により試料中の異なる上記分析物を検出するための、下記を含む、多重化法を含む:
(A)少なくとも20種の異なる分析物のコード化のために分析物特異的プローブの少なくとも20個の(20)異なるセットと試料を接触させることであって、分析物特異的プローブの各セットが異なる分析物と相互作用し、分析物が核酸である場合、分析物特異的プローブの各セットは、同じ分析物の異なる下部構造と特異的に相互作用する少なくとも5個の(5)分析物特異的プローブを含み、各分析物特異的プローブは、
(aa)コード化される異なる分析物の1種と特異的に相互作用する結合エレメント(S)、および
(bb)コード化される分析物に対しユニークなヌクレオチド配列(ユニークな識別子配列)を含む識別子エレメント(T)、
を含み、分析物特異的プローブの特定のセットの分析物特異的プローブは、識別子エレメント(T)のヌクレオチド配列中の分析物特異的プローブの別のセットの分析物特異的プローブとは異なり、
分析物特異的プローブの各セット中の分析物特異的プローブは、同じ分析物に結合し、かつ上記分析物に対しユニークな識別子エレメント(T)の同じヌクレオチド配列を含む、接触させること;および
(B)分析物当り少なくとも1セットのデコーディングオリゴヌクレオチドと試料を接触させることであって、個別の分析物のためのデコーディングオリゴヌクレオチドの各セット中の、各デコーディングオリゴヌクレオチドは、
(aa)対応する分析物特異的プローブセットの識別子エレメント(T)のユニークな識別子配列の少なくとも一部に実質的に相補的なヌクレオチド配列を含む識別子コネクターエレメント(t)、および
(bb)シグナルオリゴヌクレオチドの特異的ハイブリダイゼーションを可能にするヌクレオチド配列を含む翻訳エレメント(c);
を含み、個別の分析物のためのデコーディングオリゴヌクレオチドのセットは、第1のコネクターエレメント(t)中の異なる分析物のためのデコーディングオリゴヌクレオチドの別のセットとは異なる、接触させること;および
(C)シグナルオリゴヌクレオチドの少なくとも1セットと試料を接触させることであって、各シグナルオリゴヌクレオチドは:
(aa)デコーディングオリゴヌクレオチドに含まれる翻訳エレメント(c)のヌクレオチド配列の少なくとも一部に実質的に相補的なヌクレオチド配列を含む翻訳コネクターエレメント(C)、および
(bb)シグナルエレメント
を含む、接触させること;
(D)シグナルエレメントに起因するシグナルを検出すること;
(E)試料からデコーディングオリゴヌクレオチドおよびシグナルオリゴヌクレオチドを選択的に除去すること、それによりコード化される分析物への分析物特異的プローブの特異的結合を実質的に維持すること;
(F)分析物毎に符号語を含むコード化スキームを生成するためにステップB)~E)を含む少なくとも3回のさらなるサイクルを実施することであって、特に最後のサイクルが、ステップ(D)で停止し得る、実施すること。
【0021】
第2の態様では、本開示の実施形態は、本開示による方法の使用を含む、ウィルスまたは細菌の感染のような病原体感染に起因する疾患の診断のためのインビトロ法に関する。
【0022】
第3の態様では、本開示の実施形態は、感染性および/または寄生虫起源により引き起こされる植物の疾患の診断のためのインビトロ法を提供し、上記方法は、本開示による方法の使用を含む。
【0023】
本開示を詳細に記述する前に、本開示は、記載された方法のステップの特定の構成部分に限定されないことを理解されたい。本明細書で用いられる用語は、特定の実施形態のみを説明する目的で用いられるものであり、限定することを意図したものではないということも理解されたい。明細書および添付の特許請求の範囲で用いられるように、単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈上別段の明確な記載がない限り、単一および/または複数の指示対象を包含することに留意されたい。数値により区切られるパラメーターの範囲が与えられる場合、その範囲は、これらの限界値を含むと見なされることも更に理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】分析物が核酸であり、プローブセットが分析物に特異的に結合するオリゴヌクレオチドを含む実施形態。プローブは、デコーディングオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションを可能にするユニークな識別子配列を含む。
図2】分析物がタンパク質であり、プローブセットが分析物に特異的に結合するタンパク質(ここでは抗体)を含む実施形態。プローブは、デコーディングオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションを可能にするユニークな識別子配列を含む。
図3】本開示による方法のフローチャート。
図4】デコーディングおよびシグナルオリゴヌクレオチドの適用のための別の選択肢。
図5】2つの異なるシグナルタイプおよび3回の検出ラウンドによる、3つの異なる核酸配列のシグナルコード化の例。この例では、コード化スキームはエラー検出を含む。
図6】検出サイクル数に対する生成された符号語の数(対数尺度)。
図7】単一ステップ効率に基づく5ラウンドコード化スキームの計算された総効率。
図8】異なる実験間の相対的転写物存在量の比較。
図9】異なる実験間の相対的転写物存在量の相関。
図10】シグナルの細胞間分布の比較。
図11】シグナルの細胞内分布の比較。
図12】異なる細胞周期依存性転写物の分布パターン。
図13】2つの標識(AおよびB)を有するおよび標識のない(-)8ラウンドのコードを用いる複数標的の検出。標的1、2、3、4、5、20、およびnが示される。コード化スキームのラウンド1、2、3、および8が示される。本明細書では、ブランクはコードの一部である。
図14】複数の標的の検出は、検出可能なマーカーを用いるコード化スキームにより実施できる。終止スキームはまた、マーカーとして「0」を含み得る。それは、特定の位置で転写物が検出されないことを意味する。結果として、コード化スキームは、2個の遺伝子特異的プローブのみを用いて次の構築物により表され得る。 1)検出可能な標識F含有:画像化中に検出可能 2)検出可能な標識Fおよび消光剤Q含有:画像化中に検出できない 3)消光剤Q含有:画像化中に検出できない 4)標識F不含:画像化中に検出できない 5)シグナル伝達オリゴヌクレオチド不含:画像化中に検出できない 6)シグナル伝達オリゴヌクレオチドを動員できないデコーダーオリゴヌクレオチド含有 7)デコーダーオリゴヌクレオチド不含:画像化中に検出できない
図15】マルチデコーダーの可能な構造。数値は、例を示す。(A)は、ユニークな識別子配列であり、(a)は、デコーディングオリゴヌクレオチドまたはマルチデコーダーの対応する配列であり、(c1)~(c3)は、異なるシグナルオリゴヌクレオチドに特異的に結合する、異なる配列エレメントである。例2~5は、異なるバージョンのマルチデコーダーを示す。異なる配列エレメントの順番、並びにシグナルオリゴヌクレオチド結合エレメントの数は、固定されない。例1は、ただ1つのシグナルオリゴヌクレオチド結合エレメント(c1)のみが存在するので、通常のデコーディングオリゴヌクレオチドを示す。
図16】マルチデコーダーおよび3つの異なるシグナルタイプを生成する2個の異なるシグナルオリゴヌクレオチド並びに3回の検出ラウンドを使用することによる3つの異なる核酸配列のシグナルコード化の例。この例では、コード化スキームは、エラー検出および訂正を含む。
図17】検出サイクルの数に対する生成された符号語の数(対数尺度)。merFISHの符号語の数は、検出サイクルの数と共に指数関数的に増大しないが、それぞれの追加のラウンドで効率が低くなる。対照的に、intronSeqFISH、マルチデコーダーを使わない本開示の方法、マルチデコーダーを含む方法の符号語の数は、指数関数的に増大する。マルチデコーダーを用いる方法の曲線の傾斜は、先行発明のものよりも遙かに大きく、20ラウンドの検出後に、20,000,000倍を越える使用可能なより多くの符号語をもたらす。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書で開示されるのは、分析物の連続的なシグナルコード化により、試料中の異なる上記分析物を検出するための新規多重化方法およびキットである。
本開示は、特異的ハイブリダイゼーションにより並行して異なる分析物の特定の定量的および/または空間的検出を行うための標識されたおよび標識されない核酸配列セットの使用法を記載する。この技術は、利用できる異なる検出シグナルよりも多くの異なる分析物の鑑別を可能にする。鑑別は、特異的ハイブリダイゼーション、シグナルの検出およびハイブリダイズした核酸配列の選択的溶出のいくつかのサイクルにより達成される分析物の連続的なシグナルコード化により実現され得る。
【0026】
他の最先端の方法とは対照的に、検出可能なシグナルを提供するオリゴヌクレオチドは、試料特異的核酸配列と直接相互作用しないが、いわゆる「デコーディングオリゴヌクレオチド」により媒介される。この機序は、分析物特異的オリゴヌクレオチドとシグナルオリゴヌクレオチドの間の依存性を切り離す。デコーディングオリゴヌクレオチドの使用は、必要とされる異なるシグナルオリゴヌクレオチドの数を劇的に減らしつつ遙かに高い柔軟性を可能にし、これは次に、ある数の検出ラウンドで達成されるコード化能力を増大させる。
【0027】
デコーディングオリゴヌクレオチドの利用は、他の方法より柔軟で、安価で、単純で、高速で、および/またはより正確な連続的なシグナルコード化技術をもたらす。
【0028】
A.定義
本開示では、「分析物」は、試料中に存在しているまたは不在であるとして特異的に検出される、および、その存在の場合には、それをコード化する、対象物である。それは、目的のタンパク質、ポリペプチド、タンパク質または核酸分子(例えば、RNA、PNAまたはDNA)を含む、任意の種類の物質であり得る。分析物は、分析物特異的プローブとの特異的結合のための少なくとも1つの部位を提供する。本明細書では、用語「分析物」は、「標的」により置き換えられる場合もある。本開示による「分析物」は、対象物、例えば少なくとも2個の個別の核酸、タンパク質またはペプチド分子の複合体を含む。本開示のある実施形態では、「分析物」は、染色体を除外する。本開示の別の実施形態では、「分析物」は、DNAを除外する。
【0029】
いくつかの実施形態では、分析物は、「コード配列」、「コード化配列」、「構造ヌクレオチド配列」または「構造核酸分子」であり得、これらは、適切な調節配列の制御下に置かれると、通常mRNA経由で、ポリペプチドに翻訳されるヌクレオチド配列を指す。コード配列の境界は、5’末端にある翻訳開始コドンおよび3’末端にある翻訳終止コドンによって決定される。コード配列は、ゲノムDNA、cDNA、ESTおよび組換えヌクレオチド配列を含み得るが、これらに限定されない。
【0030】
本明細書で言及される「試料」は、コード化される分析物を含むと考えられる液体または固体形態の組成物である。特に、試料は、好ましくは生体組織を含む、更に好ましくは生体細胞および/または抽出物および/または細胞の一部を含む、生体試料である。例えば、細胞は、原核細胞または真核細胞、特に哺乳類細胞、特にヒト細胞である。いくつかの実施形態では、生体組織、生体細胞、抽出物および/または細胞の一部は、固定される。特に、細胞含有試料などの透過処理試料中の分析物は、固定される。特に、試料は、病原体含有試料であり、病原体を含む、任意の種類の物質、組織、生物学的材料、生物などであり得る。試料は、病原性物質を含む任意の種類の固体、流体試料、塗抹標本、表面であり得る。試料は、真核生物、古細菌、原核生物、またはウィルスを含み得る。試料は、生物、環境試料、生物からの排泄物、または表面由来であり得る。
【0031】
「病原体」は、2より高い「リスクレベル」を有しヒト、動物、植物、微生物集団(例えば、腸内、発酵槽中、湖沼中など)の生命にとってリスクがあると定義される、あらゆる種類の生物学的物質(真核生物、古細菌、原核生物、ウィルス、ウイロイド、タンパク質、純粋なRNA)を含む。リスクレベルは、地域当局により定義され、地域で(例えば、国毎に)異なり得る。例えば、ドイツでのリスクレベルは、BioStoffVにより定義される。他の国では、リスクレベルは、他の法律および規制により定義される(例えば、米国ではCDC)。いずれの場合でも、病原体のリスクレベルは、科学的経験に基づく手順で定義される。
【0032】
「病原体の不活化」は特に、2より高い病原体のリスクレベルが少なくとも2以下のリスクレベルに低減されることを意味する。理想的には、病原体不活化の工程は、検出工程内での病原体の検出を回避しない。いくつかの実施形態では、病原体不活化の工程は、検出工程内での検出効率を低減させない。不活性化は、2を超えるリスクレベルを2以下のリスクレベルに下げるために、試料の任意の種類の物理的、化学的、生化学的、または生物学的処理を含む。不活性化はまた、物理的、化学的、生化学的、または生物学的処理の任意の種類の組み合わせを含む。従って、病原体の不活性化は、それらを非感染性にすること、例えば、ウィルス不活化はウィルスを感染できなくすること、により、所与の試料中の病原体による目的の試料の汚染を阻止することを含む。病原体の不活化を測定するための方法の例は、国際公開第WO1993/015215A1号に記載されている。
【0033】
病原体不活化の方法は、完全な不活化を達成してもしなくてもよく、具体的な例を考慮することは役に立つ。細菌培養物は、分取量の培養物が、新鮮培養プレートに移され成長させられる時に、一定の時間後に検出できない場合、滅菌されていると言われる。その時間および成長条件(例えば、温度)は、「増幅倍率」を規定する。この増幅倍率は、検出法の制約(例えば、細菌性コロニーの外観についての培養プレートの目視検査)と共に、不活性化法の感度を規定する。生存可能な細菌の最小限の数が、シグナルが検出可能であるためにプレートに適用されなければならない。最適な検出法であれば、この最小数は、1個の細菌細胞である。準最適な検出方法では、シグナルが観察されるように適用される細菌細胞の最小数は、1よりはるかに多い場合がある。検出方法は、それより小さいとその方法が完全に有効であるように見える(およびそれを超えるとその方法は、実際に、部分的にのみ有効である)「閾値」を決定する。
【0034】
さらに、ウィルスの不活化は、酵素アッセイ(例えば、逆転写酵素における減少)または細胞培養(例えば、ウィルス誘導性の宿主細胞死)などの生物学的アッセイにより実証され得る。より感度の高い方法は、C.V.Hanson er.al.for quantifying HIV.See J.Clin.Microbiol.23:2030(1990)により報告されている。この方法は、単層でHIV感受性細胞を採用するプラークアッセイである。蛍光染色が使用され、検出は、可視化により行われる。
【0035】
例えば、スパイク試験は、ウィルス様病原体の不活化の可能な方法を決定するために行われる試験である。これらの試験の結果は、数値で表され、これらの数に基づき、研究者は、試験が行われる工程が、抽出しようとしているウィルスに、およびそれらを抽出しようとしている方式に好適であるかどうかを決定できる。例えば、試料のウィルス数(または活性のレベル)を元の10または10倍増大させることは、ウィルス不活性化比率を1桁変化させるに過ぎないであろうということが、実験を通して示され得る。この知見から、ウィルス数(または活性化レベル)が元の試料の10または10倍増大される、または「スパイクされる」スパイク試験が考案された。この新しい高い数のまたは高いレベルの活性はその後、工程の流れを通して実行され、精製される。活性の数またはレベルは、工程流の開始時および終了時に採取され、減少係数の計算に使用される。種々のウィルス除去または不活化ステップのための減少係数(RF)は、次の式を用いて計算される(Guidance on Virus Validation Studies:The Design,Contribution and Interpretation of Studies Validating the Inactivation and Removal of Viruses,EMEA CPMP BWP,268/95 1996に留意されたい):RFstep=log10[(V1xT1)/(V2xT2)]、式中、V1=クリアランスステップの前にスパイクされた供給原料の体積;T1=クリアランスステップの前にスパイクされた供給原料のウィルス濃度;V2=クリアランスステップ後の材料の体積;およびT2=クリアランスステップ後の材料のウィルス濃度。
【0036】
さらに、殺ウィルス活性試験は、30秒の暴露時間を含む定量的懸濁試験を用いることにより実施され得る(世界保健機関に記載のように、健康管理における手指衛生に関するWHOガイドライン:最初の世界の患者安全への挑戦:清潔なケアは安全なケア。ジュネーヴ:the Organization;2009.[cited 2020 Apr 08])。1部のウィルス懸濁液は、1部の有機物量(干渉物質としての0.3%ウシ血清アルブミン)および8部の異なる濃度の消毒剤溶液と混合され得る。30秒の曝露後、試料を系列希釈し、ミリリットル当りの50%組織培養感染性投与量(TCID50)を、クリスタルバイオレット染色およびその後の細胞変性効果を示すウェルの数の採点により決定する。TCID50は、記載されるように(George VG,Hierholzer JC,Ades EW.Cell culture.In:Virology methods manual.Mahy BWJ,Kangro HO,editors.Academic Press:London;1996.p.3-24)、Spearman-Karberアルゴリズムにより計算される。消毒剤の細胞毒性効果は、クリスタルバイオレット染色およびウィルスの不在下での細胞単層の変化した密度および形態の光学的分析を用いることにより監視できる。我々は、TCID50/mLのウィルス感染性に類似の細胞毒性効果を定量した。用量応答曲線は、Prismバージョン8.0.3(GraphPad、https://www.graphpad.com)に実装された正規化されたTCID50データに対するロバストフィッティング法を用いる非線形回帰によりパーセント対数消毒剤濃度に対するパーセント正規化ウィルス不活性化として決定できる。各処理条件についての減少係数(RF)は、下記式で計算できる:
【数1】
【0037】
本開示による病原体の物理的不活化処理は、限定されないが、病原体のリスクレベルを2超から少なくとも2以下のリスクレベルに低減する任意の種類の温度変化、電磁波、光(可視および不可視光も含む)、放射性物質による試料のインキュベーション、などを含み得る。これらの組み合わせまたは他の処理は、排除されない。
【0038】
いくつかの例は、限定されないが、以下である:
乾燥温度による処理:>30℃、>40℃、>50℃、>60℃、>70℃、>80℃、>90℃、>100℃>110℃など。
溶液中の温度による処理:>30℃、>40℃、>50℃、>60℃、>70℃、>80℃、>90℃、>100℃>110℃など。
X線、放射能、UV光、青色光、赤色光、赤外光、などによる処理。
【0039】
本開示による病原体のための化学的不活化処理は、限定されないが、pH、塩、非極性に対する極性溶媒の割合、酸化性試薬、還元試薬、病原体に対し共有結合のまたは非共有結合を行う試薬、または病原体の少なくとも一部を切断する分解試薬、などの病原体環境を変えることによる任意の種類の試料処理を含み得る。全ての反応は、それらが2より高い病原体のリスクレベルを少なくとも2以下のリスクレベルに低減させるという共通点を有する。これらの組み合わせまたは他の処理は、排除されない。
【0040】
いくつかの例は、限定されないが、以下である:
限定されないが、β-メルカプトエタノール、ジチオトレイトール(DTT)、またはジチオエリトリット、ホウ化水素ナトリウム(NaBH)または 水素化アルミニウムリチウム(LiAlH)などの金属ベース、過酸化物(例えば、H)、オゾン、過マンガン酸カリウム、有機物過酸化物(例えば、t-ブチルヒドロペルオキシド)、または過ホウ酸ナトリウム、次亜塩素酸塩、および電位列から研究者により選択され得る他のレドックス反応性試薬、などのレドックス反応性試薬による処理。レドックス試薬は全て、他の化学化合物を酸化または還元できる試薬および条件である。このような試薬のレドックス反応性は、標準電極電位と比較して、電極電位として測定できる。レドックス反応性薬剤は、温度、pH、濃度、または他のパラメーターを変える特定の反応条件によりそれらのレドックス反応性能力を変えることができる(レドックス反応のテキストを参照)。この観点から、経験豊かな使用者は、適切なレドックス反応性物質を見出すために薬剤および反応パラメーターを変更できる。例えば、病原体含有試料は、病原体が試料もしくは表面により密接に固着するようにレドックス反応性物質により処理される、またはレドックス反応性物質は、病原体の侵入機構もしくは生物中で増殖するために病原体により必要とされる任意の他の反応を不活性化する。病原体の架橋を生ずる典型的な病原体不活化試薬は、アルデヒド、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、Boinsche Solution、などである。溶液の親油性(lipophily)の変化を生じる典型的な病原体不活化試薬は、アルコール、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、などである。水分張力を変える典型的な病原体不活化試薬は、洗浄剤、例えば、SDS、トリトン、NP、などである。
【0041】
例えば、化学的不活化処理用の組成物は、80%(体積/体積)のエタノール、1.45%(体積/体積)のグリセロール、および0.125%(体積/体積)の過酸化水素からなり得る/を含み得る。さらなる組成物は、75%(体積/体積)の2-プロパノール、1.45%(体積/体積)のグリセロール、および0.125%(体積/体積)の過酸化水素からなり得る/を含み得る。さらなる組成物は、80%(重量/重量)のエタノール、0.725%(体積/体積)のグリセロール、および0.125%(体積/体積)の過酸化水素からなり得る/を含み得る。さらなる組成物は、75%(重量/重量)の2-プロパノール、0.725%(体積/体積)のグリセロール、および0.125%(体積/体積)の過酸化水素からなり得る/を含み得る。
【0042】
本開示による病原体のための生化学的不活化処理は、限定されないが、病原体のリスクレベルを2超から少なくとも2以下のリスクレベルに低減する任意の種類の酵素反応、競争反応または可逆的または不可逆的反応、生体分子(例えば、タンパク質、脂肪酸、炭水化物、核酸、またはこれらの混合物)の添加を含み得る。これらの組み合わせまたは他の処理は、排除されない。生体分子分解酵素、タンパク質分解酵素、親油性または両親媒性生体分子を分解する酵素、高分子、抗体を分解する酵素、などの酵素を含む典型的な病原体不活化試薬。
【0043】
本開示による病原体のための生物学的不活化処理は、限定されないが、病原体のリスクレベルを2超から少なくとも2以下のリスクレベルへの低減を行う生物学的成分による任意の種類の試料の処理を含み得る。本開示による病原体のための生物学的不活化処理は、限定されないが、病原体のリスクレベルを2超から少なくとも2以下のリスクレベルに低減する相殺的ファージ、ウィルス、細菌、または他の生物または生物の一部による任意の種類の試料の処理を含み得る。これらの組み合わせまたは他の処理は、排除されない。
【0044】
本開示による空間トランスクリプトミクス(または空間*オミクス)は、試料からのデータが組織または全生物のin situ試料から空間的手法で誘導される任意の種類の分析を意味する。in situ試料は、臓器または生物の一部であってよい。in situ試料は、前処理されないか、結果を改善するために必要な方法で前処理される。空間*オミクスは、組織または細胞の低分子化合物、タンパク質、DNA、および/またはRNAの検出を含み得る。より有利には、空間*オミクスは、タンパク質、DNA、および/またはRNAに限定される。より有利には、空間*オミクスは、DNA、および/またはRNAに限定される。さらにより有利には、空間*オミクスは、smFISHに限定される。さらにより有利には、空間*オミクスは、任意の種類の連続smFISHに限定される。
【0045】
特に、空間トランスクリプトミクス検出法は、分析物の連続的なシグナルコード化により病原体含有試料中の異なる上記分析物を検出するための多重化法を含み、病原体または試料からのRNAおよび/またはDNAの単離のない試料内の病原体の不活化、および
(A)少なくとも20個の異なる分析物のコード化のために分析物特異的プローブの少なくとも20個の(20)異なるセットと試料を接触させることであって、分析物特異的プローブの各セットが異なる分析物と相互作用し、分析物が核酸である場合、分析物特異的プローブの各セットは、同じ分析物の異なる下部構造と特異的に相互作用する少なくとも5個の(5)分析物特異的プローブを含み、各分析物特異的プローブは、
(aa)コード化される異なる分析物の1種と特異的に相互作用する結合エレメント(S)、および
(bb)コード化される分析物に対しユニークなヌクレオチド配列(ユニークな識別子配列)を含む識別子エレメント(T)、
を含み、分析物特異的プローブの特定のセットの分析物特異的プローブは、識別子エレメント(T)のヌクレオチド配列中の分析物特異的プローブの別のセットの分析物特異的プローブとは異なり、
分析物特異的プローブの各セット中の分析物特異的プローブは、同じ分析物に結合し、かつ上記分析物にユニークな識別子エレメント(T)の同じヌクレオチド配列を含む、接触させること;および
(B)分析物当り少なくとも1セットのデコーディングオリゴヌクレオチドと試料を接触させることであって、個別の分析物のためのデコーディングオリゴヌクレオチドの各セット中の、各デコーディングオリゴヌクレオチドは、
(aa)対応する分析物特異的プローブセットの識別子エレメント(T)のユニークな識別子配列の少なくとも一部に実質的に相補的なヌクレオチド配列を含む識別子コネクターエレメント(t)、および
(bb)シグナルオリゴヌクレオチドの特異的ハイブリダイゼーションを可能にするヌクレオチド配列を含む翻訳エレメント(c);
を含み、個別の分析物のためのデコーディングオリゴヌクレオチドセットは、第1のコネクターエレメント(t)中の異なる分析物のためのデコーディングオリゴヌクレオチドの別のセットとは異なる、接触させること;および
(C)シグナルオリゴヌクレオチドの少なくとも1セットと試料を接触させることであって、各シグナルオリゴヌクレオチドは:
(aa)デコーディングオリゴヌクレオチドに含まれる翻訳エレメント(c)のヌクレオチド配列の少なくとも一部に実質的に相補的なヌクレオチド配列を含む翻訳コネクターエレメント(C)、および
(bb)シグナルエレメント、
を含む、接触させること;
(D)シグナルエレメントに起因するシグナルを検出すること;
(E)試料からデコーディングオリゴヌクレオチドおよびシグナルオリゴヌクレオチドを選択的に除去すること、それによりコード化される分析物への分析物特異的プローブの特異的結合を実質的に維持すること;
(F)分析物毎に符号語を含むコード化スキームを生成するためにステップB)~E)を含む少なくとも3回のさらなるサイクルを実施することであって、特に最後のサイクルが、ステップ(D)で停止し得る、実施すること
を含む。
【0046】
本明細書で使用される場合、「細胞」、「細胞株」、および「細胞培養物」は、同じ意味で用いられ、全てのこのような名称は、子孫を含む。従って、「形質転換体」または「形質転換細胞」という語句は、初代の対象細胞および継代数に関係なくそれから誘導された培養物を含む。全ての子孫は、意図的なまたは故意でない変異に起因して、DNA含量が正確に同一ではない可能性があるということも理解されよう。最初に形質転換された細胞でスクリーニングされたものと同じ機能性を有する変異子孫が、含まれる。
【0047】
本開示による方法の1つの重要な利点は、分析が、BSL3またはBSL4実験室の外で実施できることである。バイオセーフティレベル(BSL)、または病原体/保護レベルは、危険な生物学的製剤を密閉された実験施設に隔離するために必要とされる一連の生物封じ込めの予防措置である。封じ込めのレベルは、最低のバイオセーフティレベル1(BSL-1)~最高のレベル4(BSL-4)の範囲である。米国では、疾病予防管理センター(CDC)がこれらのレベルを指定した。欧州連合では、同じバイオセーフティレベルは、指令で定義される。カナダでは、4つのレベルは、封じ込めレベルとして知られる。これらの指定を有する施設はまた、ときには、用語P3実験室におけるように、P1~P4(病原体または保護レベルに関し)として指定される。例えば、バイオセーフティレベル3(BSL-3)は、吸入経路を介して、重篤でかつ致死の可能性のある疾患を引き起こし得る病原体を含む作業に適切である。バイオセーフティレベル4(BSL-4)は、最高レベルのバイオセーフティ予防措置であり、実験室内で容易にエアロゾル伝染しかつ、利用可能なワクチンまたは治療のない、ヒトで重度~致命的な疾患を引き起こし得る病原体を用いる作業に適切である。
【0048】
「コード化スキーム」は、検出される分析物に関連する符号語セットを特徴づけ得る。各符号語は、分析物の1種を指し、全ての他の符号語から区別できる。符号語はこれにより、方法の検出サイクルにより与えられる符号の配列である。符号語内の符号は、検出できるシグナルまたはシグナルの不在である。符号語は、その方法で使用される全ての異なるシグナルから構成される必要はない。符号語中の符号の数は、検出サイクルの数により定義される。
【0049】
本明細書で使用される「オリゴヌクレオチド」は、DNA、PNA、LNA、またはRNAなどの、短い核酸分子を指す。オリゴヌクレオチドの長さは、連続的な配列エレメントの数に応じて、4~200ヌクレオチド(nt)、好ましくは6~80nt、より好ましくは8~60nt、より好ましくは10~50nt、より好ましくは12~35ntの範囲内である。核酸分子は、完全にまたは部分的に一本鎖であり得る。オリゴヌクレオチドは、直鎖であってよく、またはヘアピンまたはループ構造を含んでもよい。オリゴヌクレオチドは、ビオチン、標識部分、遮断部分、または他の修飾などの修飾を含んでよい。
【0050】
「分析物特異的プローブ」は、少なくとも2つのエレメント、即ち分析物の1種と特異的に相互作用する、いわゆる結合エレメント(S)、および「ユニークな識別子配列」を含む、いわゆる識別子エレメント(T)からなる。結合エレメント(S)は、ハイブリダイゼーション配列またはアプタマーなどの核酸、または抗体などのペプチド性構造であってよい。
【0051】
また「プローブ」は、少なくとも2つのエレメント、即ち分析物の1種と特異的に相互作用する、いわゆる結合エレメント(S)、および「ユニークな識別子配列」を含む、いわゆる識別子エレメント(T)からなる。結合エレメント(S)は、ハイブリダイゼーション配列またはアプタマーなどの核酸、または抗体などのペプチド性構造であってよい。
【0052】
特に、いくつかの実施形態では、結合エレメント(S)は、抗体、抗体フラグメント、受容体リガンド、酵素基質、レクチン、サイトカイン、リンホカイン、インターロイキン、血管新生または病原性因子、アレルゲン、ペプチド性アレルゲン、組換えアレルゲン、アレルゲン-イディオタイプ抗体、自己免疫誘発構造、組織拒絶誘導構造、免疫グロブリン定常領域、およびこれらの誘導体、変異体、またはこれらの組み合わせからなる群より選択される親和性物質由来の親和性部分またはそれ全体が親和性物質である、部分を含む。更に有利な実施形態では、抗体フラグメントは、Fab、scFv;単一ドメイン、またはそのフラグメント、ビスscFv、Fab2、Fab3、ミニボディ、マキシボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディまたはtandab、特に単鎖可変フラグメント(scFv)である。
【0053】
分析物特異的プローブにより含まれる「ユニークな識別子配列」は、他のユニークな識別子と比較して、その配列においてユニークである。この文脈中で「ユニーク」は、それが1種のみの分析物、例えば、サイクリンA、サイクリンD、サイクリンEなど、を特異的に特定すること、あるいは、それが、分析物群が遺伝子ファミリーを含むか否かに関係なく、一群の分析物のみを特異的に特定することを意味する。従って、このユニークな識別子によりコード化される分析物または一群の分析物は、識別子エレメント(T)のユニークな識別子配列に基づいてコード化される全ての他の分析物または分析物群から区別され得る。または、換言すれば、特定の分析物または一群の分析物に対して、2つ以上でなく、即ち2つでさえない、唯一の「ユニークな識別子配列」が存在する。ユニークな識別子配列のユニークさのため、識別子エレメント(T)は、正確に1つのタイプのデコーディングオリゴヌクレオチドにハイブリダイズする。ユニークな識別子配列の長さは、並行してコード化される分析物の数および必要とされる相互作用の安定性に応じて、8~60nt、好ましくは12~40nt、より好ましくは14~20ntの範囲内である。ユニークな識別子は、直接に、またはリンカー、共有結合または高親和性結合方式、例えば、抗体-抗原相互作用、ストレプトアビジン-ビオチン相互作用、などにより付着される、分析物特異的プローブの配列エレメントであり得る。用語「分析物特異的プローブ」は、各プローブが、同じ分析物であるがおそらくその異なる部分に、例えばコード化される核酸分子に含まれるヌクレオチド配列の異なる(例えば、隣接した)またはオーバーラップする部分に結合するというように、それらの結合エレメント(S)において異なり得る、複数のプローブを含むと理解される。しかし、複数のプローブのそれぞれは、同じ識別子エレメント(T)を含む。
【0054】
「二連標識プローブ」は、分析物とハイブリダイズできる結合配列、およびフルオロフォアまたはフルオロフォアを含む核酸配列のような検出可能なシグナル分子を結合できる結合プローブ配列を含む。
【0055】
「デコーディングオリゴヌクレオチド」または「アダプター」または「アダプターセグメント」は、少なくとも2つの配列エレメントからなる。「識別子コネクターエレメント」(t)または「第1のコネクターエレメント」(t)と呼ばれる、ユニークな識別子配列に特異的に結合できる1つの配列エレメント、および「翻訳エレメント」(c)と呼ばれる、シグナルオリゴヌクレオチドに特異的に結合する第2の配列エレメント。配列エレメントの長さは、並行してコード化される分析物の数、必要とされる相互作用の安定性および使われる異なるシグナルオリゴヌクレオチドの数に応じて、8~60nt、好ましくは12~40nt、より好ましくは14~20ntの範囲内である。2つの配列エレメントの長さは同じであっても、同じでなくてもよい。
【0056】
いくつかの有利な実施形態では、本開示のキットおよび/または方法中のデコーディングオリゴヌクレオチドは、「マルチデコーダー」であり得る。「マルチデコーダー」は、少なくとも3つの配列エレメントからなるデコーディングオリゴヌクレオチドである。1つの配列エレメント(識別子コネクターエレメント(t))は、ユニークな識別子配列(識別子エレメント(T))に特異的に結合でき、および少なくとも2つの他の配列エレメント(翻訳エレメント(c))は、異なるシグナルオリゴヌクレオチドを特異的に結合する(これらの配列エレメントのそれぞれは、マルチデコーダーの他のエレメントにより動員される全ての他のシグナルオリゴヌクレオチドとは異なるシグナルオリゴヌクレオチドを特異的に結合する)。配列エレメントの長さは、並行して検出される分析物の数、必要とされる安定性および使われる異なるシグナルオリゴヌクレオチドの数に応じて、8~60nt、好ましくは12~40nt、より好ましくは14~20ntの範囲内である。配列エレメントの長さは同じであっても、同じでなくてもよい。
【0057】
従って、いくつかの有利な実施形態では、デコーディングオリゴヌクレオチドは、
-対応する分析物特異的プローブセットの識別子エレメント(T)のユニークな識別子配列の少なくとも一部に実質的に相補的なヌクレオチド配列を含む識別子コネクターエレメント(t)、および
-異なるシグナルオリゴヌクレオチドの特異的ハイブリダイゼーションを可能にするそれぞれヌクレオチド配列を含む少なくとも2つの翻訳エレメント(c)
を含むマルチデコーダーである。
【0058】
従って、第1の翻訳エレメントは、第2の翻訳エレメントとは異なるシグナルオリゴヌクレオチドを結合する。特に、シグナルオリゴヌクレオチドは、シグナルオリゴヌクレオチドに含まれるシグナルエレメントにおいて、例えばフルオロフォアの種類において、異なる。
【0059】
本明細書で使用される「シグナルオリゴヌクレオチド」または「レポーター」は、デコーディングオリゴヌクレオチドの翻訳エレメント(c)の少なくとも一部のヌクレオチド配列に特異的にハイブリダイズできるヌクレオチド配列を有する少なくとも2つのエレメント、いわゆる「翻訳コネクターエレメント」(C)または「第2のコネクターエレメント」(C)、および検出可能なシグナルを提供する「シグナルエレメント」を含む。このエレメントは、検出可能なシグナルを能動的に生成する、または操作、例えば蛍光の励起、を介してこのようなシグナルを提供する。典型的なシグナルエレメントは、例えば、検出可能な反応を触媒する酵素、フルオロフォア、放射性エレメントまたは染料である。
【0060】
「セット」は、上記複数物の個別のメンバーが相互に同一であるか異なるかにかかわらず、複数の部分または対象物、例えば分析物特異的プローブまたはデコーディングオリゴヌクレオチドを指す。分析物特異的プローブセットでは、分析物特異的プローブは、識別子エレメント(T)において同一であるが、同じ分析物と特異的に相互作用するためであるが、コード化される同じ分析物の異なる下部構造と特異的に相互作用するために、異なる結合エレメント(S)を含んでもよい。
【0061】
「選択的変性」は、最も高い効率で結合されたデコーディングオリゴヌクレオチドおよびシグナルオリゴヌクレオチドを除去する過程であり得るが、同時に、標的特異的プローブは、最も高い効率でハイブリダイズされたままでなければならない。これらの2つの組み合わされたイベントの総効率は、2回の検出サイクルで少なくとも0.22、3回の検出サイクルで0.37、4回の検出サイクルで0.47、5回の検出サイクルで0.55、6回の検出サイクルで0.61、7回の検出サイクルで0.65、8回の検出サイクルで0.69、9回の検出サイクルで0.72、10回の検出サイクルで0.74、11回の検出サイクルで0.76および12回の検出サイクルで0.78であり得る。
【0062】
本開示のある実施形態では、単一セットは、複数のオリゴヌクレオチドを指す。
【0063】
「分析物特異的プローブ」は、複数の部分または対象物、例えば相互に異なりかつ分析物の独立した領域に結合する、分析物特異的プローブを指す。単一分析物特異的プローブセットは、同じユニークな識別子により更に特徴づけられる。
【0064】
「デコーディングオリゴヌクレオチドセット」は、符号語の長さに関係なくコード化を認識するために必要とされる特定のユニークな識別子に特異的な複数のデコーディングオリゴヌクレオチドを指す。「デコーディングオリゴヌクレオチドセット」に含まれるそれぞれおよび全てのデコーディングオリゴヌクレオチドは、分析物特異的プローブの同じユニークな識別子エレメント(T)に結合する。
【0065】
特定の実施形態では、デコーディングオリゴヌクレオチドの結合またはハイブリダイゼーションのこのパターンは、「符号語」へと変換され得る。例えば、符号語はまた、ある分析物に対し「101」および「110」であり得、その場合1の値は、結合を表し、0の値は、結合なしを表す。符号語はまた、他の実施形態では、より長い長さを有してよい(図13参照)。ある符号語は、分析物特異的プローブの特異的なユニーク識別子配列に直接関連し得る。従って、異なる分析物特異的プローブは、特定の符号語に適合し、これはその後、デコーディングオリゴヌクレオチドの結合パターンに基づき、分析物特異的プローブの異なる分析物を特定するために使用できる。しかし、結合がないことが明らかな場合には、符号語は、この例では、「000」であろう。
【0066】
各符号語の値はまた、いくつかの実施形態では、異なる方法で割り付けできる。例えば、0の値は、結合を表し得、一方で1の値は、結合のないこと表す。同様に、1の値は、1つのタイプのシグナル伝達物質との二次核酸プローブの結合を表し得、一方で0の値は、別のタイプの識別可能なシグナル伝達物質との二次核酸プローブの結合を表し得る。これらのシグナル伝達物質は、例えば、異なる蛍光色により区別され得る。場合によっては、符号語中の値は、0および1に制限される必要はない。値はまた、3元系(例えば、0、1、および2)または4元系(例えば、0、1、2、および3)などの、より多くのアルファベットから誘導され得る。それぞれの異なる値は、例えば、(場合によっては)シグナルの不在により表され得る1つの値を含む、異なる識別可能なシグナル伝達物質により表され得る。
【0067】
各分析物に対する符号語は、続けて割り付けされ得る、またはランダムに割り付けされ得る。例えば、第1の分析物は、101に割り付けられ、一方で第2の核酸標的は、110に割り付けられ得る。加えて、いくつかの実施形態では、符号語は、ハミングシステム、ゴーレイ符号、または拡張ハミングシステム(またはSECDEDシステム、即ち、単一のエラー訂正、ダブルエラー検出)などの、エラー検出システムまたはエラー訂正システムを用いて割り付けされ得る。一般的に言って、このようなシステムは、どこでエラーが発生したかを特定するために使用でき、場合によっては、このようなシステムはまた、エラーを訂正し、かつ正しい符号語が何であったかを決定するために使用できる。例えば、001などの符号語が無効として検出され、例えば、001が異なる標的配列に以前に割り付けられていないならば、101へとこのようなシステムを用いて訂正され得る。種々の異なるエラー訂正コードを、使用でき、これらの多くは以前に、コンピューター産業界内で使用するために開発された;しかし、このようなエラー訂正システムは通常、生体系内で使用されてこなかった。このようなエラー訂正コードの追加の例を、以下でより詳細に考察する。
【0068】
「実質的に相補的な」は、2つのヌクレオチド配列に言及する場合、両方の配列がストリンジェントな条件下で相互に特異的にハイブリダイズでき、それにより水素結合を介して相互につながれたセンスおよびアンチセンスストランドを有するハイブリッド核酸分子を形成する(ワトソンとクリックの塩基対)ことを意味する。「実質的に相補的な」は、完全なストランドに沿う完全な塩基対、即ち、完全に相補的な配列だけでなく、不完全であるが、しかし、ストリンジェントな条件下で相互にハイブリダイズする能力をまだ有する相補配列も含む。「実質的に相補的な」配列が、十分にまたは完全に相補的な配列に対して、少なくとも88%の配列同一性を有することは、専門家の間で広く受け入れられている。
【0069】
「パーセント配列同一性」または「パーセント同一性」は今度は、ある配列が、記載されたまたはクレームの配列(「参照配列」)と比較される配列(「比較配列」)の整列後に、クレームのまたは記載された配列と比較されることを意味する。パーセント同一性はその後、次の式に従って決定される:パーセント同一性=100[1-(C/R)]、
式中、Cは、参照配列と比較配列の間の整列の長さにわたる参照配列と比較配列の間の差異の数であり、
(i)比較配列中に対応する整列される塩基またはアミノ酸を有しない、参照配列中の各塩基またはアミノ酸、および
(ii)参照配列中の各ギャップ、および
(iii)比較配列中の整列される塩基またはアミノ酸とは異なり、差異を構成する参照配列中の各整列塩基またはアミノ酸、および(iiii)整列は、整列配列の位置1で始まる必要があり;
およびRは、比較配列との整列の長さにわたる参照配列中の塩基またはアミノ酸の数であり、参照配列中に形成されたいずれかのギャップもまた、塩基またはアミノ酸としてカウントされる。
【0070】
それに対する上で計算されるパーセント同一性が特定の最小パーセント同一性とほぼ等しいかまたはそれより大きい、比較配列と参照配列の間の整列が存在するならば、比較配列は、本明細書の上で計算されるパーセント同一性が指定パーセント同一性未満である整列がたとえ存在し得る場合であっても、参照配列に対し特定の最小パーセント同一性を有する。
【0071】
「インキュベーション」ステップでは、本明細書で理解されるように、プローブまたはオリゴヌクレオチドなどのそれぞれの部分または対象物は、特異的結合またはハイブリダイゼーション反応を可能にする当業者によく知られた、例えば、pH、温度、塩条件などの条件下で、相互に接触させられる。このようなステップは従って、当該技術分野において周知の緩衝系などの液体環境中で好ましくは実施され得る。
【0072】
本開示による「除去」ステップは、当技術分野において既知の通り、特定の条件、例えばpH、温度、塩条件などによるプローブまたはオリゴヌクレオチドなどの除去される部分または対象物の洗い流しを含み得る。
【0073】
本開示による方法のある実施形態では、複数の分析物が、並行してコード化され得ることは理解されよう。これは、ステップ(1)での異なる分析物特異的プローブセットの使用を必要とする。分析物特異的プローブの特定のセットは、分析物特異的プローブの別のセットとは異なる。これは、セット1の分析物特異的プローブは、分析物1に結合し、セット2の分析物特異的プローブは、分析物2に結合し、セット3の分析物特異的プローブは、分析物3に結合する、などということを意味する。この実施形態ではまた、本開示による方法では、異なるセットのデコーディングオリゴヌクレオチドの使用が必要とされる。
【0074】
デコーディングオリゴヌクレオチドの特定のセットは、デコーディングオリゴヌクレオチドの別のセットとは異なる。これは、セット1のデコーディングオリゴヌクレオチドは、上記セット1の分析物特異的プローブの分析物特異的プローブに結合し、セット2のデコーディングオリゴヌクレオチドは、上記セット2の分析物特異的プローブの分析物特異的プローブに結合し、セット3のデコーディングオリゴヌクレオチドは、上記セット3の分析物特異的プローブの分析物特異的プローブに結合し、などということを意味する。
【0075】
複数の分析物が並行してコード化される、この実施形態では、分析物特異的プローブの異なるセットは、分析物特異的プローブの異なるセットの事前混合物として提供されてよく、および/またはデコーディングオリゴヌクレオチドの異なるセットは、デコーディングオリゴヌクレオチドの異なるセットの事前混合物として提供されてよい。各混合物は、単一バイアル中に収容されてよい。あるいは、分析物特異的プローブの異なるセットおよび/またはデコーディングオリゴヌクレオチドの異なるセットは、複数のステップ
で単独で提供されてもよい。
【0076】
「キット」は、本開示の使用および/または方法を実施するために有用な個別のエレメントの組み合わせであり、エレメントは、その方法において一緒に使用するために最適化される。キットはまた、本開示による方法を実施するために有用であり得る、追加の試薬、化学薬品、緩衝液、反応バイアルなども含む。このようなキットは、本開示による方法を機能させるために必要とされる全ての不可欠なエレメントを統合する。従って、このようなキットはまた、熟練していない実験スタッフが本開示による方法を実施するのを可能にする。
【0077】
用語「消光剤」または「消光剤染料」または「消光剤分子」は、ヌクレオシドグアノシン(G)または2’-デオキシグアノシン(dG)などの染料または同等の分子を指し、これは、蛍光レポーター染料またはドナー染料の蛍光を低減できる。消光剤染料は、蛍光染料または非蛍光染料であってよい。消光剤が蛍光染料の場合、その蛍光波長は通常、レポーター染料の波長とは実質的に異なり、消光剤蛍光は通常、アッセイ中に監視されない。本開示のいくつかの実施形態は、消光剤および/またはシグナルエレメントと組み合わせた消光剤を含むシグナルオリゴヌクレオチドを開示し(図14参照)、従って、シグナルオリゴヌクレオチドは、画像化中に検出できない。
【0078】
本開示のある実施形態では、試料は、好ましくは生体組織を含む、更に好ましくは生体細胞を含む、生体試料である。生体試料は、臓器、オルガノイド、細胞培養物、幹細胞、細胞懸濁液、一次細胞;ウィルス、細菌または真菌に感染された試料、真核生物または原核生物試料、塗抹標本、疾患試料、組織切片由来であり得る。
【0079】
方法は特に、生体試料、即ち上記分析物として核酸またはタンパク質を含む試料など、における複数の分析物または単一の分析物分子をコード化する、検出する、計数するまたは定量化するのに好適である。生体試料は、それがその天然環境にある(即ち、液体、半液体、固体など)ような、または処理された、例えば方法が実施される前に再液化され得る装置の表面上の乾燥膜のような、形態であってよいと理解される。
【0080】
本開示の別の実施形態では、ステップ(2)の前に、生体組織および/または生体細胞は、固定される。例えば、いくつかの実施形態では、細胞および/または組織は、例えば、細胞内の核酸のような分析物の位置を維持するために、プローブを導入する前に固定される。細胞の固定は、当業者には既知である。非限定例として、細胞は、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、エタノール、メタノール、アセトン、酢酸、などの化学薬品を用いて固定され得る。一実施形態では、細胞は、HEPES-グルタミン酸緩衝液-媒介有機溶媒(HOPE)を用いて固定され得る。
【0081】
この方法は、コード化される分析物、例えば核またはタンパク質が固定化され脱出できないという利点を有する。そうすることで、分析物は、本開示による方法による、より良好な検出またはコード化のために準備される。
【0082】
またさらなる実施形態では、分析物特異的プローブのセット内で、個別の分析物特異的プローブは、コード化される分析物の1つの異なる下部構造と特異的に相互作用する結合エレメント(S1、S2、S3、S4、S5)を含む。
【0083】
この方策により、方法は、さらにより頑強で高信頼性になる。理由は、それぞれ、この方法またはサイクルの終了時点で、得られるシグナル強度が増大されるためである。あるセットの個別のプローブは、同じ分析物に結合しながら、分析物での、または分析物上のそれらの結合位置または結合部位において異なることが理解される。第1、第2、第3、第4、第5などの分析物特異的プローブの結合エレメントS1、S2、S3、S4、S5などは従って、異なる位置であるが、オーバーラップしても、しなくてもよい異なる位置に、またはその位置で結合する。
【0084】
多重化法またはアッセイは、複数分析物の同時測定を可能にする。本開示では、それは、試料中の核酸標的配列のような複数の予め決められた(既知の)分析物の存在または不在を決定するために使用され得る。分析物は、その標的に結合するプローブをデザインするために、その配列が既知であるという点で、「予め決められたもの」であってよい。
【0085】
本開示によるいくつかの有利な実施形態では、少なくとも20個、特に少なくとも25個、特に少なくとも30個の異なる分析物が、並行して試料中で検出および/または定量化される。例えば、同時にまたは連続的に、試料に適用される少なくとも5個、少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも50個、少なくとも75個、少なくとも100個、少なくとも300個、少なくとも1,000個、少なくとも3,000個、少なくとも10,000個、または少なくとも30,000個の識別可能な分析物特異的プローブが存在し得る。
【0086】
いくつかの有利な実施形態では、多重化のために少なくとも20個以上の異なる分析物のコード化のための分析物特異的プローブの20個(20)またはそれより多いセット、特に50個を超える、100個を超えるまたは200個を超えるセットが、必要とされる。本開示の多重化法では、特に少なくとも20個の異なる群の分析物(例えば、mRNA分子)即ちタグが、標的化される。
【0087】
いくつかの有利な実施形態では、分析物の特定のための情報を収集するために、少なくとも4ラウンドが、実施され、複数の読み出しは、特定の正確さを高め、擬陽性を回避する。ユニークなタグは、例えば標識プローブによる直接的または間接的ハイブリダイゼーション、または塩基配列決定(合成、ライゲーションによる)を含む、各種の技術により特定できる。特に、タグの同一性は、1つの単一シグナル(バイナリーコード)、2つ以上のシグナルでコード化でき、シグナルは、蛍光標識(例えば、オリゴヌクレオチドに結合した)であってよい。
【0088】
本開示によるいくつかの有利な実施形態では、キットは、項目Aで定義されたような分析物特異的プローブのセットを含まない。
【0089】
好ましくは、本開示による方法における分析物が核酸である場合、分析物特異的プローブの各セットは、同じ分析物の異なる下部構造と特異的に相互作用する、少なくとも5個の分析物特異的プローブ、特に少なくとも15個の分析物特異的プローブ、特に少なくとも20個の分析物特異的プローブを含む。核酸分析物は、特定のDNA分子、例えばゲノムDNA、核DNA、ミトコンドリアDNA、ウィルスDNA、細菌DNA、細胞外または細胞内DNAなど、および特定のmRNA分子、例えばhnRNA、miRNA、ウィルスRNA、細菌RNA、細胞外または細胞内RNA、などを含む。
【0090】
好ましくは、本開示による方法における分析物がペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質である場合、分析物特異的プローブの各セットは、同じ分析物の異なる下部構造と特異的に相互作用する、少なくとも2個の(2)分析物特異的プローブ、特に少なくとも3個の(3)分析物特異的プローブ、特に少なくとも4個の(4)分析物特異的プローブを含む。
【0091】
本開示によるいくつかの有利な実施形態では、方法は、シグナルオリゴヌクレオチドの少なくとも2個の異なるセットを含み、各セット中のシグナルオリゴヌクレオチドは、異なるシグナルエレメントを含み、および異なるコネクターエレメント(C)を含む。
【0092】
特に、方法は、分析物当りデコーディングオリゴヌクレオチドの少なくとも2個の異なるセットを含み、これらの異なるセットに含まれるデコーディングオリゴヌクレオチドは、対応する分析物特異的プローブセットの識別子エレメント(T)のユニークな識別子配列の少なくとも一部に実質的に相補的なヌクレオチド配列を含む同じ識別子コネクターエレメント(t)を含み、分析物当りの異なるセットのデコーディングオリゴヌクレオチドは、シグナルオリゴヌクレオチドの特異的ハイブリダイゼーションを可能にするヌクレオチド配列を含む翻訳エレメント(c)において異なる。
【0093】
特に、方法は、分析物当りデコーディングオリゴヌクレオチドの少なくとも2個の異なるセットを含み、これらの異なるセットに含まれるデコーディングオリゴヌクレオチドは、対応する分析物特異的プローブセットの識別子エレメント(T)のユニークな識別子配列の少なくとも一部に実質的に相補的なヌクレオチド配列を含む同じ識別子コネクターエレメント(t)を含み、少なくとも1つの分析物に対する異なるセットのデコーディングオリゴヌクレオチドは、シグナルオリゴヌクレオチドの特異的ハイブリダイゼーションを可能にするヌクレオチド配列を含む翻訳エレメント(c)において異なる。
【0094】
いくつかの有利な実施形態では、異なる翻訳エレメント(c)を含む分析物当りのデコーディングオリゴヌクレオチドの異なるセットの数は、異なるコネクターエレメント(C)を含むシグナルオリゴヌクレオチドの異なるセットの数に対応する。しかし、デコーディングオリゴヌクレオチドの特定のセット中のデコーディングオリゴヌクレオチドは、特定の分析物にユニークな同一の識別子エレメント(T)と相互作用し得る。特に、異なる分析物に対するデコーディングオリゴヌクレオチドの全てのセットは、同じタイプの翻訳エレメント(c)を含み得る。
【0095】
特に、本開示は、複数の分析物特異的プローブに病原体不活化試料を曝露する;分析物特異的プローブのそれぞれについて、試料内の分析物特異的プローブの結合を決定する;分析物特異的プローブ、デコーディングオリゴヌクレオチドおよびシグナルオリゴヌクレオチドの結合に基づき符号語を生成する;および符号語の少なくともいくつかについて、有効な符号語に符号語を一致させる、行為を含む、病原体含有試料中の分析物を検出するための方法に関する。特定の実施形態では、分析物特異的プローブ、デコーディングオリゴヌクレオチドおよびシグナルオリゴヌクレオチドのこの結合またはハイブリダイゼーションパターンは、「符号語」へと変換され得る。例えば、符号語は、それぞれ、第1の分析物および第2の分析物について「10」および「110」であり得、1の値は、デコーディングオリゴヌクレオチドの結合を表し、および0の値は、デコーディングオリゴヌクレオチドの結合なし、および/または消光されたシグナルエレメント有りまたはなしの場合のシグナルオリゴヌクレオチドの結合を表す。検出ラウンド/サイクル中の分析物は従って、画像化中に検出できない。
【0096】
個別の分析物について、符号語中のこのようなゼロ(0)を生成するために、方法は、
(D)分析物特異的プローブの特定の識別子エレメント(T)への結合のための、少なくとも1セットの非シグナルデコーディングオリゴヌクレオチドであって、同じセットの非シグナルデコーディングオリゴヌクレオチド中のデコーディングオリゴヌクレオチドは、同じ異なる識別子エレメント(T)と相互作用し、
各非シグナルデコーディングオリゴヌクレオチドは、ユニークな識別子配列の少なくとも一部に実質的に相補的なヌクレオチド配列を含む識別子コネクターエレメント(t)を含み、かつシグナルオリゴヌクレオチドの特異的ハイブリダイゼーションを可能にするヌクレオチド配列を含む翻訳エレメント(c)を含まない、非シグナルデコーディングオリゴヌクレオチド
の使用を含み得る。
【0097】
個別の分析物について、符号語中のこのようなゼロ(0)を生成するために、方法は、
(D)分析物特異的プローブの特定の識別子エレメント(T)への結合のための、少なくとも1セットの非シグナルデコーディングオリゴヌクレオチドであって、同じセットの非シグナルデコーディングオリゴヌクレオチド中のデコーディングオリゴヌクレオチドは、同じ異なる識別子エレメント(T)と相互作用し、
各非シグナルデコーディングオリゴヌクレオチドは、ユニークな識別子配列の少なくとも一部に実質的に相補的なヌクレオチド配列を含む識別子コネクターエレメント(t)を含み、かつ不安定な結合配列のためおよび/または翻訳エレメントがシグナルオリゴヌクレオチドの特異的ハイブリダイゼーションを可能にするヌクレオチド配列を含み短い(c)ために、シグナルオリゴヌクレオチドと相互作用/結合しない翻訳エレメントを含む、非シグナルデコーディングオリゴヌクレオチド
の使用を含み得る。
【0098】
いくつかの有利な実施形態では、方法は、
(D)分析物特異的プローブの少なくとも2つの異なる識別子エレメント(T)への結合のための少なくとも2個の異なる非シグナルデコーディングオリゴヌクレオチドであって、各セットの非シグナルデコーディングオリゴヌクレオチドは、異なる識別子エレメント(T)と相互作用し、
各非シグナルデコーディングオリゴヌクレオチドは、ユニークな識別子配列の少なくとも一部に実質的に相補的なヌクレオチド配列を含む識別子コネクターエレメント(t)を含み、シグナルオリゴヌクレオチドの特異的ハイブリダイゼーションを可能にするヌクレオチド配列を含む翻訳エレメント(c)を含まない、非シグナルデコーディングオリゴヌクレオチド
の使用を含み得る。
【0099】
さらに、いくつかの有利な実施形態では、方法は、
(E)非シグナルオリゴヌクレオチドのセットであって、各非シグナルオリゴヌクレオチドが
(aa)翻訳エレメント(c)のヌクレオチド配列の少なくとも一部に実質的に相補的なヌクレオチド配列を含む翻訳コネクターエレメント(C)、および(bb)消光剤(Q)、シグナルエレメントおよび消光剤(Q)を含む、またはシグナルエレメントを含まない、非シグナルオリゴヌクレオチドのセット
の使用を含み得る。
【0100】
いくつかの有利な実施形態では、方法は、
(E)非シグナルオリゴヌクレオチドの少なくとも2セットであって、各非シグナルオリゴヌクレオチドが
(aa)翻訳エレメント(c)のヌクレオチド配列の少なくとも一部に実質的に相補的なヌクレオチド配列を含む翻訳コネクターエレメント(C)、および(bb)消光剤(Q)、シグナルエレメントおよび消光剤(Q)を含む、またはシグナルエレメントを含まない、非シグナルオリゴヌクレオチドの少なくとも2セット
の使用を含み得る。
【0101】
いくつかの有利な実施形態では、非シグナルオリゴヌクレオチドの異なるセットは、非シグナルオリゴヌクレオチドの異なるセットの事前混合物中に含まれ得るか、または別々に存在し得る。
【0102】
さらに、いくつかの実施形態では、デコーディングオリゴヌクレオチドの特定のセット中のデコーディングオリゴヌクレオチドは、特定の分析物にユニークな同一の識別子エレメント(T)と相互作用する。
【0103】
いくつかの有利な実施形態では、デコーディングオリゴヌクレオチドの異なるセットは、デコーディングオリゴヌクレオチドの異なるセットの事前混合物中に含まれ得るか、または別々に存在し得る。いくつかの有利な実施形態では、分析物特異的プローブの異なるセットは、異なる分析物特異的プローブセットの事前混合物中に含まれ得るか、または別々に存在し得る。いくつかの有利な実施形態では、シグナルオリゴヌクレオチドの異なるセットは、シグナルオリゴヌクレオチドの異なるセットの事前混合物中に含まれ得るか、または別々に存在し得る。
【0104】
いくつかの有利な実施形態では、プローブセットのユニークな識別子配列に特異的にハイブリダイズする、デコーディングオリゴヌクレオチドおよび/またはマルチデコーダーの混合物が、提供される。いくつかの実施形態では、デコーディングオリゴヌクレオチドは、少なくとも2つの配列エレメント、対応するプローブセットのユニークな識別子配列に相補的な第1のエレメントおよびシグナルオリゴヌクレオチドの特異的ハイブリダイゼーションのための配列を提供する第2の配列エレメント(翻訳エレメント)を含み、翻訳エレメントは、デコーディングオリゴヌクレオチドに動員されるシグナルのタイプを規定する。いくつかの実施形態では、少なくとも3つの配列エレメントを含むマルチデコーダーが使用され、第1のエレメントは、対応するプローブセットのユニークな識別子配列、および少なくとも少なくとも2個の異なるシグナルオリゴヌクレオチドの特異的ハイブリダイゼーションのための配列を提供する少なくとも追加の配列エレメント(翻訳エレメント)に相補的である。翻訳エレメントは、マルチデコーダーに動員されるシグナルのタイプを規定する。マルチデコーダーの異なる可能な構造を、図15で見ることができる。マルチデコーダーは翻訳エレメント毎に完全なシグナルオリゴヌクレオチドを動員するので、各チャネルにおけるシグナルの輝度は、デコーディングオリゴヌクレオチドによるシグナルの輝度より低くない。
【0105】
マルチデコーダーの使用は、コード化スキームの効率を更に高める。図16は、2つの配列エレメントを有するデコーディングオリゴヌクレオチドを用いた例に使用された同じ条件に基づく、マルチデコーダーを用いる可能なコード化スキームを示す。マルチデコーダーベースのコード化スキームは、図5の例で使用された同じラウンド数および同じ数の異なるシグナルオリゴヌクレオチドで、より高いハミング距離を生成できることが、明確に見られる。
【0106】
前述のように、コード化される分析物は、核酸、好ましくはDNA、PNAまたはRNA、特にmRNA、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、および/またはこれらの混合物であってよい。
【0107】
いくつかの有利な実施形態では、結合エレメント(S)は、コード化される分析物への特異的結合を可能にするアミノ酸配列を含む。結合エレメント(S)は、抗体、抗体フラグメント、アンチカリンタンパク質、受容体リガンド、酵素基質、レクチン、サイトカイン、リンホカイン、インターロイキン、血管新生または病原性因子、アレルゲン、ペプチド性アレルゲン、組換えアレルゲン、アレルゲン-イディオタイプ抗体、自己免疫誘発構造、組織拒絶誘導構造、免疫グロブリン定常領域、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される親和性物質由来の親和性部分または全体として親和性物質である部分を含み得る。
【0108】
いくつかの有利な実施形態では、結合エレメント(S)は、Fab、scFv;単一ドメイン、またはこれらのフラグメント、ビスscFv、F(ab)、F(ab)、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディおよびtandabからなる群より選択される抗体または抗体フラグメントを含み得る、またはこれらの抗体または抗体フラグメントである。
【0109】
本開示は特に、病原体含有試料中の分析物を検出するための方法に関し、方法は、
i)病原体または試料からのRNAおよび/またはDNAの単離のない、試料内の病原体の不活化;
ii)空間トランスクリプトミクスによる分析物の検出
を含み、
空間トランスクリプトミクス検出法は、分析物の連続的なシグナルコード化により試料中の異なる上記分析物を検出するための、下記のステップを含む、多重化法を含み得る、または多重化法である:
(A)少なくとも20個の異なる分析物のコード化のために分析物特異的プローブの少なくとも20個の(20)異なるセットと試料を接触させるステップであって、分析物特異的プローブの各セットが異なる分析物と相互作用し、分析物が核酸である場合、分析物特異的プローブの各セットは、同じ分析物の異なる下部構造と特異的に相互作用する少なくとも5個の(5)分析物特異的プローブを含み、各分析物特異的プローブは、
(aa)コード化される異なる分析物の1種と特異的に相互作用する結合エレメント(S)、および
(bb)コード化される分析物に対しユニークなヌクレオチド配列(ユニークな識別子配列)を含む識別子エレメント(T)、
を含み、分析物特異的プローブの特定のセットの分析物特異的プローブは、識別子エレメント(T)のヌクレオチド配列中の分析物特異的プローブの別のセットの分析物特異的プローブとは異なり、
分析物特異的プローブの各セット中の分析物特異的プローブは、同じ分析物に結合し、かつ上記分析物にユニークな識別子エレメント(T)の同じヌクレオチド配列を含む、ステップ、および
(B)分析物当り少なくとも1セットのデコーディングオリゴヌクレオチドと試料を接触させるステップであって、個別の分析物のためのデコーディングオリゴヌクレオチドの各セット中の、各デコーディングオリゴヌクレオチドは、
(aa)対応する分析物特異的プローブセットの識別子エレメント(T)のユニークな識別子配列の少なくとも一部に実質的に相補的なヌクレオチド配列を含む識別子コネクターエレメント(t)、および
(bb)シグナルオリゴヌクレオチドの特異的ハイブリダイゼーションを可能にするヌクレオチド配列を含む翻訳エレメント(c);
を含み、個別の分析物のためのデコーディングオリゴヌクレオチドのセットは、第1のコネクターエレメント(t)中の異なる分析物のためのデコーディングオリゴヌクレオチドの別のセットとは異なる、ステップ;および
(C)シグナルオリゴヌクレオチドの少なくとも1セットと試料を接触させるステップであって、各シグナルオリゴヌクレオチドは:
(aa)デコーディングオリゴヌクレオチドに含まれる翻訳エレメント(c)のヌクレオチド配列の少なくとも一部に実質的に相補的なヌクレオチド配列を含む翻訳コネクターエレメント(C)、および
(bb)シグナルエレメント、
を含む、ステップ;
(D)シグナルエレメントに起因するシグナルを検出するステップ;
(E)試料からデコーディングオリゴヌクレオチドおよびシグナルオリゴヌクレオチドを選択的に除去し、それによりコード化される分析物への分析物特異的プローブの特異的結合を実質的に維持するステップ;
(F)分析物毎に符号語を含むコード化スキームを生成するためにステップB)~E)を含む少なくとも3回のさらなるサイクルを実施するステップであって、特に最後のサイクルが、ステップ(D)で停止し得る、ステップ。
【0110】
前述のように、本開示による方法は、試料からデコーディングオリゴヌクレオチドおよびシグナルオリゴヌクレオチドを選択的に除去すること、それによりコード化される分析物への分析物特異的プローブの特異的結合を実質的に維持することを含む。特に全てのステップは、連続的に実施される。しかし、いくつかのステップ、特に接触させるステップA)~C)、特にステップB)およびC)は、同時に実施され得る。
【0111】
この方法により、同じ分析物特異的プローブへさらなるデコーディングオリゴヌクレオチドを結合させる別のラウンド/サイクルに対する要件が達成され、従って最終的に、2つ以上のシグナルを含むコードまたはコード化スキームをもたらす。このステップは、当業者に周知の条件および因子、例えばpH、温度、塩条件、オリゴヌクレオチド濃度、高分子などを適用することにより実現される。
【0112】
本開示の別の実施形態では、方法は、コード化スキームを生成するために少なくとも3回、ステップ(B)~(E)を繰り返すことを含み得る。これにより、使用者により実施される4回のサイクル/ラウンドの場合、4つのシグナルのコードが測定され、「n」は、ラウンドの数を表す整数である。本開示による方法のコード化能力は、分析物の性質および操作者のニーズに応じて、増大する。本開示のある実施形態では、上記コード化スキームは、予め決められ、コード化される分析物に割り付けられる。
【0113】
しかし、この方法は、用いるデコーディングおよびシグナルオリゴヌクレオチドの適切な順番を与えることにより、正確な実験構成を可能にし、従って、それぞれのコード化スキームへの特異的分析物の正確な割り付けを可能にする。繰り返されるステップ(B)~(D2)で使用されるデコーディングオリゴヌクレオチドは、前のステップ(B)~(E)で使用されるデコーディングオリゴヌクレオチドの翻訳エレメント(c1)と同一の翻訳エレメント(c2)を含み得る。本開示の別の実施形態では、デコーディングオリゴヌクレオチドは、前のステップ(B)~(E)で使用されるデコーディングオリゴヌクレオチドの翻訳エレメント(c1)とは異なる翻訳エレメント(c2)を含む繰り返されるステップ(B)~(E)で使用される。デコーディングエレメントは、ラウンド毎に変わっても変わらなくてもよく、即ち、第2ラウンドでは(B)~(E)は翻訳エレメントc2を含み、第3ラウンドでは(B)~(E)は翻訳エレメントc3を含み、第4ラウンドでは(B)~(E)は翻訳エレメントc4を含む(などであり、ここで「n」は、ラウンドの数を表す整数であることが理解されよう。
【0114】
繰り返されるステップ(B)~(E)で使用されるシグナルオリゴヌクレオチドは、前のステップ(B)~(E)で使用されるデコーディングオリゴヌクレオチドのシグナルエレメントと同一のシグナルエレメントを含んでよい。本開示のさらなる実施形態では、シグナルオリゴヌクレオチドは、前のステップ(B)~(E)で使用されるデコーディングオリゴヌクレオチドのシグナルエレメントとは異なるシグナルエレメントを含む繰り返されるステップ(B)~(E)で使用される。いくつかの実施形態では、個別の分析物に対する非シグナルオリゴヌクレオチドおよび/または非シグナルデコーディングオリゴヌクレオチドが使用され、このサイクル/位置について符号語の値0をもたらす。
いくつかの実施形態では、反復されるサイクルにおいて個別の分析物に対するいかなるデコーディングオリゴヌクレオチドも試料と接触されず、このサイクル/位置についてまた符号語の値0をもたらす。
【0115】
この方法により、各ラウンドで同じまたは異なるシグナルが提供され、多数の異なるシグナルからなるシグナル配列を特徴とするコード化スキームをもたらす。この方法は、全ての他のコード化スキームの符号語とは異なるユニークなコードまたは符号語の生成を可能にする。本開示の別の実施形態では、分析物特異的プローブの結合エレメント(S)は、コード化される分析物への特異的結合、好ましくはコード化される分析物への特異的ハイブリダイゼーションを可能にするヌクレオチド配列を含む核酸を含む。
【0116】
いくつかの有利な実施形態では、全てのステップは、自動化され、特にステップB)~F)は、特にロボットによるシステムおよび/または本開示による光学的多重化システムを用いることにより自動化される。いくつかの例では、これらのステップは、流体系中で実施され得る。
【0117】
前述のように、本開示による方法により、分析物毎に符号語を用いるコード化スキームが、生成される。従って、各分析物は、特異的符号語と関連付けられ得、上記符号語は、多数の位置を含み、各位置は、1つのサイクルに対応し、複数の符号語を有する複数の識別可能なコード化スキームをもたらす。特に、上記コード化スキームは、予め決められ、かつコード化される分析物に割り付けられてよい。
【0118】
いくつかの有利な実施形態では、実施されるサイクルで個別の分析物について得られる符号語は、検出されたシグナルおよび追加で、0、1または0、1、2などの検出されるシグナルなしに対応する少なくとも1つのエレメントを含む(図13および図14も参照)。特に、図14、No.2~4による非シグナルプローブ、または図14、No.5に示すような非シグナルデコーディングオリゴヌクレオチドを用いる場合、または1回のサイクルで、デコーディングオリゴヌクレオチドが、試料中の対応する分析物と相互作用する分析物特異的プローブに含まれる対応する識別子配列と接触されない場合、シグナルは、少なくとも1回のサイクル内で少なくとも1種の分析物について検出されない。このサイクルでは、位置は、値ゼロ(0)を有する。
【0119】
いくつかの有利な実施形態では、少なくとも1種の個別の分析物について、符号語の位置は、ゼロ(0)である。特に、符号語ゼロ(0)は、個別の分析物について対応する分析物特異的プローブの識別子エレメント(T)のユニークな識別子配列の少なくとも一部に対し実質的に相補的なヌクレオチド配列を含む識別子コネクターエレメント(t)を有するデコーディングオリゴヌクレオチドを用いることなく生成される。前述のように、いくつかの実施形態では、少なくとも、1つの個別の分析物について、符号語の位置が、このサイクルでゼロ(0)である場合、個別の分析物について対応する分析物特異的プローブの識別子エレメント(T)のユニークな識別子配列の少なくとも一部に実質的に相補的なヌクレオチド配列を含む識別子コネクターエレメント(t)を有する対応するデコーディングオリゴヌクレオチドは、使用されない。
【0120】
さらに、いくつかの有利な実施形態では、試料は、シグナルオリゴヌクレオチドの少なくとも2つの異なるセットと接触させられ、各セット中のシグナルオリゴヌクレオチドは、異なるシグナルエレメントを含み、および異なるコネクターエレメント(C)を含む。
【0121】
さらに特定の実施形態では、試料は、分析物毎にデコーディングオリゴヌクレオチドの少なくとも2つの異なるセットと接触させられ、
これらの異なるセットに含まれるデコーディングオリゴヌクレオチドは、対応する分析物特異的プローブセットの識別子エレメント(T)のユニークな識別子配列の少なくとも一部に実質的に相補的なヌクレオチド配列を含む同じ識別子コネクターエレメント(t)を含み、および
分析物毎に異なるセットのデコーディングオリゴヌクレオチドは、シグナルオリゴヌクレオチドの特異的ハイブリダイゼーションを可能にするヌクレオチド配列を含む翻訳エレメント(c)において異なる。
さらに特定の実施形態では、試料は、分析物毎にデコーディングオリゴヌクレオチドの少なくとも2つの異なるセットと接触させられ、
これらの異なるセットに含まれるデコーディングオリゴヌクレオチドは、対応する分析物特異的プローブセットの識別子エレメント(T)のユニークな識別子配列の少なくとも一部に実質的に相補的なヌクレオチド配列を含む同じ識別子コネクターエレメント(t)を含み、および
分析物毎に異なるセットのデコーディングオリゴヌクレオチドは、シグナルオリゴヌクレオチドの特異的ハイブリダイゼーションを可能にするヌクレオチド配列を含む翻訳エレメント(c)において異なり;
分析物毎にデコーディングオリゴヌクレオチドの1セットのみが、サイクル毎に使用され、および/またはデコーディングオリゴヌクレオチドの異なるセットが、同じサイクルにおいてシグナルオリゴヌクレオチドの対応するセットと組み合わせて異なるサイクルで使用される。
【0122】
いくつかの有利な実施形態では、異なる翻訳エレメント(c)を含む分析物毎のデコーディングオリゴヌクレオチドの異なるセットの数は、異なるコネクターエレメント(C)を含むシグナルオリゴヌクレオチドの異なるセットの数に対応する。異なる分析物に対するデコーディングオリゴヌクレオチドの全てのセットは、同じタイプの翻訳エレメント(c)を含み得る。
【0123】
本開示による方法のいくつかの有利な実施形態では、試料は、分析物特異的プローブの特定の識別子エレメント(T)への結合のために、少なくとも1セットの非シグナルデコーディングオリゴヌクレオチドと接触させられ、非シグナルデコーディングオリゴヌクレオチドの同じセット中のデコーディングオリゴヌクレオチドは、同じ異なる識別子エレメント(T)と相互作用し、各非シグナルデコーディングオリゴヌクレオチドは、ユニークな識別子配列の少なくとも一部に実質的に相補的なヌクレオチド配列を含む識別子コネクターエレメント(t)を含み、かつシグナルオリゴヌクレオチドの特異的ハイブリダイゼーションを可能にするヌクレオチド配列を含む翻訳エレメント(c)を含まない。
【0124】
前述のように、試料は、分析物特異的プローブの少なくとも2つの異なる識別子エレメント(T)への結合のために、非シグナルデコーディングオリゴヌクレオチドの少なくとも2つの異なるセットと接触させられ得、非シグナルデコーディングオリゴヌクレオチドの各セットは、異なる識別子エレメント(T)と相互作用し、各非シグナルデコーディングオリゴヌクレオチドは、ユニークな識別子配列の少なくとも一部に実質的に相補的なヌクレオチド配列を含む識別子コネクターエレメント(t)を含み、かつシグナルオリゴヌクレオチドの特異的ハイブリダイゼーションを可能にするヌクレオチド配列を含む翻訳エレメント(c)を含まない。
【0125】
本開示による方法のいくつかの有利な実施形態では、非シグナルデコーディングオリゴヌクレオチドの異なるセットは、非シグナルデコーディングオリゴヌクレオチドの異なるセットの事前混合物中に含まれ得るか、または別々に存在し得る。
【0126】
さらに、本開示による方法のいくつかの有利な実施形態では、試料は、非シグナルオリゴヌクレオチドのセットと接触させられ、各非シグナルオリゴヌクレオチドは、(aa)翻訳エレメント(c)のヌクレオチド配列の少なくとも一部に実質的に相補的なヌクレオチド配列を含む翻訳コネクターエレメント(C)、および(bb)消光剤(Q)、シグナルエレメントおよび消光剤(Q)、を含む、またはシグナルエレメントを含まない。
【0127】
さらなる実施形態では、試料は、
非シグナルオリゴヌクレオチドの少なくとも2セットと接触させられ、各非シグナルオリゴヌクレオチドは、
(aa)翻訳エレメント(c)のヌクレオチド配列の少なくとも一部に実質的に相補的なヌクレオチド配列を含む翻訳コネクターエレメント(C)、および
(bb)消光剤(Q)、シグナルエレメントおよび消光剤(Q)
を含む、またはシグナルエレメントを含まない。
【0128】
前述のように、非シグナルオリゴヌクレオチドの異なるセットは、非シグナルオリゴヌクレオチドの異なるセットの事前混合物中に含まれ得るか、または別々に存在し得る。
【0129】
さらなる実施形態では、デコーディングオリゴヌクレオチドの特定のセット中のデコーディングオリゴヌクレオチドは、特定の分析物にユニークな同一の識別子エレメント(T)と相互作用する。
【0130】
前述のように、デコーディングオリゴヌクレオチドの異なるセットは、異なるデコーディングオリゴヌクレオチドセットの事前混合物に含まれ得る、または別々に存在し得る、ならびに分析物特異的プローブの異なるセットは、分析物特異的プローブの異なるセットの事前混合物に含まれ得る、または別々に存在してもよく、それに加えて、シグナルオリゴヌクレオチドの異なるセットは、シグナルオリゴヌクレオチドの異なるセットの事前混合物に含まれ得る、または別々に存在し得る。
【0131】
本開示による方法のいくつかの有利な実施形態では、結合エレメント(S)は、コード化される分析物に対する特異的結合、好ましくはコード化される分析物に対する特異的ハイブリダイゼーションを可能にするヌクレオチド配列を含む核酸を含む。
【0132】
本開示による方法のいくつかの有利な実施形態では、ステップA)の後でかつステップB)の前に、非結合分析物特異的プローブは、特に洗浄により、除去され得、さらにステップB)の後でかつステップC)の前に、非結合デコーディングオリゴヌクレオチドは、特に洗浄により除去され得、さらに、ステップC)の後でかつステップD)の前に、非結合シグナルオリゴヌクレオチドは、特に洗浄により除去され得る。
【0133】
本開示による方法のいくつかの有利な実施形態では、分析物特異的プローブは、試料とインキュベートされ得、それによりコード化される分析物への分析物特異的プローブの特異的結合を可能にし、さらにデコーディングオリゴヌクレオチドは、試料とインキュベートされ得、それによりそれぞれの分析物特異的プローブの識別子エレメント(T)へのデコーディングオリゴヌクレオチドの特異的ハイブリダイゼーションを可能にし、さらにシグナルオリゴヌクレオチドは、試料とインキュベートされ得、それによりそれぞれのデコーディングオリゴヌクレオチドの翻訳エレメント(T)へのシグナルオリゴヌクレオチドの特異的ハイブリダイゼーションを可能にし得る。
【0134】
前述のように、コード化される分析物は、核酸、好ましくはDNA、PNA、RNA、特にmRNA、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはこれらの組み合わせであってよい。従って、結合エレメント(S)は、コード化される分析物への特異的結合を可能にするアミノ酸配列を含み得る。結合エレメント(S)の例は、抗体、抗体フラグメント、アンチカリンタンパク質、受容体リガンド、酵素基質、レクチン、サイトカイン、リンホカイン、インターロイキン、血管新生または病原性因子、アレルゲン、ペプチド性アレルゲン、組換えアレルゲン、アレルゲン-イディオタイプ抗体、自己免疫誘発構造、組織拒絶誘導構造、免疫グロブリン定常領域、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される親和性物質由来の親和性部分または全体として親和性物質である、部分である。特に、結合エレメント(S)は、Fab、scFv;単一ドメイン、またはこれらのフラグメント、ビスscFv、Fab2、Fab3、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディおよびtandabからなる群より選択される抗体または抗体フラグメントである。
【0135】
この手段により、方法は、コード化分析物がシグナルエレメントを可視化するために適合されるいずれかの手段により検出できる程度にさらに発展させられる。検出可能な物理的特徴の例は、例えば、光、化学反応、分子量、放射能、などを含む。
【0136】
いくつかの有利な実施形態では、シグナルエレメントに起因するシグナル、従って特に、デコーディングオリゴヌクレオチドへのシグナルオリゴヌクレオチドの結合、対応する検体プローブとの相互作用、それぞれの分析物への結合は、
(a)少なくとも試料の一部を画像化すること;および/または
(b)光学画像化技術を使用すること;および/または
(c)蛍光画像化技術を使用すること;および/または
(d)多色蛍光画像化技術;および/または
(e)超解像度蛍光画像化技術
により測定される。
【0137】
本開示による方法は、理想的には癌、神経疾患、心臓血管疾患、炎症性疾患、自己免疫疾患、ウィルスまたは細菌感染による疾患、皮膚疾患、骨格筋疾患、歯科疾患および出生前疾患を含む群から選択される疾患の診断のためのインビトロ法のために使用され得る。
【0138】
さらに、本開示による方法はまた、理想的には生物ストレスに起因する、好ましくは感染性および/または寄生虫起源による疾患、非生物的ストレス、好ましくは栄養障害、および/または好ましくない環境に起因する疾患を含む群から選択される植物の疾患の診断のためのインビトロ法のために使用され得る。
【0139】
さらに、本開示による方法はまた理想的には、
(a)試料を含む試験試料を物質および/または薬物と接触させること、
(b)本開示による方法による上記分析物の連続シグナルコード化により、試料中の種々の分析物を検出すること
を含む、物質および/または薬物をスクリーニングする、特定するおよび/または試験するためのインビトロ法のために使用され得る。
【0140】
いくつかの有利な実施形態では、本明細書で記載される空間トランスクリプトミクス法は、並行して多くの異なる分析物を特異的に検出するために使用される。この技術は、異なるシグナルが利用できるよりも多くの数の分析物の鑑別を可能にする。工程は、特異的結合、シグナル検出および選択的変性(次のラウンドが必要な場合)の少なくとも4回の連続的なラウンドを含み、最終的にシグナルコードを生成する。分析物特異的結合と検出可能なシグナルを提供するオリゴヌクレオチドの間の依存性を切り離すために、いわゆる「デコーディング」-オリゴヌクレオチドが導入される。デコーディングオリゴヌクレオチドは、シグナルオリゴヌクレオチドへ分析物特異的プローブセットの情報を転写する。
【0141】
特定の実施形態では、空間トランスクリプトミクス法は、1.1つまたは複数の分析物特異的プローブセットを提供するステップであって、分析物特異的プローブのセットは、分析物と特異的に相互作用する結合部分においてそれぞれ異なる、1つまたは複数のプローブからなり、単一プローブセットの全てのプローブは、単一プローブセットに対しユニークでありかつデコーディングオリゴヌクレオチドの特異的ハイブリダイゼーションを可能にする、配列エレメント(ユニークな識別子)に繋ぎ止められる、ステップ、2.それらの分析物の標的結合部位へのプローブセットの特異的結合のステップ、3.非結合プローブを除去するステップ(例えば、洗浄ステップにより)、4.プローブセットのユニークな識別子配列に特異的にハイブリダイズするデコーディングオリゴヌクレオチドの混合物を提供するステップであって、デコーディングオリゴヌクレオチドは、少なくとも2つの配列エレメント、対応するプローブセットのユニークな識別子配列に相補的な第1のエレメントおよびシグナルオリゴヌクレオチドの特異的ハイブリダイゼーションのための配列を提供する第2の配列エレメント(翻訳エレメント)、を含み、翻訳エレメントは、デコーディングオリゴヌクレオチドに動員されるシグナルのタイプを規定する、ステップ、5.結合されたプローブセットにより提供されるユニークな識別子配列への、デコーディングオリゴヌクレオチドの特異的ハイブリダイゼーションのステップ、6.非結合デコーディングオリゴヌクレオチドを除去する(例えば、洗浄ステップにより)ステップ、7.検出できるシグナルおよび前のハイブリダイゼーションステップで使用されたデコーディングオリゴヌクレオチドの1つの翻訳エレメントに特異的にハイブリダイズする核酸配列の混合物からなるシグナルオリゴヌクレオチドの混合物を提供するステップ、8.シグナルオリゴヌクレオチドの特異的ハイブリダイゼーションのステップ、9.非結合シグナルオリゴヌクレオチドを除去するステップ、10.シグナルの検出のステップ、11.分析物への特異的プローブセットの結合がほぼまたは完全に影響されない間の、デコーディングオリゴヌクレオチドおよびシグナルオリゴヌクレオチドの選択的な放出のステップ、12.分析物への特異的プローブセットの結合がほとんどまたは完全に影響されない間に、放出されたデコーディングオリゴヌクレオチドおよびシグナルオリゴヌクレオチドを除去する(例えば、洗浄ステップにより)ステップ、を含み得、それぞれ異なる目的の分析物についてコード化スキームを生成するために十分な数のシグナルが検出されるまで少なくとも3回ステップ4~12を繰り返す。
【0142】
前に言及した特徴および以下で言及される特徴は、それぞれの事例で示される組み合わせで使用できるだけでなく、本開示の範囲を逸脱することなく他の組み合わせで、または単独でも使用できることを理解されたい。
【0143】
本開示はここで、本開示の特徴、特性および利点をもたらす実施形態により、さらに説明される。実施形態は、純粋な例示的性質のものであり、本開示の領域または範囲を限定するものではない。特定の実施形態で言及される特徴は、本開示の一般的な特徴であり、特定の実施形態において適用可能であるだけでなく、本開示のいずれかの実施形態の中で独立した様式でもまた適用可能である。
【0144】
本明細書で開示される空間トランスクリプトミクス法は、並行して多くの異なる分析物を特異的に検出するために使用される。この技術は、利用できる異なるシグナルよりも多くの数の分析物の鑑別を可能にする。工程は好ましくは、特異的結合、シグナル検出および選択的変性(次のラウンドが必要な場合)の少なくとも2回の連続的なラウンドを含み、最終的にシグナルコードを生成する。分析物特異的結合オリゴヌクレオチドと検出可能なシグナルを提供するオリゴヌクレオチドの間の依存性を切り離すために、いわゆる、「デコーディング」オリゴヌクレオチドが導入される。デコーディングオリゴヌクレオチドは、シグナルオリゴヌクレオチドへ分析物特異的プローブセットの情報を転写する。
【0145】
本開示は、病原体含有中の分析物を検出するための方法に更に関し、方法は、病原体または試料からのRNAおよび/またはDNAの単離のない、試料内の病原体の不活化、および
-分析物に複数の分析物特異的プローブを付着させることであって、分析物特異的プローブは、分析物に独立に付着し、分析物特異的プローブは、共通の識別子セグメント(T)を共有する、付着させること;
-分析物特異的プローブに複数の第1のデコーディングオリゴヌクレオチドをアニールすることであって、第1のデコーディングオリゴヌクレオチドは、共通の識別子セグメントに逆相補的である第1の共通の領域および第2の共通領域を共有する、アニールすること;
-第1のシグナルオリゴヌクレオチドに繋ぎ止められたオリゴが第2の共通の領域に逆相補的であるように複数の第1のデコーディングオリゴヌクレオチドの少なくとも1個に第1のシグナルオリゴヌクレオチドをアニールすること;
-第1のシグナルオリゴヌクレオチドを検出すること;
-複数の第1のデコーディングオリゴヌクレオチドを除去すること;
-分析物特異的プローブに複数の第2のデコーディングオリゴヌクレオチドをアニールすることであって、第2のデコーディングオリゴヌクレオチドは、共通の識別子セグメントに逆相補的である第1の共通の領域および第1のデコーディングオリゴヌクレオチドの第2の共通の領域とは異なる第2のデコーディングオリゴヌクレオチドの第2の共通の領域を共有する、アニールすること;
-シグナルオリゴヌクレオチドに繋ぎ止められたオリゴが第2のデコーディングオリゴヌクレオチドの第2の共通の領域に逆相補的であるように、複数の第2のデコーディングオリゴヌクレオチドの少なくとも1個に第2のシグナルオリゴヌクレオチドをアニールすること;および
第2のシグナルオリゴヌクレオチドを検出すること
を含む。
【0146】
特に、上述の実施形態では、複数の第1のデコーディングオリゴヌクレオチドの第2の分取量が、分析物特異的プローブにアニールされる。さらに、複数の第1のデコーディングオリゴヌクレオチドの第1の分取量が、分析物特異的プローブにアニールされる。
【0147】
いくつかの実施形態では、複数の第1のデコーディングオリゴヌクレオチドの少なくとも1つに第2のシグナルオリゴヌクレオチドは、アニールされない。特に、複数の第1のデコーディングオリゴヌクレオチドの少なくとも1つに第3のシグナルオリゴヌクレオチドは、アニールされない。
【0148】
方法および実施例
ある適用変種では、分析物または標的は、核酸、例えばDNAまたはRNAであり、プローブセットは、検出される核酸配列の全配列または部分配列に部分的にまたは完全に相補的であるオリゴヌクレオチドを含む(図1)。核酸配列特異的オリゴヌクレオチドプローブセットは、検出される標的核酸配列に特異的にハイブリダイズする結合エレメント(S)、および分析物特異的プローブの上記セットに対しユニークなヌクレオチド配列(ユニークな識別子配列)を含む識別子エレメント(T)を含む分析物特異的プローブ(1)を含む。
【0149】
さらなる適用変種では、分析物または標的は、タンパク質であり、プローブセットは、1種または複数のタンパク質、例えば抗体を含む(図2)。タンパク質特異的プローブセットは、検出される標的タンパク質と特異的に相互作用する抗体の(高頻度)可変領域などの結合エレメント(T)、および識別子エレメント(T)を含む分析物特異的プローブ(1)を含む。
【0150】
さらなる適用変種では、少なくとも1種の分析物は、核酸であり、少なくとも第2の分析物は、タンパク質であり、少なくとも第1のプローブセットは、核酸配列に結合し、少なくとも第2のプローブセットは、タンパク質分析物に特異的に結合する。他の組み合わせもまた可能である。
本開示の一般的方法のある実施形態は、下記であり得る:
ステップ1:少なくとも20個分析物または標的特異的プローブセットを適用すること。標的核酸配列は、標的核酸に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドからなるプローブセットとインキュベートされる。この実施例では、5個の異なるプローブのプローブセットが示され、それぞれは、標的核酸配列の個別の部分配列(S1~S5)に相補的な配列エレメントを含む。この実施例では、領域は、オーバーラップしない。同じ核酸配列を標的にするオリゴヌクレオチドのそれぞれは、それぞれ、識別子エレメントまたはユニークな識別子配列(T)を含む。
ステップ2:プローブセットのハイブリダイゼーション。プローブセットは、特異的ハイブリダイゼーションを可能にする条件下で、標的核酸配列にハイブリダイズされる。インキュベーション後に、プローブは、それらの対応する標的配列にハイブリダイズされ、次のステップのために識別子エレメント(T)を提供する。
ステップ3:非結合プローブを除去すること。ハイブリダイゼーション後に、非結合オリゴヌクレオチドは、例えば洗浄ステップにより、除去される。
ステップ4:デコーディングオリゴヌクレオチドを適用すること。少なくとも2つの配列エレメント(t)および(c)からなるデコーディングオリゴヌクレオチドが、適用される。配列エレメント(t)はユニークな識別子配列(T)に相補的である一方で、配列エレメント(c)は、シグナルオリゴヌクレオチド(翻訳エレメント)の次のハイブリダイゼーションのための領域を提供する。
ステップ5:デコーディングオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション。デコーディングオリゴヌクレオチドは、それらの相補的な第1の配列エレメント(t)を介してプローブ(T)のユニークな識別子配列とハイブリダイズされる。インキュベーション後に、デコーディングオリゴヌクレオチドは、その後のハイブリダイゼーションステップのための翻訳配列エレメント(c)を提供する。
ステップ6:過剰なデコーディングオリゴヌクレオチドを除去すること。ハイブリダイゼーション後に、非結合デコーディングオリゴヌクレオチドは、例えば洗浄ステップにより、除去される。
ステップ7:シグナルオリゴヌクレオチドを適用すること。シグナルオリゴヌクレオチドが、適用される。シグナルオリゴヌクレオチドは、翻訳配列エレメント(c)に実質的に相補的な少なくとも1種の第2のコネクターエレメント(C)および検出可能なシグナル(F)を提供する少なくとも1つのシグナルエレメントを含む。
ステップ8:シグナルオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション。シグナルオリゴヌクレオチドは、デコーディングオリゴヌクレオチドの翻訳エレメント(c)に相補的な配列コネクターエレメント(C)を介してハイブリダイズされる。インキュベーション後に、シグナルオリゴヌクレオチドは、それらの対応するデコーディングオリゴヌクレオチドにハイブリダイズされ、検出され得るシグナル(F)を提供する。
ステップ9:過剰なシグナルオリゴヌクレオチドを除去すること。ハイブリダイゼーション後に、非結合シグナルオリゴヌクレオチドは、例えば洗浄ステップにより、除去される。
ステップ10:シグナル検出。シグナルオリゴヌクレオチドにより提供されるシグナルが、検出される。
次のステップ(ステップ11および12)は、最後の検出ラウンドには不必要である。
ステップ11:選択的変性。ユニークな識別子配列(T)と、デコーディングオリゴヌクレオチドの第1の配列エレメント(t)の間のハイブリダイゼーションが、解消される。不安定化は、訓練を受けた人によく知られている異なる機序、例えば:温度の上昇、変性剤、などにより達成できる。標的または分析物特異的プローブは、このステップにより影響されない。
ステップ12:変性デコーディングオリゴヌクレオチドを除去すること。変性デコーディングオリゴヌクレオチドおよびシグナルオリゴヌクレオチドは、除去され(例えば洗浄ステップにより)、次のハイブリダイゼーションおよび検出ラウンド(ステップ4~10)で再使用できる、遊離のユニークな識別子配列を有する特異的プローブセットを残す。この検出サイクル(ステップ4~12)は、計画したコード化スキームが完了されるまで少なくとも4回繰り返される。
【0151】
マルチデコーダーを用いる本開示の一般的方法の別の実施形態は、下記であり得る(図16):
ステップ1:標的核酸:この実施例では、3種の異なる標的核酸(A)、(B)および(C)が、2個の異なるタイプのシグナルオリゴヌクレオチドのみを用いることにより、検出され区別されなければならない。実験を開始する前に、特定のコード化スキームが、設定される。この実施例では、3種の異なる核酸配列が、3つの異なるシグナルタイプ(1)、(2)および(1/2)による検出の3回のラウンドおよびエラー検出を可能にする3の得られるハミング距離によりコード化される。計画される符号語は:
配列A:(1)-(1)-(2)
配列B:(2)-(2)-(1/2)
配列C:(1/2)-(1/2)-(1)
である。
ステップ2:プローブセットのハイブリダイゼーション:各標的核酸に対し、自分自身のプローブセットが適用され、対応する目的の核酸配列に特異的にハイブリダイズする。各プローブセットは、ユニークな識別子配列(T1)、(T2)または(T3)を提供する。このように、それぞれ異なる標的核酸は、一意的に標識される。この実施例では、配列(A)は(T1)で標識され、配列(B)は(T2)で、配列(C)は(T3)で標識される。図16の説明は、図3のステップ1~3をまとめる。
ステップ3:デコーディングオリゴヌクレオチドおよびマルチデコーダーのハイブリダイゼーション。存在する各ユニークな識別子に対し、特定のデコーディングオリゴヌクレオチドまたはマルチデコーダーが適用され、その第1の配列エレメントにより対応するユニークな識別子配列へ特異的にハイブリダイズする(ここでは、(t1)対(T1)、(t2)対(T2)および(t3)対(T3))。デコーディングオリゴヌクレオチドまたはマルチデコーダーのそれぞれは、シグナルオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション後に生成されるシグナルを規定する翻訳エレメントまたは2つの翻訳エレメントを提供する。ここで、核酸配列(A)は、(c1)で標識され、(B)は、(c2)で標識され、および(C)は、翻訳エレメント(c1)および(c2)で標識され、シグナル(1/2)を生じる。図16の説明は、図3のステップ4~6をまとめる。
ステップ4:シグナルオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション:翻訳エレメントのそれぞれのタイプに対し、他のシグナルオリゴヌクレオチドから区別できる特定のシグナルを有するシグナルオリゴヌクレオチドが、適用される。このシグナルオリゴヌクレオチドは、対応する翻訳エレメントに特異的にハイブリダイズできる。図16の説明は、図3のステップ7~9をまとめる。
ステップ5:コード化スキームのためのシグナル検出:異なるシグナルが、検出される。この実施例では、核酸(A)、(B)および(C)は、第1の検出ラウンド後に既に区別できることに留意されたい。これは、マルチデコーダーにより実現できる追加のシグナルタイプ(1/2)により説明される図5のステップ5とは対照的である。核酸配列は既に区別できるが、追加のラウンドは、計画された3のハミング距離に寄与する。図16の説明は、図3のステップ10に対応する。
ステップ6:選択的変性:検出される全ての核酸配列のデコーディング(およびシグナル)オリゴヌクレオチドおよび/またはマルチデコーダーは、図3のステップ11及び12に記載されるように選択的に変性され除去される。その後、異なるプローブセットのユニークな識別子配列は、ハイブリダイゼーションおよび検出の次のラウンドで使用できる。
ステップ7:検出の第2ラウンド:ハイブリダイゼーションおよび検出の次のラウンドは、ステップ3~5に記載されるように実施される。この新しいラウンドでは、異なるデコーディングオリゴヌクレオチドおよびマルチデコーダーの混合物は変更されることに留意されたい。例えば、第1のラウンドで使用される核酸配列(A)のデコーディングオリゴヌクレオチドは、配列エレメント(t1)および(c1)からなったが、一方でラウンド2の新しいマルチデコーダーは、配列エレメント(t1)、(c1)および(c2)からなる。ここで2のハミング距離が2ラウンド後に既に与えられ、これは、3ラウンド後の図3の例の最終結果であることに留意されたい。
ステップ8:検出の第3ラウンド:再度、デコーディングオリゴヌクレオチドおよび/またはマルチデコーダーの新しい組み合わせが、使用され、新規シグナルの組み合わせをもたらす。シグナル検出後に、3つの異なる核酸配列について得られる符号語は、ユニークで従って区別できるだけでなく、他の符号語に対し3のハミング距離を含む。そのハミング距離のために、シグナルの検出におけるエラー(シグナル交換)は、有効な符号語を生じないはずであり、従って、図3のコード化スキームとは対照的に、検出され得、かつ3のハミング距離のため訂正もされ得る。このように、3つの異なる核酸は、2つの異なるシグナルを用いて3回の検出ラウンドで区別でき、エラー検出および訂正を可能にする。
【0152】
検出のラウンド毎に、特定のユニークな識別子により提供されるシグナルのタイプは、特定のデコーディングオリゴヌクレオチドの使用により制御されることに留意されたい。結果として、検出サイクル中に適用されるデコーディングオリゴヌクレオチドの配列は、プローブセットの結合特異性をユニークなシグナル配列へと転写する。
【0153】
デコーディングオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションのステップ(ステップ4~6)およびシグナルオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションのステップ(ステップ7~9)は、図4に示すような2つの選択肢の方式で組み合わせることができる。
選択肢1:同時ハイブリダイゼーション。図3のステップ4~9の代わりに、デコーディングオリゴヌクレオチドおよびシグナルオリゴヌクレオチドの特異的ハイブリダイゼーションは、過剰デコーディングおよびシグナルオリゴヌクレオチドの除去後に、同時に実施されてよく、図3のステップ9に示されるのと同じ結果をもたらす。
選択肢2:プレインキュベーション。図3の選択肢1に加えて、デコーディングおよびシグナルオリゴヌクレオチドは、既に結合された特異的プローブセットを用いて、標的核酸に適用される前に別々の反応でプレインキュベーションされ得る。
【0154】
1.2つの異なるシグナルタイプおよび3つの検出ラウンドによる3つの異なる核酸配列のシグナルコード化のための実施例
図3は、デコーディングオリゴヌクレオチドにより媒介される特異的シグナルの生成および検出の一般的概念を示す。それは、この方法により達成できるコード化の一般的概念を示さない。コード化スキームの生成のための図3に示す過程の使用を例示するために、図5は、3つの異なる核酸配列を用いる複数ラウンドの実施例を示す。
この実施例では、コード化スキームは、エラー検出を含む。
ステップ1:標的核酸。この実施例では、2つのみの異なるタイプのシグナルを用いることにより、3種の異なる標的核酸(A)、(B)および(C)が検出され、区別されなければならない。実験を開始する前に、特定のコード化スキームが、設定される。この実施例では、3種の異なる核酸配列が、2つの異なるシグナル(1)および(2)を用いた検出の3ラウンドおよびエラー検出を可能にする2の得られるハミング距離によりコード化される。計画符号語は:
配列A:(1)-(2)-(2);
配列B:(1)-(1)-(1);
配列C:(2)-(1)-(2)
である。
ステップ2:プローブセットのハイブリダイゼーション。各標的核酸に対し、自分自身のプローブセットが適用され、対応する目的の核酸配列に特異的にハイブリダイズする。各プローブセットは、ユニークな識別子配列(T1)、(T2)または(T3)を提供する。このように、それぞれ異なる標的核酸は、一意的に標識される。この実施例では、配列(T)は(T1)で標識され、配列(B)は(T2)で、配列(C)は(T3)で標識される。この説明は、図3のステップ1~3をまとめる。
ステップ3:デコーディングオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション。存在する各ユニークな識別子に対し、特定のデコーディングオリゴヌクレオチドが適用され、その第1の配列エレメントにより対応するユニークな識別子配列へ特異的にハイブリダイズする(ここでは、(t1)対(T1)、(t2)対(T2)、および(t3)対(T3))。デコーディングオリゴヌクレオチドのそれぞれは、シグナルオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション後に生成されることになるシグナルを規定する翻訳エレメントを提供する。ここで、核酸配列(A)および(B)は、翻訳エレメント(c1)で標識され、配列(C)は、(c2)で標識される。この説明は、図3のステップ4~6をまとめる。
ステップ4:シグナルオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション。翻訳エレメントのそれぞれのタイプに対し、他のシグナルオリゴヌクレオチドから区別できる特定のシグナル(2)を有するシグナルオリゴヌクレオチドが、適用される。このシグナルオリゴヌクレオチドは、対応する翻訳エレメントに特異的にハイブリダイズできる。この説明は、図3のステップ7~9をまとめる。
ステップ5:コード化スキームのためのシグナル検出。異なるシグナルが、検出される。この実施例では、核酸配列(C)は、それが提供するユニークなシグナル(2)により他の配列から区別でき、一方で配列(A)および(B)は、同じ種類のシグナル(1)を提供し、検出の第1のサイクル後に区別できないことに留意されたい。これは、検出される異なる核酸配列の数が、利用できる異なるシグナルの数を超えるという事実による。この説明は、図3のステップ10に対応する。
ステップ6:選択的変性。検出される全ての核酸配列のデコーディング(およびシグナル)オリゴヌクレオチドは、図3のステップ11および12に記載されるように選択的に変性され除去される。その後、異なるプローブセットのユニークな識別子配列は、ハイブリダイゼーションおよび検出の次のラウンドで使用できる。
ステップ7:検出の第2ラウンド。ハイブリダイゼーションおよび検出の次のラウンドは、ステップ3~5に記載されるように実施される。この新しいラウンドでは、異なるデコーディングオリゴヌクレオチドの混合物は変更されることに留意されたい。例えば、第1のラウンドで使用される核酸配列(A)のデコーディングオリゴヌクレオチドは、配列エレメント(t1)および(c1)からなったが、一方で新しいデコーディングオリゴヌクレオチドは、配列エレメント(t1)および(c2)からなる。ここで、全ての3つの配列は、第1および第2のラウンドシグナルのユニークな組み合わせに起因して、明確に区別できることに留意されたい。
ステップ8:検出の第3ラウンド。再度、デコーディングオリゴヌクレオチドの新しい組み合わせが、使用され、新規シグナルの組み合わせをもたらす。シグナル検出後に、3つの異なる核酸配列について得られる符号語は、ユニークで従って区別できるだけでなく、他の符号語に対し2のハミング距離を含む。そのハミング距離のために、シグナルの検出におけるエラー(シグナル交換)は、有効な符号語を生じないはずであり、従って、検出され得る。このようにして、3つの異なる核酸は、2つの異なるシグナルを用いて3回の検出ラウンドで区別でき、エラー検出を可能にする。
【0155】
2.先行技術に優る利点
コード化戦略
現時点での方法に比べて、本開示による方法の1つの特定の利点は、標的特異的プローブとシグナルオリゴヌクレオチドの間の依存性を壊すデコーディングオリゴヌクレオチドの使用である。
【0156】
標的特異的プローブとシグナル生成を切り離すことなしに、2つの異なるシグナルは、2つの異なる分子タグを用いるならば特定の標的についててのみ生成され得る。これらの分子タグのそれぞれは、1回のみ使用できる。同じ分子タグの複数の読み値は、標的に関する情報を増大させない。コード化スキームを生成するために、各ラウンド後の標的特異的プローブセットの変更が、必要とされ(SeqFISH)、または複数の分子タグが、同じプローブセット上に存在しなければならない(merFISH、intronSeqFISHのように)。
【0157】
本開示による方法に従い、異なるシグナルが、同じユニークな識別子(分子タグ)および少数の異なる、概してコストのかかるシグナルオリゴヌクレオチドを再使用する異なるデコーディングオリゴヌクレオチドを用いることにより達成される。これは、他の方法と対照的に、いくつかの利点をもたらす。
(1)コード化スキームは、先行技術の他のすべての方法の場合のように、標的特異的プローブセットにより規定されない。ここでコード化スキームは、デコーディングオリゴヌクレオチドにより転写される。これは、符号語のためのラウンドの回数およびシグナル選択の自由度に関して、遙かに高い柔軟性をもたらす。先行技術の方法(例えば、merFISHまたはintronSeqFISH)を見ると、全ての標的配列のためのコード化スキーム(検出可能なシグナルの数、タイプおよび配列)は、特異的プローブセット上の異なるタグ配列の存在(merFISHの場合では、プローブセット当り16個のうちの4個、およびintron FISHの場合、プローブセット当り60個のうちの5個)により予め定義される。プローブセット当り十分な数の異なるタグを生成するために、方法は、1個の標的特異的オリゴヌクレオチド上にいくつかのタグを有する、むしろ複雑なオリゴヌクレオチドデザインを使用する。特定の標的核酸についてのコード化スキームを変更するために、特異的プローブセットは置き換えられる必要がある。本開示による方法は、分析物当り単一のユニークなタグ配列(ユニークな識別子)の使用を説明し、理由は、それが、新らしい情報を生成するために検出ラウンド毎に再使用できるためである。コード化スキームは、検出ラウンドで使用されるデコーディングオリゴヌクレオチドの順序により規定される。従って、コード化スキームは、特異的プローブ(またはユニークなタグ配列)により予め定義されないが、実験中であっても、異なるニーズに調整できる。これは、検出ラウンドで、または追加の検出ラウンドで使用されるデコーディングオリゴヌクレオチドを単に変更することにより達成される。
(2)異なるシグナルオリゴヌクレオチドの数は、先行技術の方法では異なるタグ配列の数に一致させなければならない(merFISHの場合は16個、intronSeqFISHの場合は60個)。本開示による方法を用いて、異なるシグナルオリゴヌクレオチドの数は、使われる異なるシグナルの数に一致する。このために、シグナルオリゴヌクレオチドの数は、本明細書で記載の方法では一定のままであり、異なるシグナルの数を決して超えないが、先行技術の方法では、コード化スキームの複雑さと共に増大する(検出ラウンドの回数が多くなるほど、必要とされる異なるシグナルオリゴヌクレオチドの数が多くなる)。結果として、本明細書で記載の方法は、遙かに低い複雑さ(環境との、または互いとのシグナルオリゴヌクレオチドの意図しない相互作用)をもたらし、および大部分のコスト要因はシグナルオリゴヌクレオチドであるため、アッセイのコストを劇的に減らす。
(3)先行技術の方法では、標的特異的プローブセットにより生成される異なるシグナルの数は、プローブセットが提供できる異なるタグ配列の数に制限される。それぞれの追加のタグ配列が標的特異的プローブの合計サイズを増やすので、単一のプローブが提供できる異なるタグの数に制限がある。この制限は、いくつかの問題(意図しない分子内および分子間相互作用、コスト、拡散速度、安定性、合成中のエラーなど)のサイズ依存性の増大によりもたらされる。さらに、特定の分析物に適用できる標的特異的プローブの総数の制限がある。核酸の場合、この制限は、標的配列の長さと、好適な結合部位の比率により与えられる。これらの因子は、プローブセットが提供できる異なるシグナルの数の厳密な制約をもたらす(merFISHの場合4つのシグナル、intronSeqFISHの場合5つのシグナル)。この制限は、一定数の検出ラウンドで生成できる異なる符号語の数に実質的に影響する。本開示の手法では、1個のみのタグが必要とされ、検出ラウンド毎に自由に再使用できる。これは、低いオリゴヌクレオチド複雑さ/長さおよび同時に、可能な最大コード化効率(色数ラウンド数)をもたらす。他の方法と比較した我々の方法のコード化能力の大きな差異は、図1および図5に示される。本開示のこの手法により、遙かに少ない数の検出ラウンドが、同じ量の情報を生成するために、必要とされる。より少ない数の検出ラウンドは、より低いコスト、より少ない実験時間、より低い複雑さ、より高い安定性および的中率、収集および分析されるより少ないデータ量、ならびに、結果のより高い正確さに関係する。
【0158】
コード化能力
下表1で比較される全ての3つの方法は、検出の異なるラウンド間で変性されない特異的プローブセットを使用する。intronSeqFISHの場合、1回のコード化ラウンドの疑似色を生成するために必要とされる4回の検出ラウンドがあり、それによりデータは、ラウンド4、8、12、16および20について与えられるのみである。merFISH法は、一定数の4つのシグナルを使用し、そのためデータは、可能な最小数のラウンドで始まる。8回の検出ラウンド後に、我々の方法は、merFISHの20ラウンドで到達された最大コード化能力を越え(1つのアスタリスクで示す)、および12ラウンドの検出後に、intron FISHの最大コード化能力が超えられる(2つのアスタリスクで示す)。本開示による方法の場合、3つの異なるシグナルの使用が想定される(intronSeqFISHでのように)。
【表1】
【0159】
コード化能力のこの最大効率はまた、SeqFISHの場合にも同様に達成され、ここで特異的プローブは、どの検出ラウンドの後にも変性され、かつ新規プローブセットは、各検出ラウンドで標的配列に特異的にハイブリダイズすることに留意されたい。しかし、この方法は、下記に示す、それらのコード化スキーム(全ての他の方法)のために1個のみの特異的ハイブリダイゼーションを使用する技術上の大きな欠点を有する:
(1)特異的プローブの効率的変性のために、むしろ粗い条件を使用しなければならず(高温、高濃度の変性剤、長いインキュベーション時間)、分析物の損失または損傷の遙かに高い確率をもたらす。
(2)各検出ラウンドについて、自分自身のプローブセットを、すべての標的核酸配列に対して使用する必要がある。従って、その実験に必要とされる特異的プローブの数は、コード化スキームに必要とされる異なるシグナルの数と共に増大する。これは、アッセイの複雑さおよびコストを劇的に増大させる。
(3)全ての標的核酸分子のハイブリダイゼーション効率は、いくつかの確率的影響を受けるので、異なる検出ラウンド間のシグナル強度の変動は、1つのみの特異的ハイブリダイゼーションイベントを用いる方法におけるよりも遙かに高く、完全コードの比率を低減させる。
(4)特異的ハイブリダイゼーションに必要とされる時間は、シグナルオリゴヌクレオチドまたはデコーディングオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションのためよりも遙かに長く(intronSeqFISH、merFISHおよびSeqFISHの方法の部分で認められるように)、これは、実験を完了するのに必要とされる時間を劇的に増大させる。
【0160】
これらの理由により、全ての他の方法は、単一の特異的ハイブリダイゼーションイベントを使用し、より低いコード複雑さおよび従って、より多くの検出ラウンドの必要性、およびより高いオリゴヌクレオチドデザインの複雑さを受け入れる。
【0161】
本開示による方法は、SeqFISHの利点(主として、コード化スキームに関する完全な自由)を、1個のみの特異的ハイブリダイゼーションイベントを用いる方法の全ての利点を組み合わせ、一方でこのような方法の主要な問題点を取り除く。
【0162】
20ラウンド後に生成された大きい数の符号語はまた、1、2、あるいはさらに多くのエラーの検出およびさらにエラーの訂正を可能にする、異なる符号語間のより大きいハミング距離(差異)を導入するために使用できることに留意されたい。従って、さらに極めて高いコード化能力が、なお実際に妥当である。
【0163】
前述のように、マルチデコーダーの使用は、コード化スキームのコード化能力を更に高める。異なるシグナルオリゴヌクレオチドおよび対応する翻訳エレメントと正確に同じ数の異なるシグナルタイプを有することに制限される代わりに、マルチデコーダーの使用は、使用できるシグナルタイプを:(Nx(N+1))/2に増大させる(Nは使われる異なるシグナルオリゴヌクレオチドの数である)。3個の異なるシグナルオリゴヌクレオチドを有する表1で使用されるコードの場合、これは、次の7つの異なるシグナルタイプを使用し得ることを意味する:(S1)、(S2)、(S3)、(S1/S2)、(S1/S3)、(S2/S3)、(S1/S2/S3)。コード化効率への効果は、表1bおよび図17で見ることができる。
【表2】
【0164】
3.選択的変性、オリゴヌクレオチド構築およびユニークな識別子の再使用は驚くほど効率的である。
本開示による方法の重要な因子は、デコーディングオリゴヌクレオチド結合、オリゴヌクレオチド結合、シグナル検出および選択的変性の連続的な工程である。コード化スキームを生成するために、この工程は、数回繰り返される必要がある(符号語の長さに応じて)。同じユニークな識別子がどの検出サイクルでも再使用されるので、第1回から最後の検出サイクルまでの全てのイベントは、相互に依存する。さらに、選択的変性は、2つの異なるイベントに依存する:デコーディングオリゴヌクレオチドは、最も高い効率でユニークな識別子から溶出される必要がある一方で、特異的プローブは、最高効率でハイブリダイズしたままでなければならない。
【0165】
このため、全コード化工程の効率Eは、次式により記述できる:
【数2】
e=総効率
sp=特異的プローブの結合
de=デコーディングオリゴヌクレオチドの結合
si=シグナルオリゴヌクレオチドの結合
de=デコーディングオリゴヌクレオチドの除去
sp=除去プロセス中の特異的プローブの安定性
n=検出サイクルの数
【0166】
この式に基づいて、各単一ステップの効率は、方法の与えられた総効率について推定できる。計算はこれにより、各好適は同じ効率を有するという仮定に基づく。総効率は、存在する総シグナルのうまくデコードできるシグナルの部分を記述する。
【0167】
方法の総効率は、式により記述される異なる因子の各単一ステップの効率に依存する。等しく分布された効率の仮定下で、総効率は、図7に示すように、単一ステップ効率に対してプロットできる。図から分かるように、5検出サイクルを有するコード化スキームについて実質的に妥当な総効率は、明確に90%を超える単一ステップ効率でのみ達成できる。例えば、50%の総効率を達成するために、97.8%の各単一のステップ内の平均効率が必要とされる。これらの計算はさらに、100%のシグナル検出および分析効率の仮定に基づく。種々の配列のオリゴヌクレオチドのブロードなDNA融解曲線に起因して、発明者らは実験に先立って、選択的変性はデコーディングオリゴヌクレオチドの変性に対しより低い効率で機能し得ること、および配列特異的プローブは十分に安定でないことを仮定した。この仮定とは対照的に、我々は、全てのステップの驚くべき有効性および選択的変性の間の配列特異的プローブの高い安定性を見出した。
【0168】
実験的に、発明者らは、5検出サイクルに基づき約30%~65%の総デコーディング効率を達成した。上で与えられた式による各単一ステップ(Bsp、Bde、Bsi、Ede、Ssp)の効率の計算は、約94.4%~98%の平均効率を示した。これらの高い効率は、非常に驚くべきものであり、この分野でよく訓練された人により容易に予測できるものではない。
【0169】
4.実験データ
背景
実験は、単一分子分解能による同時の10~50の異なるmRNA種の特異的検出を示す。それは、5回の検出サイクル、3つの異なる蛍光シグナルおよびシグナルギャップの無いコード化スキームならびに2のハミング距離(エラー検出)に基づく。実験は、本開示による方法の使用可能性および機能性を証明する。
【0170】
オリゴヌクレオチドおよびそれらの配列
実験で使用する全てのオリゴヌクレオチド配列(標的特異的プローブ、デコーディングオリゴヌクレオチド、シグナルオリゴヌクレオチド)を、補足資料の配列表に列挙する。シグナルオリゴヌクレオチドR:ST05*O_Atto594を、biomers.net GmbHに注文した。全てのほかのオリゴヌクレオチドを、Integrated DNA Technologiesに注文した。オリゴヌクレオチドを、水に溶解した。ストック溶液(100μM)を、-20℃で貯蔵した。
【0171】
実験の概要
50個の異なる標的特異的プローブセットを、5つの群に分割する。検出される転写物の名称および標的特異的プローブセットの名称は、同じである(www.ensemble.orgの転写変種名)。用語「新規の」は、修正されたプローブデザインを示す。プローブセットの全てのオリゴヌクレオチド配列は、配列表で見つけることができる。表は、プローブセットのユニークな識別子名称、ならびに異なる検出サイクルで使われるデコーディングオリゴヌクレオチド名称を列挙する。得られるコードは、5回の検出サイクルの間に生成された蛍光シグナルの配列を示す((G(reen)=Alexa Fluor488、O(range)=Atto594、Y(ellow)=Alexa Fluor546)。
【表3】
【0172】
実験の変形形態
実験のいくつかの変形形態を実施した。実験1~4は、主に、並行して検出される転写物の数が異なる。標的特異的プローブセットとして列挙される群は、表6を参照する。実験5~8は、デコードされたシグナルとの比較のための単一標的対照である、単一ラウンドである。
【表4】
【0173】
実験の詳細
A.細胞の播種及び培養
HeLa細胞を、細胞培地中でほぼ100%集密度に増殖させた。HeLa細胞培地は、10%FCS(Biochrom、カタログ番号:S0415)、1%ペニシリン-ストレプトマイシン(Sigma-Aldrich、カタログ番号:P0781)および1% MEM非必須アミノ酸溶液(Thermo Fisher、カタログ番号:11140035)を含むDMEM(Thermo Fisher、カタログ番号:31885)を含む。細胞培地の吸引後に、細胞を、PBS(1.424g/lのNaHPO・2HO、0.276g/lのNaHPO・2HO、8.19g/lの水中NaCl、pH7.4)を用いる洗浄ステップ後に、37℃で5分間トリプシンEDTA溶液(Sigma-Aldrich、カタログ番号:T3924)とのインキュベーションによりトリプシン処理した。細胞をその後、μ-Slide 8 Well ibidiTreat(Ibidi、カタログ番号:80826)のウェル上に播種した。ウェル当りの細胞の数を、細胞の接着後に約50%の集密度に達するように調節した。細胞を、ウェル当り200μlのHeLa細胞培地と一晩インキュベートした。
B.細胞の固定
細胞培地の吸収およびウェル当り200μlの37℃の暖かいPBSによる2回の洗浄ステップ後に、細胞を、-20℃で10分間200μlの予め冷却したメタノール(-20℃、Roth、カタログ番号:0082.1)を用いて固定した。
C.ズダンブラックを用いる対比染色
メタノールを吸引し、150μlの70%のエタノール中に希釈した0.2%のズダンブラック溶液を、各ウェルに加えた。ウェルを、室温にて暗所で5分間インキュベートした。インキュベーション後に、細胞を、ウェル当り400μlの70%エタノールで3回洗浄して、過剰のズダンブラック溶液を除去した。
D.分析物/標的特異的プローブのハイブリダイゼーション
ハイブリダイゼーションの前に、細胞を、200μlのsm-洗浄緩衝液で平衡化した。sm-洗浄緩衝液は、30mMのNaクエン酸塩、300mMのNaCl、pH7、10%のフォルムアミド(Roth:カタログ番号:P040.1)および5mMのリボヌクレオシド バナジル錯体(NEB、カタログ番号:S1402S)を含む。各標的特異的プローブセットについて、1μlの100μMのオリゴヌクレオチドストック溶液を、混合物に加えた。オリゴヌクレオチドストック溶液は、対応する標的特異的プローブセットの全ての標的特異的オリゴヌクレオチドの等モル量を含む。混合物の総体積を、水で100μlに調節し、100μlの2x濃縮ハイブリダイゼーション緩衝液と混合した。2x濃縮ハイブリダイゼーション緩衝液は、120mMのNaクエン酸塩、1200mMのNaCl、pH7、20%のフォルムアミドおよび20mMのリボヌクレオシド バナジル錯体を含む。得られた200μlのハイブリダイゼーション混合物を、対応するウェルに加え、37℃で2時間インキュベートした。その後、細胞を、37℃で10分間ウェル当り200μlの標的プローブ洗浄緩衝液を用いて3回洗浄した。標的プローブ洗浄緩衝液は、30mMのNaクエン酸塩、300mMのNaCl、pH7、20%のフォルムアミドおよび5mMのリボヌクレオシド バナジル錯体を含む。
E.デコーディングオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション
ハイブリダイゼーションの前に、細胞を、200μlのsm-洗浄緩衝液で平衡化した。各デコーディングオリゴヌクレオチドについて、1.5μlの5μMのストック溶液を混合物に加えた。混合物の総体積を、水で75μlに調節し、75μlの2x濃縮ハイブリダイゼーション緩衝液と混合した。得られた150μlのデコーディングオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション混合物を、対応するウェルに加え、室温で45分間インキュベートした。その後細胞を、室温で2分間ウェル当り200μlのsm-洗浄緩衝液を用いて3回洗浄した。
F.シグナルオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション
ハイブリダイゼーションの前に、細胞を、200μlのsm-洗浄緩衝液で平衡化した。シグナルオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション混合物は、実験1~4の全てのラウンドについて同じであり、1x濃縮ハイブリダイゼーション緩衝液中の0.3μMの各シグナルオリゴヌクレオチド(表A3を参照)を含んだ。各ラウンドで、150μlのこの溶液を、ウェル当り加え、室温で45分間インキュベートした。手順は、各シグナルオリゴヌクレオチドの最終濃度が0.15μMであったこと以外は、実験5~8と同じであった。その後細胞を、室温で2分間ウェル当り200μlのsm-洗浄緩衝液を用いて3回洗浄した。
G.蛍光および白色光画像化
細胞を、室温でウェル当り200μlの画像化緩衝液を用いて1回洗浄した。トロロックスを含まない実験では(表7の最終列参照)、画像化緩衝液は、30mMのNaクエン酸塩、300mMのNaCl、pH7および5mMのリボヌクレオシド バナジル錯体を含む。トロロックスを含む実験では、画像化緩衝液は、10%のVectaCell Trolox Antifade Reagent(Vector laboratories、カタログ番号:CB-1000)を追加で含み、10mMの最終トロロックス濃度を与える。
1.4の開口数、pco.edge4.2 CMOSカメラ(PCO AG)およびLED-光源(Zeiss,colibri 7)を有し63x油浸対物レンズ(Zeiss、apochromat)を備えたZeiss Axiovert 200M顕微鏡を、領域の画像化のために使用した。フィルターセットおよびLED波長を、使用されるフルオロフォアの異なる最適条件に調節した。画像当りの光照射時間は、Alexa Fluor546およびAtto594の場合は、1000ms、Alexa Fluor488の場合は、400msであった。
各実験では、3つの領域を、画像化のためにランダムに選択した。各領域について、32画像のz-スタックを、350nmのz-ステップサイズで検出した。さらに、1つの白色光画像を、領域から取得した。2回以上の検出サイクルを用いた実験では、第1の検出ラウンドの領域を、見直し、後に続く全てのラウンドで撮像した。
H.選択的変性
選択的変性のために、全てのウェルを、42℃で6分間200μlのsm-洗浄緩衝液とインキュベートした。この手順を、6回繰り返した。
ステップ(E)~(H)を、実験1~4で5回繰り返した。ステップ(H)を、5回目の検出サイクルでは省略した。
I.分析
カスタムImageJプラグインに基づいて、生データの半自動化分析を、実施して、特異的蛍光シグナルをバックグラウンドから区別した。3つ全ての蛍光チャネルの得られた3次元点群を、カスタムVBAスクリプトを用いてコンピューターで組み合わせた。5回の検出サイクルの得られた組み合わせた3次元点群を、VBAスクリプトに基づき相互に整列させた。得られた整列文字列は、検出された各ユニークなシグナルについて符号語を示した。うまくデコードされたシグナルを、カスタムVBAスクリプトおよびプラグインに基づき、実験の定量的および空間的分析のために使用した。
【0174】
結果
1.デコードされたシグナルの絶対数
全ての転写物について、うまくデコードされたシグナルの絶対数を、次の表4で各実験の各領域について列挙する。まとめると、正確なコードの合計は、対応する実験で検出できる転写物に割り付けられたデコードされたシグナルの総数を示し、一方で不正確なコードの合計は、対応する実験で検出可能でないデコードされたシグナルの総数を示す。シグナルの総数は、うまくデコードされたシグナル、並びにデコードに失敗したシグナルを含む。
【表5】
【0175】
結論
本開示による方法は、少ない量の誤って割り付けられる符号語を生成し、従って特異的と見なすことができる。うまくデコードできるシグナルの割合は極めて高く、領域当り極めて多い数のシグナルをさらに有し、および並行して極めて多い数の転写物が検出される。割り付け可能なシグナルの高い割合と、高い特異性は、この方法を実際に有用にする。
【0176】
異なる実験間の相対的転写物存在量の比較
両者の比較(AおよびB)について図8に示すように、実験間で検出された転写物のオーバーラップは、分析のために使用される。各バーは、3つの全ての実験領域の平均存在量である。これらの領域間の標準偏差もまた、示される。
【0177】
異なる実験間の相対的転写物存在量の相関
図9でわかるように、実験1由来の転写物の平均相対存在量は、実験3、4および2のオーバーラップ転写物の存在量と相関する。相関係数ならびに線形回帰の式が、それぞれの相関について示される。
【0178】
図8は、低いい標準偏差を示し、1つの実験の異なる領域間の相対存在量の低い変動を示す。異なる実験由来の転写物間の相対存在量の差異も、極めて小さい。これは、実験1、2、3で検出された、群1の転写物の比較(図8A)の場合である。それはまた、実験1、2、4で重なり合った、群2、3、4からの転写物の比較でも同様である。これらの存在量の極めて高い相関もまた、図9で見ることができる。実験1由来の転写物の存在量は、他の複数ラウンド実験の存在量と極めてよく相関する。相関係数は、0.88~0.91であり、一方で線形回帰の傾斜は、0.97~1.05である。
【0179】
結論
転写物の相対存在量は、1つの実験の異なる領域間で極めて良く相関するが、異なる実験間でも同様である。これは、図3と4の比較により明確に認めることができる。実験間の主要な差異は、異なる標的の数であり、従って検出されたシグナルの総数である。従って、検出された転写物の数、ならびにシグナルの数及び密度は、転写物の数を正確に定量化するこの方法の能力を妨げない。非常に良好な相関はさらに、極めて多い数のシグナルをさらに有し、方法の特異性および安定性を裏付ける。
【0180】
シグナルの細胞間分布の比較
図10では、画像スタックの最大投射が示される。A:実験7(SPOCK1を検出する、単一ラウンド、単一転写物実験)の領域1、B:SPOCK1に割り付けられた実験1、領域1由来の全ての選択シグナルの2D投影像、C:実験8(THRAP3を検出する単一ラウンド、単一転写物実験)の領域1、D:THRAP3に割り付けられた実験1、領域1由来の全ての選択シグナルの2D投影像。
【0181】
シグナルの細胞内の分布の比較
図11では、画像スタックの最大投射が示される。対応する領域の拡大された小領域が、示される。A:実験8(THRAP3を検出する、単一ラウンド、単一転写物実験)の領域1、B:THRAP3に割り付けられた実験1、領域1由来の選択シグナルの2D投影像、C:実験5(DDX5を検出する単一ラウンド、単一転写物実験)の領域1、D:DDX5に割り付けられた実験1、領域1由来の全ての選択シグナルの2D投影像。
【0182】
図10は、異なる転写物間の細胞間分布の大きな差異を示す。SPOCK1は、いくつかの細胞中で極めて豊富であると思われるが、他の細胞中ではほとんど存在しない(図10A)。THRAP3は、領域の全ての細胞にわたり、より均一な分布を示す(図10C)。これらの空間分布パターンはまた、実験1由来の対応する転写物に割り付けられた点群でも明確に観察できる(図10BおよびD)。
【0183】
図11は、異なる転写物間の細胞内分布の大きな差異を示す。THRAP3は、細胞の周辺部(細胞質)で主に観察され(図11A)、一方でDDX5は、細胞の中央部(核)でより高い存在量を示す(図11C)。これらの細胞内分布はまた、THRAP3およびDDX5に割り付けられた実験1の点群でも観察できる(図11BおよびD)。
【0184】
結論
定量化の信頼性に加えて、複数ラウンド実験の点群もまた、転写物の同じ細胞内および細胞間の分布パターンを示す。これは、1つの特徴的なmRNA種のみを検出した単一ラウンド実験由来のシグナルとの割り付けられた点群の直接比較により明確に証明される。
【0185】
異なる細胞周期依存性転写物の分布パターン
図12の全ての画像は、実験1の領域1を示す。各イメージでは、特定の転写物、A:CCNA2、B:CENPE、C:CCNE1、D:全ての転写物、に割り付けられた、点群が示される。図12は、3つの異なる細胞周期依存性タンパク質の転写物を示す。CENPE(図12B)はまた、セントロメアタンパク質Eとしても知られ、G2期中に堆積する。それは、紡錘体伸長および染色体移動に関与すると提案されている。それは、静止期中には存在しない。CCNA2(図12A)はまた、サイクリンA2としても知られる。それは、G2からM期への移行期中にCDK1と相互作用することにより、細胞周期進行を調節する。興味深いことに、両方のmRNA種の明らかな共局在がある。それらは主に、領域1の3個の中央細胞中に存在する。CCNE1(図12C)はまた、サイクリンE1としても知られる。このサイクリンは、CDK2と相互作用し、G1からS期への移行期に関与する。図12は明確に、この遺伝子の転写物は3つの中央細胞中には存在しないが、他の細胞にわたり極めて均等に分布されることを示す。それは従って、他の2つの転写物に対し反局在を示す。対応する点群のデータは、極めて多い数の点および非常に高い点密度を有する点群に由来する(図12Dはある印象を示す)。
【0186】
結論
図12に示す細胞周期依存性タンパク質の3つのデコード点群は、それらの対応する機能により説明できる分布パターンを示す。これらのデータは、我々の方法が、さらに細胞当り少ないシグナル数を有し(図12C)および極めて高いシグナル密度を有し(図12D)、生物学的に適切なデータを確実に生成することを強く示唆する。
【0187】
配列表
添付の配列表中の配列番号1~1247は、例示的な標的特異的オリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列を指す。列挙されるオリゴヌクレオチドは、標的特異的結合部位(5’末端)、スペーサー/リンカー配列(gtaacまたはtagac)、およびユニークな識別子配列からなり、これは、1つのプローブセットのすべてのオリゴヌクレオチドでも同じである。
【0188】
添付の配列表中の配列番号1248~1397は、例示的なデコーディングオリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列を指す。
【0189】
添付の配列表中の配列番号1398~1400は、例示的なシグナルオリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列を指す。各シグナルオリゴヌクレオチドについて、対応するフルオロフォアは2箇所に存在する。1つのフルオロフォアは、5’末端に共有結合され、1つのフルオロフォアは3’末端に共有結合される。配列番号1398は、その5’末端に「5Alex488N」、およびその3’末端に「3AlexF488N」を含む。配列番号1399は、その5’末端に「5Alex546」、およびその3’末端に「3AlexF546N」を含む。配列番号1400は、その5’末端およびその3’末端に「Atto594」を含む。

図1
図2
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図3-4】
図4
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図5-4】
図5-5】
図5-6】
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図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13-1】
図13-2】
図13-3】
図13-4】
図14
図15
図16-1】
図16-2】
図16-3】
図16-4】
図17
【配列表】
2024528255000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-04-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2024528255000001.app
【国際調査報告】