(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】特に可能な減速量の特定
(51)【国際特許分類】
B60T 17/22 20060101AFI20240719BHJP
B60T 8/171 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
B60T17/22
B60T8/171 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506940
(86)(22)【出願日】2022-08-02
(85)【翻訳文提出日】2024-02-05
(86)【国際出願番号】 EP2022071753
(87)【国際公開番号】W WO2023012189
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】102021208620.9
(32)【優先日】2021-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597007363
【氏名又は名称】クノル-ブレムゼ ジステーメ フューア ヌッツファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Knorr-Bremse Systeme fuer Nutzfahrzeuge GmbH
【住所又は居所原語表記】Moosacher Strasse 80, D-80809 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ガイス-エッサー
(72)【発明者】
【氏名】トビアス シェーフベルガー
【テーマコード(参考)】
3D049
3D246
【Fターム(参考)】
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3D246MA26
(57)【要約】
特に可能な減速量の特定。車両(10)のブレーキシステムの減速量を特定する方法が開示されており、ブレーキシステムには、少なくとも1つのブレーキ(1)および少なくとも1つの別のブレーキが含まれており、本方法は次のステップ、すなわち、-ブレーキシステムによって設定される操作量の操作量値を準備するステップであって、ここでは少なくとも1つのブレーキ(1)が、操作量の操作量値に応答して減速量を生成するように構成されているステップと、-ブレーキシステムにより、操作量に応答して車両(10)に作用する制動作用であって、ブレーキシステムに加えられた制動作用を特定するステップと、-特に車両パラメータを考慮し、操作量に基づいて生じる、少なくとも1つのブレーキ(1)の、操作量値に対応する減速量を特定するステップと、-特に車両パラメータを考慮し、少なくとも1つのブレーキ(1)の減速量と、車両(10)に対する制動作用とから少なくとも1つの別のブレーキの減速量を特定するステップとを有する。さらに、この方法を実施するための装置と、車両と、コンピュータプログラム製品と、記憶媒体とが開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(10)のブレーキシステムの減速量を特定する方法であって、前記ブレーキシステムには、少なくとも1つのブレーキ(1)および少なくとも1つの別のブレーキが含まれており、前記方法は次のステップ、すなわち、
前記ブレーキシステムによって設定される操作量の操作量値を準備するステップであって、ここでは少なくとも1つの前記ブレーキ(1)が、前記操作量の前記操作量値に応答して減速量を生成するように構成されているステップと、
前記ブレーキシステムにより、前記操作量に応答して前記車両(10)に作用する制動作用であって、前記ブレーキシステムに加えられた制動作用を特定するステップと、
特に車両パラメータを考慮し、前記操作量に基づいて生じる、少なくとも1つの前記ブレーキ(1)の、前記操作量値に対応する減速量を特定するステップと、
特に車両パラメータを考慮し、少なくとも1つの前記ブレーキの前記減速量と、前記車両(10)に対する制動作用とから少なくとも1つの前記別のブレーキの減速量を特定するステップとを有する、方法。
【請求項2】
次のステップ、すなわち、
入力された操作量値から少なくとも1つの前記ブレーキ(1)の減速量を特定するように構成されたブレーキシステムモデルを準備するステップと、
前記ブレーキシステムモデルに前記操作量値を入力するステップとを有し、ここで前記ブレーキシステムモデルにより、少なくとも1つの前記ブレーキ(1)の、前記操作量値に対応する前記減速量を特定する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つの前記別のブレーキの前に特定した前記減速量と、可能な操作量値を有する可能な操作量とに基づいて、少なくとも1つの前記別のブレーキの可能な減速量を特定する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
可能な前記操作量値には、最大可能操作量値が含まれている、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記ブレーキシステムの少なくとも1つの前記ブレーキおよび/または少なくとも1つの前記別のブレーキに摩擦ブレーキが含まれている、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの前記ブレーキ(1)および/または少なくとも1つの前記別のブレーキの前記減速量を特定する際に考慮される前記車両パラメータには、車両重量、タイヤと道路との間の動力伝達能力、区間勾配(12)、前記車両(10)のドライブトレイン(11)の作動状態および/または別のブレーキシステムの可用性が含まれている、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの前記別のブレーキは、第1の車両部分に関節式に連結されている別の車両部分に設けられており、好適には、前記第1の車両部分と前記別の車両部分との間で力測定を行う、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの前記別のブレーキは、トレーラおよび/または前記車両のリフトアクスルに設けられている、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記ブレーキシステムモデルには、別の入力量として、温度、特に少なくとも1つの前記ブレーキ(1)の温度、変位および/または操作角度(9)が含まれている、請求項2から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
制動介入の履歴に基づいて、前記ブレーキシステムモデルを更新する、請求項2から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記ブレーキシステムモデルは、少なくとも1つの前記ブレーキの特性マップおよび/または物理モデルを有する、請求項2から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか1項記載の方法を実施するための装置であって、前記装置は、
入力量を受け取るためのインタフェースと、
特に可能な、少なくとも1つのブレーキの、かつ/または少なくとも1つの別のブレーキの減速量を出力するためのインタフェースと、
請求項1から11までのいずれか1項記載の方法を実施するために構成されているデータ処理ユニットとを有する、装置。
【請求項13】
請求項1から11までのいずれか1項記載の方法を実施するための車両(10)であって、
前記車両(10)は、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法を実施するために構成されており、かつ/または請求項12記載の装置を有し、前記車両(10)は好適には、商用車、トラック、トレーラ、バスとして、かつ/もしくは牽引車両とトレーラとの組み合わせとして構成されており、かつ/または
前記車両(10)は好適には、純粋に電気式に、ハイブリッド式にまたは従来通りに駆動される車両として構成されている、車両(10)。
【請求項14】
プログラムコードを備えたコンピュータプログラム製品であって、前記プログラムコードがデータ処理ユニット、特に請求項12記載のデータ処理ユニット上で実行される場合に、前記データ処理ユニットに請求項1から11までのいずれか1項記載の方法を実施させるように構成されている、プログラムコードを備えたコンピュータプログラム製品。
【請求項15】
請求項14記載のコンピュータプログラム製品を有する記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキの特に可能な減速量を特定する方法と、この方法を実施するための装置と、車両と、コンピュータプログラム製品と、記憶媒体とに関する。
【0002】
電気駆動車両が発展したことと、これに関連して、電気駆動機械の回生作動を用い、車両に対する制動作用が可能になったこととにより、従来のパーマネントブレーキ装置、例えばリターダ等を省略するアプローチが存在する。対応する電気エネルギ蓄積器の蓄積能力が限られていることと、これに関連する回収能力、ひいては制動能力が限られていることとに起因して、一方では、法的な規則が制定されているかもしくは成立しており、これによると、運転者は、特に商用車分野において、自身の車両の制動能力について通知しなければならず、この際には特に、メカニカルブレーキについて対応がなされる。このメカニカルブレーキは遅くても、例えば、電気駆動機械の回生作動を介するパーマネントブレーキ機能が利用できない場合に使用される。したがって特に努力がなされているのは、車両の最大可能減速度について運転者に通知することである。しかしながら、またこのことは無関係に、すなわち、別のタイプの道路車両、例えば従来通りにまたはハイブリッドで駆動される車両等においても、一方では走行状況中に応答できるようにするために、また他方ではメンテナンス対策をより良好に、特に経済的に構成するために、制動性能を可能な限り正確に特定することができるようにしたいと要望が存在する。
【0003】
今日の車両によって提供されるのは、摩擦材の摩耗を大まかに求める可能性である。例えば、ディスクブレーキにおける全体的な摩耗、すなわち、2つのパッドおよびディスクの摩耗全体が監視される。このために、パッドの摩耗が対応して進行すると直ちに反応するポテンショメータが使用されるか、または連続的なポテンショメータであって、その信号により、完全の摩耗の前に摩耗の進行についての推定も可能になる連続的なポテンショメータが使用される。択一的には、擦り接触部も使用可能であり、これは摩耗によって露出させられると音を鳴らして知らせる。
【0004】
考えられるのは、車両における特定のブレーキに対し、特に可能な減速量、例えば制動トルクもしくは制動力または可能な車両減速度の特定を行うことができることであるが、この特定から除外される別のブレーキが存在することがある。例えば、これらのブレーキの対応するパラメータおよび/もしくは操作量が既知でないか、または特定できない場合、または対応するブレーキが、リフトアクスルの場合のように持続的に使用されない場合には、比較的繁雑な減速量の特定は回避される。これについての別のケースは、トレーラにおけるブレーキの配置構成であってよい。
【0005】
したがって、本発明の課題は、これらの別のブレーキも監視することができる可能性を提示することである。
【0006】
この課題は、独立請求項の対象によって解決される。
【0007】
有利な実施形態は、従属請求項の対象である。
【0008】
本願の趣旨に沿うと、可能な量、例えば、可能な操作量、可能な減速量または可能な車両減速度とは、値にしたがって、観察されるシステム、観察されるアクチュエータまたはこれに類するものによって達成可能な量のことであると理解される。すなわち、これが意味しているのは、目下利用可能な値の範囲、もしくは具体的には、対応する量が想定可能な、値の範囲から得られる特定の値のことである。
【0009】
本願の趣旨に沿うと、トレーラとは、トレーラの考えられるあらゆる形態であると理解される。特に、トレーラには連結車またはドローバートレーラが含まれていてよい。牽引車両は、それ自体の力からトレーラを牽引することができる車両であってよい。しかしながら、それ自体が牽引される車両であってもよく、この車両は同時に別のトレーラを牽引することができる。
【0010】
特に、トレーラは、別のトレーラに連結されるように構成されている台車またはトレーラであってよい。
【0011】
本発明によると、車両のブレーキシステムの減速力を特定する方法が構成され、このブレーキシステムには、少なくとも1つのブレーキおよび少なくとも1つの別のブレーキが含まれており、本発明は次のステップ、すなわち、
-ブレーキシステムによって設定される操作量の操作量値を準備するステップであって、ここでは少なくとも1つのブレーキは、操作量の操作量値に応答して減速量を生成するように構成されているステップと、
-ブレーキシステムに加えられた操作量に応答して、ブレーキシステムによって車両に作用する制動作用を特定するステップと、
-操作量に基づき、特に車両パラメータを考慮して生じる、少なくとも1つのブレーキの、操作量値に対応する減速量を特定するステップと、
-特に車両パラメータを考慮し、少なくとも1つのブレーキの減速量と、車両に対する制動作用とから、少なくとも1つの別のブレーキの減速量を特定するステップとを、有する。
【0012】
好適には、減速量とは、少なくとも1つのブレーキおよび/または少なくとも1つの別のブレーキにより、操作量に応答して生成される制動トルクまたは制動力であると理解されるべきである。
【0013】
したがって、本発明の方法には、操作量に基づき、少なくとも1つのブレーキの対応する減速量を特定することが含まれており、ここでこの操作量は、少なくとも1つのブレーキにおいてこの減速量を生じさせ、したがってこの減速量は、このブレーキによって生成される。この特定は好適には、少なくとも1つのブレーキについての知識に基づいており、すなわち、操作量に対する少なくとも1つのブレーキの応答が既知である。これには、例えば、少なくとも1つのブレーキの性能が摩耗に起因して既に低下してしまっている場合であっても、少なくとも1つのブレーキの目下の状態が既知であることが含まれていてよい。この知識は、少なくとも1つの別のブレーキの減速量の特定については欠落している。このことは、例えば、コスト上の理由から、必要なパラメータ、例えば、アクチュエータ圧力、アクチュエータ電圧またはアクチュエータ電流等を検出するための対応するセンサが省略されていることが原因と考えることができる。というのは、例えば、ブレーキは、全ての制動の際に使用されないためであるか、またはブレーキは、少なくとも1つのブレーキの減速量の特定が行われる車両部分に、例えば連結解除可能なトレーラ等に永続的に結合されていないためである。したがって、ここでは、実際の制動作用、すなわちブレーキの制動もしくは設定された減速量に対する最終的な車両応答を介して、少なくとも1つの別のブレーキの減速量が間接的に推定される。
【0014】
好適には制動作用は、車両減速度を用いてもしくはこれに基づいて、かつ/または車両速度に基づいて特定される。車両減速度は、例えば、対応する加速度センサによって検出可能である。車両速度が観察される場合、特に、ブレーキシステムによる車両速度の変化を観察することができるか、または車両速度を制御量として考慮に入れることができ、この場合には特に、例えば下降区間において、速度を一定に保つために必要な操作量値が観察される。したがって、制動作用は特に、車両減速度によって、かつ/または車両の速度経過によって表すことができる。特に、制動作用は、制動の前後の速度の観察、特にそこから生じる速度差の観察を用いて特定可能である。
【0015】
本方法は好適にはさらに、次のステップ、すなわち、
-入力された操作量値から少なくとも1つのブレーキの減速量を特定するように構成されたブレーキシステムモデルを準備するステップと、
-ブレーキシステムモデルに操作量値に入力するステップであって、ここでは操作量値に対応する、少なくとも1つのブレーキの減速量をブレーキシステムモデルによって特定するステップとを有する。
【0016】
この場合、少なくとも1つのブレーキの減速量を特定するために、ブレーキシステムモデルを使用する。利用されるブレーキシステムモデルは、対応する操作量値を有する実際の操作量に、車両の少なくとも1つのブレーキの挙動をマッピングするように構成されている。
【0017】
したがって、特定した操作量によって達成される減速量の特定が行われる。
【0018】
好適には別の方法ステップにおいて、少なくとも1つ別のブレーキの前に特定した減速量と、可能な操作量値を有する可能な操作量とに基づいて、少なくとも1つの別のブレーキの可能な減速量を特定する。少なくとも1つの別のブレーキの特定した減速量により、特定した操作量に対する、少なくとも1つの別のブレーキの挙動もしくは応答が既知である。ここから、技術的に可能な操作量と、ひいては技術的に可能な操作量値とが想定される場合、少なくとも1つの別のブレーキの可能な減速量が、特に外挿によって特定可能である。可能な操作量は、全てのブレーキにおいて、または例えば少なくとも1つのブレーキ等の一部のブレーキだけにおいて設定可能である。
【0019】
可能な操作量値には好適には、最大可能操作量値が含まれる。このことは、これによって最大可能減速量が特定可能であるという利点を有する。すなわち、対応する別のブレーキが、依然としてもしくは目下のところ、どのくらい強力であるかもしくは能力を有するかをそれぞれの時点に表すことができる。
【0020】
したがって、少なくとも1つのブレーキの可能な減速量は、動作中に設定可能な操作量を考慮することによって特定される。すなわち、例えば、ブレーキを作動させるためのアクチュエータに欠陥があるため、ブレーキシステムは、動作中に技術的に制限されており、これにより、操作量が制限されることに起因して、より小さな減速量に到達可能であることを考慮できるからである。さらに、ブレーキシステムモデルにより、可能な操作量によってどの減速量を設定できるか、すなわちどの減速量に到達可能であるかを考慮することができる。したがって、ブレーキシステムモデルにより、ブレーキの状態の悪化が考慮される場合、本発明の方法により、可能な、すなわち到達可能な減速量を特定することができる。この場合、少なくとも1つのブレーキのこの可能な減速量は、少なくとも1つの別のブレーキの可能な減速量を特定するためのベースとして使用される。
【0021】
可能な操作量値には好適には、押圧力、作動力、アクチュエータ力、アクチュエータ圧力、アクチュエータ電流および/またはアクチュエータ電圧の値が含まれている。押圧力は一般に、対応する対応部材への摩擦要素の押圧の強さを表すことができる。作動力は、ブレーキディスクに対するブレーキキャリパのブレーキ要素の作動の強さを表すことができる。アクチュエータ力は、アクチュエータの力を表すことができ、このアクチュエータは、ブレーキシステムにこのアクチュエータ力を生じさせるように構成されている。このようなアクチュエータは好適には、流体式に、すなわち特に空気圧式にもしくは液圧式に、または電気機械式に作動される。
【0022】
したがって、アクチュエータ圧力、すなわち流体圧力、またはアクチュエータ電流またはアクチュエータ電圧も操作量として見なすことができる。
【0023】
ブレーキシステムまたは少なくとも1つのブレーキおよび/もしくは少なくとも1つの別のブレーキには好適には、流体式に、特に空気圧式にもしくは液圧式に、かつ/または電気機械式に作動されるブレーキが含まれている。
【0024】
好適には、ブレーキシステムの少なくとも1つのブレーキおよび/または少なくとも1つの別のブレーキに摩擦ブレーキが含まれている。摩擦ブレーキは特に、ドラムブレーキまたはディスクブレーキであってよい。このブレーキの減速量を特定することにより、例えば、ブレーキによって生成される制動トルクが表される。
【0025】
好適には、特に少なくとも1つのブレーキおよび/または少なくとも1つの別のブレーキの、減速量を特定する際に考慮される車両パラメータには、車両重量、タイヤと道路との間の動力伝達能力、区間勾配、車両のドライブトレインの作動状態および/または別のブレーキシステムの可用性が含まれている。
【0026】
一般に、車両重量、タイヤと道路との間の動力伝達能力、区間勾配、車両のドライブトレインの作動状態、および/または別のブレーキシステムの可用性は、本方法による別の量を特定するために使用可能である。
【0027】
車両重量には、例えば、車両の無積載重量、実際積載量、実際重量および/または最大許容重量が含まれていてよい。例えば、重量、例えば実際重量等は、車両自体により、例えば、撓み状態においてばね変位を特定することによって、または相応の力センサによって特定することができる。しかしながら、付加的または択一的には、重量の考慮は、対応する重量の推定または想定によって行うこともできる。例えば、これは、牽引車両にトレーラが連結されており、トレーラの重量が推定または想定されてはいるが、測定によって特定できない場合であり得る。さらに、重量が入力によって考慮されるように構成可能である。例えば、車両積載量の既知の重量は、本方法に対する入力量として人間が入力してよい。車両重量は、特に、基準重量、例えば無積載重量での車両の動作と比べて、車両を加速させるため、または上り坂で移動させるために必要な付加的な駆動出力からも特定可能である。また、車両重量を推定するために、制動出力、特に回生制動出力も使用可能である。この際には、制動出力は好適には、好ましくは下降区間を走行する際に検出される。択一的または付加的に車両の重量は、別の車両システム、例えば、ばね弾性システム、安定化システムまたは制動システム(例えばEBS、ABS、ESP)からも得ることができる。
【0028】
タイヤと道路との間の動力伝達能力は主に、タイヤと道路との間の摩擦係数によって特徴付けられる。これは、例えば公知の方法を用いて推定することができ、または一定値として想定可能である。
【0029】
区間勾配は、例えば、デジタルマップ素材から得るかまたは測定によって特定することができる。この区間勾配は、例えば勾配値または勾配角度を用いて考慮可能である。測定には、例えば車両の傾斜検出および/または車両の加速度センサが使用可能である。この場合、上りの際、すなわち上り走行する際にはより小さな限界値も許容され得るということを考慮すべきである。というのは、この場合、比較的小さく特定される可能な減速量にもかかわらず、下り勾配力により、制動過程もしくは停車過程がサポートされるからである。これとは逆に、特定される可能な減速量が同じ場合、下りでは、比較的大きな限界値が使用可能である。この場合、下り勾配力は、制動過程もしくは停車過程に抗することになり、これにより、車両のブレーキシステムは、下り勾配力をも補償しなければならない。
【0030】
ドライブトレインの作動状態とは、例えば、ドライブトレインが作動される伝達比のことと理解することができる。従来式にまたはハイブリッド式に駆動される車両では、これは、内燃機関が、惰性モードにおいて車両に制動作用を及ぼす伝達比であってよい。電気駆動車両では、内燃機関の代わりに、回生作用する電気駆動機械が、伝達比を介して車両に制動作用を及ぼすことができる。ハイブリッド式に駆動される車両では、内燃機関も電気駆動機械も、同じ伝達比または異なる伝達比を介して制動作用を及ぼすことができる。さらに作動状態には、電気エネルギ蓄積器の目下の蓄積能力が含まれていてよい。例えば、電気駆動機械による制動作用が回生によって生成される場合、この際に発生するエネルギは、対応するエネルギ蓄積器の目下の蓄積能力が十分に利用可能である場合にのみ、そこに蓄積可能である。これが実現できない場合、発生するエネルギを他の仕方で消費することができないときには、回生ブレーキをもはや利用することができない。この場合、限界値を対応して下げなければならない。
【0031】
最後に、別のブレーキシステムの利用可能性とは、損傷、摩損であり、また回生ブレーキまたはパーマネントブレーキが上述したように利用できることであると理解することができる。
【0032】
少なくとも1つの別のブレーキは好適には、第1の車両部分に関節式に連結されている別の車両部分に設けられている。別の車両部分には、第1の車両部分に連結されているトレーラまたは連結車が含まれていてよい。第1の車両部分には、牽引車両および/または別のトレーラが含まれていてよい。しかしながら、2つの車両部分が、この構成に対応してトレーラおよび牽引車両に連結されていない関節式に連結された車両を形成するように構成されていてもよい。これには、例えば、前方の部分(第1の車両部分)と後方の部分(別の車両部分)とが相互に関節式に連結されているバスが含まれる。
【0033】
好適には、第1の車両部分と別の車両部分との間で力測定、特に連結力測定を行う。これは、例えば、連結箇所における検出手段を用いて、特に力センサを用いて行うことができ、この力センサにより、2つの車両部分間の推進力および引張力が検出される。次いで、力測定からの情報は、別のブレーキの実際の減速量を推定するために使用可能である。別の車両部分が、走行方向において第1の車両部分の後方に配置されており、かつ制動時に、例えば連結箇所において推進力が測定されると、別の車両部分により、第1の車両部分が押される。この推進力が、例えばあらかじめ定めた限界値よりも大きいか、もしくはこの推進力が予想される挙動に対応しない場合には、別のブレーキが、実際に設定された操作量に真に対応する減速量に到達していないと推定することができる。制動中に連結箇所において引張力が測定される場合、別の車両部分は、第1の車両部分よりも強く減速している。可能な減速量が特定されるブレーキが損傷されていないことが、これまでの考察から推定できる場合、このことは、少なくとも1つの別のブレーキにより、過度に大きな減速量が生成されていることを表している。しかしながら、この情報は、可能な減速量が特定されるブレーキが機能しない状態にあり、これによってこれらのブレーキがこの減速量に到達しないことを推定するためにも利用可能である。
【0034】
少なくとも1つの別のブレーキは好適には、トレーラおよび/または車両のリフトアクスルに設けられている。
【0035】
一般に、本方法を実施する際には制動力の分配も考慮可能である。例えば、特定のブレーキ、例えば車両の前方のブレーキが、より大きな操作量値を有する操作量を受けることが既知である場合には、ブレーキシステムモデルにより、それらの負荷を考慮することができ、かつ/またはこれが可能でない場合には、車両減速度もしくは制動作用および既知の減速量の知識により、間接的な負荷を特定することができる。
【0036】
好適にはブレーキシステムモデルには別の入力量として、温度、特にブレーキの温度、変位および/または操作角度が含まれている。したがって、温度、特に、少なくとも1つのブレーキの摩擦要素の、例えば摩擦材および/またはブレーキディスク等の温度に依存して、ブレーキシステムモデルにより、少なくとも1つのブレーキの減速量を特定することができる。またブレーキシステムモデルによって変位および/または操作角度を考慮することにより、減速量の特定を向上させることができ、かつ/または少なくとも1つのブレーキの摩耗を表すことができる。
【0037】
摩耗を伴うブレーキは、並進運動によって、かつ/または回転運動によって作用する機構、特に伝達機構および/またはアクチュエータによって作動される。摩耗が増大すると、これにより、より大きな変位および/または操作角度が生じる。これらは検出可能であり、これによって摩耗を表すことができる。変位および/または操作角度に対する摩耗の影響を少なくとも部分的に均等化するように構成されている調整装置を機構またはアクチュエータが有する場合、この調整を検出することにより、したがって特に、変位および/または操作角度が調整された値により、摩耗を特定することも考えられる。また変位および/または操作角度の考慮に含めることできるのは、摩耗が進行して、ストッパに接触し、かつ/または変位および/または操作角度が最大許容値を取る場合が考慮されることである。
【0038】
有利には、本方法は、特定した可能な減速量と限界値と比較するステップを有する。この限界値は、例えば、一定または可変に構成可能である。少なくとも1つのブレーキおよび/または少なくとも1つの別のブレーキの可能な減速量が限界値に到達していないことが確認されると、ここからは、少なくとも1つのブレーキおよび/または少なくとも1つの別のブレーキの状態、特に摩耗状態がもはや最適でない、ということが推定されるはずである。例えば、この場合、ブレーキおよび/または少なくとも1つの別のブレーキのメンテナンスを行うことが可能である。最大可能な操作量を有する最大減速量が特定され、ここでこの最大減速量が対応する限界値に到達しない場合、このことは、安全についてクリティカルな問題であり、これには場合によっては走行中の対抗策も必要となる。例えば、車両の停止が強行されることがある。
【0039】
択一的または付加的には、本方法は、特定した可能な減速量から可能な車両減速度を特定するステップを有する。さらに、この可能な車両減速度と、対応する限界値とを比較対照することができる。この限界値は例えば、一定にまたは可変に構成可能である。この際にも上記の考察が同様に有効である。特に、最大可能車両減速度が限界値を下回ることが確認されると、安全性にクリティカルを問題があり、これには場合によっては走行中の対抗策も必要である。
【0040】
例えば、車両の停止が強行されることがある。
【0041】
可能な減速量および/または可能な車両減速度の評価結果に応じて、運転者に警報を出力することもできる。
【0042】
好適には、限界値および/または可能な車両減速度は、車両重量、タイヤと道路との間の動力伝達能力、区間勾配、車両のドライブトレインの動作状態、および/または別のブレーキシステムの可用性に依存して特定される。
【0043】
好適には、少なくとも1つのブレーキの制動介入の履歴に基づいて、ブレーキシステムモデルを更新する。ブレーキシステムモデルの精度を向上させるために、少なくとも1つのブレーキの既に行われた制動介入、すなわち、実際に設定された操作量についての値と、ここから結果的に得られる制動作用を使用し、これにより、ブレーキシステムモデルが更新されるように構成可能である。特に、これは、更新が可能な限りに少なくとも1つのブレーキの目下の状態に基づくようにするための比較的新しい制動介入である。しかしながら付加的または択一的には、特に、少なくとも1つのブレーキの最大可能減速量を特定するためにブレーキシステムモデルが利用される場合、特定の最小操作量値を有する制動だけが考慮されるように構成可能である。好適には、ブレーキシステムモデルは、周期的に更新されるか、または永続的にも更新されるように構成される。択一的または付加的に、予定外の更新が実施されるように構成される。これは、例えば、運転者によって強行可能であるか、または車両における変更により、例えば、積荷の変更の際、または例えば、車両部分が交換される、連結されるもしくは連結解除されることによる車両コンフィギュレーションの変更等の際にトリガ可能である。
【0044】
ブレーキシステムモデルは好適には、少なくとも1つのブレーキの特性マップおよび/または物理モデルを有する。特に、ブレーキシステムモデルが、比例係数で、例えば、制御量を減速量に比例変換できるようにするブレーキ特性値で動作するように構成可能である。この比例係数は、一定値として作成可能であり、特性マップに格納可能であり、または物理モデルを用いて計算可能である。比例係数は特に、かなり上の方で説明したような次の入力量、すなわち、
-温度、特にブレーキ温度、
-変位および/または
-操作角度に依存して構成可能である。
【0045】
したがって好適には、少なくとも1つのブレーキの減速量の計算は、次の関係式、すなわち、
減速量=比例係数×操作量
にしたがって得られる。
【0046】
この比例係数には、別のパラメータ、例えば、操作量と減速量との間の伝達比または効率等が含まれていてよい。少なくとも1つのブレーキをディスクブレーキとして形成する具体的なケースでは、平均摩擦半径が考慮されてもよいか、または既に伝達比に含まれていてよい。
【0047】
本発明の別の態様によると、上で説明した本方法を実施するための装置が構成され、本装置は、
-入力量を受け取るためのインタフェースと、
-特に可能な、少なくとも1つのブレーキの、かつ/または少なくとも1つの別のブレーキの減速量を出力するためのインタフェースと、
-上で説明した本方法を実施するように構成されているデータ処理ユニットとを有する。
【0048】
このような装置は、例えば、ブレーキ制御装置として構成されていてよいか、またはブレーキ制御装置の機能の一部であってよい。しかしながら、この装置が、独立した上位の、または別の装置に組み込まれた、制動監視のための機能ユニットであるように構成されていてもよい。
【0049】
データ処理ユニットには好適には、データ処理のための電子手段が含まれている。
【0050】
本発明のさらに別の態様によると、上で説明した本方法を実施するための車両が構成され、本車両は、上で説明した本方法を実施するように構成されており、かつ/または前に説明した装置を有し、本車両は好適には、商用車、トラック、トレーラ、バスとして、かつ/もしくは牽引車両とトレーラとの組み合わせとして構成されており、かつ/または本車両は好適には、純粋に電気式に、ハイブリッド式にまたは従来通りに駆動される車両として構成されている。
【0051】
本発明のさらに別の態様によると、プログラムコードを備えたコンピュータプログラム製品であって、プログラムコードがデータ処理ユニット、特に、前述したデータ処理ユニット上で実行される場合に、データ処理ユニットに、上で説明した本方法を実施させるように構成されているプログラムコードを備えたコンピュータプログラム製品が構成される。したがって、有利には、データ処理ユニットを備えた既存の装置および/または車両が、対応して機能できるようにすることが可能であり、これにより、この場合にこれらは、上で説明した本方法を実施することができる。
【0052】
本発明のさらに別の態様によると、上で説明したコンピュータプログラム製品を有する記憶媒体が構成される。このようにして、例えばデータ処理ユニットを備えた装置または車両を対応して機能できるようにするために、コンピュータプログラム製品を簡単に転送することができる。対応する記憶媒体には、例えば、CD-ROM、メモリスティック、メモリカードが、またはコンピュータプログラム製品をダウンロードすることができるクラウドメモリも含まれている。
【0053】
本方法の説明において上で使用された全ての特徴的構成は、別の対象の装置、車両、コンピュータプログラム製品および記憶媒体にも同様に転用可能である。本方法の説明において、これらの対象の特徴的構成に直接に言及されている場合、これは、対応する対象の選択的な特徴的構成と理解されるべきである。
【0054】
次に、添付の図面を利用し、特定の実施例に基づいて本発明を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】ブレーキの基本的な構造およびその作動を示す図である。
【
図2】制動過程に対する影響パラメータを示す図である。
【0056】
図1には、ブレーキの基本的な構造およびその作動が示されている。
【0057】
全てのコンポーネントの正確な図示はここでは省略されている。
図1の図には単に1つの機能基本方式が示されている。
【0058】
ブレーキ1は、この図ではブレーキパッド2と、軸Aの周りに回転可能なブレーキディスク3とを有する摩擦ブレーキとして構成されている。ブレーキパッド2は、ブレーキディスク3を両側で取り囲むブレーキキャリパ4に設けられている。ブレーキパッド2およびブレーキディスク3は摩擦要素として機能し、これらの摩擦要素は、減速量を生成するために、互いに摩擦接触させることができる。
【0059】
ブレーキ1を作動させるために、アクチュエータ5が設けられている。このアクチュエータ5は、図において並進運動して左方に移動可能な操作要素6を有する。
【0060】
アクチュエータ5とブレーキ1との間には、図平面内で旋回可能に構成された操作レバー8を有する伝達機構7が設けられている。伝達機構7は一方では、アクチュエータ5に結合されているため、操作要素6の移動が伝達機構7に導入され、これによって操作レバー8が反時計回りに旋回される。他方では、伝達機構7はブレーキ1と接触し、これにより、操作要素6の移動の結果として生じる移動もしくは力がブレーキ1に導入されて、ブレーキパッド2がブレーキディスク3に接触し、これによってブレーキ1の減速量が生成される。
【0061】
ディスクブレーキの場合、減速量は、作動力、すなわちブレーキパッド2がブレーキディスク3に押し付けられる力と、平均摩擦半径とから生じる制動トルクであってよい。
【0062】
伝達機構7によって伝達比が得られ、この伝達比は、アクチュエータ力の、もしくはアクチュエータ力から結果として生じる、操作要素6の移動の、作動力への伝達を表す。
【0063】
したがって、ブレーキ1により、操作量に応答して生成可能な、もしくは生成された減速量を特定するために、与えられたこれらの状況を考慮するブレーキシステムモデルを構成することができる。この際には特定の実施形態では、減速量への操作量の変換を表す比例係数が設けられている。例えば、図示した装置全体の、またはその一部の効率が既知である場合、可能な操作量をブレーキシステムモデルに入力することにより、可能な制動力が計算可能である。すなわち、
MB=c*×i×FZ×η×Rm
MB:減速量
c*:比例係数
i:伝達比
FZ:アクチュエータ力(操作量)
η:効率
Rm:平均摩擦半径
である。
【0064】
アクチュエータ5は、ここで一般に保持される。いくつかの実施形態では、アクチュエータ5は、流体によって作動される、特に空気圧式または液圧式に作動されるアクチュエータとして構成される。別の実施形態によると、アクチュエータ5は電気的に作動され、すなわち、このように作動されるブレーキ1は、電気機械式ブレーキシステムに分類される。流体によって作動される際には、アクチュエータ5は、ピストンを備えたシリンダを有することができ、これにより、圧力を用いて操作要素6を移動させることができる。電気的に作動させる際には、アクチュエータ5は、リニアモータまたは回転式の電動モータを有することができ、この場合、好ましくは、アクチュエータ5の回転運動は、相応の機構を用いて並進運動に変換され、これにより、操作要素6が移動される。
【0065】
別の実施形態によると、伝達機構7は省略可能である。したがって、アクチュエータ5もしくはその操作要素6が直接に、すなわち伝達されることなくブレーキ1に作用し、そこで摩擦要素2,3の互いの押し付け合い引き起こすことも可能である。
【0066】
ブレーキ1は最終的に、別の技術的または物理的な方式原理に基づいていてもよい。考えられるのは、例えば、ドラムブレーキ、または例えば磁気式軌道ブレーキのように、車両に対して静止している摩擦要素と接触する摩擦ブレーキである。
【0067】
上で説明したブレーキ1は、本出願の趣旨に沿うと、操作量に基づき、例えばブレーキシステムモデルによって減速量が決定され得る少なくとも1つのブレーキとして機能することができる。しかしながらブレーキ1はまた、本出願の趣旨に沿うと、少なくとも1つのブレーキの場合のように減速量が特定可能な少なくとも1つの別のブレーキとして機能することもでき、これによって、車両に対する制動作用を一緒に観察することにより、この減速量が間接的に推定されるはずである。
【0068】
図2には、車両の制動過程に対する影響パラメータが基本図で示されている。
【0069】
ここでは、勾配角度12を有する下降区間において移動する車両10が示されている。この勾配角度12は、例えば、傾斜測定またはデジタルマップ素材によって特定可能である。傾斜角度12の他に、例えば勾配データ等の別の適切な量も使用可能である。
【0070】
車両10は、ドライブトレイン11およびブレーキ1を有する。ブレーキ1は、
図1のブレーキに対応して構成可能である。この図では概略的にのみ表されているドライブトレイン11は、従来の、ハイブリッド式の、または電気式のドライブトレインであってよい。例えば、ドライブトレイン11は、それ以上取り込むことができない電気エネルギ蓄積器によって制動に影響を及ぼすため、それ以上は回生によって制動することはできない。
【0071】
さらに、下り勾配力13が示されている。これは、勾配角度12と、上で説明したように規定もしくは特定可能な、車両10の重量とに依存する。
【0072】
下り勾配の走行方向とは逆向きに車両減速度14が向き付けられている。これは、ブレーキ1の可能な減速量と、車両パラメータ、例えば車両重量等とがわかることによって特定可能である。
【0073】
この車両減速度14が、例えば法規によって定められた限界値と比較して小さすぎる場合には、適切な対抗策、例えば、警告、メンテナンスまたは走行動作の終了等を講じる必要がある。
【0074】
【0075】
車両10には、連結箇所22において互いに連結されている牽引車両20およびトレーラ21が含まれており、これによってトレーラ21は、牽引車両20によって走行方向19に牽引可能である。牽引車両20およびトレーラ21はそれぞれ、少なくとも1つのブレーキ(図示せず)を有する。牽引車両20は、別の車両部分、すなわちトレーラ21に関節式に連結されている第1の車両部分を形成する。この図に示した車両部分は、互いに取り外し可能に連結されている。しかしながら、この連結が取り外し不能に構成さされている、すなわち、2つの車両部分が牽引車両20およびトレーラ21として機能するのではなく、例えば関節式に車両、例えば連結バスを形成することも考えられる。
【0076】
連結箇所22は、例えば連結力検出手段を用いて、特に連結力センサを用いて、車両部分間の連結力23を求めるように構成されている。特に、ここでは車両部分の制動作用を表すことができる。
【0077】
連結力23により、制動過程中に後方の車両部分、この場合にはトレーラ21の推進を推定できることが確認される場合、2つの車両部分の比較において、前方の車両部分のより強い制動もしくはより強い制動作用を推定することができる。これに対し、連結箇所22において牽引が生じていることが確認される場合、このことは、後方の車両部分のより強い制動もしくはより強い制動作用を推定することができる。
【0078】
例えば、少なくとも1つのブレーキの減速量が、1つの車両部分においてのみ、すなわち牽引車両20またはトレーラ21においてのみ特定可能である場合、制動時における実際の制動作用を上で説明したように特定し、操作量が既知であるかもしくは操作量値が既知である場合には連結力23から、この車両部分の少なくとも1つのブレーキの減速量を推定することにより、ブレーキシステムモデルによって検出することができない、車両部分の少なくとも1つのブレーキの減速量を連結力23に基づいて推定することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 ブレーキ
2 ブレーキパッド
3 ブレーキディスク
4 ブレーキキャリパ
5 アクチュエータ
6 操作要素
7 伝達機構
8 操作レバー
9 操作角度
10 車両
11 ドライブトレイン
12 勾配角度
13 下り勾配力
14 車両減速度
19 走行方向
20 牽引車両
21 トレーラ
22 連結箇所
23 連結力
A 軸
【手続補正書】
【提出日】2024-02-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(10)のブレーキシステムの減速量を特定する方法であって、前記ブレーキシステムには、少なくとも1つのブレーキ(1)および少なくとも1つの別のブレーキが含まれており、前記方法は次のステップ、すなわち、
前記ブレーキシステムによって設定される操作量の操作量値を準備するステップであって、ここでは少なくとも1つの前記ブレーキ(1)が、前記操作量の前記操作量値に応答して減速量を生成するように構成されているステップと、
前記ブレーキシステムにより、前記操作量に応答して前記車両(10)に作用する制動作用であって、前記ブレーキシステムに加えられた制動作用を特定するステップと、
特に車両パラメータを考慮し、前記操作量に基づいて生じる、少なくとも1つの前記ブレーキ(1)の、前記操作量値に対応する減速量を特定するステップと、
特に車両パラメータを考慮し、少なくとも1つの前記ブレーキの前記減速量と、前記車両(10)に対する制動作用とから少なくとも1つの前記別のブレーキの減速量を特定するステップとを有する、方法。
【請求項2】
次のステップ、すなわち、
入力された操作量値から少なくとも1つの前記ブレーキ(1)の減速量を特定するように構成されたブレーキシステムモデルを準備するステップと、
前記ブレーキシステムモデルに前記操作量値を入力するステップとを有し、ここで前記ブレーキシステムモデルにより、少なくとも1つの前記ブレーキ(1)の、前記操作量値に対応する前記減速量を特定する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つの前記別のブレーキの前に特定した前記減速量と、可能な操作量値を有する可能な操作量とに基づいて、少なくとも1つの前記別のブレーキの可能な減速量を特定する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
可能な前記操作量値には、最大可能操作量値が含まれている、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記ブレーキシステムの少なくとも1つの前記ブレーキおよび/または少なくとも1つの前記別のブレーキに摩擦ブレーキが含まれている、請求項
1記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの前記ブレーキ(1)および/または少なくとも1つの前記別のブレーキの前記減速量を特定する際に考慮される前記車両パラメータには、車両重量、タイヤと道路との間の動力伝達能力、区間勾配(12)、前記車両(10)のドライブトレイン(11)の作動状態および/または別のブレーキシステムの可用性が含まれている、請求項
1記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの前記別のブレーキは、第1の車両部分に関節式に連結されている別の車両部分に設けられており、好適には、前記第1の車両部分と前記別の車両部分との間で力測定を行う、請求項
1記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの前記別のブレーキは、トレーラおよび/または前記車両のリフトアクスルに設けられている、請求項
1記載の方法。
【請求項9】
前記ブレーキシステムモデルには、別の入力量として、温度、特に少なくとも1つの前記ブレーキ(1)の温度、変位および/または操作角度(9)が含まれている、請求項
2記載の方法。
【請求項10】
制動介入の履歴に基づいて、前記ブレーキシステムモデルを更新する、請求項
2記載の方法。
【請求項11】
前記ブレーキシステムモデルは、少なくとも1つの前記ブレーキの特性マップおよび/または物理モデルを有する、請求項
2記載の方法。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか1項記載の方法を実施するための装置であって、前記装置は、
入力量を受け取るためのインタフェースと、
特に可能な、少なくとも1つのブレーキの、かつ/または少なくとも1つの別のブレーキの減速量を出力するためのインタフェースと、
請求項1から11までのいずれか1項記載の方法を実施するために構成されているデータ処理ユニットとを有する、装置。
【請求項13】
請求項1から11までのいずれか1項記載の方法を実施するための車両(10)であって、
前記車両(10)は、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法を実施するために構成されており、か
つ請求項12記載の装置を有し、前記車両(10)は好適には、商用車、トラック、トレーラ、バスとして、かつ/もしくは牽引車両とトレーラとの組み合わせとして構成されており、かつ/または
前記車両(10)は好適には、純粋に電気式に、ハイブリッド式にまたは従来通りに駆動される車両として構成されている、車両(10)。
【請求項14】
プログラムコードを備えたコンピュータプログラム製品であって、前記プログラムコードがデータ処理ユニッ
ト上で実行される場合に、前記データ処理ユニットに請求項1から11までのいずれか1項記載の方法を実施させるように構成されている、プログラムコードを備えたコンピュータプログラム製品。
【請求項15】
請求項14記載のコンピュータプログラム製品を有する記憶媒体。
【国際調査報告】