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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】電気化学装置及び電子装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20240719BHJP
   H01M 4/133 20100101ALI20240719BHJP
   H01G 11/42 20130101ALI20240719BHJP
   H01G 11/24 20130101ALI20240719BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/133
H01G11/42
H01G11/24
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506955
(86)(22)【出願日】2021-08-13
(85)【翻訳文提出日】2024-02-05
(86)【国際出願番号】 CN2021112520
(87)【国際公開番号】W WO2023015561
(87)【国際公開日】2023-02-16
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513054978
【氏名又は名称】寧徳新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Ningde Amperex Technology Limited
【住所又は居所原語表記】No.1 Xingang Road, Zhangwan Town, Jiaocheng District, Ningde City, Fujian Province, 352100, People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鄭強
(72)【発明者】
【氏名】張会斌
(72)【発明者】
【氏名】高潮
【テーマコード(参考)】
5E078
5H050
【Fターム(参考)】
5E078AB06
5E078BA13
5E078BA27
5E078BA44
5E078BA53
5E078BA59
5E078BA64
5E078BA65
5E078BA66
5E078CA06
5E078CA07
5E078DA03
5E078DA06
5H050AA02
5H050AA08
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050DA03
5H050EA08
5H050FA02
5H050FA13
5H050FA17
5H050HA06
5H050HA07
(57)【要約】
【課題】本発明は、優れた高レート充電特性、及び良好なサイクル特性を有する電気化学装置を提供する。
【解決手段】本発明の電気化学装置は、負極を含み、負極は、多孔質炭素材料層及び負極活物質層を含み、多孔質炭素材料層は、多孔質炭素材料粒子を含み、多孔質炭素材料粒子は、ミクロ細孔、メソ細孔、及びマクロ細孔のうちの少なくとも2種類の細孔を含み、且つ、少なくとも2種類の細孔が相互に繋がっており、ミクロ細孔の細孔径<2nm、2nm≦メソ細孔の細孔径≦50nm、50nm<マクロ細孔の細孔径≦500nmである。本発明の電気化学装置は、優れた高レート充電特性、及びサイクル特性を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極を含む電気化学装置であって、前記負極は、多孔質炭素材料層及び負極活物質層を含み、
前記多孔質炭素材料層は、多孔質炭素材料粒子を含み、前記多孔質炭素材料粒子は、ミクロ細孔、メソ細孔、及びマクロ細孔のうちの少なくとも2種類の細孔を含み、且つ、前記少なくとも2種類の細孔が相互に繋がっており、
前記ミクロ細孔の細孔径<2nm、2nm≦前記メソ細孔の細孔径≦50nm、50nm<前記マクロ細孔の細孔径≦500nmである、電気化学装置。
【請求項2】
V1/(V1+V2+V3)≦20%であり、V1 cm/gは、前記多孔質炭素材料粒子の前記ミクロ細孔の細孔容積であり、V2 cm/gは、前記多孔質炭素材料粒子の前記メソ細孔の細孔容積であり、V3 cm/gは、前記多孔質炭素材料粒子の前記マクロ細孔の細孔容積である、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項3】
V1/(V1+V2+V3)≦10%である、請求項2に記載の電気化学装置。
【請求項4】
前記負極活物質層は、負極活物質粒子を含み、前記負極活物質粒子は、前記ミクロ細孔、前記メソ細孔、及び前記マクロ細孔のうちの少なくとも2種類の細孔を含み、且つ、V1/(V1+V2+V3)<P1/(P1+P2+P3)を満たし、
V1 cm/gは、前記多孔質炭素材料粒子の前記ミクロ細孔の細孔容積であり、V2 cm/gは、前記多孔質炭素材料粒子の前記メソ細孔の細孔容積であり、V3 cm/gは、前記多孔質炭素材料粒子の前記マクロ細孔の細孔容積であり、
P1 cm/gは、前記負極活物質粒子の前記ミクロ細孔の細孔容積であり、P2 cm/gは、前記負極活物質粒子の前記メソ細孔の細孔容積であり、P3 cm/gは、前記負極活物質粒子の前記マクロ細孔の細孔容積である、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項5】
P1/(P1+P2+P3)>25%である、請求項4に記載の電気化学装置。
【請求項6】
前記負極は、
(a)前記多孔質炭素材料層の単位面積当たりの塗布質量は、前記負極活物質層の単位面積当たりの塗布質量よりも小さいこと、
(b)前記多孔質炭素材料層の厚さは、前記負極活物質層の厚さよりも小さいこと、
(c)前記多孔質炭素材料粒子は、活性炭、ハードカーボン、ソフトカーボン、炭素繊維、及びカーボンナノチューブのうちの少なくとも1種類を含むこと、及び
(d)前記負極活物質層は、負極活物質粒子を含み、前記負極活物質粒子は、ハードカーボン、及びグラファイトのうちの少なくとも1種類を含むこと、
のうちの少なくとも1つの条件を満たす、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項7】
前記負極は、負極集電体を更に含み、前記負極活物質層は、前記多孔質炭素材料層と前記負極集電体との間に位置する、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項8】
前記負極は、前記負極活物質層と前記負極集電体との間に位置する導電層を更に含む、請求項7に記載の電気化学装置。
【請求項9】
セパレータを更に含み、前記多孔質炭素材料層は、前記セパレータと前記負極活物質層との間に位置する、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項10】
前記多孔質炭素材料層は、前記セパレータと接触している、請求項9に記載の電気化学装置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の電気化学装置を含む、電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー貯蔵分野に関し、具体的には、電気化学装置及び電子装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、エネルギー密度が高く、サイクル寿命が長く、自己放電が小さく、メモリー効果がなく、及び環境に優しいなどの多くの利点があるため、既にスマートフォン、スマートブレスレット、デジタルカメラ、及びノートパソコンなどの消費者向け電子製品分野で広く応用されている。リチウムイオン電池は、主に、正極、負極、電解液、及びセパレータなどの部分から構成されている。ここで、負極材料の選択は、電池のエネルギー密度、急速充電特性に直接関係している。現在、負極材料には、金属リチウム、グラファイト、ソフトカーボン、ハードカーボン、及びシリコンスズなどの合金類が含まれている。グラファイトは、低くて安定したリチウム吸蔵電位(0.01V~0.2V)、安定したサイクル特性、安価で環境に優しいなどの総合的な優位性により、リチウムイオン電池の負極材料の主な市場を占めている。しかしながら、グラファイトは、理論比容量が低く(372mA・h/g)、同時に、異方性であるため、リチウムイオンの各方向からの吸蔵に不利であり、リチウムイオンの吸蔵速度を制限している。材料構造特性の制約を受け、グラファイト材料のグラム容量は、徐々に極値に近づき、レート特性又は急速充電特性も下流製品の電極アセンブリに対する益々高まっている性能要求を満たすことができなくなっている。
【発明の概要】
【0003】
従来の技術に存在する問題に対して、本発明は、優れた高レート充電特性、及び良好なサイクル特性を有する電気化学装置を提供する。
【0004】
本発明の第一態様は、負極を含み、当該負極が多孔質炭素材料層及び負極活物質層を含む電気化学装置を提供する。ここで、多孔質炭素材料層は、多孔質炭素材料粒子を含み、多孔質炭素材料粒子は、ミクロ細孔、メソ細孔及びマクロ細孔のうちの少なくとも2種類の細孔を含み、且つ、少なくとも2種類の細孔が相互に繋がっており、ミクロ細孔の細孔径<2nm、2nm≦メソ細孔の細孔径≦50nm、50nm<マクロ細孔の細孔径≦500nmである。
【0005】
本発明の多孔質炭素材料層における多孔質炭素材料粒子は、ミクロ細孔-メソ細孔、ミクロ細孔-メソ細孔-マクロ細孔、ミクロ細孔-マクロ細孔などの二段、又は二段以上の複合細孔構造を有する。異なるタイプの細孔の間は、少なくとも部分的に相互に貫通しており、それにより、リチウムイオンは、マクロ細孔、メソ細孔を介して拡散することができる。マクロ細孔及びメソ細孔の拡散通路が広いため、リチウムイオンがミクロ細孔に入る時の拡散抵抗を低下させ、更に高容量の活物質層の表面のリチウム析出問題を改善し、電気化学装置の高レート急速充電特性を効果的に向上させ、高容量と高エネルギー密度と急速充電特性との有益な結合を達成することができる。
【0006】
本発明のいくつかの実施形態によれば、多孔質炭素材料粒子は、ミクロ細孔及びメソ細孔を含み、ミクロ細孔とメソ細孔とが少なくとも部分的に相互に繋がっている。本発明のいくつかの実施形態によれば、多孔質炭素材料粒子は、ミクロ細孔及びマクロ細孔を含み、ミクロ細孔とマクロ細孔とが相互に繋がっている。本発明のいくつかの実施形態によれば、多孔質炭素材料粒子は、メソ細孔及びマクロ細孔を含み、メソ細孔とマクロ細孔とが相互に繋がっている。本発明のいくつかの実施形態によれば、多孔質炭素材料粒子は、ミクロ細孔、メソ細孔及びマクロ細孔を含み、ここで、ミクロ細孔とメソ細孔とマクロ細孔とが相互に繋がっており、即ち、ミクロ細孔とメソ細孔とが相互に繋がっており、ミクロ細孔とマクロ細孔とが相互に繋がっており、マクロ細孔とメソ細孔とが相互に繋がっている。
【0007】
本発明のいくつかの実施形態によれば、V1/(V1+V2+V3)≦20%を満たし、V1 cm/gは、多孔質炭素材料粒子のミクロ細孔の細孔容積であり、V2 cm/gは、多孔質炭素材料粒子のメソ細孔の細孔容積であり、V3 cm/gは、多孔質炭素材料粒子のマクロ細孔の細孔容積である。本発明において、V1/(V1+V2+V3)≦20%であると、ミクロ細孔部分のリチウム貯蔵部位の割合が低下し、ハードカーボンに比べ、多孔質炭素材料粒子には、明らかな低電圧プラットフォームがなく、大電流充電条件下でリチウムデンドライトが発生しにくい。本発明のいくつかの実施形態において、1%<V1/(V1+V2+V3)<20%である。本発明のいくつかの実施形態において、V1/(V1+V2+V3)<10%である。
【0008】
本発明のいくつかの実施形態によれば、負極活物質層は、負極活物質粒子を含み、当該負極活物質粒子は、ミクロ細孔、メソ細孔及びマクロ細孔のうちの少なくとも2種類の細孔を含み、且つ、V1/(V1+V2+V3)<P1/(P1+P2+P3)を満たし、ここで、ミクロ細孔の細孔径<2nm、2nm≦メソ細孔の細孔径≦50nm、50nm<マクロ細孔の細孔径≦500nmであり、V1 cm/gは、多孔質炭素材料粒子のミクロ細孔の細孔容積であり、V2 cm/gは、多孔質炭素材料粒子のメソ細孔の細孔容積であり、V3 cm/gは、多孔質炭素材料粒子のマクロ細孔の細孔容積であり、P1 cm/gは、負極活物質粒子のミクロ細孔の細孔容積であり、P2 cm/gは、負極活物質粒子のメソ細孔の細孔容積であり、P3 cm/gは、負極活物質粒子のマクロ細孔の細孔容積である。
【0009】
本発明において、多孔質炭素材料粒子のミクロ細孔の割合が負極活物質粒子のミクロ細孔の割合よりも小さいことは、多孔質炭素材料層から負極活物質層へのリチウムイオンの拡散に有利であり、これにより、負極極片表面のリチウム析出を改善する。多孔質炭素材料粒子のミクロ細孔の割合が高すぎると、負極活物質層へのリチウムイオンの拡散に不利であり、これにより、リチウム析出を招く。
【0010】
本発明のいくつかの実施形態によれば、P1/(P1+P2+P3)>25%である。負極活物質粒子のミクロ細孔の割合を制御することは、リチウム貯蔵容量と、イオン拡散速度及び急速充電能力とのバランスに有利である。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記負極は、
(a)前記多孔質炭素材料層の単位面積当たりの塗布質量は、前記負極活物質層の単位面積当たりの塗布質量よりも小さいこと、
(b)前記多孔質炭素材料層の厚さは、前記負極活物質層の厚さよりも小さいこと、
(c)前記多孔質炭素材料粒子は、活性炭、ハードカーボン、ソフトカーボン、炭素繊維、及びカーボンナノチューブのうちの少なくとも1種類を含むこと、及び
(d)前記負極活物質層は、負極活物質粒子を含み、前記負極活物質粒子は、ハードカーボン、及びグラファイトのうちの少なくとも1種類を含むこと、
のうちの少なくとも1つの条件を満たす。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態によれば、多孔質炭素材料層の単位面積当たりの塗布質量は、負極活物質層の単位面積当たりの塗布質量よりも小さい。圧縮密度は、電極アセンブリの体積エネルギー密度に影響を与える重要なパラメータの1つである。より高い体積エネルギー密度を満たすために、極片は、高い圧縮密度を有する必要がある。本発明において、多孔質炭素材料層の質量が負極活物質層の質量よりも小さいことは、複合層(多孔質炭素材料層及び負極活物質層)の全体的な圧縮密度の向上に有利であり、同時に電気化学装置の急速充電特性及びサイクル特性への影響を低減する。本発明のいくつかの実施形態において、多孔質炭素材料層は、多孔質炭素材料粒子を含み、負極活物質層は、ハードカーボンを含む。多孔質炭素材料層は、複数段の細孔構造を有し、且つ、各タイプの細孔の間に少なくとも部分的に貫通している多孔質炭素材料を採用し、リチウムイオンは、マクロ細孔及びメソ細孔を介して拡散することができる。マクロ細孔及びメソ細孔の拡散通路が広いため、リチウムイオンがミクロ細孔に入る時の拡散抵抗を低下させ、高レート急速充電特性に有利であり、極片表面のリチウム析出を遅らせる。そのため、多孔質炭素材料層は、拡散動態又は急速充電特性の点で、負極活物質ハードカーボン層よりも優れており、単層ハードカーボン負極の応用における急速充電のリチウム析出問題を大幅に改善し、高容量と高エネルギー密度と急速充電特性との有益な結合を達成している。また、極片表面のリチウム析出問題の改善は、急速充電特性を向上させるだけでなく、電極アセンブリの変形を抑制し、電気化学装置の外観及び安全性能を改善することにも有利である。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態によれば、当該負極は、負極集電体を更に含み、負極活物質層は、多孔質炭素材料層と負極集電体との間に位置する。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態によれば、当該負極は、負極活物質層と負極集電体との間に位置する導電層を更に含む。いくつかの実施例において、導電層は、導電材を含み、導電材は、導電性カーボンブラック、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ及びグラフェンのうちの少なくとも1種類を含む。負極活物質層と負極集電体との間に導電層を設けることにより、負極活物質層と負極集電体との間の接着力を向上させ、電気的接触を改善することができる。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本発明の電気化学装置は、セパレータを更に含み、多孔質炭素材料層は、セパレータと負極活物質層との間に位置する。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本発明の電気化学装置は、セパレータを更に含み、多孔質炭素材料層は、セパレータと接触している。
【0017】
本発明の第二態様は、第一態様の電気化学装置を含む電子装置を提供する。
【0018】
本発明は、負極に多孔質炭素材料層を設けることにより、多孔質炭素材料粒子の特殊な細孔構造を利用し、負極活物質層におけるリチウムイオンの拡散を効果的に促進し、高充電レートで高容量の負極活物質層の表面にリチウム析出が発生しやすいという問題を改善し、負極極片のリチウム析出を低減し、電気化学装置の高レート急速充電特性を効果的に向上させ、高容量と高エネルギー密度と急速充電特性の有益な結合を達成している。また、極片表面のリチウム析出問題の改善は、急速充電特性を向上させるだけでなく、電極アセンブリの変形を抑制し、電気化学装置の外観及び安全性能を改善することにも有利である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明のいくつかの実施形態に係る負極極片の構造の模式図であり、ここで、1は多孔質炭素材料層であり、2は活物質層であり、3は集電体である。
図2図2は、本発明のいくつかの実施形態に係る捲回式リチウムイオン電池の構造の模式図であり、ここで、4は正極であり、5はセパレータであり、6は負極であり、7は正極タブであり、8は負極タブである。
図3図3は、図2におけるA部分の拡大図であり、ここで、61は多孔質炭素材料層であり、62は負極活物質層であり、63は負極集電体である。
図4図4は、本発明の実施例1における負極のハードカーボン材料の充電曲線を示す。
図5図5は、本発明の実施例1における負極の多孔質炭素材料の充電曲線を示す。
図6図6は、本発明のいくつかの実施形態に係る多孔質炭素材料粒子の構造の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施例に対して詳細に説明する。本発明の実施例は、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0021】
本発明で用いられるように、「約」という用語は、小さな変化を説明及び例示するために用いられるものである。事柄又は状況と組み合わせて用いられる場合、前記用語は、その事柄又は状況が正確に発生した例、及びその事柄又は状況が極めて類似的に発生した例を指すことができる。例を挙げると、数値と組み合わせて用いられる場合、用語は、前記数値の±10%以下の変化範囲、例えば、±5%以下、±4%以下、±3%以下、±2%以下、±1%以下、±0.5%以下、±0.1%以下、又は±0.05%以下を指すことができる。なお、本明細書において、量、比率、及びその他の数値を範囲形式で呈する場合がある。このような範囲形式は、便宜及び簡潔を目的としており、柔軟に理解すべきであり、当該範囲形式は、範囲制限として明確に指定される数値を含むだけでなく、前記範囲に含まれるすべての各々の数値又はサブ範囲も含み、それは、各々の数値又はサブ範囲を明確に指定されることに相当する。
【0022】
「のうちの少なくとも1つ」や「のうちの少なくとも1種類」という用語によって接続された項のリストは、リストされた項の任意の組み合わせを意味することができる。例えば、項Aと項Bがリストされている場合、「AとBのうちの少なくとも1つ」や「AとBのうちの少なくとも1種類」という短句は、Aのみ、Bのみ、又はAとBを意味する。他の具体例において、項A、項B及び項Cがリストされている場合、「A、B及びCのうちの少なくとも1つ」や「A、B及びCのうちの少なくとも1種類」という短句は、Aのみ、Bのみ、又はCのみ、AとB(Cを除く)、AとC(Bを除く)、BとC(Aを除く)、又は、AとBとCのすべてを意味する。項Aは、単一の要素又は複数の要素を含んでいてもよい。項Bは、単一の要素又は複数の要素を含んでいてもよい。項Cは、単一の要素又は複数の要素を含んでいてもよい。
【0023】
明細書全体において、「実施例」、「実施例の一部」、「1つの実施例」、「別の一例」、「例」、「具体例」、又は「例の一部」による引用は、本発明の少なくとも1つの実施例又は例が、当該実施例又は例に記載した特定の特徴、構造、材料又は特性を含むことを意味する。したがって、明細書全体の各箇所に記載された、例えば、「いくつかの実施例において」、「実施例において」、「1つの実施例において」、「別の例において」、「1つの例において」、「特定の例において」、又は「例」は、必ずしも本発明における同じ実施例、又は例を引用するわけではない。また、本明細書における特定の特徴、構造、材料又は特性は、1つ又は複数の実施例又は例において、いかなる好適な方法で組み合わせることができる。
【0024】
本発明の第一態様は、負極を含み、当該負極が多孔質炭素材料層及び負極活物質層を含む電気化学装置を提供する。ここで、多孔質炭素材料層は、多孔質炭素材料粒子を含み、多孔質炭素材料粒子は、ミクロ細孔、メソ細孔及びマクロ細孔のうちの少なくとも2種類の細孔を含み、且つ、少なくとも2種類の細孔が相互に繋がっており、ミクロ細孔の細孔径<2nm、2nm≦メソ細孔の細孔径≦50nm、50nm<マクロ細孔の細孔径≦500nmである。
【0025】
本発明の多孔質炭素材料層における多孔質炭素材料粒子は、ミクロ細孔-メソ細孔、ミクロ細孔-メソ細孔-マクロ細孔、ミクロ細孔-マクロ細孔などの二段、又は二段以上の複合細孔構造を有する。異なるタイプの細孔の間は、少なくとも部分的に相互に貫通しており、それにより、リチウムイオンは、マクロ細孔及びメソ細孔を介して拡散することができる。マクロ細孔及びメソ細孔の拡散通路が広いため、リチウムイオンがミクロ細孔に入る時の拡散抵抗を低下させ、更に高容量の負極活物質層の表面のリチウム析出問題を改善し、電気化学装置の高レート急速充電特性を効果的に向上させ、高容量と高エネルギー密度と急速充電特性との有益な結合を達成することができる。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態によれば、多孔質炭素材料粒子は、ミクロ細孔及びメソ細孔を含み、ミクロ細孔とメソ細孔とが少なくとも部分的に相互に繋がっている。本発明のいくつかの実施形態によれば、多孔質炭素材料粒子は、ミクロ細孔及びマクロ細孔を含み、ミクロ細孔とマクロ細孔とが少なくとも部分的に相互に繋がっている。本発明のいくつかの実施形態によれば、多孔質炭素材料粒子は、メソ細孔及びマクロ細孔を含み、メソ細孔とマクロ細孔とが少なくとも部分的に相互に繋がっている。本発明のいくつかの実施形態によれば、多孔質炭素材料粒子は、ミクロ細孔、メソ細孔及びマクロ細孔を含み、ここで、ミクロ細孔とメソ細孔とマクロ細孔とが少なくとも部分的に相互に繋がっており、即ち、ミクロ細孔とメソ細孔とが少なくとも部分的に相互に繋がっており、ミクロ細孔とマクロ細孔とが少なくとも部分的に相互に繋がっており、マクロ細孔とメソ細孔とが少なくとも部分的に相互に繋がっている。
【0027】
本発明において、ミクロ細孔とミクロ細孔と、メソ細孔とメソ細孔と、及びマクロ細孔とマクロ細孔とも相互に貫通していてもよいと理解すべきである。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記少なくとも2種類の細孔の少なくとも50%が相互に繋がっており、例えば、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%が相互に繋がっている。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ミクロ細孔の細孔径D1<2nmである。本発明のいくつかの実施形態によれば、メソ細孔の細孔径D2は、2nm≦D2≦50nmを満たす。本発明のいくつかの実施形態によれば、マクロ細孔の細孔径D3は、50nm<D3≦500nmを満たす。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態によれば、V1/(V1+V2+V3)≦20%を満たし、V1 cm/gは、単一の多孔質炭素材料粒子のミクロ細孔の細孔容積であり、V2 cm/gは、単一の多孔質炭素材料粒子のメソ細孔の細孔容積であり、V3 cm/gは、単一の多孔質炭素材料粒子のマクロ細孔の細孔容積である。本発明のいくつかの実施形態によれば、V1/(V1+V2+V3)は、2%、4%、6%、8%、11%、13%、15%、17%、19%、又はこれらの値のいずれか2つからなる範囲である。
【0031】
本発明において、V1/(V1+V2+V3)≦20%であると、ミクロ細孔部分のリチウム貯蔵部位の割合が低下し、ハードカーボンに比べ、多孔質炭素材料粒子には、明らかな低電圧プラットフォームがなく、大電流充電条件下でリチウムデンドライトが発生しにくい。本発明のいくつかの実施形態において、1%<V1/(V1+V2+V3)<20%である。本発明のいくつかの実施形態において、V1/(V1+V2+V3)<10%である。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態によれば、負極活物質層は、負極活物質粒子を含み、当該負極活物質粒子は、ミクロ細孔、メソ細孔及びマクロ細孔のうちの少なくとも2種類の細孔を含み、且つ、V1/(V1+V2+V3)<P1/(P1+P2+P3)を満たし、ここで、ミクロ細孔の細孔径<2nm、2nm≦メソ細孔の細孔径≦50nm、50nm<マクロ細孔の細孔径≦500nmであり、V1 cm/gは、単一の多孔質炭素材料粒子のミクロ細孔の細孔容積であり、V2 cm/gは、単一の多孔質炭素材料粒子のメソ細孔の細孔容積であり、V3 cm/gは、単一の多孔質炭素材料粒子のマクロ細孔の細孔容積であり、P1 cm/gは、単一の負極活物質粒子のミクロ細孔の細孔容積であり、P2 cm/gは、単一の負極活物質粒子のメソ細孔の細孔容積であり、P3 cm/gは、単一の負極活物質粒子のマクロ細孔の細孔容積である。
【0033】
本発明において、多孔質炭素材料粒子のミクロ細孔の割合が負極活物質粒子のミクロ細孔の割合よりも小さいことは、多孔質炭素材料層から負極活物質層へのリチウムイオンの拡散に有利であり、これにより、極片表面のリチウム析出を改善する。多孔質炭素材料粒子のミクロ細孔の割合が高すぎると、負極活物質層へのリチウムイオンの拡散に不利であり、これにより、リチウム析出を招く。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態によれば、P1/(P1+P2+P3)>25%である。負極活物質粒子のミクロ細孔の割合が高すぎることは、リチウム貯蔵容量の向上に有利であるが、リチウムイオン拡散及び急速充電に不利である。本発明のいくつかの実施形態によれば、P1/(P1+P2+P3)は、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、35%、37%、39%、又はこれらの値のいずれか2つからなる範囲である。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態によれば、多孔質炭素材料層の単位面積当たりの塗布質量は、負極活物質層の単位面積当たりの塗布質量よりも小さい。本発明のいくつかの実施形態において、多孔質炭素材料層の厚さは、負極活物質層の厚さよりも小さい。圧縮密度は、電極アセンブリの体積エネルギー密度に影響を与える重要なパラメータの1つである。より高い体積エネルギー密度を満たすために、極片をより大きな圧縮密度に設定することができる。本発明において、多孔質炭素材料層の質量が負極活物質層の質量よりも小さいことは、複合層の全体的な圧縮密度の向上に有利であり、同時に電気化学装置の急速充電特性及びサイクル特性への影響を低減する。リチウム析出が主に極片表面で発生するため、表層の多孔質炭素材料層は、負極活物質層を薄層で被覆することができ、多孔質炭素材料層の塗布質量が負極活物質層の塗布質量よりも高い場合、複合層の全体的な圧縮密度を低下させる可能性がある。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態によれば、多孔質炭素材料粒子は、活性炭、ハードカーボン、ソフトカーボン、炭素繊維、及びカーボンナノチューブのうちの少なくとも1種類を含む。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態によれば、負極活物質層は、負極活物質粒子を含む。いくつかの実施例において、負極活物質粒子は、ハードカーボン及びグラファイトのうちの少なくとも1種類を含む。
【0038】
本発明において、負極活物質粒子は、リチウムイオンを吸蔵及び放出することができる材料を指す。本発明において、説明の便宜上、多孔質炭素材料層、多孔質炭素材料粒子、負極活物質層及び負極活物質粒子を定義するが、多孔質炭素材料粒子は、リチウムイオンを吸蔵及び放出する特性を有していてもよいことを理解すべきである。
【0039】
従来の単層グラファイト負極又は単層ハードカーボン負極では、通常、高レート充電条件下で、リチウム吸蔵を速やかに完了しにくいため、極片表面にリチウム析出が発生しやすい。グラファイトに比べ、ハードカーボンの可逆比容量は高く、一般的に500mAh/g~1000mAh/gである。ただし、ハードカーボン材料のリチウム貯蔵容量の半分以上は、Li/Li酸化還元電位に近く、グラファイト電圧プラットフォームよりもリチウム析出の電位に近い低電圧のプラットフォーム部分(0.1V-0V、vs.Li/Li)に由来するものである。そのため、大電流充電条件下では、ハードカーボン極片がグラファイト極片よりもリチウムデンドライトを析出しやすいことの原因となり、実際の応用では、ハードカーボンの高レート充電特性が制限されている。また、ハードカーボン負極極片表面に堆積したリチウムデンドライトは、電極アセンブリの局所的な変形、更には安全性の問題の発生を招く。本発明は、負極活物質層の表面に多孔質炭素材料層を積層して設けることにより、多孔質炭素材料粒子の特殊な細孔構造を利用し、リチウムイオンの拡散を促進し、単層ハードカーボン又はグラファイト負極の応用におけるリチウム析出問題を効果的に改善する。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態において、多孔質炭素材料層は、多孔質炭素材料粒子を含み、負極活物質層は、ハードカーボンを含む。多孔質炭素材料層は、複数段の細孔構造を有し、且つ、各タイプの細孔の間に少なくとも部分的に相互に貫通している多孔質炭素材料粒子を採用し、リチウムイオンは、マクロ細孔及びメソ細孔を介して拡散することができる。マクロ細孔及びメソ細孔の拡散通路が広いため、リチウムイオンがミクロ細孔に入る時の拡散抵抗を低下させ、高レート急速充電特性に有利であり、極片表面のリチウム析出を遅らせる。そのため、多孔質炭素材料粒子は、拡散動態又は急速充電特性の点で、負極活物質ハードカーボン層よりも顕著に優れており、単層ハードカーボン負極の応用における急速充電のリチウム析出という欠点を大幅に改善し、高容量と高エネルギー密度と急速充電特性との有益な結合を達成している。また、極片表面のリチウム析出問題の改善は、急速充電特性を向上させるだけでなく、電極アセンブリの変形を抑制し、電気化学装置の外観及び安全性能を改善することにも有利である。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態によれば、当該負極は、負極集電体を更に含み、負極活物質層は、多孔質炭素材料層と負極集電体との間に位置する。図1に示されるように、本発明のいくつかの実施例は、負極集電体、多孔質炭素材料層(第1層)、及び負極活物質層(第2層)を含む負極を提供する。図1において、第1層及び第2層が負極集電体の一方に設けられているように示されるが、これは、単なる例示であり、第1層及び第2層は、負極集電体の両方に設けられていてもよいことを理解すべきである。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態によれば、当該負極は、負極活物質層と負極集電体との間に位置する導電層を更に含む。いくつかの実施例において、導電層は、導電材を含み、導電材は、導電性カーボンブラック、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、及びグラフェンのうちの少なくとも1種類を含む。負極活物質層と負極集電体との間に導電層を設けることにより、負極活物質層と負極集電体との間の接着力を向上させ、電気的接触を改善することができる。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本発明の電気化学装置は、セパレータを更に含み、多孔質炭素材料層は、セパレータと負極活物質層との間に位置する。本発明のいくつかの実施形態によれば、本発明の電気化学装置は、セパレータを更に含み、多孔質炭素材料層は、セパレータと接触している。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態によれば、多孔質炭素材料層及び負極活物質層は、それぞれ独立して導電剤及び/又はバインダーを更に含む。いくつかの実施例において、導電剤は、導電性カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ、ケッチェンブラック、導電性グラファイト、及びグラフェンのうちの少なくとも1種類を含む。いくつかの実施例において、導電剤は、多孔質炭素材料層又は負極活物質層に占める質量分率が0.5%~10%である。いくつかの実施例において、バインダーは、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレンの共重合体、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、及びスチレンブタジエンゴムのうちの少なくとも1種類を含む。いくつかの実施例において、バインダーは、多孔質炭素材料層又は負極活物質層に占める質量分率が0.5%~10%である。
【0045】
本発明の負極は、本技術分野における公知の方法を採用して調製することができる。一般に、負極活物質粒子、並びに任意の導電剤(例えば、カーボンブラックなどの炭素材料、及び金属粒子など)、バインダー(例えば、SBR)、その他の任意の添加剤(例えば、PTCサーミスタ材料)などの材料を混合して溶媒(例えば、脱イオン水)に分散させ、攪拌して均一にした後、負極集電体上に均一に塗布し、乾燥させた後、負極活物質層を含む負極が得られ、その後、多孔質炭素材料粒子、並びに任意の導電剤(例えば、カーボンブラックなどの炭素材料、及び金属粒子など)、バインダー(例えば、SBR)、その他の任意の添加剤(例えば、PTCサーミスタ材料)などの材料を混合して溶媒(例えば、脱イオン水)に分散させ、攪拌して均一にした後、負極活物質層上に均一に塗布し、多孔質炭素材料層及び負極活物質層を含む負極が得られる。負極集電体としては、金属箔、又は多孔質金属板などの材料を用いることができる。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本発明の電気化学装置は、正極を更に含む。本発明の実施例の正極に用いられ得る材料粒子、組成、及びその製造方法は、先行技術で開示されているあらゆる技術を含む。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態によれば、正極は、正極集電体、及び当該正極集電体に位置する正極活物質層を含む。本発明のいくつかの実施形態によれば、正極活物質粒子は、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム(NCM)、ニッケルコバルトアルミン酸リチウム(NCA)、リン酸鉄リチウム(LiFePO)、及びマンガン酸リチウム(LiMn)のうちの少なくとも1種類を含むが、これらに限定されない。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態によれば、正極活物質層は、バインダーを更に含み、且つ、任意に導電材を含む。バインダーは、正極活物質粒子同士の結合を高め、且つ、正極活物質と正極集電体との結合を高める。いくつかの実施形態において、バインダーは、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、エチレンオキシ含有ポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、アクリル(エステル)化スチレンブタジエンゴム、エポキシ樹脂、又はナイロンなどを含む。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態によれば、導電材は、炭素による材料、金属による材料、導電性ポリマー、及びそれらの混合物を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施例において、炭素による材料は、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、カーボンナノチューブ、及びそれらの任意の組み合わせから選択される。いくつかの実施例において、金属による材料は、銅、ニッケル、アルミニウム、及び銀から選択される。いくつかの実施例において、導電性ポリマーは、ポリフェニレン誘導体である。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態によれば、正極集電体は、アルミニウムを含んでもよいが、これに限定されない。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本発明の電気化学装置は、電解液を更に含む。本発明の実施例に用いられ得る電解液は、先行技術における既知の電解液であってもよい。
【0052】
いくつかの実施例において、電解液は、有機溶媒、リチウム塩、及び添加剤を含む。本発明の電解液に含まれる有機溶媒は、先行技術における既知の任意の、電解液の溶媒として使用され得る有機溶媒であってもよい。本発明の電解液に使用される電解質は、特に制限はなく、先行技術における既知の任意の電解質であってもよい。本発明の電解液に含まれる添加剤は、先行技術における既知の任意の、電解液の添加剤として使用され得る添加剤であってもよい。
【0053】
いくつかの実施例において、有機溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)、プロピレンカーボネート、又はプロピオン酸エチルを含むが、これらに限定されない。
【0054】
いくつかの実施例において、リチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドLiN(CFSO(LiTFSI)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドLi(N(SOF))(LiFSI)、リチウムビス(オキサレート)ボレートLiB(C(LiBOB)、又はリチウムジフルオロ(オキサレート)ボレートLiBF(C)(LiDFOB)を含むが、これらに限定されない。
【0055】
いくつかの実施例において、電解液におけるリチウム塩の濃度は、約0.5mol/L~3mol/L、約0.5mol/L~2mol/L、又は約0.8mol/L~1.5mol/Lである。
【0056】
本発明の電気化学装置に使用されるセパレータの材料及び形状は、特に制限はなく、先行技術で開示されている任意の技術であってもよい。いくつかの実施例において、セパレータは、本発明の電解液に対して安定である材料からなるポリマー又は無機物などを含む。
【0057】
例えば、セパレータは、基材層及び表面処理層を含んでもよい。基材層は、多孔質構造を有する、不織布、膜、又は複合膜であり、基材層の材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、及びポリイミドからなる群より選ばれる少なくとも1種類である。具体的には、ポリプロピレン多孔質膜、ポリエチレン多孔質膜、ポリプロピレン不織布、ポリエチレン不織布、又はポリプロピレン-ポリエチレン-ポリプロピレン多孔質複合膜を選択して使用してもよい。
【0058】
基材層の少なくとも1つの表面に表面処理層が設けられており、表面処理層は、ポリマー層又は無機物層であってもよく、ポリマーと無機物とを混合してなる層であってもよい。
【0059】
無機物層は、無機粒子とバインダーとを含み、無機粒子は、アルミナ、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化チタン、二酸化ハフニウム、酸化スズ、酸化セリウム、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、炭化ケイ素、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、及び硫酸バリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種類である。バインダーは、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレンの共重合体、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコキシド、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン、及びポリヘキサフルオロプロピレンからなる群より選ばれる少なくとも1種類である。
【0060】
ポリマー層は、ポリマーを含み、ポリマーの材料は、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、アクリル酸エステルポリマー、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコキシド、ポリフッ化ビニリデン、ポリ(フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン)からなる群より選ばれる少なくとも1種類である。
【0061】
本発明の電気化学装置は、電気化学反応が発生する任意の装置を含み、その具体例は、すべての種類の一次電池、二次電池を含む。特に、当該電気化学装置は、リチウム金属二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池、又はリチウムイオンポリマー二次電池を含むリチウム二次電池である。
【0062】
本発明の第二態様は、第一態様の電気化学装置を含む電子装置を提供する。
【0063】
本発明の電子機器又は装置は、特に限定されない。いくつかの実施例において、本発明の電子機器は、ノートパソコン、ペン入力型コンピューター、モバイルコンピューター、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯型ファクシミリ、携帯型コピー機、携帯型プリンター、ステレオヘッドセット、ビデオレコーダー、液晶テレビ、ポータブルクリーナー、携帯型CDプレーヤー、ミニCD、トランシーバー、電子ノートブック、計算機、メモリーカード、ポータブルテープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、自動車、オートバイ、補助自転車、自転車、照明器具、おもちゃ、ゲーム機、時計、電動工具、閃光灯、カメラ、大型家庭用ストレージバッテリー、及びリチウムイオンコンデンサーなどを含むが、これらに限定されない。
【0064】
以下では、実施例を参照して、本発明を更に説明する。これらの実施例は、本発明の範囲を制限するためのものではなく、本発明を説明するためにのみ使用されるものであることを理解すべきである。
【0065】
測定方法
1、材料の細孔径分布及び細孔容積の測定
(1)サンプルの前処理
多孔質炭素材料粒子:
a.完全に放電したリチウムイオン電池を取り、それぞれ解体して負極極片を取り出し、洗浄して乾燥させ、極片の表層(約10μm厚)の粉末を削り落とし、材料表面に付着したバインダーを除去するように、削り落とした粉末をアルゴンガス保護条件下で管状炉において400℃で4h熱処理した後、得られた材料サンプルを150℃で12hベークし;又は
b.多孔質炭素材料サンプルを150℃で12hベークした。
【0066】
負極活物質粒子:
a.完全に放電したリチウムイオン電池を取り、それぞれ解体して負極極片を取り出し、洗浄して乾燥させ、極片の集電体に近い側(約10μm厚)の粉末を削り落とし、材料表面に付着したバインダーを除去するように、削り落とした粉末をアルゴンガス保護条件下で管状炉において400℃で4h熱処理した後、得られた材料サンプルを150℃で12hベークし;又は
b.活物質サンプルを150℃で12hベークした。
【0067】
(2)測定方法
(1)の処理後の材料サンプルをガス吸着分析装置に置き、-196℃で測定を行い、等温吸脱着曲線が得られた。吸着相対圧が0.99である時のNガスの体積は、全細孔容積に相当した。
【0068】
ミクロ細孔の範囲内での異なる細孔径に対応する体積分布は、Horvath-Kawazoe(HK)法を利用して等温吸着曲線を分析することによって得られた。
【0069】
スリット型微細孔HKの一般式は、次のとおりであった。
【0070】
【数1】
【0071】
円筒状微細孔HKの一般式は、次のとおりであった。
【0072】
【数2】
【0073】
式中、
R-気体定数;
P-吸着平衡圧、mmHg;
P0-吸着温度での吸着質の飽和蒸気圧、mmHg;
K-アボガドロ定数;
Ns-吸着剤の単位面積あたりの原子の数、個/cm
-吸着質の単位面積あたりの原子の数、個/cm
As、A-吸着剤、吸着質のLennard-Jonesポテンシャル定数;
σ-ガス原子と相互作用エネルギーがゼロである表面との核距離;
l-スリット細孔の2つの平面層の核距離;
d-吸着剤原子と吸着質原子との直径の合計;
-円筒状微細孔の半径;
α、β-Evertt及びPowlによって導出されたkのr関数から計算して得られた。有効な細孔のサイズの使用範囲を選択することで、HK式を用いて、吸着装置で測定した吸着曲線を、対応する相対圧の範囲内で、ミクロ細孔分布の計算を行うことができ、各ミクロ細孔の細孔径に対応する吸着量が得られた。
【0074】
メソ細孔及びマクロ細孔の範囲内での異なる細孔径に対応する細孔容積体積は、Barrett-Joyner-Halenda(BJH)法を利用して窒素ガスの吸脱着曲線を分析し、細孔径に伴って変化する細孔体積の積分分布が得られた。メソ細孔及びマクロ細孔の細孔径分析は、マクロ熱力学に基づいて構築され、主に毛細管凝縮理論に基づき、計算方法は、ケルビン方程式を利用して圧力に対応する細孔のサイズを決定し、ヘルセー(Halsey)方程式を利用して吸着層の厚さを計算し、且つ、細孔に吸着した窒素分子が液体窒素の密度で存在すると仮定するものであった;測定した等温吸脱着曲線(通常、相対圧の範囲は、10-4~0.995である)により、逐次計算法を用いて細孔容積-細孔径分布、全細孔体積、及び平均細孔径を計算した。
【0075】
細孔が貫通しているかどうかは、高分解能透過型電子顕微鏡(TEM、機器型式は、Talos F200Xである)を利用して分析を行い、動作電圧は、120kVであった。統計的手法を利用して貫通割合を求め、電子拡大画像の代表領域を選択し、貫通細孔の数の割合を統計し、代表領域は、10個以上選択し、それらの平均値を取った。
【0076】
2、リチウム析出の測定
恒温室において、セルを異なるレートで満充電電圧まで充電した後、定電圧で0.05Cまで充電し、その後、1Cで下限電圧まで放電した。同様の手順で順次充放電を10回行った後、負極極片を解体し、リチウム析出があるかどうかを観察した。
【0077】
リチウム析出の程度の判定:満充電の状態で解体された負極が接触するセパレータが汚染された状態によって判定を行った。負極が接触しているセパレータは、全体が白色を示し、且つ、灰色を示す面積<2%であると、リチウム析出なしと判定した。負極が接触しているセパレータは、大部が白色であるが、一部の位置に灰色が観察され、灰色の面積が2%~20%であると、僅かなリチウム析出と判定した。負極が接触しているセパレータは、一部が白色であるが、一部の灰色が明確に観察され、灰色の面積が20%~60%であると、リチウム析出と判定した。負極が接触しているセパレータは、大部が灰色を示し、灰色の面積>60%であると、深刻なリチウム析出と判定した。
【0078】
3、サイクル膨張率の測定
恒温室において、セルを一定のレートで満充電電圧まで充電した後、定電圧で0.05Cまで充電し、その後、1Cで下限電圧まで放電した。同様の手順で順次充放電を1000回行った。サイクルの過程中のセルの変形量の測定方法:平行なクランプでセルの両側を固定し、700gの圧力を加え、セルの厚さを測定した。サイクル膨張率=(最終厚さ-初期厚さ)/初期厚さ×100%であった。
【0079】
4、圧縮密度の測定
圧縮密度=層の質量/層の厚さであった。面積が同じである複数の極片サンプルを取り、極片における集電体側のコート層の物質を取得し、極片における集電体側のコート層の質量を測定した。SEMを用いて極片における集電体側のコート層の厚さを測定し、これにより、コート層の圧縮密度を計算した。
実施例及び比較例
【0080】
多孔質炭素材料粒子の調製
多孔質炭素材料粒子の調製には、テンプレート法が採用されており、テンプレート(即ち、造孔剤)の役割は、細孔の形成及び細孔径の制御であり、これにより、多孔質の炭素骨格構造を形成した。調製の手順は、
1)造孔剤と炭素源との混合溶液を調製し、溶剤を蒸発させた後、造孔剤を包む炭素源を得、造孔剤が高分子、酸性化合物粒子、及び塩基性化合物粒子などを含み、炭素源が高分子又はバイオマス原料を含むこと;
2)窒素ガス保護下で造孔剤を包む炭素源を、600℃~1600℃の高温で焼成し、炭素源前駆体を炭素材料に分解すること;
3)炭素材料をアルカリ洗浄又は酸洗浄して造孔剤を除去すること;及び
4)造孔剤が除去された粉体に対して、不純物除去、乾燥、研削、粒度のふるい分けなどの後処理を行うこと;
を含んだ。
【0081】
ここで、造孔剤のサイズ、添加量は、マクロ細孔及びメソ細孔のサイズ及び割合を制御することができる。複数段の細孔の間の貫通構造は、主に異なるサイズの造孔剤の分布均一性によって制御することができる。炭化温度により、ミクロ細孔の割合を制御することができる。
【0082】
実施例1
1、負極極片の調製
ハードカーボン、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)を97、2、1の重量割合で混合した後、一定重量の脱イオン水を加え、均一に攪拌してスラリーを得、60mg/1540mmの面密度で銅箔に塗布し、80℃で真空乾燥させた後、第2コート層(負極活物質層)とした。次に、複数段の細孔構造を有する多孔質炭素材料粒子、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)を97、2、1の重量割合で混合した後、一定重量の脱イオン水を加え、均一に攪拌してスラリーを得、30mg/1540mmの面密度で第2コート層に塗布し、第1コート層(多孔質炭素材料層)が第2コート層を被覆する複合コート層を形成した。複合コート層を80℃で真空乾燥させた後、コールドプレス、ダイカット、ストリップを行い、負極極片とした。この実施例において使用されたリチウム吸蔵ハードカーボン材料のQ-V曲線が図4に示され、そのミクロ細孔体積/全細孔容積=32%であった。多孔質炭素材料粒子は、ミクロ細孔-メソ細孔-マクロ細孔という三段の構造であり、そのQ-V曲線が図5に示され、そのミクロ細孔体積/全細孔容積(即ち、ミクロ細孔の細孔容積+メソ細孔の細孔容積+マクロ細孔の細孔容積)=6%であった。
【0083】
2、正極極片の調製
正極活物質であるLiCoO、バインダーであるポリフッ化ビニリデン(PVDF)、アセチレンブラックを取って98:1:1の質量比で混合した後、N-メチルピロリドン(NMP)を加え、均一に攪拌してスラリーを得、一定の面密度でアルミ箔に塗布し、100℃で真空乾燥させた後、コールドプレス、ダイカット、ストリップを行い、正極極片とした。
【0084】
3、リチウムイオン電池の調製
正極極片、セパレータ(PE多孔質重合フィルム)、負極極片をベアセルに巻き取り、アルミプラスチックフィルム袋に入れ、予封止、ベーク、電解液注入、形成、脱ガス、最終封止などの工程を行い、リチウムイオン電池とした。セパレータには、ベースフィルム、セラミック層、及び接着層などが含まれていた。電解液の組成には、ヘキサフルオロリン酸リチウム及び有機溶媒が含まれており、ヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度は、1mol/Lであり、有機溶媒には、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ビニレンカーボネート(VC)、及びフルオロエチレンカーボネート(FEC)が含まれており、ここで、EC:PC:DEC:DMC:EMC:VC:FEC=20:30:20:13:13:2:2であった。
【0085】
実施例2
多孔質炭素材料粒子のミクロ細孔体積/全細孔容積=14%であったこと以外は、実施例1の調製方法と同様であった。
【0086】
実施例3
多孔質炭素材料粒子がミクロ細孔/メソ細孔の二段の構造であり、ミクロ細孔体積/全細孔容積=8%であったこと以外は、実施例1の調製方法と同様であった。
【0087】
実施例4
多孔質炭素材料粒子がメソ細孔/マクロ細孔の二段の構造であったこと以外は、実施例1の調製方法と同様であった。
【0088】
実施例5
多孔質炭素材料粒子がミクロ細孔/マクロ細孔の二段の構造であり、ミクロ細孔体積/全細孔容積=8%であったこと以外は、実施例1の調製方法と同様であった。
【0089】
実施例6
負極集電体に近い第2コート層の活物質がグラファイトであったこと以外は、実施例1の調製方法と同様であった。
【0090】
実施例7
多孔質炭素材料粒子のミクロ細孔体積/全細孔容積=20%であったこと以外は、実施例1の調製方法と同様であった。
【0091】
実施例8
多孔質炭素材料粒子のミクロ細孔体積/全細孔容積=37%であり、比の値がハードカーボンのミクロ細孔体積/全細孔容積よりも高かった以外は、実施例1の調製方法と同様であった。
【0092】
実施例9
第1コート層の塗布質量が第2コート層の塗布質量と等しい50mg/1540mmであったこと以外は、実施例1の調製方法と同様であった。
【0093】
実施例10
第1コート層の塗布質量が第2コート層の塗布質量である30mg/1540mmよりも高い60mg/1540mmであったこと以外は、実施例1の調製方法と同様であった。
【0094】
比較例1
集電体に近い単層の第2コート層のみが含まれており、第2活物質がハードカーボンであり、塗布質量が90mg/1540mmであったこと以外は、実施例1の調製方法と同様であった。
【0095】
比較例2
第2活物質がグラファイトであったこと以外は、比較例1の調製方法と同様であった。
【0096】
比較例3
多孔質炭素材料粒子のミクロ細孔/メソ細孔/マクロ細孔という構造が相互に貫通していなかった以外は、実施例1の調製方法と同様であった。
【0097】
比較例4
多孔質炭素材料粒子のミクロ細孔/メソ細孔という構造が相互に貫通していなかった以外は、実施例3の調製方法と同様であった。
【0098】
比較例5
多孔質炭素材料粒子のメソ細孔/マクロ細孔という構造が相互に貫通していなかった以外は、実施例4の調製方法と同様であった。
【0099】
比較例6
多孔質炭素材料粒子のミクロ細孔/マクロ細孔という構造が相互に貫通していなかった以外は、実施例5の調製方法と同様であった。
【0100】
【表1】
【0101】
注:実施例1~実施例8の多孔質炭素材料において、相互に繋がっている細孔の割合≧70%であった
【0102】
実施例1と比較例1と、及び、実施例6と比較例2とを比較することによると、本発明の、複数段の細孔構造を有する多孔質炭素材料粒子の二層複合コート層は、単一のハードカーボンコート層又はグラファイトコート層よりも優れていることが分かる。実施例1及び実施例6のリチウムイオン電池は、8Cの高レート充電の場合、リチウム析出がないのに対して、比較例1及び比較例2のリチウムイオン電池は、6Cの充電レートの場合、既にリチウム析出が発生した。実施例1及び実施例6のセルのサイクル膨張率は、比較例1及び比較例2よりも顕著に低かった。
【0103】
実施例1と実施例2と、及び、実施例7と実施例8とを比較することによると、複数段の細孔構造である多孔質炭素材料粒子のミクロ細孔体積/全細孔容積の割合、即ち、ミクロ細孔の割合は、リチウムイオン電池の急速充電のリチウム析出のパフォーマンス及びサイクル膨張特性に著しい影響を与えることが分かる。ミクロ細孔体積/全細孔容積≦20%であることが好ましく、ミクロ細孔体積/全細孔容積<10%であることが一層好ましい。
【0104】
実施例7と実施例8とを比較することによると、複数段の細孔構造である多孔質炭素材料粒子のミクロ細孔体積/全細孔容積がハードカーボンコート層のミクロ細孔体積/全細孔容積よりも高い場合、リチウムイオン電池のリチウム析出が悪化することが分かる。第1コート層のミクロ細孔の割合が高すぎると、第2コート層へのリチウムイオンの拡散に不利であるからである。複合コート層の表層材料は、リチウムイオンの拡散プロセスを改善するために、より小さなミクロ細孔の割合を選択すべきである。
【0105】
実施例1、実施例3、実施例4、実施例5と比較例3~比較例6とを比較することによると、三段の構造(ミクロ細孔、メソ細孔及びマクロ細孔)、又は二段の構造(ミクロ細孔及びメソ細孔、ミクロ細孔及びマクロ細孔、マクロ細孔及びメソ細孔)の多孔質炭素材料粒子にかかわらず、各段の細孔が少なくとも部分的に相互に貫通していることは、いずれもリチウムイオン電池の急速充電のリチウム析出を回避し、セルのサイクル膨張を顕著に抑制することに有利であることが分かる。リチウムイオンが拡散する際に、最初に細孔径が大きい細孔通路から細孔径がより小さい細孔通路に進入することは、拡散阻害の低減に有利であるからである。そのため、複数段の、貫通のない構造では、類似の改善効果が得られにくい。
【0106】
【表2】
【0107】
注:複合コート層の圧縮密度=(第1コート層の圧縮密度×第1コート層の塗布質量+第2コート層の圧縮密度×第2コート層の塗布質量)/(第1コート層の塗布質量+第2コート層の塗布質量)
【0108】
複合コート層の圧縮密度は、セルの体積エネルギー密度に影響を与える重要なパラメータの1つである。より高い体積エネルギー密度を満たすためには、極片は、より高い圧縮密度を追求することができる。実施例1及び実施例9、10を比較することによると、第1コート層の圧縮密度が第2コート層の圧縮密度よりも低いが、コート層の圧縮密度は主に材料の特性によって決定されるため、第2コート層の塗布量を高めることは、複合コート層の全体的な圧縮密度の向上に有利であり、同時に急速充電特性及びサイクル膨張特性に影響を与えないことが分かる。リチウム析出が主に極片表面で発生するため、表層の第1コート層は、第2コート層を薄層で被覆するだけでよく、過剰な塗布を必要とせず、第1コート層の塗布質量が第2コート層の塗布質量よりも高い場合、却って複合コート層の全体的な圧縮密度を低下させる。
【0109】
例示的な実施例が記載及び説明されたが、当業者は、上述した実施例が本発明を限定するものとして解釈されないこと、且つ、本発明の思想、原理、及び範囲から逸脱しない場合に実施例への改変、置換、及び変更が可能であることを理解すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】