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特表2024-528280電界効果トランジスタにおけるトラップの補償
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】電界効果トランジスタにおけるトラップの補償
(51)【国際特許分類】
   H03F 1/32 20060101AFI20240719BHJP
   H03F 1/02 20060101ALI20240719BHJP
   H03F 3/68 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
H03F1/32
H03F1/02 188
H03F3/68 220
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024507048
(86)(22)【出願日】2022-08-03
(85)【翻訳文提出日】2024-03-28
(86)【国際出願番号】 US2022039243
(87)【国際公開番号】W WO2023014766
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】17/395,035
(32)【優先日】2021-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518066415
【氏名又は名称】マコム テクノロジー ソリューションズ ホールディングス, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MACOM TECHNOLOGY SOLUTIONS HOLDINGS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソング、ヤング - ユール
(72)【発明者】
【氏名】モクティ、ズルハズミ エイ.
(72)【発明者】
【氏名】ウッド、ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ムー、キアンリー
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー、ジェレミー
【テーマコード(参考)】
5J500
【Fターム(参考)】
5J500AA01
5J500AA21
5J500AA41
5J500AA63
5J500AA64
5J500AA65
5J500AC21
5J500AF07
5J500AF13
5J500AF17
5J500AH07
5J500AH12
5J500AH24
5J500AH25
5J500AH29
5J500AH34
5J500AH35
5J500AK01
5J500AK03
5J500AK12
5J500AK16
5J500AK29
5J500AM05
5J500AM08
5J500AM13
5J500AQ03
5J500AT01
5J500AT07
5J500NG06
(57)【要約】
回路は、電界効果トランジスタ、FETと、FETの出力に結合された出力を備える、基準トランジスタと、基準トランジスタに結合され、キャリア・トラップに起因する基準トランジスタのドレイン電流の変化に応じて、基準トランジスタへの入力信号を生成し、入力信号を基準トランジスタの入力に印加するよう構成される、アクティブ・バイアス回路と、FETの入力及び基準トランジスタの入力に結合された、加算ノードとを具備する。加算ノードは、キャリア・トラップ効果を補償するために、入力信号をFETの入力信号に加算する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電界効果トランジスタ(FET)と、
前記FETの出力に結合された出力を備える基準トランジスタと、
前記基準トランジスタに結合され、前記基準トランジスタのドレイン電流に応じて前記基準トランジスタへの入力信号を生成し、前記入力信号を前記基準トランジスタの入力に印加するように構成されているアクティブ・バイアス回路と、
前記FETの入力及び前記基準トランジスタの前記入力に結合され、前記入力信号を前記FETの入力信号に加算する加算ノードと
を備える回路。
【請求項2】
前記FET及び前記各基準トランジスタがそれぞれ、それぞれのソース端子、ドレイン端子、及びゲート端子を備え、前記FET及び前記基準トランジスタの前記ドレイン端子が、前記FET及び前記基準トランジスタの前記それぞれの出力を構成し、前記FETの前記ドレイン端子が、結合コンデンサを介して、前記基準トランジスタの前記ドレイン端子にRF結合されている、請求項1に記載の回路。
【請求項3】
前記基準トランジスタの前記ゲート端子とグランドとの間にあるRFシャント・コンデンサ
をさらに備える、請求項2に記載の回路。
【請求項4】
前記基準トランジスタの前記ゲート端子が、前記FETの前記ゲート端子とDC結合されている、請求項2に記載の回路。
【請求項5】
前記基準トランジスタの前記ゲート端子と前記FETの前記ゲート端子との間にあるバッファ
をさらに備える、請求項4に記載の回路。
【請求項6】
前記バッファが、ボルテージ・フォロワ構成の演算増幅回路を含む、請求項5に記載の回路。
【請求項7】
前記基準トランジスタの前記ゲートと前記FETの前記ゲートとの間にある低域通過フィルタ
をさらに備える、請求項4に記載の回路。
【請求項8】
前記基準トランジスタに流れ込むドレイン電流のレベルを検出するように構成され、前記アクティブ・バイアス回路に結合されているドレイン電流監視回路
をさらに備える、請求項1に記載の回路。
【請求項9】
前記基準トランジスタと前記ドレイン電流監視回路との間にある低域通過フィルタ
をさらに備える、請求項8に記載の回路。
【請求項10】
前記基準トランジスタ及び前記FETが、III族窒化物ベースの高電子移動度トランジスタを含む、請求項1に記載の回路。
【請求項11】
基準回路及び前記FETが、単一の基板上に形成され、共通のエピタキシャル構造を共有する、請求項10に記載の回路。
【請求項12】
前記基準トランジスタ及び前記FETが、共通のドレイン・バイアス電圧でバイアスされる、請求項1に記載の回路。
【請求項13】
前記アクティブ・バイアス回路が、前記基準トランジスタを流れる一定のドレイン電流を維持するために、前記基準トランジスタのゲート電圧を制御するように構成されている、請求項1に記載の回路。
【請求項14】
前記アクティブ・バイアス回路が、前記基準トランジスタの前記ドレイン電流の変化に応じて、前記入力信号を生成するように構成され、前記基準トランジスタの前記ドレイン電流の前記変化が、前記基準トランジスタにおけるキャリア・トラップによって引き起こされる、請求項1に記載の回路。
【請求項15】
ソース端子、ドレイン端子、及びゲート端子を備えるパワー電界効果トランジスタ、FETと、
ソース端子、ドレイン端子、及びゲート端子を備える基準トランジスタと、
前記基準トランジスタの前記ドレイン端子と前記パワーFETの前記ドレイン端子との間に接続されているRF結合コンデンサと、
前記基準トランジスタの前記ドレイン端子に結合され、前記基準トランジスタのドレイン電流の変化を検出するように構成されているドレイン電流検出回路と、
前記ドレイン電流検出回路に結合され、前記基準トランジスタの前記ドレイン電流の前記変化に応じて、前記基準トランジスタへの入力信号を生成するように構成されているアクティブ・バイアス回路と
を備えるトランジスタ増幅器であって、
前記入力信号が、前記基準トランジスタの前記ゲートに印加され、
前記入力信号が、前記パワーFETのRF入力信号に加算される、トランジスタ増幅器。
【請求項16】
前記基準トランジスタ及び前記パワーFETが、A級動作、又はAB級動作などの狭い導通角のバイアスでバイアスされる、請求項15に記載のトランジスタ増幅器。
【請求項17】
前記基準トランジスタの前記ゲート端子とグランドとの間にあるRFシャント・コンデンサ
をさらに備える、請求項15に記載のトランジスタ増幅器。
【請求項18】
前記基準トランジスタの前記ゲート端子が、前記パワーFETの前記ゲート端子とDC結合されている、請求項15に記載のトランジスタ増幅器。
【請求項19】
前記基準トランジスタの前記ゲート端子と前記パワーFETの前記ゲート端子との間にあるバッファ
をさらに備える、請求項18に記載のトランジスタ増幅器。
【請求項20】
前記バッファが、ボルテージ・フォロワ構成の演算増幅回路を含む、請求項19に記載のトランジスタ増幅器。
【請求項21】
前記基準トランジスタの前記ゲートと前記FETの前記ゲートとの間にある低域通過フィルタ
をさらに備える、請求項18に記載のトランジスタ増幅器。
【請求項22】
前記パワーFET及び前記基準トランジスタが、III族窒化物ベースの高電子移動度トランジスタを含む、請求項15に記載のトランジスタ増幅器。
【請求項23】
電界効果トランジスタ(FET)におけるキャリア・トラップ効果を補償する方法であって、前記方法が、
前記FETに結合された基準トランジスタのドレイン電流の変化を検出するステップと、
前記基準トランジスタの前記ドレイン電流の前記変化に応じて、前記基準トランジスタへの入力信号を生成するステップと、
前記入力信号を、前記基準トランジスタの入力に印加するステップと、
前記入力信号を、補償信号として、前記FETのRF入力信号に加算するステップと
を含む、方法。
【請求項24】
前記パワーFET及び前記基準トランジスタが、III族窒化物ベースの高電子移動度トランジスタを含む、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年8月5日に出願された米国特許出願第17/395,035号、名称「COMPENSATION OF TRAPPING IN FIELD EFFECT TRANSISTORS」の優先権を主張し、その開示は、全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本開示は、トランジスタ構造体に関し、詳細には、高電子移動度トランジスタに関する。
【背景技術】
【0003】
ケイ素(Si)及びガリウム砒素(GaAs)などの狭バンドギャップ半導体材料は、低電力用途、及びSiの場合は低周波用途の半導体デバイスに、広く使用されている。しかし、これらの半導体材料は、例えば、バンドギャップが比較的狭く(室温で、Siの場合は1.12eV、GaAsの場合は1.42eV)、破壊電圧が比較的小さいため、高出力及び/又は高周波用途には、あまり適さない可能性がある。
【0004】
高出力、高温、及び/又は高周波の、用途及びデバイスに対する関心は、炭化ケイ素(4H-SiCの場合、室温で3.2eV)及びIII族窒化物(例えば、GaNの場合、室温で3.36eV)などの、広バンドギャップの半導体材料に集中している。これらの材料は、GaAs及びSiよりも大きい電界破壊強度、並びにGaAs及びSiよりも高い電子飽和速度を有することができる。
【0005】
高出力用途及び/又は高周波用途で特に興味深いデバイスは、変調ドープ電界効果トランジスタ(MODFET:modulation doped field effect transistor)としても知られる、高電子移動度トランジスタ(HEMT:High Electron Mobility Transistor)である。HEMTデバイスでは、相異なるバンドギャップ・エネルギーを有する2つの半導体材料のヘテロ接合で、2次元電子ガス(2DEG:two-dimensional electron gas)が形成され得、この場合、バンドギャップがより狭い材料の方が、バンドギャップがより広い材料よりも高い電子親和力を有する。2DEGは、ドープされていない、バンドギャップがより狭い材料内の蓄積層であり、例えば1013キャリア/cmを超える、比較的高いシート電子濃度を含有することができる。さらに、バンドギャップがより広い半導体で発生した電子は、2DEGに移動でき、イオン化された不純物の散乱の減少により、比較的高い電子移動度が可能となる。HEMTは、この比較的高いキャリア濃度とキャリア移動度との組合せにより、比較的大きな相互コンダクタンスを得ることができ、高周波用途では、金属半導体電界効果トランジスタ(MESFET:metal-semiconductor field effect transistor)よりも優れた性能を発揮する可能性がある。
【0006】
窒化ガリウム/窒化アルミニウムガリウム(GaN/AlGaN)材料系で製造されたHEMTは、比較的大きい破壊電界、比較的広いバンドギャップ、比較的大きい伝導帯のオフセット、及び/又は比較的大きい飽和電子ドリフト速度などの、材料特性の組合せにより、大きいRF出力を生成することができる。2DEG内の電子の大部分は、AlGaN内の分極が寄与するものであり得る。
【0007】
図1Aは、従来の窒化ガリウムベースのHEMT構造体を示している。この構造体は、半絶縁性4H炭化ケイ素(SiC)基板であり得る、基板10を備える。任意選択のバッファ層、核生成層、及び/又は遷移層(図示せず)を、基板10上に設けることができる。チャネル層20は、基板10上に設けられている。チャネル層20は、GaNなどのIII族窒化物であり得る。バリア層22は、チャネル層20上に設けられている。バリア層22は、チャネル層20のバンドギャップよりも大きいバンドギャップを有し、チャネル層20は、バリア層22よりも大きい電子親和力を有することができる。バリア層22は、AlN、AlInN、AlGaN、又はAlInGaNであり得、チャネル層20とバリア層22との間の界面に、かなりのキャリア濃度を誘起するのに十分な厚さ、並びに十分に高いAl成分及びドーピングを有する。この誘起されたキャリア濃度により、デバイス内に導電チャネルをもたらす、2次元電子ガス(2DEG)が形成される。2DEGチャネルの導電率は、バリア層22上に形成されたゲート・コンタクト32に電圧を印加することにより、調整することができる。
【0008】
図1Aはさらに、バリア層22上のキャップ層24を示しており、ゲート・コンタクト32が、キャップ層24を貫く凹部36内にある。キャップ層24は、デバイスの上(外)面をチャネルから物理的に遠ざけ、これにより、デバイスの表皮効果を低減することができる。キャップ層24は、バリア層22上にブランケット形成でき、エピタキシャル成長させ、且つ/又は堆積により形成することができる。キャップ層24は、典型的には、約2nmから約500nmの厚さを有することができる。
【0009】
図1Aにさらに示しているように、オーミック・ソース/ドレイン・コンタクト30がバリア層22上に設けられ、ゲート用凹部が、キャップ層24を貫いて設けられ、バリア層22の一部を露出させる。ゲート・コンタクト32が、凹部内に形成され、バリア層22の露出部分と接触する。ゲート・コンタクト32は、図1Aに示すような「T」型ゲートであり得る。
【0010】
GaN HEMTデバイスなどの半導体デバイス内にトラップされた電荷は、デバイスを使用するトランジスタ増幅器によって生成される出力信号に、非線形歪みを引き起こす可能性がある。特定の理論に制限されることは望まないが、現在、電荷は、デバイスのゲート・コンタクトからHEMTデバイスのバリア層及び/又はチャネル層に注ぎ込まれ得、かかる電荷が、バリア層及び/又はチャネル層にトラップされ得ると考えられている。こうしたトラップされた電荷は、デバイスに長期メモリ効果を引き起こし、その結果、極めて非線形の挙動となる可能性がある。
【0011】
GaNベースのHEMTデバイスのキャリア・トラップの挙動に対処する、いくつかの取り組みが試みられてきた。例えば、図1Bは、GaN HEMTベースの電力増幅器における、電子トラップによって引き起こされる自己バイアスに起因する、長期メモリ効果を補償するための、開ループ型アナログ・フィードフォワード回路を示している。回路は、RF入力信号の包絡線を検出する、包絡線検出器を備える。包絡線は整流され、整流された包絡線が、電子トラップ・モデルとして機能するR-Cネットワークに供給され、増幅器のHEMTに印加されるゲート・バイアス電圧VGGに加算される、補償信号を生成する。
【0012】
ゲート変調によるトラップ補償の概念は、原理的に実証されているが、既存の手法にはいくつかの制限がある。既存の手法では、例えば、動的なトラップの挙動を検出できない、開ループ型の技法が使用されている。既存の手法は、むしろ、デバイスのトラップの挙動が、デバイスに印加される波形だけに依存し、トラップの挙動と入力波形との関係は一定であると仮定しているが、実際の適用時にその仮定は、必ずしも事実ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第6,849,882号明細書
【特許文献2】米国特許第7,230,284号明細書
【特許文献3】米国特許第7,501,669号明細書
【特許文献4】米国特許第7,126,426号明細書
【特許文献5】米国特許第7,550,783号明細書
【特許文献6】米国特許第7,573,078号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2005/0253167号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2006/0202272号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2008/0128752号明細書
【特許文献10】米国特許出願公開第2010/0276698号明細書
【特許文献11】米国特許出願公開第2012/0049973号明細書
【特許文献12】米国特許出願公開第2012/0194276号明細書
【特許文献13】米国特許第9,847,411号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
いくつかの実施例による回路は、電界効果トランジスタ(FET:field effect transistor)と、FETの出力に結合された出力を備える、基準トランジスタと、基準トランジスタに結合され、基準トランジスタのドレイン電流に応じて、基準トランジスタへの入力信号を生成し、入力信号を基準トランジスタの入力に印加するよう構成される、アクティブ・バイアス回路と、FETの入力及び基準トランジスタの入力に結合された、加算ノードとを具備し、加算ノードは、入力信号をFETの入力信号に加算する。
【0015】
FETのドレイン端子は、結合コンデンサを介して、基準トランジスタのドレイン端子にRF結合され得る。回路は、基準トランジスタのゲート端子とグランドとの間にある、RFシャント・コンデンサをさらに備えることができる。基準トランジスタのゲート端子は、FETのゲート端子とDC結合され得る。
【0016】
回路は、いくつかの実施例では、基準トランジスタのゲート端子とFETのゲート端子との間にある、バッファをさらに備えることができる。バッファは、ボルテージ・フォロワ構成の演算増幅回路を含むことができる。
【0017】
回路は、基準トランジスタのゲートとFETのゲートとの間にある、低域通過フィルタをさらに備えることができる。
【0018】
回路は、いくつかの実施例では、基準トランジスタに流れ込むドレイン電流のレベルを検出するよう構成される、ドレイン電流監視回路をさらに備えることができ、ドレイン電流監視回路は、アクティブ・バイアス回路に結合される。
【0019】
回路は、基準トランジスタとドレイン電流監視回路との間にある、低域通過フィルタをさらに備えることができる。
【0020】
基準トランジスタ及びFETは、III族窒化物ベースの高電子移動度トランジスタを含むことができる。基準回路及びFETは、いくつかの実施例では、単一の基板上に形成され、共通のエピタキシャル構造を共有することができる。
【0021】
基準トランジスタ及びFETは、共通のドレイン・バイアス電圧でバイアスされ得る。
【0022】
アクティブ・バイアス回路は、いくつかの実施例では、基準トランジスタを流れる一定のドレイン電流を維持するために、基準トランジスタのゲート電圧を制御するよう構成され得る。アクティブ・バイアス回路は、基準トランジスタにおけるキャリア・トラップによって引き起こされる、基準トランジスタのドレイン電流の変化に応じて、基準トランジスタへの入力信号を生成するため、入力信号を生成するよう構成され得る。
【0023】
いくつかの実施例によるトランジスタ増幅器は、ソース端子、ドレイン端子、及びゲート端子を備える、パワー電界効果トランジスタ、FETと、ソース端子、ドレイン端子、及びゲート端子を備える、基準トランジスタと、基準トランジスタのドレイン端子とパワーFETのドレイン端子との間に接続される、RF結合コンデンサと、基準トランジスタのドレイン端子に結合され、基準トランジスタのドレイン電流の変化を検出するよう構成される、ドレイン電流検出回路と、ドレイン電流検出回路に結合され、基準トランジスタのドレイン電流の変化に応じて、基準トランジスタへの入力信号を生成するよう構成される、アクティブ・バイアス回路とを具備する。入力信号は、基準トランジスタのゲートに印加され、また入力信号は、パワーFETのRF入力信号に加算される。
【0024】
基準トランジスタ及びパワーFETは、A級動作、又はAB級動作などの狭い導通角(reduced conduction angle)のバイアスでバイアスされ得る。
【0025】
トランジスタ増幅器は、基準トランジスタのゲート端子とグランドとの間にある、RFシャント・コンデンサをさらに備えることができる。基準トランジスタのゲート端子は、パワーFETのゲート端子とDC結合され得る。
【0026】
トランジスタ増幅器は、いくつかの実施例では、基準トランジスタのゲート端子とパワーFETのゲート端子との間にあるバッファを、さらに備えることができる。バッファは、ボルテージ・フォロワ構成の演算増幅回路を含むことができる。
【0027】
トランジスタ増幅器は、基準トランジスタのゲートとパワーFETのゲートとの間にある、低域通過フィルタをさらに備えることができる。
【0028】
電界効果トランジスタ(FET)におけるトラップ効果を補償する、いくつかの実施例による方法は、FETに結合された基準トランジスタのドレイン電流の変化を検出するステップと、基準トランジスタのドレイン電流の変化に応じて、基準トランジスタへの入力信号を生成するステップと、入力信号を、基準トランジスタの入力に印加するステップと、入力信号を補償信号として、FETのRF入力信号に加算するステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1A】従来のトランジスタ・デバイスの断面図である。
図1B】トランジスタ・デバイスにおけるキャリア・トラップ効果を補償するための、従来の開ループ回路の図である。
図2】いくつかの実施例による、トランジスタ・デバイスにおけるキャリア・トラップ効果を補償する、閉ループ回路の概略図である。
図3】いくつかの実施例による、トランジスタ・デバイスにおけるキャリア・トラップ効果を補償する、閉ループ回路の概略図である。
図4】いくつかの実施例による、トランジスタ・デバイスにおけるキャリア・トラップ効果を補償する、閉ループ回路の回路図である。
図5A】トラップ補償を備える場合と備えない場合との、トランジスタ・デバイスのゲート電圧及びドレイン電流を示す、シミュレーション結果のグラフである。
図5B】トラップ補償を備える場合と備えない場合との、トランジスタ・デバイスのRF包絡線を示す、シミュレーション結果のグラフである。
図6】いくつかの実施例による、トランジスタ・デバイスにおけるトラップ効果を補償する動作を示す流れ図である。
図7】いくつかの実施例による、パワー・トランジスタ・デバイスと、パワー・トランジスタ・デバイスにおけるトラップ効果を補償する回路とを備える、モノリシック集積回路のレイアウトを示す概略図である。
図8】いくつかの実施例による回路の、アクティブ・バイアス回路のトランジスタのI-Vプロットである。
図9A】実施例によるトランジスタ・デバイスを組み込んだ、RFトランジスタ増幅器が使用され得る、複数増幅器回路の概略ブロック図である。
図9B】実施例によるトランジスタ・デバイスを組み込んだ、RFトランジスタ増幅器が使用され得る、複数増幅器回路の概略ブロック図である。
図9C】実施例によるトランジスタ・デバイスを組み込んだ、RFトランジスタ増幅器が使用され得る、複数増幅器回路の概略ブロック図である。
図10】いくつかの実施例による、HEMTトランジスタを備えるMMIC増幅器の概略図である。
図11A】いくつかの実施例による、RFトランジスタ増幅器ダイ用の例示的なパッケージを示す概略断面図である。
図11B】いくつかの実施例による、RFトランジスタ増幅器ダイ用の例示的なパッケージを示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
ここで本発明の概念の実施例を、添付図面と共に説明することにする。本明細書で説明するいくつかの実施例は、自己整合ゲートであり、いくつかの実施例では、フィールド・プレートがゲートと垂直方向に重ならないように、ゲートから横方向に間隔を置いて配置される、フィールド・プレートを備えるトランジスタ・デバイスを提供する。フィールド・プレートは、いくつかの実施例では、凹部領域においてバリア層に向かって凹んでいる。フィールド・プレートは、さらに別の実施例では、デバイスの活性エリアの外側で、デバイスのゲートを越えない接続部を用いて、ソースに接続することができる。
【0031】
第1、第2、第3などの順序を示す用語は、本明細書では、様々な要素を説明するために使用され得るが、こうした要素は、これらの用語によって限定されるべきではないことも理解されよう。こうした用語は、ある要素を、別の要素から区別するためだけに使用される。例えば、本開示の範囲から逸脱することなく、第1の要素を第2の要素と呼ぶことができ、同様に、第2の要素を第1の要素と呼ぶことができる。
【0032】
さらに、関係を表す用語である「下の方の」又は「底部」及び「上の方の」又は「上部」などは、本明細書では、図面に示す、ある要素と別の要素との関係を説明するために、使用することができる。関係を表す用語は、図面に描かれている向きに加えて、デバイスの様々な向きを包含することを意図するものと理解されたい。例えば、図面のうちの1つにあるデバイスがひっくり返されると、要素の「下」側にあると説明されている機構は、その要素の「上」側に向けられることになる。したがって、例示的な用語である「下の方の」は、デバイスの特定の向きに応じて、下向きと上向きとの両方を説明することができる。同様に、図面のうちの1つにあるデバイスがひっくり返されると、他の要素「より下に」又は他の要素「の下に」あると説明された要素は、そうした他の要素「より上に」向けられることになる。したがって、例示的な用語である「~より下に」又は「~の下に」は、上向きと下向きとの両方を説明することができる。
【0033】
本明細書で開示の説明に使用されている用語は、特定の実施例を説明することだけを目的としており、本開示を限定することを意図するものではない。単数形「an」、及び「the」は、本開示の説明及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、文脈上明らかにそうでないと示していない限り、複数形も同様に含むことを意図している。用語「and/or」は、本明細書で使用される場合、1つ又は複数の関連する列挙されたアイテムのありとあらゆる可能な組合せを指し、それらを包含することも理解されたい。この明細書で使用される場合、用語「備える(三人称単数現在)」及び「備える(現在分詞)」は、述べられたステップ、工程、機構、要素、及び/又は構成要素の存在を特定するが、他の1つ又は複数のステップ、工程、機構、要素、構成要素、及び/又はこれらの群の、存在又は追加を排除するものではないことが、さらに理解されよう。
【0034】
本明細書では、本開示の理想化された実施例の概略図である断面図を参照しながら、本開示の実施例を説明している。したがって、例えば製造技法及び/又は許容誤差の結果である、図の形状からのばらつきが予想されるべきである。本開示の実施例は、したがって、本明細書に示している領域の特定の形状に限定されると解釈すべきではなく、例えば、製造に起因する形状の誤差を含むはずである。図面に示した領域は、本質的に概略的なものであり、領域の形状は、デバイスの領域の実際の形状を示すことを意図しておらず、特に明記していない限り、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。さらに図式上の理由から、下記の図面で直線、水平、又は垂直に表示されている線は、多くの場合、傾斜しているか、湾曲しているか、非水平であるか、又は非垂直であろう。さらに、要素の厚さは、本質的に図式的なものであることを意図している。
【0035】
技術用語及び科学用語を含む、本開示の実施例の開示に使用されているすべての用語は、それ以外に定義されていない限り、関連分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有し、本開示の時点で既知の特定の定義に、必ずしも限定されるものではない。こうした用語は、したがって、その後に作成される同等の用語を含むことができる。一般的に使用される辞書で定義されているような用語は、本明細書及び関連技術の文脈における用語の意味と一致する意味を有するものと解釈すべきであることを、さらに理解されたい。
【0036】
III族窒化物HEMTベースのトランジスタ増幅器における、トラップの補償に対処するための既存の手法は、上記のように、動的なトラップの挙動を検出できない、開ループ型の技法を使用している。本明細書で説明するいくつかの実施例は、基準トランジスタにおけるトラップ効果を検出し、検出されたトラップ効果に基づいてパワー・トランジスタにおけるトラップ効果を補償する、閉ループ型の解決策を提供する。
【0037】
いくつかの実施例は、とりわけ、III族窒化物HEMTトランジスタで見られ得る、複雑且つ不規則なトラップの挙動を直接的に追跡し、トランジスタのゲートに印加される、対応する補償信号を生成する、アナログ閉ループ回路を提供する。この手法では、ただ単に入力波形を追跡するのではなく、動作中のトラップの挙動の変化に基づいて、ゲート・バイアス電圧が補正される。
【0038】
図2及び図3は、いくつかの実施例による、トランジスタ・デバイスにおけるキャリア・トラップ効果を補償する、閉ループ回路の概略図である。図2及び図3を参照すると、いくつかの実施例による、トラッピング効果を補償する回路100を概略的に示している。回路100は、RF入力ノード112でRF入力信号を受信する、パワー電界効果トランジスタ(FET)110を備える。パワーFET110は、RF入力信号を増幅し、増幅された出力信号を負荷Rに出力する。
【0039】
基準FET114は、トラップの監視及び補償のために設けられている。基準FET114は、パワーFET110と実質的に同様にバイアスされ、これにより確実に、パワーFETと同じ又は類似のトラップ特性が得られる。基準FET114及びパワーFET110は、いくつかの実施例では、両方のデバイスで確実に、同様のトラップの挙動を得るために、同じエピタキシャル構造を使用して共通の基板上に形成され得る。回路100は、いくつかの実施例では、下記でより詳細に論じるように、モノリシック・マイクロ波集積回路(MMIC:monolithic microwave integrated circuit)として製造され得る。基準FET114とパワーFET110との両方は、III族窒化物ベースのHEMTデバイスを含むことができる。
【0040】
主パワーFET110の出力(ドレイン)は、結合コンデンサ126を介して基準FET114の出力(ドレイン)にRF結合され、これにより基準FET114とパワーFET110とが確実に、同じ又は類似のドレイン・ラグを有するようになる。
【0041】
回路100は、基準FET114におけるドレイン電流の変動を監視し、ドレイン電流の変動は、FETにおけるキャリア・トラップ効果を表す。ドレイン電流の変動を表す信号は、パワーFET110のゲートに印加される補償信号を生成する、アクティブ・バイアス回路120に入力される。
【0042】
アクティブ・バイアス回路120は、補償信号を生成して基準FET114の入力(ゲート)に印加し、ドレイン電流を一定レベルに維持し、トラップ効果を補償する。基準FET114の入力(ゲート)は、加算ノード117を介してパワーFET110の入力(ゲート)にDC結合され、したがってパワーFET110は、同じ補償信号を受信し、これによりパワーFET110内部のトラップ効果が補償される。
【0043】
パワーFET110は、図3を参照すると、並列に接続された複数のユニット・セルを備えることができ、一方基準FET114は、パワーFET110よりも少数のユニット・セルを備えることができる。基準FET114は、いくつかの実施例では、ただ1つのユニット・セルを備えてもよい。基準FET114及びパワーFET110のゲート入力は、バッファ又は電圧フォロワ回路などの絶縁回路130を介して、DC結合され得る。ドレイン・バイアス電圧(例えば、48V)は、整合及びRFチョーク・ネットワーク122を介して、パワーFET110に印加され得る。同様のドレイン・バイアス電圧が、基準FET114に印加され得る。
【0044】
基準FET114のゲートは、いくつかの実施例では、さもなければキャリア・トラップに起因して、ドレイン電流変調に悪影響を及ぼす可能性がある入力波形による、ドレイン電流変調を減衰させるために、RF短絡され得る。
【0045】
回路100は、閉ループ型トラップ補償回路を備えることにより、パワーFET110におけるキャリア・トラップ効果を追跡し、かかる効果を、デバイス動作中にパワーFET110のゲートに補償信号を印加することにより、補償することができる。
【0046】
図4は、いくつかの実施例による、トランジスタ・デバイスにおけるキャリア・トラップ効果を補償する、閉ループ回路100の詳細な概略回路図である。回路100は、図4を参照すると、RF入力ノード112でRF入力信号を受信する、パワーFET110を備える。パワーFET110は、RF入力信号を増幅し、増幅された出力信号を、パワーFET110の出力(ドレイン)ノードから、DC遮断コンデンサC21を介して接続された負荷RLへ出力する。パワーFET110のドレインは、整合/RFチョーク・ネットワーク122によってバイアスされる。
【0047】
基準FET114が設けられ、パワーFET110の出力(ドレイン)は、結合コンデンサC12、126を介して基準FET114の出力(ドレイン)にRF結合され、これにより基準FET114とパワーFET110とが確実に、同じ又は類似のドレイン・ラグを有するようになる。基準FET114は、抵抗R18及びコンデンサC11を、バイアス電圧とドレインとの間に並列に備える、ドレイン電流検出回路119を介してバイアスされる。コンデンサC9及びインダクタL4を備える低域通過フィルタが、基準FET114のドレインとドレイン電流検出回路119との間に設けられ、ドレイン電流検出回路119の入力からのRFエネルギーをフィルタ処理し、これにより、補償回路への出力RF波形の影響を制限することができる。ドレイン電流に比例する電圧が、ノード121に現れ、アクティブ・バイアス回路120に入力される。
【0048】
FETを制御するためのアクティブ・バイアス回路の設計は、当技術分野で知られている。アクティブ・バイアス回路は、図4に示している実施例では、抵抗器R14、R20、R53、R12、R13、R17、及びR16、並びにPNPトランジスタBJT7及びBJT6を備える。しかし、アクティブ・バイアス回路は、任意の好適なトポロジであってもよい。アクティブ・バイアス回路120の動作は、PNPトランジスタBJT7のI-Vのプロットである図8を簡単に参照すると、以下の通りである。R18の両端間の電圧は、R14及びR53からなる分圧器によって定電圧に設定される。R18を流れる電流は、一定である。基準FET114のドレイン電流Idqがトラップに起因して減少すると、より大きいコレクタ電流Icが、BJT7を通って流れることになる。次いで、BJT7の動作点が、図8のI-Vのプロットにおいて左にシフトし、その結果、BJT7のコレクタ - エミッタ電圧Vceがより小さくなり、基準FET114のゲート電圧がより大きくなる。基準FET114のドレイン電流Idqが増加して戻り、閉ループが完成する。BJT6は、抵抗器の代わりに、BJT7の電流レベルを管理し、カットオフを回避するために使用される。
【0049】
再び図4を参照すると、補償信号は、アクティブ・バイアス回路から出力され、残留RFエネルギーを減衰させるために、抵抗器R19、コンデンサC10、及びインダクタL8を備える低域通過フィルタによってフィルタ処理される。補償信号は、基準FET114の入力(ゲート)に供給され、ドレイン電流を一定レベルに維持し、これにより、基準FET114のドレイン電流の変化を補償する。
【0050】
これにより、図4に示すようなトラップ補償の閉ループが形成され、回路100が、FET114におけるキャリア・トラップ効果を表す、基準FET114でのドレイン電流の変動を監視し、調整することが可能となる。
【0051】
基準FET114の入力(ゲート)に供給される補償信号は、パワーFET110の入力(ゲート)にも供給される。基準FET114の入力(ゲート)は、とりわけ、パワーFET110の入力(ゲート)にDC結合され、加算ノード117において、パワーFET110に入力されるRF入力信号に加算される。基準FET114の入力(ゲート)は、図4に示しているように、任意選択で、RFチョーク・インダクタL11、並びに/又は抵抗器R44、インダクタL9、及びコンデンサC23を備える低域通過フィルタ123を具備することができる、DC結合経路を介して加算ノード117に結合される。基準FET114及びパワーFET110の、入力間の絶縁は、バッファ回路132によって可能となり得る。バッファ回路132は、とりわけ、図4に示しているように、電圧フォロワとして構成された演算増幅器を使用して、実現することができる。
【0052】
基準FET114のゲートは、いくつかの実施例では、さもなければキャリア・トラップに起因して、ドレイン電流変調に悪影響を及ぼす可能性がある入力波形による、ドレイン電流変調を減衰させるために、シャント・コンデンサC30を備えるRF短絡ネットワーク135を介してRF短絡され得る。
【0053】
パワーFET110は、基準FET114と同じ補償信号を受信するので、パワーFET110におけるトラップ効果が補償される。
【0054】
図4に示している回路素子の例示的な値を、下記の表1に示している。
【表1】
【0055】
図5Aは、トラップ補償を備える場合と備えない場合との、トランジスタ・デバイスのゲート電圧及びドレイン電流を示す、シミュレーション結果のグラフである。具体的には、3種類の相異なる条件に対して、ドレイン電流は、1μs(左)及び20μs(右)で、図5Aの上の方の2つのグラフにプロットされ、ゲート電圧は、1μs(左)及び20μs(右)で、図5Aの下の方の2つのグラフにプロットされている。
【0056】
図5Aのシミュレーション結果を得るために、ゲート幅が0.05mm及びIdqが1mA(110mA/mm)の、基準FET114のGaN HEMTモデル、並びにゲート幅が3.6mm及びIdqが36mA(10mA/mm)の、パワーFETのGaN HEMTモデルを使用して、図4の回路をシミュレーションした。基準FET114及びパワーFET110は、AB級モードなどの、狭い導通角のバイアスで動作するようバイアスされた。
【0057】
図5Aにおいて、曲線501は、トラップもトラップ補償もないモデルの結果を表し、曲線502は、トラップがありトラップ補償のないモデルの結果を表し、曲線503は、トラップ、及びいくつかの実施例に従った閉ループ型ゲート変調による、トラップ補償があるモデルの結果を表している。図5Aから確認できるように、ドレイン電流は、いくつかの実施例に従ってトラップ補償が実行される場合(曲線503)、トラップのないモデルのシミュレーション結果(曲線501)とほぼ同一である。トラップ補償の効果は、ゲート電圧のグラフで確認でき、トラップ補償が実行された場合のゲート電圧は、トラップ補償が実行されなかった場合(曲線501及び502)のゲート電圧とは、大幅に異なっている。
【0058】
図5Bは、図5Aを作成するのに使用したシミュレーションによる、シミュレーション結果のグラフであり、トラップ補償を備える場合と備えない場合との、1μs(左)及び40μs(右)でのトランジスタ・デバイスのRF包絡線を示している。図5Aと同様に、曲線501は、トラップもトラップ補償もないモデルの結果を表し、曲線502は、トラップがありトラップ補償のないモデルの結果を表し、曲線503は、トラップ、及びいくつかの実施例に従った閉ループ型ゲート変調による、トラップ補償があるモデルの結果を表している。トラップ補償ありのシミュレーションでのRF包絡線(曲線503)は、トラップがない曲線(曲線501)に非常に近く、トラップがありトラップ補償のない曲線(曲線502)とは大幅に異なる。
【0059】
これらの結果から、パワーFET110において、トラップ効果が補償されていることは明らかである。
【0060】
図6は、いくつかの実施例による、トランジスタ・デバイスにおいてトラップ効果を補償する動作を示す流れ図である。図6を参照すると、電界効果トランジスタ(FET)におけるトラップ効果を補償する方法は、FETに結合された基準トランジスタのドレイン電流の変化を検出するステップ(ブロック602)と、基準トランジスタのドレイン電流の変化に応じて、基準トランジスタの入力信号を生成するステップ(ブロック604)と、入力信号を、基準トランジスタの入力に印加するステップ(ブロック606)と、入力信号を補償信号として、FETのRF入力信号に加算するステップ(ブロック608)とを含む。
【0061】
図7は、いくつかの実施例による、パワーFET110と、基準FET114及びバッファ回路132を備える、パワーFET110におけるトラップ効果を補償する回路とを具備する、モノリシック・マイクロ波集積回路(MMIC)200のレイアウトを示す概略図である。パワーFET110及び基準FET114は、とりわけ、共通の基板202上に形成され、同一のエピタキシャル構造を有することができる。ゲート・パッド及びドレイン・パッドは、パワーFET110と基準FET114との両方用、並びにバッファ回路132を実現するために使用される演算増幅器用に、MMIC200上に設けられる。結合コンデンサ126は、パワーFET110及び基準FET114の、ドレイン間に設けられる。
【0062】
本明細書で説明している、トラップ効果を補償する回路を備えるトランジスタ・デバイスは、多種多様な相異なる周波数帯域で動作する増幅器で、使用することができる。いくつかの実施例では、本明細書で説明しているようなトランジスタ・デバイスを組み込んだ、RFトランジスタ増幅器は、1GHzを超える周波数で動作するよう構成され得る。RFトランジスタ増幅器は、他の実施例では、2.5GHzを超える周波数で動作するよう構成され得る。RFトランジスタ増幅器は、さらに他の実施例では、3.1GHzを超える周波数で動作するよう構成され得る。RFトランジスタ増幅器は、さらに追加の実施例では、5GHzを超える周波数で動作するよう構成され得る。RFトランジスタ増幅器は、いくつかの実施例では、2.5~2.7GHz、3.4~4.2GHz、5.1~5.8GHz、12~18GHz、18~27GHz、27~40GHz、若しくは40~75GHzの周波数帯域、又はこれらの周波数帯域の一部のうちの、少なくとも1つで動作するよう構成され得る。
【0063】
本発明の概念の実施例を、HEMTデバイスに関連して上記で論じてきたが、本明細書で説明している本発明の概念は、MOSFET、DMOSトランジスタ、及び/又は横方向拡散MOS(LDMOS:laterally diffused MOS)トランジスタなどの、他のタイプの半導体デバイスにも適用できることが理解されよう。
【0064】
本明細書で説明されているトランジスタ・デバイスを組み込んだRFトランジスタ増幅器は、独立型のRFトランジスタ増幅器及び/又は複数のRFトランジスタ増幅器で、使用することができる。いくつかの実施例によるRFトランジスタ増幅器が、複数の増幅器を備える用途で、どのように使用され得るかの実例について、図9A図9Cを参照して論じることにする。
【0065】
図9Aを参照すると、電気的に直列に接続された前置増幅器1010及び主増幅器1030を備える、RFトランジスタ増幅器1000Aを概略的に示している。RFトランジスタ増幅器1000Aは、図9Aに示しているように、RF入力1001、前置増幅器1010、段間インピーダンス整合ネットワーク1020、主増幅器1030、及びRF出力1002を備える。段間インピーダンス整合ネットワーク1020は、前置増幅器1010の出力と主増幅器1030の入力との間の、インピーダンス整合を向上させる回路を形成するために、例えば、任意の適切な構成で配置されたインダクタ及び/又はキャパシタを備えることができる。RFトランジスタ増幅器1000Aは、図9Aには示されていないが、RF入力1001と前置増幅器1010との間に挿入される入力整合ネットワーク、並びに/又は主増幅器1030とRF出力1002との間に挿入される出力整合ネットワークを、さらに備えることができる。実施例によるRFトランジスタ増幅器は、前置増幅器1010及び主増幅器1030のいずれか又は両方を実現するために、使用することができる。
【0066】
図9Bを参照すると、RF入力1001、一対の前置増幅器1010-1、1010-2、一対の段間インピーダンス整合ネットワーク1020-1、1020-2、一対の主増幅器1030-1、1030-2、及びRF出力1002を備える、RFトランジスタ増幅器1000Bを概略的に示している。分配器1003及び合成器1004も設けられている。(電気的に直列に接続されている)前置増幅器1010-1及び主増幅器1030-1は、(電気的に直列に接続されている)前置増幅器1010-2及び主増幅器1030-2と、電気的に並列に配置されている。RFトランジスタ増幅器1000Bは、図9AのRFトランジスタ増幅器1000Aと同様に、RF入力1001と前置増幅器1010-1、1010-2との間に挿入される入力整合ネットワーク、並びに/又は主増幅器1030-1、1030-2とRF出力と1002との間に挿入される出力整合ネットワークを、さらに備えることができる。
【0067】
図9Cに示しているように、いくつかの実施例によるRFトランジスタ増幅器は、ドハティ増幅器を実現するために使用することもできる。ドハティ増幅器回路は、当技術分野で知られているように、第1及び第2(又はそれ以上)の電力合成増幅器を備える。第1の増幅器は、「主」増幅器又は「キャリア」増幅器と呼ばれ、第2の増幅器は、「ピーキング」増幅器と呼ばれる。2つの増幅器は、別々にバイアスすることができる。例えば、1つの一般的なドハティ増幅器の実施態様では、主増幅器は、AB級増幅器又はB級増幅器を含むことができ、一方ピーキング増幅器は、C級増幅器であり得る。ドハティ増幅器は、飽和レベルからバックオフをとった電力レベルで動作する場合に平衡増幅器よりも効率的に動作することができる。ドハティ増幅器に入力されたRF信号は、(例えば、直交合成器を使用して)分配され、2つの増幅器の出力が合成される。主増幅器は最初に(すなわち、より低い入力電力レベルで)オンになるよう構成されているため、主増幅器だけが、より低い電力レベルで動作することになる。入力電力レベルが飽和レベルに向かって増加すると、ピーキング増幅器がオンになり、入力RF信号は、主増幅器とピーキング増幅器との間で分配される。
【0068】
ドハティRFトランジスタ増幅器1000Cは、図9Cに示しているように、RF入力1001、入力分配器1003、主増幅器1040、ピーキング増幅器1050、出力合成器1004、及びRF出力1002を備える。ドハティRFトランジスタ増幅器1000Cは、ピーキング増幅器1050の入力に90°トランス1007を備え、主増幅器1040の入力に90°トランス1005を備え、任意選択で、入力整合ネットワーク及び/又は出力整合ネットワークを備えることができる(図示せず)。主増幅器1040及び/又はピーキング増幅器1050は、上記で説明した、実施例によるRFトランジスタ増幅器のいずれかを使用して、実現することができる。
【0069】
実施例によるRFトランジスタ増幅器は、個別のデバイスとして形成されてもよく、又はモノリシック・マイクロ波集積回路(MMIC:Monolithic Microwave Integrated Circuit)の一部として形成されてもよい。MMICは、特定の機能用に、すべての回路が単一の半導体チップに集積された、無線及び/又はマイクロ波周波数の信号で動作する集積回路を指す。例示的なMMICデバイスは、関連する整合回路、給電ネットワークなどを備えるトランジスタ増幅器であり、これらはすべて、共通の基板上で実現される。MMICトランジスタ増幅器は、典型的には、並列接続された複数のユニット・セルHEMTトランジスタを備える。
【0070】
図10は、本発明の概念の実施例による、MMIC RFトランジスタ増幅器400の平面図である。MMIC RFトランジスタ増幅器400は、図10に示しているように、パッケージ410内に収容された集積回路チップ430を備える。パッケージ410は、集積回路チップ430を囲繞し、保護する、保護性筐体を備えることができる。パッケージ410は、例えば、セラミック材料で形成されてもよい。
【0071】
パッケージ410は、入力リード412及び出力リード418を備える。入力リード412は、例えばはんだづけによって、入力リード用パッド414に取り付けることができる。1本又は複数の入力接合ワイヤ420は、入力リード用パッド414を集積回路チップ430上の入力接合パッドに電気的に接続することができる。集積回路チップ430は、入力給電ネットワーク438、入力インピーダンス整合ネットワーク450、第1のRFトランジスタ増幅段460、中間インピーダンス整合ネットワーク440、第2のRFトランジスタ増幅段462、出力インピーダンス整合段470、及び出力給電ネットワーク482を備える。
【0072】
パッケージ410は、例えばはんだづけによって出力リード用パッド416に接続された、出力リード418をさらに備える。1本又は複数の出力接合ワイヤ490は、出力リード用パッド416を集積回路チップ430上の出力接合パッドに電気的に接続することができる。第1のRFトランジスタ増幅段460及び/又は第2のRFトランジスタ増幅段462は、本発明の概念の実施例による、RFトランジスタ増幅器のいずれかを使用して実現することができる。
【0073】
本発明の概念の実施例によるRFトランジスタ増幅器は、多様な相異なる周波数帯域で動作するよう設計することができる。こうしたRFトランジスタ増幅器ダイは、いくつかの実施例では、0.6~2.7GHz、3.4~4.2GHz、5.1~5.8GHz、12~18GHz、18~27GHz、27~40GHz、若しくは40~75GHzの周波数帯域、又はこれらの周波数帯域の一部のうちの、少なくとも1つで動作するよう構成され得る。本発明の概念の実施例による技法は、10GHz以上の周波数で動作するRFトランジスタ増幅器にとって特に有利であり得る。
【0074】
図11A及び図11Bは、それぞれ、パッケージ化されたRFトランジスタ増幅器600A及び600Bを実現するために、本発明の概念の実施例によるRFトランジスタ増幅器ダイをパッケージ化できる、いくつかの例示的なやり方を示す、概略断面図である。
【0075】
図11Aは、パッケージ化された、III族窒化物ベースのRFトランジスタ増幅器600Aの概略側面図である。パッケージ化されたRFトランジスタ増幅器600Aは、図11Aに示しているように、開放空洞パッケージ610A内にパッケージ化されたRFトランジスタ増幅器ダイ100を備える。パッケージ610Aは、金属ゲート・リード622A、金属ドレイン・リード624A、金属サブマウント630、側壁640、及び蓋642を備える。
【0076】
サブマウント630は、パッケージ600Aの熱管理の助けとなるよう構成された材料を、含むことができる。サブマウント630は、例えば、銅及び/又はモリブデンを含むことができる。サブマウント630は、いくつかの実施例では、複数の層で構成されてもよく、且つ/又はビア/相互接続部を含有してもよい。サブマウント630は、例示的な実施例では、いずれかの主面上に銅クラッド層を有するコア・モリブデン層を備える、多層銅/モリブデン/銅金属フランジであり得る。サブマウント630は、いくつかの実施例では、リード・フレーム又は金属スラグの一部である、金属ヒート・シンクを備えることができる。側壁640及び/又は蓋642は、いくつかの実施例では、絶縁材料で形成されるか、又は絶縁材料を含むことができる。側壁640及び/又は蓋642は、例えば、セラミック材料で形成されるか、又はセラミック材料を含むことができる。
【0077】
側壁640及び/又は蓋642は、いくつかの実施例では、例えば、Al2O3で形成され得る。蓋642は、エポキシ接着剤を使用して、側壁640に接着することができる。側壁640は、例えば蝋づけによって、サブマウント630に取り付けることができる。ゲート・リード622A及びドレイン・リード624Aは、側壁640を貫いて延在するよう構成されるが、本発明の概念の実施例は、これに限定されるものではない。
【0078】
RFトランジスタ増幅器ダイ100は、金属サブマウント630、セラミック側壁640、及びセラミック蓋642によって画定された、空気で満たされた空洞612内で、金属サブマウント630の上面に取り付けられている。RFトランジスタ増幅器ダイ100のゲート端子及びドレイン端子は、構造体の上側にあり得るが、ソース端子は、構造体の下側にある。
【0079】
ゲート・リード622Aは、1本又は複数の接合ワイヤ654によって、RFトランジスタ増幅器ダイ100のゲート端子に接続することができる。ドレイン・リード624Aは、同様に、1本又は複数の接合ワイヤ654によって、RFトランジスタ増幅器ダイ100のドレイン端子に接続することができる。ソース端子は、例えば導電性ダイ・アタッチ材料(図示せず)を使用して、金属サブマウント630に取り付けることができる。金属サブマウント630は、ソース端子126への電気接続部を備えることができ、またRFトランジスタ増幅器ダイ100内で生成される熱を放散する、放熱構造体として機能することもできる。
【0080】
熱は、主として、比較的高い電流密度が、例えばユニット・セル・トランジスタのチャネル領域で生成される、RFトランジスタ増幅器ダイ100の上部で生成される。この熱は、ソース・ビア146及びデバイスの半導体層構造体を通ってソース端子に伝達され、次いで、金属サブマウント630に伝達され得る。
【0081】
図11Bは、別のパッケージ化された、III族窒化物ベースのRFトランジスタ増幅器600Bの概略側面図である。RFトランジスタ増幅器600Bは、相異なるパッケージ610Bを備えるという点で、RFトランジスタ増幅器600Aとは異なる。パッケージ610Bは、金属サブマウント630、並びに金属ゲート622B及びドレイン・リード624Bを備える。RFトランジスタ増幅器600Bはまた、RFトランジスタ増幅器ダイ100、リード622B、624B、及び金属サブマウント630を少なくとも部分的に囲繞する、プラスチック外側被覆660を備える。
【0082】
上記の実施例の特徴の、多くの変形が可能である。本発明の実施例で使用され得る特徴を有するトランジスタ構造体は、同一出願人による特許文献1~13に開示されており、特許文献1~13のそれぞれの内容は、その全体が参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【0083】
本発明の概念の実施例を、実施例の特定の構成を参照しながら、かなり詳細に説明してきたが、他の種類も可能である。フィールド・プレート及びゲートも、多くの様々な形状を有することができ、また多くの相異なるやり方で、ソース・コンタクトに接続することができる。したがって、本発明の趣旨及び範囲は、上記で説明した特定の実施例に限定されるべきではない。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11A
図11B
【国際調査報告】