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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】ドネペジル含有持続放出型微小球
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/445 20060101AFI20240719BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240719BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
A61K31/445
A61K9/16
A61K47/34
A61P25/28
A61K47/32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024507074
(86)(22)【出願日】2022-08-05
(85)【翻訳文提出日】2024-04-04
(86)【国際出願番号】 KR2022011672
(87)【国際公開番号】W WO2023014175
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】10-2021-0103519
(32)【優先日】2021-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522179714
【氏名又は名称】ホワン イン ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】キム、ビョン-ヒョク
(72)【発明者】
【氏名】ジュン、チャン-ウン
(72)【発明者】
【氏名】クォン、ヒョ-キル
(72)【発明者】
【氏名】シン、ホ-チョル
(72)【発明者】
【氏名】ホン、ヨン-スン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジュ-ヒョン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA31
4C076AA94
4C076BB11
4C076CC01
4C076EE06
4C076EE24
4C076FF31
4C076FF68
4C076GG01
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC21
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA41
4C086MA66
4C086NA12
4C086ZA16
(57)【要約】
ドネペジル含有微小球を含む注射剤を開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物ローディング量が互いに異なる2種類以上のドネペジル微小球を含む持続放出型注射剤組成物であって、
投与周期の間の曲線下面積(AUC)に対する投与周期の初期の半分の間の曲線下面積(AUC)の比が0.4~0.6である、注射剤組成物。
(ここで、前記薬物ローディング量は、各微小球中に含まれているドネペジルの当該微小球に対する重量比を意味する)
【請求項2】
前記投与周期は、1週間~2ヶ月であることを特徴とする、請求項1に記載の注射剤組成物。
【請求項3】
前記投与周期は、10日~28日間であることを特徴とする、請求項1に記載の注射剤組成物。
【請求項4】
前記ドネペジル微小球は、理論の薬物ローディング量が32~40%のものと理論の薬物ローディング量が28~32%のものとの2種類を含むことを特徴とする、請求項1に記載の注射剤組成物。
【請求項5】
前記ドネペジル微小球は、平均薬物ローディング量が32%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の注射剤組成物。
【請求項6】
理論の薬物ローディング量が32~40%の微小球と理論の薬物ローディング量が28~32%の微小球との重量比は、1:0.8~5であることを特徴とする、請求項4に記載の注射剤組成物。
【請求項7】
前記ドネペジル微小球は、ドネペジル又はこの薬学的に許容される塩、水和物又は溶媒和物及び生分解性高分子を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の注射剤組成物。
【請求項8】
前記ドネペジル微小球は、微小球100mg当たりにドネペジル又はこの薬学的に許容される塩をドネペジルとして平均で25~32mg含むことを特徴とする、請求項5に記載の注射剤組成物。
【請求項9】
ドネペジル含有微小球を製造する方法であって、
第1薬物ローディング量を有するドネペジル含有第1分散相を製造するステップと、
第2薬物ローディング量を有するドネペジル含有第2分散相を製造するステップと、
前記ドネペジル含有第1分散相及びドネペジル含有第2分散相をこの順に連続相に加えた後、攪拌して微小球を製造するステップと、
を含むが、
前記第1薬物ローディング量及び前記第2薬物ローディング量は互いに異なっていて、薬物ローディング量が互いに異なる2種類以上のドネペジル微小球を製造する方法。
【請求項10】
ドネペジル含有微小球を製造する方法であって、
第1薬物ローディング量を有するドネペジル含有第1分散相を製造するステップと、
前記ドネペジル含有第1分散相を連続相に加えた後、攪拌して第1微小球を製造するステップと、
第2薬物ローディング量を有するドネペジル含有第2分散相を製造するステップと、
前記ドネペジル含有第2分散相を別途の連続相に加えた後、攪拌して第2微小球を製造するステップと、
前記第1微小球と前記第2微小球とを混合するステップと、
を含むが、
前記第1薬物ローディング量及び前記第2薬物ローディング量は互いに異なっていて、薬物ローディング量が互いに異なる2種類以上のドネペジル微小球を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドネペジルを含有する持続放出型微小球(microsphere)及びこれを含む注射剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ドネペジルは、認知症(特に、アルツハイマー型認知症)を治療するために開発された薬物であって、現在のところ、経口用錠剤が販売されている。現在販売中のドネペジル含有経口用錠剤は、1日につき1回、就寝前に服用するように指示されている。
【0003】
しかしながら、アルツハイマー患者が自ら毎日のように就寝前に錠剤を服用することには難点があるため、服薬順応度が低下し、これにより、持続的な薬理効果を示すのに支障をきたす恐れがある。
【0004】
したがって、ドネペジルの投与に際して服薬順応度を向上させるための新規な剤形を開発する必要性があるという声が高まっている。
【0005】
このような課題を解決するために、ドネペジルを含有する持続放出型注射剤を開発するための研究への取り組みが行われている。
【0006】
前記持続放出型注射剤は、薬物を生分解性高分子内に封入した微小球を含有する。このような微小球含有注射剤を体内に注射すれば、体内に注入された微小球内から薬物が徐々に放出されて、薬理効果が持続的に現れるようにすることができる。したがって、持続放出型注射剤を1回投与した場合、例えば、少なくとも1週間以上の長時間にわたって薬物が持続的に現れるようにすることができる。このような持続放出型注射剤を開発すれば、例えば、1週間、10日、4週間又は2ヶ月ごとに薬物を注射投与しても薬効が続くようにすることができて、薬物の体内への侵襲回数を最小限に抑えることができ、しかも、服薬順応度を画期的に向上させることができる。
【0007】
このような課題を解決するために、投与に際して投与周期の間の薬物血中濃度の変動幅を極力抑えたドネペジル含有持続放出型注射剤を開発する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、投与に際して薬物血中濃度の変動幅を極力抑えて、副作用の発現を極力抑えながら、薬理効果が持続的に現れるようにしたドネペジル含有持続放出型注射剤を開発するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、高分子を含み、一定の割合の互いに異なる薬物ローディング量を有する2種類の分散液を用意し、これから、例えば、単一乳化方法により微小球を製造して薬物投与周期の前半部に総薬物の40~60%を放出する持続放出型微小球を提供することができる。
【0010】
具体的には、本発明は、薬物ローディング量が互いに異なる2種類以上のドネペジル微小球を含む持続放出型注射剤組成物に関するものであって、投与周期(例えば、1週間ごとに投与したり、10日ごとに投与したり、又は4週間ごとに投与したりするように設計可能である)の間のAUCに対する投与周期の初期の半分の間のAUCの比(すなわち、AUC0~1/2投与周期/AUC0~投与周期)が0.4~0.6である。ここで、前記薬物ローディング量は、微小球中に含まれているドネペジルの当該微小球に対する重量比を意味する。
【0011】
本発明において、前記投与周期は、例えば、7日以上、好ましくは、7日~2ヶ月の範囲を有するように設計可能である。例えば、本発明の注射剤を10日ごとに投与すること又は4週間ごとに投与することを目指して設計可能である。
【0012】
また、本発明において、前記ドネペジル微小球の平均薬物ローディング量は、35%以下、好ましくは、32%以下である。微小球の総投与量を減量させ、製造に際して生産単価を下げるためには、薬物ローディング量が高いことが有利になる場合もあるが、薬物ローディング量が高過ぎると、徐放化剤である高分子の割合が減少し、これにより、注射剤の投与に際して薬物血中濃度を投与周期の間に有効な濃度に保持できなくなるか、あるいは、微小球内に封入されていない薬物が結晶として存在して投与の直後に高い血中濃度を示す結果を招いてしまうという問題がある。
【0013】
本発明において、前記ドネペジル微小球は、理論の薬物ローディング量が32~40%のものと理論の薬物ローディング量が28~32%のものとの2種類を含むことが好ましい。すなわち、本発明の注射剤は、理論の薬物ローディング量が32~40%のドネペジル含有微小球及び理論の薬物ローディング量が28~32%のドネペジル含有微小球を両方とも含む(ここで、本発明は、薬物ローディング量が互いに異なる2種類以上のドネペジル微小球を含むので、微小球の理論の薬物ローディング量が両方とも32%であることはない)。したがって、本発明の注射剤は、理論の薬物ローディング量が28%以上、かつ、32%以下のドネペジル含有微小球及び理論の薬物ローディング量が32%超え、かつ、40%以下のドネペジル含有微小球を含み得るか、あるいは、理論の薬物ローディング量が28%以上、かつ、32%未満のドネペジル含有微小球及び理論の薬物ローディング量が32%以上、かつ、40%以下のドネペジル含有微小球を含み得る。
【0014】
この明細書中における用語「理論の薬物ローディング量」とは、ドネペジル含有微小球を製造するときに投入された原料ドネペジル及び投入された原料高分子のすべてが微小球として製造され、かつ、投入された原料ドネペジルのすべてが微小球内に封入されることを想定したときの微小球内のドネペジルローディング量を意味し、下記の数式1から求められる:
【0015】
〔数式1〕
理論の薬物ローディング量(%)=[微小球の製造の際に投入されたドネペジルの量/(微小球の製造の際に投入されたドネペジルの量+微小球の製造の際に投入された高分子の量)]×100(%)
【0016】
この明細書中における用語「実際の薬物ローディング量」とは、ドネペジル含有微小球を製造したとき、実際に製造された微小球100mg当たりに含有されているドネペジルの含量を意味し、別途に定めのない限り、用語「薬物ローディング量」と混用される場合もある。
【0017】
本発明において、理論の薬物ローディング量が32~40%の微小球と理論の薬物ローディング量が28~32%の微小球との重量比は、1:0.8~5であることが好ましい。
【0018】
また、本発明において、前記ドネペジル微小球は、ドネペジル又はこの薬学的に許容される塩、水和物又は溶媒和物及び生分解性高分子を含む。
【0019】
本発明において、前記ドネペジル微小球は、微小球100mg当たりにドネペジル又はこの薬学的に許容される塩をドネペジルとして平均で25~32mgを含むことが好ましい(すなわち、本発明において、実際の薬物ローディング量は、25~32%であることが好ましい)。
【0020】
さらに、本発明は、薬物ローディング量が互いに異なる2種類以上のドネペジル微小球を製造する方法に関するものである。
【0021】
本発明に係るドネペジル含有微小球は、
第1薬物ローディング量を有するドネペジル含有第1分散相を製造するステップと、
第2薬物ローディング量を有するドネペジル含有第2分散相を製造するステップと、
前記ドネペジル含有第1分散液及びドネペジル含有第2分散相をこの順に連続相に加えた後、攪拌して微小球を製造するステップと、
を含んで製造されてもよい。
【0022】
また、本発明に係るドネペジル含有微小球は、
第1薬物ローディング量を有するドネペジル含有第1分散相を製造するステップと、
前記ドネペジル含有第1分散相を連続相に加えた後、攪拌して第1微小球を製造するステップと、
第2薬物ローディング量を有するドネペジル含有第2分散相を製造するステップと、
前記ドネペジル含有第2分散相を別途の連続相に加えた後、攪拌して第2微小球を製造するステップと、
前記第1微小球と前記第2微小球とを混合するステップと、
を含んで製造されてもよい。
【0023】
本発明のドネペジル含有微小球の製造方法において、前記第1薬物ローディング量及び前記第2薬物ローディング量は、互いに異なる。
【0024】
この明細書中における封入率とは、理論の薬物ローディング量に対する実際の薬物ローディング量の比を意味し、下記の数式2に従って計算される:
【0025】
〔数式2〕
【数1】
【0026】
ドネペジル含有微小球を実際に製造するとき、その封入率は、概ね90%~100%の値を有する。
【0027】
薬物ローディング量が、目標とする理論の薬物ローディング量を意味しようが、封入率が反映された実際の薬物ローディング量を意味しようが、本発明においては、互いに異なる薬物ローディング量を示す2種類以上の微小球を注射剤に含めて投与することにより、投与周期の間に均一なAUC及び均一な薬物血中濃度を示す効果を発揮させることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る徐放性微小球注射剤は、互いに異なる特性を有する高分子を用いたり、追加のさらなる工程なしに簡単に1つの高分子から特定の割合の互いに異なる薬物ローディング量を有する2つの溶液を製造したりすることにより、体内において目標の期間の間に一定に薬物を放出することから、治療濃度以上における副作用を抑え、服薬不順応を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】実験例3のSD(Sprague-Dawley)系ラットの薬物動態試験における、実施例2及び比較例の28日間の薬物濃度プロファイルの結果である。
図2】実施例2において製造されたドネペジル含有微小球の形態(morphology)を確認するための走査型電子顕微鏡(SEM)像である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下では、本発明への理解を深めるために実施例を挙げて詳しく説明する。しかし、下記の実施例は、単に本発明の内容を例示するものに過ぎず、本発明の範囲が下記の実施例によって何ら制限されるものであるではない。本発明の実施例は、当業界において平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0031】
実施例1:理論の薬物ローディング量が36%のものと理論の薬物ローディング量が30%のものとが1:1(理論の薬物の総ローディング量は、33%である)の重量割合からなる高分子微小球の製造
【0032】
ドネペジル(製造社:ニューランド・ラボラトリーズ(Neuland Laboratories Limited.)、インド)0.9g(理論の薬物ローディング量:36%)及び生分解性高分子であるポリD,L-ラクチド(Resomer R203 H;製造社:Evonik、ドイツ)1.6gをジクロロメタン(製造社:デジョン化金(DAEJUNG CHEMICALS & METALS Co.,Ltd.)、韓国)4.8gに添加しかつ攪拌して完全に溶解させて最初の分散相高分子溶液を製造した。
【0033】
別途に、ドネペジル(製造社:ニューランド・ラボラトリーズ、インド)0.75g(理論の薬物ローディング量:30%)及び生分解性高分子であるポリD,L-ラクチド(Resomer(登録商標)R 203 H;製造社:Evonik、ドイツ)1.75gをジクロロメタン(製造社:デジョン化金、韓国)5.25gに添加しかつ攪拌して完全に溶解させて2番目の分散相高分子溶液を製造した。
【0034】
また、適量のポリビニルアルコールを水に溶解させて、0.5%ポリビニルアルコール連続相を製造した。
【0035】
二重ジャケット付きのビーカーに0.5%ポリビニルアルコール連続相を入れ、恒温循環水槽を用いて10℃以下の温度に保った後、前記製造した2つの分散相(薬物ローディング量が互いに異なる2種類のドネペジル含有分散相高分子溶液)をそれぞれ前記連続相に順次に加えながら、高速攪拌してエマルジョンを形成した。
【0036】
次いで、有機溶媒を除去し、固形化した微小球を取得するために、47℃の温度において3時間かけて有機溶媒を揮発させ、1時間かけて10℃まで徐々に冷却させた。硬化した微小球を注射用水にて数回洗浄した後、ふるい網を用いてウェットろ過し、凍結乾燥させてドネペジルが含有されている微小球を最終的に得た。
【0037】
実施例2:理論の薬物ローディング量が40%のものと理論の薬物ローディング量が30%のものとが1:4(理論の薬物の総ローディング量は、32%である)の重量割合からなる高分子微小球の製造
【0038】
ドネペジル(製造社:ニューランド・ラボラトリーズ、インド)1.6g(理論の薬物ローディング量40%)及び生分解性高分子であるポリD,L-ラクチド(Resomer(登録商標)R 203 H;製造社:Evonik、ドイツ)2.4gをジクロロメタン(製造社:デジョン化金、韓国)7.2gに添加しかつ攪拌して完全に溶解させて最初の分散相高分子溶液を製造した。
【0039】
別途に、ドネペジル(製造社:ニューランド・ラボラトリーズ、インド)4.8g(理論の薬物ローディング量30%)及び生分解性高分子であるポリD,L-ラクチド(Resomer(登録商標)R 203 H;製造社:Evonik、ドイツ)11.2gをジクロロメタン(製造社:デジョン化金、韓国)33.6gに添加しかつ攪拌して完全に溶解させて2番目の分散相高分子溶液を製造した。
【0040】
また、適量のポリビニルアルコールを水に溶解させて、0.5%ポリビニルアルコール連続相を製造した。
【0041】
二重ジャケット付きのビーカーに0.5%ポリビニルアルコール連続相を入れ、恒温循環水槽を用いて10℃以下の温度に保った後、前記製造した2つの分散相(薬物ローディング量が互いに異なる2種類のドネペジル含有分散相高分子溶液)をそれぞれ前記連続相に順次に加えながら、高速攪拌してエマルジョンを形成した。
【0042】
次いで、有機溶媒を除去し、固形化した微小球を取得するために、47℃の温度において3時間かけて有機溶媒を揮発させ、1時間かけて10℃まで徐々に冷却させた。硬化した微小球は注射用水にて数回洗浄した後、ふるい網を用いてウェットろ過し、凍結乾燥させてドネペジルが含有されている微小球を最終的に得た。
【0043】
実施例3:理論の薬物ローディング量が38%のものと理論の薬物ローディング量が28%のものとが1:2(理論の薬物の総ローディング量は、31.3%である)の重量割合からなる高分子微小球の製造
【0044】
ドネペジル(製造社:ニューランド・ラボラトリーズ、インド)2.53g(理論の薬物ローディング量38%)及び生分解性高分子であるポリD,L-ラクチド(Resomer(登録商標)R 203 H;製造社:Evonik、ドイツ)4.13gをジクロロメタン(製造社:デジョン化金、韓国)12.39gに添加しかつ攪拌して完全に溶解させて最初の分散相高分子溶液を製造した。
【0045】
別途に、ドネペジル(製造社:ニューランド・ラボラトリーズ、インド)3.73g(理論の薬物ローディング量30%)及び生分解性高分子であるポリD,L-ラクチド(Resomer(登録商標)R 203 H;製造社:Evonik、ドイツ)9.6gをジクロロメタン(製造社:デジョン化金、韓国)28.8gに添加しかつ攪拌して完全に溶解させて2番目の分散相高分子溶液を製造した。
【0046】
また、適量のポリビニルアルコールを水に溶解させて、0.5%ポリビニルアルコール連続相を製造した。
【0047】
二重ジャケット付きのビーカーに0.5%ポリビニルアルコール連続相を入れ、恒温循環水槽を用いて10℃以下の温度に保った後、前記製造した2つの分散相(薬物ローディング量が互いに異なる2種類のドネペジル含有分散相高分子溶液)をそれぞれ前記連続相に順次に加えながら、高速攪拌してエマルジョンを形成した。
【0048】
次いで、有機溶媒を除去し、固形化した微小球を取得するために、47℃の温度において3時間かけて有機溶媒を揮発させ、1時間かけて10℃まで徐々に冷却させた。硬化した微小球は注射用水にて数回洗浄した後、ふるい網を用いてウェットろ過し、凍結乾燥させてドネペジルが含有されている微小球を最終的に得た。
【0049】
実施例4:理論の薬物ローディング量が32%のものと理論の薬物ローディング量が28%のものとが1:1(理論の薬物の総ローディング量は、30%である)の重量割合からなる高分子微小球の製造
【0050】
ドネペジル(製造社:ニューランド・ラボラトリーズ、インド)3.2g(理論の薬物ローディング量32%)及び生分解性高分子であるポリD,L-ラクチド(Resomer(登録商標)R 203 H;製造社:Evonik、ドイツ)6.8gをジクロロメタン(製造社:デジョン化金、韓国)20.4gに添加しかつ攪拌して完全に溶解させて最初の分散相高分子溶液を製造した。
【0051】
別途に、ドネペジル(製造社:ニューランド・ラボラトリーズ、インド)2.8g(理論の薬物ローディング量28%)及び生分解性高分子であるポリD,L-ラクチド(Resomer(登録商標)R 203 H;製造社:Evonik、ドイツ)7.2gをジクロロメタン(製造社:デジョン化金、韓国)21.6gに添加しかつ攪拌して完全に溶解させて2番目の分散相高分子溶液を製造した。
【0052】
また、適量のポリビニルアルコールを水に溶解させて、0.5%ポリビニルアルコール連続相を製造した。
【0053】
二重ジャケット付きのビーカーに0.5%ポリビニルアルコール連続相を入れ、恒温循環水槽を用いて10℃以下の温度に保った後、前記製造した2つの分散相(薬物ローディング量が互いに異なる2種類のドネペジル含有分散相高分子溶液)をそれぞれ前記連続相に順次に加えながら、高速攪拌してエマルジョンを形成した。
【0054】
次いで、有機溶媒を除去し、固形化した微小球を取得するために、47℃の温度において3時間かけて有機溶媒を揮発させ、1時間かけて10℃まで徐々に冷却させた。硬化した微小球は注射用水にて数回洗浄した後、ふるい網を用いてウェットろ過し、凍結乾燥させてドネペジルが含有されている微小球を最終的に得た。
【0055】
比較例1:理論の薬物ローディング量40%が単独の重量割合からなる高分子微小球の製造
ドネペジル(製造社:ニューランド・ラボラトリーズ、インド)2g(理論の薬物ローディング量:40%)及び生分解性高分子であるポリD,L-ラクチド(Resomer(登録商標)R 203 H;製造社:Evonik、ドイツ)3gをジクロロメタン(製造社:デジョン化金、韓国)9gに添加しかつ攪拌して完全に溶解させて分散相である高分子溶液を製造した。
【0056】
また、適量のポリビニルアルコールを水に溶解させて、0.5%ポリビニルアルコール連続相を製造した。
【0057】
二重ジャケット付きのビーカーに0.5%ポリビニルアルコール連続相を入れ、恒温循環水槽を用いて10℃以下の温度に保った後、前記製造した分散相(ドネペジル含有分散相高分子溶液)をそれぞれ前記連続相に加えながら、高速攪拌してエマルジョンを形成した。
【0058】
次いで、有機溶媒を除去し、固形化した微小球を取得するために、47℃の温度において2時間かけて有機溶媒を揮発させ、1時間かけて10℃まで徐々に冷却させた。硬化した微小球は注射用水にて数回洗浄した後、ふるい網を用いてウェットろ過し、凍結乾燥させてドネペジルが含有されている微小球を最終的に得た。
【0059】
比較例2:理論の薬物ローディング量30%が単独の重量割合からなる高分子微小球の製造
【0060】
ドネペジル(製造社:ニューランド・ラボラトリーズ、インド)6g(理論の薬物ローディング量30%)及び生分解性高分子であるポリD,L-ラクチド(Resomer(登録商標)R 203 H;製造社:Evonik、ドイツ)14gをジクロロメタン(製造社:デジョン化金、韓国)42gに添加しかつ攪拌して完全に溶解させて分散相である高分子溶液を製造した。
【0061】
また、適量のポリビニルアルコールを水に溶解させて、0.5%ポリビニルアルコール連続相を製造した。
【0062】
二重ジャケット付きのビーカーに0.5%ポリビニルアルコール連続相を入れ、恒温循環水槽を用いて10℃以下の温度に保った後、前記製造した分散相(ドネペジル含有分散相高分子溶液)をそれぞれ前記連続相に加えながら、高速攪拌してエマルジョンを形成した。
【0063】
次いで、有機溶媒を除去し、固形化した微小球を取得するために、47℃の温度において3時間かけて有機溶媒を揮発させ、1時間かけて10℃まで徐々に冷却させた。硬化した微小球は注射用水にて数回洗浄した後、ふるい網を用いてウェットろ過し、凍結乾燥させてドネペジルが含有されている微小球を最終的に得た。
【0064】
比較例3:理論の薬物ローディング量が40%のものと理論の薬物ローディング量が30%のものとが1:1(理論の薬物の総ローディング量は、35%である)の重量割合からなる高分子微小球の製造
【0065】
ドネペジル(製造社:ニューランド・ラボラトリーズ、インド)1g(理論の薬物ローディング量:40%)及び生分解性高分子であるポリD,L-ラクチド(Resomer(登録商標)R 203 H;製造社:Evonik、ドイツ)1.5gをジクロロメタン(製造社:デジョン化金、韓国)4.5gに添加しかつ攪拌して完全に溶解させて最初の分散相高分子溶液を製造した。
【0066】
別途に、ドネペジル(製造社:ニューランド・ラボラトリーズ、インド)0.75g(理論の薬物ローディング量30%)及び生分解性高分子であるポリD,L-ラクチド(Resomer(登録商標)R 203 H;製造社:Evonik、ドイツ)1.75gをジクロロメタン(製造社:デジョン化金、韓国)5.25gに添加しかつ攪拌して完全に溶解させて2番目の分散相高分子溶液を製造した。
【0067】
また、適量のポリビニルアルコールを水に溶解させて、0.5%ポリビニルアルコール連続相を製造した。
【0068】
二重ジャケット付きのビーカーに0.5%ポリビニルアルコール連続相を入れ、恒温循環水槽を用いて10℃以下の温度に保った後、前記製造した2つの分散相(薬物ローディング量が互いに異なる2種類のドネペジル含有分散相高分子溶液)をそれぞれ前記連続相に順次に加えながら、高速攪拌してエマルジョンを形成した。
【0069】
次いで、有機溶媒を除去し、固形化した微小球を取得するために、47℃の温度において3時間かけて有機溶媒を揮発させ、1時間かけて10℃まで徐々に冷却させた。硬化した微小球は注射用水にて数回洗浄した後、ふるい網を用いてウェットろ過し、凍結乾燥させてドネペジルが含有されている微小球を最終的に得た。
【0070】
実験例1:SEMを用いた微小球の形態(morphology)の観察
【0071】
約20mgの微小球をカーボンテープを用いてアルミニウムスタブ(stub)に固定し、真空度0.1トール(torr)及び高電圧(10kV)下で3分間白金コーティングを施した後、走査型電子顕微鏡(SEM)(装備名:SEC-SNE 4500M Plus A、韓国)粉体に装着し、画像解析プログラム(mini-SEM)を用いて微小球の表面の形態(morphology)を観察した。
【0072】
図2は、実施例1において製造された微小球のSEM写真である。
【0073】
実施例1~4及び比較例1~3において製造された微小球において、形態上の特異点は見られなかった。
【0074】
実験例2:微小球内へのドネペジルの封入率及び含有量の測定
【0075】
前記実施例1~4及び比較例1~3においてそれぞれ製造された微小球のそれぞれに対して、約100mgを取ってアセトニトリルに完全に溶かした後、移動相にて希釈した。希釈された溶液20μLを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に注入して、検出波長318nmにおける吸光度を測定した。
【0076】
<測定条件>
【0077】
カラム:Luna(登録商標)phenyl-Hexyl,C185μm,4.6X250mm
【0078】
移動相:テトラヒドロフラン、トリエチルアミン溶液(溶液A)とメタノールテトラヒドロフラン溶液(溶液B)との3:1の混合溶液(pH 2.0)
【0079】
各測定された実際の薬物ローディング量(微小球100mg当たりに存在するドネペジルの含量)及び薬物封入率は、下記の表1に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
前述したように、封入率は、下記の数式に従って計算される:
【0082】
〔数式2〕
【数2】
【0083】
上記の表において、「理論の薬物ローディング量の割合」は、理論の薬物ローディング量が相対的に高い微小球の総重量及び理論の薬物ローディング量が相対的に低い微小球の総重量の比を示すものである。
【0084】
実施例1~4及び比較例1~3の薬物封入率は、いずれも約90%以上であることが示された。
【0085】
実験例3:SD系ラットを用いた微小球注射剤の薬物動態試験
【0086】
この実験は、薬物ローディング量が互いに異なる微小球の含量比に応じた薬物血中濃度の変動性の減少効果を確認するためのものである。
【0087】
実施例1~4及び比較例1~3において製造された各微小球をSD系ラットの頸背部に皮下注射により投与し、血中のドネペジル濃度を測定した。
【0088】
具体的には、SD系ラット一匹当たりに25.2mgのドネペジルに相当する微小球をSD系ラットの頸背部に皮下注射した(n=6)。
【0089】
注射した日から1日、3日、7日、10日、14日、17日、21日、24日、28日、35日が経った日にラットの頸静脈から0.3mLの血液を採取して氷冷状態に保持し、遠心分離して100μLの血漿を分離した。分離された血漿のドネペジルの濃度をLC/MS/MSを用いて分析した。ラットに対する薬物動態(pharmacokinetic)の試験結果を表2に示す。
【0090】
【表2】
【0091】
表2に示すように、薬物ローディング量が30%又は40%の微小球を単独にて含有する比較例1及び2の場合、目標とする投与周期である672時間(28日)までのAUCに対する前記投与周期の初期の半分である336時間(14日)までのAUCの比は、それぞれ0.86及び0.32であった。
【0092】
AUC(Area under Curve:曲線下面積)は、薬物が消化管から吸収されるか、あるいは、注射投与の際に組織から吸収されて体内の循環血流に達した量と関連するパラメーターである。前記比較例1は、注射投与の際に投与周期の初期の半分の間に過剰に多過ぎる薬物量が血流に達するため、投与周期の初期の半分以降には有効な血中濃度に達し難くなる。前記比較例2は、注射投与の際に投与周期の初期の半分の間に比較的に少ない薬物量が血流に達するため、投与周期の初期の半分の間に有効な血中濃度に達することができなくなる可能性がある。
【0093】
これに対し、薬物ローディング量が互いに異なる2種類の微小球を含む実施例1~4の場合、目標とする投与周期である672時間(28日)までのAUCに対する前記投与周期の初期の半分である336時間(14日)までのAUCの比は、0.4~0.6の範囲の値を有する。すなわち、目標とする投与周期の間に均一なAUCを示し、薬物の放出が均一に行われる。したがって、実施例1~4の微小球を注射投与する場合、全体の投与周期の間にずっと有効な血中濃度に持続的に達し続けることができ、投与の初期に非正常的に低い薬物血中濃度を示したり、非正常的に高い薬物血中濃度を示したりして治療効果が得られないか、あるいは、治療効果が偏って得られる現象が起こることを防ぐことができ、これと併せて、服薬順応度を向上させることができる。
【0094】
但し、薬物ローディング量が互いに異なる2種類の微小球を含むが、理論の薬物ローディング量が相対的に高い微小球の理論の薬物ローディング量が40%と比較的に高い場合には、理論の薬物ローディング量が相対的に低い微小球の総重量がさらに高いことが望ましいことが示された。すなわち、理論の薬物ローディング量が40%の微小球と理論の薬物ローディング量が30%の微小球との総重量比が1:4である実施例2の場合には、微小球の平均的な実際の薬物ローディング量が比較的に低い30%であり、AUC比が0.52であって、好適な結果が得られたものの、理論の薬物ローディング量が40%の微小球と理論の薬物ローディング量が30%の微小球との総重量比が1:1である比較例3の場合には、微小球の平均的な実際の薬物ローディング量が比較的に高い32.07%であり、AUC比が0.76であって、やや物足りない結果が出てしまう。
【0095】
したがって、薬物ローディング量が互いに異なる2種類の微小球を含むが、理論の薬物ローディング量が相対的に高い微小球の理論の薬物ローディング量が40%である場合には、微小球の平均的な実際の薬物ローディング量が32%を超える場合にその効果が多少乏しくなり、微小球の平均的な実際の薬物ローディング量が32%以下である場合にその効果が良好に発揮できるということが分かる。したがって、本発明においては、薬物ローディング量が互いに異なる2種類の微小球中において薬物ローディング量が相対的に高い微小球の含量が比較的に高い場合、微小球の平均的な実際の薬物ローディング量が32%以下であることが好ましいといえる。
【0096】
実験例4:ビーグル犬を用いた微小球の薬物動態試験
【0097】
この実験は、実験例3のSD系ラットに対する薬物動態(PK)試験におけるAUCの比に対する結果が他の実験動物種であるビーグル犬においても略同様に現れるかどうかを確認するための実験である。
【0098】
実験例3と略同様に、実施例1~4及び比較例1~3において製造された各微小球をビーグル犬の大腿部に筋肉注射により投与し、血中のドネペジル濃度を測定した。
【0099】
具体的には、ビーグル犬一匹当たりに84.0mgのドネペジルに相当する微小球をビーグル犬の大腿部に筋肉注射した(n=3)。
【0100】
注射した日から1日、3日、7日、10日、14日、17日、21日、24日、28日、35日が経った日にビーグル犬の橈側皮靜脈から0.5mLの血液を採取して氷冷状態に保持し、遠心分離して100μLの血漿を分離した。分離された血漿のドネペジルの濃度を液体クロマトグラフ質量分析計(LC/MS/MS)を用いて分析した。ビーグル犬に対する薬物動態(pharmacokinetic)の試験結果を表3に示す。
【0101】
【表3】
【0102】
表3に示すように、実施例2~4をビーグル犬に投与した後のAUC0-336h/AUC0-672h比(ratio)は0.4~0.6の範囲内であり、これは、ラットへの投与時と同様に、均一な薬物の放出を行うことを意味する。
【0103】
したがって、本発明に係る微小球含有注射剤組成物は、投与周期の間に一定のAUCを示すことにより、目標とする投与周期の間に一定の治療効果を示すことができ、このような効果は、他の種に投与した場合にも略同様に現れるという点を確認した。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明に係る注射剤組成物は、認知症の治療剤として有用である。
図1
図2
【国際調査報告】