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特表2024-528284分化抗原群109(CD109)阻害剤で骨ミネラル密度低下を治療する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】分化抗原群109(CD109)阻害剤で骨ミネラル密度低下を治療する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20240719BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 38/46 20060101ALI20240719BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20240719BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P19/10
A61P43/00 111
A61K48/00
A61K31/7088
A61K31/7105
A61K31/713
A61K38/46
A61P43/00 121
C12N15/113 Z ZNA
C12N15/09 110
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024507165
(86)(22)【出願日】2022-07-29
(85)【翻訳文提出日】2024-03-14
(86)【国際出願番号】 US2022074307
(87)【国際公開番号】W WO2023019067
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】63/230,707
(32)【優先日】2021-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(71)【出願人】
【識別番号】510042677
【氏名又は名称】ザ ロイヤル インスティチューション フォー ザ アドバンスメント オブ ラーニング/マギル ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】ボビン、ヨナス
(72)【発明者】
【氏名】ソシナ、オルカヨデ
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ、シルイ
(72)【発明者】
【氏名】ロッタ、ルカ アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】バラス、アリス
(72)【発明者】
【氏名】リチャーズ、ジョン ブレント
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084AA17
4C084AA19
4C084BA44
4C084DC01
4C084MA02
4C084MA52
4C084MA56
4C084MA59
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA97
4C084ZC02
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA55
4C086MA56
4C086MA59
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA97
4C086ZC02
4C086ZC75
(57)【要約】
本開示は、骨ミネラル密度低下を有するまたは骨ミネラル密度低下を発症するリスクのある対象を治療する方法、及び骨ミネラル密度低下を発症する高いリスクを有する対象を特定する方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨ミネラル密度低下を有するまたは骨ミネラル密度低下を発症するリスクのある対象を治療する方法であって、前記対象に分化抗原群109(CD109)阻害剤を投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
骨減少症を有するまたは骨減少症を発症するリスクのある対象を治療する方法であって、前記対象に分化抗原群109(CD109)阻害剤を投与することを含む、前記方法。
【請求項3】
I型骨粗鬆症を有するまたはI型骨粗鬆症を発症するリスクのある対象を治療する方法であって、前記対象に分化抗原群109(CD109)阻害剤を投与することを含む、前記方法。
【請求項4】
II型骨粗鬆症を有するまたはII型骨粗鬆症を発症するリスクのある対象を治療する方法であって、前記対象に分化抗原群109(CD109)を投与することを含む、前記方法。
【請求項5】
続発性骨粗鬆症を有するまたは続発性骨粗鬆症を発症するリスクのある対象を治療する方法であって、前記対象に分化抗原群109(CD109)阻害剤を投与することを含む、前記方法。
【請求項6】
前記CD109阻害剤が、CD109核酸分子とハイブリダイズする阻害性核酸分子を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記阻害性核酸分子が、アンチセンス核酸分子、低分子干渉RNA(siRNA)、またはショートヘアピンRNA(shRNA)を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記CD109阻害剤が、Casタンパク質と、CD109ゲノム核酸分子内のガイドRNA(gRNA)認識配列とハイブリダイズするgRNAとを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記Casタンパク質がCas9またはCpf1である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記gRNA認識配列が配列番号1内に位置する、請求項8または請求項9に記載の方法。
【請求項11】
プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列が、前記gRNA認識配列の下流の約2~約6ヌクレオチドである、請求項8または請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記gRNAが約17~約23ヌクレオチドを含む、請求項8~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記gRNA認識配列が配列番号37~58のいずれか1つに記載のヌクレオチド配列を含む、請求項8~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記対象からの生体試料にてCD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子の存在または非存在を検出することをさらに含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
対象に標準的な投与量で骨ミネラル密度低下を治療または阻害する治療剤を投与することをさらに含み、前記CD109ミスセンス変異体核酸分子が前記生体試料に存在しない、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記CD109ミスセンス変異体核酸分子についてヘテロ接合型である対象に、標準的な投与量と同じまたはそれより少ない投与量で骨ミネラル密度低下を治療または阻害する治療剤を投与することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記CD109の予測されるミスセンス変異体核酸分子が、スプライス部位変異体、ストップゲイン変異体、スタートロス変異体、ストップロス変異体、フレームシフト変異体、もしくはインフレームインデル変異体、または切断型のCD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードする変異体である、請求項14~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記CD109の予測される機能喪失型変異体核酸分子が、6:73730573:A:G、6:73823473:GA:G、6:73763607:C:A、6:73803256:G:T、6:73818486:T:C、6:73787379:G:A、6:73771510:A:G、6:73806987:A:T、6:73758991:A:G、6:73823456:A:G 6:73762778:A:C、6:73763660:A:G、6:73730573:A:G、6:73806956:G:A、6:73792628:G:C、6:73806926:A:T、6:73771576:G:A、6:73815026:C:T、6:73765952:G:Aまたはそれから産生されるmRNA分子、もしくは前記mRNA分子から産生されるcDNA分子である、請求項14~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記CD109ミスセンス変異体核酸分子が、切断型のCD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードする、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
骨ミネラル密度低下を治療または阻害する治療剤で対象を治療する方法であって、前記対象が、骨ミネラル密度低下を有するまたは骨ミネラル密度低下を発症するリスクがあり、前記方法が、
前記対象が分化抗原群109(CD109)の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子を有するかどうかを、
前記対象から生体試料を得ることまたは得たこと、及び
前記対象が前記CD109ミスセンス変異体核酸分子を含む遺伝子型を有するかどうかを決定するために前記生体試料にて配列分析を実施することまたは実施したことによって決定する工程;ならびに
CD109基準である対象に、標準的な投与量で骨ミネラル密度低下を治療もしくは阻害する前記治療剤を投与する、もしくは投与し続ける、及び/または前記対象にCD109阻害剤を投与する工程;
前記CD109ミスセンス変異体核酸分子についてヘテロ接合型である対象に、標準的な投与量と同じもしくはそれより少ない量で骨ミネラル密度低下を治療もしくは阻害する前記治療剤を投与する、もしくは投与し続ける、及び/または前記対象にCD109阻害剤を投与する工程;または
前記CD109ミスセンス変異体核酸分子についてホモ接合型である対象に、標準的な投与量と同じもしくはそれより少ない量で骨ミネラル密度低下を治療もしくは阻害する前記治療剤を投与する、もしくは投与し続ける工程を含み;
前記CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードする前記CD109ミスセンス変異体核酸分子を有する遺伝子型の存在は、前記対象が骨ミネラル密度低下を発症する低いリスクを有することを示す、前記方法。
【請求項21】
前記対象がCD109基準であり、前記対象が、標準的な投与量で骨ミネラル密度低下を治療または阻害する前記治療剤を投与される、または投与され続ける、且つCD109阻害剤を投与される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記対象がCD109ミスセンス変異体核酸分子についてヘテロ接合型であり、前記対象が、標準的な投与量と同じまたはそれより少ない量で骨ミネラル密度低下を治療または阻害する前記治療剤を投与される、または投与され続ける、且つCD109阻害剤を投与される、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記CD109ミスセンス変異体核酸分子が、スプライス部位変異体、ストップゲイン変異体、スタートロス変異体、ストップロス変異体、フレームシフト変異体、もしくはインフレームインデル変異体、または切断型のCD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードする変異体である、請求項20~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記CD109の予測される機能喪失型変異体核酸分子が、6:73730573:A:G、6:73823473:GA:G、6:73763607:C:A、6:73803256:G:T、6:73818486:T:C、6:73787379:G:A、6:73771510:A:G、6:73806987:A:T、6:73758991:A:G、6:73823456:A:G 6:73762778:A:C、6:73763660:A:G、6:73730573:A:G、6:73806956:G:A、6:73792628:G:C、6:73806926:A:T、6:73771576:G:A、6:73815026:C:T、6:73765952:G:Aまたはそれから産生されるmRNA分子、もしくは前記mRNA分子から産生されるcDNA分子である、請求項20~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記CD109ミスセンス変異体核酸分子が、切断型のCD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードする、請求項20~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記CD109阻害剤が、CD109核酸分子とハイブリダイズする阻害性核酸分子を含む、請求項20~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記阻害性核酸分子が、アンチセンス核酸分子、低分子干渉RNA(siRNA)、またはショートヘアピンRNA(shRNA)を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記CD109阻害剤が、Casタンパク質と、CD109ゲノム核酸分子内のガイドRNA(gRNA)認識配列とハイブリダイズするgRNAとを含む、請求項20~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記Casタンパク質がCas9またはCpf1である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記gRNA認識配列が配列番号1内に位置する、請求項28または請求項29に記載の方法。
【請求項31】
プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列が、前記gRNA認識配列の下流の約2~約6ヌクレオチドである、請求項28または請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記gRNAが約17~約23ヌクレオチドを含む、請求項28~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記gRNA認識配列が配列番号37~58のいずれか1つに記載のヌクレオチド配列を含む、請求項28~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記骨ミネラル密度低下が、骨減少症である、請求項20~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記骨ミネラル密度低下が、I型骨粗鬆症である、請求項20~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記骨ミネラル密度低下が、II型骨粗鬆症である、請求項20~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記骨ミネラル密度低下が、続発性骨粗鬆症である、請求項20~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記治療剤が、アレンドロネート、イバンドロネート、ゾレドロネート、リセドロネート、カルシトニン、テリパラチド、デノスマブ、エストロゲン及びプロゲステロン、ラロキシフェン、またはそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項20~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
骨ミネラル密度低下を発症する高いリスクを有する対象を特定する方法であって、前記方法が、
前記対象から得られた生体試料にて分化抗原群109(CD109)の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子の存在または非存在を決定すること、または決定したことを含み;
その際、
前記対象がCD109基準である場合、前記対象は骨ミネラル密度低下を発症する高いリスクを有し;且つ
前記対象が前記CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードする前記CD109ミスセンス変異体核酸分子についてヘテロ接合型またはホモ接合型である場合、前記対象は骨ミネラル密度低下を発症する低いリスクを有する、前記方法。
【請求項40】
前記CD109ミスセンス変異体核酸分子が、スプライス部位変異体、ストップゲイン変異体、スタートロス変異体、ストップロス変異体、フレームシフト変異体、もしくはインフレームインデル変異体、または切断型のCD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードする変異体である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記CD109の予測される機能喪失型変異体核酸分子が、6:73730573:A:G、6:73823473:GA:G、6:73763607:C:A、6:73803256:G:T、6:73818486:T:C、6:73787379:G:A、6:73771510:A:G、6:73806987:A:T、6:73758991:A:G、6:73823456:A:G 6:73762778:A:C、6:73763660:A:G、6:73730573:A:G、6:73806956:G:A、6:73792628:G:C、6:73806926:A:T、6:73771576:G:A、6:73815026:C:T、6:73765952:G:Aまたはそれから産生されるmRNA分子、もしくは前記mRNA分子から産生されるcDNA分子である、請求項39または請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記CD109ミスセンス変異体核酸分子が、切断型のCD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードする、請求項39または請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記対象がCD109基準であり、前記対象が、標準的な投与量で骨ミネラル密度低下を治療または阻害する前記治療剤を投与される、または投与され続ける、且つCD109阻害剤を投与される、請求項39~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記対象がCD109ミスセンス変異体核酸分子についてヘテロ接合型であり、前記対象が、標準的な投与量と同じまたはそれより少ない量で骨ミネラル密度低下を治療または阻害する前記治療剤を投与される、または投与され続ける、且つCD109阻害剤を投与される、請求項39~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記CD109阻害剤が、CD109核酸分子とハイブリダイズする阻害性核酸分子を含む、請求項43または請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記阻害性核酸分子が、アンチセンス核酸分子、低分子干渉RNA(siRNA)、またはショートヘアピンRNA(shRNA)を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記CD109阻害剤が、Casタンパク質と、CD109ゲノム核酸分子内のガイドRNA(gRNA)認識配列とハイブリダイズするgRNAとを含む、請求項43または請求項44に記載の方法。
【請求項48】
前記Casタンパク質がCas9またはCpf1である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記gRNA認識配列が配列番号1内に位置する、請求項47または請求項48に記載の方法。
【請求項50】
プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列が、前記gRNA認識配列の下流の約2~約6ヌクレオチドである、請求項47または請求項48に記載の方法。
【請求項51】
前記gRNAが、約17~約23ヌクレオチドを含む、請求項46~50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記gRNA認識配列が配列番号37~58のいずれか1つに記載のヌクレオチド配列を含む、請求項46~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記骨ミネラル密度低下が、骨減少症である、請求項39~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
前記骨ミネラル密度低下が、I型骨粗鬆症である、請求項39~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記骨ミネラル密度低下が、II型骨粗鬆症である、請求項39~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
前記骨ミネラル密度低下が、続発性骨粗鬆症である、請求項39~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記治療剤が、アレンドロネート、イバンドロネート、ゾレドロネート、リセドロネート、カルシトニン、テリパラチド、デノスマブ、エストロゲン及びプロゲステロン、ラロキシフェン、またはそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項39~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
骨ミネラル密度低下を治療または阻害する治療剤であって、
分化抗原群109(CD109)の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体ゲノム核酸分子、
CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体mRNA分子、または
CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体cDNA分子を有する対象における、
骨ミネラル密度低下の治療に使用するための前記治療剤。
【請求項59】
前記骨ミネラル密度低下が、骨減少症である、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記骨ミネラル密度低下が、I型骨粗鬆症である、請求項58に記載の方法。
【請求項61】
前記骨ミネラル密度低下が、II型骨粗鬆症である、請求項58に記載の方法。
【請求項62】
前記骨ミネラル密度低下が、続発性骨粗鬆症である、請求項58に記載の方法。
【請求項63】
前記治療剤が、アレンドロネート、イバンドロネート、ゾレドロネート、リセドロネート、カルシトニン、テリパラチド、デノスマブ、エストロゲン及びプロゲステロン、またはラロキシフェンから選択される、請求項58に記載の方法。
【請求項64】
分化抗原群109(CD109)阻害剤であって、
a)CD109ゲノム核酸分子、CD109 mRNA分子、もしくはCD109 cDNA分子について基準であるか、または
b)
i)CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体ゲノム核酸分子;
ii)CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体mRNA分子;もしくは
iii)CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体cDNA分子についてヘテロ接合型である対象における、骨ミネラル密度低下の治療に使用するための、
前記分化抗原群109(CD109)阻害剤。
【請求項65】
前記骨ミネラル密度低下が、骨減少症である、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記骨ミネラル密度低下が、I型骨粗鬆症である、請求項64に記載の方法。
【請求項67】
前記骨ミネラル密度低下が、II型骨粗鬆症である、請求項64に記載の方法。
【請求項68】
前記骨ミネラル密度低下が、続発性骨粗鬆症である、請求項64に記載の方法。
【請求項69】
前記治療剤が、アレンドロネート、イバンドロネート、ゾレドロネート、リセドロネート、カルシトニン、テリパラチド、デノスマブ、エストロゲン及びプロゲステロン、ラロキシフェン、またはそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項64に記載の方法。
【請求項70】
前記CD109阻害剤が、CD109核酸分子とハイブリダイズする阻害性核酸分子を含む、請求項64~69のいずれか1項に記載の方法。
【請求項71】
前記阻害性核酸分子が、アンチセンス核酸分子、低分子干渉RNA(siRNA)、またはショートヘアピンRNA(shRNA)を含む、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記CD109阻害剤が、Casタンパク質と、CD109ゲノム核酸分子内のガイドRNA(gRNA)認識配列とハイブリダイズするgRNAとを含む、請求項64~69のいずれか1項に記載の方法。
【請求項73】
前記Casタンパク質がCas9またはCpf1である、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記gRNA認識配列が配列番号1内に位置する、請求項72または請求項73に記載の方法。
【請求項75】
プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列が、前記gRNA認識配列の下流の約2~約6ヌクレオチドである、請求項72または請求項73に記載の方法。
【請求項76】
前記gRNAが約17~約23ヌクレオチドを含む、請求項72~75のいずれか1項に記載の方法。
【請求項77】
前記gRNA認識配列が配列番号37~58のいずれか1つに記載のヌクレオチド配列を含む、請求項72~76のいずれか1項に記載の方法。
【請求項78】
前記CD109の予測される機能喪失型変異体核酸分子が、6:73730573:A:G、6:73823473:GA:G、6:73763607:C:A、6:73803256:G:T、6:73818486:T:C、6:73787379:G:A、6:73771510:A:G、6:73806987:A:T、6:73758991:A:G、6:73823456:A:G 6:73762778:A:C、6:73763660:A:G、6:73730573:A:G、6:73806956:G:A、6:73792628:G:C、6:73806926:A:T、6:73771576:G:A、6:73815026:C:T、6:73765952:G:Aまたはそれから産生されるmRNA分子、もしくは前記mRNA分子から産生されるcDNA分子である、請求項58~77のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表への参照
本出願は、2022年7月28日に作成された18923807402SEQという名称で355キロバイトのサイズのXMLファイルとして電子提出された配列表を含む。この配列表は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して分化抗原群109(CD109)阻害剤による、骨ミネラル密度低下を有する対象の治療、及び骨ミネラル密度低下を発症する高いリスクを有する対象を特定する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
骨の変性状態は、個体に骨折、骨痛、及び他の問題が起こりやすくし得る。骨の著しい変性状態の2つは、骨減少症及び骨粗鬆症である。骨ミネラル密度低下(骨減少症)は、骨粗鬆症よりも重症度が低い骨の状態であり、新しい骨の成長よりも速い速度での骨の喪失に起因する骨質量の減少を特徴とする。骨減少症は、ミネラル密度が正常なピーク骨ミネラル密度よりも低いが骨粗鬆症において見られるほど低くはない骨において現れる。骨減少症は、骨折、床上安静、骨折固定、関節再建、関節炎などの結果として起こり得る筋活動の減少から生じ得る。骨粗鬆症は、骨の脱灰及び/またはその構造の問題によって徐々に骨が弱化することを特徴とする疾患である。骨粗鬆症は、骨がより破損しやすくなることにより骨に現れる。女性における閉経に関連するホルモン欠乏症、及び男女双方における老化によるホルモン欠乏症は、骨の変性状態に寄与する。加えて、骨の成長及び維持に必須であるミネラルの食事性摂取の不足は、骨喪失の潜在的な原因である。骨粗鬆症に対する遺伝的影響も報告されている(非特許文献1)。
【0004】
筋肉の使用が骨に与える影響の一部を再現することによって、骨減少症の影響を緩徐化させ、停止し、さらには逆転させることができる。これは、典型的には、骨に対する機械的応力の影響の何らかの適用またはシミュレーションを含む。骨減少症または骨粗鬆症を治療するための化合物には、骨の成長を誘導するか、もしくは骨の脱灰を遅らせる医薬調製物、または喪失した骨のミネラルを補充するために食事を補完するミネラル複合体が含まれる。女性における低レベルのエストロゲン、及び男性における低レベルのアンドロゲンは、それぞれの性別において骨粗鬆症を引き起こす主要なホルモン欠乏症である。甲状腺ホルモン、プロゲステロン、及びテストステロンのような他のホルモンも、骨の健康に寄与する。したがって、前述のホルモン化合物は、合成的に開発され、または非哺乳動物供給源から抽出され、骨粗鬆症を治療するための治療薬へと調合されている。ヨウ素、亜鉛、マンガン、ホウ素、ストロンチウム、ビタミンD3、カルシウム、マグネシウム、ビタミンK、リン、及び銅を含有するミネラル補充調製物も、そのようなミネラルの食事性摂取の不足を補完するために使用されている。しかしながら、長期ホルモン療法は、がんリスクの増加などの望ましくない副作用を有する。加えて、提案されるミネラル及びホルモン補充剤の多くは、実際に骨折のリスクを低下させることができるかどうか不確かである。さらに、多くの合成ホルモンまたは非哺乳動物ホルモンを使用する療法は、心血管障害、神経障害、または既往症の悪化のリスク増加のような、さらなる望ましくない副作用を有する。
【0005】
分化抗原群109(CD109)は、チオエステル含有タンパク質のアルファ2-マクログロブリン/補体(AMCOM)ファミリーのメンバーである。このグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)結合糖タンパク質は、血小板、活性化T細胞、及び内皮細胞の表面に局在する。加えて、CD109は、造血細胞系統及び一部の上皮細胞で発現される。CD109タンパク質は、ケラチノサイトのトランスフォーミング成長因子ベータ(TGF-β)に結合し、それによりシグナル伝達を負に調節し、さらにTGF-βRI及びTGF-βRIIとも結合する。さらに、CR109は、AMCOMファミリーの大半のメンバーのようにプロテアーゼ阻害剤として機能するであろう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Morris et al.,Nature Genet.,2019,51,258-266
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、骨ミネラル密度低下を有するまたは骨ミネラル密度低下を発症するリスクのある対象を治療する方法を提供し、該方法は対象にCD109阻害剤を投与することを含む。
【0008】
本開示はまた、骨減少症を有するまたは骨減少症を発症するリスクのある対象を治療する方法も提供し、該方法は対象にCD109阻害剤を投与することを含む。
本開示はまた、I型骨粗鬆症を有するまたはI型骨粗鬆症を発症するリスクのある対象を治療する方法も提供し、該方法は対象にCD109阻害剤を投与することを含む。
【0009】
本開示はまた、II型骨粗鬆症を有するまたはII型骨粗鬆症を発症するリスクのある対象を治療する方法も提供し、該方法は対象にCD109を投与することを含む。
本開示はまた、続発性骨粗鬆症を有するまたは続発性骨粗鬆症を発症するリスクのある対象を治療する方法も提供し、該方法は対象にCD109阻害剤を投与することを含む。
【0010】
本開示はまた、骨ミネラル密度低下を治療または阻害する治療剤で対象を治療する方法も提供し、該対象は、骨ミネラル密度低下を有するまたは骨ミネラル密度低下を発症するリスクがあり、該方法は、該対象がCD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子を有するかどうかを、該対象から生体試料を得ることまたは得たこと、及び該対象がCD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードする該CD109ミスセンス変異体核酸分子を含む遺伝子型を有するかどうかを決定するために該生体試料にて配列分析を実施することまたは実施したことによって決定する工程;ならびにi)CD109基準である対象に、標準的な投与量で骨ミネラル密度低下を治療もしくは阻害する該治療剤を投与する、もしくは投与し続ける、及び/または該対象にCD109阻害剤を投与する工程;ii)該CD109ミスセンス変異体核酸分子についてヘテロ接合型である対象に、標準的な投与量と同じもしくはそれより少ない量で骨ミネラル密度低下を治療もしくは阻害する該治療剤を投与する、もしくは投与し続ける、及び/または該対象にCD109阻害剤を投与する工程;またはiii)該CD109ミスセンス変異体核酸分子についてホモ接合型である対象に、標準的な投与量と同じもしくはそれより少ない量で骨ミネラル密度低下を治療もしくは阻害する該治療剤を投与する、もしくは投与し続ける工程を含み;該CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードする該CD109ミスセンス変異体核酸分子を有する遺伝子型の存在は、該対象が骨ミネラル密度低下を発症する低いリスクを有することを示す。
【0011】
本開示はまた、骨ミネラル密度低下を発症する高いリスクを有する対象を特定する方法も提供し、該方法は、該対象から得られた生体試料にてCD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子の存在または非存在を決定すること、または決定したことを含み;該対象がCD109基準である場合、該対象は骨ミネラル密度低下を発症する高いリスクを有し;且つ該対象が該CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードする該CD109ミスセンス変異体核酸分子についてヘテロ接合型またはホモ接合型である場合、該対象は骨ミネラル密度低下を発症する低いリスクを有する。
【0012】
本開示はまた、骨ミネラル密度低下を治療または阻害する治療剤であって、CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体ゲノム核酸分子、CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体mRNA分子、またはCD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体cDNA分子を有する対象における、骨ミネラル密度低下の治療に使用するための該治療剤も提供する。
【0013】
本開示はまた、CD109阻害剤であって、a)CD109ゲノム核酸分子、CD109 mRNA分子、もしくはCD109 cDNA分子について基準であるか、またはb)i)CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体ゲノム核酸分子;ii)CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体mRNA分子;もしくはiii)CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体cDNA分子についてヘテロ接合型である対象における、骨ミネラル密度低下の治療に使用するための、該CD109阻害剤も提供する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の態様に関する種々の用語が本明細書及びクレームの全体を通して使用されている。特に指示されない限り、そのような用語には当該技術分野における通常の意味を付与するものとする。具体的に定義されている他の用語は、本明細書に示されている定義と一致する形で解釈されるものとする。
【0015】
別段に明示的な定めのない限り、本明細書に示されているいずれの方法または態様も、その工程を特定の順序で行う必要があるものとして解釈するようには決して意図されていない。したがって、方法クレームが、工程を特定の順序に限定すべきことをクレームまたは説明にて具体的に定めていない場合には、いかなる点においても、順序を定めるようには決して意図されていない。このことは、工程もしくは作業フローの手筈に関する論理事項、文法構成もしくは句読法に由来する一般的意味、または本明細書に記載されている態様の数もしくは種類を含め、あらゆる考え得る非明示的な解釈基準についても同様である。
【0016】
本明細書で使用する場合、文脈上明らかに別段に示されている場合を除き、「a」、「an」及び「the」という単数形には、複数の参照対象が含まれる。
本明細書で使用されるとき、「約」という用語は、引用された数値が概算であり、小さな変動が開示された実施形態の実践に有意に影響を及ぼさないことを意味する。数値が使用される場合、文脈によって別段の指示がない限り、「約」という用語は、数値が±10%変動し、開示された実施形態の範囲内に留まることができることを意味する。
【0017】
本明細書で使用されるとき、「comprising(含む)」という用語は、特定の実施形態では、所望に応じて、「consisting(成る)」または「consisting essentially of(から本質的に成る)」と置き換えてもよい。
【0018】
本明細書で使用されるとき、核酸分子またはポリペプチドに関して、「単離された」という用語は、核酸分子またはポリペプチドが、例えば、血液及び/または動物組織から離れて、その本来の環境以外の状態にあることを意味する。いくつかの実施形態では、単離された核酸分子またはポリペプチドは、他の核酸分子または他のポリペプチド、特に動物起源の他の核酸分子またはポリペプチドを実質的に含まない。いくつかの実施形態では、核酸分子またはポリペプチドは、高度に精製された形態、すなわち、95%を超えて純粋または99%を超えて純粋であることができる。この文脈で使用される場合、「単離された」という用語は、二量体または交互にリン酸化もしくは誘導体化された形態のような代わりの物理的形態における同じ核酸分子またはポリペプチドの存在を排除しない。
【0019】
本明細書で使用するとき、「核酸」、「核酸分子」、「核酸配列」、「ポリヌクレオチド」、または「オリゴヌクレオチド」という用語は、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を含むことができ、DNA及び/またはRNAを含むことができ、且つ一本鎖、二本鎖または多重鎖であることができる。核酸の一方の鎖はその相補体も指す。
【0020】
本明細書で使用されるとき、「対象」という用語は、哺乳動物を含む任意の動物を含む。哺乳動物には、家畜(例えば、ウマ、ウシ、ブタ)、ペット動物(例えば、イヌ、ネコ)、実験動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ)、及び非ヒト霊長類が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。いくつかの実施形態では、ヒトは、医師のケア下にある患者である。
【0021】
本開示に従って、CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子(これらの変異が特定の対象においてホモ接合型であるかヘテロ接合型であるかにかかわらず)は、骨ミネラル密度低下を発症する低下したリスクと関連することが観察されている。骨ミネラル密度に対するCD109の関与の詳細または方向性は不明である。本明細書に提示されるデータは、CD109における稀な、非同義/機能喪失型変異体が、骨ミネラル密度低下を発症する低下したリスクと関連することを示す第1のデータである。したがって、CD109基準であるか、またはCD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子についてヘテロ接合型である対象は、骨ミネラル密度低下が阻害され、その症状が軽減され、及び/または症状の発症が抑制されるようにCD109阻害剤で治療され得る。骨ミネラル密度低下を有するそのような対象は、骨ミネラル密度低下を治療または阻害する治療剤でさらに治療され得るとも考えられる。
【0022】
本開示の目的のために、ヒトのような任意の特定の対象は、3つのCD109遺伝子型:i)CD109基準;ii)CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子についてヘテロ接合型;またはiii)CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子についてホモ接合型のうちの1つを有するものとして分類することができる。対象がCD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子のコピーを有しない場合、対象はCD109基準である。対象がCD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子の単一コピーを有する場合、対象は、CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子についてヘテロ接合型である。CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子は、部分的な機能喪失、完全な機能喪失、予測される部分的な機能喪失、または予測される完全な機能喪失を有する変異体CD109ポリペプチドをコードする任意の核酸分子(例えば、ゲノム核酸分子、mRNA分子、またはcDNA分子)である。部分的な機能喪失(または予測される部分的な機能喪失)を有するCD109ポリペプチドを有する対象は、CD109について低形質性である。対象がCD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子の2コピー(同じまたは異なる)を有する場合、対象はCD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子についてホモ接合型である。
【0023】
CD109基準であると遺伝子型決定されている、または決定されている対象については、そのような対象は、骨減少症、I型骨粗鬆症、II型骨粗鬆症、及び/または続発性骨粗鬆症のような骨ミネラル密度低下を発症する高いリスクを有する。CD109基準であるまたはCD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子についてヘテロ接合型であると遺伝子型決定されている、または決定されている対象については、そのような対象または対象は、CD109阻害剤で治療することができる。
【0024】
本明細書に記載されている実施形態のいずれかでは、CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子は、部分的な機能喪失、完全な機能喪失、予測される部分的な機能喪失、または予測される完全な機能喪失を有するCD109変異体ポリペプチドをコードする任意の核酸分子(例えば、ゲノム核酸分子、mRNA分子、またはcDNA分子)であることができる。いくつかの実施形態では、CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子は、基準CD109と比較して、CD109リガンドに対する試験管内応答の低下と関連付けられる。いくつかの実施形態では、CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子は、ヒト参照ゲノム配列と比較して、CD109ポリペプチドの時期尚早の切断をもたらす、またはもたらすと予測される、CD109変異体である。いくつかの実施形態では、CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子は、Polyphen、SIFT、または同様のアルゴリズムなどの試験管内予測アルゴリズムによって損傷を与えると予測される変異体である。いくつかの実施形態では、CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子は、CD109において非同義アミノ酸置換を引き起こす、または引き起こすと予測される変異体であり、その対立遺伝子の頻度は、対象が選択される母集団において1/100対立遺伝子より少ない。いくつかの実施形態では、CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子は、任意の稀なミスセンス変異体(対立遺伝子頻度<0.1%;または1,000対立遺伝子に1つ)、または任意のスプライス部位、ストップゲイン、スタートロス、ストップロス、フレームシフト、もしくはインフレームインデル、もしくはその他のフレームシフトCD109変異体である。
【0025】
本明細書に記載されている実施形態のいずれかでは、CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドは、部分的な機能喪失、完全な機能喪失、予測される部分的な機能喪失、または予測される完全な機能喪失を有する任意のCD109ポリペプチドであり得る。
【0026】
本明細書に記載されている実施形態のいずれかでは、CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子は、参照配列としてCD109基準ゲノム核酸分子のヌクレオチド配列を使用する6番染色体の位置(配列番号1;GRCh38/hg38ヒトゲノムアセンブリ中のENSG00000156535.15 chr6:73,695,785-73,828,316)における変異を含み得る。
【0027】
CD109ポリペプチド配列において後続の変化を引き起こすCD109における多数の遺伝子変異体が存在し、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:6:73730573:A:G、6:73823473:GA:G(p.Ser1394fs、p.Ser1317fs、p.Ser1377fs)、6:73763607:C:A(p.Phe343Leu、p.Phe266Leu、p.Phe343Leu)、6:73803256:G:T(p.Gly972Val、p.Gly895Val、p.Gly972Val)、6:73818486:T:C(p.Val1337Ala、p.Val1260Ala、p.Val1320Ala)、6:73787379:G:A(p.Gly828Glu、p.Gly751Glu、p.Gly828Glu)、6:73771510:A:G(p.Ile586Val、p.Ile509Val、p.Ile586Val)、6:73806987:A:T(p.His1035Leu、p.His958Leu、p.His1035Leu)、6:73758991:A:G(p.Met241Val、p.Met164Val、p.Met241Val)、6:73823456:A:G 6:73762778:A:C(p.Glu298Ala、p.Glu221Ala、p.Glu298Ala)、6:73763660:A:G(p.Lys361Arg、p.Lys284Arg、p.Lys361Arg)、6:73730573:A:G(p.Lys169Arg、p.Lys169Arg)、6:73806956:G:A(p.Gly1025Ser、p.Gly948Ser、p.Gly1025Ser)、6:73792628:G:C(p.Asp902His、p.Asp825His、p.Asp902His)、6:73806926:A:T(p.Thr1015Ser、p.Thr938Ser、p.Thr1015Ser)、6:73771576:G:A(p.Glu608Lys、p.Glu531Lys、p.Glu608Lys)、6:73815026:C:T(p.Arg1272、p.Arg1195、p.Arg1255)、6:73765952:G:A(p.Gly377Asp、p.Gly300Asp、p.Gly377Asp)。
【0028】
CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子の任意の1つ以上(すなわち、任意の組み合わせ)を、本明細書に記載されている方法のいずれかで使用して、対象が骨ミネラル密度低下を発症する高いリスクを有するかどうかを決定することができる。特定の変異体の組み合わせは、CD109と、骨ミネラル密度低下を発症するリスクの増加との特定の相関を統計的に分析するために使用されるマスクを形成することができる。
【0029】
本明細書に記載されている実施形態のいずれかでは、骨ミネラル密度低下は、骨減少症、I型骨粗鬆症、II型骨粗鬆症、及び/または続発性骨粗鬆症である。いくつかの実施形態では、骨ミネラル密度低下は、骨減少症である。いくつかの実施形態では、骨ミネラル密度低下は、I型骨粗鬆症である。いくつかの実施形態では、骨ミネラル密度低下は、II型骨粗鬆症である。いくつかの実施形態では、骨ミネラル密度低下は、続発性骨粗鬆症である。
【0030】
骨ミネラル密度低下の症状は、骨脆弱性の増加(軽度から中程度の外傷の結果として骨折として現れる)、骨密度の低下、骨折の領域における局所的な骨の疼痛及び弱さ、身長の減少もしくは姿勢の変化(前かがみになるなど)、血液検査における高レベルの血清カルシウムもしくはアルカリホスファターゼ、ビタミンD欠乏、及び関節もしくは筋肉の痛み、またはそれらのいずれかの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0031】
本開示は、骨ミネラル密度低下を有するまたは骨ミネラル密度低下を発症するリスクのある対象を治療する方法を提供し、該方法は対象にCD109阻害剤を投与することを含む。
【0032】
本開示はまた、骨減少症を有するまたは骨減少症を発症するリスクのある対象を治療する方法も提供し、該方法は対象にCD109阻害剤を投与することを含む。
本開示はまた、I型骨粗鬆症を有するまたはI型骨粗鬆症を発症するリスクのある対象を治療する方法も提供し、該方法は対象にCD109阻害剤を投与することを含む。
【0033】
本開示はまた、II型骨粗鬆症を有するまたはII型骨粗鬆症を発症するリスクのある対象を治療する方法も提供し、該方法は対象にCD109を投与することを含む。
本開示はまた、続発性骨粗鬆症を有するまたは続発性骨粗鬆症を発症するリスクのある対象を治療する方法も提供し、該方法は対象にCD109阻害剤を投与することを含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、CD109阻害剤は、阻害性核酸分子を含む。阻害性核酸分子の例は、アンチセンス核酸分子、低分子干渉RNA(siRNA)、及びショートヘアピンRNA(shRNA)を含むが、これらに限定されない。そのような阻害性核酸分子は、CD109核酸分子の任意の領域を標的とするように設計することができる。いくつかの実施形態では、アンチセンスRNA、siRNA、またはshRNAは、CD109ゲノム核酸分子またはmRNA分子内の配列とハイブリダイズし、対象の細胞にてCD109ポリペプチドの発現を低下させる。いくつかの実施形態では、CD109阻害剤には、CD109ゲノム核酸分子またはmRNA分子とハイブリダイズし、対象の細胞にてCD109ポリペプチドの発現を低下させるアンチセンス分子が含まれる。いくつかの実施形態では、CD109阻害剤には、CD109ゲノム核酸分子またはmRNA分子とハイブリダイズし、対象の細胞にてCD109ポリペプチドの発現を低下させるsiRNAが含まれる。いくつかの実施形態では、CD109阻害剤には、CD109ゲノム核酸分子またはmRNA分子とハイブリダイズし、対象の細胞にてCD109ポリペプチドの発現を低下させるshRNAが含まれる。
【0035】
阻害性核酸分子は、RNA、DNA、またはRNAとDNAの双方を含むことができる。阻害性核酸分子を、例えばベクターにおける異種核酸配列、または異種標識に連結させる、または融合させることもできる。例えば、阻害性核酸分子は、阻害性核酸分子と異種核酸配列とを含むベクター内に、またはそれらを含む外来性ドナー配列として存在してもよい。阻害性核酸分子を異種標識に連結させる、または融合させることもできる。標識は、直接検出可能(例えば、蛍光色素分子)であることができる、または間接的に検出可能(例えば、ハプテン、酵素、または蛍光色素分子消光剤)であることができる。そのような標識は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、または化学的な手段によって検出可能であることができる。そのような標識には、例えば、放射性標識、顔料、染料、色原体、スピン標識、及び蛍光標識が挙げられる。標識はまた、例えば、化学発光物質;金属含有物質;または酵素であることもでき、その際、シグナルの酵素依存性の二次生成が発生する。「標識」という用語はまた、結合分子が、続いて基質とともに添加されると、検出可能なシグナルを生成するために使用されるように結合分子に選択的に結合することができる「タグ」またはハプテンを指すこともできる。例えば、ビオチンは、タグに結合するための西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)のアビジン結合体またはストレプトアビジン結合体と一緒にタグとして使用し、比色測定基質(例えば、テトラメチルベンジジン(TMB))または蛍光発生基質を使用して調べてHRPの存在を検出することができる。精製を促進するためのタグとして使用することができる例示的な標識には、myc、HA、FLAGまたは3×FLAG、6×Hisまたはポリヒスチジン、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質、エピトープタグ、または免疫グロブリンのFc部分が挙げられるが、これらに限定されない。多数の標識には、例えば、粒子、蛍光色素分子、ハプテン、酵素ならびにそれらの比色性、蛍光性及び化学発光性の基質、ならびに他の標識が挙げられる。
【0036】
阻害性核酸分子は、例えば、ヌクレオチド、または、例えば、ヌクレオチド類似体もしくはヌクレオチド置換体のような非天然ヌクレオチドもしくは修飾ヌクレオチドを含むことができる。そのようなヌクレオチドには、修飾された塩基、糖、もしくはリン酸基を含有するヌクレオチド、またはその構造内に非天然部分を組み込んでいるヌクレオチドが含まれる。非天然ヌクレオチドの例には、ジデオキシヌクレオチド、ビオチン化ヌクレオチド、アミノ化ヌクレオチド、脱アミノ化ヌクレオチド、アルキル化ヌクレオチド、ベンジル化ヌクレオチド、及び蛍光色素分子標識ヌクレオチドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
阻害性核酸分子は、1以上のヌクレオチド類似体またはヌクレオチド置換体を含むこともできる。ヌクレオチド類似体は、塩基、糖、またはリン酸の部分のいずれかに対する修飾を含有するヌクレオチドである。塩基部分への修飾としては、限定するものではないが、A、C、G、及びT/Uの天然修飾及び合成修飾、ならびに異なるプリン塩基またはピリミジン塩基(例えば、シュードウリジン、ウラシル-5-イル、ヒポキサンチン-9-イル(I)、及び2-アミノアデニン-9-イルなど)が挙げられる。修飾された塩基には、5-メチルシトシン(5-me-C)、5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、アデニン及びグアニンの6-メチル誘導体及び他のアルキル誘導体、アデニン及びグアニンの2-プロピル誘導体及び他のアルキル誘導体、2-チオウラシル、2-チオチミン、及び2-チオシトシン、5-ハロウラシル及びシトシン、5-プロピニルウラシル及びシトシン、6-アゾウラシル、シトシン及びチミン、5-ウラシル(シュードウラシル)、4-チオウラシル、8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシル及び他の8-置換アデニン及びグアニン、5-ハロ(例えば、5-ブロモ等)、5-トリフルオロメチル及び他の5-置換ウラシル及びシトシン、7-メチルグアニン、7-メチルアデニン、8-アザグアニン、8-アザアデニン、7-デアザグアニン、7-デアザアデニン、3-デアザグアニン、及び3-デアザアデニンが含まれるがこれらに限定されない。
【0038】
ヌクレオチド類似体にはまた、糖部位の修飾が含まれ得る。糖部位に対する修飾には、リボース及びデオキシリボースの天然修飾ならびに合成修飾が含まれるがこれらに限定されない。糖修飾には、2’位での以下の修飾:OH;F;O-、S-、またはN-アルキル;O-、S-、またはN-アルケニル;O-、S-またはN-アルキニル;またはO-アルキル-O-アルキルが含まれるがこれらに限定されず、アルキル、アルケニル、及びアルキニルは、置換または非置換C1-10アルキルまたはC2-10アルケニル、及びC2-10アルキニルであり得る。例示的な2’糖修飾にはまた、-O[(CHO]CH、-O(CHOCH、-O(CHNH、-O(CHCH、-O(CH-ONH、及び-O(CHON[(CHCH)](n及びmは、独立して、1~約10である)が含まれるがこれらに限定されない。2’位置における他の修飾には、C1-10アルキル、置換低級アルキル、アルカリール、アラルキル、O-アルカリールまたはO-アラルキル、SH、SCH、OCN、Cl、Br、CN、CF、OCF、SOCH、SOCH、ONO、NO、N、NH、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリール、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA切断基、レポーター基、インターカレーター、オリゴヌクレオチドの薬物動態特性を改善するための基、またはオリゴヌクレオチドの薬力学的特性を改善するための基、及び同様の特性を有する他の置換基が含まれるがこれらに限定されない。同様の修飾はまた、糖上の他の位置、特に3’末端ヌクレオチド上または2’-5’結合オリゴヌクレオチドにおける糖の3’位、及び5’末端ヌクレオチドの5’位で行われ得る。修飾された糖は、CH及びSのような架橋環酸素での修飾を含有するものも含むことができる。ヌクレオチド糖類似体はペントフラノシル糖の代わりにシクロブチル部分のような糖模放体を有することもできる。
【0039】
ヌクレオチド類似体はまた、リン酸部位で修飾され得る。修飾されたリン酸部位には、2つのヌクレオチド間の結合が、ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、メチルホスホネート及び他のアルキルホスホネート(3’-アルキレンホスホネート及びキラルホスホネートを含む)、ホスフィネート、ホスホロアミデート(3’-アミノホスホロアミデート及びアミノアルキルホスホロアミデートを含む)、チオノホスホロアミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、ならびにボラノホスフェートを含有するように修飾され得るものが含まれるがこれらに限定されない。2つのヌクレオチド間のこれらのリン酸結合または修飾されたリン酸結合は、3’-5’結合または2’-5’結合を介するものであり得、結合は、逆向きの極性(3’-5’から5’-3’へまたは2’-5’から5’-2’へ等)を含有し得る。種々の塩、混合塩、及び遊離酸の形態も含まれる。ヌクレオチド置換体にはペプチド核酸(PNA)も含まれる。
【0040】
いくつかの実施形態では、アンチセンス核酸分子はギャップマーであり、それによって5’末端及び3’末端の最初の1~7ヌクレオチドは、それぞれ2’-メトキシエチル(2’-MOE)修飾を有する。いくつかの実施形態では、5’末端及び3’末端の最初の5ヌクレオチドは、それぞれ2’-MOE修飾を有する。いくつかの実施形態では、5’末端及び3’末端の最初の1~7ヌクレオチドは、RNAヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、5’末端及び3’末端の最初の5ヌクレオチドは、RNAヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド間の骨格結合のそれぞれは、ホスホロチオエート結合である。
【0041】
いくつかの実施形態では、siRNA分子は末端修飾を有する。いくつかの実施形態において、アンチセンス鎖の5’端は、リン酸化される。いくつかの実施形態において、加水分解することができない5’リン酸塩類似体(5’-(E)-ビニル-ホスホネート等)が使用される。
【0042】
いくつかの実施形態において、siRNA分子は、骨格修飾を有する。いくつかの実施形態では、連続するリボースヌクレオシドを連結する修飾ホスホジエステル基は、siRNAの安定性及び生体内での生物学的利用能を高めることが示されている。ホスホジエステル結合の非エステル基(-OH、=O)を硫黄、ホウ素、またはアセテートと置き換えて、ホスホロチオエート、ボラノホスフェート、及びホスホノアセテート結合を得ることができる。加えて、ホスホジエステル基をホスホトリエステルで置換することにより、その負電荷を除去することによって、siRNAの細胞取り込み及び血清成分での保持を容易にすることができる。いくつかの実施形態では、siRNA分子は、糖修飾を有する。いくつかの実施形態では、糖は脱プロトン化され(エキソヌクレアーゼ及びエンドヌクレアーゼによって触媒される反応)、それによって2’-ヒドロキシルが求核剤として作用し、ホスホジエステル結合の隣接するリンを攻撃することができる。かかる代替物には、2’-O-メチル、2’-O-メトキシエチル、及び2’-フルオロ修飾が挙げられる。
【0043】
いくつかの実施形態では、siRNA分子は塩基修飾を有する。いくつかの実施形態では、塩基は、シュードウリジン、5’-メチルシチジン、N6-メチルアデノシン、イノシン、及びN7-メチルグアノシンなどの修飾塩基で置換され得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、siRNA分子は脂質に結合される。脂質はsiRNAの5’末端または3’末端に結合することができ、それらを血清リポタンパク質と会合させることにより、生体内での生物学的利用能を向上させることができる。代表的な脂質には、コレステロール及びビタミンE、ならびに脂肪酸、例えば、パルミチン酸、及びトコフェロールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
いくつかの実施形態では、代表的なsiRNAは以下の式:
センス:mNmN/i2FN/mN/i2FN/mN/i2FN/mN/i2FN/mN/i2FN/mN/i2FN/mN/i2FN/mN/i2FN/mN/32FN/アンチセンス:/52FN//i2FN/mN/i2FN/mN/i2FN/mN/i2FN/mN/i2FN/mN/i2FN/mN/i2FN/mN/i2FN/mN/i2FN/mN
を有し、式中、「N」は塩基であり;「2F」は2’-F修飾であり;「m」は2’-O-メチル修飾であり;「I」は内部塩基であり;「」はホスホロチオエート骨格結合である。
【0046】
本開示は、阻害性核酸分子のいずれか1以上を含むベクターも提供する。いくつかの実施形態では、ベクターは、阻害性核酸分子のいずれか1以上、及び異種核酸を含む。ベクターは、核酸分子を輸送することが可能なウイルスベクターまたは非ウイルスベクターであり得る。いくつかの実施形態では、ベクターは、プラスミドまたはコスミド(例えば追加のDNAセグメントがライゲーションされ得る環状二本鎖DNAなど)である。いくつかの実施形態では、ベクターは、追加のDNAセグメントがウイルスゲノムにライゲーションされ得る、ウイルスベクターである。発現ベクターとしては、プラスミド、コスミド、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、植物ウイルス、例えば、カリフラワーモザイクウイルス及びタバコモザイクウイルス、酵母人工染色体(YAC)、エプスタイン・バー(EBV)由来エピソーム、ならびに当該技術分野で既知の他の発現ベクターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
本開示は、阻害性核酸分子のいずれか1以上を含む組成物も提供する。いくつかの実施形態では、組成物は医薬組成物である。いくつかの実施形態では、組成物は担体及び/または賦形剤を含む。担体の例には、ポリ(乳酸)(PLA)ミクロスフェア、ポリ(D,L-乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)ミクロスフェア、リポソーム、ミセル、逆ミセル、脂質コクリエート、及び脂質微小管が挙げられるが、これらに限定されない。担体は、PBS、HBSSなどのような緩衝化塩溶液を含んでもよい。
【0048】
いくつかの実施形態では、CD109阻害剤は、CD109の発現を抑制するPI3K阻害剤であるLY294002であるか、またはそれを含む。
いくつかの実施形態では、CD109阻害剤は、CD109ゲノム核酸分子内の認識配列(複数可)または認識配列に結合するDNA結合タンパク質にて1以上のニックまたは二本鎖切断を誘導するヌクレアーゼ剤を含む。認識配列は、CD109遺伝子のコード領域内、または遺伝子の発現に影響を及ぼす調節領域内に配置することができる。DNA結合タンパク質またはヌクレアーゼ剤の認識配列は、イントロン、エクソン、プロモーター、エンハンサー、調節領域、または任意の非タンパク質コード領域に配置することができる。認識配列はCD109遺伝子の開始コドンを含む、またはそれに近接させることができる。例えば、認識配列は、開始コドンから約10、約20、約30、約40、約50、約100、約200、約300、約400、約500、または約1,000ヌクレオチドに配置することができる。別の例として、それぞれが開始コドンを含むまたはそれに近接するヌクレアーゼ認識配列を標的とする2以上のヌクレアーゼ剤を使用することができる。別の例として、1つが開始コドンを含むまたはそれに近接するヌクレアーゼ認識配列を標的とし、もう1つが終止コドンを含むまたはそれに近接するヌクレアーゼ認識配列を標的とする2つのヌクレアーゼ剤を使用することができ、これらのヌクレアーゼ剤による切断は2つのヌクレアーゼ認識配列間のコード領域の欠失を生じることができる。所望の認識配列にニックまたは二本鎖切断を誘導する任意のヌクレアーゼ剤を本明細書で開示されている方法及び組成物において使用することができる。所望の認識配列に結合する任意のDNA結合タンパク質を本明細書で開示されている方法及び組成物において使用することができる。
【0049】
本明細書で使用するのに好適なヌクレアーゼ剤及びDNA結合タンパク質には、ジンクフィンガータンパク質またはジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)対、転写活性化因子様エフェクター(TALE)タンパク質または転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはクラスター化された規則的に散在する短いパリンドローム反復(CRISPR)/CRISPR関連(Cas)システムが挙げられるが、これらに限定されない。認識配列の長さは異なることができるが、例えば、ジンクフィンガータンパク質またはZFN対については約30~36bp、各ZFNについては約15~18bp、TALEタンパク質またはTALENについては約36bp、及びCRISPR/CasガイドRNAについては約20bpである認識配列が挙げられる。
【0050】
いくつかの実施形態では、CRISPR/Casシステムを用いて、細胞内のCD109ゲノム核酸分子を修飾することができる。本明細書で開示されている方法及び組成物は、CD109核酸分子の部位特異的切断のためにCRISPR複合体(Casタンパク質と複合体化したガイドRNA(gRNA)を含む)を利用することによってCRISPR-Cas系を採用することができる。
【0051】
Casタンパク質は一般に、gRNAと相互作用することができる少なくとも1つのRNA認識ドメインまたはRNA結合ドメインを含む。Casタンパク質はまた、ヌクレアーゼドメイン(例えば、DNaseまたはRNaseドメイン)、DNA結合ドメイン、ヘリカーゼドメイン、タンパク質-タンパク質相互作用ドメイン、二量体化ドメイン、及び他のドメインも含むことができる。好適なCasタンパク質には、例えば、野生型Cas9タンパク質及び野生型Cpf1タンパク質(例えば、FnCpf1)が挙げられる。Casタンパク質は、CD109ゲノム核酸分子にて二本鎖切断を作り出すための完全な切断活性を有することができ、または、CD109ゲノム核酸分子にて一本鎖切断を作り出すニッカーゼであり得る。Casタンパク質の追加の例として、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas5e(CasD)、Cas6、Cas6e、Cas6f、Cas7、Cas8a1、Cas8a2、Cas8b、Cas8c、Cas9(Csn1またはCsx12)、Cas10、Cas10d、CasF、CasG、CasH、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1(CasA)、Cse2(CasB)、Cse3(CasE)、Cse4(CasC)、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4、及びCu1966、ならびにその相同体または改変体が挙げられるが、これらに限定されない。Casタンパク質を、融合タンパク質として異種ポリペプチドに操作可能に連結することもできる。例えば、Casタンパク質を、切断ドメイン、エピジェネティック修飾ドメイン、転写活性化ドメイン、または転写抑制因子ドメインに融合させることができる。Casタンパク質は任意の形態で提供することができる。例えば、Casタンパク質を、タンパク質、例えば、gRNAと複合体化したCasタンパク質の形態で提供することができる。あるいは、Casタンパク質を、Casタンパク質をコードする核酸分子、例えば、RNAまたはDNAの形態で提供することができる。
【0052】
いくつかの実施形態では、Casタンパク質と、CD109ゲノム核酸分子における標的ゲノム遺伝子座内の1以上のgRNA認識配列とハイブリダイズする1以上のgRNAとに細胞を接触させることによってCD109ゲノム核酸分子の標的とされた遺伝子組み換えを生成することができる。例えば、gRNA認識配列は配列番号1の領域内に位置することができる。gRNA認識配列は、CD109ゲノム核酸分子の開始コドンもしくはCD109ゲノム核酸分子の終止コドンを含み得るかまたはそれに近接し得る。例えば、gRNA認識配列は開始コドンまたは終止コドンから約10、約20、約30、約40、約50、約100、約200、約300、約400、約500、または約1,000ヌクレオチド離れて位置することができる。
【0053】
CD109ゲノム核酸分子における標的ゲノム遺伝子座内のgRNA認識配列は、Cas9ヌクレアーゼが標的とするDNA配列の直後にある2~6塩基対のDNA配列であるプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列の近くに位置する。標準的なPAMは、配列5’-NGG-3’であり、その際、「N」は任意の核酸塩基であり、その後に2つのグアニン(「G」)核酸塩基が続く。gRNAは遺伝子編集のためにCas9をゲノム内のどこにでも輸送することができるが、Cas9がPAMを認識する部位以外の部位では編集を行うことはできない。加えて、5’-NGA-3’はヒト細胞にとって高度に効率的な非標準的なPAMであることができる。一般に、PAMはgRNAの標的となるDNA配列の下流の約2~6ヌクレオチドである。PAMはgRNA認識配列に隣接することができる。いくつかの実施形態では、gRNA認識配列にPAMを3’末端で隣接させることができる。いくつかの実施形態では、gRNA認識配列にPAMを5’末端で隣接させることができる。例えば、Casタンパク質の切断部位はPAM配列の上流または下流における約1~約10、約2~約5塩基対または3塩基対であることができる。いくつかの実施形態(例えば、S.pyogenes由来のCas9または密接に関連するCas9を使用する場合)では、非相補鎖のPAM配列は5’-NGG-3’であることができ、その際、Nは任意のDNAヌクレオチドであり、標的DNAの非相補鎖のgRNA認識配列の直近の3’側である。したがって、相補鎖のPAM配列は5’-CCN-3’であり、式中、Nは任意のDNAヌクレオチドであり、標的DNAの相補鎖のgRNA認識配列の直近の5’側である。
【0054】
gRNAは、Casタンパク質に結合し、Casタンパク質をCD109ゲノム核酸分子内の特定の位置に標的指向化するRNA分子である。例示的なgRNAは、CD109ゲノム核酸分子に結合するまたはそれを切断するようにCas酵素を誘導するのに有効なgRNAであり、その際、gRNAは、CD109ゲノム核酸分子内のgRNA認識配列とハイブリダイズするDNA標的化セグメントを含む。例示的なgRNAは、開始コドンまたは終止コドンを含むまたはそれに近接するCD109ゲノム核酸分子内に存在するgRNA認識配列とハイブリダイズするDNA標的化セグメントを含む。例えば、gRNAは、開始コドンから約5、約10、約15、約20、約25、約30、約35、約40、約45、約50、約100、約200、約300、約400、約500、または約1,000ヌクレオチド離れて位置するgRNA認識配列と、または終止コドンから約5、約10、約15、約20、約25、約30、約35、約40、約45、約50、約100、約200、約300、約400、約500、または約1,000ヌクレオチド離れて位置するgRNA認識配列とハイブリダイズするように選択することができる。好適なgRNAは約17~約25ヌクレオチド、約17~約23ヌクレオチド、約18~約22ヌクレオチド、または約19~約21ヌクレオチドを含むことができる。いくつかの実施形態では、gRNAは20ヌクレオチドを含むことができる。
【0055】
ヒトCD109基準遺伝子内に位置する好適なgRNA認識配列の例は、配列番号37~58として表1に記述されている。
【0056】
【表1】
【0057】
Casタンパク質とgRNAは複合体を形成し、Casタンパク質は標的CD109ゲノム核酸分子を切断する。Casタンパク質は、gRNAのDNA標的化セグメントが結合する標的CD109ゲノム核酸分子に存在する核酸配列の内部または外部の部位で核酸分子を切断することができる。例えば、CRISPR複合体(gRNA認識配列とハイブリダイズし、Casタンパク質と複合体を形成するgRNAを含む)の形成は、gRNAのDNA標的化セグメントが結合するCD109ゲノム核酸分子に存在する核酸配列内またはその近傍(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、または50以内、またはそれ以上の塩基対以内)において一方または双方の鎖の切断を生じることができる。
【0058】
そのような方法は、例えば、配列番号1のある領域が破壊される、開始コドンが破壊される、終止コドンが破壊される、またはコード配列が破壊されるもしくは欠失するCD109ゲノム核酸分子を生じることができる。任意で、細胞を、CD109ゲノム核酸分子の標的ゲノム遺伝子座内の追加のgRNA認識配列とハイブリダイズする1以上の追加のgRNAとさらに接触させることができる。細胞を1以上の追加のgRNA(例えば、第2のgRNA認識配列とハイブリダイズする第2のgRNA)と接触させることによって、Casタンパク質による切断は2以上の二本鎖切断または2以上の一本鎖切断を作り出すことができる。
【0059】
いくつかの実施形態では、治療方法はさらに、対象からの生体試料にてCD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子の存在または非存在を検出することを含む。本開示全体を通して使用されるとき、「CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子」は、部分的な機能喪失、完全な機能喪失、予測される部分的な機能喪失、または予測される完全な機能喪失を有するCD109ポリペプチドをコードする任意のCD109核酸分子(例えば、ゲノム核酸分子、mRNA分子、またはcDNA分子)である。
【0060】
本開示はまた、骨ミネラル密度低下を治療または阻害する治療剤で対象を治療する方法であって、対象が、骨ミネラル密度低下を有するまたは骨ミネラル密度低下を発症するリスクがある、方法も提供する。いくつかの実施形態では、対象は、骨ミネラル密度低下を有する。いくつかの実施形態では、対象は、骨ミネラル密度低下を発症するリスクがある。いくつかの実施形態では、方法は、対象がCD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子を有するかどうかを、対象から生体試料を得ることまたは得たこと、及び対象がCD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子を含む遺伝子型を有するかどうかを決定するために生体試料にて配列分析を実施することまたは実施したことによって決定することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、CD109基準である対象に、標準的な投与量で骨ミネラル密度低下を治療もしくは阻害する治療剤を投与する、もしくは投与し続ける、及び/または該対象にCD109阻害剤を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、CD109ミスセンス変異体核酸分子についてヘテロ接合型である対象に、標準的な投与量と同じもしくはそれより少ない量で骨ミネラル密度低下を治療もしくは阻害する治療剤を投与する、もしくは投与し続ける、及び/または該対象にCD109阻害剤を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、CD109ミスセンス変異体核酸分子についてホモ接合型である対象に、標準的な投与量と同じまたはそれより少ない量で骨ミネラル密度低下を治療または阻害する治療剤を投与する、または投与し続けることをさらに含む。CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子を有する遺伝子型の存在は、対象が骨ミネラル密度低下を発症する低いリスクを有することを示す。いくつかの実施形態では、対象は、CD109基準である。いくつかの実施形態では、対象は、CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子についてヘテロ接合型である。
【0061】
CD109基準であるまたはCD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子についてヘテロ接合型であると遺伝子型決定されている、または決定されている対象については、そのような対象は、本明細書に記載されているように、CD109阻害剤で治療することができる。
【0062】
対象からの生体試料にてCD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子の存在もしくは非存在を検出すること、及び/または対象がCD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子を有するかどうかを決定することは、本明細書に記載されている方法のいずれかによって実施することができる。いくつかの実施形態では、これらの方法は試験管内で実施することができる。いくつかの実施形態では、これらの方法は原位置で実施することができる。いくつかの実施形態では、これらの方法は生体内で実施することができる。これらの実施形態のいずれかでは、該核酸分子は、該対象から得られる細胞内に存在し得る。
【0063】
いくつかの実施形態では、対象がCD109基準である場合、対象は、標準的な投与量で骨ミネラル密度低下を治療するまたは阻害する治療剤を投与される。いくつかの実施形態では、対象がCD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子についてヘテロ接合型である場合、対象は、標準的な投与量と同じまたはそれより少ない投与量で骨ミネラル密度低下を治療するまたは阻害する治療剤を投与される。
【0064】
いくつかの実施形態では、治療方法はさらに、対象からの生体試料にてCD109の予測される機能喪失型ポリペプチドの存在または非存在を検出することを含む。いくつかの実施形態では、対象がCD109の予測される機能喪失型ポリペプチドを有しない場合、対象は、標準的な投与量で骨ミネラル密度低下を治療するまたは阻害する治療剤を投与される。いくつかの実施形態では、対象がCD109の予測される機能喪失型ポリペプチドを有する場合、対象は、標準的な投与量と同じまたはそれより少ない投与量で骨ミネラル密度低下を治療するまたは阻害する治療剤を投与される。
【0065】
本開示はまた、骨ミネラル密度低下を治療または阻害する治療剤で対象を治療する方法であって、対象が、骨ミネラル密度低下を有するまたは骨ミネラル密度低下を発症するリスクがある、方法も提供する。いくつかの実施形態では、対象は、骨ミネラル密度低下を有する。いくつかの実施形態では、対象は、骨ミネラル密度低下を発症するリスクがある。いくつかの実施形態では、方法は、対象がCD109の予測される機能喪失型ポリペプチドを有するかどうかを、対象から生体試料を得ることまたは得たこと、及び対象がCD109の予測される機能喪失型ポリペプチドを有するかどうかを決定するために生体試料にてアッセイを実施することまたは実施したことによって決定することを含む。対象がCD109の予測される機能喪失型ポリペプチドを有しない場合、骨ミネラル密度低下を治療もしくは阻害する治療剤が、標準的な投与量で対象に投与される、もしくは投与され続ける、及び/またはCD109阻害剤が対象に投与される。対象がCD109の予測される機能喪失型ポリペプチドを有する場合、骨ミネラル密度低下を治療もしくは阻害する治療剤が、標準的な投与量と同じもしくはそれより少ない量で対象に投与される、もしくは投与され続ける、及び/またはCD109阻害剤が対象に投与される。CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドの存在は、対象が骨ミネラル密度低下を発症する低いリスクを有することを示す。いくつかの実施形態では、対象は、CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドを有する。いくつかの実施形態では、対象は、CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドを有しない。
【0066】
対象からの生体試料にてCD109の予測される機能喪失型ポリペプチドの存在もしくは非存在を検出すること、及び/または対象がCD109の予測される機能喪失型ポリペプチドを有するかどうかを決定することは、本明細書に記載されている方法のいずれかによって実施することができる。いくつかの実施形態では、これらの方法は試験管内で実施することができる。いくつかの実施形態では、これらの方法は原位置で実施することができる。いくつかの実施形態では、これらの方法は生体内で実施することができる。これらの実施形態のいずれかでは、該ポリペプチドは、該対象から得られる細胞内に存在し得る。
【0067】
骨ミネラル密度低下を治療または阻害する治療剤の例は、カルシウム及びビタミンDの補充(ビタミンD2、ビタミンD3、及びコレカルシフェロール)、ビスホスホネート製剤、例えばFOSAMAX(登録商標)、(アレンドロネート)、BONIVA(登録商標)(イバンドロネート)、RECLAST(登録商標)(ゾレドロネート)、ACTONEL(登録商標)(リセドロネート)、MIACALCIN(登録商標)、FORTICAL(登録商標)、及びCALCIMAR(登録商標)(カルシトニン)、FORTEO(登録商標)(テリパラチド)、PROLIA(登録商標)(デノスマブ)、エストロゲン及びプロゲステロンによるホルモン置換療法、ならびにEVISTA(登録商標)(ラロキシフェン)、及びEVENITY(登録商標)(ロモソズマブ)を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、骨ミネラル密度低下を治療または阻害する治療剤は、ビタミンD2、ビタミンD3、コレカルシフェロール、アレンドロネート、イバンドロネート、ゾレドロネート、リセドロネート、カルシトニン、テリパラチド、デノスマブ、またはラロキシフェンである。いくつかの実施形態では、骨ミネラル密度低下を治療または阻害する治療剤は、ビタミンD2である。いくつかの実施形態では、骨ミネラル密度低下を治療または阻害する治療剤は、ビタミンD3である。いくつかの実施形態では、骨ミネラル密度低下を治療または阻害する治療剤は、コレカルシフェロールである。いくつかの実施形態では、骨ミネラル密度低下を治療または阻害する治療薬は、アレンドロネートである。いくつかの実施形態では、骨ミネラル密度低下を治療または阻害する治療薬は、イバンドロネートである。いくつかの実施形態では、骨ミネラル密度低下を治療または阻害する治療薬は、ゾレドロネートである。いくつかの実施形態では、骨ミネラル密度低下を治療または阻害する治療薬は、リセドロネートである。いくつかの実施形態では、骨ミネラル密度低下を治療または阻害する治療剤は、カルシトニンである。いくつかの実施形態では、骨ミネラル密度低下を治療または阻害する治療薬は、テリパラチドである。いくつかの実施形態では、骨ミネラル密度低下を治療または阻害する治療薬は、デノスマブである。いくつかの実施形態では、骨ミネラル密度低下を治療または阻害する治療薬は、ラロキシフェンである。
【0068】
いくつかの実施形態では、骨ミネラル密度低下を治療または阻害する治療剤の用量は、CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子についてヘテロ接合型である対象については、CD109基準である(標準的な投与量を受け入れてもよい)対象と比べて約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、または約90%減らすことができる(すなわち、標準的な投与量よりも少ない)。いくつかの実施形態では、骨ミネラル密度低下を治療または阻害する治療剤の用量は約10%、約20%、約30%、約40%、または約50%減らすことができる。加えて、CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子についてヘテロ接合型である対象は、CD109基準である対象と比べて低い頻度で投与され得る。
【0069】
いくつかの実施形態では、骨ミネラル密度低下を治療または阻害する治療剤の用量は、CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子についてホモ接合型である対象については、CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子についてヘテロ接合型である対象と比べて約10%、約20%、約30%、約40%、約50%減らすことができる。いくつかの実施形態では、骨ミネラル密度低下を治療または阻害する治療剤の用量は約10%、約20%、約30%、約40%、または約50%減らすことができる。加えて、CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子についてホモ接合型である対象における骨ミネラル密度低下を治療または阻害する治療剤の用量は、CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子についてヘテロ接合型である対象と比べて低い頻度で投与することができる。
【0070】
骨ミネラル密度低下を治療もしくは阻害する治療剤及び/またはCD109阻害剤の投与は、例えば、1日後、2日後、3日後、5日後、1週後、2週後、3週後、1ヵ月後、5週後、6週後、7週後、8週後、2ヵ月後、または3ヵ月後に繰り返すことができる。反復投与は同じ用量または異なる用量であることができる。投与は1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、またはそれ以上繰り返すことができる。例えば、特定の投薬計画によれば、対象は、例えば、6ヵ月、1年、またはそれ以上のような長期間にわたって治療を受けることができる。
【0071】
骨ミネラル密度低下を治療もしくは阻害する治療剤及び/またはCD109阻害剤の投与は、非経口、静脈内、経口、皮下、動脈内、頭蓋内、くも膜下腔内、腹腔内、局所、鼻腔内、または筋肉内を含むが、これらに限定されない任意の好適な経路によって発生することができる。投与用の医薬組成物は、望ましくは無菌であり、実質的に等張であり、GMP条件下で製造される。医薬組成物は、単位剤形(すなわち、単回投与の用量)で提供することができる。医薬組成物は、1以上の生理学的及び薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤または補助剤を使用して製剤化することができる。製剤は選択した投与経路に依存する。「薬学的に許容される」という用語は、担体、希釈剤、賦形剤、または補助剤が製剤の他の成分と適合し、そのレシピエントにとって実質的に有害ではないことを意味する。
【0072】
本明細書で使用されるとき「治療する」、「治療すること」、及び「治療」ならびに「予防する」、「予防すること」、及び「予防」という用語は、それぞれ、治療効果及び予防効果のような所望の生物学的応答を引き出すことを指す。いくつかの実施形態では、治療効果は、薬剤または薬剤を含む組成物の投与後の、骨ミネラル密度低下の減少/軽減、骨ミネラル密度低下の重症度の減少/軽減(例えば、骨ミネラル密度低下の発症の減少または抑制)、症状及び骨ミネラル密度低下関連の影響の減少/軽減、症状の発症及び骨ミネラル密度低下関連の影響の遅延、骨ミネラル密度低下関連の影響の症状の重症度の軽減、症状及び骨ミネラル密度低下関連の影響の数の軽減、症状及び骨ミネラル密度低下関連の影響の潜伏期間の短縮、症状及び骨ミネラル密度低下関連の影響の改善、二次症状の軽減、二次感染の軽減、骨ミネラル密度低下の再発の防止、再発エピソードの数または頻度の減少、症候性エピソード間の潜伏期間の増加、持続的な進行までの時間の増加、回復の加速、または代替治療剤の有効性の増加もしくは耐性の減少、及び/または罹患した宿主動物の生存期間の増加のうちの1以上を含む。予防効果は、治療プロトコールの投与に続く骨ミネラル密度低下の発症/進行の完全なまたは部分的な回避/抑制または遅延(例えば、完全なまたは部分的な回避/抑制または遅延)、及び罹患した宿主動物の生存時間の増加を含んでもよい。骨ミネラル密度低下の治療には、臨床段階または臨床症状のいずれかで何らかの形態の骨ミネラル密度低下を有するとすでに診断された対象の治療、骨ミネラル密度低下の症状または徴候の発症または進展または増悪または悪化の遅延、及び/または骨ミネラル密度低下の重症度の予防及び/または軽減が包含される。
【0073】
本開示はまた、骨ミネラル密度低下を発症する高いリスクを有する対象を特定する方法も提供する。いくつかの実施形態では、方法は、対象から得られた生体試料にて、CD109ポリペプチドをコードするCD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子(例えば、ゲノム核酸分子、mRNA分子及び/またはcDNA分子)の存在または非存在を決定すること、または決定したことを含む。対象がCD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子を欠いている(すなわち、対象が遺伝子型決定でCD109基準として分類される)場合、対象は骨ミネラル密度低下を発症する高いリスクを有する。対象がCD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子を有する(すなわち、対象がCD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子についてヘテロ接合型またはホモ接合型である)場合、対象は骨ミネラル密度低下を発症する低いリスクを有する。
【0074】
CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子の単一のコピーを有することは、CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子のコピーを有しないことよりも、骨ミネラル密度低下を発症することから対象をさらに保護する。特定の理論または作用機序に限定されることを意図するものではないが、CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子の単一コピー(すなわち、CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子についてヘテロ接合型)は、骨ミネラル密度低下を発症することから対象を保護すると考えられ、且つ、CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子の2コピーを有すること(すなわち、CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子についてホモ接合型)は、単一コピーを持つ対象と比べて骨ミネラル密度低下を発症することから対象をさらに保護し得るとも考えられる。したがって、いくつかの実施形態では、CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子の単一コピーは、骨ミネラル密度低下を発症することから対象を完全に保護しなくてもよいが、代わりに、部分的または不完全に保護し得る。特定の理論に束縛されることを望むわけではないが、CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子の単一コピーを有する対象に依然として存在する骨ミネラル密度低下の発症に関与する追加の因子または分子が存在し得、それにより骨ミネラル密度低下の発症からの完全ではない保護が生じ得る。
【0075】
対象からの生体試料にて対象がCD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子を有するかどうかを決定すること、及び/または対象がCD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子を有するかどうかを決定することは、本明細書に記載されている方法のいずれかによって実施することができる。いくつかの実施形態では、これらの方法は試験管内で実施することができる。いくつかの実施形態では、これらの方法は原位置で実施することができる。いくつかの実施形態では、これらの方法は生体内で実施することができる。これらの実施形態のいずれかでは、該核酸分子は、該対象から得られる細胞内に存在し得る。
【0076】
いくつかの実施形態では、対象が骨ミネラル密度低下を発症する高いリスクを有すると特定されると、対象は、本明細書に記載されるように、骨ミネラル密度低下を治療もしくは阻害する治療剤、及び/またはCD109阻害剤で治療される。例えば、対象がCD109基準であり、したがって骨ミネラル密度低下を発症する高いリスクを有する場合、対象はCD109阻害剤を投与される。いくつかの実施形態では、そのような対象はまた、骨ミネラル密度低下を治療または阻害する治療剤を投与される。いくつかの実施形態では、対象がCD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子についてヘテロ接合型である場合、対象は、標準的な投与量と同じまたはそれより少ない投与量で骨ミネラル密度低下を治療するまたは阻害する治療剤を投与され、且つCD109阻害剤も投与される。いくつかの実施形態では、そのような対象はまた、骨ミネラル密度低下を治療または阻害する治療剤を投与される。いくつかの実施形態では、対象がCD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子についてホモ接合型である場合、対象は、標準的な投与量と同じまたはそれより少ない投与量で骨ミネラル密度低下を治療するまたは阻害する治療剤を投与される。いくつかの実施形態では、対象は、CD109基準である。いくつかの実施形態では、対象は、CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子についてヘテロ接合型である。いくつかの実施形態では、対象はCD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子についてホモ接合型である。
【0077】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法のいずれかは、骨ミネラル密度低下を発症するリスクの低下に関連するCD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子及び/またはCD109の予測される機能喪失型変異体ポリペプチドを有する対象の遺伝子負荷を決定することをさらに含み得る。遺伝子負荷は、CD109遺伝子のすべての変異体の合計であり、これは、骨ミネラル密度低下との関連分析で実施され得る。いくつかの実施形態では、対象は、骨ミネラル密度低下を発症するリスクの低下に関連するCD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードする1つ以上のCD109ミスセンス変異体核酸分子についてホモ接合型である。いくつかの実施形態では、対象は、骨ミネラル密度低下を発症するリスクの低下に関連するCD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードする1つ以上のCD109ミスセンス変異体核酸分子についてヘテロ接合型である。関連分析の結果は、CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子が、骨ミネラル密度低下を発症するリスクの低下に関連することを示唆する。対象がより低い遺伝子負荷を有する場合、対象は骨ミネラル密度低下を発症するリスクがより高く、対象は、標準的な投与量で骨ミネラル密度低下を治療または阻害する治療剤を投与される、または投与され続ける。対象がより高い遺伝子負荷を有する場合、対象は骨ミネラル密度低下を発症するリスクがより低く、対象は、標準的な投与量と同じまたはそれより少ない量で骨ミネラル密度低下を治療または阻害する治療剤を投与される、または投与され続ける。遺伝子負荷が大きいほど、骨ミネラル密度低下を発症するリスクは低くなる。
【0078】
対象の遺伝子負荷を決定するために使用される、CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子、及び/またはCD109の予測される機能喪失型変異体ポリペプチドとしては、6:73730573:A:G、6:73823473:GA:G(p.Ser1394fs、p.Ser1317fs、p.Ser1377fs)、6:73763607:C:A(p.Phe343Leu、p.Phe266Leu、p.Phe343Leu)、6:73803256:G:T(p.Gly972Val、p.Gly895Val、p.Gly972Val)、6:73818486:T:C(p.Val1337Ala、p.Val1260Ala、p.Val1320Ala)、6:73787379:G:A(p.Gly828Glu、p.Gly751Glu、p.Gly828Glu)、6:73771510:A:G(p.Ile586Val、p.Ile509Val、p.Ile586Val)、6:73806987:A:T(p.His1035Leu、p.His958Leu、p.His1035Leu)、6:73758991:A:G(p.Met241Val、p.Met164Val、p.Met241Val)、6:73823456:A:G 6:73762778:A:C(p.Glu298Ala、p.Glu221Ala、p.Glu298Ala)、6:73763660:A:G(p.Lys361Arg、p.Lys284Arg、p.Lys361Arg)、6:73730573:A:G(p.Lys169Arg、p.Lys169Arg)、6:73806956:G:A(p.Gly1025Ser、p.Gly948Ser、p.Gly1025Ser)、6:73792628:G:C(p.Asp902His、p.Asp825His、p.Asp902His)、6:73806926:A:T(p.Thr1015Ser、p.Thr938Ser、p.Thr1015Ser)、6:73771576:G:A(p.Glu608Lys、p.Glu531Lys、p.Glu608Lys)、6:73815026:C:T(p.Arg1272、p.Arg1195、p.Arg1255)、6:73765952:G:A(p.Gly377Asp、p.Gly300Asp、p.Gly377Asp)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
いくつかの実施形態では、CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするいずれか1つ以上のCD109ミスセンス変異体核酸分子を有する対象の遺伝子負荷は、CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子のいずれかの複数の加重和を表す。いくつかの実施形態では、該遺伝子負荷は、CD109遺伝子内またはその周辺(最大10Mb)に存在する、少なくとも約2、少なくとも約3、少なくとも約4、少なくとも約5、少なくとも約10、少なくとも約20、少なくとも約30、少なくとも約40、少なくとも約50、少なくとも約60、少なくとも約70、少なくとも約80、少なくとも約100、少なくとも約120、少なくとも約150、少なくとも約200、少なくとも約250、少なくとも約300、少なくとも約400、少なくとも約500、少なくとも約1,000、少なくとも約10,000、少なくとも約100,000、または少なくとも約1,000,000もしくはそれを超える遺伝子変異体を使用して計算され、ここで、遺伝子負荷は、対立遺伝子の数に、各対立遺伝子についての骨ミネラル密度低下または関連するアウトカムとの関連推定値を掛けたもの(例えば、加重負荷スコア)である。これには、ゲノムアノテーションに関係なく、遺伝子関連分析において骨ミネラル密度低下関連形質とゼロでない関連性を示すCD109遺伝子に近接する(遺伝子の周囲に最大10Mb)、任意の遺伝子変異体を含めることができる。いくつかの実施形態では、対象が所望の閾値スコアよりも高い遺伝子負荷を有する場合、対象は、骨ミネラル密度低下を発症する低いリスクを有する。いくつかの実施形態では、対象が所望の閾値スコアよりも低い遺伝子負荷を有する場合、対象は、骨ミネラル密度低下を発症する高いリスクを有する。
【0080】
いくつかの実施形態では、該遺伝子負荷は、例えば、上位五分位、中間五分位、及び下位五分位の五分位に分けることができ、遺伝子負荷の上位五分位は最低リスク群に対応し、遺伝子負荷の下位五分位は最高リスク群に対応する。いくつかの実施形態では、より大きな遺伝子負荷を有する対象は、対象集団からの上位10%、上位20%、上位30%、上位40%、または上位50%の遺伝子負荷を含むがこれらに限定されない、最高加重遺伝子負荷を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子変異体は、骨ミネラル密度低下との関連性を、関連性についてのp値範囲の上位10%、上位20%、上位30%、上位40%、または上位50%に有する遺伝子変異体を含む。いくつかの実施形態では、特定された遺伝子変異体のそれぞれは、約10-2、約10-3、約10-4、約10-5、約10-6、約10-7、約10-8、約10-9、約10-10、約10-11、約10-12、約10-13、約10-14、または約10-15以下のp値で骨ミネラル密度低下と関連性を有する遺伝子変異体を含む。いくつかの実施形態では、特定された遺伝子変異体は5×10-8未満のp値で骨ミネラル密度低下と関連性を有する遺伝子変異体を含む。いくつかの実施形態では、特定された遺伝子変異体は、オッズ比(OR)が分布の上位20%について、約1.5以上、約1.75以上、約2.0以上、もしくは約2.25以上;または約1.5以上、約1.75以上、約2.0以上、約2.25以上、約2.5以上、もしくは約2.75以上である参照集団の残りと比較して高リスクである対象において、骨ミネラル密度低下と関連性を有する遺伝子変異体を含む。いくつかの実施形態では、オッズ比(OR)は、約1.0~約1.5、約1.5~約2.0、約2.0~約2.5、約2.5~約3.0、約3.0~約3.5、約3.5~約4.0、約4.0~約4.5、約4.5~約5.0、約5.0~約5.5、約5.5~約6.0、約6.0~約6.5、約6.5~約7.0の範囲、または7.0を超えていてもよい。いくつかの実施形態では、高リスクの対象は、参照集団における下位十分位、五分位、または三分位の遺伝子負荷を有する対象を含む。遺伝子負荷の閾値は、意図される実際の用途の性質と、その実際の用途にとって意味があると考えられるリスク差に基づいて決定される。
【0081】
いくつかの実施形態では、対象が骨ミネラル密度低下を発症する高いリスクを有すると特定されると、対象は、本明細書に記載されるように、骨ミネラル密度低下を治療もしくは阻害する治療剤、及び/またはCD109阻害剤で治療される。例えば、対象がCD109基準であり、したがって骨ミネラル密度低下を発症する高いリスクを有する場合、対象はCD109阻害剤を投与される。いくつかの実施形態では、そのような対象は、骨ミネラル密度低下を治療または阻害する治療剤を投与される。いくつかの実施形態では、対象がCD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子についてヘテロ接合型である場合、対象は、標準的な投与量と同じまたはそれより少ない投与量で骨ミネラル密度低下を治療するまたは阻害する治療剤を投与され、且つCD109阻害剤も投与される。いくつかの実施形態では、対象は、CD109基準である。いくつかの実施形態では、対象は、CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子についてヘテロ接合型である。さらに、対象がCD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子を有することについてより低い遺伝子負荷を有し、したがって骨ミネラル密度低下を発症する高いリスクを有する場合、対象は骨ミネラル密度低下を治療または阻害する治療剤を投与される。いくつかの実施形態では、対象がCD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子を有することについてより低い遺伝子負荷を有する場合、対象は、CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子を有することについてより大きい遺伝子負荷を有する対象に投与される標準的な投与量と同じまたはそれより多い投与量で、骨ミネラル密度低下を治療または阻害する治療剤を投与される。
【0082】
遺伝子負荷分析に使用可能なCD109変異体としては、以下(変異体の欄は、ヒトゲノム参照コンソーシアムによるヒトゲノム配列のビルド38に従う、各変異体に関する染色体、塩基対における物理的ゲノム位置、基準対立遺伝子、及び代替対立遺伝子を示す。コーディングDNA変化及びタンパク質変化は、Human Genome Variation Societyの命名法に従って提供され、Ensemblデータベース(URL:ワールドワイド@「useast.ensembl.org/index.html」)のアノテーション付きの3つのCD109転写産物を指し、これらの3つの転写産物に対するアノテーションは、以下の順序で、表で報告されている:ENST00000287097:ENST00000422508:ENST00000437994)の任意の1つ以上、または任意の組み合わせが挙げられる。
【0083】
【表2-1】
【0084】
【表2-2】
【0085】
【表2-3】
【0086】
【表2-4】
【0087】
【表2-5】
【0088】
【表2-6】
【0089】
【表2-7】
【0090】
【表2-8】
【0091】
【表2-9】
【0092】
【表2-10】
【0093】
【表2-11】
【0094】
【表2-12】
【0095】
【表2-13】
【0096】
【表2-14】
【0097】
本開示はまた、対象からの生体試料にてCD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体ゲノム核酸分子(すなわち、ゲノム核酸分子、mRNA分子、またはmRNA分子から生成されたcDNA分子)の存在または非存在を検出する方法も提供する。集団内の遺伝子配列、及びそのような遺伝子によってコードされるmRNA分子は、一塩基多型のような多型に起因して異なり得ることが理解される。CD109変異体ゲノム核酸分子、CD109変異体mRNA分子、及びCD109変異体cDNA分子について本明細書で提供される配列は例示的な配列にすぎない。CD109変異体ゲノム核酸分子、変異体mRNA分子、及び変異体cDNA分子について他の配列も可能である。
【0098】
生体試料は、対象の任意の細胞、組織、または生体液に由来することができる。この生体試料は、骨髄試料、腫瘍生検、細針吸引物、または血液、歯肉溝滲出液、血漿、血清、リンパ、腹水、嚢胞液、もしくは尿のような体液の試料のような任意の臨床的に関連する組織を含んでもよい。場合によっては、試料は口腔スワブを含む。本明細書で開示されている方法において使用する生体試料は、アッセイ形式、検出方法の性質、及び試料として使用する組織、細胞、または抽出物に基づいて異なり得る。生体試料は採用されるアッセイに応じて異なる処理を行うことができる。例えば、CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子を検出する場合、ゲノムDNAについて生体試料を単離するまたは濃縮するように設計した予備処理を採用することができる。この目的では、種々の技術を使用してもよい。CD109変異体mRNA分子のレベルを検出する場合、さまざまな技術を使用してmRNA分子を含む生体試料を濃縮することができる。mRNA分子の存在もしくはレベル、または特定の変異体ゲノムDNA遺伝子座の存在を検出するために種々の方法を使用することができる。
【0099】
いくつかの実施形態では、対象においてCD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子を検出することは、生体試料におけるCD109ゲノム核酸分子、及び/または生体試料におけるCD109 mRNA分子、及び/または生体試料におけるmRNA分子から生成されたCD109 cDNA分子が、機能喪失(部分的もしくは完全)を引き起こすまたは機能喪失(部分的もしくは完全)を引き起こすと予測される1つ以上の変異を含むかどうかを決定するために、対象から得られた生体試料にて配列分析を実施することを含む。
【0100】
いくつかの実施形態では、対象においてCD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体核酸分子(例えば、ゲノム核酸分子、mRNA分子、及び/またはmRNA分子から生成されたcDNA分子など)の存在または非存在を検出する方法は、対象から得られた生体試料にてアッセイを実施することを含む。アッセイは、生体試料中の核酸分子が特定のヌクレオチド配列を含むかどうかを決定する。
【0101】
いくつかの実施形態では、生体試料には細胞または細胞溶解物が含まれる。そのような方法はさらに、例えば、CD109ゲノム核酸分子またはmRNA分子を含む生体試料を対象から取得すること、及びmRNAであれば、任意でmRNAをcDNAに逆転写することを含むことができる。そのようなアッセイは、例えば、特定のCD109核酸分子のこれらの位置の同一性を決定することを含むことができる。いくつかの実施形態では、方法は試験管内の方法である。
【0102】
いくつかの実施形態では、決定工程、検出工程、または配列分析は、生体試料中のCD109ゲノム核酸分子、CD109 mRNA分子、またはCD109 cDNA分子のヌクレオチド配列の少なくとも一部を配列決定することを含み、配列決定される部分は、機能喪失(部分的もしくは完全)を引き起こすまたは機能喪失(部分的もしくは完全)を引き起こすと予測される1つ以上の変異を含む。
【0103】
いくつかの実施形態では、アッセイは核酸分子全体を配列決定することを含む。いくつかの実施形態では、CD109ゲノム核酸分子のみが分析される。いくつかの実施形態では、CD109 mRNAのみが分析される。いくつかの実施形態では、CD109 mRNAから得られたCD109 cDNAのみが分析される。
【0104】
変異特異的ポリメラーゼ連鎖反応技術を使用して核酸配列におけるSNPのような突然変異を検出することができる。変異特異的プライマーが使用され得るのは、鋳型とのミスマッチが存在するとDNAポリメラーゼが伸長しないからである。
【0105】
いくつかの実施形態では、試料における核酸分子はmRNAであり、増幅工程の前にmRNAはcDNAに逆転写される。いくつかの実施形態では、核酸分子は、対象から得られた細胞内に存在する。
【0106】
いくつかの実施形態では、アッセイは、ストリンジェントな条件下でCD109変異体ゲノム配列、変異体mRNA配列、または変異体cDNA配列には特異的にハイブリダイズするが対応するCD109参照配列には特異的にハイブリダイズしない変異特異的プライマーまたは変異特異的プローブなどのプライマーまたはプローブに生体試料を接触させることと、ハイブリダイゼーションが生じたかどうかを決定することとを含む。
【0107】
いくつかの実施形態では、決定工程、検出工程、または配列分析は、a)CD109ポリペプチドをコードする核酸分子の少なくとも一部を増幅することと;b)増幅した核酸分子を検出可能な標識で標識することと;c)標識した核酸分子を、変異特異的プローブを含む支持体に接触させることと;d)検出可能な標識を検出することとを含む。
【0108】
いくつかの実施形態では、アッセイはRNAの配列決定(RNA-Seq)を含む。いくつかの実施形態では、アッセイは、例えば、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)によってmRNAをcDNAに逆転写することも含む。
【0109】
いくつかの実施形態では、方法は、標的ヌクレオチド配列に結合し、CD109変異体ゲノム核酸分子、変異体mRNA分子、または変異体cDNA分子を含むポリヌクレオチドを特異的に検出する及び/または特定するのに十分なヌクレオチド長のプローブ及びプライマーを利用する。ハイブリダイズの条件または反応条件は、この結果を達成するように作業者が決定することができる。ヌクレオチド長は、本明細書に記載されているまたは例示されている任意のアッセイを含む、最適な検出方法にて使用するのに十分である任意の長さであってもよい。そのようなプローブ及びプライマーは、高ストリンジェントなハイブリダイズ条件下で標的ヌクレオチド配列と特異的にハイブリダイズすることができる。標的ヌクレオチド配列とは異なり、且つ標的ヌクレオチド配列を特異的に検出する及び/または特定する能力を保持するプローブが従来の方法によって設計されてもよいが、プローブ及びプライマーは標的ヌクレオチド配列内の連続ヌクレオチドの完全なヌクレオチド配列同一性を有してもよい。プローブ及びプライマーは、標的核酸分子のヌクレオチド配列と約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または100%の配列同一性または相補性を有することができる。
【0110】
核酸配列決定技術の説明に役立つ実例には、連鎖停止剤(Sanger)配列決定及びダイターミネーター配列決定が挙げられるが、これらに限定されない。他の方法には、精製DNA、増幅DNA及び固定細胞標本に対する標識プライマーまたは標識プローブの使用を含めて、配列決定以外の核酸ハイブリダイズ法(蛍光原位置ハイブリダイズ(FISH))が含まれる。いくつかの方法では、検出の前にまたは検出と同時に標的核酸分子を増幅してもよい。核酸増幅技術の説明に役立つ実例には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、鎖置換型増幅法(SDA)、及び核酸配列に基づく増幅法(NASBA)が挙げられるが、これらに限定されない。他の方法には、リガーゼ連鎖反応、鎖置換型増幅法、及び好熱SDA(tSDA)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0111】
ハイブリダイズ技術では、プローブまたはプライマーがその標的と特異的にハイブリダイズするように、ストリンジェントな条件を採用することができる。いくつかの実施形態では、ストリンジェントな条件下のポリヌクレオチドのプライマーまたはプローブは、他の非標的配列よりも検出可能に高い程度で、例えば、バックグラウンドの10倍を超えてを含めてバックグラウンドの少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍またはそれ以上高い程度でその標的配列とハイブリダイズするであろう。いくつかの実施形態では、ストリンジェントな条件下のポリヌクレオチドのプライマーまたはプローブは、他のヌクレオチド配列よりも検出可能に高い程度でその標的ヌクレオチド配列と少なくとも2倍ハイブリダイズするであろう。いくつかの実施形態では、ストリンジェントな条件下のポリヌクレオチドのプライマーまたはプローブは、他のヌクレオチド配列よりも検出可能に高い程度でその標的ヌクレオチド配列と少なくとも3倍ハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、ストリンジェントな条件下のポリヌクレオチドのプライマーまたはプローブは、他のヌクレオチド配列よりも検出可能に高い程度でその標的ヌクレオチド配列と少なくとも4倍ハイブリダイズするであろう。いくつかの実施形態では、ストリンジェントな条件下のポリヌクレオチドのプライマーまたはプローブは、他のヌクレオチド配列よりも検出可能に高い程度でその標的ヌクレオチド配列とバックグラウンドの10倍を超えてハイブリダイズするであろう。ストリンジェントな条件は配列に依存し、異なる状況では異なるであろう。
【0112】
DNAのハイブリダイズを促進する適当なストリンジェントな条件、例えば、約45℃での6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)、その後の50℃での2×SSCの洗浄は公知である、またはCurrent Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,N.Y.(1989),6.3.1-6.3.6に見いだすことができる。通常、ハイブリダイズ及び検出のためのストリンジェントな条件は、塩濃度が、pH7.0~8.3において約1.5M未満のNaイオン、通常、約0.01~1.0MのNaイオン濃度(または他の塩)であり、温度が、短いプローブ(例えば10~50ヌクレオチド)では少なくとも約30℃、それよりも長いプローブ(例えば50ヌクレオチド超)では少なくとも約60℃である条件であろう。ストリンジェントな条件は、ホルムアミドのような不安定化剤の添加により達成されてもよい。任意で、洗浄緩衝液は約0.1%~約1%のSDSを含んでもよい。ハイブリダイズの持続期間は一般に約24時間未満、ふつう約4~約12時間である。洗浄の持続期間は少なくとも平衡に達するのに十分な長さの時間であろう。
【0113】
いくつかの実施形態では、そのような単離された核酸分子は、少なくとも約5、少なくとも約8、少なくとも約10、少なくとも約11、少なくとも約12、少なくとも約13、少なくとも約14、少なくとも約15、少なくとも約16、少なくとも約17、少なくとも約18、少なくとも約19、少なくとも約20、少なくとも約21、少なくとも約22、少なくとも約23、少なくとも約24、少なくとも約25、少なくとも約30、少なくとも約35、少なくとも約40、少なくとも約45、少なくとも約50、少なくとも約55、少なくとも約60、少なくとも約65、少なくとも約70、少なくとも約75、少なくとも約80、少なくとも約85、少なくとも約90、少なくとも約95、少なくとも約100、少なくとも約200、少なくとも約300、少なくとも約400、少なくとも約500、少なくとも約600、少なくとも約700、少なくとも約800、少なくとも約900、少なくとも約1000、少なくとも約2000、少なくとも約3000、少なくとも約4000、または少なくとも約5000のヌクレオチドを含むか、またはそれから成る。いくつかの実施形態では、そのような単離された核酸分子は、少なくとも約5、少なくとも約8、少なくとも約10、少なくとも約11、少なくとも約12、少なくとも約13、少なくとも約14、少なくとも約15、少なくとも約16、少なくとも約17、少なくとも約18、少なくとも約19、少なくとも約20、少なくとも約21、少なくとも約22、少なくとも約23、少なくとも約24、または少なくとも約25のヌクレオチドを含む、またはそれから成る。いくつかの実施形態では、単離された核酸分子は少なくとも約18のヌクレオチドを含む、またはそれから成る。いくつかの実施形態では、単離された核酸分子は少なくとも約15のヌクレオチドを含む、またはそれから成る。いくつかの実施形態では、単離された核酸分子は約10~約35、約10~約30、約10~約25、約12~約30、約12~約28、約12~約24、約15~約30、約15~約25、約18~約30、約18~約25、約18~約24、または約18~約22のヌクレオチドから成る、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、単離された核酸分子は約18~約30のヌクレオチドから成る、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、単離された核酸分子は少なくとも約15のヌクレオチド~少なくとも約35のヌクレオチドを含む、またはそれから成る。
【0114】
いくつかの実施形態では、そのような単離された核酸分子は、ストリンジェントな条件下でCD109ミスセンス変異体核酸分子(例えば、ゲノム核酸分子、mRNA分子、及び/またはcDNA分子)とハイブリダイズする。そのような核酸分子は、例えば、本明細書に記載されているまたは例示されているようなプローブ、プライマー、変異特異的プローブ、または変異特異的プライマーとして使用することができ、プライマー、プローブ、アンチセンスRNA、shRNA、及びsiRNAを含むがこれらに限定されず、それらの各々は、本明細書の他の箇所でさらに詳細に記載されており、本明細書に記載される方法のいずれかで使用され得る。
【0115】
いくつかの実施形態では、単離された核酸分子は、CD109ミスセンス変異体ゲノム核酸分子、CD109ミスセンス変異体mRNA分子及び/またはCD109ミスセンス変異体cDNA分子と少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%同一である核酸分子の少なくとも約15の連続ヌクレオチドとハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、単離された核酸分子は約15~約100のヌクレオチド、または約15~約35のヌクレオチドから成る、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、単離された核酸分子は約15~約100のヌクレオチドから成る、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、単離された核酸分子は、約15~約35のヌクレオチドから成る、またはそれを含む。
【0116】
いくつかの実施形態では、変異特異的プローブ及び変異特異的プライマーはDNAを含む。いくつかの実施形態では、変異特異的プローブ及び変異特異的プライマーはRNAを含む。
【0117】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているプローブ及びプライマー(変異特異的プローブ及び変異特異的プライマーを含む)は、本明細書で開示されている核酸分子のいずれかまたはその相補体と特異的にハイブリダイズするヌクレオチド配列を有する。いくつかの実施形態では、プローブ及びプライマーはストリンジェントな条件下にて本明細書で開示されている核酸分子のいずれかと特異的にハイブリダイズする。
【0118】
いくつかの実施形態では、プライマーは変異特異的プライマーを含めて、第2世代配列決定またはハイスループット配列決定において使用することができる。時には、プライマーは変異特異的プライマーを含めて、修飾することができる。特に、プライマーは、例えば、大規模並行シグネチャー配列決定(Massive Parallel Signature Sequencing)(MPSS)、Polony配列決定、及び454パイロ配列決定のさまざまな工程において使用される種々の修飾を含むことができる。修飾されたプライマーは、クローニング工程におけるビオチン化プライマー、ならびにビーズ負荷工程及び検出工程にて使用される蛍光標識プライマーを含めて、プロセスのうちのいくつかの工程で使用することができる。Polony配列決定は一般的に、DNA鋳型の各分子が長さ約135bpであるペアエンドタグライブラリを使用して行われる。ビオチン化プライマーはビーズ負荷工程及びエマルジョンPCRにおいて使用される。蛍光標識された縮重ノナマーオリゴヌクレオチドは検出工程で使用される。アダプターは、ストレプトアビジン被覆ビーズにDNAライブラリを不動化するための5’-ビオチンタグを含有することができる。
【0119】
本明細書に記載されているプローブ及びプライマーを使用して、本明細書で開示されているCD109変異体ミスセンスゲノム核酸分子、CD109ミスセンス変異体mRNA分子、及び/またはCD109ミスセンス変異体cDNA分子のいずれかにおけるヌクレオチド変異を検出することができる。本明細書に記載されているプライマーを使用して、CD109ミスセンス変異体ゲノム核酸分子、CD109ミスセンス変異体mRNA分子、またはCD109ミスセンス変異体cDNA分子、またはそれらの断片を増幅することができる。
【0120】
本開示の文脈において、「特異的にハイブリダイズする」とは、プローブまたはプライマー(例えば、変異特異的プローブまたは変異特異的プライマー)が、CD109基準のゲノム核酸分子、CD109基準のmRNA分子、及び/またはCD109基準のcDNA分子をコードする核酸配列とハイブリダイズしないことを意味する。
【0121】
いくつかの実施形態では、プローブ(例えば、変異特異的プローブなど)は標識を含む。いくつかの実施形態では、標識は蛍光標識、放射性標識、またはビオチンである。
本開示はまた、本明細書で開示されているプローブのいずれか1以上が結合している基材を含む支持体も提供する。固体支持体は、本明細書で開示されているプローブのいずれかのような分子が会合することができる固体状態の基材または支持体である。固体支持体の形態はアレイである。固体支持体の別の形態はアレイ検出器である。アレイ検出器は、複数の異なるプローブがアレイ状、グリッド状または他の組織化されたパターンで結合している固体支持体である。固体状態の基材の形態は標準的な96ウェル型のようなマイクロタイターディッシュである。いくつかの実施形態では、ふつう1ウェル当たりに1つのアレイを含有するマルチウェルスライドグラスを用いることができる。
【0122】
CD109基準のゲノム核酸分子のヌクレオチド配列は配列番号1に記述されている(GRCh38/hg38ヒトゲノムアセンブリ中のENSG00000156535.15 chr6:73,695,785-73,828,316)。
【0123】
CD109基準mRNA分子のヌクレオチド配列は配列番号2に記述されている。別のCD109基準mRNA分子のヌクレオチド配列は配列番号3に記述されている。別のCD109基準mRNA分子のヌクレオチド配列は配列番号4に記述されている。別のCD109基準mRNA分子のヌクレオチド配列は配列番号5に記述されている。別のCD109基準mRNA分子のヌクレオチド配列は配列番号6に記述されている。別のCD109基準mRNA分子のヌクレオチド配列は配列番号7に記述されている。別のCD109基準mRNA分子のヌクレオチド配列は配列番号8に記述されている。別のCD109基準mRNA分子のヌクレオチド配列は配列番号9に記述されている。別のCD109基準mRNA分子のヌクレオチド配列は配列番号10に記述されている。別のCD109基準mRNA分子のヌクレオチド配列は配列番号11に記述されている。別のCD109基準mRNA分子のヌクレオチド配列は配列番号12に記述されている。別のCD109基準mRNA分子のヌクレオチド配列は配列番号13に記述されている。別のCD109基準mRNA分子のヌクレオチド配列は配列番号14に記述されている。別のCD109基準mRNA分子のヌクレオチド配列は配列番号15に記述されている。別のCD109基準mRNA分子のヌクレオチド配列は配列番号16に記述されている。
【0124】
CD109基準cDNA分子のヌクレオチド配列は配列番号17に記述されている。別のCD109基準cDNA分子のヌクレオチド配列は配列番号18に記述されている。別のCD109基準cDNA分子のヌクレオチド配列は配列番号19に記述されている。別のCD109基準cDNA分子のヌクレオチド配列は配列番号20に記述されている。別のCD109基準cDNA分子のヌクレオチド配列は配列番号21に記述されている。別のCD109基準cDNA分子のヌクレオチド配列は配列番号22に記述されている。別のCD109基準cDNA分子のヌクレオチド配列は配列番号23に記述されている。別のCD109基準cDNA分子のヌクレオチド配列は配列番号24に記述されている。別のCD109基準cDNA分子のヌクレオチド配列は配列番号25に記述されている。別のCD109基準cDNA分子のヌクレオチド配列は配列番号26に記述されている。別のCD109基準cDNA分子のヌクレオチド配列は配列番号27に記述されている。別のCD109基準cDNA分子のヌクレオチド配列は配列番号28に記述されている。別のCD109基準cDNA分子のヌクレオチド配列は配列番号29に記述されている。
【0125】
CD109基準ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号30に記述されており、1,428アミノ酸長である。別のCD109基準ポリペプチドのヌクレオチド配列は、配列番号31に記述されており、1,368アミノ酸長である。別のCD109基準ポリペプチドのヌクレオチド配列は、配列番号32に記述されており、1,445アミノ酸長である。別のCD109基準ポリペプチドのヌクレオチド配列は、配列番号33に記述されており、665アミノ酸長である。別のCD109基準ポリペプチドのヌクレオチド配列は、配列番号34に記述されており、1,374アミノ酸長である。別のCD109基準ポリペプチドのヌクレオチド配列は、配列番号35に記述されており、854アミノ酸長である。別のCD109基準ポリペプチドのヌクレオチド配列は、配列番号36に記述されており、847アミノ酸長である。
【0126】
ゲノム核酸分子、mRNA分子、及びcDNA分子は、任意の生物に由来することができる。例えば、ゲノム核酸分子、mRNA分子、及びcDNA分子は、ヒト、または別の生物(例えば、非ヒト哺乳動物、げっ歯類、マウス、もしくはラット)からのオーソログであり得る。集団内の遺伝子配列は、一塩基多型のような多型に起因して異なり得ることが理解される。本明細書で提供される例は、例示的な配列にすぎない。他の配列もまた可能である。
【0127】
本明細書で提供されるのはまた、開示されている核酸分子と相互作用することができる機能性ポリヌクレオチドである。機能性ポリヌクレオチドの例には、アンチセンス分子、アプタマー、リボザイム、三重鎖形成分子、及び外部ガイド配列が挙げられるが、これらに限定されない。機能性ポリヌクレオチドは標的分子が持つ特定の活性のエフェクター、阻害剤、モジュレーター、及び刺激剤として作用することができ、または機能性ポリヌクレオチドはいかなる他の分子とも無関係なデノボ活性を持つことができる。
【0128】
本明細書で開示されている単離された核酸分子は、RNA、DNA、またはRNAとDNAの双方を含むことができる。単離された核酸分子を、例えばベクターにおける異種核酸配列、または異種標識に連結させる、または融合させることもできる。例えば、本明細書で開示されている単離された核酸分子は、単離された核酸分子と異種核酸配列とを含むベクター内に、またはそれらを含む外来性ドナー配列として存在してもよい。単離された核酸分子を異種標識に連結させる、または融合させることもできる。標識は、直接検出可能(例えば、蛍光色素分子)であることができる、または間接的に検出可能(例えば、ハプテン、酵素、または蛍光色素分子消光剤)であることができる。そのような標識は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、または化学的な手段によって検出可能であることができる。そのような標識には、例えば、放射性標識、顔料、染料、色原体、スピン標識、及び蛍光標識が挙げられる。標識はまた、例えば、化学発光物質;金属含有物質;または酵素であることもでき、その際、シグナルの酵素依存性の二次生成が発生する。「標識」という用語はまた、結合分子が、続いて基質とともに添加されると、検出可能なシグナルを生成するために使用されるように結合分子に選択的に結合することができる「タグ」またはハプテンを指すこともできる。例えば、ビオチンは、タグに結合するための西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)のアビジン結合体またはストレプトアビジン結合体と一緒にタグとして使用し、比色測定基質(例えば、テトラメチルベンジジン(TMB))または蛍光発生基質を使用して調べてHRPの存在を検出することができる。精製を促進するためのタグとして使用することができる例示的な標識には、myc、HA、FLAGまたは3×FLAG、6×hisまたはポリヒスチジン、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質、エピトープタグ、または免疫グロブリンのFc部分が挙げられるが、これらに限定されない。多数の標識には、例えば、粒子、蛍光色素分子、ハプテン、酵素ならびにそれらの比色性、蛍光性及び化学発光性の基質、ならびに他の標識が挙げられる。
【0129】
核酸分子内のヌクレオチド配列またはポリペプチド内のアミノ酸配列の特定の区間の間での同一性パーセント(または相補性パーセント)は、BLASTプログラム(基本的な局所的なアライメント検索ツール)及びPowerBLASTプログラムを用いて(Altschul et al.,J.Mol.Biol.,1990,215,403-410、Zhang and Madden,Genome Res.,1997,7,649-656)、または、SmithとWatermanのアルゴリズム(Adv.Appl.Math.,1981,2,482-489)を使用するデフォルト設定を用いたGapプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package,Version 8 for Unix(登録商標),Genetics Computer Group,University Research Park,Madison Wis.)を用いて日常的に決定することができる。本明細書において、配列同一性パーセントに言及している場合、配列同一性パーセントは低いよりも高い方が好ましい。
【0130】
本明細書で使用されるとき、「に対応する」という表現またはその文法的変形は、特定のヌクレオチドまたはヌクレオチドの配列もしくは位置の番号付けの文脈で使用される場合、その特定のヌクレオチドまたはヌクレオチドの配列を参照配列(例えば、配列番号1)と比べたときの指定された参照配列の番号付けを指す。言い換えれば、特定のポリマーの残基(例えば、ヌクレオチドまたはアミノ酸)の番号または残基(例えば、ヌクレオチドまたはアミノ酸)の位置は、その特定のヌクレオチドまたはヌクレオチド配列の範囲内でのその残基の実際の位置番号によってではなく、参照配列を基準として指定される。例えば、特定のヌクレオチド配列は、ギャップを導入して、2つの配列間の残基の一致を最適化することによって参照配列に対して並べることができる。これらの場合では、ギャップは存在するが、その特定のヌクレオチドまたはヌクレオチド配列における残基の番号付けはそれが並べられている参照配列を基準にして行われる。
【0131】
添付の配列表に列挙されているヌクレオチド配列及びアミノ酸配列は、ヌクレオチド塩基の標準的な略記及びアミノ酸の3文字表記を用いて示されている。ヌクレオチド配列は、配列の5’末端での開始から3’末端の方に(すなわち、各配列において左から右に)進む標準的な慣例に従う。各ヌクレオチド配列の片方の鎖のみが示されているが、示されている鎖の参照によって相補鎖が含まれるものと理解される。アミノ酸配列は、配列のアミノ末端での開始からカルボキシ末端の方に(すなわち、各配列において左から右に)進む標準的な慣例に従う。
【0132】
本開示はまた、骨ミネラル密度低下を治療または阻害する治療剤であって、CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体ゲノム核酸分子、CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体mRNA分子、またはCD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体cDNA分子を有する対象における、骨ミネラル密度低下の治療に使用するための該治療剤も提供する。本明細書に記載される骨ミネラル密度低下を治療または阻害する治療剤のいずれも、これらの方法で使用することができる。対象は、骨ミネラル密度低下、骨減少症、I型骨粗鬆症、II型骨粗鬆症、もしくは続発性骨粗鬆症を有し得るか、またはそれらを発症するリスクを有し得る。
【0133】
本開示はまた、骨ミネラル密度低下を治療または阻害する治療剤の使用であって、CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体ゲノム核酸分子、CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体mRNA分子、またはCD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体cDNA分子を有する対象における、骨ミネラル密度低下を治療するための薬物の調製に使用するための該治療剤の使用も提供する。本明細書に記載される骨ミネラル密度低下を治療または阻害する治療剤のいずれも、これらの方法で使用することができる。対象は、骨ミネラル密度低下、骨減少症、I型骨粗鬆症、II型骨粗鬆症、もしくは続発性骨粗鬆症を有し得るか、またはそれらを発症するリスクを有し得る。
【0134】
本開示はまた、CD109阻害剤であって、a)CD109ゲノム核酸分子、CD109 mRNA分子、もしくはCD109 cDNA分子について基準であるか、またはb)i)CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体ゲノム核酸分子;ii)CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体mRNA分子;もしくはiii)CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体cDNA分子についてヘテロ接合型である対象における、骨ミネラル密度低下の治療に使用するための、該CD109阻害剤も提供する。本明細書に記載されるCD109阻害剤のいずれも、これらの方法で使用することができる。対象は、骨ミネラル密度低下、骨減少症、I型骨粗鬆症、II型骨粗鬆症、もしくは続発性骨粗鬆症を有し得るか、またはそれらを発症するリスクを有し得る。
【0135】
本開示はまた、CD109阻害剤の使用であって、a)CD109ゲノム核酸分子、CD109 mRNA分子、もしくはCD109 cDNA分子について基準であるか、またはb)i)CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体ゲノム核酸分子;ii)CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体mRNA分子;もしくはiii)CD109の予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするCD109ミスセンス変異体cDNA分子についてヘテロ接合型である対象における、骨ミネラル密度低下を治療するための薬物の調製における、該CD109阻害剤の使用も提供する。本明細書に記載されるCD109阻害剤のいずれも、これらの方法で使用することができる。対象は、骨ミネラル密度低下、骨減少症、I型骨粗鬆症、II型骨粗鬆症、もしくは続発性骨粗鬆症を有し得るか、またはそれらを発症するリスクを有し得る。
【0136】
上記または下記で引用されている特許文書、ウェブサイト、他の刊行物、受入番号などはすべて、個々の文献が具体的且つ個別に参照によってそのように組み込まれることが指示されている場合と同じ程度に、あらゆる目的のためにその全体が参照によって組み込まれる。配列のさまざまなバージョンが異なる時点での受入番号に関連付けられている場合、本出願の有効出願日での受入番号に関連付けられているバージョンを意味する。有効出願日とは、該当する場合、その受入番号について言及している実際の出願日または優先権主張出願の出願日のうちの早い方を意味する。同様に、異なるバージョンの刊行物、ウェブサイトなどが異なる時点で公開されている場合、特に指示されない限り、出願の有効出願日において最後に公開されたバージョンを意味するものとする。本開示のいずれの特徴、工程、要素、実施形態、または態様も、特に指示されない限り、任意の他の特徴、工程、要素、実施形態、または態様と組み合わせて使用することができる。明瞭性及び理解を目的として本開示を説明及び実例として多少詳細に説明してきたが、特定の変更及び改変が添付のクレームの範囲内で実施されてもよいことは明らかであろう。
【0137】
以下の実施例は、実施形態をさらに詳細に説明するために提供されている。これらは、特許請求する実施形態を例示することを意図しており、限定することを意図していない。以下の実施例は、本明細書に記載されている化合物、組成物、物品、装置及び/または方法がどのように作製され、且つ評価されるかについての開示及び説明を当業者に提供し、単に例示的なものであるように意図されており、いかなるクレームの範囲も限定するようには意図されていない。数(例えば、量、温度など)については、精度を確保するように努めてきたが、ある程度の誤差及び偏差が考慮され得る。特に指示されない限り、部は重量部であり、温度は℃または周囲温度であり、圧力は大気圧またはほぼ大気圧である。
【実施例
【0138】
全般的方法論
UK Biobankコホートの説明
遺伝子関連をUnited Kingdom(UK)Biobank(UKB)で調査した。UKBは、2006年~2010年の間に英国の22の検査センターを通じて募集した40歳~69歳の間の被験者の集団ベースのコホートである。UKBにおける300,000人に近い欧州系統参加者からの遺伝子及び表現型情報を使用した。
【0139】
表現型の定義
踵の定量的超音波法に関するデータをUKBから抽出した。音速(SOS)と骨超音波減衰(BUA)の組み合わせを使用してeBMD形質値(g/cm単位)を導出した(eBMD=0.002592×(BUA+SOS)-3.687)。性別固有のクオリティコントロール措置を、SOS(男性ではSOS≦1,450または≧1,700m/s、女性では≦1,455または≧1,700m/sであれば対象を除外した)、BUA(男性ではBUA≦27または≧138dB/MHz、女性では≦22または≧138dB/MHzであれば除外)、及びeBMD(男性では≦0.18または≧1.06g/cm、女性では≦0.12または≧1.025g/cmであれば除外)について実施した。eBMDの表現型値をまず、各系統群内で男女別々に適用したランクベースの逆正規変換を使用して変換し、eBMDに関連するファインマッピングされた共通の遺伝子変異体について調整した。
【0140】
遺伝子型データ
高カバレッジ全エクソーム配列決定を、既報のとおり(Dewey et al., Science, 2016, 354,aaf6814、及びVan Hout et al., Nature, 2020, 586, 749-756)、また以下に要約するように実施した。Integrated DNA Technologies(IDT)から入手可能なxGenデザインの修正バージョンをエクソームの標的配列捕捉に使用した。ライブラリの調製中に、一意の10bpバーコード(IDT)を各DNA断片に追加し、多重化エクソーム捕捉及び配列決定を容易にできるようにした。エクソーム捕捉前に等量の試料をプールした。配列決定は、Illumina NovaSeq機器で75bpペアエンドリードを使用して実施した。配列決定は、IDT試料の99%において標的塩基の90%に対して20倍を超えるカバレッジを提供するのに十分なカバレッジ深度(すなわち、ゲノムの標的領域内の各ヌクレオチドをカバーする配列リードの数)を有していた。データ処理工程には、Illuminaソフトウェアを使用した試料の脱多重化、バイナリの配列比較及びマッピングのファイル(BAM)の生成を含むGRCh38ヒトゲノム参照配列への配列比較、BAMファイルの処理(例えば、重複リードのマーキング及び他のリードマッピング評価)が含まれた。変異体の呼び出しは、GLNexusシステム(Lin et al.,2018,bioRxiv:343970)を使用して実施した。変異体のマッピング及びアノテーションは、snpEffソフトウェアを使用したGRCh38ヒトゲノム参照配列及びEnsembl v85遺伝子定義に基づくものであった。次いで、各遺伝子について最も有害な機能的効果クラスを選択することにより、アノテーション付きの開始点及び終止点を有するタンパク質コード転写産物に関係するsnpEff予測を組み合わせて、単一の機能影響予測とした。これらのアノテーションの階層は(最も高い有害性から最も低い有害性の順に)、フレームシフト、ストップゲイン、ストップロス、スプライスアクセプター、スプライスドナー、ストップロスト、インフレームインデル、ミスセンス、他のアノテーションであった。予測されるLoF遺伝子変異体には、a)フレームシフトをもたらす挿入または欠失、b)未成熟終止コドンの導入または転写開始部位もしくは終止部位の喪失をもたらす挿入、欠失または一塩基変異体、及びc)ドナースプライス部位またはアクセプタースプライス部位の変異体が含まれた。可能性のある機能的影響について、SIFT(Vaser et al.,Nature Protocols,2016,11,1-9)、Polyphen2_HDIV及びPolyphen2_HVAR(Adzhubei et al.,Nat.Methods,2010,7,248-249)、LRT(Chun et al.,Genome Res.,2009,19,1553-1561)、ならびにMutationTaster(Schwarz et al.,Nat.Methods,2010,7,575-576)を使用し、有害性を予測したin silico予測アルゴリズムの数に従ってミスセンス変異体を分類した。各遺伝子について、各変異体の代替対立遺伝子頻度(AAF)及び機能的アノテーションにより、7つの遺伝子負荷曝露:1)AAF<1%であるpLOF変異体、2)AAF<1%である、5つ中5つのアルゴリズムにより有害と予測されたpLOFまたはミスセンス変異体、3)AAF<0.1%である、5つ中5つのアルゴリズムにより有害と予測されたpLOFまたはミスセンス変異体、4)AAF<1%である、5つ中少なくとも1つのアルゴリズムにより有害と予測されたpLOFまたはミスセンス変異体、5)AAF<0.1%である、5つ中少なくとも1つのアルゴリズムにより有害と予測されたpLOFまたはミスセンス変異体、6)AAF<1%であるpLOFまたはあらゆるミスセンス、7)AAF<0.1%であるpLOFまたはあらゆるミスセンス変異体への包含を決定した。
【0141】
CD109における稀なpLOF及びミスセンス変異の遺伝子負荷の関連分析
REGENIE v1.0(Mbatchou et al.,Nature Genetics,2021)を使用して、ゲノム関係行列を近似する多遺伝子スコアに対する調整を含む線形回帰モデルを当てはめることにより、CD109における稀な予測される機能喪失型またはミスセンス変異体の負荷とeBMDとの間の関連性を調べた。分析は、年齢、年齢、性別、性別毎年齢及び性別毎年齢の相互作用項、実験バッチ関連共変量、10個の共通変異体由来の主成分、ならびに20個の稀な変異体由来の主成分について調整した。単一変異体を使用し、遺伝子負荷試験を使用して、関連分析を実施した。遺伝子負荷試験では、1つ以上の適格な稀な変異体を保有する場合は(頻度及び機能アノテーションに基づいて上述したように)ヘテロ接合体として、ホモ接合状態で何らかの適格な変異体を保有する場合はホモ接合体として、すべての被験者を標識する。次いでこの「複合遺伝子型」を関連性について試験するために使用する。
【0142】
eBMD原因遺伝子についてのエフェクターインデックス
新規機械学習アルゴリズムであるエフェクターインデックスについて文献の別の場所に記載されている(Forgetta et al.,bioRxiv:2021,2020.2006.2028.171561)。11種の疾患及び形質(2型糖尿病、低密度リポタンパク質コレステロールレベル、成人身長、カルシウムレベル、甲状腺機能低下症、トリグリセリドレベル、グルコースレベル、赤血球数収縮期血圧、拡張期血圧及び直接ビリルビンレベル)についてのGWAS分析を実施することによってトレーニングデータを生成した。ファインマッピングを各GWASデータセットについて実施し、ゲノムアノテーションを、勾配ブースティング木アルゴリズム(XGBoost)を使用して、ファインマッピングされたGWAS遺伝子座で陽性対照遺伝子を予測するための特徴として使用した。次いで、このトレーニングされたアルゴリズムを、CD109遺伝子座におけるファインマッピングされ、アノテーションが付けられたeBMD関連データに対して試験して、CD109遺伝子がeBMDに影響を及ぼすこの遺伝子座における遺伝子である確率を試験した。
【0143】
循環CD109のメンデルランダム化解析
2サンプルのメンデルランダム化(MR)を用いて、遺伝的に予測された循環CD109とeBMDとの間の関連を調べた。このアプローチは、CD109タンパク質濃度に関連する一般的な遺伝子変異体(タンパク質量的形質遺伝子座、またはpQTLと呼ばれる)を操作変数として使用する。リードCD109 cis-pQTLは、INTERVAL(N=3,301)及びAGES(N=3,200)コホートにおいて行われた2つの以前に公表された研究において特定された(Sun et al.,Nature,2018,558,73-79;及びEmilsson et al.,Science,2018,eaaq1327)。この解析のためのpQTL-アウトカム関連を、以前に公表されたUKBにおけるeBMDのGWASから抽出し、TwoSampleMR Rパッケージを使用して、Wald比法を用いてMR解析を実施した。共局在解析を実施して、連鎖不平衡による交絡の影響を調べた。これは、CD109タンパク質濃度に関する遺伝子関連シグナルが、CD109におけるeBMD遺伝子関連シグナルと同じ原因変異体を共有する可能性があるかどうかを評価することを伴った。これらの共局在解析は、以前に公表された2つのアルゴリズム、Coloc(Giambartolomei et al.,PLOS Genetics,2014,10,e1004383)及びeCAVIAR(Hormozdiari et al.,Am.J.Hum.Genet.,2016,99,1245-1260)を使用して実施した。
【0144】
実施例1:CD109の機能喪失は、より高い推定骨ミネラル密度に関連する
UK Biobank(UKB)における欧州系統被験者278,807人の全エクソーム配列決定を実施して、ゲノム中の各遺伝子における予測される機能喪失型(pLoF)及びミスセンス遺伝子変異体を特定した。UKBにおいて配列決定された各遺伝子及び遺伝子変異体と、推定骨ミネラル密度(eBMD、踵の超音波を使用して測定される)との関連を調べた。eBMDは、一般的に使用されている骨の密度及び強度のバイオマーカーであり、二重エネルギーX線吸収測定(DXA)技術を使用して測定される骨ミネラル密度と高度に相関する。骨密度のレベル低下は、骨粗鬆症性骨折のリスク上昇と強く関連する。
【0145】
UKBにおけるエクソームワイド分析により、CD109遺伝子における稀な(代替対立遺伝子頻度[AAF]<1%)pLoF変異体の負荷が、0.18標準偏差単位高いeBMDに関連することが見いだされた(P値=1.20×10-09、ボンフェローニ補正されたエクソームワイドの統計的有意性閾値であるP<3.6×10-7を満たす(20,000個の遺伝子及び7個の変異体の凝集モデルに対して補正))(表2;関連の推定はAAF<1%のCD109 pLoF変異体の負荷と関連し、UKBにおいて導き出された)。
【0146】
【表3】
【0147】
遺伝子型カウントは、3つの遺伝子型カテゴリーの各々における被験者の数を示す:RRは、CD109における稀なpLoF変異体を保有しない被験者を示す;RAは、単一のCD109対立遺伝子における稀なpLoF変異体を保有する被験者を示す;AAは、両方のCD109対立遺伝子における稀なpLoF変異体を保有する被験者を示す。AAFは、この分析に含まれたpLoF変異体の代替対立遺伝子頻度を示す。g/cmは、グラム毎平方センチメートルであり、SDは、標準偏差であり、CIは、信頼区間である。
【0148】
CD109における稀なpLoFまたは予測される損傷を与えるミスセンス変異体の遺伝子負荷を調べると、CD109変異体とより高いeBMDとの関連も有意であった(表3;関連の推定は、AAF<1%または<0.1%のCD109 pLoFまたは予測される損傷を与えるミスセンス変異体の負荷と関連し、UKBにおいて導き出された(予測される損傷を与えるミスセンス変異体を特定するために使用したin silicoアルゴリズムの説明については以下の遺伝子型データを参照のこと))。これらの遺伝子データは、CD109の機能喪失がヒトにおいてより高いeBMDをもたらすことを示唆する。
【0149】
【表4】
【0150】
遺伝子型カウントは、3つの遺伝子型カテゴリーの各々における被験者の数を示す:RRは、CD109における稀なpLoF変異体を保有しない被験者を示す;RAは、単一のCD109対立遺伝子における稀なpLoFまたは損傷を与えるミスセンス変異体を保有する被験者を示す;AAは、両方のCD109対立遺伝子における稀なpLoF変異体または損傷を与えるミスセンス変異体を保有する被験者を示す。AAFは、この分析に含まれた変異体の代替対立遺伝子頻度である。g/cmは、グラム毎平方センチメートルであり、SDは、標準偏差であり、CIは、信頼区間である。
【0151】
実施例2:血中の低いCD109タンパク質濃度と関連する変異体は、高いeBMDにも関連する。
メンデルランダム化を用いて、CD109遺伝子座における一般的な遺伝子変異体によるより低い循環CD109タンパク質(CD109遺伝子によってコードされる)が、より高いeBMDと関連することを発見した(表4;CD109に関するリードシスタンパク質量的形質遺伝子座(pQTL)は2つの独立したコホート:INTERVAL及びAGESで得た。アウトカムデータセットとしてUKBのeBMD GWASデータを使用して2サンプルのメンデルランダム化解析を実施した)。この関係を2つの異なるアルゴリズムを使用して実施した共局在解析によってさらに裏付けた(Coloc及びeCAVIAR;H3のColoc事後確率=0.042、H4のColoc事後確率=0.958;eCAVIAR CLPP C1=0.024、CLPP C2=0.002)。これらの結果は、表2で報告した結果に対する補足的証拠を提供し、これは、CD109の機能喪失がより高いeBMDと関連することを示していた。CD109におけるいくつかの個々の稀なpLoF及びミスセンス変異体は、UKBにおけるeBMDとの関連の名目上の証拠を示した(関連に対するP値<0.05;表4)。
【0152】
【表5】
【0153】
実施例3:CD109における一般的な遺伝子変異に適用した機械学習アルゴリズムは、eBMDとの関連に関係する原因遺伝子としてCD109を暗示するさらなる証拠を明らかにした
機械学習アルゴリズム(エフェクターインデックス)をeBMDゲノムワイド関連性データに適用し、CD109が、このゲノム領域におけるeBMD GWAS関連性に関係する原因遺伝子であることを示唆する有力な証拠を確認した(エフェクターインデックス=0.96、これは、CD109がこの遺伝子座における原因遺伝子である確率が高いことを示す)。
【配列表】
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【国際調査報告】