(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】歯科用補綴物支持装置
(51)【国際特許分類】
A61C 7/08 20060101AFI20240719BHJP
A61C 7/14 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
A61C7/08
A61C7/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024507928
(86)(22)【出願日】2022-06-17
(85)【翻訳文提出日】2024-03-26
(86)【国際出願番号】 EP2022066601
(87)【国際公開番号】W WO2023011791
(87)【国際公開日】2023-02-09
(32)【優先日】2021-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524048760
【氏名又は名称】ヴァレール,フレデリック
【氏名又は名称原語表記】VALERE,Frederic
(74)【代理人】
【識別番号】100080447
【氏名又は名称】太田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレール,フレデリック
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052JJ01
(57)【要約】
本発明は、以下の、- 歯科用補綴物(DP)と一体化した支持ストリップ(201)、- コネクタ(203)であって、使用時に、歯の空隙を両側から挟む患者の歯に固定するように適合し、コネクタに、支持ストリップが分解可能に係合し、歯科用補綴物が前記空隙を埋めるようになるコネクタ、- 支持ストリップであって、歯の舌側面だけをすっかり覆って前記歯のその他の面は自由なままにしておくような輪郭を有する支持ストリップ、- コネクタであって、歯の舌側面に対して固定するように構成されるコネクタ、- 支持ストリップであって、コネクタが弾性的に嵌合する窪みを含む支持ストリップ、を含む歯科用補綴物支持装置に関する。
【選択図】
図12b
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の、
- 歯科用補綴物(DP)と一体化した支持ストリップ(101、201)、
- コネクタ(103、203)であって、使用時に、歯の空隙(E)を両側から挟む患者の歯(102、202)に固定するように適合し、コネクタに、支持ストリップ(101、201)が分解可能に係合し、歯科用補綴物(DP)が前記空隙を埋めるようになるコネクタ、
- 支持ストリップ(101、201)であって、前記歯の舌側面(102b、202b)だけをすっかり覆って前記歯のその他の面は自由なままにしておくような輪郭を有する支持ストリップ、
- コネクタ(103、203)であって、前記歯の舌側面(102b、202b)に対して固定するように構成されるコネクタ、
- 支持ストリップ(101、201)であって、コネクタ(103、203)が弾性的に嵌合する窪み(1013、2013)を含む支持ストリップ、
を含むことを特徴とする、歯科用補綴物(DP)支持装置。
【請求項2】
歯科用補綴物(DP)が、接着、ろう付けまたは嵌合によって支持ストリップ(101、201)に固定される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
歯科用補綴物(DP)が、支持ストリップ(101、201)に接着する舌側面を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
歯科用補綴物(DP)および支持ストリップ(101、201)が、成型、加工または3D印刷した一つの要素で構成される単一部品である、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
各コネクタ(103、203)が、球形の形状の接続ヘッド(1301)を有する、請求項1から4のいずれか一つに記載の記載の装置。
【請求項6】
各コネクタ(103、203)が、以下の、
- 台座(1030、2030)であって、歯の舌側面(102b、202b)に対して固定するように適合した固定面(1030b)を有する台座、
- 接続ヘッド(1031、2031)であって、台座(1030、2030)の延長部分にあり、そこに支持ストリップ(101、201)の窪み(1013、2013)のうちの1つが嵌合する接続ヘッド、
を有する、請求項1から5のいずれか一つに記載の装置。
【請求項7】
接続ヘッド(1301)が、台座(1030)から離れており、フランジ(1032)が前記ヘッドの前記台座をつなぐ、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
各コネクタ(103、203)が、以下の、
- 接続ヘッド(1031、2031)であって、支持ストリップ(101、201)の窪みのうちの1つが嵌合する接続ヘッド、
- 固定面(1030b)であって、歯の舌側面(102b、202b)に対して固定するように適合した固定面、
〇 固定面(1030b)であって、接続ヘッド(1031、2031)に整備される平面部からなる固定面、
を有する、請求項1から4のいずれか一つに記載の装置。
【請求項9】
接続ヘッド(1031、2031)が、以下の、卵形、扁長楕円体、球体、立方体、平行六面体、多面体、角柱、円錐、角錐、円柱の形状のうちの1つを有するか、またはこれらのさまざまな形状のうちの2つあるいは複数の組み合わせからなる、請求項6から8のいずれか一つに記載の装置。
【請求項10】
支持ストリップ(101、201)が、可撓性である、請求項1から9のいずれか一つに記載の装置。
【請求項11】
支持ストリップ(101、201)が、剛性である、請求項1から10のいずれか一つに記載の装置。
【請求項12】
支持ストリップ(101、201)が、明確に異なる弾性率を有する部分または領域を有する、請求項1から11のいずれか一つに記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用補綴物支持装置に関する。
【0002】
本発明の技術分野は、歯科用補綴物を患者の口の中の適所に保つことを可能にする装置の分野である。
【背景技術】
【0003】
歯科用インプラントまたは歯科用アンカーは、欠損歯を埋め合わせるために使用される。インプラントは通常、ねじ(チタン製、ジルコニア製またはポリマー製)を含み、ねじは、上顎骨または下顎骨の中に挿入されて、歯科用補綴物を受けることができるアンカーを作り出すことを目的としている。インプラントの取付けは、複数のステップで行われ、また通常麻酔下で展開される。一次手術のステップを通じて、医師は、インプラントを、骨の中にビス留めすることによって取り付ける。数か月の治癒期間の間に、骨はインプラントの周りに再び形成され、インプラントを締めつける。ひとたびインプラントが骨に定着すると、支台が、補綴物の支持体の役目を果たす歯肉の口の広がった形状を準備するために取り付けられる。最後に、補綴物が、支台に取り付けられて最終的に接着される。
【0004】
歯科用補綴物が支台に設置されない限り、患者は、歯列弓の中の、植立部位のところに、空隙をともなう状態に陥る。この空隙はとりわけ見苦しく、また他の歯の好ましくない移動を引き起こす可能性がある。その場合、歯の不正咬合、正中離開または空隙歯列が現れて、顎の筋肉の働きを妨害したりまたは歯間の機能的関係を乱したりする可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、これらの問題を解決することを目的とする。
【0006】
本発明の別の目的は、特に美的で、衛生的で、患者にとって快適な歯科用器具を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明が提案する解決案は、以下の、- 歯科用補綴物と一体化した支持ストリップ、- コネクタであって、使用時に、歯の空隙を両側から挟む患者の歯に固定するように適合し、コネクタに、支持ストリップが分解可能に係合し、歯科用補綴物が前記空隙を埋めるようになるコネクタ、- 支持ストリップであって、歯の舌側面だけをすっかり覆って前記歯のその他の面は自由なままにしておくような輪郭を有する支持ストリップ、- コネクタであって、歯の舌側面に対して固定するように構成されるコネクタ、- 支持ストリップであって、コネクタが弾性的に嵌合する窪みを含む支持ストリップ、を含む歯科用補綴物支持装置である。
【0008】
支持ストリップは舌側の位置にしかないので、常に目に見えず、実際に、特に美的である。それは、煙草の煙やコーヒーと接触して変色することになっても、見苦しくはならない。さらに、ストリップおよびコネクタが歯の咬合面および切端面を完全に自由のままにしておくので、患者は前記ストリップを外す必要なく、完璧に切り、咀嚼し、そして食べることができる。そのうえ、舌側の位置にあるがゆえに、コネクタはもはや、患者の唇および/または頬のところでの不快感および/または刺激の原因ではない。最後に、ストリップは、医師に頼ることなく、患者自身で容易に外して取り替えることができる。
【0009】
本発明の他の有利な特徴は、以下に挙げられる。これらの特徴のうちのそれぞれは、単独でまたは上記に定義された注目すべき特徴と組み合わせて検討されることができ、必要があれば、単数または複数の分割特許出願の対象となることができる。
【0010】
一実施形態によると、歯科用補綴物は、接着、ろう付けまたは嵌合によって支持ストリップに固定される。
【0011】
一実施形態によると、歯科用補綴物は、支持ストリップに接着する舌側面を有する。
【0012】
一実施形態によると、歯科用補綴物および支持ストリップは、成型、加工または3D印刷した一つの要素で構成される単一部品である。
【0013】
一実施形態によると、各コネクタは、球形の形状の接続ヘッドを有する。
【0014】
一実施形態によると、各コネクタは以下の、- 台座であって、歯の舌側面に対して固定するように適合した固定面を有する台座、- 接続ヘッドであって、台座の延長部分にあり、そこに支持ストリップの窪みのうちの1つが嵌合する接続ヘッド、を有する。
【0015】
一実施形態によると、接続ヘッドは、台座から離れており、フランジが前記ヘッドの前記台座をつなぐ。
【0016】
一実施形態によると、各コネクタは、以下の、- 接続ヘッドであって、支持ストリップの窪みのうちの1つが嵌合する接続ヘッド、- 固定面であって、歯の舌側面に対して固定するように適合した固定面、- 固定面であって、接続ヘッドに整備される平面部からなる固定面、を有する。
【0017】
一実施形態によると、接続ヘッドは、以下の、卵形、扁長楕円体、球体、立方体、平行六面体、多面体、角柱、円錐、角錐、円柱の形状のうちの1つを有するか、またはこれらのさまざまな形状のうちの2つあるいは複数の組み合わせからなる。
【0018】
一実施形態によると、支持ストリップは可撓性である。
【0019】
一実施形態によると、支持ストリップは剛性である。
【0020】
一実施形態によると、支持ストリップは、明確に異なる弾性率を有する部分または領域を有する。
【0021】
本発明によって扱わない別の態様は、以下の、- 上顎拡大プレートであって、患者の上顎歯列弓の複数の歯と協働して前記患者の口蓋を広げるように構成される上顎拡大プレート、- コネクタであって、前記歯に固定するように適合し、コネクタに上顎拡大プレートが分解可能に係合するコネクタ、- コネクタおよびプレートであって、協働して、患者が歯科用器具を装着している時に口蓋を広げる傾向のある少なくとも1つの応力を加えるようなコネクタおよびプレート、- 上顎拡大プレートであって、硬口蓋および歯の舌側面だけをすっかり覆って前記歯のその他の面は自由なままにしておくような輪郭を有する上顎拡大プレート、- コネクタであって、歯の舌側面に対して固定するように構成されるコネクタ、- 上顎拡大プレートであって、コネクタが弾性的に嵌合する窪みを含む上顎拡大プレート、を含む上顎拡大器具に関する。
【0022】
本発明によって扱わないさらに別の態様は、以下の、- 歯科用アライナーであって、患者の歯列弓の少なくとも1つの歯と協働して、所望の位置の方へ歯を移動させるように構成される歯科用アライナー、- コネクタであって、歯列弓の歯に固定するように適合し、コネクタに歯科用アライナーが分解可能に係合するコネクタ、- コネクタおよびアライナーは、協働して、患者が歯科用器具を装着している時に少なくとも前記歯に少なくとも1つの治療用の応力を加えるようなコネクタおよびアライナー、を含む歯科用器具に関する。歯科用アライナーは、歯の舌側面だけをすっかり覆って前記歯のその他の面は自由なままにしておくような輪郭を有し、可撓性ストリップで形成される。さらに、コネクタは、歯の舌側面に対して固定するように構成される。また可撓性ストリップは、コネクタが弾性的に嵌合する窪みを含む。
【0023】
本発明の他の利点および特徴は、非限定的で表示的な例として作製される付属の図面を参照して、以下の好ましい実施形態の説明を読むことにより、より良く明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】患者が装着している歯科用器具の横断面概略図である。
【
図2a】患者の上顎歯列弓のところに位置決めするように適合した歯科用アライナーの横断面概略図である。
【
図2b】患者の下顎歯列弓のところに位置決めするように適合した歯科用アライナーの横断面概略図である。
【
図3a】本発明において使用されるコネクタの正面概略図を示している。
【
図3b】本発明において使用されるコネクタの側面図を示している。
【
図3c】本発明において使用されるコネクタの平面図を示している。
【
図4a】本発明において使用されるコネクタの正面概略図を示しており、コネクタにさまざまな応力領域が示されている。
【
図4b】本発明において使用されるコネクタの側面図を示しており、コネクタにさまざまな応力領域が示されている。
【
図4c】本発明において使用されるコネクタの平面図を示しており、コネクタにさまざまな応力領域が示されている。
【
図5】患者の下顎歯列弓および上顎歯列弓のところへの歯科用器具の取付けを示している。
【
図6】患者が装着している歯科用器具の横断面概略図であり、上顎歯列弓のところに配置されたアライナーは、アンカースクリューとつながっている口蓋延長部を示している。
【
図7】
図6の器具において使用されている歯科用アライナーの横断面概略図である。
【
図8】別の実施形態による、患者の下顎歯列弓のところに配置された歯科用器具の横断面概略図である。
【
図9】
図8の器具において使用されている取外しのできるマウスピースの横断面概略図である。
【
図10】別の実施形態による、患者の上顎歯列弓のところでの歯科用器具の取付けを示している。
【
図12a】仮歯の支持体としての歯科用器具の使用を示している。
【
図12b】仮歯の支持体としての歯科用器具の使用を示している。
【
図13a】一実施変形例によるコネクタの側面概略図である。
【
図13b】一実施変形例によるコネクタの平面概略図である。
【
図14】別の実施形態による、患者の下顎歯列弓のところに配置された歯科用器具の横断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
明確にするために、明細書および特許請求の範囲で使用される特定の用語に、以下のような詳しい説明が与えられる。
- 「舌側面」は、(下顎歯列弓の歯については)舌の方に向けられる歯の面または(上顎歯列弓の歯については)口蓋の方に向けられる歯の面を意味する、
- ここで使用されているように、相反する指示がない限り、対象を記述するための「第一の」、「第二の」などの序数形容詞の使用は、類似した対象のさまざまな場合が言及されることを単に示すだけであって、このように記述される対象が時間においてであれ、空間においてであれ、分類においてであれまたは他のあらゆる方法においてであれ、所与の順序におけるものでなければならないことを意味するものではない、
- 同様に、「右/左」、「前/後」「上/下」、などの形容詞の使用は、付属の図面の構成における対象の位置を単に記述することを可能にするものであり、実際には、類似した対象が同じ位置にあることを必ずしも意味するわけではない、
- 「Xおよび/またはY」はつまり、X単独であること、またはY単独であること、またはXおよびYであることを意味している、
- 概して、さまざまな図面が、ある図面から別の図面まで、または、所与の図面でも正確な縮尺率で描かれてはいないこと、またとりわけ、対象が、図面の解読を容易にするために自由に描かれ得ることが認められるであろう。
【0026】
図1は、上顎歯列弓100の第一の歯102と協働する第一の歯科用アライナー101および下顎歯列弓200の第二の歯202と協働する第二の歯科用アライナー201を示している。実際には、各アライナー101、201は、複数の歯、例えば2~16本の歯と協働する。治療の性質によっては、2つの歯列弓100または200のうちの1つだけが、アライナーを備え得る。アライナー101、201は、1つの歯列弓の1本だけの歯または複数の歯を移動するために使用されることができる。
【0027】
歯102、202は、前庭面102a、202a(頬または唇の方に向いている面)、舌側面102b、202b、咬合面または切端面(上面)、近心面(前に向かう面)および遠心面(後ろに向かう面)を有する。一つの特徴によると、アライナー101、201は、歯の舌側面102b、202bだけをすっかり覆うような輪郭を有する可撓性ストリップで形成される。歯102、202のその他の全ての面、とりわけ咬合面または切端面は、自由なままにしておかれ、このことは、患者が、アライナー101、201を口内に持ち続けながら食べることができることを可能にする。
【0028】
一実施形態によると、この可撓性ストリップは、舌側面102b、202bの全体(コネクタ103、203のところを除く)をすっかり覆って接触しており、したがって食物が間に入り込むようになることはできない。別の一実施形態によると、この可撓性ストリップは、舌側面102b、202bの一部、例えばコネクタ103、203と咬合面または切端面との間に位置する部分しかすっかり覆わずまた接触しない。
【0029】
好ましい一実施形態によると、アライナー101、201は、一続きで作製される。それはしかしながら、複数の明確に異なる部分で形成されることができ、各部分は、単数または複数の歯の移動を特定的に取り扱うために使用される。
【0030】
アライナー101、201は有利には、透明または半透明のポリマー材料で作製され、したがって装着時に目に見えない。使用されるポリマー材料は、例えば以下の群に属することができる。(メタ)アクリレートポリマー、シリコーン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)、ポリプロピレン、エチレンビニルアセテート、またはあらゆる他の適切なポリマー。
【0031】
一実施形態によると、アライナー101、201は、成型、熱成形、3D印刷、または当業者に都合のよいあらゆる他の方法によって得られる。
【0032】
当業者に既知の仕方で、アライナー101、201による歯の動きの決定は、例えば印象を利用して、または好ましくは歯列弓のデジタルモデリングを得ることを可能にする口腔内スキャンを利用して、歯の最初の位置の模型を製作することから始めることができる。所望の最終位置までの歯の移動の手順を定義する治療プランは、医師により、かつ/またはCoruo社が販売するDeltaFace(登録商標)ソフトウェアタイプの専用ソフトウェアにより決定することができる。この手順は、治療プランの各段階でのアライナーの構成を決定することになる。各段階で、歯は、空間の異なる平面内で徐々に、例えば0.1mm~0.2mm移動する。10~100の段階、ひいては10~100の、アライナーの異なるモデルがあり得る。治療の各段階の初めに、アライナーが歯に置かれるとき、アライナーは、歯が前記段階の終わりで得なければならない中間(または最終)の整列状態に調節され、その結果アライナーの各モデルは、移動すべき前記歯に単数または複数の応力を与える。アライナーの可撓性により、アライナーは、歯が治療段階の始まりに有する整列状態まで弾性的に変形することができる。アライナーは、その最初の形状に戻ろうとすること(形状記憶)によって、歯に単数または複数の応力を与える。歯はそのとき、アライナーの形状に徐々に調節される。歯がアライナーの形状に完全に調節されるとき、すなわち歯が予定された配置まで移動したとき、アライナーの変形ひいては付随した治療力は、より小さく、さらにはゼロになる。そのときアライナーを交換して、次の治療段階へ移る。実際には、患者にはアライナーセットが提供され、医師に診察を受ける必要なく、治療の各段階でそのセットを順次使用する。治療の終わりで、最後のアライナー(または最終の整列状態に調節された別のアライナー)は保定目的で使用されることができ、そのときアライナーは受動的であり、すなわちいかなる歯も拘束しない。
【0033】
アライナー101、201の可撓性は、主にその形状、その材料およびその厚さによって決まる。この可撓性は、単数または複数の歯に単数または複数の歯を移動させるための治療用の応力を与えるための、弾性的かつ制御された方法で変形するアライナーの能力に相当する。
【0034】
一実施形態によると、アライナー101、201の厚さは、0.1mm~2mm、有利には0.5mm~1mm、好ましくは0.6mm~0.8mmである。この厚さは、一定であるか、またはむしろ、アライナー101、201が異なる弾性モジュールを持つ明確に異なる厚さのさまざまな部分または領域を有するように多様であり得る。このように、治療すべきとある歯に加えられることになる応力の強さを適合させることができる。類似の結果が、明確に異なる弾性モジュールを有する材料で構成される複数の部分または領域で形成されるアライナーを使用することによって得られる。各部分または領域はこのように、それに特有の強さを持つ応力を発生させることができる。
【0035】
アライナー101、201は、歯102、202の舌側面102b、202bに対して固定するように構成されるコネクタ103、203によって所定位置に維持される。アライナー101、201は、本明細書内で先に説明されたように、(手動でかつ道具なしで)コネクタ103、203に分解可能に係合する。
【0036】
コネクタ103は、歯列弓の歯の全部かもしくは一部に固定されることができる。
図5の例にて、上顎歯列弓100のところでは、コネクタ103は、中切歯、側切歯、および犬歯の舌側面に固定されており、アライナー101は、これらの歯のところにだけ位置決めされている。歯列弓200のところでは、コネクタ203は、中切歯、側切歯、犬歯、第一小臼歯、第二小臼歯および第一大臼歯の舌側面に固定されており、アライナー201は、これらの歯のところにだけ位置決めされている。
【0037】
コネクタ103、203は、アライナー101、201と同じポリマー材料で作製されることもできるし、または例えば金属製やセラミック製の、明確に異なる材料で作製されることもできる。コネクタ103、203は、成型、加工、3D印刷などによって得られることができる。それらは,アライナーによって拘束されるときに変形しないという意味で、剛性である。
【0038】
全てのコネクタ103、203は有利には、それらの設計およびそれらの取付けを単純化するために、コネクタが固定される歯がどれであろうと、また、コネクタが位置決めされる歯列弓がどちらであろうと、大きさおよび形状において同一である。しかしながら、歯および/または歯列弓および/または加えるべき応力のタイプおよび/または加えるべき応力の強さに応じて、異なるコネクタの大きさおよび/または形状を準備することができる。
【0039】
一実施形態によると、アライナー101、201は、把持機構を含み、コネクタ103、203からアライナーの係合を解除するために患者がアライナーを容易に捕らえることを可能にする。
図5では、この把持機構2012は、アライナー201の単数または複数の折り返したへりのところまたは各(もしくはただ一つの)遠心端部のところに形作られたノッチの形態をしている。このノッチ2012は、患者がアライナー201の係合を解除するために爪や指をそこに滑り込ませることを可能にする。把持機構2012は、別の形態、例えば隆起した構成要素の形態をしていてもよい。把持機構2012は、アライナー101、201と同時に形作られてもよいし、またはアライナーに付け加えられてもよい。
【0040】
図3a、
図3bおよび
図3cは、どの歯であろうと、どの歯列弓であろうと、また加えられるべき応力のタイプおよび/または強さがどうであろうと、汎用的に使用されることができるコネクタ103の好ましい実施形態を示している。
【0041】
このコネクタ103は、歯の舌側面102b、202bに対して固定するように適合した固定面1030bを有する台座1030を含む。一実施形態によると、台座1030は、矩形またはほぼ矩形の形状を有し、その長さは2mm~6mm、幅は1mm~3mm、厚さは0.5mm~2mmである。台座1030はしかしながら、別の形状、例えば円形、卵形、多角形の形状などを有し得る。固定面1030bは、平面であってもよいが、しかし好ましくは、舌側面102b、202bの曲率に適合した曲率を有するのがよい。一実施形態によると、歯の台座1030の固定は、接着によって、例えば光重合型接着剤を使って行われる。コネクタ103、203の位置は、治療の継続期間の間中ずっと維持され、各段階でそれらを交換する必要はない。
【0042】
コネクタ103はまた、台座1030の延長部分にある接続ヘッド1301も含む。
図3a、
図3bおよび
図3cでは、接続ヘッド1301は、例えば0.5mm~2mmの間隔をあけて台座1030から離れているので、コネクタ103は、前記ヘッドの前記台座をつなぐフランジ1032を有している。このフランジ1032はとりわけ、パワーチェーンまたはゴムを受けることを可能にすることができ、前記パワーチェーンまたは前記ゴムが別のコネクタ、アンカースクリューまたは歯科矯正用ボタンに留められるとき、コネクタ103に応力を加えることを可能にする。この技術は例えば、埋伏歯を牽引するために使用されることができる。
【0043】
図3a、
図3bおよび
図3cでは、接続ヘッド1031は、長手方向の対称軸X-Xすなわち主軸を有する卵形(または水滴または卵の形)の形状を有している。例として、この卵形は、長さが2mm~6mm、幅が1mm~6mm、高さが1mm~6mmである平行六面体の包囲体に含まれる。
【0044】
図3bを参照すると、長手方向の対称軸X-Xと台座1030の固定面1030bに対する法線Y-Yとは、10°~90°、有利には45°~90°また好ましくは55°~65°の角度αを有利には形成している。卵形の接続ヘッド1031のこの角度形成は、歯の移動、またより具体的には傾斜移動およびトルクの非常に正確な制御を可能にする。
【0045】
卵形の接続ヘッド1031は、もう一方の反対側の端部10311よりも尖った端部10310を有する。最適な精度をもって歯の移動(とりわけ傾斜移動およびトルク)を制御するためには、コネクタ103が歯に固定されるとき、この「先の尖った」端部10310は好ましくは、前記歯の根元の方に向けられる。しかしながら、先の尖った端部10310が歯の咬合面または切端面の方に向けられるときに、良好な結果を得ることもある。回転のような歯の移動のためには、先の尖った端部10310は、歯の遠心面または近心面の方に向けられてもよい。
【0046】
多くの実験の後、発明者は、このようなコネクタ103、特に、台座1030に対して角度が付けられ、先の尖った端部10310が歯の根元の方に向けられた卵形の接続ヘッド1031を有するコネクタが、三次数にしたがって歯の移動を非常に正確に制御しながら、任意の選択された軌道に沿って歯を移動させることを可能にするだけでなく、歯に加えられる応力の強さを正確に調整することもまた可能にすることを確認した。このようなコネクタ103は、ただ1つの形状およびただ1つの向きが歯の6つの動き(傾斜移動またはティッピング、挺出、埋伏、回転、トルク、歯体移動)を正確に制御することを可能にする限り、汎用的と呼ばれることができる。
【0047】
主軸が上述の長手方向の対称軸X-Xである扁長楕円体形状を接続ヘッド1031が有するとき、歯の移動の精度および応力の強さの調整の観点からの良好な結果もまた得られる。この場合、2つの端部10310および10311は、同一かつ対称である。
【0048】
他の実施形態によると、とりわけ、
図10、
図11および
図12a~12bを参照した説明において先に記述された応用例において、接続ヘッド1031は、卵形の形状または扁長楕円体形状または他の形状、とりわけ球体、立方体、平行六面体、多面体、角柱、円錐、角錐、円柱などの形状を有することができる。それはさらに、これらのさまざまな形状のうちの2つあるいは複数の組み合わせからなることができる。
【0049】
図13aおよび
図13bの実施変形例において、固定面1030bは、接続ヘッド1031に直接整備される平面部からなる。接続ヘッドはこの場合、歯の舌側面のできるだけ近くに位置決めされる。この設計は、コネクタ103の外形寸法(とりわけ厚さおよび/または高さ)が
図3a、
図3bおよび
図3cの外形寸法と比べれば小さい限り、患者にさらに多くの快適さを提供する。さらに、接続ヘッド1031が、
図3a、
図3bおよび
図3cの接続ヘッドと比べれば突出部分が少ないので、歯に加えられる応力の性質および/または強さは同じではない。
【0050】
図1、
図2aおよび
図2bを参照すると、各アライナー101、201は、コネクタ103、203、より具体的にはヘッド1031、2031が弾性的に嵌合する窪み1013、2013を含む。アライナー101、201を取り付けるためには、ヘッド1031、2031の正面に窪み1013、2013を持ってきて、手動で(指を使って)前記ヘッドに前記窪みを押すだけでよい。窪み1013、2013は、空洞(開通していない)を形成し、その中にヘッド1031、2031が入り込む。窪み1013、2013は、周縁リップ10131、20131または別のアンダーカット形状を有し、それはコネクタ103、203の取り入れおよび取り出しの際に変形する。コネクタ103、203の取り入れの後、周縁リップ10131、20131は、ヘッド1031、2031と噛合する。ここで、卵形の形状または楕円体の形状のヘッド1031、2031が、コネクタ103、203を引きちぎる危険性なく、アライナー101、201を手で容易にまた痛みを伴わず取り外しすることを確実にすることが注目される。
【0051】
窪み1013、2013が、コネクタ103、203に嵌合していてアライナー101、201が、所定位置にあるとき、前記アライナーは、ヘッド1031、2031に、また場合によっては歯の舌側面に単数または複数の応力を与えるようになる。
【0052】
図4a、
図4bおよび
図4cは、黒い点によって示された、コネクタ103のさまざまな応力領域を示している。これらの応力領域は、ヘッド1031の点または表面に相当し、それらにアライナーは押圧および/または圧力をかける。これらの圧力は、関係する治療段階の間中、アライナーの弾性変形によってもたらされる。言葉を換えれば、アライナーは、ヘッド1031の単数または複数の局所的な領域を押すようになる。応力領域の正確な位置は、窪み1013、2013の特定の構成によって、かつ/または、前記窪み内に材料(例えば樹脂)を付加することにより作製されるまたは成型によって形作られるボスの生成によって、決定することができる。窪み1013、2013が三次元的にヘッド1031、2031を取り囲んで締めつける限り、三次元制御を容易に得ることができ、ヘッドの各領域は拘束されることができる。
【0053】
埋伏の動きは、端部10311(歯の咬合面または切端面に近い)のところにある領域I(
図4a)において、歯の長軸に沿って圧力をかけることによって得られる。この圧力は、根尖方向の軸方向力を発生させることになり、この力は、歯をその歯槽の中に沈める傾向がある。
【0054】
逆に、挺出の動きは、端部10310(歯の根元に近い)のところにある領域E(
図4a)において、歯の長軸に沿って圧力をかけることによって得られる。この圧力は、咬合方向の軸方向力を発生させることになり、この力は、歯をその歯槽から出す傾向がある。
【0055】
傾斜移動(ティッピング)の動きは、領域V11および/または領域V12(
図4a)において圧力をかけることによって得られる。この圧力は、歯冠の、前庭-舌の回転軸を中心とした、近心-遠心方向の回転を引き起こすことになる。また、領域V21および/または領域V22においてかけられる圧力は、前庭-舌の軸を中心として、遠心-近心方向の歯冠の逆の回転を引き起こすことになる。
【0056】
トルクの動きは、領域T11および/または領域T12(
図4b)において圧力をかけることによって得られる。この圧力は、歯冠の、近心-遠心軸を中心とした、前庭-舌方向の回転を引き起こすことになる。また、領域T21および/または領域T22においてかけられる圧力は、近心-遠心軸を中心として、舌-前庭方向の歯冠の逆の回転を引き起こすことになる。
【0057】
回転の動きは、領域R11および/または領域R12(
図4c)において圧力をかけることによって得られる。この圧力は、歯の、その長軸を中心とした、遠心-近心方向の回転を引き起こすことになる。また、領域R21および/または領域R22においてかけられる圧力は、歯の、その長軸を中心とした、近心-遠心方向の回転を引き起こすことになる。
【0058】
歯体移動の動きは、領域L(
図4bおよび4c)において圧力をかけることによって得られる。この圧力は、歯冠の、舌-前庭方向の平行移動を引き起こすことになる。同様の歯体移動の動きが、(領域Lにおいてかけられる圧力を補足してまたはそれの代わりに)領域R21および領域R12において圧力を同時にかけることによって得られる。また、領域R11および領域R22において同時にかけられる圧力は、歯の、前庭-舌方向の逆の平行移動を引き起こすことになる。
【0059】
これらのさまざまな動きは、ヘッド1031のさまざまな領域において圧力を同時にかけることによって組み合わせることができる。例えば、領域L、領域R11および領域R12において圧力を同時にかけることによって、歯体移動の動きと回転の動きとを組み合わせることができる。同様に、領域Eおよび領域V11において圧力を同時にかけることによって、挺出の動きと傾斜移動の動きとを組み合わせることができる。さらに、これらのさまざまな歯の動きはすべて、アライナーが歯の舌側面に直接応力を与えることによって増幅および/または調整することができる。その場合、コネクタと歯の舌側面とに同時に明確に異なる応力領域が得られる。
【0060】
ヘッド1031の卵形または楕円体の形状は、前記ヘッドの特定の向きに組み合わされて、アライナーによってかけられる治療力を正確に方向づけるのを助けることになる無数の応力領域(または押し領域)を提供して、単数または複数の所望の歯の動きを引き起こすことを可能にする。医師によって選択される応力領域の位置決定はさらに、アライナーによってかけられる治療力の強さを調整することを可能にする。三次数にしたがった歯の移動はこのように、高精度で調整および制御される。
【0061】
このようなコネクタは、アライナーが発生させる治療力を、歯に正確に伝えることを可能にすることになる。コネクタは、一種の調整レバーやジョイスティックに類似しており、コネクタが固定している歯の動きを制御することを可能にする。別の類似性によると、接続ヘッドは、コネクタが固定される歯のアバターであり、ヘッドに加えられる応力の影響は、直接、歯に反映することになる。
【0062】
コネクタ103、203は、1つの歯列弓の複数の歯に固定される。しかしアライナー101、201は必ずしも、これらの歯のすべてに治療用の応力を加えることになるとは限らない。実際に、これらの歯のうちのいくつかだけを再位置決めする必要があり、一方、他の歯は、再位置決めすべき単数または複数の歯にアライナーが応力を加えるときにアライナー101、201を適所に保つためにアンカーとして役立つことになる。
【0063】
アライナー101、201が、アライナーが嵌合するコネクタ103、203および/または歯に、十分な強さで治療用の応力を与えることができるように、アライナーは表面を押さなければならない(作用・反作用の法則)。アライナーと接触している表面は、舌側面102b、202bの表面および接続ヘッド1031、2031の表面である。コネクタ103、203はつまり、総接触面積を増やすことを可能にする。しかしながらこの総接触面積は、歯の舌側面102b、202bに加えて咬合面、切端面および前庭面をすっかり覆うInvisalign(登録商標)マウスピースタイプの従来のアライナーの総接触面積よりもずっと小さい。したがって、同等の弾性率では、アライナー101、201は、Invisalign(登録商標)マウスピースに比べて、コネクタ103、203および/または歯に与えられる治療用の応力の強さが小さい可能性がある。このことは、例えば歯体移動の動きや回転の動きなど、実行すべき歯の動きの性質によっては問題となることがある。
【0064】
この問題を解決するための1つの解決策は、例えばより剛性の材料を使用することによりかつ/または前記アライナーの厚さを増すことにより、弾性率の増加したアライナー101、201を使用することにある。この解決策はしかしながら、局部的に応力の強さが比較的高くなり得る限り、患者にとって特に痛みを伴い不快であるという不都合を有する。
【0065】
したがって、好ましい解決策は、アライナーが追加の押し領域を有するように、アライナー101、201を形作ることにある。この追加の押し領域は、アライナー101、201によって与えられる応力の強さを増すことになる、てこの役割を果たす。
図1、
図2a、
図2bおよび
図5では、アライナー101は、使用時に、患者の硬口蓋VPの全部かもしくは一部を押すようになるように構成される口蓋延長部1010を有している。一実施形態によると、口蓋延長部1010は、歯肉領域を例えば0.5cm~2cm越えて広がって、口蓋稜(例えば犬歯間の幅)の全部かもしくは一部をすっかり覆う。例として、口蓋延長部1010の面積は、1cm
2~3cm
2である。同様に、アライナー201は、使用時に、患者の歯肉領域ZGを押すようになるように構成される歯肉延長部2010を有している。一実施形態によると、歯肉延長部1010は、長さが1cm~4cmのアーチ(例えば犬歯間アーチ)上でかつ歯肉粘膜境までの、歯肉領域をすっかり覆う。この歯肉延長部2010の面積は、例えば0.5cm
2~2cm
2である。
【0066】
この解決策は、アライナー101、201を比較的薄く可撓性に保ち、過度の応力を発生させず、実際に患者にとって特に快適であるという利点を有する。
【0067】
図6で示されている一実施形態によると、口蓋延長部1010は、患者の口蓋に設置されたアンカースクリューVAとつながっている。口蓋延長部1010はこのために、スクリューVAの頭部が嵌合する窪み10100(
図7)を有する。アライナー101はこのように、追加のアンカーポイントを享受し、応力の強さをさらにいっそう増すことを可能にする。類似した構成が、歯肉延長部2010のところで検討されることができる。
【0068】
図8および
図9で示されている実施形態は、接続ヘッド2031および/または移動させるべき歯の舌側面202bにアライナー201によって与えられる応力をいっそう増幅することを可能にする。この実施形態において、取外しのできるマウスピース3は、患者の歯をすっかり覆うような輪郭を有する。このマウスピース3は、アライナー201の少なくとも一部分に係合する部分30を有し、アライナーにすっかり覆われて移動しなければならない歯202の舌側面202bに向かってアライナーを拘束する傾向のある少なくとも1つの力を前記アライナーに加える。マウスピース3は有利には、アライナー201と同じ材料で作製され、また同じ厚さまたはほぼ同じ厚さを有するので、該マウスピースは可撓性である。このマウスピース3はアライナー201をすっかり覆うために下顎歯列弓のところに置かれることもできるし、アライナー101をすっかり覆うために上顎歯列弓のところに置かれることもできる。マウスピース3は、アライナー201の形状に適合しているので、治療のシーケンスにおけるアライナーと同数のマウスピースがある。
【0069】
Invisalign(登録商標)タイプのマウスピースと同様に、マウスピース3は、歯、例えばマウスピースが位置決めされる歯列弓のすべての歯に適合する受入空洞300を有する。マウスピース3はこのように、これらの歯の前庭面202aおよび咬合面/切端面をすっかり覆うことができる。これらの歯の中で、アライナー201と協働しないものについては、マウスピース3は、それらの舌側面もすっかり覆うようになる。そしてアライナー201と協働する歯については、部分30が前記アライナーの少なくとも一部をすっかり覆うようになる。
図8では、部分30は、アライナー201をコネクタ203まですっかり覆うようになる。この部分はしかしながら、それを越えて、歯肉のところまで広がることができ得る。マウスピース3の可撓性ゆえに、部分30は、アライナー201にクリップのように作用し、このことは、接続ヘッド2031および/または移動すべき歯の舌側面202bに与えられる応力を増幅することになる。
【0070】
図14では、部分30は、アライナー201をすっかり覆うようにはならずに、該アライナーを補足している。このようにアライナー201が協働する歯は、- 前記アライナーによってすっかり覆われるそれらの舌側面の大半(例えば80%~95%)、- そしてマウスピース3によってすっかり覆われるそれらの舌側面の残りの部分、それらの咬合面/切端面およびそれらの前庭面を有する。部分30は、舌側面の小さい部分をすっかり覆うようになって、歯の咬合縁/切縁から数ミリメートル(例えば1mm~5mm)にわたって広がる舌側返し部を形成することができる。マウスピース3はこのように、(歯に前庭面からの応力を加えることによって)歯に作用するが、しかしアライナー201には作用しない。この設計は、製造の観点から特に有利である。実際に、アライナー201とマウスピース3とを(例えば熱成形によって)モノブロックの単一部品に設計して、次に前記マウスピースとの連帯を絶つために前記アライナーを(例えばレーザ切断によって)切り分けるだけでよい。これらの2つの構成要素はこのように、非常に単純に少ない費用で得られる。
【0071】
舌側のアライナー101、201がそれだけで使用されるときに非常に良好な結果をもたらす限り、このマウスピース3が必要不可欠な訳ではないことに注目すべきである。マウスピース3は、単なる付属品でしかなく、本質的に夜間に使用される。それはまた、受動的な方法で(アライナーおよび/または歯を拘束することなく)、治療の終わりの保定用付属品として使用されることもできる。
【0072】
急速拡大装置やクワドヘリックスといった歯科矯正器具は、狭すぎる顎を大きくするために一般に使用されている。これらの器具によって与えられる力は、すべての歯が正確に段階を追って変化するように口蓋が広がることを可能にする。これらの器具は概して、それらの取付けが比較的複雑であり得る限り、拘束的である。またクワドヘリックスの場合、開始および調整は、検診のたびに、医師によって行われる。医師のみが器具を変更することができ、このことは特に拘束的である。本発明によってカバーされない一実施形態による歯科用器具は、これらの問題を解決することを可能にする。
【0073】
図10および
図11では、コネクタ103は、歯への安定が最適になることを確実にするように、大臼歯および小臼歯の舌側面に固定されている。コネクタはしかしながら、もっぱら大臼歯または他の歯だけに固定されることが可能である。
【0074】
アライナーはいまや、口蓋プレート101の形をしており、該プレートは口蓋をすっかり覆い、先に説明されたように(手動でかつ道具なしで)コネクタ103に分解可能に係合するものである。プレート101(上顎拡大プレート)の役割は、もはや歯を整列させることではなく、口蓋を広げることである。実際に、コネクタ103およびプレート101は、協働して、横手方向に口蓋を開く傾向のある少なくとも1つの応力を歯に加える。
【0075】
プレート101は、先に記述されたアライナーと同様に、歯の舌側面102b、202bだけをすっかり覆って前記歯のその他の面は自由なままにしておくような輪郭を有する可撓性のプレートである。それはまた、硬口蓋VPもすっかり覆う。プレート101は、コネクタ103が弾性的に嵌合する窪みを含む。
【0076】
図9を参照すると、可撓性プレート101は、硬口蓋VPに押しており、ばねまたはジャッキのように作用している。硬口蓋VPとコネクタ103および歯102とに可撓性プレート101によって与えられる力(矢印で概略化されて示されている)は、舌-前庭方向に向いており、このことは口蓋を開くことを可能にする。
【0077】
一実施形態によると、可撓性プレート101は、四分円または半歯列弓の複数の歯の舌側面に押している。場合によっては、例えば
図10での切歯および犬歯のように、コネクタ103を備えていない歯もある。その結果、可撓性プレート101は、横手方向と同時に矢状方向にも口蓋を開くこと、すなわち湾曲したまたは扇状の開きを可能にする。このことは、上顎の正常な成長が横手方向だけでなく全方向に実現する成長期の子供が器具を装着する場合に特に有利である。横手方向における口蓋の開きのみが所望される場合、可撓性プレート101は、臼歯だけを拘束するように構成され得る。
【0078】
プレート101が、容易に手動でコネクタ103に嵌合し分解されるので、患者は、自身の治療を独りで管理することができる。コネクタ103の取付けを別にすれば、医師が介入する必要はない。患者は、一連のプレート101を有しており、各段階で口蓋を徐々に例えば0.1mm~0.2mm開くことを可能にする。各プレートは、口蓋を広げるためにしだいに大きくなる。10~100の段階ひいては10~100のさまざまなプレート101のモデルがあり得る。各段階の初めに、プレートを口蓋に置いてコネクタと嵌合するとき、プレート101は、上顎歯列弓が前記段階の終わりに得なければならない中間(または最終)の構成に調節されて、その結果プレート101の各モデルは口蓋を広げる傾向のある応力を歯に与える。プレート101の可撓性により、プレートは、歯列弓が治療の段階の始まりに有する構成まで弾性的に変形することができる。プレート101は、その最初の形状に戻ろうすること(形状記憶)によって、上顎歯列弓に応力を与える。上顎歯列弓および口蓋はそのとき、プレート101の形状に徐々に調節される。上顎歯列弓および口蓋がプレート101の形状に完全に調節されると、プレートを交換して、次の治療段階へ移る。治療は、1~6か月継続し得、プレート101は、ひと月に1回か2回の交換が可能である。
【0079】
図12aでは、コネクタ203は、インプラントの植立部位のところで空いたままになっている空隙Eを両側から挟む歯202の舌側面に固定されている。例として、インプラントを第二小臼歯のところに取り付ける場合、コネクタ203は第一小臼歯および第一大臼歯の舌側面に固定される。空隙Eを、欠損歯によって空いたままにしておくこともまた可能である。コネクタ203は、先に記述したコネクタ103に類似している。
【0080】
図12bを参照すると、本発明による装置は、歯科用補綴物DPが固定する支持ストリップ201を含む。従来通り、この補綴物DPは、樹脂および/またはセラミックで作製される。それは、成型、加工または3D印刷によって得られる。
【0081】
支持ストリップ201への補綴物DPの固定は、接着、ろう付け、嵌合または、当業者に都合のよいあらゆる他の方法によって行われることができる。
図12bの実施形態によると、補綴物DPの舌側面は、支持ストリップ201に接着している。一変形例によると、補綴物DPおよび支持ストリップ201は、成型、加工または3D印刷によって得られた一つの要素で構成される単一部品である。
【0082】
先に記述されたアライナーについてと同じように、支持ストリップ201は、コネクタ203に嵌合する。それは、可撓性または剛性のプレートの形状を呈しており、歯の舌側面だけをすっかり覆って前記歯のその他の面は自由なままにしておくような輪郭を有する。それは、コネクタ203が弾性的に嵌合する窪みを含む。この支持ストリップ201の特徴は、先に記述されたアライナー101の特徴と類似している。
【0083】
支持ストリップ201がコネクタ203に嵌合しているとき、補綴物DPは空隙Eを埋めるようになる。ストリップ201の役割は、もはや歯を整列させることではなく、補綴物DPを支えることである。それはまた、例えば後の植立または子供の永久歯の萌出のために、歯が移動して空隙Eを維持することを避けることも可能にする。それはさらに、対合歯を、その後戻りを避けつつ垂直な位置に保つことによって咬合を維持することを可能にする。支持ストリップ201が、歯および補綴物DPの後ろに隠れている状態にあるので、この解決策は、特に美的である。さらに、支持ストリップ201が(手動でかつ道具なしで)コネクタ203に分解可能に係合するので、補綴物DPの取付けおよび引出しは、非常に容易になされる。補綴物DPは、単純に一時的なものであることができ、とりわけ、治癒期間が終わるとすぐに、支台および最終的な補綴物の取付けの時に外すことができる。補綴物DPはまた、より長い期間にわたって適所に保たれることもでき、例えば患者がインプラントの取付け後の手術を続行することを望まない場合に、(少ない費用で)最終的な補綴物の代用となることもできる。
【0084】
ストリップ201の役割がもはや歯を整列することではない限りにおいて、ストリップが、コネクタ203に設置される時に受動的であることが有利である。「受動的」とは、ストリップ201が空隙Eを両側から挟む歯202に移動応力を与えない(または可能な限り最小にする)ことを意味する。この結果を得るためには、接続ヘッドが球形の形状であるコネクタ203を使用することが有利であることが明らかになっている。そのようなコネクタによって歯202に与えられる三次元の応力はそのときゼロであり、または少なくとも大幅に減少する。
【0085】
上記に記述される実施形態において、本発明のさまざまな構成要素および/または手段および/またはステップの配置は、全ての実装においてそのような配置が要求されるものとして理解されてはならない。他の変形例が提供され得る。とりわけ支持ストリップ201は、隣接したまたは隣接していない複数の歯科用補綴物と連帯していることができる。
【0086】
そのうえ、一実施形態においてのみ開示される単数または複数の特徴は、別の実施形態においてのみ開示される単数または複数の別の特徴と組み合わされ得る。同様に、一実施形態においてのみ開示される単数または複数の特徴は、たとえこのまたはこれらの特徴が別の特徴との組合せにおいてのみ記述されていようと、その他の実施形態に一般化され得る。
【符号の説明】
【0087】
101 支持ストリップ
102 歯
102b 歯の舌側面
103 コネクタ
1013 窪み
201 支持ストリップ
202 歯
202b 歯の舌側面
203 コネクタ
2013 窪み
【国際調査報告】