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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】弁
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/20 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
A61M16/20 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024507987
(86)(22)【出願日】2022-08-09
(85)【翻訳文提出日】2024-03-07
(86)【国際出願番号】 GB2022052074
(87)【国際公開番号】W WO2023017256
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】2111500.1
(32)【優先日】2021-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522109157
【氏名又は名称】インペリアル カレッジ イノベーションズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】ダルマダサ, アセラ バンダラ
(72)【発明者】
【氏名】ゴメス, カルロス エムエイチ
(72)【発明者】
【氏名】パテル, マニシュ クマール
(72)【発明者】
【氏名】ビショップ, オリバー
(72)【発明者】
【氏名】スマート, ニコラス
(57)【要約】
本開示は、呼吸補助機器とともに使用するための弁(20)に関する。弁は、第1、第2及び第3のポート(21、22、23)を画定する弁本体(25)と、ポート付きチャンバ(40)を画定する弁芯(27)であって、ポート付きチャンバ(40)は、ポート付きチャンバが、第1のポートと第2のポートとの間に流体連通を提供し、かつ第1及び第2のポートから第3のポートを分離する第1の安定構成と、ポート付きチャンバが、第1のポートと第3のポートとの間に流体連通を提供し、かつ第1及び第3のポートから第2のポートを分離する、第2の安定構成との間で、弁軸(28)のまわりに回転可能であり、弁芯の外面(34)が、第1の安定構成と第2の安定構成との間の弁芯の回転に抵抗する戻り止めを画定するように、弁本体の内面(32)に係合するように構成されている、弁芯(27)と、弁芯を第1の安定構成と第2の安定構成との間で回転させるように、戻り止めを克服するように構成されている、アクチュエータ(30)と、を備える。
【選択図】図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸補助コネクタ弁であって、
第1、第2及び第3のポートを画定する弁本体と、
ポート付きチャンバを画定する弁芯であって、前記ポート付きチャンバは、
前記ポート付きチャンバが、前記第1のポートと前記第2のポートとの間に流体連通を提供し、かつ前記第1及び第2のポートから前記第3のポートを分離する、第1の安定構成と、
前記ポート付きチャンバが、前記第1のポートと前記第3のポートとの間に流体連通を提供し、かつ前記第1及び第3のポートから前記第2のポートを分離する、第2の安定構成との間で、弁軸のまわりに回転可能であり、
前記弁芯の外面が、前記第1の安定構成と前記第2の安定構成との間の前記弁芯の回転に抵抗する戻り止めを画定するように、前記弁本体の内面に係合するように構成されている、弁芯と、
前記弁芯を前記第1の安定構成と前記第2の安定構成との間で回転させるように、前記戻り止めを克服するように構成されている、アクチュエータと、を備える、呼吸補助コネクタ弁。
【請求項2】
前記弁芯の前記外面及び前記弁本体の前記内面を一緒に押し付けるように、前記弁軸に沿って付勢力を及ぼすように構成された付勢要素を備える、請求項1に記載の弁。
【請求項3】
前記アクチュエータは、前記弁芯が、
前記第1の安定構成と前記第2の安定構成との間で前記弁軸のまわりに回転し、かつ
前記弁本体の前記内面から離れて前記弁軸に沿って変位されるように、前記戻り止め及び前記付勢力を克服するように構成されている、請求項1又は請求項2に記載の弁。
【請求項4】
前記弁芯が、前記ポート付きチャンバを画定する先細部分を備え、前記先細部分の第2の端部が、前記先細部分の第1の端部よりも狭く、
前記弁本体が、前記弁芯の前記先細部分を受容するための先細部分を備える、請求項3に記載の弁。
【請求項5】
前記弁芯が、前記弁芯の外面上に、前記弁芯と前記第1、第2及び第3のポートとの間にシールを提供するように構成された1つ以上のシール部分を備える、先行請求項のいずれか一項に記載の弁。
【請求項6】
前記弁芯の前記外面及び前記弁本体の前記内面が各々、前記戻り止めを画定するために互いに係合するように構成された1つ以上の対応する戻り止め機能部を備える、先行請求項のいずれか一項に記載の弁。
【請求項7】
前記弁芯の前記外面及び前記弁本体の前記内面が各々、起伏面を備える、請求項6に記載の弁。
【請求項8】
各起伏面が、前記弁軸のまわりに延びる、繰り返しの実質的に正弦波状又は三角形プロファイルを備える、請求項7に記載の弁。
【請求項9】
前記起伏面のうちの少なくとも1つが、前記弁軸のまわりの複数の同心リングとして形成されている、請求項8に記載の弁。
【請求項10】
前記弁芯の前記外面及び前記弁本体の前記内面が各々、前記弁軸のまわりに90度の回転対称性を有する、先行請求項のいずれか一項に記載の弁。
【請求項11】
前記戻り止めが、前記第1の安定構成と前記第2の安定構成との間に、第1の回転範囲及び第2の回転範囲を含み、
前記戻り止めは、前記弁芯が前記第1の回転範囲内にあるときに、前記第1の安定構成に向かって前記弁芯を付勢し、
前記戻り止めは、前記弁芯が前記第2の回転範囲内にあるときに、前記第2の安定構成に向かって前記弁芯を付勢する、先行請求項のいずれか一項に記載の弁。
【請求項12】
前記アクチュエータが、前記弁軸のまわりに回転可能であり、かつ前記弁芯に結合されたレバーを備える、先行請求項のいずれか一項に記載の弁。
【請求項13】
前記弁本体が、前記弁本体の第1の端部を囲むキャップを更に備え、前記キャップが、前記レバー及び弁芯の、前記それぞれの第1及び第2の安定構成を超える回転をブロックするための第1及び第2の停止部を備える、請求項12に記載の弁。
【請求項14】
前記弁芯が、前記弁本体及び前記レバーに対して前記弁軸に沿って変位可能である、請求項12又は請求項13に記載の弁。
【請求項15】
前記第1のポートが、患者気道維持装置への接続のために構成されており、前記第2及び第3のポートが各々、換気器呼吸回路又は呼吸補助装置への接続のために構成されている、先行請求項のいずれか一項に記載の弁。
【請求項16】
前記第1のポートは、22mmの先細の外径のコネクタ面を有し、前記第2及び第3のポートは各々、22mmの先細の内径のコネクタ面を有する、請求項15に記載の弁。
【請求項17】
前記第2及び第3のポートのうちの少なくとも一方に結合可能な換気機器を更に含む、先行請求項のいずれか一項に記載の弁。
【請求項18】
前記第1のポートに結合可能な気管内チューブを更に含む、先行請求項のいずれか一項に記載の弁。
【請求項19】
患者のための呼吸補助機器を構成する方法であって、
弁を提供することであって、前記弁が、第1、第2及び第3のポートを画定する弁本体と、ポート付きチャンバを画定する弁芯であって、前記ポート付きチャンバは、前記ポート付きチャンバが、前記第1のポートと前記第2のポートとの間に流体連通を提供し、かつ前記第3のポートを分離する、第1の安定構成と、前記ポート付きチャンバが、前記第1のポートと前記第3のポートとの間に流体連通を提供し、かつ前記第2のポートを分離する、第2の安定構成との間で、弁軸のまわりに回転可能であり、前記弁芯の外面は、前記第1の安定構成と前記第2の安定構成との間の前記弁芯の回転に抵抗する戻り止めを画定するように、前記弁本体の内面に係合するように構成されている、弁芯と、前記弁芯を前記第1の安定構成と前記第2の安定構成との間で回転させるように、前記戻り止めを克服するように構成されている、アクチュエータと、を備える、提供することと、
患者呼吸チューブを前記第1のポートに結合することと、
第1の換気装置を前記第2のポートに結合することと、
前記弁が前記第1の安定構成にある間に、第2の換気装置を前記第3のポートに結合することと、
前記弁を前記第2の安定構成に切り換えることと、
前記第1の換気装置を前記第2のポートから切り離すことと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、呼吸補助器具及び患者用換気器システムとともに使用するための二方弁に関する。
【背景技術】
【0002】
重篤な患者は、自発呼吸を補助する又は置き換えるため人工換気を必要とすることが多い。これは、手動で又は機械的な換気システムを介して提供され得る。機械的な換気は、口又は皮膚を貫通する何らかの器具を伴う場合、「侵襲的」と呼ばれる。機械的な換気の主な2つのモードには、空気(又はその他の混合ガス)が気管に押し入れられる陽圧換気と、例えば、外側胸壁に大気圧を下回る圧力をかけることにより空気が肺に吸い込まれる陰圧換気とがある。
【0003】
患者は、例えば、(i)換気器を、例えば、病院内及び病院間搬送用の携帯型換気器に変更するため、(ii)酸素飽和度を改善するために、例えば、ウォーター回路を用いて患者を手動換気するため、(iii)呼吸回路を変更するため、(iv)患者を移動する又は患者の向きを変えるといった、いくつかの理由のために、呼吸回路及び換気器から一時的に切り離される必要があり得る。
【0004】
呼吸回路を切り離すことに関連して、いくつかの問題が生じ得る。
【0005】
第一の潜在的問題は、スタッフの安全性に関する。呼吸回路が切り離されると、呼吸回路内の分泌物及び水の潜在的に感染したエアロゾルが室内に放出され得(潜在的に圧力下で)、換気中の患者を呼吸回路から一時的に切り離している間に、付き添いの臨床スタッフ又は医療従事者にこれらのエアロゾルが吹きかけられ得る。
【0006】
第二の潜在的問題は、患者の安全性に関する。呼吸回路が大気に開放されると、減圧状態になり、患者の肺は呼気終末陽圧(PEEP)を失う。PEEPは、換気の間、患者の肺の中の肺胞の崩壊を防ぐために必要である。肺胞が崩壊すると、血液中の酸素レベルが低下し、崩壊した肺胞が感染しやすくなり得る。肺胞を再び膨らませることは、困難であり得る。重度の肺疾患を持つ患者においては、呼吸回路が切り離されると、数秒以内に酸素飽和度が危険なレベルまで急激に低下することも珍しくない。歴史的には、呼吸回路の切り離しの間のPEEPの喪失は、切り離しの前及び切り離しの間に気管内チューブにクランプを適用することにより緩和されてきたが、この手法は禁忌を有し得る。クランプが適用されている間に患者が吸気努力をした場合、生成される負圧が生命を脅かす合併症を導き得る。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、以上の問題のいくつか又は全てを軽減するための改善された方法及び機器を提供することにある。
【0008】
本開示の第1の態様によれば、弁が提供され、弁は、
第1、第2及び第3のポートを画定する弁本体と、
ポート付きチャンバを画定する弁芯であって、ポート付きチャンバは、
ポート付きチャンバが、第1のポートと第2のポートとの間に流体連通を提供し、かつ第1及び第2のポートから第3のポートを分離する、第1の安定構成と、
ポート付きチャンバが、第1のポートと第3のポートとの間に流体連通を提供し、かつ第1及び第3のポートから第2のポートを分離する、第2の安定構成との間で、弁軸のまわりに回転可能であり、
弁芯の外面が、第1の安定構成と第2の安定構成との間の弁芯の回転に抵抗する戻り止めを画定するように、弁本体の内面に係合するように構成されている、弁芯と、
弁芯を第1の安定構成と第2の安定構成との間で回転させるように、戻り止めを克服するように構成されている、アクチュエータと、を備える。
【0009】
アクチュエータは、2つの安定構成間を遷移し、弁芯及び弁本体が第1の安定構成と第2の安定構成との間の安定中間位置を維持することを防止するように構成されてもよい。
【0010】
弁は、弁芯の外面及び弁本体の内面を一緒に押し付けるように、付勢力を及ぼすように構成された付勢要素を備えてもよい。付勢要素は、弁軸に沿って付勢力を及ぼすように構成されてもよい。弁軸に沿って付勢力を及ぼすことは、弁軸に沿って少なくとも力の成分が提供されること、弁軸に沿って実質的な成分が提供され、力全体が弁軸と位置合わせされる場合を包含することを意味し得る。付勢要素は、ばねを備えてもよい。
【0011】
アクチュエータは、弁軸のまわりの弁芯に回転力を適用することを促進するように構成されてもよい。
【0012】
アクチュエータは、弁芯が、第1の安定構成と第2の安定構成との間で弁軸のまわりに回転するように、戻り止め及び付勢力を克服するように構成されてもよい。アクチュエータは、弁芯が弁本体の内面から離れて弁軸に沿って変位するように、戻り止め及び付勢力を克服するように構成されてもよい。
【0013】
弁本体の内面及び弁芯の外面のより大きな割合が、第1の安定構成と第2の安定構成との間の中間位置の間よりも、第1の安定構成と第2の安定構成との間に接触してもよい。
【0014】
弁芯は、ポート付きチャンバを画定する先細部分を備えてもよい。先細部分の第2の端部は、先細部分の第1の端部よりも狭くてもよい。弁本体は、弁芯の先細部分を受容するための先細部分を備えてもよい。弁芯は、実質的に円錐台形であってもよい。
【0015】
弁芯は、弁芯の外面に1つ以上のシール部分を備えてもよい。1つ以上のシール部分は、弁芯と、第1、第2及び第3のポートとの間にシールを提供するように構成されてもよい。
【0016】
弁芯の外面は、弁軸に実質的に横向き又は実質的に垂直であってもよい。弁本体の内面は、弁軸に実質的に横向き又は実質的に垂直であってもよい。弁芯の外面は、弁本体の内面に面してもよい。
【0017】
弁芯の外面及び弁本体の内面は各々、戻り止めを画定するために互いに係合するように構成された1つ以上の対応する戻り止め機能部を備えてもよい。
【0018】
弁芯の外面及び弁本体の内面は各々、起伏面を備えてもよい。起伏面は、一対の噛み合い面を提供してもよい。
【0019】
各起伏面は、弁軸のまわりに延びる、繰り返しの実質的に正弦波状又は三角形プロファイルを備えてもよい。
【0020】
各起伏面は、弁軸のまわりに延びる連続した山及び谷、又は丘及び窪みを含んでもよい。各山の頂点、及び各谷の基部は、弁軸から横方向又は径方向に延びてもよい。
【0021】
起伏面のうちの少なくとも1つは、弁軸のまわりの複数の同心リングとして形成されてもよい。
【0022】
弁芯の外面及び弁本体の内面は、2つの対応するカム面プロファイルを備えてもよい。
【0023】
弁芯の外面及び弁本体の内面は各々、弁軸のまわりに90度の回転対称性を有してもよい。
【0024】
戻り止めは、第1の安定構成と第2の安定構成との間に、第1の回転範囲及び第2の回転範囲を含んでもよい。戻り止めは、弁芯が第1の回転範囲内にあるときに、第1の安定構成に向かって弁芯を付勢してもよい。戻り止めは、弁芯が第2の回転範囲内にあるときに、第2の安定構成に向かって弁芯を付勢してもよい。
【0025】
アクチュエータは、弁軸のまわりに回転可能であり、かつ弁芯に結合されたレバーを備えてもよい。
【0026】
弁本体は、弁本体の第1の端部を囲むキャップを更に備えてもよく、キャップは、レバー及び弁芯の、それぞれの第1及び第2の安定構成を越える回転をブロックするための第1及び第2の停止部を備える。
【0027】
弁芯は、弁本体及びレバーに対して、弁軸に沿って変位可能又は摺動可能であってもよい。
【0028】
この弁は、呼吸補助機器、呼吸補助器具及び/又は患者用換気器システムための使用に特に適し得、これらは本明細書において同義に使用される場合がある。第1のポートは、患者気道維持装置への接続のために構成され得る。第2及び第3のポートは各々、換気器呼吸回路又は呼吸補助装置への接続のために構成され得る。第1のポートは、22mmの先細の外径のコネクタ面を有し得る。第2及び第3のポートは各々、22mmの先細の内径のコネクタ面を有し得る。
【0029】
以上に説明された弁は、第2及び第3のポートのうちの少なくとも一方に結合可能な換気機器を更に含み得る。以上に説明されたような弁は、第1のポートに結合可能な気管内チューブを更に含み得る。
【0030】
本開示の第2の態様によれば、患者のための呼吸補助機器を構成する方法が提供され、方法は、
弁を提供することであって、弁が、第1、第2及び第3のポートを画定する弁本体と、ポート付きチャンバを画定する弁芯であって、ポート付きチャンバは、ポート付きチャンバが、第1のポートと第2のポートとの間に流体連通を提供し、かつ第3のポートを分離する、第1の安定構成と、ポート付きチャンバが、第1のポートと第3のポートとの間に流体連通を提供し、かつ第2のポートを分離する、第2の安定構成との間で、弁軸のまわりに回転可能であり、弁芯の外面は、第1の安定構成と第2の安定構成との間の弁芯の回転に抵抗する戻り止めを画定するように、弁本体の内面に係合するように構成されている、弁芯と、弁芯を第1の安定構成と第2の安定構成との間で回転させるように、戻り止めを克服するように構成されている、アクチュエータと、を備える、提供することと、
患者呼吸チューブを第1のポートに結合することと、
第1の換気装置を第2のポートに結合することと、
弁が第1の安定構成にある間に、第2の換気装置を第3のポートに結合することと、
弁を第2の安定構成に切り換えることと、
第1の換気装置を第2のポートから切り離すことと、を含む。
【0031】
弁もまた開示され、弁は、
第1、第2及び第3のポートと、
二安定弁機構であって、(i)第1のポートが第2のポートと流体連通しており、第3のポートとは流体連通していない、第1の安定構成、及び(ii)第1のポートが第3のポートと流体連通しており、第2のポートとは流体連通していない、第2の安定構成を有する、二安定弁機構と、
2つの安定構成の間で二安定弁機構を遷移させ、弁機構が第1の安定構成と第2の安定構成との間の安定中間位置を維持することを防止するように構成されている、アクチュエータと、を備える。弁の様々な態様が、本明細書に更に記載される。
【0032】
本発明の実施形態が、例として、添付図面を参照しながら、ここで説明される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】患者用呼吸補助機器との使用における3ポートコネクタの模式的な図を示す。
図2A】患者用呼吸補助機器との使用のための3ポート二安定弁の斜視図を示す。
図2B図2Aの3ポート二安定弁の断面図を示す。
図2C図2Aの3ポート二安定弁の斜視切断図を示す。
図3A】第1の安定構成における図2Aの二安定弁の斜視図を示す。
図3B】第1の安定構成における図2Aの二安定弁の断面図を示す。
図3C】第2の安定構成における図2Aの二安定弁の斜視図を示す。
図3D】第2の安定構成における図2Aの二安定弁の断面図を示す。
図3E】第1の安定構成と第2の安定構成との間の遷移における図2Aの二安定弁の断面図を示す。
図4A図2Aの二安定弁の側方及び上方からの分解斜視図である。
図4B図2Aの二安定弁の側方及び下方からの分解斜視図である。
図5】二安定機構の特徴を説明するのに有用な図2Aの弁の分解断面概略図である。
図6A】患者用呼吸補助機器との使用のための別の3ポート二安定弁の側方及び上方からの分解斜視図である。
図6B】患者用呼吸補助機器との使用のための別の3ポート二安定弁の側方及び下方からの分解斜視図である。
図6C図6A及び6Cの弁のハウジングの内面を示す斜視図である。
図7A】患者用呼吸補助機器との使用のための更なる3ポート二安定弁の側方及び上方からの分解斜視図である。
図7B】患者用呼吸補助機器との使用のための更なる3ポート二安定弁の側方及び下方からの分解斜視図である。
図7C図7A及び7Cの弁のハウジングの内面を示す斜視図である。
図7D図7Aに示される分解斜視図の断面図である。
図7E図7Dに示される組み立てられた弁の断面図である。
図7F図7A~7Dの弁の芯の斜視図である。
図7G図7A~7Dの弁の芯の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本明細書を通して、「上部」、「底部」、「水平」、「垂直」、「左」、「右」、「上方」、「下方」、「前」、「後」のような相対的な向き及び位置に関する記述語、並びにそれらの形容詞及び副詞の派生語は、図面に示される弁の向きの意味で使用される。しかしながら、そのような記述語は、記載された又は特許請求された発明の意図された使用をいかなる方法でも限定することを意図しない。「時計回り」及び「反時計回り」なる表現は、本明細書では、図示されるような特定の実施形態の図示及び説明の目的のため、弁の上方から見たときの方向性の意味で使用されており、それらの特定の実施形態に限定することを意図されたものではない。
【0035】
図1は、患者用換気器システムの実用的な使用を示す。図1aに見られるように、患者1は、酸素及び/又はその他のガスを肺に供給するために、口を通して気管に入るよう配置された気管内チューブ2のような呼吸チューブを提供されている。本明細書では、本発明は気管内チューブ2に関連して説明されるが、気管切開チューブのような他の形態の呼吸チューブも本発明に適用可能であり得る。閉鎖型吸引装置3が、患者を換気器呼吸回路4に接続する。以上に議論されたような状況においては、患者1を換気バッグ6(図1c及び1d)のような代替の換気装置に接続することを容易化することが望ましいことであり得る。このことは、(吸引装置3を介して)患者呼吸チューブ2に接続された第1の分岐11と、換気器呼吸回路4に接続された第2の分岐12と、更なる換気装置への接続に適した第3の分岐13とを有する、図1bに見られるようなT字型弁5を使用して達成され得る。図1bにおいては、T字型弁5は、第1の分岐11が第1の流体通路によって第2の分岐12に流体結合され、第3の分岐13が第1の分岐11と第2の分岐12との間の第1の流体通路から分離されている、第1の構成へと回転させられる弁機構を有する。
【0036】
図1cに見られるように、弁機構が第1の分岐11と第2の分岐12とを結合する第1の構成に留まる間に、代替の換気装置6が第3の分岐13に結合される。
【0037】
図1dに見られるように、弁機構は次いで、第1の分岐11が第2の流体通路によって第3の分岐13に流体結合され、第2の分岐12が第1の分岐11と第3の分岐13との間の第2の流体通路から分離されている、第2の構成へと回転させられる。この構成においては、換気器呼吸回路4は次いで、図1dに見られるように切り離される。この切り離しは、患者の気道がT字型弁の第3の分岐13に、及びしたがって代替の換気装置6に接続され、換気器呼吸回路4から分離された後に行われる。
【0038】
一態様においては、図1a~1dの状況における実装に適した弁は、弁が第1の構成と第2の構成との間の中間位置に感知できるほどの期間留まらないように、第1の構成から第2の構成への遷移が迅速に起きる機構を有してもよい。「中間位置」なる表現は、第1の分岐11、第2の分岐12及び第3の分岐13の間の流体連通が同時に共存し得る位置、又は第1の分岐11、第2の分岐12及び第3の分岐13のいずれの間にも流体連通がない(第1、第2及び第3の分岐の各々の間の流体経路がブロックされる)位置を包含し得る。「感知できるほどの長さの時間」なる表現は、患者の気道内の通常の圧力変化に対するものとして理解されてもよい。別の態様においては、図1a~1dの状況における実装に適した弁は、かかる中間位置にユーザが弁をそのまま動かずに置く又は放置することができないような機構を有してもよい。
【0039】
図2A図5を参照しながら、以上の目的に適した第1の例示的な弁20が説明される。図4Aを参照すると、弁20は、第1の端部(図の上部)及び第2の端部(図の下部)を有する。弁は、操作レベル30と、弁キャップ26と、弁芯27と、弁本体25と、を備える。操作レベル30は、この例では、第1の端部に提供され、弁本体25は、第2の端部に提供されている。
【0040】
弁本体25は、弁本体25の円筒形芯部分24から径方向外側に延びる3つのポート21、22、23を画定する。この例では、弁キャップ26及び本体25は、本体25の芯部分24内に弁芯27を囲む。キャップ26は、溶接又は当該技術分野で既知の他の好適なプロセスを介して、弁本体25にシールされてもよい。
【0041】
弁芯27は、芯部分24内に回転可能に取り付けられ、弁20の第1の端部と第2の端部との間に延びる弁軸28のまわりに回転可能である。図4A及び4Bを参照して最もよく見られるように、弁芯27は、弁軸28のまわりに互いに対して0、180及び90度の位置においてそれぞれ開口41、42、43を有する、ポート付きチャンバ40を画定する。これらの開口41、42、43は、以下に考察されるように、弁本体25内の特定の角度位置にあるときに、ポート21、22、23のうちの選択されたものと概ね位置が合うように位置決めされる。例えば、第1の安定構成において、ポート付きチャンバ40は、第2の開口43及び第1の開口41を介して第1のポート21と第2のポート22との間に流体連通を提供することができる。第2の安定構成において、ポート付きチャンバ40は、第1の開口41及び第3の開口42を介して第1のポート21と第3のポート23との間に流体連通を提供することができる。
【0042】
また図4aにおいて見られるものは、弁軸28に沿って延びる弁芯27の中央シャフトである。この例では、中央シャフトは不連続である。中央シャフト44の第1の部分は、弁芯27の第1の表面上(弁20の第1の端部に面して)に提供され、中央部分34の第2の部分は、弁芯27の対向する第2の表面上(弁の第2の端部に面して)に提供されている。
【0043】
中央シャフト44の第1の部分は、弁芯27が本体25内に設置されたときに操作レバー30に係合するように、キャップ26内の開口部29を通って軸方向に延びている。操作レバー30は、弁軸28のまわりに回転可能であり、キャップ26から径方向外側に延びている。シャフト44の第1の部分は、操作レバー30がキャップ26及び弁本体25に対して弁軸28のまわりに回転可能であるように、開口部29内で摺動可能に回転することができる。示された配置においては、操作レバー30の動きは、キャップ26の外面に形成された停止部36a、36bによって、約90度の弧に制限される。操作レバー30の回転が弁芯27も回転させるように、操作レバー30は弁芯27に回転可能に結合されている。この例では、操作レバー30は、図2B及び2Cに最もよく見られるように、シャフト44の第1の部分を受容するための溝45を有する。シャフト44の第1の部分は、面取りされた縁部44aを有し、溝45は、操作レバー30と弁芯27との間の回転可能な係合を提供するための対応するプロファイルを有する。他の例(例えば図6を参照)では、弁芯27は、シャフトの代わりに溝又はスロットを備えてもよく、操作レバー30は、回転可能な結合を提供するために、溝に結合するための係合シャフトを含んでもよい。操作レバー30は、弁20の現在の構成を示す方向インジケータ30aを含んでもよい。この例では、方向インジケータ30aは、第1のポートと流体連通していないポートの方を指す矢印を備える。
【0044】
弁芯27は、操作レバー30に回転可能に結合されているが、弁芯27は、弁芯27が弁本体25、キャップ26、及び操作レバー30に対して、弁軸28に沿って摺動可能に変位することができるように、操作レバー30(及び弁本体25及びキャップ26)に軸方向に摺動可能に結合されている。
【0045】
弁芯27の外面は、弁の第2の端部において、弁本体25の内面に面して提供されている。弁芯27の外面は、起伏面34の形態の戻り止め機能部を備える(図4B)。この例では、起伏面34は、弁軸28のまわりに延びる繰り返しの三角形プロファイル(又は傾斜プロファイル)を備える。他の例では、起伏面34は、弁軸のまわりに延びる実質的な正弦波状プロファイルを備えてもよい。より一般的には、各起伏面は、弁軸のまわりに延びる連続した山及び谷、又は丘及び窪みを含んでもよい。各山の頂点、及び各谷の基部は、弁軸から径方向に延びてもよい。
【0046】
弁本体25の内面は、起伏面32、34が一緒に噛み合うことができるように、対応する起伏面32を備える。したがって、弁芯27の外面34は、戻り止めを画定するように、弁本体25の内面32に係合するように構成されている。戻り止めは、第1の安定構成と第2の安定構成との間の弁芯27の回転に抵抗する。両方の起伏面32、34は、弁軸28のまわりに90度の回転対称性を有する。その結果、2つの起伏面32、34は、それらが完全に係合するか又は噛み合う4つの位置を含む。これらの位置のうちの2つが、第1及び第2の安定構成を画定する。言い換えれば、弁芯27の外面34は、弁20が第1の安定構成及び第2の安定構成にあるときに、弁本体25の内面32と完全に係合している。この例では、完全に係合されることは、弁芯32の外面34の三角形プロファイルの山が弁本体25の内面32の三角形プロファイルの谷に収められること、及びその逆であることに対応する。いくつかの例では、戻り止めの抵抗強度は、起伏プロファイル32、34の傾斜角度/大きさを選択することによって調整されてもよい。
【0047】
この例では、中央シャフト46の第2の部分は、弁芯27の外面から延びている。中央シャフト46の第2の部分は、弁本体25の表面内の対応する凹部又は開口部48に係合する。中央シャフト46の第2の部分は、弁芯27が弁本体25内で弁軸28のまわりに回転するときに、開口部48内で摺動可能に回転することができる。シャフトの第1及び第2の部分44、46は、弁本体内の弁芯27の安定した回転を提供することができ、弁芯27の径方向の変位を防止することができる。他の例では、弁軸28のまわりの弁本体25内の弁芯27の安定した回転は、例えば、弁芯27を通って延びる単一のシャフト、又は操作レバー30及び/又は弁本体25の内面の対応するシャフトと適切に係合する弁芯27の第1及び/又は第2の表面の中央溝によって、他の方式で提供され得ることが理解されるであろう。しかしながら、全ての配置は、弁本体25、キャップ26、及び操作レバー30に対する弁芯27の軸方向変位を可能にする、摺動可能な軸方向結合を提供し得る。
【0048】
この例では、弁20は、キャップ26と弁芯27との間に位置づけられたばねの形態の付勢要素49を更に備える。ばねは、金属、ゴム、又はプラスチック材料によって提供されてもよい。弁が組み立てられると、付勢要素49は、弁芯27に付勢力を及ぼし、弁芯27の外面34と弁本体25の内面32との係合を促進する。言い換えれば、付勢要素49は、弁本体25に向かって弁芯を押す。結果として、付勢要素49は、弁芯27の2つの安定構成の間の回転に抵抗する際の戻り止めの強度を高めることができる。付勢要素49の付勢力は、所望の戻り止め抵抗に基づいて選択されてもよい。
【0049】
この例では、弁芯27/ポート付きチャンバは、(図2Bに最もよく見られるように)弁芯27の第2の端部が弁芯27の第1の端部よりも狭くなるように先細になっている。この例では、弁本体25の円筒形部分24も先細になっている。したがって、弁芯27は、実質的に円錐台形である。以下に考察されるように、弁芯27及び弁本体25の先細プロファイルは、弁が第1及び第2の安定構成にあるときに、開口41、42、43とポート21、22、23との間のシールを促進し、弁芯が第1の構成と第2の構成との間に位置づけられるときに、シール面上の摩擦を低減して、回転を促進することができる。
【0050】
図3A及び3Bは、第1の構成の弁20を示しており、図3C及び3Dは、第2の構成の弁20を示している。図3A及び3Bにおいては、第2の開口43が第1のポート21と位置合わせされ、第1の開口41が第2のポート22と位置合わせされているため、弁20は、第1のポート21が弁芯27のポート付きチャンバ40を介して第2のポート22と流体連通している第1の安定構成にある。第3の開口42は、弁本体25の壁によって閉塞される。また、第3のポート23は、弁芯27によってブロック又は閉塞されており、それ故、第1のポート又は第2のポートのいずれとも流体連通していないことが分かる。
【0051】
図3C及び3Dにおいては、第1の開口41が第1のポート21と位置合わせされ、第3の開口42が第3のポート23と位置合わせされているため、弁20は、第1のポート21が弁芯27のポート付きチャンバ40を介して第3のポート23と流体連通している第2の安定構成にある。第2の開口43は、弁本体25の壁によって閉塞される。また、第2のポート22は、弁芯27によってブロック又は閉塞されており、それ故、第1のポート又は第3のポートのいずれとも流体連通していないことが分かる。この図から、図3A/3Bの構成から図3C/3Dの構成に遷移するときに、弁芯27の反時計回りの1/4回転を実行する際に、開口41~43及びポート21~23の直径に依存して、及び弁芯27/円筒形芯部分24の円周に依存して、弁20が、一方のポートの対からの流体の流れが、他方の流体の対の連通がつくられ始める前に完全に遮断される「ブレーク・ビフォー・メイク」型の弁として、又はその逆(「メイク・ビフォー・ブレーク」)として構成されることができることが理解され得る。
【0052】
ここで図3Eも参照して、弁の動作が説明される。
【0053】
最初に、弁20は、操作レバー30が第3のポート23と位置合わせされた、図3A及び図3Bの第1の安定構成にあり、第3のポート23が分離され、第1のポート21が第2のポート22と流体連通していることを示す。弁芯27の起伏外面34は、弁本体25の対応する起伏内面32と完全に係合している。その結果、弁芯は、弁本体25内の内面32に最も近い位置にある。弁芯27の先細プロファイルは、弁本体の先細プロファイルにぴったりと嵌合し、第1のポート21と第2の開口43及び第2のポート22と第1の開口41との間に密閉シールを提供することができる。付勢要素49は、レバー30に適用される任意の力がない場合に、弁芯27をこの第1の安定構成に維持するための付勢力を提供する。
【0054】
図3A及び3Bの位置から、操作レバー30は時計回り方向に動かされる。操作レバー30(弁芯27に回転可能に結合された)に、弁芯27の起伏面34と弁本体25の起伏面32との係合によって形成された付勢要素49及び戻り止めの付勢力を克服する力が適用される。弁芯27は、弁本体25内の弁軸28のまわりに反時計回りに回転する。弁芯27が回転すると、起伏面32、34が完全な係合から外れて移動し、弁芯27が弁軸28に沿ってキャップ26に向かって、付勢要素49の付勢力に抗して軸方向に変位する。弁芯27の起伏面34の三角形プロファイルの山は、谷から離れて、弁本体25の起伏面32の山に向かって移動する。弁芯27がキャップ26に向かって持ち上がる(軸方向に変位する)と、弁芯27は、先細プロファイルにより、円筒形部分24の内側側壁面から引き離される。その結果、開口41、42、43とポート21、22、23との間のシールが破られる。弁本体25内の弁芯27のシール及び「ぴったりとした嵌合」の除去は、弁芯27と弁本体25との間の摩擦の低減による弁芯27の回転を促進する。
【0055】
2つの三角形表面プロファイル32、34の山が互いに近づくときの弁芯27の第1の回転範囲の間、戻り止め及び付勢要素は、弁芯27を第1の安定構成に向かって付勢する。言い換えれば、回転力が操作レバー30から除去されると、弁芯は第1の安定構成に向かって急速に回転して戻る。2つの三角形表面プロファイルの山が互いに通過するときの弁芯27の第2の回転範囲の間、戻り止め及び付勢要素は、弁芯27を第2の安定構成に向かって付勢する。したがって、弁芯が第1の回転範囲を超えて回転し(かつ弁芯27がその最上部の軸方向位置に到達し)、戻り止めが克服されると(三角形の山が通過すると)、弁芯27は、付勢力及び戻り止めの両方により、第2の安定構成に向かって急速に回転する。
【0056】
弁芯27が第2の安定構成(図3C及び3D)に到達すると、弁芯27は、キャップ26から軸方向に離れて変位し、弁芯27の起伏面34は、付勢力によって促進されるように、弁本体25の起伏面32と完全に再係合する。弁芯27と弁本体25との間にぴったりとした嵌合が再形成される。第1の開口41は、第1のポート41と密閉してシールしてもよく、第3の開口42は、第3のポート23と密閉してシールしてもよい。操作レバー30は、第2のポート22と位置合わせされて、第2のポート22が分離され、第1のポート21が第3のポート23と流体連通していることを示している。操作レバー30の更なる回転は、キャップ26上の停止部36bによって防止される。
【0057】
図3C及び3Dの位置から時計回りに約90度過ぎる操作レバー30の対応する逆の動きは、図3C、3Dの第2の安定構成から図3A、3Bの第1の安定構成に戻る弁芯27の対応する逆回転の動きを提供する。
【0058】
したがって、弁20は、ポート付きチャンバ40を画定する弁芯27を備える二安定弁機構を例示しており、ポート付きチャンバ40は、弁本体25内で弁軸28のまわりに、(i)ポート付きチャンバ40が、弁本体の第1のポート21と第2のポート22との間に流体連通を提供し、かつ第3のポート23を分離する第1の安定構成と、(ii)ポート付きチャンバ40が、第1のポート21と弁本体25の第3のポート23との間に流体連通を提供し、第2のポート22を分離する第2の安定構成との間に、回転可能であり、弁芯27の外面34が、弁芯27の第1の安定構成と第2の安定構成との間の回転に抵抗する戻り止めを画定するように、弁本体25の内面32に係合するように構成されている。更に、操作レバー30及び関連する機能部は、戻り止めを克服して、弁芯を第1の安定構成と第2の安定構成との間で回転させるように構成されたアクチュエータを例示する。「流体連通」なる表現は、弁芯27を介した連通ポート21、22又は23の間の空気又はその他のガスの流れが、十分な量であり、十分に妨げられず、呼吸チューブを介して患者の肺にガスを供給する呼吸回路の動作にほとんど又は全く影響を与えない構成を包含することが意図される。
【0059】
弁20には、以上に説明されたような様々な変更及び適合がなされ得る。図6A~6Cは、図1に関連して説明される目的に適した第2の例示的な弁120を示している。弁120は、図2図5の、5部分からなる弁と実質的に同じ配置及び動作を含む。弁20の上記の説明は、図6A~6Cに関連して本明細書で説明される特定の特徴を除いて、弁120に等しく適用される。
【0060】
この例では、弁芯127は、弁芯127が第1及び第2の安定構成にあるときに、ポート121、122、123とポート付きチャンバ140との間のシールを改善するためのシール部分127aを更に備える。弁芯127が2つの安定構成間で回転している間、弁芯127がキャップ126に向かって軸方向に変位すると、弁芯127及びシール部分127aは、弁本体の内側側壁から引き離されて、摩擦を低減し、第1又は第2の安定構成に向かって急速な回転を促進する。シール部分は、ゴム又はエラストマーなどの可撓性又は圧縮性材料を含んでもよい。
【0061】
この例では、戻り止めはまた、弁本体125の起伏内面132に係合する弁芯127の起伏外面134によって提供される。この例では、2つの起伏面132、134は、弁軸128の周囲に延びる繰り返しの正弦波状傾斜プロファイルを備える。この例では、弁芯127の起伏外面134は各々が、弁軸のまわりに、位置合わせされた正弦波状傾斜プロファイルを有する複数の同心リングとして形成されている。図示のような同心プロファイルを使用することで、製造に必要な総材料を削減し、コスト及び廃棄物を削減することができる。
【0062】
図6A~6Cの弁120はまた、操作レバー130、キャップ126、及び弁芯127の間の結合配置において、図2図5の弁とは異なる。しかしながら、操作レバー130が弁芯127と回転可能に係合され、両方のコンポーネントが弁軸128のまわりに一緒に回転するという基本原理は、同じままである。操作レバー130及び弁芯130は、キャップ126に摺動可能に結合され、両方のコンポーネントがキャップ126に対して回転することができる。この結合配置はまた、弁本体125、キャップ126、及び操作レバー130に対する弁軸128に沿った弁芯127の軸方向の変位を可能にする。
【0063】
操作レバー130は、側壁131と、操作レバー130の表面から突出する複数の第1のクリップ部分131aと、を備える。キャップ126は、対応する受容壁126aと、キャップ126から突出する対応する複数の第2のクリップ部分126bと、を備える。操作レバー130の側壁131は、キャップ126の受容壁126aの上に嵌合することができる。第1のクリップ部分131aは、第2のクリップ部分126bと摺動可能に係合することができ、弁軸128のまわりの相対的な回転を可能にし、また相対的な径方向の変位を防止しながら、操作レバーをキャップ126に固定する。
【0064】
操作レバー130は、中央シャフト130bを更に備える。シャフト130bは、シャフト130bから径方向に延びる2つの側部フランジ130cを備え、鍵の断面を画定する。弁芯127は、操作レバーの中央シャフト130bに係合するためのスロット144bを有する、対応する中央144を備える。シャフト130bの鍵の断面は、弁芯の中央シャフト144のスロット144bと回転可能に係合して、操作レバー130と弁芯127との間に回転可能な結合を提供することができる。
【0065】
弁20及び弁120の両方は、5個のコンポーネントとして例示されているが、他の例では、弁20及び弁120は、より多く又はより少ないコンポーネントを含んでもよい。例えば、弁芯は、戻り止め面34、134を画定する第1のサブコンポーネントと、ポート付きチャンバを画定する第2のコンポーネントと、を備えてもよい。
【0066】
図7A~7Gは、図1に関連して説明された目的に適した第3の例示的な弁220を示している。弁220は、図2図5の5個の弁と実質的に同じ配置及び動作を含む。弁20の上記の説明は、図7A~7Gに関連して本明細書で説明される特定の特徴を除いて、弁220に等しく適用される。
【0067】
この例では、弁芯227は、弁芯227が第1及び第2の安定構成にあるとき(図6A~6Cの弁と同じ方式で)、ポート221、222、223とポート付きチャンバ240との間のシールを改善するためのシール部分227aを更に備える。弁芯227が2つの安定構成間で回転している間、弁芯227がキャップ226に向かって軸方向に変位すると、弁芯227及びシール部分227aは、弁本体225の内側側壁から引き離されて、摩擦を低減し、第1又は第2の安定構成に向かって急速な回転を促進する。シール部分227aは、ゴム又はエラストマーなどの可撓性又は圧縮性材料を含んでもよい。この例では、可撓性材料は、ポート付きチャンバ240の円錐面全体を覆い、シール部分227aは、ポート付きチャンバ240の開口241、242、243のまわりに延びる可撓性材料の隆起を備える。
【0068】
この例では、戻り止めはまた、弁本体225の起伏内面232に係合する弁芯227の起伏外面234によって提供される。この例では、2つの起伏面232、234は、弁軸228のまわりに延びる繰り返しの三角形傾斜プロファイルを備える。この例では、弁芯227の起伏外面234は、平坦化された山234a及び陥没又はエッチングされた窪み234bを備える。同様に、弁本体225の起伏面232は、起伏外面234上のそれぞれのエッチングされた窪み234b及び平坦化された山234aに係合する平坦化された山232a及びエッチングされた窪み232bを含む。これらの追加の機能部は、戻り止めの強度及び/又は第1及び第2の安定構成の安定性を高めることができる。
【0069】
図7A~7Gの弁220はまた、キャップシール部分250を備えることによって、図2図5の弁とは異なる。キャップシール部分250は、キャップ226に追加のシールを提供して、キャップと中央シャフト244との間の界面における空気漏れを防止する。キャップシール部分250はまた、キャップ226と弁芯227の上の弁本体225内の空気空間との間にシールを提供する。この例では、キャップシール部分250は、内部を通して中央シャフト244を受容するための開口部を含む。開口部は、気密シールを提供するために、ゴム又はエラストマーなどの可撓性材料で形成されている。ワッシャ251は、キャップシール部分250と付勢要素249との間に位置づけられ、キャップシール部分250と付勢要素249との間の係合界面を提供する。
【0070】
図7A~7Gの弁220はまた、2つの部分を有する弁芯227(図7F及び7Gに最もよく示されている)を備えることによって、図2図5の弁とは異なる。この例では、弁芯227は、戻り止め面234を画定する第1の弁芯コンポーネント227bと、ポート付きチャンバ240及び中央シャフト244、246を画定する第2の弁芯コンポーネント227cと、を備える。第1の弁芯コンポーネント227bは、第2の弁芯コンポーネント227c上の対応するだぼ開口部227eに係合するためのだぼ227dを含む。
【0071】
図7A~7Cの弁220はまた、操作レバー230、キャップ226、及び弁芯227の間の結合配置において、図2図5の弁とは異なる。しかしながら、操作レバー230が弁芯227と回転可能に係合され、両方のコンポーネントが弁軸228のまわりに一緒に回転するという基本原理は、同じままである。操作レバー230及び弁芯227は、キャップ226に摺動可能に結合され、両方のコンポーネントがキャップ226に対して回転することができる。結合配置はまた、弁本体225、キャップ226、及び操作レバー230に対する弁軸228に沿った弁芯227の軸方向の変位を可能にする。これは、図7Eに最もよく示されており、この図では、弁芯227が第1の安定構成と第2の安定構成との間で回転し、キャップ226に向かって軸方向に変位し、次いで再び戻るときに、操作レバー230の中央チャネル230dの高さが、中央チャネル230d内の中央シャフト244の軸方向の変位を可能にするのに十分に大きい。
【0072】
操作レバー230は、側壁231と、操作レバー230の表面から突出する複数の第1のクリップ部分231aと、を備える。キャップ226は、対応する受容壁226aを備える。操作レバー230の側壁231は、キャップ226の受容壁226aの上に嵌合することができる。第1のクリップ部分231aは、受容壁226aの内部リム226cと摺動可能に係合することができ、弁軸228のまわりの相対的な回転を可能にし、また相対的な径方向の変位を防止しながら、操作レバー230をキャップ226に固定する。
【0073】
中央シャフト244は、実質的に正方形の断面を画定するために面取りされた縁部244aを有する。操作レバーの中央チャネル230dは、中央シャフト244を受容するための対応する実質的に正方形の断面開口部を含む。中央シャフト144の面取りされた縁部は、中央チャネル230dと回転可能に係合して、操作レバー230と弁芯227との間に回転可能な結合を提供することができる。操作レバー230はまた、内部中央チャネル230dにカバーを提供するための、及び/又は内部中央チャネル230dに端部停止部を提供するためのレバーキャップ252を有する。
【0074】
以上に説明された弁20、120、220は、患者呼吸回路コネクタとして機能するように構成されてもよく、標準的な患者用補助呼吸機器とともに特に使用するために構成されてもよい。このことは、第1、第2及び第3のポート21/121/221、22/122/222、23/123/223の各々に標準的な取り付け具を備えることを含んでもよい。例えば、第1のポート21、121、221は、気管内チューブ2又は気管切開チューブのような患者気道維持装置/呼吸チューブへの接続のために、又はそれに接続された吸引装置3を介した接続のために構成されてもよい。この点に関して、第1のポート21、121、221は、好ましくは、1:40のテーパを有する円錐形の22mmの外径のコネクタ面を有する雄コネクタと、1:40のテーパを有する15mmの内径の(雌)円錐形コネクタを有する内側の同軸の円錐形コネクタを備えてもよい。
【0075】
第2のポート22、122、222は、呼吸回路チューブを介した換気器4への接続のために構成されてもよく、使用しないときは空気に開放したままにされてもよい。第2のポート22、122、222は、1:40の先細部を有する円錐形の22mmの内径のコネクタ面を有する雌コネクタを備えてもよい。第3のポート23、123、223は、第2の呼吸回路6への接続のために構成されてもよく、同様に使用しないときは空気に開放したままにされてもよい。第3のポート23、123、223は、1:40の先細部を有する円錐形の22mmの内径のコネクタ面を有する雌コネクタを備えてもよい。この点に関して、弁は、例えば呼吸システム、麻酔ガス掃気システム及び気化器において、麻酔及び呼吸器器具を接続することを意図された円錐体及びソケットのための寸法及びゲージング要件を規定するISO5356-1:2004又はISO5356-1:2015のような関連する国内の及び/又は国際的な規格に適合するように特に構成されてもよい。
【0076】
操作レバー30、130、230は、閉回路を維持しながら、1つの呼吸回路4から別の呼吸回路6への切り換えを可能にし、かくして潜在的に感染したエアロゾルの放出を防止し、回路からの呼気終末陽圧(PEEP)の喪失を最小化する。弁は、好ましくは、90/180度の相対角度のポートを有するT字型装置として形成されてもよいが、ポートの他の角度配置も想定され得る。
【0077】
弁20、120、220は、様々な材料から形成されてもよい。いくつかの例では、弁20、120、220の1つ以上のコンポーネントは、同じ材料から形成されてもよい。弁は、好ましくは、例えば射出成形部品のような、主に強く軽量であるプラスチックからつくられ、また好ましくは、一人の患者に対して、例えば数日間までのような限られた期間使用される使い捨て装置である。例示的な材料は、ポリエチレン、ポリスルホン、ポリアセタール、及びポリスチレンブタジエンなどのポリマーを含んでもよい。
【0078】
弁は、好ましくは、例えば、実質的に1秒未満、好ましくは実質的に0.2秒未満のような、患者の気道内の通常の圧力変化の期間と比較して非常に短い期間で、一方の二安定状態から他方の二安定状態へ遷移する。
【0079】
本明細書に記載されるような弁構成は、弁がその二安定状態の間で遷移するときに強い触覚及び可聴フィードバックを提供する決定的で明白なスナップ動作を伴う速効性の遷移を提供する。このことは、潜在的に騒がしく混乱した環境における使用の容易さを確実にするために、臨床的な環境において特に有用である。更なる安全機能部として、方向インジケータ30aもまた、弁の状態に関して明確な視覚的フィードバックを提供し、弁芯27に回転可能に結合された操作レバーと一体的に形成されているため、曖昧な中間指示を示すことはできない。
【0080】
本明細書に示される実施形態においては、第1のポートが急速に遷移する弁機構によって第2及び第3のポートのいずれか一方に接続され得る二安定弁機構を例示する、3ポート弁構成が示されている。更なるポートが追加されて、アクチュエータ機構が第3の位置により補足されて、例えば三安定弁機構を提供してもよいことは、理解されるであろう。かかる三安定弁は、第1のポートが第2、第3若しくは第4ポートのいずれか1つに接続されることができる位置を有してもよく、又は第1、第2及び第3のポートがいずれも互いから分離されている完全分離位置に対応する第3の安定位置があってもよい。この点に関して、「二安定弁」なる表現は、少なくとも第1及び第2の安定構成を有する弁を包含することを意図されており、ここで第1の安定構成と第2の安定構成との間の中間安定位置は防止されるが、所定の二安定要件を依然として満たしつつ更なる安定構成を有する可能性を排除する必要はない。
【0081】
図面に関連して説明された弁の実施形態は、軸のまわりに回転する二安定弁機構及びアクチュエータ機構に基づいているが、二安定機構は、例えば直線運動を展開する弁機構を用いることのような他の方法でも実現できることは、理解されるであろう。例えば、弁は、第1のポートに対応するY字の脚部と、第2及び第3のポートに対応するY字の2つの分岐とを有する、Y字型弁として構成されてもよい。直線状のスライド式二安定機構が、第1のポートが第2のポートと流体連通している第1の構成から、第1のポートが第3のポートと流体連通している第2の構成に弁を遷移させるために使用されてもよい。
【0082】
低コストの使い捨て弁を提供する目的のため、本明細書の弁は、好ましくは手動で操作される弁であり、低コストのコンポーネントから構築される。しかしながら、他の電気的に作動させられるバージョンも想定され得る。
【0083】
以上に説明されたような弁は、以上に特定された問題のリスクを低減しながら、呼吸支援チューブを使用して第1の換気装置に接続された患者を、第2の換気装置により安全に切り換えるために配備され得る。患者の呼吸チューブは弁の第1のポートに結合され、第1の換気装置は第2のポートに結合され、呼吸機器は弁が第1の安定構成にある状態で動作させられる。弁が第1の安定構成にある間に、第2の換気装置が第3のポートに結合されてもよい。弁は次いで、第2の安定構成に切り換えられてもよい。第2の安定構成への弁の遷移の後に、第1の換気装置は、患者の能動呼吸回路から分離された第2のポートから切り離されてもよい。
【0084】
他の実施形態は意図的に添付の特許請求の範囲内にある。
図1a
図1b
図1c
図1d
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G
【国際調査報告】