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  • 特表-複合増粘剤及びその使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】複合増粘剤及びその使用
(51)【国際特許分類】
   A23L 29/269 20160101AFI20240719BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20240719BHJP
   A23L 29/25 20160101ALI20240719BHJP
   A23L 29/281 20160101ALI20240719BHJP
   A23L 29/231 20160101ALI20240719BHJP
   A23L 29/238 20160101ALI20240719BHJP
   A23L 29/256 20160101ALI20240719BHJP
   A23L 29/244 20160101ALI20240719BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240719BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240719BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20240719BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
A23L29/269
A23L5/00 C
A23L5/00 F
A23L29/25
A23L29/281
A23L29/231
A23L29/238
A23L29/256
A23L29/244
A61K9/48
A61K47/36
A61Q19/00
A61Q11/00
A61Q5/00
A61K8/73
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508032
(86)(22)【出願日】2022-08-09
(85)【翻訳文提出日】2024-02-08
(86)【国際出願番号】 CN2022111100
(87)【国際公開番号】W WO2023016442
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】202110915854.2
(32)【優先日】2021-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM IP ASSETS B.V.
【住所又は居所原語表記】Het Overloon 1, NL-6411 TE Heerlen,Netherlands
(71)【出願人】
【識別番号】511208911
【氏名又は名称】浙江帝斯曼中肯生物科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】ヤ, ルーダン
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン, フェイ
(72)【発明者】
【氏名】リウ, ヂォウピン
(72)【発明者】
【氏名】ヂャオ, ジエ
(72)【発明者】
【氏名】ユアン, チェンクゥオ
【テーマコード(参考)】
4B035
4C076
4C083
【Fターム(参考)】
4B035LC03
4B035LE01
4B035LE04
4B035LG05
4B035LG21
4B035LG27
4B035LK04
4B035LP26
4B035LP31
4C076AA56
4C076AA60
4C076BB01
4C076EE30G
4C076EE30H
4C076FF17
4C076FF21
4C083AD351
4C083AD352
4C083CC02
4C083CC07
4C083CC31
4C083CC41
4C083EE01
(57)【要約】
本発明は、ラムサンガム及びジェランガムを含む複合増粘剤に関し、該複合増粘剤において、ラムサンガムは、ラムサンガム及びジェランガムの総重量の50%~95%を占める。前記複合増粘剤におけるラムサンガムとジェランガムの組み合わせは、相乗作用を発揮し、増粘性能が顕著に向上される。前記複合増粘剤は、食品、飲料、医薬品及びパーソナルケア製品等の製品に適用することができる。前記複合増粘剤をゲル化剤としてソフトカプセル皮膜に適用する場合、皮膜の強度及び皮膜の弾性がより優れている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラムサンガム及びジェランガムを含む複合増粘剤であって、
ラムサンガムは、複合増粘剤におけるラムサンガム及びジェランガムの総重量の50%~95%を占める、
複合増粘剤。
【請求項2】
前記ラムサンガムは、複合増粘剤におけるラムサンガム及びジェランガムの総重量の60%~95%を占める、
請求項1に記載の複合増粘剤。
【請求項3】
前記ラムサンガムは、複合増粘剤におけるラムサンガム及びジェランガムの総重量の65%~95%を占める、
請求項1に記載の複合増粘剤。
【請求項4】
前記ジェランガムは、高アシルジェランガム、部分脱アシル化ジェランガム及び/又は低アシルジェランガムを含む、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の複合増粘剤。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の複合増粘剤を含む製品であって、
前記製品は、食品、飲料、医薬品、栄養品、パーソナルケア製品、又はペットフードである、
製品。
【請求項6】
前記ラムサンガム及びジェランガムは、前記製品の総重量の0.01%~5%を占める量で存在し、好ましくは、前記製品の総重量の0.02%~4%を占める量で存在する、
請求項5に記載の製品。
【請求項7】
ラムサンガム及びジェランガムを含むソフトカプセル皮膜用ゲル化剤であって、
ラムサンガムは、ゲル化剤におけるラムサンガム及びジェランガムの総重量の50%~95%を占め、好ましくは70%~95%を占め、より好ましくは75%~95%を占める、
ソフトカプセル皮膜用ゲル化剤。
【請求項8】
前記ジェランガムは、高アシルジェランガム、部分脱アシル化ジェランガム及び/又は低アシルジェランガムを含む、
請求項7に記載のソフトカプセル皮膜用ゲル化剤。
【請求項9】
請求項7又は8に記載のソフトカプセル皮膜用ゲル化剤を含むソフトカプセル皮膜であって、
前記ソフトカプセル皮膜は、基質、可塑剤及び水をさらに含む、
ソフトカプセル皮膜。
【請求項10】
前記ソフトカプセル皮膜は、1.5%~3.5%重量比の皮膜用ゲル化剤、20%~45%重量比の基質、7%~20%重量比の可塑剤、及び35%~55%重量比の水を含む、
請求項9に記載のソフトカプセル皮膜。
【請求項11】
請求項9又は10に記載のソフトカプセル皮膜を含む、
ソフトカプセル。
【請求項12】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の複合増粘剤の製造方法であって、
a)前記重量比でラムサンガム及びジェランガムの粉末を秤量する工程と、
b)秤量した粉末を均一に混合する工程と、
c)オプションとして、分散剤を添加する工程と、
を含む、複合増粘剤の製造方法。
【請求項13】
請求項9又は10に記載のソフトカプセル皮膜の製造方法であって、
a)重量比で皮膜用ゲル化剤と基質を秤量して混合する工程と、
b)工程a)で得られる混合物を可塑剤と水の溶液で分散させて均一に撹拌する工程と、
c)加熱保温後に金型に導入して冷却成形する工程と、
を含む、ソフトカプセル皮膜の製造方法。
【請求項14】
皮膜用ゲル化剤によるソフトカプセル皮膜の製造における、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の複合増粘剤の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラムサンガム及びジェランガムを含む複合増粘剤及びその製造方法に関する。本発明は、さらに、食品、飲料、医薬品、栄養品、パーソナルケア製品又はペットフードの製造における前記複合増粘剤の使用、並びに前記複合増粘剤を含む食品、飲料、医薬品、栄養品、パーソナルケア製品又はペットフードに関する。
【背景技術】
【0002】
ラムサンガム(Rhamsan gum)及びジェランガム(Gellan gum)は、いずれもスフィンゴモナス(Sphingomonas)の発酵によって生成される微生物多糖であり、その主鎖は、グルコース、グルクロン酸及びラムノースが2:1:1の割合で構成される四糖の構成繰返し単位から組成される。高アシルジェランガムは、3結合のグルコース残基に1つのL-グリセロール基が連結され、ラムサンガムは、この位置に1つの二糖側鎖が連結されている。類似の化学構造により、ラムサンガム及びジェランガムは、いくつかの類似の特性を有する。ラムサンガム及びジェランガムはいずれも強い熱安定性を有し、温度が100℃を超える条件下でもその溶液は依然として高い粘性を示し、両者とも良好な耐酸耐アルカリ性及びレオロジー特性を有する。ジェランガムは、微生物の発酵により得られる親水性ガムとして、現代食品工業においてゼラチンのような動物由来の親水性ガムよりも適用潜在力及び価値を有し、また、ジェランガムは、ゲル化剤としてその使用量が小さく、添加量が0.1%~0.3%であると、ゲルを形成することができるため、食品又は非食品の分野で広く使用されている。食品分野でのラムサンガムの使用は、あまり報告されていない。
【0003】
現在、多くの親水性ガムが食品改良剤として幅広い食品類に適用されており、1種のガムを単独で使用して食品の質品や構造を改良することができる以外にも、複数種のガムを配合して使用することもできる。例えば、CN104721170Aには、ジェランガムとゼラチンが配合され、得られた基質のゲル化性能が相乗効果を示す、混合ガム咀嚼型ソフトカプセルが開示されている。しかしながら、市場の製品はますます多様化し、ガムの性質に対するニーズもますます多様化し、如何に異なる特性を有する親水性ガムを組み合わせて、相補的又は相乗作用によって単一ガムの不足を補い、食品等の製品の機能性を向上又は改善するかというニーズは依然として存在している。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、複合増粘剤を提供し、前記複合増粘剤は、ラムサンガム及びジェランガムを含み、ラムサンガムは、ラムサンガム及びジェランガムの総重量の50%~95%を占める。前記複合増粘剤において、ラムサンガムは、ラムサンガム及びジェランガムの総重量の50%~90%、60%~90%、70%~90%、80%~90%、50%~95%、60%~95%、70%~95%、75%~85%、又は80%~95%を占めることができ、好ましくは、ラムサンガムは、ラムサンガム及びジェランガムの総重量の60%~95%を占める。前記複合増粘剤において、ラムサンガムは、ラムサンガム及びジェランガムの総重量の50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%又は95%を占めることができる。本発明の一実施例において、前記複合増粘剤において、ラムサンガムは、ラムサンガム及びジェランガムの総重量の60%~95%を占める。本発明の一実施例において、前記複合増粘剤において、ラムサンガムは、ラムサンガム及びジェランガムの総重量の65%~95%を占める。本発明の一実施例において、前記複合増粘剤は、主にラムサンガム及びジェランガムにより前記割合で複合されてなる。
【0005】
本発明において、増粘剤という用語とは、システムの粘度を増加させることができるものを意味し、システムが均一に安定された懸濁状態又は乳濁状態に維持したり、ゲルを形成したりすることができる。
【0006】
選択可能的に、前記複合増粘剤は、他の成分をさらに含んでもよく、例えば、分散剤、安定剤のうちの1種類又は複数種類をさらに含むことができる。本発明において、前記増粘剤は、ガムの凝集を低減する分散剤をさらに含んでもよく、前記分散剤は、糖類、アルカリ剤、アルカリ金属塩、有機酸塩、無機酸塩のうちの1種類又は複数種類であってもよく、前記分散剤は、水であってもよい。前記複合増粘剤は、他の増粘剤成分を含んでもよく、含まなくてもよく、前記の増粘剤成分は、例えば、アラビアゴム、ゼラチン、グアーガム、カラギーナン、キサンタンガム、ペクチン、ローカストビーンガム、アルギン酸ナトリウム、タマリンドシードガム、寒天、キトサン、カルボキシメチルセルロース、カードランガム、タラガム、及びコンニャクガムのうちの1種類又は複数種類であり、好ましくは、前記複合増粘剤は、ゼラチンを含まない。前記複合増粘剤は、少なくとも2%(重量比)のラムサンガム及びジェランガムを含むことができる。前記複合増粘剤は、80%(重量比)以上のラムサンガム及びジェランガムを含むことができる。好ましくは、前記複合増粘剤の増粘成分は、主にラムサンガムとジェランガムからなる。本発明の一実施例において、前記複合増粘剤は、粉末である。
【0007】
本発明において、「高アシルジェランガム」とは、ジェランガムの発酵液から直接抽出される、脱アシル化処理を経ていない高アシル形式のジェランガムを意味し、本願において、「天然のジェランガム」と互換的に使用することができる。本発明において、「低アシルジェランガム」とは、抽出過程において脱アシル化処理を経てアシル基が除去されたジェランガムを意味し、本願において、「脱アシルジェランガム」と互換的に使用することができる。本発明において、アシル基量が高アシルジェランガムと低アシルジェランガムとの間に介在するジェランガムは、「部分脱アシル化ジェランガム」と呼ばれる。本発明に記載の前記複合増粘剤におけるジェランガムとは、高アシルジェランガム、低アシルジェランガム及び/又は部分脱アシル化ジェランガムであってもよい。好ましくは、前記複合増粘剤におけるジェランガムは、部分脱アシル化ジェランガムを含む。本発明の一実施例において、前記複合増粘剤は、主にラムサンガム及び部分脱アシル化ジェランガムを含む。
【0008】
本発明の一態様は、前記複合増粘剤の製造方法を提供し、前記製造方法は、以下の工程を含む。
a)前記重量比でラムサンガム及びジェランガムの粉末を秤量する工程、
b)秤量した粉末を均一に混合する工程、
c)オプションとして、分散剤を添加する工程。
【0009】
前記秤量及び混合は、本分野の通常の方法に従って行うことができる。
【0010】
本発明の一態様は、前記複合増粘剤を含む製品を提供し、前記製品は、食品、飲料、医薬品、栄養品、パーソナルケア製品又はペットフードであってもよい。具体的には、前記食品は、デザート、キャンディ、乳製品又は飲料であってもよい。前記製品は、医薬又は栄養物質の送達システム、例えばソフトカプセルであってもよい。前記パーソナルケア製品は、スキンケア(例えば、フェイスマスク)、口腔ケア、又はヘアケア製品であってもよい。前記製品において、ラムサンガム及びジェランガムは、前記製品の総重量の0.01%~5%を占める量で存在してもよく、好ましくは、前記製品の総重量の0.02%~4%を占める量で存在し、より好ましくは、前記製品の総重量の0.3%~2.5%を占める量で存在してもよい。
【0011】
本発明の一態様は、製品の製造方法を提供し、前記製品は、食品、飲料、医薬品、栄養品、パーソナルケア製品又はペットフードであってもよく、その製造過程において前記複合増粘剤が使用されている。前記複合増粘剤の使用量は、ラムサンガム及びジェランガムを添加しようとするシステムの総重量の0.01%~5%であり、好ましくは0.02%~4%であり、より好ましくは0.3%~2.5%である。
【0012】
本発明の一態様は、ラムサンガム及びジェランガムを含むソフトカプセル皮膜用ゲル化剤を提供し、ラムサンガムは、ゲル化剤におけるラムサンガム及びジェランガムの総重量の50%~95%、例えば、65%~90%、70%~90%、75%~90%、80%~90%、65%~95%、70%~95%、75%~95%、80%~95%、又は85%~95%、例えば、65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%を占め、好ましくは、ラムサンガムは、ラムサンガム及びジェランガムの総重量の70%~95%を占め、より好ましくは、ラムサンガム及びジェランガムの総重量の75%~95%を占める。前記皮膜用ゲル化剤におけるジェランガムは、高アシルジェランガム、低アシルジェランガム及び/又は部分脱アシル化ジェランガムであってもよく、好ましくは、前記皮膜用ゲル化剤におけるジェランガムは、部分脱アシル化ジェランガムを含む。本発明において、前記皮膜用ゲル化剤は、他のガムをさらに含んでもよく、含まなくてもよく、例えば、アラビアゴム、ゼラチン、グアーガム、カラギーナン、キサンタンガム、ペクチン、ローカストビーンガム、アルギン酸ナトリウム、タマリンドシードガム、寒天、キトサン、カルボキシメチルセルロース、カードランガム、タラガム、及びコンニャクガムのうちの1種類又は複数種類であり、好ましくは、ゼラチンを含まない。
【0013】
本発明は、さらに、前記皮膜用ゲル化剤を含むソフトカプセル皮膜を提供する。前記ソフトカプセルの皮膜は、基質、可塑剤及び水(例えば、脱イオン水)をさらに含む。本発明の一実施例において、前記ソフトカプセルのカプセル皮膜は、1.5%~3.5%の前記皮膜用ゲル化剤と、20%~45%の基質と、7%~20%の可塑剤と、35%~55%の脱イオン水とを含み、前記割合は、重量百分率である。本発明の一実施例において、皮膜用ゲル化剤は、主にラムサンガムとジェランガムを含み、前記基質は、デキストリンであり、前記可塑剤は、グリセリンであり、各部分を一定の重量比で配合してソフトカプセル皮膜を製造することができる。前記デキストリンは、澱粉の加熱又は酸処理により得られる澱粉分解物であり、デキストリンは、ゲル化作用がなく、基質としてゲル化剤と結合して安定且つ強いゲルのネットワーク構造を形成することができ、前記グリセリンは、可塑剤としてカプセル剤皮膜溶液の流動性を増強させ、製造過程においてカプセル皮膜が十分な流動性を有するようにする。
【0014】
本発明は、さらに、ソフトカプセルを提供し、その皮膜は、本発明に係る皮膜用ゲル化剤を含む。
【0015】
本発明の一態様は、ソフトカプセル皮膜の製造方法を提供し、前記製造方法は、以下の工程を含む。
a)重量比で本発明に係る皮膜用ゲル化剤と基質を秤量して混合する工程、
b)工程a)で得られる混合物を可塑剤及び脱イオン水の溶液で分散させて均一に撹拌する工程、
c)加熱保温後に金型に導入して冷却成形する工程。
【0016】
ここで、皮膜用ゲル化剤:基質:可塑剤:脱イオン水の重量比は、1.5~3.5:20~45:7~20:35~55であり、前記皮膜用ゲル化剤は、主にラムサンガムとジェランガムを含み、ラムサンガムは、ラムサンガム及びジェランガムの総重量の50%~95%、例えば65%~90%、70%~90%、75%~90%、80%~90%、65%~95%、70%~95%、75%~95%、80%~95%、又は85%~95%、例えば65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%を占め、好ましくは、ラムサンガムは、ラムサンガム及びジェランガムの総重量の70%~95%を占め、より好ましくは、ラムサンガム及びジェランガムの総重量の75%~95%を占める。前記皮膜用ゲル化剤におけるジェランガムは、高アシルジェランガム、低アシルジェランガム及び/又は部分脱アシル化ジェランガムであってもよく、好ましくは、前記皮膜用ゲル化剤におけるジェランガムは、部分脱アシル化ジェランガムを含む。本発明の一実施例において、ソフトカプセル皮膜の製造方法は、重量比でラムサンガム、ジェランガム及びデキストリンを秤量して十分に混合する工程と、混合物をグリセリン及び脱イオン水の溶液で分散させて均一に撹拌して基質溶液を得る工程と、均一に撹拌された基質溶液を既に設定された約95℃の水浴鍋に入れて、1.5~4時間保温加熱する工程と、加熱が完了した後、ガム液を金型に注入し、金型中のガム液を室温まで冷却して一晩放置する工程と、を含み、ここで、ラムサンガム及びジェランガム:デキストリン:グリセリン:脱イオン水の重量比は、1.5~3.5:20~45:7~20:35~55であり、ラムサンガムは、ラムサンガム及びジェランガムの総重量の70%~95%を占める。
【0017】
本発明は、さらに、皮膜用ゲル化剤によるソフトカプセル皮膜の製造における前記複合増粘剤の使用を提供する。
【0018】
いかなる理論や解釈を受けることを望まないことで、発明者らは、特定の割合のラムサンガムとジェランガムを配合することにより、相乗増粘効果を発揮することができることを見出した。前記相乗増粘効果は、ラムサンガムとジェランガムを特定の割合で配合して一定濃度の溶液に製造した後、その溶液の粘度が、同じガム濃度下でラムサンガムを単独で使用又はジェランガムを単独で使用する時の溶液の粘度より高くなることで表れる。前記ジェランガムは、高アシルジェランガムであってもよく、低アシルジェランガム及び/又は部分脱アシル化ジェランガムであってもよく、いずれも相乗増粘効果を発揮することができ、好ましくは、前記ジェランガムは、部分脱アシル化ジェランガムである。ラムサンガム及びジェランガムを配合する場合、ラムサンガムは、ラムサンガム及びジェランガムの総重量の50%~95%、例えば、50%~90%、60%~90%、70%~90%、80%~90%、50%~95%、60%~95%、70%~95%、75%~85%、又は80%~95%を占める。前記溶液の濃度は、0.01%~5%(重量比)であってよく、好ましくは、0.02%~4%(重量比)であり、より好ましくは、0.3%~2.5%(重量比)である。前記ラムサンガム及びジェランガムが配合された後、調製された溶液の粘度は、同じ濃度下でラムサンガムを単独で使用又はジェランガムを単独で使用する時の溶液の粘度より高く、その粘度は、少なくとも約5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、又は20%を高めることができる。
【0019】
本発明において、レオメーターを用いて溶液の粘度を試験することができ、試験の条件とは、せん断速度:100 1/s、試験温度:85℃、歪み:2%、周波数:1Hzである。本発明において、前記試験の条件に従って、1.2%(重量比)の溶液の濃度下で、前記高アシルジェランガムの粘度は、0.4パスカル・秒~1.5パスカル・秒であってもよく、前記部分脱アシル化ジェランガムの粘度は、0.05パスカル・秒~0.5パスカル・秒であってもよく、前記低アシルジェランガムの粘度は、0.001パスカル・秒~0.08パスカル・秒であってもよく、前記ラムサンガムの粘度は、0.1パスカル・秒~0.8パスカル・秒であってもよい。本発明の一実施例において、以下の方法に従って粘度を試験する:ラムサンガムとジェランガムを特定の割合で配合して混合した後、脱イオン水に投入し、均一に分散させて溶液を調製し、溶液を85℃まで昇温加熱し、1分間保温し、溶液をレオメーターに添加し、設定した複合粘度試験モードで試験を開始し、ここで、せん断速度は、100 1/sであり、試験温度は、85℃であり、歪みは、2%であり、周波数は、1Hzである。粘度を試験する場合、溶液におけるラムサンガム及びジェランガムの総濃度は、0.5%~3%(重量比)であってもよく、好ましくは、1.0%~2.5%(重量比)である。
【0020】
いかなる理論や解釈を受けることを望まないことで、発明者らは、特定の割合のラムサンガム及びジェランガムを配合することにより、そのゲル性能も相乗効果を有することを見出した。前記相乗効果とは、前記複合組成物のゲルの強度が、同じ条件下でラムサンガムを単独で使用又はジェランガムを単独で使用する時のゲルの強度よりも高くなることで表れる。具体的には、前記組成物がソフトカプセルの皮膜用ゲル化剤として使用される場合、ソフトカプセル皮膜の強度を向上させることができる。前記皮膜用ゲル化剤におけるラムサンガムは、ゲル化剤におけるラムサンガム及びジェランガムの総重量の50%~95%、例えば、65%~90%、70%~90%、75%~90%、80%~90%、65%~95%、70-95%、75%~95%、80%~95%、又は85%~95%、例えば、65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%を占め、好ましくは、ラムサンガムは、ラムサンガム及びジェランガムの総重量の70%~95%を占め、より好ましくは、ラムサンガム及びジェランガムの総重量の75%~95%を占める。前記皮膜用ゲル化剤におけるジェランガムは、高アシルジェランガム、低アシルジェランガム及び/又は部分脱アシル化ジェランガムであってもよく、好ましくは、前記皮膜用ゲル化剤におけるジェランガムは、部分脱アシル化ジェランガムを含む。ソフトカプセル皮膜においてゲル化剤としてジェランガムを単独で使用すると、通常、弾性が悪くなる。ラムサンガムを単独で使用すると、そのゲル温度が高くなるため、操作が不便になる。本発明に係るラムサンガムとジェランガムを含む複合増粘剤をゲル化剤として使用すると、皮膜の強度は、ラムサンガムを単独で使用又はジェランガムを単独で使用する時の皮膜の強度より高くなることができ、本発明に係る皮膜用ゲル化剤を使用すると、ラムサンガムを単独で使用又はジェランガムを単独で使用する時の皮膜のうちの強度が高い皮膜に対して、皮膜の強度を少なくとも約2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、又は20%向上させることができる。
【0021】
本発明において、ゲルの強度及び弾性は、テクスチャーアナライザーにより試験することができる。本発明において、ゲルの強度とは、単位面積で、ゲルが一定の歪み範囲で耐え得る最大のプレス力値を意味する。ゲルの弾性とは、テクスチャーアナライザーのプローブがゲル状塊に接触し始めてからゲルの強度を試験して得られるまでの過程でのプローブの移動距離/テクスチャーアナライザーのプローブがゲル状塊に接触し始めてから試験して得られるまでの設定の歪み下でのプローブの移動距離を意味し、移動距離の比は、弾性を反映することができる。具体的には、以下の設定に従って、テクスチャーアナライザーにより試験することができる:プローブ:P/1KS、歪み:95%、トリガー力:5g、試験前の速度:1mm/sec、試験の速度:1mm/sec、試験後の速度:10mm/sec。
【0022】
本発明に係る複合増粘剤は、特定の割合のラムサンガムとジェランガムを配合することにより、相乗増粘効果を発揮することができ、一種の親水性ガムを単独で使用する場合に比べて、より少量のガムでより突出した増粘特性を達成することができ、コストを節約することができる。また、本発明に係る複合増粘剤のゲル性能も相乗効果を有し、皮膜用ゲル化剤としてソフトカプセルの皮膜に適用される場合、得られたカプセル剤皮膜は、ラムサンガムの単独使用又はジェランガムの単独使用によるカプセル剤よりも、皮膜の強度がより優れており、良好な弾性を保持している。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】粘度の試験結果である。ラムサンガム、ジェランガム、ラムサンガム及びジェランガムの組成物(ラムサンガムの添加割合は、それぞれ40%、60%及び80%である)を、1.2%の濃度で脱イオン水で十分に水和させ、加熱した後、レオメーターで経時的に粘度が変化するスキャン試験結果を得た。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明はさらに実施例の形態で説明する。これらの説明は、例示的なものに過ぎず、本発明を説明するためのものであり、本発明の保護範囲を限定するものではない。実施例に用いられるラムサンガムは、中国浙江帝斯曼中肯生物科学有限会社から購入され、ジェランガムは、中国浙江帝斯曼中肯生物科学有限会社から購入されたGELLANEER HSジェランガムである。
実施例1:増粘性
【0025】
ラムサンガム、ジェランガム、ラムサンガム及びジェランガムの組成物(ラムサンガムの添加割合はそれぞれ40%、60%及び80%である)を1.2%の濃度で脱イオン水で十分に水和させ、加熱した後、レオメーターで経時的に粘度が変化するスキャン試験を行い、試験結果を図1に示す。ラムサンガム及びジェランガムの組成物におけるラムサンガムの添加量が60%を超える場合、組成ガムの粘度は、ラムサンガムを単独で使用又はジェランガムを単独で使用する時の粘度よりも高い。
【0026】
ηは、レオメーターの振動モード下で試験された粘度であり、溶液の粘弾性を反映している。レオロジーの試験方法は、以下の通りである:せん断速度:100 1/s、試験温度:85℃、歪み:2%、周波数:1Hz。
実施例2:カプセルシステムにおけるゲルの強度及び弾性
【0027】
実験方法:2.5%皮膜用ゲル化剤と36.5%マルトデキストリン(MD20、保齢宝生物株式会社)を均一に混合し、さらに14%グリセリンを47%脱イオン水に入れて均一に撹拌した。均一に混合した粉末をグリセリン溶液に投入して、十分に撹拌した。各群の実験において、前記2.5%皮膜用ゲル化剤は、それぞれ、以下の通りである:2.5%ジェランガム、2.5%ラムサンガムとジェランガムの比率が2:3であるゲル化剤、2.5%ラムサンガムとジェランガムの比率が3:2のゲル化剤、2.5%ラムサンガムとジェランガムの比率が4:1のゲル化剤、及び2.5%純粋なラムサンガムである。
【0028】
ゲルの強度及び弾性の試験をテクスチャーアナライザー(TA.XT.plus、SMS(登録商標))で行った。ゲルの強度とは、単位面積で、ゲルが一定の歪み範囲で耐え得る最大のプレス力値を意味する。ゲルの弾性とは、テクスチャーアナライザーのプローブがゲル状塊に接触し始めてからゲルの強度を試験するまでの過程でのプローブの移動距離/テクスチャーアナライザーのプローブがゲル状塊に接触し始めてから試験するまでの設定の歪み下でのプローブの移動距離を意味し、移動距離の比は、弾性を反映することができる。試験方法は、以下の通りである:プローブ:P/1KS、歪み:95%、トリガー力:5g、試験前の速度:1mm/sec、試験の速度:1mm/sec、試験後の速度:10mm/sec。試験結果を表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
上記結果から分かるように、異なる濃度比率のラムサンガム及びジェランガムの組成物は、模擬したカプセル剤皮膜において、その皮膜の強度及び弾性に差別化結果を示す。ゲル化剤において、ラムサンガム及びジェランガムにおけるラムサンガムの含有量が80%である場合、ソフトカプセルの皮膜の強度は、ラムサンガムを単独で使用する時のソフトカプセルの皮膜の強度よりも有意に高く、2種類のガムの組み合わせで相乗作用が発揮され、ソフトカプセルの皮膜の強度が向上させ、皮膜が理想的な弾性を保持している。
図1
【手続補正書】
【提出日】2024-02-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラムサンガム及びジェランガムを含む複合増粘剤であって、
ラムサンガムは、複合増粘剤におけるラムサンガム及びジェランガムの総重量の50%~95%を占める、
複合増粘剤。
【請求項2】
前記ラムサンガムは、複合増粘剤におけるラムサンガム及びジェランガムの総重量の60%~95%を占める、
請求項1に記載の複合増粘剤。
【請求項3】
前記ラムサンガムは、複合増粘剤におけるラムサンガム及びジェランガムの総重量の65%~95%を占める、
請求項1に記載の複合増粘剤。
【請求項4】
前記ジェランガムは、高アシルジェランガム、部分脱アシル化ジェランガム及び/又は低アシルジェランガムを含む、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の複合増粘剤。
【請求項5】
分散剤をさらに含む、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の複合増粘剤。
【請求項6】
アラビアゴム、ゼラチン、グアーガム、カラギーナン、キサンタンガム、ペクチン、ローカストビーンガム、アルギン酸ナトリウム、タマリンドシードガム、寒天、キトサン、カルボキシメチルセルロース、カードランガム、タラガム、及びコンニャクガムのうちの1種類又は複数種類をさらに含む、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の複合増粘剤。
【請求項7】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の複合増粘剤を含む製品であって、
前記製品は、食品、飲料、医薬品、栄養品、パーソナルケア製品、又はペットフードであり、
前記ラムサンガム及びジェランガムは、前記製品の総重量の0.01%~5%を占める量で存在する、
製品。
【請求項8】
ラムサンガム及びジェランガムを含むソフトカプセル皮膜用ゲル化剤であって、
ラムサンガムは、ゲル化剤におけるラムサンガム及びジェランガムの総重量の50%~95%を占める、
ソフトカプセル皮膜用ゲル化剤。
【請求項9】
ラムサンガムは、ゲル化剤におけるラムサンガム及びジェランガムの総重量の70%~95%を占める、
請求項8に記載のソフトカプセル皮膜用ゲル化剤。
【請求項10】
ラムサンガムは、ゲル化剤におけるラムサンガム及びジェランガムの総重量の75%~95%を占める、
請求項8に記載のソフトカプセル皮膜用ゲル化剤。
【請求項11】
前記ジェランガムは、高アシルジェランガム、部分脱アシル化ジェランガム及び/又は低アシルジェランガムを含む、
請求項8乃至10のいずれか一項に記載のソフトカプセル皮膜用ゲル化剤。
【請求項12】
アラビアゴム、ゼラチン、グアーガム、カラギーナン、キサンタンガム、ペクチン、ローカストビーンガム、アルギン酸ナトリウム、タマリンドシードガム、寒天、キトサン、カルボキシメチルセルロース、カードランガム、タラガム、及びコンニャクガムのうちの1種類又は複数種類をさらに含む、
請求項8乃至10のいずれか一項に記載のソフトカプセル皮膜用ゲル化剤。
【請求項13】
ゼラチンを含まない、
請求項8乃至10のいずれか一項に記載のソフトカプセル皮膜用ゲル化剤。
【請求項14】
請求項8乃至10のいずれか一項に記載のソフトカプセル皮膜用ゲル化剤を含むソフトカプセル皮膜であって、
前記ソフトカプセル皮膜は、基質、可塑剤及び水をさらに含む、
ソフトカプセル皮膜。
【請求項15】
前記ソフトカプセル皮膜は、1.5%~3.5%重量比の皮膜用ゲル化剤、20%~45%重量比の基質、7%~20%重量比の可塑剤、及び35%~55%重量比の水を含む、
請求項14に記載のソフトカプセル皮膜。
【請求項16】
請求項14に記載のソフトカプセル皮膜を含む、
ソフトカプセル。
【請求項17】
請求項14に記載のソフトカプセル皮膜の製造方法であって、
a)重量比で皮膜用ゲル化剤と基質を秤量して混合する工程と、
b)工程a)で得られる混合物を可塑剤と水の溶液で分散させて均一に撹拌する工程と、
c)加熱保温後に金型に導入して冷却成形する工程と、
を含む、ソフトカプセル皮膜の製造方法。
【請求項18】
皮膜用ゲル化剤によるソフトカプセル皮膜の製造における、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の複合増粘剤の使用。
【国際調査報告】