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特表2024-528319不均一な厚さを有する電極素子を有する腫瘍治療電場を送達するための装置およびかかる装置を製造するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】不均一な厚さを有する電極素子を有する腫瘍治療電場を送達するための装置およびかかる装置を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/40 20060101AFI20240719BHJP
   A61N 1/04 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
A61N1/40
A61N1/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024508520
(86)(22)【出願日】2022-08-12
(85)【翻訳文提出日】2024-04-08
(86)【国際出願番号】 IB2022057573
(87)【国際公開番号】W WO2023017491
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】63/232,241
(32)【優先日】2021-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/886,345
(32)【優先日】2022-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519275847
【氏名又は名称】ノボキュア ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヨラム・ワッサーマン
(72)【発明者】
【氏名】スタス・オブチョフスキー
(72)【発明者】
【氏名】ナタリヤ・クプレニク
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053BB04
4C053BB22
4C053BB34
4C053LL05
4C053LL12
(57)【要約】
被験者の身体に腫瘍治療電場を送達するための装置。この装置は、被験者の身体上に配置されることとなり被験者の身体に腫瘍治療電場を送達することが可能な複数の電気結合電極素子を備え、複数の電気結合電極素子のうちの少なくとも1つの電極素子が、誘電体層を備え、誘電体層は、被験者の身体に対面する第1の表面と、第1の表面の対向側に位置する第2の表面とを有し、誘電体層の第1の表面および第2の表面の少なくとも一方が、非平坦表面である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の身体に腫瘍治療電場を送達するための装置であって、
被験者の身体上に配置されることとなり、前記被験者の身体に腫瘍治療電場を送達することが可能な、複数の電気結合電極素子
を備え、
前記複数の電気結合電極素子のうちの少なくとも1つの電極素子が、誘電体層を備え、前記誘電体層は、前記被験者の身体に対面する第1の表面と、前記第1の表面に対向する第2の表面とを有し、前記誘電体層の前記第1の表面および前記第2の表面の少なくとも一方が、非平坦表面である、装置。
【請求項2】
前記誘電体層の前記第1の表面は、非平坦であり、前記誘電体層の前記第2の表面は、実質的に平坦である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記非平坦な第1の表面は、少なくとも1つの突出部またはくぼみ部を有する表面である、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1の表面に対して垂直な方向から見た場合に、前記非平坦な第1の表面の前記突出部または前記くぼみ部は、パターンとして構成される、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記第1の表面に対して垂直な方向から見た場合に、前記非平坦な第1の表面の前記突出部または前記くぼみ部は、少なくとも2つの実質的に平行なライン、少なくとも2つの実質的に垂直なライン、少なくとも2つの実質的に同心状の円、少なくとも2つの実質的に同一サイズの円、または少なくとも2つの実質的に正方形もしくは矩形、あるいはそれらの組合せとして構成される、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記第1の表面に対して垂直な方向から見た場合に、前記非平坦な第1の表面の前記突出部または前記くぼみ部は、ランダムに構成される、請求項3に記載の装置。
【請求項7】
前記非平坦な第1の表面は、複数の側壁部を有する表面であり、前記複数の側壁部は、少なくとも2つの鉛直方向側壁部、少なくとも2つの湾曲状側壁部、少なくとも2つの傾斜側壁部、少なくとも2つのステップ状側壁部、またはそれらの組合せを備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの電極素子は、円形セラミックディスクを備える、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つの電極素子は、ポリマーフィルムまたはポリマー層を備える、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つの電極素子は、
前記誘電体層の前記第1の表面と直接接触状態にある基板と、
前記誘電体層の前記第2の表面と直接接触状態にある導電性層と
をさらに備える、請求項1から9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記誘電体層の前記第1の表面は、非平坦であり、前記誘電体層の前記第2の表面は、実質的に平坦であり、
前記非平坦な第1の表面と前記実質的に平坦な第2の表面との間の距離が、不均一であり、30%以下で変化する、請求項1から10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
被験者の身体に腫瘍治療電場を送達するための装置であって、
被験者の身体上に配置されることとなり、前記被験者の身体に腫瘍治療電場を送達することが可能な、接続された電極素子のアレイ
を備え、
前記アレイのうちの少なくとも1つの電極素子が、セラミックディスクを備え、
前記セラミックディスクは、前記被験者の身体に対面する第1の表面と、前記第1の表面に対向する第2の表面とを有し、
前記セラミックディスクは、不均一な厚さを有する、装置。
【請求項13】
断面で見た場合に、前記セラミックディスクの前記第1の表面は、不均一表面を有する、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
被験者の身体に腫瘍治療電場を送達するための装置であって、
被験者の身体上に配置されることとなり、前記被験者の身体に腫瘍治療電場を送達することが可能な、トランスデューサ
を備え、
前記トランスデューサは、前記被験者の身体に対面する第1の表面と前記第1の表面に対向する第2の表面とを有する1つまたは複数の電極素子を備え、
前記電極素子のうちの少なくとも1つが、前記被験者の身体に対面する第1の表面と前記第1の表面に対向する第2の表面とを有するポリマーフィルムを備え、前記ポリマーフィルムは、不均一な厚さを有する、装置。
【請求項15】
断面で見た場合に、前記ポリマーフィルムの前記第1の表面は、不均一表面を有する、請求項14に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2022年8月12日に出願された台湾特許出願第111130479号、2022年8月11日に出願された米国特許出願第17/886,345号、および2021年8月12日に出願された米国特許出願第63/232,241号に基づく優先権を主張するものであり、これらの出願はいずれも、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
腫瘍治療電場(TTフィールド)は、中間周波数範囲(例えば50kHz~1MHz、例えば50~500kHzなど)内の低強度(例えば1~4V/cm)交流電場であり、米国特許第7,565,205号に記載されるように腫瘍を治療するために使用され得る。TTフィールド療法は、再発性グリア芽細胞腫(GBM)のための承認済みの単独療法、および新規診断されたGBM患者のための化学療法との承認済みの併用療法である。また、TTフィールドは、被験者の身体の他の部分(例えば肺、卵巣、膵臓)における腫瘍を治療するためにも使用され得る。例えば、TTフィールド療法は、悪性胸膜中皮腫(MPM)のための化学療法との承認済みの併用療法である。TTフィールドは、患者の身体上に直接配置され(例えばNovocure Optune(商標)システムを使用して)トランスデューサ間にAC電圧を印加するトランスデューサ(例えば容量結合電極素子アレイ)によって、関心領域中に非侵襲的に誘発される。
【0003】
GBMの文脈においては、これらのトランスデューサを位置決めするための従来のアプローチは、前頭部および後頭部の上に第1の対のトランスデューサを位置決めし、右側頭部および左側頭部の上に第2の対のトランスデューサを位置決めするというものである。中皮腫治療の文脈においては、これらのトランスデューサを位置決めするための従来のアプローチは、胴体の前部および後部の上に第1の対のトランスデューサを位置決めし、胴体の右側部および左側部の上に第2の対のトランスデューサを位置決めするというものである。AC電圧発生器が、第1の時間間隔(例えば1秒)の間にわたり第1の対のトランスデューサ間にAC電圧(例えばGBMの文脈では200kHzまたは中皮腫の文脈では150kHz)を印加し、これにより、概して前後方向に延びる力線を有する電場が発生する。次いで、このAC電圧発生器は、第2の時間間隔(例えば1秒)の間にわたり第2の対のトランスデューサ間にAC電圧を同一周波数にて印加し、これにより、概して左右方向に延びる力線を有する電場が発生する。次いで、このシステムは、治療期間にわたりこの2ステップシーケンスを反復する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7,565,205号明細書
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1A】被験者の身体に腫瘍治療電場を送達するための複数の結合電極素子を有するトランスデューサの例示の一実施形態の断面図である。
図1B図1Aの電極素子のうちの1つの拡大断面図である。
図2A】非平坦表面を有する誘電体層の構造の例示の実施形態の断面図である。
図2B】非平坦表面を有する誘電体層の構造の例示の実施形態の断面図である。
図2C】非平坦表面を有する誘電体層の構造の例示の実施形態の断面図である。
図2D】非平坦表面を有する誘電体層の構造の例示の実施形態の断面図である。
図2E】非平坦表面を有する誘電体層の構造の例示の実施形態の断面図である。
図2F】非平坦表面を有する誘電体層の構造の例示の実施形態の断面図である。
図3A】非平坦表面に対して垂直な方向から見た場合の、非平坦表面を有する誘電体層の外観の例示の実施形態の平面図である。
図3B】非平坦表面に対して垂直な方向から見た場合の、非平坦表面を有する誘電体層の外観の例示の実施形態の平面図である。
図3C】非平坦表面に対して垂直な方向から見た場合の、非平坦表面を有する誘電体層の外観の例示の実施形態の平面図である。
図3D】非平坦表面に対して垂直な方向から見た場合の、非平坦表面を有する誘電体層の外観の例示の実施形態の平面図である。
図3E】非平坦表面に対して垂直な方向から見た場合の、非平坦表面を有する誘電体層の外観の例示の実施形態の平面図である。
図4A】複数の結合電極素子を有するトランスデューサの構造の例示の実施形態の平面図である。
図4B】複数の結合電極素子を有するトランスデューサの構造の例示の実施形態の平面図である。
図5A】腫瘍治療電場を送達するために被験者の身体に対してトランスデューサを装着するための例示の実施形態を示す図である。
図5B】腫瘍治療電場を送達するために被験者の身体に対してトランスデューサを装着するための例示の実施形態を示す図である。
図6】被験者の身体に腫瘍治療電場を送達するための装置を製造するためのプロセスの例示の一実施形態を示すプロセス流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下、添付の図面を参照として様々な実施形態を詳細に説明し、これらの図面において、同様の参照数字は同様の要素を示す。
【0007】
本発明は、以下の詳細な説明、例、図面、および特許請求の範囲、ならびにそれらの前述および後述の説明を参照することによってさらに容易に理解することができる。しかし、本発明は、別様のことが明示されない限り、本開示の具体的な装置、デバイス、システム、および/または方法に限定されるものではなく、したがって当然ながら変更可能なものである点を理解されたい。
【0008】
見出しは、便宜上の目的のみで設けられており、本発明をいかなる点においても限定するように解釈されるべきではない。任意の見出しの下においてまたは本開示の任意の部分において説明される実施形態は、同一のもしくは任意の他の見出し、あるいは本開示の他の部分の下において説明される実施形態と組み合わされてもよい。
【0009】
本明細書において別様のことが示されるかまたは文脈により別様のことが明示されない限り、本明細書に記載される要素のそのあらゆる可能な変形形態でのあらゆる組合せが、本発明に包含される。
【0010】
別様のことが明示されない限り、本明細書において示される方法または態様はいずれも、そのステップがある特定の順序で実施されることを必要とするように見なされることを意図するものではない。したがって、特許請求の範囲または本記載において、ある方法クレームのステップがある特定の順序に限定されるべきであると明言されていない場合には、いかなる点においてもある順序が推断されることを意図しない。これは、ステップ構成もしくは動作フローに関する論理的事項、文法構成もしくは句読点から導き出される平易な意味、または本明細書において説明される実施形態の個数もしくはタイプを含む、あらゆる可能な明示されていない解釈基準について当てはまる。前述の一般的な説明および以下の詳細な説明は共に、例示および説明を目的とするものにすぎず、限定的なものではない点を理解されたい。
【0011】
本明細書ではおよび添付の特許請求の範囲では、本明細書において定義される複数の用語を参照とする。
【0012】
本明細書および添付の特許請求の範囲において、「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」という単数形は、文脈により別様のことが明示されない限り、複数の言及対象を含む。
【0013】
本明細書において、「任意の」または「任意に」という用語は、それに続けて説明される事象、条件、構成要素、または状況が発生しても、発生しなくてもよいことを意味し、前記事象、条件、構成要素、または状況が発生する場合と、発生しない場合とを含むことを意味する。
【0014】
本明細書において、「突出部」という用語は、バンプ、リッジ、またはリンクルを含むがこれらに限定されない、表面の周辺部分から外方に延びまたは突出する表面の部分を示す。本明細書において、「くぼみ部」という用語は、デント、ディボット、溝、またはリンクルを含むがそれらに限定されない、表面の周辺部分に対して内方に延びるまたは凹状を成す表面の部分を示す。本明細書において、「突出部またはくぼみ部」という表現は、「突出部および/またはくぼみ部」を含む。
【0015】
身体に対してAC電圧を印加する際に、電圧の一部は、トランスデューサ中の電極素子の誘電体層にわたる電圧降下によって減損する。したがって、身体の所望位置の上にトランスデューサアレイを装着するために使用可能な面積には限度があるためトランスデューサの設置面積を変更することなく、身体に対して最大電圧を送達することを可能にするシステム(装置)または方法が必要である。本発明は、この問題に対する解決策と、他の重要な課題に対する対処策とを提供する。
【0016】
被験者の身体に対して腫瘍治療電場(TTフィールド)を送達する場合に、低強度(例えば1~4V/cm)および中間周波数(例えば50~500kHz)のAC電圧が、トランスデューサ同士の間、例えばコンデンサに印加される。本明細書における説明において、トランスデューサは、電極素子を備え、さらにこれらの電極素子は、典型的には導電性層同士の間に挟まれた誘電体層を備える。この電極素子の構成が、コンデンサとしての機能を果たす。静電容量(C)は、導体同士の間に蓄積される単位電圧(V)あたりの電荷量を表す。静電容量は、インピーダンスに反比例し、したがって高静電容量は、換言すれば低インピーダンスということになり、また対応してトランスデューサアレイにおける低い電圧降下となる。
【0017】
非平坦表面を有する誘電体層を有する電極素子を備えるトランスデューサを使用することにより、トランスデューサの静電容量を上昇させるアプローチを本発明者らは発見した。非平坦表面の場合には、誘電体層の2つの表面間の距離は不均一になり、したがってトランスデューサの静電容量は一定ではなくなる。本明細書において説明されるように、これは、腫瘍を治療するために被験者の身体に対して送達される電場力を改善することができ、したがってTTフィールド治療の効率を改善することができる。
【0018】
図1Aは、被験者の身体に腫瘍治療電場を送達するための複数の結合電極素子を有するトランスデューサの例示の一実施形態の断面図を示す。この例では、複数の電極素子101Aが、トランスデューサ100Aに組み込まれる。
【0019】
図1Aを参照すると、電極素子101Aは、基板102Aを備え得る。基板102Aは、TTフィールドを送達するために被験者の身体に接触するようにまたは被験者の身体に対してトランスデューサ100Aを装着するように構成される。基板102Aに適する材料は、導電性材料であるまたは導電性材料を含むべきであり、導電性材料としては、例えばクロス、フォーム、および可撓性プラスチックが含まれ得る。一例では、基板102Aは、典型的には約0.5mm以上の厚さを有し得るまたは基板材料(クロス、フォーム、可撓性プラスチック等)中に注入/吸収され得る導電性医療用ゲルであるか、またはこのような導電性医療用ゲルを含む。さらなる具体的な一例では、基板102Aは、0.5mmの最小厚さを有する導電性ヒドロゲル層である。別の例では、基板102Aは、典型的には約20μm以上の厚さを有し得るまたは基板材料(クロス、フォーム、可撓性プラスチック等)中に注入/吸収され得る導電性接着剤であるか、またはこのような導電性接着剤を含む。
【0020】
複数の電極素子101Aは、導電性ワイヤ105Aを介して相互に接続され得る。この例では、複数の電極素子101Aは、導電性ワイヤ105Aを介して相互に機械的かつ電気的に接続される。他の例では、複数の電極素子101Aは、基板102Aを用いずに導電性ワイヤを介して相互に接続される。
【0021】
一実施形態では、複数の電極素子101Aのうちの少なくとも1つが、誘電体層103Aを備える。一実施形態では、誘電体層103Aは、被験者の身体に対面する第1の表面と、第1の表面の対向側に位置する第2の表面とを有する。図1Aに示す例では、誘電体層103Aの第1の表面は、基板102Aと直接接触状態にある表面である。一例では、第1の表面は非平坦表面であり、第2の表面は実質的に平坦な表面である。
【0022】
一実施形態では、誘電体層103Aはセラミック層である。一例では、誘電体層103Aは円形セラミックディスクである。別の例では、誘電体層103Aは、非円形または非ディスク形状のセラミック素子である。別の例では、誘電体層103Aは、非セラミック誘電体材料である。非セラミック誘電体材料の例としては、ポリマーフィルムまたはポリマー層が含まれる。
【0023】
代替的な実施形態では、トランスデューサ100Aは、1つのみの単体電極素子を備え得る。一例では、この単体電極素子は、基板上に位置決めされた可撓性有機材料または可撓性有機複合材料であってもよい。別の例では、この電極素子は、基板を有さない可撓性有機材料または可撓性有機複合材料を含んでもよい。
【0024】
電極素子101Aは、導電性層104Aをさらに備え得る。図1Aに示す例では、導電性層104Aは、誘電体層103Aの第2の表面と直接接触状態にある。一例では、導電性層104Aは金属層である。
【0025】
さらに、(a)被験者の身体にTTフィールドを送達し(b)被験者の身体のある箇所に位置決めされることが可能である限りにおいて、本発明の実施形態と共に使用するためのトランスデューサを実装するための他の代替的な構造が使用されてもよい。他の実施形態では、被験者の身体にTTフィールドを送達することが可能である限りにおいて、任意の電場発生デバイスが本発明の実施形態と共に使用されてもよい。
【0026】
図1Bは、図1Aの電極素子101Aの拡大断面図の一例を示す。一実施形態では、電極素子101Aは、基板102A、誘電体層103A、および導電性層104Aを備える。一実施形態では、誘電体層103Aは、被験者の身体に対面する第1の表面101Bと、第1の表面の対向側に位置する第2の表面102Bとを有する。この例では、第1の表面101Bは、基板102Aと直接接触状態にあり、第2の表面102Bは、導電性層104Aと直接接触状態にある。
【0027】
一実施形態では、第1の表面101Bは非平坦表面であり、第2の表面102Bは実質的に平坦な表面である。一例では、第1の表面101Bは、不均一表面または非一様表面である。結果として、誘電体層103Aの厚さは不均一または非一様となる。第1の表面101Bもまた、不均一または非一様であってもよい。一例として、非平坦な第1の表面101Bは、例えばバンプ、デント、ディボット、リッジ、溝、もしくはリンクル等の、またはそれらの組合せなどの、少なくとも1つの突出部またはくぼみ部を有する表面である。一例では、非平坦な第1の表面101Bは、突出部およびくぼみ部を有する表面である。一例では、非平坦な第1の表面101Bは、少なくとも1つの突出部またはくぼみ部を有する化学エッチングされた表面である。別の例では、非平坦な第1の表面101Bは、切断ツール、レーザ、またはウォータジェットを使用して切断される。別の例では、非平坦な第1の表面101Bは、インプリントまたは成形される。
【0028】
別の実施形態では、非平坦な第1の表面101Bは、複数の側壁部103Bを有する表面である。一例では、複数の側壁部103Bは、非平坦な第1の表面101Bの少なくとも1つの突出部またはくぼみ部の側部である。一例では、複数の側壁部103Bは、断面方向から見た場合に、少なくとも2つの実質的に鉛直方向の側壁部、少なくとも2つの湾曲状もしくは丸みをつけられた側壁部、少なくとも2つの傾斜側壁部、少なくとも2つのステップ状側壁部、またはそれらの組合せからなる。これらの実施形態の例は、図2A図2Fにおいてさらに図示され、以降でさらに論じられる。
【0029】
別の実施形態では、第1の表面に対して垂直な方向から見た場合に、非平坦表面101Bの突出部またはくぼみ部は、パターンとして構成される。一例としては、第1の表面に対して垂直な方向から見た場合に、非平坦な第1の表面101Bの突出部またはくぼみ部は、少なくとも2つの実質的に平行なラインとして、少なくとも2つの実質的に垂直なラインとして、少なくとも2つの実質的に同心状の円として、少なくとも2つの実質的に同一サイズの円として、または少なくとも2つの実質的に同様の正方形もしくは矩形として、あるいはそれらの組合せとして構成される。別の実施形態では、第1の表面に対して垂直な方向から見た場合に、非平坦表面101Bの突出部またはくぼみ部は、ランダムに構成される。これらの実施形態の例は、図3A図3Eにおいてさらに図示され、以降でさらに論じられる。
【0030】
別の実施形態では、誘電体層103Aの第1の表面101Bと第2の表面102Bとの間の距離は、不均一である。図1Bに示す例では、第1の表面101Bと第2の表面102Bとの間の距離としては、突出部の頂部と第2の表面102Bとの間の第1の距離d、および第1の表面101Bの突出部の底部と第2の表面102Bとの間の第2の距離dが含まれる。この例では、dはdよりも小さい。一例では、dとdとの間の相違は、dの30%以下である。別の例では、dとdとの間の相違は、dの20%以下またはdの10%以下である。
【0031】
身体に送達される電圧を最大化することは、トランスデューサ中の電極素子の誘電体層にわたる電圧降下により減損される電圧を最小限に抑制することによって実現され得る。コンデンサにおいて電圧と静電容量とが反比例する性質により、後者(電圧降下を最小限に抑制すること)は、トランスデューサの電極素子の静電容量を最大化することによって実現され得る。
【0032】
一般的には、誘電体層の静電容量は、以下の等式により算出することができる。
C=εA/d 等式1
ここで、εは、誘電体材料の絶対誘電率であり、Aは、誘電体層の2つの平行な表面の表面積であり、dは、誘電体層の2つの表面間の距離である。
【0033】
誘電体層の表面積および絶対誘電率が一定に留まることを前提とした場合に、導電性層同士の間の距離dが縮小する(すなわち誘電体層の厚さが縮小する)ことにより、静電容量は上昇する。図1Bでは、層の全厚がdからdまで縮小することにより、静電容量が上昇する。厚さの下限dにおいて、誘電体層は、脆性が過剰となり意図する用途に対して耐久性を欠く場合があるが、より大きな厚さdでは、耐久性が向上し得、使用に十分なものとなり得る。図1Bは、誘電体層103A中に突出部を使用することにより、突出部の領域中の層厚をより大きな厚さdへと増大させることによって、より厚い誘電体層の耐久性に関するいくつかの点を取り戻したものを示す。2つの距離(誘電体層厚さ)dおよびdのみを有する図1Bの単純なステップ状突出部/くぼみ部の場合には、距離dを有する(X-Y平面に対して垂直方向に見た場合の)全面積の合計は、Aとなり、距離dを有する(X-Y平面に対して垂直方向に見た場合の)全面積の合計は、Aとなる。静電容量の合計は、Ctotal=C+Cである。この場合に、
=εA/d
および
=εA/d
である。
【0034】
したがって、より小さな厚さ(距離d)を有する誘電体層の代表的な領域部分の静電容量は、距離dを有する誘電体層の代表的な領域部分よりも大きい(なぜならば静電容量は距離(誘電体の厚さ)に対して反比例の関係にあるからである)。そのため、非平坦な第1の表面を有することにより、誘電体層の総静電容量は、厚さdを有する誘電体層の総静電容量に比較して高くなる。さらに、静電容量のこの改善は、静電容量が誘電体層の表面積と比例関係にあることによりさらに強化される。これは、誘電体層の表面中に突出部/くぼみ部が含まれることによって大幅に向上する(表面積が、例えばくぼみ部の追加的な側壁部および隆起突出部の隆起表面などによって増大する)。
【0035】
図2A図2Fは、非平坦表面を有する誘電体層の構造の例示の実施形態の断面図を示す。
【0036】
図2Aは、誘電体層の構造の一例を示す。この例では、誘電体層は、第1の非平坦表面201Aおよび第2の実質的に平坦な表面202Aを有する。一実施形態では、第1の非平坦表面201Aは、1つまたは複数の突出部(バンプ)203Aを有する。一例では、1つまたは複数の突出部203Aは、少なくとも2つの鉛直方向側壁部204Aを有する。「鉛直方向の」という用語は、第1の表面に対して垂直であるまたは実質的に垂直である(例えば垂直の±10度の範囲内の)方向を指す。
【0037】
図2Bは、誘電体層の構造の別の例を示す。この例では、誘電体層は、第1の非平坦表面201Bおよび第2の実質的に平坦な表面202Bを有する。一実施形態では、第1の非平坦表面201Bは、1つまたは複数の実質的に丸いくぼみ部203Bを有する。一例では、1つまたは複数の実質的に丸いくぼみ部203Bは、少なくとも2つの湾曲状側壁部204Bを有する。
【0038】
図2Cは、誘電体層の構造の別の例を示す。この例では、誘電体層は、第1の非平坦表面201Cおよび第2の実質的に平坦な表面202Cを有する。一実施形態では、第1の非平坦表面201Cは、1つまたは複数の実質的に三角形のくぼみ部(溝)203Cを有する。一例では、1つまたは複数の実質的に三角形のくぼみ部203Cは、2つの傾斜側壁部204Cを有する。
【0039】
図2Dは、誘電体層の構造の別の例を示す。この例では、誘電体層は、第1の非平坦表面201Dおよび第2の実質的に平坦な表面202Dを有する。一実施形態では、第1の非平坦表面201Dは、1つまたは複数のくぼみ部203Dを有する。一例では、1つまたは複数のくぼみ部203Dは、少なくとも2つのステップ状側壁部204Dを有する。
【0040】
図2Eは、誘電体層の構造の別の例を示す。この例では、誘電体層は、第1の非平坦表面201Eおよび第2の実質的に平坦な表面202Eを有する。一実施形態では、第1の非平坦表面201Eは、1つまたは複数の交互する突出部-くぼみ部(リンクル)203Eを有する。
【0041】
図2Fは、誘電体層の構造の別の例を示す。この例では、誘電体層は、第1の非平坦表面201Fおよび第2の実質的に平坦な表面202Fを有する。一実施形態では、第1の非平坦表面201Fは、例えば谷部、頂部、傾斜部、湾曲部、壁部、等の、突出部およびくぼみ部からなるランダム表面構造を有する。
【0042】
本明細書において説明される実施形態は、限定的なものとして解釈されるべきではなく、明らかに他の突出部/くぼみ部が可能である点を理解されたい。さらに、第2の表面が、第1の非平坦表面に加えてまたはその代わりにいずれかにおいて非平坦である実施形態が存在し、かかる突出部/くぼみ部が、これらの実施形態の第2の表面上に存在してもよい。
【0043】
図3A図3Eは、非平坦表面に対して垂直な方向から見た場合における、誘電体層の非平坦な第1の表面の外観の例を示す。図3A図3Eでは、第1の表面に対して垂直な方向から見た場合に、非平坦な第1の表面の突出部およびくぼみ部は、パターンとして構成される。しかし、いくつかの他の実施形態では、第1の表面に対して垂直な方向から見た場合に、非平坦な第1の表面の突出部およびくぼみ部は、ランダムに構成されてもよい点に留意されたい。
【0044】
図3Aは、非平坦な第1の表面の外観の一例を示す。この例では、第1の非平坦表面301Aは、少なくとも2つの実質的に平行なライン302Aとしての非平坦な第1の表面の突出部および/またはくぼみ部を例証するものである。
【0045】
図3Bは、非平坦な第1の表面の外観の別の例を示す。この例では、第1の非平坦表面301Bは、少なくとも2つの実質的に垂直なライン302Bおよび303Bとしての非平坦な第1の表面の突出部および/またはくぼみ部を例証するものである。
【0046】
図3Cは、非平坦な第1の表面の外観の別の例を示す。この例では、第1の非平坦表面301Cは、少なくとも2つの実質的に同心状の円302Cとしての非平坦な第1の表面の突出部および/またはくぼみ部を例証するものである。
【0047】
図3Dは、非平坦な第1の表面の外観の別の例を示す。この例では、第1の非平坦表面301Dは、少なくとも2つの実質的に同一サイズの円302Dとしての非平坦な第1の表面の突出部および/またはくぼみ部を例証するものである。
【0048】
図3Eは、非平坦な第1の表面の外観の別の例を示す。この例では、第1の非平坦表面301Eは、少なくとも2つの実質的に同一サイズのロッド形状矩形部302Eとしての非平坦な第1の表面の突出部および/またはくぼみ部を例証するものである。他の実施形態では、非平坦な第1の表面の突出部および/またはくぼみ部は、少なくとも2つの実質的に同一サイズの正方形または他の多角形形状であってもよい。
【0049】
図4Aおよび図4Bは、複数の結合電極素子を有するトランスデューサの構造の例示の実施形態の平面図を示す。例えば、図4Aに示すように、トランスデューサ400Aは、基板402Aおよび複数の電極素子401Aを有する。基板402Aは、被験者の身体に対してトランスデューサを装着するように構成される。基板402Aに適した材料としては、例えばクロス、フォーム、および可撓性プラスチックが含まれる。いくつかの実施形態では、基板402Aは、約0.5mm以上の厚さを有する導電性医療用ゲル、または20μm以上の厚さを有する導電性接着剤を含む。さらなる具体的な例では、基板402Aは、約0.5mmの最小厚さを有するヒドロゲル層である。この状況では、トランスデューサ400Aは、基板402Aを介して被験者の身体に対して装着される。
【0050】
複数の容量結合された電極素子401Aが、基板402A上に位置決めされ、各容量結合された電極素子が、導電性プレートを有し、この導電性プレートは、基板に対面する状態で配設された誘電体層を上に有する。一実施形態では、誘電体層は、被験者の身体に対面する第1の表面と、第1の表面の対向側に位置する第2の表面とを有する。一例では、誘電体層は、基板と接触状態にある第1の表面と、導電性プレートと接触状態にある第2の表面とを有する。いくつかの例では、複数の電極素子のうちの少なくとも1つが、非平坦表面を有する誘電体層を有する。例えば、非平坦表面は、誘電体層の第1の表面であってもよい。任意には、1つまたは複数のセンサが、Novocure Optune(登録商標)システムにおいて用いられる従来の構成と同様の様式で、各電極素子の下方に位置決めされてもよい。一例では、1つまたは複数のセンサが、温度センサ(例えばサーミスタ)である。
【0051】
いくつかの実施形態では、複数の電極素子401Aは、実質的に平坦な電極素子である。一例では、電極素子の誘電体層は、円形の誘電体層である。さらなる具体的な例では、誘電体層は、セラミックディスクであり、各セラミックディスクは、約2cmの直径と、最大厚さにおいて約1mmの厚さとを有する。他の実施形態では、誘電体層は、非円形の誘電体層である。他の実施形態では、誘電体層は、ディスク形状ではないセラミック素子である。
【0052】
図4Bは、非セラミック結合電極素子401Bを有するトランスデューサ400Bの一例を示す。この例では、トランスデューサ400Bは、基板402Bと、それぞれが非セラミック誘電体層からなる複数の電極素子401Bとを有する。一実施形態では、非セラミック誘電体層は、可撓性誘電体材料を含む。可撓性誘電体材料の例としては、誘電性ポリマーまたは誘電性コポリマーが含まれる。いくつかの実施形態では、非セラミック誘電体層401Bは、非円形形状である。図4Bでは、電極素子401B(およびポリマー誘電体層)は、実質的に三角形の形状またはウェッジ形状であるが、他の実施形態では、非セラミック誘電体層(例えばポリマー層)は、任意の形状であってもよい。いくつかの例では、非セラミック誘電体層は、最大厚さにおいて約1mmまたはそれ未満の厚さである。別の実施形態では、トランスデューサ400Bは、基板を備えない。かかる一実施形態では、非セラミック誘電体層は、任意にはヒドロゲル層または導電性接着剤を介して被験者の身体に対して直接的に装着され得る。
【0053】
誘電体層は、被験者の身体に対面する第1の表面と、第1の表面の対向側に位置する第2の表面とを有し得る。一例では、誘電体層は、基板と接触状態にある第1の表面と、導電性材料と接触状態にある第2の表面とを有する。いくつかの実施形態では、複数の電極素子のうちの少なくとも1つが、少なくとも1つの非平坦表面を有する誘電体層を有する。いくつかの実施形態では、複数の電極素子のうちの少なくとも1つが、非平坦な第1の表面を有する誘電体層を有する。
【0054】
さらに、容量結合されない電極素子のアレイを使用したトランスデューサが使用されてもよい。この状況では、トランスデューサ400Aおよび400Bは、導電性要素と身体との間に配設された誘電体層を絶縁することなく、被験者の身体に対して配置するように構成された導電性材料の領域を使用して実装され得る。
【0055】
図5Aおよび図5Bは、腫瘍治療電場を送達するために被験者の身体に対してトランスデューサを装着する例示の実施形態を示す。
【0056】
図5Aに示す例では、トランスデューサ501A、502A、503A、および504Aは、被験者の頭部に対してTTフィールドを印加するために被験者の頭部に対して装着される。一実施形態では、2つの電場が、2つの対のトランスデューサ間において交互に印加される。各対のトランスデューサは、被験者の身体にTTフィールドを発生させるためのチャネルに対応する。トランスデューサ対に関して、トランスデューサ501Aおよび503Aは、第1の対のトランスデューサを形成してもよく、トランスデューサ502Aおよび504Aは、第2の対のトランスデューサを形成してもよい。
【0057】
この例では、第1の対のトランスデューサ間の第1の腫瘍治療電場(TTフィールド)と、第2の対のトランスデューサ間の第2の腫瘍治療電場(TTフィールド)とは、交互に発生される。第1のTTフィールドは、第1の時間間隔の間にわたり第1の対のトランスデューサ間において第1のAC発生器により発生された第1のAC電圧を印加することによって生成され、例えば低強度(例えば1~4V/cm)および中間周波数範囲(例えば50~576kHzまたはいくつかの例では125~250kHz)を有する。一例では、第1のTTフィールドの周波数は、150kHzである。第1のAC電圧は、第1の時間間隔(例えば1秒)の間にわたり第1の対のトランスデューサに対して印加される。第1の時間間隔の後、第1のTTフィールドの発生が終了する。次に、第2のTTフィールドが、第2の時間間隔の間にわたり第2の対のトランスデューサ間において第2のAC発生器により発生された第2のAC電圧を印加することによって生成され、例えば低強度(例えば1~4V/cm)および中間周波数範囲(例えば50~576kHzまたはいくつかの例では125~250kHz)を有する。一例では、第2のTTフィールドの周波数は、150kHzである。第2のAC電圧は、第2の時間間隔(例えば1秒)の間にわたり第2の対のトランスデューサに対して印加される。第2の時間間隔および第1の時間間隔は、同じであっても異なっていてもよい。第2の時間間隔の後、第2のTTフィールドの発生が終了する。次に、この方法は、第1の時間間隔の間にわたり第1の対のトランスデューサ間において第1のTTフィールドを発生させることと、第2の時間間隔の間にわたり第2の対のトランスデューサ間において第2のTTフィールドを発生させることを交互に行うプロセスを反復する。
【0058】
図5Bに示す例では、トランスデューサ501B、502B、503B、および504Bは、被験者の胴体に対してTTフィールドを印加するために被験者の身体に対して装着される。一実施形態では、2つの電場が、2つの対のトランスデューサ間において交互に印加される。各対のトランスデューサが、被験者の身体にTTフィールドを発生させるためのチャネルに対応する。図5Bに示す例では、トランスデューサ501Bは、被験者の右胸部前方に対して装着され、トランスデューサ502Bは、被験者の右大腿前方に対して装着され、トランスデューサ503Bは、被験者の左胸部後方に対して装着され、トランスデューサ504Bは、被験者の左大腿後方に対して装着される。トランスデューサ対に関して、トランスデューサ501Bおよび504Bは、第1の対のトランスデューサを形成してもよく、トランスデューサ502Bおよび503Bは、第2の対のトランスデューサを形成してもよい。
【0059】
図6は、被験者の身体に腫瘍治療電場を送達するための装置を製造するためのプロセスの例示の一実施形態を示すプロセス流れ図である。
【0060】
図6を参照すると、ステップS602において、本方法は、セラミックディスクを作製することを含む。いくつかの実施形態では、セラミックディスクは、誘電体材料を備える。セラミックディスクは、第1の表面および第2の表面を有し、第1の表面は非平坦表面である。一実施形態では、本方法は、セラミックディスクの第1の表面を化学エッチングまたは切断することにより非平坦表面を作製することをさらに含む。いくつかの例では、セラミックディスクの第1の表面は、切断ツール、レーザ、またはウォータジェットを使用して切断される。他の実施形態では、本方法は、セラミックディスクの第1の表面をインプリントまたは成形することにより非平坦表面を作製することを含む。
【0061】
ステップS604において、本方法は、セラミックディスクの第2の表面に対して導電性材料を装着することを含む。いくつかの実施形態では、セラミックディスクの第2の表面は、実質的に平坦である。一例では、導電性材料は金属である。さらなる具体的な例では、導電性材料は金属層である。
【0062】
ステップS606において、本方法は、被験者の身体にTTフィールドを送達することが可能なセラミックディスクアレイを形成するためにセラミックディスクと他のセラミックディスクとを結合することを含む。いくつかの実施形態では、他のセラミックディスクのうちの1つまたは複数が、非平坦な第1の表面を有する。他の実施形態では、他のセラミックディスクのうちの1つまたは複数が、2つの実質的に平坦な表面を有する。
【0063】
図6は、本発明の一実施形態によるセラミックディスクアレイを製造する方法を論じる。本発明の他の実施形態では、同様の製造方法が、ポリマーフィルムを備える電極アレイを作製するために利用され得る。ポリマーフィルム上に1つまたは複数の非平坦表面を得るために、ポリマーフィルムの表面がインプリントまたは成形されてもよい。例えば、ポリマーフィルムの第1の表面がインプリントまたは成形されてもよい。
【0064】
例示の実施形態
本発明は、例えば以下のものなどの他の例示の実施形態を含む。
【0065】
例示の実施形態1。被験者の身体に腫瘍治療電場を送達するための装置であって、被験者の身体上に配置されることとなり被験者の身体に腫瘍治療電場を送達することが可能な複数の電気結合電極素子を備え、複数の電気結合電極素子のうちの少なくとも1つの電極素子が、誘電体層を備え、誘電体層は、被験者の身体に対面する第1の表面と、第1の表面の対向側に位置する第2の表面とを有し、誘電体層の第1の表面および第2の表面の少なくとも一方が、非平坦表面である、装置。
【0066】
例示の実施形態2。誘電体層の第1の表面が、非平坦であり、誘電体層の第2の表面が、実質的に平坦である、例示の実施形態1の装置。
【0067】
例示の実施形態3。非平坦な第1の表面が、少なくとも1つの突出部またはくぼみ部を有する表面である、例示の実施形態2の装置。
【0068】
例示の実施形態4。非平坦な第1の表面が、少なくとも1つの突出部またはくぼみ部を有する化学エッチングされた表面である、例示の実施形態3の装置。
【0069】
例示の実施形態5。第1の表面に対して垂直な方向から見た場合に、非平坦な第1の表面の突出部またはくぼみ部が、パターンとして構成される、例示の実施形態3の装置。
【0070】
例示の実施形態6。第1の表面に対して垂直な方向から見た場合に、非平坦な第1の表面の突出部またはくぼみ部が、少なくとも2つの実質的に平行なライン、少なくとも2つの実質的に垂直なライン、少なくとも2つの実質的に同心状の円、少なくとも2つの実質的に同一サイズの円、または少なくとも2つの実質的に正方形もしくは矩形、あるいはそれらの組合せとして構成される、例示の実施形態3の装置。
【0071】
例示の実施形態7。第1の表面に対して垂直な方向から見た場合に、非平坦な第1の表面の突出部またはくぼみ部が、ランダムに構成される、例示の実施形態3の装置。
【0072】
例示の実施形態8。非平坦な第1の表面が、複数の側壁部を有する表面であり、複数の側壁部が、少なくとも2つの鉛直方向側壁部、少なくとも2つの湾曲状側壁部、少なくとも2つの傾斜側壁部、少なくとも2つのステップ状側壁部、またはそれらの組合せを備える、例示の実施形態2の装置。
【0073】
例示の実施形態9。少なくとも1つの電極素子が、円形セラミックディスクを備える、例示の実施形態2の装置。
【0074】
例示の実施形態10。少なくとも1つの電極素子が、ポリマーフィルムまたはポリマー層を備える、例示の実施形態2の装置。
【0075】
例示の実施形態11。少なくとも1つの電極素子が、非円形形状である、例示の実施形態2の装置。
【0076】
例示の実施形態12。少なくとも1つの電極素子が、誘電体層の第1の表面と直接接触状態にある基板と、誘電体層の第2の表面と直接接触状態にある導電性層とをさらに備える、例示の実施形態2の装置。
【0077】
例示の実施形態13。基板が、腫瘍治療電場を送達するときに被験者の身体と接触状態になるか、または被験者の身体に対して装着される、例示の実施形態12の装置。
【0078】
例示の実施形態14。少なくとも1つの電極素子が、誘電体層の第1の表面の上にヒドロゲルまたは導電性接着剤をさらに備える、例示の実施形態2の装置。
【0079】
例示の実施形態15。少なくとも1つの電極素子が、誘電体層の第2の表面の上に金属層をさらに備える、例示の実施形態2の装置。
【0080】
例示の実施形態16。誘電体層の第1の表面が、非平坦であり、誘電体層の第2の表面が、実質的に平坦であり、非平坦な第1の表面と実質的に平坦な第2の表面との間の距離が、不均一であり、30%以下だけ変化する、例示の実施形態1の装置。
【0081】
例示の実施形態17。電極素子同士が容量結合される、例示の実施形態1の装置。
【0082】
例示の実施形態18。電極素子同士が容量結合されない、例示の実施形態1の装置。
【0083】
例示の実施形態19。被験者の身体に腫瘍治療電場を送達するための装置であって、被験者の身体上に配置されることとなり被験者の身体に腫瘍治療電場を送達することが可能な接続された電極素子のアレイを備え、アレイのうちの少なくとも1つの電極素子が、セラミックディスクを備え、セラミックディスクは、被験者の身体に対面する第1の表面と、第1の表面の対向側に位置する第2の表面とを有し、セラミックディスクは、不均一な厚さを有する、装置。
【0084】
例示の実施形態20。断面において見た場合に、セラミックディスクの第1の表面が、不均一表面を有する、例示の実施形態19の装置。
【0085】
例示の実施形態21。断面において見た場合に、セラミックディスクの第1の表面が、非一様表面を有する、例示の実施形態19の装置。
【0086】
例示の実施形態22。被験者の身体に腫瘍治療電場を送達するための装置であって、被験者の身体上に配置されることとなり被験者の身体に腫瘍治療電場を送達することが可能なトランスデューサを備え、トランスデューサは、被験者の身体に対面する第1の表面と第1の表面の対向側に位置する第2の表面とを有する1つまたは複数の電極素子を備え、電極素子のうちの少なくとも1つが、被験者の身体に対面する第1の表面と第1の表面の対向側に位置する第2の表面とを有するポリマーフィルムを備え、ポリマーフィルムは、不均一な厚さを有する、装置。
【0087】
例示の実施形態23。断面において見た場合に、ポリマーフィルムの第1の表面が、不均一表面を有する、例示の実施形態22の装置。
【0088】
例示の実施形態24。断面において見た場合に、ポリマーフィルムの第1の表面が、非一様表面を有する、例示の実施形態22の装置。
【0089】
例示の実施形態25。被験者の身体に腫瘍治療電場を送達するための装置を製造する方法であってこの方法は、被験者の身体に腫瘍治療電場を送達することが可能な誘電体材料を備えるセラミックディスクを作製することであって、セラミックディスクが、被験者の身体に対面する第1の表面と第1の表面の対向側に位置する第2の表面とを有し、セラミックディスクの第1の表面が、非平坦表面である、作製することと、セラミックディスクの第2の表面に対して
導電性材料を装着することと、被験者の身体に腫瘍治療電場を送達することが可能なセラミックディスクアレイを形成するためにセラミックディスクと他のセラミックディスクとを結合することとを含む。
【0090】
例示の実施形態26。セラミックディスクの第1の表面を化学エッチングまたは切断することにより非平坦表面を作製することをさらに含む、例示の実施形態25の方法。
【0091】
例示の実施形態27。セラミックディスクの第1の表面が、切断ツール、レーザ、またはウォータジェットを使用して切断される、例示の実施形態25の方法。
【0092】
特定の実施形態を参照として本発明を開示したが、添付の特許請求の範囲に定義されるような本発明の範囲から逸脱することなく、説明した実施形態に対する多数の修正、変形、および変更が可能である。したがって、本発明は、説明される実施形態に限定されず、本発明は、以下の特許請求の範囲の文言およびその均等物により定義された全範囲を有することが意図される。
【符号の説明】
【0093】
100A トランスデューサ
101A 電極素子
101B 第1の表面
102A 基板
102B 第2の表面
103A 誘電体層
103B 側壁部
104A 導電性層
105A 導電性ワイヤ
201A 第1の非平坦表面
201B 第1の非平坦表面
201C 第1の非平坦表面
201D 第1の非平坦表面
201E 第1の非平坦表面
201F 第1の非平坦表面
202A 第2の実質的に平坦な表面
202B 第2の実質的に平坦な表面
202C 第2の実質的に平坦な表面
202D 第2の実質的に平坦な表面
202E 第2の実質的に平坦な表面
202F 第2の実質的に平坦な表面
203A 突出部、バンプ
203B 実質的に丸いくぼみ部
203C 実質的に三角形のくぼみ部、溝
203D くぼみ部
203E 交互する突出部-くぼみ部、リンクル
204A 鉛直方向側壁部
204B 湾曲状側壁部
204C 傾斜側壁部
204D ステップ状側壁部
301A 第1の非平坦表面
301B 第1の非平坦表面
301C 第1の非平坦表面
301D 第1の非平坦表面
301E 第1の非平坦表面
302A 実質的に平行なライン
302B 実質的に垂直なライン
302C 実質的に同心状の円
302D 実質的に同一サイズの円
302E 実質的に同一サイズのロッド形状矩形部
303B 実質的に垂直なライン
400A トランスデューサ
400B トランスデューサ
401A 電極素子
401B 非セラミック結合電極素子、非セラミック誘電体層、電極素子
402A 基板
402B 基板
501A トランスデューサ
501B トランスデューサ
502A トランスデューサ
502B トランスデューサ
503A トランスデューサ
503B トランスデューサ
504A トランスデューサ
504B トランスデューサ
図1A-1B】
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
【手続補正書】
【提出日】2024-04-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の身体に腫瘍治療電場を送達するための装置であって、
被験者の身体上に配置されることとなり、前記被験者の身体に腫瘍治療電場を送達することが可能な、複数の電気結合電極素子
を備え、
前記複数の電気結合電極素子のうちの少なくとも1つの電極素子が、誘電体層を備え、前記誘電体層は、前記被験者の身体に対面する第1の表面と、前記第1の表面に対向する第2の表面とを有し、前記誘電体層の前記第1の表面および前記第2の表面の少なくとも一方が、非平坦表面である、装置。
【請求項2】
前記誘電体層の前記第1の表面は、非平坦であり、前記誘電体層の前記第2の表面は、平坦である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記非平坦な第1の表面は、少なくとも1つの突出部またはくぼみ部を有する表面である、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1の表面に対して垂直な方向から見た場合に、前記非平坦な第1の表面の前記突出部または前記くぼみ部は、パターンとして構成される、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記第1の表面に対して垂直な方向から見た場合に、前記非平坦な第1の表面の前記突出部または前記くぼみ部は、少なくとも2つの平行なライン、少なくとも2つの垂直なライン、少なくとも2つの同心状の円、少なくとも2つの同一サイズの円、または少なくとも2つの正方形もしくは矩形、あるいはそれらの組合せとして構成される、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記第1の表面に対して垂直な方向から見た場合に、前記非平坦な第1の表面の前記突出部または前記くぼみ部は、ランダムに構成される、請求項3に記載の装置。
【請求項7】
前記非平坦な第1の表面は、複数の側壁部を有する表面であり、前記複数の側壁部は、少なくとも2つの鉛直方向側壁部、少なくとも2つの湾曲状側壁部、少なくとも2つの傾斜側壁部、少なくとも2つのステップ状側壁部、またはそれらの組合せを備える、請求項に記載の装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの電極素子は、円形セラミックディスクを備える、請求項に記載の装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つの電極素子は、ポリマーフィルムまたはポリマー層を備える、請求項に記載の装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つの電極素子は、
前記誘電体層の前記第1の表面と直接接触状態にある基板と、
前記誘電体層の前記第2の表面と直接接触状態にある導電性層と
をさらに備える、請求項に記載の装置。
【請求項11】
前記誘電体層の前記第1の表面は、非平坦であり、前記誘電体層の前記第2の表面は、平坦であり、
前記非平坦な第1の表面と前記平坦な第2の表面との間の距離が、不均一であり、30%以下で変化する、請求項に記載の装置。
【請求項12】
被験者の身体に腫瘍治療電場を送達するための装置であって、
被験者の身体上に配置されることとなり、前記被験者の身体に腫瘍治療電場を送達することが可能な、接続された電極素子のアレイ
を備え、
前記アレイのうちの少なくとも1つの電極素子が、セラミックディスクを備え、
前記セラミックディスクは、前記被験者の身体に対面する第1の表面と、前記第1の表面に対向する第2の表面とを有し、
前記セラミックディスクは、不均一な厚さを有する、装置。
【請求項13】
断面で見た場合に、前記セラミックディスクの前記第1の表面は、不均一表面を有する、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
被験者の身体に腫瘍治療電場を送達するための装置であって、
被験者の身体上に配置されることとなり、前記被験者の身体に腫瘍治療電場を送達することが可能な、トランスデューサ
を備え、
前記トランスデューサは、前記被験者の身体に対面する第1の表面と前記第1の表面に対向する第2の表面とを有する1つまたは複数の電極素子を備え、
前記電極素子のうちの少なくとも1つが、前記被験者の身体に対面する第1の表面と前記第1の表面に対向する第2の表面とを有するポリマーフィルムを備え、前記ポリマーフィルムは、不均一な厚さを有する、装置。
【請求項15】
断面で見た場合に、前記ポリマーフィルムの前記第1の表面は、不均一表面を有する、請求項14に記載の装置。
【国際調査報告】