(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】改善された消泡特性を有する、排ガスを処理するための水性組成物
(51)【国際特許分類】
B01D 53/94 20060101AFI20240719BHJP
B01D 19/04 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
B01D53/94 400
B01D53/94 222
B01D19/04 A ZAB
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527873
(86)(22)【出願日】2022-07-19
(85)【翻訳文提出日】2024-03-21
(86)【国際出願番号】 FR2022051433
(87)【国際公開番号】W WO2023002117
(87)【国際公開日】2023-01-26
(32)【優先日】2021-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522178393
【氏名又は名称】トタルエナジーズ・ワンテック
【氏名又は名称原語表記】TOTALENERGIES ONETECH
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【氏名又は名称】大木 信人
(74)【代理人】
【識別番号】100204582
【氏名又は名称】大栗 由美
(72)【発明者】
【氏名】ダヴェラ,ピエール
(72)【発明者】
【氏名】フーロンノー,グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】カスティーロ,ヴェロニカ
(72)【発明者】
【氏名】トート,フレデリック
【テーマコード(参考)】
4D011
4D148
【Fターム(参考)】
4D011CA02
4D148AA06
4D148AB02
4D148AC03
4D148AC04
4D148AC09
4D148CC61
4D148DA03
4D148DA20
(57)【要約】
本発明は、窒素酸化物の少なくとも1種の還元剤および/またはこのような還元剤の少なくとも1種の前駆体、少なくとも1種の界面活性剤、ならびにポリオキシアルキレン鎖がグラフトした、平均ジメチルシロキサン単位数が150~300の範囲内であるポリジメチルシロキサン主鎖を含むコポリマーから選択される少なくとも1種の消泡性添加剤を含む、水性組成物に関する。本発明はまた、内燃機関の出口において排ガスを処理するための、このような組成物の使用、およびまた、この組成物を使用して内燃機関に起源をもつ排ガスを処理する方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 少なくとも1種の窒素酸化物を還元する作用剤および/またはこのような作用剤の少なくとも1種の前駆体、
- 少なくとも1種の界面活性剤、ならびに
- ポリオキシアルキレン鎖がグラフトした、平均ジメチルシロキサン単位数が150~300の範囲であるポリジメチルシロキサン主鎖を含むコポリマーから選択される少なくとも1種の消泡性添加剤
を含む、水性組成物。
【請求項2】
還元剤または還元剤の前駆体が、尿素、アンモニア、ホルムアミド、アンモニウム塩、およびグアニジン塩からなるリストから選択され、より優先的に還元剤前駆体が尿素であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
尿素を組成物の全重量に対して25重量%~42重量%、好ましくは30重量%~40重量%、より優先的に31~35重量%、さらによいのは32重量%~33重量%の範囲の割合で含有し、さらにより優先的には組成物の全重量に対して32.5±0.7重量%の尿素を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
界面活性剤が、水に可溶なイオン性、非イオン性または両性界面活性剤から選択され、好ましくは以下の化合物:
a)ヒドロカルビルおよびモノまたはポリアルキレングリコールエーテル、
b)ヒドロカルビルおよびポリオールエーテル、
c)脂肪酸およびモノまたはポリアルキレングリコールエステル、
d)脂肪酸およびモノまたはポリグリセロールエステル、ならびに
e)これらの化合物の混合物
から選択される非イオン界面活性剤から選択されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
界面活性剤が、式(I):
R-(Y)
n-OH
[式中、
Rは、C
3~C
40アルキル、アルケニルまたはアルキニル基、好ましくはC
8~C
30、さらにより優先的にC
10~C
24を表し、
Yは、-(O-CH
2-CH
2)-、-(O-CH(CH
3)-CH
2)-および-(O-CH
2-CH
2-CH
2)-から選択され、好ましくは-(O-CH
2-CH
2)-であり、
nは、1~60、好ましくは1~30、より優先的に1~20、よいのは3~15、さらによいのは5~12の範囲の整数である]
のモノまたはポリアルコキシ化ヒドロカルビルモノエーテルから選択されることを特徴とする、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
界面活性剤が、組成物の全重量に対して5~10,000重量ppm、好ましくは50~5,000重量ppm、より優先的に100~2,500重量ppm、さらによいのは200~1,000重量ppmの範囲の全割合で存在することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記コポリマーのポリジメチルシロキサン主鎖が、180~250の範囲にある平均ジメチルシロキサン単位数を含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記コポリマーのポリオキシアルキレン鎖が、式-(RO)
m-[Rは、1個または複数のC1~C4アルキレン基を示し、mは、10~55の範囲にある数を示す]に従い、好ましくはポリオキシアルキレン鎖が、ポリオキシエチレン(EO)、ポリオキシプロピレン(PO)、ならびにオキシエチレン単位およびオキシプロピレン単位(EO/PO)によって形成された鎖から選択され、さらにより優先的に平均OE単位数対平均OP単位数の比が好ましくは0.2~2、より優先的に0.3~1.3の範囲にあるオキシエチレン(OE)単位およびオキシプロピレン(OP)単位によって形成された鎖から選択されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記コポリマーのグラフト率が、0.5%~5%、好ましくは1%~2%の範囲にあることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記コポリマーが架橋されていることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
消泡性添加剤が、組成物の全重量に対して1~200重量ppm、好ましくは2~100重量ppm、より優先的に3~50重量ppm、よいのは4~25重量ppm、さらによいのは5~15重量ppmの範囲の全割合で存在することを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
組成物の含水率が、組成物の全重量に対して50~90重量%、好ましくは60~80重量%、より好ましくは65~70重量%の範囲にあることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
オンボードまたは定置型内燃機関の出口において排ガスを処理するための、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項14】
排ガスを内燃機関の出口から窒素酸化物の選択的接触還元用デバイスに運ぶ管におけるデポジットを防止または低減するための、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項15】
窒素酸化物の選択的接触還元用デバイスを装備した内燃機関、好ましくはディーゼル機関から生じる排ガスを処理する方法であって、排ガスを機関の出口から前記選択的接触還元用デバイスに運ぶ管に、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物を導入する少なくとも1つのステップを含むことを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重量積載物車両、輸送車両、農業用機械などのいわゆるオフロード車両、ボートなどの重車両用の機関であろうと、軽車両および/または商用車両用の機関であろうと、定置型産業用途用の機関であろうと、オンボードまたは定置型熱機関の出口において、排ガスを処理するための組成物に関する。本発明は、このような組成物の、排ガスを処理するための何らかのデバイスにおける使用、およびこの組成物を使用して排ガスを処理する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
熱機関によって放出された汚染、特にディーゼルタイプの燃料によって供給されたものに関する欧州規格、特に重量積載物車両に適用可能な規格によって、機関の製造業者は排ガスの後処理のためのシステムを設置してきた。これらのシステムは、SCR(選択的接触還元)、EGR(排ガス循環)、DOC(ディーゼル酸化触媒)、PF(粒子フィルタ)およびSCRF(登録商標)(PFと組み合わせたSCR)技術を含む。これらのさまざまな後処理システムは、排ガス中に存在する同じ汚染物質に必ずしも作用するとは限らないので単独でまたは組み合わせて設置され得る。
【0003】
規格、特に欧州規格(重量積載物車両についてはEuro IV以下参照、軽車両についてはEuro6)に従うために、欧州の自動車製造業者の大部分は、それらの機関の排気におけるSCR後処理を選んだ。この後処理は、ガス中に存在する窒素酸化物の還元に作用するのみである。この技法の別の利点は、機関のチューニングの最適化によって、燃料消費を、特にNOxトラップなどの他の後処理システムと比較して実質的に低減することである。
【0004】
SCR後処理は、窒素酸化物NOおよびNO2(普通はNOxと呼ばれる)を還元剤と接触させる触媒デバイスでそれらの窒素酸化物を還元することで構成される。このデバイスは、一般に鉄および銅交換ゼオライトをベースにした担体を含む触媒を含む。この触媒は、NOxの窒素への還元を還元剤との反応によって支援する。通常の還元剤は、例えばアンモニア(NH3)である。ガス状アンモニアを排ガス処理システムに導入するために、SCRシステムにこれらのガスを運ぶ管において、例えば尿素などこの還元剤の前駆体の水性溶液を蒸発させることによってガス状アンモニアを直接生成することが公知である。一般に150~400℃の平均排気温度で注入された尿素溶液は、連続する熱分解および加水分解反応によってアンモニアを放出する。他のアンモニア前駆体化合物が、同様の条件下で使用され得る。排ガスをSCR触媒に運ぶ管に尿素の水性溶液を導入するために、注入装置が通常その管の上流に用いられる。この注入装置とSCR触媒の間に設置された混合器が、排ガス流中における尿素の水性溶液の噴霧の蒸発を改善するために使用され得る。混合器の例が、文献SAE2015-01-1020(「Advanced Close Coupled SCR Compact Mixer Architecture」、Michelin J.ら)に記載されている。
【0005】
SCR後処理ラインの構成の従来型ではあるが非限定的な2つの例を後述する。第1のいわゆる「床下」構成は、SCR後処理デバイスを機関の下流で、車両の床下(一般に燃焼チャンバの出口から50cm超~1mのところ)に配置することで構成される。それには、非常に大きな空間が利用可能なゾーンに後処理デバイスを設置することができ、したがって尿素の水性溶液の蒸発により好都合な幾何条件下に配置するという利点がある。別のいわゆる「クローズカップルド」構成は、SCR後処理デバイスを機関のすぐ近く(一般に燃焼チャンバの出口から50cm未満のところ)に配置することで構成される。いわゆる床下構成と比較すると、この構成には、SCR触媒においてより高い温度から利益を受け、そのプライミングおよび有効性を改善するという利点がある。一方、その欠点は、利用可能な空間が床下構成の場合より少ないことであり、尿素の水性溶液の注入装置が混合器およびSCR触媒のもっと近くに配置されることを意味する。この構成は、尿素の水性溶液の良好な蒸発に至ることができない。文献SAE2014-01-1522(「Control of a Combined SCR on Filter and Under-Floor SCR System for Low Emission Passenger Cars」、Balland J.ら)およびSAE2015-01-0994(「Next Generation All in One Close-Coupled Urea-SCR System」、Kojima H.ら)、またはWO2014/060987A1に、これら2つのタイプの構成が記載されている。
【0006】
SCRデバイスおよびアンモニア前駆体注入のいくつかの設置構成では、特に尿素注入の場合に、注入装置とSCRデバイスの間に位置する排気管にデポジットの出現が製造業者によって認められた。これらのデポジットは、排気背圧に関連した排気管の部分的またはさらには完全なブロッキングを引き起こし、したがって機関出力の損失を生み出すのに充分大きいことがある。一定の注入構成では、形成されたデポジットの量は、高温より低温の場合に多い。これらのデポジットは、技術刊行物SAE2016-01-2327において行われた分析によれば、デポジットが形成された温度に従って多様な性質を有する。したがって、250~300℃を下回る温度で、デポジットは主に結晶化尿素からなり、300℃を上回る温度で主にシアヌル酸からなる。シアヌル酸は、昇華し、もう一度ガス状アンモニアを生成することができる。しかし、この反応は、450℃を上回る非常に高温においてのみ起こり得る。このような温度は、排気管中においてこの時点でまれにしか到達されない。
【0007】
特に、これらのデポジットは、車両中に空間が欠如しているため、かつ上記のクローズカップルド構成からわかるように尿素の注入と第1のエルボーを分ける間隔が短すぎるとき、エルボーを有する管中に存在したことがわかった。このタイプの構成では、尿素の液滴の一部には、蒸発させ、ガス状アンモニアに完全分解させる時間がないという仮説がまとめられている。尿素の液滴は、管の壁に被着し、低すぎる温度で、ガス状アンモニアに完全分解できず、部分分解のみ行われ、壁に粘着するシアヌル酸のデポジットが形成する。さらに、SCRラインの構成および温度に応じて、尿素はライン中で結晶化しやすく、ラインの閉塞が生じることもわかった(文献SAE2017-26-0132(「A Study on the Factors Affecting the Formation of Urea Crystals and Its Mitigation for SCR After-Treatment Systems」、Jain A.ら)を参照のこと)。
【0008】
国際公開第2008/125745号には、排ガスの後処理用のデバイス、特にSCR型デバイスにおいてシアヌル酸をベースにしたデポジットの形成を制限するために、200℃超でガス状アンモニアを放出しやすい化合物およびHLBが7から17まで変動する少なくとも1種の多官能性添加剤を含む水性溶液が記載されている。使用される多官能性添加剤は、特にポリアルコキシ化脂肪アルコールのエーテルおよびポリアルコキシ化脂肪アルコールのエステルである。
【0009】
欧州特許出願公開第2337625号には、尿素の水性溶液の小滴の直径を低減し、したがってSCRシステムにおいてその蒸発および尿素のガス状アンモニアへの転換を支援するための界面活性剤の混合物が記載されている。提案された溶液は、アルコキシル化度が制御されたポリアルコキシ化脂肪アルコールの混合物からなる。
【0010】
欧州特許出願公開第2488283号には、特定のポリアルコキシ化脂肪アルコールからなるタイプの尿素溶液用添加剤が記載されている。これらの添加剤は、SCRシステムにおける尿素の分解から生じるデポジットの形成の低減を支援するよう意図するものでもある。
【0011】
米国特許第5,453,257号は、炭素燃料の燃焼由来の流出液中の窒素酸化物含有量を、窒素酸化物を還元する化合物およびその窒素酸化物を還元する作用剤の沸点を下回る沸点を有する炭化水素化合物の乳濁液を前記流出液に導入することによって低減することを教示する。
【0012】
しかし、界面活性剤を含むアンモニア前駆体の水性溶液は、起泡する傾向があることが見出された。この起泡は、特に溶液の輸送および取扱い中に、例えば貯蔵容器に注ぎ込まれ、次いで組成物が貯蔵容器から車両のリザーバーに導入されるときに生じ、これによってリザーバーを充填する操作が複雑になり、リザーバーを溢流させるおそれがある。組成物を分注するためのノズルの正常な使用は、その起泡も支援する。さらに、組成物が車両の排ガス処理システムに注入されたときに生じるときの組成物の起泡は、より多くのまたはより少ない量の空気を前記システムに導入させることができる。この現象は、溶液の注入量の制御を妨害し、処理システムの有効性に影響を及ぼす。
【0013】
この問題に対する一解決策は、1種または複数の消泡剤を水性溶液に添加することで構成される。しかし、このような添加剤は、組成物の使用前の貯蔵時間の過程において低下する有効性を示すことが多く、組成物が比較的高温、30℃超、またはさらには35もしくは40℃で貯蔵されているときにいっそう急速に低下する。このような貯蔵条件下で、組成物を一般に数か月超(平均的に5か月)貯蔵することはあり得ず、非常に制約的であるとわかる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
したがって、NOx用の還元剤、例えばアンモニアをベースにした、または尿素などのような還元剤の前駆体をベースにした最適化された特性を有する水性溶液の形で排ガスを処理するための組成物を製剤化することができることが依然として必要とされている。SCRラインの使用中に、起泡の問題を回避しながら、デポジットを防止または低減できることがこの組成物に期待される。ある程度の時間にわたって安定であること、すなわちその特性を、高温での特性を含めて長期貯蔵にわたって維持することも、この組成物に期待される。
【0015】
本出願人は、本目的が、以下に定義されるグラフトしたポリジメチルシロキサンからなる1種または複数のコポリマーからなる少なくとも1種の特定の添加剤を水性組成物に添加することによって達成されたことを見出した。
【0016】
したがって、本発明は、
- 窒素酸化物NOxを還元する少なくとも1種の作用剤および/またはこのような作用剤の少なくとも1種の前駆体、
- 少なくとも1種の界面活性剤、ならびに
- ポリオキシアルキレン鎖がグラフトした、平均ジメチルシロキサン単位数が150~300の範囲であるポリジメチルシロキサン主鎖を含むコポリマーから選択される少なくとも1種の消泡性添加剤
を含む、水性組成物に関する。
【0017】
本発明はまた、オンボードまたは定置型内燃機関の出口において排ガスを処理するための、より詳細には窒素酸化物の選択的接触還元用デバイスにおいて排ガスを処理するための、このような組成物の使用に関する。
【0018】
機関は、特にディーゼル機関、制御-点火機関(ガソリン機関およびVNGまたは車両天然ガス機関を含む)、および複式燃料機関、特にディーゼル-ガス機関から選択することができる。好ましくは、機関はディーゼル機関である。
【0019】
本発明は、オンボード型機関および定置型機関を含めて、窒素酸化物を発しやすい機関のいずれのタイプにも適用される。本発明は、とりわけ舶用機関、重量積載物車両機関、輸送車両および建設現場用機械または例えばトラクターなどの農業用機械の機関、軽車両および商用車両の機関、ならびに定置型産業用途において使用される機関に適用される。
【0020】
窒素酸化物の選択的接触還元用デバイスは、選択的接触還元を表すSCRデバイスという名称でそれ自体公知のデバイスを示す。このようなデバイスは、選択的接触還元触媒(SCR触媒とも呼ばれる)を含む。
【0021】
本発明はまた、窒素酸化物の選択的接触還元用デバイスを装備した内燃機関、好ましくはディーゼル機関から生じる排ガスを処理する方法であって、排ガスを機関の出口から前記選択的接触還元デバイスに運ぶ管に、以上に定義された組成物を導入する少なくとも1ステップを含むことを特徴とする方法にも関する。
【0022】
以下、SCR排気ラインまたはSCRラインは、それ自体公知の方法で、排ガスを機関の出口から選択的接触還元デバイス(SCRデバイス)に運ぶ管を示す。
【0023】
本発明による組成物は、多数の利点を有する。それは、先行技術の解決策と同様にかつ同様の機器中で使用することができる。それは、SCRシステム、特にいわゆるクローズカップルド構成においてデポジットの形成を低減または防止する際に、少なくとも先行技術の溶液、特に尿素をベースにした溶液と同様に効果的であり、またはさらには先行技術の溶液より効果的である。それは、その取扱い、使用、移動および/または輸送中に、例えばデカンテーション操作またはドラム、車両リザーバー、貯蔵容器および輸送容器などの容器を充填する操作中に、全くまたはほとんど少ししか起泡しない。それは、特に車両の貯蔵リザーバーの充填中に溢流するのを回避することを可能にする。それは、車両の貯蔵容器およびリザーバーをより急速に充填することも可能にし、後者の場合、充填ノズルの噴出が制限される。
【0024】
この組成物はさらに、組成物の注入量の正確な制御をもたらし、特にフォームによるセンサーの歪曲に関連した誤りを回避することを可能にする。
【0025】
本発明による組成物は、安定して貯蔵されている。それは、ある程度の時間にわたって、特に1年にまで及ぶ期間にわたって、5℃から40℃の範囲の広範囲の貯蔵温度で維持された消泡性能も有する。
【0026】
発明の他の目的、特徴、態様および効果は、以下の説明および実施例を読んでさらにより明確に現れる。
【0027】
以下、および別段の記載がない限り、ある範囲の値の境界は、この範囲内、特に「~の間にある」および「…から…の範囲の」という表現に含まれる。
【0028】
さらに、本明細書において使用される「少なくとも1つの」および「少なくとも」という表現は、それぞれ「1つまたは複数の」および「~以上」という表現に等しい。
【0029】
最後に、それ自体が公知であるように、CN化合物または基は、その化学構造中にN個の炭素原子を含む化合物または基を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0030】
還元剤および/またはこのような還元剤の前駆体
本発明において使用された組成物は、少なくとも1種の窒素酸化物NOxを還元する作用剤および/または窒素酸化物を還元する作用剤の少なくとも1種の前駆体を含む。
【0031】
「窒素酸化物を還元する作用剤」は、窒素酸化物(化合物NOおよびNO2を示すためにNOxと呼ばれることもある)を、SCRラインの通常の操作条件下で、すなわちSCR触媒の存在下に、150~400℃の範囲の温度で窒素に完全還元しない場合には少なくとも部分還元することができる化合物を意味する。NOxを還元する作用剤のうち、アンモニア(NH3)を特に挙げることができる。
【0032】
「NOxを還元する作用剤の前駆体」は、NOxを還元する作用剤を温度の影響下および/または触媒反応によって放出することができる化合物を意味する。
【0033】
アンモニア前駆体のうち、連続的な熱分解および加水分解反応により、周知の方法に従ってアンモニアを生成する尿素を挙げることができる。SCR排気ラインは、SCR触媒系の上流に、NOxを還元する作用剤の前駆体を特にガス状アンモニアに転換する機能を有する触媒を備えることができる。
【0034】
好ましくは、還元剤または還元剤の前駆体は、尿素、アンモニア、ホルムアミド、アンモニウム塩、特にギ酸アンモニウムおよびカルバミン酸アンモニウム、ならびにグアニジン塩、特にギ酸グアニジウムからなるリストから選択され、好ましくは尿素およびアンモニアからなるリストから選択される。
【0035】
好ましい実施形態によれば、還元剤前駆体である尿素が使用される。これは、尿素が安定、不揮発性、非爆発性および非引火性という利点を有するからである。それは、リスクを伴うことなく輸送することができ、いずれの特殊訓練も行うことなくオペレータによって貯蔵し、取り扱うことができる。
【0036】
この実施形態において、組成物は、組成物の全重量に対して好ましくは25重量%~42重量%、より優先的に30重量%~40重量%、さらにより優先的に31~35重量%、さらによいのは32重量%~33重量%の範囲の尿素含有量を有する。特に好ましくは、組成物は、尿素を、ISO22241-1の規格に従って32.5±0.7重量%の割合で含む。
【0037】
この実施形態の特に好ましい変形によれば、本発明による水性溶液は、32.5±0.7重量%の尿素の水性溶液である市販製品AdBlue(登録商標)から調製される。AdBlue(登録商標)という用語は、以下に示す名称によって周知の市販製品を差別せずに示すために本明細書において使用される:AdBlue(登録商標)、DEF、AUS32、ARLA32。だんだん意味が広がって、この名称は、約40重量%の尿素の水性溶液に相当し、主に舶用機関が対象とされるAUS40という名称で販売されている製品を含めて、AdBlue(登録商標)の範囲におけるすべての製品を意味するように意図される。
【0038】
しかし、尿素を32.5%超の濃度で含む水性組成物を使用して、次いで使用直前に希釈できることも、本発明の範囲内に入る。この変形は、これらの尿素ベースの組成物の輸送時に節約することを可能にする。
【0039】
界面活性剤
本発明において使用される組成物は、特に水に可溶なイオン性、非イオン性または両性界面活性剤から選択することができる1種または複数の界面活性剤を含む。
【0040】
イオン性界面活性剤は、カチオン性界面活性剤およびアニオン性界面活性剤から選択することができ、好ましくはカチオン性界面活性剤から選択することができる。後者は、一般にカチオン性またはカチオン性の形でイオン化可能な窒素基を含む。それらは、特に単独でまたは混合物として、直鎖状アルキルアンモニウムおよびアルキルアミン、直鎖状ジアミン、1個または複数の窒素原子を含む芳香族または飽和ヘテロ環、イミダゾールタイプの環式化合物、エーテルアミンおよびエーテルアミド、オキシアミンおよびエトキシアミンから選択することができる。
【0041】
両性界面活性剤は、特に単独でまたは混合物として、アミノ酸およびそのイミドまたはアミド誘導体から選択することができる。
【0042】
非イオン界面活性剤は、好ましくは以下の化合物から選択される:
a)ヒドロカルビルおよびモノまたはポリアルキレングリコールエーテル、
b)ヒドロカルビルおよびポリオールエーテル、
c)脂肪酸およびモノまたはポリアルキレングリコールエステル、
d)脂肪酸およびモノまたはポリグリセロールエステル、ならびに
e)これらの化合物の混合物。
【0043】
「ヒドロカルビル」は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリール-アルキルまたは「アラルキル」から選択される基を意味する。有利には、ヒドロカルビルはC1~C50基である。
【0044】
「Ci~Cjアルキル」は、i~j個の炭素原子を含む飽和、直鎖状、分枝状または環式炭化水素鎖を意味する。
【0045】
「Cx~Cyアルケニル」は、少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を含み、x~y個の炭素原子を含む直鎖状、分枝状または環式炭化水素鎖を意味する。
【0046】
「Cx~Cyアルキニル」は、少なくとも1個の炭素-炭素三重結合を含み、x~y個の炭素原子を含む直鎖状、分枝状または環式炭化水素鎖を意味する。
【0047】
「Cx~Cyアリール」は、x~y個の炭素原子を含む芳香族炭化水素化合物から誘導された官能基を意味する。この官能基は、単環式でも多環式でもよい。例として、C6~C18アリールは、フェニル、ナフタレン、アントラセン、フェナントレンおよびテトラセンとすることができる。
【0048】
「Cx~Cyアラルキル」は、少なくとも1つの直鎖状または分枝状アルキル鎖によって置換されている、芳香族炭化水素化合物、好ましくは単環式芳香族炭化水素化合物を意味し、芳香族環およびその置換基の炭素原子の全数は、炭素原子xからy個の範囲である。例として、C7~C18アラルキルは、ベンジル、トリルおよびキシリルによって形成された基から選択することができる。
【0049】
ポリオールは、本発明で意味する範囲内で、少なくとも2つのアルコール官能基を含む酸素化炭化水素化合物を意味する。ポリオールは、例えばアセタール官能基、エーテル架橋またはエステル基など1種または複数の他の酸素化官能基を任意選択で含むことができる。
【0050】
脂肪酸は、それ自体公知の方法で、C4~C30、好ましくはC8~C30の直鎖状または分枝状アルキルまたはアルケニル鎖を含むカルボン酸を意味する。
【0051】
a)ヒドロカルビルおよびモノまたはポリアルキレングリコールエーテル
ヒドロカルビルおよびモノまたはポリアルキレングリコールエーテルは、ポリアルキレングリコール鎖が一端または両端でヒドロカルビル基によって置換されているかどうかに応じてモノエーテルまたはジエーテルとすることができる。
【0052】
ヒドロカルビルおよびモノまたはポリアルキレングリコールエーテルは、有利にはC1~C50ヒドロカルビル基および1~60のアルキレングリコール単位を含むものから選択される。
【0053】
ヒドロカルビルおよびモノまたはポリアルキレングリコールエーテルは、より優先的に以下の化合物から選択される:
・式(I):R-(Y)n-OHのモノまたはポリアルコキシ化ヒドロカルビルモノエーテル;
・式(II):R-(Y)m-OR’のモノまたはポリアルコキシ化ヒドロカルビルジエーテル;
・式(III):HO-(Y)n-R”-(Y’)m-OHのモノまたはポリアルコキシ化ヒドロカルビルジエーテル;および
・これらの化合物の混合物。
【0054】
上記の式(I)~(III)中、RおよびR’は独立して、C3~C40アルキルまたはアルケニルまたはアルキニルまたはアリールまたはアラルキル基を表し、R”は、アルカンジイルまたはアルケンジイルまたはアルキンジイルまたはC3~C40アリールジラジカルまたはアラルキルジラジカルを表す。
【0055】
説明を容易にするために、以下ではアルキルまたはアルケニルまたはアルキニルまたはアリールまたはアラルキルラジカルの同じ表記が、モノラジカル(R、R’)およびジラジカル(R”)に対して使用される。
【0056】
上記の式(I)~(III)中、YおよびY’は、互いに独立して以下の基から選択される基である:-(O-CH2-CH2)-、-(O-CH(CH3)-CH2)-および-(O-CH2-CH2-CH2)-。
【0057】
式(I)、(II)または(III)の全く同一の化合物において、YおよびそれぞれにY’基はすべて同一であってよく、または異なってよい。例えば、-(Y)n-は、例えばブロックコポリマーなどエチレンオキシドおよびプロピレンオキシド単位を有するコポリマーを表すことができる。
【0058】
好ましくは、式(I)~(III)中、YおよびそれぞれにY’基はすべて同一である。
【0059】
その上、好ましくは、式(I)~(III)中、Y基およびそれぞれにY’基はすべて式-(O-CH2-CH2)-のエチレンオキシドである。
【0060】
上記の式(I)~(III)中、n、mは、分子のアルコキシル化の程度を表し、互いに独立して1~60、有利には1~30、さらによいのは1~20の範囲の整数を示す。より優先的に、nおよびmは、3から15まで、さらによいのは5から12まで変動する。
【0061】
有利には、式(III)中、YおよびY’基は、-(O-CH2-CH2)-およびn=mを表す。
【0062】
第1の実施形態によれば、式(I)、(II)および(III)中、有利にはR、R’およびR”は、直鎖状または分枝状、好ましくは直鎖状のアルキルおよびアルケニル基から選択される。
【0063】
さらにより有利には、R、R’およびR”は、C5~C32基、より優先的にC8~C30から選択される。
【0064】
式(I)の化合物は、特に4~30個の炭素原子、好ましくは8~30個の炭素原子、よいのは10~24個の炭素原子;ならびに5~12のエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシド単位、好ましくはエチレンオキシドを含むポリアルコキシ化直鎖状または分枝状脂肪アルコールから選択することができる。
【0065】
市販の式(I)の化合物のうち、Marlipal(登録商標)の範囲の製品およびSurfaline(登録商標)の範囲の製品を挙げることができる。
【0066】
第2の実施形態によれば、式(I)、(II)および(III)中、R、R’およびR”は、C4~C50アルキニルから選択される。
【0067】
有利には、この実施形態は、式(III)[式中、R”は、C4~C50アルキニルである]に関する。
【0068】
例えば、この実施形態によれば、式(III)の化合物は、次式(IV):
【0069】
【化1】
[式中、R1、R2、R3、R4は、互いに独立してHまたはC
1~C
20アルキル基を表し、xおよびyは、互いに独立して1~60、好ましくは1~30の範囲の整数を表す]
によって表すことができる。
【0070】
この式に従う市販製品の一例は、Air Products社によって販売されているSurfynol 104(登録商標)である。
【0071】
第3の実施形態によれば、式(I)、(II)および(III)中、R、R’およびR”は、9~30個の炭素原子を含むアラルキル基から選択される。
【0072】
好ましくは、この実施形態は、式(I)[式中、Rは、9~30個の炭素原子を含むアラルキルから選択される基を表す]に関する。
【0073】
より好ましくは、Rは、C1~C24、より優先的にC3~C20、さらによいのはC5~C18アルキル基を含むパラ-アルキルフェニルから選択される。
【0074】
この実施形態によれば、式(I)の化合物は、次式(V):
【0075】
【化2】
[式中、R5は、C
1~C
24、好ましくはC
3~C
20、さらによいのはC
5~C
18アルキル基を表し、xは、1~50、好ましくは1~30の範囲の整数を表す]
によって表すことができる。
【0076】
このような化合物の一例は、Air Products社によって販売されている製品Dynol 800(登録商標)であり、次式に従う:
【0077】
【0078】
式(I)の化合物は、有利には、アルコールR-OHをnのエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシド単位と反応させることによって得られる混合物とすることができ、nは、1モルのアルコールR-OHと反応させられるアルキレンオキシドのモル数を表す。
【0079】
式(II)の化合物は、有利には、アルコール化合物R-OHをmのエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシド単位と反応させ、次にアルコール化合物R’-OHとのエーテル化反応を行うことによって得られる混合物とすることができる。mは、1モルのアルコールR-OHと反応させられるアルキレンオキシドのモル数を表す。
【0080】
式(III)の化合物は、有利には、ジオールHO-R”-OHを(n+m)のエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシド単位と反応させることによって得ることができる。有利には、式(III)中、n=mである。(m=n)は、1モルのジオールHO-R”-OHと反応させられるアルキレンオキシドのモル数を表す。
【0081】
式(I)、(II)および(III)の化合物は、一般にさまざまなアルコキシル化度を有する化合物の混合物の形である。
【0082】
b)ヒドロカルビルおよびポリオールエーテル
ヒドロカルビルおよびポリオールエーテルは、有利にはC1~C50、好ましくはC3~C40、より有利にはC5~C32、さらによいのはC8~C30アルキルまたはアルケニル基を含めてアルコールに起源をもつエーテル、およびポリオールから選択される。
【0083】
ここで言及されたポリオールは、モノおよびポリアルキレングリコールと異なる。
【0084】
有利には、第1の変形によれば、ポリオールは、炭水化物のファミリーに属する化合物およびそれらのオリゴマーから選択される。特に、ポリオールは、例えばグルコピラノースのオリゴマーなど環式炭水化物化合物から選択される。本発明は、特に環式ヒドロカルビルおよびポリグルコシドエーテルに関する。
【0085】
環式ヒドロカルビルおよびポリグルコシドエーテルのうち、Dow Chemical社によるTriton CG650(登録商標)という名称で販売されている製品などアルキルポリグルコシドを挙げることができる。
【0086】
有利には、第2の変形によれば、ポリオールは、グリセロールまたはグリセロールのオリゴマー、例えば2~30のグリセロール単位、好ましくは3~20のグリセロール単位を含むオリゴマーである。
【0087】
c)脂肪酸およびモノまたはポリアルキレングリコールエステル
脂肪酸およびモノまたはポリアルキレングリコールエステルは、少なくとも1種の脂肪酸と1~60のアルキレングリコール単位、優先的に1~50のアルキレングリコール単位の縮合から生じる分子である。有利には、それらは、脂肪酸と1~50のエチレングリコール単位の反応に起因に起源をもつ。
【0088】
脂肪酸は、一般にアルキルまたはアルケニル鎖を含み、その一端にカルボン酸官能基を有し、4~30個の炭素原子、好ましくは8~30個の炭素原子、より有利には8~24個の炭素原子を含む分子である。
【0089】
脂肪酸基は、単一分子または動物もしくは植物油の脂肪酸分布に対応する混合物とすることができる。
【0090】
脂肪酸のうち、非限定的に、n-カプロン酸、カプリル酸、n-カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸もしくはアラキジン酸などの飽和脂肪酸、またはパルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸またはドコサヘキサン酸などの不飽和脂肪酸を挙げることができる。
【0091】
脂肪酸およびモノまたはポリアルキレングリコールエステルは有利には、3~50、さらによいのは5~40のアルキレンオキシド単位を含む。ずっとよりよくは、脂肪酸エステルおよびモノまたはポリアルキレングリコールエステルは、3~50、有利には5~40のエチレンオキシド単位を含む。
【0092】
脂肪酸エステルおよびポリアルキレンエステルの例として、Stearinerie Dubois社によって販売されている製品DUB S PEG 30S(PEG-30ステアレート)を挙げることができる。
【0093】
d)脂肪酸およびモノまたはポリグリセロールエステル
脂肪酸およびモノまたはポリアルキレングリコールエステルは、少なくとも1種の脂肪酸と1~60のアルキレングリコール単位、優先的に1~50のグリセロール単位の縮合から生じる分子である。
【0094】
脂肪酸は、以上のc)の箇所で記載されたものと同一である。
【0095】
脂肪酸およびモノまたはポリグリセロールエステルは有利には、3~50、さらによいのは5~40のグリセロール単位を含む。
【0096】
脂肪酸およびポリグリセロールのエステルの例として、Lonza社によって販売されている製品Polyaldo 10-1-0 KFG(登録商標)(ポリグリセロールラウレート)を挙げることができる。
【0097】
好ましい実施形態によれば、界面活性剤は、非イオン界面活性剤から選択される。ヒドロカルビルおよびモノまたはポリアルキレングリコールエーテル、より優先的に式(I):
R-(Y)n-OH
[式中、
Rは、C3~C40、好ましくはC8~C30、さらにより優先的にC10~C24アルキル、アルケニルまたはアルキニル基を表し、
Yは、-(O-CH2-CH2)-、-(O-CH(CH3)-CH2)-および-(O-CH2-CH2-CH2)-から選択され、好ましくはYは、-(O-CH2-CH2)-を示す、
nは、1~60、好ましくは1~30、より優先的に1~20、よいのは3~15、さらによいのは5~12の範囲の整数である]
のモノまたはポリアルコキシ化ヒドロカルビルモノエーテルから選択される1種または複数の界面活性剤を使用することが特に好ましい。
【0098】
界面活性剤は有利には、組成物の全重量に対して5~10,000重量ppm、好ましくは50~5000重量ppm、より優先的に100~2500重量ppm、さらによいのは200~1000重量ppmの範囲の全割合で存在する。
【0099】
消泡性添加剤
本発明において使用される組成物は、ポリオキシアルキレン鎖がグラフトした、平均ジメチルシロキサン単位数が150~300の範囲であるポリジメチルシロキサン主鎖を含むコポリマーから選択される1種または複数の消泡性添加剤を含む。
【0100】
したがって、これらのコポリマーは、ポリジメチルシロキサン主鎖および主鎖上にグラフトしたポリオキシアルキレン側鎖(またはグラフト)を有する、グラフトしたポリマーである。
【0101】
これらのポリマーの主鎖は、ポリジメチルシロキサン鎖(通常PDMSとも呼ばれる)、すなわち式-[Si(CH3)2-O]n-の鎖[nは、150~300の範囲にある数である]からなる。
【0102】
好ましくは、ポリジメチルシロキサン主鎖は、180~250の範囲にある平均ジメチルシロキサン単位数を含む。これは、180~250の範囲にある数nの値に相当する。
【0103】
ポリオキシアルキレン鎖は、有利には式-(RO)m-に従い、Rは、1個または複数のC1~C4、好ましくはC2またはC3の分枝状または直鎖状アルキレン基を示し、mは、10~55の範囲にある数である。
【0104】
好ましくは、オキシアルキレン単位の平均数mは、20~50、より優先的に30~50の範囲にある。
【0105】
その上、好ましくは、Rは、1個または複数のC2および/またはC3アルキレン基を示し、より好ましくはポリオキシアルキレン鎖は、式-(CH2-CH2-O)m-のポリオキシエチレン(EO)、式-(CH2-CH(CH2)-O)m-のポリオキシプロピレン(PO)、ならびにオキシエチレン単位およびオキシプロピレン単位(EO/PO)によって形成された鎖から選択される。
【0106】
特に好ましい実施形態によれば、ポリオキシアルキレン鎖は、オキシエチレン(EO)単位およびオキシプロピレン(PO)単位によって形成される。好ましくは、EO単位の平均数とPO単位の平均数の比は、0.2~2、好ましくは0.3~1.3の範囲にある。好ましくは、これらの鎖は、ポリオキシエチレンブロックおよびポリオキシプロピレンブロックによって形成される。
【0107】
コポリマーのグラフト率(すなわち、ポリオキシアルキレン側鎖を有するジメチルシロキサン単位の平均数割合)は有利には、0.5%~5%、好ましくは1%~2%の範囲にある。
【0108】
そうでないことが明示されていない限り、本明細書に記載されている平均はすべて、数平均である。
【0109】
好ましい実施形態によれば、消泡性添加剤を構成するコポリマーは架橋されている。このような架橋により、その上に三次元構造が付与される。
【0110】
消泡性添加剤は、有利には組成物の全重量に対して1~200重量ppm、好ましくは2~100重量ppm、より優先的に3~50重量ppm、よいのは4~25重量ppm、さらによいのは5~15重量ppmの範囲の全割合で存在する。
【0111】
上記のコポリマーはそれ自体公知であり、市販されている。
【0112】
市販製品では、これらのコポリマーは、特に希釈された形で、それを含む混合物とすることができる。
【0113】
この場合、このような混合物のコポリマーの割合は、一般に10~80重量%、好ましくは20~60重量%、より優先的に30~50重量%、さらによいのは35~45重量%の範囲である。
【0114】
したがって、一実施形態によれば、消泡性添加剤は、例えば固体疎水性シリカなど無機オキシドを含む混合物において使用される。
【0115】
別の実施形態によれば、消泡性添加剤は、特に以上に記載されたポリオキシアルキレンポリマー、より優先的にEO/POコポリマーから選択することができる1種または複数の乳化剤を含む混合物において使用される。これらのポリマーは、一般にコポリマーの合成に起源をもち、ポリジメチルシロキサン主鎖上にグラフトされていないポリオキシアルキレン鎖の割合に対応する。
【0116】
特に好ましい実施形態によれば、消泡性添加剤は、以上に記載されたように特に疎水性シリカおよび1種または複数のポリオキシアルキレンポリマーを含むなど、無機オキシドおよび乳化剤を含む混合物において使用される。
【0117】
消泡性添加剤を含む製品は、固体の製品の形、特に無水の(すなわち、水がない)形、または水でも有機溶媒でもよい溶媒中の溶液の形をとることができる。
【0118】
他の構成要素
水性組成物は、上記の窒素酸化物の還元剤およびその前駆体、界面活性剤ならびに消泡性添加剤と異なる1種または複数の他の化合物を任意選択で含むことができる。
【0119】
したがって、組成物は、非限定的に、例えばアルコール、ポリオール、パラフィン系流体など水と混和できるもしくは混和できない1種もしくは複数の有機流体、および/または1種もしくは複数の金属性化合物を含むことができる。
【0120】
組成物およびそれを生成する方法
本発明において使用される組成物は水性組成物であり、すなわちその主成分が水である。組成物の含水率は、好ましくは組成物の全重量に対して50~90重量%、好ましくは60~80重量%、さらによいのは65~70重量%の範囲にある。
【0121】
組成物は、常法でその構成要素を、好ましくは周囲温度、典型的に概して10~60℃の温度範囲で混合することによって調製することができる。
【0122】
好ましい生成方法によれば、水性組成物は、例えば32.5重量%の尿素を含むAdBlue(登録商標)という名称で公知の市販組成物など尿素の予製剤化された水性溶液から調製される。
【0123】
第1の生成方法は、尿素のこの予製剤化された水性溶液に、以上に定義された割合を達成するために必要とされる量の界面活性剤および消泡性添加剤を添加することで構成される。
【0124】
第2の生成方法は、尿素のこの予製剤化された水性溶液に、添加剤を含む尿素の濃縮水性組成物を添加することで構成される。この生成方法によれば、添加剤を含む尿素の濃縮水性組成物は、尿素の水性溶液中に界面活性剤および消泡性添加剤を、SCRラインに導入された最終水性組成物の割合より非常に高い割合で、好ましくは32.5重量%の尿素という割合で含む。必要とされる最終割合を得るために適した比で2つの組成物を混合することは、SCRラインへの注入直前に実施される。
【0125】
尿素以外の前駆体の予製剤化した水性溶液を使用して、同じ生成方法を実施することができる。
【0126】
使用
本発明による水性組成物は、内燃機関から排出される排ガスを窒素酸化物の選択的接触還元用デバイスまたはSCRデバイスにおいて処理するために使用される。
【0127】
このために、本発明による水性組成物は、機関の下流でSCRデバイスの上流に位置するSCR排気ラインに導入される。この導入は、典型的に組成物を1つまたは複数のリザーバーからポンプでくみ出し、それを1つまたは複数の注入装置によって注入し、排ガス流中で組成物を霧化することによって実施される。これらのデバイスは、それ自体公知である。
【0128】
本発明による使用は、排ガスを内燃機関の出口から前記選択的接触還元デバイスに向かって運ぶ管中でのデポジットを防止または低減することも可能にする。
【0129】
これらのデポジットは、典型的に窒素化合物のデポジットであり、窒素酸化物の還元剤および/もしくはその前駆体、ならびに/または前記前駆体の分解生成物を含む。本発明は、特に尿素および/またはシアヌル酸のデポジット、さらに詳細にはSCR排気管中のシアヌル酸のデポジットを防止および/または低減することを可能にする。
【0130】
以上に示されたように、本発明は、SCRラインの形態が何であれ、これらのデポジットを低減または防止することを可能にする。本発明は、具体的にではあるが非限定的に、以上に記載されたいわゆる「クローズカップルド」および「床下」SCR排気ラインに適合される。
【0131】
特に、本発明は、組成物の起泡現象を防止しながら、このようなデポジットを低減することを可能にする。
【0132】
以上に開示されたように、SCRライン中に注入される組成物は、それ自体公知の1つまたは複数の通常の貯蔵リザーバーからポンプでくみ出される。
【0133】
第1の変形によれば、本発明による組成物の成分すべて、特に窒素酸化物の還元剤および/またはその前駆体、界面活性剤および消泡性添加剤は、全く同一の水性組成物中、必要とされる割合で製剤化され、この組成物が単一リザーバーに導入される。
【0134】
第2の変形によれば、窒素酸化物の還元剤および/またはその前駆体を2つの中間体組成物の混合から生じる最終組成物中で必要とされる割合で含む、第1の中間体水性組成物が製剤化される。この第1の中間体組成物は、第1のリザーバーに導入される。窒素酸化物の還元剤および/またはその前駆体を2つの中間体組成物の混合から生じる最終組成物中で必要とされる割合で含み、界面活性剤および消泡性添加剤を前記最終組成物中で必要とされる割合より濃縮された割合で含む、添加剤を含む第2の濃縮された中間体水性組成物が製剤化される。
【0135】
この第2の組成物は、第1のリザーバーとは異なる第2のリザーバーに導入される。2つのリザーバーは、同じ注入システムに供給し、2つの中間体組成物が混合されることを可能とする。このような変形を実施するための2つのリザーバーを備えた車両が、特に欧州特許出願公開第2541012号に記載されている。
【0136】
方法
本発明によるプロセス(または方法)は、SCRシステムを装備した内燃機関、好ましくはディーゼル機関に起源をもつ排ガスを処理することを可能にする。
【0137】
この方法は、機関から排出された排ガスを窒素酸化物の選択的接触還元用デバイスに、以上に記載された水性組成物を運ぶ管に導入するステップを含む。この導入は、以上に記載されたように、典型的に組成物を1つまたは複数のリザーバーからポンプでくみ出し、それを1つまたは複数の注入装置によって前記管に注入することによって実施される。
【0138】
以下の実施例は、本発明の例示として記載されており、その範囲を限定すると解釈されるべきでない。
【実施例】
【0139】
試験組成物
ベース組成物として、尿素32.5重量%のAdBlue(登録商標)の市販水性溶液が、ISO22241に従って使用され、それに、Arkema社から活性材料85重量%のSurfaline(登録商標)1308Lという名称で市販されているポリエトキシ化脂肪アルコールの混合物からなる500重量ppmの界面活性剤が添加された。これらのポリエトキシ化脂肪アルコールは、以上に定義された式(I)に従うポリオキシエチレン化ヒドロカルビルモノエーテルであり、エチレングリコールおよびC8~C30アルキル基であるヒドロカルビル基に由来する1~20の単位を含む。500ppmの市販製品Surfaline(登録商標)1308Lを各組成物に使用した。これは、界面活性剤含有量425重量ppmに相当する。
【0140】
尿素および界面活性剤を含むこのベース組成物はC0と呼ばれる。
【0141】
以下に定義されるさまざまな消泡性添加剤A1~A4を、ベース組成物C0に添加して、それぞれの組成物C1~C4を得た:
- A1(比較):Munzing社によってFoam Ban(登録商標)MS-525の名称で販売されている水中の架橋シロキサン乳濁液の形をした消泡性添加剤;
- A2:平均ジメチルシロキサン単位数が195のPDMS主鎖を含み、OE単位の平均数=9およびOP単位の平均数=23を有するポリオキシエチレンブロックおよびポリオキシプロピレンブロックによって形成された鎖がグラフトした、架橋コポリマー;グラフト率1.76%;このコポリマーは、疎水性シリカおよびOE/OPコポリマーも含む混合物の形をとり、混合物は、40重量%の前記コポリマーを含む;
- A3:平均ジメチルシロキサン単位数が230のPDMS主鎖を含み、OE単位の平均数=21およびOP単位の平均数=18を有するポリオキシエチレンブロックおよびポリオキシプロピレンブロックによって形成された鎖がグラフトした、架橋コポリマー;グラフト率1.41%;このコポリマーは、疎水性シリカおよびOE/OPコポリマーも含む混合物の形をとり、混合物は40重量%の前記コポリマーを含む;
- A4:平均ジメチルシロキサン単位数が200のPDMS主鎖を含み、OE単位の平均数=16およびOP単位の平均数=30を有するポリオキシエチレンブロックおよびポリオキシプロピレンブロックによって形成された鎖がグラフトした、架橋コポリマー;グラフト率1.57%;このコポリマーは、疎水性シリカおよびOE/OPコポリマーも含む混合物の形をとり、混合物は、40重量%の前記コポリマーを含む。
【0142】
試験組成物中の各消泡性添加剤の割合を、以下の表1に示す。RMは原料を意味し、AMは活性材料を意味する。
【0143】
【0144】
試験方法
これらのさまざまな組成物の起泡レベルは、Kruss社によって販売されているDFA100起泡ベンチによって決定した。
【0145】
このシステムでは、試験対象の組成物が入っているカラムの底部に位置している焼結ガラスを通して導入される上昇空気を添加することによって、起泡を発生させる。デバイスによって、形成されたフォームの体積を時間の関数として直読することが可能になる。
【0146】
空気を0.3L/分の速度で30秒注入した後に毎回測定を行った。各試験につきカラムに導入される組成物の体積は、40mlである。フォームの体積を、試験開始600秒後に測定した。
【0147】
各組成物を、その調製直後(T0における結果)、次いで12か月貯蔵後(T12における結果)にさまざまな温度:周囲温度AT(25℃)、8℃および40℃で試験した。
【0148】
結果
得られた結果を本明細書の以下に表2および3で詳述する。
【0149】
【0150】
【0151】
上記の結果から、本発明による組成物C2~C4は、消泡性添加剤を含まない組成物C0の起泡レベルより非常に低く、比較の消泡性添加剤をより高い処理レベルで含む組成物C1の起泡レベルより低い起泡レベルを有することが明らかである。
【0152】
本発明による3種の組成物の性能は、周囲温度においても低温(8℃)または高温(40℃)においても貯蔵1年後に比較の組成物の性能よりも優れたままである。
【国際調査報告】