(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】メタロ-β-ラクタマーゼ阻害剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/546 20060101AFI20240719BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240719BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240719BHJP
A61K 31/407 20060101ALI20240719BHJP
C07D 487/04 20060101ALI20240719BHJP
A61K 31/431 20060101ALI20240719BHJP
A61K 47/55 20170101ALI20240719BHJP
C07D 501/48 20060101ALN20240719BHJP
C07D 501/34 20060101ALN20240719BHJP
C07D 501/36 20060101ALN20240719BHJP
C07D 501/59 20060101ALN20240719BHJP
C07D 501/22 20060101ALN20240719BHJP
C07D 499/68 20060101ALN20240719BHJP
【FI】
A61K31/546
A61P43/00 111
A61P31/04
A61K31/407
C07D487/04 133
A61P43/00 121
A61K31/431
A61K47/55
C07D501/48
C07D501/34
C07D501/36 110
C07D501/59
C07D501/22 109
C07D499/68 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024530062
(86)(22)【出願日】2022-07-21
(85)【翻訳文提出日】2024-03-28
(86)【国際出願番号】 IB2022056748
(87)【国際公開番号】W WO2023007325
(87)【国際公開日】2023-02-02
(32)【優先日】2021-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ZA
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512072290
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ クワズル-ナタル
(71)【出願人】
【識別番号】524038532
【氏名又は名称】ユニバーシティ・オブ・ズールーランド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】サヴェンドラン・ガヴェンダー
(72)【発明者】
【氏名】トリシア・ネイカー
(72)【発明者】
【氏名】パー・アイ・アーヴィドソン
(72)【発明者】
【氏名】ヘンドリック・ジー・クルーガー
(72)【発明者】
【氏名】バイロン・ピータース
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076CC33
4C076CC41
4C076DD60
4C086AA01
4C086AA02
4C086CC04
4C086CC08
4C086CC12
4C086CC13
4C086CC15
4C086CC16
4C086CC17
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB35
4C086ZC20
4C086ZC75
(57)【要約】
一般式(I)
C-A-L
(I)
(式中、Cは、官能化アザ-シクロアルカン亜鉛キレート部分であり、Lは、官能化されていてもよいβ-ラクタム部分であり、且つAは、C1~C10直鎖状又は環状リンカーであり、官能化されていてもよい)のメタロ-β-ラクタマーゼ(MBL)阻害剤が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
C-A-L
(I)
(式中、
Cは、官能化アザ-シクロアルカン亜鉛キレート部分であり、これは置換1,4,7-トリアザシクロノナン部分であり、前記置換1,4,7-トリアザシクロノナン部分は、1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-トリ酢酸(NOTA)部分、1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-トリグルタル酸(NOTGA)部分、1,4,7-トリアザシクロノナン-1-コハク酸-4,7-ジ酢酸(NODASA)部分、1,4,7-トリアザシクロノナン-1-グルタル酸-4,7-ジ酢酸(NODAGA)部分、1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4-ジ酢酸-7-p-ヒドロキシフェニル-酢酸(NODAPA)部分、1,4,7-トリス(2-ピリジルメチル)-1,4,7-トリアザシクロノナン部分、4,7-ジ(2-ピリジルメチル)-1,4,7-トリアザシクロノナン-1-酢酸、及び1-[(5-カルボキシ-2-メチルピリジル)]-4,7-ビス(2-メチルピリジル)-1,4,7-トリアザシクロノナン部分からなる群から選択され、
Lは、官能化されていてもよいβ-ラクタム部分であり、前記β-ラクタム部分Lは、セファロスポリン部分、ペネム部分及びカルバペネム部分からなる群から選択され、且つ
Aは、C
1~C
10直鎖状又は環状リンカーであり、官能化されていてもよく、飽和一酸部分、不飽和一酸部分、飽和二酸部分、不飽和二酸部分、及びこれらの部分のエステルからなる群から選択され、
前記リンカーAは、β-ラクタム環のカルボニルのα位にあるアミド結合によってβ-ラクタム部分Lと結合している)のメタロ-β-ラクタマーゼ(MBL)阻害剤。
【請求項2】
リンカーAが、置換1,4,7-トリアザシクロノナン部分の窒素原子と連結している、請求項1に記載の阻害剤。
【請求項3】
リンカーAが、酢酸部分、グルタル酸部分、マレイン酸部分、フマル酸部分、コハク酸部分、p-ヒドロキシフェニル酢酸部分、及びこれらの部分のエステルからなる群から選択される部分である、請求項1又は請求項2に記載の阻害剤。
【請求項4】
β-ラクタム部分Lが、
【化1A】
【化1B】
から選択されるセファロスポリン、ペネム又はカルバペネムから導出される、請求項1から3のいずれか一項に記載の阻害剤。
【請求項5】
化合物
【化2A】
【化2B】
から選択される、請求項1に記載の阻害剤。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のメタロ-β-ラクタマーゼ(MBL)阻害剤及び1種又は複数の薬学的に許容される担体又は賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項7】
ヒト又は非ヒト哺乳動物における細菌感染の治療又は予防のための医薬の製造における請求項1から5のいずれか一項に記載のメタロ-β-ラクタマーゼ(MBL)阻害剤の使用。
【請求項8】
ヒト又は非ヒト哺乳動物における細菌感染を治療又は予防する方法における使用のための請求項1から5のいずれか一項に記載のメタロ-β-ラクタマーゼ(MBL)阻害剤、又は請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項9】
メタロ-β-ラクタマーゼ(MBL)阻害剤を、β-ラクタム抗生物質と同時に、又は順次投与するためのものである、請求項8に記載の使用のための阻害剤又は使用のための医薬組成物。
【請求項10】
請求項1から5のいずれか一項に記載の少なくとも1種の(i)メタロ-β-ラクタマーゼ(MBL)阻害剤、及び請求項6に記載の(ii)医薬組成物を含む、ヒト又は非ヒト哺乳動物における細菌感染を治療又は予防するためのキット。
【請求項11】
1種又は複数のβ-ラクタム抗生物質を更に含む、請求項10に記載のキット。
【請求項12】
1種又は複数のβ-ラクタム抗生物質が、メロペネム、イミペネム、ドリペネム、エルタペネム及びその組合せからなる群から選択される、請求項11に記載のキット。
【請求項13】
ヒト又は非ヒト哺乳動物における細菌感染を治療又は予防する方法であって、請求項1から5のいずれか一項に記載の有効量のメタロ-β-ラクタマーゼ(MBL)阻害剤、又は請求項6に記載の医薬組成物を、前記ヒト又は前記非ヒト哺乳動物に投与する工程を含む、方法。
【請求項14】
1種又は複数のβ-ラクタム抗生物質を、前記ヒト又は前記非ヒト哺乳動物に投与することも含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
1種又は複数のβ-ラクタム抗生物質が、メロペネム、イミペネム、ドリペネム、エルタペネム及びその組合せからなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
細菌感染が、大腸菌(E. coli)IMP-1、大腸菌NDM-1、大腸菌VIM-1、E.クロアカエ(E. cloacae)VIM-1、E.クロアカエIMP-1、肺炎桿菌(K. pneumoniae)IMP-8、肺炎桿菌VIM-1、肺炎桿菌IMP-1、肺炎桿菌NDM、及びP.レットゲリ(P. rettgeri)NDM及びその組合せからなる群から選択される菌株が原因である、請求項7に記載の使用、請求項8又は請求項9に記載の使用のための阻害剤又は同使用のための医薬組成物、請求項10から12のいずれか一項に記載のキット、又は請求項13から15のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタロ-β-ラクタマーゼ(MBL)の阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
β-ラクタム抗生物質は、最も広く使用されている抗生物質の一部であり、感染症の治療におけるそれらの成功した使用は十分に実証されている。しかしながら、既知の全てのβ-ラクタム抗生物質に対する細菌耐性が世界的に増大しており、その結果として生じる感染症の治療選択肢の損失は、公衆衛生に対する脅威となっている。β-ラクタム抗生物質に対する細菌耐性の主要な理由の1つは、細菌によるメタロ-β-ラクタマーゼ酵素の産生である。これらの酵素は、抗生物質のβ-ラクタム環を加水分解し、それによって分子が不活性化する。メタロ-β-ラクタマーゼ(MBL)は、例えば腸内細菌科(Enterobactericeae)及び他のグラム陰性細菌等の病原菌によって産生される。
【0003】
MBL産生腸内細菌科は、カルバペネム耐性腸内細菌科(CRE)の中で最も抗生物質の影響を受けにくい(Meletis G. Carbapenem resistance: overview of the problem and future perspectives. Ther Adv Infect Dis. 2016;3(1):15~21頁)。MBLは、世界中で確認されており、アフリカ全土に存在する(Gupta N、Limbago BM、Patel JBら、Carbapenem-resistant Enterobacteriaceae: epidemiology and prevention. Clinical infectious diseases 2011; 53: 60~7頁)。β-ラクタム抗生物質のカルバペネムクラスは、MBLの作用に対して耐性があるので、最後の手段の薬学的に予備として保持されているが、カルバペネム抗生物質を加水分解できる酵素がグラム陰性細菌で出現しており、このクラスの薬物に対して急速な耐性をもたらす。MBL阻害剤に関する以前の研究では、いくつかの化合物は、良好なin vitro活性を示したが、細胞障害効果、不十分な薬理学的特性又はヒト金属酵素に対する好ましくない効果のために、臨床試験で不合格になった(Tooke CL、Hinchliffe P、Bragginton EC、Colenso CK、Hirvonen VHA、Takebayashi Yら、β-Lactamases and β-Lactamase Inhibitors in the 21st Century. Journal of Molecular Biology. 2019;431(18):3472~500頁)。
【0004】
現在、MBLの阻害に利用可能な臨床阻害剤は本質的になく、MBLの阻害剤の開発は現在世界中の注目を集めている(Palacios AR、Rossi M-A、Mahler GS、Vila AJ. Metallo-β-Lactamase Inhibitors Inspired on Snapshots from the Catalytic Mechanism. Biomolecules. 2020;10(6):854頁)。
【0005】
カルバペネマーゼとしても知られるカルバペネム加水分解酵素は、酵素の反応部位に基づいてアンブラークラスA、B又はDのいずれかに属する。クラスA及びDは、β-ラクタム環を共有結合的に攻撃するセリンカルバペネマーゼ、例えばKPC-2、OXA-48及びSME-1であり、クラスBは、Zn++イオンを使用して求核性水分子を活性化し、抗生物質のβ-ラクタム環を開くMBL、例えばNDM-1、VIM-1及びIMP-1である。
【0006】
いくつかのβ-ラクタマーゼ阻害剤の組合せ、例えばアモキシシリン/クラブラン酸塩、アンピシリン/スルバクタム、ピペラシリン/タゾバクタム並びにセフタジジム及びアビバクタムは、臨床現場で使用されており、新しい阻害剤は、現在臨床試験を実施中である。環状ボロネート、すなわちタニボルバクタム((NCT03840148)及びQPX7728(NCT04380207)は、B型β-ラクタマーゼに対して良好なMBL阻害剤活性を示した。両方の化合物は、現在、それぞれ第III相及び第I相臨床試験中であるが、それらの阻害メカニズムは未だ完全には理解されていない。VIM-2 MBLは、キレート化剤による不活化の影響を受けやすく、それは酵素の亜鉛カチオンがおそらく緩く結合していることを示すことも、Docquierら(J Antimicrobe Chemother. 2003 Feb;51(2):257~66頁)によって発見されている。
【0007】
NDM-1及びVIM-2 MBLの急速で強力な阻害剤であるアスペルギロマラスミンA(King AM、Reid-Yu SA、Wang Wら、Aspergillomarasmine A overcomes metallo-[bgr]-lactamase antibiotic resistance. Nature 2014; 510: 503~6頁)等のいくつかのクラスの非毒性MBL阻害剤が特定されている。この薬剤は、NDM-1で1.8 Zn当量を損失することによってZn2+イオンを除去し、それによってサブクラスB1 MBLと相互作用するin vitroキレート化剤として作用する。NOTA、DOTA及びDPA(Somboro AM、Tiwari D、Bester LAら、NOTA: a potent metallo-β-lactamase inhibitor. Journal of Antimicrobial Chemotherapy 2015; 70: 1594~6頁; Azumah R、Dutta J、Somboro AMら、In vitro evaluation of metal chelators as potential metallo-β-lactamase inhibitors. Journal of applied microbiology 2016)も、MBLを阻害することが報告されており、かなり最近のPCT公報において、Rongvedらは、新しいMBL阻害剤を報告している(Rongved P、Astrand OAH、Bayer Aら、Inhibitors of Metallo-Beta-Lactamase (MBL) Comprising a Zinc Chelating Moiety. WO 2015/049546)。これらの阻害剤のin vitro効果及び一部のin vivo効果も報告されている(Kingら; von Nussbaum F、Schiffer G. Aspergillomarasmine A, an Inhibitor of Bacterial Metallo-β-Lactamases Conferring blaNDM and blaVIM Resistance. Angewandte Chemie International Edition 2014; 53: 11696~8頁; Rongvedら)。
【0008】
MBL産生腸内細菌科の強力な阻害剤として、全てが金属キレート剤であり、in vitroにおける有効濃度で毒性も溶血効果ももたない「独立型」亜鉛キレート化剤、例えば1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-トリ酢酸(NOTA)、1,4,7,10-テトラアザクロノナン-1,4,7,10-テトラ酢酸(DOTA)及びジピコリルアミン(DPA)の使用も報告されている(Somboroら; Azumahら)。しかしながら、このような独立型キレート化剤は、β-ラクタム抗生物質と併用可能にするために必要な薬物動態プロファイルをもたないことが判明した。
【0009】
したがって、抗菌化学療法(Craig WA、Welling P. Protein binding of antimicrobials: clinical pharmacokinetic and therapeutic implications. Clinical pharmacokinetics 1977; 2: 252~68頁)の主要な目的は、感染症を治療するのに有効な濃度に達し、且つそれを維持できるMBL阻害剤を開発することである。MBL阻害剤の生理学的及び薬理学的特性に影響を与える要因の1つは、これらの薬剤と血清及び組織タンパク質との相互作用である。これにより、これらの特性を確認するin vitro実験的アッセイは、これらが薬物のin vivoでの作用機序に関する情報をもたらす可能性があるため、非常に重要になる(Arhin FF、McKay GA、Beaulieu Sら、Impact of human serum albumin on oritavancin in vitro activity against Staphylococcus aureus. Diagnostic microbiology and infectious disease 2009; 65: 207~10頁; McKay GA、Beaulieu S、Sarmiento Iら、Impact of human serum albumin on oritavancin in vitro activity against enterococci. Antimicrobial agents and chemotherapy 2009; 53: 2687~9頁)。
【0010】
発明者らは、今回、ベータ-ラクタム部分を二官能性環状亜鉛キレート化剤に結合させることによって薬理学的特性が改善された新しいクラスのMBL阻害剤を開発して、ベータ-ラクタム抗生物質と一緒に投与した場合に効率的な併用療法が可能となった。簡単な金属キレート化剤は、急速な腎クリアランスを受けることがいくつかの研究で十分に文書化されており(Prata MI、Santos Ac Fau - Geraldes CF、Geraldes Cf Fau - de Lima JJ、de Lima JJ. Characterisation of 67Ga3+ complexes of triaza macrocyclic ligands: biodistribution and clearance studies. Nucl Med Biol. 1999;26 (6):707~10頁; Reddy N、Shungube M、Arvidsson PI、Baijnath S、Kruger HG、Govender Tら、A 2018~2019 patent review of metallo beta-lactamase inhibitors. Expert Opinion on Therapeutic Patents. 2020:1~15頁)、それは付随するベータ-ラクタム薬のものとは一致しないであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Meletis G. Carbapenem resistance: overview of the problem and future perspectives. Ther Adv Infect Dis. 2016;3(1):15~21頁
【非特許文献2】Gupta N、Limbago BM、Patel JBら、Carbapenem-resistant Enterobacteriaceae: epidemiology and prevention. Clinical infectious diseases 2011; 53: 60~7頁
【非特許文献3】Tooke CL、Hinchliffe P、Bragginton EC、Colenso CK、Hirvonen VHA、Takebayashi Yら、β-Lactamases and β-Lactamase Inhibitors in the 21st Century. Journal of Molecular Biology. 2019;431(18):3472~500頁
【非特許文献4】Palacios AR、Rossi M-A、Mahler GS、Vila AJ. Metallo-β-Lactamase Inhibitors Inspired on Snapshots from the Catalytic Mechanism. Biomolecules. 2020;10(6):854頁
【非特許文献5】Docquierら(J Antimicrobe Chemother. 2003 Feb;51(2):257~66頁)
【非特許文献6】King AM、Reid-Yu SA、Wang Wら、Aspergillomarasmine A overcomes metallo-[bgr]-lactamase antibiotic resistance. Nature 2014; 510: 503~6頁
【非特許文献7】Somboro AM、Tiwari D、Bester LAら、NOTA: a potent metallo-β-lactamase inhibitor. Journal of Antimicrobial Chemotherapy 2015; 70: 1594~6頁
【非特許文献8】Azumah R、Dutta J、Somboro AMら、In vitro evaluation of metal chelators as potential metallo-β-lactamase inhibitors. Journal of applied microbiology 2016
【非特許文献9】Kingら; von Nussbaum F、Schiffer G. Aspergillomarasmine A, an Inhibitor of Bacterial Metallo-β-Lactamases Conferring blaNDM and blaVIM Resistance. Angewandte Chemie International Edition 2014; 53: 11696~8頁; Rongvedら
【非特許文献10】Craig WA、Welling P. Protein binding of antimicrobials: clinical pharmacokinetic and therapeutic implications. Clinical pharmacokinetics 1977; 2: 252~68頁
【非特許文献11】Arhin FF、McKay GA、Beaulieu Sら、Impact of human serum albumin on oritavancin in vitro activity against Staphylococcus aureus. Diagnostic microbiology and infectious disease 2009; 65: 207~10頁
【非特許文献12】McKay GA、Beaulieu S、Sarmiento Iら、Impact of human serum albumin on oritavancin in vitro activity against enterococci. Antimicrobial agents and chemotherapy 2009; 53: 2687~9頁
【非特許文献13】Prata MI、Santos Ac Fau - Geraldes CF、Geraldes Cf Fau - de Lima JJ、de Lima JJ. Characterisation of 67Ga3+ complexes of triaza macrocyclic ligands: biodistribution and clearance studies. Nucl Med Biol. 1999;26 (6):707~10頁
【非特許文献14】Reddy N、Shungube M、Arvidsson PI、Baijnath S、Kruger HG、Govender Tら、A 2018~2019 patent review of metallo beta-lactamase inhibitors. Expert Opinion on Therapeutic Patents. 2020:1~15頁
【非特許文献15】Nordmann P. Rapid Detection of Carbapenemase-producing Enterobacteriaceae-Volume 18、Number 9-September 2012-Emerging Infectious Disease journal-CDC. 2012)
【非特許文献16】D. D. Long、J. B. Aggen、J. Chinn、S.-K. Choi、B. G. Christensen、P. R. Fatheree、D. Green、S. S. Hegde、J. K. Judice、K. Kaniga、K. M. Krause、M. Leadbetter、M. S. Linsell、D. G. Marquess、E. J. Moran、M. B. Nodwell、J. L. Pace、S. G. Trapp and S. D. Turner、J. Antibiot.、2008、61、603~614頁
【非特許文献17】Roger, M.ら、Monopicolinate-dipicolyl Derivative of Triazacyclononane for Stable Complexation of Cu2+ and 64Cu2+. Inorganic Chemistry、2013. 52(9): 5246~5259頁
【非特許文献18】Gasser, G.ら、Synthesis, Copper(II) Complexation, 64Cu-Labeling, and Bioconjugation of a New Bis(2-pyridylmethyl) Derivative of 1,4,7-Triazacyclononane. Bioconjugate Chem.、2008. 19(3): 719~730頁
【非特許文献19】Mato-Iglesias, M.ら、Lanthanide Complexes Based on a 1,7-Diaza-12-crown-4 Platform Containing Picolinate Pendants: A New Structural Entry for the Design of Magnetic Resonance Imaging Contrast Agents. Inorganic Chemistry、2008. 47(17): 7840~7851頁
【非特許文献20】Keepers TR、Gomez M、Celeri Cら、Bactericidal activity, absence of serum effect, and time-kill kinetics of ceftazidime-avibactam against β-lactamase-producing Enterobacteriaceae and Pseudomonas aeruginosa. Antimicrobial agents and chemotherapy 2014: AAC. 02894~14頁
【非特許文献21】Mosmann T. Rapid colorimetric assay for cellular growth and survival: application to proliferation and cytotoxicity assays. Journal of immunological methods 1983; 65: 55~63頁
【非特許文献22】Clinical and Laboratory Standards Institute. Performance Standards for Antimicrobial Susceptibility Testing: Twenty-Fourth Informational Supplement M100-S24. CLSI、Wayne、PA、USA、2014
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様によれば、一般式(I)
C-A-L
(I)
(式中、
Cは、官能化アザ-シクロアルカン亜鉛キレート部分であり、
Lは、官能化されていてもよいβ-ラクタム部分であり、且つ
Aは、C1~C10直鎖状又は環状リンカーであり、官能化されていてもよい)のメタロ-β-ラクタマーゼ(MBL)阻害剤が提供される。
【0014】
官能化アザ-シクロアルカン亜鉛キレート部分Cは、官能化アザ-クロノナン部分であってもよい。
【0015】
本発明に有用な官能化アザ-シクロアルカン亜鉛キレート部分Cは、通常、環窒素原子とカルボン酸置換基、又は環窒素原子とピリジル置換基を有し、これらの亜鉛キレート部分は、2種類の配位部分構造、すなわち環窒素原子並びに亜鉛と錯体を形成するカルボキシル基又はピリジル基を示すために「二官能性亜鉛キレート部分」とも呼ばれる。
【0016】
本発明に有用ないくつかの二官能性環状キレート化剤の例をスキーム1に記載する。
【0017】
【0018】
したがって、官能化アザ-シクロアルカン亜鉛キレート部分Cは、置換1,4,7-トリアザシクロノナン部分であってもよい。
【0019】
置換1,4,7-トリアザシクロノナン部分は、1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-トリ酢酸(NOTA)部分、1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-トリグルタル酸(NOTGA)部分、1,4,7-トリアザシクロノナン-1-コハク酸-4,7-ジ酢酸(NODASA)部分、1,4,7-トリアザシクロノナン-1-グルタル酸-4,7-ジ酢酸(NODAGA)部分、1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4-ジ酢酸-7-p-ヒドロキシフェニル-酢酸(NODAPA)部分、1,4,7-トリス(2-ピリジルメチル)-1,4,7-トリアザシクロノナン部分、4,7-ジ(2-ピリジルメチル)-1,4,7-トリアザシクロノナン-1-酢酸、及び1-[(5-カルボキシ-2-メチルピリジル)]-4,7-ビス(2-メチルピリジル)-1,4,7-トリアザシクロノナン部分からなる群から選択され得る。しかしながら、置換1,4,7-トリアザシクロノナン部分は、必ずしも前述の群からの部分に限定されるものではないことが理解されるべきである。
【0020】
リンカーAは、官能化アザ-シクロアルカン亜鉛キレート部分Cの環窒素原子に結合又は連結していてもよい。これは、例えば、α,β-不飽和エステル等のα,β-不飽和カルボニル化合物への官能化アザ-シクロアルカン亜鉛キレート部分Cの窒素原子のアザ-マイケル付加によって形成することができる。エステルは、例えば、α,β-不飽和C4~C10一酸又は二酸のエステルであってもよい。
【0021】
リンカーAは、このように置換1,4,7-トリアザシクロノナン部分の窒素原子に連結していてもよい。
【0022】
リンカーAは、飽和一酸部分、不飽和一酸部分、飽和二酸部分、不飽和二酸部分、及びこれらのエステルからなる群から選択される部分であってもよい。
【0023】
リンカーAは、例えば、酢酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸若しくはp-ヒドロキシフェニル酢酸又はそのエステル等の飽和若しくは不飽和一酸又は飽和若しくは不飽和二酸から導出されてもよい。
【0024】
したがって、本発明の一実施形態では、リンカーAは、酢酸部分、グルタル酸部分、マレイン酸部分、フマル酸部分、コハク酸部分、p-ヒドロキシフェニル酢酸部分及びこれらのエステルからなる群から選択される部分である。
【0025】
本発明のメタロ-β-ラクタマーゼ(MBL)阻害剤のβ-ラクタム部分Lは、それだけには限らないが、セファロスポリン、ペネム又はカルバペネムから導出されてもよい。したがって、本発明の一実施形態では、β-ラクタム部分Lは、官能化セファロスポリン部分、ペネム部分及びカルバペネム部分からなる群から選択される。
【0026】
部分が導出又は選択され得るセファロスポリン、ペネム又はカルバペネムの例を、スキーム2に記載する。
【0027】
【0028】
リンカーAは、β-ラクタム環のカルボニルのα位にあるアミド結合を介してセファロスポリン、ペネム若しくはカルバペネム部分構造又は部分のβ-ラクタム環に結合していてもよい。言い換えれば、リンカーAは、β-ラクタム環のカルボニルのα位にあるアミド結合によってβ-ラクタム部分Lと結合していてもよい。
【0029】
リンカーを介してセファロスポリン部分構造又は部分と共役している官能化アザ-シクロアルカン亜鉛キレート部分を含む、本発明のメタロ-β-ラクタマーゼ(MBL)阻害剤の例を、スキーム3に示す。
【0030】
【0031】
【0032】
本発明は、一般式(I)のメタロ-β-ラクタマーゼ(MBL)阻害剤及び1種又は複数の薬学的に許容される担体又は賦形剤を含む医薬組成物に及ぶ。
【0033】
本発明の更なる態様によれば、ヒト又は非ヒト哺乳動物における細菌感染の治療又は予防のための医薬の製造における一般式(I)のメタロ-β-ラクタマーゼ(MBL)阻害剤の使用を提供する。
【0034】
本発明の別の態様によれば、ヒト又は非ヒト哺乳動物における細菌感染を治療又は予防する方法における使用のための一般式(I)のメタロ-β-ラクタマーゼ(MBL)阻害剤、又は先に記載した医薬組成物を提供する。
【0035】
本発明の更に他の態様によれば、ヒト又は非ヒト哺乳動物における細菌感染を治療又は予防する方法であって、有効量の一般式(I)のメタロ-β-ラクタマーゼ(MBL)阻害剤を前記ヒト又は前記非ヒト哺乳動物に投与する工程を含む、方法を提供する。
【0036】
本方法は、1種又は複数のβ-ラクタム抗生物質を前記ヒト又は前記非ヒト哺乳動物に投与することも含んでもよい。したがって、本方法は、一般式(I)のメタロ-β-ラクタマーゼ(MBL)阻害剤又は一般式(I)のメタロ-β-ラクタマーゼ(MBL)阻害剤を含む医薬組成物を、β-ラクタム抗生物質と同時に、別個に、又は順次投与する工程を含んでもよい。
【0037】
β-ラクタム抗生物質は、メロペネム、イミペネム、ドリペネム、エルタペネム及びその組合せからなる群から選択されてもよい。
【0038】
本発明の更に別の態様によれば、少なくとも1種の一般式(I)のメタロ-β-ラクタマーゼ(MBL)阻害剤、又は先に記載した医薬組成物を含む、ヒト又は非ヒト哺乳動物における細菌感染を治療又は予防するためのキットを提供する。
【0039】
このキットは、1種又は複数のβ-ラクタム抗生物質を更に含んでもよい。
【0040】
1種又は複数のβ-ラクタム抗生物質は、メロペネム、イミペネム、ドリペネム、エルタペネム及びその組合せからなる群から選択されてもよい。
【0041】
細菌感染は、大腸菌(E. coli)IMP-1、大腸菌NDM-1、大腸菌VIM-1、E.クロアカエ(E. cloacae)VIM-1、E.クロアカエIMP-1、肺炎桿菌(K. pneumoniae)IMP-8、肺炎桿菌VIM-1、肺炎桿菌IMP-1、肺炎桿菌NDM又はP.レットゲリ(P. rettgeri)NDM及びメタロベータラクタマーゼを含有又は産生する他の株等の菌株が原因である感染であってもよい。
【0042】
化合物BP1(セファロスポリンへのキレート化剤、スキーム4の化合物4)の合成を、スキーム4に記載する。
【0043】
【0044】
BP1(スキーム4の化合物4)は、1,4,7-トリアザシクロノナン(1)から、2工程で、ジエチルアミンの存在下でペプチドカップリング剤COMUを使用してカップリング生成物(3)を生成し、続いてTFAを使用して保護基を除去して脱保護された最終生成物(4)を生成し、合成した。
【0045】
化合物BP2(セファロスポリンへのキレート化剤、スキーム5の化合物7)及び化合物BP3(ペネムへのキレート化剤、スキーム6の化合物10)を、以下のスキーム5及び6に同様に示す通りに調製した。
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
本明細書に開示されているが、その合成について具体的には記載されていない他のBP化合物は、その合成が本明細書に具体的に記載されているBP化合物と同様に調製した。
【0050】
次に、以下の実施例、図及び表を参照して、本発明を実施例により説明する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】肺炎桿菌IMP-8に対して異なる濃度のメロペネム及びBP1における時間の関数としての時間殺菌動態のトレースを示す図である。
【
図1A】肺炎桿菌NDMに対して異なる濃度のメロペネム及びBP1における時間の関数としての時間殺菌動態のトレースを示す図である。
【
図1B】肺炎桿菌NDMに対して異なる濃度のメロペネム及びBP6における時間の関数としての時間殺菌動態のトレースを示す図である。
【
図1C】肺炎桿菌NDMに対して異なる濃度のメロペネム及びBP10における時間の関数としての時間殺菌動態のトレースを示す図である。
【
図1D】肺炎桿菌NDMに対して異なる濃度のメロペネム及びBP14における時間の関数としての時間殺菌動態のトレースを示す図である。
【
図1E】肺炎桿菌NDMに対して異なる濃度のメロペネムとBP1、BP6、BP10及びBP14における時間の関数としての時間殺菌動態のトレースを示す図である。このグラフは、試験した固定濃度の各BP化合物(32mg/L)と最低濃度のメロペネム(0.5mg/L)を示す。
【
図2】大腸菌NDM-1に対して異なる濃度のメロペネム及びBP1における時間の関数としての時間殺菌動態のトレースを示す図である。
【
図3】BP1の投与量の関数としてのHepG2細胞生存率と、BP1の投与量の関数としての乳酸デヒドロゲナーゼの2つの棒グラフを示す。
【
図3A】BP1の投与量の関数としてのHepG2細胞生存率と、BP1の投与量の関数としての乳酸デヒドロゲナーゼの更に2つの棒グラフを示す。HepG2細胞に対するBP1の非線形適合により、IC
50値59.96μg/mlが生じた。細胞生存率の用量依存性減少が観察され、100及び200μg/mlで有意な減少が起こった。対照と比較して
*p<0.5及び
**p<0.01である。細胞外乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)は全ての濃度で有意に低下し、BP1が曝露後に壊死を誘発しないことを示した。対照と比較して
***p<0.0001である。
【
図3B】BP6の投与量の関数としてのHepG2細胞生存率と、BP6の投与量の関数としての乳酸デヒドロゲナーゼの2つの棒グラフを示す。BP6は、HepG2細胞の細胞生存率の用量依存性増加を誘発したが、細胞生存率は、200μg/mlでのみ有意に変化した。対照と比較して
*p<0.05である。LDHは全ての濃度で有意に低下し、BP6が曝露後に壊死を誘発しないことを示した。対照と比較して
***p<0.0001である。
【
図3C】BP10の投与量の関数としてのHepG2細胞生存率と、BP10の投与量の関数としての乳酸デヒドロゲナーゼの2つの棒グラフを示す。細胞生存率は、50~100μg/mlで有意に変化しなかったが、200μg/mlで有意に低下した。対照と比較して
*p<0.5及び
**p<0.01である。LDHレベルは、1μg/mlで影響を受けないままであり、8~200μg/mlで有意に低下し、BP10が曝露後にHepG2細胞の壊死を誘発しないことを示した。対照と比較して
**p<0.01及び
**p<0.001である。
【
図3D】BP14の投与量の関数としてのHepG2細胞生存率と、BP14の投与量の関数としての乳酸デヒドロゲナーゼの2つの棒グラフを示す。BP-14は、1μg/ml及び10~200μg/mlで細胞生存率が低下したが、8μg/mlで増殖が生じた。対照と比較して
*p<0.5及び
**p<0.01である。LDHレベルは、8μg/mlで有意に低下し、1μg/ml及び10~200μg/mlで影響を受けないままであり、BP-14が曝露後にHepG2細胞の壊死を誘発しないことを示した。対照と比較して
**p<0.001である。
【
図4】健康なネズミモデルにおけるBP1及びメロペネムの薬物動態学を示す図であり、データを平均±SD(n=3)として示している。
【
図5】24時間にわたるBP1による治療後の大腿部CFUカウントの変化を示す図であり、データを平均±SD(n=3)として示している。
【
図6】8時間の治療時間にわたって血漿BP1濃度を示す図であり、データを平均±SD(n=3)として示している。
【発明を実施するための形態】
【0052】
考察
以下の考察では、「BP1」は、スキーム4の化合物4を意味し、「TG1」は、1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-トリ酢酸(NOTA)を意味する。
【0053】
材料
メロペネム及びヒト血清は、Sigma-Aldrich社から購入した。
【0054】
菌株
MBL産生CREの参照株を、国立衛生医学研究所、パリ、フランスのNordmann(Nordmann P. Rapid Detection of Carbapenemase-producing Enterobacteriaceae-Volume 18、Number 9-September 2012-Emerging Infectious Disease journal-CDC. 2012)から買った。品質管理として使用された参照株は、大腸菌ATCC 25922であった。
【0055】
化合物4、7及び10の合成
概説:
商業供給源から全ての化学物質を購入し、更に精製することなく使用した。フマル酸モノメチル、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)、テトラヒドロフラン(THF)及びジクロロメタン(CH2Cl2)を、Sigma-Aldrich社から購入した。
【0056】
全ての化合物を、RP-HPLC(Agilent 1100、USA)によって分析した。溶媒A(H2O中0.1%TFA)及び溶媒B(ACN中0.1%TFA)の直線勾配を使用して実験を行い;ここで、勾配は、流速1ml/分、15分で5%B~95%Bであった。全ての合成工程は、それらの各質量に関してYMC-Triart C18(5μm、4.6×150mm)カラムを備えたLC/MS(Shimadzu 2020 UFLC-MS、日本)を使用して更に特徴付けた。NMRスペクトル(1H NMR、13C NMR、HMBC及びHSQC)を、溶媒として重水素化メタノールを使用してBruker AVANCE III 400 MHz分光計で記録した。HRMSをBruker microTOF-QIIで実施した。
【0057】
化合物2(スキーム4)、6(スキーム5)及び9(スキーム6)の調製
化合物1(スキーム4)、5(スキーム5)又は8(スキーム6)(1.0当量)を乾燥ACN:THF(30mL/mmol)に溶解させ、次にN,N-ジイソプロピルエチルアミン(3.0当量)を一度に添加し、続いてDIC(2.0当量)を添加した。5分後、7-アミノ-3-クロロメチル-3-セフェム-4-カルボン酸p-メトキシベンジルエステル塩酸塩(スキーム1、1→2)、7-アミノセファロスポラン酸(スキーム5、5→6)又はアンピシリン(スキーム6、8→9)(1.0当量)を添加し、次いで反応の進捗をLC/MSによってモニターした。24時間後、反応が完了した。スキーム4の化合物2の精製を、EtOAc:ヘキサン(1:1)を用いてアルミナのプラグに通過させた溶出によって行い、収率83%であった。化合物6(スキーム5)及び9(スキーム6)を、以下のパラメーターで分取SFCを使用して精製した:試料濃度=8mg/mL(ACN、0.3%Et3N)、注入体積=100μL、カラム=エチルピリジン(250×10mm、5Å)40℃、移動相=10~50%MeOH:ACN:Et3N(99.85:99.85:0.3)改質剤として、工業グレード-湿潤CO2流量のバランス、10分で、流量=10mL/分、平衡化時間が2分のスタック注入プログラム、BPR設定=150バール、220nmでモニタリング及び回収。収率は50~70%であった。
【0058】
スキーム4の化合物3の調製
手順は、Longら(D. D. Long、J. B. Aggen、J. Chinn、S.-K. Choi、B. G. Christensen、P. R. Fatheree、D. Green、S. S. Hegde、J. K. Judice、K. Kaniga、K. M. Krause、M. Leadbetter、M. S. Linsell、D. G. Marquess、E. J. Moran、M. B. Nodwell、J. L. Pace、S. G. Trapp and S. D. Turner、J. Antibiot.、2008、61、603~614頁)のものから適応させた。スキーム4の化合物2(1.0当量)を乾燥アセトン(スキーム4の化合物2に対して4mL/mmol)に溶解させ、フラスコをアルミニウム箔で覆って反応物を光から保護した。次にヨウ化ナトリウム(1.0当量)を室温で一度に添加し、反応物を1.5時間撹拌してから、ピリジン(1.1当量)を添加した。反応物を更に1.5時間撹拌した(この工程の進捗をLC/MSによってモニターした)。迅速な検査により、溶液が赤/紫色に変化したことが明らかになった。次に溶媒を除去し、赤/紫色発泡体を生成した。発泡体をEt2O(スキーム4の化合物2に対して5mL/mmol)中で超音波処理(5分)し、洗液をデカントし、これを2回繰り返した。洗液の純度>90%であるが、以下のパラメーターで分取SFCを使用して更に精製を実施した:試料濃度=16mg/mL(ACN、0.3%Et3N)、注入体積=100μL、カラム=エチルピリジン(25×10mm、5Å)40℃、移動相=10~50%MeOH:ACN:Et3N(99.85:99.85:0.3)改質剤として、工業グレード-湿潤CO2流量のバランス、10分で、流量=10mL/分、平衡化時間が2分のスタック注入プログラム、BPR設定=150バール、220nmでモニタリング及び回収。スキーム5の化合物7が、化合物3に基づいて収率45%で淡黄色固体として得られた。Et3N塩。
【0059】
化合物4、7及び10の調製
化合物3(スキーム4)、化合物6(スキーム5)又は化合物9(スキーム6)(1.0当量)に、トリイソプロピルシラン(7に対して4mL/mmol)を添加し、次にTFA(化合物3、6又は9に対して76mL/mmol)を添加した。反応物を室温で20分間撹拌し、その後、淡黄色の残留物が残るまで、反応物上に穏やかな窒素流を通すことによって揮発分を除去した。残留物をEt2O(化合物3、6又は9に対して5mL/mmol)中で超音波処理(10分)し、洗液をデカントし、微細な沈殿物が得られた。Et2Oを用いてこれを更に2回繰り返し、純粋な化合物4(スキーム4)、化合物7(スキーム5)及び化合物10(スキーム6)を収率85~95%で白色固体として得た。
【0060】
スキーム7の化合物2、3、4、5及び6の合成
概説:
商業供給源から全ての化学物質を購入し、更に精製することなく使用した。フマル酸モノメチル、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)、テトラヒドロフラン(THF)及びジクロロメタン(CH2Cl2)を、Sigma-Aldrich社から購入した。
【0061】
全ての化合物を、RP-HPLC(Agilent 1100、USA)によって分析した。全ての合成工程は、それらの各質量に関してYMC-Triart C18(5μm、4.6×150mm)カラムを備えたLC/MS(Shimadzu 2020 UFLC-MS、日本)を使用して更に特徴付けた。NMRスペクトル(1H NMR、13C NMR、HMBC及びHSQC)を、溶媒として重水素化クロロホルム又はメタノールを使用してBruker AVANCE III 400 MHz分光計で記録した。HRMSをBruker microTOF-QIIで実施した。
【0062】
スキーム7の化合物2は、Roger, M.ら、Monopicolinate-dipicolyl Derivative of Triazacyclononane for Stable Complexation of Cu2+ and 64Cu2+. Inorganic Chemistry、2013. 52(9): 5246~5259頁から適応させた手順を使用して調製した。
【0063】
(1→2).1,4,7-トリアザシクロノナン(スキーム7の化合物1)(1.0当量)をトルエンとクロロホルム(それぞれ1.3及び0.3ml/mmol)の混合物中に溶解させた。ジメトキシメチル-N,N-ジメチルアミン(1.0当量)を一度に添加し、混合物を還流させた。NMRを使用して、反応の進捗をモニターし、完了するまで2時間かかった。次に溶媒を除去し、純粋なスキーム7の化合物2が収率85~95%で黄色油状物として得られた。
【0064】
スキーム7の化合物3は、Gasser, G.ら、Synthesis, Copper(II) Complexation, 64Cu-Labeling, and Bioconjugation of a New Bis(2-pyridylmethyl) Derivative of 1,4,7-Triazacyclononane. Bioconjugate Chem.、2008. 19(3): 719~730頁から適応させた手順を使用して調製した。
【0065】
(2→3).乾燥THF(1ml/mmol)に溶解させたスキーム7の化合物2(1.0当量)に、塩化ピコリル(1.0当量)のTHF溶液を慎重に滴下添加した。反応物を室温で終夜撹拌して、赤橙色沈殿物を得た。液体をデカントし、沈殿物をTHF(スキーム7の化合物2に対して5mL/mmol)中で超音波処理(5分)し、洗液をデカントした。これを2回繰り返した。沈殿物を乾燥させて、スキーム7の化合物3を収率75~86%で得た。
【0066】
スキーム7の化合物4は、Gasser, G.ら、Synthesis, Copper(II) Complexation, 64Cu-Labeling, and Bioconjugation of a New Bis(2-pyridylmethyl) Derivative of 1,4,7-Triazacyclononane. Bioconjugate Chem.、2008. 19(3): 719~730頁から適応させた手順を使用して調製した。
【0067】
化合物3をミリQ水(10ml/mmol)中に溶解させ、還流させた。反応をLC/MSによってモニターした。4時間後、反応は完了していた。混合物のpHを約12に調整し、CHCl3で3回抽出した。有機抽出物をMgSO4で乾燥させ、凝固させてスキーム7の化合物4を収率45~60%で得た。
【0068】
(4→5).スキーム7の化合物5は、Gasser, G.ら、Synthesis, Copper(II) Complexation, 64Cu-Labeling, and Bioconjugation of a New Bis(2-pyridylmethyl) Derivative of 1,4,7-Triazacyclononane. Bioconjugate Chem.、2008. 19(3): 719~730頁から適応させた手順を使用して調製した。
【0069】
スキーム7の化合物4を、乾燥ACN(1.4mL/mmol)、K2CO3(4.0当量)及びKI(16.0当量)中に溶解させた。混合物を室温で撹拌した。その後ACN(1.4ml/mmol)中の塩化ピコリル塩酸塩溶液を10~15分間滴下添加した。反応物を室温で更に1時間撹拌し、続いて終夜還流させた。その後混合物を冷却し、ろ過した。アリコートを濃縮して、スキーム7の化合物5を収率50~70%で得た。
【0070】
スキーム7の化合物6は、Gasser, G.ら、Synthesis, Copper(II) Complexation, 64Cu-Labeling, and Bioconjugation of a New Bis(2-pyridylmethyl) Derivative of 1,4,7-Triazacyclononane. Bioconjugate Chem.、2008. 19(3): 719~730頁から適応させた手順を使用して調製した。
【0071】
化合物5をHCl 6M(10ml/mmol)中に溶解させ、還流させた。反応をLC/MSによってモニターした。4時間後に反応が完了した。スキーム7の化合物6は、スキーム7の化合物4と同様に収率55~65%で単離した。
【0072】
スキーム7の化合物8(Hno1a2py)及び10(Hno1pa2py)の調製
変更した手順は、Gasser, G.ら、Synthesis, Copper(II) Complexation, 64Cu-Labeling, and Bioconjugation of a New Bis(2-pyridylmethyl) Derivative of 1,4,7-Triazacyclononane. Bioconjugate Chem.、2008. 19(3): 719~730頁から適応させた。
【0073】
スキーム7の化合物6(1.0当量)を乾燥ACN(1mL/mmol)、K2CO3(0.4当量)及びKI(0.2当量)中に溶解させた。混合物を室温で撹拌した。その後ACN(1ml/mmol)中の塩化ピコリル塩酸塩(スキーム7、6→7)又は6-クロロメチルピリジン-2-カルボン酸メチルエステル(スキーム7、6→9)溶液を10~15分間滴下添加した。反応物を室温で更に1時間撹拌し、続いて終夜還流させた。その後混合物を冷却し、ろ過した。アリコートを濃縮して、スキーム7の化合物7又はスキーム7の化合物9を収率50~70%で得た。スキーム7(7→8)の化合物7(1当量)又はスキーム7(9→10)の化合物9(1当量)をミリQ水20~30ml/mmolで希釈し、HCl 6M(3当量)を添加した。反応混合物をマイクロ波中100℃で還流させ、反応の進捗をLC/MSによってモニターした。40分後、反応が完了した。混合物を更に水で5倍希釈し、凍結乾燥プロセスによって凍結させ、水を除去して、定量的収率を得た。6-クロロメチルピリジン-2-カルボン酸メチルエステルは、Mato-Iglesias, M.ら、Lanthanide Complexes Based on a 1,7-Diaza-12-crown-4 Platform Containing Picolinate Pendants: A New Structural Entry for the Design of Magnetic Resonance Imaging Contrast Agents. Inorganic Chemistry、2008. 47(17): 7840~7851頁から適応させた手順を使用して調製した。
【0074】
化合物11及び12(スキーム7)の調製
スキーム7の化合物8又は10(1.0当量)を、乾燥DMF(1~2mL/mmol)に溶解させた。次にN,N-ジイソプロピルエチルアミン(5.0当量)を一度に添加し、続いてHOBt(1.2当量)及びDIC(1.2当量)を添加した。5分後、7-アミノセファロスポラン酸(5→6)を添加し、次いで反応の進捗をLC/MSによってモニターした。一夜後、反応が完了した。スキーム7の化合物11及び12を、以下のパラメーターで分取SFCを使用して精製した:試料濃度=10mg/mL(ACN、0.3%Et3N)、注入体積=100μL、カラム=エチルピリジン(250×10mm、5Å)40℃、移動相=10~50%MeOH:ACN:Et3N(49.85:49.85:0.3)改質剤として、工業グレード-湿潤CO2流量のバランス、10分で、流量=10mL/分、平衡化時間が2分のスタック注入プログラム、BPR設定=150バール、220nmでモニタリング及び回収。
【0075】
最小発育阻止濃度(MIC)
CLSIガイドライン及びKeepersら(Keepers TR、Gomez M、Celeri Cら、Bactericidal activity, absence of serum effect, and time-kill kinetics of ceftazidime-avibactam against β-lactamase-producing Enterobacteriaceae and Pseudomonas aeruginosa. Antimicrobial agents and chemotherapy 2014: AAC. 02894~14頁)に従って最小発育阻止濃度(MIC)決定を行った。簡潔に言えば、チェッカーボード法(Kingら)を使用して96ウェルマイクロタイタープレート内のカチオン調整ミュラー-ヒントンブロス(CAMHB)で、各メロペネム/BP又はメロペネム/TGの2倍希釈液をそれぞれ0.015~16μg/mL及び1~64μg/mLで作製した。0.5マクファーランド標準化細菌性接種材料を添加して、各マイクロタイターウェルの総量を100μlにした。初期接種材料密度は、MBC試験用にMHAプレートにプレーティングすることによって決定した。次にプレートを、有酸素条件下37℃で18~22時間インキュベートした。MICは、目に見える増殖をもたらさない最低濃度として決定した。対照ウェルには、薬剤候補を溶解するのに使用される溶媒量が含まれていた。
【0076】
MICにおける血清効果
組合せのMICに対する血清の効果は、上記のMIC法と同様に行われたが、この場合、100%ヒト血清をブロスに添加して、最終ブロスで50%ヒト血清を構成した。2種のCRE株をこの実験に使用した(大腸菌NDM-1及び肺炎桿菌IMP-8)。
【0077】
時間-殺菌アッセイ
時間-殺菌試験を、CLSI文献M26-Aによって記載されたものを含む、以前に公表された方法に基づいて行った。大腸菌NDM-1、肺炎桿菌IMP-8及び肺炎桿菌NDMは、このアッセイのために選択された株であった。簡潔に言えば、新しく調製したコロニーをCAMHB 10mLに再懸濁させ、振盪型インキュベーター(37℃、180rpm)中で1~2時間インキュベートした。次いで、培養物を0.5マクファーランド標準(約108CFU/mL)に希釈し、CAMHBで更に1:20に希釈し、それにより出発接種材料はおよそ5×106CFU/mLであった。調製した細菌懸濁液にメロペネムを添加し、それにより最終メロペネム濃度がメロペネム-BPのMICの2倍、4倍又は8倍であり、BPを最終濃度64μg/mLまで添加した。抗生物質を含まない増殖対照も含まれていた。出発接種材料は、希釈直後の増殖対照チューブで決定し、ゼロ時点でのカウントとして記録された。抗生物質の添加後、出発接種材料は、およそ1×106~5×106CFU/mLであった。チューブは、振盪型インキュベーター中で、37℃、180rpmでインキュベートし、培養物100μLを取り出し、適宜希釈し、MHA上に100μLプレーティングすることによって、生存率カウントを1、2、4、6、8及び24時間で行った。MHAプレートを37℃で少なくとも18時間インキュベートした。コロニーをカウントし、結果をCFU/mLの数として記録した。CFU/mLの数の≧3-log10減少を、殺菌性があるものと考えた。
【0078】
細胞培養
ヒト肝細胞癌(HepG2)細胞は、1%pen/strep/フンギソン、1%L-グルタミン及び10%ウシ胎児血清を補充したDulbucco最小必須培地(Lonza Biowhittaker、スイス)で培養した。細胞は、5%CO2の雰囲気下に37℃で保持された。80%コンフルエントに達した後、細胞を酵素により剥離し(トリプシン)、細胞生存率アッセイに利用した。
【0079】
細胞生存率アッセイ
細胞生存率に対するMPR-SMN-05の効果は、Mosmannによって以前報告された研究(Mosmann T. Rapid colorimetric assay for cellular growth and survival: application to proliferation and cytotoxicity assays. Journal of immunological methods 1983; 65: 55~63頁)に基づいて臭化3-(4,5-ジメチル-2-チアゾリル)-2,5-ジフェニル-2H-テトラゾリウム(MTT)アッセイを使用して決定した。およそ15,000細胞を96ウェルマイクロタイタープレートに播き、終夜付着させた。続いて細胞を0~250mg/Lの範囲のMPR-SMN-05(実験は3連で行った)に曝露した。MPR-SMN-05で24時間インキュベートした後、細胞を0.1Mリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で2回洗浄し、MTT塩溶液(0.1M PBS中5mg/ml)20μl及び完全培地(CCM)100μlでインキュベートした(37℃、4時間)。次にMTT塩溶液を廃棄し、DMSO 100mlを各ウェルに添加し、インキュベートして(37℃、1時間)、ホルマザン結晶を溶解した。光学密度を、分光光度計(Bio-Tek uQuant、Winooski、VT)を使用して570/690nmで測定した。結果は、細胞生存率パーセント対MPR-SMN-05の対数濃度として表し、それから最大半減発育阻止濃度(IC50)を決定した。対照の処理は、試験化合物を含まないCCM中の等量のDMSO溶媒によって表された。
【0080】
細胞毒性アッセイ
乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)細胞毒性検出キット(Roche、Mannheim、ドイツ)を使用して、MPR-SMN-05処理HepG2細胞における細胞損傷及び細胞毒性を測定した。細胞外LDH活性は、細胞培養上清100mlと基質溶液(ジアホラーゼ/NAD+;INT/乳酸ナトリウム)100mlを96ウェルマイクロタイタープレート中室温で30分間インキュベートすることによって定量化した。アッセイを3連で行った。分光光度プレートリーダー(Bio-Tek uQuant、Winooski、VT)を使用して500nmにおけるインキュベーションの後で光学密度(OD)を測定した。
【0081】
統計的分析
全てのアッセイは、少なくとも2連で達成した。結果は、平均値±標準偏差として提供される。実験の統計的分析は、統計的一元配置Anova試験を使用して行った。P値<0.05を、統計学的に有意であるとみなした。
【0082】
マウス血漿中のメロペネム、BP1及びメロペネム-BP1組合せ濃度の決定に関する生分析法
計器装備
液体クロマトグラフィータンデム型質量分析(LC-MS)システムは、オンライン脱気装置、勾配ポンプ及び飛行時間型質量分析計アナライザー(TOF-MS)maXis 4G電気スプレー電離(ESI)装置(Bruker Daltonics社、Bremen、ドイツ)に接続されたオートサンプラーを備えたAgilent Series 1100で構成されている。全ての結果は保存され、Data Analysis 4.0 SP 5(Bruker Daltonics社)で分析された。
【0083】
標準及び検量線の調製
メロペネム、BP-1及び内部標準(IS)TG-1の個々の原液を、各物質10mgを蒸留水中50%メタノール10mLに溶解させることによって調製した。溶液を冷蔵温度(0~4℃)で保管した。作業用標準溶液及びISを未処理マウスのブランク血漿100μLに加えて、両化合物の血漿中の分析物濃度25、50、100、200、400、800及び1000ng/mLを得ることによって、較正標準を調製した。IS 200ng/mLを、両分析物及び試料の実験中ずっと使用した。定量下限濃度(LLQC)、低濃度(LQC)、中濃度(MQC)及び高濃度(HQC)(それぞれ10;75、500及び900ng/mL)の品質管理(QC)試料を、同じ方法で別個に調製した。
【0084】
クロマトグラフィー条件
対応するガードカラムを装備した、球状ハイブリッドシリカ粒子(150mm×3.0mm I.D. S-3μm)を備えた、YMC Triart C18カラム(YMC Europe Gmbh、Dislanken、ドイツ)を、HPLC分離に使用した。2つの移動相、すなわち水中0.1%FA及びACN中0.1%FAを使用した。流速は0.3mL min-1であり、カラムオーブンの温度は25℃に設定した。勾配プロファイルは、最初は、10分で25%~50%ACN、次に2分で75%に達し、その時間の後、移動相を3分で初期条件(25%ACN)に戻し、平衡化のために5分間保持した。試料の注入体積は、5μLであった。
【0085】
質量分析
Bruker Daltonics社装置、maXis 4G ESI飛行時間型質量分析(TOF-MS)を使用して、標的分析物の正確な質量スペクトルを得た。最適化されたMS条件及び取得パラメーターは以下の通りであった:ソースタイプ、ESI;イオン極性、正;ネブライザー、1.5バール;キャピラリー、6000V;乾燥ヒーター、180℃;スキャン範囲、m/z 300~1200;エンドプレートオフセット、-500V;乾燥ガス、8.0L/分;衝突セル無線周波数、3000Vpp、衝突エネルギー、7eV。これらの条件は、両方の標的化合物(メロペネム及びBP1)に当てはまる。しかしながら、異なるMS/MS条件は、各分析物のために以下のように最適化した:単離質量はm/zであり;単離幅はそれぞれ38、25に設定され;単離エネルギー21、24;及び取得計数2、2であった。
【0086】
血漿試料
ブランク血漿試料は、Life Technologies社(Burlington、ON、カナダ)から得られ、分析前は-20℃で保持した。
【0087】
分析物を投与した後のマウスから心臓穿刺により血液試料を採取し、3500rpmで10分間遠心分離し、血漿を分離し、生物分析前に-80℃で保管した。任意の実験の前に、試料を室温で解凍した。
【0088】
試料調製
ブランク血漿100μLのアリコート、較正標準、QC試料とISに1mLまでメタノールを継ぎ足して、血漿タンパク質の沈殿を誘発した。処理したマウス血漿試料は同じ手順に従った。混合物を30秒間激しく混合し、続いて4℃で10分間、15000rpmで遠心分離した。上清をDSC-18-SPEカートリッジ(50mg/mL)に通してろ過した。ろ過した試料(500μL)を、クロマトグラフシステムに注入するためにオートサンプラーバイアルに移した。凍結血漿試料の全ての解凍を室温で完了させた。
【0089】
安定性
異なる条件下での低濃度、中濃度、及び高濃度のQC試料の3つの複製のアッセイによって、血漿中のBP1の安定性を評価した:室温(25℃)で6時間保管後の短期安定性;3回の凍結/解凍サイクル(-80℃~25℃)を通した凍結/解凍安定性。25℃で維持されたオートサンプラーに入れてから24時間後、調製後安定性を評価した。4℃で保管した後、BP1の保存溶液安定性を決定した。安定性の定量化された濃度を理論上の濃度と比較した。
【0090】
結果
MIC
MBL阻害剤としてのBP1及びTG1の潜在的な活性を調べるために、既知のクラスBカルバペネマーゼを発現するよく特徴付けられたカルバペネム耐性細菌を使用した。ブロス微量希釈法を使用したMICは、CLSIガイドライン(Clinical and Laboratory Standards Institute. Performance Standards for Antimicrobial Susceptibility Testing: Twenty-Fourth Informational Supplement M100-S24. CLSI、Wayne、PA、USA、2014)に基づいて、メロペネム用のカチオン調整ミュラー-ヒントンブロスを、単独(table 4(表4)参照)で、及び可変濃度(2倍希釈液1~64ug/mL)の金属キレート剤BP1及びTG1と併せて使用して実施した。大腸菌ATCC 25922を対照として使用した。
【0091】
BP1及びTG1は、0.03mg/Lほどの低濃度でMBL産生細菌のクラスに対するカルバペネム抗生物質(メロペネム)の活性を回復させることが可能であった。セリンβ-ラクタマーゼタイプのいずれもカルバペネム/金属キレート剤の組合せの影響を受けず、これらの化合物の作用機序を実証した。
【0092】
血清効果
血清は、調べた2つの分離株(大腸菌NDM-1及び肺炎桿菌IMP-8)の両方で値は依然として影響を受けやすい範囲内にあり、±1~2倍希釈によってのみ変化するため、メロペネム/BP1組合せのMICに対して顕著な効果はなかった。同じ実験を繰り返すので、この変動は、CLSIガイドラインに基づいて容認されている。
【0093】
時間-殺菌動態
大腸菌NDM-1及び肺炎桿菌IMP-8に関してメロペネム/BP1の時間-殺菌試験を行った。組み合わせたカルバペネム及びMBL阻害剤は、試験した全ての異なるMIC濃度(2倍、4倍、8倍MIC)において、両方の菌株に対して、増加する時点(0、1、2、4、6、8及び24時間)で初期細菌密度と比較してCFU/mLの数の減少を引き起こした(
図1参照)。4倍及び8倍MICで4時間メロペネム/BP1で処理した場合に、CFU/mlの数の3log
10減少が観察された。2倍MICでは、組み合わせた分子で処理した6時間後に3log
10減少が見られた。
【0094】
時間-殺菌動態結果は、MBL阻害剤(BP1)とカルバペネム抗生物質(メロペネム)の組合せが、カルバペネム耐性腸内細菌科の試験した菌株に対して殺菌活性を有することを示す。
【0095】
選択したBP化合物とメロペネムの併用療法を、メロペネム単独の単独療法と比較した。結果の分析を、Table 1(表1)及びTable 2(表2)に示す。
【0096】
【0097】
分析は、投与された最低用量で実施された、32mg/L BP+0.5mg/Lメロペネム
【0098】
【0099】
細胞生存率
細胞生存率アッセイの結果をTable 3(表3)に示す。
【0100】
【0101】
細胞毒性
化合物BP1は、in vitro試験によって実証された活性濃度において安全であった。細胞系に対する効果は、本研究で報告されたMICよりもはるかに高い高濃度でのみ見られた。
【0102】
【0103】
in vivo薬物動態学
本研究は、クワズール-ナタール大学の施設動物研究倫理委員会(the institutional Animal Research Ethics Committee of the University of KwaZulu-Natal)によって承認された(承認基準AREC/013/016D)。雌Balb/c(6~8週齢)をBiomedical Resource Unit(BRU)から購入した。実験動物に、メロペネム(10mg/kg.b.w)とBP1(10mg/kg.b.w)の組合せを腹腔内投与した。次に投与した0、5、15、30、45、60、90及び120分後に定期的に動物を屠殺して、メロペネム及びBP1の血漿薬物動態学をそれぞれ決定した。心臓穿刺により血漿を採取し、-80℃で保管した。
【0104】
LC-MS定量化
Agilent series 1100(Agilent Technologies社、Waldbronnドイツ)液体クロマトグラフィーシステムは、maXis 4G四重極飛行時間型質量分析(Q-TOF-MS)装置(Bruker Daltonics社、Bremen、ドイツ)に接続した。
【0105】
ミリポア水(0.1%v/vギ酸)(A)及びアセトニトリル(0.1%v/vギ酸)(B)からなる勾配移動相を含むAscentis(登録商標)Express F5カラム(5cm×2.1mm、2.7μm粒径)を使用して、クロマトグラフ分離を達成した。勾配法は、5.0から開始して95.0%Bまで8.0分、次に95%で2.0分間保持し、その後1分かけて5%に戻した。カラム平衡化時間は、流速0.4mL min-1で4分であり、カラムオーブン温度は25℃であった。注入体積は10μLであり、方法の合計実行時間は15分であった。
【0106】
定量的及び定性的研究を、ESIインターフェイスを介してMSモードを使用し、以下のソースパラメーターで実施した:エンドプレートオフセット-500V;キャピラリー5kV;窒素ネブライザーガス1.5バール;乾燥ガス8.0L min-1及び乾燥温度200℃。最適化された分子イオンは、BP1ではm/z 325.1、メロペネムではm/z 384.2、及びアンピシリン(IS)ではm/z 350.1であった。結果は、Data Analysis 4.0 SP 5(Bruker Daltonics社)を使用して分析した。全てのデータを平均±SDとして表した。
【0107】
in vivo感染モデル
本研究は、クワズール-ナタール大学の施設動物研究倫理委員会によって承認された(承認基準AREC/013/016D)。雌Balb/c(6~8週齢)をBiomedical Resource Unit(BRU)から購入した。
【0108】
全ての動物実験は、クワズール-ナタール大学の施設動物研究倫理委員会によって承認された(承認番号AREC/081/015D)。大腿部感染プロトコルは、Michailら(2013)によって記載されたように行った。簡潔に言えば、重さ20~25g、6週齢の、病原体未感染-特異的、雄Bagg近交系アルビノc株(BALB/c)マウス(n=40)は、4日目(150mg/kg)及び1日目(100mg/kg)にシクロホスファミド(腹腔内)で前処理することによって好中球減少性(好中球<100/mm3)になった。左大腿部の感染は、107~108CFU/mlを含有する肺炎桿菌449細菌懸濁液(100μL)の筋間注射によって、メロペネムとBP1(それぞれ100mg/kg.b.w)の組合せによる治療開始の2時間前に実施した。マウスを、感染対照群及び治療群の2つのグループにランダムに分けた。マウスは、治療の2時間、4時間、6時間及び8時間後に、ハロタン過剰摂取によって人道的に安楽死させた。次いで、左大腿部の筋肉を、無菌的に取り出し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)5ml中でホモジナイズした。ホモジネートを段階的に希釈し、抗生物質を含まないミュラー-ヒントン寒天プレート上に播き、35℃で24時間インキュベートした。インキュベーション時間後、プレートを増殖について評価し、コロニー形成単位(CFU)を使用して定量的に数え、次いで力価をlog10 CFU/大腿筋として表した。
【0109】
結果
in vivo薬物動態学
結果を
図4及び下記Table 5(表5)に記載する。
【0110】
【0111】
メロペネム及びBP1は、相補的な薬物動態特性を示すことが判明した。
【0112】
in vivo感染モデル
結果は、
図5及び
図6に記載し、それは24時間の期間にわたってBP1で治療した後の大腿部CFUカウント(データを平均±SD(n=3)として示す)及び8時間の治療期間にわたる血漿BP1濃度(データを平均±SD(n=3)として示す)に変化を示す。
【0113】
Table 6(表6)は、2種の異なるカルバペナーゼ産生微生物に対する、全ての合成及び試験した一般式(I)のメタロ-β-ラクタマーゼ(MBL)阻害剤と同時投与したメロペネムの最小発育阻止濃度(MIC)を示す。
【0114】
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
β-ラクタム抗生物質と併せた式(I)の化合物は、細胞系に対して細胞障害効果の影響がない濃度でin vitroで効果があることが判明している。メタロ-β-ラクタマーゼ産生腸内細菌科に対して式(I)の化合物と併せて使用した場合の、投与したβ-ラクタム抗生物質の殺菌活性及び血清の効果が決定された。
【0121】
CLSIガイドラインに基づき、ブロス微量希釈技術を使用して、MIC、時間殺菌動態及び血清アッセイを行った。β-ラクタム抗生物質は、CRE産生MBLに対してその活性を回復し、その場合、式(I)の化合物の存在下で最小発育阻止濃度(MIC)値が0.03mcg/mLほど低濃度まで減少することが判明した。これらの組合せは、耐性腸内細菌科に対するそれらの殺菌活性を維持する能力を有する。血清の存在も組合せに大きな影響を及ぼさなかった。
【国際調査報告】