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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】前立腺肥大症治療用腔内ステント
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/844 20130101AFI20240719BHJP
   A61F 2/848 20130101ALI20240719BHJP
   A61F 2/91 20130101ALI20240719BHJP
   A61F 2/95 20130101ALI20240719BHJP
【FI】
A61F2/844
A61F2/848
A61F2/91
A61F2/95
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532365
(86)(22)【出願日】2022-08-04
(85)【翻訳文提出日】2024-03-05
(86)【国際出願番号】 US2022039481
(87)【国際公開番号】W WO2023014917
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】63/230,602
(32)【優先日】2021-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524049767
【氏名又は名称】リバーマーク メディカル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カドレック アダム
(72)【発明者】
【氏名】シーバー アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ドラスワミー アナンド
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA44
4C267AA49
4C267BB02
4C267BB03
4C267BB04
4C267BB06
4C267BB11
4C267BB22
4C267CC26
4C267DD10
(57)【要約】
尿道前立腺部の開存性を維持する器具は、近位端部及び遠位端部の間に流路を有するステントを含む。器具は、長手方向のストラット、角度付のストラット及びノードを備え、長手方向のストラットは、対応するノードにおいて、少なくとも1つの角度付のストラットと結合され、ストラット及びノードは、複数のセルを形成するように結合され、周方向に隣接するセルは、ステント領域を形成する。ステントは、体腔内で、圧縮された形態から拡張された形態へと拡張するように構成される。ステントは、ノーズ領域においてノーズ領域のラジアルフォースを、ボディ領域においてボディ領域のラジアルフォースを、テール領域においてテール領域のラジアルフォースをもたらすように、その長さに沿って折り畳み性の傾斜を備え、ノーズ領域は、テール領域よりラジアルフォースが小さく、テール領域は、ボディ領域よりラジアルフォースが小さい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿道前立腺部の開存性を維持するための器具であって、前記器具は、
近位端部と、遠位端部と、それらの間の体液の流れを促進するようにそれらの間に構成された通路とを備えたステントを備え、
前記ステントは、複数の、長手方向のストラットと、角度付のストラットと、ノードとをさらに備え、
それぞれの長手方向のストラットは、対応するノードにおいて、少なくとも1つの、角度付のストラットと結合され、
前記ストラット及びノードは、複数のセルを形成するように互いに結合され、
周方向に隣接するセルは、ステント領域を形成し、
前記ステントは、ノーズ領域、ボディ領域、及びテール領域をさらに備え、
前記ステントは、体腔内で、圧縮された形態から拡張された形態へと拡張するように構成され、
前記ステントは、前記ノーズ領域においてノーズ領域のラジアルフォースをもたらし、前記ボディ領域においてボディ領域のラジアルフォースをもたらし、前記テール領域においてテール領域のラジアルフォースをもたらすように、その長さに沿って折り畳み性に傾斜を有し、
前記ノーズ領域のラジアルフォースは、前記テール領域のラジアルフォースより小さく、前記テール領域のラジアルフォースは、前記ボディ領域のラジアルフォースより小さい、
器具。
【請求項2】
前記ノーズ領域におけるストラットは、ループを形成するように接続されている、
請求項1に記載の器具。
【請求項3】
前記ボディ領域における、前記長手方向のストラットの長さは同一である、
請求項1に記載の器具。
【請求項4】
前記テール領域における、一部の同一線上の長手方向のストラットの長さは、同一の長さであり、前記テール領域における、他の同一線上の長手方向のストラットの長さは、互いに異なる、
請求項1に記載の器具。
【請求項5】
前記テール領域における、同一線上の長手方向のストラットの長さは、前記ボディ領域の端部から、前記テール領域の端部に向かって長くなる、
請求項1に記載の器具。
【請求項6】
前記セルは、平行四辺形を形成する、
請求項1に記載の器具。
【請求項7】
前記セルは、台形を形成する、
請求項1に記載の器具。
【請求項8】
前記セルは、不等辺四角形を形成する、
請求項1に記載の器具。
【請求項9】
前記角度付のストラットは、前記ステントが送達器具のワーキングチャネル内に引き込まれることによって、前記ステントが半径方向に圧縮されて圧縮された形態になるように、配置されている、
請求項1に記載の器具。
【請求項10】
前記テール領域の前記端部に配置されたノードは、前記尿道前立腺部内に挿入された際に、前記近位尿道前立腺部において軟部組織に係合し、前記ステントの近位への移動を防ぐように構成された非外傷性先端部を形成する、
請求項1に記載の器具。
【請求項11】
前記拡張された形態である場合、前記テール領域は拡張されている、
請求項1に記載の器具。
【請求項12】
前記拡張された形態である場合、前記ステントは円筒形である、
請求項1に記載の器具。
【請求項13】
角度付のストラットと長手方向のストラットとの間の鋭角は、前記テール領域の前記端部における前記ステントの近位端部に向かって、大きさが小さくなる、
請求項1に記載の器具。
【請求項14】
角度付のストラットと長手方向のストラットとの間の鈍角は、前記テール領域の前記端部における前記ステントの近位端部に向かって、大きさが大きくなる、
請求項1に記載の器具。
【請求項15】
前記ステントは、形状記憶金属の円筒から形成される、
請求項1に記載の器具。
【請求項16】
前記ステントは、ステンレス鋼の円筒から形成される、
請求項1に記載の器具。
【請求項17】
前記ステントの少なくとも外側表面上に、コーティングをさらに備える、
請求項1に記載の器具。
【請求項18】
請求項1に記載のステントと送達器具とを備えた、
尿道前立腺部の開存性を維持するシステム。
【請求項19】
前記送達器具は、膀胱鏡を備えている、
請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
前記ステントに解放可能に結合し、前記送達器具のワーキングチャネル内に嵌合するように構成された制御部材をさらに備えた、
請求項17に記載のシステム。
【請求項21】
尿道前立腺部の開存性を維持するステントを留置する方法であって、前記方法は、
請求項1~18のいずれか1項に記載の器具を準備することと、
制御部材を用いて、前記器具を送達器具に結合することと、
前記制御部材及び器具を、送達器具のワーキングチャネル内に挿入することと、
前記送達器具を、近位尿道前立腺部に進めることと、
前記ステントのテール部分の少なくとも一部を、膀胱内に配置することと、
前記テール部分の端部が前記近位尿道前立腺部に位置するように、前記ステントを前記尿道前立腺部内に引き戻すことと、
前記器具を、前記制御部材及び送達器具から分離することと、
前記制御部材及び送達器具を、前記膀胱から抜去することと、
を含む方法。
【請求項22】
前記テール領域の前記端部における非外傷性先端部を、前記近位尿道前立腺部における軟部組織に埋め込むことによって、前記尿道前立腺部に前記器具を固定し、前記ステントの近位への移動を防ぐことをさらに含む、
請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記制御部材及び器具を前記送達器具の前記ワーキングチャネル内に挿入することは、前記制御部材及び前記器具を前記ワーキングチャネルを通って後退する方向に進めることを含む、
請求項21に記載の方法。
【請求項24】
尿道前立腺部の開存性を維持するために留置されていたステントを抜去する方法であって、前記方法は、
送達器具を、尿道を通じて、尿道前立腺部に留置されたステントまで進めることと、
制御部材を、前記送達器具のワーキングチャネルを通して、前記ステントまで進めることと、
前記制御部材を前記ステントに結合することと、
前記ステント及び制御部材を、前記送達器具の前記ワーキングチャネル内に引き込むことと、
を含む方法。
【請求項25】
前記ステント及び制御部材を、前記送達器具の前記ワーキングチャネル内に引き込むことは、前記ステント及び制御部材を、膀胱から離れるように移動させることを含む、
請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記ステント及び制御部材を、前記送達器具の前記ワーキングチャネル内に引き込むことは、前記送達器具の前記ワーキングチャネルを、膀胱に向かって移動させることを含む、
請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記ステント、送達器具、及び制御部材を尿道から抜去することをさらに含む、
請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記ステント及び送達器具を、所望の位置に再位置決めすることをさらに含む、
請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記ステントを、前記所望の位置に留置することをさらに含む、
請求項28に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
前立肥大症(benign prostatic hyperplasia,BPH)は男性に発症する一般的な良性疾患であり、高齢の患者にとって厄介なものである。この状況では、前立腺は肥大しているが、癌性のものではない。benign prostatic hyperplasia(前立腺肥大症)は、benign prostatic hypertrophy(前立腺肥大)又は前立腺閉塞とも呼ばれる。
【0002】
前立腺は、膀胱のすぐ下に位置する、線維筋性及び腺状の器官である。前立腺が肥大すると、腺が尿道前立腺部を圧迫し、狭窄する。これによって、膀胱が弱くなり、膀胱を完全に空にすることができなくなる。尿道前立腺部の狭窄により、BPHに見られる症状が引き起こされる。米国では、1,400万人もの男性が、BPHの症状を示唆する、軽い尿路感染症の症状を抱えている。50歳以上の全ての男性の約半数が、前立腺肥大を発症するであろう。男性が70代及び80代に達するまでに、彼らのうちの約85~90%が、BPHによる泌尿器症状を経験するであろう。
【0003】
BPHの原因は完全には理解されていないが、多因子的且つ内分泌的に制御されていると考えられている。BPHは、尿道前立腺部の移行領域で発症する。多くの場合、症状は、刺激症状及び閉塞症状を含む。特に、次の症状は、BPHを示唆している可能性がある。それは、頻尿、尿意切迫感、排尿困難、尿閉、失禁、夜間頻尿、射精後の痛みである。BPHの合併症は、膀胱結石、尿路感染症、血尿、膀胱代償不全、腎不全、及び急性尿閉/慢性尿閉を含む。
【0004】
治療のための薬理学的アプローチは、フェノキシベンザミン(非選択性)、プラゾシン(短時間作用型)、テラゾシン及びドキサゾシン(長時間作用型)、並びにタムスロシン、アルフゾシン、及びシロドシンのような(α1a)選択的遮断薬のようなα遮断薬の使用を含む。さらに、5α還元酵素阻害剤及び併用療法も用いられる。薬理学的アプローチは有効性が不十分であり、短期的な治療として、しばしば用いられる。薬理学的アプローチの副作用には、起立性低血圧、めまい、倦怠感、逆行性射精、鼻炎、及び頭痛がある。
【0005】
従来及び最近の外科治療としては、a)経尿道的前立腺切除術(TURP)、b)経尿道的前立腺切開術(TUIP)、c)レーザー治療、d)前立腺を蒸発させるための他のエネルギー形態、d)単純な前立腺切除術、e)前立腺ステント、及び、f)ウロリフト手技が挙げられる。TURPでは、症状を緩和し、尿流量を改善するために、内視鏡的高周波焼灼法が用いられる。しかしながら、TURPは、脊椎麻酔又は全身麻酔を必要とし、少なくとも24時間のカテーテル挿入を伴う、4~6週間の回復期間を必要とする。さらに、いくつかの合併症は、インポテンツ、失禁、出血、逆行性射精、及びTUR症候群(嘔吐、悪心、錯乱、高血圧等)を含む。単純な前立腺切除術は、前立腺が100グラムを超えるとき、又は、大きな膀胱結石を伴うBPHが発生するときに行われ得る。c)レーザー治療では、レーザーエネルギーを使用することによって、前立腺を切除し、蒸発させ、又は摘出し、それは、失血を最小限に抑えられ、外来患者の処置として実行できることのような利点を有する。しかしながら、レーザー治療は、術後のより長い時間のカテーテル挿入を必要とする可能性があり、レーザーのファイバー及び発生器に高額な費用を必要とする。マイクロ波、集束超音波、水誘導温熱療法、電気蒸散等を含む、他のエネルギー形態が試されてきたが、予後はさまざまである。前立腺バルーン拡張術も過去に試されてきたが、予後は不良であった。前立腺ステント(一時的なもの及び永久のもの)も、過去に用いられてきた。不十分な固定、ステントの移動、及び抜去の難しさによって、予後不良/利用の低下をまねいてきた。前立腺を尿道から離して縛る技術であるウロリフトという技術が、近年注目されている。侵襲性は最小限であるが、その手技には、一時的にカテーテルを使用すること、結果の永続性に問題があること、及び、患者にとって回復において痛み/面倒なことを伴う可能性があること、のようないくつかの欠点が依然として挙げられる。
【発明の概要】
【0006】
いくつかの実施形態は、体腔の開存性を維持するための低侵襲のシステム及び方法に関する。1つの非限定的な適用は、前立肥大症(BPH)の治療である。そのような治療のための器具は、尿道前立腺部内に配置されるステントを含み得る。この器具は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、シリコン、及び/又は他の親水性及び/又は疎水性のコーティング物質でコーティングされ得る。いくつかの実施形態では、器具は、徐放性コーティングにおけるもののように、α1遮断薬、5α還元酵素阻害剤、及び、併用療法のような薬剤を含む、1つ以上の治療薬でコーティングされ得る。いくつかの実施形態では、器具は、薬剤のような、1つ以上の治療薬でコーティングされることはない。
【0007】
いくつかの実施形態は、好適には、その長手方向に沿ったラジアルフォースの変化を有するステントを含む器具を使用した尿道前立腺部の拡張を活用する。ステントは、排尿中の尿道の自然な拡張及び収縮を妨げること無く、尿道の範囲全体にわたって、尿流を制御し、改善し得る。したがって、尿道ステントは、それぞれが特定の臨床的及び解剖学上の要件に合わせて構成される、さまざまな長手方向の区間又は領域を含み得る。
【0008】
例えば、時にはテール領域と呼ばれることがある、ステントの近位領域(挿入時、内尿道括約筋及び膀胱に最も近い領域)は、尿道前立腺部の尿道壁に対する半径方向の拡張力を少しもたらすか、ほとんどもたらさないか、又は全くもたらさないよう構成され得る。近位領域は、ステントを尿道前立腺部内に固定するため、及びステントの近位への(例えば、膀胱内へ又は膀胱の方向への)移動を防ぐために、複数の非外傷性端部を備えて構成され得る。時にはボディ領域として呼ばれることがある、ステントの中間領域は、尿道内腔の開存性を維持するために、又は尿道前立腺部を圧迫している肥大した前立腺の圧縮力に対抗するために、最大量の半径方向の拡張力をもたらすように構成され得る。ステントの中間領域は、内尿道括約筋及び外尿道括約筋の間の、尿道前立腺部内に配置され得る。ステントの遠位領域(挿入時、外尿道括約筋に最も近い領域)は、ループ又は液滴形状のリングとしてもたらされ得る。遠位領域は、尿道前立腺部の管腔壁に対して、径方向の拡張力を与えないように構成され得る。その代わりに、遠位領域は、ステントの送達及び抜去のための接続点として機能し得る。例えば、クランプ、フック、又は鉗子様の把持部材のような、取外し可能な部材は、遠位領域に解放可能に取付ることによって、ステントを、デリバリーカテーテル又はスコープ(膀胱鏡等)のワーキングチャネルから押し出し得て、又はデリバリーカテーテル又はスコープ(膀胱鏡等)のワーキングチャネルへ引き込み得る。
【0009】
ステントは、任意の1つ以上のさまざまな材料から構成され得る。例えば、ステントは、形状記憶合金(SMA群)か、ステンレス鋼、チタン等のようなフレキシブルメタルか、又は、形状記憶ポリマー(SMP群)を含む可撓性ポリマーから構成され得る。いくつかの実施形態では、ステントの材料は、劣化及び付着物を防止するために、コーティングを含み得る。コーティングは、シリコンのような、疎水性又は親水性のものであってもよい。いくつかの実施形態では、コーティングは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、又は、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)を含み得る。いくつかの実施形態では、コーティングは、フレキシブルシリコン、ヒドロゲル、粘膜付着性基材、感圧性接着剤、及び合成ゴムのような他の適切なエラストマーを含み得る。1つ以上の実施形態では、微細パターンを有するコーティングは、生物由来のタンパク質構造(例えば、コラーゲン等)を含み得て、及び/又はそれらから形成され得る。
【0010】
いくつかの実施形態では、尿道ステントを挿入する方法が開示される。画像誘導式の軟性膀胱鏡、又はカメラ付きカテーテルは、ステントを留置、抜去、及び/又は再配置するための機構と組合せて利用され得る。ステントは、スコープの遠位(出力)端部から、軟性膀胱鏡に挿入され得る。
【0011】
ステントは、年齢、人種、人口統計、素因、尿道の寸法、前立腺の寸法、解剖学的差異、及びその患者に特有の他の要因を備えた特定の患者用に、設計され得て、又は寸法が決められ得る。例えば、ステントの長さ、又はステントのそれぞれの領域の長さは、患者の特定の解剖学上の寸法に一致するように、選択及び構成され得る。
【0012】
いくつかの実施形態では、器具は、以下の特徴、又は本明細書に開示されている他の特徴の、任意の組合せを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、男性の尿道及び関連する解剖学的構造の断面図を図示する。
図2図2は、健康な前立腺、肥大した前立腺、及び尿道前立腺部内に尿道ステントが配置された肥大した前立腺の場合の、尿道前立腺部及び膀胱の概略断面図を図示する。
図3図3は、図2に示されるように、尿道前立腺部内に配置されるように構成された尿道ステントを図示する。
図4図4は、図2に示されるように、広がった近位領域を有し、尿道前立腺部内に配置されるように構成もされた、別の尿道ステントを図示する。
図5図5は、図2に示されるように、より長い近位端部と、より鋭角である内角から形成された先の尖った非外傷性端部とを有し、尿道前立腺部内に配置されるように構成もされた、別の尿道ステントを図示する。
図6図6は、図2図5の尿道ステントを含むがこれに限定されない、1つ以上の尿道ステントの、セルの幾何学的形状の例を表す概略図である。
図7図7は、図2図6の尿道ステントのような尿道ステントを送達するのに適した、送達器具の1つの実施形態を図示する。
図8図8は、尿道ステントを留置する1つの方法を図示したフロー図である。
図9図9は、尿道ステントを抜去する1つの方法を図示したフロー図である。
図10図10は、尿道ステントを再配置する1つの方法を図示したフロー図である。
図11図11は、尿道ステントの留置前にバックストップを留置するための器具と、尿道ステントを固定するための器具とを図示する。
図12図12は、尿道前立腺部内への挿入のための折り畳み可能な器具を図示する。
図13図13は、尿道前立腺部内の器具の留置を図示する。
図14図14は、図2に示されるように、尿道前立腺部内に配置されるように構成された尿道ステントの別の実施形態を図示する。
図15図15は、図2に示されるように、尿道前立腺部内に配置されるように構成された尿道ステントの別の実施形態を図示する。
図16図16は、図2に示されるように、尿道前立腺部内に配置されるように構成された尿道ステントの別の実施形態を図示する。
図17図17は、図2に示されるように、尿道前立腺部内に配置されるように構成された尿道ステントの別の実施形態を図示する。
図18図18は、図2に示されるように、尿道前立腺部内に配置されるように構成された尿道ステントの別の実施形態を図示する。
図19図19は、図2に示されるように、尿道前立腺部内に配置されるように構成された尿道ステントの別の実施形態を図示する。
図20図20は、図2に示されるように、尿道前立腺部内に配置されるように構成された尿道ステントの別の実施形態を図示する。
図21図21は、図2に示されるように、尿道前立腺部内に配置されるように構成された尿道ステントの別の実施形態を図示する。
図22図22は、図2に示されるように、尿道前立腺部内に配置されるように構成された尿道ステントの別の実施形態を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
いくつかの要因が、BPH(前立腺肥大としても知られる、前立腺肥大症)の発症と進行とに影響を与える。最も一般的な要因は、加齢及びホルモンバランスの変化である。図1は、男性の尿道100の断面を詳細に図示する。前立腺102は、膀胱104のすぐ下に示される。前立腺102によって囲まれた尿道100の領域は、尿道前立腺部106であり、それは、近位に開口する膀胱104及び遠位に開口する尿道膜様部108によって境界が定められる。尿道108の隔膜部では、尿道100は、海綿状の(陰茎)尿道110となり、外尿道口112まで続き、外尿道口112で終わる。内尿道括約筋(不図示)は、膀胱104と尿道前立腺部106の近位端部114との間の接合点に位置し、接合点を取り囲む。内尿道括約筋(不図示)は、膀胱104から尿道前立腺部106への、尿流の流れを制御する。外尿道括約筋(不図示)は、尿道108の隔膜部に位置する。外尿道括約筋(不図示)は、尿道前立腺部106の遠位端部116と陰茎尿道110の近位端部118との間の接合点を取り囲む。
【0015】
図2に図示されるように、前立腺102が肥大する時、尿道前立腺部106は圧縮されその直径が小さくなる。これによって、BPHの進行において認められるさまざまな症状が引き起こされる。これには、頻尿、尿意切迫感、夜間頻尿、排尿遅延、尿勢低下、腹圧排尿、及び排尿時間の延長が含まれるが、これらに限定されるものではない。BPHの症状を克服するための埋込器具200も、図2に示される。埋込器具200は、内尿道括約筋202及び外尿道括約筋204の間の、尿道前立腺部106内に完全に位置する尿道ステントである。
【0016】
本明細書で開示されているのは、尿道前立腺部の直径及び開口部を調節するように構成され得るステントを含む器具である。尿道前立腺部ステントは、尿道前立腺部のような、尿道の少なくとも一部分の開存性を維持又は改善するように構成された管状部材を含む、さまざまな一般的には人工的な器具を含み得る。いくつかの実施形態では、器具は、尿道前立腺部の開存性を改善し得るが、尿道膜様部又は陰茎尿道の開存性は改善し得ない。
【0017】
図3は、尿道ステント300の形式の、そのような器具のうちの1つのさまざまな図を示す。尿道ステント300、つまりステント300は、複数のノード302及びストラット304から、概ね円筒形に形成される。ある実施形態では、ノード302及びストラット304は、材料を円筒部材から切り出すことによって形成される。ノード302は、概ね三角形又は矢尻形状であってもよく、ステントの近位端部306又は遠位端部308のどちらの方向に向いていてもよい。ノード302は、長手方向のストラット310と角度付のストラット312とを互いに接続することによって、平行四辺形、台形、及び/又は四角形の形状のセルを形成する。特定のセルの、長手方向のストラット310と角度付のストラット312との間に形成される鋭角は、大きさが等しくてもよく、又は、近位方向においてセルからセルに移動するにつれて、大きさが小さくなってもよい。例えば、ステントのボディ領域320におけるセルの、長手方向のストラット310と角度付のストラット312との間に形成される鋭角は、ステントのテール領域322におけるセルの、長手方向のストラットと角度付のストラットとの間に形成される鋭角より、大きくてもよい。いくつかの実施形態では、セルの長手方向の長さは、ステント300の長手方向の軸に沿って近位方向に進むに従って(ステントの近位端部306に向かって)、長くなる。
【0018】
周方向に隣接して配置されたセルは、尿道ステント300の、長手方向の領域を形成する。例えば、図3の、図示されるステントは、ノーズ領域、ボディ領域、及びテール領域318、320、322を含む。それぞれの領域318、320、322は、以下に詳述されるように、特定の、臨床的及び解剖学的機能のために構成される。
【0019】
ステント300のノーズ領域318は、ステントの遠位端部308に配置される。ノーズ領域318におけるストラット群は、ループ324に形成される。ループ300は、留置器具の作業用内腔から及び/又は作業用内腔へ、ステント300を挿入及び/又は抜去するために使用され得る、留置部材及び/又は抜去部材(不図示)に取付るために使用され得る。ループ324を引っ張ると(挿入されている状態で膀胱から離れる遠位方向に)、てこの作用が生じ、ステント300が折り畳まれた状態に圧縮されるので、それは、留置器具(例えば、カテーテル、膀胱鏡等)のワーキングチャネル内に引き込まれ得る。
【0020】
ステント300のノーズ領域318は、臨床医が、ステント300を、その長手方向の軸のまわりに回転可能に方向を合わせることも可能にする。例えば、ループ324の基部326は、一般に、ステントの下面に沿って延びる、長手方向のストラットに位置し且つ整列する。ループの頂点328は、一般に、ステント300の上面に沿って延びる、長手方向のストラットに位置し且つ整列する。ループ324の形状は、臨床医が、ステントの上面及び下面を、患者の尿道の解剖学的構造に方向を合わせることを可能にする。
【0021】
ステント300によってもたらされる外向きのラジアルフォースは、一般に、ステントの近位方向に沿って減少する。尿道ステント300は、ステント300の近位方向(挿入されている場合に、膀胱へ向かう方向)には、より折り畳みやすい。例えば、ステント300は、折り畳み性の傾斜(collapsibility gradient)によって特徴づけることができる。ステント300のボディ領域320は、最大のラジアルフォースをもたらすので、尿道前立腺部内に挿入された際に、その折り畳み性は最小である。ステントのテール領域322は、最小のラジアルフォースしかもたらさないので、尿道前立腺部内に挿入された際に、その折り畳み性は最大である。
【0022】
ステント300のボディ領域320は、BPHを患う患者の前立腺のような、肥大した前立腺からの尿道前立腺部における圧縮力に対抗する、又は部分的に対抗するのに十分なラジアルフォースをもたらす。ステントのボディ領域320によってもたらされる半径方向の外向きの力は、排尿の間、尿道前立腺部を開いた状態にする。
【0023】
ステント300のテール領域322は、尿道前立腺部の近位部分に位置する内尿道括約筋の開閉に関する身体の制御を妨げないように、最小限のラジアルフォースしかもたらさない。テール領域は、ステントの近位端部306に位置する近位ノード群302をわずかに外側に拡張させて、内尿道括約筋の近く又は内尿道括約筋にある尿道前立腺部の軟部組織に係合するのに最低限の外側方向のラジアルフォースをもたらし得る。近位ノード302は、尿道前立腺部に接触する非外傷性アンカーとして機能することによって、いったん挿入されると、ステント300の近位(膀胱の方向)への移動を防ぎ得る。
【0024】
ステント300は、患者の特定の解剖学的構造に適合する大きさに作られ得る。例えば、患者の尿道前立腺部の長さが求められた後、その尿道前立腺部の長さ以下の長さを有する尿道ステント300が選択され得る。ある実施形態では、ステント300の長さは、ステントのテール領域322の長さによって決定される。換言すれば、異なる長さのステント300は、同一のノーズ領域及びボディ領域318、320を有し得るが、異なるテール領域322を有してもよい。例えば、より長いステントのテール領域322は、より長いストラット304で形成されてもよく、又は、より短いステントのテール領域322よりも多くのセルを含んでもよい。
【0025】
図4は、尿道ステント400の別の実施形態を示す。図4のステント400は、そのテール領域322の、広がってる近位部分402を有しているということを除いて、図3のステント300と類似している。例えば、テール領域322の近位部分の外径及び内径は、テール領域322の遠位部分より大きくてもよい。いくつかの実施形態では、ステント400の外径及び内径は、ステント400の近位方向に沿って、徐々に及び/又は均一に増加する。ステントの広がっている領域402は、ステント400を、マンドレル又は他の器具に配置してステント400を成形することによって得られるようにできる。
【0026】
図5は、尿道ステント500の、さらに別の実施形態を示す。図5のステント500は、図3のステント300とも類似であるが、特にステント500の近位端部506において、ストラット504の間に、より小さい鋭角502を含む。同様に、ステント500の最近位端部506における近位ノード510は、図3及び図4のステント300、400の近位ノードより、先が尖っている。
【0027】
図6は、さまざまな実施形態による、尿道ステント600のセル602の概略図を示す。ある実施形態では、上部の図で示されるように、それぞれのセル602は、平行四辺形に形成される。図示された実施形態では、長手方向に隣接するセル602の角度付のストラット604は同一の長さを有し、それぞれのセル602の長手方向のストラット606は同一の長さを有する。長手方向のストラット606の長さは、ステントの近位方向(挿入時、膀胱の方向)に進むに従い、長くなる又は同じままである。例えば、ステントのボディ遠位部分610における、長手方向のストラット606の長さは同一であり、ステントのテール中間部分612における長手方向のストラット606の長さは同一であり、ステントのテール近位部分614における、長手方向のストラット606の長さは同一である。セル602の鋭角θ、θ、θは同一であり、セル602の鈍角θ’、θ’、θ’も同一である。
【0028】
図6の下部の図で示される実施形態では、それぞれのセル606は、台形又は不等辺四角形として形成される。図示された実施形態では、長手方向の隣接するセル602の角度付のストラット604は、異なる長さを有し、それぞれのセル602の長手方向のストラット606も、異なる長さを有する。長手方向のストラット606の長さは、ステントの近位方向(挿入時、膀胱の方向)に進むに従い、長くなる又は同じままである。例えば、ステントのボディ遠位部分610における、上部の長手方向のストラット606の長さは、ステントのボディ遠位部分610における、下部の長手方向のストラット606より長い。同様に、ステントのテール中間部分612における、上部の長手方向のストラット606の長さは、ステントのテール中間部分612における、下部の長手方向のストラット606より長く、ステントのテール近位部分614における、上部の長手方向のストラット606の長さは、ステントのテール近位部分614における、下部の長手方向のストラット606より長い。セルの鋭角θ、θ、θは、ステント600の近位方向に沿って小さくなり、セルの鈍角θ’、θ’、θ’は、ステント600の近位方向に沿って大きくなる。それぞれの部分(例えば、ボディ遠位部分、テール中間部分、及びテール近位部分610、612、614)における、ステント600によってもたらされるラジアルフォースは、セル602の、鋭角、鈍角、及びストラットの長さのうちの1つ以上を制御することによって制御され得る。いくつかの実施形態では、セル602の鋭角θ、θ、θは、ステントの近位方向に沿って大きくなり、セル602の鈍角θ’、θ’、θ’は、ステント600の近位方向に沿って小さくなる。角度値及び/又は相対値は、特定の領域において求められる、外向きのラジアルフォースの大きさに応じて、選択され得る。例えば、鋭角及び/又は鈍角は、一定の角度値、減少する角度値、又は、増加してその後減少する角度値の組み合わせを含み得る。
【0029】
図7は、本明細書に記載されている尿道ステントのいずれかを送達するのに適した、送達器具700の1つの実施形態を図示する。図示された実施形態では、膀胱鏡が提供される。膀胱鏡は、ハンドピース704において終端するカテーテルチューブ702を備える。接眼レンズ706は、ハンドピースの近位端部708に配置される。カテーテルチューブ702は、複数のチャネル710、712、714を備える。図示された実施形態では、カテーテルチューブ702は、ワーキングチャネル710、2つの照明チャネル712、及びカメラチャネル714を備える。接眼レンズ706は、カメラ714に光学的に結合されているので、術者は、カテーテルチューブが挿入された管腔の内部を視覚化し得る。ポート716は、ワーキングチャネル710に流体的に結合されることによって、洗浄、吸引、ワーキングチャネル710に配置されたコントロールワイヤへのアクセス等をもたらす。
【0030】
尿道ステント(不図示)は、最初に、取外し可能な制御部材をステントのノーズ領域に取付ることによって、送達器具700のワーキングチャネル710内に挿入され得る。例えば、制御部材は、ステントに取外し可能に結合するための、かぎ状のワイヤ、解放可能な留め金を有するワイヤ等を備えてもよい。ステントは、制御部材の遠位端部において、制御部材に接続され得る。制御部材の近位端部は、制御部材がワーキングチャネルの遠位端部718でカテーテルチューブ702に入り、ポート716でカテーテルチューブから出るように、送達器具のワーキングチャネル710を通して、逆行方向に供給され得る。ステントは、制御部材を使用して、ノーズ領域から先にワーキングチャネルの遠位端部718内に引き込むことによって、ワーキングチャネル710の遠位端部718内に挿入され得る。ステントがワーキングチャネル710の管腔の内壁に接触して内壁を押す際に、引張力によって、ステントが折り畳まれるであろう。挿入される際に、ステントの近位端部(挿入時、膀胱に隣接するであろう端部)は、送達器具のワーキングチャネルの遠位端部718と面一になるか、又は遠位端部718から(近位に)後退するであろう。送達器具700は、以下のように、尿道前立腺部に対して、ステントを送達し、抜去し、及び/又は再位置決めするために使用され得る。
【0031】
図8は、尿道前立腺部において、本明細書に記載されるステントのうちのいずれかのような尿道ステントを留置する方法800の、ある実施形態を図示したフロー図である。図7の送達器具又は任意の他の送達器具のような送達器具が、提供される。本明細書に記載されるステントのうちのいずれかのような尿道ステントは、送達器具のカテーテルの遠位端部に挿入され、遠位端部の近くに配置される。
【0032】
方法800は、ブロック802で始まる。ブロック804では、送達器具は、尿道を通って、膀胱に向かって近位方向に進められる。送達器具は、カテーテルの遠位端部が膀胱内に入るまで進められる。ブロック806では、送達器具に対して制御部材を進めることによって、ステントの近位部分又はステントのテール部分の一部が展開され、それによって、ステントは、送達器具のワーキングチャネルから部分的に押し出され、膀胱に入る。テール部分の展開された部分は、膀胱内で拡張する。ブロック808では、送達器具及び制御部材は一緒に固定され、遠位方向に引き戻され、ステントの近位部分の近位端部が膀胱を出て、近位の尿道前立腺部に配置されるまで膀胱から離れるようにできる。スコープが慎重に抜去された後、ステントの残りの部分がワーキングチャネルから押し出され得る。ブロック810では、制御部材は、その後、ステントのノーズ領域から切り離され、制御部材及び送達器具がその後遠位へ引きもどされ、尿道から抜去され、ステントは尿道前立腺部内に留置されたままになる。ステントの長さは、ステントが、外尿道括約筋及び内尿道括約筋の間の、尿道前立腺部内のみに配置されるように選択される。方法800は、ブロック812で終わる。
【0033】
図9は、尿道前立腺部における、本明細書に記載されているステントのうちのいずれかのような尿道ステントを抜去する方法900の、ある実施形態を図示したフロー図である。図7の送達器具又は任意の他の送達器具のような、送達器具が提供される。本明細書に記載されているステントのうちのいずれかのような尿道ステントが、患者の尿道前立腺部内に配置される。
【0034】
方法900は、ブロック902で始まる。ブロック904では、送達器具は、尿道を通って、膀胱に向かって近位方向に進められる。送達器具は、カテーテルの遠位端部が、ステントの遠位端部/ノーズ部分に隣接するか又は近くなるまで進められる。ブロック906では、制御部材は、送達器具のワーキングチャネルを通って、ワーキングチャネルの遠位端部まで進められる。制御部材は、ステントのノーズ部分に取付される。ブロック908では、制御部材は、その後、遠位方向に(送達器具の近位端部に向かって)抜去され、それによって、制御部材及びステントを、送達器具のワーキングチャネル内に引き込む。代替として又は加えて、送達器具が近位に(膀胱に向かって)進められることによって、ステントを送達器具のワーキングチャネル内に捕捉し得る。ワーキングチャネルの内壁とステントとの接触によって、ステントが遠位方向に移動してワーキングチャネル内に入る時に、ステントは半径方向に折り畳まれる。いったんステントがワーキングチャネル内で部分的に又は完全に捕捉されると、ブロック910において、ステント及び送達器具は、尿道から抜去又は除去され得る。方法900は、ブロック912で終わる。
【0035】
図10は、尿道前立腺部における、本明細書に記載されているステントのうちのいずれかのような尿道ステントを再位置決めする、方法1000の、ある実施形態を図示したフロー図である。図7の送達器具又は任意の他の送達器具のような、送達器具が提供される。本明細書に記載されているステントのうちのいずれかのような尿道ステントが、患者の尿道前立腺部内に配置される。
【0036】
方法1000は、ブロック1002で始まる。ブロック1004では、ステントは、例えば図9に関して上述した方法に従って、最初に、送達器具のワーキングチャネル内に回収される。ブロック1006では、送達器具及び捕捉されたステントは、その後、新たな所望の位置に再配置される。例えば、送達器具及びステントは、近位の尿道前立腺部、又は任意の他の所望の位置に配置されてもよい。ブロック1008では、ステントは、その後、例えば図8に関して上述した方法に従って、留置される。
【0037】
図11は、目標位置においてステント又は他の器具を留置するために使用され得るバックストップ1100を留置するシステムのある実施形態を図示する。バックストップ1100は、カテーテル1102内で折り畳まれて配置される。結合されたフィラメント1104は、一端ではバックストップに結合され、フィラメントの他端ではキャップ1106に結合される。カテーテル1102は、尿道内で、近位の尿道前立腺部のような所望の位置まで進められる。カテーテル1102はフィラメント1104に対して引き抜かれ、それによってバックストップ1100は、膀胱内に留置されて開いた状態になる。バックストップ1100を膀胱頸部に配置するためにフィラメント1104が操作され得る。ステントの送達器具1108がバックストップに到達するまでフィラメントを覆って進められ得るように、キャップ1106が除去される。送達器具1108は、その後、ステントを留置するために抜去される。プッシャー1110又は制御部材は、送達器具1108が尿道から抜去される間、ステントを所定の位置に保持するために使用され得る。バックストップ1100及びフィラメント1104は、フィラメント1104及びバックストップ1100をそれらが尿道を出るまでステント及び尿道を通り抜けて引っ張ることによって、除去され得る。
【0038】
バックストップ1100は、膜、バルーン、又は長手方向の力に対して、拡張し折り畳まれ、かつ留置中にステントが膀胱内に移動するのを防ぐことができる、任意の他の材料とすることができる。
【0039】
図11は、ステントを、排尿筋、膀胱筋、又は前部前立腺に固定するために使用され得る固定機構1112も図示する。固定機構1112は、ステープルの形状であってもよい。固定機構1112は、また、溶解可能であってもよい。
【0040】
図12は、留置及び保持部材1202を備えた、折り畳み可能なステント1200を図示する。ステント1200の遠位リング(例えば、ノーズ部分)1204は、ステント1200が小径に折り畳まれることを可能にするヒンジ/折り曲げ点1206を含む。近位方向に向けられた(膀胱の方へ向いている)保持バーブ1202は、ステント1200の近位方向における移動(膀胱に向かって)を防止するが、ステント1200が、除去又は再配置のために、遠位方向において自由に進められることを可能にする。
【0041】
操作フック1208が遠位リング1204に取付されることによって、ステント1200がカテーテル1210内に引き込まれ得る。ある実施形態では、14Frの内径を有するカテーテル1210内に収まることができるように、ステント1200は、直径24Frの寸法から折り畳まれ得る。保持バーブ1202及びステントの寸法は、本明細書に記載されたステントのうちの任意のものの寸法で使用され得て、又は本明細書に記載されたステントのうちの任意のものの寸法に対応し得る。
【0042】
図13は、図12のステント1200を留置する、ある実施形態を図示する。ステント1200は、膀胱1300内に進められてから、尿道前立腺部1302内で遠位方向に抜去される。ステント1200上の保持バーブ1202は、尿道前立腺部1302の管腔壁に係合する。遠位リング1204(例えば、ノーズ部分)は、前立腺尖において、勢いよく開く。ステント1200の位置は、フレキシブルグラスパー(例えば、フレキシブル膀胱鏡グラスパー)を使用して調節され得る。同様に、ステント1200は、フレキシブルグラスパーを使用して尿道1302から遠位方向に抜去することによって、尿道1302から除去され得る。
【0043】
図14図22は、本明細書に記載された方法のうちのいずれかに従って使用するのに適した、尿道ステントの追加の実施形態を図示する。図示された実施形態は、ステントの壁パターンは、繰り返す、類似の形状のセルで、ばらつきなく模様が付けられてもよいし、又は、ステントは、異なる領域において異なる形状のセルを含んでもよいことを示す。さらに、セルの形状は、ひし形、又は他の四辺形を含む、任意の多角形であってもよい。いくつかの実施形態では、ステントは、それに加えて、又はその代わりに、3つの側面、5つの側面、又は5つを超える側面を有するセルを含み得る。
【0044】
図14図16の実施形態では、ある線に沿った長手方向のストラットは、ほぼ同じ長さであるが、周方向に隣接する線に沿った長手方向のストラットは、近位方向において長さが長くなる。図17のステントは、拡張された時に円筒形の形状を有し、セルは、近位方向に徐々に長くなる。図18のステントは、らせん形のテール部分を有する。図19図22のステントは、その拡張された構成に展開された状態でステントによってもたらされるラジアルフォースをさらに制御するために、開かれた上部領域を含む。
【0045】
本明細書に記載されたステントは、それらの長さ、拡張された直径、折り畳まれた直径、角度の値、及びストラット/壁の厚さによって、さらに説明され得る。さまざまな値と値の組合せとが可能であるが、以下の例に限定されるべきではない。いくつかの実施形態では、ステントは、約8mm~約12mmの範囲の、外径、拡張径を有する。ステントの全長は、約25mm~約55mmの範囲であり得る。ステントのノーズ部分は、約10mmの長さを有し得て、ボディ部分は、約15mmの長さを有し得て、テール部分の長さは、ステントの全長が患者の解剖学的構造に適合するように選択され得る。例えば、テール部分は、約5mm~約30mmの長さを有し得る。ステントのセル内の鋭角は、5~85度、10~60度、又は20~50度の範囲であり得る。ステント内の鈍角は、95~175度、120~170度、又は110~150度の範囲であり得る。ステントのストラット及び壁の厚さは、0.025mmと1.0mmとの範囲であり得る。
【0046】
[他の考察]
上で開示された実施形態の特定の特徴及び局面の、さまざまな組合せ又はサブコンビネーションがなされても、本発明の1つ以上の範囲に当てはまることが意図される。さらに、実施形態に関する、任意の特定の特徴、局面、方法、特性、特質、品質、属性、要素等についての本明細書における開示は、本明細書に記載の全ての他の実施形態において使用され得る。したがって、開示された発明のさまざまな形態を形成するために、開示された実施形態のさまざまな特徴及び局面は、組合せられ得て、又は互いに置換され得ることを理解されたい。よって、本明細書に開示された本発明の範囲は、上述の、特定の開示された実施形態によって限定されるべきではないことが意図される。さらに、本発明は、さまざまな改変、及び代替の形態の余地があるが、その特定の例が図面に示されており、本明細書で詳細に記載されている。しかしながら、本発明は、開示された特定の形態又は方法に限定されるものではなく、それとは反対に、本発明は、記載されたさまざまな実施形態及び添付の特許請求の範囲の精神及び範囲に包含される、全ての改変、均等物、及び代替物を対象とするものであることを理解されたい。本明細書に開示されているいかなる方法も、列挙されている順番で実行される必要はない。本明細書に開示されている方法は、術者によって行われる特定の行為を含む。しかしながら、それらは、明示的にも黙示的にも、これらの行為に対する、任意の第三者の指示も含み得る。例えば、「尿道前立腺部の遠位端部に近接して器具を挿入する」のような動作は、「尿道前立腺部の遠位端部に近接して器具を挿入することを指示する」ことを含む。本明細書に開示される範囲は、あらゆる全ての重複範囲、部分範囲、及びそれらの組合せも包含する。「~まで」、「少なくとも」、「~より大きい」、「~未満」、「~の間」等のような文言は、特定された数値を含む。本明細書で使用される、「ほぼ(approximately)」、「約(about)」、及び「実質的に」のような語によって先行される数値は、列挙された数値を含み、なお所望の機能を果たすか、又は所望の結果を達成する、記載された量に近い量も表す。例えば、「ほぼ(approximately)」、「約(about)」、及び「実質的に」という語は、記載された量の、10%未満、5%未満、1%未満、0.1%未満、及び0.01%未満である量を参照し得る。
図1
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【国際調査報告】