(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-30
(54)【発明の名称】ニッケルまたはコバルト水溶液の製造方法
(51)【国際特許分類】
C22B 23/00 20060101AFI20240723BHJP
C22B 3/04 20060101ALI20240723BHJP
C22B 3/26 20060101ALI20240723BHJP
C22B 3/44 20060101ALI20240723BHJP
C22B 3/38 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
C22B23/00 102
C22B3/04
C22B3/26
C22B3/44 101Z
C22B3/44 101A
C22B3/44 101B
C22B3/38
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547817
(86)(22)【出願日】2023-03-28
(85)【翻訳文提出日】2023-08-08
(86)【国際出願番号】 KR2023004100
(87)【国際公開番号】W WO2023243827
(87)【国際公開日】2023-12-21
(31)【優先権主張番号】10-2023-0010613
(32)【優先日】2023-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519197594
【氏名又は名称】高麗亞鉛株式会社
【氏名又は名称原語表記】KOREA ZINC CO., LTD.
(71)【出願人】
【識別番号】523282235
【氏名又は名称】ケムコ
(74)【代理人】
【識別番号】100077838
【氏名又は名称】池田 憲保
(74)【代理人】
【識別番号】100129023
【氏名又は名称】佐々木 敬
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ホン シク
(72)【発明者】
【氏名】ジュ,ジェ フン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,チャン ヨン
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA02
4K001AA07
4K001AA09
4K001AA10
4K001AA16
4K001AA19
4K001AA30
4K001DB03
4K001DB31
4K001DB34
(57)【要約】
本発明は、(A)原料を常圧加温浸出してニッケル、コバルト、および不純物を含む浸出液を生成する第1常圧加温浸出工程及び第2常圧加温浸出工程を含む浸出工程;(B)前記浸出液に第1溶媒抽出剤を投入し、ニッケル及び不純物を含む第1余液、及びコバルト及び不純物を含む第1有機層に分離する第1抽出工程;(C-i)前記第1余液に沈殿剤を投入し、マグネシウム、カルシウムまたはこれらの混合物を含む不純物を沈殿除去する沈殿除去工程;および(D-i)前記不純物が沈殿除去された第1余液に中和剤を投入し、ニッケルを含むニッケルケーキ(Cake)を選択的に沈殿する目的物沈殿工程;を含む、ニッケルまたはコバルト水溶液の製造方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)原料を常圧加温浸出してニッケル、コバルト、および不純物を含む浸出液を生成する第1常圧加温浸出工程及び第2常圧加温浸出工程を含む浸出工程;
(B)前記浸出液に第1溶媒抽出剤を投入して、ニッケル及び不純物を含む第1余液及びコバルト及び不純物を含む第1有機層に分離する第1抽出工程;
(C-i)前記第1余液に沈殿剤を投入して、マグネシウム、カルシウムまたはこれらの混合物を含む不純物を沈殿除去する沈殿除去工程;および
(D-i)前記不純物が沈殿除去された第1余液に中和剤を投入して、ニッケルを含むニッケルケーキ(Cake)を選択的に沈殿する目的物沈殿工程;を含む、ニッケルまたはコバルト水溶液の製造方法。
【請求項2】
(A)原料を常圧加温浸出してニッケル、コバルト、および不純物を含む浸出液を生成する第1常圧加温浸出工程及び第2常圧加温浸出工程を含む浸出工程;
(B)前記浸出液に第1溶媒抽出剤を投入してニッケル及び不純物を含む第1余液及びコバルト及び不純物を含む第1有機層に分離する第1抽出工程;および
(C-ii)前記第1有機層に硫酸溶液を投入して第2余液を製造し、前記第2余液に硫化物を投入してコバルト沈殿物を沈殿回収することによってマグネシウム、マンガン、亜鉛、銅、または、これらの混合物を含む不純物を精製する精製工程;を含む、ニッケルまたはコバルト水溶液の製造方法。
【請求項3】
前記第2常圧加温浸出工程の余液のpHは、前記第1常圧加温浸出工程の余液のpHより低い、請求項1または2に記載のニッケルまたはコバルト水溶液の製造方法。
【請求項4】
前記第2常圧加温浸出工程の余液は、前記第1常圧加温浸出工程に送液される、請求項1または2に記載のニッケルまたはコバルト水溶液の製造方法。
【請求項5】
前記第1溶媒抽出剤は、Bis(2、4、4-trimethylpentyl) phosphinic acidである、請求項1または2に記載のニッケルまたはコバルト水溶液の製造方法。
【請求項6】
前記第1抽出工程は、40℃でpH5.0超、5.4未満の条件で行われる、請求項1または2に記載のニッケルまたはコバルト水溶液の製造方法。
【請求項7】
前記沈殿剤は、フッ化ナトリウムである、請求項1に記載のニッケルまたはコバルト水溶液の製造方法。
【請求項8】
前記沈殿剤は、マグネシウム、カルシウムまたはこれらの混合物の含量の2.0当量超2.4当量未満の含量で投入される、請求項1に記載のニッケルまたはコバルト水溶液の製造方法。
【請求項9】
前記中和剤は、ナトリウムを含む塩基性物質である、請求項1に記載のニッケルまたはコバルト水溶液の製造方法。
【請求項10】
前記中和剤が投入された後、前記第1余液のpHは85℃で8以上である、請求項1に記載のニッケルまたはコバルト水溶液の製造方法。
【請求項11】
(E-i)前記ニッケルケーキを純水を用いて洗浄する水洗工程をさらに含む、請求項1に記載のニッケルまたはコバルト水溶液の製造方法。
【請求項12】
前記硫化物は、硫化水素ナトリウム(NaSH)である、請求項2に記載のニッケルまたはコバルト水溶液の製造方法。
【請求項13】
前記硫化物は、コバルト及び亜鉛含量の1.0当量超、1.6当量未満の含量で投入される、請求項2に記載のニッケルまたはコバルト水溶液の製造方法。
【請求項14】
(D-ii)前記コバルト沈殿物を硫酸溶液に溶解させた後、銅を除去する工程をさらに含む、請求項2に記載のニッケルまたはコバルト水溶液の製造方法。
【請求項15】
前記銅を除去する工程は硫化水素ナトリウム(NaSH)を銅含量の4.5当量超5.5当量未満の含量で投入して行われる、請求項13に記載のニッケルまたはコバルト水溶液の製造方法。
【請求項16】
(E-ii)前記銅が除去された水溶液に第2溶媒抽出剤を投入し、コバルト及び不純物を含む第3余液と、亜鉛及び不純物を含む第2有機層と、に分離する第2抽出工程をさらに含む、請求項14に記載のニッケルまたはコバルト水溶液の製造方法。
【請求項17】
前記第2溶媒抽出剤は、D2EHPA(Di-(2-ethylhexyl)phosphoric acid)である、請求項16に記載のニッケルまたはコバルト水溶液の製造方法。
【請求項18】
前記第2抽出工程は、40℃でpH2.4超3.2未満の条件で行われる、請求項16に記載のニッケルまたはコバルト水溶液の製造方法。
【請求項19】
(F)前記第3余液に沈殿剤を投入し、マグネシウムを含む不純物を沈殿除去する沈殿除去工程をさらに含む、請求項16に記載のニッケルまたはコバルト水溶液の製造方法。
【請求項20】
(G)前記不純物が沈殿除去された前記第3余液に中和剤を投入し、コバルトを含むコバルトケーキ(Cake)を選択的に沈殿する目的物沈殿工程;を含む、請求項19に記載のニッケルまたはコバルト水溶液の製造方法。
【請求項21】
前記中和剤が投入された後、前記第3余液のpHは85℃で8以上である、請求項20に記載のニッケルまたはコバルト水溶液の製造方法。
【請求項22】
(H)前記コバルトケーキを純水を用いて洗浄する水洗工程をさらに含む、請求項20に記載のニッケルまたはコバルト水溶液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケルまたはコバルト水溶液の製造方法に関するものである。より詳しくは、本発明は原料からニッケル及びコバルトを回収した後、リチウムイオ二次電池の正極活物質の製造に使用できるニッケルまたはコバルト水溶液を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ニッケル及びコバルト混合水酸化物を含む混合水酸化沈殿物(Mixed Hydroxide Precipitate,MHP)ケーキの原料からニッケルとコバルトをイオン化するために、1段からなる常圧加温反応浸出工程または常圧加温反応と加圧加温反応で構成された2段浸出工程が主に使用されてきた。
【0003】
しかし、1段常圧加温反応浸出工程の場合、Ni及びCoの回収率低下の問題が発生し、常圧加温反応と加圧加温反応で構成された2段浸出工程の場合、配管及び反応器の材質の侵食と腐食、損傷などによって材質の選択の幅が減るだけでなく、必要となるエネルギー費用によって競争力が劣るという問題点がある。
【0004】
また、イオン化されたニッケル及びコバルト水溶液はIon quest 801、Cyanex 272、Versatic Acid 10、LIX 84Iなどの溶媒抽出剤を用いてニッケル及びコバルトを選択的に回収していたが、溶媒抽出の過程で有機溶剤の使用による火災及び爆発事故の危険があり、溶媒抽出剤の単価が高いため、高純度硫酸ニッケル及びコバルトの製造費用を増加させ、価格面の競争力が劣るという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ニッケル及びコバルト混合水酸化物を含むMHPケーキの原料からニッケル及びコバルトを回収して高純度の水溶液を製造することを目的とする。
【0006】
また、本発明は、2段常圧加温浸出工程を用いてニッケル及びコバルトをイオン化してニッケル及びコバルトの回収率を向上させてエネルギー使用量を減らすことを目的とする。
【0007】
また、本発明は、高純度ニッケル水溶液の製造工程で沈殿剤であるフッ化ナトリウム(NaF)を用いてマグネシウムとカルシウムを分離し、高純度コバルト水溶液の製造工程で硫化水素ナトリウム(NaSH)を用いて溶解度の差を通じたマグネシウム、マンガンの分離を行い、硫化水素ナトリウム(NaSH)及びフッ化ナトリウム(NaF)等の使用を通じて銅、マグネシウム、マンガンなどの不純物を追加で分離して溶媒抽出工程を減らすことを目的とする。
【0008】
溶媒抽出工程は有機溶剤の使用による火災及び爆発事故の危険性があるため、本発明は、溶媒抽出工程を最小化することによって操業環境に適するだけでなく、最終製品の製造費用を減らすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面は、(A)原料を常圧加温浸出してニッケル、コバルト、および不純物を含む浸出液を生成する第1常圧加温浸出工程及び第2常圧加温浸出工程を含む浸出工程;(B)前記浸出液に第1溶媒抽出剤を投入してニッケル及び不純物を含む第1余液、及びコバルト及び不純物を含む第1有機層に分離する第1抽出工程;(C-i)前記第1余液に沈殿剤を投入し、マグネシウム、カルシウムまたはこれらの混合物を含む不純物を沈殿除去する沈殿除去工程;および(D-i)前記不純物が沈殿除去された第1余液に中和剤を投入し、ニッケルを含むニッケルケーキ(Cake)を選択的に沈殿する目的物沈殿工程;を含む、ニッケルまたはコバルト水溶液の製造方法に関するものである。
【0010】
本発明の他の一側面は、(A)原料を常圧加温浸出してニッケル、コバルト、および不純物を含む浸出液を生成する第1常圧加温浸出工程及び第2常圧加温浸出工程を含む浸出工程;(B)前記浸出液に第1溶媒抽出剤を投入してニッケル及び不純物を含む第1余液及びコバルト及び不純物を含む第1有機層に分離する第1抽出工程;および(C-ii)前記第1有機層に硫酸溶液を投入して第2余液を製造し、第2余液に硫化物を投入してコバルト沈殿物を沈殿回収することによってマグネシウム、マンガン、亜鉛、銅、または、これらの混合物を含む不純物を精製する精製工程;を含む、ニッケルまたはコバルト水溶液の製造方法に関するものである。
【0011】
本発明の一実施例は、前記第2常圧加温浸出工程の余液のpHは、前記第1常圧加温浸出工程の余液のpHより低い、ニッケルまたはコバルト水溶液の製造方法を提供することができる。
【0012】
本発明の一実施例は、前記第2常圧加温浸出工程の余液は、前記第1常圧加温浸出工程に送液される、ニッケルまたはコバルト水溶液の製造方法を提供することができる。
【0013】
本発明の一実施例は、前記第1溶媒抽出剤はBis(2、4、4-trimethylpentyl) phosphinic acidである、ニッケルまたはコバルト水溶液の製造方法を提供することができる。
【0014】
本発明の一実施例は、前記第1抽出工程は40℃でpH5.0超5.4未満の条件で行われる、ニッケルまたはコバルト水溶液の製造方法を提供することができる。
【0015】
本発明の一実施例は、前記沈殿剤はフッ化ナトリウムである、ニッケルまたはコバルト水溶液の製造方法を提供することができる。
【0016】
本発明の一実施例は、前記沈殿剤はマグネシウム、カルシウムまたはこれらの混合物の含量の2.0当量超2.4当量未満の含量で投入される、ニッケルまたはコバルト水溶液の製造方法を提供することができる。
【0017】
本発明の一実施例は、前記中和剤はナトリウムを含む塩基性物質である、ニッケルまたはコバルト水溶液の製造方法を提供することができる。
【0018】
本発明の一実施例は、前記中和剤が投入された後、第1余液のpHは85℃で8以上である、ニッケルまたはコバルト水溶液の製造方法を提供することができる。
【0019】
本発明の一実施例は、(E-i)前記ニッケルケーキを純水を用いて洗浄する水洗工程をさらに含む、ニッケルまたはコバルト水溶液の製造方法を提供することができる。
【0020】
本発明の一実施例は、前記硫化物は硫化水素ナトリウム(NaSH)である、ニッケルまたはコバルト水溶液の製造方法を提供することができる。
【0021】
本発明の一実施例は、前記硫化物はコバルト及び亜鉛含量の1.0当量超1.6当量未満の含量で投入される、ニッケルまたはコバルト水溶液の製造方法を提供することができる。
【0022】
本発明の一実施例は、(D-ii)前記コバルト沈殿物を硫酸溶液に溶解させた後、銅を除去する工程をさらに含む、ニッケルまたはコバルト水溶液の製造方法を提供することができる。
【0023】
本発明の一実施例は、前記銅を除去する工程は硫化水素ナトリウム(NaSH)を銅含量の4.5当量超5.5当量未満の含量で投入して行われる、ニッケルまたはコバルト水溶液の製造方法を提供することができる。
【0024】
本発明の一実施例は、(E-ii)前記銅が除去された水溶液に第2溶媒抽出剤を投入してコバルト及び不純物を含む第3余液と、亜鉛及び不純物を含む第2有機層と、に分離する第2抽出工程をさらに含む、ニッケルまたはコバルト水溶液の製造方法を提供することができる。
【0025】
本発明の一実施例は、前記第2溶媒抽出剤はD2EHPA(Di-(2-ethylhexyl)phosphoric acid)である、ニッケルまたはコバルト水溶液の製造方法を提供することができる。
【0026】
本発明の一実施例は、前記第2抽出工程は40℃でpH2.4超3.2未満の条件で行われる、ニッケルまたはコバルト水溶液の製造方法を提供することができる。
【0027】
本発明の一実施例は、(F)前記第3余液に沈殿剤を投入してマグネシウムを含む不純物を沈殿除去する沈殿除去工程をさらに含む、ニッケルまたはコバルト水溶液の製造方法を提供することができる。
【0028】
本発明の一実施例は、(G)前記不純物が沈殿除去された第3余液に中和剤を投入し、コバルトを含むコバルトケーキ(Cake)を選択的に沈殿する目的物沈殿工程;を含む、ニッケルまたはコバルト水溶液の製造方法を提供することができる。
【0029】
本発明の一実施例は、前記中和剤が投入された後第3余液のpHは85℃で8以上である、ニッケルまたはコバルト水溶液の製造方法を提供することができる。
【0030】
本発明の一実施例は、(H)前記コバルトケーキを純水を用いて洗浄する水洗工程をさらに含む、ニッケルまたはコバルト水溶液の製造方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、2段常圧加温工程を用いてニッケル及びコバルトの回収率を向上させつつエネルギー使用量を減らすことができる。
【0032】
また、不純物精製工程のうち、有機溶剤の使用による火災及び爆発事故の危険性がある溶媒抽出工程を最小化することによって、操業環境に適するだけでなく最終製品の製造費用も節減できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の一実施例による、ニッケルまたはコバルト水溶液を製造するための2段浸出工程及び第1抽出工程を示す図面である。
【
図2】本発明の一実施例による、ニッケル水溶液を製造するための沈殿除去工程及び目的物沈殿工程を示す図面である。
【
図3】本発明の一実施例による、コバルト水溶液を製造するための不純物精製工程、銅除去工程、第2抽出工程、沈殿除去工程、及び目的物沈殿工程を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の実施例は、本発明の技術的思想を説明するための目的で例示されたもののである。本発明による権利範囲が以下に提示される各実施例や各実施例に関する具体的説明により限定されるものではない。
【0035】
以下、図面を参照して本発明を説明する。
【0036】
図1は、本発明の一実施例による、ニッケルまたはコバルト水溶液を製造するための2段浸出工程(S10)及び第1抽出工程(S20)を示す図面である。
図2は、本発明の一実施例による、ニッケル水溶液を製造するための沈殿除去工程(S31)及び目的物沈殿工程(S32)を示す図面である。
図3は、本発明の一実施例による、コバルト水溶液を製造するための不純物精製工程(S32、S42)、銅除去工程(S62)、第2抽出工程(S72)、沈殿除去工程(S82)及び目的物沈殿工程(S92)を示す図面である。
【0037】
図1~
図3を参照すると、一連の工程を経て混合水酸化沈殿物(MHPケーキ)からリチウム二次電池の正極活物質の製造に使用できるニッケルまたはコバルト水溶液を製造する方法が提供され得る。このような方法によると、操業安定性及び純度を向上させ、製造費用を節減することができる。以下で、それぞれの図面を参考にそれぞれの工程について詳細に説明することにする。
【0038】
まず、
図1を参照すると、MHPケーキに対して2段の常圧加温浸出工程を行って浸出液を生成する浸出工程(S10)、及び浸出液をニッケル及び不純物を含む第1余液とコバルト及び不純物を含む第1有機層に分離する第1抽出工程(S20)を行うことができる。
【0039】
<浸出工程(S10)>
浸出工程(S10)は、水酸化物形態のMHPケーキをイオン化するために硫酸のような酸溶液に溶解させて浸出液を生成する工程である。浸出工程(S10)は第1常圧加温浸出工程(S11)及び第2常圧加温浸出工程(S12)を含む。常圧加温浸出工程は、100℃以下の温度で開放された反応器内に酸溶液を用意し、反応器内に原料を投入して、下記の反応式1による反応によって有価金属を浸出する工程である。ここで投入される原料は、ニッケルを40重量%の含量で含む水酸化物形態のMHPケーキであってもよい。
【0040】
[反応式1]
M(OH)2+H2SO4→MSO4+2H2O(M=Ni、Co、Mgなどの金属)
【0041】
第1常圧加温浸出工程(S11)及び第2常圧加温浸出工程(S12)は、2段で構成された装置内でそれぞれ行われるか、または、1つの加圧装置内で工程条件(例:温度、圧力、または酸度)のみ変えて行われることができる。
【0042】
第1常圧加温浸出工程(S11)を通じて原料から有価金属を浸出することができる。例えば、原料内のニッケル、コバルト、マンガンなどの有価金属が浸出され得る。その他にも、原料内の鉄、銅、アルミニウム、亜鉛、またはマグネシウムなどの元素が浸出され得る。第1常圧加温浸出工程(S11)は50℃~70℃の範囲の温度及び2.7~3.3の範囲のpH条件で約2時間行われ得る。温度とpH範囲を満たすことによって、最適の条件で高い浸出効率を得ることができる。
【0043】
第1常圧加温浸出工程(S11)において反応器内に投入される原料の固体密度は100g/L以上であってもよい。例えば、原料の固体密度は100g/L~200g/Lの範囲であってもよい。この時、固体密度は、反応器に予め投入された酸溶液の体積に対して加圧装置に投入される原料の質量比として定義する。言い換えると、固体密度は単位溶媒当たりに投入される原料の質量比であり得、溶媒1L当たりの原料の質量であり得る。
【0044】
第1常圧加温浸出工程(S11)において余液は第1抽出工程(S20)に投入され、残渣は第2常圧加温浸出工程(S12)で後続処理を施すことができる。
【0045】
第2常圧加温浸出工程(S12)では、80℃~100℃の範囲の温度で約3時間、第1常圧加温浸出工程(S11)での浸出残渣に対する浸出を行うことができる。第2常圧加温浸出工程(S12)のその他の条件は、第1常圧加温浸出工程(S11)の条件と同一であり得る。
【0046】
第2常圧加温浸出工程(S12)の余液のpHは、第1常圧加温浸出工程(S11)の余液のpHより低くてもよい。pHを調節することによって、各常圧加温工程における浸出率を高めることができる。これにより、原料に含まれた有価金属を全量浸出させることができる。例えば、原料に含まれたニッケル、コバルト、マンガン、鉄、銅、アルミニウム、亜鉛、またはマグネシウムなどが全量浸出され得る。
【0047】
一実施例において、第2常圧加温浸出工程(S12)において生成された余液は
図1に示されているように第1常圧加温浸出工程(S11)に送液されることができる。
【0048】
一般に用いられる常圧浸出法の場合、有価金属の浸出率を高めるために反応時間を18時間以上持続しなければならない。この場合、燃料、スチームの使用量増加に伴って追加費用が発生し、1日に処理できる原料量が少ないので生産性が低かった。しかし、本発明の一実施例によると、2段で構成された常圧加温浸出法を用いることによってニッケル及びコバルトの回収率を向上させつつエネルギー使用量を減らすことができる。従って、製造費用を減少させ、生産性が向上する。
【0049】
第2常圧加温浸出工程(S12)において発生する残渣は、
図1に示されているように、廃棄することができる。
【0050】
<第1抽出工程(S20)>
第1抽出工程(S20)は、2段の常圧加温浸出工程を経てイオン化されたニッケル及びコバルト水溶液(浸出液)に対し、第1溶媒抽出剤を用いて浸出液からニッケルを選択的に分離または抽出する工程である。
【0051】
ここで、第1溶媒抽出剤はニッケルのローディング率が低いものであれば特に限定されないが、例えば、Bis(2、4、4-trimethylpentyl) phosphinic acid(Cyanex272)であってもよい。
【0052】
浸出液に第1溶媒抽出剤を投入した場合、ニッケルは第1溶媒抽出剤にローディングされず、第1余液(Raffinate)に分配され、コバルトとその他の不純物(Mg、Mn、Znなど)は第1溶媒抽出剤とともに有機層に分配されて分離または抽出され得る。このような分離または抽出は、下記の反応式2及び3による反応によって生じ得る。ここで、反応式3による反応は、反応式2によって生成されるH2SO4を中和してpHを維持するための反応である。
【0053】
[反応式2]
2HR(org)+MSO4(aq)→MR2(org.)+H2SO4(aq.)
(R=Niなど、M=Co、Mg、Mnなど)
[反応式3]
H2SO4+Na2CO3→Na2SO4+H2O+CO2
【0054】
第1抽出工程は、40℃でpH5.0超5.4未満の条件で行うことができる。前記温度条件におけるpH範囲を満たすことによって、コバルト及び不純物のローディング率を高め、ニッケルを余液中に効率よく分離することができる。
【0055】
一実施例において、第1溶媒抽出剤(O)と水溶液(A)の比率は、液中の抽出成分の濃度に応じて調節することができる。例えば、第1溶媒抽出剤(O)と水溶液(A)の比(O:A)は0.5:1~2:1の範囲であり得る。例えば、O:Aは1.5:1にできる。
【0056】
次に、
図2を参照すると、第1抽出工程(S11)を経た第1余液から不純物を沈殿除去する沈殿除去工程(S31)、高純度のニッケルを含むニッケルケーキ(Cake)を選択的に沈殿する目的物沈殿工程(S41)、および高純度ニッケル水溶液を製造する最終浸出工程を行うことができる。
【0057】
<沈殿除去工程(S31)>
沈殿除去工程(S31)は、第1余液中に残存するマグネシウム、カルシウム、または、これらの混合物などの不純物を除去するために行われ得る。沈殿除去工程(S31)後、第1余液は目的物沈殿工程(S41)に送液されることができる。
【0058】
例えば、沈殿除去工程(S31)は、液中に除去剤を投入することができる。除去剤はマグネシウムまたはカルシウムと反応して沈殿物を形成できるものであれば特に限定されないが、例えば、フッ化ナトリウム(NaF)であってもよい。
【0059】
例えば、マグネシウム及びカルシウムは下記の反応式4のような反応を通じてフッ化マグネシウムまたはフッ化カルシウムとして沈殿することができる。
【0060】
例えば、50℃~70℃の範囲の反応温度で約2時間以上、沈殿除去工程(S31)を行って、余液中のニッケルの沈殿は減らしつつ、マグネシウム及びカルシウムのみ選択的沈殿を通じて分離することができる。
【0061】
[反応式4]
MSO4+2NaF=MF2+Na2SO4(M=Mg、Ca)
【0062】
一実施例において、フッ化ナトリウムはマグネシウム、カルシウムまたはこれらの混合物の含量の2.0当量(eq)を超えて投入されることができる。他の実施例において、フッ化ナトリウムはマグネシウム、カルシウムまたはこれらの混合物の含量の2.4当量(eq)未満で投入され得る。
【0063】
<目的物沈殿工程(S41)>
目的物沈殿工程(S41)において沈殿除去工程(S31)後の第1余液に中和剤を投入することができる。
【0064】
例えば、中和剤はナトリウムを含む塩基性物質であってもよい。例えば、中和剤は炭酸ナトリウム(Na2CO3)であってもよい。
【0065】
マグネシウム、カルシウムなどの不純物を除去した後、目的物沈殿工程(S41)において、ニッケルを下記の反応式5のような反応を通じてケーキ形態で沈殿させることができる。
【0066】
[反応式5]
3NiSO4+3Na2CO3+2H2O=NiCO3・2Ni(OH)2+3Na2SO4+3CO2
【0067】
目的物沈殿工程(S41)は、8以上のpH及び80℃~90℃の範囲の温度条件で、4時間以上行われ得る。
【0068】
目的物沈殿工程(S41)を通じてニッケルを回収することができるので、爆発及び火災の危険があって高価な有機溶剤の使用量を減らすことができる。従って、操業安定性及び生産性を向上させ、製造費用が節減され得る。
【0069】
図面に具体的に示してはいないが、沈殿したニッケルケーキ中にナトリウム成分が一部存在し得るので、後段で純水を用いた水洗工程を用いて水溶性であるナトリウム成分を除去することができる。ここで除去されたナトリウム成分を、中和剤である炭酸ナトリウム(Na2CO3)を製造するのに再使用することによって、製造費用を節減することができる。
【0070】
<最終浸出工程(S51)>
最終浸出工程(S51)は製造されたニッケルケーキ中のナトリウムなどの成分を水洗除去した後、硫酸溶液に溶解して高純度のニッケル水溶液を製造する工程である。
【0071】
最終浸出工程(S51)において、純水に硫酸を150g/L~200g/Lの酸度で混合した溶液にニッケルケーキを投入することができる。ニッケルケーキに含まれたニッケル、コバルト及び微量の不純物を硫酸溶液に溶解することができる。pHが2.0になるまで、硫酸水溶液とニッケルケーキを反応させる。一実施例において、最終浸出工程(S51)において1.0~3.0の範囲のpH及び50℃~70℃の範囲の温度条件で4時間以上反応が進行され得る。
【0072】
次に、
図3を参照すると、第1抽出工程(S11)を経た第1有機層に硫酸溶液を投入する第2余液製造工程(S32)、第2余液中のコバルト沈殿物を沈殿回収して不純物を精製する精製工程(S42)、回収されたコバルト沈殿物を再び硫酸溶液に溶解させる工程(S52)、硫化水素ナトリウムを投入して銅を除去する銅除去工程(S62)、銅が除去された水溶液を、コバルト及び不純物を含む第3余液、及び、亜鉛及び不純物を含む第2有機層に分離する第2抽出工程(S72)、第3余液中の不純物を沈殿除去する沈殿除去工程(S82)、高純度のコバルトを含むコバルトケーキ(Cake)を選択的に沈殿する目的物沈殿工程(S92)、および高純度コバルト水溶液を製造する最終浸出工程(S102)を行うことができる。
【0073】
<第2余液製造工程(S32)>
第2余液製造工程(S32)はコバルト及び不純物を含む第1有機層に硫酸溶液を投入して、コバルトを硫酸溶液にストリッピングする工程である。
【0074】
ストリッピングは、硫酸とローディングされたコバルトを反応させてコバルトを含むストリッピング余液を製造する工程であり、ローディングされていた不純物を水溶液に回収する工程である。
【0075】
<精製工程(S42)>
精製工程(S32)はストリッピングで得た第2余液からコバルトのみ選択的に回収するための工程である。沈殿除去工程(31)と異なる点は、精製工程(S32)では目的物であるコバルトを沈殿物形態で回収できるということである。
【0076】
例えば、精製工程(S32)は液中に硫化物を投入してコバルト沈殿物を生成することができる。例えば、硫化物は硫化水素ナトリウム(NaSH)であってもよく、下記の反応式6及び7による反応によってコバルトを硫化物形態で沈殿回収することができる。
【0077】
[反応式6]
CoSO4+2NaSH→2CoS+Na2SO4+H2SO4
[反応式7]
H2SO4+Na2CO3→Na2SO4+H2O+CO2
【0078】
例えば、70℃~90℃の範囲の反応温度において、4.5~5.0のpHを保ちながら、約3時間以上、精製工程(S32)を行うことができる。
【0079】
前記pH範囲において、CoSとZnSの溶解度は0.1mg/L以下と非常に低く、MgSとMnSの溶解度は非常に低いので、前記pH範囲の調節を通じ、コバルトと亜鉛のみを選択的沈殿を通じて分離し、マグネシウムとマンガンを精製することができる。
【0080】
一実施例において、硫化物はコバルト及び亜鉛含量の1.0当量超1.6当量未満の含量で投入されることができる。
【0081】
<硫酸溶液製造工程(S52)>
硫酸溶液製造工程(S52)はコバルトを含む沈殿物を硫酸溶液に溶解させて水溶液を製造する。
【0082】
例えば、硫酸溶液製造工程(S52)は下記の反応式8による反応によって行われ得る。
【0083】
[反応式8]
CoS+H2SO4+1/2O2→CoSO4+H2O+S
【0084】
例えば、硫酸溶液製造工程(S52)において、水溶液製造時の沈殿物の硫酸溶液中の固体密度(Solid density、S/D)は100g/L以上であり得る。
【0085】
例えば、80℃~100℃の範囲の反応温度で約20時間以上、硫酸溶液製造工程(S52)を行うことができる。
【0086】
<銅除去工程(S62)>
銅除去工程(S62)は液中に硫化水素ナトリウム(NaSH)を投入して液中の銅(Cu)を除去する工程である。銅は下記の反応式9のような反応を通じて硫化銅(CuS)化合物として沈殿することができる。
【0087】
[反応式9]
2CuSO4+2NaSH=2CuS+Na2SO4+H2SO4
【0088】
硫化銅(CuS)はpH1.0以上で沈殿が可能である。このために、銅除去工程(S62)において液中のpHは1.0~2.5に維持されることができる。一実施例において、銅除去工程(S62)において液中のpHは1.0~1.5に維持されることができる。液中のpHが1.0未満の場合、液中の銅を20mg/L以下に除去し難く、pHが2.5超の場合、コバルトの硫酸に対する溶解度が低くなり、コバルトの損失が発生し得る。
【0089】
一方、硫化水素ナトリウム(NaSH)は液中のpHが急激に変わらないようにゆっくり投入され得る。例えば、浸出液を攪拌して硫化水素ナトリウム(NaSH)を約3時間にわたって投入することができる。これにより、液中の一部の領域でpHが急激に増加し、コバルト損失率が増加するのを防止できる。
【0090】
一実施例において、硫化水素ナトリウム(NaSH)は銅含量の4.5当量(eq)超~5.5当量(eq)未満で投入されることができる。硫化水素ナトリウム(NaSH)の投入量が4.5当量(eq)以下の場合、銅除去率は95%以下であるので液中の銅を十分に除去し難い。硫化水素ナトリウム(NaSH)の投入量が5.5当量(eq)以上の場合、コバルトの除去率が0.05%以上であるのでコバルトの回収率が低くなり得る。
【0091】
50℃~70℃の範囲の反応温度で3時間以上、銅除去工程(S62)を行って余液中のコバルト沈殿は減らし、銅のみ選択的沈殿を通じて分離することができる。硫化水素ナトリウムは30wt%~70wt%の濃度を有する製品を用いることができる。
【0092】
<第2抽出工程(S72)>
第2抽出工程(S72)は、液中に第2溶媒抽出剤を投入してコバルト及び不純物を含む第3余液と、亜鉛及び不純物を含む第2有機層とに分離する工程である。
【0093】
ここで、第2溶媒抽出剤は、コバルトのローディング率が低いものであれば特に限定されないが、例えば、D2EHPA(Di-(2-ethylhexyl)phosphoric acid)であってもよい。
【0094】
液に第2溶媒抽出剤を投入した時、コバルトは、第2溶媒抽出剤にローディングされずに第3余液(Raffinate)に分配され、亜鉛、マグネシウム、マンガンなどが第2溶媒抽出剤とともに有機層に分配されて、分離または抽出されることができる。このような分離または抽出は下記の反応式10による反応によって生じることができる。
【0095】
[反応式10]
2HR(org.)+ZnSO4(aq.)→ZnR2(org.)+H2SO4(aq.)(R=Coなど)
【0096】
第2抽出工程(S72)は、40℃でpH2.4超3.2未満の条件で約10分間以上行われ得る。前記温度条件におけるpH範囲を満たすことによって、亜鉛などの不純物のローディング率を高めてコバルトのローディング率を低めるため、コバルトを余液中に効率よく分離することができる。
【0097】
一実施例において、第2溶媒抽出剤(O)と水溶液(A)の比は、液中の抽出する成分の濃度によって調節することができる。例えば、第2溶媒抽出剤(O)と水溶液(A)の比(O:A)は0.5:1~2:1の範囲であり得る。例えば、O:Aは1.5:1にすることができる。
【0098】
<沈殿除去工程(S82)>
沈殿除去工程(S82)は、第3余液中に残存するマグネシウムなどの不純物を除去するために行われ得る。沈殿除去工程(82)後、第3余液は目的物沈殿工程(S92)に送液されることができる。
【0099】
沈殿除去工程(S82)に関する詳細は、上記で沈殿除去工程(S31)について説明した内容を参照して理解することができる。
【0100】
<目的物沈殿工程(S92)>
目的物沈殿工程(S92)において、沈殿除去工程(S82)後の第3余液に中和剤を投入することができる。
【0101】
例えば、中和剤はナトリウムを含む塩基性物質であってもよい。例えば、中和剤は炭酸ナトリウム(Na2CO3)であってもよい。
【0102】
マグネシウムなどの不純物を除去した後、目的物沈殿工程(S41)において、ニッケルを下記の反応式11のような反応を通じてケーキ形態で沈殿させることができる。
【0103】
[反応式11]
3CoSO4+3Na2CO3+2H2O=CoCO3・2Co(OH)2+3Na2SO4+3CO2
【0104】
目的物沈殿工程(S92)は8以上のpH及び80℃~90℃の範囲の温度条件で、4時間以上行われ得る。
【0105】
目的物沈殿工程(S92)を通じてコバルトを回収できるので、爆発及び火災の危険性があって高価な有機溶剤の使用量を減らすことができる。よって、操業安定性及び生産性を向上させ、製造費用が節減され得る。
【0106】
図面に具体的に示してはいないが、沈殿したコバルトケーキ中にナトリウム成分が一部存在し得るので、後段で純水を用いた水洗工程を使用して水溶性であるナトリウム成分を除去することができる。ここで、除去されたナトリウム成分を、中和剤である炭酸ナトリウム(Na2CO3)を製造するのに再使用することによって、製造費用を節減することができる。
【0107】
<最終浸出工程(S102)>
最終浸出工程(S102)は、製造されたコバルトケーキ中のナトリウムなどの成分を水洗除去した後、硫酸溶液に溶解して高純度のコバルト水溶液を製造する工程である。
【0108】
最終浸出工程(S102)に関する詳細は、上記の最終浸出工程(S51)について説明した内容を参照して理解することができる。
【0109】
<実験例>
(1)実験に用いられたMHPケーキ原料の品位
【表1】
*表に示されていない含量は不純物(大部分がヒドロキシ基が付着した状態で存在)
【0110】
(2)2段常圧加温浸出工程を含む浸出工程を経た浸出余液の金属含量
【表2】
【0111】
表1及び表2を比較すると、2段常圧加温浸出工程を経た浸出余液のニッケル及びコバルト含量が高くなったことが確認できた。
(3)抽出工程におけるpH条件による有機層中のコバルト含量の比較
【0112】
Cyanex272(30%)を用いてコバルト及び不純物(Mg、Mn、Znなど)を有機層にローディングしてニッケルを水溶液である余液(Raffinate)に分離する最適のpH条件を検討するために、pH5.0、5.2、5.4で、それぞれ成分の有機層中のローディング率を比較した。40℃で10分間反応を進め、有機層と水溶液の比は1.5:1で行った。ローディング率は各成分別に浸出液に存在する含量を基準に、有機層中に存在する含量の相対的な比率で示した。
【0113】
【0114】
上記表3を参照すると、pH5.2の条件で、有機層中のローディングされたCo含量とNi含量との差が最も大きいという結果が示され、CoとNiの分離が最もよく生じることが確認できた。
【0115】
pH5.0の場合、有機層中のローディングされたNiの含量が少ないが、Coのローディングが比較的良くなく、pH5.4の場合、Coローディングが優れていたが、Niの分離が比較的良くないと確認された。
【0116】
(4)沈殿除去工程におけるフッ化ナトリウムの投入量による余液中の不純物(Mg、Ca)含量の比較
【0117】
フッ化ナトリウム(NaF)を用いて余液中の不純物(Mg、Ca)を沈殿除去する最適の投入量を検討するために、余液中のMg、Ca含量の2.0、2.2、2.4当量を投入して余液中の不純物(Mg、Ca)の含量を比較した。60℃で2時間反応を進行させた。
【0118】
【0119】
表4を参照すると、2.2当量を投入した時、余液中のMgとCaとの含量の合計が最も小さいことが確認できた。
【0120】
(5)不純物精製工程における硫化水素ナトリウム(NaSH)の投入量によるコバルトケーキ中の金属(Co、Cu、Zn、Mn、Mg)含量の比較
Cyanex272によって有機層中のローディングされたコバルトは硫酸溶液で水洗(Stripping)した後、硫化水素ナトリウム(NaSH)を用いてコバルトを硫化物形態で沈殿回収する最適な条件を検討するために、NaSHの投入量をコバルト、亜鉛含量の1.0、1.3、1.6当量別に投入して沈殿したケーキの含量を比較した。85℃、pH4.5~5.0の条件で3時間反応させた。
【0121】
【0122】
表5を参照すると、NaSHを1.3当量の条件で投入した時、ケーキ中のコバルト含量が高く、NaSHを1.3当量を超えて投入してもコバルト含量がこれ以上高くならないことが確認できる。
【0123】
(6)銅除去工程における硫化水素ナトリウム(NaSH)の投入量による銅除去率の比較
コバルト沈殿物を硫酸溶液に溶解した後、コバルト水溶液にNaSHを投入して銅をCuS形態で沈殿除去する最適の条件を検討するために、NaSH投入量を銅含量の4.5、5.0、5.5当量別に投入して銅の除去率を比較した。60℃、pH1.0の条件で3時間反応させた。除去率は各成分別にNaSH投入前後の水溶液中に存在する含量を比較して示した。
【0124】
【0125】
表6を参照すると、NaSHを5.0当量で投入した時、Cuの除去率が一番高いことが確認できた。
【0126】
(7)抽出工程におけるpH条件による有機層中のコバルト含量の比較
コバルトを沈殿除去したコバルト水溶液に対し、溶媒抽出剤であるD2EHPA(30%)を用いて水溶液中の亜鉛を有機層にローディングして分離する最適のpH条件を検討するために、pH2.4、2.8、3.2でそれぞれ成分のローディング率を比較した。40℃で10分間反応を進行させ、有機層と水溶液の比は1.5:1で進行させた。
【0127】
【0128】
表7を参照すると、pH2.8の条件で有機層中にローディングされるZn含量とCo含量との差が一番大きいという結果が示され、CoとZnの分離が最もよく生じることが確認できた。
【0129】
pH2.4の場合、有機層中のローディングされたCo含量が少ないが、Znローディングが比較的良くなく、pH3.2の場合、Znローディングが優れているが、Coの分離が比較的良くないものと確認された。
【0130】
(8)不純物を除去する最終水洗工程を経たニッケル及びコバルト水溶液の金属含量
【表8】
【0131】
【0132】
表2及び表8、9をともに比較すると、本発明の工程を経たニッケル及びコバルト水溶液の純度が高くなることが確認できた。
以上、添付した図面を参照して本発明の実施例を説明したが、本発明の属する技術分野において通常の知識を有する者は、本発明がその技術的思想もしくは必須の特徴を変更せずとも他の具体的な形態で実施され得るということを理解できるはずである。
【0133】
従って、以上で記述した各実施例は、全ての面において例示的なものであり、限定的ではないものと理解しなければならない。本発明の範囲は、詳細な説明よりは特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味及び範囲そしてその均等概念から導き出される全ての変更または変更された形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈されなければならない。
【国際調査報告】