(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-30
(54)【発明の名称】修飾された抗微生物ペプチド
(51)【国際特許分類】
C07K 7/08 20060101AFI20240723BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20240723BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240723BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240723BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240723BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240723BHJP
A01H 1/00 20060101ALI20240723BHJP
A01H 5/10 20180101ALI20240723BHJP
A01H 5/04 20180101ALI20240723BHJP
A01H 5/12 20180101ALI20240723BHJP
A01H 5/02 20180101ALI20240723BHJP
A01H 5/08 20180101ALI20240723BHJP
A01H 1/02 20060101ALI20240723BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20240723BHJP
A61K 38/10 20060101ALI20240723BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20240723BHJP
A61L 29/08 20060101ALI20240723BHJP
A01G 7/00 20060101ALI20240723BHJP
A01C 1/08 20060101ALI20240723BHJP
A01N 37/46 20060101ALI20240723BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
C07K7/08
C12N15/11 Z ZNA
C12N15/62 Z
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A01H1/00 A
A01H5/10
A01H5/04
A01H5/12
A01H5/02
A01H5/08
A01H1/02 Z
A61K38/16
A61K38/10
A61P31/00
A61L29/08 100
A01G7/00 604Z
A01C1/08
A01N37/46
A01P3/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577284
(86)(22)【出願日】2022-06-16
(85)【翻訳文提出日】2024-02-06
(86)【国際出願番号】 US2022072971
(87)【国際公開番号】W WO2022266648
(87)【国際公開日】2022-12-22
(32)【優先日】2021-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】511002799
【氏名又は名称】ドナルド・ダンフォース・プラント・サイエンス・センター
【氏名又は名称原語表記】Donald Danforth Plant Science Center
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】シャー, ディリップ エム.
(72)【発明者】
【氏名】テトリヤ, ミーナクシ
【テーマコード(参考)】
2B051
4B065
4C081
4C084
4H011
4H045
【Fターム(参考)】
2B051AA01
2B051AB01
2B051BA09
2B051BB20
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AA72X
4B065AA72Y
4B065AA88X
4B065AA88Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065CA24
4B065CA43
4B065CA44
4B065CA47
4B065CA53
4C081AC08
4C081AC09
4C081BA14
4C081CD112
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA18
4C084BA19
4C084CA13
4C084MA55
4C084MA56
4C084MA58
4C084MA60
4C084MA63
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZB32
4H011AA01
4H011AA03
4H011BB06
4H011DA13
4H011DD03
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA17
4H045BA41
4H045CA40
4H045EA06
4H045EA20
4H045EA34
4H045EA60
4H045FA74
(57)【要約】
デフェンシンの修飾されたC末端断片を含む抗微生物デフェンシンペプチドバリアント及びそれをコードする核酸が開示される。デフェンシンバリアントペプチドを含む組成物及び植物及び脊椎動物対象の微生物感染並びに家畜飼料及び食料の汚染を制御するためのそれらの使用の方法も開示される。
【選択図】
図5B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次のアミノ酸配列を含むペプチド
(a)修飾されたガンマ-コアコンセンサス配列GXCX3-10(F/W/Y/L/V/I/M)(F/W/Y)(F/W/Y/L/V/I/M)(配列番号50)、GXCX3-10(F/W/Y)(F/W/Y)(F/W/Y)(配列番号587)、GXCX3-8(F/W/Y)(F/W/Y)(F/W/Y)(配列番号33)、GXCX3-9(F/W/Y)(F/W/Y)(F/W/Y)(配列番号34)、GXCX3-8(F/W/Y)(配列番号43)、GXCX3-9(F/W/Y)(配列番号44)、GXCX3-8(F/W/Y/L/V/I/M)(配列番号45)、GXCX3-10(F/W/Y/L/V/I/M)(配列番号46)、GXCX3-8(L/V/I/M)(F/W/Y)(L/V/I/M)(配列番号47)、GXCX3-10(L/V/I/M)(F/W/Y)(L/V/I/M)(配列番号48)、GXCX3-8(F/W/Y/L/V/I/M)(F/W/Y)(F/W/Y/L/V/I/M)(配列番号49)、GXCX3-8(F/W/Y/L/V/I/M)(F/W/Y/L/V/I/M)(F/W/Y/L/V/I/M)(配列番号51)又はGXCX3-10(F/W/Y/L/V/I/M)(F/W/Y/L/V/I/M)(F/W/Y/L/V/I/M)(配列番号52)(前記ペプチドは、修飾されたガンマ-コアコンセンサス配列におけるシステイン残基に対してC末端に位置する第2のC末端システイン残基をさらに含み、前記ペプチドは、少なくとも3の正味正荷電を有し、疎水性アミノ酸含量は少なくとも18%である);又は
(b)配列番号1(前記ペプチドは、配列番号8、16、20、23、26、29、37、38、39、40又は41のデフェンシンペプチドの対応する全長配列を含まず;任意選択的に、前記ペプチドは、修飾されたガンマ-コアコンセンサス配列GXCX3-8(F/W/Y)(F/W/Y)(F/W/Y)(配列番号33)、GXCX3-9(F/W/Y)(F/W/Y)(F/W/Y)(配列番号34)、GXCX3-8(F/W/Y)(配列番号43)又はGXCX3-9(F/W/Y)(配列番号44)を含み;及び/又は任意選択的に前記C末端システイン残基又はC末端アミノ酸残基はアミド化されている)。
【請求項2】
請求項1に記載のペプチドであって、(i)参照デフェンシンC末端ペプチドのN末端及びC末端システインに対応する保存されたC1及びC4システイン残基(ここで、前記参照デフェンシンC末端ペプチドの保存されたC2及びC3システイン残基に対応するアミノ酸残基16及び18は、トリプトファン、チロシン、フェニルアラニン、ロイシン、バリン、イソロイシン又はメチオニンで独立に置換され;任意選択的に前記デフェンシンペプチドバリアントは、少なくとも3の正味正荷電を有し、疎水性アミノ酸含量は少なくとも18%である);又は(ii)配列番号7、配列番号12、配列番号13、配列番号14、15、17~20、22、23、25、26、28、29、31、32、42、578、579、581、582、584又は585の全長にわたり少なくとも50%、55%、60%、68%、75%、82%又は94%の配列同一性を有するアミノ酸配列(ここで、前記ペプチドは、配列番号8、16、20、23、26、29、37、38、39、40又は41のデフェンシンペプチドの対応する全長配列を含まない)を含み;任意選択的に、(i)又は(ii)のペプチドが、前記2つのシステイン残基の間にジスルフィド結合を含む、ペプチド。
【請求項3】
(i)30アミノ酸残基以下;又は(ii)15、16若しくは17~30のアミノ酸残基を含むか、基本的にそれらからなるか、又はそれらからなる、請求項1又は2に記載のペプチド。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のペプチドと、農業的に、薬学的に又は獣医学的に実行可能に許容可能な担体、希釈剤又は賦形と、を含む組成物。
【請求項5】
前記ペプチドが、約0.1、0.5、1.0若しくは5pg/ml~約1、5、20、50若しくは100mg/mlの濃度又は約0.1、0.5、1.0若しくは5pg/グラム~約1、5、20、50若しくは100mg/グラムの濃度で提供され、任意選択的に少なくとも100mMの濃度のナトリウム塩及び/又は少なくとも2mMの濃度のカルシウム塩を含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
植物病原性微生物による作物被害を予防又は軽減するための方法であって、植物、植物種子又は前記植物の他の部分を請求項4に記載の組成物の有効量と接触させるステップを含む、方法。
【請求項7】
前記植物病原性微生物が、フサリウム(Fusarium)sp.、アルテルナリア(Alternaria)sp.、ベルティシリウム(Verticillium)sp.、フィトフトラ(Phytophthora)sp.、コレトトリカム(Colletotrichum)sp.、ボトリチス(Botrytis)sp.、セルコスポラ(Cercospora)sp.、ファコプソラ(Phakopsora)sp. リゾクトニア(Rhizoctonia)sp.、スクレロチニア(Sclerotinia)sp.、フィチウム(Pythium)sp.、フォーマ(Phoma)sp.、レプトスフェリア(Leptosphaeria)sp.、ガエウマンノミセス(Gaeumannomyces)sp.、プッチニア(Puccinia)sp.セプトリア(Septoria)sp.、ペニシリウム(Penicillium)sp.、ラシオディプロディア(Diplodia)sp.、フォモプシス(Phomopsis)sp.、ミコスファエレラ(Mycosphaerella)sp.、ゴロビノミセス(Golovinomyces)sp.、エリシフェ(Erisyphe)sp.、アルブゴ(Albugo)sp.、セトスファエリア(Setosphaeria)sp.、コクリオボルス(Cochliobolus)sp.、ヘルミントスポリウム(Helminthosporium)sp.、ディプロディア(Diplodia)sp.又はステノカルペラ(Stenocarpella)sp.である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
機器及び請求項4に記載の組成物を含む医療機器であって、前記機器が、前記組成物で局所的にコーティングされている及び/又は前記組成物で含浸されている少なくとも1つの面を含む、医療機器。
【請求項9】
ステント、カテーテル、コンタクトレンズ、コンドーム、パッチ又は隔壁である、請求項8に記載の医療機器。
【請求項10】
微生物感染の処置、予防又は阻害を必要とする対象において微生物感染を処置、予防又は阻害するための方法であって、請求項4に記載の組成物の有効量を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項11】
前記投与が、前記組成物の局所、経腸、非経口及び/又は静脈内導入を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記対象が、ヒト、家畜、家禽、魚又はコンパニオン動物である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記微生物感染が、粘膜、眼、皮膚及び/又は爪の感染であり、前記組成物が、前記粘膜、眼、皮膚及び/又は爪に適用される、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記微生物感染が皮膚糸状菌によるものであり、前記皮膚糸状菌が、任意選択的に、トリコフィトン・ルブルム(Trichophyton rubrum)、トリコフィトン・インテルディジターレ(Trichophyton interdigitale)、トリコフィトン・ビオラセウム(Trichophyton violaceum)、トリコフィトン・トンスランス(Trichophyton tonsurans)、トリコフィトン・ソウダネンス(Trichophyton soudanense)、トリコフィトン・メンタグロフィテス(Trichophyton mentagrophytes)、ミクロスポルム・フラブム(Microsporum flavum)、エピデルモフィトン・フロッコスム(Epidermophyton floccosum)及びミクロスポルム・ジプセウム(Microsporum gypseum)からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記微生物感染が、アスペルギルス(Aspergillus)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、ペニシリウム(Penicillium)、リゾプス(Rhizopus)、アポフィソミセス(Apophysomyces)、クニンガメラ(Cunninghamella)、サクセナエア(Saksenaea)、リゾムコール(Rhizomucor)、シンセファロストルム(Syncephalostrum)、コケロミセス(Cokeromyces)、アクチノムコール(Actinomucor)、フィチウム(Pythium)、フサリウム(Fusarium)、ヒストプラズモシス(Histoplasmosis)又はブラストミセス(Blastomyces)種によるものである、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記微生物感染が、カンジダ(Candida)種によるものであり、前記カンジダ(Candida)種が、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)(C.アルビカンス(C.albicans))、C.アウリス(C.auris)、C.グラブラタ(C.glabrata)、C.パラシロシス(C.parasilosis)、C.トロピカリス(C.tropicalis)又はC.クルゼイ(C.krusei)である、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
微生物感染の処置、予防又は阻害を必要とする対象において微生物感染を処置、予防又は阻害する方法での使用のための、請求項4に記載の組成物。
【請求項18】
前記対象が、ヒト、家畜、家禽、魚又はコンパニオン動物である、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
請求項4に記載の組成物で少なくとも部分的にコーティングされている、植物部分。
【請求項20】
前記部分が種子であり、前記種子が、任意選択的に、トウモロコシ、ダイズ、小麦、米、綿、ブラッシカ(Brassica)sp.又はトマト種子である、請求項17に記載の植物部分。
【請求項21】
果実、野菜又は花である、請求項 に記載の植物部分。
【請求項22】
請求項1又は2に記載のペプチドを含むペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む組み換えポリヌクレオチドであって、第1の抗微生物ペプチドをコードするポリヌクレオチドが、前記第1の抗微生物ペプチドをコードするポリヌクレオチドとは異種であるプロモーターを含むポリヌクレオチドに操作可能に連結され、任意選択的に、前記配列における何れのアミノ酸置換も、正味正荷電を向上させるか又は維持し、及び/又は前記ペプチドの疎水性を向上させるか又は維持する、組み換えポリヌクレオチド。
【請求項23】
(i)輸送ペプチド、空胞標的化ペプチド及び/又は小胞体標的化ペプチド;(ii)色素体標的化ペプチド;及び/又は(iii)ポリアデニル化又は転写終結シグナルをコードするポリヌクレオチドさらに含み、(i)、(ii)及び/又は(iii)のポリヌクレオチドが、前記抗微生物ペプチドをコードするポリヌクレオチドに操作可能に連結される、請求項22に記載の組み換えポリヌクレオチド。
【請求項24】
前記第1の抗微生物ペプチドをコードするポリヌクレオチドが細胞の異種核又は色素体ゲノムに挿入され、前記異種核又は色素体ゲノムに位置する内在性プロモーターに操作可能に連結される、請求項22に記載の組み換えポリヌクレオチド。
【請求項25】
請求項1又は2に記載のペプチドを含むペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む植物核又は色素体ゲノムであって、前記ポリヌクレオチドが、前記核又は色素体ゲノムとは異種であり、前記ポリヌクレオチドが、前記核又は色素体ゲノムの内在性プロモーターに操作可能に連結される、植物核又は色素体ゲノム。
【請求項26】
請求項22に記載の組み換えポリヌクレオチドを含む細胞であって、任意選択的に細菌、酵母又は植物細胞である、細胞。
【請求項27】
請求項22に記載の組み換えポリヌクレオチドを含む、植物。
【請求項28】
前記組み換えポリヌクレオチドを含み、任意選択的に、種子、幹、葉、根、塊茎、花又は果実である、請求項27に記載の植物の植物部分。
【請求項29】
(i)請求項27に記載の植物を自家受粉させるか又は交配させ;(ii)前記自家受粉又は前記交配からの植物の組み換えポリヌクレオチドを含む種子を収穫し、それにより植物病原性微生物による感染に対する耐性を植物にもたらす植物種子を作製するステップを含む、植物病原性微生物による感染に対する耐性を植物にもたらす植物種子を作製するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、その全体において参照により本明細書中にそれぞれ組み込まれる、2022年6月6日提出の米国特許出願第63/365,928号及び2021年6月16日提出の米国特許出願第63/202,559号の優先権を主張する。
【0002】
政府の支援の声明
本発明は、National Science Foundationにより授与されたNational Science Foundation EAGER Award Number 1955461のもと、政府の支援によりなされた。政府は本発明において一定の権利を有する。
【0003】
配列リスト
Windowsオペレーティングシステムにおいて測定した場合に294,870バイトであり、2022年6月15日に作成され、本明細書とともに電子提出されたファイル名「P13511WO00_ST25」に含有される配列リストは、その全体において参照により本明細書中に組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
病原性微生物(例えば真菌又は卵菌)から農業的に重要な作物を守ることは、作物収量の向上に重要である。微生物感染は、多湿である気候において特に問題であり、作物保管中の大きな懸念事項となり得、このような感染の結果、微生物毒素による食料又は飼料の損傷及び汚染が起こり得る。残念ながら、現在の生育方法、収穫及び保管システムは、植物病原体感染を促進し得る。
【0005】
植物病原体の制御は、別個の属の複数の微生物を同時に制御する必要があることによりさらに複雑化する。例えば、アルテルナリア(Alternaria);アスコキタ(Ascochyta);アフェノミセス(Aphenomyces);ボトリチス(Botrytis);セルコスポラ(Cercospora);コレトトリカム(Colletotrichum);ディプロディア(Diplodia);エリシフェ(Erysiphe);フサリウム(Fusarium);ゲウマノミセス(Gaeumanomyces);ヘルミントスポリウム(Helminthosporium);レプトスフェリア(Leptosphaeria)、マクロフォミナ(Macrophomina);マグナポルテ(Magnaporthe);ネクトリア(Nectria);ペロノスポラ(Peronospora);フォーマ(Phoma);ファコプソラ(Phakopsora)、フィマトトリクム(Phymatotrichum);フィトフトラ(Phytophthora);プラズモパラ(Plasmopara);ポドスファエラ(Podosphaera);プッチニア(Puccinia);フィチウム(Pythium);ピレノフォラ(Pyrenophora);ピリキュラリア(Pyricularia);リゾクトニア(Rhizoctonia);スクレロチウム(Sclerotium);スクレロチニア(Sclerotinia);セプトリア(Septoria);チエラビオプシス(Thielaviopsis);ウンシヌラ(Uncinula);ベンチュリア(Venturia);及びベルティシリウム(Verticillium)種などの微生物は、全て認められている植物病原体である。
【0006】
ある種の微生物(例えば、カビ、酵母及び二形成真菌を含む真菌又は卵菌)は、ヒト、家畜、コンパニオン動物、魚類などを含む様々な脊椎動物に対する病原体でもあり得る。皮膚糸状菌、アスペルギルス(Aspergillus)、カンジダ(Candida)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、コッキディオミセス(Coccidiomyces)、ペニシリウム(Penicillium)、リゾプス(Rhizopus)、アポフィソミセス(Apophysomyces)、クニンガメラ(Cunninghamella)、サクセナエア(Saksenaea)、リゾムコール(Rhizomucor)、シンセファロストルム(Syncephalostrum)、コケロミセス(Cokeromyces)、アクチノムコール(Actinomucor)、フィチウム(Pythium)、フサリウム(Fusarium)、ヒストプラズモシス(Histoplasmosis)又はブラストミセス(Blastomyces)種を含む微生物も重要な脊椎動物病原体である。
【0007】
デフェンシンとして知られるタンパク質の一群は、植物病原体を阻害することが示されている。デフェンシンは、植物の自然免疫の重要な構成成分を構成する約45~54アミノ酸の小さなシステインに富むペプチドとして以前同定された(Thomma et al.,2002;Lay and Anderson,2005;Vriens et al.,2014)。植物において広く分布しているデフェンシンは、アミノ酸組成が大きく変動する。しかし、それらは全て、4又は5個の何れかの分子内ジスルフィド結合によって安定化されるコンパクトな形状を有する。植物デフェンシンは、保存されたGXCX3-9C(Xは何れかのアミノ酸である)配列を含む保存されたガンマコアペプチドを含むものとして以前特徴が調べられている(Sagaram et al.,2011;Lacerda et al.,2014)。以前特徴が調べられたガンマコアペプチドの三次元構造は、2つの逆平行β-シートからなり、内挿されるターン領域を有する(同書)。ある種のデフェンシンの抗微生物活性は、ガンマコアペプチドにおける正荷電アミノ酸残基の存在と相関があるとされている(Spelbrink et al.,Plant Physiol.,2004;Sagaram et al.,2013)。
【0008】
植物デフェンシンは、植物防御におけるそれらの役割について広く研究されてきた。いくつかの植物デフェンシンは、マイクロモル濃度で広い範囲の微生物の増殖を阻害し(Broekaert et al.1995;Broekaert et al.1997;da Silva Conceicao and Broekaert,1999)、トランスジェニック植物で発現させた場合、微生物病原体に対する強力な耐性を付与する(da Silva Conceicao and Broekaert,1999;Thomma et al.,2002;Lay and Anderson,2005)。ラディッシュ種子から単離された2つの小さなシステインに富むタンパク質、Rs-AFP1及びRs-AFP2は、この純粋なタンパク質がインビトロ抗微生物アッセイ培地に添加された場合、多くの病原性微生物の増殖を阻害した(米国特許第5,538,525号明細書)。Rs-AFP2タンパク質をコードする遺伝子を含有するトランスジェニックタバコ植物は、非形質転換植物よりも微生物による攻撃に対して強い耐性があることが分かった。
【0009】
デフェンシン遺伝子は、マメ科植物メディカゴ・ツルンカツラ(Medicago truncatula)においても同定されている(Hanks et al.,2005)。クローニングされたMtDef2タンパク質は、インビトロ実験を通じて、抗微生物活性があまりないか又は全くないことが示された(Spelbrink et al.,2004)。メディカゴ・ツルンカツラ(Medicago truncatula)デフェンシンタンパク質MtDef4(米国特許第7,825,297号明細書;その全体において参照により本明細書中に組み込まれる)及びMtDef5(国際公開第2014179260号パンフレット及び米国特許出願公開第20160208278号明細書;両者ともその全体において参照により本明細書中に組み込まれる)は抗微生物活性を有する。MtDef4デフェンシンタンパク質のC末端の16アミノ酸GMA4-Cペプチドは、3μMという低い濃度でフサリウム・グラミネアルム(Fusarium graminearum)を阻害した(Sagaram et al.,2011)。
【0010】
インビトロで強力な抗真菌活性を有する植物デフェンシンは、植物体において有効な疾患耐性を付与できないことがしばしばある。これにより、トランスジェニック作物における抗真菌剤としての商業的な開発が限定される。抗真菌植物デフェンシンは一般に陽イオン性であり、それらの配列中の陽イオン性残基は、陰イオン性真菌細胞膜との静電気的な相互作用によって真菌細胞エンベロープの通過を開始すると考えられる(Kerenga et al.,2019)。カリウム(K+)は、必須の主要栄養素であり、また植物において最も豊富な陽イオンである。植物細胞の細胞質におけるK+の濃度は、一貫して100~200mMであり(Shabala and Pottosin,2010、アポプラストにおいて10~200mMである(White and Karley,2010)。カルシウムは必須の二次微量栄養素であり、その濃度は、植物の乾燥重量の0.1%~6%の範囲であり得る(Broadley et al.,2003)。植物におけるナトリウム(Na+)の濃度は、0.001%~8%の範囲である(Marschner,1995)。Na+は、塩類土壌において植物にとって必須の微量栄養素である。
【0011】
現在まで特徴が調べられた多くの植物デフェンシンは、100mM KC1又は2mM CaCl2などの高濃度の1価及び2価陽イオンでそれらの抗真菌活性を喪失する。しかし、pH7で+10.1の予想電荷を有するトウモロコシ植物デフェンシンZmD32は、100mM NaClの存在下でカンジダ(Candida)sp.及びE.コリ(E.coli)に対する阻害活性を示し、一方で、pH7で+7.6の予想電荷を有するニコチアナ・ベンタミアナ(Nicotiana benthamiana)植物デフェンシンNbD6は、100mM NaClの存在下でカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)に対して阻害活性を示す(Kerenga et al.,2019)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
配列XGXCXGFXXXX(F/W/Y)XXXXC(配列番号1)を含むペプチド(ここで、前記ペプチドは、配列番号8、16、20、23、26、29、37、38、39、40又は41のデフェンシンペプチドの対応する全長配列を含まず;任意選択的に、前記ペプチドは、配列番号33で示される修飾されたガンマ-コアコンセンサス配列GXCX3-8(F/W/Y)(F/W/Y)(F/W/Y)、配列番号34で示されるGXCX3-9(F/W/Y)(F/W/Y)(F/W/Y)、GXCX3-8(F/W/Y)(配列番号43)又はGXCX3-9(F/W/Y)(配列番号44)を含み;及び/又は任意選択的に、C末端システイン残基又はC末端アミノ酸残基はアミド化されている)が提供される。配列番号3、4、5又は6の何れか1つの全長にわたり少なくとも75%、82%又は94%の配列同一性を有するペプチドは、配列番号8と同一ではなく、任意選択的に前記配列の何れのアミノ酸置換も、中性pHで正味正荷電を向上させるか若しくは維持し及び/又はペプチドの疎水性を向上させるか若しくは維持し、任意選択的に、C末端システイン残基がアミド化される。配列番号7、12、13、14、15、17~20、22、23、25、26、28、29、31及び32の全長にわたり少なくとも75%、82%又は94%の配列同一性を有するペプチド(ここで、このペプチドは、配列番号8、16、20、23、26、29、37、38、39、40又は41と同一でなく、任意選択的に配列番号5、配列番号13、14、15、18、19、20、22、23、26、28、29、31又は32のペプチドは、2つのシステイン残基の間にジスルフィド結合を含み、任意選択的に何れの置換も、中性pHで正味正荷電を向上させるか若しくは維持し及び/又はペプチドの疎水性を向上させるか若しくは維持し、任意選択的にC末端システイン残基又はC末端アミノ酸残基がアミド化される)が提供される。参照デフェンシンC末端ペプチドのN末端及びC末端システインに対応する保存されたC1及びC4システイン残基を含むデフェンシンC末端ペプチドバリアント(ここで、参照デフェンシンC末端ペプチドの保存されたC2及びC3システイン残基は、トリプトファン、チロシン、フェニルアラニン、ロイシン、バリン、イソロイシン又はメチオニンで独立に置換され;任意選択的にデフェンシンペプチドバリアントは、少なくとも3、3.5、4、5又は6の正味正荷電及び少なくとも18%の疎水性アミノ酸含量を有する)が提供される。修飾されたガンマ-コアコンセンサス配列GXCX3-8(F/W/Y)(F/W/Y)(F/W/Y)(配列番号33)、GXCX3-9(F/W/Y)(F/W/Y)(F/W/Y)(配列番号34)、GXCX3-8(F/W/Y)(配列番号43)、GXCX3-9(F/W/Y)(配列番号44)、GXCX3-8(F/W/Y/L/V/I/M)(配列番号45)、GXCX3-10(F/W/Y/L/V/I/M)(配列番号46)、GXCX3-8(L/V/I/M)(F/W/Y)(L/V/I/M)(配列番号47)、GXCX3-10(L/V/I/M)(F/W/Y)(L/V/I/M)(配列番号48)、GXCX3-8(F/W/Y/L/V/I/M)(F/W/Y)(F/W/Y/L/V/I/M)(配列番号49)、GXCX3-10(F/W/Y/L/V/I/M)(F/W/Y)(F/W/Y/L/V/I/M)(配列番号50)、GXCX3-8(F/W/Y/L/V/I/M)(F/W/Y/L/V/I/M)(F/W/Y/L/V/I/M)(配列番号51)、GXCX3-10(F/W/Y)(F/W/Y)(F/W/Y)(配列番号587)、GXCX3-12(F/W/Y)(F/W/Y)(F/W/Y)(配列番号588)、GXCX3-15(F/W/Y)(F/W/Y)(F/W/Y)((配列番号589)又はGXCX3-10(F/W/Y/L/V/I/M)(F/W/Y/L/V/I/M)(F/W/Y/L/V/I/M)(配列番号52)を含むC末端デフェンシンペプチドバリアントが提供される。ある特定の実施形態では、上述のペプチドは抗微生物活性を示し、この抗微生物活性は任意選択的に、抗真菌又は抗細菌活性の1つ以上である。上述のペプチドの何れか及び農業的に、薬学的に又は獣医学的に実行可能に許容可能な担体、希釈剤又は賦形剤を含む組成物も提供される。微生物感染の処置、予防又は阻害を必要とする対象において微生物感染を処置、予防又は阻害することにおける使用のための上述のペプチドの何れかと、担体、希釈剤又は賦形剤と、を含む組成物も提供される。
【0013】
(i)植物病原性微生物による作物被害を防ぐか若しくは軽減するか又は(ii)植物、植物部分、種子、そこから得られた家畜飼料若しくはそこから得られた食料の望ましくない微生物による汚染を防ぐための方法であって、植物、植物種子又は前記植物の他の部分を上述の組成物の何れかの有効量と接触させるステップを含み、この組成物が任意選択的に農業的に許容可能な担体、希釈剤又は賦形剤を含む、方法も提供される。
【0014】
上述の組成物の何れかで少なくとも部分的にコーティングされる種子を含む植物部分も提供され、ここで、この組成物は、任意選択的に農業的に許容可能な担体、希釈剤又は賦形剤を含む。
【0015】
機器及び上述の組成物を含む医療機器であって、本組成物で局所的にコーティングされ及び/又は本組成物に浸漬される少なくとも1つの面を含み、この組成物が任意選択的に薬学的に又は獣医学的に実行可能に許容可能な担体、希釈剤又は賦形剤を含む、医療機器も提供される。
【0016】
上述の組成物の何れかの有効量を前記対象に投与することを含む、微生物感染の処置、予防又は阻害を必要とする対象において微生物感染を処置、予防又は阻害するための方法であって、この組成物が任意選択的に薬学的に又は獣医学的に実行可能に許容可能な担体、希釈剤又は賦形剤を含む、方法も提供される。微生物又は酵母感染の処置、予防又は阻害を必要とする対象において微生物又は酵母感染を処置、予防又は阻害する方法における上述の組成物の何れかの何れかの(any of any of)使用が提供される。微生物又は酵母感染の阻害を必要とする対象において微生物又は酵母感染を阻害するための薬剤又は組成物の製造における上述の第1の抗微生物ペプチド又はタンパク質の何れかの使用も提供される。
【0017】
ポリヌクレオチドを含む組み換えポリヌクレオチド、上述のペプチドの何れかを含むペプチド(ここで、抗微生物ペプチドをコードするポリヌクレオチドは、前記第1の抗微生物ペプチドをコードするポリヌクレオチドにとって異種であるプロモーターを含むポリヌクレオチドに操作可能に連結され、任意選択的に前記配列中の何れのアミノ酸置換もペプチドの正味正荷電及び/又は疎水性を向上させるか又は維持する)が提供される。
【0018】
上述のペプチドの何れかを含む抗微生物ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む植物核又は色素体ゲノム(ここで、ポリヌクレオチドは、核又は色素体ゲノムにとって異種であり、このポリヌクレオチドは、核又は色素体ゲノムの内在性プロモーターに操作可能に連結される)が提供される。
【0019】
上述の組み換えポリヌクレオチド又はゲノムを含む、細胞、植物及び種子を含む植物部分が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1A-1B】
図1A及び1Bは、ニコチアナ・ベンタミアナ(Nicotiana benthamiana)の葉における滴下接種アッセイを示す。異なる濃度のGMA4Cペプチドを用いたB.シネレア(B.cinerea)に対する滴下接種アッセイのためにN.ベンタミアナ(N.benthamiana)の4週齢の葉を使用した。1A.滴下接種アッセイの画像による説明及び写真を両方とも白色光においてCropReporterを用いて温置の48時間後に撮った。損傷領域は、CropReporter画像において赤色で示される。GMA4C_AC野生型対照(配列番号2)に対するデータは最も左のパネルにあり(「GMA4C」と表示)、GMA4c_V1A(配列番号3)に対するデータは、左から2番目のパネルにあり、GMA4c_V2A(配列番号4)に対するデータは、左から3番目のパネルにあり、GMA4c_V3A(配列番号5)に対するデータは左から4番目のパネルにある。1B、ImageJソフトウェアを使用して48時間後に病変を測定し、それらのサイズをグラフで示す。
【
図2】
図2は、保存されたC1、C2、C3及びC4システイン(太字)を含む参照デフェンシンC末端ペプチドの非限定サブセットのアライメントを示す。保存されたガンマコアペプチドに下線を付す。
【
図3】
図3は、本明細書中で提供される、保存されたC1、C2、C3及びC4システイン(太字)、ガンマ-コアコンセンサス及び様々な修飾されたガンマ-コアコンセンサス配列を含む参照デフェンシンC末端ペプチドの非限定サブセットのアライメントを示す。保存されたガンマコアペプチドは下線を付し、修飾されたガンマ-コアコンセンサスペプチドにはない。
【
図4】
図4は、様々なGMA4Cデフェンシンペプチドバリアントの抗微生物活性を伴うデータの表を示す。
【
図5A-5B】
図5A、Bは、GMA4C_V9(配列番号581)及びGMA4C_V10ペプチド(配列番号582)の抗真菌活性を示す滴下接種アッセイの結果を示す。GMA4C_V10は、6μMで灰色カビ病の症状を完全に抑止する。
図5Bにおいて、最も左側のバーは、非処理対照(「B.シネレア(B.cinerea)」)に対するものであり、中央のバーはGMA4C_V9(配列番号581)処理、及び最も右側のバーはGMA4C_V10(配列番号582)処理である。3μM及び1.5μMにおいて、GMA4C_V10は、GMA4C_V9よりも灰色カビ病の症状の軽減において有効性が高い。
【
図6A-6B】
図6A、Bは、GMAOe1C_WT(配列番号577)、GMAOe1C_V3(配列番号578)及びGMAOe1C_V4(配列番号579)の抗真菌活性を示す滴下接種アッセイの結果を示す。
図6Bにおいて、最も左側のバーは、非処理対照(「B.シネレア(B.cinerea)」)に対するものであり、左から2番目のバーはGMAOe1C_WT処理であり、左から3番目のバーはGMAOe1C_V3処理に対するものであり、左から4番目のバーはGMAOe1C_V4処理に対するものである。3μM及び6μMでのGMAOe1C_V3及びGMAOe1C_V4は、灰色カビ病の症状を完全に抑止するが、GMAOe1C_WTは6μMでのみ有効である。1.5μMの濃度で、GMAOe1C_V3は、GMAOe1C_V4又はGMAOe1C_WTよりも有効である。
【
図7A-7B】
図7A、Bは、B.シネレア(B.cinerea)に対するGMA1C_V1(配列番号583)及びGMA1C_V2(配列番号584)の抗真菌活性を示す滴下接種アッセイの結果を示す。
図7Bにおいて、最も左側のバーは、処理対照(「B.シネレア(B.cinerea)」)に対するものであり、中央のバーは、GMA1C_V1(配列番号583)処理に対するものであり、最も右側のバーは、GMA1C_V2(配列番号584)処理に対するものである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
定義
「及び/又は」という用語は、本明細書中で使用される場合、他方を伴うか又は伴わない、2つの特定される特性又は構成要素のそれぞれの特定される開示であるものとして解釈されるべきである。従って、「及び/又は」という用語は、本明細書中で「A及び/又はB」などの句で使用される場合、「A及びB」、「A又はB」、「A」(単独)及び「B」(単独)を含むものとする。同様に、「及び/又は」という用語は、「A、B及び/又はC」などの句で使用される場合、次の実施形態:A、B及びC;A、B又はC;A又はC;A又はB;B又はC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);及びC(単独)のそれぞれを包含するものとする。
【0022】
本明細書中で使用される場合、「対応する(correspond)」、「対応すること(corresponding)」などの用語は、参照ペプチド配列(例えば、配列番号8、16、20、23、26、29、37、38、39、40、41又は89~122を含む参照デフェンシンC末端ペプチド配列)に対する任意のペプチド(例えばデフェンシンバリアントペプチド)におけるアミノ酸位置、突然変異及び/又は置換に関連して使用される場合、全て、あるペプチドが、参照配列とアラインされる場合に、参照アミノ酸配列中の残基とあるペプチド中の同じ位置を有する、あるペプチド配列中のアミノ酸残基を指す。ある特定の実施形態では、このアライメントは、デフェンシンバリアントペプチド及び参照デフェンシンC末端ペプチド配列のデフェンシンC末端ペプチドの4個の保存されたシステイン残基のアライメントである(例えば
図2及び3で示される場合)。
【0023】
本明細書中で使用される場合、「含む(include)」、「含む(includes)」及び「含むこと(including」)という語は、何れのさらなる指定されない特性も排除しないと同時にそれらが指す特性を少なくとも有するものとして解釈されるべきである。
【0024】
ある語が単数形で提供される場合、この用語の複数形により記載される他の実施形態も提供される。
【0025】
「抗微生物ペプチド」という句は、本明細書中で使用される場合、次の特徴、微生物細胞の増殖を阻害する、微生物細胞を死滅させる、胞子出芽、胞子形成又は接合などの微生物生活環のステージを破壊するか若しくは遅延させる、及び/又は植物若しくはヒト、家畜、家禽、魚若しくはコンパニオン動物(例えばイヌ又はネコ)を含む他の罹患し易い対象内での、微生物細胞感染、侵入又は拡散の破壊など、の何れかのうち1つ以上を示すペプチドを指す。
【0026】
本明細書中で使用される場合、「酸性」又は「陰イオン性」という用語は、アスパラギン酸及びグルタミン酸などのアミノ酸を指すために交換可能に使用される。
【0027】
本明細書中で使用される場合、「アミノ酸」という用語は、各アミノ酸に特異的な側鎖(R基)とともに、アミノ(-NH3)及びカルボキシラート(-CO2)官能基を含有する有機化合物を指す。ポリペプチド中のアミノ酸残基は、ある特定の例において、本明細書により、次のような一文字アミノ酸コード:G-グリシン(Gly);P-プロリン(Pro);A-アラニン(Ala);V-バリン(Val);L-ロイシン(Leu);I-イソロイシン(Ile);M-メチオニン(Met);C-システイン(Cys);F-フェニルアラニン(Phe);Y-チロシン(Tyr);W-トリプトファン(Trp);H-ヒスチジン(His);K-リジン(Lys);R-アルギニン(Arg);Q-グルタミン(Gln);N-アスパラギン(Asn);E-グルタミン酸(Glu);D-アスパラギン酸(Asp);S-セリン(Ser);又はT-スレオニン(Thr)で示される。
【0028】
本明細書中で使用される場合、「塩基性」及び「陽イオン性」という用語は、アルギニン、ヒスチジン及びリジンなどのアミノ酸を指すために交換可能に使用される。
【0029】
本明細書中で使用される場合、「陽イオン耐性」という句は、KC1又はNaClの非存在下でのデフェンシンペプチド又はデフェンシンペプチドバリアントの抗真菌活性と比較した場合、l00mM KCl又はl00mM NaClの存在下で、同等なインビトロ抗真菌若しくは抗微生物活性又は約1.5分の1、2分の1、3分の1若しくは4分の1までのインビトロでの抗真菌又は抗微生物活性の低下を示すデフェンシンペプチド又はデフェンシンペプチドバリアントを指す。
【0030】
本明細書中で使用される場合、「コンセンサス配列」という句は、2つ以上の相同配列をアラインし、生成される配列の各位置で相同配列の保存されるか又は一連の代替であるかの何れかの、アミノ酸、デオキシリボ核酸又はリボ核酸残基を有する新しい配列を導き出すことによって生成されるアミノ酸、DNA又はRNA配列を指す。
【0031】
「微生物損傷に効果がある」、「微生物損傷に効果があるか又は制御する」又は「微生物損傷を制御する」という句は、本明細書中で使用される場合、微生物病原体による感染ゆえの作物植物又は作物植物製品に対する損傷の軽減を指す。より一般的に、これらの句は、作物植物における病原性微生物の存在により引き起こされる悪影響の軽減を指す。微生物増殖の悪影響は、何らかのタイプの植物組織損傷又は壊死、何らかのタイプの植物収量減少、作物植物製品の価値の何らかの低下及び/又は望ましくない微生物代謝産物若しくはマイコトキシンを含む微生物増殖副産物の産生を含むと理解される。
【0032】
「デフェンシンペプチド」という句は、保存されたガンマコアペプチドを含むペプチドを指すために本明細書中で使用される。植物デフェンシンは、保存されたGXCX3-9Cガンマコアペプチド配列(配列番号9)(Xは、何れかのアミノ酸残基である)(Lacerda et al.)又は保存されたGXCX3-10Cバリアントガンマコアペプチド配列(配列番号10)(Xは何れかのアミノ酸残基である)を含むものとして以前に特徴付けられている。ある特定の実施形態では、本明細書中で開示されるデフェンシンペプチドはまた、GXCX3-12C(配列番号590)又はGXCX3-15C(配列番号591)を含む標準的ではないデフェンシンガンマコアペプチドも含み得る。従って、この開示において使用される場合、植物デフェンシン又はデフェンシン又はそれらの断片を含むC末端ペプチドは、保存されたGXCX3-9C(配列番号9)、GXCX3-10C(配列番号10)、GXCX3-12C(配列番号590)又はGXCX3-15C(配列番号591)ガンマコアペプチド配列(ここで、Xは何れかのアミノ酸残基である)を含み得る。デフェンシンペプチドは、抗微生物である、形質膜を透過性にし得る、リン脂質に結合し得る、スフィンゴ脂質に結合し得る、又はこれらの特性の何れかの組み合わせを示す、タンパク質を含む。デフェンシンペプチドは、天然又は非天然(例えば合成及び/又はキメラ)であり得る。
【0033】
「デフェンシンペプチドバリアント」という句は、(i)配列番号9又は10の保存されたガンマコアペプチド及び起源となるデフェンシンペプチドにおける少なくとも1つのアミノ酸置換;又は(ii)修飾されたガンマコアバリアント配列GXCX3-8(F/W/Y)(F/W/Y)(F/W/Y)(配列番号33)、GXCX3-9(F/W/Y)(F/W/Y)(F/W/Y)(配列番号34)、GXCX3-8(F/W/Y)(配列番号43)、GXCX3-9(F/W/Y)(配列番号44)、GXCX3-8(F/W/Y/L/V/I/M)(配列番号45)、GXCX3-10(F/W/Y/L/V/I/M)(配列番号46)、GXCX3-8(L/V/I/M)(F/W/Y)(L/V/I/M)(配列番号47)、GXCX3-10(L/V/I/M)(F/W/Y)(L/V/I/M)(配列番号48)、GXCX3-8(F/W/Y/L/V/I/M)(F/W/Y)(F/W/Y/L/V/I/M)(配列番号49)、GXCX3-10(F/W/Y/L/V/I/M)(F/W/Y)(F/W/Y/L/V/I/M)(配列番号50)、GXCX3-8(F/W/Y/L/V/I/M)(F/W/Y/L/V/I/M)(F/W/Y/L/V/I/M)(配列番号51)、GXCX3-10(F/W/Y)(F/W/Y)(F/W/Y)(配列番号587)、GXCX3-12(F/W/Y)(F/W/Y)(F/W/Y)(配列番号588)、GXCX3-15(F/W/Y)(F/W/Y)(F/W/Y)((配列番号589)又はGXCX3-10(F/W/Y/L/V/I/M)(F/W/Y/L/V/I/M)(F/W/Y/L/V/I/M)(配列番号52)の何れかを含む修飾されたデフェンシンペプチドを説明するために本明細書中で使用される。ある特定の実施形態では、本明細書中で提供されるデフェンシンペプチドバリアントは、全長デフェンシンペプチド未満である(例えば、(i)30アミノ酸残基以下;又は(ii)15、16若しくは17~30アミノ酸残基を含むか、基本的にそれらからなるか又はそれらからなるペプチド)。
【0034】
「参照デフェンシンC末端ペプチド」という句は、保存されたGXCX3-9Cガンマコアペプチド配列(配列番号9)、保存されたGXCX3-10Cバリアントガンマコアペプチド配列(配列番号10)、非標準的GXCX3-12C(配列番号590)ガンマコア配列又は非標準的GXCX3-15C(配列番号591)ガンマコア配列及びガンマコアペプチド配列に対してC末端に位置する2つのさらなる保存されたシステイン残基(ここで、参照デフェンシンC末端ペプチドのN末端の最も近くに位置するシステインは、配列番号9又は配列番号10のガンマコア配列のN-末端に対して最も近くに位置するシステインに対応する)を含む全長未満のデフェンシンペプチドを指すために本明細書中で使用される。参照デフェンシンC末端ペプチドの例としては、MtDef4 C末端ペプチド(配列番号8)、MtDef5A C末端ペプチド(配列番号16)、MtDef5B C末端ペプチド(配列番号41)、MtDef6ペプチド(配列番号21)、OeDef1 C末端ペプチド(配列番号24)、OeDef7C末端ペプチド(配列番号27)、SbDef1 C末端ペプチド(配列番号30)、NaD1 C末端ペプチド(配列番号37)、RsAFP2 C末端ペプチド(配列番号38)、DmAMP1 C末端ペプチド(配列番号39)及びHsAFP1(配列番号40)が挙げられる。参照デフェンシンC末端ペプチドの他の例としては、配列番号89~122が挙げられる。従って、参照デフェンシンC末端ペプチドは、4個の保存されたシステイン残基を含み、これらは本明細書中で、C1(両方のペプチドにおいて及びガンマコアペプチド配列において最もN末端)、C2(ガンマコアペプチド配列においてC1に対してC末端側に位置する)、C3(C2に対してC末端側)及びC4(C3に対してC末端側)と呼ばれる。保存されたガンマコアペプチド配列及びC1、C2、C3及びC4システインを含む参照デフェンシンC末端ペプチドの非限定サブセットのアライメントを
図2で示す。保存されたガンマコアペプチド配列及びC1、C2、C3及びC4システイン、C1及びC2システインを含むガンマ-コアコンセンサス及び本明細書中で提供されるある種の修飾ガンマ-コアコンセンサス配列を含む参照デフェンシンC末端ペプチドの非限定サブセットのアライメントを
図3で示す。配列番号123~434及び436~576の全長デフェンシンペプチドに含有されるものを含む他の参照デフェンシンC末端ペプチド。
【0035】
本明細書中で使用される場合、「編集する(edit)」、「編集すること(editing)」、「編集される(edited)」などの用語は、挿入、欠失及び/又はヌクレオチド置換がゲノムに導入される工程又は生成物を指す。このような工程は、ゲノムにおける1つ以上の部位の相同組み換え修復及び/又は非相同末端連結を誘導する方法を含む。
【0036】
「遺伝子編集された植物」又は「編集された植物」という句は、本明細書中で、植物のゲノムDNAにおいて1つ以上のヌクレオチド挿入、欠失、置換又は何れかのそれらの組み合わせを含む植物を指すために使用される。このような遺伝子編集された植物は、CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ介在編集、メガヌクレアーゼ介在編集、改変ジンクフィンガーエンドヌクレアーゼ介在編集などを含む技術によって構築され得る。
【0037】
「異種」という用語は、本明細書中で使用される場合、第1のポリヌクレオチドに操作可能に連結される第2のポリヌクレオチドに関連して、(i)第1のポリヌクレオチドの起源とは異なる起源由来の第2のポリヌクレオチド;(ii)第1のポリヌクレオチドと同じ起源に由来する第2のポリヌクレオチドであって、第1、第2又は両方のポリヌクレオチド配列がその元の形態から修飾されているもの;(iii)第1のポリヌクレオチドに対して、天然の細胞における第1及び第2ポリヌクレオチドのゲノム位置又は環境における順序及び/又は方向とは異なる順序及び/又は方向で又はゲノム位置若しくは環境において配置される第2のポリヌクレオチドを指すか;又は(iv)第2のポリヌクレオチドは、第1のポリヌクレオチドを含有する天然細胞で生じない。異種ポリヌクレオチドは、転写(例えばプロモーター及びエンハンサーエレメント)、転写産物量(例えば、イントロン、5’UTR及び3’UTR)、翻訳又はそれらの組み合わせを促進するポリヌクレオチド、並びにデフェンシンペプチドバリアント又はデフェンシンペプチド、スペーサーペプチド又は局在化ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、核又は色素体ゲノムは、第1のポリヌクレオチドを含み得、第2のポリヌクレオチドは、核又は色素体ゲノムにとって異種である。転写、転写産物量、翻訳又はそれらの組み合わせを促進する「異種」ポリヌクレオチド並びにデフェンシンペプチドバリアント又はデフェンシンペプチド、スペーサーペプチド又は局在化ペプチドをコードするポリヌクレオチドは、細胞にとって自己であり得るが、天然の細胞でのゲノム位置若しくは環境における順序及び/又は方向とは異なるゲノム位置又は環境における順序及び/又は方向で配置され得る。転写、転写産物量、翻訳又はそれらの組み合わせを促進するポリヌクレオチド並びにデフェンシンペプチドバリアント又はデフェンシンペプチド、スペーサーペプチド又は局在化をコードするポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドが天然の細胞中で互いに対して操作可能に連結されない場合、もう一方のポリヌクレオチドと異種であり得る。異種ペプチド又はタンパク質には、ある細胞又は生物が天然で生じないのでその細胞又は生物において見られないペプチド又はタンパク質が含まれる。そのため、異種ペプチド又はタンパク質には、このペプチドが、天然で生じる場合に細胞又は生物において見出される、細胞内の位置、細胞外の位置、組織とは異なる、細胞内の位置、細胞外の位置に局在化するか、又は組織において発現される、ペプチド又はタンパク質が含まれる。異種ポリヌクレオチドには、ある細胞又は生物が天然で生じる場合にその細胞又は生物では見られないポリヌクレオチドが含まれる。
【0038】
「植物病原性微生物の増殖を阻害する」、「微生物増殖を阻害する」などという句は、本明細書中で使用される場合、微生物増殖の何らかの測定可能な低下を生じさせる方法を指し、微生物増殖は、微生物細胞、胞子、分生子又は菌糸体の数及び/又は程度の何らかの測定可能な低下を含む。本明細書中で使用される場合、「植物病原性微生物の増殖を阻害する」は、植物における微生物増殖により引き起こされる悪影響の何らかの測定可能な低下を含むとも理解される。植物における微生物増殖の悪影響には、何らかのタイプの植物組織損傷又は壊死、何らかのタイプの植物収量の低下、作物植物製品の価値の何らかの低下及び/又は望ましくない微生物代謝産物又はマイコトキシンを含む微生物増殖副産物の産生が含まれる。本明細書中で使用される場合、「微生物増殖の阻害」などという句は、別段示されない限り、植物、ヒト又は動物での阻害を含み得る。
【0039】
「パーセント同一性」又は「配列同一性」という句は、本明細書中で使用される場合、同一であるエレメント数を最大にするアライメントにおける、定められる長さの2つのDNA、RNAセグメント内で同一である配列中のエレメント(即ち、アミノ酸又はヌクレオチド)の数を指し、同一であるエレメントの数をアライメントされるセグメントの定められる長さ中の総エレメント数で除して、100を乗じることによって計算される。
【0040】
「トランスジェニック」という句は、核又はオルガネラゲノムの生物の又はその子孫生物のDNAが10以上のヌクレオチド長の外因性DNA分子の挿入を含有する、生物又はその子孫を指す。「トランスジェニック植物」という句は、植物の又は子孫植物の核又は色素体ゲノムのDNAが10以上のヌクレオチド長の外因性DNA分子の導入を含有する、植物又はその子孫を指す。このような導入される外因性DNA分子は、異種起源由来又は自己起源由来の天然、非天然物(例えば合成及び/又はキメラ)であり得る。
【0041】
前述の定義の何れかが参照により本明細書中に組み込まれる何れかの特許又は非特許参考文献、本明細書中で引用される何れかの特許又は非特許参考文献又はその他で見られる何れかの特許又は非特許参考文献において提供される定義と合致しない範囲においては、前述の定義が本明細書中で使用されることが理解される。
【0042】
さらなる説明
デフェンシンペプチドバリアントと呼ばれる抗微生物ペプチド及びタンパク質が本明細書中で提供される。抗微生物ペプチド及びタンパク質は、植物、家畜飼料又は食料に直接適用され得るか;デフェンシンペプチドバリアント又はタンパク質を産生する微生物の形態で植物に適用され得るか又は植物がデフェンシンペプチドバリアント又はタンパク質を産生するように遺伝子編集され得る。本開示はまた、組み換えられたか又は編集されたポリヌクレオチド、組み換えられたか又は編集されたポリヌクレオチドで形質転換された微生物及び植物、デフェンシンペプチドバリアント及びタンパク質をコードする遺伝子編集された核又は色素体ゲノムを含む植物及び、植物病原性微生物を含む病原性微生物を制御することにおいて有用なデフェンシンペプチドバリアント及びタンパク質を含む組成物にも関する。ある特定の実施形態では、2つのデフェンシンペプチドバリアント又はデフェンシンペプチドバリアント及び別のペプチド(デフェンシンペプチドバリアント又はデフェンシンペプチドを含む)を含むデフェンシンバリアントタンパク質は、デフェンシンバリアントタンパク質で見出される抗微生物ペプチドのうち1つのみを含有するタンパク質と比較した場合、微生物増殖の阻害の改善をもたらし得る。ある特定の実施形態では、本明細書中で提供されるデフェンシンペプチドバリアント及びタンパク質は、陽イオン耐性である。このような陽イオン耐性デフェンシンは、トランスジェニック作物における植物病原性微生物の有効な制御をもたらすことにおいて陽イオン感受性のデフェンシンよりも有効であり得る。本明細書中で提供される陽イオン耐性のデフェンシンは、植物組織の正常な陽イオンに富む生理的環境において機能し得る(例えば、真菌病原体を含む植物病原性微生物を阻害する)。本明細書中で提供される陽イオン耐性デフェンシンはまた、病原性微生物が感染した対象(例えばヒト又は動物)の正常な陽イオンに富む生理的環境において機能し得る(例えば真菌病原体を含む病原性微生物を阻害する)。
【0043】
第1の抗真菌タンパク質をコードするポリヌクレオチドにとって異種であるプロモーターを含むポリヌクレオチドに操作可能に連結される第1の抗真菌ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む組み換えポリヌクレオチドが本明細書中で提供される。ある特定の実施形態では、第1の抗真菌ペプチドは、デフェンシンペプチドバリアントである。
【0044】
デフェンシンペプチドバリアントは、配列:Xaa1-G-Xaa3-C-Xaa5-Xaa6-Xaa7-Xaa8-Xaa9-Xaa10-Xaa11-Xaa12-Xaa13-Xaa14-Xaa15-Xaa16-Xaa17-Xaa18-Xaa19-Xaa20-Xaa21-Xaa22-Xaa23(式中、Xaa1は、F、G又は存在せず;Xaa3は、A、G、Y、H、S、R又はDabであり;Xaa5は、H、L、S、N、R、K又はDabであり;Xaa6、Xaa7、Xaa8、Xaa9、Xaa10、Xaa11、Xaa12、Xaa13、Xaa14及びXaa15はそれぞれ独立にR、K、H、N、D、F、G、Q、P、A、I、L、V、Y、S又はDabであり、Xaa8、Xaa9、Xaa10、Xaa11、Xaa12、Xaa13、Xaa14及び/又はXaa15のうち1つ以上は存在しなくてもよく;Xaa16は、C、V、W、Y又はFであり;Xaa17は、L、I、W、Y又はFであり;Xaa18は、C、V、W、Y又はFであり;Xaa19は、K、T、F、W又はYであり;Xaa20は、R、K、T、L、F、Q又はDabであり、Xaa21は、N、H、K、R、P、Q、I、F、W又はYであり;Xaa22は、N、H、K、P、Q、I、F、W、Yであるか又は存在せず;Xaa23はCであり、任意選択的にアミド化され、Dabは、ジアミノ酪酸である)(配列番号1)を含むか、基本的にそれらからなるか又はそれらからなるペプチドを含む。ある特定の実施形態では、配列番号1を含むペプチドは、配列番号1のC末端に対してC末端側に存在する1つ以上のさらなるアミノ酸をさらに含み得、前記C末端アミノ酸は任意選択的にアミド化される。ある特定の実施形態では、配列番号1を含むペプチドは、修飾されたガンマコアバリアント配列GXCX3-8(F/W/Y)(F/W/Y)(F/W/Y)(配列番号33)、GXCX3-9(F/W/Y)(F/W/Y)(F/W/Y)(配列番号34).GXCX3-8(F/W/Y)(配列番号43)又はGXCX3-9(F/W/Y)(配列番号44)を含み得る。デフェンシンペプチドバリアントはまた、配列:Xaa1-GRC-Xaa5-GFRRR(F/W/Y)(F/W/Y)(F/W/Y)XXXC-(NH2)(式中、Xaa1は、F、G又は存在せず;Xaa5は、R又はKであり;Xaa14は、T、F、W又はYであり;Xaa15は、R、K又はDabであり;Xaa16は、I、F、W又はYであり;Xaa17はCであり、任意選択的にアミド化され、ここでDabは、ジアミノ酪酸である)(配列番号14)により包含されるペプチドも含む。デフェンシンペプチドバリアントは、配列Xaa1-G-Xaa2-C-Xaa5-Xaa6-Xaa7-GF-Xaa10-Xaa11-Xaa12-(F/W/Y)(F/W/Y)(F/W/Y)-Xaa16-Xaa17-Xaa18-C-(NH2)(ここで、Xaa1は、F、Gであるか又は存在せず、Xaa3は、A、F、W、Yであるか又は存在せず;Xaa5は、H、R又はKであり;Xaa6は、R又はKであり;Xaa7は、Q、R又はKであり;Xaa10は、G、R又はKであり;Xaa11は、F、W、Y、R又はKであり;Xaa12は、A、F、W、Y、R又はKであり;Xaa16は、F、W、Y、R又はKであり;Xaa17は、R又はKであり;Xaa18は、R又はKであり;C末端システインは任意選択的にアミド化される)(配列番号17)により包含されるペプチドをさらに含む。本明細書中で示されるデフェンシンバリアントペプチドは、配列番号8、16、20、23、26、29、37、38、39、40又は41の野生型デフェンシンペプチドの対応する全長配列を含まない。表1は、配列番号1、3~7 11、13及び14のデフェンシンペプチドバリアント並びに配列番号2及び配列番号8のGMA4Cペプチドを示す。ある特定の実施形態では、上述のデフェンシンペプチドバリアントは、(i)30アミノ酸残基以下;又は(ii)15、16若しくは17~30アミノ酸残基を含むか、基本的にそれらからなるか又はそれらからなる。
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
ある特定の実施形態では、この開示のデフェンシンペプチドバリアントは、植物デフェンシンの抗真菌活性に関与するデフェンシンガンマ-コアペプチドを含有することを特徴とする。ガンマ-コアペプチドは一般的に、正味正荷電を含有し、少なくとも1個の疎水性アミノ酸を有する。ある特定の実施形態では、デフェンシンペプチドバリアントは、GXCX3-9Cのガンマ-コアコンセンサス配列(式中、Xは、何れかのアミノ酸である)(配列番号9)を含み得る。ある特定の実施形態では、デフェンシンペプチドバリアントは、GXCX3-10Cのバリアントガンマ-コアコンセンサス配列を有するガンマ-コアペプチド(ここでXは何れかのアミノ酸である)(配列番号10)を含む。ある特定の実施形態では、デフェンシンペプチドバリアントは、GXCX3-9C(配列番号9)又はGXCX3-10C(配列番号10)のガンマ-コアコンセンサス配列を含み;ここでXは、陽イオン性及び/又は疎水性アミノ酸から優先的に選択される。ある特定の実施形態では、デフェンシンペプチドバリアントは、配列番号1を含み、GXCX3-9C(配列番号9)又はGXCX3-10C(配列番号10)のガンマ-コアコンセンサス配列を含み;ここでXは陽イオン性及び/又は疎水性アミノ酸から優先的に選択され、ここで配列番号1の可変(Xaa)アミノ酸残基の何れも、配列番号3~7で見出される陽イオン性及び/又は疎水性アミノ酸の数を維持するか若しくは増加させるアミノ酸残基を含む。ガンマ-コアモチーフの外側の特異的なアミノ酸もリン脂質-及びスフィンゴ脂質-結合に関与する一方でガンマ-コアペプチドがリン脂質-及び/又はスフィンゴ脂質-結合に関与すると考えられる。配列番号1に関して、アミノ末端(又はある特定の実施形態ではデフェンシンペプチドバリアントにおける対応する領域)からの第1のシステイン(C1)と第2のシステイン(C2)との間の配列も抗微生物活性に寄与する。
【0049】
本明細書中で提供されるバリアントデフェンシンC末端ペプチドを含むデフェンシンペプチドバリアントはまた、野生型デフェンシンC末端ペプチド配列の保存されたシステイン残基の1つ以上の置換も含み得る。置換され得る保存されたシステイン残基は、デフェンシンC末端ペプチドにおけるC1、C2、C3又はC4に対応し得、C1は、最もN末端側のシステインであり、C2は、2番目にN末端側のシステインであり、C3は、3番目にN末端側のシステインであり、C4は、最もC末端側のシステインであり;
図2を参照されたい)。C1、C2、C3及びC4の保存されたシステインを含む参照デフェンシンC末端ペプチドの非限定サブセットは、配列番号8のGMA4Cペプチド、配列番号16のMtDef5Aペプチド、配列番号41のMtDef5Aペプチド、配列番号20のMtDef6ペプチド、配列番号23のOeDef1ペプチド、配列番号26のOeDef7ペプチド、配列番号29のSbDef1ペプチド、NaD1 C末端ペプチド(配列番号37)、RsAFP2 C末端ペプチド(配列番号38)、DmAMP1 C末端ペプチド(配列番号39)及びHsAFP1(配列番号40)を含み、デフェンシンペプチドバリアントを得るために少なくともC2及び/又はC3の位置において置換され得る。C1、C2、C3及びC4の保存されたシステインを含むさらなる非限定参照デフェンシンC末端ペプチドは、配列番号89~122で示されるデフェンシンC末端ペプチドを含む。C1、C2、C3及びC4の保存されたシステインを含むさらなる非限定参照デフェンシンC末端ペプチドは、配列番号123~434及び436~576の全長デフェンシンペプチドにおいて含有されるデフェンシンC末端ペプチドを含む。
【0050】
ある特定の実施形態では、本明細書中で提供されるデフェンシンペプチドバリアントは、GXCX3-9C(配列番号9)又はGXCX3-10C(配列番号10)のカノニカルなガンマ-コアコンセンサス配列を欠く。ある特定の実施形態では、本明細書中で提供されるデフェンシンペプチドバリアントは、配列番号9又は10のガンマ-コアコンセンサス配列のC末端システイン残基(例えば参照配列番号8、16、20、23、26、29、37、38、39、40、41又は89~122におけるC2)に対するトリプトファン、チロシン又はフェニルアラニンの置換を含む。ある特定の実施形態では、本明細書中で提供されるデフェンシンペプチドバリアントは、参照C末端デフェンシンペプチド(例えば、配列番号8、16、20、23、26、29、37、38、39、40、41又は89~122)中のC2及びC3残基に対応するC2及びC3残基の両方の置換を含む。C2及びC3のバリン置換を有するGMA4Cバリアントは、配列番号5で示される。C2及びC3のトリプトファン置換を有するGMA4Cバリアントは、配列番号13で示される。ある特定の実施形態では、本明細書中で提供されるデフェンシンペプチドバリアントは、参照C末端デフェンシンペプチド(例えば、配列番号8、16、20、23、26、29、37、38、39、40、41又は89~122)中のC2及びC3残基に対応するC2及びC3残基のトリプトファン、チロシン又はフェニルアラニン置換を含む。ある特定の実施形態では、本明細書中で示されるデフェンシンペプチドバリアントは、参照C末端デフェンシンペプチド(例えば、配列番号8、16、20、23、26、29、37、38、39、40、41、89~122)中のC2残基とC3残基との間に位置するアミノ酸位置のトリプトファン、チロシン又はフェニルアラニン残基をさらに含み得る。参照C末端デフェンシンペプチド中のC2及びC3残基に対応するC2及びC3残基のトリプトファン、チロシン又はフェニルアラニン置換を含む本明細書中で示されるデフェンシンペプチドバリアントは、修飾されているガンマコアバリアント配列GXCX3-8(F/W/Y)(F/W/Y)(F/W/Y)(配列番号33)、GXCX3-9(F/W/Y)(F/W/Y)(F/W/Y)(配列番号34)、GXCX3-10(F/W/Y)(F/W/Y)(F/W/Y)(配列番号587)、GXCX3-12(F/W/Y)(F/W/Y)(F/W/Y)(配列番号588)、GXCX3-15(F/W/Y)(F/W/Y)(F/W/Y)((配列番号589)、GXCX3-8(F/W/Y)(配列番号43)又はGXCX3-9(F/W/Y)(配列番号44)を含み得る。ある特定の実施形態では、上述のデフェンシンペプチドバリアントは、(i)30アミノ酸残基以下;又は(ii)15、16若しくは17~30アミノ酸残基を含むか、基本的にそれらからなるか、それらからなる。ある特定の実施形態では、上述のデフェンシンペプチドバリアントは、C1、C2、C3及びC4の保存されたシステイン(例えば配列番号8、16、20、23、26、29、37、38、39、40、41、89~122、又は配列番号123~434及び436~576の全長デフェンシンペプチドにおいて含有される)を含むデフェンシンペプチドのC末端に対応するペプチドを含むか、基本的にそれらからなるか、それらからなり、ここで、参照C末端デフェンシンペプチド中のC2及びC3残基に対応するC2及びC3残基のトリプトファン、チロシン又はフェニルアラニン置換の結果、修飾されているガンマコアバリアント配列GXCX3-8(F/W/Y)(F/W/Y)(F/W/Y)(配列番号33)、GXCX3-9(F/W/Y)(F/W/Y)(F/W/Y)(配列番号34)、GXCX3-10(F/W/Y)(F/W/Y)(F/W/Y)(配列番号587)、GXCX3-12(F/W/Y)(F/W/Y)(F/W/Y)(配列番号588)、GXCX3-15(F/W/Y)(F/W/Y)(F/W/Y)((配列番号589)、GXCX3-8(F/W/Y)(配列番号43)又はGXCX3-9(F/W/Y)(配列番号44)を含むデフェンシンバリアントペプチドが得られ得、任意選択的に参照デフェンシンC末端ペプチドの保存されたC1及びC4システインに対応するちょうど2個のシステイン残基を有するペプチドを含む。
【0051】
ある特定の実施形態では、GXCX3-9C(配列番号9)又はGXCX3-10C(配列番号10)のカノニカルなガンマ-コアコンセンサス配列を欠くさらなるデフェンシンペプチドバリアントが提供される。ある特定の実施形態では、本明細書中で提供されるデフェンシンペプチドバリアントは、配列番号9又は10のガンマ-コアコンセンサス配列のC末端システイン残基に対するトリプトファン、チロシン、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン又はメチオニンの置換を含む(例えば、参照配列番号8、16、20、23、26、29、37、38、39、40、41又は89~122において又は配列番号123~434及び436~576の全長デフェンシンペプチドにおいて含有されるC2)。ある特定の実施形態では、本明細書中で提供されるデフェンシンペプチドバリアントは、トリプトファン、チロシン、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン又はメチオニン残基での、参照C末端デフェンシンペプチド(例えば、配列番号8、16、20、23、26、29、37、38、39、40、41又は89~122、又は配列番号123~434及び436~576の全長デフェンシンペプチド内に含有される)中のC2及びC3残基に対応するC2及びC3残基の両方の独立した置換を含む。ある特定の実施形態では、本明細書中で提供されるデフェンシンペプチドバリアントは、トリプトファン、チロシン、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン又はメチオニン残基での、参照C末端デフェンシンペプチド(例えば、配列番号8、16、20、23、26、29、37、38、39、40、41又は89~122、又は配列番号123~434及び436~576の全長デフェンシンペプチド内に含有される)中のC2及びC3残基に対応するC2及びC3残基の置換を含む。ある特定の実施形態では、本明細書中で示されるデフェンシンペプチドバリアントは、参照C末端デフェンシンペプチド(例えば、配列番号8、16、20、23、26、29、37、38、39、40、41、89~122、又は配列番号123~434及び436~576の全長デフェンシンペプチド内に含有される)中のC2残基とC3残基との間に位置するアミノ酸位置においてトリプトファン、チロシン、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン又はメチオニン残基をさらに含み得る。参照C末端デフェンシンペプチド中のC2及びC3残基に対応するC2及びC3残基の独立したトリプトファン、チロシン、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン又はメチオニオン(methionione)置換を含む本明細書中で示されるデフェンシンペプチドバリアントは、その結果、修飾されたガンマコアバリアント配列GXCX3-10(L/V/I/M)(F/W/Y)(L/V/I/M)(配列番号48)、GXCX3-8(F/W/Y/L/V/I/M)(F/W/Y)(F/W/Y/L/V/I/M)(配列番号49)、GXCX3-10(F/W/Y/L/V/I/M)(F/W/Y)(F/W/Y/L/V/I/M)(配列番号50)、GXCX3-8(F/W/Y/L/V/I/M)(F/W/Y/L/V/I/M)(F/W/Y/L/V/I/M)(配列番号51)又はGXCX3-10(F/W/Y/L/V/I/M)(F/W/Y/L/V/I/M)(F/W/Y/L/V/I/M)(配列番号52)を含むデフェンシンバリアントペプチドが生じ得る。ある特定の実施形態では、上述のデフェンシンペプチドバリアントは、(i)30アミノ酸残基以下;又は(ii)15、16若しくは17~30アミノ酸残基を含むか、基本的にそれらからなるか、それらからなる。ある特定の実施形態では、上述のデフェンシンペプチドバリアントは、C1、C2、C3及びC4の保存されたシステインを含むデフェンシンペプチドのC末端に対応するペプチド(例えば、配列番号8、16、20、23、26、29、37、38、39、40、41、89~122、又は配列番号123~434及び436~576の全長デフェンシンペプチドに含有される)を含むか、基本的にそれらからなるか、それらからなり、参照C末端デフェンシンペプチド中のC2及びC3残基に対応するC2及びC3残基の独立したトリプトファン、チロシン、フェニルアラニン、ロイシン、バリン、イソロイシン又はメチオニン置換の結果、配列番号48、49、50、51又は52の修飾されたガンマコアバリアント配列を含むデフェンシンバリアントペプチドが生じ得、任意選択的に参照デフェンシンC末端ペプチドの保存されたC1及びC4システインに対応するちょうど2個のシステイン残基を有するペプチドを含む。
【0052】
ある特定の実施形態では、デフェンシンペプチドバリアントは、配列番号3~7、12~15、17~20、22、23、25、26、28、29、31、32、42、578、579、581、582、584又は585の全長にわたり少なくとも70%、75%、80%、82%、85%、90%、92%、94%、95%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記ペプチドは、配列番号8、16、20、23、26、29、37、38、39、40、41、123~434又は436~576のデフェンシンペプチドの対応する全長又はC末端配列を含まない。ある特定の実施形態では、配列番号3~7、12~15、17~20、22、23、25、26、28、29、31、32、42、578、579、581、582、584又は585の全長にわたり少なくとも70%、75%、80%、82%、85%、90%、92%、94%、95%又は100%の配列同一性を有するこのようなデフェンシンペプチドバリアントは、GXCX3-9C(配列番号9)又はGXCX3-10C(配列番号10)のガンマ-コアコンセンサス配列をさらに含み;ここで、Xは何れかのアミノ酸であるか又はXは、陽イオン性及び/又は疎水性アミノ酸から選択される。ある特定の実施形態では、配列番号3~7、12~15、17~20、22、23、25、26、28、29、31、32、42、578、579、581、582、584又は585の全長にわたり少なくとも70%、75%、80%、82%、85%、90%、92%、94%、95%又は100%の配列同一性を有するこのようなデフェンシンペプチドバリアントは、修飾されたガンマコアバリアント配列GXCX3-8(F/W/Y)(F/W/Y)(F/W/Y)(配列番号33)、GXCX3-9(F/W/Y)(F/W/Y)(F/W/Y)(配列番号34)、GXCX3-10(F/W/Y)(F/W/Y)(F/W/Y)(配列番号587)、GXCX3-12(F/W/Y)(F/W/Y)(F/W/Y)(配列番号588)、GXCX3-15(F/W/Y)(F/W/Y)(F/W/Y)((配列番号589)、GXCX3-8(F/W/Y)(配列番号43)、GXCX3-9(F/W/Y)(配列番号44)、GXCX3-8(F/W/Y/L/V/I/M)(配列番号45)、GXCX3-10(F/W/Y/L/V/I/M)(配列番号46)、GXCX3-8(L/V/I/M)(F/W/Y)(L/V/I/M)(配列番号47)、GXCX3-10(L/V/I/M)(F/W/Y)(L/V/I/M)(配列番号48)、GXCX3-8(F/W/Y/L/V/I/M)(F/W/Y)(F/W/Y/L/V/I/M)(配列番号49)、GXCX3-10(F/W/Y/L/V/I/M)(F/W/Y)(F/W/Y/L/V/I/M)(配列番号50)、GXCX3-8(F/W/Y/L/V/I/M)(F/W/Y/L/V/I/M)(F/W/Y/L/V/I/M)(配列番号51)又はGXCX3-10(F/W/Y/L/V/I/M)(F/W/Y/L/V/I/M)(F/W/Y/L/V/I/M)(配列番号52)をさらに含む。ある特定の実施形態では、このようなデフェンシンペプチドバリアントは、配列番号3~7、2~15、17~20、22、23、25、26、28、29、31、32、42、578、579、581、582、584又は585の全長にわたり少なくとも70%、75%、80%、82%、85%、90%、92%、94%、95%又は100%の配列同一性を有し、中性pHで少なくとも約5.8の正味正荷電及び/又は少なくとも約15%の疎水性パーセンテージを有する。ある特定の実施形態では、デフェンシンペプチドバリアントの第1の構造特性は、中性pHでの正味正荷電である。ある特定の実施形態では、デフェンシンペプチドバリアントは、中性pHで少なくとも+2、+3、+3.5、+4、+5、+6、+7、+8、+9又は+10の正味正荷電を有する。ある特定の実施形態では、デフェンシンペプチドバリアントは、中性pHで少なくとも+3、+3.5、+4、+5、+6又は+7~約+8、+9又は+10の正味正荷電を有する。ある特定の実施形態では、このようなデフェンシンペプチドバリアントの疎水性パーセンテージは、少なくとも約15%~30%、約16%~19%又は約28%~30%である。ある特定の実施形態では、上述のデフェンシンペプチドバリアントは、(i)30個のアミノ酸残基以下;又は(ii)15、16若しくは17~30個のアミノ酸残基を含むか、基本的にそれらからなるか、それらからなる。ある特定の実施形態では、上述のデフェンシンペプチドバリアントの何れも、ちょうど2個のシステイン残基を有するペプチドを含み、任意選択的に参照デフェンシンC末端ペプチドの保存されたC1及びC4システインに対応する2個のシステイン残基を含む。
【0053】
ある特定の実施形態では、デフェンシンペプチドバリアントは、中性pHでペプチドの正味正荷電を向上させるか若しくは維持する、及び/又はペプチドの疎水性を向上させるか若しくは維持するアミノ酸置換を含む。中性pHでペプチドの正味正荷電を維持し得る配列番号3~7、12~15、17~20、22、23、25、26、28、29、31、32、42、578、579、581、582、584又は585におけるアミノ酸置換は、リジン、アルギニン又はDab(ジアミノ酪酸)又は中性pHで正に荷電している他の非天然アミノ酸からなる群から選択される異なるアミノ酸残基での、配列番号3~7、12~15、17~20、22、23、25、26、28、29、31、32、42、578、579、581、582、584又は585における、リジン、アルギニン又はDab(ジアミノ酪酸)残基の置換を含む。中性pHで正味正荷電を向上させ得る配列番号3~7、12~15、17~20、22、23、25、26、28、29、31、32、42、578、579、581、582、584又は585におけるアミノ酸置換は、リジン、アルギニン、Dab(ジアミノ酪酸)又は中性pHで正に荷電している他の非天然アミノ酸残基からなる群から選択される異なるアミノ酸残基での配列番号3~7、12、12~15、17~20、22、23、25、26、28、29、31、32、42、578、579、581、582、584又は585における極性(例えばシステイン又はスレオニン)又は非極性(例えばグリシン)残基の置換を含む。ペプチドの疎水性を維持し得る配列番号3~7、12~15、17~20、22、23、25、26、28、29、31、32、42、578、579、581、582、584又は585におけるアミノ酸置換は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、フェニルアラニン、イソロイシン又はメチオニンからなる群から選択される異なるアミノ酸残基での配列番号3~7、12~15、17~20、22、23、25、26、28、29、31、32、42、578、579、581、582、584又は585におけるグリシン、バリン、フェニルアラニン又はイソロイシン残基の置換を含む。ペプチドの疎水性を向上させ得る配列番号3~7、12~15、17~20、22、23、25、26、28、29、31、32、42、578、579、581、582、584又は585におけるアミノ酸置換は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、フェニルアラニン又はイソロイシンからなる群から選択される異なるアミノ酸残基での配列番号3~7、12~15、17~20、22、23、25、26、28、29、31、32、42、578、579、581、582、584又は585における極性(例えばシステイン又はスレオニン)残基の置換を含む。ある特定の実施形態では、ペプチドの正味正荷電又は疎水性を向上させるか又は維持するこのような置換は、GXCX3-9C(配列番号9)又はGXCX3-10C(配列番号10)のガンマ-コアコンセンサス配列を有するデフェンシンペプチドバリアントを含む。ある特定の実施形態では、ペプチドの正味正荷電又は疎水性を向上させるか又は維持するこのような置換は、修飾されたガンマコアバリアント配列GXCX3-8(F/W/Y)(F/W/Y)(F/W/Y)(配列番号33)又はGXCX3-9(F/W/Y)(F/W/Y)(F/W/Y)(配列番号34)、GXCX3-10(F/W/Y)(F/W/Y)(F/W/Y)(配列番号587)、GXCX3-12(F/W/Y)(F/W/Y)(F/W/Y)(配列番号588)、GXCX3-15(F/W/Y)(F/W/Y)(F/W/Y)((配列番号589)GXCX3-8(F/W/Y)(F/W/Y)(F/W/Y)(配列番号33)、GXCX3-8(F/W/Y)(配列番号43)又はGXCX3-9(F/W/Y)(配列番号44)を有するデフェンシンペプチドバリアントを含む。ある特定の実施形態では、ペプチドの正味正荷電又は疎水性を向上させるか又は維持するこのような置換は、修飾されたガンマコアバリアント配列を有するデフェンシンペプチドバリアントを含み、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51又は配列番号52の修飾されたガンマコアバリアント配列を含み得る。ある特定の実施形態では、上述のデフェンシンペプチドバリアントは、(i)30アミノ酸残基以下;又は(ii)15、16若しくは17~22、24、16、28若しくは30アミノ酸残基を含むか、基本的にそれらからなるか、それらからなる。ある特定の実施形態では、上述のデフェンシンペプチドバリアントの何れも、ちょうど2個のシステイン残基を有するペプチドを含み、任意選択的に参照デフェンシンC末端ペプチドの保存されたC1及びC4システインに対応する2個のシステイン残基を含む。
【0054】
ある特定の実施形態では、上述又は他のバリアントデフェンシンペプチドバリアント配列の何れかにおける1つ以上のアミノ酸は、電荷及び極性が元のアミノ酸と類似する別のアミノ酸で置換され、即ち保存的アミノ酸置換である。デフェンシンペプチドバリアント又はタンパク質又はデフェンシンペプチド配列内のアミノ酸に対する置換は、元来のアミノ酸が属するクラスの他のメンバーから選択され得る。アミノ酸は、次の4つの群に分けられ得る:(1)酸性アミノ酸;(2)塩基性アミノ酸;(3)中性極性アミノ酸;及び(4)中性非極性アミノ酸。これらの様々な群内の代表的なアミノ酸としては、(1)酸性(陰イオン性、負荷電)アミノ酸、例えばアスパラギン酸及びグルタミン酸など;(2)塩基性(陽イオン性、正荷電)アミノ酸、例えばアルギニン、ヒスチジン及びリジンなど;(3)中性極性アミノ酸、例えばグリシン、セリン、スレオニン、システイン、シスチン、チロシン、アスパラギン及びグルタミンなど;(4)中性非極性(疎水性)アミノ酸、例えばアラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン及びメチオニンなどが挙げられる。デフェンシンペプチド配列内の保存的アミノ酸変化は、これらの群のうち1つ内のあるアミノ酸を同じ群内の別のアミノ酸で置換することによりなされ得る。デフェンシンペプチドバリアントの生物学機能同等物は、10個以下の保存的アミノ酸変化、7個以下の保存的アミノ酸変化又は5、4、3、2若しくは1個の保存的アミノ酸変化を有し得る。従って、コードヌクレオチド配列(例えば、遺伝子、プラスミドDNA、cDNA又は合成DNA)は、デフェンシンペプチドバリアントの生物学的機能同等形態をコードすることを可能にする、対応する塩基置換を有する。(i)中性非極性(疎水性)アミノ酸残基での中性極性アミノ酸残基の置換;又は(ii)中性極性アミノ酸残基での中性非極性(疎水性)アミノ酸残基の置換を含むデフェンシンペプチドバリアントにおけるある特定の半保存的置換も提供される。特に、疎水性アミノ酸残基での中性極性チロシン残基の半保存的置換が提供される。デフェンシンペプチドバリアントの生物学的機能同等物は、10個以下の半保存的アミノ酸変化、7個以下の半保存的アミノ酸変化又は5、4、3、2若しくは1個の半保存的アミノ酸変化を有し得る。
【0055】
上述のデフェンシンペプチドバリアントの何れかをコードする核酸分子も本明細書中で提供される。上述の核酸分子を含む組み換えDNA分子も本明細書中で提供され、特に上述の核酸分子に操作可能に連結される異種プロモーターを含む組み換えDNA分子も本明細書中で提供される。
【0056】
本明細書中で提供されるデフェンシンペプチドバリアントは、植物エンドプロテイナーゼを含むエンドプロテイナーゼによる切断の影響を受けにくいスペーサーペプチド配列を介して別のデフェンシンペプチドバリアント、デフェンシン又は抗微生物ペプチドに操作可能に連結され得る。多量体又はマルチドメインタンパク質においてペプチドを連結するこのようなペプチドリンカー配列が開示されている(Argos,1990;George RA,Heringa(2002))。スペーサードメインとして使用され得る多量体又はマルチドメインタンパク質からの適切なペプチド配列の例としては、免疫グロブリンからの免疫グロブリンヒンジ領域、ピルビン酸デヒドロゲナーゼにおけるリポイルとE3結合ドメインとの間のリンカー(Turner et ah,1993)、システインプロテイナーゼにおける中央ドメインとC末端ドメインとの間のリンカー(P9;Mottram et ah,1989)及びそれらの機能的な変異体が挙げられる。デフェンシンバリアントタンパク質での使用のためのスペーサーペプチドは、全体的又は部分的合成ペプチド配列でもあり得る。このような合成スペーサーペプチドは、少なくとも1つのデフェンシンペプチドバリアントと別のペプチド(デフェンシンペプチドバリアント又はデフェンシンペプチドを含む)との間の柔軟な連結を提供するように、及び内在性の植物エンドプロテイナーゼ又は他のエンドプロテイナーゼによる切断に耐性になるように設計される。ある特定の実施形態では、合成スペーサーペプチドの長さは、約3、4、8、10、12又は16~約20、24、28、30、40又は50アミノ酸残基長の間であり得る。ある特定の実施形態では、合成スペーサーペプチドは、グリシンに富む又はグリシン/セリンを含有するペプチド配列を含み得る。文献(Chen et al.,2013)に記載のタンパク質ドメインの柔軟な連結に適切な本組成物及びペプチドの設計は、本明細書中で提供されるデフェンシンバリアントタンパク質におけるスペーサーペプチドとしての使用に順応させ得る。それらの全体において本明細書中で参照によりそれぞれ組み込まれる米国特許出願公開第20190194268号明細書及び同第20190185877号明細書に記載のデフェンシン単量体を連結するために有用なスペーサーペプチドも、本明細書中で開示されるデフェンシンペプチドバリアントを他のデフェンシンペプチドバリアント、デフェンシン、抗微生物ペプチド又は他のペプチドに連結させるために使用され得る。
【0057】
本明細書中で提供されるデフェンシンペプチドバリアントは、植物エンドプロテイナーゼを含むエンドプロテイナーゼによる切断に影響を受け易いリンカーペプチド配列を介して別のデフェンシンペプチドバリアント、デフェンシン又は抗微生物ペプチドに操作可能に連結され得る。ある特定の実施形態では、得られるデフェンシンバリアントタンパク質は、エンドプロテイナーゼがデフェンシンバリアントタンパク質を切断して少なくとも1つのデフェンシンペプチドバリアント及び別のペプチド(デフェンシンペプチドバリアント又はデフェンシンペプチドを含む)を提供するように細胞で発現され得る。このようなデフェンシンバリアントタンパク質は、リンカーペプチドを切断するエンドプロテイナーゼを有する細胞区画(例えば細胞質、ミトコンドリア、色素体、空胞又は小胞体)又は細胞外スペース(即ちアポプラストに対する)において提供され得る。切断可能なリンカーペプチドは、国際公開第2014078900号パンフレット、Vasivarama and Kirti,2013a,Franqois et al,Vasivarama and Kirti,2013b及び国際公開第2017127558号パンフレットで開示され、本明細書中で提供されるデフェンシンバリアントタンパク質において使用され得る。
【0058】
単子葉植物、双子葉植物又はその両方におけるデフェンシンペプチドバリアントの発現を提供する発現カセットが構築され得る。このようなデフェンシンペプチドバリアント発現カセット構築は、植物発現ベクター又は植物のゲノムの何れかにおいて達成され得る。発現カセットは、様々なプロモーター、コード(例えばデフェンシンペプチドバリアントをコードする)及びポリアデニル化配列が操作可能に連結されるDNAコンストラクトである。一般に、発現カセットは一般的に、ポリアデニル化又はターミネーター領域に操作可能に連結される関心対象の配列に操作可能に連結されるプロモーターを含む。単子葉植物における組み換え又は編集されたポリヌクレオチドの発現を含むある特定の例において、イントロン配列を含むことも有用でもあり得る。イントロン配列が含まれる場合、これは一般的に、組み換え又は編集されたポリヌクレオチドの5’非翻訳リーダー領域に置かれる。ある特定の例において、転写産物の安定性を促進するため又は転写産物の効率的翻訳を進めるために組み換え又は編集されたポリヌクレオチドにおいて特異的な5’非翻訳配列を組み込むことも有用であり得る。その全体において参照により本明細書中に組み込まれる米国特許第10253328号明細書で開示されるものを含む、植物における他のデフェンシンペプチド又はタンパク質の発現のための発現カセット及びベクターは、トランスジェニック植物におけるデフェンシンペプチドバリアントの発現に対して順応させ得る。デフェンシンペプチドバリアント発現ベクターの何れも、アグロバクテリウム(Agrobacterium)介在性の形質転換、リゾビウム(Rhizobium)介在性の形質転換、シノリゾビウム(Sinorhizobium)介在性の形質転換、粒子介在性の形質転換、DNAトランスフェクション、DNAエレクトロポレーション又は「whiskers」が介在する形質転換などの方法を介して宿主植物の染色体に導入され得る。導入遺伝子を導入する上述の方法は、米国特許出願公開第20050289673号明細書(トウモロコシのアグロバクテリウム介在性形質転換)、米国特許第7,002,058号明細書(ダイズのアグロバクテリウム介在性形質転換)、米国特許第6,365,807号明細書(米の粒子介在性形質転換)及び米国特許第5,004,863号明細書(綿のアグロバクテリウム(Agrobacterium)介在性形質転換)に記載され、これらのそれぞれは、それらの全体において参照により本明細書中に組み込まれる。
【0059】
ある特定の実施形態では、デフェンシンペプチドバリアントをコードする組み換え又は編集されたポリヌクレオチドを含む植物は、(例えば、CRISPR、TALEN又はジンクフィンガーヌクレアーゼが介在する遺伝子編集による)植物のゲノムへの異種DNAの部位特異的な挿入を提供する技術を使用することによって得られ得る。ある特定の実施形態では、デフェンシンペプチドバリアントをコードするそのゲノム内で配列を作製するために、少なくともデフェンシンペプチドバリアントをコードするDNA断片は、植物細胞、組織、部分又は植物全体に対してゲノムに部位特異的に組み込まれる。メガヌクレアーゼ又はジンクフィンガーヌクレアーゼなどの部位特異的なヌクレアーゼを用いて植物ゲノムの特異的な部位で外来DNAを挿入するための方法の例は、少なくともVoytas,2013で開示される。クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)-関連(Cas)-ガイドRNA技術及びCasエンドヌクレアーゼを用いて植物ゲノムへと外来DNAを挿入するための方法の例は、少なくともSvitashev et al.,2015;Murovec et al.,2017;Kumar and Jain,2015;及び米国特許出願公開第20150082478号明細書により開示され、これは具体的にその全体において参照により本明細書中に組み込まれる。
【0060】
酵母におけるデフェンシンペプチドバリアントの発現も本明細書中で具体的に企図される。様々な酵母属における異種タンパク質の産生のための発現ベクターの構築がよく確立されている。一般に、このような発現ベクターは一般的に、ポリアデニル化又はターミネーター領域に操作可能に連結される関心対象の配列に操作可能に連結されるプロモーターを含む。異種遺伝子をうまく発現させるために使用されてきた酵母属の例としては、カンジダ(Candida)、クルベロマイセス(Kluveromyces)、ハンスエラ(Hansuela)、ピキア(Pichia)、サッカロミセス(Saccharomyces)、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)及びヤロウィア(Yarrowia)が挙げられる。サッカロミセス(Saccharomyces)に対する発現ベクター及び形質転換系の一般的な説明は、Kingsman et al.(1985)で見出される。サッカロミセス(Saccharomyces)以外の酵母に有用な発現ベクター及び形質転換系は、Reiser et al.(1990)に記載される。その全体において参照により本明細書中に組み込まれる、米国特許第10253328号明細書で開示されるものを含む、酵母における他のデフェンシンペプチド又はタンパク質の発現のための発現カセット及びベクターは、酵母におけるデフェンシンペプチドバリアントの発現に順応させ得る。
【0061】
細菌におけるデフェンシンペプチドバリアントの発現も本明細書中で具体的に企図される。様々な細菌系における異種タンパク質の産生のための発現ベクターの構築が記載されている。一般に、このような発現ベクターは一般的に、原核ターミネーター領域に操作可能に連結される関心対象のペプチド配列(例えば、デフェンシンバリアントペプチドのn-末端のシグナル輸送ペプチド領域)をコードする配列に操作可能に連結されるプロモーターを含む。異種遺伝子をうまく発現させるために使用されてきた細菌属の例としては、アシネトバクター(Acinetobacter)、アルカリジェネス(Alcaligenes)、アゾトバクター(Azotobacter)、バチルス(Bacillus)、エシェリキア(Escherichia)、ラクトバチルス(Lactobacillus)、ラクトコッカス(Lactococcus)、ストレプトミセス(Streptomyces)及びシュードモナス(Pseudomonas)が挙げられる。ジスルフィド結合を含み、本明細書中で提供されるデフェンシンバリアントペプチドの発現での使用のために順応させ得るタンパク質の産生に有用なE.コリ(E.coli)発現系としては、Kuddus et al.(2017)Biotechnol Prog 233:1520-1528.doi:10.1002/btpr.Protein Science 2508、Kiedzierska et al.(2008)Protein Expr Purif 60,82-88,Chang et al.(2015)Amino acids 47,579-587,Buchko et al.(2018)Protein Science 27,1611-1623,Marques et al.(2008)J Appl Microbiol 106,1640-1648及びPazgier et al.(2006)Protein Expr Pur 49,1-8に記載のものが挙げられる。E.コリ(E.coli)でのデフェンシンペプチドの発現に順応させ得るジスルフィド結合を含むタンパク質を発現させるための系としては、その全体において参照により本明細書中に組み込まれる米国特許出願公開第2020/0172915号明細書及びBerkmen,M.Protein Expr Purif.2012;82(1):240-51.doi:10.1016/j.pep.2011.10.009において開示されるものが挙げられる。
【0062】
ジスルフィド結合を含むタンパク質の産生に有用であり、本明細書中で提供されるデフェンシン変異体ペプチドの発現での使用に順応させ得る発現のための他の細菌発現系としては、その全体において参照により本明細書中に組み込まれる米国特許第10,604,761号明細書に記載のものが挙げられる。
【0063】
1つ以上の今回の単離され、精製された、抗微生物デフェンシンペプチドバリアント又は生物学的に機能的なその同等物の、抗微生物植物又は抗微生物ヒト若しくは獣医学、病原性微生物阻害量(「抗微生物有効量」)の何れかを含む、農業、薬学又は獣医学用途のための抗微生物組成物も提供される。このような組成物は、本明細書中で開示されるデフェンシンペプチドバリアント又はタンパク質のうち1つ又は何れかの組み合わせと、農業的に、薬学的に又は獣医学的に実行可能に許容可能な担体、希釈剤又は賦形剤と、を含み得る。以下で示されるように、農業及び治療の文脈に関連する他の構成成分もこのような組成物中に含まれ得る。植物、ヒト又は動物微生物感染と関連があるデフェンシンペプチドバリアントに感受性がある病原性微生物の増殖を阻害するか又はそれらを死滅させるために、抗微生物組成物を使用し得る。このような抗微生物組成物は、局所投与のために処方され得、植物、植物環境(土壌を含む)又はヒト又は動物の何れかに局所的に適用され得る。本組成物の経腸、非経口及び/又は静脈内投与のためにこのような抗微生物組成物を処方し、それを必要とする対象に投与し得;このような対象は、ヒト、家畜、家禽、魚又はコンパニオン動物であり得る。デフェンシンペプチドバリアントは、単独で、互いとの何れかの組み合わせで、処方され得、非限定例であるポリエン抗微生物剤;イミダゾール、トリアゾール及びチアゾール抗微生物剤;アリルアミン;及びヒト及び獣医学で日常的に使用されるエキノキャンディンなど従来の他の抗微生物治療化合物と組み合わせてこれらの何れかをさらに処方し得る。それを必要とするヒト又は動物対象へのデフェンシンペプチドバリアントを含む組成物の投与は、局所適用、経腸投与、非経口投与及び/又は静脈内投与を含む多岐にわたる経路を介して遂行され得る。抗微生物ペプチド及び組成物は、次のものを含む微生物病原体又は汚染物を制御するために使用され得る:(i)植物又は動物の細菌病原体(この細菌病原体は任意選択的に腸内細菌科(Enterobacteriaceae)の群のメンバーであり、任意選択的にこの細菌病原体は、サルモネラ(Salmonella)sp.、エシェリキア(Escherichia)sp.又はリステリア(Listeria)sp.である);(ii)フサリウム(Fusarium)sp.、アルテルナリア(Alternaria)sp.、アフェノミセス(Aphenomyces)sp.、ベルティシリウム(Verticillium)sp.、フィトフトラ(Phytophthora)sp.、コレトトリカム(Colletotrichum)sp.、ボトリチス(Botrytis)sp.、セルコスポラ(Cercospora)sp.、ファコプソラ(Phakopsora)sp. リゾクトニア(Rhizoctonia)sp.、スクレロチニア(Sclerotinia)sp.、フィチウム(Pythium)sp.、フォーマ(Phoma)sp.、レプトスフェリア(Leptosphaeria)sp.、ガエウマンノミセス(Gaeumannomyces)sp.、プッチニア(Puccinia)sp. セプトリア(Septoria)sp.、ペニシリウム(Penicillium)sp.、ラシオディプロディア(Lasiodiplodia)sp.、フォモプシス(Phomopsis)sp.、ミコスファエレラ(Mycosphaerella)sp.、ゴロビノミセス(Golovinomyces)sp.、エリシフェ(Erisyphe)sp.、アルブゴ(Albugo)sp.、セトスファエリア(Setosphaeria)sp.、コクリオボルス(Cochliobolus)sp.、ヘルミントスポリウム(Helminthosporium)sp.、ディプロディア(Diplodia)sp.又はステノカルペラ(Stenocarpella)sp.であるもの;(iii)アスペルギルス(Aspergillus)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、ペニシリウム(Penicillium)、リゾプス(Rhizopus)、アポフィソミセス(Apophysomyces)、クニンガメラ(Cunninghamella)、サクセナエア(Saksenaea)、リゾムコール(Rhizomucor)、シンセファロストルム(Syncephalostrum)、コケロミセス(Cokeromyces)、アクチノムコール(Actinomucor)、フィチウム(Pythium)、フサリウム(Fusarium)、ヒストプラズモシス(Histoplasmosis)、コッキディオミセス(Coccidiomyces)又はブラストミセス(Blastomyces)種;(iv)カンジダ(Candida)種(カンジダ(Candida)種は、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)(C.albicans)、C.アウリス(C.auris)、C.グラブラタ(C.glabrata)、C.パラプシロシス(C.parapsilosis)、C.トロピカリス(C.tropicalis)又はC.クルゼイ(C.krusei)である);又は(v)皮膚糸状菌は、トリコフィトン・ルブルム(Trichophyton rubrum)、トリコフィトン・インテルディジターレ(Trichophyton interdigitale)、トリコフィトン・ビオラセウム(Trichophyton violaceum)、トリコフィトン・トンスランス(Trichophyton tonsurans)、トリコフィトン・ソウダネンス(Trichophyton soudanense)、トリコフィトン・メンタグロフィテス(Trichophyton mentagrophytes)、ミクロスポルム・フラブム(Microsporum flavum)、エピデルモフィトン・フロッコスム(Epidermophyton floccosum)及びミクロスポルム・ジプセウム(Microsporum gypseum)からなる群から任意選択的に選択される。
【0064】
本発明のデフェンシンペプチドバリアント分子単独の何れかを含むか又は何らかの組み合わせで含む農業組成物は、例えばWinnacker-Kuchler(1986)Chemical Technology,Fourth Edition,Volume 7,Hanser Verlag,Munich;van Falkenberg(1972-1973)Pesticide Formulations,Second Edition,Marcel Dekker,N.Y.;及びK.Martens(1979)Spray Drying Handbook,Third Edition,G.Goodwin,Ltd.,London.Formulation aidsに記載のように処方され得、例えば担体、不活性物質、界面活性剤、溶媒及び他の添加物など、当技術分野でまた周知であり、例えばWatkins,Handbook of Insecticide Dust Diluents and Carriers,Second Edition,Darland Books,Caldwell,N.J.,and Winnacker-Kuchler(1986)Chemical Technology,Fourth Edition,Volume 7,Hanser Verlag,Munichに記載されている。これらの処方物を使用して、完成した処方物又はタンク混合物の形態で、本発明のデフェンシンペプチドバリアント及びタンパク質と他の殺虫活性物質、肥料及び/又は成長調節物質などとの混合物を調製することも可能である。
【0065】
単独又は他の活性物質との組み合わせの何れでも、本発明の抗微生物デフェンシンペプチドバリアントは、約3.0~約9.0の範囲のpHにて約0.1pg/ml~約100mg/ml又は約5pg/ml~約5mg/mlの範囲の濃度で対象又は植物に適用され得る。このような組成物は、例えば約1mM~1M、約10mM~約100mM又は約15mM~約50mMのリン酸緩衝液を使用して緩衝化し得る。低緩衝液濃度の場合、イオン強度を向上させるために塩を添加し得る。ある特定の実施形態では、デフェンシンペプチドバリアント及びタンパク質を含む組成物において、約1mM~約1M、約1mM、5mM又は10mM~約20mM、50mM、100mM、150mM又は200mM又は約10mM~約100mMの範囲のNaClを含むナトリウム塩を添加又は提供し得る。ある特定の実施形態では、デフェンシンペプチドバリアント及びタンパク質を含む組成物において、約1mM、5mM又は10mM~約20mM、50mM、100mM、150mM又は200mMの範囲のKC1を含むカリウム塩を添加又は提供し得る。ある特定の実施形態では、デフェンシンペプチドバリアントを含む組成物において、約0.1mM、0.5mM又は1mM~約2mM、5mM、10mM又は20mMの範囲のCaCl2を含むカルシウム塩を添加又は提供し得る。
【0066】
本発明のデフェンシンペプチドバリアント及びタンパク質が合わせられ得る多くの従来の微生物抗生物質及び化学抗微生物剤(例えば抗真菌剤)がWorthington and Walker(1983)The Pesticide Manual,Seventh Edition,British Crop Protection Councilに記載されている。これらは、例えば、ポリオキシン、ニッコマイシン、カルボキシアミド、芳香族炭水化物、カルボキシン、モルホリン、ステロール生合成の阻害剤及び有機リン化合物を含む。さらに、アゾール、トリアゾール及びエキノキャンディン殺真菌剤も使用され得る。本発明の抗微生物ペプチド及びタンパク質と組み合わせて処方され得る他の活性成分としては、例えば、殺虫剤、誘引剤、滅菌剤、ダニ駆除剤、殺線虫剤及び除草剤が挙げられる。その全体において参照により本明細書中に組み込まれる米国特許第5,421,839号明細書は、本発明の抗微生物デフェンシンペプチドバリアント及びタンパク質などの物質が処方され得る多くの活性物質の包括的なまとめを含有する。
【0067】
本明細書中に包含される農業的に有用な抗微生物組成物はまた、デフェンシンペプチドバリアント及びタンパク質を産生可能であり、根、苗条、葉又は植物の他の部分を含め、植物にコロニー形成し得る細菌及び微生物細胞などの宿主細胞の形態のものも含む。「植物にコロニー形成する微生物」という用語は、植物それ自身及び/又は植物環境の何れかの部分にコロニー形成可能であり、植物及び/又は植物環境において本発明のデフェンシンバリアント抗微生物ペプチド及びタンパク質を発現し得るものを含む微生物を指すために本明細書中で使用される。植物にコロニー形成する微生物は、植物環境において植物と相利共生的又は有害でない関係で存在し得るものである。その全体において参照により本明細書中に組み込まれる米国特許第5,229,112号明細書は、本明細書中で開示されるデフェンシンバリアント抗微生物ペプチド及びタンパク質に適用可能な、抗微生物ペプチド及びタンパク質を発現させるために改変され得る様々な植物にコロニー形成する微生物及びその使用方法を開示する。植物における微生物増殖の阻害において有用な本発明で開示されるデフェンシンバリアント抗微生物ペプチド及びタンパク質を発現する植物においてコロニー形成する微生物としては、バチルス・スリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)、バチルス・イスラエレンシス(Bacillus israelensis)及びバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)を含むバチルス(Bacillus)spp.、カンジダツス・リベリバクター・アシアティクス(Candidatus Liberibacter asiaticus);シュードモナス(Pseudomonas)spp.;アルスロバクター(Arthrobacter)spp.、アゾスピリルム(Azospyrillum)spp.、クラビバクター(Clavibacter)spp.、エシェリキア(Escherichia)spp.;アグロバクテリウム(Agrobacterium)spp.、例えばA.ラジオバクター(A.radiobacter)、リゾビウム(Rhizobium)spp.、エルウィニア(Erwinia)spp.アゾトバクター(Azotobacter)spp.、アゾスピリルム(Azospirillum)spp.、クレブシエラ(Klebsiella)spp.、アルカリゲネス(Alcaligenes)spp.、リゾバクテリウム(Rhizobacterium)spp.、キサントモナス(Xanthomonas)spp.、ラルストニア(Ralstonia)spp.及びフラボバクテリウム(Flavobacterium)spp.からなる群から選択される細菌が挙げられる。ある特定の実施形態では、微生物は、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)及びピキア・メタノリカ(Pichia methanolica)からなる群から選択される酵母である。ある特定の実施形態では、植物にコロニー形成する微生物は、内部寄生性の細菌又は微生物であり得る。本発明のデフェンシンペプチドバリアント分子を根圏に適用する場合、シュードモナス(Pseudomonas)属からの根圏コロニー形成細菌は特に有用であり、特にフルオレセント・シュードモナド(fluorescent pseudomonads)、例えばシュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)であり、これは、植物根圏において及び多数の植物の根の表面にコロニー形成することにおいて特に競合的である。適切な葉面(葉)コロニー形成細菌の例は、P.プチダ(P.putida)、P.シリンガエ(P.syringae)及びエルウィニア(Erwinia)種である。
【0068】
実施形態
次の番号の実施形態は本開示の一部を形成する:
1a.配列番号1を含むペプチドであって、配列番号8、16、20、23、26、29、37、38、39、40又は41のデフェンシンペプチドの対応する全長配列を含まず、任意選択的に、配列番号33で示される修飾されたガンマ-コアコンセンサス配列GXCX3-8(F/W/Y)(F/W/Y)(F/W/Y)、配列番号34で示されるGXCX3-9(F/W/Y)(F/W/Y)(F/W/Y)、GXCX3-8(F/W/Y)(配列番号43)又はGXCX3-9(F/W/Y)(配列番号44)を含み;及び/又は任意選択的にC末端システイン残基又はC末端アミノ酸残基がアミド化される、ペプチド。
【0069】
1b.配列番号3、4、5又は6の何れか1つの全長にわたり少なくとも50%、55%、60%、68%、75%、82%又は94%の配列同一性を有し、配列番号8とは同一ではないペプチドであって、任意選択的に、前記配列中の何れのアミノ酸置換も、中性pHで正味正荷電を向上させるか若しくは維持し、及び/又は前記ペプチドの疎水性を向上させるか若しくは維持し、任意選択的に前記C末端システイン残基がアミド化される、ペプチド。
【0070】
1c.配列番号7、12、13、14、15、17~20、22、23、25、26、28、29、31、32、42、578、579、581、582、584又は585の全長にわたり少なくとも50%、55%、60%、68%、75%、82%、94%、95%又は100%の配列同一性を有するペプチドであって、配列番号8、16、20、23、26、29、37、38、39、40又は41と同一ではなく、任意選択的に、配列番号5、配列番号13、14、15、18、19、20、22、23、26、28、29、31、32、42、42、578、579、581、582、584又は585のペプチドが、2個のシステイン残基の間にジスルフィド結合を含み、任意選択的に何れの置換も、中性pHで正味正荷電を向上させるか若しくは維持し、及び/又はペプチドの疎水性を向上させるか若しくは維持し、任意選択的に、前記C末端システイン残基又はC末端システイン残基がアミド化される、ペプチド。
【0071】
1d.参照デフェンシンC末端ペプチドのN末端及びC末端システインに対応する保存されたC1及びC4システイン残基を含むデフェンシンC末端ペプチドバリアントであって、前記参照デフェンシンC末端ペプチドの保存されたC2及びC3システイン残基が、トリプトファン、チロシン、フェニルアラニン、ロイシン、バリン、イソロイシン又はメチオニンで独立に置換され;任意選択的に、少なくとも3、3.5、4、5又は6の正味正荷電及び少なくとも18%の疎水性アミノ酸含量を有する、デフェンシンC末端ペプチドバリアント。
【0072】
1e.修飾されたガンマ-コアコンセンサス配列GXCX3-8(F/W/Y)(F/W/Y)(F/W/Y)(配列番号33)、GXCX3-9(F/W/Y)(F/W/Y)(F/W/Y)(配列番号34)、GXCX3-10(F/W/Y)(F/W/Y)(F/W/Y)(配列番号587)、GXCX3-12(F/W/Y)(F/W/Y)(F/W/Y)(配列番号588)、GXCX3-15(F/W/Y)(F/W/Y)(F/W/Y)((配列番号589)、GXCX3-8(F/W/Y)(配列番号43)、GXCX3-9(F/W/Y)(配列番号44)、GXCX3-8(F/W/Y/L/V/I/M)(配列番号45)、GXCX3-10(F/W/Y/L/V/I/M)(配列番号46)、GXCX3-8(L/V/I/M)(F/W/Y)(L/V/I/M)(配列番号47)、GXCX3-10(L/V/I/M)(F/W/Y)(L/V/I/M)(配列番号48)、GXCX3-8(F/W/Y/L/V/I/M)(F/W/Y)(F/W/Y/L/V/I/M)(配列番号49)、GXCX3-10(F/W/Y/L/V/I/M)(F/W/Y)(F/W/Y/L/V/I/M)(配列番号50)、GXCX3-8(F/W/Y/L/V/I/M)(F/W/Y/L/V/I/M)(F/W/Y/L/V/I/M)(配列番号51)又はGXCX3-10(F/W/Y/L/V/I/M)(F/W/Y/L/V/I/M)(F/W/Y/L/V/I/M)(配列番号52)を含む、C末端デフェンシンペプチドバリアントであって、任意選択的に、前記ペプチドが保存されたC4システイン残基をさらに含み、任意選択的に、修飾されたガンマ-コアコンセンサス配列中のシステイン残基が保存されたC4システイン残基とともにジスルフィド結合を形成し、及び/又は任意選択的に少なくとも3、3.5、4、5又は6の正味正荷電及び少なくとも18%の疎水性アミノ酸含量を有する、C末端デフェンシンペプチドバリアント。
【0073】
1f.修飾されたガンマ-コアコンセンサス配列GXCX3-8(F/W/Y)(F/W/Y)(F/W/Y)(配列番号33)、GXCX3-9(F/W/Y)(F/W/Y)(F/W/Y)(配列番号34)、GXCX3-10(F/W/Y)(F/W/Y)(F/W/Y)(配列番号587)、GXCX3-12(F/W/Y)(F/W/Y)(F/W/Y)(配列番号588)、GXCX3-15(F/W/Y)(F/W/Y)(F/W/Y)((配列番号589)、GXCX3-8(F/W/Y)(配列番号43)又はGXCX3-9(F/W/Y)(配列番号44)、GXCX3-8(F/W/Y/L/V/I/M)(配列番号45)、GXCX3-10(F/W/Y/L/V/I/M)(配列番号46)、GXCX3-8(L/V/I/M)(F/W/Y)(L/V/I/M)(配列番号47)、GXCX3-10(L/V/I/M)(F/W/Y)(L/V/I/M)(配列番号48)、GXCX3-8(F/W/Y/L/V/I/M)(F/W/Y)(F/W/Y/L/V/I/M)(配列番号49)、GXCX3-10(F/W/Y/L/V/I/M)(F/W/Y)(F/W/Y/L/V/I/M)(配列番号50)、GXCX3-8(F/W/Y/L/V/I/M)(F/W/Y/L/V/I/M)(F/W/Y/L/V/I/M)(配列番号51)又はGXCX3-10(F/W/Y/L/V/I/M)(F/W/Y/L/V/I/M)(F/W/Y/L/V/I/M)(配列番号52)を含むペプチドであって、修飾されたガンマ-コアコンセンサス配列中のシステイン残基に対してC末端に位置する第2のC末端システイン残基をさらに含み、少なくとも3、3.5、4、5又は6の正味正荷電及び少なくとも18%の疎水性アミノ酸含量を有し、任意選択的に、2つのシステイン残基の間にジスルフィド結合を含む、ペプチド。
【0074】
2.実施形態1a、1b、1c、1d、1e又は1fに記載のペプチドであって、(i)配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、17~20、22、23、25、26、28、29、31、32、42、578、579、581、582、584又は585からなる群から選択され;任意選択的に、配列番号5、配列番号13、配列番号14、15、18、19、20、22、23、26、28、29、32、42、578、579、581、582、584又は585のペプチドが2個のシステイン残基の間にジスルフィド結合を含む、アミノ酸配列;(ii)配列番号7、配列番号12、配列番号13、配列番号14、15、17~20、22、23、25、26、28、29、31、32、18、19、20、22、23、26、28、29、32、42、578、579、581、582、584又は585の全長にわたり少なくとも50%、55%、60%、68%、75%、82%、94%、95%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列(ここで、前記ペプチドは、配列番号8、16、20、23、26、29、37、38、39、40又は41のデフェンシンペプチドの対応する全長配列を含まず;任意選択的に、前記ペプチドは、2個のシステイン残基の間にジスルフィド結合を含む)を含むか;又は(iii)抗微生物活性を示す、ペプチド。
【0075】
3.実施形態1a、1b、1c、1d、1e、1f又は2に記載のペプチドであって、(i)30アミノ酸残基以下;(ii)15、16又は17~30アミノ酸残基;又は(iii)15、16又は17~30アミノ酸残基を含むか、基本的にそれらからなるか又はそれらからなり、2個のシステイン残基を含有する、ペプチド。
【0076】
4.実施形態1a、1b、1c、1d、1e又は1f~3の1つの何れかに記載のペプチドと、農業的に、薬学的に又は獣医学的に実行可能に許容可能な担体、希釈剤又は賦形剤と、を含む組成物。
【0077】
5.前記ペプチドが、約0.1、0.5、1.0又は5pg/ml~約1、5、20、50又は100mg/mlの濃度又は約0.1、0.5、1.0又は5pg/グラム~約1、5、20、50又は100mg/グラムの濃度で提供され、任意選択的に、少なくとも100mMの濃度でナトリウム塩及び/又は少なくとも2mMの濃度でカルシウム塩を含む、実施形態4に記載の組成物。
【0078】
6.(i)植物病原性微生物による作物被害を防ぐか若しくは軽減するか;又は(ii)植物、植物部分、種子、それらから得られる家畜飼料又はそれらから得られる食料の望ましくない微生物による汚染を防ぐための方法であって、植物、植物種子、前記植物の他の部分、それらから得られる家畜飼料又はそれらから得られる食料を実施形態4又は実施形態5に記載の組成物の有効量と接触させるステップを含む、方法。
【0079】
7.前記植物病原性微生物又は望ましくない微生物が、(i)任意選択的に腸内細菌科(Enterobacteriaceae)群のメンバーであり、任意選択的にサルモネラ(Salmonella)sp.、エシェリキア(Escherichia)sp.又はリステリア(Listeria)sp.である、植物又は動物の細菌病原体;又は(ii)フサリウム(Fusarium)sp.、アルテルナリア(Alternaria)sp.、アフェノミセス(Aphenomyces)sp.、ベルティシリウム(Verticillium)sp.、フィトフトラ(Phytophthora)sp.、コレトトリカム(Colletotrichum)sp.、ボトリチス(Botrytis)sp.、セルコスポラ(Cercospora)sp.、ファコプソラ(Phakopsora)sp. リゾクトニア(Rhizoctonia)sp.、スクレロチニア(Sclerotinia)sp.、フィチウム(Pythium)sp.、フォーマ(Phoma)sp.、レプトスフェリア(Leptosphaeria)sp.、ガエウマンノミセス(Gaeumannomyces)sp.、プッチニア(Puccinia)sp.セプトリア(Septoria)sp.、ペニシリウム(Penicillium)sp.、ラシオディプロディア(Lasiodiplodia)sp.、フォモプシス(Phomopsis)sp.、ミコスファエレラ(Mycosphaerella)sp.、ゴロビノミセス(Golovinomyces)sp.、エリシフェ(Erisyphe)sp.、アルブゴ(Albugo)sp.、セトスファエリア(Setosphaeria)sp.、コクリオボルス(Cochliobolus)sp.、ヘルミントスポリウム(Helminthosporium)sp.、ディプロディア(Diplodia)sp.又はステノカルペラ(Stenocarpella)sp.である、実施形態6に記載の方法。
【0080】
8.機器及び実施形態4又は5に記載の組成物を含む医療機器であって、前記組成物で局所的にコーティングされる及び/又は含浸される少なくとも1つの面を含む、医療機器。
【0081】
9.ステント、カテーテル、コンタクトレンズ、コンドーム、パッチ又は隔壁である、実施形態8に記載の医療機器。
【0082】
10.微生物感染の処置、予防又は阻害を必要とする対象において微生物感染を処置、予防又は阻害するための方法であって、実施形態4又は5に記載の組成物の有効量を前記対象に投与することを含む、方法。
【0083】
11.前記投与が、前記組成物の、局所、経腸、非経口及び/又は静脈内導入を含む、実施形態10に記載の方法。
【0084】
12.前記対象が、ヒト、家畜、家禽、魚又はコンパニオン動物である、実施形態10又は11に記載の方法。
【0085】
13.前記微生物感染が、粘膜、眼、皮膚及び/又は爪への感染であり、前記組成物が、粘膜、眼、皮膚、及び/又は爪に適用される、実施形態12に記載の方法。
【0086】
14.前記微生物感染が皮膚糸状菌よるものであり、前記皮膚糸状菌が任意選択的に、トリコフィトン・ルブルム(Trichophyton rubrum)、トリコフィトン・インテルディジターレ(Trichophyton interdigitale)、トリコフィトン・ビオラセウム(Trichophyton violaceum)、トリコフィトン・トンスランス(Trichophyton tonsurans)、トリコフィトン・ソウダネンス(Trichophyton soudanense)、トリコフィトン・メンタグロフィテス(Trichophyton mentagrophytes)、ミクロスポルム・フラブム(Microsporum flavum)、エピデルモフィトン・フロッコスム(Epidermophyton floccosum)及びミクロスポルム・ジプセウム(Microsporum gypseum)からなる群から選択される、実施形態10~13の何れか1つに記載の方法。
【0087】
15.前記微生物感染が、(i)任意選択的に腸内細菌科(Enterobacteriaceae)群のメンバーであり、任意選択的にサルモネラ(Salmonella)sp.、エシェリキア(Escherichia)sp.又はリステリア(Listeria)sp.;又は(ii)アスペルギルス(Aspergillus)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、ペニシリウム(Penicillium)、リゾプス(Rhizopus)、アポフィソミセス(Apophysomyces)、クニンガメラ(Cunninghamella)、サクセナエア(Saksenaea)、リゾムコール(Rhizomucor)、シンセファロストルム(Syncephalostrum)、コケロミセス(Cokeromyces)、アクチノムコール(Actinomucor)、フィチウム(Pythium)、フサリウム(Fusarium)、ヒストプラズモシス(Histoplasmosis)、コッキディオミセス(Coccidiomyces)又はブラストミセス(Blastomyces)種である動物の細菌病原体による、実施形態10~13の何れか1つに記載の方法。
【0088】
16.前記微生物感染が、カンジダ(Candida)種によるものであり、前記カンジダ(Candida)種が、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)(C.albicans)、C.アウリス(C.auris)、C.グラブラタ(C.glabrata)、C.パラプシロシス(C.parapsilosis)、C.トロピカリス(C.tropicalis)又はC.クルゼイ(C.krusei)である、実施形態10~13の何れか1つに記載の方法。
【0089】
17.微生物感染の処置、予防又は阻害を必要とする対象において微生物感染を処置、予防又は阻害する方法における使用のための、実施形態4又は5に記載の組成物。
【0090】
18.前記対象が、ヒト、家畜、家禽、魚又はコンパニオン動物である、実施形態17に記載の組成物。
【0091】
19.実施形態4又は5に記載の組成物で少なくとも部分的にコーティングされる、植物部分。
【0092】
20.種子であり、前記種子が、任意選択的に、トウモロコシ、ダイズ、小麦、米、綿、ブラッシカ(Brassica)sp.又はトマト種子である、実施形態19に記載の植物部分。
【0093】
21.果実、野菜又は花である、実施形態19に記載の植物部分。
【0094】
22.実施形態1a、1b、1c、1d、1e、1f、2又は3に記載の抗微生物ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む組み換えポリヌクレオチドであって、前記第1の抗微生物ペプチドをコードするポリヌクレオチドが前記第1の抗微生物ペプチドをコードするポリヌクレオチドにとって異種であるプロモーターを含むポリヌクレオチドに操作可能に連結され、任意選択的に前記配列中の何れのアミノ酸置換も、正味正荷電を向上させるか若しくは維持し、及び/又はペプチドの疎水性を向上させるか若しくは維持する、組み換えポリヌクレオチド。
【0095】
23.(i)輸送ペプチド、空胞を標的とするペプチド及び/又は小胞体を標的とするペプチド;(ii)色素体標的化ペプチド;及び/又は(iii)ポリアデニル化又は転写終結シグナルをコードするポリヌクレオチドをさらに含む、実施形態22に記載の組み換えポリヌクレオチドであって、(i)、(ii)及び/又は(iii)のポリヌクレオチドが前記抗微生物ペプチドをコードするポリヌクレオチドに操作可能に連結される、組み換えポリヌクレオチド。
【0096】
24.前記第1の抗微生物ペプチドをコードするポリヌクレオチドが、細胞の異種核又は色素体ゲノムに挿入され、異種核又は色素体ゲノムに位置する内在性プロモーターに操作可能に連結される、実施形態22又は23に記載の組み換えポリヌクレオチド。
【0097】
25.実施形態1a、1b、1c、1d、1e、1f、2又は3に記載の抗微生物ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む植物核又は色素体ゲノムであって、前記ポリヌクレオチドが前記核又は色素体ゲノムにとって異種であり、前記ポリヌクレオチドが前記核又は色素体ゲノムの内在性プロモーターに操作可能に連結される、植物核又は色素体ゲノム。
【0098】
26.任意選択的に細菌、酵母又は植物細胞である、実施形態22に記載の組み換えポリヌクレオチド又は実施形態25に記載のゲノムを含む細胞。
【0099】
27.実施形態22に記載の組み換えポリヌクレオチド又は実施形態25に記載のゲノムを含む、植物。
【0100】
28.前記組み換えポリヌクレオチド又はゲノムを含み、種子、茎、葉、根、塊茎、花又は果実である、実施形態26に記載の植物の植物部分。
【0101】
29.(i)実施形態22に記載の植物を自家受粉させるか又は交配させ;(ii)前記自家受粉又は交配から前記植物の組み換えポリヌクレオチドを含む種子を収穫し、それにより植物病原性微生物による感染に対する耐性を植物に提供する植物種子を生成させるステップを含む、植物病原性微生物による感染に対する耐性を植物に提供する植物種子を生成させるための方法。
【0102】
参照文献
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【実施例】
【0103】
実施例1
Biomatik Inc,Canadaにより粗製ペプチド(GMA4C-AC、GMA4C_V1、GMA4C_V2及びGMA4C_V3)が化学合成され、GMA4C_V4及びGMA4C_V5はAlan Scientific Inc.(USA)により合成され、C-18逆相HPLC(Agilent Technologies,USA)においてアセトニトリル/水混合液の直線的勾配を使用してこれらをさらに精製した。HPLC分画を凍結乾燥し、ヌクレアーゼ不含水中で再懸濁した。製造者のプロトコール(Thermo-Fisher Scientific,USA)に従い行われたBCAアッセイを使用して、各ペプチドの濃度を決定した。SFM培地中のアッセイにおいて抗真菌活性を決定した。SFM培地は、K2HPO4(2.5mM)、MgSO4(50μM)、CaCl2(50μM)、FeSO4(5μM)、CoCl2(0.1μM)、CuSO4((0.1μM)、Na2MoO4(2μM)、H3BO3(0.5μM)、KI(0.1μM)、ZnSO4(0.5μM)、MnSO4(0.1μM)、グルコース(10g/リットル)、アスパラギン(1g/リットル)、メチオニン(20mg/リットル)、ミオイノシトール(2mg/リットル)、ビオチン(0.2mg/リットル)、チアミン-HCL(1mg/リットル)及びピリドキシン-HCL(0.2mg/リットル)、pH7.0)を含む。
【0104】
【0105】
【0106】
低陽イオン条件でのインビトロでの抗真菌活性:GMA4CバリアントGMA4C_V1A、GMA4C_V3A、GMA4C_V4A及びGMA4C_V5Aは、B.シネレア(B.cinerea)、F.グラミネアルム(F.graminearum)、F.オキシスポルム(F.oxysporum)及びP.カプシシ(P.capsici)に対する、インビトロでの野生型GMA4C_AC対照についての抗真菌活性同等物を示す。GMA4CバリアントGMA4C_V2Aは、B.シネレア(B.cinerea)及びF.グラミネアルム(F.graminearum)に対して、インビトロでの野生型GMA4C_AC対照と比較して抗真菌活性が2分の1に低下する。GMA4C_GMA4C_V6Aは、B.シネレア(B.cinerea)に対して、インビトロでの野生型GMA4C_AC対照と比較して抗真菌活性の4倍の上昇を示す。
【0107】
植物体における抗真菌活性。取り外されたニコチアナ・ベンタミアナ(Nicotiana benthamiana)の葉に適用した場合、GMA4C_V1A及びGMA4C_V3Aは、
図1A及び1Bで示されるように、GMA4C_AC又はGMA4C_V2Aよりも、B.シネレア(B.cinerea)により引き起こされる灰色カビ病の症状の軽減において強力である。トマト葉に適用される場合、GMA4C_V1Aは、GMA4C_ACよりも、P.カプシシ(P.capsici)により引き起こされる疾患症状の軽減において効果が高い。
【0108】
陽イオン存在下でのインビトロでの抗真菌活性。100mM NaCl、100mM KCl又は2mM CaCl2の存在下でB.シネレア(B.cinerea)に対する抗真菌活性について試験した場合、GMA4C_ACを含むペプチドの全てが、100mM NaCl又は100mM KClの存在下でそれらの抗真菌活性を保持する。しかし、GMA4C_V1A及びGMA4C_V4Aは、GMA4C_ACよりも活性が2倍強力である。2mM CaCl2の存在下で、GMA4C_V1A及びGMA4C_V4Aのみが6μMで真菌増殖を阻害し、一方で植物デフェンシンMtDef4又はOeDef1などの他のペプチドは、この濃度では殆ど活性を示さない。
【0109】
【0110】
ヒト真菌病原体に対する抗真菌活性:GMA4C_V1A及びGMA4C_V3Aは、陽イオンに富むRPMI培地中でC.アウリス(C.auris)及びC.グラブラタ(C.glabrata)に対する抗真菌活性を示すが、親MtDef4デフェンシンは活性を示さない。
【0111】
【0112】
【0113】
実施例2.病原性微生物に対するGMA4C-バリアントの活性
抗真菌活性に対する試験は、ペプチドには強度が半分のポテトデキストロースブロスを使用し、対照薬抗真菌フルコナゾール及びボリコナゾールにはRPMIを使用した。MICを測定するためにCLSI M27及びM38法を使用した。最小発育阻止濃度(MIC)は、本化合物、タンパク質又はペプチドを欠く増殖培地中での微生物の増殖と比較して微生物の顕著な増殖がない、本化合物、タンパク質又はペプチドの濃度である。
【0114】
全ての試験は、0.165M MOPSで緩衝化されたRPMI中で行った。ポテトデキストロースブロス中のペプチドに対する濃度範囲は、0.06~2mcg/mlであり、フルコナゾールに対する濃度範囲は、0.125~64mcg/mlであり、ボリコナゾールに対する濃度範囲は、0.03~16mcg/mlであった。MICを24~72時間で決定した。
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
このアッセイで使用される全ての病原体分離株は、抗真菌薬フルコナゾールに対して耐性がある。半強度ポテトデキストロースブロス中で抗真菌アッセイを行った。
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
実施例3.ヒト細菌病原体に対するGMA4C_V1Aの抗微生物活性
サルモネラ・チフィムリウムvar.コペンハーゲン(Salmonella Typhimurium var.Copenhagen)、腸内毒素原性E.コリ(E.coli)-F4及びリステリア・モノサイトゲンス(Listeria monocytogens)(F5244)株をLB寒天プレート上で37℃にて一晩増殖させた。少数の細菌をプレートから擦り取り、Mueller-Hinton(MH)増殖培地に添加し、対数期まで増殖させた。1~3x106CFU/mLまで細胞を希釈し、ポリプロピレン96ウェルプレートにおいて50ulを各ウェルに添加した。合成されたペプチドGMA4C_V1Aを0.2%BSA、0.01%酢酸溶液中で希釈し、0.2、0.4、0.80、1.6、3.25、7.5、15、30及び60及び120μMの濃度まで添加した。次に、各ペプチド溶液の50μlを細菌細胞の50μlに添加した。プレートをパラフィルムで被覆し、37℃で一晩温置した。MH培地単独のOD600nm値及びペプチドがないMH培地中の細菌増殖のそれと比較して、各濃度でのOD600nm値に基づいて細菌増殖阻害が決定された濃度。最小発育阻止濃度(MIC)は、ペプチドを欠く増殖培地中での微生物の増殖と比較して微生物の顕著な増殖がないペプチドの濃度である。
【0125】
【0126】
実施例4.デフェンシンペプチド断片の抗微生物活性
80~85%純度の粗製化学合成デフェンシン由来ペプチドは、Biomatik Inc,Canada又はAlan Scientific Inc.,USAから得た。C-18逆相HPLC(Agilent,Singapore)を使用して、各ペプチドをさらに精製した。本ペプチドを含有するHPLC分画を凍結乾燥し、ヌクレアーゼ不含水中で再懸濁した。それらの正確な定量のために、製造者のプロトコール(Thermo-Fisher Scientific)を用いてBCAアッセイを使用して濃度を決定した。
【0127】
ボトリチス・シネレア(Botrytis cinerea)T-4、アルテルナリア・アルテルナータ(Alternaria alternata)、セルコスポラ・ソジナ(Cercospora sojina)及びコレトトリカム・グロエオスポリオイデス(Colletotrichum gloeosporioides)の真菌株を表16で示されるそれらの個々の通常の増殖培地中でそれぞれ培養した。滅菌水で真菌増殖プレートをフラッディングする(flooding)ことによって、真菌胞子を回収した。Miraclothの2層を通じて胞子懸濁液をろ過し、13,600rpmで1分間、遠心分離し、洗浄し、低塩合成真菌培地(SFM)中で再懸濁した(米国特許第6,316,407号明細書)。血球計数器を使用して所望の胞子数まで胞子懸濁液を調整した。
【0128】
【0129】
96ウェルプレートアッセイを使用して、B.シネレア(B.cinerea)、A.アルテルナータ(A.alternata)、C.ソジナ(C.sojina)及びC.グロエオスポリオイデス(C.gloeosporioides)真菌病原体に対する短縮されたデフェンシン由来ペプチド及びそれらのバリアントの抗真菌活性を分光測定により決定した(Sagaram et al.,(2011)PLoS ONE 6:e18550.doi:10.1371/journal.pone.0018550)。45μLの(約105個のB.シネレア(B.cinerea)胞子/ml)胞子懸濁液を含有するマイクロタイタープレートの各ウェルに0.375、0.75、1.5、3、12μMの濃度の45マイクロリットルのペプチドを添加した。48h後、(Tecan Infinite M200 ProTecan Systems Inc.,San Jose,CA)マイクロプレートリーダーを使用して595nmでの吸光度を測定することによって、定量的な真菌増殖阻害を決定した。レサズリン細胞生存能アッセイを使用して、真菌細胞生存能を決定した(Chadha and Kale,(2015)Lett Appl Microbiol 61,238-244,Li et al.,(2019)Mol Plant Microbe Interact 32,1649-1664)。48hにわたる病原体/ペプチド混合物の温置後、10μlの0.1%レサズリン溶液を各ウェルに添加し、一晩再温置した。青からピンク又は無色へのレサズリンの色の変化は、生きている真菌細胞の存在を示した。青色の変化が観察されなかったペプチドの最小濃度として各ペプチドのMIC値を決定した。SFM及び上記のような100mM NaCl、100mM又は2mM CaCl2を補給したSFM中でデフェンシン由来ペプチド及びそれらのバリアントのMIC値も決定した。
【0130】
既に記載されているようにN.ベンタミアナ(N.benthamiana)Nb1の取り外された葉を使用して、B.シネレア(B.cinerea)に対する各デフェンシン由来ペプチド及びそのバリアントの半インプランタ抗真菌活性を決定した(Li et al.,(2019)Mol Plant Microbe Interact 32、1649-1664;Velivelli et al.,(2020)Proceedings of the National Academy of Sciences.117、16043-16054)。1.5μM、3μM及び6μMの濃度で各ペプチドを試験した。48時間にわたる室温での各ペプチド/真菌胞子混合物の温置後、白色光下で葉の写真を撮影した。CropReporter(PhenoVation,Wageningen,Netherlands)を使用して、高解像度蛍光画像も撮影した。これらの画像は、B.シネレア(B.cinerea)感染により冒された疾患領域のFV/FM(photosystem IIの最大量子収量)計算値を示した。画像における色は、組織損傷度の変動を示すクラスIからクラスV(0.000~0.700)の範囲の5つの異なるクラスを示す。各画像中の緑色は、0.600~≧0.700の範囲のクラスVに相当し、これは葉の表面の健康な領域を示す。その一方、赤色は0.000~0.160の範囲のクラスIに相当し、重度の損傷又は罹患した葉の表面を示す。
【0131】
デフェンシン由来ペプチドの、一次アミノ酸配列、長さ、正味荷電及疎水性アミノ酸のパーセンテージを表17で示す。これらのペプチドは、植物デフェンシン、OeDef1、MtDef4、MsDef1及びMtDef5A由来である。正味荷電及び疎水性を向上させるために、各ペプチドの野生型配列におけるアミノ酸置換を行った。さらに、偽環状にするために、ジスルフィド結合を特異的なバリアントに導入した。単一ジスルフィド結合を形成し得るペプチド及び偽環状ペプチドは、表17の「ジスルフィド結合」カラムにおいて「+」として示される。全てのペプチドがカルボキシ末端アミド基も保有する。
【0132】
【0133】
各デフェンシン由来ペプチド及びそのバリアントの最小発育阻止濃度(MIC)値を決定した(表18)。陽イオンの存在が正荷電デフェンシンと負荷電真菌膜との間の静電気的相互作用を顕著に弱めるという仮説が立てられている(Chu et al.,(2013)Antimicrobial Agents and Chemotherapy 57:4050-4052)。従って、発明者らは、100mM NaCl、100mM KCl又は2mM CaCl2を補給したSFM中のB.シネレア(B.cinerea)に対する各ペプチドの抗真菌活性を決定した(表18)。
【0134】
【0135】
アルテルナリア・アルテルナータ(Alternaria alternata)、セルコスポラ・ソジナ(Cercospora sojina)及びコレトトリカム・グロエオスポリオイデス(Colletotrichum gloeosporioides)に対してもデフェンシン由来ペプチドのMIC値を試験した(表19)。
【0136】
【0137】
N.ベンタミアナ(N.benthamiana)の取り外された葉を使用することによって、B.シネレア(B.cinerea)に対するGMA4C_V9、GMA4C_V10、GMAOe1C_WT、GMAOe1C_V3、GMAOe1C_V4、GMA1C_V1及びGMA1C_V2ペプチドの半インプランタ抗真菌活性を決定した。1.5μM、3μM及び6μMの濃度の各ペプチドを液滴として葉に適用し、新鮮調製した分生子接種物を本ペプチドの各液滴にすぐに適用した。病変サイズを測定することによって、ペプチドなしの対照と比較して、接種の48時間後に灰色カビ病症状の軽減について葉を評価した。GMA4C_V9及びGMA4C_V10ペプチドは両方とも灰色カビ病の症状の軽減において有効である。しかし、1.5μM及び3μMの低濃度で、GMA4C_V10は、GMA4C_V9よりも、灰色カビ病の症状の軽減において有効である(
図5)。
【0138】
GMAOe1C_WT、GMAOe1C_V1、GMAOe1C_V2の抗真菌活性を試験するためにも、滴下接種アッセイを行った。この結果から、3及び6μMの濃度でのGMAOe1C_V1及びGMAOe1C_V2が灰色カビ病の症状を完全に抑止したが、GMAOe1C_WTは6μMでのみ有効であったことが明らかになった。1.5μMの濃度で、GMAOe1C_V3は、GMAOe1C_V4又はGMAOe1C_WTよりも有効である(
図6)。
【0139】
GMA1C_V1及びGMA1C_V2の抗真菌活性を試験するためにも滴下接種アッセイを行った(
図6)。3μM及び6μMのGMA1C_V2は、灰色カビ病の症状を完全に抑止した。GMA1C_V1は、これらの濃度で疾患症状を軽減できなかった。1.5μMの濃度で、GMA1C_V2はGMA1C_V1よりも有効であった(
図7)。
【0140】
上の結果から、これらの短縮されたデフェンシン由来ペプチドに導入される修飾(例えばアミノ酸置換)のパネルは、野生型短縮ペプチドよりも高い抗真菌活性を付与することが示される。
【0141】
本開示の幅及び範囲は、上記の例の何れによっても限定されるべきではない。
【配列表】
【国際調査報告】