(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-30
(54)【発明の名称】吸着によるテレフタル酸ジエステルモノマーの精製方法
(51)【国際特許分類】
B01D 15/00 20060101AFI20240723BHJP
C07C 69/82 20060101ALI20240723BHJP
C07C 67/56 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
B01D15/00 M
C07C69/82 B
C07C67/56
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577537
(86)(22)【出願日】2022-06-07
(85)【翻訳文提出日】2024-02-15
(86)【国際出願番号】 EP2022065428
(87)【国際公開番号】W WO2022263236
(87)【国際公開日】2022-12-22
(32)【優先日】2021-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(71)【出願人】
【識別番号】508194892
【氏名又は名称】株式会社JEPLAN
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【氏名又は名称】玉井 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100228175
【氏名又は名称】近藤 充紀
(72)【発明者】
【氏名】シシェ ダヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ブランケ ギヨーム
(72)【発明者】
【氏名】ラインクーゲル ル コック ダミアン
【テーマコード(参考)】
4D017
4H006
【Fターム(参考)】
4D017AA01
4D017BA04
4D017CA03
4D017CA05
4D017CB01
4D017DA01
4D017EA05
4H006AA02
4H006AD15
4H006AD17
4H006BC51
4H006BC52
(57)【要約】
本発明は、粗ジエステルモノマー給送物を精製するための方法であって、以下の工程を含む方法に関する:a)粗ジエステルモノマー給送物を60~150℃の温度で水性溶媒と混合して、ジエステルモノマーの水性混合物を得る工程であって、注入される水性溶媒の量の調節を、粗ジエステルモノマー給送物がジエステルモノマーの水性混合物の全重量の20~90%を占めるように行う、工程;b)ジエステルモノマーの水性混合物を60~150℃の温度および0.1~1.0MPaの圧力で吸着して、精製済みモノマー流出物を得る工程。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粗ジエステルモノマー供給原料を精製するための方法であって、以下の工程を含む、方法:
a) 混合工程;粗ジエステルモノマー供給原料および水性溶媒を給送し、60℃~150℃の温度で行う;ジエステルモノマーの水性混合物を得る;導入される水性溶媒の量の調節を、粗ジエステルモノマー供給原料がジエステルモノマー水性混合物の全重量の20重量%~90重量%を表すように行う、
b) 吸着工程;粗ジエステルモノマー水性混合物を、少なくとも1種の吸着剤と、60℃~150℃の温度および0.1~1.0MPaの圧力で接触させることによって行う;精製済みモノマー流出物を得る。
【請求項2】
水性溶媒は、最低50重量%の水、好ましくは最低75重量%の水、優先的には最低90重量%の水、よりなおさら優先的には最低97重量%の水、好ましくは最低99重量%の水を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程a)に導入される水性溶媒の量の調節を、粗ジエステルモノマー供給原料が、ジエステルモノマー水性混合物の全重量の30重量%~80重量%、好ましくは50重量%~75重量%、好ましくは40重量%~60重量%を示すように行う、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
混合工程a)を行う際の温度は、70℃~120℃、好ましくは75℃~110℃の温度であり、その際の圧力は、好ましくは0.1~1.0MPa、優先的には0.1~0.8MPa、好ましくは0.1~0.5MPaである、請求項1~3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
工程b)を行う際の温度は、70℃~120℃、優先的には75℃~110℃である、請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
工程b)を行う際の圧力は、0.1~0.8MPa、より特定的には0.1~0.5MPaである、請求項1~5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1種の吸着剤を、活性炭、アルミナおよび粘土から選ぶ、請求項1~6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
吸着工程b)では、1~5種の吸着剤、好ましくは1または2種の吸着剤が用いられる、請求項1~7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1種の吸着剤は、活性炭である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
吸着工程b)を、フロースルー固定床方式において行う、請求項1~9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
分離工程c)を工程b)の下流に配置されて含み、分離精製済みジエステルモノマー流出物および使用済み水性溶媒流出物を得、分離工程c)では、好ましくは、固体-液体分離、例えば、ろ過、デカンテーションおよび/または遠心分離による分離が用いられる、請求項1~10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
ジエステルモノマーを結晶化する工程c
*)を含み、好ましくは、吸着工程b)の下流、かつ特に分離工程c)の上流に配置し、結晶化工程c
*)では、少なくとも1つの固体生成セクションが用いられ、該固体生成セクションに、吸着工程b)からの精製済みモノマー流出物を給送し。固体ジエステルモノマーの水性懸濁液を生じさせる、請求項1~11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
固体生成セクションに、混合工程a)に導入された水性溶媒と同一またはそれとは異なる結晶化溶媒を給送し、導入される結晶化溶媒の量の調節を、混合工程a)に給送する粗ジエステルモノマー供給原料が、前記固体生成セクション中の混合物の全重量の1重量%~75重量%、優先的には5重量%~45重量%、好ましくは15重量%~35重量%を示すように行う、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
結晶化工程c
*)の前記固体生成セクションを操作する際の温度は、0℃~100℃、好ましくは5℃~80℃、好ましくは10℃~70℃であり、その際の圧力は、好ましくは0.00001~1.00MPa、優先的には0.0001~0.50MPa、好ましくは0.001~0.20MPaである、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
分離工程c)に、吸着工程b)からの精製済みモノマー流出物または結晶化工程c
*)の終わりに得られた固体ジエステルモノマーの水性懸濁液を給送し、分離精製済みジエステルモノマー流出物および使用済み水性溶媒流出物を得る、請求項11~14のいずれか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジエステルモノマー、特にテレフタル酸ジエステルモノマー、特にビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(bis(2-hydroxyethyl) terephthalate:BHET)を吸着により精製するための方法に関する。より詳細には、本発明は、粗ジエステルモノマー供給原料、特にテレフタル酸ジエステルモノマー、とりわけビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)を含んでいる粗ジエステルモノマー供給原料を、前記供給原料の水性溶媒との混合物の、少なくとも1種の吸着剤による吸着によって精製して、精製・脱色されたジエステルモノマー流出物を得るための方法に関する。粗ジエステルモノマー供給原料は、例えば、特にポリエステル廃棄物および使用済みプラスチックからなるポリエステル供給原料の解重合によって得られてよい。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル、特にポリエチレンテレフタラート(polyethylene terephthalate:PET)のケミカルリサイクルは、廃棄物の形態で回収されたポリエステルを、重合方法用の供給原料として再び用いられることが可能となるだろうモノマーに分解することを目的とした数多くの研究の対象となっている。
【0003】
数多くのポリエステルが材料を収集・選別するためのネットワークから得られる。特に、ポリエステル、特にPETは、ポリエステルから構成される、ボトル、コンテナトレイ、フィルム、樹脂および/または繊維(例えばテキスタイル繊維、タイヤ繊維)の収集を起源とする場合がある。収集および選別のチャネルから得られるポリエステルは、リサイクル対象のポリエステルと呼ばれる。
【0004】
リサイクル対象のPETは、4つの主要なカテゴリーに分類され得る:
- クリアPET:主として無色透明なPET(一般に最低60重量%)と、淡青色で透明なPETとから構成され、顔料を含有しておらず、かつ機械的リサイクル法において用いられ得る;
- 暗色または着色(緑色、赤色など)のPET:一般に0.1重量%までの染料または顔料を含有することができるが、透明または半透明のままである;
- 不透明PET:相当量の顔料を、典型的には0.25重量%と5.0重量%との間で変動する含有量で含有し、ポリマーを不透明化する。不透明PETは、例えば、食品コンテナ、例えば、牛乳ボトルの製造、化粧品、植物防疫または染料のボトルの組成物において用いられることが増えている、
- 多層PET:PET以外のポリマーの層若しくはリサイクルPETの層と、層の間のバージンPET(すなわち、リサイクルに供されていないPET)、または例えばアルミニウムのフィルムとを含む。多層PETは、熱成形後に梱包材、例えばコンテナトレイの製造に用いられる。
【0005】
収集および選別の後に、これらの流れのリサイクルは、一般に、コンディション調整の第1の工程からなり、この工程の間に、未処理の梱包材のベールは洗浄され、精製され、選別され、粉砕され、その後に、再度精製され、選別されて、一般に1重量%未満の「巨視的」不純物(ガラス、金属、他のプラスチック、木材、紙、ボール紙、無機要素)、優先的には0.2重量%未満の「巨視的」不純物、さらにより優先的には0.05重量%未満の「巨視的」不純物を含有しているフレークの流れを生じさせる。
【0006】
クリアPETフレークは、その後、押出-ろ過工程を経て、押出物を生じさせてよく、これらは、その後、バージンPETとの混合物として再使用されて、新たな製品(ボトル、繊維、フィルム)を製造することができる。真空下での固相重合(solid state polymerization;SSPの略称によって知られる)の工程が食品用途のためにしばしば必要である。このタイプのリサイクルは、機械的リサイクルとして知られている。
【0007】
暗色(または着色)PETフレークも、機械的にリサイクルされ得る。しかしながら、着色流れから形成された押出物の着色により、用途は制限される:暗色PETは、一般的に、パッケージングストラップまたは繊維を製造するために用いられる。出口は、それ故に、クリアPETのものと比較してより制限される。
【0008】
リサイクル対象PET中の、顔料を高含有率で含有している不透明PETの存在は、リサイクル業者に問題を提示する。不透明PETは、リサイクルされるPETの機械的特性に悪影響を及ぼすからである。不透明PETは、今のところ、着色PETと共に収集され、着色PET流れ中に見出される。不透明PETについての用途の開発の点から見て、リサイクル対象の着色PETの流れ中の不透明PETの含有率は、今のところ、5~20重量%であり、さらに増大している傾向にあるところである。数年の期間内に、着色PET流れ中の不透明PETの含有率:20~30重量%超に達することが可能であるだろう。しかしながら、着色PET流れ中の不透明PET10~15%超で、リサイクルされるPETの機械的特性が悪影響を受けることが示され(参照:Impact du developpement du PET opaque blanc sur le recyclage des emballages en PET [白色不透明PETの増加がPETのパッケージングのリサイクルに及ぼす影響], preliminary report of COTREP of 5/12/13)、繊維の形態で着色PETについてのチャネルの主要な出口にリサイクルすることが防止される。
【0009】
染料は、天然のまたは合成の物質であり、ポリエステル材料中にとりわけ可溶であり、それらが導入される材料を着色するために用いられる。 一般的に用いられる染料は、異なる性質を有し、しばしば、OおよびNのタイプのヘテロ原子および共役不飽和、例えば、キノン、メチンまたはアゾの基、または分子、例えば、ピラゾロンおよびキノフタロンを含有する。
【0010】
顔料は、微細分割された物質であり、ポリエステル材料中に特に不溶であり、それらが導入される材料を着色し、かつ/または不透明にするために用いられる。ポリエステル、特に、PETを着色し、かつ/または不透明にするために用いられる主要な顔料は、金属酸化物、例えば、TiO2、CoAl2O4またはFe2O3、ケイ酸塩、ポリスルフィドおよびカーボンブラックである。顔料は、一般的には0.1~10μm、主として0.4~0.8μmのサイズを有する粒子である。これらの顔料の完全な除去は、不透明PETをリサイクルすることを想定するために必要であるが、ろ過によるこれらの顔料の完全な除去が技術的に困難であるのは、それらが極めて高い閉塞容量を有するからである。
【0011】
着色および不透明のPETのリサイクルには、それ故に、極めて大きな問題がある。
【0012】
特許文献1には、着色PET、特に緑着色PETボトルの回収に由来するもののグリコリシスによる解重合のための方法が記載されている。この方法によって処理されるPET供給原料は、180℃~280℃の温度で数時間にわたってエチレングリコールと接触させられる。グリコリシスの生成物は、解重合工程の終結の際に得られ、このものは、直接的にまたはろ過の後に、活性炭上で170℃を上回る温度で精製され、次いで、残留染料、特に黄色着色染料の抽出を溶媒により行い、この溶媒は、アルコール、例えば、メタノール、またはグリコール、例えば、エチレングリコールであってよく、次いで、抽出溶媒中のBHETの結晶化が温度を下げることによって行われる。BHETは、次いで、ろ過によって分離される。
【0013】
特許文献2において、消費後(post-consumer)PETは、種々のPET、例えば、クリアPETおよび着色PET、例えば、青色PET、緑色PETおよび/またはこはく色PETの混合物を含み、このものは、エチレングリコールおよびアミン触媒およびアルコールの存在中、反応器において、150~250℃で、バッチ様式でグリコリシスにより解重合される。生じたジエステルモノマーは、直接的なろ過、次いで、活性炭上の吸着、最後に、特に80~90℃の温度でのイオン交換樹脂上の通過によって精製され、その後に、結晶化され、ろ過によって回収される。特許文献2には、得られたジエステルモノマーの200℃での短経路蒸留による精製のための別の方法が開示されている。
【0014】
特許文献3には、メタノールまたはエチレングリコールに溶解した粗BHETの溶液の精製が同様に記載され、これは、前記溶液と、活性炭、アニオン交換樹脂およびカチオン交換樹脂との間の少なくとも一連の接触を、40℃~120℃、特に、60℃、65℃または80℃に等しい温度で含む。具体的には、この特許には、上記の条件下での活性炭のみとの接触では、溶液を完全に脱色するためにはとりわけ十分ではないのは、残留する色、特に、黄色が存続する一方で、活性炭およびアニオンおよびカチオンの交換樹脂上を連続的に通過した後には黄色の着色がもはや見られないからである。
【0015】
特許文献4において、この方法は、着色ポリエステル、例えば緑色PETの、ジオール、特にエチレングリコールの存在中での反応器における180℃~240℃の温度での解重合の工程と、場合による、薄膜式エバポレータにおける蒸発の工程と、高温の溶媒中への溶解の工程と、サイズが50μm超である不溶性不純物を分離除去するためのろ過の工程とを含む。着色PET中の顔料の低い割合により、ろ過による分離が可能となる。しかしながら、この技術は、より多量の顔料、例えば、不透明PET中に存在する顔料により操作することができないのは、これらの顔料がフィルタをすぐに詰まらせるからである。
【0016】
特許文献5には、PETからの精製BHETの製造が記載されている。本方法は、以下を含んでいる:水により洗浄することによって予め前処理された固体の形態にあるPETフレークを、エチレングリコールおよび触媒の存在中、撹拌反応器において、180℃、次いで、195~200℃でグリコリシスする工程、次の、冷却による反応流出物の予備精製、ろ過、吸着およびイオン交換樹脂上の処理の工程。この予備精製工程は、後続の精製工程におけるBHETの再重合を防止するために重要であるとして提示され、グリコールの蒸発およびBHETの精製の前に行われる。しかしながら、供給原料が大量の非常に小さい固体粒子、例えば、顔料を含んでいる場合に、ろ過およびイオン交換樹脂の工程を経ることは極めて大きな問題となり得る。
【0017】
最後に、特許文献6には、不透明PET、特に0.1重量%~10重量%の顔料を含んでいるポリエステル供給原料を、エチレングリコールの存在中でグリコリシスにより解重合するための方法が記載されている。精製済みビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)流出物が、分離および吸着による精製の特定の工程の後に得られる。しかしながら、特許文献6に記載された解重合方法によって得られたBHET流出物は、欠陥を有する可能性がある:得られたBHET流出物は、吸着剤のカラムを通過したにも拘わらず、とりわけ急速な着色を経る。
【0018】
本発明は、粗ジエステルモノマーの精製、従来技術の方法、例えば、上記の方法の精製工程を改善して、ジエステルモノマー、特にBHETモノマー、とりわけ、PETを含んでいるポリエステル供給原料の解重合の後に得られるものの脱色を改善しようとするものである。本発明の目的は、具体的には、粗ジエステルモノマー供給原料、特に、ポリエステル廃棄物、特にPET廃棄物のグリコリシスによる解重合の反応に由来するものから、高純度でありかつ脱色されたジエステルモノマー、特にBHETモノマーを得ることにある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0074136号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2015/0105532号明細書
【特許文献3】米国特許第6642350号明細書
【特許文献4】欧州特許第0865464号明細書
【特許文献5】特許第3715812号
【特許文献6】仏国特許出願公開第3053691号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0020】
(発明の概要)
本発明の目的は、それ故に、粗ジエステルモノマー供給原料を精製するための方法であって、以下を含む、方法にある:
a) 混合工程;粗ジエステルモノマー供給原料および水性溶媒を給送し、60℃~150℃の温度で行う;ジエステルモノマーの水性混合物を得る;導入される水性溶媒の量の調節を、粗ジエステルモノマー供給原料がジエステルモノマー水性混合物の全重量の20重量%~90重量%を表すように行う、
b) 吸着工程;ジエステルモノマー水性混合物を、少なくとも1種の吸着剤と、60℃~150℃の温度および0.1~1.0MPaの圧力で接触させることによって行う;精製済みモノマー流出物を得る。
【0021】
本発明の1つの利点は、粗ジエステルモノマー供給原料、特に、粗BHET供給原料から、精製されかつ脱色されたジエステルモノマー流出物、特に、BHET流出物を得ることにある。本発明による方法の終わりに得られた精製済みジエステルモノマー流出物は、それが液体の形態にある場合、有利には、無色またはほぼ無色の見た目にあり、それが処理されて固体の形態にある流出物を得る場合、固体の形態にある精製済みジエステルモノマー流出物は、白色の固体の見た目にある。有利には、本発明による方法により、UV-可視分光法によって特徴付けられる場合に可視波長の範囲内、すなわち、400~800nmに有意な吸収帯を一切示さない(すなわち、バックグラウンドノイズと区別することができない)精製済みジエステルモノマー流出物を得ることが可能となる。大いに有利には、本発明による方法の終わりに得られる精製済みジエステルモノマー流出物は、好ましくは固体の形態で、CIE 1976 L*a*b*基準システムで表され、色度測定法(ASTM D6290 2019法に準拠)によって決定されるカラーパラメータを有し、好ましくは、以下の通りである:
- 明度(または輝度)パラメータL*:100に近い、より詳細には90.00超、好ましくは92.00超(100.00が最大である);
- パラメータa*(緑-赤軸に相当する);0に近い、より詳細には-1.50~+1.50、好ましくは-1.00~+1.00;および、
- パラメータb*(青-黄軸に相当する);0に近い、より詳細には-2.50~+2.50、より詳細には-1.00~+1.50。
【0022】
本発明の利点は、したがって、ポリエステル廃棄物、典型的には、着色、不透明、さらには多層のPETを含み、したがって結果として顔料および染料を含んでいるもののグリコリシスによる解重合のための方法に特に由来する粗ジエステルモノマー流れから、精製されかつ脱色されたジエステルモノマー流出物を得ることにある。本発明による方法により、残留不純物、例えば、ポリエステルの解重合の下流の分離工程中に排除することができなかった染料および/または有機または無機の塩を除去することがこのように可能となる。
【0023】
このようなジエステルモノマーは、引き続き(再)重合させられて、バージンポリエステル、特にバージンPETと違いを示さないポリエステルポリマーを与えてよく、そのため、バージンPETのあらゆる用途に至ることが可能となる。
【0024】
本発明による方法は、非常にフレキシブルであり、不透明および/または着色のPETを含むポリエステル、例えば、PETの解重合、特にグリコリシスによる解重合のための任意の方法の下流に、解重合反応によって直接的に得られたかまたはグリコリシスのために過剰に導入されたか若しくは解重合中に生じたジオールおよび/または重質不純物、例えば、不完全に転化されたオリゴマーおよび顔料を分離するための工程の後に得られたジエステルモノマー流出物を精製するための工程として容易に組み込まれ得る。例えば、本発明による方法は、特許出願FR 3053691に記載される方法の脱色工程の代わりに容易に組み込まれてよい。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(図面のリスト)
図1は、実施例1、2および3に記載される方法によって生じた流出物について、550nm~700nmで得られたUV-可視スペクトルを示す。
【0026】
図2は、実施例1に記載される方法によって生じた流出物について、350nm~850nmで得られたUV-可視スペクトルを示す。
【0027】
(実施形態の説明)
本発明によると、ポリエチレンテレフタラートまたはポリ(エチレンテレフタラート)は、簡単にPETとも呼ばれるものであり、下記式のテレフタル酸ジエステルを含んでいる基本繰り返し単位を有している。
【0028】
【0029】
慣習的に、PETは、テレフタル酸(PTA)またはテレフタル酸ジメチル(dimethyl terephthalate:DMT)のエチレングリコールとの重縮合によって得られる。
【0030】
本発明によると、用語「モノマー」または「ジエステルモノマー」は、有利には、ポリエステルポリマーの繰り返し単位を指し、ジカルボン酸、好ましくは芳香族ジカルボン酸、優先的にはテレフタル酸と、ジオール、好ましくは2~12個の炭素原子、優先的には2~4個の炭素原子を含んでいるジオール(好適なジオールは、エチレングリコールである)とのジエステルを定義する。より詳細には、「モノマー」または「ジエステルモノマー」は、本発明の方法によって標的とされる生成物に対応する。それ故に、本発明の実施形態によると、「モノマー」または「ジエステルモノマー」(本発明の方法によって標的とされる生成物)は、HOCnH2n-CO2-(Aro)-CO2-CnH2nOHのタイプの化学式を有し、式中、n=2~12、好ましくはn=2~4であり、-(Aro)-=-(C6H4)-は、芳香族環を表す。好ましくは、用語「モノマー」または「ジエステルモノマー」は、化学式HOC2H4-CO2-(C6H4)-CO2-C2H4OHのビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)を指し、式中、-(C6H4)-は、芳香族環を表す。
【0031】
用語「オリゴマー」は、典型的には、小サイズのポリマーであって、一般的には、2~20個の基本繰り返し単位からなるものを指す。本発明によると、用語「エステルオリゴマー」または「BHETオリゴマー」は、テレフタラートエステルオリゴマーであって、2~20個、好ましくは2~5個の、式-[O-CO-(C6H4)-CO-O-C2H4]-の基本繰り返し単位を含んでいるものを指し、-(C6H4)-は、芳香環である。
【0032】
本発明によると、用語「ジオール」および「グリコール」は、区別なく用いられ、2個の水酸基-OHを含んでおり、かつ、好ましくは、2~12個の炭素原子、優先的には2~4個の炭素原子を含んでいる化合物に対応する。好適なジオールは、エチレングリコールであり、これは、モノエチレングリコールまたはMEGとも称される。
【0033】
したがって、本発明の方法の工程において場合により用いられるジオールまたはジオール流出物流れは、このように好ましくは、エチレングリコール(またはMEG)を、前記ジオールまたはジオール流出物流れの全重量の40重量%超、優先的には50重量%超、好ましくは60重量%以上の量で含む。
【0034】
用語「染料」は、ポリエステル材料に可溶であり、かつそれを着色するために用いられる物質を規定する。染料は、天然または合成の起源のものであってよい。
【0035】
本発明によると、用語「顔料」、より特定的には、不透明にするおよび/または着色する顔料は、微細分割された物質であって、ポリエステル材料中に特に不溶であるものを規定する。顔料は、固体粒子の形態にあり、一般的には0.1~10μm、優勢には0.4~0.8μmのサイズを有している。それらは、しばしば、無機の性質のものである。一般的に用いられる、とりわけ、不透明にするために用いられる顔料は、金属酸化物、例えば、TiO2、CoAl2O4またはFe2O3、ケイ酸塩、ポリスルフィドおよびカーボンブラックである。
【0036】
本発明によると、表現「AとBとの間の、またはA~Bの(of between A and B)」および「AとBとの間、またはA~B(between A and B)」は、等価であり、間隔の両限界値(A、B)は値の記載された範囲に含まれることを意味する。もしそのようになっていなかったならば、および両限界値が記載された範囲に含まれなかったならば、そのような説明が本発明によって与えられることになる。
【0037】
本発明の目的のために、所与の工程についてのパラメータの種々の範囲、例えば、圧力範囲および温度範囲は、単独でまたは組み合わせで用いられてよい。例えば、本発明の意義の範囲内で、好適な圧力値の範囲は、より好適な温度値の範囲と組み合わされ得る。
【0038】
以下の本文において、本発明の特定の実施形態が記載されてよい。それらは、別々にまたは技術的に実現可能である場合には組合せに制限なく一緒に組み合わされて実施されてよい。
【0039】
用語「上流」および「下流」は、本処理方法における流れの一般的な流動に応じて理解されるべきである。
【0040】
本発明によると、圧力は、絶対圧であり、MPaまたはMPa(絶対圧力)(またはMPa(絶対))で与えられる。
【0041】
(供給原料)
本発明による方法は、粗ジエステルモノマー供給原料を給送される。
【0042】
前記粗ジエステルモノマー供給原料は、有利には、最低70.0重量%、好ましくは最低85.0重量%、優先的には最低95.0重量%、好ましくは最低99.0重量%、大いに好ましくは最低99.9重量%のジエステルモノマー、好ましくはビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(またはBHET)を含み、100.0重量%は供給原料中のジエステルモノマーの最大を表す。粗ジエステルモノマー供給原料は、不純物、好ましくはジエステルモノマー中に可溶な不純物を含む場合もある。これらの不純物は残留不純物と呼ばれる場合もある。これらは、染料、例えば、典型的にポリエステルポリマー材料を着色するために用いられる染料、有機または無機の塩、またはジカルボン酸および少なくとも1種のジオールのダイマーまたはトリマー(前記ジオールは、標的にされるジエステルモノマーを形成するものである)のエステルのタイプの化合物であり、ジカルボン酸は、好ましくは芳香族ジカルボン酸、優先的にはテレフタル酸であり、ジオールのダイマーまたはトリマーは、好ましくは4~36個の炭素原子、優先的には4~8個の炭素原子を含み、例えばジエチレングリコールである(1つのそのような不純物は、例えば、2-ヒドロキシエチルテレフタル酸2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチルであり、これは、テレフタル酸とエチレングリコールおよびジエチレングリコールとのエステルである)。より詳細には、染料タイプの不純物は、粗ジエステルモノマー供給原料の全重量の最高1重量%(すなわち、1重量%未満)、好ましくは最高0.1重量%、優先的には最高0.05重量%、かつ、特に粗ジエステルモノマー供給原料の全重量の最低1重量ppmを示す場合がある。他の不純物、特にジカルボン酸と少なくとも1種のジオールのダイマーまたはトリマーとのエステルのタイプの不純物は、トータルで、粗ジエステルモノマー供給原料の全重量の最高15.0重量%、好ましくは最高10.0重量%、優先的には最高5.0重量%、かつ、特に粗ジエステルモノマー供給原料の全重量の最低10重量ppmを示す場合がある。
【0043】
粗ジエステルモノマー供給原料は、場合によっては、溶媒、例えば、モノアルコール、特にメタノール若しくはエタノール、またはジオール、より詳細にはエチレングリコールをさらに含んでよい。粗ジエステルモノマー供給原料は、特に、最高30.0重量%、好ましくは最高15.0重量%、優先的には最高5.0重量%、好ましくは最高1.0重量%、大いに好ましくは最高0.1重量%の溶媒、より詳細にはジオール、例えば、エチレングリコール、または痕跡量のみの溶媒、特に500重量ppm未満の溶媒、好ましくはジオール、特にエチレングリコールを含んでよい。粗ジエステルモノマー供給原料は、溶媒を一切含まなくてもよい。
【0044】
本発明の1つの好適な実施形態によると、粗ジエステルモノマー供給原料は、典型的には着色および/または不透明PET、および場合による多層PETを含んでいるポリエステル供給原料、特にポリエステル廃棄物供給原料のグリコリシスによる解重合のための方法から得られる。より詳細には、粗ジエステルモノマー供給原料は、ジオール、好ましくはエチレングリコールの存在中での、着色および/または不透明PETを含んでいるポリエステル供給原料の解重合に直接的にまたは間接的に由来してよく、用語「間接的に由来する」は、解重合方法が、ジオールの存在中での解重合反応によって得られた反応流出物の予備精製の工程、例えば、グリコリシス用に過剰に用いられたか若しくは解重合中に生じたジオールを分離する工程および/または重質不純物、例えば、不完全に転化されたオリゴマーを分離する工程および/または例えばイオン交換樹脂を通過させることによってイオン性の種を分離する工程を含むことを意味し、用語「直接的に由来する」は、解重合方法がそのような予備精製工程を含まないことを意味する。
【0045】
本発明の1つの非常に詳細な実施形態によると、本発明による精製方法に給送する粗ジエステルモノマー供給原料は、解重合方法、例えば、特許出願FR 3053691に記載された方法から得られ、当該方法において、本発明による精製方法は、記載された脱色工程を置き換える。
【0046】
(精製方法)
粗ジエステルモノマー供給原料の精製は、有利には、粗ジエステルモノマーの水溶液の吸着によって行われる。
【0047】
本発明による方法は、そのため、ジエステルモノマー供給原料を水性溶媒と混合するための工程a)と、得られたジエステルモノマー水性混合物を少なくとも1種の吸着剤と接触させることによって精製済みジエステルモノマー流出物を得る吸着工程b)とを少なくとも含む。
【0048】
本発明による方法は、場合によっては、ジエステルモノマーを分離して、分離精製済みジエステルモノマー流出物と、使用済み水性溶媒流出物とを得るための工程c)を含んでよい。本発明による方法は、場合によっては、ジエステルモノマーを結晶化するための追加の工程c*)を、好ましくは吸着工程b)の下流に、有利には任意選択の分離工程c)の上流に配置されて含んでもよい。
【0049】
(混合工程a))
有利には、混合工程a)は、粗ジエステルモノマー供給原料および水性溶媒を給送され、粗ジエステルモノマー供給原料は、好ましくはBHETを含む。工程a)により、ジエステルモノマー水性混合物を得ることが可能となる。
【0050】
水性溶媒は、有利には、水、好ましくは最低50重量%の水、好ましくは最低75重量%の水、優先的には最低90重量%の水、よりなおさら優先的には最低97重量%の水、好ましくは最低99重量%の水を含み、最高は100重量%の水である(すなわち、水性溶媒は、有利には100重量%以下の水、特に50重量%~100重量%、好ましくは75重量%~100重量%、優先的には90重量%~100重量%、より優先的には97重量%~100重量%、好ましくは99重量%~100重量%の水を含む)。場合によっては、水性溶媒は、水以外に、他の水混和性化合物、例えばアルコール、ジオール、酸などのタイプの化合物を含んでよい。水性溶媒は、イオンおよび/または無機塩を少量で、典型的には1重量%未満の量で含んでもよい。好ましくは、水性溶媒は、最低99重量%の水、特に最高100重量%の水を含み、場合によっては、イオンおよび/または無機塩を含んでよい。本発明の好適な実施形態によると、混合工程a)に給送する水性溶媒は、水性溶媒流出物の全部または一部を含み、好ましくはそれらからなり、これは、場合によっては精製され、任意選択の分離工程c)の出口のところで得られた使用済み水性溶媒流出物から得られ、場合によっては、本発明による方法に対して外部の溶媒の供給物を補充される。
【0051】
好ましくは、導入される水性溶媒の量の調節は、粗ジエステルモノマー供給原料がジエステルモノマー水性混合物の全重量の20重量%~90重量%、優先的には30重量%~80重量%、好ましくは40重量%~75重量%、よりなおさら好ましくは40重量%~60重量%を表すように行われる。
【0052】
有利には、混合工程a)が行われる際の温度は、60℃~150℃、好ましくは70℃~120℃、好ましくは75℃~110℃であり、好ましくはその際の圧力は、0.1~1.0MPa、好ましくは0.1~0.8MPa、好適には0.1~0.5MPaである。
【0053】
水性溶媒は、前記混合工程a)の前に、好ましくは混合工程a)が行われる温度に、特に60℃~150℃、好ましくは70℃~120℃、好ましくは75℃~110℃の温度に加熱されてよい。好ましくは、粗ジエステルモノマー供給原料は、前記粗ジエステルモノマー供給原料が少なくとも部分的に、好ましくは完全に液体または溶融の形態にある温度で混合工程a)に給送する。大いに有利には、粗ジエステルモノマー供給原料は、混合工程a)の前に、好ましくは110℃以上、好ましくは120℃以上、かつ、好ましくは220℃以下、優先的には200℃以下の温度に加熱されてよい。それ故に、粗ジエステルモノマー供給原料、好ましくはBHETを含む粗ジエステルモノマー供給原料は、有利には、110℃以上、好ましくは120℃以上、かつ、好ましくは220℃以下、優先的には200℃以下の温度(または入口温度)で混合工程a)に給送する。
【0054】
混合工程a)は、当業者に知られている任意の混合設備、例えば、静的または動的ミキサ、特に静的ミキサなどを用いてよい。
【0055】
工程a)の終わりに得られたジエステルモノマー水性混合物は、有利には、ジエステルモノマー、特にBHETが可溶である均質な混合物である。
【0056】
(吸着工程b))
工程a)の終わりに得られたジエステルモノマー水性混合物は、吸着工程b)に給送する。吸着工程b)は、ジエステルモノマー水性混合物を、少なくとも1種の吸着剤、特に固体であるものと接触させることによって行われ、その際の温度は、有利には60℃~150℃、好ましくは70℃~120℃、優先的には75℃~110℃であり、その際の圧力は、大いに有利には0.1~1.0MPa、特に0.1~0.8MPa、より詳細には0.1~0.5MPaである。
【0057】
吸着工程b)では、有利には、少なくとも1基の吸着ユニット(吸着トレインとも呼ばれる)、好ましくは1~10基の吸着ユニット、好ましくは1~4基の吸着ユニットが用いられ、各吸着ユニットは、有利には、相互に並列で操作する。有利には、各吸着セクションは、少なくとも1基の吸着器、かつ、好ましくは最大4基の吸着器を含み、各吸着器は、例えば反応器またはカラムである。大いに有利には、吸着工程の各吸着器における滞留時間は、好ましくは20分~40時間、好ましくは1時間~30時間、好ましくは1時間~20時間である。滞留時間は、ここでは、問題の吸着器の内部容積と、混合工程a)からのジエステルモノマー水性混合物の容積流量との間の比として定義される。
【0058】
吸着工程b)では、少なくとも1種の吸着剤、特に固体であるもの、好ましくは最大5種の異なる吸着剤が用いられる。非常に特定的な実施形態によると、吸着工程b)では、1種または2種の異なる吸着剤が用いられる。本発明によると、吸着剤が異なると言われるのは、それらの性質および/またはそれらの組成および/またはそれらの粒子サイズおよび/またはそれらの組織特性、例えば細孔容積などが異なる場合である。好ましくは、異なる吸着剤は、異なる性質のものである。具体的には、いくつかの異なる吸着剤、特に異なる性質の吸着剤を組み合わせて、残留不純物、特にそれ自体で非常に異なる性質のものである場合がある残留染料または残留塩の除去を最適化することは有利であってよい。具体的には、ポリエステル廃棄物、例えば、PET梱包材またはプラスチックボトル廃棄物は、本発明による方法によって処理される粗ジエステルモノマー供給原料を、前記廃棄物の解重合によって得てよく、非常に多数の着色および/または不透明PETを含む場合があり、したがって、非常に多数の異なる染料化合物を含む場合がある。粗ジエステルモノマー供給原料の着色は、粗ジエステルモノマー供給原料が得られてよい解重合方法の種々の工程(例えば、廃棄物のコンディション調整工程および/または解重合反応工程)の間のポリエステル廃棄物中に含有される化合物の分解または変換を起源とする場合がある。
【0059】
吸着工程b)で2~5種の異なる吸着剤が用いられる場合、前記異なる吸着剤は、混合物状にあるか、または1基または複数基の吸着器、有利には1つの同一の吸着ユニット内に直列に配置される。好ましくは、吸着工程b)で2~5種の異なる吸着剤が用いられる場合、前記異なる吸着剤は、相互に直列にあり、有利には、1つの同一の吸着ユニットにあり、より優先的には、吸着剤のそれぞれは、直列または並列に、好ましくは直列に配置された異なる吸着器内にあり、有利には、1つの同一の吸着ユニット内にある。
【0060】
有利には、1種または複数種の吸着剤、特に固体であるものは、活性炭、アルミナおよび粘土から選ばれる。活性炭は、例えば、石油コーク、瀝青炭若しくは任意の他の化石起源から得られるか、またはバイオマス、例えば、木材、ココナッツ若しくは任意の他のバイオマス源から得られる。種々の原材料が混合されて、前記吸着工程b)において吸着剤として用いられてよい活性炭を得るようにしてもよい。粘土は、層状複水酸化物または天然または変換粘土、例えば、脱色土として当業者に知られているようなものであってよい。好ましくは、少なくとも1種の吸着剤は、活性炭である。それ故に、吸着工程b)で単一のタイプの吸着剤が用いられる場合、前記吸着剤は活性炭であり、吸着工程b)で2種以上の異なる吸着剤が用いられる場合、一方の吸着剤は活性炭であり、1種または複数種の他方は、別の活性炭、アルミナ、および/または粘土、好ましくは活性炭および/または粘土、より詳細には粘土である。
【0061】
好ましくは、吸着工程b)において用いられる各吸着剤の細孔容積(Vp)は、水銀ポロシメトリによって決定されて、0.25mL/g以上、優先的には0.40mL/g以上、より好ましくは0.50mL/g以上、かつ、好ましくは5mL/g以下である。
【0062】
好ましくは、吸着工程b)は、有利には、各吸着ユニットにおいて、以下のように行われる:
- フロースルー固定床(または固定床)方式、すなわち、1種または複数種の吸着剤の固定床を含んでいる少なくとも1基の吸着器、特に、1種または複数種の吸着剤の少なくとも1基のカラムにおける方式;上昇流または下降流の方式で操作してよい、または
- 撹拌方式、有利には、連続撹拌槽反応器(CSTR)としても知られる少なくとも1基の連続撹拌型反応器における方式;連続撹拌槽反応器(continuous stirred tank reactor:CSTR)としても知られている。
【0063】
吸着工程b)が少なくとも1基のCSTR型の撹拌型反応器において撹拌方式で行われる場合、1基または複数基の反応器に、処理された液体中に懸濁状で存在する前記1種または複数種の吸着剤を回収するためのろ過システムが続く。好ましくは、吸着工程b)は、フロースルー固定床方式で、有利には各吸着ユニットにおいて行われる。
【0064】
好ましくは、吸着工程b)にて、有利には各吸着ユニットにおいて、少なくとも2種の異なる吸着剤がフロースルー固定床方式で用いられる場合、吸着剤は、以下であってよい:
- 各吸着器、またはカラム中に全て存在し、混合物としてまたは連続した固定床において用いられる;または
- 吸着セクションにおいてそれぞれ用いられ、セクションは、相互に直列に置かれ、各吸着セクションは、1~4基、好ましくは2~4基の固定床吸着剤カラム、有利には、各吸着ユニットにおけるものからなる。
【0065】
大いに有利には、吸着工程b)、有利には、各吸着ユニットまたは吸着セクションのそれぞれで、同一の1種または複数の吸着剤のいくつかの固定床のカラム、特に、少なくとも2基の固定床のカラム、好ましくは2~4基の固定床のカラムが用いられる。吸着工程b)で、有利には、各吸着ユニットまたは1つの吸着セクションにおいて、同一の1種または複数種の吸着剤の2基のカラムが用いられる場合、吸着工程b)は、有利には、各吸着ユニットまたは吸着セクションにおいて、「スイング」操作方式に従って操作してよく、当該方式において、カラムの一方がオンラインである一方で、他方のカラムは、インリザーブである。オンラインのカラム内の吸着剤が使い果たされ時に、このカラムは隔離される一方で、インリザーブのカラムは、オンラインに置かれる。次いで、隔離されたカラムの使用済み吸着剤は、次いで、現場内(in situ)再生されるか、かつ/またはフレッシュな吸着剤と交換されて、他方のカラムが隔離されたところで再度オンラインに置き戻されてよい。吸着剤カラムの別の操作方式は、少なくとも2基のカラムを、有利には、各吸着ユニットにおいて、直列で操作しているようにさせる:先頭のカラム(すなわち、直列の第1のカラム)の吸着剤が使い古された時に、この第1のカラムが隔離され、使用済み吸着剤は、現場内再生されるかまたはフレッシュな吸着剤と置き換えられ、前記カラムは、次いで、一連のカラムの最後の位置においてオンラインに置き戻されるなどがなされる。この操作は、「リード-ラッグ」と呼ばれる。大いに好ましくは、吸着工程b)では、有利には、各吸着ユニットまたは各吸着セクションにおいて、同一の吸着剤の少なくとも2基のカラム、好ましくは同一の吸着剤の2~4基のカラム、優先的には同一の吸着剤の2基のカラムが、「リード-ラッグ」方式で用いられる。
【0066】
同一の吸着剤の少なくとも2基のカラムの組み合わせにより、有利には、各吸着ユニットにおいて、吸着剤のおそらくは迅速な飽和および/または目詰まりを特に改善することが可能となる。具体的には、少なくとも2基の吸着剤のカラムの存在により、吸着剤の交換および/または再生が有利には吸着ユニット、さらには処理方法を停止することなく容易になるため、目詰まりのリスクを低下させ、吸着剤の飽和によるユニットの停止を防ぎ、コストを管理し、吸着剤の消費を制限することが可能となり、その一方で、精製済みジエステルモノマーの連続的な製造が保証される。少なくとも2基の吸着剤のカラムのこの組み合わせにより、特に「リード-ラッグ」方式で操作する際に、有利には、各吸着ユニットにおいて、前記吸着剤の吸着容量を最大化することも可能となる。
【0067】
本発明の非常に特定的な実施形態において、吸着工程b)で、有利には各吸着ユニットにおいて2種の異なる吸着剤が用いられ、吸着工程b)は、大いに優先的には、活性炭の少なくとも2基、好ましくは2~4基の固定床カラムを含んでいる第1の吸着セクションと、別の吸着剤、好ましくは、別の活性炭または粘土から選ばれる吸着剤の少なくとも2基、好ましくは2~4基の固定床カラムを含んでいる第2の吸着セクションとを含み、第1の吸着セクションの固定床カラムは、スイング方式またはリード-ラッグ方式で操作し、第2の吸着セクションの固定床カラムは、特にスイング方式またはリード-ラッグ方式で操作し、固定床活性炭カラムの第1のセクションの上流または下流に配置される。
【0068】
吸着工程b)において用いられる各吸着剤は、好ましくは、細粒、押出物または粉末の形態にある。好ましくは、各吸着剤は、以下の形態にある:
- 吸着工程b)がフロースルー固定床方式で行われる場合、細粒または押出物の形態、および、
- 吸着工程b)がCSTRタイプの撹拌型反応器において行われる場合、粉末の形態。
【0069】
前記少なくとも1種の吸着剤のサイズは、特にそれが細粒または押出物の形態にある場合、前記少なくとも1種の吸着剤の最小寸法(細粒若しくは多葉押出物の基準で外接する円の直径、または円柱タイプの押出物の円柱の基準で外接する円柱の直径に相当する;この寸法は「直径」とも呼ばれる)が、好ましくは0.1~5mm、優先的には0.3~2mmになるようにされる。例えば、Cabot Noritによって販売されている直径0.8mmの活性炭押出物、またはChemvironによって販売されている0.4~1.7mmのサイズ範囲内の細粒が吸着剤として適切であってよい。
【0070】
本発明による方法は、有利には、吸着工程b)の前記1種または複数種の吸着剤を再生する段階を含んでもよい。
【0071】
精製済みモノマー流出物は、吸着工程b)の終わりに得られる。それは、任意選択の分離工程c)または場合によっては結晶化工程c*)に給送してよい。
【0072】
(任意選択の結晶化工程c*))
本発明による方法は、場合によっては、ジエステルモノマーを結晶化するための工程c*)を含んでよく、好ましくは、吸着工程b)の下流、かつ大いに有利には任意選択の分離工程c)の上流に配置される。有利には、結晶化工程c*)では、少なくとも1個の固体生成セクションが用いられる。任意選択の結晶化工程c*)により、固体ジエステルモノマーの水性懸濁液を得ることが可能となる。
【0073】
この任意選択の結晶化工程は、二元的な効果を有する:それにより、使用済み水性溶媒流出物からの固体の形態にある精製済みジエステルモノマーの分離を容易にすることを可能とするとともに、ジエステルモノマーの精製を改善することも可能にする。
【0074】
本発明の1つの好適な実施形態によると、本方法は、吸着工程b)の下流、かつ大いに有利には任意選択の分離工程c)の上流に結晶化工程c*)を含む。本発明の別の実施形態によると、本方法は、吸着工程b)の下流に、2~4回の結晶化工程c*)を含んでよく、各工程には、以下に記載される任意選択の分離工程c)が続く。
【0075】
本発明の別の実施形態によると、本方法は、吸着工程b)の上流かつ有利には混合工程a)の上流に少なくとも1回の結晶化工程c*)を含んでよい。後者の実施形態において、結晶化工程c*)は、場合によってはろ過された粗ジエステルモノマー供給原料および以下に記載される結晶化溶媒を給送される固体生成セクションと、固体生成セクションにおいて形成された固体を分離する固体-液体分離セクションとを含み、分離された固体は、次いで、混合工程a)に送られて、そこで、それは水性溶媒中に溶解させられることになる。
【0076】
任意選択の結晶化工程c*)、より詳細には、吸着工程b)の下流に有利に配置される固体生成セクションは、吸着工程b)からの精製済みモノマー流出物を給送される。結晶化工程c*)は、場合によっては、吸着工程b)からの精製済みモノマー流出物をろ過するためのセクションをさらに含んでよく、このセクションは、固体生成セクションの上流に配置される。
【0077】
場合によっては、固体生成セクションは、混合工程a)に導入された水性溶媒と同一またはそれとは異なる結晶化溶媒を給送されてもよい。結晶化溶媒は、有利には、以下から選ばれる:水、最低50重量%、好ましくは最低75重量%、優先的には最低90重量%、よりなおさら優先的には最低97重量%、好ましくは最低99重量%の水を含んでいる水性溶媒;モノアルコール、好ましくは1~12個の炭素原子を有するモノアルコール、例えば、メタノールまたはエタノール;ジオール、好ましくは1~12個の炭素原子を有するジオール;エーテル;アルデヒド;エステル;炭化水素、好ましくは芳香族炭化水素、例えばモノ芳香族化合物;および同じ化学族または異なる化学族に属するこれらの化合物の少なくとも2種の混合物。好ましくは、結晶化溶媒は、以下から選ばれる:水、最低50重量%、好ましくは最低75重量%、優先的には最低90重量%、よりなおさら優先的には最低97重量%、好ましくは最低99重量%の水を含んでいる水性溶媒;1~12個の炭素原子を有するモノアルコール、例えば、メタノールまたはエタノール;1~12個の炭素原子を有するジオール、好ましくはエチレングリコール;モノ芳香族化合物、例えばキシレン;およびそれらの混合物。好ましくは、結晶化溶媒は、混合工程a)に導入された水性溶媒と同じである。
【0078】
本発明の好適な実施形態によると、結晶化溶媒は、水性溶媒流出物の全部または一部を含み、好ましくはそれらからなり、これは、場合によっては、精製され、任意選択の分離工程c)の出口のところで得られた使用済み水性溶媒流出物に由来し、場合によっては、本発明による方法に対して外部の溶媒の供給物によって補充される。
【0079】
好ましくは、結晶化溶媒が導入される場合、固体生成セクションに導入される結晶化溶媒の量の調節は、本方法、特に本方法の混合工程a)に給送する粗ジエステルモノマー供給原料が、前記固体生成セクションにおける混合物(すなわち、粗ジエステルモノマー供給原料と、混合工程a)に導入された水性溶媒と、結晶化溶媒とを含んでいる混合物)の全重量の1重量%~75重量%、優先的には5重量%~45重量%、好ましくは15重量%~35重量%を示すように行われる。
【0080】
前記固体生成セクションの前に、結晶化溶媒の全部または一部は、好ましくは、吸着工程b)が行われる際の温度に加熱されるか、または冷却されてよく、特に、好ましくは0℃~120℃、好ましくは5℃~100℃、好ましくは10℃~90℃の温度にされてよい。
【0081】
有利には、任意選択の結晶化工程c*)の固体生成セクションが操作される際の温度は、0℃~100℃、好ましくは5℃~80℃、好ましくは10℃~70℃である(すなわち、前記固体生成セクションからの流出物の温度がそのような温度とされる)。より正確には、固体生成セクションにおいて、吸着工程b)からの精製済みモノマー流出物は、場合によっては、結晶化溶媒との混合物で、吸着工程b)が行われる際の温度、すなわち60℃~150℃、好ましくは70℃~120℃、優先的には75℃~110℃の温度から、0℃~100℃、好ましくは5℃~80℃、好ましくは10℃~70℃の温度まで冷却される。
【0082】
冷却は、当業者に知られている任意の方法に従って実施されてよい。例えば、バッチ方式において、温度の冷却の実現は、温度の低下のレギュレーションなく(課された温度傾斜なく;それ故に、初期および最終の温度のみがコントロールされる)または少なくとも1回の低下温度勾配に従って、特に、5℃~30℃/時、より詳細には8℃~15℃/時の低下温度勾配に従って、あるいはほかに、連続して一緒に繋がった両方の方式に従って、すなわち、冷却の1つの部分についてコントロールなくかつ冷却の別の部分について低下温度勾配に従ってなされてよい。別の例によると、冷却は、簡単に、吸着工程b)からの冷却されることになる流れ、すなわち、精製済みモノマー流出物または精製済みモノマー流出物および結晶化溶媒を含んでいる混合物の、冷却されるべき流れの流量に有利には適合した容積を有しており、0℃~100℃、好ましくは5℃~80℃、好ましくは10℃~70℃の温度に保持された貯蔵器への導入に起因してよい。
【0083】
固体生成セクションが操作される際の圧力は、有利には、0.00001~1.00MPa、好ましくは0.0001~0.50MPa、好適には0.001~0.20MPaである。本発明の特定の実施形態によると、固体生成セクションは、真空下で、好ましくは0.0001~0.10MPa、優先的には0.001~0.01MPaの圧力で操作される。別の特定の実施形態によると、固体生成セクションは、有利には、ジャケット付き反応器内において、0.01~1.00MPa、好ましくは0.05~0.20MPaの圧力で、好ましくは大気圧、すなわち0.10MPaで操作される。
【0084】
本発明の好適な実施形態によると、水が、結晶化溶媒として、工程b)からの精製済みモノマー流出物と混合され、固体生成セクションは、前記固体生成セクションからの流出物の温度が5℃~50℃、好ましくは10℃~40℃になるような条件下に操作される。
【0085】
本発明の別の好適な実施形態によると、導入されかつ工程b)からの精製済みモノマー流出物と混合される結晶化溶媒は、エチレングリコールであり、固体生成セクションは、前記固体生成セクションからの流出物の温度が5℃~50℃、好ましくは10℃~40℃になるような条件下に操作される。
【0086】
有利には、固体生成セクションの目的は、ジエステルモノマー、好ましくはBHETを固化すること、すなわち、少なくとも部分的に結晶化または沈殿させることにある。それ故に、固体生成セクションは、当業者に知られている任意の沈殿または結晶化の技術によって行われる沈殿または結晶化の段階を含み、好ましくはそれらからなる。固体生成セクションは、好ましくは、結晶化のためのセクションであり、例えば冷却または濃縮によるセクションであり、これは、例えば、雑誌Techniques de l’Ingenieur, "Cristallisation industrielle - Aspects pratiques" [Industrial Crystallization - Practical Aspects], ref. J2788 V1において定義されているような、当業者に知られている任意の設備において行われ、これに液体-固体分離が続く。
【0087】
有利には、固体を生じさせるためのセクションは、好ましくは結晶化により、1回または複数回の結晶化操作を含み、直列または並行で操作し、バッチ式または連続的に、好ましくは連続的に行われる。
【0088】
任意選択の結晶化工程c*)の固体生成セクションにより、不均質な流出物、より詳細には、固体ジエステルモノマーの水性懸濁液を得ることが可能となり、これは、ジエステルモノマーの固相と、吸着工程b)から得られた精製済みモノマー流出物中に依然として存在する可能性のある残留不純物、例えば、残留染料を含む場合がある液相とを含む。有利には、任意選択の結晶化工程c*)の終わりに得られた固体ジエステルモノマーの水性懸濁液は、分離工程c)に送られる。
【0089】
(任意選択の分離工程c))
本精製方法は、分離工程c)を含んでよく、好ましくはそれを含み、工程b)の下流に配置される。任意選択の分離工程は、有利には、吸着工程b)からの精製済みモノマー流出物または本発明による方法が任意選択の結晶化工程c*)を含む場合には、そのような工程の終わりに得られた固体ジエステルモノマーの水性懸濁液を給送される。
【0090】
分離工程c)が本発明による方法に組み込まれる場合、それにより、有利には、精製済みジエステルモノマー流出物と使用済み水性溶媒流出物とを分離することが可能となる。
【0091】
任意選択の分離工程c)には、有利には、当業者に知られている任意の分離技術が用いられてよい。任意選択の分離工程c)には、例えば水性溶媒の蒸留および/または蒸発による分離が用いられて、一方では分離精製済みジエステルモノマー流出物を得て、他方では水性溶媒を含む使用済み水性溶媒流出物を得てよい。別の実施形態によると、特に本発明による方法が、結晶化工程c*)を、特に吸着工程b)の下流に含む場合、任意選択の分離工程c)には、固体-液体分離、例えば、ろ過、デカンテーションおよび/または遠心分離による分離が用いられて、固体ジエステルモノマー、有利には結晶の形態にあるもの、好ましくはBHET結晶を、結晶工程c*)の終わりに得られる固体ジエステルモノマーの水性懸濁液の液相から分離してよい。こうして分離された固体ジエステルモノマーは、分離精製済みジエステルモノマー流出物を構成し、液相は、使用済み水性溶媒流出物を構成する。
【0092】
大いに有利には、任意選択の工程c)における温度および圧力は、当業者によって、精製済みジエステルモノマー流出物および使用済み水性溶媒流出物を十分に分離するように調節される。任意選択の分離工程c)で固体-液体分離が用いられる実施形態によると、工程c)が行われる際の温度は、0℃~100℃、好ましくは5℃~80℃、好ましくは10℃~50℃で変動し、圧力は、好ましくは0.0001~0.50MPa、好ましくは0.001~0.20MPaで変動する。
【0093】
本発明の特定の実施形態によると、好ましくはろ過または遠心分離によって固体の形態で回収された、分離精製済みジエステルモノマー流出物は、さらに有利には、予め規定された時系列順序なしに1回または複数回行われる以下の操作の全部または一部を経てもよい:混合セクションまたは場合による固体生成セクションに給送する溶媒と同一またはそれとは異なる溶媒によるリンス:追加のろ過または遠心分離;当業者に知られている任意の方法による、例えば蒸発乾燥による残留溶媒の除去;形付け、例えば粉末または細粒への形付け;および固体の貯蔵。
【0094】
本発明の別の実施形態によると、分離精製済みジエステルモノマー流出物は、好ましくはろ過または遠心分離によって回収され、次いで、当業者に知られている重合工程に直接的に(すなわち、固体の貯蔵の段階なしで)送られ、場合によっては、重合反応の前に、固体の精製済みジエステルモノマー流出物を水またはジオール流出物、例えば、エチレングリコール流出物によりリンスする操作、好ましくは水によりリンスする操作を行い、続いて溶融の目的でリンス済み固体を加熱する。
【0095】
大いに有利には、本発明による方法の終わりに得られた、精製済みジエステルモノマー流出物または分離精製済みジエステルモノマー流出物は、以下の通りである:それが液体の形態にある場合には肉眼で無色またはほぼ無色である;それが固体の形態にある場合には白色である。本発明による精製方法は、ジエステルモノマー水溶液を吸着する工程b)と、場合による、前記ジエステルモノマーを結晶化する工程c*)とを含んでおり、粗ジエステルモノマー供給原料が相当量の着色および/または不透明PETを含むポリエステル供給原料の重合のための方法に由来するとしても、本発明による精製方法により、粗ジエステルモノマー供給原料を十分に精製し、かつ脱色することがこのように可能となる。具体的には、ジエステルモノマー供給原料中に存在する不純物、例えば、染料は、少なくとも部分的に吸着剤によって捕捉されたままであり、および/または少なくとも1つの他の部分については、本方法の間に導入される水性溶媒または溶媒の混合物中に溶解しており、場合により分離された使用済み水性溶媒流出物中に見られる場合もある。
【0096】
大いに有利には、本発明による方法の終わりに得られた、精製済みジエステルモノマー流出物または分離精製済みジエステルモノマー流出物は、好ましくは、乾燥重量の基準で(すなわち、前記精製または分離されたジエステルモノマー流出物中に含有される固体に相対して)最低90重量%、優先的には最低95重量%、好ましくは最低98重量%のジエステルモノマー(すなわち、本発明による方法によって標的とされる生成物)、好ましくはBHETを含む。本発明による精製方法の終わりに得られた、精製済みジエステルモノマー流出物または分離精製済みジエステルモノマー流出物は、大いに有利には、乾燥重量の基準で(すなわち、前記流出物の固体に相対して)、5重量%未満、好ましくは1重量%未満、優先的には0.5重量%未満のジカルボン酸と少なくとも1種のジオールのダイマーまたはトリマーとのエステルのタイプの不純物、例えば、ジエチレングリコールから得られるエステル化合物を含む場合がある。
【0097】
本方法の終わりに得られた、精製済みジエステルモノマー流出物または分離精製済みジエステルモノマー流出物は、UV-可視分光法によって特徴付けられて、可視範囲、特に400~800nmにおける吸収帯の存在を確認してよい。この特徴付け方法によると、精製済みジエステルモノマー流出物または分離精製済みジエステルモノマー流出物は、好ましくは、UV-可視分光法によって、特に、400~800nmにおいて、有利には、液体媒体中、すなわち、有利には、適切な溶媒中の希釈または溶解の後に、好ましくは、0.1重量%~10重量%で、周囲温度にて、従来の研究室用卓上UV-可視分光法を用いて特徴付けられる。エタノールが適切な溶媒として用いられてよく、精製済みジエステルモノマー流出物または分離精製済みジエステルモノマー流出物のサンプルの希釈または溶解を可能にする。慣例的な1cmまたは1インチの光路長を有するキュベットが用いられてよい。好ましくは、ジエステルモノマー流出物または分離精製済みジエステルモノマー流出物のUV-可視スペクトルは、エタノール中5重量%で調製された前記ジエステルモノマー流出物の溶液と1インチの光路長を有するキュベットとを用いて決定される。この方法によると、本発明による方法によって得られた精製または分離されたジエステルモノマー流出物が示すスペクトルは、可視波長(400~800nm)の範囲内、特に、550~650nmの範囲内に有意な吸収帯を一切表示しない(すなわち、バックグラウンドノイズと区別することができない)。実際に、驚くべきことに、水中での吸着の工程を含む本発明による方法により、典型的には550~650nmの可視光を吸収する青色染料を効果的に排除することが可能となる。
【0098】
本方法の終わりに得られた、精製済みジエステルモノマー流出物または分離精製済みジエステルモノマー流出物は、ASTM D6290 2019に記載されるような色度測定法に従って特徴付けられてもよい。選ばれた光源は、光源D65であり、測定は、反射において、鏡面反射除外モード、10゜の標準観測者で行われる。測定は、CIE L*a*b*基準系で表される。色度測定法によると、本発明による方法によって得られた、ジエステルモノマー流出物または分離精製済みジエステルモノマー流出物は、好ましくは固体の形態にあり、有利には、以下を有するCIE L*a*b*基準系を示す:
- 明度(または輝度)パラメータL*;100に近い、より特定的には90.00超、好ましくは92.00超(100.00が最大である);
- パラメータa*(緑-赤軸に相当する);0に近い、より特定的には-1.50~+1.50、好ましくは-1.00~+1.00;および、
- パラメータb*(青-黄軸に相当する);0に近い、より特定的には-2.50~+2.50、より特定的には-1.00~+1.50。
【0099】
任意選択の工程c)の終わりに得られた使用済み水性溶媒流出物は、混合工程a)に導入された水性溶媒および任意選択の結晶化工程c*)に場合により導入される結晶化溶媒の全部または一部を含む。それは、染料および/または他の残留不純物を含む場合もある。好ましくは、使用済み水性溶媒流出物は、20重量%未満、優先的には15重量%未満、好ましくは10重量%未満、好ましくは5重量%未満のジエステルモノマー(すなわち、標的とされる生成物)、好ましくはBHETモノマーを含む。
【0100】
使用済み水性溶媒流出物は、次いで、少なくとも一部、本方法の混合工程a)および/または任意選択の結晶化工程c*)に直接的にリサイクルされてよい。使用済み水性溶媒流出物は、少なくとも一部、処理されて、特に、染料および/または不純物を、例えば吸着によって分離し、こうして精製済み水性溶媒を回収するようにしてよく、これは、次いで、少なくとも一部、本方法の混合工程a)および/または任意選択の結晶化工程c*)にリサイクルされる。使用済み水性溶媒流出物は、結晶化溶媒が導入されかつ結晶化溶媒が混合工程a)に導入された溶媒と異なる場合に、染料および/または不純物の分離に加えて、溶媒の分離のための操作を、例えば、蒸留またはデカンテーションによって経て、2つの別個の溶媒を得るようにしてもよく、一方は、混合工程a)にリサイクルされることができ、第2は、結晶化工程c*)の固体生成セクションにリサイクルされることができる。
【0101】
本発明による方法の終わりに得られた、精製済みジエステルモノマー流出物または分離精製済みジエステルモノマー流出物は、それ故に、対応するバージン樹脂と区別することができないポリエステルポリマー、好ましくはPETまたはPETベースのコポリエステルを製造するという目的のために、当業者に知られている重合工程に直接的にまたは間接的に給送してよい。前記重合工程は、精製済みジエステルモノマー流出物または分離精製済みジエステルモノマー流出物に加えて、標的とする(コ)ポリマーに応じてエチレングリコール、テレフタル酸、若しくはテレフタル酸ジメチル、または任意の他のモノマーを給送されてもよい。
【0102】
以下の図面および実施例は、本発明を例証するものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【0103】
(実施例)
以下の実施例において、粗BHET供給原料の製造に至る工程は、同一であり、以下に記載される。
【0104】
ポリエステル供給原料を収集および選別のチャネルから処理のために得る。このポリエステル供給原料は、特に、20重量%の不透明PETを含んでいる。20重量%の不透明PET(6.2重量%のTiO2顔料を含む)を含んでいる前記ポリエステル供給原料のフレーク4kg/時を250℃の温度にした後に、エチレングリコール(MEG)11.5kg/時と共に第1の撹拌型反応器に注入し、次いで第2および第3の撹拌型反応器に注入する。第1の撹拌型反応器を250℃に維持し、第2および第3の撹拌型反応器を220℃に維持する。反応器を0.4MPaの圧力で維持する。滞留時間を、第1の反応器中20分に、第2および第3の反応器中2.1時間に設定する。滞留時間は、反応器内の液体容積対反応器に入る液体容積流量の合計の比として定義される。第3の反応器の出口のところで、反応流出物は、67.7重量%のジオールと、25.8重量%のジエステルモノマーと、0.32重量%のTiO2と、6.1重量%の重質化合物とからなる。ジオールは、大いに優勢にはエチレングリコール(MEG)から構成され(すなわち、95重量%以上のMEGを含む)、ジエステルモノマーは、大いに優勢にはビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)から構成され(すなわち、95重量%以上のBHETを含む)、重質化合物は、とりわけダイマーおよび/またはオリゴマーを含む。
【0105】
反応流出物中に存在するジオールを、180℃から120℃までの範囲にわたる温度および0.04MPaから0.004MPaまでの圧力の連続する2個のフラッシュ容器と、その次の175℃および0.0005MPaで操作される薄膜式エバポレータとにおける蒸発によって分離する。この蒸発工程の終わりに、10.46kg/時のMEGリッチ流れと、5.02kg/時のBHETリッチ液体流れとを回収する。BHETリッチ液体流れは、液体モノマー流出物に相当し、79.6重量%のBHETジエステルモノマーと、0.6重量%のMEGと、1.0重量%のTiO2と、18.8重量%のとりわけBHETのダイマーを含む重質化合物とからなる。
【0106】
次いで、BHETリッチ液体流れを、短経路蒸留とも呼ばれる短経路エバポレータに注入し、この短経路エバポレータを20Paの圧力で操作する。215℃の高温の油によりBHETの蒸発が可能となり、これを引き続き短経路エバポレータ内で130℃にて凝縮させて、短経路エバポレータの留出物としてBHETの液体流れを得、これは、3.8kg/時の流量を有している。短経路エバポレータ内の滞留時間は、1分である。短経路エバポレータの出口のところで回収されたHETの液体流れは、粗BHETに相当し、これは、以下の実施例1、2および3に記載される精製方法のための供給原料である。それは99重量%のBHETジエステルモノマーからなり、痕跡量のTiO2さえも一切含まない。1.19kg/時の流量を有する重質残留物を短経路エバポレータから残留物として回収し、これは、16.7重量%のBHETジエステルモノマーと、79.2重量%のBHETオリゴマーと、4.1重量%のTiO2とを含む。
【0107】
(実施例1-本発明に合致)
粗BHETを0.15MPaに加圧し、混合セクションに給送し、そこに水の流れも給送する。水の給送流量を、粗BHETが混合物(粗BHET+水)の50重量%を示すように調節する。前記混合セクションを90℃で0.15MPaの圧力にて操作する。
【0108】
次いで、得られた混合物を、2基のカラムからなる吸着セクションに給送し、この2基のカラムのそれぞれに吸着剤を充填する(すなわち、吸着剤の固定床を有する)。吸着セクションを90℃で0.15MPaの圧力にて操作する。一方のカラムを流れ上に置き(つまり、それは操作中にある)、他方のカラムをインリザーブに留める。2基のカラムを充填するために用いられる吸着剤は、直径が0.8mmである円柱形押出物からなる活性炭(Cabot Norit社製の参照番号ROY 0.8)である。
【0109】
一方のカラムにおいて、滞留時間を40分に固定する。空のカラムの線速度は、2.4cm/分である。
【0110】
BHET-水混合物中、50重量%にあるBHETから構成される流出物を経時的にカラムの出口のところで収集する。
【0111】
UV―可視分光法による測定をBHET溶液上で行う。BHET溶液の調製を、40時間の操作で得られた流出物のサンプルを用い、その後にエタノールに溶解させ、最終溶液中のBHETの濃度5重量%に達するようにして行う。UV―可視分光法による測定を1インチの光路長を有するキュベットにおいてHach DR3900 研究室用卓上UV―可視分光計を用いて行う。
【0112】
得られたスペクトル(
図1を参照)は、550~650nmの波長範囲において有意な吸収帯を一切表示しない。
【0113】
(実施例2-本発明に合致)
粗BHETを0.15MPaに加圧し、混合セクションに給送し、そこに水の流れも給送する。水の給送流量の調節を、粗BHETが混合物(粗BHET+水)の50重量%を示すように行う。前記混合セクションを90℃で0.15MPaの圧力にて操作する。
【0114】
次いで、得られた混合物を、2基のカラムからなる吸着セクションに給送し、この2基のカラムのそれぞれに吸着剤を、固定床で充填する。吸着セクションを90℃で0.15MPaの圧力にて操作する。一方のカラムを流れ上(つまり、操作中)に置き、他方のカラムをインリザーブに留める。2基のカラムを充填するために用いられる吸着剤は、直径が0.8mmである円柱形押出物からなる活性炭(Cabot Norit社製の参照番号ROY 0.8)である。
【0115】
一方のカラムにおいて、滞留時間を40分に固定する。空のカラムの線速度は、2.4cm/分である。
【0116】
吸着工程からの液体流れ780gを撹拌槽内で水と混合し、20重量%のBHETおよび80重量%の水の最終含有量並びに60℃の最終温度に達するようにする。混合物を撹拌下に保ちつつ1時間かけて50℃に冷却し、次いで12℃/時の勾配に従って20℃まで徐々に冷却する。
【0117】
冷却の過程で固体粒子が形成され、主として水を含んでいる液体中固体の懸濁液が得られる。次いで、得られた懸濁液を20℃でろ過して、固体ケークおよび着色液体ろ液を回収する。固体ケークを1.5Lの水によりリンスする。リンス済み固体ケークを回収した後に、真空下で40℃にて終夜乾燥させて、99重量%のBHETジエステルを含有している白色固体320gを得る(液体クロマトグラフィーによる組成の決定)。
【0118】
回収された固体は白色である。UV―可視分光法による測定をBHET溶液上で行う。BHET溶液の調製を、得られた白色固体のサンプルを用い、5重量%でエタノールに溶解させるようにして行う。UV―可視分光法による測定を1インチの光路長を有するキュベットにおいてHach DR3900 研究室用卓上UV―可視分光計を用いて実行する。
【0119】
得られたスペクトル(
図1および
図2を参照)は、400~800nmの波長範囲において有意な吸収帯を一切表示しない。
【0120】
色度測定も、得られた固体BHET上で、ASTM D6290 2019の方法に従って実行する。固体BHET生成物のサンプル5gを乳鉢中で乳棒を用いて粉砕する。粉砕したBHET5gを、34mmの直径を有する光学品質ガラスから作られたキュベットに置く。測定を、Konica Minolta CM-2300d測色計およびSpectraMagic NXソフトウェアを用いて、以下の条件下に反射で実行する:光源D65、鏡面反射を除く、10゜の標準観測者。測定を、CIE L*a*b*基準系において表す。サンプル上で実行された10回の測定で得られた値を平均することによって結果を得た。結果を表1に示す。
【0121】
【0122】
得られた色度測定値は目標値と一致している。
【0123】
(実施例3-本発明に合致しない)
粗BHETを0.15MPaに加圧し、混合セクションに給送し、そこにエチレングリコールの流れも給送する。エチレングリコールの給送流量の調節を、粗BHETが混合物(粗BHET+エチレングリコール)の50重量%を示すように行う。前記混合セクションを120℃で0.15MPaの圧力にて操作する。
【0124】
次いで、得られた混合物を、2基のカラムからなる吸着セクションに給送し、この2基のカラムのそれぞれに吸着剤を、固定床で充填する。吸着セクションを150℃で0.15MPaの圧力にて操作する。一方のカラムを流れ上(つまり、操作中)に置き、他方のカラムをインリザーブに留める。2基のカラムを充填するために用いられる吸着剤は、直径が0.8mmである円柱形押出物からなる活性炭(Cabot Norit社製の参照番号ROY 0.8)である。
【0125】
一方のカラムにおいて、滞留時間を40分に固定する。空のカラムの線速度は、2.4cm/分である。
【0126】
BHET-エチレングリコール混合物中、50重量%にあるBHETから構成される流出物を経時的にカラムの出口のところで収集する。
【0127】
40時間の操作で得られた生成物は、青みがかった色合いを有する。
【0128】
UV―可視分光法による測定をBHET溶液上で行う。BHET溶液の調製を、40時間の操作で得られた流出物のサンプルを用い、その後にエタノールに溶解させ、最終溶液中のBHETの濃度5重量%に達するようにして行う。UV―可視分光法による測定を1インチの光路長を有するキュベットにおいてHach DR3900 研究室用卓上UV―可視分光計を用いて実行する。
【0129】
得られたスペクトル(
図1を参照)は、550~650nmの波長範囲において有意な吸収帯を有し、これは生成物の青みがかった色合いと一致している。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【
図1】実施例1、2および3に記載される方法によって生じた流出物について、550nm~700nmで得られたUV-可視スペクトルを示す。
【
図2】実施例1に記載される方法によって生じた流出物について、350nm~850nmで得られたUV-可視スペクトルを示す。
【国際調査報告】