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特表2024-528427ヒトインターロイキン-2変異体およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-30
(54)【発明の名称】ヒトインターロイキン-2変異体およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/55 20060101AFI20240723BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240723BHJP
   C12N 15/26 20060101ALI20240723BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240723BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240723BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240723BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240723BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240723BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20240723BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20240723BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20240723BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20240723BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240723BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240723BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20240723BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240723BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240723BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240723BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20240723BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240723BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240723BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240723BHJP
   C07K 16/30 20060101ALN20240723BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240723BHJP
【FI】
C07K14/55 ZNA
C07K19/00
C12N15/26
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K38/20
A61K47/60
A61K47/64
A61K47/54
A61K39/395 Y
A61P35/00
A61P35/04
A61P37/02
A61P3/10
A61P19/02
A61P11/06
A61P17/00
A61P37/06
A61P25/00
C07K16/30
C12N15/13
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577980
(86)(22)【出願日】2022-07-14
(85)【翻訳文提出日】2024-02-06
(86)【国際出願番号】 CN2022105789
(87)【国際公開番号】W WO2023005680
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】202110868409.5
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202210621425.9
(32)【優先日】2022-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】524217768
【氏名又は名称】ドラコターピン バイオメディスン エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100195556
【弁理士】
【氏名又は名称】柿沼 公二
(72)【発明者】
【氏名】ドン ミンフイ
(72)【発明者】
【氏名】ルー ヨンタオ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA26X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C076AA95
4C076CC01
4C076CC07
4C076CC15
4C076CC21
4C076CC27
4C076CC41
4C076DD66
4C076EE23
4C076EE59
4C076FF70
4C084AA02
4C084BA34
4C084BA37
4C084BA41
4C084CA53
4C084DA14
4C084NA05
4C084NA13
4C084ZA02
4C084ZA61
4C084ZA96
4C084ZB07
4C084ZB08
4C084ZB15
4C084ZB26
4C084ZC35
4C085AA14
4C085AA25
4C085BB11
4C085DD62
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045BA53
4H045BA57
4H045CA40
4H045DA04
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
ヒトインターロイキン-2変異体およびその使用が提供される。具体的には、高親和性受容体IL-2Rα/β/γとの親和性が消失または低下し、中親和性受容体IL-2Rβ/γとの親和性が維持されている、IL-2変異体(またはその誘導体)が提供される。また、IL-2変異体およびヒト抗体フラグメントを含む組換えタンパク質/融合タンパク質も提供される。IL-2変異体の活性は向上しており、野生型ヒトIL-2の活性に近くなる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成熟野生型ヒトインターロイキン-2(IL-2)と比較してアミノ酸変異を含むヒトIL-2変異体であって、前記変異は、置換、欠失および付加の少なくとも1つであり、好ましくは、前記成熟野生型ヒトIL-2は、SEQ ID No.1に示されるとおりであり、前記変異は、
前記成熟野生型ヒトIL-2の31~45位におけるアミノ酸残基のSEQ ID No.11に示す配列への変異、
前記成熟野生型ヒトIL-2の35~41位におけるアミノ酸残基のSEQ ID No.12または14に示す配列への変異、
前記成熟野生型ヒトIL-2の35~43位におけるアミノ酸残基のSEQ ID No.13に示す配列への変異、
前記成熟野生型ヒトIL-2の31~32位におけるアミノ酸残基のGGへの変異、
前記成熟野生型ヒトIL-2の43~45位におけるアミノ酸残基のGへの変異、
前記成熟野生型ヒトIL-2の125位におけるアミノ酸残基のAへの変異、
任意選択で、前記成熟野生型ヒトIL-2のN末端におけるMの付加
からなる群から選択される、IL-2変異体。
【請求項2】
前記IL-2変異体は、
SEQ ID No.2~10、SEQ ID No.15、
N末端にMが付加されたSEQ ID No.2~10、およびN末端にMが付加されたSEQ ID No.15、
からなる群から選択される配列で示されるとおりである、請求項1に記載のIL-2変異体。
【請求項3】
前記IL-2変異体は、IL-2Rαとの低下した親和性を有し、および/または、
前記IL-2変異体は、IL-2Rβとの変化していないかまたは増加した親和性を有し、および/または、
前記IL-2変異体は、IL-2Rγとの変化していないかまたは増加した親和性を有し、
好ましくは、前記IL-2変異体は、IL-2Rα/β/γとの低下した親和性を有し、およびIL-2Rβ/γとのIL-2変異体の親和性は、維持されるか増加する、
請求項1または2に記載のIL-2変異体。
【請求項4】
PEG化、グリコシル化、アルブミンへの接合、Fcへの接合、ヒドロキシエチル化、脱O-グリコシル化、
からなる群から選択される修飾を有し、
好ましくは、前記Fcへの接合は、請求項1から3のいずれか一項に記載のIL-2変異体のC末端へのヒトIgG1 Fcの接合を指し、
前記PEG化は、IL-2変異体のN末端でのPEGの結合を指し、
好ましくは、前記PEGは、5kD~80kDの分子量を有し、
より好ましくは、前記PEGは、10kD~20kDの分子量を有し、
請求項1から3のいずれか一項に記載のIL-2変異体を含む、IL-2変異体の誘導体。
【請求項5】
第1の成分と、
第2の成分と、
を含む接合体であって、
前記第1の成分は、前記第2の成分に、直接的に接合するかまたはリンカーを介して間接的に接合し、
前記第1の成分は、請求項1から3のいずれか一項に記載のIL-2変異体、または請求項4に記載のIL-2変異体の誘導体であり、
好ましくは、前記第2の成分は、抗体またはその抗原結合断片であり、
より好ましくは、前記抗体またはその抗原結合断片は、腫瘍抗原を標的とする、
接合体。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか一項に記載のIL-2変異体、または請求項4に記載のIL-2変異体の誘導体、または請求項5に記載の接合体、
薬学的に許容される希釈剤、担体または賦形剤
を含有する、医薬組成物。
【請求項7】
請求項1から3のいずれか一項に記載のIL-2変異体、請求項4に記載のIL-2変異体の誘導体、または請求項5に記載の接合体をコードする核酸分子。
【請求項8】
請求項7に記載の核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項9】
請求項8に記載の発現ベクターを含むこと、
請求項1から3のいずれか一項に記載のIL-2変異体を発現すること、
請求項4に記載のIL-2変異体の誘導体を発現すること、
請求項5に記載の接合体を発現すること、
のいずれかを含むまたは発現する、宿主細胞であって、
好ましくは、前記宿主細胞は、原核細胞または真核細胞であり、
好ましくは、前記宿主細胞は、細菌細胞、酵母細胞、哺乳類細胞からなる群から選択され、
最も好ましくは、前記宿主細胞は、サッカロミケス・セレビシエ細胞または大腸菌細胞である、
宿主細胞。
【請求項10】
薬剤の調製における、請求項1から3のいずれか一項に記載のIL-2変異体、請求項4に記載のIL-2変異体の誘導体、請求項5に記載の接合体から選択されるいずれかの使用であって、
前記薬剤は、増殖性疾患、増殖性疾患の転移、免疫疾患からなる群から選択される疾患を予防または治療するためのものであり、
好ましくは、前記増殖性疾患は、腫瘍または癌であり、
好ましくは、前記免疫疾患は、糖尿病、関節リウマチ、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、湿疹、喘息、自己免疫疾患および臓器移植後の自己免疫反応からなる群から選択され、
好ましくは、前記腫瘍または癌は、上皮細胞癌、内皮細胞癌、扁平上皮癌、パピローマウイルスによる癌、腺癌、黒色腫、肉腫、奇形腫、肺癌、転移性肺癌、リンパ腫および転移性腎細胞癌腫からなる群から選択される、
使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年7月30日に出願された特許出願(出願番号2021108684095)および2022年6月1日に出願された特許出願(2022106214259)の優先権を主張する。
【0002】
本開示は、1つ以上のアミノ酸変異を有するヒトインターロイキン-2(IL-2)変異体(variant)またはその誘導体に関する。IL-2変異体またはその誘導体は、高親和性受容体(IL-2Rα/β/γ)との消失または低下した親和性を有し、中親和性受容体(IL-2Rβ/γ)との親和性を維持する。本開示はまた、ヒトIL-2変異体、コードポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、医薬組成物、を含む免疫接合体、それらの調製方法、治療方法および使用に関する。
【技術背景】
【0003】
ヒトインターロイキン-2(IL-2)は、T細胞増殖因子(TCGF)としても知られる。IL-2遺伝子は、第4染色体(4q27)上に位置し、合計約7kbの配列を含む。IL-2は、約133個のアミノ酸から構成され、約15kDの分子量を有する。Doris Morganら、1976年および1977年は、活性化されたT細胞の培養液がT細胞の増殖を促進し得ることをそれぞれ発見した。培養液中の刺激因子は精製され、IL-2と同定された。
【0004】
第1のin vitro細胞実験では、T細胞がTCRおよびCD28によって活性化された後、IL-2を分泌し、細胞表面にIL-2受容体(IL-2R)を発現し得ることが示された。IL-2のIL-2Rへの結合は、T細胞の増殖およびT細胞への影響を引き起こし得る。IL-2は、T細胞免疫応答において中心的な役割を果たす分子である。in vivo実験では、IL-2またはその受容体をノックアウトした後、動物は自己免疫を発症することが判明した。IL-2はエフェクター細胞(T細胞およびNK細胞など)だけでなく制御性T細胞も活性化し、それによって自己に対する過剰な免疫を抑制する。
【0005】
IL-2は、IL-2Rを通じて作用する。IL-2Rは、IL-2Rα(つまりCD25)、IL-2Rβ(つまりCD122)、およびIL-2Rγ(つまりCD132)の3つのサブユニットからなる。3つのサブユニットは、3つの形態の受容体を形成し得、高親和性受容体は、すべての3つのサブユニットのIL-2Rα/β/γを備え、中親和性受容体は、IL-2Rβ/γを備え、低親和性受容体は、IL-2Rαを備える。IL-2RβおよびIL-2Rγは、IL-2による下流シグナル伝達経路の活性化に必要である。IL-2がIL-2RβおよびIL-2Rγに同時に結合するとき、2つの受容体サブユニットは、ヘテロ二量体を形成して細胞内STAT5をリン酸化し、これは、核に入り、それによって対応する遺伝子の転写および発現を引き起こす。IL-2Rαは、シグナル伝達には必要ないが、IL-2RβおよびIL-2RγへのIL-2の結合を促進し得る。
【0006】
IL-2Rγは、すべての免疫細胞で発現される。IL-2Rβは、CD8+T細胞、NK細胞、制御性T細胞で発現し、発現レベルは、T細胞の活性化後に増加する。IL-2Rαは、制御性T細胞で持続的に高発現し、活性化されたCD8+T細胞で一時的に発現し、その後発現レベルが下方制御される。
【0007】
IL-2は、主に活性化T細胞、特にCD4+ヘルパーT細胞によって合成される。T細胞の増殖および分化を刺激し、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の産生と末梢血リンパ球の細胞傷害性細胞とリンホカイン活性化キラー(LAK)細胞への分化を誘導し、T細胞によるサイトカインおよび細胞溶解性分子の発現を促進し、B細胞の増殖および分化、およびB細胞による免疫グロブリン合成を促進し、ならびにナチュラルキラー(NK)細胞の産生、増殖、活性化を刺激する。in vivoでリンパ球集団を拡大しこれらの細胞のエフェクター機能を向上するIL-2の能力は、その抗腫瘍効果につながり、IL-2免疫療法は、特定の転移性癌患者に対する治療選択肢となる。現在、高用量のIL-2は、転移性腎細胞癌および悪性黒色腫の治療に承認されている。
【0008】
国際公開第2009/135615号に開示されるIL-2変異体は、20位、88位、または126位に変異を有する。国際公開第2012/062228号に開示されるIL-2変異体は、38位、42位、45位、62位、68位、または88位の少なくとも1つに変異を有する。米国特許第8906356号明細書に開示されるIL-2変異体は、91位および126位に変異を有する。米国特許第9732134号明細書に開示されるIL-2変異体は、15位、16位、22位、84位、88位または95位の少なくとも1つに変異を有する。米国特許7803361号明細書および米国特許8124066号明細書に開示されるIL-2変異体は、変異R38Wを含む。
【発明の概要】
【0009】
本開示は、1つ以上のアミノ酸変異を有するIL-2変異体(またはその誘導体)、その接合体に関し、さらにはIL-2変異体の使用および調製方法にも関する。
【0010】
(IL-2変異体またはその誘導体)
第1の態様では、本開示は、成熟野生型ヒトIL-2(SEQ ID No.1)と比較して1つ以上のアミノ酸変異を含むIL-2変異体(またはその誘導体)を提供する。
【0011】
「インターロイキン-2」または「IL-2」は、任意の哺乳動物、例えば、ヒトなどの霊長類、およびマウスおよびラットなどの齧歯動物に由来する任意の天然のIL-2を指す。この用語には、未処理のIL-2と細胞由来の任意の処理型IL-2との両方が含まれる。この用語には、天然に存在するIL-2変異体、例えばスプライス変異体または対立遺伝子変異体も含まれる。
【0012】
「野生型ヒトIL-2」は、IL-2変異体の各アミノ酸位置に野生型IL-2型のアミノ酸を有することを除いて、IL-2変異体と同一である。「野生型」という用語は、IL-2受容体への結合能力に影響を与えない、1つ以上の天然に存在するアミノ酸変異を含むことを包含することを意図する。
【0013】
「成熟野生型ヒトIL-2」とは、野生型ヒトIL-2の成熟型を指す。未処理のヒトIL-2はさらに、成熟IL-2分子には存在しない、約20アミノ酸のN末端シグナルペプチドを含む。成熟野生型ヒトIL-2の例示的なアミノ酸配列は、例えば、INSDCデータベースの受託番号CAA25742.1、Swiss-ProtのP60568.1、およびGenbankのNP_000577.2のセグメント21-153であるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、成熟野生型ヒトIL-2は、SEQ ID No.1に示されるアミノ酸配列である。組換え発現の目的については、N末端に追加のメチオニンMが必要であることに留意されたい。しかしながら、当業者は、第1の位置にMを有する配列または有しない配列はすべて、本出願における「成熟野生型ヒトIL-2」の範囲内に含まれることを理解されたい。
【0014】
いくつかの実施形態では、本出願で実施されるアミノ酸変異は、成熟野生型ヒトIL-2と比較して、IL-2Rαに結合するIL-2上の領域(アミノ酸の約26~約47の位置)の長さが短くなる結果となる。
【0015】
いくつかの実施形態では、アミノ酸変異には、置換、欠失(または切断)、挿入(または付加)、修飾、およびそれらの任意の組み合わせが含まれる。例えば、IL-2の結合特性を変更するには、1つのアミノ酸(例えば、異なる構造および/または化学的特性を有するアミノ酸)を使用して、別のアミノ酸を置き換え得る。アミノ酸置換には、非天然アミノ酸および20種類の標準アミノ酸が含まれる。アミノ酸変異は、部位特異的変異誘発、PCR、遺伝子合成、化学修飾などを含む当技術分野で知られている方法を使用して生成され得る。
【0016】
いくつかの実施形態では、本開示によるIL-2変異体(またはその誘導体)は、IL-2Rαとの低下した親和性を有し、IL-2Rβおよび/またはIL-2Rγとの未変化または増加した親和性を有する。
【0017】
「親和性」とは、分子の結合部位とそのリガンドとの間の非共有結合性相互作用の合計の強さを指す。特に明記しない限り、本明細書における「親和性」は、結合対の要素、例えば受容体とリガンド間の1:1での相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。親和性は通常、解離と結合速度定数との比である、解離定数(K)として表され得る(それぞれK解離とK結合)。親和性は、本明細書に記載される方法を含む、当技術分野の一般的な方法によって測定され得る。
【0018】
いくつかの実施形態では、本開示によるIL-2変異体(またはその誘導体)は、高親和性受容体(IL-2Rα/β/γ)との低下した親和性を有するが、中親和性受容体(IL-2Rβ/γ)との親和性を維持するまたは増加させる。
【0019】
いくつかの実施形態では、「高親和性IL-2受容体」は、受容体γサブユニット(サイトカイン受容体共通サブユニットγ、γc、またはCD132としても知られる)、受容体βサブユニット(CD122またはp70としても知られる)、および受容体αサブユニット(CD25またはp55としても知られる)からなるヘテロ三量体形態のIL-2受容体を指す。
【0020】
いくつかの実施形態では、「中親和性IL-2受容体」は、γおよびβサブユニットのみを含み、αサブユニットを含まないIL-2受容体を指す(OlejniczakおよびKasprzak、MedSci Monit14、RA179~189、2008を参照)。
【0021】
いくつかの実施形態では、本開示によるIL-2変異体(またはその誘導体)は、低下した制御性T細胞(Treg)の活性化、および/または影響を受けない、もしくは増加した免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞、NK細胞)の活性化を有する。
【0022】
本開示によるIL-2変異体(またはその誘導体)のいくつかの実施形態では、変異は、
31位におけるチロシン(Y)、32位におけるリジン(K)、33位におけるアスパラギン(N)、
34位におけるプロリン(P)、35位におけるリジン(K)、36位におけるロイシン(L)、
37位におけるスレオニン(T)、38位におけるアルギニン(R)、39位におけるメチオニン(M)、
40位におけるロイシン(L)、41位におけるスレオニン(T)、42位におけるフェニルアラニン(F)、
43位におけるリジン(K)、44位におけるフェニルアラニン(F)の変異、45位におけるチロシン(Y)、
125位におけるシステイン(C)、
の位置(連続または不連続)(SEQ ID No.1の1位から数えて)のいずれか1つ以上で発生する。
【0023】
本開示によるIL-2変異体(またはその誘導体)のいくつかの実施形態では、変異は、31~32位および125位(連続または不連続)のいずれか1つ以上で生じる。
【0024】
本開示によるIL-2変異体(またはその誘導体)のいくつかの実施形態では、変異は、35~41位および125位(連続または不連続)のいずれか1つ以上で生じる。
【0025】
本開示によるIL-2変異体(またはその誘導体)のいくつかの実施形態では、変異は、43~45位および125位(連続または不連続)のいずれか1つ以上で生じる。
【0026】
本開示によるIL-2変異体(またはその誘導体)のいくつかの実施形態では、変異は、31~45位および125位(連続または不連続)のいずれか1つ以上で生じる。
【0027】
本開示によるIL-2変異体(またはその誘導体)のいくつかの実施形態では、変異は、31~32位、35~41位および125位(連続または不連続)のいずれか1つ以上で生じる。
【0028】
本開示によるIL-2変異体(またはその誘導体)のいくつかの実施形態では、変異は、35~41位、43~45位および125位(連続または不連続)のいずれか1つ以上で生じる。
【0029】
本開示によるIL-2変異体(またはその誘導体)のいくつかの実施形態では、変異は、31~43位および125位(連続または不連続)のいずれか1つ以上で生じる。
【0030】
いくつかの他の実施形態では、公的データベースまたは既知の文献に記載されている天然配列が野生型成熟IL-2として使用されるとき、アミノ酸変異の位置は、1位のアミノ酸Aから数えられる。
【0031】
いくつかの特定の実施形態では、
Gly-Gly-Asn-Pro-Met-His-Gly-Leu-Asp-Gly-Phe-Gly(SEQ ID No.11)に変異した31~45位におけるアミノ酸、
Gly-Glyに変異した31~32位におけるアミノ酸、
Met-His-Gly-Leu-Asp-Gly(SEQ ID No.12)に変異した35~41位におけるアミノ酸、
Met-Gly-Gly-Leu-Gly-Gly(SEQ ID No.13)に変異した35~43位におけるアミノ酸、
Gly-Gly-Gly-Gly-Gly-Gly(SEQ ID No.14)に変異した35~41位におけるアミノ酸、
Glyに変異した43~45位におけるアミノ酸、
Alaに変異した125位におけるアミノ酸、
の変異のいずれか1つまたはそれらの組み合わせを含むIL-2変異体が提供される。
【0032】
いくつかの特定の実施形態では、IL-2変異体が、
(1)31~32位におけるYKのGGへの変異、および35~41位におけるKLTRMLTのMHGLDGへの変異、および43~45位におけるKFYのGへの変異、125位におけるCのAへの変異、または、
(2)31~45位におけるアミノ酸のGGNPMHGLDGFGへの変異、および125位におけるアミノ酸のAへの変異、
からなる群から選択され、
変異配列は、SEQ ID No.2または15である、
変異を含むとき、IL-2変異体は、IL-2Rβ/γとの親和性を維持または増加させながら、IL-2Rαとの低下した親和性を有する。
【0033】
いくつかの特定の実施形態では、IL-2変異体が、
35~41位におけるKLTRMLTのMHGLDGへの変異、および125位におけるアミノ酸のAへの変異であり、変異配列はSEQ ID No.3である、
からなる群から選択される変異を含むとき、IL-2変異体は、IL-2Rβ/γとの親和性を維持または増加させながら、IL-2Rαとの低下した親和性を有する。
【0034】
いくつかの特定の実施形態では、IL-2変異体が、
31~32位におけるYKのGGへの変異、および125位におけるアミノ酸のAへの変異であり、変異配列はSEQ ID No.4である、
からなる群から選択される変異を含むとき、IL-2変異体は、IL-2Rβ/γとの親和性を維持または増加させながら、IL-2Rαとの低下した親和性を有する。
【0035】
いくつかの特定の実施形態では、IL-2変異体が、
43~45位におけるKFYのGへの変異、および125位におけるアミノ酸のAへの変異であり、変異配列はSEQ ID No.5である、
からなる群から選択される変異を含むとき、IL-2変異体は、IL-2Rβ/γとの親和性を維持または増加させながら、IL-2Rαとの低下した親和性を有する。
【0036】
いくつかの特定の実施形態では、IL-2変異体が、
(1)31~32位におけるYKのGGへの変異、
(2)35~41位におけるKLTRMLTのMHGLDGへの変異、
(3)125位におけるアミノ酸のAへの変異、
であり、変異配列は、SEQ ID No.6である、
からなる群から選択される変異を含むとき、IL-2変異体は、IL-2Rβ/γとの親和性を維持または増加させながら、IL-2Rαとの低下した親和性を有する。
【0037】
いくつかの特定の実施形態では、IL-2変異体が、
(1)35~41位におけるKLTRMLTのMHGLDGへの変異、
(2)43~45位におけるKFYのGへの変異、
(3)125位におけるアミノ酸のAへの変異、
であり、変異配列は、SEQ ID No.7である、
からなる群から選択される変異を含むとき、IL-2変異体は、IL-2Rβ/γとの親和性を維持または増加させながら、IL-2Rαとの低下した親和性を有する。
【0038】
いくつかの特定の実施形態では、IL-2変異体が、
(1)31~32位におけるYKのGGへの変異、
(2)43~45位におけるKFYのGへの変異、
(3)125位におけるアミノ酸のAへの変異、
であり、変異配列は、SEQ ID No.8である、
からなる群から選択される変異を含むとき、IL-2変異体は、IL-2Rβ/γとの親和性を維持または増加させながら、IL-2Rαとの低下した親和性を有する。
【0039】
いくつかの特定の実施形態では、IL-2変異体が、
35~43位におけるKLTRMLTFKのMGGLGGへの変異、および125位におけるアミノ酸のAへの変異であり、変異配列はSEQ ID No.9である、
からなる群から選択される変異を含むとき、IL-2変異体は、IL-2Rβ/γとの親和性を維持または増加させながら、IL-2Rαとの低下した親和性を有する。
【0040】
いくつかの特定の実施形態では、IL-2変異体が、
35~41位におけるKLTRMLTのGGGGGGへの変異、43~45位におけるアミノ酸のGへの変異、および125位におけるアミノ酸のAへの変異であり、変異配列はSEQ ID No.10である、
からなる群から選択される変異を含むとき、IL-2変異体は、IL-2Rβ/γとの親和性を維持または増加させながら、IL-2Rαとの低下した親和性を有する。
【0041】
いくつかの特定の実施形態では、IL-2変異体(またはその誘導体)のアミノ酸配列は、SEQ ID No.2~10から選択される。
【0042】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0043】
天然に発現されるヒトIL-2は、合計153個のアミノ酸を有し、1~20位のアミノ酸はシグナルペプチドである。これは、シグナルペプチドの切断後に合計133個のアミノ酸(すなわち、成熟ヒトIL-2)を有し、本開示におけるSEQ ID No.1の1~133位に対応する。組換え発現を目的として、人工的に生成されたIL-2は、第1の位置(開始コドンAUGに対応)に追加のメチオニンを有する。
【0044】
【0045】
いくつかの実施形態では、IL-2変異体は、単量体形態である。
【0046】
第2の態様では、本開示は、PEG化、グリコシル化、アルブミンへの接合、Fcへの接合、ヒドロキシエチル化、脱O-グリコシル化からなる群から選択される修飾を有する本開示のIL-2変異体を含むIL-2変異体の誘導体を提供する。
【0047】
いくつかの実施形態では、IL-2変異体の誘導体には、本開示のIL-2変異体の全長もしくは一部、あるいは本開示のIL-2変異体に基づいてさらに得られるその機能的誘導体、機能的断片、生理活性ペプチド、融合タンパク質、アイソフォームもしくはそれらの塩、例えば、IL-2変異体、IL-2変異体の二量体、三量体、または多量体を含む融合タンパク質が含まれる。IL-2変異体の様々な修飾型(例えば、PEG化、グリコシル化、アルブミンへの接合、Fcへの接合、ヒドロキシエチル化、脱O-グリコシル化などの後)。
【0048】
いくつかの実施形態では、IL-2変異体の誘導体は、PEG化される(PEG-IL-2として表現され得る)。
【0049】
いくつかの他の実施形態では、PEG-IL-2変異体は、メトキシ-PEG-アルデヒド(mPEG-ALD)リンカーを含む。特定の実施形態では、PEGの平均分子量は、約5kD~約50kD、特に5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50kD、または約5kD~約40kD、または約10kD~約30kD、または約10kDから約30kDの間、または約15kDから約30kDの間、約20kDである。
【0050】
ある特定の実施形態では、mPEG-ALDリンカーは、約5kDa、約10kDa、約12kDaおよび約20kDaからなる群から選択される平均分子量を有するPEG分子を含む。いくつかの実施形態では、mPEG-ALDのアルデヒド基は、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、またはブチルアルデヒドなどであり得る。
【0051】
一実施形態では、IL-2変異体の誘導体は、成熟野生型ヒトIL-2と比較して長い血清半減期を有する。
【0052】
いくつかの実施形態では、IL-2変異体の誘導体は、抗体またはその抗原結合断片に接合したIL-2変異体である。いくつかの実施形態では、IL-2変異体の誘導体は、ヒト抗体のFc断片に接合したIL-2変異体である。特定の実施形態では、IL-2変異体の誘導体は、そのC末端でヒト抗体のFc断片に接合したIL-2変異体である(すなわち、本出願によるIL-2変異体は、ヒト抗体のFc断片のN末端に接合している)。
【0053】
場合によっては、IL-2変異体の誘導体は、ホモ二量体またはヘテロ二量体のいずれかの二量体形態である。一例として、ヘテロ二量体化を促進するために、Fcフラグメントに修飾が導入される。いくつかの実施形態では、Fcフラグメントは、ノブイントゥホール(KIH)構造を含み、これは、第1のFcフラグメントの界面にノブ構造を導入することおよび第2のFcフラグメントの界面にホール構造を導入すること、ならびにその逆を含む。これによって、ノブ構造がホール構造内に局在化することが可能になり、ヘテロ二量体の形成が促進され、ホモ二量体の形成が抑制される。ノブ構造は、第1のFcフラグメントの界面からの小さなアミノ酸側鎖をチロシンまたはトリプトファンなどのより大きな側鎖に置き換えることによって構築されるが、一方、細孔構造は大きなアミノ酸側鎖を第2のFcフラグメントの界面にあるアラニンまたはスレオニンなどのより小さなアミノ酸側鎖に置き換えることによって構築される。
【0054】
(接合体)
第3の態様では、本開示は、第1の成分と第2の成分とを含む接合体を提供し、第1の成分は、第2の成分に直接的に接合している(またはリンカーを介して間接的に接合している)。第1の成分は、本開示のIL-2変異体(またはその誘導体)であり、第2の成分は、IL-2またはIL-2変異体(またはその誘導体)ではない。
【0055】
いくつかの実施形態では、IL-2変異体(またはその誘導体)は、少なくとも1つの第2の成分に結合される。
【0056】
いくつかの実施形態では、IL-2変異体(またはその誘導体)および第2の成分は、ペプチド結合を介して融合タンパク質を形成する。
【0057】
いくつかの特定の実施形態では、IL-2変異体(またはその誘導体)は、第2の成分のカルボキシル末端に結合される(またはリンカーを介して間接的に結合される)。
【0058】
いくつかの特定の実施形態では、IL-2変異体(またはその誘導体)は、第2の成分のアミノ末端に接合される(またはリンカーを介して間接的に接合される)。
【0059】
いくつかの実施形態では、第2の成分は、抗原結合成分である。抗原結合成分とは、エピトープに特異的に結合するポリペプチド分子を指す。
【0060】
いくつかの実施形態では、抗原結合成分は、それに接続された部分(例えば、本開示のIL-2、その変異体または誘導体)を標的部位(例えば、腫瘍細胞または腫瘍)に導き得る。抗原結合成分は、抗体または抗原結合断片であり得る。
【0061】
抗体は、本明細書において最も広い意味で使用され、抗原結合活性を示す限り、様々な抗体構造が包含される。抗体には、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(二重特異性抗体など)および抗原結合断片が含まれるが、これらに限定されない。抗体には、マウス抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、およびラクダ抗体が含まれ得る。
【0062】
いくつかの特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、抗体重鎖可変領域および抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチド複合体、Fab、Fv、sFv、F(ab’)2、直鎖状抗体、一本鎖抗体、scFv、sdAb、sdFv、ナノボディ、ペプチボディ、ドメイン抗体、および多重特異性抗体(二重特異性抗体、ダイアボディ、トリアボディおよびテトラボディ、タンデムdi-scFv、タンデムtri-scFv)からなる群から選択される。
【0063】
いくつかの実施形態では、IL-2変異体(またはその誘導体)は、2つ以上の抗原結合成分に接続される場合、各抗原結合成分は、抗体および抗原結合断片から独立して選択され得る。例えば、第1の抗原結合成分はFab分子であり得、第2の抗原結合成分はscFv分子であり得る。例えば、第1の抗原結合成分はscFv分子であり得るが、一方、第2の抗原結合成分もまた、scFv分子である。いくつかの実施形態では、第1および第2の抗原結合成分は、独立して、異なる抗原または同じ抗原に対して向けられる。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は腫瘍抗原を標的とする。
【0064】
いくつかの実施形態では、腫瘍抗原は、例えば、MAGEファミリー(例えば、MAGE-A1、MAGE-A2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A5、MAGE-A6、MAGE-A7、MAGE-A8、MAGE-A9、MAGE-A10、MAGE-A11、MAGE-A12、MAGE-Xp2、MAGE-B2、MAGE-Xp3、MAGE-B3、MAGE-Xp4、MAGE-B4、MAGE-C1、MAGE-C2、MAGE-C3、MAGE-C4、MAGE-C5)、GAGEファミリー(例えば、GAGE-1、GAGE-2、GAGE-3、GAGE-4、GAGE-5、GAGE-6、GAGE-7、GAGE-8、GAGE-9)、MART-1/ Melan-A、gp75、gp100、DPPIV、ADAbp、シクロフィリン、CEA、CAP-1、CAP-2、etv6、aml1、PSA(PSA-1、PSA-2およびPSA-3)、PSMA、T細胞受容体、RAGE、LAGE-1、NAG、GnT-V、MUM-1、CDK4、チロシナーゼ、p53、MUCファミリー、HER2/neu、p21ras、RCAS1、α-フェトプロテイン、E-カドヘリン、α-カテニン、β-カテニン、γ-カテニン、p120ctn、PRAME、NY-ESO-1、cdc27、SSX-1、SSX-2、SSX-1、SSX-4、SSX-5、SCP-1、CT-7であるが、それらに限定されない。
【0065】
(医薬組成物)
第4の態様では、本開示は、本開示によるIL-2変異体(またはその誘導体)または接合体、および必要に応じて薬学的に許容される希釈剤、担体または賦形剤を含有する医薬組成物を提供する。医薬組成物は、凍結乾燥製剤または注射用溶液であり得る。
【0066】
いくつかの特定の実施形態では、医薬組成物の単位用量は、0.01wt%~99wt%のIL-2変異体(またはその誘導体)または接合体を含有し得る。あるいは、医薬組成物の単位用量中に含有されるIL-2変異体(またはその誘導体)または接合体の量は、0.1~2000mg(例えば、1~1000mg;1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、5、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000mg)である。
【0067】
(ポリヌクレオチド)
第5の態様では、本開示は、本開示のIL-2変異体(またはその誘導体)をコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0068】
当業者は、同じアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列が異なり得ることを理解されたい。異なる宿主におけるコドン縮重およびコドンバイアスによって、異なるヌクレオチド配列は、同じアミノ酸配列をコードし得、これらの配列はすべて本開示の範囲内に含まれる。
【0069】
(発現ベクター)
第6の態様では、本発明は、本発明によるポリヌクレオチドを含む発現ベクターを提供する。発現ベクターは、真核生物発現ベクター、原核生物発現ベクター、またはシャトル発現ベクターであり得る。
【0070】
(宿主細胞)
第7の態様では、本開示は、本開示による発現ベクターを含む、または本開示によるIL-2変異体を発現する、または本開示による接合体を発現する、宿主細胞を提供する。
【0071】
いくつかの実施形態では、宿主細胞は、本開示によるポリヌクレオチドを含む発現ベクターを含む(例えば、形質転換またはトランスフェクトされる)。
【0072】
いくつかの実施形態では、宿主細胞は、原核細胞または真核細胞である。
【0073】
いくつかの実施形態では、宿主細胞は細菌、酵母、または哺乳動物の細胞、特にピキア・パストリスまたはサッカロミケス・セレビシエである。
【0074】
いくつかの特定の実施形態では、宿主細胞は、大腸菌などの原核微生物である。
【0075】
いくつかの特定の実施形態では、宿主細胞は、真核細胞である。
【0076】
いくつかの実施形態では、グリコシル化ペプチドを発現する植物細胞および昆虫細胞などの宿主細胞が使用される。脊椎動物細胞はまた、宿主細胞として、例えば、浮遊培養の哺乳類細胞株、サル腎臓CV1細胞株(COS-7)、ヒト胎児腎臓細胞株(293または293T細胞)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、マウスセルトリ細胞(TM4細胞)、サル腎細胞(CV1)、VERO-76、ヒト子宮頸がん細胞(HELA)、イヌ腎細胞(MDCK)、バッファローラット肝細胞(BRL3A)、ヒト肺細胞(W138)、ヒト肝細胞(Hep G2)、マウス乳房腫瘍細胞(MMT060562)、MRC5細胞、FS4細胞、CHO細胞、骨髄腫細胞株(YO、NS0、P3X63、Sp2/0など)としても使用され得る。
【0077】
(使用および治療方法)
第8の態様では、本開示は、薬剤の製造における本開示によるIL-2変異体(またはその誘導体)、接合体および医薬組成物の使用を提供する。
【0078】
いくつかの実施形態では、増殖性疾患および免疫疾患の治療、T細胞媒介免疫応答の調節、および個体の免疫系の刺激におけるIL-2変異体(またはその誘導体)の使用が提供される。
【0079】
いくつかの実施形態では、増殖性疾患は、腫瘍または癌(例えば、転移性腫瘍または癌)であり得るか、または固形腫瘍であり得る。
【0080】
いくつかの実施形態では、本開示のIL-2変異体(またはその誘導体)、接合体、または医薬組成物は、宿主の免疫系を治療および刺激するために(特に、細胞性免疫応答を増強するために)使用され得る。
【0081】
いくつかの実施形態では、細胞性免疫応答の増強には、T細胞機能の向上、B細胞機能の向上、リンパ球機能の回復、IL-2受容体の発現の増加、T細胞応答性の増加、IL-2受容体の活性の増加、ナチュラルキラー細胞またはリンホカイン活性化キラー(LAK)細胞が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0082】
いくつかの実施形態では、本開示のIL-2変異体(またはその誘導体)、接合体、または医薬組成物は、癌などの増殖性状態を治療するために使用される。癌の非限定的な例としては、膀胱癌、脳癌、頭頸部癌、膵臓癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、子宮癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、食道癌、結腸癌、結腸直腸癌、直腸癌、胃癌、前立腺癌、血液癌、皮膚癌、扁平上皮癌、骨癌、腎臓癌が挙げられる。
【0083】
いくつかの実施形態では、本開示のIL-2変異体(またはその誘導体)、接合体、または医薬組成物は、腹部、骨、乳房、消化器系、肝臓、膵臓、腹膜、内分泌腺(副腎、副甲状腺、下垂体、精巣、卵巣、胸腺、甲状腺)、目、頭頸部、神経系(中枢および末梢)、リンパ系、骨盤、皮膚、軟部組織、脾臓、胸部、泌尿生殖器系に位置する新生物を治療するために使用される。
【0084】
いくつかの実施形態では、本開示のIL-2変異体(またはその誘導体)、接合体、または医薬組成物は、前癌状態または癌転移を治療するために使用される。癌は、腎細胞癌、皮膚癌、肺癌、結腸直腸癌、乳癌、脳癌および頭頸部癌からなる群から選択される。
【0085】
いくつかの実施形態では、本開示のIL-2変異体(またはその誘導体)、接合体、または医薬組成物は、高ガンマグロブリン血症、リンパ増殖性状態、パラプロテイン血症、紫斑病、サルコイドーシス、セザリー症候群、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、ゴーシェ病、組織球症を治療するために使用される。
【0086】
いくつかの実施形態では、本開示のIL-2変異体(またはその誘導体)、接合体、または医薬組成物は、自己免疫疾患、移植拒絶反応、外傷後免疫応答および感染症を治療するために使用される。
【0087】
いくつかの実施形態では、自己免疫疾患は、I型糖尿病、関節リウマチ、多発性硬化症、慢性胃炎、クローン病、バセドウ病、ベヒテレフ病、乾癬、重症筋無力症、自己免疫性肝炎、APECED、チャーグストラウス症候群、潰瘍性大腸炎、糸球体腎炎、ギラン・バレー症候群、橋本甲状腺炎、硬化性苔癬、全身性エリテマトーデス、PANDAS、リウマチ熱、サルコイドーシス、シェーグレン症候群、スティフマン症候群、強皮症、ウェゲナー肉芽腫症、白斑、自己免疫性腸症、グッドパスチャー症候群、皮膚筋炎、多発性筋炎、自己免疫アレルギー、喘息からなる群から選択され得る。
【0088】
いくつかの実施形態では、IL-2変異体(またはその誘導体)は、免疫抑制剤と組み合わせて使用され得る。
【0089】
いくつかの実施形態では、免疫抑制剤は、グルココルチコイド、アザチオプリン、シクロスポリンA、ミコフェノール酸モフェチル、タクロリムス、抗CD3抗体、抗CD25抗体、抗TNF-α抗体、メトトレキサート、シクロスポリン、シロリムス、エベロリムス、フィンゴリモドおよびシクロホスファミドからなる群から選択される。
【0090】
いくつかの実施形態では、治療有効量の本開示のIL-2変異体(またはその誘導体)、接合体、または医薬組成物が対象に投与される。
【0091】
いくつかの実施形態では、患者または個人などの、必要とされる対象は、通常、ヒトなどの哺乳動物である。
【0092】
いくつかの実施形態では、本開示のIL-2変異体(またはその誘導体)、接合体、または医薬組成物は、少なくとも1日2回、少なくとも1日1回、少なくとも48時間毎に1回、少なくとも72時間毎に1回、少なくとも1週間に1回、少なくとも2週間毎に1回、少なくとも1か月に1回、少なくとも2か月毎に1回、または少なくとも3か月毎に1回、対象に投与される。
【0093】
いくつかの実施形態では、本開示のIL-2変異体(またはその誘導体)、接合体、または医薬組成物は、任意の経路を介して投与され、例えば、非経口注射(例えば、皮下注射または静脈内注射)によって投与される。
【図面の簡単な説明】
【0094】
図1】野生型ヒトIL-2、IL-2変異体またはその誘導体とIL-2Rα受容体との間の相互作用の曲線である。
図2】野生型ヒトIL-2、IL-2変異体またはその誘導体とIL-2Rβ/γ受容体との間の相互作用の曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0095】
下記の実施例は本開示をさらに説明するために組み込まれるが、これらの実施例は本開示の範囲を限定するものではない。
【0096】
(実施例1.野生型ヒトIL-2およびIL-2変異体またはその誘導体の組換え発現および調製)
IL-2変異体の核酸配列の合成、発現および精製。
【0097】
1.この例では、野生型ヒトIL-2とIL-2変異体(IL-2-1~IL-2-9)とを別々に発現させ、分子のC末端においてHPC4タグを使用して精製および調製した。IL-2-10は、IL-2-1のC末端にヒトIgG1 Fc配列を付加した変異体であり、これは、次いで精製および調製された。
【0098】
全遺伝子を合成し、各タンパク質のコード配列を二重酵素消化によって発現ベクターpcDNA3.1にサブクローニングした。最終的な発現ベクターは、酵素消化および配列決定によってその精度が確認され、最終的にDH5αクローン株にトランスフェクトされた。トランスフェクションに適したプラスミドをプラスミド抽出キットによって抽出し、一過性発現用のトランスフェクション試薬を使用して哺乳類HEK293細胞にトランスフェクトし、各タンパク質をアフィニティークロマトグラフィーで精製した。
【0099】
2.DH5αのプラスミド形質転換
コード配列を含有する発現プラスミド80~100ngを、事前に調製したDH5αコンピテント細胞にピペットで移した。コンピテントセルを、プラスミドの添加後に熱ショックによって形質転換した。
【0100】
形質転換されたコンピテントセルをLB液体培地に添加し、37℃の振盪機に置き、200rpmで約30分間振盪培養した。培養したコンピテントセルをシェーカーから取り出し、懸濁液の一部をピペッティングしてアンピシリンを含むプレートに広げ、インキュベーターに入れて37℃で一晩培養した。
【0101】
新鮮な培養プレートから単一クローンを選択し、2~5mLのLB培地中で37℃、200rpmで8時間培養した。培養物を1/500の比率で200mLのLB培地に接種し、37℃、200rpmで16時間培養した。培養菌懸濁液を収集し、遠心分離して上清を除去した。
【0102】
3.HEK293細胞の解凍および継代
ウォーターバスを37℃に設定して、培地を37℃に予熱した。
【0103】
HEK293細胞を液体窒素タンクから取り出し、すぐに37℃のウォーターバスに入れ穏やかに振って急速解凍した(約1分間)。
【0104】
チューブの外壁を75%エタノールで滅菌し、チューブをバイオセーフティキャビネットに置いた。細胞を、10mLの培地を含有する15mL遠心管に移し、800rpmで5分間遠心分離した。遠心分離後、上清を除去し、細胞を少量の新鮮な培地に再懸濁し、次いで培養フラスコに移した、新鮮な培地を加え、細胞を均一に分散させるためにフラスコを穏やかに振盪し、計数および生存率検出のために細胞サンプルを収集した。密度は3×10~4×10細胞/mLに制御され、生存率は95%超であった。
【0105】
細胞を37℃、110rpm、5%COのインキュベーター内に置いた。2.0×10細胞/mLの密度に達するまで2~3日間細胞培養した後、新鮮な培地を補充することによって細胞を継代した。細胞の密度および生存率をモニタリングした。
【0106】
4.HEK293細胞のプラスミドトランスフェクション
トランスフェクションの1日前に、HEK293細胞を1×10細胞/mLの接種密度で1Lの懸濁液中において培養し、インキュベーターに入れて37℃、110rpm、5% COで培養した。トランスフェクション当日、細胞密度を1×10細胞/mL~1.5×10細胞/mLに制御した。
【0107】
DNAトランスフェクション試薬の混合物:DNAとトランスフェクション試薬をトランスフェクション緩衝液に加え、よく混合し、37℃で培養した。DNAトランスフェクション試薬の混合物を、トランスフェクトされる細胞に加え、インキュベーターに置き、37℃、110 rpm、5% COで培養した。トランスフェクションから約4~6日後、細胞培養物をインキュベーターから取り出し、遠心分離して上清と細胞とを収集した。
【0108】
5.タンパク質の精製
5日間培養した後の細胞培養液を収集して遠心分離し、上清を収集して0.22μmのフィルターで濾過した。サンプルを、1×PBS、pH7.4の緩衝液を用いて4℃で透析した。透析後、HPC4抗体を接合させた培地を使用したアフィニティー精製にサンプルを供し、さらにsuperdex200を使用したゲル濾過クロマトグラフィーに供してさらに精製し、高純度の目的タンパク質を得た。
【0109】
(実施例2.野生型ヒトIL-2およびIL-2変異体またはその誘導体のIL-2Rαとの親和性の決定)
実施例1で得られた野生型ヒトIL-2およびそのIL-2変異体または誘導体(IL-2-1~IL-2-10)のIL-2Rαに対する結合特性を、Octetプラットフォームによって検出した。Octetプラットフォームによって、生物層干渉法(BLI)に基づいて生体分子間の相互作用を検出および分析した。
【0110】
1.実験器具、試薬および消耗品
Octet(登録商標) Octet RED96eシステム(カリフォルニア州メンローパーク、Pall Fortebio Corp)、
分析緩衝液:SD緩衝液(PBS(pH7.4)+0.01% BSA+0.02% Tween20)、
酢酸緩衝液(10mM、pH4.0、5.0、6.0)、
AR2G(Fortebio、カタログ番号18-5092)、
96ウェルプレート(Greiner Bio-One 部品番号655209)。
【0111】
2.下記の実験計画を参照して実験を実施した。
実験全体は、30℃、1000rpm、220μl/ウェルの条件下で完了した。実験で使用したタンパク質は、IL2-Rα-his、およびHEK293での一過性発現およびアフィニティー精製によって得られたIL-2変異体またはその誘導体であった。
【0112】
分析対象サンプルは、IL-2Rα、希釈緩衝液は、SD緩衝液であった。分析対象物の濃度は、500nM、240nM、120nM、60nM、30nM、15nM(および一部の変異体では追加の濃度1000nM)であった。
【0113】
3.実験データおよび処理
実験データを、データ分析ソフトウェア9.0を使用して処理した。1:1モデル、つまり1つのIL-2Rαに結合した1つの野生型ヒトIL-2またはIL-2変異体(具体的にはIL-2-1~IL-2-10)をフィッティングのために選択した。グローバルフィッティングの方法を適用した、つまり、6つの濃度がグループとして分析された。フィッティング結果を図1に示す。
【0114】
実験で得られたデータを1:1結合モデルに当てはめて、野生型ヒトIL-2またはIL2変異体または誘導体の受容体IL-2Rαとの親和性Kd値を取得した。
【0115】
野生型ヒトIL-2およびIL-2変異体またはその誘導体のIL-2Rαとの結合データを図1および表2に示した。
【0116】
その結果、IL-2-1、IL-2-6、IL-2-8、IL-2-9、およびIL-2-10はIL-2Rαに結合せず、IL-2-2、IL-2-3、IL-2-4、IL-2-5、IL-2-7およびIL-2Rα間の相互作用は、ある程度まで低下するか、または維持されたことが示された。
【0117】
これは、次のことを示唆した。
(1)31~32位におけるアミノ酸のGGへの変異は、IL-2のIL-2Rαへの結合に有意な影響を及ぼさなかった。
(2)43~45位におけるアミノ酸のGへの変異は、IL-2のIL-2Rαへの結合に一定の影響を及ぼした。
(3)35~41位におけるKLTRMLTのMHGLDGへの変異は、IL-2のIL-2Rαへの結合に有意な影響を及ぼさなかった。
(4)上記3つの変異の組み合わせによってタンパク質の構造が大きく変化し、IL-2のIL-2Rαへの結合が大幅に減少したが、実験条件下では両者の結合は観察されなかった。
【0118】
【表2】
【0119】
(実施例3.野生型ヒトIL-2およびIL-2変異体またはその誘導体のIL-2Rβ/γとの親和性の決定)
実施例1における野生型ヒトIL-2およびその変異体または誘導体のIL-2Rβ/γとの親和性を実験によって検出した。
【0120】
1.実験器具、試薬および消耗品
Octet(登録商標)Octet RED96eシステム(カリフォルニア州メンローパーク、Pall Fortebio Corp)、
分析緩衝液:SD緩衝液(PBS(pH7.4)+0.01% BSA+0.02% Tween20)、
酢酸緩衝液(10mM、pH4.0、5.0、6.0)、
AR2G(Fortebio、カタログ番号18-5092)、
96ウェルプレート(Greiner Bio-One 部品番号655209)。
【0121】
IL-2Rβ/γ-Fcヘテロ二量体の調製のために、IL-2RβおよびIL-2Rγサブユニットをクローニングし、それぞれFcホールおよびFcノブに融合させた。IL-2Rβ-Fc-ホールおよびIL-2Rγ-Fc-ノブをHEK293細胞に同時にトランスフェクトした。ヘテロ二量体を、プロテインAとモレキュラーシーブSuperdex 200とを使用して精製した。
【0122】
2.実験全体は、30℃、1000rpm、220μl/ウェルの条件下で完了した。
【0123】
分析物サンプルはIL-2Rβ/γヘテロ二量体であり、希釈緩衝液はSD緩衝液であった。分析対象物の濃度は、750nM、500nM、250nM、125nM、62.5nM、31.3nMであった。
【0124】
3.実験データおよび処理
実験データを、データ分析ソフトウェア9.0を使用して処理した。1:1モデル、すなわち、1つのIL-2Rβ/γに結合した1つの野生型ヒトIL-2またはIL-2変異体もしくはその誘導体(IL-2-1~IL-2-10)をフィッティングのために選択した。グローバルフィッティングの方法を適用した、つまり、6つの濃度がグループとして分析された。
【0125】
実験で得られたデータを1:1結合モデルに当てはめて、野生型ヒトIL-2またはIL2変異体またはその誘導体のIL-2Rβ/γとの親和性Kd値を取得し、結合データを図2および表3に示した。
【0126】
結果は、IL-2変異体またはその誘導体(IL-2-1からIL-2-10)とIL-2Rβ/γとの間の相互作用が変化しないことを示した。
【0127】
【表3】
【0128】
(実施例4.野生型IL-2、IL-2変異体またはその誘導体に対するCTLL-2細胞増殖活性アッセイ)
IL-2の生物学的活性は、異なるIL-2濃度下での依存性細胞株CTLL-2の増殖速度に従って検出された。
【0129】
細胞は、10%ウシ胎児血清および1%の2つの抗生物質(ペニシリン-ストレプトマイシン溶液)を含有するRPMI 1640培地中で、37℃、5%COのインキュベーター内で培養された。対数増殖期の細胞をトリプシン処理し、顕微鏡下で計数し、1×10~5×10細胞/mlの細胞懸濁液として調製した。懸濁液100μlを、96ウェル培養プレートの3つの同一のウェルに、細胞の種類ごとにプレートあたり3つずつ、1×10~5×10細胞/ウェルにおいてピペットで移し、ブランク対照として培地100μlを使用した。プレートを37℃で一晩培養した。
【0130】
ブランク、0.001nM、0.01nM、0.1nM、1nM、10nMの異なる濃度のグループを設定した。
【0131】
0時間および24時間の時点で、Cell Counting Kit-8 (CCK-8)と無血清最小必須培地とを体積比1:10で混合し、1ウェルあたり100μLでテストウェルに添加し、5% COで1時間恒温槽内において培養した。
【0132】
波長490nmにおける吸光度をマイクロプレートリーダーで測定した 各プレートの値を記録した。
【0133】
結果は表4に示すとおりであった。IL-2変異体またはその誘導体はすべてCTLL-2細胞増殖活性を有しており、変異がIL-2Rβ/γ受容体サブユニット複合体のシグナル伝達機能に有意な影響を及ぼさないことが示された。CTLL-2細胞上のIL-2-1、IL-2-6、IL-2-8、およびIL-2-9変異体の増殖活性は、陽性対照の増殖活性よりも有意に低かった。陽性対照はIL-2Rα受容体に結合しなかったが、陽性対照はIL-2Rα受容体に結合し、それによってIL-2Rβ/γへの結合が増強され、CTLL-2細胞に対する増殖活性がより高かった。
【0134】
IL-2-10は、IL-2-1変異体のC末端をFcフラグメントのN末端に接続することによって形成された組換えタンパク質であった(本出願ではIL-2変異体の誘導体として定義される)。IL-2Rβ/γへの結合を増強するのに十分な分子量を持っていたため、CTLL-2細胞に対して野生型ヒトIL-2と同様の増殖活性を維持することができた。データを表4に示した。
【0135】
【表4】

図1
図2
【配列表】
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【手続補正書】
【提出日】2024-02-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成熟野生型ヒトインターロイキン-2(IL-2)と比較してアミノ酸変異を含むヒトIL-2変異体であって、前記変異は、置換、欠失および付加の少なくとも1つであり、好ましくは、前記成熟野生型ヒトIL-2は、SEQ ID No.1に示されるとおりであり、前記変異は、
前記成熟野生型ヒトIL-2の31~45位におけるアミノ酸残基のSEQ ID No.11に示す配列への変異、
前記成熟野生型ヒトIL-2の35~41位におけるアミノ酸残基のSEQ ID No.12または14に示す配列への変異、
前記成熟野生型ヒトIL-2の35~43位におけるアミノ酸残基のSEQ ID No.13に示す配列への変異、
前記成熟野生型ヒトIL-2の31~32位におけるアミノ酸残基のGGへの変異、
前記成熟野生型ヒトIL-2の43~45位におけるアミノ酸残基のGへの変異、
前記成熟野生型ヒトIL-2の125位におけるアミノ酸残基のAへの変異、
任意選択で、前記成熟野生型ヒトIL-2のN末端におけるMの付加
からなる群から選択される、IL-2変異体。
【請求項2】
前記IL-2変異体は、
SEQ ID No.2~10、SEQ ID No.15、
N末端にMが付加されたSEQ ID No.2~10、およびN末端にMが付加されたSEQ ID No.15、
からなる群から選択される配列で示されるとおりである、請求項1に記載のIL-2変異体。
【請求項3】
前記IL-2変異体は、IL-2Rαとの低下した親和性を有し、および/または、
前記IL-2変異体は、IL-2Rβとの変化していないかまたは増加した親和性を有し、および/または、
前記IL-2変異体は、IL-2Rγとの変化していないかまたは増加した親和性を有し、
好ましくは、前記IL-2変異体は、IL-2Rα/β/γとの低下した親和性を有し、およびIL-2Rβ/γとのIL-2変異体の親和性は、維持されるか増加する、
請求項1に記載のIL-2変異体。
【請求項4】
PEG化、グリコシル化、アルブミンへの接合、Fcへの接合、ヒドロキシエチル化、脱O-グリコシル化、
からなる群から選択される修飾を有し、
好ましくは、前記Fcへの接合は、請求項1に記載のIL-2変異体のC末端へのヒトIgG1 Fcの接合を指し、
前記PEG化は、IL-2変異体のN末端でのPEGの結合を指し、
好ましくは、前記PEGは、5kD~80kDの分子量を有し、
より好ましくは、前記PEGは、10kD~20kDの分子量を有し、
請求項1に記載のIL-2変異体を含む、IL-2変異体の誘導体。
【請求項5】
第1の成分と、
第2の成分と、
を含む接合体であって、
前記第1の成分は、前記第2の成分に、直接的に接合するかまたはリンカーを介して間接的に接合し、
前記第1の成分は、請求項1に記載のIL-2変異体であり、
好ましくは、前記第2の成分は、抗体またはその抗原結合断片であり、
より好ましくは、前記抗体またはその抗原結合断片は、腫瘍抗原を標的とする、
接合体。
【請求項6】
請求項1に記載のIL-2変異体、または請求項4に記載のIL-2変異体の誘導体、または請求項5に記載の接合体、
薬学的に許容される希釈剤、担体または賦形剤
を含有する、医薬組成物。
【請求項7】
請求項1に記載のIL-2変異体、請求項4に記載のIL-2変異体の誘導体、または請求項5に記載の接合体をコードする核酸分子。
【請求項8】
請求項7に記載の核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項9】
請求項8に記載の発現ベクターを含むこと、
請求項1に記載のIL-2変異体を発現すること、
請求項4に記載のIL-2変異体の誘導体を発現すること、
請求項5に記載の接合体を発現すること、
のいずれかを含むまたは発現する、宿主細胞であって、
好ましくは、前記宿主細胞は、原核細胞または真核細胞であり、
好ましくは、前記宿主細胞は、細菌細胞、酵母細胞、哺乳類細胞からなる群から選択され、
最も好ましくは、前記宿主細胞は、サッカロミケス・セレビシエ細胞または大腸菌細胞である、
宿主細胞。
【請求項10】
薬剤の調製における、請求項1に記載のIL-2変異体、請求項4に記載のIL-2変異体の誘導体、請求項5に記載の接合体から選択されるいずれかの使用であって、
前記薬剤は、増殖性疾患、増殖性疾患の転移、免疫疾患からなる群から選択される疾患を予防または治療するためのものであり、
好ましくは、前記増殖性疾患は、腫瘍または癌であり、
好ましくは、前記免疫疾患は、糖尿病、関節リウマチ、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、湿疹、喘息、自己免疫疾患および臓器移植後の自己免疫反応からなる群から選択され、
好ましくは、前記腫瘍または癌は、上皮細胞癌、内皮細胞癌、扁平上皮癌、パピローマウイルスによる癌、腺癌、黒色腫、肉腫、奇形腫、肺癌、転移性肺癌、リンパ腫および転移性腎細胞癌腫からなる群から選択される、
使用。
【国際調査報告】