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▶ ノルウェージャン ユニバーシティ オブ サイエンス アンド テクノロジー(エヌティーエヌユー)の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-30
(54)【発明の名称】治療方法およびデバイス
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/06 20060101AFI20240723BHJP
   A61M 5/172 20060101ALI20240723BHJP
   A61M 5/142 20060101ALI20240723BHJP
   A61B 5/1473 20060101ALI20240723BHJP
   A61B 5/1486 20060101ALI20240723BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240723BHJP
   A61K 50/00 20060101ALI20240723BHJP
   A61K 38/26 20060101ALI20240723BHJP
   A61K 38/28 20060101ALI20240723BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240723BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240723BHJP
   A61P 9/08 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
A61K45/06
A61M5/172 500
A61M5/142 522
A61B5/1473
A61B5/1486
A61K45/00
A61K50/00 200
A61K38/26
A61K38/28
A61P3/10
A61P43/00 121
A61K50/00 100
A61P9/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579049
(86)(22)【出願日】2022-06-23
(85)【翻訳文提出日】2024-02-19
(86)【国際出願番号】 EP2022067148
(87)【国際公開番号】W WO2022268941
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】2109087.3
(32)【優先日】2021-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512101187
【氏名又は名称】ノルウェージャン ユニバーシティ オブ サイエンス アンド テクノロジー(エヌティーエヌユー)
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カールセン, スヴェン マグナス
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャンセン, スヴェレ クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】フォグナー, アンデルス リュングヴィ
(72)【発明者】
【氏名】スタヴダール, オイヴィンド
(72)【発明者】
【氏名】エリングセン, ライノルド
(72)【発明者】
【氏名】イェルム, ダグ ロア
【テーマコード(参考)】
4C038
4C066
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
4C038KK10
4C038KL01
4C038KL09
4C038KX01
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD12
4C066FF04
4C066QQ21
4C066QQ61
4C066QQ82
4C066QQ92
4C084AA17
4C084AA20
4C084BA01
4C084BA19
4C084BA20
4C084DB34
4C084DB35
4C084MA02
4C084MA56
4C084MA63
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA20
4C084ZA391
4C084ZA392
4C084ZC351
4C084ZC352
4C084ZC751
4C084ZC752
4C084ZC782
4C085HH20
4C085KA36
4C085KB82
4C085LL01
(57)【要約】
本発明は、治療剤の送達を補助する、または血中の解析物のレベルを測定するセンサーデバイスの操作を補助するための、グルカゴンおよびグルカゴン活性を有する化合物の、血管拡張剤としての新規な医学的使用に関する。特に、本化合物は、活性薬剤と時間的に同期して、および/または、体内センサーによる解析物の測定と連動して、活性薬剤の投与部位、および/または、体内センサーによる解析物のセンシングの部位の近傍にある部位に投与される。これには、特に、糖尿病の処置におけるインスリンの送達、およびグルコースセンサーによる血中グルコースレベルの測定を含む。また、本明細書では、医学的使用および治療を実施するための統合型システムも提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性治療剤の対象への送達、および/または前記対象における解析物の血中レベルの測定において使用するための、グルカゴン活性を有する化合物であって、前記化合物は、活性薬剤と共に、および/または体内センサーによる前記解析物の測定に連動して投与され、前記活性薬剤の投与部位、および/または前記体内センサーによる前記解析物のセンシングの部位の近傍にある部位において、前記活性薬剤の投与、および/または前記センサーによる前記解析物の前記センシングを時間的に同期させて、前記対象へ投与される、化合物。
【請求項2】
前記使用が、糖尿病を伴う対象の処置および/または管理における、インスリンとの共投与、および/またはグルコースセンサーによるグルコースセンシングとの連動的な使用である、請求項1に記載の使用のための化合物。
【請求項3】
第2の活性治療剤の対象への送達における使用のための、グルカゴン活性を有する化合物であって、前記使用が、前記化合物を前記第2の剤と共投与するステップを含み、前記化合物が、前記対象へと、前記第2の剤の投与部位の近傍にある部位において、前記第2の剤と時間的に同期させて投与される、化合物。
【請求項4】
前記第2の活性治療剤がインスリンであり、前記化合物およびインスリンが、糖尿病の処置における使用のために共投与される、請求項3に記載の使用のための化合物。
【請求項5】
対象における解析物の血中レベルの測定における、体内解析物センサーと連動的な使用のための、グルカゴン活性を有する化合物であって、前記使用が、前記化合物を、前記解析物センサーの近傍にある部位において、前記センサーによる解析物のセンシングの時点と時間的に同期させて投与するステップを含み、好ましくは、前記解析物がグルコースであり、前記体内解析物センサーが体内グルコースセンサーである、化合物。
【請求項6】
血中のグルコースレベルにおける臨床的に重要な上昇を達成するのに要求される用量未満である微小用量において投与される、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項7】
0.1mg以下の用量において投与される、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項8】
0.05mg以下の用量において投与される、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項9】
前記対象の前記処置および/または管理が、前記対象におけるグルコースレベルを上昇させるために、グルカゴン活性を有する化合物の治療用量の別個の投与をさらに含む、請求項2および請求項4~8のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項10】
前記使用において、前記化合物が、前記第2の活性治療剤の前記投与部位、および/または前記解析物のセンシング部位から3cm以内の部位に投与される、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項11】
前記使用において、前記化合物と前記インスリンまたは他の第2の活性治療剤とが、別々に投与される、請求項1~4および請求項6~10のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項12】
前記使用において、前記化合物と前記インスリンまたは他の第2の活性治療剤とが、混合物として投与される、請求項1~4および請求項6~10のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項13】
前記使用において、前記化合物と前記第2の活性治療剤とが、前記体内解析物センサーまたは別の解析物センサーによって、前記解析物のセンシングと連動的または呼応して共投与される、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項14】
前記化合物と前記インスリンまたは他の第2の活性治療剤とが、別々に、皮下投与または腹腔内投与される、請求項1~13のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項15】
前記化合物および/または前記インスリンが、それぞれに、
(i)前記インスリンおよび前記化合物の投与のための、1つまたは複数の送達デバイスまたは送達手段、およびグルコースセンサーを含む統合型デバイスである人工膵臓から投与されるか;または、
(ii)インスリンポンプまたは別のポンプであってもよい、インスリンポンプ、および/または前記化合物の送達のためのポンプから投与されるか;または、
(iii)毎日複数回注射の計画の一部として投与されるか;あるいは、
(iv)前記化合物が、インスリン投与部位または前記グルコースセンサーの部位の近傍に持続注入により投与されるか;または、
(v)前記化合物が、徐放用調製物の形態において投与される、
請求項2および請求項4~14のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項16】
(v)において、前記徐放用調製物が、前記インスリン投与部位の近傍、および/または前記グルコースセンサーの近傍にある部位に投与するための組成物もしくはリザーバーであるか;またはインスリン送達ラインの送達末端もしくは送達末端に向かってコーティングする形態であるか;または前記インスリン投与部位の近傍および/または前記グルコースセンサーの近傍に適用するための皮膚接着性パッチである、請求項15に記載の使用のための化合物。
【請求項17】
前記化合物が皮下投与され、前記インスリンが、皮下、腹腔内、または他の任意の体腔内もしくは臓器内に投与される、請求項2、4、および請求項6~16のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項18】
前記センサーが、皮下留置、腹腔内留置、または他の任意の体腔内もしくは臓器内に留置される、請求項1、2、および請求項5~17のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項19】
皮下グルコースセンサーと連動して前記化合物が皮下投与され、任意に、前記化合物が必要に応じて血中グルコースレベルを上昇させるために、任意で同じ部位に、さらに別個に皮下投与される、請求項18に記載の使用のための化合物。
【請求項20】
前記使用が、任意に腹腔内、または他の体腔内もしくは臓器内にインスリンを投与するステップをさらに含む、請求項19に記載の使用のための化合物。
【請求項21】
前記化合物および前記インスリンが、前記インスリンおよび化合物の制御送達ならびに血中グルコースセンシングのための統合型システムである人工膵臓を介して投与され、前記グルコースセンサーがその一部を形成する、請求項2および請求項4~20のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項22】
糖尿病の対象における血中グルコースレベルを制御するための統合型システムであって、
(i)前記対象の前記血中グルコースレベルを測定し、前記血中グルコースレベルと関連するセンサーデータを提供するように構成された、1つまたは複数のグルコースセンサー;
(ii)グルカゴン活性を有する化合物を前記対象に投与するように構成された、化合物送達手段;
(iii)インスリンを前記対象に投与するように構成された、インスリン送達デバイス;および
(iv)前記グルコースセンサーからセンサーデータを受け取り、少なくとも前記センサーデータに基づき前記対象に投与するインスリン用量を決定し、前記インスリン送達デバイスを制御して、前記用量を投与するように構成された、制御システム
を含み、
(a)前記化合物送達手段が、前記化合物を、インスリン投与部位の近傍、および/または前記グルコースセンサーの近傍にある部位に投与するように構成された、グルカゴン活性を有する前記化合物の徐放リザーバーを含むか;
または
(b)前記化合物送達手段が、グルカゴン活性を有する前記化合物を前記対象に投与するように制御可能であり、前記制御システムが、前記化合物送達手段を制御して、前記化合物を、前記インスリン投与部位の近傍にある部位に、インスリンの投与と時間的に同期させて投与し、これにより、前記インスリン投与部位の近傍の血流を改善するように構成され、および/または前記化合物送達手段を制御して、前記化合物を、グルコースセンサーの近傍にある部位に、前記血中グルコースレベルを測定する前記グルコースセンサーの作動と時間的に同期させて投与し、これにより、前記グルコースセンサーの近傍の血流を改善するように構成されている、
統合型システム。
【請求項23】
前記制御システムが、少なくとも前記センサーデータに基づき、前記対象の血中グルコースレベルを上昇させるよう、前記対象に投与する化合物の治療用量を決定し、前記治療用量の化合物を前記対象へと投与して、低血糖症または予測される低血糖症に対抗するよう、前記化合物送達手段を制御するようにさらに構成されている、請求項22に記載の統合型システム。
【請求項24】
(i)皮下システムであり、前記グルコースセンサーが、皮下グルコースセンサーであり、前記化合物およびインスリンが、皮下投与される;または
(ii)腹腔内システムであり、前記グルコースセンサーが、腹腔内グルコースセンサーであり、前記化合物およびインスリンが、腹腔内投与される;または
(iii)皮下/腹腔内システムの組合せであり、前記グルコースセンサーが、皮下グルコースセンサーであり、前記化合物が、皮下投与され、インスリンが、腹腔内投与され、任意で、化合物が前記インスリン投与と連動して腹腔内投与される、またはグルコースセンサー部位において皮下投与される、
請求項22および23のいずれか一項に記載の統合型システム。
【請求項25】
前記化合物送達手段が、化合物を、前記グルコースセンサー、および/または前記インスリン投与部位から3cm以内の部位に投与するように構成されている、請求項22~24のいずれか一項に記載の統合型システム。
【請求項26】
対象の血中のグルコースのレベルを測定するためのセンサーシステムであって、
(i)前記対象の血中グルコースレベルを測定し、前記血中グルコースレベルと関連するセンサーデータを提供するように構成されたグルコースセンサー;
(ii)グルカゴン活性を有する化合物を前記対象に投与するように構成された送達手段;
(iii)前記センサーデータを前記グルコースセンサーから受け取るように構成された制御システム
を含み、
(a)前記送達手段が、前記化合物を、前記グルコースセンサーの近傍にある部位に投与し、これにより、前記グルコースセンサーの近傍の血流を改善するように構成された、グルカゴン活性を有する前記化合物の徐放リザーバーを含む;
または
(b)前記送達手段が、グルカゴン活性を有する前記化合物を前記対象へと投与するように制御可能であり、前記制御システムが、前記送達手段を制御して、前記血中グルコースレベルを測定する前記グルコースセンサーの作動と時間的に同期させて、前記化合物を、前記グルコースセンサーの近傍にある部位に投与し、これにより、前記グルコースセンサーの近傍の血流を改善するように構成されている、
センサーシステム。
【請求項27】
対象にインスリンを投与するためのインスリン送達システムであって、
(i)グルカゴン活性を有する化合物を前記対象に投与するように構成された、化合物送達手段;
(ii)インスリンを前記対象に投与するように構成された、インスリン送達デバイス;
(iii)前記対象に投与するインスリン用量を決定し、前記インスリン送達デバイスを制御して、前記用量を投与するように構成された制御システム
を含み、
(a)前記化合物送達手段が、前記化合物を、インスリン投与部位の近傍にある部位に投与するように構成された、グルカゴン活性を有する前記化合物の徐放リザーバーを含む;
または
(b)前記化合物送達手段が、グルカゴン活性を有する前記化合物を前記対象に投与するように制御可能であり、前記制御システムが、前記化合物送達手段を制御して、前記化合物を、前記インスリン投与部位の近傍にある部位に、インスリンの投与と時間的に同期させて投与するように構成されている、
インスリン送達システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示および本発明は、一般に、医学的使用および治療に関し、より詳細には、グルカゴンおよびグルカゴン活性を有する他の化合物の新規の医学的使用に関する。本明細書では、グルカゴン活性を有する化合物を、治療剤の送達を補助するため、または血中の解析物のレベルを測定するセンサーデバイスの操作を補助するために、血管拡張剤として使用することを提案する。これは、特に、糖尿病の処置におけるインスリンの送達およびグルコースセンサーによる血中グルコースレベルの測定を含む。本明細書ではまた、医学的使用および治療を実施するためのデバイスも提供される。
【背景技術】
【0002】
糖尿病、中でもとりわけ、1型糖尿病(T1D)の処置および管理がなされる対象は、長年にわたり、進行中の難題となっている。糖尿病の微小血管合併症を低減し、実際に、糖尿病における死亡率を低減するための、血中グルコースレベルの緊密な制御の利益が認識されているが、これは、低血糖症の危険性の増大および集中的なグルコース制御を伴う、自己管理の負担の増大と釣り合わされる必要がある。この目的で、持続グルコースモニタリング(CGM)技術およびインスリン注入ポンプの進歩は、CGMを、インスリンポンプおよびインスリン投与アルゴリズムと組み合わせて、血中グルコースレベルを制御するように、インスリン送達を、自動的に、かつ、持続的に調節する、自動化システムである、人工膵臓(AP)の開発をもたらしつつある。単一ホルモン型(インスリンだけ)システムおよび二重ホルモン型(インスリンおよびグルカゴン)システムの両方が開発されつつある(PetersおよびHaidar、2018、Diabet.Med.35、450~459)。二重ホルモン型人工膵臓システムでは、グルカゴンは、低血糖症の制御のために、血中グルコースを増大させる、そのホルモン効果のために使用される。
【0003】
このような開発は、糖尿病の管理を改善するために、極めて有望であるが、継続的に、改善が必要とされている。特に、皮下投与されたインスリンによる、グルコース低下応答の顕著な遅延を含む動態が緩徐であるために、特に、皮下(SC)人工膵臓システムを、完全自動化することは、困難であることが分かっており、血中グルコースレベルに対する大きな効果が見られるのに、1~2時間かかる場合がある。加えて、典型的に、皮下グルコースセンシングでは、少なくとも6~8分間の遅延が見られるが、これは、一部の対象では、さらに延長されうる。これらの遅延は、SC APシステムの開発を妨げており、これまでのところ、ハイブリッドシステムだけが利用可能である。使用者が、システムに、摂取された炭水化物の量について情報を与え、システムが、これを、インスリン用量(食事ボーラス)へと変換する。真に自動式の人工膵臓のために、インスリンの、グルコースレベルに対する迅速な効果は、食後ならびに身体活動時および身体活動後に必要とされるが、これは、グルコースセンシングの遅延および皮下送達されたインスリンの効果が低減される必要があることを意味する。
【0004】
インスリンの腹腔内(IP)送達は、典型的に、迅速な応答を結果としてもたらし、実際に、良好なグルコース制御を結果としてもたらすので、インスリン動態を増大させ、血中グルコースレベルの上昇に応答する迅速なインスリン効果を達成しようと試みるために、腹腔内人工膵臓システムを開発しようとする取組みがなされつつある。これは、二重ホルモン型人工膵臓の分野を含む(Amら、Scientific Reports、2020、10、13735)。しかし、IP APの開発は、技術的に困難であり、インスリン送達およびグルコースセンシングのための新たな手法が、持続的に求められつつある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】PetersおよびHaidar、2018、Diabet.Med.35、450~459
【非特許文献2】Amら、Scientific Reports、2020、10、13735
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開発は、このニーズに向けたもので、グルカゴンの血管拡張作用に基づく。グルカゴンは既に、血管拡張活性を有することが報告されているが、これは、大血管、すなわち、大動脈のレベルにおいてであり(Selleyら、Horm.Metab.Res.、2016、48、476~483)、この効果の治療的活用または治療的利用については、いまだ提起されていない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】SC CGMデバイスについての概略図を提示する図である。
図2】インスリン単独型人工膵臓の作動を示すフローチャートを提示する図である。
図3】二ホルモン型人工膵臓の作動を示すフローチャートを提示する図である。
図4】センシング部位の近傍における、徐放グルカゴンを伴うSC CGMについての概略図を提示する図である。
図5】センシング部位の真上の皮膚表面における、グルカゴンを伴うSC CGMについての概略図を提示する図である。
図6】センシング部位の近傍において、グルカゴンのための送達ラインを伴う、SC CGMについての概略図を提示する図である。
図7】センシング部位の近傍にある末端部の直前において併合される、グルカゴンのための、1つの送達ラインと、インスリンのための、1つの送達ラインとを伴う、SC CGMについての概略図を提示する図である。
図8】グルカゴンおよびインスリンの、センシング部位の近傍への送達のための代替的方途である、(A)個別のグルカゴンラインおよびインスリンライン;ならびに(B)併合される、個別のグルカゴン送達ラインおよびインスリン送達ラインを伴う、SC CGMについての概略図を提示する図である。
図9】インスリン送達部位の真上の皮膚表面において、グルカゴンを伴う、インスリンのための送達ラインについての概略図を提示する図である。
図10】送達ラインの先端部において、徐放グルカゴンを伴う、インスリン送達デバイスについての概略図を提示する図である。
図11】インスリン送達ラインと、センシング部位およびインスリン送達部位の真上の皮膚表面におけるグルカゴンとを伴う、SC CGMについての概略図を提示する図である。
図12】センサーの先端部における、徐放グルカゴンと、センシング部位およびグルカゴン放出部位の近傍を末端とする、インスリン送達ラインとを伴うSC CGMについての概略図を提示する図である。
図13】SC CGMおよび徐放グルカゴンでコーティングされ、センシング部位の近傍を末端とする、インスリン送達ラインについての概略図を提示する図である。
図14】レーザードップラー法により測定された、両上腕部側面の皮下部位における、0.1mgのグルカゴンまたはプラセボ(0.9%の生理食塩液)の注射後のヒト対象における血流を、グルカゴンについて破線で示され、プラセボについて点線で示された、95%信頼区間と共に示すグラフであり;血液灌流単位は、時間経過(分)にわたり示される。
図15】レーザードップラー法により測定された、両上腕部側面の皮下部位における、変動用量のグルカゴン(0.1mg、0.015mgおよび0.01mg)またはプラセボ(0.9%の生理食塩液)の注射後のヒト対象における血流を示すグラフであり;血液灌流単位は、時間経過(分)にわたり示される。
図16】レーザードップラー法により測定され、プラセボ(0.9%の生理食塩液)により引き起こされた、血流に対する効果を控除された、両上腕部側面の皮下部位における、変動用量のグルカゴン(0.1mg、0.015mgおよび0.01mg)の注射後のヒト対象における血流を示すグラフであり;血液灌流単位は、時間経過(分)にわたり示される。
図17】レーザードップラー法により測定された、腹部対側の皮下部位における、0.1mgのグルカゴンまたはプラセボ(0.9%の生理食塩液)の注射後のヒト対象における血流を、グルカゴンについて破線で示され、プラセボについて点線で示された、95%信頼区間と共に示すグラフであり;血液灌流単位は、時間経過(分)にわたり示される。
図18】レーザードップラー法により測定された、腹部両側の皮下部位における、変動用量のグルカゴン(0.1mg、0.015mgおよび0.01mg)またはプラセボ(0.9%の生理食塩液)の注射後のヒト対象における血流を示すグラフであり;血液灌流単位は、時間経過(分)にわたり示される。
図19】レーザードップラー法により測定され、プラセボ(0.9%の生理食塩液)により引き起こされた、血流に対する効果を控除された、腹部両側の皮下部位における、変動用量のグルカゴン(0.1mg、0.015mgおよび0.01mg)の注射後のヒト対象における血流を示すグラフであり;血液灌流単位は、時間経過(分)にわたり示される。
図20】レーザードップラー法により測定された、1~3秒間にわたり持続する注射または少なくとも10秒間にわたり持続する注射を使用する、腹部両側の皮下部位における、0.1mgのグルカゴンの注射後のヒト対象における血流を示すグラフであり;血液灌流単位は、時間経過(分)にわたり示される。
図21】レーザードップラー法により測定された、1~3秒間にわたり持続する注射または少なくとも10秒間にわたり持続する注射を使用する、腹部対側の皮下部位における、0.1mgのグルカゴンまたはプラセボ(0.9%の生理食塩液)の注射後のヒト対象における血流を示すグラフであり;血液灌流単位は、時間経過(分)にわたり示される。
図22】レーザードップラー法により測定された、大腿部の皮下部位における、0.05mgのグルカゴンまたはプラセボ(0.9%の生理食塩液)の注射後のヒト対象における血流を、グルカゴンについて破線で示され、プラセボについて点線で示された、95%信頼区間と共に示すグラフであり;血液灌流単位は、時間経過(分)にわたり示される。
図23】レーザードップラー法により測定された、大腿部の皮下部位における、変動用量のグルカゴン(0.05mg、0.03mgおよび0.01mg)またはプラセボ(0.9%の生理食塩液)の注射後のヒト対象における血流を示すグラフであり;血液灌流単位は、時間経過(分)にわたり示される。
図24】レーザードップラー法により測定され、プラセボ(0.9%の生理食塩液)により引き起こされた、血流に対する効果を控除された、大腿部の皮下部位における、変動用量のグルカゴン(0.05mg、0.03mgおよび0.01mg)の注射後のヒト対象における血流を示すグラフであり;血液灌流単位は、時間経過(分)にわたり示される。
図25】レーザードップラー法により測定された、両上腕部側面の皮下部位における、0.015mgのグルカゴンまたはプラセボ(0.9%の生理食塩液)の注射後のヒト対象における血流であって、レーザードップラープローブからの距離を変動させて(プローブ下、プローブ中心から1.6cm、プローブ中心から3cm、プローブ中心から5cmにおいて)注射を実施した場合の血流を示すグラフである。プラセボ(0.9%の生理食塩液)により引き起こされた、血流に対する効果を控除し、血液灌流単位を、時間経過(分)にわたり示す。
図26】Dexcom G6により回収された、非糖尿病性女性における12回の食事および非糖尿病性男性における11回の食事からの、ヒト対象における持続CGMデータを示すグラフである。対象に、各上腕部の側面上の対称位置に、2つのCGMを留置した。摂食開始の1~3分前に、0.1mlのグルカゴン(1mg/ml)を、一方のCGM部位に注射し、0.1mlのプラセボ(0.9%の生理食塩液)を、対側CGM部位に注射した。各回の食事の前に、新たな無作為化により、グルカゴン送達部位を測定した。各回の食事の開始時におけるグルコースレベルをゼロとした(ベースラインおよびベースラインからの変化を、図中に示す)。値は、平均値として与えられる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
特に、皮下インスリン送達および皮下グルコースセンシングの分野における、インスリン効果およびグルコースセンシングの遅延の問題に取り組むために、本明細書では、ホルモンであるグルカゴンまたは、より一般に、グルカゴン活性を有する化合物を、局所的血管拡張剤として使用して、インスリン投与および/またはグルコースセンシングの位置における血流を増大させることを提案する。これは、投与されたインスリンの動態およびグルコースセンシングを改善するように作用し、インスリン効果の遅延を低減し、必要とされる場合に、例えば、グルコースレベルが、食事または身体運動の時間に変化する場合に、血中グルコースレベルの、より正確および/または迅速な測定を達成するように、グルコースセンサーの性能を改善しうる。
【0009】
この新たな提案によれば、グルカゴンは、低血中グルコースレベルの挿間に対抗するか、またはこれを防止する、その通例のホルモン効果のために使用されるのではなく、その血管拡張効果のために使用される。本発明者らは、驚くべきことに、グルカゴンが、皮下投与される場合に、局所レベルにおいて、皮膚内の小血管に対して、血管拡張効果を及ぼし、投与部位において、血流を、数百パーセント増大させることが可能であることを見出した。したがって、本発明者らは、毛細血管レベルにおいて、すなわち、皮下微小循環内において、血管拡張効果を観察した。投与部位における小血管に対するこの局所効果はまた、特に腹腔内投与部位を含む他の部位においても見られることが考えられる。したがって、グルカゴンおよびグルカゴン活性を有する化合物は、投与部位における局所血流を改善するために、より一般的に使用することができ、それによって、インスリンだけではなく、一般的な治療剤の送達を補助するか、または増強するために使用されうる。同様に、グルカゴン活性を有する化合物は、任意の血液解析物についてのセンサーであり、グルコースだけについてのセンサーではないセンサーの作動部位において、局所血流を改善するのに使用されうる。
【0010】
したがって、本明細書で提供される、第1の広範な態様は、活性治療剤の対象への送達、および/または対象における解析物の血中レベルの測定において使用するための、グルカゴン活性を有する化合物であって、化合物は、活性薬剤と共に、および/または体内センサーによる解析物の測定に連動して投与され、活性薬剤の投与部位、および/または体内センサーによる解析物のセンシングの部位(複数可)の近傍にある部位において、活性薬剤の投与、および/またはセンサーによる解析物の前記センシングを時間的に同期させて、対象へ投与される、化合物が提供される。
【0011】
上記で言及された通り、グルカゴン活性を有する化合物は、それ自体、活性薬剤であるので、共投与される活性治療剤は、第2の活性薬剤として考えられる。
【0012】
本明細書の一実施態様では、第2の活性治療剤の対象への送達における使用のための、グルカゴン活性を有する化合物であって、前記使用が、化合物を、前記第2の剤と共投与するステップを含み、対象へと、第2の剤の投与部位の近傍にある部位において、第2の剤と時間的に同期させて投与される化合物が提供される。
【0013】
活性治療剤の送達は、この薬剤の治療的使用の分野においてなされることが理解されるであろう。したがって、グルカゴン活性を有する化合物は、この薬剤に対して応答性である医学的状態の処置および/または防止における、(第2の)治療剤の送達において使用される。言い換えれば、グルカゴン活性を有する化合物は、(第2の)治療剤による、状態の処置および/または防止において使用される。
【0014】
別の実施態様では、本明細書では、対象における解析物の血中レベルの測定における、体内センサーと連動して使用するための、グルカゴン活性を有する化合物であって、前記化合物を、センサーの近傍にある部位において、センサーによる解析物のセンシングの時点と時間的に同期させて投与するステップを含む、化合物が提供される。
【0015】
下記でさらに説明される通り、ある実施形態では、投与は、センサーによるセンシングが生じるたびごとに(すなわち、センサーが、センシングを実施するたびごとに)行われうる。別の実施態様では、投与は、センシングが生じる時点において、持続的に、または定期的に行われる場合もあり、センサーによるセンシングが行われる時間にわたり、持続的に、または定期的に行われる場合もある。このように、化合物は、それが、センサーによるセンシングが実施される時点において、センサーの近傍に存在するように投与される場合があり、例えば、化合物は、センサーの近傍において配置もしくは適用されるか、またはセンサーの一部として施された、制御放出(「徐放」)デポまたはリザーバー(または他の任意の徐放製剤もしくは徐放調製物)から投与されうる。
【0016】
上記から、「時間的に同期させて」とは、活性薬剤の投与と関連する場合であれ、センサーによるセンシングと関連する場合であれ、化合物の投与が、治療用活性薬剤の投与もしくはセンサーによるセンシングと同期されるか、もしくは、より一般に、化合物が、活性薬剤の投与、および/または吸収、もしくはセンシングが生じる時点に、活性薬剤の投与部位の近傍またはセンシング部位の近傍において、存在するか、または効果的である(すなわち、活性であるか、または効果を及ぼすことが可能である)であるように同期されることを意味することが理解されるであろう。これについては、下記で、さらに論じられる。
【0017】
このような使用のために、グルカゴン活性を有する化合物は、化合物を含む組成物の形態において提供されうる。特定の実施形態では、組成物は、医薬組成物と称されうる。ある特定の実施形態では、組成物は、1つまたは複数の薬学的に許容可能な担体または賦形剤を含みうる。
【0018】
本明細書の第2の広範な態様では、治療用活性薬剤を、対象へと送達する方法および/または対象の解析物の血中レベルを、体内センサーにより測定する方法であって、対象へと、グルカゴン活性を有する化合物を、治療用活性薬剤と併せて、および/または体内センサーによる解析物の測定に連動して投与するステップを含み、化合物が、活性薬剤の投与部位の近傍またはセンサーの近傍にある部位において、かつ、第2の活性薬剤の投与および/またはセンサーによる解析物のセンシングの時点と時間的に同期させて投与される方法が提供される。
【0019】
一実施態様では、方法は、治療用活性薬剤を、対象へと送達する方法であって、前記対象へと、グルカゴン活性を有する化合物を、治療用活性薬剤と併せて共投与するステップを含み、化合物が、インスリン投与部位の近傍にある部位において、かつ第2の活性薬剤と時間的に同期させて投与される方法である。
【0020】
上記で言及された通り、方法は、治療用活性薬剤に対して応答性である状態を処置および/または防止する方法でありうる。
【0021】
別の実施態様では、方法は、対象の解析物の血中レベルを、体内センサーにより測定するための方法であって、対象へと、グルカゴン活性を有する化合物を投与するステップを含み、化合物が、センサーの近傍にある部位において、センサーによる解析物のセンシングの時点と時間的に同期させて投与される方法である。
【0022】
本明細書の第3の態様では、活性治療剤の対象への送達および/または対象における解析物の血中レベルの測定における使用のための医薬品の製造における、グルカゴン活性を有する化合物の使用が提供されるが、この場合、医薬品は、活性薬剤を含み、および/または体内センサーによる解析物の測定に連動して投与され、化合物は、対象へと、活性薬剤の投与部位および/またはセンサーによる解析物のセンシングの部位(複数可)の近傍にある部位において、投与および/またはセンサーによる解析物のセンシングと時間的に同期させて投与される。
【0023】
医薬品が、活性治療剤の送達における使用のための医薬品である場合、化合物は、単一の組成物または調製物により、活性薬剤と併せて提供または製剤化される場合もあり、または化合物および活性薬剤は、別個の組成物または調製物により、個別に提供または製剤化される場合もある。したがって、医薬品は、化合物および活性薬剤の両方を含む組成物の形態を取る場合もあり、(i)化合物および(ii)活性薬剤を含むキットの形態を取る場合もある。
【0024】
医薬品は、本明細書における、本発明の任意の態様における使用のために提供されうる。医薬品は、対象への、連動的投与、個別投与または逐次的投与のための化合物および活性薬剤を含むが、化合物の投与が、下記で記載され、さらに規定される通り、活性薬剤の投与と時間的に同期されることの制限内にある。
【0025】
上記の多様な態様および実施形態ならびに本明細書の下記および他の箇所においてさらに記載された態様および実施形態では、グルカゴン活性を有する化合物は、その投与部位における局所血流を改善するように作用する。血流の改善により、化合物は、活性薬剤の効果もしくは送達を改善し、および/またはセンサーによる対象における解析物の血中レベルの測定を改善する。ある実施形態では、活性薬剤の吸収が改善されうる。ある実施形態では、センサーの性能が改善されうる。例えば、血中解析物レベルの測定のために費やされる時間が短縮されうる。
【0026】
本明細書の関連する態様では、対象の解析物の血中レベルを測定するためのセンサーシステムであって、
(i)対象における解析物の血中レベルを測定し、血中解析物レベルと関連するセンサーデータをもたらすように構成されたセンサー;
(ii)グルカゴン活性を有する化合物を、前記対象へと投与するように構成された、化合物送達手段;
(iii)センサーデータを、センサーから受け取るように構成された制御システム
を含み、
(a)送達手段が、化合物を、センサーの近傍にある部位へと投与するように構成された、グルカゴン活性を有する化合物の徐放リザーバーを含むか;
または
(b)送達手段が、グルカゴン活性を有する化合物を、前記対象へと投与するように制御可能であり、制御システムが、送達デバイスを制御して、血中解析物レベルを測定するセンサーの作動と時間的に同期させて、化合物を、センサーの近傍にある部位へと投与するように構成されている、
センサーシステムが提供される。
【0027】
本明細書の別の関連する態様では、活性治療剤の対象への投与のための送達システムであって、
(i)グルカゴン活性を有する化合物を、前記対象へと投与するように構成された、化合物送達手段;
(ii)活性治療剤を、前記対象へと投与するように構成された送達デバイス
を含み、
(a)化合物送達手段が、化合物を、活性治療剤の投与部位の近傍にある部位へと投与するように構成された、グルカゴン活性を有する化合物の徐放リザーバーを含むか;
または
(b)化合物送達手段が、グルカゴン活性を有する化合物を、前記対象へと投与するように制御可能であり、送達システムが、化合物送達手段を制御して、化合物を、活性薬剤投与部位の近傍にある部位へと、活性薬剤の投与と時間的に同期させて投与するように構成された制御システムをさらに含む、
送達システムが提供される。
【0028】
特定の実施形態では、治療用活性薬剤はインスリンであり、化合物およびインスリンは、糖尿病、特に、1型糖尿病の処置において共投与される。したがって、化合物は、インスリンの送達において使用される。特に、化合物は、インスリンの効果または送達を増強または改善する、このような実施形態において使用される。
【0029】
さらに、特定の実施形態では、解析物はグルコースであり、センサーはグルコースセンサーである。より特定すると、このような実施形態では、化合物は、グルコースセンサーによる対象の血中グルコースレベルの測定を改善するのに使用される。
【0030】
したがって、より特定の態様では、インスリンとの共投与による、糖尿病を伴う対象の処置および/または管理における、および/またはグルコースセンシングと連動して使用するための、グルカゴン活性を有する化合物であって、対象へと、インスリン投与部位および/または体内グルコースセンサーによるグルコースセンシングの部位(複数可)の近傍にある部位において、かつ、インスリン投与および/またはグルコースセンシングと時間的に同期させて投与される化合物が提供される。
【0031】
ある実施形態では、本態様は、対象へのインスリンの送達における使用のための、グルカゴン活性を有する化合物であって、前記使用が、化合物をインスリンと共投与するステップを含み、前記化合物が、対象へと、インスリン投与部位の近傍にある部位において、インスリンと時間的に同期させて投与される、化合物を提供する。
【0032】
別の実施態様では、本態様は、対象の血中グルコースレベルの測定における、体内グルコースセンサーと連動して使用するための、グルカゴン活性を有する化合物であって、前記使用が、化合物を、グルコースセンサーの近傍にある部位において、センサーによるグルコースセンシングの時点と時間的に同期させて投与するステップを含む、化合物を提供する。
【0033】
本明細書の関連する態様ではまた、糖尿病を伴う対象を処置および/または管理する方法であって、グルカゴン活性を有する化合物を、対象へと、インスリン投与部位および/または体内グルコースセンサーによるグルコースセンシングの部位の近傍にある部位において、インスリン投与および/またはグルコースセンシングと時間的に同期させて共投与するステップを含む方法も提供される。
【0034】
ある実施形態では、本態様は、インスリンを対象へと送達する方法であって、前記対象へと、グルカゴン活性を有する化合物を、インスリンと併せて共投与するステップを含み、化合物が、インスリン投与部位の近傍にある部位において、かつ第2の活性薬剤と時間的に同期させて投与される方法を提供する。
【0035】
別の実施態様では、本態様は、体内グルコースセンサーにより対象の血中のグルコースのレベルを測定するための方法であって、対象へと、グルカゴン活性を有する化合物を投与するステップを含み、化合物が、グルコースセンサーの近傍にある部位において、センサーによるグルコースセンシングの時点と時間的に同期させて投与される方法を提供する。
【0036】
なおさらなる態様は、インスリンとの共投与による、糖尿病を伴う対象の処置および/または管理における、および/またはグルコースセンシング連動して使用するための医薬品の製造における、グルカゴン活性を有する化合物の使用を提供するが、この場合、医薬品は、インスリンを含み、および/または、体内センサーによるグルコースの測定に連動して投与され、化合物は、対象へと、活性薬剤の投与部位および/またはセンサーによるグルコースセンシングの部位(複数可)の近傍にある部位において、インスリン投与および/またはグルコースセンシングと時間的に同期させて投与される。
【0037】
上記で言及された通り、医薬品が、インスリンの送達のための医薬品である、この態様では、医薬品は、インスリンおよび化合物を、同じ組成物中または製剤中に含む場合もあり、別個の組成物中または製剤中に含む場合もあり、上記において論じられたキットを含む。
【0038】
本明細書ではまた、糖尿病を伴う対象における血中グルコースレベルを制御するための統合型システムであって、
(i)対象の血中グルコースレベルを測定し、血中グルコースレベルと関連するセンサーデータをもたらすように構成された、1つまたは複数のグルコースセンサー;
(ii)グルカゴン活性を有する化合物を、前記対象へと投与するように構成された、化合物送達手段;
(iii)インスリンを、前記対象へと投与するように構成された、インスリン送達デバイス;
(iv)センサーデータを、グルコースセンサー(複数可)から受け取り、少なくともセンサーデータに基づき対象へと投与するインスリン用量を測定し、インスリン送達デバイスを制御して、前記用量を投与するように構成された、制御システム
を含み、
(a)化合物送達手段が、化合物を、インスリン投与部位の近傍および/またはグルコースセンサーの近傍にある部位へと投与するように構成された、グルカゴン活性を有する化合物の徐放リザーバーを含むか;
または
(b)化合物送達手段が、グルカゴン活性を有する化合物を、前記対象へと投与するように制御可能であり、制御システムが、化合物送達手段を制御して、化合物を、インスリン投与部位の近傍にある部位へと、インスリンの投与と時間的に同期させて投与し、これにより、インスリン投与部位の近傍における血流を改善するように、および/または化合物送達手段を制御して、化合物を、グルコースセンサーの近傍にある部位へと、血中グルコースレベルを測定するグルコースセンサーの作動と時間的に同期させて投与し、これにより、グルコースセンサーの近傍における血流を改善するように構成されている、
統合型システムも提供される。
【0039】
インスリン投与部位「近傍にある」部位および/またはグルコースセンサーの「近傍にある」部位への化合物の投与は、インスリン投与部位から3cmまたは2.5cm以内における化合物の投与および/またはグルコースセンサーから3cmまたは2.5cm以内における化合物の投与(特に、グルコースセンサー上におけるサンプリング/センシングの部位)を含む場合があり、インスリン投与部位および/またはグルコースセンサーと近接した、化合物の投与(および、特に、グルコースセンサー上におけるサンプリング/センシングの部位と近接した、化合物の投与)を含む場合があり、この場合、近接とは、2cm以内、例えば、1.5cm以内または1cm以内を意味する。
【0040】
(a)の化合物送達手段は、例えば、経皮パッチ、徐放コーティング、またはデポ製剤を含む、上記において論じられた徐放手段のうちのいずれかでありうる。(a)の化合物送達手段は、代替的に、化合物を含むリザーバーと連絡されたポンプへと接続された化合物注入ラインを含む場合があり、この場合、化合物送達手段は、持続的または準持続的化合物投与をもたらすように構成されている。
【0041】
(b)の化合物送達手段は、化合物を含むリザーバーと連絡されたポンプへと接続された化合物注入ラインを含みうる。化合物送達手段は、投与(複数回可)および/またはセンシングのタイミングを考慮して、化合物を投与するように制御されうる。代替的に、(b)の化合物送達手段は、化合物が、インスリンの投与、および/または吸収またはセンシングが行われる時点において存在するよう、化合物の反復投与または複数回投与を施して、近傍における化合物の高局所濃度を創出し、維持するように構成されうる。ある実施形態では、制御システムは、さらに、化合物送達手段を制御して、インスリン投与部位の近傍にある部位において、インスリンの投与と時間的に同期させて化合物を投与するように構成されている。
【0042】
加えて、本明細書では、対象の血中のグルコースのレベルを測定するためのセンサーシステムであって、
(i)対象の血中グルコースレベルを測定し、血中グルコースレベルと関連するセンサーデータをもたらすように構成されたグルコースセンサー;
(ii)グルカゴン活性を有する化合物を前記対象へと投与するように構成された送達手段;
(iii)センサーデータをグルコースセンサーから受け取るように構成された制御システム
を含み、
(a)送達手段が、化合物を、グルコースセンサーの近傍にある部位へと投与し、これにより、グルコースセンサーの近傍への血流を改善するように構成された、グルカゴン活性を有する化合物の徐放リザーバーを含むか;
または
(b)送達手段が、グルカゴン活性を有する化合物を前記対象へと投与するように制御可能であり、制御システムが、送達手段を制御して、血中グルコースレベルを測定するグルコースセンサーの作動と時間的に同期させて、化合物を、グルコースセンサーの近傍にある部位へと投与し、これにより、グルコースセンサーの近傍への血流を改善するように構成されている、
センサーシステムが提供される。
【0043】
グルコースセンサーの「近傍にある」部位への化合物の投与は、グルコースセンサーから3cmまたは2.5cm以内における化合物の投与(特に、グルコースセンサー上におけるサンプリング/センシングの部位)を含む場合があり、グルコースセンサーと近接した、化合物の投与(および、特に、グルコースセンサー上におけるサンプリング/センシングの部位と近接した、化合物の投与)を含む場合があり、この場合、近接とは、2cm以内、例えば、1.5cm以内または1cm以内を意味する。
【0044】
(a)の化合物送達手段は、例えば、経皮パッチ、徐放コーティング、またはデポ製剤を含む、上記において論じられた徐放手段のうちのいずれかでありうる。(a)の化合物送達手段は、代替的に、化合物を含むリザーバーと連絡されたポンプへと接続された化合物注入ラインを含む場合があり、この場合、化合物送達手段は、持続的または準持続的化合物投与をもたらすように構成されている。
【0045】
(b)の化合物送達手段は、化合物を含むリザーバーと連絡されたポンプへと接続された化合物注入ラインを含みうる。化合物送達手段は、センシングのタイミングを考慮して、化合物を投与するように制御されうる。代替的に、(b)の化合物送達手段は、化合物が、センシングが行われる時点において存在するよう、化合物の反復投与または複数回投与を施して、近傍における化合物の高局所濃度を創出し、維持するように構成されうる。
【0046】
本明細書ではさらに、インスリンの対象への投与のためのインスリン送達システムであって、
(i)グルカゴン活性を有する化合物を前記対象へと投与するように構成された、化合物送達手段;
(ii)インスリンを前記対象へと投与するように構成された、インスリン送達デバイス;
(iii)対象へと投与するインスリン用量を測定し、インスリン送達デバイスを制御して、前記用量を投与するように構成された制御システム
を含み、
(a)化合物送達手段が、化合物を、インスリン投与部位の近傍にある部位へと投与するように構成された、グルカゴン活性を有する化合物の徐放リザーバーを含むか;
または
(b)化合物送達手段が、グルカゴン活性を有する化合物を前記対象へと投与するように制御可能であり、制御システムが、化合物送達手段を制御して、化合物を、インスリン投与部位の近傍にある部位へと、インスリンの投与と時間的に同期させて投与するように構成されている、
インスリン送達システムが提供される。
【0047】
インスリン投与部位の「近傍にある」部位への化合物の投与は、インスリン投与部位から3cmまたは2.5cm以内における化合物の投与を含む場合があり、インスリン投与部位と近接した、化合物の投与を含む場合があり、この場合、近接とは、2cm以内、例えば、1.5cm以内または1cm以内を意味する。
【0048】
(a)の化合物送達手段は、例えば、経皮パッチ、徐放コーティング、またはデポ製剤を含む、上記において論じられた徐放手段のうちのいずれかでありうる。(a)の化合物送達手段は、代替的に、化合物を含むリザーバーと連絡されたポンプへと接続された化合物注入ラインを含む場合があり、この場合、化合物送達手段は、持続的または準持続的化合物投与をもたらすように構成されている。
【0049】
(b)の化合物送達手段は、化合物を含むリザーバーと連絡されたポンプへと接続された化合物注入ラインを含みうる。化合物送達手段は、投与(複数回可)のタイミングを考慮して、化合物を投与するように制御されうる。代替的に、(b)の化合物送達手段は、化合物が、インスリンの投与および/または吸収が行われる時点において存在するよう、化合物の反復投与または複数回投与を施して、近傍における化合物の高局所濃度を創出し、維持するように構成されうる。
【0050】
図4~13に描示されたデバイスはまた、人工膵臓の統合部分としても使用されうる。
【0051】
本明細書で提示される多様な態様は、グルカゴンおよびグルカゴンの活性を有する他の化合物の血管拡張特性の新たな適用に基づく。このような化合物の血管拡張活性は、それらの投与部位における血流を増大させ、この局所血流の増大は、薬物送達および血中の解析物を測定するセンサーの作動など、それらの効果のために、局所血流に依拠する方法および使用のために、利益をもたらす。したがって、本発明者らは、この血管拡張活性が、対象への活性薬剤の送達および/または対象の解析物の血中レベルの測定における、グルカゴン活性を有する新規の化合物の使用において利用されうることを発見した。
【0052】
活性薬剤(すなわち、薬物)の投与部位または解析物センサーによるセンシングが行われる部位へと、化合物を投与することにより、この部位における局所血流が増大される。これは、投与された活性薬剤の効果の改善をもたらす(例えば、下記でさらに論じられる通り、効果が迅速に見られるか、または投与後における効果の時間差もしくは遅延が低減される)。このように、活性薬剤の送達は、改善されうる。同様に、センサーによるセンシングの部位における局所血流の増大は、例えば、血中の解析物レベルの測定の遅延を低減することにより、センサーの性能を改善しうる。
【0053】
特に、下記の実施例で示される通り、グルカゴンが投与されると、局所血流の、即時的であり、かつ、大きな増大が見られることが観察されている。これは、時間経過にわたり、例えば、30分間などの時間にわたり低下する。とりわけ、血流は、グルカゴン投与の前のベースラインレベルを超えるレベルへと戻り、このレベルの上昇は、長時間にわたり維持されることが観察されている。同じ容量のプラセボ(生理学的生理食塩液)の投与は、このような急性効果をほとんど及ぼさず、長期効果も及ぼさない。したがって、グルカゴン活性を有する化合物の投与は、投与領域内における局所血流を、血流の増大を利用して、別の活性薬剤を送達するか、またはセンサーを作動させるのに有用な時間にわたり増大させる。
【0054】
これらの発見は、とりわけ、上記で明示され、本明細書で、さらに論じられる通り、インスリンの送達およびグルコースセンサーによる血中グルコースレベルのセンシングに適用され、このため、糖尿病の処置および/または管理に適用される。
【0055】
上記で言及された通り、「時間的に同期させて」という用語とは、活性薬剤の投与および/または吸収、もしくはセンシングが生じる時点において、化合物が、近傍に存在するか、またはなおも、血管拡張効果を及ぼすように、化合物の投与が、活性薬剤の投与またはセンサーによるセンシングと同期されることを意味する。言い換えれば、化合物の投与は、治療用活性薬剤の投与、および/または吸収、もしくはセンサーによるセンシングの時点と一致するようなタイミングであるか、または化合物の効果が、この時点と一致するようなタイミングであるか、または化合物が、治療用活性薬剤が投与される時点において、またはそれが吸収される間において、またはセンサーによるセンシングの時点において、近傍に存在するようなタイミングである。一部の状況では、化合物の血管拡張効果は、ホルモンにより生じることが公知の現象であるが、それが吸収された後、ある時間にわたり持続しうることが理解されるであろう。したがって、化合物またはその効果が、近傍に存在することが要求されるが、化合物自体が存在することが必ずしも要求されるわけではなく;その効果が吸収された後で、その効果が持続する場合もあり、維持される場合もある。言い換えれば、化合物の効果は、長時間持続する場合があり、化合物自体が、もはや存在しなくなった後で観察されうる。したがって、局所血流を増大させる、化合物の血管拡張効果は、活性薬剤が、投与もしくは吸収されるか、またはセンシングが生じる時点の近傍において生じる。下記でより詳細に論じられる通り、これは、例えば、活性治療剤の投与またはセンシングの時点、もしくはこの近傍において投与がなされるような、投与(複数回可)および/またはセンシングのタイミング、長時間投与、持続的投与または準持続的投与、もしくは活性薬剤の投与またはセンシングが行われる時点において、化合物または少なくとも化合物の血管拡張効果が存在するように、近傍における化合物の高局所濃度を創出し、維持する、化合物の反復投与または複数回投与を含む、多様な方式により達成されうる。
【0056】
「グルカゴン活性を有する化合物」という用語は、グルカゴン受容体において作用するか、または、言い換えれば、受容体の効果を刺激するように、グルカゴン受容体と相互作用する、任意の化合物を含む。すなわち、グルカゴン活性を有する化合物は、グルカゴンによる、グルカゴン受容体との相互作用から生じる下流効果のうちのいずれかを引き起こすか、またはこれを結果としてもたらす。特に、化合物は、グルカゴン受容体と相互作用し、血管の拡張を結果としてもたらす。したがって、特に、化合物は、血管拡張効果を有し、より特定すると、グルカゴンと、実質的に同じ血管拡張効果を及ぼすことが可能である。化合物により誘導される血管拡張効果は、グルカゴン受容体との相互作用の直接的結果の場合もあり、間接的結果の場合もある。これは、グルカゴン効果を及ぼす、任意の化合物を含む。したがって、代替的に、グルカゴン活性を有する化合物は、グルカゴン受容体におけるグルカゴンの効果を有するか、またはこれを模倣する化合物として規定されうる。したがって、グルカゴン活性を有する化合物は、グルカゴンアゴニストとして規定されうる。さらに、代替的に、グルカゴン活性を有する化合物は、グルカゴンまたはその類似体としても規定されうる。
【0057】
「グルカゴン」という用語は、任意の種における、任意の、公知であるか、または報告されている、野生型であるか、または天然のグルカゴン分子およびその任意の自然発生の変異体もしくは断片を含む。グルカゴン類似体は、自然発生のグルカゴン化合物ではないが、グルカゴン活性を有するか、またはグルカゴン効果を及ぼす、任意の化合物である。これは、天然グルカゴン分子の、合成であるか、または人工の、誘導体または変異体または断片を含む。グルカゴン類似体は、公知であり、文献において記載されている。グルカゴンは、ペプチドホルモンであり、ペプチド誘導体または他のペプチド化合物の形態における、多様なグルカゴン類似体が開発されている。したがって、一実施態様では、化合物は、天然であるか、もしくは野生型のグルカゴンまたはグルカゴン活性を保持する、その誘導体もしくは変異体もしくは断片あるいはペプチドであるか、またはペプチドベースであるグルカゴン類似体を含む用語である、グルカゴンペプチドとして規定されうる。より特定すると、グルカゴン類似体は、挿入ならびにC末端および/またはN末端における切断または伸長のほか、多様な化学基(例えば、アミド基、エステル基、アルキル基またはアシル基、親油性基など)の付加などの共有結合的修飾を含む、1つまたは複数のアミノ酸残基に対する化学修飾を含む、天然のグルカゴンペプチドと比較した、1つまたは複数のアミノ酸の置換、付加および/または欠失を含みうる。しかし、グルカゴン類似体は、ペプチドに限定されず、任意のグルカゴン活性を有する化合物、例えば、低分子化合物を含む。
【0058】
グルカゴン活性を有する化合物は、酸添加塩、金属塩、アンモニウム塩およびアルキル化アンモニウム塩など、化合物の薬学的に許容可能な塩を含む。
【0059】
グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)は、グルカゴン受容体に結合し、グルカゴン効果を及ぼすことが可能である。したがって、GLP-1は、グルカゴン活性を有する化合物として組み入れられる。さらに、グルカゴン自体を含む、グルカゴン活性を有する化合物は、GLP-1受容体において作用しうる。したがって、ある実施形態ではまた、「グルカゴン活性を有する化合物」という一般的表題の下に、GLP-1受容体と相互作用して、血管拡張効果を引き起こすことが可能である化合物も含まれる。
【0060】
しかし、別の実施態様では、「グルカゴン活性を有する化合物」という用語は、GLPを含まず、とりわけ、GLP-1またはGLP-1受容体における活性を伴うか、もしくはGLP-1受容体に結合することが可能である、任意の化合物を含まない。
【0061】
当技術分野では、例えば、WO2008/086086、WO2008/101017、WO2007/056362、WO2008/152403およびW096/29342など、異なるグルカゴンベースの類似体およびGLP-1/グルカゴン受容体共アゴニストを開示する、いくつかの特許出願が公知である。開示される他のグルカゴン類似体は、天然のヒトグルカゴンの特定の位置において、PEG化(例えば、WO2007/056362)またはアシル化(例えば、W096/29342)されている。低血糖症の防止のためのグルカゴンペプチドは、例えば、US7314859における通りに開示されている。
【0062】
長時間作用型グルカゴン類似体またはより安定的なグルカゴン類似体については、Novo Nordisk A/Sによる、WO2013/040678において記載されている。本文献および上記で言及された他の文献は、参照により本明細書に組み込まれる。これらの文献において記載された化合物は、使用されうる。
【0063】
また、Zealand Pharma A/Sから市販されているグルカゴン類似体であるダシグルカゴンおよびXeris Pharmaceuticals Incにより市販されている安定化グルカゴン送達用品(ペンおよびシリンジ)への参照がなされる場合もあり、これらも使用されうる。
【0064】
ヒトグルカゴンの配列(グルカゴン1~29)は、下記:
His-Ser-Gln-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Tyr-Ser-Lys-Tyr-Leu-Asp-Ser-Arg-Arg-Ala-Gln-Asp-Phe-Val-Gln-Trp-Leu-Met-Asn-Thr(配列番号1)
に示される、配列番号1に明示される。
【0065】
本明細書では、配列番号1のC末端において、それぞれ、1、2および3アミノ酸の伸長部を有する、グルカゴン1~30、グルカゴン1~31、およびグルカゴン1~32が、化合物として含まれる。
【0066】
グルカゴン類似体は、配列番号1の配列に対する、少なくとも80%の配列同一性、例えば、少なくとも85、90または95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むペプチドを含みうる。
【0067】
さらに、化合物の投与可能性を改善するように、グルカゴンの誘導体または類似体が作製される場合もある。グルカゴンは、水溶性であり、一部の場合に、化合物の脂溶性を促進して、例えば、皮膚を介する化合物の吸収を支援することが所望される。したがって、例えば、例えば、親油性基または他の脂溶性基を、化合物へと接合させることにより、脂溶性の大きな誘導体が作製されうる。
【0068】
グルカゴンは、グリコーゲン分解ならびにピルビン酸、乳酸、グリセロールおよび一部のアミノ酸からのグルコース新生を刺激し、これにより、インスリンの効果に対抗するので、主に、血中グルコースレベルの維持におけるその役割について公知である。正の変力効果および変時効果など、グルカゴンの多様な肝外効果について記載される一方、消化管内では、グルカゴンは、平滑筋弛緩剤として作用するが、また、糸球体濾過速度、脂肪組織、甲状腺および中枢神経系にも影響を及ぼす。グルカゴンは、cAMPレベルを増大させるほか、ホスホリパーゼC(PLC)タンパク質キナーゼC(PKC)経路を活性化させる、アデニルシクラーゼの活性化を介する、Gタンパク質共役型グルカゴン受容体を介して、これらの効果を及ぼす。しかし、cAMP依存性タンパク質キナーゼA(PKA)の活性化のほかに、グルカゴンはまた、Jiangら、PNAS USA、2001、98、10102~10107に記載されている通り、ヒト胎児性腎細胞のクローン細胞系内において、細胞外シグナル制御タンパク質キナーゼ(ERK1/2)を活性化させることも示されている。これらの活性のいずれもが、化合物が、グルカゴン活性を有するのかどうかを測定するか、またはこの活性のレベルを測定するアッセイのベースとして使用されうる。例えば、このようなアッセイは、化合物が、グルカゴン受容体および膜結合型cAMPバイオセンサーを発現させる細胞内のcAMPレベルを増大させることが可能であるのかどうかを測定するステップを含みうる。cAMPの検出に基づくアッセイについては、WO2103/041678において、以下の通り(アッセイI)に記載されている。アッセイは、グルカゴン受容体がクローニングされた、膜結合型cAMPバイオセンサー(ACTOne(商標))を有するHEK-293細胞を使用する。細胞(ウェル1つ当たりの細胞14000個)を、384ウェルプレート内で、一晩にわたりインキュベートする(37℃、5%C02)。翌日、細胞に、細胞質だけへと分布する、カルシウム応答性染料をロードする。有機アニオン輸送体の阻害剤である、プロベネシドを添加して、染料が、細胞から遊離することを防止する。PDE阻害剤を添加して、フォーマットされたcAMPの分解を防止する。プレートを、FLIPR TETRAへと入れ、グルカゴン活性についての被験化合物を添加する。6分間後に、終点データを回収しうる。細胞内cAMPの増大は、細胞質内のカルシウム濃度の増大に比例する。カルシウムが結合されると、蛍光シグナルが発生される。EC50値は、Prism5により計算されうる。
【0069】
例を目的として述べると、グルカゴン活性を有する化合物は、例えば、上記で記載された、cAMPアッセイにより測定される通り、1μMを下回る、例えば、100nMを下回る、または1nMを下回るアフィニティーまたは効力(EC50)、で、グルカゴン受容体に結合するか、またはこれを活性化させる、任意の化合物、例えば、グルカゴンペプチドでありうる。
【0070】
本明細書で使用される、「インスリン」という用語は、任意の動物種、特に、ヒトのインスリン分子ならびに人工類似体および合成類似体を含む、その類似体および誘導体を含む。現在、当技術分野では、インスリンの、多様な類似体および誘導体が公知であり、報告されており、臨床において使用されている。任意のこのようなインスリン化合物が含まれる。インスリン類似体および誘導体は、配列修飾アミノ酸配列および/または上記で、グルカゴンについて記載された化学修飾と類似の化学修飾を有する化合物およびペプチドを含む。
【0071】
即効型インスリン類似体が、利用可能である。即効型類似体は、皮下注射部位から、たやすく吸収され、天然インスリンより迅速に作用しうる。このような類似体は、食事時間において必要とされる、ボーラスレベルのインスリン(食後インスリン)を供給するのに有用でありうる。このような類似体の例は、リスプロ、アスパルトおよびグルリジンを含む。長時間作用型インスリン類似体もまた、利用可能であるが、このような類似体は、典型的に、本明細書における開示に従うなら、使用されないであろう。したがって、特に、本明細書におけるインスリン類似体およびインスリン誘導体は、天然のインスリンの活性プロファイルと同様またはと同等である活性プロファイルを伴うインスリン類似体およびインスリン誘導体、即効型であるインスリン類似体およびインスリン誘導体、食事と共に使用されるインスリン類似体およびインスリン誘導体、インスリンポンプにおいて使用されるインスリン類似体およびインスリン誘導体ならびに、特に、人工膵臓において使用されるインスリン類似体およびインスリン誘導体である。
【0072】
「糖尿病」という用語は、1型糖尿病(T1D)および2型糖尿病(T2D)を含む、糖尿病の全ての種類および形態を含む。本明細書における使用、方法およびシステムは、1型糖尿病の処置または管理において、特に、有用であるが、グルコースモニタリング、特に、持続グルコースモニタリング(CGM)は、全ての種類の糖尿病において必要とされる場合があり、2型糖尿病を伴うある特定の対象、例えば、インスリンの産生が低減されうる、長期および/または進行疾患を伴う対象では、インスリンの投与が必要とされうる。「糖尿病」という用語はまた、任意の糖尿病性状態、または、実際に、グルコースレベルの外部制御が必要とされうるか、もしくは臨床利益をもたらしうる、任意の状態(state)または状態(condition)も含む。これは、膵臓が、損傷を受けるか、もしくは摘出されているか、または任意の理由で、例えば、疾患または外傷の結果として、インスリンを産生するのに十分に機能的ではない状態を含む。ある実施形態では、本明細書で記載される通りに処置または管理される糖尿病は、2型糖尿病を含まない。
【0073】
「治療用活性薬剤」は、代替的に、薬物とも称され、それが投与される対象に対して、有益な効果または治療効果を及ぼす、任意の薬剤、例えば、任意の化合物、物質または部分を含む。したがって、「治療用活性薬剤」は、薬学的活性薬剤(例えば、薬学的化合物)であり、臨床的有用性を伴う、任意の薬剤を含む。上記で言及された通り、インスリンは、本明細書における使用のための、特定の治療用活性薬剤であるが、活性薬剤は、任意の医学的状態または疾患を処置または防止するための医学的使用について公知であるか、報告されているか、または提案されている、任意の薬剤でありうる。
【0074】
治療的活性薬剤は、対象へと、薬剤が、その意図された治療効果を及ぼすか、またはこれを達成するために効果的な量で投与されうる。例えば、これは、処置される状態またはその任意の症状を、治癒させる場合もあり、緩和する場合もあり、これを停止させる場合もあり、この進行を遅延させる場合もあり、任意の形でこれを改善する場合もある。
【0075】
一実施態様では、処置される状態は、治療用活性薬剤に対して応答性であるか、またはこれから利益を得る、任意の状態である。別の実施態様では、状態は、2型糖尿病を含まない。
【0076】
同様に、グルカゴン活性を有する化合物は、その投与部位において、局所血管拡張効果または局所血流を増大させる効果を達成するのに効果的である量で投与されうる。血管拡張活性は、化合物投与後の、ヒトまたは非ヒト動物対象の体表または体内の投与部位において、レーザードップラー方法を介して、血流を測定することにより評価または測定されうる。例えば、化合物は、皮下注射が可能であり、皮膚表面直下の血流は、注射部位において測定されうる。このような方法は、実施例1において記載される。しかし、化合物が、治療用活性薬剤(例えば、インスリン)の送達におけるその効果のために、またはセンサー(例えば、グルコースセンサー)の作動と連動的に使用される、本明細書における方法および使用のために、化合物が、血中グルコースを増大させるか、または低血糖症の挿間に対抗する、その通例の治療効果を及ぼすことは、必要ではなく、実際、所望されない場合がある。したがって、投与される量または用量は、低血糖症を処置するのに、投与されるか、または典型的に使用される用量より少ない場合があり、実際、典型的に、これより少ないであろう。化合物のための用量については、下記でより詳細に論じられる。
【0077】
本明細書で使用される、「処置」および「~を処置すること」という用語ならびにこれらの他の変異体は、状態(上記で指し示された通り、任意の疾患または障害を含む)に対抗することを目的とする、対象の管理およびケアを指す。「防止」は、状態またはその任意の症状、兆候もしくは合併症の発症を防止するか、または遅延させることを含む。治療的活性薬剤は、この薬剤の投与に対して応答性であるか、またはこれから利益を得る、任意の状態を処置または防止するように投与されうる。
【0078】
対象は、任意のヒトまたは非ヒト動物対象、特に、哺乳動物対象、より特定すると、ヒト対象でありうる。本明細書で提示される方法、使用およびシステムは、糖尿病を伴うヒト対象の処置または管理において、特に有用である。しかし、獣医科における使用もまた含まれ、対象は、任意の家畜、飼育動物、競技動物、動物園動物または実験動物もしくは研究動物または野生動物でありうる。したがって、対象は、例えば、イヌ科動物、ネコ科動物、ウマ科動物、ウシ科動物、ヒツジ科動物またはネズミ科動物などでありうる。
【0079】
本明細書で言及される「センサー」とは、解析物のレベルを測定するためのデバイスである。測定される解析物は、標的解析物と称される。本明細書におけるセンサーは、体内センサーである。すなわち、センサーは、対象の体内または体表に装着されるか、または携行されるセンサーである。したがって、デバイスは、対象の体内面および/または体外面、例えば、対象の組織と接触しうる。センサーは、実際上、対象の組織上に装着される場合もあり、組織内に装着される場合もある。デバイスは、標的解析物を、センサーデバイスのセンシングエレメント(例えば、センサープローブ、例えば、センサー電極)が接触する、体内組織内または体液中において、直接測定するか、または対象の体液または組織をサンプリングし、試料中に存在する標的解析物の量を検出および測定することが可能である。例えば、デバイスは、任意の体内組織の間質液中において、標的解析物を、直接測定することが可能でありうる。これは、組織と接触するか、または組織内に配置されるデバイス内に備えられたセンサーエレメント(例えば、プローブ)により達成されうる。代表例では、センサーは、皮下(SC)センサーでありうるが、他の部位または体内面または体表、例えば、腹腔内(IP)または他の体腔内または臓器内に配置されるようにデザインされる場合もある。したがって、センサーは、外部デバイスの場合もあり、部分留置デバイスまたは完全留置デバイスの場合もある。
【0080】
典型的に、センサーおよび/または送達デバイス、例えば、人工膵臓は、コントローラー(制御システム)エレメント、電力エレメントおよびポンプエレメントが外部にあり、対象の内部にある送達ライン(例えば、注入チューブ)を介して、対象へと接続される、部分留置センサーおよび/または部分留置送達デバイスである。無配管(「パッチポンプ」)形もまた、利用可能である。しかし、完全留置デバイスも、除外されない。したがって、部分留置デバイスが、外部バッテリーバックにより電力供給され、および/または外部制御システムを装備されるのに対し、完全留置デバイスは、内部(留置)バッテリーおよび制御システムを装備され、例えば、無線通信のための手段を装備されうる。防汚技術およびバッテリー容量の進歩は、完全留置デバイスが、例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11もしくは12カ月間またはこれを超える長期間にわたり植え込まれうることを意味する。さらに、完全留置デバイスは、留置デバイスの上の皮膚において、外部電源から充電されうる。
【0081】
「センシング」という用語が、一般に、対象における解析物または、より特定すると、解析物のレベルの測定を指すことは、これと符合する。「センシング」は、ある時点における解析物の読取りまたは測定を行うこととして考えられうる。本明細書における使用、方法およびシステムでは、血中解析物のレベル、すなわち対象の血中に存在する解析物のレベルの測定が、特に重要である。これは、センサーが、対象の血液中または血液上において直接測定を実施するように要求されることを意味するのではないが、これを除外せず、対象の解析物の血中レベルを指し示す情報をもたらすことが可能であることを意味する。例えば、センサーは、例えば、皮下センサーがアクセスし、ここから、血中に存在するそのレベルを推定することが可能である解析物の、間質液中レベルを測定しうる。したがって、サンプリングされた体組織内または体液中の、この解析物のレベルと、解析物の血中レベルとの間には、所定の関係が存在しうるか、またはこのような関係が測定されうる。関係は、解析物の血中レベルを測定するのに使用されうる。言い換えれば、サンプリングされた体組織内または体液中の、この解析物のレベルについて測定された値は、解析物の血中レベルについての値またはこれを指し示す値へと変換されうる。これは、当技術分野で公知の原理に従う、参照図もしくは参照グラフまたは検量線などへの参照またはこれとの比較によりなされる場合もあり、上記で明示された医学的使用および医学的方法を実施するソフトウェアまたはアルゴリズムにより、例えば、デバイスの制御システムにより実施される場合もある。したがって、「測定」は、解析物の血中レベルの直接的測定および間接的測定または推定もしくは評価を含む。解析物の濃度が測定される場合もあり、解析物のレベルを指し示す、他の任意の測定値または値が測定される場合もある。
【0082】
このようなセンサーは、対象に、解析物レベル自体を測定するか、またはモニタリングするか、または追跡することが可能であることの便宜をもたらす。しかし、これは、センサーがまた、特に、または、もっぱら、医師または他の医療従事者によっても使用されうることを除外しないことが理解されるものとする。体内センサーは、試料が、別個に採取され、センサーへと投与または適用されることをさらに要求しない。体内センサーは、必要とされる場合に、またはそうするようにプログラムされるか、もしくは命令される場合に、試料または読取りを自動的に採取または行う。様々なこのようなセンサーは、それらの糖尿病の管理において、糖尿病対象により常套的に使用されるグルコースセンサーを典型とする通り、当技術分野において公知であり、利用可能である。
【0083】
解析物は、とりわけ、対象の血中において測定することが所望される、任意の解析物でありうる。グルコースは、典型的な代表的解析物であるが、対象の血中において生じる、他の任意の分子でありうる。例えば、解析物は、例えば、対象の状態(stateまたはcondition)を指し示す、ピルビン酸または乳酸などの代謝物でありうる。例えば、このような解析物を追跡するか、またはモニタリングすること、例えば、手術時もしくは入院時、フィットネス時もしくはスポーツからの回復時またはこれらの後などを含む、エネルギーの消費または利用をモニタリングすることが所望されうる。このような解析物のモニタリングは、集中治療室における患者のモニタリングにおいて有利でありうる。
【0084】
グルコースレベルの測定およびモニタリングのために、持続グルコースモニタリング(CGM)センサーが開発されている。したがって、センサーは、CGMセンサーでありうる。「持続的」という用語は、センサーが、中断を伴わずに、グルコースを、持続的にセンシングしつつあることではなく、測定(センシング)の反復が、時間経過にわたり、例えば、24時間またはこれを超える時間にわたり生じることを含意する。「持続的」センシングは、センサーが体表上または体内にある時間にわたり生じうる。センシングは、定期的な間隔で、および/または所定の間隔もしくはプログラムされた間隔で、例えば、一定の間隔で行われうる。例えば、センシングは、5分間隔で生じる場合もあり、より長い間隔で生じる場合もある。代替的に、または、加えて、センシングは、血中グルコースレベルが、変化しつつあるか、または血中グルコースレベルが、変化しつつあることが予測される時点において、大きな頻度で生じうるか、または行われうる。例えば、センシングの頻度は、食事時間または活動時に増大される場合もあり、および/またはセンシングの頻度は、夜間に低下される場合もある。使用者が、センサーに、いつ読取りを行うべきかを通知または命令する場合もあり、読取りが、自動的に行われる場合もあり、これらの両方の場合もある。
【0085】
1つまたは複数のセンサーは、任意の一時点の対象において使用されうる。例えば、センサーは、体内または体表上の、異なる部位または位置に位置付けられうる。これは、冗長性を導入するのに有用でありうる、例えば、万一、1つのセンサーが故障した場合に、別のセンサーが、読取りを行うことが可能であろう。さらに、異なる部位もしくは異なる組織において読取りを行い、および/または異なる部位において、異なるセンサーモダリティーを使用することは、有利でありうる。このように、頑健なシステムが提供されうる。人工膵臓またはグルコースセンサーシステムは、1つまたは複数のグルコースセンサーを含有しうる。したがって、グルカゴン活性を有する化合物は、1つまたは複数のセンサーと連動して投与されうる。
【0086】
ある実施形態では、化合物は、センサーによるセンシングが生じるたびに、すなわち、センサーが、読取りを行うたびに投与される。しかし、化合物は、センサーがセンシングしつつあるときに、センサーの近傍にそれが存在するか、またはセンサーの近傍において効果を及ぼすように投与されうるので、センシングが生じるたびの投与は必要ではない。例えば、化合物の作用の持続時間は、1回を超える読取りが行われうる時間経過(例えば、20、30、40、50もしくは60分間またはこれを超える時間経過)にわたり持続しうる。代替的に、化合物は、センサーによるセンシングが生じるたびに、センサーの近傍にそれが存在するように、持続的に、または長時間にわたり、例えば、制御放出調製物(例えば、徐放リザーバー)から、または持続注入により投与されうる。ある実施形態では、1つまたは複数のセンサー読取りが行われうる時間経過にわたり、制御放出がなされうる。したがって、化合物は、例えば、多かれ、少なかれ、局所血流に対して、したがって、センサーの性能に対して、持続的効果を及ぼすのに十分な形で投与されうる。これは、読取りが行われるたび~毎日数回の範囲でありうる。
【0087】
グルカゴン活性を有する化合物は、治療用活性薬剤(例えば、インスリン)の投与部位、またはセンサー部位、より特定すると、センサーによるセンシングまたはサンプリングが生じる部位の近傍にある部位へと投与される。部位の近傍は、部位から3cm以内の領域、より特定すると、部位からの半径3cm以内の領域として規定されうる。一部の実施形態では、近傍は、部位から、2.5、2、1.5もしくは1cm以内の領域、または、より特定すると、部位からの半径が、2.5、2、1.5もしくは1cmである領域でありうる。
【0088】
特定の実施形態では、「近傍にある」は、センサーから、またはさらにより特定すると、センサーデバイスのセンシングエレメントまたはサンプリングエレメント(例えば、センサープローブ、例えば、電極または同等のエレメント)から、3cm以内であるか、または2.5、2.0、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1または1.0cm以内として規定されうる。
【0089】
別の実施態様では、「近傍にある」ことへの言及は、センサーの中心またはセンサーのプローブの中心への言及によりなされる。すなわち、この実施形態では、「近傍にある」とは、センサーから、またはさらにより特定すると、センサーデバイスのセンシングエレメントまたはサンプリングエレメント(例えば、センサープローブ、例えば、電極または同等のエレメントの中心)から、3cm以内であるか、または2.5、2.0、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1または1.0cm以内を意味する。
【0090】
特定の実施形態では、化合物は、治療用活性薬剤(例えば、インスリン)の投与部位、またはセンサー部位、より特定すると、センサーによるセンシングまたはサンプリングが生じる部位(この場合、この部位は、上記の任意の実施形態に従い規定される)と近接して投与されうる。「近接して」とは、部位から2cm以内の領域または、より特定すると、部位からの半径2cm以内、例えば、1.5または1cmの領域を意味する。上記で言及された通り、センサーの分野では、これは、センサー自体からの距離である場合もあり、より特定すると、センサーデバイスのセンシングエレメントもしくはサンプリングエレメントまたはこれらの中心からの距離の場合もある。
【0091】
化合物は、送達される治療用活性薬剤(例えば、インスリン)の投与またはセンサーによるセンシングと時間的に同期させて投与される。これは、化合物の投与が、治療用活性薬剤の投与またはセンサーによるセンシングの時点と一致するタイミングであるか、化合物が治療用活性薬剤が投与および/または吸収される時点か、センサーによるセンシングの時点で近傍に存在するか、活性であるか、もしくは、なおも効果を及ぼすようなタイミングであることを意味する。したがって、局所血流を増大させる、化合物の血管拡張効果は、活性薬剤が投与されるか、またはセンシングが生じる時点の近傍において生じる。このような薬剤の投与もしくはその送達またはセンサーによるセンシングは、下記で、より詳細に論じられる通り、局所血流の増大から利益を得る。言い換えれば、化合物は活性薬剤の投与および/またはセンシングと共時的にもしくは連動して投与されるか、化合物は活性薬剤の投与部位および/またはセンシングの近傍において、投与および/または吸収、および/またはセンシングの時点と共時的に、連動的に、もしくは効果的であるように、投与される。言い換えれば、化合物の投与は、活性薬剤の投与および/またはセンサーによるセンシングと共時的または連動的であるか、もしくは、化合物の投与は、化合物を、活性薬剤の投与および/または吸収および/またはセンサーによるセンシングと、共時的または連動的に送達する。
【0092】
実際、化合物は、活性薬剤またはセンシングと同じ時点において、または実質的に同じ時点(すなわち、ほぼ同じ時点)において存在し、および/または活性であるか、もしくは効果的であるように投与されるか、または送達される。したがって、化合物は、治療用活性薬剤の投与またはセンシングの前に、この間に、またはこの直後に投与されうる。例えば、投与は、治療用活性薬剤の投与またはセンシングから、30分以内または、より特定すると、25、20、15、12もしくは10分以内または6、5、4、3、2もしくは1分以内でありうる。図15から見られうる通り、グルカゴンの血管拡張効果は、何分間か(35~40分間など)にわたり見られる場合があり、さらに、血管拡張効果は、ある時間にわたり、ベースラインを上回り続ける。したがって、化合物の血管拡張効果は、投与後、ある時間にわたり持続しうる。さらに、インスリンなどの活性薬剤は、それが投与された後、長時間、例えば、2~3時間にわたり吸収されうるので、化合物の投与時間と、活性薬剤の投与時間との正確な同期は必要とされない。したがって、投与およびセンシングのタイミングには、ある程度の許容度が存在し、正確に同じ時点または精密に同じ時点でなくともよい。実際、上記で論じられた通り、鍵となる問題は、化合物が、投与および/または吸収、もしくはセンシングが行われる時点において、治療用活性薬剤の投与部位またはセンサーのセンシング部位の近傍において存在するか、または血管拡張効果を及ぼしうることである。これは、化合物の反復投与または長時間投与を使用して達成されうる。これは、拡散効果に対抗しうる、組織内の局所圧の増大を創出しうる。したがって、投与が、活性薬剤の投与および/または吸収、もしくはセンシングの時点の、近傍における、化合物または化合物の血管拡張効果の存在を確保する投与などの投与である限りにおいて、投与時間帯は、長時間、例えば、35、40、45、50、55、60分間またはこれを超える時間でありうる。これは、複数回投与の、ある期間にわたる反復、例えば、一日間にわたる反復により達成される場合もあり、持続投与、例えば、持続注入または徐放用調製物からの制御放出により達成される場合もある。
【0093】
タイミングは、投与の性質および方式ならびに投与される製剤(組成物)により測定されうる。例えば、化合物は、同じ組成物の活性治療剤と共に共製剤化される場合があり(すなわち、これらは、混合物により提供される場合もあり、混合物中で使用される場合もあり)、この場合、投与は、連動的であることが見られるであろう。別の例では、活性薬剤と、化合物とは、別個の製剤により提供されうるが、これらは、例えば、注射の前に手動で、または送達デバイス内(例えば、人工膵臓内または送達システム内)で混合することにより、投与の直前の使用時に混合されうる。例えば、これらは、同じ送達ラインにより混合または投与される場合もあり、2つの個別の送達ラインが、投与地点の前などで接続される場合もある。代替的に、別の例では、化合物および活性薬剤は、個別に、例えば、個別の注射または送達ラインにより投与されうる。さらに別の例では、化合物は、治療用活性薬剤が投与されるか、またはセンシングが行われる時間経過にわたり、例えば、徐放調製物または制御放出調製物から、または他の持続投与もしくは反復投与により送達されうる。このような異なる投与方式は、例えば、図7、8および9に示される。典型的に、投与が個別である場合、化合物は、活性薬剤の前に投与されうる。センサーの場合、投与は、センサーによるセンシングの時点の前に、またはこれと同時に、例えば、数分間以内、例えば、6、5、4、3、2または1分間先行してなされるようなタイミングでありうる。しかし、上記で論じられた通り、投与された化合物の作用の持続のために、投与がセンシングに先行する時間は、例えば、30、25、20、15、12または10分間などに延長されうる。
【0094】
したがって、投与およびセンシングは、上記において論じられた通り、時間的に同期される限りにおいて、連動的な場合もあり、逐次的な場合もある。活性薬剤の投与の場合、これは、同じ投与の場合もあり、別個の投与の場合もある。異なる投与経路などの詳細については、下記で論じられる。
【0095】
上記で言及された通り、化合物の効果は、その投与部位およびその近傍において、局所血流を改善するか、または、より特定すると、局所血流を増大させることである。局所血流は、その投与部位の近傍において、増大される場合があり、「近傍」は、上記の通りに規定される。血流の増大は、化合物と共投与される治療剤の効果を改善するか、またはセンサーによるセンシングを改善する効果を及ぼす。例えば、インスリンの効果が改善される場合もあり、グルコースセンサーの性能が改善される場合もある、すなわち、グルコースセンサーによる血中グルコースレベルの測定が改善される場合もある。
【0096】
効果の改善とは、治療剤が達成するように投与される、治療利益または治療効果が改善されることを意味する。これは、例えば、迅速であり、および/または大きな効果が達成されるか、もしくは、活性薬剤の用量の低下が可能とされる、薬物動態および/または薬力学が改善されるなど、任意の形でありうる。インスリンの場合、この効果は、グルコース制御の改善として規定されうる。したがって、効果は、血中グルコースレベルを低減する効果でありうる。したがって、インスリン効果の改善は、より迅速な場合もあり、より急速な場合もあり、血中グルコースレベルの低下の場合もあり、血中グルコースレベルの低減の迅速な開始の場合もある。例えば、インスリン(または、実際には、他の治療剤)に対する対象の応答時間もしくは、より特定すると、血中グルコースレベルの応答時間の遅延が低減される場合もあり、またはインスリンに対する応答の時間差もしくは待機時間が短縮される場合もある。言い換えれば、インスリンに対する応答の薬力学は、例えば、迅速に改善されうる。血中グルコースレベルの安定化または正常化におけるインスリンの効果は、例えば、迅速な効果または血中グルコースレベルの、インスリンに対する迅速な応答を達成することにより改善されうる。インスリン効果の改善はまた、皮下インスリン注射により観察されるインスリン吸収の日ごとの変動を低減することにより、インスリンの、より予測可能な吸収ももたらすことが可能であり、これにより、また、グルコースレベルに対する、より予測可能な効果ももたらしうる。これらの多様な効果は、化合物の非存在下において、同じインスリン投与により達成される効果と比べて、またはこれと比較して見られうる。別の態様は、1回のインスリン投与が、グルコースレベルに対して作用する時間が短縮され、低血糖症の危険性を低減しうることである。同様の検討または類似の検討は、他の治療剤へも適用されうる。
【0097】
同様に、センサーの場合、センシングの動態が改善される場合もあり、迅速化される場合もある。これは、迅速なセンシング、例えば、迅速な結果または、より特定すると、センシングおよび/またはより正確な結果の遅延、時間差または待機時間の短縮において明らかでありうる。このような改善は、化合物の非存在下において得られるセンシングと比べて、またはこれと比較して、すなわち、化合物の非存在下において、センサーにより達成される効果(または結果)と比べて、またはこれと比較して見られうる。
【0098】
理論に束縛されることを望まずに述べると、化合物または局所血流の改善の効果は、共投与された治療用活性薬剤、例えば、インスリンの吸収を増大させるような効果でありうる。
【0099】
吸収の増大は、投与された治療用活性薬剤の送達の改善についての態様として見られうる。すなわち、活性薬剤の、その標的組織または血流(循環)への送達は、改善されうる、例えば、増大または加速化されうる(言い換えれば、送達される治療剤の量または送達の速度が増大されうる)。したがって、より一般に、化合物は、対象へと共投与された治療用活性薬剤の送達を改善する効果を有しうる。この分野における送達とは、治療用活性薬剤の、体内におけるその作用または取込みの部位への送達、例えば、薬剤(例えば、インスリン)の、それが身体により吸収される部位への送達であって、循環への送達を含む送達を指すように理解されうる。
【0100】
グルカゴン活性を有する化合物は、グルコース増大効果ではなく、血管拡張効果を達成するように、治療剤の投与部位またはセンサーの近傍へと投与される。化合物の用量は、これに応じて選択または測定されうる。驚くべきことに、血管拡張効果を達成するのに要求される用量は、低用量であり、グルカゴンについての、現行の治療適応または診断適応のために使用されることが報告されている用量より、はるかに低用量であることが見出されている。一部の対象の、ある特定の体内領域では、用量を<0.01mgとするグルカゴンにより、血管拡張効果が観察されている。
【0101】
したがって、一般に、低用量が使用され、典型的に、低血糖症または低血糖症の挿間を処置するか、またはこれに対抗するために投与される用量より低用量が使用される。したがって、用量は、低血糖症の症例において投与されるレスキュー用量より低用量である。このようなレスキュー用量は、典型的に、1mgである。
【0102】
特に、化合物は、実際の低血糖症に対抗するのに要求される用量未満であるか、または血中のグルコースのレベルにおける臨床的に重要な上昇を達成するのに要求される用量未満である、微小用量で、対象へと投与されうる。極低用量または微小用量の、グルカゴン活性を有する化合物は、血中グルコースを増大させるか、または低血糖症を処置することは意図されないが、しかしながら、血中グルコースレベルの上昇において、検出可能な効果または測定可能な効果をもたらしうる。「臨床的に重要な」という用語は、低血糖症の処置において有益である、血中グルコースレベルの上昇を達成するのに十分である用量を運ぶことが意図される。低血糖症は、1リットル当たり<3.9ミリモル(<70mg/dl)の血中グルコースレベルとして規定される。より特定すると、低血糖症は、1リットル当たり<3.9ミリモルの血中グルコースレベルを、罹患対象が介助を必要とする(例えば、臨床介助を必要とする)ことの臨床徴候と共に伴いうる。
【0103】
ある実施形態では、化合物は、0.2mg以下またはこれ未満、より特定すると、0.15mg以下またはこれ未満である、微小用量で投与される。より特定の実施形態では、化合物は、0.1mg以下であるか、または0.09、0.08、0.07、0.06もしくは0.05mg以下である微小用量で投与される。
【0104】
糖尿病の処置または管理の分野では、低血糖症を処置または防止するのに、グルカゴン活性を有する化合物が、別個に投与される場合がある。すなわち、化合物は、血中グルコースレベルを上昇させる、その常套的目的またはホルモン作動的目的のために、さらに、または加えて使用される場合がある。グルカゴンは、インスリンと反対の効果を有するので、このような化合物の使用は、インスリンと全く別個であり、かつ、異なる時点における、化合物の投与を伴うことが理解されるであろう。言い換えれば、その治療的グルコース増大効果のための、このような化合物の使用は、インスリン投与と時間的に同期されない。このような使用では、化合物が、血中のグルコースを上昇させるために投与されるのに対し、インスリンは、血中のグルコースを低下させるために投与されるので、これらは、同じ時点において、またはこの近傍において投与されるのではなく、異なる時点において投与されるであろう。本明細書では、このような効果のために投与される化合物の用量は、治療用量(治療剤の効果もしくは送達またはセンサーの機能を改善するために投与される「増強」用量に対して)と称される。
【0105】
常套的に、実際の臨床的低血糖症を処置するか、またはこれに対抗するのに投与される化合物の用量、すなわち、レスキュー用量が、大用量(例えば、1mgなどまたは小児における0.5mgの桁数の用量)であるのに対し、糖尿病の管理において、または例えば、センサーにより、もしくは臨床的徴候により、血中グルコースレベルが、降下し始めつつあることが検出される場合には、本明細書における開示に従い、低用量の化合物が使用されうる。なおさらに、低用量のグルカゴン活性を有する化合物は、定期的に、または特定の時間間隔において、または一定の時点もしくは所定の時点において、例えば、低血糖症が予測される時点において、低血糖症が生じることを防止するために投与される場合もあり、低血糖症が生じる可能性または危険性を低減するために投与される場合もあり、低血糖症の程度を軽減するために投与される場合もある。このような予防用量または「管理」用量は、上記で指し示された、微小用量の桁数の用量でありうる。低用量または微小用量の化合物の反復投与は、低血糖症が生じることを防止するのに十分でありうる。
【0106】
このような治療的使用のために、治療用量の化合物は、例えば、送達デバイスまたは送達システム(例えば、人工膵臓)の分野では、「増強」用量と同じ手段により、同じリザーバーから、かつ、同じラインまたはチャネルなどを介して投与されうる。したがって、2つの異なる目的のための、化合物の投与部位は、同じ場合もあるが、代替的に、異なる場合もある。しかし、低血糖症に対抗するための、治療的化合物の投与は、時間的に間隔を隔てられた投与であり、血管拡張効果を、さらなる治療用活性薬剤(インスリン)またはセンシングと連動的に達成するための化合物の投与と識別されるであろう。ある実施形態では、低血糖症に対抗する治療効果のための投与は、インスリンに対する効果を増強するための投与と、全く異なる時点における投与となるであろう。ある実施形態では、その血管拡張効果(すなわち、治療剤の送達および/または解析物のセンシングと連動的な)と、低血糖症に対抗する効果のための別個の投与とのために、化合物の長時間放出または制御放出がなされうる。一般に、このような投与は、異なる用量または異なる投与速度における投与でありうる。
【0107】
別の実施態様では、その治療的抗低血糖症効果のための化合物の投与は、血管拡張性(増強)効果のための投与と、同じであるか、または同様である、用量および/または投与経路による投与でありうる。この場合、ある実施形態では、2つの投与は、投与部位により識別されうる、すなわち、2つの投与は、異なる部位における投与でありうる。特に、ある実施形態では、治療的投与は、治療剤の投与部位またはセンサーによるセンシングの近傍における投与ではないであろう。
【0108】
血管拡張効果(または代替的に述べると、「増強」効果)に関して、本明細書における方法、使用およびシステムは、2つの目的のうちの一方または両方のために、すなわち、活性治療剤の投与またはセンサーと連動的に、グルカゴン活性を有する化合物の投与を伴う。これらの2つの使用は、互いから独立の場合もあり、併せて実施される場合もある。したがって、センサーによる解析物のセンシングは、治療用活性薬剤の投与を補完することが可能であり、実際、この投与に情報をもたらしうる。したがって、化合物を伴う活性薬剤の投与は、センサーによるセンシングに呼応して生じうる。インスリン投与およびグルコースセンシングの分野では、特に、これが当てはまりうる。しかし、また、治療用活性薬剤が、別のセンサーによるセンシング、または別の結果、例えば、異なるセンサー、例えば、体内センサーではないか、または化合物と連動的に使用されないセンサーによるセンシングに呼応して、化合物と共投与される場合もある。
【0109】
グルカゴン活性を有する化合物およびさらなる治療剤(例えば、インスリン)は、典型的に、単一の組成物中に組み合わされるのであれ、より適切に、別個の組成物として組み合わされるのであれ、医薬組成物の形態における投与のために施されるであろう。医薬組成物は、化合物または薬剤および1つまたは複数の薬学的に許容される担体または賦形剤を含みうる。
【0110】
このような担体または賦形剤は、医薬技術分野において、周知であり、記載されており、組成物の投与経路に依存するであろう。化合物(または組成物)は、任意の所望の経路により投与される場合があり、これは、治療剤の性質に依存しうる。
【0111】
典型的に、化合物の血管拡張効果を利用するために、化合物および治療剤は、吸収が、局所的血管拡張により増強される、体内の選択または所望される部位または位置へと投与されるであろう。この点で、所望された効果を及ぼすのに十分な、局所薬物濃度を達成することが困難でありうる、低灌流組織では、特に有用である。場合によって、これは、抗生剤に該当する。したがって、本使用、本方法および本デバイスは、局所感染の処置のために、抗生剤を局所投与するための、抗生剤投与に適用されうる。
【0112】
したがって、投与は、適切には、注射または注入による、体内部位への投与でありうる。投与は、体内組織もしくは臓器または体腔の部位への局所投与でありうる。ある実施形態では、投与は、吸収を伴う部位への投与、例えば、皮内投与、皮下投与、筋内投与、または腹部内投与、鼻腔内投与、または粘膜表面における投与、例えば、気道内投与、例えば、肺内投与である。例えば、投与は、皮下(SC)投与もしくは筋内(IM)投与もしくは腹腔内(IP)投与または所望される任意の体腔もしくは臓器への投与でありうる。
【0113】
一部の実施形態では、投与は、口腔への投与、例えば、口腔内投与または舌下投与、または経鼻投与(例えば、経鼻スプレーによる投与)、肺内投与(例えば、吸入による投与)、膣内投与、直腸内投与、眼内投与または尿道内投与でありうる。
【0114】
ある実施形態では、化合物の投与は、肺内投与ではない、例えば、吸入による投与ではない。化合物が、GLP-1である、別の実施態様では、投与は、肺内投与または吸入による投与ではない。処置される状態が、2型糖尿病であり、および/またはセンシングが、2型糖尿病を伴う対象におけるグルコースセンシングである、さらにより特定の実施形態では、化合物の投与は、肺内投与または吸入による投与ではない。
【0115】
特に、投与は、非経口投与でありうる。
【0116】
特定の実施形態では、投与は、皮下投与または腹腔内投与である。
【0117】
同様に、センサーは、体内の、任意の所望される部位または位置に配置されうる。これは、血液の供給が豊富である(これは、センサーの遅延を低減する)、任意の部位、組織または臓器であって、例えば、鼻腔を含む、任意の部位、組織または臓器を含みうる。しかし、典型的に、センシングは、皮下または腹腔内においてなされるであろう。皮下センサーは、体表上の体外に装着され、皮下センシングを実施しうる、例えば、センサーは、皮下の体液または組織にアクセスしうる。皮下センサーは、体表上の任意の所望の部位または好都合な部位に位置付けられ、これは、皮下センサーが、独立型センサーであるのか、統合型デバイスの一部であるのかに依存しうる。グルコースセンサーのための典型的な位置は、腹部上の位置であるが、例えば、センサーはまた、腕部、例えば、上腕部に位置付けられる場合もあり、脚部、例えば、大腿部に位置付けられる場合もある。代替的に、センサーは、部分留置センサーであることが可能であり、例えば、体内腔において、例えば、腹腔内において、または体内組織もしくは臓器において、センシングを実施しうる。これは、例えば、静脈洞を含む場合もあり、CSF中の解析物を測定するために、センサーは、頭蓋内に、または脊髄に沿って位置付けられる場合もある。例えば、代謝疾患の診断もしくはモニタリングまたはその処置では、または、より一般に、治療的モニタリングでは、例えば、このような部位における代謝物を測定するセンサーは貴重でありうる。
【0118】
薬学的に許容される担体または賦形剤は、緩衝系、保存剤(複数可)、毒性薬剤(複数可)、キレート剤(複数可)、安定化剤(複数可)および界面活性剤(複数可)を含みうる。本発明についての一実施態様では、医薬製剤は、水性製剤、すなわち、水を含む製剤である。このような薬剤および構成要素の範囲については、当技術分野で公知であり、当業者に利用可能である。
【0119】
さらに可能なさらなる成分は、保湿剤、乳化剤、抗酸化剤、増量剤、金属イオン、油性媒体、タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミンまたは非ヒト血清アルブミン、ゼラチン、または他のタンパク質)および両性イオン(例えば、ベタイン、タウリン、アルギニン、グリシン、リシンおよびヒスチジンなどのアミノ酸)を含みうる。他の成分は、例えば、ポリマー、粒子、封入剤などの担体を含みうる。
【0120】
製剤補助剤のほか、医薬組成物はまた、例えば、化合物が、皮下センサーまたは治療剤の皮下投与の近傍にある皮膚へと適用される場合に、投与方式および投与部位に応じて、例えば、化合物の投与または送達の一助となりうる薬剤、例えば、浸透増強剤、例えば、皮膚浸透増強剤を含む、他の成分または構成要素も含有しうる。このような皮膚浸透増強剤は、化粧品分野および医薬分野において、薬物または他の薬剤の、皮膚を介する浸透を促進するのに、広く使用される。皮膚浸透増強剤は、異なる方式で、皮膚内の構成要素に対して、直接的に作用する場合もあり、間接的に作用する場合もある。典型的なこのような薬剤は、アゾン、尿素、脂肪酸、スルホキシド(例えば、DMSO)、界面活性剤、テルペン、アルコール、例えば、エタノールおよびグリコールを含む。代替的に、皮膚浸透増強剤は、小胞性担体(例えば、リポソームまたは他の微小胞を含む)の場合もあり、角質層内の脂質を変更する、酵素阻害剤の場合もある。
【0121】
一部の実施形態では、長時間放出フォーマットまたは緩徐放出フォーマット(本明細書ではまた、「制御放出」とも言及される)で、化合物を投与することが好都合でありうる。例えば、センサー部位において、化合物は、徐放製剤または徐放調製物により投与される場合もあり、徐放リザーバーにより投与される場合もある。皮下センサーの場合、これは、センシング部位の近傍に配置または適用される、皮膚接着性パッチの形態を取りうる。皮下センサーは、皮膚へと固定されるので、これは好都合である。グルカゴンのための経皮送達デバイス、例えば、経皮送達のための接着性パッチまたはリザーバーは、例えば、図5に示される通り、センサーの一部として備えられる場合もあり、センサーの近傍における、皮膚への適用のための、別個のパッチまたはリザーバーとして備えられる場合もある。治療用活性薬剤(例えば、インスリン)のための皮下送達デバイス、例えば、注入ポンプの場合、皮下送達ラインはまた、皮膚へと固定される場合もあり、ここでもまた、皮膚パッチまたはリザーバーの、徐放化合物の投与のための経皮送達のための使用は、例えば、図9または11に示される通り、送達ラインが、皮膚に刺入される部位の近傍において好都合である。このようなフォーマットでは、皮膚浸透増強剤を使用して、化合物の送達または吸収を容易とするか、またはこの一助とすることが有益な場合もあり、上記で論じられた、脂溶性の大きな誘導体を使用することが有益な場合もある。
【0122】
代替的徐放フォーマットは、化合物が、治療剤が投与されるか、またはセンサーによるセンシングが行われる場合に投与されるように、送達デバイス(例えば、注入ポンプ)の送達ライン上の、特に、先端部における、または、例えば、皮膚に刺入される、送達ラインの端部における、もしくは送達ラインの端部へと向かう徐放コーティング内に、あるいはセンサーの皮下部分もしくは他の内部部分、例えば、センサー膜、センサー注射針もしくはセンサー電極(例えば、グルコースセンサー内に存在するセンサー膜、センサー注射針またはセンサー電極など)またはセンサーのサンプリング部分において、化合物を施す、徐放フォーマットである。
【0123】
さらに別の徐放フォーマットは、化合物を、化合物の放出を遅延させるか、または延長する、徐放担体または徐放材料と併せて含む、デポ製剤(または、言い換えれば、デポ組成物)またはインプラントである。このような調製物は、治療剤の投与部位の近傍にある部位またはセンサーによるセンシング部位へと投与される場合もあり、この部位に沈着される場合もある。したがって、このような調製物は、例えば、例えば、図4に示される通り、センサー注射針もしくはセンサー電極において、またはこれらの近傍において、統合型センサーの一部でありうる。徐放担体ならびにこのような使用に適する材料は、当技術分野で公知であり、例えば、多様なポリマー材料を含む。このような徐放フォーマットの例は、化合物の徐放を可能とし(例えば、カプセルの壁面を介して)、インスリン送達部位またはセンシング部位へと投与されうる形で、化合物の製剤(組成物)を含有するか、またはこれを封入するか、もしくはカプセル化する、マイクロアンプルまたはカプセルである。
【0124】
グルカゴン活性を有する化合物は、例えば、それが投与されるデバイスの選択およびデザインに応じて、異なる方式で投与されうる。したがって、注射または注入による投与は、急性投与の場合もあり、時間経過にわたる持続性投与の場合もあり、例えば、例えば1~3秒間にわたり投与される急性ボーラス注射の場合もあり、例えば10~15秒間にわたる持続性ボーラス注射の場合もある。注入は、より長い時間、例えば、数分間または数時間にわたる注入でありうる。持続注入が実施されうる。したがって、グルカゴンの投与は、数秒間~数分間または数時間の範囲で変動する持続時間にわたる、持続投与または間欠投与の場合もあり、数日間にわたる持続投与の場合もある。例えば、注入はグルコース偏位が限定的となる夜間に停止される場合があり、日中、間欠的となる場合がある。これは、投与部位に依存しうるが、一般に、このような注射または注入は、皮下注射または皮下注入へと適用可能な場合もあり、他の部位における注射または注入、例えば、腹腔内注射または腹腔内注入へと適用可能な場合もある。
【0125】
糖尿病の処置または管理において、インスリンは、典型的に、非経口投与手段、一般に、皮下注射もしくは皮下注入または腹腔内注射もしくは腹腔内注入により投与され、これらは、本明細書の好ましい投与経路を表す。
【0126】
インスリンは、典型的に、一部の対象により、毎日複数回の注射(MDI)を介して投与される。したがって、一部の実施形態では、化合物は、毎日複数回の注射により、インスリンと共に共投与される。インスリンは、例えば、混合物中で、化合物と共に共製剤化される場合もあり、インスリンと、化合物とは、投与の前に、例えば、シリンジ内の取込みの前に混合される場合もある。代替的に、インスリンと、化合物とは、個別の注射、例えば、毎日複数回の個別の注射により投与されうる。このように用量またはボーラスの化合物は、1日を通して、個別の注射により投与されうる。これは、1日を通して、異なる頻度でありうる。
【0127】
インスリンのための、別の一般的投与経路は、一般に、インスリンポンプと称される注入ポンプを介する投与経路、すなわち、持続皮下インスリン注入(CSII)である。化合物は、インスリンポンプを介して、インスリンと共に投与される場合もあり、異なるポンプを介して投与される場合もある。当業者は、これが、様々な方式でなされうることを認識するであろう。例えば、化合物が、ポンプを介する送達のために、インスリンと共に共製剤化される場合もあり、ポンプが、インスリンと同じであるか、または異なる送達ラインにより送達されうる化合物の、別個のリザーバーを含むか、またはこれを備える場合もある。2つの個別の送達ラインは、皮膚などへの刺入の前に、1つの送達ラインへと接続される場合がある。ある実施形態では、化合物、例えば、微小用量の化合物の持続注入がなされうる。別の実施態様では、化合物の投与は、インスリンの投与とタイミングを合わせてなされうる。
【0128】
インスリンおよび化合物は、それらを、極微針により、皮膚を介して投与するデバイスから投与されうる。これらは、例えば、当技術分野において一般に公知であり、送達デバイス内で使用される、短い、1~3mmの極微針でありうる。各々のための送達用注射針は、互いと近接するように、たやすく構成されうる。ある実施形態では、化合物およびインスリンの投与のための注射針は、デバイス内で、互いと近接して位置付けられうるが、皮膚への浸透は、異なる深さへの浸透でありうる。例えば、これらの注射針は、異なる長さの注射針でありうる。
【0129】
さらに、糖尿病の管理では、対象が、CGMセンサーなどの体内グルコースセンサーを使用することは、常套的である。典型的に、これは、皮下センサーである。したがって、このようなグルコースセンサーのために、特に、皮下グルコースセンサーシステムのために、化合物は、皮下投与されることが好ましい。したがって、化合物は、インスリン送達システムの一部として投与される場合もあり、化合物およびインスリンの送達のための統合型ポンプシステムの一部として投与される場合もある。
【0130】
上記で言及された通り、人工膵臓(AP)は、インスリン送達およびグルコースセンシングを、統合方式で自動化するように開発されている。したがって、人工膵臓は、1つまたは複数のグルコースセンサーおよび制御システムおよびインスリンのための送達デバイスを含む、血中グルコースレベルを制御するための統合型デバイスまたは統合型システムとであると考えられうる。本明細書における開発に従い、人工膵臓は、化合物のための送達デバイスを含むように、さらに改変される。これは、インスリン送達デバイスと同じ送達デバイスの場合もあり、別個の送達デバイスの場合もある。したがって、人工膵臓は、化合物を投与する、別の方式を表す。
【0131】
送達デバイスまたは、より一般に、送達手段は、ポンプまたは注射デバイスもしくは注入デバイスまたは経皮送達システム、例えば、デバイスの皮膚接触部分などと接触するか、もしくは化合物が、グルコースセンシングおよび/またはインスリン投与の部位において送達または放出されることを可能とするように構成されたデバイス内のコーティング、デポまたはリザーバーとしての、経皮送達のための接着性パッチまたはリザーバーなどの形態を取りうる。
【0132】
したがって、多様な実施形態では、化合物および/またはインスリンは、各々、
(i)インスリンおよび化合物ならびにグルコースセンサーの投与のための、1つもしくは複数の送達デバイスを含む統合型デバイスである人工膵臓から投与されうるか;または
(ii)インスリンポンプまたは別のポンプであってもよい、インスリンポンプ、および/または前記化合物の送達のためのポンプから投与されるか;または
(iii)毎日複数回注射の計画の一部として投与されうるか;あるいは
(iv)化合物は、インスリン投与もしくはグルコースセンサーの部位の近傍における持続注入により投与されるか;または
(v)化合物は、徐放用調製物の形態において投与される。
【0133】
異なる徐放調製物については、上記において論じられた。
【0134】
今日、臨床において使用される人工膵臓は、SC APである傾向がある。しかし、上記で言及された通り、例えば、皮下グルコースセンシングが、腹腔内インスリン送達と組み合わされる場合に、腹腔内インスリン投与を、腹腔内グルコースセンシングと組み合わせるIP APまたは混合型SC/IP APが開発されつつある。本方法および本使用は、任意のこのような人工膵臓を伴う使用のために適用可能である。
【0135】
ある特定の実施形態では、化合物は、皮下グルコースセンサーと連動的に使用される場合があり、インスリンは、化合物の共投与を伴うか、またはこれを伴わずに、皮下投与される場合もあり、任意の手段により投与される場合もある。言い換えれば、一部の実施形態では、化合物は、これを、インスリン投与と連動的に使用せずに、単独で、グルコースセンシングを改善するのに使用されうる。これは、例えば、グルコースセンサーが、皮下グルコースセンサーであり、インスリンが、腹腔内投与されるか、または別の体腔内に投与される場合に、所望の選択肢でありうる。
【0136】
したがって、ある実施形態では、化合物は、皮下投与され、インスリンは、皮下投与、腹腔内投与されるか、または他の任意の体腔内または臓器内または組織内、例えば、筋内に投与される。
【0137】
さらに、ある実施形態では、グルコースセンサーは、皮下グルコースセンサー、腹腔内グルコースセンサーであるか、または他の任意の体腔内もしくは臓器内もしくは組織内に留置される。
【0138】
任意のこのような実施形態では、臓器は、肺を含まない場合がある。より特定すると、化合物が、GLP-1である、一実施態様では、臓器は、肺を含まない。
【0139】
さらなる実施形態では、化合物は、皮下グルコースセンサー(複数可)と連動して、皮下投与される。このような実施形態は、化合物の共投与を伴うか、またはこれを伴わない、さらなるインスリンの投与、例えば、腹腔内投与を含みうる。
【0140】
したがって、治療剤の送達を強化する化合物の使用と、センサーを強化する化合物の使用とを、互いから独立に援用することもでき、組み合わせて援用することもできることが理解されるであろう。
【0141】
任意のこのような実施形態では、化合物は、要求される場合に、血中グルコースレベルを上昇させるように、さらに別個に皮下投与されうる。低血糖症に対抗するか、またはこれを防止する、このさらなる別個の化合物の投与は、インスリン投与部位またはグルコースセンサー部位の近傍における化合物の投与と同じ部位における投与の場合もあり、異なる部位における投与の場合もある。
【0142】
ある特定の実施形態では、下記でさらに論じられる通り、本明細書における方法および使用は、独立型センサーシステムフォーマット、独立型送達システムフォーマットまたは統合型センサーおよび送達システムフォーマットを含む、多様な自動化フォーマットにおいて適用されると好都合でありうる。インスリン送達およびグルコースセンシングの場合、これらは、独立型グルコースセンサーシステムと考えられる場合もあり、独立型インスリン送達システム(いわゆるインスリンポンプ)と考えられる場合もあり、人工膵臓と考えられる場合もある。このような各システムは、インスリン/他の治療用活性薬剤の投与および/またはセンサーによるグルコース/他の解析物のセンシングと連動的に、化合物の投与を可能とするように適合される。化合物の投与のためのシステムに組み入れられる手段またはデバイスは、インスリン(または他の治療用活性化合物)の投与のために組み入れられるデバイスと同じ場合もあり、異なる場合もある。
【0143】
人工膵臓の場合、これは、グルコースセンシングまたはインスリン投与単独と連動的に化合物を投与するようにデザインされる場合もあり、グルコースセンシングおよびインスリン投与の両方と連動的に化合物を投与するようにデザインされる場合もある。このような多様な構成は、図11、12および13に描示される。例えば、人工膵臓の全体がSC APである場合、化合物を、両方の分野で使用することが所望かつ有利でありうる。しかし、別の実施態様では、皮下インスリン投与のみと連動的に化合物を投与することが所望の場合もあり、グルコースセンシングのみと連動的に化合物を投与することが所望の場合もある(図5~10を参照されたい)。例えば、腹腔内インスリン投与を、皮下グルコースセンシングと組み合わせる、混合型人工膵臓の場合、化合物は、グルコースセンサーのみと連動的に投与されうる。しかし、他の混合型システムでは、化合物は、グルコースセンシングおよびインスリン投与の両方と連続的に投与される場合もあり、インスリン投与だけと連続的に投与される場合もある。なおさらに、全面的なIP APは、グルコースセンシングおよびインスリン投与の両方と連動的な化合物の投与を可能とする場合があり、この場合、化合物は、グルコースセンシングの部位の近傍において、かつ、インスリン投与の近傍において、腹腔内投与される。
【0144】
したがって、一態様では、本明細書ではまた、糖尿病を伴う対象における血中グルコースレベルを制御するための統合型システムとも言及される人工膵臓は、グルコースセンサーによるグルコースのセンシングと連動的に、化合物を投与するように構成されている。したがって、システムは、同じ場合もあり、異なる場合もある、上記で指し示された、インスリン送達システムおよび化合物送達システムならびに1つまたは複数のグルコースセンサーを含む、グルコースセンサーシステムを含む。血中グルコースレベルについての情報をもたらす、グルコースセンサー(複数可)からのセンサーデータに、少なくとも部分的に基づき、人工膵臓の制御システムは、投与されるインスリン用量を測定し、インスリン送達デバイスを制御して、インスリンを投与する。所望の場合、さらなるデータまたは情報、例えば、あらかじめプログラムされたデータもしくは情報または使用者により入力されるデータもしくは情報もまた、インスリン用量を測定するのに使用されうる。制御システムは、化合物送達デバイスを制御して、化合物を、グルコースセンサーの近傍にある部位へと、血中グルコースレベルを測定する、グルコースセンサーの作動と時間的に同期させて投与するように、さらに構成されうる。上記で言及された通り、化合物は、グルコースセンサーの近傍における血流を改善するように作用する。センサーの近傍への血流は、改善が可能であり、これは、センサーの性能を改善しうる。代替的に、化合物の送達は、デバイスに含まれるか、またはデバイスに装備された、化合物のための徐放システムにより制御されうる。
【0145】
近傍および時間的な同期ならびに化合物の用量などと関連して、上記で論じられ、記載された詳細は、本明細書で記載される任意のシステムの分野では、全て適用可能である。
【0146】
所望の場合、制御システムは、化合物送達デバイスを制御して、化合物を、インスリン投与部位の近傍にある部位において、インスリンの投与と時間的に同期させて投与するようにさらに構成されうる。
【0147】
なおさらに、所望の場合、制御システムは、少なくともセンサーデータに基づき、対象の血中グルコースレベルを上昇させるよう、対象へと投与する化合物の治療用量を測定し、前記治療用量の化合物を対象へと投与して、低血糖症または予測される低血糖症に対抗するよう、化合物送達デバイスを制御するようにさらに構成されうる。
【0148】
多様な代表的実施形態では、統合型システムまたは人工膵臓は、
(i)皮下システムであり、この場合、グルコースセンサーは、皮下グルコースセンサーであり、化合物およびインスリンは、皮下投与されるか;または
(ii)腹腔内システムであり、この場合、グルコースセンサーは、腹腔内グルコースセンサーであり、化合物およびインスリンは、腹腔内投与されるか;または
(iii)皮下/腹腔内システムの組合せであり、この場合、グルコースセンサーは、皮下グルコースセンサーであり、化合物は、グルコースセンサーの近傍部位において皮下投与され、インスリンは、腹腔内投与され、任意選択で、化合物は、インスリン投与と連動的に腹腔内投与される。
【0149】
任意のこのような実施形態では、システムは、低血糖症を処置または防止する化合物の、任意選択の腹腔内投与または皮下投与をさらに含みうる。(iii)の場合、化合物は、例えば、低血糖症を処置または防止するように、グルコースセンサーの近傍にある部位において、皮下投与されうる。したがって、このような場合における化合物送達システムは、センサーによるグルコースセンシングと連動的に、化合物を投与し、かつ、別個に、必要とされるか、または所望される場合、低血糖症を処置または防止するように、治療用量の化合物を投与する、2つの個別の機能を果たすように、制御システムにより、構成および制御されうる。
【0150】
同様に、上記において論じられた、多様な要素およびシステム部分は、対象の血中のグルコースのレベルを測定するためのセンサーシステム内に存在する場合もあり、インスリンの対象への投与のためのインスリン送達システム内に存在する場合もある。
【0151】
より広義には、上記で指し示された通り、対象の血中における、任意の解析物の検出または任意の治療用活性薬剤の、対象への送達のために、類似のセンサーシステムが提供されうることが察知されうる。
【0152】
化合物および、適切な場合、他の治療剤の用量および投与経路は、上記において論じられた通りでありうる。したがって、例えば、投与される化合物の濃度および/または容量および/または投与速度(例えば、速さ)は、要求される効果を達成するように、測定および変更または調整されうる。
【0153】
例えば、当技術分野では、CGMは、挿入後最初の時間において、良好に作動しない場合があることが公知である。したがって、投与パラメータを設定する場合に、これを考慮することが所望であるか、または適切でありうる。さらに、これとの類推により、化合物投与の速度、濃度および容量は、デバイスの性能に影響を及ぼしうる。CGMが、化合物と連動的に最初に使用される場合、化合物投与の、センサーに対する、短期的な負の影響の可能性を測定し、考慮に入れることが、規定の重要事となるであろう。
【0154】
図1は、当技術分野で公知である、典型的なCGMデバイスについての概略図である。このようなデバイスは、接着性バッキングまたは接着性パッド6を使用して、皮膚の表面1に対して保持された筐体4を含む。デバイスは、皮膚の表面1を介して、皮下組織2内および毛細血管3へと伸張するグルコースセンサー5をさらに含む。グルコースセンサー5は、筐体4内に配置された電子回路へと電気的に接続された、注射針様電極である。この例におけるグルコースセンサー5は、表面にメディエーターおよび酵素を固定した、白金-イリジウム線(作業電極を形成する)を含む。作業電極の周囲に巻き付けられた銀/銀塩化線は、対電極を形成する。酵素電極は、グルコースの還元-酸化反応を触媒し、結果として生じる電子の移動は、グルコースセンサー5において、間質液中のグルコース濃度(すなわち、グルコースレベル)に依存する大きさで、電流または電圧をもたらす。間質液中のグルコース濃度は、血漿中の対応するグルコース濃度へと転換されうる。
【0155】
注射針様電極を含む、グルコースセンサーの他の形態は、当然ながら、公知であり、上記で記載された構成の代わりに使用されうる。さらに、注射針様電極を含まない、他の種類のグルコースセンサーもまた公知であり、上記で記載された構成の代わりに使用されうる。例えば、間質液中のグルコースを測定する、他の技術(例えば、蛍光、浸透圧または他の技法)を使用する皮下インプラントも利用可能である。
【0156】
このような標準的CGMデバイスは、人工膵臓の一部を形成することが可能であり、使用者のグルコースレベルの測定値を、人工膵臓のコントローラーへともたらしうる。測定されたグルコースレベルに呼応して、人工膵臓は、1回または複数回にわたるホルモン(または他の物質)の、使用者への投与を制御することにより、使用者の体内におけるグルコース濃度を調節する。ホルモン(複数可)の投与は、一般に、皮下投与または腹腔内投与であるが、また、ホルモン調製物のリザーバーを含む、1つまたは複数の対応するホルモンポンプへと接続されたラインを介する、静脈内投与または動脈内投与でもありうる。人工膵臓は、単一ホルモン型(インスリンだけを投与することが可能である)の場合もあり、二ホルモン型(グルカゴンまたは別のホルモンまたは別の物質のほか、インスリンも投与することが可能である)の場合もある。
【0157】
図2は、常套的な単一ホルモン型人工膵臓のための制御ループを示すフローチャートである。単一ホルモン型人工膵臓は、皮下部位または腹腔内部位におけるグルコースセンサー(図1のCGMデバイスなど)、コントローラーおよびインスリン投与(例えば、皮下部位または腹腔内部位における注入用注射針を介する)のための部位において、インスリンを投与する(コントローラーの制御下で)、インスリンポンプを含む。典型的に、グルコースセンサーと、インスリン投与のための部位とは、使用者の体表上において、少なくとも4~5cmの間隔を隔てられ、なおさらに間隔を隔てられうる。
【0158】
CGMデバイスは、一般に、センサー部位におけるグルコースレベルを、所定の時間間隔において、例えば、5分間ごとに測定する。CGMデバイスにより測定された各グルコース測定値は、測定されたグルコースレベルを、理想的グルコースレベルと比較して、2つの値の間の偏差(差違)を測定する、人工膵臓コントローラーにより受け取られる。測定されたグルコースレベルの、理想的グルコースレベルからの偏差の測定に基づき、コントローラーは、インスリンが投与されるべきかどうかを決定する。コントローラーが、インスリンが投与されるべきであることを決定する場合、コントローラーは、インスリン投与のための部位に配置された、インスリンラインおよび注入用注射針を介してインスリンを投与するように、インスリンポンプを制御する。インスリンの吸収およびインスリンを利用する代謝過程は、血漿中のグルコースレベルに影響を及ぼす。全身にわたるグルコースの輸送とは、血漿中のグルコースレベルの変化が、これに応じて、センサー部位におけるグルコースレベル(間質液中の)に影響を及ぼすことを意味する。
【0159】
図3は、インスリンおよびグルカゴンを使用する、常套的な二ホルモン型人工膵臓のための制御ループを示すフローチャートである。上記で言及された通り、インスリンと、グルカゴン以外のホルモンまたは別の物質とを投与する、常套的な二ホルモン型人工膵臓もまた公知であるが、この議論は、インスリンと、グルカゴンとを投与する、常套的な二ホルモン型人工膵臓に焦点を当てる。
【0160】
二ホルモン型人工膵臓は、皮下部位または腹腔内部位におけるグルコースセンサー(図1のCGMデバイスなど)、コントローラー、インスリン投与(例えば、皮下部位または腹腔内部位における注入用注射針を介する)のための部位において、インスリンを投与する(コントローラーの制御下で)、インスリンポンプおよびグルカゴン投与(例えば、皮下部位または腹腔内部位における注入用注射針を介する)のための部位において、グルカゴンを投与する(コントローラーの制御下で)、グルカゴンポンプを含む。典型的に、グルコースセンサーと、インスリン投与のための部位と、グルカゴン投与のための部位とは、使用者の体表上において、各々互いに少なくとも4~5cmの間隔を隔てられ、なおさらに間隔を隔てられうる。
【0161】
CGMデバイスは、一般に、センサー部位におけるグルコースレベルを、所定の時間間隔において、例えば、5分間ごとに測定する。CGMデバイスにより測定された各グルコース測定値は、測定されたグルコースレベルを、理想的グルコースレベルと比較して、2つの値の間の偏差(差違)を測定する、人工膵臓コントローラーへと送られる。測定されたグルコースレベルの、理想的グルコースレベルからの偏差の測定に基づき、コントローラーは、インスリンまたはグルカゴンが投与されるべきであるのかどうかを決定する。ここで、常套的な二ホルモン型人工膵臓により投与される、任意のグルカゴンは、低血糖症の挿間を反転する目的で投与される(すなわち、治療用量が投与される)。コントローラーが、インスリンまたはグルカゴンが投与されるべきであることを決定する場合、コントローラーは、インスリン(インスリン投与のための部位に配置された、インスリンラインおよび注入用注射針を介して)またはグルカゴン(グルカゴン投与のための部位に配置された、グルカゴンラインおよび注入用注射針を介して)を投与するように、それぞれ、インスリンポンプまたはグルカゴンポンプを制御する。
【0162】
インスリンまたはグルカゴンの吸収およびインスリンまたはグルカゴンを利用する代謝過程は、血漿中のグルコースレベルに影響を及ぼす。全身にわたるグルコースの輸送とは、血漿中のグルコースレベルの変化が、これに応じて、センサー部位におけるグルコースレベル(間質液中の)に影響を及ぼすことを意味する。
【0163】
常套的な二ホルモン型人工膵臓は、インスリンおよびグルカゴンの一方または他方を、任意の一時点において投与するが、インスリンおよびグルカゴンが、同時に、または時間的に同期させて投与されうる制御機構は存在しない。グルカゴンは、インスリンと反対の効果を有し;グルカゴンは、グルコースレベルを上昇させるのに投与されるのに対し、インスリンは、グルコースレベルを低下させるのに投与され、したがって、常套的に、同じ時点において、またはこの近傍において投与されないため、これが当てはまる。
【0164】
図4は、改変型CGMデバイスを示す。デバイスの構造は、図4に示された改変型デバイスが、皮下徐放グルカゴン「リザーバー」10をさらに含むことを除き、大まかに、図1に示されたデバイスに関して明示された通りである。リザーバー10は、グルカゴンの徐放を可能とする任意の形態であって、例えば、グルコースセンサーの近傍に(例えば、2cm以内など、これと近接して)配置された、グルコースセンサー5上における、徐放グルカゴンコーティングまたは徐放グルカゴンデポインプラントもしくは徐放グルカゴンマイクロアンプル(例えば、例えば、グルカゴンが、体内に設置された場合にグルカゴンの徐放を容易とする、1つまたは複数の他の物質と混合された、カプセルまたは丸剤の壁面を介する、グルカゴンの徐放を可能とする形で、グルカゴンの製剤を封入するか、またはカプセル化するカプセル)を含む、任意の形態を取りうる。徐放担体およびコーティングならびにこのような使用に適する材料は、当技術分野で公知であり、例えば、多様なポリマー材料を含む。
【0165】
皮下徐放グルカゴンリザーバー10は、皮膚表面1から最も遠く、センサー端部近傍である、グルコースセンサー5のセンシング部位の近傍に、例えば、これと近接して(例えば、2cm以内に)備えられる。グルカゴンの血管拡張効果のために、グルコース濃度が測定される部位の近傍における(これと近接して、例えば、2cm以内などにおける)グルカゴンの徐放は、例えば、迅速な結果または、より特定すると、センシングおよび/またはより正確な結果の遅延、時間差または待機時間の短縮をもたらす。
【0166】
図5はまた、徐放グルカゴンリザーバーを含むCGMデバイスも示す。この場合、グルカゴンリザーバーは、経皮徐放グルカゴンパッチ11である。経皮徐放グルカゴンパッチ11は、CGMデバイスの筐体4内の、皮膚表面1へと接着される。一般に、徐放経皮パッチは、当技術分野で公知である(かつ、グルカゴンを送達するために、必要に応じて改変されうる)が、本発明者らの知見に照らして、CGMデバイスの部分としての、徐放経皮グルカゴンパッチを備えることは公知ではない。グルカゴンの血管拡張効果のために、グルコース濃度が測定される部位の近傍における(これと近接して、例えば、2cm以内などにおける)グルカゴンの徐放は、迅速なセンシング、例えば、迅速な結果または、より特定すると、センシングおよび/またはより正確な結果の遅延、時間差または待機時間の短縮をもたらす。
【0167】
グルカゴンの徐放リザーバーが備えられる(例えば、図4および5における通りに)場合、グルカゴンの投与速度は、グルカゴンの用量が、典型的に、低血糖症を処置するか、またはこれに対抗するために投与される用量(すなわち、治療用量が投与される)より低用量となるような投与速度である。
【0168】
図6のCGMデバイスは、図1に示された構造(筐体4、グルコースセンサー5および接着性パッチ6を含む)と同様の構造を有する。しかし、図6に示されたデバイスは、グルカゴン注入ライン8と流体連絡された注入用注射針7を含む、皮下グルカゴン注射デバイスをさらに含む。注入用注射針7は、グルコースセンサー5の近傍に、またはこれと近接して(例えば、2cm以内に)配置される。グルカゴン注入ライン8は、グルカゴンリザーバーを含むグルカゴンポンプ(図示されない)と流体連絡されている。グルカゴンポンプは、体外に配置される。グルカゴンポンプ(徐放グルカゴンリザーバーではなく)の装備は、グルカゴンが、所定の時点において、制御用量で送達されることを可能とする。グルカゴンポンプによる、グルカゴンの投与は、コントローラー(図示されない)の制御下にある。グルカゴンが投与される時点は、センサーによるグルコースのセンシングと時間的に同期される。特に、グルカゴンは、センサーによるサンプリングの時点と同時に、またはサンプリングが生じる、少なくとも30分前以内に投与される。グルカゴンの血管拡張効果のために、グルコース濃度が測定される部位の近傍における(これと近接して、例えば、2cm以内などにおける)グルカゴンの投与は、迅速なセンシング、例えば、迅速な結果または、より特定すると、センシングおよび/またはより正確な結果の遅延、時間差または待機時間の短縮をもたらす。グルカゴンの各回の投与の用量は、典型的に、低血糖症を処置するか、またはこれに対抗するために投与される用量より低用量である。
【0169】
図7は、人工膵臓の概略図を示す。図7の人工膵臓は、筐体4、グルコースセンサー5、接着性パッチ6および注入用注射針7を含む。人工膵臓は、グルカゴンポンプ(図示されない)へと接続された、グルカゴン注入ライン8と、インスリンポンプ(図示されない)と流体連絡された、インスリン注入ライン9とをさらに含む。インスリンポンプは、インスリンリザーバーを含み、体外に配置される。グルカゴンポンプは、グルカゴンリザーバーを含み、体外に配置される。この実施形態では、インスリン注入ライン9は、インスリンおよびグルカゴンのいずれもが、単一の注入用注射針7を介して、体内へと送達されうるように、グルカゴン注入ライン8と合流する。注入用注射針7は、グルコースセンサー5の近傍に、またはこれと近接して(例えば、2cm以内に)配置される。グルカゴンおよびインスリンの投与は、コントローラー(図示されない)の制御下にある。
【0170】
グルカゴンポンプの装備は、グルカゴンが、所定の時点において、制御量で送達されることを可能とする。グルカゴンが投与される時点は、センサーによるグルコースのセンシングおよび/またはインスリンの投与と時間的に同期される。特に、グルカゴンは、センサーによるサンプリングの時点の直前に、またはサンプリングが生じる、少なくとも30分前以内に投与される。さらに、グルカゴンは、インスリンを投与する時点と同時に、またはインスリンの投与前少なくとも30分以内に、またはインスリンの投与後1~2時間以内に投与される。グルカゴンの各回の投与の用量は、典型的に、低血糖症を処置するか、またはこれに対抗するために投与される用量より低用量である。
【0171】
上記で論じられた通り、グルカゴンの血管拡張効果のために、グルコース濃度が測定される部位の近傍における(これと近接して、例えば、2cm以内などにおける)投与は、迅速なセンシング、例えば、迅速な結果または、より特定すると、センシングおよび/またはより正確な結果の遅延、時間差または待機時間の短縮をもたらす。さらに、グルカゴンの血管拡張効果のために、インスリンが投与される部位の近傍における(これと近接して、例えば、2cm以内などにおける)投与は、インスリン投与からの効果の改善をもたらす。したがって、インスリン効果の改善は、より迅速な場合もあり、より急速な場合もあり、血中グルコースレベルの低下の場合もあり、血中グルコースレベルの低減の迅速な開始の場合もある。インスリン効果の改善はまた、皮下インスリン注射により観察されるインスリン吸収の日ごとの変動を低減することにより、インスリンの、より予測可能な吸収ももたらすことが可能であり、これにより、また、グルコースレベルに対する、より予測可能な効果ももたらしうる。
【0172】
血管拡張効果(インスリンの投与および/またはグルコースのセンシングと時間的に同期させた)に有利であることを目的とするグルカゴンの投与に加えて、グルカゴンポンプは、万一、コントローラーが、使用者が、低血糖症を患いつつあるか、または近い将来において、低血糖症の危険性があることを決定する場合に、レスキューグルカゴン用量(治療用量)を投与するように、コントローラーにより制御されうる。
【0173】
上記で言及された通り、グルコースがセンシングされる部位である、常套的二ホルモン型人工膵臓内では、インスリンが投与され、グルカゴンも投与されるが、使用者の体表上では、互いから空間的に隔てられる。本発明者らの知見に照らして、3つの部位全てを、図7に示される通り、すぐの近傍に、一体に備えることは公知ではない。
【0174】
図8Aおよび8Bは、各々、皮下グルカゴン注射デバイスおよび皮下インスリン注射デバイスを示す。各デバイスは、接着性バッキングまたは接着性パッド6を使用して、皮膚の表面1に対して保持された筐体4を含む。各デバイスは、グルカゴン注入ライン8およびインスリン注入ライン9をさらに含む。図8Aでは、2つの注入用注射針7が備えられる(第1の注入用注射針は、グルカゴン注入ライン8と流体連絡されており、第2の注入用注射針は、インスリン注入ライン9と流体連絡されている)。2つの注入用注射針は、互いの近傍に、例えば、互いと近接して(例えば、2cm以内に)配置される。比較として述べると、図8Bに示されたデバイスでは、1つの注入用注射針7だけが備えられ、この単一の注入用注射針は、グルカゴン注入ライン8およびインスリン注入ライン9の両方と流体連絡されている。図8Aおよび8Bのいずれにおいても、グルカゴン注入ライン8は、グルカゴンリザーバーを含むグルカゴンポンプ(図示されない)と流体連絡されており、インスリン注入ライン9は、インスリンリザーバーを含むインスリンポンプ(図示されない)と流体連絡されている。インスリンポンプおよびグルカゴンポンプは、体外に配置される。
【0175】
図8Aおよび8Bに示された皮下グルカゴン注射デバイスおよび皮下インスリン注射デバイスは、別個のCGMデバイスからの、血中グルコースレベルの測定値に呼応して、グルカゴンおよびインスリンの投与を制御するコントローラーを含むか、またはこれと連絡されている。グルカゴンは、体内のグルコースレベルに影響を及ぼすために(すなわち、グルカゴンは、低血糖症を処置するか、またはこれに対抗するために投与されうる)、および/または注入用注射針7により送達された、インスリン注入ライン9からの皮下インスリンの吸収を増強するために投与されうる。
【0176】
グルカゴンポンプの装備は、グルカゴンが、所定の時間において、制御用量で送達されることを可能とする。グルカゴンが投与される時点は、インスリンの投与と時間的に同期させてである。特に、グルカゴンは、インスリンを投与する時点と同時に、またはインスリンの投与前少なくとも30分以内に、またはインスリンの投与後2時間以内に投与される。
【0177】
グルカゴンの血管拡張効果のために、インスリンが投与される部位の近傍における(これと近接して、例えば、2cm以内などにおける)投与は、インスリン投与からの効果の改善をもたらす。したがって、インスリン効果の改善は、より迅速な場合もあり、より急速な場合もあり、血中グルコースレベルの低下の場合もあり、血中グルコースレベルの低減の迅速な開始の場合もある。インスリン効果の改善はまた、皮下インスリン注射により観察されるインスリン吸収の日ごとの変動を低減することにより、インスリンの、より予測可能な吸収ももたらすことが可能であり、これにより、また、グルコースレベルに対する、より予測可能な効果ももたらしうる。グルカゴンの各回の投与の用量は、典型的に、低血糖症を処置するか、またはこれに対抗するために投与される用量より低用量である。
【0178】
従来、インスリンが投与される部位と、グルカゴンが投与される部位とは、使用者の体表上において空間的に隔てられる。本発明者らの知見に照らして、両方の部位を、図8Aおよび8Bに示される通り、すぐの近傍に、一体に備えることは公知ではない。
【0179】
図9は、接着性バッキングまたは接着性パッド6を使用して、皮膚の表面1に対して保持された筐体4を含む、インスリン注射デバイスを、概略的に示す。デバイスは、インスリンリザーバーを含むインスリンポンプ(図示されない)へと接続された、インスリン注入ライン9と流体連絡された、注入用注射針7をさらに含む。インスリンポンプは、体外に配置される。図9のインスリン注射デバイスは、経皮徐放グルカゴンパッチ11をさらに含む。経皮徐放グルカゴンパッチ11は、インスリン注射デバイスの筐体4内の、皮膚表面1へと接着される。一般に、徐放経皮パッチは、当技術分野で公知であるが、本発明者らの知見に照らして、インスリン注射デバイスの部分としての、徐放経皮グルカゴンパッチを備えることは公知ではない。
【0180】
図10は、図10のデバイス内にあることを除き、図9に示されたインスリン注射デバイスと同様のインスリン注射デバイスを示し、経皮徐放グルカゴンパッチ11ではなく、皮下徐放グルカゴンリザーバー10が備えられる。徐放グルカゴンリザーバー10は、インスリンの投与部位の近傍に(これと近接して、例えば、2cm以内などに)、注入用注射針7の端部と近接して備えられる。リザーバー10は、グルカゴンの徐放を可能とする任意の形態であって、例えば、注入用注射針7上の徐放グルカゴンコーティングまたは注入用注射針7の端部の近傍に(これと近接して、例えば、2cm以内などに)配置された、徐放グルカゴンデポインプラントもしくは徐放グルカゴンマイクロアンプルを含む任意の形態を取りうる。徐放担体およびコーティングならびにこのような使用に適する材料は、当技術分野で公知であり、例えば、多様なポリマー材料を含む。
【0181】
図9および10に示されたインスリン注射デバイスのいずれについても、インスリン注射デバイスは、CGMデバイスからの、血中グルコースレベルの測定値に呼応して、インスリンの投与を制御するコントローラーを含むか、またはこれと連絡されている。グルカゴンの血管拡張効果のために、インスリンが投与される部位の近傍における(これと近接して、例えば、2cm以内などにおける)グルカゴンの投与は、インスリン投与からの効果の改善をもたらす。インスリン効果の改善は、より迅速な場合もあり、より急速な場合もあり、血中グルコースレベルの低下の場合もあり、血中グルコースレベルの低減の迅速な開始の場合もある。インスリン効果の改善はまた、皮下インスリン注射により観察されるインスリン吸収の日ごとの変動を低減することにより、インスリンの、より予測可能な吸収ももたらすことが可能であり、これにより、また、グルコースレベルに対する、より予測可能な効果ももたらしうる。
【0182】
図11、12および13は、各々、人工膵臓を、概略的に示す。各場合に、人工膵臓は、接着性バッキングまたは接着性パッド6を使用して、皮膚の表面1に対して保持された筐体4を含む。図11、12および13の各々に示された人工膵臓は、皮膚の表面1を介して、皮下組織2内および毛細血管3へと伸張するグルコースセンサー5をさらに含む。上記で記載された(図1に示されたデバイスを参照して)通り、グルコースセンサー5は、筐体4内に配置された電子回路へと電気的に接続された、注射針様電極である。
【0183】
図11、12および13の各々に示された人工膵臓は、インスリンリザーバーを含むインスリンポンプ(図示されない)へと接続された、インスリン注入ライン9と流体連絡された、注入用注射針7をさらに含む。インスリンポンプは、体外に配置される。下記でより詳細に記載される通り、図11、12および13示された人工膵臓の各々は、グルコース濃度が、グルコースセンサー5により測定され、インスリンが、注入用注射針7により投与される部位の近傍に(これと近接して、例えば、2cm以内などに)、グルカゴンの徐放のための手段をさらに含む。
【0184】
図11に示されたデバイスにおいて、グルカゴンの徐放のための手段は、経皮徐放グルカゴンパッチ11(図5および9と関連して、上記において論じられた)である。経皮徐放グルカゴンパッチ11は、人工膵臓の筐体4内の皮膚表面1へと接着される。
【0185】
図12および13に示されたデバイスにおいて、グルカゴンの徐放のための手段は、皮下徐放グルカゴンリザーバー10である。図12に示されたデバイスにおいて、皮下徐放グルカゴンリザーバー10は、皮膚表面1から最も遠く、グルコースセンサー5上の、実際のグルコースセンシング点の近傍にある、グルコースセンサー5の端部の近傍に(これと近接して、例えば、2cm以内などに)備えられる。図13に示されたデバイスにおいて、皮下徐放グルカゴンリザーバー10は、インスリン投与部位に近い、注入用注射針7の端部の近傍に(これと近接して、例えば、2cm以内などに)備えられる。
【0186】
図12および13のリザーバー10は、グルカゴンの徐放を可能とする任意の形態であって、例えば、徐放グルカゴンコーティングまたは徐放グルカゴンデポインプラントもしくは徐放グルカゴンマイクロアンプルを含む任意の形態を取りうる。徐放担体およびコーティングならびにこのような使用に適する材料は、当技術分野で公知であり、例えば、多様なポリマー材料を含む。
【0187】
図11、12および13に示された人工膵臓の全てに関して、人工膵臓は、グルコースセンサーからの、血中グルコースレベルの測定値に呼応して、インスリンの投与を制御するコントローラーを含む。図11、12および13における設定はまた、グルコースセンシングおよびインスリンポンプによるインスリン注入が、人工膵臓の統合部分としてではなく、独立型ソリューションとして使用される場合にも使用されうる。
【0188】
グルカゴンの血管拡張効果のために、インスリンが投与される部位の近傍における(これと近接して、例えば、2cm以内などにおける)グルカゴンの投与は、インスリン投与からの効果の改善をもたらす。インスリン効果の改善は、より迅速な場合もあり、より急速な場合もあり、血中グルコースレベルの低下の場合もあり、血中グルコースレベルの低減の迅速な開始の場合もある。インスリン効果の改善はまた、皮下インスリン注射により観察されるインスリン吸収の日ごとの変動を低減することにより、インスリンの、より予測可能な吸収ももたらすことが可能であり、これにより、また、グルコースレベルに対する、より予測可能な効果ももたらしうる。さらに、グルコース濃度が測定される部位の近傍における(これと近接して、例えば、2cm以内などにおける)投与は、迅速なセンシング、例えば、迅速な結果または、より特定すると、センシングおよび/またはより正確な結果の遅延、時間差または待機時間の短縮をもたらす。
【0189】
図3~13に示されたデバイスの全ては、グルコースレベルがセンシングされる位置の近傍において、もしくはこれに近接して、および/またはインスリンが投与(および吸収)される位置の近傍において、もしくはこれに近接して、グルカゴンの投与を可能とする。近傍にあるとは、例えば、3cmまたは2.5cm以内の近傍を意味しうる。近接とは、2cm以内、例えば、1.5cm以内または1cm以内でありうる。グルカゴンの用量が、典型的に、低血糖症を処置するか、またはこれに対抗するための治療用量として投与される用量より低用量である一方、グルカゴンの投与部位の近傍の局所領域では、グルカゴンの濃度は、治療用量のグルカゴンの投与から得られる、対応する濃度より高濃度でありうるように、グルカゴンの投与は、高度に局所的である。低血糖症に対抗するか、またはこれを処置するための、従来の1mgの治療用量が、血液へと吸収される場合、この治療用量は、平均的患者において、約5リットルの血液により希釈される。比較として述べると、前出のデバイスにより、血管拡張を目的として投与された用量は、当初、約20cm3またはこれ未満の皮下体積中に分配されうる。皮下組織は、約90%の細胞と、約10%の間質液とを含むので、20cm3の皮下体積中で、グルカゴンは、わずか約2cm3の体液により希釈される。
【0190】
本発明は、下記の実施例において、さらに詳細に記載されるであろう。
【実施例
【0191】
実施例1
グルカゴンの、血流に対する効果
実験は、2例のヒト若齢成人健常ボランティアに対して実施した。皮下(本明細書の以下では、SC)注射の、皮内の血流に対する効果を、2例の対象(男性対象における4回の試験および女性対象における2回の試験)において、6回にわたり調べた。グルカゴンを、1mg/mlのグルカゴン0.1ml(すなわち、0.1mgのグルカゴンを含有する注射)の皮下注射により、対象の上腕部の両側の部位へと投与した。血流は、投与部位の皮膚表面上において、レーザードップラー技術により測定した。対照として、同じ容量の生理食塩液(0.9%)を、同じ部位において、プラセボとして注射した。
【0192】
この実験の結果を、グルカゴンおよびプラセボの両方について、図14に提示する。6回の試験の平均を、95%信頼区間と併せて示す。グルカゴンの、局所血流に対する効果は、莫大であり、血流は、数百パーセント増大したことを見ることができる。「正常」値へと戻った後であってもなお、血流は、グルカゴン注射前と比較して増大した。同じ容量による、生理食塩液の注射は、短命の急性効果を及ぼすに過ぎず、長期効果は及ぼさなかった。
【0193】
この効果を、グルカゴンの用量を変動させる同様の実験においてさらに探索した。ここでもまた、同じ2例の対象を使用し、グルカゴンまたはプラセボの皮下注射を、6回(男性対象における4回の試験および女性対象における2回の試験)にわたり施した。グルカゴンを、両上腕部の側面上の部位へと、0.1mg、0.015mgおよび0.01mg(それぞれ、0.1mg/ml、0.015mg/mlおよび0.01mg/mlの濃度のグルカゴン0.1mlずつ)の量で投与した。血流は、投与部位の皮膚表面上において、レーザードップラー技術により測定した。対照として、同じ容量の生理食塩液(0.9%)を、同じ部位において、プラセボとして注射した。
【0194】
この実験の結果を、各濃度のグルカゴンおよびプラセボについて、6回にわたる試験の平均を示す、図15に提示する。同等の結果はまた、プラセボ効果控除された、図16にも示す。0.1mgおよび0.015mgいずれのグルカゴンによっても、局所血流の、劇的な増大(ベースラインの読取りの400~450%)が得られたことを見ることができる。同様に、それほど顕著ではないが、0.01mgのグルカゴンによってもまた、効果が観察された。第1の実験における通り、血流の増大は、値が安定化されると、一定を維持することが見出された。これは、全てのグルカゴン用量について見られたが、プラセボについては見られなかった。
【0195】
さらなる実験を行って、腹部における、グルカゴンの皮下注射の、局所血流に対する効果について探索した。ここでもまた、同じ2例の対象を使用し、グルカゴンまたはプラセボの皮下注射を、6回(男性対象における3回の試験および女性対象における3回の試験)にわたり施した。グルカゴンを、1mg/mlのグルカゴン0.1ml(すなわち、0.1mgのグルカゴンを含有する注射)の皮下注射により、対象の腹部の両側面上の部位へと投与した。血流は、投与部位の皮膚表面上において、レーザードップラー技術により測定した。対照として、同じ容量の生理食塩液(0.9%)を、同じ部位において、プラセボとして注射した。
【0196】
この実験の結果を、グルカゴンおよびプラセボの両方について、図17に提示する。6回の試験の平均を、95%信頼区間と併せて示す。0.1mgのグルカゴンの投与は、局所血流の著明な増大を結果としてもたらし、これは、生理食塩液を投与した場合に観察される増大より、わずかに大きかったことを見ることができる。グルカゴンの投与に後続する局所血流の増大はまた、対照の投与に後続して観察される増大より持続的でもあったが、いずれの群についての血流値も、約30分間後には、ほぼ同等であった。
【0197】
この効果を、グルカゴンの用量を変動させる同様の実験においてさらに探索した。ここでもまた、同じ2例の対象を使用し、グルカゴンまたはプラセボの皮下注射を、6回(男性対象における3回の試験および女性対象における3回の試験)にわたり施した。グルカゴンを、腹部の両側面上の部位へと、0.1mg、0.05mgおよび0.015mg(それぞれ、0.1mg/ml、0.05mg/mlおよび0.015mg/mlの濃度のグルカゴン0.1mlずつ)の量で投与した。血流は、投与部位の皮膚表面上において、レーザードップラー技術により測定した。対照として、同じ容量の生理食塩液(0.9%)を、同じ部位において、プラセボとして注射した。
【0198】
この実験の結果を、各濃度のグルカゴンおよびプラセボについて、6回にわたる試験の平均を示す、図18に提示する。同等の結果はまた、プラセボ効果控除された、図19にも示す。グルカゴンを、腹部へと投与したところ、0.1mgのグルカゴンだけが、同じ対照の投与に後続して見られる初期増大より大きな局所血流の初期増大をもたらした。0.05mgのグルカゴンの投与は、初期において、局所血流の著明な増大を結果としてもたらさなかったが、観察された増大は、15分後において、局所血流が、対照の注射の後の同じ時点において観察される局所血流を超えるように、生理食塩液注射の効果より持続的であった。0.015mgのグルカゴンの、腹部への投与は、局所血流に対して、対照の注射と比べて、著明な効果をもたらさないと考えられた。
【0199】
さらなる実験を行って、大腿部における、グルカゴンの皮下注射の、局所血流に対する効果について探索した。1例の女性対象を使用し、グルカゴンまたはプラセボの皮下注射を、7回にわたり施した。グルカゴンを、0.05mgのグルカゴンの皮下注射(0.1mlにより、5回にわたる皮下注射および0.05mlにより、2回にわたる皮下注射)により、対象の大腿部上の部位へと投与した。血流は、投与部位の皮膚表面上において、レーザードップラー技術により測定した。対照として、0.9%の生理食塩液(0.6mlにより、5回にわたる注射および0.03mlにより、2回にわたる注射)を、同じ部位において、プラセボとして注射した。
【0200】
この実験の結果を、グルカゴンおよびプラセボの両方について、図22に提示する。7回の試験の平均を、95%信頼区間と併せて示す。0.05mgのグルカゴンの投与は、局所血流の著明な増大を結果としてもたらし、これは、生理食塩液を投与した場合に観察される増大より、わずかに大きかったことを見ることができる。グルカゴンの投与に後続する局所血流の増大はまた、対照の投与に後続して観察される増大より持続的でもあったが、いずれの群についての血流値も、約30分間後には、ほぼ同等であった。
【0201】
この効果を、グルカゴンの用量を変動させる同様の実験においてさらに探索した。ここでもまた、1例の女性対象を使用し、グルカゴンまたはプラセボの皮下注射を、7回にわたり施した。グルカゴンを、対象の大腿部上の部位へと、0.05mg(0.1mlにおいて、5回にわたり、0.05mlにおいて、2回にわたり)、0.03mg(0.06mlにおいて、5回にわたり、0.03mlにおいて、2回にわたり)および0.01mg(0.02mlにおいて、5回にわたり、0.01mlにおいて、2回にわたり)の量で投与した。血流は、投与部位の皮膚表面上において、レーザードップラー技術により測定した。対照として、0.9%の生理食塩液を、同じ部位において、プラセボとして(0.06mlにおいて、5回にわたり、0.03mlにおいて、2回にわたり)注射した。
【0202】
この実験の結果を、各濃度のグルカゴンおよびプラセボについて、7回にわたる試験の平均を示す、図23に提示する。同等の結果はまた、プラセボ効果控除された、図24にも示す。グルカゴンを、大腿部へと投与したところ、0.03mgのグルカゴンが、局所血流の最大の増大をもたらした。0.05mgのグルカゴンの投与もまた、生理食塩液対照の投与に後続して観察される局所血流の増大よりわずかに大きく、著明に持続的である、局所血流の著明な増大を結果としてもたらした。0.01mgのグルカゴンの、大腿部への投与は、局所血流に対して、対照の注射と比べて、著明な効果をもたらさないと考えられた。
【0203】
グルカゴンの、CGMの性能に対する効果について探索するように、この効果を、同様の実験においてさらに探索した。ここでもまた、2例の対象を使用し、Dexcom G6 CGMにより回収された、非糖尿病性女性における12回の食事および非糖尿病性男性における11回の食事からのデータを示す。対象に、各上腕部の側面上の対称位置に、2つのCGMを留置した。摂食開始の1~3分前に、0.1mlのグルカゴン(1mg/ml)を、一方のCGM部位に注射し、0.1mlのプラセボ(生理食塩液(0.9%))を、対側CGM部位に注射した。各回の食事の前に、新たな無作為化により、グルカゴン送達部位を測定した。
【0204】
この実験の結果を、図26に提示する。これは、CGM部位におけるグルカゴンの投与が、プラセボと比較して検出されるグルコースレベルの、迅速であり、かつ、大きな上昇を結果としてもたらすことを示す。この効果は、対象のうちの1例において、10分で明らかに見られた。
【0205】
実施例2
注射技法のグルカゴンの効果に対する影響
注射技法、特に、注射の速度の、グルカゴンの皮下注射により誘導される効果に対する影響を観察するために、注射が1~3秒間にわたり持続する技法(技法1)および注射が少なくとも10秒間にわたり持続する技法(技法2)である、2つの異なる注射技法を比較する実験を行った。6回の注射を、技法1により施し、4回の注射を、技法2により施した。各場合に、0.1mgのグルカゴン(0.1mlの注射による)を、対象の腹部へと、皮下注射した。各技法について、注射のうちの半数回は、男性対象へと施し、半数回は、女性対象へと施した。血流は、投与部位の皮膚表面上において、レーザードップラー技術により測定した。
【0206】
この実験の結果を、図20に提示する。加えて、図21に、同じ結果を、同じ2つの技法を使用する、0.9%の生理食塩液0.1mlによるプラセボ注射の結果と併せて示す。技法1について、6回のプラセボ注射を施し、技法2について、2回のプラセボ注射を施した。ここでもまた、各技法による注射のうちの半数回は、男性対象において行い、半数回は、女性対象において行った。
【0207】
注射がより緩徐に行われる技法2は、局所血流の著明に大きな増大を結果としてもたらすことを見ることができる。この効果は、グルカゴン注射およびプラセボ注射のいずれによっても観察されたが、注目すべきことは、「緩徐な」グルカゴン注射の、局所血流に対する効果が、他の注射のいずれの効果より持続的であったことである。
【0208】
実施例3
プローブ配置の、グルカゴン効果の測定に対する影響
プローブからの距離を変動させる、複数の部位において注射を施すことにより、グルカゴン注射の、局所血流に対する効果の測定に対する、レーザードップラープローブの配置の影響について探索した。実験は、対象の両上腕部の側面上の部位における、0.015mgのグルカゴン(0.1ml中に)または対照としての、0.9%の生理食塩液0.1mlの皮下注射を伴った。注射は、プローブ下、プローブ中心から1.6cm、プローブ中心から3cmまたはプローブ中心から5cmにおいて施した。各場合に、4回にわたる生理食塩液注射だけを施した、プローブ中心から1.6cmを除き、6回の注射を施した。4回の試験を、男性対象において行い、2回の試験を、女性対象において行った、プローブ下を除き、全ての場合に、注射のうちの半数回は、男性対象へと施し、半数回は、女性対象へと施した。血流は、皮膚表面上において、レーザードップラー技術により測定した。
【0209】
この実験の結果を、プラセボ注射の平均を控除した、6回にわたるグルカゴン注射の平均を示す、図25に提示する。局所血流の最大の増大は、注射を、プローブ下において、直接施した場合に観察されたことを見ることができる。プローブからの距離を大きくして、注射を施した場合、局所血流の増大は、それほど著明ではなかった。注射を、プローブ中心から1.6cm、3cmまたは5cmにおいて施した場合に得られる結果の間では、著明な差違が見られないと考えられた。しかし、プローブから5cmにおける注射を除き、効果は、プラセボより大きかった。
【符号の説明】
【0210】
1 皮膚表面
2 皮下組織
3 毛細血管
4 筐体
5 グルコースセンサー
6 接着性バッキングまたは接着性パッド
接着性パッチ
7 注入用注射針
8 グルカゴン注入ライン
9 インスリン注入ライン
10 皮下徐放グルカゴンリザーバー
リザーバー
11 経皮徐放グルカゴンパッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
【配列表】
2024528457000001.app
【国際調査報告】