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特表2024-528459全固体電池(ASSB)の再循環及びアノードの回収
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-30
(54)【発明の名称】全固体電池(ASSB)の再循環及びアノードの回収
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/54 20060101AFI20240723BHJP
【FI】
H01M10/54
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579116
(86)(22)【出願日】2022-06-27
(85)【翻訳文提出日】2024-02-15
(86)【国際出願番号】 US2022035079
(87)【国際公開番号】W WO2022272162
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】63/215,410
(32)【優先日】2021-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】522346431
【氏名又は名称】アセンド エレメンツ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】グラッツ,エリック
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ヤン
【テーマコード(参考)】
5H031
【Fターム(参考)】
5H031AA00
5H031RR02
(57)【要約】
全固体電池(ASSB)を再循環させるための方法であって、方法が、少なくとも1つの充電材料と混合された電解質を含むASSBの再循環ストリームを受け取ることと、不動態化物質を導入して、再循環ストリームを画定する電池から充電材料の望ましくない反応又は放電を中和することと、不動態化物質の存在下で再循環ストリーム中の電池を撹拌して、その中に蓄えられた充電材料及び電解質を遊離させることと、撹拌された電池から充電材料及び電解質を回収することとを含み、不動態化物質が、撹拌された電池と結合して有益な生成物を生成し、それによってASSBを再循環させるようにする、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全固体電池(ASSB)を再循環させるための方法であって、前記方法が、
少なくとも1つの充電材料と混合された電解質を含むASSBの再循環ストリームを受け取ることと、
不動態化物質を導入して、前記再循環ストリームを画定する前記電池から前記充電材料の望ましくない反応又は放電を中和することと、
前記不動態化物質の存在下で前記再循環ストリーム中の前記電池を撹拌して、その中に蓄えられた前記充電材料及び電解質を遊離させることと、
前記撹拌された電池から前記充電材料及び前記電解質を回収することとを含み、前記不動態化物質が、前記撹拌された電池と結合して有益な生成物を生成し、それによってASSBを再循環させる、方法。
【請求項2】
前記電池が金属系アノードと、カソードと、固体電解質(SSE)とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属アノードが非不活性環境内で反応性である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記不動態化物質が前記金属アノードとの有害な反応を軽減し、前記有益な生成物を製造するための有益な反応に関与している、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記固体電解質がリチウム金属である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
導入の前に、固体電解質のタイプに基づいてASSBの前記再循環ストリームを仕分けることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記不動態化物質が、還元ガス、及び不活性ガスから選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記還元ガスが二酸化炭素、空気、窒素、及び硫化水素から選択される少なくとも1つである、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記不活性ガスがヘリウム、アルゴン、ネオン、キセノン、クリプトン、及びラドンのうちの少なくとも1つを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記不動態化物質が空気及びアルゴンを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記不動態化物質中の前記還元ガスの百分率が少なくとも99%、又は少なくとも95%、又は少なくとも90%、又は少なくとも85%、又は少なくとも80%、又は少なくとも75%、又は少なくとも70%である、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記不動態化物質中の前記不活性ガスの百分率が少なくとも1%、又は少なくとも5%、又は少なくとも10%、又は少なくとも15%、又は少なくとも20%、又は少なくとも25%、又は少なくとも30%である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
撹拌した後に、前記充電材料と有益な生成物とをふるい分けすることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
ふるい分けした後に、前記有益な生成物を水で洗浄して前記有益な生成物を溶解し、前記有益な生成物を清浄化することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ASSBが積み重ね形、袋形、折り重ね形パウチ、及び円筒ロールから選択される少なくとも1つの形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
得られた前記有益な生成物が炭酸リチウム前駆体、窒化リチウム、水酸化リチウム、炭酸リチウム、シュウ酸リチウム、水素、及び硫化リチウムから選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記再循環ストリーム中の前記電池が、カソード材料のためのNMC(ニッケル、マンガン、コバルト)をベースとした化学的性質を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
撹拌の前に、前記ASSBを孔開けして前記不動態化物質を注入することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
撹拌が、細断、ハンマー打ち、及び微粉砕の少なくとも1つをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
渦電流、及びフロス浮遊から選択される少なくとも1つの方法によって前記NMCと集電体とを分離することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、発明者Eric Gratz及びYan Wangによって題名“Recycling all solid-state batteries (ASSBS)”を有する2021年6月25日に出願された米国仮特許出願第63/215,410号(その内容をその全体において参照によって本願明細書に組み入れる)に対する優先権の利益を請求する。
【背景技術】
【0002】
背景
全固体電池(ASSB)は、リチウムイオン電池(LIB)に代わる成長産業を代表することが期待されている。しかしながら、ASSBの再循環の側面は探究不足であり、供給/需要予測は、特に自動車部門からの、かつてないほどの量の廃棄処分されたLIBを最終的にもたらすので重要である。LIB再循環の現在の状態は不十分であり、ASSBにおけるリチウム-金属アノード及び固体電解質化学の導入は、さらに別の難題を投げかける。したがって、再循環の実行可能性及び廃棄物処理は、商品化に向かってのASSBの開発において指導的な役割を有するべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、ASSBの安全な廃棄処分、廃棄物処理、ASSBのために必要とされる重要物質の回収及び資源の持続的使用のために費用効果が高く且つ経済的に発展し得るASSBを再循環させるための新規な方法が必要とされている。
【0004】
概要
1990年代初めにおけるそれらの商品化以来、リチウムイオン電池(LIB)は、社会の不可欠の部分になっている。その低い原子質量及びサイズと組み合わせられたリチウムの電気化学的活性は、他の同等の電池化学と比較してエネルギー及び電力密度のすぐれた利点を可能にする。より要求のきびしい用途のためにより良い電気化学的性能、寿命、及び安全性を求めて、将来のLIBのかなりの部分が全固体電池(ASSB)から構成されることが予想される。ASSB、従来の非水性液体電解質ではなく固体電解質(SSE)を含有する。ASSBは現在のLIBを上回る著しい利点を実証し、SSEの機械的結着性はデンドリティック成長を様々な程度に妨げ得、エネルギー高密度リチウム金属アノードの実現性を可能にする。SSEの化学的性質は一般的に、非水性電解質を有するLIBと比較してすぐれた熱的及び電気化学的安定性を提供し、より広い電圧領域を可能にする。したがって、SSEは、電気車(EV)の電池パックのコストの20%を同様に占め得る、電池パックレベルでの熱管理及びセル支持体/筐体インフラの必要とされる量を低減することによって増加したセルのエネルギー密度、増加した電池パックに特定的な体積エネルギー密度をもたらす。
【0005】
LIBはポータブル・エレクトロニクスのために広範囲にわたって使用され、代替エネルギー発生と組み合わせて電気車、Eバイク、及びグリッドストレージなどの用途を新たに開発するために使用され続けている。既存の市場の継続的な成長と共にこれらの新しい市場が加わることによって、LIBの製造において重要なリチウム及びその他の材料の需要の指数関数的増加が予想される。必要な製造を産業が扱うことができる方法の問題点と共に、LIBがそれらの寿命末期サイクルに達して廃棄される時に生じる廃棄物が後で増加する問題点があるはずである。現状は、リチウム及びコバルトなどの重要物質の限られた天然供給のために持続可能ではなく、現在の寿命末期の処置は、廃棄処分されたLIBのための経済的に発展し得る大規模再循環システムが無い。最近採用されたLIB再循環は典型的に、様々な程度の効率で且つ電解質及びリチウムの回収不能な著しい損失がある、カソード中の金属の材料回収に焦点を合わせている。回収率の必要とされる改良と共に、これらのプロセスはまだ経済的に発展し得ず、かなりの量の廃棄物自体を生じるか又は温室効果ガスを発生し得る。インフラ及び法令の両方において再循環の将来の展望が無いことによって、あり得るLIBの約5%しかUSAにおいて再循環されていないということに至っている。これは、はるかに高いレート-ほとんど99%で現在再循環され回収されている、鉛-酸電池とは著しく対照的である。したがって、次世代LIBの再循環の経済的に発展し得る効率的システムへの発展は緊急課題である。ASSBはまだ発展段階であり、まだ大量生産されていないので、持続可能なシステムのための再循環プロセスを先回りして計画及び開発する重要な好機がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に記載される本発明の態様は、全固体電池(ASSB)を再循環させるための方法を提供し、方法は、少なくとも1つの充電材料と混合された電解質を含むASSBの再循環ストリームを受け取ることと、不動態化物質を導入して、再循環ストリームを画定する電池から充電材料の望ましくない反応又は放電を中和することと、不動態化物質の存在下で再循環ストリーム中の電池を撹拌して、その中に蓄えられた充電材料及び電解質を遊離させることと、撹拌された電池から充電材料及び電解質を回収することとを包含し、ここで、不動態化物質は、撹拌された電池と結合して有益な生成物を生成し、それによってASSBを再循環させる。
【0007】
方法の実施形態では、電池は、金属系アノードと、カソードと、固体電解質(SSE)とを備える。方法の実施形態では、金属アノードは非不活性環境内で反応性である。方法の実施形態では、不動態化物質は金属アノードとの有害な反応を軽減し、有益な生成物を製造するための有益な反応に関与している。方法の実施形態では、固体電解質はリチウム金属である。
【0008】
方法の実施形態は、導入の前に、固体電解質のタイプに基づいてASSBの再循環ストリームを仕分けることをさらに包含する。方法の実施形態では、不動態化物質は、還元ガス、及び不活性ガスから選択される少なくとも1つである。方法の実施形態では、還元ガスは、二酸化炭素、空気、窒素、及び硫化水素から選択される少なくとも1つである。方法の実施形態では、不活性ガスは、ヘリウム、アルゴン、ネオン、キセノン、クリプトン、及びラドンのうちの少なくとも1つを含有する。
【0009】
方法の実施形態では、不動態化物質は空気及びアルゴンを含有する。方法の実施形態では、不動態化物質中の還元ガスの百分率は少なくとも99%、又は少なくとも95%、又は少なくとも90%、又は少なくとも85%、又は少なくとも80%、又は少なくとも75%、又は少なくとも70%である。方法の実施形態では、不動態化物質中の不活性ガスの百分率は少なくとも1%、又は少なくとも5%、又は少なくとも10%、又は少なくとも15%、又は少なくとも20%、又は少なくとも25%、又は少なくとも30%である。
【0010】
方法の実施形態は、撹拌した後に、充電材料と有益な生成物とをふるい分けすることをさらに包含する。方法の実施形態は、ふるい分けした後に、有益な生成物を水で洗浄して有益な生成物を溶解し、有益な生成物を清浄化することをさらに包含する。方法の実施形態では、ASSBは、積み重ね形、袋形、折り重ね形パウチ、及び円筒ロールから選択される少なくとも1つの形態である。方法の実施形態では、得られた有益な生成物は、炭酸リチウム前駆体、窒化リチウム、水酸化リチウム、炭酸リチウム、シュウ酸リチウム、水素、及び硫化リチウムから選択される少なくとも1つである。
【0011】
方法の実施形態では、再循環ストリーム中の電池は、カソード材料のためのNMC(ニッケル、マンガン、コバルト)をベースとした化学的性質を有する。方法の実施形態は、撹拌の前に、ASSBを孔開けして不動態化物質を注入することをさらに包含する。方法の実施形態では、撹拌は、細断、ハンマー打ち、及び微粉砕の少なくとも1つをさらに包含する。方法の実施形態は、渦電流、及びフロス浮遊から選択される少なくとも1つの方法によってNMCと集電体とを分離することをさらに包含する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図面の簡単な説明
図1A】従来の電池とASSBの構造を図示する一連の略図である。図1Aは、多孔性黒鉛又はケイ素アノード複合体、液体電解質及び多孔性セパレーター層、並びに多孔性カソード複合体を含有する従来の液体電解質LIBの構造を示す略図である。
図1B】従来の電池とASSBの構造を図示する一連の略図である。図1Bは、高密度黒鉛及びLi金属アノード、高密度固体電解質層、並びに高密度カソード及び電解質複合体を有するASSBの構造を示す略図である。
図2A】異なった再循環方法、必要とされるプロセス、及びASSBのためにそれらの工程を適用することに関するそれぞれの工程の課題を図示する一連の略図である。図2Aは、機械的分離の方法の工程を示す略図である。
図2B】異なった再循環方法、必要とされるプロセス、及びASSBのためにそれらの工程を適用することに関するそれぞれの工程の課題を図示する一連の略図である。図2Bは、乾式精錬の方法の工程を示す略図である。
図2C】異なった再循環方法、必要とされるプロセス、及びASSBのためにそれらの工程を適用することに関するそれぞれの工程の課題を図示する一連の略図である。図2Cは、湿式精錬の方法の工程を示す略図である。
図2D】異なった再循環方法、必要とされるプロセス、及びASSBのためにそれらの工程を適用することに関するそれぞれの工程の課題を図示する一連の略図である。図2Dは、水熱再循環による直接再循環の方法の工程を示す略図である。
図2E】異なった再循環方法、必要とされるプロセス、及びASSBのためにそれらの工程を適用することに関するそれぞれの工程の課題を図示する一連の略図である。図2Eは、溶解又は沈殿による直接再循環の方法の工程を示す略図である。
図3】湿式精錬及び直接再循環方法を利用するASSBの再循環システムのプロセスの流れを示す略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明の詳細な説明
本明細書に記載される方法及び方法の実施形態は、ASSBを再循環させるための新規な直接再循環プロセスを実証する。従来のLIBのための最近導入された再循環プロセスは、異なったASSBシステムに対してそれらの実行可能性に関して考察される。全固体電池(ASSB)のための再循環プロセスは、セラミック電解質などの固体電解質(SSE)を有する電池の再循環ストリームを受け取る。いくつかの実施形態では、物理的攪拌は不動態化物質の存在下で行われ、これは、充電材料からの有害反応を中和し、有益な生成物を生じて再循環される価値を助長する反応を促進するように選択される。
【0014】
SSEの化学的性質及び従来のLIBとの比較
「固体電解質」及び「固体イオニクス」は、1960年代にNa-S電池におけるβ-アルミナ(NaO・11Al)によって最初に概念化された。リチウムイオン化学のために、LiI化合物は、スロードレン薄膜マイクロ電池における用途があった。しかしながら、電力密度、加工、及びコストに関する制限条件は、より広い用途での使用を妨げ、固体電解質はほとんど、有機溶媒に溶解されたLiPF塩を利用する液体電解質系システムのすぐれた電気化学的性能のために除外された。それにもかかわらず、固体電解質の近年の開発は、酸化物、硫化物、及びポリマーに基づいた化学的性質を有する、本分野への新たな関心に至っており、商用ASSBの実現に対する様々な形の将来性を示す。
【0015】
1970年代に最初に開発された酸化物系SSEは、ガラス状/非晶質又は結晶形態として存在することができる。ガラス-セラミック酸化物化合物は一般的に、LiOの網目修飾酸化物及びSiO、B、P、GeO等の網目形成酸化物の不規則構造を有する、LiO-MO(M=Si、B、P、Ge等)からなる。また、1990年代に開発されたLiPO(LiPON)は、より広い電圧領域と共に、水及びリチウム金属に対して高められた化学安定性を有するガラス-セラミック薄膜SSEである。しかしながら、ガラス-セラミック/非晶質酸化物のイオン導電率は非常に低いままであり、室温導電率は10-6~10-9S/cmの範囲である。酸化物SSEにおける最近の関心は、LiM(PO型LISICONから、ガーネット型LLZO、及びペロブスカイト型LLTOまでの範囲の、ガーネット型及びペロブスカイト型結晶SSEに焦点を合わせている。これらの材料は約10-3S/cmのイオン導電率及び改良された電気化学及び熱安定性を有するずっと高い将来性を示すが、特定の化学はGeなどの希元素、又は費用がかかる加工技術を利用する。さらに、酸化物系SSEは、機械的脆性又は他の電池構成要素との化学的不適合性のために長期繰り返し安定性においてさらに悪化し得、それはその場合には、電解質/電極構成要素間に別個の界面層を必要とする。
【0016】
LiS-SiSシステムを有する硫化物系SSEは、1980年代に最初に開発された。観察された高いイオン導電率は、より多くの自由移動リチウムイオンを可能にする硫黄とリチウムとの間のより弱い結合強さに帰された。また、硫化物型固体電解質はガラス状又は結晶性として分類され得、LiPSX(X=Cl、Br、又はI)アルジロダイト、LiS-Pチオ-LISICON、及びLi11-x2-x1+x12(M=Ge、Sn、及びSi)化合物などのLi-P-S系の化学的性質を有する。もちろん、結晶性チオ-LISICONは、液体電解質の導電率に匹敵する高い導電率を示し、研究開発のために特に重要である。また、硫化物系SSEは、酸化物系SSEの相対的硬度及び脆性とは対照的に、それらの機械的可撓性のためにすぐれた且つ実施可能なカソード/電解質の接触を可能にする。しかしながら、制限条件は、周囲環境におけるこのSSEの化学的性質の化学的不安定性をめぐり、製造又はリサイクルの周囲環境においてあり得る耐久性及び安全性問題を提起する。
【0017】
ポリマー及びポリマー/複合体SSEは不揮発性である傾向があり、すぐれた機械的可撓性、加工性、及びリチウム金属との相溶性を有する。これらのSSEは典型的に、固体溶媒として、LiTFSIなどのリチウム塩を有するポリマーホストを必要とする。リチウムイオンは、電界の効果の下で1つの配位部位から新しい部位にポリマー鎖に沿って又はそれらの間で移動するか又は1つの鎖から別の鎖に跳ぶ。いくつかのタイプのポリマーホストを利用することができるが、他のタイプのポリマー系SSEのなかでその成熟及び優れた電気化学的性能のためにポリエチレンオキシド(PEO)が最も広範囲に使用される。ポリマー複合体は同じポリマーSSEを利用するが、LiAlO、Al、及びSiOなどのセラミック充填剤と共に利用してガラス転移温度を低下させることによってイオン導電率を改良する。残念なことに、熱安定性、エネルギー高密度正極との化学的適合性、及びより低い酸化電圧における制限条件は、一般的なLIBカソード/アノード対において使用するためのポリマー系SSEを極度に制限し得る。近年の開発はポリマー系SSEの将来性を示し続けることができるが硫化物系及び酸化物系SSEの開発へのいっそう大きな傾向がある。
【0018】
ASSBの構造及び製造
ASSBと従来のLIBとの間のセル構造の相違は、図1に例示される。ASSBにおいて、SSEは、液体電解質及びポリマーセパレーターを有する代わりに高密度層の形態で両方として作用し、さらに、イオン導電性網目をもたらすために(リチウム金属アノードの場合を除いて)SSE材料を各電極内で十分に混合して活物質と十分に接触させなければならない。酸化物系SSEについては、活性電極とSSE材料とを混合して同時焼結し、十分な接触を得る。硫化物系及びポリマー系SSEについては、これらの材料の有利な機械的可撓性のためにコールドプレスによって接触が達成される。
【0019】
異なった構造及び化学的性質に加えて、いくつかの実施形態ではASSBはまた、従来のLIBと比べて異なった製造プロセスを必要とし得る。従来のLIB組立体において、アノード及びカソードのフィルムを製造し、セパレーター層と共にロールツーロール法で一緒に巻き付け、その後に、液体電解質の浸透を行なうことができる。アノード及びカソード上に安定な固体電解質相間層を生じさせるためにセルの形成サイクルの繰り返し/状態調節が必要とされる。しかしながら、高密度SSE層が電極層間に残存しなければならず、従来のロールツーロール法では亀裂又はボイドを生じ得るので、ロールツーロール法は、ASSBに特に適していない。
【0020】
したがって、ASSBは通常、単一シートを切断及び積層してセル積層体を作ることによって製造される。いくつかの実施形態では、カソード材料を集電体の一方の面上にコートし且つアノード材料を他方の面上にコートするバイポーラ板が使用される。この形態因子は、より高いエネルギー密度を可能にし、形態因子を角柱状及びパウチセルに制限する。リチウム金属は、従来の切断技術を妨げる著しい粘着性を有するので、リチウム金属アノードを利用するASSBは、レーザー切断法の使用を必要とする。
【0021】
【表1】
【0022】
従来のLIB及びASSBの構成要素、並びに従来のLIBの材料コストの一覧を表1に記載する。従来のLIB中の液体電解質の材料コストは、重量当たりの基準で他の主成分と比べてかなり高く、いくつかのアノード材料及びカソード材料と全く同じように高価である(しかしセルにおける実際の重量分率はずっと小さい)。ASSBについては、SSEの材料コストはさらに高くなり得、例えば硫化物系Li11について約$50/kgのコストである。電解質を製造してセル製造に組み込む時の加工及び管理費のコストが計算される場合、このコストは場合によってはさらに高い。
【0023】
SSEは典型的に、固体電解質/電極界面に帰される分解機構のためにそれらの寿命末期に達する。空間電荷層の形成、元素の相互拡散、及び活物質/電解質界面における電気化学的衝撃などの様々な機構が生じ得る。電気化学サイクルの繰り返し中のカソード関連の体積変化のためにSSE層中に亀裂及びボイドが生じ得、セルのイオン導電率を低減させることができる。さらに、SSEは、粒界に沿って成長して内部短絡を起こし得る、Liデンドライト形成の現象を完全に軽減することができない。
【0024】
従来のLIBに対してASSBの再循環のあり得る課題
従来のLIBと比べてASSBの化学的性質及び構造の著しい相違のために、ASSBを再循環させるために考慮に入れるべき固有の側面がある。主な課題の1つは、他のセル構成要素からのSSEの分離である。従来のLIBにおいて、N-メチル-2-ピロリドンなどの溶媒を使用することによってセルの分解後に液体電解質を容易に洗浄除去することができる。溶媒として超臨界COを使用する回収を実証するいくつかの研究があるが、従来のLIBの再循環において分離された液体電解質は典型的には回収されず、回収不能な損失である。表1に示される材料の有効値のために、ASSBのための再循環システムは、実際的な方法でSSEを回収及び再生することができるのがよい。しかしながら、SSEの均質混合及び固体性は、SSEとカソード活物質とが同時焼結される酸化物系の化学反応のための実施可能な洗浄方法を妨げる。他方、硫化物系及びポリマー系SSEは、あり得る溶媒系の分離方法を示す。また、有効な再循環プロセスは、異なったタイプのSSEとカソードとを含むことができるASSB供給原料を取り扱うことを考えなければならず、適切な方法で材料を分離及び再生することができる。
【0025】
リチウム金属アノードはより高いセルのエネルギー密度を可能にするが、これらのアノードは、モジュール内の単一セルが内部短絡を有し且つモジュールがかなりの量の残留リチウム金属と共に廃棄処分される場合に再循環についてのいくつかの問題を生じることがある。リチウム金属は粘着性であることが公知であり、細断、圧潰、又はふるい分けなどの機械的分離方法に関する問題を生じることがある。さらに、リチウム金属の反応性は、リチウムが急速な発熱反応を起こし得る、具体的には溶液系プロセス又は他の非理想的な環境において、著しい安全上の問題をもたらす。リチウム金属アノードを利用しない、従来のLIBでさえ、それらの固有の反応性のために安全性のリスクを以前からもたらしている。これまでの10年間、かなりの量のLIB廃棄物の貯蔵のためにいくつかの事故が起こっている。廃棄処分されたASSB中にさらにいっそう反応性の材料があり得るため、この安全上の問題は、再循環プロセスを設計する際に明らかにされなければならない。
【0026】
また、SSEの化学的性質自体は、安定性又は安全上の問題をもたらし、SSEを扱うために特殊なプロセス又は環境が必要とされる場合がある。特に、硫化物系SSEについては、それらは水/湿り雰囲気の存在下で不安定であり、すぐに加水分解し、副生成物として毒性HSガスを発生し、ヒトの健康への著しい安全上の問題をもたらす。酸化物系SSEは周囲条件においてずっと安定しており、低い健康リスクで扱うことができる。しかしながら、それらは、格子リチウムと空気中のHO及びCOとの間の反応からあり得るLi/H交換及び表面での様々なLi塩の形成によって、水への暴露による或るレベルの分解をまだ受け得る。また、PEOポリマー系SSEは低いレベルのリスクを示すが、PEOは非常に吸湿性でありすぐに吸水することができる。これらの問題は、セルの分離及び溶液ベースの加工などのプロセスの間に著しく、次の欄で考察される。
【0027】
現在の再循環方法のタイプ
最新のLIB再循環方法は典型的に、機械的分離、乾式精錬、及び湿式精錬プロセスの組み合わせを利用し、それらは、新しい材料を再合成するために使用される異なった形態に電池構成要素を細分する。湿式精錬及び乾式精錬では、材料を他の使用可能な形式に化学的に分解する。ASSBシステムにおけるより複雑な組成物、化学、形態因子、及び場合によってはより貴重な金属のためにこれらの従来の再循環プロセスは適しており、さらなる問題点を考慮に入れなければならない。各々の再循環プロセスの工程及びASSBの再循環に伴なう課題の一覧を図2A~2Eに示す。
【0028】
電池パックとモジュールとの機械的分離はしばしば、他の再循環プロセスのための供給原料の調製として必要である。この工程の主な目的は、分解、細断、圧潰、及びふるい分けの組み合わせを使用して主成分を分離することである。特にEV及びハイブリッド電池パックにおいて、サイズ及び形状の標準が無いため、セル分解は大規模なプロセスのために広範囲に利用されておらず、より簡単な細断及びふるい分けプロセスを優先して除外される。集電体とセル-ケーシング材料の大部分は、密度、サイズ、及び展性などの電極/電解質材料との物理的相違のために除去される。また、中位の熱処理及び有機溶媒による洗浄工程は有機結合剤及び/又は電解質を除去するためにしばしば使用される。機械的分離のプロセスは、しばしば「ブラックマス」と称される、カソード及びアノードの粉末の混合物をもたらし、それは次に、湿式精錬又は直接再循環技術を用いてさらに分離及び加工される。
【0029】
従来のLIB再循環と共に一般的であるが、ASSBシステムはこれらの従来のプロセスにさらに別の難題を投げかける。Li金属アノードを有するASSBに関する上述の問題と共に、硫化物系及びポリマー系SSEの可撓性はまた、ブラックマスを集電体から分離すること又はメッシュフィルターに通過させることの難しさを伴うことがある。さらに、カソード及びアノードは典型的に、結合剤によって一体に保持されるミクロンサイズの粒子から構成されるが、酸化物系SSEを利用する電極は2つの電極の間に焼結接点、並びに高密度焼結層を必要とする。したがって、これらのセラミック粉末の硬度のために細断/圧潰プロセス中に工具損傷を悪化させることに加えて、カソード材料をSSE材料から物理的に分離することは実用的ではない。
【0030】
乾式精錬方法は、高温炉を使用して使用済みLIBからの金属酸化物を、カソード、セルケーシング、及び集電体の組み合わせに由来する、Co、Cu、Fe、及びNiの合金に製錬することを必要とする。ASSBの再循環の著しい利点は、全電池パック及びモジュールを供給原料として直接に使用することができるので、仕分け又は予備処理工程が必要とされないということである。このプロセスの高い炉温度が潜在的危険要因、並びに作業環境からのファンネルガスへの煙突の使用をなくすので、作業者の安全性及び反応性の問題は最低限である。この技術の商品化は、科学の簡素且つ完全な発達にありUmicore及びその他の会社は乾式精錬を使用して高価値の金属を良好に再循環させている。
【0031】
しかしながら、この技術のために必要とされる高い融解温度は、著しいエネルギー費を招く。炭素添加剤、黒鉛アノード、及びその他の材料の酸化はプロセスのエネルギーのかなりの部分を供給することができるが、これはまた、これらの構成要素の回収不能な損失並びにかなりの量のCOの生成をもたらす。さらに、Mn、Li、及びAlは通常、溶融中に酸化され、スラグの一部として除去され、潜在的回収率をさらに低下させる。ポリマー系及び硫化物系SSEは燃焼除去されるか又はスラグの一部になり、この方法で回収され得ず、硫化物系SSEは場合によっては、大気中への放出前に浄化される必要がある副生成物として毒性ガスを生じる。酸化物系SSEについては、La、Zr、Ti、及びGeなどの有価金属は、溶融合金又はスラグの一部になり、カソード及びSSE製造のために分離するのが困難となる。著しいエネルギーを使用して合金を回収し、追加のエネルギー、時間、及び材料の投入コストを必要とする、湿式精錬及び化学沈殿プロセスなどの方法によってそれを次いで細分し、電池構成要素に合成することを必要とするので、それもまた、最適化された再循環システムではない。最後に、この方法は典型的に、やや低い回収率を有し、コバルトなどの有価金属を回収することに焦点を合わせることによって通常は経済的に発展し得るが、次世代カソードはコバルト部分を低減することを目指すので、これは、持続可能ではない。
【0032】
湿式精錬は、溶液中に含有される様々な有用な金属を酸-塩基浸出、精製、及び濃縮することによって金属化合物を化学的に分解し、溶液中に溶解することと、最後に、炭酸塩、シュウ酸塩、又は水酸化物などの適切な対アニオンを使用して所望の材料を沈殿させることとを包含する湿式化学に基づく方法である。それは、大部分のLIB構成要素を>90%の高い回収率で再循環させ、高純度の材料を再生し、異なったカソード化学を扱う可能性を示し、低いエネルギー費及びガス排出を有する。酸-塩基浸出の反応速度を増加させるために、廃棄されたLIBは典型的に機械的に分離され、ふるい分けされてセルケーシング及び集電体材料を除去する。次に、得られたブラックマスを加熱して残留有機溶媒及び結合剤を燃焼除去し、その後に、硫酸及び過酸化水素などの溶液中に分散させ、ここで、より化学的に安定な炭素材料が濾塊として分離されて別々に採取及び再生され得る間にカソード材料は溶解される。このプロセスは乾式精錬ほど成熟しておらず、浸出剤、抽出プロセス、及び再生方法の変更による継続的な改良があった。湿式精錬再循環の著しい利点は、pHを調節すると共に錯化剤及び沈殿剤を調整するプロセスによって高純度のLiNiMnCo(NMC)化合物及び適切なモルフォロジーを有するSSE材料を選択的に共沈殿させることができるということである。また、誘導結合プラズマ(ICP)測定と、選択された遷移金属塩を加えて反応器溶液を目標とする組成物に変えることの組み合わせによって所望の組成物の沈殿を達成することができ、異なったNMC又は酸化物系SSEの化学的性質に有効に耐性がある供給原料を可能にする。
【0033】
湿式精錬プロセスは、大部分のLIB成分を再循環させて高い回収率、低いエネルギー費、及びCO排出で高純度の材料を再生することができる。しかしながら、プロセスは複雑であり、材料の投入コスト、及び発生されるかなりの量の危険廃棄物溶液を特に考慮して費用がかかる。また、湿式精錬方法は、特定のASSBシステムに適していない場合がある。高反応性Li金属は、前もって予備処理されていない場合浸出溶液中で激しく反応し得る。さらに、硫化物系SSEは、それらの不安定性及び毒性HSガスの発生をもたらすために水中に分散させることができない。ポリマー系SSEは、酸水溶液中への或る溶解度を有することができるが、小さい濃度でも反応器溶液の粘性をかなり変えることができ、共沈殿プロセスに悪影響を与える可能性があり、溶液からのPEO及びLiTFSIの回収/分離の有効な形態はありそうもない。
【0034】
酸化物系SSE及び遷移金属酸化物カソードは化学的性質において似ており、対アニオンと反応器条件の注意深い選択によってNMC又はSSE化合物の選択的沈殿を可能にする。温度、pH、並びにNa-Cyanex-272及びNa-D2EHPAなどの特定の抽出剤の利用の注意深い調節によって、ニッケル、コバルト、及びマンガンを硫酸塩溶液中で良好に分離することができることが実証された。反応器条件の追加の微調整及び特化された抽出剤(例えば稀土類元素のために設計されたCyanex-572など)の利用は、カソード関連化合物から、同様に電解質/カソード反応を抑えるために一般に使用される任意の金属酸化物コーティング配合物からのSSE関連化合物の選択的分離及び沈殿を可能にすることができる可能性が高い。さらに、ランタン、ジルコニウム、及びチタンなどの、酸化物系SSEのための一般に使用される元素の金属水酸化物は、ニッケル、マンガン、及びコバルトのKsp値よりも数オーダー低いKsp値を示す。また、溶解度におけるこの著しい差をカソード材料からのSSE材料の選択的沈殿のために利用することができるが、所望のモルフォロジーを得るためにキレート化剤及び抽出剤はまだ必要とされる場合がある。湿式精錬は従来のカソード及びアノード化合物を再循環させる時に大きな利点を有するが、SSEの化学的性質及び組み合わされたカソード/SSE混合物の複雑さは、ASSBの再循環に対する著しい障害である。
【0035】
ASSBの直接再循環プロセスは、電池構成要素を化学的に分解及び再合成する必要なしに材料を再生又は再循環させることを必要とする。それ故、理想的な直接再循環システムは、材料及び/又は高エネルギー投入がNMC又はSSE化合物中の蓄えられたエネルギーを分解及び放出するのを避けることによって従来の再循環よりも低いエネルギー費を招く。直接再循環方法は、材料の投入及び加工の両方を考慮に入れるとき、湿式精錬及び乾式精錬方法よりもはるかに少ない、それぞれ約5MJ/kgcathode及び約0.6kgCO2eq/kgcathodeの温室効果ガス排出を生じながら、わずかなエネルギーしか必要としないことをLiCoOのEverBattモデルを利用する既存の研究は実証した。比較して、湿式精錬及び乾式精錬方法は、それぞれ約2.3及び約2.5kgCO2eq/kgcathodeを発生しながら、約31及び約19MJ/kgcathodeを必要とする。経済的観点から、経済的実行可能性を達成するために直接再循環方法の開発が重要であり得る。
【0036】
したがって、直接再循環は、環境への優しさと組み合わせた低いエネルギー費の利点を有することができる。老化又は劣化した材料を初期の状態に再生することができ、プロセスに応じて、受け取られた材料を新しい電極製造のために準備ができている構成要素に変換する比較的簡単且つ単純なプロセスを達成することができる。直接再循環における主な工程は、リチウム消耗カソード材料がリチウム源と反応してその元の化学量論を回復し、その後に、又は共に熱処理を実施して表面構造及びモルフォロジーを回復する再リチオ化プロセスを必要とする。従来の液体電解質は典型的に、カソード再生前に洗浄除去されるので、SSEを加えることによってこのプロセスは複雑さを増す場合がある。
【0037】
水熱再生において、NMC、LCO、又はLMOなどの消耗カソード材料をLiOH又はLiSOなどのリチウム塩の水溶液中に分散させ、テフロンなどの化学的に不活性な容器内に封止し、数時間の間100℃~200℃に加熱した。通常、この後に、洗浄、濾過、及び簡単な熱処理工程を実施して表面特性を回復する。この方法は、異なったレベルのリチウム消耗でのカソード粉末の再生を可能にし、バッチごとに化学組成を分析して必要とされる追加のリチウム塩の量を決定しなければならない従来の固体再生よりも著しい利点を可能にする。さらに、Li1+xAlTi2-x(PO)などの特定の固体電解質が水熱法を使用して良好に合成された。固体電解質に関して水熱法を利用するごく少数の研究があるが、この方法による再生は、化学的性質における類似性及び酸化物系カソードに関する概念実証のため、あり得る。特に、これは、加工の観点において特に有利であり得、ここで、十分に混合されるか又は同時焼結されたカソード-電解質粉末は、再生のための完全な分離を必要としない。後続の熱処理工程は、表面回復工程として及びカソードと電解質粒子との間の焼結接点を再確立するために両方で機能することができる。
【0038】
PS 3-チオホスフェートを利用する硫化物系SSEは、極性溶媒中ですぐに溶媒和される。その後、溶解/沈殿法を硫化物系ASSBのための有効な再循環方法として利用することができると言える。エタノール又はアセトニトリルなどの安価な且つ安全な溶媒を使用して、硫化物系SSEを溶解してセル構成要素の残部から濾過することができる。これらの溶媒は従来のカソード及びアノードと非反応性であり、溶解プロセスは、SSEの化学分解なしに行われ、それらは良好に溶解されて結晶形態に再結晶化され、ASSBにおいて再生使用することができる。極性溶媒溶液が低蒸気圧溶媒の蒸発及び収集によってSSEの回収を可能にしながら、不溶性カソード及びアノードの粉末を別々に加工及び再生することができる。典型的にはこの後に、沈殿したSSE材料の中位の熱処理を実施して、粒度を増加させることによって導電率を改良し、その後に、高密度SSEフィルムに再加工するか又は電極製造において使用する。この低エネルギー集約的なプロセスは全体に、高い回収率を有しながら非常に少ない量の廃棄物を生じることができる。
【0039】
特定のポリマー系SSEもまた、溶解/沈殿法を使用する再循環及び回収における用途があり得る。PEOは、十分に研究された材料であり、水及びアセトニトリルなどのいくつかの極性溶媒に可溶性である。これは、ポリマー系SSEの製造における著しい利点であるが、また、セル構成要素の残部又はブラックマスからPEO系SSEを分離する有効な方法を可能にすることもできる。LiTFSIなどの一般的に使用されるリチウム塩もまた、水に可溶性であり、SSE再循環の安全な且つ費用効果が高い方法を場合によっては可能にする。また、いくつかの研究は、攪拌を必要とせずに30分以内の水中浸漬でモノマー中へのPEOの完全な溶解性及び溶解を実証した。次いで、加熱下で水の除去によってモノマー及びLi塩をSSE/ポリマー網目中に戻すことができる。
【0040】
ASSBの再循環の設計及び要件
図3に示されるプロセスの流れの略図において、本発明者は、セルパックの形態、安全性要件、及び異なったASSBシステムの加工性を考慮に入れて、ASSBの再循環の方法の実施形態を構想する。最初の工程において、セルパックを内部化学に基づいて分離し、健全度について検査してから完全に放電させ、一切の電気的仕事を元に戻し、並びに残留リチウム又は他の反応性成分の量を最小にする。これが実施可能でない状態において、セルパックの分解は乾燥した二酸化炭素リッチ環境(<4%酸素)内で行われ、セルパックの細断及び/又は圧潰の自動化プロセスを利用する。作業者は危険な状態に晒されないように保護され、分解されたセル構成要素の反応性は水分が無いことによって抑制され、COとの反応によって残留リチウム金属を安定な炭酸リチウム化合物に変換しながら硫化物系SSEからのHSガスの形成を防ぐ。後続のふるい分けは、外側のセルパック構成要素及び/又は集電体の分離を可能にし、これは、従来の方法を用いて再循環されるか又は廃棄処分される。
【0041】
次に、得られたアノード、カソード、及びSSE粉末を分散させ、エタノールなどの極性溶媒中で十分に洗浄して、硫化物系SSEを最初に溶解し、その後に、濾過によって不溶性成分を溶液から分離する。溶液を集め、蒸発させて硫化物SSE材料を再結晶させ、熱処理してミクロ構造を改良し、新しいASSB製造へと再導入する。潜在的なPEO系ポリマーSSEを分離するために、PEO溶液の粘性のために50℃超の水又は水/アルコール混合物を使用して追加の洗浄工程を実施する。この溶液は、理想的にはPEOモノマーとLi塩(LiTFSI)とを含有し、これは、加熱及び溶媒の除去によってSSEに変化させられる。水熱又は湿式精錬方法を使用して不溶性成分を分離及び処理する。
【0042】
水熱再生プロセスのために、重力分離の形態を使用して一切の黒鉛又はカーボンブラックを固体混合物から最初に分離することが適しているであろう。その後、残りのカソード-SSE固形分を水溶液中に分散させる。先行のリチウム金属反応からの一切の残留炭酸リチウムもまた可溶性であり、水熱再生のために必要とされるリチウム塩水溶液に寄与し、pH測定を利用して溶液中のリチウム濃度を決定し、リチウム塩を加えることによってコンシステンシーを満たすことができる。水熱再生の後、粉末バッチを化学組成について測定し、目標とするカソード/電解質比になるように追加のカソード又はSSE粉末を加える。表面モルフォロジーを回復してカソード/SSE粒子の接点を形成するために粉末バッチを同時焼結し、その後に、新しいASSB製造に組み込む。
【0043】
供給原料が様々な組成のカソード又は酸化物系SSEを含有することが知られている場合、湿式精錬プロセスを利用することが適しているであろう。固形分混合物を酸浸出溶液中に分散させ、不活性黒鉛及びカーボンブラックが濾塊として分離される。溶液中の目標とするNMC及びSSE組成物を得るためにICP分析及び追加の遷移金属塩が必要とされる。これらの工程の後に注意深く制御されたプロセスが続き、選択的な対アニオン、キレート化剤、及び抽出剤を用いてNMC前駆体化合物を別々に沈殿させて集め、その後に、SSE化合物及びあり得るコーティング配合物を沈殿させて集める。NMC及びSSE材料を別々に固相法を用いて、固相法を用いてリチウム化/熱処理し、新しいASSB製造に組み込む。
【0044】
方法の実施形態では、全固体電池(ASSB)のための再循環プロセスは、セラミック電解質などの固体電解質(SSE)を有する電池の再循環ストリームを受け入れる。充電材料からの有害反応を中和すると共に、有益な生成物を生じて再循環される価値を助長する反応を促進するように選択される不動態化物質の存在下で、物理的攪拌が行われる。
【0045】
本明細書に記載される方法の実施形態は、一つには、固体電解質が、未検知の火災につながり得る無制御放電を避ける時の安全性のために従来の液体電解質よりも好評を得ているという観察に基づいている。残念なことに、SSE充電材料は、酸素雰囲気中で分解される時に揮発性であり得る、リチウム金属又はケイ素金属などの金属アノードと一緒にしばしば使用されるという欠点が従来の方法にはある。したがって、ここでの構成は、リチウム金属アノード材料の有害な外気反応を防ぐだけでなくむしろ遊離されたリチウム金属アノード材料との反応から有益な生成物をもたらす不動態化物質を提供することによって従来の方法の欠点を実質的に克服する。
【0046】
ASSBと従来のリチウムイオン電池との間のセル構造の相違が図1A及び図1Bに例示され、ここで、液体電解質及びポリマーセパレーターの代わりに、SSEは、高密度層の形態で両方として作用する。さらに、イオン導電性網目をもたらすために(リチウム金属アノードの場合を除いて)SSE材料を各電極内で十分に混合して活物質と十分に接触させなければならない。酸化物系SSEの場合、これは典型的に、活性電極とSSE材料の混合及び同時焼結を必要とする。硫化物系及びポリマー系SSEについては、この接触は、これらの材料の有利な機械的可撓性のためにコールドプレスによって達成される。
【0047】
図1Bに例示されるように、固体電解質材料が充電材料と混合され、図1Aにおけるようなセパレーター材料の分散層ではなく高純度電解質の高密度凝集を形成する。ASSBセル内に残っているいずれの残留電荷も、導電性集電体と同時に物理的に分解される時に突然発散され得る。不動態化物質は、この電気化学反応を中和し、それに影響を与えて有益な生成物を画定する。
【0048】
本明細書に記載される実施形態では、固体電池を再循環させるための方法は、図1Bに例示されるように、充電材料と混合された固体電解質(SSE)を備える二次電池の再循環ストリームを受け取ることを包含する。再循環プロセスは、気体環境などの不動態化物質を導入して、再循環ストリームを画定する電池からの充電材料の望ましくない反応又は放電を中和する。したがって、再循環ストリームに入る電池の状態は未知であるので、ASSBは再循環の前に手動で放電される必要はない。機械的プロセスが、再循環ストリーム中の電池を撹拌して、その中に蓄えられた充電材料及び電解質を遊離させる。機械的プロセスは、電池容器、集電体及び充電材料の物理的細断、ハンマー打ち又は微粉砕などの様々な物理的操作を包含する。さらなる処理は、充電材料と固体電解質とを画定する粒状又は粉状物質をもたらす渦電流及びフロス浮遊の少なくとも1つによってニッケル、マンガン、及びコバルト(NMC)と集電体とを分離することを包含する。
【0049】
再循環プロセスは、撹拌された電池から充電材料及び電解質を回収することを包含し、不動態化物質が撹拌された電池と結合して有益な生成物を生成するようにする。対照的に、従来の液体電解質はしばしば溶解され、かなりのリチウムと共に充電材料の浸出によって失われる。
【0050】
いくつかの実施形態では、電池は金属アノードを備え、ここで金属アノードは非不活性環境内で反応性であり、不動態化物質はアノード金属との有害な反応を緩和し、出力生成物を製造するための有益な反応に関与している。出力生成物は、充電材料中のアノード材料との気体反応に基づいて変化し、存在している。ケイ素金属及びリチウム金属はしばしばアノード充電材料として使用されるが、しかしながらリチウム金属は、改良された貯蔵容量を有し、制御されていない(酸素添加)雰囲気中でいっそう反応性である。いくつかの実施形態では、リチウム金属は導電性ポリマーでコートされる。
【0051】
いくつかの実施形態では、固体電解質は、有機電解質又はポリマーゲル電解質(粘着ポリマー電解質)、水性電解質、又はセラミック電解質である。
【0052】
いくつかの実施形態では、不動態化物質はCOを含み、Liを含む炭酸リチウム前駆体をもたらし、それは、加熱時に炭酸リチウムを生じる。別の実施形態では、不動態化物質は、水素及びLiSなどの有益な生成物をもたらす硫化水素である。いくつかの実施形態では、不動態化物質は、有益な生成物が水酸化リチウムであるような適切な不活性ガスを含有する。
【0053】
いくつかの実施形態では、再循環ストリーム中の電池は、カソード材料のためのNMC(ニッケル、マンガン、コバルト)をベースとした化学的性質を有する。しかしながら他の適した電池化学を方法の他の実施形態では使用することができる。不動態化物質は、SSEと併用して使用される、充電材料、特にアノードの金属充電材料に基づいて選択される。いくつかの実施形態では、不動態化物質は、還元ガスと不活性ガスとの混合物である。他の実施形態では、不動態化物質は消火ガスである。
【0054】
方法のいくつかの実施形態では、ASSBをCOリッチ環境中で孔開けし、それによって高反応性リチウム金属を不動態化する。その場合には、ASSBは、例えば、ハンマーミル、剪断シュレッダー、ロールクラッシャー又は同様な装置内での機械的分解に対して安全である。不動態化反応は以下の通りである:
Li+CO=Li
Li+高いT=LiCO+CO
代替の実施形態では、COリッチ環境中でASSBを孔開けする代わりに、COガスをセル内に直接に注入する。方法のいくつかの実施形態では、モジュール又はパウチ又はパックをCOガスの存在下で直接に細断する。いくつかの実施形態では、COリッチ環境はアルゴン又は別の不活性ガスを含有する。いくつかの実施形態では、不動態化物質の圧力は周囲圧力又は1atmに維持される。いくつかの実施形態では、不動態化物質は遮蔽ガスである。
【0055】
いくつかの実施形態では、ASSBをHSリッチ環境中で孔開けして硫化リチウムを得る。反応はLi+HS=LiS+Hである。代替の実施形態では、HSガスをASSB内に直接に注入する。他の実施形態では、モジュール又はパックをHSガスの存在下で細断する。いくつかの実施形態では、セル、モジュール、及びパックを備える電池を0℃未満で冷却し、例えば、ヘリウム、アルゴン、ネオン、キセノン、クリプトン、ラドン、CO又はHSの存在下の不活性雰囲気中で細断する。
【0056】
いくつかの実施形態では、細断装置例えばハンマーミル、剪断シュレッダー、ロールクラッシャー等は、細断中に0℃以下に維持される。
【0057】
NMCカソード材料及び箔をセラミックセパレーター及びリチウム金属又は化合物から分離するために電池は、剪断細断されるか又はロールクラッシュされる。代替の実施形態では、NMC及びアルミニウムは、渦電流によってアノード材料から分離される。代替の実施形態では、NMC及びアルミニウムは、フロス浮遊によってアノード材料から分離される。
【0058】
細断された材料(ブラックマス)は不活性雰囲気中で又は鉱油の存在下でふるい分けされ、リチウム金属の回収を可能にする。ふるい分けした時、ブラックマスはカソード粉末、金属系アノードからの塩、及び固体電解質材料を含有する。固体電解質材料、例えば、硫化物、ポリマー等を適切な溶媒中に選択的に溶解してカソード材料を得る。いくつかの実施形態では、リチウム系アノード化合物、例えば、水酸化リチウム、炭酸リチウム、硫化リチウム、硫酸リチウム等を冷水で洗浄してリチウムイオンを溶解する。次に、リチウム溶液を濾過し、精製し、リチウム塩として結晶化した。固体電解質材料を湿式精錬プロセスに供して塩、前駆体又はカソード材料を回収する。固体電解質材料、例えば酸化物が溶解性ではない場合、固体電解質とカソード材料の両方が酸性溶液中に浸出される。
【0059】
固体電解質の有無にかかわらず溶解されたカソード材料については、異なった溶解度、pH等に基づく分離が行われ、浸出溶液中の固体電解質元素を除去して、Niイオン、Mnイオン、Coイオン、Liイオン及び/又はNaイオンを含有する溶液を得る。精製した溶液を溶媒抽出に供して、異なった元素を分離するか又は異なった元素の比を調節した後にNMC前駆体を直接合成する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される再循環方法によって回収されたリチウムは少なくとも80%である。
【0060】
本明細書に記載された実施形態の一部は、Matter (2020)“Recycling for All Solid-State Lithium-Ion Batteries”共著者Luqman Azhari, Sungyool Bong, Xiaotu Ma, and Yan Wangにおいて公開された。
【0061】
本明細書に記載された本発明は最も実用的な方法である。しかしながら、本発明の範囲内で逸脱があり得、当業者には改良形態が思い浮かぶと理解される。その場合に上記の記載に対して、サイズ、材料、形状、形態、機能、工程、並びに操作、組立及び使用の方法における変化を包含するための、本発明の部分のための最適な寸法の関係は当業者には明白であり、図面に例示され本明細書に記載される関係に対する全ての同等の関係は、本発明によって包含されることが意図されていると理解されるはずである。
【0062】
したがって、前述の内容は、本発明の原理のみ例示するものとして考えられる。さらに、多数の改良形態及び変更は当業者には容易に思い浮かぶであろうが、図示及び記載される正確な構造及び操作に本発明を限定することは望ましくなく、したがって、全ての適した改良形態及び同等物は、本発明に用いることができ、本発明の範囲内に含まれ得る。このような同等物は本発明及び特許請求の範囲の範囲内にある。本出願における引用された発行特許及び公開特許出願を含む全ての文献の内容は本願明細書に参照によって組み込まれる。
【0063】
本発明はここに完全に記載されており、それは、以下の特許請求の範囲によってさらに説明される。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3
【国際調査報告】