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特表2024-528482半透明低誘電ポリイミドフィルムおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-30
(54)【発明の名称】半透明低誘電ポリイミドフィルムおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20240723BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20240723BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20240723BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
C08J5/18 CFG
C08G73/10
B32B27/34
H05K1/03 610N
H05K1/03 670Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579380
(86)(22)【出願日】2022-06-24
(85)【翻訳文提出日】2023-12-22
(86)【国際出願番号】 KR2022009019
(87)【国際公開番号】W WO2022270968
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】10-2021-0083076
(32)【優先日】2021-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520160738
【氏名又は名称】ピーアイ・アドバンスド・マテリアルズ・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ミン サン
(72)【発明者】
【氏名】バック,ソン ユル
(72)【発明者】
【氏名】リー,キル ナム
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
4J043
【Fターム(参考)】
4F071AA60
4F071AA86
4F071AF30Y
4F071AF40Y
4F071AG05
4F071AH13
4F071BA02
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4F071BC12
4F100AB01B
4F100AB33B
4F100AK01B
4F100AK49
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4F100BA02
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4F100JA05
4F100JA05A
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4F100JG05A
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4F100JK17B
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4F100JN01A
4F100YY00A
4J043PA04
4J043PA06
4J043PA08
4J043PA19
4J043PB08
4J043PB15
4J043PC015
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4J043QB15
4J043QB26
4J043QB31
4J043RA06
4J043RA35
4J043SA06
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4J043SA62
4J043SB01
4J043SB02
4J043TA22
4J043TB03
4J043TB04
4J043UA121
4J043UA122
4J043UA131
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4J043UA141
4J043UA151
4J043UB121
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4J043UB402
4J043VA011
4J043VA021
4J043VA041
4J043VA051
4J043VA061
4J043XA16
4J043XA18
4J043XB27
4J043XB35
4J043YA06
4J043YA13
4J043YA14
4J043ZA12
4J043ZA43
4J043ZA46
4J043ZA52
4J043ZB11
4J043ZB50
4J043ZB58
(57)【要約】
本発明は、誘電損失率(Df)が0.003以下であり、ヘイズが3.5%以下であり、光透過率が45%以上であり、ガラス転移温度(Tg)が300℃以上、320℃未満である、ポリイミドフィルムおよびその製造方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第1二無水物酸成分、第2二無水物酸成分およびジアミン成分を有機溶媒中で重合してポリアミック酸を製造するステップと、
(b)前記ポリアミック酸を含む前駆体組成物を支持体上に製膜した後、イミド化するステップとを含み、
前記第1二無水物酸成分は、オキシジフタリックジアンハイドライド(ODPA)、ビフェニルテトラカルボキシリックジアンハイドライド(BPDA)、ピロメリティックジアンハイドライド(PMDA)およびベンゾフェノンテトラカルボキシリックジアンハイドライド(BTDA)からなるグループより選択されたいずれか1つであり、
前記第2二無水物酸成分は、オキシジフタリックジアンハイドライド(ODPA)、ビフェニルテトラカルボキシリックジアンハイドライド(BPDA)、ピロメリティックジアンハイドライド(PMDA)およびベンゾフェノンテトラカルボキシリックジアンハイドライド(BTDA)からなるグループより選択されたいずれか1つであり、
前記ジアミン成分は、パラフェニレンジアミン(PPD)、ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、m-トリジン(m-tolidine)、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-R)、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-Q)、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン(BAPP)、4,4’-ジアミノベンズアニリドおよび3,5-ジアミノベンゾイックアシッド(DABA)からなるグループより選択されたいずれか1つ以上であり、
ポリイミドフィルムの誘電損失率(Df)が0.003以下であり、ヘイズが3.5%以下である、
ポリイミドフィルムの製造方法。
(ただし、前記第1二無水物酸成分と第2二無水物酸成分は、互いに異なる)
【請求項2】
前記ポリイミドフィルムの光透過率が45%以上であり、
ガラス転移温度(Tg)が300℃以上、320℃未満である、
請求項1に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記ポリアミック酸を製造するステップにおいて、前記ジアミン成分を投入した後、前記第1二無水物酸成分を投入して先に重合させ、
次いで、前記第2二無水物酸成分を投入して重合させる、
請求項1に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記ポリイミドフィルムの二無水物酸成分の総含有量100モル%を基準として、前記第1二無水物酸成分の含有量が40モル%以上95モル%以下であり、
前記第2二無水物酸成分の含有量が5モル%以上60モル%以下である、
請求項1に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項5】
前記ポリイミドフィルムの二無水物酸成分の総含有量100モル%を基準として、5モル%以下の第3二無水物酸成分を追加的に含み、
前記第3二無水物酸成分は、オキシジフタリックジアンハイドライド(ODPA)、ビフェニルテトラカルボキシリックジアンハイドライド(BPDA)、ピロメリティックジアンハイドライド(PMDA)およびベンゾフェノンテトラカルボキシリックジアンハイドライド(BTDA)からなるグループより選択されたいずれか1つである、
請求項1に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
(ただし、前記第3二無水物酸成分は、前記第1二無水物酸成分および前記第2二無水物酸成分と異なる)
【請求項6】
前記第1二無水物酸成分は、ビフェニルテトラカルボキシリックジアンハイドライド(B
PDA)であり、
前記第2二無水物酸成分は、オキシジフタリックジアンハイドライド(ODPA)であり、
前記ジアミン成分は、パラフェニレンジアミン(PPD)である、
請求項1に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法により製造された、
ポリイミドフィルム。
【請求項8】
請求項7に記載のポリイミドフィルムと熱可塑性樹脂層とを含む、
多層フィルム。
【請求項9】
請求項7に記載のポリイミドフィルムと電気伝導性の金属箔とを含む、
フレキシブル金属箔積層板。
【請求項10】
請求項9に記載のフレキシブル金属箔積層板を含む、
電子部品。
【請求項11】
誘電損失率(Df)が0.003以下であり、
ヘイズが3.5%以下である、
ポリイミドフィルム。
【請求項12】
前記ポリイミドフィルムの光透過率が45%以上であり、
ガラス転移温度(Tg)が300℃以上、320℃未満である、
請求項11に記載のポリイミドフィルム。
【請求項13】
前記ポリイミドフィルムは、オキシジフタリックジアンハイドライド(ODPA)、ビフェニルテトラカルボキシリックジアンハイドライド(BPDA)、ピロメリティックジアンハイドライド(PMDA)およびベンゾフェノンテトラカルボキシリックジアンハイドライド(BTDA)からなるグループより選択されたいずれか1つの第1二無水物酸成分、
オキシジフタリックジアンハイドライド(ODPA)、ビフェニルテトラカルボキシリックジアンハイドライド(BPDA)、ピロメリティックジアンハイドライド(PMDA)およびベンゾフェノンテトラカルボキシリックジアンハイドライド(BTDA)からなるグループより選択されたいずれか1つの第2二無水物酸成分、および
パラフェニレンジアミン(PPD)、ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、m-トリジン(m-tolidine)、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-R)、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-Q)、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン(BAPP)、4,4’-ジアミノベンズアニリドおよび3,5-ジアミノベンゾイックアシッド(DABA)からなるグループより選択されたいずれか1つ以上のジアミン成分をイミド化反応させて得られる、請求項11に記載のポリイミドフィルム。
(ただし、前記第1二無水物酸成分と第2二無水物酸成分は、互いに異なる)
【請求項14】
前記ポリイミドフィルムの二無水物酸成分の総含有量100モル%を基準として、前記第1二無水物酸成分の含有量が40モル%以上95モル%以下であり、
前記第2二無水物酸成分の含有量が5モル%以上60モル%以下である、
請求項11に記載のポリイミドフィルム。
【請求項15】
前記ポリイミドフィルムの二無水物酸成分の総含有量100モル%を基準として、5モル
%以下の第3二無水物酸成分を追加的に含み、
前記第3二無水物酸成分は、オキシジフタリックジアンハイドライド(ODPA)、ビフェニルテトラカルボキシリックジアンハイドライド(BPDA)、ピロメリティックジアンハイドライド(PMDA)およびベンゾフェノンテトラカルボキシリックジアンハイドライド(BTDA)からなるグループより選択されたいずれか1つである、
請求項11に記載のポリイミドフィルム。
(ただし、前記第3二無水物酸成分は、前記第1二無水物酸成分および前記第2二無水物酸成分と異なる)
【請求項16】
前記第1二無水物酸成分は、ビフェニルテトラカルボキシリックジアンハイドライド(BPDA)であり、
前記第2二無水物酸成分は、オキシジフタリックジアンハイドライド(ODPA)であり、
前記ジアミン成分は、パラフェニレンジアミン(PPD)である、
請求項11に記載のポリイミドフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半透明でありながらも低誘電特性を示すポリイミドフィルムおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド(polyimide、PI)は、剛直な芳香族主鎖とともに化学的安定性が非常に優れたイミド環をベースとして、有機材料の中でも最高水準の耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性、耐化学性、耐候性を有する高分子材料である。
特に、ポリイミドは、優れた絶縁特性、すなわち低い誘電率のような優れた電気的特性により電気、電子、光学分野などに至るまで高機能性高分子材料として注目されている。
最近、電子製品の軽量化および/または小型化の傾向に伴い、集積度が高くて柔軟な薄型回路基板が活発に開発されている。
このような薄型回路基板は、優れた耐熱性、耐低温性および絶縁特性を有しながらも屈曲が容易なポリイミドフィルム上に金属箔を含む回路が形成されている構造が多く活用される傾向である。
【0003】
このような薄型回路基板としてはフレキシブル金属箔積層板が主に使用されており、一例として、金属箔として薄い銅板を使用するフレキシブル銅箔積層板(Flexible Copper Clad Laminate、FCCL)が含まれる。その他にも、ポリイミドを薄型回路基板の保護フィルム、絶縁フィルムなどとして活用したりする。
一方、最近、電子機器に多様な機能が搭載されるにつれ、前記電子機器に速い演算速度と通信速度が要求されており、これを満たすために、高周波で高速通信が可能な薄型回路基板が開発されている。
【0004】
高周波高速通信の実現のために、高周波でも電気絶縁性を維持できる高いインピーダンス(impedance)を有する絶縁体が必要である。インピーダンスは、絶縁体に形成される周波数および誘電定数(dielectric constant;Dk)と反比例の関係が成立するので、高周波でも絶縁性を維持するためには、誘電定数ができるだけ低くなければならない。
しかし、通常のポリイミドの場合、誘電特性が高周波通信で十分な絶縁性を維持できるほど優れた水準ではないのが現状である。
また、絶縁体が低誘電特性を有するほど、薄型回路基板で好ましくない浮遊容量(stray capacitance)とノイズの発生を減少させることが可能で、通信遅延の原因を相当部分解消できることが知られている。
【0005】
したがって、低誘電特性のポリイミドが薄型回路基板の性能に何より重要な要因として認識されているのが現状である。
特に、高周波通信の場合、必然的にポリイミドによる誘電損失(dielectric dissipation)が発生するが、誘電損失率(dielectric dissipation factor;Df)は、薄型回路基板の電気エネルギーの浪費の程度を意味し、通信速度を決定する信号伝達遅延と密接に関係していて、ポリイミドの誘電損失率をできるだけ低く維持することも、薄型回路基板の性能に重要な要因として認識されている。
これとともに、最近、透明ディスプレイ分野など透明絶縁基板の使用が要求される分野での製品が相次いで開発されるにつれ、一定の透明度(低いヘイズ)を備えたポリイミドの必要性が増大している。
【0006】
通常、濃厚な褐色のポリイミドフィルムの透明度を高めるために、弱い電子受容体二無水物酸、弱い電子供与体ジアミンを用いてπ電子の移動を制限したり、主鎖に体積の大きい置換基、非対称または非平面構造を導入してCTC効果を低減したり、脂肪族無水物、脂肪族ジアミンを導入してπ電子の共鳴構造の形成を阻害する方法などが適用されている。しかし、これらの方法は、ポリイミドフィルムの熱安定性および機械的物性を低下させるだけでなく、ポリイミドフィルムの誘電率を高めて低誘電特性が要求される分野での活用を制限している。
また、構造が複雑で単価の高い単量体が主に用いられて、透明ポリイミドフィルムの原材料費用は非常に高い方である。
したがって、ある程度の透明度を有しながらもポリイミドの固有の熱安定性および機械的特性を維持すると同時に、低誘電特性を有するポリイミドフィルムの開発が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】大韓民国公開特許公報第2003-0027249号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、上記の問題を解決すべく、低誘電特性の半透明なポリイミドフィルムおよびその製造方法を提供することを目的とする。
特に、複雑な構造の単量体ではない通常の単量体の組み合わせを用いて低誘電および半透明(低ヘイズ)特性を有する低価格のポリイミドフィルムを提供することを目的とする。そこで、本発明は、その具体的な実施例を提供することを実質的な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための、本発明の一実施形態は、
(a)第1二無水物酸成分、第2二無水物酸成分およびジアミン成分を有機溶媒中で重合してポリアミック酸を製造するステップと、
(b)前記ポリアミック酸を含む前駆体組成物を支持体上に製膜した後、イミド化するステップとを含み、
前記第1二無水物酸成分は、オキシジフタリックジアンハイドライド(ODPA)、ビフェニルテトラカルボキシリックジアンハイドライド(BPDA)、ピロメリティックジアンハイドライド(PMDA)およびベンゾフェノンテトラカルボキシリックジアンハイドライド(BTDA)からなるグループより選択されたいずれか1つであり、
前記第2二無水物酸成分は、オキシジフタリックジアンハイドライド(ODPA)、ビフェニルテトラカルボキシリックジアンハイドライド(BPDA)、ピロメリティックジアンハイドライド(PMDA)およびベンゾフェノンテトラカルボキシリックジアンハイドライド(BTDA)からなるグループより選択されたいずれか1つであり、
前記ジアミン成分は、パラフェニレンジアミン(PPD)、ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、m-トリジン(m-tolidine)、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-R)、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-Q)、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン(BAPP)、4,4’-ジアミノベンズアニリドおよび3,5-ジアミノベンゾイックアシッド(DABA)からなるグループより選択されたいずれか1つ以上であり、
ポリイミドフィルムの誘電損失率(Df)が0.003以下であり、ヘイズが3.5%以下である、
ポリイミドフィルムの製造方法を提供する。
(ただし、前記第1二無水物酸成分と第2二無水物酸成分は、互いに異なる)
【0010】
本発明の他の実施形態は、前記製造方法により製造された、ポリイミドフィルムを提供する。
本発明のさらに他の実施形態は、前記ポリイミドフィルムと熱可塑性樹脂層とを含む、
多層フィルムを提供する。
本発明のさらに他の実施形態は、前記ポリイミドフィルムと電気伝導性の金属箔とを含む、
フレキシブル金属箔積層板を提供する。
本発明のさらに他の実施形態は、前記フレキシブル金属箔積層板を含む、
電子部品を提供する。
本発明のさらに他の実施形態は、誘電損失率(Df)が0.003以下であり、
ヘイズ(haze)が3.5%以下である、
ポリイミドフィルムを提供する。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明は、特定の組成比で構成される特性成分を含むポリイミドフィルムおよびその製造方法により低誘電および半透明(低ヘイズ)特性を有する低価格のポリイミドフィルムを提供することにより、このような特性が要求される多様な分野、特にフレキシブル金属箔積層板などの電子部品などに有用に適用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明による「ポリイミドフィルム」および「ポリイミドフィルムの製造方法」の順序で発明の実施形態をより詳細に説明する。
これに先立ち、本明細書および特許請求の範囲に使用された用語や単語は通常または辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自らの発明を最も最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則り、本発明の技術的思想に符合する意味と概念で解釈されなければならない。
したがって、本明細書に記載された実施例の構成は本発明の最も好ましい一つの実施例に過ぎず、本発明の技術的思想をすべて代弁するものではないので、本出願時点においてこれらを代替可能な多様な均等物と変形例が存在できることを理解しなければならない。
本明細書において、単数の表現は、文脈上明らかに異なって意味しない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は実施された特徴、数字、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、1つまたはそれ以上の他の特徴や、数字、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加の可能性を予め排除しないことが理解されなければならない。
【0013】
本明細書において、量、濃度、または他の値またはパラメータが範囲、好ましい範囲または好ましい上限値および好ましい下限値の列挙として与えられる場合、範囲が別に開示されるかに関係なく、任意の一対の任意の上方範囲限界値または好ましい値および任意の下方範囲限界値または好ましい値で形成されたすべての範囲を具体的に開示することが理解されなければならない。
数値の範囲が本明細書で言及される場合、他に記述されなければ、その範囲はその終点およびその範囲内のすべての整数と分数を含むと意図される。本発明の範疇は、範囲を定義する時、言及される特定の値に限定されないことが意図される。
本明細書において、「二無水物酸」は、その前駆体または誘導体を含むと意図されるが、これらは技術的には二無水物酸でないかも知れないが、それにもかかわらず、ジアミンと反応してポリアミック酸を形成し、このポリアミック酸は再度ポリイミドに変換される。本明細書において、「ジアミン」は、その前駆体または誘導体を含むと意図されるが、これらは技術的にはジアミンでないかも知れないが、それにもかかわらず、ジアンハイドライドと反応してポリアミック酸を形成し、このポリアミック酸は再度ポリイミドに変換さ
れる。
【0014】
本発明の一態様によるポリイミドフィルムは、誘電損失率(Df)が0.003以下であり、ヘイズが3.5%以下であってもよい。本発明と同一または類似の単量体を一部使用してポリイミドフィルムを製造したとしても、前記範囲の誘電損失率を達成できなければ、低誘電特性を確保しにくく、同時に、前記範囲のヘイズを達成できなければ、フィルムに対する光の透過光が過度に拡散してフィルムの半透明性を達成しにくい。
好ましくは、誘電損失率(Df)が0.0029以下であり、ヘイズが3.3%以下であってもよい。
したがって、通常の低誘電ポリイミドフィルムは、非常に濃厚な褐色で透明性がほとんどないが、前記ポリイミドフィルムは、低誘電特性を有しながらも、同時にヘイズが低くて半透明性を有するという技術的利点がある。
また、前記ポリイミドフィルムの光透過率が45%以上であり、ガラス転移温度(Tg)は300℃以上、320℃未満であってもよい。したがって、本発明のポリイミドフィルムは、高い光透過率を有すると同時に、フレキシブル金属箔積層板用絶縁フィルムとして活用できるガラス転移温度を有するという技術的利点がある。好ましくは、ガラス転移温度(Tg)は、305℃以下であってもよい。
【0015】
一実施形態において、前記ポリイミドフィルムは、オキシジフタリックジアンハイドライド(4,4’-Oxidiphthalic dianhydride、ODPA)、ビフェニルテトラカルボキシリックジアンハイドライド(3,3’,4,4’-Biphenyltetracarboxylic dianhydride、BPDA)、ピロメリティックジアンハイドライド(Pyromellitic anhydride、PMDA)およびベンゾフェノンテトラカルボキシリックジアンハイドライド(3,3’,4,4’-Benzophenonetetracarboxylic dianhydride、BTDA)からなるグループより選択されたいずれか1つの第1二無水物酸成分、
オキシジフタリックジアンハイドライド(ODPA)、ビフェニルテトラカルボキシリックジアンハイドライド(BPDA)、ピロメリティックジアンハイドライド(PMDA)およびベンゾフェノンテトラカルボキシリックジアンハイドライド(BTDA)からなるグループより選択されたいずれか1つの第2二無水物酸成分、および
パラフェニレンジアミン(p-Phenylenediamine、PPD)、ジアミノジフェニルエーテル(4,4’-oxydianiline、ODA)、m-トリジン(m-tolidine)、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(1,3-bis(4-aminophenoxy)benzene、TPE-R)、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(1,4-bis(3-aminophenoxy)benzene、TPE-Q)、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン(2,2-Bis[4-(4-aminophenoxy)phenyl]propane、BAPP)、4,4’-ジアミノベンズアニリド(4,4’-Diaminobenzanilide)および3,5-ジアミノベンゾイックアシッド(3,5-Diaminobenzoic acid、DABA)からなるグループより選択されたいずれか1つ以上のジアミン成分をイミド化反応させて得られる。
【0016】
また、前記第1二無水物酸成分と第2二無水物酸成分は、互いに異なっていてもよい。
例えば、第1二無水物酸成分は、ビフェニルテトラカルボキシリックジアンハイドライド(BPDA)であり、前記第2二無水物酸成分は、オキシジフタリックジアンハイドライド(ODPA)であり、前記ジアミン成分は、パラフェニレンジアミン(PPD)であってもよい。
一実施形態において、前記ポリイミドフィルムの二無水物酸成分の総含有量100モル%を基準として、第1二無水物酸成分の含有量が40モル%以上95モル%以下であり、前
記第2二無水物酸成分の含有量が5モル%以上60モル%以下であってもよい。
好ましくは、前記ポリイミドフィルムの二無水物酸成分の総含有量100モル%を基準として、前記第1二無水物酸の含有量が45モル%以上80モル%以下であり、前記第2無水物酸の含有量が15モル%以上50モル%以下であってもよい。
【0017】
二無水物酸成分の総含有量100モル%に対して、前記第1二無水物酸の含有量が40モル%未満95モル%超過で使用されたり、第2二無水物酸の含有量が5モル%未満60モル%超過で使用される場合には、誘電損失率が高くなって誘電特性が低下したり、ポリイミドフィルムの機械的特性が低下することがある。
一実施形態において、前記ポリイミドフィルムの二無水物酸成分の総含有量100モル%を基準として、5モル%以下の第3二無水物酸成分を追加的に含み、
前記第3二無水物酸成分は、オキシジフタリックジアンハイドライド(ODPA)、ビフェニルテトラカルボキシリックジアンハイドライド(BPDA)、ピロメリティックジアンハイドライド(PMDA)およびベンゾフェノンテトラカルボキシリックジアンハイドライド(BTDA)からなるグループより選択されたいずれか1つであってもよい。
また、前記第3二無水物酸成分は、前記第1二無水物酸成分および前記第2二無水物酸成分と異なっていてもよい。
【0018】
例えば、前記第3二無水物酸は、ピロメリティックジアンハイドライドであってもよく、ポリアミック酸の製造時、粘度調節用に活用されてもよい。
一方、前記ポリイミドフィルムの二無水物酸成分として使用可能なビフェニルテトラカルボキシリックジアンハイドライドに由来するポリイミド鎖は、電荷移動錯体(CTC:Charge transfer complex)と名付けられた構造、すなわち、電子供与体(electron donnor)と電子受容体(electron acceptor)とが互いに近接して位置する規則的な直線構造を有し、これによってポリイミドの分子間相互作用(intermolecular interaction)を強化させる。
【0019】
このような構造は、水分との水素結合を防止する効果があるので、吸湿率を低下させるのに影響を与えてポリイミドフィルムの吸湿性を低下させる効果を極大化できる。
ポリイミドフィルムが適切な弾性と吸湿率を同時に満足するためには、二無水物酸の含有量比が特に重要である。例えば、ビフェニルテトラカルボキシリックジアンハイドライドの含有量比が減少するほど、前記CTC構造による低い吸湿率を期待しにくくなる。
また、前記ポリイミドフィルムの二無水物酸成分としてともに使用可能なオキシジフタリックジアンハイドライドは、ビフェニルテトラカルボキシリックジアンハイドライドと同じく、芳香族部分に相当するベンゼン環を2個含み、一層低い吸湿率を期待することができる。
これに関連して、誘電損失率(Df)およびガラス転移温度をすべて満足するポリイミドフィルムの場合、フレキシブル金属箔積層板用絶縁フィルムとして活用可能である上に、製造されたフレキシブル金属箔積層板が10GHz以上の高周波で信号を伝送する電気的信号伝送回路として使用されても、フレキシブル金属箔積層板の絶縁安定性が確保可能であり、信号伝達遅延も最小化できる。
【0020】
以下、誘電損失率(Df)について詳細に説明する。
<誘電損失率>
「誘電損失率」は、分子の摩擦が交流電場によって引き起こされた分子運動を妨げる時、誘電体(または絶縁体)によって消滅する力を意味する。
誘電損失率の値は、電荷の消失(誘電損失)の容易性を示す指数であって、通常使用され、誘電損失率が高いほど、電荷が失われやすくなり、逆に、誘電損失率が低いほど、電荷が失われにくくなる。すなわち、誘電損失率は、電力損失の尺度であるが、誘電損失率が
低いほど、電力損失による信号伝送遅延が緩和されながら速い通信速度が維持できる。
これは、絶縁フィルムであるポリイミドフィルムに強く要求される事項であり、本発明によるポリイミドフィルムは、10GHzの非常に高い周波数下で誘電損失率が0.003以下であってもよい。
【0021】
本発明において、ポリアミック酸の製造は、例えば、
(1)ジアミン成分全量を溶媒中に入れて、その後、二無水物酸成分をジアミン成分と実質的に等モルとなるように添加して重合する方法;
(2)二無水物酸成分全量を溶媒中に入れて、その後、ジアミン成分を二無水物酸成分と実質的に等モルとなるように添加して重合する方法;
(3)ジアミン成分中の一部成分を溶媒中に入れた後、反応成分に対して二無水物酸成分中の一部成分を約95~105モル%の比率で混合した後、残りのジアミン成分を添加し、これに続いて残りの二無水物酸成分を添加して、ジアミン成分および二無水物酸成分が実質的に等モルとなるようにして重合する方法;
(4)二無水物酸成分を溶媒中に入れた後、反応成分に対してジアミン化合物中の一部成分を95~105モル%の比率で混合した後、他の二無水物酸成分を添加し、続いて残りのジアミン成分を添加して、ジアミン成分および二無水物酸成分が実質的に等モルとなるようにして重合する方法;
(5)溶媒中で一部のジアミン成分と一部の二無水物酸成分をいずれか1つが過剰となるように反応させて第1組成物を形成し、他の溶媒中で一部のジアミン成分と一部の二無水物酸成分をいずれか1つが過剰となるように反応させて第2組成物を形成した後、第1、第2組成物を混合し、重合を完了する方法であって、このとき、第1組成物を形成する時、ジアミン成分が過剰の場合、第2組成物では二無水物酸成分を過剰にし、第1組成物で二無水物酸成分が過剰の場合、第2組成物ではジアミン成分を過剰にして、第1、第2組成物を混合してこれらの反応に使用される全体のジアミン成分と二無水物酸成分とが実質的に等モルとなるようにして重合する方法などが挙げられる。
ただし、前記重合方法が以上の例のみに限定されるものではなく、前記ポリアミック酸の製造は、公知のいかなる方法を使用できることはもちろんである。
【0022】
一つの具体例において、本発明の他の態様によるポリイミドフィルムの製造方法は、
(a)第1二無水物酸成分、第2二無水物酸成分およびジアミン成分を有機溶媒中で重合してポリアミック酸を製造するステップと、
(b)前記ポリアミック酸を含む前駆体組成物を支持体上に製膜した後、イミド化するステップとを含み、
前記第1二無水物酸成分は、オキシジフタリックジアンハイドライド(ODPA)、ビフェニルテトラカルボキシリックジアンハイドライド(BPDA)、ピロメリティックジアンハイドライド(PMDA)およびベンゾフェノンテトラカルボキシリックジアンハイドライド(BTDA)からなるグループより選択されたいずれか1つであり、
前記第2二無水物酸成分は、オキシジフタリックジアンハイドライド(ODPA)、ビフェニルテトラカルボキシリックジアンハイドライド(BPDA)、ピロメリティックジアンハイドライド(PMDA)およびベンゾフェノンテトラカルボキシリックジアンハイドライド(BTDA)からなるグループより選択されたいずれか1つであり、
前記ジアミン成分は、パラフェニレンジアミン(PPD)、ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、m-トリジン(m-tolidine)、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-R)、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-Q)、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン(BAPP)、4,4’-ジアミノベンズアニリドおよび3,5-ジアミノベンゾイックアシッド(DABA)からなるグループより選択されたいずれか1つ以上を含むことができる。
また、前記第1二無水物酸成分と第2二無水物酸成分は、互いに異なっていてもよい。
一実施形態において、前記ポリアミック酸を製造する過程で、ジアミン成分を投入した後
、前記第1二無水物酸成分を投入して先に重合させ、次いで、前記第2二無水物酸成分を投入して重合させる順序で前記ポリイミドフィルムを製造することができる。
【0023】
このような投入順序によって製造されたポリイミドフィルムは、低誘電および低ヘイズの特性を示したが、投入順序が変更される場合(特に、第1二無水物酸および第2二無水物酸の投入順序が変更される場合)、製造されたポリイミドフィルムの誘電損失値が高くなって低誘電特性が低下し、光透過率特性も低下した。
すなわち、ジアミン成分および二無水物酸成分の投入順序は、製造されたポリイミドフィルムの誘電および光学特性に影響を与えることができる。
前記のようなポリアミック酸の重合方法をランダム(random)重合方式で定義することができ、前記のような過程で製造された本発明のポリアミック酸から製造されたポリイミドフィルムは、誘電損失率(Df)および吸湿率を低下させ、低ヘイズ特性を付与する本発明の効果を最適化させる面で好ましく適用できる。
【0024】
ただし、前記重合方法は、先に説明した高分子鎖内の繰り返し単位の長さが相対的に短く製造されるので、二無水物酸成分に由来するポリイミド鎖が有するそれぞれの優れた特性を発揮するには限界がありうる。したがって、本発明において、ポリアミック酸の重合方法は、ブロック重合方式を使用してもよい。
一方、ポリアミック酸を合成するための溶媒は特に限定されるものではなく、ポリアミック酸を溶解させる溶媒であればいかなる溶媒も使用可能であるが、アミド系溶媒であることが好ましい。
具体的には、前記溶媒は、有機極性溶媒であってもよく、詳しくは、非プロトン性極性溶媒(aprotic polar solvent)であってもよいし、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-ピロリドン(NMP)、ガンマブチロラクトン(GBL)、ジグリム(Diglyme)からなる群より選択された1つ以上であってもよいが、これに限定されるものではなく、必要に応じて、単独でまたは2種以上組み合わせて使用可能である。
【0025】
一つの例において、前記溶媒は、N,N-ジメチルホルムアミドおよびN,N-ジメチルアセトアミドが特に好ましく使用可能である。
また、ポリアミック酸製造工程では、摺動性、熱伝導性、コロナ耐性、ループ硬さなどのフィルムの様々な特性を改善する目的で充填材を添加してもよい。添加される充填材は特に限定されるものではないが、好ましい例としては、シリカ、酸化チタン、アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、雲母などが挙げられる。
充填材の粒径は特に限定されるものではなく、改質しなければならないフィルム特性と添加する充填材の種類によって決定すれば良い。一般的には、平均粒径が0.05~100μm、好ましくは0.1~75μm、さらに好ましくは0.1~50μm、特に好ましくは0.1~25μmである。
【0026】
粒径がこの範囲を下回ると、改質効果が現れにくくなり、この範囲を上回ると、表面性を大きく損傷させたり、機械的特性が大きく低下することがある。
また、充填材の添加量についても特に限定されるものではなく、改質しなければならないフィルム特性や充填材の粒径などによって決定すれば良い。
一般的に、充填材の添加量は、ポリイミド100重量部に対して、0.01~100重量部、好ましくは0.01~90重量部、さらに好ましくは0.02~80重量部である。充填材の添加量がこの範囲を下回ると、充填材による改質効果が現れにくく、この範囲を上回ると、フィルムの機械的特性が大きく損傷する可能性がある。充填材の添加方法は特に限定されるものではなく、公知のいかなる方法を利用してもよい。
【0027】
本発明の製造方法において、ポリイミドフィルムは、熱イミド化法および化学的イミド化法により製造できる。
また、熱イミド化法および化学的イミド化法が並行される複合イミド化法により製造されてもよい。
前記熱イミド化法とは、化学的触媒を排除し、熱風や赤外線乾燥機などの熱源でイミド化反応を誘導する方法である。
【0028】
前記熱イミド化法は、前記ゲルフィルムを100~600℃の範囲の可変的な温度で熱処理してゲルフィルムに存在するアミック酸基をイミド化することができ、詳しくは、200~500℃、さらに詳しくは、300~500℃で熱処理してゲルフィルムに存在するアミック酸基をイミド化することができる。
ただし、ゲルフィルムを形成する過程でも、アミック酸中の一部(約0.1モル%~10モル%)がイミド化され、このために、50℃~200℃の範囲の可変的な温度でポリアミック酸組成物を乾燥することができ、これも前記熱イミド化法の範疇に含まれる。
化学的イミド化法の場合、当業界で公知の方法により、脱水剤およびイミド化剤を用いて、ポリイミドフィルムを製造することができる。
複合イミド化法の一例として、ポリアミック酸溶液に脱水剤およびイミド化剤を投入した後、80~200℃、好ましくは100~180℃で加熱して、部分的に硬化および乾燥した後に、200~400℃で5~400秒間加熱することにより、ポリイミドフィルムを製造することができる。
【0029】
以上のような製造方法により製造された本発明のポリイミドフィルムは、誘電損失率(Df)が0.003以下であり、ヘイズが3.5%以下であり、光透過率が45%以上であり、ガラス転移温度(Tg)が300℃以上、320℃未満であってもよい。
本発明は、上述したポリイミドフィルムと熱可塑性樹脂層とを含む多層フィルムおよび上述したポリイミドフィルムと電気伝導性の金属箔とを含むフレキシブル金属箔積層板を提供する。
前記熱可塑性樹脂層としては、例えば、熱可塑性ポリイミド樹脂層などが適用可能である。
使用する金属箔としては特に限定されるものではないが、電子機器または電気機器の用途に本発明のフレキシブル金属箔積層板を用いる場合には、例えば、銅または銅合金、ステンレス鋼またはその合金、ニッケルまたはニッケル合金(42合金も含む)、アルミニウムまたはアルミニウム合金を含む金属箔であってもよい。
【0030】
一般的なフレキシブル金属箔積層板においては、圧延銅箔、電解銅箔という銅箔が多く使用され、本発明においても好ましく使用可能である。また、これら金属箔の表面には防錆層、耐熱層または接着層が塗布されていてもよい。
本発明において、前記金属箔の厚さについては特に限定されるものではなく、その用途によって十分な機能を発揮できる厚さであれば良い。
本発明によるフレキシブル金属箔積層板は、前記ポリイミドフィルムの一面に金属箔がラミネートされているか、前記ポリイミドフィルムの一面に熱可塑性ポリイミドを含む接着層が付加されており、前記金属箔が接着層に付着した状態でラミネートされている構造であってもよい。
【0031】
本発明はまた、前記フレキシブル金属箔積層板を電気的信号伝送回路として含む電子部品を提供する。前記電気的信号伝送回路は、少なくとも2GHzの高周波、詳しくは、少なくとも5GHzの高周波、さらに詳しくは、少なくとも10GHzの高周波で信号を伝送する電子部品であってもよい。
前記電子部品は、例えば、携帯端末用通信回路、コンピュータ用通信回路、または宇宙航空用通信回路であってもよいが、これに限定されるものではない。
【実施例
【0032】
以下、発明の具体的な実施例を通じて、発明の作用および効果をより詳述する。ただし、このような実施例は発明の例として提示されたものに過ぎず、これによって発明の権利範囲が定められるのではない。
【0033】
<製造例>
撹拌機および窒素注入・排出管を備えた500ml反応器に窒素を注入させながらDMFを投入し、反応器の温度を30℃以下に設定した後、ジアミン成分としてパラフェニレンジアミンと、第1二無水物酸成分としてビフェニルテトラカルボキシリックジアンハイドライドおよび第2二無水物酸成分としてオキシジフタリックジアンハイドライドを投入して完全に溶解したことを確認した。
前記ジアミン成分および二無水物酸成分の投入順序は、パラフェニレンジアミン(PPD)、ビフェニルテトラカルボキシリックジアンハイドライド(BPDA)、オキシジフタリックジアンハイドライド(ODPA)の順であった。
窒素雰囲気下、40℃に温度を上げて加熱しながら120分間撹拌を続けて反応させた後、ピロメリティックジアンハイドライド(PMDA)10%溶液を分割投入しながら粘度を調節して、23℃での粘度が200,000cPを示すポリアミック酸溶液を製造した。
前記製造されたポリアミック酸溶液を1,500rpm以上の高速回転により気泡を除去した。以後、スピンコーターを用いてガラス基板に脱泡されたポリイミド前駆体組成物を塗布した。以後、窒素雰囲気下および120℃の温度で30分間乾燥してゲルフィルムを製造し、前記ゲルフィルムを450℃まで2℃/分の速度で昇温し、450℃で60分間熱処理し、30℃まで2℃/分の速度で冷却してポリイミドフィルムを得た。
以後、蒸留水にディッピング(dipping)して、ガラス基板からポリイミドフィルムを剥離させた。製造されたポリイミドフィルムの厚さは25~30μmであった。製造されたポリイミドフィルムの厚さはAnritsu社の膜厚測定器(Electric Film thickness tester)を用いて測定した。
【0034】
<実施例1~4および比較例1~3>
製造例において、成分およびその含有量をそれぞれ下記表1のように変更してそれぞれのポリイミドフィルムを製造した。
比較例2および比較例3の場合、それぞれ実施例1および実施例4と組成および組成比が同一であるが、前記ジアミン成分および二無水物酸成分の投入順序は、パラフェニレンジアミン、オキシジフタリックジアンハイドライド、ビフェニルテトラカルボキシリックジアンハイドライドの順であった。
すなわち、オキシジフタリックジアンハイドライドとビフェニルテトラカルボキシリックジアンハイドライドの投入順序が、実施例1および実施例4と逆であった。
【表1】
【0035】
<実験例>誘電損失率、ヘイズ、光透過率およびガラス転移温度評価
実施例1~実施例6および比較例1~比較例3でそれぞれ製造したポリイミドフィルムに対して誘電損失率、ヘイズおよび光透過率およびガラス転移温度を測定し、その結果を下記表2に示した。
(1)誘電損失率の測定
誘電損失率(Df)は、製造されたフィルムを130℃で30分間乾燥した後、23℃、50%相対湿度が維持される恒温恒湿器内で24時間エージングして前処理を進行させた。以後、Keysight社のENAを用いてSplit Post Dielectric Resonator(SPDR)測定方式で10Ghz周波数で誘電特性を測定した。
(2)ヘイズの測定
ヘイズ(Haze)は、HunterLab社の装置を用いてASTM E308基準に基づいて測定した。
(3)光透過率の測定
光透過率(Transmittance)は、HunterLab社の装置を用いてASTM D1003基準に基づいて400-700nmでの光透過率を測定した。
(4)ガラス転移温度の測定
ガラス転移温度(T)は、DMAを用いて各フィルムの損失弾性率と貯蔵弾性率を求め、これらのタンジェントグラフで変曲点をガラス転移温度として測定した。
【表2】
【0036】
表2に示しているように、本発明の実施例により製造されたポリイミドフィルムは、誘電損失率が0.003以下で、比較例のポリイミドフィルムに比べて著しく低い誘電損失率を示した。
すなわち、比較例1~3のポリイミドフィルムの誘電損失率は、いずれも0.003超過であった。
また、本発明の実施例により製造されたポリイミドフィルムのガラス転移温度は、いずれも300℃以上、320℃未満に相当した。
【0037】
これとともに、本発明の実施例により製造されたポリイミドフィルムのヘイズは、いずれも3.5%以下と測定された。
これに対し、オキシジフタリックジアンハイドライドを含まない比較例1は、7.1%の高いヘイズと40%の低い光透過率を示した。
一方、実施例1および実施例4とそれぞれ第1、第2二無水物酸成分の投入順序を逆にした比較例2および比較例3の場合、測定されたヘイズがそれぞれ2.7%および5.9で、同じ組成比の実施例1および実施例4に比べて高いヘイズを示した。
【0038】
また、比較例2および比較例3のポリイミドフィルムは、光透過率がそれぞれ35%、24%と測定されて、実施例1および実施例4に比べて低い光透過率を示した。
すなわち、実施例と同じ組成および組成比のポリイミドフィルムであっても、二無水物酸成分の投入順序によって低誘電(低誘電損失率)特性が低下するだけでなく、光透過特性も低下することを確認することができた。
したがって、本願のポリイミドフィルムの固有の低誘電損失、ヘイズ、光透過率およびガラス転移温度は、本願の特定された成分、組成比および製造方法(特に、二無水物酸成分の投入順序)によって達成可能であり、ギガ単位の高周波で信号伝送が行われる電子部品への使用に適切であることが分かった。
これに対し、実施例と異なる組成または製造方法を有する比較例1~3のポリイミドフィルムは、誘電損失率、ヘイズ、光透過率およびガラス転移温度のいずれか1つの面以上でギガ単位の高周波で信号伝送が行われる電子部品への使用が困難であることを予想することができる。
以上、本発明の実施例を参照して説明したが、本発明の属する分野における通常の知識を
有する者であれば、上記の内容に基づいて本発明の範疇内で多様な応用および変形を行うことが可能であろう。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上説明したように、本発明は、特定の組成比で構成される特性成分を含むポリイミドフィルムおよびその製造方法により低誘電および半透明(低ヘイズ)特性を有する低価格のポリイミドフィルムを提供することにより、このような特性が要求される多様な分野、特にフレキシブル金属箔積層板などの電子部品などに有用に適用可能である。

【国際調査報告】