(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-30
(54)【発明の名称】コーヒーメラノイジンナノ粒子及びナノファイバー
(51)【国際特許分類】
C07G 99/00 20090101AFI20240723BHJP
A61K 36/74 20060101ALI20240723BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20240723BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20240723BHJP
B82Y 5/00 20110101ALN20240723BHJP
B82Y 30/00 20110101ALN20240723BHJP
A23F 5/10 20060101ALN20240723BHJP
【FI】
C07G99/00 Z
A61K36/74 ZNM
A61K8/9789
B82Y40/00
B82Y5/00
B82Y30/00
A23F5/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579481
(86)(22)【出願日】2022-06-22
(85)【翻訳文提出日】2024-02-01
(86)【国際出願番号】 EP2022067051
(87)【国際公開番号】W WO2022268898
(87)【国際公開日】2022-12-29
(32)【優先日】2021-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523482307
【氏名又は名称】カフェ ブエノ エーピーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【氏名又は名称】加藤 由加里
(72)【発明者】
【氏名】アセンサン アローソ,イヴォ マヌエル
(72)【発明者】
【氏名】デサ ベッサ,リカルド
(72)【発明者】
【氏名】ゴンサルベス ドス レイス,ルイ ルイス
(72)【発明者】
【氏名】アクシー,アドナン
(72)【発明者】
【氏名】メディーナ,ジュアン
【テーマコード(参考)】
4B027
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
4B027FB28
4B027FC10
4B027FQ20
4C083AA111
4C083AA112
4C083CC01
4C083FF01
4C088AB12
4C088AC04
4C088AC14
4C088BA08
4C088MA02
4C088NA14
(57)【要約】
【課題】本発明は、メラノイジン産物を調整する方法であって、a)コーヒーかすが7超のpH値を有する抽出剤で処理されて、前記抽出剤の流体相中のメラノイジン含有溶質を抽出するところの抽出工程;b)前記流体相が前記コーヒーかすから分離されるところの第1の分離工程;c)前記流体相が(i)酸と接触されて、4未満のpH値を有する酸性混合物を得て、又は(ii)有機相分離剤及び酸と接触されて4~8の範囲のpH値を有する混合物を得て、それによってメラノイジンを含有する析出物を形成するところの析出工程;並びに、d)前記形成された析出物が前記酸性混合物から分離されるところの第2の分離工程を含む、前記方法に関する。本発明は更に、コーヒーかすから得られるメラノイジンナノ粒子及びメラノイジンナノファイバーに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メラノイジン産物を調整する方法であって、
a)コーヒーかすが7超のpH値を有する抽出剤で処理されて、前記抽出剤の流体相中のメラノイジン含有溶質を抽出するところの抽出工程;
b)前記流体相が前記コーヒーかすから分離されるところの第1の分離工程;
c)前記流体相が(i)酸と接触されて、4未満のpH値を有する酸性混合物を得て、又は(ii)有機相分離剤及び酸と接触されて4~8の範囲のpH値を有する混合物を得て、それによってメラノイジンを含有する析出物を形成するところの析出工程;並びに、
d)前記形成された析出物が前記酸性混合物から分離されるところの第2の分離工程
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記抽出剤が水性であり、及び水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記有機相分離剤が、エタノール、酢酸エチル、テトラヒドロフラン及び2-メチルテトラヒドロフランの群から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の分離工程が、10kDa未満の平均分子量を有する前記形成された析出物の低分子量画分が得られるところの分画工程を含み、ここで、前記第2分離工程の後に、ナノ粒子が前記低分子量画分から製造されるところのナノ粒子製造工程を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ナノ粒子製造工程が、エレクトロスプレーイング、レーザアブレーション、凍結乾燥、噴霧乾燥、対流乾燥、放射線乾燥、真空乾燥及び超音波微粒子化の群から選択される少なくとも1つの方法を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の分離工程が、前記形成された析出物のうち少なくとも10kDaの平均分子量を有する高分子量画分が得られるところの分画工程を含み、ここで、前記第2分離工程の後に、ナノファイバーが前記高分子量画分からを製造されるところのナノファイバー製造工程を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ナノファイバー製造工程がエレクトロスピニングを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
コーヒーかすから抽出されたメラノイジン生成物であって、該メラノイジン生成物が1nm~800nmの平均直径を有するメラノイジンナノ粒子である、前記メラノイジン生成物。
【請求項9】
前記メラノイジンナノ粒子が70重量%超のメラノイジンを含み、ここで、前記メラノイジンが1重量%~15重量%のフェノール化合物及び/又は1重量%~40重量%のタンパク質を含む、請求項8に記載のメラノイジン産物。
【請求項10】
コーヒーかすから抽出されたメラノイジン産物であって、メラノイジンナノファイバーである前記メラノイジン産物。
【請求項11】
前記メラノイジンナノファイバーが1nm~1000nmの平均直径を有し、及び50重量%超のメラノイジンを含み、ここで、前記メラノイジンが1重量%~15重量%のフェノール化合物及び/又は1重量%~40重量%のタンパク質を含む、請求項10に記載のメラノイジン産物。
【請求項12】
請求項8~11のいずれか1項に記載のメラノイジン産物を含む電子部品。
【請求項13】
請求項8~11のいずれか1項に記載のメラノイジン産物を含む導電性液体。
【請求項14】
光熱用途、特には、光熱療法、光力学療法、光熱触媒作用、光熱抗菌処置、ソーラーコレクタ、ソーラー加熱、ソーラー蒸発の為に、請求項8~11のいずれか1項に記載のメラノイジン産物を使用する方法。
【請求項15】
請求項8~11のいずれか1項に記載のメラノイジン産物を含む化粧品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーヒーメラノイジンを含有するナノ粒子及びナノファイバーに関する。本発明は更に、コーヒーメラノイジンナノ粒子及びナノファイバーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メラノイジンは、褐色の、親水性窒素含有ポリマーの一種であり、それは、食品、例えば、コーヒー、ココア、パン、麦芽、大麦、ビール醸造所の使用済み穀物(BSG:Brewers Spent Grain)、大豆、肉及び蜂蜜、の熱処理中に生成される。そのような食品の熱処理の間に、アミノ酸、並びに還元糖、例えばアルドース及びd-キシロース、が反応して、初期メイラード反応生成物(initial Maillard reaction products)と呼ばれるものが形成される。加熱を続けると、それらの初期メイラード反応生成物の環化、脱水、逆アルドール化、転位、異性化、縮合によってメラノイジンが形成される。メイラード反応経路の複雑さにより、最終的な反応生成物は様々であり、なかんずく、加熱時間、加熱の種類、温度、系の初期化学組成、含水率、水分活性及びpH値が最終組成を決定する。
【0003】
例として、コーヒー生豆の焙煎方法は、i)該豆からの自由水分の蒸発、ii)豆内部の熱分解、それに伴う豆の膨潤及び黒ずみ、並びに乾燥重量の減少、の2段階の変化として表されうる。該コーヒー生豆に存在する、オリゴ糖、多糖類及びタンパク質は分解され、そして次に、メイラード反応に関与する。その結果、焙煎の間に該豆の化学組成が有意に変化し、そして、メラノイジンが主な生成物となるが、カフェイン及びクロロゲン酸がまた最終的な焙煎されたコーヒー豆中に存在する。
【0004】
コーヒーの化学組成がまた品種によって異なる。焙煎された豆の主成分は、炭水化物(約38~約42重量%)、メラノイジン(約25~約28重量%)、脂質(約11~約17重量%)及びタンパク質(約8重量%)である。微量成分は、ミネラル、クロロゲン酸、脂肪族酸、カフェイン及びトリゴネリンを包含する。
【0005】
コーヒーかすからメラノイジンを抽出することは、数十年前から当技術分野において知られている。英国特許出願第GB1,073,738号は、インスタントコーヒーの製造方法を開示する。この工業的規模の方法は、抽出工程、酸性化工程、及び任意の乾燥工程を含む。
【0006】
文献IT MI20 132 040 A1は、抽出剤としてのエタノールと水を用いて、挽きたての焙煎されたコーヒーからメラノイジンを抽出する方法を開示する。得られた粒子は、食品及び医薬品分野における様々な用途の為に適している。
【0007】
文書 米国特許出願公開公報第US 2020/0367487 A1号明細書は、コーヒー抽出物をベースとする剤と、生体の臓器、組織又は細胞を保存する方法を開示する。抽出工程後、コーヒー抽出液のpHが調整され、そして、有機溶媒によって抽出される。
【0008】
メラノイジン、及び食品、医療又は技術への応用におけるそれらの潜在的使用が、近年注目されてきている。例えば、Ji Yup Kim等による論文:「Coffee melanoidin-based multipurpose film formation:application to single-cell nanoencapsulation」(ChemNanoMat 10.1002/cnma.202000004)において、可溶性コーヒー粉末から抽出されたメラノイジンが、材料に依存しない多目的コーティング材料として利用されている。コーヒーメラノイジンと第二鉄イオン(Fe3+)との瞬間的な錯体化により、表面接着性の凝集体がもたらされ、逐次的な膜堆積が引き起こされる。著者等は更に、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)の単細胞ナノカプセルに適用されたコーヒーメラノイジンベースのコーティングを開示した。
【0009】
これまでのところ、学界及び産業界は、主にグルコースとアミノ酸グリシンとのメイラード反応に基づく合成メラノイジンに焦点を当ててきた。他の供給源からナノスケールのメラノイジンを得る可能性は、これまでのところ追求されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、ナノスケールにおけるメラノイジンを得る為の方法を提供することである。本発明の更なる目的は、多くの用途に使用可能なメラノイジン産物(melanoidin products)を提供することであり、該ナノスケールのメラノイジンは環境に優しく及び効率的な方法によって得られることができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この問題は、請求項1に記載のメラノイジン産物を調製する為の方法を提供し、請求項8~11に記載のメラノイジン産物を提供することによって解決される。本発明の主題の有利な実施態様及び応用は、請求項2~7及び12~15において示されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、得られた繊維を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した写真を示す。
【
図2】
図2は、得られた繊維を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した写真を示す。
【
図3】
図3は、得られた粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した写真を示す。
【0013】
定義
【0014】
下記において、1つ(冠詞「1つ」(a)及び「該」(the)を包含する)、2つ、又はそれ以外の数の対象物への何らかの言及は、それ以外のものが明示的に言及されていない限り、本発明における更なるそのような対象物の存在を排除するものでないことが理解されることを意味する。
【0015】
本明細書において使用される場合に、語「を含んでいる」(comprising)、「を含む」(comprises)及び「からなる」(comprised of)は、「包含している」(including)、「包含する」(includes)、「含有している」(containing)又は「含有する」(contains)と同義であり、包括的又は開放的であり、及び追加の、言及されていない部材、要素、又は方法工程を除外しない。使用される場合、句「からなる」は閉鎖的であり、及び全ての追加要素を除外する。更に、句「本質的に~からなる」は、追加の物質的要素を除外するが、発明の性質を実質的に変えない非物質的要素を包含することを許す。
【0016】
量、濃度、寸法及び他のパラメータが、範囲、好ましい範囲、上限値、下限値、又は好ましい上限値及び下限値の形で表現されている場合に、得られた任意の範囲が文脈において明確に言及されているかどうかにかかわらず、任意の上限値又は好ましい値を任意の下限値又は好ましい値と組み合わせることによって得られる範囲がまた具体的に開示されていると理解されるべきである。
【0017】
更に、標準的な理解に従って、「○~x」であると表される重量範囲は、具体的には○重量%を含み、該範囲によって定義される成分は、該組成物中に存在しなくてもよく、又はx重量%までの量で該組成物中に存在してもよい。
【0018】
語「重量パーセント」、語「重量%」及び語「wt%」は、互換的に使用される。
【0019】
本明細書において、語「好まれる」(preferable)、「好ましい」(preferred)、「好ましくは」(preferably)、「特に」(particularly)及び「望ましくは」(desirably)は、或る状況下で、特定の利点を与えうるところの本開示の実施態様を言及する為に本明細書において頻繁に使用される。しかしながら、1つ以上の、好まれる、好ましい、特定の又は望ましい実施態様の記載は、他の実施態様が有用でないことを意味するものではなく、本開示の範囲からそれらの他の実施態様を除外することを意図するものでない。
【0020】
本出願全体で使用される場合に、語句「しうる/してもよい」は、強制的な意味ではなく、許容的な意味、すなわち可能性があるという意味で使われている。
【0021】
本明細書において使用される場合に、室温は23℃±2℃である。
【0022】
本明細書において使用される場合に、数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、DIN 556721:2007-08に従って、溶離液としてテトラヒドロフラン(THF)を用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC:gel permeation chromatography)によって決定される。
【0023】
食品に関して使用される場合に、語「微粒子化された」は、1~1500ミクロン、典型的には100~1250ミクロン、の粒子径を有する粉末を意味する。語「微粒子化された」は、元来バルクの形態で提供される材料を細かく分割することを通じて製造された粒子、並びに、シーディングの有無にかかわらず溶液中での形成、並びに他の機械的、化学的又は物理的方法、例えば、粉砕(pulverization:パルベライゼーション)、粉砕(milling:ミリング)、粉砕(grinding:グラインディング)、均質化、及び超音波処理のうちの1つ以上による粉砕を包含する、上記の他の機械的、化学的又は物理的方法、によって得られた粒子の両方を言及することが意図されている。
【0024】
語「マイクロメートル」、「ミクロン」及び「μm」は、互換的に使用されている。
【0025】
グラインディングは例えば、グラインディング媒体(grinding media)を回転させる為に使用されるところのローターシャフトを備えているグラインディングチャンバ(grinding chamber)を有する遊星ボールミル(planetary ball mill)を用いて行われることができる。下記の文献が参照されうる:Le Caer et al.Mechanical Alloying and HighEnergy Ball-Milling:Technical Simplicity and Physical Complexity for the Synthesis of New Materials www.ademe.fr/recherche/manifestations/materiaux-2002/。
【0026】
粉砕は任意の高エネルギーミルにおいて行われてもよく、その例は、遠心ミル(centrifugal mills)、遊星ボールミル(planetary ball mills)、ジェットミル(jet mills)(例えば、スピン気流ジェットミル(spinning air flow jet mill))、及び流体エネルギーミル(fluid energy mills)を包含する。望ましくは、高エネルギーミルは、少なくとも0.5G、例えば0.5~25G、の衝撃力をミリング媒体(milling media)に与えることができるべきである。本発明において有用であると思われうる粉砕機の非限定的な例が、下記において開示されている:米国特許第5,522,558号明細書、米国特許第5,232,169号明細書、米国特許第6,126,097号明細書、及び米国特許第6,145,765号明細書。その上、本発明は、加熱下、例えば、国際公開公報WO00/56486A1号パンフレットにおいて記載されている加熱下で、及び/又は添加剤、例えば、潤滑剤、界面活性剤、分散剤及び溶媒、の存在下で、ミリングが行われることが妨げられないことに留意されるべきである。
【0027】
本明細書において使用される場合に、「d50粒径」は、粒子の少なくとも50重量%が特定の値未満の粒径直径を有するような粒径分布であることが意味される。特に断らない限り、その粒子径は動的光散乱法によって決定される。
【0028】
本明細書において記載されている組成物の粘度は、特に規定がない限り、ASTM D3236に従って、ブルックフィールド粘度計(Brookfield Viscometer)を使用して、25℃及び相対湿度(RH:Relative Humidity)50%の標準条件下で測定される。ブルックフィールド粘度計の較正方法、スピンドルの種類及び回転速度は、測定されるべき組成物の為に適した製造業者の指示書に従って選択される。
【0029】
メラノイジン産物を調製する方法
【0030】
本発明の第1の観点において、該問題は、メラノイジン産物を調製する方法であって、
コーヒーかすが7超のpH値を有する抽出剤で処理されて、該抽出剤の流体相中のメラノイジン含有溶質を抽出するところの抽出工程;
該流体相が該コーヒーかすから分離されるところの第1の分離工程;
該流体相が(i)酸と接触されて、4未満のpH値を有する酸性混合物を得て、又は(ii)有機相分離剤及び酸と接触されて4~8の範囲のpH値を有する混合物を得て、それによってメラノイジンを含有する析出物を形成するところの析出工程;並びに、
該形成された析出物が該酸性混合物から分離されるところの第2の分離工程
を含む上記の方法を提供することによって解決される。
【0031】
本発明の文脈において、「コーヒーかす」は、新鮮なコーヒーかす又はコーヒーを淹れた後に残ったコーヒーかすであり、後者はまた、「使用済みコーヒーかす」(spent coffee grounds)として呼ばれる。
【0032】
本発明により、使用済みコーヒーかすはまだかなりの量のメラノイジンを含むことができることが利用されることができる。使用済みコーヒーかすは通常、コーヒーの調製の間に蓄積される。ホテル及びレストランにおいては、大量の使用済みコーヒーかすが廃棄物として定期的に処分されている。有利なことに、本発明により、貴重な原料が、廃棄された使用済みコーヒーかすから抽出されることができる。
【0033】
一般的に、他のメラノイジン含有食品、例えば、ココア、パン、麦芽、大麦、ビール醸造所の使用済み穀物(BSG:Brewers Spent Grain)、大豆、肉又は蜂蜜が、本発明に従うメラノイジン産物の調製の為に同様に使用されることができる。しかしながら、コーヒーかすは、他の食品源よりも高いメラノイジン含有量を有するので、コーヒーかすが好ましい。コーヒーかすの中でも、使用済みコーヒーかすが、メラノイジンが抽出される原料として特に好ましい。
【0034】
本発明の文脈において、溶質は、抽出剤の流体相中に溶解された及び/又は分散された形態で存在するところの物質である。
【0035】
抽出工程
【0036】
抽出工程において、該コーヒーかすは抽出剤で処理されて、メラノイジン含有溶質を抽出する。該含有溶質は、液相中に溶解された形態及び/又は分散された形態で存在してもよい。
【0037】
適切な抽出方法は、還流抽出(reflux extraction)、加圧液体抽出(pressurized liquid extraction)、超音波アシスト抽出(ultrasound assisted extraction)、マイクロ波アシスト抽出(microwave assisted extraction)、パルス電場抽出(pulsed electric field extraction)、及び/又は水中蒸留(hydro-distillation)を包含するが、これらに限定されるものでない。
【0038】
好ましくは、該抽出工程は1~8バール(abs)の圧力で行われる。より好ましくは、該圧力は2~5バール(abs)の範囲である。好ましい変形例において、該圧力は、密閉装置内で該抽出剤を加熱することによって調整される。
【0039】
好ましい実施態様において、該抽出工程は、加圧液体抽出を含む。好ましくは、加圧液体抽出は100℃以上の温度、より好ましくは120℃以上の温度、で行われる。好ましくは、温度は140℃未満である。加圧液体抽出の好ましい時間は、10分超1時間未満、例えば30~40分である。高い溶質抽出収率が実現されることができることは、上述されたような液体抽出法の達成可能な有利点である。
【0040】
好ましくは、該抽出剤は、液相であり又は液相を含み、ここで、該溶質は該液相中に溶解及び/又は分散される。より好ましくは、該抽出剤又は該抽出剤の液相は水性であり、及び該溶質は水性抽出剤又は抽出剤の水性相に溶解及び/又は分散される。該抽出剤又は該抽出剤の一部として水を使用することは、抽出工程が環境に好ましい方法で実施されることができるという有利点を有する。その上、該抽出工程で水を使用することにより、高いメラノイジン回収率が得られることが見出された。
【0041】
好適な抽出剤は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム及びアンモニア(NH3(水性))のうちの少なくとも1つを含むアルカリ性溶液を包含するが、これらに限定されるものでない。該抽出剤は、1以上の水混和性溶媒を含みうる。1以上の該水混和性溶媒が該抽出剤の20重量%を超えない場合に、該抽出剤は本発明の意味において「水性」とみなされる。好ましくは、該抽出剤は水性であり、及び少なくとも水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを含む。より好ましくは、該水性抽出剤は下記の組成を有する:1~5重量%、より好ましくは2~4重量%、特に好ましくは3重量%、の水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム、及び残りは水である。
【0042】
水性抽出剤を使用することの有利点は、高い解離定数、低い動的粘度、コーヒーかすの固体マトリックス中への良好な拡散性、該溶質の良好な濡れ性、並びにコーヒーかすからの溶質の高い溶解性による短い抽出時間を包含する。
【0043】
該抽出剤は、7超のpH値を有し、好ましくは8超のpH値を有し、より好ましくは10超のpH値を有する。好ましくは、該pH値は、14以下、例えば12~14である。
【0044】
第1の分離工程
【0045】
該第1の分離工程において、溶質を含む該流体相が該コーヒーかすから分離される。好適な分離方法は、遠心分離、浸軟(maceration)、パーコレーション(percolation)、濾過、及び/又は煎出(decoction)を包含するが、これらに限定されるものでない。
【0046】
適切な遠心分離法において、遠心力は100G(重力相当)超、好ましくは500G超、である。該遠心力は好ましくは、10000G未満、より好ましくは5000G未満、例えば600G~800Gである。好ましくは、遠心分離は0℃超、より好ましくは5℃超、の温度で行われる。好ましくは、該温度は50℃未満、より好ましくは30℃未満、例えば10℃~20℃、である。該遠心分離の好ましい時間は1分超、好ましくは5分超、である。継続時間は好ましくは、4時間未満、好ましくは1時間未満、例えば10分~30分、である。好ましくは、該遠心分離が終了したときに、メラノイジンを含む上清が集められる。
【0047】
析出工程
【0048】
該析出工程の第1の変形例において、第1の分離工程からの流体相が酸と接触されて、4未満のpH値を有する酸性混合物が得られ、それによってメラノイジンを含む析出物を形成する。好ましくは、pH値は1より大きく4より小さく、例えば2~3.5である。
【0049】
好適な酸は、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸及びメタンスルホン酸を包含するが、これらに限定されるものでない。好ましくは、該析出工程において使用される酸は塩酸である。
【0050】
該析出工程の第2の変形例において、流体相が、有機相分離剤と及び酸と接触されて、4~8の範囲のpH値を有する混合物が得られ、それによってメラノイジンを含有する析出物が形成される。
【0051】
該混合物は、4以上のpH値を有する。好ましくは、該pH値は、5超、より好ましくは6超、である。該混合物は、8以下のpH値を有する。好ましくは、該pH値は、8未満、例えば6.5~7.5、である。
【0052】
好適な有機相分離剤は、エタノール、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、及び2-メチルテトラヒドロフランを包含するが、これらに限定されるものでない。好ましくは、該有機相分離剤は、酢酸エチルである。
【0053】
該有機相分離剤と該流体相との重量比は好ましくは、1:3未満である。該有機相分離剤と該流体相の重量比は好ましくは、1:5超、例えば1:3.5~1:4.5、である。
【0054】
該析出工程の第2の変形例の為に適した酸は、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、メタンスルホン酸を包含するが、これらに限定されるものでない。好ましくは、該析出工程の第2の工程において使用される酸は塩酸である。
【0055】
好ましくは、該析出は50℃未満、より好ましくは40℃未満、の温度で行われる。好ましくは、該析出は20℃超の温度で行われる。
【0056】
第2の分離工程
【0057】
該第2の分離工程において、該形成された析出物が該酸性混合物から分離される。好適な分離方法は、遠心分離、浸軟(maceration)、パーコレーション(percolation)、濾過、及び/又は煎出(decoction)を包含するが、これらに限定されるものでない。
【0058】
本発明に従うメラノイジン産物を調製する為の方法は、環境に優しく、及びコーヒーかすから高品質のメラノイジン産物を与える。本発明に従う方法によって得られるメラノイジン産物は、既にナノスケールであるか、又はナノスケール製品に容易に変換あれることができる。
【0059】
分画工程
【0060】
メラノイジン産物を調製する為の方法の好ましい実施態様において、該第2の分離工程は、分画工程を含むか、又は分画工程に続く。該分画工程において、メラノイジン含有析出物は、分子量による分画によって分離される。
【0061】
該方法の好ましい実施態様では、該分画は、限外濾過によって、好ましくは必要な分子量カットオフ膜を用いて、行われる。有利なことに、限外濾過は、次に、更に処理されうる複数の保持物を与えることができる。
【0062】
該方法の好ましい実施態様において、該分画は遠心分離又はサイズ排除クロマトグラフィーによって行われる。分画されるべき化合物の最小分子量を適切に選択することにより、得られた保持物からカフェイン(分子量194ダルトン)を実質的に除去することができることは、本発明のこの実施態様の達成可能な有利点である。
【0063】
液相除去工程
【0064】
第2の分離工程又は分画工程の産物、例えば、析出物又は残余分、は、固体の形態のメラノイジン画分を得るために、液相除去工程に付すことができる。水性抽出剤の場合に、好適な脱水方法は、凍結乾燥、噴霧乾燥、対流乾燥、放射線乾燥及び真空乾燥を包含するが、これらに限定されるものでない。好ましくは、水分除去工程により、メラノイジン産物が粉末として与えられる。好ましい粉末の粒子は、1nm(ナノメートル)以上、より好ましくは10nm以上、の平均粒径(質量-メディアン-直径D50として測定)を有する。好ましくは、粉末の粒子は、50μm(マイクロメートル)以下、より好ましくは5μm以下、例えば10nm~1μm、の平均粒径(D50)を有する。
【0065】
ナノ粒子製造工程/ナノファイバー製造工程
【0066】
該第2の分離工程、該分画工程又は該液相除去工程の生成物、例えば析出物又は残余分、は、ナノ粒子が製造されるナノ粒子製造工程に供されてもよい。好ましくは、該ナノ粒子製造工程は、エレクトロスプレーイング(electrospraying)、レーザアブレーション(laser ablation)、凍結乾燥、噴霧乾燥、対流乾燥、放射線乾燥、真空乾燥及び超音波微粒子化(ultrasound particulation)の群から選択される少なくとも1つの方法を含む。
【0067】
該第2の分離工程、該分画工程又は該液相除去工程の生成物、例えば析出物又は残余分、は、ナノファイバーが製造されるところのナノファイバー製造工程に付されてもよい。好ましくは、該ナノファイバー製造工程は、エレクトロスピニングを含む。該ナノファイバー製造工程は、メラノイジン画分への1以上の補助成分の添加を含みうる。これらの補助成分は、加工性、又はファイバーの形成を改善しうる。好ましい実施態様において、ポリビニルアルコールが補助成分として添加される。
【0068】
1つの好ましい実施態様において、該第2の分離工程は、該形成された析出物のうち平均分子量が10kDa未満の低分子量画分が得られるところの分画工程を含むか、又はそれに続く工程であり、ここで、該第2の分離工程の後に、ナノ粒子が低分子量画分から製造されるナノ粒子製造工程が続く。好ましくは、該ナノ粒子製造工程は、エレクトロスプレーイング、レーザアブレーション、凍結乾燥、噴霧乾燥、対流乾燥、放射線乾燥、真空乾燥及び超音波微粒子化の群から選択される少なくとも1つの方法を含む。
【0069】
他の好ましい実施態様において、該第2の分離工程は、該形成された析出物のうち少なくとも10kDaの平均分子量を有する高分子量画分が得られるところの分画工程を含むか、又はそれに続く工程であり、ここで、該第2の分離工程は、ナノファイバーが高分子量画分から製造されるナノファイバー製造工程が続く。好ましくは、該ナノファイバー製造工程は、エレクトロスピニングを含む。該ナノファイバー製造工程は、該メラノイジン画分への1以上の補助成分の添加を含みうる。これらの補助成分は、加工性、又はファイバーの形成を改善しうる。好ましい実施態様において、ポリビニルアルコールが補助成分として添加される。
【0070】
前処理
【0071】
メラノイジン産物を調製する方法の別の好ましい実施態様において、該抽出工程の前に1以上の前処理工程がある。
【0072】
好ましい前処理は、該コーヒーかすの微粉化である。本発明の文脈において、「微粉化」とは、該コーヒーかすの粒子の平均直径を減少させるプロセスである。好ましくは、該微粉化は、粉砕(milling)又は粉砕(grinding)によって行われる。好ましい粉砕機(mill)はボールミルである。微粉化後の該コーヒーかすの平均直径は好ましくは、1500μm未満、より好ましくは1250μm未満、である。該平均直径は好ましくは、1μm超、より好ましくは100μm超、である。
【0073】
別の好ましい前処理は、該コーヒーかすの乾燥である。好ましくは、乾燥の間、該コーヒーかすは、50℃超、より好ましくは70℃超、の温度に曝露される。好ましくは、該乾燥温度は、110℃未満、例えば70℃~90℃、である。該乾燥後の該コーヒーかすの含水率は好ましくは、5%未満、より好ましくは2%未満、である。好ましい乾燥時間は、1時間超2時間未満である。
【0074】
別の好ましい前処理は、該コーヒーかすの脱脂である。好ましい脱脂方法において、該コーヒーかす中に存在する脂質及び/又は油の少なくとも一部は、好適な溶媒、例えば二酸化炭素、を用いて抽出される。好ましくは、二酸化炭素は、超臨界流体となるような圧力及び温度で適用される。
【0075】
使用済みコーヒーかすの為に特に適している別の好ましい脱脂方法は、該コーヒーかす中に存在する脂質及び/又は油の少なくとも一部が、有機溶媒、例えばエタノール、ジエチルエーテル又はクロロホルム、を用いて抽出される。
【0076】
脱脂後の該コーヒーかすの脂質含量は好ましくは、2%未満、より好ましくは1%未満、である。該脱脂により、有利には、後続の抽出工程の収量が増加されること、油抽出溶媒エマルションの潜在的形成が防止されることが達成されることができる。
【0077】
上記の前処理及び他の前処理は、単独で又は任意の組み合わせで実施されることができる。好ましくは、微粉化は、後者の工程の後ではなく、乾燥及び/又は脱脂の前に行われる。
【0078】
メラノイジンナノ粒子及びナノファイバー
【0079】
本発明の第2の観点において、該問題は、本発明に従う方法によって得られるメラノイジンナノ粒子及びメラノイジンナノファイバーを提供することによって解決される。
【0080】
1つの好ましい実施態様において、該メラノイジン産物は、1nm~800nmの平均直径を有するナノ粒子である。
【0081】
好ましくは、該ナノ粒子は、1nm超、より好ましくは10nm超、の平均直径を有する。好ましくは、該ナノ粒子は、1000nm未満、より好ましくは800nm未満、例えば40nm~600nm、の平均直径を有する。
【0082】
好ましくは、該メラノイジンナノ粒子は、70重量%超のメラノイジン、より好ましくは80重量%超のメラノイジン、更により好ましくは90重量%超のメラノイジン、特には95重量超のメラノイジン、を含む。
【0083】
メラノイジンが1重量%~15重量%のフェノール化合物を含むことが更に好ましい。好ましくは、メラノイジンは2重量%超のフェノール化合物を含み、より好ましくは3重量%超のフェノール化合物を含む。好ましくは、メラノイジンは14重量%未満のフェノール化合物、より好ましくは13重量%未満のフェノール化合物、例えば4~12重量%のフェノール化合物、を含む。
【0084】
語「フェノール化合物」は、該メラノイジン産物中に存在する全てのフェノールとポリフェノールとの合計を意味し、フェノール、ポリフェノール、及びフェノール酸、例えば、没食子酸、クロロゲン酸、カフェ酸及びサリチル酸、を包含するが、これらに限定されるものでない。
【0085】
該フェノール化合物の定量分析は、当技術分野において十分に確立されているフォリン-チオカルト(Folin Ciocalteu)試薬を用いて行われることができる。フォリン-チオカルト試薬はホスホモリブデン酸塩とホスホタングステン酸塩との混合物であり、フェノール系及びポリフェノール系抗酸化剤のイン・ビトロ(in vitro)比色分析の為に典型的に使用される。
【0086】
更に好ましくは、メラノイジンは1重量%~40重量%のタンパク質を含む。好ましくは、メラノイジンは5重量%超のタンパク質を含み、より好ましくは10重量%超のタンパク質を含む。好ましくは、メラノイジンは35重量%未満のタンパク質、例えば20~30重量%のタンパク質を含む。
【0087】
タンパク質含量の定量分析は、溶液中のタンパク質濃度を測定する為に使用される分光分析法であり且つ当技術分野でよく確立されているところのブラッドフォード(Bradford)タンパク質アッセイを用いて行われることができる。
【0088】
他の好ましい実施態様において、該メラノイジン産物はナノファイバーである。
【0089】
好ましくは、該ナノファイバーは、1nm超、より好ましくは10nm超、の平均直径を有する。好ましくは、該ナノファイバーは1000nm未満、より好ましくは800nm未満、例えば40nm~600nm、の平均直径を有する。
【0090】
好ましくは、該メラノイジンナノファイバーは、50重量%超のメラノイジン、より好ましくは70重量%超のメラノイジン、更に好ましくは90重量%超のメラノイジン、特には95重量%超のメラノイジン、を含む。
【0091】
メラノイジンが1重量%~15重量%のフェノール化合物を含むことが更に好ましい。好ましくは、メラノイジンは2重量%超のフェノール化合物を含み、より好ましくは3重量%超のフェノール化合物を含む。好ましくは、メラノイジンは14重量%未満のフェノール化合物、より好ましくは13重量%未満のフェノール化合物、例えば4~12重量%のフェノール化合物、を含む。
【0092】
メラノイジンは1重量%~40重量%のタンパク質を含むことが更に好ましい。好ましくは、メラノイジンは5重量%超のタンパク質を含み、より好ましくは10重量%超のタンパク質を含む。好ましくは、メラノイジンは35重量%未満のタンパク質、例えば20~30重量%のタンパク質、を含む。
【0093】
本発明に従うコーヒーかすから得られるメラノイジンナノ粒子及びメラノイジンナノファイバーは、広範な応用を可能にする有利な特性を有することが見出された。これらの有利な特性は、水及び他の溶媒中への良好な溶解性、広い光吸収範囲、並びに抗菌特性及び抗酸化特性を包含するが、これらに限定されるものでない。
【0094】
その上、本発明に従うコーヒーかすから得られるメラノイジンナノ粒子及びメラノイジンナノファイバーは、既知のメラノイジン産物と比較して、高い熱変換効率と優れた電気伝導性を有することが見出された。
【0095】
メラノイジンナノ粒子及びナノファイバーの使用
【0096】
本発明の更なる観点は、本発明に従うメラノイジン産物を含む電子部品である。該メラノイジン産物は、メラノイジンナノ粒子及び/又はメラノイジンナノファイバーを含みうる。
【0097】
本発明に従うナノスケールのメラノイジン産物の導電性は、環境に優しく且つ持続可能な電子部品の開発及び提供を可能にする。電子部品の例は、コンピュータ、メモリストレージ、ディスプレイ、オプトエレクトロニクスデバイス、プリント回路、導電性液体、ソーラーコレクタ(solar collectors)、ソーラー加熱(solar heating)、ソーラー蒸発(solar evaporation)を包含するが、これらに限定されるものでない。
【0098】
本発明の更なる観点は、本発明に従うメラノイジン産物を含む導電性液体である。該メラノイジン産物は、メラノイジンナノ粒子及び/又はメラノイジンナノファイバーを含みうる。
【0099】
好ましい実施態様において、該導電性液体は、導電性インクである。本発明に従う導電性インクは、印刷されたエレクトロニクスにおける様々な用途、例えば、フレキシブル回路、抵抗器、発熱体、ディスプレイ、センサー、RFIDアンテナ、スマートタトゥーにおいて使用されることができる。
【0100】
本発明の更なる観点は、本発明に従うメラノイジン産物を、光熱用途、特には、光熱療法、光力学療法、光熱触媒作用、光熱抗菌処置、ソーラーコレクタ、ソーラー加熱、ソーラー蒸発において使用することである。該メラノイジン産物は、メラノイジンナノ粒子及び/又はメラノイジンナノファイバーを含みうる。
【0101】
本発明の更なる観点は、薬物送達用途の為に本発明に従うメラノイジン産物を使用することである。該メラノイジン産物は、メラノイジンナノ粒子及び/又はメラノイジンナノファイバーを含みうる。
【0102】
好ましい実施態様において、該メラノイジン産物は、局所薬物送達の為に使用される。別の好ましい実施態様において、該メラノイジン産物は経皮薬物送達の為に使用される。両方の実施態様において、薬物又は他の活性成分の制御された放出が達成されることができる。その好ましい生体適合性により、該メラノイジン産物は体内への自然な経路を通じて分解することができる。
【0103】
好ましくは、本発明に従うメラノイジンナノ粒子及び/又はナノファイバーは、薬剤又は活性成分が配置されるところのマトリックスを提供する為に使用される。例えばクリーム、ローション、軟膏又は粘着テープとして、皮膚に施与されるときに、メラノイジンナノ粒子及び/又はナノファイバーは皮膚に浸透し、そして、該薬剤又は活性成分を体内に送達することができる。
【0104】
薬物送達の為の更なる実施態様において、該メラノイジン産物は皮下注射用途の為の医療用製品において使用される。このタイプの好ましい医療用製品において、該メラノイジン産物は薬剤又は活性成分と組み合わされる。該医療用製品は、例えば手術後の創傷組織として、又は或る期間にわたって、制御された医療処置の為に薬剤量を継続的に体内に供給する薬物のデポとして、皮膚の下に配置される。
【0105】
薬物送達の為の更なる実施態様において、メラノイジン産物は経口用途の医療用製品において使用される。このタイプの好ましい医療用製品において、薬物又は活性成分が腸に送達されることが予見される。担体(carrier)としてメラノイジン産物を使用することにより、この場合、薬剤又は活性成分が腸壁に浸透することができる。
【0106】
本発明に従うメラノイジンナノ粒子及びナノファイバーは、それらの良好な生体適合性及び有益な特性、例えば抗菌特性、により、医療用途の為に特に十分に適している。
【0107】
本発明の更なる観点は、バイオエレクトロニクス用途の為に本発明に従うメラノイジン産物を使用することである。該メラノイジン産物は、メラノイジンナノ粒子及び/又はメラノイジンナノファイバーを含んでいてもよい。本発明に従うメラノイジン産物は、それらの導電特性により、これらの用途の為に特に十分に適している。
【0108】
1つの変形において、該メラノイジン産物は、神経バイオインターフェース用途、特にはインプラント用途、の為に使用される。例えば、生体電極、神経インタフェース、神経電極-組織インタフェース、心臓インタフェース、骨組織バイオマテリアル、人工組織バイオマテリアル、組織再生、伸縮性バイオエレクトロニクス、神経インタフェースの為の導電性ハイドロゲルを包含するが、これらに限定されるものでない。
【0109】
更なる変形において、該メラノイジン産物は、バイオアクチュエータ(bio-actuator)用途、例えば、神経刺激、機械的作動、バイオアクチュエータ、動的作動のようなe-スキン、e-マッスル用途、人工関節、の為に、使用される。
【0110】
全ての医療用途の場合に、語「皮膚」及び「身体」とは、ヒトの皮膚及び身体、並びに動物の皮膚及び身体を言及しうる。
【0111】
コーヒーかすから得られる本発明のメラノイジンナノ粒子及びメラノイジンナノファイバーの更なる応用分野は、化粧品組成物である。それ故に、本発明の更なる対象は、化粧品の実施態様の下記のリストを包含するが、これらに限定されるものでない。ここで、語「ナノスケールのメラノイジン産物」は、1nm~1000nmの平均直径を有するメラノイジンナノ粒子及び/又は1nm~1000nmの平均直径を有するメラノイジンナノファイバーを意味する。
【0112】
本明細書において使用される場合に、語「化粧品」とは、米国連邦食品医薬品化粧品法(US Federal Food,Drug and Cosmetic Act)(2002年12月19日、P.L.107-377により改正)において適用される定義に従って、「清潔にすること、美化すること、魅力を増進すること、又は、外観を変えることを目的として、人体又はその一部にこすりつけたり、注いだり、振りかけたり、噴霧したり、なじませたり、又は、その他の方法により塗布したりすることを意図された物品」(articles intended to be rubbed,poured,sprinkled,or sprayed on,introduced into,or otherwise applied to the human body...for cleansing,beautifying,promoting attractiveness,or altering the appearance)として使用される。その最も広い開示において、本発明の化粧品組成物の形態は特に限定されず、液体、エマルジョン、ペースト、ゲル、固体パウダー(solid powder)又はコンパクトパウダー(compact powder)でありうる。該化粧品組成物の具体例は、洗顔料;フェイシャルトリートメント、例えば、スキンローション、スキンミルク、クリーム、ゲル、美容液及びフェイシャルマスク;フェイシャルメイクアップ及びアイメイクアップの調製物、例えば、フェイスパウダー、ファンデーション、リップルージュ、チーク、アイライナー、マスカラ、アイシャドウ及びアイブロウペンシル;パーマネントメイクを包含するタトゥー;毛髪化粧品組成物、例えば、シャンプー、リンス、コンディショナー、ヘアスタイリング剤、ヘアトリートメント及びヘアカラー剤、を包含する。この定義内において特に含まれているものは、アイメイクアップ及びフェイシャルメイクアップの調製品、パーマネントメイクを包含するタトゥー;及びヘアカラーである。
【0113】
本明細書において化粧品組成物に関して使用される場合に、語「固体」とは、室温で且つ大気圧下で該組成物の状態を云う:該組成物は、保存の間にその形態を保持し且つそれ自体の重さで流動しない高いところのコンシステンシー(consistency)を有する。
【0114】
本明細書において使用される場合に、語「構造化剤」(structurant)とは、該組成物に懸濁特性、ゲル化特性、粘稠化特性、固化特性及び/又は増粘特性を提供する為に知られている任意の材料若しくは他の方法で有効な任意の材料、又は他の方法で最終製品形態に構造を提供する材料を意味する。これらの固体構造化剤は、ヒト皮膚への局所施与の為に適した1以上の固体結晶又は他の非ポリマー懸濁化剤を包含する。好適な懸濁化剤は、揮発性溶媒、不揮発性溶媒、又は該組成物の他の液体成分が含まれるところの結晶性又は他のマトリックスを該組成物中に形成することができるものである。そのような材料は典型的には、周囲条件下で固体であり、及び有機固体、ワックス、結晶性若しくは他のゲル化剤、又はそれらの組み合わせを包含する。構造化剤は、製品全体に微粒子活性の均一な分布を提供し、及びまた、製品の硬度又はレオロジーを制御する。完全を期す為に、本明細書において開示されている固体組成物における使用の為に適した結晶性構造化剤は、なかんずく、米国特許第5,552,136号明細書(Motley)、米国特許第5,976,514号明細書(Guskey等)、及び米国特許第5,891,424号明細書(Bretzler等)において記載されている。
【0115】
語「コンパクトパウダー」(compact powder)とは、製造の間の圧縮又は加圧によって提供される凝集力が少なくとも部分的に与えられた製品の塊を云う。特には、Stable Micro Systemsから入手可能なTA.XT.plus Texture Analyser texturometerを用いた測定を行うことによって、コンパクトパウダーは、使用されるスピンドルの表面積に対して0.1~2.5kgの圧力抵抗を有するべきである。この抵抗の測定は、SMS P/3平頭円筒形スピンドル(7.07mm2)を1.5mmの距離及び0.5mm/sの速度で移動させることによって行われる。
【0116】
語「タトゥー」は、針、メス、又は他の関連器具を使用して皮膚の下に色素を挿入することを通じて得られる、哺乳類の身体上の消えない印又は図形を云う。該語は、なかんずく該タトゥーの永続性の程度によって区別される表皮内タトゥーと皮膚内タトゥーの両方を包含することが意図されている。
【0117】
本明細書において使用される場合に、「ケラチン組織」とは、哺乳動物の最も外側の保護被覆として配置されるケラチン含有層を云い、それは、皮膚、毛髪、爪、及び甘皮(cuticle)を包含するがこれらに限定されるものでない。本発明の化粧品組成物が施与されうるケラチン組織の部位を限定する意図は特になく、顔、首、胸、背中、腕(脇の下を含む)、手、脚、足、臀部及び頭皮に上に露出されるケラチン組織について言及がされうる。
【0118】
本明細書において使用される場合に、語「表皮」とは、主な細胞型がケラチノサイトであるところの皮膚の外層を云う。当業者によって理解されるように、該表皮は慣用的に5つの層(strata)に分けられる:角質層(stratum corneum);顆粒層(stratum granulosum);有棘層(stratum spinosum);及び基底層(stratum basale)。該角質層はしばしば非生存性であるとして言及され、実質的にケラチンで満たされている、死んだ、無核のケラチノサイトの多くの層を含む。該角質層は2~3層の無核細胞を含む。該顆粒層は2~4層の細胞を含み、該細胞は、ケラトヒアリン顆粒(keratohyaline granules)を含むデスモソームによって結合されている。該有棘層は、適度に活動的な分裂細胞の8~10層を含み、それらは、デスモソーム(desmosomes)によって互いに保持されている。該基底層は単層の柱状細胞を含み、それは、有糸分裂によって活発に分裂し、そして、上部表皮を通じて角質層へと移動する細胞を提供する。
【0119】
本明細書において使用される場合に、語「真皮」とは、表皮と皮下組織との間にある皮膚の層を云う。該真皮は、皮膚に構造的な支持を与え、及び線維芽細胞由来の非細胞性コラーゲン線維を含む。
【0120】
本明細書において、語「毛」(hair)とは、哺乳類のケラチンファイバーを意味し、並びに頭皮毛、顔面毛及び体毛を包含する。加えて、該語は、生きている対象に付着している毛と、そこから除去されている毛の両方を包含する。念のため、「毛幹」又は「毛ファイバー」とは、個々の毛の束を意味する。
【0121】
表現「頭皮の近位」とは、延在した又は実質的に直線化した毛シャフト(hair shaft)、毛の末端よりも頭皮に距離的に近い部分を意味する。これにより、毛ファイバーの長さの50%が頭皮の近位であるとみなされ、及び毛ファイバーの長さの50%が該頭皮の遠位であるとみなされる。該頭皮に近位で「x cm」と使用する場合、該頭皮を終点として測定された、延在した又は実質的に直線化した毛に沿った距離「x」を意味する。
【0122】
「化粧品的に許容される」とは、本明細書において記載された組成物、製剤又は成分が、過度の毒性、不適合性、不安定性、アレルギー反応等を伴わずに、ヒトのケラチン組織と接触して使用する為に適していることを意味する。ケラチン組織に直接的に施与される目的を有するところの、本明細書に記載される全ての組成物及び製剤は、化粧品的に許容されるものに限定される。
【0123】
本明細書において使用される場合に、語「局所適用」とは、本発明の組成物を皮膚の表面上に施与又は広げることを意味する。
【0124】
本明細書において(共)溶媒として使用する為の水は、当業者によって理解されるように、固形分含量の低い水を意味することが意図されている。水は例えば、蒸留水、脱塩水、脱イオン水、逆浸透水、ボイラー凝縮水、又は限外濾過水であってもよい。水道水は、或る状況において許容されうるが、本明細書において記載されるタトゥーインク組成物内では許容されない。
【0125】
本明細書において使用される場合に、「溶媒」とは、他の物質を溶解して、均一な溶液を形成することができる物質であり、溶解の間は、該溶媒も溶解物質のいずれも化学変化を起こさない。溶媒は極性であってもよく又は非極性であってもよい。語「アルコール溶媒」は、大気圧下、25℃で液体である水溶性のモノアルコール、ジオール又はポリオールである溶媒を包含する。
【0126】
有機液体製品が沸点領域を有する場合、大気圧下での沸点範囲の開始点(最低温度)が公称沸点として扱われる。必要に応じて、材料の初期沸点の測定は、ASTM標準試験法D1078-95又はその最新版に従って実施されるべきである。
【0127】
本明細書において使用される場合に、語「水混和性有機溶媒」とは、室温で水と完全に混和する有機溶媒を云う。この点で、水中に可溶性、自由に可溶性又は非常に可溶性であり、そして、それによって室温で1gの有機溶媒を溶解する為に≦30mlの水を必要とすることによって特徴付けられる有機溶媒が特に好ましい(https://www.sigmaaldrich.com/united-kingdom/technical-services/solubility.html)。
【0128】
本明細書において使用される場合に、語「水不混和性有機溶媒」とは、水と二相系を形成する有機溶媒を云う。この点で、水中にわずかに可溶性、非常にわずかに可溶性、又は実質的に不溶性であり、そして、それによって室温で1gの有機溶媒を溶解する為に≧100mlの水を必要とすることによって特徴付けられる有機溶媒が特に好ましい(https://www.sigmaaldrich.com/united-kingdom/technical-services/solubility.html)。
【0129】
本明細書において使用される場合に、語「分散液」とは、連続液体媒体を通じて分散された不連続粒子を含むところの組成物を云う。
【0130】
本明細書において使用される場合に、語「表面張力」とは、液体の表面の単位面積、2つの液体間の界面の単位面積、又は液体と気体との間の界面の単位面積を増加させる為に必要な力を云い、一般的に、単位はdynes/cmである。本明細書において記載されている表面張力は、Kruss USA,Matthews,N.C.が販売するEasyDyneテンシオメーターモデルK20を用いたDu Nouyリング法によって測定される。
【0131】
本明細書において使用される場合に、「C1~Cnアルキル」基とは、1~n個の炭素原子を含む一価の基を云い、アルカンのラジカルであり、直鎖及び分岐の有機基を含む。このように、「C1~C6アルキル」基とは、1~6個の炭素原子数を含む一価の基を云い、アルカンのラジカルであり、直鎖及び分岐の有機基を含む。アルキル基の例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル及びtert-ブチルを包含するが、これらに限定されるものでない。本発明において、そのようなアルキル基は、非置換であってもよく、又は1以上のハロゲン原子で置換されていてもよい。該当する場合、所与の置換基についての優先順位は明細書において記載されているだろう。
【0132】
本明細書において使用される場合に、語「C2~C6アルキレン」は、2~6個の炭素原子を有する飽和の二価炭化水素ラジカルとして定義される。
【0133】
本明細書において、本発明の組成物は、或る化合物、元素、イオン又は他の同種の成分を「実質的に含まない」として定義される。語「実質的に含まない」とは、化合物、元素、イオン、又は他の同種の成分が、該組成物に意図的に添加されず、該組成物の所望の特性に(悪影響を)及ぼさない、せいぜい微量しか存在しないことを意味することが意図される。例示的な微量は、該組成物の重量に対して1000ppm未満である。語「実質的に含まない」とは、特定の化合物、元素、イオン、又は他の同様の成分が、該組成物から完全に存在しないか、又は当技術分野において一般的に使用されている技術によって測定可能ないかなる量でも存在しない、それらの実施態様を包含する。
【0134】
化粧品の実施態様1
は、ナノスケールのメラノイジン産物を含む化粧品組成物である。
【0135】
化粧品の実施態様2
は、ナノスケールのメラノイジン産物を含む化粧品組成物であり、ここで、該ナノスケールのメラノイジン産物は、200ダルトン(Da)~300キロダルトン(kDa)、好ましくは1~300kDa、より好ましくは1~100kDa、最も好ましくは10~100kDa、の重量平均分子量を有する。
【0136】
化粧品の実施態様3
は、より狭く定義された分子量、例えば10~30kDa、30~50kDa、50~100kDa、又は100~200kDa、を有するところのナノスケールのメラノイジン産物を含む化粧品組成物であり、ここで、例えば、特定の顔料効果又は光吸収効果が所望される。下記の2以上のナノスケールのメラノイジン産物画分が存在し得ることがまた想定される:例えば、10~30kDaの重量平均分子量を有するナノスケールのメラノイジン産物に基づく第1の画分が、50~100kDa又は100~200kDaの重量平均分子量を有するナノスケールのメラノイジン産物に基づく第2の画分と、該化粧品組成物中で組み合わせられうる。
【0137】
化粧品の実施態様4
は、ナノスケールのメラノイジン産物を含む化粧品組成物であり、ここで、該化粧品組成物は、非粉末固形化粧品組成物、コンパクトパウダー化粧品組成物、又は水性液体化粧品組成物である。
【0138】
化粧品の実施態様5
は、本質的にカフェインを含まないナノスケールのメラノイジン産物を含む化粧品組成物である。
【0139】
化粧品の実施態様6
は、
a)ナノスケールのメラノイジン産物、ここで、該ナノスケールのメラノイジン産物は、200ダルトン~300kDa、好ましくは1~300kDa、より好ましくは1~100kDa、の重量平均分子量を有する;並びに、
b)湿潤剤、膨潤剤、浸透剤、pH調整剤、界面活性剤、増粘剤、抗菌剤、及び香料からなる群から選択される少なくとも1つの補助剤
を含む水性染毛剤組成物である。
【0140】
化粧品の実施態様7
は、該組成物の重量に基づいて、
a)5~20重量%のナノスケールのメラノイジン産物、ここで、該ナノスケールのメラノイジン産物は、200ダルトン~300kDa、好ましくは1~300kDa、より好ましくは1~100kDa、の重量平均分子量を有する;並びに、
b)湿潤剤、膨潤剤、浸透剤、pH調整剤、界面活性剤、増粘剤、抗菌剤、及び香料からなる群から選択される少なくとも1つの補助剤5~40重量%;並びに、
c)40~90重量%の水
を含む水性染毛剤組成物である。
【0141】
水性染毛剤組成物に関しては、該組成物が、該組成物の重量に基づいて、40~90重量%、好ましくは40~80重量%、より好ましくは55~75重量%、の水を含有することが好ましく、ここで、上記の成分a)、b)及びc)の合計は常に100重量%である。代替的であるが相互に排他的でない特徴付けにおいて、該水性染毛剤組成物は、25℃でブルックフィールド(Brookfield)粘度計を用いて測定される場合に、0.005~50Pa.sの粘度によって定義されうる。
【0142】
化粧品の実施態様7における成分b)は、薬剤によって提供される利益に基づく分類又は該薬剤の想定される作用様式に基づく分類を表す。この分類は便宜上なされたものであり、例えば所与の化学成分、例えばアンモニア、は、複数の利益を提供してもよく又は複数の作用様式を介して作用してもよい。
【0143】
単独で又は組み合わせて使用されうる例示的な湿潤剤は、グリセリン;プロピレングリコール;ソルビトール;1,3-ブチレングリコール;ポリビニルピロリドン(PVP);ポリエチレングリコール(PEG);ポリプロピレングリコール(PPG);PEG/PPG-ブロックコポリマー;及びPEG/PPG-ランダムコポリマーを包含するが、これらに限定されるものでない。例示的なPEG/PPG-ランダムコポリマーは、PEG/PPG-8/17である。
【0144】
例示的な膨潤剤は、アンモニア及びモノエタノールアミン(MEA)を包含する。アンモニアは、含まれる場合、本発明の水性組成物中にアンモニア溶液NH3(水性)として存在するであろう。これは、水酸化アンモニウム、アンモニア水、アンモニアリカー(ammonia liquor)、アクアアンモニア(aqua ammonia)、水性アンモニア、又は単にアンモニアとして当技術分野において言及されうる水中のアンモニアの弱塩基性溶液を包含する。語「水酸化アンモニウム」は、組成[NH4
+][OH-]を有する塩基を示唆しているが、NH4OHのサンプルを単離することは事実上不可能である。極端に希薄なアンモニア水溶液の場合を除き、これらのイオンはアンモニア水溶液中のアンモニアの総量の有意な割合を構成しないからである。
【0145】
単独で又は組み合わせて使用されうる例示的な浸透剤は、C1~C6アルキル基を有する一価アルコール、例えば、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール;3~8個の炭素原子を有する多価アルコール、例えば、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ヘプタンジオール、ヘプタントリオール、オクタンジオール、オクタントリオール、イソプレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン及びジエチレングリコールモノエチルエーテル;上記多価アルコールのエステル;室温で液体であるN-アルキルピロリドン、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-プロピル-2-ピロリドン、N-ブチル-2-ピロリドン及びN-シクロヘキシル-2-ピロリドン;C2~C6アルキレンカーボネート、例えば、エチレンカーボネート及びプロピレンカーボネート;芳香族アルコール、例えば、ベンジルアルコール、ベンジルオキシエタノール、シンナミルアルコール、p-アニシルアルコール、p-メチルベンジルアルコール、フェノキシエタノール、フェノキシイソプロパノール、2-ベンジルエタノール、β-フェニルエチルアルコール、を包含する。2-プロパノール、1,2-ヘキサンジオール及びベンジルアルコールが好ましいものとして言及されうる。
【0146】
pH調整剤の例は、鉱酸、例えばリン酸;ヒドロキシカルボン酸、例えば、乳酸、グリコール酸、クエン酸、3-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ酪酸、2-ヒドロキシブタン二酸、2,3-ジヒドロキシブタン二酸、3-ヒドロキシ吉草酸、5-ヒドロキシ吉草酸、6-ヒドロキシカプロン酸及びそれらのアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩;アンモニア;アルカリ金属水酸化物;アルカリ金属炭酸塩;アルカリ金属炭酸水素塩;アルカリ土類金属水酸化物;アルカリ土類金属炭酸塩;及びアルカリ土類金属炭酸水素塩を包含する。
【0147】
本発明の水性染毛剤組成物は典型的には、該組成物の重量に基づいて、最大10重量%、例えば最大5重量%又は最大3重量%、の界面活性剤を含む。多種多様な界面活性剤が本明細書において使用されうる。分散された相の乳化の為にも且つ施与される組成物の許容可能な広がりを提供する為にも、望ましい界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非泡立ち界面活性剤(Non-Lathering Surfactants)、乳化剤(emulsifiers)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。米国特許第6,280,757号明細書(McAtee等)は、好適な界面活性剤に関する有益な開示を提供する。
【0148】
アニオン性界面活性剤:本発明の組成物において有用なアニオン性界面活性剤の非限定的な例が、米国特許第3,929,678号明細書(Laughlin等)及び米国特許第4,557,853号明細書に開示されている。下記からなる群から選択されるアニオン性界面活性剤が言及されうる:i)8~36個又は8~24個の炭素原子を有する脂肪酸をベースとする脂肪酸石鹸;ii)モノアルキルホスフェート塩、ジアルキルホスフェート塩及びトリアルキルホスフェート塩;iii)サルコシネート、例えば、ラウロイルサルコシネートナトリウム、ミリストイルサルコシネートナトリウム及びココイルサルコシネートナトリウム;iv)硫酸塩、例えば、アルキル硫酸塩及びアルキルエーテル硫酸塩を包含する上記の硫酸塩、それらは、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウレス硫酸アンモニウム、ラウレス硫酸ナトリウム、トリデセス硫酸ナトリウム、セチル硫酸アンモニウム及びセチル硫酸ナトリウムが言及されうる;v)イセチオン酸塩、例えば、ラウロイルイセチオン酸ナトリウム及びココイルイセチオン酸アンモニウム;vi)タウリン酸塩、例えば、ラウロイルメチルタウリン酸ナトリウム及びココイルメチルタウリン酸ナトリウム;vii)ラクチル酸塩、例えば、ラウロイルラクチル酸ナトリウム、ラウロイルラクチル酸トリエタノールアミン及びカプロイルラクチル酸ナトリウム;viii)グルタミン酸塩、例えば、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、ミリストイルグルタミン酸ナトリウム及びココイルグルタミン酸ナトリウム;並びに、それらの混合物。
【0149】
非イオン性界面活性剤:本開示において有用性を有する好適な非イオン性界面活性剤は、アルキルグルコシド;アルキルポリグルコシド;ポリヒドロキシ脂肪酸アミド;アルコキシル化された脂肪酸エステル;スクロースエステル;アミンオキシド;及びこれらの混合物を包含する。例えば、C8~C14グルコースアミド、C8~C14アルキルポリグルコシド、スクロースココエート、スクロースラウレート、ラウラミンオキシド、ココアミンオキシド及びそれらの組み合わせが言及されうる。
【0150】
両性界面活性剤:本明細書において使用される場合に、語「両性界面活性剤」はまた、双性イオン界面活性剤を包含することが意図されている。単独で又は組み合わせて使用されうる有用な両性界面活性剤は、脂肪族第2級及び第3級アミンの誘導体、好ましくは、ここで、窒素がカチオン状態にあり、及びここで、少なくとも1つの脂肪族ラジカルが、イオン化可能な水溶性基、例えば、カルボキシル基、スルホネート基、スルフェート基、ホスフェート基又はホスホネート基、ベタイン、スルタイン、ヒドロキシスルタイン、アルキルイミノアセテート、イミノジアルカノエート、及びアミノアルカノエートを包含するが、これらに限定されるものでない。
【0151】
非泡立ち界面活性剤:本発明の染毛剤組成物は慣用的に、クレンジング機能を有することが意図されていないことを考慮すると、それ故に、それらは、泡立てシステム(lathering systems)である必要はなく、非泡立て界面活性剤(non-lathering surfactants)を含むことができる。本明細書において有用性を有する例示的な非泡立ち性界面活性剤は、モノラウリン酸ポリエチレングリコール20ソルビタン(ポリソルベート20);ポリソルベート60;ポリソルベート80;トリオレイン酸ポリオキシエチレン20ソルビタン(ポリソルベート85);ステアレス20;セテス-10;セテアレス-20;リン酸セチル;リン酸セチルカリウム;リン酸セチルジエタノールアミン;ステアリン酸グリセリル;ジステアリン酸PPG-2-メチルグルコースエーテル;及び、ステアリン酸PEG-100を包含する。
【0152】
乳化剤系(Emulsifier systems):上記に加えて、1以上の乳化剤の使用は本開示において排除されない。下記の乳化剤混合物が言及されうる:ISPから入手可能なPROLIPID登録商標141(ステアリン酸グリセリル、ベヘニルアルコール、パルミチン酸、ステアリン酸、レシチン、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール及びセチルアルコール);ISPから入手可能なPROLIPID登録商標151(ステアリン酸グリセリル、セテアリルアルコール、ステアリン酸、1-プロパナミウム、3-アミノ-N-(2-(ヒドロキシエチル)-N-N-ジメチル,NC(16~18)アシル誘導体、塩化物);Crodaから入手可能なPOLAWAX登録商標NF(乳化ワックスNF);Crodaから入手可能なINCROQUAT登録商標BEHENYL TMS(硫酸ベヘントリモニウム及びセテアリルアルコール);並びに、Gattefosseから入手可能なEMULLIUM登録商標DELTA(セチルアルコール、ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸ペグ-75、セテス-20及びステアレス-20)。
【0153】
本開示の水性染毛剤組成物は、該組成物の重量に基づいて、0~10重量%、例えば0~5重量%、の1以上の増粘剤を含んでいてもよい。該増粘剤は、下記から選択されうる:i)カルボン酸ポリマー、例えばB.F.Goodrichから入手可能なCARBOPOL登録商標900シリーズのそれらのメンバー;ii)アクリレート/C10~C30アルキルアクリレートクロスポリマー、例えば、B.F.Goodrichから入手可能なCARBOPOL登録商標1342、CARBOPOL登録商標1382、PEMULEN登録商標TR-1及びPEMULEN登録商標TR-2;iii)カチオン性ポリマー又は非イオン性ポリマーであってもよい架橋ポリアクリレートポリマー;iv)ポリアクリルアミドポリマー、特には、非イオン性ポリアクリルアミドポリマー;iv)アクリルアミド及び置換アクリルアミドとアクリル酸及び置換アクリル酸とのマルチブロックコポリマー;v)多糖類、例えば、スクレログルカン(scleroglucans)、セルロース及びセルロース誘導体、例えばカルボキシメチルセルロース及びアルキルヒドロキシアルキルセルロースエーテル、を包含する上記の多糖類;vi)変性デンプン;vii)ガム類、例えば、キサンタムガム、アカシアガム、アルギンニン、アルギン酸ナトリウム、ローカストビーンガム及びグアーガム;viii)タンパク質、例えば、コラーゲン、アルブミン及びゼラチン;並びに、これらの組み合わせ。
【0154】
本開示の水性染毛剤組成物は、該組成物の重量に基づいて、0~5重量%、好ましくは0~2重量%、の少なくとも1つの抗菌剤を含んでいてもよい。該組成物中に含まれる1つの抗菌剤又は各抗菌剤は、水中に不溶性である結晶性粒子であることが好ましい。例示的な抗菌剤は、硫黄;ピロクトンオラミン;米国特許第2,694,668号明細書、米国特許第3,152,046号明細書及び米国特許第4,089,945号明細書において記載されているような硫化セレン、並びに、米国特許第3,753,196号明細書、米国特許第4,345,080号明細書、米国特許第4,323,683号明細書及び米国特許第4,470,982号明細書において記載されているようなピリジンチオン塩を包含するが、これらに限定されるものでない。
【0155】
水性染毛組成物中に含まれていてもよい香料の例は、バニリン、桂皮アルコール、ヘリオトロピン、クマリン、2-メチル-3-(3,4-メチレンジオキシ-フェニル)-プロパナール、4-(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノン、ベンズアルデヒド、アニシルアルコール、3,4-ジメトキシベンズアルデヒド、ヘリオトロピルアセテート、フェニルアセトアルデヒドジメチルアセタール、フェノキシエチルアルコール、フェニルアセトアルデヒドグリセリルアセタール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、フラネオール、シュガーラクトン、メントール、エチルジグリコール、ベンジルアセテート、リナロール、カンファー、テルピネオール、シトロネロール、ゲラニオール、2,6-ノナジエノール、メチルオクチル20カーボネート、3,7-ジメチル-2,6-オクタジエナール及びノナナールを包含する。
【0156】
本発明の組成物の染毛剤は、熱エネルギー又は好適な電磁照射(electromagnetic radiation)を供給する手段と任意的に協働して、慣用的な手段を用いて、例えば、指触による、手による、ブラシによる又は別の実装によることを包含する上記慣用的な手段を用いて、毛シャフトの少なくとも一部に施与されうる。1以上の該組成物は、濡れた毛に又は乾燥した毛25に施与されうる。施与される量は、毛の太さ及び長さ、並びに所望の効果に依存して変化するだろう。
【0157】
1以上の染毛剤組成物は、実質的に毛の全てに施与されてもよく、又は代替的に、該毛の一部に施与されてもよい。1つの実施態様において、該組成物は、頭皮に近接する毛の一部に、例えば、頭皮に近接する0~10cm又は0~5cmに、施与されうる。これは、使用者が新しく成長した毛の根元30の色を修正する為に望ましい場合がある。
【0158】
化粧品の実施態様8
は、水性タトゥーインク組成物であり、
a)少なくとも1つの着色剤、ここで、該少なくとも1つの着色剤は、ナノスケールのメラノイジン産物を含み、該ナノスケールのメラノイジン産物は、200ダルトン~300kDa、好ましくは1~300kDa、より好ましくは1~100kDa、の重量平均分子量を有する;並びに、
b)結合剤、増粘剤、pH調整剤、界面活性剤、湿潤剤、抗菌剤、抗炎症剤、抗酸化剤、防腐剤、及び局所麻酔剤からなる群より選択される少なくとも1つの補助剤
を含む。
【0159】
任意的に、水性タトゥーインクは、少なくとも1つの共溶媒を更に含むことができる。
【0160】
化粧品の実施態様9
は、該組成物の重量に基づいて、該組成物の下記の成分の合計が100重量%であるところの水性タトゥーインク組成物である:
a)10~40重量%の水;
b)30~60重量%の少なくとも1つの着色剤、ここで、該少なくとも1つの着色剤はナノスケールのメラノイジン産物を含み、該ナノスケールのメラノイジン産物は、200ダルトン~300kDa、好ましくは1~300kDa、より好ましくは1~100kDa、の重量平均分子量を有する;
c)0~15重量%の少なくとも1つの共溶媒;並びに、
d)結合剤、増粘剤、pH調整剤、界面活性剤、湿潤剤、抗菌剤、抗炎症剤、抗酸化剤、防腐剤、及び局所麻酔剤からなる群より選択される少なくとも1つの、5~15重量%の補助剤。
【0161】
化粧品の実施態様9における成分d)は、該補助剤によって提供される利益に基づく分類又は該補助剤の想定される作用様式に基づく分類を表す。この分類は便宜上なされたものであり、所与の化学成分、例えばポリエチレングリコール、は、複数の利益を提供してもよく、又は複数の作用様式を介して作用してもよい。この点に関して、ナノスケールのメラノイジン産物それら自体が色素機能を提供し、且つ抗菌剤、抗炎症剤及び抗酸化剤として作用し、それによって、これらの機能性を有する補助成分を提供する必要性を最小限にすることができることがここで繰り返される。
【0162】
本発明の水性タトゥーインキ組成物は、前述されたメラノイジンに加えて、更なる着色剤を含むことができる。上記着色剤は、必然的に水溶性又は水分散性であり、下記から選択されうる:無機顔料;有機顔料;天然染料;合成染料;及びこれらの組み合わせ。天然染料又は合成染料を金属塩で析出させることによって得られるところの、有機顔料、ラッカー化された顔料(lacquered pigment)又はラッカー顔料(lacquer pigment)(「レーキ顔料」(lake pigments))の使用がまた想定される。しかしながら、該製剤は金属粒子を実質的に含まないか、又はマイクロカプセル化された着色剤を実質的に含まないことが好ましい。
【0163】
完全を期す為に、例示的な無機顔料は下記のものを包含するが、これらに限定されるものではない:金属酸化物、例えば、酸化鉄赤、酸化鉄黄、酸化鉄黒、アナターゼ(anatase)、ブルッカイト(brookite)、ルチル(rutile)、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化コバルト、酸化セリウム、酸化ニッケル、酸化クロム、ニッケルクロム酸化物、酸化亜鉛及び複合酸化物(composite oxides);金属水酸化物、例えば、水酸化カルシウム、水酸化鉄、水酸化アルミニウム、水酸化クロム、水酸化マグネシウム、及び複合金属水酸化物(composite metal hydroxides);プルシアンブルー;硫化鉄;マンガンバイオレット;カーボンブラック;雲母;並びに、カオリン。
【0164】
該水性タトゥーインク組成物は、少なくとも1つの水混和性有機共溶媒を含んでいてもよい。存在する場合、水と上記の少なくとも1つの水混和性有機溶媒は、20:80~80:20、例えば30:70~70:30、の重量比で混合されるべきである。上述された重量比の相互的に排他することが意図されるものではない好適な追加の記述において、この部分において含まれる水混和性有機溶媒又は水混和性有機溶媒の混合物は、水/溶媒の組み合わせの表面張力を室温で64ダイン/cm未満に低下させる為に十分な量で選択され、そして、水に添加されることが好ましい。
【0165】
本発明の少なくとも1つの水混和性有機溶媒は、下記からなる群から選択されうる:C1~6アルカノール、例えばメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、n-ペンタノール;シクロペンタノール;シクロヘキサノール;ジオール、特には、2~12個の炭素原子を有するジオール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、ただし、チオジグリコール、並びにオリゴ及びポリアルキレングリコール、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール、を包含する;トリオール、例えば、1,2,6-ヘキサントリオール;ケトン及びケトンアルコール、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、3-ペンタノン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン及びジアセトンアルコール;テトラヒドロフラン;ジオキサン;2~12個の炭素原子を有するジオールのモノ-C1~4-アルキルエーテル、例えばエチレングリコールモノ-(C1~C4)-アルキルエーテル、プロピレングリコールモノ-(C1~C4)アルキルエーテル、特には、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル;ジエチレングリコールモノ(C1~C4)アルキルエーテル、例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル及びジエチレングリコールモノブチルエーテル;ジプロピレングリコールモノ(C1~C4)アルキルエーテル、例えば、ジプロピレングリコールNプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル及びジプロピレングリコールモノブチル;プロピレングリコールフェニルエーテル;鎖状アミド、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド及びN,N-ジメチルアセトアミド;環状アミド、例えば、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、カプロラクタム及び1,3-ジメチルイミダゾリドン;糖エステル、例えば、ジメチルイソソルビド;環状エステル、例えばカプロラクトン;並びに、スルホキシド、例えば、ジメチルスルホキシド及びスルホラン。
【0166】
上記の少なくとも1つの水混和性溶媒は好ましくは、アセトン、ジアセトンアルコール、イソプロピルアルコール及びそれらの組み合わせから選択される。
【0167】
この製剤中における水非混和性有機溶媒の存在は厳密に排除されるものではないが、好ましい実施態様を示すものでない。寧ろ、該製剤が本質的に水非混和性有機溶媒を含まず、単一の連続した水性相として存在することが好ましい。
【0168】
上記の成分d)に関して、結合剤(binders)又は結合化剤(binding agents)は、水性タトゥーインク組成物の慣用的な成分であり、それは、該組成物の重量に基づいて、5重量%までの量で存在しうる。該結合剤は、不揮発性成分であり、それは、粒子状の着色剤を互いに結合させ、そうすることによって、注入手段、例えば注射針、を用いたインクの皮内又は表皮内への導入を容易にする。ポリビニルピロリドン(PVP)、特には1~3000kDaの重量平均分子量を有するポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール(PEG)、特には0.2~6kDaの重量平均分子量を有するポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール(PPG)、特には0.2~6kDaの重量平均分子量を有するポリプロピレングリコール、PEG/PPGブロックコポリマー、特には5~15kDaの重量平均分子量を有するPEG/PPGブロックコポリマー、PEG/PPGランダムコポリマー、及びシェラック樹脂。
【0169】
該水性タトゥーインク組成物は典型的には、該組成物の重量に基づいて、最大5重量%、例えば最大3重量%、の界面活性剤を含む。本明細書において、多種多様な界面活性剤が使用されることができる。分散された相の乳化の為にも且つ施与される組成物の許容可能な広がりを提供する為にも、望ましい界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非泡立ち界面活性剤、乳化剤、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。上記された水性染毛組成物の為に提供される界面活性剤に関する開示は、適用可能であると考えられ、参照によって本明細書内に組み込まれる。
【0170】
pH調整剤の例:鉱酸、例えばリン酸;ヒドロキシカルボン酸、例えば、乳酸、グリコール酸、クエン酸、3-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ酪酸、2-ヒドロキシブタン二酸、2,3-ジヒドロキシブタン二酸、3-ヒドロキシ吉草酸、5-ヒドロキシ吉草酸、6-ヒドロキシカプロン酸、及びそれらのアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩;アンモニア;アルカリ金属水酸化物;アルカリ金属炭酸塩;アルカリ金属炭酸水素塩;アルカリ土類金属水酸化物;アルカリ土類金属炭酸塩及びアルカリ土類金属炭酸水素塩。
【0171】
この実施態様の製剤は、該組成物の重量に基づいて、0~5重量%、例えば0~3重量%、の1以上の増粘剤を含んでいてもよい。上記の増粘剤は、下記から選択されうる:i)カルボン酸ポリマー、例えばB.F.Goodrichから入手可能なCARBOPOL登録商標900シリーズのそれらのメンバー;ii)アクリレート/C10~C30アルキルアクリレートクロスポリマー、例えばB.F.Goodrichから入手可能なCARBOPOL登録商標1342、CARBOPOL登録商標1382、PEMULEN登録商標TR-1及びPEMULEN登録商標TR-2;iii)カチオン性又は非イオン性ポリマーであってもよい架橋されたポリアクリレートポリマー;iv)ポリアクリルアミドポリマー、特には、非イオン性ポリアクリルアミドポリマー;iv)アクリルアミド及び置換されたアクリルアミドとアクリル酸及び置換アクリル酸とのマルチブロックコポリマー;v)多糖類、例えば、スクレログルカン、セルロース及びセルロース誘導体、例えばカルボキシメチルセルロース及びアルキルヒドロキシアルキルセルロースエーテル;vi)変性されたデンプン;vii)ガム類、例えば、キサンタムガム、アカシアガム、アルギンニン、アルギン酸ナトリウム、ローカストビーンガム及びグアーガム;viii)タンパク質、例えば、コラーゲン、アルブミン及びゼラチン;並びに、それらの混合物。
【0172】
当技術分野において知られているように、保湿剤(humectants)は、それらの重量に相対的に多量の水を保持することができるところの、水結合特性を有する化粧品成分である。保湿剤は通常、油中よりも水中に溶けやすい。本製剤における使用の為に、好適な保湿剤に関する参考文献は、国際公開公報第WO98/22085号パンフレット、国際公開公報第WO98/18444号パンフレット及び国際公開公報第WO97/01326号パンフレットを包含する。そして、本明細書において使用する為の例示的な保湿剤は、アミノ酸、コラーゲンアミノ酸又はペプチド、ケラチンアミノ酸、シルクアミノ酸、尿素、グリコサミノグリカン、N-アセチルグルコサミン、グリセリン、グリセリンのポリエチレングリコールエーテル、並びに、ヒアルロン酸、アセチルヒアルロン酸、アスパラギン酸、グルクロン酸及びグルタミン酸のアルカリ金属塩を包含する。
【0173】
この実施態様の製剤は、該組成物の重量に基づいて、0~5重量%、好ましくは0~2重量%、の少なくとも1つの抗菌剤を含んでいてもよい。該組成物中に含まれる1つの抗菌剤又は各抗菌剤は、水中に不溶性である結晶性粒子であることが好ましい。例示的な抗菌剤とは、硫黄;ピロクトンオラミン;米国特許第2,694,668号明細書、米国特許第3,152,046号明細書及び米国特許第4,089,945号において記載されているような硫化セレン、並びに、米国特許第3,753,196号、米国特許第4,345,080号、米国特許第4,323,683号及び米国特許第4,470,982号に記載されているようなピリジンチオン塩を包含するが、これらに限定されるものでない。
【0174】
この実施態様の製剤は、該組成物の重量に基づいて、0~2重量%の少なくとも1つの抗炎症剤を含みうる。単独で又は組み合わせて使用されうる好適な抗炎症剤は、下記を包含する:ビタミンF、ビタミンE、不飽和脂肪酸、ルチン、バイオフラボノイド、カフェ酸フェネチルエステル、シーバックソーン(sea buckthorn)油、オリーブ油、ホホバ油、カモミール精油、カモミール抽出物、ウィッチヘーゼル(witch hazel)(別名:ハマメリス バージニアナ(Hamamelis virginiana))抽出物、ビート根(beetroot)抽出物、ワサビ抽出物、タンポポ抽出物、シマカンギク(Chrysanthemum indicum)抽出物、スクバギ抽出物、ベタメタゾン、デキサメタゾン、及びそれらの混合物。前述された抽出物は、公知の方法、例えば、熱水又はアルコールによる抽出工程を包含する上記の公知の方法、によって得られうる。ウィッチヘーゼル(witch hazel)抽出物が好ましいことが言及されうる。
【0175】
例示的な抗酸化剤は、ビタミンE、ビタミンF、ビタミンC、ルチン、レスベラトロール、カルノシン酸、キトサン、フラボノイド、没食子酸塩、アントシアニン及びカロテノイドを包含する。例示的な防腐剤は、キャプタン(captan)、クロルヘキシジン、ヘキサクロロフェン、トリクロサン、トリアセチン、及びそれらの混合物を包含する。
【0176】
或る実施態様において、この実施態様の製剤は、該組成物の重量に基づいて、最大1重量%の少なくとも1つの局所麻酔薬を含んでいてもよい。当技術分野において知られているように、局所麻酔薬は、敏感な神経線維の興奮性を低下させ、ナトリウムイオンチャネルの膜の内側上の結合部位との相互作用を通じてナトリウムイオンの流入を阻止し、従って、興奮の伝導の為に必要な活動電位の発生を防止する。本明細書において、好ましい局所麻酔薬は、リドカイン、メピバカイン、プリロカイン、アルチカイン、ブピバカイン、ジブカイン、ロピバカイン、エチドカイン、ジクロニン、プロカイン、ベンゾカイン、2-クロロプロカイン、オキシブプロカイン、テトラカイン、フォモカイン、エチドカイン、プラモカイン、レボブピバカイン、オキシプロカイン、ヘキシルカイン、ジブカイン、ピペロカイン、ブタンベン、ブタンベンピクレート、ジメチソキン塩酸塩、ジペロドン、ジクロニン、ケタミン、p-ブチルアミノ安息香酸、プラモキシン、及びそれらの医薬的に許容される塩、並びにそれらの混合物からなる群から選択される。リドカイン及びベンゾカインが好ましいことが言及されうる。この嗜好性は、これらの化合物の医薬的に許容される塩を包含することが意図されている。
【0177】
本開示のタトゥーインク組成物は、任意の慣用的な技術によって施与されうる。当業者によって認識されるように、タトゥーの適用は、表面の汚染物質を除去する為の洗浄による皮膚の準備、及び/又は局所的及び一時的な痛みの緩和を提供する為の麻酔薬の適用によって先行されうる。局所麻酔薬の事前施与は、上述されているように、インク組成物それ自体に含まれている任意の麻酔薬を補完しうる。
【0178】
表皮内タトゥーは、着色剤が表皮内に配置されているが、皮膚から拡散せず、皮膚の物理的破壊又は自然な落屑のいずれかを伴わずに皮膚から除去することができないという点で、「半永久的着色剤」(semi-permanent colorant)とみなされうる。該表皮内タトゥーは、特には、水、石鹸、アルコール性溶媒又はそれらの組み合わせの作用下で洗い流される場合はない。
【0179】
本開示の組成物の表皮投与は、例えば、針;マイクロニードル;ジェット注入;サーマルマイクロポレーション;エレクトロポレーション;ソノポレーション;又はそれらの組み合わせによって行われうる。その上、表皮投与の部位は、角質層(stratum corneum)、手掌と足の裏の皮膚で角質層の直下にある表皮層(stratum lucidum)、顆粒層、有棘層及び基底層のうちの1つ以上であってもよい。
【0180】
本開示を限定する意図はないが、皮内塗布の為の技術は、少なくとも3つの微細な点を有し、その点が50~5000分-1の頻度で軸方向に前後に移動するところの針を用いて、毛細管現象下で真皮内にインクを導入することによって特徴付けられるすべきであると考えられる。そのような導入方法の下では、マクロファージが防御反応として真皮内に放出される。しかしながら、インク微粒子がマクロファージよりもはるかに大きいことを考えると、インク微粒子が貪食細胞によって取り囲まれる結果、該インク微粒子は真皮内に固定されることになる。そのような導入方法の下では、インク微粒子の一部が線維芽細胞によって取り込まれ、更に一部が真皮内のコラーゲン線維の細胞外マトリックス内に保持されることがまた立証されている。しかしながら、表皮内に沈着したインクは、表皮細胞が自然に、及び針による損傷に対する治癒反応の両方で剥がれ落ちることから、失われることになるであろう。
【0181】
皮膚内適用の為の例示的なタトゥーニードルは、下記に記載されているものを包含するが、これらのものに限定されない:欧州特許出願公開EP2454966 A1号明細書;米国特許出願公開第2007/0038181 A号明細書(Melamud);米国特許出願公開第2004/0186501 A号明細書(Kuei);米国特許第8,764,784号(Crockett);米国意匠特許第866950 S1号(Schubert);及び米国意匠特許第888240 S1号(Importla)。
【0182】
タトゥーは永久的であることが意図されているが、人はしばしば身体からそれを除去しようとすることが認識されている。顔料としてメラノイジンを使用することにより、真皮又は表皮内に導入された酵素及び化学物質、例えば過酸化水素及びオゾン、の標的作用を通じて、これらの化合物が分解されることができるという利点があると考えられている。メラノイジンの分解により、色素は「除去可能」になる。
【0183】
化粧品の実施態様10
は、固形化粧品組成物であり、ここで、該組成物は、
a)少なくとも1つの着色剤、ここで、該少なくとも1つの着色剤は、ナノスケールのメラノイジン産物を含み、該ナノスケールのメラノイジン産物は、200ダルトン~300kDa、好ましくは1~300kDa、より好ましくは1~100kDa、の重量平均分子量を有する;
b)少なくとも1つの構造化剤;並びに、
c)少なくとも1つの増粘剤
を含む。
【0184】
化粧品の実施態様11
は、組成物の重量に基づいて、
a)2~30重量%の少なくとも1つの着色剤、ここで、該少なくとも1つの着色剤は、ナノスケールのメラノイジン産物を含み、ここで、該ナノスケールのメラノイジン産物は、200ダルトン~300kDa、好ましくは1~300kDa、より好ましくは1~100kDa、の重量平均分子量を有する;
b)4~50重量%の少なくとも1つの構造化剤;
c)4~50重量%の少なくとも1つの増粘剤;並びに、
d)担体(carrier)、安定剤、界面活性剤及び防腐剤からなる群から選択される少なくとも1つの、0~90重量%の補助剤
を含む固形化粧品組成物である。
【0185】
化粧品実施態様11における成分d)は、薬剤又は薬剤の想定される作用様式によって提供される利益に基づく分類を表す。この分類は便宜上なされたものである。所与の化学成分は、複数の利益を提供してもよく、又は複数の作用様式を介して作用してもよい。
【0186】
該固形化粧品組成物は、該組成物の重量を基準として、4~50重量%、例えば5~40重量%又は5~30重量%、の1以上の構造化剤を含んでいてもよい。本発明を限定する意図はないが、本発明において有用性を有する該構造化剤は、50~150℃の軟化点を有するワックスを含むか又はワックスからなるべきであり、下記のうちの1つ以上を包含しうる:i)数平均分子量が500~7500を有するポリエチレン;ii)石油ワックス、例えばパラフィンワックス、オゾケライトワックス(ozokerite wax)、セレシンワックス(ceresin wax)、エーデルワックス(ader wax)、アースワックス(earth wax)、及びマイクロクリスタリンワックス(microcrystalline wax);iii)一酸化炭素と水素を重合することによって作られた合成ワックス、例えばフィッシャートロプシュワックス(Fischer-Tropsch wax);iv)ポリオレフィンワックス、v)水素添加された動物油、魚油又は植物油、vi)動植物由来のワックス、例えば、蜜蝋、カルナウバワックス、キャンデリラワックス(carnauba wax)、スペルメセチワックス(spermeceti wax)及びベイズベリーワックス(baysberry wax)。
【0187】
該固形化粧品組成物は、該組成物の重量に基づいて、4~50重量%、例えば5~40重量%又は5~30重量%、の1以上の増粘剤を含んでいてもよい。上記の増粘剤は、下記から選択されうる:i)カルボン酸ポリマー、例えばB.F.Goodrichから入手可能なCARBOPOL登録商標900シリーズのメンバー;ii)アクリレート/C10~C30アルキルアクリレートクロスポリマー、例えばB.F.Goodrichから入手可能なCARBOPOL登録商標1342、CARBOPOL登録商標1382、PEMULEN登録商標TR-1及びPEMULEN登録商標TR-2;iii)カチオン性又は非イオン性ポリマーであってもよい架橋されたポリアクリレートポリマー;iv)ポリアクリルアミドポリマー、特には非イオン性ポリアクリルアミドポリマー;iv)アクリルアミド及び置換されたアクリルアミドとアクリル酸及び置換されたアクリル酸とのマルチブロックコポリマー;v)多糖類、例えば、スクレログルカン、セルロース及びセルロース誘導体、例えばカルボキシメチルセルロース及びアルキルヒドロキシアルキルセルロースエーテル、を包含する上記の多糖類;vi)変性されたデンプン;vii)ガム類、例えば、キサンタムガム、アカシアガム、アルギンニン、アルギン酸ナトリウム、ローカストビーンガム及びグアーガム;viii)タンパク質、例えば、コラーゲン、アルブミン及びゼラチン;並びに、それらの組み合わせ。
の混合物。
【0188】
該固形化粧品組成物は、施与時に、着色剤としてのナノスケールのメラノイジン産物を含む膜を残す機能性を有するところの担体(carrier)を50重量%まで含んでいてもよい。例示的な担体は、水;水混和性溶媒;水不混和性溶媒;Todd等、「Volatile Silicone Fluids for Cosmetics」,Cosmetics and Toiletries,91:27-32(1976)において記載されているような揮発性シリコーン;不揮発性有機流体;並びに、不揮発性シリコーン流体が挙げられる。語「揮発性シリコーン」とは、周囲条件下で測定可能な蒸気圧を有するシリコーン材料を云う。シクロメチコンは重要な例である。
【0189】
完全を期す為に、不揮発性有機流体の非限定的な例は、鉱油、PPG-14ブチルエーテル、ミリスチン酸イソプロピル、ワセリン、ステアリン酸ブチル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸ブチル、ミリスチン酸ミリスチル、C12~C15アルキル安息香酸塩(例えば、Finsolv.TM)、ジプロピレングリコールジベンゾエート、PPG-15ステアリルエーテルベンゾエート及びそれらのブレンド(例えば、Finsolv TPP)、ネオペンチルグリコールジヘプタノエート(例えば、InolexによるLexfeel 7)、オクチルドデカノール、イソステアリン酸イソステアリル、安息香酸オクトドデシル、乳酸イソステアリル、パルミチン酸イソステアリル、イソノニル/イソノネート、イソエイコサン、ネオペンタン酸オクチルドデシル、水添されたポリイソブタン及びステアリン酸イソブチルを包含する。米国特許第6,013,248号(Luebbe等)及び米国特許第5,968,489号(Swaile等)は、この文脈において有益な文献を提供すると考えられる。
【0190】
該固形化粧品組成物は典型的には、該組成物の重量に基づいて、最大5重量%、例えば最大3重量%、の界面活性剤を含む。本明細書において、多種多様な界面活性剤が使用されうる。分散された相の乳化の為にも且つ施与される組成物の許容可能な広がりを提供する為にも、望ましい界面活性剤は、アニオン性界面活性剤;非イオン性界面活性剤;両性界面活性剤;非泡立ち性界面活性剤;乳化剤;及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。上記された水性毛髪染色組成物の為に提供される界面活性剤に関する開示は、適用可能であると考えられ、参照によって本明細書内に組み込まれる。
【0191】
防腐剤がまた、固形化粧料組成物中に存在してもよい。その例は、フェノキシエタノール;C1~C6アルキルパラベン;イミダゾリニル尿素;ジメチルメトイルヒダントイン;N-(3-クロロアリル)ヘキサミニウムクロリド;セトリモニウムブロミド;エチレンジアミン四酢酸三ナトリウム;及び、ブチル化されたヒドロキシアニソール(BHA)を包含する。存在する場合、該防腐剤は典型的には、該組成物の重量に基づいて、0.5重量%まで、例えば0.01~0.1重量%、の量で添加される。しかしながら、メラノイジンの防腐機能を考慮すると、該固形化粧品組成物は実質的に防腐剤を含んでいなくてもよいことがまた想定される。
【0192】
本発明の固形化粧品組成物は、皮膚の所望の領域へのメラノイジン活性の局所施与を提供する為の任意の既知の製品形態又は他の有効な製品形態として処方されることができる。そのような製品形態の非限定的な例は、ケーキ、スティック、ペンシル及びロールオンを包含し、但し、選択された形態が本明細書において定義されている全ての必須要素を含む。該固形組成物は一般的に、施与の前及び施与の間の任意の構成成分である揮発性化合物の損失を防止する為に閉鎖可能であるべきところの好適なパッケージ又はアプリケーターデバイス内に貯蔵され、そしてそこから吐出される。
【0193】
化粧品の実施態様10及び11に従う固形化粧品組成物は特には、顔のメークアップとして十分に適している。
【0194】
メラノイジンナノ粒子又はナノファイバーを化粧品組成物に使用することは、既知の化粧品組成物に比べて幾つかの有利点を有する。
【0195】
ナノスケールのメラノイジンを化粧品組成物に直接含有させることにより、上記メラノイジンは、一般的に使用される有機顔料、鉱物顔料及び合成染料の全部又は一部を置き換えることができる。これは、既知の顔料及び染料、例えばカーボンブラック、に関連付けられた潜在的な健康問題及び有害な影響の観点から有益である。
【0196】
コーヒーかす、特には使用済みコーヒーかす、から得られるナノスケールのメラノイジンは、環境に優しく、及び化粧品組成物原料の為に再生可能で且つ持続可能な供給源である。
【0197】
化粧品組成物中のナノスケールのメラノイジンは、皮膚内に侵入する能力を有し、及び該皮膚に対してより良く付着する。この効果は、例えば日焼け止め、皮膚着色剤又は毛着色剤の用途の為に有利に使用されることができる。
【0198】
本発明の例示的な実施態様の詳細な説明
【0199】
以下において、本発明の更に好ましい実施態様が下記の実施例によって説明される。しかしながら、本発明はこれらの実施例に限定されるものでない。上記された説明、下記の実施例及び添付の特許請求の範囲において記載された特徴は、本発明の様々な実施態様を実現する為に、個々に又は任意の組み合わせで関連することができる。
【0200】
特に断りのない限り、下記の分析法が用いられた:溶液中の濃度は、405nm及び様々な波長のUV-VISによる吸光度によって決定された。分子量分布は、ゲル浸透クロマトグラフィー及び/又はガスクロマトグラフィー及び質量分析によって決定された。電気的表面、表面pH、及び表面電荷に関連する安定性は、ゼータ電位測定により決定された。
【0201】
実施例1
【0202】
メラノイジン産物が、本発明に従う、抽出工程、第1の分離工程、析出工程及び第2の分離工程を含む方法によって調製された。
【0203】
抽出工程
【0204】
該抽出工程は、1.2リットルの内容積を有するステンレス製反応器内で行われた。該反応器は、該反応器の容積内に機械式攪拌機、外部電気加熱、及び該反応器内にサーペンタイン冷却コイル(serpentine cooling coil)を備えていた。該反応器は、電気加熱により80℃に予熱された。100gの使用済みコーヒー粉が、該反応器内に入れられた。
【0205】
該抽出剤は、30gの水酸化ナトリウム(NaOH)を1リットルの蒸留水中に溶かして調製された。該抽出剤のpH値は13.9であった。該抽出剤が80℃の温度に予熱され、そして、該コーヒーかす粉の直後に該反応器内に入れられた。該反応器が密閉され、そして、その内容物が50~100rpmの速度で攪拌された。該反応器は120℃の温度に達するまで15分間加熱された。該反応器内の圧力は3バール(絶対値)まで上昇された。その温度が更に30分間維持された。次に、該加熱が止められ、そして、液体冷却液が冷却コイルを通じて流された。該反応器の液体内容物が、10分間で40℃まで急速に冷やされた。該反応器が開けられ、そして、抽出剤の流体相中に、結果として生じたメラノイジン含有溶質が得られた。
【0206】
第1の分離工程
【0207】
該反応器の内容物が、200μmでのカットオフを有するフィルタープレスに供給された。該メラノイジン含有溶質を含む流体相は、排出されたコーヒーかすから分離された。
【0208】
析出工程
【0209】
該第1の分離工程において分離された流体相が2リットルのガラスビーカーに供給された。37%(w/v)濃度の塩酸(HCl)が、pH値が2になるまで該流体相に滴下された。pH値はpH電極によって連続的に測定された。酸性化の間、酸性混合物の濁度の増加が観察され、析出物の形成を示した。
【0210】
第2の分離工程
【0211】
酸性混合物が約12時間静置された。次に、該酸性混合物が、攪拌することによってホモジナイズされ、そして、遠心分離機(エッペンドルフ社製モデル5810R)に供給された。10,000rpmで10分間遠心された後、固体粒子が50mlのフラスコ内に回収された。液相が排出された。フラスコ内の固体粒子が50mlの酸性水で再懸濁され、そして、2回目の遠心分離に付された。該2回目の遠心分離で得られた固体粒子が水中に再懸濁され、そして、凍結乾燥された。結果として得られた粉末は暗褐色であり、そして、最初のコーヒーかす粉の21重量%に達した。
【0212】
実施例2
【0213】
実施例1に従う方法によって得られた1gの粉末が50ml(ミリリットル)の脱塩水中に溶解された。該弱酸性溶液が、水酸化ナトリウムでpH値7に中和された。該中和された混合物が限外濾過膜に供給され、そこで、300kDa超の分子量を有する粒子の画分が低い分子量を有する画分から分離された。高分子量画分が、エタノールの水性溶液と混合された。該水性液は、75体積%のエタノールと25体積%の水とを含んでいた。80重量%のエタノール水性溶液が20重量%のメラノイジン含有混合物と混合された。
【0214】
結果として得られた混合物がエレクトロスピニング器具に供給された。ターゲットはアルミホイルであった。針と該ターゲットとの間の距離は15cmであった。印加電圧は10kV~20kVで変化された。この方法により、300~400nm(ナノメートル)の直径を有するメラノイジン含有ナノファイバーが得られた。
【0215】
実施例3
【0216】
実施例1に従う方法によって得られた1gの粉末が50mlの脱塩水中に溶解された。該弱酸性溶液が、水酸化ナトリウムでpH値7に中和された。該中和された混合物が限外濾過膜に供給され、そこで、100kDa超の分子量を有する粒子の画分が低い分子量を有する画分から分離された。高分子量画分が、エタノールの水性溶液と混合された。該水性液は、50体積%のエタノールと50体積%の水とを含んでいた。84.15重量%のエタノール水性溶液が、15重量%のメラノイジン含有混合物と、分子量(Mw)85000~124000を有し、87~89%加水分解された、0.85重量%の純粋なポリビニルアルコール(Sigma Aldrich)と混合された。
【0217】
結果として得られた混合物が0.3ml/時間の流速でエレクトロスピニング器具に供給された。ターゲットはアルミニウムホイルであった。針と該ターゲットとの間の距離は12cmであった。印加電圧は13.5kVであった。この方法により、多層ファイバーマットが得られた。
図1は、得られた繊維を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した写真を示す。
図1の左下隅にスケールが1μmとして与えられている。該ファイバーの直径は200nm~500nmの範囲であった。
【0218】
実施例4
【0219】
実施例1に従う方法によって得られた1gの粉末が50ml(ミリリットル)の脱塩水中に溶解された。該弱酸性溶液が、水酸化ナトリウムでpH値7に中和された。該中和された混合物が限外濾過膜に供給され、そこで、100kDa超の分子量を有する粒子の画分が低い分子量を有する画分から分離された。高分子量画分が、エタノールの水性溶液と混合された。該水性液は、50体積%のエタノールと50体積%の水とを含んでいた。82.45重量%のエタノール水性溶液が、15重量%のメラノイジン含有混合物と、分子量(Mw)85000~124000を有し、87~89%加水分解された、2.55重量%の純粋なポリビニルアルコール(Sigma Aldrich)と混合された。
【0220】
結果として得られた混合物が0.3ml/時間の流速でエレクトロスピニング器具に供給された。ターゲットはアルミニウムホイルであった。針と該ターゲットとの間の距離は12cmであった。印加電圧は11.7kVであった。この方法により、多層ファイバーマットが得られた。
図2は、得られた繊維を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した写真を示す。
図2の左下隅にスケールが1μmとして与えられている。該ファイバーの直径は250nm~450nmの範囲であった。
【0221】
実施例5
【0222】
実施例1に従う方法によって得られた1gの粉末が50mlの脱塩水中に溶解された。該弱酸性溶液が、水酸化ナトリウムでpH値7に中和された。該中和された混合物が限外濾過膜に供給され、そこで、100kDa超の分子量を有する粒子の画分が低い分子量を有する画分から分離された。高分子量画分が、エタノールの水性溶液と混合された。該水性液は、50体積%のエタノールと50体積%の水とを含んでいた。80重量%のエタノール水性溶液が20重量%のメラノイジン含有混合物と混合された。
【0223】
結果として得られた混合物がエレクトロスピニング器具に供給された。ターゲットはアルミホイルであった。針と該ターゲットとの間の距離は16cmであった。印加電圧は24.7kVであった。この方法により、球状のメラノイジン含有ナノ粒子が得られた。
図3は、得られた粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した写真を示す。
図3の左下隅にスケールが200nmとして与えられている。該粒子の直径は400nm未満であり、滑らかな表面を有していた。
【0224】
実施例6
【0225】
メラノイジン産物が、本発明に従う、抽出工程、第1の分離工程、析出工程及び第2の分離工程を含む方法によって調製された。
【0226】
該抽出工程及び該第1の分離工程は、実施例1の抽出工程及び第1の分離工程と同じであった。
【0227】
析出工程
【0228】
該第1の分離工程において分離された流体相が、容器容積内に機械式攪拌機を備えた容器に供給された。該流体相は周囲温度(約25℃)であった。該攪拌機は400~500rpmで運転された。該流体相が、有機相分離剤としての酢酸エチルと接触された。酢酸エチルが該流体相の体積の25%に相当する量で該流体相に添加された。該攪拌が、2つの非混和性液体のエマルジョンが形成されるまで続けられた。37%(w/v)濃度の塩酸(HCl)が、pH値が7になるまで該エマルションにゆっくりと添加された。pH値はpH電極によって連続的に測定された。酸性化の間、混合物の濁度の増加が観察され、析出物の形成を示した。
【0229】
第2の分離工程
【0230】
次に、該混合物が遠心分離機(エッペンドルフ社製モデル5810R)に供給された。2,000rpmで5分間遠心された後、混合物がフラスコ内に満たされた。沈下した後、下記の3つの相が分離された:すなわち、フラスコの底の水性相、上部の酢酸エチル相、メラノイジン含有析出物を含む中間相。固体粒子が、濾過によって中間相から取り出され、そして、引き続き、オーブン内で乾燥された。結果として得られた粉末は暗褐色を有し、最初のコーヒー粉の21重量%に達した。該粉末は、その粒度分布について分析された。粒径は40~600nm(ナノメートル)であり、粒子の大部分は200~400nmであった。
【0231】
実施例7
【0232】
メラノイジン産物が、実施例1に従う方法によって調製された。得られた生成物が限外濾過によって更に処理され、下記の異なる分子量の画分が結果として得られた:300kDa、100kDa、30kDa、10kDa、3kDa、1kDa及び1kDa未満。使用された膜(MerckによるUltracel登録商標)は、再生セルロース製であり、直径76mmであった。種々の画分が凍結乾燥によって溶液から回収された。収率は、全メラノイジン含量のパーセンテージとして計算された。
【0233】
夫々のメラノイジン画分の総フェノール含量(TPC:total phenolic content)が、フォリン-チオカルト(Folin Ciocalteu)法によって決定された。各抽出物が、まず脱イオン水中で、又は該抽出物が純水中に溶けない場合には0.01MのNaOH溶液中で希釈された。50μLのサンプルと500μLのフォリン-チオカルト試薬のアリコートが15秒間混合され、そして、室温で30分間インキュベートされた。次に、450μLの75g/L炭酸ナトリウムが該混合物に添加された。室温で暗所に1時間保存された後、混合物の760nmの吸光度が、マイクロプレートリーダーを用いて測定された。既知濃度の没食子酸を含有するトリヒドロキシ安息香酸の標準溶液が検量線を決定する為に用いられ、そして、結果は質量当たりの没食子酸当量(mg GAeq)で表された。各分析は3回行われ、そして、平均化された。
【0234】
総タンパク質含量が、ブラッドフォード(Bradford)タンパク質アッセイを用いて決定された。抽出の為に用いられた同じ溶媒中に適切に希釈された10μlの濾過された抽出物が、96ウェルマイクロプレート中で300μlのクマシーブルー試薬(Coomassie Blue reagent)と混合された。次に、該マイクロプレートが30秒間撹拌され、そして、室温で10分後、吸光度が、蒸留水で調製されたブランクを用いて、分光光度計マイクロプレートリーダー(Sunrise Tecan,Grodig,Austria)において595nmで測定された。検量線は、BSA(bovine serum albumin:ウシ血清アルブミン)の水性溶液を用いて用意された。タンパク質含量は、物質の質量当たりのミリグラム(mg BSA/g)として表された。
【0235】
下記の表1は、異なるフラクションの収率、総フェノール含量(TPC)、及び総タンパク質含量を示す。
【0236】
【0237】
実施例8
【0238】
電解質溶液としてのメラノイジンナノ粒子の導電率が室温で測定された。脱塩水が、該溶液のベースとして使用された。メラノイジンナノ粒子を含まない該ベース溶液の導電率は15μS/cm(10-6シーメンス/センチメートル)であった。10kDa~300kDaの範囲における重量分率のメラノイジンナノ粒子が該ベース溶液に添加された。該溶液が、導電率測定の前に十分に撹拌された。下記の表2は、溶液中の異なる濃度のメラノイジンナノ粒子についての測定された導電率を示す。
【0239】
【国際調査報告】