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特表2024-528512電気活性種及び電気化学的ガス分離方法
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  • 特表-電気活性種及び電気化学的ガス分離方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-30
(54)【発明の名称】電気活性種及び電気化学的ガス分離方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 50/10 20060101AFI20240723BHJP
   C07D 233/60 20060101ALI20240723BHJP
   C07D 323/00 20060101ALI20240723BHJP
   C07D 213/20 20060101ALI20240723BHJP
   B01D 53/32 20060101ALI20240723BHJP
   B63G 8/36 20060101ALN20240723BHJP
   B63G 8/00 20060101ALN20240723BHJP
   B64G 1/48 20060101ALN20240723BHJP
【FI】
C07C50/10
C07D233/60
C07D323/00
C07D213/20
B01D53/32
B63G8/36 B
B63G8/00 C
B64G1/48
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579797
(86)(22)【出願日】2022-06-28
(85)【翻訳文提出日】2023-12-26
(86)【国際出願番号】 US2022035209
(87)【国際公開番号】W WO2023278372
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】63/215,619
(32)【優先日】2021-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522481031
【氏名又は名称】ヴェルドックス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】キャメロン・ロジャース
(72)【発明者】
【氏名】サハグ・ヴォスキアン
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・リース
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA03
4H006AB90
(57)【要約】
キノン核構造及びそれに共有結合した少なくとも1つの安定化基を含む電気活性種を開示する。安定化基は、カチオン基、水素結合供与体、又はそれらの組合せを含む。この電気活性種は、酸化状態、及びルイス酸ガスと結合して、アニオン付加体を形成することができる少なくとも1つの還元状態を有する。流体混合物からルイス酸ガスを分離する方法、電気化学セル、及びガス分離システムも提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キノン核構造及びそれに共有結合した少なくとも1つの安定化基を含む電気活性種であって、
安定化基が、カチオン基、水素結合供与体、又はそれらの組合せを含み、
電気活性種が、
酸化状態、及び
ルイス酸ガスと結合して、ルイス酸ガスと還元型電気活性種との間のアニオン付加体を形成することができる少なくとも1つの還元状態
を含み、
安定化基の存在が、
還元型電気活性種及びルイス酸ガスからのアニオン付加体の形成を反応速度論的に有利にする、又は
アニオン付加体と還元型電気活性種との間の熱力学的平衡におけるアニオン付加体の形成を熱力学的に有利にする、又は
還元型電気活性種からのアニオン付加体の形成を反応速度論的に有利にし、アニオン付加体と還元型電気活性種との間の熱力学的平衡におけるアニオン付加体の形成を熱力学的に有利にする、電気活性種。
【請求項2】
キノン核構造が、式(I)又は(II)を有し
【化1】
(式中、式(I)及び(II)の破線は、任意選択で存在していてもよい追加の置換又は非置換アリール基を示す)、
安定化基Aが、連結基-(L)z-(式中、zは、0又は1であるが、Aが水素結合供与体である場合、zは1であることを条件とする)を介してキノン核構造に共有結合している、請求項1に記載の電気活性種。
【請求項3】
電気活性種が、式(VI)~(X)、又はそれらの組合せを有する
【化2】
〔式中、
各R1は、それぞれの出現において独立して水素、ハロゲン、置換若しくは非置換C1~30アルキル基、置換若しくは非置換C1~30アルコキシ基、ポリ(C1~30アルキレンオキシド)基、置換若しくは非置換C3~30シクロアルキル基、置換若しくは非置換C6~30アリール基、置換若しくは非置換C2~30ヘテロアリール基、ニトリル基、ニトロ基、チオール基、又はビニル基であり、
各Rxは、それぞれの出現において独立して-(L)z-A基であり、
xは、それぞれの出現において独立して1~4であり、
yは、それぞれの出現において独立して0~3であるが、x及びyの合計は4であることを条件とし、
Rbは、それぞれの出現において独立してR1又はRxであり、
eは、それぞれの出現において独立して0~4であるが、eの少なくとも1つの出現は1であることを条件とし、
fは、それぞれの出現において独立して0~4であるが、各e-f対の合計は4であることを条件とし、
c及びdは各々独立して0~4であるが、c及びdの合計は4であることを条件とし、cが0である場合、Rbの少なくとも1つはRxであることを条件とする〕、請求項1に記載の電気活性種。
【請求項4】
カチオン基が、置換若しくは非置換C1~6アルキルアンモニウム基、置換若しくは非置換C1~6アルキルホスホニウム基、置換若しくは非置換C7~30アリールアルキルアンモニウム基、キレートされた金属カチオン、置換若しくは非置換アニリニウム基、置換若しくは非置換ピリジニウム基、又は置換若しくは非置換イミダゾリウム基、好ましくは、置換若しくは非置換C1~6アルキルアンモニウム基、置換若しくは非置換ベンジルアンモニウム基、置換若しくは非置換ピリジニウム基、又は置換若しくは非置換イミダゾリウム基を含み、
水素結合供与体が、ヒドロキシル基、カルボン酸基、アミン基、アニリン基、アミド基、又はチオール基、好ましくはヒドロキシル基を含む、請求項1に記載の電気活性種。
【請求項5】
電気活性種が、式(VI)、(VII)、又は(VIII)の化合物である、請求項3に記載の電気活性種。
【請求項6】
電気活性種が、式(VIII)の化合物である
〔式中、
cは0であり、
dは4であり、
Rbの少なくとも1つの出現は、-(L)z-Aであり、
zは1であり、
Lは、置換又は非置換フェニレン基であり、
Aは、
-NR2R3R4アンモニウム基(R2、R3及びR4は、それぞれの出現において独立して置換若しくは非置換C1~6アルキル基又は置換若しくは非置換ベンジル基である)、又は
ヒドロキシル基である〕、請求項5に記載の電気活性種。
【請求項7】
Rbの両出現が、-(L)z-Aであり、
zのそれぞれの出現は1であり、
Lのそれぞれの出現は、置換又は非置換フェニレン基であり、
Aは、-NR2R3R4アンモニウム基であり、好ましくはR2、R3及びR4の各々はメチルであり、
R1が水素である、請求項6に記載の電気活性種。
【請求項8】
Aが、ヒドロキシル基、アミン基、アミド基、又はチオール基、好ましくはヒドロキシル基であり、
R1が水素である、請求項6に記載の電気活性種。
【請求項9】
電気活性種が、式(VIII)の化合物である
〔式中、
cは0であり、
dは4であり、
Rbの少なくとも1つの出現は、-(L)z-Aであり、
zは0であり、
Aは、置換又は非置換ピリジニウム基又はイミダゾリウム基である〕、請求項5に記載の電気活性種。
【請求項10】
電気活性種が、式(VIII)の化合物である
〔式中、
cは2であり、
dは2であり、
Rbは、それぞれの出現において独立して水素又は置換若しくは非置換フェニル基であり、
Rxは、それぞれの出現において独立して-(L)z-Aであり、
zは0であり、
Aは、
-NR2R3R4アンモニウム基(R2、R3及びR4は、それぞれの出現において独立して置換若しくは非置換C1~6アルキル基又は置換若しくは非置換ベンジル基である)、又は
ヒドロキシル基であり、
好ましくは、Rx基は互いにパラ位に配置される〕、請求項5に記載の電気活性種。
【請求項11】
電気活性種が、式(IX)の化合物である、請求項3に記載の電気活性種。
【請求項12】
eのそれぞれの出現が1であり、
fのそれぞれの出現が3であり、
Rxのそれぞれの出現が、-(L)z-Aであり、Aは、
-NR2R3R4アンモニウム基(R2、R3及びR4は、それぞれの出現において独立して、置換若しくは非置換C1~6アルキル基又は置換若しくは非置換ベンジル基である)、又は
ヒドロキシル基、アミン基、アミド基、若しくはチオール基、好ましくはヒドロキシル基であり、
好ましくは、
Aは、-NR2R3R4アンモニウム基であり、好ましくはR2、R3及びR4の各々はメチルであるか、又は、R2及びR3はメチルであり、R4はベンジルであり、
R1が水素である、請求項11に記載の電気活性種。
【請求項13】
電気活性種が、式(IXb)の化合物である
【化3】
〔式中、
R1は、それぞれの出現において独立して水素、ハロゲン、C1~30アルキル基、C1~30アルコキシ基、ポリ(C1~30アルキレンオキシド)基、C3~30シクロアルキル基、C3~30分岐アルキル基、C6~30アリール基、C2~30ヘテロアリール基、C1~30フルオロアルキル基、ニトリル基、ニトロ基、チオール基、又はビニル基、好ましくは水素であり、
Dは、それぞれの出現において独立して、酸素又は窒素であり、
rは、0又は1であり、
R5及びR6は、それぞれの出現において独立してC1~6アルキル基、ポリ(C2~3アルキレンオキシド)基、又はポリ(C2~3アルキレンジアミン)基であり、R5はR6と任意選択で組み合わされて環式基を形成していてもよく、
Eは、金属カチオンであり、好ましくは金属カチオンは、第1族元素、第2族元素、希土類元素、第11族元素、第12族元素、第13族元素、又はそれらの組合せであり、より好ましくは、金属カチオンは、Li、Ca、Sc、La、Al、Zn、Mg、Na、K、又はそれらの組合せである〕、請求項11に記載の電気活性種。
【請求項14】
R1が水素であり、
R5及びR6がメチルであり、
Dが、酸素又は窒素であり、
rが0である、請求項13に記載の電気活性種。
【請求項15】
R1が水素であり、
Dが酸素であり、
rが0であり、
R5及びR6がポリ(エチレンオキシド)基であり、R5及びR6が組み合わされて環式エーテルを形成していてもよい、請求項13に記載の電気活性種。
【請求項16】
電気活性種が、式(X)を有する、請求項3に記載の電気活性種。
【請求項17】
Aが、-NR2R3R4アンモニウム基であり、好ましくはR2、R3及びR4の各々が、メチル又はベンジルであり、
Zが0であり、
R1が水素であり、
eのそれぞれの出現が1であり、
fのそれぞれの出現が3である、請求項16に記載の電気活性種。
【請求項18】
Aが、ヒドロキシル基、アミン基、アミド基、又はチオール基、好ましくはヒドロキシル基であり、
Zが1であり、
Lが、C6アリーレン基を含む連結基であり、
R1が水素であり、
eのそれぞれの出現が1であり、
fのそれぞれの出現が3である、請求項16に記載の電気活性種。
【請求項19】
安定化基Aが、電気活性種の少なくとも1個のケトン基から10原子以下若しくは8原子以下離れており、又は安定化基Aが、電気活性種の少なくとも1個のケトン基から1~10原子離れている、請求項1に記載の電気活性種。
【請求項20】
繰り返し単位の少なくとも一部分が請求項1に記載の電気活性種を含む、ポリマー又はオリゴマー。
【請求項21】
重合性基及びキノン核構造を含む電気活性種を含む第1のモノマー、並びに
重合性基、及びカチオン基、水素結合供与体、又はそれらの組合せを含む安定化基を含む第2のモノマー
に由来する繰り返し単位を含むポリマー又はオリゴマーであって、
電気活性種が、
酸化状態、及び
ルイス酸ガスと結合して、ルイス酸ガスと還元型電気活性種との間のアニオン付加体を形成することができる、少なくとも1つの還元状態
を含み、
安定化基の存在が、
還元型電気活性種及びルイス酸ガスからのアニオン付加体の形成を反応速度論的に有利にする、又は
アニオン付加体と還元型電気活性種との間の熱力学的平衡におけるアニオン付加体の形成を熱力学的に有利にする、又は
還元型電気活性種からのアニオン付加体の形成を反応速度論的に有利にし、アニオン付加体と還元型電気活性種との間の熱力学的平衡におけるアニオン付加体の形成を熱力学的に有利にする、ポリマー又はオリゴマー。
【請求項22】
ルイス酸ガスを含む流体混合物からルイス酸ガスを分離する方法であって、
流体混合物を請求項1に記載の電気活性種又は請求項20に記載のポリマー若しくはオリゴマー又は請求項21に記載のポリマー若しくはオリゴマーと接触させる工程を含み、
前記工程では、電気活性種が還元状態にあって、ルイス酸ガスと還元状態の電気活性種との間のアニオン付加体が形成される、方法。
【請求項23】
接触が電解質の存在下で実施され、
好ましくは電解質が、有機電解質、イオン性液体、又はそれらの組合せを含み、
有機電解質が、有機溶媒及び支持電解質を含み、
好ましくは有機溶媒が、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、プロピレンカーボネート、ジメチルスルホキシド、ポリエチレングリコール、ジグリム、又はそれらの組合せである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
安定化基を含む還元型電気活性種とルイス酸ガスとの間の会合定数が、安定化基を含まない還元型電気活性種とルイス酸ガスとの間の会合定数よりも大きい、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
安定化基を含む還元型電気活性種及びルイス酸ガスからのアニオン付加体の形成が、安定化基を含まない還元型電気活性種及びルイス酸ガスからのアニオン付加体の形成よりも反応速度論的に有利である、又は
安定化基を含む還元型電気活性種及びルイス酸ガスからのアニオン付加体の形成が、安定化基を含まない還元型電気活性種及びルイス酸ガスからのアニオン付加体の形成よりも熱力学的に有利である、又は
安定化基を含む還元型電気活性種及びルイス酸ガスからのアニオン付加体の形成が、安定化基を含まない還元型電気活性種及びルイス酸ガスからのアニオン付加体の形成よりも反応速度論的にかつ熱力学的に有利である、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
安定化基がカチオン基であり、
安定化基を含む還元型電気活性種及びルイス酸ガスからのアニオン付加体の形成が、安定化基を含む還元型電気活性種と同じ還元電位を有する非イオン性電気活性種の還元状態及びルイス酸ガスからのアニオン付加体の形成よりも反応速度論的に有利である、又は
安定化基を含む還元型電気活性種及びルイス酸ガスからのアニオン付加体の形成が、安定化基を含む還元型電気活性種と同じ還元電位を有する非イオン性電気活性種の還元状態及びルイス酸ガスからのアニオン付加体の形成よりも熱力学的に有利である、又は
安定化基を含む還元型電気活性種及びルイス酸ガスからのアニオン付加体の形成が、安定化基を含む還元型電気活性種と同じ還元電位を有する非イオン性電気活性種の還元状態及びルイス酸ガスからのアニオン付加体の形成よりも反応速度論的にかつ熱力学的に有利である、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
安定化基が水素結合供与体であり、
安定化基を含む還元型電気活性種及びルイス酸ガスからのアニオン付加体の形成が、安定化基を含む還元型電気活性種と同じ還元電位を有する非イオン性電気活性種の還元状態及びルイス酸ガスからのアニオン付加体の形成よりも反応速度論的に有利である、又は
安定化基を含む還元型電気活性種及びルイス酸ガスからのアニオン付加体の形成が、安定化基を含む還元型電気活性種と同じ還元電位を有する非イオン性電気活性種の還元状態及びルイス酸ガスからのアニオン付加体の形成よりも熱力学的に有利である、又は
安定化基を含む還元型電気活性種及びルイス酸ガスからのアニオン付加体の形成が、安定化基を含む還元型電気活性種と同じ還元電位を有する非イオン性電気活性種の還元状態及びルイス酸ガスからのアニオン付加体の形成よりも反応速度論的にかつ熱力学的に有利である、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
ルイス酸ガスが、CO2、COS、SO2、SO3、R2SO4、NO2、NO3、R3PO4、R2S、RCOOR'、RCHO、R'2CO、R'NCO、R'NCS、BR''3、R''3BO3、又はそれらの組合せであり、
各Rが、独立して水素、C1~12アルキル、C3~12シクロアルキル、C1~12ヘテロシクロアルキル、C6~20アリール、又はC1~12ヘテロアリールであり、
各R'が、独立してC1~12アルキル、C3~12シクロアルキル、C1~12ヘテロシクロアルキル、C6~20アリール、又はC1~12ヘテロアリールであり、
各R''が、独立して水素、ハロゲン、C1~12アルキル、C3~12シクロアルキル、C1~12ヘテロシクロアルキル、C6~20アリール、又はC1~12ヘテロアリールである、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
電気化学装置であって、
還元状態の電気活性種と電子連通している負極、及び電解質を含むチャンバを含み、チャンバが、ルイス酸ガスを含む流体混合物を受け取るように構成されており、
電気活性種が、キノン核及びそれに共有結合した少なくとも1つの安定化基を含み、
安定化基が、カチオン基、水素結合供与体、又はそれらの組合せを含み、
電気活性種が、
酸化状態、及び
ルイス酸ガスと結合して、ルイス酸ガスと還元型電気活性種との間のアニオン付加体を形成することができる少なくとも1つの還元状態
を含み、
安定化基の存在が、
還元型電気活性種及びルイス酸ガスからのアニオン付加体の形成を反応速度論的に有利にする、又は
アニオン付加体と還元型電気活性種との間の熱力学的平衡におけるアニオン付加体の形成を熱力学的に有利にする、又は
還元型電気活性種からのアニオン付加体の形成を反応速度論的に有利にし、アニオン付加体と還元型電気活性種との間の熱力学的平衡におけるアニオン付加体の形成を熱力学的に有利にする、電気化学装置。
【請求項30】
電気化学装置であって、
還元状態の電気活性種と電子連通している負極、及び電解質を含むチャンバを含み、チャンバが、ルイス酸ガスを含む流体混合物を受け取るように構成されており、
電気活性種が、請求項20に記載のポリマー又はオリゴマーを含む、電気化学装置。
【請求項31】
電気化学装置であって、
還元状態の電気活性種と電子連通している負極、及び電解質を含むチャンバを含み、チャンバが、ルイス酸ガスを含む流体混合物を受け取るように構成されており、
電気活性種が、請求項21に記載のポリマー又はオリゴマーを含む、電気化学装置。
【請求項32】
ガス入口及びガス出口と流体連通している複数の電気化学セルを含むガス分離システムであって、複数の電気化学セルの各々が、
還元状態の電気活性種を含む第1の電極であり、電気活性種が、酸化状態、及びルイス酸ガスと結合して、アニオン付加体を形成する少なくとも1つの還元状態を含む、第1の電極と、
相補的電気活性層を含む第2の電極と、
第1の電極と第2の電極との間の第1のセパレータと、
電解質と
を含み、
電気活性種が、キノン核及びそれに共有結合した少なくとも1つの安定化基を含み、
安定化基が、カチオン基、水素結合供与体、又はそれらの組合せを含み、
安定化基の存在が、
還元型電気活性種及びルイス酸ガスからのアニオン付加体の形成を反応速度論的に有利にする、又は
アニオン付加体と還元型電気活性種との間の熱力学的平衡におけるアニオン付加体の形成を熱力学的に有利にする、又は
還元型電気活性種からのアニオン付加体の形成を反応速度論的に有利にし、アニオン付加体と還元型電気活性種との間の熱力学的平衡におけるアニオン付加体の形成を熱力学的に有利にする、ガス分離システム。
【請求項33】
ガス入口及びガス出口と流体連通している複数の電気化学セルを含むガス分離システムであって、複数の電気化学セルの各々が、
還元状態の電気活性種を含む第1の電極であり、電気活性種が、酸化状態、及びルイス酸ガスと結合して、アニオン付加体を形成する少なくとも1つの還元状態を含む、第1の電極と、
相補的電気活性層を含む第2の電極と、
第1の電極と第2の電極との間の第1のセパレータと、
電解質と
を含み、
電気活性種が、請求項20に記載のポリマー又はオリゴマーを含む、ガス分離システム。
【請求項34】
ガス入口及びガス出口と流体連通している複数の電気化学セルを含むガス分離システムであって、複数の電気化学セルの各々が、
還元状態の電気活性種を含む第1の電極であり、電気活性種が、酸化状態、及びルイス酸ガスと結合して、アニオン付加体を形成する少なくとも1つの還元状態を含む、第1の電極と、
相補的電気活性層を含む第2の電極と、
第1の電極と第2の電極との間の第1のセパレータと、
電解質と
を含み、
電気活性種が、請求項21に記載のポリマー又はオリゴマーを含む、ガス分離システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年6月28日に米国特許商標庁に出願された米国仮特許出願第63/215,619号の優先権、及び米国特許法第119条に基づきそこから生じる全ての利益を主張し、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
流体混合物から標的種を除去することは、多くの研究開発の主題であった。例えば、二酸化炭素の排出を抑制することによって地球温暖化を緩和する取り組みが行われてきた。この目的のために、二酸化炭素をその生成の様々な段階で捕捉しようとして、熱的方法を含む多くのアプローチが検討されてきた。ルイス酸ガス除去の他の潜在的な用途には、空気又は換気空気からルイス酸ガスを直接除去することが含まれる。
【0003】
エレクトロスイング(Electroswing)吸着は、ガス状混合物からルイス酸ガスを捕捉する代替的な方法である。一般に、エレクトロスイング吸着セル内では、電極は炭素繊維紙等の導電性足場を含み、電子の伝導経路の提供、活物質が電解質と接触するための表面積の提供、及び多孔質構造を保持するための機械的支持の提供を含むいくつかの機能を果たしている。
【0004】
流体混合物から標的種を捕捉するための改良された材料及び方法に対する必要性が依然として存在する。標的ルイス酸ガスを他のガスの存在下、特に二酸化炭素等の酸化還元活性ガスの存在下で捕捉するための改良された材料を提供することは、有利であろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願第16/659,398号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Shimizu A, Takenaka K, Handa N, Nokami T, Itoh T, Yoshida JI. Liquid Quinones for Solvent-Free Redox Flow Batteries, Advanced Materials. 2017 Nov; 29(41):1606592
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
キノン核構造及びそれに共有結合した少なくとも1つの安定化基を含む電気活性種であって、安定化基が、カチオン基、水素結合供与体、又はそれらの組合せを含み、電気活性種が、酸化状態、及びルイス酸ガスと結合して、ルイス酸ガスと還元型電気活性種との間のアニオン付加体を形成することができる少なくとも1つの還元状態を含み、安定化基の存在が、還元型電気活性種及びルイス酸ガスからのアニオン付加体の形成を反応速度論的に有利にする、又はアニオン付加体と還元型電気活性種との間の熱力学的平衡におけるアニオン付加体の形成を熱力学的に有利にする、又は還元型電気活性種からのアニオン付加体の形成を反応速度論的に有利にし、アニオン付加体と還元型電気活性種との間の熱力学的平衡におけるアニオン付加体の形成を熱力学的に有利にする、電気活性種が提供される。
【0008】
また、繰り返し単位の少なくとも一部が電気活性種を含む、ポリマー又はオリゴマーが提供される。
【0009】
ルイス酸ガスを含む流体混合物からルイス酸ガスを分離する方法であって、方法が、流体混合物を電気活性種又はポリマー若しくはオリゴマーと接触させる工程を含み、電気活性種が還元状態にあって、ルイス酸ガスと還元状態の電気活性種との間のアニオン付加体を形成する、方法も記載される。
【0010】
また、還元状態の電気活性種と電子連通している負極、及び非水電解質を含むチャンバを含む電気化学装置であって、チャンバが、ルイス酸ガスを含む流体混合物を受け取るように構成されており、電気活性種が、キノン核及びそれに共有結合した少なくとも1つの安定化基を含み、安定化基が、カチオン基、水素結合供与体、又はそれらの組合せを含み、電気活性種が、酸化状態、及びルイス酸ガスと結合して、ルイス酸ガスと還元型電気活性種との間のアニオン付加体を形成することができる少なくとも1つの還元状態を含み、安定化基の存在が、還元型電気活性種及びルイス酸ガスからのアニオン付加体の形成を反応速度論的に有利にする、又はアニオン付加体と還元型電気活性種との間の熱力学的平衡におけるアニオン付加体の形成を熱力学的に有利にする、又は還元型電気活性種からのアニオン付加体の形成を反応速度論的に有利にし、アニオン付加体と還元型電気活性種との間の熱力学的平衡におけるアニオン付加体の形成を熱力学的に有利にする、電気化学装置が提供される。
【0011】
また、ガス入口及びガス出口と流体連通している複数の電気化学セルを含むガス分離システムであって、複数の電気化学セルの各々が、還元状態の電気活性種を含む第1の電極であり、電気活性種が、酸化状態、及びルイス酸ガスと結合して、アニオン付加体を形成する少なくとも1つの還元状態を含む、第1の電極と、相補的電気活性層を含む第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間の第1のセパレータと、非水電解質とを含み、電気活性種が、キノン核及びそれに共有結合した少なくとも1つの安定化基を含み、安定化基が、カチオン基、水素結合供与体、又はそれらの組合せを含み、安定化基の存在が、還元型電気活性種及びルイス酸ガスからのアニオン付加体の形成を反応速度論的に有利にする、又はアニオン付加体と還元型電気活性種との間の熱力学的平衡におけるアニオン付加体の形成を熱力学的に有利にする、又は還元型電気活性種からのアニオン付加体の形成を反応速度論的に有利にし、アニオン付加体と還元型電気活性種との間の熱力学的平衡におけるアニオン付加体の形成を熱力学的に有利にする、ガス分離システムが提供される。
【0012】
上述した特徴及び他の特徴は、以下の図及び詳細な説明によって例示される。
【0013】
以下の図は、例示的な実施形態である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】4-ジメチルアミノピリジン官能化ナフトキノン(NQ-DMAP)の化学構造、並びに実施例1に記載の電気化学セルの動作中のセル電圧(ボルト、V)及び正規化濃度対時間(分、min)のグラフを示す。
図2A】電流(アンペア、A)対電位(ボルト、フェロセン(Fc/Fc+)に対するV)のグラフであり、実施例2に記載の重ね合わせたサイクリックボルタンモグラムを示す。
図2B】電流(アンペア、A)対電位(ボルト、フェロセン(Fc/Fc+)に対するV)のグラフであり、実施例2に記載の重ね合わせたサイクリックボルタンモグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示は、流体混合物から1種以上のルイス酸ガスを分離する電気活性種、方法、装置、及びシステムを対象にする。電気活性種は、安定化基、又は安定化部分に共有結合している(例えば、以下に詳細に更に記載されるように、安定化基はキノン核に直接結合しているか、又は、安定化基はキノン核と同様にポリマー鎖に共有結合しているが、必ずしもキノン核に直接共有結合していない)。電気活性種が還元状態にある場合(すなわち、「還元型電気活性種」)、流体混合物と接触させて、流体混合物の成分から1種以上の選択されたルイス酸ガス(例えば、CO2)を捕捉することができる。電気活性種における安定化基の存在は、1種以上のルイス酸ガスと還元型電気活性種との間のアニオン付加体の形成にとって反応速度論的に有利であり得る。場合によっては、還元型電気活性種における安定化基の存在は、1種以上のルイス酸ガスと還元型電気活性種との間のアニオン付加体の形成にとって熱力学的に有利であり得る。有利なことに、電気活性種における安定化基の存在は、1種以上のルイス酸ガスと還元型電気活性種との間のアニオン付加体の形成にとって反応速度論的にも熱力学的にも有利であり得る。いくつかの態様において、「1種以上のルイス酸ガスと還元型電気活性種との間のアニオン付加体の形成に有利」であることは、同じルイス酸ガスと安定化基を含まない同等の電気活性種との間のアニオン付加体の形成により有利であることを意味するために相対的な意味で使用され得る。いくつかの態様において、「1種以上のルイス酸ガスと還元型電気活性種との間のアニオン付加体の形成の形成に有利」であることは、同じルイス酸ガスと安定化基を含まない同等の電気活性種との間のアニオン付加体の形成より有利であり、かつ、安定化基を含む電気活性種の還元電位と同等の還元電位を有することを意味するために相対的な意味で使用され得る。
【0016】
したがって、本開示の一態様は、キノン核構造及びそれに共有結合した少なくとも1つの安定化基を含む電気活性種である。本明細書で使用する場合、「電気活性種」は、電気化学セル内の電位に曝露されると酸化又は還元を受ける材料を指す。電気活性種は、電気活性種が還元状態にあるときにルイス酸ガスと結合し、又はルイス酸ガスに結び付き、電気活性種が酸化状態にあるときにルイス酸ガスを放出することが可能である。したがって、電気活性種は酸化状態及び少なくとも1つの還元状態を含み、還元型電気活性種はルイス酸ガスと結合してアニオン付加体を形成する。本明細書で使用する場合、「アニオン付加体」は、ルイス酸ガスと結合した還元型電気活性種を指す。その後の電気活性種の酸化によってルイス酸ガスが放出されてもよく、対応する方法により、CO2の場合の可逆的な炭素捕捉等のルイス酸ガスの可逆的な捕捉が可能になり得る。
【0017】
本開示の電気活性種はキノン核構造を含む。本明細書で使用する場合、「キノン核構造」という用語は、完全に共役している環式ジオン構造を指す。例えば、キノン核構造は、式(I)又は(II)を有することができる
【0018】
【化1】
【0019】
(式中、破線は、追加の基、好ましくは任意選択で存在していてもよい芳香族基を示す)。追加の芳香族基(式(I)及び(II)中、破線によって表される)は、存在する場合キノン核構造の一部分であるとみなされ、したがって本明細書では用語「キノン核構造」によって包含されることが理解されよう。キノン核構造のカルボニル基は、以下に示す形で還元されることができ、1電子還元されて、セミキノンアニオン(IA)又は(IIA)をそれぞれ形成し、続いてセミキノンアニオンが1電子還元されて、キノンジアニオン(IB)又は(IIB)をそれぞれ形成する。
【0020】
【化2】
【0021】
ルイス酸ガスがCO2である場合、セミキノンアニオン(IA)の例示的な場合について以下に示すように、式:(Q-CO2)・-を有するアニオン付加体がセミキノンアニオンとCO2との間に形成されてもよい。
【0022】
【化3】
【0023】
ルイス酸ガスがCO2である場合、キノンジアニオン(IB)の例示的な場合について以下で示すように、アニオン付加体(Q-(CO2)2)2-)がキノンジアニオンとCO2との間に形成されてもよい。
【0024】
【化4】
【0025】
いくつかの態様において、キノン核とCO2との間で形成されたアニオン付加体は、アニオン付加体(Q-CO2)-)、アニオン付加体(Q-(CO2)2)2-)、又はそれらの組合せを含む。
【0026】
一態様において、キノン核構造としては、例えば、1,2-ベンゾキノン、1,4-ベンゾキノン、1,4-ナフトキノン、1,2-ナフトキノン、アントラキノン、フェナントレンキノン、ベンゾアントラキノン、ジベンゾアントラキノン、4,5,9,10-ピレンテトラオン等、又はそれらの組合せを挙げることができる。
【0027】
電気活性種は、連結基-(L)z-を介してキノン核構造に共有結合した少なくとも1つの安定化基Aを含む。安定化基とリンカーの組合せ(-(L)z-A)は、わかりやすくするために本明細書では「Rx」と総称することができる。安定化基Aは、それぞれの出現において独立してカチオン基、水素結合供与体、又はそれらの組合せであり、Lは、連結基である。連結基Lは、置換若しくは非置換C1~6アルキレン基、置換若しくは非置換C6~20アリール基、置換若しくは非置換C2~3アルキレングリコールエーテル基、置換若しくは非置換C2~3アルキレンジアミン基(例えば、エチレンジアミン又はプロピレンジアミン)、置換若しくは非置換ポリ(C2~3アルキレングリコールエーテル)基、又は置換若しくは非置換ポリ(C2~3アルキレンジアミン)基であり得る。式-(L)z-A中、zは、0又は1であるが、Aが水素結合供与体である場合、zは1であることを条件とする。一態様において、連結基Lは、非置換C1~6アルキレン基又は非置換C6~20アリール基である。
【0028】
例えば、電気活性種は、(Ic)又は(IIc)の構造を有することができる
【0029】
【化5】
【0030】
(上記の式中、各Rxは、それぞれの出現において独立して上記の-(L)z-A基であり、xは、それぞれの出現において独立して0~4であるが、xの少なくとも1つの出現は1である(すなわち、少なくとも1つのRx基がキノン核に結合している)こと、及びキノン核の価数を超えないことを条件とする)。破線によって示される任意選択の基の1つ又は両方が存在しない場合、Rx基は、ベンゾキノン基の少なくとも1個の炭素原子に結合され得ることが理解されよう。
【0031】
カチオン性安定化基としては、例えば、置換若しくは非置換C1~6アルキルアンモニウム基、置換若しくは非置換C1~6アルキルホスホニウム基、置換若しくは非置換ベンジルアンモニウム基、キレートされた金属カチオン、置換若しくは非置換アニリニウム基、置換若しくは非置換ピリジニウム基、又は置換若しくは非置換イミダゾリウム基を挙げることができる。いくつかの態様において、カチオン基は、置換若しくは非置換C1~6アルキルアンモニウム基、置換若しくは非置換ベンジルアンモニウム基、置換若しくは非置換ピリジニウム基、又は置換若しくは非置換イミダゾリウム基であり得る。カチオン性安定化基がキレートされた金属カチオンである態様において、金属カチオンは、キノン核に共有結合した連結基「L」によってキレートされ得る。本明細書で使用する場合、「キレートされた金属カチオン」は、キレート配位子とカチオン性金属キレートのキレート錯体を指す。カチオン性安定化基がキレートされた金属カチオンである場合、式-(L)z-A中のA基は、キレート配位子とカチオン性金属キレートを両方含むことを理解すべきである。例えば、カチオン性安定化基は、キレートされた金属カチオンとすることができ、A基は、連結基Lを介してキノン核に結合しているカチオン性金属キレート及びキレート基、例えば、クラウンエーテル、アザ-クラウンエーテル等を含む。
【0032】
本明細書で使用する場合、「水素結合供与体」という用語は、水素結合受容体に対する水素結合供与体であり得る化合物を指す。水素結合は、分子又は分子断片X-H(式中、Xは、Hより電気陰性である)(「水素結合供与体」)からの水素原子と同じ又は異なる分子中の原子又は原子団(「水素結合受容体」)との相互作用を指す。例えば、Arunanら、「Definition of the hydrogen bond」、Pure and Appl. Chem.、83(8):1637-1641(2011)を参照のこと。その内容は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。水素結合受容体であるアニオン付加体の場合、水素結合供与体種は、アニオン付加体を安定化させる。いくつかの態様において、水素結合供与体の水素原子とアニオン付加体との間の水素結合強度は、水素結合供与体の水素原子とセミキノンアニオン又はキノンジアニオンとの間の水素結合強度よりも大きい。
【0033】
水素結合供与体としては、例えば、ヒドロキシル基、カルボン酸基、アミン基、アニリン基、アミド基、又はチオール基を挙げることができる。いくつかの態様において、水素結合供与体はヒドロキシル基である。
【0034】
電気活性種は、少なくとも1個の安定化基を含むが、いくつかの態様において、最大で8個の安定化基、又は最大で4個の安定化基を含んでよい。本開示の利益を受ける当業者は、例えば、合成の実現可能性、得られる還元電位、及び置換に利用可能なキノン核の部位数に基づいて、いくつの安定化基が電気活性種に適しているかを決定する仕方を理解するであろう。
【0035】
いくつかの態様において、電気活性種は、(III)、(IV)、又は(V)の構造、又はそれらの組合せによるものであり得る。
【0036】
【化6】
【0037】
(III)~(V)の構造の各々において、各Rxは、それぞれの出現において独立して式-(L)z-Aの基であり、式中、L、A、z及びxは以上に定義された通りである。
【0038】
一態様において、電気活性種は、(VI)の構造を有し得る
【0039】
【化7】
【0040】
(式中、各R1は、それぞれの出現において独立して水素、ハロゲン(例えば、クロロ、ブロモ、ヨード)、置換若しくは非置換C1~30アルキル基、置換若しくは非置換C1~30アルコキシ基、ポリ(C1~30アルキレンオキシド)基;置換若しくは非置換C3~30シクロアルキル基、置換若しくは非置換C3~30分岐アルキル基、置換若しくは非置換C6~30アリール基、置換若しくは非置換C2~30ヘテロアリール基、置換若しくは非置換C1~30フルオロアルキル基、ニトリル基、ニトロ基、チオール基、又はビニル基であり、任意選択で、いずれの隣接するR1基も一緒になって、環式基を形成することができ、各Rxは、それぞれの出現において独立して-(L)z-A基であり、xは、1~4であり、yは、0~3であるが、x及びyの合計は4であることを条件とする)。
【0041】
一態様において、電気活性種は、(VII)の構造を有し得る
【0042】
【化8】
【0043】
(式中、各R1は、それぞれの出現において独立して水素、ハロゲン、置換若しくは非置換C1~30アルキル基、置換若しくは非置換C1~30アルコキシ基、ポリ(C1~30アルキレンオキシド)基;置換若しくは非置換C3~30シクロアルキル基、置換若しくは非置換C3~30分岐アルキル基、置換若しくは非置換C6~30アリール基、置換若しくは非置換C2~30ヘテロアリール基、置換若しくは非置換C1~30フルオロアルキル基、ニトリル基、ニトロ基、チオール基、又はビニル基であり、任意選択で、いずれの2つ以上の隣接するR1基も一緒になって、環式基を形成することができ、各Rxは、それぞれの出現において独立して-(L)z-A基であり、xは、1~4であり、yは、0~3であるが、x及びyの合計は4であることを条件とする)。
【0044】
一態様において、電気活性種は、(VIII)の構造を有し得る
【0045】
【化9】
【0046】
(式中、各R1は、それぞれの出現において独立して水素、ハロゲン、置換若しくは非置換C1~30アルキル基、置換若しくは非置換C1~30アルコキシ基、ポリ(C1~30アルキレンオキシド)基;置換若しくは非置換C3~30シクロアルキル基、置換若しくは非置換C3~30分岐アルキル基、置換若しくは非置換C6~30アリール基、置換若しくは非置換C2~30ヘテロアリール基、置換若しくは非置換C1~30フルオロアルキル基、ニトリル基、ニトロ基、チオール基、又はビニル基であり、任意選択で、いずれの隣接するR1基も一緒になって、環式基を形成することができ、各Rxは、それぞれの出現において独立して-(L)z-A基であり、各Rbは、それぞれの出現において独立してR1又はRxであり、c及びdは、それぞれの出現において独立して0~4であるが、c及びdの合計は4であることを条件とし、cが0である場合、Rbの少なくとも1つはRxであることを条件とする)。
【0047】
特定の一態様において、電気活性種は、(VIII)の構造(式中、cは0であり、dは4であり、Rbの少なくとも1つの出現は、-(L)z-Aであり、Lは、置換又は非置換フェニル基であり、zは1である)を有することができ、電気活性種は、(VIIIa)の構造を有する
【0048】
【化10】
【0049】
(好ましくは、式中、Aは、-NR2R3R4アンモニウム基又は-PR2R3R4ホスホニウム基(R2、R3及びR4は、それぞれの出現において独立して、置換若しくは非置換C1~6アルキル基又は置換若しくは非置換ベンジル基である)、又はヒドロキシル基であり、各R1は、それぞれの出現において独立して水素、ハロゲン、置換若しくは非置換C1~30アルキル基、置換若しくは非置換C1~30アルコキシ基、ポリ(C1~30アルキレンオキシド)基;置換若しくは非置換C3~30シクロアルキル基、置換若しくは非置換C3~30分岐アルキル基、置換若しくは非置換C6~30アリール基、置換若しくは非置換C2~30ヘテロアリール基、置換若しくは非置換C1~30フルオロアルキル基、ニトリル基、ニトロ基、チオール基、又はビニル基であり、任意選択で、いずれの隣接するR1基も一緒になって、環式基を形成することができ、好ましくは、R1のそれぞれの出現は水素であり、Rbは、R1又はRxである)。(VIIIa)の構造による例示的な実施形態のアリール連結基は、非置換アリール基として示されているが、本開示によって置換アリール基も企図される。
【0050】
一態様において、電気活性種は、(VIII)の構造(式中、cは0であり、dは4であり、Rbの両出現は-(L)z-Aであり、Lは、置換又は非置換フェニル基であり、zは1である)を有することができ、電気活性種は、(VIIIb)の構造を有する
【0051】
【化11】
【0052】
(式中、R1及びAは上記の通りであり、好ましくはR1のそれぞれの出現は水素であり、Aのそれぞれの出現は、-NR2R3R4アンモニウム基であり、好ましくはR2、R3及びR4の各々はメチルである)。(VIIIb)の構造による例示的な実施形態のアリール連結基は、非置換アリール基として示されているが、本開示によって置換アリール基も企図される。
【0053】
一態様において、電気活性種は、(VIII)の構造(式中、cは0であり、dは4であり、R1は上記の通りであり、好ましくは水素であり、Rbの少なくとも1つの出現は-(L)z-Aであり、zは0であり、Aは、置換又は非置換ピリジニウム基であり、Rbは、R1又はRxである)を有することができ、電気活性種は、(VIIIc)の構造を有する。
【0054】
【化12】
【0055】
(VIIIc)の構造による例示的な実施形態におけるピリジニウムは、非置換ピリジニウム基として示されているが、本開示によって置換ピリジニウム基も企図される。
【0056】
(VIIIc)の構造のいくつかの態様において、残りのRb基は、式-(L)z-Aを有することができ、式中、zは0であり、Aは、置換又は非置換ピリジニウム基である。(VIIIc)の構造のいくつかの態様において、Rbは、R1、好ましくは置換又は非置換フェニル基である。いくつかの態様において、ピリジニウム基は、置換ピリジニウム基、例えば4-(ジメチルアミノ)ピリジニウム基であり得る。
【0057】
一態様において、電気活性種は、(VIII)の構造(式中、cは0であり、dは4であり、R1は上記の通りであり、好ましくは水素であり、Rbの少なくとも1つの出現は-(L)z-Aであり、zは0であり、Aは、C2、C3、又はC4位を介してキノン核に結合している置換又は非置換ピリジニウム基であり、Rbは、R1又はRxであり、Raは、置換又は非置換C1~6アルキル基、好ましくはメチル基である)を有することができ、電気活性種は、(VIIId)の構造を有する。
【0058】
【化13】
【0059】
一態様において、電気活性種は、(VIII)の構造(式中、cは0であり、dは4であり、R1は上記の通りであり、好ましくは水素であり、Rbの少なくとも1つの出現は-(L)z-Aであり、zは0であり、Aは、置換又は非置換イミダゾリウム基であり、Rbは、R1又はRxである)を有することができ、電気活性種は、(VIIIe)の構造を有する
【0060】
【化14】
【0061】
(式中、Raは、置換若しくは非置換C1~6アルキル基、好ましくはメチル基、又は置換若しくは非置換ベンジル基である)。(VIIIe)の構造のいくつかの態様において、Rbは、式-(L)z-Aの基とすることができ、式中、zは0であり、Aは、置換又は非置換イミダゾリウム基である。
【0062】
一態様において、電気活性種は、(VIII)の構造(式中、cは2であり、dは2であり、Rbは、それぞれの出現において独立して、水素又はフェニルである)を有することができ、電気活性種は、式(VIIIf-h)を有する
【0063】
【化15】
【0064】
(式中、Rxのそれぞれの出現は-(L)z-Aであり、好ましくはzは0であり、Aは-NR2R3R4アンモニウム基(R2、R3及びR4は、それぞれの出現において独立して、置換若しくは非置換C1~6アルキル基又は置換若しくは非置換ベンジル基である)、又はヒドロキシル基であり、好ましくはRx基は、互いにパラ位(すなわち、ナフトキノン核の5及び8位)に配置され、R1は、それぞれの出現において独立して、水素、ハロゲン、置換若しくは非置換C1~30アルキル基、置換若しくは非置換C1~30アルコキシ基、ポリ(C1~30アルキレンオキシド)基;置換若しくは非置換C3~30シクロアルキル基、置換若しくは非置換C6~30アリール基、置換若しくは非置換C2~30ヘテロアリール基、ニトリル基、ニトロ基、チオール基、又はビニル基、好ましくは水素であり、任意選択で、いずれの隣接するR1基も一緒になって、環式基を形成していてもよい)。一態様において、C1~30アルキル基としては、C3~30分岐アルキル基を挙げることができる。一態様において、C1~30アルキル基は置換されていてよく、例えばC1~30フルオロアルキル基を含み得る。
【0065】
一態様において、電気活性種は、(VIII)の構造(式中、cは0であり、dは4であり、R1は上記の通りであり、好ましくは水素であり、Rbの少なくとも1つの出現は-(L)z-Aであり、zは1であり、Lは、置換若しくは非置換C1~8アルキル基又はオリゴ(C2~3アルキレングリコール)基であり、Aは、キレートされた金属カチオン、例えば第1族元素、第2族元素、希土類元素、第11族元素、第12族元素、第13族元素、又はそれらの組合せであり、好ましくは金属カチオンは、クラウンエーテル(例えば、12-クラウン-4、15-クラウン-5、18-クラウン-6等、又はアザ-クラウンエーテル)によってキレートされたLi、Ca、Sc、La、Al、Zn、Mg、Na、K、又はそれらの組合せであり、電気活性種は、式(VIIIi)を有する。
【0066】
【化16】
【0067】
式(VIIIi)の構造はリチウムがキレートされた金属カチオンとして示されているが、上記の金属カチオンのいずれも使用され得ることが理解されよう。本開示によって提供される指針を使用して、過度の実験なしに、当業者が特定のクラウンエーテル/金属カチオンの組合せを選択することができる。
【0068】
一態様において、電気活性種は、(IX)の構造を有し得る
【0069】
【化17】
【0070】
(式中、R1は、それぞれの出現において独立して、水素、ハロゲン、置換若しくは非置換C1~30アルキル基(例えば、C3~30分岐アルキル基、C1~30フルオロアルキル基等を含む)、置換若しくは非置換C1~30アルコキシ基、ポリ(C1~30アルキレンオキシド)基;置換若しくは非置換C3~30シクロアルキル基、置換若しくは非置換C6~30アリール基、置換若しくは非置換C2~30ヘテロアリール基、ニトリル基、ニトロ基、チオール基、又はビニル基であり、任意選択で、いずれの隣接するR1基も一緒になって、環式基を形成していてよく、Rxは、それぞれの出現において独立して、-(L)z-A基であり、eは、それぞれの出現において独立して、0~4であるが、eの少なくとも1つの出現は1であることを条件とし、fは、それぞれの出現において独立して、0~4であるが、アントラキノンの各フェニル基の価数を超えないことを条件とする(例えば、各e/f対は合計して4になる)。一態様において、eのそれぞれの出現は1である。
【0071】
(IX)の構造の一態様において、eのそれぞれの出現は1であり(すなわち、全eは2である)、fのそれぞれの出現は3であり(すなわち、全fは6である)、Rxのそれぞれの出現は-(L)z-Aであり、好ましくはAは-NR2R3R4アンモニウム基(R2、R3及びR4は、それぞれの出現において独立して、置換若しくは非置換C1~6アルキル基又は置換若しくは非置換ベンジル基である)、又はヒドロキシル基、アミン基、アミド基、若しくはチオール基、好ましくはヒドロキシル基であり、R1のそれぞれの出現は水素であり得る。例えば、電気活性種は、(IXa)の構造を有し得る。
【0072】
【化18】
【0073】
一態様において、Aは、-NR2R3R4アンモニウム基であり、好ましくはR2、R3及びR4の各々はメチルであり、又はR2及びR3はメチルであり、R4はベンジルであり、R1は水素である。
【0074】
一態様において、電気活性種は、(IX)の構造によるものとすることができ、安定化基は、キレートされた金属であり得る。例えば、eのそれぞれの出現は2であり、fのそれぞれの出現は2であり、Rxのそれぞれの出現は-(L)z-Aであり、zは1であり、Lは、アルキレンエーテル又はアルキレンジアミン連結基である。いくつかの態様において、連結基Lが、C2~3アルキレングリコールエーテル基、C2~3アルキレンジアミン基、ポリ(C2~3アルキレングリコールエーテル)基、又はポリ(C2~3アルキレンジアミン)基である場合、安定化基Aは、カチオン基、具体的にはキレートされた金属カチオンEである。一態様において、eが2である場合、Rx基は、互いにオルト位に配置され得る。一態様において、電気活性種は、(IXb)の構造によるものであり得る
【0075】
【化19】
【0076】
(式中、R1は、それぞれの出現において独立して、水素、ハロゲン、置換若しくは非置換C1~30アルキル基(例えば、C3~30分岐アルキル基、C1~30フルオロアルキル基等を含む)、置換若しくは非置換C1~30アルコキシ基、ポリ(C1~30アルキレンオキシド)基;置換若しくは非置換C3~30シクロアルキル基、置換若しくは非置換C6~30アリール基、置換若しくは非置換C2~30ヘテロアリール基、ニトリル基、ニトロ基、チオール基、又はビニル基、好ましくは水素であり、任意選択で、いずれの隣接するR1基も一緒になって、環式基を形成していてもよく、Dは、それぞれの出現において独立して、酸素(O)又は窒素(N)であり、rは、それぞれの出現において独立して、0又は1であり、R5及びR6は、それぞれの出現において独立して、C1~6アルキル基、ポリ(C2~3アルキレンオキシド)基、又はポリ(C2~3アルキレンジアミン)基であるが、R5及びR6が各々ポリ(C2~3アルキレンオキシド)基又はポリ(C2~3アルキレンジアミン)基である場合、R5は、R6と任意選択で組み合わされて環を形成し得ることを条件とし、金属カチオンEは、第1族元素、第2族元素、希土類元素、第11族元素、第12族元素、第13族元素、又はそれらの組合せであり、好ましくは金属カチオンCは、Li、Ca、Sc、La、Al、Zn、Mg、Na、K、又はそれらの組合せである)。R5及びR6が組み合わされて環式基を形成する場合、環式基は、クラウンエーテル(例えば、DがOである場合)又はアザ-クラウンエーテル(例えば、DがNである場合)であり得る。
【0077】
一態様において、電気活性種は、(IXb)の構造によるものとすることができ、R1は水素であり、R5及びR6はメチルであり、Dは酸素であり、rは0であり、Eは金属カチオンである。例えば、電気活性種は、(IXc)の構造を有し得る。
【0078】
【化20】
【0079】
一態様において、電気活性種は、(IXb)の構造によるものとすることができ、R1は水素であり、R5及びR6はメチルであり、Dは窒素であり、rは0であり、Eは金属カチオンである。例えば、電気活性種は、(IXd)の構造を有し得る。
【0080】
【化21】
【0081】
一態様において、電気活性種は、(X)の構造によるものとすることができる
【0082】
【化22】
【0083】
(式中、各R1は、それぞれの出現において独立して、水素、ハロゲン、置換若しくは非置換C1~30アルキル基(例えば、C3~30分岐アルキル基s、C1~30フルオロアルキル基等を含む)、置換若しくは非置換C1~30アルコキシ基、ポリ(C1~30アルキレンオキシド)基;置換若しくは非置換C3~30シクロアルキル基、置換若しくは非置換C6~30アリール基、置換若しくは非置換C2~30ヘテロアリール基、ニトリル基、ニトロ基、チオール基、又はビニル基であり、任意選択で、いずれの隣接するR1基も一緒になって、環式基を形成することができ、Rxは、それぞれの出現において独立して、-(L)z-A基であり、eは、それぞれの出現において独立して、0~4であるが、eの少なくとも1つの出現は1であることを条件とし、fは、それぞれの出現において独立して、0~4であるが、アントラキノンの各フェニル基の価数を超えないことを条件とする(例えば、各e及びfの対は合計して4になる)。一態様において、eのそれぞれの出現は1である。
【0084】
一態様において、電気活性種は、(X)の構造によるものとすることができ、Aは、-NR2R3R4アンモニウム基であり、好ましくは、R2、R3及びR4の各々は、メチル又はベンジルであり、zは0であり、R1は水素であり、eのそれぞれの出現は1であり、fのそれぞれの出現は3である。
【0085】
一態様において、電気活性種は、(X)の構造によるものとすることができ、Aは、ヒドロキシル基、アミン基、アミド基、又はチオール基、好ましくはヒドロキシル基であり、zは1であり、R1は水素であり、eのそれぞれの出現は1であり、fのそれぞれの出現は3であり、Lは、C6アリーレン基を含む連結基である。
【0086】
安定化基は、有利なことに、(例えば、アニオン付加体とのクーロン相互作用によって、電子求引性誘起効果によって、アニオン付加体への水素結合供与体として、又はそれらの組合せによって)アニオン付加体に安定性をもたらすことができるようにキノン核に配置され得る。いくつかの態様において、安定化基は、キノン核の少なくとも1つのケトン基から10オングストローム以下(例えば、スルースペース距離)離れていてもよい。いくつかの態様において、安定化基は、電気活性種の少なくとも1つのケトン基から10原子以下、若しくは8原子以下、又は1~10原子、若しくは2~10原子、若しくは1~8原子、若しくは2~8原子、若しくは1~5原子、若しくは2~5原子離れていてもよい。キノン核の少なくとも1つのケトン基から「離れている原子」の数によって安定化基の距離を記載する際に、ケトン基のカルボニル炭素から官能基までの距離が、カルボニル炭素を「0」として計数されることが理解されよう。例えば、以下に示す第1の例では、安定化基A(例えば、ピリジニウム基)は、ケトン基から1原子離れており、第2の例では、安定化基A(例えば、ヒドロキシル基)は、ケトン基から4原子離れている。
【0087】
【化23】
【0088】
いくつかの態様において、安定化基を含む還元型電気活性種とルイス酸ガスとの間の会合定数は、安定化基の非存在下での還元型電気活性種とルイス酸ガスとの間の会合定数よりも大きい。
【0089】
いくつかの態様において、安定化基を含む還元型電気活性種とルイス酸ガスとの間の反応平衡定数は、電気活性種が安定化基を含まない場合の還元型電気活性種とルイス酸ガスとの間の反応平衡定数よりも大きい。例えば、セミキノンアニオン又はキノンジアニオンがカチオン基又は水素結合供与体等の安定化基を含む、セミキノンアニオン又はキノンジアニオンとルイス酸ガスとの間の反応平衡定数は、セミキノンアニオン又はキノンジアニオンが安定化基を含まない場合のセミキノンアニオン又はキノンジアニオンとルイス酸ガスとの間の反応平衡定数よりも大きくてもよい。いくつかの態様において、特に安定化基がカチオン基である場合、カチオン性安定化基を含む還元型電気活性種とルイス酸ガスとの間の反応平衡定数は、安定化基を含む還元型電気活性種と同じ還元電位を有する対応する非イオン性電気活性種(すなわち、カチオン性安定化基を含まない)の還元状態とルイス酸ガスとの間の反応平衡定数よりも大きくてもよい。
【0090】
いくつかの態様において、安定化基を含む還元型電気活性種及びルイス酸ガスからのアニオン付加体の形成は、安定化基を含まない等価な還元型電気活性種及びルイス酸ガスからのアニオン付加体の形成よりも反応速度論的に有利である。
【0091】
いくつかの態様において、安定化基を含む還元型電気活性種及びルイス酸ガスからのアニオン付加体の形成は、安定化基を含まない等価な還元型電気活性種及びルイス酸ガスからのアニオン付加体の形成よりも熱力学的に有利である。
【0092】
いくつかの態様において、安定化基を含む還元型電気活性種及びルイス酸ガスからのアニオン付加体の形成は、安定化基を含まない等価な還元型電気活性種及びルイス酸ガスからのアニオン付加体の形成よりも熱力学的にかつ反応速度論的に有利である。
【0093】
いくつかの態様において、安定化基がカチオン基である場合、安定化基を含む還元型電気活性種及びルイス酸ガスからのアニオン付加体の形成は、安定化基を含む還元型電気活性種と同じ還元電位を有する非イオン性電気活性種の還元状態及びルイス酸ガスからのアニオン付加体の形成よりも反応速度論的に有利である。
【0094】
いくつかの態様において、安定化基がカチオン基である場合、安定化基を含む還元型電気活性種及びルイス酸ガスからのアニオン付加体の形成は、安定化基を含む還元型電気活性種と同じ還元電位を有する非イオン性電気活性種の還元状態及びルイス酸ガスからのアニオン付加体の形成よりも熱力学的に有利である。
【0095】
いくつかの態様において、安定化基がカチオン基である場合、安定化基を含む還元型電気活性種及びルイス酸ガスからのアニオン付加体の形成は、安定化基を含む還元型電気活性種と同じ還元電位を有する非イオン性電気活性種の還元状態及びルイス酸ガスからのアニオン付加体の形成よりも反応速度論的にも熱力学的にも有利である。
【0096】
いくつかの態様において、安定化基がカチオン基である場合、安定化基を含む還元型電気活性種とルイス酸ガスとの間の会合定数は、安定化基を含む還元型電気活性種と同じ還元電位を有する非イオン性電気活性種の還元状態とルイス酸ガスとの間の会合定数よりも大きい。
【0097】
いくつかの態様において、水素結合供与体安定化基を含む還元型電気活性種及びルイス酸ガスからのアニオン付加体の形成は、水素結合供与体安定化基の非存在下での還元型電気活性種及びルイス酸ガスと比較してアニオン付加体の形成を反応速度論的に有利にする。
【0098】
いくつかの態様において、安定化基は水素結合供与体であり、水素結合供与体の存在下でのセミキノンアニオン又はキノンジアニオンとルイス酸ガスとの間の反応平衡定数は、水素結合供与体が存在しない場合のセミキノンアニオン又はキノンジアニオンとルイス酸ガスとの間の反応平衡定数よりも大きい。
【0099】
いくつかの態様において、安定化基は水素結合供与体であり、水素結合供与体の存在下でのセミキノンアニオン又はキノンジアニオンとルイス酸ガスとの間の会合定数は、水素結合供与体が存在しない場合のセミキノンアニオン又はキノンジアニオンとルイス酸ガスとの間の会合定数よりも大きい。
【0100】
いくつかの態様において、電気活性種における安定化基の存在は、安定化基を含まない同じ電気活性種に比べて還元電位をシフトすることができる。特に、安定化基がカチオン基である場合、還元電位を、対応する非官能化電気活性種に比べてシフトすることができる。一態様において、カチオン性安定化基を含む電気活性種の還元電位を、対応する非官能化(非イオン性)電気活性種の還元電位に比べて0.1~1.2Vシフトすることができる。例えば、1つの安定化基が電気活性種に存在する一態様において、特に安定化基がカチオン基である場合、カチオン性安定化基を含む電気活性種の還元電位を、対応する非官能化(非イオン性)電気活性種の還元電位に比べて各々0.1~1.2V、又は0.1~1.1V、又は0.1~1.0V、又は0.1~0.9V、又は0.2~1.9V、又は0.5~0.9V、又は0.6~0.9Vシフトすることができる。還元電位は、対応する非官能化(非イオン性)電気活性種の還元電位に比べて、正又は負の向きに0.1~1.2Vシフトすることができる。本明細書で使用する場合、「還元型電気活性種と同じ還元電位を有する非イオン性電気活性種」は、非イオン性電気活性種が安定化基を含む電気活性種の還元電位の50~60mVの範囲内である還元電位を有することを意味する。これらの態様において比較のために使用されている非イオン性電気活性種は、還元電位が安定化基を含む電気活性種と実質的に同じ(例えば、50~60mVの範囲内)である限り、同じ核のキノン構造を有しても有しなくてもよいと理解されるであろう。
【0101】
電気活性種は、電気活性種の少なくとも1つの還元状態がルイス酸ガスに対して強い親和性を有するように選択されてもよい。一態様において、還元状態において、電気活性種は、室温(例えば23℃)で少なくとも10リットル/モル(M-1)、又は少なくとも102M-1、又は少なくとも103M-1のルイス酸ガスとの結合定数を有し得る。例えば、還元型電気活性種は、10~1020M-1、103~1019M-1、104~1018M-1、105~1017M-1、106~1016M-1、又は107~1015M-1のルイス酸ガスとの結合定数を有してもよい。一態様において、ルイス酸ガスとの結合定数は105~1020M-1、又は1010~1015M-1である。
【0102】
一態様において、電気活性種は少なくとも2つの酸化状態を有することができる。電気活性種が第1の酸化状態にあるとき、電気活性種は「活性状態」にあると考えることができ、ルイス酸ガスに対する親和性は高くてもよい(すなわち、「活性状態」にある電気活性種はルイス酸ガスとの結合定数を有し得る)。第2の酸化状態では、電気活性種は「不活性化」状態にあると考えることができ、ルイス酸ガスに対する親和性は、「活性」状態のルイス酸ガスに対する親和性に対して低下する。例えば、電気活性種は、0.9:1~10-20:1、例えば0.9:1、0.8:1、0.5:1、0.1:1、10-2:1、10-3:1、10-4:1、又は10-20:1の不活性化状態の結合定数の活性状態の結合定数に対する比を有してもよい。一態様において、不活性化状態におけるルイス酸ガスとの結合定数は0であってもよい(すなわち、不活性化状態はルイス酸ガス種に対して本質的に不活性である)。
【0103】
電気活性種は少なくとも1つの酸化状態を有することができ、ルイス酸ガスが電気活性種から放出され得る。例えば、一態様において、電気活性種は少なくとも1つの酸化状態を有することができ、酸化状態に酸化されると、ルイス酸ガスは電気活性種から放出され得る。一態様において、ルイス酸ガスに対する還元型電気活性種の結合定数は、ルイス酸ガスに対する対応する酸化型電気活性種の結合定数よりも大きくなり得る。したがって、有利な特徴において、ルイス酸ガスの捕捉及び放出は、酸化還元サイクリングによって達成され得る。
【0104】
電気活性種は、数分のオーダー、数秒のオーダー、ミリ秒のオーダー、又はマイクロ秒のオーダー以下の時間尺度でルイス酸ガスに結び付くことが可能である。
【0105】
一態様において、電気活性種は、電気活性種がルイス酸ガスと結合し得る還元状態を有することができ、還元型電気活性種が二酸素(O2)と反応することが熱力学的に不利である少なくとも1つの温度(例えば、223K以上、248K以上、273K以上、又は298K以上、かつ最大323K、最大348K、又は最大413Kの範囲、例えば298K)がある。一態様において、電気活性種は、電気活性種がルイス酸ガスと結合し得る還元状態を有し得、酸素との反応の速度定数が、ルイス酸ガスの捕捉に見合った時間尺度で反応が起こるには遅すぎるため還元型電気活性種が二酸素(O2)と反応するのに反応速度論的に不利である少なくとも1つの温度(例えば、298K)がある。したがって、電気活性種は、二酸素よりもルイス酸ガスの捕捉に向けた特異性を提供する。
【0106】
いくつかの態様において、電気活性種は、電気活性材料の形(例えば、カーボンナノチューブが安定化基を含む1つ以上の電気活性種で官能化された官能化カーボンナノチューブ等)をとり得る。
【0107】
また、電気活性種及び安定化基を含む電気活性ポリマー又はオリゴマーが提供される。電気活性ポリマー又はオリゴマーの繰り返し単位の少なくとも一部は、電気活性種ベースの繰り返し単位のキノン核に共有結合している、又は電気活性種ベースの繰り返し単位と同じポリマー鎖上の繰り返し単位に共有結合しているが、キノン核には直接共有結合していない、本開示の安定化基を含む。
【0108】
本明細書で使用する場合、「ポリマー」という用語は、10個を超える繰り返し単位を有する構造を指す。本明細書で使用する場合、「オリゴマー」という用語は、2~10個の繰り返し単位を有する構造を指す。一態様において、電気活性ポリマー又はオリゴマーの少なくとも一部は、少なくとも1つの電気活性種が主鎖に共有結合した主鎖を含む。一態様において、電気活性種は、ポリマー主鎖の少なくとも一部を形成してもよい。
【0109】
一態様において、繰り返し単位の少なくとも一部は、キノン核構造に共有結合した安定化基を含む電気活性種に由来することができる。いくつかの態様において、電気活性ポリマー又はオリゴマーは、本開示の安定化基を含む電気活性種(例えば、ホモポリマー)に由来する繰り返し単位のみ含むことができる。別の態様において、電気活性ポリマー又はオリゴマーは、本開示の電気活性種と異なる電気活性種(例えば、コポリマー)に由来する繰り返し単位を任意選択で更に含むことができる。別の態様において、電気活性ポリマー又はオリゴマーは、本開示の安定化基を含む2つ以上の電気活性種に由来する繰り返し単位を含み得る。別の言い方をすれば、電気活性ポリマー又はオリゴマーは、2つ以上のタイプの安定化基(例えば、2つ以上のタイプのカチオン基;2つ以上のタイプの水素結合供与体基;又は少なくとも1つのタイプのカチオン基及び少なくとも1つのタイプの水素結合供与体基)を含む電気活性種に由来する繰り返し単位を含み得る。
【0110】
一態様において、電気活性ポリマー又はオリゴマーは、1~100モルパーセントの本開示の電気活性種及び0~99モルパーセントの、本開示の電気活性種と異なる電気活性種、例えば置換若しくは非置換キノン、置換若しくは非置換テトラオン、置換若しくは非置換ビピリジニウム、置換若しくは非置換ビピリジン、置換若しくは非置換フェナジン、置換若しくは非置換ベンゾイミダゾール、置換若しくは非置換ベンゾトリアゾール、置換若しくは非置換インドール、置換若しくは非置換ビオロゲン、置換若しくは非置換ピラジニウム、置換若しくは非置換ピリミジニウム、置換若しくは非置換キノリン、置換若しくは非置換イソキノリン、置換若しくは非置換キノキサリニウム、置換若しくは非置換ピリリウム、置換若しくは非置換ピラジン、置換若しくは非置換ピリジニウム、置換若しくは非置換テトラゾリウム、置換若しくは非置換ベルダジル、置換若しくは非置換キノジメタン、置換若しくは非置換トリシアノビニルベンゼン、置換若しくは非置換テトラシアノエチレン、置換若しくは非置換チオケトン、置換若しくは非置換チオキノン、置換若しくは非置換ジスルフィド、又はそれらの組合せに由来する繰り返し単位を含み得る。
【0111】
一態様において、電気活性ポリマーは、式-(L)z-Aの少なくとも1つの置換基を含むキノンに由来する繰り返し単位を含む。例えば、ポリマーは、式-(L)z-Aの少なくとも1つの置換基を含む1,4-ベンゾキノン、式-(L)z-Aの少なくとも1つの置換基を含む1,2-ベンゾキノン、式-(L)z-Aの少なくとも1つの置換基を含む1,4-ナフトキノン、式-(L)z-Aの少なくとも1つの置換基を含む1,2-ナフトキノン、式-(L)z-Aの少なくとも1つの置換基を含むアントラキノン、式-(L)z-Aの少なくとも1つの置換基を含むフェナントレンキノン等、又はそれらの組合せに由来する繰り返し単位を含み得る。一態様において、電気活性ポリマーは、式-(L)z-Aの少なくとも1つの置換基を含むポリ(アントラキノン)を含み得る。一態様において、電気活性ポリマーは、式-(L)z-Aの少なくとも1つの置換基を含む置換又は非置換ポリ(ビニルアントラキノン)を含み得る。一態様において、電気活性ポリマーは、式-(L)z-Aの少なくとも1つの置換基を含むポリ(フェニルナフトキノン)を含み得る。
【0112】
特定の一態様において、電気活性ポリマー又はオリゴマーは、1,4-ベンゾキノンに由来し、安定化基を含む電気活性種に由来する繰り返し単位を含む。例えば、電気活性ポリマー又はオリゴマーは、(XI)の構造による繰り返し単位を含み得る
【0113】
【化24】
【0114】
(式中、R1及びRxは上記の通りであり、xは、1又は2であり、yは、0又は1であるが、x及びyの合計は2であることを条件とし、Arは、置換又は非置換C6~20アリーレン基であり、nは、0又は1である)。いくつかの態様において、存在する場合、Ar基は、上記のように安定化基(例えば、カチオン基又は水素結合供与体)で任意選択で置換され得る。そのような態様において、Ar基上における安定化基の存在が、所望の安定化効果を電気活性種及びルイス酸ガスのアニオン付加体にもたらすのに十分である場合、xが0であり得る可能性がある。
【0115】
存在する場合、Ar基は、例えば置換若しくは非置換フェニレン、ビフェニレン、フルオレン、チオフェン、又はそれらの組合せであり得る。一態様において、Arは、好ましくは置換又は非置換フェニレン基であり得る。
【0116】
特定の一態様において、電気活性ポリマー又はオリゴマーは、ナフトキノン核に由来し、安定化基を含む電気活性種に由来する繰り返し単位を含む。例えば、電気活性ポリマー又はオリゴマーは、(XII)の構造による繰り返し単位を含み得る
【0117】
【化25】
【0118】
(式中、R1及びRxは上記の通りであり、xは、1~4であり、yは、0~3であるが、x及びyの合計は4であることを条件とし、nは、それぞれの出現において独立して0又は1であり、Arは、それぞれの出現において独立して置換又は非置換C6~20アリーレン基である)。いくつかの態様において、存在する場合、Ar基は、上記のように安定化基(例えば、カチオン基又は水素結合供与体)で任意選択で置換され得る。そのような態様において、Ar基上における安定化基の存在が、所望の安定化効果を電気活性種及びルイス酸ガスのアニオン付加体にもたらすのに十分である場合、xが0であり得る可能性がある。例えば、電気活性ポリマー又はオリゴマーは、(XIIa)又は(XIIb)の構造による繰り返し単位を含み得る。
【0119】
【化26】
【0120】
別の特定の態様において、電気活性ポリマー又はオリゴマーは、フェナントレンキノン核に由来し、安定化基を含む電気活性種に由来する繰り返し単位を含む。例えば、電気活性ポリマー又はオリゴマーは、(XIII)の構造による繰り返し単位を含み得る
【0121】
【化27】
【0122】
(式中、R1及びRxは上記の通りであり、xは、それぞれの出現において独立して0~3であるが、xの少なくとも1つの出現は1であることを条件とし、yは、それぞれの出現において独立して0~3であるが、フェニル基の価数を超えない(例えば、各x/y対は合計して3になる)ことを条件とし、nは、0~2又は0~1であり、Arは、置換又は非置換C6~20アリーレン基である)。いくつかの態様において、存在する場合、Ar基は、上記のように安定化基(例えば、カチオン基又は水素結合供与体)で任意選択で置換され得る。そのような態様において、Ar基上における安定化基の存在が、所望の安定化効果を電気活性種及びルイス酸ガスのアニオン付加体にもたらすのに十分である場合、xの両出現が0であり得る可能性がある。例えば、電気活性ポリマー又はオリゴマーは、(XIIIa)又は(XIIIb)の構造による繰り返し単位を含み得る。
【0123】
【化28】
【0124】
いくつかの態様において、キノン核と安定化基は共に、例えば安定化基がアンモニウム基等のカチオン基である場合、ポリマー又はオリゴマー主鎖の一部分を形成することができる。特定の一態様において、電気活性ポリマー又はオリゴマーは、フェナントレンキノン核及びカチオン性アンモニウム基に由来する電気活性種に由来する繰り返し単位を含む。例えば、電気活性ポリマー又はオリゴマーは、(XIV)の構造による繰り返し単位を含み得る
【0125】
【化29】
【0126】
(式中、R1は以上に定義された通りであり、yは、それぞれの出現において独立して3であり、Aは、-NR2R3-アンモニウム基であり、R2及びR3は、それぞれの出現において独立して置換若しくは非置換C1~6アルキル基又は置換若しくは非置換ベンジル基であり、nは、0又は1であり、Arは、置換又は非置換C6~20アリーレン基である)。特定の一態様において、ポリマー又はオリゴマーは、(XIVa)又は(XIVb)の構造による繰り返し単位を含み得る。
【0127】
【化30】
【0128】
いくつかの態様において、ポリマー又はオリゴマーは、本開示の電気活性種を、ポリマー主鎖に組み込まれた基としてではなく、ポリマー主鎖から離れたペンダント基として含むことができる。例えば、ポリマー又はオリゴマーは、置換又は非置換C1~12アルキル(メタ)アクリレートモノマー、置換又は非置換アルケニル芳香族モノマー(例えば、スチレン)、置換又は非置換ビニルモノマー等に由来する繰り返し単位を含むことができ、繰り返し単位の少なくとも一部が、本明細書に記載される電気活性種を共有結合させるように好適に官能化されたモノマーに由来する。
【0129】
一態様において、電気活性ポリマー又はオリゴマーは、重合性基及びキノン核構造を含む電気活性種を含む第1のモノマー、並びに重合性基及び安定化基を含む第2のモノマーに由来する繰り返し単位を含み得る。したがって、本開示のこの態様による電気活性ポリマー又はオリゴマーは、少なくとも上記の2つのモノマーに由来する繰り返し単位を含むコポリマーである。コポリマーは、ランダムコポリマー、交互コポリマー、ブロックコポリマー、又はそれらの組合せであり得る。一態様において、コポリマーはランダムコポリマーである。一態様において、コポリマーは交互コポリマーである。一態様において、電気活性ポリマー又はオリゴマーは、第1のモノマー及び第2のモノマーに由来する繰り返し単位からなり得る。一態様において、追加のモノマー単位が存在してもよい。一態様において、存在する場合、追加のモノマー単位は、第1のモノマーのキノン核構造と異なるキノン核構造を有してもよい。一態様において、存在する場合、追加のモノマー単位は、第2のモノマーの安定化基と異なる安定化基を有してもよい。一態様において、存在する場合、追加のモノマー単位は、ここで定義されるキノン核又は安定化基を含まない可能性がある。例えば、ポリマー又はオリゴマーは、特定の溶解度又は他の特性を得られた電気活性ポリマー又はオリゴマーに付与するように選択されたモノマーに由来する追加の繰り返し単位を含んでよい。追加のモノマー単位は、一般的にいずれのタイプでもよく、又はいずれの量で存在してもよいが、電気活性ポリマー又はオリゴマーの1つ以上の所望の特性は悪影響を与えないことを条件とする。例えば、追加のモノマー単位は、50モルパーセント以下、又は40モルパーセント以下、又は30モルパーセント以下、又は20モルパーセント以下、又は10モルパーセント以下、又は5モルパーセント以下、又は1モルパーセント以下の量で存在してもよい。
【0130】
第1及び第2のモノマーの重合性基は同じでも異なってもよく、例えばエチレン性不飽和基を含めて、一般的に公知であるいずれの重合性基であってもよい。一態様において、重合性基は、(メタ)アクリレート基、スチレン系基、環式オレフィン(例えば、ノルボルネン)等、又はそれらの組合せであってもよい。一態様において、重合性基は、ノルボルネン部分であり得る。
【0131】
第1のモノマーのキノン核構造は、上記の通りであり、例えば式(I)又は式(II)による構造であり得る。一態様において、キノン核構造は、例えば1,4-ベンゾキノンを含み得る。一態様において、キノンは、環式オレフィン(例えば、ノルボルネン)重合性部分に縮合して、縮合環構造を形成することができる。
【0132】
一態様において、第1のモノマーは次式を有することができる
【0133】
【化31】
【0134】
(式中、各R1は、それぞれの出現において独立して水素、ハロゲン(例えば、クロロ、ブロモ、ヨード)、置換若しくは非置換C1~30アルキル基、置換若しくは非置換C1~30アルコキシ基、ポリ(C1~30アルキレンオキシド)基;置換若しくは非置換C3~30シクロアルキル基、置換若しくは非置換C3~30分岐アルキル基、置換若しくは非置換C6~30アリール基、置換若しくは非置換C2~30ヘテロアリール基、置換若しくは非置換C1~30フルオロアルキル基、ニトリル基、ニトロ基、チオール基、又はビニル基であり、任意選択で、いずれの隣接するR1基も一緒になって、環式基を形成することができる)。
【0135】
第2のモノマーの安定化基は、上記のようにカチオン基、水素結合供与体、又はそれらの組合せであり得る。一態様において、安定化基は水素結合供与体であり得る。特定の一態様において、安定化基はヒドロキシル基であり得る。一態様において、第2のモノマーは、ヒドロキシル官能化ノルボルネンであり得る。
【0136】
一態様において、第2のモノマーは次式を有することができる
【0137】
【化32】
【0138】
(式中、Aは、水素結合供与体又はカチオン基を含む安定化基である)。一態様において、Aはヒドロキシル基であり得る。
【0139】
一態様において、電気活性ポリマー又はオリゴマーは次式を有することができる
【0140】
【化33】
【0141】
(式中、R1及びAは、以上に定義された通りであり得る)。一態様において、ポリマーは確率論的ポリマーであり得る。
【0142】
電気活性ポリマー又はオリゴマーにおける第2のモノマーの安定化基と第1のモノマーのキノン核構造のケトンの間のスルースペース距離は、以上に述べられたようにアニオン付加体に安定性をもたらすために好ましくは10オングストローム以下である。
【0143】
電気活性ポリマー又は電気活性オリゴマーは、任意選択で架橋され得る。架橋は、当該技術分野で一般的に知られている様々な方法によって達成することができる。当業者は、本開示の利益を受けて、電気活性種の選択に基づいて、好適な架橋化学を決定することができるであろう。
【0144】
いくつかの態様において、電気活性種は、ヒドロゲル、イオノゲル、オルガノゲル、又はそれらの組合せに組み込まれ得る。このような架橋ポリマー材料は、当該技術分野において一般に知られており、いくつかの場合では、三次元構造の一部として(例えば、共有結合を介して)本明細書に記載される電気活性種を含んでもよい。しかし、いくつかの態様において、本開示の電気活性種は、吸着(例えば、物理吸着及び/又は化学吸着)を介して架橋ポリマー材料に組み込まれ得る。いくつかの態様において、電気活性種は、拡張ネットワークに含まれ得る。例えば、金属有機構造体(MOF)又は共有結合有機フレームワーク(COF)は、電気活性種を含んでよい。いくつかの態様において、官能化炭素質材料は、電気活性種、例えば官能化グラフェン、官能化カーボンナノチューブ、官能化カーボンナノリボン、エッジ官能化グラファイト、又はそれらの組合せを含み得る。
【0145】
また、ルイス酸ガスを含む流体混合物からルイス酸ガスを分離する方法が提供される。方法は、流体混合物を本明細書に記載される電気活性種、又は電気活性種を含むポリマー、オリゴマー、若しくは他の材料と接触させる工程であって、電気活性種が還元状態にあって、ルイス酸ガスと還元型電気活性種との間のアニオン付加体を形成する工程を含む。
【0146】
流体混合物はルイス酸ガスを含む。「ルイス酸ガス」という用語は、電子対供与体から電子対を受容することができる(例えば、供与体の電子対にエネルギー的にアクセス可能な空の軌道を有することによって)ガス種を指す。
【0147】
ルイス酸ガスとしては、二酸化炭素(CO2)、硫化カルボニル(COS)、例えば二酸化硫黄(SO2)又は三酸化硫黄(SO3)等の酸化硫黄;有機硫酸塩(R2SO4)、例えばジメチル硫酸;二酸化窒素(NO2)又は三酸化窒素(NO3)等の酸化窒素;リン酸エステル(R3PO4)、例えばリン酸トリメチル;硫化物(R2S)、エステル(RCOOR')、例えばギ酸メチル又はアクリル酸メチル;アルデヒド(RCHO)、例えばホルムアルデヒド又はアクロレイン;ケトン(R'2CO)、例えばアセトン、イソシアネート(R'NCO)、例えばイソシアン酸メチル;イソチオシアネート(R'NCS);ボラン(BR''3)、例えばトリメチルボラン、ボレート(R''3BO3)、例えばトリメチルボレート;又はそれらの組合せを挙げることができ、各Rは、独立して水素、C1~12アルキル、C3~12シクロアルキル、C1~12ヘテロシクロアルキル、C6~20アリール又はC1~12ヘテロアリールであり、各R'は、独立してC1~12アルキル、C3~12シクロアルキル、C1~12ヘテロシクロアルキル、C6~20アリール又はC1~12ヘテロアリールであり、各R''は、独立して水素、ハロゲン、C1~12アルキル、C3~12シクロアルキル、C1~12ヘテロシクロアルキル、C6~20アリール又はC1~12ヘテロアリールである。1つ以上の態様において、ルイス酸ガスは、CO2、COS、SO2、SO3、NO2又はNO3を含むことができる。更に他の態様において、ルイス酸ガスはCO2である。
【0148】
方法は、電解質、例えば非水性電解質中で実施され得る。非水電解質は、室温(例えば、23℃)で好適な導電率を有する固体又は液体であってもよい。非水電解質は、有機電解質(例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、液体キノン)、イオン性液体、有機材料の液体共晶混合物、又はそれらの組合せであってもよい。本明細書の方法及びシステムに好適であり得る液体キノンの一例は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれるShimizu A, Takenaka K, Handa N, Nokami T, Itoh T, Yoshida JI. Liquid Quinones for Solvent-Free Redox Flow Batteries, Advanced Materials. 2017 Nov; 29(41):1606592に記載されるように、ベンゾキノンとナフトキノン等の第2のキノンとの液体混合物である。1つ以上の態様において、ベンゾキノンとナフトキノン等の第2のキノンとの液体混合物を、電気活性種と非水電解質の両方に使用することができる。いくつかの態様において、非水電解質は炭酸エステルを含む。例えば、いくつかの態様において、非水電解質は、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、又はそれらの組合せを含んでもよい。
【0149】
一態様において、有機電解質は、有機溶媒及び支持電解質を含み得る。例示的な有機溶媒としては、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、プロピレンカーボネート、ジメチルスルホキシド、ポリエチレングリコール、ジグリム、又はそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0150】
電解質は、支持電解質を更に含むことができる。支持電解質は、非水電解質中での優れた電気伝導性等の電気的特性のために、一般に第四級アンモニウム塩である。第四級アンモニウム塩の例としては、例えば、(CH3)4N・BF4、(CH3)3C2H5N・BF4、(CH3)2(C2H5)2N・BF4、CH3(C2H5)3N・BF4、(C2H5)4N・BF4、(C3H7)4N・BF4、CH3(C4H9)3N・BF4、(C4H9)4N・BF4、(C6H13)4N・BF4、(C2H5)4N・ClO4、(C2H5)4N・BF4、(C2H5)4N・PF6、(C2H5)4N・AsF6、(C2H5)4N・SbF6、(C2H5)4N・CF3SO3、(C2H5)4N・C4F9SO3、(C2H5)4N・(CF3SO2)2N、(C2H5)4N・BCH3(C2H5)3、(C2H5)4N・B(C2H5)4、(C2H5)4N・B(C4H9)4、(C2H5)4N・B(C6H5)4,等、これらのヘキサフルオロリン酸塩等が挙げられる。支持電解質は、非水電解質の総質量に対して0~70wt%の量で存在することができる。
【0151】
一態様において、電解質は、イオン性液体、例えば室温イオン性液体(RTIL)を含む。室温、例えば23℃で液体であるため溶融塩とも称されるイオン性液体は、低揮発性、例えば23℃の温度で10-5パスカル(Pa)未満、又は10-10~10-5Paの蒸気圧を有することができ、この蒸気圧は、セパレータが乾燥するリスクを低減させ、蒸発又はエントレインメントによる電解質の損失を低減させ得る。一態様において、イオン性液体は、非水電解質の実質的に全体(例えば、少なくとも80体積パーセント(vol%)、又は少なくとも90vol%、又は少なくとも95vol%、又は少なくとも98vol%、少なくとも99vol%、又は少なくとも99.9vol%)を占める。
【0152】
イオン性液体は、アニオン成分及びカチオン成分を含む。イオン性液体のアニオンとしては、ハロゲン化物イオン、硫酸イオン、スルホン酸イオン、炭酸イオン、重炭酸イオン、リン酸イオン、硝酸イオン、酢酸イオン、PF6、BF4、トリフルオロメタンスルホン酸イオン(トリフレート)、ノナフレート、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミド、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリフルオロ酢酸イオン、ヘプタフルオロ酪酸イオン、ハロアルミネート、トリアゾリド、又はアミノ酸誘導体(例えば、窒素上のプロトンが除去されたプロリン)のうちの1つ以上を挙げることができるが、これらに限定されない。イオン性液体のカチオンは、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、ホスホニウム、アンモニウム、スルホニウム、チアゾリウム、ピラゾリウム、ピペリジニウム、トリアゾリウム、ピラゾリウム、オキサゾリウム、グアニジニウム、アルカリカチオン、又はジアルキルモルホリニウムのうちの1つ以上を含み得るがこれらに限定されない。一態様において、室温イオン性液体は、カチオン成分としてイミダゾリウムを含む。一態様において、室温イオン性液体は、カチオン成分として1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム(「Bmim」)を含む。一態様において、室温イオン性液体は、アニオン成分としてビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(「TFSI」)を含む。一態様において、室温イオン性液体は、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(「[Bmim][TFSI]」)を含む。一態様において、室温イオン性液体は、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート(「BF4」)(「[Bmim][BF4]」)を含む。
【0153】
一態様において、電解質は、非置換若しくは置換イミダゾリウム、非置換若しくは置換モルホリニウム、非置換若しくは置換ピリジニウム、非置換若しくは置換ピロリジニウム、非置換若しくは置換ピペリジニウム、非置換若しくは置換ピペラジニウム、非置換若しくは置換ピラジニウム、又はそれらの組合せを含み得るイオン性液体を含む。特定の態様において、イオン性液体は、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(ペンタフルオロスルホニル)イミド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジシアンアミド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチル-スルホニル)イミド、1-ブチル-3-メチルピリジニウムビス(トリフルオロメチル-スルホニル)イミド、N-メチル-N-プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、又はそれらの組合せであり得る。
【0154】
電気化学装置も提供される。電気化学装置は、還元状態の電気活性種と電子連通している負極を含むチャンバを含み、電気活性種は安定化基を含み、チャンバは、ルイス酸ガスを含む流体混合物を受け取るように構成されている。安定化基を含む電気活性種及びルイス酸ガスは、本明細書に開示される通りである。
【0155】
還元状態の電気活性種を含む電気化学セルは、本開示の別の態様を表す。一態様において、電気化学セルは、電気活性種及び電解質、例えば非水電解質を含む。いくつかの態様において、電気化学セルは、還元状態の電気活性種を含む第1の電極を含み、電気活性種は、酸化状態、及び電気活性種がルイス酸ガスと結合してアニオン付加体を形成する少なくとも1つの還元状態を含む。電気化学セルは、相補的電気活性層を含む第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間の第1のセパレータと、電解質とを更に含む。一態様において、第1の電極及び第2の電極は、対称型電気化学セルを提供するために構成又は組成が同一であり得る。
【0156】
安定化基を含む電気活性種は、第1の電極の総質量に対して10~90質量%(wt%)の量で存在し得る。この範囲内で、電気活性種は、第1の電極の総質量に対して少なくとも20wt%、又は少なくとも25wt%、又は少なくとも30wt%、又は少なくとも40wt%、又は少なくとも50wt%の量で存在することができる。また、この範囲内で、電気活性種は、第1の電極の総質量に対して最大80wt%、又は最大70wt%、又は最大60wt%、又は最大50wt%、又は最大45wt%、又は最大40wt%の量で存在することができる。例えば、電気活性種は、第1の電極の総質量に対して10~75wt%、又は10~60wt%、又は15~60wt%、又は20~55wt%、又は25~55wt%、又は30~50wt%の量で存在することができる。
【0157】
第1のセパレータは、多孔質セパレータであってもよい。セパレータは、ポリマーフィルム、例えばポリアミド、ポリオレフィン、ポリアラミド、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂等、又はそれらの組合せを含むフィルムを含んでもよい。ポリマーは、片面又は両面がセラミックナノ粒子でコーティングされてもよい。一態様において、多孔質セパレータは、セルロース、合成ポリマー材料、ポリマー/セラミック複合材料、又はセラミック材料を含み得る。セパレータの更なる例としては、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)セパレータ、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、PVDF-アルミナ複合体セパレータ、リチウム超イオン導電体(LiSICON)セパレータ等を挙げることができる。上記のものの組合せも使用され得る。様々なセパレータの組合せが使用される場合、一般的にいずれの順序でも配置され得る。
【0158】
セパレータは、各電極におけるそれぞれの電気化学反応が互いに干渉するのを防止し得る保護層として機能し得る。セパレータはまた、第1及び第2の電極を互いに又は電気化学セル内の他の成分から電子的に分離して、短絡を防止することにも役立ち得る。本開示の利益を受ける当業者は、好適なセパレータを選択できるであろう。
【0159】
一態様において、セパレータは、電解質で部分的又は完全に含浸され得る。電解質は、例えばイオン性液体、非揮発性溶媒に溶かした塩、又はそれらの組合せを含み得る。セパレータを電解質で含浸させる工程は、液中に入れること、被覆、浸漬、又はその他の方法でセパレータを電解質に接触させることによって行うことができる。多孔質セパレータの細孔の一部又は全部は、電解質で部分的又は完全に充填され得る。一態様において、セパレータは電解質で飽和させることができる。
【0160】
電気化学セルの第2の電極は、相補的電気活性層を含む。相補的電気活性層は、第1の電極の電気活性種と同じでも異なってもよい(例えば、本明細書に記載される安定化基を含む電気活性種と同じでも異なってもよい)第2の電気活性種を含む。
【0161】
一態様において、相補的電気活性層は、安定化基を含む第1の電極と同じ電気活性種を含む。一態様において、相補的電気活性層は、第1の電極の第1の電気活性種とは異なる第2の電気活性種を含む。一態様において、相補的電気活性層の第2の電気活性種は、電気活性有機分子、電気活性ポリマー、電気活性オリゴマー、電気活性無機複合体、電気活性メタロセン、又はそれらの組合せであり得る。第2の電気活性種も、安定化基を含んでも含まなくてもよい。
【0162】
第2の電気活性種として使用されてもよい例示的な電気活性有機化合物としては、置換又は非置換キノン又はテトラオン、ビピリジン、フェナジン、ビピリジニウム又はビオロゲン、ピラジニウム、ピリミジニウム、キノキサリニウム、ピリリウム、ピリジニウム、テトラゾリウム、ベルダジル、キノジメタン、トリシアノビニルベンゼン、テトラシアノエチレン、チオケトン、チオキノン、及びジスルフィドを挙げることができるが、これらに限定されない。一態様において、第2の電気活性種は、置換又は非置換キノンを含む(例えば、キノンは、キノンに結合した1つ以上の官能基又は他の部分若しくは連結を含み得る)。置換キノン上の置換基(例えば、官能基)の選択は、置換キノンの還元電位に対する効果を含むがこれに限定されない様々な要因に依存し得る。本開示の利益を受ける当業者は、例えば合成の実現可能性及び結果として生じる還元電位に基づいて、置換キノン上のどの置換基又は置換基の組合せが第2の電気活性種に適しているかを決定する仕方を理解するであろう。例示的な官能基としては、ハロ(例えば、クロロ、ブロモ、ヨード)、ヒドロキシル、カルボキシレート/カルボン酸、スルホネート/スルホン酸、アルキルスルホネート/アルキルスルホン酸、ホスホネート/ホスホン酸、アルキルホスホネート/アルキルホスホン酸、アシル(例えば、アセチル又はエチルエステル)、アミノ、アミド、第四級アンモニウム(例えば、テトラアルキルアミノ)、分岐又は非分岐アルキル(例えば、C1~18アルキル)、ヘテロアルキル、アルコキシ、グリコキシ、ポリアルキレングリコキシ(例えば、ポリエチレングリコキシ)、イミノ、ポリイミノ、分岐又は非分岐アルケニル、分岐又は非分岐アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ニトロ、ニトリル、チイル、又はカルボニル基が挙げられるが、これらに限定されず、いずれもが置換又は非置換であってよい。任意の好適な有機又は無機の対イオンが、前述の荷電種、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、又は式R4N+(式中、各Rは同一又は異なり、独立してC1~18ヒドロカルビルであるが、少なくとも1つのRはヒドロカルビルであることを条件とする)の置換アンモニウムに存在し得る。
【0163】
一態様において、第2の電気活性種は、構造(XV)又は(XVI)
【0164】
【化34】
【0165】
(式中、R7、R8、R9、及びR10は、それぞれの出現において独立して、水素、ハロゲン(例えば、クロロ、ブロモ、ヨード)、ヒドロキシル、カルボキシレート/カルボン酸、スルホネート/スルホン酸、アルキルスルホネート/アルキルスルホン酸、ホスホネート及び/又はホスホン酸、アルキルホスホネート及び/又はアルキルホスホン酸、アシル(例えば、アセチル又はエチルエステル)、アミノ、アミド、第四級アンモニウム(例えば、テトラアルキルアミノ)、分岐又は非分岐C1~18アルキル、ヘテロアルキル、アルコキシ、グリコキシ、ポリアルキレングリコキシ(例えば、ポリエチレングリコキシ)、イミノ、ポリイミノ、分岐又は非分岐アルケニル、分岐又は非分岐アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ニトロ、ニトリル、チイル又はカルボニル基であり、いずれもが置換又は非置換であり、任意の2つの隣接するR7~R10基は任意選択で一緒に環式基を形成し得る)
の置換又は非置換キノンを含む。
【0166】
いくつかの態様において、第2の電気活性種は、置換又は非置換のキノン又はテトラオン、好ましくは1,4-ベンゾキノン、1,2-ベンゾキノン、1,4-ナフトキノン、1,2-ナフトキノン、アントラキノン、フェナントレンキノン、ベンズアントラキノン、ジベンゾアントラキノン、4,5,9,10-ピレンテトラオン、又はそれらの組合せを含み得る。上記のいずれかは、任意選択で上記のように置換され得る。一態様において、第2の電気活性種は、任意選択で置換されたナフトキノン、任意選択で置換されたキノリン、任意選択で置換されたアントラキノン、任意選択で置換されたフェナントレンキノン(任意選択で置換されたフェナントレンジオンとも称される)、又は任意選択で置換されたチオクロメンジオンを含んでもよい。例えば、第2の電気活性種としては、ベンゾ[g]キノリン-5,10-ジオン、ベンゾ[g]イソキノリン-5,10-ジオン、ベンゾ[g]キノキサリン-5,10-ジオン、キノリン-5,8-ジオン、又は1-ラムダ4-チオクロメン-5,8-ジオンが挙げられてもよい。前述の非限定的な例の第2の電気活性種の他の位置異性体も、(例えば、キノンの異なる位置に置換基を用いて)使用してもよい。
【0167】
いくつかの態様において、第2の電気活性種は、置換若しくは非置換ビピリジン、置換若しくは非置換フェナジン、置換若しくは非置換ビピリジニウム、置換若しくは非置換ビオロゲン、置換若しくは非置換ピラジニウム、置換若しくは非置換ピリミジニウム、置換若しくは非置換キノキサリニウム、置換若しくは非置換ピリリウム、置換若しくは非置換ピリジニウム、置換若しくは非置換テトラゾリウム、置換若しくは非置換ベルダジル、置換若しくは非置換キノジメタン、置換若しくは非置換トリシアノビニルベンゼン、置換若しくは非置換テトラシアノエチレン、置換若しくは非置換チオケトン、置換若しくは非置換チオキオノン、置換若しくは非置換ジスルフィド、又はそれらの組合せを含み得る。
【0168】
一態様において、第2の電気活性種は、電気活性ポリマー又はオリゴマーである。前に定義されたように、「ポリマー」という用語は、10個を超える繰り返し単位を有する構造を指す。本明細書で使用する場合、「オリゴマー」という用語は、2~10個の繰り返し単位を有する構造を指す。一態様において、第2の電気活性ポリマーの少なくとも一部は、第2の電気活性種の少なくとも1つがポリマー主鎖に共有結合しているポリマー主鎖を含む。一態様において、第2の電気活性種は、ポリマー主鎖の少なくとも一部を形成してもよい。
【0169】
一態様において、第2の電気活性種は、置換若しくは非置換キノン、置換若しくは非置換テトラオン、置換若しくは非置換ビピリジニウム、置換若しくは非置換ビピリジン、置換若しくは非置換フェナジン、置換若しくは非置換ベンゾイミダゾール、置換若しくは非置換ベンゾトリアゾール、置換若しくは非置換インドール、置換若しくは非置換ビオロゲン、置換若しくは非置換ピラジニウム、置換若しくは非置換ピリミジニウム、置換若しくは非置換キノリン、置換若しくは非置換イソキノリン、置換若しくは非置換キノキサリニウム、置換若しくは非置換ピリリウム、置換若しくは非置換ピラジン、置換若しくは非置換ピリジニウム、置換若しくは非置換テトラゾリウム、置換若しくは非置換ベルダジル、置換若しくは非置換キノジメタン、置換若しくは非置換トリシアノビニルベンゼン、置換若しくは非置換テトラシアノエチレン、置換若しくは非置換チオケトン、置換若しくは非置換チオキノン、置換若しくは非置換ジスルフィド、又はそれらの組合せに由来する繰り返し単位を含むポリマー又はオリゴマーを含む。
【0170】
例示的な第2の電気活性種は、置換若しくは非置換1,4-ベンゾキノン、置換若しくは非置換1,2-ベンゾキノン、置換若しくは非置換1,4-ナフトキノン、置換若しくは非置換1,2-ナフトキノン、置換若しくは非置換2,3-ジアミノナフタレン、置換若しくは非置換アントラキノン、置換若しくは非置換フェナントレンキノン、置換若しくは非置換ベンズアントラキノン、置換若しくは非置換ジベンゾアントラキノン、置換若しくは非置換4,5,9,10-ピレンテトラオン、置換若しくは非置換インドール、置換若しくは非置換キノリン、置換若しくは非置換イソキノリン、置換若しくは非置換ベンズイミダゾール、又は置換若しくは非置換ベンゾトリアゾールから誘導された1つ以上の繰り返し単位を含むポリマー又はオリゴマーを含む。
【0171】
一態様において、第2の電気活性ポリマーは、キノンから誘導された繰り返し単位を含んでおり、このキノンは、上述のように、1,4-ベンゾキノン、1,2-ベンゾキノン、1,4-ナフトキノン、1,2-ナフトキノン、アントラキノン、フェナントレンキノン、ベンズアントラキノン、ジベンゾアントラキノン、4,5,9,10-ピレンテトラオン、又はそれらの組合せを含み得る。一態様において、第2の電気活性ポリマーは、置換又は非置換ポリ(アントラキノン)を含み得る。一態様において、第2の電気活性ポリマーは、置換又は非置換ポリ(ビニルアントラキノン)を含み得る。一態様において、第2の電気活性ポリマーは、置換又は非置換ポリ(フェニルナフトキノン)を含み得る。
【0172】
第2の電気活性種が電気活性ポリマー又は電気活性オリゴマーを含む場合、電気活性ポリマー又は電気活性オリゴマーは、任意選択で架橋されてもよい。架橋は、当該技術分野で一般的に知られている様々な方法によって達成することができる。当業者は、本開示の利益を受けて、電気活性種の選択に基づいて、好適な架橋化学を決定することができるであろう。
【0173】
例えば、いくつかの態様において、第2の電気活性種は、ヒドロゲル、イオノゲル、オルガノゲル、又はそれらの組合せを含むか、又はそれらに組み込まれる。このような架橋ポリマー材料は、当該技術分野において一般に知られており、いくつかの場合では、三次元構造の一部として(例えば、共有結合を介して)本明細書に記載される第2の電気活性種を含んでもよい。しかし、いくつかの態様において、第2の電気活性種は、吸着(例えば、物理吸着及び/又は化学吸着)を介して架橋ポリマー材料に組み込まれ得る。いくつかの態様において、第2の電気活性種は拡張ネットワークを含む。例えば、第2の電気活性種は、金属有機フレームワーク(MOF)又は共有結合有機フレームワーク(COF)を含み得る。いくつかの態様において、第2の電気活性種は官能化炭素質材料を含む。例えば、第2の電気活性種は、官能化グラフェン、官能化カーボンナノチューブ、官能化カーボンナノリボン、エッジ官能化グラファイト、又はそれらの組合せを含むことができる。
【0174】
一態様において、第2の電気活性種は、電気活性無機複合体、例えば、式
YM1X
(式中、YはLi、Na、又はKであり;M1はNi、Co、Mn、Al、Ti、Mo、Fe、V、Si、又はそれらの組合せであり;XはO2又はPO4である)
のアルカリ金属-遷移金属酸化物又はアルカリ金属-遷移金属リン酸塩であり得る。一態様において、第2の電気活性種は、LiFePO4であり得る。
【0175】
一態様において、相補的電気活性層の第2の電気活性種は、メタロセンを含む。好適なメタロセンの例としては、フェロセン、又はフェロセンから誘導された繰り返し単位を含むポリマー(例えば、ポリビニルフェロセン)、又はその誘導体を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0176】
電気化学セルの動作中、相補的電気活性層の第2の電気活性種は、第1の電極の電気活性種を還元するための電子の供給源として機能し得る。同様に、相補的電気活性層の第2の電気活性種は、第1の電極の電気活性種の酸化中、電子の吸込み口(sink)として機能し得る。
【0177】
一態様において、第2の電極は、基材を更に含み得、この基材は、相補的電気活性層に近接して又はその間に配置され得る。基材は、相補的電気活性層に直接又は間接的に接触し得る。存在する場合、基材は、例えば、カーボンペーパー(処理済み、テフロン(登録商標)処理済み、又は未処理)、カーボンクロス、カーボン不織マット、又はカーボンナノチューブ不織マットを含み得る。一態様において、第2の電極の基材は、伝導性材料であり、電気化学セル内の集電体として機能し得る。
【0178】
一態様において、第1の電極は負電極であり得、第2の電極は正電極であり得る。負電極及び正電極という用語は、ルイス酸ガスを取得又は放出する場合にのみ技術的に正確である場合があるが、便宜上及び明確化のために使用される。
【0179】
一態様において、第2の電極は、第1の電極の間に配置され得る。第1の電極の各々は、還元状態の開示された電気活性種(例えば、安定化基を含む)及び非水電解質を含み得る。一態様において、第1の電極及び/又は第2の電極は、構成又は組成が同一であり得る。
【0180】
一態様において、電気化学セルは、第1の電極と第2の電極との間、例えば、負電極と正電極との間に配置された、単一のセパレータを含む。電気化学セルは、並列構成及び直列構成の任意の好適な組合せでスタックを作るために組み合わせることができる。一態様において、電気化学セルは、2つ以上のセパレータを含み得る。例えば、当業者であれば、直列及び並列構成の選択された組合せに応じて、単一のセパレータが使用されてもよく、又は複数のセパレータが好ましい場合があることを理解するであろう。
【0181】
電気化学セルは、任意選択で、ガス透過性層を更に含み得る。ガス透過性層は、セパレータと反対側で、第1の電極に隣接して配置され得る。ガス透過性層は、伝導性固体材料を含み、セル内の集電体として機能し得る。ガス透過性層は、多孔質材料を含み得る。一態様において、ガス透過性層は、例えば、60%以上、70%以上、75%以上、80%以上、又はそれ以上の多孔率を有する。一態様において、ガス透過性層は、85%以下、90%以下、又はそれより大きい値以下の多孔率を有する。これらの範囲の組合せが可能である。例えば、一態様において、第1の電極のガス透過性層は、60%以上、かつ90%以下の多孔率を有する。他の多孔率もまた可能である。ガス透過性層に好適な材料の例としては、カーボンペーパー(処理済み、テフロン(登録商標)処理済み、又は未処理)、カーボンクロス、及びカーボン不織マットが挙げられるがこれらに限定されない。
【0182】
電気化学セルは、任意選択で、ガス流場を含んでもよい。ガス流場は、存在する場合、第1の電極と反対側で、ガス透過性層に隣接して配置されてもよい。ガス透過性層が電気化学セル内に存在しない場合、ガス流場は、セパレータの反対側で、第1の電極に隣接して配置されてもよい。
【0183】
電気化学セルは、流体混合物が電気化学セルに接触したときに、流体混合物からルイス酸ガスを分離するために特に有用であり得、したがって、ガス分離システムにおける使用に特によく適している。ガス分離システムは、ガス入口及びガス出口と流体連通している複数の電気化学セルを含む。
【0184】
入力ガスとも呼ばれる流体混合物は、電気化学セルへの曝露時に少なくとも部分的に分離され得る。流体混合物は、例えば、周囲空気(例えば、外気等の周囲環境からの空気)であり得る。一態様において、ガス分離システムは、直接的な空気捕捉のために使用され得る。本明細書に記載のシステム及び方法は、事前濃縮工程を必要とせずに、(例えば、温室効果ガスレベルを低減するために)二酸化炭素等のルイス酸ガスを周囲空気から直接除去するのに有用であり得る。本開示の特定の態様は、本明細書に記載のシステム及び方法を、直接的な空気捕捉(例えば、酸素等の周囲空気の主要成分と反応することが熱力学的に避けられる一方で、ルイス酸ガスと結合する能力)にとって特に有用にすることができる。
【0185】
一態様において、流体混合物中のルイス酸ガスの濃度は、例えば流体混合物が周囲空気である場合、比較的低い。例えば、電気化学セルへの曝露前の流体混合物中のルイス酸ガスの濃度は、500ppm以下、又は450ppm以下、又は400ppm以下、又は350ppm以下、又は300ppm以下、又は200ppm以下であり得る。一態様において、流体混合物中のルイス酸ガスの濃度は、100ppm、又は50ppm、又は10ppmという低い値であり得る。
【0186】
一態様において、流体混合物(例えば、入力流体混合物)は、換気空気である。換気空気は、囲い込まれた又は少なくとも部分的に囲い込まれた場所における空気(例えば、囲い込まれた場所において循環されている空気)であり得る。流体混合物(例えば、換気空気)が配置され得る場所の例としては、密閉された建物、部分的に換気された場所、自動車車室、有人潜水艇、航空機等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0187】
換気空気中のルイス酸ガスの濃度は、周囲空気よりも大きいが、工業プロセスに典型的な濃度より低い場合がある。一態様において、電気化学セルへの曝露前の流体混合物中のルイス酸ガスの濃度は、5,000ppm以下、又は4,000ppm以下、又は2,000ppm以下、又は1,000ppm以下である。一態様において、流体混合物中のルイス酸ガスの濃度は(例えば、囲い込まれた空間の換気空気/空気である場合)、1,000ppm、又は800ppm、又は500ppm、又は200ppm、又は100ppm、又は10ppmという低い値である。
【0188】
一態様において、流体混合物は、酸素ガス(O2)を含む。一態様において、流体混合物は、(例えば、電気化学セルへの曝露前に)比較的高濃度の酸素ガスを有する。本明細書に記載のシステム及び方法の特定の態様(例えば、特定の電気活性種の選択、システム内のガスの取り扱い方法等)は、酸素ガスが存在する流体混合物中のルイス酸ガスを有害な干渉なしに捕捉する能力に寄与し得る。一態様において、酸素ガスは、(例えば、電気化学セルへの曝露前に)流体混合物中に、0vol%以上、又は0.1vol%以上、又は1vol%以上、又は2vol%以上、又は5vol%以上、又は10vol%以上、又は20vol%以上、又は50vol%以上、又は75vol%以上、又は90vol%以上、95vol%以上の濃度で存在する。一態様において、酸素ガスは、流体混合物中に、99vol%以下、又は95vol%以下、又は90vol%以下、又は75vol%以下、又は50vol%以下、又は25vol%以下、又は21vol%以下、又は10vol%以下、又は5vol%以下、又は2vol%以下の濃度で存在する。
【0189】
一態様において、流体混合物は水蒸気を含む。流体混合物は、例えば、周囲空気又は換気空気であるか、又はそれらを含むため、水蒸気を含み得る。一態様において、流体混合物は(例えば、電気化学セルへの曝露前に)、比較的高い相対湿度を有する。例えば、一態様において、流体混合物は、-50~140℃の範囲の少なくとも1つの温度で、0%以上、又は5%以上、又は10%以上、又は25%以上、又は50%以上、又は75%以上、又は90%以上の相対湿度を有し得る。一態様において、流体混合物は、-50~140℃の範囲の少なくとも1つの温度で、100%以下、又は95%以下、又は90%以下、又は75%以下、又は50%以下、又は25%以下、又は10%以下の相対湿度を有し得る。
【0190】
ルイス酸ガスは、ガス分離システムの電気化学セル間に電位差を印加することによって、ガス分離システム内の流体混合物から分離され得る。本開示の利益を受ける当業者であれば、電気化学セルにわたって電位を印加する方法を理解するであろう。例えば、電位は、負電極と正電極を分極させることができる好適な電源に負電極及び正電極を接続することによって印加され得る。一態様において、電源は直流電圧であり得る。好適な電源の非限定例としては、電池、電力網、回生電源(例えば、風力発電機、光電池、潮力発電機)、発電機等、及びそれらの組合せが挙げられる。
【0191】
電位差は、流体混合物が電気化学セルに曝露される時間の少なくとも一部の間、電気化学セルに印加され得る。一態様において、電位差は、流体混合物を電気化学セルに曝露する前に印加され得る。
【0192】
充電モード中に電気化学セルに電位差を印加すると、負電極で酸化還元反応が起こり、電気活性種が還元される。本明細書で論じられるように、電気活性種は、それが酸化状態にあるときと比較して、還元状態にあるときにルイス酸ガスに対してより大きな親和性を有するように選択される。電気活性種を還元し、流体混合物を第1の電極を横切って通過させることにより、ルイス酸ガスは電気活性種に結合し、アニオン付加体を形成することができる。有利なことに、電気活性種における安定化基の存在は、(例えば、イオン相互作用、水素結合、誘起効果、又はそれらの組合せを介してアニオン付加体を安定化することによって)アニオン付加体の形成を有利にすることができる。このようにして、ルイス酸ガスが流体混合物から除去されて、(例えば、最初の流体混合物に対してより少ない量のルイス酸ガスを含む)処理済みの流体混合物を得ることができる。
【0193】
充電モード中に電気化学セルに対して印加される電位差は、特定の電圧を有し得る。電気化学セルにわたって印加される電位差は、例えば、第1の電気活性種の少なくとも1つの還元状態の生成のための還元電位、並びに第2の電極における電気活性種の還元状態と酸化状態との間の相互変換のための標準電位に依存し得る。電圧は、スタック電気化学抵抗によって乗算される電流を更に含む。一態様において、電位差は、少なくとも0V、又は少なくとも0.1V、又は少なくとも0.2V、又は少なくとも0.5V、又は少なくとも0.8V、又は少なくとも1.0V、又は少なくとも1.5Vである。一態様において、電位差は、2.0V以下、又は1.5V以下、又は0.5V以下、又は0.2V以下である。
【0194】
一態様において、第1の電極の安定化基を含む電気活性種はキノンを含み、その還元状態の少なくとも1つに還元され得る。第1の電極の安定化基を含む電気活性種がルイス酸ガス、例えば二酸化炭素の存在下で還元されるとき、電気活性種の還元型は二酸化炭素と結合できる。
【0195】
一態様において、安定化基を含む電気活性種が第1の電極において還元されている間、第2の電気活性種(例えば、ポリビニルフェロセン等の酸化還元活性ポリマー)が第2の電極において酸化されている。充電モードの間、第2の電気活性種の酸化は、第1の電気活性種の還元を駆動するための電子の供給源をもたらす。
【0196】
上述の例示的な反応は、一方向に起こるが、いくつかの可逆性が示され得ることが理解されるであろう。当業者に理解されるように、類似の反応は、異なる電気活性種で起こり得る。
【0197】
一態様において、本明細書に記載のプロセスの間に、比較的多量のルイス酸ガスが流体混合物から除去される。比較的多量のルイス酸ガスを除去することは、場合によっては、環境上の理由から大気中に放出されると有害となり得るガスを捕捉する等、様々な用途のいずれに対しても有益であり得る。例えば、ルイス酸ガスは、二酸化炭素を含むことができ、流体混合物から比較的多量の二酸化炭素を除去することは、プロセス(例えば、工業プロセス又は輸送プロセス)の温室効果ガスの影響を制限したり、又は(加熱及び空調プロセスに関する熱力学的理由又は環境的理由のいずれかにより)室内又は大気中の二酸化炭素の量を低減したりするためにも有益であり得る。
【0198】
一態様において、処理済みの流体混合物中のルイス酸ガスの量(例えば、電気化学セルに曝露されたときに特定量のルイス酸ガスが除去された流体混合物)は、処理前の元の流体混合物中のルイス酸ガスの量(vol %)(例えば、電気化学セルに曝露される前の流体混合物中の標的の量)の50%以下、25%以下、10%以下、5%以下、2%以下、1%以下、0.5%以下、0.1%以下である。一態様において、処理済み流体混合物中のルイス酸ガスの量は、処理前の元の流体混合物中のルイス酸ガスの量(vol%)の0.001%以上、0.005%以上、0.01%以上、0.05%以上、0.1%以上、0.5%以上、1%以上、2%以上、5%以上である。
【0199】
一態様において、ルイス酸ガスの少なくとも一部が電気活性種に結合した後、電気化学セルにわたって第2の電位差が印加され得る。第2の電位差は、第1の電位差と異なっていてもよい。一態様において、第2の電位差を印加することにより、電気活性種と結合したルイス酸ガスの一部又は全部を放出して、第2の処理済み流体混合物を生成する工程がもたらされる。第2の処理済み流体混合物は、入力流体混合物よりも多量のルイス酸ガスを有し得る。例えば、ルイス酸ガスは、そのvol%が、入力流体混合物中のルイス酸ガス量よりも10%大きい、20%大きい、50%大きい、100%大きい、200%大きい、1,000%大きい、及び/又は最大2,000%大きい、5,000%大きい、10,000%大きい、又はそれ以上である量で、第2の処理済み流体混合物中に存在し得る。
【0200】
一態様において、本明細書で「電解質溶液」として知られる安定化基を含む電気活性種(例えば、キノン核及びそれに結合している安定化基を含む電気活性種、それに由来するポリマー若しくはオリゴマー、キノン含有電気活性種及び安定化基含有種に由来するポリマー若しくはオリゴマー、又はそれらの組合せ)及び電解質(例えば、非水電解質)の混合物は、電気化学セルの第1の電極チャンバ(ハーフセル)内で第1の電極と接触させられ、そこで電解質溶液中の電気活性種が還元(活性化)される。電解質溶液はまた、還元プロセス中に第1の電極チャンバで同時に、又は還元プロセスの後に、液体-ガス接触器でルイス酸ガスの液体混合物と接触させられる。この接触により、電気活性種はルイス酸ガスと結合してルイス酸ガスを捕捉し、アニオン付加体を形成する。その後、電解質溶液は電気化学セルの第2のハーフセルに運ばれ、そこで酸化電位で第2の電極と接触し、ルイス酸ガスが放出される。
【0201】
ガス分離システムは、各電気化学セルの負電極及び正電極を、各電気化学セルの負電極(アノード)及び正電極(カソード)にわたって電位差を印加するように構成された電源に接続する外部回路を含み得る。ガス分離システムの電気化学セルの各々は、上記の通りであり得る。ガス分離システムの電気化学セルは、並列又は直列を含む、当技術分野で一般に知られている様々な構成に従って積層され得る。
【0202】
一態様において、ガス分離システムは、電気化学セルの第1のセットと電気化学セルの第2のセットとを含む。第1のセット及び第2のセットの各々は、本開示全体を通して説明される1つ以上の電気化学セルを含む。第1のセット及び第2のセットは、セルの一方のセットが充電モードで動作し、流体混合物からルイス酸ガス(例えば、CO2)を捕捉する一方で、セルの他方のセットが放電モードで動作してルイス酸ガス(例えば、CO2)を放出するように、交互に並行して動作するように構成され得る。別の態様において、複数セットの電気化学セルを、充電放電モードの様々な段階で並行して動作させることができる。そのような構成は、充電放電モードの速さに対して最適化され得る(例えば、数セットのセルは、捕捉モードの様々な段階にあり得、1セットのセルは、放電モードである)。更に、システムは、電気化学セルのセットの各々のための別々のハウジングを含み得る。システムは、所望の様式で流れを導くように配置された導管及び弁を更に含み得る。ガス分離システムは、流体混合物(例えば、ガス流)のほぼ連続的な分離を可能にし得、流体混合物は、所定の時点で、充電/捕捉モードで動作するセルのセットに向けられる一方、別のルイス酸ガスに富む処理済み混合物は、放電/放出モードで動作するセルの他のセットにより生成される。更に、電気化学セルの追加のセットは、用途の必要性に応じて、並列又は直列に追加され得る。
【0203】
別の態様において、安定化基を含む電気活性種、及び非水電解質は、電気化学セルの第1の電極チャンバ(又はハーフセル)において第1の電極と接触させることができる「電解質溶液」を形成するように組み合わされ、ここで電解質溶液中の電気活性種は還元状態にある。電解質溶液は、還元プロセスの間、第1の電極チャンバ内で同時に液体/ガス接触器を使用してルイス酸ガスを含む流体混合物と接触させてもよく、又は電解質溶液は、還元プロセスの後に液体/ガス接触器を使用してルイス酸ガスを含む流体混合物と接触させてもよい。この接触工程で、電気活性種はルイス酸ガスと結合してルイス酸ガスを「捕捉」し、アニオン付加体を形成する。その後、電解質溶液を電気化学セルの第2のチャンバ(又はハーフセル)に移し、酸化電位で第2の電極と接触させてもよく、それにより「捕捉」されたルイス酸ガスを放出する。
【0204】
流体混合物(例えば、入力ガス流等のガス流)は、特定の流量でガス分離システムに導入することができる。一態様において、流量は、0.001リットル/秒(L/s)以上、0.005L/s以上、0.01以上、0.05L/s以上、0.1L/s以上、0.5L/s以上、1L/s以上、5L/s以上、10L/s以上、10 50L/s以上、又は100L/s以上であってもよい。一態様において、流体混合物(例えば、入力ガス流等のガス流)の流量は、500L/秒以下、400L/秒以下、300L/秒以下、200L/秒以下、100L/秒以下、50L/秒以下、10L/秒以下、1L/秒以下、0.5L/秒以下、又は0.1L/秒以下であり得る。
【0205】
一態様において、ルイス酸ガスを放出する工程の間又は後に、方法は、電気化学セルに真空条件を適用して、放出されたルイス酸ガスの少なくとも一部又は全部を電気化学セルから除去することを更に含む。本開示の利益を受ける当業者であれば、電気化学セルに真空条件を適用するための好適な技術及び装置を理解するであろう。例えば、真空ポンプは、電気化学セルのガス出口に流体接続され得る。真空ポンプは、電気化学セルベッドと下流位置との間に負の圧力差を生じさせるように動作することができる。この真空状態は、上述の放出工程中に放出されたルイス酸ガスを電気化学セルから流出させるのに十分な力をもたらし得る。真空条件は、ルイス酸ガスの放出中又は放出後の電気化学セル内の圧力が、760torr以下、700torr以下、500torr以下、100torr以下、50torr以下、10torr以下、及び/又は5torr、1torr、0.5torr、0.1torrという低い値となるように適用できる。
【0206】
システムの種々の構成要素、例えば、電極(例えば、負電極、正電極)、電源、セパレータ、容器、回路部品、絶縁材料等は、当業者によって種々の構成要素のいずれかから作製され得る。構成要素は、環境にやさしい(green)状態若しくは焼き付け(fired)状態で、成形、機械加工、押出し、プレス、アイソプレス、印刷、浸透、被覆を施すか、又は他の任意の好適な技術によって形成し得る。
【0207】
本明細書に記載される電極(例えば、負電極、正電極)は、任意の好適なサイズ又は形状を有し得る。形状の非限定的な例としては、シート、立方体、円筒、中空管、球体等が挙げられる。電極は、それらが使用される用途(例えば、換気空気からのガスの分離、直接空気捕捉等)に応じて、任意の好適なサイズであり得る。更に、電極は、電極を別の電極、電源、及び/又は別の電気デバイスに接続する手段を含み得る。当業者は、本明細書のシステムの構成要素を形成するための技術を容易に理解することができる。
【0208】
システムの様々な電気部品は、接続のための手段によって、少なくとも1つの他の電気部品と電気的に接続していてもよい。接続のための手段は、第1の構成要素と第2の構成要素との間に電気の流れが発生することを可能にする任意の材料であってよい。2つの電気部品を接続するための手段の非限定的な例は、伝導性材料(例えば、銅、銀等)を含むワイヤである。一態様において、システムは、2つ以上の構成要素(例えば、ワイヤと電極)の間の電気コネクタを含み得る。一態様において、ワイヤ、電気コネクタ、又は接続のための他の手段は、材料の抵抗が低くなるように選択され得る。一態様において、抵抗は、電極、電解質、又はシステムの他の構成要素の抵抗よりも実質的に小さくてもよい。
【0209】
本開示の電気化学セル及びガス分離システムは、更に米国特許出願第16/659,398号及び同第17/665,815号、並びに国際出願PCT/US2021/59048号に記載されている通りであり、それらのそれぞれの内容が、あらゆる目的において、参照によりそれらの全体として組み込まれる。
【0210】
本明細書に記載された電気化学セル、システム、及び方法は、様々な用途で実施され得る。電気化学セル又はセルのセットの数は、必要に応じて、特定の用途の要件に合わせて規模を調整することができる。以下の態様は、用途のいくつかの非限定的な例を示す。一態様において、本明細書に記載されるシステム及び方法は、周囲空気から、並びに取り囲まれた空間、例えば、気密建造物、自動車車室(換気のための流入空気の加熱コストを低減するため)、並びにCO2レベルの増加が致命的となり得る潜水艦及び宇宙カプセルから、ルイス酸ガス(例えば、CO2)を除去することを目的とする。電力業界に向けた態様では、システム及び方法は、様々な濃度で燃焼後の二酸化炭素を捕捉するために使用され得る。一態様では、システム及び方法は、工業用煙道ガス又は工業プロセスガスからルイス酸ガスを分離するのに適している。システム及び方法はまた、煙道ガスから二酸化硫黄や他のガスを捕捉するためにも使用され得る。石油及びガス産業に向けた態様では、開示されたシステム及び方法は、様々なプロセスから二酸化炭素及び他のガスを捕捉し、下流の圧縮又は処理のためにそれらのガスを転換するために使用され得る。開示されたシステム及び方法は、温暖及び寒冷な気候の温室を暖めるために使用される天然ガスの燃焼からの二酸化炭素を捕捉し、その後、植物が光合成で使用するために、すなわち、植物に栄養を与えるために、捕捉した二酸化炭素を温室内に転換するために適用され得る。
【0211】
本開示は、非限定的である以下の実施例によって更に例示される。
【実施例
【0212】
実施例で使用される電気活性種を、以下の合成手順に従って調製した。
【0213】
2,3-ビス(4-ジメチルアミノピリジニウム)-ナフトキノントリフレート(NQ-DMAP)の合成
攪拌子を備えた炉乾燥したセプタムキャップバイアルに、窒素下で2,3-ジヨードナフトキノン(100mg、0.24mmol)を投入し、それに無水DMSO(2mL)を添加した。炉乾燥した別のセプタムキャップバイアルに、窒素下で4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)(65mg、0.54mmol)を投入し、それに無水DMSO(1mL)を添加した。両方の材料が完全に溶解すると、DMAP溶液を撹拌しているキノン溶液に注射器でゆっくり添加した。反応混合物を室温で15分間撹拌し、次いでトリフル酸銀(154mg、0.60mmol)を固体として添加した。得られた懸濁液を更に5分間撹拌し、次いで遠心管に移し、遠心した(4000rpm、5分間)。橙色上澄みをピペットで除去し、9mLのクロロホルム:ジエチルエーテル(2:1)を添加し、得られた懸濁液を遠心した(4000rpm、10分間)、上澄みを除去した。ペレットを6mLのクロロホルムに再分散し、再び遠心し、得られたペレットを減圧下で乾燥して、2,3-ビス(4-ジメチルアミノピリジニウム)-ナフトキノントリフレート(NQ-DMAP)を黄色-橙色粉末として得た。
【0214】
2,3-ビス(3-ヒドロキシフェニル)-ナフトキノン(NQ-PhOH)の合成
攪拌子を備えた50mLの丸底フラスコに、空気下でK3PO4(930mg、4.4mmol)、3-ヒドロキシフェニルボロン酸(242mg、1.75mmol)及び水(8mL)を投入し、室温で20分間撹拌しながら溶解することになった。2,3-ジヨードナフトキノン(300mg、0.73mmol)のジオキサン(12mL)溶液をピペットで添加し、次にPd(OAc)2(8mg)を添加した。反応混合物を室温で3時間撹拌し、次いでジクロロメタンと共に分液漏斗に移し、1M HClで中和した。水性相をジクロロメタンで2回抽出し、有機相を合わせ、水で洗浄し、MgSO4で脱水し、溶媒を減圧下で除去した。粗製材料をカラムクロマトグラフィー(シリカ;20%酢酸エチル/ヘキサン)によって精製して、2,3-ビス(3-ヒドロキシフェニル)-ナフトキノン(NQ-PhOH)を明黄色粉末として得た。
【0215】
(実施例1)
NQ-DMAPをカーボン紙に被着させ、電気化学セルで試験して、カチオン性安定化基の存在の効果を決定した。電気化学セルにおいて使用される電解質は、テトラエチレングリコールジメチルエーテル中の0.15M MgTFSI2であった。対極をポリ(ビニルフェロセン)と共に使用し、セル中を流れるガス混合物は、空気中1%二酸化炭素であった。
【0216】
図1は、NQ-DMAPの構造、及び非常にマイルドな印加電位(青色トレース)におけるCO2捕捉及び放出(橙色トレース)の1サイクルのグラフを示す。図1は、電子不足キノンであるNQ-DMAPの優れたCO2結合能力を図示している。この結果は、O2濃度(灰色トレース)の低減が最小で空気中のCO2捕捉を可能にする、カチオン基の影響の例示でもある。
【0217】
(実施例2)
サイクリックボルタンメトリーを使用して、NQ-PhOHのCO2結合反応速度に対する分子内水素結合の効果を示した。結果を図2に示す。分子内水素結合供与体がない同等の分子では、CO2結合は、化合物が二重還元されるまでは遅く、分離した還元波が認められることが認められた。対応する分子内H結合供与体化合物(3位にヒドロキシル基を有する、図2A)は、キノンへのCO2付加体の分子内水素結合安定化によって可能になったCO2結合反応速度の改善を意味する「ピークマージング」効果(還元波)を示した。この効果は、100当量の同等の水素結合供与体(例えば、NQ-PhOHのフェノール)を水素結合供与体基がない比較分子に添加した場合に認められたいずれの反応速度論的向上とも一致する、又はそれを超えることが認められた。興味深いことに、2位にヒドロキシル基を有する対応する分子内H結合供与体化合物(図2B)も、「ピークマージング」効果(還元波)を示したが、還元型種によるCO2結合を意味する電気化学的不可逆性を示さなかった。これは、2位置換が、3位置換誘導体で認められた向上とは対照的に、CO2結合に反応速度論的向上をもたらすが、熱力学的障害をももたらすことを示唆している。これは、分子内官能化によって可能な、CO2付加体の安定化対還元型種の安定化のバランスを保つことの重要性を説明する。
【0218】
本開示は、更に以下の態様を包含する。
【0219】
態様1:キノン核構造及びそれに共有結合した少なくとも1つの安定化基を含む電気活性種であって、安定化基が、カチオン基、水素結合供与体、又はそれらの組合せを含み、電気活性種が、酸化状態、及びルイス酸ガスと結合して、ルイス酸ガスと還元型電気活性種との間のアニオン付加体を形成することができる少なくとも1つの還元状態を含み、安定化基の存在が、還元型電気活性種及びルイス酸ガスからのアニオン付加体の形成を反応速度論的に有利にする、又はアニオン付加体と還元型電気活性種との間の熱力学的平衡におけるアニオン付加体の形成を熱力学的に有利にする、又は還元型電気活性種からのアニオン付加体の形成を反応速度論的に有利にし、アニオン付加体と還元型電気活性種との間の熱力学的平衡におけるアニオン付加体の形成を熱力学的に有利にする、電気活性種。
【0220】
態様2:キノン核構造が、式(I)又は(II)を有し
【0221】
【化35】
【0222】
(式中、式(I)及び(II)の破線は、追加の置換又は非置換アリール基の任意選択の存在を示す)、安定化基Aが、連結基-(L)z-(式中、zは、0又は1であるが、Aが水素結合供与体であるとき、zは1であることを条件とする)を介してキノン核構造に共有結合している、態様1に記載の電気活性種。
【0223】
態様3:電気活性種が、式(VI)~(X)、又はそれらの組合せを有する
【0224】
【化36】
【0225】
(式中、各R1は、それぞれの出現において独立して水素、ハロゲン、置換若しくは非置換C1~30アルキル基、置換若しくは非置換C1~30アルコキシ基、ポリ(C1~30アルキレンオキシド)基;置換若しくは非置換C3~30シクロアルキル基、置換若しくは非置換C6~30アリール基、置換若しくは非置換C2~30ヘテロアリール基、ニトリル基、ニトロ基、チオール基、又はビニル基であり、各Rxは、それぞれの出現において独立して-(L)z-A基であり、xは、それぞれの出現において独立して1~4であり、yは、それぞれの出現において独立して0~3であるが、x及びyの合計は4であることを条件とし、Rbは、それぞれの出現において独立してR1又はRxであり、eは、それぞれの出現において独立して0~4であるが、eの少なくとも1つの出現は1であることを条件とし、fは、それぞれの出現において独立して0~4であるが、各e-f対の合計は4であることを条件とし、c及びdは各々独立して0~4であるが、c及びdの合計が4であることを条件とし、cが0である場合、Rbの少なくとも1つはRxであることを条件とする、態様1又は2に記載の電気活性種。
【0226】
態様4:カチオン基が、置換若しくは非置換C1~6アルキルアンモニウム基、置換若しくは非置換C1~6アルキルホスホニウム基、置換若しくは非置換C7~30アリールアルキルアンモニウム基、キレートされた金属カチオン、置換若しくは非置換アニリニウム基、置換若しくは非置換ピリジニウム基、又は置換若しくは非置換イミダゾリウム基、好ましくは置換若しくは非置換C1~6アルキルアンモニウム基、置換若しくは非置換ベンジルアンモニウム基、置換若しくは非置換ピリジニウム基、又は置換若しくは非置換イミダゾリウム基を含み、水素結合供与体が、ヒドロキシル基、カルボン酸基、アミン基、アニリン基、アミド基、又はチオール基、好ましくはヒドロキシル基を含む、態様1から3のいずれか一態様に記載の電気活性種。
【0227】
態様5:電気活性種が、式(VI)の化合物である、態様3又は4に記載の電気活性種。
【0228】
態様6:電気活性種が、式(VII)の化合物である、態様3又は4に記載の電気活性種。
【0229】
態様7:電気活性種が、式(VIII)の化合物である、態様3又は4に記載の電気活性種。
【0230】
態様8:cが0であり、dが4であり、Rbの少なくとも1つの出現が-(L)z-Aでありzは1であり、Lは、置換又は非置換フェニレン基であり、Aは-NR2R3R4アンモニウム基(R2、R3及びR4は、それぞれの出現において独立して置換若しくは非置換C1~6アルキル基又は置換若しくは非置換ベンジル基である)、又はヒドロキシル基である、態様7に記載の電気活性種。
【0231】
態様9:Rbの両出現が、-(L)z-Aであり、zのそれぞれの出現は1であり、Lのそれぞれの出現は、置換又は非置換フェニレン基である、態様7又は8に記載の電気活性種。
【0232】
態様10:Aが-NR2R3R4アンモニウム基であり、好ましくはR2、R3及びR4の各々がメチルであり、R1が水素である、態様7から9のいずれか一態様に記載の電気活性種。
【0233】
態様11:Aが、ヒドロキシル基、アミン基、アミド基、又はチオール基、好ましくはヒドロキシル基であり、R1が水素である、態様7から9のいずれか一態様に記載の電気活性種。
【0234】
態様12:cが0であり、dが4であり、Rbの少なくとも1つの出現が-(L)z-Aであり、zは0であり、Aは、置換又は非置換ピリジニウム基である、態様7に記載の電気活性種。
【0235】
態様13:cが0であり、dが4であり、Rbの少なくとも1つの出現が-(L)z-Aであり、zは0であり、Aは、置換又は非置換イミダゾリウム基である、態様7に記載の電気活性種。
【0236】
態様14:cが2であり、dが2であり、Rbが、それぞれの出現において独立して水素又は置換若しくは非置換フェニル基であり、Rxが、それぞれの出現において独立して-(L)z-Aであり、zは0であり、Aは-NR2R3R4アンモニウム基(R2、R3及びR4は、それぞれの出現において独立して置換若しくは非置換C1~6アルキル基又は置換若しくは非置換ベンジル基である)、又はヒドロキシル基であり、好ましくはRx基は互いにパラ位に配置されている、態様7に記載の電気活性種。
【0237】
態様15:電気活性種が、式(IX)の化合物である、態様3又は4に記載の電気活性種。
【0238】
態様16:eのそれぞれの出現が1であり、fのそれぞれの出現が3であり、Rxのそれぞれの出現が-(L)z-Aであり、Aは-NR2R3R4アンモニウム基(R2、R3及びR4は、それぞれの出現において独立して置換若しくは非置換C1~6アルキル基又は置換若しくは非置換ベンジル基である)、又はヒドロキシル基、アミン基、アミド基、又はチオール基、好ましくはヒドロキシル基である、態様15に記載の電気活性種。
【0239】
態様17:Aが-NR2R3R4アンモニウム基であり、好ましくはR2、R3及びR4の各々がメチルであり、R2及びR3がメチルであり、R4がベンジルであり、R1が水素である、態様16に記載の電気活性種。
【0240】
態様18:電気活性種が、式(IXb)の化合物である
【0241】
【化37】
【0242】
(式中、R1は、それぞれの出現において独立して水素、ハロゲン、C1~30アルキル基、C1~30アルコキシ基、ポリ(C1~30アルキレンオキシド)基;C3~30シクロアルキル基、C3~30分岐アルキル基、C6~30アリール基、C2~30ヘテロアリール基、C1~30フルオロアルキル基、ニトリル基、ニトロ基、チオール基、又はビニル基、好ましくは水素であり、Dは、それぞれの出現において独立して酸素又は窒素であり、rは、0又は1であり、R5及びR6は、それぞれの出現において独立してC1~6アルキル基、ポリ(C2~3アルキレンオキシド)基、又はポリ(C2~3アルキレンジアミン)基であり、R5は、R6と任意選択で組み合わされて環式基を形成していてもよく、Eは、金属カチオンであり、好ましくは金属カチオンは、第1族元素、第2族元素、希土類元素、第11族元素、第12族元素、第13族元素、又はそれらの組合せであり、より好ましくは金属カチオンは、Li、Ca、Sc、La、Al、Zn、Mg、Na、K、又はそれらの組合せである)、態様15に記載の電気活性種。
【0243】
態様19:R1が水素であり、R5及びR6がメチルであり、Dが酸素であり、rが0である、態様18に記載の電気活性種。
【0244】
態様20:R1が水素であり、R5及びR6がメチルであり、Dが窒素であり、rが0である、態様18に記載の電気活性種。
【0245】
態様21:R1が水素であり、Dが酸素であり、rが0であり、R5及びR6がポリ(エチレンオキシド)基であり、R5及びR6が組み合わされて環式エーテルを形成していてもよい、態様18に記載の電気活性種。
【0246】
態様22:電気活性種が、式(X)を有する、態様3又は4に記載の電気活性種。
【0247】
態様23:Aが-NR2R3R4アンモニウム基であり、好ましくはR2、R3及びR4の各々が、メチル又はベンジルであり、zが0であり、R1が水素であり、eのそれぞれの出現が1であり、fのそれぞれの出現が3である、態様22に記載の電気活性種。
【0248】
態様24:Aが、ヒドロキシル基、アミン基、アミド基、又はチオール基、好ましくはヒドロキシル基であり、zが1であり、Lが、C6アリーレン基を含む連結基であり、R1が水素であり、eのそれぞれの出現が1であり、fのそれぞれの出現が3である、態様22に記載の電気活性種。
【0249】
態様25:安定化基Aが、電気活性種の少なくとも1個のケトン基から10原子以下、又は8原子以下離れている、態様1から24のいずれか一態様に記載の電気活性種。
【0250】
態様26:安定化基Aが、電気活性種の少なくとも1個のケトン基から1~10原子離れている、態様1から25のいずれか一態様に記載の電気活性種。
【0251】
態様27:繰り返し単位の少なくとも一部分が、態様1から26のいずれか一態様に記載の電気活性種を含む、ポリマー又はオリゴマー。
【0252】
態様28:重合性基及びキノン核構造を含む電気活性種を含む第1のモノマー並びに重合性基及びカチオン基、水素結合供与体、又はそれらの組合せを含む安定化基を含む第2のモノマーに由来する繰り返し単位を含むポリマー又はオリゴマーであって、電気活性種が、酸化状態、及びルイス酸ガスと結合して、ルイス酸ガスと還元型電気活性種との間のアニオン付加体を形成することができる少なくとも1つの還元状態を含み、安定化基の存在が、還元型電気活性種及びルイス酸ガスからのアニオン付加体の形成を反応速度論的に有利にする、又はアニオン付加体と還元型電気活性種との間の熱力学的平衡におけるアニオン付加体の形成を熱力学的に有利にする、又は還元型電気活性種からのアニオン付加体の形成を反応速度論的に有利にし、アニオン付加体と還元型電気活性種との間の熱力学的平衡におけるアニオン付加体の形成を熱力学的に有利にする、ポリマー又はオリゴマー。
【0253】
態様29:ルイス酸ガスを含む流体混合物からルイス酸ガスを分離する方法であって、方法が、流体混合物を態様1から26のいずれか一態様に記載の電気活性種又は態様27に記載のポリマー若しくはオリゴマー又は請求項28に記載のポリマー若しくはオリゴマーと接触させる工程を含み、電気活性種が還元状態にあって、ルイス酸ガスと還元状態の電気活性種との間のアニオン付加体を形成する、方法。
【0254】
態様30:接触が、電解質、好ましくは非水電解質の存在下で実施される、態様29に記載の方法。
【0255】
態様31:電解質が、有機電解質、イオン性液体、又はそれらの組合せを含み、有機電解質が、有機溶媒及び支持電解質を含み、好ましくは有機溶媒が、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、プロピレンカーボネート、ジメチルスルホキシド、ポリエチレングリコール、ジグリム、又はそれらの組合せである、態様30に記載の方法。
【0256】
態様32:安定化基を含む還元型電気活性種とルイス酸ガスとの間の会合定数が、安定化基を含まない還元型電気活性種とルイス酸ガスとの間の会合定数よりも大きい、態様29から31のいずれか一態様に記載の方法。
【0257】
態様33:安定化基を含む還元型電気活性種及びルイス酸ガスからのアニオン付加体の形成が、安定化基を含まない還元型電気活性種及びルイス酸ガスからのアニオン付加体の形成よりも反応速度論的に有利である、態様29から32のいずれか一態様に記載の方法。
【0258】
態様34:安定化基を含む還元型電気活性種及びルイス酸ガスからのアニオン付加体の形成が、安定化基を含まない還元型電気活性種及びルイス酸ガスからのアニオン付加体の形成よりも熱力学的に有利である、態様29から33のいずれか一態様に記載の方法。
【0259】
態様35:安定化基を含む還元型電気活性種及びルイス酸ガスからのアニオン付加体の形成が、安定化基を含まない還元型電気活性種及びルイス酸ガスからのアニオン付加体の形成よりも反応速度論的にかつ熱力学的に有利である、態様29から34のいずれか一態様に記載の方法。
【0260】
態様36:安定化基がカチオン基であり、安定化基を含む還元型電気活性種及びルイス酸ガスからのアニオン付加体の形成が、安定化基を含む還元型電気活性種と同じ還元電位を有する非イオン性電気活性種の還元状態及びルイス酸ガスからのアニオン付加体の形成よりも反応速度論的に有利である、又は安定化基を含む還元型電気活性種及びルイス酸ガスからのアニオン付加体の形成が、安定化基を含む還元型電気活性種と同じ還元電位を有する非イオン性電気活性種の還元状態及びルイス酸ガスからのアニオン付加体の形成よりも熱力学的に有利である、又は安定化基を含む還元型電気活性種及びルイス酸ガスからのアニオン付加体の形成が、安定化基を含む還元型電気活性種と同じ還元電位を有する非イオン性電気活性種の還元状態及びルイス酸ガスからのアニオン付加体の形成よりも反応速度論的にかつ熱力学的に有利である、態様29から31のいずれか一態様に記載の方法。
【0261】
態様37:安定化基がカチオン基であり、安定化基を含む還元型電気活性種とルイス酸ガスとの間の会合定数が、安定化基を含む還元型電気活性種と同じ還元電位を有する非イオン性電気活性種の還元状態とルイス酸ガスとの間の会合定数よりも大きい、態様29から31のいずれか一態様に記載の方法。
【0262】
態様38:安定化基が水素結合供与体であり、安定化基を含む還元型電気活性種及びルイス酸ガスからのアニオン付加体の形成が、安定化基を含む還元型電気活性種と同じ還元電位を有する非イオン性電気活性種の還元状態及びルイス酸ガスからのアニオン付加体の形成よりも反応速度論的に有利である、又は安定化基を含む還元型電気活性種及びルイス酸ガスからのアニオン付加体の形成が、安定化基を含む還元型電気活性種と同じ還元電位を有する非イオン性電気活性種の還元状態及びルイス酸ガスからのアニオン付加体の形成よりも熱力学的に有利である、又は安定化基を含む還元型電気活性種及びルイス酸ガスからのアニオン付加体の形成が、安定化基を含む還元型電気活性種と同じ還元電位を有する非イオン性電気活性種の還元状態及びルイス酸ガスからのアニオン付加体の形成よりも反応速度論的にかつ熱力学的に有利である、態様29から31のいずれか一態様に記載の方法。
【0263】
態様39:安定化基が水素結合供与体であり、安定化基を含む還元型電気活性種とルイス酸ガスとの間の会合定数が、安定化基を含む還元型電気活性種と同じ還元電位を有する非イオン性電気活性種の還元状態とルイス酸ガスとの間の会合定数よりも大きい、態様29から31のいずれか一態様に記載の方法。
【0264】
態様40:ルイス酸ガスが、CO2、COS、SO2、SO3、R2SO4、NO2、NO3、R3PO4、R2S、RCOOR'、RCHO、R'2CO、R'NCO、R'NCS、BR''3、R''3BO3、又はそれらの組合せであり、各Rが独立して水素、C1~12アルキル、C3~12シクロアルキル、C1~12ヘテロシクロアルキル、C6~20アリール、又はC1~12ヘテロアリールであり、各R'が独立してC1~12アルキル、C3~12シクロアルキル、C1~12ヘテロシクロアルキル、C6~20アリール、又はC1~12ヘテロアリールであり、各R''が独立して水素、ハロゲン、C1~12アルキル、C3~12シクロアルキル、C1~12ヘテロシクロアルキル、C6~20アリール、又はC1~12ヘテロアリールである、態様29から39のいずれか一態様に記載の方法。
【0265】
態様41:電気化学装置であって、還元状態の電気活性種と電子連通している負極、及び電解質を含むチャンバを含み、チャンバが、ルイス酸ガスを含む流体混合物を受け取るように構成されており、電気活性種が、キノン核及びそれに共有結合した少なくとも1つの安定化基を含み、安定化基が、カチオン基、水素結合供与体、又はそれらの組合せを含み、電気活性種が、酸化状態、及びルイス酸ガスと結合して、ルイス酸ガスと還元型電気活性種との間のアニオン付加体を形成することができる少なくとも1つの還元状態を含み、安定化基の存在が、還元型電気活性種及びルイス酸ガスからのアニオン付加体の形成を反応速度論的に有利にする、又はアニオン付加体と還元型電気活性種との間の熱力学的平衡におけるアニオン付加体の形成を熱力学的に有利にする、又は還元型電気活性種からのアニオン付加体の形成を反応速度論的に有利にし、アニオン付加体と還元型電気活性種との間の熱力学的平衡におけるアニオン付加体の形成を熱力学的に有利にする、電気化学装置。
【0266】
態様42:電気化学装置であって、還元状態の電気活性種と電子連通している負極、及び電解質を含むチャンバを含み、チャンバが、ルイス酸ガスを含む流体混合物を受け取るように構成されており、電気活性種が、態様27に記載のポリマー又はオリゴマーを含む、電気化学装置。
【0267】
態様43:電気化学装置であって、還元状態の電気活性種と電子連通している負極、及び電解質を含むチャンバを含み、チャンバが、ルイス酸ガスを含む流体混合物を受け取るように構成されており、電気活性種が、態様28に記載のポリマー又はオリゴマーを含む、電気化学装置。
【0268】
態様44:ガス入口及びガス出口と流体連通している複数の電気化学セルを含むガス分離システムであって、複数の電気化学セルの各々が、還元状態の電気活性種を含む第1の電極であり、電気活性種が、酸化状態及びルイス酸ガスと結合して、アニオン付加体を形成する少なくとも1つの還元状態を含む、第1の電極と、相補的電気活性層を含む第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間の第1のセパレータと、電解質とを含み、電気活性種が、キノン核及びそれに共有結合した少なくとも1つの安定化基を含み、安定化基が、カチオン基、水素結合供与体、又はそれらの組合せを含み、安定化基の存在が、還元型電気活性種及びルイス酸ガスからのアニオン付加体の形成を反応速度論的に有利にする、又はアニオン付加体と還元型電気活性種との間の熱力学的平衡におけるアニオン付加体の形成を熱力学的に有利にする、又は還元型電気活性種からのアニオン付加体の形成を反応速度論的に有利にし、アニオン付加体と還元型電気活性種との間の熱力学的平衡におけるアニオン付加体の形成を熱力学的に有利にする、ガス分離システム。
【0269】
態様45:ガス入口及びガス出口と流体連通している複数の電気化学セルを含むガス分離システムであって、複数の電気化学セルの各々が、還元状態の電気活性種を含む第1の電極であり、電気活性種が、酸化状態及びルイス酸ガスと結合して、アニオン付加体を形成する少なくとも1つの還元状態を含む、第1の電極と、相補的電気活性層を含む第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間の第1のセパレータと、電解質とを含み、電気活性種が、態様27に記載のポリマー又はオリゴマーを含む、ガス分離システム。
【0270】
態様46:ガス入口及びガス出口と流体連通している複数の電気化学セルを含むガス分離システムであって、複数の電気化学セルの各々が、還元状態の電気活性種を含む第1の電極であり、電気活性種が、酸化状態及びルイス酸ガスと結合して、アニオン付加体を形成する少なくとも1つの還元状態を含む、第1の電極と、相補的電気活性層を含む第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間の第1のセパレータと、電解質とを含み、電気活性種が、態様28に記載のポリマー又はオリゴマーを含む、ガス分離システム。
【0271】
組成物、方法、及び物品は、代替的に、本明細書に開示された任意の好適な材料、工程、又は成分を含むか、それらから成るか、又はそれらから本質的に成ることができる。組成物、方法、及び物品は、追加的に又は代替的に、組成物、方法、及び物品の機能若しくは目的の達成に必要でない任意の材料(若しくは種)、工程、若しくは成分を含まないように、又は実質的に含まないように、製造され得る。
【0272】
本明細書に開示された全ての範囲は、終点を包含し、終点は、独立して互いに組合せ可能である。「組合せ」は、ブレンド、混合物、合金、反応生成物等を包含する。「第1」、「第2」等の用語は、順序、数量、又は重要性を示すものではなく、ある要素を他の要素から区別するために使用されるものである。用語「a」及び「an」並びに「the」は、数量の制限を示すものではなく、本明細書において特に指示がない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数と複数の両方を意味すると解釈される。「又は」は、明確に別段の記載がない限り、「及び/又は」を意味する。本明細書全体を通して「一態様」への言及は、その態様に関連して説明される特定の要素が、本明細書に記載される少なくとも1つの態様に含まれ、他の態様において存在してもしなくてもよいことを意味する。本明細書で使用される「それらの組合せ」という用語は、列挙された要素の1つ以上を含み、挙げられていない1つ以上の同様の要素の存在を許容する、開放的なものである。加えて、記載された要素は、様々な局面において任意の好適な仕方で組み合わされてよいことを理解されたい。
【0273】
本明細書で反対の指定がない限り、全ての試験規格は、本出願の出願日、又は優先権が主張される場合は、試験規格が現れる最も早い優先権出願の出願日において有効な最新の規格である。
【0274】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語は、本出願が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。引用された全ての特許、特許出願、及び他の文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。ただし、本出願の用語が、組み込まれた文献の用語と矛盾又は相反する場合、本出願の用語が、組み込まれた文献の矛盾する用語に優先して適用される。
【0275】
化合物は、標準的な命名法を用いて記載されている。例えば、指示された基で置換されていない位置は、指示された結合又は水素原子によってその原子価が満たされているものと理解される。2つの文字又は記号の間にないダッシュ(「-」)は、置換基の結合位置を示すのに使用される。例えば、-CHOは、カルボニル基の炭素を介して結合する。
【0276】
本明細書で使用する場合、「ヒドロカルビル」という用語は、それ自体で使用するか、別の用語の接頭辞、接尾辞、又は断片として使用するかを問わず、炭素及び水素のみを含有する残基を指す。残基は、脂肪族又は芳香族、直鎖、環状、二環状、分岐、飽和、又は不飽和であり得る。残基はまた、脂肪族、芳香族、直鎖、環状、二環状、分岐、飽和、及び不飽和の炭化水素部分の組合せを含有し得る。しかしながら、ヒドロカルビル残基が置換として記載される場合、ヒドロカルビル残基は、任意選択で、置換基残基の炭素及び水素員に加えて、ヘテロ原子を含有していてもよい。したがって、特に置換として記載される場合、ヒドロカルビル残基は、1つ以上のカルボニル基、アミノ基、ヒドロキシル基等を含有することもでき、又はヒドロカルビル残基の主鎖内にヘテロ原子を含有することもできる。「アルキル」という用語は、分岐鎖又は直鎖の飽和脂肪族炭化水素基、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、s-ペンチル、並びにn-及びs-ヘキシルを意味する。「アルケニル」とは、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する直鎖又は分岐鎖の一価炭化水素基(例えば、エテニル(-HC=CH2))を意味する。「アルコキシ」とは、酸素を介して結合しているアルキル基(すなわち、アルキル-O-)、例えば、メトキシ基、エトキシ基、及びsec-ブチロキシ基を意味する。「アルキレン」とは、直鎖又は分岐鎖の飽和二価脂肪族炭化水素基(例えば、メチレン(-CH2-)又はプロピレン(-(CH2)3-))を意味する。「シクロアルキレン」は、二価環状アルキレン基-CnH2n-x(式中、xは、環化によって置換された水素の数である)を意味する。「シクロアルケニル」とは、1つ以上の環及び環中に1つ以上の炭素-炭素二重結合を有する一価の基を意味し、全ての環原子は炭素である(例えば、シクロペンチル、及びシクロヘキシル)。「アリール」とは、フェニル、トロポン、インダニル、又はナフチル等の、所定の数の炭素原子を含有する芳香族炭化水素基を意味する。「アリーレン」は、二価のアリール基を意味する。「アルキルアリーレン」は、アルキル基で置換されたアリーレン基を意味する。「アリールアルキレン」は、アリール基(例えば、ベンジル)で置換されたアルキレン基を意味する。接頭辞の「halo」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨードのうちの1つ以上の置換基を含む基又は化合物を意味する。異なるハロ原子の組合せ(例えば、ブロモ及びフルオロ)、又はクロロ原子のみが存在し得る。接頭辞「ヘテロ」は、化合物又は基がヘテロ原子(例えば、1、2、又は3個のヘテロ原子)である少なくとも1つの環原子を含むことを意味し、ここでヘテロ原子はそれぞれ独立してN、O、S、Si、又はPである。「置換」とは、置換原子の通常の価数を越えないことを条件として、化合物又は基が、水素の代わりに、それぞれ独立して、C1~9アルコキシ、C1~9ハロアルコキシ、ニトロ(-NO2)、シアノ(-CN)、C1~6アルキルスルホニル(-S(=O)2-アルキル)、C6~12アリールスルホニル(-S(=O)2-アリール)、チオール(-SH)、チオシアノ(-SCN)、トシル(CH3C6H4SO2-)、C3~12シクロアルキル、C2~12アルケニル、C5~12シクロアルケニル、C6~12アリール、C7~13アリールアルキレン、C4~12ヘテロシクロアルキル、及びC3~12ヘテロアリールであってもよい、少なくとも1つ(例えば、1つ、2つ、3つ、又は4つ)の置換基で置換されていることを意味する。基において示される炭素原子の数は、置換基を除いたものである。例えば、-CH2CH2CNは、ニトリル(-CN)で置換されたC2アルキル基(-CH2CH3)を含む。
【0277】
特定の態様を説明してきたが、現在予測できない、又は予測できない場合がある、代替、修正、変形、改良、及び実質的な均等物が、本発明者ら又は他の当業者に生じ得る。したがって、出願時の及び修正され得る、添付された特許請求の範囲は、全てのそのような代替、修正、変形、改良、及び実質的な均等物を包含することを意図している。
図1
図2A
図2B
【国際調査報告】