(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-30
(54)【発明の名称】標的特定方法、装置、電子デバイス、記憶媒体及び神経調節デバイス
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20240723BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240723BHJP
A61N 1/36 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
A61B5/055 380
A61B5/055 382
G06T7/00 612
A61N1/36
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579842
(86)(22)【出願日】2022-07-04
(85)【翻訳文提出日】2023-12-26
(86)【国際出願番号】 CN2022103558
(87)【国際公開番号】W WO2023280086
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】202110757474.0
(32)【優先日】2021-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523397045
【氏名又は名称】北京銀河方圓科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】BEIJING GALAXY CIRCUMFERENCE TECHNOLOGIES CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Rm. 504, 5 / F, BLDG. 2, No. 9, Yike Rd. Life Science Park, Changping District Beijing 102206, China
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】魏 可成
(72)【発明者】
【氏名】王 也▲ジョー▼
(72)【発明者】
【氏名】張 維
(72)【発明者】
【氏名】張 ▲チョン▼
【テーマコード(参考)】
4C053
4C096
5L096
【Fターム(参考)】
4C053JJ21
4C096AA03
4C096AA04
4C096AA17
4C096AC01
4C096AD06
4C096AD14
4C096BA05
4C096BA07
4C096BA19
4C096BA41
4C096DC19
4C096DC22
4C096DC28
4C096DC33
5L096BA06
5L096DA02
5L096HA11
5L096KA04
(57)【要約】
本開示は、標的特定方法、装置、電子デバイス、記憶媒体及び神経調節デバイスを提供する。標的特定方法は、被験者の脳の磁気共鳴画像から得られたデータを含む前記被験者のスキャンデータを取得することと、スキャンデータに基づいて前記被験者の少なくとも2つの関心領域を特定することと、予め設定された異常検出規則に従って、前記少なくとも2つの関心領域の中で少なくとも1つの異常関心領域を特定することと、前記少なくとも1つの異常関心領域に基づいて標的を特定することとを含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の脳の磁気共鳴画像から得られたデータを含む前記被験者のスキャンデータを取得することと、
前記スキャンデータに基づいて前記被験者の少なくとも2つの関心領域を特定することと、
予め設定された異常検出規則に従って、前記少なくとも2つの関心領域の中で少なくとも1つの異常関心領域を特定することと、
前記少なくとも1つの異常関心領域に基づいて標的を特定することと、
を含む標的特定方法。
【請求項2】
前述した前記スキャンデータに基づいて前記被験者の少なくとも2つの関心領域を特定することは、体積標準脳テンプレートに基づいて、前記スキャンデータに基づいて前記被験者の少なくとも2つの関心領域を特定することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前述した前記スキャンデータに基づいて前記被験者の少なくとも2つの関心領域を特定することは、皮質標準脳テンプレートに基づいて、前記スキャンデータに基づいて前記被験者の少なくとも2つの関心領域を特定することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前述した前記スキャンデータに基づいて前記被験者の少なくとも2つの関心領域を特定することは、
前記スキャンデータ中の全ての2つのボクセルの組み合わせに対してそれらの間の接続度を確定し、前記スキャンデータに対応する脳接続マトリックスを形成することと、
標準脳の脳領域テンプレート及び脳接続マトリックスに基づいて、前記少なくとも2つの関心領域を形成することと、
を含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前述した予め設定された異常検出規則に従って、前記少なくとも2つの関心領域の中で少なくとも1つの異常関心領域を特定することは、
集団の脳磁気共鳴データを取得することと、
前記集団の脳磁気共鳴データに基づいて集団の脳接続マトリックスを確定することと、
前記スキャンデータ中の全ての2つのボクセルの組み合わせに対してそれらの間の接続度を確定し、前記スキャンデータに対応する被験者の脳接続マトリックスを形成することと、
前記集団の脳接続マトリックス及び前記被験者の脳接続マトリックスに基づいて、前記少なくとも1つの異常関心領域を特定することと、
を含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前述した前記少なくとも1つの異常関心領域に基づいて標的を特定することは、
前記少なくとも1つの異常関心領域が調節可能な脳領域に位置するかどうかを確定することと、
前記少なくとも1つの異常関心領域が調節可能な脳領域に位置する場合、前記少なくとも1つの異常関心領域の中心を前記標的として特定する、または、前記少なくとも1つの異常関心領域の中心を球の中心とし、予め設定された標的半径の領域を第1の標的関心領域として特定し、前記第1の標的関心領域の位置に基づいて前記標的を特定することと、
前記少なくとも1つの異常関心領域が調節可能な脳領域に位置しない場合、前記少なくとも1つの異常関心領域と前記少なくとも2つの関心領域における他の関心領域との接続度を確定し、前記他の関心領域において前記少なくとも1つの異常関心領域との接続度が予め設定された接続度閾値を超え、かつ調節可能な領域に位置する関心領域を第2の標的候補領域として特定することと、
前記第2の標的候補領域の中心を前記標的として特定する、または、前記第2の標的候補領域の中心を球の中心とし、予め設定された標的半径の領域を第2の標的関心領域として特定し、前記第2の標的関心領域の位置に基づいて前記標的を特定することと、
を含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前述した前記少なくとも1つの異常関心領域に基づいて標的を特定することは、
前記被験者の疾患タイプに応じて、前記標的が位置する脳構造区分を特定することと、
前記少なくとも1つの異常関心領域または前記異常関心領域との接続度が予め設定された接続度閾値条件を満たす関心領域と前記脳構造区分との交差を、標的候補領域として特定することと、
前記標的候補領域の中心を前記標的として特定する、または、前記標的候補領域の中心を球の中心とし、予め設定された標的半径の領域を標的関心領域として特定し、前記標的関心領域の位置に基づいて前記標的を特定することと、
を含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記磁気共鳴画像は、脳構造磁気共鳴画像、及び/又は、タスク状態機能的磁気共鳴画像、及び/又は、安静時機能的磁気共鳴画像を含む請求項1に記載の方法。
【請求項9】
被験者の脳の磁気共鳴画像から得られたデータを含む前記被験者のスキャンデータを取得するデータ取得ユニットと、
前記スキャンデータに基づいて前記被験者の少なくとも2つの関心領域を特定するように配置された処理ユニットと、
予め設定された異常検出規則に従って、前記少なくとも2つの関心領域の中で少なくとも1つの異常関心領域を特定する異常検出ユニットと、
前記少なくとも1つの異常関心領域に基づいて標的を特定するように配置された標的特定ユニットと、
を含む標的特定装置。
【請求項10】
少なくとも1つのプロセッサと、
少なくとも1つのプログラムが記憶された記憶装置であって、前記少なくとも1つのプログラムが前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、前記少なくとも1つのプロセッサに請求項1~8のいずれか一項に記載の方法を実施させる記憶装置と、
を含む電子デバイス。
【請求項11】
コンピュータプログラムが記憶されたコンピュータ可読記憶媒体であって、前記コンピュータプログラムが少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法を実施するコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項12】
予め設定された神経調節プランに従って被験者の標的を神経調節するように配置された神経調節デバイスであって、前記標的は請求項1~8のいずれか一項に記載の方法に従って特定されたものである神経調節デバイス。
【請求項13】
前記予め設定された調節プランは、
脳深部電気刺激、
経頭蓋電気刺激、
電気痙攣療法、
皮質脳電気電極に基づく電気刺激、
経頭蓋磁気刺激、
超音波集束神経調節、
磁気共鳴誘導高エネルギー超音波集束治療調節、
光刺激調節
のうちの少なくとも1つを含む請求項12に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コンピュータ技術の分野に関し、特に、標的特定方法、装置、電子デバイス、記憶媒体及び神経調節デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの神経および精神疾患は、しばしば明確な病巣を有さず、神経系の機能異常として現れる。電気、磁気、光、及び超音波などの神経調節手段を用いて、直接的または間接的に異常機能ネットワークを調節することは、患者の症状を改善する重要な手段である。如何にヒト脳において神経調節標的を選択することは難題である。研究によれば、多くの神経疾患および精神疾患に対して、病因を構造画像から直接解析することおよび病巣を位置特定することができず、通常所望の調節および治療効果が得られない。したがって、臨床では、医師が個体の神経調節標的を選別するのに役立つ客観的で正確かつ定量化可能な補助手段を必要とする。神経調節標的を特定する既存の方法は、この要求を満たすことができない。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、個別化された神経調節標的を選別するための標的特定方法、装置、電子デバイス、記憶媒体及び神経調節デバイスを提供する。
【0004】
第1の態様では、本開示は、被験者の脳の磁気共鳴画像から得られたデータを含む前記被験者のスキャンデータを取得することと、前記スキャンデータに基づいて前記被験者の少なくとも2つの関心領域(region of interest、ROI)を特定することと、予め設定された異常検出規則に従って、前記少なくとも2つの関心領域の中で少なくとも1つの異常関心領域を特定することと、前記少なくとも1つの異常関心領域に基づいて標的を特定することと、を含む標的特定方法を提供する。
いくつかの選択可能な実施態様において、前述した前記スキャンデータに基づいて前記被験者の少なくとも2つの関心領域を特定することは以下を含む。
前記スキャンデータ中の全ての2つのボクセルの組み合わせに対してそれらの間の接続度を確定し、前記スキャンデータに対応する脳接続マトリックスを形成する。
前記少なくとも2つの関心領域は、標準脳の脳領域テンプレート及び脳接続マトリックスに基づいて形成される。
いくつかの選択可能な実施態様において、前述した前記スキャンデータに基づいて前記被験者の少なくとも2つの関心領域を特定することは以下を含む。
前記スキャンデータ中の全ての2つのボクセルの組み合わせに対してそれらの間の接続度を確定する。
【0005】
前記スキャンデータに対応する前記被験者の脳の解剖学的構造を複数の大領域に分割し、前記複数の大領域の各大領域を複数の脳領域に分割し、前記複数の脳領域における各脳領域は少なくとも1つのボクセルを含む。
【0006】
前記複数の脳領域における各脳領域の間のボクセル接続度が予め設定された脳領域のボクセル接続度の閾値よりも高い脳領域を融合して、前記少なくとも2つの関心領域を形成する。
いくつかの選択可能な実施態様において、前述した前記スキャンデータに基づいて前記被験者の少なくとも2つの関心領域を特定することは以下を含む。
体積標準脳構造テンプレートに基づいて、前記スキャンデータに基づいて前記被験者の少なくとも2つの関心領域を特定する。
いくつかの選択可能な実施態様において、前述した前記スキャンデータに基づいて前記被験者の少なくとも2つの関心領域を特定することは以下を含む。
皮質標準脳構造テンプレートに基づいて、前記スキャンデータに基づいて前記被験者の少なくとも2つの関心領域を特定する。
【0007】
いくつかの選択可能な実施態様において、前述した予め設定された異常検出規則に従って、前記少なくとも2つの関心領域の中で少なくとも1つの異常関心領域を特定することは以下を含む。
集団の脳磁気共鳴データを取得する。
前記集団の脳磁気共鳴データに基づいて集団の脳接続マトリックスを確定する。
前記スキャンデータ中の全ての2つのボクセルの組み合わせに対してそれらの間の接続度を確定し、前記スキャンデータに対応する脳接続マトリックスを形成する。
前記集団の脳接続マトリックス及び前記脳接続マトリックスに基づいて、前記少なくとも1つの異常関心領域を特定する。
いくつかの選択可能な実施態様において、前述した前記少なくとも1つの異常関心領域に基づいて標的を特定することは以下を含む。
前記少なくとも1つの異常関心領域が調節可能な脳領域に位置するかどうかを確定する。
【0008】
前記少なくとも1つの異常関心領域が調節可能な脳領域に位置する場合、前記少なくとも1つの異常関心領域の中心を前記標的として特定する、または前記少なくとも1つの異常関心領域の中心を球の中心とし、予め設定された標的半径の領域を第1の標的関心領域として特定し、前記第1の標的関心領域の位置に基づいて前記標的を特定する。
【0009】
前記少なくとも1つの異常関心領域が調節可能な脳領域に位置しない場合、前記少なくとも1つの異常関心領域と前記少なくとも2つの関心領域における他の関心領域との接続度を確定し、前記他の関心領域において前記少なくとも1つの異常関心領域との接続度が予め設定された接続度閾値を超え、かつ調節可能な領域に位置する関心領域を第2の標的候補領域として特定する。
【0010】
前記第2の標的候補領域の中心を前記標的として特定する、または、前記第2の標的候補領域の中心を球の中心とし、予め設定された標的の半径の領域を第2の標的関心領域として特定し、前記第2の標的関心領域の位置に基づいて前記標的を特定する。
いくつかの選択可能な実施態様において、前述した前記少なくとも1つの異常関心領域に基づいて標的を特定することは以下を含む。
前記被験者の疾患タイプに基づいて、前記標的が位置する脳構造区分を特定する。
【0011】
前記少なくとも1つの異常関心領域または異常関心領域との接続度が予め設定された接続度閾値条件を満たす関心領域と前記脳構造区分との交差を、標的候補領域として特定する。
【0012】
前記標的候補領域の中心を前記標的として特定する、または、前記標的候補領域の中心を球の中心とし、予め設定された標的の半径の領域を標的関心領域として特定し、前記標的関心領域の位置に基づいて前記標的を特定する。
【0013】
いくつかの選択可能な実施態様において、前記機能的磁気共鳴画像は、構造的磁気共鳴画像、及び/又は、タスク状態機能的磁気共鳴画像、及び/又は、安静時機能的磁気共鳴画像を含む。
【0014】
第2の態様では、本開示は、被験者の脳の磁気共鳴画像から得られたデータを含む前記被験者のスキャンデータを取得するように配置されたデータ取得ユニットと、前記スキャンデータに基づいて、前記被験者の少なくとも2つの関心領域を特定するように配置された処理ユニットと、予め設定された異常検出規則に従って、前記少なくとも2つの関心領域の中で少なくとも1つの異常関心領域を特定するように配置された異常検出ユニットと、前記少なくとも1つの異常関心領域に基づいて標的を特定するように配置された標的特定ユニットと、を含む標的特定装置を提供する。
いくつかの選択可能な実施形態において、前記処理ユニットは、さらに以下のように配置される。
前記スキャンデータ中の全ての2つのボクセルの組み合わせに対してそれらの間の接続度を確定し、前記スキャンデータに対応する脳接続マトリックスを形成する。
標準脳の脳領域テンプレート及び脳接続マトリックスに基づいて、前記少なくとも2つの関心領域を形成する。
いくつかの選択可能な実施形態において、前記処理ユニットは、さらに以下のように配置される。
前記スキャンデータ中の全ての2つのボクセルの組み合わせに対してそれらの間の接続度を確定する。
【0015】
前記スキャンデータに対応する前記被験者の脳の解剖学的構造を複数の大領域に分割し、前記複数の大領域における各大領域を複数の脳領域に分割し、前記複数の脳領域における各脳領域は少なくとも1つのボクセルを含む。
【0016】
前記複数の脳領域における各脳領域の間のボクセル接続度が予め設定された脳領域のボクセル接続度の閾値よりも高い脳領域を融合して、前記少なくとも2つの関心領域を形成する。
いくつかの選択可能な実施形態において、前記処理ユニットは、さらに以下のように配置される。
体積標準の脳構造テンプレートに基づいて、前記スキャンデータに基づいて被験者の少なくとも2つの関心領域を特定する。
いくつかの選択可能な実施形態において、前記処理ユニットは、さらに以下のように配置される。
皮質標準脳構造テンプレートに基づいて、前記スキャンデータに基づいて前記被験者の少なくとも2つの関心領域を特定する。
いくつかの選択可能な実施態様において、前記異常検出ユニットは、さらに以下のように配置される。
集団の脳磁気共鳴データを取得する。
前記集団の脳磁気共鳴データに基づいて集団の脳接続マトリックスを確定する。
前記スキャンデータ中の全ての2つのボクセルの組み合わせに対してそれらの間の接続度を確定し、前記スキャンデータに対応する被験者の脳接続マトリックスを形成する。
前記集団の脳接続マトリックス及び前記被験者の脳接続マトリックスに基づいて、前記少なくとも1つの異常関心領域を特定する。
いくつかの選択可能な実施態様において、前述した前記少なくとも1つの異常関心領域に基づいて標的を特定することは以下を含む。
前記少なくとも1つの異常関心領域が調節可能な脳領域に位置するかどうかを確定する。
【0017】
前記少なくとも1つの異常関心領域が調節可能な脳領域に位置する場合、前記少なくとも1つの異常関心領域の中心を前記標的として特定する、または、前記少なくとも1つの異常関心領域の中心を球の中心とし、予め設定された標的半径の領域を第1の標的関心領域として特定し、前記第1の標的関心領域の位置に基づいて前記標的を特定する。
【0018】
前記少なくとも1つの異常関心領域が調節可能な脳領域に位置しない場合、前記少なくとも1つの異常関心領域と前記少なくとも2つの関心領域における他の関心領域との接続度を確定し、前記他の関心領域における前記少なくとも1つの異常関心領域との接続度が予め設定された接続度閾値を超え、かつ調節可能な領域に位置する関心領域を第2の標的候補領域として特定する。
【0019】
前記第2の標的候補領域の中心を前記標的として特定する、または、前記第2の標的候補領域の中心を球の中心とし、予め設定された標的半径の領域を第2の標的関心領域として特定し、前記第2の標的関心領域の位置に基づいて前記標的を特定する。
いくつかの選択可能な実施態様において、前述した前記少なくとも1つの異常関心領域に基づいて標的を特定することは以下を含む。
前記被験者の疾患タイプに基づいて、前記標的が位置する脳構造区分を特定する。
【0020】
前記少なくとも1つの異常関心領域、または、前記異常関心領域との接続度が予め設定された接続度閾値条件を満たす関心領域と前記脳構造区分との交差を、標的候補領域として特定する。
【0021】
前記標的候補領域の中心を前記標的として特定する、または、前記標的候補領域の中心を球の中心とし、予め設定された標的半径の領域を標的関心領域として特定し、前記標的関心領域の位置に基づいて前記標的を特定する。
【0022】
いくつかの選択可能な実施形態において、前記磁気共鳴画像は、構造的磁気共鳴画像、および/または、タスク状態機能的磁気共鳴画像、および/または、安静時機能的磁気共鳴画像を含む。
【0023】
第3の態様では、本開示は、少なくとも1つのプロセッサと、少なくとも1つのプログラムが記憶された記憶装置であって、前記少なくとも1つのプログラムが前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、前記少なくとも1つのプロセッサに第1の態様のいずれかの実装形態に記載の方法を実施させる記憶装置と、を含む電子デバイスを提供する。
【0024】
第4の態様では、本開示は、コンピュータプログラムが記憶されたコンピュータ可読記憶媒体を提供し、前記コンピュータプログラムが少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、第1の態様のいずれか1つの実装形態に記載の方法を実施する。
【0025】
第5の態様では、本開示は、予め設定された神経調節プランに従って被験者の標的を神経調節するように配置された神経調節デバイスであって、前記標的は第1の態様のいずれかの実装形態に記載の方法に従って特定されたものである神経調節デバイスを提供する。
【0026】
いくつかの選択可能な実施態様において、前記予め設定された調節プランは、脳深部電気刺激、経頭蓋電気刺激、電気痙攣療法、皮質脳電気電極による電気刺激、経頭蓋磁気刺激、超音波集束神経調節、磁気共鳴導波高エネルギー超音波集束治療調節、及び光刺激調節のうちの少なくとも1つを含む。
神経調節標的の確定を達成するために、現在一般的に使用される技術的手段は以下を含む。
【0027】
1.グループレベルのタスク状態機能的磁気共鳴画像法(functional magnetic resonance imaging,fMRI)に基づいて、神経調節標的を特定する。この方法の欠点は、タスク状態fMRIの信号対雑音比が低く、再現性が高くなく、被験者に一定の認知レベルを要求すること、タスク状態fMRIの機能領域の結果がタスク設計によって大きく影響を受けること、機能領域のベースラインレベルを決定することが困難であることを含む。
【0028】
2.脳解剖学的構造に基づく臨床経験により、患者の頭皮表面に特定の機能的領域の体表投影の大局的位置を見出し、神経調節標的を特定する。例えば、米国食品医薬品局FDA(Food And Drug Administration)によって承認された反復経頭蓋磁気刺激(repetitive transcranial magnetic stimulation、rTMS)により抵抗性うつ病を治療する左背外前頭葉(Dorsal Lateral Prefrontal Corte×、DLPFC)位置特定方法(「5cm」位置特定方法とも呼ばれる)。この方法の欠点は、個体の解剖学的構造の差異を無視し、かつ位置特定精度が低く、神経調節標的の位置特定が不正確になること、個体の機能的ネットワークの差異を無視し、標的の位置が他の脳機能領域に位置する可能性があることを含む。
【0029】
3.電極帽子により神経調節標的を特定する。例えば、国際10-20電極帽子による位置特定方法。この方法の欠点は、個体の解剖学的構造の差異を無視し、かつ位置特定精度が低く、神経調節標的の位置特定が不正確になること、個体の機能的ネットワークの差異を無視することを含む。
【0030】
4.解剖学的構造または集団平均fMRI研究によって定義されるROIに基づいて神経調節標的を特定する。この方法の欠点は、多種の神経および精神疾患が明確な病巣を有さないことが多く、神経系の機能異常を示すだけであり、単純な解剖学的構造が疾患特徴を反映できないこと、神経および精神疾患の病因が複雑であり、個人差を加えて、集団平均fMRIに基づく治療計画の有効性が低いことを含む。
【0031】
5.PETスキャンデータによって反映される組織構造代謝の状態に基づいて神経調節標的を特定する。この方法の欠点は、PETスキャンが高価であり、それにより医療負担が重くなること、スキャンプロセスにおいて一定の放射が存在すること、PETスキャンが適用される神経及び精神疾患が制限されること、画像信号対雑音比が低く、解剖学的構造の境界が明瞭でないことが標的を特定する精度に影響し、臨床治療の有効性が低いことを含む。
【0032】
本開示が提供する標的特定方法、装置、電子デバイス、記憶媒体及び神経調節デバイスは、被験者の脳の磁気共鳴画像から得られたデータを含む前記被験者のスキャンデータを取得し、前記スキャンデータに基づいて前記被験者の少なくとも2つの関心領域を特定し、予め設定された異常検出規則に従って、前記少なくとも2つの関心領域の中で少なくとも1つの異常関心領域を特定し、前記少なくとも1つの異常関心領域に基づいて標的を特定する。本開示の実施例は、機能的磁気共鳴画像を用いて被験者の脳スキャンデータを提供し、被験者の脳領域を特定し、個人差を十分に考慮した上で、従来の方法における個体の構造または機能的差異を考慮しないことによる神経調節標的が不正確である問題を効果的に解決し、被験者の個体化された神経調節標的の位置特定を実現できた。個体化異常検出方法に脳の構造情報と機能情報を組み合わせ、正常者に比べて脳の接続パターンに異常がある脳領域を効率的に検出することができ、従来の方法における個体の構造または機能的差異を考慮しないことによる神経調節標的が不正確である問題を効果的に解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、本開示の一実施例が適用され得る例示的なシステム構成図である。
【
図2】
図2は、本開示の標的特定方法に係る一実施例のフロー図である。
【
図3】
図3は、
図2に示す標的特定方法におけるステップ202の一実施例の分解図である。
【
図4】
図4は、
図2に示す標的特定方法におけるステップ202のさらに他の実施例の分解図である。
【
図5】
図5は、本開示の標的特定装置に係る一実施例の構造図である。
【
図6】
図6は、本開示の端末デバイスまたはサーバを実現するのに適したコンピュータシステムの構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本開示の実施例の特徴および技術的内容をより詳細に理解することができるように、以下、添付の図面を参照して本開示の実施例の実現を詳細に説明するが、添付の図面は、単に説明のためのものであり、本開示の実施例を限定するものではない。
【0035】
本発明の実施例の記載において、別途の記載及び限定がない限り、「接続」という用語は、広く理解されるべきであり、例えば、電気的な接続であってもよく、2つの素子の内部の連通であってもよく、直接的な接続であってもよく、中間媒体を介する間接的な接続であってもよく、当業者であれば、具体的な状況に応じて前記用語の具体的な意味を理解することができる。
【0036】
なお、本開示の実施例に係る用語「第1の」、「第2の」、「第3の」は、単に類似する対象を区別するためのものであり、対象に対する特定の順序を表すものではなく、「第1の」、「第2の」、「第3の」は、許容される場合、特定の順序または優先順位を入れ替えてもよい。ここで説明される本開示の実施例がここで図示又は記載された以外の順序で実施できるように、「第1の」、「第2の」、「第3の」で区別される対象は場合によっては入れ替えてもよい。
図1は、本開示の標的特定方法または標的特定装置を適用できる実施例の例示的なシステム構成100を示す。
【0037】
図1に示すように、システム構成100は、端末デバイス101、102、103、ネットワーク104、及びサーバ105を含む。ネットワーク104は、端末デバイス101、102、103とサーバ105との間の通信リンクを提供する媒体の役割を果たす。ネットワーク104は、有線、無線通信リンク、又は光ファイバケーブル等のような、様々な接続タイプを含んでもよい。
【0038】
ユーザは、端末デバイス101、102、103を使用して、ネットワーク104を介してサーバ105と相互作用して、メッセージなどを受信または送信してもよい。端末デバイス101、102、103には、磁気共鳴画像制御アプリケーション、機能的磁気共鳴画像制御アプリケーション、ウェブブラウザアプリケーション、ショッピング系アプリケーション、検索系アプリケーション、インスタントコミュニケーションツール、メールボックスクライアント、ソーシャルプラットフォームソフトウェアなどの各種通信クライアントアプリケーションがインストールされてもよい。
【0039】
端末デバイス101、102、103は、ハードウェアであってもよいし、ソフトウェアであってもよい。端末デバイス101、102、103がハードウェアである場合、表示画面を有する様々な電子デバイスであってもよく、スマートフォン、タブレット、ラップトップ、デスクトップなどを含むが、これらに限定されない。端末デバイス101、102、103がソフトウェアである場合、前記に列挙した被験者の複数の脳領域を特定する電子デバイスに搭載することができる。それは、複数のソフトウェアまたはソフトウェアモジュールとして実現してもよいし(例えば、脳アトラスを提供するための処理)、単一のソフトウェアまたはソフトウェアモジュールとして実現してもよい。ここでは具体的に限定しない。
【0040】
サーバ105は、様々なサービスを提供するサーバ、例えば、端末デバイス101、102、103によって送信されるスキャンデータを処理するバックグラウンドデータ処理サーバであってもよい。バックグラウンドデータ処理サーバは、スキャンデータに基づいて、被験者の複数の脳領域及び各脳領域に対応するボクセルを特定して端末デバイスにフィードバックすることができる。
【0041】
なお、サーバ105は、ハードウェアであってもよいし、ソフトウェアであってもよい。サーバ105がハードウェアである場合、複数のサーバからなる分散型サーバクラスタとして実現してもよいし、単一のサーバとして実現してもよい。サーバ105がソフトウェアである場合、複数のソフトウェアまたはソフトウェアモジュール(例えば、分散型サービスを提供するために)として実現してもよいし、単一のソフトウェアまたはソフトウェアモジュールとして実現してもよい。ここでは具体的に限定しない。
なお、本開示が提供する標的特定方法は、一般的にサーバ105で実行されるため、標的特定装置は、一般的にサーバ105に設けられる。
【0042】
なお、場合によっては、本開示が提供する標的特定方法は、サーバ105で実行されてもよいし、端末デバイス101、102、103で実行されてもよいし、サーバ105と端末デバイス101、102、103とが連携して実行されてもよい。したがって、標的確定装置は、サーバ105に設けられてもよいし、端末デバイス101、102、103に設けられてもよいし、一部がサーバ105に設けられ、一部が端末デバイス101、102、103に設けられてもよい。したがって、システム構成100は、サーバ105のみを含んでもよく、または端末デバイス101、102、103のみを含んでもよく、または端末デバイス101、102、103、ネットワーク104、およびサーバ105を含んでもよい。本開示ではこれを限定しない。
【0043】
なお、
図1における端末デバイス、ネットワーク、サーバの数は、例示的なものにすぎない。端末デバイス、ネットワーク、サーバは、実現の必要に応じて任意の数だけ備えられてもよい。
引き続き
図2を参照すると、本開示に係る標的特定方法による一実施例のフロー200が示されている。該標的特定方法は、以下のステップを含む。
ステップ201、被験者のスキャンデータを取得する。
本開示の実施例において、スキャンデータは、被験者の脳の磁気共鳴画像から得られたデータを含む。
【0044】
スキャンデータは、予め設定された数のボクセルにおける各ボクセルに対応する血中酸素濃度依存(Blood Oxygen Level Dependency、BOLD)信号シーケンスを含む。
【0045】
本実施例において、標的特定方法の実行主体(例えば、
図1に示すサーバ)は、まず、前記実行主体にネットワーク接続された他の電子デバイス(例えば、
図1に示す端末デバイス)から被験者のスキャンデータをローカルまたはリモートで取得することができる。
【0046】
ボクセルは立体ボクセル(voxel)とも呼ばれ、体積ボクセル(volume pixel)の略称である。ボクセルは、概念的には、2次元空間の最小単位であるピクセルに類似しており、ピクセルは、2次元コンピュータ画像のイメージデータに用いられる。ボクセルは、デジタルデータの3次元空間分割上の最小単位であり、3次元イメージング、科学データ、医用画像などの分野で利用されている。
【0047】
ボクセルに対応するBOLD信号シーケンスとは、被験者に対して磁気共鳴スキャンを行い、各ボクセルに対して予め設定された時間単位毎に1つのBOLD信号を取得し、最終的にある時間のBOLD信号を取得し、これらのBOLD信号を取得時間の順に並べることで、各ボクセルに対応するBOLD信号シーケンスを取得し、含まれているBOLD信号の数は、目標タスクに対応する時間の長さを予め設定された時間単位で割った整数商であってもよい。例えば、スキャンに対応する時間の長さが300秒であり、予め設定された時間単位が2秒である場合、各ボクセルに対応するBOLD信号シーケンスに150個のBOLD値があり、各ボクセルに対応するBOLD信号シーケンスに150フレームのデータがあると考えてもよく、または、各ボクセルに対応するBOLD信号シーケンスが150次元のベクトルであると考えてもよく、または、各ボクセルに対応するBOLD信号シーケンスが1×150次元マトリックスであると考えてもよいが、本開示はこれを具体的に限定しない。
【0048】
スキャンデータに含まれるボクセルの具体的な数は、機能的磁気共鳴画像または磁気共鳴画像のスキャン精度に基づいて決定されてもよく、イメージングデバイスの精度に基づいて決定されてもよく、ここでの予め設定された数は、ボクセルの具体的な数に対する限定ではなく、現在の実際応用において、人の脳のスキャンデータのボクセル数は、数万又は十万で測定され、スキャン技術の進歩に伴って、人の脳のスキャンデータに含まれるボクセル数は、更に増加され得ることが理解される。
【0049】
本開示において、前記実行主体は、前記実行主体にネットワーク接続された他の電子デバイス(例えば、
図1に示す端末デバイス)から、被験者のスキャンデータをローカルまたはリモートで取得することができる。
【0050】
本開示の実施例において、磁気共鳴画像は、構造的磁気共鳴画像、および/または、タスク状態機能的磁気共鳴画像、および/または、安静時機能的磁気共鳴画像を含んでもよい。
【0051】
機能的磁気共鳴画像によって得られるデータは、時系列情報を含んでおり、4次元画像に相当する。例えば、機能的磁気共鳴画像画像を収集し、3次元画像マトリクス(Length×Width×Height、L×M×N)を2秒ごとに1フレーム収集すると、6分間に150フレームのデータを収集し、L×M×N個のボクセル×150の機能的磁気共鳴画像データ信号を形成することができる。
【0052】
構造磁気共鳴画像法によって得られたデータは、高分解能三次元グレースケール解剖学的構造画像であり、例えば、T1w(T1強調画像---突出組織T1緩和(縦緩和)差)及びその関連画像、T2w(T2強調画像---突出組織T2緩和(横緩和)差)及びその関連画像、流体減衰反転回復シーケンス(fluid attenuated inversion recovery、FLAIR)及びその関連画像である。構造的磁気共鳴画像は、磁気共鳴拡散画像、例えば、拡散強調画像(diffusion-weighted imaging、DWI)及びその関連画像、拡散テンソル画像(diffusion tensor imaging、DTI)及びその関連画像等も含んでもよい。
【0053】
DTIは、中枢神経系の解剖学的神経束の拡散異方性を研究し、白質線維の解剖学的構造を表示するために使用される磁気共鳴技術であり、組織内の水分子拡散の異方性(anisotropy)により組織の微細構造を探知する。白質の異方性は平行に走行するミエリン鞘軸索線維によるものであり、白質の拡散は平行神経線維方向に最大であり、つまり、拡散異方性分数(fractionalanisotropy、FA)が最大であり、近似的に1と確定することができる(実際には0.9より大きく1に近い分数でよい)。この特性は、色彩で標記すれば白質の空間的方向性を反映でき、つまり、最も拡散の早い方向が繊維の走行方向を示す。DTI法による線維束画像は、脳の構造を反映した脳接続マトリックスを得ることができる。
本開示の実施形態において、機能的磁気共鳴画像は、タスク状態機能的磁気共鳴画像、および/または安静時機能的磁気共鳴画像を含んでもよい。
【0054】
安静時機能的磁気共鳴画像は、被験者がスキャン中にタスクを行わずに被験者の脳の磁気共鳴スキャンを行うことによって得られる磁気共鳴画像であることが理解される。これに対応して、タスク状態機能的磁気共鳴画像は、被験者が目的のタスクを実行する際に、被験者の脳に対して磁気共鳴スキャンを行うことによって得られる磁気共鳴画像である。
【0055】
被験者の脳構造磁気共鳴スキャンデータを取得した後、様々な実現方法により、被験者の脳構造磁気共鳴スキャンデータに基づいて、被験者の脳構造図を確定することができ、つまり、被験者の脳の特定の領域がどの構成要素であるかを得ることができる。例えば、磁気共鳴データ処理ソフトであるフリーサーファー(FreeSurfer)のような三次元の脳スキャンデータを処理する既存のソフトウェアを用いて実現することができる。また例えば、予め大量の脳構造映像スキャンサンプルデータと対応する脳構成要素のラベリングに基づいて深層学習モデルを訓練し、さらに訓練して得られた深度学習モデルに被験者の脳構造磁気共鳴スキャンデータを入力して、対応する脳構造図を得てもよい。
いくつかの選択可能な実施形態において、前記実行主体は、被験者のスキャンデータを取得した後、スキャンデータを前処理する。
本発明において、前処理の処理方法は具体的に限定されず、例えば、前処理は以下を含んでもよい。
機能的磁気共鳴画像法影像に対する前処理、例えば、
(1) 時間レイヤ補正、頭動補正、時間信号フィルタリング、ノイズ成分回帰、空間平滑など、
(2) 機能的磁気共鳴画像法影像と構造画像(構造画像が存在する場合)とのレジストレーション、
【0056】
(3) 機能的磁気共鳴画像信号を、再構築された個体の脳皮質画像または関連するグループ平均レベルの構造画像を含む構造画像(構造画像が存在する場合)に投影する。
【0057】
構造磁気共鳴画像法影像(構造画像が存在する場合)に対して、例えば、頭蓋骨除去、電場強度補正、個体の解剖学的構造のセグメンテーション、脳の皮質再構築などの前処理を行う。
ステップ202、スキャンデータに基づいて、被験者の少なくとも2つのROIを特定する。
前記のステップ202に関して、本開示は、様々な代替的な実施態様を提供する。
【0058】
図3は、
図2に示す標的特定方法におけるステップ202の一実施例の部分分解図である。いくつかの選択可能な実施形態において、
図3に示すように、前記のステップ202は具体的に以下を含んでもよい。
ステップ202a1、スキャンデータ中の全ての2つのボクセルの組み合わせに対してそれらの間の接続度を確定し、スキャンデータに対応する脳接続マトリックスを形成する。
【0059】
本開示において、ボクセルとROIとの接続度は、ボクセルとROIにおける各ボクセルとの接続度の平均値を含んでもよく、2つのROI間の接続度は、2つのROIにおいて、各ROIにおけるボクセルと他方のROIにおける各ボクセルとの接続度の平均値を含んでもよく、ボクセルと脳領域との接続度は、ボクセルと脳領域における各ボクセルとの接続度の平均値を含んでもよく、2つの脳領域間の接続度は、2つの脳領域において、各脳領域におけるボクセルと他方の脳領域における各ボクセルとの接続度の平均値を含んでもよい。
【0060】
接続度は、脳接続の接続度を特徴付け、相関度として表すこともできる。ここで、脳接続は、機能的接続及び構造的接続を含む。機能的接続は、ROIにおけるボクセルに対応するBOLD時系列に基づいてピアソン相関係数計算によって得られ、構造的接続は、トラクトグラフィーにより得られたROI間の構造的接続などを含む。
【0061】
例えば、スキャンデータ中のボクセルの数が10万個であり、各ボクセルに対応するBOLD信号シーケンスがT個のBOLD値を含み、Tがスキャン時間に対応する時間次元のサンプリング数であると仮定すると、スキャンデータに対応する脳接続マトリックスは、10万×10の万次マトリックスであり、該脳接続マトリックスは、前記スキャンデータ中の全ての2つのボクセルの組み合わせに対してそれらの間の接続度を特徴付けることができ、そのうち、2つのボクセル間の接続度は、ボクセルに対応するT個のBOLD値に基づいてピアソン相関係数によって計算することができる。
本開示において、相関係数はピアソン(pearson)相関係数であり、変数間の線形性の程度を測るための係数である。その計算式は以下の通りである。
【数1】
【0062】
式は、2つの連続変数(X,Y)のpearson相関係数(ρX,Y)が、それらの間の共分散cov(X,Y)をそれらのそれぞれの標準偏差の積(σX,σY)で割ったものに等しいと定義される。係数の値が常に-1.0から1.0の間にあり、0に等しいまたはほぼ等しい変数は無相関であると呼ばれ、1または-1に近い値に等しいまたはほぼ等しい変数は強い相関を有すると呼ばれる。ここで、近似値が目標値との差が誤差許容範囲内にあると理解できるが、例えば、本発明では、0.01が0に近似でき、または、0.99が1に近似できるが、ここでは、例示に過ぎず、実際の応用では、計算に必要な精度に基づいて、近似的に等しい誤差許容範囲内を決定することができる。ステップ202a2、標準脳の脳領域テンプレートおよび脳接続マトリックスに基づいて、少なくとも2つのROIを形成する。
【0063】
例えば、パターン認識又は機械学習方法を用いて、標準脳の脳領域テンプレートに基づいて、被験者に2つ以上の脳領域を含む脳地図を作成することができる。方法は、独立成分分析(Independent Component Correlation Algorithm、ICA)、主成分分析(Principal Component Analysis、PCA)、各種クラスタリング法、因子分析(factor analysis)、線形判別分析(linear discriminant analysis、LDA)、各種マトリックス分解法などを含んでもよいが、これらに限定されない。最終的に得られた脳機能ネットワークは、異なる被験者に対し、各機能分割に含まれるボクセル位置が異なる可能性はあるが、各ボクセルは、ある特定のROIに帰属する。すなわち、被験者の各ROIは、同じ機能を有するfMRIにおけるボクセルから構成されるボクセルの集合であってもよい。
本開示の実施例において、脳領域は、脳機能領域分割及び/又は脳構造区分を含んでもよい。
【0064】
図4は、
図2に示す標的特定方法におけるステップ202のさらに他の実施例の分解図である。いくつかの選択可能な実施形態において、
図4に示すように、前記ステップ202は、具体的には以下のステップを含んでもよい。
ステップ202b1、スキャンデータ中の全ての2つのボクセルの組み合わせに対してそれらの間の接続度を確定する。
【0065】
ステップ202b2、スキャンデータに対応する被験者の脳の解剖学的構造を複数の大領域に分割し、複数の大領域(例えば、各大領域)を複数の脳領域に分割し、複数の脳領域の各々は、少なくとも1つのボクセルを含む。
【0066】
ステップ202b3、複数の脳領域の各々の間のボクセル接続度が予め設定された脳領域のボクセル接続度閾値よりも高い脳領域を融合し、少なくとも2つの脳領域を形成する。
【0067】
例えば、まず、被験者の脳を、主要な解剖学的境界に従って複数の大領域に分割し、その後、各大領域に機能的接続によってセグメンテーションを行い、各大領域を信頼度(test-retest reliability)に従ってボクセルの接続度を確定する。各大領域を分割して複数の脳領域を得て、さらにこれらの脳領域を、それらに含まれるボクセルの接続度に基づいて融合し、ボクセルが高度に接続している脳領域を1つのROIとして統合し、例えば、最終的に全脳で少なくとも2つの脳領域ROIを特定することができる。
【0068】
例えば、脳の左、右皮質を前頭葉、頭頂葉、後頭葉、側頭葉及び全中心溝領域の5つの大領域に分割することにより、初期の個体脳地図を10個の大領域に分割することができる。また、例えば、脳を上位皮質と下位皮質とに分割し、左右の脳を計4領域に分割することができる。
いくつかの選択可能な実施形態において、前記ステップ202は、具体的に以下を含んでもよい。
【0069】
脳地図テンプレートとして、集団の脳地図を予め選択又は作成し、脳地図テンプレートにおける少なくとも2つの脳領域に対応する境界を、被験者の脳スキャンデータに投影する。
【0070】
被験者の脳スキャンデータに基づいて少なくとも2つの脳領域の境界を調節し、調節された脳領域境界を少なくとも被験者の脳スキャンデータと一致させて、少なくとも2つのROIを形成する。
【0071】
例えば、集団の脳地図を被験者の脳に直接投影した後、再帰的アルゴリズムを用いて、脳領域の境界が安定するまで、被験者の解剖学的脳地図に従って、集団の脳地図が投影される脳領域の境界を段階的に調節する。再帰的プロセスは、被験者の脳接続の個人差分布、および被験者自身の脳画像の信号対雑音比を利用し、脳領域の境界調節の幅を確定する。最後に、脳の脳領域をボクセルの相関性に基づいて融合することにより、少なくとも2つのROIを得る。
いくつかの選択可能な実施形態において、前記ステップ202は、具体的に以下を含んでもよい。
【0072】
複数の試験シナリオ関連ROIおよびその潜在的な脳接続パターンを含む標準ROIライブラリを構築する。標準ROIライブラリがあれば、試験シナリオタイプによって対応するROIを選別し、さらにそれに基づいて被験者の少なくとも2つのROIを得ることができる。
いくつかの任意の実施形態において、前記ステップ202は、具体的に以下を含んでもよい。
【0073】
体積標準の脳構造テンプレートに基づいて、スキャンデータに基づいて、被験者の少なくとも2つのROIを確定する。体積標準の脳構造テンプレート内の白質および脳室領域を抽出し、体積標準の脳構造テンプレートのバイナリマスクMaskを構築し、白質および脳室領域をMaskから除去して、白質および脳室領域のないMaskを得、白質および脳室領域のないMaskを再サンプリングして、少なくとも2つのROIを得る。あるいは、体積標準の脳構造テンプレートバイナリMaskを構築し、再サンプリングを行い、少なくとも2つのROIを得る。
いくつかの選択可能な実施形態において、前記ステップ202は、具体的に以下を含んでもよい。
【0074】
皮質標準脳構造テンプレートに基づいて、スキャンデータに基づいて、被験者の少なくとも2つのROIを確定する。皮質標準脳構造テンプレートを再サンプリングして、少なくとも2つのROIを生成する。例えば、粗い解像度皮質surfaceテンプレート(例えば、fsaverage3(fs3)、fsaverage4(fs4))に基づいて、高解像度テンプレートの少なくとも2つのROI(例えば、fsaverage6(fs6))を生成する。具体的には、粗い解像度テンプレートの左右脳頂点をそれぞれ順に割り当て(1、2、3...)、さらにそれらをfs6テンプレート空間に再サンプリング(近接法補間)し、割り当てられた順に従って、各数値に対応するfs6 surfaceにおけるすべての頂点インデックス番号を順に統計し、これはfs6空間の少なくとも2つのROIであり、例えば、左脳fs4 surfaceテンプレートにおける13番目の頂点が13に割り当てられており、fs6テンプレート空間に再サンプリングした後に30個の数値がいずれも13である頂点を見つけることができ、左脳fs6 surfaceテンプレートの13番目のROIはこれらの30個の頂点からなる。surfaceテンプレートにおける全ての頂点に基づいて少なくとも2つのROIを生成し、任意のsurfaceテンプレートに対して、各頂点を1つのROIとする(例えば、fsaverage6左脳テンプレートは40962頂点を含み、対応して40962個のROIを生成できる)。
ステップ203、予め設定された異常検出規則に従って、少なくとも2つのROIの中で少なくとも1つの異常ROIを特定する。
いくつかの選択可能な実施形態において、前記ステップ203は、具体的に以下を含んでもよい。
集団の脳磁気共鳴データを取得する。
例えば、取得された集団サンプルの数は、300人以上であってもよい。ここで、集団サンプルの数を具体的に限定するものではなく、単に例示的な説明である。
取得した集団の脳磁気共鳴データを前処理する。
集団の脳磁気共鳴データに基づいて、集団の脳接続マトリックスを確定する。
ここで、集団の脳接続マトリックスの計算は、以下のステップを含んでもよい。
【0075】
ステップS11、集団の脳磁気共鳴データの各被験者のデータについて、各ROI中のすべての頂点/ボクセルの平均時系列を計算する。ここで、ROIは、本開示の実施例におけるROIの特定方法によって得られてもよいし、他の従来のROI特定方法によって得られてもよい。
【0076】
ステップS12、ROIとROI時系列との間の相関係数(例えば、ピアソン相関係数)を順次計算し、最終的に各被験者の脳接続マトリックスを取得し、脳接続マトリックスは、機能接続マトリックスと構造接続マトリックスとを含んでもよく、機能接続(functional connectivity、FC)を例にすると、indi_fc(このマトリックスは対角マトリックスであり、マトリックス中のi行目j列目の値はi個目のROIとj個目のROI時系列との相関性を表し、i≦N、j≦N、NはROIの個数であり、indi_fcの大きさはN×Nである)である。
スキャンデータ中の各ボクセルに対応するBOLD信号シーケンスを取得する。
【0077】
各ボクセルに対応するBOLD信号シーケンスに基づいて、スキャンデータ中の全ての2つのボクセルの組み合わせに対してそれらの間の接続度を確定し、スキャンデータに対応する被験者の脳接続マトリックスを形成する。
集団の脳接続マトリックスおよび被験者の脳接続マトリックスに基づいて、少なくとも1つの異常ROIを特定する。
いくつかの実施形態において、ステップ203は、具体的にプラン1またはプラン2を含み得る。
プラン1:異常検出アルゴリズムAは、具体的に以下のステップSA1~SA3を含んでもよい。
ステップSA1、ベースラインbaseline生成(集団の脳接続マトリックス)。具体的に以下のサブステップSA11~SA14を含んでもよい。
サブステップSA11、データ収集:大きなサンプルfMRIデータ(一般的に、>=300人)を収集する。
サブステップSA12、データ前処理:
図2の実施例の前処理方法に従ってデータを前処理する。
サブステップSA13、脳接続マトリックス計算。
【0078】
大きなサンプルデータの各被験者のデータについて、各ROI(ステップSA1から生成され、N個のROIがあると仮定する)におけるすべての頂点/ボクセルの平均時系列を計算する。
【0079】
ROIとROI時系列との間の相関係数(例えば、ピアソン相関係数)を順次計算し、最終的に各サンプルの脳接続マトリックスを取得し、脳接続マトリックスは、機能接続マトリックス及び構造接続マトリックスに限定されず、機能接続(functional connectivity、FC)マトリックスを例にすると、indi_fc(このマトリックスは対角マトリックスであり、マトリックスにおけるi行目j列目の値はi個目のROIとj個目のROI時系列との相関を表し、i≦N、j≦N、NはROIの個数であり、indi_fcの大きさはN×Nである)。
サブステップSA14、baseline生成。
すべての被験者のindi_fcを平均して、平均値マトリクス、すなわちBig_mean_fc (サイズN×N)を得る。
【0080】
indi_fcの各行のBig_mean_fcに対応する行との相関係数を順次計算して、1次元マトリックス(サイズN×1)を得て、最後に、すべての被験者のこの1次元マトリックスについて、平均値と標準偏差、すなわちCorr_mean(サイズN×1)とCorr_std(サイズN×1)を計算する。
ステップSA2、被験者FC生成(被験者脳接続マトリクス)。
被験者(Pとする)の前処理したデータを用いて、各ROI(ステップ1から生成された)における全ての頂点/ボクセルの平均時系列を計算する。
【0081】
ROIとROIの時系列との間の相関係数(例えば、ピアソン相関係数を用いて)を順次計算し、最終的に、被験者Pの脳接続マトリックスを得て、脳接続マトリックスは、機能接続マトリックス及び構造接続マトリックスを含んでもよく、機能接続(functional connectivity、FC)マトリックスを例にすると、p_fc(そのサイズ及び意味は、ステップSA1のindi_fcと同じである)とする。
【0082】
p_fcの各行のBig_mean_fc(ステップSA1から生成された)に対応する行との相関係数を順次計算し、例えばp_corrのようなN×1の1次元マトリックスを得る。
ステップSA3、異常検出アルゴリズムの手順。
p_corrのn(n≦N、NはROIの個数)個目のROIについて以下の演算を行う。
【数2】
式中、p_corr、Corr_mean、Corr_stdはステップSA1、SA2の変数名の意味と一致する。
マトリックスp_z(サイズN×1)は最終的な異常検出結果である。
プラン2:異常検出アルゴリズムBは、具体的には以下のステップSB1~SB3を含んでもよい。
ステップSB1、baseline生成(集団の脳接続マトリックス)。具体的に以下のサブステップSB11~SB14を含んでもよい。
サブステップSB11、データ収集:大きなサンプルfMRIデータ(一般的に、>=300人)を収集する。
サブステップSB12、データ前処理:
図2の実施例の前処理方法に従ってデータを前処理する。
サブステップSB13、脳接続マトリックス計算。
【0083】
ここで、サブステップSB11からSB13は、前記プラン1のステップSA1におけるサブステップSA11からSA13と内容及び効果が同じであり、ここでその説明を省略する。サブステップSB14、baseline生成。
全てのサンプルデータのindi_fcの平均値と標準偏差マトリックス、すなわちBig_mean_fc、Big_std_fcを計算する。
【0084】
ステップS2、被験者FC生成(被験者脳接続マトリックス)。具体的に以下のサブステップSB21からSB22を含んでもよい。サブステップSB21、被験者(例えばP)の前処理したデータを用いて、各ROI(ステップ1から生成された)における全ての頂点/ボクセルの平均時系列を計算する。
【0085】
サブステップSB22、ROIとROIの時系列との間の相関係数を順次計算し(例えば、ピアソン相関係数を用いて)、最終的に各被験者の脳接続マトリックス(functional connectivity, FC)、すなわちp_fc(大きさN×N)を得る。
サブステップSB、異常検出アルゴリズム手順。具体的に以下を含んでもよい。
p_fcマトリックス中のi行目j列目(i≦N、j≦N、NはROIの個数)のデータに対して以下の演算を行う。
【数3】
式中、p_fc、Big_mean_fc、Big_std_fcは、ステップSB1、SB2における変数名の意味と一致する。
【0086】
p_z(サイズN×1)において各行の中で閾値k(kは2以上の整数)より大きい値を合計すると、最終的にp_z_sum(サイズN×1)というN×1の一次元マトリックスが得られ、これが最終的な異常検出結果となる。
ここで、異常検出結果は、被験者が正常人と比較して異常があるm(m>=0)個の脳領域、すなわちm個のROIに位置特定する。
前記ステップ203において、少なくとも1つの異常ROIは、大脳領域異常ROIであってもよいし、小脳領域異常ROIであってもよい。
ステップ204において、少なくとも1つの異常ROIに基づいて標的を特定する。
いくつかの選択可能な実施形態において、前記のステップ204は、具体的に以下を含んでもよい。
いくつかの選択可能な実施態様において、少なくとも1つの異常ROIに基づいて標的を特定することは以下を含む。
少なくとも1つの異常ROIが調節可能な脳領域に位置するかどうかを確定する。
【0087】
少なくとも1つの異常ROIが調節可能な脳領域に位置する場合、少なくとも1つの異常ROIの中心を標的として特定する、または、少なくとも1つの異常ROIの中心を球の中心とし、予め設定された標的半径の領域を第1の標的ROIとして特定し、第1の標的ROIの位置に基づいて標的を特定する。
【0088】
少なくとも1つの異常ROIが前記調節可能脳領域に位置しない場合、少なくとも1つの異常ROIと少なくとも2つのROIにおける他のROIとの接続度を確定し、他のROIにおいて少なくとも1つの異常ROIとの接続度が予め設定された接続度閾値を超え、かつ調節可能領域に位置するROIを第2の標的候補領域として特定する。
【0089】
第2の標的候補領域の中心を標的として特定するか、または、第2の標的候補領域の中心を球の中心とし、予め設定された標的半径の領域を第2の標的ROIとして特定し、第2の標的ROIの位置に基づいて標的を特定する。
いくつかの選択可能な実施態様において、少なくとも1つの異常ROIに基づいて標的を特定することは以下を含む。
被験者の疾患のタイプに応じて標的が位置する脳構造区分を特定する。
【0090】
少なくとも1つの異常ROI、又は異常ROIとの接続度が予め設定された接続度閾値条件を満たすROIと脳構造区分との交差を、標的候補領域として特定する。
【0091】
標的候補領域の中心を標的として特定する、または標的候補領域の中心を中心とし、予め設定された標的半径の領域を標的ROIとし、標的ROIの位置に基づいて標的を特定する。
疾患タイプは、被験者を診断して確定された疾患タイプ、または被験者を治療しようとする症状に対応する疾患タイプを含む。
【0092】
疾患タイプの脳領域対応関係は、既存の既に特定された疾患タイプの脳領域対応関係に基づいて照会することもでき、実際の需要に応じて設けることもできる。ここで、疾患タイプの脳領域の取得方法は例示に過ぎず、具体的に限定されない。
【0093】
ここで、標的脳領域とは、標的に対応する脳領域であり、標的と標的脳領域との間には神経関連があり、標的に対する刺激により標的脳領域を神経調節することができる。
標的は、単一のボクセルに対応する座標を含んでもよいし、いくつかのボクセルからなる領域の集合であってもよい。
いくつかの選択可能な実施形態において、前記のステップ204は、具体的に以下を含んでもよい。
少なくとも1つの標的脳領域の中心位置を標的として特定する。
いくつかの選択可能な実施形態において、前記のステップ204は、具体的に以下を含んでもよい。
【0094】
少なくとも1つの標的脳領域の中心位置を球の中心とし、予め設定された標的半径の領域を標的関心領域ROIとして特定し、標的ROIの位置を標的として特定する。
【0095】
本開示は、予め設定された標的半径の長さについて特に限定されず、予め設定された標的半径は、神経調節の実際の必要性に応じて設定されてもよく、例えば、予め設定された標的半径は、3mmであってもよい。
いくつかの選択可能な実施形態において、前記のステップ204は、具体的に以下を含んでもよい。
疾患タイプに応じて標的が存在する脳構造区分を特定し、少なくとも1つの標的脳領域と脳構造区分との交差を確定し、前記交差の中で前記標的を特定する。
【0096】
いくつかの選択可能な実施形態において、標的は以下の条件を満たす必要がある。標的が脳の内側及び底部に存在しない、標的が脳回に存在してもよいが、標的が脳溝に存在しない。
【0097】
前記方法により特定された標的は比較的正確であり、実際の応用においては、科学者又は医療従事者は、前記方法により特定された標的に基づいて、光ナビゲーション装置又は電磁ナビゲーション装置を用いて被験者の神経調節ナビゲーションを行うことができ、神経調節の効率を向上させることができる。
【0098】
本開示は、予め設定された神経調節プランに従って被験者の標的を神経調節するように配置された神経調節デバイスを提供し、被験者の標的は、本開示の上述の実施例のいずれか1つにおける標的特定方法に従って特定されたものである。
【0099】
神経調節デバイスは、埋め込み神経調節デバイス及び非埋め込み神経調節デバイス、例えば、事象関連電位解析システム、脳波図システム、ブレインインターフェースデバイスなどを含んでもよい。本開示は、神経調節デバイスの具体的な形態を限定せず、ここでは例示に過ぎない。
【0100】
被験者の標的に対して神経調節を行うのは、オペレータが標的に応じて神経調節デバイスを接続して調節を行うものであってもよいし、オペレータ入力に基づいて又は神経調節デバイスから能動的に取得した被験者の標的に基づいて、神経調節デバイスが調節を行うものであってもよい。これは、単に例示的なものであり、被験者の標的に対して神経調節を行うことを具体的に限定するものではなく、当業者は実際の神経調節デバイスの使用方法に応じて操作することができる。例えば、予め設定された神経調節プランは以下を含むが、それらに限定されない。
a. 電気パルスシーケンスに基づく神経調節プラン
i. 脳深部電気刺激、ii.経頭蓋電気刺激、iii.電気痙攣関連療法、iv.皮質脳電気電極による電気刺激、v.前記技術の関連派生技術
b. 磁気パルスシーケンスに基づく神経調節プラン
i. 経頭蓋磁気刺激および関連プラン、ii.前記技術の関連派生技術
c. 超音波に基づく神経調節プラン
i. 超音波集束神経調節プラン、ii.磁気共鳴誘導高エネルギー超音波集束治療システムおよび関連調節プラン、iii.前記技術の関連派生技術
d. 光に基づく神経調節プラン
i. 異なる波長帯域の光刺激および関連プラン、ii.前記技術の関連派生技術
【0101】
新しい神経調節デバイス及び神経調節技術の発展に伴い、将来的な神経調節デバイス及び神経調節プランにおいても、本開示の標的特定方法を用いて神経調節の標的を特定することができ、これも本開示の保護範囲に属する。
【0102】
本開示の実施例は、正確な個体の脳地図を確立する方法によって、脳の様々な部位の機能情報を効率的かつ確実に取得することができ、脳領域の位置特定の正確性を向上させる。正確な個体レベルの脳地図を用いて機能的位置特定を行うことで、神経調節標的の位置特定結果の信頼性を向上させる。
【0103】
さらに、
図5を参照すると、上記の各図に示される方法の実現として、本開示は、
図2に示される方法の実施例に対応する標的特定装置の実施例を提供し、この装置は様々な電子デバイスに適用され得る。
【0104】
図5に示すように、本実施例の標的特定装置500は、データ取得ユニット501、処理ユニット502、異常検出ユニット503及び標的特定ユニット504を備える。
【0105】
データ取得ユニット501は、被験者の脳を磁気共鳴画像することによって得られたデータを含む被験者のスキャンデータを取得するように配置され、スキャンデータは、予め設定された数のボクセルの各々に対応する血中酸素濃度依存性BOLD信号のシーケンスを含む。処理ユニット502は、スキャンデータに基づいて、被験者の少なくとも2つの関心領域ROIを特定するように配置される。異常検出ユニット503は、予め設定された異常検出規則に従って、少なくとも2つのROIの中で少なくとも1つの異常ROIを特定する。標的特定ユニット504は、少なくとも1つの異常ROIに基づいて標的を特定するように配置される。
いくつかの選択可能な実施態様において、処理ユニット502は、さらに以下のように配置される。
スキャンデータ中の各ボクセルに対応するBOLD信号シーケンスを取得する。
【0106】
各ボクセルに対応するBOLD信号シーケンスに基づいて、スキャンデータ中の全ての2つのボクセルの組み合わせに対してそれらの間の接続度を確定し、スキャンデータに対応する被験者の脳接続マトリックスを形成する。
標準脳の脳領域テンプレート及び被験者の脳接続マトリックスに基づいて、少なくとも2つのROIを形成する。
いくつかの選択可能な実施態様において、処理ユニット502は、さらに以下のように配置される。
スキャンデータ中の各ボクセルに対応するBOLD信号シーケンスを取得する。
各ボクセルに対応するBOLD信号シーケンスに基づいて、スキャンデータ中の全ての2つのボクセルの組み合わせに対してそれらの間の接続度を確定する。
【0107】
スキャンデータに対応する被験者の脳の解剖学的構造を複数の大領域に分割し、複数の大領域を複数の脳領域に分割し、複数の脳領域において各脳領域は少なくとも1つのボクセルを含む。
【0108】
複数の脳領域における各脳領域の間のボクセル接続度が予め設定された脳領域のボクセル接続度閾値よりも高い脳領域を融合して、少なくとも2つのROIを形成する。
いくつかの選択可能な実施態様において、処理ユニット502は、さらに以下のように配置される。
体積標準脳構造テンプレートに基づいて、スキャンデータに基づいて被験者の少なくとも2つのROIを特定する。
いくつかの選択可能な実施態様において、処理ユニット502は、さらに以下のように配置される。
皮質標準脳構造テンプレートに基づいて、スキャンデータに基づいて被験者の少なくとも2つのROIを特定する。
選択可能な実施形態において、異常検出ユニット503は、さらに以下のように配置される。
集団の脳磁気共鳴データを取得する。
集団の脳磁気共鳴データから集団の脳接続マトリックスを確定する。
スキャンデータ中の各ボクセルに対応するBOLD信号シーケンスを取得する。
【0109】
各ボクセルに対応するBOLD信号シーケンスに基づいて、スキャンデータ中の全ての2つのボクセルの組み合わせに対してそれらの間の接続度を確定し、スキャンデータに対応する被験者の脳接続マトリックスを形成する。
集団の脳接続マトリックスおよび被験者の脳接続マトリックスに基づいて、少なくとも1つの異常ROIを特定する。
いくつかの選択可能な実施形態において、標的特定ユニット504は、さらに以下のように配置される。
前記少なくとも1つの異常ROIに基づいて標的を特定することは以下を含む。
前記少なくとも1つの異常ROIが調節可能な脳領域に位置するかどうかを確定する。
【0110】
前記少なくとも1つのROIが調節可能な脳領域に位置すると確定された場合、前記少なくとも1つの異常ROIの中心を前記標的として特定する、または、前記少なくとも1つの異常ROIの中心を球の中心とし、予め設定された標的半径の領域が第1の標的ROIとして特定し、前記第1の標的ROIの位置に基づいて前記標的を特定する。
【0111】
前記少なくとも1つの異常ROIが調節可能な脳領域に位置しないと確定された場合、前記少なくとも1つの異常ROIと前記少なくとも2つのROIにおける他のROIとの接続度を確定し、前記他のROIにおいて前記少なくとも1つの異常ROIとの接続度が予め設定された接続度閾値を超え、かつ調節可能な領域に位置するROIを第2の標的候補領域として特定する。
【0112】
前記第2の標的候補領域の中心を前記標的として特定する、または、前記第2の標的候補領域の中心を球の中心とし、予め設定された標的半径の領域を第2の標的ROIとして特定し、前記第2の標的ROIの位置に基づいて前記標的を特定する。
いくつかの選択可能な実施態様において、前記少なくとも1つの異常ROIに基づいて標的を特定することは以下を含む。
前記被験者の疾患タイプに基づいて、前記標的が位置する脳構造区分を特定する。
【0113】
前記少なくとも1つの異常ROI、又は異常ROIとの接続度が予め設定された接続度閾値条件を満たすROIと前記脳構造区分との交差を、標的候補領域として特定する。
【0114】
前記標的候補領域の中心を前記標的として特定する、または、前記標的候補領域の中心を球中心とし、予め設定された標的半径の領域を標的ROIとして特定し、前記標的ROIの位置に基づいて前記標的を特定する。
【0115】
いくつかの選択可能な実施態様において、磁気共鳴画像は、構造的磁気共鳴画像、および/または、タスク状態機能的磁気共鳴画像、および/または、安静時機能的磁気共鳴画像を含む。
【0116】
なお、本開示が提供する標的特定装置における各ユニットの実現細部及び技術的効果は、本開示における他の実施例を参照することができ、ここでその説明が省略される。
【0117】
次に
図6を参照すると、本開示を実現するのに適した端末デバイスまたはサーバのコンピュータシステム600の構造概略図が示されている。
図6に示される端末デバイスやサーバは単に一例であり、本開示の機能や利用範囲を何ら限定するものではない。
【0118】
図6に示すように、コンピュータシステム600は、リードオンリメモリ(ROM、Read Only Memory)602に記憶されているプログラム、または記憶部608からランダムアクセスメモリ(RAM、Random Access Memory)603にロードされたプログラムに従って、各種の適切な動作および処理を実行することが可能な中央処理ユニット(CPU、Central Processing Unit)601を含む。RAM603には、システム600の動作に必要な各種プログラムやデータも記憶されている。CPU601、ROM602、及びRAM603は、バス604を介して相互に接続されている。バス604には、入力/出力(I/O、Input/Output)インターフェース605も接続されている。
【0119】
I/Oインターフェース605には、キーボード、マウス等を含む入力部606、陰極線管(CRT、Cathode Ray Tube)、液晶ディスプレイ(LCD、Liquid Crystal Display)等及びスピーカー等を含む出力部607、ハードディスク等を含む記憶部608、LAN(Local Area Network)カード、モデム等のネットワークインターフェースカードを含む通信部609が接続される。通信部609は、インターネット等のネットワークを介して通信処理を行う。
【0120】
特に、本開示の実施例によれば、上記フローチャートを参照して説明したプロセスは、コンピュータソフトウェアプログラムとして実現されてもよい。例えば、本開示の実施例は、コンピュータ可読媒体上にロードされるコンピュータプログラムを含むコンピュータプログラム製品を含み、該コンピュータプログラムは、フローチャートに示される方法を実行するためのプログラムコードを含む。このような実施例において、該コンピュータプログラムは、通信部609を介してネットワークからダウンロード及びインストールされてもよい。このコンピュータプログラムが中央処理ユニット(CPU)601によって実行されると、本開示の方法において限定された上記機能が実行される。なお、本開示のコンピュータ可読媒体は、コンピュータ可読信号媒体又はコンピュータ可読記憶媒体又はそれらの任意の組み合わせであってもよい。コンピュータ可読記憶媒体は、例えば、電気、磁気、光、電磁、赤外線、又は半導体のシステム、装置又はデバイス、又は任意の以上の組み合わせであってもよいが、これらに限定されない。コンピュータ可読記憶媒体のより具体的な例は、1本又はそれ以上の導線を有する電気接続、ポータブルコンピュータ磁気ディスク、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EPROM又はフラッシュメモリ)、光ファイバ、ポータブルコンパクトディスクリードオンリメモリ(CD-ROM)、光記憶デバイス、磁気記憶デバイス、又は上記の任意の適切な組合せを含み得るが、これらに限定されない。本開示において、コンピュータ可読記憶媒体は、プログラムを含む又は記憶するいかなる有形の媒体であってもよく、該プログラムは、指令実行システム、装置又はデバイスによって使用され又はそれらと組み合わせて使用されてもよい。本開示において、コンピュータ可読信号媒体は、ベースバンド、又は搬送波の一部として伝送されるデータ信号を含んでもよく、コンピュータ可読プログラムコードがロードされている。このような伝播するデータ信号は、電磁信号、光信号又は上記の任意の適切な組み合わせを含むが、これらに限定されない様々な形態を採用することができる。コンピュータ可読媒体は、コンピュータ可読記憶媒体以外の任意のコンピュータ可読媒体であってもよく、該コンピュータ可読媒体は、指令実行システム、装置又はデバイスによって使用され又はそれらと組み合わせて使用されるためのプログラムを送信、伝播又は伝送することができる。コンピュータ可読媒体上に含まれるプログラムコードは、任意の適切な媒体によって伝送され得るが、ワイヤレス、電気配線、光ケーブル、RFなど、または前記の任意の適切な組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0121】
本開示の動作を実行するためのコンピュータプログラムコードは、Java、Smalltalk、C++、Pythonのようなオブジェクト指向プログラミング言語を含み、「C」言語又は類似のプログラミング言語などの従来の手続き型プログラミング言語をさらに含む、少なくとも1つのプログラミング言語又はそれらの組み合わせで、作成することができる。プログラムコードは、完全にユーザコンピュータ上で実行されてもよく、部分的にユーザコンピュータ上で実行されてもよく、独立したソフトウェアパッケージとして実行されてもよく、部分的にユーザコンピュータ上で部分的にリモートコンピュータ上で実行されてもよく、又は完全にリモートコンピュータ又はサーバ上で実行されてもよい。遠隔コンピュータに関わる場合、遠隔コンピュータは、ローカルエリアネットワーク(LAN)又は広域ネットワーク(WAN)を含む任意の種類のネットワークを介してユーザコンピュータに接続されてもよく、又は外部コンピュータに接続されてもよい(例えば、インターネットサービスプロバイダを利用してインターネットを介して接続される)。
【0122】
図面におけるフローチャートおよびブロック図は、本開示の様々な実施例によるシステム、方法およびコンピュータプログラム製品の実現可能なシステム構成図、機能および動作を示す。この点において、フローチャート又はブロック図における各ブロックは、予め設定された論理機能を実現するための1つ又は複数の実行可能命令を含むモジュール、ブロック、又はコードの一部を表すことができる。代替として、ブロックに記載された機能は、図面に記載された順序とは異なる順序で発生されてもよいことに留意されたい。例えば、2つの連続的に示されるブロックは、実際には基本的に並行して実行されてもよく、場合によってはこれらは逆の順序で実行されてもよく、係る機能によって定められる。なお、ブロック図及び/又はフローチャートにおける各ブロック、及びブロック図及び/又はフローチャートにおけるブロックの組み合わせは、予め設定された機能又は操作を実行する専用のハードウェアによるシステムで実現されてもよく、又は専用ハードウェアとコンピュータ命令との組み合わせで実現されてもよい。
【0123】
本開示にかかるユニットは、ソフトウェアの方式で実現されてもよく、ハードウェアの方式で実現されてもよい。記述されたユニットは、プロセッサに設けられてもよく、例えば、スキャンデータ取得ユニットと、処理ユニットと、位置特定ユニットと、側性特定ユニットとを含むプロセッサとして記述されてもよい。ただし、これらのユニットの名称は、場合によっては該ユニット自体を限定するものではない。
【0124】
別の態様として、本開示は、コンピュータ可読媒体をさらに提供し、該コンピュータ可読媒体は、上記実施例に記載の装置に含まれるものであってもよく、単独で存在し、該装置に組み込まれていないものであってもよい。上記コンピュータ可読媒体は、少なくとも1つのプログラムがロードされ、上記少なくとも1つのプログラムが該装置によって実行されるとき、該装置は、被験者のスキャンデータを取得し、ただし、スキャンデータは、被験者の脳の磁気共鳴画像から得られたデータを含み、スキャンデータは、予め設定された数のボクセルにおける各ボクセルに対応する血中酸素濃度依存BOLD信号シーケンスを含む。スキャンデータに基づいて、被験者の少なくとも2つの関心領域ROIを特定し、予め設定された異常検出規則に従って、少なくとも2つのROIに中で少なくとも1つの異常ROIを特定し、少なくとも1つの異常ROIに基づいて標的を特定する。
【0125】
以上の記載は、単に本開示の好ましい実施例及び運用技術原理についての説明である。当業者であれば、本開示に係る発明の範囲は、上記の技術的特徴の特定の組み合わせに限定されるものではなく、上記の発明思想を逸脱しない限り、上記の技術的特徴又はその均等な特徴によって任意に組み合わせて形成される他の技術的形態も含むことを理解すべきである。例えば、上記特徴を本開示に開示される(限定されない)類似する機能を有する技術的特徴と相互に置き換えて形成される技術的手段である。
本開示の実施例に記載の技術形態の間は、衝突しない場合、任意に組み合わせてもよい。
【0126】
以上のように、本開示の具体的な実施形態に過ぎず、本開示の保護範囲はこれに限定されず、当業者が本開示に開示された技術的範囲内において、変更又は置換を容易に想到することができ、いずれも本開示の保護範囲内に含まれるべきである。したがって、本開示の保護範囲は、特許請求の範囲の保護範囲に準じる。
【国際調査報告】