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特表2024-528516空気アクセスが最小限の金属空気セル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-30
(54)【発明の名称】空気アクセスが最小限の金属空気セル
(51)【国際特許分類】
   H01M 12/06 20060101AFI20240723BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20240723BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
H01M12/06 A
H01M12/06 G
H01M12/06 B
H01M10/44 Z
H01M10/48 P
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580438
(86)(22)【出願日】2022-06-28
(85)【翻訳文提出日】2023-12-27
(86)【国際出願番号】 US2022035329
(87)【国際公開番号】W WO2023278457
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】17/365,328
(32)【優先日】2021-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516268286
【氏名又は名称】エナジャイザー ブランズ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(74)【代理人】
【識別番号】100176418
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 嘉晃
(72)【発明者】
【氏名】ラブサム トニー
(72)【発明者】
【氏名】カニア ジョン
(72)【発明者】
【氏名】プロフィト ダニエレ
(72)【発明者】
【氏名】カー キャサリン
(72)【発明者】
【氏名】シヴェルトセン マーク
(72)【発明者】
【氏名】ポズドル イアン
【テーマコード(参考)】
5H030
5H032
【Fターム(参考)】
5H030BB21
5H030FF42
5H030FF44
5H032AA02
5H032AS03
5H032AS11
5H032CC01
5H032CC16
5H032HH01
5H032HH04
5H032HH08
(57)【要約】
バッテリは、空気カソード、アノード、水性電解質、及びハウジングを含み、ハウジングは、総通気面積を画定する、1つ以上の空気アクセスポートを含み、バッテリは、電流密度を呈し、電流密度の総通気面積に対する比は、約100mA/mm2よりも大きく、水性電解質は、両性フッ素界面活性剤を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気カソード、アノード、水性電解質、及びハウジングを備える、バッテリであって、
前記ハウジングは、総通気面積を画定する、1つ以上の空気アクセスポートを備え、
前記バッテリは、0.9Vでのセル制限電流、及び1.15Vでのセル制限電流を呈し、
1.15Vでのセル制限電流の、0.9Vでのセル制限電流に対する比は、約0.6よりも大きく、
前記水性電解質は、両性フッ素界面活性剤を含む、バッテリ。
【請求項2】
前記比が、約0.75よりも大きい、請求項1に記載のバッテリ。
【請求項3】
前記比が、約0.6~約0.9である、請求項1に記載のバッテリ。
【請求項4】
公称直径約8mm及び公称高さ約5.4mmを有する、請求項1に記載のバッテリ。
【請求項5】
公称直径約8mm及び公称高さ約3.6mmを有する、請求項1に記載のバッテリ。
【請求項6】
前記バッテリが、公称外部容積約180mm3~約270mm3を有する、請求項1に記載のバッテリ。
【請求項7】
前記バッテリが有する公称電極界面面積が約35mm2である、請求項1に記載のバッテリ。
【請求項8】
前記総通気面積が、約0.030mm2~約0.13mm2である、請求項1に記載のバッテリ。
【請求項9】
1.15Vでの前記セル制限電流が、約4mA~約15mAである、請求項1に記載のバッテリ。
【請求項10】
空気カソード、アノード、水性電解質、及びハウジングを備える、バッテリであって、
前記ハウジングは、総通気面積を画定する、1つ以上の空気アクセスポートを備え、
前記バッテリは、前記アノードと前記カソードとの間に界面表面積を有し、
通気面積の界面面積に対する比は、約3×10-3以下であり、但し、前記バッテリがサイズ13のバッテリである場合、前記比は、約2.4×10-3以下であり、
前記水性電解質は、両性フッ素界面活性剤を含む、バッテリ。
【請求項11】
前記比が、約1.0×10-3~約3.0×10-3である、請求項10に記載のバッテリ。
【請求項12】
前記比が、約約1.0×10-3~約2.4×10-3である、請求項10に記載のバッテリ。
【請求項13】
前記比が、約約1.4×10-3~約3.0×10-3である、請求項10に記載のバッテリ。
【請求項14】
公称直径約8mm及び公称高さ約5.4mmを有する、請求項10に記載のバッテリ。
【請求項15】
公称直径約8mm及び公称高さ約3.6mmを有する、請求項10に記載のバッテリ。
【請求項16】
前記バッテリが、公称外部容積約180mm3~約270mm3を有する、請求項10に記載のバッテリ。
【請求項17】
前記バッテリが、公称電極界面面積約25~50mm2を有する、請求項10に記載のバッテリ。
【請求項18】
総通気面積が、約0.030mm2~約0.115mm2である、請求項10に記載のバッテリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年7月1日に出願された米国特許出願第17/365,328号の優先権を主張し、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本技術は、概して、金属空気バッテリの分野及びその使用に関連している。
【発明の概要】
【0003】
一態様では、空気カソード、アノード、水性電解質、及びハウジングを含む、バッテリが提供され、ハウジングは、総通気面積を画定する、1つ以上の空気アクセスポートを備え、バッテリは、1.15Vでのセル制限電流を呈し、1.15Vでのセル制限電流の総通気面積に対する比は、約100mA/mm2よりも大きく、水性電解質は、両性フッ素界面活性剤を含む。いくつかの実施形態では、比は、約150mA/mm2よりも大きい。いくつかの実施形態では、比は、250mA/mm2よりも大きい。いくつかの実施形態では、比は、約70mA/mm2~約1000mA/mm2である。いくつかの実施形態では、バッテリは、公称直径約8mm及び公称高さ約5.4mmを有する。いくつかの実施形態では、バッテリは、公称直径約8mm及び公称高さ約3.6mmを有する。いくつかの実施形態では、バッテリは、公称外部容積約180mm3~約270mm3を有する。いくつかの実施形態では、バッテリは、公称電極界面面積約35mm2である。いくつかの実施形態では、バッテリは、約25~50mm2の公称電極界面面積を有する。いくつかの実施形態では、総通気面積は、約0.030mm2~約0.115mm2である。いくつかの実施形態では、1.15Vでのセル制限電流は、約4mA~約15mAである。
【0004】
別の態様では、空気カソード、アノード、水性電解質、及びハウジングを備える、バッテリが提供され、ハウジングは、総通気面積を画定する、1つ以上の空気アクセスポートを備え、バッテリは、アノードとカソードとの間に界面表面積を有し通気面積の界面面積に対する比は、約3×10-3以下であり(但し、バッテリがサイズ13のバッテリである場合、比は、約2.4×10-3以下である)、水性電解質は、両性フッ素界面活性剤を含む。いくつかの実施形態では、比は、約1.0×10-3~約3.0×10-3である。いくつかの実施形態では、比は、約1.0×10-3~約2.4×10-3である。いくつかの実施形態では、比は、約1.4×10-3~約3.0×10-3である。いくつかの実施形態では、バッテリは、公称直径約8mm及び公称高さ約5.4mmを有する。いくつかの実施形態では、バッテリは、公称直径約8mm及び公称高さ約3.6mmを有する。いくつかの実施形態では、バッテリは、公称外部容積約180mm3~約270mm3を有する。いくつかの実施形態では、バッテリが有する公称電極界面面積は、約25~50mm2である。いくつかの実施形態では、総通気面積は、約0.030mm2~約0.115mm2である。
【0005】
更なる態様では、空気カソード、アノード、水性電解質、及びハウジングを備える、バッテリが提供され、ハウジングは、総通気面積を画定する、1つ以上の空気アクセスポートを備え、バッテリは、0.9Vでのセル制限電流、及び1.15Vでのセル制限電流を呈し、1.15Vでのセル制限電流の、0.9Vでのセル制限電流に対する比は、約0.6よりも大きく、水性電解質は、両性フッ素界面活性剤を含む。いくつかの実施形態では、比は、約0.7よりも大きい。いくつかの実施形態では、比は、0.75よりも大きい。いくつかの実施形態において、比は、約0.6~0.9である。いくつかの実施形態では、バッテリは、公称直径約8mm及び公称高さ約5.4mmを有する。いくつかの実施形態では、バッテリは、公称直径約8mm及び公称高さ約3.6mmを有する。いくつかの実施形態では、バッテリは、公称外部容積約180mm3~約270mm3を有する。いくつかの実施形態では、公称電極界面面積は、約35mm2である。いくつかの実施形態では、総通気面積は、約0.030mm2~約0.13mm2である。いくつかの実施形態では、1.15Vでのセル制限電流は、約4mA~約15mAである。
【0006】
更に別の態様では、空気カソード、アノード、水性電解質、及びハウジングを備える、バッテリが提供され、ハウジングは、総通気面積を画定する、1つ以上の空気アクセスポートを備え、バッテリは、0.9Vでのセル制限電流を呈し、バッテリは、制限電流の半分に等しい電流で放電されると、その0.9Vまでの放電の50%を通して、1.17V以上の電圧を維持し、水性電解質は、両性フッ素界面活性剤を含む。
【0007】
更なる態様では、バッテリが提供され、バッテリは、空気カソード、アノード、水性電解質、及びハウジングを備え、ハウジングは、総通気面積を画定する、1つ以上の空気アクセスポートを備え、バッテリは、0.9Vでのセル制限電流を呈し、バッテリは、制限電流の3分の1に等しい電流で放電されると、その0.9Vまでの放電の50%を通して、1.20V以上の電圧を維持し、水性電解質は、両性フッ素界面活性剤を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】例示的な電気化学セルを示す、断面概略図である。
図2】実施例による、ANSI/IEC試験に従って80%RH(相対湿度)において10/2mAで放電された比較用「標準」セルに対する、本技術のサイズ13のセルの実施形態に係る容量データの箱ひげ図である。
図3】実施例による、ANSI/IEC試験に従って80%RH(相対湿度)において10/2mAで放電された比較用「標準」セルに対する、本技術のサイズ312のセルの実施形態に係る容量データの箱ひげ図である。
図4】実施例による、ANSI/IEC試験に従って20%RH(相対湿度)において10/2mAで放電された比較用「標準」セルに対する、本技術のサイズ312のセルの実施形態に係る容量データの箱ひげ図である。
図5】例による、1mA/cm2及び5mA/cm2の電流引き込みを、3つの異なる電解質を用いる金属空気セルのカソードに適用したときの、純亜鉛参照に対する電位のプロットである。
図6】実施例による、本出願(左)によるセル対商用セル(右)に係る、1.15Vでのセル制限電流の、0.9Vでのセル制限電流に対する比のプロットである。
図7】実施例による、本出願によるセル(黒丸)及び商用セル(中空ひし形)による、1.15Vでの制限電流対0.9Vでの制限電流の散布図である。
図8】本出願によるサイズ13のセル(2個)及び参照用の商用セル(1個)に係る、定電流での放電曲線のセットであり、放電中の閉回路電圧(V)対容量(mAh)を示す。実施例8を参照されたい。
図9】本出願によるサイズ13のセル(2個)及び参照用の商用セル(1個)に係る、定電流での放電曲線のセットであり、放電中の閉回路電圧(V)対容量(mAh)を示す。実施例8を参照されたい。
図10】実施例による、ANSI/IEC試験に従って50%RH(相対湿度)において10/2mAで放電された、0.0330mm2~0.0869mm2の範囲の3つの異なる総通気面積を有する、本技術のサイズ312のセルの実施形態に係る容量データの箱ひげ図である。
図11】実施例による、ANSI/IEC試験に従って50%RH(相対湿度)において5/2mAで放電された、0.0330mm2~0.0869mm2の範囲の3つの異なる総通気面積を有する、本技術のサイズ312のセルの実施形態に係る容量データの箱ひげ図である。
図12】実施例による、ANSI/IEC試験に従って50%RH(相対湿度)において12/3mAで放電された、0.0499mm2~0.1295mm2の範囲の3つの異なる総通気面積を有する、本技術のサイズ13のセルの実施形態に係る容量データの箱ひげ図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、様々な実施形態について説明する。特定の実施形態は、網羅的な説明として、又は本明細書で考察されるより広範な態様への限定として意図されないことに留意すべきである。特定の実施形態と併せて記載される一態様は、必ずしもその実施形態に限定されるものではなく、任意の他の実施形態とともに実施することができる。
【0010】
本明細書で使用される場合、「約」は、当業者によって理解され、それが使用される文脈に応じてある程度変化する。当業者には明らかでない用語の使用が存在する場合、それが使用される文脈を考慮すると、「約」は、特定の用語のプラス又はマイナス10%までを意味し、例えば、「約10重量%」は、「9重量%~11重量%」を意味することが理解されるであろう。「約」が用語の前にくる場合、用語は、「約」によって修正されない用語と同様に、「約」のついた用語を開示するものと解釈されるべきであり、例えば、「約10重量%」は、「10重量%」と同様に、「9重量%~11重量%」を開示することが理解されるべきである。
【0011】
要素を記載する文脈(特に、次の特許請求の範囲の文脈において)における、「a」、「an」及び「the」という用語並びに同様の指示対象の使用は、本明細書中に別段の指示がない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方を包含すると解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の言及は、本明細書中に別段の指示がない限り、単に、範囲に含まれる各個別の値を個々に参照する簡略方法として機能することを意図しており、各個別の値は本明細書に個別に言及されているかのように、本明細書に組み入れられる。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書中で別段の指示がない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実施され得る。本明細書で提供される任意の及び全ての例、又は例示的な用語(例えば、「~など」)の使用は、単に実施形態をよりよく示すことを意図しており、別段の記載がない限り、特許請求の範囲の限定を提示するものではない。本明細書中のいかなる文言も、不可欠なものとして、特許請求されない要素を示すとして解釈されるべきではない。
【0012】
概して、「置換された」は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、又はエーテル基(例えば、アルキル基)を指し、以下に定義されるように(例えば、アルキル基)、その中に含有される水素原子への1つ以上の結合は、非水素原子又は非炭素原子への結合によって置き換えられる。置換基はまた、炭素又は水素原子への1つ以上の結合が、ヘテロ原子への二重又は三重結合を含む1つ以上の結合によって置換される基を含む。したがって、別段の定めがない限り、置換された基は1つ以上の置換基で置換される。いくつかの実施形態では、置換された基は、1、2、3、4、5、又は6つの置換基で置換されている。置換基の例としては、ハロゲン(すなわち、F、Cl、Br、及びI)、ヒドロキシル、アルコキシ、アルケノキシ、アルキノキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ、ヘテロシクリルオキシ、及びヘテロシクリルアルコキシ基、カルボニル(オキソ)、カルボキシル、エステル、ウレタン、オキシム、ヒドロキシルアミン、アルコキシアミン、アラルコキシアミン、チオール、硫化物、スルホキシド、スルホン、スルホニル、スルホンアミド、アミン、N-酸化物、ヒドラジン、ヒドラジド、ヒドラゾン、アジド、アミド、尿素、アミジン、グアニジン、エナミン、イミド、イソシアネート、イソチオシアネート、シアネート、チオシアネート、イミン、ニトロ基、ニトリル(すなわち、CN)などが挙げられる。
【0013】
本明細書で使用される場合、「アルキル」基は、1~約20個の炭素原子、典型的には、1~12個の炭素、又はいくつかの実施形態では、1~8個の炭素原子を有する、直鎖及び分岐鎖アルキル基を含む。アルキル基は、置換又は非置換であり得る。直鎖アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、及びn-オクチル基が挙げられる。分岐鎖アルキル基の例としては、イソプロピル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、ネオペンチル基、及びイソペンチル基が挙げられるが、これらに限定されない。代表的な置換アルキル基は、例えば、アミノ基、チオ基、ヒドロキシ基、シアノ基、アルコキシ基、及び/又はF基、Cl基、Br基、及びI基などのハロ基で、1回以上置換されてもよい。本明細書で使用される場合、ハロアルキルという用語は、1つ以上のハロ基を有するアルキル基である。いくつかの実施形態では、ハロアルキルは、過ハロアルキル基を指す。
【0014】
シクロアルキル基は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、及びシクロオクチル基などの環状アルキル基であるが、これらに制限されない。いくつかの実施形態では、シクロアルキル基は3~8個の環員を有するが、他の実施形態では、環炭素原子の数は3~5、6、又は7個の範囲である。シクロアルキル基は、置換又は非置換であり得る。シクロアルキル基は、以下に限定されないが、ノルボルニル基、アダマンチル基、ボルニル基、カンフェニル基、イソカンフェニル基、及びカレニル基などの多環式シクロアルキル基、並びに、以下に限定されないが、デカリニルなどの縮合環を更に含む。シクロアルキル基はまた、上記で定義された、直鎖又は分岐鎖アルキル基で置換されている環を含む。代表的な置換シクロアルキル基は、一置換でもよく、又は2回以上置換されていてもよく、例えば、限定するものではないが、2,2-、2,3-、2,4-、2,5-、若しくは2,6-二置換シクロヘキシル基、又は一、二、若しくは三置換ノルボルニル若しくはシクロヘプチル基であり、これらは、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、チオ基、ヒドロキシ基、シアノ基、及び/又はハロ基で置換され得る。
【0015】
アルケニル基は、2~約20個の炭素原子を有し、かつ更に少なくとも1つの二重結合を含む、直鎖、分岐鎖、又は環状のアルキル基である。いくつかの実施形態では、アルケニル基は、1~12個の炭素、又は、典型的には、1~8個の炭素原子を有する。アルケニル基は、置換又は非置換であり得る。アルケニル基は、例えば、ビニル基、プロペニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、イソブテニル基、シクロヘキセニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキサジエニル基、ブタジエニル基、ペンタジエニル基、及びヘキサジエニル基を特に含む。アルケニル基は、アルキル基と同様に、置換されていてもよい。二価アルケニル基、すなわち、2つの結合点を有するアルケニル基としては、CH-CH=CH2、C=CH2、又はC=CHCH3が挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
「アルコキシ基」という用語は、Hが、本明細書に定義される、1~12個の炭素原子を含むアルキル基に置換されている、ヒドロキシ基(OH)を指す。いくつかの実施形態では、アルコキシ基は、1~7個又は1~4個の炭素原子を有する。アルコキシ基は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペントキシ基、イソペントキシ基、3-メチルブトキシ基、2,2-ジメチルプロポキシ基、n-ヘキソキシ基、2-メチルペントキシ基、2,2-ジメチルブトキシ基、2,3-ジメチルブトキシ基、n-ヘプトキシ基、2-メチルヘキソキシ基、2,2-ジメチルペントキシ基、2,3-ジメチルペントキシ基、シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、1-メチルシクロプロピルオキシ基などであり得る。いくつかの実施形態では、アルコキシ基は、O-C1-C6-アルキル基を含む。他の実施形態では、アルコキシ基は、O-C1-C4-アルキル基を含む。
【0017】
本明細書で使用される場合、「アミン」(又は、「アミノ」)という用語は、-NR100101基を指し、式中、R100及びR101は、独立して、水素、又は、本明細書で定義されるように、置換若しくは非置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリルアルキル若しくはヘテロシクリル基である。いくつかの実施形態では、アミンは、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、又はアルキルアリールアミノである。他の実施形態では、アミンは、NH2、メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、ジエチルアミノ、プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、フェニルアミノ、又はベンジルアミノである。
【0018】
本明細書で使用される場合、「ハロゲン」又は「ハロ」という用語は、臭素、塩素、フッ素、又はヨウ素を指す。いくつかの実施形態では、ハロゲンは、フッ素である。他の実施形態では、ハロゲンは、塩素又はフッ素である。
【0019】
本明細書で使用される場合、「ヒドロキシル」という用語は、-OH又はそのイオン化された形態-O-を指し得る。
【0020】
本明細書で使用される場合、「ニトリル」又は「シアノ」という用語は、-CN基を指す。
【0021】
本明細書で使用される場合、「チオ」という用語は、酸素が硫黄で置換された-S-基又はエーテルを指す。
【0022】
本明細書で使用される場合、「両性フッ素界面活性剤」という用語は、少なくとも1つのカチオン性基、及び/又は一級、二級、三級、及び/又は四級アミン基などの、カチオン性基にプロトン化され得る基を含む、フッ素界面活性剤を指し、少なくとも1つのアニオン性基、及び/又はカルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基などのアニオン性基に脱プロトン化され得る基は、それらの任意の1つ以上の塩である。
【0023】
本明細書で使用される場合、「ベタイン官能性」という用語は、正荷電カチオン性官能基及び負荷電官能基を有する中性化合物を指す。いくつかの実施形態では、カチオン性官能基は、水素原子を有さない四級アンモニウム又はホスホニウムカチオンであり得る。いくつかの実施形態では、負荷電官能基は、カルボキシレート基であり得る。
【0024】
本明細書で使用される場合、「短鎖ペルフルオロ置換基」という用語は、C1-C7ペルフルオロ置換基を指す。
【0025】
本明細書で使用される場合、「亜鉛アノード」という用語は、アノード活性材料として亜鉛を含む、アノードを指す。
【0026】
本明細書で使用される場合、「ppm」という用語は、別途明示的に示されない限り、重量での百万分率を意味する。
【0027】
本明細書で使用される場合、両性フッ素界面活性剤については、「ppm」という用語は、別途明示的に示されない限り、活性成分の重量での百万分率を意味する。
【0028】
金属空気セルの設計では、電流を制限するという観点から、セルの特性を定義することは有用である。セル制限電流試験は、セルを特定の電圧で特定の時間保持し、設定された時間エンドポイントでセルによって提供された結果として生じる電流を測定することによって実行される。セルが最初に(セルからの電流ドレインを調整して設定電圧に達する器具を使用して)電圧に保持されると、電流は最初は高くなり、漸近的に比較的一定のレベルまで低下する。典型的には、設定された時間は、このような比較的一定の範囲内に電流がある点で選択される。
【0029】
本明細書で使用される場合、「0.9Vでのセル制限電流」は、セルが0.9Vの電圧で保持されていた60秒の最後に、0.9Vで金属空気電気化学セルによって提供された電流を意味する。この試験の前に、セルは少なくとも60秒間いかなる負荷もかかるべきではない。
【0030】
本明細書で使用される場合、「1.15Vでのセル制限電流」は、セルが1.15Vの電圧で保持されていた60秒の最後に、1.15Vで金属空気電気化学セルによって提供された電流を意味する。この試験の前に、セルは少なくとも60秒間いかなる負荷もかかるべきではない。
【0031】
ここで、金属空気電気化学セルにおける酸素利用は、限られた空気アクセスを有するセルハウジングにおける、フッ素化両性界面活性剤を有する電解質と、水酸化リチウムとの組み合わせによって、予想外に改善され得ることが観察されている。電解質配合物は、所与の電流引き込みのためにセルによって必要とされる酸素アクセスの低減を可能にし、かつ/又は、望ましい閉回路電圧を維持しながら、閉セル電圧及びカソードハーフセル電圧を増加させることが見出されている。酸素利用におけるこのようなより高い効率及びより高いセル電圧は、セルの外部へのより小さい通気面積の使用を可能にし、水分(H2O蒸気)及び二酸化炭素(CO2)の有害な影響への曝露を低減する。酸素利用におけるこのようなより高い効率及びより高いセル電圧はまた、空気アクセスポートと活性カソード材料との間のより少ない多孔質拡散層の使用も可能にし、また、水分及びCO2の有害な影響への曝露を低減する。これらの変化は、酸素へのアクセスを低下させ、低湿度及び高湿度条件、並びにCO2濃度が高い環境での性能を高める。
【0032】
両性フッ素界面活性剤からなる高電圧アノード配合物と、ドレインレート使用要件を依然として満たしながら、セル制限電流が可能な限り低いレベルまで低下するように設計されたセルとの組み合わせを、本明細書に記載する。本技術は、空気カソードと、アノードと、両性界面活性剤を含む、水性電解質と、空隙の総面積(「通気面積」)を画定する1つ以上の空気アクセスポートを含む、ハウジングと、を含む、バッテリを提供する。いくつかの変数の通気面積に対する比は、様々なセルについて試験されている。
【0033】
本明細書に記載の驚くべき観察によれば、両性フッ素界面活性剤が本技術のバッテリの電解質で使用されると、空気アクセスポートによって画定された最小必要総通気面積は驚くほど低いことが見出された。例として、本技術の改良されたバッテリでは、サイズ312のセルの総通気面積は0.0660mm2であり得る(標準/従来寸法0.0869mm2から24%低減)。いくつかの実施形態では、サイズ312の通気面積は、0.033mm2であり得る。いくつかの実施形態では、サイズ312の通気面積は、約0.01mm2~約0.1mm2、又は約0.03mm2~約0.07mm2であり得る。例として、本技術の改良されたバッテリでは、サイズ13のセルの総通気面積は0.0998mm2であり得る(標準/従来寸法0.1295mm2から30%低減)。いくつかの実施形態では、サイズ13の通気面積は、0.1295mm2、又は約0.0499mm2であり得る。いくつかの実施形態では、サイズ13の通気面積は、約0.04mm2~約0.15mm2、又は約0.05mm2~約0.13mm2、又は約0.09mm2~約0.13mm2であり得る。理論に縛られるものではないが、低減された通気面積は、高電圧かつより効率的な電解質配合物(すなわち、両性フッ素界面活性剤、及び、任意選択的に、LiOH・xH2Oを含む)によって可能になることが提案され、両性フッ素界面活性剤は、ガス化信頼性を維持しながら電圧抑制を低減するのに役立ち得、アノード内の成分の組み合わせは、セル電圧及びセル性能の大幅な向上をもたらし得る。
【0034】
基準点として、サイズ13のセルは、直径約8.0mm、高さ約5.4mmの外形寸法を有し、一方、サイズ312のセルは、直径約8.0mm、高さ約3.6mmの外形寸法を有する。これらは公称寸法であり、典型的な実寸法は、公称寸法よりも0~0.2mm小さい。外部容積は、ここでは、セルが公称寸法の円筒であるかのように計算され、以下の表1に示されるが、実際のセル容積は、製造された各セルの実寸法の偏差と、そのような小さなデバイスの逆方向挿入を防止するためのノッチを組み込んだセルの一端と、の両方に起因し、わずかに小さくなり得る。電極界面面積は、セルの内側の絶縁体(6.7mm)を貫通する穴の直径に基づいて、計算される。
【表1】

【表2】
【0035】
上述のように、提供された寸法はおおよそのものであり、それぞれの公称値からそれぞれの実際の値までの範囲であり得る。したがって、計算され得る外部容積は、セルについて約150mm3~約300mm3の範囲であり得ることに留意されたい。更に、いくつかのセルの界面面積は、セルハウジングの正確な厚さの変動、セル絶縁体の実直径などを含む、いくつかの理由で変動し得る。したがって、界面面積は、約25mm2~約50mm2の範囲であり得る。更に広く見れば、類似のフォーマットセルの界面面積は、15~75mm2の範囲である。
【0036】
1.15Vでのセルのセル制限電流は、セル設計によって決まる。この要素に影響を与える設計要因には、セルの通気面積、空気アクセスポートとカソード活性層との間の拡散層の多孔性、並びに電解質及びアノード素子が挙げられるが、これらに限定されない。最終的に、これらの設計要素は、セルが酸素に効率的にアクセスして利用する能力に影響を与える。したがって、1.15Vでの制限電流の通気面積に対する比は、セルのサイズに関係なく、それらの能力の尺度を提供する。様々な実施形態によれば、1.15Vでの制限電流の通気面積に対する比が100mA/mm2よりも大きいセルが、提供されてもよい。いくつかの実施形態では、この比は、約150mA/mm2よりも大きくてもよく、200mA/mm2よりも大きくてもよく、210mA/mm2よりも大きくてもよく、又は250mA/mm2よりも大きくてもよい。他の実施形態では、この比は、約10mA/mm2~約1000mA/mm2、約80mA/mm2~約500mA/mm2、約70mA/mm2~約300mA/mm2、約70mA/mm2~約220mA/mm2、又は約100mA/mm2~約200mA/mm2であり得る。
【0037】
電極容量の別の尺度は、通気面積と界面面積、アノードとカソードとの間の面積との関係において見出される。これらの値の比は、カソードの活性を電解質及びアノード電気化学反応に結合する電極界面の量と比較して、カソードへの空気アクセスを可能にする、空気アクセスポートの相対面積の尺度を提供する。理論に縛られるものではないが、通気面積の界面面積に対する比は、カソード-アノード界面の三相境界の特性によって決定されるように、アノードとともに使用するための酸素の活性化及び輸送、並びに電解質への組み込みと対比した、セル内への酸素の輸送の相対的な力学的特性を示す。界面面積は、体積、ねじれ及び濡れ性が一定であると仮定した、必要な三相境界の量の大まかな推定値である。必要な通気面積が小さい場合、セルに入る酸素が少なくなり、電解質中のヒドロキシル基及び酸素イオンへの変換に使用可能な酸素が少なくなる。したがって、アノード上の反応の過電圧は、電解質中で必要な過剰反応物が少ないため、より小さくなければならないことが前提となっている。代替的に、電解質中の反応物に変換するために、カソード部位において高い活性があり得る。通気面積の界面面積に対する比は、約1.0×10-4以上、又は約1.0×10-4以上であり得る。通気面積の界面面積に対する比は、約1.0×10-4~約3.0×10-3であり得る。通気面積の界面面積に対する比は、約1.0×10-3~約3.0×10-3であり得る。様々な実施形態では、通気面積の界面面積に対する比は、約1.0×10-3~約3.0×10-3、約1.0×10-3~約2.4×10-3、又は約1.4×10-3~約3.0×10-3であってもよい。
【0038】
セル活性及び安定性の更なる尺度は、1.15Vでのセル制限電流の、0.9Vでのセル制限電流に対する比を測定することによって、見出され得る。1.15Vでのセル制限電流は、補聴器デバイスの操作窓における適正電圧である、1.15Vでのセルによって生成され得る最大電流を表す。0.9Vでのセル制限電流は、このバッテリが見るべき最も低い適正動作電圧での最大電流を表す。0.9Vセル制限電圧は、均衡とは程遠い運動現象を表す。これらの2つの値の比を研究することにより、バッテリ設計によって決定されるように、異なる律速段階及び機構が、これらの2つの電位で作用していることを観察することが可能である。様々な実施形態によれば、1.15Vでのセル制限電流の、0.9Vでのセル制限電流に対する比が約0.6よりも大きいセルが提供され得る。いくつかの実施形態では、この比は、約0.7よりも大きくてもよく、又は0.75よりも大きくてもよい。他の実施形態では、この比は、約0.6~0.9であり得る。
【0039】
0.9Vでのセル制限電流はまた、電流がカソードへの酸素の可用性によって制限されるときに、セルが提供することができる電流を示す。この電流は、以下の2つの意味で「制限」されている。1つ目は、セルが0.9V(電気化学的な定義)で保持されている場合、最初の約30秒後、電流の経時変化が少ないためであり、2つ目は、0.9Vを下回る電圧の更なる低下がもたらす、セルの分極曲線上のこの電圧の位置に起因する、電流の変化が少ないためである。特定の用途のセルの設計では、空気アクセスポートのサイズ及び数、並びに、酸素が反応部位に到達するために拡散しなければならない他の材料層の多孔性を選択する。セルは、使用時にセルの所望の放電電流範囲に対応するために、適切な制限電流を有する必要がある。しかしながら、0.9Vでの制限電流が必要以上に高い場合、セルは悪影響を受ける。この悪影響は、水分(H2O蒸気)及び二酸化炭素(CO2)が、空気アクセスポート及び膜層を通して、非常に類似した拡散特性を有するためである。したがって、0.9Vでのより高い制限電流は、水蒸気及び二酸化炭素のより多くの拡散のためのプロキシとして機能する。セル内外の水蒸気の拡散は、セルが平衡湿度のある環境にないときに常に発生し、セルの構成を変化させ、その性能に悪影響を及ぼす。同様に、二酸化炭素は、電解質中に溶解し、イオン伝導率を低下させ、セルの性能を低下させることが知られている。したがって、セルは、所望の放電電流レートに対応しながら、0.9Vでの可能な限りの最低制限電流を有することが望ましい。
【0040】
前述のように、1.15Vで測定された制限電流は、セルの動作電圧で測定されるため、セルの使用可能な最大定電流負荷の近似値である。注目すべきことは、この測定値は時間的に「制限的な」だけであるが、0.9Vで測定された制限電流とは異なり、電圧の小さな変化が電流の大きな変化をもたらす分極曲線のやや平坦な部分上にあるため、電圧の小さな変化に敏感である。したがって、1.15Vでの制限電流の、0.9Vでの制限電流に対する比が高いセルは、0.9Vでのより低い制限電流を有し、したがって、より低い水分及び二酸化炭素輸送を有する一方で、通常のセルと同じ電流をデバイスの動作条件下で提供するように設計することができるため、有利である。
【0041】
ここで、本明細書に記載のセルでは、以前に必要とされたよりも低い、0.9Vでの制限電流をセルが有しながら、連続電流が供給され得ることが見出されている。連続電流のわずか2倍の、0.9Vでの制限電流が必要である。したがって、6mAの電流については、わずか12mAの0.9Vでの制限電流が必要であり、本セルは、水分及び二酸化炭素輸送の低減のために、優れた結果を提供する。
【0042】
上記の規則は、本出願の電圧要件及び電流パルス要件に応じて変更することができるが、一般原理及び設計の違いは依然として適用される。通常のセルの場合、必要な最大連続電流の2倍である、0.9Vでの制限電流が適切である場合、本発明のセルでは、連続電流のわずか1.33倍の、0.9Vでの制限電流が同様に適切である。この場合、要求された連続電流が9mAである場合、通常のセルは、18mAの0.9Vでの制限電流で設計される必要があるが、本発明のセルは、12mAの0.9Vでの制限電流で設計され得る。
【0043】
本明細書のいずれの実施形態においても、両性フッ素界面活性剤は、ペルフルオロオクタン酸に分解することができない、短鎖ペルフルオロ置換基を含み得る。本明細書のいずれの実施形態においても、両性フッ素界面活性剤は、ベタイン官能性を含み得る。例えば、両性フッ素界面活性剤は、式(I)の化合物として表され得:
【化1】
式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8は、各々独立して、水素基、アルキル基、アルケニル基、又はシクロアルキル基であり、X1は、-C(O)-、-SO2-、-C(O)NRa-、-SO2NRa-、-CO2-、又は-SO2O-であり、Raは、H基又はアルキル基であり、m及びpは、各々独立して、0、1、2、3、4、5、又は6であり、n及びrは、各々独立して、1、2、3、4、又は5である。いくつかの実施形態では、R1~R6は、Hであり、R7及びR8は、C1~C4アルキルであり、n及びpは、2であり、mは、4、5、又は6のいずれかであり、X1は、SO2であり、rは、1である。
【0044】
本明細書のいずれの実施形態においても、両性フッ素界面活性剤は、約200ppm~約20,000ppmで電解質中に存在し得る。したがって、本明細書のいずれの実施形態においても、電解質は、約500ppm、約600ppm、約700ppm、約800ppm、約900ppm、約1,000ppm、約2,000ppm、約3,000ppm、約4,000ppm、約5,000ppm、約6,000ppm、約7,000ppm、約8,000ppm、約9,000ppm、約10,000ppm、約11,000ppm、約12,000ppm、約13,000ppm、約14,000ppm、約15,000ppm、約16,000ppm、約17,000ppm、約18,000ppm、約19,000ppm、約20,000ppmの量、又はこれらの値のうちのいずれか2つの間の範囲(両端点を含む)の両性フッ素界面活性剤を含み得る。例えば、本明細書のいずれの実施形態においても、両性フッ素界面活性剤は、約2000ppm~約15000ppm又は約3000ppm~約12000ppmの電解質中に存在し得る。別の例として、本明細書のいずれの実施形態においても、電解質中の両性フッ素界面活性剤濃度は、約10,000ppmであり得る。
【0045】
バッテリは、亜鉛/酸化銀バッテリ、亜鉛/二酸化マンガンバッテリなどの、金属空気バッテリの設計に従うか、又はそれと一致して構成され得る。例えば、バッテリは、金属空気ボタンサイズバッテリに適した仕様書どおりに設計され得る。更に、バッテリの形状は、アノードが、やや平坦又は皿状の位置で保持されるようにし得る。
【0046】
以降、図1への参照を介した開示は、理解を助けるために提供されるが、本技術の金属空気バッテリに記載された特徴を含めることを義務付けることを意図していない。しかしながら、本開示のいずれの実施形態においても、本開示のバッテリは、図1に示すようなものであり得る。図1は、バッテリのセル10において、負極が、(アノード缶24が、その中に含有される電気化学反応性アノード26を有する)アノード缶アセンブリ22と、絶縁ガスケット60と、を含むことを示す。アノード缶24は、ベース壁28と、下方に延びる円周側壁30と、を有する。側壁30は、円周缶足部36で終端する。ベース壁及び側壁30は、概して、アノード缶24内のアノードキャビティ38を画定し、このキャビティは、アノード26を含有する。
【0047】
アノード缶24は、銅と、アルミニウム、シリコン、コバルト、スズ、クロム、亜鉛、及びそれらのうちのいずれか2つ以上の混合物などの金属と、を含む、銅の合金を含み得る。例えば、本明細書に開示のいずれの実施形態においても、アノード缶24全体は、銅の合金を含み得る。
【0048】
カソード42は、セパレータ74の下からカソード缶44までの領域を含む。このカソード42の領域は、多孔質拡散層57、セルロース空気拡散層、及びカソード活性層72を含む。カソード缶44は、底部46、及び直立の円周側壁47を有する。底部46は、略平坦な内面48と、略平坦な外面50と、平坦な外面50上に画定された外周52と、を有する。複数の空気アクセスポート54は、カソード缶44の底部46を通って延在し、底部46を通って、隣接するカソード缶アセンブリ40内に酸素を横断するための道を提供する。空気貯留部55は、カソード缶アセンブリ40を、底部46と、対応する空気アクセスポート54とから、距離をあけて配置する。多孔質拡散層57及びセルロース空気拡散層32は、空気貯留部55を満たす。カソード缶の側壁47は、内面56及び外面58を有する。
【0049】
上述のように、空気アクセスポート54は、亜鉛が電流を生成するボルタセルを形成するセルに酸素が入り得る、通気面積を画定する。本明細書に記載の驚くべき観察によれば、両性フッ素界面活性剤が本技術のバッテリの電解質で使用されると、空気アクセスポート54によって画定された最小必要総通気面積は驚くほど低いことが見出された。先に論じたように、金属空気バッテリが、サイズ13のセルである場合、ハウジング内の空気アクセスポートの全てによって画定された総通気面積は、約0.05mm2~約0.1995mm2である。したがって、サイズ13のセルの本明細書に開示のいずれの実施形態においても、空気アクセスポートの全てによって画定された総通気面積は、約0.05mm2~約0.10mm2、約0.06mm2~約0.095mm2、約0.06mm2~約0.085mm2、約0.07mm2~約0.09mm2、又は約0.08mm2~約0.085mm2であり得る。
【0050】
アノード缶アセンブリ22は、絶縁ガスケット60によって、カソード缶アセンブリ40から電気的に絶縁されている。絶縁ガスケット60は、カソード缶の直立側壁47と、アノード缶の下方に延びる側壁30との間に配置された、円周側壁62を含む。絶縁ガスケット足部64は、概して、アノード缶の缶足部36とカソード缶アセンブリ40との間に配置されている。絶縁ガスケットの上部66は、絶縁ガスケット60の側壁62が、セルの上部に隣接する側壁30と側壁47との間から延在する軌跡に位置決めされている。
【0051】
したがって、セル10の外面68は、アノード缶24の上部の外面の部分と、カソード缶44の側壁47の外面58の部分と、カソード缶44の底部の外面50の部分と、絶縁ガスケット60の上部66の部分と、によって画定されている。
【0052】
絶縁ガスケット60は、少なくとも2つの主要機能を実行する。第一に、絶縁ガスケット60は、アノード26及び/又は電解質が、アノード缶30の側壁の外面とカソード缶47の側壁の内面56との間のセルから漏れることを防止するために、セル10の密封装置として機能する。したがって、絶縁ガスケット60は、そのような漏れを防止するために、適切な液体封止特性を保有する必要がある。概して、そのような特性は、弾性的に変形可能な、様々な熱可塑性ポリマー材料で利用可能である。
【0053】
第二に、絶縁ガスケット60は、電気絶縁を提供し、アノード缶24とカソード缶44との間の全ての実効的で直接的な電気接触を防止する。したがって、絶縁ガスケット60の側壁62は、概して側壁47の上部から側壁30の底部まで、外面と内面56との間のバッテリの円周全体を取り囲み、電気絶縁特性を提供する必要がある。同様に、絶縁ガスケット60の足部64は、側壁30の足部36と、側壁47の下部と、カソード缶アセンブリ40の外周部分との間のセルの円周全体を取り囲み、電気絶縁特性を提供する必要がある。良好な液体封止特性と良好な電気絶縁特性との組み合わせは、典型的には、公知のバッテリグレードのナイロンポリマー材料を所望の構成で成形することによって達成される。
【0054】
電気絶縁要件を満たすために、絶縁ガスケット60は、良好な誘電体絶縁特性を有してもよく、側壁62の周りで最小厚を有してもよく、かつ、側壁30と側壁47との間の電流の伝達を可能にし得る任意のピンホール又は他の欠陥をないものとしてもよい。約200~約250ミクロンの絶縁ガスケットの側壁62の厚さは、従来の電気化学セルで一般的である。100ミクロンほどの薄さは、高性能セルで見出され、先行技術のより厚い絶縁ガスケットと同じ弾性変形可能な熱可塑性ナイロン材料を使用して、本開示のセルで許容される。
【0055】
絶縁ガスケットの適用対象である電池の構造に応じて、例えば、150ミクロン、140ミクロン、127ミクロンなどの中間的な厚さが、いくつかのセルに選択され得る。しかしながら、セルの体積効率が駆動的な考慮事項である場合、好ましい厚さは、例えば、120ミクロン又は110ミクロン~100ミクロンほどの薄さである。したがって、本開示のセル10用の好ましい絶縁ガスケット60の厚さの範囲の下端は、約100ミクロンである。場合によっては、更に薄い絶縁材料を用いる他の絶縁方法は、可能であり、本明細書に開示の材料と不適合ではない。
【0056】
この設計では、絶縁体の内径が、アノードとカソードとの間のおおよその使用可能な界面面積を画定することに留意すべきである。しかしながら、他のセル設計では、異なる構成要素が界面面積を制御し得、界面面積の概念は、その場合でも同様に重要である。
【0057】
本明細書に開示のいずれの実施形態においても、多孔質拡散層57は、厚さ約25~約100ミクロンのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜などの微多孔質疎水性ポリマー材料であり得、これは、そこを通る空気の通過を可能にし、概して、バッテリの電解質を通さない。例えば、多孔質拡散層57は、テフロン(商標)である。本明細書に開示のいずれの実施形態においても、多孔質拡散層57は、空気アクセスポート54と組み合わせて、カソードアセンブリの活性反応の表面領域に酸素を効率的に輸送するために使用され得る。
【0058】
セルロース空気拡散層32は、多孔質拡散層57の下に位置してもよく、保護的な横方向の空気拡散層として機能してもよい。具体的には、セルが作動すると、アノード缶アセンブリ22はセパレータ74を押し下げ、セルロース空気拡散層32は、空気アクセスポート54を完全に覆われないように保護するのに役立つ。
【0059】
活性層72は、集電体としてカソード缶とインターフェース可能な導電性織込ニッケルワイヤ層(図示せず)などの、接続基層を更に含み得る。本明細書に開示のいずれの実施形態においても、炭素は、ニッケルワイヤの導電層を取り囲む、マトリックスを形成し得る。ニッケルは、亜鉛空気セルの環境において腐食をほとんど又はまったく呈さないため、またニッケルが優れた電気伝導体であるため、導電層に使用され得る。本明細書に開示のいずれの実施形態においても、セパレータ74と多孔質拡散層57との間のカソードアセンブリの厚さは、可能な限り小さくてもよい。
【0060】
本技術の金属空気バッテリ用の水性電解質は、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、又はそれらの組み合わせなどの、塩基を含み得る。本明細書に開示の任意の実施形態の電解質は、界面活性剤系、腐食抑制剤(例えば、水酸化インジウム、ポリアニリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及び水酸化リチウムのうちの1つ以上)、ゲル化剤(例えば、ポリアクリレートポリマー)、ガス抑制添加剤(例えば、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、LiOH、及び臭化カルシウムのうちの1つ以上)、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化セシウム、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、スズ酸ナトリウム、スズ酸カリウム、又はそれらのいずれか2種以上の組み合わせを含み得る。
【0061】
界面活性剤系は、少なくとも1つの両性フッ素界面活性剤を含み得る。例えば、界面活性剤系は、少なくとも2つの両性フッ素界面活性剤を含み得る。本明細書のいずれの実施形態においても、界面活性剤系は、1つ以上の両性フッ素界面活性剤、並びに、1つ以上の腐食抑制剤(例えば、水酸化インジウム、ポリアニリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及び水酸化リチウムのうちの1つ以上)、ゲル化剤(例えば、ポリアクリレートポリマー)、ガス抑制添加剤(例えば、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、LiOH、及び臭化カルシウムのうちの1つ以上)、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化セシウム、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、スズ酸ナトリウム、及びスズ酸カリウムを含み得る。本明細書に開示のいずれの実施形態においても、界面活性剤系は、CHEMGUARD(登録商標)S-111、CHEMGUARD(登録商標)S-500、CAPSTONE(登録商標)FS-50、CAPSTONE(登録商標)FS-51、APFS-14、DYNAX DX3001、ZONYL(登録商標)FSK、ZONYL(登録商標)FS-500、又はそれらのいずれか2つ以上の組み合わせであり得る。
【0062】
本明細書の任意の実施形態の電解質及び/又は界面活性剤系は、ヘキシルジフェニルオキシドジスルホン酸、ジエチレントリアミン、オクチルフェノキシポリエトキシエタノール、式(III)の化合物、又はそれらのいずれか2つ以上の組み合わせなどの、追加の界面活性剤を含み得る。式(III)の化合物は、以下を含み:
【化2】
式中、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、及びR21は、各々独立して、水素基、アルキル基、アルケニル基、又はシクロアルキル基であり、X2は、O又はSであり、X3は、OH又はSHであり、wは、5~50である。本明細書に開示のいずれの実施形態においても、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、及びR21は、それぞれ水素であり得る。本明細書に開示のいずれの実施形態においても、X2は、Oであり得る。本明細書に開示のいずれの実施形態においても、X3は、OHであり得る。本明細書に開示のいずれの実施形態においても、w、は5~15であり得る。本明細書に開示のいずれの実施形態においても、w、は5~10であり得る。本明細書に開示のいずれの実施形態においても、R13は、C1-C12アルキル基であり得、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、及びR21は、それぞれ水素であり得、X2は、Oであり得、X3は、OHであり得、wは、5~15であり得る。本明細書に開示のいずれの実施形態においても、R13は、オクチルであり得、wは、5~10であり得る。別の実施形態では、R13は、1,1,3,3-テトラメチルブチルであり、wは、5~10である。
【0063】
本明細書の任意の実施形態の電解質は、ヘキシルジフェニルオキシドジスルホン酸界面活性剤系の一部として、ヘキシルジフェニルオキシドジスルホン酸を更に含み得る。ヘキシルジフェニルオキシドジスルホン酸界面活性剤系は、電圧抑制を低減し得る。本明細書に開示の任意の実施形態のヘキシルジフェニルオキシドジスルホン酸界面活性剤系は、約9.0~約10.0ポンド/ガロンの密度、例えば、約9.8ポンド/ガロンの密度を有し得る。本明細書に開示の任意の実施形態のヘキシルジフェニルオキシドジスルホン酸界面活性剤系は、約2.0未満のpHを有し得る。ヘキシルジフェニルオキシドジスルホン酸は、約50%の水への溶解度を有し得る。
【0064】
本明細書に開示の任意の実施形態のヘキシルジフェニルオキシドジスルホン酸界面活性剤系は、約70重量%~約75重量%のスルホン化ベンゼン、1,1’-オキシビス-sec-ヘキシル誘導体を含み得る。本明細書のいずれの実施形態においても、ヘキシルジフェニルオキシドジスルホン酸界面活性剤系は、約0重量%~約5重量%、又は約2重量%~約4重量%の硫酸を含み得る。本明細書に開示の任意の実施形態のヘキシルジフェニルオキシドジスルホン酸界面活性剤は、約20重量%~約30重量%、又は約22重量%~約28重量%の水を含み得る。例示的な実施形態では、ヘキシルジフェニルオキシドジスルホン酸界面活性剤は、Pilot Chemical Company(2744 East Kemper Road,Cincinnati,Ohio,45241)から入手可能な、Calfax(登録商標)6LA-70であり、Calfax(登録商標)6LA-70は、本開示の他の実施形態では、カップリング剤及び/又はHLB調整剤としても作用し得る。したがって、「界面活性剤」という用語は、Calfax(登録商標)6LA-70で例示されるような限定的な意味で見られるべきではなく、代わりに、この用語は、例えば、ヘキシルジフェニルオキシドジスルホン酸及び/又はヘキシルジフェニルオキシドジスルホン酸界面活性剤系が提供し得る、機能のうちの1つの説明である。
【0065】
本明細書のいずれの実施形態においても、ヘキシルジフェニルオキシドジスルホン酸は、約500ppm~約5,000ppm、例えば、約1,000ppm~約4,000ppm、又は約2,000ppm~約3,000ppmの量で含まれ得る。したがって、ヘキシルジフェニルオキシドジスルホン酸は、約1,000ppm、約2,000ppm、約3,000ppm、約4,000ppm、又は約5,000ppmの量、又はこれらの値のうちのいずれか2つの間の任意の範囲(両端点を含む)で存在し得る。例えば、ヘキシルジフェニルオキシドジスルホン酸は、約3,000ppmの量で存在し得、別の例として、ヘキシルジフェニルオキシドジスルホン酸は、約4,500ppmの量で存在し得る。
【0066】
本明細書に開示の任意の実施形態の電解質は、腐食抑制剤を更に含み得る。腐食抑制剤は、清浄な亜鉛表面を維持するのに役立つために使用され得、これにより、セル電圧及び効率が増加する。腐食抑制剤及び両性フッ素界面活性剤の両方が、セル電圧及びセル性能の向上をもたらし得る。腐食抑制剤は、導電率を向上させ得る。腐食抑制剤は、約100ppm~約15,000ppm、例えば、約200ppm~約300ppmの電解質中に存在し得る。本明細書のいずれの実施形態においても、腐食抑制剤は、約150ppm、約200ppm、約250ppm、約300ppm、約350ppmの量、又はこれらの値のうちのいずれか2つの間の任意の範囲(両端点を含む)で存在し得る。本明細書のいずれの実施形態においても、腐食抑制剤は、約250ppmの量で存在し得る。腐食抑制剤のみに関して、ppm量は、腐食抑制剤が室温で液体である場合の電解質の総重量に基づくか、又は、腐食抑制剤が室温で固体である場合のアノードの亜鉛重量に基づく。
【0067】
本技術の任意の実施形態の腐食抑制剤は、芳香族アミンポリマー、水酸化インジウム、ポリアニリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、水酸化リチウム、水酸化リチウム一水和物、水酸化リチウム水和物、又はそれらのいずれか2つ以上の組み合わせであり得る。例えば、腐食抑制剤は、式(II)の化合物を含み得
【化3】
式中、R9、R10、R11、及びR12は、各々独立して、水素基、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアルケニル基、又は置換若しくは非置換のシクロアルキル基であり、tは、100~500である。本明細書に開示のいずれの実施形態においても、R9、R10、R11、及びR12は、それぞれ水素であり得る。本明細書に開示のいずれの実施形態においても、tは、100~200であり得る。本明細書に開示のいずれの実施形態においても、R9、R10、R11、及びR12は、それぞれ水素であり得、mは、100~200であり得る。
【0068】
上記で考察されるように、腐食抑制剤は、ポリアニリンを含み得る。例えば、ポリアニリンは、エメラルジンポリアニリンであり得る。エメラルジン形態のポリアニリンは、中性であり、室温で高い安定性を有し得る。本明細書に開示の任意の実施形態のポリアニリンは、非酸ドープ形態のポリアニリンであってもよく、導電形態のポリアニリンでなくてもよい。本明細書に開示の任意の実施形態のポリアニリンは、腐食抑制剤として機能し得、かつ/又は、ポリアニリンを腐食抑制剤としてのみ機能することに限定しない、他の利点をもたらし得る。したがって、ポリアニリンを「腐食抑制剤」と称することは、ポリアニリンを、その特定の機能のみに限定するものではない。例えば、ポリアニリンは、導電率を向上させ得る。
【0069】
上記で考察されるように、腐食抑制剤は、水酸化インジウムを含み得る。本明細書に開示のいずれの実施形態においても、水酸化インジウムは、アノードの亜鉛の総重量に基づいて、約2,500ppm~約3,500ppm、又は約2,750ppm~約3,250ppmなどの、約2,000ppm~約4,000ppmの量で存在し得る。したがって、水酸化インジウムは、約2,000ppm、約2,500ppm、約3,000ppm、約3,500ppm、約4,000ppmの量、又はこれらの値のうちのいずれか2つの間の範囲(両端点を含む)で存在し得る。例えば、水酸化インジウムは、本明細書に開示のいずれの実施形態においても、アノードの亜鉛の総重量に基づいて、約3,000ppmの量で存在し得る。
【0070】
電解質は、ゲル化剤を含み得る。当技術分野での任意の好適なゲル化剤は、本開示の範囲から逸脱しない限り、使用され得る。ゲル化剤は、電解質の総重量に基づいて、約500ppm~約1,500ppm、約750ppm~約1,250、又は約900ppm~約1,100ppmの量で存在し得る。したがって、ゲル化剤は、約500ppm、約600ppm、約700ppm、約800ppm、約900ppm、約1,000ppm、約1,100ppm、約1,200ppm、約1,300ppm、約1,400ppm、若しくは約1,500ppmの量、又はこれらの値のうちのいずれか2つの間の範囲(両端点を含む)で存在し得る。例えば、ゲル化剤は、本明細書に開示のいずれの実施形態においても、約1,000ppmの量で存在し得る。本明細書に開示のいずれの実施形態においても、ゲル化剤は、架橋ポリアクリル酸ポリマーなどのポリアクリル酸ポリマーであり得る。
【0071】
電解質は、ポリアクリレートポリマーを含み得る。ポリアクリレートポリマーは、約1,000ppm~約5,000ppmの量で存在し得る。これは、約2,000ppm~約4,000ppm、又は約2,500ppm~約3,500ppmを含み得る。したがって、ポリアクリレートポリマーは、本明細書に開示のいずれの実施形態においても、約2,000ppm、約2,500ppm、約3,000ppm、約3,500ppm、約4,000ppmの量、又はこれらの値のうちのいずれか2つの間の範囲(両端点を含む)で存在し得る。例えば、ポリアクリレートポリマーは、約2,000ppmの量で存在し得る。例として、好適なポリアクリレートポリマーは、架橋ポリアクリレートポリマーである。
【0072】
酸化亜鉛は、電解質の約1重量%~約10重量%の量で存在し得る。これは、電解質の約1重量%~約8重量%、1重量%~約5重量%、約1.5重量%~約5重量%、又は約2重量%~約5重量%を含み得る。したがって、酸化亜鉛は、本明細書に開示のいずれの実施形態においても、電解質の約1重量%、約1.5重量%、約2重量%、約2.5重量%、約3重量%、約3.5重量%、又は約4重量%の量、又はこれらの値のうちのいずれか2つの間の範囲(両端点を含む)で存在し得る。例えば、酸化亜鉛は、電解質の約2重量%の量で存在し得る。酸化亜鉛は、酸化亜鉛をガス抑制添加剤としてのみ機能することに限定しない、他の利点をもたらし得、したがって、酸化亜鉛を「ガス抑制添加剤」と称することは、酸化亜鉛を、その特定の機能のみに限定するものではない。例えば、本明細書に開示の任意の実施形態の酸化亜鉛は、亜鉛表面の不動態化を調節し得る。
【0073】
電解質は、水酸化カリウムを含み得る。水酸化カリウムは、電解質の約20重量%~約45重量%、例えば、電解質の約25重量%~約40重量%、又は約30重量%~約35重量%の量で存在し得る。本明細書に開示のいずれの実施形態においても、水酸化カリウムは、電解質の約45重量%、約30重量%、約25重量%、又は約20重量%の量、又はこれらの値のうちのいずれか2つの間の範囲(両端点を含む)で存在し得る。例えば、水酸化カリウムは、電解質の約33重量%の量で存在し得る。
【0074】
電解質は、水酸化ナトリウムを含み得る。水酸化ナトリウムは、電解質の約20重量%~約45重量%、例えば、電解質の約25重量%~約40重量%、又は約30重量%~約35重量%の量で存在し得る。水酸化ナトリウムは、本明細書に開示のいずれの実施形態においても、電解質の約45重量%、約30重量%、約25重量%、又は約20重量%の量、又はこれらの値のうちのいずれか2つの間の範囲(両端点を含む)で存在し得る。例えば、水酸化ナトリウムは、電解質の約33重量%の量で存在し得る。
【0075】
本明細書に開示のいずれの実施形態においても、金属空気バッテリの電解質は、界面活性剤系及び腐食抑制剤を含み得、界面活性剤系は、両性フッ素界面活性剤を含む。界面活性剤系は、ガス抑制添加剤を更に含み得る。本明細書に開示のいずれの実施形態においても、界面活性剤系は、ヘキシルジフェニルオキシドジスルホン酸、ジエチレントリアミン、又はオクチルフェノキシポリエトキシエタノール、式(III)の化合物、又はそれらのいずれか2つ以上の組み合わせを更に含み得る。ガス抑制添加剤は、LiOH又はZnOなどの、材料を含み得る。本明細書に開示のいずれの実施形態においても、電解質は、約500ppm~約20,000ppmのガス抑制添加剤を含み得る。したがって、電解質は、約500ppm、約600ppm、約700ppm、約800ppm、約900ppm、約1,000ppm、約2,000ppm、約3,000ppm、約4,000ppm、約5,000ppm、約6,000ppm、約7,000ppm、約8,000ppm、約9,000ppm、約10,000ppm、約11,000ppm、約12,000ppm、約13,000ppm、約14,000ppm、約15,000ppm、約16,000ppm、約17,000ppm、約18,000ppm、約19,000ppm、約20,000ppmの量、又はこれらの値のうちのいずれか2つの間の範囲(両端点を含む)のガス抑制添加剤を含み得る。
【0076】
本明細書に開示の任意の実施形態の電解質は、約500ppm、約600ppm、約700ppm、約800ppm、約900ppm、約1,000ppm、約2,000ppm、約3,000ppm、約4,000ppm、約5,000ppm、約6,000ppm、約7,000ppm、約8,000ppm、約9,000ppm、約10,000ppm、約11,000ppm、約12,000ppm、約13,000ppm、約14,000ppm、約15,000ppm、約16,000ppm、約17,000ppm、約18,000ppm、約19,000ppm、約20,000ppm、約21,000ppm、約22,000ppm、約23,000ppm、約24,000ppm、約25,000ppmの量、又はこれらの値のうちのいずれか2つの間の範囲(両端点を含む)のLiOHを含み得る。
【0077】
本明細書に開示の任意の実施形態の金属空気バッテリは、セル性能及び寿命を向上させるための、二酸化炭素スクラブ剤を含み得る。空気がセルに入ると、二酸化炭素は二酸化炭素スクラバと反応し、電解質中又は散気膜の表面における、二酸化炭素とアルカリ成分との反応を防止するか、又は少なくとも最小限に抑える。スクラバは、電解質の導電率及びカソードの多孔性が、長期間維持されることを可能にする。本明細書に開示の任意の実施形態の電解質は、電解質中に存在するアルカリ水酸化物との反応前に、溶解した二酸化炭素と優先的に反応する材料で播種されてもよい。
【0078】
例示的な二酸化炭素スクラバとしては、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、過酸化リチウム、酸化リチウム、アミン、オリビン、又は他の塩基性水酸化物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
本明細書に開示のいずれの実施形態においても、二酸化炭素スクラブ剤は、アノード活性材料(すなわち、亜鉛)に接触する前に、流入する空気がスクラブ剤に遭遇し得る空間で、カソード缶の内側をコーティングするために使用され得る。例えば、図1に示すように、空気貯留部55は、バッテリセル内の空隙である。セルは、拡散層32に接触する前に、空気が空気アクセスポート54を通してセルに入るように、構成されている。したがって、二酸化炭素スクラブ剤は、空気貯留部55内のセルの内面に塗布されて、二酸化炭素が空気アクセスポート54を通してセルに入るときに、二酸化炭素を除去又は少なくとも軽減することができる。スクラブ剤はまた、セルロース空気拡散層32、カソード42、又は多孔質拡散層57のうちのいずれかの内部に埋設されるか、又はその上に堆積され得る。スクラブ剤は、粉末として、後で除去される溶媒を通して塗布することによるフィルムとして、又は他の実用的手段によって堆積され得る。
【0080】
本明細書に開示のいずれの実施形態においても、二酸化炭素スクラブ剤は、アルカリ電解質に添加され得る。そのような実施形態では、スクラブ剤は、電解質中に存在するNaOH又はKOHを保ちながら、材料が最初に二酸化炭素と反応するように選択される。理論に縛られるものではないが、CO2が亜鉛空気セルに入ると、CO2が水性電解質中に溶解し、それによって、炭酸を形成すると考えられる。次いで、炭酸は、電解質中に存在するNaOH又はKOHとの反応前に、電解質の所望のアルカリ度が維持されるように、スクラバと反応し得る。
【0081】
本明細書に開示のいずれの実施形態においても、二酸化炭素スクラブ剤は、セルの使用前に、二酸化炭素の曝露による保管時損傷を最小限に抑えるために、(本技術による)補聴器セルを含む、パッケージングに含まれ得る。例えば、パッケージングは、補聴器バッテリなどの亜鉛空気セルを保管又は販売のために保持することを意図した、チャンバを含んでもよい。パッケージングは、粉末として、パッケージング材料上のコーティング、又はパッケージング及びチャンバ形成材料を構成するプラスチック又は紙内に埋設された、二酸化炭素スクラブ剤のいずれかを含み得る。
【0082】
アノードは、アノード活性材料を含み、アノード缶アセンブリは、アノード活性材料を取り囲んでもよい。本明細書に開示のいずれの実施形態においても、アノード活性材料は、亜鉛、及び「亜鉛アノード」と称されるアノードを含み得る。この点に関して、本明細書で使用される場合、アノード「活性材料」は、セルのアノードでの放電反応の一部であり、セルの放電容量に寄与する単一の化合物を指し得、そこに存在し得る不純物、及び少量の他の部分を含むことに留意されたい。アノード「活性材料」は、亜鉛活性材料を含有又は支持し得る、集電体、電極リードなどを含まない。
【0083】
アノードの物理的改質はまた、単独で、又は上述の化学改質と組み合わせてのいずれかで、セルの耐用年数も向上させ得る。例えば、水酸化物イオンの拡散抵抗を低下させることによって、電解質中の水酸化物イオンの濃度が、従来のセルで使用され得るよりも有利に低いセルを効率的に放電することができる。このことは、例えば、亜鉛の粒径分布を調整して、アノード内に類似の亜鉛の狭い粒径分布を提供し、それによって、水酸化物イオンの多孔性(拡散経路)を向上させることによって、達成され得る。拡散特性を改善することに加えて、本開示の粒径分布はまた、ZnOの析出のための多孔性部位も提供し、それによって、アノードの不動態化を遅らせる。このアプローチは、亜鉛空気バッテリセルのアノードでの使用に有効であり、本明細書に開示の他の改善と組み合わせて使用され得る。
【0084】
好適な亜鉛粒径分布は、粒子の少なくとも70%が、100ミクロンサイズ範囲内の標準メッシュ篩い分け粒径を有し、分布のモードが、約100~約300ミクロンであるものである。好適な亜鉛粒径分布は、上記の試験を満たし、約100ミクロン、約150ミクロン、又は約200ミクロンのモードを有する、粒径分布を含む。本明細書に開示のいずれの実施形態においても、粒子の約70%が、約100ミクロンよりも狭い粒径分布範囲、例えば、約50ミクロン、又は約40ミクロン以下の範囲に分布していてもよい。
【0085】
正極は、カソード缶44及びカソード42を含む、カソード缶アセンブリ40を含み得る。カソード42の例示的な実施形態は、図1に最もよく見られる。カソード42の活性層72は、セパレータ74と多孔質拡散層57との間に介在されている。活性層72は、好ましくは、約50ミクロン~約1250ミクロンの厚さであり、電解質中のヒドロキシルイオンと空気のカソード酸素との間の反応を促進する。セパレータ74は、微多孔質プラスチック膜及び微多孔質セルロース紙の一方又は両方を含むか、又はそれらからなり得る。微多孔質プラスチック膜は、約25ミクロンの厚さであり、典型的には、ポリプロピレンからなる。紙材料は、70~90ミクロンの厚さであり、坪量が20~25g/m2であり、典型的には、ポリビニルアルコール及びセルロース材料からなる。セパレータは、アノード亜鉛粒子が、カソード42の残りの要素と物理的に接触するのを防止する、主要機能を有する。しかしながら、セパレータ74は、それを通したヒドロキシルイオン及び水のカソードアセンブリへの通過を可能にする。ここでは、カソードは空気カソードであり、カソード活性層は炭素を含む。
【0086】
カソード缶44の側壁47は、中間要素80によって、缶の底部46に接合されている。中間要素80の外面は、底部46の外面50の外周52におけるその下端から、略垂直配向で側壁47の外面58を接合するその上端まで延在する。中間要素80の内面は、もしあれば、底部46の内面48と側壁47の内面56との接合にて表される。内面48及び56は、中間要素の内面が公称寸法であるように、鋭角な隅で一体化してもよい。隅材料が隅を形成する際に加工される範囲で、隅は加工硬化され得、それによって、隅構造は、中間要素80に隅構造が形成されると、底部46及び側壁47に対して強化される。
【0087】
本明細書に開示のいずれの実施形態においても、缶/ハウジングは、選択された材料から十分な強度及び延性が利用可能である限り、(缶のめっき又はクラッディングとは対照的に)カソードのものと同様の水素過電圧を有する金属又は合金で完全に形成され得る。ニッケルに加えて、そのような水素過電圧特性を有する材料としては、例えば、限定するものではないが、コバルト及び金が挙げられる。いくつかの実施形態では、そのような材料は、例えば、めっき、クラッディング、又は他の塗布プロセスによって、コア層上に1つ以上のコーティング層としてコーティングされ得る。十分な強度及び延性を提供する材料はまた、複合構造の代わりに、単層材料として使用することもできる。単層材料は、CRS又は他の好適な材料を、コア層として包含する。
【0088】
本明細書に開示のいずれの実施形態においても、ニッケル及びニッケル合金でめっきされた鋼帯は、経費検討のため、及び、めっき後のプロセスを一般に必要としない予めめっきされた鋼帯が市販されているため、使用され得る。缶/ハウジング内の金属は、好ましくは、絞りプロセスに耐えるのに十分な延性があり、並びにセルの圧着及び密閉プロセスを許容し、別様にそれに耐え、並びにセル/バッテリに主要な全体的な構造強度を提供するのに十分な強度及び剛性の両方がある。
【0089】
本明細書に開示のいずれの実施形態においても、ハウジングは、ニッケルクラッドステンレス鋼、ニッケルめっき冷間圧延鋼、INCONEL(登録商標)(ニッケルの非磁性合金)、微量合金元素を有する純ニッケル(例えば、Nickel 200、及びNickel 201などのNickel 200合金の関連系列)(全てHuntington Alloysから入手可能)、又はSpecial Metalsから入手可能なDURANICKEL(登録商標)301を含み得る。例えば、ハウジングは、ニッケルめっきステンレス鋼で作られ得る。いくつかの貴金属はまた、缶/ハウジング金属用のめっき、クラッディング、又は他のコーティングとしても使用でき、その例は、ニッケルめっきされた鋼帯、及び缶の製造後にニッケルでめっきされた軟鋼帯の被覆である。
【0090】
両側のニッケルでコーティングされた複数の層(例えば、CRS)が使用される場合、本開示は、ニッケルとCRSとの間、又はCRSと追加の層との間のニッケル層のいずれかで、任意の追加の(例えば、第4の、第5のなど)層を企図する。例えば、金、コバルト、又は他の優れた電気伝導体は、缶を絞り加工した後、又は絞り加工及びしごき加工した後、カソード缶の外面(ニッケル層の外側)の一部又は全てに堆積させることができる。代替例として、そのような第4の層などは、例えば、CRSとニッケルとの間の結合強化層であり得る。
【0091】
缶/ハウジングが、シート構造として、ニッケル/ステンレス鋼(SST)/ニッケル/NI/SST/NIの典型的な原材料構造を使用して製造される場合、そのようなシート構造は、約0.05mm~約0.3mmであり得る。これには、約0.076mm~約0.25mm、又は約0.1mm~約0.15mmが含まれ得、したがって、厚さは、約0.05mm、約0.076mm、約0.1mm、約0.13mm、又は約0.15mm、又はこれらの値のうちのいずれか2つの間の範囲(両端点を含む)であり得る。例えば、厚さは、約0.13mmであり得る。本明細書に開示のいずれの実施形態においても、ニッケル層のそれぞれは、そのような3層構造の金属シートの全体の厚さの約1%~約10%を表し得る。これは、そのような3層構造の金属シートの全体の厚さの約1.5%~約9%、約2%~約8%、約2.5%~約7%、又は約3%~約6.5%を含み得る。例えば、ニッケル層のそれぞれは、そのような3層構造の金属シートの全体の厚さの約2%~約4%を表す。本明細書に開示のいずれの実施形態においても、ニッケル層のそれぞれは、そのような3層構造の金属シートの全体の厚さの約2%を表し得る。
【0092】
したがって、記載の本発明は、概して、以下の実施例を参照することによってより容易に理解され、これらの実施例は、例示のために提供され、本発明を限定することを意図するものではない。
【実施例
【0093】
実施例1.(電解質の重量で)31.5%の水酸化カリウム、10,000ppmの両性フッ素界面活性剤、1.5%の水酸化リチウム、2%の酸化亜鉛、及び1,000ppmのポリアクリル酸を含む、亜鉛アノード及び水性電解質を使用して、0.0498mm2の総通気面積を有する、本技術のサイズ312のセルを調製した。比較用「標準」セルを、標準セルが両性フッ素界面活性剤を含まず、総通気面積が0.1329mm2であることを除いて、同様に調製した。セルは、ANSI/IEC試験に従って80%RH(相対湿度)において10/2mAで放電され、本技術のセルは、比較用「標準」セルに比べて、約15%の容量の改善を呈した。
【0094】
実施例2.水酸化カリウム、実施例1の両性フッ素界面活性剤、水酸化リチウム、及び実施例1のポリアクリル酸を含有する亜鉛アノード及び水性電解質を使用して、実施例1の電解質と同じ量で、0.0998mm2の総通気面積を有する、本技術のサイズ13のセルを調製した。比較用「標準」セルを、標準セルが両性フッ素界面活性剤を含まず、総通気面積が0.1295mm2であることを除いて、同様に調製した。セルは、ANSI/IEC試験に従って80%RH(相対湿度)において12/3mAで放電され、本技術のセルは、比較用「標準」セルに比べて、約7%の容量の改善を呈した(図2)。
【0095】
実施例3.水酸化カリウム、実施例1の両性フッ素界面活性剤、水酸化リチウム、及び実施例1のポリアクリル酸を含む亜鉛アノード及び水性電解質を使用して、実施例1の電解質と同じ量で、0.0660mm2の総通気面積を有する、本技術のサイズ312のセルを調製した。比較用「標準」セルを、標準セルが両性フッ素界面活性剤を含まず、総通気面積が0.0869mm2であることを除いて、同様に調製した。セルは、ANSI/IEC試験に従って80%RH(相対湿度)において10/2mAで放電され、本技術のセルは、比較用「標準」セルに比べて、約13%の容量の改善を呈した(図3)。
【0096】
実施例4.水酸化カリウム、実施例1の両性フッ素界面活性剤、水酸化リチウム、及び実施例1のポリアクリル酸を含有する亜鉛アノード及び水性電解質を使用して、実施例1の電解質と同じ量で、0.0660mm2の総通気面積を有する、本技術のサイズ312のセルを調製した。比較用「標準」セルを、標準セルが両性フッ素界面活性剤を含まず、総通気面積が0.0869mm2であることを除いて、同様に調製した。セルは、ANSI/IEC試験に従って20%RH(相対湿度)において10/2mAで放電され、本技術のセルは、比較用「標準」セルに比べて、約4%の容量の改善を呈した(図4)。
【0097】
実施例5.本技術のバッテリの性能に対する電解質自体の寄与を更に例解するために、3つの水性電解質を生成し、以下のように評価した。3つの電解質は、
(1)(電解質の重量で)33%の水酸化カリウム、及び(電解質の重量で)2%の酸化亜鉛を含む、水性電解質、
(2)(電解質の重量で)33%の水酸化カリウム、(電解質の重量で)2%の酸化亜鉛、及び7,500ppmのカルボキシル化アミン界面活性剤を含む、水性電解質、並びに、
(3)(電解質の重量で)33%の水酸化カリウム、(電解質の重量で)2%の酸化亜鉛、及び10,000ppmの両性フッ素界面活性剤を含む、本技術の水性電解質である。
電解質の使用でもたらされるカソード性能は、カソードの近くの溶液中に純亜鉛参照電極を配置することによって、アノード性能とは独立して試験し(注:全ての試験に対し、カソードからの同じ距離が使用された)、カソードは、一方の側で無制限の空気アクセスを有し、他方の側で電解質に曝露された(「カソードハーフセル」)。続いて、1mA/cm2及び5mA/cm2の電流引き込みをカソードに適用し、純亜鉛参照に対する電位を、上述の各電解質について記録した。図5に示すように、本技術の水性電解質(3)は、水性電解質(1)及び(2)上に同じ電流を引き込むことで、より少ない電圧降下で改善された挙動を呈した。
【0098】
実施例6.本技術と先行技術との違いを更に例解するために、各種類の多数のサイズ13のセルを、1.15V及び0.9Vでの電流制限について試験した。1.15Vでの制限電流の、0.9Vでの制限電流に対する比は、本技術の場合、商用セルの場合よりも大きいことが観察される。図6は、両方のセル種類の比を示す。更に詳細に調べるために、1.15Vでの制限電流を、各種の複数のセルについて、0.9Vでの制限電流に対してプロットした。両方の制限電流は、セルごとに異なるが、互いに相関しており、本技術と商用セルの特性である、比較的一定の比を有することが観察される。
【0099】
実施例7.サイズ13のセルを、定電流で放電した(図8に示す)。本技術のセルは、12mAの0.9Vでの制限電流を有する。4mAのレートで、又は0.9Vでの制限電流の3分の1で放電されると、放電の大部分を通して1.2Vよりも大きい電圧が供給される。このことは、多くの実用的なデバイスが、電圧が約1.1Vを下回ると、ユーザーに「バッテリ残量」警報を送信するため、特に重要である。
【0100】
本技術のセルが、6mAで、又は0.9Vでの制限電流の半分で放電されると、それはまだ放電の前半を通して、1.17Vよりも大きい電圧を供給さすることができる。
【0101】
比較すると、6mAで放電された、18mAの0.9Vでの制限電流を有する市販のセルは、0.9Vでの制限電流の3分の1に等しい電流ドレインを反映している。現在の技術よりも低い電圧が供給される。加えて、より高い制限電流は、より多くの水分及び二酸化炭素輸送をもたらし、特に放電時間がより長い低レートの条件下で、セルに悪影響を及ぼす。
【0102】
実施例8.別のテストでは、本技術は、更に小さな通気面積を可能にすることが見出される。水酸化カリウム、実施例1の両性フッ素界面活性剤、水酸化リチウム、及び実施例1のポリアクリル酸を含む亜鉛アノード及び水性電解質を使用して、0.0330mm2~0.0869mm2の3つの異なる総通気面積を有する、本技術のサイズ312のセルを調製した。セルは、ANSI/IEC試験に従って50%RH(相対湿度)において10/2mAで、及び、ANSI/IEC試験に従って50%RH(相対湿度)において5/2mAで放電され、本技術のセルは、試験された総通気面積の範囲にわたっての容量に統計的差異を呈さなかった(図9図10)。
【0103】
実施例9.水酸化カリウム、実施例1の両性フッ素界面活性剤、水酸化リチウム、及び実施例1のポリアクリル酸を含む亜鉛アノード及び水性電解質を使用して、0.0499mm2~0.1295mm2の範囲の3つの異なる総通気面積を有する、本技術のサイズ13のセルを調製した。セルは、ANSI/IEC試験に従って50%RH(相対湿度)において12/3mAで、及び、ANSI/IEC試験に従って50%RH(相対湿度)において5/3mAで放電され、本技術のセルは、試験された総通気面積の範囲にわたっての容量に統計的差異を呈さなかった(図11図12)。
【0104】
特定の実施形態を示して説明してきたが、以下の特許請求の範囲に定義されるそのより広い態様の技術から逸脱することなく、当業者によって変更及び修正を行うことができることを理解されたい。
【0105】
本明細書に例示的に記載された実施形態は、本明細書に具体的に開示されていない任意の要素又は複数の要素、限定又は複数の限定がなくても好適に実施することができる。したがって、例えば、「含むこと(comprising)」、「含むこと(including)」、「含有すること(containing)」等の用語は、広義かつ限定されずに、読み取られるべきである。追加的に、本明細書で使用されている用語及び表現は、限定ではなく、説明の用語として使用されており、そのような用語及び表現の使用において、示され、説明された特徴又はその一部のいずれかの同等物を除外する意図はないが、特許請求される技術の範囲内で様々な修正が可能であると認識される。追加的に、「~から本質的になる」という語句は、具体的に列挙された要素、及び特許請求される技術の基本的かつ新規の特徴に実質的に影響を与えない追加の要素を含むことが理解されるであろう。「~からなる」という語句は、指定されていないあらゆる要素を除外する。
【0106】
本開示は、本出願に記載される特定の実施形態の観点から限定されるべきではない。当業者には明らかなように、その趣旨及び範囲から逸脱することなく、多くの修正及び変形をなすことができる。本明細書に列挙されるものに加えて、本開示の範囲内の機能的に均等な方法及び組成物は、前述の説明から当業者に明らかになるであろう。かかる修正及び変形は、添付の特許請求の範囲内に入ることを意図する。本開示は、そのような特許請求の範囲が権利を有する均等物の全範囲とともに、添付の特許請求の範囲の条件によってのみ制限されるべきである。本開示は、特定の方法、試薬、化合物、組成物、又は生体系に限定されず、これらは、もちろん、変動し得ることが理解されるべきである。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【0107】
加えて、本開示の特徴又は態様がマーカッシュ群の観点から記載される場合、当業者は、本開示が、それによってマーカッシュ群のいずれかの個々のメンバー又はメンバーのサブグループの観点からも記載されることを認識するであろう。
【0108】
当業者によって理解されるであろうように、いずれか又は全ての目的のために、特に書面による説明を提供するという観点から、本明細書に開示される全ての範囲はまた、いずれか及び全ての可能な部分範囲並びにそれらの部分範囲の組み合わせを包含する。いずれかの列挙された範囲は、同じ範囲が少なくとも等しい半分、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1などに分解されることを十分に説明し、それを可能にするものとして容易に認識することができる。非限定的な例として、本明細書で考察される各範囲は、下位3分の1、中位3分の1、及び上位3分の1などに容易に分解することができる。また当業者によって理解されるように、「最大」、「少なくとも」、「より大きい」、「より小さい」などの全ての言語は、列挙された数を含み、上記で考察されるように部分範囲にその後分解することができる範囲を指す。最後に、当業者によって理解されるであろうように、範囲は、各個々のメンバーを含む。
【0109】
本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、登録された特許、及び他の文献は、各々、個々の刊行物、特許出願、登録された特許、又は他の文献が、その全体が、参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されるかのように、本明細書に組み込まれる。参照により組み込まれたテキストに含まれる定義は、本開示の定義と矛盾する程度まで除外される。
【0110】
本技術は、以下の文字を付けた段落で列挙された特徴及び特徴の組み合わせを含み得るが、それらに限定されず、以下の段落は、本明細書に添付の特許請求の範囲を限定するもの、又は全てのそのような特徴が必ずそのような特許請求の範囲に含まれなければならないと義務付けるものとして解釈されるべきではないことを理解されたい。
【0111】
他の実施形態は、以下の特許請求の範囲に記載されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
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図11
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【国際調査報告】