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特表2024-528519積層造形のための粉末を作製する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-30
(54)【発明の名称】積層造形のための粉末を作製する方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 1/14 20220101AFI20240723BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20240723BHJP
   B22F 10/14 20210101ALI20240723BHJP
   B22F 9/02 20060101ALI20240723BHJP
   B22F 1/05 20220101ALI20240723BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240723BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20240723BHJP
   B22F 9/04 20060101ALI20240723BHJP
   B22F 1/148 20220101ALI20240723BHJP
   C22C 29/08 20060101ALN20240723BHJP
【FI】
B22F1/14 400
B22F1/00 Q
B22F10/14
B22F9/02 A
B22F1/05
B33Y10/00
B33Y70/00
B22F9/04 C
B22F1/148
C22C29/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580508
(86)(22)【出願日】2022-06-23
(85)【翻訳文提出日】2024-02-26
(86)【国際出願番号】 EP2022067077
(87)【国際公開番号】W WO2023274818
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】21183255.5
(32)【優先日】2021-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519208731
【氏名又は名称】サンドビック マシニング ソリューションズ アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ギレンフライクト, トビアス
【テーマコード(参考)】
4K017
4K018
【Fターム(参考)】
4K017AA04
4K017BA09
4K017BB06
4K017BB13
4K017DA09
4K018AD06
4K018BA04
4K018BA13
4K018BC11
4K018BC15
4K018KA15
4K018KA63
(57)【要約】
本発明は、浸炭雰囲気中で顆粒を焼結することを含む、焼結された顆粒を含むすぐにプリントできるサーメットまたは超硬合金粉末を作製する方法に関する。浸炭雰囲気に起因して、顆粒は、表面上により少ないバインダー相を有し、焼結し合わず、解凝集が容易であり、顆粒は、その球状の形を維持する。本発明はまた、前記方法に従って作製された粉末および積層造形プロセスにおける粉末の使用に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 硬質成分、バインダー金属、有機バインダーおよび溶媒を含むスラリーを形成する工程と、
- スラリーから、硬質成分、バインダー金属および有機バインダーを含む焼結されていない顆粒を形成する工程と、
- 焼結されていない顆粒を炉に入れる工程と、
- Tが、バインダーが依然として、特定のサーメットまたは超硬合金組成物について固体状態にある最高温度である、浸炭雰囲気中で1200℃とT℃の間の温度で顆粒を焼結して焼結された顆粒を形成する工程と、
- 焼結された顆粒を解凝集工程に供する工程であって、それにより、顆粒の粉末が形成される、焼結された顆粒を解凝集工程に供する工程と
を含む、焼結された顆粒を含むすぐにプリントできるサーメットまたは超硬合金粉末を作製する方法。
【請求項2】
浸炭雰囲気が、CO、COおよびCHから選択される1つまたは複数の浸炭気体により提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
浸炭気体が、少なくとも50mBarの分圧で存在する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
すぐにプリントできる粉末が、超硬合金粉末であり、硬質成分が、少なくとも50wt%のWC粒状物を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
金属バインダーが、Co、NiおよびFeから選択される1つまたは複数の元素であり、金属バインダーの量が、乾燥粉末重量に基づいて5wt%と14wt%の間である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
焼結温度が、1250℃と1300℃の間である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
金属性バインダーが、Coであり、焼結温度が、1260℃と1290℃の間である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
焼結された顆粒を含むすぐにプリントできるサーメットまたは超硬合金粉末が、1つまたは複数の篩分け工程に供される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の方法に従って作製された、焼結された顆粒を含むすぐにプリントできるサーメットまたは超硬合金粉末。
【請求項10】
顆粒が、15μmと30μmの間の平均粒径を有する、請求項9に記載のすぐにプリントできるサーメットまたは超硬合金粉末。
【請求項11】
顆粒の気孔率が、0.1vol%と5vol%の間である、請求項9から10のいずれか一項に記載のすぐにプリントできるサーメットまたは超硬合金粉末。
【請求項12】
粉末が、超硬合金粉末である、請求項9から11のいずれか一項に記載のすぐにプリントできるサーメットまたは超硬合金粉末。
【請求項13】
サーメットまたは超硬合金体を作製するための積層造形プロセスにおける、請求項9から12のいずれか一項に記載のすぐにプリントできるサーメットまたは超硬合金粉末の使用。
【請求項14】
積層造形プロセスが、バインダージェッティングである、請求項13に記載のすぐにプリントできるサーメットまたは超硬合金粉末の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結された、すぐにプリントできる(ready-to-print)サーメットまたは超硬合金粉末を作製する方法、およびまた、そのような方法によって作製された粉末に関する。粉末は、サーメットおよび超硬合金体の3Dプリンティングのような積層造形に好適である。
【背景技術】
【0002】
3次元(3D)プリンティングまたは積層造形は、3次元体をプリントすることを可能にする有望な製造技術である。3次元プリンティングは、従来の製造プロセスにより達成することができない複雑な構造物および物体を生成することを可能にするため、有望な製造技術である。
【0003】
3Dプリンティングを使用してサーメットまたは超硬合金体を作製することは、当技術分野で公知である。サーメットおよび超硬合金材料は、例えばCoの金属性バインダー相中のWCまたはTiCなどの炭化物および/または窒化物の硬質成分からなる。これらの材料は、高靱性と組み合わせたそれらの高硬度および高耐摩耗性に起因して、要求の非常に厳しい適用において有用である。適用の領域の例は、金属切削用の切削工具、削岩用のドリルビットおよび摩耗部品である。
【0004】
3Dプリンティングを使用してサーメットおよび超硬合金材料を生成する場合の難題の1つは、従来の方法で生成されたサーメットおよび超硬合金材料、すなわち加圧によって形成されたものと同等の微細構造、すなわち気孔率、最小のCo島などを有する物体を提供することである。
【0005】
しかし、製造が容易であり、3Dプリンティングのための適切な特性を有し、さらにまた、優れた品質を有する最終的な焼結されたサーメットまたは超硬合金をもたらす、好適な粉末を見出すための多くの試みがなされている。
【0006】
粉砕、噴霧乾燥、加圧および焼結を使用する超硬合金体の従来の生成において、加圧に使用される粉末は、焼結されていないが、3Dプリンティングの場合、そのような粉末は、あまりにももろく、また、あまりにも多孔性である。したがって、3Dプリンティングに使用される場合、顆粒の形態の乾燥粉末は、様々な程度まで焼結される。しかし、顆粒の表面における金属バインダーが容易に融け合うため、これは顆粒を互いに付着させ得る。故に、焼結された粉末は、3Dプリンティングに使用されるためには、大きな力を使用して粉砕または破砕される必要がある。これは、焼結された顆粒の粉砕/破砕後に非球状粒状物をもたらし、粉末の流動性に影響を及ぼし得る。
【0007】
顆粒が焼結し合うのを防止する1つの方法は、より低い焼結温度を使用し、こうして、顆粒の表面上により少ない金属バインダーを形成させることであるが、これは、より多くの孔を有するより密度の低い顆粒をもたらす。顆粒があまりにも多孔性である場合、3Dプリントされた超硬合金は、最終的な焼結後、依然として孔を有し得る。
【0008】
例えば障壁として機能し得る粉末を添加することにより、顆粒間の接触を物理的に妨げることによって、顆粒が焼結し合うのを防止する試みもなされている。しかし、そのような方法はまた、最終的な粉末が3Dプリンティングに使用され得る前に、障壁粉末を除去するための焼結後のいくつかのクリーニング工程を必要とする。
【0009】
本発明の目的は、顆粒が互いに焼結するのを防止する、積層造形のためのサーメットまたは超硬合金粉末を作製する方法を得ることである。
【0010】
本発明の目的は、容易であり、ほとんど工程を必要としない、積層造形のためのサーメットまたは超硬合金粉末を作製する方法を得ることである。
【0011】
本発明の目的は、適切な気孔率および優れた流動性を有する、積層造形のためのサーメットまたは超硬合金粉末を作製する方法を得ることである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に従って作製された焼結された顆粒のSEM画像である。
図2】先行技術に従って作製された焼結された顆粒のSEM画像である。
図3】顆粒の断面のLOM画像である。
図4】工程Aが焼結されていない顆粒を形成させ、工程Bが焼結されていない顆粒を炉に入れ、工程Cが浸炭雰囲気中で焼結されていない顆粒を焼結し、工程Dが焼結された顆粒を解凝集工程に供する、様々な工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、上記に従って粉末を作製する方法に関する。方法は、以下:
- 硬質成分、バインダー金属、有機バインダーおよび溶媒を含むスラリーを形成させる工程、
- スラリーから、硬質成分、バインダー金属および有機バインダーを含む焼結されていない顆粒を形成させる工程
- 焼結されていない顆粒を炉に入れる工程
- 焼結された顆粒を形成させるために、浸炭雰囲気中で1200℃とT℃の間の温度で顆粒を焼結する工程であって、Tは、バインダーが依然として、特定のサーメットまたは超硬合金組成物について固体状態にある、最高温度である、浸炭雰囲気中で1200℃とT℃の間の温度で顆粒を焼結する工程、
- 焼結された顆粒を解凝集工程に供する工程であって、それにより、焼結された顆粒の粉末が形成される、焼結された顆粒を解凝集工程に供する工程
を含む。
【0014】
スラリーは、硬質成分を形成する粉末、バインダー金属、有機バインダーおよび溶媒を含む。
【0015】
硬質成分を形成する粉末とは、本明細書では、W、Ta、Ti、Nb、Nb、CrおよびVのうちの1つまたは複数の元素の炭化物、窒化物または炭窒化物から選択される粉末を意味する。
【0016】
超硬合金粉末を作製する場合、硬質成分は、少なくとも50wt%のWC粒状物を含む。硬質成分はまた、Ta、Ti、Nb、Cr、Hf、V、MoおよびZrのうちの1つまたは複数の炭化物または炭窒化物、例えばTiN、TiCおよび/またはTiCNを含み得る。
【0017】
サーメット粉末を作製する場合、硬質成分は、Ta、Ti、Nb、Cr、Hf、V、MoおよびZrのうちの1つまたは複数の炭化物または炭窒化物、例えばTiN、TiCおよび/またはTiCNを含む。
【0018】
金属バインダーとは、本明細書では、Co、NiおよびFeから選択される1つまたは複数の元素を意味し、好ましくは金属バインダーはCoである。スラリー中の金属バインダーの量は、好適には、乾燥粉末重量に基づいて5wt%と14wt%の間、好ましくは8wt%と14wt%の間である。金属性バインダー相含有量は、本明細書では、有機バインダーおよび溶媒を除いて計算される。
【0019】
有機バインダーは、好適には、ポリエチレグリコール(Polyethyleglycol)(PEG)またはワックスから選択される。有機バインダーの量は、粉末重量に基づいて1wt%と5wt%の間であってもよい。
【0020】
溶媒は、スラリーを作製するのに好適な任意の溶媒、好ましくは水およびアルコールの混合物であってもよい。
【0021】
焼結されていない顆粒の形成は、好適には、噴霧乾燥、または球状顆粒を形成することができる任意の他の好適な技術を使用することにより行われる。
【0022】
焼結されていない顆粒は、トレー上で炉の中に配置される。好ましくは、グラファイトのトレーは、粉末がトレーにくっつくのを防止するために、酸化イットリウムで被覆される。
【0023】
焼結サイクルの第1の部分は、有機バインダーが除去される、脱バインダー工程である。好適には、これは、200℃と550℃の間の温度で、5分と240分の間の期間、行われる。脱バインダーはまた、2つ以上の工程で、すなわち温度を段階的に上昇させることにより行われ得る。正確な脱バインダープロセスは、いくつかのこと、例えば、炉のタイプ、バッチサイズ、バインダーのタイプなどに依存する。
【0024】
焼結の第2の部分、すなわち固体焼結は、1200℃を上回り、T℃を下回る温度で行われ、Tは、バインダーが依然として、特定のサーメットまたは超硬合金組成物について固体状態にある、最高温度である。この温度は、通常、それぞれの特定のサーメットまたは超硬合金組成物についての相図において「固相線」と呼ばれる線として示される。固体焼結は、5分と60分の間の期間、実施される。好ましくは、焼結は、1250℃とT℃の間、より好ましくは1250℃と1300℃の間の温度で行われる。
【0025】
正確な焼結温度を決定する際、特定のサーメットまたは超硬合金組成物を考慮に入れなければならない。
【0026】
本発明の一実施形態では、金属性バインダーがCoである場合、焼結は、1250℃と1300℃の間、好ましくは1260℃と1290℃の間の温度で行われる。
【0027】
浸炭雰囲気とは、本明細書では、炭素が炉に添加されることを意味する。これは、いくつかの方法、例えば1つまたは複数の炭素含有気体、例えばCO、CH、COで行われ得る。一部の炭素寄与はまた、炉がグラファイト炉である場合、炉から生じ得る。
【0028】
好ましくは、浸炭雰囲気は、炭素含有気体、好ましくはCO、COおよび/またはCHによって作出される。浸炭気体の分圧は、存在する気体の全量の少なくとも50mBar、好ましくは少なくとも75mBarであるべきである。浸炭気体の分圧は、大気圧を下回るべきである。存在し得る他の好適な気体は、Ar、Hなどである。焼結炉中の全圧力は、大気圧を下回るべきである。
【0029】
焼結後、顆粒は、通常、弱い力で互いに付着する。最終的な粉末を得るために、穏やかな解凝集のみを実施することが必要である。解凝集は、好ましくは、粉砕液などを用いないボールミル中での穏やかな粉砕により行われる。より少量の顆粒が解凝集される場合、解凝集は、乳鉢を使用して手で行われ得る。
【0030】
顆粒は焼結し合っていないが、代わりに互いに弱くのみ付着しているため、噴霧乾燥工程から達成される球状のまたは丸くなった形は、解凝集後にも維持され得る。
【0031】
3Dプリンティングに焼結された顆粒を使用する前に、焼結された顆粒を含むすぐにプリントできる粉末は、1つまたは複数の篩分け工程に供されてもよい。これは、いくつかの目的のために、例えば解凝集されていない任意のより大きな断片を除去するためだけでなく、所望の顆粒サイズを達成するために、行われ得る。
【0032】
本発明はまた、上記の方法に従って作製された、焼結された顆粒を含むすぐにプリントできるサーメットまたは超硬合金粉末に関する。
【0033】
すぐにプリントできるとは、本明細書では、粉末が、3Dプリンティングのような積層造形プロセスで使用する準備ができていることを意味する。
【0034】
粉末は、WCおよび金属バインダーを含む、15μmと30μmの間の平均直径(D50)を有する焼結された顆粒を含み、焼結された顆粒は、0.1vol%と5vol%の間の気孔率を有する。
【0035】
焼結された顆粒の気孔率は、様々な方法で決定され得る。1つの方法は、比重瓶を使用して顆粒の密度をまず測定することにより、それを計算することである。次いで、測定された密度は、特定のサーメットまたは超硬合金組成物についての理論的(または完全)密度と比較される。完全密度は、例えばThermocalcのような適切なソフトウェアを使用した計算により、または同じ組成物を有する粉末から作製された孔のない焼結された断片についてそれを測定することにより、決定され得る。差は、孔であると推定される。
【0036】
気孔率を測定する別の方法は、少なくとも50個の焼結された顆粒の断面のSEMまたはLOM画像に対する画像分析を使用することである。次いで、結果は面積%で与えられるが、vol%における同じ値であると推定される。
【0037】
本発明に従って作製された焼結された顆粒は、顆粒の内側部における金属バインダー含有量より少ない金属バインダー含有量を有する表面領域を有する。
【0038】
表面領域における金属バインダーの枯渇は、顆粒のSEM画像において最も容易に見られ得、顆粒の表面がWC結晶で被覆されていることが見られ得る。金属バインダーを、時折、WC粒状物間のより大きな間隙の底部に見ることができるが、顆粒の実際の表面上には見ることができない。例えば図1を参照されたい。
【0039】
焼結された顆粒は、通常球状であるか、または丸くなった形を有し、これは噴霧乾燥工程から達成される。顆粒は、焼結中に焼結し合っていないため、顆粒が噴霧乾燥から達成した形は、維持され得る。
【0040】
焼結されていない顆粒とは、本明細書では、有機バインダーと、硬質成分の粒子と、バインダー金属とを含む、コンパクトな粒子を意味する。
【0041】
焼結された顆粒とは、本明細書では、バインダー金属マトリックス中に埋め込まれた硬質成分の粒子を含むコンパクトな粒子を意味する。
【0042】
サーメットとは、本明細書では、金属性バインダー相中に硬質成分を含む材料であって、硬質成分が、Ta、Ti、Nb、Cr、Hf、V、MoおよびZrのうちの1つまたは複数の炭化物または炭窒化物、例えばTiN、TiCおよび/またはTiCNを含む、材料を意味する。
【0043】
超硬合金粉末とは、本明細書では、金属性バインダー相中に硬質成分を含む材料であって、硬質成分が少なくとも50wt%のWC粒状物を含む、材料を意味する。硬質成分はまた、Ta、Ti、Nb、Cr、Hf、V、MoおよびZrのうちの1つまたは複数の炭化物または炭窒化物、例えばTiN、TiCおよび/またはTiCNを含み得る。
【0044】
本発明はまた、3次元プリンティングのような積層造形によってサーメットまたは超硬合金体を作製するための、上記のすぐにプリントできる粉末の使用に関する。
【0045】
本発明の一実施形態では、3次元プリンティングは、バインダージェッティングである。バインダージェッティングは、比較的安価な3次元プリンティング法である点で有利である。
【0046】
サーメットまたは超硬合金断片の3Dプリンティングは、当技術分野で公知であり、正確なプリンティングパラメータは、使用されるプリンティング技術のタイプに基づいて決定する当業者次第である。通常、プリンティング工程の後に、硬化および粉末除去が続き、次いで最終的なサーメットまたは超硬合金断片が達成される焼結工程が続く。
【実施例
【0047】
例1(発明)
WC、金属性バインダー、ならびにCrおよび存在する場合にTaおよびNbの炭化物を含む原材料として、既に粉砕され、噴霧乾燥されている、すぐに加圧できる(ready-to-press)(RTP)粉末を使用した。元素に基づく異なる粉末の組成を表1に示し、残りは炭素である。発明1および2におけるWC粒状物サイズ(FSSS)は0.80μmであり、発明3では、WC粒状物サイズ(FSSS)は1.5μmであった。粉末原材料に加えて、RTP粉末は、乾燥粉末重量中に含まれない2wt%のPEGも含有した。
【0048】
RTP粉末を、78/22の比のエタノールおよび水の溶媒に溶解し、2wt%の追加のPEGを添加することにより、新しいスラリーを作製した。スラリーを、D50およそ25μmを有する小さな顆粒へと噴霧乾燥した。
【0049】
焼結されていない顆粒を、酸化イットリウムで被覆されたグラファイトトレー上で焼結炉の中に配置し、最初に、170分間の500℃までの温度の段階的な上昇を含んだ、水素雰囲気中での脱バインダー工程に供した。次いで、温度を、Ar雰囲気(200mBar分圧)中で1275℃の最高焼結温度に上昇させ、そこで、COおよびArを、250mbar分圧で1:1の流量比で導入した。温度およびCO/Ar雰囲気を60分間維持した。その後、フリークーリングにより、顆粒を室温に冷却した。
【0050】
焼結は、焼結された顆粒のケークをもたらし、これを、30kg粉末を用いて100kgシルペブを使用したボールミル中での解凝集に供した。ボールミルされたものを粉砕液なしで運転して乾燥させた。解凝集時間は、試料に応じて10分と40分の間であった。
【0051】
次いで、粉末を、63μmで篩にかけた。
【0052】
焼結された顆粒を含む得られた超硬合金粉末を、本明細書では発明1~3と表示する。
【0053】
発明1の焼結された顆粒のSEM画像を図1に示す。
【0054】
焼結された顆粒の粒径を、0.5μmおよび175μmの間隔で乾燥顆粒のレーザー回折により測定した。結果を表2に示す。
【0055】
例2
例1からの発明1に使用したのと同じ焼結されていない顆粒を、例1と同じ方法であるが、COおよびH雰囲気の混合物(1:1の比の全分圧250mBarで)(3つの試料すべてについて同じ)を使用して異なる最高温度で焼結した。サイクルの終わりに、50bar(Ar)の高圧を適用した。試料を発明1a~cと呼ぶ。
【0056】
気孔率を、ソフトウェアImage Jを使用した顆粒の断面におけるLOM(光学顕微鏡)画像(倍率2000)に対する画像分析により測定した。粉末試料あたりおよそ50個の顆粒の平均を分析した。1300℃で焼結された粉末は、解凝集が著しくより困難であり、したがって、顆粒は、1250℃および1275℃と比較してより高い程度まで変形した。
【0057】
例3(比較)
物理的障壁としてグラファイト粉末を使用するUS2017/0072469に記載されるプロセスに従って、例1における発明1と同じ組成を有する粉末から、焼結された顆粒を作製した。焼結後、グラファイト粉末を除去した。焼結された顆粒のSEM画像を図2に示す。
【0058】
例4(プリンティング)
焼結された顆粒である例1からの発明2を使用して、試料のキューブ(15×15×6mm)をプリントした。バインダージェットプリンティングにより、キューブを生成した。プリンティング中の層の厚さ50μmを用いたExOne Innovent+を使用して、プリンティングを行った。プリンティング中の飽和を80%に設定した。次いで、最高温度1410℃を有する高圧焼結サイクルを用いて90分間、キューブを焼結した。サイクルの終わりに、50barの高圧を適用した。すべての物理的特性は、従来の方法、すなわち形成工程としてプリンティングの代わりに圧縮を使用して作製された場合のこの基材についての基準内であった。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】