(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-30
(54)【発明の名称】予測保守システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/20 20230101AFI20240723BHJP
G01N 35/00 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
G06Q10/20
G01N35/00 F
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580659
(86)(22)【出願日】2022-06-14
(85)【翻訳文提出日】2024-02-28
(86)【国際出願番号】 EP2022066197
(87)【国際公開番号】W WO2023274720
(87)【国際公開日】2023-01-05
(32)【優先日】2021-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】500554782
【氏名又は名称】ラジオメーター・メディカル・アー・ペー・エス
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100173565
【氏名又は名称】末松 亮太
(74)【代理人】
【識別番号】100195408
【氏名又は名称】武藤 陽子
(72)【発明者】
【氏名】デーニエルスン,マーティン・タンダル・スリチャン
(72)【発明者】
【氏名】アイアデール,ラース
(72)【発明者】
【氏名】ラースン,アラン・サンドビェア
【テーマコード(参考)】
2G058
5L010
【Fターム(参考)】
2G058GA01
2G058GD05
2G058GE08
2G058GE09
5L010AA04
5L010AA20
(57)【要約】
生体試料を分析するための装置の保守を支援するためのコンピュータ実装の方法であって、本装置は、保守の対象となる少なくとも1つのハードウェア構成要素を含み、本方法は、複数の測定結果を受信するステップであって、各測定結果は、生体試料を分析するための装置によって生体試料に対してまたは品質管理試料に対して実施される測定から導出され、複数の測定結果は、異なる時間に獲得される測定結果を含む、ステップと、複数の測定結果から性能パラメータの時系列を計算するステップであって、性能パラメータは、上記少なくとも1つのハードウェア構成要素の動作状態を示すものであり、時系列は、開始時間および終了時間を有する期間を表し、終了時間は、現在の時間よりも前である、ステップと、予め決められた外挿モデルを使用して、計算した時系列を外挿して、性能パラメータの外挿時系列を獲得するステップであって、外挿時系列は、1つまたは複数の未来の時間における性能パラメータの1つまたは複数の推定値を含む、ステップと、性能パラメータの1つまたは複数の推定値を、上記構成要素の構成要素故障のリスクを示す予め決められた条件と比較して、上記予め決められた条件が満たされる推定の未来の時間を決定するステップと、推定の未来の時間から推定故障時間を決定するステップと、を含む、方法。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料を分析するための装置の保守を支援するためのコンピュータ実装の方法であって、前記装置は、保守の対象となる少なくとも1つのハードウェア構成要素を含み、前記方法は、
複数の測定結果を受信するステップであって、各測定結果は、生体試料を分析するための前記装置によって生体試料に対してまたは品質管理試料に対して実施される測定から導出され、前記複数の測定結果は、異なる時間に獲得される測定結果を含む、ステップと、
前記複数の測定結果から性能パラメータの時系列を計算するステップであって、前記性能パラメータは、前記少なくとも1つのハードウェア構成要素の動作状態を示すものであり、前記時系列は、開始時間および終了時間を有する期間を表し、前記終了時間は、現在の時間よりも前である、ステップと、
予め決められた外挿モデルを使用して、前記計算した時系列を外挿して、前記性能パラメータの外挿時系列を獲得するステップであって、前記外挿時系列は、前記終了時間よりも後の、特に前記現在の時間よりも後の、1つまたは複数の未来の時間における前記性能パラメータの1つまたは複数の推定値を含む、ステップと、
前記性能パラメータの前記1つまたは複数の推定値を、前記構成要素の構成要素故障のリスクを示す予め決められた条件と比較して、前記予め決められた条件が満たされる推定の未来の時間を決定するステップと、
前記推定の未来の時間から推定故障時間を決定するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記推定故障時間を出力するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記性能パラメータは、品質管理試料と関連付けられた標的値からの測定値の逸脱を示すものであり、前記測定値は、前記装置によって前記品質管理試料に対して実施される量の測定から生じる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記測定値は、前記装置によって前記品質管理試料に対して実施される量の測定から生じ、それぞれの生体試料に対して実施された1つまたは複数の以前の測定に基づいて補正された、補正測定値である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記決定された推定故障時間と関連付けられた信頼区間を決定するステップをさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
外挿するステップは、線形外挿を実施することを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記時系列を計算するステップは、1つまたは複数のデータクレンジング動作を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記時系列を計算するステップは、
1つまたは複数の動作事象を検出すること、および
前記受信した測定結果のうちの1つまたは複数を破棄することであって、前記1つまたは複数の破棄される測定結果は、前記検出した動作事象の後の時間に実施された測定から生じたものである、破棄すること、を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記動作事象は、前記装置および/または1つもしくは複数の予め決められた保守活動の再始動を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記1つまたは複数の破棄される測定結果は、前記検出した事象の後の予め決められた期間中に実施された測定から生じたものである、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記時系列を計算するステップは、前記時系列の移動中央値および/または低域フィルタリングを計算することを含む、請求項7~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記測定結果を受信するステップは、通信ネットワークを介して前記装置から前記測定結果を受信すること、ならびに前記装置から遠隔のデータ処理システムによって、計算、外挿、比較、および決定する前記ステップのうちの一部またはすべてを実施することを含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記装置は、血液試料を分析するための血液分析装置である、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記ハードウェア構成要素は、前記血液分析装置の光学分析ユニットのガラスキュベットである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
比較するステップは、前記性能パラメータの前記1つまたは複数の推定値を、前記性能パラメータの予め決められた標的範囲と比較して、前記推定値のうちの1つまたは複数が前記予め決められた標的範囲外にある推定の未来の時間を決定することを含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
生体試料を分析するための装置の保守を実施するための方法であって、前記装置は、保守の対象となる少なくとも1つのハードウェア構成要素を含み、前記方法は、
請求項1~15のいずれか1項に記載の方法のステップをデータ処理システムに実施させるステップと、
前記推定故障時間より前の保守時間において前記ハードウェア構成要素の保守を実施するステップと、を含む、方法。
【請求項17】
請求項1~15のいずれか1項に記載の方法のステップを実施するように構成されたデータ処理システム。
【請求項18】
データ処理システムによって実行されるとき、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法のステップを前記データ処理システムに実施させるように構成されたプログラムコードを備える、コンピュータプログラム製品。
【請求項19】
システムであって、
生体試料を分析するための少なくとも1つの装置であって、保守の対象となる少なくとも1つのハードウェア構成要素を含む、少なくとも1つの装置と、
請求項17に記載のデータ処理システムであって、前記少なくとも1つの装置に通信可能に結合され、前記少なくとも1つの装置から測定結果を受信するように構成された、データ処理システムと、を備える、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つの態様において、体液分析装置、特に血液分析装置など、生体試料を分析するための装置の保守を支援するための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
それぞれの検出器またはセンサを用いて、生体試料、特に、液体試料中の分析物の物理的パラメータを測定するための分析装置ユニットは、食品産業、環境産業、ならびに医療および臨床産業など、様々な産業において広く使用される。そのような分析装置ユニットは、しばしば、単に分析装置と称される。
【0003】
正確性、精度、および信頼性に関する一般的な要件に加えて、臨床用途の分析装置ユニットは、しばしば、さらなる重大な制約を受ける。そのような制約は、低い運用費、低いダウンタイム、使い易さなどの必要性を含む。
【0004】
これらの制約のうちの一部またはすべての組み合わせは、血液分析装置などのポイントオブケア分析装置において特に関連性がある。ポイントオブケア血液分析装置は、しばしば、病棟で治療を受ける人間の患者の血液を分析するための様々なパラメータの測定を提供するために、例えば、患者の生物学的状態を確立および/または監視するために、病棟により使用される。様々な場合において、例えば、哺乳動物被験体の全血試料中の血液ガスの分圧、血液試料中の電解物および/または代謝物の濃度、ならびに血液試料のヘマトクリット値を測定することが望ましい。例えば、pCO2、pO2、pH、Na+、K+、Ca2+、Cl-、Mg2+、グルコース、乳酸、クレアチニン、尿、ならびにヘモグロビンおよびヘモグロビン派生物の値を測定することは、患者の病状を査定することにおいて基本の臨床指標である。そのような測定に基づいて、患者の任意の治療に対する即座の決定が頻繁に下される。現在、いくつかの異なる分析装置が、上記パラメータの少なくとも一部のそのような測定を行うために存在する。そのような分析装置は、最も有意義な診断情報を提供するために、精密な測定を実施することができる。分析装置は、典型的には、医療従事者が測定結果を速やかに使用することを可能にするように、分析を実施した直後にディスプレイに測定結果を表示するか、または紙片に結果を印刷する。
【0005】
大量の血液分析を、適時および常に、効率的かつ確実に実施する能力は、多くの医療施設にとって重要である。例えば、集中治療中の一部の患者は、血液ガスおよび臨床化学測定のために1日15~20の試料のサンプリング頻度を必要とし得、おそらくは大量の血液試料が毎日分析されることにつながる。常に分析装置を利用できることは、医学的意思決定のためだけでなく、運用費を低減するためにも重要である。
【0006】
したがって、血液分析装置の文脈において、ならびに一般に生体試料を分析するための装置の文脈において、装置保守は、そのような装置の運用の重要な側面である。一般的には、生体試料を分析するための装置の正常な動作ができる限り確実にされることが望ましい。特に、予期せぬ装置故障および計画外の保守が減少されることが望ましい。
【0007】
この点に関して、いわゆる事後保守は、一般的には、装置の既存のエラーを、そのようなエラーが発生していたことが検出され次第、対処することを目指す。故に、このパラダイムは、多くの場合、結果として計画外の保守および/または長期ダウンタイムをもたらす。予防保守は、装置の現在の動作状態を考慮することなく定期的な保守を実施することによって予想外のエラーを回避しようとするものである。したがって、予防保守は、結果として、例えば部品の不必要な交換を含む、不必要な保守をもたらし得る。
【0008】
学会論文S.Gokalpら、DOI:10.1109/SOCA.2018.00021による「Predictive Maintenance in Healthcare Services with Big Data Technologies(ビッグデータ技術を用いた医療サービスにおける予測保守」は、医療領域のためのスケーラブルな予測保守アーキテクチャについて説明する。予測保守は、いつ保守が必要とされ得るかを予測しようとするものである。
【0009】
米国特許出願公開第2014/0266713号は、医療デバイスの実際の使用に基づいて医療デバイスに対して保守を実施するためにアラートを生成するための方法を開示する。この先行技術の方法は、パラメータタイプのためのパラメータ値を測定することを含む。パラメータタイプは、ネットワークに接続される医療デバイス内の構成要素と関連付けられ得、この構成要素によって実施される機能に関連し得る。この方法は、測定したパラメータ値、パラメータタイプ、および測定したパラメータ値がいつ測定されたかを示す第1の値を医療デバイスにローカルに記憶すること、パラメータタイプのための性能制限を指定する保守しきい値にアクセスすること、保守しきい値を測定したパラメータ値と比較すること、および保守がその構成要素のために必要とされることを示すために、比較に基づいてアラートを生成することをさらに含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、生体試料を分析するための装置の構成要素不具合の正確かつ確実な予測を可能にする方法およびシステムを提供することが依然として望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような背景から、第1の態様によると、本明細書に開示されるのは、生体試料を分析するための装置の保守を支援するためのコンピュータ実装の方法の実施形態であり、本装置は、保守の対象となる少なくとも1つのハードウェア構成要素を含み、本方法は、
- 複数の測定結果を受信するステップであって、各測定結果は、生体試料を分析するための装置によって生体試料に対してまたは品質管理試料に対して実施される測定から導出され、複数の測定結果は、異なる時間に獲得される測定結果を含む、ステップと、
- 複数の測定結果から性能パラメータの時系列を計算するステップであって、性能パラメータは、上記少なくとも1つのハードウェア構成要素の動作状態を示すものであり、時系列は、開始時間および終了時間を有する期間を表し、終了時間は、現在の時間よりも前である、ステップと、
- 予め決められた外挿モデルを使用して、計算した時系列を外挿して、性能パラメータの外挿時系列を獲得するステップであって、外挿時系列は、終了時間よりも後の、特に現在の時間よりも後の、1つまたは複数の未来の時間における性能パラメータの1つまたは複数の推定値を含む、ステップと、
- 性能パラメータの1つまたは複数の推定値を、上記構成要素の構成要素故障のリスクを示す予め決められた条件と比較して、上記予め決められた条件が満たされる推定の未来の時間を決定するステップと、
- 推定の未来の時間から推定故障時間を決定するステップと、を含む。
【0012】
したがって、推定故障時間の決定が装置の実際の測定に基づくため、本明細書に開示される方法の実施形態は、ハードウェア構成要素が故障する、すなわち、十分によく動作しなくなる、全く動作しなくなる、または壊れる可能性のある時間の正確かつ確実な予測を提供する。
【0013】
いくつかの実施形態において、複数の測定結果は、生体試料を分析するための装置によって品質管理試料に対して実施される測定から導出される1つまたは複数の測定結果を含む。いくつかの実施形態において、複数の測定結果は、生体試料を分析するための装置によって品質管理試料に対して実施される測定から導出される1つもしくは複数の測定結果、および生体試料を分析するための装置によって生体試料に対して実施される測定から導出される1つもしくは複数の測定結果を含む。したがって、予測は、装置の正常動作、ならびに良好に管理可能な品質管理手順に基づく。性能パラメータの時系列の計算を品質管理試料に対する測定に少なくとも部分的に基づくことは、特に計算が生体試料に対する測定ならびに品質管理試料に対する測定に基づくとき、推定故障時間の特に確実な決定を可能にする。この文脈において、品質管理試料という用語は、既知の組成を有する、および測定結果の既知の標的値を有し、故に、生体試料を分析するための装置によって品質管理試料に対して実施される測定から導出される測定結果と、上記品質管理試料と関連付けられた標的値との間の逸脱の正確な決定を可能にする、液体試料などの試料を指す。典型的には、品質管理試料は、合成的に製造された試料、すなわち、患者から獲得されない試料である。
【0014】
さらには、本方法の少なくともいくつかの実施形態は、必要とされるのでなければ実施されない追加の測定を必要としない。特に、決定は、装置の正常動作の一部として実施される生体試料の測定および/または装置の通常ルーチン品質管理の一部として実施される品質管理試料に対する品質管理測定に基づき得る。
【0015】
計算した時系列の外挿に基づいた推定故障時間の決定は、計算効率が高く、比較的小さいデータに基づいて、特に、少ない測定に基づいて実施され得る。
外挿モデルは、構成要素故障の既知の原因および/または構成要素故障のための既知の指標の演繹的知識に基づき得る予め決められたモデルであり得る。外挿時系列は、1つまたは複数の離散した推定の未来の値の形態、または連続した外挿関数の形態にあり得る。外挿関数は、現在の時間よりも後の未来のそれぞれの時間における複数の推定の未来の値を示すものであり得る。
【0016】
いくつかの実施形態において、外挿するステップは、線形外挿を実施することを含み、すなわち、外挿モデルは、線形モデルであり、故に、計算効率が高くかつロバストな方法を結果としてもたらす。他の実施形態において、非線形モデルまたは機械学習に基づいた時系列予測モデルなど、他のタイプの外挿、すなわち、他のタイプの外挿モデルが、使用され得る。
【0017】
構成要素故障のリスクを示す予め決められた条件は、性能パラメータのどのレベルまたは性質が高リスクの構成要素故障を示すかに関する予備知識に基づいて選択される好適な条件であり得る。いくつかの実施形態において、条件は、予め決められた許容範囲外で動く性能パラメータに関する。したがって、比較するステップは、性能パラメータの1つまたは複数の推定値を、性能パラメータの予め決められた標的範囲と比較して、推定値のうちの1つまたは複数が予め決められた標的範囲外にある推定の未来の時間を決定することを含み得る。他の実施形態において、例えば、推定の未来の値の他の属性を、そのような属性のための許容範囲と比較して、そのような属性が許容範囲外にある推定の未来の時間を決定することなど、他の条件が使用され得る。属性の例としては、経時的な性能パラメータの変化率、許容範囲での性能パラメータの変動の振幅または頻度などが挙げられる。
【0018】
いくつかの実施形態において、本方法は、決定された推定故障時間と関連付けられた信頼区間、例えば、95%信頼区間または同様のもの、を決定するステップをさらに含む。
時系列の外挿に基づいた推定故障時間の決定は、装置のオペレータに対して、容易に視覚化されるかまたは別途提示され得、故に、通知した意思決定プロセスを促進する。一般的に、本方法は、推定故障時間を出力するステップを含み得る。推定故障時間は、データ処理システムのグラフィックユーザインターフェースなど、好適なユーザインターフェースを介して出力され得る。
【0019】
一般的に、性能パラメータは、少なくとも1つのハードウェア構成要素の動作状態を示すものである。この点に関して、ハードウェア構成要素の動作状態は、劣化、摩耗、および損耗の度合い、ならびに/または使用可能な動作寿命の終わりに近づいている構成要素、もしくは使用可能であり続けるには保守を必要とする構成要素を示す他の因子を含む。したがって、性能パラメータが上記少なくとも1つのハードウェア構成要素の動作状態を示すということは、劣化または差し迫った構成要素故障の予測または決定がなされることを可能にする、性能パラメータとハードウェア構成要素の動作状態との相関が存在するように、性能パラメータが選択されることを伴う。ハードウェア構成要素の推定故障時間を予測する目的のための性能パラメータの選択は、問題になっているハードウェア構成要素に依存し得、例えば、特定のハードウェア構成要素の劣化が測定結果にどのように影響を及ぼすかについての演繹的知識に基づき得るということを理解されたい。いくつかの実施形態において、好適な性能パラメータの選択は、例えば、測定結果または測定結果の組み合わせと観察された構成要素故障との相関を決定するように、生体試料を分析するための1つまたは複数の装置の動作中に獲得されるデータの統計分析に基づき得る。
【0020】
性能パラメータは、生体試料もしくは品質管理試料の測定によって獲得される単一の測定されたパラメータ、または複数の測定されたパラメータの組み合わせ、および/または単一のパラメータの複数の測定の組み合わせであり得る。いくつかの実施形態において、性能パラメータは、さらに、電力消費、1つまたは複数の物質の消費、光強度の基準測定、検出器と関連付けられた他のパラメータなど、装置と関連付けられた追加の動作データに基づき得る。いくつかの実施形態において、故障時間の推定は、2つ以上の性能パラメータの組み合わせに基づいて実施され得る。
【0021】
いくつかの実施形態において、性能パラメータは、品質管理試料と関連付けられた標的値からの測定値の逸脱を示すものであり、測定値は、装置によって品質管理試料に対して実施される量の測定から生じる。そのような逸脱の外挿は、生体試料を分析するための装置内の構成要素故障の信頼性のある指標であるということが分かった。測定値は、測定から直接的に獲得されるか、または測定および後に行われる事前処理から獲得される値であり得る。
【0022】
いくつかの実施形態において、性能パラメータは、生体試料を分析するための装置による1つまたは複数の生体試料の測定から生じる1つまたは複数の測定結果に少なくとも部分的に基づく。いくつかの測定は、実際の生体試料に対して、唯一、または少なくともより正確に、実施され得るため、これは、予測故障時間のより正確な推定を促進する。いくつかの実施形態において、測定値は、装置によって上記品質管理試料に対して実施される量の測定から生じ、それぞれの生体試料に対して実施された1つまたは複数の以前の測定に基づいて補正された、補正測定値である。
【0023】
計算した時系列と関連付けられた開始および終了時間は、観察期間を規定し、ここで、開始時間は、(計算が実施される現在の時間に対して)過去にあるのに対し、終了時間は、現在の時間に対応するかまたは同様に過去にあり得る。例えば、終了時間は、直近の測定結果の時間であり得る。時系列を計算するステップは、ノイズ低減、外れ値除去、フィルタリング、移動平均、および/または移動中央値など、1つまたは複数のデータクレンジング動作を含む。
【0024】
いくつかの実施形態において、時系列を計算するステップは、
- 1つまたは複数の動作事象を検出すること、および
- 受信した測定結果のうちの1つまたは複数を破棄することであって、1つまたは複数の破棄される測定結果は、検出した動作事象の後の時間に実施された測定から生じたものである、破棄すること、を含む。1つまたは複数の破棄される測定結果は、検出した事象の後の予め決められた期間中に実施された測定から生じたものであり得る。したがって、特定の動作事象が、性能パラメータに影響を及ぼすことが分かっているか、またはその疑いがある状況において、効率的な機構が、結果として生じる推定故障時間の信頼性を増加させるために提供される。1つまたは複数の動作事象を検出するステップは、装置の再始動/リブート、部品の交換などの1つまたは複数の保守活動の実施など、1つまたは複数の予め決められた動作事象を検出することを含み得る。
【0025】
いくつかの実施形態において、推定故障時間の決定は、生体試料自体を分析するための装置によって実施される。この目的のために、本装置は、好適にプログラミングされた処理ユニットを備え得る。結果として生じる推定故障時間は、装置の好適なユーザインターフェースを介して出力され得、および/または、遠隔データ処理システム、例えば、中央管理システムまたは保守支援システムに通信され得る。代替的に、推定故障時間の決定は、生体試料を分析するための装置から遠隔のデータ処理システムによって、完全にまたは部分的に実施され得る。遠隔データ処理システムは、好適にプログラミングされたサーバコンピュータ、クラウドベースのコンピューティングアーキテクチャ、または同様のものであり得る。この目的のために、生体試料を分析するための装置は、遠隔データ処理システムに通信可能に結合され得、測定結果を転送し得る。ここでは、および以下において、測定結果という用語は、1つまたは複数のセンサ/検出器によって測定される、生の、すなわち未処理のセンサ/検出器データおよび/もしくはもしくは予め処理されたセンサ/検出器データ、ならびに/または、センサ/検出器データおよび/もしくは性能パラメータおよび/もしくは推定故障時間の計算のための遠隔データ処理システムへの他の好適な入力から計算される測定結果を含む。したがって、測定結果を受信するステップは、通信ネットワークを介して装置から測定結果を受信すること、ならびに装置から遠隔のデータ処理システムによって、計算、外挿、比較、および決定するステップのうちの一部またはすべてを実施することを含み得る。
【0026】
生体試料を分析するための装置は、任意の好適な有線および/またはワイヤレス通信インターフェースを介して、例えば、ローカルコンピュータネットワークおよび/またはインターネットなど、好適な通信ネットワークを介して、遠隔データ処理システムに通信可能に結合され得ることを理解されたい。遠隔データ処理システムは、好適なユーザインターフェースを介して、決定された推定故障時間を出力し得、および/または決定された推定故障時間を、クライアントコンピュータ、クライアントタブレット、クライアント端末など、クライアントデバイスに通信し得る。例えば、クライアントデバイスは、決定された推定故障時間を表示するための、ユーザインターフェース、例えば、ウェブベースのユーザインターフェースを提供するように構成される、好適なコンピューティングデバイスであり得る。代替的または追加的に、遠隔データ処理システムは、決定された推定故障時間を、生体試料を分析するための装置に、ならびに/または保守支援システム、在庫管理システム、および/もしくは同様のものなど、別のデータ処理システに通信し得る。
【0027】
決定された推定故障時間は、特定の装置に関する他のデータ、例えば、装置シリアル番号または装置を識別する他の情報、装置の動作状態および/または保守に関する他のデータなどと一緒に出力および/または通信され得るということを理解されたい。
【0028】
いくつかの実施形態において、装置は、血液試料を分析するための血液分析装置であり、すなわち、生体試料は、血液試料、特に全血の試料であり得る。血液分析装置は、哺乳動物被験体の全血試料中の1つまたは複数の血液ガスの分圧を測定するように構成され得る。追加的または代替的に、血液分析装置は、血液試料中の1つもしくは複数の電解物および/もしくは代謝物の濃度、ならびに/または血液試料のヘマトクリット値、ならびに/またはヘモグロビンおよびヘモグロビン派生物値を測定するように構成され得る。例えば、血液分析装置は、以下の分圧または濃度のうちの1つまたは複数を測定するように構成され得る:pCO2、pO2、pH、Na+、K+、Ca2+、Cl-、Mg2+、グルコース、乳酸、クレアチニン、尿、ならびにヘモグロビンおよびヘモグロビン派生物値。
【0029】
いくつかの実施形態において、血液分析装置は、分析されるべき血液試料を収容するためのガラスキュベットを備え得る。血液分析装置は、光学分析ユニットをさらに備え得る。光学分析ユニットは、ガラスキュベット内に収容される血液試料を照明するための光源、およびガラスキュベット内に収容される照明された血液試料からの光を受け取るための、分光光度計などの検出器を備え得る。使用中、ガラスキュベットは劣化し、この劣化は、結果として生じる測定に影響を及ぼし、最終的には、ヘモライザガラス破壊とも称されるガラスキュベットの故障につながる。そのような故障の発生は、ガラスキュベットの交換、またはガラスキュベットを含むユニットの交換を必要とする。したがって、いくつかの実施形態において、ハードウェア構成要素は、血液分析装置の光学分析ユニットのガラスキュベットである。この目的のために、1つまたは複数の品質管理試料において測定される、測定されたMetHbレベルの、上記品質管理試料のための関連付けられた標的値からの逸脱は、全血試料を分析するための分光光度検出器のヘモライザユニットのガラスキュベットの故障予測のための好適な性能パラメータであることが分かっている。
【0030】
しかしながら、本明細書に説明される方法およびシステムの実施形態は、他のタイプのハードウェア構成要素および/または他のタイプの分析装置ユニットにも適用され得るということを理解されたい。保守の対象となるハードウェア構成要素の例は、センサパック、弁、ガスケット、膜、光源など、または経時的な徐々の劣化の影響下にある、もしくは繰り返しの使用にさらされる他のハードウェア構成要素を含むが、これらに限定されない。
【0031】
概して、生体試料を分析するための装置の例は、医療施設内のポイントオブケア分析装置としての使用のための分析装置ユニット、または研究室での使用のための分析装置ユニットを含み得る。生体試料を分析するための装置の例は、尿試料または他の液体生体試料を分析するための装置、組織試料を分析するための分析装置などを含み得る。
【0032】
本開示は、上に説明される方法、対応する装置、システム、方法、および/または製品を含む異なる態様に関し、各々が、他の態様のうちの1つまたは複数と関連して説明される利益および利点のうちの1つまたは複数をもたらし、また各々が、他の態様のうちの1つもしくは複数と関連して説明されるおよび/または添付の特許請求の範囲において開示される実施形態に対応する1つまたは複数の実施形態を有する。
【0033】
特に、1つの態様によると、本明細書に開示されるのは、生体試料を分析するための装置の保守を実施するための方法の実施形態であり、本装置は、保守の対象となる少なくとも1つのハードウェア構成要素を含み、本方法は、
- 上および以下に説明されるコンピュータ実装の方法に従って方法のステップをデータ処理システムに実施させるステップと、
- 推定故障時間より前の保守時間においてハードウェア構成要素の保守を実施するステップと、を含む。
【0034】
別の態様によると、本明細書に開示されるのは、上および以下に説明されるコンピュータ実装の方法のステップを実施するように構成されるデータ処理システムの実施形態である。
【0035】
ここでは、および以下において、データ処理システムという用語は、任意の好適にプログラミングされたコンピュータまたは複数のコンピュータのシステム、例えば、分散型データ処理システム、仮想マシン、クラウドベースのコンピューティングシステムなどを含むことが意図される。
【0036】
別の態様によると、本明細書に開示されるのは、データ処理システムまたは処理ユニットによって実行されるとき、本明細書に説明される方法の行為をデータ処理システムまたは処理ユニットに実施させるように構成される実行可能なプログラムコードを備えるコンピュータプログラム製品の実施形態である。コンピュータプログラム製品は、コンピュータ可読媒体、特に、CD-ROM、DVD、光学ディスク、メモリカード、フラッシュメモリ、磁気データストレージデバイス、フロッピディスク、ハードディスクなどの、非一時的な媒体として提供され得る。他の実施形態において、コンピュータプログラム製品は、ダウンロード可能なソフトウェアパッケージとして、例えば、インターネットまたは他のコンピュータもしくは通信ネットワークを介したダウンロードのためにウェブサーバ上に、提供され得る。
【0037】
処理ユニットという用語は、本明細書に説明される信号および/またはデータ処理機能の一部またはすべてを実施するように好適に適合される任意の回路および/またはデバイスを含むことが意図される。特に、処理ユニットという用語は、汎用または特殊用途プログラマブルマイクロプロセッサ、例えば、コンピュータもしくは別のデータ処理システムの中央処理装置(CPU)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラマグル論理アレイ(PLA)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特殊目的電子回路など、またはそれらの組み合わせを含む。
【0038】
さらに別の態様によると、本明細書に開示されるのは、
- 生体試料を分析するための少なくとも1つの装置であって、保守の対象となる少なくとも1つのハードウェア構成要素を含む、少なくとも1つの装置と、
- 上および以下に説明されるようなデータ処理システムであって、少なくとも1つの装置に通信可能に結合され、少なくとも1つの装置から測定結果を受信するように構成される、データ処理システムと、を備える、システムの実施形態である。
【0039】
本明細書に開示される様々な態様の好ましい実施形態は、添付の図面と関連してより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】生体試料を分析するための装置の例の概略ブロック図である。
【
図2】生体試料を分析するための装置の測定ユニットの例を概略的に示す図である。
【
図3】生体試料を分析するためのシステムの概略ブロック図である。
【
図4】生体試料を分析するための装置の保守を支援するためのコンピュータ実装の方法の例を概略的に例証する図である。
【
図5】性能パラメータの計算した時系列の例を示す図である。
【
図6】性能パラメータの時系列の別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下において、本明細書に開示される方法および他の態様の実施形態は、血液分析装置のガラスキュベットの文脈において説明される。しかしながら、本明細書に開示される方法および他の態様は、血液分析装置の、または生体試料を分析するための別のタイプの装置の、他のハードウェア構成要素にも適用され得るということを理解されたい。
【0042】
図1は、生体試料を分析するための装置の概略ブロック図を示す。この例では、装置は、血液試料を分析するための分析装置ユニットである。全体が参照番号100により示される分析装置ユニットは、血液試料を受け取るための入口110、流体操作システム120、測定システム130、および処理ユニット140を備える。
【0043】
測定システム130は、それぞれの測定結果を獲得するための1つまたは複数のセンサおよび/または検出器を含む。特に、本例では、測定システムは、血液試料の吸収スペクトルを獲得するための分光光度検出器ユニット132を含む。この目的のために、測定システム130は、血液試料を収容するためのガラスキュベット131、およびガラスキュベット131内に収容される生体試料を照明するための照明ユニット133を備える。分析装置ユニット100が入口110において血液試料を受け取ると、流体操作システム120は、受け取った血液試料をガラスキュベット131へ供給し、測定システム130は、吸収スペクトルを獲得するために光度測定を実施する。分析装置ユニット100は、次いで、ヘモグロビンおよび/またはヘモグロビン派生物値のレベルのうちの1つまたは複数など、血液試料中の1つまたは複数の分析物のそれぞれの濃度を決定し得る。上の分析物を測定するのに好適な光学センサ/検出器は、当該技術分野において知られているようなものである。分光光度検出器132の例は、
図2を参照して以下により詳細に説明される。いくつかの実施形態において、測定システム130は、例えば、EP 2147307 B1または米国特許第8,728,288(B2)号に説明されるような1つまたは複数の電気化学センサ、およびまたはガラスキュベット以外の別のタイプの測定チャンバなど、代替および/または追加のセンサ/検出器を含み得る。
【0044】
測定後、流体操作システム120は、血液試料を、ガラスキュベット131または他のタイプの測定チャンバから、例えば、好適な廃棄物容器(明示的に示されない)へと廃棄し得る。測定システム130は、さらなる処理のために測定結果を処理ユニット140に転送する。測定システム130は、生の測定信号、または予め処理された測定信号もしくはデータ、例えば、A/D変換された信号、フィルタリングされた信号、増幅された信号、および/もしくは別途予め処理された信号もしくはデータを処理ユニット140に転送し得るということを理解されたい。
【0045】
一般的に、流体操作システム120は、流体導管、ガスケット、1つまたは複数のポンプ、弁、および/または同様のものなど、1つまたは複数の構成要素を含み得、これらはすべて当該技術分野において知られているということに留意されたい。同様に、測定システム130は、1つまたは複数のセンサ/検出器、ならびに任意選択的に、電気回路、1つもしくは複数の励起源、1つもしくは複数の検出器、1つもしくは複数の電極、1つもしくは複数の基準電極、および/または同様のものなど、他の構成要素を含み、これらはすべて当該技術分野において知られている。例えば、血液分析装置ユニットの例は、WO18/104134に説明される。
【0046】
処理ユニット140は、例えば、好適なプログラミングされたCPUを含み得、分析装置ユニットの動作を制御するため、および/または測定ユニット130によって獲得されるセンサ/検出器信号を処理するために、プログラムコード151を実行するように構成され得る。この目的のために、分析装置ユニット100は、ハードドライブ、EEPROM、ソリッドステートドライブ、または同様のものなど、データストレージデバイス150をさらに備え得る。データストレージデバイス150には、プログラムコード151および/または他の情報が記憶されていてもよい。処理ユニット140は、故に、メモリ150からプログラムコード151を読み込み、読み込まれたプログラムコードを実行し得る。特に、プログラムコード151は、性能パラメータ、または少なくとも、性能パラメータが計算され得る測定結果を、処理ユニット140に計算させるように構成され得る。
【0047】
分析装置ユニット100は、追加の構成要素、例えば、出力インターフェース160を備え得る。出力インターフェースは、タッチスクリーンなどのディスプレイ、または測定結果および/もしくは他の関連情報を分析装置ユニットのユーザに提示するための別の好適な出力デバイスを含み得る。
【0048】
分析装置ユニット100は、例えば、ローカルエリアネットワークまたは他の好適なコンピュータネットワークを介した、有線またはワイヤレスデータ通信のための通信インターフェース180を含み得る。通信インターフェース180は、Wi-Fi、Bluetooth、または任意の他の好適なワイヤレスもしくは有線通信技術、例えば、IEEE 802標準規格のうちの1つまたは複数に従う通信を利用し得る。この目的のために、通信インターフェース180は、有線もしくはワイヤレスネットワークアダプタ、および/またはワイヤレスもしくは有線データ通信を提供するための他の好適な回路もしくはデバイスを備え得る。
【0049】
分析装置ユニット100は、入口110、流体輸送システム120、測定システム130、処理ユニット140、データストレージデバイス150、出力インターフェース160、および通信インターフェース180を収容するハウジング190をさらに備える。
【0050】
図2は、生体試料を分析するための装置の測定システムの例を概略的に示す。
図2の測定システム130は、試料照明ユニット133、ガラスキュベット131、および分光光度検出器ユニット132を含む。生体試料または品質管理試料は、矢印275により例証されるように、好適な導管によってガラスキュベット131内へ、またそこから外へ供給され得る。
【0051】
図2の例では、照明ユニット133は、ハロゲンランプ270または別の好適な光源を備える。照明ユニット133は、現在の測定が生体試料の測定であるかQC測定であるかによって、血液試料または品質管理(QC)試料を含む、ガラスキュベット131上へ光ビームを指向する。測定システム130は、超音波を用いてガラスキュベット131内の血液試料を溶血させるように構成されるヘモライザユニット134をさらに備える。溶血は、試料中の赤血球の壁を破壊し、以て、血液細胞にそれらのヘモグロビン内容物を放出させるプロセスである。光ビームは、赤外フィルタ271および両凸レンズ272を通ってガラスキュベット131まで透過され得る。ガラスキュベット131を通過した後、光ビームは、例えば、開口部278、例えば、狭いスリットを通じて光を指向する光ファイバ277を介して、分光光度検出器ユニット132の方へ指向され、これによりビームは、光ビームを波長に従って回折させる凹面格子ユニット281の方へ指向される。
【0052】
凹面格子ユニット281は、回折光ビームが透過される光ダイオードアレイ283上に光を集束させる。光ダイオードアレイ283は、例えば、複数の、例えば、128個の光ダイオードを備え得、アレイ283は、回折光ビーム内の、例えば、およそ1.5nmの波長の範囲を含む光が光ダイオード(図示されない)に衝突するような様式で配置され得、光ダイオードは、光を、光ダイオードに衝突する光強度に実質的に比例する電流へ変換する。光ダイオードアレイ283の複数の光ダイオードの各々における電流の値を測定することによって、試料を透過した後の光ビームの離散強度スペクトルが生成される。この強度スペクトルから、ガラスキュベット131内に含まれる血液またはQC試料の吸収スペクトルが、装置の処理ユニットによって、例えば、
図1の装置の処理ユニット140によって決定され得る。吸収スペクトルは、例えば、波長範囲478~672nmで、または別の好適な波長範囲で獲得され得る。
【0053】
概して、生体試料を測定するための装置のいくつかの実施形態は、例えば、予め決められたスケジュールに従って、および/または特定のトリガ事象に基づいて、例えば、QC手順を開始するユーザ入力に応答して、装置の初期化に応答して、例えば、再始動後、および/または他のタイプの動作事象に応答して、品質管理測定を実施するように管理され得る。品質管理測定は、1つまたは複数の予め決められた品質管理試料に対して実施され得、装置の動作状態を監視すること、ならびに/または装置の特定の側面を調整すること、例えば、分光光度検出器ユニットの起こり得る波長シフトおよび/もしくは他の量に関する調整を実施することに役立ち得る。
【0054】
いくつかの実施形態において、複数の異なるタイプの品質管理試料、例えば、それぞれの予め決められたレベルの1つまたは複数の分析物を含む品質管理試料が提供され得る。1つの特定の例では、装置には、異なる濃度のスルホローダミンBを含む品質管理試料が提供され得る。分光光度検出器ユニットの品質管理における増加した信頼性は、故に、いくつかの分析物レベルにおけるQC試料の吸収スペクトルを測定することによって提供され得る。異なる濃度のスルホローダミンBなどの予め決められた分析物を含むQC試料を利用することによって、装置が血液試料中の幅広い範囲の成分濃度にわたって血液パラメータを正しく測定することができることが確実にされる。
【0055】
そのような品質管理手順の例は、米国特許第6980285号に説明される。しかしながら、異なる実施形態は、異なるタイプの品質管理試料、例えば、他の分析物を含むQC試料を含み得、および/または、これらのQC試料に基づいて異なるQC手順を採用し得るということを理解されたい。特定のQC試料および手順は、一般的に、装置によって採用される特定のタイプのセンサ/検出器に適合され得る。
【0056】
上で述べたように、生体試料を分析するための装置の他の例は、例えば、分析されるべき生体試料のタイプ、実施されるべき分析のタイプなどに応じて、代替または追加の構成要素を含み得る。例えば、血液試料を分析するための装置の他の実施形態は、分光光度検出器以外のセンサ/検出器を含み得る。依然としてさらに、生体試料を分析するための装置の他の実施形態は、血液試料以外の生体試料、例えば、尿試料などの他の流体の試料、または組織などを含む試料を分析するように構成され得る。
【0057】
いずれにせよ、生体試料を分析するための大半の装置は、保守の対象となる、例えば、構成要素の部品または構成要素全体の手動調節、洗浄、または交換の対象となる、1つまたは複数のハードウェア構成要素を含む。
図2と関連して説明される分光光度検出器ユニット132の例では、ガラスキュベット131は、ガラス表面が超音波溶血プロセスに起因して劣化し、最終的にキュベットのガラス破壊につながるため、保守の対象となることが分かっている。
【0058】
そのようなガラス破壊がいつ発生するかを推定するためのプロセスの例は、以下により詳細に説明される。ハードウェア構成要素の推定故障時間の正確な予測は、上記構成要素の保守が、特に、故障が発生するのを防ぐのに間に合うが、不必要に早期ではなく、効率的にスケジュールされることを可能にし、以て、スケジュールされたダウンタイムおよび保守費用を低減しながら装置のスケジュールされていないダウンタイムを防ぐ。
【0059】
図3は、生体試料を分析するためのシステム300の概略ブロック図を示す。システム300は、生体試料を分析するための分析装置ユニット100を備える。分析装置ユニット100は、
図1と関連して説明されるような分析装置ユニット、または別の好適な分析装置ユニットであり得る。
【0060】
システム300は、例えば、医療施設のローカル通信ネットワークおよび/またはインターネットおよび/または別の好適な通信チャネルなど、好適な通信ネットワーク500を介して分析装置ユニット100に通信可能に結合されるデータ処理システム200をさらに備える。いくつかの実施形態において、システム300は、クラウドベースのアーキテクチャを備え得、クラウドコンピューティングリソースは、データを処理するための分析装置ユニット100に通信可能に結合され得る。
【0061】
図3では、単一の分析装置ユニット100のみが示される。しかしながら、データ処理システム200は、複数の分析装置ユニットに通信可能に結合され得るということを理解されたい。
【0062】
データ処理システム200は、単一のコンピュータ、またはいくつかのコンピュータ、1つもしくは複数の仮想マシン、および/または同様のものを備える分散型データ処理システムであり得る。データ処理システム200は、例えば、
図1の分析装置ユニットの通信インターフェース180を介して、分析装置ユニット100と通信するように構成される通信インターフェース280を備える。データ処理システム200は、例えば、CPUを含む、好適にプログラミングされた処理ユニット240、および任意選択的に、例えば、ディスプレイおよびキーボード、またはタッチスクリーンもしくは別の好適な形態のユーザインターフェースを備える、ユーザインターフェース260をさらに備える。データ処理システム200は、データ処理システムの認定ユーザが保守関連情報および/または分析装置ユニット100に関する他の情報を閲覧および/または修正することを可能にする保守インターフェースとしてユーザインターフェース260を動作させるように構成され得る。例えば、データ処理システム200は、複数の分析装置ユニット100のためのデバイス管理機能を提供するように構成されるデバイス管理プログラムを実行し得る。特に、データ処理システム200は、本明細書に説明されるように分析装置ユニット100から受信される測定結果に基づいて、分析装置ユニット100のハードウェア構成要素の推定故障時間を計算および出力するように構成され得る。
【0063】
図4は、生体試料を分析するための装置の保守を支援するためのコンピュータ実装の方法の例を概略的に例証する。方法の実施形態は、例えば、
図3のシステム300によって実施され得る。システム300は、
図1および
図2と関連して説明されるような分析装置ユニット100を含み得る。
【0064】
初期ステップS1において、分析装置ユニット100は、血液試料、例えば、医療施設における患者からなど、人間の被験者から獲得される全血の試料に対して測定を実施する。測定は、医療施設における装置の通常動作の一部であり得、特定の患者の診断および/または治療中の使用のために1つまたは複数の測定結果をもたらし得る。測定は、血液試料をガラスキュベット内へ供給した後、および、例えば、
図2と関連して説明されるように、血液試料を溶血させた後に、血液試料の吸収スペクトルを測定することに関与し得る。
【0065】
ステップS2において、分析装置ユニットの処理ユニットは、吸収スペクトルに基づいて血液試料の濁度の尺度を計算する。濁度の尺度は、一般的には裸眼では見えない個々の粒子(特に、懸濁物質)による血液試料の濁りまたは曇りの尺度である。
【0066】
ステップS3において、計算した濁度に基づいて、分析装置ユニットの処理ユニットは、処理ユニットによって保持される補正指数を更新する。補正指数は、故に、複数の血液試料の吸収スペクトルから導出される濁度の尺度に基づいて計算される集計した指数である。例えば、1つの実施形態において、本プロセスは、測定した吸収スペクトルのベクトル表現と、HHb、O2Hb、COHb、MetHb、SHb、およびさらにビリルビンのような様々なHbスペクトルを考慮する多変量校正によって導出される係数ベクトルとのドット積を計算する。処理ユニットは、1つまたは複数のトリガ事象401に応答して、例えば、分析装置ユニットが再始動される度に、および/または予め決められた保守事象に応答して、補正指数をリセットする。
【0067】
ステップS4において、分析装置ユニットの処理ユニットは、計算した補正指数に対する1つまたは複数のノイズ低減および/または他のデータクレンジング動作、例えば、低域フィルタリング、移動平均、および/または他のフィルタ動作を実施する。
【0068】
ステップS5において、分析装置ユニットは、品質管理測定を実施する。品質管理測定は、品質管理試料、すなわち、予め決められたおよび既知の標的濃度の1つまたは複数の分析物を有する合成試料の吸収スペクトルを獲得することを含む。そのような品質管理測定は、定期的に、例えば、予め決められた品質管理スケジュールに従って実施され得、および/またはそれらは、1つもしくは複数のトリガ事象によって、例えば、予め決められた数の測定を実施した後、システムの再始動後などに、トリガされ得る。
【0069】
ステップS6において、処理ユニットは、品質管理試料の測定した吸収スペクトルから品質管理試料の1つまたは複数の分析物の濃度を計算する。処理ユニットはさらに、補正指数を、計算した濃度に適用し、例えば、追加し、品質管理試料の計算した濃度と既知の標的濃度との間の、バイアス、すなわち逸脱を決定する。品質管理プロセスは、複数の異なる品質管理試料、例えば、異なるレベルの分析物を含む品質管理試料に対する品質管理測定に関与し得るということを理解されたい。したがって、本プロセスのいくつかの実施形態は、異なるタイプの品質管理試料のためのそれぞれのバイアスを計算し得る。
【0070】
分析装置ユニット100は、計算したバイアスを遠隔データ処理システム200に、例えば、
図3と関連して説明されるようなクラウドベースのシステムに転送し得る。他の実施形態において、分析装置ユニット100は、代替および追加のタイプの測定結果、ならびに任意選択的に、他の情報を、データ処理システム200に転送し得るということを理解されたい。例えば、分析装置ユニット100は、データ処理システム200が測定結果の計算を実施することを可能にするように、測定した吸収スペクトルをデータ処理システム200に転送し得る。同様に、他の実施形態において、分析装置ユニット100は、例えば、濁度とは異なる他の尺度に基づいて、測定結果に対する他のタイプの補正を実施し得るか、または補正を全く実施しない。依然としてさらに、分析装置ユニットのいくつかの実施形態は、品質管理試料および生体試料の両方から、例えば、本例にあるように生体試料の測定に基づいて補正される品質管理試料に対する測定、または品質管理測定に基づいて補正される生体試料の測定から導出される測定結果を転送する。分析装置ユニットの他の実施形態は、品質管理試料の測定のみに基づいて、または血液もしくは他の生体試料のみに基づいて、測定結果を転送し得る。
【0071】
データ処理システム200は、測定結果を受信し、受信した測定結果に基づいて分析装置ユニットのハードウェア構成要素の推定故障時間を計算する。データ処理システム200はさらに、分析装置ユニットからの追加データ、例えば、実施された保守動作、分析装置ユニットの再始動、他の動作データ、および/または同様のものに関する情報を受信し得る。
【0072】
本例では、ハードウェア構成要素は、分析装置ユニット100のヘモライザユニット134のガラスキュベット131であり、データ処理システム200は、ガラスキュベット131の推定故障時間を計算するために、品質管理測定と関連付けられた計算したバイアスを性能パラメータとして使用する。特に、計算したバイアスは、例えば、上のステップS1~S6と関連して説明されるような、分析装置ユニット100によって分析されている血液試料の測定した濁度尺度に基づいて決定される補正指数に基づいて補正されるバイアスである。本プロセスの他の実施形態は、分析装置ユニットの他のハードウェア構成要素の推定故障時間を計算し得、および/または他のタイプの測定結果に基づき得る別の性能パラメータに基づいて推定故障時間を計算し得るということを理解されたい。
【0073】
一般的に、初期ステップS7において、データ処理システム200は、例えば、分析装置ユニットから受信される測定結果とは異なる性能パラメータを計算するため、および/または性能パラメータをフィルタリングするためなど、分析装置ユニットからの受信した測定結果に対して1つまたは複数の事前処理ステップを実施する。本例では、データ処理システム200は、受信した測定結果、特に、受信したバイアスを、性能パラメータとして直接使用し、観察期間にわたって性能パラメータの値を示す性能パラメータの時系列を計算する。観察期間は、終了時間、例えば、計算が実施される現在の時間、または直近の測定結果の時間から、過去の開始時間まで延び得る。
【0074】
データ処理システム200は、例えば、異なる時点において受信される値から性能パラメータの移動中央値として時系列を計算し得る。受信した値は、故に、複数の品質管理測定と関連付けられた計算したバイアスを表し得る。移動中央値は、好適な時間窓、例えば、7日間の窓、または別の好適な長さの時間窓にわたって計算され得る。
【0075】
図5は、性能パラメータのこうして計算した時系列の例を示す。特に、
図5は、上に説明されるように、血液試料に対する濁度尺度の測定から生じる補正指数に基づいて補正される品質管理測定の計算したバイアスの時系列501を示す。
図5の例では、時系列は、約2カ月の観察期間について示される。本プロセスの実施形態は、より短いまたはより長い観察期間など、異なる観察期間にわたって時系列を計算し得るということを理解されたい。一般的に、観察期間は、任意の好適な長さ、例えば、1週間、数週間、1カ月、数カ月、またはそれ以上を有し得る。観察期間の好適な選択は、測定結果の頻度、構成要素故障につながる劣化プロセスの時間スケールなどのパラメータに依存し得る。観察期間は、固定され得るか、変化し得る。
【0076】
図5はさらに、特定の保守事象、例えば、センサカセットの交換および/または分析装置ユニットの別の部品の交換および/または分析装置ユニットの再始動に関与していた別の保守アクションが発生した時間502および503を示す。時系列501から見ることができるように、時間502および503における保守事象に応答して、性能パラメータは、一時的に増加または減少し得る。そのような一時的な増加または減少は、例えば、分析装置ユニットが、性能パラメータが基づく測定結果の計算に影響を及ぼす1つまたは複数の累積パラメータ、例えば、上のステップS3と関連して論じられる補正因子をリセットすることによって引き起こされ得る。推定故障時間の計算に影響を及ぼす特定の保守事象に起因するそのような性能パラメータの一時的な変化を回避するため、本プロセスのいくつかの実施形態は、保守事象の登録後および/または性能パラメータに一時的に影響を及ぼすことが知られている別の動作事象の登録後、予め決められた時間窓など、時間窓以内に獲得される性能パラメータの値を無視し得る。
【0077】
データ処理システム200はさらに、例えば、最大しきい値と比較した性能パラメータの割合として表現される、スケーリングされた性能パラメータを示す時系列に達するように、例えば、性能の予め決められた最大しきい値と比較される性能パラメータをスケーリングし得る。
【0078】
図6は、上に説明されるスケーリングされたバイアスのこの例では、スケーリングされた性能パラメータの、結果として生じる時系列601の例を示す。スケーリングされた性能パラメータは、予め決められた最大しきい値602、この例では、性能パラメータの許容値の範囲の上限に対してスケーリングされる。
【0079】
いくつかの実施形態において、データ処理システム200は、任意選択的にスケーリングされた、性能パラメータの現在の値を、出力、例えば、表示し得る。データ処理システムはさらに、例えば、予め決められたアラートしきい値、例えば、最大しきい値の予め決められた割合を超える性能パラメータに応答して、性能パラメータの現在の値に基づいてアラートまたは警告を発行し得る。
【0080】
依然として
図4を参照すると、および継続して
図6を参照すると、ステップS8において、データ処理システム200は、過去の開始時間t0から、計算が実施される現在の時間t1、または現在の時間より早くてもよい直近の測定結果の時間であり得る終了時間まで延びる観察窓に基づいて、計算した時系列を外挿する。観察窓の長さおよび位置は、異なる実施形態では異なってもよく、利用可能なデータの量、予測されるべき構成要素故障を結果としてもたらす機構の性質および/もしくは時間スケール、ならびに/または同様のものなどの因子に依存するということを理解されたい。一般的に、現在の時間は、外挿が実施され得る時間であり得るということを理解されたい。
【0081】
外挿は、観察期間の終了時間よりも後の、特に、現在の時間より後の、未来の時間t3において、外挿水平線まで延び得る。外挿水平線は、異なる実施形態では異なってもよい。ここでも、外挿水平線は、利用可能なデータの量、予測されるべき構成要素故障を結果としてもたらす機構の性質および/もしくは時間スケール、ならびに/または同様のものなどの因子に依存し得る。観察窓および/または外挿水平線は、予め決められ得るか、プロセスによって適応的に決定され得る。
【0082】
図6の実施形態において、外挿は、推定故障時間を計算するのに好適であることが分かっている線形外挿である。さらには、線形外挿は、ノイズの多いデータを過剰適合するリスクを低減し、計算効率が高く、比較的少ないデータ点に基づいて実施され得る。他の実施形態は、他の外挿モデル、例えば、非線形モデルを使用し得るということを理解されたい。外挿の選択は、推定されるべき構成要素故障につながる機構の演繹的知識に依存し得る。例えば、構成要素故障を結果として生じるプロセスが、例えば、指数関数的に、加速することが分かっている場合、非線形外挿、例えば、指数関数的な外挿が選択され得る。
【0083】
図6では、時系列の線形外挿603が示される。線形補間が、時間t1(外挿の現在の時間を表す)に実施されており、それは、現在の時間t1を超えて未来まで延びる。
図6はまた、実際の観察に基づいた時系列601と外挿603との比較を可能にするために、外挿の現在の時間t1の後に獲得される実際に記録された観察を示す。
【0084】
任意選択的に、本プロセスはさらに、外挿の信頼区間、例えば、外挿が予め決められた信頼度で、例えば、95%信頼度で存在することが予期される補間の反映範囲を計算し得る。
図6は、外挿線605および607としての95%信頼区間を示す。
【0085】
依然として
図4を参照すると、および継続して
図6を参照すると、S9において、本プロセスは、いつ性能パラメータが構成要素故障の差し迫ったリスクを示す臨界レベルに到達することが予期されるかを外挿から決定する。例えば、臨界レベルは、許容値の範囲外に延びる外挿された性能パラメータとして規定され得る。本例では、臨界値は、最大しきい値602である。したがって、推定故障時間t2は、補間603が最大しきい値602を超える時間604として計算される。本プロセスの他の実施形態は、異なる様式で外挿から推定故障時間を計算し得るということを理解されたい。例えば、いくつかの実施形態は、外挿された時系列の推定値が、構成要素故障のリスクを示す予め決められた基準を満たす、例えば、予め決められたしきい値を超える、予め決められたしきい値を下回って減少する、または同様の、推定される未来の時間を決定し得る。本プロセスは、次いで、推定故障時間を、直接的に、このように推定した未来の時間として決定し得るか、または、本プロセスは、このように推定した未来の時間から推定故障時間を別途計算し得る。例えば、いくつかの実施形態は、推定故障時間に達するために、このように推定した未来の時間から予め決められたマージンを減算し得る。
【0086】
いずれにせよ、本プロセスは、計算した推定故障時間を、好適な様式で、例えば、保守ダッシュボードまたは他のユーザインターフェースの一部として、出力し得、保守オペレータが分析装置ユニットの保守をスケジュールすることを可能にする。任意選択的に、本プロセスはさらに、推定故障時間のための信頼区間を、例えば、それぞれ外挿の信頼区間を表す、外挿線605および607のそれぞれの交差点606および608として、計算し得る。任意選択的に、データ処理システムは、推定故障時間に関する情報を分析装置ユニット100および/または別のシステムに転送し得る。例えば、データ処理システム200は、推定故障時間を保守スケジューリングシステムおよび/または在庫管理システムに転送し得、オペレータの保守訪問のスケジューリングおよび/または予備部品の注文を可能にする。したがって、推定故障時間に基づいて、分析装置のオペレータは、不必要に頻繁な保守を回避しながら実際の構成要素故障を防ぐように、ハードウェア構成要素の保守をいつ実施すべきかに関して保守決定を行い得る。
【0087】
いくつかの実施形態において、推定故障時間は、推定故障時間が、予め決められたマージンよりも早いとき、例えば、現在の時間から、1カ月以内、6カ月以内、または1年以内であるときにのみ、表示され得る。代替的または追加的に、本プロセスは、推定故障時間が予め決められたマージンよりも早いときにアラートまたは警告を発行し得る。依然としてさらに、推定故障時間の計算は、1つまたは複数のトリガ条件が満たされていることを条件として実施され得る。例えば、いくつかの実施形態において、外挿は、最小数のデータ点が時系列内で利用可能であるときにのみ、および/または計算した時系列が十分に長い観察期間をカバーするときにのみ、および/または性能パラメータが、例えば、少なくとも予め決められた期間にわたって、公称範囲外にあるとき、実施され得る。
【0088】
図4のプロセスのステップは、分析装置ユニット100とデータ処理システム200との間で異なる様式で分散され得るということを理解されたい。例えば、1つの実施形態において、実際の測定ステップを除くすべてのステップは、遠隔データ処理システム200によって実施され得る。別の実施形態において、プロセス全体が、分析装置ユニット100によってローカルで、すなわち、遠隔データ処理システム200の必要性なしに、実施され得る。
【0089】
概して、本明細書で使用されるすべての用語は、異なる意味が、明白に与えられる、および/または使用される文脈において示唆されない限り、関連技術分野におけるそれらの通常の意味に従って解釈されるものとする。
【0090】
本明細書では様々な実施形態に対して参照がなされている。しかしながら、当業者は、説明された実施形態に対する多数の変形が依然として特許請求の範囲内に入るということを理解する。
【0091】
例えば、本明細書に説明される方法の実施形態は、特定の順序で実施されるステップを通じて例となる方法を開示する。しかしながら、これらの事象の順は、特許請求の範囲から逸脱することなく別の順序で発生し得るということを理解されたい。さらには、いくつかの方法ステップは、それらが順に実施されるものとして説明されているとしても、並行して実施され得る。故に、本明細書に開示される任意の方法のステップは、ステップが他のステップの後に続くもしくは他のステップに先行するものとして明示的に説明されない限り、および/またはステップが別のステップの後に続かなければならない、もしくは別のステップに先行しなければならないことが黙示的である場合を除き、開示される正確な順序で実施される必要はない。
【0092】
同じように、実施形態の説明において、特定のユニットへの機能ブロックの分割は、決して限定として意図されないということに留意されたい。逆に、これらの分割は、単に例にすぎない。1つのユニットとして本明細書に説明される機能ブロックは、2つ以上のユニットへと分けられ得る。さらには、2つ以上のユニットとして実装されるものとして本明細書に説明される機能ブロックは、より少ない(例えば、単一の)ユニットへと統合され得る。
【0093】
本明細書に開示される実施形態のいずれかの任意の特徴は、好適な場合には、任意の他の実施形態に適用され得る。同様に、実施形態のいずれかの任意の利点は、任意の他の実施形態に当てはまり得、その逆も然りである。
【0094】
故に、説明された実施形態の詳細は、単に例証の目的のために提案された例にすぎないこと、および特許請求の範囲内に入るすべての変形が、そこに取り入れられることが意図されるということを理解されたい。
【手続補正書】
【提出日】2024-02-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料を分析するための装置の保守を支援するためのコンピュータ実装の方法であって、前記装置は、保守の対象となる少なくとも1つのハードウェア構成要素を含み、前記方法は、
複数の測定結果を受信するステップであって、各測定結果は、生体試料を分析するための前記装置によって生体試料に対してまたは品質管理試料に対して実施される測定から導出され、前記複数の測定結果は、異なる時間に獲得される測定結果を含む、ステップと、
前記複数の測定結果から性能パラメータの時系列を計算するステップであって、前記性能パラメータは、前記少なくとも1つのハードウェア構成要素の動作状態を示すものであり、前記時系列は、開始時間および終了時間を有する期間を表し、前記終了時間は、現在の時間よりも前である、ステップと、
予め決められた外挿モデルを使用して、前記計算した時系列を外挿して、前記性能パラメータの外挿時系列を獲得するステップであって、前記外挿時系列は、前記終了時間よりも後の、特に前記現在の時間よりも後の、1つまたは複数の未来の時間における前記性能パラメータの1つまたは複数の推定値を含む、ステップと、
前記性能パラメータの前記1つまたは複数の推定値を、前記構成要素の構成要素故障のリスクを示す予め決められた条件と比較して、前記予め決められた条件が満たされる推定の未来の時間を決定するステップと、
前記推定の未来の時間から推定故障時間を決定するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記推定故障時間を出力するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記性能パラメータは、品質管理試料と関連付けられた標的値からの測定値の逸脱を示すものであり、前記測定値は、前記装置によって前記品質管理試料に対して実施される量の測定から生じる、請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
前記測定値は、前記装置によって前記品質管理試料に対して実施される量の測定から生じ、それぞれの生体試料に対して実施された1つまたは複数の以前の測定に基づいて補正された、補正測定値である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記決定された推定故障時間と関連付けられた信頼区間を決定するステップをさらに含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項6】
外挿するステップは、線形外挿を実施することを含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項7】
前記時系列を計算するステップは、1つまたは複数のデータクレンジング動作を含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項8】
前記時系列を計算するステップは、
1つまたは複数の動作事象を検出すること、および
前記受信した測定結果のうちの1つまたは複数を破棄することであって、前記1つまたは複数の破棄される測定結果は、前記検出した動作事象の後の時間に実施された測定から生じたものである、破棄すること、を含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項9】
前記動作事象は、前記装置および/または1つもしくは複数の予め決められた保守活動の再始動を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記1つまたは複数の破棄される測定結果は、前記検出した事象の後の予め決められた期間中に実施された測定から生じたものである、請求項
8に記載の方法。
【請求項11】
前記時系列を計算するステップは、前記時系列の移動中央値および/または低域フィルタリングを計算することを含む、請求項
7に記載の方法。
【請求項12】
前記測定結果を受信するステップは、通信ネットワークを介して前記装置から前記測定結果を受信すること、ならびに前記装置から遠隔のデータ処理システムによって、計算、外挿、比較、および決定する前記ステップのうちの一部またはすべてを実施することを含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項13】
前記装置は、血液試料を分析するための血液分析装置である、請求項
1に記載の方法。
【請求項14】
前記ハードウェア構成要素は、前記血液分析装置の光学分析ユニットのガラスキュベットである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
比較するステップは、前記性能パラメータの前記1つまたは複数の推定値を、前記性能パラメータの予め決められた標的範囲と比較して、前記推定値のうちの1つまたは複数が前記予め決められた標的範囲外にある推定の未来の時間を決定することを含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項16】
生体試料を分析するための装置の保守を実施するための方法であって、前記装置は、保守の対象となる少なくとも1つのハードウェア構成要素を含み、前記方法は、
請求項1~15のいずれか1項に記載の方法のステップをデータ処理システムに実施させるステップと、
前記推定故障時間より前の保守時間において前記ハードウェア構成要素の保守を実施するステップと、を含む、方法。
【請求項17】
請求項1~15のいずれか1項に記載の方法のステップを実施するように構成されたデータ処理システム。
【請求項18】
データ処理システムによって実行されるとき、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法のステップを前記データ処理システムに実施させるように構成されたプログラムコードを備える、コンピュータプログラ
ム。
【請求項19】
システムであって、
生体試料を分析するための少なくとも1つの装置であって、保守の対象となる少なくとも1つのハードウェア構成要素を含む、少なくとも1つの装置と、
請求項17に記載のデータ処理システムであって、前記少なくとも1つの装置に通信可能に結合され、前記少なくとも1つの装置から測定結果を受信するように構成された、データ処理システムと、を備える、システム。
【国際調査報告】