(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-30
(54)【発明の名称】再構成可能な回転直列弾性アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
B25J 19/00 20060101AFI20240723BHJP
F16F 3/04 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
B25J19/00 A
F16F3/04 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580693
(86)(22)【出願日】2022-06-10
(85)【翻訳文提出日】2023-12-28
(86)【国際出願番号】 SG2022050402
(87)【国際公開番号】W WO2023277799
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】10202107200X
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】509034605
【氏名又は名称】ナショナル ユニバーシティ オブ シンガポール
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【氏名又は名称】野本 裕史
(74)【代理人】
【識別番号】100220423
【氏名又は名称】榊間 城作
(72)【発明者】
【氏名】キアン,ユエペン
(72)【発明者】
【氏名】ユ,ハオヨン
【テーマコード(参考)】
3C707
3J059
【Fターム(参考)】
3C707AS38
3C707HS27
3C707HT21
3C707HT36
3C707KS21
3C707KV01
3C707LW07
3C707XK02
3C707XK06
3C707XK13
3C707XK17
3C707XK42
3C707XK85
3C707XK86
3J059AA09
3J059AC01
3J059BA01
3J059BB02
3J059BD02
3J059CB11
3J059GA50
(57)【要約】
内側引張ばねマウントと、外側引張ばねマウントと、内側引張ばねマウントと外側引張ばねマウントとの間に接続される複数の引張ばねとを備える再構成可能な回転直列弾性要素(RSEE)が開示される。各ばねが内側引張ばねマウント及び外側引張ばねマウントの一方又は両方に接続する位置は、出力トルクとRSEEの偏向角との間の関係を調整するために変更され得る、及び
内側引張ばねマウントと外側引張ばねマウントとの相対回転中に、少なくとも1つの前記引張ばねにおける張力の大きさが少なくとも1つの他の前記引張ばねにおける張力の大きさと異なるように設定される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再構成可能な回転直列弾性要素(RSEE)であって、
内側引張ばねマウントと、
外側引張ばねマウントと、
前記内側引張ばねマウントと前記外側引張ばねマウントとの間に接続される複数の引張ばねと、を備え、
各ばねが前記内側引張ばねマウント及び前記外側引張ばねマウントの一方又は両方に接続する位置は、
出力トルクと前記RSEEの偏向角との間の関係を調整するために変更可能であり、かつ、
前記内側引張ばねマウントと前記外側引張ばねマウントとの相対回転中に、少なくとも1つの前記引張ばねにおける張力の大きさが、少なくとも1つの他の前記引張ばねにおける張力の大きさと異なるように設定される、RSEE。
【請求項2】
前記内側引張ばねマウントが内側プレートであり、
前記外側引張ばねマウントが2つの外側プレートを備え、
前記内側プレートが前記外側プレート間に配置される、請求項1に記載のRSEE。
【請求項3】
前記外側引張ばねマウントは、前記外側引張ばねマウントに接続するように前記引張ばねを選択できる位置を規定する複数の離隔したヒッチホールを備える、請求項1又は2に記載のRSEE。
【請求項4】
各引張ばねが接続シャフトによって前記外側引張ばねマウントに接続する、請求項1から3のいずれか一項に記載のRSEE。
【請求項5】
各引張ばねは、前記内側引張ばねマウントと前記外側引張ばねマウントとの間の角度を規定し、
前記関係は、前記引張ばねのうちの1つ以上の前記角度をオフセットすることによって調整され得る、請求項4に記載のRSEE。
【請求項6】
前記関係は、前記引張ばねのうちの1つ以上のプレテンション長さを変更することによって調整され得る、請求項4又は5に記載のRSEE。
【請求項7】
前記関係は、前記内側引張ばねマウントと前記外側引張ばねマウントとの間の引張ばねの追加又は除去を変更することによって調整され得る、請求項1から6のいずれか一項に記載のRSEE。
【請求項8】
前記内側プレートと前記外側プレートとの間で、前記内側プレートの両側に配置される2つの軸受を更に備える、請求項2に記載のRSEE。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のRSEEと、
前記内側引張ばねマウント及び前記外側引張ばねマウントのうちの一方を駆動するための駆動アセンブリと、を備える直列弾性アクチュエータ(SEA)。
【請求項10】
前記駆動アセンブリが前記内側引張ばねマウントを駆動する、請求項9に記載のSEA。
【請求項11】
前記RSEEを収容するためのハウジングを更に備える、請求項9又は10に記載のSEA。
【請求項12】
前記内側引張ばねマウントの角度の変化を測定するための第1の角度測定器と、
前記外側引張ばねマウントの角度の変化を測定するための第2の角度測定器と、を更に備える、請求項9から11のいずれか一項に記載のSEA。
【請求項13】
前記駆動アセンブリは、
駆動力を与えるためのモータと、
埋め込み歯車減速機と、
前記内側引張ばねマウント及び前記第1の角度測定器に接続される出力シャフトと、を備える、請求項12に記載のSEA。
【請求項14】
前記内側引張ばねマウントの回転軸に沿って前記出力シャフトの位置を固定するためのシャフトスリーブを更に備える、請求項13に記載のSEA。
【請求項15】
各角度測定器がエンコーダである、請求項12から14のいずれか一項に記載のSEA。
【請求項16】
各エンコーダがロータリエンコーダである、請求項15に記載のSEA。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、再構成可能な回転直列弾性要素、及びそのようなRSEEを備える直列弾性アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、障害者を身体的に支援したり、人力を増強したりするために、様々な支援ロボットが開発されている。歩行支援用の電動外骨格などのこれらのロボット装置は、障害者の移動性及び生活の質を著しく改善する。そのような用途において、支援ロボットは、それらを使用する人間との直接的な物理的相互作用を必然的に有する。
【0003】
物理的な人間-ロボット相互作用(pHRI)の性能及び安全性を向上させるために、アクチュエータ及び対応するコントローラの設計は非常に重要である。制御によってもたらされる能動的な順応性及び受動的な物理的順応性を含む順応性の使用は、支援ロボットにとって必須であり、環境に対する動的な適応性及びロバスト性を改善し、安全なpHRIを達成するために不可欠であると考えられている。様々な順応性のあるアクチュエータの設計及び制御には多くの新たな開発があったが、実際の用途において満足のいくpHRI性能を得ることは依然として困難である。
【0004】
直列弾性アクチュエータ(SEA)は、そのような順応性のあるアクチュエータの1つであり、この場合、物理的弾性要素が剛性アクチュエータと外部負荷との間に意図的に直列に導入される。より低い出力インピーダンス、良好な逆駆動性、耐衝撃性、エネルギー効率、滑らかで正確な力伝達、及びpHRIの安全性を含む、SEAの利点を利用するための支援ロボット用の様々なSEAが開発されている。しかしながら、SEAは、一般に、力伝達における弾性要素として所定の剛性を有するばねを使用し、これは、SEAの性能がばね定数に大きく依存するため、従来のSEAの基本的な制限である。一方で、柔軟なばねが、高い力制御忠実度、低い出力インピーダンスを生み出して、静止摩擦を低減するが、力範囲及び力帯域幅も制限する。一方、剛性ばねは、力の帯域幅を増大させるが、力の忠実度を低下させる。所望の力出力及び十分な力帯域幅を達成するために、殆どの既存のSEAは、高い剛性を有するばねを使用し、それにより、力制御性能の低下、低い固有の順応性及び逆駆動性がもたらされる。
【0005】
従来のSEAの基本的な制限を克服するために、多数の新規な順応性のあるアクチュエータが提案されている。可変剛性アクチュエータ(VSA)は、最も研究されている例の1つである。VSAは、様々な動作原理に基づいて剛性を調整することができる。これらの動作原理の中で、二次モータ及び複雑な剛性調整機構によって弾性要素を調整することが、剛性変動を達成するための最も一般的な手法である。結果として、これらのアクチュエータは一般に複雑で重く、そのため、制御の複雑さが増大し、支援ロボット、特に装着型支援ロボットにおける展開が困難になる。
【0006】
VSAとは別に、SEAに非線形剛性を導入することも、従来のSEAの制限に対する有望な解決策を提供する。しかし、既存の設計は、非線形剛性を達成して支援ロボットの様々な用途への適応性を改善するには依然として限界がある。場合によっては、非線形剛性挙動は、特別に設計されたカム形状で達成され、異なる用途への適応性の欠如をもたらした。非線形及び調整可能な剛性挙動をもたらすことができる幾つかの新規で再構成可能な設計が利用可能である。しかし、そのような装置の再構成可能性及び調整可能な剛性は、プーリブロックでの様々な複雑な巻線方法を使用して達成され、その結果、摩擦に起因してモデル精度が制限され、pHRIで満足のいく制御性能を達成することが困難になる。
【0007】
pHRIの性能及び異なる用途への適応性を改善するために、又は少なくとも有用な代替物を提供するために、既存の非線形SEAの前述の制限を克服するための新規な装置設計を提供することがましい。
【発明の概要】
【0008】
本明細書では、順応性のあるアクチュエータ設計、より詳細には、支援ロボットのための非線形剛性を有する再構成可能な回転直列弾性アクチュエータ(SEA)について説明する。記載された装置は、通常の引張ばねを有する新規且つ再構成可能な回転直列弾性要素(RSEE)によってもたらされる非線形剛性及び調整可能な剛性プロファイルを特徴とする。非線形剛性は、一定の剛性によって引き起こされる従来のSEAの制限を克服し、人間とロボットとの相互作用の性能を改善することができる。再構成可能なRSEEの異なる構成を変更することによって異なる剛性プロファイルを得ることができ、それにより、このモジュール式アクチュエータを異なる支援ロボット及びタスクに適用することができる。
【0009】
再構成可能な回転直列弾性要素(RSEE)であって、
内側引張ばねマウントと、
外側引張ばねマウントと、
内側引張ばねマウントと外側引張ばねマウントとの間に接続される複数の引張ばねと、
を備え、
各ばねが内側引張ばねマウント及び外側引張ばねマウントの一方又は両方に接続する位置が、
出力トルクとRSEEの偏向角との間の関係を調整するために変更され得る、及び
内側引張ばねマウントと外側引張ばねマウントとの相対回転中に、少なくとも1つの前記引張ばねにおける張力の大きさが少なくとも1つの他の前記引張ばねにおける張力の大きさと異なるように設定される、
RSEEが開示される。
【0010】
内側引張ばねマウントが内側プレートであってもよく、この場合、外側引張ばねマウントが2つの外側プレートを備え、内側プレートが外側プレート間に配置される。
【0011】
外側引張ばねマウントは、外側引張ばねマウントに接続するように引張ばねを選択できる位置を規定する複数の離隔したヒッチホールを備えてもよい。
【0012】
各引張ばねは、接続シャフトによって外側引張ばねマウントに接続されてもよい。各引張ばねは、内側引張ばねマウントと外側引張ばねマウントとの間の角度を規定してもよく、この場合、関係は、引張ばねのうちの1つ以上の角度をオフセットすることによって調整され得る。関係は、引張ばねのうちの1つ以上のプレテンション長さを変更することによって調整されてもよい。
【0013】
関係は、内側引張ばねマウントと外側引張ばねマウントとの間の引張ばねの追加又は除去を変更することによって調整され得る。
【0014】
RSEEは、内側プレートと外側プレートとの間で、内側プレートの両側に配置される2つの軸受を更に備えてもよい。
【0015】
前述のRSEEと、
内側引張ばねマウント及び外側引張ばねマウントのうちの一方を駆動するための駆動アセンブリと、
を備える直列弾性アクチュエータ(SEA)も開示される。
【0016】
駆動アセンブリは、内側引張ばねマウントを駆動してもよい。
【0017】
SEAは、RSEEを収容するためのハウジングを更に備えてもよい。
【0018】
SEAは、内側引張ばねマウントの角度の変化を測定するための第1の角度測定器と、外側引張ばねマウントの角度の変化を測定するための第2の角度測定器とを更に備えてもよい。駆動アセンブリは、駆動力を与えるためのモータと、埋め込み歯車減速機と、内側引張ばねマウント及び第1の角度測定器に接続される出力シャフトとを備えてもよい。SEAは、内側引張ばねマウントの回転軸に沿って出力シャフトの位置を固定するためのシャフトスリーブを更に備えてもよい。
【0019】
各角度測定器がエンコーダであってもよい。各エンコーダがロータリエンコーダであってもよい。
【0020】
好適には、RSEEが非線形剛性を有する。非線形剛性は、一定の剛性によって引き起こされる従来のSEAの制限を克服することができる。そのような実施形態は、低コストで正確な非線形剛性を有する特別なねじりばねではなく、通常の引張ばねを利用することもできる。
【0021】
本明細書に記載の構成は、回転直列弾性アクチュエータに使用される既存のねじりばねと比較して、大きな偏向範囲及び高いトルク分解能を与える。
【0022】
好適には、RSEEの設計は再構成可能である。したがって、再構成可能なRSEEの構成を変更することによって、異なる剛性プロファイルをもたらすことができる。更に、剛性プロファイルは調整可能であり、それにより、異なる支援ロボット及びタスクのためにアクチュエータ(又はモジュール設計の複数のアクチュエータ)を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
ここで、本発明の実施形態を、非限定的な例として、以下の図面を参照して説明する。
【
図1】本開示に係る、装置内の再構成可能なRSEEの斜視図である。
【
図2】
図1の再構成可能RSEEアクチュエータの分解斜視図である。
【
図3】本開示に係る再構成可能RSEEの斜視図である。
【
図4】
図3の再構成可能RSEEの分解斜視図である。
【
図5】引張ばねのプレテンション長さΔlを変えることによって構成されるRSEEの例示的な実施形態の概略図である。
【
図6】
図5のRSEEの出力トルクと偏向角との関係を示す。
【
図7】引張ばねのオフセット角φを変化させることによって構成されるRSEEの例示的な実施形態の概略図である。
【
図8】
図7のRSEEの出力トルクと偏向角との関係を示す。
【
図9】引張ばねのオフセット角φを変化させることによって構成されるRSEEの例示的な実施形態の概略図である。
【
図10】
図9のRSEEの出力トルクと偏向角との関係を示す。
【
図11】本教示に係るRRSEAnsの機械設計及びプロトタイプであり、画像(a)はコンピュータ支援設計(CAD)モデルの全体図であり、画像(b)はCADモデルの分解図であり、画像(c)は可変ばねプレテンション長さ(最大6ばね対)を伴う第1の構成であり、画像(d)は可変オフセット角(最大6ばね対)を伴う第2の構成であり、画像(e)は可変オフセット角(最大4ばね対)を伴う1/3構成であり、画像(f)は試験のために使用されるRRSEAnsプロトタイプである。
【
図12】再構成可能なRSEEの概略図であり、画像(a)はばねのプレテンションを伴う構成を示し、画像(b)はオフセット角度を伴う構成を示す。
【
図13】画像(a)は、RRSEAnの出力トルク及び剛性に関する2つの調整可能な変数の影響のシミュレーション結果を示し、画像(b)は、実験結果によるモデル検証を示す。
【
図14】本教示に係るRRSEAnの概略線形化モデルである。
【
図15】カスケードPIコントローラの一実施形態を示す。
【
図16】異なるレベルの非線形性を伴うRRSEAnの周波数応答を示し、画像(a)は、低い出力トルクを伴う開ループ応答を示し、画像(b)は、低い出力トルクを伴う閉ループ応答を示し、画像(c)は、高い出力トルクを伴う開ループ応答を示し、画像(d)は、高い出力トルクを伴う閉ループ応答を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
支援ロボット用の非線形剛性を有する再構成可能な回転直列弾性アクチュエータ(RRSEAns)について説明する。非線形及び調整可能な剛性プロファイルは、新規の再構成可能な回転直列弾性要素(RSEE)によって生成され、これは、低出力インピーダンス、力制御の高忠実度、大きな力帯域幅、及び出力力範囲の間の良好なバランスを達成するのを助けることができる。線形引張ばねは、再構成可能なRSEEにおける基本的な弾性要素として使用され、剛性プロファイルは、RSEEの設定を変更することによって調整することができる。更に、2つの異なる調整原理に基づく運動学的モデルが確立され、これは、剛性特性に対する調整可能なパラメータの影響を明らかにし、設計及び剛性調整のためのガイダンスも提供する。
【0025】
アクチュエータ設計に加えて、コントローラ設計もまた、pHRIの満足できる性能及び保証された安全性を達成するために重要である。コントローラ設計の場合、非線形剛性は、通常、正確で安定した力制御を達成することをより困難にする。適用が容易で堅牢なコントローラとして、幾つかの実施形態では、線形SEAの力制御のためにカスケードPIDが選択される。カスケードPIDコントローラを使用すると、駆動されるモータの速度ループ帯域幅がSEAの力ループ帯域幅よりもはるかに高く、モータダイナミクスが負荷側から切り離されるため、効果的で堅牢な力制御を達成することができる。以下に、非線形剛性を有する提案されたアクチュエータのトルク制御のために設計されたカスケードPIコントローラについて説明する。調整可能な剛性プロファイルに基づいて、高度に非線形及び線形剛性を有する人間-ロボット相互作用の試験が実行され、これにより、pHRIにおける非線形剛性の利点が明確に実証される。
【0026】
図1~
図4は、支援ロボットにおける使用を容易にするために、システムに非線形剛性を与える再構成可能な回転直列弾性要素(RSEE)102を組み込んだそのような装置100を示す。幾つかの実施形態では、RSEE 102を有する装置100は、単一のユニットとして提供される。他の実施形態では、RSEEは、別の装置に組み込むためにそれ自体で提供される。
【0027】
装置100は、ハウジングアセンブリ104を備える。ハウジングアセンブリ104は、人間の移動を支援するためのシステムに対して定位置に装置100を保持する。したがって、装置は、2つの部材(例えば、上肢と下腿との間の移動のための膝、又は前腕と上腕との間の移動のための肘)間の相対運動を与えるジョイントに取り付けられる。ハウジングは、一方の部材(例えば、上部アーム)に取り付けられてもよく、外側引張ばねマウント(後述)は、他方の部材(例えば前腕部)に取り付けられてもよい。例えば、装置は、人間の大腿部に固定するための上部脚部材と、人間の下腿部に固定するための下部脚部材とを備えるシステムの膝関節に取り付けられてもよい。次いで、装置は、膝の制御された屈曲を支援し、脚の制御された動きを支援するための適切な抵抗を与えるのに役立つことができる。同様のコメントは、人間の別の関節、例えば肘関節に配置されている装置に関しても当てはまる。
【0028】
RSEE 102は、内側引張ばねマウント106と、ここではプレート108a及び108bによって具体化される外側引張ばねマウントと、複数の引張ばね110とを備える。引張ばね110は、内側引張ばねマウント106と外側引張ばねマウント(108a,108b)との間に延在又は接続する。引張ばね110は、任意の適切なばねであってもよいが、一般に、通常の(例えば、線形ばね定数)ばねであることが想定される。
【0029】
図5、
図7、及び
図9を参照して説明されるように、各ばね110が内側引張ばねマウント106及び外側引張ばねマウント(108a,108b)の一方又は両方に接続する位置を変更して、RSEE 102の出力トルクと偏向角との間の関係を調整することができる。これにより、RSD102は、例えば、内側ばねマウント106を外側ばねマウントに対して回転させるのに必要な懸垂量(108a,108b)を調整するように再構成することができる。ばね110がばねマウント(106,108a,108b)に接続される位置はまた、内側引張ばねマウント106と外側引張ばねマウント(108a,108b)との相対回転中に、少なくとも一方の前記引張ばね110の張力の大きさが、少なくとも一方の他の前記引張ばね110の張力の大きさと異なるように設定される。したがって、RSEE 102は非線形力応答を有する。
【0030】
内側引張ばねマウント106は、内側プレートの形態をとる。内側プレート106に取り付けられたばね110が内側プレート106の周囲に均等に分布する位置112。他の実施形態では、位置112は、内側プレート106の周囲に不均一に分布してもよく、又は内側引張ばねマウントの回転軸から様々な半径方向距離に配置されてもよい。
【0031】
外側引張ばねマウントは、同様に、2つの外側プレート108a及び108bを備える。内側プレート106は、外側プレート(108a,108b)の間に配置される。幾つかの実施形態では、外側引張ばねマウントは、内側引張ばねマウントの片側に配置された単一のプレート又は他の部材のみを備えてもよい。しかしながら、横方向に課される荷重(すなわち、内側引張ばねマウントの回転軸に平行な非ゼロ成分を有する荷重)の下での曲げに対する安定性のために、内側引張ばねマウント106は、外側引張ばねマウントの部材の間に配置されることが望ましい。
【0032】
RSEE 102とハウジング104との間の相対回転を容易にするために、軸受126がRSEE 102とハウジング104のプレート128との間に設けられる。ここで、ハウジングは、RSEE 102が間に挟まれる2つのプレート128,132を備え、プレート128,132は上部プラテン130によって接続されている。駆動アセンブリ120は、固定された関係でプレート132の一方に接続される。内側引張ばねマウントは、シャフト134に取り付けられるか、又はシャフトを備える。シャフトとハウジングとの正確な位置合わせを維持するために、シャフト134はシャフトスリーブ136内で回転する。
【0033】
外側引張ばねマウントは、引張ばね110を接続することができるヒッチホール114によって現在具体化されている複数の位置を含む。ヒッチホール114は、取り付けられた外側引張ばねの周囲に均等に分布してもよく、代替的に示すように、ヒッチホール114は、外側引張ばね取り付けの周囲に不均等に分布してもよく、又は外側引張ばね取り付けの回転軸からの様々に異なる半径方向距離に配置されてもよい。引張ばね110は外側引張ばねマウントに直接接続されてもよいが、本引張ばね110は、プレート108a、108bのそれぞれに両端で接続されたシャフト113に接続される。
【0034】
内側ばねマウント(プレート106)は、外側ばねマウント(プレート108a、108b)に対して回転する。その回転を容易にするために、内側ばねマウントは、118上の2つの軸受116によって2つの外側プレート108a及び108bに接続される。2つの軸受116,118は、内側プレート106と外側プレート108a、108bとの間で、内側プレート106の両側に配置される。したがって、内側プレート106は、外側プレート108a及び108bに対して自由に回転することができる。内側プレート106と2つの外側プレート108a,108bとの間の空間には、引張ばね110が配置される。引張ばね110は、内側プレート106のヒッチポイント112を介して内側プレート106に接続され、2つの外側プレート108a,108bのヒッチホール114に配置された接続シャフト113を介して2つの外側プレート108a,108bに接続される。
【0035】
図2及び
図4を参照すると、装置100は、外側引張ばねマウント内の内側引張ばねマウントのうちの1つを駆動するための駆動アセンブリ120を含む。本駆動アセンブリ120は、内側引張ばねマウントを駆動する。
【0036】
駆動アセンブリ120は、出力シャフト124を駆動するモータ122を備える。モータ122によって加えられる力を調整するために、駆動アセンブリは、埋め込まれた歯車減速機を含むこともできる。
【0037】
出力シャフト124は、コネクタ126を介して再構成可能RSEE 102の内側プレート106に接続される。コネクタ126は、駆動アセンブリ120によってその回転がもたらされている1つ以上のプレート、ここでは内側プレート106の周りに出力シャフト124からの力が均等に分配されるようにする。
【0038】
取り付けられた内側引張ばねと取り付けられた外側引張ばねとの間の相対回転量を制御し、それによって、例えば補助運動のための外骨格の2つの部材間の相対回転量を制御するために、1つ以上の角度測定器が設けられる。各角度測定器は、内側引張ばねマウントと外側引張ばねマウントとの間、又はばねマウントの一方とハウジング104との間の角度を測定する。ここでは、2つの角度測定器がある。第1の角度測定器133は、出力軸の角度の変化、すなわち内側プレート106の角度の変化を測定する。第1の角度測定器は、既知の態様で動作するロータリエンコーダであってもよく、内側引張ばねマウント及び外側引張ばねマウントの他方の回転変化を測定するために、取り付けられた内側引張ばね及び取り付けられた外側引張ばねの一方に固定される。第2の角度測定器136は、シャフト124又はハウジングアセンブリ104に対する外側プレート108a及び108bの角度の変化を測定し、例えば、外側プレート又は内側プレートのハウジング、モータ又は他の何らかの点に関する角回転を測定する。角度測定器は、エンコーダ又はロータリエンコーダなどの任意の適切な装置であってもよい。角度測定器133,136の異なる読み取り値を使用して、RSEE 102の偏向角を推定することができる。言い換えれば、内側プレート106と外側プレート108a及び108bとの角度間の角度差は、再構成可能RSEE3の偏向角である。出力トルクは、再構成可能RSEE3及びフックの法則の運動学的モデルに基づいて正確に計算することができる。
【0039】
再構成可能RSEE3の構成は、
図5、
図7、及び
図9に示すような様々な非線形配置に設定することができる。
図5及び
図6を参照すると、引張ばね110は、位置112から半径方向外側に2つの位置114まで延在する。引張ばね110は、回転軸138の周りに等距離に離隔される。等距離隔隔にもかかわらず、
図6に示すように、出力トルクτと偏向角θとの間の関係は非線形である。出力トルクは、増大する量だけ、偏向角θの大きさが大きくなる。非線形関係は、引張ばね110のうちの1つ以上のプレテンション長さΔlを変更することによって調整することができる。
図7を参照すると、複数のばねの第1の端部を位置112に取り付け、それらのばねの第2の端部をそれぞれ異なる位置114に取り付けることによって、別の非線形関係を得ることができる。同様の効果は、複数のばねを位置114に接続すること、反対側の端部がそれぞれ異なる位置112に接続されること、又は両方の取り付け方式の組み合わせによって達成することができる。
図8に示すように、出力トルクτと偏向角θとの間の関係は、やはり非線形である。本実施形態では、引張ばね110のオフセット角度(すなわち、角度をオフセットする)φを変更することにより、非線形関係を調整することができる。オフセット角φは、半径方向線Yに対して、位置112からのばねの軌道Xと、2つの対応する位置114との間の角度である。単一の位置112,114に接続された任意のばねについて、オフセット角度は、
図7に示すように同じであってもよいし、異なっていてもよい。
図8に示すように、正の方向の偏向角0からのプロファイルは、負の方向の偏向角0からのプロファイルと等しく反対であるが、これらのプロファイルは、同じ位置112,114に接続された任意の2つのばね間のオフセット角度が異なる場合、もはや等しくない可能性がある。
図9は、引張ばね110のオフセット角φを変化させることにより、
図10に示すように非線形関係が変化する代替的な構成を示す。
【0040】
図5~
図10に示す各実施形態では、全ての引張ばねを調整して非線形関係を変更することができ、又は引張ばねのサブセットを調整することができる。同様に、いずれの場合も、非線形関係は、取り付けられた内側引張ばねと外側引張ばねマウントとの間の引張ストリングを追加又は除去することによって変更することができる。
【0041】
上記の実施形態、及びそれらの実施形態を参照して理解される実施形態のうち、出力トルクと偏向角との間の関係は非線形であり、剛性は、0に近い最小値から比較的大きい値まで変化し得る。非線形関係は広い範囲の偏向角で維持され、それによってトルク測定は正確である。
【0042】
再構成可能RSEE 102の構成の変更は、プレテンション長Δl、引張ばね110のオフセット角φ、及びばねの数のうちの1つ以上を調整することによって実施することができる。したがって、出力トルクと偏向角との間の非線形関係は、
図6、
図8、及び
図10に示すように調整することができる。再構成可能RSEE 102及び回転直列弾性アクチュエータは、異なる使用条件に適合する。
【0043】
基準は、0.095Nm/°~2.330.095Nm/°.を含むがこれらに限定されない広範囲の剛性を与えることができる。
【0044】
次に、試験に使用される
図11を参照して、更なる実施形態を説明する。特に、RRSEAnを駆動するために歯車減速機及びアブソリュートエンコーダが埋め込まれた1100のディスク形状モータを使用して、RRSEAnのサイズ及び重量を保存することができる。出力トルクを更に増大させ、またRRSEAnsの厚さを減少させるために、同期ベルト1102を使用してモータ1100とRSEE 1104との間で力を伝達した(すなわち、RSEE 1104を駆動するモータ1100によって駆動されるシャフト1106)。同期ベルトの変速比は、適宜選択することができる。例えば、変速比は2:1であってもよく、これはより大きな出力トルクの要件を満たすために更に増大させることができ、又はより低いトルクのために減少させることができる。幾つかの実施形態では、変速機の後、RRSEAnは、最大13.2N・mの連続トルク及び30N・mを超えるピークトルクを与えることができる。この範囲は、殆どの支援ロボットにとって適切である。
【0045】
構造部品は、必要に応じてRRSEAnの総重量が約1kgになり得るアルミニウム合金などの任意の適切な材料から形成されてもよい。
【0046】
図11に示す実施形態では、直列弾性要素は、弾性による位置制御、並びにモータ及び伝達機構における摩擦及び反射慣性を部分的にマスキングする力制御を伝達する。これにより、正確なトルク制御及び低インピーダンスが可能になる。伝送エラーの影響を排除するために、RSEEの偏向角は、1108、1110である2つのアブソリュートエンコーダを使用して測定される。ロータリエンコーダなどの任意の適切なエンコーダ、例えば、17ビットの分解能を有するロータリアブソリュートエンコーダを使用することができる。
【0047】
ロータリSEAでは、弾性要素は、トルクセンサ及びトルク発生器として使用される。したがって、回転SEAの性能は、弾性要素の特性に大きく依存する。本RSEEは、線形剛性と比較して、pHRI制御の要件をより良好に満たすことができる非線形剛性を特徴とする。弾性要素としてカスタムねじりばねを使用する他の既存の回転SEAとは異なり、RRSEAnsの主な利点は、安価な線形ばねを用いたRSEEの新規設計によって所望の非線形剛性特性が生成されることである。RSEEは、同軸回転機構に基づいて設計される。この設計では、RSEEの2つの同軸プレート(内側プレート及び外側プレート)は、相対的に回転することができ、引張ばねを介して結合される。内側プレートは、伝達機構を介してモータによって駆動され、外側プレートは、外側負荷に連結される。結果として、引張ばねからの順応性は、RSEEの入力側と出力側との間に意図的に直列に導入される。
【0048】
図11(画像(c))に示すように、幾つかのヒッチポイント1112、1114が、2つのプレート1116、1118上に均等に配置される。引張ばね1120は、入力側から出力側への回転を結合するために、2つのプレート1116、1118のヒッチポイントの間に挟まれる。結合の剛性は、ばね剛性、ばねの数、ばねのプレテンション長さ、及び初期位置におけるオフセット角によって決定される。この設計により、RSEEの異なる構成を選択することによって可変剛性値及び様々な剛性プロファイルを得ることができ、これにより、支援ロボットにおける異なる用途へのRRSEAnsの適応性が大幅に改善される。
図5、
図7、及び
図9に対応する3つの典型的な構成(画像(c)、(d)及び(e))が
図11に示されている。
【0049】
運動学的設計のために、剛性調整の2つの基本原理、すなわち、ばねのプレテンション長さを調整することと、
図12に概略的に記載されている初期位置におけるオフセット角を調整することとを考慮する。調整のための第3の機構は、引張ばねを追加又は除去する際に存在する。12に示す幾何学的パラメータ及びばね張力は、次のように表される。
-l
0、ΔLはそれぞればね静止長さ及びばねプレテンション長さである;
-r
1、r
2は、それぞれ内側板及び外側板のヒッチポイントの半径である。具体的には、r
1は固定であり、r
2はばねプレテンション長ΔLによって決定され、式(1)を用いて計算することができる。
【数1】
【0050】
-θ、qは、それぞれ内側プレート及び外側プレートの回転角度を示す。
-φ
1、φ
2は、オフセット角度が初期位置にあることを示し、幾つかの実施形態では反対(φ
1=-φ
2-
図11、画像(d))であり、他の実施形態では同一(φ
1=-φ
2-
図11、画像(e))である。
-l
1及びl
2は、任意の偏向角度での各対における2つのばねの滞留長さを示し、式(2)を使用して計算することができる。
【数2】
【0051】
-F
i(i=1,2)は、各対の2つのばねの引張力を表し、式(3)によるフックの法則に従って計算することができる。
【数3】
【0052】
θ及びqの測定により、RRSEAnsの出力トルクは、式(4)によって計算することができる。
【数4】
【0053】
ここで、n=4、6はばね対の数に対応する。したがって、RRSEAnsの等価回転剛性は、式(5)によって定義される。
【数5】
【0054】
ここで、βは式(6)によるRSEEの偏向角であり、
【数6】
【0055】
この運動学的モデルは、RSEEの全ての構成を表すことができる。例えば、初期位置のオフセット角が0(φ
1=φ
2=0)に設定されると、
図11の画像(c)に示される構成を特徴付ける。また、ばね対の数が4に設定され、各対の2つのばねのオフセット角が同一に設定される場合(Φ1=Φ2)、
図11の画像(e)に示す構成を特徴付ける。
【0056】
引張ばねのパラメータ及び数は、コンパクトRSEE内の制限された設置スペース、並びに最大出力トルクの要件を考慮に入れることによって決定される。一方で、より高い剛性を有する引張ばねは、大きな偏向角でより高い剛性及びRSEEのより大きな出力トルクをもたらす。一方、初期位置の周りのRSEEの剛性は、RSEEの設計特性のために低いままであり、透明モードで低インピーダンスを確立する必要性を満たすことができる。RSEE(表I参照)の運動学的モデル及び幾何学的パラメータによれば、剛性20kN/m及び静止長さ28.5mmの引張ばねが、約30°のたわみで30N・mを超えるトルクの設計基準を満たすように選択され、予備試験結果は、引張ばねがHookeの法則によく適合することを示した。
【0057】
運動学的モデル及びRSEEの調整原理に基づいて、RRSEAnの性能限界及び特性を明らかにするためにシミュレーションを実行した。RSEEの幾何学的パラメータ及び選択されたばねの特性を表Iに示す。選択されたばねの初期張力を克服し、RRSEAnの使用及び制御に何らかの問題を引き起こす可能性があるRSEEの完全に弛緩した状況を回避するために(K
eq=0-すなわち、ばねに張力がない。幾つかの実施形態では、ばねのサブセットは、ゼロ張力を有することを許容され得る)、最小プレテンション長さが、RSEEの全ての構成(プレテンション長さを有する構成及びオフセット角度を有する構成を含む)について0.5mmに設定されたことは注目に値する。シミュレーションでは、以下の仕様が考慮された。
-剛性範囲 K
eq∈[K
min,K
max]
-最大許容出力トルク τ
max
-最大偏向角 β
max
【表1】
表I-プロトタイプ及びコントローラのパラメータ
【0058】
図13の画像(a)は、RRSEAnの出力トルク及び剛性に対する2つの調整可能な変数の影響のシミュレーション結果を示す。図では、破線及び実線は、任意のRSEE構成を有するRRSEAnsの作業空間を決定する、選択されたばねが支持することができる最小プレテンション長さ及び最大テンション長さをそれぞれ表す。ばねプレテンション長さを有する構成では、最大出力トルクは30.4N・mであり、最大偏向角31.4°に達した。剛性は0.095N・m/°から2.18N・m/°.まで変化した。オフセット角を有する構成では、出力トルクは最大36.5N.mに達し、最大偏向角は31.4°であった。剛性は、0.095N・m/°から2.33N・m/°.まで変えることができる。シミュレーションに基づいて、性能限界及び特性が明確に示された。最後に、図から分かるように、性能はRSEE構成に対して変化した。
【0059】
運動学的モデルの精度を検証するために、ベンチテストシステムで準静的試験を実行して、RSEEの実験的なトルク-たわみ特性を式(4)の理論結果と比較した。試験中、トルクセンサをRSEE出力プレートに接続して実際の出力トルクを測定し、RSEE偏向角を2つのアブソリュートエンコーダで測定した。異なる構成に対するRSEEのトルク-たわみ特性を評価するために、
図13の画像(b)に示すように、0.5mm及び2.0mmのプレテンション長さ並びに10°及び20°のオフセット角で4つの別個の測定を実施した。点、黒破線及び実線は、それぞれ実験結果、フィッティング曲線及び理論結果を表す。実験結果と理論結果とを比較すると、4つの構成でそれぞれ0.28、0.21、0.24、0.22N・mの二乗平均平方根(RMS)誤差が見られ、これはピーク印加負荷の3.6%、2.2%、2.6%、2.1%未満である。実験データのフィッティング曲線と理論的予測との間の密接な相関は、運動学的モデルが正確であることを示している。
【0060】
図13において、画像(a)は、RRSEAnの出力トルク及び剛性に対する2つの調整可能な変数の影響のシミュレーション結果を示す。白い実線は、選択されたばねが支持できる最大張力を表し、RRSEAnの作業空間を示している。上:出力トルクτ
e対プレテンション長さΔL及び偏向角β;剛性K
eq対プレテンション長さΔL及び偏向角β。下:出力トルクτ
e対オフセット角Φ及び偏向角β;剛性K
eq対オフセット角Φ及び偏向角β。画像(b)は、実験結果によるモデル検証であり、点、黒破線及び実線は、それぞれ実験結果、フィッティング曲線及びシミュレーション結果を示す。左側の図は実験結果を示し、右側の図はフィッティング曲線とシミュレーション結果の比較を示す。上:プレテンション長さΔLが可変の構成。下:オフセット角Φが可変の構成。
【0061】
図13は、RRSEAnの剛性性能が、RSEE構成を変更することによって大幅に調整され得ることを示す。構成1(
図11、画像(c))の場合、プレテンション長さが増大するにつれて非線形性が弱くなり、同じ偏向角での出力トルク及び剛性が増大する。剛性プロファイルは、プレテンション長さが大きい場合でも依然として非線形であることに留意されたい。構成2(
図11、画像(d))の場合、オフセット角を有するRSEEは、構成1と比較してより広い範囲でその剛性性能を変化させることができる。硬化、線形及び軟化モードは、オフセット角が徐々に増大するにつれて達成することができ、硬化モードはpHRIの性能を改善するために望ましく、線形モードは約20°のオフセット角で達成することができる。
【0062】
プレテンション長さ及びオフセット角とは別に、ばねの数もRSEEの性能に大きな影響を及ぼす。同じ偏向角での出力トルク及び剛性は、ばねの数に比例する。したがって、異なる数のばねを選択することによって、様々な剛性及び出力トルク範囲を達成することができる。例えば、運動学的モデルによれば、構成2の同じ偏向角での出力トルク及び剛性は、同じオフセット角を有する構成3(
図11、画像(e))と比較して1.5倍である。
【0063】
次に、トルク制御を司るモータ制御について考える。モータからRRSEAnsの出力までの等価ダイナミクスは、
図14に示すように説明することができ、式(6)において非線形剛性はK
eqとして表される。モータ電流指令から出力トルクまでのRRSEAnsの動的モデルは、以下のように定式化することができる。
【数7】
【0064】
ここで、τ
mはモータの出力トルク、J
m,b
m,k
mはそれぞれモータの慣性係数、減衰係数、トルク定数、i
mはモータ電流、J
sは減速機と回転部品の慣性、
【数8】
【0065】
τ
m及びθ
mを打ち消すことによって、RRSEAnsの出力トルクに対する電流指令の動力学を以下のように得る。
【数9】
【0066】
ここで、τeは式(4)として定式化され、式(4)に従って、式(8)によれば、トルク動力学の非線形性は主に非線形剛性から生じる。
【0067】
幾つかの実施形態によれば、SBAは、モータの作動を制御するためのコントローラを含む。コントローラは、
図15に示すような比例積分(PI)コントローラ設計であってもよい。PIコントローラは、カスケードPIコントローラであってもよい。トルク制御項PI
torqueは、外側ループコントローラであり、トルクトラッキングエラーに従って内側ループコントローラPI
velocityからコマンドを生成する。PI
velocityは、フィードバック速度
【数10】
【0068】
外側ループコントローラは以下のように設計される。
【数11】
【0069】
ここで、sはラプラス演算子である。
モータのPI速度ループコントローラは、大きな帯域幅を有する内側ループとして機能する。速度コントローラは以下のように設計される。
【0070】
【0071】
【0072】
ケーシングPIコントローラの有効性及び堅牢性を検証するために、MAT-LAB/SimuLinkソフトウェアを用いてシミュレーションを行った。シミュレーション結果は、制御パラメータ
【数14】
の適切な調整により、正確な力追跡が達成され得ることを実証した。更に、内側ループ帯域幅が外側ループ帯域幅よりもはるかに大きいため、カスケードPIコントローラは、外乱に対する良好なロバスト性を達成することができる。
【0073】
開ループ周波数応答試験では、より高い剛性はより高い帯域幅と相関する。
図16の画像(a)を参照すると、
図13に示すように、高い非線形性は同じ偏向角での比較的低い剛性に対応するため、より高い非線形性はより低い帯域幅をもたらした。
図16の画像(c)に示すRRSEAnsのより高い出力トルク動作は、より高い剛性に起因してより大きな帯域幅をもたらす。比較すると、
図16の画像(b)及び(d)に示す閉ループ帯域幅は部分的に減少している。いずれの場合も、典型的な人間の動きに対する効果的な支援は、装置の動作能力の範囲内である。
【0074】
トルク追跡及びステップ応答試験中、正弦波軌道及びステップ応答の面では、過渡プロセスは速く、満足のいくものである。トルク制御結果は、十分に調整されたカスケードPIコントローラを用いて、RRSEAnsが異なる構成で効果的且つ正確なトルクトラッキングを実行できることを実証した。
【0075】
衝撃荷重試験(例えば、事故シミュレーション)中、RRSEAnの出力トルクの急激な変化は、チャタリング又は不安定性の傾向を伴うことなく、短い時間間隔(約0.25秒)で所望の値に迅速に回復した。
【0076】
pHRI性能はまた、パッシブモード、透過(ヒューマン-イン-チャージ)モード、及び支援(ロボット-イン-チャージ)モードの3つの条件下で、2つの構成(一方は非線形性が低く、他方は非線形性が高い)について試験された。パッシブモードでは、RRSEAnsは給電されない。このモードでは、初期位置付近の剛性が低いため、非線形性の高い構成の反射トルクは、非線形性の低い構成の反射トルクよりも低くなる。これは、非線形性が高い構成は、より低い機械インピーダンスを有することを意味する。更に、両方の構成の低い反射トルクは、RRSEAnの高い逆駆動性を実証する。透過モードでは、所望のトルクは、ゼロインピーダンス制御及び最小の人間相互作用力を達成するためにゼロに設定される。両方の構成は、透明モードにおけるRRSEAnの高い順応性を実証する低い相互作用トルクを示した。高い非線形性を有するRRSEAnは、初期位置の周りの剛性が低いため、より滑らかでより快適な透明運動を実行できることが判明し、これはpHRIにおける非線形剛性の利点も実証している。最後に、支援モードでは、アクチュエータの基本機能が作動され、すなわちロボット支援を容易にする。この試験では、両方の構成のトルク誤差は非常に小さく、線形性の高い構成は、より低い偏向角誤差で正確なトルクトラッキングを達成した。
【0077】
調整可能な剛性プロファイルは、本RRSEAnの重要な特徴である。調整は、RSEEの構成を変更することによって達成することができる。調整可能な剛性プロファイルに基づいてタスク特化した最適化を達成することができ、異なる剛性プロファイルは異なる用途に適している。例えば、高い非線形性を有する構成は、上肢リハビリテーション又は相互作用力の低インピーダンス及び正確な制御を必要とする他の支援タスクのために設計されたロボットにより適している可能性がある。異常な歩行を補正することを意図した下肢外骨格の場合、中程度又は低い非線形性を伴う構成は、より良好な選択肢となることができ、位置誤差が少なく、トルク出力及び帯域幅が大きくなる。
【0078】
記載された実施形態の様々な態様の多くの更なる修正及び置換が可能であることが理解されよう。したがって、記載された態様は、添付の特許請求の範囲の精神及び範囲内に入る全てのそのような変更、修正、及び変形を包含することが意図されている。
【0079】
本明細書及び以下の特許請求の範囲を通して、文脈がそうでないことを要求しない限り、「備える(comprise)」という単語、並びに「備える(comprises)」及び「備えている(comprising)」などの変形は、記載された整数もしくはステップ又は整数もしくはステップの群を含むが、任意の他の整数もしくはステップ又は整数もしくはステップの群を除外しないことを意味すると理解される。
【0080】
本明細書における任意の先行する刊行物(又はそれに由来する情報)又は任意の既知の事項への言及は、その先行する刊行物(又はそれに由来する情報)又は既知の事項が、本明細書が関連する努力の分野における共通の一般知識の一部を形成することの承認又は承認又は任意の形態の示唆として解釈されるべきではなく、そのように解釈されるべきではない。
【国際調査報告】