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特表2024-528537等電点電気泳動に基づく分画と質量分析との組み合わせ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-30
(54)【発明の名称】等電点電気泳動に基づく分画と質量分析との組み合わせ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/62 20210101AFI20240723BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20240723BHJP
   C07K 16/00 20060101ALN20240723BHJP
【FI】
G01N27/62 V
G01N27/62 X
G01N33/68
C07K16/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580708
(86)(22)【出願日】2022-06-29
(85)【翻訳文提出日】2024-01-05
(86)【国際出願番号】 US2022035602
(87)【国際公開番号】W WO2023278634
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】63/217,125
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/301,350
(32)【優先日】2022-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507302748
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【弁理士】
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ユエティエン
(72)【発明者】
【氏名】シン タオ
(72)【発明者】
【氏名】ワン シュンハイ
【テーマコード(参考)】
2G041
2G045
4H045
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041EA04
2G041FA10
2G041FA11
2G041FA12
2G041HA01
2G045DA37
2G045FA34
2G045FB06
4H045AA11
4H045AA30
4H045AA50
4H045CA40
4H045DA75
4H045EA50
4H045FA70
4H045GA21
4H045GA32
(57)【要約】
本発明は、概して、関心対象のタンパク質の電荷バリアントを特徴付ける方法に関する。特に、本発明は、キャピラリー等電点電気泳動によって分離された電荷バリアントを同定するための、脱塩サイズ排除クロマトグラフィー-還元ペプチドマッピング質量分析の使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
関心対象のタンパク質の電荷バリアントを特徴付けるための方法であって、
(a)関心対象のタンパク質の電荷バリアントを分離するために、前記関心対象のタンパク質を含む試料をキャピラリー等電点電気泳動に供することと、
(b)前記キャピラリー等電点電気泳動のステップから画分を収集することと、
(c)前記画分を脱塩サイズ排除クロマトグラフィーに供することと、
(d)前記関心対象のタンパク質の前記電荷バリアントを特徴付けるために、ステップ(c)からの溶出液を質量分析に供することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記タンパク質が、抗体、二重特異性抗体、モノクローナル抗体、融合タンパク質、抗体-薬物コンジュゲート、抗体断片、又はタンパク質医薬製品である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記キャピラリー等電点電気泳動が、撮像キャピラリー等電点電気泳動である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記脱塩サイズ排除クロマトグラフィーシステムが、前記質量分析計に連結されている、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記質量分析計が、エレクトロスプレーイオン化質量分析計、ナノエレクトロスプレーイオン化質量分析計、又は三連四重極質量分析計である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記質量分析が、インタクト質量分析又は還元ペプチドマッピング分析を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記質量分析計が、多重反応モニタリング又は並行反応モニタリングを実施することができる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
脱塩サイズ排除クロマトグラフィーの前に、前記画分を少なくとも1つの加水分解剤に接触させるステップ
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの加水分解剤が、トリプシン、キモトリプシン、LysC、LysN、AspN、GluC及びArgCからなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
脱塩サイズ排除クロマトグラフィーの前に、前記画分を少なくとも1つの還元剤に接触させるステップ
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記脱塩サイズ排除クロマトグラフィーが、ネイティブ条件下で行われる、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年6月30日に出願された米国仮特許出願第63/217,125号及び2022年1月20日に出願された米国仮特許出願第63/301,350号の優先権及び利益を主張し、その各々が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
分野
本出願は、治療用タンパク質の電荷バリアントの特徴付けのための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
治療用ペプチド及びタンパク質のドメイン特異的バリアントを含む生物物理学的特性は、それらの安全性、有効性及び貯蔵寿命に影響を及ぼす可能性がある。例えば、異なる電荷バリアントの存在は、タンパク質の溶解性、結合、及び安定性を変化させる可能性がある。
【0004】
抗体などの治療用ペプチド又はタンパク質は、種々の翻訳後修飾(PTM)、タンパク質分解、酵素修飾、及び化学修飾に起因して、異なるバリアントを獲得し、不均一になる場合がある。生物物理学的特性に対するこれらの変化は、ペプチド及びタンパク質の産生中及び産生後のほぼ任意の時点で起こり得る。生物物理学的特徴に対するこれらの変化は、治療用ペプチド及びタンパク質の安全性、有効性、及び貯蔵寿命に影響を及ぼす可能性があるため、特定の治療用ペプチド又はタンパク質に対する異なるバリアントを同定すること、更に、電荷バリアントの原因となる修飾を調べることが重要である。
【0005】
等電点電気泳動(IEF)は、電荷(pI)に基づいて試料の成分を分離し、それにより、タンパク質の電荷バリアントの分離を可能にするための一般的なツールになっている。IEF分析はまた、各電荷バリアントに関連するタンパク質についての更なる情報を得るために、質量分析(MS)と組み合わせることができる。しかしながら、従来の方法は、IEF-MS分析において使用され得る技術では制限されている。今日まで、高分解能で、狭いIEF画分の還元ペプチドマッピング分析を実施することは不可能であった。したがって、特定の電荷バリアントに関連する特定のタンパク質修飾の部位、例えばアミノ酸残基を同定することは可能ではなかった。
【0006】
したがって、電荷バリアントに関連する治療用タンパク質の修飾を具体的に特徴付けるための方法及びシステムの必要性が存在することが理解されるであろう。
【発明の概要】
【0007】
概要
関心対象のタンパク質の電荷バリアントの特徴付けのための方法が開発されている。例示的な実施形態では、関心対象のタンパク質を含む試料は、キャピラリー等電点電気泳動分析に供される。電荷バリアントに対応するUVピークを含む、タンパク質試料のUVトレースが生成される。試料の画分が等電点電気泳動後に収集される。画分は、等電点電気泳動ステップからの全試料出力を表すように高スループットの方法で収集され得、狭い間隔、例えば、15秒間隔を含み得る。質量分析に適合するように画分緩衝液を変更することに加えて、分析物をサイズによって分離する脱塩サイズ排除クロマトグラフィーを使用して、画分は更に処理される。最後に、脱塩サイズ排除クロマトグラフィーからの溶出液を質量分析に供し、これを使用して、各画分、したがって各電荷バリアントに対応する特定の翻訳後修飾を同定することができる。
【0008】
本開示は、関心対象のタンパク質の電荷バリアントの特徴付けのための方法を提供する。一部の例示的な実施形態では、方法は、(a)関心対象のタンパク質を含む試料をキャピラリー等電点電気泳動に供して、当該関心対象のタンパク質の電荷バリアントを分離することと、(b)当該キャピラリー等電点電気泳動ステップから画分を収集することと、(c)当該画分を脱塩サイズ排除クロマトグラフィーに供することと、(d)ステップ(c)からの溶出液を質量分析に供して、当該関心対象のタンパク質の当該電荷バリアントを特徴付けることと、を含む。
【0009】
一態様では、当該タンパク質は、抗体、二重特異性抗体、モノクローナル抗体、融合タンパク質、抗体-薬物コンジュゲート、抗体断片、又はタンパク質医薬製品である。別の態様では、当該キャピラリー等電点電気泳動は、撮像キャピラリー等電点電気泳動である。更に別の態様では、当該脱塩サイズ排除クロマトグラフィーシステムは、当該質量分析計に連結されている。
【0010】
一態様では、当該質量分析計は、エレクトロスプレーイオン化質量分析計、ナノエレクトロスプレーイオン化質量分析計、又は三連四重極質量分析計である。別の態様では、当該質量分析は、インタクト質量分析又は還元ペプチドマッピング分析を含む。更に別の態様では、当該質量分析計は、多重反応モニタリング又は並行反応モニタリングを実施することができる。
【0011】
一態様では、方法は、脱塩サイズ排除クロマトグラフィーの前に、当該画分を少なくとも1つの加水分解剤に接触させるステップを更に含む。特定の態様では、当該少なくとも1つの加水分解剤は、トリプシン、キモトリプシン、LysC、LysN、AspN、GluC及びArgCからなる群から選択される。
【0012】
一態様では、方法は、脱塩サイズ排除クロマトグラフィーの前に、当該画分を少なくとも1つの還元剤に接触させるステップを更に含む。別の態様では、当該脱塩サイズ排除クロマトグラフィーは、ネイティブ条件下で行われる。
【0013】
本発明のこれら及び他の態様は、以下の説明及び添付の図面と併せて考慮すると、よりよく認識され、理解されるであろう。以下の説明は、種々の実施形態及びその多数の具体的詳細を示すが、限定ではなく、例証として与えられる。本発明の範囲内で、多くの置換、変更、追加、又は再配置を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】例示的な実施形態による本発明の方法のワークフローを示す。
図2A】例示的な実施形態による、キャピラリー等電点電気泳動(cIEF)によって検出されたUVトレースからのピークと、脱塩サイズ排除クロマトグラフィー-質量分析(SEC-MS)からの対応するピークとの相関を示す。
図2B】例示的な実施形態による、脱塩SEC-MS及び対応するcIEFピーク及び画分によって同定された電荷バリアントを示す。
図3A】例示的な実施形態による、cIEFによって検出された主なUVピークに対応する、脱塩SEC-MSによって検出された電荷バリアントの、デコンボリューションされた質量スペクトルを示す。
図3B】例示的な実施形態による、cIEFによって検出されたB1 UVピークに対応する、脱塩SEC-MSによって検出された電荷バリアントの、デコンボリューションされた質量スペクトルを示す。
図3C】例示的な実施形態による、cIEFによって検出されたB2 UVピークに対応する、脱塩SEC-MSによって検出された電荷バリアントの、デコンボリューションされた質量スペクトルを示す。
図3D】例示的な実施形態による、cIEFによって検出されたA1 UVピークに対応する、脱塩SEC-MSによって検出された電荷バリアントの、デコンボリューションされた質量スペクトルを示す。
図3E】例示的な実施形態による、cIEFによって検出されたA2 UVピークに対応する、脱塩SEC-MSによって検出された電荷バリアントの、デコンボリューションされた質量スペクトルを示す。
図3F】例示的な実施形態による、cIEFによって検出されたA3 UVピークに対応する、脱塩SEC-MSによって検出された電荷バリアントの、デコンボリューションされた質量スペクトルを示す。
図4】例示的な実施形態による、cIEFによって検出された各UVピークについての、還元ペプチドマッピングスペクトルを示す。
図5A】例示的な実施形態による、cIEFによって検出された各UVピークについての、複数のアミノ酸残基におけるアスパラギン酸異性化の分布を示す。
図5B】例示的な実施形態による、cIEFによって検出された各UVピークについての、複数のアミノ酸残基におけるアスパラギン酸環化の分布を示す。
図5C】例示的な実施形態による、cIEFによって検出された各UVピークについての、複数のアミノ酸残基におけるアスパラギン脱アミド化の分布を示す。
図5D】例示的な実施形態による、cIEFによって検出された各UVピークについての、複数のアミノ酸残基におけるアスパラギンスクシンイミドの分布を示す。
図5E】例示的な実施形態による、cIEFによって検出された各UVピークについての、複数のアミノ酸残基におけるリジン糖化の分布を示す。
図5F】例示的な実施形態による、cIEFによって検出された各UVピークについての、各重鎖におけるC末端リジンの分布を示す。
図5G】例示的な実施形態による、cIEFによって検出された各UVピークについての、N-アセチルノイラミン酸の分布を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
詳細な説明
哺乳動物細胞において産生される治療用抗体(モノクローナル抗体(mAb)又は二重特異性抗体(bsAb)を含む)は、翻訳後修飾(PTM)、酵素修飾及び化学修飾の結果として不均一であり、これらは、サイズ及び電荷のバリアントに寄与する。これらの修飾には、例えば、グリコシル化、脱グリコシル化、アミド化、脱アミド化、酸化、糖化、末端環化、C末端リジン変異、C末端アルギニン変異、N末端ピログルタミン酸変異、C末端グリシンアミド化、C末端プロリンアミド化、スクシンイミド形成、シアリル化、又は脱シアリル化が含まれ得る。更に、タンパク質産物の凝集、分解、変性、断片化、又は異性化もまた、電荷の不均一性を導入する可能性がある。表1は、例示的なタンパク質修飾、及びペプチド又はタンパク質の電荷の変化に対するそれらの影響を示している。
【0016】
【表1】
【0017】
モノクローナル抗体などの治療用ペプチド又はタンパク質の製造中に、電荷の不均一性が、タンパク質分解及び/又はPTMの存在の結果として導入される可能性がある。効力などのタンパク質の特性と電荷バリアントに関連する物理的及び化学的変化との間の相関を完全に理解するために、製造された原薬内のタンパク質の電荷バリアント形態の特徴付けが必要である。
【0018】
イオン交換クロマトグラフィー及び等電点電気泳動(IEF)を含む、タンパク質電荷バリアントの分離を可能にする複数の方法が存在する。IEFは、pIに基づく試料成分の高分解能分離のためのそのキャパシティ、及び疎水性相互作用に起因する分解能の喪失を伴わずに表面露出アミノ酸及び内部アミノ酸の両方を考慮するその能力のため、より一般的な手法となっている。IEF、特にキャピラリーIEF(cIEF)はまた、タンパク質試料に関する更なる情報を得るために、質量分析(MS)と組み合わせることができる。しかしながら、cIEF及びMSに使用される緩衝液は、直ちに適合するわけではなく、このことは、MS分析のためにcIEFによって分離された試料を使用する際に困難を生じる。この問題を解決するために、MSへのオフライン接続又はオンライン接続のいずれかを使用する、2つの主な手法が取られている。
【0019】
オフライン接続を使用する場合、cIEFからの画分を収集し、MSに適合するように緩衝液を変更し、変更された画分をMS分析に供する。しかしながら、cIEFからの画分収集は、低スループットであり、少数の大きな画分が収集されることになり、電荷バリアント分析の分解能及び特異性を低下させる。
【0020】
あるいは、オンライン接続が使用され得、画分収集ステップを伴わずに、分離された試料をcIEFからMSに出力する。これは、cIEF分析とMS分析との間で試料緩衝液を変更するために、中間のオンラインステップ(例えば、暫定的なクロマトグラフィー又は透析)を必要とする。このオンライン接続は、cIEFの高分解能分離を維持するが、cIEFで分離された試料の別の処理、例えば、関心対象のタンパク質の消化又は還元が可能でないため、インタクトな質量分析に限定される。
【0021】
したがって、関心対象のタンパク質の電荷バリアントを、柔軟かつ高分解能の方法で特徴付けるための方法及びシステムが必要とされている。特に、電荷バリアントに関連する部位特異的タンパク質修飾を同定する方法が必要とされている。
【0022】
本開示は、関心対象のタンパク質の電荷バリアントに関連する部位特異的タンパク質修飾を同定するための新規な方法を示す。この方法は、MSへのオフライン接続を有するcIEFを使用する。以前の手法とは異なり、cIEF画分は、包括的かつ高スループットな方法で収集され、例えば、cIEFキャピラリーからの全ての出力を収集し、各々が15秒間隔を表す画分に分離される。この新規の高スループットの画分収集は、pI分解能の実質的な喪失を伴わずに、cIEF分離された試料のオフライン処理を可能にする。収集された画分は、例えば、それらを加水分解剤及び/又は還元剤と接触させて、還元ペプチドマッピング分析のための還元ペプチドを生成することによって、更に処理することができる。収集された画分は、ユーザの必要性に従って種々の処理ステップに供されてもよいし、又は例えば、インタクトな質量分析のために使用される場合は、処理ステップに供されなくてもよい。
【0023】
次いで、収集した画分を、例えば、Yan et al.,2020,J Am Soc Mass Spectrom,31:2171-2179に記載されているような脱塩サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)に個々に供する。この高スループット脱塩SEC法は、画分の効率的な処理、サイズによる試料成分の更なる分離、並びにMSに適合するように画分緩衝液を変更することを可能にする。脱塩SECシステムは、質量分析計にオンライン接続することができる。
【0024】
脱塩SECから出力された画分は、MS分析、例えばインタクト質量分析又は還元ペプチドマッピング分析に供される。MS分析は、分析物の断片を生成し、質量対電荷(m/z)比に基づいてそれらを分離する。この分離は、PTMなどのタンパク質に対する修飾の同定を可能にする。特に、還元ペプチドマッピング分析の分解能は、PTMの部位特異的同定、例えば、関心対象のタンパク質上の特定のアミノ酸残基における特定の化学変化の同定を可能にする。次いで、既知のcIEF画分から生じる同定された部位特異的修飾は、関心対象のタンパク質の特定の電荷バリアントと関連付けられ得る。この方法は、電荷バリアントを生じさせる部位特異的タンパク質修飾の高分解能、高スループット分析を可能にし、タンパク質の生物物理学的特徴及び均一性を検証及び最適化するための治療用タンパク質産生プロセスのモニタリング及び改善を可能にする。
【0025】
別段記載されない限り、本明細書で使用される全ての技術及び科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書中に記載されるものと類似又は等価な任意の方法及び材料が、実施又は試験において使用され得るが、特定の方法及び材料がここで記載される。
【0026】
「1つの(a)」という用語は、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきであり、「約(about)」及び「およそ(approximately)」という用語は、当業者によって理解されるように、標準偏差を許容すると理解されるべきであり、範囲が提供される場合、終点が含まれる。本明細書で使用される場合、「含む(include)」、「含む(includes)」、及び「含む(including)」という用語は、非限定的であることを意味し、それぞれ「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、及び「含む(comprising)」を意味すると理解される。
【0027】
本明細書で使用される場合、「タンパク質」又は「関心対象のタンパク質」という用語は、共有結合したアミド結合を有する任意のアミノ酸ポリマーを含み得る。タンパク質は、当技術分野で一般的に「ポリペプチド」として知られている1つ以上のアミノ酸ポリマー鎖を含む。「ポリペプチド」とは、ペプチド結合を介して連結された、アミノ酸残基、関連する天然に存在する構造バリアント、及びその合成の天然に存在しないアナログから構成されるポリマーをいう。「合成ペプチド又はポリペプチド」は、天然に存在しないペプチド又はポリペプチドをいう。合成ペプチド又はポリペプチドは、例えば、自動ポリペプチド合成装置を用いて合成することができる。種々の固相ペプチド合成法が当業者に知られている。タンパク質は、単一の機能性生体分子を形成するために1つ又は複数のポリペプチドを含み得る。別の例示的な態様では、タンパク質は、抗体断片、ナノボディ、組換え抗体キメラ、サイトカイン、ケモカイン、ペプチドホルモンなどを含むことができる。関心対象のタンパク質は、生物学的治療用タンパク質、研究又は治療において使用される組換えタンパク質、捕捉タンパク質及び他のキメラ受容体Fc融合タンパク質、キメラタンパク質、抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト抗体、並びに二重特異性抗体のいずれかを含むことができる。タンパク質は、昆虫バキュロウイルス系、酵母系(例えば、ピキア属の種(Pichia sp.))、及び哺乳動物系(例えば、CHO細胞、及びCHO-K1細胞のようなCHO誘導体)などの、組換え細胞ベースの産生系を使用して産生され得る。生物学的治療用タンパク質及びそれらの産生を議論する最近の総説については、Ghaderi et al.,“Production platforms for biotherapeutic glycoproteins.Occurrence,impact,and challenges of non-human sialylation”(Darius Ghaderi et al.,Production platforms for biotherapeutic glycoproteins.Occurrence,impact,and challenges of non-human sialylation,28 BIOTECHNOLOGY AND GENETIC ENGINEERING REVIEWS 147-176(2012)、その教示全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい。一部の例示的な実施形態では、タンパク質は、修飾、付加物、及び他の共有結合部分を含む。これらの修飾、付加物及び部分としては、例えば、アビジン、ストレプトアビジン、ビオチン、グリカン(例えば、N-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、ノイラミン酸、N-アセチルグルコサミン、フコース、マンノース、及び他の単糖)、PEG、ポリヒスチジン、FLAGtag、マルトース結合タンパク質(MBP)、キチン結合タンパク質(CBP)、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)myc-エピトープ、蛍光標識及び他の色素などが挙げられる。タンパク質は、組成及び溶解度に基づいて分類することができ、したがって、球状タンパク質及び繊維状タンパク質などの単純タンパク質と、核タンパク質、糖タンパク質、ムコタンパク質、色素タンパク質、リンタンパク質、金属タンパク質、及びリポタンパク質などのコンジュゲートされたタンパク質と、一次由来タンパク質及び二次由来タンパク質などの由来タンパク質と、を含むことができる。
【0028】
一部の例示的な実施形態では、関心対象のタンパク質は、組換えタンパク質、抗体、二重特異性抗体、多重特異性抗体、抗体断片、モノクローナル抗体、融合タンパク質、scFv及びそれらの組み合わせであり得る。
【0029】
本明細書で使用される場合、「組換えタンパク質」という用語は、好適な宿主細胞に導入された組換え発現ベクター上に保有される遺伝子の転写及び翻訳の結果として産生されるタンパク質を指す。特定の例示的な実施形態では、組換えタンパク質は、抗体、例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体、又は完全ヒト抗体であり得る。特定の例示的な実施形態では、組換えタンパク質は、IgG、IgM、IgA1、IgA2、IgD、又はIgEからなる群から選択されるアイソタイプの抗体であり得る。特定の例示的な実施形態では、抗体分子は、全長抗体(例えば、IgG1)であるか、あるいは抗体は、断片(例えば、Fc断片又はFab断片)であり得る。
【0030】
本明細書で使用される「抗体」という用語は、ジスルフィド結合によって相互接続された4つのポリペプチド鎖、2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含む、免疫グロブリン分子、並びにその多量体(例えば、IgM)を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではHCVR又はVHと略す)及び重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2及びCH3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではLCVR又はVLと略す)及び軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(CL1)を含む。VH及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と称されるより保存された領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域に更に細分することができる。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端へ、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4の順序で配置された、3つのCDR及び4つのFRで構成される。本発明の異なる実施形態では、抗ビッグET-1抗体(又はその抗原結合部分)のFRは、ヒト生殖系列配列と同一であり得るか、又は天然に若しくは人工的に修飾され得る。アミノ酸コンセンサス配列は、2つ以上のCDRの並列分析に基づいて定義され得る。本明細書で使用される「抗体」という用語はまた、完全抗体分子の抗原結合断片も含む。抗体の「抗原結合部分」、抗体の「抗原結合断片」などの用語は、本明細書で使用される場合、抗原に特異的に結合して複合体を形成する、任意の天然に存在する、酵素的に得ることができる、合成の、又は遺伝子操作された、ポリペプチド又は糖タンパク質を含む。抗体の抗原結合断片は、例えば、タンパク質分解消化又は抗体可変ドメイン及び任意選択的に定常ドメインをコードするDNAの操作及び発現を含む組換え遺伝子操作技術などの任意の好適な標準技術を使用して、完全抗体分子から得ることができる。かかるDNAは公知であり、及び/又は、例えば、商業的供給源、DNAライブラリ(例えば、ファージ-抗体ライブラリを含む)から容易に入手可能であり、又は合成することができる。DNAを配列決定し、化学的に又は分子生物学技術を使用することによって操作して、例えば、1つ以上の可変及び/又は定常ドメインを好適な立体配置に配置するか、又はコドンを導入する、システイン残基を作製する、アミノ酸を修飾する、付加する、若しくは欠失させることなどができる。
【0031】
本明細書で使用される場合、「抗体断片」は、インタクトな抗体の一部(例えば、抗体の抗原結合領域又は可変領域)を含む。抗体断片の例としては、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、scFv断片、Fv断片、dsFvダイアボディ、dAb断片、Fd’断片、Fd断片、及び単離された相補性決定領域(CDR)領域、並びにトリアボディ、テトラボディ、線状抗体、一本鎖抗体分子、及び抗体断片から形成された多重特異性抗体が挙げられるが、これらに限定されない。Fv断片は、免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の可変領域の組み合わせであり、ScFvタンパク質は、免疫グロブリン軽鎖及び重鎖可変領域がペプチドリンカーによって接続されている組換え一本鎖ポリペプチド分子である。一部の例示的な実施形態では、抗体断片は、親抗体と同じ抗原に結合する断片である親抗体の十分なアミノ酸配列を含み、一部の例示的な実施形態では、断片は、親抗体の親和性に匹敵する親和性で抗原に結合し、かつ/又は抗原への結合について親抗体と競合する。抗体断片は、任意の手段によって産生され得る。例えば、抗体断片は、インタクトな抗体の断片化によって酵素的若しくは化学的に産生されてもよく、及び/又は部分的な抗体配列をコードする遺伝子から組換えによって産生されてもよい。あるいは、又は更に、抗体断片は、完全に又は部分的に合成的に産生され得る。抗体断片は、任意選択的に、単鎖抗体断片を含み得る。あるいは、又は更に、抗体断片は、例えば、ジスルフィド結合によって一緒に連結された複数の鎖を含み得る。抗体断片は、任意選択的に、多分子複合体を含み得る。機能的抗体断片は、典型的には、少なくとも約50個のアミノ酸を含み、より典型的には、少なくとも約200個のアミノ酸を含む。
【0032】
「二重特異性抗体」という用語は、2つ以上のエピトープに選択的に結合することができる抗体を含む。二重特異性抗体は、一般的に、2つの異なる重鎖を含み、各重鎖は、2つの異なる分子(例えば、抗原)上又は同じ分子上(例えば、同じ抗原上)のいずれかの異なるエピトープに特異的に結合する。二重特異性抗体が2つの異なるエピトープ(第1のエピトープ及び第2のエピトープ)に選択的に結合することができる場合、第1のエピトープに対する第1の重鎖の親和性は、一般的に、第2のエピトープに対する第1の重鎖の親和性よりも少なくとも1~2桁又は3桁又は4桁低く、逆もまた同様である。二重特異性抗体によって認識されるエピトープは、同じ又は異なる標的上(例えば、同じ又は異なるタンパク質上)に存在し得る。二重特異性抗体は、例えば、同じ抗原の異なるエピトープを認識する重鎖を組み合わせることによって作製することができる。例えば、同じ抗原の異なるエピトープを認識する重鎖可変配列をコードする核酸配列は、異なる重鎖定常領域をコードする核酸配列に融合され得、そしてかかる配列は、免疫グロブリン軽鎖を発現する細胞において発現され得る。
【0033】
典型的な二重特異性抗体は、各々が3つの重鎖CDR、続いてCH1ドメイン、ヒンジ、CH2ドメイン、及びCH3ドメインを有する2つの重鎖、並びに抗原結合特異性を付与しないが、各重鎖と会合することができるか、又は各重鎖と会合することができかつ重鎖抗原結合領域によって結合されるエピトープのうちの1つ以上に結合することができるか、又は各重鎖と会合することができかつ重鎖の一方若しくは両方が一方若しくは両方のエピトープに結合することを可能にするかのいずれかである免疫グロブリン軽鎖を有する。bsAbは、Fc領域を有するもの(IgG様)及びFc領域を欠くものの2つの主要なクラスに分けることができ、後者は通常、Fcを含むIgG及びIgG様二重特異性分子よりも小さい。IgG様bsAbは、トリオマブ、ノブイントゥホールIgG(kih IgG)、crossMab、orth-Fab IgG、二重可変ドメインIg(DVD-Ig)、ツーインワン若しくはデュアルアクションFab(DAF)、IgG-一本鎖Fv(IgG-scFv)、又はκλボディなどであるがこれらに限定されない、異なる形式を有し得る。非IgG様の異なる形式には、タンデムscFv、ダイアボディ形式、一本鎖ダイアボディ、タンデムダイアボディ(TandAb)、二重親和性再標的化分子(DART)、DART-Fc、ナノボディ、又はドックアンドロック(DNL)法によって産生される抗体が含まれる(Gaowei Fan,Zujian Wang&Mingju Hao,Bispecific antibodies and their applications,8 JOURNAL OF HEMATOLOGY&ONCOLOGY 130;Dafne Muller&Roland E.Kontermann,Bispecific Antibodies,HANDBOOK OF THERAPEUTIC ANTIBODIES 265-310(2014)、その教示全体が本明細書に組み込まれる)。bsAbを産生する方法は、2つの異なるハイブリドーマ細胞株の体細胞融合に基づくクアドローマ技術、化学的架橋剤を含む化学的結合、及び組換えDNA技術を利用する遺伝学的手法に限定されない。bsAbの例としては、参照により本明細書に組み込まれる、以下の特許出願、すなわち2010年6月25日に出願された米国特許出願第12/823838号、2012年6月5日に出願された米国特許出願第13/488628号、2013年9月19日に出願された米国特許出願第14/031075号、2015年7月24日に出願された米国特許出願第14/808171号、2017年9月22日に出願された米国特許出願第15/713574号、2017年9月22日に出願された米国特許出願第15/713569号、2016年12月21日に出願された米国特許出願第15/386453号、2016年12月21日に出願された米国特許出願第15/386443号、2016年7月29日に出願された米国特許出願第15/22343号、及び2017年11月15日に出願された米国特許出願第15814095号に開示されているものが挙げられる。
【0034】
本明細書で使用されるとき、「多重特異性抗体」は、少なくとも2つの異なる抗原に対する結合特異性を有する抗体を指す。かかる分子は、通常、2つの抗原のみに結合する(すなわち、二重特異性抗体、bsAb)が、三重特異性抗体及びKIH三重特異性などの更なる特異性を有する抗体もまた、本明細書に開示されるシステム及び方法によって対処することができる。
【0035】
本明細書中で使用される場合、「モノクローナル抗体」という用語は、ハイブリドーマ技術を通して生成された抗体に限定されない。モノクローナル抗体は、当技術分野において利用可能な又は公知の任意の手段によって、任意の真核生物、原核生物、又はファージクローンを含む単一のクローンから得ることができる。本開示で有用なモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ、組換え、及びファージディスプレイ技術、又はそれらの組み合わせの使用を含む、当技術分野で公知の多種多様な技術を使用して調製することができる。
【0036】
一部の例示的な実施形態では、関心対象のタンパク質は、約4.5~約9.0の範囲のpIを有し得る。1つの例示的な特定の実施形態では、pIは、約4.5、約5.0、約5.5、約5.6、約5.7、約5.8、約5.9、約6.0、約6.1、約6.2、約6.3、約6.4、約6.5、約6.6、約6.7、約6.8、約6.9、約7.0、約7.1、約7.2、約7.3、約7.4、約7.5、約7.6、約7.7、約7.8、約7.9、約8.0、約8.1、約8.2、約8.3、約8.4、約8.5、約8.6、約8.7、約8.8、約8.9、又は約9.0であり得る。一部の例示的な実施形態では、組成物中の関心対象のタンパク質のタイプは、2つ以上であり得る。
【0037】
一部の例示的な実施形態では、関心対象のタンパク質は、哺乳動物細胞から産生され得る。哺乳動物細胞は、ヒト起源又は非ヒト起源であり得、初代上皮細胞(例えば、ケラチノサイト、子宮頸部上皮細胞、気管支上皮細胞、気管上皮細胞、腎臓上皮細胞及び網膜上皮細胞)、樹立細胞株及びそれらの株(例えば、293胎児腎細胞、BHK細胞、HeLa子宮頸部上皮細胞及びPER-C6網膜細胞、MDBK(NBL-1)細胞、911細胞、CRFK細胞、MDCK細胞、CHO細胞、BeWo細胞、Chang細胞、Detroit562細胞、HeLa229細胞、HeLa S3細胞、Hep-2細胞、KB細胞、LSI80細胞、LS174T細胞、NCI-H-548細胞、RPMI2650細胞、SW-13細胞、T24細胞、WI-28VA13、2RA細胞、WISH細胞、BS-C-I細胞、LLC-MK2細胞、クローンM-3細胞、1-10細胞、RAG細胞、TCMK-1細胞、Y-l細胞、LLC-PKi細胞、PK(15)細胞、GHi細胞、GH3細胞、L2細胞、LLC-RC256細胞、MHiCi細胞、XC細胞、MDOK細胞、VSW細胞、及びTH-I、B1細胞、BSC-1細胞、RAf細胞、RK細胞、PK-15細胞又はその誘導体)、任意の組織又は器官(心臓、肝臓、腎臓、結腸、腸、食道、胃、神経組織(脳、脊髄)を含むが、これらに限定されない)由来の線維芽細胞、肺、血管組織(動脈、静脈、毛細血管)、リンパ組織(リンパ腺、アデノイド、扁桃、骨髄、及び血液)、脾臓、並びに線維芽細胞及び線維芽細胞様細胞株(例えば、CHO細胞、TRG-2細胞、IMR-33細胞、Don細胞、GHK-21細胞、シトルリン血症細胞、Dempsey細胞、Detroit551細胞、Detroit510細胞、Detroit525細胞、Detroit529細胞、Detroit532細胞、Detroit539細胞、Detroit548細胞、Detroit573細胞、HEL299細胞、IMR-90細胞、MRC-5細胞、WI-38細胞、WI-26細胞、ミディ細胞、CHO細胞、CV-1細胞、COS-1細胞、COS-3細胞、COS-7細胞、Vero細胞、DBS-FrhL-2細胞、BALB/3T3細胞、F9細胞、SV-T2細胞、M-MSV-BALB/3T3細胞、K-BALB細胞、BLO-11細胞、NOR-10細胞、C3H/IOTI/2細胞、HSDMiC3細胞、KLN205細胞、McCoy細胞、マウスL細胞、株2071(マウスL)細胞、L-M株(マウスL)細胞、L-MTK’(マウスL)細胞、NCTCクローン2472及び2555、SCC-PSA1細胞、Swiss/3T3細胞、インドホエジカ細胞、SIRC細胞、Cn細胞、及びジェンセン細胞、Sp2/0、NS0、NS1細胞又はその誘導体)を含み得る。
【0038】
一部の例示的な実施形態では、関心対象のタンパク質を含む試料は、脱塩SEC-MS分析の前に調製することができる。調製ステップは、アルキル化、還元、変性、及び/又は消化を含むことができる。
【0039】
本明細書で使用される場合、「タンパク質アルキル化剤」という用語は、タンパク質中の特定の遊離アミノ酸残基をアルキル化するために使用される薬剤を指す。タンパク質アルキル化剤の非限定的な例は、ヨードアセトアミド(IOA)、クロロアセトアミド(CAA)、アクリルアミド(AA)、N-エチルマレイミド(NEM)、メタンチオスルホン酸メチル(MMTS)、及び4-ビニルピリジン、又はそれらの組み合わせである。
【0040】
本明細書で使用される場合、「タンパク質変性」は、分子の三次元形状がその天然状態から変化するプロセスを指し得る。タンパク質の変性は、タンパク質変性剤を用いて行うことができる。タンパク質変性剤の非限定的な例としては、熱、高pH若しくは低pH、DTTのような還元剤(以下を参照のこと)、又はカオトロピック剤への曝露が挙げられる。複数のカオトロピック剤をタンパク質変性剤として使用することができる。カオトロピック溶質は、水素結合、ファンデルワールス力、及び疎水性効果などの非共有結合力によって媒介される分子内相互作用を妨害することによって、系のエントロピーを増加させる。カオトロピック剤の非限定的な例としては、ブタノール、エタノール、塩化グアニジニウム、過塩素酸リチウム、酢酸リチウム、塩化マグネシウム、フェノール、プロパノール、ドデシル硫酸ナトリウム、チオ尿素、N-ラウロイルサルコシン、尿素、及びそれらの塩が挙げられる。
【0041】
本明細書で使用される場合、「タンパク質還元剤」という用語は、タンパク質中のジスルフィド架橋の還元のために使用される薬剤を指す。タンパク質を還元するために使用されるタンパク質還元剤の非限定的な例は、ジチオスレイトール(DTT)、β-メルカプトエタノール、エルマン試薬、ヒドロキシルアミン塩酸塩、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP-HCl)、又はそれらの組み合わせである。
【0042】
本明細書で使用される場合、「消化」という用語は、タンパク質の1つ以上のペプチド結合の加水分解を指す。適切な加水分解剤を使用して試料中のタンパク質の消化を行うための複数の手法(例えば、酵素的消化又は非酵素的消化)が存在する。
【0043】
本明細書で使用される場合、「消化酵素」という用語は、タンパク質の消化を行うことができる多数の異なる薬剤のいずれかを指す。酵素消化を行うことができる加水分解剤の非限定的な例としては、アスペルギルス・サイトイ(Aspergillus Saitoi)由来のプロテアーゼ、エラスターゼ、サブチリシン、プロテアーゼXIII、ペプシン、トリプシン、Tryp-N、キモトリプシン、アスペルギロペプシンI、LysNプロテアーゼ(Lys-N)、LysCエンドプロテイナーゼ(Lys-C)、エンドプロテイナーゼAsp-N(Asp-N)、エンドプロテイナーゼArg-C(Arg-C)、エンドプロテイナーゼGlu-C(Glu-C)若しくは外膜タンパク質T(OmpT)、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)の免疫グロブリン分解酵素(IdeS)、サーモリシン、パパイン、プロナーゼ、V8プロテアーゼ又はそれらの生物学的に活性な断片若しくはホモログ又はそれらの組み合わせが挙げられる。タンパク消化のための利用可能な技術を記載する最近の総説については、Switazar et al.,“Protein Digestion:An Overview of the Available Techniques and Recent Developments”(Linda Switzar,Martin Giera&Wilfried M.A.Niessen,Protein Digestion:An Overview of the Available Techniques and Recent Developments,12 JOURNAL OF PROTEOME RESEARCH 1067-1077(2013))を参照されたい。
【0044】
本明細書で使用される場合、ポリペプチドの「電荷バリアント」又は「バリアント」という用語は、関心対象のタンパク質の参照又は天然アミノ酸配列と少なくとも約70~99.9%(例えば、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.5、99.9%)同一又は類似であるアミノ酸配列を含むポリペプチドを指す。配列比較は、例えば、BLASTアルゴリズムによって実施することができ、ここで、アルゴリズムのパラメータは、それぞれの参照配列の全長にわたってそれぞれの配列間で最大の一致を与えるように選択される(例えば、期待閾値:10;ワードサイズ:3;クエリ範囲内の最大マッチ:0;BLOSUM62マトリックス;ギャップコスト:存在11、拡張1;条件付き組成スコアマトリックス調整)。ポリペプチドのバリアントはまた、例えば、ミスセンス変異(例えば、保存的置換)、ナンセンス変異、欠失、又は挿入などの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個)の変異を除いて、参照されるアミノ酸配列を含むポリペプチドを指し得る。以下の参考文献は、配列分析にしばしば使用されるBLASTアルゴリズムに関する。BLAST ALGORITHMS:Altschul et al.(2005)FEBSJ.272(20):5101-5109、Altschul,S.F.,et al.,(1990)J.Mol.Biol.215:403-410、Gish,W.,et al.,(1993)Nature Genet.3:266-272、Madden,T.L.,et al.,(1996)Meth.Enzymol.266:131-141、Altschul,S.F.,et al.,(1997)Nucleic Acids Res.25:3389-3402、Zhang,J.,et al.,(1997)Genome Res.7:649-656、Wootton,J.C.,et al.,(1993)Comput.Chem.17:149-163、Hancock,J.M.et al.,(1994)Comput.Appl.Biosci.10:67-70;ALIGNMENT SCORING SYSTEMS:Dayhoff,M.O.,et al.,“A model of evolutionary change in proteins.” in Atlas of Protein Sequence and Structure,(1978)vol.5,suppl.3.M.O.Dayhoff(ed.),pp.345-352,Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,D.C.、Schwartz,R.M.,et al.,“Matrices for detecting distant relationships.” in Atlas of Protein Sequence and Structure,(1978)vol.5,suppl.3.“M.O.Dayhoff(ed.),pp.353-358,Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,D.C.、Altschul,S.F.,(1991)J.Mol.Biol.219:555-565;States,D.J.,et al.,(1991)Methods 3:66-70、Henikoff,S.,et al.,(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915-10919、Altschul,S.F.,et al.,(1993)J.Mol.Evol.36:290-300;ALIGNMENT STATISTICS:Karlin,S.,et al.,(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264-2268、Karlin,S.,et al.,(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-5877、Dembo,A.,et al.,(1994)Ann.Prob.22:2022-2039、及びAltschul,S.F.“Evaluating the statistical significance of multiple distinct local alignments.” in Theoretical and Computational Methods in Genome Research(S.Suhai,ed.),(1997)pp.1-14,Plenum,N.Y.;これらの全教示は、本明細書に組み込まれる。
【0045】
一部のバリアントは、ポリペプチドがそれらのリボソーム合成の間(同時翻訳修飾)又は後(翻訳後修飾「PTM」)のいずれかに受ける共有結合修飾であり得る。PTMは一般的に、特定の酵素又は酵素経路によって導入される。多くは、タンパク質骨格内の特定の特徴的なタンパク質配列(例えば、シグネチャー配列)の部位に存在する。数百のPTMが記録されており、これらの修飾は、タンパク質の構造又は機能の何らかの側面に常に影響を及ぼす(Walsh,G.“Proteins”(2014)second edition,published by Wiley and Sons,Ltd.,ISBN:9780470669853、その全教示は本明細書に組み込まれる)。
【0046】
特定の例示的な実施形態では、タンパク質組成物は、関心対象のタンパク質の1つより多くの型のバリアントを含み得る。かかるバリアントは、酸性種及び塩基性種の両方を含み得る。酸性種は、典型的には、CEXからのメインピークよりも早く、又はAEXからのメインピークよりも遅く溶出するバリアントであり、塩基性種は、CEXからのメインピークよりも遅く、又はAEXからのメインピークよりも早く溶出するバリアントである。例示的な実施形態では、塩基性種は、cIEFからのメインピークよりも早く溶出し得、酸性種は、cIEFからのメインピークよりも遅く溶出し得る。
【0047】
本明細書で使用される場合、「酸性種」、「AS」、「酸性領域」及び「AR」という用語は、全体的な酸性電荷によって特徴付けられるタンパク質のバリアントを指す。
【0048】
特定の実施形態では、試料は、1つより多くのタイプの酸性種バリアントを含み得る。例えば、限定するものではないが、総酸性種は、出現するピークのクロマトグラフィー保持時間に基づいて、又はIEFを使用して生成されるUVピークによって分類することができる。
【0049】
酸性又は塩基性種の原因となる化学分解経路の中で、タンパク質及びペプチドにおいて生じる2つの最もよく観察される共有結合修飾は、脱アミノ化及び酸化である。メチオニン、システイン、ヒスチジン、トリプトファン、及びチロシンは、最も酸化を受けやすいアミノ酸の一部である。Met及びCysはそれらの硫黄原子が理由であり、His、Trp、及びTyrはそれらの芳香環が理由である。
【0050】
本明細書で使用される場合、「酸化種」、「OS」、又は「酸化バリアント」という用語は、酸化によって形成されるタンパク質のバリアントを指す。かかる酸化種は、イオン交換、例えば、WCX-10 HPLC(弱陽イオン交換クロマトグラフィー)、又はIEFなどの種々の方法によっても検出することができる。酸化バリアントは、ヒスチジン、システイン、メチオニン、トリプトファン、フェニルアラニン及び/又はチロシン残基で起こる酸化から生じ得る。
【0051】
本明細書で使用される場合、「塩基性種」、「塩基性領域」、及び「BR」という用語は、タンパク質内に存在する一次電荷バリアント種と比較して、全体的な塩基性電荷を特徴とする、タンパク質、例えば、抗体又はその抗原結合部分のバリアントを指す。例えば、組換えタンパク質調製物において、かかる塩基性種は、種々の方法(例えば、イオン交換(例えば、WCX-10 HPLC(弱陽イオン交換クロマトグラフィー))又はIEF)によって検出され得る。例示的なバリアントには、リジンバリアント、アスパラギン酸の異性化、アスパラギンでのスクシンイミド形成、メチオニン酸化、アミド化、不完全なジスルフィド結合形成、セリンからアルギニンへの変異、非グリコシル化、断片化及び凝集が含まれ得るが、これらに限定されない。通常、塩基性種は、CEX中のメインピークより遅く溶出するか、又はAEX分析中のメインピークより早く溶出する。(Chromatographic analysis of the acidic and basic species of recombinant monoclonal antibodies.MAbs.2012 Sep 1;4(5):578-585.doi:10.4161/mabs.21328、その教示全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0052】
特定の実施形態では、試料は、2つ以上のタイプの塩基性種バリアントを含むことができる。例えば、限定するものではないが、全塩基性種は、出現するピークのクロマトグラフィー保持時間に基づいて、又はIEFを使用して生成されるUVピークに基づいて分割することができる。全基本種が分割され得る別の例は、バリアント - 複数のバリアント、構造バリアント、又は断片化バリアントの、タイプに基づき得る。
【0053】
本明細書で使用される場合、「試料」は、細胞培養流体(CCF)、採取された細胞培養流体(HCCF)、下流処理における任意のステップ、原薬(DS)、又は最終製剤化製品を含む製剤(DP)などのバイオプロセスの任意のステップから得ることができる。一部の他の特定の例示的な実施形態では、試料は、清澄化、クロマトグラフィー生成、ウイルス不活性化、又は濾過の下流プロセスの任意のステップから選択され得る。一部の特定の例示的な実施形態では、製剤は、診療所、出荷、保管、又は取り扱いにおいて、製造された製剤から選択することができる。
【0054】
一部の態様では、開示される方法は、試料をキャピラリー等電点電気泳動に供して、当該関心対象のタンパク質の電荷バリアントを分離することを含み得る。
【0055】
本明細書で使用される場合、「等電点電気泳動」又は「IEF」(単に電気泳動としても知られる)は、荷電分子(通常、タンパク質又はペプチド)を、それらの等電点(pI)(例えば、分子が電荷を有さないpH)に基づいて分離するための技術である。電場において、pH勾配中の分子がそれらのpIに向かって移動することが理由で、IEFが機能する。IEFを行うための種々の技術が存在する。例えば、キャピラリー等電点電気泳動(cIEF)において、試料は、印加された電場に基づいてキャピラリーを通って移動する。UV検出器は、キャピラリーに沿った点で使用されて、分析物(例えば、タンパク質)がキャピラリーのその点を横切る時間を検出し得る。キャピラリーを通る移動時間は、分析物の電荷(pI)に直接関連するため、経時的なキャピラリー中の点からのUVシグナルは、UVトレースとして表され得、これは、試料成分の多様な電荷(pI)を表す。例示的な実施形態では、cIEFによって生成されたUVトレースは、関心対象のタンパク質の電荷バリアントを表し、各UVピークは、有意な電荷バリアントを表す。cIEFの変形、例えば、撮像cIEF(icIEF)も使用することができる。
【0056】
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)又はゲル濾過は、それらの分子サイズの関数としての成分の分離に依存する。分離は、流体中の時間と比較して、物質が多孔質固定相中で費やす時間の量に依存する。分子が細孔内に存在する確率は、分子及び細孔のサイズに依存する。更に、物質が細孔内に行き渡る能力は、高分子の拡散移動度によって決定され、この拡散移動度は、小さい高分子ほど高い。非常に大きな高分子は、固定相の細孔に全く行き渡らないことがあり、非常に小さな高分子については、行き渡る確率は1に近い。より大きな分子サイズの成分は、より迅速に固定相を通過するが、小さな分子サイズの成分は、固定相の細孔を通るより長い経路長を有し、したがって、固定相中に、より長く保持される。
【0057】
クロマトグラフィー材料はサイズ排除材料を含むことができ、サイズ排除材料は、樹脂又は膜である。サイズ排除のために使用されるマトリックスは、好ましくは、不活性ゲル媒体であり、これは、架橋多糖類(例えば、球状ビーズの形態の架橋アガロース及び/又はデキストラン)の複合体であり得る。架橋度は、膨潤したゲルビーズ中に存在する細孔のサイズを決定する。特定のサイズより大きい分子は、ゲルビーズに入らず、したがって、最も速くクロマトグラフィーベッドを通って移動する。界面活性剤、タンパク質、DNAなどのより小さい分子は、それらのサイズ及び形状に依存して種々の程度までゲルビーズに入り、ベッドを通過するのが遅れる。したがって、分子は、おおむね、分子サイズが減少する順序で溶出される。
【0058】
ウイルスのサイズ排除クロマトグラフィーに適切な多孔性クロマトグラフィー樹脂は、異なる物理的特性を有するデキストロース、アガロース、ポリアクリルアミド、又はシリカから作製され得る。ポリマーの組み合わせも使用することができる。最もよく使用されるのは、Amersham Biosciences社から市販されている商品名「SEPHADEX」のものである。異なる構築材料由来の他のサイズ排除支持体もまた適切であり、例えば、Toyopearl 55F(ポリメタクリレート、Tosoh Bioscience社、Montgomery Pa.)及びBio-Gel P-30 Fine(BioRad Laboratories社、Hercules,CA)である。
【0059】
一部の例示的な実施形態では、SECは、ネイティブMS検出の前にオンライン緩衝液交換を達成するために、「脱塩モード」で操作され得る。脱塩は、水と(SEC樹脂を予め平衡化するために使用される水とともに)交換して、試料から緩衝塩を除去するという目標を達成する。本発明の方法に好適な脱塩SEC法は、例えば、Yan et al.,2020,J Am Soc Mass Spectrom,31:2171-2179に記載されている。脱塩SECは、cIEFから溶出された試料のその後のMS分析を可能にし、そうでなければ、適合しない緩衝液条件を有し得る。
【0060】
関心対象のタンパク質を含む試料のタンパク質負荷は、約50g/L~約1000g/L;約5g/L~約150g/L、約10g/L~約100g/L、約20g/L~約80g/L、約30g/L~約50g/L、又は約40g/L~約50g/Lの、カラムへの総タンパク質負荷に調整することができる。特定の実施形態では、ロードタンパク質混合物のタンパク質濃度は、約0.5g/L~約50g/L、又は約1g/L~約20g/Lの、カラム上にロードされる材料のタンパク質濃度に調整される。
【0061】
本明細書で使用される場合、「質量分析計」という用語は、特定の分子種を同定し得そしてそれらの正確な質量を測定し得るデバイスを含む。この用語は、ポリペプチド又はペプチドが特徴付けられ得る任意の分子検出器を含むことを意味する。質量分析計は、3つの主要部分、すなわち、イオン源、質量分析器、及び検出器を含むことができる。イオン源の役割は、気相イオンを生成することである。分析物原子、分子、又はクラスタは、気相に移動され、同時に(エレクトロスプレーイオン化におけるように)、又は別個のプロセスを通して、イオン化され得る。イオン源の選択は用途に依存する。一部の例示的な実施形態では、質量分析計は、タンデム質量分析計であり得る。本明細書で使用される場合、「タンデム質量分析」という用語は、試料分子についての構造情報が、質量選択及び質量分離の複数の段階を使用することによって得られる技術を含む。必要条件は、第1の質量選択ステップの後に断片が予測可能かつ制御可能な方法で形成されるように、試料分子が気相に変換され、イオン化されることである。多段階MS/MS、又はMSは、意味のある情報を得ることができるか、又は断片イオンシグナルが検出可能である限り、最初に前駆体イオン(MS)を選択及び単離すること、それを断片化すること、一次断片イオン(MS)を単離すること、それを断片化すること、二次断片(MS)を単離することなどによって実施され得る。タンデムMSは、広範な分析器の組み合わせを用いて正常に実施されている。特定の用途のためにどの分析器を組み合わせるかは、感度、選択性、及び速度だけでなく、サイズ、コスト、及び利用可能性などの多くの異なる要因によって決定することができる。タンデムMS法の2つの主要なカテゴリーは、タンデムインスペース及びタンデムインタイムであるが、タンデムインタイム分析器がスペース内で又はタンデムインスペース分析器と連結されるハイブリッドも存在する。タンデムインスペース質量分析計は、イオン源と、前駆体イオン活性化デバイスと、少なくとも2つの非捕捉質量分析器とを備える。特定のm/z分離関数は、機器の1つのセクションにおいてイオンが選択され、中間領域において解離され、次いで、生成イオンがm/z分離及びデータ取得のために別の分析器に送られるように設計され得る。タンデムインタイムの場合、イオン源で生成された質量分析計のイオンは、同じ物理的デバイスで捕捉、単離、断片化、及びm/z分離することができる。質量分析計によって同定されたペプチドは、インタクトなタンパク質及びそれらの翻訳後修飾の代理代表として使用され得る。それらは、実験的及び理論的MS/MSデータを相関させることによって、タンパク質特徴付けのために使用することができ、後者は、タンパク質配列データベース内の可能なペプチドから生成される。特徴付けとしては、限定されるものではないが、タンパク質断片のアミノ酸の配列決定、タンパク質シーケンシングの決定、タンパク質デノヴォシーケンシングの決定、翻訳後修飾の位置決定、若しくは翻訳後修飾の同定、若しくは同等性/同質性分析、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0062】
一部の例示的な態様では、質量分析計は、ナノエレクトロスプレー又はナノスプレーを搭載し動作することができる。
【0063】
本明細書で使用される「ナノエレクトロスプレー」又は「ナノスプレー」という用語は、多くの場合、外部溶媒送達を使用しない、非常に低い溶媒流量、典型的には、数百ナノリットル/分以下の試料溶液におけるエレクトロスプレーイオン化を指す。ナノエレクトロスプレーを形成するエレクトロスプレー注入セットアップは、静的ナノエレクトロスプレーエミッタ又は動的ナノエレクトロスプレーエミッタを使用することができる。静的ナノエレクトロスプレーエミッタは、長期間にわたって少量の試料(分析物)溶液の連続分析を行う。動的ナノエレクトロスプレーエミッタは、キャピラリーカラム及び溶媒送達システムを使用して、質量分析計による分析の前に混合物に対してクロマトグラフィー分離を行う。
【0064】
一部の例示的な実施形態では、SEC-MSは、ネイティブ条件下で実施することができる。
【0065】
本明細書で使用される場合、「ネイティブ条件」という用語は、分析物中の非共有結合性相互作用を保存する条件下で質量分析を行うことを含み得る。ネイティブMSについての詳細な総説については、総説Elisabetta Boeri Erba&Carlo Pe-tosa,The emerging role of native mass spectrometry in characterizing the structure and dynamics of macromolecular complexes,24 PROTEIN SCIENCE1176-1192(2015)を参照されたい。
【0066】
一部の例示的な態様では、質量分析計は、タンデム質量分析計であり得る。
【0067】
本明細書で使用される場合、「タンデム質量分析」という用語は、試料分子についての構造情報が、質量選択及び質量分離の複数の段階を使用することによって得られる技術を含む。必要条件は、試料分子が気相に移動され得、そしてインタクトなままイオン化され得ること、及びこれらの分子が、第1の質量選択ステップ後に、いくらかの予測可能かつ制御可能な方法でばらばらになるように誘導され得ることである。多段階MS/MS、又はMSは、意味のある情報を得ることができるか、又は断片イオンシグナルが検出可能である限り、最初に前駆体イオン(MS)を選択及び単離すること、それを断片化すること、一次断片イオン(MS)を単離すること、それを断片化すること、二次断片(MS)を単離することなどによって実施され得る。タンデムMSは、広範な分析器の組み合わせを用いて正常に実施されている。特定の用途のためにどの分析器を組み合わせるかは、感度、選択性、及び速度だけでなく、サイズ、コスト、及び利用可能性などの多くの異なる要因によって決定することができる。タンデムMS法の2つの主要なカテゴリーは、タンデムインスペース及びタンデムインタイムであるが、タンデムインタイム分析器がスペース内で又はタンデムインスペース分析器と連結されるハイブリッドも存在する。タンデムインスペース質量分析計は、イオン源と、前駆体イオン活性化デバイスと、少なくとも2つの非捕捉質量分析器とを備える。特定のm/z分離関数は、機器の1つのセクションにおいてイオンが選択され、中間領域において解離され、次いで、生成イオンがm/z分離及びデータ取得のために別の分析器に送られるように設計され得る。タンデムインタイムの場合、イオン源で生成された質量分析計イオンは、同じ物理的デバイスで捕捉、単離、断片化、及びm/z分離することができる。
【0068】
質量分析計によって同定されたペプチドは、インタクトなタンパク質及びそれらの翻訳後修飾の代理代表として使用され得る。それらは、実験的及び理論的MS/MSデータを相関させることによって、タンパク質特徴付けのために使用することができ、後者は、タンパク質配列データベース内の可能なペプチドから生成される。特徴付けとしては、限定されるものではないが、タンパク質断片のアミノ酸の配列決定、タンパク質シーケンシングの決定、タンパク質デノヴォシーケンシングの決定、翻訳後修飾の位置決定、若しくは翻訳後修飾の同定、若しくは同等性/同質性分析、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0069】
本明細書で使用される場合、「データベース」という用語は、例えば、FASTA形式のファイルの形態で、試料中に存在する可能性があるタンパク質配列の、編集されたコレクションを指す。関連するタンパク質配列は、研究される種のcDNA配列に由来し得る。関連するタンパク質配列を検索するために使用され得る公的データベースは、例えば、Uniprot又はSwiss-protによって管理されるデータベースを含んでいた。データベースは、本明細書で「バイオインフォマティクスツール」と称されるものを使用して検索することができる。バイオインフォマティクスツールは、データベース中の全ての可能な配列に対して解釈されていないMS/MSスペクトルを検索するキャパシティを提供し、出力として解釈された(アノテーションされた)MS/MSスペクトルを提供する。かかるツールの非限定的な例は、Mascot(www.matrixscience.com)、Spectrum Mill(www.chem.agilent.com)、PLGS(www.waters.com)、PEAKS(www.bioinformaticssolutions.com)、Proteinpilot(download.appliedbiosystems.com//proteinpilot)、Phenyx(www.phenyx-ms.com)、Sorcerer(www.sagenresearch.com)、OMSSA(www.pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/omssa/)、X!Tandem(www.thegpm.org/TANDEM/)、Protein Prospector(prospector.ucsf.edu/prospector/mshome.htm)、Byonic(www.proteinmetrics.com/products/byonic)又はSequest(fields.scripps.edu/sequest)である。
【0070】
一部の例示的な実施形態では、質量分析計は、クロマトグラフィーシステム、例えば、SEC又は脱塩SECに連結される。
【0071】
本発明は、前述のタンパク質、抗体、pI、タンパク質アルキル化剤、タンパク質変性剤、タンパク質還元剤、消化酵素、加水分解剤、電荷バリアント、翻訳後修飾、試料、IEFシステム、SECシステム、質量分析計、データベース、又はバイオインフォマティクスツールのいずれにも限定されず、任意のタンパク質、抗体、pI、タンパク質アルキル化剤、タンパク質変性剤、タンパク質還元剤、消化酵素、加水分解剤、電荷バリアント、翻訳後修飾、試料、IEFシステム、SECシステム、質量分析計、データベース、又はバイオインフォマティクスツールは、任意の好適な手段によって選択され得ることが理解される。
【0072】
本発明は、以下の実施例を参照することによってより完全に理解されるであろう。しかしながら、それらは本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例
【0073】
実施例1.本発明の方法の概要
関心対象のタンパク質の電荷バリアントを特徴付けるための新規な方法が、本明細書中に開示される。本発明の方法の例示的なワークフローを図1に示している。試料、例えば、治療用タンパク質産物又は任意の関心対象のタンパク質の生成ステップからの試料は、キャピラリー等電点電気泳動(cIEF)に供される。cIEFは、関心対象のタンパク質の電荷バリアントを分離することを含めて、電荷(pI)に基づいてタンパク質試料の成分を分離する。cIEFキャピラリーを横切る試料成分のUVトレースが生成され、タンパク質濃度の極大値は「ピーク」と考えられ、タンパク質電荷バリアントに対応する。画分はキャピラリーから連続的に収集される。画分は、cIEF溶出液の全てが収集されるように高スループット方法で収集され得、画分は、狭い間隔(例えば、15秒間隔)を示す。この高スループット画分収集は、後のMS分析のために質量分析計へのオンライン接続を必要とすることなく、cIEFの高分解能分離の維持を可能にする。
【0074】
任意選択的に、画分は、加水分解剤、アルキル化剤及び/又は還元剤に接触されて、関心対象のタンパク質の還元ペプチド断片を生成し得る。画分は、分析の所望の濃度及び分解能に依存して、その後の分析の前に再び組み合わされ得る。
【0075】
次いで、画分を脱塩サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)に供する。脱塩SECは、収集されたcIEF画分からの緩衝液を、質量分析(MS)に適合する緩衝液と交換すること、及びサイズに基づいて画分成分を更に分離することの、二重の目的を果たす。
【0076】
最後に、脱塩SECからの溶出液を、質量分析、例えば、インタクト質量分析又は還元ペプチドマッピング分析に供する。脱塩SECは、質量分析計(脱塩SEC-MS)とオンラインで接続されてもよい。特に、還元ペプチドマッピング分析は、電荷変動に寄与し得る部位特異的タンパク質修飾の同定を可能にする。同定されたタンパク質修飾は既知の画分から生じ、画分はcIEF UVトレースの既知の部分と一致するため、部位特異的タンパク質修飾とタンパク電荷バリアントとの間に因果関係をもたらすことができる。
【0077】
実施例2.タンパク質電荷バリアントのインタクトな質量分析
本発明の方法を用いて、二重特異性抗体bsAb-1を、cIEF、分画、及び脱塩SEC-MSのステップに供した。cIEFによって生成されたUVトレース(赤色で示される)及び脱塩SEC-MSによって生成されたMSシグナル(青色で示される)は、図2Aに示されるように相関させることができる。6つのUVピーク(電荷バリアントに対応する)、すなわちB2、B1、メイン、A1、A2、及びA3(塩基性から酸性の順)を、このUVトレースに指定した。各青色ピークは、画分の脱塩SEC-MS分析を表す。
【0078】
cIEF画分の脱塩SEC-MS分析は、図2Bに示されるように、電荷バリアントに対する特定のタンパク質修飾の割り当てを可能にする。各脱塩SEC-MS分析は既知の画分から生じ、各画分はUVトレースの既知の部分を表すため、MSによって検出されるタンパク質修飾は、cIEFによって検出される電荷バリアントと直接関連付けることができる。このようにして、関心対象のタンパク質の電荷バリアントの具体的な原因を明らかにすることができる。
【0079】
更なる分析を図3に示している。脱塩SEC-MSによって検出された、bsAb-1の各電荷バリアントについてのデコンボリューションされた質量スペクトルが示され、各々が、特定のタンパク質修飾で同定され得る種々のm/zピークを特徴とする。図3Aは、主要な電荷バリアントと、主要なmAb種を表すピークとを示している。図3Bは、B1電荷バリアントと、C末端リジンを有する種を表すピークとを示している。図3Cは、B2電荷バリアントと、2つのC末端リジンを有する種を表すピークとを示している。図3Dは、A1電荷バリアントと、糖化修飾を有する種を表す1つのピークと、脱アミド化修飾を有する種を表す1つのピークとを示している。図3Eは、A2電荷バリアントと、糖化/グルクロニル修飾を有する種を表す1つのピークと、脱アミド化修飾を有する種を表す1つのピークと、N-アセチルノイラミン酸修飾を有する種を表す1つのピークとを示している。図3Fは、A3電荷バリアントと、糖化/グルクロニル修飾を有する種を表す1つのピークと、脱アミド化修飾を有する種を表す1つのピークと、及び2つのN-アセチルノイラミン酸修飾を有する種を表す1つのピークとを示している。
【0080】
これらの実験は、脱塩SEC-MSを使用して、cIEFによって検出された電荷バリアントに対応し、その原因となる特定のタンパク質修飾を決定する本発明の方法のキャパシティを実証するものである。
【0081】
実施例3.タンパク質電荷バリアントの還元ペプチドマッピング分析
本発明の方法はまた、関心対象のタンパク質の特定の残基でのタンパク質修飾を同定し、そしてこれらの部位特異的修飾をタンパク質の電荷バリアントと関連付けるために、還元ペプチドマッピング分析とともに使用され得る。二重特異性抗体bsAb-1を、以前に記載されたように、cIEF、分画、及び脱塩SEC-MSのステップに供した。画分をタンパク質還元及び加水分解に供した後、脱塩SECに供して、還元ペプチド断片を生成した。
【0082】
cIEFによって検出された各電荷バリアントに対応する例示的なMSシグナルを図4に示している。ペプチドマッピングを用いてペプチドを分析し、図5に示すように、特定の残基での特定のタンパク質修飾を同定した。この方法を使用して、特定のアミノ酸残基におけるタンパク質修飾の電荷バリアントにわたる統計的分布を確立することができた。図5A図5Gは、アスパラギン酸異性化、アスパラギン酸環化、アスパラギン脱アミド化、アスパラギンスクシンイミド、リジン糖化、C末端リジン、又はN-アセチルノイラミン酸を含む、電荷バリアントをもたらし得る例示的な修飾を示している。特定の修飾残基は、bsAb-1の軽鎖(LC)、第1の重鎖(HC)又は第2の重鎖(HC*)にわたって同定される。
【0083】
これらの実験は、本発明の方法が、関心対象のタンパク質の特定の電荷バリアントを生じ得る特定のタンパク質修飾についてのアミノ酸残基レベル分解能を提供するキャパシティを実証する。この情報は、例えば、許容可能な生物物理学的特性及び産物の均一性を達成するために、治療用タンパク質の生成プロセスをモニタリング及び/又は修飾するために使用され得る。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
【国際調査報告】