(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-30
(54)【発明の名称】力センサおよび力センサを組み込んだ装置
(51)【国際特許分類】
B25J 19/02 20060101AFI20240723BHJP
G01L 5/00 20060101ALI20240723BHJP
G01L 5/169 20200101ALI20240723BHJP
【FI】
B25J19/02
G01L5/00 101Z
G01L5/169
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580792
(86)(22)【出願日】2022-06-06
(85)【翻訳文提出日】2023-12-28
(86)【国際出願番号】 SG2022050387
(87)【国際公開番号】W WO2023277794
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】10202107135Y
(32)【優先日】2021-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】509034605
【氏名又は名称】ナショナル ユニバーシティ オブ シンガポール
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【氏名又は名称】野本 裕史
(74)【代理人】
【識別番号】100220423
【氏名又は名称】榊間 城作
(72)【発明者】
【氏名】ル,ゼユ
(72)【発明者】
【氏名】ユ,ハオヨン
【テーマコード(参考)】
2F051
3C707
【Fターム(参考)】
2F051AA10
2F051AB03
2F051AB05
2F051AB06
2F051BA05
2F051BA07
2F051DA03
3C707AS38
3C707ES06
3C707HS27
3C707JS06
3C707KS31
3C707KS33
3C707KV04
3C707KV11
3C707KW03
3C707LW12
3C707XK03
3C707XK12
3C707XK17
(57)【要約】
力センサアセンブリに接触力を伝達するための接触配置を含む力センサ。力センサアセンブリは、接触力の通常の接触力成分を検知して、接触力成分から出力を生成する第1のセンサと、接触力を力センサアセンブリに伝達する際に移動可能な本体と、を含む、接触配置と、第2のセンサに対する本体の相対変位を検知して、相対変位から出力を生成するための第2のセンサであって、相対変位から3軸接触力が決定される、第2のセンサと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触力を力センサアセンブリに伝達するための接触配置と、
第2のセンサと、を備える力センサであって、
前記力センサアセンブリは、
前記接触力の通常の接触力成分を検知して、前記接触力成分から出力を生成する第1のセンサと、
前記接触力を前記力センサアセンブリに伝達する際に移動可能な本体と、を含み、
前記第2のセンサは、前記第2のセンサに対する前記本体の相対変位を検知して、前記相対変位から出力を生成し、
前記相対変位から3軸接触力が決定される、力センサ。
【請求項2】
前記接触配置が、前記接触力の下で変形する変形可能な基板を含む、請求項1に記載の力センサ。
【請求項3】
前記変形可能な基板がエラストマ基板である、請求項1または2に記載の力センサ。
【請求項4】
前記本体が磁石を含み、前記第2のセンサが1つまたは複数のホール効果センサである、請求項1から3のいずれか一項に記載の力センサ。
【請求項5】
前記本体が複数の磁石を含む、請求項4に記載の力センサ。
【請求項6】
前記本体が、
前記1つまたは複数の磁石を含む剛性層と、
一方の側が前記剛性層に固定され、反対側が前記ホール効果センサに対して固定された変形可能層と、を含み、
前記変形可能層が、前記接触力の下で、前記ホール効果センサに対する前記剛性層の変位を可能にする、請求項4または5に記載の力センサ。
【請求項7】
前記第2のセンサがチャンバ内に収容される、請求項1から6のいずれか一項に記載の力センサ。
【請求項8】
前記力センサを装置に組み込むための基部構造体をさらに含み、
前記基部チャンバは、前記基部構造体に組み込まれる、または、当接する、請求項7に記載の力センサ。
【請求項9】
前記本体が、前記第1のセンサと前記第2のセンサとの間の基板に埋め込まれる、請求項1から8のいずれか一項に記載の力センサ。
【請求項10】
前記第1のセンサが、1つまたは複数のセンサを含み、
その各々は、マトリックスピエゾ抵抗センサ、圧電センサ、静電容量センサ、摩擦電気センサ、および光学センサのうちの1つである、請求項1から9のいずれか一項に記載の力センサ。
【請求項11】
前記接触配置を含む最上層と、第2の層と、前記最上層と前記第2の層との間の第1の層と、を有する多層構造を形成し、
前記第1の層および前記第2の層が、前記第1のセンサおよび前記第2のセンサのうちの異なるものをそれぞれ含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の力センサ。
【請求項12】
前記本体が前記第1の層と前記第2の層との間に配置される、請求項11に記載の力センサ。
【請求項13】
前記第2のセンサが前記第2の層内にある、請求項11または12に記載の力センサ。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の力センサのアレイを含む、力センサ装置。
【請求項15】
請求項1から13のいずれか一項に記載の力センサ、または、請求項14に記載の力センサ装置を含むロボット装置。
【請求項16】
グリッパである、請求項15に記載のロボット装置。
【請求項17】
請求項1から13のいずれか一項に記載の力センサまたは請求項14に記載の力センサ装置を含む人工装具。
【請求項18】
人工腕、人工上肢または人工下肢のうちの1つである、請求項17に記載の人工装具。
【請求項19】
手のひら部分と、
複数の指部分と、
書き込み部分と、
使用中に対象物に接触するための接触点に配置された、請求項1から13のいずれか一項に記載の複数の力センサと、
プロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、
前記第1のセンサおよび前記第2のセンサの各々から出力を受信し、
前記出力から、1つまたは複数の高速適応(FA)応答ならびに1つまたは複数の低速適応(SA)応答を決定し、
前記1つまたは複数のFA応答ならびに1つまたは複数のSA応答に基づいて前記対象物の外部接触状態(ECS)を識別する、ロボットハンド。
【請求項20】
前記ECSを識別することが、前記1つまたは複数のFA応答ならびに1つまたは複数のSA応答から一次応答および二次応答を決定することを含む、請求項19に記載のロボットハンド。
【請求項21】
前記一次応答が垂直力および剪断力の一方または両方を含み、前記二次応答が時間変化パターンを含む、請求項20に記載のロボットハンド。
【請求項22】
対象物に対するロボットハンドの外部接触状態(ECS)を識別するための、コンピュータ実装方法であって、
高速適応(FA)応答信号および低速適応(SA)応答信号を含む触覚検知信号を、前記ロボットハンドの各指部分から受信することと、
デコーダモデルによって前記触覚検知信号を処理して、前記ロボットハンドの各指部分に関連する触覚イベントデータを決定することと、
前記決定された触覚イベントデータを機械学習モデルによって処理して、前記対象物に対する前記ロボットハンドのECSを決定することと、を含むコンピュータ実装方法。
【請求項23】
前記機械学習モデルが、トレーニングされた畳み込みニューラルネットワーク(CNN)または二次判別分析(QDA)モデルを含む、請求項22に記載のコンピュータで実施される方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本開示は、一般に、力センサ、力センサを組み込んだロボット装置、および触覚力検知の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]この背景技術の説明は、本開示の文脈を一般的に提示する目的で提供される。この背景技術のセクションの内容は、本開示に対する先行技術として明示的にも暗示的にも認められない。
【0003】
[0003]触覚センシング技術は、ロボット操作が複雑なタスクを実行し、複雑な環境で情報を収集することを可能にする。ピエゾ抵抗、光学、容量、気圧、または磁気の原理に基づくいくつかの触覚センシング技術が知られている。触覚検知は、垂直力および剪断力を含むいくつかの種類の力検知を含み得る。力は、1つの点で加えられてもよく、またはより大きな領域にわたって分散されてもよい。異なる動作または環境は、異なる分解能での力の測定を必要とする場合がある。いくつかのロボット操作では、接触力の位置を取得することが有益であり得る。
【0004】
[0004]外部触覚力検知および接触位置推定のための既知のセンサは、現代の高感度および複雑なロボット工学の必要性を満たすのに十分に高い分解能および次元で力検知を十分に実行しない。既知のセンサアレイはまた、かさばり、サイズおよび重量の制限が重要ではない環境の適用性を制限する物理的サイズおよび重量の制約を受ける。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[0005]先行技術に関連する1つまたは複数の欠点または制限に対処または改善すること、または少なくとも有用な代替案を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[0006]本明細書では力センサが開示され、力センサは、
接触力を力センサアセンブリに伝達するための接触配置であって、
力センサアセンブリが、
接触力の通常の接触力成分を検知して、接触力成分から出力を生成する第1のセンサと、
接触力を力センサアセンブリに伝達する際に移動可能な本体と、を含む、接触配置と、
第2のセンサに対する本体の相対変位を検知して、相対変位から出力を生成するための第2のセンサであって、相対変位から3軸接触力が決定される、第2のセンサと、を含む。
【0007】
[0007]接触配置は、接触力の下で変形する変形可能な基板を含んでもよい。
【0008】
[0008]変形可能な基板は、エラストマ基板であってもよい。
【0009】
[0009]本体は磁石を含んでもよく、第2のセンサは1つまたは複数のホール効果センサである。本体は、複数の磁石を含んでもよい。本体は、1つまたは複数の磁石を含む剛性層と、片側が剛性層に固定され、反対側がホール効果センサに対して固定された変形可能層と、を含んでもよく、変形可能層は、接触力の下で、ホール効果センサに対する剛性層の変位を可能にする。
【0010】
[0010]第2のセンサは、チャンバ内に収容されてもよい。力センサは、力センサを装置に組み込むための基部構造体をさらに含んでもよく、基部チャンバは、基部構造体に組み込まれるか、または基部構造体に当接する。
【0011】
[0011]本体は、第1のセンサと第2のセンサとの間の基板に埋め込まれてもよい。
【0012】
[0012]第1のセンサは、各々がマトリックスピエゾ抵抗センサ、圧電センサ、静電容量センサ、摩擦電気センサ、および光学センサのうちの1つである、1つまたは複数のセンサを含んでもよい。
【0013】
[0013]力センサは、接触配置を含む最上層と、第2の層と、最上層と第2の層との間の第1の層と、を有する多層構造を形成してもよく、第1のセンサおよび第2のセンサのうちの異なるものをそれぞれ含む。
【0014】
[0014]本体は、第1の層と第2の層との間に配置されてもよい。第2のセンサは、第2の層内にあってもよい。
【0015】
[0015]上述のような力センサのアレイを含む力センサ装置も開示される。
【0016】
[0016]上述の力センサ、または上述の力センサ装置を含むロボット装置も開示される。
【0017】
[0017]ロボット装置はグリッパであってもよい。
【0018】
[0018]上述の力センサまたは上述の力センサ装置を含む人工装具も開示される。
【0019】
[0019]人工装具は、人工腕、人工上肢または人工下肢のうちの1つであってもよい。
【0020】
[0020]本明細書ではロボットハンドも開示され、ロボットハンドは、
手のひら部分と、
複数の指部分と、
書き込み部分と、
使用中に対象物に接触するための接触点に配置された、上述した複数の力センサと、
プロセッサであって、
第1のセンサおよび第2のセンサの各々から出力を受信し、
出力から、1つまたは複数の高速適応(FA)応答ならびに1つまたは複数の低速適応(SA)応答を決定し、
1つまたは複数のFA応答ならびに1つまたは複数のSA応答に基づいて対象物の外部接触状態(ECS)を識別する、ためのプロセッサと、を含む。
【0021】
[0021]ECSを識別することは、1つまたは複数のFA応答ならびに1つまたは複数のSA応答から一次応答および二次応答を決定することを含んでもよい。
【0022】
[0022]一次応答は、垂直力および剪断力の一方または両方を含んでもよく、二次応答は、時間変化パターンを含んでもよい。
【0023】
[0023]本明細書では、対象物に対するロボットハンドの外部接触状態(ECS)を識別するための、コンピュータで実施される方法も開示され、本方法は、ロボットハンドの各指部分から触覚検知信号を受信することであって、触覚検知信号が高速適応(FA)応答信号および低速適応(SA)応答信号を含み、受信することと、ロボットハンドの各指部分に関連する触覚イベントデータを決定するために、デコーダモデルによって触覚検知信号を処理することと、対象物に対するロボットハンドのECSを決定するために、マシンリーニングモデルによって決定された触覚イベントデータを処理することと、を含む。
【0024】
[0024]本発明の例示的な実施形態は、添付の図面に例として示されており、同様の符号は同じまたは同様の要素を示している。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1(a)】多層構造体およびその構成要素を示す力センサの側面図である。
【
図2】触覚センサが垂直力ベクトルおよび接線力ベクトルからなる外部接触力にあるときのエラストマ基板の予想される変形を示す側面図である。
【
図3】印加された機械的負荷に起因して電気抵抗が変化する複数の交差導電性ワイヤおよび可撓性導電性材料から構成されるマトリックスピエゾ抵抗センサの層を示す図である。
【
図4】磁力線がN極(N)からS極(S)を指し、磁場の強度が磁石からの距離に反比例する、円筒磁石からの代表的な磁場ベクトルを示す図である。
【
図5】接触力に対応する磁石を移動させるためのキャリアとして機能する磁石を内側に取り付けることによって磁化される剛性骨構造を示す図である。
【
図6】骨構造の層が左への接線接触力(F)によって印加されている間のエラストマ形状および局所磁場の予想される変化を示す図である。
【
図7】骨構造の層が右への接線接触力(F)によって印加されている間のエラストマ形状および局所磁場の予想される変化を示す図である。
【
図8】骨構造の層が上部から垂直接触力(F)によって印加されている間のエラストマ形状および局所磁場の予想される変化を示す図である。
【
図9】ロボットグリッパが力センサと一体化されている力センサの適用例を示す図である。
【
図10】ロボットハンド/人工ハンドが触覚的に検知される指先として力センサと一体化されている力センサの別の適用例を示す図である。
【
図11】ロボットの脚部/人工脚部が触覚的に検知される指先として力センサと一体化されている力センサの別の適用例を示す図である。
【
図12】力センサのFA-I層としての4×4マトリックスピエゾ抵抗センサと、関連する回路の概略図である。
【
図13】力センサの多層構造および特性評価性能を示す図である。
【
図14】力センサを組み込んだグリッパの指機構構造を示す図である。
【
図15】力センサを組み込んだグリッパのための触覚センシングソリューションおよび信号伝送の概要を示す図である。
【
図16】力センサを組み込んだグリッパの様々な把持構成を示す図である。
【
図17】力センサを組み込んだロボットハンドを示し、ロボットハンドを人間の手と類似させる図である。
【
図18】ロボットハンドの力センサ統合およびデータ伝送を示す図である。
【
図19】ロボットハンドが力で閉じた方法で円筒形状の対象物を把持しているときの人差し指の遠位部分におけるデータ・フロー・グラフを示す図である。
【
図20】9つの支配的なECSを識別するために使用される触覚検知信号およびCNNアーキテクチャを示す図である。
【
図21】力センサを組み込んだロボットハンドを使用して実施された実験を示す図である。
【
図22】ボールヒット認識を実行するためにECS識別能力を適用する実験的設定を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[0047]本開示は、触覚力検知のための力センサ(GTacもしくはGTacセンサまたは触覚センサもしくは触覚力センサとも呼ばれる)に関する。本開示はまた、GTacセンサを使用してマトリックス垂直接触力および内部3軸力を測定する方法に関する。GTacセンサは、家庭用ロボット用の低コストの生体模倣触覚センサとして機能することができ、ロボット操作の必要性に応じて解決策をカスタマイズすることができる。例えば、ロボットアームには大きな検知領域が設けられ、ロボットの指先には小さな検知領域が設けられてもよい。GTacセンサはまた、切断者で安全に制御されるロボット人工装具に組み込まれてもよい。例えば、GTacセンサは、その設計の高いセンシング能力、高い拡張性、および低コストのために、下肢人工装具および上肢人工装具に大面積の生体模倣触覚センシング能力を提供するために使用することができる。
【0027】
[0048]いくつかの例示的な実施形態では、GTacは、人間の指先の触覚検知機能を模倣する密な外部垂直力検知および内部3軸力検知能力を分離する。いくつかの例示的な実施形態のGTacは、マトリックスピエゾ抵抗センサ、磁性骨構造、シリコーンエラストマ基板、およびホール効果センサからなる人間の皮膚に触発された多層構造を採用する。例示的なGTacセンサは、密な垂直接触力および接触剪断力を推定することができる。GTacは、有利には、検知能力、単純さ、感度、堅牢性、およびフォームファクタに関して改善された触覚検知を提供する。
【0028】
[0049]人間-ロボット/ロボット-環境の相互作用、例えば、対象物操作のためのロボットハンド把持は、接触力の大きさ、接触位置、および力の方向を推定するために触覚センサに依存し、対象物操作の安全性および堅牢性を向上させることができる。したがって、高分解能かつ高次元で接触情報を推定する能力が重要である。
【0029】
[0050]いくつかの実施形態のGTacは、豊富な接触情報、すなわち接触力の大きさ、接触力の位置、および接触力の方向を認識する。接触情報は、ロボット/人間とロボットとの相互作用を制御する際の安全性および安定性の向上に有利に寄与する。ロボットは、対象物や人間と対話しながら、対話の状況を能動的に把握し、状況に応じた判断を行うことが求められる。例えば、接触は、ロボットが対象物に触れるときに起こる。接触力の大きさを測定することにより、対象物の運動特性の推定が可能になり、把持対象物の安定性、人間との相互作用の安全性、および対象物の操作の有効性の調整が可能になる。接触位置の測定を使用して、対象物によって加えられる関節レベルトルクを推定することができる。接触力の方向を測定することは、対象物を操作する際の知覚、および操作中の対象物の安定性を推定するのに有用である。
【0030】
[0051]力センサは、ピエゾ抵抗検知原理とホール効果ベースの検知という2つの検知原理を組み込むことができる。いくつかの実施形態では、力センサは、ピエゾ抵抗センサ、ホール効果センサ、磁石、3D印刷構造、およびエラストマ基板を含むことができる。外部からの接触力を接触面から力センサの検知構成要素に伝達させるための多層構造を設けてもよい。検出構成要素からの信号を処理して、力センサに加えられる力を決定することができる。いくつかの力センサは、軟質接触面を構築するために使用され、および/または力伝達媒体として機能するエラストマ基板を含むことができる。ピエゾ抵抗センサは、接触力に対応する位置で電気抵抗を減少させることによって、通常の接触力に応答する。ホール効果センサは、磁化された骨構造の外部接触力変化位置によって引き起こされる局所磁場の変化を測定することができる。上記の信号はすべて、力センサに設けられたプロセッサまたはマイクロコントローラによって収集および処理することができる。
【0031】
[0052]
図1(a)は、触覚力センサ100の側面図を示す。側面視において、センサ100は、多層構造を呈している。上から、接触面は、可撓性(例えば、エラストマまたはエラストマ)基板2a(タップエラストマとも呼ばれる)上にある。基板2aは、接触力に対応して変形し、接触力を次の層、すなわちマトリックスピエゾ抵抗センサ3(垂直力検知積層体マトリックスとも呼ばれる)に伝達することができる。圧力/機械的歪みは、圧電抵抗センサ3の領域に伝達され、それにより、圧力のある領域で電気抵抗が低減される。加えて、3の電気抵抗は、加えられた圧力で線形化されてもよい。別の可撓性(例えば、エラストマまたはエラストマ)基板2b(平坦なエラストマとも呼ばれる)は、骨構造4aと呼ばれる構造および基部チャンバ4bに取り付けられ、剛体は、ピエゾ抵抗センサ3、骨構造4a、および磁石5を含む。したがって、剛体は、加えられた接触力の下で、基部チャンバ4bに対して3軸(すなわち、3次元で)の変位を受ける可能性がある。これにより、局所磁場5aを変化させることができる。特に、磁石5からの局所磁場は、基部チャンバ4bを貫通することができなければならず、ホール効果センサ6によって検出されなければならない。使用されるホール効果センサ6は、MLX90393集積回路チップ(Melexis Co.Ltd.)、または任意の他の適切なホール効果センサを使用して提供することができる。ホール効果センサ6によって生成された信号は、I2Cバスまたは他の通信バスを介して読み取ることができる。ホール効果センサ6によって生成される出力データは、x-y-z軸における磁気強度値および温度を含む。ホール効果センサ6のデジタル出力は、通常の接触力および剪断接触力の一方または両方を決定するために、Arduino Mega2560または他のプロセッサ上のI2Cピンによって読み取られる。
【0032】
[0053]
図1(b)は、触覚力センサの略図を示し、正方形はピエゾ抵抗検知点を示し、円は単位当たりのホール効果検知点または検知領域を示す。
【0033】
[0054]
図2に示すように、対象物1は、2aの接触面に外力Fを加える。エラストマ基板2aは、変形し、接触力を3上の機械的歪みに伝達し、接触力をエラストマ基板2bの変形に伝達することが予想される。特に、4aの変位ベクトルの方向は、接線接触力ベクトルの方向と整列している。したがって、局所磁場はそれに応じて変化している。
【0034】
[0055]GTacセンサ100は、そのエラストマ基板2a(ヒト皮膚のマイスナー小体に基づいて設計され、高速適応(FA)-I層とも呼ばれる)における外部配列された(4×4マトリックス)垂直接触力を推定することができる。エラストマ基板2aの厚さは、0.5mmであってもよい。センサ100は、骨構造層4a(人間の皮膚のラフィニ柱に基づいて設計され、低速適応(SA)-II層とも呼ばれる)における3軸総接触力を測定することができる。この機能において、骨構造層4aは、層2bおよび4bと協調して動作する。SA-II層は、3mmの厚さまたは任意の他の適切な厚さであってもよい。FA-I層およびSA-II層の両方における関節レベルのトルクは、外部接触力が最上層2aに加えられたときの既知の幾何学的寸法に基づいて推定することができる。より具体的には、GTacは、通常の外因性接触力を抵抗の低減に変換し、総3軸力を局所的な磁束密度変化に変換する。抵抗および局所磁束密度は、ピエゾ抵抗センサおよびホールセンサを独立して同時に使用して測定される。各GTacセンサ100は、FA-I層から16個(4×4マトリックス)およびSA-II層から3個からなる19個の触覚信号を取得することができる。
【0035】
[0056]不均一な力のフィードバック
GTacの接触位置推定は、以下のように各検出点での検出圧力の加重平均によって得ることができる。
【数1】
式中、R
r、cは、行rおよび列cにおけるFA-I層からの信号読み取り値であり、eは、FA-I層の空間分解能であり、例えば、e=2.5mmである。ヒトの皮膚柔軟性と同様に、外部接触力は、接触面上のエラストマ基板を変形させることができる。このエラストマは、鋭い接触の場合の圧力を機械的に緩衝し、その後に、機械的歪みのために電気抵抗が低減されたFA-I層に接触面から圧力を送達する。さらに、接触力が骨構造に伝達され、平坦なエラストマを基部チャンバに対して変形させる。したがって、骨構造は、局所的な磁束密度を変化させながら、ホール効果センサに対して3軸に沿って移動することができる。局所磁束密度のこの変化は、ホールセンサによって測定することができ、剪断接触力を推定するために使用することができる。GTac上の力検知の組成の表現は、FA-IおよびSA-II信号のハイブリッド結果である。3軸接触力とGTac検知信号との間の線形関係は、以下のように表すことができる。
【数2】
ここで、ΔB
x、y、z、k
x、y、z、およびb
x、y、zは、それぞれ3軸における線形フィッティングラインの初期化位置、勾配、および切片に対する局所磁束密度の観察された変化である。変数aに関して、FA-I層およびSA-II層はz軸に冗長な力検知自由度(DoF)を有するので、垂直力推定値の冗長性は、FA-I層およびSA-II層によって重み付けすることができ、すなわち式(2)の
【数3】
であり、
【数4】
は4×4行列のアレイ化されたFA-I信号の合計である。
【0036】
[0057]製造およびカスタマイズ
図13は、生体模倣触覚センサGTac 1300を示す。の設計は、多層構造を採用している。GTac 1300ユニットは、可撓性基板(例えば、タップエラストマ1310)、平坦なエラストマ1350、ピエゾ抵抗センサ積層体(4×4)1320、ポリラクチド骨構造1330、円筒ネオジム(NdFeB)磁石または他の磁石1340、基部チャンバ1380、および統合ホールセンサ1370を有するPCBからなる。配列された垂直力検知積層体、すなわちピエゾ抵抗センサ1320は、第1の層を形成し、その一方の側にエラストマ基板1310が軟質接触面として配置される。積層体の他方の側は、円筒形のNdFeB磁石1340を取り付けることによって磁化された剛性骨構造1330である次の層に取り付けられる。この層の下には、ホール効果センサ1370を一体化する基部チャンバ1380に取り付けられた平坦なエラストマ基板1350がある。エラストマ基板1310、1350はいずれも、弾性率83kPaの特注の型に入れた液体シリコーンゴム(Ecoflex 00-50、Smooth-On Inc.)を流延および乾燥(12時間)することによって作製した。GTacの両方の層は、異なる目的のために様々な形状にカスタマイズすることができる。GTacのカスタマイズ可能な変数には、FA-I層の圧電抵抗器、骨構造、強磁性マーカー、SA-II層のエラストマならびにPCBが含まれた。すべての層は、接着剤、例えば、シアノルーブシアノアクリレート(Electrolube Co.Ltd)を用いて互いに貼り合わせることができる。ポリラクチド骨構造およびカスタマイズされた鋳型は、PLA White(Ultimaker Co.Ltd.)を使用してUltimaker S5によって印刷することができた。各構成要素の他の材料を所望に応じて使用することができ、提案された材料は例示のみを目的としている。ホールセンサは、MLX90393集積回路チップ(Melexis Co.Ltd.)であった。MLX90393 Qwiic磁力計(SparkFun Co.Ltd.)を特性評価実験に使用した。
【0037】
[0058]
図3において、マトリックスピエゾ抵抗センサ3は、ピエゾ抵抗材料3aおよび導電性ワイヤ3bからなる。ピエゾ抵抗材料3aは、印加された機械的歪みによって電気抵抗が変化するVelostat/Linqstatを含むことができる。導電性ワイヤ3bは、ピエゾ抵抗センサ3を異なる形状に変形させることができるように可撓性にすることができ、これは良好に適合する接触面を構築するのを助けることができる。導電性ワイヤ3bは、格子を形成するために行および列を横切って送られてもよい。しかしながら、ピエゾ抵抗材料で構成された積層体は、行および列のワイヤの間にあるため、ワイヤのいずれも直接接触していない。
【0038】
[0059]
図4は、シリンダ磁石5が、その強度が磁石からの距離に反比例する磁場5aを生成することを示す。特に、他の形状の磁石が使用されてもよいが、円筒は半径方向に均一な磁場を提供するように選択されており、任意の横方向に特定の量だけ変位すると、ホールセンサで磁場が一貫して予測可能に変化する。
図5は、骨構造の層が
図2の局所磁場5aを変化させるために磁石と共に移動することができるように、磁石5を取り付けることによって剛性骨構造4aが磁化されることを実証する。任意の極は、上面または底面であり得る。骨構造の形状は、矩形に限定されない。
図6、
図7および
図8は、骨構造4aの側面および上部に外力Fが加えられた場合に、エラストマの形状がどのように変化すると予想されるかを示す。これにより、エラストマ2bが変形して磁石5が移動する。したがって、局所磁場5aは外力Fに応答することができる。
【0039】
[0060]地球磁場相殺
SA-II層の検出原理は磁束密度測定に基づくため、2つの主な原因、地球の磁場および隣接する磁場からの磁気外乱(d)がある。いくつかの実施形態のGTacは、地球磁場相殺を低減するためのIMUベースの方法を組み込んでいる。磁気擾乱を定量化するために、そのような実施形態は、信号対雑音比(SNR)の代替的な定義をSNR=s/(s+d)として使用し、ここでsは有効信号強度である。地球の磁場は、環境内の一定のベクトル(B
e)であるが、最初は未知である(ホールセンサを介してその磁束密度の変化を観察することができる)。したがって、それはセンサ観測(B
s)に含まれ、すなわちB
s=B
e+B
mであり、ここでB
mはGTac内の磁石の磁場である。したがって、B
m=B
s-B
eであり、接触力推定はB
m、すなわちF=f(B
m)=f(B
s-B
e)にのみ関係する。したがって、解決策は、B
eを決定し、接触力推定のためにそれを減算することである。回転行列の行列乗算を使用して、方向R
ab後の新しい座標における接触ベクトルq
bは、q
a=R
abq
bを使用して取得することができる。したがって、Δq=q
a-q
b=(R
ab-I)q
bである。したがって、環境B
e|bにおける地球の磁場の定数ベクトルは、最小二乗最適化によって線形方程式を解くことによって得ることができる。
【数5】
ここで、R
abは回転行列であり、慣性測定ユニット(IMU)または角度エンコーダを介して取得することができ、ΔB
sはセンサによって観測された磁束密度変化である。
【0040】
[0061]
図9は、把持などのフィードバックベースのタスクの性能を改善するための豊富な接触フィードバックをロボットに提供するためのロボットグリッパ101と一体化された力センサの例示的な適用を示す。触覚センサ100は、密な垂直接触力および3軸接触力を推定することができる。100の接触面は、適合する把持接触を有するために、別の指の触覚センサ100の接触面に面してもよい。本発明の用途は、グリッパの指と一体化することを含むが、これに限定されない。
【0041】
[0062]
図10および
図11は、触覚力センサのいくつかの実施形態を利用する本発明の2つの例示的な用途を示す。この実施形態では、触覚力センサ100は、上肢人工装具/擬人化ロボットハンドおよびアーム102ならびに下肢人工装具103と一体化されている。触覚センサ100は、アーム/シャンク上の無意識の衝突のフィードバックを提供し、対象物を落下させないように操作するときの安定性を把握することによって、上肢/下肢人工装具の人間とロボットとの相互作用の安全性を高めるために使用することができる。検知能力の側面から、触覚センサは、マトリックスピエゾ抵抗センサからの信号およびホール効果センサからの信号を出力することができ、最終出力は、2つの信号の両方の混合結果である。外部接触位置および3軸力は、それぞれ2つの信号から推定することができるので、最終混合信号を使用して、各指先の関節レベルのトルクを推測することができる。人工装具/ロボットハンド102の手のひら、人工装具/ロボットアーム102、および人工装具シャンクなどのより広い領域の触覚センシングが必要な場合、本発明の原理を拡張することができる。そのような場合、マトリックスピエゾ抵抗センサおよびホール効果センサの空間分解能は、それに応じて調整されるべきである。上記で説明した実施形態のほとんどは、マトリックスピエゾ抵抗センサに関するものであるが、静電容量センサ、圧電センサ、摩擦電気センサ、光学センサまたは他の同様のセンサを使用してそのような触覚力センサを開発するために同じ原理を適用することもできる。
【0042】
[0063]データ取得および処理
図12(a)は、マトリックスピエゾ抵抗センサの読み出し回路を示す。
図12(b)は、フォロアベースの信号分離回路を示す。Rsは[5k,100k]オームの抵抗R
sの範囲を有するピエゾ抵抗センサであり、R
0は10kオームである。
図12のマトリックスピエゾ抵抗センサを読み出すための回路には、所定の時間間隔で行を高電圧に切り替える4チャネルマルチプレクサがある。ボルテージフォロワとして機能し、他の外乱源からのアナログ読み出しを分離するために、10kオームのプルアップ抵抗を有する4つの演算増幅器がある。4チャネルマルチプレクサは、Arduino Mega2560の4つのデジタルI/Oピンに接続されている。信号は、4つのアナログI/Oピンによって直接読み取られる。
【0043】
[0064]各瞬間に1つの行のみがVrefに接続されてもよい。残りの行は、グラウンド(GND)に短絡される。GTacセンサの力検知原理に関して、各GTacは16個のFA-I信号および3個のSA-II信号を取得することができる。GTacセンサのSA-II層内のホールセンサは全体的な磁束密度(MFD)を測定するので、相対的なMFD変化ΔB
x、y、zは、初期N
0個のサンプルB
N0
x、y、zの平均値から測定されたMFD B
x、y、zを減算することによって得ることができ(N
0は300として設定することができる)、すなわち
【数6】
である。信号のノイズを低減するために、移動平均を加算して、ウィンドウサイズが6のすべての信号をフィルタリングすることができる。
【0044】
[0065]制御戦略
いくつかの実施形態は、各グリッパにGTacセンサが設けられた2つ以上の指状グリッパに関することができる。脆弱な対象物を把持するために一体化されたGTacを有する2つの指グリッパを使用して閉ループ把持を達成するために、しきい値Tgを使用して、グリッパの各指先にGTacからのフィードバックを介して指によって加えられる把持力を制御する。対象物を把持するために、各指fの対応するモータm
fを1増分(1.5°)回転させてラックアンドピニオンギヤを駆動し、利用されたGTac信号g
f>T
gまで指閉鎖を行う。活用されたGTacシグナルは、以下によって導き出すことができる。
【数7】
ここで、f=1は左指、f=2は右指である。ピンセットでは、ピンセット把持実験のために、Tg
high=900、Tg
low=500およびa=0.3として使用実験値を設定した。g
1<Tg
highおよびg2<Tg
highである場合、g
1>Tg
highおよびg
2>Tg
highになるまで両指が閉じ始めた。2秒後に、両指は対象物を離し始めたが、g
1<T
glowおよびg
2<T
glowになるまでピンセットを保持した。卵把持実験では、Tgを700、aを0.3とした。
【0045】
[0066]GTac-グリッパ:触覚検知を有する再構成可能な動作不足マルチ・フィンガ・ロボットグリッパ
本開示のいくつかの実施形態は、より広範囲の対象物に関する。したがって、本明細書に提示されるのは、指および手のひらに一体化された再構成可能な機構および触覚センサ(GTac)を有するロボットグリッパである。グリッパは、GTac-グリッパとも呼ばれ得る。GTac-グリッパの各指は、2DOF未作動設計および中手指節(MCP)関節を有する1つまたは複数、現在は2つの指骨から構成され得る。4本の適応指を備えたGTac-グリッパは、5つの把持構成を実行し、150Hzで228個の触覚フィードバック信号(垂直力および剪断力)を得ることができる。グリッパは、様々な日常の対象物を把持し、閉ループ制御によって並進および回転を含む手元操作を達成することができる。Yale-CMU-Berkeley(YCB)ベンチマーク評価では、グリッパは合計で93%(円形対象物)、0%(平坦対象物)、78%(ツール)、90%(関節対象物)、および65%のスコアを達成した。GTac-グリッパは新しいハードウェア設計を提供し、家庭および産業分野における様々なロボット用途に有益であり得る。
【0046】
[0067]グリッパ設計
2本の指骨を有する指には、2DOFリンク駆動の非作動設計を採用した。
図14(a)に示すように、平行四辺形機構を有する4バー機構を積み重ねることによって未作動機構を構築した。他の構成も可能であり、本教示の範囲内に入ることが意図されている。作動リンクl1は、サーボモータに接続されている。1-DOF平行四辺形機構では、アクティブリンクABの回転がリンクO1Cの動きに伝達され、これにより2-DOF未作動4節リンク機構O1CDO2が作動する。
【0047】
[0068]関節O2内の予荷重ねじりばねTは、遠位指骨を完全に伸長した状態に維持するために使用される。機械的ストッパは、指骨に外力が加えられていないとき、遠位指骨をばねの伸長下で整列させたままにした。関節O0は、人間の手の中手指節関節として機能し、各指が手のひらの中心軸に対して独立して向きを変えることを可能にする。指が屈曲するときの指先の軌跡は、外的制約によって決定される。
図14(b)は、指屈曲中の3つの状況を示す。#1では、接触は中節骨で起こる。#2では、2つの指骨が剛体として動作し、固定点の周りを回転する。#3では、屈曲前に指を押したときに、指先が直線的に移動する。
【0048】
[0069]
図14(c)は、GTac-グリッパの部分分解図を示す。指の遠位節骨、指の中節骨、および手のひらに一体化された触覚センサを備えた、4本の指および8個のモータを有する。各指は、指の屈曲/伸展のための1つのモータと、再配向のための1つのモータとを有する。GTacセンサの軟質シリコーン皮膚は、指表面を部分的に覆い、対象物把持中の把持安定性を改善する構造的コンプライアンスを提供した。
【0049】
[0070]GTac-グリッパの操作範囲および器用さを評価するために作業スペース分析が実行される。関節O1およびO2の動きは、非作動の指の設計のために結合される。指先の到達可能な作業空間を分析するために、指先の動作範囲は、未作動特性に起因する機械的限界に依存すると仮定した。したがって、指運動学モデルをRRR機構として構成し、座標を配置してDenavit-Hartenberg(DH)パラメータを得た。
図14(d)に示すように、各指は、X
0Y
0平面内の関節O0の周りを180°回転することができる。リンクO1CおよびリンクO2Dは、それぞれX
1Y
1平面で85°およびX
2Y
2平面で70°の動作範囲を達成することができる。指のDHパラメータを表Iに列挙し、式(6)および(7)によって使用して指先の作業空間を取得することができる。変換行列を以下のように定義した。
【数8】
と
【数9】
【表1】
表I-指の標準DHパラメータ
モンテカルロ数値アルゴリズムを適用して、各指先の作業空間を求めた。
【0050】
[0071]触覚センサの統合
GTacセンサは、手によって加えられる接触力を測定するために適切な位置に統合される。現在、これらの位置は、
図15に示すように、各指の末節骨および中節骨、ならびにGTac-グリッパの手のひらにある。各GTacセンサは、複数の触覚検知信号、ここでは19の触知検知信号(FA-I層から16、SA-II層から3)を知覚することができる。例えば、12個のGTacセンサを備えたGTac-グリッパは、150Hzで228個の触覚検知信号を取得することができる。各GTacセンサでは、前面の中央に配置されたホールセンサ(MLX90393)を使用して、局所磁束密度を取得し、例えばI2Cバスでデジタル信号を送信する。マルチチャネル演算増幅器、現在は4チャネル演算増幅器(MCP6004)は、圧電抵抗器からアナログ信号を取得するために使用される。GTac-グリッパの4本の指には4つの並列検知分岐がある。アップロードするマルチプレクサ信号、ダウンロードするデジタルおよびアナログ信号、ならびに電源(5V)は、各分岐でシリアルに送信される。遠位節骨(s=2)、中節骨(s=1)、および手のひら(s=0)にそれぞれGTacセンサを接続するために、12ピン、16ピン、および20ピンの0.5mmピッチのジャンパケーブルが使用される。
【0051】
[0072]多用途の把持構成
指基部間の指間距離は、特に未作動機構の精密把持(ピンチ)およびケージ化におけるグリッパの安定性および把持/操作能力に関連する。同様に、グリッパは、そのMCP関節を連続的に制御して、異なる把持構成を達成し、指間距離を変更することができる。
図16(a)に示すように、4つの異なる指間距離pl、pw、d、およびd/2がある。5つの把持構成は、異なる指間距離で達成することができる(
図16(b))。グリッパは、球状または不規則な対象物のケージ把持(#1)、円筒状の対象物または小さな対象物の平行ピンチ(#2および#3)、把持の安定性を強調したクラスポーズ(#4)、およびドリルなどのT字形対象物のT字形把持(#5)を実行することができる。
【0052】
[0073]GTac-Hand:統合された生体模倣触覚センシングおよびECS認識機能を備えたロボットハンド
いくつかの実施形態は、手の指および手のひらから触覚フィードバックを得るための一体化されたGTacセンサを有するロボットハンドに関する。そのような実施形態は、GTac-Handと呼ばれることがある。GTac-Handは、285個の触覚測定を提供し得る。GTac-Handは、繊細な対象物を把持し、人間のようなパターニングおよび学習モデルを介してそれらのECS(外部接触状態)を正確に識別することができ、これは、繊細な対象物把持、対象物ハンドオーバ、およびボールヒット認識などの困難なタスクを実行するためにロボットに使用することができる。
【0053】
[0074]いくつかの実施形態では、GTac-Handは、(i)人間の皮膚のような垂直力(分布)および剪断力(グロス)検知能力を有する触覚センサ、ならびに(ii)人間の体性感覚システムのものなどの効果的な感覚解釈方法を提供する。
図17は、GTac-Hand 1700を示し、GTac-Handの構造および動作を人間の手と類似させる。GTac-Hand 1700は、把持された対象物の9つの典型的なECSをリアルタイムで識別することができる擬人化ロボットハンドの指および手のひらにGTacを統合している。GTac-Handは、GTac-Handによって生成されたセンサデータ上で動作する人間のようなパターニングおよびディープラーニングモデルを介して保持された対象物のECSを識別することができる。人間の感覚モータコントローラと同様に、GTac-Handは、把持された対象物の識別されたECSに従って、閉ループ把持および対象物ハンドオーバなどの困難なタスクを実行することができる。
【0054】
[0075]GTac-Handのメカトロニクス設計
GTac-Handは、手首の検知および作動のための電子機器を統合する。
図3に示すように、2つのPCBがあり、1つのPCBは、GTac検知PCBからの信号を収集するために使用され、もう1つのPCBは、電源、作動PCBに使用される。検知PCBは、各GTac-finger分岐に対して5つの20ピンのジャンプケーブルコネクタを有することができる。マイクロコントローラ、Teensy 4.1は、デジタルデータを生成するために検知PCBに直接接続され、モータの低レベルコントローラとして機能し、コア処理ユニットと通信するためにシリアルポートおよびCANバスを開く。
【0055】
[0076]擬人化手は、
図18(d)に示すように作動不足であり、ケーブル駆動されてもよく、10個の回転関節が6個のモータによって作動される。形状、サイズ、運動学、および外観は、人間の手のものと同様である。ロボットハンドは、ハンド内のすべての電子機器および作動伝達を統合する。人差し指、中指、薬指、および小指は、遠位部分の長さが異なることを除いて同じ設計を有し、2つの回転関節、すなわち近位指節間関節および中手指節関節を有する。把持および操作のために作動される関節の冗長性を低減するために、遠位および中節骨が指ごとに接続される。親指には、人間のような器用さと機械的な相乗効果を得るために、2つの自由度、すなわち手根中手関節の半径方向外転/内転と、中手指節関節の屈曲/伸展が与えられる。
【0056】
[0077]信号取得および処理
GTacセンサの特徴によれば、GTac-Handは、指および手のひらから285の触覚信号を取得することができる。150Hzにおいてすべての信号を取得することができる検知PCB。まず、300サンプルを収集し、テール100サンプルの平均値(
【数10】
、0.67秒データ)を計算して、GTac信号を初期化することができる。触覚信号の相対値は、平均値
【数11】
を減算することによって取得することができる。信号のノイズを低減するために、移動平均(ウィンドウサイズ:6)を加算することができる。フィルタリング・アルゴリズムは、GTacのSA-II信号に対する磁気擾乱を低減するために実施され得る。信号処理アルゴリズムは、閉ループ把持段階でのみ使用された。各GTacユニットのFA-IおよびSA-IIデータの両方の2つのしきい値を使用して、接触状態を推定することができる。利用されたFA-Iシグナル、
【数12】
またはSA-IIシグナル、
【数13】
のいずれかがしきい値(T1およびT2)を上回った場合、指fの切片sを接触させたと見なした。SA-IIシグナルは、応答指部分が接触しているときにのみ有効であった。したがって、グローバル座標に対する指の向きによる磁束密度の変化は、接触が検出されない場合には破棄された。データ処理のための擬似コードは、アルゴリズム1に記載されている。
【表2】
【0057】
[0078]パターン化および学習モデル
GTacの特性に基づいて、15個のGTacユニット(GTac#=f×4+s,f∈{0,1,2,3,4}、s∈{0,1,2})からの240個のFA-I型信号および45個のSA-II型信号からなる285個の触覚検知信号を15×19の信号行列(特徴#:0-18)に変換した。GTacのシグナル伝達スキームによれば、ニューロンに触発された触覚表現を符号化することは、GTacが各指部において同期した時間精度を維持しながらFA-I型およびSA-II型の両方の触覚信号を組み込むことができるので、その中での実装に適している。
図19に示すように、人間の体性感覚システムGTac-Handにいくつかのデコーダを組み込んで生体模倣触覚情報を抽出し、分散FA-I信号
【数14】
を組み込み、FA-IおよびSA-II信号(SFA
x,y,z=ΔB
x,y,z/SR)を統合し、n番目のサンプリング時点での動的時間変化速度
【数15】
を取得し、触覚イベントを生成することによって、神経触覚パターン表現によって着想を得た。
【0058】
[0079]対応する層の触覚イベントは、時間変化速度が所定のしきい値内の境界を超えたときに捕捉され、3軸でFA-I層については|F|=20、SA-II層については|S
i|=20,i∈{x,y,z}であった。抽出された触覚情報は、各指部分から独立していた。したがって、それらをセクションごとの特徴(SWF)と呼んだ。
図20(a)に示すように、モデルは、10個のデコーダ出力と、元の19個のGTac信号を有する機械学習ベースの分類器のオプションの入力(w/SWFまたはw/oSWF)としての4つの触覚イベントとからなる14個のSWFを含んでいた。
図20に示すように、全体で33チャネルのデータ、すなわち平坦化されたRr、c(特徴#:0-15)、ΔBx、y、z(特徴#:16-18)、xeおよびye(特徴#:19-20)、SR(特徴#:21)、dFA(特徴#:22)、SF Ax、y、z(Feature#:23-25)、dSAx、y、z(特徴#:26-29)および触覚イベント(特徴#:30-33)があった。
【0059】
[0080]教師あり学習モデル訓練および検証:触覚フィードバックを介して9つのECSを識別するために、2つの教師あり学習モデル、すなわち畳み込みニューラルネットワーク(CNN)および二次判別分析(QDA)を実装した。TensorFlowに基づくPythonのKerasライブラリを使用して、CNNベースのモデルを構築および訓練することができる(
図20(b))。CNNモデルの複雑さ(訓練可能なパラメータの数)を低減し、その性能(検証精度)を維持するためにCNNモデルのパラメータを調整した後に、2つの主な畳み込みブロック、0.5の「ドロップアウト」レートで調整された平坦化層、および完全接続高密度層からなるアーキテクチャが実施形態によって提供された。各畳み込みブロックは、非線形性を導入するために、3×3の畳み込みカーネル、正規化線形ユニット(ReLU)、および2×2の最大プーリング層によって組み立てられた。入力オプションw/oSWFおよびw/SWFについて、それぞれ2121および2985の訓練可能なパラメータがCNNモデルにあった。学習プロセス中、Adamオプティマイザを使用して学習率を0.001、バッチサイズを12とし、モデルを15エポックで訓練した。性能をCNNベースのモデルと比較するために、QDAベースの分類器は、ベイズの定理に基づいて特徴空間内のクラス間の二次決定境界を決定するscikit-learnライブラリを使用して実装された。QDAモデルの構成はデフォルト構成であった。教師あり学習モデルを検証するために、5倍交差検証を実施し、データセットをランダム化後に5つの等しい断片に分割し、4つの断片を使用してモデルを訓練し、残りの1つを使用して訓練されたモデルを検証した。この推定プロセスを5回繰り返した。
【0060】
[0081]
図21(a)は、GTac-Handの制御ループにおける4つの段階を示す。
図21(b)は、学習済みNN-ECSモデルおよびハンドオーバコントローラを使用した卵の把持およびハンドオーバの実験を示す。
【0061】
[0082]
図22(a)は、ボールヒット認識を実行するためにECS識別能力を適用する実験的設定を示す。
図22(b)は、一試行実験の認識結果および復号された触覚イベント表現を示す。
図22(c)は、行われたボールヒット認識実験の6回の試行すべての認識精度を示す(合計60回の試行にわたって96.7%の精度)。
【0062】
[0083]本明細書における任意の先行する刊行物(またはそれに由来する情報)または任意の既知の事項への言及は、その先行する刊行物(またはそれに由来する情報)または既知の事項が、本明細書が関連する努力の分野における共通の一般知識の一部を形成することの承認または許可または任意の形態の示唆として解釈されるべきではなく、そのように解釈されるべきではない。
【0063】
[0084]本開示の範囲は、当業者が理解するであろう、本明細書に記載または図示した例示的な実施形態に対するすべての変更、置換、変形、変更、および修正を包含する。本開示の範囲は、本明細書に記載または図示した例示的な実施形態に限定されない。さらに、本開示は、特定の構成要素、要素、特徴、機能、動作、またはステップを含むものとして本明細書のそれぞれの実施形態を説明および図示しているが、これらの実施形態のいずれも、当業者が理解するであろう本明細書のどこかに記載または図示されている構成要素、要素、特徴、機能、動作、またはステップのいずれかの任意の組み合わせまたは順列を含むことができる。本開示は、特定の利点を提供するものとして特定の実施形態を説明または例示しているが、特定の実施形態は、これらの利点のいずれも、いくつか、またはすべてを提供しなくてもよい。
【国際調査報告】