(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-30
(54)【発明の名称】アンチセンスオリゴヌクレオチドに基づく薬物が搭載された細胞由来の自然又は人工ナノベシクルを含有する薬学組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/7105 20060101AFI20240723BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240723BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20240723BHJP
A61K 47/46 20060101ALI20240723BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240723BHJP
A61K 31/712 20060101ALI20240723BHJP
A61K 31/7125 20060101ALI20240723BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240723BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240723BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20240723BHJP
A61K 35/545 20150101ALI20240723BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20240723BHJP
C12N 5/07 20100101ALN20240723BHJP
C12N 5/0789 20100101ALN20240723BHJP
【FI】
A61K31/7105 ZNA
A61P35/00
A61K9/51
A61K47/46
A61K48/00
A61K31/712
A61K31/7125
A61K45/00
A61P43/00 121
A61P35/04
A61K35/545
C12N15/113 110Z
C12N5/07
C12N5/0789
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580907
(86)(22)【出願日】2022-06-30
(85)【翻訳文提出日】2024-02-27
(86)【国際出願番号】 KR2022009415
(87)【国際公開番号】W WO2023277610
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】10-2021-0085716
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522388176
【氏名又は名称】プリモリス セラピューティクス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ ジェ-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】アン ヒ-ジン
(72)【発明者】
【氏名】イ デ-ハン
(72)【発明者】
【氏名】イ ドン-ヨル
(72)【発明者】
【氏名】ナ キュ-フム
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AC20
4B065BD21
4B065BD50
4B065CA44
4C076AA65
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4C076BB25
4C076CC27
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4C087MA57
4C087MA59
4C087MA66
4C087NA13
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZC75
(57)【要約】
本発明は、細胞由来の自然又は人工ナノベシクルに核酸に基づく薬物を搭載することで、核酸に基づく薬物を細胞内に取り入れる薬学組成物及びこの製造方法に関する。本発明により、アンチセンスオリゴヌクレオチドを搭載した自然又は人工ナノベシクルは、癌細胞の増殖と移動を抑制し、既存の化学抗がん剤との併用投与において、薬剤感受性を増加させる特性を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンチセンスオリゴヌクレオチドに基づく薬物を搭載させた細胞由来の自然又は人工ナノベシクルを含有することを特徴とする薬学組成物。
【請求項2】
ガレクチン-3標的核酸薬物が搭載された細胞由来の自然又は人工ナノベシクルを含有する薬学組成物。
【請求項3】
核酸に基づく薬物が搭載された細胞由来の自然又は人工ナノベシクルを含有することを特徴とする口腔又は鼻腔吸入(Inhalation)用又は静脈注射用薬学組成物。
【請求項4】
核酸に基づく薬物が搭載された臍帯血幹細胞由来の自然又は人工ナノベシクルを含有することを特徴とする癌予防又は治療用薬学組成物。
【請求項5】
自然又は人工ナノベシクルは、ヒト胚芽伸張細胞又は臍帯血幹細胞から分泌又は準備されたものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の薬学組成物。
【請求項6】
ASOに基づく薬物又は核酸に基づく薬物は、塩基序列の少なくとも1つの塩基(base)の一部又は全部が、ホスホロチオエート及び/又は2'-O-メチル基に修正されたASOに基づく薬物であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の薬学組成物。
【請求項7】
癌予防又は治療用薬学組成物であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の薬学組成物。
【請求項8】
ASOに基づく薬物又は核酸に基づく薬物は、ガレクチン-3標的であることを特徴とする請求項1、3、又は4のいずれか一項に記載の薬学組成物。
【請求項9】
ASOに基づく薬物又は核酸に基づく薬物は、ガレクチン-3標的化で序列番号1~3のいずれか1つ以上の序列を用いて設計されたものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の薬学組成物。
【請求項10】
口腔又は鼻腔吸入用、又は静脈注射用剤形であることを特徴とする請求項1、2,又は4のいずれか一項に記載の薬学組成物。
【請求項11】
肺がん予防又は治療用であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の薬学組成物。
【請求項12】
非核酸に基づく薬物と併用投与されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の薬学組成物。
【請求項13】
ターゲット細胞の増殖能及び/又は移動能を減少させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の薬学組成物。
【請求項14】
併用投与される抗がん剤に対する感受性を増加させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の薬学組成物。
【請求項15】
ガレクチン-3コード配列(coding sequence、CDS)内の塩基序列を用いて設計されたことを特徴とするガレクチン-3標的化アンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項16】
序列番号1~3のいずれか1つ以上の序列を用いて設計されたことを特徴とする請求項15に記載のガレクチン-3標的化アンチセンスオリゴヌクレオチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸に基づく薬物が搭載された細胞由来の自然又は人工ナノベシクルを含有する薬学組成物に関する。一例として、本発明は、発癌誘導遺伝子塩基序列に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドを搭載した人体細胞由来の自然又は人工ナノベシクルを活用した抗癌薬物の開発に関する。
【背景技術】
【0002】
癌は発生した身体臓器の位置によって、肝臓癌、胃癌、子宮癌などと呼び、肺に発生した癌を肺がんといい、正確には、原発性(肺から始まった)肺がんと呼ぶ。すなわち、気管支、細気管支、肺胞などの肺組織で発生した癌をいう。これに対して、例えば、乳房癌、肝癌など、他の臓器で発生して肺に転移した場合は、転移性肺がんと呼んで、原発性肺がんとは異なって取り扱う。
【0003】
肺がんは、癌死亡のうち、最も確率が高い。徐々に進行するので、早期に発見すると、手術で治療可能である。肺がんは、臨床的経過と治療が異なるので、顕微鏡的に癌細胞のサイズと形状によって、非小細胞肺がん(Non Small Cell Lung Cancer、NSCLS)と小細胞肺がん(Small Cell Lung Cancer、SCLC)とに区分され、このうち、NSCLSが、肺がん患者の85%を占める。この非小細胞肺がんは、再度、非扁平非小細胞肺がん(NSCLC)と扁平非小細胞肺がん(NSCLC)とに分けられる。非扁平非小細胞肺がんが70~75%で、殆どを占めており、扁平非小細胞肺がんが25%程度と知られている。現在、非小細胞肺がんに対する標的抗がん剤として使用される一部の薬は、高い治療効果にもかかわらず、EGFR T790M変異で発生する耐性癌に対しては、治療方法が無い。
【0004】
全ての細胞は、他の細胞又は外部環境と情報交換をする。このような情報交換のために、細胞は、様々な物質を外部環境に分泌し、成長因子(growth factors)、サイトカイン(cytokines)、ケモカイン(chemokines)、ホルモン、神経伝達物質などがある。最近には、このような単一物質の他にも、細胞外小胞(extracellular vesicles、EVs)による情報交換が逐次注目されている。バクテリアエクソソームの場合、リポ多糖(lipopolysaccharides)又はリポタイコ酸(lipoteichoic acid)を含む。
【0005】
細胞外小胞は、細胞間の情報交換のために、全ての細胞が外部環境に分泌するナノサイズの小胞である。細胞外小胞は、タンパク質、脂質、核酸、代謝物質など、生物学的活性を示す様々な物質を含んでいる。また、細胞外小胞の構成成分は、由来する細胞の種類と状態を反映しており、細胞培養液、血液、小便、唾液、涙、精液、母乳、腹水(ascites)、脳脊髄液など、様々な体液で存在する。様々な細胞から由来する細胞外小胞が標的細胞と相互作用して、様々な生理的・病理的機能を行う。例えば、幹細胞由来の細胞外小胞は、組織再生を誘導し、癌細胞由来の細胞外小胞は、癌の成長と転移、血管新生などに影響する。バクテリア由来の細胞外小胞は、抗生剤耐性、競争バクテリア除去、毒性因子(virulence factor)伝達、免疫反応調節などの機能を行う。
【0006】
一方、様々な細胞と体液から由来した細胞外小胞にて共通に多く見出されるタンパク質があり、これにより、タンパク質が細胞外小胞に無秩序に入ることではなく、調節される機作により入ることが確認できる。
【0007】
由来する細胞小器官により細胞外小胞タンパク体を分析した結果、主に、原形質膜(plasma membrane)や細胞質基質(cytosol)から由来するタンパク質が多く、相対的にミトコンドリアや細胞核から由来するタンパク質は少なかった。細胞外小胞で共通して見出されるタンパク質は、細胞外小胞の構造、生成、移動に関与し、代表的にテトラスパニン(tetraspanins: CD9、CD63、CD81など)、インテグリン(integrins)、エスコート複合体(endosomal sorting complex)タンパク質(TSG101、Alix)、細胞骨格タンパク質(cytoskeletal proteins: actins、tubulin)、熱衝撃タンパク質(heat shock proteins: HSP70、HSP90)などがある。哺乳類細胞由来の細胞外小胞に共通して見出されるタンパク質は、細胞外小胞を分離したとき、使用するタグタンパク質として活用することができる。一方、細胞外小胞には、由来する細胞種類の特異タンパク質も存在し、これらは、細胞種類に関する生理的・病理的機能を行うことと関連がある。
【0008】
細胞外小胞は、生物学的活性を有している様々な物質で構成されているので、様々な生物学的機能を行う。細胞外小胞が標的細胞と相互作用する機作としては、リガンド-受容体相互作用(ligand-receptor interactions)、結合(fusion)、そして、内包作用(endocytosis)などがある。様々な細胞から由来する細胞外小胞が標的細胞と相互作用して、正常な状況で生理的機能を行ったり、疾病を誘発する病理的機能を行ったりする。これにより、様々な疾病の診断と治療に活用することができる。
【0009】
哺乳類細胞由来の細胞外小胞が行う様々な生理的機能としては、止血、組織再生、幹細胞維持、炎症/免疫反応調節、胚芽発達などがある。血管内には、単球、内皮細胞、血小板など、様々な細胞から由来する細胞外小胞が存在し、ホスファチジルセリン(phosphatidylserine)を有している細胞外小胞は、血液凝固を促進する。また、幹細胞から由来する細胞外小胞は、腎臓・肝・皮膚など、損傷モデルにおいて、組織再生と炎症反応調節を媒介する。一方、免疫細胞から由来した細胞外小胞は、IL-1βのような炎症性サイトカインを伝達するか、直・間接的に抗原提示するなど、免疫反応を促進することもできる。TGF-βのような抑制性サイトカインを伝達するか、T細胞活性化を抑制する方式などにより免疫反応を抑制することもできる。Wntなどの膜結合型モルフォゲン(membrane-bound morphogen)を有した細胞外小胞は、対応する受容体につけられて、胚芽発達に関する信号伝達経路を促進したりする。
【0010】
一方、哺乳類細胞由来の細胞外小胞は、様々な疾病を誘発する病理的機能をする。特に、腫瘍微細環境(tumor microenvironment)で癌細胞由来の細胞外小胞は、非常に様々な機能をする。癌細胞由来の細胞外小胞は、スフィンゴミエリン(sphingomyelin)を通じて内皮細胞に作用して、分裂、移動、管形成を促進して、血管新生を増進させる。そして、単球を骨髄由来抑制細胞(myeloid-derived suppressor cells)に分化させたりする。これと共に、他の免疫細胞にも作用するが、細胞毒性T細胞の死滅を促進するか、調節T細胞の分化を促進して、抗癌免疫作用を抑制させる。これにより、癌細胞由来の細胞外小胞は、腫瘍微細環境で癌の進行を促進させる機能を果たすことが分かる。
【0011】
核酸医薬品は、生体内で主に遺伝情報を担当する物質として機能する核酸を用いた医薬品であり、遺伝子発現を抑制するsiRNAや標的分子と特異的に結合するアプタマー(Aptamer)などが注目されている。
【0012】
核酸医薬とは、遺伝子の構成成分である核酸(DNAやRNAなど)を主成分とする医薬品であり、アンチセンス、siRNA、アプタマー、CpGオリゴなどがある。疾患原因遺伝子とタンパク質に作用して効果を発揮するため、既存の医薬品では標的にしにくかった細胞内分子に作用することができ、効果が優れており、副作用が少ないと期待されている。
【0013】
特に、低分子干渉(Small interfering)RNAs(siRNAs)、microRNAs(miRNAs)、antisense oligonucleotides(ASOs)、aptamers、合成mRNAs、及びCRISPR Cas9のように、RNAを基にする治療剤は、現在、薬物で調節できない多くの遺伝子及び遺伝子産物をターゲットし、癌から、流行性インフルエンザ、アルツハイマー、自己免疫疾患に至る疾病から、新たな治療パラダイムを創出できる重大な潜在力がある。しかし、このようなRNAの潜在力が最大限に発揮されるためには、まず、細胞外のRNAを細胞内に浸透できないようにする長時間の間、進化的に完成した防御体系を克服しなければならない。脂質二重層をあけてRNAを細胞に伝達することが、RNA治療剤の広範囲な開発のための主要課題であり、昔から提起されてきた薬物伝達の問題は、持続的に指摘されている。
【0014】
生命体は、原始RNAと高分子溶液が脂質二重層によりカプセル化されて、外部のRNAと巨大分子の干渉なく、独自の化学反応が可能となることで発生した。脂質二重層は、1,000Daltons(Da)よりも小さい中性、わずかの疎水性分子 <1,000Daltons(Da)の受動的拡散を許容することに対して、RNAのような大きい分子の移動は、制限する。
【0015】
そこで、脂質二重層は、生命を創造し、侵入するRNAから防御することにおいて基本的なものであった。この古い障壁上には、RNasesと先天的な免疫パターン認識Toll様受容体(Toll like receptors)(TLRs)3、7、8、二重螺旋RNA受容体PKRなどを含めて、侵入するRNAから、後生動物(metazoan)細胞を更に保護するために考案された一連の進化的防御装置がある。また、RNAは、腎臓と肝細胞の捕獲受容体により、血液から早く除去される。これらの障壁のうち、脂質二重層による伝達は、解決すべき問題として残っている。低分子抑制剤は、分子量が少なく、低い電荷量及び十分な疎水性性質により、細胞膜の脂質二重層をスムーズに滑って移ることになる。これに対して、全てのRNAに基づく治療剤は、脂質二重層を横切る能力がなく、サイズが大きく、高電荷量の巨大分子物質である(
図13)。
【0016】
しかし、既存の薬物伝達体であるリポソームに比べて、エクソソームが、膵臓癌発病に関与する遺伝子であるKRASの発現を抑制する遺伝子治療剤の治療効果を大いに増加したことを確認した2017年ネイチャー論文は、エクソソームを活用した治療剤後続研究及び開発にベースとなっている。
【0017】
細胞内に存在する生体膜で取り囲まれた構造物と定義される細胞外小胞は、サイズと生成方式において、非常に様々な種類がある。エクソソームと呼ぶことは、細胞内のエンドソーム(endosome)から由来して、細胞内に放出され、直径が30~200nm程度のものを言う。
【0018】
エクソソームの生成過程は、細胞内で物質を吸収し分泌する役割を果たす部分であるエンドソームと密接な関連がある。後期エンドソーム(date endosome)には、多胞体(multivesicular body)と呼ばれる小さな小胞(vesicle)を含有しているエンドソームがあるが、これらが細胞膜と融合すると、内部に存在する小胞が放出され、これがエクソソームとなる。
【0019】
エクソソームは、サイズ、表面に存在するバイオマーカータンパク質、機能、由来する組織によって、互いに異なる性質を有する。すなわち、エクソソームは、非常に様々なサイズと特性を有した細胞外部で見出される生体膜で取り囲まれた構造物を通称する用語である。
【0020】
エクソソームの構成成分は、生体膜と、生体膜内に収められた構成成分とに分けられる。エクソソームと外部を区分する生体膜には、細胞内の生体膜構成成分と同様に、様々な膜タンパク質と脂質、糖鎖が共に存在する。エクソソーム生体膜に存在するタンパク質には、エクソソームに特異的に存在し、エクソソームのバイオマーカーと見なされる様々なタンパク質があるが、これらには、CD63、CD9、CD81などがある。エクソソーム内の構成成分には、様々な細胞由来のタンパク質、RNA(miRNA、Mrnaなど)、各種の代謝物質などがある。
【0021】
結果として、エクソソームは、他の細胞に移動し物質を交換することで、細胞間の信号を伝達する役割を果たす。他の細胞に信号を伝達し、他の細胞に影響することで、生理的、病理的な役割を果たすことになる。
【0022】
エクソソームは、生体膜を構成する脂質の他にも、様々なタンパク質成分を有しており、自然的に細胞内で物質を交換する手段に用いられるものであるので、より効率的な物質伝達が可能である。また、免疫誘導や毒性は減少していると期待されている。
【0023】
事実上、殆ど全ての哺乳類細胞がエクソソームを放出すると知られている。30~200nmのサイズを有するエクソソームの外部は、膜タンパク質と共に、リン脂質二重層で構成され、内部には、タンパク質及びmRNA、miRNA、ノンコーディング(non-coding)RNAなどが含まれている。すなわち、エクソソームの構造が、遺伝情報を安定して保管することができる。
【0024】
エクソソームは、殆どの細胞から分泌する30~200nmサイズの生体ナノ粒子で、分泌細胞のタンパク質と遺伝情報などを含んでいる。エクソソームは、隣接細胞又は遠距離細胞に情報を伝達し、細胞周辺の微細環境を調節する媒介体であると知られている。
【0025】
既存の薬物伝達システムは、人為的に合成した物質が主をなしているので、生物学的異質性により、受容細胞吸収及び血液脳関門(BBB)の通過に限界があった。一方、エクソソームは、人体の細胞で生成されるので、生体適合性に優れ、細胞毒性が低くて、免疫拒絶反応やその他の合併症を誘発しない。
【0026】
エクソソームは、薬物の内部搭載が容易であるというメリットがある。さらには、エクソソームは、細胞膜との融合により、情報を伝達することができる。この方法で細胞に伝達された遺伝情報及び薬物が、細胞内消化器官により分解されることを減らすことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
本発明は、発癌促進遺伝子であるガレクチン(Galectin)-3に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドを細胞由来の自然又は人工ナノベシクルに搭載して、抗癌薬物に開発する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明の第1様態は、アンチセンスオリゴヌクレオチドに基づく薬物を搭載させた細胞由来の自然又は人工ナノベシクルを含有することを特徴とする薬学組成物を提供する。
【0029】
本発明の第2様態は、ガレクチン-3標的核酸薬物が搭載された細胞由来の自然又は人工ナノベシクルを含有する薬学組成物を提供する。
【0030】
本発明の第3様態は、核酸に基づく薬物が搭載された細胞由来の自然又は人工ナノベシクルを含有することを特徴とする口腔又は鼻腔吸入(Inhalation)用又は静脈注射用薬学組成物を提供する。
【0031】
本発明の第4様態は、核酸に基づく薬物が搭載された臍帯血幹細胞由来の自然又は人工ナノベシクルを含有することを特徴とする癌予防又は治療用薬学組成物を提供する。
【0032】
本発明の第5様態は、ガレクチン-3コード配列(coding sequence、CDS)内の塩基序列を用いて設計されたことを特徴とするガレクチン-3標的化アンチセンスオリゴヌクレオチドを提供する。
【0033】
以下、本発明を説明する。
【0034】
エクソソーム治療剤は、母細胞に非常に似ているエクソソーム自体を治療剤に開発する方式、エクソソームを薬物伝達システム(DDS)に活用する方式などがある。一方、幹細胞が有した再生能力は、エクソソームによる。幹細胞由来のエクソソームは、幹細胞に比べて、治療剤として多くの特長を有する。まず、生きている細胞ではないので、長く保管し運送し易いという点がある。また、分裂しないので、腫瘍及び感染発生の恐れが低い。効能が似ていると、更に治療剤として開発し易い。
【0035】
ガレクチンは、1970年代動物から分離され、レクチンファミリー(lectin family)に属する。今まで15個の亜種(subtype)が知られており、cell-cellあるいはcell-matrix interactionを誘導して、細胞内の様々な信号伝達に関与する。ガレクチンの発現は、細胞死滅、胚芽の発生、炎症反応、発癌などに影響する。そのなかでも、ガレクチン-3の場合、非小細胞肺がん組織で高く発現して、癌組織内で癌細胞の成長を促進させ、免疫反応を抑制することで、癌の転移を促進することと知られている(
図17)。
【0036】
通常、遺伝子治療は、標的細胞に、DNA断片、miRNA、siRNA、及びlncRNAを導入して、異常な遺伝子発現を戻し、自殺遺伝子の発現を誘導し、免疫反応を調節し、血管新生を抑制することを含む。
【0037】
図12に示しているように、アンチセンスヌクレオチドは、特定遺伝子の塩基序列に付着して、遺伝子の機能消失を誘導する紀伝として作用して、ターゲットが可能であるというメリットを持っている。しかし、
図13に示しているように、一本鎖(single strand)という構造の特性上、単独処理時に薬物の安定性が落ちて、汎用的薬物として活用するには限界があるだけでなく、現在のASO伝達方法からは、多くの組織及び細胞類型から細胞内に伝達されることができない。
【0038】
前記問題点を解決するために、本発明は、このようなアンチセンスヌクレオチドを、自然ナノベシクルであるエクソソームや細胞を押出粉砕した人工ナノベシクルに搭載することで、薬物の安定性を高めて、正常に癌細胞の増殖と移動を抑制させる効果があることを確認した。一例として、本発明は、アンチセンスオリゴヌクレオチド(Anti-sense oligonucleotide:ASO)を活用した遺伝子ターゲット薬物を開発して、非小細胞肺がんの増殖と転移に関与する遺伝子であるガレクチン-3の発現抑制に際して、効果を確認した。すなわち、癌細胞増殖及び転移抑制薬物としてのガレクチン-3のASO機能を確認しており、ガレクチン-3のASOのナノベシクル(エクソソームと人工ナノベシクルを含む)内の搭載可能性を確認した。更に、既存の抗がん剤と併用投与したとき、感受性を増加して、癌細胞の死滅をより効果的に誘導する効能があることを確認した。そこで、本発明により、ナノベシクル搭載のアンチセンスオリゴヌクレオチドを活用した抗がん剤を生産することができるだけでなく、既存の抗がん剤との併用投与薬物として使用することができる。
【0039】
要するに、本発明は、核酸伝達システムとして、ウイルスベクターの代わりに、細胞由来のナノベシクルを使用し、これにより、様々な核酸に基づく薬物だけでなく、特に、ASOに基づく薬物も、高い生体利用率に使用できることを特徴とする。本発明は、細胞由来の自然又は人工ナノベシクルに核酸に基づく薬物を搭載させることで、核酸に基づく薬物を細胞質基質に分布(Distribution)させることができる。また、本発明により、標的細胞への治療核酸伝達のための道具として細胞由来のナノベシクルを用いると、治療効能を改善し、副作用を避けることができる。
【0040】
本発明は、核酸伝達システムとして、細胞由来の自然ナノベシクルだけでなく、人工ナノベシクルを使用することができる。
【0041】
細胞由来のナノベシクル剤形の信頼性(Reliability)、再現性(reproducibility)、ドナー-ドナー変形(donor-donor variations)、及び母細胞の固有特性の反映などは、重要な関心事であるので、幹細胞を母細胞に活用するとき、臍帯血幹細胞由来の自然又は人工ナノベシクルを使用するのが望ましく、再生促進という幹細胞の固有特性が癌細胞の増殖に影響する場合、幹細胞の他の治療しようとする疾患に適合な細胞を活用するのが望ましい。
【0042】
幹細胞エクソソーム自体は、他の細胞の増殖と移動を促進させる効能があり、癌細胞の増殖と移動も促進させる。それにもかかわらず、臍帯血幹細胞から由来したエクソソームの単独処理に際して、癌細胞の増殖能及び移動能が大きくなることに対して、臍帯血幹細胞から由来したエクソソームと癌細胞の増殖能及び移動能を抑制する抗癌物質と併用投与すると、癌細胞の増殖と移動が減少することを見つけた(
図8及び
図9)。
【0043】
臍帯血幹細胞から由来したエクソソームに含まれた抗炎物質は、他組織由来のエクソソームの5倍に達することに関連があると類推される。炎症細胞が分泌する炎症性物質が、癌細胞の増殖、生存、及び転移誘導と密接な関係にあり、腫瘍のミクロ環境で、炎症は腫瘍を促進する効果を有し、癌細胞の生存と増殖を助けるだけでなく、血管生成と転移を促進し、適応免疫反応を破壊し、ホルモンと薬物に対する反応性を変化させるためである。
【0044】
そこで、前記発見に基づいて、本発明により臍帯血幹細胞由来の自然又は人工ナノベシクルは、癌予防又は治療用薬学組成物に使用可能であり、癌予防又は治療用薬物伝達システム(DDS)として使用することができる。
【0045】
本明細書において、細胞由来の自然ナノベシクルは、細胞外小胞(Extracellular Vesicles)又はエクソソーム(exosome、30~200nmサイズの細胞外小胞)と混用して称されている。
【0046】
[細胞外小胞(Extracellular Vesicles)]
細胞外小胞は、細胞間の情報交換のために、全ての細胞が外部環境に分泌する脂質二重層で囲まれたナノサイズの小胞である。
【0047】
細胞外小胞は、膜と内腔が存在し、細胞と同一の膜位相(membrane topology)を有しているので、遺伝子組織を通じて様々な膜タンパク質を発現することができ、ターゲット細胞や組織に比較的正確に薬物を伝達することができる。また、細胞外小胞の膜と内腔に様々な薬物を搭載することができる。内腔に薬物を搭載する場合、安全にターゲット細胞に伝達することもできる。細胞と同一の膜を有するので、膜融合により、内腔の薬物への伝達が可能である。
【0048】
細胞外小胞の治療的使用において最も大きなメリットの1つは、低等級免疫原性から始まる。細胞外小胞は、細胞から由来したため、免疫原性が低い。例えば、間葉系幹細胞(MSC)から派生された細胞外小胞は、免疫原性の危険が非常に低いことと知られている。そこで、細胞外小胞の寿命を延ばし、搭載された薬物の生体利用率を高めることに寄与する。また、大きいので、血液脳関門(Blood brain barrier)まで通過可能であり、体内の全ての組織への移動が可能である。
【0049】
細胞外小胞は、タンパク質、脂質、核酸、代謝物質(metabolites)など、生物学的活性を見せる様々な物質を含んでおり、由来する細胞の種類、状態によって、その構成成分が異なる。細胞外小胞で共通して検出される構成成分もあるが、細胞種類特異的に検出される構成成分も存在する。
【0050】
哺乳類細胞由来の細胞外小胞には、由来する細胞に比べて、ホスファチジルセリン、コレステロール、スフィンゴミエリン、GM3ガングリオシド(ganglioside)が多くある。細胞外小胞に存在する脂質は、細胞外小胞の生成と安定性、機能に寄与する。ホスファチジルセリンは、細胞外小胞が生成されることに関与し、コレステロール、スフィンゴミエリン、GM3ガングリオシドは、全体として、細胞外小胞の安定性を高める。また、癌細胞から由来する細胞外小胞は、スフィンゴミエリンを通じて、血管新生を促進することが知られている。
【0051】
細胞外小胞には、mRNAsとmiRNAsの他にも、rRNAs、tRNAs、DNAsも存在することが知られている。細胞外小胞には、由来する細胞に似ている程度で存在するRNAsもあるが、由来する細胞に比べて、細胞外小胞に多く存在する特定のRNAsもあるので、RNAsもタンパク質と同様に調節される機作を通じて、細胞外小胞を構成することになることを推定することができる。
【0052】
細胞外小胞は、生理的機能を行い、特定の細胞や組織に伝達できるようにすることができるので、疾病治療剤、薬物伝達、ワクチンとして活用可能である。
【0053】
細胞外小胞は、生きている細胞ではないので、長く保管し、運送することができる。そして、分裂しないため、哺乳類由来の細胞外小胞の場合、腫瘍発生の恐れが低い。
【0054】
細胞外小胞の吸収は、テトラスパニン、フィブロネクチン、プロテオグリカンのような膜タンパク質により非常に効率的であるが、標的細胞によって、合わせることもできる。
【0055】
血管細胞付着分子1-及びインテグリンα4が豊かな細胞外小胞は、内皮細胞(endothelial cells)によるナノベシクルのドッキング及び吸収を向上させる。
【0056】
細胞外小胞は、サイズが小さいので、トランスサイトーシス(transcytosis、endocytosis followed by multivesicular body formation and release on the other side)、又は、内皮細胞間の接合部を通じて、両方向方式で血液-脳関門を通過することができる。
【0057】
細胞-細胞通信において、細胞外小胞の固有特性は、核酸伝達システムとして有用である。細胞外小胞の媒介輸送は、非常に効果的であると認められ、さらに多くの量の治療剤を腫瘍に放出することができるので、血液内の量を減らし、副作用を減らすことができる。細胞外小胞は、治療剤を伝達し、且つ、機能的有用性をもっている。細胞表面の受容体を活性化し、細胞質内部に内容物を伝達し、内部に親水性分子を伝達し、脂質二重層にある親油性分子及び表面上の両親媒性分子を伝達することで、様々な様式により信号を送ることができる。
【0058】
[細胞由来の自然又は人工ナノベシクル(exosomes + artificial nanovesicles)準備]
自然又は人工ナノベシクルは、細胞から分泌又は準備されたものである。
【0059】
ナノベシクル(Nanovesicle)は、直径がナノメートル単位の袋状の物質に対する表現である。ナノベシクルの代表的な物質として、エクソソームが挙げられ、細胞治療剤を代替する生体親和的な薬物伝達体として脚光を浴びている。
【0060】
自然的に分泌するエクソソームの量が制限的であるため、生産性が落ちる。エクソソームの分離、精製技術を開発して収率を高めるか、培養条件を異にして、増殖速度を高めるなどのアクセス法がある。
【0061】
人工ナノベシクルは、細胞から人工的に作ったエクソソームであって、自然に分泌するエクソソームに比べて、生産性がはるかに高い。
【0062】
エクソソームを分離する方法としては、超遠心機(Ultracentrifuge)、限外ろ過(Ultrafiltration)、クロマトグラフィー(Chromatography)などの方法があり、分離方法によって、エクソソームの機能的特性、純度、濃度、サイズが異なる。
【0063】
成体幹細胞から分泌するエクソソームは、周辺細胞の再生と抗炎効果に優れた効能を示す多くの研究がなされている。
【0064】
大規模生産のナノベシクルに基づく剤形は、臨床解析(clinical translation)の成功において重要である。ところで、自然的に分泌する細胞外小胞の量は、制限的であるので、細胞外小胞の模写体として、人工ナノベシクルを用いた治療が試みされている。人工ナノベシクルは、細胞自体を粉砕して、エクソソーム形状に作ったものであり、エクソソームの最も短所である量産の問題を解決し、且つ、ナノベシクルを形成する過程中に、薬物を効率よく搭載できるというメリットがある。
【0065】
人工ナノベシクルの生産方法は、多孔性膜(porous membrane)を活用した順次押出(serial extrusion)又は繰返し押出(repetitive extrusion)方式がある。また、本発明は、高圧ホモジナイザー(High Pressure Homogenizer)又は高圧分散機(Nano Disperser)を活用して、人工ナノベシクルを生産することができる。
【0066】
通常、小細胞の径は20umの前後であり、体内において移動が制限的である。しかし、エクソソームの場合、固有の小サイズの特性で、脳血管膜まで通過が可能であって、内部の有効性分を体内の全ての部位に伝達できるというメリットを持っている。そこで、細胞自体を活用して、エクソソームのサイズに粉砕することになると、細胞内の効能成分を高含量で含み、且つ、体内の全ての部位に到達することができる特徴点を確保する。
【0067】
さらに、有機体の基本構造及び活動単位である細胞は、体外(in vitro)で培養することができ、薬学、組織工学、治療剤の開発に使用することができる。細胞は、周辺環境によって適応する特性があるので、同一の細胞種であるとしても、培養環境によって、細胞の接着力、成長、移動、分化などが異なる。さらには、再生医学(regenerative medicine)分野と関連して、最近大きな注目を受けている幹細胞は、培養に際して、適切な刺激を与えることで、所望する細胞への分化(differentiation)及び成長促進を誘導することができる。また、人工ナノベシクルは、該当人工ナノベシクルが由来した細胞の様々な分子構成成分(例えば、タンパク質及びRNA)を含有する。そこで、人工ナノベシクル内のタンパク質組成は、該当人工ナノベシクルが由来した細胞の培養条件(例えば、培養時に細胞が受けた分子信号)によって、様々に調節することができる。
【0068】
例えば、本発明により、幹細胞から生産された人工ナノベシクルは、特有の脂質二重層構造で、ナノサイズの人工ナノベシクルも多量に提供することができ、人工ナノベシクル内に様々な成長因子を多量含有しているので、線維芽細胞の増殖と活性化による組織再生及び抗老化効果、コラーゲン合成増加、及び傷治癒の効果を発揮することができる。
【0069】
[薬物の搭載方法]
ナノベシクル内に薬物を搭載する方法は、大いに3つに区分することができる。
【0070】
第1は、超高速遠心分離機(ultracentrifuge)を活用することであり、溶媒内にあった薬物が、遠心力でベシクル内に流入されるように誘導する方式である。
【0071】
第2は、電気刺激(electroporation)を活用したことであり、瞬間的に膜(membrane)外側の電荷は陰性、膜内側の電荷は陽性となるように誘導したとき、膜に孔ができ、孔を介して、薬物がベシクル内に流入される方式である。
【0072】
第3は、細胞が粉砕されてから、再度球形を形成する過程で、懸濁液内に浮遊していた薬物が自然にベシクル球形内に嵌入される方式を活用したことである。
【0073】
人工ナノベシクルは、自然に分泌する細胞外小胞よりも収率が更に高く、薬物伝達効率は、類似している。
【0074】
[一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)の変形]
【0075】
本発明において、アンチセンスオリゴヌクレオチド(anti-sense oligonucleotide、ASO)に基づく薬物は、塩基序列のうち、少なくとも1つの塩基(base)の一部又は全部が、ホスホロチオエート(phosphorothioate)及び/又は2'-O-メチル基に修正されたASOに基づく薬物を含む。
【0076】
図12に示しているように、ASOは、特定遺伝子のmRNA塩基序列に、ASOのDNA塩基序列がターゲットして該当部位の分解を誘導することで、解読(translation)過程が行わず、機能喪失を誘導する。1978年に最初機能が知られてから、現在までASOを基にした4つの薬物が、米国FDAから承認を受けたことがある。しかし、8~50base pairのヌクレオチド構造上、体内安定性が微弱であって、薬物としての効能に比して、活用度が低いという短所がある。
【0077】
一本鎖のASO分野は、1978年リン酸ジエステル骨格を有するASOの合成から始まった。不幸にも、リン酸ジエステル結合は、高い電荷を有し、親水性であり、核酸分解酵素により容易に分解される。リン酸塩群のうち、1つの酸素が硫黄原子に置換されたモノヌクレオチドに変形すると、リン酸ジエステル分解酵素に対する抵抗性を大いに増加させ、疎水性を増加させる。1984年に最初の完全ホスホロチオエートASOを合成して、安定性と伝達可能性を極めて向上させた。
【0078】
ASOの効能及び薬理学的特性を向上させるために、2'ヒドロキシル基(hydroxyl)(OH)を化学的に変形することができる。これは、標的mRNAに対する結合親和性を増加させ、これにより、ASOの全長を減少することができる。
【0079】
2つの代案的なアンチセンス化合物のアクセス法は、電荷がかかったリン酸塩結合とリボース糖骨格を中性phosphorodiamidate morpholino oligomer(PMO)又は ペプチド核酸( peptide nucleic acid(PNA))骨格に代替して、正しい核塩基間隔を維持することである。その結果として、標的mRNAに選択的で強く結合する高度に安定化した分子となる。しかし、PMOsとPNAsは、リン酸ジエステル骨格がないので、RNase H(遺伝子抑制に必要である)を活性化することができず、その代わりに、立体遮断剤(Steric blocker)とエクソンスキッピングをためのSSOとして使用可能である。
【0080】
[核酸に基づく薬物]
本発明の細胞由来の自然又は人工ナノベシクルに搭載される核酸に基づく薬物は、前述したASOの他にも、mRNAs、miRNAs、rRNAs、tRNAs、DNAsがある。
【0081】
ASO、miRNAに比べて、サイズの大きいmRNAをエクソソームに封入することは容易でない。しかし、人工ナノベシクルの場合、ベシクルのサイズを容易に調節することができるので、比較的容易にmRNAを、ベシクル内に搭載することができる。
【0082】
本明細書において、核酸に基づく薬物は、自然又は人工的に合成された核酸だけでなく、変形核酸も含む。
【0083】
本発明の細胞由来の自然又は人工ナノベシクルを通じて伝達されるmRNAsは、標的細胞において、該当mRNAsが暗号化するタンパク質の発現を増加することもでき、miRNAsが伝達される場合、標的細胞において、該当miRNAsが標的とするmRNAsの発現が減少したりする。
【0084】
RNAに基づく治療法は、標的RNAやDNAに対する高い選択的特異性により、薬物適用とならないヒト及びウイルス遺伝子の発現抑制、mRNAのsplicing調節、後性遺伝調節に関与する非暗号化RNAs(ncRNA)標的、標的遺伝子の増加、遺伝子の発現、そして、誘電体矯正などの作業を選択的に可能にする。このような部分は、低分子抑制剤や抗体を通じて実現できなかった形態の治療的な作用である。また、RNAに基づく治療法は、癌突然変異及び伝染病ウイルスの感染と速度を合わせる発展能力を有した唯一の方法である。2世代RNA化学技術は、RNA治療剤の安定性を大いに向上させ、意図しない副作用を減少させ、標的に向けた薬理活性を最大化させる。
【0085】
[搭載薬物の種類(核酸に基づく薬物及び既存の抗がん剤)]
前述した核酸に基づく薬物の他に、更にナノベシクルに搭載可能な薬物は、種類に制限を置かない。既存に伝統的に活用してきたシスプラチン(cisplatin)や5-FUのような化学抗がん剤と共に、ガレクチン-3の他の癌に関する遺伝子をターゲットとするASOの搭載も可能である。既に広範囲な体外実験で効能が立証された特定遺伝子ターゲットsiRNAも、活用可能である。更に、遺伝子の発現を調節するmiRNA系列の搭載も可能である。
【0086】
例えば、エクソソームに、特定の遺伝子の発現を抑制するための短い干渉RNA(siRNA)もしくはmiRNAを人為的に導入した後、エクソソームを薬物伝達体として使用する。例えば、癌遺伝子であるKRAS(G12D)をターゲットするsiRNAを、間葉系幹細胞由来のエクソソームに、電気衝撃法で導入することができる。
【0087】
特定の細胞に特異的にエクソソームを伝達するか、エクソソーム内に特定のmRNAを入れようとする場合、遺伝子操作された細胞を基に、エクソソームを作ることができる。例えば、乳房癌細胞にエクソソームを特異的に伝達するために、乳房癌細胞のマーカーであるインテグリンαVに結合するペプチドが融合されたタンパク質をエクソソームに入れ、エクソソームにドキソルビシンのように癌細胞を抑制できる薬物を入れるか、mRNAをエクソソームにパッケージングするために、エクソソームマーカータンパク質であるCD63にRNA結合部分を融合して、特定のmRNAを、エクソソームを通じて伝達するようなものなどがある。
【0088】
[ナノベシクルの細胞起源及び臍帯血幹細胞]
本発明の自然又は人工ナノベシクルの細胞起源は、樹枝状細胞、網状赤血球、赤血球、単球、マクロファージから、間葉系幹細胞(MSC)及びヒトiPSCを含めて、遺伝子操作を通じて、永久継代可能な細胞株(例えば、HEK293細胞など)に至るまで様々である。MSCは、臨床試験のために、本発明の自然又は人工ナノベシクル生産の主要源泉である。MSC派生の細胞外小胞は、患者に容易に拡張可能で安全である。
【0089】
幹細胞の種類としては、胚芽幹細胞、成体幹細胞、逆分化幹細胞があり、これらのうち、成体幹細胞は、血液、骨髄、脂肪などから抽出して、胚芽幹細胞とは異なり、倫理的な問題にて自由である。
【0090】
成体幹細胞は、必要な場合、特定組織の細胞に分化するようになる未分化状態の細胞である。成体幹細胞は、間葉系幹細胞、間葉基質細胞(mesenchymal stromal cell)、又は、多分化能幹細胞であり、これに制限されない。
【0091】
間葉系幹細胞(Mesenchymal stem cell)は、表皮細胞成長因子(Epithelial growth factor)、線維芽細胞成長因子(Fibroblast growth factor)のような様々な成長因子(growth factor)とサイトカインを分泌して、線維芽細胞から、コラーゲン、フィブロネクチン、エラスチンの生成を促進して、再生に重要な役割を果たす。
【0092】
間葉系幹細胞(MSC)は、ニューロン細胞、脂肪細胞、軟骨細胞、造骨細胞、筋肉細胞、心臓組織、及び他の内皮又は上皮細胞に分化可能な能力を有する前驅細胞である。これらの細胞は、遺伝子又はタンパク質発現により、表現型的に定義することができる。そこで、MSCは、それらの分化潜在力によって、表現型的及び/又は機能的に特徴づけられる。MSCは、骨髄、血液、骨膜、真皮、臍帯血、及び/又はマトリックス(例えば、ウォートンジェリー)、及び胎盤を含むが、これに限定されない多数の供給源から回収可能である。MSCは、組織培養プラスチックに対する付着性に基づいて、多数の供給源、例えば、骨髄単核細胞、臍帯血、脂肪組織、胎盤組織から単離される。
【0093】
成体幹細胞は、ヒト胚芽から抽出した胚芽幹細胞と異なり、骨髄や脳細胞など、既に成長した身体組織から抽出するので、倫理論争を避けることができる。本明細書において、成体幹細胞は、臍帯、臍帯血、骨髄、脂肪、筋肉、神経、皮膚、羊膜、又は胎盤から由来するが、これに限定されない。
【0094】
間葉系幹細胞(mesenchymal stem cells)や樹枝状細胞(dendritic cell)で生成されるエクソソームは、その自体だけで生理的な活性を有しているので、治療目的としての利用が模索されている。
【0095】
特に、損傷した組織の復旧や再生活性を見せる間葉系幹細胞の活性は、間葉系幹細胞自体よりは、間葉系幹細胞からエクソソームを通じて伝達される成長因子などによることと知られている。間葉系幹細胞由来のエクソソームは、造血母細胞移植で発生する副作用である移植片対宿主病(Graft-versus-host diseases)などの治療に効果的であるという報告が出たことがある。
【0096】
骨髄、脂肪由来の幹細胞の場合、贈与者から侵襲的な方法で抽出されることに対して、臍帯血幹細胞の場合、出産後廃棄される臍帯血から抽出して、贈与者に侵襲的な方法を使用せず、贈与者間の臍帯血幹細胞の効能の差が小さいというメリットがある。
【0097】
本発明の自然又は人工ナノベシクル生産のために幹細胞を活用する場合、臍帯血幹細胞から分泌又は準備されたものである。臍帯血由来幹細胞は、脂肪又は骨髄由来の成体幹細胞とは異なり、贈与者の妊娠周期(40週)の間に形成された臍帯血を使用するので、贈与者の状態による効能の差が発生しないというメリットがある。
【0098】
臍帯血間葉系幹細胞(UCB-MSC)は、EGF、VEGF、TGF、HGF、FGF、IGF、及びPDGFなどの様々な成長因子を含有している。そこで、臍帯血間葉系幹細胞で生産された人工ナノベシクルに担持されているEGFなどの成長因子は、線維芽細胞の増殖を促進し、細胞の移動及びコラーゲン合成などを促進する。
【0099】
成体幹細胞が得られる組織(脂肪、骨髄、臍帯血)のうち、臍帯血から分離したエクソソームは、再生因子と抗炎因子を最も多く含有している。臍帯血幹細胞から由来したエクソソームに含まれた抗炎物質は、他の組織由来のエクソソームの5倍に達する。
【0100】
[核酸に基づく薬物が搭載されたナノベシクルの剤形]
本発明により生産されるナノベシクルは、使用目的によって、様々に剤形化される。本発明による核酸に基づく薬物が搭載された細胞由来の自然又は人工ナノベシクルの剤形は、その特性をあまりに変更せず、濃縮、ゲル化(gelation)、凍結乾燥、及び水溶液で再構成することができる。
【0101】
薬物ナノ剤形は、疾病部位に治療剤を効率よく伝達する驚くべき可能性を有している。不幸にも、人工ナノキャリア、多くのリポソーム及び高分子ナノ粒子は、不利な躍動学及び細網内皮系(reticuloendothelial system、RES)による血液循環からの速い除去により、制限された応用を見せる。更に、それらのうち、多くのものは、高い細胞毒性、低い生分解性、そして、血液脳関門を含む生物学的障壁を超えない。
【0102】
本発明において、薬物伝達システムに使用する細胞由来の自然又は人工ナノベシクルは、高い生体利用率、卓越な生体適合性、及び低い免疫原性を有する。
【0103】
本発明において、薬物伝達システムで使用する細胞由来の自然又は人工ナノベシクルは、これに搭載した核酸に基づく薬物を、標的組織、細胞、及び器官に伝達する。本発明の細胞由来の自然又は人工ナノベシクルは、人工ナノキャリアと同様に、安定性及び溶解度のような遊離された核酸に基づく薬物の基本特性を改善し、血流の分解から、核酸に基づく薬物を保護することができる。また、細胞外にある分解酵素から保護することができる。
【0104】
本発明の細胞由来の自然又は人工ナノベシクルの膜は、相対的に固い脂質二重層であるので、統合された核酸に基づく薬物の持続的で長期間放出を提供することができる。また、多くの合成ナノキャリアと異なり、本発明の細胞由来の自然又は人工ナノベシクルは、血液脳関門(BBB)を含む生物学的バリアを通過することができ、神経退行性疾患治療に特に有用である。
【0105】
更に、本発明の細胞由来の自然又は人工ナノベシクルは、低免疫原性と低細胞毒性を有している。そこで、本発明の細胞由来の自然又は人工ナノベシクルは、分離した自己細胞として準備することも望ましい。
【0106】
本発明の細胞由来の自然又は人工ナノベシクルは、特定の細胞類型又は炎症組織への移動を可能にする組織向性を発揮するように設計することができる。本発明の自然又は人工ナノベシクルは、その起源、すなわち、母細胞を反映する固有な生物学的活性を有し、これは、統合された核酸に基づく薬物に更なる治療効能を提供することができる。
【0107】
様々な類型の細胞から分泌/準備される自然又は人工ナノベシクルの生物学的活動は、膨大で有望である。しかし、剤形の信頼性(Reliability)、再現性(reproducibility)及び、ドナー-ドナー変形(donor-donor variations)が重要であるので、本発明の細胞由来の自然又は人工ナノベシクルは、治療しようとする疾患の特徴に合わせて準備されたことが望ましい。
【0108】
[肺胞の構造及び投与経路]
図15に示しているように、呼吸系(respiratory system)の主機能は、酸素が含まれた血液を全身に供給して酸素を伝達することである。呼吸作用は、口、鼻、器官、肺、横隔膜を通じて行われる。まず、酸素が鼻と口を介して呼吸系に入ることになり、喉頭と器官を通じて、胸腔に入る。胸腔内で器官は、気管支と呼ぶ2つのさらに小さな管に分けられる。各気管支は更に分けられて、木の枝のような形状をなす。肺内に直接入る気管支は、再度、とても多い細気管支に分けられ、その末端に肺胞(alveoli)と呼ぶとても小さな懐に連結される。
【0109】
大人男性は、毛細血管を取り囲む気嚢である肺胞を600万個程度有している。肺胞の総断面積は、70~90m2で、人体の総皮膚断面積の50倍程度となる。
【0110】
図16には、肺胞の構造が示されている。肺胞細胞(Type II alveolar cell)から分泌するリン脂質とタンパク質の組合物である肺の表面活性剤(pulmonary surfactant)は、水分子間の水素結合力を弱化させて、表面張力を十分下げるので、表面張力は、肺胞の崩壊を起こさない。
【0111】
一方、上皮組織の機能は、器官の内面と表面を取り囲むことである。上皮組織は、層状配列細胞を単一層又は複数層で稠密に配列しており、上皮組織は、器官を取り囲むか、中空の器官や体腔の内面を取り囲んでいる。上皮組織は、常に、体の外側や体腔の内側に露出した正断面を有し、反対側である基底面は、非細胞性物質である基底膜により、他の組織と繋げられる。
【0112】
上皮組織は、ある組織を他の組織と区分し、体を外部環境と区分する蓋体を提供する。上皮組織の構造は、機能と密接な関係を持つ。
【0113】
例えば、心臓及び血管の内面、肺の肺胞、腎臓の糸球体の場合、偏平な細胞が単層配列した単層扁平上皮組織であって、ろ過、拡散機能を行い、肺の肺胞上皮組織は、気体交換が容易に行われるように、非常に薄い(
図16)。
【0114】
そこで、
図16に示しているように、本発明により核酸に基づく薬物が搭載された細胞由来の自然又は人工ナノベシクルは、口又は鼻で吸入して、器官(気道)を通じて肺胞に直接伝達可能であり、静脈投与後、毛細血管を通じて肺胞にも伝達される。
【0115】
[ターゲット細胞の増殖能及び/又は移動能の抑制]
癌とは、体内の正常な細胞が突然変異を起こして発生した異常細胞(癌細胞)の集団である。癌細胞は、人間の体に揃っている正常な調節器具の統制からずれて、無秩序に増殖する。また、他の臓器(正常組織)に転移されて増殖を繰返し、結果として、その臓器(組織)の機能を毀損させる。
【0116】
本発明により、核酸に基づく薬物が搭載された細胞由来の自然又は人工ナノベシクルは、ターゲット細胞、特に、癌細胞の増殖能及び/又は移動能を減少するだけでなく、口腔又は鼻腔を通じた吸入(Inhalation)又は静脈注射(intravenous injection)投与により、肺がん、吸入による肺がん、特に、非小細胞肺がんを集中的に予防又は治療することができる。
【0117】
[口腔又は鼻腔を通じた吸入(Inhalation)]
空気又は他のガスが肺に入ると、吸入(inhalation、inspiration)が発生する。
【0118】
口腔又は鼻腔を通じた吸入(Inhalation)は、気道粘膜及び肺上皮の巨大な表面積を通じた薬物の迅速な吸収を起こし、静脈内注射と同様に迅速な効果を奏する。この経路は、本発明により、核酸に基づく薬物が搭載された細胞由来の自然又は人工ナノベシクルが、作用部位に局所的に直接輸送されることで、全身副作用を最小化する。また、吸入投与経路は、吸収が迅速で直ちに効果を表わすことができるので、用量を適正にし、肺を標的とする局所効果を表わす。そこで、経口又は非経口投与用量に比べて、更に低い用量を使用することができる。
【0119】
そこで、本発明により、核酸に基づく薬物が搭載された細胞由来の自然又は人工ナノベシクルは、気体状態又はエアロゾル(aerosol)に分散させた状態に剤形化する。
【0120】
口を通じて吸入して投与される場合、器官(気道)を通じて肺に伝達されるように、鼻経路を通じて投与される場合よりも小さな飛沫で噴射されなければならない。肺に深く伝達される程度は、飛沫のサイズによって異なる。飛沫が小さいほど、さらに深く伝達されて、吸収される量が増える。この場合、本発明により、核酸に基づく薬物が搭載された細胞由来の自然又は人工ナノベシクルは、肺内部にて血流に入ることができる。
【0121】
吸入は、指定された時間内に適量が投与されたか否かを確認するために、注意深くモニタリングしなければならないので、このような方式で投与される薬物は、相対的に少ない。また、吸入経路に薬物を投与するためには、特殊装備が必要である。肺に特異に作用するように投与するために、エアロゾル化計量容器(吸入器という)を使用するか、ガス投与方式を使用することができる。
【0122】
一方、吸入経路と同様に、噴霧で投与する場合、肺に到達できるように、小さな粒子で噴射しなければならない。噴霧のためには、特殊機器、一般に超音波又はジェット噴霧器システムを使用する。機器の適切な使用は、肺に伝達される薬物の量を極大化させることに役立つ。
【0123】
[静脈注射(intravenous injection)による注入]
既存の研究結果によると、静脈注射を通じて体内に注入された細胞外小胞は、血流に沿って体内で循環して、肝と肺に到達して留まることと確認された(
図18)。そこで、細胞外小胞の外部に特異的な操作なく、特定の組織にターゲット機能を付与しなくても、自然に肺に作用する紀伝を活用して、小胞内部の物質を肺組織内部に伝達する効果を誘導することができる。そこで、本発明により、核酸に基づく薬物が搭載された細胞由来の自然又は人工ナノベシクルを含有する肺がん治療剤は、薬物が全身に作用して治療効果が減少し、深刻な副作用が発生する限界点を、エクソソームを活用して解決することができる。
【0124】
[薬学組成物]
薬学組成物は、製薬上許容される濃度の炎、緩衝剤、保存剤、相溶性担体及び/又は他の(すなわち、2次)治療剤を更に含むことができる。
【0125】
薬学組成物の各構成成分は、薬学的に許容可能な形態ではなければならない。
【0126】
薬学的に許容される担体は、薬学的に許容される物質、組成物、又はビークル、例えば、液状又は固形充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、又はカプセル化物質であって、予防的又は治療的に活性である作用剤を運搬又は輸送することに関与する。それぞれの担体は、剤形の他の成分と相溶性で対象体に有害でないということで「許容され」なければならない。製薬上許容される担体として作用する物質の一例は、糖、例えば、ラクトース、グルコース、及びスクロース; グリコール、例えば、プロピレングリコール; ポリオール、例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトル、及びポリエチレングリコール; エステル、例えば、オレイン酸エチル及びラウリン酸エチル; 緩衝剤、例えば、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム; 注射用蒸溜水; 生理食塩液;リンゲル液; エチルアルコール; リン酸塩緩衝溶液; 及び製薬剤形に用いられる非毒性相溶性物質を含む。
【0127】
本明細書において、薬学組成物は、肺疾患の治療のために剤形化される。そこで、薬学組成物は、肺疾患を治療するために用いられる他の治療剤(2次作用剤)を更に含む。本願で使用されているように、治療剤は、本願に議論されたような肺疾患の予防、治療及び/又は管理に使用可能な任意の作用剤を称する。これらは、界面活性剤、吸入された酸化窒素、アルミトリンビスメシレイト、免疫調整剤及び抗酸化剤を含むが、これに制限されない。免疫調整剤は、例えば、メチルプレドニゾロンであるが、これに制限されないステロイド及び副腎皮質ホルモンを含む。抗酸化剤は、スーパーオキシドディスムターゼを含むが、これに制限されない。
【0128】
肺疾患の治療のために、第2作用剤は、肺界面活性剤である。肺界面活性剤は、肺気道を開放状態に維持することに有用な(例えば、肺胞壁が互いに付着することを防止することで)リポタンパク質混合物である。肺界面活性剤は、リン脂質、例えば、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルグリセロール(PG); コレステロール; 及びタンパク質、例えば、SP-A、B、C及びDで構成される。肺界面活性剤は、自然に発生する供給源、例えば、ウシ又はブタの肺組織から由来する。その例は、AlveofactTM(ウシ肺洗浄液からのもの)、CurosurfTM(ミンチされたブタ肺からのもの)、InfasurfTM(子牛肺洗浄液からのもの)、及びSurvantaTM(ミンチされたウシ肺からのもの; DPPC、パルミチン酸及びトリパルミチンを含む付加成分を伴う)を含む。肺界面活性剤は、更に合成であり得る。その例は、ExosurfTM(ヘキサデカノール及びチロキサポールと共にDPPCで構成される)、PumactantTM又は人工肺拡張化合物(ALEC)(DPPC及びPGで構成される)、KL-4(DPPC、パルミトイル-オレオイルホスファチジルグリセロール、パルミチン酸、及びSP-Bを倣う合成ペプチドで構成される)、VenticuteTM(DPPC、PG、パルミチン酸、及び再組合SP-Cで構成される)を含む。肺界面活性剤は、商業的供給業者から得られる。
【0129】
「有効量」は、所望する成果を達成する作用剤の量である。絶対量は、投与のために選択された物質、投与が単一用量であるか、それとも多数用量であるか否か、及び年齢、身体条件、サイズ、体重、及び疾患の病気を含む個別患者パラメータを含む様々な要因に左右される。これらの要因は、関連する技術分野における通常の技術者に広く公知されており、単に、日常的な実験だけで解決可能である。
【0130】
一実施様態において、有効量は、対象体に毒性を誘発しない作用剤の投与量である。一実施様態において、有効量は、対象体に毒性を減少させる作用剤の投与量である。毒性を測定する方法は、関連する技術分野にて広く公知されている(例えば、肝、脾腫及び/又は腎臓の生検/組織学; 肝毒性に対するアラニントランスフェラーゼ、アルカリ性フォスファターゼ及びビリルビン検定; 及び腎臓毒性に対するクレアティニン水準)。
【0131】
有効量水準は、個体種類及び重症度、年齢、性別、疾患の種類、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路及び排出割合、治療期間、同時使用される薬物を含む要素及びその他の医学分野によく知られた要素によって決められる。また、有効量は、当業者に認識されているように、処理の経路、賦形剤の使用及び他の薬剤と共に使用する可能性によって異なる。
【0132】
「治療する」又は「治療」は、疾患の発生を予防、減少、又は停止させるとか、疾患の症状を減少又は除去するか、疾患を予防することを含むが、これに制限されない。
【0133】
対象体は、齧歯目、例えば、ラット又はマウス、犬、猫、馬、牛、豚、羊、ヤギ、七面鳥、ニワトリ、及び霊長類、例えば、サルを含むが、これに制限されない人間又は脊椎動物又は哺乳動物を意味する。本開示内容の方法は、治療を要する対象体を治療することに有用である。治療を要する対象体は、疾患が発生する危険のある対象体(すなわち、遺伝子検査を通じて)、又は疾患がある対象体である。
【0134】
一実施様態において、核酸に基づく薬物が搭載された細胞由来の自然又は人工ナノベシクルを含む組成物は、ボーラス用量で対象体に投与される。ボーラス用量は、治療上有効な水準を達成するために、別の量の医薬、薬物、又は他の化合物の単一投与を称する。一実施様態において、前記核酸に基づく薬物が搭載されたナノベシクルの2回、3回、4回、5回、又はその超過の投与を含む前記核酸に基づく薬物が搭載されたナノベシクルの繰返し投与が考えられる。一部の場合、前記核酸に基づく薬物が搭載されたナノベシクルは、連続的に投与可能である。繰返し又は連続投与は、治療される病態の重症度によって、数時間(例えば、1-2、1-3、1-6、1-12、1-18、又は1-24時間)、数日(例えば、1-2、1-3、1-4、1-5、1-6日、又は1-7日)、又は、数週(例えば、1-2週、1-3週、又は1-4週)の期間にわたって起きる。投与が繰返されるが、連続的ではない場合、投与間の時間は、数時間(例えば、4時間、6時間、又は12時間)、数日(例えば、1日、2日、3日、4日、5日、又は6日)、又は、数週(例えば、1週、2週、3週、又は4週)である。投与間の時間は、同一又は相違している。
【0135】
核酸に基づく薬物が搭載されたナノベシクルは、肺又は他の組織への伝達を行う任意の経路によって投与される。全身投与経路、例えば、静脈内の大量単一注射又は連続注入が適している。より直接的な経路、例えば、鼻腔内投与、気管支内投与(例えば、挿管を通じる)、及び吸入(例えば、口又は鼻を通じたエアロゾルを通じる)が考えられ、特に、迅速な作用が必要な場合、さらに適している。エアロゾルは、気体中の小さな粒子として分散した液体の懸濁液であり、微細なミスト又はこのような粒子を含有するスプレーを含む。エアロゾル化は、液体懸濁液を小さな粒子又は飛沫に変換させることで、エアロゾルを生産するプロセスである。これは、エアロゾル伝達システム、例えば、加圧パック又はネブライザーを用いて行われる。ネブライザーは、例えば、ジクロロジフルオロメタン、卜リクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又は他の適した気体であるが、これに制限されない適した推進剤を用いるエアジェット(すなわち、空圧)、超音波及び振動メッシュネブライザーを含む。ネブライザーの他に、肺伝達のための他の装置は、計測された量吸入器(MDI)及び乾燥粉末吸入器(DPI)を含むが、これに制限されない。吸入器又は吹込器に用いるための、例えば、ゼラチンのカプセル及びカートリッジは、凍結乾燥された核酸に基づく薬物が搭載されたナノベシクル及び適合な粉末機作、例えば、ラクトース又は澱粉を含有して、剤形化することができる。
【0136】
核酸に基づく薬物が搭載されたナノベシクルは、全身に伝達するのが望ましい場合、例えば、大型単一注射又は連続注入を含む注射による非経口投与用に剤形化することができる。注射用剤形は、保存制を付加又は付加せず、単位投与形態、例えば、アンプル又は多回投与容器に提供される。組成物は、油性又は水性ビークル中の水溶性懸濁液、溶液又はエマルジョンのような形態を取り、剤形化剤、例えば、懸濁剤、安定化剤及び/又は分散剤を含有する。適合な親油性溶媒又はビークルは、脂肪オイル、例えば、胡麻油、又は合成脂肪酸エステル、例えば、オレイン酸エチル又はトリグリセリドを含む。水性注射懸濁液は、懸濁液の粘度を増加させる物質、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトール、又はデキストリンを含有する。懸濁液は、更に、適合な安定化剤、又は溶解度を増加させる作用剤を含有する。代案的に、核酸に基づく薬物が搭載されたナノベシクルは、使用前に、適合なビビクル、例えば、滅菌注射用蒸溜水で構成するための凍結乾燥されるか又は他の粉末又は固体形状である。
【0137】
本開示内容により治療される対象体に投与される他の作用剤は、経口投与、鼻腔内投与、気管支内投与、吸入、静脈内投与などを含む任意の適合な経路によって投与されることを理解すべきである。関連する技術分野の通常の技術者は、このような2次作用剤に対する通常の投与経路を知っているだろう。
【0138】
核酸に基づく薬物が搭載されたナノベシクルは、即時使用されるか、又は、短期間及び/又は長期間、例えば、使用前に冷凍保存された状態で貯蔵される。プロテアーゼ抑制剤は、典型的に、長期間貯蔵の間、ナノベシクル完全性を提供するため、凍結バッジに含まれる。-20℃以下での凍結は、ナノベシクル活性の喪失増加と関連があるため、望ましくない。活性を保存するので、-80℃以下での急速凍結がさらに望ましい。核酸に基づく薬物が搭載されたナノベシクルの生物学的活性の保存を増強させるため、凍結バッジに対する付加制が使用される。このような付加剤は、無損傷細胞の冷凍保存に用いられることと類似しており、DMSO、グリセロール、及びポリエチレングリコールを含むが、これに制限されない。
【0139】
本発明の製薬製剤は、典型的に製薬上許容される非経口ビークルと共に、単位投与注射可能な形態で、非経口投与、すなわち、ボーラス、静脈内及び腫瘍内注射のために製造される。所望する程度の純度を有する核酸に基づく薬物が搭載された細胞由来の自然又は人工ナノベシクルは、製薬上許容される希釈剤、担体、賦形剤、又は安定化剤と共に、凍結乾燥製剤又は水溶液形態で任意に混合される。
【発明の効果】
【0140】
本発明により、アンチセンスオリゴヌクレオチドを搭載した自然又は人工ナノベシクルは、癌細胞の増殖と移動を抑制し、既存の化学抗がん剤との併用投与において、薬剤感受性を増加させる特性を示す。また、細胞由来の自然又は人工ナノベシクルは、細胞治療剤の強点を活かしながらも、比較的安価で生産が可能であり、既存の免疫抗がん剤と全く異なる紀伝で癌細胞を攻略できると期待されるモダリティである。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【
図1】
図1は、ガレクチン-3ASO処理において、肺がん細胞株(A549)におけるガレクチン-3遺伝子発現が減少されることを分析したグラフである。
【
図2】
図2は、ガレクチン-3ASO処理において、肺がん細胞株(A549)におけるガレクチン-3タンパク質発現が減少されることを分析したグラフである。
【
図3】
図3は、ガレクチン-3ASO処理において、肺がん細胞株の細胞増殖が減少されることを確認したグラフと、細胞移動能が抑制されることを確認するために、細胞を染色後、撮影した写真である。
【
図4】
図4は、ガレクチン-3ASOと抗がん剤シスプラチン(Cisplatin)を併用投与するとき、癌細胞死滅が促進されて、抗がん剤に対する感受性が増加することを確認するために、死滅細胞を染色後に撮影した写真である。
【
図5】
図5は、電気刺激方式(electgrophoration)と多孔性膜細胞押出方式(extrusion)でガレクチン-3ASOをナノベシクル内に搭載後、搭載可否及び効率程度を確認するために分析後、撮影した写真である。
【
図6】
図6は、ナノベシクル内にガレクチン-3ASO搭載後、未搭載ASOを精製して、純粋にASO搭載ナノベシクルを確保する方法及び結果に対するグラフである。
【
図7】
図7は、ガレクチン-3ASO搭載人工ナノベシクル処理において、肺がん細胞株(A549)でのガレクチン-3遺伝子発現が減少されることを確認したグラフである。
【
図8】
図8は、ガレクチン-3ASO搭載臍帯血幹細胞エクソソームと人工ナノベシクル処理後、肺がん細胞の細胞増殖能が減少することを確認するために、増殖した細胞を染色した後に撮影した写真、及びガレクチン-3ASO搭載エクソソームと人工ナノベシクル処理後、肺がん細胞の細胞増殖能を確認したグラフである。
【
図9】
図9は、ガレクチン-3ASO搭載臍帯血幹細胞エクソソームと人工ナノベシクル処理後、肺がん細胞の細胞移動能が減少することを確認するために、移動した細胞を染色した後に撮影した写真; 及びガレクチン-3ASO搭載エクソソームと人工ナノベシクル処理後、肺がん細胞の細胞移動能を確認したグラフである。
【
図10】
図10は、ガレクチン-3ASO搭載HEK293細胞エクソソームと人工ナノベシクル処理後、肺がん細胞の細胞増殖能が減少することを確認するために、増殖した細胞を染色した後に撮影した写真; 及びガレクチン-3ASO搭載エクソソームと人工ナノベシクル処理後、肺がん細胞の細胞増殖能を確認したグラフである。
【
図11】
図11は、ガレクチン-3ASO搭載HEK293細胞エクソソームと人工ナノベシクル処理後、肺がん細胞の細胞移動能が減少することを確認するために、移動した細胞を染色した後に撮影した写真; 及びガレクチン-3ASO搭載エクソソームと人工ナノベシクル処理後、肺がん細胞の細胞移動能を確認したグラフである。
【
図12】
図12は、ターゲット遺伝子のmRNAに結合して分解することで、遺伝子機能喪失を誘導するASOの機作に対する模式図である(Science 27 Mar 2020; vol.367、Issue 6485)。
【
図13】
図13は、RNAの侵入を防ぐ40億年なる脂質二重層保護膜を示す図である。
【
図14】
図14は、ナノベシクル内の薬物を搭載する方法別の特徴と短所についてまとめた図表である。
【
図17】
図17は、肺がん細胞で高く発現して、癌細胞の増殖と転移を促進するGalectinの機能を示す図である(Chang WA、2017、Oncology Letters)。
【
図18】
図18は、細胞外小胞の静脈投与後、体内蓄積機関を確認した結果である(Sci Rep. 2019 Jul 11;9(1):10041)。
【0142】
[発明を実施するための具体的な内容]
以下、本発明を、実施形態により具体的に説明する。但し、下記実施形態は、本発明の技術的特徴を明確に例示するためのものであり、本発明の保護範囲を限定することではない。
【0143】
実施例1. ガレクチン-3のASO製作
ガレクチン-3をターゲットとするASOを製作するために、ガレクチン-3のコード配列(coding sequence)内で、1サイトの当たり連続する20個の塩基序列を含むASO塩基序列3種を任意に選定した。ガレクチン-3を標的化するために、序列番号1~3の各序列を用いてASOを設計した後、ASOの細胞内流入及び細胞内での安定性を高めるために、各塩基序列baseに、ホスホロチオエートと2'-0-methyl基をつけている。
【0144】
【0145】
各序列番号1~3に設計されたガレクチン-3ASOについて、予備実験を通じて、ASOの3種いずれも、ガレクチン-3発現減少側面で、正常に同一機能を有することを確認した。そこで、下記実施形態では、代表的に序列番号1に設計されたASOについて実験した結果を、図面に示している。
【0146】
また、序列番号1~3の塩基序列は、全体のガレクチン-3のコード配列のうち、任意に3か所を選定して製作したものであるので、全体のガレクチン-3のコード配列のうち、序列番号1~3の他に、他の部位の塩基序列を活用して、ガレクチン-3のASO製作が可能である。
【0147】
実施例2. ガレクチン-3のASOのnanovesicle内の搭載
2-1) 電気穿孔法
臍帯血幹細胞の細胞培養液から分離したエクソソームを、超高速遠心分離機(50,000~150,000×g、1~3h)を用いて精製、濃縮した。ナノ粒子トラッキング解析(Nanoparticle Tracking Analysis)によりエクソソームを計数した後、1~4×10^10個をInvitrogen NeonTM R buffer 100μlで希釈した。準備されたエクソソーム100μlに、ガレクチン-3のASO 100~1、000pmolを添加した。Invitrogen NeonTM Electroporatorを用いて、エクソソーム100μl、1000~2000V、5~20ms、1~3pulseの条件で、電気穿孔法transfectionを行った。IZON qEV originalサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)精製を通じて、残りのASOを除去した。
【0148】
2-2) 押出(Extruder)
培養中の臍帯血幹細胞を、TrypLEを用いて捕集した後、PBSを活用して、2回水洗した。細胞計数後に、PBSに1~10×10^5cells/mlとなるように再懸濁して、細胞懸濁液を準備した。細胞懸濁液にガレクチン-3のASOを100~1、000pmol/mlとなるように添加した。Avanti mini Extruderを用いて、1mlの細胞懸濁液を、0.1~0.8μm WhatmanTM Membrane Filterを用いて押し出した。総2~10回往復して、細胞を押出粉砕した。押出粉砕した試料を、超高速遠心分離機(50、000~150、000×g、1~3h)を用いて、精製、濃縮した。IZON qEV originalサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)精製を通じて、残りのASOを除去した。
【0149】
エクソソームと人工ナノベシクルにガレクチン-3のASOの搭載可否を確認するために、電気穿孔法の前後と排除前後の残りのASOを、電気泳動及びバンドを確認した結果、実験群でバンドの厚さが減ることで、ASOがナノベシクル内に搭載されたことを確認した(
図5)。
【0150】
ガレクチン-3のASOを搭載したエクソソームと人工ナノベシクルの分離及び精製結果、SEC過程中、3~6分数(fraction)間の試料を取得すると、残りのASOなく、純粋に精製された状態のエクソソームと人工ナノベシクルが確保できることを確認した(
図6)。
【0151】
実施例3. 肺がん細胞株の培養
非小細胞肺がん細胞株であるA549細胞を、37℃、5%のCO2インキュベーターで10%ウシ胎児血清(FBS)、PrimocinTM(100μg/ml)が添加されたRPMI 1640バッジに培養した。バッジは、2~3日間隔で交替し、細胞が培養皿底面積の80%程度増殖した時、継代培養した。
【0152】
実施例4. ガレクチン-3のASO処理後、肺がん細胞におけるガレクチン-3遺伝子発現量の分析
A549細胞を、培養皿に4、000~8、000cells/cm2で播種して、37℃、5%のCO2インキュベーターで24時間培養した。100~1、000pmolのガレクチン-3 ASOを、リポフェクタミンを活用して、細胞内流入を誘導した。37℃、5%のCO2インキュベーターで24~48時間培養後、PBSで洗浄し、TrypLEを活用して細胞を捕集した。細胞を遠心分離して、上層液を除去後、細胞ペレット(pellet)をPBSで再懸濁した後、遠心分離して上層液を除去した。
【0153】
PureLinkTM RNA Mini Kit(Invitrogen)で、Total RNAを分離後、定量して、cDNAを合成した。
【0154】
合成されたA579cDNAを、表2のprimerでReal-Time PCRを進行して、ガレクチン-3の発現量を確認した。ここで、ローディング対照群(loading control)で一種のハウスキーピング遺伝子(house keeping gene)であるGAPDHを使用した。
【0155】
【0156】
表1の塩基序列で製作したガレクチン-3 ASOが正常に作用して、肺がん細胞内のガレクチン-3の遺伝子発現を減少させるか否かを確認するために、肺がん細胞にASOを処理後、表2の塩基序列を活用して分析した結果、ガレクチン-3 ASO処理により、肺がん細胞株A549内のガレクチン-3遺伝子発現が減少されることを確認した(
図1)。
【0157】
実施例5. ガレクチン-3 ASO処理後、肺がん細胞におけるガレクチン-3タンパク質発現量の分析
実施例4と同様な方法で、ガレクチン-3 ASOの担持を誘導した肺がん細胞を取得した後、細胞内ガレクチン-3のタンパク質発現を確認するために、ウェストンブロッ(western blot)を行った。細胞ペレットをホスファターゼ阻害剤カクテル(phaspatease inhibitor cocktail)(sigma)が含まれた細胞溶解用溶液(200ng/mlのフッ化フェニルメチルスルホニル(phenylmethylsulfony fluoride)、1% Triton X-100、150mM NaCl、50mM Tris)を活用して、細胞内タンパク質溶出を誘導した。10%のSDSポリアクリルアミドゲル(polyacrylamide gel)に電気泳動した後、Immobilon P membraneにtransferした。以後、ガレクチン-3抗体をmembraneに処理した後、ECL kitを活用して発色させて、ガレクチン-3バンドを確認した。
【0158】
分析結果、ガレクチン-3 ASO処理により、肺がん細胞株A549内のガレクチン-3タンパク質発現が減少されることを確認した(
図2)。
【0159】
RNA段階での反応後、最終的にタンパク質水準で効果が表れることには、数時間から数日がかかることもあり、短時間(24時間未満)内にASOによる減少反応を見せた後、再度、元に戻る場合もある。
図2は、ASO処理後、1日目と4日目のタンパク質発現程度を確認したものであり、ガレクチン-3ASO処理後、4日以上、長期間の間、タンパク質発現抑制現象を見せることで、薬物として十分な機能を行っていることを確認した。
【0160】
実施例6. ガレクチン-3 ASO処理後、肺がん細胞増殖能の分析
A549細胞を培養皿に4、000~8、000cells/cm2で播種して、37℃、5%のCO2インキュベーターで、24時間培養した。既存の培養液を全て除去した後、1%のFBSバッジ条件で、100~1、000pmolのガレクチン-3 ASOを、リポフェクタミン(Lipofectamine)を活用して細胞内流入を誘導した。37℃、5%のCO2インキュベーターで、24時間、48時間培養後、細胞計数をした。
【0161】
分析結果、ガレクチン-3 ASO処理により、肺がん細胞株A549の細胞増殖能が減少されることを確認した(
図3左側)。実施例5(
図2)の場合、ガレクチン-3 ASO処理によるタンパク質発現量の減少を確認したことで、タンパク質発現減少の結果として、細胞増殖能及び移動能減少が誘導されたことが分かる。
【0162】
図3のグラフは、細胞増殖の程度を相対的に比較したもので、細胞数字に対する定量ではなく、対照群の増殖程度を「1」として、実験群の細胞増殖程度を比較したものである。
【0163】
一方、H-358は、A549と同一の非小細胞肺がん株の1つであり、
図3に示しているように、ガレクチン-3 ASOが、A549細胞株にのみ特異的に反応を見せることではなく、他の非小細胞肺がん株にも同一の効能を見せることで、非小細胞肺がんの全般に活用可能であることを示した。
【0164】
実施例7. ガレクチン-3 ASO処理後、肺がん細胞移動能の分析
A549細胞を0.5~2×10^4cells/wellで、trans-well内のinsert wellに播種して、37℃、5%のCO2インキュベーターで24時間培養した。既存の培養液を全て除去した後、 無血清培地の条件で、100~1、000pmのガレクチン-3 ASOを、リポフェクタミンを活用して、細胞内流入を誘導した。37℃、5%のCO2インキュベーターで2時間培養後、insert well下側のplateに、10%FBS、PrimocinTM(100μg/ml)が添加されたRPMI1640培地を、500μl分周した。37℃、5%のCO2インキュベーターで48時間培養後、クリスタルバイオレット染色を行った。光学顕微鏡で、insert well membraneの反対側に移動した細胞を観察した。
【0165】
分析結果、ガレクチン-3のASO処理により、肺がん細胞株A549の細胞移動能が減少されることを確認した(
図3右側)。
【0166】
図3に示しているように、Galection-3のASO処理後、2日目までも、肺がん細胞の移動が抑制されることが確認できる。
【0167】
実施例8. ガレクチン-3のASO処理後、癌細胞抗がん剤感受性の分析
A549肺がん細胞を2~10×10^4cell/cm2の細胞数で培養皿に付着後、ガレクチン-3 ASOを100~1、000pmol濃度で、リポフェクタミンを活用して、細胞内流入を誘導した。24時間後に、10~50uMのシスプラチンを処理した後、24時間後にLive & Deadアッセイキットを活用して、細胞死滅程度を蛍光顕微鏡を通じて確認した。
【0168】
分析結果、ガレクチン-3 ASOと既存の化学抗がん剤の併用投与において、肺がん細胞株A549の細胞死滅が増加して、抗がん剤に対する感受性が増加することを確認した(
図4)。
【0169】
実施例9. ガレクチン-3 ASO搭載人工ナノベシクル処理後、肺がん細胞におけるガレクチン-3遺伝子発現量の分析
A549細胞を培養皿に4、000~8、000cells/cm2で播種して、37℃、5%CO2インキュベーターで24時間培養した。翌日、ガレクチン-3 ASOを搭載した0.5~2×10^9個の人工ナノベシクルを処理した。37℃、5%のCO2インキュベーターで24時間培養後、実施例4と同様に、ガレクチン-3の遺伝子発現を分析した。
【0170】
分析結果、ガレクチン-3 ASO搭載人工ナノベシクル処理により、肺がん細胞株A549内のガレクチン-3遺伝子発現が減少されることを確認した(
図7)。
【0171】
図1は、ガレクチン-3 ASOをナノベシクルに搭載せず、リポフェクタミン試薬を活用して細胞に注入後、細胞内のガレクチン-3遺伝子の発現程度を確認した結果である。リポフェクタミン試薬は、人工的にリポソーム形成を誘導して、物質を細胞内に流入できるようにする機能を果たすが、固有毒性と処理方法上の問題のため、実際に薬物生産過程で活用することは不可な試薬である。そこで、
図1の結果から、ガレクチン-3 ASOが正常の機能を有していることを1次に確認したことであり、
図7の場合、ガレクチン-3 ASOを人工ナノベシクルに搭載して、リポフェクタミンのような試薬の処理なく、自然に細胞内に流入した後、ガレクチン-3の発現抑制効能を確認した結果である。
【0172】
実施例10: ガレクチン-3 ASOを担持しないか又は担持した臍帯血幹細胞エクソソームと人工ナノベシクルの肺がん細胞株(A549)の増殖と移動に及ぶ影響
(実験群の説明)
Control: 何も処理しない実験群(Negative control)
Exosome: 臍帯血幹細胞エクソソーム処理群
GAL-3 Exosome: ガレクチン-3 ASO担持した臍帯血幹細胞エクソソーム処理群
ANV: 何も担持しない臍帯血幹細胞人工ナノベシクル処理群
GAL-3 ANV : ガレクチン-3 ASOを担持した臍帯血幹細胞人工ナノベシクル処理群
【0173】
10-1. ガレクチン-3 ASO搭載nano-vesicles処理後、肺がん細胞増殖能の分析
A549細胞を培養皿に4、000~8、000cells/cm2で播種して、37℃、5%のCO2インキュベーターで24時間培養した。既存の培養液を全部除去した後、1%のFBS培地の条件で、0.5~2×10^9個エクソソーム及び人工ナノベシクルを処理した。37℃、5%のCO2インキュベーターで24時間、48時間培養後、細胞計数を行った。
【0174】
分析結果、ガレクチン-3 ASO搭載ナノベシクル処理により、肺がん細胞株A549の増殖が減少することを確認した(
図8)。
図8のグラフは、細胞増殖率に対する相対的数値を比較したものである。
【0175】
図8のエクソソーム/人工ナノベシクルのグラフから分かるように、ガレクチン-3 ASOを、エクソソームと細胞を粉砕して作った人工ナノベシクルの2つにいずれも搭載して、効能を確認したとき、同一の効能を表わすことを確認した。
【0176】
10-2. ガレクチン-3 ASO搭載nano-vesicles処理後、肺がん細胞移動能の分析
A549細胞を0.5~2×10^4cells/wellでtrans-well内のinsert wellに播種して、37℃、5%のCO2インキュベーターで24時間培養した。既存の培養液を全部除去した後、無血清培地の条件で、0.5~2×10^9個のエクソソーム及び人工ナノベシクルを処理した。37℃、5%のCO2インキュベーターで2時間培養後、insert well下側のplateに、10%FBS、PrimocinTM(100μg/ml)が添加されたRPMI 1640培地を、500μl分周した。37℃、5%のCO2インキュベーターで48時間培養後、クリスタルバイオレット染色を行った。光学顕微鏡で、insert well membraneの反対側に移動した細胞を観察した。
【0177】
分析結果、実施例2で準備したガレクチン-3 ASO搭載人工ナノベシクル処理により、肺がん細胞株A549の移動能が減少することを確認した(
図9)。
【0178】
(結論)
ガレクチン-3 ASOを担持しない臍帯血幹細胞エクソソームと人工ナノベシクルの場合、周辺細胞の増殖と移動を促進させる幹細胞の固有な特性により、肺がん細胞株の増殖と移動を促進する。しかし、ガレクチン-3 ASOを担持した臍帯血幹細胞エクソソームと人工ナノベシクルは、ガレクチン-3遺伝子発現(非小細胞肺がんの増殖・移動促進)抑制効果により、幹細胞の固有な特性(細胞増殖/移動促進)が相殺されることで、ガレクチン-3を担持しないエクソソームと人工ナノベシクルを処理した実験群(Exosome & ANV)よりも増殖・移動効果が抑制されて、何も処理しないcontrol実験群と同様な肺がん細胞増殖及び移動能を見せる。
【0179】
実施例11: ガレクチン-3 ASOを担持しないか又は担持したHEK293細胞エクソソームと人工ナノベシクルの肺がん細胞株(A549)の増殖と移動に及ぶ影響
ガレクチン-3 ASOの搭載人工ナノベシクルの肺がん細胞株の増殖と移動に及ぶ影響において、幹細胞の固有な特性を排除するために、幹細胞ではないHEK293 cellsを活用して、ガレクチン-3 ASO担持の人工ナノベシクルを生産後、実施例10と同様な方法で肺がん細胞株に処理、ガレクチン-3 ASOの効能を観察した。肺がん細胞株の増殖能及び移動能に及ぶ影響は、
図10及び
図11に示している。
【0180】
(実験群説明)
Non-Treat(NC): 何も処理しない実験群(Negative control)
Control_ANV : 何も担持しないHEK293 cells由来の人工ナノベシクル
GAL-3_ANV : ガレクチン-3 ASOを担持したHEK293cells由来の人工ナノベシクル
【0181】
(結論)
ガレクチン-3 ASOを担持しないHEK293 cells由来の人工ナノベシクルは、何も処理しないNegative controlと同様な処理様相を見せるが、ガレクチン-3 ASOを担持したHEK293 cells人工ナノベシクルは、肺がん細胞株の増殖と移動を抑制した。これにより、HEK293 cellsが細胞自体特性の影響なく、ASOの効能をそのまま再現できる担持体として役割を果たすということを確認した。
【配列表】
【国際調査報告】