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特表2024-528549高電力密度および低コストのリチウムイオン電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-30
(54)【発明の名称】高電力密度および低コストのリチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/052 20100101AFI20240723BHJP
   H01M 10/0565 20100101ALI20240723BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20240723BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20240723BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20240723BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20240723BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240723BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20240723BHJP
   H01M 50/431 20210101ALI20240723BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240723BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20240723BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20240723BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20240723BHJP
   H01M 50/491 20210101ALI20240723BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20240723BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20240723BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M10/0565
H01M10/0568
H01M10/0566
H01M4/48
H01M4/58
H01M4/505
H01M4/525
H01M50/431
H01M4/13
H01M4/485
H01M4/139
H01M4/66 A
H01M50/491
H01M10/0585
H01M50/403 D
H01M50/403 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580921
(86)(22)【出願日】2022-06-29
(85)【翻訳文提出日】2024-02-28
(86)【国際出願番号】 IB2022056051
(87)【国際公開番号】W WO2023275779
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】2107016
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(31)【優先権主張番号】2107017
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(31)【優先権主張番号】2114448
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(31)【優先権主張番号】2114445
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
2.ZIGBEE
(71)【出願人】
【識別番号】514110783
【氏名又は名称】アイ テン
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン、ギャバン
【テーマコード(参考)】
5H017
5H021
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017AS02
5H017CC01
5H017EE01
5H017EE06
5H017HH02
5H017HH03
5H017HH04
5H017HH08
5H021BB01
5H021BB12
5H021CC03
5H021EE22
5H021HH02
5H021HH03
5H021HH04
5H021HH06
5H029AJ06
5H029AJ12
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL03
5H029AM02
5H029AM07
5H029AM16
5H029BJ12
5H029BJ13
5H029CJ02
5H029CJ03
5H029CJ22
5H029CJ28
5H029DJ04
5H029DJ07
5H029DJ13
5H029EJ05
5H029HJ02
5H029HJ04
5H029HJ05
5H029HJ07
5H029HJ09
5H029HJ14
5H050AA12
5H050AA15
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050DA04
5H050DA19
5H050FA04
5H050FA13
5H050GA02
5H050GA03
5H050GA22
5H050GA27
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA09
5H050HA14
(57)【要約】
第1の電子集電体と、Nb2-x 5-δ δ、Nb18-x 16-y 93-δ δ、Nb16-x 5-y 55-δ δ、0≦δ≦2であるNb5-δ、0≦δ≦2であるNb181693-δ、0≦δ≦2であるNb1655-δ、LiTi12、およびMがV、Zr、Hf、Nb、Taであり、0≦x≦0.25であるLiTi5-x12により形成される群から選択される材料からなる第1の多孔質電極と、電気絶縁性無機材料からなる多孔質セパレータ、リン酸塩または酸化リチウムからなる第2の多孔質電極、および第2の電子集電体を連続的に含む少なくとも1つの積層体を備えるリチウムイオン電池であって、前記電池の電解質が、前記多孔質層に封入されたリチウムイオンで充満した液体であり、前記3つの多孔質層のそれぞれが結合剤を含まず、20~70体積%の多孔率を有するリチウムイオン電池。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
好ましくは、1mAhを超えない容量を有するマイクロ電池、および1mAhを超える容量を有する電池から選択されるリチウムイオン電池であって、第1の電子集電体、第1の多孔質電極、多孔質セパレータ、第2の多孔質電極および第2の電子集電体を連続的に含む少なくとも1つの積層体を備え、前記電池の電解質が、前記多孔質層に封入されたリチウムイオンで充満した液体であり:
-前記第1の電極が陽極であり、
Nb2-x 5-δ δ
[式中、Mは、Nb、V、Ta、Fe、Co、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Al、Zr、Si、Sr、K、Ge、Ce、CsおよびSnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり;
は少なくとも1種のハロゲンであり、好ましくはF、Cl、Br、Iまたはそれらの混合物から選択され、かつ
0≦x≦1および0≦δ≦2である]、
Nb18-x 16-y 93-δ δ
[式中、MおよびMは、Nb、V、Ta、Fe、Co、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Al、Zr、Si、Sr、K、Ge、Ce、CsおよびSnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり;
およびMは同一であってもよく、互いに異なっていてもよく、
は少なくとも1種のハロゲンであり、好ましくはF、Cl、Br、Iまたはそれらの混合物から選択され、かつ
0≦x≦1、0≦y≦2および0≦δ≦2である]、
Nb16-x 5-y 55-δ δ
[MおよびMは、Nb、V、Ta、Fe、Co、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Al、Zr、Si、Sr、K、Ge、Ce、CsおよびSnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり;
およびMは同一であってもよく、互いに異なっていてもよく、
は少なくとも1種のハロゲンであり、好ましくはF、Cl、Br、Iまたはそれらの混合物から選択され、かつ
0≦x≦1、0≦y≦2および0≦δ≦2である]、
0≦δ≦2であるNb5-δ、0≦δ≦2であるNb181693-δ、0≦δ≦2であるNb1655-δ、MがV、Zr、Hf、Nb、Taであり、0≦x≦0.25であるLiTi12およびLiTi5-x12により形成される群から選択され、酸素原子の一部がハロゲン原子で置換されていてもよく、かつ/またはハロゲン原子でドープされていてもよい材料PAからなる多孔質層であって、結合剤を含まず、20~70体積%、好ましくは25~65体積%、より好ましくは30~60体積%の多孔率を有する多孔質層を含み、
-前記セパレータが電子絶縁性無機材料Eからなる多孔質無機層を含み、好ましくは:
・Al、SiO、ZrOおよび/または
・任意にAl、Ca、B、Y、Sc、Ga、Zrからの少なくとも1種の元素を含むリチウム化リン酸塩から選択される材料;または任意にAl、Ca、Y、Sc、Ga、Zrからの少なくとも1種の元素を含むリチウム化ホウ酸塩から選択される材料であって;
リチウム化リン酸塩によって形成される群から選択され、好ましくはNaSICONタイプのリチウム化リン酸塩、LiPO;LiPO;<<LASP>>と呼ばれるLiAl0.4Sc1.6(PO;0≦x≦0.25であるLi1+xZr2-xCa(PO;0≦x≦0.25であるLi1+2xZr2-xCa(PO、例えば、Li1.2Zr1.9Ca0.1(POまたはLi1.4Zr1.8Ca0.2(PO;1.8<x<2.3であるLiZr(PO;Li1+3xZr(P1-xSi;0≦x≦0.25であるLi1+6xZr(P1-x;MがAlまたはYであり、0≦x≦1であるLi(Sc2-x)(PO;MがAl、Y、Gaまたはこれら3種の元素の混合物であり、0≦x≦0.8であるLi1+x(Sc)2-x(PO;0≦x≦0.8であり、0≦y≦1であり、MがAlおよび/またはYであるLi1+x(Ga1-ySc2-x(PO;MがAlおよび/またはYであり、0≦x≦0.8であるLi1+x(Ga)2-x(PO;<<LATP>>と呼ばれる0≦x≦1であるLi1+xAlTi2-x(PO;または<<LAGP>>と呼ばれる0≦x≦1であるLi1+xAlGe2-x(PO;または0≦x≦0.8であり、0≦y≦1.0であり、0≦z≦0.6であり、MがAl、GaもしくはYまたはこれらの元素の2種または3種の混合物であるLi1+x+z(Ge1-yTi2-xSi3-z12:MがAlおよび/またはYであり、QがSiおよび/またはSeであり、0≦x≦0.8であり、0≦y≦1であるLi3+y(Sc2-x)Q3-y12;またはMがAl、Y、Gaまたはこれら3種の元素の混合物であり、QがSiおよび/またはSeであり、0≦x≦0.8であり、0≦y≦1であるLi1+x+ySc2-x3-y12;または0≦x≦0.8であり、0≦y≦1であり、0≦z≦0.6であり、MがAlおよび/またはYであり、QがSiおよび/またはSeであるLi1+x+y+z(Ga1-ySc2-x3-z12;または0≦x≦0.25であるLi1+xZr2-x(PO;または0≦x≦1でありMがCr、V、Ca、B、Mg、Biおよび/またはMoであり、MがSc、Sn、Zr、Hf、SeもしくはSiまたはこれらの元素の混合物であるLi1+x 2-x12から選択され、
前記多孔質無機層は結合剤を含まず、20~70体積%、好ましくは25~65体積%、より好ましくは30~60体積%の多孔率を有し、
-前記第2の電極が陰極であり、
・LiFePO
・MがMn、Ni、Co、Vである式LiFeMPOのリン酸塩、
・酸化物LiMn、0<x<0.15であるLi1+xMn2-x、LiCoO、LiNiO、LiMn1.5Ni0.5、XがAl、Fe、Cr、Co、Rh、Nd、その他の希土類、例えば、Sc、Y、Lu、La、Ce、Pr、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybから選択され、0<x<0.1であるLiMn1.5Ni0.5-x、MがEr、Dy、Gd、Tb、Yb、Al、Y、Ni、Co、Ti、Sn、As、Mgまたはこれらの化合物の混合物であり、0<x<0.4であるLiMn2-x、LiFeO、LiMn1/3Ni1/3Co1/3、LiNi0.8Co0.15Al0.05、0≦x<0.15であるLiAlMn2-x、x+y+z=10であるLiNi1/xCo1/yMn1/z
・0.6≦y≦0.85であり、0≦x+y≦2であり、MがAl、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Ru、SnおよびSbまたはこれらの元素の混合物である酸化物Li;Li1.20Nb0.20Mn0.60
・AおよびMeがそれぞれSc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hgから選択される少なくとも1種の遷移金属であり、0.6<x<1であり、0<y<0.5であり、0.25≦z<1であり、AがMeでなく、AがNbでなく、0≦p≦0.2であるLi1+xNbMe
・1.2<x≦1.75であり、0≦y<0.55であり、0.1<z<1であり、0≦a<0.5であり、0≦b<.1であり、0≦c<0.8であり、M、NおよびPがそれぞれTi、Ta、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Zr、Y、Mo、Ru、RhおよびSbであるLiNby-az-b2-c
・酸化物Li1.25Nb0.25Mn0.50、Li1.3Nb0.3Mn0.40、Li1.3Nb0.3Fe0.40、Li1.3Nb0.43Ni0.27、Li1.3Nb0.43Co0.27、Li1.4Nb0.2Mn0.53
・0.00≦x≦1.52であり、1.07≦y<2.4である酸化物LiNi0.2Mn0.6、Li1.2Ni0.2Mn0.6
・化合物Li1.9Mn0.952.050.95、LiVPOF、FeF、FeF、CoF、CuF、NiF、0<x<0.2であり、MがCo、Ni、MnおよびCuからなる群から選択された少なくとも1種の元素であるFe1-xOF、
・0≦xであり、y≦0.5である酸化物LiNiCoMn1-x-y、0≦xであり、y≦0.5であり、0≦zであるLiNiCeCoMn1-x-y
により形成される群から選択される材料PCからなる多孔質層であって、結合剤を含まず、20~70体積%、好ましくは25~65体積%、より好ましくは30~60体積%の多孔率を有する多孔質層を含み、
前記セパレータが、前記第1および/または第2の電極上に堆積された多孔質無機層を含み、該多孔質無機層が結合剤を含まず、20~70体積%、好ましくは25~65体積%、より好ましくは30~60体積%の多孔率を有する、
前記電池。
【請求項2】
前記2つの多孔質層のうちの少なくとも1つ、好ましくは材料PCからなる多孔質層が、その細孔の上部および内部に電子伝導性材料被覆を有し、該電子伝導性材料が好ましくは炭素または電子伝導性酸化物材料であり、より好ましくは:
-酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム(In)、酸化ガリウム(Ga)、これらの酸化物の2種の混合物、例えば、酸化インジウム(In2O)および酸化スズ(SnO)の混合物に相当するインジウム-スズ酸化物、これらの酸化物の3種の混合物、またはこれらの酸化物の4種の混合物、
-好ましくはガリウム(Ga)および/またはアルミニウム(Al)および/またはホウ素(B)および/またはベリリウム(Be)および/またはクロム(Cr)および/またはセリウム(Ce)および/またはチタン(Ti)および/またはインジウム(In)および/またはコバルト(Co)および/またはニッケル(Ni)および/または銅(Cu)および/またはマンガン(Mn)および/またはゲルマニウム(Ge)によりドープされた、酸化亜鉛をベースとするドープされた酸化物、
-好ましくはスズ(Sn)および/またはガリウム(Ga)、および/またはクロム(Cr)および/またはセリウム(Ce)および/またはチタン(Ti)および/またはインジウム(In)および/またはコバルト(Co)および/またはニッケル(Ni)および/または銅(Cu)および/またはマンガン(Mn)および/またはゲルマニウム(Ge)によりドープされた、酸化インジウムをベースとするドープされた酸化物、
-好ましくはヒ素(As)および/またはフッ素(F)および/または窒素(N)および/またはニオブ(Nb)および/またはリン(P)および/またはアンチモン(Sb)および/またはアルミニウム(Al)および/またはチタン(Ti)および/またはガリウム(Ga)および/またはクロム(Cr)および/またはセリウム(Ce)および/またはインジウム(In)および/またはコバルト(Co)および/またはニッケル(Ni)および/または銅(Cu)および/またはマンガン(Mn)および/またはゲルマニウム(Ge)によりドープされた酸化スズ
から選択される、請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記電子伝導性材料被覆が絶縁性でイオン伝導性を有する層で被覆され、前記層の厚さが好ましくは1~20nmである、請求項2に記載の電池。
【請求項4】
前記第1の電極の細孔の平均直径が50nm未満であり、かつ/または前記無機層の細孔の平均直径が50nm未満であり、かつ/または前記第2の電極の細孔の平均直径が50nm未満である、請求項1~3のいずれか一項に記載の電池。
【請求項5】
第1の多孔質電極層、多孔質セパレータおよび第2の多孔質電極層を含む前記積層体に、電解質、好ましくはリチウムイオン担体相が含浸されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の電池。
【請求項6】
前記電解質が、
・少なくとも1種の非プロトン性溶媒および少なくとも1種のリチウム塩からなる電解質;
・少なくとも1種のイオン性液体またはイオン性ポリ液体および少なくとも1種のリチウム塩からなる電解質;
・少なくとも1種の非プロトン性溶媒および少なくとも1種のイオン性液体またはイオン性ポリ液体および少なくとも1種のリチウム塩の混合物;
・少なくとも1種のリチウム塩の添加によりイオン伝導性化されたポリマー;および
・液体電解質の添加によりポリマー相またはメソ多孔質構造のいずれかにおいてイオン伝導性化されたポリマー
により形成される群から選択され、
前記ポリマーが、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリジメチルシロキサン、ポリアクリロニトリル、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(フッ化ビニリデン)、PVDF-ヘキサフルオロプロピレンにより形成される群から選択される、請求項5に記載の電池。
【請求項7】
前記材料PAがLiTi12であり、かつ/または前記材料PCがLiFePOであり、かつ/または前記材料EがLiPOである、請求項1~6のいずれか一項に記載の電池。
【請求項8】
前記材料PAがLiTi12であり、前記材料PCがLiMnであり、前記材料EがLiPOである、請求項1~6のいずれか一項に記載の電池。
【請求項9】
前記材料PAがLiTi12であり、前記材料PCがLiMn1.5Ni0.5であり、前記材料EがLiPOである、請求項1~6のいずれか一項に記載の電池。
【請求項10】
前記材料PAがLiTi12であり、前記材料PCがx+y+z=10であるLiNi1/xCo1/yMn1/zであり、前記材料EがLiPOである、請求項1~6のいずれか一項に記載の電池。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池の製造方法であって、
前記電池が、第1の電子集電体、第1の多孔質電極、多孔質セパレータ、第2の多孔質電極および第2の電子集電体を連続的に含む少なくとも1つの積層体を備え、前記電池の電解質が、前記多孔質層に封入されたリチウムイオンで充満した液体であり;
前記製造方法が、第1の多孔質電極および多孔質セパレータを備えるアセンブリの製造方法を実施し、
前記第1の電極が、基板上に堆積された多孔質層を含み、該層が結合剤を含まず、20~70体積%、好ましくは25~65体積%、より好ましくは30~60体積%の多孔率を有し、前記セパレータが、前記電極上に堆積された多孔質無機層を含み、前記多孔質無機層は結合剤を含まず、20~70体積%、好ましくは25~65体積%、より好ましくは30%~60体積%の多孔率を有し、
(a)第1の多孔質電極層が前記基板上に堆積され、
(a1)前記第1の電極層が第1のコロイド懸濁液から堆積され、
(a2)次いで、工程(a1)で得られた前記層を加圧および/または加熱することによって乾燥および固化させて第1の多孔質電極を得、任意に
(a3)次いで、工程(a2)で得られた前記多孔質層がその細孔上および細孔内に電子伝導性材料コーティングを受け、
-前記第1の多孔質電極層が、工程(a1)および(a2)、ならびに必要に応じて工程(a3)を実施することによって前記第1の電子集電体上に堆積されていてもよく、または
-第1の電極の前記層が、工程(a1)で予め中間基板上に堆積され、乾燥され、次いで、前記中間基板から分離されて、加圧および/または加熱による圧密を受けて第1の多孔質電極が得られ、次いで、前記第1の電子集電体上に配置されてもよく、前記第1の多孔質電極が工程(a3)に供されてもよく;
(b)電子絶縁体である無機材料Eの多孔質無機層を、工程(a)で堆積または配置された前記第1の多孔質電極上に堆積させ、
(b1)多孔質無機層の前記層が、材料Eの粒子の第2のコロイド懸濁液から堆積され;
(b2)次いで、工程(b1)で得られた前記層が、好ましくは空気流下で乾燥され、600℃未満、好ましくは500℃未満の温度で熱処理を行って、多孔質無機層が得られ、それにより多孔質電極および多孔質セパレータからなる前記アセンブリが得られ、
-前記多孔質無機層が、一連の工程(b1)および(b2)を実施することによって前記第1の電極層上に堆積されていてもよく、または前記無機層が、工程(b1)で中間基板上に予め堆積され、乾燥され、次いで前記第1の電極層上に配置される前または後に、前記中間基板から剥離され、加圧および/または加熱により圧密されて多孔質無機層が得られてもよく;
-前記第1の多孔質電極層および前記多孔質無機層が、電気泳動、押出成形、好ましくはインクジェット印刷およびフレキソ印刷から選択される印刷法、および好ましくはロールコーティング、カーテンコーティング、ドクターブレードコーティング、押出スロットダイコーティング、ディップコーティングから選択されるコーティング法により形成される群から選択される技術によって堆積され;
-前記第1の多孔質電極層および前記多孔質無機層が、
・それぞれ2~100nm、好ましくは2~60nmの平均一次直径D50を有する第1の電極の活性物質PAもしくはPCの少なくとも1種、または無機材料Eの少なくとも1種の単分散一次ナノ粒子の集合体または凝集体であって、50~300nm、好ましくは100~200nmの平均直径D50を有する前記集合体または凝集体、または
・第1の電極の活性物質PAもしくはPCの少なくとも1種、または無機材料Eの少なくとも1種の非集合一次粒子または非凝集一次粒子であって、それぞれ200nm~10μm、好ましくは300nm~5μmの一次直径D50を有する前記非集合一次粒子または非凝集一次粒子
のいずれかを含むコロイド溶液から堆積され、
前記第1の多孔質電極が前記電池において陽極として用いられることが意図される場合、前記材料PAは、
Nb2-x 5-δ δ
[式中、Mは、Nb、V、Ta、Fe、Co、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Al、Zr、Si、Sr、K、Ge、Ce、CsおよびSnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり;
は少なくとも1種のハロゲンであり、好ましくはF、Cl、Br、Iまたはそれらの混合物から選択され、かつ
0≦x≦1および0≦δ≦2である]、
Nb18-x 16-y 93-δ δ
[式中、MおよびMは、Nb、V、Ta、Fe、Co、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Al、Zr、Si、Sr、K、Ge、Ce、CsおよびSnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり;
およびMは同一であってもよく、互いに異なっていてもよく、
は少なくとも1種のハロゲンであり、好ましくはF、Cl、Br、Iまたはそれらの混合物から選択され、かつ
0≦x≦1、0≦y≦2および0≦δ≦2である]、
Nb16-x 5-y 55-δ δ
[MおよびMは、Nb、V、Ta、Fe、Co、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Al、Zr、Si、Sr、K、Ge、Ce、CsおよびSnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり;
およびMは同一であってもよく、互いに異なっていてもよく、
は少なくとも1種のハロゲンであり、好ましくはF、Cl、Br、Iまたはそれらの混合物から選択され、かつ
0≦x≦1、0≦y≦2および0≦δ≦2である]、
0≦δ≦2であるNb5-δ、0≦δ≦2であるNb181693-δ、0≦δ≦2であるNb1655-δ、MがV、Zr、Hf、Nb、Taであり、0≦x≦0.25であるLiTi12およびLiTi5-x12により形成される群から選択され、酸素原子の一部がハロゲン原子で置換されていてもよく、かつ/またはハロゲン原子でドープされていてもよく、
前記第1の多孔質電極が前記電池において陰極として用いられることが意図される場合、前記材料PCは、
・LiFePO
・MがMn、Ni、Co、Vである式LiFeMPOのリン酸塩、
・酸化物LiMn、0<x<0.15であるLi1+xMn2-x、LiCoO、LiNiO、LiMn1.5Ni0.5、XがAl、Fe、Cr、Co、Rh、Nd、その他の希土類、例えば、Sc、Y、Lu、La、Ce、Pr、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybから選択され、0<x<0.1であるLiMn1.5Ni0.5-x、MがEr、Dy、Gd、Tb、Yb、Al、Y、Ni、Co、Ti、Sn、As、Mgまたはこれらの化合物の混合物であり、0<x<0.4であるLiMn2-x、LiFeO、LiMn1/3Ni1/3Co1/3、LiNi0.8Co0.15Al0.05、0≦x<0.15であるLiAlMn2-x、x+y+z=10であるLiNi1/xCo1/yMn1/z
・0.6≦y≦0.85であり、0≦x+y≦2であり、MがAl、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Ru、SnおよびSbまたはこれらの元素の混合物である酸化物Li;Li1.20Nb0.20Mn0.60
・AおよびMeがそれぞれSc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hgから選択される少なくとも1種の遷移金属であり、0.6<x<1であり、0<y<0.5であり、0.25≦z<1であり、AがMeでなく、AがNbでなく、0≦p≦0.2であるLi1+xNbMe
・1.2<x≦1.75であり、0≦y<0.55であり、0.1<z<1であり、0≦a<0.5であり、0≦b<.1であり、0≦c<0.8であり、M、NおよびPがそれぞれTi、Ta、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Zr、Y、Mo、Ru、RhおよびSbであるLiNby-az-b2-c
・酸化物Li1.25Nb0.25Mn0.50、Li1.3Nb0.3Mn0.40、Li1.3Nb0.3Fe0.40、Li1.3Nb0.43Ni0.27、Li1.3Nb0.43Co0.27、Li1.4Nb0.2Mn0.53
・0.00≦x≦1.52であり、1.07≦y<2.4である酸化物LiNi0.2Mn0.6、Li1.2Ni0.2Mn0.6
・化合物Li1.9Mn0.952.050.95、LiVPOF、FeF、FeF、CoF、CuF、NiF、0<x<0.2であり、MがCo、Ni、MnおよびCuからなる群から選択された少なくとも1種の元素であるFe1-xOF、
・0≦xであり、y≦0.5である酸化物LiNiCoMn1-x-y、0≦xであり、y≦0.5であり、0≦zであるLiNiCeCoMn1-x-y
により形成される群から選択される、前記製造方法。
【請求項12】
工程(c)において、第2の多孔質電極層を前記多孔質無機層上に堆積させて、第1の多孔質電極層、多孔質無機層および第2の多孔質電極層を含む積層体を得る、請求項11に記載の製造方法であって、
(c1)前記第2の多孔質電極層が、電気泳動、押出成形、好ましくはインクジェット印刷およびフレキソ印刷から選択される印刷法、および好ましくはロールコーティング、カーテンコーティング、ドクターブレードコーティング、押出スロットダイコーティング、ディップコーティングから選択されるコーティング法により形成される群から選択される技術によって第3のコロイド懸濁液から堆積され、前記第3のコロイド懸濁液が、2~100nm、好ましくは2~60nmの平均一次直径D50を有する第2の電極の活性物質PAもしくはPCの少なくとも1種の単分散一次ナノ粒子の集合体または凝集体のいずれかを含み、前記集合体または凝集体が、50~300nm、好ましくは100~200nmの平均直径D50を有し、すなわち前記第2の電極の活性物質PAまたはPCの少なくとも1種の非凝集一次粒子または非凝集一次粒子が200nm~10μm、好ましくは300nm~5μmの一次直径D50を有し、
(c2)次いで、工程(c1)で得られた前記層を加圧および/または加熱することによって圧密して多孔質層を得、任意に
(c3)次いで、工程(c2)で得られた前記多孔質層がその細孔上および細孔内に電子伝導性材料コーティングを受けて前記第2の多孔質電極を形成し、
前記第2の多孔質電極層が、一連の工程(c1)および(c2)、および必要に応じて(c3)を実施することによって前記第2の電子集電体上に堆積されてもよく、または第2の電極の前記層が、一連の工程(c1)および(c2)、および必要に応じて(c3)を実施することによって、中間基板上に予め堆積され、次いで前記中間基板から剥離されて前記多孔質無機層上に配置され、
前記第1の電極層が材料PAからなる場合には、前記第2の電極層は材料PCからなり、前記第1の電極層が材料PCからなる場合には、前記第2の電極層は材料PAからなる、前記製造方法。
【請求項13】
第2の多孔質電極および多孔質セパレータの第2の層からなる第2のアセンブリが、第1の多孔質電極および多孔質セパレータの第1の層を含む第1のアセンブリ上に堆積され、前記第2のセパレータが層を前記第1のセパレータ層上に堆積または配置されて、第1の多孔質電極層、多孔質無機層および第2の多孔質電極層を含む積層体を得る、請求項11に記載の製造方法。
【請求項14】
前記電子伝導性材料コーティングの堆積が、原子層堆積法、または前記電子伝導性材料の前駆体を含む液相への浸漬、それに続く前記前駆体の電子伝導性材料への変換によって行われる、請求項11~13のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項15】
前記電子伝導性材料が炭素であるか、または前記電子伝導性材料がIn、SnO、ZnO、Gaおよびそれらの酸化物の1種または複数種の混合物から選択される、請求項11~14のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項16】
前記前駆体が炭水化物等の炭素に富んだ化合物であり、電子伝導性材料への前記変換が熱分解、好ましくは不活性雰囲気下での熱分解である、請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
イオン伝導性を有する電子絶縁体の層が前記電子伝導性材料コーティング上に堆積される、請求項11~16のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項18】
第1の電極の前記多孔質層が4~400μmの厚さを有する、請求項11~17に記載の製造方法。
【請求項19】
前記多孔質無機層が3~20μm、好ましくは5~10μmの厚さを有する、請求項11~18のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項20】
第1の電極の前記多孔質層が10~500m/gの比表面積を有する、請求項11~19のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項21】
前記無機材料Eが、好ましくは
・Al、SiO、ZrOおよび/または
・任意にAl、Ca、B、Y、Sc、Ga、Zrからの少なくとも1種の元素を含むリチウム化リン酸塩から選択される材料;または任意にAl、Ca、Y、Sc、Ga、Zrからの少なくとも1種の元素を含むリチウム化ホウ酸塩から選択される材料であって;
リチウム化リン酸塩によって形成される群から選択され、好ましくはNaSICONタイプのリチウム化リン酸塩、LiPO;LiPO;<<LASP>>と呼ばれるLiAl0.4Sc1.6(PO;0≦x≦0.25であるLi1+xZr2-xCa(PO;0≦x≦0.25であるLi1+2xZr2-xCa(PO、例えば、Li1.2Zr1.9Ca0.1(POまたはLi1.4Zr1.8Ca0.2(PO;1.8<x<2.3であるLiZr(PO;Li1+3xZr(P1-xSi;0≦x≦0.25であるLi1+6xZr(P1-x;MがAlまたはYであり、0≦x≦1であるLi(Sc2-x)(PO;MがAl、Y、Gaまたはこれら3種の元素の混合物であり、0≦x≦0.8であるLi1+x(Sc)2-x(PO;0≦x≦0.8であり、0≦y≦1であり、MがAlおよび/またはYであるLi1+x(Ga1-ySc2-x(PO;MがAlおよび/またはYであり、0≦x≦0.8であるLi1+x(Ga)2-x(PO;<<LATP>>と呼ばれる0≦x≦1であるLi1+xAlTi2-x(PO;または<<LAGP>>と呼ばれる0≦x≦1であるLi1+xAlGe2-x(PO;または0≦x≦0.8であり、0≦y≦1.0であり、0≦z≦0.6であり、MがAl、GaもしくはYまたはこれらの元素の2種または3種の混合物であるLi1+x+z(Ge1-yTi2-xSi3-z12:MがAlおよび/またはYであり、QがSiおよび/またはSeであり、0≦x≦0.8であり、0≦y≦1であるLi3+y(Sc2-x)Q3-y12;またはMがAl、Y、Gaまたはこれら3種の元素の混合物であり、QがSiおよび/またはSeであり、0≦x≦0.8であり、0≦y≦1であるLi1+x+ySc2-x3-y12;または0≦x≦0.8であり、0≦y≦1であり、0≦z≦0.6であり、MがAlおよび/またはYであり、QがSiおよび/またはSeであるLi1+x+y+z(Ga1-ySc2-x3-z12;または0≦x≦0.25であるLi1+xZr2-x(PO;または0≦x≦1でありMがCr、V、Ca、B、Mg、Biおよび/またはMoであり、MがSc、Sn、Zr、Hf、SeもしくはSiまたはこれらの元素の混合物であるLi1+x 2-x12
から選択される電子絶縁材料を含む、請求項11~20のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項22】
前記陰極集電体が、Mo、W、Ti、Cr、Ni、Al、ステンレス鋼、導電性カーボンにより形成される群から選択される材料からなり、かつ/または前記陽極集電体が、Cu、Mo、W、Ta、Ti、Cr、ステンレス鋼、導電性カーボンにより形成される群から選択される材料からなる、請求項11~21のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項23】
第1の多孔質電極層、多孔質セパレータおよび第2の多孔質電極層を含む前記積層体に、電解質、好ましくは
・少なくとも1種の非プロトン性溶媒および少なくとも1種のリチウム塩からなる電解質;
・少なくとも1種のイオン性液体またはイオン性ポリ液体および少なくとも1種のリチウム塩からなる電解質;
・少なくとも1種の非プロトン性溶媒および少なくとも1種のイオン性液体またはイオン性ポリ液体および少なくとも1種のリチウム塩の混合物;
・少なくとも1種のリチウム塩の添加によりイオン伝導性化されたポリマー;および
・液体電解質の添加によりポリマー相またはメソ多孔質構造のいずれかにおいてイオン伝導性化されたポリマー
により形成される群から選択され、
前記ポリマーが、好ましくはポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリジメチルシロキサン、ポリアクリロニトリル、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(フッ化ビニリデン)、PVDF-ヘキサフルオロプロピレンにより形成される群から選択される、請求項11~22のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項24】
-10℃未満の温度および/または+80℃超の温度における、請求項1~10のいずれか一項に記載の電池の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気エネルギーを貯蔵するための電気化学システムの分野に関し、特にリチウムイオン電池の分野に関する。本発明は、高い電力密度、良好な安定性を有し、-20℃未満および+85℃超の非常に広い温度範囲で用いることができる新しい電池に関する。本発明の電池は、特定の材料が選択された多孔質電極を備えている。本発明の電池は急速充電も可能である。本発明の電池は、電極を製造するための原材料のコストが比較的低いことも一部関係しており、低コストで製造することができる。
【背景技術】
【0002】
エレクトロニクス業界は、さまざまな形式、さまざまな用途、さまざまな技術仕様の二次電池を必要としている。緊急のニーズは、例えばクロックバックアップ機能、メモリの電力損失保護機能、自律センサー、スマートカードおよびRFIDタグのエネルギーバッファーストレージ機能の確保を目的とした、特に二次マイクロ電池である。実際、これらの電子デバイスには、周囲のエネルギーを取り込むためのさまざまな技術に基づいた電気エネルギー生成源が含まれている場合がよくある。これらは、例えば、電磁波を電流に変換する太陽電池やレクテナ、あるいはサーモパイル等である。
【0003】
しかしながら、これらのエネルギー生産源はいずれもそれほど強力なものではなく、その動作は環境に依存する。また、デバイスの動作を保証するためには、このエネルギーを確実に貯蔵し、電子デバイスが、例えば、信号の発信や計算の実行等の特定の機能を実行するために必要になるまで、生成されたエネルギーを維持することができる必要がある。これらの特定の通信機能等は、一般に短時間に大電流を必要とする。例えば、ネットワーク上で通信を実行するには、電子デバイスは数百ミリ秒間に数十ミリアンペアを必要とする場合がある。このようなマイクロ電池の容量は、通常、約10μA.h~約0.5mA.hである。複雑な回路では、特に5Gタイプのモバイル通信プロトコルのアプリケーションでは、1mA.hを超える高容量の電池が好ましい場合がある。
【0004】
さらに、センサーやその他の電子デバイスは屋外に設置されることが多く、通常は-40℃~+85℃の非常に広い温度範囲で動作できる必要がある。現在のところ、これらすべての機能を実行できる電子コンポーネントは存在しない。電池およびセルが必要な電流を供給できるようにするには、その容量が数十または数百mAh程度の比較的大きい必要がある。これらは実質的にボタン電池またはミニ電池である。スーパーキャパシタに関しては、容量エネルギー密度が低いため非常にかさばり、さらに大幅な自己放電がある。
【0005】
本発明は、電子回路上に表面実装することができる電子部品(表面実装部品、SMD)であって、リフローはんだ付けによって組み立てることができる電子部品の形態で、エレクトロニクス産業の小型化要件を満たすために、小さなスペース要件で、大量のエネルギー貯蔵をすることができる電池、特にマイクロ電池を製造することを目的とする。小型化を確実にするために、この本発明のマイクロ電池は、電池およびスーパーキャパシタの性質を組み合わせる必要がある。
【0006】
実際、電池が供給することができる電流はその容量に比例する。現在の技術では、容量が数十、さらには数百μAhのマイクロ電池は、数十mAの電流を供給することはほぼできない。実際、充電式リチウムイオン電池は、最も強力なものでは、約10~50Cの電流密度を供給する。言い換えれば、電力PとエネルギーEとの比(P/E比)が10であり、10Cを供給することができる電池は、50mAの電流を供給するために5mAhの容量が必要である。
【0007】
したがって、自律型センサーに電力を供給するために用いることができる電池は、自律型センサーの通信過渡現象に電力を供給できるように、数mAhの容量を備えている必要がある。したがって、それらはマイクロ電池というよりも、ミニ電池、ボタン電池またはSMD部品である。本発明の電池によれば、その高い性能、寿命および自律性により、接続されたすべてのオブジェクトの動作を保証することができる。ミニ電池は特に、あらゆるIoT通信プロトコルのエネルギー需要を満たすことができる。マイクロ電池によれば、特にセンサーと他の接続デバイスとの間の長距離通信を低いデータレートで実行するために設計されたBluetooth、LoraWan、zigbeeネットワーク等の低電力拡張ネットワークにおいて、M2M(machine to machine)の頭字語で知られる機器間のあらゆる通信プロトコルの低エネルギー要件を満たすことができる。
【0008】
一方、リチウムイオン電池は自己放電要件を満たすものの、その動作温度範囲は依然として非常に限られている。溶媒ベースの液体電解質とグラファイト負極とを用いるリチウムイオン電池は、約60℃の温度までしか動作しない。この温度を超えると、急速に劣化し、この劣化は、セルの熱暴走や爆発をもたらす場合がある。
【0009】
もう一つの緊急のニーズは、自動車産業によって表明されており、低コストで、低温でも非常に高い電力密度を備え、優れたサイクル寿命を備えたコンパクトな電池が必要されている。より具体的には、内燃機関と電気モータとを備えるハイブリッド車両に用いるための、これらの特徴を有する電池が特に必要とされており、このニーズは、「マイクロハイブリッド」または「マイルドハイブリッド」として知られる技術においてさらに強化される。電池、特に電気自動車用の電池のコストは、基本的に活性物質を構成する原材料の価格に関係する。したがって、自動車産業のコスト目標を達成するには、安価で豊富に入手可能な電池材料が必要である。例えば、「マイルドハイブリッド」タイプの車両用電池の販売価格は、kWhあたり約100ドルを超えてはならない。このコストの問題が解決されれば、これらの電池の使用は、他の電気自動車(電動自転車、電動スクーター、電動キックボード)、他のモバイル機器(電動工具等)、または定置型電気エネルギー貯蔵設備にも考えられる。
【0010】
このタイプの電池の場合、最も適合した構造の1つは:
0≦δ≦2であるNb5-δ
0≦δ≦2であるNb181693-δ
Nb2-x 5-δ δ
[式中、Mは、Nb、V、Ta、Fe、Co、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Al、Zr、Si、Sr、K、Ge、Ce、CsおよびSnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり;
は少なくとも1種のハロゲンであり、好ましくはF、Cl、Br、Iまたはそれらの混合物から選択され、かつ
0≦x≦1および0≦δ≦2である]、
Nb18-x 16-y 93-δ δ
[式中、MおよびMは、Nb、V、Ta、Fe、Co、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Al、Zr、Si、Sr、K、Ge、Ce、CsおよびSnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり;
およびMは同一であってもよく、互いに異なっていてもよく、
は少なくとも1種のハロゲンであり、好ましくはF、Cl、Br、Iまたはそれらの混合物から選択され、かつ
0≦x≦1、0≦y≦2および0≦δ≦2である]、
Nb16-x 5-y 55-δ δ
[MおよびMは、Nb、V、Ta、Fe、Co、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Al、Zr、Si、Sr、K、Ge、Ce、CsおよびSnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり;
およびMは同一であってもよく、互いに異なっていてもよく、
は少なくとも1種のハロゲンであり、好ましくはF、Cl、Br、Iまたはそれらの混合物から選択され、かつ
0≦x≦1、0≦y≦2および0≦δ≦2である]、
0≦δ≦2であるNb1655-δ
LiTi12またはTiNb2O7
によって形成される群から選択される陽極、および
陰極LiMnおよび/またはLiFePOで構成される電池である。
【0011】
実際、これらの材料には貴金属元素、高価な金属元素または希少金属元素がほとんどまたはまったく含まれておらず、合成コストも高くない。さらに、LiTi12およびTiNbは高電位で動作し、高速再充電に対応し、優れたサイクル性能を備えている。
【0012】
化合物
-Nb2-xxO5-δ δ
[式中、Mは、Nb、V、Ta、Fe、Co、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Al、Zr、Si、Sr、K、Ge、Ce、CsおよびSnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、
は少なくとも1種のハロゲンであり、好ましくはF、Cl、Br、Iまたはそれらの混合物から選択され、かつ
0≦x≦1および0≦δ≦2である。]
-Nb18-x 16-y 93-δ δ
[式中、MおよびMは、Nb、V、Ta、Fe、Co、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Al、Zr、Si、Sr、K、Ge、Ce、CsおよびSnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、
およびMは同一であってもよく、異なっていてもよく、
は、好ましくはF、Cl、Br、Iまたはそれらの混合物から選択される少なくとも1種のハロゲンであり、かつ
0≦x≦1、0≦y≦2および0≦δ≦2である。]
-Nb16-x 5-y 55-δ δ
[式中、MおよびMは、Nb、V、Ta、Fe、Co、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Al、Zr、Si、Sr、K、Ge、Ce、CsおよびSnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、
およびMは同一であってもよく、異なっていてもよく、
は、好ましくはF、Cl、Br、Iまたはそれらの混合物から選択される少なくとも1種のハロゲンであり、かつ
0≦x≦1、0≦y≦2および0≦δ≦2である。]
-0≦δ≦2であるNb5-δ
-0≦δ≦2であるNb181693-δ、および/または
-0≦δ≦2であるNb1655-δ
が、高速再充電に対応した陽極の形成に用いることができる。
【0013】
しかしながら、そのような構造を自動車および/または定置用途に用いることができるようにするには、解決すべき課題がまだある。これらの問題の1つは電力密度に関連しており、検討されている用途においては、電池が-30℃程度の非常に低い温度で大電流を供給できる必要があるが、従来技術によるリチウムイオン電池ではこの点を満足することができない。
【0014】
さらに、そのような電池のサイクル寿命は、数十万回の充放電サイクル程度でなければならない。従来技術のリチウムイオン電池ではこれが不可能である。実際、サイクルが進むと活性物質粒子間の電気的接触が失われる可能性があり、これにより電池の容量が低下する。
【0015】
上述した低コストの電池材料に関して、正極材料として用いることができるLiFePOは非常に抵抗が高く、このタイプの材料で非常に高出力の電池構造と高エネルギー密度とを達成するのは非常に難しいことが判明している。LiMnに関しては、問題となるのは非プロトン性溶媒中での高温での安定性である。実際、55℃を超えると、Mn2+イオンがほとんどの電解液に溶解し、電池性能の大幅な低下につながる。
【0016】
また、本発明の目的は、100分の1mAhから数10Ahの範囲の容量を有し、大電流を供給することができる電池を製造することである。したがって、本発明の電池は、単一セル、すなわち「電池セル」と呼ばれる単一セルを含む電池、または「電池システム」とも呼ばれる複数のセルを含む電池であり得る。本発明の電池は、
-1mAhを超える容量を有する電池、または
-マイクロ電池、すなわち、ボタン電池やSMD部品の形態の電池等の1mAhを超えない容量を有する電池
であり得る。
【0017】
特に、本発明は、エレクトロニクス産業の小型化要件を満たし、高電流を供給できる、非常に低容量のマイクロ電池の製造を可能にする。このマイクロ電池は、非常に低い温度で動作できる必要があり、屋外の電子用途では、-40℃までの動作温度が必要であるが、従来のリチウムイオン電池の電解質は、-20℃に近い温度で凍結する。これらの屋外用途では、発火の危険性がなく、+85℃に達するかそれを超える可能性がある高温での動作も必要である。
【0018】
さらに、この電池のフォームファクタは、ピックアンドプレイスおよびはんだリフロータイプの組み立てラインに自動的に取り付けることができるように、エレクトロニクス業界の標準的なSMD部品のタイプでなければならない。ミニ電池の場合、この部品はボタン電池またはスルーホール部品の形式にすることができる。
【0019】
また、廃棄されたセンサーの寿命を延ばし、電池の早期劣化に伴うメンテナンスコストを抑えるために、この電池は優れたサイクル寿命を備えている必要がある。
【0020】
そして最後に、この部品は、スマートカードという特殊なケースに関して言えば、非接触型決済時に発生するような非常に高速な充電過渡状態中に最大のエネルギーを回収できるように、非常に高速な再充電容量を備えていなければならない。
【0021】
本発明はまた、1mAhを超える容量を有し、公称容量のかなりの部分から非常に迅速に再充電でき、かつ非常に低い温度で動作できる電池を提供することを目的としており、車両は屋外で約-30℃までの温度で動作できなければならない(従来のリチウムイオン電池の電解液は-20℃に近い温度で凍結することが知られている)。これらの屋外用途では、発火の危険性がなく、+85℃に達するか、またはそれを超える可能性がある高温での動作も必要である。
【0022】
また、この電池は優れたサイクル寿命を持っていなければならず、時折停止するときに最大限のエネルギーを回収できるように、寿命を縮めることなく公称容量のかなりの部分を非常に迅速に再充電できなければならない。例えば高速道路のサービスエリア。
【0023】
本発明の目的
本発明によれば、この問題は、いくつかの手段を組み合わせた方法および電池によって解決される。
【0024】
本発明の第1の目的は、好ましくは、1mAhを超えない容量を有するマイクロ電池、および1mAhを超える容量を有する電池から選択されるリチウムイオン電池であって、第1の電子集電体、第1の多孔質電極、多孔質セパレータ、第2の多孔質電極および第2の電子集電体を連続的に含む少なくとも1つの積層体を備え、前記電池の電解質が、前記多孔質層に封入されたリチウムイオンで充満した液体であり、前記電池が:
-前記第1の電極が陽極であり、
Nb2-x 5-δ δ
[式中、Mは、Nb、V、Ta、Fe、Co、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Al、Zr、Si、Sr、K、Ge、Ce、CsおよびSnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり;
は少なくとも1種のハロゲンであり、好ましくはF、Cl、Br、Iまたはそれらの混合物から選択され、かつ
0≦x≦1および0≦δ≦2である]、
Nb18-x 16-y 93-δ δ
[式中、MおよびMは、Nb、V、Ta、Fe、Co、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Al、Zr、Si、Sr、K、Ge、Ce、CsおよびSnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり;
およびMは同一であってもよく、互いに異なっていてもよく、
は少なくとも1種のハロゲンであり、好ましくはF、Cl、Br、Iまたはそれらの混合物から選択され、かつ
0≦x≦1、0≦y≦2および0≦δ≦2である]、
Nb16-x 5-y 55-δ δ
[MおよびMは、Nb、V、Ta、Fe、Co、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Al、Zr、Si、Sr、K、Ge、Ce、CsおよびSnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり;
およびMは同一であってもよく、互いに異なっていてもよく、
は少なくとも1種のハロゲンであり、好ましくはF、Cl、Br、Iまたはそれらの混合物から選択され、かつ
0≦x≦1、0≦y≦2および0≦δ≦2である]、
0≦δ≦2であるNb5-δ、0≦δ≦2であるNb181693-δ、0≦δ≦2であるNb1655-δ、MがV、Zr、Hf、Nb、Taであり、0≦x≦0.25であるLiTi12およびLiTi5-x12により形成される群から選択され、酸素原子の一部がハロゲン原子で置換されていてもよく、かつ/またはハロゲン原子でドープされていてもよい材料PAからなる多孔質層であって、結合剤を含まず、20~70体積%、好ましくは25~65体積%、より好ましくは30~60体積%の多孔率を有する多孔質層を含み、
-前記セパレータが電子絶縁性無機材料Eからなる多孔質無機層を含み、好ましくは:
・Al、SiO、ZrOおよび/または
・任意にAl、Ca、B、Y、Sc、Ga、Zrからの少なくとも1種の元素を含むリチウム化リン酸塩から選択される材料;または任意にAl、Ca、Y、Sc、Ga、Zrからの少なくとも1種の元素を含むリチウム化ホウ酸塩から選択される材料であって;
好ましくはNaSICONタイプのリチウム化リン酸塩、LiPO;LiPO;<<LASP>>と呼ばれるLiAl0.4Sc1.6(PO;0≦x≦0.25であるLi1+xZr2-xCa(PO;0≦x≦0.25であるLi1+2xZr2-xCa(PO、例えば、Li1.2Zr1.9Ca0.1(POまたはLi1.4Zr1.8Ca0.2(PO;1.8<x<2.3であるLiZr(PO;Li1+3xZr(P1-xSi;0≦x≦0.25であるLi1+6xZr(P1-x;MがAlまたはYであり、0≦x≦1であるLi(Sc2-x)(PO;MがAl、Y、Gaまたはこれら3種の元素の混合物であり、0≦x≦0.8であるLi1+x(Sc)2-x(PO;0≦x≦0.8であり、0≦y≦1であり、MがAlおよび/またはYであるLi1+x(Ga1-ySc2-x(PO;MがAlおよび/またはYであり、0≦x≦0.8であるLi1+x(Ga)2-x(PO;<<LATP>>と呼ばれる0≦x≦1であるLi1+xAlTi2-x(PO;または<<LAGP>>と呼ばれる0≦x≦1であるLi1+xAlGe2-x(PO;または0≦x≦0.8であり、0≦y≦1.0であり、0≦z≦0.6であり、MがAl、GaもしくはYまたはこれらの元素の2種または3種の混合物であるLi1+x+z(Ge1-yTi2-xSi3-z12:MがAlおよび/またはYであり、QがSiおよび/またはSeであり、0≦x≦0.8であり、0≦y≦1であるLi3+y(Sc2-x)Q3-y12;またはMがAl、Y、Gaまたはこれら3種の元素の混合物であり、QがSiおよび/またはSeであり、0≦x≦0.8であり、0≦y≦1であるLi1+x+ySc2-x3-y12;または0≦x≦0.8であり、0≦y≦1であり、0≦z≦0.6であり、MがAlおよび/またはYであり、QがSiおよび/またはSeであるLi1+x+y+z(Ga1-ySc2-x3-z12;または0≦x≦0.25であるLi1+xZr2-x(PO;または0≦x≦1でありMがCr、V、Ca、B、Mg、Biおよび/またはMoであり、MがSc、Sn、Zr、Hf、SeもしくはSiまたはこれらの元素の混合物であるLi1+x 2-x12から選択され、
前記多孔質無機層は結合剤を含まず、20~70体積%、好ましくは25~65体積%、より好ましくは30~60体積%の多孔率を有し、
-前記第2の電極が陰極であり、
・LiFePO
・MがMn、Ni、Co、Vである式LiFeMPOのリン酸塩、
・酸化物LiMn、0<x<0.15であるLi1+xMn2-x、LiCoO、LiNiO、LiMn1.5Ni0.5、XがAl、Fe、Cr、Co、Rh、Nd、その他の希土類、例えば、Sc、Y、Lu、La、Ce、Pr、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybから選択され、0<x<0.1であるLiMn1.5Ni0.5-x、MがEr、Dy、Gd、Tb、Yb、Al、Y、Ni、Co、Ti、Sn、As、Mgまたはこれらの化合物の混合物であり、0<x<0.4であるLiMn2-x、LiFeO、LiMn1/3Ni1/3Co1/3、LiNi0.8Co0.15Al0.05、0≦x<0.15であるLiAlMn2-x、x+y+z=10であるLiNi1/xCo1/yMn1/z
・0.6≦y≦0.85であり、0≦x+y≦2であり、MがAl、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Ru、SnおよびSbまたはこれらの元素の混合物である酸化物Li;Li1.20Nb0.20Mn0.60
・AおよびMeがそれぞれSc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hgから選択される少なくとも1種の遷移金属であり、0.6<x<1であり、0<y<0.5であり、0.25≦z<1であり、AがMeでなく、AがNbでなく、0≦p≦0.2であるLi1+xNbMe
・1.2<x≦1.75であり、0≦y<0.55であり、0.1<z<1であり、0≦a<0.5であり、0≦b<.1であり、0≦c<0.8であり、M、NおよびPがそれぞれTi、Ta、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Zr、Y、Mo、Ru、RhおよびSbであるLiNby-az-b2-c
・酸化物Li1.25Nb0.25Mn0.50、Li1.3Nb0.3Mn0.40、Li1.3Nb0.3Fe0.40、Li1.3Nb0.43Ni0.27、Li1.3Nb0.43Co0.27、Li1.4Nb0.2Mn0.53
・0.00≦x≦1.52であり、1.07≦y<2.4である酸化物LiNi0.2Mn0.6、Li1.2Ni0.2Mn0.6
・化合物Li1.9Mn0.952.050.95、LiVPOF、FeF、FeF、CoF、CuF、NiF、0<x<0.2であり、MがCo、Ni、MnおよびCuからなる群から選択された少なくとも1種の元素であるFe1-xOF、
・0≦xであり、y≦0.5である酸化物LiNiCoMn1-x-y、0≦xであり、y≦0.5であり、0≦zであるLiNiCeCoMn1-x-y
により形成される群から選択される材料PCからなる多孔質層であって、結合剤を含まず、20~70体積%、好ましくは25~65体積%、より好ましくは30~60体積%の多孔率を有する多孔質層を含み、
前記セパレータが、前記第1および/または第2の電極上に堆積された多孔質無機層を含み、該多孔質無機層が結合剤を含まず、20~70体積%、好ましくは25~65体積%、より好ましくは30~60体積%の多孔率を有する
ことを特徴とする。
【0025】
多孔質構造、有機結合剤を含まないオールセラミック構造、イオン性液体ベースの電解質(オールセラミック構造だからこそ使用できる)、耐食性基板、および一定以上の電極の併用電極(特に陰極)の内面に導電性コーティングを施すことにより、液体電解質の結晶化温度が例え-40℃を超えるものであったとしても、-40℃から+125℃まで動作できる、非常に信頼性の高い電池を得ることができる。-10℃未満の温度および/または+80℃を超える温度での本発明による電池の使用は、本発明の別の目的を表す。
【0026】
リチウムイオン電池に関して用いられる「全セラミック構造」という表現は、ここでは電池の固相に有機残留物が含まれていないことを意味し、電池を形成する層を堆積する方法中に用いられる結合剤、添加剤または有機溶媒は、熱分解によって除去される。液体電解質は、有機材料、特に有機液体、および任意にそれらを希釈するための溶媒を含んでもよい。
【0027】
本発明の方法によって得られる電池の性能は、セパレータおよび有機結合剤が存在しないという事実に関連している。本発明の電池は、この拡張された動作温度範囲と、その電力密度と比較して並外れた電力密度とを組み合わせて有している。本発明の電池は、安全上のリスクや電池の発火がなく、非常に早く充電することができる。
【0028】
この性能は材料の選択にも関係している。出願人は、電池が約50℃~60℃を超える温度で動作する場合、マンガンは非プロトン性溶媒をベースとする通常の液体電解質に溶解する可能性が高いため、マンガン酸化物を含む正極では高温での長期動作を保証できないことを認識した。
【0029】
本発明の本質的な特徴によれば、電極層およびセパレータ層は多孔質である。より具体的には、それらは開放多孔性ネットワークを有する。第1の実施形態によれば、細孔はメソ細孔であり、その平均直径は50nm未満、好ましくは10~50nm、より好ましくは20~50nmである。これらの層は、2~100nm、好ましくは2~60nmの平均一次直径D50を有する単分散一次ナノ粒子の集合体または凝集体を含むコロイド懸濁液から得ることができ、前記集合体または凝集体は50~300nm、好ましくは100~200nmの平均直径D50を有する。第2の実施形態によれば、細孔は、50nm超、より具体的には100nm超の平均直径を有する。これらの層は、200nm~10μm、好ましくは300nm~5μmの平均直径D50を有する非集合または非凝集一次粒子を含むコロイド懸濁液から得ることができ、これらの粒子の粒度分布は非常に狭くあるべきである。粒子が均一なサイズであることにより、粒子の結合が促進され、均一な細孔サイズが得られる。
【0030】
電極の層が約5μm~10μmを超える厚さを有する場合、優れた電子伝導性、好ましくは金属伝導性を有する材料の薄層を多孔質ネットワークの内側に堆積させることが特に有利であり、この材料は、黒鉛状炭素または電子伝導性酸化物材料であり得る。電極の厚さがわずか数μmである場合、このコーティングは必須ではなく、いずれの場合にも、電池の電力性能が向上する。
【0031】
本発明の別の目的は、リチウムイオン電池、好ましくは1mAhを超えない容量を有するマイクロ電池、または1mAhを超える容量を有する電池から選択されるリチウムイオン電池を製造するための方法であって、前記電池が、第1の電子集電体、第1の多孔質電極、多孔質セパレータ、第2の多孔質電極および第2の電子集電体を連続的に含む少なくとも1つの積層体を備え、前記電池の電解液が、前記多孔質層に封入されたリチウムイオンで充満された液体であり;
前記製造方法が、第1の多孔質電極および多孔質セパレータを備えるアセンブリの製造方法を実施し、
前記第1の電極が、基板上に堆積された多孔質層を含み、該層が結合剤を含まず、20~70体積%、好ましくは25~65体積%、より好ましくは30~60体積%の多孔率を有し、前記セパレータが、前記電極上に堆積された多孔質無機層を含み、前記多孔質無機層は結合剤を含まず、20~70体積%、好ましくは25~65体積%、より好ましくは30%~60体積%の多孔率を有し、
(a)第1の多孔質電極層が前記基板上に堆積され、
(a1)前記第1の電極層が第1のコロイド懸濁液から堆積され、
(a2)次いで、工程(a1)で得られた前記層を加圧および/または加熱することによって乾燥および固化させて第1の多孔質電極を得、任意に
(a3)次いで、工程(a2)で得られた前記多孔質層がその細孔上および細孔内に電子伝導性材料コーティングを受け、
-前記第1の多孔質電極層が、工程(a1)および(a2)、ならびに必要に応じて工程(a3)を実施することによって前記第1の電子集電体上に堆積されていてもよく、または
-第1の電極の前記層が、工程(a1)で予め中間基板上に堆積され、乾燥され、次いで、前記中間基板から分離されて、加圧および/または加熱による圧密を受けて第1の多孔質電極が得られ、次いで、前記第1の電子集電体上に配置されてもよく、前記第1の多孔質電極が工程(a3)に供されてもよく;
(b)電子絶縁体である無機材料Eの多孔質無機層を、工程(a)で堆積または配置された前記第1の多孔質電極上に堆積させ、
(b1)多孔質無機層の前記層が、無機材料Eの粒子の第2のコロイド懸濁液から堆積され;
(b2)次いで、工程(b1)で得られた前記層が、好ましくは空気流下で乾燥され、600℃未満、好ましくは500℃未満の温度で熱処理を行って、多孔質無機層が得られ、それにより多孔質電極および多孔質セパレータからなる前記アセンブリが得られ、
-前記多孔質無機層が、一連の工程(b1)および(b2)を実施することによって前記第1の電極層上に堆積されていてもよく、または前記無機層が、工程(b1)で中間基板上に予め堆積され、乾燥され、次いで前記第1の電極層上に堆積される前または後に、前記中間基板から剥離され、加圧および/または加熱により圧密されて多孔質無機層が得られてもよく;
-前記第1の多孔質電極層および前記多孔質無機層が、電気泳動、押出成形、好ましくはインクジェット印刷およびフレキソ印刷から選択される印刷法、および好ましくはロールコーティング、カーテンコーティング、ドクターブレードコーティング、押出スロットダイコーティング、ディップコーティングから選択されるコーティング法により形成される群から選択される技術によって堆積され;
-前記第1の多孔質電極層および前記多孔質無機層が、
・それぞれ2~100nm、好ましくは2~60nmの平均一次直径D50を有する第1の電極の活性物質PAもしくはPCの少なくとも1種、または無機材料Eの少なくとも1種の単分散一次ナノ粒子の集合体または凝集体であって、50~300nm、好ましくは100~200nmの平均直径D50を有する前記集合体または凝集体、または
・第1の電極の活性物質PAもしくはPCの少なくとも1種、または無機材料Eの少なくとも1種の非集合一次粒子または非凝集一次粒子であって、それぞれ200nm~10μm、好ましくは300nm~5μmの一次直径D50を有する前記非集合一次粒子または非凝集一次粒子
のいずれかを含むコロイド溶液から堆積され、
前記第1の多孔質電極が前記電池において陽極として用いられることが意図される場合、前記材料PAは、
Nb2-x 5-δ δ
[式中、Mは、Nb、V、Ta、Fe、Co、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Al、Zr、Si、Sr、K、Ge、Ce、CsおよびSnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり;
は少なくとも1種のハロゲンであり、好ましくはF、Cl、Br、Iまたはそれらの混合物から選択され、かつ
0≦x≦1および0≦δ≦2である]、
Nb18-x 16-y 93-δ δ
[式中、MおよびMは、Nb、V、Ta、Fe、Co、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Al、Zr、Si、Sr、K、Ge、Ce、CsおよびSnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり;
およびMは同一であってもよく、互いに異なっていてもよく、
は少なくとも1種のハロゲンであり、好ましくはF、Cl、Br、Iまたはそれらの混合物から選択され、かつ
0≦x≦1、0≦y≦2および0≦δ≦2である]、
Nb16-x 5-y 55-δ δ
[MおよびMは、Nb、V、Ta、Fe、Co、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Al、Zr、Si、Sr、K、Ge、Ce、CsおよびSnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり;
およびMは同一であってもよく、互いに異なっていてもよく、
は少なくとも1種のハロゲンであり、好ましくはF、Cl、Br、Iまたはそれらの混合物から選択され、かつ
0≦x≦1、0≦y≦2および0≦δ≦2である]、
0≦δ≦2であるNb5-δ、0≦δ≦2であるNb181693-δ、0≦δ≦2であるNb1655-δ、MがV、Zr、Hf、Nb、Taであり、0≦x≦0.25であるLiTi12およびLiTi5-x12により形成される群から選択され、酸素原子の一部がハロゲン原子で置換されていてもよく、かつ/またはハロゲン原子でドープされていてもよく、
前記第1の多孔質電極が前記電池において陰極として用いられることが意図される場合、前記材料PCは、
・LiFePO
・MがMn、Ni、Co、Vである式LiFeMPOのリン酸塩、
・酸化物LiMn、0<x<0.15であるLi1+xMn2-x、LiCoO、LiNiO、LiMn1.5Ni0.5、XがAl、Fe、Cr、Co、Rh、Nd、その他の希土類、例えば、Sc、Y、Lu、La、Ce、Pr、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybから選択され、0<x<0.1であるLiMn1.5Ni0.5-x、MがEr、Dy、Gd、Tb、Yb、Al、Y、Ni、Co、Ti、Sn、As、Mgまたはこれらの化合物の混合物であり、0<x<0.4であるLiMn2-x、LiFeO、LiMn1/3Ni1/3Co1/3、LiNi0.8Co0.15Al0.05、0≦x<0.15であるLiAlMn2-x、x+y+z=10であるLiNi1/xCo1/yMn1/z
・0.6≦y≦0.85であり、0≦x+y≦2であり、MがAl、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Ru、SnおよびSbまたはこれらの元素の混合物である酸化物Li;Li1.20Nb0.20Mn0.60
・AおよびMeがそれぞれSc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hgから選択される少なくとも1種の遷移金属であり、0.6<x<1であり、0<y<0.5であり、0.25≦z<1であり、AがMeでなく、AがNbでなく、0≦p≦0.2であるLi1+xNbMe
・1.2<x≦1.75であり、0≦y<0.55であり、0.1<z<1であり、0≦a<0.5であり、0≦b<.1であり、0≦c<0.8であり、M、NおよびPがそれぞれTi、Ta、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Zr、Y、Mo、Ru、RhおよびSbであるLiNby-az-b2-c
・酸化物Li1.25Nb0.25Mn0.50、Li1.3Nb0.3Mn0.40、Li1.3Nb0.3Fe0.40、Li1.3Nb0.43Ni0.27、Li1.3Nb0.43Co0.27、Li1.4Nb0.2Mn0.53
・0.00≦x≦1.52であり、1.07≦y<2.4である酸化物LiNi0.2Mn0.6、Li1.2Ni0.2Mn0.6
・化合物Li1.9Mn0.952.050.95、LiVPOF、FeF、FeF、CoF、CuF、NiF、0<x<0.2であり、MがCo、Ni、MnおよびCuからなる群から選択された少なくとも1種の元素であるFe1-xOF、
・0≦xであり、y≦0.5である酸化物LiNiCoMn1-x-y、0≦xであり、y≦0.5であり、0≦zであるLiNiCeCoMn1-x-y
により形成される群から選択される。
【0032】
有利には、工程(c)において、第2の多孔質電極層を前記多孔質無機層上に堆積させて、第1の多孔質電極層、多孔質無機層および第2の多孔質電極層を含む積層体を得、
(c1)前記第2の多孔質電極層が、電気泳動、好ましくはインクジェット印刷およびフレキソ印刷から選択される印刷法、および好ましくはロールコーティング、カーテンコーティング、ドクターブレードコーティング、押出スロットダイコーティング、ディップコーティングから選択されるコーティング法により形成される群から選択される技術によって第3のコロイド懸濁液から堆積され、前記第3のコロイド懸濁液が、2~100nm、好ましくは2~60nmの平均一次直径D50を有する第2の電極の活性物質PAもしくはPCの少なくとも1種の単分散一次ナノ粒子の集合体または凝集体のいずれかを含み、前記集合体または凝集体が、50~300nm、好ましくは100~200nmの平均直径D50を有し、すなわち前記第2の電極の活性物質PAまたはPCの少なくとも1種の非凝集一次粒子または非凝集一次粒子が200nm~10μm、好ましくは300nm~5μmの一次直径D50を有し、
(c2)次いで、工程(c1)で得られた前記層を加圧および/または加熱することによって圧密して多孔質層を得、任意に
(c3)次いで、工程(c2)で得られた前記多孔質層がその細孔上および細孔内に電子伝導性材料コーティングを受けて前記第2の多孔質電極を形成し、
前記第2の多孔質電極層が、一連の工程(c1)および(c2)、および必要に応じて(c3)を実施することによって前記第2の電子集電体上に堆積されてもよく、または第2の電極の前記層が、一連の工程(c1)および(c2)、および必要に応じて(c3)を実施することによって、中間基板上に予め堆積され、次いで前記中間基板から剥離されて前記多孔質無機層上に配置され、
前記第1の電極層が材料PAからなる場合には、前記第2の電極層は材料PCからなり、前記第1の電極層が材料PCからなる場合には、前記第2の電極層は材料PAからなる。
【0033】
有利には、第2の多孔質電極および多孔質セパレータの第2の層からなる第2のアセンブリが、第1の多孔質電極および多孔質セパレータの第1の層を含む第1のアセンブリ上に堆積され、その結果、前記第2のセパレータは、前記第1のセパレータ層上に堆積または配置されて、第1の多孔質電極層、多孔質無機層および第2の多孔質電極層を含む積層体を得る。
【0034】
有利には、前記第1の電極の細孔は50nm未満の平均直径を有し、かつ/または前記無機層の細孔は50nm未満の平均直径を有し、かつ/または前記第2の電極の細孔は50nm未満の平均直径を有する。
【0035】
有利には、前記積層体は、第1の多孔質電極層、多孔質セパレータおよび第2の多孔質電極層を含む。遊離には、この積層体には電解質、好ましくはリチウムイオン担体相が含浸されている。有利には、前記電解質、好ましくはリチウムイオン担体相は、
・少なくとも1種の非プロトン性溶媒および少なくとも1種のリチウム塩からなる電解質;
・少なくとも1種のイオン性液体またはイオン性ポリ液体および少なくとも1種のリチウム塩からなる電解質;
・少なくとも1種の非プロトン性溶媒および少なくとも1種のイオン性液体またはイオン性ポリ液体および少なくとも1種のリチウム塩の混合物;
・少なくとも1種のリチウム塩の添加によりイオン伝導性化されたポリマー;および
・液体電解質の添加によりポリマー相またはメソ多孔質構造のいずれかにおいてイオン伝導性化されたポリマー
により形成される群から選択され、
前記ポリマーが、好ましくはポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリジメチルシロキサン、ポリアクリロニトリル、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(フッ化ビニリデン)、PVDF-ヘキサフルオロプロピレンにより形成される群から選択される。
【0036】
有利には、前記材料PAはLiTi12であり、かつ/または前記材料PCはLiFePOであり、かつ/または前記材料EはLiPOである。
【0037】
有利には、前記材料PAはLiTi12であり、前記材料PCはLiMnであり、前記材料EはLiPOである。
【0038】
有利には、前記材料PAはLiTi12であり、前記材料PCはLiMn1.5Ni0.5であり、前記材料EはLiPOである。
【0039】
有利には、前記材料PAはLiTi12であり、前記材料PCはx+y+z=10であるLiNi1/xCo1/yMn1/zであり、前記材料EはLiPOである。
【0040】
有利には、前記多孔質無機層は、3~20μm、好ましくは5~10μmの厚さを有する。
【0041】
有利には、第1の電極の前記多孔質層は、10m~500m/gの比表面積を有する。
【発明の詳細な説明】
【0042】
1.定義
この文書の文脈において、粒子のサイズはその最大寸法によって定義される。「ナノ粒子」とは、少なくとも1つの寸法が100nm以下であるナノメートルサイズの任意の粒子または物体を意味する。
【0043】
この文書の文脈において、「電子伝導性酸化物」という用語は、電子伝導性酸化物および電子半導体酸化物を含む。
【0044】
この文書の文脈において、電子絶縁性の材料または層、好ましくは電子絶縁層およびイオン伝導層は、電気抵抗率(電子の通過に対する抵抗)が10Ω・cmより大きい材料または層である。「イオン性液体」とは、イオンを輸送できる任意の液体塩を意味し、融解温度が100℃未満であるという点ですべての溶融塩とは異なる。これらの塩の中には、室温では液体のままであり、非常に低い温度であっても固化しないものもある。このような塩は「室温イオン性液体」、略称RTILと呼ばれる。
【0045】
「メソ多孔質」材料は、その構造内に、ミクロ細孔(幅2nm未満)とマクロ細孔(幅50nm超)との間の中間サイズ、すなわち2~50nmのサイズの「メソ細孔」と呼ばれる細孔を有する任意の固体を意味する。この用語は、当業者にとって参考となる、IUPAC(国際純正・応用化学連合)によって採用された用語に対応している。したがって、「ナノ細孔」という用語は、例え上記で定義したメソ細孔がナノ粒子の定義の意味においてナノメートル寸法を有する場合でも、メソ細孔よりも小さいサイズの細孔が当業者によって「ミクロ細孔」と呼ばれていることを知っているため、ここでは使用しない。
【0046】
多孔性の概念(および上記で説明した用語)については、分析および特性評価に関する条約の収集物「Techniques de l'Ingenieur」のブックレットP 1050のF. Rouquerolらによる論文「Texture des materiaux pulverulents ou poreux」に記載されており;この論文では、多孔性の特性評価技術、特にBET法についても説明されている。
【0047】
本発明の意味の範囲内で、「メソ多孔質層」という用語は、メソ細孔を有する層を意味する。以下で説明するように、これらの層ではメソ細孔が総細孔容積に大きく寄与し、この状況は、以下の説明で用いられる「X体積%を超えるメソ多孔性のメソ多孔質層」という表現によって翻訳され、X%は、層の総体積に対して好ましくは25%より大きく、好ましくは30%より大きく、さらに好ましくは30~50%である。同じ指摘が、上記のIUPAC定義によるメソ細孔より大きい細孔にも当てはまる。
【0048】
「集合体」という用語は、IUPACの定義によれば、弱く結合した一次粒子の集合体を意味する。この場合、これらの一次粒子は、透過型電子顕微鏡によって測定できる直径を有するナノ粒子である。集合した一次ナノ粒子の集合体は、通常、当業者に知られている技術に従って、超音波の影響下で液相中の懸濁液中で破壊する(すなわち、一次ナノ粒子に還元する)ことができる。
【0049】
「凝集体」という用語は、IUPACの定義によれば、一次粒子または凝集体の強く結合した集合体を意味する。
【0050】
本発明の意味の範囲内で、「電解質層」という用語は、電気化学デバイス内の層を指し、このデバイスは、その意図された目的に従って動作することができる。一例として、前記電気化学デバイスがリチウムイオン二次電池である場合、「電解質層」という用語は、リチウムイオン担体相が含浸された「多孔質無機層」を指す。電解質層はイオン伝導体であるが、電気的には絶縁性である。
【0051】
電気化学装置における前記多孔質無機層は、当業者が用いる用語に従って、ここでは「セパレータ」とも呼ばれる。
【0052】
電極層も多孔質無機層であるが、本明細書では適宜、「多孔質電極層」または「第1の多孔質電極層」および「第2の多孔質電極層」または「多孔質陽極層」または「多孔質陰極層」と呼ばれる。
【0053】
特に明記しない限り、粒子および凝集体のサイズはD50で表される。
【0054】
2.電池デバイスを構成する層の概要
本発明の方法の本質的な特徴によれば、多孔質電極層および多孔質無機層は、好ましくは3つすべてがメソ多孔質であり、異なる方法、特に電気泳動、押出成形、ディップコーティング等のコーティング法、ロールコーティング、カーテンコーティング、スロットダイコーティングまたはドクターブレードコーティングによって、あるいはインクジェット印刷法またはフレキソ印刷等の印刷法によって、ナノ粒子、好ましくはナノ粒子の凝集体を含む濃縮懸濁液から堆積させることができる。
【0055】
各電極は集電体と表面接触している必要があり、集電体は金属導電性を有していなければならない。その厚さは、5~15μmであることが有利である。それは、有利には、巻かれたシートまたは電着されたシート(場合によってはポリマーシート基材上に付着された)の形態である。電池の製造中、集電体は、第1の電極層を堆積するための基板として用いることができ、積層体を熱圧着する前に電極層上に配置することもできる。
【0056】
陰極集電体は、モリブデン、タングステン、タンタル、チタン、クロム、ニッケル、ステンレス鋼、アルミニウム、電子伝導性カーボン(グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ等)からなる群から選択されるのが有利である。
【0057】
陰極層は多孔質であり、優れた電子伝導性、好ましくは金属伝導性を有する材料でコーティングされている必要がある。特定の実施形態では、陰極層はメソ多孔質である。
【0058】
本明細書で説明される他のすべての実施形態と組み合わせることができる有利な実施形態において、陰極材料はLiFePOである。この材料にはいくつかの利点を有する。この材料は高温でも安定であり、電解質に溶解しない(55℃超でマンガンを失うLiMnとは異なる)。しかしながら、この材料は電子絶縁体であり、以下に説明するように、陰極層を堆積した後、電子伝導性材料の薄層で陰極層をコーティングすることが有利である。この材料は、低電位で動作し、金属集電体を酸化する危険性がなく、そのため、他の陰極材料よりも高温での動作が可能である。同じ理由で、例えば希釈イオン性液体等、より多くの流体電解質配合物を用いることができ、より高い電位で動作する陰極では、特に高温において、これらの液体が陰極集電体を酸化する可能性がある。したがって、正極材料としてLiFePOを選択することにより、電池がより高温で耐久的に動作することが可能となる。
【0059】
セパレータは多孔質である必要がある。本明細書で説明される他のすべての実施形態と組み合わせることができる特定の実施形態において、セパレータ層はメソ多孔質である。その材料は、電極と接触しても安定した状態を維持する必要がある。有利な実施形態において、LiPOが用いられる。
【0060】
陽極層は多孔質である必要がある。本明細書で説明される他のすべての実施形態と組み合わせることができる特定の実施形態において、陽極層はメソ多孔質である。その材料は、LiTi12であり得る。この材料にはいくつかの利点を有する。陰極LiFePOと組み合わせることで、多くの電子回路の動作電圧と互換性のある約1.5Vの安定した電圧で動作する電池を設計することができる。これにより、電池出力電圧を電子回路が必要とする電圧に適合させるための集積回路レギュレータ(例えば、LDOタイプレギュレータ、低ドロップアウトレギュレータ)やDC/DCコンバータが不要になり、これはマイクロ電池にとって有利である。
【0061】
さらに、寸法的に安定した材料であるため、カプセル化の寿命が長くなる。安価であるというメリットもある。
【0062】
有利には、多孔質陽極層は、優れた電子伝導性、好ましくは金属伝導性を有する材料のコーティングを有し、これについては後述する。イオン伝導性を有する電子絶縁体の層をこのコーティングの上に堆積させることができる。
【0063】
陽極集電体は、モリブデン、タングステン、タンタル、チタン、クロム、銅、ステンレス鋼、アルミニウム、導電性カーボンからなる群から選択されることが有利である。電気泳動によって陽極層を堆積させる場合、銅は陽極集電体としては適さないことに留意されたい。同様に、電気泳動によって陰極層を堆積させる場合、チタンは陰極集電体としては適さない。これらの基板は、言及した他の基板のほとんどよりも安価であり、したがって実質的な経済的利点を有し、言及した他のすべての堆積技術を多孔質電極層に用いることができる。
【0064】
このセクション2で述べたことはすべて、多孔質層、より具体的にはメソ多孔質層に当てはまる。
【0065】
3.層の堆積と圧密の方法
多孔質電極またはセパレータの層を製造するには、一般に、粒子の懸濁液またはペーストの層が、任意の適切な技術によって、特に、電気泳動、押出成形、印刷法、および好ましくはインクジェット印刷またはフレキソ印刷、コーティング法、および好ましくはドクターブレードコーティング、ロールコーティング、カーテンコーティング、ディップコーティングまたはスロットダイコーティングによって形成される群から選択される方法によって基板上に堆積される。懸濁液は、通常インクの形態、すなわちかなり流動的な液体であるが、ペースト状の粘度を有していてもよい。堆積技術および堆積方法の実行は、懸濁液またはペーストの粘度に適合する必要があり、またその逆も同様である。
【0066】
一般に、本発明の文脈において、第1の電極層は、工程(a1)および(a2)、および任意に工程(a3)を連続的に実行することによって、電子集電体として機能することができる基板の表面上に堆積させることができる。あるいは、第1の電極の層は、工程(a1)において中間基板上にあらかじめ堆積され、乾燥され、次いで、工程(a2)において、第1の多孔性電極板を得るために、加圧および/または加熱による圧密化を受けるために、前記中間基板から剥離され、次いで、前記第1の電子集電体上に配置されてもよい。工程(a3)は任意であり、前記第1の電子集電体上への前記板の堆積の前または後に行うことができる。加圧および/または加熱による乾燥および圧密の間、前記第1の電極層は収縮を受け、この収縮は、前記第1の電極層の厚さによっては、後者が基板上に固定された場合、前記層を損傷する可能性がある。
【0067】
同様に、無機材料Eの多孔質無機層は、一連の工程(b1)および(b2)を実行することによって、前記第1の電極層上に堆積されてもよく、あるいは、無機材料Eの無機層は、工程(b1)において中間基板上に予め堆積され、乾燥させた後、前記中間基板から剥離されて、前記第1の電極層上に配置される前または後に、加圧および/または加熱により圧密化されて、多孔質無機層が得られる。
【0068】
中間基板を用いたこれらの実施形態は、10μmを超える厚さ、より具体的には20μmを超える厚さを有する層の製造に特に適している。このような厚い層は、1mAhを超える容量を有する電池に有利に用いられる。
【0069】
一般に、本発明の文脈において、かなり広いサイズ範囲を有する粒子PA、PCまたはEの懸濁液またはペーストを用いることができる。
【0070】
かなり薄い層(典型的には約10μmを超えない)の製造に特に適した第1の実施形態によれば、ナノ粒子が用いられる。その一次サイズは、約2~150nmで構成され得る。これらのナノ粒子は凝集体を形成し、そのサイズは典型的には通常50~300nmで構成される。このようにしてメソ多孔質層が得られる。例えば、約100~約200nmのサイズを有する凝集体を、約10~約60nmの範囲の一次サイズを有するナノ粒子とともに用いることが可能である。一次粒子の粒度分布は、有利には単分散である。
【0071】
かなり厚い層(典型的には10μmより大きい、特に約20μmより大きい厚さを有する)の製造に特に適している第2の実施形態によれば、より大きな粒子が用いられ、その粒径は、高容量電池に使用可能な数十μmより大きい大きさの層の場合、1μm、さらには5μm、さらには10μmに達し得る。出発懸濁液中では、これらの粒子は通常は凝集しておらず、それらの粒子サイズは有利には単分散である。この実施形態は、懸濁液またはペーストの堆積が中間基板上で実行される場合に特に適している。
【0072】
これらの厚い層は、電池、特にボタン電池またはSMD部品の形態の電池等、1mAhを超える容量または1mAhを超えない容量を有する電池の製造に特に適している。これらの厚い層は、単一セル、すなわち「電池セル」と呼ばれる単一セルを含む電池に特に適している。これらの電池において、第1の電極(陽極および/または陰極)の多孔質層は、有利には4~400μmの厚さを有する。
【0073】
上述した懸濁液またはペーストからの堆積後、堆積された層は乾燥される。乾燥された層は、次いで所望のセラミック多孔質構造を得るために圧密される。この圧密化については後述する。これは、熱処理および/または機械的圧縮処理を含み、場合によっては熱機械的処理、典型的には熱圧着を含む。この熱的、機械的または熱機械的処理中に、電極層から有機成分や残留物(粒子、結合剤、界面活性剤の懸濁液の液相等)が除去され、無機層(セラミック)となる。板の圧密は、中間基板がこの処理中に劣化する危険性があるため、中間基板から分離した後に実行することが好ましい。一つの実施形態において、機械的圧縮処理は熱処理の前に実行される。
【0074】
圧密条件、特にその温度、時間、加える圧力は、特に材料、粒子のサイズ、結晶状態に依存する。この処理中に、粒子は形状を変化させ、相互拡散によって連続的な多孔質ネットワークを形成する(「ネッキング」として知られる現象)。結晶性が向上し、欠陥の数が減少するという意味で、結晶状態も変化する。非晶質ナノ粒子は結晶化する可能性があるが、そのためには比較的高い温度が必要である。そのため、この段階で集電体が存在する場合は、この処理温度に適合したものを選択する必要がある。
【0075】
特に、インクによって基板上に堆積されたナノ粉末が非晶質であり、かつ/または多くの点欠陥を有する場合、圧密に加えて、材料を正しい化学量論で正しい結晶相に再結晶化させる熱処理を実行する必要があることに留意されたい。この目的のためには、一般に、空気中で500~700℃の温度で熱処理を行う必要がある。集電体はこの種の熱処理に耐える必要があり、ステンレス鋼、チタン、モリブデン、タングステン、タンタル、クロムおよびそれらの合金等、高温処理に耐性のある材料を用いる必要がある。
【0076】
ナノ粒子の粉末および/または凝集体が結晶化された形で用いられる場合、特に適切な相および結晶構造を有するハイドロゾル熱合成によって得られたナノ粉末の場合は、制御された雰囲気下で圧密の熱処理を用いることが可能であり、これによりニッケル、銅、アルミニウム等の希少性の低い基板の使用が可能になる。この合成経路では、一次粒子径が非常に小さいナノ粒子を得ることができるため、圧密熱処理の温度および/または時間を350~500℃に近い値まで下げることも可能になり、基材の選択肢が広がる。
【0077】
しかしながら、擬水熱合成と呼ばれる一部の合成では、後で再結晶化する必要がある非晶質ナノ粒子が生成される。
【0078】
空気中での圧密熱処理を行うことの結果の1つは、電極の良好な電子伝導を確保するために電極内にカーボンブラック粒子を存在させることができなくなることである。実際、これらの熱処理中(特に温度が約500℃の値に達した場合)、炭素はCOの形で焼成される危険性がある。
【0079】
圧密熱処理により、電極層を完全に乾燥させることもできる。したがって、水性溶媒および/またはエタノール等の有機溶媒を用いることも可能である。
【0080】
電極層の堆積、乾燥および圧密は、これから説明する特定の問題を引き起こす可能性がある。これらの問題は、層の圧密中に収縮が起こり、内部応力が発生するという事実に部分的に関係している。
【0081】
第1の実施形態によれば、電極の層はそれぞれ、集電体として機能する基板上に堆積される。ナノ粒子の懸濁液またはナノ粒子の凝集体を含む層は、上述した堆積技術によって両面に堆積させることができる。
【0082】
電極の厚みを増やそうとすると、圧密によって生じる収縮が、層のひび割れや、基板(寸法が固定されている)とセラミック電極との界面でのせん断応力につながることが観察される。このせん断応力が閾値を超えると、層が基板から剥離する。
【0083】
この現象を回避するには、連続した堆積-焼結操作により電極の厚さを増加させることが好ましい。層を堆積する第1の実施形態のこの第1の変形は、良好な結果を与えるが、あまり生産性が高くない。あるいは、第2の変形例では、より厚い層が、穿孔された基板の両面に堆積される。表と裏の2つの層が穿孔部で接触するように、穿孔部は十分な直径を有していなければならない。したがって、圧密中、基板の穿孔を通して接触している電極材料のナノ粒子および/またはナノ粒子の凝集体が互いに溶接し、付着点(2つの面の堆積物間の溶接点)を形成する。これにより、圧密工程中の基板上の層の接着力の損失が制限することができる。
【0084】
第2の実施形態によれば、電極層は集電体として機能することができる基板上ではなく、中間の一時的な基板上に堆積される。特に、ナノ粒子および/またはナノ粒子の凝集体(すなわち、流動性が低く、好ましくはペースト状)がより濃縮された懸濁液から、かなり厚い層(「グリーンシート」と呼ばれる)を堆積することが可能である。これらの厚い層は、例えば、コーティング法、好ましくはドクターブレードコーティングまたはスロットダイを通した押出成形によって堆積される。前記中間基材は、ポリマーシート、例えばポリ(エチレンテレフタレート)、略称PET、またはマイラーであり得る。乾燥時に、これらの層はひび割れない。熱処理による圧密のために(そしてできればすでに乾燥のために)、それらを基材から取り外すことができ、このようにして、「生の」電極板と呼ばれる電極板が切断後に得られ、この電極板は、焼成熱処理および部分焼結後に、多孔質で自立支持性のセラミック板となる。この実施形態は、かなり厚い板の製造に特に適している。硬質の基板上に堆積されないため、圧密処理中に収縮が生じ、亀裂が発生する危険性がない。
【0085】
次いで、3つの層の積層体、すなわち、集電体として機能することができる金属シートによって分離された同じ極性の電極の2つの板が製造される。次いで、この積層体は、加圧処理と加熱処理とを好ましくは同時に含む熱機械処理によって組み立てられる。あるいは、セラミックプレートと金属シートとの間の結合を促進するために、界面を電子伝導性結合を可能にする層でコーティングすることもできる。この層は、多孔質電極と金属シートとの間にセラミック溶接部を形成する電子伝導性材料の粒子が充填されたゾルゲル層(好ましくは、熱処理後に電極の化学組成を得ることができるタイプのもの)とすることができる。この層は、非焼結電極ナノ粒子の薄層、または導電性接着剤(例えばグラファイト粒子を充填)の薄層、または低融点金属の金属層、または導電性接着剤で構成することもできる。
【0086】
前記金属シートは、好ましくは圧延シート、すなわち圧延によって得られる。圧延の後に、任意に、冶金学の用語にしたがって、(全体的または部分的な)軟化焼鈍または再結晶化である最終焼鈍を行うことができる。電気化学的に堆積されたシート、例えば電着銅シートまたは電着ニッケルシート、あるいはグラファイトシートを用いることも可能である。
【0087】
いずれの場合も、有機結合剤を用いることなく多孔質のセラミック電極が得られ、電子集電体(典型的には金属導電性を有する集電体)の両側に配置される。
【0088】
本発明の方法の変形例では、金属導電性を有する集電体を用いることなく電池が製造される。これは、電極板が電極の端での電子の通過を保証するのに十分な導電性を備えている場合に可能である。後述するように、多孔質表面が電子伝導性層でコーティングされている場合、十分な電子伝導性が観察され得る。
【0089】
層堆積工程中に、特定の有機結合剤および/または有機溶媒を用いることが可能であることに留意されたい。これらの有機物質は、その後、酸化雰囲気中での熱処理によって除去され、この処理は熱分解である。
【0090】
このセクション3で述べたことはすべて、多孔質層、より具体的にはメソ多孔質層に当てはまる。
【0091】
4.電極の多孔質ネットワーク内での薄い電子伝導体層の堆積
この工程は任意である。薄い電子伝導体層により、電極層の直列抵抗が減少する。厚さが数μm(通常は2~5μm)を超えない電極の場合、この薄い電子導体層の堆積は必須ではない。一方、電池の出力を改善するため、および/または電極の厚さを増大させる(例えば10μmを超える)ために、この電子伝導性薄層の堆積は、本発明の好ましい実施形態を表す。一例として、この電子伝導性薄層は、上記セクション3で述べた厚い単一電池の場合に非常に有利であるが、それは、そうしないと直列抵抗が大きすぎるからである。
【0092】
本発明のこの実施形態によれば、電子伝導性材料コーティングが、多孔質電極層の細孔上および細孔内に堆積される。有利には、2つの多孔質層のうちの少なくとも一方、好ましくは材料PCからなる多孔質層は、その細孔上および内部に電子伝導性材料コーティングを含む。この電子伝導性材料は、以下に示す材料PCからなる多孔質層(多孔質陰極層)および/または以下に示す材料PAからなる多孔質層(多孔質陽極層)に堆積させることができる。この電子伝導性材料は、有利には、以下に示す材料PCからなる多孔質層(多孔質陰極層)上に堆積される。多孔質陰極層(つまり陰極)の細孔上および内部に導電性材料をコーティングすることで、寿命を低下させる陰極表面での寄生反応をブロックすることができる。マンガンベースの陰極上にそのようなコーティングが存在することにより、電解質中のMn2+の溶解を回避することができる。
【0093】
この電子伝導性材料は、原子層堆積技術(略称ALD)によって、または液体前駆体から堆積させることができる。前記電子伝導性材料は、炭素または電子伝導性酸化物材料であり得る。その厚さは、典型的には0.5~20nm程度であり、好ましくは0.5~10nmである。このコーティングは実質的に細孔の表面全体を覆っている。
【0094】
液体前駆体から炭素層を堆積させるには、メソ多孔質層を炭素前駆体が豊富な溶液(例えば、スクロース等の炭水化物の溶液)に浸漬することができる。次いで、層を乾燥させ、好ましくは窒素下等の不活性雰囲気下で、炭素前駆体を熱分解するのに十分な温度で熱処理する。こうして、非常に薄い炭素のコーティングが多孔質層の内面全体に完全に分散して形成される。このコーティングにより、電極の厚さに関係なく、電極に良好な電子伝導性が付与される。電極は有機残留物がなく完全に固体であり、さまざまな熱処理によって課せられる熱サイクルに耐えられるため、この処理は焼結後に可能であることに留意されたい。
【0095】
この電子伝導層は電池の直列抵抗を低減させ、そうでなければ高すぎる抵抗を示す比較的厚い電極にとって非常に有利である。これにより、このような電池で高パルス電力を供給できる可能性も高まる。
【0096】
この電子伝導層は、陽極と電解質との寄生反応の可能性から高温の陽極表面を保護することもできる。
【0097】
電子伝導性材料の層は、非常に有利には、前記電子伝導性材料の前駆体を含む液相に浸漬し、次いで熱処理によって前記電子伝導性材料の前駆体を電子伝導性材料に変換することによって形成することができる。この方法はシンプル、高速、実装が容易で、原子層堆積技術ALDよりも安価である。
【0098】
液体前駆体から電子伝導性酸化物材料の層を堆積させるには、多孔質層(すなわち、陰極または陽極等の電極の多孔質ネットワーク)を、前記電子伝導性酸化物材料の前駆体が豊富な溶液に浸漬することができる。次いで、層を乾燥させ、電子伝導性酸化物材料の前駆体を電子伝導性酸化物材料に変換するために、好ましくは空気中または酸化雰囲気下で行われる焼成等の熱処理に供する。
【0099】
有利には、電子伝導性酸化物材料の前駆体は、好ましくは空気中または酸化雰囲気下で行われる焼成等の熱処理後に、電子伝導性酸化物を形成することができる1種以上の金属元素を含む有機塩から選択することができる。これらの金属元素、好ましくはこれらの金属カチオンは、スズ、亜鉛、インジウム、ガリウム、またはこれらの元素の2種もしくは3種もしくは4種の混合物から有利に選択することができる。有機塩は、好ましくは空気中または酸化性雰囲気下で行われる焼成等の熱処理後に、電子伝導性酸化物を形成することができる少なくとも1種の金属元素のアルコキシド、好ましくは空気中または酸化性雰囲気下で行われる焼成等の熱処理後に、電子伝導性酸化物を形成することができる少なくとも1種の金属元素のシュウ酸塩、好ましくは空気中または酸化性雰囲気下で行われる焼成等の熱処理後に、電子伝導性酸化物を形成することができる少なくとも1種の金属元素の酢酸塩から選択される。
【0100】
有利には、前記電子伝導性材料は電子伝導性酸化物材料であり、好ましくは:
-酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム(In)、酸化ガリウム(Ga)、これらの酸化物の2種の混合物、例えば、酸化インジウム(In2O)および酸化スズ(SnO)の混合物に相当するインジウム-スズ酸化物、これらの酸化物の3種の混合物、またはこれらの酸化物の4種の混合物、
-好ましくはガリウム(Ga)および/またはアルミニウム(Al)および/またはホウ素(B)および/またはベリリウム(Be)および/またはクロム(Cr)および/またはセリウム(Ce)および/またはチタン(Ti)および/またはインジウム(In)および/またはコバルト(Co)および/またはニッケル(Ni)および/または銅(Cu)および/またはマンガン(Mn)および/またはゲルマニウム(Ge)によりドープされた、酸化亜鉛をベースとするドープされた酸化物、
-好ましくはスズ(Sn)および/またはガリウム(Ga)、および/またはクロム(Cr)および/またはセリウム(Ce)および/またはチタン(Ti)および/またはインジウム(In)および/またはコバルト(Co)および/またはニッケル(Ni)および/または銅(Cu)および/またはマンガン(Mn)および/またはゲルマニウム(Ge)によりドープされた、酸化インジウムをベースとするドープされた酸化物、
-好ましくはヒ素(As)および/またはフッ素(F)および/または窒素(N)および/またはニオブ(Nb)および/またはリン(P)および/またはアンチモン(Sb)および/またはアルミニウム(Al)および/またはチタン(Ti)および/またはガリウム(Ga)および/またはクロム(Cr)および/またはセリウム(Ce)および/またはインジウム(In)および/またはコバルト(Co)および/またはニッケル(Ni)および/または銅(Cu)および/またはマンガン(Mn)および/またはゲルマニウム(Ge)によりドープされた酸化スズ
から選択される。
【0101】
アルコキシド、シュウ酸塩または酢酸塩から電子伝導性材料、好ましくは電子伝導性酸化物材料の層を得るために、多孔質層(すなわち、陰極または陽極等の電極の多孔質ネットワーク)を、目的の電子伝導性材料の前駆体が豊富に含まれる溶液に浸漬させることができる。次いで、電極を乾燥させ、目的の電子伝導性材料の前駆体を変換(焼成)させるのに十分な温度で熱処理する。このようにして、電子伝導性材料コーティング、好ましくは電子伝導性酸化物材料コーティング、より好ましくはSnO、ZnO、In、Ga、またはインジウム-スズ酸化物が、電極の内面全体にわたって分布して形成される。
【0102】
多孔質層の細孔上および内部に、炭素コーティングの代わりに酸化物の形態の電子伝導性コーティングが存在することにより、電極は高温でより優れた電気化学的性能を発揮し、電極の安定性が大幅に向上する。炭素コーティングの代わりに酸化物の形態の電子伝導性コーティングを用いることにより、特に、最終電極における電子伝導性が向上する。実際、この電子伝導性酸化物の層が多孔質層または板の細孔上および内部に存在することにより、特に電子伝導性コーティングが酸化物の形態であるという事実により、電極の最終特性を改善することができ、特に、電極の耐電圧性、温度耐性を改善することができ、電極の電気化学的安定性を改善することができ、特に、電極が液体電解質と接触している場合、電極が厚い場合であっても、電極のバイアス抵抗を低減することができる。電極が厚い場合、および/または多孔質層の活性物質の抵抗が高すぎる場合、電極活性物質の多孔質層の細孔上および内部に、酸化物、特にIn、SnO、ZnO、Gaタイプまたはこれらの酸化物の1種以上の混合物の形態の電子伝導性コーティングを用いることが特に有利である。多孔質層の細孔上および内部にZnOコーティングが存在することにより、電極は高温で優れた電気化学的性能を発揮し、電極の安定性および寿命が大幅に向上する。
【0103】
本発明の電極は多孔質であり、好ましくはメソ多孔質であり、その比表面積は大きい。電極の比表面積の増大により交換表面積が増大し、その結果、電池の出力が増大するが、寄生反応も加速する。多孔質層の細孔上および内部に酸化物の形態で電子伝導性コーティングが存在すると、このような寄生反応をブロックすることができる。
【0104】
さらに、比表面積が非常に大きいため、酸化物の形態の電子伝導性コーティングが電極の電子伝導性に及ぼす影響は、堆積された導電性コーティングの厚さが小さくても、比表面積が小さい従来の電極の場合よりもはるかに顕著になる。これらの電子伝導性コーティングは、多孔質層の細孔上および細孔内に堆積され、電極に優れた電子伝導性を付与する。
【0105】
それは本質的に、活性電極材料からなる多孔質層または板と、前記多孔質層または板の細孔上および内部に配置された酸化物の形態の電子伝導性コーティングとの相乗的な組み合わせであり、電極の最終特性を改善することができ、特に、電極の内部抵抗を増大させることなく厚い電極を得ることができる。
【0106】
さらに、多孔質層の細孔上および内部の酸化物の形態の電子伝導性コーティングは、炭素コーティングよりも容易にかつ安価に実現できる。実際、酸化物の形態の電子伝導性材料からなるコーティングの場合、炭素コーティングとは異なり、電子伝導性材料の前駆体の電子伝導性コーティングへの変換を不活性雰囲気下で行う必要がない。
【0107】
任意に、この電子伝導層の上、すなわち前記電子伝導材料コーティングのこの層の上に、電子絶縁性で良好なイオン伝導性を有する層を堆積することが可能である。その厚さは通常1~20nmの範囲である。イオン伝導性を有するこの電子絶縁層により、電極(陽極および/または陰極)の温度耐性が向上し、最終的には電池の温度耐性が向上する。
【0108】
前記イオン伝導性および電子絶縁性の層は、無機または有機の性質のものであり得る。より具体的には、無機層の間では、例えば、リチウムイオンを伝導する酸化物、リン酸塩、またはホウ酸塩を用いることが可能であり、有機層の間では、ポリマー(例えば、任意にリチウム塩を含むPEO、またはNafion(商標)、CAS番号31175-20-9等のスルホン化テトラフルオロエチレンコポリマー)を用いることが可能である。
【0109】
この層または層のセットにはさまざまな機能がある。第1の機能は、LiMnまたはLiFePO電極の固有の導電率がそれほど高くないため、電極の導電率を向上させることである。第2の機能は、LiMn電極ではマンガンが特定の液体電解質に、特に高温で溶解する危険性があるため、電極からのイオンの溶解および電解質へのイオンの移動を制限することである。そして最後に、本発明で用いられる方法により、前記イオン伝導性および電子絶縁性の層の堆積がコレクタの金属表面まで広がり、コレクタを腐食から保護する。電子伝導性層のみが存在する場合には、電極の導電性を向上させる機能と電極の溶解を制限する機能が確保される。電子伝導性層がイオン伝導性層で覆われている場合、上述したように、イオン伝導性層が主に保護機能を果たすことになる。
【0110】
要約すると、これらのコーティングを多孔質電極層の細孔上および内部に堆積させると、電子伝導性の向上と高温での電解質への溶解に対する保護という2つの効果が求められる。これら2つの効果は、単一のコーティング、すなわち電子伝導性層で得られるか、または、単一のコーティングでは両方の効果を得るのに十分ではない場合には2つの層が堆積され、例えば電子伝導性を得るために第1層と、高温保護を達成するために第2のイオン伝導体および電子絶縁体層が堆積される。
【0111】
5.液体電解質の含浸
本明細書では、この含浸については、メソ多孔質層について説明する。特に明記しない限り、それは、より一般的に、メソ多孔質よりも大きな細孔を有する多孔質層にも適用される。
【0112】
前記多孔質セパレータ層がその電解質機能を果たすことができるようにするためには、可動カチオンを運ぶ液体を含浸させる必要があり、リチウムイオン電池の場合、このカチオンはリチウムカチオンである。一般に、このリチウムイオン担体相は、
-少なくとも1種の非プロトン性溶媒および少なくとも1種のリチウム塩からなる電解質、
-少なくとも1種のイオン性液体またはイオン性ポリ液体および少なくとも1種のリチウム塩からなる電解質、
-少なくとも1種の非プロトン性溶媒および少なくとも1種のイオン性液体またはイオン性ポリ液体および少なくとも1種のリチウム塩の混合物、
-少なくとも1種のリチウム塩の添加によりイオン伝導性化されたポリマー、および
-液体電解質の添加によりポリマー相またはメソ多孔質構造のいずれかにおいてイオン伝導性化されたポリマー
により形成される群に属し、
前記ポリマーが、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリジメチルシロキサン、ポリアクリロニトリル、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(フッ化ビニリデン)、PVDF-ヘキサフルオロプロピレンにより形成される群から選択される。
【0113】
含浸は、方法のさまざまな工程で行うことができる。含浸は、特に積層され、熱圧縮されたセルに対して、すなわち電池が完成した後に行うことができる。カプセル化後に切断端から行うこともできる。より具体的には、第1の多孔質電極層、多孔質セパレータおよび第2の多孔質電極層を含む積層体に前記液体電解質が含浸される。液体電解質は毛細管現象によってメソ多孔質層の多孔質に瞬時に入り込み、メソ多孔質構造内に封入されたままになる。前記イオン性液体は、室温で溶融塩(これらの製品は、RTIL、室温イオン性液体という名称で知られている)、または室温で固体であるイオン性液体であり得る。室温では固体であるイオン性液体を加熱して液化し、メソ多孔質構造に含浸させる必要があり、メソ多孔質構造に浸透した後に固化される。本発明の文脈においては、RTILが好ましい。
【0114】
前記イオン伝導性ポリマーは、溶融してリチウム塩と混合することができ、次いで、この溶融相をメソ多孔性に含浸させることができる。同様に、前記ポリマーは室温で液体であってもよく、あるいは固体であってもよく、その後、メソ多孔質構造に含浸させるために加熱されて液体となる。
【0115】
リチウムイオンキャリア相は、イオン性液体を含む電解液であり得る。イオン性液体は、アニオンと結合したカチオンからなり、このアニオンおよびカチオンは、蓄電池の動作温度範囲でイオン性液体が液体状態になるように選択される。イオン性液体は、熱安定性が高く、可燃性が低く、不揮発性で毒性が低く、電極材料として用いることができるセラミックスの濡れ性が良好であるという利点を有する。
【0116】
このイオン性液体のカチオンは、好ましくは、下記のカチオン性化合物およびカチオン性化合物のファミリーにより形成される群から選択される:イミダゾリウム(1-ペンチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、略称PMIM等)、アンモニウム、ピロリジニウム、かつ/またはこのイオン性液体のアニオンは、好ましくは、下記のアニオン性化合物およびアニオン性化合物のファミリーにより形成される群から選択される:ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(トリフルオロスルホニル)イミド、トリフルオロメチルスルホネート、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロリン酸、4,5-ジシアノ-2-(トリフルオロメチル)イミダゾリウム(略称TDI)、ビス(オキサレート)ボレート(略称BOB)、オキサリルジフルオロボレート(略称DFOB)、ビス(マンデラート)ボレート(略称BMB)、ビス(ペルフルオロピナコラト)ボレート(略称BPFPB)。
【0117】
本発明の文脈において、イオン性液体は電池に優れた高温耐性を付与する。これらの条件下では、望ましくないマンガンの溶解が大幅に遅くなるため、LiMnベースの陰極を用いる場合にも、これらの使用が推奨される。この陰極材料は4.2V程度の高電位で動作するため、コレクタの金属表面が腐食するという問題が生じ、この酸化腐食の速度は、電位、温度および電解質の性質に依存する。この腐食は、溶媒を用いることなくイオン性液体を用いる場合、およびイオン性液体が硫黄を含まない分子で構成される場合に遅くすることができ、そのため、イオン性液体では、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(一般に「LiBOB」と略される、CAS番号244761-29-3)、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(一般に「LiDFOB」と略される、CAS番号409071-16-5)、リチウム4,5-ジシアノ-2-(トリフルオロメチル)イミダゾール(一般的に「LiTDI」と略される、CAS番号761441-54-7)」等の硫黄を含まないリチウム塩が好ましい。この腐食は明らかに金属表面の性質にも依存しており、そのためモリブデン、タングステンおよびチタンは特に耐性を有する。
【0118】
一方、LiFePO陰極では、この陰極材料の動作電位が約3.0Vであり、この値では金属コレクタに腐食が観察されないため、電解質の液相の配合に溶媒を用いることができる。
【0119】
一例として、本発明の文脈で用いることができるいくつかの電解質は、N-ブチル-N-メチル-ピロリジニウム4,5-ジシアノ-2-(トリフルオロメチル)イミダゾール(Pyr14TDI)を含む電解質、1-メチル-3-プロピルイミダゾリウム4,5-ジシアノ-2-(トリフルオロメチル)イミダゾリド(PMIM-TDI)およびリチウム4,5-ジシアノ-2-(トリフルオロメチル)イミダゾリド(LiTDI)を含む電解質である。PYR14TFSIおよびLiTFSIも用いることができる。
【0120】
有利には、イオン性液体は、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(TFSI)および/またはビス(フルオロスルホニル)イミド(FSI)型のアニオンと結合した1-エチル-3-メチルイミダゾリウム型(EMIまたはEMIMとも呼ばれる)および/またはn-プロピル-n-メチルピロリジニウム(PYR13 とも呼ばれる)および/またはn-ブチル-n-メチルピロリジニウム(PYR14 とも呼ばれる)のカチオンであり得る。有利な実施形態において、液体電解質は少なくとも50質量%のイオン性液体を含有し、イオン性液体は好ましくはPyr14TFSIである。
【0121】
これらのイオン性液体に用いることができる他のカチオンとしては、PMIMも挙げられる。これらのイオン性液体に用いることができる他のアニオンとしては、BF 、PF 、BOB-、DFOB、BMB、BPFPBも挙げられる。電解質を形成するには、溶媒として機能するイオン性液体またはγ-ブチロラクトン等の溶媒にLiTFSI等のリチウム塩を溶解することができる。γ-ブチロラクトンは、イオン性液体の結晶化を防止し、特に低温においてイオン性液体の動作温度範囲を拡大する。有利には、多孔質陰極がリン酸リチウムを含む場合、リチウムイオン担体相は、LiBHまたはLiBHとLiCl、LiIおよびLiBrから選択される1種以上の化合物との混合物等の固体電解質を含む。LiBHはリチウムの良導体であり、融点が低いため、特に浸漬による多孔質電極への含浸が容易である。その極度の還元特性により、LiBHは電解質としてはほとんど用いられない。多孔質リン酸リチウム電極の表面に保護膜を用いることにより、LiBHによる正極材料の還元が防止され、その劣化が回避される。
【0122】
一般に、リチウムイオン担体相は、有利には、10~40重量%の溶媒、好ましくは30~40重量%の溶媒、より一層好ましくは30~40重量%のγ-ブチロラクトン、グライムまたはポリカーボネートを含む。有利な実施形態において、リチウムイオン担体相は、50質量%を超える少なくとも1種のイオン性液体と50%未満の溶媒とを含み、これにより、このようなリチウムイオン担体相を含む電池の故障の場合における安全性および燃焼の危険性が制限される。
【0123】
有利な実施形態において、リチウムイオン担体相は:
-LiTFSI、LiFSI、LiBOB、LiDFOB、LiBMB、LiBPFPBおよびLiTDIにより形成される群から選択されるリチウム塩またはリチウム塩の混合物であって:リチウム塩濃度は、好ましくは0.5~4mol/Lであり;出願人は、高濃度のリチウム塩を含む電解質を用いることにより非常に急速な充電性能が促進されることを発見した;
-質量含有量が40%未満、好ましくは20%以下である溶媒または溶媒の混合物であって;該溶媒は、例えば、γ-ブチロラクトン、ポリカーボネート、グライムであり得る;
-頭字語TDIで知られる4,5-ジシアノ-2-(トリフルオロメチル)イミダゾール塩、または頭字語VCで知られるビニルカーボネート等の、界面を安定させ、寄生反応を制限するための任意の添加剤
を含む。
【0124】
別の実施形態において、リチウムイオン担体相は:
-30~40質量%の溶媒、好ましくは30~40質量%のγ-ブチロラクトンまたはPCまたはグライム、および
-50質量%を超える少なくとも1種のイオン性液体、好ましくは50質量%を超えるPYR14TFSI
を含む。
【0125】
一例として、リチウムイオン担体相は、PYR14TFSI、LiTFSIおよびγ-ブチロラクトンを含む電解液、好ましくは約90質量%のPYR14TFSI、0.7MのLiTFSI、2%のLiTDIおよび10質量%のγ-ブチロラクトン10を含む電解液であり得る。
【0126】
6.いくつかの特に有利な電池の説明
本発明の方法を用いて製造することができるいくつかの特に有利な電池をここで説明する。
【0127】
第1の有利な実施形態は、
約1μm~約10μmの厚さを有し、約35%~約60%のメソ多孔性多孔率を有し、好ましくはその細孔上および内部に電子伝導性材料コーティングの層(金属導電性を有する炭素層、または好ましくはIn、SnO、ZnO、Gaおよびこれらの酸化物の1種以上の混合物から選択される電子伝導性酸化物材料コーティングの層)を含み、メソ多孔質表面全体にわたって数nmの厚さを有するLiFePO陰極;
約1μm~約10μmの厚さを有し、約35~約60%のメソ多孔性多孔率を有するLiPOセパレータ;
約1μm~約10μmの厚さを有し、約35%~約60%のメソ多孔性多孔率を有し、好ましくはその細孔上および内部に電子伝導性材料コーティングの層(金属導電性を有する炭素層、または好ましくはIn、SnO、ZnO、Ga2Oおよびこれらの酸化物の1種以上の混合物から選択される電子伝導性酸化物材料コーティングの層)を含み、メソ多孔質表面全体にわたって数nmの厚さを有するLiTi12陽極
を備えるマイクロ電池である。
【0128】
電子伝導性材料コーティングの層は、層が厚すぎない限り、すなわち、少なくとも電極の厚さが約5μmまたは6μm未満である限り不要である。
【0129】
電解質は、イオン性液体、例えば、EMIM-TFSI+LiFSIまたはPyr14TFSI+LiTFSIであり得る。
【0130】
このような電池は、約-40℃~約+125℃の特に広い温度範囲で動作する。このような電池は非常に急速に充電することができ、3分以内に全容量の約80%まで充電することができる。また、このような電池は熱暴走の危険性がない。
【0131】
第2の有利な実施形態は、
2μm~約10μmの厚さを有し、約35%~約60%のメソ多孔性多孔率を有し、好ましくはその細孔上および内部に電子伝導性材料コーティングの層(炭素層、または好ましくはIn、SnO、ZnO、Ga2Oおよびこれらの酸化物の1種以上の混合物から選択される電子伝導性酸化物材料コーティングの層)を含み、メソ多孔質表面全体にわたって約1nmの厚さを有し、さらにNafion型ポリマーフィルムで約2nm覆われているLiMn陰極;
約1μm~約10μmの厚さを有し、約35%~約60%のメソ多孔性多孔率を有するLiPOセパレータ;
約2μm~約10μmの厚さを有し、約35%~約60%のメソ多孔性多孔率を有し、好ましくはその細孔上および内部に電子伝導性材料コーティングの層(炭素層、または好ましくはIn、SnO、ZnO、Ga2Oおよびこれらの酸化物の1種以上の混合物から選択される電子伝導性酸化物材料コーティングの層)を含み、メソ多孔質表面全体にわたって約1~2の厚さを有するLiTi12陽極
によって形成されるマイクロ電池である。
【0132】
電解質は、イオン性液体、例えば、EMIM-TFSI+LiFSIまたはPr14TSFI+LiTDIまたはPyr14TFSI+LiTFSIであり得る。後者は流動性が低く(多くの場合、適切な溶媒での希釈が必要)、約5.0Vまで安定し、前者は約4.7Vまで、後者は最大4.6Vまで安定する。
【0133】
このような電池は、約-40℃~約+70℃で動作する。このような電池は非常に急速に充電することができ、3秒以内に全容量の約80%まで充電することができる。また、このような電池は熱暴走の危険性がない。
【0134】
第3の有利な実施形態は、
約1μm~約10μmの厚さを有し、約35%~約60%のメソ多孔性多孔率を有し、好ましくはその細孔上および内部に電子伝導性材料コーティングの層(金属伝導性を有する炭素層、または好ましくはIn、SnO、ZnO、Ga2Oおよびこれらの酸化物の1種以上の混合物から選択される電子伝導性酸化物材料コーティングの層)を含み、メソ多孔質表面全体にわって数nmの厚さを有するLiMn1.5Ni0.5陰極;
約1μm~約10μmの厚さを有し、約35%~約60%のメソ多孔性多孔率を有するLiPOセパレータ;
約1μm~約10μmの厚さを有し、約35%~約60%のメソ多孔性多孔率を有し、好ましくはその細孔上および内部に電子伝導性材料コーティングの層(金属伝導性を有する炭素層、または好ましくはIn、SnO、ZnO、Ga2Oおよびこれらの酸化物の1種以上の混合物から選択される電子伝導性酸化物材料コーティングの層)を含み、メソ多孔質表面全体にわたって数nmの厚さを有するLiTi12陽極
を備えるマイクロ電池である。
【0135】
電子伝導性材料コーティングの層は、層が厚すぎない限り、すなわち、少なくとも電極の厚さが約5μmまたは6μm未満である限り不要である。
【0136】
電解質は、イオン性液体、例えば、EMIM-TFSI+LiFSIまたはPyr14TFSI+LiTFSIであり得る。
【0137】
このような電池は、約-40℃~約+85℃の特に広い温度範囲で動作する。このような電池は非常に急速に充電することができ、3分以内に全容量の約80%まで充電することができる。また、このような電池は熱暴走の危険性がない。
【0138】
第4の有利な実施形態は、
x+y+z=10であり、約1μm~約10μmの厚さを有し、約35%~約60%のメソ多孔性多孔率を有し、好ましくはその細孔上および内部に電子伝導性材料コーティングの層(金属伝導性を有する炭素層、または好ましくはIn、SnO、ZnO、Ga2Oおよびこれらの酸化物の1種以上の混合物から選択される電子伝導性酸化物材料コーティングの層)を含み、メソ多孔質表面全体にわたって数nmの厚さを有するLiNi1/xCo1/yMn1/z陰極;
約1μm~約10μmの厚さを有し、約35%~約60%のメソ多孔性多孔率を有するLiPOセパレータ;
約1μm~約10μmの厚さを有し、約35%~約60%のメソ多孔性多孔率を有し、好ましくはその細孔上および内部に電子伝導性材料コーティングの層(金属伝導性を有する炭素層、または好ましくはIn、SnO、ZnO、Ga2Oおよびこれらの酸化物の1種以上の混合物から選択される電子伝導性酸化物材料コーティングの層)を含み、メソ多孔質表面全体にわたって数nmの厚さを有するLiTi12陽極
を備えるマイクロ電池である。
【0139】
電子伝導性材料コーティングの層は、層が厚すぎない限り、すなわち、少なくとも電極の厚さが約5μmまたは6μm未満である限り不要である。
【0140】
電解質は、イオン性液体、例えば、EMIM-TFSI+LiFSIまたはPyr14TFSI+LiTFSIであり得る。
【0141】
このような電池は、約-20℃~約+85℃で動作する。このような電池は大容量である。また、このような電池は熱暴走の危険性がない。
【実施例
【0142】
実施例1:
電池を下記の構造で作製した:
陰極は、厚さ7μmのLiFePOからなり、メソ多孔性多孔率は約50%であり、厚さ数nmの金属伝導性の炭素層がメソ多孔性表面全体に堆積されていた。この陰極の容量は約145mAh/gであった。
【0143】
セパレータは、厚さ約6μmのLiPOからなり、メソ多孔性多孔率は約50%であった。
【0144】
陽極は、厚さ8μmのLiTi12からなり、メソ多孔性多孔率は約50%であり、厚さ数nmの金属伝導性の炭素層がメソ多孔性表面全体に堆積されていた。この陰極の容量は約130mAh/gであった。
【0145】
電解質は、0.7MのEMIM-TFSI+LiTFSIのイオン性液体、または常に0.7Mのイオン性液体Pyr14TFSI+LiTFSIであった。
【0146】
この電池は下記の特徴を有していた:
体積容量密度:70mAh/cm
体積エネルギー密度:120mWh/cm
パルスパワー:500C
連続出力:50C
動作温度範囲:-40℃~+125℃
急速充電:3分以内に80%充電
安全性:熱暴走の危険性なし。
【0147】
実施例2:
マイクロ電池を下記の構造で作製した:
陰極は、厚さ8μmのLiMnからなり、メソ多孔性多孔率は約50%であり、厚さ数nmの金属伝導性の炭素層がメソ多孔性表面全体に堆積され、この炭素層の上にアルミナの層が数nmの厚さであった。この陰極の容量は約130mAh/gであった。
【0148】
セパレータは、厚さ約6μmのLiPOからなり、メソ多孔性多孔率は約50%であった。
【0149】
陽極は、厚さ8μmのLiTi12からなり、メソ多孔性多孔率は約50%であり、厚さ数nmの金属伝導性の炭素層がメソ多孔性表面全体に堆積され、この炭素層の上にアルミナの層が数nmの厚さであった。この陽極の容量は約130mAh/gであった。
【0150】
電解質は、0.7Mのイオン性液体Pyr14TFSI+LiTFSIであった。
【0151】
この電池は下記の特徴を有していた:
体積容量密度:60mAh/cm
体積エネルギー密度:150mWh/cm
パルスパワー:500C
連続出力:50C
動作温度範囲:-40℃~+70℃
急速充電:3分以内に80%充電
安全性:熱暴走の危険性なし。
【国際調査報告】