(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-30
(54)【発明の名称】遺骨でのリン還元によって得た触媒剤を活用した遺骨粉結晶体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C03B 1/00 20060101AFI20240723BHJP
C03B 3/02 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
C03B1/00
C03B3/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580978
(86)(22)【出願日】2022-07-06
(85)【翻訳文提出日】2024-01-05
(86)【国際出願番号】 KR2022009722
(87)【国際公開番号】W WO2023282606
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】10-2021-0089294
(32)【優先日】2021-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524001938
【氏名又は名称】コ,ミ キョン
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】コ,ミ キョン
(72)【発明者】
【氏名】ブ,セ ホ
(72)【発明者】
【氏名】キム,デ フン
【テーマコード(参考)】
4G014
【Fターム(参考)】
4G014AA01
4G014AC00
(57)【要約】
本発明は、遺骨粉結晶体を製造する方法に関し、具体的には、リン酸(H
3PO
4)を遺骨粉の熱処理過程の触媒剤として活用して、揮散作用による遺骨粉の消失を防止し、より効率よく結晶体を形成することができる遺骨粉結晶体の製造方法に関し、より具体的には、遺骨でのリン還元によって得たリン酸を遺骨粉と混合して遺骨粉結晶体を製造することにより、他の添加剤を別途投入することなく純粋な遺骨それ自体成分のみからなる遺骨粉結晶体を提供することができるので、故人または死んだ伴侶動物の純粋な遺骨粉のみからなる遺骨粉結晶体を蔵しようとする遺族または保護者の要求を満たすことができ、また最終的に形成される遺骨粉結晶体の色相及び透明度を一つの製造工程によって同時に自由に実現することにより、需要者の審美的要求を満たすことができるとともに、各種宝石への活用も容易に行うことができる遺骨粉結晶体の製造方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺骨粉と触媒剤とを混合して混合物を形成する混合段階と、
前記混合物を乾燥させて乾燥物を形成する乾燥段階と、
前記乾燥物を粉砕して粉砕物を形成する粉砕段階と、
前記粉砕物を熱処理過程によって溶融させて溶融物を形成する熱処理段階と、
前記溶融物を冷却させて結晶体を形成する結晶化段階と、を含むことを特徴とする、遺骨粉結晶体の製造方法。
【請求項2】
前記混合段階での前記触媒剤はリン酸(H
3PO
4)であることを特徴とする、請求項1に記載の遺骨粉結晶体の製造方法。
【請求項3】
前記遺骨粉結晶体の製造方法は、
遺骨粉を原料遺骨粉とリン抽出遺骨粉に分ける分類段階と、
前記リン抽出遺骨粉からリン酸を収得するリン酸収得段階と、をさらに含み、
前記混合段階での触媒剤としてのリン酸は、前記リン酸収得段階で収得したリン酸であることを特徴とする、請求項2に記載の遺骨粉結晶体の製造方法。
【請求項4】
前記混合段階は、前記原料遺骨粉と、前記リン酸収得段階で収得したリン酸とを混合して第2混合物を形成することを特徴とする、請求項3に記載の遺骨粉結晶体の製造方法。
【請求項5】
前記遺骨粉結晶体の製造方法は、
遺骨粉からリン酸を収得するリン酸収得段階と、
前記リン酸収得段階を行った後、残存する残存遺骨粉を回収する回収段階と、をさらに含み、
前記混合段階は、前記回収段階で回収した前記残存遺骨粉と前記触媒剤としてのリン酸とを混合して第3混合物を形成することを特徴とする、請求項2に記載の遺骨粉結晶体の製造方法。
【請求項6】
前記混合段階で前記残存遺骨粉と混合される前記触媒剤としてのリン酸は、前記リン酸収得段階で収得したリン酸であることを特徴とする、請求項5に記載の遺骨粉結晶体の製造方法。
【請求項7】
前記リン酸収得段階は、
遺骨粉からリンを還元して抽出するリン還元段階と、
抽出した前記リンを燃焼して酸化させて酸化物を形成する燃焼段階と、
前記酸化物を水(H
2O)と反応させてリン酸を収得する水和段階と、を含むことを特徴とする請求項3~6のいずれか一項に記載の遺骨粉結晶体の製造方法。
【請求項8】
前記混合段階は、前記触媒剤を前記遺骨粉100重量部に対して100~200重量部で混合することを特徴とする、請求項1に記載の遺骨粉結晶体の製造方法。
【請求項9】
前記熱処理過程は、前記粉砕物を800~1250℃の温度で10分~2時間の間熱処理して溶融させることを特徴とする、請求項2に記載の遺骨粉結晶体の製造方法。
【請求項10】
前記遺骨粉結晶体の製造方法は、前記残存遺骨粉の残存リン含量を調節することにより、最終生成される遺骨粉結晶体の色相及び透明度を調節することを特徴とする、請求項5に記載の遺骨粉結晶体の製造方法。
【請求項11】
遺骨粉を原料遺骨粉とリン抽出遺骨粉に分ける分類段階と、
リン抽出遺骨粉からリン酸(H
3PO
4)を収得するリン酸収得段階と、
リン酸収得段階で収得された触媒剤としてのリン酸を原料遺骨粉と混合して第2混合物を形成する混合段階と、
前記第2混合物を乾燥させて乾燥物を形成する乾燥段階と、
前記乾燥物を粉砕して粉砕物を形成する粉砕段階と、
前記粉砕物を熱処理過程によって溶融させて溶融物を形成する熱処理段階と、
前記溶融物を冷却させて結晶体を形成する結晶化段階と、を含むことで、
透明な結晶体を製造するようにすることを特徴とする、遺骨粉結晶体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺骨粉結晶体を製造する方法に関し、具体的には、リン酸(H3PO4)を遺骨粉の熱処理過程の触媒剤として活用して、揮散作用による遺骨粉の消失を防止し、より効率よく結晶体を形成することができる遺骨粉結晶体の製造方法に関し、より具体的には、遺骨でのリン還元によって得たリン酸を遺骨粉と混合して遺骨粉結晶体を製造することで、他の添加剤を別途投入することなく純粋な遺骨それ自体成分のみからなる遺骨粉結晶体を提供することができるので、故人または死んだ伴侶動物の純粋な遺骨粉のみからなる遺骨粉結晶体を蔵しようとする遺族または保護者の要求を満たすことができ、また最終的に形成される遺骨粉結晶体の色相及び透明度を一つの製造工程によって同時に自由に実現することで、需要者の審美的要求を満たすことができるとともに、各種宝石への活用も容易に行うことができる遺骨粉結晶体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
埋葬は、従来から韓国において主な死体安置方法として行われており、このように造成された墓の場合、1基当たり平均15坪程度の面積を占有し、統計によれば、韓国の場合、濟州島の半分くらいの大きさにあたる面積の土地が墓地として使われているそうである。また、このように造成された墓は、大抵辺鄙な所や山中に位置してその管理がかなり難しい。このような埋葬風習は、可用面積が狭くかつ土地の価値が持続的に増加しつつある韓国の実情に合わないということと、現代社会が全般的に西欧化及び核家族化されて葬礼の風習に伴う社会的認識が多く変化したということから衰退しており、漸進的に火葬に取り替えられる成り行きにある。なお、伴侶動物の養育文化の発達につれ伴侶動物が死ぬと人間と同様に火葬して葬式を出す場合が持続的に増加している。
【0003】
一方、一般に、火葬後に残った遺骨は粉砕して粉骨の形態で納骨箱に入れて納骨堂や石造物などで築造された屋外納骨墓に保管するようになる。この時、遺骨は、高温で燃焼されることによって多量の微細孔が発達している形態の多孔質構造を形成するようになり、非常に強い吸着特性を持つようになる。よって、保管する間に周辺環境から湿気、異物、細菌などの吸収または吸着が強く生じて、遺骨の変質及び腐敗を引き起こして悪臭を発生させるとともに、害虫の侵入に因って毀損してしまうという問題点がある。
【0004】
かかる問題点を解決しようと遺骨粉を追加的に加工してその安定性を高めると同時に、審美的価値と保管性を付与して亡者または死亡した伴侶動物の遺骨粉を蔵することができるように遺骨粉を舎利化または宝石化する技術が提案されてきた。ただし、従来の遺骨粉の舎利化工程の場合、一般にガス直化方式若しくはプラズマ方式を用いる場合が多いが、かかる方式の場合、1,800~2,200℃の高温を利用して遺骨粉を溶融させる時に酸性化が行われるという特徴と、高融点での急冷体の特性とを活用して砂利形態の舎利を作製する。ところが、この場合、直化方式に伴う酸化、高い温度を使用する工程上、揮散作用による遺骨粉の消失が不可避的に生じるだけでなく、舎利化以後にも変質される可能性が大きいという問題がある。また従来の宝石化技術の場合、遺骨粉内の特定の元素のみを抽出してルビー及びサファイアと混合して合成するか、または炭素を抽出して人造ダイヤモンドを作る工程法が提案されているが、これは外観上審美的機能性には優れているものの、全体遺骨粉と比べて極めて一部の元素のみを原料として使用することから、遺骨の保存を重視する東洋の葬礼文化とは相当な距離があって、その結果、当該技術の根本的な目的を達成できないという問題が発生した。
【0005】
特許文献1においては、遺骨粉を熱処理して玉形態の結晶体を生成する装置及びこれを利用した結晶体製造方法が開示されているが、1,800℃以上の高温で遺骨粉を熱処理して揮散作用による遺骨粉の消失が発生するという問題があった。
特許文献2においては、防腐、脱臭、抗菌効果に優れる遺骨結晶体の製造方法が開示されているが、製造過程において、炭、セラミックス、七宝石、トルマリンなどの物質などを相当量添加するため、遺骨結晶体内における遺骨粉の含量が少ないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国登録特許第10-1516149号公報
【特許文献2】韓国公開特許第10-2013-0082462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる問題点を解決するために発明されたもので、その目的は、リン酸(H3PO4)を遺骨粉熱処理過程の触媒剤として活用し、揮散作用による遺骨粉の消失を防止するとともに、より効率よく結晶体を形成することができる遺骨粉結晶体の製造方法を提供することにある。
【0008】
本発明は、火葬した遺骨から抽出したリン酸(H3PO4)を遺骨粉熱処理過程の触媒剤として活用し、他の添加剤を別途投入しないことで、純粋に遺骨成分のみからなる遺骨粉結晶体の製造方法を提供し、これにより、故人または死んだ伴侶動物の純粋な遺骨粉のみからなる遺骨粉結晶体を蔵しようとする遺族または保護者の要求を満たすことを目的とする。また、別途の添加剤を要しないことで、既存の技術に比べてより経済的な遺骨粉結晶体の製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
本発明は、遺骨粉結晶体の色相及び透明度を需要者の所望に応じて自由に実現することができ、需要者の審美的要求を満たすとともに、各種宝石への活用も容易な遺骨粉結晶体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
本発明は、湿気による腐食、微生物の増殖による変質などを防止し、長期間保管時にも安定した遺骨粉結晶体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
一方、本発明において明示されていない別の目的は、下記の課題を解決するための手段、発明の効果及び詳細な説明から容易に推論可能な範囲内でさらに考慮されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記目的を達成するためになされたもので、次の構成を有する実施形態によって実現される。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、本発明の遺骨粉結晶体の製造方法は、遺骨粉と触媒剤とを混合して混合物を形成する混合段階と、前記混合物を乾燥させて乾燥物を形成する乾燥段階と、前記乾燥物を粉砕して粉砕物を形成して溶融モールドに安着させる粉砕段階と、前記粉砕物を熱処理過程によって溶融させて溶融物を形成する熱処理段階と、前記溶融物を冷却させて結晶体を形成する結晶化段階と、を含むことを特徴とする。
【0014】
本発明による遺骨粉結晶体の製造方法において、前記混合段階での触媒剤は、リン酸(H3PO4)であることを特徴とする。
【0015】
本発明の他の実施形態によれば、本発明の遺骨粉結晶体の製造方法は、遺骨粉を原料遺骨粉とリン抽出遺骨粉に分ける分類段階と、前記リン抽出遺骨粉からリン酸を収得するリン酸収得段階と、をさらに含み、前記触媒剤としてのリン酸は、前記リン酸収得段階で収得したリン酸であることを特徴とする。
【0016】
本発明の他の実施形態による遺骨粉結晶体の製造方法において、前記混合段階は、前記原料遺骨粉と前記リン酸収得段階で収得したリン酸とを混合して第2混合物を形成することを特徴とする。
【0017】
本発明の別の実施形態によれば、本発明の遺骨粉結晶体の製造方法は、遺骨粉からリン酸を収得するリン酸収得段階と、前記リン酸収得段階を行った後、残存する残存遺骨粉を回収する回収段階と、さらに含み、前記混合段階は、前記回収段階で回収した前記残存遺骨粉と前記触媒剤としてのリン酸とを混合して第3混合物を形成することを特徴とする。
【0018】
本発明の別の実施形態による遺骨粉結晶体の製造方法において、前記混合段階で前記残存遺骨粉と混合される前記触媒剤としてのリン酸は、前記リン酸収得段階で収得したリン酸であることを特徴とする。
【0019】
本発明による遺骨粉結晶体の製造方法において、前記リン酸収得段階は、遺骨粉からリンを還元して抽出するリン還元段階と、抽出した前記リンを燃焼して酸化させて酸化物を形成する燃焼段階と、前記酸化物を水と反応させてリン酸を収得する水和段階と、を含むことを特徴とする。
【0020】
本発明による遺骨粉結晶体の製造方法において、前記混合段階は、前記触媒剤としてのリン酸を前記遺骨粉100重量部に対して100~200重量部で混合することを特徴とする。
【0021】
本発明による遺骨粉結晶体の製造方法において、前記熱処理過程は、前記粉砕物を800~1250℃の温度で10分~2時間の間熱処理して溶融させることを特徴とする。
【0022】
本発明の別の実施形態によれば、本発明の遺骨粉結晶体の製造方法は、前記残存遺骨粉の残存リン含量を調節することにより、最終生成される遺骨粉結晶体の色相及び透明度を調節することを特徴とする。
【0023】
本発明の別の実施形態によれば、本発明の遺骨粉結晶体の製造方法は、遺骨粉を原料遺骨粉とリン抽出遺骨粉に分ける分類段階と、リン抽出遺骨粉からリン酸(H3PO4)を収得するリン酸収得段階と、リン酸収得段階で収得された触媒剤としてのリン酸を原料遺骨粉と混合して第2混合物を形成する混合段階と、前記第2混合物を乾燥させて乾燥物を形成する乾燥段階と、前記乾燥物を粉砕して粉砕物を形成する粉砕段階と、前記粉砕物を熱処理過程によって溶融させて溶融物を形成する熱処理段階と、前記溶融物を冷却させて結晶体を形成する結晶化段階と、を含むことで、透明な結晶体を製造するようにすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、前記開示の課題の解決手段を採用することにより、次の効果を奏する。
【0025】
本発明は、リン酸(H3PO4)を遺骨粉熱処理過程の触媒剤として活用して、揮散作用による遺骨粉の消失を防止するとともにより効率よく結晶体を形成することができる遺骨粉結晶体の製造方法を提供するという効果がある。
【0026】
本発明は、火葬した遺骨から抽出したリン酸(H3PO4)を遺骨粉熱処理過程の触媒剤として活用し、他の添加剤を別途投入しないことで、純粋に遺骨成分のみからなる遺骨粉結晶体の製造方法を提供し、これにより、故人または死んだ伴侶動物の純粋な遺骨粉のみからなる遺骨粉結晶体を蔵しようとする遺族または保護者の要求を満たすことができるという効果がある。また、別途の添加剤を要しないことで、既存の技術に比べてより経済的な遺骨粉結晶体の製造方法を提供するという効果がある。
【0027】
本発明は、遺骨粉結晶体の色相及び透明度を一つの工程で同時に容易に調節することにより、需要者が所望する色相及び透明度を自由に実現することができるので、需要者の審美的要求を満たすとともに各種宝石への活用も容易である遺骨粉結晶体の製造方法を提供するという効果がある。
【0028】
本発明は、湿気による腐食、微生物増殖による変質などを防止し、長期間保管時にも安定した遺骨粉結晶体及びその製造方法を提供するという効果がある。
【0029】
なお、本発明において明示的に言及されていない効果であっても、下記の詳細な説明など明細書全体の記載において合理的に推論可能な範囲内で導出可能な効果であれば、本明細書に記載されたものとみなすことができるのは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の一実施形態による遺骨粉結晶体の製造方法を示すフローチャートである。
【
図2】本発明による遺骨粉結晶体の製造方法において、リン酸収得段階の詳細な段階を示すフローチャートである。
【
図3】前記リン酸収得段階を含む遺骨粉結晶体の製造方法の全体的な段階を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の他の実施形態による遺骨粉結晶体の製造方法を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の別の実施形態による遺骨粉結晶体の製造方法を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の他の実施形態による遺骨粉結晶体の製造方法によって製造された遺骨粉結晶体の写真である。
【
図7】本発明の別の実施形態による遺骨粉結晶体の製造方法によって製造された遺骨粉結晶体の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明による遺骨粉結晶体の製造方法を添付の図面を参照して詳しく説明する。特に定義がない限り本明細書のすべての用語は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する技術者が理解する当該用語の一般的意味と同一であり、もし、本明細書に使われた用語の意味と衝突する場合は、本明細書に使われた定義に従う。また、本発明の要旨を無駄に濁らす恐れがある公知の機能及び構成については詳細な説明を省略する。
【0032】
別段の定義がなければ、本明細書で使われるすべての用語(技術及び科学的用語を含む)は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に共通に理解できる意味で使われることができる。また、通常使われる辞典上に定義されている用語は、明らかに特別に定義されない限り、理想的に、または過度に解釈されない。明細書の全般に亘って、ある部分がある構成要素を「含む」とするととき、これは特に反対の記載がない限り、他の構成要素を排除するものではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0033】
一方、遺骨粉とは、一般に、脊椎動物の死体において残存する骨成分を粉骨して得られた物質を通称するものであるが、本明細書における「遺骨粉」という用語は、故人または死んだ伴侶動物または家畜などを火葬した後に残存した骨成分を粉骨して得られた物質を意味するものと理解するのが好ましい。
【0034】
本発明の一実施形態による遺骨粉結晶体の製造方法を
図1に基づいて説明すると、本発明の一実施形態による遺骨粉結晶体の製造方法は、遺骨粉と触媒剤とを混合して混合物を形成する混合段階(S11)と、前記混合物を乾燥させて乾燥物を形成する乾燥段階(S12)と、前記乾燥物を粉砕して粉砕物を形成する粉砕段階(S13)と、前記粉砕物を熱処理過程によって溶融させて溶融物を形成する熱処理段階(S14)と、前記溶融物を冷却させて結晶体を形成する結晶化段階(S15)と、を含むことを特徴とする。
【0035】
前記混合段階(S11)は、遺骨粉を触媒剤と均一に混合して混合物を形成する段階を意味し、前記混合物を形成するための混合方法は、特に限定されることなく適用可能であり、例えば、ボールミル、カッターミル、自動乳鉢、ビーズミル、ジェットミル、プレートミルなどの公知の機械的混合方法に加えても、手動でも容易に混合を行うことができる。より純粋な形態の混合物を形成するために、石英またはパイレックス(登録商標)などの耐化学性を有する素材を適用した混合器具を用いて混合することが好ましいが、必ずこれに限定されるものではない。
【0036】
前記触媒剤は、前記遺骨粉と混合して遺骨自体の溶融温度よりも低い共晶点を形成することができるなどの役割を果たすことができるものであればいずれでも特に限定されず、好ましくは、シリコン化合物、ホウ素化合物、リン化合物またはこれらの混合物からなるものを意味し、より好ましくは、メタリン酸(HPO3)、ピロリン酸(H4P2O7)、リン酸(H3PO4)、これらのリン酸化合物、五酸化リン(P4O10)またはこれらの混合物からなる群から選ばれる一つ以上のリン化合物であることを意味し、さらに好ましくは、前記触媒剤はリン酸(H3PO4)であることを意味する。前記リン酸は、前記遺骨粉溶融過程において共晶点を低くする融剤としての役割を果たすことができ、これと同時に、その濃度が高くなると、結晶化されるという性質を利用して遺骨粉内のリンを活性化することにより、結晶体を形成するにあたり密接した役割を果たすことができ、また、溶融過程において発生する主な問題点の一つである、高温条件下で発生する揮散作用による遺骨粉の消失を防止する役割を果たすことができる。
【0037】
前記混合段階(S11)において、前記触媒剤は、前述したように、リン酸であることを意味し、前記触媒剤としてのリン酸は、好ましくは、85%水溶液としてのリン酸を意味し、前記遺骨粉100重量部に対して100~200重量部で混合されることを特徴とし、好ましくは、前記触媒剤は、前記遺骨粉100重量部に対して100~180重量部で混合され、より好ましくは、前記触媒剤は、前記遺骨粉100重量部に対して160重量部で混合される。前記触媒剤が前記遺骨粉100重量部に対して100重量部以下で混合される場合、遺骨粉が十分に溶融されず結晶体が形成されないという問題点が発生し、200重量部以上で混合される場合には、リンの過度な含量によって追後の熱処理過程において溶融モールドの外へ溶融物が噴出されるか、結晶化後の溶融モールドとの離型性が確保されなく、最終的に得られる結晶体の形態が通常の形態とは異なる平面の形態を有することで審美的な機能性も低下するという問題点が発生する。一方、前記混合段階(S11)において、前記遺骨粉と前記触媒剤との更なる円滑な反応のために、前記遺骨粉100重量部に対して20~60重量部の蒸留水をさらに添加することができる。
【0038】
前記乾燥段階(S12)では、前記混合段階(S11)で形成された均一な混合物を高温条件下で、好ましくは、前記混合物を300~600℃の温度で乾燥させて乾燥物を形成し、前記混合物の量及び混合物の状態などに応じて、前記乾燥温度または乾燥時間などを適宜設定して乾燥を行うことが好ましい。前記乾燥が不十分に進行されたり、または必要以上に過度に進行されたりする場合、追後生成される結晶体の模様や透明度に影響を与えることができる。
【0039】
前記粉砕段階(S13)では、前記乾燥段階(S12)で形成された乾燥物を粉砕して粉砕物を形成する。前記乾燥段階(S12)で乾燥が完了した前記乾燥物は、セメントのように強固に固まった形態で存在するので、その溶融のためには粉砕して小さいサイズの粉砕物を得なければならない。前記粉砕段階(S13)で使われる粉砕方法としては、公知の種々の粉砕方法を用いることができるが、その粉砕による粉砕物の消失を最小化するために、ディスクミル、ボールミルまたはカッターミルの中から選択された一つ以上の方法を利用することが好ましい。形成された前記粉砕物の大きさは、80~120メッシュの大きさを有することが好ましく、より好ましくは、100メッシュの大きさを有する。
【0040】
前記熱処理段階(S14)では、前記粉砕段階(S13)で形成された粉砕物を熱処理過程によって溶融させて溶融物を形成する。前記熱処理過程は、用意した溶融モールドに前記粉砕物を投入した後、熱処理によって前記粉砕物を溶融させる。製作された結晶体の形態は、前記溶融モールドの形態によって変わるので、前記溶融モールドの形態は、製作しようとする結晶体の形態に合わせて任意に選択することができ、前記溶融モールド素材としては、アルミナ、ジルコニア、ムライト(Mullite)または石英からなる群より少なくとも一つ以上が選択されることを特徴とするセラミックス類の素材、白金またはニッケルなど鋳型金属として頻繁に用いられる金属のうち一つまたは一つ以上が選択されることを特徴とする金属材質またはグラファイト(graphite)であることが好ましく、結晶体の模様形成及び溶融モールドから結晶体の円滑な分離のために、前記溶融モールドの材質は、グラファイトであることがより好ましい。
【0041】
前記熱処理過程で用いられる熱処理方式は、通常用いられる熱処理方式であればいずれの方式でも特に制限されないが、経済性、取り扱い容易性及び装備の価格的な側面で一般的な電気炉を利用した熱処理方式を用いるのが好ましい。
【0042】
前記熱処理過程の遂行は、前記粉砕物を前記電気炉内で800~1250℃の温度条件下10分~2時間の間溶融させることが好ましい。前記熱処理温度が800℃よりも低い場合、前記粉砕物を十分に溶融させることができないことから、結晶体の効果的な製造が困難であり、前記熱処理温度が1250℃よりも高い場合、前記粉砕物の溶融は比較的効果的に達成できるが、必要以上のエネルギーを使用するようになることで発生する高コストの問題点とともに、過度な温度によって高温用特殊装備を別途採用しなければならないという問題点が発生する。また、前記熱処理温度条件下、前記熱処理時間が10分未満の場合も前記粉砕物を十分に溶融させることができなく、結晶体の効果的な製造が困難であるという問題が発生し、前記熱処理時間が2時間を超える場合も、必要以上のエネルギーを使用するようになることで発生する問題点に加えて、溶融モールドが過度に酸化されることにより、最終結晶体の品質が劣るという問題点が発生する。前記熱処理時間は、製造される結晶体の大きさや形状によって前記時間範囲内で適宜選択されることが好ましい。
【0043】
前記熱処理過程の遂行をより具体的に説明すれば、溶融すべき前記粉砕物を前記電気炉内の温度が700~900℃であるときに投入し、前記熱処理温度範囲内の既設定済みの目的温度まで昇温を行った後、目標とする結晶体の大きさ及び模様に応じて、前記目的温度を前記熱処理時間範囲内の既設定済みの時間の間保持することで、前記熱処理過程を遂行する。
【0044】
前記結晶化段階(S15)では、前記熱処理段階(S14)での熱処理過程を経た前記溶融物を冷却させて結晶体を形成する。前記熱処理過程が終了すると、前記電気炉内の温度を下降させ、降温によって放出温度に到逹すると前記溶融モールドを電気炉の外部へ放出する。約750℃以下の低い温度で前記溶融モールドを電気炉の外部に放出する場合、結晶体で陶磁器化現象が発生するという問題点があるので、前記放出温度は、750~950℃、好ましくは800~900℃であることを特徴とする。
【0045】
本発明の一実施形態による遺骨粉結晶体の製造方法は、前記結晶化段階(S15)後の分離洗浄段階(図示せず)をさらに含むことができる。前記分離洗浄段階は、前記電気炉から放出した前記溶融モールドを追加的に冷却させた後、前記結晶体を分離して、前記結晶体の表面に存在する溶融モールドの粉などの異物を取り除く過程を行うことを特徴とする。この時、前記溶融モールドの温度が100℃以上を維持する状態で、前記結晶体の分離を行う場合、前記結晶体の模様が歪むという問題点が発生するとともに、洗浄過程において割れなどの現象を誘発することができるので、前記溶融モールドの温度が10~100℃の温度範囲を維持する状態で前記結晶体を前記溶融モールドから分離するのが好ましい。前記洗浄方法は、いずれの方法でも特に制限されないが、前記結晶体の模様の維持及び傷などの発生を最小化するために超音波を利用した洗浄が好ましい。
【0046】
以下では、本発明による遺骨粉結晶体の製造方法におけるリン酸収得段階(S2)を、
図2及び
図3を参照して説明する。本発明による遺骨粉結晶体の製造方法でのリン酸収得段階(S2)は、遺骨粉からリンを還元して抽出するリン還元段階(S21)と、抽出した前記リンを燃焼して酸化させて酸化物を形成する燃焼段階(S22)と、前記酸化物を水と反応させてリン酸を収得する水和段階(S23)と、を含むことを特徴とする。
【0047】
遺骨は、種によって一部異なる部分があるが、一般に、55.82%の酸化カルシウム(CaO)、42.39%の五酸化リン(P4O10)、及び1.79%の水からなる組成を有するものと知られている。リン(P)の原子量は、30.9738g/molなので、これに基づいて計算すると、遺骨でのリン含有量は、全重量対比約25~30%を占めるようになる。したがって、遺骨はそれ自体で立派なリンの収得源となることができ、現在一般的に行われる燐鉱石からのリン化合物の収得方式と比較しても、収得したリン化合物の品質が全く劣らない。したがって、本発明による遺骨粉結晶体の製造方法は、遺骨粉それ自体からリン酸を収得するリン酸収得段階(S2)をさらに含むことにより、その製造コストの節減を図ることができる。
【0048】
前記リン還元段階(S21)は、遺骨粉からリンを抽出する段階であり、前記抽出方法は、既存に公知されている多様な方法の抽出方法であれば如何なる方法でも特に制限されないが、好ましくは、加熱による酸化を最小化するためにアルゴン、ヘリウムなどの不活性雰囲気または窒素、水素、二酸化炭素ガスなどの還元雰囲気下で前記ガス雰囲気を自由に造成可能な形態のチューブ型電気炉を活用し、遺骨粉からリンを還元及び抽出することを特徴とする。
【0049】
前記燃焼段階(S22)では、前記リン還元段階(S21)で抽出した前記リンを燃焼して酸化させることで酸化物を形成する。前記酸化物は、リンが酸化された多様な形態の化合物を通称するが、好ましくは、五酸化リン(P4O10)を意味する。リンは、燃焼すれば酸化されて通常五酸化リン(P4O10)を形成するようになり、そのスキームは、次の通りである。
【0050】
【0051】
前記燃焼段階(S22)での燃焼過程を行うための方法としては、公知の燃焼方法であれば如何なる方法でも特に制限されない。
【0052】
前記水和段階(S23)では、前記燃焼段階(S22)で形成された前記酸化物を水と反応させてリン酸を収得する。前記酸化物は、前述したように、好ましくは五酸化リンであることを特徴とし、五酸化リンは、水と反応するとリン酸を形成するようになり、そのスキームは、次の通りである。
【0053】
【0054】
したがって、前記リン酸収得段階(S2)を含む遺骨粉結晶体の製造方法を時系列的な方法によってより具体的に説明すると、前記リン還元段階(S21)と、前記燃焼段階(S22)と、前記水和段階(S23)と、を含む、前記リン酸収得段階(S2)によってリン酸を収得し、前記リン酸収得段階で収得したリン酸を遺骨粉と混合する混合段階(S11)と、前記混合物を乾燥させて乾燥物を形成する乾燥段階(S12)と、前記乾燥物を粉砕して粉砕物を形成する粉砕段階(S13)と、前記粉砕物を熱処理過程によって溶融させて溶融物を形成する熱処理段階(S14)と、前記溶融物を冷却させて結晶体を形成する結晶化段階(S15)と、を含む方法によって遺骨粉結晶体を製造することを特徴とする。前記混合段階(S11)、乾燥段階(S12)、粉砕段階(S13)、熱処理段階(S14)、及び結晶化段階(S15)に対する詳細な説明は、前述したものと同様なので、以下では省略する。
【0055】
次に、本発明の他の実施形態による遺骨粉結晶体の製造方法を
図4に基づいて説明する。本発明の他の実施形態による遺骨粉結晶体の製造方法は、遺骨粉を原料遺骨粉とリン抽出遺骨粉とに分ける分類段階(S3)と、前記リン抽出遺骨粉からリン酸を収得するリン酸収得段階(S2)と、をさらに含み、前記混合段階での触媒剤としてのリン酸は、前記リン酸収得段階で収得したリン酸であることを特徴とする。更に、前記混合段階は、前記原料遺骨粉と前記リン酸収得段階で収得したリン酸とを混合して第2混合物を形成することを特徴とする。
【0056】
前記分類段階(S3)では、前述した本発明の一実施形態による遺骨粉結晶体の製造工程に先立って、遺骨粉結晶体を製造しようとする遺骨粉を原料遺骨粉とリン抽出遺骨粉とに分類する。前記原料遺骨粉は、前記分類段階(S3)以後の前記混合段階(S11)で混合対象になる前記遺骨粉として用いられるための目的で分類しておく遺骨粉を意味し、前記分類後前記混合段階(S11)で用いられる前まで適切に保管されることが好ましく、前記保管方法は、前記遺骨粉の物性または化学的性質などに影響を及ぼさない保管方法であれば如何なる方法でも特に制限されない。一方、前記リン抽出遺骨粉は、前記リン酸収得段階(S2)で前記リン酸を収得するために投入される遺骨粉として用いられるための目的で分類しておく遺骨粉を意味し、前記リン抽出遺骨粉を還元させて燃焼及び水和させる過程によって前記リン抽出遺骨粉から前記リン酸を収得する方法についての詳細な説明は、前述したものと同様なので省略することにする。なお、前記第2混合物は、前述したごとく、前記混合段階(S11)において、前記原料遺骨粉と前記リン酸収得段階(S2)で収得したリン酸とを混合した混合物を意味する。
【0057】
なお、遺骨粉から得られるリン酸の質量は、投入された遺骨粉の質量と略等しい。これは前述のように遺骨でのリン含有量は、全重量対比約25~30%を占め、リンの原子量は、前述のように30.9738g/mol、そして酸素Oの原子量は、15.999g/mol、水素Hの原子量は、1.008g/molに該当し、一つのリン酸分子の場合、水素原子が3個、酸素原子が4個、リン原子が1個含まれているということから、前記リン、酸素及び水素の原子量を勘案すれば、結局一つのリン酸分子でリンが占める質量比(%)は、約31.6%となるので、これを総合して計算すると、最終的に得られるリン酸の質量が、投入された遺骨粉の質量と略等しい値を有するようになるということに起因することである。したがって、かかる点に基づき、前述したように本発明による遺骨粉結晶体の製造方法において、混合段階(S11)での好ましい配合比が遺骨粉100重量部に対して触媒剤100~200重量部、より好ましくは、遺骨粉100重量部に対して触媒剤100~180重量部、さらに好ましくは、遺骨粉100重量部に対して触媒剤160重量部に該当するので、前記原料遺骨粉と前記リン抽出遺骨粉との分類の割合も、前述した重量部の割合に従うのが好ましい。
【0058】
したがって、本発明の他の実施形態による遺骨粉結晶体の製造方法を時系列的な方法によってより具体的に説明すると、まず、前記分類段階(S3)によって遺骨粉を原料遺骨粉とリン抽出遺骨粉とに分類し、前記リン抽出遺骨粉を利用して前記リン酸収得段階(S2)を行うことで前記リン酸を収得した後、収得した前記リン酸と前記原料遺骨粉とを混合して第2混合物を形成する混合段階(S11)と、前記第2混合物を乾燥させて乾燥物を形成する乾燥段階(S12)と、前記乾燥物を粉砕して粉砕物を形成する粉砕段階(S13)と、前記粉砕物を熱処理過程によって溶融させて溶融物を形成する熱処理段階(S14)と、前記溶融物を冷却させて結晶体を形成する結晶化段階(S15)と、を含む方法によって最終的に水色または無色の透明な遺骨粉結晶体を製造することを特徴とする。前記リン酸収得段階(S2)、乾燥段階(S12)、粉砕段階(S13)、熱処理段階(S14)、及び結晶化段階(S15)に対する詳細な説明は、前述したものと同様なので、以下では省略することにし、前記混合段階(S11)の場合、前記原料遺骨粉と前記リン酸収得段階(S2)によって得られた前記リン酸とを混合して第2混合物を形成するという点で、前述したものと異なるが、前記第2混合物を形成する詳しい混合方法については、前述した混合方法と差がないので、これも以下では省略する。
【0059】
本発明の他の実施形態による遺骨粉結晶体の製造方法は、遺骨粉結晶体を製造するにあたり、遺骨粉を原料遺骨粉とリン抽出遺骨粉とに分類した後、前記リン抽出遺骨粉から抽出したリン酸を前記原料遺骨粉と混合して遺骨粉結晶体を製造することができることから、別途の物質を添加する必要なしに単一個体に由来する遺骨それ自体のみを活用し、水色または無色の透明な遺骨粉結晶体を製造することができるので、遺骨粉結晶体を形成して故人、死んだ伴侶動物または家畜を記念してその遺骨を保存しようとする遺族または保護者の根本的な意図と要求を満たすと同時に、その審美的価値にも優れた遺骨粉結晶体を製造することができるという点にその特徴があると言える。
【0060】
次に、本発明の別の実施形態による遺骨粉結晶体の製造方法を
図5に基づいて説明する。本発明の別の実施形態による遺骨粉結晶体の製造方法は、前記リン酸収得段階(S2)を行った後に残存する残存遺骨粉を回収する回収段階(S4)をさらに含むことができ、前記混合段階(S11)は、前記回収段階(S4)で回収した前記残存遺骨粉と前記触媒剤としてのリン酸とを混合して第3混合物を形成することを特徴とし、好ましくは、前記混合段階(S11)で前記残存遺骨粉と混合される前記触媒剤としてのリン酸は、前記リン酸収得段階(S2)で収得したリン酸であることを特徴とする。
【0061】
前記回収段階(S4)では、前記リン酸収得段階(S2)を経てリン成分が抽出されて残存する残存遺骨粉を回収する。一方、前記第3混合物は、前述のように前記混合段階S11において、前記残存遺骨粉と前記触媒剤としてのリン酸または前記リン酸収得段階S2で収得したリン酸とを混合した混合物を意味する。
【0062】
したがって、本発明の別の実施形態による遺骨粉結晶体の製造方法を時系列的な方法によってより具体的に説明すると、まず、遺骨粉を利用して前記リン酸収得段階(S2)を行うことで前記リン酸を収得し、回収段階(S4)を行うことにより、前記リン酸収得段階(S2)によってリン成分が抽出されて残存する前記残存遺骨粉を回収した後、回収した前記残存遺骨粉を前記リン酸収得段階(S2)で収得した前記リン酸と混合して第3混合物を形成する混合段階(S11)と、前記混合物を乾燥させて乾燥物を形成する乾燥段階(S12)と、前記乾燥物を粉砕して粉砕物を形成する粉砕段階(S13)と、前記粉砕物を熱処理過程によって溶融させて溶融物を形成する熱処理段階(S14)と、前記溶融物を冷却させて結晶体を形成する結晶化段階(S15)と、を含む方法によって最終的に緑色または白色の不透明な遺骨粉結晶体を製造することを特徴とする。前記リン酸収得段階(S2)、乾燥段階(S12)、粉砕段階(S13)、熱処理段階(S14)、及び結晶化段階S15に対する詳細な説明は、前述したものと同様なので、以下では省略することにし、前記混合段階(S11)の場合、前記残存遺骨粉と前記触媒剤としてのリン酸または前記リン酸収得段階(S2)によって得られたリン酸とを混合して第3混合物を形成するという点で、前述したものと差があるが、前記第3混合物は、前述した本発明の一実施形態による遺骨粉結晶体の製造方法または本発明の他の実施形態による遺骨粉結晶体の製造方法での混合段階で形成される前記混合物、前記第2混合物と構成成分などにおいてのみ差があり、混合物を形成する詳しい混合方法については前述した混合方法と差がないので、これも以下では省略する。
【0063】
本発明の別の実施形態による遺骨粉結晶体の製造方法は、遺骨粉結晶体を製造するにおいて、すべての遺骨粉からリン酸を抽出した後、抽出した前記リン酸を、残存したすべての遺骨粉と再び混合して遺骨粉結晶体を製造することができるので、別途の物質を添加する必要なく単一個体に由来した遺骨それ自体のみを活用して、緑色または白色の不透明な遺骨粉結晶体を製造することができ、該遺骨粉結晶体を形成して故人、死んだ伴侶動物または家畜を記念してその遺骨を保存しようとする遺族または保護者の根本的な意図と要求を満たすとともに、その審美的価値にも優れた遺骨粉結晶体を製造することができるという点にその特徴があるが、必ずこれに限定されるものではなく、必要に応じて、遺骨粉からリン酸のみを抽出した後、他の個体に由来したリン酸抽出後に残存遺骨粉に混合するなど多様な変形が可能であることは当業者にとって自明である。
【0064】
一方、本発明の別の実施形態による遺骨粉結晶体の製造方法によってリン成分が抽出されて残存する残存遺骨粉を活用して製造した遺骨粉結晶体は、リン成分が抽出されない遺骨粉を活用して製造した遺骨粉結晶体と異なり、緑色または白色の不透明な形態を持つようになる。これは、遺骨の組成が前述した本発明の他の実施形態による遺骨粉結晶体の製造方法の詳細な説明で説明したような組成を有するので、リン成分が抽出されて残存する前記残存遺骨粉は概ねカルシウム、酸素及び水素の組成のみを有するようになるところ、これを利用して前記混合段階(S11)で形成される第3混合物は、前記混合物または第2混合物に比べてリンの含量が少なくなるので、その結果、最終的に形成される遺骨粉結晶体に含有されるリン成分の含量が、前述した本発明の一実施形態または他の実施形態による製造方法などによって製造された遺骨粉結晶体に比べて相対的に少ないことに起因するものとみられる。
【0065】
したがって、前記残存遺骨粉の残存リン含量を調節することにより、最終的に生成される遺骨粉結晶体の色相及び透明度を自由に調節することができる。前記リン酸収得段階(S2)におけるリン成分は、前記リン還元段階(S21)によって遺骨粉から還元されるようになる。したがって、前記リン還元段階(S21)でのリン還元過程を調節して前記残存遺骨粉の残存リン含量を調節することにより、最終的に形成される遺骨粉結晶体の色相及び透明度を自由に実現することができる。前記残存遺骨粉の残存リン含量の調節方法は、既存の公知の多様な方法の抽出方法で用いられる還元過程の調節方法に該当すれば如何なる方法でも特に制限されなく、前述したように、不活性雰囲気または還元雰囲気を自由に造成可能な形態のチューブ型電気炉を活用して前記リン還元段階(S21)を行う場合、前記還元雰囲気の造成に投入される還元ガスの量を調整したり、遺骨粉を電気炉内で還元させる過程の時間を調整したり、電気炉の内部温度を調整したりするなどの方法で、前記残存遺骨粉の残存リン含量を調節することができる。
【0066】
以下、本発明の理解を助けるために好適な実施形態を提示する。しかし、下記の実施形態は本発明をより理解しやすくするために提供されるものに過ぎず、実施形態によって本発明の内容が限定されるものではない。
【実施例1】
【0067】
火葬後粉骨して得た豚の遺骨粉100g当たり市販の85%リン酸水溶液100mLを2分間1000RPMで高速攪拌して混合物を形成した後、形成された混合物を450℃の温度で20分間乾燥して乾燥物を形成し、これを100メッシュの大きさに粉砕した後、溶融モールドに投入した。前記溶融モールドを700℃温度の電気炉に投入した後、1000℃温度まで1時間にかけて昇温後、前記温度で20分間熱処理した後、電気炉を800℃温度まで降温後、室温まで自然冷却させ、冷却させた溶融モールドから玉形態の結晶体を離型させた後、超音波で洗浄して水色の玉形態の透明な結晶体を得た。
【実施例2】
【0068】
1.火葬後粉骨して得た豚遺骨粉200gを原料遺骨粉85gとリン抽出遺骨粉115gとに分類した後、前記リン抽出遺骨粉115gを1,350℃温度の電気炉に投入して窒素及び水素ガスを投入した後、還元を進め、これによって収得したリンを燃焼させた後、流れる水と反応させて約110gの液状のリン酸を得たし、前記液状のリン酸に蒸溜水を25g投入して約135gの85%リン酸水溶液を得た。前記リン酸収得過程で還元後電気炉に残された残存遺骨粉は別途分離して保管した。
2.豚の遺骨粉の代わりに実施例2の1にて別途分類した原料遺骨粉を用い、市販のリン酸水溶液の代わりに実施例2の1で得たリン酸水溶液を用いたことを除き、他の条件を実施例1と同様にして、
図6のような水色の透明な玉形態の単結晶体1を得た。
【実施例3】
【0069】
豚の遺骨粉の代わりに実施例2の1にて別途分離して保管された残存遺骨粉を用い、市販のリン酸水溶液の代わりに実施例2の1で得たリン酸水溶液を用いたことを除き、他の条件を実施例1と同様にして、
図7のような緑色の不透明な玉形態の単結晶体2を得た。
【0070】
<比較例1>
リン酸水溶液と豚の遺骨粉との混合過程なしに直ちに豚の遺骨粉のみを乾燥させて工程を開始したことを除き、他の条件を実施例1と同様にして結晶体の製造を試みたが、粉砕物の溶融がまともにできず、最終的に玉形態の遺骨粉結晶体が得られなかった。
【0071】
<比較例2>
リン酸水溶液100mLの代わりに50mLのみを用いたことを除き、他の条件を実施例1と同様にして結晶体の製造を試みたが、この場合、粉砕物の溶融がまともにできず、最終的に玉形態の遺骨粉結晶体が得られなかった。
【0072】
<比較例3>
リン酸水溶液100mLの代わりに150mLのみを用いたことを除き、他の条件を実施例1と同様にして結晶体製造を試みたが、この場合、結晶体が溶融モールドからまともに離型できず、最終的に玉形態の遺骨粉結晶体が得られなかった 。
【0073】
<比較例4>
実施例1と異なり、熱処理を750℃の温度で30分間行ったことを除き、他の条件を実施例1と同様にして結晶体製造を試みたが、この場合、粉砕物の溶融がまともにできず、最終的に玉形態の遺骨粉結晶体が得られなかった。
【0074】
以上、出願人は本発明の多様な実施形態を説明したが、これらの実施形態は本発明の技術的思想を実現する一実施形態に過ぎないものであり、本発明の技術的思想を実現する限り、いずれの変更例や修正例も本発明の範囲に属するものと解釈されなければならない。
【国際調査報告】