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特表2024-528569プラダー・ウィリー症候群を治療するためのカンナビジオール酸エステル
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-30
(54)【発明の名称】プラダー・ウィリー症候群を治療するためのカンナビジオール酸エステル
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/235 20060101AFI20240723BHJP
   A61K 31/05 20060101ALI20240723BHJP
   A61K 31/352 20060101ALI20240723BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20240723BHJP
   A61K 36/185 20060101ALI20240723BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20240723BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20240723BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240723BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20240723BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20240723BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20240723BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240723BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20240723BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20240723BHJP
   A61K 47/40 20060101ALI20240723BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20240723BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20240723BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20240723BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
A61K31/235
A61K31/05
A61K31/352
A61P3/00
A61K36/185
A61K9/107
A61K9/06
A61K9/08
A61K9/10
A61K9/12
A61K9/14
A61K47/10
A61K47/24
A61K9/127
A61K47/40
A61P3/04
A61K47/14
A61K47/44
A61K47/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500204
(86)(22)【出願日】2022-07-07
(85)【翻訳文提出日】2024-01-22
(86)【国際出願番号】 IL2022050734
(87)【国際公開番号】W WO2023286047
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】63/221,006
(32)【優先日】2021-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/276,668
(32)【優先日】2021-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】521261670
【氏名又は名称】イーピーエム(アイピー), インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】504389234
【氏名又は名称】イッサム リサーチ デベロップメント カンパニー オブ ザ ヘブリュー ユニバーシティー オブ エルサレム エルティーディー.
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】スウィサ,レシェフ
(72)【発明者】
【氏名】シャー,ロテム
(72)【発明者】
【氏名】シャラバーニ,ロン
(72)【発明者】
【氏名】タム,ヨセフ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA11
4C076AA16
4C076AA17
4C076AA19
4C076AA24
4C076AA29
4C076BB01
4C076BB13
4C076BB14
4C076BB16
4C076BB21
4C076BB25
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4C076DD41
4C076DD46
4C076DD63
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4C076EE39
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4C086MA13
4C086MA17
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4C086NA14
4C086ZA70
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4C086ZC54
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4C088MA13
4C088MA17
4C088MA21
4C088MA22
4C088MA27
4C088MA43
4C088MA52
4C088MA56
4C088MA59
4C088MA66
4C088NA10
4C088NA14
4C088ZA70
4C088ZC21
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4C206AA02
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4C206MA01
4C206MA02
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4C206MA37
4C206MA41
4C206MA42
4C206MA47
4C206MA63
4C206MA72
4C206MA76
4C206MA79
4C206MA86
4C206NA10
4C206NA14
4C206ZA70
4C206ZC21
4C206ZC54
(57)【要約】
本発明は、プラダー・ウィリー症候群(PWS)を治療するための組成物及び方法を提供する。具体的には、本発明は、PWSを治療することにおける使用のための、カンナビジオール酸(CBDA)エステル誘導体を単独で、又は1つ以上の追加のカンナビノイド化合物と組み合わせて、及び薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を含む医薬組成物及び製剤を提供する。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラダー・ウィリー症候群(PWS)を治療することにおける使用のための、カンナビノイド成分(前記カンナビノイド成分が、式(I)の構造によって表されるカンナビジオール酸(CBDA)エステルを、単独で、又は1つ以上の追加のカンナビノイド化合物と組み合わせて含む)と、薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤と、を含む、医薬組成物であって、
【化1】
式中、
及びRが、各々独立して、直鎖又は分岐鎖、非置換又は置換のC-C15アルキル、直鎖又は分岐鎖、非置換又は置換のC-C15アルケニル、及び直鎖又は分岐鎖、非置換又は置換のC-C15アルキニル、並びにそれらの立体異性体及び塩からなる群から選択される、医薬組成物。
【請求項2】
が、メチルである、請求項1に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項3】
前記カンナビジオール酸エステルが、CBDA-MEである、請求項1又は2に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項4】
前記医薬組成物が、PWSの1つ以上の症状を緩徐化すること、その進行を予防すること、治療すること又は改善することにおける使用のためのものである、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項5】
前記追加のカンナビノイド化合物を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項6】
前記追加のカンナビノイド化合物が、カンナビジオール(CBD)、カンナビゲロール(CBG)、Δ-テトラヒドロカンナビノール(Δ-THC)、Δ-テトラヒドロカンナビノール(Δ-THC)、カンナビノール(CBN)、Δ(11)-テトラヒドロカンナビノール(exo-THC)、カンナビクロメン(CBC)、テトラヒドロカンナビノール-C3(THC-C3)、テトラヒドロカンナビノール-C4(THC-C4)、テトラヒドロカンナビノール-C7(THC-C7)、それらのエステル及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項5に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項7】
前記1つ以上の追加のカンナビノイド化合物が、大麻植物の1つ以上の抽出物から得られる、請求項5又は6に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項8】
前記大麻植物抽出物が、Cannabis sativa、Cannabis indica、Cannabis ruderalis、ハイブリッド株、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される株から得られる、請求項7に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項9】
前記大麻植物抽出物が、高CBD株、高THC株、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される株から得られる、請求項7に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項10】
前記大麻植物抽出物が、CBD、THC、CBN、CBG、CBC、それらの酸及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのカンナビノイドを含む、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項11】
大麻植物抽出物が、約1%(w/w)のCBDを含む、請求項7に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項12】
大麻植物抽出物が、約10%(w/w)のCBDを含む、請求項7に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項13】
大麻植物抽出物が、約1%(w/w)のTHCを含む、請求項7に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項14】
大麻植物抽出物が、約10%(w/w)のTHCを含む、請求項7に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項15】
前記大麻植物抽出物が、前記大麻植物材料を好適な溶媒又は溶媒の組み合わせと接触させることを含むプロセスによって生成される、請求項7~14のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項16】
前記溶媒が、極性溶媒、炭化水素溶媒、二酸化炭素、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項15に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項17】
エマルション、ゲル、溶液又は分散液の形態である、請求項1~16のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項18】
前記薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤が、水、油、又は両方を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項19】
前記医薬組成物が、吸入用に製剤化されている、請求項1~18のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項20】
前記医薬組成物が、乾燥粉末製剤である、請求項19に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項21】
前記医薬組成物が、鼻腔内、経口、静脈内、動脈内、又は皮下投与に好適な剤形に製剤化されている、請求項1~18のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項22】
前記賦形剤が、トリグリセリド、脂肪、脂質、油、脂肪酸、溶媒又はそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~21のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項23】
前記溶媒が、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール又は両方である、請求項22に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項24】
天然に存在するリン脂質及び合成リン脂質からなる群から選択されるリン脂質を更に含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項25】
前記天然に存在するリン脂質が、大豆レシチン、卵レシチン、水素化大豆レシチン、水素化卵レシチン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項24に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項26】
前記合成リン脂質が、ホスホコリン、ホスホエタノールアミン、ホスファチジン酸、ホスホグリセロール、ホスホセリン、混合鎖リン脂質、リゾリン脂質、ペグ化リン脂質、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項24に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項27】
ミセル、エマルション又はリポソームの形態である、請求項1~26のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項28】
シクロデキストリンを更に含む、請求項1~27のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項29】
前記シクロデキストリンが、ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリン、スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリン、及びメチルβ-シクロデキストリン(MβCD)からなる群から選択される、請求項28に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項30】
前記賦形剤が、乳化剤、緩衝剤、pH調整剤、防腐剤、抗酸化剤、安定剤、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~29のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項31】
約10%(w/w)未満の前記カンナビノイド成分を含む、請求項1~30のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項32】
約7%(w/w)未満の前記カンナビノイド成分を含む、請求項1~30のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項33】
約5%(w/w)未満の前記カンナビノイド成分を含む、請求項1~30のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項34】
約1%(w/w)未満の前記カンナビノイド成分を含む、請求項1~30のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項35】
プラダー・ウィリー症候群を治療するための方法であって、そのような治療を必要とする対象に、治療有効量の、カンナビノイド成分(前記カンナビノイド成分が、式(I)の構造によって表されるCBDAエステルを単独で、又は1つ以上の追加のカンナビノイド化合物と組み合わせて含む)と、薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤と、を含む医薬組成物を投与することを含み、式(I)中、R及びRが、請求項1に定義されるとおりである、方法。
【請求項36】
前記治療することが、PWSの1つ以上の症状を緩徐化すること、その進行を予防すること、治療すること又は改善することを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
治療することが、PWSに関連する行動を治療することを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
治療することが、(a)プラセボと比較した強迫性行動の減少、又は(b)吸入による投与を含む、プラセボと比較した不安の減少のうちの1つ以上をもたらす、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
治療することが、臨床治験のための過食質問票(HQ-CT)合計スコアの測定値の減少をもたらす、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
PWSを治療するための少なくとも1つの追加の治療剤を前記対象に投与することを更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項41】
前記医薬組成物を、前記対象に経口、経鼻、静脈内、又は筋肉内投与することを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項42】
前記医薬組成物を、1日に2回、1日に1回、1週間、2週間に1回、3週間に1回、又は1ヶ月に1回、前記対象に投与することを含む、請求項35に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラダー・ウィリー症候群(Prader-Willi Syndrome、PWS)を治療するための組成物及び方法に関する。具体的には、本発明は、PWSを治療することにおける使用のための、カンナビジオール酸(cannabidiolic acid、CBDA)エステル誘導体を単独で、又は1つ以上の追加のカンナビノイド化合物と組み合わせて含む医薬組成物及び製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
プラダー・ウィリー症候群(PWS)は、ヒトにおける生命を脅かす肥満の最も一般的に既知の遺伝的原因として認識されている稀な複合多系遺伝的障害である。PWSは、染色体15q11-q13領域における父性遺伝された刷り込み遺伝子の発現の欠如を伴うゲノム刷り込みの誤りから生じ、これは一般に父性欠失、両方の染色体15が母親から遺伝される母性ダイソミー15、又は15q11-q13領域における刷り込み変異によって引き起こされる。主要な臨床的特徴には、重度の乳児緊張低下、制御されなければ小児期初期の肥満の発症を伴う過食、学習及び行動問題を伴う発達遅延、手足が小さい低身長、並びに成長ホルモン及び他の内分泌欠乏による性腺機能低下症/性器機能低下症が含まれる。エナメル質形成不全及び口渇を伴う軽度の頭蓋顔面異形症が一般的である。精神医学的表現型、行動及び自閉症の特徴は、特定のPWS遺伝子サブタイプと相関する(例えば、母性ダイソミー15を有する者における自閉症)。PWSは、15,000人に約1人で生じる(Butler et al.2019,Curr Pediatr Rev.2019 Nov;15(4):207-244)。
【0003】
カンナビジオール(Cannabidiol、CBD)は、植物Cannabis sativaに存在する主要な非向精神性フィトカンナビノイド化合物であり、大麻抽出物のカンナビノイドの最大40%を占めている(Grlic,Bull.Narc.,1976,14:37-46)。CBDは、炎症性及び酸化的損傷を治療及び予防するためのリード化合物と考えられており、例えば、国際公開第1999/053917号を参照されたい。
【化1】
【0004】
CBDに関する広範な知識とは対照的に、同じくCannabis sativa植物の主な構成成分であるカンナビジオール酸(CBDA)に関する文献は非常に限られているが、それはその不安定性によるものであり得る。それは1955年に最初に単離された(Krejci and Santavy,1955,Acta Univ Palacki Olomuc 6:59-66)。そのメチルエステルであるカンナビジオール酸メチルエステル(cannabidiolic acid methyl ester、CBDA-ME)の物理的特性の分析により、1965年にその構造が解明された(Mechoulam and Gaoni,Tetrahedron,1965,21:1223-1229)。その後、CBDからのその合成が報告された(Mechoulam and Ben-Zvi,J.Chem.Soc.Commun.,1969,7:343-344)。
【0005】
CBDAのCBDへの脱炭酸は熱によって促進されることからCBDAの相対的な不安定性が示唆され、したがってそれが薬物として機能する可能性を低下させる(Mechoulam,Academic Press,New York,1973,1-99;Citti et al.,J.Pharm.Biomed.Anal.,2018,16:532-540)。そのため、CBDA-MEは比較的未知のカンナビノイドであり、研究されていないままであり、その効果が明らかになり始めたばかりである。
【化2】
【0006】
CBDA-MEは、CBDAの誘導体であり、インビボで薬理活性であり得る。Pertwee et al.(Brit.J.Pharmacology,2018,175:100-112)は、HU-580(本明細書ではEPM301とも表記される)と称されるCBDAのメチルエステルが、ラットにおける急性及び予期性の悪心とストレス誘発性の不安の両方の兆候を抑制することにおいてCBDAよりも高い効力を示すこと、またそれは5-HT1A受容体依存的にこれらの効果をもたらすことを報告している。別の最近の研究(Hen-Shoval et al.,Behav.Brain Res.,2018,351:1-3)は、2つのラットモデルにおける低用量(1mg/kg)のCBDA-MEの経口摂取後の強力な抗うつ効果を裏付けている。
【0007】
国際公開第2018/235079号は、CBDAエステルを含む組成物、及び5-HT1A受容体に関連する状態、疾患、又は症状の治療におけるその使用を開示している。
【0008】
国際公開第2020/186010号は、カンナビノイド酸エステル化合物を単独で、又は1つ以上の追加のカンナビノイド化合物と組み合わせて含む、医薬組成物を開示している。PCT出願は、関節疾患、皮膚疾患、胃腸疾患、子宮関連障害、非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease、NAFLD)、慢性腎疾患(chronic kidney disease、CKD)、糖尿病、脂質異常症、メタボリックシンドローム、高血糖、肥満を含む様々な疾患の治療、及びコレステロールレベルの低下若しくは維持、又はLDL/HDL比の低下における医薬組成物の使用を開示する。
【0009】
CBD経口溶液は、PWSを有する対象の治療のために提案され、第2相臨床治験において試験された[https://www.clinicaltrials.gov/ ct2/show/NCT02844933?term=insys]。
【0010】
その症状を改善することができる、PWSのための十分に評価された有効な療法に対する満たされていない医学的必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、プラダー・ウィリー症候群を治療するための、カンナビノイド(カンナビノイド成分は、カンナビジオール酸(CBDA)エステルを、単独で、又は1つ以上の追加のカンナビノイド化合物と組み合わせて含む)と、薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤と、を含む、医薬組成物を提供する。ある特定の実施形態によれば、カンナビノイド成分は、大麻植物の1つ以上の抽出物と組み合わせたCBDAエステル、及び薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、CBDAエステルは、CBDA又はCBDのいずれかよりもPWSを治療することにおいて活性が高い。CBDAエステルを含む組成物は、PWSにおいて長期の著しい治療効果を示す。任意の特定の理論又は作用機序に束縛されることを望むものではないが、組成物の治療効果は、CBDAエステルの安定性に起因し得る。
【0013】
ここで、CBDA-MEによる治療が、PWSのマウスモデル(Magel2ヌルマウス)において体重を低減し、脂肪量を低減し(除脂肪量を維持しながら)、歩行活動を改善し、脂質、グルコース及びインスリンレベルを正常化し、肝臓における脂肪を低減し、肝酵素レベルを改善することを開示する。
【0014】
一態様によれば、本発明は、PWSを治療することにおける使用のための、カンナビノイド成分(カンナビノイド成分は、式(I)の構造によって表されるCBDAエステルを、単独で、又は1つ以上の追加のカンナビノイド化合物と組み合わせて含む)と、薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤と、を含み、
【化3】
式中、
及びRは、各々独立して、直鎖又は分岐鎖、非置換又は置換のC-C15アルキル、直鎖又は分岐鎖、非置換又は置換のC-C15アルケニル、及び直鎖又は分岐鎖、非置換又は置換のC-C15アルキニル、並びにそれらの立体異性体及び塩からなる群から選択される。
【0015】
いくつかの実施形態によれば、Rはメチルである。いくつかの実施形態によれば、カンナビジオール酸エステルは、CBDA-MEである。
【0016】
いくつかの実施形態によれば、本発明の組成物中のCBDAエステルは、式(Ia)によって表される。
【化4】
【0017】
いくつかの実施形態によれば、本発明の組成物中のCBDAエステルは、式(Ib)によって表される。
【化5】
【0018】
特定の実施形態によれば、CBDAエステルは、(本明細書ではEPM301と称される)。
【化6】
【0019】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、PWSの1つ以上の症状を緩徐化すること、その進行を予防すること、治療すること又は改善することにおける使用のためのものである。
【0020】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、追加のカンナビノイド化合物を含む。いくつかの実施形態によれば、追加のカンナビノイド化合物は、CBD、カンナビゲロール(CBG)、Δ-テトラヒドロカンナビノール(Δ-THC)、Δ-テトラヒドロカンナビノール(Δ-THC)、カンナビノール(CBN)、Δ(11)-テトラヒドロカンナビノール(exo-THC)、カンナビクロメン(CBC)、テトラヒドロカンナビノール-C3(THC-C3)、テトラヒドロカンナビノール-C4(THC-C4)、テトラヒドロカンナビノール-C7(THC-C7)、それらのエステル及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0021】
いくつかの実施形態によれば、1つ以上の追加のカンナビノイド化合物が、大麻植物の1つ以上の抽出物中に存在する。いくつかの実施形態によれば、1つ以上の追加のカンナビノイド化合物が、大麻植物の1つ以上の抽出物から得られる。
【0022】
いくつかの実施形態によれば、大麻植物抽出物は、Cannabis sativa、Cannabis indica、Cannabis ruderalis、ハイブリッド株、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される種又は株から得られる。更なる実施形態によれば、大麻植物抽出物は、高CBD株、高THC株、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される株から得られる。いくつかの実施形態によれば、大麻植物抽出物は、CBD、THC、CBN、CBG、CBC、それらの酸及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのカンナビノイドを含む。
【0023】
いくつかの実施形態によれば、大麻植物抽出物は、約1%(w/w)のCBDを含む。いくつかの実施形態によれば、大麻植物抽出物は、約10%(w/w)のCBDを含む。いくつかの実施形態によれば、大麻植物抽出物は、約25%(w/w)のCBDを含む。
【0024】
いくつかの実施形態によれば、大麻植物抽出物は、約1%(w/w)のTHCを含む。いくつかの実施形態によれば、大麻植物抽出物は、約10%(w/w)のTHCを含む。いくつかの実施形態によれば、大麻植物抽出物は、約25%(w/w)のTHCを含む。
【0025】
いくつかの実施形態によれば、大麻植物抽出物は、好適な溶媒又は溶媒の組み合わせとの接触によって形成される。いくつかの実施形態によれば、溶媒は、極性溶媒、炭化水素溶媒、二酸化炭素、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0026】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、エマルション、溶液、ゲル又は分散液の形態である。いくつかの実施形態によれば、薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤は、水、油、又はその両方を含む。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0027】
いくつかの実施形態によれば、カンナビノイド成分は、水性担体又は油性担体のいずれかにおける使用に好適な製剤に乳化、溶解、分散又はカプセル化することができる。したがって、いくつかの実施形態によれば、本医薬組成物は、エマルション、溶液又は分散液の形態である。各可能性は、別々の実施形態を表す。また、いくつかの実施形態によれば、本医薬組成物は、水性担体又は油性担体を含んでもよい。各可能性は、別々の実施形態を表す。
【0028】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、吸入用に製剤化される。特定の実施形態によれば、医薬組成物は、乾燥粉末製剤である。いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、気化による投与用に製剤化される。
【0029】
代替実施形態によれば、医薬組成物は、鼻腔内、経口、静脈内、動脈内、又は皮下投与に好適な剤形に製剤化される。各実施形態は、本発明の別々の実施形態を表す。追加の実施形態によれば、医薬組成物は、経口投与用に製剤化される。
【0030】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、非水性組成物である。非水性組成物は、非水性溶媒又は添加剤を含み、10%以下、5%以下、2%以下又は1%以下の水(w/w)を含む、任意の乾燥組成物又は組成物を含み得ることが理解されるべきである。いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、粉末の形態で製剤化される。いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、複数回用量リザーバー乾燥粉末吸入器(dry powder inhaler、DPI)に好適な粉末である。
【0031】
他の実施形態によれば、医薬組成物は、液体組成物である。
【0032】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、カプセル、錠剤、液体、又はシロップとして製剤化される。ある特定の実施形態によれば、剤形は、溶液、懸濁液で送達されるか、又はカプセルに充填されるか、又は錠剤に圧縮される顆粒又はペレットである。
【0033】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、トリグリセリド、脂肪、脂質、油、脂肪酸、溶媒又はそれらの混合物を更に含む。いくつかの実施形態によれば、賦形剤は、トリグリセリド、脂肪、脂質、油、脂肪酸、溶媒又はそれらの混合物からなる群から選択される。特定の実施形態によれば、医薬組成物は、コパイバ油、ヤシ油、綿実油、大豆油、ベニバナ油、ゴマ油、ヒマワリ油、ヒマシ油、トウモロコシ油、オリーブ油、ヤシ油、落花生油、及びポピーシード油からなる群から選択される食用油を含む。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0034】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、アルコールを含む。いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、アルコール及び第2の溶媒を含む。いくつかの実施形態によれば、アルコールは、エタノールである。ある特定の実施形態によれば、第2の溶媒は、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol、PEG)、プロピレングリコール又はその両方である。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0035】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、CBDAエステルの徐放のために製剤化される。ある特定の実施形態では、医薬組成物は、放出遅延剤又は放出遅延剤の混合物を更に含む。いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、腸溶コーティング剤によって少なくとも部分的にコーティングされている。
【0036】
いくつかの実施形態によれば、CBDAエステルは、マイクロカプセル化粒子中に提供される。ある特定の実施形態によれば、CBDAエステルは、リポソームカプセル粒子中に提供される。
【0037】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、リン脂質を含む。ある特定の実施形態によれば、医薬組成物は、天然に存在するリン脂質及び合成リン脂質からなる群から選択されるリン脂質を含む。特定の実施形態によれば、天然に存在するリン脂質は、大豆レシチン、卵レシチン、水素化大豆レシチン、水素化卵レシチン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。ある特定の実施形態によれば、合成リン脂質は、ホスホコリン、ホスホエタノールアミン、ホスファチジン酸、ホスホグリセロール、ホスホセリン、混合鎖リン脂質、リゾリン脂質、ペグ化リン脂質、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0038】
いくつかの実施形態によれば、リン脂質は、ミセル、エマルション、又はリポソームを形成し得る。いくつかの実施形態によれば、リン脂質は、ミセル、エマルション、又はリポソームを形成する。いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、ミセル、エマルション、又はリポソームの形態である。
【0039】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、シクロデキストリンを含む。ある特定の実施形態によれば、シクロデキストリンは、ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリン、スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリン、及びメチル-β-シクロデキストリン(methyl-β-cyclodextrin、MβCD)、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0040】
いくつかの実施形態によれば、賦形剤は、乳化剤、緩衝剤、pH調整剤、防腐剤、抗酸化剤、安定剤、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0041】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、ビタミン、抗酸化剤、ミネラル、及び/又は香味剤を更に含む。
【0042】
いくつかの実施形態によれば、組成物は、約10%(w/w)未満のカンナビノイド成分を含む。追加の実施形態によれば、約7%(w/w)未満のカンナビノイド成分を含む組成物。更なる実施形態によれば、約5%(w/w)未満のカンナビノイド成分を含む組成物。更に別の実施形態によれば、約2%(w/w)未満のカンナビノイド成分を含む組成物。いくつかの実施形態によれば、約1%(w/w)未満のカンナビノイド成分を含む組成物。追加の実施形態によれば、約0.5%(w/w)未満のカンナビノイド成分を含む組成物。
【0043】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、少なくとも約20mgのCBDAエステルの単位剤形を含む。ある特定の実施形態では、剤形は、約20mg~約2,000mgのCBDAエステルを含む。ある特定の実施形態では、剤形は、約20mg~約500mgのCBDAエステルを含む。ある特定の実施形態では、剤形は、約50mg~約1,000mgのCBDAエステルを含む。ある特定の実施形態では、剤形は、約200mg~約1,000mgのCBDAエステルを含む。ある特定の実施形態では、剤形は、約50mg、100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600、約700mg、約800mg、約900mg、約1000mg、約2000mg、約3000、約4000、約5000mg、約6000、約8000又は約10000mgのCBDAエステルを含む。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、少なくとも約20mgのカンナビノイド成分の単位剤形を含む。ある特定の実施形態では、剤形は、約20mg~約2,000mgのカンナビノイド成分を含む。ある特定の実施形態では、剤形は、約20mg~約500mgのカンナビノイド成分を含む。ある特定の実施形態では、剤形は、約50mg~約1,000mgのカンナビノイド成分を含む。ある特定の実施形態では、剤形は、約200mg~約1,000mgのカンナビノイド成分を含む。ある特定の実施形態では、単位剤形は、約50mg、100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、約1000mg、約2000mg、又は約5000mgのカンナビノイド成分を含む。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0044】
本明細書に記載の医薬組成物は、1つ以上の他の治療剤とともに投与することができる。いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、PWSを治療するための少なくとも1つの追加の治療剤を更に含む。
【0045】
追加の態様によれば、本発明は、PWSを治療するための方法であって、そのような治療を必要とする対象に、治療有効量の本明細書に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法を提供する。
【0046】
いくつかの実施形態によれば、治療することは、PWSの1つ以上の症状を緩徐化すること、その進行を予防すること、治療すること、又は改善することを含む。
【0047】
いくつかの実施形態によれば、治療することは、PWSに関連する行動を治療することを含む。
【0048】
ある特定の実施形態によれば、治療することは、(a)プラセボと比較した強迫性行動の減少、又は(b)プラセボと比較した不安の減少のうちの1つ以上をもたらす。
【0049】
いくつかの実施形態によれば、治療することは、空腹感の持続の低減又は排除、過剰な食欲(過食症)の低減又は排除、体重増加の低減又は排除、肥満の低減又は排除をもたらす。ある特定の実施形態によれば、治療することは、臨床治験のための過食質問票(HQ-CT)合計スコアの測定値の減少をもたらす。
【0050】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、気化器又は定量吸入器からの吸入によって投与される。他の実施形態によれば、医薬組成物は、経口投与される。
【0051】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、1日に1回、週に2回、週に1回、2週間に1回、3週間に1回、又は月に1回投与される。
【0052】
いくつかの実施形態によれば、対象は、哺乳動物である。いくつかの実施形態によれば、対象は、ヒト対象である。
【0053】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、気化器又は定量吸入器からの吸入によって投与される。他の実施形態によれば、医薬組成物は、経口投与される。
【0054】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、1日に1回、週に2回、週に1回、2週間に1回、3週間に1回、又は月に1回投与される。
【0055】
いくつかの実施形態によれば、対象は、哺乳動物である。いくつかの実施形態によれば、対象は、ヒト対象である。
【0056】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、PWSの治療のための他の治療薬と組み合わせて使用される。
【0057】
いくつかの実施形態によれば、本方法は、インスリン、インスリン受容体アゴニスト、成長ホルモン放出ホルモン(Growth hormone-releasing hormone、GHRH)、GHRH受容体アゴニスト、アルファ-メラノサイト刺激ホルモン(alpha-Melanocyte-stimulating hormone、αMSH)、アルファ-MSH受容体アゴニスト、オキシトシン、オキシトシン受容体アゴニスト、オレキシン、オレキシン受容体アゴニスト、脳由来神経栄養因子(Brain-derived neurotrophic factor、BDNF)、BDNF受容体アゴニスト、バソプレシン、バソプレシン受容体アゴニスト、神経ペプチドY(Neuropeptide Y、NPY)、NPY受容体アゴニスト、アグーチ関連神経ペプチド(Agouti Related Neuropeptide、AGRP)、AGRP受容体アゴニスト、ゴナドトロピン、ゴナドトロピン受容体アゴニスト、又はそれらの組み合わせを投与することを更に含む。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0058】
いくつかの実施形態によれば、治療することは、過食症、代謝率の低下、肥満、性腺機能低下症、成長ホルモン産生の減少、筋緊張の低下、スタミナの低下、集中する能力の低下、認知障害、不安、成長不全、未成熟ホルモンの成熟型及び活性型への変換の低下、糖尿病、並びにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるPWS関連症状の少なくとも1つを改善する。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0059】
いくつかの実施形態によれば、治療することは、筋緊張を改善する。いくつかの実施形態では、治療することは、吸引反射を改善する。
【0060】
本発明の更なる実施形態及び適用可能性の全範囲は、以下に与えられる詳細な記述及び図面から明らかになるであろう。しかしながら、本発明の趣旨及び範囲内での様々な変更及び修正は、この詳細な記述から当業者に明らかになるであろうから、詳細な記述及び具体的な実施例は、本発明の好ましい実施形態を示しているが、単に例示として与えられているにすぎないことは理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1A】高脂肪食(high-fat diet、HFD)を与えられた場合のWT又はPWSマウスモデルの体重に対する異なる用量のCBDA-ME(EPM301)の効果を示す。
図1B】高脂肪食(high-fat diet、HFD)を与えられた場合のWT又はPWSマウスモデルの体重に対する異なる用量のCBDA-ME(EPM301)の効果を示す。
図1C】高脂肪食(high-fat diet、HFD)を与えられた場合のWT又はPWSマウスモデルの体重に対する異なる用量のCBDA-ME(EPM301)の効果を示す。
図1D】高脂肪食(high-fat diet、HFD)を与えられた場合のWT又はPWSマウスモデルの体重に対する異なる用量のCBDA-ME(EPM301)の効果を示す。
図1E】高脂肪食(high-fat diet、HFD)を与えられた場合のWT又はPWSマウスモデルの体重に対する異なる用量のCBDA-ME(EPM301)の効果を示す。
図1F】高脂肪食(high-fat diet、HFD)を与えられた場合のWT又はPWSマウスモデルの体重に対する異なる用量のCBDA-ME(EPM301)の効果を示す。
図2A】高脂肪食(HFD)を与えられたWT又はPWSマウスモデルにおける炭水化物酸化(図2A)及び脂肪酸化(図2B)に対するCBDA-MEの効果を示す。
図2B】高脂肪食(HFD)を与えられたWT又はPWSマウスモデルにおける炭水化物酸化(図2A)及び脂肪酸化(図2B)に対するCBDA-MEの効果を示す。
図3A】高脂肪食(HFD)を与えられたWT又はPWSマウスモデルにおける食物摂取に対するCBDA-MEの効果を示す。
図3B】高脂肪食(HFD)を与えられたWT又はPWSマウスモデルにおける食物摂取に対するCBDA-MEの効果を示す。
図3C】高脂肪食(HFD)を与えられたWT又はPWSマウスモデルにおける食物摂取に対するCBDA-MEの効果を示す。
図4】高脂肪食(HFD)を与えられたWT又はPWSマウスモデルにおける歩行活動に対するCBDA-MEの効果を示す。
図5A】高脂肪食(HFD)を与えられたWT又はPWSマウスモデルにおける脂質プロファイルに対するCBDA-MEの効果を示す。
図5B】高脂肪食(HFD)を与えられたWT又はPWSマウスモデルにおける脂質プロファイルに対するCBDA-MEの効果を示す。
図5C】高脂肪食(HFD)を与えられたWT又はPWSマウスモデルにおける脂質プロファイルに対するCBDA-MEの効果を示す。
図5D】高脂肪食(HFD)を与えられたWT又はPWSマウスモデルにおける脂質プロファイルに対するCBDA-MEの効果を示す。
図6A】高脂肪食(HFD)を与えられたWT又はPWSマウスモデルにおける血糖値(図6A)、グルコース耐性及びインスリン感受性(図6B~F)に対するCBDA-MEの長期治療の効果を示す。
図6B】高脂肪食(HFD)を与えられたWT又はPWSマウスモデルにおける血糖値(図6A)、グルコース耐性及びインスリン感受性(図6B~F)に対するCBDA-MEの長期治療の効果を示す。
図6C】高脂肪食(HFD)を与えられたWT又はPWSマウスモデルにおける血糖値(図6A)、グルコース耐性及びインスリン感受性(図6B~F)に対するCBDA-MEの長期治療の効果を示す。
図6D】高脂肪食(HFD)を与えられたWT又はPWSマウスモデルにおける血糖値(図6A)、グルコース耐性及びインスリン感受性(図6B~F)に対するCBDA-MEの長期治療の効果を示す。
図6E】高脂肪食(HFD)を与えられたWT又はPWSマウスモデルにおける血糖値(図6A)、グルコース耐性及びインスリン感受性(図6B~F)に対するCBDA-MEの長期治療の効果を示す。
図6F】高脂肪食(HFD)を与えられたWT又はPWSマウスモデルにおける血糖値(図6A)、グルコース耐性及びインスリン感受性(図6B~F)に対するCBDA-MEの長期治療の効果を示す。
図7A】高脂肪食(HFD)を与えられたWT又はPWSマウスモデルにおけるアラニントランスアミナーゼ(alanine transaminase、ALT)、アスパラギン酸トランスアミナーゼ(aspartate transaminase、AST)、及びアルカリホスファターゼ(alkaline phosphatase、ALP)に対するCBDA-MEの効果を示す。
図7B】高脂肪食(HFD)を与えられたWT又はPWSマウスモデルにおけるアラニントランスアミナーゼ(alanine transaminase、ALT)、アスパラギン酸トランスアミナーゼ(aspartate transaminase、AST)、及びアルカリホスファターゼ(alkaline phosphatase、ALP)に対するCBDA-MEの効果を示す。
図7C】高脂肪食(HFD)を与えられたWT又はPWSマウスモデルにおけるアラニントランスアミナーゼ(alanine transaminase、ALT)、アスパラギン酸トランスアミナーゼ(aspartate transaminase、AST)、及びアルカリホスファターゼ(alkaline phosphatase、ALP)に対するCBDA-MEの効果を示す。
図8A】高脂肪食(HFD)を与えられたWT又はPWSマウスモデルにおける肝臓トリグリセリド(図8A)及び肝臓コレステロール(図8B)に対するCBDA-MEの効果を示す。図8Cは、高脂肪食(HFD)を与えられたWT又はPWSマウスモデルにおける治療を伴う又は伴わない肝臓の組織学画像を示す。
図8B】高脂肪食(HFD)を与えられたWT又はPWSマウスモデルにおける肝臓トリグリセリド(図8A)及び肝臓コレステロール(図8B)に対するCBDA-MEの効果を示す。図8Cは、高脂肪食(HFD)を与えられたWT又はPWSマウスモデルにおける治療を伴う又は伴わない肝臓の組織学画像を示す。
図8C】高脂肪食(HFD)を与えられたWT又はPWSマウスモデルにおける肝臓トリグリセリド(図8A)及び肝臓コレステロール(図8B)に対するCBDA-MEの効果を示す。図8Cは、高脂肪食(HFD)を与えられたWT又はPWSマウスモデルにおける治療を伴う又は伴わない肝臓の組織学画像を示す。
図9A】体重増加(図9A)、脂肪量(図9B)及び除脂肪量(図9C)に対するPWS予防モデルにおけるCBDA-MEの効果を示す。
図9B】体重増加(図9A)、脂肪量(図9B)及び除脂肪量(図9C)に対するPWS予防モデルにおけるCBDA-MEの効果を示す。
図9C】体重増加(図9A)、脂肪量(図9B)及び除脂肪量(図9C)に対するPWS予防モデルにおけるCBDA-MEの効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0062】
本発明は、PWSを治療する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量のCBDAエステルを単独で、又は1つ以上の追加のカンナビノイド化合物と組み合わせて、及び薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を投与することを含む方法を提供する。
【0063】
理論又は作用機序に拘束されることを望むものではないが、本発明の非常に安定な化合物は、PWSを治療するための長期の生物学的活性を可能にする。
【0064】
PWSは、染色体15qの刷り込み領域における父性発現遺伝子の喪失によって引き起こされる。PWSを有する対象は、典型的には、神経学的異常、認知異常、内分泌異常、及び行動異常を含む様々な症状を患う。最初に、乳児は、筋緊張低下(フロッピーベビー症候群)を示し、吸飲及び摂食の困難を経験し、これは成長遅延をもたらし得る。PWSを有する対象は、筋緊張不良、成長ホルモン欠乏症、低レベルの性ホルモン、空腹感の持続及び過剰な食欲(過食)を有することが多い。彼らは過食し、体重増加、肥満及び糖尿病の高い発生率につながる。低身長、運動能力不良、未発達の性器、並びに軽度の知的障害及び学習障害を含む、他の徴候が現れる。PWS対象は、発話及び言語発達の遅延、並びに不妊症を経験し得る。行動症状としては、認識障害、認知硬直、情緒不安定及び強迫性行動、自閉性症候、精神病エピソード、及び精神病を伴う双極性障害が挙げられ得る。追加の臨床症状としては、日中の過剰な眠気、脊柱側弯症、骨減少症/骨粗鬆症、胃腸運動の低下、睡眠障害、及び疼痛感受性の低下が挙げられ得る。
【0065】
以下のいくつかの実施形態の説明は、本開示が特許請求される主題の例示として考慮されるべきであり、添付の特許請求の範囲を図示される特定の実施形態に限定することを意図しないという理解の下で行われる。本開示全体を通して使用される見出しは、便宜上、提供されるにすぎず、特許請求の範囲を限定するものと決して解釈されるべきではない。任意の見出しの下に例示される実施形態は、任意の他の見出しの下に例示される実施形態と組み合わせられてもよい。
【0066】
カンナビノイド成分
本明細書、特許請求の範囲、及び他の活用において使用される「カンナビノイド」という用語は、カンナビノイド受容体と相互作用する任意の化合物を意味するために使用される。これらの受容体タンパク質のリガンドとしては、エンドカンナビノイド(ヒトや動物によって体内で自然に生成される)、フィトカンナビノイド(カンナビス及びいくつかの他の植物中に見出される)、及び合成カンナビノイド(人工的に製造される)が挙げられる。「カンナビノイド酸」という用語は、上記のカンナビノイドの酸形態を指す。
【0067】
好適なカンナビノイドとしては、ある特定のテトラヒドロピラン類似体:THC、CBN、CBD、CBG、Δ(11)-テトラヒドロカンナビノール(exo-THC)、CBC、テトラヒドロカンナビノール-C3(THC-C3)、テトラヒドロカンナビノール-C4(THC-C4)、テトラヒドロカンナビノール-C7(THC-C7)、それらの塩、溶媒和物、代謝産物、及び代謝前駆体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
「カンナビジオール」という用語は、CBDを指す。本出願において使用されるように、CBDは、微量のTHCを含む産業用大麻抽出物から、又は高CBD大麻栽培品種を使用して大麻抽出物から得られる。いくつかの実施形態によれば、カンナビジオールは、植物抽出物から得られ得るか、又は合成的に調製され得る(人工的に製造され得る)。
【0069】
「CBDA」という略語は、CBDのカルボン酸形態であるカンナビジオール酸を指すために本明細書で使用される。「カンナビジオール酸エステル」又は「カンナビジオールエステル」という用語は、CBDAのアルキル、アルケニル、アルキニル又はアリールエステル形態である様々な分子を指す。略語「CBDA-ME」は、CBDAのメチルエステル形態であるカンナビジオール酸メチルエステルを指すために本明細書で使用される。
【0070】
一般的なCBDA異性体は、2位に、n-C11鎖を含むが、CBDAの誘導体は、他の置換基、特にアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基を含み得ることを理解されたい。したがって、カンナビジオール酸及びCBDAエステルという用語は、2位が、n-C11又は異なる化学基、特にアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基のいずれかである基で置換されている、対応する構造を含む。「カンナビジオール酸」及び/又は「カンナビジオール酸エステル」という用語は、関連する式のすべての可能な立体配置及び塩を広く参照して解釈されるべきである。
【0071】
本明細書で提供される化合物は、1つ以上のキラル中心を含有し得ることが理解されるべきである。そのようなキラル中心は、各々(R)又は(S)配置のいずれかであり得る。本発明の化合物が2つ以上のキラル中心を含有する場合、それらのキラル中心の各々は、独立して、(R)又は(S)配置であり得る。したがって、本明細書で提供される化合物は、鏡像異性的に純粋であり得るか、又は立体異性混合物又はジアステレオマー混合物であり得る。
【0072】
一態様によれば、本発明は、PWSを治療することにおける使用のための、カンナビノイド(カンナビノイド成分は、式(I)の構造によって表されるCBDAエステルを、単独で、又は1つ以上の追加のカンナビノイド化合物と組み合わせて含む)と、薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤と、を含む、医薬組成物を提供し、
【化7】
式中、
及びRは、各々独立して、直鎖又は分岐鎖、非置換又は置換のC-C15アルキル、直鎖又は分岐鎖、非置換又は置換のC-C15アルケニル、及び直鎖又は分岐鎖、非置換又は置換のC-C15アルキニル、並びにそれらの立体異性体及び塩からなる群から選択される。
【0073】
別の態様によれば、本発明は、PWSを治療することにおける使用のための、カンナビノイド(カンナビノイド成分は、式(I)の構造によって表されるCBDAエステルを、単独で、又は1つ以上の追加のカンナビノイド化合物と組み合わせて含む)と、薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤と、を含む、医薬組成物を提供し、
【化8】
式中、
及びRは、各々独立して、非置換の、またはヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、チオール、及びホスフェートからなる群から選択される1つ以上の基によって置換された直鎖若しくは分岐鎖のC-C15アルキル、非置換の、またはヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、チオール、及びホスフェートからなる群から選択される1つ以上の基によって置換された直鎖若しくは分岐鎖のC-C15アルケニル、並びに非置換の、又はヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、チオール、及びホスフェートからなる群から選択される1つ以上の基によって置換された直鎖若しくは分岐鎖のC-C15アルキニル、並びにそれらの立体異性体及び塩からなる群から選択される。
【0074】
一態様によれば、本発明は、PWSを治療することにおける使用のための、カンナビノイド(カンナビノイド成分は、式(I)の構造によって表されるCBDAエステルを、単独で、又は1つ以上の追加のカンナビノイド化合物と組み合わせて含む)と、薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤と、を含む、医薬組成物を提供し、
【化9】
式中、
及びRは、各々独立して、直鎖又は分岐鎖、非置換又は置換のC-C15アルキル、直鎖又は分岐鎖、非置換又は置換のC-C15アルケニル、及び直鎖又は分岐鎖、非置換又は置換のC-C15アルキニル、並びにそれらの立体異性体及び塩からなる群から選択される。
【0075】
ある特定の実施形態によれば、1つ以上の追加のカンナビノイド化合物が、大麻植物の1つ以上の抽出物中に存在する。ある特定の実施形態によれば、1つ以上の追加のカンナビノイド化合物が、大麻植物の1つ以上の抽出物から提供される。ある特定の実施形態では、1つ以上の追加のカンナビノイド化合物が、大麻植物から抽出される。
【0076】
いくつかの実施形態によれば、Rは、直鎖又は分岐鎖、置換又は非置換のC-C15アルキルである。いくつかの実施形態によれば、Rは、直鎖又は分岐鎖、置換又は非置換のC-C10アルキルである。いくつかの実施形態によれば、Rは、直鎖又は分岐鎖、置換又は非置換のC-C10アルキルである。いくつかの実施形態によれば、Rは、直鎖又は分岐鎖、置換又は非置換のC-C15アルキルである。いくつかの実施形態によれば、Rは、直鎖又は分岐鎖、置換又は非置換のC-C15アルケニルである。いくつかの実施形態によれば、Rは、直鎖又は分岐鎖、置換又は非置換のC-C10アルケニルである。いくつかの実施形態によれば、Rは、直鎖又は分岐鎖、置換又は非置換のC-C10アルケニルである。いくつかの実施形態によれば、Rは、直鎖又は分岐鎖、置換又は非置換のC-C15アルケニルである。いくつかの実施形態によれば、Rは、直鎖又は分岐鎖、置換又は非置換のC-C15アルキニルである。いくつかの実施形態によれば、Rは、直鎖又は分岐鎖、置換又は非置換のC-C10アルキニルである。いくつかの実施形態によれば、Rは、直鎖又は分岐鎖、置換又は非置換のC-C10アルキニルである。いくつかの実施形態によれば、Rは、直鎖又は分岐鎖、置換又は非置換のC-C15アルキニルである。
【0077】
いくつかの実施形態によれば、Rは、直鎖置換のC-C15アルキルである。いくつかの実施形態によれば、Rは、直鎖非置換のC-C15アルキルである。いくつかの実施形態によれば、Rは、分岐鎖置換のC-C15アルキルである。いくつかの実施形態によれば、Rは、分岐鎖非置換のC-C15アルキルである。
【0078】
いくつかの実施形態によれば、Rは、直鎖置換のC-C15アルケニルである。いくつかの実施形態によれば、Rは、直鎖非置換のC-C15アルケニルである。いくつかの実施形態によれば、Rは、分岐鎖置換のC-C15アルケニルである。いくつかの実施形態によれば、Rは、分岐鎖非置換のC-C15アルケニルである。
【0079】
いくつかの実施形態によれば、Rは、直鎖置換のC-C15アルキニルである。いくつかの実施形態によれば、Rは、直鎖非置換のC-C15アルキニルである。いくつかの実施形態によれば、Rは、分岐鎖置換のC-C15アルキニルである。いくつかの実施形態によれば、Rは、分岐鎖非置換のC-C15アルキニルである。
【0080】
いくつかの実施形態によれば、Rは、非置換である。いくつかの実施形態によれば、Rは、直鎖非置換のC-C10アルキルである。いくつかの実施形態によれば、Rは、直鎖非置換のC-Cアルキルである。いくつかの実施形態によれば、Rは、直鎖非置換のC-Cアルキルである。いくつかの実施形態によれば、Rは、メチル又はエチルである。いくつかの実施形態によれば、Rはメチルである。
【0081】
いくつかの実施形態によれば、Rは、直鎖又は分岐鎖、置換又は非置換のC-C15アルキルである。いくつかの実施形態によれば、Rは、直鎖又は分岐鎖、置換又は非置換のC-C10アルキルである。いくつかの実施形態によれば、Rは、直鎖又は分岐鎖、置換又は非置換のC-C10アルキルである。いくつかの実施形態によれば、Rは、直鎖又は分岐鎖、置換又は非置換のC-C15アルキルである。いくつかの実施形態によれば、Rは、直鎖又は分岐鎖、置換又は非置換のC-C15アルケニルである。いくつかの実施形態によれば、Rは、直鎖又は分岐鎖、置換又は非置換のC-C10アルケニルである。いくつかの実施形態によれば、Rは、直鎖又は分岐鎖、置換又は非置換のC-C10アルケニルである。いくつかの実施形態によれば、Rは、直鎖又は分岐鎖、置換又は非置換のC-C15アルケニルである。いくつかの実施形態によれば、Rは、直鎖又は分岐鎖、置換又は非置換のC-C15アルキニルである。いくつかの実施形態によれば、Rは、直鎖又は分岐鎖、置換又は非置換のC-C10アルキニルである。いくつかの実施形態によれば、Rは、直鎖又は分岐鎖、置換又は非置換のC-C10アルキニルである。いくつかの実施形態によれば、Rは、直鎖又は分岐鎖、置換又は非置換のC-C15アルキニルである。
【0082】
いくつかの実施形態によれば、Rは、直鎖置換のC-C15アルキルである。いくつかの実施形態によれば、Rは、直鎖非置換のC-C15アルキルである。いくつかの実施形態によれば、Rは、分岐鎖置換のC-C15アルキルである。いくつかの実施形態によれば、Rは、分岐鎖非置換のC-C15アルキルである。
【0083】
いくつかの実施形態によれば、Rは、直鎖置換のC-C15アルケニルである。いくつかの実施形態によれば、Rは、直鎖非置換のC-C15アルケニルである。いくつかの実施形態によれば、Rは、分岐鎖置換のC-C15アルケニルである。いくつかの実施形態によれば、Rは、分岐鎖非置換のC-C15アルケニルである。
【0084】
いくつかの実施形態によれば、Rは、直鎖置換のC-C15アルキニルである。いくつかの実施形態によれば、Rは、直鎖非置換のC-C15アルキニルである。いくつかの実施形態によれば、Rは、分岐鎖置換のC-C15アルキニルである。いくつかの実施形態によれば、Rは、分岐鎖非置換のC-C15アルキニルである。
【0085】
いくつかの実施形態によれば、Rは、直鎖非置換のC-Cアルキルである。いくつかの実施形態によれば、Rは、直鎖非置換のC-Cアルキルである。いくつかの実施形態によれば、Rは、C11である。
【0086】
いくつかの実施形態によれば、本発明の組成物中のCBDAエステルは、式(Ia)によって表される。
【化10】
【0087】
いくつかの実施形態によれば、本発明の組成物中のCBDAエステルは、式(Ib)によって表される。
【化11】
【0088】
特定の実施形態によれば、CBDAエステルは、EPM301と称される化合物である。
【化12】
【0089】
「アルキル」基は、線形鎖又は直鎖、分岐鎖及び環状アルキル基を含む飽和脂肪族炭化水素を指す。一実施形態では、アルキル基は、1~15個の炭素を有し、本明細書ではC-C15アルキルと称される。別の実施形態では、アルキル基は、2~6個の炭素を有し、本明細書ではC-C-アルキルと称される。別の実施形態では、アルキル基は、2~4個の炭素を有し、本明細書ではC-C-アルキルと称される。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。アルキル基は、非置換であり得るか、又はヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、チオール、ホスフェート、及びそれらの組み合わせからなる基から選択される1つ以上の基によって置換され得る。したがって、「非置換又は置換アルキル」という句は、非置換であるアルキル基(すなわち、炭化水素である)、又はヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、チオール、ホスフェート、及びそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つで置換されたアルキルのいずれかを指す。
【0090】
「ハロ」及び「ハロゲン」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨード原子を指す。化合物がハロゲン置換されていると言われるときはいつでも、化合物は、同じ又は異なる1つ以上のハロゲンを含んでもよい。
【0091】
「アルケニル」基は、線形鎖又は直鎖、分岐鎖及び環状アルケニル基を含む少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含有する脂肪族炭化水素基を指す。一実施形態では、アルケニル基は、2~15個の炭素原子を有する(C15アルケニル)。別の実施形態では、アルケニル基は、鎖中に2~4個の炭素原子を有する(Cアルケニル)。例示的なアルケニル基には、エテニル、プロペニル、n-ブテニル、i-ブテニル、3-メチルブタ-2-エニル、n-ペンテニル、ヘプテニル、オクテニル、シクロヘキシル-ブテニル及びデセニルが含まれるが、これらに限定されない。アルキルアルケニルは、本明細書で定義されるようなアルケニル基に結合した、本明細書で定義されるようなアルキル基である。アルケニル基は、非置換であり得るか、又はアルキルについて上で定義した1つ以上の基で、利用可能な炭素原子を介して置換され得る。したがって、「非置換又は置換アルケニル」という句は、非置換であるアルケニル基(すなわち、炭化水素である)、又はヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、チオール、ホスフェート、及びそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つで置換されたアルケニルのいずれかを指す。
【0092】
「アルキニル」基は、線形鎖及び分岐鎖を含む少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含有する脂肪族炭化水素基を指す。一実施形態では、アルキニル基は、鎖中に2~15個の炭素原子を有する(C15アルキニル)。別の実施形態では、アルキニル基は、鎖中に2~4個の炭素原子を有する(C2-4アルキニル)。例示的なアルキニル基には、エチニル、プロピニル、n-ブチニル、2-ブチニル、3-メチルブチニル、n-ペンチニル、ヘプチニル、オクチニル及びデシニルが含まれるが、これらに限定されない。アルキルアルキニルは、本明細書で定義されるようなアルキニル基に結合した、本明細書で定義されるようなアルキル基である。アルキニル基は、非置換であり得るか、又はアルキルについて上で定義した1つ以上の基で、利用可能な炭素原子を介して置換され得る。したがって、「非置換又は置換アルキニル」という句は、非置換であるアルキニル基(すなわち、炭化水素である)、又はヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、チオール、ホスフェート、及びそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つで置換されたアルキニルのいずれかを指す。
【0093】
いくつかの実施形態によれば、追加のカンナビノイド化合物は、CBD、CBG、Δ-THC、Δ-THC、CBN、exo-THC、CBC、THC-C3、THC-C4、THC-C7、それらのエステル及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0094】
式(I)のCBDAエステルまたはカンナビノイド化合物は、その任意の溶媒和物を含むことが企図される。本明細書で使用される「溶媒和物」という用語は、本明細書に開示される化合物と1つ以上の溶媒分子との物理的会合を指す。この物理的会合は、水素結合を含む様々な程度のイオン結合及び共有結合を含む。特定の例では、溶媒和物は単離することができる。「溶媒和物」は、液相溶媒和物と単離可能溶媒和物の両方を包含する。好適な溶媒和物の非限定的な例には、エタノレート、メタノレートなどが含まれる。「水和物」は、溶媒分子が水である溶媒和物である。
【0095】
CBDAエステルが固体形態で組成物に組み込まれる実施形態では、本開示は、その任意の多形も含む。「多形」という用語は、X線回折、電子線回析、IRスペクトル、ラマンスペクトル、融点などの特定の物理的特性によって特徴付けることができる、物質の特定の結晶又はアモルファス状態を指す。
【0096】
本明細書に開示されるカンナビノイドのいずれか、具体的には、式(I)のCBDAエステルは、当業者に既知の任意の方法によって調製することができる。例えば、それは、天然の供給源から単離若しくは抽出され得るか、又は合成若しくは半合成手段によって調製され得る。例えば、カンナビノイドは大麻植物から抽出することによって単離することができる。カンナビス属の植物には、Cannabis sativa、Cannabis indica、及びCannabis ruderalisが含まれるが、これらに限定されない。各可能性は、別々の実施形態を表す。これらの植物はカンナビノイドの天然の供給源である。いくつかの実施形態によれば、特定のカンナビノイドは、大麻植物から単離又は抽出され、次いで、式(I)のCBDAエステルに誘導体化される。しかしながら、式(I)のカンナビノイドエステルのうちのいくつかは天然に存在せず、したがって、それらの生成のために化学合成が必要とされることが当業者によって理解されるべきである。
【0097】
本明細書で使用される「抽出物」という用語は、物理的手段による(例えば、粉砕、プレス、加熱、パルス電界支援処理、剪断処理及び圧力波処理による)、化学的手段による(例えば、酸、塩基及び/又は溶媒による処理による)及び/又は生化学的手段による抽出によって調製された生成物を指す。この用語は、所与の物質からの抽出によって得られる液体物質、又は溶媒を含まない、若しくは実質的に含まない濃縮物若しくはエッセンスを指す。抽出物という用語は、特定の抽出ステップ又は一連の抽出ステップから得られる単一の抽出物であり得る。抽出物はまた、別々の抽出ステップ又は別々の原料から得られる抽出物の組み合わせであり得る。したがって、そのような組み合わされた抽出物もまた、「抽出物」という用語に包含される。好適な溶媒を用いた任意の抽出の方法が包含される。例示的な抽出方法は、例えば、米国特許第6,403,126号に見出すことができる。抽出物は、植物の任意の部分から、例えば、葉、花、茎、根、果実及び種子から得ることができる。抽出物は水性又は油性であり得る。
【0098】
いくつかの実施形態によれば、大麻植物抽出物は、好適な溶媒又は溶媒の組み合わせによって形成される。いくつかの実施形態によれば、溶媒は、極性溶媒、炭化水素溶媒、二酸化炭素、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態によれば、大麻植物抽出物は、大麻植物材料を好適な溶媒又は溶媒の組み合わせと接触させることを含むプロセスによって生成される。いくつかの実施形態によれば、本プロセスは、当該溶媒に可溶な画分を単離することを更に含む。いくつかの実施形態によれば、本プロセスは、可溶性画分から溶媒を除去して、抽出物を得ることを更に含む。
【0099】
好適な溶媒には、水、エタノール、酢酸エチル、CO(例えば、液体CO又は超臨界CO)、メタノール、アセトン、及び酢酸が含まれるが、これらに限定されない。好適な極性溶媒には、限定されないが、ハロゲン化炭化水素(例えば、クロロホルム、ジクロロメタン)、エーテル(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン)、アルコール(例えば、エタノール、メタノール、イソプロパノール)、エステル(例えば、酢酸エチル)、ニトリル(例えば、アセトニトリル)、スルホン及びスルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド、スルホラン)、アミド(例えば、ジメチルホルムアミド)及び/又は酸(例えば、酢酸)を含む、極性有機溶媒が含まれる。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。好適な非極性溶媒には、限定されないが、脂肪族炭化水素(例えば、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、石油エーテル)及び/又は芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン)を含む、炭化水素が含まれる。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。一実施形態によれば、溶媒はエタノールである。一実施形態によれば、溶媒は、水性エタノールなどのエタノールを含む。別の実施形態によれば、抽出はCOによるものである。具体的には、「抽出物」という用語は、本出願に定義される植物からの抽出によって得られる液体若しくは半固体又は樹脂性の物質、すなわち、大麻植物、例えば、Cannabis sativa、Cannabis indica、及びCannabis ruderalisから得られる抽出物を指す。いくつかの実施形態では、この用語は、2つ以上の異なる植物からの抽出によって得られる液体又は半固体の樹脂性物質の混合物を指す。いくつかの実施形態では、この用語は、抽出物から精製された化合物も指す。いくつかの実施形態によれば、「抽出物」という用語は、2つ以上の抽出物の混合物又は組み合わせの意味を有する。
【0100】
本明細書で使用される「大麻抽出物」という用語は、大麻植物からの1つ以上の植物抽出物を指す。大麻抽出物は、1つ以上のカンナビノイドに加えて、植物材料からカンナビノイドと共抽出される1つ以上の非カンナビノイド成分を含有する。それらのそれぞれの重量範囲は、出発植物材料と使用する抽出方法とによって異なるであろう。カンナビノイド含有植物抽出物は、大麻植物材料の様々な抽出手段によって得ることができる。そのような手段には、COによる超臨界又は亜臨界抽出、高温又は低温ガスによる抽出、及び溶媒による抽出が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、この用語は、2つ以上の異なる大麻種からの抽出によって得られる液体又は半固体の樹脂性物質の混合物を指す。いくつかの実施形態では、この用語は、抽出物から精製された化合物も指す。本明細書で使用される「大麻植物」という用語は、限定されないが、Cannabis sativa、Cannabis indica、及びCannabis ruderalisを含む、大麻属の植物を指す。いくつかの実施形態によれば、大麻植物は、大麻植物のCBDリッチ株又は大麻植物のTHCリッチ株である。各可能性は、別々の実施形態を表す。
【0101】
いくつかの実施形態によれば、大麻植物抽出物は、Cannabis sativa、Cannabis indica、Cannabis ruderalis、ハイブリッド株、高CBD株、高THC株、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される種又は株から得られる。いくつかの実施形態によれば、大麻植物抽出物は、CBD、THC、CBN、CBG、CBC、それらの酸及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのカンナビノイドを含む。
【0102】
いくつかの実施形態によれば、大麻植物抽出物は、約1%(w/w)のCBDを含む。いくつかの実施形態によれば、大麻植物抽出物は、約10%(w/w)のCBDを含む。いくつかの実施形態によれば、大麻植物抽出物は、約25%(w/w)のCBDを含む。いくつかの実施形態によれば、大麻植物抽出物は、約45%(w/w)のCBDを含む。いくつかの実施形態によれば、大麻植物抽出物は、約1%~約45%(w/w)のCBDを含み、指定範囲内の各値及び部分範囲を含む。いくつかの実施形態によれば、大麻植物抽出物は、約1%~約10%(w/w)のCBD、約10%~約25%(w/w)のCBD又は約25%~約40%(w/w)のCBDを含む。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0103】
いくつかの実施形態によれば、大麻植物抽出物は、約1%(w/w)のTHCを含む。いくつかの実施形態によれば、大麻植物抽出物は、約10%(w/w)のTHCを含む。いくつかの実施形態によれば、大麻植物抽出物は、約25%(w/w)のTHCを含む。いくつかの実施形態によれば、大麻植物抽出物は、約45%(w/w)のTHCを含む。いくつかの実施形態によれば、大麻植物抽出物は、約1%~約45%(w/w)のTHCを含み、指定範囲内の各値及び部分範囲を含む。いくつかの実施形態によれば、大麻植物抽出物は、約1%~約10%(w/w)のTHC、約10%~約25%(w/w)のTHC又は約25%~約40%(w/w)のTHCを含む。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0104】
「ハイブリッド株」という用語は、異なる量及び/又は比率の様々なカンナビノイド化合物を含む、大麻(Cannabis)の異なる株を指す。例えば、Cannabis sativaは、通常、比較的高いTHC/CBD比を有する。逆に、Cannabis indicaは、Cannabis sativaと比べると比較的低いTHC/CBD比を有する(但し、THCの絶対量はCannabis sativaよりもCannabis indicaの方が高い可能性がある)。
【0105】
本明細書で使用される場合、「高CBD株」及び「CBDリッチ株」という用語は、CBDと、任意選択的に1つ以上の追加のカンナビノイド、例えば、限定されないが、THC、CBNなどを含む大麻植物の株を指す。いくつかの実施形態によれば、CBDは、高CBD株の主成分である。
【0106】
本明細書で使用される場合、「高THC株」及び「THCリッチ株」という用語は、THCと、任意選択的に1つ以上の追加のカンナビノイド、例えば、限定されないが、CBD、CBNなどを含む大麻植物の株を指す。いくつかの実施形態によれば、THCは、高THC株の主成分である。
【0107】
本発明のカンナビノイド成分の組み合わせは、上記の比率で混合物を作製する当技術分野で既知であるような従来の方法によって一般に調製され得る。そのような方法は、典型的には、加熱、冷却、真空の適用などを用いて又は用いずに、CBDAエステルと、1つ以上の追加のカンナビノイド化合物、又は1つ以上の大麻植物の抽出物とを、1つ以上のステップで混合して比較的均一な状態にすることを含む。
【0108】
医薬組成物
本明細書に開示される組成物は、局所的又は全身的に投与され得る。
【0109】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、吸入用に製剤化される。いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、非水性組成物である。特定の実施形態によれば、医薬組成物は、乾燥粉末製剤である。いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、気化による投与用に製剤化される。
【0110】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、複数回用量リザーバー乾燥粉末吸入器(DPI)に好適な粉末である。
【0111】
本明細書で使用される「乾燥粉末」という用語は、吸入装置内で分散され、続いて対象によって吸入されることが可能な呼吸用乾燥粒子を含有する組成物を指す。そのような乾燥粉末は、約25%以下、約20%以下、若しくは約15%以下の水若しくは他の溶媒を含有してもよく、又は水若しくは他の溶媒を実質的に含まなくてもよく、又は無水であってもよい。
【0112】
本明細書に記載の粉末は、一価金属カチオン塩、二価金属カチオン塩、又はそれらの組み合わせであり得る、1つ以上の金属カチオン塩を含有してもよい。乾燥粉末における使用に好適な塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0113】
好ましくは、乾燥粒子は、高度に分散性であり、患者自身の呼吸パターンのみに依存する受動DPIを使用して患者の気道に送達することができる。ある特定の実施形態では、呼吸に適した乾燥粒子の気道への送達は、患者の吸気流量とは比較的無関係であり、これは送達される用量が、比較的高い又は低い流量で呼吸する患者に非常に類似していることを意味する。
【0114】
本明細書に記載の呼吸に適した乾燥粒子は、生理学的又は薬学的に許容される賦形剤を含むことができる。例えば、薬学的に許容される賦形剤は、吸入療法に有用な賦形剤であることが当技術分野で既知の標準的な炭水化物、糖アルコール、及びアミノ酸のうちのいずれかを、単独で、又は任意の所望の組み合わせで含む。これらの賦形剤は、一般に、比較的易流動性の粒子であり、水と接触しても増粘又は重合せず、分散粉末として吸入された場合に毒物学的に無害であり、所望の生理作用に悪影響を及ぼすように治療剤と著しく相互作用しない。これに関して有用な炭水化物賦形剤としては、単糖類及び多糖類が挙げられる。代表的な単糖類としては、デキストロース(無水物及び一水和物、グルコース及びグルコース一水和物とも称される)、ガラクトース、マンニトール、D-マンノース、ソルボースなどが挙げられる。代表的な二糖類としては、ラクトース、マルトース、スクロース、トレハロースなどが挙げられる。代表的な三糖類としては、ラフィノースなどが挙げられる。他の炭水化物賦形剤としては、マルトデキストリン及びシクロデキストリンが挙げられる。代表的な糖アルコールとしては、マンニトール、ソルビトールなどが挙げられる。
【0115】
賦形剤は、約90%未満の量、約80%未満の量、約70%未満の量、約60%未満の量、約50%未満の量、約40%未満の量、約35%未満の量、約30%未満の量、約25%未満の量、約20%未満の量、約17%未満の量、約15%未満の量、約12%未満の量、約10%未満の量、約8%未満の量、約6%未満の量、約5%未満の量、約4%未満の量、約3%未満の量、約2%未満の量、又は約1%未満の量で存在してもよく、すべてのパーセンテージは、乾燥粒子の重量による。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0116】
いくつかの実施形態では、乾燥粒子は、ロイシン、マルトデキストリン、マンニトール及びそれらの任意の組み合わせから選択される賦形剤を含有する。ある特定の実施形態では、賦形剤は、ロイシン、マルトデキストリン、又はマンニトールである。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0117】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、推進剤を含む、吸入用に製剤化される。薬学的に許容される推進剤としては、吸入許容されるヒドロフルオロアルカン(hydrofluoroalkane、HFA)が挙げられる。これらには、HFA 134a(テトラフルオロエタン)、HFA 227(ヘプタフルオロプロパン)及びそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0118】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、鼻腔内、経口、静脈内、動脈内、経粘膜、又は皮下投与に好適な剤形に形成される。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0119】
追加の実施形態によれば、医薬組成物は、カプセル剤、錠剤、液剤、又はシロップ剤として製剤化される。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。ある特定の実施形態では、剤形は、サシェで送達されるか、カプセルに充填されるか、又は錠剤に圧縮される顆粒又はペレットである。
【0120】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、トリグリセリド、脂肪、脂質、油、脂肪酸、共溶媒又はそれらの混合物を更に含む。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。ある特定の実施形態によれば、医薬組成物は、食用油又は脂肪を含む。
【0121】
特定の実施形態によれば、医薬組成物は、コパイバ油、ヤシ油、綿実油、大豆油、ベニバナ油、ゴマ油、ヒマワリ油、ヒマシ油、トウモロコシ油、オリーブ油、ヤシ油、落花生油、及びポピーシード油からなる群から選択される食用油を含む。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。特定の実施形態によれば、医薬組成物は、コパイバ油を含む。
【0122】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、アルコール及び溶媒を含む。いくつかの実施形態によれば、アルコールは、エタノールである。ある特定の実施形態によれば、溶媒は、ポリエチレングリコール(PEG)又はプロピレングリコールである。
【0123】
いくつかの実施形態によれば、医薬品は、ビタミン、ミネラル、及び/又は香味剤を更に含む。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0124】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、カンナビノイド成分の徐放のために製剤化される。いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、CBDAエステルの徐放のために製剤化される。ある特定の実施形態では、医薬組成物は、放出遅延剤又は放出遅延剤の混合物を更に含む。いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、腸溶コーティング剤によって少なくとも部分的にコーティングされている。
【0125】
いくつかの実施形態によれば、組成物は、カンナビノイド成分又はその許容される塩がゲルマトリックスに封入されているゲルである。本発明のゲル組成物は、水中油型(o/w)エマルションを含み得る。
【0126】
可溶化剤及び乳化剤は、カンナビノイド成分の生物学的利用能を改善するために使用される。生物学的利用能とは、活性部分(薬物又は代謝物)が体循環に入り、それによって作用部位にアクセスする程度及び速度を指す。
【0127】
いくつかの態様によれば、本発明の組成物及び方法内で、生物学的利用能増強剤は、食用油若しくは脂肪、保護コロイド、又は保護コロイド及び食用油若しくは脂肪の両方である。別の態様では、生物学的利用能増強剤はまた、親油性活性剤矯味剤である。他の実施形態では、対象における親油性活性剤の生物学的利用能は、生物学的利用能増強剤の非存在下での対象における親油性活性剤の生物学的利用能より少なくとも約2倍、5倍、又は10倍大きい。
【0128】
いくつかの実施形態によれば、マイクロカプセル化粒子中に提供されるカンナビノイド成分。いくつかの実施形態によれば、マイクロカプセル化粒子中に提供されるCBDAエステル。カプセル化は、リポソームカプセル粒子または他のタイプの粒子中のカンナビノイド材料に存在するカンナビノイド及び他の材料をもたらす可能性がある。
【0129】
マイクロカプセル化又はナノカプセル化は、カンナビノイドの生物学的利用能を増加させ、それによって、粘膜を介した吸収後のカンナビノイドの効力を増加させ得る。マイクロカプセル化又はナノカプセル化は、20~40nmのサイズの粒子をもたらし得る。マイクロカプセル化又はナノカプセル化は、水性環境でのカンナビノイド粒子の溶解を促進する。
【0130】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、ポリオキシエチレンエーテル、エステル又はアルコール;アルカリ金属硫酸アルキル;胆汁酸;レシチン、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸の薬学的に許容される塩、オクチルフェノキシポリエトキシエタノール、グリコール酸、乳酸、カモミール抽出物、キュウリ抽出物、オレイン酸、リノレン酸、ボラージ油、マツヨイグサ油、トリヒドロキシオキソ-コラニルグリシン、グリセリン、ポリグリセリン、リジン、ポリリジン、トリオレイン、それらの塩、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのミセル形成化合物を含む。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。ある特定の実施形態によれば、胆汁酸又は胆汁酸塩は、ケノデオキシコール酸(chenodesoxycholic acid、CDCA)、デオキシコール酸(desoxycholic acid、DCA)、リトコール酸(lithocholic acid、LCA)、タウロデオキシコール酸(taurodesoxycholic acid、TDCA)、ヒオデオキシコール酸(hyodeoxycholic acid、HDCA)、タウロコール酸(taurocholic acid、TCA)、グリココール酸(glycocholic acid、GCA)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0131】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、リン脂質を含む。ある特定の実施形態によれば、医薬組成物は、天然に存在するリン脂質及び合成リン脂質からなる群から選択されるリン脂質を含む。特定の実施形態によれば、天然に存在するリン脂質は、大豆レシチン、卵レシチン、水素化大豆レシチン、水素化卵レシチン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。ある特定の実施形態によれば、合成リン脂質は、ホスホコリン、ホスホエタノールアミン、ホスファチジン酸、ホスホグリセロール、ホスホセリン、混合鎖リン脂質、リゾリン脂質、ペグ化リン脂質、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0132】
いくつかの実施形態によれば、リン脂質は、ミセル、エマルション、又はリポソームを形成し得る。したがって、いくつかの実施形態によれば、本医薬組成物は、乳化剤としてリン脂質を含むエマルションの形態である。いくつかの実施形態によれば、本医薬組成物は、ミセル形成剤としてリン脂質を含むミセルの形態である。いくつかの実施形態によれば、本医薬組成物は、リポソーム形成剤としてリン脂質を含むリポソーム組成物の形態である。
【0133】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、シクロデキストリンを含む。ある特定の実施形態によれば、シクロデキストリンは、ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリン、スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリン、及びメチル-β-シクロデキストリン(MβCD)、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0134】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、薬学的に許容される溶媒、すなわち、許容できない有害作用を伴わない哺乳動物への投与に好適な非毒性溶媒を含む。溶媒は、水性又は非水性溶媒であり得る。好適な溶媒としては、アルコール溶液、特にエタノールが挙げられる。
【0135】
医薬組成物は、任意選択的に、安定剤及び/又は保存剤を含有し得る。フェノール化合物、すなわち、ベンジル環上に1つ以上のヒドロキシル基を含む化合物は、組成物を安定化するだけでなく、組成物の吸収を高めるので、この目的に特に適している。好ましいフェノール化合物としては、フェノール、メチルフェノール及びそれらの混合物が挙げられる。
【0136】
医薬組成物はまた、以下の追加の添加剤:無機塩、抗酸化剤、プロテアーゼ阻害剤、着色剤及び香味剤のうちの1つ以上を含み得る。無機塩の非限定的な例としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩及び亜鉛塩、特に塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化亜鉛及び重炭酸ナトリウムが挙げられる。
【0137】
経口投与された製剤は、任意選択的にコーティングされ、そこに含まれる活性成分の持続放出、遅延放出又は制御放出を提供するように製剤化され得る。
【0138】
本明細書で使用される「持続」という用語は、治療剤の持続放出、長時間放出又は延長放出を提供する組成物を指す。この用語は更に、治療有効量の本発明の医薬組成物を含む医薬組成物の長期の、長い又は延長された作用持続時間(薬物動態)を提供する組成物を指す場合がある。
【0139】
医薬組成物は、本明細書に記載の賦形剤を含むがこれに限定されない追加の成分を含むことができる。ある特定の実施形態によれば、投与単位の1つ以上の治療剤は、徐放性製剤又は制御放出製剤中に存在してもよく、追加の治療剤は、徐放性製剤中に存在しなくてもよい。例えば、本明細書に記載のカンナビノイド成分は、制御放出製剤又は徐放性製剤のいずれかに含まれる場合も含まれない場合もある別の薬剤と同じ投与単位で制御放出製剤又は徐放性製剤に存在し得る。したがって、ある特定の実施形態では、本明細書に記載の薬剤のうちの1つ以上の即時放出、及び1つ以上の他の薬剤の制御放出を提供することが望ましい場合がある。
【0140】
いくつかの実施形態によれば、組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容される担体を更に含む。追加の実施形態によれば、賦形剤は、乳化剤、緩衝剤、pH調整剤、浸透圧修飾剤、保存剤、抗酸化剤、安定剤、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0141】
いくつかの実施形態によれば、薬学的に許容される担体は、水性担体である。いくつかの実施形態では、水性担体は、生理学的又は生理学的に近いpHを有する生理学的に許容される緩衝剤である。
【0142】
いくつかの実施形態によれば、組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容される担体を更に含む。更なる実施形態によれば、賦形剤は、乳化剤、緩衝剤、pH調整剤、浸透圧修飾剤、保存剤、抗酸化剤、安定剤、又は当技術分野で既知の任意の他の薬学的に許容される賦形剤から選択されるが、これらに限定されない。
【0143】
医薬組成物は、プルラン、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、メタクリル酸ポリマー、メタクリル酸コポリマー、アクリル酸ポリマー、アクリル酸コポリマー、ポリアクリルアミド、ポリアルキレンオキシド、カラギーナン、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、グリコリド、ポリラクチド、メチルメタクリレートコポリマー、カルボキシビニルポリマー、アミロース、高アミロースデンプン、ヒドロキシプロピル化高アミロースデンプン、アルギン酸、エンドウ豆デンプン、デキストリン、ペクチン、キチン、キトサン、レバン、エルシナン及びそれらの混合物などの、少なくとも1つの生理学的に許容されるフィルム形成剤を含み得る。キサンタンガム、トラガカンスガム、グアーガム、ローカストビーンガム、アカシアガム、アラビアガム、コラーゲン、ゼラチン、ゼイン、グルテン、大豆タンパク質分離物、ホエイタンパク質分離物、カゼイン及びそれらの混合物のような薬剤を含む追加のフィルム形成剤を加えて、引張強度、安定性、柔軟性及び脆性などの特性を最適化することができる。
【0144】
いくつかの実施形態によれば、経口投与製剤は、フィルム形成剤としてのカルボキシメチルセルロースナトリウムと、ヒドロキシプロピルセルロース又はメチルセルロースとの混合物を含む。製剤を製造するために使用されるカルボキシメチルセルロースナトリウムとヒドロキシプロピルセルロース(又はメチルセルロース)との比は、所望の溶解時間をもたらし、更に許容される生成物取り扱い特性を与えるように選択される。
【0145】
いくつかの実施形態によれば、組成物は、約10%(w/w)未満のカンナビノイド成分を含む。追加の実施形態によれば、組成物は、約7%(w/w)未満のカンナビノイド成分を含む。更なる実施形態によれば、組成物は、約5%(w/w)未満のカンナビノイド成分を含む。更に別の実施形態によれば、組成物は、約2%(w/w)未満のカンナビノイド成分を含む。いくつかの実施形態によれば、組成物は、約1%(w/w)未満のカンナビノイド成分を含む。追加の実施形態によれば、組成物は、約0.5%(w/w)未満のカンナビノイド成分を含む。w/w単位は、組成物中のカンナビノイド成分の相対重量を指すことが意図されていることを理解されたい。例えば、組成物の総重量が1グラムであり、その中のカンナビノイド成分の重量が50ミリグラムである場合、組成物は、5%(w/w)のカンナビノイド成分を含むと言われる。
【0146】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、固体又は半固体形態である。「半固体」という用語は、一方でそれ自体の重量を支持し、その形状を保持し、他方で外圧に応答して形状が適合することができる形態を指す。
【0147】
本発明はまた、本発明の医薬組成物のうちの1つ以上が充填された1つ以上の容器を含む医薬パック又はキットを提供する。
【0148】
患者を治療するために患者に投与される任意の活性剤の量は、患者の体重及び年齢を考慮して、通常の技術を有する医師、薬理学者、及び毒物学者によって決定されるような治療有効量で投与されることが理解されるべきである。いずれにしても、薬物が規制当局(例えば、米国食品医薬品局)によって承認されている場合、カンナビノイド成分の治療有効量は、規制当局によって承認された量である。
【0149】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、追加の治療剤を更に含む。
【0150】
調製方法
本発明の組成物は、当技術分野で既知の吸入用に製剤化することができる。そのような製剤において、CBDA-MEは、いくつかの実施形態では、吸入可能な乾燥粉末として、又はエアロゾル溶液として調製される。吸入療法のための乾燥粉末製剤は、例えば、Lipp及びSungの米国特許第10,588,870号、Suttonらの米国特許第5,993,805号、Platzらの米国特許第6,921,527号、Tararaらの国際公開第1999016419号、及びBotらの国際公開第2000000215号に記載されている。
【0151】
本発明の組成物は、単相水性、エマルション又は複数のエマルションとして製剤化することができる。いくつかの実施形態によれば、組成物は、エマルションとして製剤化される。これらのエマルションは、水中油型(o/w)(水中シリコーン型を含む)エマルション、油中水型(シリコーン中水型を含む)(w/o)エマルション、又は油中水中油(o/w/o)型若しくは水中油中水(w/o/w)型などの多重エマルションであり得る。油相は、シリコーン油、非シリコーン有機油、又はそれらの混合物を含み得ることを理解されたい。組成物は、使用時に振盪することによって混合される2つの非混和性相を含むことができる。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0152】
いくつかの実施形態によれば、組成物は、好適な溶媒(分散剤)中で各成分の分散液を調製し、pH調整剤で分散液のpHを調整し、必要に応じて、分散液を剪断により混合して所望のマトリックスの形成を可能にすることによって作製される。
【0153】
医療大麻の一般的な投与方様式は、大麻抽出物又は純粋なカンナビノイドを植物油などのトリグリセリド油に溶解して経口送達することである。油は、カプセルに充填されるか、又は様々な量でそのまま使用される。吸入とは対照的に、薬物の経口投与経路は、ほとんどの人にとって最も便利であり、丸剤を摂取するなどの自己投薬の許容可能な様式として認識されている。そのような場合、カンナビノイドの即時放出が得られ、吸収が速く、活性の持続時間は中間的であるが、喫煙又は気化よりも長い。トリグリセリド油中にカンナビノイドを溶解することの主な欠点は、植物油中のカンナビノイド、特にCBDの限られた溶解度のために、単一単位用量中で高濃度のカンナビノイドに達することができないことである。したがって、多くの製品は、植物油に溶解され、比較的大量に投与されるカンナビノイドである「カンナビス油」である。しかしながら、このアプローチの制限は、植物油及びカンナビノイドに特徴的な好ましくない味及び臭いであり、これはしばしば患者のコンプライアンスの低下をもたらす。
【0154】
当業者は、使用される構成成分の性質及び組成物の使用目的を考慮して、一般的な知識に基づいて、適切な提示形態、及びそれを調製する方法を選択することができる。上記の組成物を含有するキットも企図される。本発明の組成物は、容器、説明書、又は指示パンフレットを含有するように、それらとは別に、又はそれらと一緒にキットの形態で包装することができる。
【0155】
使用方法
一態様によれば、本発明は、PWSを治療するための方法であって、それを必要とする対照に、治療有効量の、カンナビノイド成分(カンナビノイド成分は、式(I)の構造によって表されるCBDAエステルを、単独で、又は1つ以上の追加のカンナビノイド化合物と組み合わせて含む)と、薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤とを含む、医薬組成物を投与することを含む方法を提供し、
【化13】
式中、
及びRは、各々独立して、直鎖又は分岐鎖、非置換又は置換のC-C15アルキル、直鎖又は分岐鎖、非置換又は置換のC-C15アルケニル、及び直鎖又は分岐鎖、非置換又は置換のC-C15アルキニル、
並びにそれらの立体異性体及び塩からなる群から選択される。
【0156】
追加の態様によれば、本発明は、プラダー・ウィリー症候群を治療するための方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の、カンナビノイド成分(カンナビノイド成分は、式(I)の構造によって表されるCBDAエステルを単独で、又は1つ以上の追加のカンナビノイド化合物と組み合わせて含む)と、薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤とを含む、医薬組成物を投与することを含む方法を提供し、
【化14】
式中、
及びRは、各々独立して、直鎖又は分岐鎖、非置換又は置換のC-C15アルキル、直鎖又は分岐鎖、非置換又は置換のC-C15アルケニル、及び直鎖又は分岐鎖、非置換又は置換のC-C15アルキニル、
並びにそれらの立体異性体及び塩からなる群から選択される。
【0157】
ある特定の実施形態によれば、1つ以上の追加のカンナビノイド化合物が、大麻植物の1つ以上の抽出物中に存在する。
【0158】
治療剤の「治療有効量」におけるような「有効量」という用語は、所望の生物学的応答を誘発するのに必要な薬剤の量を指す。当業者によって理解されるように、薬剤の有効量は、所望の生物学的エンドポイント、送達される薬剤、医薬組成物の組成、標的組織又は細胞などの因子に依存して変動し得る。より具体的には、「有効量」という用語は、所望の効果をもたらす、例えば、疾患、障害、若しくは状態、又はそれらの1つ以上の症状の重症度、持続期間、進行、若しくは発症を低減又は改善する;疾患、障害、又は状態の進行を予防し、疾患、障害、又は状態の退行を引き起こす;疾患、障害、若しくは状態に関連する症状の再発、発生、発症若しくは進行を予防するか、又は別の療法の予防効果若しくは治療効果を増強若しくは改善するのに十分な量を指す。例えば、CBDAエステルの「治療有効量」は、特定の疾患又は障害を予防、改善、又は治療するのに有効な量を指す。同様に、CBDAエステルと第2の化合物との組み合わせの「治療有効量」とは、組み合わせて、特定の疾患又は障害を改善又は治療するのに有効である、CBDAエステルの量と第2の化合物の量を指す。
【0159】
「治療」という用語又はその任意の文法上の変形(例えば、治療する、治療すること、及び治療など)は、本明細書で使用される場合、疾患若しくは状態の症状を緩和すること;並びに/又は疾患若しくは状態の進行、重症度、及び/若しくは範囲を低減すること、抑制すること、阻害すること、軽減すること、又は影響を及ぼすことを含むがこれらに限定されない。
【0160】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、哺乳動物、好ましくはヒトを示す。
【0161】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、PWSを治療することにおける使用のためのものである。ある特定の実施形態によれば、本明細書に記載の医薬組成物は、PWSに関連する少なくとも1つの症状を治療又は改善することにおける使用のためのものである。
【0162】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、PWSの治療のための他の治療薬と組み合わせて使用される。
【0163】
有益な効果は、例えば、罹患しやすい対象における疾患又は状態の臨床症状の発症の遅延、疾患又は状態のいくつか又はすべての臨床症状の重症度の低減、疾患又は状態の進行の遅延、疾患又は状態の再発数の低減、対象の全体的な健康又はウェルビーイングの改善によって、特定の疾患又は状態に特異的な当技術分野で周知の他のパラメータによって、及びそのような因子の組み合わせによって証明することができる。
【0164】
投与経路は、任意の経路であり得、医師及び患者に基づいて決定される。PWSを治療している患者を治療するための治療有効量の薬剤の投与のすべての他の経路は、本明細書において企図され、限定されないが、経腸(例えば、経口)、又は非経口(例えば、静脈内、皮下、若しくは吸入による)、又は他の経路(例えば、鼻腔内、皮内、皮下、及び経皮)を含む。
【0165】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、吸入によって投与される。ある特定の実施形態によれば、医薬組成物は、鼻腔内に投与される。他の実施形態によれば、医薬組成物は、経口投与される。
【0166】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、1日に2回、1日に3回又はそれ以上投与される。いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、1日に1回、週に2回、週に1回、2週間に1回、3週間に1回、又は月に1回投与される。更なる実施形態によれば、組成物は、2ヶ月に1回、3ヶ月に1回、4ヶ月に1回、5ヶ月に1回、又は6ヶ月に1回投与される。
【0167】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、1週間を超える期間投与される。いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、4週間を超える期間投与される。いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、2ヶ月を超える期間投与される。いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、3、4、5、又は6ヶ月を超える期間投与される。
【0168】
いくつかの実施形態によれば、カンナビノイド成分の有効用量は、体重の0.1~500mg/kg/日、体重の1~250mg/kg/日、体重の2~100mg/kg/日、又は5~30mg/kg/日の範囲であり、単回用量であり得るか、又は1日を通して分割されてもよい。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0169】
いくつかの実施形態によれば、CBDAエステルの有効用量は、体重の0.1~500mg/kg/日、体重の1~250mg/kg/日、体重の2~100mg/kg/日、又は5~30mg/kg/日の範囲であり、単回用量であり得るか、又は1日を通して分割されてもよい。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0170】
いくつかの実施形態によれば、CBDA-MEの有効用量は、体重の0.1~500mg/kg/日、体重の1~250mg/kg/日、体重の2~100mg/kg/日、又は5~30mg/kg/日の範囲であり、単回用量であり得るか、又は1日を通して分割されてもよい。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0171】
他の実施形態によれば、医薬組成物は、およそ0.05g/kg/日~およそ0.5g/kg/日の単位剤形で投与される。
【0172】
本発明の活性剤は、広い投与量範囲にわたって有効である。ある特定の実施形態によれば、カンナビノイド成分の投与量は、経口で1日当たり0.5mg、1mg、2mg、3mg、5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、50mg、75mg、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、1000mg、1500mg、2000mg、3000mg、4000mg、5000mg、6000mg、7000mg、8000mg、9000mg、又は10000mgである。ある特定の実施形態によれば、CBDAエステルの投与量は、経口で1日当たり約0.5mg、1mg、2mg、3mg、5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、50mg、75mg、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、1000mg、5000mg、又は10000mgである。ある特定の実施形態によれば、CBDA-MEの投与量は、経口で1日当たり約0.5mg、1mg、2mg、3mg、5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、50mg、75mg、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、1000mg、2000mg、5000mg、又は10000mgである。
【0173】
いくつかの実施形態によれば、単位剤形は、1日の任意の時間に食物と一緒に、1日の任意の時間に食物なしで、一晩の断食後に食物と一緒に(例えば、朝食と一緒に)投与される。
【0174】
いくつかの実施形態では、本発明による治療方法は、併用療法を伴い得ると考えられる。言い換えれば、本発明の組成物は、1つ以上の追加の化合物又は療法と組み合わせて投与することができ、後者は経腸又は非経口を使用し、吸入、経口、皮内、筋肉内、静脈内、皮下、鼻腔内、及び経皮投与経路を含むが、これらに限定されない。
【0175】
以下の実施例は、本発明を例示するために、及び当業者に対して本発明の方法の説明を提供するために、本発明の特定の態様を記載する。「及び」という用語又は「又は」という用語は、文脈による明確な別段の指示がない限り、「及び/又は」を含む意味で、一般的に用いられることに留意すべきである。本明細書で使用される場合、「約」という用語は、量、時間的持続時間(temporal duration)などの測定可能な値を指すとき、指定された値から、±10%、より好ましくは±5%、更により好ましくは±1%、なおより好ましくは±0.1%の変動を含むことを意味し、そのような変動は、開示された方法を行うのに適切である。
【0176】
実施例は、本発明及びその様々な態様の理解及び実施において有用な特定の方法論を単に提供するので、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。本発明のある特定の好ましい実施形態及び代替実施形態が、本発明を開示する目的のために記載されているが、開示された実施形態に対する改変が、当業者に想起され得る。
【実施例
【0177】
実施例1.カンナビジオール酸(CBDA)の合成
PCT出願国際公開第2018/235079号に記載されている調製プロセスを適用した。ジメチルホルムアミド(dimethylformamide、DMF)中のカンナビジオール(CBD、314mg、1mmol)と炭酸マグネシウムメチルの2モル溶液(MMC/2M、1.5ml、3mmol)との混合物を130℃で3時間加熱した。次いで、反応物を0℃に冷却し、10%塩酸で酸性化し、エーテルで抽出した。有機層を生理食塩水で洗浄し、乾燥剤である硫酸マグネシウム(MgSO)で乾燥させた後、蒸発させた。次いで、粗化合物をカラムクロマトグラフィー(20%エーテル-石油エーテル)により洗浄した。
【0178】
実施例2.カンナビジオール酸メチルエステル(CBDA-ME)の合成
PCT出願国際公開第2018/235079号に記載されている調製プロセスを適用した。2.5mlのジクロロメタン(CHCl)中のカンナビジオール酸(CBDA)の溶液(175mg、0.488mmol)に、0.02mlのメタノール(CHOH,0.488mmol)及び7.2mgの4-ピロリジノピリジン(0.048mmol)を加えた。反応物を室温で5分間撹拌し、続いてカップリング剤、N、N’ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(121mg、0.585mmol)を加え、一晩撹拌した。次いで、溶媒を蒸発させ、粗混合物を5%塩酸で酸性化し、ジクロロメタン(CHCl)で抽出した。有機層を飽和重炭酸ナトリウム水溶液(NaHCO)で洗浄し、乾燥剤である硫酸マグネシウム(MgSO)で乾燥させた後、蒸発させた。次いで、粗化合物をカラムクロマトグラフィー(2%エーテル-石油エーテル)により洗浄する。
【0179】
H-NMRスペクトルは、重水素化DMSOを用いて、Bruker AMX 300MHz装置を使用して得た。薄層クロマトグラフィー(Thin-layer chromatography、TLC)は、シリカゲル60F254プレート(Merck)上で実行した。カラムクロマトグラフィーは、シリカゲル60Å(Merck)上で行われた。化合物は、254nmのUVランプを使用して特定した。
【0180】
H NMR(300MHz、((CDSO))δ 6.18(1H、s、Ar)、5.07(1H、s)、4.44(1H、s)、4.41(1H、s)、3.82(3H、s)、3.35(1H、m)、2.66(1H、m)、2.49(2H、t)、2.09(1H、b)、1.95(3H、s)、1.71-1.05(12、ms)、0.86(3H、t)。
【0181】
実施例3.プラダー・ウィリー症候群モデルにおけるCBDA-MEの治療効果
プラダー・ウィリー症候群のMagel2ヌルマウスモデルを使用して、CBDA-ME治療の効果を調べた。
【0182】
研究設計
使用された実験プロトコルは、AAALAC国際認定機関であるヘブライ大学(イスラエル)の動物実験委員会によって承認された。雄6週齢Magel2nullマウス及びそれらの野生型同腹仔対照を12時間の明/暗サイクル下で維持し、自由に摂食させた。飼料誘発性肥満を生じさせるために、マウスに高脂肪食(HFD)(カロリーの60%脂肪、20%タンパク質、及び20%炭水化物;Research Diet,D12492)又は標準的な実験室飼料(standard laboratory diet、STD、14%脂肪、24%タンパク質、62%炭水化物;NIH-31げっ歯類飼料)のいずれかを14~16週間与えた。次いで、HFDを与えられた肥満マウスは、腹腔内(intraperitoneal、ip)注射により、ビヒクル(1%Tween80、4%DMSO、95%生理食塩水)又はCBDA-ME(20又は40mg/kg)を28日間毎日投与された。STDの同年齢の対照マウスは、毎日ビヒクルを投与された。
【0183】
試験システムの説明:
体重を毎日モニターした。総体脂肪及び除脂肪量は、EchoMRI-100H(商標)(Echo Medical Systems LLC、TX,USA)によって決定された。20~22週目に、深麻酔下で頸部脱臼によりマウスを安楽死させた。脳、腎臓、肝臓、脂肪パッド、膵臓及び筋肉を除去し、肝臓及び腎臓も秤量した。試料を急速凍結するか、又は緩衝化4%ホルマリン中で固定した。生化学的パラメータを決定するために幹血液を採取した。
【0184】
方法:
マルチパラメータ代謝アセスメント-マウスの代謝プロファイルを、Promethion High-Definition Behavioral Phenotyping System(Sable Instruments,Inc.、Las Vegas,NV,USA)を使用することによって評価した。データ取得及び機器制御は、MetaScreenソフトウェアバージョン2.2.18.0を使用して行われ、取得された生データはデータ変換のすべての側面を詳述する分析スクリプトを使用してExpeDataバージョン1.8.4を使用して処理された。食物及び水(継続的に測定した)を自由に摂取できるマウスは、標準的な12時間の明/12時間の暗サイクルに晒され、そのサイクルは、24時間の順応期間とそれに続く24時間のサンプリングで構成された。呼吸ガスを、プルモードの負圧システムを使用するGA-3ガスアナライザー(Sable Systems,Inc.、Las Vegas,NV,USA)を使用して測定した。空気流を、FR-8(Sable Systems,Inc.、Las Vegas,NV,USA)によって、2000mL/分の設定流量で測定及び制御した。水蒸気を連続的に測定し、O及びCOの希釈効果を数学的に補正した。有効体重を、ANCOVAによって計算した。脂肪酸化(Fat oxidation、FO)及び炭水化物酸化(carbohydrate oxidation、CHO)を、FO=1.69xVO-1.69xVCO及びCHO=4.57×VCO-3.23xVOとして計算し、g/d/kg有効質量で表した。
【0185】
歩行活動-歩行活動、自発運動及びホイール走行能力を、Promethion High-Definition Behavioral Phenotyping System(Sable Instruments,Inc.、Las Vegas,NV,USA)で、ビーム間隔が0.25cmの赤外線XYZビームアレイの破壊数によって定量化した。
【0186】
グルコース耐性試験(glucose tolerance test、ipGTT)及びインスリン耐性試験(insulin tolerance test、ipITT)-一晩断食したマウスに、グルコース(1.5g/kg、ip)を注射した後、0、15、30、45、60、90、及び120分に尾の採血を行った。血中グルコースレベルを、Contourグルコメーター(Bayer、Pittsburgh,PA)を使用して決定した。翌日、マウスを6時間絶食させた後、インスリン(0.75U/kg、ip;Eli Lilly)を投与し、血糖値を上記と同じ間隔で測定した。
【0187】
血液生化学-コレステロール、トリグリセリド(triglyceride、TG)、高密度リポタンパク質(high-density lipoprotein、HDL)、低密度リポタンパク質(low-density lipoprotein、LDL)、グルコース、アラニンアミノトランスフェラーゼ(alanine aminotransferase、ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(aspartate aminotransferase、AST)、及びアルカリホスファターゼ(ALP)の血清レベルを、Cobas C-111化学分析装置(Roche、Switzerland)を使用して決定した。空腹時血糖を、Contourグルコメーターを使用して測定した。
【0188】
肝臓脂質含量-肝臓組織を抽出し、それらのトリグリセリド及びコレステロール含量を、Cobas C-111化学分析装置(Roche、Switzerland)又はEnzyChrom(商標)トリグリセリドアッセイキット(BioAssay Systems、Hayward CA,USA)を使用して決定した。
【0189】
組織病理-最初に、群当たり5匹の動物からの5μmパラフィン包埋肝臓切片を、ヘマトキシリン-エオシン染色で染色した。肝臓の画像は、Zeiss Axio Scope.A1光学顕微鏡(Carl Zeiss AG、Jena,Germany)に取り付けられたZeiss AxioCam ICc5カラーカメラ(Carl Zeiss AG、Jena,Germany)でキャプチャされ、各動物の10個のランダムな40×フィールドから撮影された。
【0190】
統計的方法-複数の群における結果及び時間依存変数を、ANOVA、続いてTukey事後検定によって比較した。有意性は、以下の記号を使用してP<0.05に設定した:*STD-Vehに対してP<0.05;HFD-Vehに対して#P<0.05;HFD-20mg/kgのCBDA-MEに対して^P<0.05。
【0191】
結果:
CBDA-MEの代謝プロファイルを、飼料誘発性肥満及び遺伝子誘発性肥満(diet-induced obesity、DIO、genetic-induced obesity、GIO)のマウスで調べた。高脂肪食(HFD)を14~16週間与えた雄Magel2nullマウス及びそれらの野生型同腹仔対照は肥満になり、次いで、ビヒクル又はCBDA-ME(20mg/kg/日又は40mg/kg/日)の毎日のip注射による28日間の治療を開始した。STDの同年齢及び同性別マウスは、対照としての役割を果たした。HFDを与えたMagel2nullマウスの過体重及び脂肪過多症の増加は、両方の用量のCBDA-MEによって低減され、しかしながら、WTマウスにおいて、これらの効果は、40mg/kgのより高い用量においてのみ観察された(図1A図1E)。40mg/kgで治療したWTマウスはまた、除脂肪体重パーセンテージの著しい増加を示した唯一の群であった(図1F)。
【0192】
CBDA-MEで治療されたマウスの代謝プロファイルの変化は、間接熱量測定評価を使用して示した。図2A~2Bに示されるように、CBDA-MEは、WTマウスにおいて脂肪の利用を下方制御し、炭水化物酸化を上方制御した。比較すると、Magel2nullマウスは、脂肪酸化を更に上方制御し、炭水化物酸化を下方制御することによって反対の効果を示した。これらの代謝の差は、Magel2nullマウスにおいてのみ食物摂取及び過食を阻害するCBDA-MEの能力と関連しており、この効果は、それらのWT同腹仔対照では観察されなかった(図3)。
【0193】
CBDA-MEは、WTマウス及びMagel2nullマウスの両方において歩行活動の低下を回復させた(図4)。
【0194】
CBDA-MEで治療したDIOマウスにおける体重の減少は、脂質プロファイルのいくらかの改善をもたらし、HFD誘発性高コレステロール血症が低減した(図5A)。CBDA-MEは、血清HDLに影響を及ぼさず、血清HDLは高いままであった(図5B)。それでも、CBDA-MEは血清LDLのレベルを低下させ(図5C)、これはHDL対LDLの比の増加に寄与した(図5D)。脂質プロファイルに対するこれらの効果は、より高用量のCBDA-MEで治療したマウスにおいてより顕著であった。
【0195】
EPM301による長期治療は、Magel2nullマウスにおいてのみ空腹時血糖値を低下させた(図6A)。更に、CBDA-MEで治療したWTマウス及びMagel2nullマウスの両方が、肥満誘発性グルコース不耐性の低下を示した。この効果は、40mg/kgの用量のEPM301で治療したWTマウスにおいて観察されたが、CBDA-MEは、試験した両方の用量でMagel2nullマウスにおいて有効であることが見出された(図6B、6C)。インスリン感受性は、40mg/kgのCBDA-ME下で両方の遺伝子型においてわずかに改善された(図6D図6F)。
【0196】
より高用量の40mg/kgのCBDA-MEは、AST及びALTの血清レベルの低下によって記録されるように、肥満関連肝細胞傷害を著しく低下させた。ALPレベルに大きな変化は記録されなかった(図7A図7C)。同様に、肝臓トリグリセリド及びコレステロールレベルの上昇並びに肝臓の脂肪液胞の増加に反映されるように、HFD誘発性脂肪肝を、EPM301によって完全に減弱した(図8A図8C)。
【0197】
結論:
CBDA-MEは、Magel2nullマウスにおいて、PWSに関連する主要な代謝パラメータである体重及び食物摂取量(過食)を著しく低減した。
【0198】
CBDA-MEは、試験した両方の用量でMagel2nullマウスにおいて体重を効果的に低減したが、WTマウスでは、より高い用量のみが有効であることが見出された。CBDA-ME(40mg/kg)は、WT DIOマウスにおいて測定されたほとんどすべてのパラメータの改善をもたらした。
【0199】
実施例4.PWS予防モデルにおけるCBDA-MEの治療効果
研究目的
第2の研究の目的は、PWSのマウスモデルにおいて、EPM301治療が体重増加及び脂肪過多症に影響を及ぼすかどうかを評価することであった。
【0200】
研究設計及び方法
雄6週齢Magel2nullマウス及びそれらの野生型同腹仔対照を、12時間の明/暗サイクル下で維持し、標準的な実験室飼料(STD、14%脂肪、24%タンパク質、62%炭水化物;NIH-31げっ歯類飼料)を自由に与えた。
【0201】
治療群
Magel2nullマウスを、EPM301 20mg/kg/日又はビヒクル(1%Tween80、4% DMSO、95%生理食塩水)のいずれかで治療した。WT同胞をビヒクルで治療した。すべての治療は、腹腔内(IP)注射によって18週間与えられた。
【0202】
結果
体重増加:
結果は、EPM301治療Magel2nullマウスが、WT対照マウスと同様に体重を増加させたことを示し、これは、ビヒクル治療Magel2nullマウスで見られた体重増加よりも低かった。体重の変化を比較すると、Magel2nullマウスにおける変化は、WT対照及びMagel2nullビヒクル治療マウスよりも著しく低かった(図9A)。
【0203】
脂肪量:
EPM301治療Magel2nullマウスにおける脂肪量は、WT対照マウスの脂肪量と同様であったが、ビヒクル治療Magel2nullマウスは、WT対照マウスよりも著しく高い、はるかに高い脂肪量を有していた。EPM301治療Magel2nullマウスで見られたより低い脂肪量は、ビヒクル治療Magel2nullマウスと比較して統計的に有意であった(図9B)。
【0204】
除脂肪量:
EPM301治療Magel2nullマウスは、ビヒクル治療Magel2nullマウスよりも著しく高い除脂肪量を有していた。EPM301治療Magel2nullマウスにおける除脂肪量は、WT対照マウスと同様であった(図9C)。
【0205】
結論
結果は、EPM301治療が、Magel2nullマウスにおいて、体重増加、脂肪量を予防し、除脂肪量を増加させたことを示した。これらのパラメータは、WT対照健常マウスと同様であったが、ビヒクル治療Magel2nullマウスは、より体重が増え、はるかに高い脂肪量及びはるかに低い除脂肪量を有していた。
【0206】
本発明は、その好ましい実施形態として本明細書で上述してきたが、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の趣旨及び性質から逸脱することなく、それを変更することができる。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
【国際調査報告】